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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】電池の多層保護要素
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20240517BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20240517BHJP
   H01M 50/289 20210101ALI20240517BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20240517BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20240517BHJP
   H01M 50/211 20210101ALI20240517BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20240517BHJP
【FI】
H01M50/204 401H
H01M50/293
H01M50/289 101
H01M10/658
H01M50/209
H01M50/211
H01M50/291
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574445
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2022064005
(87)【国際公開番号】W WO2022253631
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】21177488.0
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520217386
【氏名又は名称】ハー カー オー イゾリアー ウント テクスティルテヒニーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【弁理士】
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】シュテックマン カルステン
(72)【発明者】
【氏名】シュトゥーデ ウルリヒ
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031CC01
5H031EE01
5H031EE03
5H031EE04
5H031KK02
5H040AA37
5H040AS04
5H040AT02
5H040AT04
5H040AT06
5H040AY05
5H040CC05
5H040JJ03
5H040LL01
5H040LL04
5H040LL06
(57)【要約】
電池の熱絶縁のための多層保護要素、そのような保護要素を持つ電池及びそのような保護要素の使用法が提案される。保護要素は、発泡体層、縫合不織ニードル繊維フリースの形態の圧縮性繊維層、雲母を含有する好ましくは1つ又は2つの保護層を備える。これは、高圧縮率の他に良好な絶縁性能を許容する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体層(2)及び繊維層(3)を有する、電池(8)の熱絶縁のための多層保護要素(1)であって、
前記繊維層(3)が100若しくは250kPaで30%を超える圧縮性であること、及び/又は
前記保護要素(1)が保護層(5)を更に備え、前記保護層(5)が鉱物保護材料(6)を備えること
を特徴とする、多層保護要素。
【請求項2】
前記繊維層(3)が不織繊維フリースを備える又はそれによって形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の保護要素。
【請求項3】
前記不織繊維フリースがニードル不織繊維フリースであることを特徴とする、請求項2に記載の保護要素。
【請求項4】
前記繊維層(3)が少なくとも本質的にバインダフリーであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の保護要素。
【請求項5】
前記繊維層(3)がガラス繊維、セラミック繊維若しくはシリケート繊維(3A)又はその混合物から作られていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の保護要素。
【請求項6】
前記繊維層(3)の繊維(3A)が、金属酸化物を含有する仕上材を備えることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の保護要素。
【請求項7】
前記金属酸化物が酸化アルミニウムであることを特徴とする、請求項6に記載の保護要素。
【請求項8】
前記繊維層(3)又は繊維フリースが糸(3B)で縫合されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の保護要素。
【請求項9】
前記糸(3B)が1つ又は複数のガラス繊維から作られていることを特徴とする、請求項8に記載の保護要素。
【請求項10】
前記発泡体層(2)がシリコーンから作られていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の保護要素。
【請求項11】
前記発泡体層(2)がポリウレタンから作られていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の保護要素。
【請求項12】
前記繊維層(3)及び/又は前記発泡体層(2)が、特に100又は250kPaで30%を超える-好ましくは弾性的に-圧縮性であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の保護要素。
【請求項13】
前記繊維層(3)及び/又は前記発泡体層(2)が弾性圧縮性であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の保護要素。
【請求項14】
前記繊維層(3)及び/又は前記発泡体層(2)が100又は250kPaで30%を超える圧縮性であることを特徴とする、請求項12又は13に記載の保護要素。
【請求項15】
前記発泡体層(2)が前記繊維層(3)より柔らかい又は圧縮性があることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の保護要素。
【請求項16】
