(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】GSNアブレーションによる患者の治療方法、装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20240517BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61M25/00 624
A61M25/00 620
A61B18/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575340
(86)(22)【出願日】2022-06-06
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 US2022032391
(87)【国際公開番号】W WO2022261022
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519030774
【氏名又は名称】アクソン セラピーズ,インク.
【氏名又は名称原語表記】AXON THERAPIES,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ジャビール,マヌエル アルザドン ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】イラニタラブ,パジャンド
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK12
4C267AA05
4C267AA09
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB28
4C267BB38
4C267BB42
4C267BB43
4C267BB52
4C267BB63
4C267CC08
4C267GG34
(57)【要約】
標的組織の経血管的アブレーションの為のシステム、装置、及び方法。本装置及び方法は、幾つかの例において、心不全及び高血圧の少なくとも一方を治療する為に内臓静脈血液容量を増加させる為の内臓神経アブレーションに使用することができる。例えば、本明細書で開示される装置は、大内臓神経(GSN)又はTSN神経根等の胸部内臓神経(TSN)の領域の標的血管の内部に進められてもよい。又、胸部内臓神経を血管内でアブレーションして静脈容量を増加させ、肺血圧を低下させることにより、HFpEF等の心不全を治療する方法も開示する。
【選択図】
図12D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送達シースと、第1拡張器(530)及び第2拡張器(550)とを備え、前記第1及び前記第2拡張器はそれぞれ、完全に挿入されたときに前記送達シース(505)の遠位端(508)から10cm~30cmの範囲内の伸長量で伸長する拡張器遠位部(541、551)を備える
ことを特徴とするカテーテル送達システム(500)。
【請求項2】
前記拡張器遠位部(541、551)の各々は、前記送達シースの遠位部(514)の剛性よりも小さい剛性を有することを特徴とする請求項1に記載のカテーテル送達システム。
【請求項3】
前記第2拡張器遠位部(551)の前記剛性は、前記第1拡張器遠位部(541)の前記剛性よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載のカテーテル送達システム。
【請求項4】
前記拡張器遠位部(541、551)の前記剛性は、遠位方向において減少することを特徴とする請求項2又は3に記載のカテーテル送達システム。
【請求項5】
前記拡張器遠位部は、遠位方向に向かうに従い小さくなる外径を有することを特徴とする請求項4に記載のカテーテル送達システム。
【請求項6】
前記遠位方向に向かうに従い小さくなる外径は、緩やかなテーパ、段階的に小さくなる外径、又はそれらの組み合わせを有することを特徴とする請求項5に記載のカテーテル送達システム。
【請求項7】
前記第1拡張器及び前記第2拡張器はそれぞれ、拡張器管状構造体、近位端、遠位端、前記近位端と前記遠位端との間の作動長さ、その間の中央ルーメン、遠位方向に向かうに従い小さくなる外径を有する遠位部、及びテーパ状の遠位先端部を備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のカテーテル送達システム。
【請求項8】
前記作動長さ(536、556)の各々は、60cm~145cmの範囲内であることを特徴とする請求項7に記載のカテーテル送達システム。
【請求項9】
前記第1拡張器遠位部(541)は、3~10cmの範囲内、好ましくは5±0.5cmの長さを有することを特徴とする請求項7又は8に記載のカテーテル送達システム。
【請求項10】
前記第2拡張器遠位部(551)は、3~10cmの範囲内、好ましくは5±0.5cmの長さを有することを特徴とする請求項7乃至9の何れか1項に記載のカテーテル送達システム。
【請求項11】
前記第2拡張器は、遠位部(551)において予め形成された曲部(552)を有することを特徴とする請求項7乃至10の何れか1項に記載のカテーテル送達システム。
【請求項12】
前記予め形成された曲部(552)は、拘束されていない状態にあるとき、90度~120度の範囲内、好ましくは115度の角度(553)と、7mm~11mmの範囲内、好ましくは9.14mmの曲率半径(554)を有することを特徴とする請求項11に記載のカテーテル送達システム。
【請求項13】
前記第2拡張器は、5mmから10mmの範囲内、好ましくは7mmの長さを有する、前記予め形成された曲部の遠位側の直線部(555)を備えることを特徴とする請求項11又は12に記載のカテーテル送達システム。
【請求項14】
各拡張器の前記テーパ状の遠位先端部は、3mmから10mmの範囲内、好ましくは5±0.5mmの長さを有することを特徴とする請求項7乃至13の何れか1項に記載のカテーテル送達システム。
【請求項15】
ガイドワイヤを更に備えることを特徴とする請求項1乃至14の何れか1項に記載のカテーテル送達システム。
【請求項16】
前記送達シースは、近位端及び遠位端と、その間のルーメンと、編組ワイヤ及びポリマーを含む管状構造体(506)とを備えることを特徴とする請求項1乃至15の何れか1項に記載のカテーテル送達システム。
【請求項17】
前記管状構造体は、前記遠位端に向かって減少する可変剛性を有することを特徴とする請求項16に記載のカテーテル送達システム(500)。
【請求項18】
前記可変剛性は、徐々に変化することを特徴とする請求項17に記載のカテーテル送達システム(500)。
【請求項19】
前記可変剛性は、部毎に変化することを特徴とする請求項17に記載のカテーテル送達システム(500)。
【請求項20】
前記可変剛性は、前記編組ワイヤの編組密度を変化させることに因って作り出されることを特徴とする請求項17乃至19の何れか1項に記載のカテーテル送達システム(500)。
【請求項21】
前記近位端に近接する前記編組密度は80PPIであり、前記遠位端に近接する前記編組密度は40PPIであることを特徴とする請求項20に記載のカテーテル送達システム(500)。
【請求項22】
前記管状構造体は、第1剛性を有する近位部、第2剛性を有する中間部及び第3剛性を有する遠位部を備え、前記第3剛性は前記第1剛性よりも小さく、前記第2剛性は前記第1剛性と前記第3剛性との間にあることを特徴とする請求項17に記載のカテーテル送達システム(500)。
【請求項23】
前記近位部は、80PPIの編組密度及び72Dのデュロメータのポリマーを有し、前記中間部は、60PPIの編組密度及び63Dのデュロメータのポリマーを有し、前記遠位部は、40PPIの編組密度及び55Dのデュロメータのポリマーを有することを特徴とする請求項22に記載のカテーテル送達システム。
【請求項24】
前記近位部、前記中間部及び前記遠位部はそれぞれ互いに等しい内径を有することを特徴とする請求項22又は23に記載のカテーテル送達システム。
【請求項25】
前記内径は3.35mmであることを特徴とする請求項24に記載のカテーテル送達システム。
【請求項26】
前記近位部、前記中間部及び前記遠位部はそれぞれ互いに等しい壁厚を有することを特徴とする請求項22乃至25の何れか1項に記載のカテーテル送達システム。
【請求項27】
前記壁厚は0.127mmであることを特徴とする請求項26に記載のカテーテル送達システム。
【請求項28】
前記システムは、血管系アクセスポイントから患者の奇静脈にT7とT11の間のレベルでアブレーションカテーテルを送達するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至27の何れか1項に記載のカテーテル送達システム。
【請求項29】
前記システムは、血管系アクセスポイントから前記患者の肋間静脈にT7とT11の間のレベルでアブレーションカテーテルを送達するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至28の何れか1項に記載のカテーテル送達システム。
【請求項30】
前記シースの前記管状構造体の前記作動長さ(515)は、50cmから115cmの範囲内であることを特徴とする請求項28又は29に記載のカテーテル送達システム。
【請求項31】
前記シースの遠位部は9.50±0.50cmの長さを有することを特徴とする請求項30に記載のカテーテル送達システム。
【請求項32】
前記シースの中間部は6.5±0.5cmの長さを有することを特徴とする請求項30又は31に記載のカテーテル送達システム。
【請求項33】
前記シースの近位部は、前記作動長さから前記遠位部の長さ及び前記中間部の長さを差し引いた残りの長さを有することを特徴とする請求項30乃至32の何れか1項に記載のカテーテル送達システム。
【請求項34】
前記シースの前記近位部は64cmの長さを有することを特徴とする請求項33に記載のカテーテル送達システム。
【請求項35】
前記送達シースは、本明細書に記載されている何れかの送達シースであることを特徴とする請求項1乃至34に記載のカテーテル送達システム。
【請求項36】
前記カテーテル送達システムは滅菌パッケージに入ったキットとして提供されることを特徴とする請求項1乃至35の何れか1項に記載のカテーテル送達システム。
【請求項37】
送達システムを使用する方法であって、
送達シースを患者の中で前進させる工程と、
前記送達シースから前記送達シースの遠位端を越えて拡張器を前進させる工程と、
前記拡張器を大静脈から奇静脈内に前進させる工程と、
前記送達シースを前記拡張器上で前記奇静脈内にさらに前進させる工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項38】
前記拡張器を前記送達シースの遠位端を越えて前進させる工程は、前記拡張器を前記送達シースの遠位端を越えて10cm~30cm前進させる工程を含むことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
参照による組み込み
本出願は、2021年6月7日に出願された米国仮出願第63/197,953号に基づく優先権を主張するものであり、その開示はあらゆる目的の為に参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書中で言及されている全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、主題に因って、米国特許出願公開第2019/0175912号明細書、米国特許出願公開第2019/0183569号明細書、米国特許出願公開第2021/0220043号明細書、米国特許第10,376,308号明細書、米国特許第10,207,110号明細書、米国特許出願第16/510,503号、米国特許出願第62/836,720号、米国特許出願第62/837,090号、米国特許出願第62/864,093号、PCT/US2019/15400号、PCT/US2020/038934号、PCT/US2021/014001号、国際公開第2018/023132号、国際公開第2019/118976号及び国際公開第2020/257763号に関係しており、これらは全て、あらゆる目的の為に参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0004】
本発明は、GSNアブレーションによる患者の治療方法、装置及びシステム装置に関する。
【背景技術】
【0005】
心不全(HF)とは、心臓が体の器官を維持する為に十分なポンプ機能を果たせなくなったときに起こる病状である。心不全は重篤な疾患であり、米国及び世界中で数百万人の患者が罹患している。
【0006】
心臓の健康状態を測る一般的な指標のひとつに、左室駆出率(LVEF)又は駆出率がある。定義によれば、収縮直前の心室内の血液量は拡張末期容積(EDV)として知られている。同様に、収縮終了時に心室に残っている血液量は収縮末期容積(ESV)である。EDVとESVの差がストローク量(SV)である。SVは心拍のたびに右心室と左心室から送り出される血液量を表す。駆出率(EF)はEDVのうち一回の拍動で駆出される血液量の割合であり、つまりSVをEDVで割った値である。心拍出量(CO)は心臓の各心室が1分間に送り出す血液量と定義される。COはSVに心拍数(HR)をかけたものに等しい。
【0007】
心筋症は、心筋が弱くなったり、伸びたり、その他の構造上の問題を示すもので、心室駆出率に基づいて収縮機能障害と拡張機能障害にさらに分類することができる。
【0008】
多くの薬物療法が収縮機能障害とHFrEFを標的とすることに成功しているが、拡張機能障害とHFpEFを有する多くの患者群に対しては、有望な治療法はまだ同定されていない。HFrEFとHFpEFの両患者の臨床経過は、呼吸困難、運動能力低下、末梢浮腫等の症状を伴う急性代償性心不全(ADHF)の再発が重要である。ADHFの再発による入院は現在の医療資源の大部分を利用しており、今後も莫大な費用が発生する可能性がある。
【0009】
HFの病態生理は益々よく理解されつつあるが、現代医学はこれまでのところ、HFの慢性管理やADHFの再発に対する新しい治療法の開発に失敗している。過去数十年にわたり、ADHFの管理と予防の戦略は、塩分と体液の貯留が血管内体液の膨張と心機能低下の原因であるという古典的なパラダイムに焦点が当てられてきたし、今も当てられている。
【0010】
従って、安全で効果的な心不全患者の為の改善された治療法、及びそれらの治療法を実施するように適合及び構成された装置及びシステムに対する必要性が残っている。又、医療器具を所望の解剖学的位置に安全かつ効果的に送達し、それらの器具を使用してそれらの療法を実施できるようにする必要性も残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は、胸部内臓神経又は胸部内臓神経根をアブレーションする方法、その為の装置、及びアプローチに関する。アブレーションは、高血圧及び心不全の少なくとも1つを治療する為に実施することができるが、一般的な方法は、他の治療にも使用することができる。例えば、本明細書の方法は、疼痛の治療に用いることができ、或いは一般に、内臓床から胸部中心静脈に排出される血液量を減少させる為に患者に利益をもたらすこともできる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書における治療は、内臓の容量を増加させることに因って達成することができる。この治療法は一般に、患者の節前胸部内臓神経又は胸部内臓神経根をアブレーションして内臓の容量を増加させ、それに因って高血圧及び心不全の少なくとも一方を治療することを含む。
【0013】
本明細書に記載された方法は、大胸部内臓神経又は大胸部内臓神経根等の胸部内臓神経をアブレーションすることである。本明細書における方法は、大内臓神経又は大内臓神経根を標的とする具体例を提供し得るが、本明細書における1つ以上の治療を実施する為に、代替的に、又はそれに加えて、他の胸部内臓神経(例えば、小内臓神経、最小内臓神経)をアブレーションしてもよい。
【0014】
本開示の一態様は、送達シース、第1拡張器(例えば、530)及び第2拡張器(例えば、550)を備えるカテーテル送達システム(例えば、500)である。この態様に関して記載された特徴の何れかを、この態様における任意の他の好適に組み合わせ可能な特徴と組み合わせてもよい。
【0015】
この態様において、第1及び第2拡張器はそれぞれ、完全に挿入されたときに送達シースの遠位端(例えば、508)から10cm~30cmの範囲内の伸長量で伸長する拡張器遠位部(例えば、541、551)を備えてもよい。拡張器遠位部の各々は、送達シースの遠位部(例えば、514)の剛性よりも小さい剛性を有してもよい。第2拡張器遠位部の剛性は、第1拡張器遠位部の剛性よりも小さくてもよい。拡張器遠位部の剛性は、遠位方向において減少してもよい。拡張器遠位部は、遠位方向に向かうに従い小さくなる外径を有してもよい。遠位方向に向かうに従い小さくなる外径は、緩やかなテーパ、段階的に小さくなる外径、又はそれらの組み合わせを有してもよい。
【0016】
この態様において、第1拡張器及び第2拡張器はそれぞれ、拡張器管状構造体、近位端、遠位端、近位端と遠位端との間の作動長さ、その間の中央ルーメン、遠位方向に向かうに従い小さくなる外径を有する遠位部、及びテーパ状の遠位先端部を備えてもよい。
