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特表2024-520749凸形接触面を用いて角膜内切開部を形成する方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】凸形接触面を用いて角膜内切開部を形成する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/009 20060101AFI20240517BHJP
   A61F 9/008 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61F9/009
A61F9/008 120F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575357
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2022065423
(87)【国際公開番号】W WO2022258630
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】21178105.9
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510030308
【氏名又は名称】テクノラス パーフェクト ビジョン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クーゲル,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ドニツキ,クリストフ
(57)【要約】
本開示は、レーザー光学システムを含む、眼にレーザー手術を行うための眼治療システムに関する。レーザー光学システムは、眼の角膜内でレーザー光のレーザービームの焦点を3次元で走査する走査システムを含む。レーザー光学システムはさらに、集光光学システムを含む。走査システムは、レーザービームのビーム経路においてレーザー光源と集光光学システムとの間にある。眼治療システムはさらに、レーザービームのビーム経路において集光光学システムと眼との間にある接触素子を含む。接触素子は、眼の角膜に接触するための接触面を有する。接触面の少なくとも一部分は、角膜に向かって凸形の形状を有する。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼にレーザー手術を行うための眼治療システム(1)であって、
1ピコ秒未満のパルス持続時間を有するパルス状レーザー光を生成するように構成されたレーザー光源(5)を有する、レーザー光学システムを備え、
前記レーザー光学システムは、
前記眼の角膜内で前記レーザー光のレーザービームの焦点を3次元で走査する走査システム(43)と、
集光光学システム(8)と、を備え、前記走査システム(43)は、前記レーザービームのビーム経路において前記レーザー光源(5)と前記集光光学システム(8)との間にあり、
前記眼治療システムはさらに、前記レーザービームの前記ビーム経路において前記集光光学システム(8)と前記眼との間にある接触素子(10)を備え、
前記接触素子(10)は、前記眼の角膜(20)に接触する接触面(15)を有し、前記接触面(15)の少なくとも一部分は、前記角膜(20)に向かって凸形の形状を有する、眼治療システム(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の眼治療システム(1)であって、前記走査システム(43)は、
前記レーザービームの軸に沿って前記レーザー焦点を走査する軸方向走査システム(6)と、
前記レーザービームの偏向を介して前記レーザービームを走査するビーム偏向走査システム(7)と、
を備える、眼治療システム(1)。
【請求項3】
請求項2に記載の眼治療システム(1)であって、平行平面式圧平板と比べると、前記接触素子(10)は、前記レーザー焦点の走査面(18)の少なくとも一部分の深さのばらつきを低減させるように構成されており、
前記深さは、前面(19)に対して測定され、前記走査面(18)は、前記軸方向走査システム(6)の一定の走査状態に対応する、眼治療システム(1)。
【請求項4】
請求項3に記載の眼治療システム(1)であって、前記接触素子(10)は、少なくとも前記レーザー光学システムの光軸(A)から2ミリメートル未満、または4ミリメートル未満、または5.5ミリメートル未満、または6ミリメートル未満の距離を有する各点について、前記深さのばらつきが30マイクロメートル未満または20マイクロメートル未満になるように構成されている、眼治療システム(1)。
【請求項5】
請求項3または4に記載の眼治療システム(1)であって、前記軸方向走査システム(6)は、前記レーザービームの前記ビーム経路において前記レーザー光源(5)と前記ビーム偏向走査システム(7)との間にある、眼治療システム(1)。
【請求項6】
請求項5に記載の眼治療システム(1)であって、前記軸方向走査システム(6)は、
負の屈折力を有する第1の光学システム(25)と、
正の屈折力を有する第2の光学システム(26)と、
を備え、
前記第2の光学システム(26)は、前記レーザービームの前記ビーム経路において前記第1の光学システム(25)と前記偏向走査システム(7)との間にあり、
前記軸方向走査システム(6)は、前記第1の光学システム(25)と前記第2の光学システム(6)との間の距離が制御により変更可能に構成されている、
眼治療システム(1)。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1項に記載の眼治療システム(1)であって、前記ビーム偏向走査システム(7)は走査ミラーを3つ備える、眼治療システム(1)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の眼治療システム(1)であって、前記レーザーシステムは、前記接触素子(10)が前記レーザー光学システムに対して取り外しおよび取り付けが可能となるように構成されており、
前記眼治療システム(1)は、前記接触素子(10)が前記レーザービームの前記ビーム経路において前記レーザー光学システムと前記眼との間にある唯一の光学素子になるように構成されている、眼治療システム(1)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の眼治療システム(1)であって、前記レーザー光学システムは、前記レーザービームの前記ビーム経路において前記走査システム(43)と前記眼との間にあるビームコンバイナー(56)を備える、眼治療システム(1)。
【請求項10】
請求項9に記載の眼治療システム(1)であって、前記ビームコンバイナー(56)は、前記レーザービームの前記ビーム経路を前記眼治療システムの撮像システム(58)のビーム経路と合成するように構成されている、眼治療システム(1)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の眼治療システム(1)であって、前記接触面(15)の前記凸形状の少なくとも一部分は、
10ミリメートル超または50ミリメートル超、および
500ミリメートル未満または300ミリメートル未満
の少なくとも一方である曲率半径を有する、眼治療システム(1)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の眼治療システム(1)であって、前記接触面(15)は、少なくとも前記接触面(15)の頂点(21)から2ミリメートル未満、または4ミリメートル未満、または6ミリメートル未満の距離を有する各点について凸形状を有する、眼治療システム(1)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の眼治療システム(1)であって、前記レーザーシステムは、前記接触素子(10)が前記集光光学システムに対して取り外しおよび取り付けが可能となるように構成されており、前記接触素子(10)は、前記結合された状態において、
前記集光光学システムの光軸(A)に対する所定の径方向位置および前記レーザー光学システムの前記光軸(A)に対する所定の傾斜角の少なくとも一方
にある、眼治療システム(1)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の眼治療システム(1)であって、
前記レーザー光学システムは、前記レーザービーム(9)を用いて、実質的に横方向に延びる表面下の切開部を前記角膜(20)内に生成するように構成されており、
前記凸形状は、前記実質的に横方向に延びる表面下の切開部の前記形成によって生じる気体が前記凸形状の頂点(21)から離れる方向に実質的に誘導されるように構成されている、眼治療システム(1)。
