(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】添加物を含有するゴム組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20240517BHJP
C08L 93/04 20060101ALI20240517BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20240517BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L93/04
C08L71/02
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574877
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2022065214
(87)【国際公開番号】W WO2022254019
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523455161
【氏名又は名称】シル + ザイラッハー ストラクトール ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ベルガー, フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ガイデル, クリスティアン
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BA02
3D131BA03
3D131BA04
3D131BA05
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3D131BA20
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3D131BC19
3D131BC33
3D131BC51
4J002AB044
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002AC111
4J002AF022
4J002CH023
4J002DA016
4J002DA036
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE236
4J002DG046
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002FD014
4J002FD016
4J002GN01
(57)【要約】
本発明は、ゴム、およびより高い分子量のコロホニーロジンエステルに基づく少なくとも1種のゴム用添加物を含有するゴム組成物に関する。少なくとも1種のゴム用添加物は、コロホニーロジンおよび少なくとも1種のアルコールから作製されるコロホニーロジンエステルを含み、コロホニーロジンエステルを製造するために使用されるコロホニーロジンは、130~190mg KOH/gの酸価を有し、少なくとも1種の使用されるアルコールは、7つ以下のヒドロキシル基、および少なくとも200g/molの分子量を有する。本発明は、ゴム組成物中でのゴム用添加物の使用、少なくとも1つの構成成分が本発明によるゴム組成物から少なくとも部分的に製造されるタイヤ、およびそれらを製造する方法にさらに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムおよび少なくとも1種のゴム用添加物を含有するゴム組成物であって、前記少なくとも1種のゴム用添加物が、ロジンおよび少なくとも1種のアルコールに由来するロジンエステルを含むことを特徴とし、前記ロジンエステルを調製するために使用される前記ロジンが、130~190mg KOH/gの酸価を有しており、使用される前記アルコール(複数可)が、7つ以下のヒドロキシル基および少なくとも200g/molの分子量を有する、ゴム組成物。
【請求項2】
前記ロジンエステルを調製するために使用される前記少なくとも1種のアルコールが、少なくとも380、好ましくは380~2000g/molの分子量を有することを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ロジンエステルを調製するために使用される前記少なくとも1種のアルコールが、少なくとも2つのヒドロキシル基、特に2つ、3つまたは4つのヒドロキシル基を有することを特徴とする、前記請求項のうちの一項に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記ロジンエステルを調製するために使用される前記少なくとも1種のアルコールが、ポリオールのC
2~C
4アルコキシレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、および/またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーからなる群から選択されることを特徴とする、前記請求項のうちの一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記ロジンエステルを調製するために使用される前記少なくとも1種のアルコールが、200~800g/molの分子量を有するPEGなどのポリエチレングリコール(PEG)、200~800g/molの分子量を有するPPGなどのポリプロピレングリコール(PPG)、および5~10、例えば7つなどの特に最大で10のエチレンオキシド単位(EO単位)を有するエトキシ化グリセロールからなる群から選択されることを特徴とする、前記請求項のうちの一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記ロジンエステルを調製するために使用される前記ロジンが、140~180mg KOH/gの酸価を有する、前記請求項のうちの一項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記ゴム組成物が、0.1~40phrの間、好ましくは1~30phrのロジンエステルを含有することを特徴とする、前記請求項のうちの一項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記ゴム組成物が、少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、天然ゴムおよび/またはブタジエンゴム、ならびに必要に応じてそれらの官能基化形態を含むことを特徴とする、前記請求項のうちの一項に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記ロジンエステルを調製するために使用される前記ロジンが不均化ロジンであることを特徴とする、前記請求項のうちの一項に記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記ゴム組成物が、加硫後に、同じ量の公知のゴム用添加物を代わりに含む同一組成物と比較すると、60℃において、少なくとも5%、好ましくは10%低い転がり抵抗の損失正接、および/または0℃において、5%、好ましくは10%高いウェットグリップの損失正接を有することを特徴とする、前記請求項のうちの一項に記載のゴム組成物。
【請求項11】
前記ゴム組成物が、タイヤのトレッドコンパウンドの調製に好適であることを特徴とする、前記請求項のうちの一項に記載のゴム組成物。
【請求項12】
前記ゴム組成物が、タイヤのトレッドコンパウンドの調製に好適なさらなる添加物および構成物質、特に、1種または複数種の充填剤、および必要に応じてさらなる追加物を含有することを特徴とする、前記請求項のうちの一項に記載のゴム組成物。
【請求項13】
ゴム組成物における、前記ゴム組成物のムーニー粘度を改善するため、ならびに/または前記ゴム組成物から製造されるタイヤの摩耗、グリップおよび転がり抵抗のうちの少なくとも1つを改善するための、ゴム用添加物としての、ロジンおよび少なくとも1種のアルコールに由来するロジンエステルの使用であって、使用される前記ロジンが、130~190mg KOH/gの酸価を有し、使用される前記アルコール(複数可)が、少なくとも200g/molの分子量および7つ以下のヒドロキシル基を有する、使用。
【請求項14】