【0017】
この態様において、拡張器の作動長さ(例えば、536、556)の各々は、60cm~145cmの範囲内であってもよい。
【0018】
この態様において、第1拡張器遠位部(例えば、541)は、3~10cmの範囲内、好ましくは5±0.5cmの長さを有してもよい。
【0019】
この態様において、第2拡張器遠位部(例えば、551)は、3~10cmの範囲内、好ましくは5±0.5cmの長さを有してもよい。
【0020】
この態様において、第2拡張器は、遠位部(例えば、551)において予め形成された曲部(例えば、552)を有してもよい。予め形成された曲部は、拘束されていない状態にあるとき、90度~120度の範囲内、任意で115度の角度(例えば、553)、7mm~11mmの範囲内、任意で9.14mmの曲率半径554を有してもよい。第2拡張器は、5mm~10mmの範囲内、好ましくは7mmの長さを有する、予め形成された曲部の遠位側の直線部(例えば、555)を備えてもよい。各拡張器のテーパ状の遠位先端部は、3mm~10mmの範囲内、好ましくは5±0.5mmの長さを有してもよい。
【0021】
この態様において、システムはさらにガイドワイヤを含んでもよい。
【0022】
この態様において、送達シースは、近位端及び遠位端と、その間のルーメンと、編組ワイヤ及びポリマーを含む管状構造体(例えば、506)とを備えてもよい。管状構造体は、遠位端に向かって減少する可変剛性を有してもよい。可変剛性は、徐々に変化してもよい。可変剛性は、部毎に変化してもよい。可変剛性は、編組ワイヤの編組密度を変化させることに因って作り出されてもよい。近位端に近接する編組密度は80PPIであってもよく、遠位端に近接する編組密度は40PPIであってもよい。
【0023】
この態様において、管状構造体は、第1剛性を有する近位部、第2剛性を有する中間部及び第3剛性を有する遠位部を備えてもよく、第3剛性は第1剛性よりも小さく、第2剛性は第1剛性と第3剛性との間にある。
【0024】
近位部は、80PPIの編組密度及び72Dのデュロメータのポリマーを有してもよく、中間部は、60PPIの編組密度及び63Dのデュロメータのポリマーを有してもよく、遠位部は、40PPIの編組密度及び55Dのデュロメータのポリマーを有してもよい。近位部、中間部、及び遠位部はそれぞれ、互いに等しい内径、任意で3.35mmの内径を有してもよい。近位部、中間部、及び遠位部はそれぞれ、互いに等しい壁厚、任意で0.127mmの壁厚を有してもよい。
【0025】
この態様において、システムは、血管系アクセスポイントから患者の奇静脈にT7とT11の間のレベルでアブレーションカテーテルを送達するように構成されてもよい。
【0026】
この態様において、システムは、血管系アクセスポイントから患者の肋間静脈にT7とT11の間のレベルでアブレーションカテーテルを送達するように構成されてもよい。
【0027】
この態様において、シースの管状構造体の作動長さ(例えば、515)は、50cm~115cmの範囲内であってもよく、アクセスポイントが頸静脈である場合には任意で50cm~85cmの範囲内であってもよく、アクセスポイントが大腿静脈である場合には任意で70cm~115cmの範囲内であってもよい。シースの遠位部は9.50±0.50cmの長さを有してもよい。シースの中間部は6.5±0.5cmの長さを有してもよい。シースの近位部は、作動長さから遠位部の長さ及び中間部の長さを差し引いた残りの長さを有してもよい。シースの近位部は64cmの長さを有してもよい。
【0028】
この態様において、送達シースは、本明細書に記載、特許請求がされている又は示されている送達シースの何れかであるか、又は何れかの特徴を含むものであってもよい。
【0029】
この態様において、カテーテル送達システムは滅菌パッケージに入ったキットとして提供されてもよい。
【0030】
本開示の一態様は、送達システムを使用する方法であって、送達シースを患者の中で前進させる工程と、送達シースから送達シースの遠位端を越えて拡張器を前進させる工程と、拡張器を大静脈から奇静脈内に前進させる工程と、送達シースを拡張器上で奇静脈内にさらに前進させる工程と、を含む方法である。この態様において、拡張器を送達シースの遠位端を越えて前進させることは、拡張器を送達シースの遠位端を越えて10cm~30cm前進させることを含む。
【0031】
本開示の一態様は、患者の内臓神経をアブレーションする方法であって、送達シースを奇静脈に送達する工程と、1つ以上のアブレーション要素を含むアブレーションカテーテルを送達シースを通して送達し、1つ以上のアブレーション要素を組織に近接して配置する工程と、ベースライン中心静脈圧(CVPb)を測定して記憶する工程と、アブレーションコンソールからアブレーションエネルギーを1つ以上のアブレーション要素及び組織に送達する工程と、第2中心静脈圧(CVP2)を測定する工程と、CVP2をCVPbと比較する工程と、を含む方法である。この態様に関して記載された特徴の何れかを、この態様における任意の他の好適に組み合わせ可能な特徴と組み合わせてもよい。
【0032】
この態様において、送達シースは圧力センサを備えてもよく、CVPbを測定して記憶する工程は、圧力センサから信号を得る工程を含んでもよい。
【0033】
この態様において、CVPbを測定して保存する工程は、アブレーションコンソール内のプロセッサにより行われてもよい。
【0034】
この態様において、CVPbを測定して保存する工程は、アブレーションエネルギーを送達する前の所定の期間内、例えば10分以内、5分以内、1分以内に行われてもよい。
【0035】
この態様において、CVP2を測定する工程は、アブレーションエネルギーを送達している間、及び/又はアブレーションエネルギーを送達し終えた後に行われてもよい。
【0036】
この態様において、奇静脈に送達シースを送達する工程は、送達シースを大腿静脈に導入する工程を含んでもよい。
【0037】
この態様において、奇静脈に送達シースを送達する工程は、送達シースを頸静脈に導入する工程を含んでもよい。
【0038】
この態様において、奇静脈に送達シースを送達する工程は、T7レベルとT11レベルとの間の奇静脈の領域に送達シースを送達する工程を含んでもよい。
【0039】
この態様において、1つ以上のアブレーション要素を配置する工程は、1つ以上のアブレーション要素を、奇静脈からの小孔と小孔から25mmの位置との間の肋間静脈内の領域内に位置決めする工程を含んでもよい。
【0040】
この態様において、本方法は、CVP2がCVPbから所定の圧力を差し引いた値以下である場合に成功工程を実行する工程をさらに含んでもよく、任意で、所定の圧力は、10mmHg、20mmHg超、又はユーザ設定値の内の少なくとも1つである。
【0041】
この態様において、成功工程は、アブレーションコンソールのユーザインターフェース上にユーザメッセージを配信する工程を含んでもよい。ユーザメッセージはCVPbとCVP2の差を含んでもよい。ユーザメッセージは所定の圧力を含んでもよい。CVP2が経時的に測定された複数の測定値を含む場合、ユーザメッセージはCVPbとCVP2を時間と共にグラフで示す視覚的表現(任意にグラフ)を含んでもよく、任意でグラフは所定の圧力を示す。
【0042】
この態様において、測定工程は患者の大静脈で生じ又は行われてもよい。
【0043】
この態様において、送達シースは、本明細書の送達シースの何れのものであってもよい。
【0044】
この態様において、CVP2は、経時的に得られた複数の測定値を含んでもよい。
【0045】
本開示の一態様は、近位端(例えば、486)と、遠位端(例えば、487)と、壁及びルーメン(例えば、491)を有する管状部(例えば、481)と、1つ以上の圧力センサ(例えば、483)とを備える圧力モニタリング送達シース(例えば、480)である。この態様に関して記載された特徴の何れかを、この態様における他の好適に組み合わせ可能な特徴と組み合わせてもよい。
【0046】
この態様において、1つ以上の圧力センサは、管状部の遠位端より24cm~48cmの範囲に配置されてもよい。
【0047】
この態様において、1つ以上の圧力センサは、管状部の近位端より32cm~56cmの範囲に配置されてもよい。
【0048】
この態様において、管状部は、50cm~115cmの範囲の作動長さ(例えば、482)を有してもよい。
【0049】
この態様において、1つ以上の圧力センサは、管状部の壁に配置されてもよい。
【0050】
この態様において、1つ以上の圧力センサは、光学センサ、歪みセンサ、フィルムセンサ、又は可変容量センサの内の1つ以上を含んでもよい。
【0051】
この態様において、1つ以上の圧力センサは、MEMSセンサを含んでもよい。
【0052】
この態様において、1つ以上の圧力センサは、管状部の異なる半径方向位置又は異なる軸方向位置の一方又は両方に配置された複数の圧力センサを含んでもよい。
【0053】
この態様において、1つ以上の圧力センサは、保護圧力伝達カバーで覆われていてもよく、この保護圧力伝達カバーは、任意で可撓性膜であってもよく、任意で管状構造体の外表面と面一であってもよい。
【0054】
この態様において、1つ以上の圧力センサは、コネクタに電気的に接続されてもよく、コネクタは、圧力測定コンソールに接続可能なように構成及び適合されてもよい。
【0055】
この態様において、管状部は、管状部の遠位領域がアクセスポイントからT7レベルとT11レベルの間の奇静脈に到達することを可能にする作動長さを有してもよく、アクセスポイントは大腿静脈又は頸静脈であってもよい。管状部の作動長さは、50cm~115cmの範囲、任意で80cmであってもよい。
【0056】
この態様において、シースはさらに、管状部の遠位端に近接して、管状部の外面に配置されてもよい展開可能なバルーン(例えば、583、603)を含んでもよい。
【0057】
この態様において、展開可能なバルーンは、送達シースに対して半径方向に非対称に展開されるように位置決め及び適合され、送達シースの第1半径方向の側面に展開するように位置決め及び適合されてもよい。戻り電極は、少なくとも第1半径方向の側面の反対側の側面に配置されてもよい。戻り電極は、管状部の遠位端から15cm以内に在ってもよい。戻り電極は、10mm2~200mm2の範囲の表面積を有してもよい。戻り電極は、各々が1mm~10mmの範囲の長さを有し、5mm~10mmの範囲の間隔を空けて互いに配置された複数の電極を含んでもよい。戻り電極は、放射線不透過性材料を含んでもよい。温度センサは、第1半径方向の側面とは反対側の側面に配置されてもよい。
【0058】
この態様において、シースは、管状部の壁内に造影剤送達ルーメンをさらに含んでもよく、造影剤送達ルーメンは、管状部の遠位端に近接して配置されたポートと流体連通している。ポートは圧力開放弁を有していてもよく、任意で、圧力開放弁は、造影剤送達ルーメン内の圧力が弁の外部より50~150mmHgの範囲で大きいときに開くように定格されている。
【0059】
本開示の一態様は、圧力モニタリング送達シースであって、近位端と、遠位端と、壁と、ルーメンと、管状部の遠位端から24cm~48cmの範囲に位置し近位端から32cm~56cmの範囲に位置する圧力センサとを有する管状部を備え、管状部は、50cm~115cmの範囲の作動長さを有する、圧力モニタリング送達シースである。この態様において、シースは、本明細書における任意の圧力モニタリング送達シースの任意の特徴を含んでもよい。
【0060】
本開示の1つの態様は、患者の内臓神経をアブレーションする方法であって、送達シースを奇静脈に送達する工程と、シース内の膨張ルーメンを通して膨張液を送達し、送達シースの遠位端の近位に在る膨張可能な構造体を膨張させる工程と、送達シースを通して1つ以上のアブレーション要素を有するアブレーションカテーテルを送達し、1つ以上のアブレーション要素を組織に近接して配置する工程と、1つ以上のアブレーション要素及び組織にアブレーションエネルギーを送達する工程と、を含む方法である。この態様において、膨張可能な構造体を膨張させることにより、奇静脈の血流を減少させることができる。
【0061】
本開示の一態様は、近位端と、遠位端と、その間のルーメンと、遠位端に近接し外面上に展開可能なバルーン(例えば、583)とを備える送達シースである。この態様において、送達シースは、本明細書における任意のシースの任意の他の好適に組み合わせ可能な特徴を含んでもよい。
【0062】
本開示の一態様は、送達シースであって、近位端と、遠位端と、その間のルーメンと、遠位端に近接し、送達シースの外面上に在る展開可能なバルーンと、を備え、展開可能なバルーンは、送達シースに対して半径方向に非対称に展開されるように位置決め及び適合され、送達シースの第1半径方向の側面に展開されるように位置決めされる。この態様において、送達シースは、本明細書における任意のシース(例えば、送達シース)の任意の他の好適に組み合わせ可能な特徴を含んでもよい。
【0063】
本開示の一態様は、送達シースであって、近位端と、遠位端と、その間の壁に因って画定されたルーメンと、壁内の造影剤送達ルーメンと、を備え、造影剤送達ルーメンは、遠位端に近接して配置されたポートと流体連通している。ポートは、任意で、造影剤送達ルーメン内の圧力がバルブの外部より50~150mmHgの範囲で大きいときに開くように定格された圧力開放バルブを備える。この態様において、シースは、造影剤送達コネクタとストップコックバルブとをさらに備えてもよい。
【0064】
本明細書に含まれる図面は、本明細書の物品、方法及び装置の様々な例を図示する為のものであり、教示される範囲をいかなる形でも限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】胸部内臓神経のアブレーションの為に肋間静脈内に配置されたアブレーションカテーテルの等角概略図である。
【
図2】肋間静脈及び中心奇静脈に配置されたアブレーションカテーテルの横断面概略図である。
【
図3】患者のT8~T12胸部領域のAP蛍光透視画像である。
【
図4】患者のT8~T12胸部領域のRAO30蛍光透視画像である。
【
図5A】2つのコイル状RF電極を有するアブレーションカテーテルの概略図である。
【
図5B】2つのコイル状RF電極と遠位展開可能要素を有するアブレーションカテーテルの概略図である。
【
図5C】カテーテルシャフトの第1、第2及び第3部分を示す概略図である。
【
図5D】螺旋電極の巻線の間に螺旋パターンで配置された灌流孔と、遠位電極の遠位に在る灌流孔とを有するアブレーションカテーテルの遠位部又は部分の概略図である。
【
図5E】螺旋電極の少なくとも一部の巻線の間に螺旋パターンで配置された潅流孔と、遠位電極の遠位で近位電極と遠位電極の間に配置された複数の潅流孔とを有するアブレーションカテーテルの遠位部の概略図である。
【
図6】表面にRF電極を有する拡張可能なバルーンを備えるRF電極を有するアブレーションカテーテルの概略図である。
【
図7B】拡張可能なバルーン上にRF電極パッドを備えたアブレーションカテーテルの概略図である。
【
図8】超音波トランスデューサを備えたアブレーションカテーテルの概略図である。
【
図10】圧力モニタリングセンサを備えた例示的な送達シースの概略図である。
【
図11A】展開可能なバルーンを備えた例示的な送達シースの概略図である。
【
図11B】非対称の展開可能なバルーンと戻り電極を備えた例示的な送達シースの概略図である。
【
図12D】例示的な送達システムの構成要素を示す様々な図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本明細書の開示は、一般に、内臓静脈容量を増加させることにより心不全及び高血圧の少なくとも一方を治療する方法に関する。幾つかのアプローチには、内臓静脈容量又は静脈のコンプライアンスを増加させる為に標的組織を経血管的(例えば、経静脈的)にアブレーションする為のシステム、装置、及び方法が含まれる。装置及び方法は、幾つかの例において、内臓静脈容量を増加させるべく内臓神経をアブレーションする為に使用されてもよい。例えば、本明細書に開示される例示的なアブレーション装置は、前ガングリオン性大内臓神経(「GSN」)、小内臓神経、又は最小内臓神経、もしくはそれらの根(TSN神経根)の1つ等の胸部内臓神経(「TSN」)の領域内の標的血管又は複数の血管の内部に進めることができる。標的血管は、例えば、肋間静脈又は奇静脈(又はその両方)若しくは奇静脈系の静脈であってもよく、好ましくは、最下部(すなわち、最も後方)の3つの肋間静脈(T9、T10、又はT11であってもよい)の内の1つ以上である。
【0067】
本明細書における方法として、大内臓神経又は大内臓神経根等の胸部内臓神経をアブレーションすることを記載する。本明細書における方法は、大内臓神経又は大内臓神経根を標的とする具体例を提供することがあるが、本明細書における1つ以上の治療を実施する為に、代替的に、又はそれに加えて、他の胸部内臓神経(例えば、小内臓神経、最小内臓神経)をアブレーションしてもよい。
【0068】
図1は、例示的なアブレーションカテーテルの配置の為の非限定的な例示的位置を示す。
図1は、T12(62)、T11(63)、T10(64)、及びT9(65)椎骨、椎間板、交感神経幹54、奇静脈50、右T11肋間静脈55、右T10肋間静脈56、右T9肋間静脈66、GSN根53、及び完全に形成されたGSN52を含む患者の胸椎を示す。小内臓神経及び最小内臓神経ならびにそれらの根は、簡略化の為に省略されている。