前記発泡体層(2)及び前記繊維層(3)が結合され且つ前記保護層(5)によって外側が覆われていることを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項に記載の保護要素。
【請求項17】
前記発泡体層(2)及び前記繊維層(3)が結合層(4)又は接着剤によって結合されていることを特徴とする、請求項16に記載の保護要素。
【請求項18】
前記発泡体層(2)及び前記繊維層(3)が前記保護層(5)によって両側が覆われていることを特徴とする、請求項16に記載の保護要素。
【請求項19】
前記繊維層(3)がニードル不織繊維フリースを備える又はそれによって形成されていること、及び前記保護層(5)が鉱物保護材料(6)として雲母を備えることを特徴とする、請求項18に記載の保護要素。
【請求項20】
前記保護鉱物保護材料(6)が1種又は複数のフィロ珪酸塩、好ましくは雲母、特に金雲母である又はそれを備えることを特徴とする、請求項1~19のいずれか1項に記載の保護要素。
【請求項21】
ハウジング(9)及び熱絶縁のために前記ハウジング(9)内に配置される少なくとも1つの多層保護要素(1)を有し、前記保護要素(1)が発泡体層(2)及び繊維層(3)を備える、電池(8)、好ましくはリチウムイオン電池であって、
前記保護要素(1)が、請求項1~20のいずれか1項に従って設計されていること
を特徴とする、電池。
【請求項22】
前記電池(8)がプリズム又はパウチセル(8A)を備えることを特徴とする、請求項21に記載の電池。
【請求項23】
前記保護要素(1)又は追加の保護要素(1D)が前記電池(8)の2つの隣接する電池セル(8A)間に配置されることを特徴とする、請求項21又は22に記載の電池。
【請求項24】
電池(8)における熱絶縁のための、発泡体層(2)及び繊維層(3)を有する多層保護要素(1)の使用であって、
前記保護要素(1)が、請求項1~20のいずれか1項に従って設計されていることを特徴とする、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の電池の熱絶縁のための多層保護要素、請求項21の前提部に記載の多層保護要素を持つ電池、及び請求項24の前提部に記載の多層保護要素の使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明において、用語「保護要素」は好ましくは、電池及び/又はそのセルの熱絶縁及び/又はあらゆる他の遮蔽のために設計及び/又は使用される、層状構造、特に層パッケージを持つ扁平部品として理解されるべきである。特に、保護要素は、環境、特に車室への熱の放出を低減及び/若しくは遅延させるように、並びに/又は電池における無制御且つ/若しくは過度の熱発達の場合に電池における熱の広がりを抑制及び/若しくは低減及び/若しくは遅延させるように構成される。
【0003】
本発明において、用語「電池」は、化学エネルギーを変換することによって電気エネルギーを提供するための貯蔵要素又は二次要素、特に再充電貯蔵要素として理解されるべきである。電池は好ましくは、幾つかの相互接続された蓄電池セル及び/又はセルブロック、すなわち電池セルから構成される。
特に、電池は、牽引用電池として及び/又は電気自動車の駆動のために及び/又はリチウムイオン電池として構成される。ここで、例えば交通事故の結果としての電池過熱の場合に少なくとも救助隊の到着まで及び/又は一定期間、例えば少なくとも5分の間車両乗員を保護するために、確実且つ/又は効果的な熱絶縁が重要である。
リチウムイオン電池は特に、それらの化学組成により、比較的に高不安定性を呈する。例えば捕獲異質粒子及び/又は機械的作用若しくは損傷による、電池セルにおける内部電極を分離するセパレータの汚染により、電極の局部短絡が生じれば、強い短絡電流が電池セルを短時間で800℃まで、時には1300℃まで加熱する。この過程は熱暴走として知られている。特にセパレータが相対的に低温度で、例えば120℃を上回ると安定性を失うので、1つの電池セルの熱暴走が他の隣接する電池セルに容易且つ/又は急速に広がることがあり、したがって隣接する電池セルにおいて急速に短絡が生じることがある。これは、停止不可能な連鎖反応に至り、電池に貯蔵されたエネルギーが短時間で、通常爆発的に且つ/又は毒性ガスの放出と共に並びに炎及び/若しくは火花の形成と共に放出される。内圧がそれに応じて上昇すると電池が破裂する危険性もある。
【0004】
したがって、電池セルを可能な限り長く或る限界温度、好ましくは120℃、特に80℃未満に保つことが望ましい。80℃を上回ると電池セルの劣化過程が相当に加速され、そして120℃を上回ると電池セルにおけるセパレータがしばしば融解し始めて、不可逆的損傷及び/又は短絡を伴う。
同様に、電池における無制御の熱発達に対して、隣接する領域及び/又は室内、特に車室の効率的且つ/又は長期持続の熱保護の高い需要がある。特に、救助及び/又は回復処置が完全に完了されるまで乗員及び/又は物体は熱から保護されるべきである。
加えて、救助活動中に、電池が熱暴走下にあるときには救助者も無制御の爆発に対して保護されるべきであり、且つ毒性ガス(例えばガス状のフッ化水素酸)、火花及び炎が漏出する危険性が低減されるべきである。特に、電池が暴走下にある場合、電池において電気アークが生じて、通常金属性のハウジングを非常に急速に融解させることがあるという危険性があり、その結果この場合には炎等が、例えば上方に車室内へ漏出する危険性が非常に高い。
WO2019/121641A1は、熱絶縁のための電池用の多層保護要素を開示している。保護要素は、雲母の外側保護層及び間に圧縮性ニードル不織繊維フリースを備える。
【0005】
CN110641101Aは、熱拡散を遅延させる電気自動車電池用の熱絶縁複合材料を開示している。複合材料は、シリコーンゴム層及び無機繊維層を備える。繊維層はキャリア層を形成し、そして両側にシリコーンゴム層が設けられることができる。繊維層は、接着剤及び水分損失吸熱充填剤を含む。
米国特許出願公開第2020/0062920号は、シリコーンゴムシンタクチック発泡体が電池ケーシングにおけるオープンスペースを満たし且つ/又は電池セルを覆う電池パックに関する。発泡体は、シリコーンゴムバインダ及び中空ガラスビーズを備える。
EP3395872A1は、プラスチック、紙、不織布、金属箔、金属メッシュ、ガラス又はガラスクロスから作られる支持体で一方又は両側が覆われるシリコーン発泡シートの複合体を開示している。複合体は、-30℃~150℃で良好な弾性及び圧縮性能を有するものとし、したがってソーラパネル等に有用である。
米国特許出願公開第2011/0192564号は、発泡体層及び繊維層を有しており、繊維層が不織材料であることができる、電池用のシート材料を開示している。シート材料は、接着剤層上に配置される剥離ライナを有する。繊維層の圧縮率も、フィロ珪酸塩、雲母又は金雲母などの鉱物保護材料を備える保護層も開示されていない。
