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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】水素酸化触媒及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/42 20060101AFI20240517BHJP
   B01J 35/45 20240101ALI20240517BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240517BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20240517BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20240517BHJP
   B01J 23/64 20060101ALI20240517BHJP
   C01B 5/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
B01J23/42 M
B01J35/45
B01J37/08
B01J37/02 101D
B01J23/44 M
B01J23/64 M
C01B5/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574614
(86)(22)【出願日】2022-05-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 KR2022007621
(87)【国際公開番号】W WO2022255748
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0070650
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523453226
【氏名又は名称】ハイドロケム, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シム スン ソプ
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA12
4G169AA14
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA21C
4G169BA28A
4G169BA28B
4G169BA28C
4G169BA42C
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB12C
4G169BC26A
4G169BC26B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BE06C
4G169CA07
4G169CA11
4G169CB81
4G169DA05
4G169EB19
4G169ED07
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB15
4G169FB19
4G169FB30
4G169FC02
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】常温だけでなく、極低温で低濃度の水素を除去することができる水素酸化触媒を提供しようとするものである。
【解決手段】 白金クラスターが担持されたチタニア支持体を含む水素酸化触媒であって、前記白金クラスターは、Pt0を含み、前記Pt0は、テラス(Terrace)、ステップ(Step)、キンク(Kink)結晶面を含み、前記結晶面のうちテラス(Terrace)結晶面がステップ(Step)、キンク(Kink)結晶面よりもさらに多い水素酸化触媒を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金クラスターが担持されたチタニア支持体を含む水素酸化触媒であって、
前記白金クラスターは、Pt0を含み、
前記Pt0は、テラス(Terrace)、ステップ(Step)、キンク(Kink)結晶面を含み、
前記結晶面のうちテラス(Terrace)結晶面がステップ(Step)、キンク(Kink)結晶面よりもっと多いことを特徴とする水素酸化触媒。
【請求項2】
前記白金クラスターの酸化価比率(Pt0/Pttotal)は、40~50%であることを特徴とする請求項1に記載の水素酸化触媒。
【請求項3】