図1は、GSN又はその根をアブレーションする為の例示的なアブレーションカテーテルの配置を示し、その追加の例は本明細書で議論される。小内臓神経又は最小内臓神経ならびにその根のアブレーションは又、治療効果を有し、手術目的であってもよいことに留意されたい。例示的な送達シース80(本明細書における送達シースの任意の数の特徴を含んでもよい)が、奇静脈内に配置された状態で示されていて、アブレーションカテーテル81が、シースを通って送達され、奇静脈からT11肋間静脈内に通過するように示されている。交感神経幹は背骨と実質的に平行に走り、常に各肋椎関節61の近くを通っている(
図2参照)。体の右側では、GSN根が交感神経幹から分岐し、典型的にはT9椎骨の頭側で収束してGSNを形成し、GSNは交感神経幹から脊椎の前中心に向かって斜めに走行し、肋間静脈と頭頂胸膜60の間で肋間静脈の前方に位置する(
図2参照)。奇静脈50は脊柱の前面に沿って走行し、
図1に示すようにやや直線的で脊柱の軸と平行であってもよい。
【0069】
TSN、特にGSNを経血管的にアブレーションする為の血管内アプローチは、アクセスイントロデューサーシース(例えば12F)を用いて患者の頸静脈又は大腿静脈で静脈血管系にアクセスする工程と、送達シース(例えば、9Fシース)を奇静脈(例えば、標的肋間静脈の1つ又は2つ上の胸部レベルまで)に送達する工程と、幾つかの実施形態において造影剤をシースを通して送達して蛍光透視法で静脈の位置を示す工程と、幾つかの実施形態においてガイドワイヤ(例えば、0.014”ガイドワイヤ)を送達シースを通して、標的とするT9、T10、又はT11肋間静脈に送達する工程と、アブレーションカテーテルを送達シースを通して奇静脈に送達し、幾つかの実施形態においてはガイドワイヤにより、アブレーション要素を肋間静脈、奇静脈、又はその両方に配置する工程と、任意で、アブレーションカテーテル上の放射線不透過性マーカを解剖学的ランドマークと位置合わせして(又はそれに対して位置決めして)、1つ以上の非標的構造を傷つけるリスクを最小限に抑えながら、標的TSN/GSNをアブレーションする効果を最大化する領域にアブレーション要素を位置決めする工程の内の1つ以上を含んでもよい。
【0070】
この領域の近傍に在る、傷つけてはならない重要な解剖学的構造には、交感神経幹54、迷走神経、胸管、食道等が含まれる。従って、安全性を確保する為に、アブレーションゾーンはこのような構造を傷つけない安全な領域内に収めなければならない。
【0071】
骨、放射線不透過性造影剤を注入した場合は血管、放射線不透過性材料で作製した場合は医療器具は蛍光透視法で見えるが、神経は見えない。安全性を確保しながらTSN(例えば、GSN)の効果的なアブレーションを確実に行う為、手順に従って、肋間静脈、奇静脈、又はその両方からTSN(例えば、GSN)を経血管的(例えば、経静脈的)にアブレーションするように設計されたアブレーション装置が提供される。この手順は、骨又は血管構造に対してアブレーションカテーテルのアブレーション要素を配置する為の蛍光透視法撮像を含んでもよい。
【0072】
右GSNをアブレーションする方法の第1実施形態では、近位の放射線不透過性マーカ136、遠位の放射線不透過性マーカ130、アブレーション要素131又は複数のアブレーション要素132、133、及びアブレーション要素と遠位の放射線不透過性マーカとの間の任意の間隙135を有する単に例示的なアブレーションカテーテルが、奇静脈50から下側の3つの胸部レベル(例えば、T9、T10、T11)の内の1つの肋間静脈55内に進められる。Cアームは前後方向(AP)に配置される。幾つかの実施形態において、交感神経幹が傷害を受ける危険性がないことを確認する為に、肋椎関節に対する遠位の放射線不透過性マーカ130の位置を評価してもよい(例えば、CアームをRAO方向にして)。Cアームは、肋椎関節61と椎骨69の前正中線との間の肋間静脈の部分の2D投影を最大化する為に、右斜めに(RAO方向)に角度を付けてもよい(
図4)。例えば、Cアームは、APから20°~70°の範囲(例えば、30°~60°の範囲、35°~55°の範囲、約30°、近位及び遠位のROマーカ間の投影距離を最大にする角度)の右前斜(RAO)角度で配置してもよい。この画像により、ユーザは遠位の放射線不透過性マーカが肋椎関節61に近すぎないことを確認してもよい。例えば、遠位の放射線不透過性マーカがアブレーション要素の遠位に直接配置される場合、交感神経幹が傷付けられないことを確実にする為に、少なくとも3mm(例えば、少なくとも5mm)の距離を選択してもよい。他の例では、遠位の放射線不透過性マーカがアブレーション要素の遠位に、両者の間に既知の間隔を空けて配置される場合、遠位の放射線不透過性マーカは交感神経関節の安全性を確保する為に肋椎関節と整列させるか、その近位に配置することができる。遠位の放射線不透過性マーカが肋椎関節に近すぎるか、肋椎関節を越えている場合は、遠位の放射線不透過性マーカと肋椎関節との間に許容可能な距離が確認されるまでカテーテルを引き戻してもよい。アブレーション要素が複数のアブレーション要素(例えば2つ)を備える場合は、カテーテルを引き戻して遠位の放射線不透過性マーカを肋椎関節に対して適切に配置する前に、より近位のアブレーション要素から最初にアブレーションを行うことができる。そして、より遠位のアブレーション要素からのアブレーションを行ってもよい。
【0073】
右GSNをアブレーションする方法の第2実施形態において、近位の放射線不透過性マーカ136、遠位の放射線不透過性マーカ130、アブレーション要素131又は複数のアブレーション要素132、133、及びアブレーション要素と遠位の放射線不透過性マーカとの間の任意の間隙135を有するアブレーションカテーテルが、奇静脈50から下の3つの胸部レベル(例えば、T9、T10、T11)の内の1つの肋間静脈55内に進められる。Cアームは前後方向(AP)に配置される。近位の放射線不透過性マーカ136は、肋間静脈の小孔59又は椎骨69の正中線に合わせてもよい。小孔は、例えば造影剤を注入して蛍光透視法で血管系を見ることに因って見つけることができ、又ガイドワイヤが以前に標的肋間静脈に配置されていた場合には、ガイドワイヤ又はアブレーションカテーテルの曲がりが小孔の位置を示すことができる。幾つかの実施形態において、交感神経幹が傷付けられる危険性がないことを確認する為、肋椎関節に対する遠位放射線不透過性マーカ130の位置を評価してもよい(例えば、CアームをRAO方向にして)。Cアームは、肋椎関節61と椎骨69の前正中線との間の肋間静脈の部分の2D投影を最大化する為に、右斜め(RAO方向)に角度をつけてもよい(
図4)。例えば、Cアームは、APから20°~70°の範囲(例えば、30°~60°の範囲、35°~55°の範囲、約30°、近位及び遠位のROマーカ間の投影距離を最大化する角度)の右前斜(RAO)角度で配置してもよい。この画像により、ユーザは遠位の放射線不透過性マーカが肋椎関節61に近すぎないことを確認してもよい。例えば、遠位の放射線不透過性マーカがアブレーション要素の遠位に直接配置される場合、交感神経幹が傷付けられないことを確実にする為に、少なくとも3mm(例えば、少なくとも5mm)の距離を選択することができる。他の例では、遠位の放射線不透過性マーカがアブレーション要素の遠位に、両者の間に既知の間隔をあけて配置される場合、遠位の放射線不透過性マーカは交感神経関節の安全性を確保する為に肋椎関節と整列させるか、その近位に配置してもよい。遠位の放射線不透過性マーカが肋椎関節に近すぎるか、肋椎関節を超えている場合は、遠位の放射線不透過性マーカと肋椎関節との間の距離が許容できる距離になるまでカテーテルを後退させてもよいが、この場合、特に奇静脈が右偏位している場合には、近位の放射線不透過性マーカが奇静脈内に配置されてもよい。
【0074】
右GSNをアブレーションする方法の第3実施形態では、遠位の放射線不透過性マーカ130、アブレーション要素131又は複数のアブレーション要素132、133、及びアブレーション要素と遠位の放射線不透過性マーカとの間の間隙135を有するアブレーションカテーテルが、奇静脈50から下の3つの胸部レベル(例えば、T9、T10、T11)の内の1つの肋間静脈55内に進められる。Cアームは、肋椎関節61と椎骨69の前正中線との間の肋間静脈の部分の2D投影を最大化するように、右斜めに角度がつけられている(
図2)。例えば、Cアームは、APから20°~70°の範囲(例えば、30°~60°の範囲、35°~55°の範囲、約30°、近位及び遠位のROマーカ間の投影距離を最大化する角度)の右前斜(RAO)角度で配置してもよい。前後(AP)から見た蛍光透視法画像を
図3に示す。比較として、RAO30°の蛍光透視法画像を
図4に示す。カテーテルを前進させて、遠位の放射線不透過性マーカ130を肋椎関節61と整列してもよい。交感神経幹54は肋椎関節61に隣接しているので、遠位の放射線不透過性マーカとアブレーション要素との間に間隙を設けることにより、交感神経幹を傷つけないようにすることができる。間隙は、例えば、0~25mmの範囲の長さ(例えば、3~25mmの範囲、5~25mmの範囲、5~20mmの範囲)であってもよい。幾つかの実施形態において、膨張可能なバルーン134が間隙内のカテーテルシャフト上に配置されることがあり、このバルーンは、カテーテルを固定したり、バルーンの近傍にアブレーションエネルギーを封じ込めたりするのに役立つことがある。幾つかの実施形態において、アブレーション要素の遠位側のカテーテルシャフト138は、肋間静脈の狭い遠位部分を通る送達を容易にする為に、シャフトの残りの部分よりも狭く、又はより柔軟であってもよい。幾つかの実施形態において、アブレーション要素は、遠位の放射線不透過性マーカが肋椎関節と整列しているときに椎骨69の前正中線までアブレーションできる長さを有する。例えば、アブレーション要素は、5~25mmの範囲内(例えば、10~25mmの範囲内、15~20mmの範囲内)の全長を有してもよい。アブレーションカテーテルは、アブレーション要素のすぐ近位に位置する近位の放射線不透過性マーカを有していてもよい。幾つかの実施形態において、近位の放射線不透過性マーカが椎骨69の前正中線に在ることを確認する為、アブレーションエネルギーを送達する前にユーザは近位の放射線不透過性マーカを画像化してもよい。近位の放射線不透過性マーカが正中線69の左側に在る場合、例えば患者が極端に小柄な場合、胸管や食道等の非標的組織を傷付ける危険性がある。このリスクを軽減する為に、より小さなサイズのアブレーション要素を有するカテーテルを使用してもよく、又はアブレーション要素が複数のアブレーション要素で構成されている場合には、正中線69と遠位の放射線不透過性マーカとの間の要素のみをアブレーションの為に作動させてもよい。逆に、近位の放射線不透過性マーカが正中線69の右側に在る場合、例えば患者が極端に大柄な場合、GSNを見逃す危険性がある。このリスクを軽減する為に、近位の放射線不透過性マーカが正中線69と一直線に並ぶまでアブレーション要素の位置を後退させて、他のアブレーションを他の肋間レベル又は同じ肋間静脈内で行ってもよい。
【0075】
右GSNをアブレーションする方法の第4実施形態において、複数のアブレーション要素を含んでもよいアブレーション要素131と、アブレーション要素の遠位端に位置する遠位の放射線不透過性マーカと、アブレーション要素の近位端に位置する近位の放射線不透過性マーカとを備えるアブレーションカテーテルが、奇静脈から下の3つの胸部レベル(例えば、T9、T10、T11)の内の1つに在る肋間静脈内に進められる。Cアームは、肋椎関節61と椎骨69の前正中線との間の肋間静脈の部分の2D投影を最大化するように、右斜めに角度がつけられている(
図2)。例えば、Cアームは、APから25°~65°の範囲(例えば、30°~60°の範囲、35°~55°の範囲、約30°)の右前斜(RAO)角度で配置してもよい。カテーテルを前進させ、遠位の放射線不透過性マーカを斜視における肋椎関節と椎体の対向縁との相対的な位置に合わせる。例えば、遠位の放射線不透過性マーカは、斜視図において肋椎関節と椎体の対向縁との中間に位置する点に合わせてもよい。アブレーション要素は、ほとんどの患者においてGSN位置範囲68をカバーすると予想される全長を有してもよい。アブレーションエネルギーは、カテーテルを動かさずにその範囲をアブレーションする為にアブレーション要素から送達されてもよい。幾つかの実施形態において、カテーテルを別の肋間レベルに移動させて、同じ方法の工程を用いて第2のアブレーションを行ってもよい。
【0076】
上記に開示された配置戦略の例示的な実施形態のいずれかを実行すると、アブレーション要素131が30mm未満(例えば、25mm未満、20mm未満、約15mm)の全長を有する場合、大多数の患者において交感神経幹が傷付くことから免れることが期待される。さらに、本明細書の方法を実施する場合、アブレーション要素131が15mm以上の全長を有する場合、大多数の患者においてGSNがアブレーションされることが期待される。従って、例示的なアブレーション要素131は、これらの配置戦略を用いる患者の大多数に対して有効かつ安全であるように、15mm~30mmの範囲の全長を有してもよい。しかしながら、アブレーション要素の全長がより小さい方が一部の患者に適している場合がある。例えば、アブレーション要素は、5~25mmの範囲内(例えば、10~20mmの範囲内、又は10~15mmの範囲内)の全長を有してもよい。
【0077】
本明細書で使用される場合、アブレーション要素は、単一の構造又は複数の構造を指すことがある。例えば、本明細書で使用されるように、アブレーション要素は、軸方向に間隔を空けて配置された複数のアブレーション電極を含んでもよく、これらの各々は、アブレーションエネルギーの送達を容易にするように適合されてもよい。
【0078】
例えば本明細書における配置戦略の例示的な実施形態の内の1つを使用して、許容可能なアブレーション要素の配置が行われると、カテーテルを移動させることなく、アブレーション要素又は複数のアブレーション要素からアブレーションエネルギーを送達することができる。肋間静脈の周囲の円周方向に2mm~10mmの範囲(例えば、2mm~8mmの範囲、3mm~8mmの範囲、約5mm)の深さの組織をアブレーションする為に、アブレーションエネルギーをアブレーション要素から送達してもよい。幾つかの実施形態において、特に奇静脈が右偏である場合、別の胸部レベル(例えば、より頭側のレベル、より尾側のレベル、患者の同じ側のT9、T10、T11肋間静脈の別のレベル)で手順を繰り返してもよい。アブレーション要素又は複数のアブレーション要素の両端に遠位及び近位の放射線不透過性マーカを設けることに替えて、又は加えて、アブレーション要素自体が放射線不透過性であってもよく、解剖学的ランドマーク(例えば、脊椎の正中線、肋椎関節等)に対してアブレーション要素の遠位端又は近位端を配置する為に本明細書と同じ方法を用いてもよい。従って、本明細書で使用する放射線不透過性マーカという語句は、アブレーション要素が放射線不透過性である場合に、アブレーション要素を表すことがある。幾つかの代替実施形態では、放射線不透過性マーカは、1つ以上のアブレーション要素の下又は隣に配置された比較的長い放射線不透過性マーカを含んでいてもよく、長い放射線不透過性マーカの近位端は、少なくともアブレーション要素の近位端と整列しているか、又は最大で3mmまでアブレーション要素の近位側に延びていて、長い放射線不透過性マーカの遠位端は、少なくともアブレーション要素の遠位端と整列しているか、又は最大で3mmまでアブレーション要素の遠位側に延びている。
【0079】
上記に開示した配置戦略の例示的な実施形態のいずれにおいても、アブレーション要素の一部が奇静脈内に在り、残りが肋間静脈内に在る場合、特にアブレーションカテーテルが10~25mmの範囲の全長を有するアブレーション要素又は複数の要素を有する場合がある。奇静脈は肋間静脈よりも大きく、血流が多い為、奇静脈周辺、或いは肋間静脈内でも効果的なアブレーションを行う能力に影響を与えることがあり、完全に肋間静脈内で行うアブレーションとは異なるエネルギー送達パラメータを必要とすることがある。これを解決する為に、アブレーションカテーテルは複数のアブレーション要素を有してもよく、少なくとも1つは完全に肋間静脈内に配置され、残りは肋間静脈又は奇静脈若しくはその両方に配置されてもよい。異なるシナリオに対して異なるアブレーションエネルギー送達パラメータが使用されてもよく、例えば、より高い出力又はエネルギーが奇静脈内のアブレーション要素に送達されてもよく、又はアブレーションエネルギーが完全に又は部分的に肋間静脈内に在る要素にのみ送達されてもよい。複数のアブレーション要素の位置は、蛍光透視法撮像に因って、又は各アブレーション要素(例えば、RF電極)と分散電極との間の電気インピーダンスをモニタリングすることに因って決定してもよい。
【0080】
幾つかの実施形態において、2又は3つのレベルでアブレーションしてもよく、これにより有効性を更に高めてもよい。
【0081】
代替的な装置及び使用方法は、比較的短いアブレーションを生成する為に使用され、GSN位置範囲68内で複数のアブレーションを生成する為に複数回再位置決めされる、より短いアブレーション要素を含んでもよい。幾つかの実施形態において、アブレーションは、例えば、奇静脈から行われてもよく、異なるエネルギー送達パラメータ、例えばより高いエネルギー又は出力を使用してもよい。
【0082】