【請求項15】
先行する請求項1から14のいずれか1項に記載の眼治療システムであって、前記レーザービームは、前記眼治療システムのビームマルチプライヤーを用いる前記レーザー光学システムによって生成される複数のレーザービームのうちの1つであり、前記ビームマルチプライヤーは、前記パルス状レーザー光が前記ビームマルチプライヤーに当たるように配置されており、前記走査システムは、前記複数のレーザービームを用いる前記レーザー光学システムによって生成される、規則的または不規則的な1次元、2次元または3次元の焦点アレイを前記角膜内で走査するように構成されている、眼治療システム。
【請求項16】
先行する請求項1から15のいずれか1項に記載の眼治療システムであって、前記レーザーシステムは、角膜組織の薄板、特に、角膜フラップ、角膜内レンティクル、または角膜表面薄板を形成するように構成されており、
前記眼治療システムはコントローラーを備え、前記コントローラーは、表面下の切開部および側面切開部を用いて周囲の角膜組織から前記薄板を少なくとも部分的に切り離すために、前記角膜内で前記焦点を走査するように前記レーザー光学システムを制御するように構成されており、
前記表面下の切開部は、前記薄板の前面または後面の少なくとも一部分に相当し、前記側面切開部は、前記薄板の縁の少なくとも一部分に相当し、前記コントローラーは、前記薄板を形成するために、
気体を誘導する1つまたは複数の気体放出切開部を前記角膜に形成し、前記気体放出切開部のそれぞれについて、前記それぞれの切開部が前記角膜の前面または後面に延び、前記気体放出切開部の少なくとも一部分が前記薄板の前記縁の少なくとも一部分を形成するように、
前記1つまたは複数の気体放出切開部の形成後に、前記表面下の切開部の少なくとも一部分を形成するように、および
前記表面下の切開部の形成後に、前記気体放出切開部のそれぞれについて前記それぞれの気体放出切開部の少なくとも一部分が前記側面切開部の一部分を形成するように前記側面切開部を完成させるように、
前記レーザー光学システムを制御するように構成されている、眼治療システム。
【請求項17】
角膜組織の薄板、特に、角膜フラップ、角膜内薄板、または角膜表面薄板を形成するための眼治療システムであって、前記眼治療システムは、
1ピコ秒未満のパルス持続時間を有するパルス状レーザービームを生成するように構成されたレーザー光源を有する、レーザー光学システムと、
表面下の切開部および側面切開部を用いて周囲の角膜組織から前記薄板を少なくとも部分的に切り離すために、角膜内で前記レーザービームの焦点を走査するように前記レーザー光学システムを制御するように構成された、コントローラーと、
を備え、
前記表面下の切開部は、前記薄板の前面または後面の少なくとも一部分に相当し、前記側面切開部は、前記薄板の縁の少なくとも一部分に相当し、
前記コントローラーは、前記薄板を形成するために、
気体を誘導する1つまたは複数の気体放出切開部を前記角膜に形成し、前記気体放出切開部のそれぞれについて、前記それぞれの切開部が前記角膜の前面または後面に延び、前記気体放出切開部の少なくとも一部分が前記薄板の前記縁の少なくとも一部分を形成するように、
前記1つまたは複数の気体放出切開部の形成後に、前記表面下の切開部の少なくとも一部分を形成するように、および
前記表面下の切開部の形成後に、前記気体放出切開部のそれぞれについて前記それぞれの気体放出切開部の少なくとも一部分が前記側面切開部の一部分を形成するように前記側面切開部を完成させるように、
前記レーザー光学システムを制御するように構成されている、眼治療システム。
【請求項18】
請求項16または17に記載の眼治療システムであって、前記気体放出切開部の1つまたは複数またはそれぞれについて、前記それぞれの気体放出切開部は前記側面切開部の外周部を備える、眼治療システム。
【請求項19】
請求項16から18のいずれか1項に記載の眼治療システムであって、前記気体放出切開部の前記1つまたは複数のうちの少なくとも1つは、120度未満または90度未満および5度超または10度超の少なくとも一方である外周範囲を有する、眼治療システム。
【請求項20】
請求項16から19のいずれか1項に記載の眼治療システムであって、前記側面切開部の完成後には、前記表面下の切開部から気体を放出するために使用された各気体放出切開部について、前記それぞれの気体放出切開部の少なくとも一部分は前記側面切開部の一部である、眼治療システム。
【請求項21】
請求項16から20のいずれか1項に記載の眼治療システムであって、前記薄板はヒンジ接続されたフラップであり、前記側面切開部は、前記ヒンジ接続されたフラップの縁である、眼治療システム。
【請求項22】
請求項16から21のいずれか1項に記載の眼治療システムであって、前記側面切開部は、前記表面下の切開部の周縁部で前記表面下の切開部に接続されている、眼治療システム。
【請求項23】
請求項16から22のいずれか1項に記載の眼治療システムであって、前記1つまたは複数の気体放出切開部の合算された外周長さは、前記側面切開部の外周に沿って測定されたときに、前記側面切開部の外周長さの60%未満または50%未満になる、眼治療システム。
【請求項24】
請求項16から23のいずれか1項に記載の眼治療システムであって、前記表面下の切開部を形成することは、前記表面下の切開部を形成するための複数の予め定められた走査パターンの1つを自動的にまたは対話形式で選択することを含み、
前記コントローラーはさらに、前記表面下の切開部を形成するために用いられる前記選択された走査パターンに基づいて、i)前記気体放出切開部の少なくとも1つについて、a)幾何形状、b)位置、およびc)向きの少なくとも1つのパラメーターならびにii)前記1つまたは複数の気体放出切開部の数の少なくとも一方を決定するように構成されている、眼治療システム。
【請求項25】
請求項16から24のいずれか1項に記載の眼治療システムであって、前記コントローラーは、前記表面下の切開部を形成するための全走査経路の60%未満または50%未満に対応する走査経路の初期セクションによって走査される少なくとも1箇所で前記気体放出切開部が前記表面下の切開部に接するように、前記気体放出切開部の少なくとも1つを形成するように、前記レーザー光学システムを制御するように構成されている、眼治療システム。
【請求項26】
請求項16から25のいずれか1項に記載の眼治療システムであって、前記側面切開部の外周に沿って測定すると、前記気体放出切開部のそれぞれは、40度未満または20度未満または10度未満である外周範囲を有し、前記気体放出切開部の数は、5超または10超または20超または50超である、眼治療システム。
【請求項27】
請求項16から26のいずれか1項に記載の眼治療システムであって、前記眼治療システムは、前記レーザービームの前記ビーム経路において前記レーザー光学システムと前記眼との間にある接触素子を備え、前記接触素子は接触面を有し、前記接触面は、前記角膜に接触し、頂点を形成するように前記角膜に向かって凸形であり、前記気体放出切開部のそれぞれは、前記接触面が前記角膜に接触する箇所で前記角膜の前面に開口している、眼治療システム。
【請求項28】
角膜組織の薄板、特に、角膜フラップ、角膜内薄板、または角膜表面薄板を形成するための眼治療システムであって、
前記眼治療システムは、
1ピコ秒未満のパルス持続時間を有するパルス状レーザービームを生成するように構成されたレーザー光源を有する、レーザー光学システムと、前記レーザービームのビーム経路において前記レーザー光学システムと前記眼との間にある接触素子であって、前記接触素子は前記角膜に接触する接触面を有し、前記接触面は頂点を形成するように前記角膜に向かって凸形である、接触素子と、
表面下の切開部を用いて周囲の角膜組織から前記薄板を少なくとも部分的に切り離すために、前記接触素子が前記角膜と接触しているときにレーザービームの焦点を角膜内で走査するように前記レーザー光学システムを制御するように構成された、コントローラーと、
を備え、
前記コントローラーはさらに、前記表面下の切開部を形成する前に1つまたは複数の気体放出切開部を前記角膜に形成するように前記レーザー光学システムを制御するように構成されており、
前記気体放出切開部のそれぞれは、前記接触面が前記角膜に接触する箇所で前記角膜の前面と気体流体連絡している、眼治療システム。
【請求項29】
請求項27または28に記載の眼治療システムであって、前記レーザー光学システムは、前記眼内で前記レーザービームの焦点を3次元で走査する走査システムを備え、
前記走査システムは、前記レーザービームの軸に沿って前記レーザー焦点を走査する軸方向走査システムと、前記レーザービームの偏向を介して前記レーザービームを走査するビーム偏向走査システムとを備える、眼治療システム。
