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特表2024-520679宿根かすみ草を含む脱毛防止及び発毛促進用の組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】宿根かすみ草を含む脱毛防止及び発毛促進用の組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/36 20060101AFI20240517BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20240517BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20240517BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20240517BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20240517BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20240517BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K36/36
A61Q7/00
A61K8/9789
A61Q5/02
A61Q5/06
A61Q5/12
A61Q5/10
A61Q5/04
A61P17/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574494
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 KR2022007793
(87)【国際公開番号】W WO2022255799
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0071137
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ユン-ホ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ-ヨン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ-ユン・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン-ファ・イ
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC692
4C083AD282
4C083CC05
4C083CC07
4C083CC33
4C083CC34
4C083CC36
4C083CC37
4C083CC38
4C083DD08
4C083DD17
4C083DD21
4C083DD22
4C083DD30
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE22
4C088AB12
4C088CA03
4C088MA13
4C088MA16
4C088MA28
4C088MA43
4C088NA14
4C088ZA92
(57)【要約】
本発明は、毛髪成長の促進を誘導する成分を含有する脱毛防止及び発毛促進用の組成物に関する。本発明の脱毛防止及び毛髪成長促進用の組成物は、有効成分として含まれた宿根かすみ草抽出物によって男性ホルモンの活性を抑制して毛嚢成長因子遺伝子の発現を促進することで、脱毛防止及び毛髪成長促進の効果が優秀である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿根かすみ草抽出物を有効成分として含む脱毛防止または毛髪成長促進用の組成物。
【請求項2】
前記有効成分の含量が、組成物の総重量に対して0.001~10重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の脱毛防止または毛髪成長促進用の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、男性ホルモンの活性を抑制する、請求項1に記載の脱毛防止または毛髪成長促進用の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、毛嚢成長因子遺伝子の発現を増進する、請求項1に記載の脱毛防止または毛髪成長促進用の組成物。
