(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】VEGFとAng2に結合する二重特異性結合分子およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/22 20060101AFI20240517BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240517BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240517BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240517BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240517BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240517BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240517BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240517BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240517BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240517BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240517BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240517BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240517BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240517BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C07K16/22 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P27/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K38/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574547
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 CN2022096848
(87)【国際公開番号】W WO2022253314
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】202110623779.2
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519274183
【氏名又は名称】イノベント バイオロジクス(スーチョウ)カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100225598
【氏名又は名称】桐島 拓也
(72)【発明者】
【氏名】リー イーミン
(72)【発明者】
【氏名】フー スーイー
(72)【発明者】
【氏名】チン ホア
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
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4B065AB01
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4C084NA05
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4C084ZA332
4C084ZC75
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4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA21
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、それぞれ血管内皮増殖因子(VEGF/VEGF-A)とアンジオポエチン-2(ANG-2)に対する抗体、同時に血管内皮増殖因子(VEGF/VEGF-A)とアンジオポエチン-2(ANG-2)に対する二重特異性結合分子(例えば、抗体)、およびそれらの製造方法、ならびに前記抗体または分子を含む医薬組成物およびそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗Ang2のVHH抗体であって、HCDR1、HCDR2およびHCDR3の3つのCDRを含み、ここで、
HCDR1は、配列番号16に示される配列を含むかまたはそれからなり、
HCDR2は、配列番号17もしくは配列番号20に示される配列を含むかまたはそれからなり、
HCDR3は、配列番号18に示される配列を含むかまたはそれからなる、VHH抗体。
【請求項2】
前記VHHは、
(1)配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸からなり、あるいは、
(2)配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のVHH抗体。
【請求項3】
VEGF AおよびAng2に結合する二重特異性結合分子であって、VEGF Aに特異的に結合する第1の標的結合領域と、Ang2に特異的に結合する第2の標的結合領域とを含み、ここで、第2の標的結合領域は、請求項1または2に記載のVHH抗体であり、
任意に、第1の標的結合領域は、
VEGF Aに特異的に結合するVHH、
VEGF Aに特異的に結合する抗体の抗原結合断片、例えばscFv、例えば、前記抗体は完全ヒト抗体またはヒト化抗体であり、あるいは、
VEGF Aに特異的に結合するVEGF受容体(VEGF R)またはその細胞外ドメイン、またはその細胞外ドメインを含む融合タンパク質、例えば、その細胞外ドメインとFcとの融合タンパク質から選択される、二重特異性結合分子。
【請求項4】
二重特異性抗体である、請求項3に記載の二重特異性結合分子。
【請求項5】
二価、三価または四価である、請求項3または4に記載の二重特異性結合分子。
【請求項6】
以下の構造:
抗VEGF抗体の軽鎖可変領域VL-リンカー-抗VEGF抗体の重鎖可変領域VH-リンカー-抗Ang2 VHH、または
抗VEGF抗体の重鎖可変領域VH-リンカー-抗VEGF抗体の軽鎖可変領域VL-リンカー-抗Ang2 VHH、を有する、請求項4または5に記載の二重特異性結合分子。
【請求項7】
抗VEGF抗体の軽鎖可変領域VLは、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、ここで、LCDR1は、配列番号31に示される配列を含むかまたはそれからなり、LCDR2は、配列番号32に示される配列を含むかまたはそれからなり、LCDR3は、配列番号33に示される配列を含むかまたはそれからなり、かつ/または、
抗VEGF抗体の重鎖可変領域VHは、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含み、ここで、HCDR1は、配列番号35に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2は、配列番号36に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR3は、配列番号37に示される配列を含むかまたはそれからなる、請求項6に記載の二重特異性結合分子。
【請求項8】
抗VEGF抗体の重鎖可変領域VHは、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号34に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号34に示されるアミノ酸からなり、あるいは、前記重鎖可変領域VHは、配列番号34に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含み、
抗VEGF抗体の軽鎖可変領域VLは、配列番号30に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号30に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号30に示されるアミノ酸からなり、あるいは、前記軽鎖可変領域VLは、配列番号30に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む、請求項6または7に記載の二重特異性結合分子。
【請求項9】
(1)前記結合分子は、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号28に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号28に示されるアミノ酸からなり、あるいは、
(2)前記二重特異性結合分子は、配列番号28に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子。
【請求項10】
以下の構造:
第1の抗VEGF VHH-リンカー-第2の抗VEGF VHH-リンカー-抗Ang2 VHHを有し、
ここで、第1の抗VEGF VHHおよび第2の抗VEGF VHHは、同じであるか、または異なる、請求項4または5に記載の二重特異性結合分子。
【請求項11】
第1の抗VEGF VHHまたは第2の抗VEGF VHHはHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、ここで、
HCDR1は、配列番号1に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2は、配列番号2に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR3は、配列番号3に示される配列を含むかまたはそれからなり、
あるいは、
HCDR1は、配列番号6に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2は、配列番号7もしくは配列番号10に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR3は、配列番号8に示される配列を含むかまたはそれからなる、請求項10に記載の二重特異性結合分子。
【請求項12】
第1の抗VEGF VHHまたは第2の抗VEGF VHHは、配列番号4、配列番号5、配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号4、配列番号5、配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号4、配列番号5、配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸からなり、あるいは、前記VHHは、配列番号4、配列番号5、配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む、請求項10または11に記載の二重特異性結合分子。
【請求項13】
(1)前記結合分子は、配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号22に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号22に示されるアミノ酸からなり、あるいは、
(2)前記二重特異性結合分子は、配列番号22に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子。
【請求項14】
以下の鎖:
VEGF R細胞外ドメイン-Fc-リンカー-抗Ang2 VHH、の1本または2本を含む、請求項3に記載の二重特異性結合分子。
【請求項15】
前記VEGFR細胞外ドメインは、ヒト由来のVEGFRの細胞外ドメインであり、好ましくは、前記VEGFR細胞外ドメインは、VEGFR1第2の抗体様ドメインおよびVEGFR2第3の抗体様ドメインを含み、より好ましくは、前記VEGFR細胞外ドメインは、ヒトVEGFR1第2の抗体様ドメインおよびヒトVEGFR2第3の抗体様ドメインを含む、請求項14に記載の二重特異性結合分子。
【請求項16】
前記VEGFR細胞外ドメインは、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号26に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号26に示されるアミノ酸からなる、請求項14または15に記載の二重特異性結合分子。
【請求項17】
前記Fcは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来するFcであり、好ましくは、前記Fcは、配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号27に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号27に示されるアミノ酸からなる、請求項14~16のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子。
【請求項18】
前記VEGF R細胞外ドメイン-Fcは、VEGF R細胞外ドメインとFcとの融合タンパク質、例えば、アフリベルセプト(Aflibercept)またはその誘導体であり、例えば配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号25に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号25に示されるアミノ酸からなる、請求項14~17のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子。
【請求項19】
(1)前記結合分子は、配列番号24に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号24に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号24に示されるアミノ酸からなり、あるいは、
(2)前記二重特異性結合分子は、配列番号24に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む、請求項14~18のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子。
【請求項20】
前記リンカーは、配列番号23のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、請求項3~19のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子。
【請求項21】
抗VEGF AのVHH抗体であって、HCDR1、HCDR2およびHCDR3の3つのCDRを含み、ここで、
HCDR1は、配列番号1に示される配列を含むかまたはそれからなり、
HCDR2は、配列番号2に示される配列を含むかまたはそれからなり、
HCDR3は、配列番号3に示される配列を含むかまたはそれからなり、
あるいは、
HCDR1は、配列番号6に示される配列を含むかまたはそれからなり、
HCDR2は、配列番号7もしくは配列番号10に示される配列を含むかまたはそれからなり、
HCDR3は、配列番号8に示される配列を含むかまたはそれからなる、VHH抗体。
【請求項22】
(1)配列番号4、配列番号5、配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号4、配列番号5、配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号4、配列番号5、配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸からなり、あるいは、
(2)配列番号4、配列番号5、配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む、請求項21に記載のVHH抗体。
【請求項23】
請求項1、2、21および22のいずれか一項に記載のVHH抗体、または請求項3~20のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子もしくは前記結合分子の鎖をコードする、核酸分子。
【請求項24】
請求項23に記載の核酸分子を含む発現ベクターであって、好ましくは、前記発現ベクターはpcDNA3.1である、発現ベクター。
【請求項25】
