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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】乳化剤としての発酵糖蜜の使用
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/56 20220101AFI20240517BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240517BHJP
   C09J 193/00 20060101ALI20240517BHJP
   C09D 193/00 20060101ALI20240517BHJP
   A23D 7/005 20060101ALI20240517BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20240517BHJP
【FI】
C09K23/56
C09D5/02
C09J193/00
C09D193/00
A23D7/005
A61Q19/00
A61K8/9789
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574379
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 FR2022051047
(87)【国際公開番号】W WO2022254153
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】2105874
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506261567
【氏名又は名称】ルサッフル・エ・コンパニー
【氏名又は名称原語表記】LESAFFRE ET COMPAGNIE
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルブラン, ザビエル
【テーマコード(参考)】
4B026
4C083
4D077
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4B026DL05
4B026DX04
4C083AA111
4C083BB01
4C083CC01
4C083DD33
4D077AA02
4D077AA07
4D077AA09
4D077AB01
4D077AB06
4D077AB08
4D077AB10
4D077AB11
4D077AC03
4D077CA02
4D077CA12
4D077DA02X
4D077DD63X
4D077DD63Y
4J038BA011
4J038EA001
4J038MA10
4J040BA141
4J040JA03
4J040KA35
(57)【要約】
本発明は、エマルション中の乳化剤としての発酵糖蜜の使用に関する。本発明はまた、ビチューメンと発酵糖蜜とを含むエマルションにも関する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルション中の乳化剤としての発酵糖蜜の使用。
【請求項2】
上記エマルションが水中油型エマルションである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
上記発酵糖蜜が発酵ビート糖蜜および/または発酵サトウキビ糖蜜である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
上記発酵糖蜜が発酵ビート糖蜜である、請求項1から3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
上記発酵糖蜜が脱塩発酵糖蜜である、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
上記発酵糖蜜が脱カリウム発酵糖蜜である、請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
上記発酵糖蜜が上記エマルション中に、該エマルションの総重量に対して、25~85重量%、好ましくは25~60重量%、より好ましくは25~50重量%、さらに好ましくは30~40重量%の量で含まれる、請求項1から6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
上記エマルションが、該エマルションの総重量に対して、15~75重量%、好ましくは40~75重量%、より好ましくは50~75重量%、さらに好ましくは60~70重量%の量の油相を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
上記発酵糖蜜が50~90重量%、好ましくは55~65重量%の乾物含量を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
上記エマルションのpHが2~11である、請求項1から9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
上記エマルションがビチューメンエマルションまたは石油エマルションであり、好ましくは上記エマルションがビチューメンエマルションである、請求項1から10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
上記エマルションが40℃より高い温度である、請求項1から11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
上記エマルションが、食品、化粧品、植物保護製品、医薬品、塗料、浮遊媒体、洗剤または洗浄製品、重合媒体などの反応媒体、増進油回収流体、または接着剤であるか、またはそれらに含まれる、請求項1から12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
ビチューメンと発酵糖蜜とを含むエマルション、好ましくは水中油型エマルション。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化剤としての発酵糖蜜の新規な使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ビチューメン(瀝青)エマルションは、注入するには濃すぎるビチューメンの流動化を可能にする。代表的には、これらのエマルションは、ビチューメン、酸性pHの水、および乳化剤としてのアミン誘導体から構成される。しかしながら、これらのアミン誘導体は環境に対して非常に有害である。
