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特表2024-520706低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料及びその製造方法
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  • 特表-低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/195 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
C04B35/195
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574632
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 CN2022114695
(87)【国際公開番号】W WO2023159895
(87)【国際公開日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】202210188646.1
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522235249
【氏名又は名称】嘉興佳利電子有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIAXING GLEAD ELECTRONICS CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.66, Zhengyuan Road, Tanghui Street, Economic Development Zone Jiaxing, Zhejiang 314003, China
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】李 進
(72)【発明者】
【氏名】余 祖高
(72)【発明者】
【氏名】譚 金剛
(72)【発明者】
【氏名】石 珊
(72)【発明者】
【氏名】陸 建軍
(72)【発明者】
【氏名】童 建喜
(57)【要約】
本発明は、低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料及びその製造方法を開示し、電子材料の技術分野に関する。このセラミック材料の組成は、CaSiO+awt%SiO+bwt%RO+cwt%Bi+dwt%B+ewt%MO(式中、0.9≦x≦1.1、0<a≦30、1≦b≦5、0<c≦3、0<d≦6、0≦e≦10であり、ROはLiO、KOの少なくとも1つであり、MOはZnO、MgO、BaO、CoO、CuO、La、MnOの1つ又は複数である)である。本発明に係る低温同時焼成セラミック材料は、低誘電、低損失及び低温焼結の要求を満たし、ミリ波LTCCデバイス等の分野に使用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料であって、この低温同時焼成セラミック材料の配合式は、CaSiO+awt%SiO+bwt%RO+cwt%Bi+dwt%B+ewt%MO(式中、0.9≦x≦1.1であり、
0<a≦30、1≦b≦5、0<c≦3、0<d≦6、0≦e≦10であり、a、b、c、d及びeはそれぞれCaSiOに対するSiO、RO、Bi、B及びMO相の質量分率であり、
OはLiO、KOの少なくとも1つであり、
MOはZnO、MgO、BaO、CoO、CuO、La、MnOの1つ又は複数であり、
SiOは石英及び溶融石英の少なくとも1つである)である、
ことを特徴とする低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料。
【請求項2】
前記主相セラミック材料の組成はCaSiO(式中、0.9≦x≦1.0)である、
ことを特徴とする請求項1に記載の低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料。
【請求項3】
前記SiOは溶融石英である、
ことを特徴とする請求項1に記載の低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料。
【請求項4】
請求項1に記載の低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料の製造方法であって、
