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特表2024-520668水素製造のための組み合わせ型燃焼・熱分解反応器、ならびに関連システムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】水素製造のための組み合わせ型燃焼・熱分解反応器、ならびに関連システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/26 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
C01B3/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574455
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 US2022032257
(87)【国際公開番号】W WO2022256709
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】63/283,156
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/197,255
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522469420
【氏名又は名称】モダン エレクトロン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】グレーネヴァルト ロエロフ イー
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ ケヴィン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ココナスキ ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】マンキン マックス エヌ
(72)【発明者】
【氏名】パン トニー エス
(72)【発明者】
【氏名】ウッド ロウェル エル
(72)【発明者】
【氏名】ロア ジョン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ゴヤル アミット
(72)【発明者】
【氏名】ラダエッリ グイド
(72)【発明者】
【氏名】セシャドリ ヴィクラム
(72)【発明者】
【氏名】マフディ エムジェイ
(72)【発明者】
【氏名】バラード マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ハリス スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ピアース アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー ジェフ
【テーマコード(参考)】
4G140
【Fターム(参考)】
4G140DA03
4G140DB05
(57)【要約】
組み合わせ型燃焼・熱分解(CCP)システム、ならびに関連システムおよび方法が明細書に開示される。幾つかの実施形態では、CCPシステムは、炭化水素反応体を受け取るよう燃料供給源に流体結合可能な入力弁、入力弁に流体結合可能なCCP反応器、およびCCP反応器に流体結合可能な炭素分離コンポーネントを含む。CCP反応器は、燃焼チャンバ、燃焼チャンバと熱的連絡状態にあるとともに/あるいは入力弁に流体結合された反応チャンバ、および燃焼チャンバおよび/または反応チャンバからの熱損失を減少させるために配置された断熱材料を有するのがよい。CCP反応器は、燃焼チャンバ内の燃料を燃焼させるよう配置された燃焼コンポーネントをさらに有するのがよい。燃焼により、反応チャンバおよび反応チャンバ中を流通する炭化水素反応体を加熱することができる。この熱により、炭化水素反応体の熱分解が生じ、それにより水素ガスと炭素が生じる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み合わせ型燃焼・熱分解(CCP)システムであって、前記CCPシステムは、
CCP反応器を含み、前記CCP反応器は、
燃焼チャンバを有し、
前記燃焼チャンバ内の燃料を燃焼させて結果として生じる煙道ガスを前記燃焼チャンバ中に入るように方向づけるよう位置決めされた燃焼コンポーネントを有し、
反応チャンバを有し、前記反応チャンバは、(1)反応体を受け入れるよう反応体供給源に流体結合可能な第1の領域、および(2)前記第1の領域の下流側に設けられている第2の領域を有し、前記反応チャンバは、前記反応体を加熱させて前記反応チャンバ内に熱分解反応を生じさせるよう前記燃焼チャンバと熱的連絡状態にあり、前記熱分解反応は、水素ガスおよび炭素を含む出力を生じさせ、
前記燃焼チャンバまたは反応チャンバのうちの少なくとも一方からの熱損失を減少させるよう配置された断熱材料を有し、
前記炭素の少なくとも一部分を前記出力から除去して分離された出力を形成するよう前記反応チャンバの前記第2の領域と流体連通状態にある炭素分離コンポーネントを含む、CCPシステム。
【請求項2】
前記分離出力を受け入れるよう前記炭素分離コンポーネントと流体連通状態にある出力弁をさらに含み、前記出力弁は、少なくとも、第1の位置および第2の位置を有し、
前記第1の位置では、前記出力弁は、前記分離出力の少なくとも一部分を前記燃焼コンポーネントに入るよう方向づけ、
前記第2の位置では、前記出力弁は、前記分離出力の少なくとも一部分を前記CCPシステムから出るよう方向づける、請求項1記載のCCPシステム。
【請求項3】
前記燃焼コンポーネントは、
前記燃焼コンポーネント内における前記燃料と酸素の比を制御するよう酸化体供給源に流体結合された酸化体入力弁と、
前記酸素を受け入れて前記比における前記燃料と前記酸素の混合物を燃焼させるよう前記酸化体入力弁に作動的に結合されたバーナとを含む、請求項1記載のCCPシステム。
【請求項4】
前記反応チャンバは、前記燃焼チャンバと同心であり、かつ前記燃焼チャンバから半径方向外方に位置し、前記断熱材料は、前記反応チャンバと同心であり、かつ前記反応チャンバから半径方向外方に位置する、請求項1記載のCCPシステム。
【請求項5】
前記燃焼チャンバは、前記反応チャンバと同心であり、かつ前記反応チャンバから半径方向外方に位置し、前記断熱材料は、前記燃焼チャンバと同心であり、かつ前記燃焼チャンバから半径方向外方に位置する、請求項1記載のCCPシステム。
【請求項6】
(1)前記燃焼チャンバを出ている前記煙道ガスおよび(2)(a)前記燃焼コンポーネントに入っている前記燃料の流れまたは(b)前記燃焼チャンバに入っている酸化体のうちの一方と熱的連絡状態にあり、それにより前記煙道ガスからの熱を(a)前記燃焼チャンバに入っている前記燃料または(b)前記燃焼チャンバに入っている前記酸化体に伝達するための再生熱交換器をさらに含む、請求項1記載のCCPシステム。
【請求項7】
熱を前記煙道ガスから、前記反応チャンバに入る前記反応体中に伝達するよう前記反応チャンバに入っている前記反応体の流れと前記燃焼チャンバを出ている前記煙道ガスの両方と熱的連絡状態にある再生熱交換器をさらに含む、請求項1記載のCCPシステム。
【請求項8】
炭素デポジットを前記反応チャンバ内の少なくとも1つの表面から除去するよう前記反応チャンバ内に少なくとも部分的に配置された炭素除去装置をさらに含む、請求項1記載のCCPシステム。
【請求項9】
前記炭素除去装置は、前記炭素デポジットを前記少なくとも1つの表面から掻き落とすよう前記反応チャンバの長手方向流路に沿って動くことができるプランジャ、前記炭素デポジットを前記少なくとも1つの表面から掻き落とすよう回転可能に動くことができるスクリュー形押出機、または前記炭素デポジットを少なくとも1つの表面から除去するよう加圧ガス流を方向づけるよう位置決めされた1つ以上のガスジェットのうちの少なくとも1つ含む、請求項8記載のCCPシステム。
【請求項10】
前記炭素除去装置は、前記炭素デポジットを前記少なくとも1つの表面から掻き落とすよう前記反応チャンバの長手方向流路に沿って動くことができるプランジャを含む、請求項8記載のCCPシステム。
【請求項11】
前記燃焼チャンバは、第1の燃焼チャンバであり、前記燃焼コンポーネントは、第1の燃焼コンポーネントであり、前記反応チャンバは、第1の反応チャンバであり、前記CCP反応器は、
少なくとも1つの追加の燃焼チャンバと、
前記少なくとも1つの追加の燃焼チャンバ内の前記燃料を燃焼させ、結果的に生じた煙道ガスを前記少なくとも1つの追加の燃焼チャンバ中に方向づけるよう配置された少なくとも1つの燃焼コンポーネントと、
前記反応体を受け取るよう前記反応体供給源に流体結合可能な第1の領域および前記第1の領域と反対側の第2の領域を各々備えた少なくとも1つの追加の反応チャンバとをさらに有する、請求項1記載のCCPシステム。
【請求項12】
前記断熱材料は、前記第1の燃焼チャンバ、前記第1の反応チャンバ、前記少なくとも1つの追加の燃焼チャンバ、および前記少なくとも1つの追加の反応チャンバの各々から半径方向外方に配置されている、請求項11記載のCCPシステム。
【請求項13】
前記反応チャンバは、共有壁を介する熱伝導および/または熱放射により前記燃焼チャンバと熱的連絡状態にある、請求項1記載のCCPシステム。
【請求項14】
前記反応体は、天然ガスを含む、請求項1記載のCCPシステム。
【請求項15】
前記反応体供給源と前記反応チャンバとの間に流体結合された入力弁をさらに含む、請求項1記載のCCPシステム。
【請求項16】
出力接合部をさらに含み、前記出力は、前記分離出力の少なくとも一部分を前記燃焼コンポーネントに入るよう方向づけるように位置決めされた第1の出口および前記分離出力の少なくとも一部分を前記CCPシステムから出るよう方向づけるように位置決めされた第2の出口を有する、請求項1記載のCCPシステム。
【請求項17】
炭化水素反応体を水素ガスおよび炭素を含む出力に変換する組み合わせ型燃焼・熱分解(CCP)システムであって、前記CCPシステムは、
複数のチャンバおよび前記複数のチャンバからの熱損失を減少させるよう配置された断熱材料を有するCCP反応器を含み、前記複数のチャンバの各々は、第1の部分および前記第1の部分と反対側の第2の部分を有し、
少なくとも第1のチャンバが、燃料の供給源に結合可能であり、かつ燃焼煙道ガスを前記第1のチャンバに入るよう方向づけるように配置された燃焼コンポーネントを有し、
少なくとも第2のチャンバが、炭化水素反応体を受け入れるための入力弁に流体結合可能であり、かつ前記出力を生じさせる熱分解反応を引き起こすために燃焼熱を前記炭化水素反応体に伝達するよう前記第1のチャンバと熱的連絡状態にあり、
炭化分離コンポーネントが、前記炭素の少なくとも一部分を前記出力から除去するようCCP反応器と流体連通状態にある、CCPシステム。
【請求項18】
前記第1のチャンバを出た前記燃焼煙道ガスから熱を回収して前記燃焼コンポーネントに入る前記燃料、前記第2のチャンバに入る前記炭化水素反応体および/または前記燃焼コンポーネントに入る前記酸化体を予熱するよう前記燃焼チャンバと流体連通状態にある再生熱交換器をさらに含む、請求項17記載のCCPシステム。
【請求項19】
前記出力は、未反応炭化水素ガスをさらに含み、前記CCPシステムは、前記出力を受け取って前記未反応炭化水素ガスの少なくとも一部分を前記出力から除去するよう前記CCP反応器と流体連通状態にあるガス分離器をさらに含む、請求項17記載のCCPシステム。
【請求項20】
前記複数のチャンバは、互いに同心であり、前記第1のチャンバは、前記第2のチャンバから半径方向内方に配置され、前記断熱材料は、前記第2のチャンバから半径方向外方に配置されている、請求項17記載のCCPシステム。
【請求項21】
前記燃焼コンポーネントは、第1の燃焼コンポーネントであり、前記燃焼煙道ガスは、第1の燃焼煙道ガスであり、
前記第2のチャンバは、前記燃料の前記供給源に結合可能であり、かつ第2の燃焼煙道ガスを前記第2のチャンバ中に方向づけるように配置された第2の燃焼コンポーネントを有し、
前記CCP反応器は、
前記第2のチャンバと同心であり、かつ前記第2のチャンバから半径方向外方に位置する第3のチャンバをさらに有し、前記第3のチャンバは、前記炭化水素反応体を受け入れるよう前記入力弁に流体結合可能であり、かつ前記第1および/または前記第2の燃焼コンポーネントからの燃焼熱を前記炭化水素反応体に伝達して前記熱分解反応を生じさせるよう前記第1のチャンバおよび前記第2のチャンバと熱的連絡状態にあり、
(1)前記第1および前記第2のチャンバのうちの少なくとも一方内に燃焼を生じさせるが、熱分解は生じさせず、(2)前記第2および前記第3のチャンバのうちの少なくとも一方内に熱分解を生じさせるが、燃焼は生じさせないよう前記第1の燃焼コンポーネント、前記第2の燃焼コンポーネント、および前記入力弁の各々に作動可能に結合されたコントローラをさらに有する、請求項20記載のCCPシステム。
【請求項22】
前記第3のチャンバは、前記燃料の前記供給源に結合可能であり、かつ前記第3の燃焼煙道ガスを前記第3のチャンバ中に方向づけるよう配置された第3の燃焼コンポーネントを有し、
前記第1のチャンバは、前記炭化水素反応体を受け入れて前記第2および/または前記第3の燃焼コンポーネントからの燃焼熱を前記炭化水素反応体に伝達して前記熱分解反応を生じさせるよう前記入力弁に流体結合可能であり、
前記コントローラはさらに、(3)前記第3のチャンバ内に燃焼を生じさせるが、熱分解は生じさせず、(4)前記第1のチャンバ内に熱分解を生じさせるが、燃焼は生じさせないよう前記第3の燃焼コンポーネントおよび前記入力弁に作動的に結合可能である、請求項21記載のCCPシステム。
【請求項23】
炭素デポジットを前記第1のチャンバ内の少なくとも1つの表面から掻き落とすよう前記第1のチャンバの長手方向流路に沿って動くことができる第1のプランジャと、
炭素デポジットを前記第2のチャンバ内の少なくとも1つの表面から掻き落とすよう前記第2のチャンバの長手方向流路に沿って動くことができる第2のプランジャとをさらに有する、請求項22記載のCCPシステム。
【請求項24】
前記第1のチャンバは、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間に壁を形成する伝熱材料によって前記第2のチャンバに熱的に結合されている、請求項17記載のCCPシステム。
【請求項25】
水素ガスを発生させるための組み合わせ型燃焼・熱分解(CCP)システムを作動させる方法であって、前記方法は、
反応体をCCP反応器の第1のチャンバ中に方向づけるステップを含み、前記第1のチャンバは、熱伝導性の共有壁を介して前記CCP反応器の第2のチャンバと熱的連絡状態あり、
前記第2のチャンバ内の燃料を燃焼コンポーネントにより燃焼させて前記第1のチャンバ内の前記反応体を反応温度よりも高い温度に加熱するステップを含み、前記反応温度では、前記反応体の少なくとも一部分は、水素ガスおよび炭素粒子を含む出力に変換し、
前記炭素粒子の少なくとも一部分を前記出力から分離して取り出すステップを含む、方法。
【請求項26】
前記第2のチャンバを出ている煙道ガスからの熱を前記燃料および/または前記燃焼コンポーネントに入っている酸化体および/または前記第1のチャンバに入っている前記反応体中に伝達するステップをさらに含むことを請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記出力内の前記水素ガスの少なくとも一部分を前記燃焼コンポーネントに入るよう方向づけて前記燃焼コンポーネントに入る前記燃料を補充するステップをさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項28】
炭素除去コンポーネントにより前記CCP反応器の前記第2のチャンバ内の少なくとも1つの表面から炭素デポジットを脱落させるステップをさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項29】
前記反応体を前記第1のチャンバ中に方向づけるとともに前記燃料を燃焼させながら研磨を実施する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記反応体を前記第1のチャンバ中に方向づける前に、前記CCP反応器を予熱するステップをさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項31】
前記CCP反応器を予熱する前記ステップは、前記燃焼コンポーネントにより前記第2のチャンバ内の前記燃料を燃焼させるステップを含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記燃焼コンポーネントは、第1の燃焼コンポーネントであり、前記CCP反応器を予熱する前記ステップは、第2の燃焼コンポーネントにより前記CCP反応器の前記第1のチャンバ内の前記燃料を燃焼させるステップを含む、請求項30記載の方法。
【請求項33】
入力弁を第1の位置から第2の位置に動かすステップをさらに含み、
前記第1の位置では、前記入力弁は、前記反応体を前記第1のチャンバ中に方向づけ、
前記第2の位置では、前記入力弁は、前記反応体を前記第2のチャンバと熱的連絡状態にある第3のチャンバ中に方向づけ、
前記燃焼コンポーネントにより、前記第2のチャンバ内の前記燃料を燃焼させて前記第3のチャンバ内の前記反応体を前記反応温度よりも高い温度に加熱するステップを含む、請求項25記載の方法。
【請求項34】
炭素除去コンポーネントにより、前記入力弁が前記第2の位置にある間、前記CCP反応器の前記第1のチャンバ内の少なくとも1つの表面から炭素デポジットを落とすステップを含む、請求項33記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、一般に、水素製造のための組み合わせ型燃焼・熱分解反応器、ならびに関連システムおよび方法に関する。代表的なシステムは、分散型の住居および/または商業用途に使用でき、水素に加えて、熱、電力、および/または他の出力を生産することができる。
【0002】
〔関連出願の引照〕
本願は、2021年11月24日に出願された米国特許仮出願第63/283,156号、および2021年6月4日に出願された米国特許仮出願第63/197,255号の優先権主張出願であり、これら米国特許仮出願を参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
水素は、典型的には、工業設備において高温で動作する大規模反応器によって製造される。水素を製造する工業的方法の中には、蒸気メタン改質(SMR)および石炭ガス化を行うものがある。これらプロセスの結果として、大量の直接温室効果ガス(GHG)エミッションが生じる。例えば、SMRは、水素1kg当たり二酸化炭素を約10kg生じさせる場合があり、石炭ガス化は、水素1kg当たり二酸化炭素を20kg生じさせる場合がある。次に、製造された水素を燃料電池および/または例えばある幾つかのアンモニアを主成分とする肥料を製造する他の工業プロセスでの最終的使用のために輸送する。近年、化学反応体として、また暖房や電力用の熱エネルギー源として用いるために低GHG方法を用いて水素ガスを製造している。このやり方は、電力および/または熱を発生させる、または水素を種々のプロセスに供給する魅力的な方法として興味を集めているが、その理由は、水素ガスの燃焼では温室効果ガスまたは他の有害な化学物質を何ら放出しないからである。しかしながら、水素ガスを燃焼させた場合に放出する1mol当たりの熱量は、天然ガスの場合よりも少なく、したがって効率的な製造システムが必要である。
【0004】
メタン熱分解は、水素を少量の直接温室効果ガスエミッションで製造する代替的なプロセスである。変形メタン熱分解法に関して続行されてきた研究およびパイロットとしては、触媒溶融金属または塩の使用を含むプラズマ駆動型解離、熱解離、および種々の反応器形態(例えば、流動床式反応器)における触媒の利用が挙げられる。これらシステムは、温室効果ガスの同時放出をしないで水素の製造を可能にする技術動向への前途有望な技術展開となっており、と言うのは、炭素は、熱分解反応中、固体の形態で自然に分離されるからである。しかしながら、熱分解反応吸熱を供給するために、これらプロセスは、メタン改質または解離プロセスに動力供給するために電力および/または熱を発生させるよう炭素を主成分とする材料によって燃料供給されるのが通例であるエネルギー源を用いる。代替策として、再生可能エネルギーが提案されたが、再生可能エネルギーは、一般的には、連続操業を必要とする工業的大規模用途に関する永続的なエネルギーの要件を満たすのに実行可能であるとは言えず、今日においては、必要な全エネルギー発生能力のほんの一部を占めているに過ぎない。したがって、大規模水素製造のための再生可能エネルギーの利用可能性と分配型小規模製造のためのプロセスをスケールダウンすることができないということの不一致は、本技術部門においての必要性を提示している。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一観点によれば、組み合わせ型燃焼・熱分解(CCP)システムであって、CCPシステムは、
CCP反応器を含み、CCP反応器は、
燃焼チャンバを有し、
燃焼チャンバ内の燃料を燃焼させて結果として生じる煙道ガスを燃焼チャンバ中に入るように方向づけるよう位置決めされた燃焼コンポーネントを有し、
反応チャンバを有し、反応チャンバは、(1)反応体を受け入れるよう反応体供給源に流体結合可能な第1の領域、および(2)第1の領域の下流側に設けられている第2の領域を有し、反応チャンバは、反応体を加熱させて反応チャンバ内に熱分解反応を生じさせるよう燃焼チャンバと熱的連絡状態にあり、熱分解反応は、水素ガスおよび炭素を含む出力を生じさせ、
燃焼チャンバまたは反応チャンバのうちの少なくとも一方からの熱損失を減少させるよう配置された断熱材料を有し、
炭素の少なくとも一部分を出力から除去して分離された出力を形成するよう反応チャンバの第2の領域と流体連通状態にある炭素分離コンポーネントを含むことを特徴とするCCPシステムが提供される。
【0006】
本発明の別の観点によれば、炭化水素反応体を水素ガスおよび炭素を含む出力に変換する組み合わせ型燃焼・熱分解(CCP)システムであって、CCPシステムは、
複数のチャンバおよび複数のチャンバからの熱損失を減少させるよう配置された断熱材料を有するCCP反応器を含み、複数のチャンバの各々は、第1の部分および第1の部分と反対側の第2の部分を有し、
少なくとも第1のチャンバが、燃料の供給源に結合可能であり、かつ燃焼煙道ガスを第1のチャンバに入るよう方向づけるように配置された燃焼コンポーネントを有し、
少なくとも第2のチャンバが、炭化水素反応体を受け入れるための入力弁に流体結合可能であり、かつ出力を生じさせる熱分解反応を引き起こすために燃焼熱を炭化水素反応体に伝達するよう第1のチャンバと熱的連絡状態にあり、