前記水素酸化触媒は、極低温(-10℃)から常温(25℃)範囲の温度で水素酸化反応活性を有することを特徴とする、請求項1に記載の水素酸化触媒。
【請求項4】
前記チタニア支持体にパラジウムおよびアンチモンのいずれか一つ以上の助触媒がさらに担持されることを特徴とする、請求項1に記載の水素酸化触媒。
【請求項5】
前記水素酸化触媒は、窒素酸化物が同時注入される条件でも95%以上の水素酸化活性を有することを特徴とする、請求項4に記載の水素酸化触媒。
【請求項6】
前記水素酸化触媒は、一酸化炭素が同時注入される条件でも80%以上の水素酸化活性を有することを特徴とする、請求項4に記載の水素酸化触媒。
【請求項7】
白金クラスター前駆体をチタニア支持体に担持するステップと、前記担持された白金クラスター/チタニアを200~300℃で焼成する段階を含み、
前記白金クラスターはPt0を含み、
前記Pt0はテラス(Terrace)、ステップ(Step)、キンク(Kink)結晶面を含み、
前記焼成温度範囲で、前記結晶面のうちテラス(Terrace)結晶面がステップ(Step)、キンク(Kink)結晶面よりさらに多いことを特徴とする、
水素酸化触媒の製造方法。
【請求項8】
前記白金クラスター前駆体は、チタニア支持体100重量部に対して0.5重量部以上であることを特徴とする請求項7に記載の水素酸化触媒の製造方法。
【請求項9】
前記白金クラスター前駆体は、Ptc(MA)、Ptc(EN)及びPtc(EA)の中でいずれか一つであることを特徴とする請求項7に記載の水素酸化触媒の製造方法。
【請求項10】
前記焼成するステップにおいて還元される白金クラスターの酸化価比率(Pt0/Pttotal)は、40~50%であることを特徴とする請求項7に記載の水素酸化触媒の製造方法。
【請求項11】
前記白金クラスター前駆体をチタニア支持体に担持する前に、パラジウム及びアンチモンのいずれか一つ以上を含む助触媒前駆体を前記チタニア支持体に担持するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の水素酸化触媒の製造方法。
【請求項12】
前記助触媒前駆体は、チタニア支持体100重量部に対して0.1~2.0重量部であることを特徴とする、請求項11に記載の水素酸化触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素酸化触媒及びその製造方法に関し、より詳細には、常温だけでなく、極低温で低濃度の水素を制御することができる水素酸化触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、全世界的に水素エネルギー化に対する関心が増加するにつれ、米国、日本、欧州など主要国で水素エネルギー技術開発に心血を注いでいる。さらに、水素エネルギー化過程で発生し得る水素の漏出及び爆発性に対する安全研究も着実な投資を通じて同時に行われている。水素の場合、濃度が4vol%以上で周辺の雰囲気によって自然発火して爆発の可能性が存在するため、燃料電池、鉛蓄電池、半導体工程など多様な分野で発生する水素に対するsafety問題が言及されている。
【0003】
現在、水素エネルギー安定性の研究は、水素の貯蔵及び遮断、漏出防止センサなどに対する研究が主に行われており、最近では水素除去技術が研究されている。代表的な水素除去技術としては、水素爆発の被害を予防するために、点火器(igniter)、熱材結合器(thermal recombiner)または触媒酸化法などが存在する。このうち、点火器及び熱再結合器は、水素が水に再結合される反応温度まで熱エネルギーを注入して水素を制御する方法であって、空間の使用に制限があり、別途のエネルギー源が必要であるという短所を有している。
【0004】
一方、触媒酸化技術は、触媒を用いて気相の酸素と水素が結合することにより水素を除去する技術であって、安全に水素を制御することができる技術である。したがって、上述した三つの方法のうち、水素と酸素を触媒を用いて結合させる触媒酸化技術が最も脚光を浴びているのが実情である。
【0005】
このような触媒酸化技術は、別途のエネルギー源なしに水素と酸素の発熱反応で発生する熱を回収して暖房や温水に適用するか、システムに必要な熱エネルギーとして活用が可能であるため、エネルギー効率の面でも長所を有する。また、密閉された空間で発生する水素を処理することによって発生する熱による自然対流現象を利用して持続的な処理が可能な長所を有している。
【0006】
