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特表2024-520642複数の出口および攪拌または混合特性を有する戻りラインを備えたポンプ一体型容器
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  • 特表-複数の出口および攪拌または混合特性を有する戻りラインを備えたポンプ一体型容器 図1
  • 特表-複数の出口および攪拌または混合特性を有する戻りラインを備えたポンプ一体型容器 図2
  • 特表-複数の出口および攪拌または混合特性を有する戻りラインを備えたポンプ一体型容器 図3
  • 特表-複数の出口および攪拌または混合特性を有する戻りラインを備えたポンプ一体型容器 図4A
  • 特表-複数の出口および攪拌または混合特性を有する戻りラインを備えたポンプ一体型容器 図4B
  • 特表-複数の出口および攪拌または混合特性を有する戻りラインを備えたポンプ一体型容器 図4C
  • 特表-複数の出口および攪拌または混合特性を有する戻りラインを備えたポンプ一体型容器 図4D
  • 特表-複数の出口および攪拌または混合特性を有する戻りラインを備えたポンプ一体型容器 図4E
  • 特表-複数の出口および攪拌または混合特性を有する戻りラインを備えたポンプ一体型容器 図5
  • 特表-複数の出口および攪拌または混合特性を有する戻りラインを備えたポンプ一体型容器 図6
  • 特表-複数の出口および攪拌または混合特性を有する戻りラインを備えたポンプ一体型容器 図7A
  • 特表-複数の出口および攪拌または混合特性を有する戻りラインを備えたポンプ一体型容器 図7B
  • 特表-複数の出口および攪拌または混合特性を有する戻りラインを備えたポンプ一体型容器 図8
  • 特表-複数の出口および攪拌または混合特性を有する戻りラインを備えたポンプ一体型容器 図9
  • 特表-複数の出口および攪拌または混合特性を有する戻りラインを備えたポンプ一体型容器 図10
  • 特表-複数の出口および攪拌または混合特性を有する戻りラインを備えたポンプ一体型容器 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】複数の出口および攪拌または混合特性を有する戻りラインを備えたポンプ一体型容器
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
C12M1/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574366
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 US2022031966
(87)【国際公開番号】W WO2022256532
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】63/197,250
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522306435
【氏名又は名称】アルフィニティ ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALPHINITY USA,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ガニエ,マイケル シー.
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA27
4B029BB01
4B029CC01
4B029DC01
4B029DG10
4B029GB10
(57)【要約】
可撓性バッグまたは実質的に剛性のコンテナを含むことができるバイオプロセスまたは医薬品容器は、内部容積を規定し、底面を有し、底面が、開放されているか、または流体を通過させるための開口を含む。ポンプは容器の底面に固定されている。ポンプは、容器の内部と流体連通する入口と、複数の出口とを有し、流体が、容器の内部容積からポンプの入口内に入って複数の出口から排出される。また、容器は、容器の内部容積に流体を戻す1または複数の戻りラインも含むことができる。戻りラインを介して流体が送り出されると、戻りラインは、波状に動き、揺れ動き、または他の方法で動いて、容器に収容される流体の攪拌および/または混合を行うことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器であって、
内部容積を規定し、かつ底面を有する可撓性バッグまたは実質的に剛性のコンテナを含む容器であって、前記底面が、流体を通過させるための開口を含む、容器と、
前記容器の底面に固定されたポンプであって、前記開口を介して前記内部容積と流体連通する入口および複数の出口を有し、当該ポンプが前記容器の内部容積から当該ポンプの入口内に流体を吸い込んで前記複数の出口から排出する、ポンプと、
戻りラインを含む1または複数の導管またはチューブであって、前記戻りラインは、一端が前記複数の出口に接続され、かつ前記容器の内部容積内に延びる可撓性の自由端を有する、1または複数の導管またはチューブとを備えることを特徴とする容器。
【請求項2】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記1または複数の管理またはチューブの戻りラインが、可撓性チューブまたは可撓性導管を含むことを特徴とする容器。
【請求項3】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記1または複数の導管またはチューブの戻りラインが、前記容器の外部に配置された剛性の導管またはチューブを含むことを特徴とする容器。
【請求項4】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記戻りラインの可撓性の自由端が、前記容器の内部容積内の異なる深さまたは高さで終端していることを特徴とする容器。
【請求項5】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記戻りラインの可撓性の自由端が、端部特徴部を含むことを特徴とする容器。
【請求項6】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記出口の数が、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれを超える出口を含むことを特徴とする容器。
【請求項7】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記1または複数の戻りラインが、分岐ラインを含むことを特徴とする容器。
【請求項8】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記1または複数の戻りラインが、その側面に形成された1または複数の穴を有することを特徴とする容器。
【請求項9】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記複数の出口が、異なる流量となるように構成されていることを特徴とする容器。
【請求項10】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記複数の出口が、実質的に同じ流量になるように構成されていることを特徴とする容器。
【請求項11】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記戻りラインが、前記容器に含まれるポートから前記容器に入り、前記戻りラインのそれぞれの可撓性の自由端が、前記容器に固定されていないことを特徴とする容器。
【請求項12】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記戻りラインの少なくとも1つが、濾過、緩衝液添加、緩衝液希釈、培地添加、栄養素添加、ガスのスパージング、ガス除去、オゾンガス添加、廃棄物除去、希釈、目的の1または複数の分子または1または複数の化合物の沈殿、センサ読み取り、およびpH調整、懸濁液中の物質の連続的な混合または維持、生成物サンプリング、生成物の採取、または限外濾過/透析濾過(UFDF)洗浄のうちの1または複数を実行する処理ユニットに連結されていることを特徴とする容器。
【請求項13】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記容器の開口に配置されたポートをさらに有し、前記容器の底面がポートに固定されていることを特徴とする容器。
【請求項14】
請求項13に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記ポートが、フランジ付き端部を含み、前記ポンプが、前記ポートのフランジ付き端部に固定されていることを特徴とする容器。