炭化分離コンポーネントが、炭素の少なくとも一部分を出力から除去するようCCP反応器と流体連通状態にあることを特徴とするCCPシステムが提供される。
【0007】
本発明のさらに別の観点によれば、水素ガスを発生させるための組み合わせ型燃焼・熱分解(CCP)システムを作動させる方法であって、本方法は、
反応体をCCP反応器の第1のチャンバ中に方向づけるステップを含み、第1のチャンバは、熱伝導性の共有壁を介してCCP反応器の第2のチャンバと熱的連絡状態あり、
第2のチャンバ内の燃料を燃焼コンポーネントにより燃焼させて第1のチャンバ内の反応体を反応温度よりも高い温度に加熱するステップを含み、反応温度では、反応体の少なくとも一部分は、水素ガスおよび炭素粒子を含む出力に変換し、
炭素粒子の少なくとも一部分を出力から分離して取り出すステップを含むことを特徴とする方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本技術の幾つかの実施形態に従って現地分配、現地消費、および/または現地貯蔵可能に水素ガスを製造するシステムのブロック図である。
図2】本技術の幾つかの実施形態に従って種々の代表的な用途のための電力、加熱、冷却、ならびに天然ガス需要および使用を示す表の図である。
図3】本技術の幾つかの実施形態に従って水素ガスを製造する反応器システムのブロック図である。
図4】本技術の種々の実施形態に従って一体形加熱特徴部を含む反応器システムの略図である。
図5】本技術の幾つかの実施形態に従って水素ガスを製造する代表的な反応器システムのブロック図である。
図6】本技術の幾つかの実施形態に従って図4の反応器システムに用いられる反応チャンバの略図である。
図7】本技術の幾つかの実施形態に従って種々の流量に関して反応チャンバの長さと反応チャンバを通って流れる反応体の温度との間の関係を示すグラフ図である。
図8】本技術の幾つかの実施形態に従って反応チャンバ内における反応に対する表面積対体積率とフローチャンバの直径との関係の影響を示すグラフ図である。
図9】本技術の幾つかの実施形態に従って反応器前後の最大圧力降下を得るために均一反応条件を満たす反応チャンバの代表的な寸法を示す図である。
図10】本技術の幾つかの実施形態に従って多数の反応チャンバを含む図4の反応器システムの略図である。
図11】本技術の諸実施形態に従って構成された反応器システムの代表的なコンポーネントの略図である。
図12】本技術の諸実施形態に従って構成された反応器システムの代表的なコンポーネントを示すブロック図である。
図13】本技術の別の諸実施形態に従って構成された反応器システムの代表的なコンポーネントの略図である。
図14A】本技術の諸実施形態に従って構成された炭素除去コンポーネントを含む反応器システムの部分略図である。
図14B】本技術の諸実施形態に従って構成された炭素除去コンポーネントを含む反応器システムの部分略図である。
図14C】本技術の諸実施形態に従って構成された炭素除去コンポーネントを含む反応器システムの部分略図である。
図14D】本技術の諸実施形態に従って構成された炭素除去コンポーネントを含む反応器システムの部分略図である。
図14E】本技術の諸実施形態に従って構成された炭素除去コンポーネントを含む反応器システムの部分略図である。
図14F】本技術の諸実施形態に従って構成された炭素除去コンポーネントを含む反応器システムの部分略図である。
図14G】本技術の諸実施形態に従って構成された炭素除去コンポーネントを含む反応 システムの部分略図である。
図14H】本技術の諸実施形態に従って構成された炭素除去コンポーネントを含む反応器システムの部分略図である。
図14I】本技術の諸実施形態に従って構成された炭素除去コンポーネントを含む反応器システムの部分略図である。
図14J】本技術の諸実施形態に従って構成された炭素除去コンポーネントを含む反応器システムの部分略図である。
図14K】本技術の諸実施形態に従って構成された炭素除去コンポーネントを含む反応器システムの部分略図である。
図14L】本技術の諸実施形態に従って構成された炭素除去コンポーネントを含む反応器システムの部分略図である。
図15A】本技術の諸実施形態に従って構成された炭素除去コンポーネントを含むRTP反応器システムの部分略図である。
図15B】本技術の諸実施形態に従って構成された炭素除去コンポーネントを含むRTP反応器システムの部分略図である。
図16A】本発明のさらに別の諸実施形態に従って構成された炭素除去コンポーネントを含む反応器システムの部分略図である。
図16B】本発明のさらに別の諸実施形態に従って構成された炭素除去コンポーネントを含む反応器システムの部分略図である。
図16C】本発明のさらに別の諸実施形態に従って構成された炭素除去コンポーネントを含む反応器システムの部分略図である。
図16D】本発明のさらに別の諸実施形態に従って構成された炭素除去コンポーネントを含む反応器システムの部分略図である。
図17A】本技術の諸実施形態に従って炭素除去技術の効果を実証した試験データを示す図である。
図17B】本技術の諸実施形態に従って炭素除去技術の効果を実証した試験データを示す図である。
図17C】本技術の諸実施形態に従って炭素除去技術の効果を実証した試験データを示す図である。
図18A】本技術の諸実施形態に従って軸方向および半径方向熱分解ゾーンを有する代表的な反応器モデルを示す図である。
図18B】本技術の諸実施形態に従って軸方向および半径方向熱分解ゾーンを有する代表的な反応器モデルを示す図である。
図18C】本技術の諸実施形態に従って軸方向および半径方向熱分解ゾーンを有する代表的な反応器モデルを示す図である。
図19A図18A図18Cに示す代表的な反応器モデルに関する予測性能パラメータを示す図である。
図19B図18A図18Cに示す代表的な反応器モデルに関する予測性能パラメータを示す図である。
図19C図18A図18Cに示す代表的な反応器モデルに関する予測性能パラメータを示す図である。
図19D図18A図18Cに示す代表的な反応器モデルに関する予測性能パラメータを示す図である。
図19E図18A図18Cに示す代表的な反応器モデルに関する予測性能パラメータを示す図である。
図19F図18A図18Cに示す代表的な反応器モデルに関する予測性能パラメータを示す図である。
図20A】本技術の諸実施形態に係る種々の代表的な熱分解反応器システムに関する試験データを示す図である。
図20B】本技術の諸実施形態に係る種々の代表的な熱分解反応器システムに関する試験データを示す図である。
図20C】本技術の諸実施形態に係る種々の代表的な熱分解反応器システムに関する試験データを示す図である。
図20D】本技術の諸実施形態に係る種々の代表的な熱分解反応器システムに関する試験データを示す図である。
図20E】本技術の諸実施形態に係る種々の代表的な熱分解反応器システムに関する試験データを示す図である。
図20F】本技術の諸実施形態に係る種々の代表的な熱分解反応器システムに関する試験データを示す図である。
図20G】本技術の諸実施形態に係る種々の代表的な熱分解反応器システムに関する試験データを示す図である。
図20H】本技術の諸実施形態に係る種々の代表的な熱分解反応器システムに関する試験データを示す図である。
図21】本技術の諸実施形態に従って反応体と燃焼用燃料の様々な比に関して熱損失と熱分解変換百分率の関係を示す図である。
図22】本技術の諸実施形態に従って構成された反応器の試験から得られたスペクトルデータを示す図である。
図23】本技術の幾つかの実施形態による、炭素を水素ガスから分離するサイクロン型分離器の略図である。
図24A】本技術の種々の実施形態に係る炭素収集システムの部分概略等角図である。
図24B】本技術の種々の実施形態に係る炭素収集システムの部分概略等角図である。
図24C】本技術の種々の実施形態に係る炭素収集システムの部分概略等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
説明の目的上、以下の説明が対応の見出しのもとに幾つかの区分で提供されている。理解されるように、任意の見出しのもとで説明する要素は、別段の明示の指定がなければ、限定なく、他の見出しのもとで説明するシステムに適用できる。区分としては、以下が挙げられる。
1.概観
2.代表的な全体的燃焼熱分解システム
3.代表的な再生熱分解システム
4.代表的な組み合わせ型燃焼・熱分解システム
5.堆積炭素除去システムを備えた代表的な反応器構成例
6.代表的な試験およびシミュレーションデータ
7.液体中間生成物
8.代表的なガス伝送(ガスで運ばれる)炭素除去システム
【0010】
1.概観
蒸気メタン改質(SMR)およびガス化を使用する工業反応器により製造された水素の幅広い使用を可能にするため、水素輸送および貯蔵技術ならびにインフラストラクチャが必要とされる。このためには、既存の天然ガスパイプラインを水素適合材料で置き換える必要があり、あるいは水素を貯蔵しまたは水素を運搬するためのより経済的かつ質量/体積効率のよい仕方を見出すことが必要である。現在、最先端の水素貯蔵は、水素重量と貯蔵タンク重量について5:95の近似比を有する。この要因および他の要因の示すところによれば、ガスパイプラインの大規模な交換および新規な輸送インフラストラクチャの創設は、とてつもなく費用がかかり、しかもかつ/あるいは遅いので、迅速に採用することはできない。これらの制約に起因して、水素使用は、主として、水素が製造される場所の近くの現場における化学分子としての使用に限定されている。例えば、米国では、約1,600マイルの水素パイプライン(大抵の場合、精製装置/化学プラントの付近に配置される)に対して2,000,000マイルの天然ガスラインが敷設されている。しかしながら、水素製造の現行の工業的方法では、多量の各種温室効果ガス(GHG)が放出され、スケールアップする上でのこれら工業的方法の可能性が制限されている。同様に、これら現行の製造方法について脱炭素化を行うには、炭素捕捉・貯蔵(CCS)が必要であり、これは、小規模で動作するのが困難でありかつ非経済的である。最後に、水素製造の現行の方法は、小規模では効率が低くなる。以上まとめて言えば、これらの要因は一緒になって、現地需要を満たすとともに水素輸送および貯蔵上の難題およびこれらのコストを回避するよう規模においてダウンサイズする上で現行の水素製造方法の潜在的可能性を制限する。
【0011】
輸送および貯蔵を回避して低GHGエミッションで水素を現地で作ることができれば、反応体としての化学物質における使用を越えて水素は、その使用ベースを次の用途に拡大することができ、用途としては、建築分野(暖房、冷房、電気)、パワーまたは電力発生(電気)、輸送機関用燃料(例えば、トラック、輸送、車および/または他の車両用)、他の工業部門(鋼、ガラス、セメント)、および/または他の伝統的な化学プラントユーザが挙げられる。燃焼用燃料またはクリーンな化学反応体としての水素への切り換えは、桁外れの環境上の利益をもたらす。
【0012】
例えば、建築部門(商用および住宅用)では、化石燃料を用いる暖房および水の加熱(温水提供)は、世界的な温室効果ガスエミッションに関する最も大きな原因のうちの1つである。したがって、住宅用暖房器具での水素燃焼への切り替えにより、桁外れに大きな環境上の利益が得られる。また、燃料電池または他の装置を使って水素を電気に直接変換することができ、あるいは建物レベルでの熱電変換器およびヒートエンジンを介して間接的に電気に変換することができる。現地での発電のために水素を用いると(例えば、同一の建物内で、同じ区域内で、単一の電気器具および/またはハウジング内で、伝統的な電気器具、および/または現地熱電併給発電向きに従来指定されたスペース内で)、炭素放出電力源への依存性が一段と小さくなり、それによりそれ以上の環境上の利点が得られる。
【0013】
現地分配、現地消費、および/または現地貯蔵可能に水素ガスを製造するシステム、ならびに関連装置および方法が本明細書において開示される。幾つかの実施形態では、代表的なシステムは、炭化水素または炭化水素の混合物を含む反応物質の供給源に結合可能な入力ラインと、入力ラインと流体連通状態にある反応器とを含む。反応器は、水素ガス、炭素微粒子、および熱(ならびに他のガス、例えば残りの反応物質)を含む出力(例えば、出力生成物流)に炭化水素を変換するために熱を反応物質に伝達するよう位置決められた1本以上のフローチャネルを有する。全体的システムは、炭素を反応器から除去する炭素除去システム、および水素ガスを出力流中の炭素微粒子から分離するよう反応器に作動的に結合された分離システムをさらに含むのがよい。種々の実施形態では、本システムは、濾過済みの水素ガスを現地で消費するためのコンポーネントをさらに含む。例えば、本システムは、水素ガスの全てまたは一部を燃やす1つ以上のバーナ、およびバーナと反応器(および/または反応器内の特定のチャンバ)との間に結合されていて熱をバーナから反応器に伝達する1本以上の熱経路をさらに含むのがよい。幾つかの実施形態では、例えば、システムの動作は、加熱期間およびその次の作動期間を含む。加熱期間中、反応器は、所望のレートで熱分解を生じさせるのに十分な熱を反応体に伝達することができない(例えば、その理由は、反応器および/または反応器壁がまだ十分に高温でないからである)。したがって、熱分解反応は、比較的低いレートで起こり(例えば、比較的少ない量の反応体が反応器に通され、かつ/あるいは多くの割合の反応体は、この通過中、反応が起こらない)、水素ガス製造率は、比較的低い。その結果、反応によって生じた水素ガスの全て(または大部分)は、反応器を引き続き加熱する必要のある場合がある。作動期間中、反応器(および/または反応器内の壁)は、熱分解反応を所望のレートで推進するのに十分な温度の状態にある。したがって、過剰の水素ガスを製造する場合があり、その結果、反応器を加熱し続けるために消費される水素ガスはほんの一部分である。熱を伝達するため、1つの実施例では、熱的経路は、高温煙道ガスをバーナから反応器上にかつ/あるいは反応器中に方向づけるのがよい。特定の実施例では、バーナは、反応器の第1のチャンバ内に配置されるのがよく、そして熱を共有壁を介する熱伝導および/または熱放射により第2のチャンバ中に伝えることができる。
【0014】
本システムは、反応器および/またはバーナに作動可能に結合された1つ以上の発電機をさらに含むのがよい。発電機は、水素および/または熱を受け入れて電気を発生させる。電気は、システムの種々のコンポーネントに電力供給するために使用できかつ/あるいは送電設備網に方向づけることができる。送電設備網は、一戸建て住宅、多世帯住宅、商用ビルディング、および/または他の任意の適当なスペースに電力供給することができる。幾つかの実施形態では、近隣使用場所(例えば、建物レベルにおいて)向きに消費される電力よりも大きな電力が作られる。幾つかのかかる実施形態では、過剰電力は、外部電力または送電設備網に輸出される。幾つかのかかる実施形態では、過剰電力は、建物規模における後での消費のために二次電気化学または熱貯蔵システム内に貯蔵される。全体的システムはまた、反応器、バーナ、および/または熱経路により発電機に作動可能に結合された循環システムをさらに含むのがよい。循環システムは、システム内の他のコンポーネントから過剰の熱を受け取り、そしてこの熱を一戸建て住宅、多世帯住宅、商用ビルディング、および/または他の任意の適当なスペース用の暖房設備網および/または温水設備網内で循環させる。
【0015】
本システムは、水素生成物を石油・ガス精製装置、反応体としてのH2の使用のための化学プラントに、あるいはタンク内での圧縮および貯蔵による浄化および貯蔵のためのガス供給装置に供給することによって、化学反応体として使用可能に水素生成物を利用する1つ以上の手立てをさらに含むのがよい。すると、圧縮水素ガスタンクを様々な使用、例えば燃料電池ステーション、専用および精製化学品製造のための小規模水素ユーザのために分散配置するのがよい。
【0016】
本明細書において開示するように、代表的なシステムは、適切な用途を(a)住宅、住宅区域、または単一商用ビルディングレベル、(b)工業ユーザ‐小規模水素ユーザまたは大規模ユーザ、および/または(c)燃料としての用途‐例えば、自動車に電力供給するための燃料電池ステーション、または他の発電もしくは発熱目的に合わせるようスケール変更(スケールダウンまたはスケールアップ)されるのがよい。これらの実施形態のうちの任意のものに関し、水素を使用箇所の近くで発生させ、それにより、水素または水素/天然ガス混合グリッドまたは設備網の構築を可能にするためのインフラのオーバーホールの必要性を回避することができる。すなわち、開示するシステム設計により、述の部門については、天然ガス設備網に何ら変更を加えないで上部分的または完全な脱炭素が可能になるが、その理由は、水素を現場で天然ガスから発生させ、そしてまた現場で消費するからである。しかしながら、小規模の熱分解反応器はまた、多くの難題をもたらす。これらの難題を解決するため、本明細書において開示する種々の実施形態は、熱分解反応器を小規模用途、分配用途、および/または住宅用暖房システムとの一体化に合わせる特徴を含む。
【0017】
代表的なシステムは、固体炭素副生物を発生させる1つ以上の手立てをさらに含むのがよい。システムから収集された固体炭素は、種々の用途に使用でき、かかる用途としては、水および栄養素保持のための土壌改良材料、道路建設、タイヤ、建物建設、防水材料、カーボンブラック、活性炭素、黒鉛炭素、ポリマーおよび金属複合材用の添加剤、バインダまたは充填材料、触媒支持体、耐火物、炭素‐炭素ブレーキ、インクおよび被膜のためのサーマルペースト、鋼鉄を製造するための冶金コークスの交換、および/または炭化水素燃料の熱分解反応を助けるために触媒または核生成部位として働く熱分解反応器システムへのリサイクルが挙げられるが、これらには限定されない。バルク炭素副生物を種々のグレードに分離することができ、そしてこれに種々の意図した用途のために化学的および/または物理的機能化を施すのがよい。
【0018】
代表的なシステムは、液体または固体(例えば、ワックス)炭化水素生成物に凝縮できる中間生成物への炭化水素燃料の不完全な変換のための特徴をさらに含むのがよい。中間生成物はまた、主要な副生物(例えば、固体炭素)のための結合剤として使用されるのに十分な量を発生させるように間欠的に作られるのがよい。変形例として、中間生成物を、ガス状天然ガス供給物または完全変換生成物―水素と比較して輸送するのがいっそう容易な、高い物理的およびエネルギー密度を備えた燃料または化学製品として使用してもよい。
【0019】
本システムは、固体炭素副生物を反応器から除去し、そしてこれらをガス状水素から分離するための1つ以上の手立てをさらに含むのがよい。方法としては、炭素を定期的または連続的に除去する機械的手立てと非機械的手立ての両方が挙げられる。幾つかの代表的な技術については後述する。
【0020】
本システムは、システムを始動中、作動停止中、および定常状態作動中に制御し、それ自体の作動を検出し、かつ/あるいはオペレータと情報のやり取りをするコンポーネントおよび方法をさらに含むのがよい。例えば、1つ以上のセンサが圧力低下および流量を検出するのがよく、そして適当なコントローラを介して弁および/または他のコンポーネントを調節して作動を最適化し、あるいは作動を調整して水素製造のための一時的な漸変需要に合致するのがよい。本システムは、遠隔モニタリングのための通信装置、ならびに現地モニタリングステーション(例えば、スクリーンおよび/またはオペレータへの他の指標を介して)をさらに含むのがよい。本システムは、システムを加熱することができ、しかも/あるいはシステムが第1の燃焼用燃料(例えば、天然ガスおよび/または別の適当な炭化水素)により当初供給される吸熱を有することができるようにする弁サブシステムをさらに含むのがよい。すると、システムが適当な作動運動にいったん達すると、弁は、システムの加熱および/または第2の燃焼用燃料(例えば、本システムにおける熱分解反応により生じた水素および/または製造した水素と第1の燃焼用燃料の混合物)を介して吸熱の供給に切り替わることができる。本システムは、連続/定常状態モードで作動するよう構成されていてもよく、あるいは、オペレータ、センサ、および/または他の自動システムからの指令または信号に従ってターンオンしたりターンオフしたりするよう構成されていてもよい。例えば、本システムは、建物内の熱需要に従ってターンオンしまたはターンオフすることができ、そして本システムは、サーモスタットまたは他のHVAC制御システムと通信するためのハードウェアを含むのがよい。本システムは、保守の必要に応じてユニットをターンオフしたり始動させたりする制御ユニットを含むのがよい。
【0021】
参照しやすいように、本明細書に記載するシステムおよびコンポーネントは、図示の実施形態のスペース配向状態に対して、頂、底、上側、下側、上方、下方、および/または水平面、x‐y平面、垂直方向、またはz方向を参照して本明細書において説明される場合がある。しかしながら、理解されるべきこととして、本明細書において記載するシステムおよびコンポーネントは、本技術の開示する実施形態の構造および/または機能を変更しないで、互いに異なるスペース配向状態に移動でき、そしてかかる互いに異なる配向状態で使用できる。
【0022】
さらに、本明細書において、天然ガスを現地消費のための水素ガスに分解するシステムとして主として説明されるが、当業者であれば理解されるように、本技術の範囲は、これには限定されない。例えば、本明細書において説明する熱分解反応器はまた、任意他の適当な炭化水素または炭化水素混合物を分解するために使用できる。したがって、本技術の範囲は、実施形態の任意特定のサブセットに限定されない。
【0023】
本明細書において開示する代表的なシステムは、再生式熱分解(RTP)反応器および/または組み合わせ型燃焼・熱分解(CCP)反応器を含む。RTP反応器は、代表的には、並行動作する少なくとも2つの反応容器またはチャンバを有し、一方の十分に加熱された容器は、熱分解反応を実施し、他方の容器は、加熱されている。CCP反応器は、代表的には、例えば同心または環状配列状態にある燃焼チャンバと反応チャンバとの間の共通の壁または表面を有する。
【0024】
2.代表的な全体的燃焼熱分解システム
図1は、本技術の幾つかの実施形態に従って、水素ガスを局所化されたスケールまたは規模で製造するとともに/あるいは利用する(例えば、分配し、消費し、かつ/あるいは貯蔵する)ことができるシステム100のブロック図である。幾つかの実施形態では、水素ガスをシステム100で製造して利用することは、単身住宅内で行われる。例えば、システム100は、従来型天然ガス炉またはバーナにより従来占有されていたスペースに位置決めされる単一の電気器具として具体化できるとともに/あるいはこれらの従来型電気器具の直接的な代替物としての役目を果たすことができる。別の実施例では、システム100は、互いに作動可能に連結された多数の装置および/または電気器具の形態をとることができる。さらに、幾つかの実施形態では、システム100は、水素ガスを他の局所化されたスケールで製造するとともに利用する。例えば、以下に詳細に説明するように、システム100は、ワンルーム、一世帯住宅、集合住宅、アパート、住宅街、公共の施設(例えば、単一の店舗、政府建物、病院、学校、または任意の他の適当なスペース)、商用ビルディング(例えば、オフィスビルディング)、データセンタ、または任意の他の適当なスペースのために水素ガスを製造して利用することができる。システム100は、水素ガスを現地で製造して利用するので、システム100は、炭化水素燃料(例えば、天然ガス、メタン、および他の炭化水素)の既存の使用に取って代わるとともに/あるいはこれらを補完するとともに、既存の電力源に取って代わるとともに/あるいはこれらを補完するよう具体化でき、この場合、インフラのオーバーホールを行うことは全くない。
