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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】CHK1阻害剤化合物の調製
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/10 20060101AFI20240517BHJP
   C07D 211/38 20060101ALI20240517BHJP
   C07D 211/52 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/497 20060101ALN20240517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
C07D401/10 CSP
C07D211/38
C07D211/52
A61K31/497
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574716
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2022064903
(87)【国際公開番号】W WO2022253895
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】2107932.2
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523107927
【氏名又は名称】センチネル オンコロジー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523453754
【氏名又は名称】ファーマエンジン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】トラバース,スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】メジャー,メリエル
(72)【発明者】
【氏名】ロンデスボロー,デレク ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チャブ,リチャード
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA04
4C086BC48
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、Chk-1阻害剤化合物(I)を調製するための新規合成経路、および新規のプロセス中間体自体を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(15)の化合物:
【化1】
を調製するためのプロセスであって、式(14)の化合物:
【化2】
を、ヒドラジン(NHNH)と反応させる工程を含む、プロセス。
【請求項2】
式(14)の化合物:
【化3】
を調製するためのプロセスであって、式(13)の化合物:
【化4】
を、塩基の存在下でアセトニトリル(CHCN)と反応させる工程を含む、プロセス。
【請求項3】
式(13)の化合物:
【化5】
を調製するためのプロセスであって、式(12)の化合物:
【化6】
を、デオキシフッ素化試薬と反応させる工程を含む、プロセス。
【請求項4】
式(12)の化合物:
【化7】
を調製するためのプロセスであって、式(10)の化合物:
【化8】
を、式(11)の化合物:
【化9】
と、グリニャール試薬などの金属化剤の存在下で反応させる工程を含む、プロセス。
【請求項5】
式(18)の化合物:
【化10】
を調製するためのプロセスであって、式(17)の化合物:
【化11】
を、ハロゲン化アルキルシリルまたはスルホン酸と反応させる工程を含む、プロセス。
【請求項6】
式(17)の化合物を、ハロゲン化アルキルシリル(例えば、TMSI)と反応させる工程を含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
式(17)の化合物を、スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸)と反応させる工程を含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
式(17)の化合物:
【化12】
を調製するためのプロセスであって、式(15)の化合物:
【化13】
の、式(16)の化合物:
【化14】
との反応を含む、プロセス。
【請求項9】
5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルを調製するためのプロセスであって、
i)
a)請求項4に記載のプロセス、および/または
b)請求項3に記載のプロセス、および/または
c)請求項2に記載のプロセス、および/または
d)請求項1に記載のプロセス、および/または
e)請求項8に記載のプロセス、および/または
f)請求項5から請求項7のいずれか1項に記載のプロセスと、
ii)例えば、式(18)の化合物をメチル化剤((AcO)BHなどの還元剤存在下におけるHCHOなど)と反応させることにより、工程i)から得られた生成物を5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルに相互変換する工程と、
iii)必要に応じて、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容される塩を形成する工程と、
を含む、プロセス。
【請求項10】
5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルを調製するためのプロセスであって、
i)
a)請求項4に記載のプロセス、および/または
b)請求項3に記載のプロセス、および/または
c)請求項2に記載のプロセス、および/または
d)請求項1に記載のプロセスと、
ii)工程i)から得られた生成物を式(18)の化合物に相互変換する工程と、
iii)例えば、式(18)の化合物をメチル化剤((AcO)BHなどの還元剤存在下におけるHCHOなど)と反応させることにより、工程ii)から得られた生成物を5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルに相互変換する工程と、
iv)必要に応じて、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容される塩を形成する工程と、
を含む、プロセス。
【請求項11】
式(14)の化合物:
【化15】
【請求項12】
式(13)の化合物:
【化16】
【請求項13】
式(12)の化合物:
【化17】
【請求項14】
実質的に結晶形態である、請求項11から13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
本明細書に記載の実施形態1.1から1.7、2.1から2.6、3.1から3.6、4.1から4.8、5.1から5.5、6.1から6.8、および7.1から7.78のいずれか1つに定義される、発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Chk-1阻害剤化合物である5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルを調製するプロセス、合成中間体を調製するプロセス、およびこれらのプロセスにおいて用いるための新規の化学中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
Chk-1は、DNA損傷および複製ストレスに応答した細胞周期チェックポイントの誘導に関与するセリン/スレオニンキナーゼである[Tseら,Clin.Can.Res.2007;13(7)]。細胞周期チェックポイントは、細胞周期の移行の順序およびタイミングを制御する調節経路である。多くのがん細胞では、G1期チェックポイント活性化に障害が生じている。例えば、Hahnら、およびHollsteinらは、腫瘍が、ヒトのすべてのがんの約50%で見られる、腫瘍抑制遺伝子であるp53遺伝子における変異と関連していることを報告している[N Engl J Med 2002,347(20):1593;Science,1991,253(5015):49]。
【0003】
Chk-1の阻害によって、S期内チェックポイントおよびG2/M期チェックポイントが阻害される。また、Chk-1の阻害によって、腫瘍細胞が周知のDNA損傷剤に対して選択的に感作されることが示されている。この感作効果が実証されているDNA損傷剤としては、ゲムシタビン、ペメトレキシド、シタラビン、イリノテカン、カンプトテシン、シスプラチン、カルボプラチン[Clin.Cancer Res.2010,16,376]、テモゾロマイド[Journal of Neurosurgery 2004,100,1060]、ドキソルビシン[Bioorg.Med.Chem.Lett.2006;16:421-6]、パクリタクセル[WO2010149394]、ヒドロキシ尿素[Nat.Cell.Biol.2005;7(2):195-20]、ニトロイミダゾール低酸素標的薬TH-302(Mengら,AACR,2013 Abstract No.2389)、および電離放射線[Clin.Cancer Res.2010,16,2076]が挙げられる。McNeelyらによる総説[Pharmacology&Therapeutics(2014),142(1):1-10]も参照されたい。