【請求項15】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記ポンプが、接合部分、溶着部分、粘着剤または接着剤のうちの1つによって前記容器の底面に固定されたポンプヘッドを含むことを特徴とする容器。
【請求項16】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記ポンプが、前記容器と一体的に成形または形成されていることを特徴とする容器。
【請求項17】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記戻りラインが、ツーピースジャケットに収容されていることを特徴とする容器。
【請求項18】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記容器が上面を有し、前記戻りラインが、前記上面を貫通して前記内部容積内に延びることを特徴とする容器。
【請求項19】
容器から流体を送り出す方法であって、
前記容器が、内部容積を規定し、かつ底面を有する可撓性バッグまたは実質的に剛性のコンテナを含み、前記底面が、流体を通過させるための開口を含み、ポンプが、前記容器の底面に固定され、前記開口を介して前記内部容積と流体連通する入口と、戻りラインを含むそれぞれの導管またはチューブに結合された複数の出口とを備え、前記戻りラインは、一端が前記複数の出口に接続され、かつ前記容器の内部容積内に延びる可撓性の自由端を有し、
当該方法が、前記容器に含まれる流体を前記ポンプの複数の出口から送り出して、前記容器内に戻すステップを備えることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、
前記導管またはチューブが、濾過、緩衝液添加、緩衝液希釈、培地添加、栄養素添加、ガスのスパージング、ガス除去、オゾンガス添加、廃棄物除去、希釈、目的の1または複数の分子または1または複数の化合物の沈殿、センサ読み取り、およびpH調整、懸濁液中の物質の連続的な混合または維持、生成物サンプリング、生成物の採取、または限外濾過/透析濾過(UFDF)洗浄のうちの1または複数を実行する処理ユニットに連結されていることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法において、
前記複数の出口に接続された導管またはチューブの少なくとも1つが、第2の容器に接続され、前記第2の容器が、内部容積を規定し、かつ底面を有する可撓性バッグまたは実質的に剛性のコンテナを含み、前記底面が、流体を通過させるための開口を含み、第2のポンプが、前記第2の容器の底面に固定され、前記開口を介して前記内部容積と流体連通する入口と、複数の出口とを備え、当該方法が、前記ポンプを使用して前記容器の内部容積から前記第2の容器に流体を送り出すステップと、前記第2のポンプを使用して前記第2の容器内の流体を前記第2のポンプの複数の出口から送り出すステップとを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、概して生成物の製造、生産または回収において使用される流体ベースのシステムおよびプロセスに関する。より具体的には、本発明は、医薬、生物学、遺伝子治療用途または他の衛生プロセス産業に関連して使用される、バイオプロセスまたは医薬品流体コンテナ、培地および緩衝液バッグ、リアクタおよび発酵ユニットなどの容器に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、2021年6月4日に出願された米国仮特許出願第63/197,250号に対する優先権を主張するものであり、この出願は、引用によりその全体が本明細書に援用されるものとする。優先権は、米国特許法第119条および他の適用可能な法令に従って主張される。
【背景技術】
【0003】
多くの市販製品は、化学的プロセスおよび生物学的プロセスを使用して製造される。例えば、医薬品は、大型のリアクタおよび他の装置を用いて商業的に大量に生産される。いわゆる生物製剤は、細胞または組織のような生体から生産または単離される薬物または他の化合物である。生物製剤は、タンパク質、核酸、生体分子、またはそれら物質の複雑な組合せで構成される。生物製剤は、細胞のような生体を含むこともある。例えば、生物製剤を商業規模で生産するには、高度で高価な装置が必要とされる。例えば、医薬品でも生物製剤でも、最終製品を得るまでに様々なプロセスが必要である。生物製剤の場合、哺乳動物細胞が、増殖チャンバ、リアクタ、バッグなどのコンテナ内で培養され、それら細胞を保持するユニット内で、栄養素を注意深く調節する必要がある。
【0004】
重要なことは、生きた細胞または他の生物によって生産された生物学的産物は、濾過し、抽出し、濃縮し、最終的に増殖コンテナから回収する必要があることである。細胞によって生成された廃棄物は、通常、制御下で、増殖コンテナから除去する必要がある。典型的には、細胞によって産生される所望の生物学的産物および/または老廃物は、細胞を含む増殖コンテナの下流に位置する別個のポンプデバイスを用いて、増殖を行う増殖コンテナから送り出される。増殖チャンバから取り除かれるこの送り出される流体は、通常、分離や濾過のような下流処理を受ける。濾過は、流体溶液を分離または濃縮するために行われ、バイオテクノロジーや医薬品の製造プロセスでは、医薬品や他の望ましい製品を成功裏に効率的に製造するために重要である。
【0005】
細胞増殖が行われるコンテナユニットから送り出される流体を処理するために、様々な分離および濾過デバイスを使用することができる。流体から成分を濾過または分離するために使用される一般的な技術は、フィルタまたは膜を使用して、例えば物理的サイズに基づき流体中に含まれる種を濾過する接線流濾過(TFF)である。フィルタ膜を詰まらせる傾向のある老廃物、死細胞、バイオフィルムの蓄積を減らすために、流れが膜に対して接線方向とされる。別の分離技術では、細胞の採取と清澄化に音響波分離(AWS)技術が利用されている。TFFのような方法とは対照的に、AWSは物理的なバリアやフィルタではなく、高周波の共振超音波を用いて細胞の分離を実現している。
【0006】
より最近では、細胞を成長させるための灌流法が開発されている。灌流法では、栄養分が枯渇し、細胞から発生する老廃物を含む培地が細胞培養物から連続的に除去され、新鮮な培地と交換される。灌流法では、高濃度の細胞を得ることができ、バッチプロセスとは異なり、生産プロセスを連続的に行うことができる。灌流法においても、連続的に循環する細胞から生成された薬物や老廃物を分離および/または濾過する必要がある。しかしながら、灌流法は、培地と細胞を分離する分離および/または濾過プロセス中に細胞が頻繁に損傷を受けるため、信頼性が低いことが知られている。灌流増殖法の既知の欠点に対処するために、様々な解決策が提案されている。米国特許第6,544,424号は、灌流法の低い信頼性に対処しようとする流体濾過システムを開示している。‘424特許に記載のシステムは、一端が別のダイヤフラムポンプに連結された中空ファイバモジュールを利用している。ポンプは、フォローファイバまたはフィルタスクリーンを横切る交互の流れを生成するために使用される。
【0007】
‘424特許に開示されているような解決法の問題点は、細胞を含む容器の下流に位置する別個のポンプが、様々な導管および中空ファイバモジュールを介して容器に接続されていることである。ポンプを流体経路に組み込む場合、キャビテーション、真空または脈流状態による問題を避けるように、そのようなシステムを設計する必要がある。キャビテーションおよび非定常流の状態は、これらの製造プロセスで使用される繊細な哺乳類細胞を溶解する傾向がある。このため、ポンプと容器のシステムは、それらの問題を回避するように設計する必要がある。技術的には、これは、ポンプがキャビテーションまたは他の不利な流れ状態なしに動作することを保証するために、有効正味吸込ヘッド(NPSH)が必要正味吸込ヘッド(NPSH)を上回るように、ポンプおよびシステムを設計する必要があることを意味する。残念ながら、‘424特許に開示されているようなコンテナの下流にポンプを設置すると、必然的にキャビテーション、真空、および細胞を死滅させたり破壊したりする問題のある流れ状態が発生する傾向がある。
【0008】
さらに、上述したような多くの細胞増殖システムでは、チューブの可撓性セグメントが、細胞含有容器とポンプおよび関連する濾過/分離デバイスとを接続している。残念ながら、この構成は、上流の「負」のポンプ圧力により、可撓性チューブ自体が潰れる可能性があるという問題に悩まされる。チューブが潰れると、チューブの内面が互いに接触し、チューブ内の流体の更なる流れが妨げられる。チューブが完全に閉じない場合でも、チューブの存在により、キャビテーションや他の有害な脈動流状態が発生する可能性がある。例えば、チューブや導管の不規則で曲がりくねることの多い経路は、細胞の脆弱な状態を破壊する。このような流れ状態は、ポンプに損傷を与えるだけでなく、流体中に含まれる細胞を破壊したり干渉したりする可能性がある。ポンプ設計においてこれに対処する試みがなされている。例えば、Watson Marlow社製のQuantum蠕動ポンプは、使い捨てカートリッジを使用してせん断力の低減を試みているが、このポンプは依然として、リザーバから少し離れた位置にある供給ラインを介して接続されている。これにより、低流量で脈動が発生し、流体を効率的にポンプに送り込むという主な課題を解決しない。
