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特表2024-520736スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化により得られる選択透過性膜
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  • 特表-スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化により得られる選択透過性膜 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化により得られる選択透過性膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/02 20060101AFI20240517BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20240517BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20240517BHJP
   C08G 65/48 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
B01D71/02 500
B01D53/22
B01D69/08
C08G65/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574853
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 IB2021062134
(87)【国際公開番号】W WO2022137137
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】202011055507
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】21180050.3
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521198963
【氏名又は名称】エスエイチピーピー グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セカル アナンダ クマラン
(72)【発明者】
【氏名】チョードリー ラジェシュ
【テーマコード(参考)】
4D006
4J005
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006GA17
4D006GA41
4D006MA01
4D006MA12
4D006MA21
4D006MA31
4D006MB04
4D006MB06
4D006MC05
4D006MC46
4D006MC62
4D006MC63
4D006MC74
4D006PA01
4D006PB18
4D006PB20
4D006PB62
4D006PB63
4D006PB64
4D006PB66
4D006PB67
4D006PB68
4J005AA23
4J005BD06
(57)【要約】
ガス流中のメタンから二酸化炭素を分離するための選択透過性膜であって、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含み、少なくとも60×10-6cm(STP)/cm・s cmHgの二酸化炭素透過率;50℃および791kPaで測定したときに40超のメタンに対する二酸化炭素の選択率;メタン投入の総体積を基準にして0.6体積%未満のメタンスリップ;75%超の二酸化炭素回収率;および精製されたガス流において90kJ/kg天然ガス未満に相当する、精製されたガス流を生成するための電力消費量を有し、好ましくは、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含まない同等の膜のカーボンフットプリントの75%未満であるカーボンフットプリントをさらに有する、膜。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流中のメタンから二酸化炭素を分離するための選択透過性膜であって、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含み、
少なくとも60×10-6cm(STP)/cm・s cmHgの二酸化炭素透過率、
50℃および791kPa(100psig)において単一ガス試験条件で測定したときに、40超、好ましくは40~150、より好ましくは50~150のメタンに対する二酸化炭素の選択率、
メタン投入の総体積を基準にして0.6体積%未満、好ましくは0.5体積%未満、より好ましくは0.4体積%未満のメタンスリップ、
75%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超の二酸化炭素回収率、ならびに
精製されたガス流において90kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり25kWh)未満、または72kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり20kWh)未満、または54kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり15kWh)未満に相当する、前記精製されたガス流を生成するための電力消費量、
を有し、
好ましくは、前記スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの前記炭化生成物を含まない同等の膜のカーボンフットプリントの75%未満、または80%未満、または85%未満であるカーボンフットプリントをさらに有する、
ことを特徴とする、膜。
【請求項2】
請求項1に記載の膜であって、前記膜の総重量を基準にして20~90重量%、または30~80重量%、または40~80重量%の前記スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの前記炭化生成物を含むことを特徴とする、膜。
【請求項3】
請求項1または2に記載の膜であって、前記スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーを含む中空繊維の炭化から誘導された中空炭素繊維を含むことを特徴とする、膜。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の膜であって、炭化された追加のポリマーをさらに含み、
好ましくは、前記追加のポリマーがポリ(フェニレンエーテル)ホモポリマー、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)ホモポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリ(フェニレンスルホン)、またはこれらの組合せである、
ことを特徴とする、膜。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の膜であって、前記炭化生成物が、前記スルホン化ポリ(フェニルエーテル)コポリマーの熱分解生成物をもたらすのに有効な条件下で前記スルホン化ポリ(フェニルエーテル)コポリマーを加熱することによって調製されることを特徴とする、膜。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の膜であって、前記スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーが、
49~89mol%、好ましくは55~85mol%、より好ましくは60~80mol%の式(1):
【化1】
(1)
の第1の繰返し単位;
10~50mol%、好ましくは15~40mol%、より好ましくは20~28mol%の式(2):
【化2】
(2)
の第2の繰返し単位;
1mol%以下の式(3):
【化3】
(3)
の第3の繰返し単位;および
1mol%以下の式(4):
【化4】
(4)
の第4の繰返し単位を含み、
式中、各Xは独立して水素、ナトリウム、カリウム、またはNH であり、
各量は前記スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマー中の繰返し単位の総モルを基準にする、
ことを特徴とする、膜。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の膜であって、前記スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーが、プロトン核磁気共鳴分光法によって決定したときに20~50%のスルホン化レベルを有し、好ましくは、前記スルホン化レベルが、プロトン核磁気共鳴分光法によって決定したときに均一であることを特徴とする、膜。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の膜であって、前記スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーが、
1,2-ジクロロエタンと好ましくは共溶媒との混合物中にポリ(フェニレンエーテル)を溶解して、溶媒混合物を形成すること、および
前記溶媒混合物とスルホン化剤とを組み合わせること、
を含む方法によって調製され、
前記スルホン化剤が前記ポリ(フェニレンエーテル)と反応して、前記スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーを形成し、
任意選択で、前記方法が、前記スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーを沈殿させること;および前記沈殿したスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーを濾過することをさらに含み、好ましくは、前記スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)が均一なスルホン化レベルを有する、
ことを特徴とする、膜。
【請求項9】
請求項8に記載の膜であって、前記溶媒混合物が前記共溶媒を含み、前記共溶媒がテトラヒドロフラン、アセトン、エタノール、メタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、メチルエチルスルホン、酢酸エチル、またはテトラメチレンスルホンのうちの少なくとも1つを含み、好ましくは、前記共溶媒がテトラヒドロフラン、アセトン、エタノール、メタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、メチルエチルスルホン、酢酸エチル、もしくはテトラメチレンスルホン、またはこれらの組合せであり、より好ましくは、前記共溶媒が酢酸エチルまたはテトラメチレンスルホンのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、膜。