指定した特性のうちの少なくとも1つが、同じ量の公知のゴム用添加物を代わりに含むゴム組成物と比べ、少なくとも5%、好ましくは、少なくとも10%改善される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記ロジンエステルが、請求項1~6のうちの一項で定義されている通りであること、および/または前記ゴム組成物が、請求項7~12のうちの一項で定義されている通りであることを特徴とする、請求項13または請求項14に記載の使用。
【請求項16】
a)1種または複数種の固体担体物質であって、シリカが、担体物質として好ましくは使用される、固体担体物質
b)1種または複数種の前記ロジンエステル
を含むブレンドが使用されることを特徴とする、請求項13~15のうちの一項に記載の使用。
【請求項17】
タイヤを製造する方法であって、前記タイヤの1種または複数つの構成成分が請求項1~12のうちの一項に記載のゴム組成物から製造され、前記ゴム組成物が硬化されることを特徴とする、方法。
【請求項18】
タイヤであって、少なくとも1つの構成成分が、請求項1~12のうちの一項に記載のゴム組成物から少なくとも部分的に製造されており、前記タイヤが好ましくは、超高性能(UHP)タイヤまたはサマータイヤであり、前記構成成分が特にトレッドである、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ゴム、および高分子量ロジンエステルに基づく少なくとも1種のゴム用添加物を含有するゴム組成物に関する。本発明は、ゴム組成物中でのゴム用添加物の使用、少なくとも1つの構成成分が本発明によるゴム組成物から少なくとも部分的に製造されるタイヤ、およびそれらの生産方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
自動車用タイヤは、様々な道路走行要件を満たさなければならない。トレッドのコンパウンド配合物は、使用の個々の領域におけるタイヤの特定の要件に対して通常、最適化される。超高性能(UHP)タイヤおよびサマータイヤ向けのトレッドコンパウンドの開発中に、タイヤグリップ、タイヤの摩耗およびタイヤハンドリングなどの特性の改善を達成する試みが近年、行われてきた。この目的のため、乗用車向けのタイヤ生産に使用されるゴム組成物に、例えば、アルファ-メチルスチレン、テルペンおよびクマロン-インデン樹脂に基づく樹脂が高い割合で添加された。
【0003】
しかし、上記の手法は、ゴム組成物の加工性を一層、乏しくし、特に、粘着性、高い粘度および未処理強度の欠如という問題が生じる。これらの問題をなくすまたは低減するため、いくつかの加工助剤(添加物)が、ゴム/加硫ゴム産業において使用されているが、それらの使用は、多くの場合、例えば、タイヤを製造する材料となるゴムコンパウンドまたは加硫ゴムコンパウンドの剛性が一層低いなどの他の所望の特性の場合には、欠点をもたらす。これは、タイヤの摩耗がより高いこと、およびタイヤハンドリングがより不良であることを意味する。タイヤの摩耗特性の不良は、これによって放出される物質に起因して問題となる(微粒子状物質の問題)。タイヤのウェットグリップ特性は、安全性に重要な役割を果たしており、転がり抵抗挙動は、エネルギー消費において重要な役割を果たす。
【0004】
専門家の間では、ゴム組成物の物理特性の改善は、別の特性が損なわれることに関連していることが公知である。トレッドコンパウンドでは、一方ではゴム組成物の加工性と他方ではウェットブレーキ挙動、転がり抵抗およびタイヤの摩耗のうちの少なくとも1つの特性との間に、いわゆる二律背反が存在する。良好な加工特性と、タイヤグリップ(ウェットグリップおよびドライグリップ、タイヤの摩耗およびタイヤハンドリング)などの性能基準における欠点との間のこのような妥協点は、今日ではますます受け入れられ難くなっている。
【0005】
WO2016/105909(A1)は、ゴム、シリカ、少なくとも1つの環式および/または架橋アルコキシ基を含有するオルガノシラン、ならびに「ロジン含有材料」を含むゴム組成物に関するものである。記載されているゴム組成物は、タイヤの生産に使用され得る。このゴム組成物は、ロジンエステルを含むことができる。WO‘909は、高分子量を有するロジンエステルの使用は開示していない。
【0006】
WO2017/117578(A1)は、成形されたゴム組成物の調製に関する方法であって、ゴムコンパウンドが、エクステンダーコンパウンドと一緒にされた、方法に関するものである。記載されているゴム組成物は、タイヤの生産に使用され得る。エクステンダーコンパウンドは、ロジンエステルとすることができ、この場合、とりわけ、エチレングリコール、ジエチレングリコールまたはトリエチレングリコールをアルコールとして使用することができる。
【0007】
WO2011/130525(A1)は、ゴムコンパウンドおよび加工油を含むタイヤ用ゴム組成物であって、加工油が改変されたトール油ピッチを含む、タイヤ用ゴム組成物、ならびにそれから製造されるタイヤに関する(要約を参照されたい)。トール油(液状コロホニーとしても公知である)とは、木材パルプの生産中に、副生物として生じる物質の油性混合物のことである。トール油ピッチは、通常、2~8重量%の脂肪酸、3~15重量%の樹脂酸および30~45重量%の「不鹸化性物質」を含有する。トール油ピッチの酸価は、15~50の間にある。
【0008】
本発明の目的は、超高性能(UHP)タイヤおよびサマータイヤの製造に使用される、ゴム組成物の加工特性を改善する、これらのタイヤ向けの新規添加物を開発することである。同時に、タイヤの他の性能特性、特に、ハンドリング挙動、ウェットブレーキングおよびドライブレーキングに関する特性、タイヤの摩耗ならびに転がり抵抗挙動が、損なわれないか、またはさらに少なくとも部分的に改善されさえする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2016/105909号
【特許文献2】国際公開第2017/117578号
【特許文献3】国際公開第2011/130525号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要旨
本目的は、本発明によれば、ゴムおよび少なくとも1種のゴム用添加物を含有するゴム組成物であって、少なくとも1種のゴム用添加物が、ロジンおよび少なくとも1種のアルコールに由来するロジンエステルを含むことを特徴とし、ロジンエステルを調製するために使用されるロジンが、130~190mg KOH/gの酸価を有しており、使用されるアルコール(複数可)が、7つ以下のヒドロキシル基および少なくとも200g/molの分子量を有する、ゴム組成物によって実現される。
【0011】
本発明のさらなる態様は、ゴム組成物における、ゴム組成物のムーニー粘度を改善するため、ならびに/またはゴム組成物から製造されるタイヤの摩耗、グリップおよび転がり抵抗のうちの少なくとも1つを改善するための、ゴム用添加物としての、ロジンおよび少なくとも1種のアルコールに由来するロジンエステルの使用であって、使用されるロジンが、130~190mg KOH/gの酸価を有し、使用されるアルコール(複数可)が、少なくとも200g/molの分子量および7つ以下のヒドロキシル基を有する、使用に関する。
【0012】
本発明のさらなる態様は、タイヤを製造する方法であって、タイヤの1種または複数つの構成成分が本発明のゴム組成物から製造され、ゴム組成物が硬化されることを特徴とする、方法に関する。
【0013】
本発明のさらなる態様は、少なくとも1つの構成成分が本発明によるゴム組成物から少なくとも部分的に製造されており、タイヤが、好ましくは超高性能(UHP)タイヤまたはサマータイヤである、タイヤに関する。
【0014】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。本発明の実施形態は、以下に列挙されている構成物質を含み、特にそれらからなることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施例7に記載されている、ゴム組成物J、KおよびLから製造された3種の異なる押出成形物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明者らは、高分子量を有するアルコール構成成分(これは、対応するアルコールから誘導される部分であることを意味する)を有するロジンエステルは、低分子量を有するアルコール構成成分を有するロジンエステルに比べて、ゴム組成物中に有益な特性を有することを驚くべきことに見出した。
【0017】
ゴム組成物
本発明によるゴム組成物の構成物質を以下に一層詳細に記載する。記述はすべて、本発明によるタイヤであって、少なくとも1つの構成成分が、少なくとも部分的に、本発明によるゴム組成物からなるタイヤ、およびロジンエステルの本発明による使用にやはり適用される。