【0009】
引用により本明細書に援用される国際特許出願第PCT/US2018/015777号は、流体容器に直接または間接的に組み込まれるポンプを組み込むことによって上記の制限を克服する、生物学的/医薬品流体を収容するための流体容器を記載している。一体化されたポンプを有するそのような流体容器の設計における更なる改良が望まれている。
【発明の概要】
【0010】
一実施形態では、生物学的流体または医薬品流体を収容するための流体容器が、流体容器に直接または間接的に組み込まれるポンプを含む。一実施形態では、容器の底面に、容器からの流体の流出を可能にする穴または開口が配置される。穴または開口は、ある実施形態では、実際に容器の底面の一部、大部分またはすべてにわたり、ポンプが固着される周囲または外周面を残すことができる。ポンプは、容器底部の開口または開口部の位置で容器に組み込まれるか、または容器に取り付けられる。いくつかの実施形態では、開口を貫通して流体密な配置構成で容器に固定される(または容器とともに製造される)ポートまたはフランジなどの中間構成要素を介して、ポンプが容器に固定される。その後、ポンプはフランジに固定される。別の実施形態では、ポンプが容器に直接固定される。例えば、ポンプのポンプヘッドは、製造プロセス中に容器と一体的に形成することができる。代替的には、さらに別の実施形態では、1または複数の締結具を用いてポンプヘッドを容器に固定することができる。ポンプヘッドは、熱接着、接着剤、粘着剤、溶着などを使用して容器に直接接合することもできる。
【0011】
本明細書で説明するように、ポンプまたはポンプヘッドは、複数の出口を組み込むことができる。例えば、ポンプまたはポンプの一部を形成するポンプヘッドは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の別個の出口を有することができる。出口は、各出口からの同じ流量または異なる流量に対応するように設計することができる。出口は、ポンプまたはポンプヘッドの周囲または側面に、対称または非対称に配置することができる。ポンプの出口は、バイオ医薬品プロセスで使用される様々な端部またはコネクタで終端することができる。それには、衛生コネクタ、バーブロック、ホースバーブ、フランジ、TCコネクタ、使い捨て無菌コネクタ(DAC)などが含まれる。出口は、任意選択的には、1または複数の出口に直接または間接的にバルブを含むか、または組み込むことができる。また、チューブまたは他の導管は、(例えば、出口への溶着などにより)ポンプの出口と直接接続することもできる。さらに別の実施形態では、ポンプの出口は、単に流体が通過する開口または開口部であってもよい。この開口または開口部は、内部にネジが切られており、それによりポンプのネジ付き出口と接続するネジ付き接続構成要素またはインサートを出口が収容することができる。
【0012】
出口は、容器に戻される別個の流体ライン(例えば、チューブまたは導管)に通じるようにしてもよい。他の実施形態では、それら流体ラインが、流体容器に戻る前に、異なるプロセスやユニット操作に導かれる。一例として、出口に接続された流体ラインは、流体を流体容器に直接戻す戻りラインとしても動作することができる。他の出口からの流体ラインは、1または複数の能動的な動作を実行することができる。例えば、流体ラインは、流体容器に戻される前に、濾過、ガススパージャ、廃棄物除去器、検知ユニット(例えば、pHおよび導電率)、媒体添加ユニットまたは分離ユニットに繋げることができる。流体ラインは、一実施形態では、剛性のパイプまたは導管を含むことができる。別の実施形態では、流体ラインが、可撓性チューブまたは導管(例えば、シリコーンチューブ)も含むことができる。いくつかの実施形態では、例えば、流体圧力が高い場合、可撓性導管またはチューブは、可撓性チューブを取り囲んで可撓性チューブ内に存在する高い流体圧力に抵抗する1または複数の外部ツーピースジャケットを使用して、封入される。それらジャケットは、流体ラインが流体容器に戻るまで、他の構成要素(例えば、バルブ、処理ユニットなど)に接続されるか、端と端を接した配置で互いに接続され得る。
【0013】
複数の出口に接続される流体ラインは、いくつかの実施形態では、最終的に流体容器に戻るか、流体容器に戻る他の流体ラインに接続される。それら「戻りライン」は、上部または側部から流体容器に入り、流体容器の内部にある程度の距離だけ延びる長さを有する。一実施形態では、異なる戻りラインが、流体容器の内部に異なる距離延びることできる。例えば、1本の戻りラインは、流体容器の底部近くに端部が配置される長さを有することできる。逆に、別の戻りラインは、流体容器の上部に近い位置に端部が配置される長さを有することができる。他の戻りラインは、同じ長さまたは異なる長さ(例えば、その中間)を有することができる。さらに他の実施形態では、複数の出口に接続される流体ラインが、容器に戻らない。すなわち、出口ラインを、他の下流システムまたはプロセスに接続することもできる。例えば、緩衝液調製または直列希釈用途の場合、1または複数の出口が下流の容器などに?がり、そこで、流体および/または試薬が添加された後、同様の方法でポンプで送り出される。
【0014】
好ましい一実施形態では、容器内部の戻りラインが可撓性チューブから形成され、流体が戻りラインを通って流体容器の内部に実際に送り込まれるときに、戻りラインが前後に動き、蛇行し、または振動して、流体容器に含まれる液体を撹拌または混合するようになっている。可撓性チューブは、容器環境外で使用されるチューブと同じであっても異なっていてもよい。戻りラインの動きは、水道ホースを放置したときにする蛇行の動きに似ている。戻りラインのこのランダムな動きは、流体容器に収容された流体の撹拌および混合を助ける。いくつかの実施形態では、戻りラインが、含まれる流体の攪拌および/または混合を助ける1または複数の端部特徴部を含むことができる。例えば、戻りラインは、フィン、突起、分岐、または他の表面特徴部を含むことができる。また、戻りラインは、流体容器に含まれる液体内での蛇行する往復運動をさらに可能にし得る、端部に形成された穴または開口を含むことができる。
【0015】
一実施形態では、流体容器が実質的に剛性のコンテナである。例えば、容器は、タブ、バット、バレル、ボトル、タンク(例えば、緩衝液タンク)、リアクタ、フラスコ、または液体を保持するのに適した他のコンテナの形態をとることができる。いくつかの実施形態では、容器がバイオリアクタまたは発酵槽として使用されるプロセスに流体容器を組み込むことができる。流体容器は、金属、ポリマー、ガラスなどを含む多くの材料で作製することができる。好ましい一実施形態では、容器がポリマーまたは樹脂材料から形成され、使い捨てデバイスとして作製される。同様に、容器に直接または間接的に固定されるポンプ(例えば、ポンプヘッド)の1または複数の部分も、ポンプと容器の一体化または接合を容易にするポリマーまたは樹脂材料から作製することができる。いくつかの実施形態では、ポンプと容器がともに同じ材料から作られる。他の実施形態では、ポンプと容器が異なる材料から作られる。
【0016】
別の実施形態では、流体容器がバッグのような可撓性コンテナである。バッグは、通常、ポリマーまたは樹脂の1または複数の材料から作られ、数多くの形状およびサイズを有することができる。可撓性バッグは、1または複数の層から形成されるものであってもよい。バッグは、バッグの底面に直接または間接的に固定されたポンプを含む。バッグおよび取り付けられたまたは一体化されたポンプは、バッグおよびポンプを適切な向きに保持するために、トロリ、台車、クレードル、カート、ホルダまたは他の支持コンテナに支持されるようにしてもよい。いくつかの実施形態では、ポンプとバッグがともに同じ材料から作られる。他の実施形態では、ポンプとバッグが異なる材料から作られる。
【0017】
一実施形態では、容器が可撓性であるか実質的に剛性であるかにかかわらず、ポンプは、ポンプに動力を供給して作動させるために使用される別個のモータを含む。例えば、ポンプの好ましい一実施形態は、動作中に生成される流れが緩やかな性質を持つダイヤフラムポンプである。ダイヤフラムポンプまたはメンブレンポンプは、バルブと組み合わせて可動膜を使用して流体を送り出す移送式ポンプとして動作する。一実施形態では、モータの駆動シャフトを使用して章動ディスクまたはワッブルプレートを駆動し、それによりダイヤフラム膜を作動させて、ポンプを介して流体を駆動することができる。代替的には、サーボモータまたは電子/磁気アクチュエータを使用して、ダイヤフラム膜を順次作動させて、同様のポンプ作用を達成することもできる。ポンプは、容器の開口または開放された容器底部を通過する流入流体を受け入れる入口ポートと、送り出される流体が通過する出口ポートとを含む。