【0003】
糖蜜は砂糖の生産から得られる副産物であり、従来は砂糖工場でテンサイやサトウキビから、あるいは精製工場で黒糖から作られていた。砂糖の製造工程では、サトウキビであれビートであれ、結晶化ステップの後に砂糖と糖蜜が得られる。
【0004】
ビート糖蜜は、エステル化後に界面活性剤として使用されるグリシンベタインの抽出に使用され、サトウキビ糖蜜と同様に、より一般的には、わらや他のセルロース系食品と混合して動物飼料として使用されるが、動物用完全飼料における結合剤として、又は殆ど食欲をそそらない餌の動物による消化を促進するために使用される。
【0005】
動物飼料の代替品として、糖蜜は発酵工程によるいわゆる「高貴な」製品の生産にも事業家によって使用されている。いくつかの微生物が持つ発酵メカニズムにより、糖蜜は基質として使用され、特にパン酵母、エチルアルコール、クエン酸、グルタミン酸、リジン、又は抗生物質などを得ることができる。
【0006】
一方、発酵工程で糖蜜を使用すると、大量の液体発酵残渣が発生する。これらの液体発酵残渣は発酵糖蜜に相当する。
【0007】
発酵糖蜜は微生物によって成分が減少しているため、世界的にはあまり興味のない発酵残渣と考えられており、主に農業分野で回収され、肥料として散布されている。
【0008】
その他の用途も記載されている。
【0009】
特許文献1は、圧縮固形組成物における、結合剤および/または崩壊剤としての発酵糖蜜の使用に関する。
【0010】
特許文献2は、水相が水および糖蜜、ビナスおよび/またはシロップのような農業または発酵の副産物を含み、油相が油および乳化剤を含む油/水エマルションを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2019/106190号
【特許文献2】国際公開第02/063941号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
より環境に優しい経済的な乳化剤を提供する真の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、まず、エマルションにおける乳化剤としての発酵糖蜜の使用に関する。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記エマルションは水中油型エマルションである。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記発酵糖蜜は、発酵ビート糖蜜および/または発酵サトウキビ糖蜜である。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記発酵糖蜜は発酵ビート糖蜜である。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記発酵糖蜜は脱塩(demineralized)発酵糖蜜である。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記発酵糖蜜は脱カリウム発酵糖蜜である。
【0019】
いくつかの実施形態において、上記発酵糖蜜は、上記エマルションの総重量に対して、25~85重量%、好ましくは25~60重量%、より好ましくは25~50重量%、さらに好ましくは30~40重量%の量で上記エマルション中に含まれる。
【0020】
いくつかの実施形態において、上記エマルションは、該エマルションの総重量に対して、15~75重量%、好ましくは40~75重量%、より好ましくは50~75重量%、さらに好ましくは60~70重量%の量の油相を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、発酵糖蜜は、50~90重量%、好ましくは55~65重量%の乾物含量を有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記エマルションのpHは2~11である。
【0023】
いくつかの実施形態において、上記エマルションはビチューメンまたは石油のエマルションであり、好ましくは該エマルションはビチューメンエマルションである。
【0024】
いくつかの実施形態において、上記エマルションは40℃より高い温度である。
【0025】
いくつかの実施形態において、上記エマルションは、食品、化粧品、植物保護製品、医薬品、塗料、浮遊媒体、洗剤または洗浄製品、重合媒体のような反応媒体、増進油回収流体、または接着剤であるか、またはそれらに含まれる。
【0026】
本発明はまた、ビチューメンと発酵糖蜜とを含むエマルション、好ましくは水中油型エマルションにも関する。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、上記の必要性を満たすことを可能にする。本発明は、より詳細には、良好な乳化特性を有し、経済的でありながら無毒で環境に優しい安定なエマルションを得ることを可能にするシステムを提供する。さらに、本発明は糖蜜の発酵からの副産物を回収することを可能にする。
【0028】
これは、乳化剤として発酵糖蜜を使用してエマルションを調製することにより達成される。驚くべきことに、発酵糖蜜は本質的に水と比較して低い界面張力を有し、油相と混合するとエマルションを形成することができ、該発酵糖蜜は水相としても界面活性剤としても作用することが発見された。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、実施例3に記載したようなエマルションNo. 1の光学顕微鏡像である。
図2図2は、実施例3に記載したようなエマルションNo. 2の光学顕微鏡像である。
図3図3は、平面配置のレオメーターを用いてエマルションNo. 1(曲線C)、エマルションNo. 2(曲線D)および純重質原油(薄い灰色の曲線A)について得られたレオロジー曲線、および実施例3に記載されているような円錐平面配置のレオメーターで純重質原油について得られたレオロジー曲線(濃い灰色の曲線B)を示す。X軸は、対数目盛りの適用せん断速度(単位:s-1)を表し、Y軸は、対数目盛りの試験組成物の動的粘度(単位:Pa.s)を表す。
図4図4は、実施例4に記載したようなエマルションNo. 3の光学顕微鏡像を示す。
図5図5は、実施例4に記載したようなエマルションNo. 4の光学顕微鏡像を示す。
図6図6は、実施例4に記載したようなエマルションNo. 5の光学顕微鏡像を示す。
図7図7は、実施例4に記載したようなエマルションNo. 3(曲線G)、エマルションNo. 4(曲線H)、エマルションNo. 5(曲線F)および純粋なビチューメン(曲線E)について得られたレオロジー曲線を示す。X軸は、対数目盛りで適用せん断速度(単位:s-1)を表し、Y軸は、対数目盛りで試験組成物の動的粘度(単位:Pa.s)を表す。