請求項23に記載の核酸分子または請求項24に記載の発現ベクターを含む宿主細胞であって、好ましくは、前記宿主細胞は原核のものまたは真核のもの、例えば大腸菌細胞などの細菌、例えばTG1、または293細胞、例えば293FもしくはExpi-293細胞である、宿主細胞。
【請求項26】
請求項1、2、21および22のいずれか一項に記載のVHH抗体、または請求項3~20のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子を製造するための方法であって、前記方法は、前記VHH抗体または二重特異性結合分子もしくはその鎖の発現に適した条件下で、請求項25に記載の宿主細胞を培養すること、および任意に前記宿主細胞(または宿主細胞培地)から前記VHHまたは二重特異性結合分子を回収することを含む、方法。
【請求項27】
請求項1、2、21および22のいずれか一項に記載のVHH抗体、または請求項3~20のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子を含む、免疫複合体。
【請求項28】
請求項1、2、21および22のいずれか一項に記載のVHH抗体、または請求項3~20のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子、および任意に1つまたは複数の他の治療剤、および任意に薬用補助材料を含む、医薬組成物または製剤。
【請求項29】
対象における眼疾患を予防または治療するための方法であって、有効量の請求項1、2、21および22のいずれか一項に記載のVHH抗体、または請求項3~20のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子、請求項27に記載の免疫複合体、または請求項28に記載の医薬組成物もしくは製剤を対象に投与することを含む、方法。
【請求項30】
前記眼疾患は、血管新生に関連する眼疾患、例えば、角膜血管新生に関連する眼疾患から選ばれる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記患者は、(例えばレベルが上昇したもの、例えば核酸やタンパク質レベルの)VEGF、例えばVEGF A、および/またはAng2を有する、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記方法は、患者に1種または複数種の療法、例えば、治療方式および/または他の治療剤を投与することをさらに含む、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ血管内皮増殖因子(VEGF/VEGF-A)とアンジオポエチン-2(ANG-2)に対する抗体、同時に血管内皮増殖因子(VEGF/VEGF-A)とアンジオポエチン-2(ANG-2)に対する二重特異性結合分子(例えば、抗体)、およびそれらの製造方法、ならびに前記抗体または分子を含む医薬組成物およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血管新生は、固形腫瘍、眼内血管新生に関連する疾患、関節リウマチおよび乾癬を含む様々な疾患の病因に関与する。
【0003】
VEGFは、有効かつ遍在する血管成長因子である。VEGFファミリーメンバーには、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、胎盤成長因子(PIGF)、および内分泌腺由来VEGF(EG-VEGF)が含まれる。VEGFの活性型は、他のVEGFファミリーメンバーとともにホモ二量体またはヘテロ二量体として合成される。VEGF-Aは、選択的スプライシングによって生成される6つのアイソフォーム、VEGF121、VEGF145、VEGF165、VEGF183、VEGF189、およびVEGF206で存在する。これらのアイソフォームは、主にその生物学的利用可能性によって異なり、VEGF165は主なアイソフォームである。VEGFは、正常な血管新生と疾患に関連する血管新生の重要な調節因子であると考えられている。
【0004】
VEGFファミリーに加えて、ヒトアンジオポエチンも血管の発達と出生後の血管新生に関与していると考えられている。ヒトアンジオポエチンには、天然に存在するアゴニストであるアンジオポエチン-1(ANG-1)と天然に存在するアンタゴニストであるアンジオポエチン-2(ANG-2)が含まれる。ANG-1の役割は、成人において保存されており、成人において広範かつ構成的に発現されると考えられている。対照的に、ANG-2の発現は主に血管リモデリングの部位に限定されており、ANG-1の構成的安定化または成熟化機能を遮断し、これにより、血管が発芽シグナルに対してより応答性を有し得る可塑性状態に戻り、その可塑性状態を維持することを可能にすると考えられている。
【0005】
近年、VEGF-AおよびANG-2を標的とするいくつかの二重特異性抗体がすでに開発されている(例えば、WO2012131078およびWO2014009465)。しかしながら、既存の二重特異性抗体は、VEGFおよびAng2に対する遮断性が比較的弱く、かつ分子量が大きすぎるため、単回投与時のモル濃度が低くなる。特に、眼疾患に対しては、通常、より低分子量の抗体を硝子体内投与する方法が用いられ、かつより少ない投与頻度が必要とされる。したがって、特に眼疾患に適用され、VEGF-AおよびANG-2を標的とする新しい二重特異性結合分子が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、VEGF-AまたはANG-2を標的とする新しいVHH抗体、および同時にVEGF-AとANG2に対する二重特異性結合分子を開発する。特に、本発明の二重特異性結合分子は、既知の抗体と比較して、より低い分子量を有し、同じ質量濃度においてより高いモル濃度を有し、かつ比較的強力なVEGF AおよびAng2遮断活性有し、VEGFA誘導性初代細胞増殖を完全に遮断することができる。したがって、本発明の分子は、臨床的により強力な遮断活性を有し、かつ単回投与時の抗体モル濃度をより高くし、単回投与の薬効をより長期間維持し、眼内投与(例えば、硝子体腔内注射)の頻度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】ELISAで測定された抗VEGF A VHH抗体がVEGF AのVEGFR2への結合を遮断し得ることを示す。
【
図3】ELISA法で測定されたヒト化抗anti-Ang2 VHH抗体がAng2のTie2への結合を遮断する作用を示す。
【
図4】ELISA法で測定された、抗Ang2 VHH抗体(A)およびヒト化抗Ang2 VHH抗体(B)が、Ang2-Fcによって誘導される293-Tie2細胞のリン酸化を抑制する作用を示す。
【
図5】HEK293-KDR reporter法で抗VEGF A VHHがVEGFAによるKDR受容体の活性化を遮断する作用を検出することを示す。
【
図6】CCK-8で測定された、抗VEGF A VHH抗体が、VEGF Aによって誘導されるHUVEC細胞の生存および増殖を阻害する作用を示す。
【
図7】HEK293-KDR reporter法でVEGF A/Ang2二重特異性結合分子IEX04-012がVEGFによるKDR受容体の活性化を遮断する作用を検出することを示す。
【
図8】二重特異性結合分子IEX04-008、IEX04-010およびIEX04-012がVEGFによって誘導されるHUVEC細胞の生存および増殖を阻害する作用を検出することを示す。
【
図9】ELISA法で測定された、二重特異性結合分子IEX04-008、IEX04-010およびIEX04-012がヒトAng2のTie2への結合を遮断することを示す。
【
図10】フローサイトメトリーアッセイで測定された、二重特異性結合分子IEX04-008、IEX04-010およびIEX04-012がAng2-FcのTie2への結合を遮断することを示す。
【
図11】フローサイトメトリーアッセイで測定された、本発明の二重特異性結合分子IEX04-012がインビトロでhAng2-Fcによって誘導される293-Tie2リン酸化を効果的に抑制することを示す。
【
図12】本発明の二重特異性結合分子IEX04-012がVEGFによって誘導される血管内皮細胞の透過性を低下させる、すなわち、VEGFによって誘導されるHUVEC細胞漏出を抑制することを示す。
【
図13】レーザー誘発脈絡膜血管新生モデルにおけるグレード4(
図A)およびグレード3以上(
図B)のレーザースポットの比率の統計を示す。
【
図14】レーザー誘発脈絡膜血管新生モデルにおける網膜厚さの統計を示す。
【
図15】レーザー誘発脈絡膜血管新生モデルにおける漏出面積の統計を示す。
【
図16】レーザー誘発脈絡膜血管新生モデルの眼底組織のH&E染色図(A)および病変面積統計(B)を示す。
【
図17】レーザー誘発脈絡膜血管新生モデルの眼底組織のCD31染色図(A)および陽性細胞統計(B)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
以下、本発明を詳細に説明するに先立ち、本明細書に記載される特定の方法学、形態または試薬が変更され得るため、本発明はそれらに限定されるものではないことが理解すべきである。また、本明細書に使用される用語は、具体的な実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定しようとは意図せず、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって限定されると理解すべきである。特に定義のない限り、本明細書に使用される技術・科学用語は、当業者による通常の理解と同じ意味を有する。
【0009】
本明細書を解釈するために次の定義が使用され、また、適切であるならば、単数形で使用される用語には複数形が含まれてもよく、その逆も同様である。本明細書で使用される用語は、具体的な実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定するためのものではないと理解しなければならない。
【0010】
用語「約」は、数字または数値とともに使用される場合、下限として指定された数字または数値より5%小さく、上限として指定された数字または数値より5%大きい範囲内の数字または数値をカバーすることを意味する。
【0011】
本明細書で使用されるように、用語「および/または」は選択可能なオプションのうちのうちのいずれか1つ、または選択可能なオプションのうちの2項または複数項またはすべてを意味する。
【0012】
本明細書で使用されるように、用語「含有する」または「含む」とは、前記要素、整数またはステップを含むが、任意の他の要素、整数またはステップを排除しないことを意味する。本明細書において、用語「包含する」または「含む」を用いる場合、特記しない限り、言及される要素、整数またはステップからなる場合も含まれる。例えば、ある具体的な配列を「含む」抗体可変領域が言及される場合、この具体的な配列からなる抗体可変領域を包含することも意図する。
【0013】
本明細書で使用される用語「VEGF」とは、血管成長因子を指す。VEGFファミリーメンバーには、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、胎盤成長因子(PIGF)、および内分泌腺由来VEGF(EG-VEGF)が含まれる。VEGFの活性型は、他のVEGFファミリーメンバーとともにホモ二量体またはヘテロ二量体として合成される。VEGF-Aは、選択的スプライシングによって生成される6つのアイソフォーム、VEGF121、VEGF145、VEGF165、VEGF183、VEGF189、およびVEGF206で存在する。これらのアイソフォームは、主にその生物学的利用可能性によって異なり、VEGF165は主なアイソフォームである。いくつかの実施形態において、本発明のVEGF Aは、ヒト由来のVEGF A、例えばヒト由来のVEGF165を指す。一実施形態において、本発明のVEGFAのアミノ酸配列は、アクセッション番号P15692(uniprotデータベース)のアミノ酸配列である。
【0014】
本明細書で使用されるように、用語「ANG2」は、ヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)(代替的にANGPT2またはANG2と略称される)、例えば、Maisonpierre、P.C.ら、Science277(1997)55~60、およびCheung、A.H.ら、Genomics48(1998)389~91に記載されているものを指す。Ang1とAng2は、血管内皮で選択的に発現されるチロシンキナーゼのファミリーであるTieのリガンドとして発見される。現在、4つの確定のアンジオポエチンファミリーのメンバーが存在する。アンジオポエチン-3および-4(ANG3およびANG4)は、マウスおよびヒトにおける同じ遺伝子座の広範に多様な対応物を表し得る。Ang1およびAng2は、最初に組織培養実験においてそれぞれアゴニストおよびアンタゴニストとして同定された(ANG1については、Davis、S.ら、Cell87(1996)1161-69を参照;ANG2については、Maisonpierre、P.C.ら、Science277(1997)55~60を参照)。すべての既知のアンジオポエチンは主にTie2に結合する。いくつかの実施形態において、本発明のANG2は、ヒト由来のAng2を指す。いくつかの実施形態において、ヒトAng2は、アクセッション番号015123(uniprotデータベース)のアミノ酸配列を含む。
【0015】
用語「多重特異性結合分子」とは、少なくとも二重特異性の多重特異性結合分子、例えば二重特異性結合分子を指し、すなわち、前記分子は、少なくとも第1の標的結合領域および第2の標的結合領域を含み、ここで、前記第1の標的結合領域は1つの標的または抗原に結合し、かつ前記第2の標的結合領域は別の抗原または標的に結合する。したがって、本発明による分子は、少なくとも2つの異なる抗原または標的に対する特異性を含む。本発明による分子は、複数の標的結合領域/結合部位を含む多重特異性分子、例えば、三重特異性結合分子も包含する。いくつかの実施形態において、本発明の二重特異性結合分子は、二重特異性抗体である。
【0016】
本明細書で使用される用語「リンカー」とは、二重特異性結合分子の異なる部分に直接連結可能な任意の分子を指す。異なる分子部分の間で共有結合を確立するリンカーの実例には、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレンまたはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体を含むが、これらに限定されないペプチドリンカーおよび非タンパク質ポリマーが含まれる。いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドリンカーであり、ここで、結合分子の第1の部分のアミノ酸配列を結合分子の第2の部分に連結するアミノ酸配列を指す。例えば、ペプチドリンカーは、結合分子の第1の標的結合領域を第2の標的結合領域に連結することができる。例えば、ペプチドリンカーは、抗体の一部を抗体の別の部分に連結すること、例えば、軽鎖可変領域を重鎖可変領域に連結することもできる。好ましくは、前記ペプチドリンカーは、所望の活性を妨害せずに、それらが互いに対してコンフォメーションを維持するように、2つの実体を連結するのに十分な長さを有する。
【0017】
ペプチドリンカーは、Gly、Ser、AlaもしくはThrというアミノ酸残基を主に含んでもよいが、主に含まなくてもよい。有用なリンカーには、(GS)n、(GSGGS)n、(GGGGS)n、(GGGS)nおよび(GGGGS)nGを含むグリシン-セリンポリマーが含まれ、ここで、nは少なくとも1(かつ好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10)の整数である。有用なリンカーには、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマーおよび他のフレキシブルリンカーがさらに含まれる。有用なリンカーには、グリシンモノマー重合、例えば(G)nも含まれ、ここで、nは少なくとも4(かつ例えば4~20、例えば4、5、6、7、8、9、10およびそれ以上)の整数である。好ましくは、前記リンカーは(GGGGS)nであり、ここで、n=1、2、3または4である。
【0018】
本発明による用語「価」は、抗体分子、例えば結合分子における特定の数の結合部位の存在を意味する。したがって、用語二価、三価、四価は、それぞれ、結合分子内に2つ、3つ、または4つの結合部位(標的結合領域)が存在することを意味する。本発明による二重特異性結合分子は少なくとも二価であり、多価、例えば二価、三価、四価または六価であってもよい。
【0019】
本明細書で使用される用語「標的結合領域」とは、多重特異性結合分子、例えば二重特異性結合分子の特定の標的または抗原に結合する任意の部分を指す。標的結合領域は、例えば、抗体または免疫グロブリン自体、または抗体断片であり得る。このような標的結合領域は、BsABの残りの部分から独立した三次構造を有してもしなくてもよく、別個の実体としてその標的に結合してもしなくてもよい。標的結合領域はまた、受容体もしくはリガンド、またはリガンドに結合できる受容体のドメインであってもよい。