肋間静脈及び又は奇静脈からTSN(例えば、GSN)をアブレーションするように適合された例示的なアブレーションカテーテルは、例えば、本明細書に開示された配置戦略の1つ以上の実施形態を使用して、T9、T10、又はT11肋間静脈の所望の位置に経血管的に送達されること、大多数の患者において重要な非標的構造を安全に回避しながら標的TSNを効果的にアブレーションするように解剖学的特徴に対して位置決めされること、及び標的TSNをアブレーションすることができるアブレーションエネルギーを送達することを可能にする特徴を有してもよい。アブレーション用カテーテル及びシステムの特徴により、ユーザは、有効性や安全性を犠牲にすることなく、比較的容易かつ効率的にTSNをアブレーションすることができる。例えば、カテーテルのアブレーション要素が一旦位置決めされると(例えば、本明細書に開示された方法を用いて)、アブレーションエネルギーは、ボタンを押すだけで、又は少なくともカテーテルの最小限の調整、再位置決め、引っ張り、ねじり、又はエネルギー送達に関する最小限のユーザの決定により、コンピュータ化されたアブレーションコンソールから送達されてもよい。本明細書で開示されるアブレーションカテーテル及びシステムの特徴により、TSN/GSNのアブレーションを、1回の配置及びエネルギー送達手順により、又は場合に因っては追加の配置(例えば、T9、T10、又はT11肋間静脈への別の配置)及びエネルギー送達により、大多数の患者において高い確率で成功させることができる。
【0083】
経血管的アブレーション(GSNの幾つかの実施形態において)の為に標的の解剖学的位置に送達することができる例示的なアブレーションカテーテルは、近位端と、遠位端と、その間の細長いシャフトと、遠位部(例えば、最も遠位の7cmを含む)と、遠位部上、遠位部に在る、又は遠位部に保持されるアブレーション要素を備えてもよい。アブレーション要素は、幾つかの実施形態では、5mm~25mmの範囲、好ましくは10mm~25mm(15mm~20mm等)の範囲の長さ、及び血管表面から少なくとも5mmの半径方向の深さを有するアブレーションを生成するように適合(サイズ及び/又は構成を含む)されてもよい。カテーテルの近位端には、電気的接続部や流体接続部を収納したり、カテーテルの取り扱いを容易にしたりする為のハンドルを配置してもよい。ストレインリリーフ領域から遠位先端部までの細長いシャフトはヒト患者の大部分において、遠位部を大腿静脈アクセス(又は頸静脈、上腕静脈、橈骨静脈、肝静脈、又は鎖骨下静脈のような他のアクセス位置)等の動脈切開部からT11肋間静脈への遠位部の送達を可能にする100cm~140cm(例えば110cm~130cm、例えば約120cm)の長さを有してもよく、又はほとんどの患者において頸静脈アクセスからT11肋間静脈への遠位部の送達を可能にする50cm~140cmの長さを有してもよい。9F送達シース(本明細書の送達シースの何れか等)を通して送達可能である為に、カテーテルは、少なくともその送達状態において3mm(例えば、2.5mm、2mm、1.5mm)の最大外径を有してもよい。カテーテルは、幾つかの実施形態において、送達シースから前進して標的血管内に配置されると、この寸法を超えて拡張する展開可能な構造を有してもよい。奇静脈から肋間静脈に接近することを含む、血管内アプローチから肋間静脈、特にT9、T10又はT11肋間静脈にアブレーション要素を送達する為のアブレーションカテーテルは、ガイドワイヤによる容易なトラッキング、押しやすさ、カテーテルのハンドルからの並進力の伝達、及び奇静脈から肋間静脈へのきつい屈曲部をキンクすることなく通過することを容易にする特徴を有するシャフトを有してもよい。
図5Cに示すように、カテーテルシャフトは、第1部分340、第2部分341、及び第3部分342を有してもよい。第1部分340は、第2部分及び第3部分よりも可撓性が高くてもよく、図示のように2つのコイル電極133及び132のようなアブレーション要素を保持してもよい。この第1部分は、奇静脈から肋間静脈へのきつい屈曲部(例えば、曲率半径≧5mmを有し、120度までの角度を有する)を通過することができる可撓性を有してもよい。第1部分は、60mm~100mmの範囲(例えば、約65mm)の長さを有し、50~60D、例えば55Dのデュロメータを有する単一ルーメンのPebax(登録商標)チューブから作製されてもよい。
【0084】
第2部分341は、第1部分と第3部分の間の可撓性を有してもよく、キンクに抵抗する為の移行領域及びストレインリリーフとして機能してもよい。例えば、第2部分は、15mm~25mmの範囲(例えば、約20mm)の長さを有し、60D~70D、例えば、60D~65D、例えば、63Dのデュロメータを有する単一ルーメンのPebax(登録商標)チューブから作製されてもよい。
【0085】
第3部分342は、細長いシャフトの近位領域の少なくとも一部であってもよく、押しやすさ、耐キンク性、トルク伝達、及び可撓性の為に適合されてもよい。例えば、細長いシャフトの第3部分は、カテーテルの近位端から遠位端まで約85mm(例えば、75mm~100mmの範囲内)にわたることがあり、幾つかの実施形態において、シャフトの外層に埋め込まれた金属ワイヤブレードを有してもよい。細長いシャフトの第3部分の為の例示的な材料は、70D~75D、例えば72Dのようなのデュロメータを有する押出成形Pebax(登録商標)であってもよい。例えば、第1部分340は、第3部分342よりも可撓性が高くてもよい第2部分341よりも可撓性が高くてもよく、可撓性は、より低いデュロメータの材料、より可撓性のある編組外層、又は編組外層を使用しないことに因って増加してもよい。細長いシャフトの最大外径は、少なくとも送達状態において、1.5~3mmの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態において、
図5Cに示されるように、シャフトの第1部分340は、第2部分341よりも小さい直径を有する管を用いて作製されてもよく、この管は、シャフトの第3部分342よりも小さい直径を有してもよい。例えば、第1部分は、2mmの外径を有する管を用いて作製されてもよく、第2部分は、2.5mmの外径を有する管で作製されてもよく、第3部分は、3mmの外径を有する管で作製されてもよい。幾つかの実施形態において、細長いシャフトは、5mm~30mm(例えば、約8mm)の範囲の長さを有してもよく、第1部分よりも軟質であってもよい、先細りの軟質の遠位先端部345を有してもよい。幾つかの実施形態において、シャフトの第1、第2又は第3部分は、血管系を通る送達をさらに改善する為に、外面に潤滑性コーティングを有してもよい。ガイドワイヤルーメンは、シャフトの遠位先端部に出口ポート82を有する細長いシャフトを貫通していてもよい。ガイドワイヤルーメンは、例えば、シャフトのルーメン内に配置された内径0.014”のポリイミドチューブから作製してもよい。
【0086】
アブレーションカテーテルは、幾つかの実施形態では、10mm~25mm、例えば10mm~20mm、例えば15mm~20mmの範囲の全長で、血管表面から最大で5mmまでの標的神経にアブレーションエネルギーを送達するように適合されたアブレーション要素を有してもよい。アブレーション要素は、軸方向に間隔を空けて配置されている場合でも、10mm~25mm、例えば10mm~20mm、例えば15mm~20mmの範囲の全長を有するシャフトの領域内に配置された複数のアブレーション要素(例えば2つ)から構成されてもよい。アブレーション要素は、RFアブレーション電極、コイル状ワイヤ電極、レーザー切断RF電極、導電性インクで印刷されたRF電極、拡張可能なバルーン上のRF電極(例えば、導電性インク又はフレキシブル回路を用いて作製されている)、導電性膜RF電極、拡張可能なケージ又はメッシュ上のRF電極、超音波アブレーショントランスデューサ、エレクトロポレーション電極、冷凍アブレーション要素、又は仮想RF電極の内の1つ以上を含んでもよい。
【0087】
アブレーション要素は、アブレーション要素の周囲及びアブレーション要素が配置されている血管の周囲で半径方向に対称なアブレーションエネルギーを円周方向に送達するように適合してもよい。GSNは常に肋間静脈及び奇静脈の前方を通過するが、肋間静脈又は奇静脈の周囲の組織をアブレーションすることは安全であり、許容され、又円周方向にアブレーションすることで、より単純で迅速な手術が可能になり、又、エネルギー送達の目標を定める必要がない為、ユーザのミスが起こりにくくすることができる。円周方向のアブレーションを可能にする特徴としては、限定されるものではないが、血管の円周上で血管壁に均等に接触するように拡張するアブレーション電極、導電性流体と共に使用されるアブレーション電極、標的血管のセグメント内にアブレーションエネルギーを含む電気絶縁性のバルーン又は展開可能な構造体であって放射状に向けることができるもの、円筒形の超音波トランスデューサのような円周方向にアブレーションエネルギーを向けるアブレーション要素を含んでもよい。
【0088】
幾つかの実施形態において、アブレーション要素はRF電極であり、生理食塩水がRF電極と流体連通する血管に送達されてもよい。潅流ポートと連通する潅流ルーメンは、アブレーション要素の遠位、(潅流された生理食塩水がアブレーション要素を通過することができる幾つかの設計において)アブレーション要素の下、又は幾つかの実施形態において展開可能な構造体内に配置されてもよい。灌流ルーメンは、例えば、カテーテル近位端のチューブと流体連通する細長いシャフト内のルーメンであって、流体源及びポンプに接続可能なものであってもよい。
【0089】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの展開可能な閉塞構造(例えば、バルーン、蛇腹、ワイヤメッシュ、ワイヤ編組、コーティングされたワイヤメッシュ、又はコーティングされたワイヤ編組)がアブレーション要素の遠位でシャフト上に配置されてもよい。展開可能な構造体は、エネルギー送達中にカテーテルを所定の位置に固定する機能を果たすことができ、場合に因っては、展開可能な構造体の近位に電気絶縁体を提供するか、生理食塩水を含有させることにより、交感神経幹のアブレーションを回避して安全性を向上させる可能性がある。幾つかの実施形態において、展開可能な閉塞構造はアブレーション要素の近位端のすぐ近くに配置されてもよく、奇静脈を流れる血液をアブレーションゾーンから遠ざけるように機能することができる。例えば、展開可能な閉塞構造は、約2.5mmの長さ(シャフトの軸に沿って)及び約2.5mm~7mm(例えば、3mm~6mm、4mm~5mm)の膨張直径を有するウレタンバルーン等のバルーンであってもよい。バルーンは、バルーンとカテーテルの近位端に在る膨張源に接続可能な膨張ルーメンとを接続する膨張ポートと流体連通していてもよい。幾つかの実施形態において、膨張ルーメンは、灌流源及びポンプに接続可能な灌流ルーメンと流体連通してもよい。幾つかの実施形態において、このようなカテーテルは、灌流液が膨張したバルーンから流出し、アブレーション要素に向かって流れることを可能にする孔を有するバルーンを有することができる。
【0090】
アブレーションカテーテルは、幾つかの実施形態において、アブレーション要素の近位端又はその近位のシャフト上に配置された近位の放射線不透過性マーカを備えてもよい。幾つかの実施形態において、アブレーションカテーテルは、アブレーション要素の遠位端又はその遠位のシャフト上に配置されてもよい遠位の放射線不透過性マーカを備えてもよい。幾つかの実施形態において、遠位の放射線不透過性マーカとアブレーション要素の遠位端との間に空間があってもよく、この空間は0.1mm~25mmの範囲、例えば0.1mm~5mm、例えば0.1mm~3mm、例えば0.5mm、1mm、又は1.5mmの長さを有する。例えば、
図2に示すように、遠位の放射線不透過性マーカ130を肋椎関節61のような解剖学的ランドマークと整列させるか、相対的に位置決めしてもよく、遠位の放射線不透過性マーカ130とアブレーション要素132の遠位端との間に空間135(例えば、0.1mm~25mm)を設けて、アブレーション要素が交感神経幹54から安全に離れているようにしてもよい。幾つかの実施形態において、展開可能な構造体134が、収縮状態(シャフトの外径と同様の外径、例えば1.5mm~3mmの範囲)と展開状態(外径が3mm~7mmの範囲に増大)との間で移行可能な空間内に配置されてもよい。展開可能な構造体は、バルーン、蛇腹、ワイヤメッシュ、ワイヤ編組、コーティングされたワイヤメッシュ、又はコーティングされたワイヤ編組であってもよい。
【0091】
GSNアブレーションに適合したサイズのアブレーションカテーテルの一例を
図2に示す。アブレーションカテーテル81は、大腿静脈又は頸静脈の導入部位からT11肋間静脈に到達するサイズに適合した細長いシャフトを有する。肋間静脈55内に配置されているように示されているカテーテル81の遠位部は、肋椎関節61と整列しているか、又は肋椎関節61に対して配置されている遠位の放射線不透過性マーカ130と、遠位の導電性コイル状RF電極132及び近位の導電性コイル状RF電極133を含むか又はこれらからなるアブレーション要素131と、任意でアブレーション要素131と遠位の放射線不透過性電極130との間に配置された膨張可能なバルーン134とを含む。遠位の放射線不透過性マーカ130は、幾つかの実施形態において、アブレーション要素132の遠位端から、例えば0~25mmの範囲(例えば、0.1mm~20mmの範囲、例えば0.1mm~15mmの範囲、0.1mm~3mmの範囲、例えば0.5mm、1mm、又は1.5mm)の距離135だけ遠くに離間している。カテーテル81は又、アブレーション要素131の近位端又はその近傍に位置する近位の放射線不透過性マーカ136を含む。幾つかの実施形態において、近位の放射線不透過性マーカ136は、アブレーション要素31の近位端(アブレーション要素133の近位端からであってもよい)から0mm~25mmの間で軸方向に間隔をあけて配置されている。
【0092】
本明細書に記載されたマーカと電極間の例示的な軸方向の距離(例えば、0mm~25mm、又は0mm~15mm)は、本明細書で異なる言及がない限り、本明細書の任意の他のアブレーションカテーテルに組み込んでもよい。
【0093】
アブレーション電極132及び133(又は、本明細書における任意の他のアブレーション電極)は、例えば、カテーテルシャフトに巻かれたニチノールワイヤから作製されてもよく、これにより、電極が柔軟である為、奇静脈から肋間静脈までのきつい屈曲部を通過することができ、又、長いアブレーション(例えば、5~25mm)を生成することができる。ニチノールは超弾性材料の一例で、解剖学的な屈曲部を通過する時にアブレーション要素を曲げることを可能にし、電極が屈曲部を過ぎると弾性的に線状又は直線状の構成に戻る。
【0094】
従って、本明細書における遠位部はいずれも、静止時(製造時)に線状又は直線状の構成を有する遠位部として記載されてもよい。これは、静止時に非直線的な構成に戻るか又は非直線的な構成を取る遠位部(例えば、コイル状の構成に戻る電極を有する遠位部)とは対照的である。
【0095】
幾つかの実施形態では、アブレーションカテーテル81は、生理食塩水のような流体を送達する為に、コイル電極の近くに在る潅流ルーメンと流体連通する少なくとも1つの潅流ポート137(
図2に示す)を含む。生理食塩水の送達は、装置の送達又は除去を容易にすることができ、又は、例えば、アブレーション形成を改善し、過熱を防止する為に、エネルギー送達中に使用することができる。幾つかの実施形態では、カテーテル81は、ガイドワイヤ79上に送達する為のガイドワイヤルーメン82を含んでもよい。
【0096】
図5Aは、その遠位部の少なくとも一部を含む例示的なアブレーションカテーテルの一部を示す。
図5Aのアブレーションカテーテルは、遠位のアブレーション要素及び近位のアブレーション要素を含むアブレーション要素を含む。アブレーション要素(及び本明細書における他のアブレーション要素)は、
図5Aに示すように、遠位の導電性コイル状RF電極132及び近位の導電性コイル状RF電極133を含むか、又はこれらからなる。遠位のコイル電極及び近位のコイル電極の両方は、シャフトの周囲及び少なくとも部分的にシャフトの外面に配置された螺旋コイルであってもよく、幾つかの実施形態において、シャフトの溝内に配置される。コイル電極は、螺旋状であってもよく、様々な方向、ピッチ、又はワイヤ厚さを有してもよく、ステンレス鋼又は超弾性ニチノール等の導電性材料の丸ワイヤ又はリボンワイヤから作製されてもよく、幾つかの実施形態においては電解研磨され、幾つかの実施形態においては白金イリジウム等の放射線不透過性材料を含む。或いは、1つ以上のコイル電極は、コイル状パターン又は他の柔軟なパターンを形成するニチノール管等のレーザー切断管から作製されてもよい。或いは、アブレーション要素(例えば、アブレーション要素131)は、ワイヤメッシュ又は編組の形態の遠位及び近位の可撓性電極から作製されてもよい。或いは、可撓性アブレーション要素は、各々が5mm以下、例えば3mm以下の長さを有する複数のリング電極を備えてもよい。幾つかの実施形態において、可撓性アブレーション要素は、血管壁に接触するように拡張できるように、収縮した送達状態から拡張した展開状態まで移行可能な、拡張可能な直径(例えば、最大で約5mmまでの外径を有する)を有してもよい。
【0097】