1)主相セラミックCaSiOの合成:化学式CaSiOの計量比で原料CaCO及びSiOを秤量し、脱エタノールを溶剤とし、ボールミルで16~24h混合して乾燥させた後、40メッシュのふるいにかけ、均一に粉砕した後、アルミナ坩堝に入れ、900℃~1300℃で2~4h焼成して主相セラミックを合成して、粉砕してセラミック基材として使用するステップと、
2)焼結助剤の合成:bwt%RO+cwt%Bi+dwt%B+ewt%MO(式中、1≦b≦5、0<c≦3、0<d≦6、0≦e≦10、b、c、d及びeはそれぞれCaSiOに対するRO、Bi、B及びMO相の質量分率である)に対する質量分率比で、LiCO、KCO、Bi、B又はHBO、ZnO、MgO又はMg(OH)、BaCO、CoO又はCo、CuO、La、MnO/MnCOの原料を秤量し、混合材料と無水エタノールとの質量比1:1~1:1.5でエタノールを加え、湿式法で16~24h混合して80℃で乾燥させ、乾燥させた混合材料を40メッシュのふるいにかけ、アルミナ坩堝に入れ、500~700℃で2~4h焼成し、粉砕して焼結助剤として使用するステップと、
3)製造した主相CaSiOセラミック、SiO及び酸化物焼結助剤をCaSiO+awt%SiO+bwt%RO+cwt%Bi+dwt%B+ewt%MO(式中、a、b、c、d及びeはそれぞれCaSiOに対するSiO、RO、Bi、B及びMO相の質量分率である)の配合質量比で混合し、ZrOボールをミル媒体とし、エタノールを溶剤とし、ボールミルで16~24h混合して乾燥させ、含有量が5重量%~8重量%のポリビニルアルコールバインダーを加えて粉砕造粒し、ふるいにかけた後に80~120MPaの圧力で直径が20mm、厚さが10mmの素体をプレス成形し、850℃~950℃の空気雰囲気で1~3h焼成して、前記低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料を得るステップと、
を含むことを特徴とする低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料の技術分野に属し、具体的に低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低温同時焼成セラミック技術(Low-temperature co-firing ceramics,LTCC)は、電子パッケージング技術の1つであり、低温同時焼成セラミック材料、デバイス設計などの技術を含み、低温同時焼成セラミックが基本及び鍵である。近年、5G通信技術の急速な発展に伴い、マイクロ波技術は、より高い周波数である、ミリ波やサブミリ波の方向に向かって発展し、低温同時焼成セラミック材料に対してますます高い要求が求められ、伝送過程における信号の遅延時間を低減するための低誘電率と、デバイスの挿入損失を低減して、良好な周波数選択特性を保証するための低誘電損失である高いQ値(1/tan)と、を含み、900℃でAg、Cuなどの金属導電性材料と同時焼成を実現することができる以外、十分な機械的強度及び環境信頼性などの性能を有し、電気メッキ又は無電解めっき液からの耐食性も必要である。
【0003】
現在研究されている高周波・低誘電率・低温同時焼成セラミック材料には、主に結晶化ガラス、ガラスセラミック及びセラミック助剤の3つの主要系が含まれる。結晶化ガラス系は、焼結プロセスにおいて材料の晶析を厳密に制御する必要があり、プロセスに対する要求が比較的厳しいため、現在、米国FEERO社のA6M材料のみが広く使用されている。ガラスセラミック系は、セラミックの低温焼結を達成するために多くのガラスを必要とするが、材料損失の急激な増大が問題となる。セラミック助剤系の材料は、低い誘電率を導入することができるガラスセラミック系とは異なり、一般に、低い誘電率を達成することが困難である。
【0004】
(Ca,Mg)SiO系マイクロ波誘電体セラミックは、良好な誘電特性を有し、材料コストが低い。発明特許CN103193389Bでは、少なくとも2種の酸化マグネシウム、酸化カルシウム又は酸化ケイ素を1500~1800℃で混合してガラス質にし、酸化マグネシウム、酸化カルシウム及び酸化ケイ素の合計量を100モル%とした後、CaTiO、MgTiO、ZrTiO及びTiOなどの材料を添加して、1500~1800℃で溶融させて900℃で焼成させる。この方法は、プロセスが複雑で、誘電率が高く、ガラス質までの溶融工程が2回あるため、Q×f値が低くなる。特許出願CN112759378Aには、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化マンガン、酸化リチウム及び酸化ビスマスを混合して直接仮焼し、次に860~880℃で焼結させた低温同時焼成セラミックであるCaO-MgO-TiO-SiOセラミック材料が記載されている。