【請求項5】
前記組成物が医薬組成物である、請求項1に記載の脱毛防止または毛髪成長促進用の組成物。
【請求項6】
前記組成物が医薬部外品用の組成物である、請求項1に記載の脱毛防止または毛髪成長促進用の組成物。
【請求項7】
前記組成物が化粧料組成物である、請求項1に記載の脱毛防止または毛髪成長促進用の組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の脱毛防止または毛髪成長促進用の組成物を含む、ヘアーまたは頭皮用の製品。
【請求項9】
前記製品が、発毛剤、頭皮クレンジング剤、頭皮スケーリング剤、頭皮マッサージ剤、頭皮ケア剤、洗浄剤、シャンプー、トニック、ヘアコンディショナー、ヘアローション、ゲル、パック、クリーム、エッセンス、パウダー、スプレー、オイル、石けん、軟膏、ヘアスタイリング剤、染毛剤及びパーマ剤からなる群より選択される、請求項8に記載のヘアーまたは頭皮用の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪成長促進のための組成物に関し、毛髪の新規成長または成長促進を誘導する成分を含む毛髪成長促進のための脱毛防止及び発毛促進用の組成物に関する。
【0002】
本出願は、2021年6月1日出願の韓国特許出願第10-2021-0071137号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
最近、美容に対する関心がますます高まるにつれ、毛髪も重要な部分を占めている。毛髪は、皮膚の表面で産生され、細く角化した構造である。これは、外部衝撃に対するクッションの役割と共に、直射日光、寒冷、摩擦、危険などの外部刺激から人体を保護し、身体に有害なヒ素、水銀、亜鉛などの重金属を体外へ排出するように機能し、現代には、装飾のような美容的な面においても強調されている。しかし、食生活の変化や内外的ストレスの増加などの多様な原因によって脱毛を訴える人が増加しつつある。脱毛は、遺伝的要因が最も主な原因として作用すると知られているが、前述したように社会的ストレスの増加、環境汚染、頻繁なパーマとヘアカラー及び正しくない頭皮管理も脱毛の原因として挙げられている。
【0004】
ヒトの毛髪は、約10~15万本程度であり、各々の毛髪は相異なる成長周期を有する。発生初期の毛嚢(hair follicle)の形成は、β-カテニン(β-catenin)の作用によって基底層の上皮細胞によってプラコード(placode)が形成される(Sarah E. Miller, 2002)。形成されたプラコードから信号を受けた真皮線維芽細胞が皮膚凝縮物(dermal condensate)を形成する。それと共にプラコードは、真皮方向へ成長、陥入して皮膚凝縮物と合わせられて一次毛芽(primary hair germ)を形成する。毛芽を形成した上皮細胞は、発生する真皮方向へ長く成長し、多層からなる長い棒状の構造物である毛杭(hair peg)を形成すると共に、皮膚凝縮物は球状の毛乳頭(dermal papilla)に形成される。毛杭の先は次第に厚くなって毛球(hair bulb)が形成され、毛球は、毛乳頭を囲む形態になって毛嚢が完成され、毛嚢内部の上皮細胞が分化して毛髪が生成される。
【0005】
初めて生成された毛髪は、成長期の時期を経て退行期、休止期に進み、その後、毛髪が脱落してからさらに成長期に戻る周期を反復する。毛髪成長周期は3段階で構成され、毛髪が最も活発に成長する成長期(anagen stage)、毛髪の退化が始まる退行期(catagen stage)及び毛髪の成長が止まるか、または休息に入る休止期(telogen stage)に分類される。
【0006】
このような毛髪成長周期の調節において、毛嚢を構成する毛乳頭細胞及び毛嚢幹細胞を含む外毛根鞘細胞(outer root sheath cell)の活性、及びこれらの細胞で生産される多様なサイトカイン及び成長因子が重要な役割を果たすと知られている。FGF、VEGFまたはIGF-1などの成長因子は、毛髪の成長期を促進すると知られており、TGFb-1またはEGFなどは毛嚢の退行期を誘導する成長因子として知られている。
【0007】