【0006】
WO2021/019495A1は、電気自動車電池モジュール用の耐火障壁に関し、そして発泡体層及び、不織繊維層であることができる無機繊維層を有する材料を開示している。水性シリコーンエラストマから作られる防火コーティングも開示されている。種々の層の圧縮率も鉱物保護材料も開示されていない。
WO2021/022130A1は、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム用の熱バリア材料に関する。提供されるバリア物品は、複数の繊維又は補助層に若しくはそれが結合される難燃性発泡体を含むコア層を一般に含む。発泡体層と繊維層の両方を有する材料は開示されていない。
電池セル、特にパウチセル又はプリズムセルは、温度上昇とともに及び/又は充電若しくは放電されるときに膨張する又はサイズが変化する。したがって、極めて圧縮性である一方で、超高温でさえ高熱安定性及び絶縁特性を有する保護要素の需要がある。先行技術の製品は、これらの要件を満たしていない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、改善された熱絶縁の他に改善された圧縮率も達成されることができる、電池の熱絶縁のための多層保護要素、そのような保護要素を持つ電池、及び同保護要素の使用法を提供することである。
上記目的は、請求項1に記載の多層保護要素によって、請求項21に記載の電池によって又は請求項24に記載の使用法によって達成される。有利な実施形態は下位請求項の対象である。
本発明によれば、保護要素は、発泡体層及び繊維層を備える。したがって、最適化された絶縁及び圧縮率特性が達成されることができる。
本発明の第1の態様によれば、繊維層は、不織ニードル繊維フリースを備える又はそれによって形成される。そのようなフリースは、非常に効果的な熱絶縁の他に良好な圧縮率を許容する。特に、絶縁又は圧縮率低下という結果になるあらゆるバインダ、接着剤等の添加が回避されることができる。
【0008】
独立して実現されることができる、本発明の第2の態様によれば、繊維層は、特に250kPaの圧力で20%超、好ましくは30%超だけ圧縮性である。これは、特に発泡体層が250kPaで30%より及び/又は繊維層より高い圧縮率を有する場合、保護要素の非常に良好な圧縮率に至る。
好ましくは、発泡体層は、100又は250kPaで50%超、好ましくは60%超、特に70%超の圧縮率さえ有する。
【0009】
好ましくは、繊維層の相対又は絶対圧縮率は、特に100又は250kPaで、発泡体層のものより低く、或いは発泡体層の相対又は絶対圧縮率の20%超、特に約30%若しくは約40%若しくは30%超若しくは40%超、特に約45%若しくは45%超、且つ/又は60%未満若しくは70%未満である。
好ましくは、繊維層は、特にガラス糸によって縫合される。これは、改善された結束性を可能にし且つ/若しくは達成し且つ/又は加工、製造、組立及び/若しくは使用を単純化する。
繊維層が長さ30mm超の長繊維から且つ/又はニードル不織布及び/若しくはボンド不織布から形成されることが特に好ましい。繊維層の長繊維並びに/又はニードリング及び/若しくはボンディングは、別の繊維層と比較して機械抵抗性を著しく増加させる。結果として、繊維層は特に伸縮性及び圧力弾性があり、高圧迫力の吸収を可能にする。同時に、絡み合った繊維が繊維層を通る熱エネルギーの通過を効率的に低減させるので、繊維層は高熱絶縁能力を有する。これが電池の完全な破壊及び/又は爆発を著しく遅延させるので、これは、電池内の無制御の発熱の場合に、例えば電池セルの熱暴走が生じたときに、特に有利である。最後に、ニードル不織布は低単位面積質量を有し、取扱いを容易にする。
【0010】
好ましくは、繊維層は、ガラス繊維又はシリケート繊維又はその混合物から作られる。したがって、高熱抵抗性が達成されることができる。
独立して実現されることができる、本発明の第3の態様によれば、繊維層は、好ましくはバインダフリーである。あらゆるバインダに代わり、繊維は、好ましくはニードリングによって、機械的にのみ相互接続される。したがって、より高い熱抵抗性が達成されることができる。
好ましくは、繊維には溶融ビードがない。これは、良好な圧縮率を支援する。
独立して実現されることができる、本発明の第4の態様によれば、保護要素は好ましくは、発泡体層及び繊維層に加えて少なくとも1つの保護層を備える。特に、保護層は、フィロ珪酸塩、好ましくは雲母、特に金雲母などの、鉱物保護材料を備える。保護層は好ましくは、保護要素の外側及び/又は両側に設けられる。保護層は、保護要素及び/若しくはその成分の熱抵抗性及び安定性を増加させ且つ/又は発泡体層及び/若しくは繊維層より高い熱伝導率を提供して局部過熱を最小限に抑える若しくは遅らせることができる。これは、保護層を形成するための必須又は主成分として雲母そして、より好ましくは、金雲母が使用されるときに特に当てはまる。
【0011】
保護要素又は保護層は代替的又は追加的に、好ましくはガラス繊維のキャリア層、特に織布又はスクリムを備えることができる。したがって、より高い熱又は機械抵抗性が達成されることができる。
特に、保護要素は、少なくとも1つの平坦側に接着剤層-特にそれを部分的にだけ覆う-を備え、又は1つの平坦側が少なくとも所々粘着性であるように設計される。これは、保護要素が電池及び/又は更なる保護要素に容易に配置され且つ/又は取り付けられることを許容する。
提案される電池、好ましくはリチウムイオン蓄電池は、ハウジング及び熱絶縁のためにハウジングに配置される少なくとも1つの多層保護要素を備えており、提案される電池の保護要素は好ましくは、前述した態様の1つに従って設計される。これは、上に説明したように電池のための同様な利点に至る。
好ましくは、保護要素は、2つの近傍の電池セル、特にパウチ又はプリズムセル間に配置され、且つそれらを互いから熱絶縁することができる。このように、1つの電池セルから隣の及び/又は近傍の電池セルへの熱又は熱暴走の広がりが効果的に遅延及び/又は抑制及び/又は防止さえされて、したがって電池からの熱及び/又は破片の爆発的放出を防止又は少なくとも著しく遅延させる。
【0012】
本発明によれば、上記態様の1つに従って設計される多層保護要素は、電池の熱絶縁のために使用されるものであり、保護要素は、ハウジングと電池の少なくとも1つの電池セルとの間に及び/若しくは近傍の電池セル間に配置され且つ/又は少なくとも1つの電池セルを部分的に若しくは完全に覆い、或いは特に電池のハウジング内で、一方で1つ又は複数の電池セルと他方で電池の制御デバイス及び/又は制御エレクトロニクスとの間の絶縁のために使用される。これは再び、同様な利点という結果になることができる。