【請求項10】
請求項8または9に記載の膜であって、前記溶媒混合物が、
1~10重量%、好ましくは5~10重量%の前記ポリ(フェニレンエーテル);
70~90重量%、好ましくは80~90重量%の前記1,2-ジクロロエタン;および
1~10重量%、好ましくは2~6重量%の前記共溶媒;
を含み、重量パーセントが、100重量%の前記溶媒混合物を基準にする、
ことを特徴とする、膜。
【請求項11】
ガス流中のメタンから二酸化炭素を分離するための方法であって、
請求項1から10のいずれか1項に記載の膜の第1の側面を前記ガス流と接触させること、および
前記膜に前記ガス流を選択透過させて、前記膜の第2の側面上に透過組成物を形成すること、
を含み、
前記透過組成物中のメタンの濃度が、前記ガス流中の前記メタンの濃度よりも高く、前記透過組成物中の二酸化炭素の濃度が、前記ガス流中の二酸化炭素の濃度よりも低く、
未透過物が二酸化炭素を含む、
ことを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記接触させることおよび前記選択透過させることを少なくとも720時間、好ましくは少なくとも1440時間、より好ましくは少なくとも2160時間連続的に、またはほぼ連続的に繰り返すことをさらに含み、
二酸化炭素を690kPaで少なくとも720時間、好ましくは少なくとも1440時間、より好ましくは少なくとも2160時間接触させ、モル比1:1の二酸化炭素とメタンを含む供給組成物を35℃および345kPaで少なくとも720時間、好ましくは少なくとも1440時間、より好ましくは少なくとも2160時間透過させた後の前記膜の二酸化炭素透過率、メタンに対する二酸化炭素の選択率、メタンスリップ、または二酸化炭素回収率のうちの1つ以上が、前記接触および選択透過の前の前記膜の前記二酸化炭素透過率、前記メタンに対する二酸化炭素の選択率、前記メタンスリップ、または前記二酸化炭素回収率の少なくとも90%である、
ことを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の方法であって、前記ガス流が2種以上のガス成分を含み、好ましくは、前記ガス流が二酸化炭素と、メタンと、および水素、一酸化炭素、二酸化硫黄、ヘリウム、硫化水素、窒素、酸素、アルゴン、硫化水素、二酸化窒素、亜酸化窒素、一酸化窒素、アンモニア、1~5個の炭素原子の炭化水素、塩化水素、またはこれらの組合せのうちの少なくとも1種と、を含み、より好ましくは、前記ガス流が二酸化炭素、メタン、窒素、およびパラフィンまたはオレフィンのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか1項に記載の方法であって、
前記膜が、前記スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーを含む中空繊維の炭化から誘導された中空炭素繊維を含み、
前記方法が、前記スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーおよび有機溶媒を含むドープ溶液組成物を、環状ダイの外側同心リングを通して非溶媒中に押し出し、その間、前記環状ダイの内側同心ボアを通して前記非溶媒を同時にポンピングすることをさらに含み、
好ましくは、前記有機溶媒がジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、またはこれらの組合せであり、前記非溶媒が水、N-メチルピロリドン、ヘキサン、シクロヘキサン、四塩化炭素、二硫化炭素、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、またはこれらの組合せである、
ことを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか1項に記載の膜を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ガス流中のメタンから二酸化炭素を分離するための選択透過性膜を本明細書において開示する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、欧州特許庁において2021年6月17日に出願された欧州特許出願第21180050.3号およびインド特許庁において2020年12月21日に出願されたインド特許第202011055507号に基づく利益および優先権を主張するものであり、その全内容を本願に引用して援用する。
【0003】
ポリマー膜はガス分離、例えば酸素濃縮空気の生成、燃料および石油化学製品をブランケッティングするための窒素濃縮流の生成、天然ガス中のメタンからの二酸化炭素または硫化水素の分離、アンモニアプラントのパージ流からの水素回収、ならびに空気または窒素からの有機蒸気の除去に使用することができる。
【0004】
商業的に実現可能なガス分離膜では、所望のガスの高い選択性、高い透過流束すなわち処理量、および長い耐用寿命が組み合わされる。透過流束は、膜を通るガスの体積流量(volumetric gas flow)の尺度である。透過流束が高いと、所定の体積のガスを処理するのに必要な膜面積が小さくなる。分離係数は、分離されるガスペアの膜選択性の尺度である。これは膜を横切る個々のガスの流束の比である。例えば酸素/窒素分離では、分離係数は酸素の流束対窒素の流束の比である。選択性は流束に反比例しうるので、流束に悪影響を及ぼすことなく選択性を増加させることが望ましい。過酷な条件、例えば高温および腐食性ガスへの曝露下での長い耐用寿命を有し、交換コストが最小限となるガス分離膜を得ることが望ましい。ガス分離膜に使用するための多くの材料が研究されている。
【0005】
ビクソン(Bikson)らの米国特許第5,348,569号では、向上した流体分離のための修飾ポリ(フェニレンエーテル)膜が記載されている。ポリ(フェニレンエーテル)樹脂を精製して低分子量成分を除去し(数平均分子量を25,000超にしておく)、次にスルホン化して、ガス分離膜に使用する材料を生成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,348,569号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガス分離などの用途に使用するのに好適な、経済的で環境的に持続可能な膜が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ガス流中のメタンから二酸化炭素を分離するための選択透過性膜であって、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含み、少なくとも60×10-6cm(STP)/cm・s cmHgの二酸化炭素透過率;50℃および791kPa(100psig)において単一ガス試験条件で測定したときに、40超、好ましくは40~150、より好ましくは50~150のメタンに対する二酸化炭素の選択率;メタン投入の総体積を基準にして0.6体積%未満、好ましくは0.5体積%未満、より好ましくは0.4体積%未満のメタンスリップ;75%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超の二酸化炭素回収率;および精製されたガス流において90kJ/kg天然ガス(kJ/kg of natural gas)(天然ガス1トン当たり25kWh)未満、または72kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり20kWh)未満、または54kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり15kWh)未満に相当する、精製されたガス流を生成するための電力消費量を有し、好ましくは、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含まない同等の膜のカーボンフットプリントの75%未満、または80%未満、または85%未満であるカーボンフットプリントをさらに有する、膜を提供する。
【0009】
ガス流中のメタンから二酸化炭素を分離するための方法であって、膜の第1の側面をガス流と接触させることと;膜にガス流を選択透過させて、膜の第2の側面上に透過組成物を形成することとを含み、透過組成物中のメタンの濃度が、ガス流中のメタンの濃度よりも高く、透過組成物中の二酸化炭素の濃度が、ガス流中の二酸化炭素の濃度よりも低く、未透過物(retentate)が二酸化炭素を含む、方法も提供する。
【0010】
記載した膜を含む物品も提供する。
【0011】
これより図面を参照するが、図面は例示的なものであり限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】酢酸セルロース膜、高性能膜、または実施例2のスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化から誘導された膜を含むシステムを使用した二酸化炭素捕獲のゆりかごからゲートまで(cradle to gate)のカーボンフットプリントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ポリ(フェニレンエーテル)は、その物理、化学、および電気特性の独特な組合せに起因して、商業的に魅力のある材料である。さらに、ポリ(フェニレンエーテル)と他のポリマーまたは添加物との組合せにより、全体的な特性が改良された、例えば耐薬品性、高強度、および高流動性のブレンドがもたらされうる。新しい商業的用途が探索されるにつれて、様々なスルホン化の度合いのポリ(フェニレンエーテル)材料が望まれている。
【0014】
ガス流中のメタンから二酸化炭素を分離するための選択透過性膜を本明細書において開示する。膜は、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含む。スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーは、異なるスルホン化レベルを有するスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの生成を可能にする、規模の変更が可能なプロセスを使用して調製することができる。例えば、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーは、プロトン核磁気共鳴分光法(H-NMR)によって決定したときに20~50%の範囲であるスルホン化レベルを有することができる。このプロセスは、最大50%のスルホン化レベルのスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーをもたらし、同時に均一性を維持し、好ましくは溶媒を回収しリサイクルする。