【0018】
本明細書において使用されるphr(100重量部のゴムあたりの部数)という規格は、ゴム産業において通常である、コンパウンド配合物に関する量に関する規格である。本明細書における個々の物質の重量部の割合は、コンパウンド中に存在する、すべての高分子量の、したがって固体のゴムの、合計質量の100重量部を基準としている。
【0019】
ロジンエステル
ロジン(コロホニー)は、多数の植物から、特にPinus Sylvestris、Pinus palustrisおよびPinus caribaeaなどの針葉樹から得られる樹脂材料である。ロジンは、ロジン酸、および少量のさらなる成分の混合物からなる。ロジン酸には、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ピマール酸、レボピマール酸、サンダラコピマール酸、イソピマール酸およびパルストリン酸が含まれる。ロジン中に存在する樹脂酸のタイプおよび相対量は、植物のタイプおよび生産プロセスに一部依存し、様々となり得る。
【0020】
好ましい実施形態では、不均化ロジンが使用される。不均化ロジンは、脱水素化ロジン酸および水素化ロジン酸を主に含有する。不均化ロジンは、加熱または酸処理によって、ガムロジンから製造される。本発明のロジンエステルを調製するために使用されるロジンは、5重量%未満のアビエチン酸、および/または30重量%より多いデヒドロアビエチン酸を好ましくは含有する。
【0021】
ロジンエステルを調製するために使用されるロジンは、130~190mg KOH/g、好ましくは140~180mg KOH/g、および特に150~170mg KOH/gの酸価を有する。酸価の測定は、DIN EN ISO 2114によって行われる。
【0022】
さらに、ロジンエステルを調製するために使用されるロジンは、50~100℃の間、好ましくは60~90℃の間、65~80℃の間、特に68~74℃の間の、ASTM E 28によって測定される軟化点(リングおよびボール)を好ましくは有する。
【0023】
用語「ロジンエステル」とは、酸成分としてのロジンの少なくとも1種のアルコールとのエステルを指す。ロジンエステルは、ロジンおよびアルコールから、当業者に公知の方法によって調製することができる。異なる供給源に由来し得るロジンの混合物も使用することができる。
【0024】
ロジンエステルは、少なくとも200g/molの分子量を有する少なくとも1種のアルコールによりロジンをエステル化することによって調製される。少なくとも1種のアルコールは、好ましくは、380g/molなど、特に少なくとも400g/molの、少なくとも300g/molの分子量を有する。アルコールは、200~2000g/mol、好ましくは300~2000g/mol、例えば400g/mol~2000g/molまたは400g/mol~1500g/molなどの分子量を有することができる。
【0025】
特定のアルコールは、分子的に一様に調製され得る一方、重合によって調製されるアルコールは、多分子であること、すなわち、様々なモル質量を有するマクロ分子の分布物からなることが専門家には公知である。本発明の文脈では、多分子アルコールの場合、平均分子量(数平均)が参照される。例えば、DIN 53240または特に、ASTM D4274-16などの、その決定方法は専門家に公知である。
【0026】
ロジンエステルを調製するために使用される少なくとも1種のアルコールは、7つ以下のヒドロキシル基を有する。
【0027】
好ましい実施形態では、ロジンエステルを調製するために使用されるアルコールは、2~7つのヒドロキシル基を有する。
【0028】
好ましい実施形態では、6つ以下のヒドロキシル基、好ましくは4つ以下のヒドロキシル基を有するアルコールが、ロジンエステルの調製に使用される。特に好ましい実施形態では、ロジンエステルを調製するために使用されるアルコールは、2つまたは3つのヒドロキシル基を有する。
【0029】
好ましくは、ロジンエステルに使用される少なくとも1種のアルコールは、少なくとも7個の炭素原子、好ましくは少なくとも8個、特に、少なくとも15個の炭素原子を有する。
【0030】
好ましい実施形態では、使用されるアルコールは、芳香族基を有さない。
【0031】
さらに好ましい実施形態では、使用されるアルコールはさらに、炭素、水素および酸素だけからなる。
【0032】
ロジンエステルを調製するために使用される少なくとも1種のアルコールは、直鎖状または分岐状、特に直鎖状とすることができ、ヘテロ原子が必要に応じて介在し得る。
【0033】
実施形態では、1種のアルコールだけ(しかし、これは、PEG 400などのある特定の分子量分布を有する高分子量アルコールを含む)を使用して、ロジンエステルが調製される。さらなる実施形態では、少なくとも2種の異なるアルコール、例えば今度は各場合において、7つ以下のヒドロキシル基および少なくとも200g/molの分子量を有する2種の異なるアルコールが、ロジンエステルの調製に使用される。
【0034】
好ましい実施形態では、ロジンエステルを調製するために使用される少なくとも1種のアルコールは、少なくとも300g/molの分子量、および6つ以下のヒドロキシル基を有する。
【0035】
さらに好ましい実施形態では、ロジンエステルを調製するために使用される少なくとも1種のアルコールは、少なくとも300g/molの分子量、および4つ以下のヒドロキシル基を有する。
【0036】
さらに好ましい実施形態では、ロジンエステルを調製するために使用される少なくとも1種のアルコールは、少なくとも380g/molの分子量、および4つ以下のヒドロキシル基を有する。
【0037】
さらに好ましい実施形態では、140~180mg KOH/gの酸価を有するロジン、および少なくとも380g/molの分子量を有する少なくとも1種のアルコールが、ロジンエステルの調製に使用される。
【0038】
さらに好ましい実施形態では、140~180mg KOH/gの酸価を有するロジン、ならびに少なくとも380g/molの分子量、および2つまたは3つのヒドロキシル基を有する少なくとも1種のアルコールが、ロジンエステルの調製に使用される。
【0039】
さらに好ましい実施形態では、150~170mg KOH/gの酸価を有するロジン、および400g/mol~1500g/molの分子量を有する少なくとも1種のアルコールが、ロジンエステルの調製に使用される。
【0040】
さらに好ましい実施形態では、ロジンエステルを調製するために使用される少なくとも1種のアルコールは、少なくとも200g/molの分子量、2つまたは3つのヒドロキシル基、および少なくとも7個の炭素原子を有する。
【0041】
さらに特に好ましい実施形態では、ロジンエステルを調製するために使用される少なくとも1種のアルコールは、少なくとも380g/molの分子量、および2つまたは3つのヒドロキシル基を有する。
【0042】
好ましい実施形態によれば、使用される少なくとも1種のアルコールは、以下に一層詳細に定義されるポリエチレングリコール、以下に一層詳細に定義されるエトキシ化グリセロール、エトキシ化トリメチロールプロパン、エトキシ化ペンタエリスリトールまたはエトキシ化ソルビトールからなる群から選択される。
【0043】
ロジンエステルを調製するために使用される少なくとも1種のアルコールは、ポリオールのC2~C4アルコキシレート、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、および/またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーからなる群から選択することができる。
【0044】
実施形態では、ロジンエステルは、ロジンと、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)などの少なくとも1種のポリエーテル、および/またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーとから調製される。エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーは、統計コポリマーまたはブロックコポリマーとすることができる。より高いモル質量を有するポリエーテルは多分子であり、すなわち、様々なモル質量を有するマクロ分子の分布物からなることが当業者に公知である。本発明によれば、ほぼ200~1500g/molの範囲の平均分子量を有する、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよび/またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーを、ロジンエステルを調製するために使用することができ、例えば200~800g/molのものを使用することができる。