本発明の上述の態様及び特徴の他に請求項及び以下の説明から生じる本発明の態様及び特徴は基本的に、互いから独立して、いかなる組合せ及び/又は順序でも実現されることができる。本発明の追加の利点、特徴、性能及び態様は、請求項及び図面に基づく以下の好ましい実施形態の説明から生じる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】提案された多層保護要素の概略断面図である。
図2】保護要素を持つ提案された電池の概略断面図である。
図3】提案された電池を持つ車両の概略断面図である。
図4】保護要素の圧縮率測定値の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、提案される多層保護要素1を概略のノンスケール断面図で図示する。保護要素1は、特に熱絶縁のために且つ/又は、図2に概略のノンスケール断面図で図示される、提案される電池8を遮蔽するために使用される。電池8(蓄電池)は、特にリチウムイオン蓄電池として設計され、且つ/又は図3に示されるように、車両12用に意図される。
最も好ましくは、電池8は、好ましくは電気車及び/又は電気自動車として設計される、車両12用の駆動用電池又は牽引用電池として役立つ。
しかしながら、保護要素1及び/又は本発明は、医療分野において電池、特に、例えば据置蓄電池としてのリチウムイオン蓄電池等の保護のために、軍隊において電池式電気器具のために、又は他の目的の電池のためにも一般に適用可能且つ/又は使用可能である。
以下、提案される保護要素1の好ましい構造がより詳細に記載される。
保護要素1は、発泡体層2及び繊維層3を備える。
層2及び3は、好ましくは互いに接続され、特に接着結合され、すなわち間に形成及び/又は配置される接続又は結合層4を用いて接続される。したがって、複合材が形成される。これは、取扱い及び設置及び/又は特に組立を容易にする。
発泡体層2は、いかなる追加の又は後の結合も必要でないように繊維層3上に直接形成又は発泡されることもあり得る。
発泡体層2は、好ましくはシリコーン又はポリウレタンから作られる。
発泡体層2は、好ましくは開放気孔2Aを備える。
好ましくは、発泡体層2は、100又は250kPaの圧力で50%超、好ましくは約60%又は60%超、特に65%超の圧縮率を有する。
好ましくは、発泡体層2は、1mm超、特に約2mmの、且つ/又は6mm未満、特に5mm未満の厚さを有する。
【0015】
繊維層3は、図1に概略的に図示されるように、好ましくは不織布、特にニードル不織マット又は繊維フリースを形成する繊維3Aを備える又はそれによって形成される又はそれから成る。
【0016】
繊維層3は好ましくは、ニードル及び/又はボンド繊維フリース/不織布から形成される。本発明の目的で、用語「ニードル不織布」は好ましくは、その繊維がランダムに絡み合わされ、それによってドライニードリング並びに/又はバインダなし及び/若しくは溶融ビードなしのニードリングによって結合された、織物として理解されるべきである。
好ましくは、繊維層3には-少なくとも本質的に-結合剤及び/又は溶融ビードがない。
繊維層3は、特にガラス繊維又はシリケート繊維又はその混合物から作られる。例えば、特にA、C、D、E、ECR、S2若しくはRガラス又はその混合物のガラス繊維、及び/或いは他の耐熱繊維が使用されてもよい。
繊維3Aは好ましくは、少なくとも4μm、特に少なくとも5又は6μm、そして最も好ましくは本質的に6~15μmの平均直径を有する。
繊維3Aの長さは好ましくは、30mm超、好ましくは40mm超、特に本質的に50~60mmである。原則として、しかしながら、繊維の長さはより大きい、例えば約120mmまでであることもできる。
【0017】
繊維層3又は繊維フリースは、図1に糸3Bによって示されるように、縫合されるのが最も好まれる。これは、繊維層3及び/又は保護要素1の安定性及び/又は加工性を改善することができる。
任意の縫合は好ましくは、比較的ゆるく且つ/又は1ミリメートル以上の比較的大距離で行われる。
縫合は好ましくは、他の層の適用及び/又は積層の前に、すなわち特に他の層とでなく且つ/又はそれ自体の安定化のためだけに行われる。
最も好ましいのが、ガラス繊維での縫合、すなわちガラス繊維の糸3Bでの縫合である。
試験により、不織繊維フリースが少なくとも本質的にシリケート繊維から作られて、最も好ましくはガラス繊維から作られた糸3Bで縫合されるときに非常に良好な安定性及び理想性能が達成されることができることが示された。
繊維層3は、多層/多材の設計を有することも、且つ任意に中間層及び/又は中間材が縫合され且つ/又は設けられることもできる。
【0018】
好ましくは、繊維層3の単位面積質量は、1800若しくは1500g/m2未満、好ましくは1300g/m2未満、且つ/又は150g/m2超、好ましくは200g/m2超、特に300若しくは400g/m2超である。
好ましくは、繊維層3は、電池8に設置されると、1mm超、特に約2mmの、且つ/又は4mm未満、特に3mm未満の厚さを有する。
納品状態で又は設置前に、繊維層3は好ましくは、2mm超、特に約3mm以上の、且つ/又は6mm未満、特に5mm未満の厚さを有する。
好ましくは、繊維層3は、発泡体層2より大きな厚さを有する。
代替的に、発泡体層2は、繊維層3と類似の又は繊維層3より大きな厚ささえ有する。
好ましくは、繊維層3は、特に100又は250kPaの圧力で20%超、好ましくは30%超だけ圧縮性である。これは、特に発泡体層2が100若しくは250kPaで30%より及び/又は繊維層3より高い圧縮率を有する場合、保護要素1の非常に良好な圧縮率に至る。
【0019】
好ましくは、繊維層3の相対又は絶対圧縮率は、特に100若しくは250kPaで又は100~200kPaの範囲で、発泡体層3の相対又は絶対圧縮率より低い。
好ましくは、発泡体層2の絶対圧縮は、繊維層3の潜在的により高い厚さを考慮しても、所与の圧縮強度、すなわち圧力で、好ましくは100又は250kPaで繊維層3のものより大きい。
好ましくは、本出願で言及される圧縮率は、それぞれのプローブ又は層に50×50mmの板を押圧することによって、そして圧力を計算するための力を測定することによって測定される。更に、厚さ変動又は押込が測定される。
絶対圧縮又は圧縮率は、凹み、例えば初期厚さ引く最終厚さの差に対応する。
【0020】
相対圧縮又は圧縮率は、初期厚さに基づく百分率として、例えば次の通りに計算されてもよい:100・(初期厚さ-最終厚さ)/初期厚さ。
図4は、上で概説されたように保護要素1の圧縮率の測定値を示しており、x軸はN/m2の、すなわちMPaの加圧力pに関し、そしてy軸は厚さtをmmで示す。