【0015】
スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含む膜から、様々な異なる物品を製造することができる。例えば、物品としては、透析用イオン交換膜、ポリマー電解質膜燃料電池用プロトン伝導膜、フロー電池(flow battery)用イオン交換膜、電気透析、精密濾過、限外濾過、ナノ濾過中空繊維膜(hollow fiber membrane)、逆浸透、分子ふるい用中空繊維膜前駆体、ガス分離用炭素膜、燃料電池用炭素電極の前駆体、炭素膜反応器などが挙げられる。
【0016】
本明細書において使用する場合、「炭化すること」または「炭化」とは、有機物質を熱処理に供して、それを「炭素質材料」としばしば呼ばれる炭素含有材料に変換することを意味する。炭化は、酸素を含まない雰囲気(すなわち、真空雰囲気)、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素ガスもしくはアルゴンガス)、または酸素含有ガスを含む雰囲気で行うことができる。炭化は典型的に1℃/分以上、好ましくは3℃/分以上、より好ましくは5℃/分以上の温度増加を用いて行う。炭化時間の上限は10時間、好ましくは7時間、より好ましくは5時間とすることができるが、上限はこのような時間に限定されない。炭化時間の下限は、有機物質が炭化を経て炭素含有材料(すなわち、「炭素質材料」)をもたらすのに十分な時間とすることができる。
【0017】
1つ以上の態様によれば、ガス流中のメタンから二酸化炭素を分離するための選択透過性膜は、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含み、少なくとも60×10-6cm(STP)/cm・s cmHgの二酸化炭素透過率;50℃および791kPa(100psig)において単一ガス試験条件で測定したときに、40超、好ましくは40~150、より好ましくは50~150のメタンに対する二酸化炭素の選択率;メタン投入の総体積を基準にして0.6体積%未満、好ましくは0.5体積%未満、より好ましくは0.4体積%未満のメタンスリップ;75%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超の二酸化炭素回収率;および精製されたガス流において90kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり25kWh)未満、または72kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり20kWh)未満、または54kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり15kWh)未満に相当する、精製されたガス流を生成するための電力消費量を有する。
【0018】
膜は、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含まない同等の膜のカーボンフットプリントの75%未満、または80%未満、または85%未満であるカーボンフットプリントを有しうる。例えば、膜は、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含まない高性能膜のカーボンフットプリントの75%未満、または80%未満、または85%未満であるカーボンフットプリントを有しうる。別の例としては、膜は、酢酸セルロースを含み、かつスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含まない膜のカーボンフットプリントの40%未満、または50%未満、または60%未満であるカーボンフットプリントを有しうる。
【0019】
本明細書において使用する場合、「炭化生成物を含まない高性能膜」は、100×10-6cm(STP)/cm s cmHgの二酸化炭素透過率、ならびに二酸化炭素およびメタンを含む供給物からの少なくとも40の二酸化炭素選択率を有する炭素含有膜を指す。例えば、炭化生成物を含まない高性能膜は、Ind.Eng.Chem.Res.2002,41(6),1393-1411頁に記載された膜とすることができ、その文献の全内容を本願に引用して援用する。
【0020】
膜は、膜の総重量を基準にして20~90重量%、または30~80重量%、または40~80重量%のスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含みうる。
【0021】
スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーは、49~89モルパーセント(mol%)、好ましくは55~85mol%、より好ましくは60~80mol%の式(1)の第1の繰返し単位;10~50mol%、好ましくは15~40mol%、より好ましくは20~28mol%の式(2)の第2の繰返し単位;および式(3)の第3の繰返し単位または式(4)の第4の繰返し単位のうちの少なくとも1つを含むことができる。例えば、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーは、49~89mol%、好ましくは55~85mol%、より好ましくは60~80mol%の式(1)の第1の繰返し単位;10~50mol%、好ましくは15~40mol%、より好ましくは20~28mol%の式(2)の第2の繰返し単位;1mol%以下の式(3)の第3の繰返し単位;および1mol%以下の式(4)の第4の繰返し単位を含むことができる。
【0022】
式(1)、式(2)、式(3)、および式(4)の繰返し単位は以下の構造:
【化1】
(1)
【化2】
(2)
【化3】
(3)
【化4】
(4)
を有し、式(2)および式(4)において、各Xは独立して水素、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、またはNH (アンモニウム)であり、各量はスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマー中の繰返し単位の総モルを基準にする。
【0023】
一部の態様において、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーは、49~89mol%、または55~85mol%、または60~80mol%の式(1)の第1の繰返し単位;10~50mol%、または15~40mol%、または20~28mol%の式(2)の第2の繰返し単位;0.01~1mol%の式(3)の第3の繰返し単位;および0.01~1mol%の式(4)の第4の繰返し単位を含む。例えば、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーは、49~89mol%、または55~85mol%、または60~80mol%の式(1)の第1の繰返し単位;10~50mol%、または15~40mol%、または20~28mol%の式(2)の第2の繰返し単位;0.05~1mol%または0.1~1mol%の式(3)の第3の繰返し単位;および0.05~1mol%または0.1~1mol%の式(4)の第4の繰返し単位を含むことができる。
【0024】
スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーは、本明細書において便宜上「ポリ(フェニレンエーテル)」と呼ぶ、対応するスルホン化されていないポリ(フェニレンエーテル)から誘導することができる。ポリ(フェニレンエーテル)は、ホモポリマー、コポリマー、グラフトコポリマー、アイオノマー、ブロックコポリマー、オリゴマー、またはこれらの組合せの形態とすることができる。
【0025】
ポリ(フェニレンエーテル)は、式
【化5】
[式中、Zの各存在は独立してハロゲン、非置換もしくは置換のC~C12ヒドロカルビル(ただしヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルでない)、C~C12ヒドロカルビルチオ、C~C12ヒドロカルビルオキシ、またはC~C12ハロヒドロカルビルオキシ(少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を分離している)であり;Zの各存在は独立して水素、ハロゲン、非置換もしくは置換のC~C12ヒドロカルビル(ただしヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルでない)、C~C12ヒドロカルビルチオ、C~C12ヒドロカルビルオキシ、またはC~C12ハロヒドロカルビルオキシ(少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を分離している)である]
の繰返し構造単位を有するものを含む。例えば、Zは、末端3,5-ジメチル-1,4-フェニル基と酸化重合触媒のジ-n-ブチルアミン成分との反応によって形成されたジ-n-ブチルアミノメチル基とすることができる。
【0026】
例示的なポリ(フェニレンエーテル)は、2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル単位、2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレンエーテル単位、またはこれらの組合せを含みうる。例えば、ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)とすることができる。一部の態様において、ポリ(フェニレンエーテル)は、0.03~2デシリットル毎グラム(dL/g)の固有粘度を有するポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)を含む。例えば、ポリ(フェニレンエーテル)は、Ubbelohde粘度計を使用してクロロホルム中25℃で測定した場合に、0.25~1.7dL/g、または0.2~1.5dL/g、または0.25~0.7dL/g、0.35~0.55dL/g、または0.35~0.50dL/gの固有粘度を有しうる。ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリスチレン標準を使用してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定したときに、500~7,000グラム毎モル(g/mol)の数平均分子量(M)および500~300,000g/molの重量平均分子量を有しうる。ポリマーは、単峰性または多峰性の分子量分布を有してもよい。ポリ(フェニレンエーテル)は、3~12の多分散度(重量平均分子量対数平均分子量の比)を有しうる。この範囲内で、多分散度は4または5以上かつ10、9または8以下でありうる。
【0027】