通常、脱毛症とは、このような周期において、成長期の毛髪の割合が少なくなり、退行期または休止期の毛髪が多くなって、非正常に毛髪の脱落数が多くなることを称する。脱毛は、正常な現象であるが、正常な人が成長期の毛髪が多い一方、通常の脱毛症(Alopecia)の人は、休止期の毛髪が多く肉眼で見える脱毛現象を現すようになる。脱毛症の人の特徴は、毛髪の小型化にある。脱毛が進むほど、成長期の期間が短くなって退行期、休止期への移行が促進され、次いで毛乳頭の体積が小さくなって毛嚢がますます小型化する。したがって、脱毛の治療のためには、休止期状態の毛嚢を成長期へ速やかに行かせ、短くなった成長期を延ばすことが重要である。
【0008】
なお、最も多い脱毛患者が属している脱毛症である男性型脱毛症は、「アンドロゲン性脱毛症」とも呼ばれる。男性型脱毛症は、平均的に20~30代の若い男性によく現われる。これは、アンドロゲン性脱毛症が遺伝的影響のみならず、男性ホルモンの作用及び年齢によって左右されるためである。男性型脱毛症の脱毛発生の主な原因は、男性ホルモンであるテストステロンとして研究されており、脱毛斑の形態と進行状態によって多様に分けられる。テストステロンによる男性型脱毛症は、男性ホルモンと活性酵素である5α-レダクターゼの結合によって発生したジヒドロテストステロン(DHT:Dihydro-testosterone)が毛嚢に作用して細胞分裂を抑制し、毛髪の成長を阻害することから発生する。
【0009】
活性酵素である5α-レダクターゼが頭皮に分布する様相によって脱毛の形態が相違に現われる。活性酵素が多く分布する脳天部位は、DHTの影響で細胞分裂が鈍化して毛髪の毛周期が短くなり、毛髪の軟毛化と脱毛現象が現われるが、側頭部や後頭部の場合には、相対的に活性酵素の活性度が弱く、女性ホルモンの影響を受けて脱毛が現れにくい。現在、男性型脱毛の管理法としては、植毛手術または薬物療法などが活用されている。
【0010】
前述したように、脱毛の原因には、男性ホルモン過剰、皮脂過剰分泌、血液循環不良、過酸化物や細菌などによる頭皮機能低下、遺伝的要因、老化、ストレスなどが提起されてきたが、脱毛の原因は現在まで明確に知られていない状態であり、非常に複雑な要因がからんでいると知られている。
【0011】
このように多様かつ複雑な脱毛原因に対し、現在まで知られた脱毛防止製品には、有効成分として、血行促進、毛根機能強化、頭皮保湿効果、ふけ防止効果、抗酸化効果、毛髪成長期延長効果、または男性ホルモン作用抑制などを目的とする成分などが含まれているが、効果の面で著しい効果を奏するものは未だに存在しない状態であり、副作用の問題が提起されることもある。
【0012】
現在、米国食品医薬品局(FDA)から承認を受けた塗布剤の脱毛治療剤は、ミノキシジル(2,4-diamino-6-piperidinopyrimidine-3-oxide)が唯一であるが、32週~48週の使用時、その効果が各々38%及び13%であって満足できない実情(J Am Acad Dermatol.2002.47(3))であり、前髪には効果が劣るという短所がある。また、経口用の脱毛治療剤であるフィナステリドは、副作用または使用上の注意事項から使用に多い制約がある。
【0013】
宿根かすみ草(Gypsophila paniculata)は、地中海沿岸が原産地であって、ナデシコ科(Caryophyllaceae)に属し、耐寒性が強く、多年草である。宿根かすみ草は、多数の枝に小さな花を多数咲かせ、宿根かすみ草の根は長く生き残るという特徴がある。宿根かすみ草の根は、皮膚のコンディショニング、鎮静または老廃物除去の効果があると知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】J Am Acad Dermatol.2002.47(3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、優秀な脱毛防止及び/または毛髪成長効果を奏する脱毛防止または毛髪成長促進用の組成物を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、前記脱毛防止または毛髪成長促進用の組成物を含む毛髪または頭皮用の製品を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、従来の脱毛治療剤の副作用及び使用上の注意事項などの問題点を改善し、脱毛防止/養毛剤の発毛促進効果が微々たるなどの短所なく、人体に安全でありながらも毛髪成長及び発毛促進に効果的に作用する組成物を開発するために鋭意努力をした結果、宿根かすみ草抽出物が脱毛防止及び毛髪成長促進に著しく優秀な効果を奏することを見出した。