本明細書における近位電極及び遠位電極(例えば、遠位電極132及び近位電極133)等の本明細書における電極は、4mm~12mm、例えば、5mm~11mmの範囲にある長さを有してもよく、幾つかの実施形態において、それらは、5mm、5.5.mm、6mm、6.5mm、7.0mm、7.5mm、8mm、8.5mm、9mm、9.5mm、10mm、10.5mm、又は11mmである。近位電極及び遠位電極は、本明細書で提供される範囲内の長さ(例えば、5mm~11mm)を含む、同じ又は実質的に同じ長さを有してもよい。幾つかの実施形態において、電極は異なる長さを有してもよい。例えば、幾つかの例において、遠位電極132は近位電極133よりも長くてもよいが、電極は個々に、本明細書に記載の任意の長さを有してもよい。幾つかの例において、遠位電極132は近位電極133よりも短いが、電極は個々に、本明細書の任意の長さを有してもよい。
【0098】
複数の電極を有するカテーテルの場合、各電極は、細長いシャフトを通ってカテーテルの近位領域に至る独立した導線に接続され、そこで延長ケーブル又はアブレーションエネルギー源に接続可能である。これにより、各電極を独立して単極モード又は両極モードで通電することができる。
【0099】
遠位電極及び近位電極を有する幾つかのカテーテルでは、カテーテルは近位電極の遠位端と遠位電極の近位端との間に間隙を含んでもよい。幾つかの実施形態において、間隙は0~5mmの範囲、例えば0mm~4mm、例えば0.1mm~1.25mm、例えば0.25mm、0.5mm、0.75mm、1mm、又は1.25mmであってもよい。好ましくは、近位電極と遠位電極は互いに電気通信していない。或いは、近位電極と遠位電極は、互いに電気通信していない限り、その長さに沿って少なくとも部分的に互いに重なっていてもよい。
【0100】
近位電極と遠位電極との間の間隙は、連続的なアブレーション損傷の形成を妨げるような、それほど大きなものでなくともよい。本明細書に記載される間隙(例えば、0mm~5mm、例えば0.1mm~1.25mm、例えば0.25mm、0.5mm、0.75mm、1mm、又は1.25mm)は、連続的な損傷の形成をもたらすという例示的な利点を提供し得る。
【0101】
本明細書におけるアブレーションカテーテルは、1つ以上の温度センサを含んでもよい。
図5Aは、少なくとも1つの温度センサを含む例示的なアブレーションカテーテルを示す。図示のアブレーションカテーテルは、例えば、近位電極133と接触して配置され、幾つかの実施形態において、近位電極133の近位端に配置されてもよい近位温度センサ139を含む。図示のアブレーションカテーテルは又、遠位電極132と接触して配置され、幾つかの実施形態において、遠位電極の遠位端に配置されてもよい遠位温度センサ140を含む。本明細書におけるアブレーションカテーテルのいずれも、幾つかの実施形態において、近位電極と遠位電極との間、又は複数の電極の間に配置されてもよい別の温度センサを含んでもよい。1つ以上の温度センサを含むカテーテルの場合、温度センサは熱電対(例えば、T型)又はサーミスタであってもよい。幾つかの実施形態において、少なくとも1つの温度センサは、カテーテル表面から最大3mm離れた組織と接触するように、カテーテルシャフトから放射状に延びているか、又は放射状に延びることが可能である。温度センサは、カテーテルの近位領域において、センサからの信号が入力され、エネルギー送達制御アルゴリズムにおいて使用することができる、コンピュータ化されたエネルギー送達コンソールに接続可能である。
【0102】
本明細書におけるアブレーション用カテーテルはいずれも、生理食塩水(例えば、通常の生理食塩水又は高張食塩水)等の流体を血管に送達する為にカテーテルの近位領域で流体源に接続可能な灌流ルーメンと流体連通する1つ以上の灌流ポート(本明細書では孔又は開口と呼ぶことがある)を含んでもよい。ポートは、ポートと灌流ルーメンとの間の流体連通を形成する為、細長いシャフトの1つ以上の層に形成されてもよい。流体は、電極及び/又は血管壁の冷却又は熱の除去、血栓形成リスクの低減又はアブレーションの均質性の向上の為の血管からの血液の洗浄、アブレーション電極からの電気エネルギーの伝導、血管内の圧力の制御、標的血管(例えば、肋間静脈)へのアブレーションカテーテルの遠位部の送達の促進、又は標的血管からのアブレーションカテーテルの遠位部の除去の促進の為に機能してもよい。幾つかの実施形態において、1つ以上の灌流ポートは、アブレーション要素の遠位、又は複数の可撓性アブレーション要素の各々の遠位にあってもよい。幾つかの実施形態において、潅流ポートのいずれかが可撓性アブレーション要素の半径方向における下方に配置されてもよい。幾つかの実施形態において、1つ又は全ての潅流ポートは、ポートがアブレーション要素の巻線の半径方向の下方に位置しないように、コイル状アブレーション要素の巻線の間に配置されてもよい。幾つかの実施形態において、灌流ポートは、隣接するアブレーション電極間の軸方向の間隙又は空間に配置されてもよい。幾つかの実施形態において、1つ以上の灌流ポートは、展開可能な閉塞構造(例えば、バルーン)の空洞内に在り、バルーンを膨張させるように機能してもよく、バルーンは、その近位側に、流体がバルーンから血管の標的領域内に出ることを可能にする穿孔を有してもよい。
【0103】
図5A乃至5Eは、単に例示的なアブレーションカテーテルの遠位部を示しており、この実施形態において、コイル状アブレーション要素の巻線間に複数の潅流ポートを含む(1つのポート137のみに符号が付されているが、他のポートは図において見ることができる)。
【0104】
幾つかの実施形態において、
図5Dに示されるように、潅流孔(本明細書では開口又はポートと呼ばれることがある)137はコイル電極の巻線の間に配置されてもよく、又電極周りの円周方向、かつアブレーション電極の長さに沿って生理食塩水を堆積させる為に、電極周りの円周方向に分配されてもよい。
【0105】
図5Eは、アブレーションカテーテルの遠位部分の概略図であり、潅流孔137が近位螺旋電極133の少なくとも一部の巻線の間に螺旋パターンで配置され、同様に潅流孔137が遠位螺旋電極132の少なくとも一部の巻線の間に螺旋パターンで配置され、複数の潅流孔461が遠位電極の遠位に配置され、複数の潅流孔460が近位電極と遠位電極の間に配置されてもよい。
【0106】
幾つかの実施形態において、アブレーションカテーテルは、収縮した送達状態(例えば、1.5mm~3mmの範囲の外径を有する)から拡張した展開状態(例えば、2.5mm~6mmの範囲の外径を有する)に移行可能であり、カテーテルの遠位部を血管の標的領域に固定する、血流を閉塞する、生理食塩水のような送達流体を封じ込める、血管の開存性を維持する、又は電気絶縁体として機能する等の1つ以上の機能を果たす、展開可能要素を有してもよい。例えば、
図5Bに示すように、本明細書における任意のカテーテルは又、最適化された潅流と結合された遠位展開可能要素134を含んでもよく、この遠位展開可能要素は、壁接触を必要とせずに効果的なアブレーションを実現する仮想電極を形成することができる。遠位展開可能要素134は、
図5Bに示されるようなバルーン(例えば、コンプライアントバルーン)であってもよく、或いは、蛇腹又はコーティングされたステント又はメッシュであってもよい。遠位展開可能要素134は、
図5Bに示すように近位電極及び遠位電極を含んでもよいアブレーション要素の遠位に在る。
【0107】
本開示では、非標的構造体への損傷を最小化又は回避しながら、GSNをアブレーションする為にアブレーションカテーテルを肋間静脈内に配置する例示的な方法を説明した。
図5A乃至5Eに示すアブレーションカテーテルは、それらの配置方法の一部として使用することができる1つ以上の放射線不透過性マーカ(例えば、遠位マーカ130及び近位マーカ136)を含んでいた。
図5A乃至5Eのアブレーションカテーテルは、本明細書の方法を実施する際に使用されてもよいアブレーションカテーテルの一例であるが、本方法は様々なアブレーションカテーテルを用いて実施されてもよいことが理解される。従って、本明細書における方法は、本明細書における特定のアブレーションカテーテルに因って限定されないことが理解される。又、本明細書におけるアブレーションカテーテルは、本明細書における配置方法と共に使用される必要はないことが理解される。
【0108】
TSN/GSNアブレーションカテーテルの代替的な実施形態は、本明細書に記載される特徴、例えば、記載されるように間隔を空けた近位及び遠位の放射線不透過性マーカ、灌流ルーメン、温度センサ、ガイドワイヤルーメン、可撓性シャフト等を1つ以上を有することができ、又、代替的なアブレーション要素を含んでもよい。例えば、アブレーション要素は、異なる構成を有するRF電極であってもよいし、超音波、エレクトロポレーション、冷凍アブレーション、レーザー、化学的又は他のアブレーションのモダリティ等、異なるタイプのアブレーションエネルギーを送達するアブレーション要素であってもよい。本明細書における1つの実施形態又は例に関して記載されるアブレーションカテーテルの特徴は、本開示が別段示さない限り、他の好適な実施形態に組み込まれてもよい。同じ又は類似の符号を有する特徴は、幾つかの実施形態に含まれると理解され、同じ構成要素であり得る。
【0109】
図6は、拡張可能なバルーンに因って運ばれるアブレーション要素を有する例示的なアブレーションカテーテルを示す。
図6は、RFアブレーション要素を有するアブレーションカテーテルの遠位部を示し、アブレーション要素は、拡張可能バルーン144上に配置された1つ以上の導電性要素を含む。導電性要素は、フィルム又は導電性インク又はフレキシブル回路であってもよい。センサ(例えば温度センサ)をバルーン上に配置してもよい。幾つかの実施形態において、バルーンは、生理食塩水又は空気等の流体をバルーン内に送達することに因って膨張させてもよい。幾つかの実施形態において、導電性要素又はバルーンには、電極を冷却したりエネルギーを伝導したりする為に流体を通過させる穿孔が設けられていてもよい。導電性要素のパターンは、円筒形148であってもよい。
【0110】
肋間神経内からTSN又はGSNをアブレーションする為の経血管的アブレーションカテーテル241の別の実施形態を
図7Aに示す。カテーテル241は長手軸に沿って延びてもよい。例えば未拡張状態及び拡張状態を有するバルーン242の形態の拡張可能部材が、カテーテルの遠位部243に結合されていてもよい。拡張可能部材(例えば、バルーン)は、拡張状態で長手方向軸に沿って延び、血管55を取り囲む円周方向処置ゾーン248(例えば、5~25mmの範囲、10~15mmの範囲の長さを有する)を有してもよい。カテーテルは、複数の電極パッド244を有する電極アセンブリ252を含み、バルーン242に取り付けられるか、又は他の方法で固定されてもよい。各電極パッドアセンブリは、各電極パッドが一対の細長い両極電極を有し、電気トレース249で接続された第1及び第2電極パッドを支持する基板を含んでもよい。各電極パッドアセンブリの電極パッドは、互いに長手方向及び円周方向にオフセットしていてもよい。本方法は又、電極を肋間静脈の壁と電気的に結合させるように肋間静脈内でバルーンを拡張させる工程、及び肺高血圧症、又は心不全(例えば、HFpEF)等の疾患の治療の為に患者の血液量が再分配されるように肋間静脈の5mm以内のTSN又はGSNを治療的に変化させるべく各両極対の電極間で両極エネルギーを駆動する工程を含んでもよい。
【0111】
各電極パッドは、一対の電極の間に配置された温度センサを含んでもよい。バルーンの拡張により、温度センサを肋間静脈の壁と結合させてもよい。幾つかの実施形態において、本方法は、壁をほぼ均等に加熱するように、温度センサからの温度信号に応答してエネルギーを両極対に向ける工程をさらに含んでもよい。
【0112】
肋間静脈からGSNを標的とする5mmの深さのアブレーションを生成する為に、アブレーションの深さを妨げる静脈壁の組織を乾燥させることなく、より大きな出力を送達できるように電極パッドを冷却してもよい。電極は、例えば、バルーン242内に冷却剤を循環させることに因って冷却することができる。一実施形態において、バルーンチャンバーの一端に在る冷却剤注入ポート246からバルーン242内に冷却剤を注入し、チャンバーの対向端に在る出口ポート247からチャンバーを出て、出口ルーメンからカテーテルを通って戻るようにしてもよい。
【0113】
電極パッドは、標的アブレーション領域58と同じ長さ(例えば、最大20mm、約15mm、12~18mmの間)の円周方向のアブレーションパターンを作る為にバルーンの周囲に配置されてもよい。例えば、
図67Bに示すように、細長いシャフト253に取り付けられた電極パッドを有するバルーンは、約1mm~2.5mmの直径及び約3.14mm~7.85mmの円周を有する展開されていない状態を有し、約3mm~5mmの範囲の直径及び約9.4mm~15.7mmの範囲の円周を有する展開された状態に拡張可能であってもよい。電極パッド244は、5mm未満(例えば、2.5mm未満)の距離250及び3mm~3.5mmの範囲の幅又は円弧長251だけ分離又は間隔を空けて配置されてもよい。電極パッド244は、それぞれ約3mm~5mmの長さを有してもよい。
図67Aに示すように、電極パッドアセンブリ252は、電気トレース249に因って互いに接続された4つの別個の列に配置された複数の電極パッド244を備えてもよく、列はバルーン242の円周の周りに等間隔に配置されている(例えば、各90度の四分円に4列)。長手方向では、1つの列に在るパッド244は隣接する列のパッドからオフセットしていてもよい。バルーンが膨張していない状態では、電極パッド間の間隙は減少し(例えば、約0~1mm)、隣接する列は互いにかみ合う。拡張状態では、パッド間の空間250は拡張可能なバルーン242に因って約2mm~5mmに膨張する。バルーン242は、ラテックス等のコンプライアント材料であってもよいし、柔軟に折り畳まれて収縮するノンコンプライアント材料であってもよい。
【0114】
バルーンのすぐ近位に在るカテーテルシャフトは、アブレーションバルーンが肋間静脈の自然な向きに収まるようにする可撓性ネック245を備えてもよい。この位置の曲げ半径が小さい為、シャフトが硬いとアブレーションバルーンに力が加わり、肋間静脈が歪んでアブレーションゾーンの予測性が低下する可能性がある。可撓性ネックは、より柔らかいデュロメータポリマー(例えば、Pebax(登録商標))を用いて作製され、ワイヤコイルが材料に埋め込まれていてもよく、これにより押しやすさを提供しつつ、柔軟な曲げを可能にしてもよい。この種の可撓性ネックは本明細書の他のアブレーション用カテーテルに組み込むことができる。
【0115】
最も近位に在る電極は、肋間静脈の小孔付近に留置することができる。肋間静脈を通る血流は、その付近の組織を代謝的に冷却し、アブレーションの生成を妨げることがある。血流による冷却を補う為に、この近位電極には、他の電極よりも多くの量のアブレーション出力(例えばRF)が、又はより長い持続時間で送達されてもよい。
【0116】
カテーテル241は、アブレーション要素の遠位、例えばバルーン242の遠位に配置された遠位の放射線不透過性マーカ255、及び/又はアブレーション要素244の近位、例えばバルーン242の近位に配置された近位の放射線不透過性マーカ254を有してもよい。遠位及び近位の放射線不透過性マーカ255、254は、シャフトの長手方向軸に沿って、5mm~25mm(例えば、10mm~15mm)の範囲の距離だけ離間していてもよい。本明細書における放射線不透過性マーカの他の特徴又は説明が、マーカ255及び/又は254に適用されてもよい。
【0117】
図8は、例示的な超音波アブレーションカテーテルを示す。カテーテル220は、近位領域及び遠位部を有する細長いシャフト225と、遠位部に対して又は遠位部上に取り付けられたアブレーションアセンブリ232とを含む。超音波アブレーションカテーテル220は、肋間静脈内における拡張に適した形状(例えば、膨張状態で2.5~5mmの範囲の外径222)及び8~30mmの範囲の長さ223を有してもよい膨張可能なバルーン221を有する。バルーン221内には、複数の超音波トランスデューサ224が、バルーン221の中央に配置されたシャフト233上に配置されている。トランスデューサ224は、標的アブレーション領域58の長さのアブレーションを生成することができる同様の長さのアブレーションを生成する為に、5~25mmの範囲内の長さ226にわたって連続的に配置されてもよい。肋間静脈の直径が小さい為、バルーンのサイズが小さくなると、トランスデューサに接触したり、トランスデューサに因って過熱されたりする危険性があり、バルーンが破裂したり、アブレーションの有効性が低下したりする可能性がある。このリスクを改善する為に、支柱又は突起227をトランスデューサとバルーンの間に配置してもよい。支柱227は、例えば、トランスデューサ224から半径方向に離れて拡張するように弾性的に予備成形されたポリマーストランドであってもよい。標的アブレーション領域にわたるより長いアブレーションを行う為に、複数のトランスデューサを組み込んで(例えば、長さ4mmのトランスデューサを3つ)、それらの間に柔軟な間隙228を隔てて、奇静脈から肋間静脈までの小さな曲げ半径を横断するのを容易にすることができる。例えば、シャフト225は、任意でガイドワイヤ79上に送達すると共にトランスデューサ224に通電する電気導体を搬送する為のガイドワイヤルーメン229を有する編組強化ポリイミドチューブであってもよい。超音波トランスデューサ224は、標的静脈の周囲で円周方向のアブレーションを生成する為に円筒形であってもよい。或いは、超音波トランスデューサは、静脈の円周方向の部分的なセグメントであるアブレーションを生成させる為に、平坦又は半円筒形であってもよく、半径方向に識別可能な放射線不透過性マーカ230が遠位部に配置されてもよく、これにより、ユーザは、GSNが静脈55上を通過する患者の前方に向かってアブレーション方向を方向付けることができる。幾つかの実施形態において、超音波トランスデューサは、アブレーションと同時に撮像するように構成されてもよく、撮像機能は、肺、椎骨、肋骨等の近くの構造を評価する為に使用されてもよい。画像化超音波は、トランスデューサが標的GSNの方向である肺に向かっていることを確認する為に使用されてもよい。幾つかの実施形態において、シャフトは、遠位部が肋間静脈内にうまく収まるように、バルーン221の近位10mm以内に可撓性ネック231を有してもよい。