一部の態様において、ポリ(フェニレンエーテル)は、典型的にヒドロキシ基に対してオルト位に位置するアミノアルキル含有末端基を有する分子を含むことができる。テトラメチルジフェノキノン(TMDQ)末端基もしばしば存在し、これは典型的に、テトラメチルジフェノキノン副生成物が存在する2,6-ジメチルフェノール含有反応混合物から得られる。
【0028】
本明細書において使用する場合、ポリ(フェニレンエーテル)は、より低い分子量を有するフェニレンエーテルオリゴマーも指しうる。例えば、フェニレンエーテルオリゴマーは、2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル単位、2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレンエーテル単位、またはこれらの組合せを含みうる。フェニレンエーテルオリゴマーは、Ubbelohde粘度計を使用してクロロホルム中25℃で測定される、0.03~0.13デシリットル毎グラム(dL/g)、または0.05~0.1dL/g、または0.1~0.15dL/gの固有粘度を有しうる。フェニレンエーテルオリゴマーは、ポリスチレン標準を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定したときに、500~7,000グラム毎モル(g/mol)の数平均分子量(M)および500~15,000g/molの重量平均分子量(M)を有しうる。一部の態様において、ポリスチレン標準を使用してGPCによって決定したときに、数平均分子量(M)は750~4,000g/molでありえ、Mは1,500~9,000g/molでありうる。
【0029】
フェニレンエーテルオリゴマーは、単官能性または二官能性とすることができる。一部の態様において、フェニレンエーテルオリゴマーは単官能性とすることができる。例えば、フェニレンエーテルオリゴマーはポリマー鎖の一方の末端に官能基を有することができる。官能基は、例えばヒドロキシル基または(メタ)アクリレート基、好ましくは(メタ)アクリレート基とすることができる。一部の態様において、フェニレンエーテルオリゴマーはポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)を含む。
【0030】
一部の態様において、フェニレンエーテルオリゴマーは二官能性とすることができる。例えば、フェニレンエーテルオリゴマーは、オリゴマー鎖の両末端に官能基を有することができる。官能基は、例えばヒドロキシル基または(メタ)アクリレート基、好ましくは(メタ)アクリレート基とすることができる。ポリマー鎖の両末端に官能基を有する二官能性ポリマーは、「テレケリック」ポリマーとも呼ばれる。一部の態様において、フェニレンエーテルオリゴマーは、構造
【化6】
{式中、QおよびQはそれぞれ独立してハロゲン、非置換または置換のC~C12の第一級または第二級のヒドロカルビル、C~C12ヒドロカルビルチオ、C~C12ヒドロカルビルオキシ、およびC~C12ハロヒドロカルビルオキシ(少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を分離している)を含み;QおよびQの各存在は独立して水素、ハロゲン、非置換または置換のC~C12の第一級または第二級のヒドロカルビル、C~C12ヒドロカルビルチオ、C~C12ヒドロカルビルオキシ、およびC~C12ハロヒドロカルビルオキシ(少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を分離している)を含み;Zは水素または(メタ)アクリレートであり;xおよびyは独立して0~30、特定すると0~20、より特定すると0~15、さらにより特定すると0~10、なおより特定すると0~8であり、ただしxとyの合計は少なくとも2、特定すると少なくとも3、より特定すると少なくとも4であり;Lは構造
【化7】
[式中、RおよびRおよびRおよびRの各存在は独立して水素、ハロゲン、非置換または置換のC~C12の第一級または第二級のヒドロカルビル、C~C12ヒドロカルビルチオ、C~C12ヒドロカルビルオキシ、およびC~C12ハロヒドロカルビルオキシ(少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を分離している)を含み;zは0または1であり;Yは、
【化8】
(式中、Rの各存在は独立して水素およびC~C12ヒドロカルビルを含み、RおよびRの各存在は独立して水素、C~C12ヒドロカルビル、およびRとRがC~C12アルキレン基を一緒に形成するC~Cヒドロカルビレンを含む)
を含む構造を有する]
を有する}
を有する二官能性フェニレンエーテルオリゴマーを含む。
【0031】
一態様において、フェニレンエーテルオリゴマーは、構造
【化9】
[式中、Q、Q、Q、Q、L、x、およびyは上で規定した通りであり、R10はメチルまたは水素である]
を有する二官能性フェニレンエーテルオリゴマーを含む。
【0032】
上記の(メタ)アクリレート末端フェニレンエーテル構造において、二官能性フェニレンエーテルオリゴマー中の2つの異なる場所におけるフェニレンエーテルの繰返し単位の数に対応する変数xおよびyに制限がある。構造において、xおよびyは独立して0~30、特定すると0~20、より特定すると0~15、さらにより特定すると0~10、なおより特定すると0~8である。xとyの合計は少なくとも2、特定すると少なくとも3、より特定すると少なくとも4である。フェニレンエーテルオリゴマーは、プロトン核磁気共鳴分光法(H NMR)によって分析して、これらの制限が平均して満たされているかどうかを決定することができる。詳細には、H NMRは、内部および末端のフェニレンエーテル基、多価フェノールの内部および末端の残基、ならびにまた末端の残基に結合したプロトンを区別することができる。したがって1分子当たりのフェニレンエーテル繰返し単位の平均数、ならびに二価フェノールから誘導された内部および末端の残基の相対存在量を決定することが可能である。
【0033】
一部の態様において、フェニレンエーテルオリゴマーは、構造
【化10】
[式中、QおよびQの各存在は独立してメチル、ジ-n-ブチルアミノメチル、またはモルホリノメチルを含み;aおよびbの各存在は独立して0~20であり、ただしaとbの合計は少なくとも2であり;R10の各存在はメチルまたは水素である]
を有する二官能性フェニレンエーテルオリゴマーを含む。例示的な二官能性フェニレンエーテルオリゴマーとしては、SABIC Innovative Plasticsから入手可能なNORYL SA9000が挙げられる。
【0034】
一部の態様において、フェニレンエーテルオリゴマーは、構造
【化11】
[式中、QおよびQの各存在は独立してメチル、ジ-n-ブチルアミノメチル、またはモルホリノメチルを含み;aおよびbの各存在は独立して0~20であり、ただしaとbの合計は少なくとも2である]
を有する二官能性フェニレンエーテルオリゴマーを含む。例示的な二官能性フェニレンエーテルオリゴマーとしては、SABIC Innovative Plasticsから入手可能なNORYL(商標)Resin SA90が挙げられる。
【0035】
ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(フェニレンエーテル)ホモポリマー、オリゴマー、またはこれらの組合せとすることができる。ポリ(フェニレンエーテル)は、好ましくはポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)を含むことができる。
【0036】
膜は、炭化された追加のポリマーをさらに含むことができる。追加のポリマーは、ポリ(フェニレンエーテル)ホモポリマー(例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル))、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)ホモポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリ(フェニレンスルホン)、またはこれらの組合せとすることができる。炭化された追加のポリマーは、膜の総重量を基準にして0.1~20重量%または1~10重量%の量で膜に含まれうる。
【0037】
一部の態様において、親水性ポリマーは膜から除外される。除外される親水性ポリマーは、例えばポリアクリルアミド、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルエステル)、例えばポリ(酢酸ビニル)もしくはポリ(プロピオン酸ビニル)、ポリ(ビニルアルデヒド)、例えばポリ(ビニルホルマール)もしくはポリ(ビニルブチラール)、ポリ(ビニルアミン)、例えばポリ(4-ビニルピリジン)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(N-ビニルイミダゾール)、ポリ(4-アクリロイルモルホリン)、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(エチレンアミン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)モノエーテル、ポリ(エチレンオキシド)とポリ(プロピレンオキシド)のブロックコポリマー、ポリ(アルコキシキャップトポリ(エチレンオキシド)メタクリレート)(poly(alkoxy-capped poly(ethylene oxide) methacrylate))、またはこれらの組合せとすることができる。例えば、除外される親水性ポリマーは、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)モノエーテルもしくはモノエステル、ポリ(プロピレンオキシド)モノエーテルもしくはモノエステル、ポリ(エチレンオキシド)とポリ(プロピレンオキシド)のブロックコポリマー、ポリソルベート、酢酸セルロース、またはこれらの組合せとすることができる。一部の態様において、除外される親水性コポリマーはポリ(N-ビニルピロリドン)を含む。
【0038】
ポリ(フェニレンエーテル)のスルホン化のためのプロセスは、ポリ(フェニレンエーテル)を溶媒(好ましくは、1,2-ジクロロエタンおよび共溶媒)に溶解して溶媒混合物を形成することを含む。混合は、10℃~60℃または25℃~40℃の温度で行うことができる。1,2-ジクロロエタンは、ポリ(フェニレンエーテル)を溶解するのに十分な量で存在する。溶媒混合物は、100重量%の溶媒混合物を基準にして1重量%~20重量%、好ましくは5重量%~10重量%のポリ(フェニレンエーテル);80~99重量%または90重量%~95重量%の1,2-ジクロロエタン;および0~10重量%(例えば、ゼロ超)、好ましくは0超~6.0重量%、または1~10重量%、または2~6重量%の共溶媒を含むことができる。共溶媒の量は、所望のスルホン化度を基準にして決定することができる。例えば10~20%のスルホン化では、溶媒混合物は、1~20重量%または5~10重量%のポリ(フェニレンエーテル);80重量%~99重量%または90重量%~95重量%の1,2-ジクロロエタンを含むことができ、共溶媒は必要ではない。しかしながら、20%超の均一なスルホン化には、共溶媒の存在が望ましい。例えば、25%~50%の均一なスルホン化レベルのためには、溶媒混合物は、100重量%の溶媒混合物を基準にして1~10重量%、好ましくは5~10重量%のポリ(フェニレンエーテル);70~90重量%または80~90重量%の1,2-ジクロロエタン、および1~10重量%または2~6重量%の共溶媒を含むことができる。