酸化リチウム及び酸化ビスマスを焼結助剤として成分に配合添加し、TiOと組み合わせて共融点物質であるLiTiO(900℃)を形成する。この方法は、仮焼プロセスに全ての原料を添加し、仮焼時に成分間の制御不能な反応を生成し、生成した相が複雑で不確実になる。また、その材料の誘電率が9.5±0.1であり、Q×f値が低い。上記特許に記載されている材料は、誘電率がいずれも9を超えており、低誘電率・高周波数シナリオでの使用を抑制している。発明特許CN200410039848.1では、(Ca,Mg)SiO系を主成分とし、CaTiOを採用して周波数温度係数を調整し、LiCO及びVを焼結助剤とする低温焼結マイクロ波誘電体セラミックの配合方法及び製造プロセスが報告され、この低温焼結マイクロ波誘電体セラミック材料が銀電極と良好な同時焼成マッチングを実現することができ、その材料性能は、誘電率8~10で、品質係数Qf>25000GHzであり、該材料が量産されている。しかし、この材料は、(1)低融点酸化物Vが焼結効果に優れ、(Ca,Mg)SiOセラミックの焼結温度を著しく低下させることができるが、毒性が強く、人体に有害であり、ますます重視される環境保護の需要を満たすことができない。(2)Vは焼結プロセスで液相を形成してセラミック焼結を促進するとともに、銀電極の短距離拡散を促進しやすく、銀マイグレーションによる層間回路短絡のリスクが発生しやすいため、製品の信頼性不良という重大な問題を引き起こすという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術的問題を解決するために、本発明の第1目的は、誘電率が低く、Q×f値が高く、周波数温度係数が低く、かつ低温焼結が可能な低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料を提供することにある。本発明の第2目的は、主相セラミックを合成し、次に酸化物焼結助剤を製造し、最後に低温焼結を行う合成ルートを採用する低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料及びその製造方法を提供することにある。この製造方法は、焼結プロセスが簡単で、再現性がよい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の第1目的を達成するために、本発明は以下の技術的手段を採用する。
低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料であって、この低温同時焼成セラミック材料の配合式は、CaSiO+awt%SiO+bwt%RO+cwt%Bi+dwt%B+ewt%MO(式中、0.9≦x≦1.1であり、
0<a≦30、1≦b≦5、0<c≦3、0<d≦6、0≦e≦10であり、a、b、c、d及びeはそれぞれCaSiOに対するSiO、RO、Bi、B及びMO相の質量分率であり、
OはLiO、KOの少なくとも1つであり、
MOはZnO、MgO、BaO、CoO、CuO、La、MnOの1つ又は複数であり、
SiOは石英及び溶融石英の少なくとも1つである)である。
【0007】
好ましい技術的解決策として、主相セラミック材料の組成はCaSiO(式中、0.9≦x≦1.0)である。
【0008】
好ましい技術的解決策として、SiOは溶融石英である。
【0009】
上記の第2目的を達成するために、本発明は以下の技術的手段を採用する。
低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料の製造方法であって、
1)主相セラミックCaSiOの合成:化学式CaSiOの計量比で原料CaCO及びSiOを秤量し、脱エタノールを溶剤とし、ボールミルで16~24h混合して乾燥させた後、40メッシュのふるいにかけ、均一に粉砕した後、アルミナ坩堝に入れ、900℃~1300℃で2~4h焼成して主相セラミックを合成して、粉砕してセラミック基材として使用するステップと、
2)焼結助剤の合成:bwt%RO+cwt%Bi+dwt%B+ewt%MO(式中、1≦b≦5、0<c≦3、0<d≦6、0≦e≦10、b、c、d及びeはそれぞれCaSiOに対するRO、Bi、B及びMO相の質量分率である)に対する質量分率比で、LiCO、KCO、Bi、B又はHBO、ZnO、MgO又はMg(OH)、BaCO、CoO又はCo、CuO、La、MnO/MnCOの原料を秤量し、混合材料と無水エタノールとの質量比1:1~1:1.5でエタノールを加え、湿式法で16~24h混合して80℃で乾燥させ、乾燥させた混合材料を40メッシュのふるいにかけ、アルミナ坩堝に入れ、500~700℃で2~4h焼成し、粉砕して焼結助剤として使用するステップと、