【0018】
本発明の一実施形態では、容器自体が単回使用または使い捨てとして作られる。さらに、ポンプの1または複数の構成要素を使い捨てにすることもできる。例えば、いくつかの実施形態では、容器と一体的に形成されているポンプヘッドが、使い捨てであるか、または使い捨ての構成要素を含むこともできる。ポンプヘッドが容器に固定される他の実施形態では、ポンプヘッドも、単回使用の1または複数の構成要素から形成することができる。代替的には、容器、ポンプ、それらの間のポートやフランジのようなインターフェース構成要素が、再使用のために滅菌可能であってもよい。ポンプに動力を供給して作動させるために使用されるモータまたは他の駆動機構は、通常は再使用可能である。
【0019】
一実施形態では、例えばバイオプロセスまたは製薬操作に使用される容器が、一体型ポンプまたは接続されたポンプを含む。この容器は、内部容積を規定し、かつ底面を有する可撓性バッグまたは実質的に剛性のコンテナを含み、底面が、流体を通過させるための開口を含む。ポンプが、容器の底面に固定されており、当該ポンプが、開口を介して内部容積と流体連通する入口および複数の出口を有し、当該ポンプが容器の内部容積から当該ポンプの入口内に流体を吸い込んで、複数の出口から流体を排出し、1または複数の導管またはチューブは、一端が複数の出口に接続され、かつ容器の内部容積内に延びる可撓性の自由端を有する戻りラインを含む。
【0020】
別の実施形態では、可撓性バッグまたは実質的に剛性のコンテナから形成される容器から流体を送り出す方法が開示される。容器は、内部容積を規定し、かつ底面を有し、底面が、流体を通過させるための開口を含み、ポンプが、容器の底面に固定され、開口を介して内部容積と流体連通する入口と、戻りラインを含むそれぞれの導管またはチューブに結合された複数の出口とを備え、戻りラインの一端が複数の出口に接続され、戻りラインが、容器の内部容積内に延びる可撓性の自由端を有する。当該方法は、容器に含まれる流体をポンプの複数の出口から送り出し、戻りラインを介して容器内に戻すステップを備える。
【0021】
本明細書に記載の容器は、容器自体またはポンプのいずれかに固定されるオプションを含むことができる。粉末バリアは、ポンプの入口の一部を少なくとも部分的に覆う。粉末バリアは、容器に供給される固形物や他の物質が、流体と適切に混合する前にポートの入口に直接入るのを防ぐために使用することができる。粉末バリアは、完全に省略することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、複数の出口を有する一体型ポンプを有する容器の一実施形態を概略的に示している。また、容器内の撹拌/混合機能を有する可撓性戻りラインも図示されている。
図2図2は、複数の出口を有する一体型ポンプを有する容器の別の実施形態を概略的に示している。この実施形態では、容器の外側に位置する可撓性戻りラインが、ツーピースジャケットに封入されている。可撓性戻りラインセグメントは容器内部に配置されている。また、戻りラインに介在する様々な処理ユニットも図示されている。
図3図3は、可撓性チューブまたは導管のセグメントを封入するために使用されるツーピースジャケットの一実施形態を示している。
図4図4Aは、一実施形態に係る可撓性戻りラインの(容器内部に位置する)端部を示している。図4Bは、別の実施形態に係る可撓性戻りラインの(容器内部に位置する)端部を示している。図4Cは、別の実施形態に係る可撓性戻りラインの(容器内部に位置する)端部を示している。図4Dは、別の実施形態に係る可撓性戻りラインの(容器内部に位置する)端部を示している。図4Eは、別の実施形態に係る可撓性戻りラインの(容器内部に位置する)端部を示している。
図5図5は、複数の出口を有する一体型ポンプを有する剛性容器の一実施形態を概略的に示している。また、容器内の撹拌/混合機能を有する戻りラインも図示されている。この実施形態では、外部戻りラインを、剛性導管またはチューブ、またはツーピースジャケット内に封入された可撓性導管またはチューブとすることができる。
図6図6は、一実施形態に係る容器および接続ポート(ポンプを取り付けまたは固定するために使用される)を示している。
図7図7Aは、一実施形態に係る容器に固定されるポンプの分解組立図を示している。ポンプは複数の出口を有する。図7Bは、一実施形態に係る容器に固定されるポンプの側面図を示している。ポンプは複数の出口を有する。
図8図8は、複数の出口を有するポンプが固定される容器を概略的に示している。出口は出口ラインに連結されている。これらの出口ラインは、他のプロセス/システムに導くことができ、また、容器に流体を戻す戻りラインに結合することもできる。
図9図9は、複数のポンプを有し、各ポンプが複数の出口を有する容器の一実施形態を示している。
図10図10は、一実施形態に係るポンプヘッドを示している。任意選択的な粉末バリアも図示されている。
図11図11は、複数出口のポンプの使用例を示す一実施形態を示している。ここでは、第1の容器に接続された第1のポンプの出口の一つが、導管またはチューブを介して、第2のポンプに接続された第2の容器に送り出されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、容器10の一実施形態を示し、この容器は、ポンプ12と一体化されているか、またはポンプに固定された可撓性バッグまたは実質的に剛性のコンテナとなっている。容器10は、その中に流体を保持するために使用される内部容積を規定する。容器10の内部は、流体、試薬、細胞または生成物が収容される無菌または滅菌環境を規定する。容器10は、上面16および底面18だけでなく、複数の側面14も含む。容器10は、数多くの形状およびサイズ(例えば、100リットル以下から数千リットルまで)を有することができる。図示の容器10は、別個の表面(例えば、上面、側面、底面)を有するが、いくつかの実施形態では、そのような別個の境界は必要ない。容器10は、上面16を含み、この上面が、いくつかの実施形態では、容器10の内部へのアクセス通路を規定する1または複数のポート20を含むことができる。ポート20は、数多くの異なるサイズおよび構成を有する。ポート20は、上面16に位置するように図示されているが、ポート20は、容器10の任意の表面に配置することもできる。例えば、ポート20は、容器10の側面14または容器10の底面18に設けることもできる。ポート20は、固体、液体および気体を含む物質の添加/還流のためのアクセスを提供することができる。また、ポート20は、容器10内に含まれる流体をサンプリングするために使用することもできる。また、ポート20は、容器10の内部の状態を監視するために使用される1または複数のプローブまたはセンサのアクセスを提供することもできる。また、ポート20は、通気口として使用することもできる。ポート20は、いくつかの実施形態では、バイオ医薬品プロセスで使用される様々な端部またはコネクタで終端することができる。それには、衛生コネクタ、ホースバーブ、フランジ、TCコネクタ、使い捨て無菌コネクタ(DAC)などが含まれる。
【0024】
好ましい一実施形態では、ポート20の1または複数が、容器10に流体を戻す戻りライン24へのアクセスも提供する。一実施形態における戻りライン24は、本明細書でより詳細に説明するように、戻りライン24が、容器10内にあるときに、流体の流れに応答して曲がり、捻じれることができるように、少なくとも部分的に可撓性材料から形成されている。戻りライン24を構成する可撓性チューブまたは導管は、いくつかの実施形態では、非強化ポリマー導管またはチューブを用いて形成することができる。例えば、可撓性チューブまたは導管24は、白金硬化シリコーンから形成され得るが、他の材料を使用することもできる。それには、例えば、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ゴム(TPR)、シリコーン、または医薬品/バイオ医薬品用途で一般的に使用される他の材料などのポリマーが含まれる。戻りライン24の可撓性チューブ/導管は、様々な直径および長さを有することができる。容器10内には、任意の数の戻りライン24が存在していてもよい。それには、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10本以上の戻りライン24が含まれる。いくつかの実施形態では、戻りライン24の数が、ポンプ12からの出口52の数(後述)に等しいが、他の実施形態では、出口52の数よりも多いまたは少ない戻りラインが存在するようにしてもよい。戻りライン24は、いくつかの実施形態では、容器10に直接戻ることができる。他の実施形態では、戻りライン24が、戻りライン24の流体流路に沿って介装された(図2に示すような)センサまたは処理ユニット100を含むことができる。