これと関連して、韓国登録特許第10-0998325号は白金/チタニア触媒を利用して常温でホルムアルデヒドを酸化させる触媒の製造技術、韓国登録特許第10-1660014号は白金系触媒に関するもので、常温で水素を除去することができる白金/チタニア触媒、韓国登録特許第10-1331391号は白金/チタニア触媒ではないパラジウム/チタニア触媒及びその製造方法に関するもので、常温で空気中に含まれたホルムアルデヒド、一酸化炭素及び水素除去能を有するパラジウム/チタニア触媒及びその製造方法を開示している。
【0007】
このように、従来技術は常温で水素を除去できる触媒を開示しているが、極低温で低濃度の水素を除去できる触媒は開示されていないのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためのものであって、常温だけでなく、極低温で低濃度の水素を除去することができる水素酸化触媒を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、白金クラスターが担持されたチタニア支持体を含む水素酸化触媒であって、前記白金クラスターは、Pt0を含み、前記Pt0は、テラス(Terrace)、ステップ(Step)、キンク(Kink)結晶面を含み、前記結晶面のうちテラス(Terrace)結晶面がステップ(Step)、キンク(Kink)結晶面よりもさらに多い水素酸化触媒を提供する。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記白金クラスターの酸化価比率(Pt0/Pttotal)は40~50%であってもよい。
【0011】
本発明の一実施例において、上記水素酸化触媒は、極低温(-10℃)から常温(25℃)範囲の温度で水素酸化反応活性を有することができる。
【0012】
本発明の一実施例において、前記チタニア支持体にパラジウム及びアンチモンのいずれか一つ以上の助触媒がさらに担持されていてよい。
【0013】
本発明の一実施例として、前記水素酸化触媒は、窒素酸化物が同時注入される条件でも95%以上の水素酸化活性を有し得る。
【0014】
本発明の一実施例において、前記水素酸化触媒は、一酸化炭素が同時注入される条件でも80%以上の水素酸化活性を有することができる。
【0015】
また、本発明は、白金クラスター前駆体をチタニア支持体に担持する段階および前記担持された白金クラスター/チタニアを200~300℃で焼成する段階を含み、前記白金クラスターはPt0を含み、前記Pt0はテラス(Terrace)、ステップ(Step)、キンク(Kink)結晶面を含み、前記焼成温度範囲で、前記結晶面のうちテラス(Terrace)結晶面がステップ(Step)、キンク(Kink)結晶面よりさらに多い水素酸化触媒の製造方法を提供する。
【0016】
本発明の一実施形態として、前記白金クラスター前駆体は、チタニア支持体100重量部に対して0.5重量部以上であってもよい。
【0017】
本発明の一実施例として、前記白金クラスター前駆体は、Ptc(MA)、Ptc(EN)及びPtc(EA)のうちいずれか一つであり得る。
【0018】
本発明の一実施形態として、前記焼成するステップにおいて還元される白金クラスターの酸化価比率(Pt0/Pttotal)は、40~50%であってもよい。
【0019】
本発明の一実施形態として、前記白金クラスター前駆体をチタニア支持体に担持する前に、パラジウム及びアンチモンのいずれか一つ以上を含む助触媒前駆体を前記チタニア支持体に担持するステップをさらに含んでいてもよい。
【0020】
本発明の一実施例として、前記助触媒前駆体は、チタニア支持体100重量部に対して0.1~2.0重量部であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明による水素酸化触媒は、常温だけでなく極低温で低濃度の水素を効果的に制御することができる。また、水素酸化触媒の還元工程なしに焼成工程だけでもPt0の酸化価種を示すことができるので、製造工程上時間、費用などを節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
[図1]は、Pt0の反応結晶面を示す図である。
[図2]、[図3]は、それぞれPt前駆体別の水素濃度及び反応温度による水素酸化反応活性を示す図である。
[図5]は、焼成温度による水素反応活性を示す図である。
[図6]は、焼成温度による吸着特性を示すFT-IR分析結果である。
[図7]は、Ptc含量別の水素酸化活性を示す図である。