測定された保護要素1は、各側に保護層5を持つ繊維層3の複合材を備える。繊維層3の厚さtは約3.3mmである。2つの保護層5と合わせた繊維層3の厚さは約3.5mmである。発泡体層2の厚さは約2mmである。
線L1は、圧力pにわたる発泡体層2の厚さtを示す。
線L2は、圧力pにわたる繊維層2及び保護層5の複合材の厚さtを示す。保護層5が非常に薄く且つ本質的に非圧縮性であるので、線L2は、本質的に繊維層3の圧縮率挙動を示す。
【0021】
線L3は、圧力pにわたる測定された保護要素1の厚さを示す。
測定データは、100kPaでの発泡体層2の絶対圧縮が約1.13mmであり、そして250kPaでの発泡体層2の相対圧縮が約56%であること、及び100kPaでの繊維層3の絶対圧縮が約1.26mmであり、そして250kPaでの繊維層3の相対圧縮が約38%である(測定された凹み又は絶対圧縮が、相対圧縮を計算するために約3.3mmの初期厚さに関連付けられた)ことを示す。
発泡体層2は好ましくは、繊維層3より低い密度及び/又は面積質量を有する。したがって、保護要素1は、比較的に低総質量を有する一方で、優れた圧縮率特性を提供する。
図4は、発泡体層2が特に初期に又は250kPa若しくは500kPaまでの超低圧範囲において非常に良好又は妥当な圧縮率、特にその他の層及び/又は繊維層3としてより高い絶対及び/又は相対圧縮率を提供することを示す。
好ましくは、発泡体層2及び繊維層3は、特に少なくとも100~200kPa、特に少なくとも50~250kPa及び/又は100~500kPaの範囲において、少なくとも本質的に弾性的に圧縮性である。
保護要素1は、測定された保護要素1に対する場合のように、図1に図示される以外のあらゆる順序でも層2、3及び5(特に1つ又は2つの層5)を備えてもよい。
【0022】
更に、保護要素1は、1つの代わりに2つの発泡体層2、すなわち1つの追加の発泡体層2を備えてもよい。
任意に、保護要素1は、発泡体層2が繊維層3によって両側/反対側が覆われるように追加の繊維層3(図示せず)を備えてもよい。
保護要素1又は繊維層3は追加的又は代替的に、織布又はあらゆる他の繊維強化材を備えてもよい。例えば、布又は繊維強化材は、保護要素1、繊維層3、発泡体層2又は保護要素1の追加の保護層5の追加の要素でもよい。
用語「布」/「織布」は、互いと交差する複数の糸によって形成される好ましくは扁平製品を特に指す。糸は、横糸の上下に、特に反復配列で案内される。
保護層5は好ましくは、機械的強度を改善するため並びに/又は電気絶縁及び/若しくは熱絶縁のため、並びに/又は保護要素1の耐熱性のためである。
好ましくは、保護要素1は、発泡体層2及び繊維層3に加えて1つ又は2つの保護層5を備える。
保護層5は好ましくは、保護要素1並びに/又は層2及び/若しくは3の外側に、例えば発泡体層2又は繊維層3の反対側に配置される。
【0023】
特に、2つの保護層5が、保護要素1の反対側並びに/又は発泡体層2及び繊維層3を含む複合材の両側に配置される。
2つの保護層5は同一でも又は異なってもよい。
保護層5は好ましくは、発泡体層2、繊維層3及び/又は保護要素1の被覆層又は外層を形成する。
好ましくは、保護層5は、鉱物保護材料6、特に雲母、最も好ましくは金雲母を備える又は本質的にそれから作られる。これは、特に高耐熱性を可能にする一方で、表面にわたる若干の熱分布を許容する。
好ましくは、上記又は各保護層5は、m2当たり100g超の雲母又は金雲母を備える。
保護層5は好ましくは、特に好ましくは外側を向く側又は発泡体層2及び/若しくは繊維層3から離れて向く側に、繊維強化材若しくはスクリム7が設けられ及び/又は上述した布によって強化される。
特に、スクリム7は、保護材料6のための支持体が設けられる又はそれを形成する。
【0024】
例えば、一方の保護層5は耐熱層若しくは高誘電体層及び/又は雲母層として設計されることができ、そして他方及び/又は保護層5は、任意に雲母なしで、布又は繊維強調7として設計される又は設けられることができる。
異なる層2、3及び5は好ましくは、特に接着して及び/又は結合層4を用いて、互いに接続される。異なる結合層4は、接続されるべき材料に応じて、同一でも又は異なってもよい。
接続及び/又は接着結合の代替として又はそれに加えて、熱不安定性接着剤並びに/又は熱不安定性接続及び/若しくは接続箔も使用されることができる。
層2、3及び/又は5は、特に接着結合によって接続される。しかしながら、縫合又は溶着などの、他の接合技術も可能である。
好ましくは、保護要素1は、2つの機能層2及び3又は3種の機能層2、3及び5(1つ若しくは2つの層5を含む)だけから成る。この文脈では、用語「機能層」は、それぞれの層が保護要素1の機能性のために妥当な意義のある機能を提供すると理解されなければならない。これは、保護要素1が、結合層4、織布等などの、非機能層も加えて備えてもよいことを排除しない。
【0025】
例えば、絶縁機能は、温度に応じて又は異なる温度まで全ての層2、3及び5によって提供されることができる。好ましくは、層3及び5は、発泡体層2より著しく高い耐熱性を有する。
保護要素1の所望の圧縮率は好ましくは、たとえ繊維層3が発泡体層2より好ましくは著しく低い(相対及び/又は絶対)圧縮率を有するが、にもかかわらず全体の圧縮率に顕著に寄与し得るとしても、特に100若しくは250Paまでは、本質的に発泡体層2によって、又は層2及び3によって提供される。
保護要素1並びに/又は層2、3及び/若しくは5は好ましくは、特に少なくとも200℃まで、最も好ましくは250℃を上回って耐熱性であるように設計される。
【0026】
層3及び/又は5は好ましくは、600℃、800℃又は1000℃を上回って耐熱に設計されるが、発泡体層2、結合層4、層の接続及び/又は接着結合はこの耐熱性を備える必要がない。
本発明の意味での用語「耐熱」は好ましくは、高温又は言及した温度に対する材料又は成分の耐性又は耐久性を述べるために使用される。
特に、耐熱性のために指定される温度は、融解温度の好ましい最小値、若しくは融解温度の0.8若しくは0.9倍の特に好ましい下限、及び/又は以下に説明される意味で好ましい上限印加温度を表し、且つ/或いは特に基材に、例えば繊維層3の場合は特にその繊維3Aに又は発泡体層2の場合は例えば発泡体に関する。
【0027】
材料又は成分、特に保護要素1及び/又は層2、3、5の1つが本発明の意味で耐熱性(上限印加温度まで)であり、特に、この印加温度までであれば、それは、その性能-例えばその絶縁耐力、その機械的安定性又は形状、その強度又は変形能等-を維持することができ、或いはそれが所望の用途(この場合、特に事故又は熱暴走の場合の、電池又は電池セルの密閉又は絶縁及び/又は電気絶縁若しくは熱絶縁)にもはや適切でなくなる程度までそれらを変化させることはない。