【0018】
具体的には、本発明者は、インビトロ(in-vitro)実験によって、宿根かすみ草抽出物が、脱毛を起こす男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)の活性を顕著に抑制することを確認した(実験例1)。また、本発明者は、インビトロ実験によって、宿根かすみ草抽出物が毛嚢成長因子マーカーであるFGF2、FGF7、VEFG遺伝子の発現を著しく増加させることを確認した(実験例2)。また、本発明者は、宿根かすみ草抽出物を含む脱毛治療用の組成物を脱毛症患者に処理した場合、毛髪の太さ、密集程度及び弾力性を改善するのに顕著に優秀な効果を奏することを確認した。追加的に、市販の製品であるミノキシジルと比較して実験した結果、本発明の宿根かすみ草抽出物を含む脱毛治療用の組成物の脱毛防止及び発毛効果がミノキシジルよりも遥かに優秀であることを確認した(実験例3)。
【0019】
本発明は、宿根かすみ草抽出物を有効成分として含む脱毛防止または毛髪成長促進用の組成物を提供する。望ましくは、前記宿根かすみ草抽出物は、宿根かすみ草の根抽出物であり得る。本発明において、前記宿根かすみ草抽出物は、当業界における公知の方法によって抽出可能であり、その方法は特に限定されない。または、市販の抽出物を用いてもよい。
【0020】
本発明の一様態において、前記宿根かすみ草抽出物は、宿根かすみ草を水及び/または有機溶媒で抽出して得た抽出物を使用することができ、前記有機溶媒は、極性有機溶媒、非極性有機溶媒またはこれらの混合溶媒であり得る。前記極性有機溶媒は、炭素数1~5の低級アルコール、エチルアセテートまたはアセトンなどであり得る。非極性有機溶媒は、エーテル、クロロホルム、ベンゼン、核酸またはジクロロメタンなどであり得る。例えば、前記炭素数1~5の低級アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたはイソプロパノールなどであり得る。
【0021】
本発明の一様態で、前記宿根かすみ草抽出物は、前述した抽出溶媒を用いて抽出された一次抽出物を極性の異なる他の抽出溶媒を用いて分画した分画物を含み得る。例えば、宿根かすみ草抽出物は、炭素数1~5のアルコールで抽出した後、エーテル、ベンゼン、ヘキサンなどの極性の異なる他の溶媒でさらに分画した分画物であり得る。前記分画時の溶媒は、二種以上が使用可能であり、溶媒の極性によって順次に使用するか、または混合して使用することで各溶媒抽出物を製造し得る。
【0022】
本発明の一様態で、前記製造された抽出物または前記分画過程を行って得られた分画物に対して、濾過するか、或いは濃縮または乾燥過程を行って溶媒を除去することでき、前記濾過、濃縮及び乾燥を全部行い得る。具体的には、前記濾過は、濾過紙を用いるか、または減圧濾過器を用い得る。濃縮は、減圧濃縮器などを用いて減圧濃縮し得る。乾燥は、凍結乾燥法を行い得る。なお、前記製造された抽出物または前記分画過程を経て得た分画物に対して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーまたは高性能液体クロマトグラフィーなどの多様なクロマトグラフィーを用いて精製することでさらに精製された分画を得ることができる。
【0023】
本発明の一様態において、本発明の脱毛防止または毛髪成長促進用の組成物の有効成分として含まれる宿根かすみ草抽出物の含量は、組成物の総重量に対して0.0001~10重量%、望ましくは0.001~5重量%、より望ましくは0.1~2重量%であり得る。本発明において、前記宿根かすみ草抽出物が組成物の総重量の0.0001~10重量%である場合、インビトロでまたは臨床的に脱毛防止及び毛髪成長促進に優秀な効果を奏することが現われた。前記宿根かすみ草抽出物が0.0001重量%未満である場合には、毛髪成長誘導促進効果が微々たるものとなり、10重量%超過する場合には、剤形の安定性が阻害されるという問題点が発生し得る。より望ましくは、前記宿根かすみ草抽出物の含量は、組成物の総重量に対して0.5~2重量%であり、最も望ましくは1~2重量%であり得る。本発明においては、宿根かすみ草抽出物が前記含量範囲であるときに発毛促進及び脱毛防止の効能が著しく優秀であることを実験から確認した。