【請求項30】
請求項27から29のいずれか1項に記載の眼治療システムであって、平行平面式圧平板と比べると、前記接触素子は、前記レーザー焦点の走査面の少なくとも一部分の深さのばらつきを低減させるように構成されており、前記深さは、前記前面に対して測定され、前記走査面は、前記レーザービームの軸に沿って前記レーザー焦点を走査するように構成された前記眼治療システムの軸方向走査システムの一定の走査状態に対応する、眼治療システム。
【請求項31】
請求項27から30のいずれか1項に記載の眼治療システムであって、前記接触素子は、少なくとも前記レーザー光学システムの光軸から2ミリメートル未満、または4ミリメートル未満、または5.5ミリメートル未満、または6ミリメートル未満の距離を有する各点について、前記レーザー焦点の走査面の少なくとも一部分の前記深さのばらつきが30マイクロメートル未満または20マイクロメートル未満になるように構成されており、前記走査面は、前記レーザービームの軸に沿って前記レーザー焦点を走査する、前記眼治療システムの軸方向走査システムの一定の走査状態に対応する、眼治療システム。
【請求項32】
請求項27から31のいずれか1項に記載の眼治療システムであって、前記レーザー光学システムは、前記角膜内で前記レーザービームの前記焦点を走査する走査システムを備え、前記走査システムは、前記レーザービームの前記ビーム経路において前記集光光学システムと前記眼との間にある、眼治療システム。
【請求項33】
請求項27から32のいずれか1項に記載の眼治療システムであって、前記凸形状の少なくとも一部分は、10ミリメートル超または50ミリメートル超、および500ミリメートル未満または300ミリメートル未満の少なくとも一方である曲率半径を有する、眼治療システム。
【請求項34】
請求項27から33のいずれか1項に記載の眼治療システムであって、前記凸形状は、前記表面下の切開部の形成中に生成される気体が前記凸形状の頂点から離れる方向に実質的に誘導されるように構成されている、眼治療システム。
【請求項35】
請求項1から34のいずれか1項に記載の眼治療システムであって、前記接触素子は、前記レーザービームの前記ビーム経路にあり前記接触面の反対側にある近位面を含み、前記近位面の少なくとも一部分は、前記入射レーザービームに向かって凸形もしくは凹形の形状または平坦な形状を有する、眼治療システム。
【請求項36】
1ピコ秒未満のパルス持続時間を有するパルス状レーザービームを生成するように構成されたレーザー光源と、表面下の切開部および側面切開部を用いて周囲の角膜組織から前記薄板を少なくとも部分的に切り離すために、角膜内で前記レーザービームの焦点を走査する走査システムと、を有するレーザー光学システム
を用いて、角膜組織の薄板、特に、角膜フラップ、角膜内薄板、または角膜表面薄板を形成するための、眼を治療する方法であって、
前記表面下の切開部は前記薄板の前面または後面の少なくとも一部分に相当し、前記側面切開部は、前記薄板の前記縁の少なくとも一部分に相当し、
前記方法は、
前記レーザー光学システムを用いて、気体を誘導する1つまたは複数の気体放出切開部を前記角膜に形成することであって、前記気体放出切開部のそれぞれについて、前記それぞれの切開部が前記角膜の前面または後面に延びる、気体放出切開部を形成することと、
前記1つまたは複数の気体放出切開部の形成後に、前記レーザー光学システムを用いて前記表面下の切開部の少なくとも一部分を形成することと、
前記表面下の切開部の形成後に、前記気体放出切開部のそれぞれについて前記それぞれの気体放出切開部の少なくとも一部分が前記側面切開部の一部分を形成するように、前記レーザー光学システムを用いて前記側面切開部を完成させることと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼の角膜内にその切開部を形成するシステムおよび方法に関する。詳細には、本発明は、ヒンジ接続されたフラップまたは実質内レンティクルを形成するために、露出された実質面にレーザー光を施すシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー角膜内切削形成術(LASIK:Laser‐assisted in-situ keratomileusis)は最も一般的なレーザー手術の一つである。その手術は、ヒンジ接続された角膜フラップの形成を含む。フラップのヒンジによって、実質組織へのアクセスを確立するようにフラップをめくることが可能になり、その実質組織は、屈折異常を矯正するパターンで、露出された角膜実質に直接的に集光されるエキシマーレーザービームを用いて切削されることになる。
【0003】
確立されたフラップ形成処置では、フラップは、機械的なマイクロケラトーム(ヒンジ接続されたフラップを切り出すように設計された振動式ブレードを有する)または集光されたフェムト秒レーザービームを用いて形成される。フェムト秒レーザーは、その正確性および予測可能性がより高いため、マイクロケラトーム処置よりも人気が出ている。特に、フェムト秒レーザーによって、意図したフラップの厚さおよび直径の狭い範囲内での予測可能性、再現性、および安定性が高い角膜フラップの作製が可能である。比較すると、従来のマイクロケラトームは、概して、周縁と比べて中央が薄いフラップを生成し、そのことが、ボタンホール状の孔が発生することがある。また、フェムト秒レーザーは、実質ベッドの平滑性がより高い切開部の形成を可能にする。
【0004】
しかし、フェムト秒レーザー支援のレーシックにもやはり、マイクロケラトーム処置では起きない合併症がある。合併症を招く可能性のある作用の一つは、キャビテーションバブルの発生であり、これは、レーザービームの焦点における角膜組織の光切断によって生じる。気化した組織がキャビテーション気泡を形成し、それらがつぶれて気泡を残す。気泡は、主成分として二酸化炭素(CO)、窒素(N)および水(HO)から構成される。実質ベッドの表層に気泡が集まると、いわゆる不透過性気泡層(OBL:opaque bubble layer)が発生することがあり、、それが角膜混濁を引き起こす。
【0005】
過剰なOBLは、フラップの作製、フラップの持ち上げ、残る実質ベッドの測定、およびエキシマーレーザー切削工程のためのレーザーのトラッキングなど、手術処置の多くの段階で妨害を招く恐れがある。キャビテーション気泡に関係するさらなる合併症は、垂直方向の気体による破壊(VGB:vertical gas breakthrough)の発生である。VGBは、医師がフラップを折り返そうとするときにフラップに穴が生成される程度に、フラップと実質ベッドとの間の切開部の不完全な分離を招くことがある。気泡が眼の前眼房に移動することも可能であり、そこで気泡がエキシマーレーザーアイトラッカーと干渉する恐れがある。
【0006】
レーシック手術処置の場合、平滑な実質ベッドの切開部の形成を可能にするレーザープロセスが、明確な実質面にエキシマーレーザーによる切削を提供し、手術処置が患者にとって大きなストレスにならず患者が過剰に動くことによって引き起こされるエラーの発生が増大されないように十分に速いことも望ましい。
【0007】
実質内レンティクルを形成するプロセスに同様の課題が存在する。レンティクルは、小さい切り口(本明細書で以下にSMILEと略記するsmall incision lenticule extraction)を通して、またはヒンジ接続されたフラップ(本明細書で以下にFLExと略記するfemtosecond lanticle extraction)を用いて、角膜から分離される。角膜の層状部分が移植によって置換される技術(層状角膜移植術などにおいて)にも同様の課題がある。
【0008】
したがって、上記で論じた課題の1つまたは複数を克服する、改善されたレーザーシステムおよび眼の治療方法の必要が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の実施形態は、眼にレーザー手術を行うための眼治療システムに関する。本システムは、1ピコ秒未満のパルス持続時間を有するパルス状レーザー光を生成するように構成されたレーザー光源を有する、レーザー光学システムを備える。レーザー光学システムは、眼の角膜内でレーザー光のレーザービームの焦点を3次元で走査する走査システムを備える。眼治療システムはさらに、レーザービームのビーム経路において集光光学システムと眼との間にある接触素子を備える。接触素子は、眼の角膜に接触する接触面を有し、接触面の少なくとも一部分は、角膜に向かって凸形の形状を有する。
【0010】
一実施形態によれば、眼治療システムは集光光学システムを備え、走査システムは、レーザービームのビーム経路においてレーザー光源と集光光学システムとの間にある。