【0025】
図示の実施形態では、システム100全体は、反応器システム110、1つ以上の送風機118、発電システム120、循環システム130、および循環システム130とは別の冷却システム140を含む。反応器システム110は、燃料供給源10に作動可能に連結された反応器112および反応器112に作動可能に連結された炭素分離器114を含む。燃料供給源10からの反応体は、反応器システム110により分解可能な炭化水素を含む。適当な反応体の例としては、天然ガス、メタン、ガソリン、ジェット燃料、プロパン、ケロセン、ディーゼル、および/または任意の他の適当な炭化水素燃料が挙げられる。
【0026】
以下に詳細に説明するように、反応器112は、反応体を受け入れて炭化水素を水素ガスと炭素微粒子に分解し、次に、水素ガスと炭素微粒子は、炭素分離器114に送られる。炭素分離器114は、炭素微粒子を水素ガスから除去し、それにより水素燃料を生じさせる。炭素分離器114は、次に、炭素微粒子を炭素処分コンポーネント20(例えば、空にすることができるビン)に方向づけることができ、それにより炭素を処分し、貯え、または転売することができ、他方、水素ガスは、反応器システム110内でかつ/あるいはシステム100全体中のどこか他の場所で利用できる。例えば、図示の実施形態では、反応器システム110は、水素ガスを燃焼させるよう1つ以上の送風機118に作動可能に結合された1つ以上のバーナ116をさらに含む。バーナ116と反応器112との間の熱経路は、水素ガスを燃焼させることによって生じる熱を伝えることができる。例えば、熱経路は、高温煙道ガスを反応器112周りかつ/あるいはこの中に方向づけることができる。反応器112は、熱を燃焼中の水素ガスから受け取り、この熱を用いてそれ以上の炭化水素を分解する。
【0027】
追加的にまたは代替的に、反応器システム110は、水素ガスを発電システム120(ここで、水素ガスが消費される)および/または分配および/または後の消費のために水素貯蔵コンポーネント30に方向づけることができる。例えば、水素貯蔵コンポーネント30を燃焼用の燃料が非使用期間後に反応器112を再熱するために利用できる。容量が0.21立方フィートの容量を有し、かつアルミナ壁として形成された反応器112の場合、反応器112を室温から約1000℃の動作温度まで加熱するためのエネルギー量は、ほぼ720キロジュール(kJ)である。熱が比較的完全に利用されると仮定すれば、約66標準リットルの水素ガスを燃焼させることによってこのエネルギーを生じさせることができる。別の実施例では、水素貯蔵を利用すると、水素の発生と水素の消費を切り離すことができる。すなわち、貯蔵状態の水素は、需要の高い期間中に、製造された水素の流れを補完するとともに/あるいはこれに置き換えることができる。別の実施例では、貯蔵状態の水素はまた、水素設備網中に再分配することができる。水素設備網を用いると、燃料電池(例えば、システム100によって後で用いられる燃料電池、自動車で用いられる燃料電池、および/または他の任意の適当な燃料電池)を充電することができるとともに/あるいはインフラの追加を最小限に抑えた状態において高いエネルギー需要により水素を近所のアパート、住宅、および/または建物に再分配することができる。
【0028】
水素を貯蔵するために使用できる資材の非限定的な例としては、代表的なガス貯蔵タンクや固体材料(または固形物質)、例えばゼオライト、Pd、H3N:BH3、および/または以下の表1に記載された固体材料のうちの任意のものが挙げられる。

表1
【0029】
さらに図1に示すように、発電システム120は、水素ガスを燃焼させるために送風機118に作動可能に結合された1つ以上のバーナ116、およびバーナ116および/または反応器112の出力(例えば、高温ガス、水素ガス、および/または物理的伝熱媒体、例えば熱伝達流体を介する熱)に作動可能に結合された1つ以上の発電機124をさらに含む。発電機124は、バーナ116からの煙道ガス、バーナ116からの熱、および/または反応器112からの出力を用いて、電気を発生させる。種々の実施形態では、発電機124として、熱電子変換器、熱光起電力システム、アルカリ金属熱電変換器(AMTEC)、燃料電池、内燃エンジン、タービン、マイクロタービン、熱電子発生器、蒸気タービン、および/またはスターリングエンジンが挙げられる。次に、発電システム120は、発生させた電気を現地消費、現地貯蔵、および/または現地分配(配電)のために送電設備網40に方向づけることができる。例えば、送電設備網40は、発生させた電気の一部分を貯蔵する二次電池および発生させた電気の一部分を消費する住宅内の種々の電子機器を含むことができる。上述したように、幾つかの実施形態では、使用箇所の近く(例えば、現地で)消費される電気よりも多くの電気が作られる。かかる幾つかの実施形態では、過剰な電気は、送電設備網40に輸出されるとともに/あるいは後の消費のために二次燃料に貯蔵される。
【0030】
さらに図1に示すように、発電システム120は、過剰な高温煙道ガスおよび/または熱を反応器システム110および/または循環システム130に方向づけることができる。反応器システム110は、変換されなかった熱および煙道ガスを用いて、反応器を加熱するのに役立ち、それによりそれ以上の炭化水素を水素ガスに分解することができる。反応器システム110は、次に、過剰のかつ/あるいは寄生的に(付随的に生じる好ましくない現象として)失われる熱を循環システム130に方向づけることができる(例えば、高温ガスおよび/または高温流体の流れにより、かつ/あるいは物理的伝熱媒体、例えば熱伝達流体または他の適当な熱伝達媒体を介して)。
【0031】
図示の実施形態では、循環システム130は、反応器システム110に作動可能に結合された凝縮熱交換器132、発電システム120に作動可能に結合されたヒートシンク134、および凝縮熱交換器132およびヒートシンク134に作動可能に結合された循環ポンプ136を含む。凝縮熱交換器132は、反応器システム110から過剰のかつ/あるいは寄生的に失われた熱を受け取る。凝縮熱交換器132は、次に、熱を再利用して(例えば、ボイラ、炉、および/または類似の機器で)熱を暖房設備網50中に循環させる。例えば、凝縮熱交換器132は、反応器112からの過剰な熱を用いて、アパートのための温水を供給することができる。ヒートシンク134は、発電システム120から過剰のかつ/あるいは寄生的に失われた熱を受け取る。循環ポンプ136は、次に、流体(例えば、水、空気、または他の適当な熱伝達流体)をヒートシンク134および凝縮熱交換器132上でこれに沿って循環させ、熱をヒートシンク134から凝縮熱交換器132に伝達し、それにより再利用のために暖房設備網50中にさらに送り込む。
【0032】
さらに図1に示すように、システム100のコンポーネントが種々の使用のために煙道ガスから熱を抽出した後、システム100は、煙道ガスを排気系統60に方向づけるのがよい。幾つかの実施形態では、システム100は、反応体中の炭化水素を反応器システム110からの水素ガス製造物で全て置き換える。したがって、これらの実施形態では、煙道ガスは、水蒸気だけ、酸素ガスだけ、および/または送風機118からの空気中に存在する任意他の分子(例えば、窒素ガス)を含む。すなわち、煙道ガスは、通常は炭化水素の燃焼の結果として生じる新たな二酸化炭素分子を含まない。幾つかの実施形態では、排気系統60は、システム100が実現されるスペース内の既存の換気系統(例えば、二酸化炭素を炉から遠ざかる方向に向けるための既存の排気系統)を利用する。
【0033】
さらに図1に示すように、発電システム120は、熱および/または電気を冷却システム140中に方向づけるのがよい。冷却システム140は、熱および/または電気を利用して冷風を循環させる。種々の実施形態では、冷却システム140は、吸収式冷凍機、圧縮式空調装置、および/またはヒートポンプを含むことができる。幾つかの実施形態では、冷却システム140は、水素ガスおよび/または熱(図示せず)を受け取るよう、反応器システム110に直接作動可能に結合されている。かかる実施形態では、冷却システム140は、水素ガスおよび/または熱を利用して、冷却システム、例えば上述のシステムのうちの任意のものを駆動する。さらに、幾つかの実施形態では、冷却システム140は、循環システム130と一体化されてもよくかつ/あるいはこの中に組み込まれてもよい。
【0034】
幾つかの実施形態では、反応器システム110および/または発電システム120は、エネルギーを循環させないで、熱および/または電気を加熱コンポーネントおよび/または冷却コンポーネントに方向づけるのがよい。例えば、加熱コンポーネント(例えば、凝縮熱交換器132)は、反応器112からの熱を受け取り、この熱を流体(例えば、水、空気、または別の適当な流体)に伝達し、そして、流体を戻して受け取るのではなく、加熱状態の流体を暖房設備網50中に方向づける。特定の実施例では、加熱コンポーネントは、反応器112から熱を受け取り、この熱を外部供給源から水に伝達し、そして温水を住宅スペース中に方向づける。次に用いられた温水は、循環システム130中に循環して戻るのではなく、下水および/または家庭雑排水処理システムに流れ出る。別の実施例では、冷却コンポーネントは、発電コンポーネント124から熱および/または電気を受け取り、熱および/または電気を用いて冷風発生器を駆動し、そして冷風を居住スペースに方向づけることができる。次に、冷風は、居住スペース内で消散し、その間、冷却コンポーネントは、外部源から冷却用の新たな空気を引き込むことができる。
【0035】
種々の実施形態では、反応器システム110、発電システム120、循環システム130、および/または冷却システム140は、システムのコンポーネントと関連したデータを収集するために1つおよび/または2つ以上のセンサ(図示せず)を含むのがよい。例えば、センサは、反応器システム110により製造された固体炭素の重量または光学的性質を測定することができる。次に、これらセンサからのデータを利用すると、反応体から除去した炭素の量に関する報告を作成することができ、それにより、ユーザは、炭素クレジットまたは炭素クレジットまたは炭素削減支払いにアクセスすることができる(例えば、州、連邦政府、および/または商用炭素市場から)。また、データを利用すると、炭素処分コンポーネント20が満杯である(または、満杯に近くなっている)ことをユーザに警告することができ、それによりユーザに炭素処分コンポーネント20を空にするよう促すことができる。
【0036】
幾つかの実施形態では、センサは、反応器112のところで電気的特性(例えば、導電率、周波数依存導電率、電気インピーダンス分光特性、および/または任意他の適当な特性)を測定することができる。幾つかの実施形態では、センサは、反応器112を通る反応体の流量および/または反応器112内の炭素の堆積量を算定するために超音波測定を実施することができる。幾つかの実施形態では、ガス流量センサは、反応器112から流出している反応体(例えば、メタン)と製造物(例えば、水素)の比を算定することができる。かかる実施形態では、この比は、反応器112内で起こっている熱分解反応の程度を示しているといえる。幾つかの実施形態では、熱電対または他の温度センサが、システム100の反応器112、バーナ116からの煙道ガス、発電機124、凝縮熱交換器132、および/または任意他の適当なコンポーネントの温度を測定する。幾つかの実施形態では、水素ガスセンサ(例えば、電流をパラジウム電線に流すセンサ)が、反応体変換率および/または水素製造率をモニタする。
【0037】
幾つかの実施形態では、システム100は、入力/出力(I/O)リンクを介してシステムのセンサおよび種々のコンポーネントに作動可能に結合されたコントローラ150を含む。上述の測定値のうちの任意のものに基づき、コントローラ150は、システム100の作動を調節することができる。例えば、コントローラ150は、反応器112から出ている測定済みの反応体と水素ガスの比に基づいて、反応体112の入力流量および/または反応器112の動作温度を調節することができる(例えば、この比中の水素の量を増減するため)。幾つかの実施形態では、コントローラ150は、過去の条件および水素消費量を記憶したメモリ並びに予測分析コンポーネントを含む。上述の測定値の任意のものおよびメモリからのデータに基づき、予測分析コンポーネントは、システム100中のコンポーネントのうちの任意のものの動作に関する調節具合を決定することができ、コントローラ150は、この調節を完了することができる。例えば、予測分析は、水素需要が高い期間と低い期間を決定することができ、コントローラ150は、反応器112を決定された期間に従ってオン・オフにトグル操作することができる(例えば、反応体の入力を開始させたり停止させたりすることによって)。
【0038】
上述したように、システム100は、ワンルーム、一世帯住宅、集合住宅、アパート、住宅街、公共の施設(例えば、単一の店舗、政府建物、病院、学校、または任意の他の適当なスペース)、商用ビルディング(例えば、オフィスビルディング)、データセンタ、または任意の他の適当なスペースのために水素ガスを製造してこれを利用するようスケール変更される。スケールは、典型的な反応体消費量の観点から定量化されるのがよい。例えば、メタンを反応体として用いる場合、典型的なスケールとしては、一家族住宅(例えば、スタンドアロン型ハウスまたは集合住宅の単一のユニット)に関し、毎分約500標準立方センチメートル(sccm)から約37,500sccmまでの天然ガス流量範囲、集中システム100を備えた集合住宅に関し、約150,000 sccm から約3,750,000sccmまでの天然ガス流量範囲、集中システム100を備えた住宅区域に関し、約150,000sccmから約3,750,000sccmまでの天然ガス流量範囲を含む。別の定量化実施例では、メタンを反応体として用いる場合、典型的なスケールとしては、一家族住宅に関し、毎年約約1000万英サーマルユニット(MMBtu/年)から約164MMBtu/年まで(または、約15981Btu/時~約18721Btu/時)の天然ガス消費量、小規模な集合住宅に関し、約4875MMBtu/年から約6300MMBtu/年までの天然ガス消費量、集中システム100を備えた商業ビル(例えば、工業用地、およびオフィス、キャンパス、空港、病院、モール、および/または任意他の適当な商業ビル)に関し、約9500MMBtu/年から約136,189MMBtu/年までの天然ガス消費量、大規模集合住宅および/または住宅区域に関し、約453,963MMBtu/年から約1,232,184MMBtu/年までの天然ガス消費量、および高電力および冷却需要のあるデータセンタに関しては約2,468,421MMBtu/年から約3,350,000MMBtu/年までの天然ガス消費量が挙げられる。
【0039】
図2は、種々の用途に関するスケールの追加の実施例ならびに互いに異なるスケールでのシステム100の特定のコンポーネントによって消費される電力を記載した表である。図示のように、この表は、システム100の種々の実施形態(図1)に必要な電力、加熱、冷却、および天然ガスならびに、需要および使用量の観点での各実施形態に関する近似スケールを示している。例示のスケールとしては、電力、熱、および冷却に関する住宅、商業施設、地区、およびデータセンタの使用量ならびに関連ニーズが挙げられる。したがって、図2の表は、水素の工業製造で用いられる極めて大きなスケールとは対照的に、これらの実施形態についてのニーズとシステム要求を区別するための技術的背景を提供している。しかしながら、理解されるように、図2の表の値は、例示として示されているに過ぎず、本発明は、本技術を図示の特定の実施例に限定するものではない。
【0040】
図1に再び戻ってこれを参照すると、上述の用途のうちの任意のものに関し、システム100は、システム100が配備されているスペースの消費需要を満たすために多数の反応器112を含むのがよい。例えば、メタンを反応体として用いる場合、単一の反応器は、約500sccm~約172,853,881sccm、または約10MMBtu/年~約3,350,000MMBtu/年のCH4消費量を呈する場合がある。この範囲は、複数の反応器112が協働して用いられる場合であっても、工業的熱分解反応器に代表的な出力よりも著しく低い。反応器112が局所化消費に必要なスケールで、特に住宅レベルで、効率的に作動することができるようにするために、反応器は、多数の欠点を解決するための特徴を含む。
【0041】
第1に、代表的な実施形態において熱分解反応により製造される炭素は、反応器112から除去されて製造物流から分離されるが、その間、安全性、効率、および利便性に関する関心のバランスを取る。例えば、ユーザと反応器112の比較的高温のコンポーネントの分離をもたらす仕方で炭素を反応器112から除去するのがよい。さらに、炭素は、あまりにも頻繁な(例えば、時間単位で、日にち単位で、週単位でなど)維持を必要としないシステムによって分離される必要があり、さもなければ、ユーザは、反応器を採用することに気が進まない場合がある。別の実施例では、炭素は、電力を過剰に消費することはないシステムによって分離されるのがよく、さもなければ、システム100の効率は、使用可能なレベルを下回る場合がある。したがって、種々の実施形態では、反応器システム110は、これらの懸念を払しょくするのを助ける特徴を含むのがよい。
【0042】
第2に、住宅用および/または単一の建物環境における熱および電気についての周期的および/またはむらのある需要のために、反応器112の出力は、しばしば調整の必要がある場合がある。幾つかの実施形態では、標的調整スケールは、数分間から数時間のオーダーである。さらに、幾つかの実施形態では、調整は、水素ガスが要求されていない期間(例えば、仕事の日で住宅には誰もいないとき)、および、水素ガスが反応器によって製造できる速度(例えば、ピーク電力消費時刻の間)よりも高い速度で水素ガスが必要とされる期間を含む。
【0043】
第3に、反応器112は、スペース上の制約を受ける場合がある。例えば、反応器は、既存の機器スペース(例えば、炉スペース)中にレトロフィットされる場合がある。したがって反応器112は、スペース上の制約に適合した反応器112がスペース上の制約にもかかわらず効率的に働くことができるようにする特徴を有するのがよい。関連して述べると、システム100および/または反応器112は、寄生的な熱損失を減少させるとともに/あるいは最小限にするのに役立ち、それにより、反応器112からのエネルギー効率を増大させる(または、最大にする)特徴を有するのがよい。例えば、上述したように、反応器112は、寄生的な熱損失を循環システム130内で再生処理するために循環システム130に結合されるのがよい。システム100および/または反応器112の効率に関する懸念は、住宅スケールの反応器において特に重要な場合があり、と言うのは、かかる反応器は、工業規模のシステムと比較して比較的高い表面積と体積の比を有する場合があり、したがって、より多くの寄生的な熱損失を呈する場合があるからである。加うるに、反応器112は、住宅スケールおよび/または水素ガス製造物の局所的消費に対して特有のモニタリングおよび制御方式を有するのがよい。
【0044】
加うるに、システム100を特定の時点における特定の要件に応じて互いに異なる出力モードに従って作動させることができる。例えば、図示のように、発電機124からの電気を反応器システム110に方向づけて反応器システム内の1つ以上のコンポーネントに電力供給することができ、あるいは、反応器112は、発電機124のためのエネルギーを提供することができる。発電機124によって得られた電気は、熱発生器(例えば、反応器、入力弁、出力弁、炭素分離器114、および/または任意の他の適切なコンポーネントに結合された抵抗コイル)に電力供給することができる。図示の実施形態では、発電機124からの高温煙道ガスは、凝縮熱交換器132に直接送られて熱を循環システム130に送り込む。
【0045】
図3は、本技術の幾つかの実施形態に従って、反応器システム110を通る物質の流れの略図である。図示のように、反応体は、入力経路302に沿って反応器に入る。上述したように、反応体は、天然ガスおよび/または純粋メタンであるのがよい。したがって、入力経路302は、反応体を反応器112に供給するために既存のガスラインに連結されるのがよい。反応器112は、エンタルピー点を超えて反応体を制御可能に加熱し、なお、エンタルピー点は、熱分解反応体の何らかの量が生じる最小エネルギーを表している(例えば、反応器112は、少なくとも、開始エネルギーをもたらす)。その結果、反応器112により、反応体中の炭化水素を水素ガスと炭素に分解する熱分解反応が生じる。例えば、メタン反応器の場合、熱分解反応は次式で表される。
CH4(気体) → C(固体)+2H2(気体)
さらに、CH4の場合、エンタルピー点は、CH4の1mol当たり約75kJであり、それにより、CH4は、約650℃まで昇温する。幾つかの実施形態では、熱分解反応が比較的短い滞留時間(例えば、数秒台)の間に完全に起こるようにするために、反応器112は、反応体を約1000℃超の温度まで制御可能に加熱する。幾つかの実施形態では、反応器112は、溶融物質、例えば、溶融金属、溶融塩、および/またはこれらの組み合わせを含む加熱状態の塔(コラム)でありまたはこれを含む。高温の液体は、純物質または多数の物質の混合物を含む場合がある。かかる実施形態では、反応体は、例えば、表面下送り出し管または多孔質スパージャによって反応器112内の液体の表面下に送り込む。反応器は、反応体が気泡の状態に分離するようにするためのコンポーネントを含み、気泡は、これらの浮力によって加熱状態の塔の頂部まで運ばれる。気泡が上昇するにつれて、高温の液体は、熱を反応体に送り出して上述の熱分解反応を生じさせる。幾つかの実施形態では、反応器112は、1つ以上の熱貯蔵装置を有し、かかる熱貯蔵装置は、以下に説明する幾つかの実施形態に係る反応チャンバを有するのがよい。
【0046】
各反応チャンバは、熱交換物質および熱交換物質中の反応体のための1つ以上の流路を有する。熱交換物質は、物質の比較的低い熱伝導率、比較的低い熱膨張係数、および/または比較的高い熱安定性に基づいて選択されるのがよい。種々の実施形態では、熱交換物質は、コーディエライト、ムライト、アルファアルミナ、および/またはこれらの組合せを含むのがよい。反応体が流路を通って流れているときに、熱交換物質は熱を反応体に送り出して上述した熱分解反応を生じさせる。