【0004】
最近発表されたデータも、Chk-1阻害剤が、PARP阻害剤[Cancer Res 2006.;66:(16)]、Mek阻害剤[Blood.2008;112(6):2439-2449]、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤[Blood.2005;105(4):1706-16]、ラパマイシン[Mol.Cancer Ther.2005;4(3):457-70]、Src阻害剤[Blood.2011;117(6):1947-57]、およびWEE1阻害剤[Carrassa,2021,11(13):2507;Chaudhuriら,Haematologica,2014 99(4):688.]と相乗効果的に作用し得ることを示している。
【0005】
さらに、Chk-1阻害剤は、免疫療法剤と組み合わせた場合に優位性を示す[Mouwら,Br J Cancer,2018.(7):933]。Chk1阻害剤は、STINGシグナル伝達を介して先天性免疫応答を誘導するcGASを活性化すること、およびPD-L1発現を誘導し、インビボにおいて抗PD-L1と相乗作用を示すことが示されている[Senら,Cancer Discov 2019(5):646;Senら,J Thorac Oncol,2019.(12):2152]。
【0006】
従来の療法の臨床的問題である化学療法および放射線療法に対する耐性は、Chk1が関与するDNA損傷応答の活性化に関連している[Nature;2006;444(7):756-760;Biochem.Biophys.Res.Commun.2011;406(1):53-8]。
【0007】
また、腫瘍細胞では、DNA損傷およびチェックポイント経路の構成的活性化が、特に複製ストレスを介して、ゲノム不安定化を引き起こすが、この腫瘍細胞の治療に、Chk-1阻害剤を単一の薬剤として、または組み合わせて用いることが有用であると考えられている。このような表現型は、例えば急性骨髄性白血病(AML)患者由来の試料において、複雑な核型と関連している[Cancer Research 2009,89,8652]。低分子阻害剤またはRNA干渉によるChk-1キナーゼのインビトロにおける拮抗は、DNA損傷レベルが高いAML試料のクローン原性を強く低下させる。対照的に、Chk-1の阻害は、正常な造血前駆細胞には影響を及ぼさない。さらに、最近の研究では、腫瘍内微小環境が遺伝的不安定化を引き起こすこと[Nature;2008;(8):180-192]、およびChk-1の欠損により細胞が低酸素/再酸素化に対して感作されること[Cell Cycle;2010;9(13):2502]が示されている。神経芽腫においては、カイノームRNA干渉検査によって、Chk-1の欠損が8つの神経芽腫細胞株の増殖を阻害することが実証された。ファンコニ貧血DNA修復を欠く腫瘍細胞は、Chk-1の阻害に感受性を示す[Molecular Cancer 2009,8:24]。Chk-1特異的阻害剤PF-00477736は、30種類の卵巣がん細胞株[Bukczynskaら,23rd Lorne Cancer Conference]、およびトリプルネガティブ乳がん細胞[Cancer Science 2011,102,882]の増殖を阻害することが示されている。また、PF-00477736は、MYC癌遺伝子によるマウス自然発症型がんモデルにおいて、選択的単剤活性を示す[Ferraoら,Oncogene(15 August 2011)]。RNA干渉または選択的低分子阻害剤のいずれかによるChk-1の阻害は、インビトロと、B細胞リンパ腫のインビボマウスモデルとの両方において、MYC過剰発現細胞のアポトーシスをもたらす[Hoglundら,Clinical Cancer Research,2011]。後者のデータは、Chk-1阻害剤が、B細胞リンパ腫/白血病、神経芽腫、ならびに一部の乳がんおよび肺がんなどのMYCによる悪性腫瘍を治療するのに有用であることを示唆している。Chk-1阻害剤は、ユーイング肉腫および横紋筋肉腫を含む小児腫瘍モデルにおいて有効であることも示されている[Lowery,2018.Clin Cancer Res 2019,25(7):2278]。Chk1阻害剤の致死性は、DNAポリメラーゼのBファミリーと合成的であり、その結果、複製ストレス、DNA損傷、および細胞死が増加する[Rogersら,2020,80(8);1735]。CDK2およびPOXM1を含む他の細胞周期調節遺伝子も、Chk-1阻害剤に対する感受性を与えることが報告されている[Ditanoら,20201.11(1);7077;Braniganら,2021 Cell Reports 34(9):1098808]。
【0008】
DNA修復経路の活性を低下させる変異が、Chk1阻害とともに、合成的に致死的な相互作用をもたらすことも報告されている。例えば、RAD50複合体およびATMシグナル伝達を阻害する変異は、Chk1阻害に対する応答性を高める[Al-Ahmadieら,Cancer Discov.2014.(9):1014-21]。同様に、ファンコニ貧血相同DNA修復経路の欠損は、Chk1阻害に対する感受性をもたらす[Chenら,Mol.Cancer 2009 8:24,Duanら,Frontiers in Oncology 2014 4:368]。また、Rad17遺伝子産物における機能を失ったヒト細胞は、Chk1抑制に対して感受性を有する[Shenら,Oncotarget,2015.6(34):35755]。
【0009】
Chk-1キナーゼの阻害剤を開発するために、様々な試みがなされてきている。例えば、WO03/10444およびWO2005/072733(どちらもミレニアム社名義)には、Chk-1キナーゼ阻害剤としてアリール/ヘテロアリール尿素化合物が開示されている。US2005/215556(アボット社)には、キナーゼ阻害剤として大環状尿素が開示されている。WO02/070494、WO2006014359、およびWO2006021002(すべてアイコス社名義)には、Chk-1阻害剤としてアリール尿素およびヘテロアリール尿素が開示されている。WO/2011/141716およびWO/2013/072502のどちらにも、Chk-1キナーゼ阻害剤として置換ピラジニル-フェニル尿素が開示されている。WO2005/009435(ファイザー社)およびWO2010/077758(イーライリリー社)には、Chk-1キナーゼ阻害剤としてアミノピラゾールが開示されている。
【0010】
WO2015/120390には、Chk-1キナーゼ阻害剤として置換フェニル-ピラゾリル-アミンの一種が開示されている。開示されている化合物のうちの1つは、化合物5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルであり、その合成については、WO2015/120390の実施例64および合成方法Lに記載されている。
【0011】
Chk-1キナーゼ阻害剤化合物5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルは、WO2015/120390に記載されているように、がんの治療に有用である。
【0012】
WO2018/183891(カスカディアン・セラピューティクス社)には、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルまたはその薬学的に許容される塩と、WEE-1阻害剤との組み合わせが開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(本発明)
本発明は、Chk-1キナーゼ阻害剤化合物5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(本明細書においては、式(I)の化合物またはChk-1阻害剤ともいう)を製造するための改良されたプロセスを提供する。
【0014】
1つの一般的な局面において、本発明の改良されたプロセスは、以下のスキーム1に示される一連の反応によって表される。
【0015】
【化1】
【0016】
スキーム1に示されている合成経路には、WO2015/120390に記載されている合成経路と比べていくつかの利点がある。例えば、スキーム1で表されている経路は、総工程数において短い(7対9)。このプロセスから誘導される中間体の多くは、容易に単離可能な結晶性固体である。したがって、この新規経路では、これらの結晶性中間体を用いることでクロマトグラフィーの必要性が排除され、よりスケーラブルなプロセスとなる。さらに、改良されたプロセスでは、大規模合成に望ましくない、WO2015/120390における特定の試薬(例えば、デス-マーチン・ペルヨージナンおよびn-BuLi)の使用が回避される。
【0017】
改良された合成経路では、WO2015/120390に記載されている合成経路と同じ最終工程(還元的メチル化)が利用されるが、本経路における式(17)のBoc-保護中間体の脱保護および合成は、WO2015/120390における式(17)の中間体の合成および脱保護とは異なる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