【0025】
図2に示すように、好ましい一実施形態では、容器10の外側または外部に位置する戻りライン24が、剛性の外骨格またはツーピースジャケット26内に収容された可撓性チューブまたは導管から形成されている。例えば、図2に見られるように、容器10の外部に位置する可撓性戻りライン24は、可撓性チューブまたは導管の周囲に配置可能な剛性ツーピース外骨格またはジャケット構造26内に収容されている。剛性のツーピース外骨格/ジャケット26は、いくつかの実施形態では、ヒンジ30(図3を参照)を介して互いに接続され、それにより、ツーピースジャケット26を戻りライン24の可撓性チューブまたは導管の周りで閉じることが可能となっている。ツーピース外骨格またはジャケット26は開くことができ、それにより、交換用の可撓性チューブまたは導管を内部に配置することが可能となっている(例えば、可撓性チューブまたは導管は使い捨てであってもよい)。剛性のツーピース外骨格/ジャケット26は、有利なことに、可撓性ラインが破損したり他の方法で機能しなくなることなく、非常に高い圧力を戻りライン24に流すことを可能にする。しかしながら、動作圧力が低い場合には、ツーピースジャケット26が不要になり得ることを理解されたい。
【0026】
図3は、戻りライン24の可撓性チューブまたは導管を包囲するために使用され得るツーピース外骨格またはジャケット26の一実施形態を示している。ツーピース外骨格またはジャケット26は、ジャケット26の2つの半部26a、26bを連結するヒンジ30を含む。外骨格またはジャケット26の各半部26a、26bは、戻りライン24の可撓性チューブまたは導管をぴったりと収容するように寸法設定された半環状内面を規定する。ツーピース外骨格またはジャケット26は、図示のノッチ34内へと回動するネジ付きラッチ32を使用して閉じることができる。ツーピース外骨格またはジャケット26は、任意選択的に、図3に示すようなフランジ付き端部36を含むことができる(戻りライン24の可撓性チューブまたは導管も、同様の形状のフランジ付き端部38を含むことができる)。これにより、隣接するツーピース外骨格またはジャケット26を、クランプ72(図2)を使用して、端と端とを突き合わせて連結することができる。ジャケット26は、同様のクランプ72を使用して、バルブ、センサ、マニホールド、ユニット操作などの他の構成要素に連結することもできる。
【0027】
好ましい一実施形態において、複数の戻りライン24が使用される場合、異なる戻りライン24は、図1および図2に見られるように、容器10内の異なる深さで終端する可撓性チューブまたは導管の自由端42を有する。すなわち、戻りライン24の可撓性チューブまたは導管は、容器10内部で異なる長さを有することができる。一部の戻りライン24は底面18の近くで終端し、他の戻りライン24は上面16の近くで終端するようにしてもよい。さらに他の戻りライン24は、容器10内の中間レベルで終端するようにしてもよい。当然のことながら、すべての戻りライン24が容器10内の異なるレベルで終端するわけではない。さらに、戻りライン24はすべて同じレベルで終端するようにしてもよい。
【0028】
戻りライン24の可撓性チューブまたは導管は、「自由」端42を有し、この自由端は、容器10の内部に延び、流体が戻りライン24から容器10内に出る開放端を有する。自由端42は、好ましくは、流体が存在するときに流体中に沈められる。戻りライン24は、自由にぶら下がるように構成され、液体流体が戻りライン24を通って容器10内に流れるとき、戻りライン24が容器10内に含まれる液体内で前後にうねる運動、または蛇のような動きをする(図1図2図4A図4Eおよび図5に示される)。戻りライン24のこの動き、および戻りライン24から容器10内に出る流体の付随する変化する流体の方向は、容器10に含まれる流体の攪拌および/または混合を助ける。戻りライン24の可撓性チューブまたは導管の動きは、ホースから出る水によって引き起こされる力に応じてランダムな方向に制御不能に動く、圧力のかかった放置された給水ホースの動きに似ている。この動きは典型的にはランダムであり(ただし、必ずしもそうである必要はないが)、戻りライン24を容器10内で曲げたり、回転させたり、揺れ動かしたりする。
【0029】
任意選択的な一実施形態では、図4Aおよび図4Bに示すように、戻りライン24が、端部特徴部44を含むことができ、この端部特徴部が、戻りライン24の外面に位置し、容器10内の液体の混合および/または撹拌を促進するのを助ける、フィン、突起または突出部を含むことができる。さらに別の実施形態では、図4Cおよび図4Dに見られるように、戻りライン24の1または複数が、末端に分岐46を含むことができ、それにより、流出時に流れが複数方向にそらされる。分岐46は、容器10内の流体の混合/攪拌をさらに補助することができる。単一の戻りライン24は、複数の分岐(例えば、2、3、4、5またはそれ以上の分岐)を有することができる。別の選択肢では、図4Eに見られるように、戻りライン24が、混合および/または攪拌を助けるために、側面に沿って穴または開口48を含むことができる。また、図4A図4Eの特徴部の組合せも考えられる。戻りライン24は、動作中に戻りライン24がもつれたり、絡まったりしないような長さおよび構成とされる。これは、容器10への入口点、戻りライン24の長さ、さらには戻りライン24の可撓性または構造を調整することによって達成することができる。
【0030】
図1に示すようないくつかの実施形態では、戻りライン24を複数のセグメントまたはセクションに分割することができる。例えば、第1のセグメント24aは、一端をポンプ出口52に接続し、他端を容器10に形成されたポート20に接続することができる。ポート20は、例えば、かえしのある端部を含むことができ、そこに第1のセグメント24aが結合される。ポート20は、容器10の内部に延びる戻りライン24の第2のセグメント24bを含むことができる。このため、第2のセグメント24bは、一端がポート20に固定され、かつ容器10の内部に位置する自由端42を有する。この実施形態では、戻りライン24が、このように複数のセグメント24a、24bから形成される。当然のことながら、戻りライン24を構成する追加のセグメントを有することもできる。また、戻りライン24は、導管またはチューブの単一または一体のセグメントであってもよい。
【0031】
一実施形態では、容器10が可撓性バッグである。可撓性バッグは、一実施形態では、1または複数のポリマーまたは樹脂材料から作られる。例えば、クラスVI規格に準拠した医療グレードの樹脂を使用することができる。更なる例としては、ポリエチレン(PE)、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)または超低密度ポリエチレン(ULDPE)、またはポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル(EFA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)なども考えられる。いくつかの実施形態では、可撓性バッグを複数の層から形成することができる。例えば、流体と接触する内層はLDPEまたはPEから作られ、外層はEVOHから作られるようにしてもよい。いくつかの実施形態では、ポリ酢酸ビニル(PVA)または可撓性ポリ塩化ビニル(PVC)の第2の層を中間層として使用することができる。LDPEまたはPETの外層は、機械的強度を提供することができる。当然のことながら、可撓性バッグは、より少ない層またはより多い層を含むこともでき、場合によっては単層であってもよい。本明細書に記載の一体型ポンプ12の実施形態は、可撓性バッグに使用される数多くの異なる構造タイプ、材料、および1または複数の層とともに使用され得ることを理解されたい。
【0032】