【0047】
さらに図3に示すように、反応器112からの出力は、熱分解反応からの2つの生産物に対応した水素経路310および炭素経路320に分割されている。水素ガスは、水素経路310中に方向づけられ、炭素微粒子は、炭素経路320に方向づけられる。上述したように、水素経路310内の水素を反応器システム110および/またはシステム100(図1)内のどこか他の場所に戻すよう方向づけることができる。他方、炭素経路320は、処分システム(例えば、図1を参照して説明した炭素処分コンポーネント20)に方向づけられるのがよい。図示のように、炭素経路320は、送風機118と流体連通関係をなしているのがよく、それにより、炭素微粒子が反応器112からの出口を閉塞することなく、炭素処分コンポーネント30(図1)まで完全に移動するようにするのを助ける。幾つかの実施形態では、分割は、反応器112とは別体でありかつこれと流体連通状態にある炭素分離器(図示せず)によって達成される。
【0048】
図示の実施形態では、水素経路310は、第1の水素経路312と第2の314にさらに分割されるのがよい。水素ガスの一部分は、第1の水素経路312内のバーナ116の方へ方向づけられる。バーナ116は、第1の水素経路312内の水素ガスを空気入力経路304内の送風機118からの空気と混合してこれを燃焼させ、熱流路332に沿って反応器112に熱を提供する。この熱は、反応器112からの寄生的な熱損失を補償して、反応体を、エンタルピー点を超えて加熱するのに必要なエネルギーを供給し、それにより熱分解反応を生じさせる。他方、水素ガスの一部分は、図1を参照して上述した任意の目的のために、第2の水素経路314に沿って反応器システム110から出されるよう方向づけられる。すなわち、第2の水素経路314に沿って反応器システム110から出される方に方向づけられた水素ガスは、全体的システム100(図1)内に熱および/または電気を生じさせるために使用されてもよく、後での使用のために貯蔵されてもよく、かつ/あるいはさらにそれ以上の分配に供されてもよい。例えば、近隣または多世帯スケールの装置では、第2の水素経路314に沿って反応器システム110から出た水素ガスを現地消費のためのパイプシステムを通って個々の家庭またはユニットに送り出されるのがよい。
【0049】
さらに図3に示すように、バーナ116からの煙道ガスは、反応器112を加熱した後、煙道経路334を通って反応器システム110を出る。幾つかの実施形態では、煙道経路334は、ガスを消費のために他のシステムに(例えば、図1を参照して上述した発電システム120および/または循環システム130に)方向づけられる。幾つかの実施形態では、煙道経路334は、出口に方向づけられて放出される(例えば、図1を参照して上述した排気システム60中に)。
【0050】
図4は、本技術の種々の実施形態に従って反応器112に一体化された迅速加熱特徴を含む反応器システム110の略図である。反応器112の本体412は、チャンバ1140によって包囲されるのがよい。チャンバ1140は、スペース1142および1つ以上の電気加熱器1144(2つが示されている)を有する。低需要の期間中、スペース1142は、寄生的な熱損失を減少させるよう排気されるのがよい(例えば、少なくとも部分的な真空を作る)。幾つかの実施形態では、チャンバ1140の内面は、寄生的な熱損失をさらに減少させるよう反射作用を有する。需要が高まり始めると、スペース1142は、充填されるのがよく(例えば、空気で)、電気加熱器1144は、熱を本体412の周りに送り出すのがよく、その間、バーナ116が熱を本体412に送り込んで反応器112を迅速に再熱する。幾つかの実施形態では、電気加熱器1144は、低需要の期間中、熱を本体412周りに送って寄生的熱損失をさらに減少させる。さらに、幾つかの実施形態では、チャンバ1140は、寄生的熱損失の一部分を捕捉する発電機(例えば、熱電発生器)を有する。幾つかのかかる実施形態では、捕捉された寄生的熱損失は、次に、電気加熱器1144に電力供給して反応器を再熱するために用いられる。
【0051】
3.代表的な再生熱分解システム
幾つかの実施形態では、反応器は、再生方式のものであるのがよい。かかる反応器を本明細書では、再生熱交換(RTP)反応器という。かかる反応器は、代表的には、並行動作する少なくとも2つの反応容器またはチャンバを有し、一方の十分に加熱された容器は、熱分解反応を実施し、他方の容器は、加熱されている。第1の容器内の熱がなくなると、反応は、現在十分に加熱された第2の容器にシフトし、他方、第1の容器は、再熱される。
【0052】
図5は、本技術の実施形態に従って、再生式熱分解反応器112を通る物質の流れのブロック図である。図示の実施形態では、反応器112は、燃料供給源10に作動可能に結合された入力弁502、入力弁502に作動可能に結合された2つの反応チャンバ512(個別的に、第1の反応チャンバ512aおよび第2の反応チャンバ512bという)、および反応チャンバ512に作動可能に結合された1つ以上の出力弁504を有する。反応チャンバ512の各々は、熱交換物質と、熱交換物質を通る1つ以上の流路を有するのがよい。種々の実施形態では、熱交換物質としては、コーディエライト、ムライト、アルファアルミナ、および/またはこれらの組合せが挙げられる。さらに、幾つかの実施形態では、反応チャンバ512の各々は、熱交換物質によって構成された単体および/または一体型構造を有する。反応体が反応チャンバ512のうちの1つを通って流れているとき、熱交換物質は、反応体を熱分解反応のエンタルピー点よりも高く加熱し、それにより反応体中の炭化水素を水素ガスと炭素微粒子に分解させるようにする。次に、水素ガスを用いて熱を発生させるとともに/あるいは電気を発生させるのがよい。幾つかの実施形態では、例えば、水素ガスを燃焼させて、反応チャンバ512を予熱するとともに/あるいはこの反応チャンバの熱を維持する。
【0053】
上述したように、反応チャンバ512は、循環方式で動作する。例えば、第1の期間中、入力弁502は、反応体を第1の反応チャンバ512a中に方向づけるのがよい。第1の反応チャンバ512aは、熱分解反応を生じさせることができ、それにより反応体を炭素微粒子と水素ガスに分解する。次に、出力弁504は、第1の反応チャンバ512aからの出力の少なくとも一部分を、炭素分離器114、送風機118、およびバーナ116の方へ方向づけるのがよい。上述したように、炭素分離器114は、炭素微粒子を水素ガスの流れから除去することができ、送風機118は、水素ガスと酸素を混合することができ、バーナ116は、水素を酸素で燃焼させることができる。次に、煙道弁506は、結果的に生じた高温煙道ガスを第2の反応チャンバ512b中にかつ/あるいはこの周りに方向づけて、第2の反応チャンバ512bを加熱することができる。幾つかの実施形態では、高温煙道ガスは、第2の反応チャンバ512b内の炭素を燃焼させ、熱を第2の反応チャンバ512bにさらに送る。出力弁504は、第2の反応チャンバ512bから流出する高温煙道ガスを発電機124および/または循環システム130の方へ方向づけることができる。発電機124は、高温煙道ガスを用いて、電気を発生させてこれを電気設備網40に出力し、他方、循環システム130は、高温煙道ガスを用いて、熱を暖房設備網50中に出力する。次に、残存している煙道ガスがあれば排気システム60を介して放出する。
【0054】
第2の期間の際、弁502,504,506を通る流れをリセットするのがよく、それにより第2の反応チャンバ512b中に伝達された熱を利用して熱分解反応を生じさせるとともに、反応チャンバ512aを再熱する。すなわち、入力弁502は、反応体を第2の反応チャンバ512b中に方向づけ、出力弁504は、第2の反応チャンバ512bからの水素ガスの少なくとも一部分をバーナ116の方へ方向づけ、煙道弁506は、高温煙道ガスを第1の反応チャンバ512aと熱的連絡状態になるように方向づけ、出力弁504は、第1の反応チャンバ512aからの高温煙道ガスを発電機124および/または循環システム130の方へ方向づける。
【0055】
幾つかの実施形態では、反応器112は、適当な長さの時間が経つと、反応チャンバ512を作動段階と予熱段階との間でサイクル動作させる(例えば、反応体を第1の反応チャンバ512a中への反応体の方向づけと、第2の反応チャンバ512b中への方向づけを切り替えることによって)。例えば、種々の実施形態では、反応器112は、1分おきに、2分おきに、10分おきに、30分おきに、または任意他の適当な期間後、反応チャンバ512を相互にサイクル動作させるのがよい。幾つかの実施形態では、反応器112は、作動状態の反応チャンバ(例えば、熱分解反応を生じさせる反応チャンバ)中の温度が所定の温度を下回った時に反応チャンバ512を相互にサイクル動作させる。所定の温度は、作動状態の反応チャンバ内にある間、反応体が十分に反応することを保証するのを助けるよう選択されるのがよい。所定の温度未満では、反応体は、作動状態の反応チャンバ内では十分に迅速には反応しない場合がありかつ/あるいは全く反応しない場合がある。種々の実施形態では、反応器112は、作動状態の反応チャンバ内の温度が約1200℃を下回ると反応チャンバ512を相互にサイクル動作させるのがよい。
【0056】
幾つかの実施形態では、反応チャンバ512の入力および出力は、配管システムによって弁502,504,506に連結されるのがよく、弁502,504,506は、弁502,504,506を切り替えて流体の流れを管中に方向づけるようアクチュエータに結合されるのがよい。したがって、反応器112は、スイッチに命令を出して弁502,504,506を切り替えることによって反応チャンバ512を相互にサイクル動作させることができる。その結果、反応器112は、反応器が弁を稼働させる時間に応じて、迅速かつ効率的な仕方で反応チャンバ512を相互にサイクル動作させることができる。種々の実施形態では、反応器112は、1分未満、30秒未満、10秒未満、またはほぼ瞬時に反応チャンバ512を相互にサイクル動作させることができる。幾つかの実施形態では、弁502,504,506の各々は、対応の弁を同時に切り替えることができる。幾つかの実施形態では、弁502,504,506のうちの1つ以上は、対応の弁を順次切り替えることができる。例えば、出力弁504は、作動状態の反応チャンバからの水素ガスの全てが適当な行先に方向づけられた後、対応の弁を切り替えることができる。
【0057】
出力弁504は、作動状態の反応チャンバからの水素ガスの一部分を反応器112から遠ざかるよう、例えば、発電機124に方向づけて電気を発生させるとともに/あるいはかかる水素ガスを水素貯蔵庫に方向づけることができる。幾つかの実施形態では、貯蔵状態の水素ガスを後で用いて、反応チャンバ512のうちの1つ以上を加熱することができる。幾つかのかかる実施形態では、貯蔵状態の水素の使用により、反応器112は、反応器112を再始動させるための別のエネルギー源(例えば、熱および/または電気)を必要としないで、最頻度使用期間相互間で冷えることができる。
【0058】
反応器112は、1つ以上の追加のコンポーネントおよび/または上述のコンポーネントのうちの1つ以上の別の配置を含むことができる。幾つかの実施形態では、例えば、炭素分離器114は、反応チャンバと出力弁504の間に位置決めされるのがよい。幾つかの実施形態では、反応器112は、多数の出力弁504、多数の炭素分離器114、および/または多数のバーナ116を有することができる。さらに、幾つかの実施形態では、反応器112のコンポーネントのうちの1つ以上が組み合わされる。例えば、バーナ116を単一のコンポーネントの状態で送風機118と一体化することができる。別の実施例では、弁502,504,506のうちの1つ以上を単一のコンポーネントの状態に組み合わせることができる。幾つかの実施形態では、反応器112は、3つ以上の反応チャンバ512、例えば、3個、4個、5個、10個および/または任意他の適当な個数の反応チャンバ512を有することができる。幾つかのかかる実施形態では、2つ以上の反応チャンバ512は、反応器112の動作中、作動状態にある(例えば、反応体を加熱するために用いられる)。幾つかのかかる実施形態では、2つ以上の反応チャンバ512は、反応器112の動作中、予熱される。
【0059】
図6は、本技術の幾つかの実施形態に従って、図5の反応器112に用いられる反応チャンバ612の部分略図である。図示の実施形態では、反応チャンバ612は、反応チャンバ612の第1の端614から第1の端614と反対側に位置する反応チャンバ612の第2の端616まで延びる多数のフローチャネル680を有する。フローチャネル680は、一緒になって、反応チャンバ612の熱交換物質を通る通路672を構成する。したがって、動作中、反応体は、フローチャネル680中に第1の端614のところで流れ込むことができ、通路672に沿って下り、そしてフローチャネル680から第2の端616のところで流出することができる。反応チャンバ612は、通路672に沿って動く反応体に熱を伝達することができ、それにより熱分解反応を生じさせる。
【0060】
図示の実施形態では、反応チャンバ612は、円管形状を有する。種々の他の実施形態では、反応チャンバ612は、他の形状、例えば、正方形、長方形、六角形、および/または他の管形状、コイル、または他の非軸形状、および/または任意他の適当な形状をとることができる。同様に、図示の実施形態では、フローチャネル680の各々は、円形の管形状を有する。種々の他の実施形態では、反応チャンバ612のフローチャネル680は、他の形状、例えば、正方形、長方形、六角形、および/または他の管状形状、コイル、および/または任意他の適当な形状をとることができる。反応チャンバ612は、所望の構造に適用される種々の既知の製造技術によって製作できる。例えば、反応チャンバ612は、アディティブマニュファクチャリングプロセス(例えば、3次元印刷)、ダイプロセス、成形プロセス、押出プロセス、および/または、製造技術の任意の組み合わせによって製作できる。
【0061】
図6に示されているように、反応チャンバ612は、通路672の長さに一致した長さLおよび直径D1を備えている。さらに示されているように、フローチャネル680の各々は、直径D2を有する。長さL、直径D1、および直径D2は各々、反応チャンバ612の所望の出力能力、反応器112(図5)が組み込まれるスペースに関する大きさの要件、および/または反応チャンバ612に関する好ましい動作条件に応じて様々であってよい。さらに、寸法は、相互依存性であってよい。例えば、直径D1は、直径D2および所望のチャネル密度に従って設定されるのがよい。別の実施例では、長さLは、フローチャネル680を通って流れる反応体が反応チャンバ612内のエンタルピー点に達するようにするのを助けるよう、直径D2に部分的に依存してもよい。種々の例示の実施形態では、反応チャンバ612の長さLは約0.5メートル(m)から約10mまでの範囲にあるのがよく、反応チャンバ612の直径D1は、約0.1mから約1mまでの範囲にあるのがよく、フローチャネルの直径D2は、約0.01センチメートル(cm)から約1mまでの範囲にあるのがよく、かつ/あるいはチャネル密度は、平方インチ当たり約1本のチャネル(CPI)から約500CPIまでの範囲にあるのがよい。一実施形態では、例えば、反応チャンバ612の長さLは約1mであり、反応チャンバ612の直径D1は、約1.3cmであり、フローチャネルの直径D2は、約0.635cmであり、チャネル密度は、約4CPIである。
【0062】
動作上の検討事項が寸法の各々にどのように影響を及ぼすことができるかについての追加の詳細が以下に記載されている。当業者であれば理解されるように、以下に説明する例示の動作条件は、例示に過ぎず、反応器には、上述の出力需要を満たすよう種々の他の適当な動作上の検討事項が加えられるのがよい。例えば、反応チャンバ612は、毎分1標準リットル(SLPM)および5SLPMの反応体入力流量を備えるものとして後述するが、反応チャンバ612は、任意の他の適当な反応体入力流量を有することができる。
【0063】
反応チャンバの寸法に関する1つの検討事項は、反応チャンバ612が到来する反応体を所望の反応温度よりも高い温度(例えば、エンタルピー点よりも高い温度またはエンタルピー点よりも優に高い温度)に加熱することができるかどうかである。例えば、熱伝達物質が所与であり、反応チャンバの温度が所与であり、しかもフローチャネル680の表面積と体積(S/V)の比(フローチャネル680の直径D2によって定められる)が所与の場合、反応チャンバ612は、熱を到来反応体に速度R1で伝達する。熱伝達速度R1では、特定の誘導時間(例えば、反応体を所望の温度よりも高い温度まで加熱するための時間)および滞留時間(例えば、反応時間)が到来反応体中の炭化水素を熱分解反応により水素と炭素に変換するのに必要である。したがって、熱伝達速度R1では、反応体は、熱分解反応における所望の変換程度(例えば、分解された炭化水素の所望のパーセント)に達するための全時間要件を有するのがよい。反応チャンバ612の長さLおよび/または反応体の入力流量を変化させると、全時間要件を満たすことができる。追加的にまたは代替的に、S/V比は、全時間要件を満たすために設定された長さLについて選択されるのがよい。幾つかの実施形態では、所望の動作温度は、約1200℃~約1600℃であるのがよい。幾つかのかかる実施形態では、炭化水素の全てまたはほぼ全てを水素ガスと炭素に変換するのに必要な滞留時間は、秒単位であるが、1秒未満を含む。一実施形態では、動作温度は、約5SLPMの入口流量および約1.3cmのフローチャネルの直径D2を有する反応器において、約1200℃から約1400℃まで様々であってよく、その結果、誘導時間は、約0.27秒であり、滞留時間は、約0.38秒である。約1mの長さLを備えた反応チャンバに関し、反応体のうちの約90%が反応チャンバ内で変換される。
【0064】
図7は、種々の入力流量および種々の熱伝達速度に関して、反応チャンバ612の長さと反応チャンバ612を通って流れる反応体の温度との関係の一例を示している。図示のように、1平方メートル‐ケルビン当たり20ワット(W/m2K)の第1の熱伝達速度および1SLPMの反応体の入力流量では、反応体は、約40cmの長さLにわたって温度が1200℃だけ高くなる。これとは対照的に、この第1の熱伝達速度および5SLPMの反応体の入力流量では、反応体は、約100cmの長さLにわたって温度が1200℃だけ高くなる。さらに対照的に、5SLPMの反応体の入力流量および100W/m2Kの第2の熱伝達速度では、反応体は、約40cmの長さLにわたって温度が1200℃だけ高くなる。種々の実施形態に関し、本発明者が確認したところによれば、約1SLPMから約5SLPMまで変化する入力流量、約0.5cmから約5cmまでの範囲にあるフローチャネル680の直径D2、および約1000℃の所望の動作温度増大に関し、所要の長さLは、約0.05mから約1.3mまで様々であってよい。
【0065】
幾つかの実施形態では、反応チャンバ612のサイズをさらに減少させるには、反応体を予熱し、その後反応体が反応チャンバ612に入るようにすればよい。例えば、幾つかの実施形態では、反応体は、反応体が反応チャンバ612に入る前に約500℃の温度まで予熱される。幾つかの実施形態では、反応体は、作動状態の反応チャンバから流出する高温出力を用いるとともに/あるいは反応チャンバを予熱することによって予熱される。例えば、反応体の入力ラインは、動作状態の反応チャンバから出力部に巻き付いて出力部を冷却すると同時に反応体を予熱するコイルを含むのがよい。別の例では、図5を参照して上述したように、反応体の入力ラインは、予熱反応チャンバから出力部に巻き付いて煙道ガスを冷却すると同時に反応体を予熱するコイルを含むのがよい。
【0066】
反応チャンバの寸法に関するもう1つの検討事項は、反応チャンバ612が連続的かつ/あるいは延長作業に耐えることができるかどうかである。かかる作業に関する一制約は、反応チャンバ612内の熱交換物質が高温(例えば、1000℃を超える)状態にあるフローチャネル680相互間の比較的高い圧力降下に耐えることができないということである。したがって、反応チャンバ612の寸法および所定の動作条件は、少なくとも部分的に、作動中におけるフローチャネル680前後の予想圧力降下に基づいて選択されるのがよい。
【0067】
例えば、フローチャネル680前後の圧力損失は、反応体のガスまたは流体流量、チャネル直径D2、およびチャネル長さ(例えば、反応チャンバ612の長さL)で決まる。したがって、幾つかの実施形態では、フローチャネル680の直径D2および/または反応チャンバ612の長さLは、フローチャネル680前後の圧力降下を考慮に入れるよう選択されるのがよい。例えば、本発明者の確認したところによれば、約5mの長さL、約0.5cm~約1.5cmのフローチャネル直径D2、約1SLPM~約5SLPMの反応体入力流量、および約1500℃の動作温度を有する反応チャンバ612に関し、圧力降下は、1平方インチ当たり約1ポンド(psi)未満であり、これは、許容範囲内にある。
【0068】
さらに、幾つかの実施形態では、フローチャネル680の表面壁上に付着した炭素物質(「ファウリング」ともいう)は、作動中、フローチャネル680を部分的に(または完全に)閉塞させる場合がある。ファウリングに起因したフローチャネル直径D2の減少は、圧力降下要件を満たすよう選択された反応チャンバ612の寸法に悪影響を及ぼす場合がある。例えば、炭素微粒子は、不均一および/または均一な熱分解反応の結果として、反応チャンバ612中に生じる場合がある。不均一反応は、反応体と反応チャンバ612の高温表面または壁との相互作用に基づいて生じる。これとは対照的に、均一反応は、反応体の気相で起こり、その結果、気体反応体中における炭素微粒子の核生産および成長が生じる。均一反応により生じた炭素微粒子は、ガス流によって反応チャンバ612の第2の端616に運ばれる。炭素微粒子は、反応チャンバ612からいったん出ると、炭素分離器、例えば一連のサイクロンおよび/または炭素フィルタによって集められるのがよい。不均一反応により生じた炭素微粒子は、反応チャンバ612のフローチャンバ内に残る場合が多く、それにより経時的にフローチャネル680のファウリングを生じさせる。不均一反応と均一反応の比は、フローチャネル680内のS/V比(フローチャネル680の直径D2によって定められる)および反応チャンバ612の壁と反応体との接触時間によって影響を受ける。したがって、幾つかの実施形態では、フローチャネル680の直径D2は、均一反応として起こる熱分解反応の量を最大にするよう選択される。
【0069】