したがって、1つの局面(実施形態1.1)において、本発明は、式(18)の化合物:
【0019】
【化2】
【0020】
を調製するためのプロセスを提供し、本プロセスは、式(17)の化合物:
【0021】
【化3】
【0022】
を、ハロゲン化アルキルシリルまたはスルホン酸(ベンゼンスルホン酸など)と反応させる工程を含む。
【0023】
WO2015/120390における式(17)のBoc保護中間体の脱保護には、塩酸が用いられた。しかし、式(18)の脱保護中間体に存在する塩酸の残留分は、この反応におけるその後の還元メチル化に用いられるホルムアルデヒドと反応し、例えば発癌性であることが知られているビス(クロロメチル)エーテル(BCME)のような、潜在的遺伝毒性不純物を形成することが見出された。改良されたプロセスでは、ハロゲン化アルキルシリルまたはベンゼンスルホン酸(BSA)のいずれかが用いられており、最終産物における潜在的遺伝毒性不純物およびその他の不純物の生成が回避されることが見出されている。本プロセスは、脱保護工程をよりクリーンにするために、出発材料の水分含有量を低減することをさらに含んでいてもよい。しかし、ハロゲン化アルキルシリルの使用は、出発物質中の水の存在への耐性があることが見出されているので、ハロゲン化アルキルアルキルシリルを用いることには、BSAを用いる場合と比べて、反応前の乾燥工程が不要であるという利点がある。また、ハロゲン化アルキルシリルを用いることで、反応温度が低下し、かつ反応時間が短縮され、ベンゼン不純物を含有する可能性のある試薬の使用が回避される。
【0024】
さらなる実施形態において、本発明は、以下を提供する:
1.2 式(17)の化合物をハロゲン化アルキルシリルと反応させる工程を含む、実施形態1.1に記載のプロセス。
1.3 ハロゲン化アルキルシリルが、ハロゲン化トリメチルシリルである、実施形態1.2に記載のプロセス。
1.4 ハロゲン化アルキルシリルが、ヨウ化トリメチルシリル(TMSI)である、実施形態1.3に記載のプロセス。
1.5 反応が、極性非プロトン性溶媒の存在下で行われる、実施形態1.1から実施形態1.4のいずれか1つに記載のプロセス。
1.6 極性非プロトン性溶媒が、アセトニトリルである、実施形態1.5に記載のプロセス。
1.7 反応が、0℃から20℃の温度で行われる、実施形態1.1から実施形態1.6のいずれか1つに記載のプロセス。
1.8 反応が、15分間から60分間、例えばおよそ30分間行われ、その後、必要に応じて(例えば、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩)が添加される、実施形態1.1から実施形態1.7のいずれか1つに記載のプロセス。
1.9 式(17)の化合物を、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸と反応させる工程を含む、実施形態1.1に記載のプロセス。
1.10 反応が、極性非プロトン性溶媒の存在下で行われる、実施形態1.9に記載のプロセス。
1.11 極性非プロトン性溶媒が、酢酸エチルである、実施形態1.10に記載のプロセス。
1.12 反応が、50℃から70℃の温度、例えばおよそ60℃の温度で行われる、実施形態1.9から実施形態1.11のいずれか1つに記載のプロセス。
1.13 反応が、20時間から30時間、例えばおよそ26時間行われる、実施形態1.9から実施形態1.11のいずれか1つに記載のプロセス。
1.14 式(17)の化合物をベンゼンスルホン酸と反応させる前に出発物質の水分含有量を低減させる工程を含む、実施形態1.9から実施形態1.11のいずれか1つに記載のプロセス。
1.15 出発物質の水分含有量を低減させる工程は、非極性溶媒(1,4-ジオキサンなど)中で式(17)の化合物を例えば80℃から85℃の温度で加熱した後、非極性溶媒を除去することを含む、実施形態1.14に記載のプロセス。
【0025】
別の局面(実施形態2.1)において、本発明は、式(17)の化合物:
【0026】
【化4】
【0027】
を調製するためのプロセスを提供し、本プロセスは、式(15)の化合物:
【0028】
【化5】
【0029】
の、式(16)の化合物:
【0030】
【化6】
【0031】
との反応を含む。
【0032】
WO2015/120390では、式(17)のBoc保護中間体が、式(15)の中間体と5-ブロモピラジン-2-カルボニトリルとの反応によって形成された。一方、改良されたプロセスでは、5-クロロピラジン-2-カルボニトリルが用いられている。さらに、改良されたプロセスでは、WO2015/120390に記載されているよりも低い温度(80℃ではなく50℃)で、反応が行われる。
【0033】
さらに、無水条件で反応を行うことで、不要な副生成物/不純物の形成が低減されることが見出された。
【0034】
さらなる実施形態において、本発明は、以下を提供する:
2.2 反応が、非水性非プロトン性溶媒中で行われる、実施形態2.1に記載のプロセス。
2.3 溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)である、実施形態2.2に記載のプロセス。
2.4 溶媒が無水溶媒であり、例えば溶媒の水分含有量が500ppm以下である、実施形態2.1から実施形態2.3のいずれか1つに記載のプロセス。
2.5 反応が、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の存在下で行われる、実施形態2.1から実施形態2.3のいずれか1つに記載のプロセス。
2.6 プロセスが、40℃から80℃の範囲の温度、例えば約70℃で行われる、実施形態2.1から実施形態2.5のいずれか1つに記載のプロセス。
【0035】
改良されたプロセスにおいて、式(15)の中間体を調製する方法は、WO2015/120390で用いられた方法とは全く異なる。改良された方法は、以下に記すいくつかの利点をもたらす:
・結晶性中間体の使用(中間体のクロマトグラフィー精製の必要性を低減)
・用いられる最低温度が-10℃であるため、プロセスがスケーリングにより適したものとなる(WO2015/120390に記載されている経路には、-78℃で行われる2つの反応工程が含まれていた)
・反応の収率がより高い
・酸化試薬としてのデス-マーチン・ペルヨージナンの使用が回避される。この試薬を工業的規模で用いることは、そのコストおよび潜在的な爆発性から困難である(Plumb,J.B.;Harper,D.J.(1990).”Chemical Safety: 2-Iodoxybenzoic acid”.Chem.Eng.News.68:3.doi:10.1021/cen-v068n029.p002を参照のこと)。
【0036】
以下の各工程に関して、さらに具体的な利点を論ずる。
【0037】
さらなる局面(実施形態3.1)において、本発明は、式(15)の化合物:
【0038】
【化7】
【0039】
を調製するためのプロセスを提供し、本プロセスは、式(14)の化合物:
【0040】
【化8】
【0041】
を、ヒドラジン(NHNH)と反応させる工程を含む。
【0042】
このプロセスでは、WO2015/120390においてこれと対応する式(15)の化合物を形成するためのプロセスと比較して、収率が向上する(実施例64を参照のこと)。実施例64のプロセスによる収率は44%であったが、改良されたプロセスでは、収率は58%となった。
【0043】
さらなる実施形態において、本発明は、以下を提供する:
3.2 反応が、極性プロトン性溶媒中で行われる、実施形態3.1に記載のプロセス。
3.3 極性プロトン性溶媒が、エタノール(EtOH)などのC1-4アルコールである、実施形態3.2に記載のプロセス。
3.4 反応が、氷酢酸の存在下で行われる、実施形態3.1から実施形態3.3のいずれか1つに記載のプロセス。
3.5 反応が、70℃から80℃の温度、例えばおよそ75℃の温度で行われる、実施形態3.1から実施形態3.4のいずれか1つに記載のプロセス。
3.6 反応が、4時間以下、例えば1時間から3時間(およそ2時間など)行われる、実施形態3.1から実施形態3.5のいずれか1つに記載のプロセス。
【0044】
さらなる局面(実施形態4.1)において、本発明は、式(14)の化合物:
【0045】
【化9】
【0046】
を調製するためのプロセスを提供し、本プロセスは、式(13)の化合物:
【0047】
【化10】
【0048】
を、塩基の存在下でアセトニトリル(CHCN)と反応させる工程を含む。
【0049】
さらなる実施形態において、本発明は、以下を提供する:
4.2 塩基が、アルコキシド塩基である、実施形態4.1に記載のプロセス。
4.3 塩基が、tert-ブトキシド塩基である、実施形態4.2に記載のプロセス。
4.4 塩基が、KOBuである、実施形態4.3に記載のプロセス。
4.5 反応が、極性非プロトン性溶媒中で行われる、実施形態4.1から実施形態4.4のいずれか1つに記載のプロセス。
4.6 溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)またはジエチルエーテルである、実施形態4.5に記載のプロセス。
4.7 反応が、30℃から50℃の温度、例えばおよそ40℃の温度で行われる、実施形態4.1から実施形態4.6のいずれか1つに記載のプロセス。