特に、層5は、それが雲母又は金雲母並びに/或いはガラス、シリケート及び/若しくはセラミックの繊維、又はその混合物から作られる又はそれを含有する場合、本発明の意味内で耐熱として考えられるべきである。
特に、繊維層3は、それがガラス、シリケート及び/若しくはセラミック繊維又はその混合物から作られる又はそれを含有する場合、本発明の意味内で耐熱として考えられるものとする。
好ましくは、材料又は成分、特に保護要素1及び/又は層2、3若しくは5の1つは、それがDIN EN 60085:2008-08による絶縁材料クラスの1つ、特にこの規格の絶縁材料クラスF、H、N又はRの要件を満たす場合、耐熱性である。
【0028】
保護要素1は、特に扁平層パッケージとして設計され且つ/又は特に圧縮性も柔軟性もあるように設計される。
用語「柔軟性の」は好ましくは、保護要素1の十分に低い曲げ剛性を意味すると理解され、曲げ剛性は、部品及び/又は保護要素1に関する曲げ変形に対する作用力の抵抗の尺度である。曲げ剛性は好ましくは、ISO5628、好ましくはISO5628:2019に従って求められる。この目的で、好ましくは、或る寸法を持つ、例えば6mmの厚さ及び60mm×40mmのサイズを持つ板状の保護要素1が回転可能なクランプ装置に締め付けられる。保護要素1の自由端はロードセルのセンサに接触し、クランプ装置が回転されると、それを介して対応する接触力が記録される。特に、センサは、締付け点から50mmの距離で熱保護要素1の自由端に接触する。曲げ剛性は特に、保護要素が15°曲げられたときにセンサで測定される力によって求められる。
好ましくは、保護要素1は、10N未満、好ましくは5N未満、特に1N未満のこのように求められる曲げ剛性を有する。
提案された保護要素1及び/又は繊維層3は好ましくは圧縮性があり、したがって特に個々の電池セル8A間の及び/又は電池セル8Aとハウジング9との間の設置条件への適応を許容する。
【0029】
最も好ましいのが、設置状態における1つ又は複数の保護要素1の或る初荷重及び/又は圧縮を伴う設置である。好ましい圧縮は、設置時に少なくとも20kPa且つ/又は25kPa超である。
一部の電池セル8Aが充電状態及び経年劣化の関数として膨張及び収縮する。保護要素1は、特に電池セル8Aのそのような「呼吸」がセル8Aの寿命にわたって補償されることができるというように設計される。
特に、保護要素1は、少なくとも300kPa、最も好ましくは少なくとも450kPa以上の圧縮圧力に耐えるように設計される。これは、火災、短絡、事故等の場合に電池セル8Aの起こり得る「呼吸」及び/又は高負荷能力に有益である。この圧縮率及び/又はそのような弾性は、電池8の寿命にわたって可能であるべきである。
【0030】
好ましくは、保護要素1、発泡体層2及び/又は繊維層3は圧縮性である。
用語「圧縮性の」は好ましくは-特にこの文脈では-保護要素1の十分に低い圧縮硬さを意味すると理解され、圧縮硬さは、試験体及び/又は保護要素1をその原厚の40%だけ圧縮するために必要とされる圧力を表す。圧縮硬さは好ましくは、試験体として5mmの厚さ及び300mm×200mmのサイズを持つ板状の熱保護要素1並びに圧子として20mmの厚さ及び190×80mmのサイズを持つアルミニウム板を用いて、DIN EN ISO3386、好ましくはISO3386-1:1986に従って求められる。
好ましくは、保護要素1及び/又は繊維層3は、40kPa未満、好ましくは30kPa未満、特に20kPa未満の上述したように求められる圧縮硬さを有する。
好ましくは、保護要素1及び/又は繊維層3は極めて弾性圧縮性があり(厚さ方向、すなわち表面延在に垂直に)、最も好ましくは少なくとも未設置状態の厚さに対して少なくとも90%~50%の範囲で弾性圧縮性がある。
【0031】
好ましくは、保護要素1の単位面積質量は、3000若しくは2700g/m2未満、好ましくは2100g/m2未満、且つ/又は550g/m2超、好ましくは200g/m2超、特に700若しくは800g/m2超である。
保護要素1は好ましくは、特に無圧縮状態又は納品状態で、15mm未満、好ましくは10mm未満、特に3及び9mm間の厚さを有する。
特に、保護要素1は-好ましくは設置されると-7mm未満、好ましくは6mm未満、特に2及び5mm間の厚さである。これは、狭い設置間隙にさえ、電池8への柔軟且つ簡単な設置を許容する。
特に好ましくは、保護要素1は、2.5kV/mm超、好ましくは2.9kV/mm超、特に3~20kV/mmの絶縁耐力を有する。これは、アーク又は火花の形成を回避及び/又は遅延させる。
絶縁耐力は、電圧ブレークスルー(電気アーク又は電気火花)が生じない材料内の電界の限界を定める。
【0032】
絶縁耐力は好ましくは、IEC60243-1:2013に従って測定される。
測定は、好ましくは20℃と25℃との間の正常条件下で且つ好ましくは約50%の相対湿度で且つ/又はその圧縮状態の保護要素1で行われる。
25℃室温での保護要素1、発泡体層2及び/又は繊維層3の熱伝導率は0.13W/mK未満、好ましくは0.08又は0.09W/mK未満、特に0.05W/mk未満である。
保護要素1又は保護層5は任意に、特に部分的若しくは点的に適用されるだけの、接着剤層(図示せず)を備え、且つ/又は電池8及び/若しくはそのハウジング9への保護要素1の締着及び/若しくは組立を容易にし及び/若しくは可能にするために粘着性であるように設計される。
以下、提案された電池8、並びに電池8における本提案に係る保護要素1の、特に本提案に係る保護要素1A及び1B並びに任意に本提案に係る更なる熱保護要素1C及び1D又は類似の保護要素1の、配置及び/又は使用法が図2に基づいてより詳細に説明される。
【0033】
保護要素1A~1Dは同一に又は異なって設計されることができる。
以下、保護要素1A~1Dは、区別のために第1の保護要素1A、第2の保護要素1B、第3の保護要素1C及び第4の保護要素1Dとも称される。しかしながら、これは、異なる保護要素1を区別するためだけの役割であり、例えば、第3の保護要素1Cが設けられる場合、第2の保護要素1Bも存在しなければならないことを意味するわけではない。
好ましいのは、電力供給のために電池8が概略的に表された車両12、特に電気自動車に配置及び/又は設置されることである。特に、設置されるときに、電池8は車室12A、例えば車両12の乗客又は他の室内領域の下方に設けられる。
【0034】
電池8は好ましくは、上ハウジング部且つ/又はハウジング蓋9A及びハウジング底部を持つハウジング9を有する。ここで、ハウジング9及び/又はハウジング底部は、少なくとも1つのハウジング側壁9B及びハウジング底9Cを備える。