図8は、入力流量が所与の場合に、S/V比とフローチャネル680の直径D2との関係が図6の反応チャンバ612内の反応の種類に及ぼす影響を示している。図示の関係では、第1の領域1902は、約10,000/cm~約1000/cmのS/V比に対応している。第1の領域1902では、熱分解反応は、全体が(またはほぼ全体が)不均一反応である。第2の領域1904は、約1000/cm~約100/cmの間のS/V比に対応している。第2の領域1904では、熱分解反応は、主として、不均一反応であり、幾分かの均一反応が起こり始めている。第3の領域1906は、約100/cm~約20/cmのS/V比に対応している。第3の領域1906では、熱分解反応は、主として均一反応であり、幾分かの不均一反応が残存している。第4の領域1908は、約20/cm未満のS/V比に対応している。第4の領域1908では、熱分解反応は、全体が(またはほぼ全体が)均一反応である。したがって、幾つかの実施形態では、フローチャネル直径D2は、第4の領域1908内で選択されるのがよく、したがって、約0.2cm以上の直径D2を有するのがよい。かかる実施形態では、ファウリングは、フローチャネル相互間の圧力降下に関して最小限の役割を果たすことができるに過ぎない。
【0070】
さらに、本発明者の確認したところによれば、領域1908内のフローチャネルに関する圧力降下は、上述の圧力降下に関する要件を全て満たす(例えば、1psig/m未満の圧力降下を示す)。例えば、図9は、種々の入力流量に関して、直径D2とフローチャネル前後の圧力降下の関係を示している。図9では、圧力降下を1psig/m未満に維持するための最小直径が線2002によって示されている。例えば、入力流量が1SLPMである場合、線2002によって指示された最小直径は、約0.3cmである。別の実施例では、入力流量が50SLPMである場合、線2002によって指示された最小直径は、約1.1cmである。線2002の各々によって指示されているように、各入力流量に対する最小直径は、図8を参照して上述した領域1908に関して0.2cmを超えている。したがって、1psig/mの圧力降下の要件を満たす直径はまた、結果として、ほぼ全体として均一反応をもたらし、それによりファウリングに起因する圧力降下に関する懸念が回避される。
【0071】
図10は、本技術の幾つかの実施形態に従って、図5に示した形式の反応器112の部分略図である。例えば、図示の実施形態では、反応器112は、入力弁602、2つの反応チャンバ612、2つの出力弁604(個別的に第1の出力弁604aおよび第2の出力弁604bという)、炭素分離器114およびバーナ116を有する。図10では、反応器112を通る物質の流れは、全体として図5を参照して上述したのと同一の仕方で、第1の期間にわたって矢印で指示されている。しかしながら、図示の実施形態では、出力弁604は、連携して動作するよう煙道弁506(図5)と組み合わされている。例えば、第1の出力弁604aは、第1の反応チャンバ612aからの出力を炭素分離器114およびバーナ116中に方向づけ、他方、第2の出力弁604bは、バーナ116からの煙道ガスを第2の反応チャンバ612b中に方向づける。第2の期間の間、反応器112を通る流体の流れを逆にする。第2の期間の間、第2の出力弁604bは、第2の反応チャンバ612bからの出力を炭素分離器114およびバーナ116中に方向づけ、他方第1の出力弁604aは、バーナ116からの煙道ガスを第1の反応チャンバ612a中に方向づける。
【0072】
さらに図10に示すように、反応器112の反応チャンバ612は、垂直方向に(例えば、z軸に沿って)配向されるのがよい。垂直配向は、重力を利用して炭素微粒子を反応チャンバ612から運び出すのを助けることによって、ファウリングに起因する影響を回避するのに役立ち得る。炭素微粒子を除去するための重力に基づく助けは、重要な場合があり、と言うのは、炭素微粒子は、有効流体密度および/または速度を変化させる場合があり、したがって、炭素が全体として均一反応によって生じている場合であっても、炭素を反応器から運び出す流体の能力を変化させる場合があるからである。本発明者の確認したところによれば、毎秒約1メートル(m/s)~約30m/sのガス空塔速度、約1400℃の動作温度、およびCH4分子に関してほぼ100%熱分解作用を持つ反応チャンバ612に関し、反応チャンバ612は、1立方メートル当たり約268グラム(g/m3)を除去してファウリングによる影響を全く回避することができることが必要となる。また、本発明者の確認したところによれば、フローチャネル680(図6)の直径D2が約1cm~約5cmであり、垂直の配向状態を有する反応チャンバ612に関し、炭素微粒子は、反応チャンバ612を通るガスの流れを安定化するとともに、反応チャンバ612を通る物質の流れによって反応チャンバ612から除去される。さらに、フローチャネル680(図6)の直径D2が約1cm~約5cmである場合、炭素は、水平反応体流および/または垂直方向上向きの反応体流に関する場合であっても、反応チャンバ612から完全に除去される。さらに、本発明者の確認したところによれば、これよりも大きな直径D2を有するフローチャネル680の場合、圧力降下は、それよりも低い。したがって、かかるフローチャネル680の場合、本発明者の確認したところによれば、圧力降下に関する懸念を回避しながら、より多くの流量が可能である。
【0073】
さらに図10に示すように、入力弁602は、高温煙道ガスを反応器112から出るよう方向づけるために予熱反応チャンバ(例えば、図示の流れ中の第2の反応チャンバ612b)のための出力弁として作用することができる。したがって、幾つかの実施形態では、入力弁602は、高温煙道ガスからの熱を用いて反応器112中に流れる反応体を予熱するために反応チャンバ612からの出力チャネルの周りに巻きつけられた入力コイルを有するのがよい。さらに、幾つかの実施形態では、反応器からの出力ラインは、反応器に至る入力ラインに隣接して位置決めされるのがよく、それによっても、高温煙道ガスは、反応器112中に流れる反応体を予熱することができる。
【0074】
4.代表的な組み合わせ型燃焼・熱分解システム
図11は、本技術の別の実施形態にしたがって構成されたシステム1100の部分概略等角図である。この種のシステムを本明細書では組み合わせ型燃焼・熱分解(CCP)システムという場合があり、このCCPシステムは、互いに熱的連絡状態にある第1のチャンバおよび第2のチャンバを含む。熱的連絡の結果として、第1のチャンバ(例えば、燃焼チャンバ)内における燃焼により、第2のチャンバ(例えば、反応チャンバ)内の反応体を加熱することができ、それにより第2のチャンバ内における熱分解反応を推進することができる。熱的連絡は、任意適当な手段で確立できる。例えば、同心状または環状に配列された第1のチャンバと第2のチャンバとの間の共通壁または表面は、これら相互間の熱的連絡を確立することができる。例えば、図11に示すように、システム1100は、環状反応チャンバ1112(本明細書では「反応器1112」とも呼ばれる場合がある)によって包囲された中央燃焼チャンバ1111(本明細書では「燃焼器1111」とも呼ばれる場合がある)を含むのがよい。燃焼器1111は、燃料(例えば、メタン、天然ガス、水素、および/または別の適当な可燃材料)を酸化剤(例えば、空気、純酸素、および/または別の適当な酸素運搬材料)とともに燃焼させて半径方向外方に配置された反応チャンバ1112を加熱することができる。炭化水素燃料(本明細書では「反応体」および/または「反応体燃料」という場合がある)、例えばメタンまたは天然ガスが反応チャンバ1112中に方向づけられて燃焼器1111内の燃焼から得られる熱によって加熱される。この熱により、炭化水素を熱分解反応により解離しまたは分解し、その結果、水素ガスおよび炭素微粒子(例えば、未反応炭化水素燃料および/または二次反応から生じる副生成物ガスを含む)を含む出力が得られる。分離器1114が出力内の炭素と水素を分離する。例えば、分離器1114は、炭素微粒子を出力から除去するためのスクリーンフィルタ、バグハウスフィルタ、サイクロン分離器、蛇行フローチャネル、および/または種々の他の適当な構造を含むがよい。この場合、炭素が炭素隔離を含む任意の数の目的のために用いられるのがよい。
【0075】
水素は、水素分配器1116に方向づけられ、この水素分配器は、水素ガスを1つ以上のエンドポイントに方向づける。例えば、図示のように、水素ガスの一部分を燃焼器1111に差し戻して反応器1112の加熱を続行するのがよく(例えば、燃焼を完全にまたは部分的に燃料供給する)、他方、水素ガスの他の部分を他の目的のためのシステム1100の外部に方向づけるのがよい。例えば、水素ガスの一部分を熱電併給施設1117に方向づけるのがよく、この熱電併給施設において、この水素ガスの一部分は、空気と混合して燃焼させ、それにより熱および電気を生じさせる。種々の他の実施例では、水素ガスを部分的に後で消費可能に水素貯蔵装置に方向づけ、発電器で用い(例えば、電気だけを発生させるため)、燃料電池中に充填し(例えば、車両に動力供給するよう後で使用するために)、肥料製造で用い、種々の製造プロセスで用い(例えば、エレクトロニクス製造におけるキャリアガスとして、ガラス製造におけるフロートガスとして、およびその他として)、かつ/あるいは種々の他の適当な設備で使用するのがよい。
【0076】
さらに図11に示すように、燃焼器1111からの排気流(例えば、燃焼から生じる煙道ガス)を熱交換器1113中に方向づけるとともに/あるいはこれに接触させて熱を反応器1112中に方向づけられる炭化水素燃料に伝達するのがよい。すなわち、排気流中の残りの熱を再生熱交換器によってリサイクルして反応器1112中に方向づけられる炭化水素燃料を予熱するのがよい。炭化水素燃料を予熱することによって、再生熱交換器は、水素ガスおよび炭素に変換される炭化水素燃料の量を増大させることができる(例えば、炭化水素燃料が熱分解反応のためのエンタルピー点よりも高い状態にある期間を増大させることによって)。次に、比較的低温の排気を処分、スクラビング、および/または他の処理後機能のために排気システム1115(例えば、図1の排気システム60に類似している)に方向づけることができる。
【0077】
図12は、図11を参照して上述した構成要素のうちの幾つかを含む代表的なCCPシステム1200を示すブロック図である。特に、図12は、メタン、天然ガス、および/または別の適当な炭化水素反応体を反応チャンバ1212(例えば、図11の反応器1112)に供給するよう入力弁1211に流体結合可能である燃料供給源1220を示している。反応チャンバ1212のところで熱分解反応を受けた後、反応生成物(例えば、水素ガス、炭素微粒子、未反応炭化水素反応体、およびその他)を1つ以上の分離器1214中に方向づける。分離器1214は、炭素のうちの少なくとも何割かを出力から除去するための炭素分離器および/または非水素ガス(例えば、未反応炭化水素、副生成物ガス、およびその他)のうちの少なくとも何割かを出力から除去するためのガス分離器を含むのがよい。次に、分離した出力中の水素を出力弁1223中に方向づけて種々の目的地に引き回すのがよい。
【0078】
例えば、図12に示すように、水素の一部分(または全て)を水素貯蔵施設1221に方向づけるのがよくかつ/あるいはブロック1222で種々の製造目的に用いるのがよい。追加的にまたは代替的に、水素の一部分(または全て)を熱電併給施設1217に方向づけてもよい。熱電併給施設1217は、水素を燃焼させて動力(例えば、電気)を発生させるための電力発電器を含むのがよく、次に、電気は、配電網または他の最終使用者に向けられる。非変換(例えば、過剰)熱を循環システムに方向づけるのがよい。循環システムは、住宅用および/または他の暖房用途のために過剰の熱を利用するよう熱交換器および/または他のコンポーネントを含むのがよい。残りの熱/成分は、最終的には、排気システムに向けられる。
【0079】
追加的または代替的に、水素の一分(または全て)は、燃焼コンポーネント1206に方向づけられてもよく、燃焼コンポーネント1206は、バーナ1210(または他の適当な燃焼開始装置、例えば、点火器、保炎器、点火装置、およびその他)を含み、燃焼コンポーネント1206は、送風機1209(または他の酸化剤供給源)に流体結合可能である。幾つかの実施形態では、燃焼コンポーネント1206は、送風機を含むことができる。燃焼コンポーネント1206内では、水素(および/または任意他の適当な燃料、例えば、天然ガス)を送風機1209からの空気と混合させてバーナ1210に導入するのがよい。幾つかの実施形態では、燃焼用燃料とバーナ1210に入る空気の比は制御される(例えば、理論比(化学量論的比)を維持するため)。バーナ1210のところで、水素‐空気混合物を燃焼させ、それにより熱を発生させ、次に、この熱を用いて反応チャンバ1212およびこの中の炭化水素燃料を加熱する。次に、燃焼プロセスからの排気流(例えば、煙道ガス)を煙道弁1208中に方向づけ、そして再生熱交換器内の熱交換器1213に至らせるのがよい。熱交換器1213は、過剰(例えば、未使用)熱を煙道ガスから吸収することができ、そして吸収した熱を用いて燃料供給源1220からの炭化水素燃料を予熱し、その後、炭化水素燃料を反応チャンバ1212中に導入する。追加的または代替的に、熱交換器1213は、煙道ガスから過剰熱を吸収し、そして吸収した熱を用いて燃焼用燃料(例えば、水素ガス、天然ガス、空気、およびその他)を予熱し、その後、燃焼用燃料を燃焼コンポーネント1206中に導入する。幾つかの実施形態では、熱交換器1213は、煙道ガス流(例えば、排気システム内を移動している)と反応チャンバ1212に入る炭化水素反応体流および/またはバーナ1210に入る燃焼用燃料との間に位置する相互熱伝導壁である。
【0080】
幾つかの実施形態では、出力弁1223は、分離した出力を種々の目的地相互間で能動的に分配させることができる。例えば、出力弁は、濾過した出力の制御された部分(または全て)を燃焼コンポーネント1206に方向づける第1の位置、および濾過した出力の制御された部分(または全て)をシステム1200の外部に(例えば、水素貯蔵施設1221および/または熱電併給施設1217)方向づける第2の位置を有するのがよい。種々の実施形態では、第1および/または第2の位置はまた、分離した出力の一部分を任意他の適当な目的地に制御可能に分配することができる。幾つかの実施形態では、出力弁1223は、分離した出力を受動的に分配する。例えば、出力弁1223は、分離した出力を燃焼コンポーネント1206に方向づけるよう位置決めされた第1の出口および分離した出力をシステム1200の外部に方向づけるよう位置決めされた第2の出口を備えた接合(例えば、T継手)を有するのがよい。
【0081】
図13は、図11および図12を参照した上述した構成要素とほぼ同じ構成要素を含むもう1つのCCPシステム1300の概略断面図である。図示のように、システム1300は、高温(例えば、1000℃またはこれを超える温度)に耐えるよう選択された材料で作られている2つの同心筒体を含むのがよく、そして熱をこれらの中に形成されたチャンバ相互間で伝達することができる。図示の実施形態では、内側筒体は、燃焼チャンバ1311を形成し、この内側筒体は、燃焼コンポーネント1310を備え、燃焼コンポーネント1310は、第1の流路F1に沿う燃料(例えば、水素、水素/天然ガス混合物、純粋天然ガスおよび/または他の炭化水素)および第2の流路F2に沿って酸化剤供給源からの酸化剤(例えば、空気、酸素、および/または別の酸素運搬成分)を受け入れるよう燃料供給源(例えば、ガスメータ)に結合可能である。燃焼コンポーネント1310は、次に、燃焼チャンバ1311内で燃料と酸化剤を燃焼させる。さらに、天然ガスおよび/または他の炭化水素反応体を第3の流路F3に沿って外側筒体(例えば、本明細書では熱分解炉ともいう場合がある反応チャンバ1312)内に導入する。図12を参照して上述したように、炭化水素反応体の入力は、入力弁(例えば、図11参照)によって制御されるのがよい。十分に高い温度では、炭化水素反応体は、熱分解反応により水素と炭素に解離する。例えば、上述したように、天然ガス中のメタンに関する熱分解反応は次の通りである。
CH4→C+2H2、この場合、ΔH=76kJ/モル メタン
【0082】
燃焼チャンバ1311内における燃焼により、炭化水素反応体を十分に高い温度に加熱する(または、さらに加熱する)ことができる。例えば、燃料と酸素を燃焼させることにより生じた熱を燃焼チャンバ1311と反応チャンバ1312との間の共有壁Wを通って第1の熱経路H1沿いに熱放射および熱伝導により半径方向外方にかつ外側筒体(例えば、反応チャンバ1312)中に伝達する。さらに、断熱材1307(例えば、耐火材料)は、第2の熱経路H2に沿う反応チャンバ1312からの熱損失を減少させることができ、それによりシステム1300内における燃焼から生じた熱を保持するのを助けることができる。
【0083】
反応からの出力(例えば、H2、残留炭化水素、および炭素)は、第4の流路F4に沿って反応チャンバ1312で、分離器1314に入る。分離器1314は、出力内のガス状の水素および残ったガス状反応物質から固体粒子(例えば、炭素微粒子)を分離する。次に、炭素を第5の流路F5に沿って炭素処分システム1315に動かす(例えば、手作業で、機械的に、流体学的に、およびその他のやり方で)。すると、反応チャンバ1312からのガス状生成物の第1の部分(本明細書では分離した出力という場合がある)は、次に、第6の流路F6に沿って分離器1314から流出することができる。次に、分離出力の一部分は、第7の流路F7に沿って燃焼コンポーネント1310に戻ることができ、そして、燃焼チャンバ1311内で燃焼する。分離出力の第2の部分を上述した種々の目的に用いるよう(例えば、水素貯蔵装置1316内に貯蔵するよう)第8の流路F8に沿ってシステム1300から離れるよう方向づけるのがよい。理解されるように、第1の部分は、分離出力の任意適当な部分、例えば、分離出力の5%、10%、20%、50%、100%、および/または任意他の適当な部分を含むのがよい。同様に、第2の部分は、分離出力の任意適当な部分を含むのがよい。
【0084】
反応チャンバ1312内における熱分解反応により生じた固体炭素のうちの何割かを経時的に反応チャンバ1312の壁上に付着させ、かつ/あるいは堆積させ、それによりブリッジおよび/または凝集体を形成する。炭素デポジットの結果として、反応チャンバ1312内における詰まりが生じる場合があり、かかる詰まりは、システム1300を過度に加圧する場合があり、かつ/あるいはシステム1300の生産性を減少させる場合がある。望ましくない変化としては、例えば反応器を冷却させることによりまたは反応器を動作停止させることにより、あるいは、休止状態のものもあれば使用状態のものもある数基並列システムを必要とすることによって、温度および/または圧力の変化が挙げられる。上述の有害な変化の全ての結果として、効率が減少する場合があるので、したがって、かかるプロセスを減らし、またはなくす本技術の実施形態は、効率を向上させることができる。
【0085】
例えば、本明細書において提供される種々の実施形態は、間欠的または連続的な仕方で付着するとともに/あるいは堆積した炭素を除去する方法および装置に関しており、それにより、反応器条件をそれほど変化させる必要なく、少なくとも疑似連続作動を可能にする。例えば、代表的な炭素除去装置は、プランジャまたはピストン1306(本明細書では「プランジャ1306」という)を有し、この種々の実施形態については、以下にさらに詳細に説明する。プランジャ1306は、反応チャンバ1312の長手方向軸線に沿って動くことができ、そしてこのプランジャが動いているときに反応チャンバ1312の壁の汚れを掻き落とすことができる。掻き落とし動作により炭素デポジットがほぐされ、ばらばらにされ、かつ/あるいは違ったやり方で除かれ、それにより上述した有害な変化が減少する。
【0086】
図11および図13に示す同心形態により、熱の使用量を増大させることができる(例えば、最大にすることができる)。例えば、内側筒体からその隣の外側筒体への熱放射/熱伝導による燃焼熱損失を直接用いて外側筒体内で実施される吸熱熱分解反応に熱投入する。さらに、内側筒体からの熱は、反応チャンバ1312を通って半径方向外方にのみ流れることができる。すると、断熱材1307が反応チャンバ1312を半径方向に包囲しているので、反応チャンバ1312からの半径方向外方への熱放射/熱伝導による熱損失が減少する。かくして、内側筒体内における燃焼から生じる熱は、外側筒体内の炭化水素反応体を効果的に加熱することができる。
【0087】
燃焼チャンバ1311を出た煙道ガスは、代表的には、H2O、N2、残留H2、残留炭化水素燃料、および微量のNOx、SOx、CO2、および/またはCOを含む。煙道ガスは、反応チャンバ1312に伝えられない熱(本明細書において「過剰熱」および/または「未使用熱」という場合がある)を第9の流路F9に沿って燃焼チャンバ1311から運び出すことができる。排気流中の過剰熱は、再生熱交換器1313により少なくとも部分的に回収でき、それにより、反応チャンバ1312に入る炭化水素反応体および/または燃焼および/または反応チャンバに入る燃焼用燃料(例えば、空気、窒素、天然ガス、および/または別の炭化水素燃料)を予熱することができる。炭化水素反応体を予熱することによって、例えば、再生熱交換器1313は、システム1300の効率を高めることができる。例えば、予熱した炭化水素反応体は、反応チャンバ1312内でより迅速に熱分解温度に達することができ、したがって、熱分解反応が完了するまでの時間が多く与えられ、その後、反応チャンバ1312を出る。その結果、反応チャンバ1312からの出力は、水素ガスおよび炭素と未反応炭化水素との大きな比を有することができる。もう1つの実施例では、燃焼用燃料を予熱することにより、燃焼を生じさせるのに必要な入力熱を減少させることができ、それにより過剰熱を用いて燃焼コンポーネント様の入力エネルギーを減少させることができる。変形例として、幾つかの実施形態では、プラズマを用いると、排気流をキネティクス(反応速度)を速めるために標的温度まで予熱することができる。
【0088】
始動段階の間、システム1300は、貯蔵した水素、天然ガス(例えば、ガスメータ
からの)、および/または他の炭化水素を燃焼させることによって作動するのがよく、ついには、CCP反応器は、熱分解反応が出力中の水素の一部分を燃焼コンポーネントに供給するのに十分な速度で進むようにするのに適した温度まで昇温する。その時点で、制御ユニット(温度および/または他のセンサに結合されている)が弁(例えば、図12の出力弁1223)および/または他のハードウェアに指図を出して上述の再循環方法に切り替えるようにすることができ、この再循環方法において、出力中の水素の一部を燃焼させて、炭化水素熱分解を可能にする熱を生じさせる。
【0089】