4.8 反応が、3時間から5時間、例えばおよそ4時間行われる、実施形態4.1から実施形態4.7のいずれか1つに記載のプロセス。
【0050】
式(13)の化合物は、対応する式(12)のアルコール化合物をフッ素化することによって調製される。
【0051】
したがって、さらなる局面(実施形態5.1)において、本発明は、式(13)の化合物:
【0052】
【化11】
【0053】
を調製するためのプロセスを提供し、本プロセスは、式(12)の化合物:
【0054】
【化12】
【0055】
を、デオキシフッ素化試薬と反応させる工程を含む。
【0056】
さらなる実施形態において、本発明は、以下を提供する:
5.2 デオキシフッ素化試薬が、三フッ化ジエチルアミノ硫黄DASTである、実施形態5.1に記載のプロセス。
5.3 反応が、極性非プロトン性溶媒中で行われる、実施形態5.1または実施形態5.2に記載のプロセス。
5.4 溶媒が、ジクロロメタン(DCM)である、実施形態5.3に記載のプロセス。
5.5 反応が、-20℃から-10℃の間の温度(例えば、およそ-10℃)で行われる、実施形態5.1から実施形態5.4のいずれか1つに記載のプロセス。
【0057】
さらなる局面(実施形態6.1)において、本発明は、式(12)の化合物:
【0058】
【化13】
【0059】
を調製するためのプロセスを提供し、本プロセスは、式(10)の化合物:
【0060】
【化14】
【0061】
を、式(11)の化合物:
【0062】
【化15】
【0063】
と、グリニャール試薬などの金属化剤の存在下で反応させる工程を含む。
【0064】
反応は、典型的には、グリニャール試薬およびルイス酸(例えば、LaCl)の存在下で行われる。LaCl試薬は、キレート試薬として作用し、不純物の形成を低減させることが見出されている。
【0065】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、以下を提供する:
6.2 反応が、式RMgClで表される化合物の存在下で行われ、RがC1-4アルキル基である、実施形態6.1に記載のプロセス。
6.3 Rが、イソプロピルである(そして、RMgClが、iPrMgClである)、実施形態6.2に記載のプロセス。
6.4 反応が、ルイス酸の存在下で行われる、実施形態6.1から実施形態6.3のいずれか1つに記載のプロセス。
6.5 ルイス酸が、塩化ランタニド(例えば、LaClまたはCeCl)である、実施形態6.4に記載のプロセス。
6.6 ルイス酸が、LaClである、実施形態6.4または実施形態6.5に記載のプロセス。
6.7 反応が、極性非プロトン性溶媒中で行われる、実施形態6.1から実施形態6.6のいずれか1つに記載のプロセス。
6.8 溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)である、実施形態6.7に記載のプロセス。
【0066】
5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルまたはその薬学的に許容される塩の調製に、上記のプロセスを用いることができる。したがって、さらなる局面において、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルを調製するためのプロセスが提供され、本プロセスは、
i)
a)実施形態6.1から6.8のいずれか1つに記載のプロセス、および/または
b)実施形態5.1から5.5のいずれか1つに記載のプロセス、および/または
c)実施形態4.1から4.8のいずれか1つに記載のプロセス、および/または
d)実施形態3.1から3.6のいずれか1つに記載のプロセス、および/または
e)実施形態2.1から2.6のいずれか1つに記載のプロセス、および/または
f)実施形態1.1から1.7のいずれか1つに記載のプロセスと、
ii)例えば、式(18)の化合物をメチル化剤((AcO)BHなどの還元剤存在下におけるHCHOなど)と反応させることにより、工程i)から得られた生成物を5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルに相互変換する工程と、
iii)必要に応じて、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容される塩を形成する工程と、
を含む。
【0067】
あるいは、本発明は、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルを調製するためのプロセスを提供し、本プロセスは、
i)
a)請求項4に記載のプロセス、および/または
b)請求項3に記載のプロセス、および/または
c)請求項2に記載のプロセス、および/または
d)請求項1に記載のプロセスと、
ii)工程i)から得られた生成物を式(18)の化合物に相互変換する工程と、
iii)例えば、式(18)の化合物をメチル化剤((AcO)BHなどの還元剤存在下におけるHCHOなど)と反応させることにより、工程ii)から得られた生成物を5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルに相互変換する工程と、
iv)必要に応じて、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容される塩を形成する工程と、
を含む。
【0068】
さらなる局面において、本発明は、本発明のプロセスで用いるのに適した新規の中間体を提供する。中間体は結晶性であるため、反応生成物を精製するためのクロマトグラフィーの必要性が低減または回避されることが見出されている。
【0069】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、以下を提供する:
7.1 式(14)の化合物:
【0070】
【化16】
【0071】
7.2 式(13)の化合物:
【0072】
【化17】
【0073】
7.3 式(12)の化合物:
【0074】
【化18】
【0075】
7.4 実質的に結晶形態である、実施形態7.1から7.3のいずれか1つに記載の化合物。
【0076】
改良されたプロセスで用いられる結晶形態の中間体のさらなる詳細を以下に示す。
【0077】
(式(12)の中間体)
結晶形態である式(12)の中間体に対するXRPD回折図を図1に示す。
【0078】
結晶形態である式(12)の中間体のX線回折パターンは、表A-1に示す回折角(2θ)において最大強度のピークを示す。
【0079】
【表A-1】
【0080】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、以下を提供する:
7.5 10.6°および/または13.3°および/または16.7°および/または17.0°および/または19.9°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(12)の化合物。
7.6 10.6°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(12)の化合物。
7.7 13.3°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(12)の化合物。
7.8 16.7°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(12)の化合物。
7.9 17.0°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(12)の化合物。
7.10 19.9°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(12)の化合物。
7.11 10.6°、13.3°、16.7°、17.0°、および19.9°(±0.2°)から選択される回折角(2θ)のうちの2つ以上の回折角、例えば3つ以上の回折角、または4つ以上の回折角、特に5つの回折角に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(12)の化合物。
7.12 上記表A-1または下記表1に示される回折角において相対強度が少なくとも15%であるピークを示す、実質的に結晶形態である式(12)の化合物。
7.13 図1に示すX線粉末回折パターンに対応する回折角においてピークを示す、実質的に結晶形態である式(12)の化合物。
7.14 実質的に図1に示すようなX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(12)の化合物。
【0081】
(式(13)の中間体)
結晶形態である式(13)の中間体に対するXRPD回折図を図2に示す。
【0082】
結晶形態である式(13)の中間体のX線回折パターンは、表A-2に示す回折角(2θ)において最大強度のピークを示す。
【0083】
【表A-2】
【0084】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、以下を提供する:
7.15 10.8°および/または13.5°および/または14.0°および/または15.7°および/または21.7°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(13)の化合物。