【0039】
共溶媒は、テトラヒドロフラン、アセトン、エタノール、メタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、メチルエチルスルホン、酢酸エチル、またはテトラメチレンスルホンとすることができる。
【0040】
溶媒混合物は次に、ポリ(フェニレンエーテル)と反応してスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーを形成するスルホン化剤と組み合わせることができる。スルホン化は最大85℃、例えば10~60℃または25℃~40℃の温度で行うことができる。溶媒混合物に添加するスルホン化剤の量は、溶媒混合物に溶解した合計1モルのポリ(フェニレンエーテル)を基準にして0.5~1モルまたは0.25~0.9モルとすることができる。添加するスルホン化剤の具体的な量は、スルホン化反応生成物でのスルホン化の所望のレベルに依存する。望ましくは、スルホン化剤を溶媒混合物にゆっくり添加し、例えば15分~60分間かけて(例えば、30分間かけて)添加する。スルホン化剤を溶媒混合物に添加したら、沈殿に進む前に、溶媒混合物を例えば60~210分間撹拌することができる。
【0041】
ポリ(フェニレンエーテル)がスルホン化されたら、例えば脱イオン(DI)水を含有する貧溶媒混合物を使用して、溶媒混合物からスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)を沈殿させることができる。例えば、ヘキサンまたはヘプタンのうちの少なくとも1つを例えばDI水と共に使用して、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーを溶媒混合物から沈殿させることができる。溶媒混合物を貧溶媒混合物に添加することができ、貧溶媒混合物は沈殿を誘発するのに十分な量で使用することができる。例えば、溶媒混合物100グラム(g)を、ヘキサン対水の重量比が0~1.15の範囲である貧溶媒混合物300~700gに添加することができる。
【0042】
沈殿したスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーは濾過し、任意選択で洗浄および乾燥することができる。濾液は、有機相として1,2-ジクロロエタン、共溶媒、および貧溶媒混合物の一部であった任意選択の有機物(例えば、ヘキサン)を有機相とし、ならびに水性相として水を含む、二相性でありうる。濾液はさらに処理して、1,2-ジクロロエタン、共溶媒、水、またはこれらの組合せを回収することができる。これらの材料を回収することは、二相性濾液をデカンテーションして水性流および有機流を形成することを含むことができる。有機流をさらに処理して、例えば蒸留して、1,2-ジクロロエタン、共溶媒、またはその両方を回収することができる。回収した材料はリサイクルすることができる。
【0043】
膜は、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含む。炭化の方法として、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーを不活性(例えば、不活性窒素雰囲気)、酸化性、または還元性雰囲気中で熱処理して炭化し、成形された多孔性炭素膜を生成することができる。熱処理は典型的に250~1,000℃、または300~900℃、または300~800℃の温度で行う。
【0044】
ガス流中のメタンから二酸化炭素を分離するための方法も提供する。方法は、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化から誘導される膜の第1の側面をガス流と接触させることを含む。ガス流を膜に選択透過させて、膜の第2の側面上に透過組成物を形成することができ、透過組成物中のメタンの濃度は、ガス流中のメタンの濃度よりも高く、透過組成物中の二酸化炭素の濃度は、ガス流中の二酸化炭素の濃度よりも低く、未透過物は二酸化炭素を含む。透過物、未透過物、または透過物と未透過物の両方を収集することができる。
【0045】
膜は、良好な持続可能性および長い寿命を有する。一態様において、膜をガス流と接触させて、経時的にガス流を膜に選択透過させることができる。例えば、二酸化炭素を690キロパスカル(kPa;6.9バール)で少なくとも720時間、好ましくは少なくとも1440時間、より好ましくは少なくとも2160時間接触させ、モル比1:1の二酸化炭素とメタンを含む供給組成物を35℃および345kPa(3.45バール)で少なくとも720時間、好ましくは少なくとも1440時間、より好ましくは少なくとも2160時間透過させた後の膜の二酸化炭素透過率、メタンに対する二酸化炭素の選択率、メタンスリップ、または二酸化炭素回収率のうちの1つ以上は、接触および選択透過の前の膜の二酸化炭素透過率の少なくとも90%、メタンに対する二酸化炭素の選択率の90%、メタンスリップの90%、または二酸化炭素回収率の90%である。換言すると、膜は上述の条件下で、最初の二酸化炭素透過率、最初のメタンに対する二酸化炭素の選択率、最初のメタンスリップ、最初の二酸化炭素回収率、またはこれらの組合せの90%を保持する。
【0046】
ガス流は、空気、煙道ガス、消化ガス、発酵ガス、下水ガス、天然ガス、石炭ガス、合成ガス、またはこれらの組合せを含むことができる。好ましくは、ガス流は天然ガスを含む。
【0047】
ガス流は2種以上のガス成分を含むことができ、好ましくは、ガス流は二酸化炭素、メタン、および水素、一酸化炭素、二酸化硫黄、ヘリウム、硫化水素、窒素、酸素、アルゴン、硫化水素、二酸化窒素、亜酸化窒素、一酸化窒素、アンモニア、1~5個の炭素原子の炭化水素、塩化水素、またはこれらの組合せのうちの少なくとも1種を含む。より好ましくは、ガス流は、二酸化炭素、メタン、窒素、およびパラフィンまたはオレフィンのうちの少なくとも1種を含む。
【0048】
膜は多孔性膜とすることができる。膜は、シート、ディスク、渦巻き状、プレートおよびフレーム、中空繊維、キャピラリー、またはチューブ形状の形態とすることができる。
【0049】
膜は、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーを含む中空繊維の炭化から誘導された中空炭素繊維を含むことができる。中空繊維は、環状部およびボアを含む紡糸口金を通して共押出しを行い、好適な溶媒に溶解したスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーを含む膜形成組成物を環状部に通して、第1の非溶媒組成物をボアに通して、第2の非溶媒組成物中に中空繊維を形成することによって作製することができる。例えば、中空繊維は、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーおよび有機溶媒を含むドープ溶液組成物を、環状ダイの外側同心リングを通して非溶媒中に押し出し、その間、環状ダイの内側同心ボアを通して非溶媒を同時にポンピングすることによって調製することができる。
【0050】
有機溶媒はジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、またはこれらの組合せとすることができ、非溶媒は水、N-メチルピロリドン、ヘキサン、シクロヘキサン、四塩化炭素、二硫化炭素、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、またはこれらの組合せである。
【0051】
中空繊維の壁の厚さは50~5,000マイクロメートル(μm)とすることができる。この範囲内で、直径は100~2,000μm、または10~200μm、または20~80μm、または20~60μm、または20~40μm、または20~35μmとすることができる。分離モジュールは、多孔性中空繊維の束、例えば10~10,000本の多孔性中空繊維を含むことができる。中空繊維は長手方向に束ね、両端で硬化性樹脂中にポッティングし、圧力容器内に入れて、中空繊維モジュールを形成することができる。中空繊維モジュールは垂直または水平に取り付けることができる。
【0052】
膜が多孔性膜である場合、表面の細孔サイズは0.03~10マイクロメートル(μm)、または0.002~0.1μm、または0.001~0.002μmとすることができる。
【0053】
1つ以上の態様において、ガス流中のメタンから二酸化炭素を分離するための選択透過性膜であって、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含み、少なくとも60×10-6cm(STP)/cm・s cmHgの二酸化炭素透過率;50℃および791kPa(100psig)において単一ガス試験条件で測定したときに、40超、好ましくは40~150、より好ましくは50~150のメタンに対する二酸化炭素の選択率;メタン投入の総体積を基準にして0.6体積%未満、好ましくは0.5体積%未満、より好ましくは0.4体積%未満のメタンスリップ;75%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超の二酸化炭素回収率;および精製されたガス流において90kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり25kWh)未満、または72kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり20kWh)未満、または54kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり15kWh)未満に相当する、精製されたガス流を生成するための電力消費量を有し、好ましくは、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含まない同等の膜のカーボンフットプリントの75%未満、または80%未満、または85%未満であるカーボンフットプリントをさらに有し;膜の総重量を基準にして20~90重量%、または30~80重量%、または40~80重量%のスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含む膜を提供する。
【0054】