図5に示すような別の実施形態では、容器10が、タブ、バット、バレル、ボトル、タンク、フラスコなどを含む実質的に剛性のコンテナである。実質的に剛性のコンテナは、一実施形態では、バイオリアクタまたは発酵タンクの形態で作製され得る。タンク容器10は、1または複数の側面14と、ポンプ12が配置される底面18とを含む。容器10は、いくつかのバージョンでは円筒形であってもよく、多種多様な容積を有することができる。容器10は、数多くの幾何学的形状およびサイズを有することができることを理解されたい。典型的には、タンクの高さはタンクの直径の少なくとも1.5倍であるが、他のサイズも考えられる。一実施形態では、容器10が、液体含有タンクと、ポート20を含む蓋または上面16とを含む。それらポート20は、タンク容器10内の流体を追加または除去するためのアクセスを提供することができる。また、ポート20は、タンク容器10の内部の状態を監視するために使用されるセンサまたはプローブを保持または収容することもできる。また、ポート20は、ミキサ、ガス導入器、攪拌器、ガスバブラーなどへのアクセスを提供することもできる。ポート20は、いくつかの実施形態では、バイオ医薬品プロセスで使用される様々な端部またはコネクタで終端することができる。それには、衛生コネクタ、ホースバーブ、フランジ、TCコネクタ、使い捨て無菌コネクタ(DAC)などが含まれる。ポート20は、蓋または上面16に配置することができ、いくつかの代替的な実施形態ではタンク自体(例えば、側壁)に組み込むこともできる。例えば、1または複数のポート20をタンク容器10の側面14に配置することもできる。可撓性バッグの実施形態と同様に、1または複数のポート20は、本明細書に記載されるような1または複数の戻りライン24を(導管またはチューブの一体部品またはセグメントとして)収容することができる。好ましい一実施形態では、ポート20および戻りライン24が、タンクまたは他の容器10の上部に位置する蓋または上面16を介してタンク容器10に入る。
【0033】
タンク容器10および蓋または上面16は、ガラスまたはステンレス鋼の性能を模倣するポリマー、プラスチック材料または樹脂から作られたものであってもよい。ポリマー材料は、好ましくは、生体適合性および耐薬品性のクラスVIまたはISO-10993規格またはそれより高いレベル(または特定の用途に必要とされ得るあらゆる規制要件)に必要に応じて適合し、溶出可能および抽出可能な物質を含まないか、または少量しか含まない。実質的に剛性のコンテナを形成するために使用することができるポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリカーボネート、および可撓性バッグの実施形態に関して上述した材料が挙げられる。クラスVI規格に準拠した医療グレードの樹脂を使用することもできる。代替的には、タンク容器10および/または蓋もしくは上面16は、ステンレス鋼のような金属から作られたものであってもよい。タンク容器10および/または蓋もしくは上面16は、ガラス製であってもよい。いくつかの実施形態では、容器10が、製品のバッチまたは連続運転が完了した後に廃棄される使い捨て容器10として設計される。他の実施形態では、容器10が滅菌して再使用されるように設計される。
【0034】
ポンプ12は、本明細書で説明するように、容器10に直接的または間接的に接続することができる。直接的接続は、ポンプ12の入口54の1または複数の表面を容器10に接続する。対照的に、間接的接続は、(図7Aに見られるような)接続ポート22を使用してポンプ12(またはポンプ12の入口54)を容器10に接続する。接続ポート22は、容器10の底面18の開口19内またはその周囲に配置される剛性構造体であり、ポンプ12(またはポンプヘッド)を容器10に固定または結合するための取付点として使用され、また容器10の内部とポンプ12との間の流体の通過も(接続ポート22の通路を介して)可能にする。接続ポート22は、1または複数のフランジ面を有することもできる。例えば、接続ポート22は、接続ポート22を容器10に固定するフランジ面を有することができる。別の可能性のあるフランジ面は、ポンプ12(またはポンプ12の入口54(例えば、ポンプヘッド))が取り付けられるか、または他の方法で固定されるフランジまたは他のマウントを含む。接続ポート22は、ポリマー材料、例えば、ポリプロピレンおよびポリカーボネート、LDPE、高密度ポリエチレン(HDPE)、または他の医療グレードのプラスチックもしくは樹脂などを含む、数多くの材料から作製され得る。接続ポート22は、いくつかの実施形態では、金属から形成される場合もある。いくつかの実施形態では、接続ポート22が容器10に使用される材料と同じ材料から形成されるが、他の実施形態では、接続ポート22が容器10とは異なる材料から形成される。引用により本明細書に援用される国際特許出願第PCT/US2018/015777号には、ポンプ12を容器10に固定する様々な方法が記載されている。そこに記載されている変形例および選択肢もすべて、本明細書に記載の本発明と組み合わせて使用することができる。それには、熱接着、接着剤、粘着剤、溶着などを介してポンプ12を容器10に固定することが含まれる。
【0035】
いくつかの実施形態では、接続ポート22を容器10の底面18に溶着することができる。熱溶着、抵抗溶着、スピン溶着、摩擦溶着、レーザー溶着などを含む、そのような構成要素を互いに溶着する任意の既知の方法を使用することができる。接着剤を使用して接続ポート22を底面18に固定することもできる。代替的には、接続ポート22を、製造プロセス中(例えば、容器10(例えば、可撓性バッグまたは剛性のコンテナまたはタンク)の成形または形成中)に容器10と一体的に形成するようにしてもよい。また、接続ポート22は、例えば、加えられた熱に応答して容器10を接合することができるポリマーまたは樹脂材料から作られるものであってもよい。
【0036】
一実施形態では、接続ポート22が、バイオプロセスおよび製薬システムで一般的に使用される衛生クランプである、容器10の外側に位置するフランジ面を含むことができる。例えば、トリクランプ(TC)タイプのフランジ面は、バイオプロセスおよび製薬システムで一般的に使用される衛生クランプの1つのタイプである。衛生クランプ接続では、2つの嵌合フランジ面が、一般的にフェルールガスケット56(図7A)を含む境界面で互いに接続され、別個のクランプ40が、2つの構成要素を一緒に固定するために使用される。例えば、ポンプ12は、クランプ40(図7Aおよび図7B)のようなクランプを使用して接続ポート22に固定され得る。接続ポート22のフランジ面について説明したが、雄/雌コネクタなどの他の衛生コネクタ(独自のコネクタを含む)を使用することもできることが理解されよう。接続ポート22は、容器10から大きく延出しないことが好ましい(すなわち、接続ポートは可能な限り短くすべきであり、それでも使用時にクランプ40を収容することができることが好ましい)。接続ポート22のコネクタ端部は(フランジ付き端部58を介して)ポンプ12とインターフェースするため、それら接続は典型的には、ポンプ12のサイズに応じて、大きい直径の開口部、例えば、6インチ、8インチ、10インチまたは12インチの直径の開口部とすることができるが、他のサイズも考えられる。接続ポート22が図示されているが、他の実施形態では、接続ポート22は完全に省略され得ることを理解されたい。例えば、ポンプ12を容器10に直接固定することもできる。
【0037】
図7Aおよび図7Bに最もよく見られるように、ポンプ12は、ポンプヘッド60と、ポンプ12の動作構成要素を収容するポンプケーシング62とを含むことができる。ポンプヘッド60は、容器10の内部と連通する入口54を含む。有利には、ポンプ12への入口54は、容器に直接または接続ポート22(使用される場合)を介して接続され、ポンプ12と容器10との間に介在するチューブまたは導管は存在しない。本明細書で説明するように、ポンプヘッド60は複数の出口52を有する。これは、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上の出口52を含むことができる。出口52は、それぞれの出口52において実質的に同じ流量を流すことができる。代替的には、出口52は、異なる流量を流すことができる(例えば、各出口のサイズは異なるものであってもよい)。図10は、4個の出口52を含むポンプヘッド60を示している。また、図10には、ポンプヘッド60の入口の一部を覆う任意選択的な粉末バリア64が示されている。粉末バリア64は、容器10内に上方から装填される粉末の塊を最小限に抑える。
【0038】
ポンプ12の出口52は、バイオ医薬品プロセスで使用される様々な端部またはコネクタで終端することができる。それには、衛生コネクタ、バーブロック、ホースバーブ、フランジ、TCコネクタ、使い捨て無菌コネクタ(DAC)などが含まれる。出口52は、出口52に直接または間接的にバルブを含むか、または組み込むことができる。また、チューブまたは他の導管は、(例えば、出口52に対する溶着などによって)ポンプ12の出口52と直接接続することもできる。さらに別の実施形態において、ポンプ12の出口52は、単に、流体が通過する開口または開口部であってもよい。この開口または開口部は、ポンプ12のネジ付き出口52にねじ込まれるネジ付き接続部品またはインサートを出口52が受け入れるように、内部にネジが切られていてもよい。それには、雌ネジ付き出口52内にねじ込まれるコネクタ(図示せず)が含まれる。ネジ付き接続部品またはインサートは、本明細書に記載されるようなバイオ医薬品/医薬品プロセスで使用される数多くの端部またはコネクタを含むことができる。
【0039】