7.16 10.8°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(13)の化合物。
7.17 13.5°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(13)の化合物。
7.18 14.0°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(13)の化合物。
7.19 15.7°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(13)の化合物。
7.20 21.7°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(13)の化合物。
7.21 10.8°、13.5°、14.0°、15.7°、および21.7°(±0.2°)から選択される回折角(2θ)のうちの2つ以上の回折角、例えば3つ以上の回折角、または4つ以上の回折角、特に5つの回折角に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(13)の化合物。
7.22 上記表A-2または下記表2に示される回折角において相対強度が少なくとも15%であるピークを示す、実質的に結晶形態である式(13)の化合物。
7.23 図2に示すX線粉末回折パターンに対応する回折角においてピークを示す、実質的に結晶形態である式(13)の化合物。
7.24 実質的に図2に示すようなX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(13)の化合物。
【0085】
(式(14)の中間体)
結晶形態である式(14)の中間体に対するXRPD回折図を図3に示す。
【0086】
結晶形態である式(14)の中間体のX線回折パターンは、表A-3に示す回折角(2θ)において最大強度のピークを示す。
【0087】
【表A-3】
【0088】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、以下を提供する:
7.25 7.8°および/または14.6°および/または15.4°および/または15.7°および/または18.9°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(14)の化合物。
7.26 7.8°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(14)の化合物。
7.27 14.6°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(14)の化合物。
7.28 15.4°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(14)の化合物。
7.29 15.7°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(14)の化合物。
7.30 18.9°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(14)の化合物。
7.31 10.7°、14.6°、15.4°、15.7°、および18.9°(±0.2°)から選択される回折角(2θ)のうちの2つ以上の回折角、例えば3つ以上の回折角、または4つ以上の回折角、特に5つの回折角に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(14)の化合物。
7.32 上記表A-3または下記表3に示される回折角において相対強度が少なくとも15%であるピークを示す、実質的に結晶形態である式(14)の化合物。
7.33 図3に示すX線粉末回折パターンに対応する回折角においてピークを示す、実質的に結晶形態である式(14)の化合物。
7.34 実質的に図3に示すようなX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(14)の化合物。
【0089】
(式(15)の中間体)
結晶形態である式(15)の中間体に対するXRPD回折図を図4に示す。
結晶形態である式(15)の中間体のX線回折パターンは、表A-4に示す回折角(2θ)において最大強度のピークを示す。
【0090】
【表A-4】
【0091】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、以下を提供する:
7.35 実質的に結晶形態である、式(15)の化合物。
7.36 5.5°および/または14.5°および/または17.0°および/または18.9°および/または19.3°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(15)の化合物。
7.37 5.5°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(15)の化合物。
7.38 14.5°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(15)の化合物。
7.39 17.0°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(15)の化合物。
7.40 18.9°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(15)の化合物。
7.41 19.3°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(15)の化合物。
7.42 5.5°、14.5°、17.0°、18.9°、および19.3°(±0.2°)から選択される回折角(2θ)のうちの2つ以上の回折角、例えば3つ以上の回折角、または4つ以上の回折角、特に5つの回折角に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(15)の化合物。
7.43 上記表A-4または下記表4に示される回折角において相対強度が少なくとも15%であるピークを示す、実質的に結晶形態である式(15)の化合物。
7.44 図4に示すX線粉末回折パターンに対応する回折角においてピークを示す、実質的に結晶形態である式(15)の化合物。
7.45 実質的に図4に示すようなX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(15)の化合物。
【0092】
(式(17)の中間体)
結晶形態である式(17)の中間体に対するXRPD回折図を図5に示す。
【0093】
結晶形態である式(17)の中間体のX線回折パターンは、表A-5に示す回折角(2θ)において最大強度のピークを示す。
【0094】
【表A-5】
【0095】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、以下を提供する:
7.46 実質的に結晶形態である、式(17)の化合物。
7.47 8.8°および/または12.5°および/または15.4°および/または16.3°および/または22.0°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(17)の化合物。
7.48 8.8°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(17)の化合物。
7.49 12.5°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(17)の化合物。
7.50 15.4°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(17)の化合物。
7.51 16.3°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(17)の化合物。
7.52 22.0°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(17)の化合物。
7.53 8.8°、12.5°、15.4°、16.3°、および22.0°(±0.2°)から選択される回折角(2θ)のうちの2つ以上の回折角、例えば3つ以上の回折角、または4つ以上の回折角、特に5つの回折角に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(17)の化合物。
7.54 上記表A-5または下記表5に示される回折角において相対強度が少なくとも15%であるピークを示す、実質的に結晶形態である式(17)の化合物。
7.55 図5に示すX線粉末回折パターンに対応する回折角においてピークを示す、実質的に結晶形態である式(17)の化合物。
7.56 実質的に図5に示すようなX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(17)の化合物。
【0096】
(式(18)の中間体)
結晶形態である式(18)の中間体のベンゼンスルホン酸塩に対するXRPD回折図を図6に示す。
【0097】
結晶形態である式(18)の中間体のベンゼンスルホン酸塩のX線回折パターンは、表A-6に示す回折角(2θ)において最大強度のピークを示す。
【0098】
【表A-6】