ハウジング9は好ましくは、非導電材料、例えばプラスチックから、又は金属から成る。
電池8は好ましくは、再充電蓄電池、特にリチウムイオン蓄電池として設計される。代替的に、それは、リン酸リチウム鉄、リチウムコバルト酸化物、リチウム金属酸化物、リチウムイオンポリマー、ニッケル亜鉛、ニッケル金属、ニッケルカドミウム、ニッケル水素、洋銀、ニッケル金属ハイブリッド、全固体、リチウム空気、リチウム硫黄並びに類似の系及び/又は材料から構築又は設計されることもできる。
特に、電池8は、特に電気配線され且つ/又はハウジング9に、好ましくは下ハウジング部10に収容された少なくとも1つのグループの電池セル8Aを有する。
好ましくは、保護要素1は、電池セル8Aを収容するハウジング9の内部空間内に配置される。
【0035】
好ましくは、少なくとも1つの保護要素1、特に第1の保護要素1Aが、好ましくは電池セル8A上方に且つ/又は特にハウジング9且つ/若しくはハウジング蓋9Aに取り付けられ且つ/又は固定される、好ましくは接着結合されることである。第1の保護要素1Aは、ハウジング底部及び/又は電池8若しくはそのセル8Aを好ましくは上側で閉鎖及び/又は絶縁する。
このように、内部の人又は物体を電池8における無制御の熱発達から効率的に且つ/又は十分に長く保護するために、車室12Aに対する特に効率的な上側断熱及び防火が達成される。
電池8及び/又はハウジング9は好ましくは-少なくとも火災及び/又は電池8の内側の過度の加熱若しくは強い圧力増加の場合に-ガスが電池8及び/又はハウジング9から外側に逃げるのを許容し、並びにしたがって圧力補償を許容する、少なくとも1つの出口10を備える。これは、特に火災並びに/又は短絡及び/若しくは過熱の場合に、電池8が爆発及び/又は破裂するのを防止する。
出口10は好ましくは、ハウジング蓋9Aに並びに/又は電池8及び/若しくはハウジング9の上側に配置される。
電池8及び/又はハウジング9は好ましくは、ガスの逃げ及び/又は圧力補償のための幾つかの出口10を備える。
【0036】
好ましくは、上記且つ/又は各出口10は、特に熱不安定且つ/又は非圧力安定要素11を用いて、特に最も好ましくは破裂板等を用いて、基本的に及び/又は納品時に及び/又は正常な使用中に又は必要な限り閉じている又は可閉である。
破裂板の代わりに、例えば、基本的に出口10を封じ、そして火災の場合に及び/又は短絡若しくは過熱の場合に開く-好ましくは圧力及び/又は温度に応じて自動的に開く-閉止要素11として、別の要素又は弁も使用されることができる。しかしながら、他の設計解決策も可能である。
火災、短絡、過熱又はハウジング9における他の圧力増加の場合に、ガスが出口10を通じてハウジング9から流れ出るのを許容することによって、特に破裂板及び/又は弁の開放の後に、出口10を介して圧力補償が達成されることができる。保護要素1及び/又はその繊維層3はフィルタとして作用し、その結果不必要な毒及びガスが除去及び/又は保持されることができる。更には、保護要素1は、開放出口10を通じた炎若しくは火花の漏出に対する障壁として役立ち、且つ/又は出口10が突然に開かれ且つ/若しくは電池が熱暴走下にあるときに急激に生じ得る機械負荷を受けることができ、その結果保護要素1は、特にガスが出口10を通じて流れ出る上述の場合に、炎の漏出に対するその所望のフィルタ機能及び安全機能を保持する。
【0037】
実例では、ハウジング9は、特にハウジング蓋9Aに1つ又は複数の出口10を備え、これらは好ましくは保護要素1且つ/又は第1の保護要素1Aによって内側で覆われる。
代替的又は追加的に、電池8及び/又はハウジング9且つ/若しくは少なくとも1つのハウジング側板9Bは、図2に図示されるように1つ又は複数の側方出口10も備えてもよい。この場合、特に第1の保護要素1Aに加えて又はそれの代替として、更なる且つ/又は第2の保護要素1Bも設けられて、それぞれの側壁9B及び/又はそれぞれの側方出口10を覆う。
特に、少なくとも1つの第1の保護要素1A及び少なくとも1つの第2の保護要素1Bが使用され、第1の保護要素1Aは上側でハウジングの内部を封じ且つ/又は熱絶縁し、そして第2の保護要素1Bはハウジング側壁9Bに側方に配置される。
好ましくは、第2の保護要素1Bは、第1の保護要素1Aに、特に横切って且つ/又は垂直に取り付けられ、好ましくは接着結合、縫合又は溶着される。
好ましくは、電池8及び/又はハウジング9の全ての側壁9Bは、好ましくは形成された出口10とも無関係に、内側に第2の保護要素1Bが設けられ又はそれで覆われる。
【0038】
第2の保護要素1Bも好ましくは、関連した側壁9Bに締着及び/又は接着結合される。
1つ又は複数の保護要素1による1つ又は複数の出口10の好ましい提案された配置及び内側被覆は、電池8の非常に容易な組立及び構造を許容し、火災及び/又は短絡若しくは過熱の場合に所望の圧力補償を提供する一方で、車両12で使用するために出口10における所望のフィルタ及び保護性能を保証する。
第1の保護要素1A及び/又は第2の保護要素1Bの代替として又はそれに加えて、電池8は、図2に一例として図示されるように、更なる且つ/又は第3の保護要素1Cを備えることができる。
第3の保護要素1Cは好ましくは、第1の保護要素1Aの反対側に且つ/又はハウジング内側の下側且つ/若しくは底9Cに配置される。好ましくは、下側且つ/又は底9Cは、第3の保護要素1Cによって完全に且つ/又は完全に覆われる。
第3の保護要素1Cは好ましくは、底9Cに締着及び/又は接着結合される。しかしながら、他の構造解決策も可能である。
【0039】
保護要素1A~1Cは好ましくは各々、1つの電池セル8A且つ/又は上記電池セル8Aとハウジング9との間に配置される。
保護要素1A~1Cに代替的に又は加えて、好ましくは少なくとも1つの(更なる且つ/又は第4の)保護要素1Dが電池セル8A間に設けられ且つ配置され、それによってこれらのセル8A又はセルグループは互いから熱絶縁及び/又は分離される。保護要素1Dは、電池セル8A間に挿入され、圧入され、又は任意の他の仕方で設けられるのが最も好まれる。
好ましくは、本発明の保護要素1/1Dは、図2に示されるように、全ての電池セル8間に配置される。図3は、それが単に概略であるので、この好ましい態様を図示していない。
電池セル8Aは好ましくは、1つ又は複数の1D保護要素によって少なくとも実質的に完全に且つ/又は全ての側で包容される。
【0040】
好ましくは、保護要素1は、充電中のセル8Aのいかなる起こり得る膨張も完全に補償し、且つ/又は電池8の運用寿命にわたって可能な限り定められる機械的初荷重を保証することができる。納品条件において少なくとも約25kPaが必要とされる。運用寿命にわたって、設置条件における圧力は、セル8Aの膨張(膨潤)により最高で250kPaに又は500kPaにさえ増加し得る。これらの値は、セル型(円形セル、パウチセル及びプリズムセル)に応じて変化し、顧客要件に適合されることができる。