1つ以上の態様において、ガス流中のメタンから二酸化炭素を分離するための選択透過性膜であって、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含み、少なくとも60×10-6cm(STP)/cm・s cmHgの二酸化炭素透過率;50℃および791kPa(100psig)において単一ガス試験条件で測定したときに、40超、好ましくは40~150、より好ましくは50~150のメタンに対する二酸化炭素の選択率;メタン投入の総体積を基準にして0.6体積%未満、好ましくは0.5体積%未満、より好ましくは0.4体積%未満のメタンスリップ;75%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超の二酸化炭素回収率;および精製されたガス流において90kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり25kWh)未満、または72kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり20kWh)未満、または54kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり15kWh)未満に相当する、精製されたガス流を生成するための電力消費量を有し、好ましくは、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含まない同等の膜のカーボンフットプリントの75%未満、または80%未満、または85%未満であるカーボンフットプリントをさらに有し;膜の総重量を基準にして20~90重量%、または30~80重量%、または40~80重量%のスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含み;スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーを含む中空繊維の炭化から誘導された中空炭素繊維を含む膜を提供する。
【0055】
1つ以上の態様において、ガス流中のメタンから二酸化炭素を分離するための選択透過性膜であって、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含み、少なくとも60×10-6cm(STP)/cm・s cmHgの二酸化炭素透過率;50℃および791kPa(100psig)において単一ガス試験条件で測定したときに、40超、好ましくは40~150、より好ましくは50~150のメタンに対する二酸化炭素の選択率;メタン投入の総体積を基準にして0.6体積%未満、好ましくは0.5体積%未満、より好ましくは0.4体積%未満のメタンスリップ;75%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超の二酸化炭素回収率;および精製されたガス流において90kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり25kWh)未満、または72kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり20kWh)未満、または54kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり15kWh)未満に相当する、精製されたガス流を生成するための電力消費量を有し、好ましくは、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含まない同等の膜のカーボンフットプリントの75%未満、または80%未満、または85%未満であるカーボンフットプリントをさらに有し;膜の総重量を基準にして20~90重量%、または30~80重量%、または40~80重量%のスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含み;スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーを含む中空繊維の炭化から誘導された中空炭素繊維を含み;炭化された追加のポリマーをさらに含み、好ましくは、追加のポリマーがポリ(フェニレンエーテル)ホモポリマー、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)ホモポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリ(フェニレンスルホン)、またはこれらの組合せである、膜を提供する。
【0056】
1つ以上の態様において、ガス流中のメタンから二酸化炭素を分離するための選択透過性膜であって、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含み、少なくとも60×10-6cm(STP)/cm・s cmHgの二酸化炭素透過率;50℃および791kPa(100psig)において単一ガス試験条件で測定したときに、40超、好ましくは40~150、より好ましくは50~150のメタンに対する二酸化炭素の選択率;メタン投入の総体積を基準にして0.6体積%未満、好ましくは0.5体積%未満、より好ましくは0.4体積%未満のメタンスリップ;75%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超の二酸化炭素回収率;および精製されたガス流において90kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり25kWh)未満、または72kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり20kWh)未満、または54kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり15kWh)未満に相当する、精製されたガス流を生成するための電力消費量を有し、好ましくは、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含まない同等の膜のカーボンフットプリントの75%未満、または80%未満、または85%未満であるカーボンフットプリントをさらに有し;膜の総重量を基準にして20~90重量%、または30~80重量%、または40~80重量%のスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含み;炭化生成物が、スルホン化ポリ(フェニルエーテル)コポリマーの熱分解生成物をもたらすのに有効な条件下でスルホン化ポリ(フェニルエーテル)コポリマー(sulfonated poly(phenyl ether) copolymer)を加熱することによって調製された、膜を提供する。
【0057】
1つ以上の態様において、ガス流中のメタンから二酸化炭素を分離するための選択透過性膜であって、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含み、少なくとも60×10-6cm(STP)/cm・s cmHgの二酸化炭素透過率;50℃および791kPa(100psig)において単一ガス試験条件で測定したときに、40超、好ましくは40~150、より好ましくは50~150のメタンに対する二酸化炭素の選択率;メタン投入の総体積を基準にして0.6体積%未満、好ましくは0.5体積%未満、より好ましくは0.4体積%未満のメタンスリップ;75%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超の二酸化炭素回収率;および精製されたガス流において90kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり25kWh)未満、または72kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり20kWh)未満、または54kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり15kWh)未満に相当する、精製されたガス流を生成するための電力消費量を有し、好ましくは、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含まない同等の膜のカーボンフットプリントの75%未満、または80%未満、または85%未満であるカーボンフットプリントをさらに有し;膜の総重量を基準にして20~90重量%、または30~80重量%、または40~80重量%のスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含み;スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーを含む中空繊維の炭化から誘導された中空炭素繊維を含み;炭化された追加のポリマーをさらに含み、好ましくは、追加のポリマーがポリ(フェニレンエーテル)ホモポリマー、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)ホモポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリ(フェニレンスルホン)、またはこれらの組合せであり;;炭化生成物が、スルホン化ポリ(フェニルエーテル)コポリマーの熱分解生成物をもたらすのに有効な条件下でスルホン化ポリ(フェニルエーテル)コポリマーを加熱することによって調製された、膜を提供する。
【0058】
本明細書において開示された膜を含む物品も提供する。膜は、限定されるものではないが、可燃性流体、腐敗しやすい食材、および金属処理プロセスの不活性化(inerting)のための濃縮窒素流をもたらすこと、医療または工業で使用するための濃縮酸素流をもたらすこと、発酵プロセス、強化燃焼プロセス、軽質炭化水素から二酸化炭素を回収すること、煙道ガスを処理して窒素酸化物および/または硫黄酸化物を除去すること、空気から有機蒸気を除去すること、空気および天然ガスを脱水することなどを含めた、多くの異なるガス分離用途に有用である。加えて、膜は、膜ストリッピングまたは膜蒸留の膜分離プロセスを使用して、液体の混合物または液体とガスの混合物からガスおよび/または蒸気を分離するのに有用である。膜ストリッピングにおいて、膜を通ってまたは横切って透過する材料は、ガスまたは蒸気として膜から除去される。膜蒸留において、膜を通ってまたは横切って透過する材料は凝縮され、液体として除去される。
【0059】
例示的な物品は、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーを含む中空繊維の炭化から誘導された中空炭素繊維の束を有する筐体を含み、筐体は、ガス流を導入するための入口、および精製されたガス流を取り出すための出口を備える。
【実施例
【0060】
本開示を以下の実施例によってさらに説明するが、実施例は限定するものではない。
【0061】
<実施例1:スルホン化ポリフェニレンエーテル(sPPE)を作製するための例示的な方法>