【0045】
好ましい実施形態では、使用される少なくとも1種のアルコールは、ポリエチレングリコール、好ましくは200~800g/molの分子量を有するポリエチレングリコールである。
【0046】
さらに好ましい実施形態では、使用される少なくとも1種のアルコールは、ポリプロピレングリコール、好ましくは200~800g/molの分子量を有するポリプロピレングリコールである。
【0047】
さらに好ましい実施形態では、ロジンエステルは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの少なくとも1種の統計コポリマーから調製され、好ましくは、コポリマーは、200~800g/molの分子量を有する。好ましい実施形態では、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの統計コポリマーは、10~30重量%のエチレンオキシド基含有率を有する。
【0048】
さらなる実施形態では、ロジンエステルは、200~3000、特に500~2500g/molなどの50~4500g/molの分子量を有する、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの少なくとも1種のブロックコポリマーから調製される。好ましい実施形態によれば、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーは、10~55重量%などの10~80重量%のエチレンオキシド基含有率を有する。ブロックコポリマーは、中間に位置するポリプロピレングリコール分子と両末端に位置するポリオキシエチレン基で構築され得る。
【0049】
本発明により使用されるエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーは、商業的に慣用的な化合物である。それらは、ポリプロピレングリコールとエチレンオキシドとを反応させることによって調製することができる。エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーの例は、BASF SE製の、Pluronic(登録商標)PE 3100、Pluronic(登録商標)PE 3500、Pluronic(登録商標)PE 4300、Pluronic(登録商標)PE 6100、Pluronic(登録商標)PE 6120、Pluronic(登録商標)PE 6200、Pluronic(登録商標)PE 6400、Pluronic(登録商標)PE 6800、Pluronic(登録商標)PE 8100、Pluronic(登録商標)PE 9200、Pluronic(登録商標)PE 9400、Pluronic(登録商標)PE 10100、Pluronic(登録商標)PE 10300、Pluronic(登録商標)PE 10400およびPluronic(登録商標)PE 10500などのPluronic(登録商標)PEポリマーである。
【0050】
さらなる実施形態では、ロジンエステルは、ポリオールの少なくとも1つのC2~C4アルコキシレートから調製される。ポリオールとは、少なくとも2つの遊離ヒドロキシル基を有する物質を意味する。ポリオールの炭化水素部分は、炭素および水素を含有し、少なくとも2個の炭素原子が、1つのヒドロキシル基に結合している基である。ポリオールの炭化水素部分は、直鎖状または分岐状、特に直鎖状とすることができ、ヘテロ原子が必要に応じて介在し得る。
【0051】
ポリオールのC2~C4アルコキシレートは、C2~C4アルキレンオキシドと反応したポリオールであり、いくつかの反応が、ポリオールのヒドロキシル基上で次々と起こり得る。C2~C4アルキレンオキシドの例は、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび1-ブテンオキシドである。ポリオールとC2~C4アルキレンオキシドとの反応は、確立された方法を使用して行われる。
【0052】
混合型C2~C4アルコキシレートも使用することができ、この場合、ポリオールは、C2~C4アルキレンオキシドの混合物(エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドおよび/または1-ブチレンオキシドの混合物)を使用して反応させる。
【0053】
好ましい実施形態では、ロジンエステルは、5~10、例えば、7つなどの最大で10のアルキレンオキシド単位を有する少なくとも1種のポリオールアルコキシレートから調製される。
【0054】
ポリオールのC2~C4アルコキシレートは、ほぼ200~800g/mol、特に300~500g/molなどのほぼ200~1500g/molの範囲の平均分子量を有することができる。
【0055】
実施形態では、C2~C4アルコキシレートは、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する。好ましい実施形態では、ロジンエステルを調製するために使用されるポリオールのC2~C4アルコキシレートは、2つまたは3つのヒドロキシル基などの2~4つの間のヒドロキシル基を有する。
【0056】
好ましい実施形態では、ロジンエステルは、5~10、例えば、7つなどの最大で10のエチレンオキシド単位(EO単位)を有する少なくとも1種のポリオールエトキシレートから調製される。
【0057】
さらに好ましい実施形態では、ロジンエステルは、5~10、例えば、7つなどの最大で10のプロピレンオキシド単位(PO単位)を有する少なくとも1種のポリオールプロポキシレートから調製される。
【0058】
ポリオールエトキシレートまたはポリオールプロポキシレートは、2~4つの間などの2~6つの間のヒドロキシル基を好ましくは有する。
【0059】
C2~C4アルコキシレートのポリオールは、C2~C15ポリオールとすることができる。これは、ポリオールが、2~15個の炭素原子を有することを意味する。C2~C10ポリオール、特にC2~C6ポリオールは、アルコキシレートのC2~C15ポリオール成分として好ましくは使用される。ポリオールは、好ましくは、2つまたは3つのヒドロキシル基などの、2~8つ、特に2~4つのヒドロキシル基などの2~8つのヒドロキシル基を有する。
【0060】
C2~C4アルキレンオキシドと反応することができるポリオールの例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよびそれらの混合物である。C2~C4アルコキシレートのポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセロールおよびそれらの混合物からなる群から好ましくは選択され、特に、グリセロールである。
【0061】
例えばソルビトール、マルチトール、マンニトール、キシリトールおよびそれらの混合物などの糖アルコールもまた、C2~C4アルキレンオキシドと反応することができるポリオールとして使用され得る。これは、こうして生成したロジンエステルは、さらに持続的に生成することができるというさらなる利点を有する。
【0062】
さらに特に好ましい実施形態では、使用される少なくとも1種のアルコールは、特に、5~10、例えば7つなどの最大で10のエチレンオキシド単位(EO単位)を有するエトキシ化グリセロールである。本発明によるこのようなグリセロールは、例えば、Aduxol-Gly-07として、Schaerer & Schlaepferから市販されている。
【0063】
さらなる実施形態では、使用される少なくとも1種のアルコールは、エトキシ化トリメチロールプロパン、エトキシ化ペンタエリスリトールまたはエトキシ化ソルビトールである。
【0064】
代替的な実施形態では、使用される少なくとも1種のアルコール(ロジンがこのアルコールによりエステル化される)は、C2~C4アルキレンオキシドと少なくとも1種のモノアルコールとを含むか、またはこれらの反応生成物であり、この場合、この生成物は、今度は、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも2~30、特に6~12の、C2~C4アルキレンオキシドから誘導される単位(簡単には、単に「C2~C4アルキレンオキシド単位」でもある)、好ましくはエチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位および/またはブチレンオキシド単位を有する。少なくとも1種のモノアルコールは、好ましくは、飽和または不飽和のC8~C24炭化水素基、特にC12~C18炭化水素基を有する炭化水素アルコールである。天然源に由来するいわゆる脂肪アルコールが、モノアルコールとして使用される場合、それらは、混合物として存在することが多い。