【0011】
レーザーシステムは、眼にレーザー手術をするように、具体的には、パルス状レーザービームを用いて眼の角膜内に切開部を生成するように構成できる。レーザー光源は、レーザービームが角膜組織内に光切断を生成するようにレーザーパルスがパルスエネルギーを有するように構成できる。光切断は、レーザー誘起光学破壊によって引き起こすことができる。代替的に、レーザーパルスのパルスエネルギーは、レーザー誘起光学破壊を生成するための閾値よりも低くてよい。一例として、レーザー誘起光学破壊を生成するための閾値よりも低いパルスエネルギーを有する複数のパルスを、角膜内で組織分離を生成するように重ねることができる。
【0012】
レーザー光源は、レーザーパルスのパルスエネルギーが1ナノジュール超、または10ナノジュール超、または50ナノジュール超になるように構成できる。パルスエネルギーは、20マイクロジュール未満、または15マイクロジュール未満、または10マイクロジュール未満でよい。
【0013】
パルス状レーザービームのパルス持続時間は、800フェムト秒未満、または500フェムト秒未満、または300フェムト秒未満、または150フェムト秒未満、または100フェムト秒未満でよい。パルス持続時間は、10フェムト秒超または50フェムト秒超でよい。パルス状レーザービームの繰り返し率は、50kHz超または80kHz超でよい。パルス状レーザービームの繰り返し率は、10MHz未満または1MHz未満でよい。
【0014】
眼に入射するパルス状レーザービームの中心波長は、800ナノメートルと1400ナノメートルとの間、または900ナノメートルと1400ナノメートルとの間、または1000ナノメートルと1100ナノメートルとの間、または1010ナノメートルと1050ナノメートルとの間の範囲にあってよい。
【0015】
レーザー光源は、レーザービームのビーム経路においてレーザー光源の下流にあるレーザー光学システムの構成素子によって誘起される、レーザーパルスの群遅延分散(GDD:group delay dispersion)の変化を少なくとも部分的に前置補償する前置補償器を含むことができる。レーザーパルスが正のGDDを有する場合は、より長い波長のレーザーパルスはより短い波長よりも速く伝播する。したがって、赤色の波長は青色の波長と比べると屈折率が低いため、正の群遅延分散は、透過性の媒体で典型的である材料分散に対応する。前置補償器は、群遅延分散を低減させるように構成できる。一例として、前置補償器によって生成された、低減された群遅延分散は、より低い正の群遅延分散またはさらに負の群遅延分散を有することができる。
【0016】
角膜内のレーザービーム焦点の横方向直径は、10マイクロメートル未満または6マイクロメートル未満でよい。直径は、3マイクロメートル超でよい。横方向の直径は、レーザー光学システムの光軸に直角の方向において測定できる。横方向の直径は、80%エンサークルドエネルギーの直径として測定できる。
【0017】
レーザー光学システムは、レーザー光学システムを制御するためのコントローラーを含むことができる。コントローラーは、データ処理システムを含むことができる。データ処理システムはコンピューターシステムを含むことができ、コンピューターシステムは、プロセッサーと、プロセッサーによって処理できる命令を格納するメモリーとを有する。プロセッサーは、オペレーティングシステムを実行できる。データ分析システムはさらに、データ処理システムからデータを受信する、およびデータ処理システムにデータを提供する、の少なくとも一方をユーザーができるように構成されたユーザーインターフェースを含むことができる。ユーザーインターフェースは、グラフィカルユーザーインターフェースを含むことができる。
【0018】
コントローラーは、角膜内でレーザー焦点を走査するためにパルス状レーザービームの走査経路を決定するように構成できる。コントローラーは、患者固有のデータに基づいて走査経路を決定するように構成できる。一例として、コントローラーは、フラップのパラメーターに基づいて、ヒンジ接続されたフラップを形成するための走査経路を決定するように構成でき、それらのパラメーターは、フラップの厚さ、フラップの中心、フラップのヒンジの位置、側面切開角度(レーザー光学システムの光軸に対して測定する)、およびフラップのサイズ(フラップの直径など)の1つまたは組み合わせを含むことができる。
【0019】
コントローラーは、レーザーパルスが重なるかまたは重ならないように走査パターンを生成するように構成できる。隣り合うレーザーパルスの横方向の変位量は、30マイクロメートル未満、または20マイクロメートル未満、または10マイクロメートル未満でよい。変位量は、1マイクロメートル超または2マイクロメートル超でよい。
【0020】
眼治療システムは、周囲の角膜組織から少なくとも部分的に分離される薄板を形成するようにレーザー焦点を角膜内で走査するように構成できる。薄板はヒンジ接続されたフラップでよい。ヒンジは、折り返されていないフラップによってカバーされている下にある角膜組織を露出するためにフラップを折り返すことができるように構成できる。露出された角膜の表面は、眼に入射する切削レーザービームによる目標とすることができる。露出された角膜の表面は実質面でよい。ヒンジ接続されたフラップのヒンジは、フラップが周囲の組織から分離されないようにする組織部分によって形成することができる。ヒンジ接続されたフラップの前面は、角膜の前面の一部分でよい。
【0021】
代替的に、薄板は、移植片に置き換えられる眼から、切り離された薄板を抜去できるように、角膜のうち周囲の角膜組織から完全に切り離された部分でよい。薄板に関するさらなる例は、完全に角膜内に位置する角膜内薄板である。角膜内薄板の少なくとも一部分は、レンティクルの形態であってよい。レンティクルは、正または負の屈折力に相当する形状を有することができる。一例として、角膜内薄板は、FLExまたはSMILE処置を行うために形成できる。
【0022】
薄板は角膜表面薄板とすることができる。「角膜表面薄板(corneal surface lamella)」という用語は、(a)薄板の前面の少なくとも一部分が(レーシック処置などにおいて)角膜の前面の一部分になること、または(b)薄板の後面の少なくとも一部分が(深層角膜移植術などにおいて)角膜の後面の一部分になることを意味するものと定義できる。角膜表面薄板は、フラップとしてもよく、周囲の角膜組織から完全に切り離してもよい。
【0023】
「接触面」という用語は、本明細書で用いられているように、接触素子のうちの治療中に角膜と接触状態になる表面部分を意味するものと定義できる。眼治療システムは、接触面の直径が6ミリメートル以上または8ミリメートル以上になるように構成できる。
【0024】
接触素子は、患者に、具体的には眼に固定されるように構成された固定システム(吸引リングなど)に、取り外し可能なように取り付け可能にできるか、または取り外し不能なように取り付けることができる。接触素子と固定システムとが単一部片として形成されることも考えられる。固定システムは、真空を用いて眼に固定されるように構成できる。付加的にまたは代替的に、レーザーシステムは、接触素子をレーザー光学システムに対して取り外し可能となるように取り付けるための結合機構を含むことができる。結合機構は、接触素子がレーザー光学システムに直接的または間接的に結合されるように構成できる。
【0025】
接触素子の少なくとも一部分はレンズ形でよい。レンズ形部分の少なくとも一部分は、レーザービームによって横断されてよい。接触素子のレンズ形部分は、正または負の屈折力を有してよいか、または屈折力がなくてよい。接触素子の少なくとも一部分、具体的には接触素子のレンズ形部分は、パルス状レーザービームに対して透過性または実質的に透過性とすることができる。レンズ形部分はさらに、眼治療システムの光干渉断層撮影(OCT)系の測定アームの光を透過できる。OCT測定アームの中心波長は、750ナノメートルと1400ナノメートルとの間の範囲内とすることができる。付加的にまたは代替的に、レンズ形部分は、可視光波長範囲内、すなわち380ナノメートルと750ナノメートルとの間の範囲内にある複数の波長に対して透過性であってよい。
【0026】
一例として、レンズ形部分の接触素子は、シクロオレフィンポリマー(COP:Cyclo Olefin Polymer)またはポリメチルメタクリレート(PMMA:Polymethylmethacrylate)などのポリマーから少なくとも部分的に作製できる。代替的に、レンズ形部分の接触素子は、少なくとも部分的にガラスから作製できる。接触面の少なくとも一部分およびレンズ形部分の近位面の少なくとも一部分の少なくとも一方をコーティングすることができる。
【0027】