[図8]、[図9]はそれぞれ助触媒添加による水素反応活性を示す図である。
[図10]、[図11]は、それぞれ添加された助触媒含量による水素反応活性を示す図である。
[図12]、[図13]、[図14]は、異なる濃度の一酸化炭素が水素と同時流入する場合の水素反応活性を示す図である。
[図15]、[図16]、[図17]は、異なる濃度の窒素酸化物が水素と同時流入する場合の水素反応活性を示す図である。
[図18]は、助触媒添加による反応温度別の水素反応活性を示す図である。
[図19]は、水素、一酸化炭素に対する選択的反応活性を示す図ある。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、多様な変換を加えることができ、様々な実施例を有することができるところ、以下、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明に詳細に説明しようとする。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変換、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。本発明を説明するにおいて、関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にし得ると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0024】
図1は、Pt0の反応結晶面を示す図である。
【0025】
図1を参照すると、Pt0は原子が配列されて成長することによって3つの反応結晶面が形成された階段式結晶構造を有するようになるが、前記階段式結晶構造を立体的に観察した時、平面に見える平らな面がテラス(Terrace)面、前記テラス(Terrace)面の間に位置して階段に見える角面がステップ(Step)面、前記ステップ(Step)面が切れたり曲がって見える頂点面がキンク(Kink)面に該当する。この時、ステップ(Step)、キンク(Kink)面の場合には、活性化度が非常に強くて解離、吸着が容易である反面、テラス(Terrace)面の場合には、活性化度が弱くて解離、吸着よりは分子そのまま吸着される特性がある。また、FT-IR(Fourier transform-infrared)分析結果としてテラス(Terrace)面は2075~2100波数(cm-1)、ステップ(Step)面は2050~2075波数(cm-1)、キンク(Kink)面は2000~2050波数(cm-1)を示すことで、各反応結晶面を定義することもできる。前記3つの反応結晶面は、原子の配列方法が異なって異なる吸着性質を示し、各反応結晶面の成長程度に応じて水素酸化反応の活性が異なるようになり、これは後述する実験例で詳しく説明する。
【0026】
本明細書において、「白金クラスター(Pt cluster、Ptc)」は、触媒支持体に担持されて焼成された後に残留するPt0を含む白金構造体であって、Pt0の反応結晶面のうちテラス(Terrace)面が支配的に存在するすべての白金構造体を意味する。このとき、水素酸化反応と関連した反応結晶面は、様々な酸化価を示す全体PtではないPt0の反応結晶面であることを明白にする。
【0027】
また、本明細書で“Pt0のテラス(Terrace)面が支配的に存在”することはPt0の反応結晶面のうちテラス(Terrace)面の成長が極大化されてテラス(Terrace)面がステップ(Step)、キンク(Kink)面より多くて水素酸化反応時に反応結晶面として水素が吸着されるテラス(Terrace)面の比重がステップ(Step)、キンク(Kink)面の比重の総和より高いことを意味する。 本発明は、常温だけでなく極低温でも低濃度の水素を除去するために白金クラスターが担持されたチタニア支持体を含む水素酸化触媒であって、前記白金クラスターは、Pt0を含み、前記Pt0は、テラス(Terrace)、ステップ(Step)、キンク(Kink)結晶面を含み、前記結晶面のうちテラス(Terrace)結晶面がステップ(Step)、キンク(Kink)結晶面よりもさらに多いものである、水素酸化触媒を提供する。
【0028】
特に、本発明は、白金前駆体としてPtCl4、Pt(OH)2を用いて常温でのみ水素除去が可能な従来技術とは異なり、白金クラスタが担持された水素酸化触媒を用いて常温(25℃)だけでなく極低温(-10℃)でも水素除去が可能であり、白金クラスタの使用による常温および極低温での水素除去効果は、後述する実験例で詳細に説明する。
【0029】