3)製造した主相CaSiOセラミック、SiO及び酸化物焼結助剤をCaSiO+awt%SiO+bwt%RO+cwt%Bi+dwt%B+ewt%MO(式中、a、b、c、d及びeはそれぞれCaSiOに対するSiO、RO、Bi、B及びMO相の質量分率である)の配合質量比で混合し、ZrOボールをミル媒体とし、エタノールを溶剤とし、ボールミルで16~24h混合して乾燥させ、含有量が5重量%~8重量%のポリビニルアルコールバインダーを加えて粉砕造粒し、ふるいにかけた後に80~120MPaの圧力で直径が20mm、厚さが10mmの素体をプレス成形し、850℃~950℃の空気雰囲気で1~3h焼成して、前記低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料を得るステップと、を含む低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
従来技術と比べて、本発明の材料は、以下のメリットを有する。
1.本発明は、簡単で、信頼性があり、低コストの製造方法を提供する。主相セラミックと焼結助剤とを別々に合成した後、低温同時焼成セラミックを製造した。この方法により、主相セラミック相の組成を確実に制御可能にし、また焼結助剤が低い共融点(700℃未満)のLiO(KO)-Bi-Bなどの化合物を確実に合成する。従来技術と比べて、この方法で合成された主相セラミック相は、制御が容易で、共融点化合物の温度降下効果が優れ、誘電特性にも優れている。
2.本発明は、主相セラミックのカルシウム対シリコン比を設計及び最適化し、材料の誘電特性への影響を研究する。特に、主相セラミックCaSiOにおいて0.9≦x≦1である場合に、材料の誘電特性に優れる。これは、仮焼プロセスにおいてワラストナイト相(CaSiO)に加えて、一部の誘電損失の大きいCaSiO相を生成するため、過剰なSiOがワラストナイト相の合成を促進するのに有利であり、さらに材料の誘電特性を向上させるためである。
3.溶融石英とCaSiOセラミックを用いて複合すると、溶融石英の誘電率が小さく、材料の誘電率を効果的に低下させることができる一方、溶融石英が焼結プロセスにおいて液相を形成しやすいため、粉体粒子を湿潤させ、焼結を促進させる効果がある。
4.本発明は、複合酸化物を導入することによって相乗的な温度低下を行い、且つアルカリ金属酸化物及びBiの添加量を制御して、セラミック材料と銀電極との同時焼成の際に、非常に発生しやすい銀マイグレーションによる層間回路短絡のリスクを防止する。また、複雑でバッチ安定性を制御することが困難なガラス助剤の製造工程を回避するために、導入された各種の焼結助剤酸化物に対して予備混合焼成処理工程を行うことにより、セラミック流延スラリー製造時にB等の酸化物及び粉体中の遊離水酸基とPVB等のバインダー中の水酸基とが架橋反応してスラリー粘度が大きくなり、高品質のセラミックグリーンシートを得ることができないという問題を解決した。
5.本発明は、誘電率が7.5未満で、Q×f値が20000GHzよりも大きく、周波数温度係数の絶対値が35ppm/℃未満の低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料を提供する。ミリ波デバイスに要求される低誘電率、低損失及び低周波数温度係数の要求を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の一部を構成する明細書の図面は、本発明をさらに理解するために提供するためのものである。本発明の例示的な実施例及びその説明は本発明を解釈するためのものであり、本発明を限定するためのものではない。
図1】実施例2におけるセラミックのXRD回折パターンである。
図2】実施例4の焼成セラミック試料のSEM走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を詳細に説明し、前記実施例の例示が図面に示され、図面を参照しながら説明する実施例は例示的なものであって、単に本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0013】
本発明の目的、技術的手段及び利点を明確かつ明瞭にするために、以下、図面及び実施例を参照しながら、本発明を詳細に説明する。ここで説明する具体的な実施例は、本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するためのものではないことを理解されたい。
【0014】
(実施例1)
1)主相の合成:化学式Ca0.98SiOの計量比で原料CaCO及び石英を秤量し、脱エタノールを溶剤とし、ボールミルで24h混合して乾燥させた後、40メッシュのふるいにかけ、均一に粉砕した後、アルミナ坩堝に入れ、1200℃で3h焼成して主相セラミックを合成した。