【0065】
代替的な実施形態では、ロジンはまた、C2~C4アルキレンオキシドと少なくとも1種のカルボン酸との反応生成物と反応させることもできる。この場合、ロジンは、アルキレンオキシド反応に由来する、遊離ヒドロキシル基によりエステル化される。反応生成物は、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも2~30、特に6~12の、C2~C4アルキレンオキシドに由来する単位、特にエチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位および/またはブチレンオキシド単位を好ましくは有する。
【0066】
少なくとも1種のカルボン酸は、好ましくは、C8~C24カルボン酸、特にC12~C18カルボン酸である。天然源に由来するいわゆる脂肪酸が、カルボン酸として使用される場合、それらは、混合物として存在することが多い。例は、ヒマシ油(オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびパルミチン酸)またはココナッツ油(オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミチン酸、ラウリン酸およびミリスチン酸)である。
【0067】
本発明によるロジンエステルを調製するために上で使用されるアルコール成分は、一般に水溶性であり、すなわち標準条件下(標準圧(ほぼ1bar)および室温(ほぼ20℃))で、100mlの水に少なくとも1gが溶解する。
【0068】
ロジンエステルは、ロジンおよびアルコールを酸と共に加熱することによって調製することができる。次亜リン酸または次亜リン酸とp-トルエンスルホン酸との混合物が、例えば、酸として使用され得る。
【0069】
ロジンエステルの分子量は、好ましくは少なくとも450g/mol、特に500~2000g/molである。ロジンエステルの分子量は、示差屈折率計を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって求めることができる。
【0070】
さらに、ロジンエステルは、20℃において、2000~60000mPa s、好ましくは2500~5000mPa s、特に3000~4500mPa sの動的粘度を有することができる。
【0071】
好ましい実施形態では、本発明によるロジンエステルは、標準条件下(標準圧(ほぼ1bar)および室温(ほぼ20℃))で、液体である。
【0072】
ゴム用添加物
本発明によるゴム組成物は、上で詳述した本発明によるロジンエステルを含む、少なくとも1種のゴム用添加物を含有する。実施形態では、ゴム用添加物は、ロジンエステルからなることができる。代替的に、ゴム用添加物は、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、特に少なくとも90重量%のロジンエステルを含有する。
【0073】
ゴム用添加物はまた、ロジンエステルに加え、なおさらなる構成物質をさらに有することができる。好ましい実施形態では、ゴム用添加物は、脂肪酸エステルおよび/または脂肪酸の石鹸、特に、亜鉛および/またはカリウム脂肪酸石鹸を含有する。
【0074】
本発明のゴム用添加物は、好ましくは、1種または複数種の固体担体物質および1種または複数種のロジンエステルを含有するブレンド中に存在することができる。無機充填剤(例えば、シリカなど)またはワックス様物質(例えば、ポリエチレンワックスなど)が、担体物質として好ましくは使用され得る。
【0075】
好ましい変形形態では、シリカが、担体物質として使用される。本発明のブレンドに使用することができる市販のシリカの例は、Evonik製のSipernat 22およびSipernat 50である。
【0076】
ブレンド中の担体物質とロジンエステルとの重量比は、例えば10/90~90/10、より好ましくは20/80~80/20、特に好ましくはほぼ30/70または33/67である。
【0077】
ブレンドの使用により、特に、ロジンエステルが室温で液体である場合、これらのロジンエステルの取り扱いが一層容易になる。
【0078】
ゴム
本発明によるゴム組成物は、少なくとも1種のゴムを含有する。
【0079】
好ましい実施形態では、ゴムは、硫黄架橋によって架橋化され得るゴムである。本発明によれば、タイヤの製造に使用することができるトレッドコンパウンドの調製に特に好適なゴムが使用される。
【0080】
好ましいゴムは、ジエンゴムである。ジエンおよび/またはシクロアルケンの重合または共重合によって形成され、したがって、主鎖基または側鎖基のどちらかにC=C二重結合を有するゴムは、ジエンゴムと称される。好ましいジエンゴムは、ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴムおよびスチレン-ブタジエンゴムである。
【0081】
好ましい実施形態では、本ゴム組成物は、少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴムおよび/またはブタジエンゴム、ならびに必要に応じてそれらの官能基化形態を含む。
【0082】
好ましい実施形態では、本ゴム組成物は、少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴム(スチレン-ブタジエンコポリマー)を含有する。これは、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)および乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)の両方とすることができ、この場合、少なくとも1種のSSBRと少なくとも1種のESBRとの混合物もまた使用され得る。用語「スチレン-ブタジエンゴム」および「スチレン-ブタジエンコポリマー」は、本発明の文脈では、同義に使用される。使用されるスチレン-ブタジエンコポリマー(複数可)は、修飾および官能基により末端基修飾され得る、ならびに/またはポリマー鎖に沿って官能基化され得る。この修飾は、ヒドロキシ基および/またはエトキシ基および/またはエポキシ基および/またはシロキサン基および/またはアミノ基および/またはアミノシロキサンおよび/またはカルボキシ基および/またはフタロシアニン基および/またはシランスルフィド基によるものとすることができる。しかし、官能基化とやはり称される、当業者に公知のさらなる修飾もまた、考慮される。金属原子は、このような官能基化の構成物質とすることができる。
【0083】
好ましい実施形態によれば、本ゴム組成物は、少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムを、好ましくは、40~100phr、特に好ましくは70~90phrの量で含有する。
【0084】
好ましい実施形態によれば、本ゴム組成物は、少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムを含有し、このゴムは、ポリマー鎖末端において、および/またはポリマー鎖に沿って、上で指定した基の少なくとも1つにより官能基化されている(「骨格が官能基化されている」)。官能基は、特に好ましくは、特に、ヒドロキシ基および/またはエトキシ基および/またはエポキシ基および/またはシロキサン基および/またはアミノシロキサンおよび/またはカルボキシ基および/またはシランスルフィド基などの、シリカに結合することができる基である。
【0085】
ブタジエンゴム(=BR、ポリブタジエン)は、当業者に公知のすべてのタイプであり得る。これらには、とりわけ、いわゆる高シス型および低シス型が含まれ、シス含有率が90重量%より多いまたはこれに等しいポリブタジエンは高シス型と称され、シス含有率が90重量%より少ないポリブタジエンは低シス型と称される。低シスポリブタジエンは、例えば、20~50重量%のシス含有率を有するLi-BR(リチウム触媒によるブタジエンゴム)である。
【0086】
使用されるポリブタジエンは、末端基が修飾され得る、および/またはポリマー鎖に沿って官能基化され得る。これに関して、適切な場合、ゴム物質としてBRの要件に適合させた、スチレン-ブタジエンゴムの修飾および官能基化に関連して開示されている上記の可能性を参照することができる。