出口52は、全体として、容器10の垂直軸に対してほぼ直交するように向けられた状態で図示されている。出口52は、ポンプ12から斜めに出てもよいことを理解されたい。例えば、出口52は、使いやすくするために下向きに角度を付けてもよい。他の角度も考えられるが、約15°~45°の角度(水平に対して)が一般的であろう。
【0040】
ポンプ12は、一実施形態では、ダイヤフラムポンプとして動作する。ダイヤフラムポンプは、ポンプを通る流体の穏やかなポンプ作用を作り出すために順次作動される複数のダイヤフラム66(図7Aおよび図7B)の作動によって動作する。ダイヤフラム66は、逆止弁68と連動して、ポンプ12を通る一方向の流体の流れを確保する。一実施形態では、ダイヤフラム66の作動が、ダイヤフラムの下方に位置する章動プレートまたはワッブルプレート69(図7Aおよび図7B)によってもたらされ、このプレートは、ダイヤフラム66を順次作動させるためにモータ70の駆動シャフトによって駆動されるのに応答して、中心軸を中心に回転する。モータ70は、ポンプ12に固定され、駆動シャフト(図示せず)を介して章動ディスクまたはワッブルプレート69に結合され、複数のダイヤフラム66を(順次)作動させて、ポンプ12を通って入口54から出口52まで流体を送り出す。モータ70には、直流モータ、交流モータなど、数多くのタイプを使用することができる。本明細書に開示の容器10に関連して使用され得るポンプ12に関する更なる詳細は、引用により本明細書に援用される国際特許出願第PCT/US2021/015917号に見出すことができる。
【0041】
図7Aには4つのダイヤフラム66が示されているが、ポンプ12の他の構成は、より少ないまたはより多くのダイヤフラム66を含むことができることを理解されたい。例えば、追加のダイヤフラム66は、脈動流の影響を低減して、さらに滑らかなポンプ作用を実現することができる。同様に、モータ70は、章動ディスクまたはワッブルプレート69を駆動するものとして例示されているが、ポンプ12の代替的な構造は、回転ディスクまたはワッブルプレート66を必要とせずに同じポンプ作用を達成するために、ダイヤフラム66を順次作動させるために個々のアクチュエータ(例えば、サーボ、電気、磁気、または空気圧)を利用することができる。このため、モータ70は、同様の方法でダイヤフラム66を順次作動させるサーボアクチュエータ、電気/磁気アクチュエータなどに置き換えることができる。
【0042】
図2図5図7A図7Bおよび図10は、一実施形態に係る容器10の開口19を少なくとも部分的に覆うために使用される任意選択的な粉末バリア64を示している。粉末バリア64は、ポート20を介して容器10に添加される可能性のある粉体または他の固体媒体のような材料が、ポンプ12の動作を妨げる可能性のある入口54内に直接落下しないようにするために使用される。また、粉末バリア64は、流体の混合を補助する。特に、図6Bに見られるように、粉末バリア64は、一実施形態では、容器10の開口19の断面積を少なくとも部分的に覆う上部曲面を含む。流体は、粉末バリア64の側面の周りでポンプ12の入口に入ることができる。図7Aおよび図7Bに見られるように、粉末バリア64は、ポンプ12のポンプヘッドに固定され、ポンプ12の入口54内で中央に突出するものであってもよい。粉末バリア64は、本明細書に記載されるようなポリマーおよび樹脂、並びに、金属(例えば、ステンレス鋼)を含む任意の適合材料から作製され得る。当然のことながら、粉末バリア64を完全に省略できることを理解されたい。
【0043】
図1を再び参照すると、ポンプ12からの出口52は、戻りライン24の可撓性チューブ/導管に流体的に結合され、可撓性チューブ/導管は、出口52から出た流体を、容器10または図2および図5において戻りライン24と直列に配置されている様々な処理ユニット100のいずれかに運ぶ。処理ユニット100は、ポンプ12の1または複数の出口52に結合されるこれらの「側流」の1または複数内で、数多くの動作を実行することができる。例示であって限定ではないが、処理ユニット100は、濾過、緩衝液添加(緩衝液供給)、希釈(緩衝液希釈を含む)、媒体添加(媒体供給)、栄養素添加、プロセスのために必要なガスまたは添加されるガス(例えば、O、Nまたは他のガス)のスパージング、ガスの除去、オゾンガスの添加、廃棄物の除去、目的の1または複数の分子または1または複数の化合物の沈殿、センサ読み取り(例えば、圧力、pH、導電率)およびその調整(例えば、pH、導電率)、懸濁液中の物質の連続的な混合または維持、生成物のサンプリング、採取または限外濾過/透析濾過(UFDF)洗浄のような他のバイオプロセスステップから典型的な他の要素のうちの1または複数を実行することができる。
【0044】
図2は、例示された戻りライン24の各々に配置された処理ユニット100を示しているが、これは必ずしも必要ではない。例えば、戻りライン24の一部のみが、処理ユニット100(例えば、図5)に通じているか、または処理ユニットを組み込むようにしてもよい。他の戻りライン24は、(処理ユニット100を介して)処理を受けることなく容器10に戻るようにしてもよい(図8を参照)。いくつかの実施形態では、処理ユニット100を、容器10の近くに配置することができる。しかしながら、他の実施形態では、処理ユニット100を、容器10からある程度離れた位置に配置することもできる。一実施形態では、本明細書で説明するように、可撓性チューブまたは導管から形成される可撓性戻りライン24が、ツーピースジャケット26によって封入または被覆される。複数のツーピースジャケット26を、図2に示すように、クランプ72によって接続することもできる。この実施形態では、他の構成要素(例えば、バルブ、センサ、処理ユニットなど)に接続されていない、(容器10の外部に)露出している戻りライン24の全長が、ツーピースジャケット26によって封入されている。可撓性戻りライン24は、隣接するツーピースジャケット26または他の構成要素間の接続点で接合されるチューブまたは導管のセグメントを含むことができる。いくつかの実施形態では、長い可撓性チューブまたは導管が、複数のジャケット26または他のインラインデバイス(例えば、バルブ、センサ、処理ユニット100)を横切ることができる。特定のシステム設定に応じて、戻りライン24のために様々な長さのチューブ/導管が使用される。図2に見られるように、任意選択的なバルブ74が戻りライン24に配置されている。それらバルブ74は、システム内の背圧を調整または制御するために使用することができる。
【0045】
ツーピースジャケット26の使用は、本明細書で説明するように任意である。他の構成では、戻りライン24を形成する可撓性導管またはチューブが、封入構造を有さない。これは、例えば、動作圧力が低く、可撓性導管またはチューブが破裂または他の方法で破損する危険性が低い場合である。戻りライン24は、容器10に直接戻るようにしても、あるいは図2および図5の実施形態に示すように、インラインに配置された1または複数の処理ユニット100を有するようにしてもよい。また、様々なセンサを戻りライン24に組み込むか、または戻りライン上に設けることもできる。
【0046】
図5は、一体型ポンプ12を有する剛性コンテナの形態の容器10の一実施形態を示している。図1および図2と同様の構成要素には、同様の符号が付されている。図5には、戻りライン24に接続された2つの処理ユニット100(例えば、濾過ユニット)が示されている。この特定の実施例では、容器10の外側に位置する戻りライン24が、可撓性ではなく、硬質または剛性の導管材料から形成されている(または、ジャケット26により封入された可撓性導管またはチューブから形成されている)。しかしながら、容器10内に延びる戻りライン24の部分は可撓性であり、上述したように動作する。バルブ74は、流体の排出、システム圧力の調整などのために様々な位置に配置されている。図5は、剛性容器10の場合におけるセットアップを概略的に示しているだけであり、本発明は図5に見られる特定の構成に限定されるものではないことを理解されたい。
【0047】
図9は、複数のポンプ12が容器10に一体化されているか、他の方法で容器に結合されている、容器10の別の実施形態を示している。図示の実施形態では、容器10に一体化された2つの別個のポンプ12がある。この実施形態では、容器10が、2つの開口19を有し、各開口19がそれ自体のポンプ12に関連付けられている。各ポンプ12は複数の出口52を含む。この実施形態では、出口52からの流れを、システム全体の様々な動作または機能ユニットに導くことができる。
【0048】