2)焼結助剤の合成:3wt%LiO+2wt%Bi+3wt%B+3wt%ZnOの主相セラミックに対する質量分率比で、LiCO、Bi、HBO、ZnOなどの原料を秤量し、混合材料と無水エタノールとの質量比1:1でエタノールを加え、湿式法で16h混合して80℃で乾燥し、乾燥した混合材料を40メッシュのふるいにかけ、アルミナ坩堝に入れ、600℃で3h焼成し、粉砕して焼結助剤として使用した。
3)主相Ca0.98SiOセラミックにそれぞれ主相セラミックの質量分率に対して3.0wt%の溶融石英と前工程で合成した焼結助剤とを加えて混合し、ZrOボールをミル媒体とし、エタノールを溶剤とし、ボールミルで16h混合して乾燥させ、含有量が8重量%のポリビニルアルコールバインダーを加えて粉砕造粒し、ふるいにかけた後に100MPaの圧力で直径が20mm、厚さが10mmの素体を製造した。850℃の空気雰囲気下で3h焼成して、低温同時焼成セラミック材料を得るとともに、その誘電特性を評価した。
【0015】
(実施例2)
1)主相の合成:化学式CaSiOの計量比で原料CaCO及び石英を秤量し、脱エタノールを溶剤とし、ボールミルで24h混合して乾燥させた後、40メッシュのふるいにかけ、均一に粉砕した後、アルミナ坩堝に入れ、1250℃で3h焼成して主相セラミックを合成した。
2)焼結助剤の合成:1.5wt%LiO+1wt%KO+0.5wt%Bi+2.5wt%B+3wt%BaO+2wt%MnOの主相セラミックに対する質量分率比で、LiCO、KCO、Bi、HBO、BaCO、MnOなどの原料を秤量し、混合材料と無水エタノールとの質量比が1:1でエタノールを加え、湿式法で16h混合して80℃で乾燥し、乾燥した混合材料を40メッシュのふるいにかけ、アルミナ坩堝に入れ、650℃で3h焼成し、粉砕して焼結助剤として使用した。
3)主相CaSiOセラミックにそれぞれ主相セラミックの質量分率に対して3.5wt%の溶融石英と前工程で合成した焼結助剤とを加えて混合し、ZrOボールをミル媒体とし、エタノールを溶剤とし、ボールミルで16h混合して乾燥させ、含有量が8重量%のポリビニルアルコールバインダーを加えて粉砕造粒し、ふるいにかけた後に100MPaの圧力で直径が20mm、厚さが10mmの素体を製造した。900℃の空気雰囲気下で3h焼成して、低温同時焼成セラミック材料を得るとともに、その誘電特性を評価した。図1は、焼成後のセラミックのXRDパターンであり、セラミックの主要相はCaSiO及び少量のSiO相である。
【0016】
(実施例3)
1)主相の合成:化学式Ca1.02SiOの計量比で原料CaCO及び石英を秤量し、脱エタノールを溶剤とし、ボールミルで24h混合して乾燥させた後、40メッシュのふるいにかけ、均一に粉砕した後、アルミナ坩堝に入れ、1300℃で3h焼成して主相セラミックを合成した。
2)焼結助剤の合成:2.5wt%LiO+1wt%Bi+2.5wt%B+2wt%MgOの主相セラミックに対する質量分率比で、LiCO、Bi、HBO、MgOなどの原料を秤量し、混合材料と無水エタノールとの質量比1:1でエタノールを加え、湿式法で16h混合して80℃で乾燥し、乾燥した混合材料を40メッシュのふるいにかけ、アルミナ坩堝に入れ、700℃で3h焼成し、粉砕して焼結助剤として使用した。
3)主相Ca1.02SiOセラミックにそれぞれ主相セラミックの質量分率に対して5.0wt%の溶融石英と前工程で合成した焼結助剤とを加えて混合し、ZrOボールをミル媒体とし、エタノールを溶剤とし、ボールミルで16h混合して乾燥させ、含有量が8重量%のポリビニルアルコールバインダーを加えて粉砕造粒し、ふるいにかけた後に100MPaの圧力で直径が20mm、厚さが10mmの素体を製造した。850℃の空気雰囲気下で3h焼成して、低温同時焼成セラミック材料を得るとともに、その誘電特性を評価した。
【0017】
(実施例4)
1)主相の合成:化学式CaSiOの計量比で原料CaCO及び石英を秤量し、脱エタノールを溶剤とし、ボールミルで24h混合して乾燥させた後、40メッシュのふるいにかけ、均一に粉砕した後、アルミナ坩堝に入れ、1200℃で3h焼成して主相セラミックを合成した。
2)焼結助剤の合成:4wt%LiO+1.5wt%Bi+4wt%B+1wt%La+2wt%CuOの主相セラミックに対する質量分率比で、LiCO、Bi、HBO、La、CuOなどの原料を秤量し、混合材料と無水エタノールとの質量比1:1でエタノールを加え、湿式法で16h混合して80℃で乾燥し、乾燥した混合材料を40メッシュのふるいにかけ、アルミナ坩堝に入れ、600℃で3h焼成し、粉砕して焼結助剤として使用した。