図8図8は、実施例5に記載したようなエマルションNo. 6(曲線J)および純粋なビチューメン(曲線I)について得られたレオロジー曲線を示す。X軸は、対数目盛りで適用せん断速度(単位:s-1)を表し、Y軸は、対数目盛りで試験組成物の動的粘度(単位:Pa.s)を表す。
図9図9は、実施例6に記載したような調製後のエマルションNo. 7の光学顕微鏡像を示す。
図10図10は、実施例6に記載したような調製後のエマルションNo. 8の光学顕微鏡像を示す。
図11図11は、実施例6に記載したような、調製20日後のエマルションNo. 7の光学顕微鏡像を示す。
図12図12は、実施例6に記載したような、調製20日後のエマルションNo. 8の光学顕微鏡像を示す。
図13図13は、実施例7に記載したような、pH10のエマルションNo. 9の光学顕微鏡像を示す。
図14図14は、実施例7に記載したような、pH3のエマルションNo. 10の光学顕微鏡像を示す。
図15図15は、実施例8に記載したような、pH6のエマルションNo. 11の光学顕微鏡像を示す。
図16図16は、実施例8に記載したような、pH10のエマルションNo. 12の光学顕微鏡像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を以下の説明において、より非限定的に詳細に説明する。
【0031】
ここで、明示的に別段の記載がない限り、全ての示されたパーセンテージ(%)は重量%である。
【0032】
本発明は、エマルション中の乳化剤としての発酵糖蜜の使用に関する。
【0033】
本発明の意味において、「発酵糖蜜」とは、エステル化工程(例えば、発酵ビート糖蜜に含まれるグリシンベタインをエステル化する目的で)に付されていない発酵糖蜜を意味する。
【0034】
前述したように、発酵糖蜜は、バクテリア、酵母または菌類による発酵後に得られる糖蜜の副産物であり、前記発酵により、例えば、パン酵母、エチルアルコール、クエン酸またはグルタミン酸のような、いわゆる「高貴な」生成物を得ることができる。
【0035】
本発明で使用する発酵糖蜜は、発酵ビート糖蜜または発酵サトウキビ糖蜜であることができる。あるいは、本発明で使用する発酵糖蜜は、発酵ビート糖蜜と発酵サトウキビ糖蜜との混合物であることができる。例えば、該混合物は、1~25重量%の発酵ビート糖蜜と75~99重量%の発酵サトウキビ糖蜜、または25~50重量%の発酵ビート糖蜜と50~75重量%の発酵サトウキビ糖蜜、または50~75重量%の発酵ビート糖蜜と25~50重量%の発酵サトウキビ糖蜜、または75~99重量%の発酵ビート糖蜜と1~25重量%の発酵サトウキビ糖蜜を含み得る。特に好ましい態様では、本発明の発酵糖蜜は75~100重量%の発酵ビート糖蜜と0~25重量%の発酵サトウキビ糖蜜を含む。
【0036】
より好ましくは、使用される発酵糖蜜は発酵ビート糖蜜である。発酵ビート糖蜜は、発酵サトウキビ糖蜜よりも油相との低い界面張力を得ることを可能にし、したがって発酵サトウキビ糖蜜よりも優れた乳化特性を有する。
【0037】
発酵サトウキビ糖蜜はわずかにせん断低減(thinning)レオロジー挙動(粘度はせん断速度に依存する)を示すが、発酵ビート糖蜜はほぼニュートンレオロジー挙動を示す。発酵糖蜜がせん断低減レオロジー挙動を持つほど、エマルションの安定性は高まる。
【0038】
有利には、上記発酵糖蜜は酵母による糖蜜の発酵によって得られる。
【0039】
好ましくは、上記エマルションに配合される上記発酵糖蜜は、50~90重量%、好ましくは55~65重量%、より好ましくは58~62重量%の乾物含量を有する。特に、上記発酵糖蜜は、50~55重量%、または55~58重量%、または58~60重量%、または60~62重量%、または62~65重量%、または65~70重量%、または70~75重量%、または75~80重量%、または80~85重量%、または85~90重量%の乾物含量を含んでもよい。好ましくは、上記発酵糖蜜の残りは水である(したがって、上記エマルションに配合される上記発酵糖蜜は、10~50重量%の水、好ましくは35~45重量%の水、より好ましくは38~42重量%の水を含む)。
【0040】
発酵浴の後に回収される発酵糖蜜は、一般に5~10重量%の乾物(したがって90~95重量%の水)を含む。発酵工程後に回収されたような発酵糖蜜は、水の量を減少させるために濃縮を受けるか、または好ましくは水で希釈され、例えば上記の範囲のいずれかの乾物含量になる。
【0041】
上記エマルションに配合される発酵糖蜜は、脱塩(脱ミネラル)発酵糖蜜であり得る。脱塩は、例えば、硫酸の添加による硫酸カリウム(K2SO4)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、硫酸マグネシウム(MgSO4)および硫酸カルシウム(CaSO4)の塩の沈殿を伴い得る。有利なことに、脱塩は発酵糖蜜内の有機物の割合の増加、および発酵糖蜜内の全乾物に対する糖蜜の界面活性剤分子の割合の増加を可能にする。
【0042】
上記エマルションに配合される発酵糖蜜は、例えば硫酸溶液による酸性化、次いでアンモニアによる中和を経て脱カリウムされた発酵糖蜜であることができる。
【0043】
あるいは、上記エマルションを形成するために使用される発酵糖蜜は、いわゆる「粗製」発酵糖蜜、すなわち化学的または物理化学的処理が施されていない発酵糖蜜とすることもできる(しかしながら粗製発酵糖蜜は濃縮または希釈されていてもよい)。
【0044】
上記発酵糖蜜は、窒素含有物質の分布とアミノグラムによって定義することができる。したがって、本発明の発酵糖蜜は、以下の窒素含有物質の分布を有することができる:
- ケルダール法によって決定される全アミノ酸からの窒素:全窒素の25重量%~100重量%、
- ベタイン態窒素:全窒素の0重量%~50重量%、
- アンモニア性窒素:全窒素の0重量%~30重量%。
【0045】
より詳細には、本発明の発酵糖蜜は、特にそれが発酵ビート糖蜜である場合、窒素含有物質の以下の分布を有することができる:
- ケルダール法によって決定される全アミノ酸からの窒素:全窒素の25重量%~50重量%、
- ベタイン態窒素:全窒素の40重量%~50重量%、
- アンモニア性窒素:全窒素の2重量%~3重量%。
【0046】
あるいは、本発明の発酵糖蜜は、特にそれが発酵サトウキビ糖蜜である場合、窒素含有物質の以下の分布を有することができる:
- ケルダール法によって決定される全アミノ酸からの窒素: 全窒素の70重量%~100重量%、