テフロン(登録商標)撹拌機、還流冷却器、および均圧滴下ロートを備えた3つ口丸底ガラスフラスコを40℃に維持する。NORYL PPO 646ポリ(フェニレンエーテル)樹脂10.0gを1,2-ジクロロエタンと酢酸エチル(EA)(179.5g:11.7g)の混合物に、均質な透明溶液が得られるまで(約60分)溶解する。温度を40℃に維持する。クロロスルホン酸5.85gを均圧滴下ロートに移し、1,2-ジクロロエタン-酢酸エチル溶液混合物中に激しく撹拌しながら30分かけて添加する。急速に撹拌しながら窒素パージを終始維持する。撹拌を40℃でさらに210分間続ける。続いて、1,000回転毎分(rpm)で稼働し、3.14メートル毎秒(m/s)の先端速度を与える4ブレードかき混ぜ機(直径約60mm)を備え、10℃に維持した2Lのバッフル付き沈殿容器に、反応塊(reaction mass)を脱イオン水1,200mL(例えば、貧溶媒混合物として)とともに移す。続いて温度を1時間後に25℃に上げる。撹拌を合計30分間続ける。この後、濾過を行う。次いで残渣(スルホン化PPE)を脱イオン水/ヘキサン(500mL:70mL)混合物中で再度スラリー化し、再度濾過する。pHが中性になるまで残渣を脱イオン水で十分に洗浄する。次いでスルホン化材料を真空下、室温で48時間乾燥させる。
【0062】
sPPEの製造のための工業的プロセスは、ポリ(フェニレンエーテル)を1,2-ジクロロエタン(EDC)および酢酸エチル(EA)中に、ポリ(フェニレンエーテル)、EA、およびEDCの総重量を基準にして89.2重量%のEDC、4.97重量%のポリ(フェニレンエーテル)、および5.83重量%の酢酸エチルの量で、滞留時間10~15分で溶解することを含む(ポリ(フェニレンエーテル)100kg/時間の基準)。ポリ(フェニレンエーテル)を、クロロスルホン酸対ポリ(フェニレンエーテル)のモル比0.613で、クロロスルホン酸(58.5kg/時間)と反応させる。反応温度は40℃であり、滞留時間は30分である。プロセス中に発生するHClガスを反応器から排出し、アルカリスクラバーを使用してスクラビングする。反応器からの反応塊を、水を用いて沈殿容器内で沈殿させる。沈殿塊を濾過し、2つの洗浄容器を通過させることによって湿ったsPPEを精製し、7.99kPaの減圧下、50~60℃の温度で、乾燥機内で乾燥させる。濾液は二相性であり、1,2-ジクロロエタンおよびEAが有機相であり、水が水性相である。デカンテーション(液-液分離)を行ってEDCおよびEAを水から分離し、その後、蒸留してEDCとEAを分離する。EDCとEAの両方ともに水と不均一な共沸混合物を形成する。蒸留操作により、EDCとEAは、リサイクルすることができる留出液と、底部の有機重質分として分離される。水および溶媒のリサイクル効率は90%超である。単離後のスルホン化生成物は、スルホン化度が31.42%であった。プロセス全体をAspenでシミュレーションして、回収およびリサイクルを理解した。
【0063】
スルホン化度(DS)(スルホン化レベルとも呼ばれる)を核磁気共鳴分光法(NMR)によって決定した。試料をジメチルスルホキシド-d(DMSO-d)に溶解し(水平振盪機における終夜の振盪を用いて)、遅延時間5秒で32スキャンを平均した。溶解しない部分がある場合は、溶媒バイアルを45℃の水浴で15~30分間超音波処理した。
【0064】
スルホン化度は、脂肪族または芳香族のプロトンのいずれかから計算することができる。
芳香族プロトンを考慮する(式1):
【数1】
式1
脂肪族プロトンを考慮する(式2):
【数2】
式2
式中、Iは、所定の百万分率(ppm)でのH-NMR化学シフト(δ)の積分値である。
【0065】
<実施例2>
中空繊維炭素膜を、実施例1のスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーから誘導する。
【0066】
表1は、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)の炭化生成物から誘導される中空繊維炭素膜およびいくつかの比較中空繊維炭素膜の特性を示している。
【0067】
【表1】
【0068】
図1は、酢酸セルロース膜、高性能膜、またはスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化から誘導された膜(すなわち、実施例2)を使用した二酸化炭素捕獲によって可能となる精製されたメタンのゆりかごからゲートまで(cradle to gate)のカーボンフットプリントを示している。図1は、表1の値を使用して作成した。図1に示されるように、精製されたメタンのカーボンフットプリントは、酢酸セルロースおよび高性能膜と比較して、スルホン化ポリ(フェニレン)ベースの膜ではかなり小さい。
【0069】
組成物、方法、および物品は、代替的に、本明細書において開示される任意の適切な材料、ステップ、または成分を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になることができる。組成物、方法、および物品は、追加的または代替的に、組成物、方法、および物品の機能または目的の達成に別法で必要でない任意の材料(もしくは種)、ステップ、または成分を全く含まない、または実質的に含まないように組み立てることができる。
【0070】
本発明の方法を以下の態様によってさらに規定する。
【0071】
態様1:ガス流中のメタンから二酸化炭素を分離するための選択透過性膜であって、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含み、少なくとも60×10-6cm(STP)/cm・s cmHgの二酸化炭素透過率;50℃および791kPa(100psig)において単一ガス試験条件で測定したときに、40超、好ましくは40~150、より好ましくは50~150のメタンに対する二酸化炭素の選択率;メタン投入の総体積を基準にして0.6体積%未満、好ましくは0.5体積%未満、より好ましくは0.4体積%未満のメタンスリップ;75%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超の二酸化炭素回収率;ならびに精製されたガス流において90kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり25kWh)未満、または72kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり20kWh)未満、または54kJ/kg天然ガス(天然ガス1トン当たり15kWh)未満に相当する、精製されたガス流を生成するための電力消費量を有し、好ましくは、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含まない同等の膜のカーボンフットプリントの75%未満、または80%未満、または85%未満であるカーボンフットプリントをさらに有する、膜。
【0072】
態様2.態様1に記載の膜であって、膜の総重量を基準にして20~90重量%、または30~80重量%、または40~80重量%のスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーの炭化生成物を含む、膜。
【0073】
態様3.態様1または2に記載の膜であって、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーを含む中空繊維の炭化から誘導された中空炭素繊維を含む、膜。
【0074】
態様4.態様1から3のいずれか1つに記載の膜であって、炭化された追加のポリマーをさらに含み、好ましくは、追加のポリマーがポリ(フェニレンエーテル)ホモポリマー、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)ホモポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリ(フェニレンスルホン)、またはこれらの組合せである、膜。
【0075】
態様5.態様1から4のいずれか1つに記載の膜であって、炭化生成物が、スルホン化ポリ(フェニルエーテル)コポリマーの熱分解生成物をもたらすのに有効な条件下でスルホン化ポリ(フェニルエーテル)コポリマーを加熱することによって調製される、膜。
【0076】
態様6.態様1から5のいずれか1つに記載の膜であって、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーが、49~89mol%、好ましくは55~85mol%、より好ましくは60~80mol%の式(1):
【化12】
(1)
の第1の繰返し単位;10~50mol%、好ましくは15~40mol%、より好ましくは20~28mol%の式(2):
【化13】
(2)
の第2の繰返し単位;1mol%以下の式(3):
【化14】
(3)
の第3の繰返し単位;および1mol%以下の式(4):
【化15】
(4)
の第4の繰返し単位を含み、式中、各Xは独立して水素、ナトリウム、カリウム、またはNH であり、各量はスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマー中の繰返し単位の総モルを基準にする、膜。
【0077】
態様7.態様1から6のいずれか1つに記載の膜であって、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーが、プロトン核磁気共鳴分光法によって決定したときに20~50%のスルホン化レベルを有し、好ましくは、スルホン化レベルが、プロトン核磁気共鳴分光法によって決定したときに均一である、膜。
【0078】
態様8.態様1から7のいずれか1つに記載の膜であって、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーが、
1,2-ジクロロエタンと好ましくは共溶媒との混合物中にポリ(フェニレンエーテル)を溶解して、溶媒混合物を形成すること;および溶媒混合物とスルホン化剤とを組み合わせることを含む方法によって調製され、スルホン化剤がポリ(フェニレンエーテル)と反応して、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーを形成し、任意選択で、方法が、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーを沈殿させること;および沈殿したスルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーを濾過することをさらに含み、好ましくは、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)が均一なスルホン化レベルを有する、膜。
【0079】