【0020】
用語「抗体断片」は、完全な抗体の一部を含む。好ましい実施形態において、抗体断片は抗原結合断片である。
【0021】
「抗原結合断片」とは、完全な抗体の一部を含むとともに、完全な抗体の結合する抗原と結合する、完全な抗体とは異なる分子を指す。抗体断片の例は、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、dAb(domain antibody)、線状抗体、単鎖抗体(例えば、scFv)、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、二価抗体またはその断片、あるいはラクダ科抗体を含むが、これらに限定されない。
【0022】
単一ドメイン抗体(single domain antibody、sdAb)とも呼ばれる「VHH」とは、重鎖可変領域の3つのHCDRのみを含む、重鎖抗体可変領域(Variable region)のみから構成される遺伝子工学抗体を指す。VHHは抗原の特異性および高親和性を有するのは3つのHCDRのみに依存するが、通常の抗体は6つのCDRを必要とする。結晶構造は、VHHが従来の抗体VH免疫グロブリンの折り畳みと同様に、2つのβシートから足場を構成することが示された。
【0023】
用語「標的」とは、結合分子が結合する対象を指す。標的は、抗原であってもよいし、リガンドまたは受容体であってもよい。
【0024】
用語「抗原」とは、免疫応答を引き起こす分子を指す。このような免疫応答は、抗体の産生または特異性免疫細胞の活性化に関係し、あるいは両方に関係する可能性がある。当業者であれば、ほぼすべてのタンパク質またはペプチドを含む大分子は、いずれも抗原として利用できると理解される。また、抗原は、組換えDNAまたはゲノムDNAから誘導されてもよい。本明細書で使用されるように、用語「エピトープ」とは、抗原(例えば、VEGFまたはAng2)における抗体分子と特異的に相互作用する部分を指す。
【0025】
「相補性決定領域」、「CDR領域」または「CDR」は、抗体可変ドメインにおいて、配列において超可変であるとともに構造上に形成されて決定されたループ(「超可変ループ」)であり、および/または抗原接触残基(「抗原接触点」)を含む領域である。CDRは、主に抗原エピトープに結合する役割を果たす。重鎖および軽鎖のCDRは通常、CDR1、CDR2とCDR3と呼ばれ、N-末端から順に番号付けられる。抗体の重鎖可変ドメインにあるCDRはHCDR1、HCDR2とHCDR3と呼ばれ、抗体の軽鎖可変ドメインにあるCDRはLCDR1、LCDR2とLCDR3と呼ばれる。1つの所定の軽鎖可変領域または重鎖可変領域のアミノ酸配列において、各CDRの精確なアミノ酸配列の境界は、多くの公知の抗体CDR割り当てシステムのいずれか1種またはその組み合わせにより決定することができ、前記割り当てシステムは、例えば、抗体の3次元構造とCDRループのトポロジーに基づくChothia(Chothiaら.(1989)Nature 342:877~883、Al-Lazikaniら、「Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins」、Journal of Molecular Biology、273、927~948(1997))、抗体配列の可変性に基づくKabat(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第4版、U.S.Department of Health and Human Services、National Institutes of Health(1987))、AbM(University of Bath)、Contact(University College London)、国際ImMunoGeneTics database(IMGT)(ワールドワイドウェブのwww.imgt.cines.fr/にて利用可能)、および大量の結晶構造が利用されるアフィニティ伝播クラスタリング(affinity propagation clustering)に基づくNorth CDR定義を含む。
【0026】
例えば、異なるCDRの決定方案によって、それぞれのCDRの残基は、以下のとおりである。
【表1】
【0027】
CDRは、参照CDRの配列(例えば、本発明の例示的なCDRのいずれか1つ)と同じKabat番号付け位置を有することで決定されてもよい。
【0028】
特に断りのない限り、本発明において、用語「CDR」または「CDR配列」は、前記いずれか1つの方法で決定されるCDR配列を含む。
【0029】
特に断りのない限り、本発明において、抗体可変領域における残基位置(重鎖可変領域残基と軽鎖可変領域残基を含む)に言及する場合、Kabat番号付けシステム(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))に基づく番号付け位置を指す。
【0030】
一実施形態において、本発明のVHHにおけるCDRは、以下の規則に従っている:ここで、HCDR1はAbMに従って決定され、HCDR2およびHCDR3はKabatに従って決定される。
【0031】
異なる割り当てシステムによって得られた同一抗体の可変領域のCDRの境界は、差異があり得ると注意すべきである。即ち、異なる割り当てシステムで定義された同一抗体の可変領域のCDR配列には、違いがある。従って、本発明で定義された具体的なCDR配列により抗体が限定される場合、前記抗体の範囲には、可変領域配列が前記具体的なCDR配列を含むが、異なる方案(例えば、異なる割り当てシステムのルールまたは組合せ)が使用されるので、かかるCDR境界が本発明に定義された具体的なCDR境界と異なるような抗体も含まれる。
【0032】
異なる特異性を有する(即ち、異なる抗原の異なる結合部位を対象とする)抗体は、(同一の割り当てシステムにおいて)異なるCDRを有する。しかし、CDRが抗体間で異なるにもかかわらず、CDRにおいては、抗原との結合に直接関与するアミノ酸位置の数が限られている。Kabat、Chothia、AbM、ContactおよびNorth方法のうちの少なくとも2つにより、最小重複領域を決定して抗原結合用の「最小結合単位」を提供することができる。最小結合単位は、CDRの1つのサブ部分であってもよい。当業者に知られているように、抗体の構造とタンパク質の折り畳みによって、CDR配列の残り部分の残基を決定することができる。従って、本発明は、本明細書で提供されるいずれのCDRの変異体についても考慮する。例えば、1つのCDRの変異体において、最小結合単位のアミノ酸残基は変わらないように保持するが、KabatまたはChothiaに基づいて定義された残りのCDR残基は、保存的なアミノ酸残基で置換されてもよい。
【0033】
用語「Fc領域」は、本明細書において免疫グロブリン重鎖のCH2とCH3の定常領域を定義するためであり、当該用語は、天然配列Fc領域と変異体Fc領域を含む。天然または野生型のFc領域は、免疫細胞表面の異なるFc受容体と結合することができ、これによりCDC/ADCC/ADCPエフェクター機能を引き起こすことができる。このようなエフェクター機能は一般に、Fc領域と結合ドメイン(例えば、抗体可変領域)との連合を必要とする。いくつかの実施形態において、Fc領域は、そのCDC/ADCC/ADCPエフェクター機能を強化するために変異される。いくつかの実施形態において、Fc領域は、そのCDC/ADCC/ADCPエフェクター機能を低下または欠失させるために変異される。
【0034】
「ヒト化」抗体は、非ヒトCDRからのアミノ酸残基とヒトFRからのアミノ酸残基を含む抗体を指す。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、ほぼすべての可変ドメインの少なくとも1つ、一般的に2つを含み、ここで、すべてまたはほぼすべてのCDR(例えば、CDR)は、非ヒト抗体に由来する部分に対応し、かつすべてまたはほぼすべてのFRは、ヒト抗体に由来する部分に対応する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含む。抗体(例えば、非ヒト抗体)の「ヒト化形態」は、ヒト化が行われた抗体を指す。「ヒト抗体」または「全ヒト化抗体」または「完全ヒト抗体」は、交換して使用されてもよく、ヒトまたはヒト細胞から生成され、または非ヒト由来のものから由来し、ヒト抗体ライブラリーや他のヒト抗体で配列がコードされた抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体を指す。ヒト抗体についての当該定義には、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体が明確に除外されている。
【0035】
本明細書で使用されるように、用語「抗」、「結合」または「特異的に結合」は、結合作用が標的または抗原に対して選択的であり、かつ好ましくないまたは非特異的な相互作用と区別できることを意味する。結合部位の特定の標的または抗原との結合能力は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)または当分野における既知の通常の結合測定法、例えば、放射免疫測定(RIA)やバイオレイヤー干渉測定法やMSD測定法や表面プラズモン共鳴法(SPR)で測定することができる。
【0036】
用語「有効量」とは、本発明の抗体もしくは断片または組成物または組み合わせの1回分または複数回分の量を患者に投与した後、治療または予防が必要な患者に所望の効果が得られるという量または投与量を指す。
【0037】
「治療有効量」とは、必要な期間にわたって必要な用量で所望の治療結果を効果的に実現するための量を指す。治療有効量は、抗体もしくは抗体断片または組成物または組み合わせのいずれの毒性または有害作用も治療による有益な作用に及ばないという量でもある。未治療の対象と比較して、「治療有効量」は、好ましくは、測定可能なパラメータを少なくとも約40%、さらに好ましくは、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは100%抑制するか、または改善する。
【0038】
「予防有効量」とは、必要な期間にわたって必要な用量で所望の予防結果を効果的に実現するための量を指す。一般的に、予防目的の用量が対象における疾患の初期段階より前にまたは疾患の初期段階に適用されるため、予防有効量は治療有効量を下回る。
【0039】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」と「宿主細胞培養物」は、交換して使用されてもよく、外因性核酸が導入された細胞を指し、この細胞の子孫を含む。宿主細胞は、「形質転換体」と「形質転換細胞」を含み、初代形質転換細胞および継代数に関係なくそれに由来する子孫を含む。子孫は、核酸の内容において親細胞とは全く同じではない可能性があり、変異を含んでもよい。本明細書では、初代形質転換細胞からスクリーニングまたは選択された同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫を含む。
【0040】
本明細書で使用される用語「標識」は、試薬(例えば、ポリヌクレオチドプローブもしくは抗体)に直接的または間接的に結合または融合され、かつ、その結合または融合の対象試薬による検出を促進する化合物または組成物を指す。標識は、それ自体が検出可能(例えば、放射性同位体標識または蛍光標識)であるか、または、酵素触媒によって標識される場合に、検出可能な基質化合物または組成物の化学的改変に触媒作用を及ぼすことができる。当該用語は、検出可能な物質をプローブまたは抗体にカップリング(即ち、物理的連結)することによってプローブもしくは抗体を直接標識すること、および、直接標識されている別の試薬との反応によりプローブもしくは抗体を間接的に標識することを含もうとする。いくつかの実施形態において、標識はhFcまたはビオチンである。
【0041】
「個体」または「対象」は、哺乳動物を含む。哺乳動物は、家畜(例えば、ウシ、ヤギ、ネコ、イヌおよびウマ)、霊長類動物(例えば、ヒト、サルなどの非ヒト霊長類動物)、ウサギ、およびげっ歯類動物(例えば、マウスとラット)を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、個体または対象はヒトである。
【0042】
「単離された」抗体または分子とは、その存在する自然環境の成分と単離されている抗体である。いくつかの実施形態において、抗体または分子は、純度が95%または99%を超えるように精製され、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換もしくは逆相HPLC)によって決定される。
【0043】
以下のように、配列間の配列同一性を算出する。
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性パーセンテージを決定するために、前記配列を最適比較のためにアラインメントを行う(例えば、最適アラインメントのために第1と第2のアミノ酸配列または核酸配列の一方もしくは両方にギャップを導入してもよく、あるいは比較のために、非相同配列を捨ててもよい)。一好ましい実施形態では、比較のために、アラインメントされる参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、さらに好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が、第2の配列における対応の位置での同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有されている場合、前記分子はこの位置において同一である。
【0044】
数学アルゴリズムにより、2つの配列間の配列比較および同一性パーセンテージの計算を実現することができる。一好ましい実施形態において、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセンテージは、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに統合されたNeedlemaおよびWunsch((1970)J.Mol.Biol.48:444-453)アルゴリズム(http://www.gcg.comにて取得可能)により、Blossum 62行列若しくはPAM250行列、およびギャップ重み16、14、12、10、8、6もしくは4と長さ重み1、2、3、4、5もしくは6を用いて決定される。別の好ましい実施形態において、GCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラム(http://www.gcg.comにて取得可能)により、NWSgapdna.CMP行列、およびギャップ重み40、50、60、70もしくは80と長さ重み1、2、3、4、5もしくは6を用いて、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセンテージを決定する。特に好ましいパラメータセット(および特に断りのない限り使用すべき1つのパラメータセット)は、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、およびフレームシフトギャップペナルティ5のBlossum 62スコアリング行列を採用する。また、PAM120加重余り表、ギャップ長ペナルティ12、ギャップペナルティ4を利用して、ALIGNプログラム(2.0版)に統合されたE.MeyersとW.Millerアルゴリズム((1989)CABIOS、4:11-17)により、2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列間の同一性パーセンテージを決定してもよい。追加的にまたは選択的に、本明細書に記載の核酸配列とタンパク質配列を「問い合わせ配列」として利用してパブリックデータベースに対して検索を実行することにより、例えば、他のファミリーメンバーの配列または関連配列を同定することができる。
【0045】
本明細書に記載の「眼疾患」は、血管新生に関連する眼の疾患(例えば、眼内で起こる疾患)、例えば角膜血管新生に関連する眼疾患を包含する。
【0046】
用語「薬用補助材料」は、活性物質とともに投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全もしくは不完全))、賦形剤、ベクターや安定化剤などを指す。
【0047】
用語「医薬組成物」とは、それに含まれる活性成分の生物学的活性を有効にする形態で存在するとともに、前記組成物が投与された対象に許容されない毒性がある別の成分を含まない組成物を指す。
【0048】
本明細書に使用される場合、「治療」とは、存在している症状、病症、病状または疾患の進行もしくは重症度を軽減、中断、遅延、寛解、停止、低減、または逆転することを指す。
【0049】
本明細書に使用される場合、「予防」は、疾患、病症、または特定の疾患もしくは病症に係る症状の発生または進行に対する阻害を含む。
【0050】