3)主相CaSiOセラミックにそれぞれ主相セラミックの質量分率に対して2.0wt%の溶融石英と前工程で合成した焼結助剤とを加えて混合し、ZrOボールをミル媒体とし、エタノールを溶剤とし、ボールミルで16h混合して乾燥させ、含有量が8重量%のポリビニルアルコールバインダーを加えて粉砕造粒し、ふるいにかけた後に100MPaの圧力で直径が20mm、厚さが10mmの素体を製造した。880℃の空気雰囲気下で3h焼成して、低温同時焼成セラミック材料を得るとともに、その誘電特性を評価した。図2はセラミック試料の断面の走査電子顕微鏡写真であり、この低温同時焼成セラミックの緻密性が良好であることが分かる。
【0018】
(実施例5)
1)主相の合成:化学式Ca0.95SiOの計量比で原料CaCO及び溶融石英を秤量し、脱エタノールを溶剤とし、ボールミルで24h混合して乾燥させた後、40メッシュのふるいにかけ、均一に粉砕した後、アルミナ坩堝に入れ、1100℃で3h焼成して主相セラミックを合成した。
2)焼結助剤の合成:3.75wt%LiO+2.5wt%Bi+3.75wt%B+1wt%CoO+2wt%CuOの主相セラミックに対する質量分率比で、LiCO、Bi、HBO、CoO、CuOなどの原料を秤量し、混合材料と無水エタノールとの質量比1:1でエタノールを加え、湿式法で16h混合して80℃で乾燥し、乾燥した混合材料を40メッシュのふるいにかけ、アルミナ坩堝に入れ、650℃で3h焼成し、粉砕して焼結助剤として使用した。
3)主相Ca0.95SiOセラミックにそれぞれ主相セラミックの質量分率に対して10.0wt%の溶融石英と前工程で合成した焼結助剤とを加えて混合し、ZrOボールをミル媒体とし、エタノールを溶剤とし、ボールミルで16h混合して乾燥させ、含有量が8重量%のポリビニルアルコールバインダーを加えて粉砕造粒し、ふるいにかけた後に100MPaの圧力で直径が20mm、厚さが10mmの素体を製造した。850℃の空気雰囲気下で3h焼成して、低温同時焼成セラミック材料を得るとともに、その誘電特性を評価した。
【0019】
(実施例6)
実施例5で合成した主相Ca0.95SiOセラミックに主相セラミックの質量分率が10.0wt%の石英と実施例5で合成した焼結助剤とを加えて混合し、ZrOボールをミル媒体とし、エタノールを溶剤とし、ボールミルで16h混合して乾燥させ、含有量が8重量%のポリビニルアルコールバインダーを加えて粉砕造粒し、ふるいにかけた後に100MPaの圧力で直径が20mm、厚さが10mmの素体を製造した。880℃の空気雰囲気下で3h焼成して、低温同時焼成セラミック材料を得るとともに、その誘電特性を評価した。
【0020】
(実施例7)
実施例2で合成した主相CaSiOセラミックに主相セラミックの質量分率が7.0wt%の溶融石英と実施例2で合成した焼結助剤とを加えて混合し、ZrOボールをミル媒体とし、エタノールを溶剤とし、ボールミルで16h混合して乾燥させ、含有量が8重量%のポリビニルアルコールバインダーを加えて粉砕造粒し、ふるいにかけた後に100MPaの圧力で直径が20mm、厚さが10mmの素体を製造した。850℃の空気雰囲気下で3h焼成して、低温同時焼成セラミック材料を得るとともに、その誘電特性を評価した。
【0021】
(比較例1)
実施例2で合成した主相CaSiOセラミックと実施例2で合成した焼結助剤とを混合し、ZrOボールをミル媒体とし、エタノールを溶剤とし、ボールミルで16h混合して乾燥させ、含有量が8重量%のポリビニルアルコールバインダーを加えて粉砕造粒し、ふるいにかけた後に100MPaの圧力で直径が20mm、厚さが10mmの素体を製造した。930℃の空気雰囲気下で3h焼成して、低温同時焼成セラミック材料を得るとともに、その誘電特性を評価した。
【0022】
表1は比較例と実施例1~7に対応する材料の誘電特性の評価結果である。誘電特性は、Agilent8719ETネットワークアナライザを用いて誘電率ε及びQ×fの値を評価した。試料の周波数温度係数τ=(f110-f25)/(f25×85)の計算により決定され、ここで、f110及びf25はそれぞれ110℃及び25℃における試料の共振中心周波数である。
【表1】
上記表に挙げられた低温同時焼成セラミック材料は、誘電率が7.5未満で、Q×f値が20000GHzよりも大きく、周波数温度係数の絶対値が35ppm/℃未満である。ミリ波デバイスに要求される低誘電率、低損失及び低周波数温度係数の要求を満たす。比較例と比べて、溶融石英を導入することにより、焼結温度を低下させ、材料のQ×f値を増加させ、周波数温度係数を改善することができる。
【0023】