特に、保護要素1Dは、幾つかの又は全ての電池セル8Aを、全ての側で且つ/又は特に電池セル8Aが互いに関して絶縁、遮蔽及び/若しくは減衰されるよう、それらがハウジング9に支持及び/若しくは配置されるというように、封じ且つ/又は包容する。保護要素1は、したがって好ましくは電池セル8Aのための保管マットを形成する。特に全ての側で効果的な熱絶縁に加えて、いかなる衝撃及び/又は振動も圧縮性保護要素1によって減衰及び/又は吸収されるので、これは電池セル8Aのロバストで且つ/又は耐性のある保管も可能にする。
【0041】
電池セル8Aは好ましくは-グループで又は個々に-1つ又は複数の保護要素1A~1Dによって少なくとも実質的に完全に且つ/又は全ての側で封じられ且つ/又は包囲され、すなわち電池8において互いから絶縁及び/又は遮蔽される。
電池セル8Aの円筒状設計の場合には、第4の保護要素1Dは、例えば、中空円筒に設計され、したがって電池セル8Aを-特に個々に-径方向に包囲することができ、第1の保護要素1A及び第3の保護要素1Cなどの更なる保護要素1が、例えば、電池セル8Aを軸方向に覆う又は封止することができる。
【0042】
セルスタックの場合には、保護要素1からの電池セル8Aの軸方向分離のために中間層も形成されることができる。
保護要素1及び/又は1Dが、原則として且つ特に電池セル8A間に配置されるときにも-すなわち特に電池セル8Aとハウジング9との間の外側に配置されないときに-更なる繊維層及び/又は必要に応じて別の中間層、分離層若しくは絶縁層などの、追加層を備えることができ、したがってより低いガス透過率も有し得ることが留意されるべきである。
試験により、提案された保護要素1が電池8内に熱を抑制するためにも上側及び/又は側面配置及び/又は絶縁のためにも、すなわち特に隣接する車室12Aの熱保護のためにも適切であることが示された。
代替的に又は加えて、提案された保護要素1は、特に電池8のハウジング9において電池8の制御部、制御デバイス及び/又は制御エレクトロニクス8Bを絶縁するために、特に図2において例えば電池8及び/又はハウジング9における1つのセル8Aの代わりに制御デバイス8Bが置かれ得る右側に概略的に図示されるように、それを1つ又は複数の電池セル8Aから絶縁するために、使用及び/又は配置されることもできる。この使用法又は配置は、例えば、電池セル8Aの故障及び/又は熱暴走の場合に、電池8内に熱を抑制し且つ/又は絶縁を提供し、したがって最終的に特に以前より長時間の間電池8を安定化するためにも役立ち得る。
【0043】
独立して又は上に説明した態様及び特徴の1つ若しくは複数とのあらゆる組合せで実現されることができる、本発明の更なる態様は、特に以下の通りである:
1.発泡体層(2)及び繊維層(3)を持つ、
電池(8)の熱絶縁のための多層保護要素(1)において、
繊維層(3)が、好ましくはニードル不織繊維フリースを備え若しくはそれによって形成され、且つ/又は圧縮性であり、好ましくは100若しくは250kPaで30%超だけ圧縮性であり、且つ/又は少なくとも本質的にバインダフリーであること、並びに/或いは
保護要素(1)が保護層(5)を更に備え、好ましくは保護層(5)が鉱物保護材料(6)を備えること
を特徴とする、多層保護要素。
2.繊維層(3)がガラス繊維、セラミック繊維若しくはシリケート繊維(3A)又はその混合物から作られることを特徴とする、態様1に記載の保護要素。
3.繊維層(3)の繊維(3A)が、金属酸化物、特に酸化アルミニウムを含有する仕上材を備えることを特徴とする、態様1又は2に記載の保護要素。
4.繊維層(3)又は繊維フリースが糸(3B)、好ましくはガラス繊維の糸で縫合されることを特徴とする、態様1~3のいずれか1つに記載の保護要素。
5.発泡体層(2)がシリコーンから作られることを特徴とする、態様1~4のいずれか1つに記載の保護要素。
6.発泡体層(2)がポリウレタンから作られることを特徴とする、態様1~5のいずれか1つに記載の保護要素。
7.繊維層(3)及び/又は発泡体層(2)が、特に100又は250kPaで30%超だけ-好ましくは弾性的に-圧縮性であることを特徴とする、態様1~6のいずれか1つに記載の保護要素。
8.発泡体層(2)が繊維層(3)より柔らかい又は圧縮性があることを特徴とする、態様1~7のいずれか1つに記載の保護要素。
9.発泡体層(2)及び繊維層(3)が結合され、好ましくは結合層(4)又は接着剤によって結合され、且つ保護層(5)によって外側が、好ましくは両側が覆われることを特徴とする、態様1~8のいずれか1つに記載の保護要素。
10.繊維層(3)がニードル不織繊維フリースを備え又はそれによって形成されること、及び保護層(5)が鉱物保護材料(6)として雲母を備えることを特徴とする、態様9に記載の保護要素。
11.保護鉱物保護材料(6)が1種又は複数のフィロ珪酸塩、好ましくは雲母、特に金雲母である又はそれを備えることを特徴とする、態様1~10のいずれか1つに記載の保護要素。
12.ハウジング(9)及び熱絶縁のためにハウジング(9)に配置される少なくとも1つの多層保護要素(1)を持ち、
保護要素(1)が発泡体層(2)及び繊維層(3)を備える、
電池(8)、好ましくはリチウムイオン電池において、
保護要素(1)が態様1~11のいずれか1つに従って設計されること
を特徴とする、電池。
13.電池(8)がプリズム又はパウチセル(8A)を備えることを特徴とする、態様12に記載の電池。
14.保護要素(1)又は追加の保護要素(1D)が電池(8)の2つの隣接する電池セル(8A)間に配置されることを特徴とする、態様12又は13に記載の電池。
15.電池(8)における熱絶縁のための発泡体層(2)及び繊維層(3)を持つ多層保護要素(1)の使用法において、
保護要素(1)が態様1~11のいずれか1つに従って設計されること
を特徴とする、使用法。
【0044】
本発明の個々の態様は、既述のように、要望に応じて組み合わされることができるが、互いから独立して実現されることもできる。
【符号の説明】
【0045】
1(A、B、C、D) 保護要素
2 発泡体層
2A 気孔
3 繊維層
3A 繊維
3B 糸
4 結合層
5 保護層
6 鉱物保護材料
7 キャリア層
8 電池
8A 電池セル
8B 制御部/制御デバイス
9 ハウジング
9A ハウジング蓋
9B ハウジング側壁
9C ハウジング底
10 出口
11 (閉止)要素
12 車両
12A 車室
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】