用語「ベクター」は、本明細書で使用される場合、それに連結された別の核酸を増殖可能な核酸分子を指す。当該用語は、自己複製の核酸構造である担体、およびそれが導入された宿主細胞のゲノムに結合された担体を含む。一部のベクターは、それに操作可能に連結された核酸の発現をガイドすることができる。かかる担体は本明細書において、「発現担体」と呼ばれる。
【0051】
「対象/患者/個体試料」は、患者または対象から得た細胞または流体の集まりを指す。組織または細胞試料の由来としては、新鮮な、冷凍されたかつ/または保存された器官や組織試料や生検試料や穿刺試料などの固形組織、血液もしくは任意の血液成分、涙液、硝子体液、脳脊髄液、羊膜液(羊水)、腹膜液(腹水)や間質液などの体液、対象における妊娠もしくは発育の任意段階に由来する細胞であってもよい。いくつかの実施形態において、組織試料は、眼組織、例えば硝子体である。いくつかの実施形態において、試料は涙液または硝子体液である。組織試料は、自然界において天然に組織と混ぜ合わせない化合物、例えば、防腐剤、抗凝固剤、緩衝剤、固定剤、栄養素、抗生物質などを含んでもよい。
【0052】
I.抗VEGF AのVHH抗体
本発明は、VEGF Aに対するVHH抗体に関する。いくつかの実施形態において、本発明の抗VEGF VHHは、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3の3つのCDRを含み、ここで、
HCDR1は、配列番号1に示される配列を含むかまたはそれからなり、
HCDR2は、配列番号2に示される配列を含むかまたはそれからなり、
HCDR3は、配列番号3に示される配列を含むかまたはそれからなり、
あるいは、
HCDR1は、配列番号6に示される配列を含むかまたはそれからなり、
HCDR2は、配列番号7もしくは配列番号10に示される配列を含むかまたはそれからなり、
HCDR3は、配列番号8に示される配列を含むかまたはそれからなる。
【0053】
いくつかの実施形態において、前記VHHは、配列番号4、配列番号5、配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号4、配列番号5、配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号4、配列番号5、配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸からなる。
【0054】
いくつかの実施形態において、前記VHHは、配列番号4、配列番号5、配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0055】
いくつかの好ましい実施形態において、前記変異は、CDR、例えばHCDR1、HCDR2、またはHCDR3には存在しない。
【0056】
II.抗Ang2のVHH抗体
本発明は、Ang2に対するVHH抗体に関する。いくつかの実施形態において、本発明の抗Ang2 VHHは、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3の3つのCDRを含み、ここで
HCDR1は、配列番号16に示される配列を含むかまたはそれからなり、
HCDR2は、配列番号17もしくは配列番号20に示される配列を含むかまたはそれからなり、
HCDR3は、配列番号18に示される配列を含むかまたはそれからなる。
【0057】
いくつかの実施形態において、前記VHHは、配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸からなる。
【0058】
いくつかの実施形態において、前記VHHは、配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0059】
いくつかの好ましい実施形態において、前記変異は、CDR、例えばHCDR1、HCDR2、またはHCDR3には存在しない。
【0060】
III.抗VEGF A×ANG2の二重特異性結合分子
本発明の一態様において、本発明は、VEGF Aに特異的に結合する第1の標的結合領域と、Ang2に特異的に結合する第2の標的結合領域とを含むVEGF AおよびAng2に結合する二重特異性結合分子に関し、ここで、第2の標的結合領域は、抗Ang2のVHH、例えば、本発明の上述の抗Ang2 VHHである。
【0061】
いくつかの実施形態において、第1の標的結合領域は、
VEGF Aに特異的に結合するVHH、
VEGF Aに特異的に結合する抗体の抗原結合断片、例えばscFv、例えば、前記抗体は完全ヒト抗体またはヒト化抗体であり、あるいは、
VEGF Aに特異的に結合するVEGF受容体(VEGF R)またはその細胞外ドメイン、またはその細胞外ドメインを含む融合タンパク質、例えば、細胞外ドメインとFcとの融合タンパク質から選択される。
【0062】
いくつかの実施形態において、本発明の二重特異性結合分子は、1つもしくは2つもしくは3つもしくは4つの第1の標的結合領域または第2の標的結合領域を含む。いくつかの実施形態において、本発明の二重特異性結合分子は、2つ、3つ、もしくは4つの標的結合領域を含む。いくつかの実施形態において、本発明の二重特異性結合分子は、二価、三価、または四価である。いくつかの実施形態において、本発明の二重特異性結合分子は、二重特異性抗体である。
【0063】
本発明の一態様において、本発明の二重特異性結合分子、例えば二重特異性抗体は、以下の構造:
抗VEGF抗体の軽鎖可変領域VL-リンカー-抗VEGF抗体の重鎖可変領域VH-リンカー-抗Ang2 VHH、または
抗VEGF抗体の重鎖可変領域VH-リンカー-抗VEGF抗体の軽鎖可変領域VL-リンカー-抗Ang2 VHH、を有し、
ここで、抗Ang2 VHHは、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号16に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2は、配列番号17もしくは配列番号20に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR3は、配列番号18に示される配列を含むかまたはそれからなる。
【0064】
いくつかの実施形態において、上記二重特異性結合分子の構造は、
図1Aまたは
図1Bに示されるとおりである。いくつかの実施形態において、上記二重特異性結合分子は1本の鎖からなる。いくつかの実施形態において、上記二重特異性結合分子は二価である。
【0065】
いくつかの実施形態において、抗VEGF抗体の軽鎖可変領域VLは、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、ここで、LCDR1は、配列番号31に示される配列を含むかまたはそれからなり、LCDR2は、配列番号32に示される配列を含むかまたはそれからなり、LCDR3は、配列番号33に示される配列を含むかまたはそれからなる。
【0066】
いくつかの実施形態において、抗VEGF抗体の重鎖可変領域VHは、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含み、ここで、HCDR1は、配列番号35に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2は、配列番号36に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR3は、配列番号37に示される配列を含むかまたはそれからなる。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明の抗VEGF抗体の重鎖可変領域VHは、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号34に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号34に示されるアミノ酸からなる。いくつかの実施形態において、前記重鎖可変領域VHは、配列番号34に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの好ましい実施形態において、前記変異は、CDR、例えばHCDR1、HCDR2、またはHCDR3には存在しない。
【0068】
いくつかの実施形態において、本発明の抗VEGF抗体の軽鎖可変領域VLは、配列番号30に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号30に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号30に示されるアミノ酸からなる。いくつかの実施形態において、前記軽鎖可変領域VLは、配列番号30に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの好ましい実施形態において、前記変異は、CDR、例えばLCDR1、LCDR2、またはLCDR3には存在しない。
【0069】
いくつかの実施形態において、本発明の抗Ang2 VHHは、配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸からなる。いくつかの実施形態において、前記VHHは、配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの好ましい実施形態において、前記変異は、CDR、例えばHCDR1、HCDR2、またはHCDR3には存在しない。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記リンカーは、配列番号23のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、抗VEGF抗体の軽鎖可変領域と重鎖可変領域との間のリンカーは、配列番号23のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、ここで例えば、n=4である。いくつかの実施形態において、抗VEGF可変領域と抗Ang2 VHHとの間のリンカーは、配列番号23のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、ここで例えば、n=2または3、例えば3である。
【0071】
いくつかの実施形態において、本発明の抗VEGF A×ANG2二重特異性結合分子は、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号28に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号28に示されるアミノ酸からなる。いくつかの実施形態において、前記二重特異性結合分子は、配列番号28に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの好ましい実施形態において、前記変異は、抗VEGF抗体可変領域および抗Ang2 VHHのCDRには存在しない。
【0072】
本発明の別の態様において、本発明の二重特異性結合分子、例えば二重特異性抗体は、以下の構造:
第1の抗VEGF VHH-リンカー-第2の抗VEGF VHH-リンカー-抗Ang2 VHHを有し、
ここで、抗Ang2 VHHは、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号16に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2は、配列番号17もしくは配列番号20に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR3は、配列番号18に示される配列を含むかまたはそれからなる。
【0073】
いくつかの実施形態において、上記二重特異性結合分子の構造は、
図1Cに示されるとおりである。いくつかの実施形態において、上記二重特異性結合分子は1本の鎖からなる。いくつかの実施形態において、上記二重特異性結合分子は三価である。いくつかの実施形態において、第1の抗VEGF VHHおよび第2の抗VEGF VHHは、同じであるか、または異なる。
【0074】
いくつかの実施形態において、抗VEGF VHHは、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、ここで、HCDR1は、配列番号1に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2は、配列番号2に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR3は、配列番号3に示される配列を含むかまたはそれからなり、
あるいは、
HCDR1は、配列番号6に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2は、配列番号7もしくは配列番号10に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR3は、配列番号8に示される配列を含むかまたはそれからなる。
【0075】
いくつかの実施形態において、前記抗VEGF VHHは、配列番号4、配列番号5、配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号4、配列番号5、配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号4、配列番号5、配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸からなる。いくつかの実施形態において、前記VHHは、配列番号4、配列番号5、配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの好ましい実施形態において、前記変異は、CDR、例えばHCDR1、HCDR2、またはHCDR3には存在しない。
【0076】
いくつかの実施形態において、抗VEGF VHHは、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、ここで、HCDR1は、配列番号6に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2は、配列番号7もしくは配列番号10に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR3は、配列番号8に示される配列を含むかまたはそれからなる。
【0077】
いくつかの実施形態において、前記抗VEGF VHHは、配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸からなる。いくつかの実施形態において、前記VHHは、配列番号9もしくは配列番号11に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの好ましい実施形態において、前記変異は、CDR、例えばHCDR1、HCDR2、またはHCDR3には存在しない。
【0078】
いくつかの実施形態において、本発明の抗Ang2 VHHは、配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸からなる。いくつかの実施形態において、前記VHHは、配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの好ましい実施形態において、前記変異は、CDR、例えばHCDR1、HCDR2、またはHCDR3には存在しない。
【0079】
いくつかの実施形態において、前記リンカーは、配列番号23のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、第1の抗VEGF VHHと第2の抗VEGF VHHとの間のリンカー、または第2の抗VEGF VHHと抗Ang2 VHHとの間のリンカーは、配列番号23のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、例えば、n=2である。
【0080】
いくつかの実施形態において、本発明の抗VEGF A×ANG2二重特異性結合分子は、配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号22に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号22に示されるアミノ酸からなる。いくつかの実施形態において、前記二重特異性結合分子は、配列番号22に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの好ましい実施形態において、前記変異は、抗VEGF VHHおよび抗Ang2 VHHのCDRには存在しない。
【0081】
本発明の別の態様において、本発明の二重特異性結合分子は、以下の鎖:
VEGF R細胞外ドメイン-Fc-リンカー-抗Ang2 VHH、の1本または2本を含み、
ここで、抗Ang2 VHHは、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号16に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2は、配列番号17もしくは配列番号20に示される配列を含むかまたはそれからなり、HCDR3は、配列番号18に示される配列を含むかまたはそれからなる。