活性金属に該当する白金クラスターは、水素酸化触媒の表面でPt0またはPt2+酸化が種として現れ、Pt0は水素酸化反応活性の主要因子に該当する。本発明の一実施形態において、白金クラスターの酸化価比率(Pt0/Pttotal)は、40~50%を示すことができる。
【0030】
前記Pt0は、上述したように、原子配列によってテラス(Terrace)、ステップ(Step)、キンク(Kink)のそれぞれ異なる反応結晶面を形成し、結晶面によって原子の配列方法が異なって異なる吸着性質を示す。白金前駆体としてPt(OH)2を使用した従来技術の場合には、常温でのみ水素吸着性質を示し、この時、Pt0の結晶面は、Step、Kink面が支配的に現れ、特に、Step面の比重が高い。これとは異なり、白金クラスターを使用した本発明の場合には、常温だけでなく極低温でも低濃度の水素吸着性質を示し、この時、Pt0の結晶面はTerrace面が支配的に現れる。即ち、水素吸着時、Pt0のTerrace面がStep、Kink面より多く存在する時、常温だけでなく極低温で低濃度の水素を制御することができる。
【0031】
前記チタニア支持体には、パラジウムおよびアンチモンのいずれか一つ以上の助触媒がさらに担持され、助触媒の添加によって極低温での水素酸化活性が向上し、一酸化炭素および窒素酸化物の同時流入による耐被毒性を増進させることができる。このような効果は、後述する実験例で詳しく説明する。
【0032】
また、本発明は、白金クラスター前駆体をチタニア支持体に担持するステップと、前記白金クラスター前駆体が担持されたチタニア支持体を焼成するステップとを含む水素酸化触媒の製造方法を提供する。
【0033】
前記白金クラスター前駆体は、Ptc(MA)、Ptc(EN)及びPtc(EA)のうちいずれか一つであり得るが、高い比表面積と活性粒子の大きさを考慮する時、Ptc(MA)が好ましい。前記Ptc(MA)、Ptc(EN)及びPtc(EA)において、MAはメチルアルコール、ENは硝酸、EAはエチルアルコールであって、各物質処理により製造された白金クラスター前駆体を意味する。
【0034】
前記白金クラスター前駆体は、チタニア支持体100重量部に対して0.5重量部以上で担持されることが好ましく、前記範囲で常温だけでなく極低温で存在する低濃度の水素除去が可能である。
【0035】
特に、本発明は、前記白金クラスター前駆体が担持されたチタニア支持体を焼成する段階を通じてPt0の酸化価種を示すことができる。従来の白金前駆体としてPtCl4、Pt(OH)2を用いて水素酸化触媒を製造する場合、Pt0の酸化価種を示すためには、触媒の焼成工程の後に還元工程が必須に行われなければならない。これとは異なり、本発明は、白金クラスター前駆体を使用することによって、焼成工程のみによってPt0の酸化価種を示すことができるので、製造工程上、費用と時間などを減縮することができる。
【0036】
前記焼成する段階で還元する白金クラスター前駆体の酸化価比率(Pt0/Pttotal)は、40~50%を示すことができ、前記範囲で常温だけでなく極低温で低濃度の水素を制御することができる。
【0037】
前記焼成するステップの焼成温度は、200~300℃が好ましく、前記範囲でPt0の酸化が紙の前記比率の範囲に維持でき、Terrace面が支配的に現れて極低温で低濃度の水素を制御することができる。前記範囲を外れる場合、触媒の比表面積が大きく減少し、Pt2+の成長が極大化されてPt0の比率が低くなるだけでなく、Pt0のStep、Kink面が成長してTerrace面の比重が少なくなるため、極低温で低濃度の水素酸化活性が低くなる。
【0038】
本発明の一実施形態において、前記白金クラスター前駆体をチタニア支持体に担持する前にパラジウムおよびアンチモンのいずれか一つ以上を含む助触媒前駆体を前記チタニア支持体に担持するステップをさらに含んでもよい。
【0039】
前記助触媒前駆体は、極低温での水素酸化活性を向上させ、一酸化炭素及び窒素酸化物の同時流入による耐被毒性を増進させることができ、チタニア支持体100重量部に対して0.1~2.0重量部で担持されることが好ましい。
【0040】
以下、本発明の好ましい実験例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。しかし、本発明の技術的思想はこれに限定または制限されず、当業者によって変形されて多様に実施できることはもちろんである。
【0041】
実験例1:水素反応活性比較
図2図3は、それぞれPt前駆体別の水素濃度及び反応温度による水素酸化反応活性を示す図である。