共通の容器10に複数のポンプ出口52を追加することにより、現在存在しない機能が追加される。単一の容器に複数の重力出口を設けることができることは知られているが、それら出口は、過加圧による膨張、真空による潰れ、導管の不十分な統合または人が踏むことによるキンクに曝される可能性がある。複数のポンプ出口52を採用することで、それら問題のいくつかを解決することができる。さらに、容器10内の空間の生物学的または化学的構成をより効率的に管理するために、可撓性チューブ用の封入ジャケット26および複数の流れを有する処理ユニット100を複数の出口設計と組み合わせることにより、現在のセットアップの問題がさらに解決される。複数のポンプ出口52を有する単一または共通の容器10の使用は、バイオプロセス/医薬品システム内の任意のポンプ12をより良好に機能させ、次世代の処理を前進させることを可能にする基本的な要素となり得る。
【0049】
本明細書で説明するポンプの実施形態のいくつかは、容器10に戻る戻りライン24として導管またはチューブを利用するが、いくつかの実施形態では、戻りラインがなくてもよいことを理解されたい。例えば、ポンプ12のポンプ出口52に結合される導管またはチューブは、本明細書に記載されるように、別個の処理ユニット100に?がるものであってもよい。例えば、図11は、複数の出口52を有するポンプ12からの導管またはチューブ76が、複数の出口52’を有する統合ポンプ12’を同様に有する第2の容器10’に通じている一実施形態を示している。第2のポンプ12’は、それ自体のモータ70’を有し、導管またはチューブ76’が複数の出口52’に接続されている。この構成は、例えば、上流容器10に含まれる濃縮流体が(例えば、第2の容器10’内で)流体を希釈する二次下流容器10’に送られる希釈用途で使用することができる。当然のことながら、そのような下流のプロセスユニットにおいて様々な試薬/流体/薬剤などが添加され得るため、このような構成は希釈用途に限定されるものではない。
【0050】
本発明の実施形態を開示および説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることが可能である。さらに、ある実施形態の態様は、本明細書に記載の他の実施形態においても利用され得ることを理解されたい。したがって、ある実施形態の1または複数の特徴を、他の実施形態で置き換えたり、使用したりすることが可能である。それには、例えば、粉末バリア、ポート、ポンプ、ポンプ接続タイプ、ジャケット(またはその省略)、モータなどが含まれる。さらに、本明細書に記載の実施形態は、大部分がバイオプロセスまたは医薬品操作の文脈で使用されることを述べてきたが、それら実施形態はそれらの用途に限定されるものではない。例えば、本明細書に記載の概念および実施形態は、高純度化学システムまたは他の産業においても適用され得る。このため、本発明は、以下の特許請求の範囲およびその均等物を除いて限定されるべきではない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器であって、
内部容積を規定し、かつ底面を有する可撓性バッグまたは実質的に剛性のコンテナを含む容器であって、前記底面が、流体を通過させるための開口を含む、容器と、
前記容器の底面に固定されたポンプであって、前記開口を介して前記内部容積と流体連通する入口および複数の出口を有し、当該ポンプが前記容器の内部容積から当該ポンプの入口内に流体を吸い込んで前記複数の出口から排出する、ポンプと、
戻りラインを含む1または複数の導管またはチューブであって、前記戻りラインは、一端が前記複数の出口に接続され、かつ前記容器の内部容積内に延びる可撓性の自由端を有する、1または複数の導管またはチューブとを備えることを特徴とする容器。
【請求項2】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記1または複数の導管またはチューブの戻りラインが、可撓性チューブ可撓性導管、または前記容器の外部にある剛性の導管またはチューブを含むことを特徴とする容器。
【請求項3】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記戻りラインの可撓性の自由端が、前記容器の内部容積内の異なる深さまたは高さで終端していることを特徴とする容器。
【請求項4】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記戻りラインの可撓性の自由端が、端部特徴部を含むことを特徴とする容器。
【請求項5】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記出口の数が、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれを超える出口を含むことを特徴とする容器。
【請求項6】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記1または複数の戻りラインが、分岐ラインを含むことを特徴とする容器。
【請求項7】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記1または複数の戻りラインが、その側面に形成された1または複数の穴を有することを特徴とする容器。
【請求項8】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記戻りラインが、前記容器に含まれるポートから前記容器に入り、前記戻りラインのそれぞれの可撓性の自由端が、前記容器に固定されていないことを特徴とする容器。
【請求項9】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記戻りラインの少なくとも1つが、濾過、緩衝液添加、緩衝液希釈、培地添加、栄養素添加、ガスのスパージング、ガス除去、オゾンガス添加、廃棄物除去、希釈、目的の1または複数の分子または1または複数の化合物の沈殿、センサ読み取り、およびpH調整、懸濁液中の物質の連続的な混合または維持、生成物サンプリング、生成物の採取、または限外濾過/透析濾過(UFDF)洗浄のうちの1または複数を実行する処理ユニットに連結されていることを特徴とする容器。
【請求項10】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記容器の開口に配置されたポートをさらに有し、前記容器の底面が前記ポートに固定されていることを特徴とする容器。
【請求項11】
請求項10に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記ポートが、フランジ付き端部を含み、前記ポンプが、前記ポートのフランジ付き端部に固定されていることを特徴とする容器。
【請求項12】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記ポンプが、接合部分、溶着部分、粘着剤または接着剤のうちの1つによって前記容器の底面に固定されたポンプヘッドを含むことを特徴とする容器。
【請求項13】
請求項1に記載の一体型ポンプまたは接続されたポンプを有する容器において、
前記容器が上面を有し、前記戻りラインが、前記上面を貫通して前記内部容積内に延びることを特徴とする容器。
【請求項14】
容器から流体を送り出す方法であって、
前記容器が、内部容積を規定し、かつ底面を有する可撓性バッグまたは実質的に剛性のコンテナを含み、前記底面が、流体を通過させるための開口を含み、ポンプが、前記容器の底面に固定され、前記開口を介して前記内部容積と流体連通する入口と、戻りラインを含むそれぞれの導管またはチューブに結合された複数の出口とを備え、前記戻りラインは、一端が前記複数の出口に接続され、かつ前記容器の内部容積内に延びる可撓性の自由端を有し、
当該方法が、前記容器に含まれる流体を前記ポンプの複数の出口から送り出して、前記容器内に戻すステップを備えることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
前記導管またはチューブが、濾過、緩衝液添加、緩衝液希釈、培地添加、栄養素添加、ガスのスパージング、ガス除去、オゾンガス添加、廃棄物除去、希釈、目的の1または複数の分子または1または複数の化合物の沈殿、センサ読み取り、およびpH調整、懸濁液中の物質の連続的な混合または維持、生成物サンプリング、生成物の採取、または限外濾過/透析濾過(UFDF)洗浄のうちの1または複数を実行する処理ユニットに連結されていることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法において、
前記複数の出口に接続された導管またはチューブの少なくとも1つが、第2の容器に接続され、前記第2の容器が、内部容積を規定し、かつ底面を有する可撓性バッグまたは実質的に剛性のコンテナを含み、前記底面が、流体を通過させるための開口を含み、第2のポンプが、前記第2の容器の底面に固定され、前記開口を介して前記内部容積と流体連通する入口と、複数の出口とを備え、当該方法が、前記ポンプを使用して前記容器の内部容積から前記第2の容器に流体を送り出すステップと、前記第2のポンプを使用して前記第2の容器内の流体を前記第2のポンプの複数の出口から送り出すステップとを含むことを特徴とする方法。
【国際調査報告】