【0082】
いくつかの実施形態において、上記二重特異性結合分子の構造は、
図1Dに示されるとおりである。いくつかの実施形態において、上記二重特異性結合分子は2本の鎖からなる。いくつかの実施形態において、上記二重特異性結合分子は四価である。
【0083】
いくつかの実施形態において、前記抗Ang2 VHHは、配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸からなる。いくつかの実施形態において、前記VHHは、配列番号19もしくは配列番号21に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの好ましい実施形態において、前記変異は、CDR、例えばHCDR1、HCDR2、またはHCDR3には存在しない。
【0084】
いくつかの実施形態において、VEGFR細胞外ドメインは、ヒト由来のVEGFRの細胞外ドメインである。いくつかの実施形態において、前記VEGFR細胞外ドメインは、VEGFR1第2の抗体様ドメイン(例えば、FLT1 domain 2)およびVEGFR2第3の抗体様ドメイン(例えば、KDR domain 3)を含む。いくつかの実施形態において、前記VEGFR細胞外ドメインは、ヒトVEGFR1第2の抗体様ドメインおよびヒトVEGFR2第3の抗体様ドメインを含む。いくつかの実施形態において、前記VEGFR細胞外ドメインは、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号26に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号26に示されるアミノ酸からなる。いくつかの実施形態において、前記VEGFR細胞外ドメインは、配列番号26に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、前記VEGFR細胞外ドメインは配列番号26に示されるドメインと同様(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%を有する)のVEGFに対する結合親和性を保持する。
【0085】
いくつかの実施形態において、前記Fcは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来するFc、例えば、野生型Fc、または当分野で公知のFc変異体である。いくつかの実施形態において、前記Fcは、配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号27に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号27に示されるアミノ酸からなる。
【0086】
いくつかの実施形態において、前記VEGF R細胞外ドメイン-Fcは、VEGFR細胞外ドメインとFcとの融合タンパク質、例えば、アフリベルセプト(Aflibercept)またはその誘導体である。
【0087】
いくつかの実施形態において、前記VEGF R細胞外ドメインは、配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号25に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号25に示されるアミノ酸からなる。いくつかの実施形態において、前記VEGF R細胞外ドメインは、配列番号25に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、前記VEGF R細胞外ドメイン-Fcは配列番号25に示されるドメインと同様(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%を有する)のVEGFに対する結合親和性を保持する。
【0088】
いくつかの実施形態において、前記リンカーは、配列番号23のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、例えば、n=3である。
【0089】
いくつかの実施形態において、本発明の抗VEGF A×ANG2の二重特異性結合分子の1本の鎖は、配列番号24のアミノ酸配列を含むか、または前記配列番号24に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号24に示されるアミノ酸からなる。いくつかの実施形態において、前記二重特異性結合分子は、配列番号24に示されるアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数(好ましくは10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個以下)の変異、例えば置換、欠失または付加、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの好ましい実施形態において、前記変異は、抗Ang2 VHHのCDRには存在しない。いくつかの実施形態において、前記変異を有するVEGF R細胞外ドメイン-Fcは配列番号25に示されるドメインと同様(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%を有する)のVEGFに対する結合親和性を保持する。
【0090】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載の抗体または結合分子は、1つまたは複数のアミノ酸変異を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸変異は、アミノ酸の置換、挿入、または欠失を含む。好ましくは、本明細書に記載のアミノ酸変異はアミノ酸置換であり、好ましくは保存的置換である。
【0091】
好ましい実施形態において、本発明に記載のアミノ酸変異は、CDR外の領域(例えば、FR)に生じる。いくつかの実施形態において、本発明に記載されるアミノ酸変異は、Fc領域などの抗体重鎖定常領域に生じ、好ましい実施形態において、前記Fc領域上のアミノ酸変異により、抗体のADCCおよび/またはCDC作用を弱めるかまたは欠失させる。
【0092】
いくつかの実施形態において、置換は保存的置換である。保存的置換とは、1つのアミノ酸が同種の別のアミノ酸によって置換され、例えば、1つの酸性アミノ酸が別の酸性アミノ酸によって置換され、1つの塩基性アミノ酸が別の塩基性アミノ酸によって置換され、または1つの中性アミノ酸が別の中性アミノ酸によって置換されたことを指す。
【0093】
一部の実施形態において、本明細書で提供される抗体のFc領域に1つまたは複数のアミノ酸変異を導入することにより、Fc領域変異体を生成して、抗体の1つまたは複数の機能特性、例えば、血清半減期、補体結合、補体依存性細胞毒性、Fc受容体結合および/または抗体依存性細胞毒性を変化させることができる。Fc領域変異体は、1つまたは複数のアミノ酸位置においてアミノ酸変異(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3やIgG4 Fc領域)を含んでもよい。
【0094】
一部の実施形態において、ジスルフィド結合変異を含むscFvを生成するなど、ジスルフィド結合を生成するために抗体の可変領域を変異させることが必要な場合がある。
【0095】
一部の実施形態において、本明細書で提供される抗体または結合分子は、当分野における既知で容易に得られる他の非タンパク質部分が含まれるようにさらに修飾することができる。前記誘導作用に適した部分は、水溶性ポリマーを含むが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な実例は、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキサン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダム共重合体)、およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセリン)、ポリビニルアルコール、およびそれらの混合物を含む。
【0096】
IV.本発明のVHH抗体または二重特異性結合分子の特性
いくつかの実施形態において、本発明の抗Ang2 VHH抗体は、例えば高親和性でAng2、例えばヒトAng2に特異的に結合することができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、本発明の抗VEGFA VHH抗体は、例えば高親和性でVEGF A、例えばヒトVEGF Aに特異的に結合することができる。
【0098】
いくつかの実施形態において、本発明の二重特異性結合分子は、例えば高親和性でAng2およびVEGFA、例えばヒトAng2およびヒトVEGFAに特異的に結合することができる。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明の抗Ang2抗体または抗VEGFA抗体または二重特異性結合分子は、以下の特性:
(i)抗Ang2抗体または二重特異性結合分子は、Ang2によって誘導されるTie2リン酸化に対して阻害効果を有すること、
(ii)抗Ang2抗体または二重特異性結合分子は、Ang2とTie2の間の結合に対して遮断効果を有すること、
(iii)抗VEGFA抗体または二重特異性結合分子は、例えばKDR reporterによって検出される、VEGFA活性化関連受容体シグナル伝達経路に対して遮断効果を有すること、
(iv)抗VEGFA抗体または二重特異性結合分子は、VEGFAとVEGFRとの間の結合に対して遮断効果を有すること、
(v)抗VEGFA抗体または二重特異性結合分子は、VEGFAによって誘導される細胞(例えば初代細胞、例えば血管内皮細胞、例えばヒト臍帯静脈内皮細胞、例えばHUVEC)の生存および増殖に対して阻害効果を有すること、
(vi)二重特異性結合分子は、血管内皮細胞(例えば、ヒト臍帯静脈内皮細胞、例えばHUVEC)の漏出に対して阻害効果を有すること、および
(vii)二重特異性結合分子は、インビボまたはインビトロにおいて血管新生に対して阻害効果を有し、例えば眼底または網膜脈絡膜血管新生を阻害し、例えば新生血管によって引き起こされる漏出を阻害し、例えば血管完全性を保護すること、の1つまたは複数を有する。
【0100】
V.本発明の核酸およびそれを含む宿主細胞
一態様では、本発明は、上記のいずれかのVHHまたは二重特異性結合分子、あるいはそれらのいずれかの鎖をコードする核酸を提供する。一実施形態において、前記核酸を含む担体を提供する。一実施形態において、担体は発現担体、例えば、真核発現担体である。担体は、ウイルス、プラスミド、コスミド、λファージまたは酵母人工染色体(YAC)を含むが、これらに限定されない。一実施形態において、ベクターは例えばpcDNA3.1である。一実施形態において、前記核酸または前記担体を含む宿主細胞を提供する。一実施形態において、宿主細胞は真核のものである。別の実施形態において、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞(例えばCHO-S)または293細胞(例えば、293FやHEK293細胞))、あるいは抗体またはその断片の製造に適用される他の細胞から選択される。別の実施形態において、前記宿主細胞は原核細胞であり、例えば、大腸菌細胞、例えばTG1である。
【0101】
例えば、本発明の核酸は、配列番号4、配列番号5、配列番号9、配列番号11、配列番号19、配列番号21、配列番号22、配列番号24、配列番号28のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列をコードする核酸、または配列番号4、配列番号5、配列番号9、配列番号11、配列番号19、配列番号21、配列番号22、配列番号24、配列番号28のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸を含む。
【0102】
一実施形態において、前記ベクターを含む宿主細胞を提供する。VHHまたは二重特異性結合分子をコードするベクターをクローニングまたは発現するための適切な宿主細胞は、本明細書に記載される原核または真核細胞を含む。例えば、VHHは細菌中で生成され得る。発現後、VHHは培養上清中に存在し、さらに精製することができる。
【0103】
一実施形態において、宿主細胞は、原核のもの、例えば細菌、例えば大腸菌細胞、例えばTG1である。
【0104】
一実施形態において、宿主細胞は真核のものである。別の実施形態において、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞、または抗体若しくはその断片の製造に適用される他の細胞から選択される。例えば、糸状菌または酵母のような真核微生物は、抗体をコードするベクターに適したクローニングまたは発現宿主である。例えば、グリコシル化経路が既に「ヒト化」された真菌と酵母菌株により、部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体を生成する。グリコシル化抗体の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物と脊椎動物)からも由来する。脊椎動物の細胞を宿主として用いてもよい。例えば、懸濁成長に適するように改変された哺乳動物細胞株を使用することができる。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の実例は、SV40で転換されたザル腎CV1細胞株(COS-7)、ヒト胎児腎臓細胞株(HEK293、293Fまたは293T)などである。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含み、DHFR-CHO細胞、CHO-S細胞、ExpiCHOなど、およびY0、NS0とSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。当分野では、抗体の生成に適する哺乳動物宿主細胞株が知られている。
【0105】
VI.本発明のVHHまたは二重特異性結合分子の生成および精製
一実施形態において、本発明のVHHまたは二重特異性結合分子を製造する方法を提供し、ここで、前記方法は、上述したように、VHHまたは二重特異性結合分子またはその鎖の発現に適した条件において、前記VHHまたは二重特異性結合分子(例えば、いずれか1本のポリペプチド鎖、および/または複数本のポリペプチド鎖)をコードする核酸または前記核酸の発現ベクターを含む宿主細胞を培養することと、任意に、前記宿主細胞(または宿主細胞培地)から前記VHHまたは二重特異性結合分子を回収することとを含む。
【0106】
組換えにより本発明の分子を生成するために、本発明のVHHまたは二重特異性結合分子(例えば、上記に記載の分子、例えば、いずれか1本のポリペプチド鎖、および/または複数本のポリペプチド鎖)をコードする核酸を単離し、それを1つまたは複数のベクターに挿入し、宿主細胞におけるさらなるクローニングおよび/または発現に用いる。このような核酸は、通常のプロトコルを使用して単離および配列決定することが容易である。
【0107】
本明細書に記載されるように製造されたVHHまたは二重特異性結合分子は、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどの既知の従来技術により精製することができる。特定のタンパク質を精製するための実際の条件は、正味電荷、疎水性、親水性などの要因にも依存し、かつこれらは当業者にとって自明である。本発明の抗体分子の純度は、様々な周知の分析方法のいずれか1つにより決定することができ、前記周知の分析方法は、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィーなどを含む。
【0108】
VII.測定法
当分野で既知の様々な測定法により、本明細書に提供されるVHHまたは二重特異性結合分子を同定し、スクリーニングし、またはその物理的/化学的特性および/または生物学的活性を特徴付けることができる。一態様では、本発明のVHHまたは二重特異性結合分子は、例えば、バイオレイヤー干渉技術、ELISAなどの既知の方法によって、それらの標的(例えば、抗原)結合活性について試験される。当分野で既知の方法によりVEGF Aおよび/またはAng2への結合を測定することができ、本明細書には例示的な方法が開示されている。いくつかの実施形態において、放射免疫測定(RIA)またはバイオレイヤー干渉測定法またはMSD測定法または表面プラズモン共鳴法(SPR)またはフローサイトメトリーにより測定される。
【0109】
本発明は、生物学的活性を有するVHHまたは二重特異性結合分子を同定するための測定法をさらに提供する。生物学的活性は、例えば
(i)抗Ang2抗体または二重特異性結合分子のAng2によって誘導されるTie2リン酸化に対する阻害効果、
(ii)抗Ang2抗体または二重特異性結合分子のAng2とTie2の間の結合に対する遮断効果、