【0118】
超音波アブレーションカテーテルの代替的な実施形態において、カテーテルはアクティブ超音波トランスデューサと膨張可能な反射体バルーンとを備えて構成することができ、これらは同じカテーテル上に設けてもよいし、或いは別個のカテーテル上に設けてもよい。反射体バルーンは、2.5~4mmの範囲の膨張直径を有し、その近位表面には、反射波を標的アブレーション領域に集束させる凹状の湾曲等の形状を有することができる。反射体バルーンはトランスデューサの遠位に位置し、細い肋間静脈に挿入され、超音波トランスデューサは太い奇静脈に留まる。超音波トランスデューサは、奇静脈内の血流に曝されるか、或いは、冷却剤(例えば、滅菌水や生理食塩水等の循環冷却剤)で満たされた膨張式バルーンのチャンバー内に収容される。超音波エネルギーは遠位反射バルーンに向けて照射され、反射して内臓神経周囲の組織に集束する。この方法の利点は、アクティブ超音波トランスデューサを大型化することができ、奇静脈から肋間静脈への急な湾曲部分を通過する必要がないことである。第2の利点は、複数の肋間静脈を同じカテーテルでアブレーションの標的にすることができることである。
【0119】
カテーテル220は、アブレーション要素の遠位、例えばバルーン221の遠位に配置された遠位の放射線不透過性マーカ230と、アブレーション要素の近位、例えばバルーンの近位に配置された近位の放射線不透過性マーカとを有してもよい。遠位及び近位の放射線不透過性マーカは、シャフトの長手方向の軸に沿って、5mm~25mm(例えば、10mm~15mm)の範囲の距離だけ離間していてもよい。
【0120】
幾つかの使用方法において、アブレーションエネルギーはRFであり、エネルギー送達コントローラは、15W~50Wの範囲のRF出力を送達するように適合される。幾つかの実施形態において、コントローラは、15W~40Wの範囲、15W~35Wの範囲、又は約20W~35Wの範囲、例えば約25W、約30W又は約35WでRF出力を送達するように適合される。
【0121】
本明細書の装置の中には、標的血管への安全な送達を提供する1つ以上の特徴を有するものがあってもよい。
【0122】
本明細書で使用する装置及び方法の中には、温度をモニタリングされたエネルギー送達で安全にエネルギーを送達するものがあってもよい。
【0123】
本明細書で使用する方法の幾つかは、標的血管から最大で5mmまで離れ、5mm~25mm、例えば10mm~25mm、例えば15mm~20mm(例えば、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、20mm)の連続損傷長を有する標的領域内の神経を標的とすることができる損傷を、1回の配置及びエネルギーの送達で生成することができる。
【0124】
本明細書における装置及び方法の幾つかは、アブレーションの有効性を低下させ得る沸騰、ホットスポット、又は不規則なエネルギー送達のリスクを回避するように適合されている。さらに、一部の実施形態において、アブレーション前の配置を確認する為、又はアブレーション中もしくはアブレーション後の技術的成功を確認する為に、標的神経又は非標的神経を同定する為の神経刺激を含んでもよい。
【0125】
アブレーションの方法は、連続的なアブレーションゾーンを形成する(すなわち、互いに連結していないアブレーション組織の分離した個別の領域を持たない)ことが好ましいが、必須ではない。これにより、標的GSN神経又はGSN神経根が位置すると思われる組織の領域が、アブレーションエネルギーに因って最も効果的にアブレーションされる可能性が高くなる。連続的なアブレーション領域は円周状であってもよいし、円周状でなくてもよい。
【0126】
幾つかの実施形態において、アブレーション確認試験は、その後、例えば、神経刺激信号を送達することに因って実施されてもよい。アブレーション確認試験に対する生理学的応答(例えば、脾臓血管収縮、心拍数の増加、血圧の上昇)についてモニタリングを実施することができる。生理学的応答が、第1損傷が臨床的に有意な量のGSN遮断を提供しなかったことを示す場合(例えば、生理学的応答の欠如を観察することに因って)、アブレーションエネルギーがアブレーションカテーテルから送達され、第2の肋間静脈から最大で5mmまでの組織に第2の損傷を形成することができる。アブレーションカテーテルの遠位部は、第2肋間静脈の上方に在る(例えば、上方に在り隣接する)第3肋間静脈に移動させることができる。同じ又は異なるアブレーション確認試験を実施し、その後に別のモニタリング試験を実施することができる。生理学的応答により、第1損傷及び第2損傷が臨床的に有意な量のGSN遮断を提供しなかったことが実証された場合(例えば、生理学的応答の欠如を観察することにより)、アブレーションエネルギーをアブレーションカテーテルから送達して、第3肋間静脈から最大で5mmまでの組織に第3損傷を形成することができる。アブレーション確認試験のいずれもが、胸部内臓神経に活動電位を発生させるように構成されたアブレーションカテーテルの遠位部に配置された刺激電極から神経刺激信号を送達する工程を含んでもよい。代替的に又は追加的に、アブレーション確認試験は下肢挙上試験を含んでよい。代替的に又は追加的に、アブレーション確認試験は、静脈系に流体量を追加する工程を含んでもよい。代替的に又は追加的に、アブレーション確認試験は、ハンドグリップ試験を含んでもよい。代替的に又は追加的に、アブレーション確認試験は静脈のコンプライアンス又は静電容量を測定する工程を含んでもよい。
【0127】
アブレーション確認試験が下肢挙上試験を含む例示的な方法において、方法は以下の工程のいずれかを含んでもよい。最下部の肋間静脈のアブレーションに先立ち、脚を上げて中心静脈圧の変化を測定し、平衡化を待つことにより、中心静脈と内臓床を含む全静脈のコンプライアンスの指標であるベースライン測定値を得ることができる。その後、血液が脚に再分配されるように、脚を下ろして平衡化させることができる。その後、最下部の肋間静脈(例えば、T11)のアブレーションを、本明細書で述べたように実施することができる。その後、脚を上げ、平衡化を待って中心静脈圧を再測定することができる。その後、測定を行って、全静脈のコンプライアンスが適切に低下したかどうかを判定することができる。イエスであれば、GSNのアブレーションは成功したことになる。ノーである場合は、本明細書で説明したように、次の上位の肋間静脈(例えば、T10)のアブレーションを実施することができる。測定は繰り返すことができる。その後、全静脈のコンプライアンスが適切に低下したかどうかを判定することができる。イエスであれば、GSNは正常にアブレーションされたことになる。ノーであれば、次に高い肋間静脈(例えば、T9)のアブレーションを実施することができる。
【0128】
アブレーション確認試験が内臓床への交感神経系(SNS)流出を増加させるハンドグリップ又は他の行動を含む例示的な方法では、以下の工程を含んでもよい。アブレーションを最下部の肋間静脈(例えば、T11)で行うことができる。その後、静脈コンプライアンスを測定する。その後、ハンドグリップを所定時間(例えば60秒)行うことができる。その後、静脈コンプライアンスを再測定することができる。静脈コンプライアンスに変化がなければ、最初のアブレーションは臨床的に有意な結果を得るのに十分であったことになる。それでもなおコンプライアンスが低下する場合は、ハンドグリップによるSNS活動の一部が伝わっている。従って、最下部の肋間静脈のアブレーションは臨床的に有意な効果を得るには不十分であった。次に、次に高い肋間静脈(例えばT10)にアブレーションを行うことができる。所定時間(例えば60秒)のハンドグリップ試験を行うことができる。その後、静脈コンプライアンスを再測定することができる。コンプライアンスに変化がなければ、2回目のアブレーションは十分であった。コンプライアンスが低下していれば、ハンドグリップによるSNS活動の一部が伝わっており、次に高い肋間静脈のアブレーションでは臨床的に有意な効果を得るには不十分であったことになる。次いで、アブレーションは次に高い肋間静脈(T9)で行うことができる。3番目に低い肋間静脈より高いレベルでのアブレーションは期待できないので、この時点で処置を行う。
【0129】
エネルギー送達アルゴリズム
【0130】
本明細書の開示の1つの態様は、肋間静脈又は他の同様の血管のような細い血管の周囲で、少なくとも5mm、最大10mmの深さまで、アブレーションカテーテルから円周方向に組織をアブレーションする為に特に適するように適合されたエネルギー送達アルゴリズムに関する。アブレーションカテーテルは、本明細書におけるカテーテルのいずれかであってもよいし、他の適切に適合されたカテーテルであってもよい。以下のエネルギー送達方法は、単に例示であり、非限定的であると理解される。
【0131】
例示的なエネルギー送達アルゴリズムの第1実施形態は、「多重化単極RF」と呼ばれ、RFのパルスが非同期波形で単極構成で複数(例えば2つ)の電極に送達される。各電極は、定常周波数で交互にオン・オフするパルス波形のRFエネルギーを受信する。波形は、例えば矩形波、正弦波、又は他の形態の交流波形であってもよい。オン期間にはアブレーションレベルのRF出力が送達され、オフ期間には非アブレーションレベルのRF出力が送達される(例えば、0W~1Wの範囲、約0.1W)。各電極の波形は非同期であり、すなわち、1つの電極のオン期間と残りの電極のオフ期間が一致し、その逆も同様である。
【0132】
GSNアブレーションの為に所望の損傷を形成する為に使用されるアブレーションエネルギー送達アルゴリズムの代替的な実施形態は、「両極充填を伴う連続的単極」と呼ばれ、アブレーションRFエネルギーが単極モードで第1アブレーション電極(例えば、
図1、2、5A-5Eに示す遠位電極132)に第1電極単極持続時間送達され、次に第2アブレーション電極(例えば、近位電極133)に第2電極単極持続時間送達され、次にアブレーションRFエネルギーが第1電極と第2電極との間に両極モードで、両極持続時間の間、かつ初期両極出力で送達される。アブレーションエネルギーを受信する電極に関連する温度センサに因って測定された温度が、単極上限温度を超えて上昇した場合、RFエネルギーの初期単極出力は、2次単極出力に減少されるか、或いは出力減少に因って減少される。低出力が送達されている間に温度が再び上限温度を超えて上昇した場合、出力は、3次出力に、又は出力減少に因って、再び減少されてもよい。幾つかの実施形態において、ユーザは、各アブレーション電極への初期出力、第1及び第2電極の単極持続時間、出力減少又は第2、第3等の単極出力のようなパラメータを定義してもよい。同様に、両極段階中、初期両極出力は、活性化された電極に関連する温度センサの何れかからの測定温度が両極上限温度を上回った場合、2次双極出力に、又は出力減少に因って減少されてもよい。
【0133】
以下の開示は、幾つかの例示的な使用方法及びその工程を提供する。使用方法の幾つかの実施形態は、以下の工程の内の1つ以上を含んでもよく、その順序は、場合に因っては変化してもよく、その全ての工程が必ずしも実行される必要はない。本明細書の方法には、介入アクセスが含まれてもよく、これには、静脈介入処置に適した抗凝固療法で患者を治療する工程と、患者の右胸に戻り電極を配置する工程と、適切な場合にはヘパリン化生理食塩水を使用して、大腿静脈、鎖骨下静脈、又は頸静脈の穿刺、ガイドワイヤの挿入及びシースの配置の為の標準的な技術に従う工程と、0.035交換長さのガイドワイヤ(例えば、コーディス(Cordis)社製Amplatz Super Stiff 260cm又は同等品)を配置する工程と、6F汎用カテーテル(例えば、JR4又は同等品)をガイドワイヤにより奇静脈小孔まで進める工程と、6F汎用カテーテルを使用して、放射線不透過性造影剤をボーラス注入し、蛍光透視法を使用して奇静脈小孔を特定する工程と、奇静脈小孔をガイドワイヤと6F汎用カテーテルに係合させ、バルブ(該当する場合)を通してガイドワイヤを奇静脈内に進める工程と、6F汎用カテーテルを奇静脈アクセスシースと交換し、ここで奇静脈アクセスシースは9Fで少なくとも100cmの長さがある(例えば、アロー(Arrow)社製9F Super Arrow Flex Introducer Sheath又は同等品)である工程と、奇静脈アクセスシースをほぼT9レベルに配置する工程と、アブレーションカテーテルを導入する前に、Cアームを垂直軸からずらして調整し、撮影コントラストに因って奇静脈ツリーの最適な画像を取得する工程と、0.014交換長のガイドワイヤ(例えばチョイス(ChoICE)Pt LS Floppy又は同等品)を奇静脈アクセスシースに挿入する工程と、0.014ガイドワイヤを前進させて第1標的肋間静脈(例えばT11肋間静脈)に深く挿入する工程の内の1つ以上の工程が含まれてもよい。
【0134】
本明細書の方法には、装置、ジェネレータ、及び付属品の準備が含まれ、これには使用前にカテーテルのパッケージを検査する工程と、滅菌技術を用いてアブレーションカテーテルのパッケージを開封する工程と、無菌状態を維持しながら、カテーテルをパッケージから取り出し、滅菌フィールドに置く工程と、電極及びアブレーションカテーテルの完全性及び全体的な状態を注意深く目視検査する工程と、10cc以上の注射器に生理食塩水を充填し、注射器をアブレーションカテーテルのハンドルに在るガイドワイヤルーメンハブに接続する工程と、ガイドワイヤルーメンを生理食塩水で洗浄し、空気を除去する工程と、アブレーションカテーテルの灌流ラインを三方活栓に接続し、チューブセットを三方活栓に接続し、吊り下げられた滅菌生理食塩水バッグの生理食塩水スパイクを接続し、生理食塩水入口ラインと生理食塩水出口ラインの活栓が開位置にあることを確認して、アブレーションカテーテルを準備する工程と、潅流ポンプチューブをポンプに入れてバブルディテクタに通してポンプドアを閉める工程と、ジェネレータ(コンピュータ化されたコンソールとも呼ばれる)の電源を入れ、ポンプを初期化する工程と、ポンプを使用してアブレーションカテーテルの灌流ルーメンを洗浄し、灌流ルーメンに生理食塩水を送り込む工程と、灌流ポートが開いていることを確認する工程と、チューブとアブレーションカテーテルから気泡を取り除く工程と、生理食塩水チューブとカテーテル先端の気泡を観察し、アブレーション用カテーテルの灌流ルーメンとチューブセット内に空気がなくなるまで気泡除去を続ける工程と、灌流導管の閉塞を回避し、アブレーションカテーテルへの空気の浸入を防止する為に、血管系内に在るときに、アブレーションカテーテルを例えば2mL/分の速度で連続的に灌流してもよい工程と、灌流はアブレーション用カテーテルを体内から抜去した後においてのみ中止できる工程と、ジェネレータ上でユーザが選択可能なアブレーションパラメーターを確認する工程と、ケーブル付きアブレーションカテーテルをRFジェネレータに深く着座させる工程と、コネクタの極性を確認する工程の内の1つ以上の工程が含まれてもよい。
【0135】