【0099】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、以下を提供する:
7.57 実質的に結晶形態である、式(18)の化合物のベンゼンスルホン酸塩。
7.58 4.3°および/または6.5°および/または8.6°および/または15.2°および/または20.5°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(18)の化合物のベンゼンスルホン酸塩。
7.59 4.3°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(18)の化合物のベンゼンスルホン酸塩。
7.60 6.5°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(18)の化合物のベンゼンスルホン酸塩。
7.61 8.6°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(18)の化合物のベンゼンスルホン酸塩。
7.62 15.2°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(18)の化合物のベンゼンスルホン酸塩。
7.63 20.5°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(18)の化合物のベンゼンスルホン酸塩。
7.64 4.3°、6.5°、8.6°、15.2°、および20.5°(±0.2°)から選択される回折角(2θ)のうちの2つ以上の回折角、例えば3つ以上の回折角、または4つ以上の回折角、特に5つの回折角に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(18)の化合物のベンゼンスルホン酸塩。
7.65 上記表A-6または下記表6に示される回折角において相対強度が少なくとも15%であるピークを示す、実質的に結晶形態である式(18)の化合物のベンゼンスルホン酸塩。
7.66 図6に示すX線粉末回折パターンに対応する回折角においてピークを示す、実質的に結晶形態である式(18)の化合物のベンゼンスルホン酸塩。
7.67 実質的に図6に示すようなX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(18)の化合物のベンゼンスルホン酸塩。
【0100】
結晶形態である式(18)の中間体の遊離塩基に対するXRPD回折図を図7に示す。
【0101】
結晶形態である式(18)の中間体のX線回折パターンは、表A-7に示す回折角(2θ)において最大強度のピークを示す。
【0102】
【表A-7】
【0103】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、以下を提供する:
7.68 実質的に結晶形態である、式(18)の化合物。
7.69 9.5°および/または10.2°および/または14.7°および/または15.6°および/または26.2°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(18)の化合物。
7.70 9.5°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(18)の化合物。
7.71 10.2°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(18)の化合物。
7.72 14.7°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(18)の化合物。
7.73 15.6°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(18)の化合物。
7.74 26.2°(±0.2°)の回折角(2θ)に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(18)の化合物。
7.75 9.5°、10.2°、14.7°、15.6°、および26.2°(±0.2°)から選択される回折角(2θ)のうちの2つ以上の回折角、例えば3つ以上の回折角、または4つ以上の回折角、特に5つの回折角に主要なピークが存在することを特徴とするX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(18)の化合物。
7.76 上記表A-7または下記表7に示される回折角において相対強度が少なくとも15%であるピークを示す、実質的に結晶形態である式(18)の化合物。
7.77 図7に示すX線粉末回折パターンに対応する回折角においてピークを示す、実質的に結晶形態である式(18)の化合物。
7.78 実質的に図7に示すようなX線粉末回折パターンを有する、実質的に結晶形態である式(18)の化合物。
【0104】
本発明のさらなる態様および実施形態は、以下に示す実施例から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1図1は、結晶形態である式(12)の中間体のXRPDパターンである。
図2図2は、結晶形態である式(13)の中間体のXRPDパターンである。
図3図3は、結晶形態である式(14)の中間体のXRPDパターンである。
図4図4は、結晶形態である式(15)の中間体のXRPDパターンである。
図5図5は、結晶形態である式(17)の中間体のXRPDパターンである。
図6図6は、結晶形態である式(18)の中間体のベンゼンスルホン酸塩のXRPDパターンである。
図7図7は、結晶形態である式(18)の中間体の遊離塩基のXRPDパターンである。
【実施例
【0106】
次に、以下の実施例に記載されている特定の実施形態を参照して本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0107】
(略語)
実施例においては、以下の略語を用いる。
AcOH 酢酸
aq 水性
BSA ベンゼンスルホン酸
DAST 三フッ化ジエチルアミノ硫黄
DCM ジクロロメタン
DIPEA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMSO ジメチルスルホキシド
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
h 時間
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
iPrOAc 酢酸イソプロピル
iPrMgCl 塩化イソプロピルマグネシウム
KF カール・フィッシャー
LC 液体クロマトグラフィー
LCMS 液体クロマトグラフィー質量分析
MeCN アセトニトリル
min 分
MgSO 硫酸マグネシウム
NMR 核磁気共鳴
RT 保持時間
THF テトラヒドロフラン
【0108】
(分析方法)
(HPLC法1)
Agilent1100シリーズHPLCシステムでHPLC分析を行った。使用カラムは、Aquity BEH Phenyl、30×4.6mm、粒子径1.7μm(Exウォーターズ、PN:186004644)であった。流速は、2.0mL/分とした。移動相Aは、水:トリフルオロ酢酸(100:0.03%)とし、移動相Bは、アセトニトリル:トリフルオロ酢酸(100:0.03%)とした。検出は、210nmのUVを用いて行った。注入量は5μL、カラム温度は40℃とし、以下のグラジエントを用いた。
【0109】
【表B-1】
【0110】
(HPLC法2)
Agilent1110シリーズHPLCシステムでHPLC分析を行った。使用カラムは、Aquity BEH Phenyl、30×4.6mm、粒子径1.7μm(Exウォーターズ、PN:186004644)であった。流速は、2.0mL/分とした。移動相Aは、水:トリフルオロ酢酸(100:0.03%)とし、移動相Bは、アセトニトリル:トリフルオロ酢酸(100:0.03%)とした。検出は、210nmのUVを用いて行った。注入量は5μL、カラム温度は40℃とし、以下のグラジエントを用いた。
【0111】
【表B-2】
【0112】
(HPLC法3)
Agilent1100/1200シリーズ液体クロマトグラフでHPLC分析を行った。使用カラムは、XSelect Phenyl-Hexyl、150×4.6mm、粒子径2.5μm(Exウォーターズ、PN:186006735)であった。流速は、1.0mL/分とした。移動相Aは10mMの酢酸アンモニウム(pH5.8)とし、移動相Bはアセトニトリル100%とした。検出は、302nmのUVを用いて行った。注入量は5μL、カラム温度は50℃とし、以下のグラジエントを用いた。
【0113】
【表B-3】
【0114】
(プロトンNMR)
オートサンプラーを備えたJEOL ECX 400MHz分光計を用いて収集したH NMRスペクトルから、全中間体の構造を確認した。分析のために、適切な重水素化溶媒に試料を溶解した。デルタNMR処理制御ソフトウェア・バージョン4.3を用いて、データを取得した。
【0115】
(X線粉末回折(XRPD))