【0087】
好ましい実施形態によれば、本ゴム組成物は、5~50phr、好ましくは10~30phrの少なくとも1種のブタジエンゴムを含有する。
【0088】
本発明によるゴム組成物はまた、天然および/または合成ポリイソプレンを含有することができる。ここでは、cis-1,4-ポリイソプレンと3,4-ポリイソプレンの両方を使用することができる。本ゴム組成物は、90重量を超えるcis-1,4含有率を有する、cis-1,4-ポリイソプレンを好ましくは含有する。天然ゴムは、cis-1,4含有率が高いゴムである。使用されるポリイソプレンはまた、末端基修飾され得る、および/またはポリマー鎖に沿って官能基化され得る。これに関して、適切な場合、ゴム物質としてポリイソプレンの要件に適合させた、スチレン-ブタジエンゴムの修飾および官能基化に関連して開示されている上記の可能性を参照することができる。
【0089】
指定されるゴムはまた、ゴム組成物中に、互いに組み合わされて含まれ得る。
【0090】
好ましい実施形態では、本ゴム組成物は、少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムおよび少なくとも1種のブタジエンゴム、特に、5~40phrのブタジエンゴムおよび40~100phrのスチレン-ブタジエンゴムを含む。
【0091】
好ましい実施形態では、本ゴム組成物は、例えば、LIR(液体ポリイソプレン)、LBR(液体ポリブタジエン)およびL-SBR(液体スチレン-ブタジエン)などの、少なくとも1種の液体ポリマー(通常温度で粘性液体である)を含む。
【0092】
Kuraray Co.,Ltd製のKurapren LIR30およびKurapren LIR50は、例えば、液体ポリイソプレンとして使用され得る。Kuraray Co.,Ltd製のLBR-302、LBR-307、LBR-305、LBR-352またはLBR-361は、例えば、液体ポリブタジエンとして使用され得る。Kuraray Co.,Ltd製のL-SBR-820またはL-SBR-841は、例えば、液体スチレン-ブタジエンとして使用され得る。
【0093】
さらに、本発明によるゴム組成物に、油展ゴムもまた添加され得る。使用される油展ゴムの量に関すると、やはり油含有率を「秤量」するのが通例であり、こうして、例えば、最大で200phr、例えば40または70~140または150phrの範囲などの100phrを超える「ゴム」量を有する配合物が、これによって生じ得る。しかし、油含有率は、通常、既知であるので、固体ゴム成分の合計(「ゴム組成物」における上記の定義を参照されたい)が、100重量部の総量のゴムが存在するよう、油展ゴムを添加することができる。
【0094】
本発明によるゴム組成物は、0.1~50phrなどの比較的少量のさらなるゴムをさらに含有することができる。
【0095】
さらなる添加物
本発明のゴム組成物は、さらなる添加物および構成物質、特に、1種もしくは複数種の充填剤、硫黄架橋するための1種もしくは複数種の触媒または活性化剤、ならびに必要に応じて、抗エージング剤および均質化剤などのさらなる追加物を通常の量で含有することができる。
【0096】
好ましい実施形態では、本発明のゴム組成物は、タイヤのトレッドコンパウンドの調製に好適なさらなる添加物および構成物質を含有する。
【0097】
本ゴム組成物は、少なくとも1種の充填剤を好ましくは含有する。本ゴム組成物は、5~300phr、好ましくは30~300phr、特に50~200phrの少なくとも1種の充填剤を含有することができ、この場合、含有するすべての充填剤の総量であることを意味する。
【0098】
本発明の好ましい実施形態によれば、充填剤含有率の合計は、30~150phr、特に好ましくは60~140phr、やはり好ましくは80~130phr、やはり特に好ましくは100~130phr、およびやはり非常に特に好ましくは110~130phrである。
【0099】
これらは、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、シリカ、アルミノシリケート、フィロケイ酸塩(カオリンなど)、炭酸カルシウム(チョーク)、デンプン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化チタンまたはゴムゲルなどの、当業者に公知の充填剤のすべてとすることができる。
【0100】
本ゴム組成物は、少なくとも1種のシリカを充填剤として好ましくは含有する。シリカは、ゴム組成物向けの充填剤として好適な、当業者に公知のシリカとすることができる。しかし、35~350m2/g、好ましくは35~260m2/g、特に好ましくは100~260m2/g、および非常に特に好ましくは115~235m2/gの窒素表面積(BET表面積)(DIN ISO 9277に準拠)、ならびに30~400m2/g、好ましくは30~250m2/g、特に好ましくは80~250m2/g、および非常に特に好ましくは80~230m2/gのCTAB表面積(ASTM D 3765に準拠)を有する微粉砕沈降シリカを使用する場合、特に好ましい。
【0101】
したがって、使用することができるシリカは、例えば、Evonik製のUltrasil(登録商標)7000 GR(商標名)というタイプ、およびEvonik製のUltrasil(登録商標)VN3(商標名)というタイプのものの両方、ならびに高分散性シリカ、いわゆるHDシリカ(例えば、Solvay製のZeosil(登録商標)1165 MP)である。
【0102】
加工性を改善するため、ならびにシリカおよび他の必要に応じて存在する極性充填剤をジエンゴムに結合させるために、シランカップリング剤をゴムコンパウンドに使用することができる。ここで、1種または複数種の異なるシランカップリング剤を、互いに組み合わせて使用することができる。すなわち、ゴムコンパウンドは、異なるシランの混合物を含有することができる。シランカップリング剤は、ゴムもしくはゴムコンパウンドを混合している間に(in situ)、または前処理の意味で充填剤がゴムに添加される前にすでに(事前修飾)、表面の、シリカのシラノール基または他の極性基と反応する。ここで使用することができるシランカップリング剤は、ゴムコンパウンドにおいて使用するための、当業者に公知のシランカップリング剤のすべてである。技術水準から公知のこのようなカップリング剤は二官能性オルガノシランであり、このシランは、脱離基として、ケイ素原子上に少なくとも1つのアルコキシ基、シクロアルコキシ基またはフェノキシ基を有しており、他の官能基として、必要に応じて、開裂後にポリマーの二重結合と化学反応を受けることができる基を有する。
【0103】
本発明によるゴム組成物が、少なくとも1種の可塑剤を含有し、可塑剤の総量が、好ましくは5~100phrである場合に、さらに有利である。本発明の文脈において使用される可塑剤には、例えば、MES(軽度抽出溶媒和物)またはRAE(残留芳香族抽出物)またはTDAE(処理蒸留芳香族抽出物)、またはラバーツーリキッド(Rubber-to-Liquid)(RTL)油、またはバイオマスツーリキッド(Biomass-to-Liquid)(BTL)油(好ましくはIP 346法に準拠すると3重量%未満の多環式芳香族化合物含有率を有する)などの芳香族、ナフテン系またはパラフィン系鉱油可塑剤、あるいはファクチスまたは可塑性樹脂などの、当業者に公知のすべての可塑剤が含まれる。本ゴム組成物は、5~40phr、好ましくは10~30phrの可塑剤を含有することができる。
【0104】
本ゴム組成物は、酸化亜鉛、促進剤および/または硫黄などの、架橋に必要な物質を好ましくはさらに含む。
【0105】
本発明によるゴム組成物が、硫黄の加硫の活性化のための酸化亜鉛または亜鉛含有化合物を含有する場合に、特に有利である。
【0106】
ゴム組成物の加硫は、適切な場合、硫黄および/または硫黄供与体の存在下、および加硫促進剤を利用して行われ、この場合、いくつかの加硫促進剤は、硫黄供与体として同時に作用することができ、硫黄および/または硫黄供与体、ならびに加硫促進剤は、技術水準において公知の量で使用される。硫黄および/または硫黄供与体、ならびに1種または複数種の促進剤は、最終混合工程において、ゴムコンパウンドに指定量で添加される。促進剤は、チアゾール促進剤および/またはメルカプト促進剤および/またはスルフェンアミド促進剤および/またはチオカルバメート促進剤および/またはチウラム促進剤および/またはチオリン酸塩促進剤および/またはチオウレア促進剤および/またはキサントゲン酸塩促進剤および/またはグアニジン促進剤からなる群から選択される。N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)および/またはN,N-ジシクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド(DCBS)および/またはベンゾチアジル-2-スルフェンモルホリド(MBS)および/または2,2’-ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)および/またはN-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)からなる群から選択される、少なくとも1種のスルフェンアミド促進剤の使用が好ましい。