【0024】
本発明の一様態において、本発明の脱毛防止または毛髪成長促進用の組成物は、医薬組成物、医薬部外品用の組成物、または化粧料組成物として使用され得る。本発明の組成物は、通常皮膚に適用可能な如何なる形態にも剤形化できるが、望ましくは、皮膚外用剤の形態に剤形化できる。本発明の組成物は、例えば、液状、クリーム状、ペースト状または固状など、皮膚に適用可能な剤形に製造できる。
【0025】
本発明の宿根かすみ草抽出物は、前記組成物または剤形に脱毛防止剤または毛髪成長促進剤として含まれ得る。
【0026】
本発明の剤形が液状である場合には、担体成分として、溶媒、可溶化剤または乳濁化剤などが使われ得、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルなどが使われ得る。
【0027】
本発明の剤形が、ペースト、クリームまたはゲルである場合には、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、でん粉、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルクまたは酸化亜鉛などが使われ得る。
【0028】
本発明の剤形がパウダーまたはスプレーである場合には、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケートまたはポリアミドパウダーなどが用いられ得る。特に、スプレー剤形である場合には、クロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルなどのような推進体をさらに含み得る。
【0029】
本発明の組成物に含まれる成分は、宿根かすみ草抽出物の他に、皮膚に適用可能な外用剤に通常使用される成分を含み得る。例えば、水、界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、キレート剤、殺菌剤、酸化防止剤、防腐剤、色素及び香料などからなる群より選択される一つ以上の添加剤をさらに含み得る。
【0030】
なお、本発明は、前記脱毛防止または毛髪成長促進用の組成物を含む毛髪または頭皮用製品を提供する。前記毛髪または頭皮用製品は、発毛剤、頭皮クレンジング剤、頭皮スケーリング剤、頭皮マッサージ剤、頭皮ケア剤、洗浄剤、シャンプー、トニック、ヘアコンディショナー、ヘアローション、ゲル、パック、クリーム、エッセンス、パウダー、スプレー、オイル、石けん、軟膏、ヘアスタイリング剤、染毛剤及びパーマ剤からなる群より選択されるいずれか一つであり得るが、これらに限定されない。
【0031】
本発明の一様態で、前記脱毛防止または毛髪成長促進用の組成物は、ヘアトニックまたはヘアローションの剤形に製造され得る(製造例1、2)。
【0032】
本発明の脱毛防止または毛髪成長促進用の組成物は、望ましくは、皮膚に直接塗布するか、または散布するなどの経皮投与の方法で使われ得る。
【0033】
また、本発明は、宿根かすみ草抽出物を有効成分として含む脱毛防止または毛髪成長促進用の組成物を患者(subject)に投与する段階を含む脱毛防止または毛髪成長促進方法を提供する。本発明の一様態で、前記脱毛防止または毛髪成長促進方法は、前記脱毛防止または毛髪成長促進用の組成物を患者の頭皮または毛髪に処理する段階を含み得る。
【0034】
本発明において使用される用語、「投与」は、任意の適切な方法で本発明の組成物を導入することを意味する。本発明の組成物の投与経路は、目的とする組織に到達可能であれば、任意の一般的な経路によっても投与可能である。望ましくは、経皮投与可能であり、その中でも局所塗布が最も望ましい。本発明の組成物の適用回数は、処方、必要または所望に応じて決定可能である。
【0035】
本発明の脱毛防止または毛髪成長促進用の組成物の使用量は、年齢、病変の程度などの個人差や剤形によって適切に調節でき、通常、1日1回ないし数回、適量を頭皮に塗布し、一週間~数ヶ月間使用することが望ましい。本発明の実験例においては、脱毛治療用の組成物1を一週に7回ずつ6ヶ月間使用した結果、優秀な毛髪成長促進効果を奏したことを確認した(実験例3)。
【0036】