- アンモニア性窒素:全窒素の0重量%~30重量%。
【0047】
本発明の発酵糖蜜のプロチドのアミノグラムに関して、アミノ酸の平均含量は以下のとおりであることができる(含量の範囲は発酵糖蜜のg/kg乾物で与えられる):
- アスパラギン酸:6~8
- スレオニン:0.5~3;
- セリングルタミン酸:115~130;
- プロリン:3~4;
- グリシン 4~5;
- アラニン:2.5~3.5
- バリン:2.5~3.5
- メチオニン及びシステイン:0.5~3;
- イソロイシン 1.5~2.5;
- チロシン:2~3.5
- ロイシン 3~4.5;
- フェニルアラニン:1~2;
- リジン:0.5~2.5
- ヒスチジン:0.5~2;及び
- アルギニン:0.2~1。
【0048】
発酵糖蜜は糖含量が低く、該糖は発酵過程で微生物によって消費されている。「低糖分」とは、糖含量が発酵糖蜜の乾燥エキスの総重量に対して5重量%以下、または4重量%以下、または3重量%以下、または2重量%以下、好ましくは1重量%以下であることを意味する。より好ましくは、本発明の発酵糖蜜は糖類を含まない。
【0049】
本発明で使用される発酵糖蜜は、1.10~1.50、好ましくは1.20~1.40、より特に1.25~1.35の密度を有することができる。発酵糖蜜の密度は、アントンパール(Anton Paar)社製密度計DMA(登録商標)4500Mを用いて、2mLの試料を20℃の温度で測定することができる。
【0050】
本発明で使用される発酵糖蜜は、20℃で50~6000mPA.s、好ましくは500~5000mPA.s、より好ましくは1000~4000mPA.sの粘度を有することができる。該粘度は、ブルックフィールド粘度計を用いて、温度20℃、せん断速度20s-1で測定することができる。
【0051】
上記エマルションを形成するために使用される発酵糖蜜は、2~12のpHを有することができる。
【0052】
本発明では、発酵糖蜜は乳化剤としてエマルション中に使用される。この目的のために、発酵糖蜜は油相と合わされる。
【0053】
一例として、油相は、植物油、動物油、鉱物油、石油、ビチューメン、植物保護有効成分、治療有効成分、顔料、樹脂、またはそれらの組み合わせを含むか、またはそれらであることができる。
【0054】
植物油としては、例えば、ナタネ油、グレープシード油、スイートアーモンド油、オリーブ油、ホホバ油および/またはヒマワリ油を挙げることができる。
【0055】
動物油としては、魚油、タラ肝油、鯨油、マッコウクジラ油、および/またはニートフット油を挙げることができる。
【0056】
有利には、上記エマルションに使用される発酵糖蜜の量は、エマルションの総重量に対して、25~85重量%、好ましくは25~60重量%、より好ましくは25~50重量%、さらに好ましくは30~40重量%である。いくつかの実施形態において、エマルション中の発酵糖蜜の量は、25~30重量%、または30~35重量%、または35~40重量%、または40~45重量%、または45~50重量%、または50~55重量%、 または55~60重量%、または60~65重量%、または65~70重量%、または70~75重量%、または75~80重量%、または80~85重量%である。
【0057】
好ましくは、上記エマルション中の油相の量は、該エマルションの総重量に対して、15~75重量%、より好ましくは40~75重量%、さらに好ましくは50~75重量%、さらに好ましくは60~70重量%である。いくつかの実施形態において、エマルション中の油相の量は、該エマルションの総重量に対して、15~20重量%、または20~25重量%、または25~30重量%、または30~35重量%、または35~40重量%、または40~45重量%、または45~50重量%、または50~55重量%、または55~60重量%、または60~65重量%、または65~70重量%、または70~75重量%であることができる。
【0058】
好ましくは、上記エマルションは、該エマルションの総重量に対して、少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、さらに好ましくは少なくとも12重量%、より特に少なくとも15重量%の水を含み、例えば、10~40重量%、または12~30重量%の水を含む。いくつかの実施形態において、上記エマルションは、該エマルションの総重量に対して、5~10重量%、または10~12重量%、または12~15重量%、または15~20重量%、または20~25重量%、または25~30重量%、または30~35重量%、または35~40重量%の水を含んでもよい。
【0059】
上記エマルションは、60~95重量%、好ましくは75~85重量%の乾物含量を有し得る。特に、上記エマルションは、60~65重量%、または65~70重量%、または70~75重量%、または75~80重量%、または80~85重量%、または85~90重量%、または90~95重量%(エマルションの総重量に対して)の乾物含量を有することができる。
【0060】
上記エマルションは、発酵糖蜜と油相から構成されていてもよい。
【0061】
あるいは、発酵糖蜜および油相を別の水溶液と合わせて、本発明のエマルションを形成することもできる。水溶液の例として、果汁、酢、フローラルウォーターおよび/または食塩水を挙げることができる。
【0062】
上記エマルションの水相は、有利には、20℃で50~6000mPA.s、好ましくは100~5000mPA.s、より好ましくは150~4000mPA.sの粘度を有する。該粘度は上記のようにして測定できる。
【0063】
上記エマルションは、例えば、ソルビタンおよびその誘導体、アルキルポリグルコシド、糖エステル、グリシンベタインのエステル、ラムノリピド、サーファクチン、ソホロリピド、糖脂質、ビートペクチン、リン脂質、レシチン、第4級アミンおよびその誘導体、脂肪アミンおよびアミド、キトサンおよびその誘導体、ならびに石鹸およびその誘導体からなる群から選択される、1種以上の他の界面活性剤を含んでもよい。これらの界面活性剤は、0~10重量%、好ましくは0~2重量%、または0.5~2重量%の量でエマルション中に含まれることができる(特にエマルションがビチューメンエマルションである場合)。
【0064】
有利には、上記エマルションは発酵糖蜜以外の界面活性剤を含まず、特に上記のような界面活性剤を含まない。
【0065】
上記エマルションは、1種以上の添加剤、特にキサンタンガム、セルロース、ペクチン、アルギン酸塩および/またはデンプンなどの1種以上のヒドロコロイドを含有してもよい。これらの添加剤は、該エマルション中に0~1重量%、好ましくは0~0.5重量%の量で含まれることができる。