接触素子、具体的には、レンズ形部分は、レーザービームのビーム経路においてレーザー光学システムと眼との間にある唯一の構成素子でよく、そのため、レーザー光学システムとレンズ形部分との間でレーザービームが空気または真空を通過する。代替的に、1つまたは複数のさらなる光学素子は、レーザービームのビーム経路においてレンズ形部分と集光光学システムとの間にあってよい。
【0028】
一実施形態によれば、走査システムは、レーザービームの軸に沿ってレーザー焦点を走査する軸方向走査システムを含む。走査システムはさらに、レーザービームの偏向を介してレーザービームを走査するビーム偏向走査システムを含むことができる。軸方向走査システムは、レーザービームのビーム経路においてレーザー光源とビーム偏向走査システムとの間にあってよい。走査システムは、角膜の焦点の3次元走査を行うために3自由度を提供できる。3自由度のうちの1つは軸方向走査システムによって提供できる。走査システムの残る2自由度はビーム偏向走査システムによって提供できる。
【0029】
軸方向走査システムは、レーザービームの集束または発散の角度を変更することによってレーザービームの焦点を軸方向に走査するように構成できる。集束または発散は、レーザービームの軸に沿った、レーザービームが軸方向走査システムから出る位置で測定できる。「集束」または「発散」という用語は、本明細書で用いられているように、距離に伴ってビームの直径または半径が拡大または縮小する角度の尺度を意味するものと定義できる。レーザー焦点のレーザービーム軸に沿った走査の動きに加えて、軸方向走査システムは、レーザービームの焦点が角膜内で軸方向の動きと同時に横方向の動きを行うように、レーザービームの偏向を引き起こすこともできる。レーザー焦点の横方向の動きは、レーザー焦点の軸方向の動きよりも小さくすることができる。
【0030】
ビーム偏向走査システムを用いて行われるレーザービームの偏向は、角膜内での集光光学システムの光軸に対するレーザー焦点の横方向の位置を調節できる。
【0031】
さらなる実施形態によれば、平行平面式圧平板と比べると、接触素子は、レーザー焦点の走査面の少なくとも一部分の深さのばらつきを低減させるように構成されている。深さは、角膜の前面に対して測定できる。付加的にまたは代替的に、走査面は、軸方向走査システムの一定の走査状態に対応することができる。
【0032】
深さのばらつきの低減は、平行平面式圧平板が角膜の圧平のために用いられ、軸方向走査システムが同じ走査状態にあるときの、角膜内の走査面の深さのばらつきと比較することで測定することができる。深さのばらつきは、走査面の部分の深さの値の間の最大の差と定義できる。
【0033】
平行平面式圧平板は、レーザービームによって横断される、対向する2つの平行な面を有することができる。平行平面式圧平板は、レーザービームのビーム経路において接触素子のレンズ形部分の代わりに使用できる。圧平板の対向する面は、レーザー光学システムの光軸に直角に向けることができる。平行平面式圧平板は、接触素子のレンズ形部分と同じかまたは実質的に同じガラス材料から作製できる。
【0034】
平行平面式圧平板の厚さは、40ミリメートル以下、または30ミリメートル以下、または20ミリメートル以下、または10ミリメートル以下でよい。厚さは、0.5ミリメートル以上、または1ミリメートル以上、または10ミリメートル以上でよい。平行平面式圧平板は、接触面(すなわち、圧平板のうちの眼の前面と接触状態になる面)が接触素子と比較して同じかまたは実質的に同じ範囲を有するように、眼に押し付けることができる。
【0035】
接触素子がもたらす深さのばらつきの低減は、少なくとも光軸から2ミリメートル未満、または4ミリメートル未満、または5.5ミリメートル未満、または6ミリメートル未満の距離を有する走査面の各点において生じる。
【0036】
走査面の、低減されていない深さのばらつき(すなわち、平行平面式圧平板が用いられるとき)は、レーザー光学システムの像面湾曲、具体的には、集光光学システムの像面湾曲によって、少なくとも部分的に引き起こされる場合がある。
【0037】
軸方向走査システムの走査状態は、レーザービームの軸に沿ったレーザー焦点の軸方向走査位置、およびレーザービームが軸方向走査システムから出る位置でのレーザービームの集束または発散、の少なくとも一方に対応する軸方向走査システムの構成を意味するものと定義できる。
【0038】
さらなる実施形態によれば、接触素子は、少なくとも集光光学システムの光軸から2ミリメートル未満、または4ミリメートル未満、または5.5ミリメートル未満、または6ミリメートル未満の距離を有する各点について、走査面の深さのばらつきが30マイクロメートル未満、または20マイクロメートル未満、または10マイクロメートル未満、または6マイクロメートル未満、または2マイクロメートル未満になるように構成されている。
【0039】
一実施形態によれば、接触素子は近位面を含み、近位面は、レーザービームのビーム経路にあり、接触面の反対側にある。近位面の少なくとも一部分は、入射レーザービームに向かって凸形の形状を有することができる。代替的に、近位面の少なくとも一部分は、入射レーザービームに向かって凹形の形状または平坦な形状を有することができる。平坦な形状は、レーザー光学システムの光軸に対して直角または実質的に直角でよい。近位面の凸形または凹形の形状の局所曲率半径は、レーザー光学システムの像面湾曲に応じて変わってよい。凸形状の少なくとも一部分は、10ミリメートル超、または15ミリメートル超、または30ミリメートル超、または50ミリメートル超、または100ミリメートル超、または150ミリメートル超である曲率半径を有することができる。近位面の曲率半径の値は、レーザー光学システムの光学設計に応じて変わることがある。
【0040】
特に、少なくとも近位面の頂点から3ミリメートル未満の距離、または4ミリメートル未満の距離、または6ミリメートル未満の距離を有する近位面上の各位置について、近位面の局所曲率半径は、10ミリメートル超、または15ミリメートル超、または30ミリメートル超、または50ミリメートル超、または100ミリメートル超、または150ミリメートル超でよい。
【0041】
近位面部分の形状は、走査面の深さのばらつきの低減に寄与することができる。付加的にまたは代替的に、近位面部分の形状は、平坦な形状の近位面部分と比べてまたは平行平面式圧平板と比べて、レーザー焦点の横方向の焦点直径を小さくすることができる。焦点直径は、80%エンサークルドエネルギーの直径として測定できる。
【0042】
一実施形態によれば、レーザービームは、眼治療システムのビームマルチプライヤーを用いるレーザー光学システムによって生成される複数のレーザービームのうちの1つである。ビームマルチプライヤーは、パルス状レーザー光がビームマルチプライヤーに当たるように配置できる。走査システムは、複数のレーザービームを用いるレーザー光学システムによって生成される、規則的または不規則的な1次元または2次元の焦点アレイを角膜内で走査するように構成できる。焦点アレイの焦点は、走査システムによって同時に走査することができる。特に、焦点は、時間的および空間的に同時に走査でき、焦点の走査経路は、横方向および軸方向の少なくとも一方において互いに変位する。
【0043】
ビームマルチプライヤーは、マイクロレンズアレイなど、規則的または不規則的な1次元、2次元または3次元のレンズアレイまたはレンズ位置を含むことができる。レンズには、パルス状レーザービームが並列に照射される(すなわち、レンズは、レーザービームによって連続的には横断されない)。レンズアレイの主平面は、平面に配置するかまたは実質的に平面に配置することができる。付加的にまたは代替的に、ビームマルチプライヤーは、規則的または不規則的なミラーアレイ、具体的にはマイクロミラーアレイを含むことができる。ミラーは、並列に照射されるようにパルス状レーザーのビーム経路に配置できる。
【0044】
付加的にまたは代替的に、ビームマルチプライヤーは、位相マスクまたは空間光変調器(SLM:spatial light modulator)を含むことができる。SLMは透過型または反射型でよい。SLMは、振幅のみ、位相のみ、または位相振幅のSLMでよい。
【0045】
焦点アレイの焦点は、角膜の前面から測定して一定または実質的に一定の深さに位置してよい。
【0046】
一実施形態によれば、焦点アレイの焦点のそれぞれについて、平行平面式圧平板と比べると、接触素子は、それぞれの焦点のおよび互いに対する個々の焦点の、走査面の少なくとも一部分の深さのばらつきを低減させるように構成されている。深さは、前面および走査面に対して測定できる、ならびに軸方向走査システムの一定の走査状態に対応できる、の少なくとも一方である。
【0047】