制御システムは、上述の始動段階を含むシステム作動の対応の観点を制御するために多種多様な適当な適当なセンサのうちの任意のものを含むことができる。センサは、システム全体にわたる種々の箇所のところでガス流のうちの任意のものの温度、組成、および/または圧力を測定することができ、かつ/あるいは他の作動パラメータを測定することができる。センサからのデータをオペレータまたは自動制御システムに伝送することができ、そしてかかるデータを用いると、システムの性能を制御するとともに/あるいは向上させ(例えば、最適化し)、かつ/あるいはその作動を監視し、例えば予防保守が必要な時点を知らせることができる。他のセンサまたは制御ループは、生成水素のうちのどれぐらいの量がバーナ/燃焼供給流に再循環するか、および/またはどれほど多くの天然ガスが燃焼供給流中に混ざり込むかを求めることができ、そして1つ以上の弁または他のコンポーネントをそれらに応じて作動させ、それにより作動状態をシステム始動中、システム1300によった生じた作動をシステム1300の漸変需要および/またはシステム1300によって生じる水素に合わせることができる(例えば、システム始動中、最終使用者からの需要の変化に対応することができる)。追加的または代替的に、他のセンサまたは制御ループは、どれほど多くの炭素が熱分解チャンバ内に蓄積したか(例えば、システムの特定の部分内の圧力変化によって指示される)を求めることができ、そして1つ以上の炭素除去機構体を作動/開始させて(例えば、プランジャ1306を作動させて)炭素デポジットのうちの少なくとも一部分を落とす(例えば、掻き落とす、除去する、すり落とし、こすり落とし、脱落させ、かつ/あるいはきれいにする)ことができる。
【0090】
制御ループを用いると、定期的に、例えば、所定の時間間隔、作動時間間隔、および/または累積的に熱分解供給流の間隔で炭素除去機構体を作動させることができる。他のセンサまたは制御ループは、炭素収集システムが満杯である時点を検出することができ、そして自動的に空にするプロセスをトリガし、または信号オペレータに送ってかかるプロセスを実施させるのがよい。さらに別のセンサまたは制御ループは、水素、熱、または電気に関する最終使用者からの一時的な漸変需要にしたがって、燃焼用ガスおよび熱分解ガスの流量を調節することができる。例えば、制御ループは、弁を作動させて、プランジャ1306が作動されている間(例えば、プランジャ1306が反応チャンバ1312を通る流路を完全に遮断しているとき)追加の炭化水素反応体が反応チャンバ1312に入るのを制止する。もう1つの実施例では、制御ループは、プランジャ1306が作動されている間、炭化水素反応体の流れの何割か(または全て)を維持することができる。さらに別のセンサまたは制御ループは、熱電併給システムと通信して問題または故障を検出し、そしてそれにしたがって反応器をターンオフしまたはそれに応じて燃焼または熱分解流量を調節し、それにより需要に合致するようにすることができる。さらに別のセンサまたは制御ループは、安全条件(例えば、漏れ)があるかどうかを監視するのがよく、そしてシステムまたはシステムの幾つかの部分を安全にターンオフするのがよい。他のセンサまたは制御ループは、水素の生産量を測定し、そして信号をオペレータに送って例えば水素の最終使用者の消費量に基づいて最終使用者料金を課すのがよい。
【0091】
5.堆積炭素除去システムを備えた代表的な反応器構成例
図14Aおよび図14Bは、それぞれ同心反応器/燃焼チャンバ配列構造を備えた代表的なシステム1400aの部分概略断面図および平面図である。図14Aおよび図14Bは、図13を参照して上述したシステムの単純化されたバージョンを示している。図14に示すように、システム1400aは、中央の第1のチャンバ1411を含むのがよく、中央の第1のチャンバ1411は、同心の第2のチャンバ1412によって少なくとも部分的に包囲されている。第2のチャンバ1412は、第1および第2のチャンバ1411,1412からの熱損失を減少させまたはなくすよう断熱材1407(例えば、1つ以上の固形、液状、および/またはガス状材料、および/または真空チャンバ)によって包囲されるのがよい。図示の実施形態では、第1のチャンバ1411は、燃焼チャンバとして使用され、他方、第2のチャンバ1412は、反応チャンバとして使用される。しかしながら、図14Cを参照して詳細に説明したように、利用を切り替えることができる(例えば、第1のチャンバ1411を反応チャンバとして使用することができ、第2のチャンバ1412を燃焼チャンバとして使用することができる)。図示の実施形態に戻ってこれを参照すると、反応ガス(「反応体」)(例えば、炭化水素反応体)は、矢印Rで示すように第2のチャンバ1412に導入される。燃焼コンポーネント1410aは、燃料(例えば、水素ガス、天然ガス、および/または任意他の適当な燃料)を燃焼させて第2のチャンバ1412内で熱分解反応を実施するのに必要な熱を生じさせる。熱は、同心チャンバの共有の壁を介して熱伝導および/または熱放射により第2のチャンバ中に伝えられ、そして第2のチャンバ内の反応体に伝えられる。反応体温度がエンタルピー点をいったん越えると、熱分解反応により反応体が分解し水素ガスおよび炭素を含む出力が生じる。
【0092】
理解されるように、第1および第2のチャンバ1411,1412内の流れが並流方式で示されているが、この流れは、向流方式であってもよい(例えば、2つのチャンバ内の流れが互いに逆の方向に流れる)。第2のチャンバ1412(例えば、この第2のチャンバ内では熱分解反応により炭素微粒子が生じる)を垂直に方向づけるのがよく、炭素の除去を助けるよう重力を利用するために上から下への流れを利用するようこの第2のチャンバ内の流れは、上から下である。システム1400aの並流方式では、燃焼コンポーネント1410aもまた、頂部に取り付けられ、火炎が下に向いている。この配向状態では、燃焼に起因して生じる水素ガス(および他の燃料ガス)の流れおよび/または凝縮水の流れを管理することは、極めて容易である。これによりシステム1400aは、安定した火炎を維持することができる。しかしながら、並流方式は、第1のチャンバ1411内における燃焼から第2のチャンバ1412内の反応体ガスへの熱伝達が貧弱な場合があり、その結果、変換度が低い。追加的または代替的に、並流方式では、到来する天然ガス流を予熱するのに足るほどの残留時間を得ることができず、これまた結果として、変換度が低い。これとは対照的に、燃焼コンポーネント1410aが第1のチャンバ1411の底部のところに配置されていて上方に向いており、そして反応体が第2のチャンバ1412内で上から下へ流れている向流方式では、熱交換のための滞留時間を長くとるとともに/あるいは高煙道ガスと反応体との間の表面積を広く取ることができるので、到来する天然ガスを予熱する上で良好な熱伝達が可能である。したがって、向流方式は、全体的な変換度を向上させることができる。しかしながら、向流方式は、燃焼により生じる水素ガスおよび/または凝縮水が燃焼を妨害するのを阻止するために水管理および/または除去システムを必要とする場合がある。例えば、向流方式は、第1のチャンバ(全ての水が気相の状態のままである)全体を通じて十分に高い温度を維持することができるか燃焼コンポーネント1410a内の火炎から凝縮水を遠ざけるための流路を形成することができるかのいずれかである。
【0093】
上述したように、第2のチャンバ1412内における熱分解反応により生じた炭素が第2のチャンバ1412の壁上に沈殿する場合があるので、システム1400aは、可動プランジャ1406aを含むのがよい。可動プランジャ1406aは、第2のチャンバ1412の壁をかいて堆積炭素をほぐし、ばらばらにし、かつ/あるいは違ったやり方で除去するのがよい。種々の実施形態では、プランジャ1406aは、多数のプランジャのうちの1つであってもよく、あるいは、単一の環状プランジャの形をしていてもよい。種々の実施形態では、プランジャ1406aは、単一のスクレイパ構造を有するのがよい。他の実施形態では、プランジャ1406aは、炭素を除去するのを助けるための1枚以上の鋭利なナイフブレード、および/または微粒子状炭素を第2のチャンバ1412から除去して分離器1414中に投入する重力利用プロセスの実施を助けるためのオプションとしての真空ポンプを有するのがよい。これらの実施形態の任意のものに関し、プランジャ1406aは、堆積炭素を除去するために壁と接触関係のままで第2のチャンバ1412内で長手方向に(例えば、図示の向きでは上方かつ/あるいは下方に)動くのがよい。追加的または代替的に、システム1400aは、空気または別の酸化体を定期的にかつ/あるいは場合に応じて第2のチャンバ1412中に送り込んで残留炭素を燃やすのがよい。
【0094】
プランジャ1406aにより除去された炭素生成物を分離器1414に方向づける(例えば、重力および/または第2のチャンバ1412内のガスの流れによって運搬する)。分離器1414は、バッフル1405を有するのがよく、バッフル1405は、微粒子状炭素を出力から分離するためにガス流および種々の他の特徴部(例えば、スクリーン、フィルタ、サイクロン型分離器、他の流路妨害装置、およびその他)から落下することができる蛇行状流路を形成している。
【0095】
燃焼生成物(例えば、煙道ガス)を再生熱交換器に(例えば、熱交換器と接触状態に)方向づけるのがよく、それにより第1のチャンバ1411に適用される燃焼用燃料および/または第2のチャンバ1412に適用される反応体を予熱するのがよい。その後、燃焼生成物を排気システムに方向づけるのがよい。
【0096】
図14Aおよび図14Bを参照して上述した代表的な実施形態では、反応チャンバは、燃焼チャンバ回りに同心状に配置されている。図14Cは、これらの位置が逆になったシステム1400bを示している。具体的に説明すると、第1のチャンバ1411は、中央の場所に配置されて反応チャンバとして用いられ、他方、第2のチャンバ1412は、第1のチャンバ1411から外方に同心状に配置されていて燃焼チャンバとして用いられる。幾つかのかかる実施形態では、燃焼コンポーネント1410bは、第2のチャンバ1412の同心構造に合致するよう同心バーナを含む。図示の実施形態では、燃焼コンポーネント1410bは、第2のチャンバ1412の回りに円周方向に配置された多数のバーナ(例えば、2台、4台、5台、10台、および/または任意他の適当な台数)を有する。プランジャ1406bは、例えば第1のチャンバ1411の円形断面形状に合致するよう単純な円の形をしているのがよい。
【0097】
理解されるように、図14A図14Cを参照して上述したシステム1400a,1400bのうちのいずれかに関し、第1および第2のチャンバ1411,1412は、様々な需要に応じるようスケール変更されるのがよい。例えば、高出力システムは、一般に、低出力システムの直径よりも大きな直径を備えたチャンバを必要とする。種々の実施形態では、第1のチャンバ1411の直径は、約0.01m(m)~約10mであるのがよく、第2のチャンバ1412の直径は、約0.1m~約20mであるのがよい(第1のチャンバ1411よりも大きな直径を維持しながら)。追加的または代替的に、第1および第2のチャンバ1411,1412内の炭化水素反応体の流量(および/または燃焼速度)は、出力の容積(および出力中の水素ガスの量)を増大させたり/あるいは減少させたりするようスケール変更可能である。例えば、炭化水素反応体の流量を増大させると、出力の体積を増大させることができる。しかしながら、流量の増大により、利益が減少する場合がある(例えば、燃焼からの熱が炭化水素反応体を十分な温度までかつ/あるいは十分な速度で加熱することができない場合に、出力中の水素ガスの量が不十分になる場合がある)。もう1つの実施例では、燃焼に至らせる燃料ガスの流量を増大させると、出力中の水素ガスと未反応炭化水素反応体の比が増大する場合がある。
【0098】
図14Dおよび図14Eは、それぞれ本技術の別の実施形態にしたがって同心チャンバを含むシステム1400cの部分概略断面図および平面図である。特に、システム1400cは、中央の第1のチャンバ1401(「第1のチャンバ1401」)、および第1のチャンバ1401から半径方向外方に配置された引き続く同心状の第2および第3のチャンバ1402,1403を含む。上述のチャンバのうちの3つ全ては、システム1400cの作動段階またはモードに応じて燃焼チャンバか反応チャンバかのいずれかとして動作することができる。したがって、例えば、第1~第3のチャンバ1401~1403の各々は、3つの燃焼コンポーネント1410c1,1410c2,1410c3として示された対応の燃焼コンポーネントを有するのがよい。各チャンバは、当該チャンバが反応チャンバとして動作しているとき、微粒子状炭素をチャンバから除去するための対応のプランジャ1406c1,1406c2,1406c3をさらに有するのがよい。例えば、図14Dに示す形態では、第1のチャンバ1410c1および第3のチャンバ1410c3は、反応チャンバとして動作し、反応体は、反応体矢印Rに沿って第1のチャンバ1410c1および第3のチャンバ1410c3中に下方に流れる。さらに、中間の第2のチャンバ1410c2は、燃焼チャンバとして動作し、この場合、第2の燃焼コンポーネント1410c2は、第1および第3のチャンバ1410c1,1410c3中に流れる反応体を加熱する作動されるのがよい。図示の実施形態の1つの観点では、能動型燃焼チャンバ(例えば、第2のチャンバ1402)用のプランジャ1406c2は、燃焼プロセスを邪魔しないようバーナ1410c2の上方に配置されるよう引っ込められるのがよい。
【0099】
幾つかの実施形態では、第1~第3のチャンバ1401~1403は、互いに異なる作動段階中かつ/あるいは出力に関する漸変需要に対応するため、燃焼チャンバとしての動作と反応チャンバとしての動作との間でサイクル動作する。純然に例示として、第2のチャンバ1402は、第1の動作段階中、燃焼チャンバとして動作するのがよく(例えば、燃焼あり、熱分解なし)、他方、第1および第3のチャンバ1401,1403は、反応チャンバとして動作する(例えば、熱分解あり、燃焼なし)。第2の動作段階中、役割を逆にするのがよく、その結果、第1および第3のチャンバ1401,1403は、燃焼チャンバとして動作し、第2のチャンバ1402は、反応チャンバとして動作するようになる。もう1つの実施例では、第2のチャンバ1402は、燃焼チャンバとしてフルタイム動作するのがよく、第1および第3のチャンバ1401,1403は、能動的反応とクリーニング段階との間で回転する。すなわち、第1の動作段階中、第1のチャンバ1401は、反応チャンバとして動作するのがよく、第3のチャンバ1403は、プランジャ1406c3によってクリーニングされる。次に、第2の動作段階中、第3のチャンバ1403は、反応チャンバとして動作するのがよく、第1のチャンバ1401は、プランジャ1406c1によってクリーニングされる。
【0100】
サイクル動作のため、第1~第3のチャンバ1401~1403の各々は、反応体供給源に流体結合された入力弁(例えば、図12の入力弁1211)に流体結合されるのがよい。さらに、入力弁および燃焼コンポーネント1410c1,1410c2,1410c3は、種々の段階をサイクル動作するようコントローラ(例えば、図1のコントローラ150)に作動的に結合されるのがよい。例えば、上述の第1の動作段階では、コントローラにより、燃焼コンポーネント1410c2は、燃料を燃焼させるのがよく、それにより、入力弁が反応体を第1および第3のチャンバ1401,1403中に方向づけるのがよい。その結果、燃焼(しかしながら、熱分解なし)が第2のチャンバ1402内で起こり、熱分解(しかしながら、燃焼なし)が第1および第3のチャンバ1401,1403内で起こる。上述の第2の動作段階中、コントローラにより動作を逆にするのがよい。
【0101】
図14Fおよび図14Gは、それぞれ、本技術のさらに別の実施形態により構成されたシステム1400eの部分概略側面断面図および平面図である。図14Fに示すように、システム1400eは、中央の第2のチャンバ1412(例えば、反応チャンバ)および同心状に包囲した第1のチャンバ1411(例えば、燃焼チャンバ)を含む。第1のチャンバ1411は、1つ以上の燃焼コンポーネント1410eを含むのがよい(2つは図14Fの断面図に示され、6つが図14Gの平面図に示されている)。燃焼コンポーネント1410eの各々は、第1のチャンバ1411内に配置されるとともに燃焼煙道ガスを第2のチャンバ1412の共有壁に接触するよう方向づけるように方向づけられている。上述の実施形態と同様、プランジャ1406を用いると、炭素微粒子を第2のチャンバ1412の壁から除去することができる。図14Gに最もよく示すように、システム1400eは、非対象円形断面形状を有するのがよい。変形例として、図14Hの平面図に示された実施形態によって理解されるように、システム1400eは、矩形の断面形状を有してもよい。
【0102】
図14Iおよび図14Jは、それぞれ、本技術のさらに別の実施形態にしたがって構成されたシステム1400fの部分概略等角図および平面図である。この図示の実施形態では、システム1400fは、複数の第1のチャンバ1411(15個が図示されている)、複数の第2のチャンバ1412(15個が図示されている)と、第1および第2のチャンバ1411,1412を包囲した断熱材1407とを含む。作動中、第1のチャンバ1411のうちの1つ以上(または全て)は、燃焼チャンバとして動作することができ、第2のチャンバ1412のうちの1つ以上(または全て)は、反応チャンバとして動作することができる。したがって、第1のチャンバ1411の各々は、第1のチャンバ1411内の燃料を燃焼させるよう配置された対応の燃焼コンポーネント(例えば図14D参照)を有するのがよい。変形例として、システム1400fは、第1のチャンバ1411内における燃焼の一部分を引き起こすとともに/あるいは燃焼から生じた煙道ガスを第1のチャンバ1411を通って方向づけるよう位置決めされた個々のバーナおよび/または出口を備えた単一の燃焼コンポーネント(例えば図14C参照)を含んでもよい。同様に、第2のチャンバ1412の各々は、対応のプランジャおよび対応の入力弁(いずれも図示されていない)を有するのがよい。
【0103】
図14Jに最もよく示されているように、第1のチャンバ1411と第2のチャンバ1412は、交互配列で配置されるのがよい。その結果、例えば、第1のチャンバ1411は、第2のチャンバ1412または断熱材1407とのみ壁を共有する。かくして、第1のチャンバ1411内で生じた熱を主として熱放射するとともに/あるいは熱伝導して第2のチャンバ1412中に外方に伝える(例えば、断熱材1407中に方向づけられた熱は、主として反射される)。理解されるように、第1および第2のチャンバ1411,1412の各々は、異なる断面形状を有するのがよい。純然に例示として、第1および第2のチャンバ1411,1412の各々は、正方形の断面形状を有するのがよい。正方形の断面形状は、第1のチャンバ1411と第2のチャンバ1412との間の共有壁の表面積を増大させることができ、それにより、第1のチャンバ1411と第2のチャンバ1412との間の熱伝達を増大させるのを助けることができる。種々の他の実施例では、第1および第2のチャンバ1411,1412の各々は、六角形断面、八角形断面、および/または任意他の適当な断面形状のものであってよい。
【0104】
幾つかの実施形態では、第1および第2のチャンバ1411,1412のサブセットをシステム1400fに関する作動段階に応じて動作させる。例えば、第1および第2のチャンバ1411,1412の第1のサブセットを第2のサブセットに属する第2のチャンバ1412がこれらの対応のプランジャによって掻かれている間に動作させるのがよい。次に、動作を入れ替えると、第1のサブセットに属する第2のチャンバ1412をこれらの対応のプランジャによって掻くことができるようにするのがよい。もう1つの実施例として、動作している第1および第2のチャンバ1411,1412の数を出力に関する需要によりスケール変更することができる。すなわち、出力に関する需要が低い場合、第1および第2のチャンバ1411,1412のうちのほんの少しが動作状態にある。需要が増すにつれて、動作中の第1および第2のチャンバ1411,1412の数を需要の増大に合うよう増大させることができる。
【0105】
図14Kおよび図14Lは、それぞれ、本技術のさらに別の実施形態にしたがって構成されたシステム1400gの部分概略等角図および平面図である。図示の実施形態では、システム1400gは、複数の第1のチャンバ1411(25個が示されている)を含み、これら第1のチャンバは、これらよりも大きな第2のチャンバ1412を貫通している。この場合、第2のチャンバ1412は、断熱材1407によって包囲されている。第1のチャンバ1411の各々は、燃焼チャンバとして動作するのがよく、第2のチャンバ1412は、反応チャンバとして動作するのがよい。したがって、第1のチャンバ1411の各々は、第1のチャンバ1411内の燃料を燃焼させるよう配置された対応の燃焼コンポーネント(図14D参照)を有するのがよい。変形例として、システム1400fは、第1のチャンバ1411内における燃焼の一部分を引き起こすとともに/あるいは燃焼から生じた煙道ガスを第1のチャンバ1411を通って方向づけるよう位置決めされた個々のバーナおよび/または出口を備えた単一の燃焼コンポーネント(例えば図14C参照)を含んでもよい。
【0106】
システム1400gは、第2のチャンバの壁を掻くよう第2のチャンバ1412を貫通するのがよい1本以上のプランジャ(例えば、図14D参照)を含むのがよい。幾つかの実施形態では、プランジャは、比較的小さな断面積を有し、このプランジャは、第2のチャンバ1412のフットプリント内で動くことができる。かかる実施形態では、プランジャは、第2のチャンバ1412の一部分を掻くことができ、残部は、反応チャンバとして作動し、そして連続的に動いて種々の掻き落とし部分についてサイクロ動作する。
【0107】
理解されるように、第1および第2のチャンバ1411,1412の形態を入れ替えることができる。すなわち、第1のチャンバ1411の各々は、反応チャンバとして働くことができ、他方、第2のチャンバ1412は、反応チャンバを包囲した燃焼チャンバとして働く。
【0108】
炭素を反応チャンバの壁から除去するためのプランジャの構成を上述したようにCCP反応器に利用することができかつ/あるいは図15Aおよび図15Bを参照して以下に説明するようにRTP反応器に利用することができる。図15Aでは、共通チャンバ1501が燃料を燃焼しながら炭化水素反応体を加熱しながら、共通チャンバ1501内に存在する酸素の量を制御することができる燃焼コンポーネント1510を有する。燃焼コンポーネント1510は、共通チャンバ1501を加熱するバーナおよび/または共通チャンバ1501内で熱分解されるべき炭化水素反応体を提供する入力弁を有するのがよい。燃焼中、燃焼コンポーネント1510は、酸素の全てがバーナによって消費されるよう共通チャンバ1501内の酸素レベルを制御するのがよい。その結果、炭化水素反応体は、これが加熱されているときに燃焼ではなく熱分解反応を起こす。幾つかの実施形態では、燃焼用燃料と炭化水素反応体は、同一である。例えば、燃焼用燃料と炭化水素反応体は両方とも、天然ガスであるのがよい。幾つかの実施形態では、燃焼コンポーネント1510は、共通チャンバ1501中への天然ガス入力の全てを燃焼させるのに足るほどの酸素が存在していないようにするのがよい。その結果、第1の部分は、燃焼して第2の部分を加熱し、第2の部分は、熱分解反応を起こす。