本発明に記載した全ての成分は、望ましくは、韓国、中国、アメリカ、ヨーロッパ、日本などの関連法規、規範(例えば、化粧品安全基準などに関する規定(韓国)、化粧品安全技術規範(中国)、食品公典(韓国)、食品添加物公典(韓国)、健康機能食品公典(韓国)などで規定した最大使用値を超過しない。即ち、望ましくは、本発明による医薬組成物、医薬部外品用の組成物、または化粧料組成物は、各国の関連法規、規範で許容する含量の限度で本発明による成分を含む。
【発明の効果】
【0037】
本発明の脱毛防止及び毛髪成長促進用の組成物は、有効成分として含まれた宿根かすみ草抽出物によって、男性ホルモンの活性を抑制し、毛嚢成長因子遺伝子の発現を促進することで、脱毛防止及び毛髪成長促進の効果が優秀である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】宿根かすみ草抽出物を処理したとき男性ホルモン活性抑制効果を示したグラフである。
図2】宿根かすみ草抽出物を処理したときの細胞活性度を示したグラフである。
図3】宿根かすみ草抽出物を処理したときのFGF2遺伝子発現を示したグラフである。
図4】宿根かすみ草抽出物を処理したときのFGF7遺伝子発現を示したグラフである。
図5】宿根かすみ草抽出物を処理したときのVEGF遺伝子発現を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は他の多様な形態に変更可能であり、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は本発明が属する分野において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例
【0040】
実験例1:男性ホルモン抑制活性評価
本実験では、アンドロゲン受容体陽性の22Rv1ヒト前立腺癌細胞株に、二つのアンドロゲン反応因子と蛍ルシフェラーゼ(firefly luciferase)レポーター遺伝子を含んでいるpGL4.36-MMTV-Lucベクターを永久的に形質注入して駆逐した安定化細胞株(stable cell line)を使用した。前記安定細胞株は、RPMI1640と10%のウシ胎児血清(Fetal bovine serum)(Gibco BRL,Gaithersburg,MD,USA)を使用して継代培養によって維持した。転写活性化試験法のために、96-ウェルプレートにウェル当たり25,000個の細胞を播種し、5%のチャコール処理ウシ胎児血清(charcoal-stripped fetal bovine serum)が含まれたフェノールレッド不含(phenol-red free)のRPMI1640で培養液を入れ替えた。その後、48時間37℃のインキュベーターで培養した後、宿根かすみ草の根抽出物(Gypsophila paniculata Root Extract;GPRE)を1 nM DHTと共に処理した。その後、24時間を培養し、ルシフェラーゼ分析システム(Luciferase assay system)(Promega)を用いてDHTによって増加したルシフェラーゼ活性が抑制される程度を測定した。結果の値は、無処理対照群から確認された発光酵素の活性度(Luminescence)値の平均量を1とし、1 nM DHT処理群及び1 nM DHTと宿根かすみ草の根抽出物との共処理(co-treatment)によって発現された発光酵素の活性度値を無処理対照群に対する倍率変化(Fold change)で示した。抗アンドロゲン陽性対照群としては、ビカルタミド(bicalutamide)(casodex)を使用した。また、物質処理による細胞毒性を確認するためにCCK-8分析を並行して細胞活性度を評価した。CCK-8試薬を培養液に1:10で処理し、2時間インキュベートした。2時間後、各ウェルの吸光度(absorbance)を450nmで測定した。全ての実験は、3回ずつ繰り返して吸光度値の平均を求め、1 nM DHT処理群の値を100%にして、それに対する処理群の値を求めた。
【0041】
宿根かすみ草の根抽出物の男性ホルモン抑制活性を評価した結果を表1及び図1に示し、細胞活性度を評価した結果を表2及び図2に示した。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
前記実験結果から、宿根かすみ草抽出物は、男性ホルモン(DHT)の活性抑制効果が遥かに優秀であることを確認することができた。
【0045】
実験例2:毛嚢成長因子遺伝子発現評価