さらなる実施形態によれば、焦点アレイの焦点のそれぞれについて、深さのばらつきは、少なくともレーザー光学システムの光軸から2ミリメートル未満、または4ミリメートル未満、または5.5ミリメートル未満、または6ミリメートル未満の距離を有する各点について、30マイクロメートル未満、または20マイクロメートル未満、または10マイクロメートル未満、または6マイクロメートル未満、または2マイクロメートル未満とすることができる。
【0048】
さらなる実施形態によれば、軸方向走査システムは、負の屈折力を有する第1の光学システムを含む。軸方向走査システムはさらに、正の屈折力を有する第2の光学システムを含むことができる。第2の光学システムは、レーザービームのビーム経路において第1の光学システムと偏向走査システムとの間にあってよい。軸方向走査システムは、第1の光学システムと第2の光学システムとの間の距離が制御により変更可能に構成できる。第1の光学システムおよび第2の光学システムの少なくとも一方は、1つもしくは複数のレンズを含むかまたは1つもしくは複数のレンズから構成することができる。距離は、軸方向走査システムの光軸に沿って測定することができる。
【0049】
一実施形態によれば、軸方向走査システムは、レーザービームのビーム経路にある1つまたは複数の位置変更が可能なレンズを含む。軸方向走査システムは、1つまたは複数の位置変更が可能なレンズの光軸に平行または実質的に平行な方向に、1つまたは複数の位置変更が可能なレンズが制御により位置変更が可能になるように構成できる。眼治療システムは、軸方向走査システムのアクチュエーターと信号通信するコントローラーを含むことができる。アクチュエーターは、コントローラーから受信した信号に基づいて1つまたは複数の位置変更が可能なレンズを変位させるように構成できる。
【0050】
一実施形態によれば、眼治療システムは、角膜組織の薄板、特に、角膜フラップ、角膜内レンティクル、または角膜表面薄板を形成するように構成されている。レーザーシステムはコントローラーを含むことができ、コントローラーは、表面下の切開部および側面切開部を用いて周囲の角膜組織から薄板を少なくとも部分的に切り離すために、角膜内で焦点を走査するようにレーザー光学システムを制御するように構成されている。表面下の切開部は、薄板の前面または後面の少なくとも一部分に相当し得る。表面下の切開部は、薄板の前面または後面の少なくとも50%または少なくとも80%に相当し得る。表面下の切開部は、軸方向走査システムの一定または実質的に一定の走査状態で形成できる。側面切開部は、角膜の前面に延びることができるか、または実質的に延びることができる。一例として、側面切開部は、角膜の前面に延びることなく上皮に延びることができ、そのため、側面切開部は実質的に前面に延びるに過ぎない。代替的な実施形態において、側面切開部は、角膜の後面に実質的に延びるかまたは延びる。
【0051】
薄板の前面の少なくとも一部分は、角膜の前面の一部分でよい。代替的に、薄板の後面の少なくとも一部分は、角膜の後面の一部分でよい。
【0052】
一実施形態によれば、ビーム偏向走査システムは走査ミラーを2つまたは3つ含む。走査ミラーのそれぞれは、走査システムのガルバノスキャナーの、具体的には共鳴型のガルバノスキャナーの一部でよい。走査ミラーのそれぞれは、回転可能なように支持できる。走査ミラーのうちの少なくとも2つのミラーの回転軸は、互いに対して平行でないように向けられていてよい。
【0053】
さらなる実施形態によれば、ビーム偏向走査システムは3つの走査ミラーを含む。3つの走査ミラーのうちの第1および第2のミラーは、ビーム偏向システムの2つの角度走査次元の1つを提供するように構成できる。第1および第2の走査ミラーは、第1および第2の走査ミラーによって生成されるビーム偏向によって、レーザービームのビーム経路において2つの走査ミラーの下流にあるピボット点を中心にレーザービームの向きを変えるように構成できる。ピボット点は、第3の走査ミラーの反射面上に、具体的には、反射面のうちの第3のミラーの回転軸上に位置するかまたは実質的に位置する部分上にあってよい。
【0054】
さらなる実施形態によれば、レーザーシステムは、接触素子がレーザー光学システムに対して取り外しおよび取り付けが可能となるように構成されている。接触素子は、レーザービームのビーム経路においてレーザー光学システムと眼との間にある唯一の光学素子とすることができる。
【0055】
接触素子は、結合部分を含むことができるかまたはそれに取り付けることができ、その結合部分は、レーザー光学システムに設けられているかまたはレーザー光学システムに剛性連結されている対応する結合部分に接触素子を結合するためのものである。代替的な実施形態において、対応する結合部分は、レーザー光学システムの光軸に平行な方向に移動可能に支持される。
【0056】
一実施形態によれば、レーザー光学システムは、レーザービームのビーム経路において走査システムと眼との間にあるビームコンバイナーを含む。
【0057】
さらなる実施形態によれば、ビームコンバイナーは、レーザービームのビーム経路と眼治療システムの撮像システムのビーム経路と合成するように構成されている。撮像システムはイメージセンサーを含むことができる。イメージセンサーは、2次元の規則的または規則的でない画素アレイを含むことができる。イメージセンサーは、380ナノメートルと950ナノメートルとの間の範囲内、または380ナノメートルと1400ナノメートルとの間の範囲内の1つまたは複数の波長を感知できる。撮像システムは、眼および接触素子の一部分の少なくとも一方の正面画像を取得するように構成できる。付加的にまたは代替的に、撮像システムは光干渉断層撮影システムを含むことができる。光干渉断層撮影システムは、角膜および眼の水晶体の少なくとも一部分の少なくとも一方の断面画像を取得するように構成できる。
【0058】
さらなる実施形態によれば、ビームコンバイナーは、パルス状レーザービームを眼に向かう方向または実質的に眼に向かう方向に偏向するように構成できる。ビームコンバイナーは、ミラーおよびプリズムの少なくとも一方を含むことができる。ビームコンバイナーは、ダイクロイックビームコンバイナーとして構成できる。ビームコンバイナーは、集光光学システム内のレーザービームのビーム経路において集光光学システムの下流または集光光学システムの上流にあってよい。ビームコンバイナーの上流では、レーザーのビーム経路は、水平方向に延びることができるか、または実質的に水平方向に延びることができる。ビームコンバイナーの下流では、レーザービームは、垂直方向に延びるかまたは実質的に延びることができる。
【0059】
さらなる実施形態によれば、接触面の凸形状の少なくとも一部分は、10ミリメートル超、または50ミリメートル超、または100ミリメートル超、または150ミリメートル超の曲率半径を有する。付加的にまたは代替的に、接触面の凸形状の少なくとも一部分は、500ミリメートル未満、または300ミリメートル未満、または250ミリメートル未満、または200ミリメートル未満の曲率半径を有する。曲率半径は局所曲率半径でよい。特に、曲率半径は、接触面の凸形状に応じて変わってよい。
【0060】
一実施形態によれば、接触面は、少なくとも接触面の頂点から測定して2ミリメートル未満、または4ミリメートル未満、または6ミリメートル未満の距離を有する各点について凸形状を有する。
【0061】
接触面の凸形状の横方向の範囲は、薄板の後面または前面の横方向の範囲に対応するかもしくは実質的に対応するかまたはそれよりも大きい。
【0062】
さらなる実施形態によれば、少なくとも接触面の頂点から3ミリメートル未満、または4ミリメートル未満、または6ミリメートル未満の距離を有する接触面上の各位置について、接触面の局所曲率半径は、10ミリメートル超、または50ミリメートル超、または100ミリメートル超、または150ミリメートル超である。付加的にまたは代替的に、局所曲率半径は、500ミリメートル未満、または300ミリメートル未満、または250ミリメートル未満、または200ミリメートル未満でよい。
【0063】
さらなる実施形態によれば、レーザーシステムは、接触素子がレーザー光学システムに対して取り外しおよび取り付けが可能となるように構成されている。結合された状態では、接触素子は、集光光学システムの光軸に対して所定の径方向位置および所定の傾斜角の少なくとも一方にあってよい。一例として、結合された状態では、接触素子は、レーザー光学システムの光軸に平行な方向に移動可能に支持される。代替的に、結合された状態では、接触素子は、レーザー光学システムに対して所定の径方向位置だけでなく所定の3次元位置にあってよい。一例として、接触素子は、結合部分と剛性連結でき(またはそれと単一部片になるように形成でき)、その結合部分は、レーザー光学システムに設けられた対応する結合部分と係合するように構成されている。
【0064】