【0109】
図15Aにさらに示すように、プランジャ1506aは、開口中央部分を備えたリング状の本体を有するのがよい。リングの形状により、プランジャ1506aは、燃焼煙道ガス、水素ガス、炭素微粒子、および/または未反応炭化水素が共通チャンバ1501を通って移動している間、共通チャンバ1501の壁を掻くことができる。次に、共通チャンバ1501からの出力は、出力弁1523を通って、分離器1514中に流れる。出力弁1523は、出力を例えば共通チャンバ1501が加熱サイクルを受けているとき(例えば、燃焼煙道ガスだけが共通チャンバを出ている)出力を排気システムに方向づける第1の位置を有するのがよい。上述したように、分離器1514は、炭素および/または非水素ガスを出力から除去することができる。次に、分離した出力を目的地に方向づけるのがよい(例えば、燃焼が行われるべき共通チャンバ1501中に戻し、水素貯蔵タンクに送り、かつ/あるいは任意他の適当な目的地に送る)。
【0110】
図15Bでは、反応チャンバ1512は、別個の燃焼プロセスによって加熱される。別個の燃焼プロセスを別個のチャンバ内で実施するのがよく、この別個のチャンバは、反応チャンバ1512との(例えば、第2のチャンバ内の)共通の壁を共有しない。そうではなく、第2の燃焼プロセスは、もう1つの装置によって反応チャンバ1512に熱的に結合されるのがよい。例えば、燃焼プロセスからの煙道ガスを燃焼プロセスの直後に反応チャンバ1512中に方向づけるのがよい。追加的または代替的に、燃焼プロセスを反応チャンバ1512に隣接して実施するとともに熱放射による加熱により熱的に結合されるのがよい。追加的または代替的に、燃焼プロセスを反応チャンバ1512を予熱するために反応チャンバ1512内で前もって完了させるのがよい。図15Bにさらに示すように、プランジャ1506bを用いると、炭素微粒子を上述した仕方で反応チャンバ1512の壁から除去することができる。図示の実施形態では、プランジャ1506bは、ガスを挿通させることができる開口中心を備えていない。これとは異なり、例えば、プランジャ1506bを、反応プロセスのサイクル後(例えば、反応チャンバ1512の再加熱前)に反応チャンバ1512内で作動させるのがよい。
【0111】
図16A図16Cは、図14Aを参照して上述したプランジャ1406aおよび分離器1414に加えてまたはこれに代えて、炭素微粒子を反応チャンバおよび/または出力から除去する別の構成例の部分略図である。例えば、図16Aは、図14Aを参照して上述したシステム1400aと全体として類似したシステム1600aを示している。システム1600aは、第1のチャンバ1411、これを包囲する第2のチャンバ1412、第1のチャンバ1411内の燃料を燃焼させるよう配置された燃焼コンポーネント1410a、および炭素を第2のチャンバ1412の壁から除去するよう作動可能なプランジャ1406aを含む。しかしながら、図示のように、システム1600aは、第2のチャンバ1412と流体連通状態にある1つ以上のロックホッパ1621をさらに含むのがよい。ロックホッパ1621は、第2のチャンバ1412からの出力からの固体炭素の連続濾過および/または取り出しを可能にする。ロックホッパ1621は、分離した出力を分離器1414に方向づけてガス状生成物を固体炭素生成物からさらに分離するのがよい。例えば、出力をサイクロン、バグハウス、および/または他の装置中に通すのがよく、それによりガス状物質(例えば、水素ガス、取り残しの炭化水素反応体、およびその他)を出力中の固形材料から分離するのがよい。純然に例示として、図示の実施形態では、出力を液体コラム1622に通してガス状物質を出力中の固形材料からさらに分離する。
【0112】
図16Bは、図16Aを参照して上述したプランジャ1406aに代えて、炭素を第2のチャンバ1412の壁から除去することができる1つ以上のスクリュー型押出機1623(2つで示されており、本明細書では「オーガ1623」ともいう場合がある)を含むシステム1600bの部分概略断面図である。各オーガ1623は、微粒子状炭素を第2のチャンバ1412の壁から掻き落とす回転スクリュー形部材を有するのがよい。幾つかの実施形態では、オーガ1623は、第2のチャンバ1412の長さに沿って軸方向に動いて微粒子を第2のチャンバ1412の長さ全体(例えば、高さ全体)から除去するとともに/あるいは作動中に取り外される。幾つかの実施形態では、オーガ1623は、固定長手方向位置に位置したままであり、これらオーガは、第2のチャンバ1412の壁を掻くとともに/あるいは除去した炭素をこの第2のチャンバ1412から押し出す。幾つかの実施形態では、第2のチャンバ1412は、第1のチャンバ1411と同心でありかつこれを包囲した単一のオーガ1623(例えば、第1のチャンバ1411に対応した中空部分を有する)を有する。
【0113】
幾つかの実施形態では、例えば、図16Cの平面図で示すように、2つのオーガ1623が互いに連結されるのがよく、これらオーガは、環状の第2のチャンバ1412を通る円形経路に沿って移動し、それにより微粒子を第2のチャンバ1412の内周壁および外周壁から除去することができる。したがって、オーガ1623は、矢印Cで指示されているように、これら自体の軸線回りに回転することができ、そして矢印Dによって指示されているように共通中心軸線回りに周回することができる。共通中心軸線回りの回転により、第2のチャンバ1412の一部分は、オーガ1623が炭素壁から除去している間、使用状態のままである。
【0114】
理解されるように、第1のチャンバ1411が反応チャンバとして作動する実施形態では、システムは、第1のチャンバ1411内に配置されるとともに/あるいはこの中で動くことができる1つ以上のオーガ1623を含むのがよい。例えば、2つのオーガ1623が第1のチャンバ1411の周壁をクリーニングするよう中心軸線回りに回転することができ、その間、中央部分および他の壁により、第1のチャンバ1411は、使用状態のままである。もう1つの実施例では、第1のチャンバ1411とほぼ同じ直径を備えた単一のオーガが第1のチャンバ1411の壁を一度に全て掻くことができる。
【0115】
図16Dは、本技術のさらに別の実施形態によって構成されたシステム1600dの断面図である。図示の実施形態では、このシステムは、炭素微粒子を加圧流体によりチャンバ壁から除去するとともに/あるいは微粒子が全く堆積するのを阻止するガスジェット1624の配置構成(例えば、オーガ1623に代えて)を含む。
【0116】
6.代表的な試験およびシミュレーションデータ
図17A図17Cは、本技術の諸実施形態に従って構成された代表的な炭素除去システムに関して得られた試験データを示している。これらの図は、(a)炭素微粒子除去のために流体の流れを利用したシステム、および(b)流体の流れに加えて機械式除去装置を含むシステムについて炭素除去効率を比較している。図17Aは、水素および炭素を生じさせる反応器を通るメタンの流れが1SLPMメタン流および1150℃で60分かけてプロセスで生じた全炭素の最高66%までを収集することができることを示している。もう1つの実施例では、30分間にわたる1500℃における動作状態の5SLPMメタン流が炭素分離器内において反応器の外側に43%の炭素を生じさせた。
【0117】
システムはまた、円筒形ピストンまたはプランジャを端部に備えた超合金ロッドで作られている機械式装置で試験が行われた。プランジャを用いて反応器内で生じた炭素を炭素分離器に押し出した。1500℃において30分間にわたる5SLPMメタン流での同等な試験では、炭素分離器内の炭素収集量(収集した炭素を生じさせた全炭素で除算した割合)は、プランジャの追加配置により43%から77%まで増大した。試験をさらに続行させると、炭素を除去した後において、収集した全炭素は、プランジャを33分後に再び用いた場合に77%から86%に増大した。炭素除去のサイクル回数を増加させた場合、炭素収集率は、漸近的に100%まで増大する。図17Bは、プランジャの有無を問わず、多数回にわたる試験において多数のメタン流量についての代表的な収集値を示している。図17Cは、初期除去後における連続して行われた作動行程による炭素収集率の増大を示している。
【0118】
図18A図18Cは、再生熱分解(RTP)反応器の性能と組み合わせ型燃焼・熱分解(CCP)反応器の性能を比較するために用いられたシミュレーションである。図18Aおよび図18Bは、筒型反応器の断面図である。RTP反応器(図18A)に関し、流体を燃焼用ガスから熱分解用ガスにサイクル方式で切り替える。換言すると、名称がつけられた燃焼ゾーンは、このゾーンが到来するガスを燃焼させることによって加熱された加熱段階と、到来ガスが現時点において加熱された状態にある反応器内で熱分解される熱分解段階との間で交互に移り変わる。CCP反応器(図18B)では、燃焼は、中央燃焼ゾーン内で実施され、熱分解は、半径方向外方の同心熱分解ゾーン内で実施される。シミュレーションを5SLPM水素燃焼と5SLPMメタン熱分解において実施した。RTPシステムでは、流体を上述したように燃焼用ガスから熱分解用ガスにサイクル方式で切り替える。したがって、燃焼プロセスの終了時における定常状態燃焼温度プロフィールを熱分解段階の開始条件と見なした。図18Cについては、以下の図19A図19Fの説明の後で後述する。
【0119】
図19Aは、RTP反応器とCCP反応器について燃焼ゾーンの長さに沿う距離の関数として流体温度プロフィールを示している。断熱条件を前提として、流体およびアルミナ壁の温度は、距離と共に増大した。図19Bは、RTP反応器とCCP反応器に関し、熱分解ゾーンの長さに沿う距離の関数として温度プロフィールを示している。熱分解プロセスを定常状態が達成されるまでシミュレートした(図19BではRTP‐熱分解の終了という)。CCPシステムの場合、反応器の熱分解部と燃焼部とを定常状態でシミュレートする。RTPシステムで得た燃焼温度は、CCPシステムの温度よりも高く、熱分解温度は、RTPシステムと比較してCCPシステムの方が高い。CCPシステムに関するアルミナ壁温度もまた、図19Cに示す熱分解ゾーンの長さに沿う距離の関数としての温度プロフィールによって示すように、RTPシステムのアルミナ壁温度よりも低い。
【0120】
上述の実施例は、外側壁が断熱であることを仮定したものである(例えば、周囲環境中に失われる熱はゼロである)。実際には、RTP反応器システムとCCP反応器システムに関する重要な要因は、周囲環境への熱損失である。図19D図19Fは、CCPシステム内における非断熱壁からの熱損失の効果を示している。特に、図19Dは、断熱および非断熱壁に関して燃焼ゾーンの長さに沿う距離の関数としての流体温度プロフィールを示し、図19Eは、断熱および非断熱壁に関して熱分解ゾーンの長さに沿う距離の関数としての温度プロフィールを示し、図19Fは、断熱および非断熱条件であることを仮定したCCP反応器の長さに沿うアルミナ壁温度を示している。周囲環境への熱損失を減少させる(例えば、最小限に抑える)と、RTPシステムの性能が著しく向上する。CCPシステムでは、燃焼は、内側筒体内で起こる。燃焼からの熱損失は、周囲の熱分解ゾーン内における熱分解反応のために利用される。したがって、CCPシステム内における主要な熱損失機構は、熱分解ゾーンから周囲環境への損失である。RTPシステムとCCPシステムの両方に関し、有効な断熱が性能を著しく向上させる。
【0121】
図18Cは、外壁が断熱ではない代表的なCCP反応器を示している。これとは異なり、外壁は、熱伝導率が0.15W/m/K、熱損失係数が3W/m2K、輻射率が0.7(熱放射による熱伝達)、外側温度が25℃である断熱層を有する。図19D図19Fは、断熱モデルと非断熱モデルに関する流体と壁の温度を比較していて、壁が断熱であるという前提の影響の度合い、および反応器回りの効果的な断熱の重要性を示している。非断熱反応器は、断熱型である反応器と同一の変換を達成するのに長い滞留時間を必要とする。したがって、断熱材厚さを増大させて周囲への熱損失を減少させるのがよい。少なくとも幾つかの実施形態では、1本以上の追加のチャネル(例えば、同心チャネル)を断熱材と熱分解ゾーンとの間に設けるのがよい。これら追加のチャネルは、熱伝達流体(例えば、次に反応チャンバ中に方向づけられて熱分解されることになるメタン)を循環させるのがよく、これは、もしそうでなければ無駄になる熱を捕捉する手段として採用される。他の実施形態では、追加のチャネルを排気して、断熱作用をさらに提供するのがよく、あるいは、追加のチャネルを用いて熱分解反応をさらに実施するのがよい。
【0122】
したがって、代表的なシステムは、安全性について選択されるとともに特定の最終使用者需要を満たしながら作動を向上させる(例えば、最適化する)形態を有する。これらの結果を達成するために選択される代表的なパラメータとしては、燃焼チャンバと熱分解チャンバの寸法およびこれらの寸法比、燃焼供給流量と熱分解供給流量の比(これは時間の関数として変化する場合がある)、および/または燃焼用ガス供給物中の水素と炭化水素の流量比(例えば、質量比または体積比)が挙げられる(流量比もまた、時間の関数として変化する場合がある)。
【0123】
同様に、燃焼チャンバから熱分解チャンバへの熱伝達を最大にしまたは違ったやり方で調節するために材料を選択するのがよい。例えば、燃焼チャンバは、高温適合性材料、例えば被膜を備えた金属(例えば、W、Mo、Nb、またはTaのようなセラミック被覆耐熱金属)、セラミック(炭化物、窒化物、ホウ化物、または酸化物、例えば、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、ホウ化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、イットリウムドープ酸化ジルコニウム、耐火レンガ、または類似物)、および/または複合材(例えば、炭素マトリックス複合材)を含むのがよい。同様に、熱分解チャンバからシステムの外部への熱伝達を最小限に抑えまたは違ったやり方で調節するために熱分解チャンバについて材料を選択するのがよい。材料としては、上述の材料のうちの任意のものが挙げられる。種々の表面は、熱伝達を調節するために丹念に研磨されてもよく、あるいはそうでなくてもよく、または反射性または非反射性(低または高輻射率)材料で被覆されてもよい。「耐火性」材料は、上記リストから採用されるバルク材料、エーロゲル、真空環境、低圧ガス(例えば、HeまたはAr)、断熱シート、または上記材料の幾つかの組み合わせ、複合材、もしくは他の組み合わせ(例えば、層)を含むことができる。
【0124】
熱伝達特徴部が種々の表面上に設けられるのがよい。例えば、燃焼チャンバ内壁または外壁は、フィン、チャネル、および/または他の表面積増大特徴部を有するのがよい。燃焼および/または熱分解ガスを方向づけて渦を巻くようにするのがよく、それにより熱伝達を促進する。熱分解ガスは、水素の熱分解および収率を最適化しまたは炭素を除去するために熱分解チャンバの直径、周長、および/または高さに沿う多数の入り口箇所を有するのがよい。燃焼用ガスは、燃焼および/または熱伝達を向上させる(例えば、最適化する)よう燃焼チャンバの直径、周長、または長さに沿う多数の入り口箇所を有するのがよい。同様に、燃焼チャンバの壁は、それ自体、バーナ、例えば多孔質媒体バーナまたは触媒表面バーナであってもよくまたはかかるバーナを収容してもよい。
【0125】
熱分解チャンバおよび燃焼チャンバは、円形断面を備えていなくてもよい。例えば、これらチャンバは、六角形または八角形断面形状のものであってよい。熱分解および燃焼チャンバはまた、流れ軸線に沿って同一の有効直径を備えていなくてもよい。例えば、炭素除去を容易にするため、熱分解チャンバは、外方にテーパした側壁を有してもよく、その結果、その直径は、ガス入り口から遠ざかるにつれて増大するようになる。このやり方により、ガスは膨張し、それにより粒子を減速させる。さらに、開口部が大径であれば、長期間にわたる反応器の詰まりが阻止され、しかも反応器出口のところでの微粒子の収集が単純化される。このやり方はまた、炭素を反応器から除去するために機械式装置を用いる頻度を減少させることができる。CCPシステムは、例えば、図14Cを参照して上述したように、単一の燃焼チャネルおよび単一の熱分解チャネルまたは任意適当な本数の各チャネルを含むことができる。
【0126】
多数の個々のCCPシステムを含む設備では、第1の反応器(A)が作動しており、その水素出力は、第2の反応器(B)の供給物として使用できる。これは、始動中または水素生産についての時間的に過渡的な需要の間(この間、第2の反応器(B)をターンオンしまたはターンオフし、あるいは違ったやり方で変更するのがよい)、特に有用であり、というのは、これにより炭化水素を燃やして第2の反応器(B)の昇温を再開する必要性が回避されるからであり、これに代えて、水素を燃やして温室効果ガスを生じさせることなく第2の反応器(B)を昇温させることができるからである。
【0127】
図20A図20Hは、本技術の実施形態による種々の代表的な熱分解反応器システムに関する試験データを示している。特に、試験は、上述の種々の特徴から得られる改良点ならびに様々な作動条件(例えば、流量)の結果を示している。例えば、試験は、ムライトを含んでいてCCP反応器システム内の燃焼チャンバと反応チャンバとの間の熱伝達を向上させるセラミックの一体形の壁の利点を示している。もう1つの実施例では、燃焼前に空気を予熱し、メタン(例えば、炭化水素反応体として用いられる)を予熱し、反応器システム中へのメタンの流量を変化させた場合の作用効果を試験した。図20Aの表は、代表的な試験の結果を示している。試験は、燃焼により生じる火炎に対する一体型壁の近接性、一体型壁の一平方インチあたりのセル数、および断熱の向上効果を変化させることを含んでいた。図20Aの表はまた、チューブインチューブ(tube-in-tube)型反応器(例えば、同心燃焼チャンバと反応チャンバを備えた反応器(例えば、図14Aおよび図14Bに示されている))の作用効果を示している。
【0128】
図21は、幾つかの代表的な燃焼用燃料についての熱損失と熱分解変換百分率、すなわち、炭化水素反応体比の関係を示している。具体的に説明すると、図21は、水素ガス(燃焼用燃料として)とメタンガス(炭化水素反応体として)の代表的な比に関する関係を示している。この関係は、グローバルな質量とエネルギーのバランス限界によって定められる。その結果、例えば、熱分解変換は、熱損失が最小限に抑えられたときに最大になる。図21に明らかに示すように、燃焼用燃料と炭化水素反応体の比が高ければ、より多くの熱を維持中に失わせる場合がある。
【0129】
7.液体中間生成物
上述の固体炭素除去技術に加えて、代表的な反応器は、液体除去技術、例えば、反応器内の反応が止まる時点を調節することによって液体炭化水素を生じさせる技術を含むことができる。反応がガス状水素および固体炭素までずっと進行することができるのはなく、何割かまたは全ての反応体が樹脂または想い炭化水素の形態をとる場合がある。これは、炭素のうちの何割かまたは全てを除去する単純な手法であるといえ、というのは、(a)炭化水素樹脂は、炭素を捕捉することができかつ/あるいは(b)趣旨は剥がれて重力の作用で反応器から落ちて出るからである。また、反応条件の調節を利用して水素の製造量を調節することができる。
【0130】
特定の実施例では、25mmID、1000mm長さのアルミナ反応器を用いて実験を実施した。体積流量が所与の場合に反応器内の滞留時間は、25m、反応器については、これが60mmID反応器に関する場合よりも短い。1SLPMおよび1250℃では、反応器の外部に集められた炭素は、炭素変換値が非常に似通っている場合で、25mm反応器の方が60mm反応器と比較して高かった(58.2%に対して47.8%)。最も注目すべきこととして、5SLPMでは、16%H2が出口ガス分析器内で識別されたが、炭素分離器114内に集められた炭素はなかった(例えば、図14A参照)。炭素分離器は、微粒子分離のための1つ以上の分離コンポーネント、例えばバッフル、バグフィルタ、および/または液体バブラ(これらには限定されない)を有するのがよい。本発明者の知見によれば、収集ボックスの入り口のところに油の生成が見られた。反応器内の滞留時間は、CH4を完全に炭素に変換するには十分ではなく、樹脂状炭化水素にのみ変換されたにすぎない。これは、炭素へのメタンの変換百分率をそれぞれ同一の流量で、例えば、5SLPM、1250℃で2つの直径(25mmに対して60mm)を互いに比較したときに極めて明白である。
【0131】
液体生成物は、組成を求めるためにそれぞれクロマトグラフ/質量分析器計により特徴づけられた。クロマトグラムが図22に適用されている。主たる選択ピークは、分で表された保持時間のところにあり、すなわち、フェナントレンに対応した21.525(23.795%)、フェナントレンに対応した21.606(5.175%)、ピレンに対応した24.322(8.437%)、およびこれまたピレンに対応した24.881(31.153%)のところにある。フェナントレンは、C1410であり、ピレンは、C1610である。両方の分子は、多環芳香族炭化水素であり、周囲条件では液相の状態にある。
【0132】
8.代表的なガス伝送炭素除去システム
固体炭素および液体炭素捕捉技術について上述した。代表的なシステムは、例えば、上述した炭素/水素分離器のうちの任意のものの一部として、ガス伝送(ガスによって運ばれる)炭素微粒子のための分離システムをさらに含むのがよい。
【0133】
図23は、上述の分離器のうちの任意のもの、例えば図1に示す炭素分離器114で利用できるサイクロン型分離器2300の略図である。図23に示すように、サイクロン型分離器2300は、入り口管2310(個別的に第1の入り口管2310aと第2の入り口管2310bという)と流体連通状態にある主バレル2302、主バレル2302と流体連通状態にあるコーン区分2304、コーン区分2304と流体連通状態にある収集区分2306、および収集区分2306と流通連通状態にあるディプレグ2308を有する。
【0134】
第1の入口管2310aは、炭素微粒子および水素ガスを含む混合物を反応器出力経路2312に沿って受け入れるために上述した反応器のうちの任意のものからの出口と流体連通状態にあるのがよい。第2の入口管2310bは、触媒蒸気を触媒入力経路2314に沿って受け入れるよう触媒蒸気源に連結されるのがよい。図23に示すように、触媒入力経路2314は、主バレル2302内の反応器出力経路2312に衝突してサイクロン型分離器2300内に下方に動くサイクロンを生じさせる。すると、サイクロンは、このサイクロン内を流れている炭素微粒子と水素ガスの混合物に遠心力を及ぼす。この力に起因した衝撃および水素ガスと炭素微粒子との密度の差に基づいて、混合物は、これがサイクロン型分離器2300を通って移動しているときに分離する。円錐形区分2304のテーパ付き壁は、サイクロンの速度を維持し、そして混合物を収集区分2306とディップレッグ2308に向かって集めて流す。炭素微粒子のうちの何割かまたは全てが収集区分2306で捕捉され、そして炭素処分コンポーネント20(図1)に送られ、その後、ディップレッグ2308は、結果として生じる水素ガスをどこか他の場所に送る。幾つかの実施形態では、サイクロン型分離器2300は、直径が約10マイクロメートル(μm)以上の炭素微粒子を捕捉する。直径が約10μm未満の炭素微粒子は、サイクロン型分離器2300から出力中に逃れる場合がある。したがって、種々の実施形態では、炭素分離器114は、一連のサイクロン型分離器および/または他の微粒子捕捉ユニット、例えば湿式スクラビングコンポーネント、バグハウスフィルタ、および/または電気集塵機、および/または別の適当なコンポーネントを有するのがよい。