【0107】
いくつかの促進剤もまた使用することができる。スルフェンアミド促進剤、特に好ましくは、CBSは、グアニジン促進剤DPG(ジフェニルグアニジン)と好ましくは組み合わせて使用される。DPGの量は、0~5phr、好ましくは0.1~3phr、特に、好ましくは0.5~2.5phr、非常に特に好ましくは1~2.5phrである。
【0108】
さらに、本ゴム組成物は、通常の添加剤を通常の重量部で含有することができる。添加剤は、抗エージング剤、活性化剤、ワックス、樹脂、素練り助剤および加工助剤、ならびにそれらの混合物からなるリストから選択することができる。
【0109】
N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DTPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)および2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)は、例えば、抗エージング剤として使用され得る。本発明によるゴム組成物は、0.1~3phrの抗エージング剤を好ましくは含む。
【0110】
酸化亜鉛および脂肪酸(例えば、ステアリン酸)、または例えば、エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛錯体が、活性化剤として、例えば使用され得る。本発明による本ゴム組成物は、0.5~10phr、好ましくは2~5phrの活性化剤を好ましくは含む。
【0111】
本発明によるゴム組成物は、0.1~3phrのワックスを好ましくは含む。
【0112】
例えば、C5石油樹脂、C9石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂などの可塑性樹脂、またはアルファ-メチルスチレンおよびスチレンからなる炭化水素樹脂(AMS樹脂)が、樹脂として特に使用され得る。本発明によるゴム組成物は、5~100phr、好ましくは15~50phrの樹脂を好ましくは含む。
【0113】
2,2’-ジベンズアミドジフェニルジスルフィド(DBD)が、例えば、素練り助剤として使用され得る。本発明によるゴム組成物は、0.1~3phrの素練り助剤を好ましくは含む。
【0114】
例えば、亜鉛石鹸などの脂肪酸の塩、ならびに脂肪酸エステルおよびその誘導体が、例えば、加工助剤として使用され得る。本発明による本ゴム組成物は、0.5~10phr、好ましくは2~5phrの加工助剤を好ましくは含む。
【0115】
特に、本ゴム組成物は、
a)0.1~3phrの抗エージング剤
b)0.5~10phr、好ましくは2~5phrの活性化剤
c)0.1~3phrのワックス
d)5~100phr、好ましくは15~50phrの樹脂
e)0.1~3phrの素練り助剤、および
f)0.5~10phr、好ましくは2~5phrの加工助剤
を含有する。
【0116】
総量中のさらなる添加剤の割合は、3~150phr、好ましくは3~100phr、特に好ましくは5~80phrである。
【0117】
組成物
本ゴム組成物は、0.1~40phrの間、好ましくは1~30phrの本発明によるロジンエステルを好ましくは含有する。
【0118】
好ましい実施形態では、本組成物は、加硫後、60℃において、少なくとも5%、好ましくは10%、特に15%低い転がり抵抗の損失正接、および/または0℃において、5%、好ましくは10%、特に15%高いウェットグリップの損失正接を有する。
【0119】
さらに、本組成物は、改善された加工性、特に少なくとも5%、好ましくは10%、特に15%低いムーニー粘度および/またはそれに対応して、より低いガーベイダイ材料圧を好ましくは有する。
【0120】
さらに、本組成物は、改善された剛性、特に、少なくとも5%、好ましくは10%、特に15%高い引裂強さおよび/または破断伸びおよび/または引張強度、100%モジュラス、および/または引張強度、300%モジュラスを好ましくは有する。
【0121】
上で指定した改善(より小さな転がり抵抗、より高いウェットグリップ、改善された加工性、剛性の増大)は、本発明による添加物の代わりに、技術水準から公知のゴム用添加物を同じ量で含む同一組成物との比較で行うことができる。Novares C 10などの市販のゴム用添加物は、公知(比較)のゴム用添加物として使用され得る。試験のためには、2種の他は同じであるゴム組成物を調製し、次に、それらの特性が、互いに比較される。
【0122】
上で指定した改善はまた、本発明によるゴム用添加物を含有しない同一組成物と比較して判定することができる。試験のためには、この場合、2種の同一ゴム組成物を調製し、本発明によるゴム用添加物が、それらの一方にさらに添加される。次に、これらの2種のゴム組成物の特性が、互いに比較される。
【0123】
本ゴム組成物は、タイヤのトレッドコンパウンドの調製に好ましくは好適である。本発明によるゴム組成物はさらに、互いに隣り合って、および/または一方が他方の下に配置された異なるトレッドコンパウンドからなるトレッド(多成分トレッド)にも好適である。
【0124】
調製
本発明によるゴムコンパウンドの調製は、慣用的な方法で行われ、まず第1に、加硫系(硫黄および加硫影響物質)を除くすべての構成物質を含有する基本混合物を一般に、1つまたは複数の混合工程で調製し、続いて、加硫系を添加することによって、最終混合物を生成する。
【0125】
次に、この混合物は、例えば押出成形プロセスによりさらに加工されて、対応する形態、例えば、トレッドブランクの形態にすることができる。
【0126】
ゴムコンパウンドおよびその加硫物を調製するための一般的な方法は、"Rubber Technology Handbook", W. Hofmann, Hanser Verlag 1994に記載されている。適宜、混合物に応じて、特に充填剤の含有率に応じて、粘度のより良好な低下および一層優れた均質化を実現するため、第1の基本混合工程の後に、さらなる混合工程が行われるべきであることは、当業者に公知である。
【0127】
タイヤ
本発明はまた、少なくとも1つの構成成分が本発明によるゴム組成物から少なくとも部分的に製造されている、タイヤに関する。本タイヤは、好ましくは、超高性能(UHP)タイヤまたはサマータイヤである。
【0128】
本発明の文脈では、タイヤとは、産業用および建築現場での自動車、HGV、車のためのタイヤを含めた、自動車用空気式タイヤおよび固形ゴム製タイヤ、ならびに二輪用タイヤであることを意味する。
【0129】
本発明の好ましい実施形態によれば、タイヤは、本発明によるゴム組成物を、少なくともトレッド中に有する。
【0130】
本発明は、タイヤを製造する方法であって、タイヤの1種または複数つの構成成分が本発明によるゴム組成物から製造され、ゴム組成物が硬化される、方法にさらに関する。
【0131】
本発明によるゴム組成物の使用は、タイヤおよびトレッドを製造するための方法を顕著に改善することができる。
【0132】
使用
本発明は、ゴム組成物における、ゴム組成物のムーニー粘度を改善するため、ならびに/またはゴム組成物から製造されるタイヤの摩耗、グリップおよび転がり抵抗のうちの少なくとも1つを改善するための、ゴム用添加物としての、ロジンおよび少なくとも1種のアルコールからなるロジンエステルの使用であって、使用されるロジンが、130~190mg KOH/gの酸価を有し、使用されるアルコール(複数可)が、少なくとも200g/molの分子量および7つ以下のヒドロキシル基を有する、使用にさらに関する。
【0133】
好ましい実施形態では、指定した特性のうちの少なくとも1つは、代わりに同じ量の公知のゴム用添加物を含むゴム組成物と比べ、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%改善される。例えば、Novares C 10などの市販のゴム用添加物は、公知(比較)のゴム用添加物として使用され得る。