(iii)抗VEGFA抗体または二重特異性結合分子の、例えばKDR reporterによって検出される、VEGFA活性化関連受容体シグナル伝達経路に対する遮断効果、
(iv)抗VEGFA抗体または二重特異性結合分子のVEGFAとVEGFRとの間の結合に対する遮断効果、
(v)抗VEGFA抗体または二重特異性結合分子の、VEGFAによって誘導される細胞(例えば初代細胞、例えば血管内皮細胞、例えばヒト臍帯静脈内皮細胞、例えばHUVEC)の生存および増殖に対する阻害効果、
(vi)二重特異性結合分子の血管内皮細胞(例えばヒト臍帯静脈内皮細胞、例えばHUVEC)の漏出に対する阻害効果、
(vii)二重特異性結合分子は、インビボまたはインビトロにおいて血管新生に対する阻害効果、例えば眼底または網膜脈絡膜血管新生の阻害、例えば新生血管によって引き起こされる漏出の阻害、例えば血管完全性の保護、から選択される。
【0110】
上記のインビトロ測定法のいずれかで使用される細胞は初代細胞または細胞株であり、Ang2受容体(例えば、Tie2)またはVEGFR(例えば、VEGFR2、すなわちKDR)を天然に発現または過剰発現する細胞、例えばTie2またはKDRを過剰発現する293細胞、例えばHEK293もしくはExpi293、あるいは、血管内皮細胞、例えばヒト臍帯静脈内皮細胞、例えばHUVECを含む。
【0111】
いくつかの実施形態において、測定は、ビオチンまたはhFcなどのマーカーを使用して行うことができる。
【0112】
なお、本発明の抗体と他の活性剤の組み合わせを使用して、任意の上記の測定法を実現できる。
【0113】
VIII.免疫複合体および医薬組成物
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載の任意のVHHまたは二重特異性結合分子を含む免疫複合体を提供する。好ましくは、前記免疫複合体は、1つまたは複数の他の治療剤またはマーカーを含む。
【0114】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載の任意のVHHまたは二重特異性結合分子を含む組成物または薬物または製剤を提供し、好ましくは、組成物は医薬組成物である。一実施形態において、前記組成物は、薬用補助材料をさらに含む。一実施形態において、組成物、例えば医薬組成物は、本発明のVHHまたは二重特異性結合分子、および1つまたは複数の他の治療剤の組み合わせたを含む。
【0115】
本発明はまた、本発明のVHHまたは二重特異性結合分子を含む組成物(医薬組成物を含む)または薬物または製剤を含む。これらの組成物または薬物または製剤はまた、適切な薬用補助材料、例えば、当分野での既知の薬用ベクター、緩衝剤を含む薬用賦形剤を含んでもよい。
【0116】
本明細書で使用されるように、「薬用ベクター」は、生理学的に適合する溶剤、分散媒体、等張剤、吸収遅延剤などのいずれかまたは全てを含む。
【0117】
薬用補助材料の使用およびその使用については、『Handbook of Pharmaceutical Excipients』、第八版、R.C.Rowe、P.J.SeskeyおよびS.C.Owen、Pharmaceutical Press、London、Chicagoも参照される。
【0118】
本発明の組成物または薬物または製剤は、様々な形態で存在することができる。これらの形態は、例えば、液体、半固体および固体の剤型、例えば、液体溶液剤(例えば、注射液または点眼液)、分散剤または懸濁剤、リポソーム剤および坐剤を含む。好ましい形態は、所望の投与モードと治療的使用によって決定する。例えば、本発明の組成物または薬物または製剤は、点眼液であってもよい。
【0119】
所望の純度を有する本発明のVHHまたは二重特異性結合分子を1種または複数種の任意の薬用補助材料と混合することにより、本明細書に記載のVHHまたは二重特異性結合分子の薬物または製剤を製造することができ、好ましくは、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で製造する。
【0120】
本発明の組成物または薬物または製剤は、1種以上の活性成分をさらに含んでもよく、前記活性成分は、治療される特定の適応症に必要なものであり、好ましくは、互いに悪影響を与えない相補的な活性を有する活性成分である。例えば、他の治療剤も提供することが望ましい。
【0121】
持続放出製剤を製造することができる。持続放出製剤の適切な実例は、抗体を含む疎水性固体ポリマーの半透性マトリックスを含み、上記マトリックスは、例えば、フィルムまたはマイクロカプセル形態のような成形品である。
【0122】
本発明は薬物組合せまたは薬物組合せ製品をさらに提供し、本発明のVHHまたは二重特異性結合分子、および1つまたは複数の他の治療剤を含む。本発明は、前記薬物組合せを含む薬物キットのセットをさらに提供し、例えば、前記薬物キットのセットは同じパッケージ内に、
-本発明のVHHまたは二重特異性結合分子を含む医薬組成物を含有する第1の容器、および
-他の治療剤を含む医薬組成物を含有する第2容器、を含む。
【0123】
IX.使用と方法
本発明の一態様は、対象における眼疾患を予防または治療するための方法であって、有効量の本発明の抗VEGF VHH、本発明の抗Ang2 VHH、または本発明の二重特異性結合分子、またはそれらを含む組成物、薬物もしくは製剤を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0124】
いくつかの実施形態において、前記患者は、(例えば、核酸やタンパク質レベルなどのレベルが上昇した)VEGF、例えばVEGFA、および/またはAng2を有する。
【0125】
いくつかの実施形態において、前記眼疾患は、血管新生に関連する眼疾患、例えば、角膜血管新生に関連する眼疾患を含むが、これらに限定されない。
【0126】
いくつかの実施形態において、前記眼疾患の治療は、核酸またはタンパク質レベルが抑制されたVEGF、例えばVEGFA、および/またはAng2から利益を受ける。
【0127】
他の態様において、本発明は、本発明の抗VEGF VHH、本発明の抗Ang2 VHH、または本発明の二重特異性結合分子、またはそれらを含む組成物の薬物の生産または製造における使用を提供し、前記薬物は、本明細書に記載の使用に用いられ、例えば、本明細書にかかる関連疾患または病症の予防または治療に用いられる。
【0128】
いくつかの実施形態において、本発明の抗VEGF VHH、本発明の抗Ang2 VHH、または本発明の二重特異性結合分子、またはそれらを含む組成物もしくは薬物もしくは製剤は、病症および/または病症に関連する症状の発作を遅延することができる。
【0129】
いくつかの実施形態において、本発明の抗VEGF VHH、本発明の抗Ang2 VHH、または本発明の二重特異性結合分子、またはそれらを含む組成物もしくは薬物もしくは製剤は、さらに1種または複数種の他の療法、例えば、治療方式および/または他の治療剤と組み合わせて投与され、本明細書に記載の使用に用いられ、例えば、本明細書にかかる関連疾患または病症の予防または治療に用いられることができる。
【0130】
本発明の抗VEGF VHH、本発明の抗Ang2 VHH、または本発明の二重特異性結合分子、またはそれらを含む組成物もしくは薬物もしくは製剤の投与経路は、既知の方法、例えば、局所投与、例えば眼内投与、眼表面投与に従う。いくつかの実施形態において、投与は注射または滴下による。
【0131】
X.診断と検出のための方法と組成物
一部の実施形態において、本明細書で提供される抗Ang2 VHH抗体も、生体試料におけるAng2の存在の検出に用いることができる。一部の実施形態において、本発明で提供される抗VEGFA VHH抗体は、生体試料におけるVEGFAの存在を検出するために用いることができる。一部の実施形態において、本明細書で提供される抗二重特異性結合分子は、生体試料におけるAng2および/またはVEGFAの存在を検出するために使用することができた。
【0132】
用語「検出」が本明細書に使用される場合、定量的または定性的検出を含み、例示的な検出方法としては、免疫組織化学、免疫細胞化学、フローサイトメトリー(例えば、FACS)、抗体分子複合磁気ビーズ、ELISA測定法、PCR-技術(例えば、RT-PCR)が挙げられる。一部の実施形態において、生体試料は、体液または眼組織、例えば硝子体液である。
【0133】
一部の実施形態において、前記方法は、Ang2またはVEGFAへの結合が許容される条件で、生体試料を本明細書に記載のVHHまたは二重特異性結合分子と接触するとともに、当該VHHまたは二重特異性結合分子とAng2またはVEGFAの間に複合物が形成されたか否かを検出することを含む。複合物の形成は、Ang2またはVEGFAの存在を示す。当該方法は、インビトロまたはインビボ方法であってもよい。一実施形態において、本発明の抗体は、本発明のVHHまたは二重特異性結合分子による治療に適する対象の選択に用いられ、例えば、ここで、Ang2またはVEGFAは前記対象を選択するためのバイオマーカーである。
【0134】
一部の実施形態において、標識されたVHHまたは二重特異性結合分子が提供される。標識は、直接検出される標識または部分(例えば、蛍光標識、発色団標識、高電子密度標識、化学発光標識および放射性標識)、および例えば、酵素触媒反応または分子間の相互作用により間接的に検出される部分、例えば、酵素もしくはリガンドを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記標識は、例えば、ビオチンまたはhFcなどのマーカーである。
【0135】
本明細書に記載のいくつかの実施形態において、試料が本発明のVHHまたは二重特異性結合分子による治療前に得られる。いくつかの実施形態において、試料は、他の療法を使用する前に得られる。いくつかの実施形態において、試料は、他の療法による治療中または他の療法による治療後に得られる。
【0136】
いくつかの実施形態において、治療前に、例えば、治療開始前または治療間隔後のある治療前にAng2および/またはVEGF Aを検出する。
【0137】
いくつかの実施形態において、本発明の疾患を治療する方法が提供され、前記方法は、Ang2および/またはVEGF Aの存在について対象(例えば、試料)(例えば、対象試料)を検査することにより、Ang2および/またはVEGF A値を確定し、Ang2および/またはVEGF A値を対照値(例えば、正常個体における値)と比較し、Ang2および/またはVEGF A値が対照値より大きい場合、対象に治療有効量の、場合によって1種または複数種の他の療法と組み合わせる本発明に記載のVHHまたは二重特異性結合分子を投与することにより、前記疾患を治療することを含む。
【0138】
本発明にかかる上記と他の態様および実施形態は、図面(図面の簡単な説明がその後に続く)と以下の発明の詳細な説明において記載され、以下の実施例に例示されている。上記および本願にわたって説明された特徴のいずれかまたはすべては、本発明の各実施形態において組み合わせることができる。以下の実施例を用いて本発明をさらに説明するが、実施例は、限定ではなく、説明することで記載され、当業者は、様々な変更を行うことができると理解すべきである。
【実施例】
【0139】
実施例1.ファージ免疫ライブラリーの調製
アルパカの免疫または合成ライブラリーの構築
1.1 健康な成体アルパカ(Chengdu NBBIOLAB社)を2頭選択し、組換えタンパク質抗原VEGFAまたはAng2(Beijing Sino Biological社)0.5mgとフロイントアジュバントを1:1の比率で均一に混合し、背中の複数箇所に皮下注射する方式でアルパクを4回免疫化し、免疫間隔を2週間とした。
【0140】
1.2 アルパカ末梢血50mlを採取し、リンパ球を分離し、生細胞2.5×107個あたり1mLのTrizol試薬を加え、クロロホルム/イソプロピルアルコール沈殿法により全RNAを抽出した。10μgのRNAを鋳型として取り、PrimeScript逆転写キット(Takara社)を用いて逆転写を行った。cDNAを鋳型として1回目のPCR反応を行い、フォワードプライマーAlp-VhLとリバースプライマーAlp-2b/2cRを用いて1回目のPCR産物を得た。1回目のPCR産物を鋳型として2回目のPCR反応を行い、フォワードプライマーAlp-VhFおよびリバースプライマーAlp-JHR-SalIを使用して2回目のPCR産物を得た。pC3-HFベクターと2回目のPCR産物をそれぞれSacIとSalI(Thermo社)を用いて二重消化し、酵素消化産物をT4リガーゼ(Thermo社)に加えて反応させ、TG1コンピテント細胞を電気形質転換して、VHH抗体ライブラリーを構築し、菌液を-80℃で凍結保存した。復活した菌液を100mlのYT-AG培地(Shanghai Sangon Biotech社)に接種し、M13KO7ヘルパーファージを加えて感染させ、2×YT-AK培地(Shanghai Sangon Biotech社)に菌体を再懸濁し、37℃、200rpmで一晩培養した。培養上清を回収し、PEG/NaCl沈殿法を用いて組換えファージを調製した。
【0141】
1.3 組換えファージを、ビオチン標識抗原VEGFA(ACRO社)またはAng2(Beijing Sino Biological社)を使用する3回のパニング実験を行った。50μlのM280磁気ビーズ(Thermo社)および適量のビオチン標識抗原を各チューブに加え、室温で30分間インキュベートした後、1×1012cfuの組換えファージを加え、室温で1時間インキュベートした。得られた混合物を1mlのPBSTに加え、各洗浄時間は5分間で10回洗浄した。最後に、pH2.5グリシン緩衝液0.5mlを加えて抗原結合した組換えファージを溶出し、TG1に感染させて一晩培養し、組換えファージを調製して次回のパニング実験に供し、陽性VHHのTG1細菌クローンを同定した。
【0142】
1.4 Binding ELISAにより結合活性およびクローニング配列決定を検出した。
VEGF Aを予め取り、Ang2抗原(Beijing Sino Biological社)は、PBS緩衝液で0.5μg/mlに希釈して96ウェルELISAプレートにコーティングし、冷蔵庫で4℃で一晩置いた。抗原コーティングプレートをPBSTで3回洗浄し、ブロッキング剤を300μl/ウェルで加え、室温で1時間静置ブロッキングした。PBSTで3回洗浄し、80μlのブロッキング剤+上記1.3で同定した陽性VHHのTG1菌の発現上清20μlを加え、室温で1時間振盪した。PBSTで3回洗浄し、ブロッキング剤で希釈したAnti-Flag/HRP二次抗体(Sigma社)100μl/ウェルを加え、室温で40分間振盪した。PBSTで6回洗浄し、TMB発色液を100μl/ウェルに添加し、光を避けて5~15分間発色させた。100μl/ウェルの停止液をさらに加えた。マイクロプレートリーダーで読み取り、OD450nm吸光度を測定し、読み取り値が0.5より大きい細菌クローンを選択して配列決定のためにジーンウイズに送り、各対応するVHH配列を含むTG1菌クローンを選択してグリセロールを加え、冷蔵庫で-80℃に凍結した。
【0143】
実施例2.原核生物抗体の生産および精製、ならびにヒト化
本発明は、分子生物学技術を利用して抗VEGFAまたはAng2陽性ファージ内の抗体配列を得、上記で得られた陽性VHHを含むTG1モノクローナル発現および精製を利用してVHH抗体タンパク質を得た。
【0144】
実施例1で同定したVHH発現プラスミドを含むTG1菌を800mlのLB-Amp培地に接種し、37℃、200rpmでOD600値が0.5~0.6になるまで培養した。菌液に1mMのIPTGを加えて発現を誘導し、28℃、200rpmで一晩培養し、培養上清を収集し、遠心分離後に15ml PB+1mg/mlポリミキシンを加えて細菌を再懸濁し、再度遠心分離し、0.22μmフィルタ膜で濾過した。細菌溶解物を1ml Ni Sepharoseプレカラムに流し、PBSを加えて2回洗浄し、0.5Mイミダゾールを加えて標的タンパク質を溶出し、紫外線法を使用してタンパク質濃度を測定した。溶出した目的タンパク質は紫外線法でタンパク質濃度を測定し、複数のチューブに分けて冷蔵庫で-40度に凍結した。得られた抗体溶液を以降上清と呼ぶ。
【0145】
本発明で得られた2つの抗VEGF A VHH抗体(LA42F8およびLA46E11)と1つの抗Ang2 VHH抗体(LA24C11)のCDR、およびVHHのアミノ酸配列、ならびに配列番号については、配列表を参照した。
【0146】
次に、上記で得られた免疫ライブラリ抗体LA42F8、LA46E11、およびLA24C11を、以下のステップのようにしてヒト化した:
1. CDRループ構造を決定し、
2. ヒト生殖系列配列データベースに重鎖の各V/J領域に最も近い相同配列を見つけ、
3. 重鎖軽鎖と最もマッチングするヒト生殖細胞系列および最低量の復帰変異をスクリーニングし、
4. キメラ抗体のCDR領域をヒトの骨格領域に構築し、
5. 配列と構造特徴を使用して、骨格領域においてCDRを維持する機能を果たすアミノ酸位置を決定し、
6. 重要であると決定された配列位置で復帰変異を行い(入力アミノ酸タイプに戻す)、
7. リスク部位のアミノ酸を最適化した。
【0147】