さらなる実施形態によれば、レーザー光学システムは、レーザービームを用いて、実質的に横方向に延びる表面下の切開部を角膜内に生成するように構成されている。凸形状は、実質的に横方向に延びる表面下の切開部の形成によって生じる気体が、凸形状の頂点およびレーザー光学システムの光軸の少なくとも一方から離れる方向に実質的に誘導されるように構成できる。レーザー光学システムの光軸は、横方向に延びる表面下の切開部を通って延びることができる。表面下の切開部は、前面に対して一定の深さまたは一定でない深さに位置することができる。表面下の切開部が光軸に交わる位置で、表面下の切開部は、光軸に対して直角または実質的に直角に向けられていてよい。
【0065】
さらなる実施形態によれば、眼治療システムはコントローラーを含み、コントローラーは、表面下の切開部および側面切開部を用いて周囲の角膜組織から薄板を少なくとも部分的に切り離すために、角膜内で焦点を走査するようにレーザー光学システムを制御するように構成されている。表面下の切開部は、薄板の前面または後面の少なくとも一部分に相当し、側面切開部は薄板の縁の少なくとも一部分に相当し得る。コントローラーは、薄板を形成するために、気体を誘導する1つまたは複数の気体放出切開部を角膜に形成し、気体放出切開部のそれぞれについて、それぞれの切開部が角膜の前面または後面に延び、気体放出切開部の少なくとも一部分が薄板の縁の少なくとも一部分を形成するように、1つまたは複数の気体放出切開部の形成後に、表面下の切開部の少なくとも一部分を形成するように、および表面下の切開部の形成後に、気体放出切開部のそれぞれについてそれぞれの気体放出切開部の少なくとも一部分が側面切開部の一部分を形成するように側面切開部を完成させるように、レーザー光学システムを制御するように構成できる。
【0066】
表面下の切開部、側面切開部、および気体放出切開部の少なくとも1つの少なくとも一部分または全部は、断続的または連続的とすることができる。「断続的な切開部」という用語は、本明細書で用いられているように、相互に対向する2つの表面を接続する、切開部によって分離される角膜組織の複数のブリッジを含む切開部を意味するものと定義できる。「連続的な切開部」という用語は、本明細書で用いられているように、ブリッジがないかまたは実質的にない、すなわち断続的ではない切開部を意味するものと定義できる。
【0067】
側面切開部および縁の少なくとも一方は、眼の光軸およびレーザー光学システムの光軸の少なくとも一方を少なくとも部分的に取り囲むことができる。側面切開部および縁の少なくとも一方は、外周に沿って開いていても閉じていてもよい。側面切開部および縁の少なくとも一方の少なくとも一部分は、角膜の前面に延びることができるかまたは実質的に延びることができる。一例として、側面切開部の少なくとも一部分は、角膜の前面に延びることなく上皮に延びることができ、そのため、側面切開部は実質的にだけ前面に延びる。縁および側面切開部の少なくとも一方は、薄板の前面を薄板の後面と接続することができる。
【0068】
薄板の前面の少なくとも一部分は、角膜の前面の一部分でよい。代替的に、薄板の後面の少なくとも一部分は、角膜の後面の一部分でよい。
【0069】
眼の光軸およびレーザー光学システムの光軸の少なくとも一方は、表面下の切開部を通って延びることができる。「眼の光軸」という用語は、本明細書で用いられているように、瞳孔の中心と角膜の湾曲の中心とを結ぶ軸であると定義できる。側面切開部は、ヒンジ接続されたフラップのヒンジを画定するために外周に沿って開いていてよい。ヒンジの外周範囲(すなわち、側面切開部が開いている外周領域)は、10度超または30度超でよい。外周範囲は、120度未満、または90度未満、または70度未満でよい。側面切開部の最小の直径は4ミリメートル超でよい。
【0070】
1つまたは複数の気体放出切開部は、光切断によって、具体的にはレーザー誘起光学破壊によってレーザービームの焦点領域に生じる気体を放出するように構成できる。気体は、気体放出切開部によって表面下の切開部から角膜の前面または後面に誘導できる。単位面積当たりの局所的な圧力p/Aが、接触面の凸形状により角膜の前面に生成され、また、凸形接触面の頂点からの径方向距離rが大きくなるにつれて単位面積当たりの局所的な圧力p/Aが小さくなることによって、気体が気体放出切開部を通して角膜の前面または後面にさらに誘導される。
【0071】
側面切開部を完成させることは、気体放出切開部のうちの2つ以上を接続することを含むことができる。3つ以上の気体放出切開部が順次接続されてよい。気体放出切開部のそれぞれについて、それぞれの気体放出切開部の少なくとも一部分は、側面切開部の外周部に相当し得る。
【0072】
さらなる実施形態によれば、側面切開部の完成後には、表面下の切開部から気体を放出するために使用された各気体放出切開部について、それぞれの気体放出切開部の少なくとも一部分は側面切開部の一部である。特に、気体放出切開部のそれぞれは、側面切開部の一部を完全に形成することができる。
【0073】
さらなる実施形態によれば、薄板はヒンジ接続されたフラップであり、側面切開部は、ヒンジ接続されたフラップの縁である。側面切開部は、側面切開部の外周全体に沿って角膜の前面に延びることができ、側面切開部の外周は開いているかまたは閉じている。薄板の後面の少なくとも一部分が角膜の後面の一部分である実施形態では、側面切開部は、側面切開部の外周全体に沿って角膜の後面に延びることができ、側面切開部の外周は開いているかまたは閉じている。
【0074】
さらなる実施形態によれば、側面切開部は、表面下の切開部の周縁部で表面下の切開部に接続されている。
【0075】
さらなる実施形態によれば、1つまたは複数の気体放出切開部の合算された外周長さは、側面切開部の外周に沿って測定されたときに、側面切開部の外周長さの60%未満または50%未満になる。側面切開部が外周に沿って開いている場合、そのことがその外周を小さくすることができる。側面切開部がヒンジを形成する組織部分を通って延びることがないため、外周に沿って開いている側面切開部が生じ得る。
【0076】
さらなる実施形態によれば、気体放出切開部の1つまたは複数の少なくとも1つまたはそれぞれは、5度超または10度超の外周範囲を有する。外周範囲は、120度未満、または90度未満、または60度未満、または45度未満、または20度未満でよい。
【0077】
さらなる実施形態によれば、表面下の切開部を形成することは、表面下の切開部を形成するための複数の予め定められた走査パターンの1つを自動的にまたは対話形式で選択することを含む。コントローラーはさらに、表面下の切開部を形成するために用いられる選択された走査パターンに基づいて、i)気体放出切開部の少なくとも1つについて、a)幾何形状、b)位置、およびc)向きの少なくとも1つのパラメーター、ならびにii)1つまたは複数の気体放出切開部の数の少なくとも一方を決定するように構成できる。幾何形状は、湾曲または平面など、気体放出切開部の固有の幾何形状でよい。
【0078】
走査パターンの対話形式の選択は、コントローラーのユーザーインターフェースを介して、走査パターンの1つまたは複数のパラメーターおよび複数の予め定められた走査パターンタイプの1つの少なくとも一方を示す、ユーザーインプットを受信することを含むことができる。予め定められた走査パターンタイプのそれぞれは、1つまたは複数のデータ構造によって表すことができる。データ構造は、1つまたは複数のパラメーターを用いて設定可能とすることができる。一例として、予め定められた走査パターンタイプは、走査パターンタイプ「蛇行走査パターン」および走査パターンタイプ「スパイラル走査パターン」を含むことができる。走査パターンの1つまたは複数のパラメーターは、例えば、蛇行走査パターンのライン間の間隔および走査パターンの開始点の少なくとも一方のパラメーターを含むことができる。
【0079】
さらなる実施形態によれば、コントローラーは、表面下の切開部を形成するための全走査経路の60%未満、または50%未満、または30%未満、または20%未満に対応する走査経路の初期セクションによって走査される位置で気体放出切開部が表面下の切開部に接するように、気体放出切開部の少なくとも1つを形成するように、レーザー光学システムを制御するように構成されている。
【0080】
さらなる実施形態によれば、気体放出切開部のそれぞれは、40度未満、または20度未満、または10度未満の周縁範囲を有し、気体放出切開部の数は、5超、または10超、または20超、または50超でよい。
【0081】
さらなる実施形態によれば、気体放出切開部のそれぞれは、接触面が角膜に接触する位置で角膜の前面に開口している。
【0082】