【0042】
図2を参照すると、Ptc(MA)から製造された触媒は低濃度水素でも水素酸化反応活性が100%に維持される反面、PtCl4、Pt(OH)2から製造された触媒は低濃度水素で水素酸化反応活性が顕著に減少することが分かった。
【0043】
また、図3を参照すると、Ptc(MA)から製造された触媒は、常温(25℃)だけでなく、極低温(-10℃)でも水素酸化反応活性が高く維持されるのに対し、PtCl4、Pt(OH)2から製造された触媒は、極低温で水素酸化反応活性がほとんど示されないことが分かった。 すなわち、本発明による水素酸化触媒は、常温だけでなく極低温で低濃度の水素制御が可能であると予想される。
【0044】
実験例2:Pt前駆体別の酸化価状態及び物理的特性の比較
表1は、Pt前駆体別の酸化価状態及び物理的特性を示す表である。
【0045】
【表1】
【0046】
表1を参照すれば、Ptc(MA)の比表面積は、PtCl4に比べて約4.5倍、Pt(OH)2に比べて約3.6倍高く、反応粒子の大きさが4.85nmであり、格子酸素(Οα)比率も高かった。したがって、実験例1と関連して、前記優れた特性は本発明による白金クラスターが担持された触媒の水素酸化反応活性が高く現れることに寄与すると判断される。
【0047】
実験例3:Pt前駆体別の吸着特性比較
図4は、Pt前駆体ごとの吸着特性を示すFT-IR分析結果であり、表2は、FT-IR分析結果を示す表である。
【0048】
【表2】
【0049】
図4及び表2を参照すると、Ptc(MA)はPt0のテラス(Terrace)面が成長してテラス(Terrace)面で吸着が活発に起こる反面、Pt(OH)2はPt0のステップ(Step)、キンク(Kink)面が成長し、主にステップ(Step)面で吸着が起こることを確認することができた。すなわち、本発明による水素酸化触媒は、Pt0のテラス(Terrace)面が支配的に現れ、このようなテラス(Terrace)面で水素吸着が活発に起こって常温だけでなく極低温で低濃度の水素制御が可能であると判断される。
【0050】
実験例4:焼成温度による水素反応活性、物理的特性及び酸化価状態の比較
図5及び表3はそれぞれ本発明の焼成温度による水素反応活性と物理的特性、酸化価状態を示す結果である。
【0051】
【表3】
【0052】
図5及び表3を参照すれば、200℃と300℃で焼成された場合には、Pt0の比率と比表面積が高く、反応粒子の大きさが小さかったが、300℃より高い温度で焼成された場合には、比表面積が飛躍的に減少し、反応粒子の大きさが大きくなることが確認できた。何より、200℃と300℃で焼成された場合には、常温だけでなく極低温(-10℃)でも高い水素反応活性を示したが、300℃より高い温度で焼成された場合には、常温で水素反応活性が徐々に減少し、極低温(-10℃)では水素反応活性がほとんど示されないことを確認することができた。これにより、本発明の白金クラスターが担持された水素酸化触媒は、200~300℃範囲で焼成されることが常温だけでなく極低温で低濃度の水素制御性能が高いと判断される。
【0053】
実験例5:焼成温度による吸着特性の比較
図6は、本発明の焼成温度による吸着特性を示すFT-IR分析結果であり、表4は、FT-IR分析結果を示す表である。
【0054】
【表4】
【0055】
図6及び表4を参照すれば、本発明はPt0のテラス(Terrace)面が支配的に現れ、特に300℃で焼成される場合、テラス(Terrace)面の比重が85.2%で最も高く現れたが、300℃より高い温度で焼成される場合にはテラス(Terrace)面の比重が減少するものと現れた。したがって、白金クラスターが担持された水素酸化触媒は、300℃で焼成される場合にテラス(Terrace)面の成長を促進させて常温だけでなく極低温で低濃度の水素制御性能が優秀であると判断される。
【0056】
実験例6:Ptc含量別の水素酸化活性の比較
図7は、本発明のPtc含量別の水素酸化活性を示す図である。図7を参照すると、Ptc含量が増加するにつれて極低温(-10℃)で水素酸化活性が増加し、極低温で水素酸化活性が現われるための最小限のPtcの含量は0.1%であることを確認することができた。すなわち、極低温で低濃度の水素を制御するためには、Ptc含量がチタニア支持体100重量部に対して0.1重量部以上含有されなければならないことを確認することができた。
【0057】
実験例7:助触媒の添加による水素反応活性比較