本発明で得られた3つのヒト化抗体によりそれぞれ得られたヒト化VHH抗体LA42F8.5、LA46E11.8、LA24C11.10のCDR、および重鎖可変領域のアミノ酸配列については、添付の配列表を参照した。
【0148】
上記のLA42F8、LA46E11、LA24C11およびヒト化抗体LA42F8.5、LA46E11.8、LA24C11.10は真核細胞での発現のために以下のように調製した:
【0149】
上記で得られたヒト化抗体配列をpcDNA3.1(Invitrogen)にクローニングし、抗体配列を含むプラスミドをそれぞれ得た。
【0150】
必要なトランスフェクション体積に応じて、Expi-293細胞(Invitrogen)を継代し、トランスフェクションの前日に細胞密度を1.5×10
6個の細胞/mLに調整した。トランスフェクションの当日に細胞密度は約3×10
6個の細胞/mLであった。最終体積の1/10のF17培地(Gibco、A13835-01)をトランスフェクション緩衝液として使用し、適切な前記プラスミドを加えて、均一に混合した。プラスミドに適量のポリエチレンイミン(PEI)(Polysciences、23966)を加え(293F細胞におけるプラスミドとPEIの比率は1:3)、均一に混合してから室温で10分間インキュベートすることによって、DNA/PEI混合物を得た。DNA/PEI混合物で細胞を再懸濁して、36.5℃、8%CO
2において培養した。24時間後にトランスフェクション体積の2%でフィード培地(FEED)(Sigma)を追加し、36.5℃、120rpmと8%CO
2の条件において培養した。6日目に連続培養しまたは細胞活性が60%以下になると、細胞上清を収集して精製した。精製に使用される重力カラムを0.5M NaOHで一晩処理し、ガラス瓶などは蒸留水で洗浄した後に180℃で4時間乾燥させて、精製カラムを得た。精製前に、上記の収集した細胞上清を4500rpmで30分間遠心分離し、細胞を廃棄した。次に上清を0.22μlのフィルタで濾過した。Protein Aカラム(Hitrap Mabselect Sure 5*5ml、GE、11-0034-95)を10mlの結合緩衝液(リン酸ナトリウム20mM、NaCl150mM、pH7.0)で平衡化した。濾過後の上清を精製カラムに加えて結合緩衝液15mlで再平衡化した。溶出緩衝液5ml(クエン酸+クエン酸ナトリウム0.1M、pH3.5)を加えて溶出液を収集し、溶出液1mlあたりTris-HCl 80μlを加えた。収集した抗体を限外濾過により濃縮し、PBS(Gibco、70011-044)に交換して濃度を検出した。表3、
図2、
図4A、
図5Aにおける検出のための本発明の抗体を除き、上清について特に言及されていない限り、実施例で使用した抗体はすべてこの発現のために精製された抗体であった。
【0151】
同様に、陰性対照IgG、陽性対照BI-anti-VEGF、BI836880、Faricimab(配列については配列表を参照)のコーディング核酸をpcDNA3.1にクローニングした後、Expi-293細胞にトランスフェクトした後、発現および精製して得、方法は実施例2と同じでした。
【0152】
実施例3 バイオレイヤー干渉技術による本発明のキメラ抗体と抗原の結合動力学の測定
バイオレイヤー干渉測定技術(ForteBio)を用いてヒトAng2と結合する本発明の抗体の平衡解離定数(KD)を測定した。従来の方法(Estep,Pら,High throughput solution Based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning.MAbs、2013.5(2):p270-8)に従ってForteBio親和性を測定した。
【0153】
実験開始より半時間前に、サンプルの数量分に応じて、適切な数量のAMQ(Pall、1506091)(サンプル検出用)センサまたはAHQ(Pall、1502051)(陽性対照検出用)センサを用意し、SDバッファ(PBS 1×、BSA 0.1%、ポリソルベート20 0.05%)に浸漬した。
【0154】
100μlのSDバッファー、上記の実施例2で調製したVHH抗体、および抗原[ヒトAng2(Beijing Sino Biological)、およびヒトVEGF165(R&D)を含む]を取り、それぞれ96ウェル黒色ポリスチレンハーフボリュームマイクロプレート(Greiner、675076)に加えた。試料の位置に応じてプレートを配置し、センサの位置を決定した。次のように機器パラメータを設定した:ステップBaseline、Loading~1nm、Baseline、Association、Dissociationを実行し、試料の結合と解離の速度で各ステップの実行時間を決定し、回転数は400rpmで、温度は30℃であった。ForteBio分析ソフトウェアを用いてKD値を分析した。
【0155】
上記測定法に記載の実験において、抗体の親和性は、表1に示された。
【表2】
【表3】
【0156】
実施例4 抗VEGF A VHH抗体ELISA遮断実験
本実施例は、受容体KDRへのhVEGFAの結合に対する本発明の抗VEGF A VHHの遮断効果を検証した。SA(Thermo カタログ番号21125)を1μg/mlに希釈し、100μl/ウェルでマイクロプレートにプレーティングし、4℃で一晩置いた。PBSTで3回洗浄し、3%BSAを加えて1.5時間ブロッキングした。PBSTで3回洗浄し、50ng/mlのビオチン標識のVEGF A165(ACRO カタログ番号VE5-H8210)を加え、1.5時間インキュベートし、予め抗体(初期濃度150μg/ml、3倍連続希釈した)の実施例2で調製したLA42F8上清、LA46E11上清、陰性対照IgG、および50μlの陽性対照BI-anti-VEGFをVEGFR-Fc(Beijing Sino Biological、カタログ番号:10012-H02H、最終濃度0.2μg/ml)と20分間インキュベートした後、プレートに加えた。PBSTで3回洗浄し、抗human Fc HRP抗体(Bethyl カタログ番号:A80-104P)(1:10000)を加え、30分間インキュベートした。PBSTで6回洗浄し、TMBで5分間発色し、停止後にOD450nmを読み取った。
【0157】
本発明により得られた3つの抗VEGF VHH抗体の遮断結果を
図2に示した。
図2は、候補分子LA42F8およびLA46E11抗体がVEGF AのVEGFR2への結合を完全に遮断できることを示した。
【0158】
実施例5 抗Ang2 VHH抗体ELISA遮断実験
本実施例は、本発明の抗Ang2 VHH抗体の、hAng2-biotin(R&D カタログ番号:BT623B/CF)のTie2タンパク質への結合に対する遮断効果を検証した。
【0159】
Tie2-Fc(Beijing Sino Biological カタログ番号:10700-H03H)を2μg/mlに希釈し、100μl/ウェルでマイクロプレートにプレーティングし、4℃で一晩置いた。PBSTで3回洗浄し、3%BSAを加えて1.5時間ブロッキングした。PBSTで3回洗浄し、予め実施例2で調製した精製LA24C11.10および陰性対照IgG各50μlをhAng2-biotin(最終濃度0.2μg/ml)と20分間インキュベートした後、プレートに加えた。PBSTで3回洗浄し、Avidin HRP(1:2000)を加え、35分間インキュベートした。PBSTで6回洗浄し、TMBで5分間発色し、停止後にOD450nmを読み取った。
【0160】
本発明によって得られた抗Ang2 VHH抗体の遮断結果を表3に示し、候補分子LA24C11は、Ang2の受容体Tie2への結合に対する遮断効果を有した。
【表4】
【0161】
実施例4と同様に(Ang2-Bio(R&D カタログ番号:BT623B/CF)を使用)、Ang2およびTie2の結合の遮断に対するLA24C11.10の効果をELISA遮断実験によって検出し、その結果を
図3に示した。LA24C11.10がAng2の受容体Tie2への結合に対して遮断効果を有することがわかった。
【0162】
実施例6 抗Ang2 VHH抗体のリン酸化実験
本実施例は、hAng2-Fcによって誘導されるTie2リン酸化に対する本発明の抗Ang2
VHH抗体の阻害効果を実証した。
【0163】
hAng2によって誘導されるリン酸化実験
本研究は、抗体および組換えhAng2-Fcタンパク質を、Tie2を過剰発現するExpi293細胞293-Tie2と共インキュベートし、系内のリン酸化Tie2の含有量を検出して、hAng2-fcによって誘導されるTie2リン酸化に対する異なる抗体の阻害効果を反映した。
【0164】
ヒトTie2を過剰発現するExpi-293細胞293-Tie2細胞は、マルチクローニングサイトMCSにクローニングされたヒトTie2遺伝子(Beijing Sino Biological カタログ番号:HG10700-M)を有するpCHO1.0ベクター(Invitrogen)をExpi-293細胞(Thermo)にトランスフェクトすることによって生成された。
【0165】
ヒトTie2を過剰発現する293-Tie2細胞を取り、2×106細胞/mlに希釈し、ウェル当たり100μlを96ウェルプレートに加え、400gで5分間遠心分離し、上清を除去した。
【0166】
Expi293培地(Thermo カタログ番号A1435102)を使用して実験培地を構成し、その中に試験抗体(実施例2で調製したLA24C11(24C11)およびLA24C11.0(hz24C11.10)、ならびに陰性対照IgG、および陽性対照Nesvacumab(CN202010573625.2にしたがって調製された))を加え、初期濃度は60μg/mlで、順次に1:2で等倍希釈し、hAng2-Fc(Beijing Sino Biological:10691-H02H)の最終濃度は2.5μg/mlであった。
【0167】
細胞をウェルあたり100μlの実験培地に再懸濁し、37℃で15分間インキュベートし、遠心分離して培地を除去し、1%プロテアーゼ(Thermo カタログ番号:78442)およびホスファターゼ阻害剤(Thermo カタログ番号:78442)を含むNP-40溶解バッファー(Beyotime、カタログ番号:P0013F)100μlを加え、氷上で30分間置き、2000gで遠心分離し、タンパク質上清を収集し、冷蔵庫で-80度に保管した。
【0168】
リン酸化Tie2 ELISAキット(R&D カタログ番号:DYC2720E)の説明書に従ってpTie2濃度を検出し、キット内の捕捉抗体を4μg/mlの濃度でマイクロプレートにコーティングし、4℃で一晩置いた。PBSTで3回洗浄し、5%BSAで1時間ブロッキングした。前のステップで得た凍結解凍したタンパク質上清100μl、および対照pTie2(R&D カタログ番号:DYC2720E)を加え、標準曲線の作成に用いて室温で2時間インキュベートした(試料pTie2の濃度が高すぎて、ELISAの検出範囲を超える場合、得られた混合物を2~3倍希釈した)。PBSTで3回洗浄し、HRPが結合される抗pTyr抗体(R&D カタログ番号:DYC2720E)100μlを加え、室温で2時間インキュベートした。PBSTで6回洗浄し、100μlのTMB(Solarbio カタログ番号:PR1200)を加えて発色させ、15分後に100μlの停止緩衝液(Solarbioカタログ番号:C1058)を加えて反応を停止させた。多機能マイクロプレートリーダーSpectraMax i3を使用してOD450~OD620を測定した。実験結果を
図4A(24C11は実施例2で調製したLA24C11原核生物発現精製上清である)および
図4Bに示した。
【0169】
したがって、本発明の抗Ang2 VHH抗体LA24C11およびLA24C11.10は両方とも、インビトロでhAng2-Fcによって誘導される293-Tie2細胞のリン酸化を効果的に阻害することができた。
【0170】
実施例7 抗VEGF A VHH抗体KDR reporter遮断実験
VEGF Aは、関連する受容体VEGFR2(KDR)に結合し、VEGFR2シグナル伝達経路を活性化し、血管内皮細胞の生存、増殖、および遊走などを誘導し、本研究は、KDR reporter実験系を用い、NFAT-RE-luc2P/KDR HEK293細胞(Promega Cat CS181401)を使用し、VEGFA活性化関連受容体シグナル伝達経路に対する段階希釈した抗体の遮断効果を検出した。
【0171】
実験方法については、供給元(Promega)の説明書を参照した。
【0172】
3日前に実験培地(10%FBSを含むDMEM培地)に交換したNFAT-RE-luc2P/KDR HEK293細胞を取り、古い培地を吸引除去し、PBSで1回洗浄した後、1mlのAccutase solution(Sigma カタログ番号:A6964-500ML)を使用して細胞が丸くなり脱壁するまで細胞を消化し、5mlの希釈培地で反応を停止し、細胞を遠沈管に吸い取り、1000rpmで5分間遠心分離し、培地を廃棄し、10mlの希釈培地(10%FBSを含むDMEM培地)を加えて細胞を再懸濁し、均一に混合して計数し、細胞生存率が90%以上になるべきであった。希釈培地を使用して細胞密度を0.8×106細胞/mlに調整し、実験レイアウトに従って96ウェル白色細胞培養プレートに50μl/ウェルで加えた。
【0173】
濃度が100ng/mlのVEGF Aと勾配希釈した被検抗体混合液を調製し、30分間静置し、細胞を含む96ウェル白色細胞培養プレートに50μl/ウェルで加え、37℃、5%炭酸ガスインキュベーターで6時間インキュベートした。ここで、被検試料は、陰性対照IgG、陽性対照BI-anti-VEGF、LA42F8、LA46E11、LA42F8.5、LA46E11.8であり;Blankは、希釈培地のみを含み、VEGF A、抗体を含まず;VEGF A 100ng/mlは、100ng/mlのVEGFAのみを含んだ。
【0174】
6時間インキュベートした96ウェル白色細胞培養プレートを炭酸ガスインキュベーターから取り出し、室温まで10~15分間平衡化した。予め室温に平衡化したBio-Glo Luciferase Assay Systemを取り出し、実験レイアウトに従って96ウェル白色細胞培養プレートに100μl/ウェルで加え、室温で光を避けて5分間インキュベートした。蛍光読み取りは、多機能マイクロプレートリーダーを使用し、プレート読み取りモードとして化学発光モードを選択し、プレート読み取りタイプとしてエンドポイント法を選択し、波長を全波長に設定し、列ごとに蛍光を収集し、各列の収集時間は1000msであった。
【0175】
上記測定法に記載の実験において、検出結果を
図5に示し、抗VEGF VHH抗体LA42F8、LA42F8.5、LA46E11、およびLA46E11.8はすべて、VEGF Aによって誘導されるKDRシグナル伝達経路の活性化を遮断することができた。
【0176】
実施例8 抗VEGF A VHHによるVEGF Aによって誘発されるHUVEC生存増殖の阻害の実験
VEGF Aは、血管内皮細胞中のVEGFRなどに関連する受容体に作用することができ、血管内皮細胞の生存、増殖、遊走を促進し、これによって血管新生を誘導し、本実験は、VEGFがヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の生存および増殖を誘導することに基づいて、抗体がVEGF Aによって誘導される初代細胞の生存および増殖に対する阻害効果を検出した。
【0177】
本実施例は、CCK-8を用いてHUVECの生存および増殖を測定し、具体的な方法は、細胞HUVEC(Allcells カタログ番号:H-001-CN)を1日前に処理し、96ウェル培養プレートに2000細胞/ウェルでプレーティングし、37℃、5%炭酸ガスインキュベーター中に入れて24時間インキュベートしたことであった。
【0178】
細胞が壁に付着した後、最終濃度が10ng/mlのVEGF Aおよび勾配希釈した抗体(実施例2で調製したLA42F8、初期濃度80μg/ml、1:3で等倍希釈し、陰性対照IgG、陽性対照BI836880、10ng/mlのVEGF Aのみを含む群(VEGFA)、ならびにVEGF Aおよび抗体添加なしのBlank)を含む実験培地を調製し、96ウェルプレート中の内皮細胞培地を置換し、37℃、5%炭酸ガスインキュベーター中に入れて72時間インキュベートし、CCK-8検出液(Dojindo カタログ番号:CK04)を10μl/ウェルで加え、37℃、5%炭酸ガスインキュベーター中で12~24時間インキュベートし、多機能マイクロプレートリーダーを使用して吸光度OD450-OD620の読み取り値を行った。
【0179】
上記測定法に記載の実験において、検出結果を
図6に示し、図から、抗VEGFA抗体LA42F8が、VEGFAによって誘導されるHUVEC細胞の生存および増殖を完全に阻害できることがわかった。
【0180】
実施例9 抗VEGF A/Ang2二重特異性抗体HEK293-KDR reporter遮断実験
本発明の二重特異性結合分子の鎖IEX04-008、IEX04-010およびIEX04-012(配列は配列表に示す)の鎖をpcDNA3.1ベクターに構築し、実施例2に記載のように293細胞で発現させ、前記二重特異性結合分子を精製した。
【0181】