【0135】
例えば、炭素分離器114としては、混合物からの追加の炭素微粒子を捕捉するようサイクロン型分離器2300に作動可能に結合されたバグハウスフィルタが挙げられる。バグハウスフィルタは、ダストおよび固体微粒子が開放環境中に逃げないようにするために製造業および他の工業的作業からの微粒子除去のために採用されている一種のファブリックフィルタ空気‐物質分離器である。バグハウスは、列状に配置されるとともに板金ハウジング内に垂直に設けられたファブリックフィルタバグおよび/またはプリーツ付きのフィルタを利用する。ダストを含むガス流を送風機によって動かしてダクトシステムを通ってバグハウス中に引き込む。流れ中のガスは、次に、フィルタを通り、他方、微粒子は、濾過材表面上に残り、かくして、微粒子をガスから分離する。経時的にダストは、フィルタ表面上に蓄積してフィルタケークを形成し始める。したがって、種々のクリーニングシステムを用いて、ダストをフィルタから除去するのがよくかつ/あるいはフィルタを手動で定期的に空にするのがよい。炭素分離器114に利用されると、バグハウスフィルタは、水素ガスと炭素微粒子の流れを受け入れることができる。水素ガスがファブリックフィルタを通過することができるが、フィルタは、炭素微粒子を捕捉ことができる。
【0136】
図24A図24Cは、本技術の種々の実施形態に係る炭素収集システム2420a~2420cの部分概略等角図である。図示のように、炭素収集システム2420a~2420cの各々は、入口およびシステム100(図1)からの炭素を収集する広い貯蔵領域を有する。図24Aに示されているように、炭素収集システム2420aは、定期的に空にされるとともに/あるいは交換されるのがよい取り外し可能な貯蔵ビンを含むのがよい。図24Bに示されているように、炭素収集システム2420bは、下部開口部に通じる漏斗部を有するのがよく、かかる下側開口部により炭素を炭素収集システム2420bから連続的にかつ/あるいは定期的に除去することができる。例えば、ユーザは、週に1回、開口部を介して炭素収集システム2420bを空にするのがよい。図24Cに示されているように、炭素収集システム2420cは、使い捨ての貯蔵タンクを含むのがよい。例えば、ユーザは、貯蔵タンクのうちの一方(または両方)を定期的に取り外してこれらを空の貯蔵タンクと置き換えるのがよい。次に、満杯の貯蔵タンクをどこか他の場所に持っていって空の貯蔵タンクと交換するとともに/あるいは処分するのがよい。
【0137】
本明細書において説明した実施形態は、幾つかの有利な特徴を含むことができる。例えば、システムは、反応器内で実施される熱分解反応への供給を行うよう反応器によって生じる水素を用いて自立的に作動することができる。これは、典型的には、外部エネルギー源、例えば炭化水素燃料または電気を用いる(例えば、もっぱらこれらを用いる)従来型反応器とは異なる。もう1つの特徴は、システム実施形態が炭素を機械的に除去している間、連続的に稼働することができるということにある。これは、炭素を収集して除去する前に反応器を作動停止させる必要のある従来型技術とは対照的である。さらにもう1つの特徴は、システム実施形態が本発明のように構成されていなければ失われる燃焼熱を用いてその代わりに熱分解反応器を加熱し、かくして全体的熱効率を向上させることにある。従来の間接加熱式工業システムでは、熱放射による損失が著しく、これにより効率が減少する。さらに別の特徴は、反応器内における粒子堆積量を減少させる(例えば、最小限に抑える)ために特別に選択された(例えば、最適化された)表面/体積比を備えたフローチェネルを有するシステムにおいて重力を利用することにより炭素粒子の流れを向上させる「フローダウン」構造を含む。
【0138】
本明細書で用いられる「Aおよび/またはB」の場合のような「および/または」は、A単独、B単独、およびAとBの両方をさしている。
【0139】
本明細書で用いる「約」や「ほぼ」は、記載した値の10%の範囲の値をさしている。
【0140】
参照により引用して本明細書の一部とする任意の資料が本開示と矛盾する場合、本開示が優先する。
【0141】
上記のことから、理解されるように、開示した技術の特定の実施形態を例示目的で本明細書において説明したが、種々の改造を本技術から逸脱することなく行うことができる。例えば、RTP反応器との関係で上述した幾つかの特徴をCCP反応器に利用することができ、またこの逆の関係が成り立つ。特定の実施形態との関連で説明した技術のある幾つかの観点を他の実施形態において組み合わせることができまたはなくすことができる。さらに、本開示した技術のある幾つかの実施形態と関連した利点をこれら実施形態との関連で説明したが、他の実施形態はまた、かかる利点を奏することができるが、本技術の範囲に含まれるよう必ずしも全ての実施形態にかかる利点を奏する必要がない。したがって、開示内容および関連技術は、本明細書において明示的に図示していないまたは説明していない他の実施形態を含むことができる。
【0142】
以下の実施態様項は、本技術の追加の代表的な特徴を提供している。
【0143】
実施態様項
〔実施態様項1〕 組み合わせ型燃焼・熱分解(CCP)システムであって、上記CCPシステムは、
CCP反応器を含み、上記CCP反応器は、
燃焼チャンバを有し、
上記燃焼チャンバ内の燃料を燃焼させて結果として生じる煙道ガスを上記燃焼チャンバ中に入るように方向づけるよう位置決めされた燃焼コンポーネントを有し、
反応チャンバを有し、上記反応チャンバは、(1)反応体を受け入れるよう反応体供給源に流体結合可能な第1の領域、および(2)上記第1の領域の下流側に設けられている第2の領域を有し、上記反応チャンバは、上記反応体を加熱させて上記反応チャンバ内に熱分解反応を生じさせるよう上記燃焼チャンバと熱的連絡状態にあり、上記熱分解反応は、水素ガスおよび炭素を含む出力を生じさせ、
上記燃焼チャンバまたは反応チャンバのうちの少なくとも一方からの熱損失を減少させるよう配置された断熱材料を有し、
上記炭素の少なくとも一部分を上記出力から除去して分離された出力を形成するよう上記反応チャンバの上記第2の領域と流体連通状態にある炭素分離コンポーネントを含む、CCPシステム。
〔実施態様項2〕 上記分離出力を受け入れるよう上記炭素分離コンポーネントと流体連通状態にある出力弁をさらに含み、上記出力弁は、少なくとも、第1の位置および第2の位置を有し、
上記第1の位置では、上記出力弁は、上記分離出力の少なくとも一部分を上記燃焼コンポーネントに入るよう方向づけ、
上記第2の位置では、上記出力弁は、上記分離出力の少なくとも一部分を上記CCPシステムから出るよう方向づけることを特徴とする実施態様項1記載のCCPシステム。
〔実施態様項3〕 上記燃焼コンポーネントは、
上記燃焼コンポーネント内における上記燃料と酸素の比を制御するよう酸化体供給源に流体結合された酸化体入力弁と、
上記酸素を受け入れて上記比における上記燃料と上記酸素の混合物を燃焼させるよう上記酸化体入力弁に作動的に結合されたバーナとを含むことを特徴とする実施態様項1または2記載のCCPシステム。
〔実施態様項4〕 上記反応チャンバは、上記燃焼チャンバと同心であり、かつ上記燃焼チャンバから半径方向外方に位置し、上記断熱材料は、上記反応チャンバと同心であり、かつ上記反応チャンバから半径方向外方に位置することを特徴とする実施態様項1~3のうちいずれか一に記載のCCPシステム。
〔実施態様項5〕 上記燃焼チャンバは、上記反応チャンバと同心であり、かつ上記反応チャンバから半径方向外方に位置し、上記断熱材料は、上記燃焼チャンバと同心であり、かつ上記燃焼チャンバから半径方向外方に位置することを特徴とする実施態様項1~4のうちいずれか一に記載のCCPシステム。
〔実施態様項6〕 (1)上記燃焼チャンバを出ている上記煙道ガスおよび(2)(a)上記燃焼コンポーネントに入っている上記燃料の流れまたは(b)上記燃焼チャンバに入っている酸化体のうちの一方と熱的連絡状態にあり、それにより上記煙道ガスからの熱を(a)上記燃焼チャンバに入っている上記燃料または(b)上記燃焼チャンバに入っている上記酸化体に伝達するための再生熱交換器をさらに含むことを特徴とする実施態様項1~5のうちいずれか一に記載のCCPシステム。
〔実施態様項7〕 熱を上記煙道ガスから、上記反応チャンバに入る上記反応体中に伝達するよう上記反応チャンバに入っている上記反応体の流れと上記燃焼チャンバを出ている上記煙道ガスの両方と熱的連絡状態にある再生熱交換器をさらに含むことを特徴とする実施態様項1~6のうちいずれか一に記載のCCPシステム。
〔実施態様項8〕 炭素デポジットを上記反応チャンバ内の少なくとも1つの表面から除去するよう上記反応チャンバ内に少なくとも部分的に配置された炭素除去装置をさらに含むことを特徴とする実施態様項1~7のうちいずれか一に記載のCCPシステム。
〔実施態様項9〕 上記炭素除去装置は、上記炭素デポジットを上記少なくとも1つの表面から掻き落とすよう上記反応チャンバの長手方向流路に沿って動くことができるプランジャ、上記炭素デポジットを上記少なくとも1つの表面から掻き落とすよう回転可能に動くことができるスクリュー形押出機、または上記炭素デポジットを少なくとも1つの表面から除去するよう加圧ガス流を方向づけるよう位置決めされた1つ以上のガスジェットのうちの少なくとも1つ含むことを特徴とする実施態様項8記載のCCPシステム。
〔実施態様項10〕 上記炭素除去装置は、上記炭素デポジットを上記少なくとも1つの表面から掻き落とすよう上記反応チャンバの長手方向流路に沿って動くことができるプランジャを含むことを特徴とする実施態様項8記載のCCPシステム。
〔実施態様項11〕 上記燃焼チャンバは、第1の燃焼チャンバであり、上記燃焼コンポーネントは、第1の燃焼コンポーネントであり、上記反応チャンバは、第1の反応チャンバであり、上記CCP反応器は、
少なくとも1つの追加の燃焼チャンバと、
上記少なくとも1つの追加の燃焼チャンバ内の上記燃料を燃焼させ、結果的に生じた煙道ガスを上記少なくとも1つの追加の燃焼チャンバ中に方向づけるよう配置された少なくとも1つの燃焼コンポーネントと、
上記反応体を受け取るよう上記反応体供給源に流体結合可能な第1の領域および上記第1の領域と反対側の第2の領域を各々備えた少なくとも1つの追加の反応チャンバとをさらに有することを特徴とする実施態様項1~10のうちいずれか一に記載のCCPシステム。
〔実施態様項12〕 上記断熱材料は、上記第1の燃焼チャンバ、上記第1の反応チャンバ、上記少なくとも1つの追加の燃焼チャンバ、および上記少なくとも1つの追加の反応チャンバの各々から半径方向外方に配置されていることを特徴とする実施態様項11記載のCCPシステム。
〔実施態様項13〕 上記反応チャンバは、共有壁を介する熱伝導および/または熱放射により上記燃焼チャンバと熱的連絡状態にあることを特徴とする実施態様項1~12のうちいずれか一に記載のCCPシステム。
〔実施態様項14〕 上記反応体は、天然ガスを含むことを特徴とする実施態様項1~13のうちいずれか一に記載のCCPシステム。
〔実施態様項15〕 上記反応体供給源と上記反応チャンバとの間に流体結合された入力弁をさらに含むことを特徴とする実施態様項1~14のうちいずれか一に記載のCCPシステム。
〔実施態様項16〕 出力接合部をさらに含み、上記出力は、上記分離出力の少なくとも一部分を上記燃焼コンポーネントに入るよう方向づけるように位置決めされた第1の出口および上記分離出力の少なくとも一部分を上記CCPシステムから出るよう方向づけるように位置決めされた第2の出口を有することを特徴とする実施態様項1~14のうちいずれか一に記載のCCPシステム。
〔実施態様項17〕 炭化水素反応体を水素ガスおよび炭素を含む出力に変換する組み合わせ型燃焼・熱分解(CCP)システムであって、上記CCPシステムは、
複数のチャンバおよび上記複数のチャンバからの熱損失を減少させるよう配置された断熱材料を有するCCP反応器を含み、上記複数のチャンバの各々は、第1の部分および上記第1の部分と反対側の第2の部分を有し、
少なくとも第1のチャンバが、燃料の供給源に結合可能であり、かつ燃焼煙道ガスを上記第1のチャンバに入るよう方向づけるように配置された燃焼コンポーネントを有し、
少なくとも第2のチャンバが、炭化水素反応体を受け入れるための入力弁に流体結合可能であり、かつ上記出力を生じさせる熱分解反応を引き起こすために燃焼熱を上記炭化水素反応体に伝達するよう上記第1のチャンバと熱的連絡状態にあり、
炭化分離コンポーネントが、上記炭素の少なくとも一部分を上記出力から除去するようCCP反応器と流体連通状態にある、CCPシステム。
〔実施態様項18〕 上記第1のチャンバを出た上記燃焼煙道ガスから熱を回収して上記燃焼コンポーネントに入る上記燃料、上記第2のチャンバに入る上記炭化水素反応体および/または上記燃焼コンポーネントに入る上記酸化体を予熱するよう上記燃焼チャンバと流体連通状態にある再生熱交換器をさらに含むことを特徴とする実施態様項17記載のCCPシステム。
〔実施態様項19〕 上記出力は、未反応炭化水素ガスをさらに含み、上記CCPシステムは、上記出力を受け取って上記未反応炭化水素ガスの少なくとも一部分を上記出力から除去するよう上記CCP反応器と流体連通状態にあるガス分離器をさらに含むことを特徴とする実施態様項17または18記載のCCPシステム。
〔実施態様項20〕 上記複数のチャンバは、互いに同心であり、上記第1のチャンバは、上記第2のチャンバから半径方向内方に配置され、上記断熱材料は、上記第2のチャンバから半径方向外方に配置されていることを特徴とする実施態様項17~19のうちいずれか一に記載のCCPシステム。
〔実施態様項21〕 上記燃焼コンポーネントは、第1の燃焼コンポーネントであり、上記燃焼煙道ガスは、第1の燃焼煙道ガスであり、
上記第2のチャンバは、上記燃料の上記供給源に結合可能であり、かつ第2の燃焼煙道ガスを上記第2のチャンバ中に方向づけるように配置された第2の燃焼コンポーネントを有し、
上記CCP反応器は、
上記第2のチャンバと同心であり、かつ上記第2のチャンバから半径方向外方に位置する第3のチャンバをさらに有し、上記第3のチャンバは、上記炭化水素反応体を受け入れるよう上記入力弁に流体結合可能であり、かつ上記第1および/または上記第2の燃焼コンポーネントからの燃焼熱を上記炭化水素反応体に伝達して上記熱分解反応を生じさせるよう上記第1のチャンバおよび上記第2のチャンバと熱的連絡状態にあり、
(1)上記第1および上記第2のチャンバのうちの少なくとも一方内に燃焼を生じさせるが、熱分解は生じさせず、(2)上記第2および上記第3のチャンバのうちの少なくとも一方内に熱分解を生じさせるが、燃焼は生じさせないよう上記第1の燃焼コンポーネント、上記第2の燃焼コンポーネント、および上記入力弁の各々に作動可能に結合されたコントローラをさらに有することを特徴とする実施態様項20記載のCCPシステム。
〔実施態様項22〕 上記第3のチャンバは、上記燃料の上記供給源に結合可能であり、かつ上記第3の燃焼煙道ガスを上記第3のチャンバ中に方向づけるよう配置された第3の燃焼コンポーネントを有し、
上記第1のチャンバは、上記炭化水素反応体を受け入れて上記第2および/または上記第3の燃焼コンポーネントからの燃焼熱を上記炭化水素反応体に伝達して上記熱分解反応を生じさせるよう上記入力弁に流体結合可能であり、
上記コントローラはさらに、(3)上記第3のチャンバ内に燃焼を生じさせるが、熱分解は生じさせず、(4)上記第1のチャンバ内に熱分解を生じさせるが、燃焼は生じさせないよう上記第3の燃焼コンポーネントおよび上記入力弁に作動的に結合可能であることを特徴とする実施態様項21記載のCCPシステム。
〔実施態様項23〕 炭素デポジットを上記第1のチャンバ内の少なくとも1つの表面から掻き落とすよう上記第1のチャンバの長手方向流路に沿って動くことができる第1のプランジャと、
炭素デポジットを上記第2のチャンバ内の少なくとも1つの表面から掻き落とすよう上記第2のチャンバの長手方向流路に沿って動くことができる第2のプランジャとをさらに有することを特徴とする実施態様項22記載のCCPシステム。
〔実施態様項24〕 上記第1のチャンバは、上記第1のチャンバと上記第2のチャンバとの間に壁を形成する伝熱材料によって上記第2のチャンバに熱的に結合されていることを特徴とする実施態様項17~23のうちいずれか一に記載のCCPシステム。
〔実施態様項25〕 水素ガスを発生させるための組み合わせ型燃焼・熱分解(CCP)システムを作動させる方法であって、上記方法は、
反応体をCCP反応器の第1のチャンバ中に方向づけるステップを含み、上記第1のチャンバは、熱伝導性の共有壁を介して上記CCP反応器の第2のチャンバと熱的連絡状態あり、
上記第2のチャンバ内の燃料を燃焼コンポーネントにより燃焼させて上記第1のチャンバ内の上記反応体を反応温度よりも高い温度に加熱するステップを含み、上記反応温度では、上記反応体の少なくとも一部分は、水素ガスおよび炭素粒子を含む出力に変換し、
上記炭素粒子の少なくとも一部分を上記出力から分離して取り出すステップを含む、方法。
〔実施態様項26〕 上記第2のチャンバを出ている煙道ガスからの熱を上記燃料および/または上記燃焼コンポーネントに入っている酸化体および/または上記第1のチャンバに入っている上記反応体中に伝達するステップをさらに含むことを実施態様項25記載の方法。
〔実施態様項27〕 上記出力内の上記水素ガスの少なくとも一部分を上記燃焼コンポーネントに入るよう方向づけて上記燃焼コンポーネントに入る上記燃料を補充するステップをさらに含むことを特徴とする実施態様項25または26記載の方法。
〔実施態様項28〕 炭素除去コンポーネントにより上記CCP反応器の上記第2のチャンバ内の少なくとも1つの表面から炭素デポジットを脱落させるステップをさらに含むことを特徴とする実施態様項25~27のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項29〕 上記反応体を上記第1のチャンバ中に方向づけるとともに上記燃料を燃焼させながら研磨を実施することを特徴とする実施態様項28記載の方法。
〔実施態様項30〕 上記反応体を上記第1のチャンバ中に方向づける前に、上記CCP反応器を予熱するステップをさらに含むことを特徴とする実施態様項25~29のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項31〕 上記CCP反応器を予熱する上記ステップは、上記燃焼コンポーネントにより上記第2のチャンバ内の上記燃料を燃焼させるステップを含むことを特徴とする実施態様項30記載の方法。
〔実施態様項32〕 上記燃焼コンポーネントは、第1の燃焼コンポーネントであり、上記CCP反応器を予熱する上記ステップは、第2の燃焼コンポーネントにより上記CCP反応器の上記第1のチャンバ内の上記燃料を燃焼させるステップを含むことを特徴とする実施態様項30記載の方法。
〔実施態様項33〕 入力弁を第1の位置から第2の位置に動かすステップをさらに含み、
上記第1の位置では、上記入力弁は、上記反応体を上記第1のチャンバ中に方向づけ、
上記第2の位置では、上記入力弁は、上記反応体を上記第2のチャンバと熱的連絡状態にある第3のチャンバ中に方向づけ、
上記燃焼コンポーネントにより、上記第2のチャンバ内の上記燃料を燃焼させて上記第3のチャンバ内の上記反応体を上記反応温度よりも高い温度に加熱するステップを含むことを特徴とする実施態様項25~32のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項34〕 炭素除去コンポーネントにより、上記入力弁が上記第2の位置にある間、上記CCP反応器の上記第1のチャンバ内の少なくとも1つの表面から炭素デポジットを落とすステップを含むことを特徴とする実施態様項33記載の方法。
〔実施態様項35〕 熱分解システムであって、燃料を受け入れるよう位置決めされた燃焼チャンバ入口、および排出生成物を放出するよう位置決めされた燃焼チャンバ出口を有する燃焼チャンバを含み、
上記燃焼チャンバに対して同心状に位置決めされ、かつ上記燃焼チャンバと共通の熱伝達壁を有する反応チャンバとを含み、上記反応チャンバは、炭化水素を受け入れるよう位置決めされた反応チャンバ入口、および熱分解生成物を放出するよう位置決めされた反応チャンバ出口を有し、
上記反応チャンバ内に配置され、かつ上記反応チャンバ内の少なくとも1つの表面から炭素デポジットを除去するよう上記反応チャンバ内で動くことができる炭素除去装置を含むことを特徴とする熱分解システム。
〔実施態様項36〕 上記燃焼チャンバは、上記反応チャンバから半径方向内方に配置されていることを特徴とする実施態様項1記載のシステム。
〔実施態様項37〕 上記燃焼チャンバは、上記反応チャンバから半径方向外方に配置されていることを特徴とする実施態様項1記載のシステム。
〔実施態様項38〕 上記少なくとも1つの表面は、上記共通の壁を含むことを特徴とする実施態様項1記載のシステム。
〔実施態様項39〕 上記反応チャンバ出口に結合されかつ上記反応チャンバを出た熱分解生成物の流れ中の水素から炭素粒子を分離するよう構成された分離器をさらに含むことを特徴とする実施態様項1記載のシステム。
〔実施態様項40〕 上記燃焼チャンバに入っている上記燃料の流れを加熱するよう上記燃焼チャンバに入っている上記燃料の流れと上記燃焼チャンバを出ている排出生成物の流れの両方と熱的連絡状態にある熱交換器をさらに含むことを特徴とする実施態様項1記載のシステム。
〔実施態様項41〕 上記反応チャンバに入っている上記炭化水素の流れを加熱するよう上記反応チャンバに入っている上記炭化水素の流れと上記燃焼チャンバを出ている排出生成物の流れの両方と熱的連絡状態にある熱交換器をさらに含むことを特徴とする実施態様項1記載のシステム。
〔実施態様項42〕 水素の一部分を上記熱分解生成物から上記燃焼チャンバ中に方向づけるよう上記反応チャンバ出口と上記燃焼チャンバ入口との間に結合された流路をさらに含むことを特徴とする実施態様項1記載のシステム。
〔実施態様項43〕 上記炭素除去装置は、上記炭素デポジットを前記少なくとも1つの表面から掻き落とすよう配置されたプランジャを含むことを特徴とする実施態様項1記載のシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
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図24C
【国際調査報告】