【0066】
上記エマルションは、有利には2~11、好ましくは5~11の範囲のpHを有する。該エマルションは、2~3、または3~4、または4~5、または5~6、または6~7、または7~8、または8~9、または9~10、または10~11のpHを有することができる。
【0067】
特に有利な態様において、上記エマルションは水中油型エマルションであり、すなわち連続相は水相であり、分散相は油相である。
【0068】
上記エマルションは、発酵糖蜜と少なくとも1種の油相および任意に該エマルションの他の成分(他の界面活性剤、添加剤および/または1種以上の他の水溶液など)とを混合することにより調製することができる。混合は、単一の工程(構成成分をすべて同時に混合物に添加する)またはいくつかの工程(他の構成成分を添加する前に、まずいくつかの構成成分の予備混合を行う)で実施することができる。好ましくは、該油相を該発酵糖蜜に注ぐ。
【0069】
上記発酵糖蜜と油相(および任意にエマルションの他の成分)の混合は、ホモジナイザーまたは分散機を用いて行うことができる。
【0070】
混合は、1分~1時間、好ましくは2~30分、より好ましくは3~15分、例えば5分間行うことができる。
【0071】
有利には、上記発酵糖蜜と混合する前に、上記油相を加熱し、好ましくは30℃より高いかそれに等しい温度まで、より好ましくは35℃より高いかそれに等しい温度まで、さらに好ましくは40℃より高いかそれに等しい温度まで加熱する。いくつかの実施形態では、油相は、50℃より高いかそれに等しい温度、又は60℃より高いかそれに等しい温度、又は70℃より高いかそれに等しい温度、又は80℃より高いかそれに等しい温度まで加熱することができる。
【0072】
上記発酵糖蜜の温度は、油相と混合される時点で、周囲温度(すなわち15~30℃)とすることができる。あるいは、該発酵糖蜜は油相の温度、または油相の温度に近い温度(例えば、油相の温度に対して±10℃の範囲)にすることができる。
【0073】
上記エマルションは、有利には、40℃より高いかまたは等しい温度であることができる。いくつかの実施形態において、該エマルションは、50℃より高いかもしくは等しいか、または60℃より高いかもしくは等しい温度であることができる。あるいは、該エマルションは周囲温度であることができる。いくつかの実施形態において、該エマルションは、5~15℃、または15~30℃、または30~40℃、または40~50℃、または50~60℃、または60~70℃、または70~80℃、または80~90℃の温度であることができる。
【0074】
本発明に従って調製されたエマルションは、任意のタイプの用途に使用することができる。
【0075】
上記エマルションは有利にはビチューメンエマルション、すなわち油相はビチューメンである。ビチューメンエマルションを形成することにより、該ビチューメンの流動化が可能になり、その塗布が容易になる。本発明で使用できるビチューメンは、単独でまたは混合物で、純粋なビチューメン、改質ビチューメンまたは特殊なビチューメンである。該ビチューメンは、天然のビチューメン、天然ビチューメンの沈澱物、天然アスファルトの沈澱物又はビチューメン様の砂に含まれるビチューメンを含む。本発明のビチューメンは、原油の精製に由来するビチューメンをも含む。該ビチューメンは、原油の常圧蒸留および/または減圧蒸留から得られる。これらのビチューメンは、任意に、破壊(blown)、ビスブロークン(bisbroken)、および/または脱アスファルト工程から誘導される。精製工程で得られた異なるビチューメンを、一緒に組み合わせることができる。該ビチューメンは、再生ビチューメンであることもある。該ビチューメンは軟質等級又は硬質等級のビチューメンであることができる。本発明のビチューメンの貫入値(penetration value)は、好ましくは、標準NF EN 1426に従って測定して25℃で800×1/10 mm(800 tenths of mm)未満であり、例えば、標準NF EN 1426に従って測定した25℃での貫入値(10~30)×1/10 mm(10 to 30 tenths of mm)、または(30~50)×1/10 mm(30 to 50 tenths of mm)、または(50~100)×1/10 mm(50 to 100 tenths of mm)、または(100~200)×1/10 mm(100 to 200 tenths of mm)、または(200~300)×1/10 mm(200 to 300 tenths of mm)、または(300~400)×1/10 mm(300 to 400 tenths of mm)、または(400~500)×1/10 mm(400 to 500 tenths of mm)、または(500~600)×1/10 mm(500 to 600 tenths of mm)、または(600~700)×1/10 mm(600 to 700 tenths of mm)、または(700~800)×1/10 mm(700 to 800 tenths of mm)である。
【0076】
上記ビチューメンエマルションは、好ましくは40℃より高い温度、好ましくは50℃より高いかもしくは等しい温度または60℃より高いかもしくは等しい温度を有する。
【0077】
好ましくは、上記ビチューメンエマルションの調製のために、ビチューメンは、発酵糖蜜と混合される前に、70℃より高いかもしくは等しい温度、好ましくは80℃より高いかもしくは等しい温度に達するまで加熱される。
【0078】
本発明のビチューメンエマルションは、道路産業または屋根産業などの様々な産業用途に使用することができる。例えば、ビチューメンエマルションは、道路産業において、道路のベースコース、バインダーコースおよび/またはサブベースコースを形成するために使用することができる。それらはまた、特に交通量の多い区域の舗装に使用することができる。舗装可能な領域としては、車道、駐車場、歩道やテラスなどの歩行者用通路、スケートボードパークなどの都市施設、スポーツ用路面や工業用地の路面、冷蔵倉庫の床などが挙げられる。本発明のビチューメンエマルションは、シールコーティング、膜または含浸層の調製にも使用できる。該ビチューメンエマルションは、防水膜、低騒音膜、断熱膜、表面コーティング、カーペットタイル、含浸コートの製造に適合する。
【0079】
他の実施形態において、上記エマルションは、石油エマルション(すなわち、油相は石油である)、例えば重質原油のエマルションであることができる。好ましくは、石油、例えば重質原油は、発酵糖蜜と混合される前に、35℃以上、好ましくは40℃以上になるまで加熱される。
【0080】