態様9.態様8に記載の膜であって、溶媒混合物が共溶媒を含み、共溶媒がテトラヒドロフラン、アセトン、エタノール、メタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、メチルエチルスルホン、酢酸エチル、またはテトラメチレンスルホンのうちの少なくとも1つを含み、好ましくは、共溶媒がテトラヒドロフラン、アセトン、エタノール、メタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、メチルエチルスルホン、酢酸エチル、もしくはテトラメチレンスルホン、またはこれらの組合せであり、より好ましくは、共溶媒が酢酸エチルまたはテトラメチレンスルホンのうちの少なくとも1つを含む、膜。
【0080】
態様10.態様8または9に記載の膜であって、溶媒混合物が、1~10重量%、好ましくは5~10重量%のポリ(フェニレンエーテル);70~90重量%、好ましくは80~90重量%の1,2-ジクロロエタン;および1~10重量%、好ましくは2~6重量%の共溶媒を含み、重量パーセントが、100重量%の溶媒混合物を基準にする、膜。
【0081】
態様11.ガス流中のメタンから二酸化炭素を分離するための方法であって、態様1から10のいずれか1つに記載の膜の第1の側面をガス流と接触させること;および膜にガス流を選択透過させて、膜の第2の側面上に透過組成物を形成することを含み、透過組成物中のメタンの濃度が、ガス流中のメタンの濃度よりも高く、透過組成物中の二酸化炭素の濃度が、ガス流中の二酸化炭素の濃度よりも低く、未透過物が二酸化炭素を含む、方法。
【0082】
態様12.態様11に記載の方法であって、接触させることおよび選択透過させることを少なくとも720時間、好ましくは少なくとも1440時間、より好ましくは少なくとも2160時間連続的に、またはほぼ連続的に繰り返すことをさらに含み、二酸化炭素を690kPaで少なくとも720時間、好ましくは少なくとも1440時間、より好ましくは少なくとも2160時間接触させ、モル比1:1の二酸化炭素とメタンを含む供給組成物を35℃および345kPaで少なくとも720時間、好ましくは少なくとも1440時間、より好ましくは少なくとも2160時間透過させた後の膜の二酸化炭素透過率、メタンに対する二酸化炭素の選択率、メタンスリップ、または二酸化炭素回収率のうちの1つ以上が、接触および選択透過の前の膜の二酸化炭素透過率、メタンに対する二酸化炭素の選択率、メタンスリップ、または二酸化炭素回収率の少なくとも90%である、方法。
【0083】
態様13.態様11または12に記載の方法であって、ガス流が2種以上のガス成分を含み、好ましくは、ガス流が二酸化炭素と、メタンと、および水素、一酸化炭素、二酸化硫黄、ヘリウム、硫化水素、窒素、酸素、アルゴン、硫化水素、二酸化窒素、亜酸化窒素、一酸化窒素、アンモニア、1~5個の炭素原子の炭化水素、塩化水素、またはこれらの組合せのうちの少なくとも1種と、を含み、より好ましくは、ガス流が二酸化炭素、メタン、窒素、およびパラフィンまたはオレフィンのうちの少なくとも1種を含む、方法。
【0084】
態様14.態様11から13のいずれか1つに記載の方法であって、膜が、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーを含む中空繊維の炭化から誘導された中空炭素繊維を含み、方法が、スルホン化ポリ(フェニレンエーテル)コポリマーおよび有機溶媒を含むドープ溶液組成物を、環状ダイの外側同心リングを通して非溶媒中に押し出し、その間、環状ダイの内側同心ボアを通して非溶媒を同時にポンピングすることをさらに含み、好ましくは、有機溶媒がジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、またはこれらの組合せであり、非溶媒が水、N-メチルピロリドン、ヘキサン、シクロヘキサン、四塩化炭素、二硫化炭素、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、またはこれらの組合せである、方法。
【0085】
態様15.態様1から10のいずれか1つに記載の膜を含む物品。
【0086】
組成物、方法、および物品は、代替的に、本明細書において開示される任意の適切な材料、ステップ、または成分を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になることができる。組成物、方法、および物品は、追加的または代替的に、組成物、方法、および物品の機能または目的の達成に別法で必要でない任意の材料(もしくは種)、ステップ、または成分を全く含まない、または実質的に含まないように組み立てることができる。
【0087】
本明細書で開示される全ての範囲は端点を包み、端点は独立して互いと組み合わせることができる(例えば、「最大25重量%、より特定すると5重量%~20重量%」の範囲は、「5重量%~25重量%」の範囲の端点および全ての中間値などを包む)。「組合せ」は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物などを含む。「第1」、「第2」などの用語は、いかなる順序、量、または重要性を示すものではなく、むしろ1つの要素を別の要素と区別するために使用される。「a」および「an」および「the」という用語は、数量の限定を示すものではなく、本明細書において別段の定めがない限り、または文脈で明らかに矛盾しない限り、単数形と複数形の両方を網羅すると解釈されるものとする。「または」は、明確に別段の記載がない限り、「および/または」を意味する。本明細書全体を通して「一部の態様」、「一態様」などへの言及は、態様に関連して記載される特定の要素が本明細書に記載される少なくとも1つの態様に含まれ、他の態様には存在してもしなくてもよいことを意味する。加えて、記載された要素は、様々な態様において任意の好適な方式で組み合わせてもよいことが理解されるものとする。「それらの組合せ」は非限定的であり、列挙された成分または特性のうちの少なくとも1つを、任意選択で列挙されていない同様または同等の成分または特性と一緒に含む任意の組合せを含む。
【0088】
本明細書において反する明記がない限り、全ての試験規格は、本出願の出願日現在、または優先権が主張される場合は、試験規格が現れる最も古い優先権出願の出願日現在で有効な最新の規格である。
【0089】
別段の定めがない限り、本明細書中で使用する技術用語および科学用語は、本出願が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。引用した全ての特許、特許出願、および他の参考文献は、その全体を本願に引用して援用する。しかしながら、本出願の用語が、援用された参考文献の用語と矛盾または相反する場合、援用された参考文献の相反する用語よりも本出願の用語が優先する。
【0090】
本明細書で使用する場合、「均一な」とは、「均一なスルホン化レベル」を指し、これは、生成物塊全体から取った少なくとも5個の小試料のプロトン核磁気共鳴(H-NMR)分光法によって決定したときに、スルホン化コポリマー生成物の単離塊にわたって同じスルホン化度であることを意味する。
【0091】
本明細書で使用する場合、「カーボンフットプリント」とは、製品、プロセス、または事象によって直接的および間接的に引き起こされる総温室効果ガス排出量を指す。カーボンフットプリントは、二酸化炭素相当量のトン単位で測定することができる。「低カーボンフットプリント」または「低減されたカーボンフットプリント」とは、代替製品、プロセス、または事象のカーボンフットプリントの85%未満、または82%未満、または75%未満、または70%未満、または60%未満、または50%未満、または30%未満を有することを意味する。
【0092】
化合物は標準的な命名法を用いて記載されている。例えば、いずれの示された基でも置換されていない任意の位置は、示された結合または水素原子でその原子価が満たされていると理解される。2つの文字または記号の間にないダッシュ(「-」)は、置換基の結合点を示すために使用される。例えば、-CHOはカルボニル基の炭素を介して結合する。
【0093】
本明細書で使用する場合、「ヒドロカルビル」という用語は、それ自体で使用されても、または別の用語の接頭辞、接尾辞、もしくは断片として使用されても、炭素および水素のみを含む残基を指す。残基は、脂肪族または芳香族、直鎖状、環式、二環式、分枝状、飽和または不飽和でありうる。残基は、脂肪族、芳香族、直鎖状、環式、二環式、分枝状、飽和、および不飽和の炭化水素部分の組合せも含むことができる。しかしながら、ヒドロカルビル残基が置換されていると記載される場合、ヒドロカルビル残基は任意選択で置換残基の炭素および水素構成員の上および上方にヘテロ原子を含んでもよい。したがって、置換されていると特に記載される場合、ヒドロカルビル残基は、1つ以上のカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基などを含むこともでき、またはヒドロカルビル残基の骨格内にヘテロ原子を含むことができる。
【0094】
置換基が別段特に示されない限り、前述の基の各々は非置換または置換でありうるが、ただし、その置換が化合物の合成、安定性、または使用に重大な悪影響を及ぼさないことを条件とする。「置換」とは、化合物、基、または原子が、水素の代わりに少なくとも1個(例えば、1、2、3、または4個)の置換基で置換されていることを意味し、各置換基は独立してニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、ヒドロキシ(-OH)、ハロゲン、チオール(-SH)、チオシアノ(-SCN)、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ハロアルキル、C1-9アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、C3-12シクロアルキル、C5-18シクロアルケニル、C6-12アリール、C7-13アリールアルキル、C7-12アルキルアリール、C4-12ヘテロシクロアルキル、C3-12ヘテロアリール、C1-6アルキルスルホニル(-S(=O)-アルキル)、C6-12アリールスルホニル(-S(=O)-アリール)、またはトシル(CHSO-)であり、ただし、置換された原子の通常の原子価を超えず、置換が化合物の製造、安定性、または所望の特性に重大な悪影響を及ぼさないことを条件とする。化合物が置換されている場合、炭素原子の示されている数は、あらゆる置換基の炭素原子を含む、化合物または基内の炭素原子の総数である。
【0095】
本明細書において使用する場合、「スルホン化」分子は、-SOH型の少なくとも1つのスルホネート(またはスルホとも称される)残基、または-SO 型のその対応する塩の形態を有し、MはLi、Na、K、Ca、Mg、またはアンモニウムである。
【0096】
特定の態様を記載したが、出願人または当業者が現在予見できない、または予見できない可能性がある代替物、変形、変化、改良、および実質的均等物が生じる能性がある。したがって、出願された、および補正される可能性のある添付の特許請求の範囲は、そのような代替物、変形、変化、改良、および実質的均等物を全て包含することが意図される。
図1
【国際調査報告】