【0134】
本発明によるゴム用添加物は、トレッド向けのゴム組成物に特に使用され得る。
【0135】
好ましい実施形態では、本発明による使用の場合、
a)1種または複数種の固体担体物質
b)本発明による1種または複数種のロジンエステル
を含むブレンドが使用される。
【0136】
無機充填剤(例えば、シリカなど)またはワックス様物質(例えば、ポリエチレンワックスなど)が、担体物質として好ましくは使用され得る。好ましい実施形態では、シリカは、担体物質として使用される。
【0137】
ブレンド中の担体物質とロジンエステルとの重量比は、例えば10/90~90/10、より好ましくは20/80~80/20、特に好ましくはほぼ30/70または33/67である。
【0138】
実施形態の実施例
本発明を、これより、比較および実施形態の実施例を参照しながら、一層詳細に説明するが、これらの実施例に限定されない。
【実施例】
【0139】
(実施例1)
ゴム用添加物の調製
a)コロホニーのエトキシ化グリセロールによるエステル化(添加物A)
369.0gのエトキシ化グリセロール(Schaerer+Schlaepfer製のAduxol GLY-07)および1.4gの次亜リン酸を窒素雰囲気下に置き、この混合物を100℃に加熱した。次に、合計で473.1gのロジン(DRT製のGresinox 578 M、酸価160mg KOH/g)を小分けにして加え、この混合物を220℃までゆっくりと加熱し、真空を適用した。酸価を測定することによって、反応の進行をモニタリングした。DIN EN ISO 3016に準拠して測定すると、約0℃の流動点を有する、室温において粘度の高い液体が得られた。
【0140】
b)コロホニーのエトキシ化グリセロールによるエステル化(添加物B)
4000gのエトキシ化グリセロール(Schaerer+Schlaepfer製のAduxol GLY-07)、9.2gの次亜リン酸、4.14gのパラトルエンスルホン酸および5190gのロジン(DRT製のGresinox 578 M)を窒素雰囲気下で一緒にし、この混合物をゆっくりと245℃まで加熱し、真空を適用した。酸価を測定することによって反応の進行をモニタリングした。12℃の流動点を有する、室温において粘度の高い液体が得られた。20℃の密度は、1100kg/m3である。
【0141】
c)コロホニーのポリエチレングリコール400によるエステル化(添加物C)
さらなる手法では、332.23gのロジン(DRT製のGresinox 578 M)および385.07gのポリエチレングリコール400(DOW Chemical Company製のCarbowax PEG 400DE)を触媒として酸化亜鉛を利用してエステル化した。得られたエステルの動的粘度は、20℃において3,700mPaである。
【0142】
(実施例2)
ゴム組成物の調製
1つまたは複数の混合工程で、通常の条件下で混合物を調製した。次に、この混合物を、例えば、押出成形プロセスによりさらに加工し、対応する形態にする。個々の混合物の様々な成分が、以下に示されている表中に指定されている。
【0143】
【0144】
表中に含まれる混合物実施例のすべてにおいて、指定量(重量部)は、100重量部の全ゴム基準(phr)である。
【0145】
すべての混合物から試験片を調製し、これらの試験片を用いて、ゴム産業に典型的な材料特性を、以下に指定した試験方法を使用して確認した:
・ 各場合において、DIN EN ISO 289-1に準拠した、各混合工程およびエージング後のムーニー粘度(MS1+4、100℃)
・ 各場合において、ASTM D 2230に準拠した、押出成形パラメータ(押出成形のスピード、ダイスウェル、押出成形速度、材料圧、材料温度)表面評価(ガーベイダイ:表面A~Eであり、Aが最良のグレードである。エッジ1~10であり、10が最良グレードである)
・ ASTM D-8059に準拠して測定した、室温における反発弾性
・ DIN EN ISO 868に準拠して測定した、室温(RT)におけるショアA硬度
・ DIN 53 504に準拠して測定した引裂強さ、破断伸びおよび引張強度、剛性に関する、やはりまたタイヤの摩耗に関するパラメータ
・ DIN 53 504に準拠した、室温における100%および300%延伸時における応力値(100%モジュラス、300%モジュラス)
・ DIN 53 545に準拠した、0℃および60℃における損失係数の損失正接
○ 加硫した材料をクランプし、動的負荷をかける、動的機械分析
○ ウェットグリップは、0℃における損失正接と相関し得る(0℃における損失正接が大きいほど、ウェットグリップは良好である)
○ 転がり抵抗は、60℃における損失正接と相関し得る(60℃における損失正接が小さいほど、転がり抵抗は小さい)
・ DIN 53512に準拠した反発弾性。
【0146】
(実施例3)
Struktol EF44との比較
本発明によるゴム組成物を、タイヤ産業において確立された添加物と比較して試験した。ここで、実施例1b)において調製した添加物B(ロジン酸およびエトキシ化グリセロールからなるエステル)を含有するゴム組成物(組成物C)を、市販の添加物Struktol EF44(脂肪酸誘導体の混合物、主に亜鉛石鹸、Schill+Seilacher「Struktol」(GmbH))を含有するゴム組成物(組成物B)、および2種の添加物のいずれも含まないゴム組成物(組成物A)と比較した。
【0147】
以下に示されている表から分かる通り、本発明によるゴム組成物Cは、比較組成物Bに比べて、ゴム組成物の匹敵する良好な加工性および同じタイヤの摩耗、一層高い転がり抵抗を伴って、タイヤハンドリング(=一層高い剛性)およびタイヤグリップの領域における有利な点を有した。
【0148】
これらの結果により、本発明による添加物は、超高性能(UHP)タイヤおよびサマータイヤに特に好適である。同時に、他の特性は同じレベルに留まっており、顕著に損なわれないか、または部分的に改善さえもされている。
【0149】
【0150】
(実施例4)
TDAE油(標準品)との比較
この実施例では、実施例1b)において調製した添加物Bを含有するゴム組成物(組成物D)の特性を、TDAE油のみを含み他は同じであるゴム組成物(組成物E)の特性と比較した。この比較により、本発明によるゴム組成物Dの加工特性が改善されたこと、および一層高い剛性となることが示され、これは、この組成物により優れたタイヤグリップ特性(より小さな反発弾性、0℃における一層高い損失正接、および60℃では、わずかにのみ高い損失正接)をもたらしている。
【0151】
【0152】
(実施例5)
短鎖ロジンエステルとの比較
この実施例では、実施例1b)において調製した添加物Bを含有するゴム組成物(組成物F)の特性を、短鎖ロジンエステル(Pinerez 7024E(ロジンおよびトリエチレングリコールからなるロジンエステル)を含有し他は同じであるゴム組成物(組成物G)の特性と比較した。
【0153】
本発明による組成物Fは、等しく良好な加工性を伴って、一層高い剛性、一層良好な転がり抵抗および一層良好なタイヤグリップを示した。
【0154】
【0155】
(実施例6)
タイヤ樹脂との比較
この実施例では、実施例1a)において調製した添加物Aを含有するゴム組成物(組成物H)の特性を、市販のタイヤ樹脂(Novares C 10)を含有し他は同じであるゴム組成物(組成物I)の特性と比較した。
【0156】
本発明によるゴム組成物Hは、一層高い剛性、したがって一層良好なタイヤグリップ、および同時に良好な転がり抵抗を伴う、加工性の改善を示した。
【0157】
【0158】
(実施例7)
ポリエチレングリコールロジンエステルの場合の結果
この実施例では、本発明によるゴム用添加物として添加物C’(組成物J)または添加物D(組成物K)を含有するゴム組成物の特性を、低分子量(比較)添加物Eを含有し他は同じであるゴム組成物(組成物L)の特性と比較した。本発明による添加物C’は、PEG 400ロジンエステルであり、本発明による添加物Dは、PEG 600ロジンエステルである。その調製に関すると、実施例1a)~1c)による可能な合成法を参照することができる。調製に使用したロジンは、158mg KOH/gの酸価を有した。比較添加物Eは、同じ方法で調製したジエチレングリコールロジンエステルである。
【0159】
本発明による添加物は、一層高い剛性、転がり抵抗の改善、および加工性の改善を示した。
【0160】
【0161】
組成物J、KおよびLの3種の異なる押出成形物の図示が、
図1に表されている。図示される通り、本発明によるゴム組成物は、エッジがより少ない。
【国際調査報告】