本発明のエマルションは、多数の他の産業または部門、例えば食品工業、化粧品工業、植物保護産業、製薬工業、塗料およびコーティング工業、冶金工業、洗剤および洗浄剤工業、化学工業、石油工業、接着剤工業で使用することができる。
【0081】
従って、上記エマルションは、油と酢のドレッシングやクリームなどの食品として又は該食品に含めることができる。
【0082】
あるいは、上記エマルションは、化粧クリームなどの化粧品として使用するか又は該化粧品に含めることができる。
【0083】
あるいは、上記エマルションは、殺虫剤、殺菌剤または除草剤などの植物保護製品として使用するか、またはそれに含めることができる。
【0084】
あるいは、上記エマルションは、例えば油性活性成分を含む医薬品として、または該医薬品に含めることができる。
【0085】
あるいは、上記エマルションは、塗料、例えば、顔料および/または樹脂を水中油型エマルション中に含有する塗料として使用するか、または該塗料に含有させることができる。
【0086】
あるいは、上記エマルションは、浮遊媒体として使用するか、または浮遊媒体に含めることができる。
【0087】
あるいは、上記エマルションは、布地および/または表面クリーニング製品、家具用ワックスおよび/または靴用ワックスなどの洗剤またはクリーニング製品として使用するか、またはそれに含めることができる。
【0088】
あるいは、上記エマルションは、乳化重合を行うための重合媒体のような反応媒体として使用するか、またはそれに含めることができる。
【0089】
あるいは、上記エマルションは、強化油回収流体、特に石油を油相として含む強化油回収流体として使用するか、またはそれに含めることができる。
【0090】
あるいは、上記エマルションはポリマーエマルション(またはラテックス)であることができる。この場合、該エマルションは、好ましくは、スチレン-ブタジエンのコポリマー(SBR)、多糖類、デンプン、ポリ酢酸ビニルポリマー、ポリアクリレート、天然ゴム(NR)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンのコポリマー(SBBS)、スチレン-ブタジエン-スチレンのコポリマー(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンのコポリマー(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンのコポリマー(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレンのコポリマー(SEEPS)、スチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレンのコポリマー(SIBS)、スチレン-イソプレン-スチレンのコポリマー(SIS)、スチレン-イソプレンのコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレンのコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレンのコポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む。該エマルションは、接着剤として使用するか、または接着剤に含有させることもできる。
【0091】
本発明はまた、ビチューメンと発酵糖蜜とを含むエマルションにも関する。該エマルションは上記のようなものであることができる。
【0092】
本発明はまた、石油および発酵糖蜜を含むエマルションにも関する。該エマルションは、上記のようなものであることができる。
【0093】
本発明はまた、発酵糖蜜および油相を含むエマルションを含むか、または該エマルションから成る食品に関する。該エマルションは、上記のようなものであることができる。
【0094】
本発明はまた、発酵糖蜜および油相を含むエマルションを含むか、または該エマルションからなる化粧品にも関する。該エマルションは、上記のようなものであることができる。
【0095】
本発明はまた、発酵糖蜜および油相を含むエマルションを含むか、または該エマルションから成る殺虫剤、殺菌剤および除草剤の中から選択される植物保護製品にも関する。該エマルションは上記のようなものであることができる。
【0096】
本発明はまた、発酵糖蜜および油相を含むエマルションを含むか、または該エマルションから成る医薬品にも関する。該エマルションは、上記のようなものであることができる。
【0097】
本発明はまた、発酵糖蜜および油相を含むエマルションを含むか、または該エマルションからなる塗料に関する。該エマルションは上記のようなものであることができる。
【0098】
本発明はまた、発酵糖蜜および油相を含むエマルションを含むか、または該エマルションからなる浮遊媒体に関する。該エマルションは上記のようなものであることができる。
【0099】
本発明はまた、発酵糖蜜および油相を含むエマルションを含むか、または該エマルションからなる洗剤または洗浄剤にも関する。該エマルションは、上記のようなものであることができる。
【0100】
本発明はまた、発酵糖蜜および油相を含むエマルションを含むか、または該エマルションからなる、重合媒体のような反応媒体にも関する。該エマルションは、上記のようなものであることができる。
【0101】
本発明はまた、発酵糖蜜および油相を含むエマルションを含むか、または該エマルションからなる、増進型油回収流体にも関する。該エマルションは、上記のようなものであることができる。
【実施例
【0102】
以下の実施例は本発明を例示するが、本発明を限定するものではない。
【0103】
実施例1(比較例)
発酵サトウキビ糖蜜から水分を除去して得られた無水粉末を、異なる濃度(0.5重量%;1重量%;2重量%;5重量%;および10重量%)で重質原油に添加した。
【0104】
5%および10%の無水粉末を含む重質原油の組成物を顕微鏡で観察したところ、該粉末は重質原油中に溶解しておらず、固体粒子の形のままであった。
【0105】
重質原油と無水粉末の各混合物の粘度、および重質原油100%を含む組成物の粘度を、TAInstruments社製DHR3レオメーターを用い、円錐-平面構成(円錐1°、平面直径4cm)で、せん断速度の関数(0.1~400s-1の範囲に亘って)として40℃で測定した。
【0106】
すべての重質原油/無水粉体の全ての混合物は、純重質原油の粘度に近い粘度を有した。水が全くない場合、発酵糖蜜の無水抽出物は、重質原油の粘度を効率的に下げることはできなかった。
【0107】
実施例2-界面張力の測定
以下の組成物を試験した:
- DRM 1:乾燥物約55重量%を含む発酵サトウキビ糖蜜;
- DRM 2:乾燥物約60重量%を含む発酵ビート糖蜜;
- DRM 3:20g/LのNaClを含み界面活性剤を含まない水。
【0108】
これら3種類の組成物をそれぞれ軽質原油(FAB社から供給)と混合し、該組成物と該軽質原油の間に界面を形成させた。界面張力は、ウィルヘルミー(Wilhelmy)プレートを装備したクリュッセ(Kruess)社製K100力張力計を用いて60℃で測定した。
【0109】
第二の試験は、3種類の組成物DRM 1、DRM 2、DRM 3をそれぞれキシレンと混合して、該組成物とキシレンとの間に界面を形成させて行った。界面張力は、ウィルヘルミープレート付きK100力張力計を用いて25℃で測定した。
【0110】
結果を下表に示す:
【0111】
【表1】
【0112】
各発酵糖蜜は、油相と混合した場合、20g/LのNaCl水溶液の界面張力よりも低い界面張力を得ることができ、これは発酵糖蜜が潜在的に界面活性を有することを示している。
【0113】
また、発酵ビート糖蜜は、発酵サトウキビ糖蜜よりも低い界面張力(ほぼ2倍)を達することも観察された。
【0114】
実施例3-重質原油のエマルション
ULtraTurrax T25ホモジナイザーを用いて、エマルション(エマルションNo.1)を以下のように調製した。45g(34ml)の(上記の実施例2に記載されているような)発酵糖蜜DRM 1をビーカーに入れた。重質原油をオーブン中で40℃の温度に加熱した。次に、20000rpmに設定したホモジナイザーで混合しながら、30mLの重質油をシリンジで発酵糖蜜に注いだ。混合は5分間続けた。該エマルションは47体積%の重質原油を含む。
【0115】
発酵糖蜜DRM 1の代わりに発酵糖蜜DRM 2(上記実施例2に記載)を使用した以外は、エマルションNo.1と同様の方法で第2のエマルション(エマルションNo.2)を調製した。
【0116】
エマルションNo.2の液滴を水道水に入れた。該液滴は水中に分散し、従って該エマルションは水中油型エマルションである。エマルションNo.2の液滴をヘプタンにも入れた。該液滴はヘプタン中で分散せず、該エマルションの連続相は水相であることが確認された。
【0117】
2つのエマルションNo. 1とNo. 2を光学顕微鏡で観察した。光学顕微鏡の画像を図1図2に示す。
【0118】
両エマルションも、かなり多分散した油相の液滴を含んでいることが観察される。発酵糖蜜の存在は、エマルションの形成を可能にした。
【0119】
レオロジー測定もまた、エマルションNo. 1とNo. 2について実施した。粘度は、平面配置(直径4cmの粗い平行プレート)のレオメーターを用い、すべり効果を制限するために750μmのエアギャップを設けて、40℃で測定した。同じ配置での純重質原油の粘度測定と、円錐-平面配置のレオメーターでの測定も行った。
【0120】
結果を図3に示す。
【0121】
発酵糖蜜/重質原油のエマルションは、重質原油の粘度よりもはるかに低い粘度を有することが確認される。
【0122】
実施例4 - ビチューメンエマルション
Esso 160200ビチューメンを用いて試験を行った。
【0123】
エマルション(エマルションNo.3)を次のようにして調製した:ビチューメンを80℃に加熱し、ビチューメン51mLを45g(34 mL)の発酵糖蜜DRM1に加えて、ビチューメンの量が60容量%になるようにした。この混合物をUltraTurraxホモジナイザーを用いて20000rpmで5分間混合した。
【0124】
発酵糖蜜DRM 1の代わりに発酵糖蜜DRM 2を使用した以外は、エマルションNo. 3と同様の方法で第2のエマルション(エマルションNo. 4)を調製した。
【0125】
第3のエマルション(エマルションNo. 5)は、発酵糖蜜DRM 2に添加するビチューメンの量が、エマルションが70容量%のビチューメンを含有するようにした以外は、エマルションNo. 4と同様にして調製した。
【0126】
エマルションNo. 3、No. 4およびNo. 5を光学顕微鏡で観察した。光学顕微鏡画像を図4図5および図6に示す。
【0127】
油相液滴は幾分多分散していることが確認される。発酵糖蜜の存在は、ビチューメンエマルションの形成を可能にした。
【0128】
3つのエマルションNo. 3、No. 4およびNo. 5は安定である。
【0129】
各エマルションの液滴を水及びヘプタンに添加した:各エマルションについて、液滴は水に分散したが、ヘプタンには分散しなかった:エマルションNo. 3、No. 4およびNo. 5は水中油型エマルションである。
【0130】
レオロジー測定を、3つのエマルションNo. 3、No. 4およびNo. 5と、純粋なエッソ(Esso) 160200ビチューメンについて実施した。粘度を、ペルチェプレートを備えた平面配置(直径4cmの平行プレート)のレオメーターを用いて40℃で測定した。
【0131】
結果を図7に示す。
【0132】
発酵サトウキビ糖蜜またはビート糖蜜と60容量%のビチューメンとのエマルション(エマルションNo. 3およびNo. 4)は、純粋なビチューメンの粘度よりもはるかに低いことが確認される。発酵ビート糖蜜は、発酵サトウキビ糖蜜よりも粘度をより大きく低下させる。
【0133】
さらに、70容量%のビチューメンを含むエマルションNo. 5においても、粘度の低下(純粋なビチューメンと比較して)が観察された。
【0134】
実施例5-50容量%のビチューメンエマルション
ビチューメンエマルション(エマルションNo. 6)を、発酵糖蜜DRM 1に添加したビチューメンの量が50容量%であることを除いて、エマルションNo. 3と同じ方法で調製した。
【0135】
レオロジー測定は、このエマルションと純粋なビチューメンについて行った。粘度は、ペルチェプレートを備えた平面配置(直径4cmの平行プレート)のレオメーターを用いて40℃で測定した。
【0136】
結果を図8に示す。
【0137】
発酵サトウキビ糖蜜をビチューメンに添加してエマルションを形成すると、粘度が大幅に低下することが確認される。
【0138】
エマルションを放置して冷却したところ、エマルションの温度が40℃まで低下したときに相分離が観察された。これは、一般にビチューメンを注入した後にエマルションの破壊が必要とされるビチューメンの用途において有利であろう。
【0139】
実施例6-菜種油エマルション