本実施例は、HEK293-KDR reporter実験により、VEGF Aに対する抗VEGF A/Ang2二重特異性抗体の遮断効果を検出した。実験方法については実施例7を参照した。
使用した結合分子または対照は次のとおりであった:
Blank:VEGF Aなし、抗体なし、
VEGF A:100ng/ml VEGF A、
陰性対照IgG:上記のように調製し、
陽性対照Faricimab:上記のように調製し、初期濃度は13.5μg/ml、1:3で勾配希釈し、
陽性対照BI-836880:上記のように調製し、初期濃度は13.5μg/ml、1:3で勾配希釈し、
IEX04-012:上記のように調製し、初期濃度は13.5μg/ml、1:3で勾配希釈した。
【0182】
検出結果を
図7に示し、二重特異性結合分子IEX04-012は、VEGFによって誘導されるKDRシグナル伝達経路の活性化を阻害し、対照抗体BI836880と比較して、より優れた阻害能力を有した。
【0183】
実施例10 抗VEGF A/Ang2二重特異性結合分子HUVEC増殖阻害実験
本研究は、HEK293-KDR reporter実験により、VEGFAによって誘導されるHUVEC細胞の生存および増殖に対する抗VEGF A/Ang2二重特異性結合分子の阻害効果を検出した。
【0184】
実験方法は実施例8と同様であるが、使用した抗体は以下のとおりであった。
図A:初期濃度が20ng/mlで、1:3で等倍希釈した上記のように調製したIEX04-008、陰性対照IgG、陽性対照FaricimabおよびBI836880、ブランクはBlank(すなわち抗体およびVEGF Aなし)、およびVEGF A群(すなわち、20ng/mlのVEGFAのみを加えた)、
図B:初期濃度が80μg/mlで、1:3で等倍希釈した上記のように調製した陰性対照IgG、BI-anti-VEGF、IEX04-010、ブランクはBlank(すなわち抗体およびVEGF Aなし)、およびVEGF A群(すなわち、20ng/mlのVEGFAのみを加えた)、
図C:初期濃度が20nMで、1:3で等倍希釈した上記のように調製したIEX04-012、陰性対照IgG、陽性対照FaricimabおよびBI836880、ブランクはBlank(すなわち抗体およびVEGF Aなし)、およびVEGF A群(すなわち、20ng/mlのVEGFAのみを加えた)。
【0185】
検出結果は
図8に示すように、二重特異性結合分子IEX04-008、IEX04-010、およびIEX04-012はすべてVEGFによって誘導されるHUVEC細胞の生存および増殖を阻害し、対照抗体BI836880およびFaricimabと比較して、IEX04-012のIC50がより低く、より優れた阻害能力を有した。
【0186】
実施例11 抗VEGF A/Ang2二重特異性抗体Ang2遮断実験
Ang2はその天然受容体Tie2に結合することができ、本研究は、ELISA法およびFACS法により抗VEGF A/Ang2二重特異性結合分子によるAng2とTie2間の結合の遮断を検出した。
【0187】
(1)ELISA
IEX04-008、IEX04-010およびIEX04-012、ならびに対照抗体BI-836880およびFaricimabがヒトAng2のhTie2への結合を遮断する能力を、ELISAによって検出した。
【0188】
hTie2タンパク質(Beijing Sino Biological)をPBSで再懸濁して2μg/mLの濃度に溶解し、マイクロプレートに一晩被覆した。5%のBSAで1時間ブロッキングし、ビオチン抗原Recombinant Biotinylated hAngiopoietin-2タンパク質(R&D)を600μg/mlMに希釈し、50μl/ウェルであった。上記のように調製した抗体(IEX04-008、IEX04-010、IEX04-012、ならびに陽性対照抗体BI836880、Faricimab、および陰性対照IgG)を最高濃度300nMから1:2で等倍希釈し、合計8個または12個の希釈勾配、50μl/ウェルで、氷上のPBS中で30分間インキュベートし、ビオチン抗原の最終濃度は300ng/mlであった。上記で得られた抗原抗体混合液をマイクロプレートにて90分間インキュベートし、PBSで3回洗浄し、上清を捨て、各ウェルに1:10000で希釈したAvidin-HRP(Invitrogen)を100μL加え、常温で30分間行い、PBSを加えて6回洗浄した。100μL/ウェルのTMB発色液(solarbio)により1分間発色し、100μL/ウェルの停止液(Solarbio)により停止させた。
【0189】
マイクロプレートリーダーを使用して、各ウェルのOD450およびOD620を読み取った。
【0190】
実験結果は(
図9を参照)、IEX04-008、IEX04-010、IEX04-012および対照抗体BI836880がすべて完全な遮断効果を有し、本発明の二重特異性結合分子のIC50がすべて陽性対照抗体より顕著に小さいことを示した。
【0191】
(2)フローサイトメトリー(FACS)
IEX04-008、IEX04-010、IEX04-012、ならびに陽性対照抗体BI-836880およびFaricimabおよび陰性対照IgGが細胞表面上のTie2へのヒトAng2-hFcの結合を遮断する能力はFACSによって測定した。
【0192】
抗原hAng2-Fcタンパク質(Beijing Sino Biological、カタログ番号:10691-H02H)を4μg/mlに希釈し、50μl/ウェルであった。上記のように調製した抗体(IEX04-008、IEX04-010、IEX04-012、ならびに陽性対照抗体BI-836880およびFaricimabおよび陰性対照IgG)を最高濃度の800nMから始めて2倍勾配希釈し、合計12個の希釈勾配、50μl/ウェルで、氷上のPBS中で30分間インキュベートし、抗原hAng2-Fcタンパク質の最終濃度は2μg/ml、各抗体の最大最終濃度は400nMであった上記のように調製した293-Tie2細胞を2×10
5細胞/ウェル、100μl/ウェルに調整した。細胞を300gで5分間遠心分離し、上清を捨て、抗原抗体混合液に再懸濁した。氷上において30分間インキュベートし、100μl/ウェルでPBSを加え、300gで5分間遠心分離し、PBSで洗浄し、1ウェルあたり1:200で希釈した100μlのGoat anti-human IgG-PE(SouthernBiotech)を加え、20分間氷浴して、1ウェルあたり100μlのPBSを加え、300gで5分間遠心分離し、PBSで洗浄した。100μlのPBSで再懸濁して、フローサイトメーター(BD Biosciences)で細胞蛍光シグナル値を検出した。そのMFIに従って、GraphPadで濃度依存曲線をフィッティングした。結果を
図10に示した。図に示されるように、二重特異性結合分子IEX04-008、IEX04-010およびIEX04-012がすべてヒトAng2-hFcのTie2への結合を効果的に遮断でき、IC50が陽性対照より低かった。
【0193】
実施例12 抗VEGF A/Ang2二重特異性結合分子のAng2リン酸化阻害実験
本実施例は、hAng2によって誘導されるリン酸化実験を使用して、hAng2-Fcによって誘導されるTie2リン酸化に対する本発明の二重特異性結合分子の阻害効果を検証した。
【0194】
本研究は、二重特異性結合分子と組換えhAng2-Fcタンパク質を、Tie2を過剰発現するExpi293細胞、293-Tie2と共インキュベートし、系内のリン酸化Tie2の含有量を検出して、hAng2-Fcによって誘導されるTie2リン酸化に対する異なる抗体の阻害効果を反映した。
【0195】
上記のように調製した過剰発現293-Tie2細胞を取り、2×106cell/mlに希釈し、ウェル当たり100μlを96ウェルプレートに加え、400gで5分間遠心分離し、上清を除去した。
【0196】
Expi293培地(Thermo カタログ番号A1435102)を使用して実験培地を調製し、その中にそれぞれ試験抗体(上記のように調製したIEX04-012、陽性対照BI-836880およびFaricimab、陰性対照IgG)を加え、最大最終濃度は60μg/mlで、順次に1:2で等倍希釈し、hAng2-Fc(Beijing Sino Biological、カタログ番号:10691-H02H)の最終濃度は2.5μg/mlであった。
【0197】
細胞をウェルあたり100μlの実験培地に再懸濁し、37度で15分間インキュベートし、遠心分離して培地を除去し、1%プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含む100μlのNP-40溶解液を加え、氷上に30分間置いた。2000gで遠心分離し、タンパク質上清を収集し、冷蔵庫で-80度に保存し、
【0198】
リン酸化Tie2 ELISAキット(R&D DYC2720E)の説明書に従ってpTie2の濃度を検出し、捕捉抗体を4μg/mlの濃度でマイクロプレートにコーティングし、4℃で一晩置いた。PBSTで3回洗浄し、5%BSAで1時間ブロッキングした。試験試料100μl、および対照pTie2(R&Dカタログ番号:DYC2720E)を加え、標準曲線の作成に用いて室温で2時間インキュベートした(試料pTie2の濃度が高すぎて、ELISAの検出範囲を超える場合、得られた混合物を2~3倍希釈した)。PBSTで3回洗浄し、HRPが結合される抗pTyr抗体(R&D カタログ番号:DYC2720E)100μlを加え、室温で2時間インキュベートした。PBSTで6回洗浄し、TMBを100μl加えて発色し、15分後に100μlの停止緩衝液を加えて反応を停止した。分光光度計を使用して、各ウェルのOD450~OD620を測定した。
【0199】
実験結果を
図11に示した。本発明の抗体IEX04-012は、インビトロでhAng2-Fcによって誘導される293-Tie2リン酸化を効果的に阻害することができ、IC50は陽性対照より優れていた。
【0200】
実施例13 Ang2血管内皮細胞漏出に対する抗VEGF A/Ang2二重特異性結合分子の阻害実験
本研究は、HUVEC-Tie2漏出実験により、血管内皮細胞漏出に対する抗VEGF A/Ang2二重特異性結合分子の作用および機能を同定した。
【0201】
HUVEC細胞をレンチウイルス(Allcells カタログ番号:H-001-CN)でトランスフェクトし、Tie2を過剰発現するHUVEC-Tie2細胞を得た。
【0202】
mini-well96ウェルインサートペトリ皿を用いてEGM-2培地300μlを下層にプレーティングし、Accutase(Sigma)で消化してHUVEC-Tie2を得、EGM-2培地を用いて1*107細胞/mlに再懸濁し、100μl/ウェルでペトリ皿の上層にプレーティングした。下室培地(EGM-2培地)を24時間ごとに置換し、24時間後に下室培地を実験培地に交換し、前記実験培地の組成は次のとおりであった:
Blank:EGM-2培地(Lonza カタログ番号:CC-5035)、
VEGF A群:EGM-2培地+20ng/ml VEGF(R&D カタログ番号:293-VE)、
IgG群(VEGF A+IgG):EGM-2培地+20ng/ml VEGF+10μg/ml IgG、
Ang1群(VEGF A+Ang1):EGM-2培地+20ng/ml VEGF(R&D カタログ番号:293-VE)+200ng/ml Ang1(R&D カタログ番号:923-AN)、
IEX04-012群(VEGF A+IEX04-012):EGM-2培地+20ng/ml VEGF+10μg/ml IEX04-012、
BI-836880群(VEGF A+BI-836880):EGM-2培地+20ng/ml VEGF+10μg/ml BI-836880、
Faricimab群(VEGF A+Faricimab):EGM-2培地+20ng/ml VEGF+10μg/ml Faricimab。
上記実験培地を37℃、5%CO2に置いて培養した。
【0203】
24時間後、1μlのFITC-Dextran(Sigma カタログ番号:FD2000S-1G)(4mg/ml)を上室実験培地の各ウェルに加え、37℃、5%CO2に置き、30分間後に下室培地を取り外し、PBSで希釈し、1:10で希釈した後、マイクロプレートリーダーで検出し、励起光の波長は488nm、発光波長は535nmであった。
【0204】
実験結果は
図12に示すように、本発明の抗体IEX04-012がVEGFによって誘導される血管内皮細胞の透過性を効果的に低下させることができることを示した。
【0205】
実施例14.レーザー誘発脈絡膜血管新生の薬効試験
本実験は、アカゲザルレーザー誘発脈絡膜血管新生モデルを使用して、本発明の二重特異性結合分子IEX04-012の抗血管新生効果を測定した。
【0206】
アカゲザル:種属はアカゲザルであり、グレードは普通グレードであり、体重は、購入時の体重が3.30~4.20kgで、モデリング時の体重が3.35~4.35kgであり、由来は、Sichuan Hengshu Bio-Technology Co.,Ltd.であり、生産許可証番号はSCXK(川)2019-029であり、実験動物品質合格書番号はNo.0023356であり、
【0207】
本試験はレーザーを用いてアカゲザルの眼底黄斑の中心窩周辺に光凝固術を行って、眼底の脈絡膜血管新生を誘発することにより、ヒト脈絡膜新生血管に類似する動物モデルを作成した。光凝固前と光凝固後20日後にフルオレセイン眼底血管造影を行い、モデリング状況を判定し、モデリングに成功したアカゲザル20匹(雌雄各半)を選択してモデル対照群、IEX04-012低用量群、IEX04-012高用量群、Eylea群、Faricimab群の5群に分け、各群に4匹のサル、雌雄各半とした。
【0208】
光凝固後21日目に、各群のサルに表中の投与量に応じてそれそれ投与を行い、IEX04-012、Eylea(Bayer)またはFaricimab(いずれも0.9%塩化ナトリウム注射液に溶解)を両眼硝子体に注射投与し、モデル対照群には同体積の0.9%塩化ナトリウム注射液が投与された。各群の動物は、投与後7日目、14日目、21日目、および28日目に眼底カラー写真撮影、フルオレセイン眼底血管造影(漏出スポット統計および漏出面積測定)(Robin J Goody、Wenzheng Hu、Afshin Shafieeら、Optimization of laser-induced choroidal neovascularization in African green monkeys.Experimental Eye Research、Exp Eye Res.2011 92(6):464-72)、光干渉断層撮影(OCT、Wang Q、Lin X、 Xiang Wら、Assessment of laser induction of Bruch’s membrane disruption in monkey by spectral-domain optical coherence tomography. British Journal of Ophthalmology、2015、99(1):119-24)をそれぞれ行い、試験製品による脈絡膜血管新生の阻害を観察した。投与後29日目に安楽死させた後、両眼を取って免疫組織化学(HE)染色による組織学的検査を行った。
【表5】
【0209】
結果は
図13~15に示すように、本発明の二重特異性結合分子は、投与28日後に、顕著な抗血管新生効果を示し、グレード4の漏出スポット(
図13A)とグレード3~4の漏出スポット(
図13B)の数の統計は、IEX04-012群の処置動物における高漏出スポットの数が対照群および陽性対照群より顕著に少なかったことを示した。OCTの結果は、IEX04-012治療群の動物において、網膜厚が顕著に減少し、網膜浮腫の程度が減少することを提示し、かつその効果が対照より優れたことを示した(
図14)。フルオレセイン眼底血管撮影の結果は、IEX04-012治療群における眼底漏出面積が顕著に減少し、かつその効果が陽性対照であるEyleaおよびFaricimabより優れたことを示し(
図15)、本発明の抗体が新生血管による漏出を顕著に阻害することができることを示した。以上により、本発明の抗体併用抗VEGF阻害剤は、レーザー誘発眼底血管新生に対して明らかな阻害効果を有し、同時に血管の完全性を保護する機能を有することが証明された。
【0210】
アカゲザルに投与29日後、体重に応じてペントバルビタールナトリウムで麻酔し(約30mg/kgを静脈内注射、投与量は動物の健康状態に応じて調整できる)、腹部大動脈または大腿動脈から瀉血させて安楽死させ、大局観察を行い、両側眼を摘出した。
【0211】
一部の動物の両眼を、改良したDavidson’s固定液で固定し、パラフィン包埋して切片にし、レーザーモデリング領域を選択して通常のHE染色、CD31 IHC染色などの組織病理学的検査を行った。
【0212】
本発明の抗体群は、病理学的切片において、抗VEGF単独治療と比較して、網膜病変領域を顕著に減少させ、網膜浮腫を緩和し、レーザー損傷領域における組織増殖を減少させ、その結果は、より良好な網膜形態学的改善が示され(
図16を参照)、網膜脈絡膜血管新生が阻害され、血管完全性が向上した(
図17)。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【表6-5】
【配列表】
【国際調査報告】