図8図9はそれぞれ助触媒添加による水素反応活性を示す図である。図8を参照すれば、助触媒としてPd、Sbが添加された場合には、極低温(-10℃)で水素反応活性が高く表れ、助触媒が添加されない場合には、極低温で水素反応活性が多少低く表れた。また、図9を参照すると、同じく助触媒が添加されたPtc(MA)とPt(OH)2の場合には、極低温で水素反応活性の差が非常に大きいことが明らかになった。これにより、本発明の白金クラスターが担持された水素酸化触媒にPdまたはSbの助触媒を添加して、極低温(-10℃)で低濃度の水素反応活性を向上させることができることを確認することができた。
【0058】
実験例8:助触媒含量による水素反応活性比較
図10及び図11は、それぞれ添加されたPd、Sb含量による水素反応活性を示す図である。図10図11を参照すると、Pd含量が0.1から0.5に増加するにつれて極低温(-10℃)での低濃度水素反応活性が向上し、Sb含量が1.0から2.0に増加するにつれて極低温での低濃度水素反応活性が向上したが、含量が2.0を超過する場合には水素反応活性が多少減少した。これにより、助触媒がチタニア支持体100重量部に対して0.1~2.0重量部添加されてこそ、極低温で低濃度水素反応活性に優れていることを確認することができた。
【0059】
実験例9:助触媒の添加による一酸化炭素耐被毒性比較
図12図13図14は、異なる濃度の一酸化炭素が水素と同時流入する場合の水素反応活性を示す図である。
【0060】
図12図13を参照すると、反応温度-10~25℃で2.5ppmまたは5.0ppm濃度の一酸化炭素が水素と同時流入される場合に、助触媒としてPdまたはSbが添加された場合には、一酸化炭素に耐被毒性を有するようになって水素反応活性が助触媒が添加されていない場合に比べて高く現れ、特に助触媒としてpdが添加された場合に、一酸化炭素に高い耐被毒性を有するようになって水素反応活性が高い状態で維持されることを確認することができた。
【0061】
また、図14を参照すると、反応温度50℃で5.0ppmの一酸化炭素が水素と同時流入される場合に、助触媒としてPdが添加されると、100%に近い水素反応活性を有するようになり、一酸化炭素耐被毒性が非常に高いことが示されたが、Pt(OH)2は水素反応活性が急激に低下され、一酸化炭素耐被毒性が非常に低いことが示された。
【0062】
実験例10:助触媒の添加による窒素酸化物耐被毒性比較
図15図16図17は、異なる濃度の窒素酸化物が水素と同時流入する場合の水素反応活性を示す図である。
【0063】
図15図16を参照すると、反応温度-10~25℃で2.5ppmまたは5.0ppm濃度の窒素酸化物が水素と同時流入される場合に助触媒としてPdまたはSbが添加された場合には窒素酸化物に耐被毒性を有するようになって水素反応活性が助触媒が添加されなかった場合に比べて高く現れ、特に助触媒としてpdが添加された場合に窒素酸化物に高い耐被毒性を有するようになって水素反応活性が高い状態で維持されることを確認することができた。また、実験例9と比較するとき、助触媒の添加による耐被毒性増進は、一酸化炭素より窒素酸化物に対してより大きいことが確認できた。
【0064】
また、図17を参照すると、反応温度50℃で5.0ppmの窒素酸化物が水素と同時流入される場合に、助触媒としてPdが添加されると100%に近い水素反応活性を有するようになって窒素酸化物耐被毒性が非常に高いことが示されたが、Pt(OH)2は水素反応活性が急激に低下されて窒素酸化物耐被毒性が非常に低いことが示された。
【0065】
実験例11:助触媒の添加による反応温度別の水素反応活性比較
図18は、助触媒添加による反応温度別の水素反応活性を示す図である。図18を参照すると、助触媒が添加されていないPt(OH)2は、50℃でのみ水素反応活性を示し、特に極低温(-10℃)では水素反応活性がほとんど示されない反面、助触媒としてPdが添加されたPtc(MA)は-10~50℃の広い温度範囲で高い水素反応活性を示すことを確認することができた。
【0066】
実験例12:水素、一酸化炭素の選択的反応活性比較
図19は、水素、一酸化炭素に対する選択的反応活性を示す図である。図19を参照すれば、本発明によるPtcまたは助触媒が添加されたPtcの場合には、水素と一酸化炭素が共存する状況でも水素に対する反応活性が高くなり水素の選択的制御が可能である反面、Pt(OH)2は一酸化炭素に対する反応活性だけが現れ水素の制御が難しいことを確認することができた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】