60重量%の菜種油と40重量%の発酵糖蜜を含み、それぞれpH10(エマルションNo. 7)とpH6(エマルションNo. 8)の2種類のエマルションを調製した。これらのエマルションを調製するために使用した発酵糖蜜は、80~90%の発酵ビート糖蜜と10~20%の発酵サトウキビ糖蜜を含み、乾物含量が60%、pHが6である発酵糖蜜であった。エマルションNo. 7を調製するために、50重量%の水酸化カリウム水溶液をpHが10から11になるまで該発酵糖蜜に添加した。該発酵糖蜜のpHを上げると、ごく僅かな希釈が観察される。
【0140】
上記エマルションの調製は以下のように行った。菜種油を60℃に加熱し、60gの油を、同じ温度に加熱した40gの発酵糖蜜に一度に加えて、60重量%の油量になるようにした。この混合物をUltra Turaxホモジナイザーで12,000rpmで1分間混合し、次に強制安定性(遠心分離による相分離の促進)と経時安定性(20日後)をモニターするため、熱い間に2本の遠心分離チューブに注いだ。強制分離のため、該2本のチューブのうち1本を、エマルション調製2時間後に、20℃で10分間、8,000rpmで遠心分離した。
【0141】
2つのエマルションNo. 7とNo. 8を、それらの調製後(遠心分離前)に光学顕微鏡で観察した。光学顕微鏡画像を図9図10に示す。
【0142】
両エマルションとも、水相中に油相の単分散液滴が観察された。したがって、エマルションが形成された。該液滴の大きさは10μmに近かった。
【0143】
エマルションNo. 7およびNo. 8の経時安定性を調べるために、エマルションNo. 7およびNo. 8を収容する円錐ポリプロピレンチューブ(すなわち、遠心分離しなかったチューブ)を周囲温度で20日間保存した後、エマルションNo. 7およびNo. 8を光学顕微鏡で観察した。光学顕微鏡画像を図11図12に示す。
【0144】
両エマルションとも油の液滴は水相中に分散したままであり、クリーム状化は観察されなかった。両エマルションは時間が経っても安定である。該液滴の大きさは平均20μmに近づいた。pH10のエマルションでは、エマルション調製から20日後でも、合体はより少なく、該液滴は単分散のままであった。一方、pH6のエマルションでは、20日間の保存後、該液滴はより多分散であった。このことは、エマルションの安定性がpH6よりもpH10でより高いことを示しているであろう。
【0145】
実施例7-脱塩発酵糖蜜のエマルション
60重量%の菜種油と40重量%の希釈脱塩(脱ミネラル)発酵糖蜜を含み、それぞれpH10(エマルションNo. 9)とpH3(エマルションNo. 10)を有する2つのエマルションを調製した。これらのエマルションの調製に使用した発酵糖蜜は、85~95%の発酵ビート糖蜜と5~15%の発酵サトウキビ糖蜜を含む発酵糖蜜であった。これらは70重量%の乾物と30重量%の水を含んでいた(脱塩前の乾物は約85重量%の有機物と15重量%の鉱物質を含む)。発酵糖蜜の脱塩は、硫酸を添加し、次いで得られた結晶を分離して行った。エマルションに配合する前に、該発酵糖蜜66.7gに蒸留水33.3gを加えて該発酵糖蜜を希釈し、実施例6のエマルションNo. 7およびNo. 8に含まれるのと同量の有機物をこれらのエマルションに添加した。エマルションNo. 9を調製するために、50重量%の水酸化カリウム水溶液を、pHが10~11になるまで該脱塩発酵糖蜜に添加した。
【0146】
エマルションNo. 9およびNo. 10を、実施例6のエマルションNo. 7およびNo. 8について記載した方法で調製した。
【0147】
エマルションNo. 9およびNo. 10を調製後、光学顕微鏡で観察した。光学顕微鏡画像を図13および図14に示す。
【0148】
両方のエマルション(pH10およびpH3)において、油滴が水相中に安定に分散していることが確認される。したがって、エマルションが得られた。さらに、エマルションNo. 9(pH10)の粘度は、エマルションNo. 10(pH3)の粘度よりも高く、pHの上昇はエマルションの安定性を促進する。
【0149】
実施例8-脱カリウム(depotassified)発酵糖蜜のエマルション
60重量%の菜種油と40重量%の脱カリウム発酵糖蜜を含み、それぞれpH6(エマルションNo. 11)とpH10(エマルションNo. 12)の2種類のエマルションを調製した。これらのエマルションを調製するために使用した発酵糖蜜は、85~95%の発酵ビート糖蜜および5~15%の発酵サトウキビ糖蜜を含み、約60重量%の乾物含量を有する発酵糖蜜であった。該糖蜜は、硫酸の添加によりカリウムを沈殿させ、得られた結晶を分離した後、pHが6になるまでアンモニアを添加して中和することにより脱カリウムさせた。エマルションNo. 12を調製するために、50重量%の水酸化カリウムの水溶液を、pHが10と11の間になるまで、脱カリウムした発酵糖蜜に添加した。
【0150】
エマルションNo. 11およびNo. 12を、実施例6のエマルションNo. 7およびNo. 8について記載した方法で調製した。
【0151】
エマルションNo. 11およびNo. 12の両方を、それらの調製後、光学顕微鏡で観察した。光学顕微鏡画像を図15および図16に示す。
【0152】
エマルションNo. 11(pH 6)およびNo. 12(pH 10)は、水相中に分散した安定な油滴を含むことが観察される。エマルションはpH6およびpH10で形成された。
【0153】
実施例9-異なる油量のエマルション
油と発酵糖蜜のエマルションを、実施例6のエマルションNo. 8と同じ方法で調製したが、菜種油と発酵糖蜜の割合は以下に示す。
【0154】
【表2】
【0155】
エマルションNo. 13~15を調製後、光学顕微鏡で観察したところ、いずれも約2~5μmの大きさの油相の液滴が水相中に安定に単分散している。
【0156】
これらのエマルションの強制安定性(遠心分離による)も、実施例6に記載した方法で調べた。エマルションNo. 13~15は安定であった。
【0157】
実施例10-異なる油のエマルション
菜種油の代わりにヒマワリ油(エマルションNo. 16)またはグレープシード油(エマルションNo. 17)を用いたことを除いて、実施例6のエマルションNo. 8と同様の方法で、60重量%の油および40重量%の発酵糖蜜を含む2種のエマルションを調製した。
【0158】
エマルションNo. 16およびNo. 17を調製後、光学顕微鏡で観察した。該エマルションは、水相中に単分散した油相の液滴を含み、安定である。エマルションNo. 16の液滴の大きさは約3~8μmであり、エマルションNo. 17の液滴の大きさは約4~8μmである。
【0159】
これらのエマルションも、実施例6に記載した方法で強制安定性(遠心分離による)を試験した。これらのエマルションは安定であった。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】