本明細書の方法には、アブレーションカテーテルの挿入及びアブレーションエネルギーの送達が含まれ、これには0.014ガイドワイヤを第1標的肋間静脈に深く着座した状態で、アブレーション用カテーテルをガイドワイヤにより肋間静脈に進める工程と、アブレーションカテーテルが患者に挿入された後、ジェネレータから生理食塩水のトラッキング(本明細書に示す例)を開始する工程と、蛍光透視法を用いてアブレーションカテーテルを末梢血管から所望の位置まで通してもよい工程と、アブレーションカテーテルへの生理食塩水の注入速度を最大50mL/分まで上げて標的肋間静脈への装置の進入を補助してもよい工程と、(可能であれば)AP視で椎体の前正中線に近位のマーカを置く工程と、奇静脈から肋間静脈への小孔が患者の正中線の右側に在る場合は、近位の放射線不透過性マーカが奇静脈から肋間静脈への小孔の近位に在り、かつ患者の正中線にほぼ一致するように装置を前進させる工程と、CアームをRAO30(又は近位と遠位の放射線不透過性マーカの投影長を最大にする適切な角度)に回転させ、遠位のマーカが肋椎関節を越えていないことを確認し、必要に応じて調整する工程と、ジェネレータの両電極について、有効なインピーダンスの読み取り値(例えば、単極モードでは80~150オーム以内、両極モードでは60~80オーム以内)が表示されていることを確認する工程と、アブレーションエネルギーの送達を開始する前に、生理食塩水の注入速度を15ml/分から30ml/分にする工程と、アブレーション中に推奨される生理食塩水の注入速度は15ml/分である工程と、生理食塩水の注入速度は、RF送達開始後に15ml/分~30ml/分の範囲で調整可能である工程と、ジェネレータからRFアブレーションモードアルゴリズムを開始する工程と、RF出力の送達前、送達中、送達後にRFジェネレータのインピーダンス表示をモニタリングする工程と、RF送達中にインピーダンスの急激な上昇が見られ、それが予め設定された限界値を超えない場合は、手動で出力送達を中止する工程と、臨床的に状況を評価する工程と、必要であれば、アブレーションカテーテルを抜き取り、損傷がないか検査する工程と、スチームポップ又は自動シャットオフの場合、RFを中止し、アブレーションカテーテルを抜去し、RFジェネレータからの生理食塩水のトラッキングを終了し、目視検査を行い、凝固物、炭化、又はその他のカテーテルの欠陥がないかをチェックする工程と、患者に再挿入する前に、生理食塩水の注入速度を確認し、ポートを洗浄し、挿入後に生理食塩水のトラックングを再開する工程と、アブレーションカテーテルに欠陥がある場合は、新しいものと交換する工程と、アブレーションカテーテルを再度配置し、RFの印加を試みる工程と、幾つかの実施形態において、180秒のRFの適用は、1つの標的部位で2回以下で完了させるべきである工程、ポンプがアラームを発し、灌流が停止した場合は、直ちにカテーテルを患者から取り外し、アブレーションカテーテルを検査し、再洗浄する工程と、第1標的肋間静脈(例えばT11)のアブレーションが終了したら、ガイドワイヤとアブレーションカテーテルを第1標的肋間静脈から抜去し、奇静脈アクセスシースを所定の位置に留める工程と、標的肋間静脈からの装置の抜去を補助する為にアブレーションカテーテルの生理食塩水の注入速度を最大50cc/分まで上げてもよい工程、アブレーションカテーテルを検査の為に抜去してもよい工程、第2標的肋間静脈(例えば、T10)を奇静脈アクセスシースから可視化する為に造影剤を投与する工程と、アブレーションカテーテル挿入とアブレーションエネルギー送達の工程を繰り返し、ガイドワイヤによりアブレーションカテーテルを第2標的肋間静脈まで進め、アブレーションを行う工程と、第2標的肋間静脈のアブレーションが終了したら、アブレーションカテーテルを9Fの奇静脈アクセスシースに引き抜き、奇静脈アクセスシースから造影剤を送り、奇静脈の蛍光透視法画像を得る工程の内の1つ以上の工程が含まれてもよい。
【0136】
本明細書における方法には、アブレーションカテーテルを9Fの奇静脈アクセスシース内に引き抜き、患者から取り出す工程と、生理食塩水のトラッキング終了する工程と、コネクタケーブルを外すと便利である工程と、アブレーションカテーテルを検査する工程と、奇静脈シースを患者から抜き取り、静脈穿刺を閉じる工程と、使用後に、病院、行政、地方自治体の方針に従って装置を廃棄する工程の内の1つ以上を含んでもよい装置の引き抜きが含まれる。
【0137】
本明細書におけるアブレーション確認試験を含む本明細書における方法のいずれにおいても、全ての工程が必ずしも実行される必要はない。又、工程の幾つかは異なる順序で行われてもよい。本明細書における処置は、特定の神経又は神経根を標的とすることを意図しており、特定の標的静脈から処置しており、さらにそれらの静脈内において、特定の領域内にアブレーション要素又は部材を配置していることに留意されたい。アクセスされ標的化される解剖学的領域は、特定の設計要件を必要とする。異なる解剖学的位置を配置の標的としており、異なる標的神経を標的としている他の治療では、それらのアプローチの為の装置設計上の制約は非常に異なっており、従って、それらの治療で使用することができる装置は非常に異なっていることがある。従って、本明細書の開示は、特定の装置を設計する為の具体的な理由を提供し、それらの理由には、本明細書に具体的に規定された治療を効果的に実施できることが含まれる。
【0138】
上記の説明は、1つ以上の工程又は装置の例を提供するが、他の工程又は装置も添付の特許請求の範囲に含まれてもよいことが理解されよう。
【0139】
アブレーションを確認する為の中心静脈圧の測定
【0140】
GSNをアブレーションした結果、血行動態が変化することがある。中心静脈圧(CVP)をGSNアブレーションの指標の1つとしてもよい。
図9は、GSNをアブレーションし、アブレーションの成功を評価する為にCVP測定を使用することに因って患者を治療する方法の為の工程を有するフローチャートを示す。第1工程560において、医師は、血管アクセスからT7レベルとT11レベルの間の領域の奇静脈に送達シースを送達してもよい。血管アクセスは、大腿静脈又は頸静脈の静脈切開であってもよい。幾つかの実施形態において、送達シースは、
図10の送達シース505のような圧力センサ483を有してもよい。第2工程561において、医師は、送達シースを通してアブレーションカテーテルを送達し、所望の領域(例えば、T9、T10、又はT11の肋間静脈内)の第1解剖学的位置にアブレーション要素を配置してもよい。アブレーションカテーテルは、本明細書に開示される任意のアブレーションカテーテルであってもよい。第3工程562において、ベースラインCVPは、アブレーションエネルギーが送達される直前(例えば、10分以内、5分以内、1分以内)に測定され、保存されてもよい。幾つかの実施形態において、ベースラインCVPは、送達シース上の圧力センサを使用して得られてもよい。幾つかの実施形態において、ベースラインCVPは、アブレーション制御コンソール内のプロセッサに因って評価され、記憶されてもよい。第4工程563において、アブレーションエネルギーをアブレーションカテーテル上のアブレーション要素から送達してもよい。アブレーションエネルギーは、例えば、設定値を維持する為のフィードバック信号を用いて、又は本明細書に開示される他の制御アルゴリズムを使用して、アブレーション制御コンソールに因って制御されてもよい。第5工程564では、GSNアブレーション中(例えば、連続的又は離散的に)又はその後にCVP
Aを測定し、ベースラインCVPと比較することができる(工程565)。CVPの所定の低下(例えば、10mmHgを超える低下、20mmHgを超える低下、ユーザが選択した値)は、GSNが正常にアブレーションされたことを示し、CVP測定値、ベースラインCVPと第2CVPとの差を示すユーザメッセージが表示されてもよく、幾つかの実施形態において、時間を伴うグラフにおいて、所定の低下、及び/又はCVP測定値の解釈(すなわち、CVP
AがベースラインCVP低下以下である場合、ここで低下は有意な低下(例えば、10mmHg、20mmHg)である場合には、GSNアブレーションが成功したことを任意に示し(工程566)、有意なCVP低下がない場合は、GSNが見逃されたか、或いは小内臓神経や最小内臓神経、反対側の内臓神経等他の内臓神経に対して信号伝達を減少させる為にアブレーションが必要であることを示すことがある(工程567)。CVPの比較によりアブレーションが不成功であったことが示された場合、医師は同じレベルでアブレーションエネルギーの送達を繰り返すか、又は位置を調節し、異なるレベル、異なる側、又は同じレベルであるが異なる位置でGSNのアブレーションを試みてアブレーションエネルギーを送達してもよい。最初のアブレーションに対するベースライン及びその後のCVP測定値は、アブレーション番号インジケータと共にコンソールに保存されてもよく、又、その後のアブレーションは、ユーザがデータをレビューできるように、連続するアブレーション番号と共に保存されるCVP測定値を測定して保存することを含んでもよい。
【0141】
幾つかの実施形態において、アブレーションカテーテルが標的神経をアブレーションする為に正しく配置されているかどうかを評価する為に、CVPをモニタリングしながら、電気刺激又は遮断信号を標的神経(例えば、GSN)に送達してもよい。電気刺激又は遮断信号は、アブレーションカテーテル上の電極、例えばアブレーション電極から、又はアブレーション電極に近接した電極から送達してもよい。ある実装形態において、刺激電極はROマーカとしても機能してもよく、ROマーカは、一方がアブレーション電極の近位に位置し、他方がアブレーション電極の遠位、幾つかの実施形態においてはアブレーション電極の2mm以内に位置するリングバンドであり、ROマーカ/電極は、カテーテルを通って刺激コンソールに接続可能なカテーテルの近位端に至る導線に電気的に接続されている。幾つかの実施形態において、刺激コンソールはアブレーションコンソールに組み込まれていてもよい。幾つかの実施形態において、アブレーションフェーズの間、刺激信号とアブレーション信号が一緒に送達されてもよく、例えば、短いバーストのエネルギーが交互に繰り返すシーケンスで送達されてもよい。CVPは、患者の下大静脈(IVC)において、幾つかの実施形態において、圧力モニタリング送達シースでモニタリングされてもよい。
【0142】
圧力モニタリング送達シース
【0143】
圧力モニタリング送達シースは、アブレーションカテーテルを標的位置に送達する為に使用されてもよく、シースの遠位端がT7~T11レベル近傍の位置の奇静脈内に在り、アクセスポイントが大腿静脈静脈切開である場合に、IVC内に整列するシースの長さに沿った位置で圧力をモニタリングする圧力測定装置(例えば、圧力センサ、ひずみゲージ、圧力MEMS)を備えてもよい。例えば、
図10に示すように、圧力モニタリング送達シース480は、ルーメンを有する管状部481と、シースの遠位領域が大腿静脈静脈切開部から奇静脈のT7レベルからT11レベルに到達することを可能にする作動長さ482とを有してもよく、管状部480の作動長さ482は、50cm~115cmの範囲内(例えば、約80cm)であり、任意で、アクセスポイントが大腿静脈である場合、作動長さは70cm~115cmであり、アクセスポイントが頸静脈である場合、作動長さは50cm~85cmである。大柄な患者に配置する場合、近位の20cmほどは大腿静脈に、遠位の24cmほどは奇静脈に配置してもよい。より小さい患者においては、近位端の一部が患者の外側に在り、約12cmが奇静脈内に在る場合がある。圧力センサ483は、送達シースがアブレーションカテーテルの送達の為に配置されるとき、センサ483がほとんどの患者において大静脈内に位置するように、管状部の近位端486から32cm~56cmの範囲484にある範囲488の管状部481の壁上又は壁内に配置されてもよい。これに代えて述べれば、圧力センサ483は、管状部の近位端486から32cm~56cmの範囲488に配置されてもよい。圧力センサは、送達シースがアブレーションカテーテルの送達の為に配置されたときにセンサ483がほとんどの患者において大静脈内に位置するように、管状部481の遠位端487から24cm~48cmの範囲485にある範囲488の送達シース上に配置されてもよい。これに代えて述べれば、圧力センサ483は、管状部の遠位端487から24cm~48cmの範囲488に配置されてもよい。
【0144】
代替的な送達アプローチには、頸静脈にアクセスし、送達シースを頸静脈切開部からT7-T11レベルの奇静脈に送達する工程が含まれてもよい。頸静脈アクセス用の送達シースは、本明細書に記載される幾つかのシースよりも短くてもよいが(例えば、50cm~85cm)、管状部の壁上又は壁内の圧力センサの位置は、遠位端487から同様の範囲485(例えば、遠位端から24cm~48cmの範囲)であってもよい。
【0145】
本明細書における圧力センサは、光学式、歪み式、フィルム式、可変容量式、又は他の形式の医療グレードの小型センサ等の1つ以上のタイプの圧力センサを含んでもよく、これは微小電気機械システム(MEMS)センサの形式であってもよい。例えば、本明細書における圧力センサはいずれも、センサを保護すると同時にシース上に滑らかな表面を提供する為に、センサを覆う可撓性膜又はシーラント等の圧力伝達保護カバーを備えた送達シースの壁内に配置してもよい。
【0146】
図10は、シースが任意で複数の圧力センサを含む例を示す。複数の圧力センサ483、483a、483bは、1つのセンサが血管壁に押し付けられた場合、別のセンサが妨げられずにCVPを読み取る為に使用できるように、管状部の範囲488内の異なる半径方向又は円周方向側面及び異なる軸方向位置において送達シース上に載置又は配置されてもよい。センサ483、483a、483bは、コネクタ489を介して、アブレーションコンソール42に組み込まれる圧力モニタリングコンソール490に電気的に接続可能であってもよい。幾つかの実施形態において、アブレーションエネルギー送達アルゴリズム40は、圧力センサ483又は圧力コンソール490からの入力を受け入れて、アブレーションエネルギー送達及び/又は電気刺激又は遮断エネルギーを自動的に制御してもよい。
【0147】
展開可能なバルーン付き送達シース
【0148】
本明細書の送達シースはいずれも、シースの管状部の遠位端に近接する膨張可能な構造体をさらに含んでもよい。しかしながら、任意の展開可能な構造体を含む本明細書の送達シースは、本明細書の他のシースの特徴(例えば、1つ以上の圧力センサ)を含む必要はないことが理解される。例示的な送達シース580は、幾つかの実施形態において、
図11Aに示されるように、その遠位端487上又はその近傍に、外面から展開可能である、展開可能なバルーン583を備えてもよい(遠位端487は又、シースの管状部の遠位端であってもよく、ここで、シースの管状部の例示的な詳細は、
図10に関して記載される)。或いは、展開可能なバルーンは、送達シースを通過するように構成された拡張器の遠位端の外面に設けられていてもよい。バルーン583は、例えば、シースの剛性を調整する為、又は静脈弁を横断する為に先端の軌道を方向転換する為に、奇静脈弓におけるシース580の送達を容易にする為に展開されてもよい。バルーン583は、標的部位の血管系の放射線撮影による可視化を容易にする為に使用してもよい。血液は奇静脈内を送達方向(すなわち、頭部方向)に対して逆行的に流れるので、送達シース580から血管系(例えば、奇静脈)内に造影剤を注入すると、造影剤が所望されている肋間静脈内ではなく、優先的に後方に流れる可能性がある。造影剤を注入する前に奇静脈を閉塞(例えば、完全に又は部分的に)させることにより、造影剤が肋間静脈に送達されやすくなり、そこで造影剤がより長い時間滞留することがあり、医師が標的血管の位置や、奇静脈から肋間静脈への小孔、又は血管の蛇行等の他のランドマークを視覚化するのに役立つことがある。バルーン583は、コンプライアントバルーン材料を用いて作製されてもよく、外面に潤滑性のコーティングが施されていてもよい。展開可能なバルーン583は、アブレーションカテーテル(例えば、本明細書に開示されるアブレーションカテーテルのいずれか)の送達中又は抜去中に展開して、アブレーションカテーテルのハンドル又はシャフトに加えられる力がカテーテルの遠位部分により容易に伝達されるように送達シースを安定化させるのを助けてもよい。展開可能なバルーン583は、送達シース580を中心として半径方向に対称であってもよい。送達シース580の壁内に配置され、展開可能なバルーン583の内部空間585と流体連通するバルーン膨張用ルーメン584は、バルーン583を膨張又は収縮させる為に使用されてもよい。ルーメンは、注射器やポンプ等の流体送達装置に接続可能なシースの近位端のコネクタ589と流体連通していてもよい。コネクタ589はバルブ590を備えてもよく、このバルブは閉じたときにルーメンの空気流を密閉し、バルーン583内の空気圧を維持する。
【0149】
幾つかの実施形態において、展開可能なバルーン603は、半径方向に非対称であってもよく、又は送達シース600の片側に優先的に配置されてもよく、送達シースは、バルーン603の少なくとも反対側において、送達シース600の外面上に、送達シースの遠位端487から15cm以内(例えば、5cm以内)に在る戻り電極604をさらに備えてもよい。電極604は、コネクタケーブルを介してコンソール42に接続するコネクタ606に電気的に接続され、コンソール42を介してRFアブレーションカテーテル上の1つ以上のアブレーション電極との電気回路を完成させ、これにより外部接地電極の必要性を排除する、アブレーション電極よりも大きな表面積を有する分散電極であってもよい。幾つかの実施形態において、送達シース上の戻り電極604が、刺激電極との回路を完成する為に使用されてもよい。戻り電極は、10mm2~200mm2の範囲内(例えば、80mm2~150mm2の範囲内)の表面積を有してもよい。幾つかの実施形態において、戻り電極604は、送達シースが十分な可撓性を維持するように、各々が1mm~10mmの範囲の長さを有し、互いに間隔を置かれた(例えば、5mm~10mmの範囲の空間605を有する)複数の帯状電極を含んでもよい。戻り電極604は放射線不透過性材料を用いて作製されてもよい。温度センサ608は、センサを通過して流れる奇静脈の壁又は血液の温度を測定することができるように、幾つかの実施形態において、非対称に展開可能なバルーン603の反対側の送達シースの壁に配置されてもよい。温度センサ608は、温度信号をコンソール42に送信するように構成されたコネクタ606に電気的に接続されていてもよい。送達シースからの温度信号は、警告メッセージが表示されるか、又は出力の低減のようなアブレーション制御アルゴリズムにおける反応がなされた際に安全性の評価に使用されてもよい。
【0150】
放射線不透過性造影剤溶液は、送達シースを通して、例えば、ガイドワイヤ、診断カテーテル、又はアブレーションカテーテルをスライド可能に係合する為にも使用されてもよいシースの中央ルーメンを通して注入されてもよい。