CuKα線(45kV、40mA)、θ-θゴニオメーター、収束鏡、発散スリット(1/2”)、入射ビームと発散ビームとの両方に対するソーラースリット(4mm)、およびPIXcel検出器を用いるPANalytical回折計で、X線粉末回折パターンを収集した。データ収集に用いたソフトウェアは、X’Pertデータコレクター,バージョン2.2fであり、X’Pertデータビューアー,バージョン1.2dを用いてデータを提示した。PANalytical X’Pert PROを用い、周囲条件下の透過ホイルサンプルステージ(ポリイミドカプトン、12.7μm厚のフィルム)を介して、周囲条件下でXRPDパターンを取得した。データ収集範囲は、連続スキャン速度を0.202004°s-1として、2θが2.994°から35°であった。
【0116】
(実施例1)
以下に示す反応スキームにおいて概説するように、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルを調製した。
【0117】
【化19】
【0118】
(工程1:tert-ブチル4-(4-シアノ-3-メトキシ-フェニル)-4-ヒドロキシ-ピペリジン-1-カルボン酸塩)
窒素中、2Lの容器に、4-ブロモ-2-メトキシベンゾニトリル(125g、589mmol)および無水THF(375mL)を投入した。スラリーを0℃に冷却した。iPrMgClの2MのTHF溶液(530mL、1.06mol)を、0℃から10℃で20分かけて投入した。0℃から5℃で2時間、バッチを撹拌した。LaCl.2LiClの0.6MのTHF溶液(196mL、118mmol)を、0℃から5℃で15分かけて投入した。30分後、N-Boc-4-ピペリドン(146.7g、736mmol)の無水THF溶液(375mL)を、0℃から15℃で25分かけて投入した。30分撹拌した後、10%のAcOH(750mL、1.31mol)を、0℃から30℃で15分かけて投入した。有機層を分離し、濃縮して残留THFを除去した。水層をTBME(750mL)で抽出し、濃縮した有機層と合わせた。水(250mL)を投入して、バッチを撹拌し、有機層を分離して乾燥させた(MgSO)。バッチを真空で濃縮した。粗物質をジイソプロピルエーテル(500mL)に溶解させ、追加のジイソプロピルエーテル(125mL)と共に清浄な2L容器に移した。バッチを60℃に加熱し、ヘプタン(500mL)を55℃から60℃で15分かけて投入した。バッチを5時間かけて10℃に冷却した後、一晩撹拌してスラリーを得た。ヘプタン(375mL)を投入し、バッチを30分間、0℃に冷却した。固体を濾別し、ジイソプロピルエーテル(125mL)およびヘプタン(125mL)の氷冷混合物で洗浄した。物質を40℃で乾燥させて、標記の化合物を白色の固体として得た(126g、収率64%)。
【0119】
HPLC(方法1) RT 2.97分、99.0%。H NMR純度 >95%。
1H NMR (CDCl3) d 7.49 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.16 (s, 1H), 7.04 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 4.05 (br s, 2H), 3.93 (s, 3H), 3.89 (brs, 2H), 2.04 (s, 1H), 1.94 (brs, 2H), 1.67 (d, J = 12.8 Hz, 2H), 1.457 (s, 9H)。
【0120】
生成物のXRPD回折パターンを図1に示し、XRPDピークのリストを下記表1に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
(工程2:tert-ブチル4-(4-シアノ-3-メトキシ-フェニル)-4-フルオロ-ピペリジン-1-カルボン酸塩)
窒素中、2Lのフラスコに、DCM(1.2L)およびDAST(69.8g、133mmol)を投入した。溶液を-10℃に冷却した。tert-ブチル4-(4-シアノ-3-メトキシ-フェニル)-4-ヒドロキシ-ピペリジン-1-カルボン酸塩(120g、361mmol)のDCM溶液(0.24L)を、-10℃で1時間かけて投入した。添加が完了した後、反応物を1時間、15℃から20℃に加温した。第2の容器に、重炭酸カリウム(240g、2.40mol)および水(1L)を投入した。バッチを室温で撹拌して溶液を得た。反応溶液を、15℃から25℃で20分かけて(窒素移動)重炭酸カリウム水溶液に移した。ラインリンスとしてDCM(50mL)を用いた。クエンチしたバッチを15分撹拌し、pHを確認した(>7)。有機層を分離した。水層をDCM(240mL)で抽出し、分離を容易にするために水(150mL)を添加した。有機層を合わせて乾燥させ(MgSO)、真空で濃縮した。ジイソプロピルエーテル(360mL)を添加して粗物質を溶解させ、真空で濃縮して白色の固体(114g)を得た。粗物質の一部(100g)にジイソプロピルエーテル(400mL)およびヘプタン(400mL)を投入した。バッチを70℃に加熱して溶液を得、1時間かけて周囲温度に冷却して、一晩撹拌した。バッチを濾過し、固体をジイソプロピルエーテル(100mL)およびヘプタン(100mL)の混合物で洗浄して、80gを得た。物質をさらに精製し、ジイソプロピルエーテル(240mL)およびヘプタン(240mL)を添加した。バッチを70℃に加熱して溶液を得、1時間かけて周囲温度に冷却した。バッチを濾過し、固体をジイソプロピルエーテル(80mL)およびヘプタン(80mL)の混合物で洗浄して、標記の化合物を白色の固体として得た(72.6g、収率69%)。HPLC(方法2) RT 10.58分、99.2%。H NMR純度 >95%。
1H NMR (CDCl3) d 7.54 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.01 (s, 1H), 6.91 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.13 (br s, 2H), 3.95 (s, 3H), 3.14 (brs, 2H), 2.00-1.91 (m, 4H), 1.28 (s, 9H)。
【0123】
生成物のXRPD回折パターンを図2に示し、XRPDピークのリストを下記表2に示す。
【0124】
【表2】
【0125】
(工程3:tert-ブチル4-[4-[(Z)-1-アミノ-2-シアノ-ビニル]-3-メトキシ-フェニル]-4-フルオロ-ピペリジン-1-カルボン酸塩)
2Lの容器に、tert-ブチル4-(4-シアノ-3-メトキシ-フェニル)-4-フルオロ-ピペリジン-1-カルボン酸塩(60.2g、180mmol)および無水THF(180.6mL)を投入した。バッチを15℃から25℃で撹拌して、溶液とした。無水MeCN(18.7mL、360mmol)を投入した。カリウムtert-ブトキシドの1MのTHF溶液(540mL、540mmol)を、15℃から25℃で10分かけて投入し、その後ラインリンス(60mLのTHF)を行った。その後、バッチを4時間、40℃に加温した。バッチを15℃から25℃に冷却し、水(16.3mL、900mmol)を投入した。10分後、体積が約1/4となるまでロタヴェイパー(rotavapor)でバッチを濃縮した。粗物質を、15℃から25℃で30分間、水(903mL)でスラリー化し、その後、濾過した。固体を水(300mL)で洗浄し、40℃で乾燥させて、標記の化合物を黄褐色の固体として得た(65.0g、収率96%)。HPLC(方法2):RT 10.46分、94.4%(プラス1.4%β-ケトニトリル)。H NMR純度 >95%。
1H NMR (CDCl3) d 7.39 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.02 (s, 1H), 6.91 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 5.31 (brs, 2H), 4.19 (s, 1H), 4.15 (brs, 2H), 3.92 (s, 3H), 3.17 (brs, 2H), 1.98-1.92 (m, 4H), 1.50 (s, 9H)。
【0126】
生成物のXRPD回折パターンを図3に示し、XRPDピークのリストを下記表3に示す。
【0127】
【表3】
【0128】
(工程4:tert-ブチル4-[4-(5-アミノ-1H-ピラゾール-3-イル)-3-メトキシ-フェニル]-4-フルオロ-ピペリジン-1-カルボン酸塩)
tert-ブチル4-[4-[(Z)-1-アミノ-2-シアノ-ビニル]-3-メトキシ-フェニル]-4-フルオロ-ピペリジン-1-カルボン酸塩(61.4g、163.6mmol)に、EtOH(246mL)を投入し、バッチを15℃から25℃で撹拌した。ヒドラジン一水和物(9.6mL、196mmol)を投入し、その後、氷酢酸(11.2mL、196mmol)を投入した。バッチを2時間、75℃に加温した。バッチを15℃から25℃に冷却し、水(614mL)を投入した。30分撹拌した後、固体を濾別し、水で洗浄した(2×246mL)。物質を50℃で乾燥させて、標記の化合物をオフホワイト色の固体(58.6g、収率91.7%)として得た。HPLC(方法1):97.7%(1.6%アミド)。KF水測定:1.3%。
【0129】