本実験では、ヒト毛乳頭細胞(human dermal papilla cells;hDPCs)を用いて毛嚢成長因子マーカーであるFGF2、FGF7、VEGFの遺伝子発現増加を確認した。ヒト毛乳頭細胞は、プロモセル(PromoCell)社から購入した。前記hDPCsを培養液添加剤(Supplement Mix;PromoCell,Heidelberg,Germany)、ペニシリン100unit/mL及びストレプトマイシン100μg/mLが含まれたhDPCs専用培養液(Follicle Dermal Papilla Cell Growth Medium;PromoCell,Heidelberg,Germany)で37℃、5%COの条件下で継代培養した。培養したhDPCsを60mm細胞培養ディッシュに15万個ずつ播種した後、37℃のインキュベーターで培養した。24時間後、1%ウシ胎児血清と1ng/mlのbFGFが含まれたDMEMに培養液を入れ替える。24時間後、宿根かすみ草の根抽出物(GPRE)を各々20、40、80μg/mlで処理し、実験の対照群としてはミノキシジル(Minoxidil)10μMを処理した。24時間処理して細胞を得た後、RNeasy mini kit(Qiagen)を用いてRNA抽出を行った。その後、cDNA 合成キット(cDNA synthesis kit)(PhileKorea)を用いてcDNAを合成した後、Applied Biosystems StepOnePlus装備を用いてリアルタイムPCRを行った。各実験群の遺伝子発現はGAPDH発現量に補正し、無処理対照群に対する倍率変化(Fold change)で示した。各々の毛嚢成長因子遺伝子の発現量を評価した結果を表3及び図3図5に示した。
【0046】
【表3】
【0047】
前記実験結果から、宿根かすみ草抽出物は、毛嚢成長因子であるFGF2、FGF7、VEGF遺伝子の発現を遥かに促進することを確認することができた。
【0048】
製造例1:脱毛防止及び発毛促進用のヘアトニック組成物の製造
宿根かすみ草の根抽出物を含む実施例1及び実施例2のヘアトニック組成物を下記の表4に示された処方にしたがって通常の方法で製造した。比較例1は別の有効成分を含んでおらず、比較例2はミノキシジルを含んでいる。
【0049】
【表4】
【0050】
製造例2:脱毛防止及び発毛促進用のヘアローション組成物の製造
宿根かすみ草の根抽出物を含むヘアローション組成物を下記の表5に示された処方にしたがって通常の方法で製造した。
【0051】
【表5】
【0052】
前記ヘアトニックまたはヘアローションのような剤形は、本発明の毛髪成長促進用の組成物の例示であるだけであり、本発明の組成物の範囲がこれらの剤形のみに限定されないということは当業界における通常の知識を持った者に自明であろう。
【0053】
実験例3:脱毛防止及び発毛促進用のヘアトニック組成物の発毛効果確認実験
本実験は、毛髪の数が正常な場合に比べて顕著に少ないか、または脱毛症状のある毛髪の弱い男女総44人を対象にし、各々11人ずつ4個のグループに分けて行った。前記製造例1に開示された比較例1、比較例2、実施例1、実施例2のヘアトニック組成物を一週に7回ずつ6ヶ月間各実験群の毛髪及び頭皮に使用した。
【0054】
ヘアトニック組成物の使用前後の臨床写真撮影によってフォトトリコトグラム評価を行い、単位面積当たりの毛髪数と厚さを測定した。比較例1、比較例2、実施例1または実施例2のヘアトニック組成物を塗布する前及び6ヶ月後の単位面積当たりの毛髪数及び毛髪厚さを測定し、その結果を表6に示した。
【0055】
【表6】
【0056】
前記ヘアトニック組成物を使用した後、毛髪の太さ、密集程度、弾力性、全体評価の項目に対して改善程度(非常によくなった:+3、よくなった:+2、少しよくなった:+1、変化なし:0、少し悪くなった:-1、悪くなった:-2、非常に悪くなった:-3)を6ヶ月経過後に使用者に問診して平均値として判定し、その結果を表7に示した。
【0057】
【表7】
【0058】
前記結果から分かるように、宿根かすみ草抽出物を含む実施例1、2は、宿根かすみ草抽出物を含んでいない比較例1またはミノキシジルを含む比較例2よりも高い脱毛防止及び毛髪成長の効果を奏することを確認することができた。このことから、宿根かすみ草抽出物を有効成分として含む本発明の脱毛防止及び毛髪成長促進用の組成物が脱毛治療に非常に効果的に使用可能であることを立証した。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】