図11Bに示すような幾つかの実施形態において、送達シース600は、造影剤送達のためにルーメン610をその側壁に有してもよい。一実装形態において、造影剤送達ルーメン610はバルーン膨張用ルーメンと同じルーメンであってもよい。他の実装形態において、シースは、バルーン膨張用ルーメン及び別個の造影剤送達ルーメン610を有する展開可能なバルーンを有してもよい。幾つかの実施形態において、造影剤送達ルーメンは、造影剤送達ルーメンの加圧時、例えば50~150mmHgの範囲の放出圧力を超える、又はルーメンとバルブの外部との間の差圧が50~150mmHgの範囲にある場合に開く圧力解放バルブを有する送達シースの遠位端又はその近傍に在るポート611で終端していてもよい。造影剤送達ルーメン610がバルーン膨張用ルーメン584とは別個である実施形態において、造影剤送達ルーメン610は、ルアーコネクタ612及びバルブ613と流体連通していてもよく、このルアーコネクタ612及びバルブ613は、バルーン膨張用コネクタ589と視覚的に区別可能であってもよい。
【0151】
幾つかの実施形態における送達シースは、所定の湾曲した先端部を有してもよく、これにより、奇静脈弓又は静脈弁の横断を容易にしてもよい。或いは、送達シースと共に使用するように構成された拡張器は、所定の湾曲した先端部を有してもよい。湾曲した先端部は放射線不透過性であってもよく、放射線不透過性要素を有していてもよい。幾つかの実施形態において、拡張器は、送達シースが拡張器から近位に取り外されている間、患者の血管系内の所定の位置に放置されることを可能にする特徴を有していてもよく、幾つかの実施形態において、他のシース又はカテーテルが拡張器により送達されてもよい。拡張器は、送達シースの少なくとも2倍の長さ、例えば200cm~700cmの範囲の長さを有してもよい。拡張器の近位端は、送達シースの内径よりも小さい狭いプロファイルを有してもよく、その為、シースは拡張器から近位に取り外されてもよい。拡張器は、取り外し可能な、例えばティアアウェイ式の近位ハブを有していてもよく、これは所望に応じて取り外される。拡張器は、圧縮可能な近位ハブを有してもよい。
【0152】
送達シースと2つの拡張器を備えた送達システム
【0153】
GSNアブレーションカテーテル送達システム500は、
図12Aに示すように、送達シース505、第1拡張器530及び第2拡張器550を含んでもよく、キットとして提供されてもよい。送達シース505は、本明細書に記載される送達シースのいずれであってもよく、シース505に関するあらゆる詳細は、本明細書のシースのいずれにも組み込まれてもよい。送達シース505は、近位端507及び遠位端508と、その間のルーメン509とを有する細長い管状構造体506を有してもよい。ルーメン509は、アブレーションカテーテル(例えば、本明細書に開示されるアブレーションカテーテルのいずれか)をスライド可能に収容するように構成された内径、例えば、9F適合内径(約3.35mm)を有してもよい。細長い管状構造体506は、約12Fの外径517を有してもよい。管状構造体506の近位端507は、雌ルアー又は止血弁付きハンドル等のハンドル又はコネクタ510に接続されてもよい。管状構造体506は、PTFEのインナーライナーを有してもよい。管状構造体506は、ポリマーに埋め込まれた編組ワイヤ層511で補強されていてもよい。管状構造体506は、近位端507で高い剛性を有し、遠位端508で低い剛性を有してもよい。例えば、剛性の差は、編組密度(例えば、80PPIの近位編組密度から40PPIの遠位編組密度まで)、及び/又はポリマーデュロメータを調整することに因って達成されてもよい。剛性の差は、管状構造体の長さに沿って緩やかに変化するものであってもよく、又は部分毎に変化してもよい。例えば、管状構造体506は、第1剛性を有する近位部512、第2剛性を有する中間部513、及び第3剛性を有する遠位部514を有してもよく、第3剛性は第1剛性よりも小さく、第2剛性は第1剛性と第3剛性との間にある。剛性の異なる部を有する管状構造体506の例示的な構造は、80PPIの編組密度でありPebax(登録商標)7233を用いて作製されたポリマージャケット(例えば、デュロメータが72D)を有する近位部512と、編組密度が60PPIでありPebax(登録商標)6333(例えば、デュロメータが63D)を用いて作製されたポリマージャケットを有する中間部513、及び編組密度が40PPIでありPebax(登録商標)5533(例えば、デュロメータが55D)を用いて作製されたポリマージャケットを有する遠位部514を有してもよい。各部は、等しい内径(例えば、3.35mm)及び壁厚(例えば、0.127mm)を有してもよい。管状構造体506の全作動長さ515は、ほとんどの患者において、アクセス静脈から大静脈、大静脈から奇静脈へのような血管系を通過する際に、大腿静脈や頸静脈のような静脈のアクセスポイントから奇静脈のT11レベルに到達するのに十分であり、50cm~115cmの範囲内(例えば、約80cm±0.5cm)であってもよい。アクセスポイントが頸静脈である幾つかの例において、作動長さ515は50cm~85cmであってもよい。アクセスポイントが大腿静脈である幾つかの例において、作動長さ515は70cm~115cmであってもよい。部512、512、514は、別々に作製され、接続(例えば、溶接)されてもよいし、一体として作製されてもよいし、それらの組み合わせであってもよい。遠位部514は、9.50±0.50cmの長さを有してもよい。中間部513は、6.5±0.5cmの長さを有してもよい。近位部512は、全作動長さ515の残りの長さ、例えば約64cmの長さを有してもよい。シース505の可変剛性は、幾つかの実施形態において、シース内に含まれる第1又は第2拡張器の使用と共に、又一部の実施形態において、拡張器内又は拡張器が無いシース内のガイドワイヤの使用と共に、大静脈から奇静脈弓を越え、奇静脈を下ってT7~T11肋間静脈の周囲のレベルまでアブレーションカテーテルの送達を容易にする様々な機能を提供することができる。近位部512は、近位端507(例えば、雌ルアー510)に加えられる並進力及び回転力を、近位部512を通して遠位部514に伝達するように機能してもよいが、血管系の解剖学的屈曲部を横断する為に曲げを許容する。より剛性の低い遠位部514は、大静脈から奇静脈にシースを進入させることを容易にすることができる。特に、第1拡張器530又は第2拡張器550が、大静脈内に配置された送達シース505内から、奇静脈弓を通って、幾つかの実施形態において、T7~T11領域のレベルまで奇静脈を下って、ガイドワイヤにより進められるとき、送達シース505は、拡張器530又は550の上を進められてもよく、可撓性遠位部514は、拡張器が引っかかったり位置から引き出されたりすることなく、拡張器の屈曲部の上に適合して追従するのに十分に可撓性である。中間部513は、可撓性の変化が大きい部分で起こりやすいキンクを防止する為の可撓性移行部として機能する。送達シースの遠位端508は、血管壁を損傷から保護する為に、軟質の無外傷性先端部515を有していてもよく、白金イリジウムマーカバンド等の一体型放射線不透過性マーカを有してもよい。
【0154】
例示的な第1拡張器530が
図12Cに示されている。例示的な第2拡張器550が
図12Dに示されており、第1拡張器と同じ特徴については同じ符号を使用している。第1及び第2拡張器530、550は、送達シース505と共に、大静脈から奇静脈に入ること、奇静脈弓を横断すること、奇静脈のT7~T11レベルに到達すること、奇静脈及び肋間静脈の一部に造影剤を送達すること、ガイドワイヤ(例えば、0.035”ガイドワイヤ)を所望の肋間静脈に送達し所望の肋間静脈(例えば、T9、T10、又はT11の肋間静脈)へのアブレーションカテーテルの送達を準備することを容易にする。拡張器はさらに、送達シースを受け入れる為の静脈切開等の穿孔を拡張する機能を果たしてもよい。これらの機能を達成する為に、拡張器530及び550はそれぞれ、細長い管状構造体532の遠位端533に、テーパ状の遠位先端部531を有してもよく、細長い管状構造体532は、遠位に向かって減少する外径を有してもよく、一貫した又は均一な内径を有するルーメン535を有してもよい。拡張器は、細長い管状構造体532が送達シース505の遠位端508を越えて、例えば、10~30cmの範囲の量(例えば、約18cm)だけ従来の拡張器よりも伸長することを可能にする作動長さ536を有してよく、これにより、拡張器は、拡張された長さまで送達シースの前方の血管系に進められ、そしてシース505が拡張器530、550上を追従することが可能になる。このように、拡張器は、曲がりくねった血管系を通して送達シース505を誘導する為に使用することができ、拡張器を「深く着座」させる、言い換えれば、送達シースをはるかに超えて前進させることができる為、送達シースが深く着座した拡張器上を前進させられたとき、拡張器が所定の位置から引き抜かれることがなく、拡張器は、曲がりくねった血管を横断する為にシースがその上を追従する為の軌道を提供する。2つの拡張器530、550はそれぞれ、送達手順における異なる特定の工程に適していてもよく、或いは、奇静脈の所望の位置にアクセスする際に困難に遭遇した場合にユーザにより多くの選択肢を与える為に、異なる取り扱い特性を提供してもよい。第1及び第2拡張器530、550は、送達シース505のルーメン509にスライド可能に適合する最大外径(例えば、近位部の外径)537を有する細長い管状構造体532と、近位端534と遠位端533との間で、0.035’’のガイドワイヤをスライド可能に収容するように構成された内径を有するルーメン535と、幾つかの実施形態において細長い管状構造体532の近位端に接続され、その間にストレインリリーフ539を有する雌ルアー538と、丸みを帯びた遠位端540を有するテーパ状である遠位先端部531と、を有してもよい。第1拡張器530は、送達シース505の遠位端から延び、送達シースの遠位部514よりも小さい剛性を有する遠位部541を有してもよい。第1拡張器の遠位部541は、遠位端に向かって減少する剛性を有してもよい。剛性は、外径もしくは壁厚を先細りもしくは段階的に減少させることに因って、又は編組密度が変化する編組ワイヤのように材料もしくは材料の配置を変化させることに因って変化させてもよい。第1拡張器は、60cm~145cmの範囲、任意で107±0.5cmの全作動長さ536と、3cm~10cmの範囲、好ましくは5cm±0.5cmの長さを有する遠位テーパ部541と、3mm~10mmの範囲、好ましくは5mm±0.5mmの長さを有するテーパ状の遠位先端部531とを有してもよい。第2拡張器550は、第1拡張器の遠位部541とは異なり、送達シース505の遠位端から延び、送達シースの遠位部514よりも小さく、第1拡張器530の遠位部541よりも小さい剛性を有する遠位部551を有してもよい。第2拡張器は、60cm~145cmの範囲、任意で107±0.5cmの全作動長さ556と、5cm~15cmの範囲、好ましくは9cm±0.5cmの長さを有する遠位テーパ部551と、3mm~10mmの範囲、好ましくは5mm±0.5mmの長さを有するテーパ状の遠位先端部531とを有してもよい。さらに、第2拡張器550は、その遠位部551に予め形成された曲部552を有してもよく、この予め形成された曲部は、
図12Dに示されるように、その拘束されていない状態(例えば、送達シース内で拘束されることなく、又はそのルーメン内にガイドワイヤを有していないことが分かる)で、90度~120度の範囲の角度553(例えば、約115度)、7~11mmの範囲(例えば、約9.14mm)の曲率半径554、及び5mm~10mmの範囲(例えば、約7mm)の長さを有する予め形成された曲部の遠位の直線部555を有してもよい。送達シース505から延びる拡張器の延長された長さは、送達シース505を前進させる前に、拡張器を奇静脈内に十分に前進させること(例えば、送達シースを越えて延びる長さまでの量、又はT7椎骨とT11椎骨の間の奇静脈のレベルまで)を可能にし、これは、拡張器が位置から脱落することなく、送達シースが拡張器上を追従することを可能にするのに十分な構造的支持を提供することができる。
【0155】
第2拡張器550は、遠位部がより長く、より柔軟で、予め形成された曲部を有してもよいことを除いて、第1拡張器530と同じ特徴を有する。予め形成された湾曲した先端部は、大静脈から奇静脈に通じる小孔等の解剖学的特徴に最初にアクセスする為に使用することができる。拡張器の湾曲した先端部は、拡張器の近位端でトルクを加えることに因って回転可能に配置されてもよい。拡張器の構造は、単純な押し出しチューブとすることもできるし、ワイヤ編組ポリマー等の壁補強材を用いた複合構造を有するものとしてもよい。別の構造では、遠位側の押し出しチューブが近位側の複合チューブに接続されている。拡張器の湾曲した先端部は、そのルーメンに配置されたガイドワイヤの柔軟な(フロッピーな)遠位部が湾曲した先端部を変化させない一方で、ガイドワイヤのより硬い近位部が湾曲した先端部を真っ直ぐにするような柔軟性を有することができる。これにより、解剖学的特徴、すなわち小孔にアクセスする最初の目的に従って、送達シースと共に拡張器を継続的に使用することを促進することができ、真っ直ぐにすると、静脈経路に沿ってより容易に並進することができる。第2拡張器550は、単一の曲部552を有していてもよいし、複数の曲部を有していてもよい。予め形成された曲部552は、ガイドワイヤが拡張器550の長軸に対して最大90度で抜け出ることを可能にしてもよい。拡張器の極遠位の先端部は、血管壁を損傷することを防ぐ為に、例えば半球状又は弾丸状の形状を有する無外傷性のものであってもよい。
【0156】
送達シース、第1拡張器及び第2拡張器は、無菌パッケージのキットとして一緒に包装されてもよく、このキットにはさらにガイドワイヤが含まれてもよい。
【0157】
アブレーションカテーテルは、
図5A乃至
図5Eに示したアブレーションカテーテルのいずれかと同様であってもよく、幾つかの実施形態においては、追加のコイル電極、例えば幾つかの実施形態においてはそれぞれ5mm~10mmの範囲の長さを有する合計3つのコイル電極を有する。
図5A乃至
図5Eに示す実装形態に関連して説明した特徴は、幾つかの実施形態において、3つ以上のアブレーション電極を有するカテーテルに組み込まれてもよい。3電極アブレーションカテーテルは、所望のアブレーションの長さに応じて1電極、2電極又は3電極アブレーションが選択されることがある、広範囲の患者に使用することができる。アブレーション処置に因っては、2電極アブレーションを必要とする場合があり、その場合、例えば、奇静脈小孔と肋椎関節又は交感神経幹との間の標的肋間静脈内の距離が18mm~25mmの範囲内である場合、奇静脈が右偏在である場合、又は肋間静脈の角度が脊柱に対して±約10度で横方向にある場合、第3電極は不活性である。状況に因っては、GSNを確実にアブレーションする為に、より長いアブレーションが必要となる場合があり、例えば、奇静脈小孔と肋椎関節又は交感神経幹との間の標的肋間静脈内の距離が20mm~35mmの範囲内である場合、奇静脈が左偏位している場合、又は肋間静脈の角度が脊柱に対して横方向から10度超(例えば、15度超、20度超、25度超、30度超)である場合、第3電極が第1電極及び第2電極に加えて活性化されてもよい。3つ以上の電極は放射線不透過性であってもよいし、放射線不透過性マーカに関連付けられていてもよく、遠位の放射線不透過性マーカが肋椎関節又はその近傍に配置されているときに、近位電極が肋間静脈内又は奇静脈内に在るか否かをユーザが判断し、そうである場合、コンソールに指示することに因って近位電極を非活性化してもよい。或いは、コンソールは、インピーダンスのような電極に関連するセンサ又は熱センサを評価することに因って、1つ以上のアブレーション電極を自動的に選択又は選択解除してもよい。
【0158】
幾つかの実施形態において、使用方法は、患者の食道に熱感知カテーテルをアブレーション部位に近接して配置して、食道の温度、例えば食道の内面をモニタリングする工程を含んでもよい。食道でモニタリングされた温度が、例えば体温より摂氏1℃上昇した場合、警告が発せられるか、温度信号がアブレーションコンソールに送られ、制御アルゴリズムが出力を下げるか、温度を設定するか、エネルギー送達を停止する。
【0159】
先行技術であるか否かを問わず、いずれかの技術に関して以前になされた補正、特徴付け、又はその他の主張(本出願において、又は親、兄弟、又は子を含む関連特許出願又は特許において)が、本出願の本開示に因ってサポートされる主題の否認として解釈され得る限りにおいて、出願人は、本書により、かかる否認を取り消し、撤回する。又、出願人は、親、兄弟、又は子を含め、関連する特許出願又は特許において以前に検討された先行技術は、再検討される必要があることがあることを謹んで申し上げる。
【0160】
本明細書に記載される特定の実施形態は、いかなる請求項も限定することを意図するものではなく、いかなる請求項も、特に別段の指示がない限り、以下に記載されるものとは異なるプロセス又は装置を対象とすることができる。特許請求の範囲は、特に別段の指示がない限り、以下に記載されるいずれか1つの装置又は工程の特徴を全て有する装置又は工程、又は以下に記載される装置の複数又は全てに共通する特徴に限定されない。以下に記載される装置又は工程は、本特許出願の発行により付与される排他的権利の実施形態ではない可能性がある。以下に記載され、本特許出願の発行により排他的権利が付与されない主題は、別の保護手段、例えば、継続特許出願の主題である可能性があり、出願人、発明者又は所有者は、本書における開示により、かかる主題を放棄、否認又は公衆に捧げる意図はない。
【国際調査報告】