アミド副生成物レベルを低減するために、物質の一部(49.4g)をジイソプロピルエーテル(250mL)を用いて50℃で30分スラリー化し、その後、15℃から25℃で単離した。固体をジイソプロピルエーテル(50mL)で洗浄し、オーブンで乾燥させて47.7gのステージ4を得た。HPLC(方法):0.8%アミド。物質の一部(41.5g)を15℃から25℃でDCM(415mL)に溶解させ、1MのKCOで洗浄した(2×100mL)。有機層を乾燥させ(MgSO)、濃縮し、オーブンで50℃で乾燥させて、標記の化合物を薄黄色の固体として得た(39.7g、収率58%)。HPLC(方法3):RT 12.94分、96.4%。H NMR純度 >95%。
1H NMR (CDCl3) d 10.35 (s, 1H), 7.54 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.04 (s, 1H), 6.93 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 5.99 (s, 1H), 4.16 (brs, 2H), 3.98 (s, 3H), 3.16 (brs, 2H), 3.16 (brs, 2H), 2.06-1.94 (m, 4H), 1.48 (s, 9H)。
【0130】
生成物のXRPD回折パターンを図4に示し、XRPDピークのリストを下記表4に示す。
【0131】
【表4】
【0132】
(工程5:tert-ブチル4-[4-[5-[(5-シアノピラジン-2-イル)アミノ]-1H-ピラゾール-3-イル]-3-メトキシ-フェニル]-4-フルオロ-ピペリジン-1-カルボン酸塩)
窒素中、500mLの容器に、tert-ブチル4-[4-(5-アミノ-1H-ピラゾール-3-イル)-3-メトキシ-フェニル]-4-フルオロ-ピペリジン-1-カルボン酸塩(32.4g、83mmol)を投入し、その後、5-クロロ-2-シアノピラジン(12.34g、91.3mmol)および無水DMSO(64.8mL)を投入した。DIPEA(18.1ml、103.8mmol)を投入し、バッチを20時間、50℃に加温した。バッチを周囲温度に冷却し、iPrOAc(162mL)を投入した。得られた溶液を15℃から30℃の水(324mL)に注ぎ、バッチを1時間撹拌した。バッチを濾過し、水(324mL)およびiPrOAc(162mL)で洗浄した。固体をオーブンで50℃で乾燥させて、標記の化合物を黄褐色の固体として得た(39.6g、収率94%)。HPLC(方法3):RT 15.57分、97.6%。H NMR純度 >95%。
1H NMR (DMSO-d6) d 12.65 (s, 1H), 10.76 (s, 1H), 8.66 (s, 1H), 8.51 (brs, 1H), 7.67 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.14 (s, 1H), 7.09 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 4.01 (brs, 2H), 3.93 (s, 3H), 3.05 (brs, 2H), 2.13-1.88 (m, 4H), 1.42 (s, 9H)。
【0133】
生成物のXRPD回折パターンを図5に示し、XRPDピークのリストを下記表5に示す。
【0134】
【表5】
【0135】
(工程6A:5-[[3-[4-(4-フルオロ-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-5-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル)
窒素中、フラスコに、tert-ブチル4-[4-[5-[(5-シアノピラジン-2-イル)アミノ]-1H-ピラゾール-3-イル]-3-メトキシ-フェニル]-4-フルオロ-ピペリジン-1-カルボン酸塩(1g、2.03mmol)および1,4-ジオキサン(15mL)を投入した。バッチを1時間、80℃から85℃に加熱した後、周囲温度に冷却し、真空で溶媒を除去した。粗物質にEtOAc(30mL)を投入し、バッチを60℃に加熱した。ベンゼンスルホン酸(801mg、5.08mmol)を投入し、スラリーを26時間、60℃に加熱した。バッチを周囲温度に冷却し、濾過した。固体をEtOAc(10mL)で洗浄し、オーブンにて50℃で乾燥させて、標記の化合物を薄茶色の固体のベシル酸塩として得た(1.15g、84%)。HPLC(方法3):RT 9.09分、97.9%。H NMR:41%BSA、0.8%EtOAc、58%標記化合物。
【0136】
生成物のXRPD回折パターンを図6に示し、XRPDピークのリストを下記表6に示す。
【0137】
【表6】
【0138】
(工程6B:5-[[3-[4-(4-フルオロ-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-5-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル)
上記の工程6Aの代替として、以下の方法にもしたがって、5-[[3-[4-(4-フルオロ-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-5-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルを調製した。
【0139】
tert-ブチル4-[4-[5-[(5-シアノピラジン-2-イル)アミノ]-1H-ピラゾール-3-イル]-3-メトキシ-フェニル]-4-フルオロ-ピペリジン-1-カルボン酸塩(1.0g、2.03mmol)に、MeCN(10mL)を添加し、その後、0℃から20℃でヨードトリメチルシラン(577μl、4.06mmol)を添加した。30分後、10%炭酸カリウム水溶液(5mL、3.62mmol)を投入し、バッチを30分撹拌した。その後、固体を濾別し、MeCN(2mL)および水(2mL)の混合物で洗浄した。固体をオーブンで50℃で乾燥させて、標記の化合物を薄茶色の固体として得た(766mg、96%)。HPLC(方法3):RT 9.09mun、98.8%。H NMR純度 >95%。
1H NMR (DMSO-d6) d 12.65 (s, 1H), 10.50 (s, 1H), 8.66 (s, 1H), 8.51 (brs,1H), 7.67 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.10 (s, 1H), 7.05 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 3.92 (s, 3H), 3.48 (brs, 1H), 2.93-2.83 (m, 4H), 2.08-1.82 (m, 4H)。
【0140】
生成物のXRPD回折パターンを図7に示し、XRPDピークのリストを下記表7に示す。
【表7】
【0141】
(工程7:5-[[3-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-5-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル)
5-[[3-[4-(4-フルオロ-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-5-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(60.79g有効、155mmol)に、EtOH(608mL)を投入した。バッチを室温で撹拌し、37%ホルマリン(22.5mL、278mmol)を投入した。トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(58.95g、278mmol)を、4回に分け、15℃から25℃で30分かけて投入した。2時間後、8.5%水酸化アンモニウム溶液(608mL)を、25℃よりも低い温度で20分かけて投入した。バッチを0℃から5℃に冷却してろ過し、水でケーキを洗浄した(2×304mL)。水(608mL)とともに湿った物質を容器に戻し、室温で30分間スラリー化した。バッチを濾過し、水(304mL)で洗浄した。固体をオーブンにて50℃で乾燥させ、標記の化合物を得た(51.4g、有効収率82%(100%から水およびエタノールをマイナス))。
【0142】
HPLC(方法3)RT 10.20分、97.0%。H NMR純度 >95%。
1H NMR (DMSO-d6) δ 12.64 (s, 1H), 10.74 (s, 1H), 8.66 (s, 1H), 8.51 (brs,1H), 7.66 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.12 (s, 1H), 7.07 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 3.92 (s, 3H), 2.72-2.49 (m, 2H), 2.22-2.09 (m, 4H), 2.12 (s, 3H), 1.93-1.86 (m, 2H)。
【0143】
(均等物)
上記の実施例は、本発明を説明する目的で提示されたものであり、本発明の範囲に何らかの制限を課すものと解釈されるべきではない。上記に記載し、また、実施例で示す、本発明の特定の実施形態に対して、本発明の原理から逸脱することなく、多くの改変および変更をなし得ることは容易に明らかであろう。このような改変および変更のすべてが、本願に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】