なお、本発明の説明において、「含む」、「包含」などの用語は、非排他的な包含をカバーすることを意図し、明示的に記載されていない他の幾つかのプロセス、方法、原材料などをさらに含むことに留意されたい。「実施例」又はある「具体的な実施例」などは、実施例に関連して説明される具体的な特徴、構造、材料、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。
【0024】
従って、以上では、具体的な実施例を使用して発明を説明したが、上記の実施例は、発明の方法及び核心事項を理解するために使用され、本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。当業者は、本発明の原理及び主旨を逸脱することなく、本発明の範囲内で上記の実施例を変更、修正、置換及び変形することができる。本発明の技術的本質に従って上記の実施例に対して行われた任意の簡単な修正、同等の変更及び修飾は、本発明の保護範囲と見なされるものとする。
【0025】
(付記)
(付記1)
低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料であって、この低温同時焼成セラミック材料の配合式は、CaSiO+awt%SiO+bwt%RO+cwt%Bi+dwt%B+ewt%MO(式中、0.9≦x≦1.1であり、
0<a≦30、1≦b≦5、0<c≦3、0<d≦6、0≦e≦10であり、a、b、c、d及びeはそれぞれCaSiOに対するSiO、RO、Bi、B及びMO相の質量分率であり、
OはLiO、KOの少なくとも1つであり、
MOはZnO、MgO、BaO、CoO、CuO、La、MnOの1つ又は複数であり、
SiOは石英及び溶融石英の少なくとも1つである)である、
ことを特徴とする低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料。
【0026】
(付記2)
前記主相セラミック材料の組成はCaSiO(式中、0.9≦x≦1.0)である、
ことを特徴とする付記1に記載の低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料。
【0027】
(付記3)
前記SiOは溶融石英である、
ことを特徴とする付記1に記載の低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料。
【0028】
(付記4)
付記1に記載の低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料の製造方法であって、
1)主相セラミックCaSiOの合成:化学式CaSiOの計量比で原料CaCO及びSiOを秤量し、脱エタノールを溶剤とし、ボールミルで16~24h混合して乾燥させた後、40メッシュのふるいにかけ、均一に粉砕した後、アルミナ坩堝に入れ、900℃~1300℃で2~4h焼成して主相セラミックを合成して、粉砕してセラミック基材として使用するステップと、
2)焼結助剤の合成:bwt%RO+cwt%Bi+dwt%B+ewt%MO(式中、1≦b≦5、0<c≦3、0<d≦6、0≦e≦10、b、c、d及びeはそれぞれCaSiOに対するRO、Bi、B及びMO相の質量分率である)に対する質量分率比で、LiCO、KCO、Bi、B又はHBO、ZnO、MgO又はMg(OH)、BaCO、CoO又はCo、CuO、La、MnO/MnCOの原料を秤量し、混合材料と無水エタノールとの質量比1:1~1:1.5でエタノールを加え、湿式法で16~24h混合して80℃で乾燥させ、乾燥させた混合材料を40メッシュのふるいにかけ、アルミナ坩堝に入れ、500~700℃で2~4h焼成し、粉砕して焼結助剤として使用するステップと、
3)製造した主相CaSiOセラミック、SiO及び酸化物焼結助剤をCaSiO+awt%SiO+bwt%RO+cwt%Bi+dwt%B+ewt%MO(式中、a、b、c、d及びeはそれぞれCaSiOに対するSiO、RO、Bi、B及びMO相の質量分率である)の配合質量比で混合し、ZrOボールをミル媒体とし、エタノールを溶剤とし、ボールミルで16~24h混合して乾燥させ、含有量が5重量%~8重量%のポリビニルアルコールバインダーを加えて粉砕造粒し、ふるいにかけた後に80~120MPaの圧力で直径が20mm、厚さが10mmの素体をプレス成形し、850℃~950℃の空気雰囲気で1~3h焼成して、前記低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料を得るステップと、
を含むことを特徴とする低誘電率ワラストナイト系低温同時焼成セラミック材料の製造方法。
図1
図2
【国際調査報告】