本開示の実施形態は、角膜組織の薄板、特に、角膜フラップ、角膜内薄板、または角膜表面薄板を形成するための、眼を治療する方法に関する。本方法は、1ピコ秒未満のパルス持続時間を有するパルス状レーザービームを生成するように構成されたレーザー光源と、表面下の切開部および側面切開部を用いて周囲の角膜組織から薄板を少なくとも部分的に切り離すために、角膜内でレーザービームの焦点を走査する走査システムと、を有するレーザー光学システムを用いて行われる。表面下の切開部は薄板の前面または後面の少なくとも一部分に相当し、側面切開部は薄板の縁の少なくとも一部分に相当する。本方法は、レーザー光学システムを用いて、気体を誘導する1つまたは複数の気体放出切開部を角膜に形成することであって、気体放出切開部のそれぞれについて、それぞれの切開部が角膜の前面または後面に延びる、気体放出切開部を角膜に形成することを含む。本方法はさらに、1つまたは複数の気体放出切開部の形成後に、レーザー光学システムを用いて表面下の切開部の少なくとも一部分を形成することを含む。本方法はさらに、表面下の切開部の形成後に、気体放出切開部のそれぞれについてそれぞれの気体放出切開部の少なくとも一部分が側面切開部の一部分を形成するように、レーザー光学システムを用いて側面切開部を完成させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1】ヒトの眼の角膜を治療するための、第1の例示的な実施形態によるシステムを概略的に示す。
図2図1に示す第1の例示的な実施形態によるレーザーシステムのさらなる概略図である。
図3A図1および図2に示す第1の例示的な実施形態による、眼治療システムの接触素子、吸引リング、および結合部分の概略図である。
図3B】第1の例示的な実施形態による眼治療システムの接触素子の断面図である。
図4A】レンズ形部分が角膜と接触した状態にある、第1の例示的な実施形態による眼治療システムの接触素子のレンズ形部分の断面図である。
図4B】角膜に接触するために平行平面式圧平板が用いられる場合の、第1の例示的な実施形態のレーザー光学システムの様々な走査面の深さのばらつきを示す曲線をあらわすグラフである。
図4C】角膜に接触するために接触素子が使用される場合の、第1の例示的な実施形態のレーザー光学システムの様々な走査面の深さのばらつきを示す曲線をあらわすグラフである。
図5A】第1の例示的な実施形態による眼治療システム放出システムの軸方向走査システムの概略図である。
図5B】第1の例示的な実施形態による眼治療システムのビーム偏向走査システムの概略図である。
図5C】第1の例示的な実施形態による眼治療システムのビームコンバイナー、集光光学システム、接触素子、および撮像システムの概略図である。
図6A】第1の例示的な実施形態による眼治療システムを用いた表面下の切開部の形成中に生成される気泡が、眼治療システムの光軸から離れる方に誘導される様子の概略図である。
図6B】第1の例示的な実施形態による眼治療システムの接触素子を用いて角膜の前面に加えられる単位面積当たりの力の径方向の依存性の概略図である。
図7】第1の例示的な実施形態による眼治療システムの接触素子を用いて光軸から離れる方に誘導される気泡を受けるために使用される角膜内ポケットの概略図である。
図8A】気泡を外部に放出するために使用される気体放出切開部の概略図であり、気泡は、第1の例示的な実施形態による眼治療システムの接触素子を用いて光軸から離れる方に誘導される。
図8B】気泡を外部に放出するために使用される気体放出切開部の概略図であり、気泡は、第1の例示的な実施形態による眼治療システムの接触素子を用いて光軸から離れる方に誘導される。
図9A】例示的な実施形態による眼治療システムによって表面下の切開部を生成するために用いられる、様々な走査パターンの概略図である。
図9B】例示的な実施形態による眼治療システムによって表面下の切開部を生成するために用いられる、様々な走査パターンの概略図である。
図9C】例示的な実施形態による眼治療システムによって表面下の切開部を生成するために用いられる、様々な走査パターンの概略図である。
図10】例示的な実施形態による眼治療システムによって表面下の切開部を生成するために用いられる、様々な走査パターンの概略図である。
図11】例示的な実施形態による眼治療システムによって表面下の切開部を生成するために用いられる、様々な走査パターンの概略図である。
図12】例示的な実施形態による眼治療システムによって表面下の切開部を生成するために用いられる、様々な走査パターンの概略図である。
図13】第2の例示的な実施形態による眼治療システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
図1は、例示的な実施形態による、眼にレーザー手術を行うための眼治療システム1の概略図である。システム1は、ハウジング2内に搭載された、レーザー光源およびレーザー光学システムを含む。レーザー光学システムは、患者の頭部を支持するヘッドレスト4を有する患者支持構造3上に横たわる患者の眼に、レーザービームを向けるように構成されている。例示的な実施形態において、レーザー光源は、患者の眼の角膜内にレーザー誘起光学破壊(LIOB)を生成するのに十分な、パルスエネルギーおよびパルス持続時間を有するパルス状レーザービームを放射するように構成されている。レーザーパルスによって生成されるレーザー誘起光学破壊は、一連の連続して重なっているかまたは近接した位置にあるレーザーパルスが各箇所で角膜組織内に切開部を生成するように光切断をもたらす。光切断は、角膜内で実質層を分離させる非熱的な光切断プロセスである。レーザー光学システムは、断続的な切開部または連続的な(すなわち断続的でない)切開部を形成するように、角膜内でパルス状レーザービームの焦点を走査するように構成された走査システムを含む。断続的な切開部は、重ならないレーザーパルスを施すことによって生成でき、連続的な切開部は、重なったレーザーパルスを用いることで生成できる。
【0085】
図1に示す例示的な実施形態において、レーザー光学システムは、患者の眼に入射するレーザービームが1ps未満または800フェムト秒未満のパルス持続時間を有するように構成されている。パルス持続時間は、1フェムト秒超または20フェムト秒超でよい。
【0086】
付加的にまたは代替的に、例示的な実施形態のレーザーシステムが、LIOBを生成するための閾値よりも低いエネルギーを有するレーザーパルスが角膜に施されるように構成されることも考えられる。一例として、LIOBを生成するための閾値よりも低いパルスエネルギーを有する複数のレーザーパルスは、組織の分離を引き起こすように重ねることができる。
【0087】
角膜の切開部は、様々な異なるレーザー手術処置を行うために使用することができる。一例として、レーザー角膜内切削形成術(レーシック)を行うために、レーザーシステムは、角膜の薄い層が表面にフラップを形成するよう、角膜表面の層を部分的に切り離して切開部を形成するように構成できる。フラップは、ヒンジとして機能する組織部分を介して角膜に接続されている。実質組織の表面を露出するために、ヒンジを用いてフラップを折り返すことができる。次いで、エキシマーレーザー(図1に示すレーザーシステムの一部にできるか、または別個のレーザーシステムに実装できる)が、眼の屈折異常を少なくとも部分的に矯正するように実質組織を切削するために計算されたパターンで、その露出された実質面上で走査される。
【0088】
さらなる例において、切開部は、角膜内の表面近くに、周囲の組織から完全に切り離された表面下の角膜内レンティクルを形成する。レンティクルは、それを抜き取ることで眼の屈折異常を少なくとも部分的に矯正するような形状にされている。レンティクルの抜き取りは、例えば、「Small Incision Lenticule Extraction」(SMILE)処置などの小さい切り口を通して、または「Femtosecond Lenticule Extraction」(FLEx)処置などのレーシックタイプのヒンジ接続されたフラップを通して行うことができる。図1のレーザーシステムを使用できるレーザー手術処置に関するさらにほかの例は、層状角膜移植技術である。
【0089】
短時間で手術処置を実行できるように角膜組織内の切開部が十分に速く形成されることが効果的であることが示された。そうすることで、手術は患者にとってストレスが少なくなる。さらに、そのことが、患者が過剰に動くことで引き起こされるエラーの発生を減少させる。
【0090】
一方で、走査速度が上昇すると、レーザービームの方向づけに使用されるレーザースキャナーへの要求がより大きくなる。特に、走査の動きを制御するために使用されるレーザースキャナーは、高い走査速度で焦点を位置決めするときに機械的な遅延エラーを引き起こし始めることがある。
【0091】
しかし、以下でより詳細に説明するように、本発明者らは、フェムト秒レーザーを用いて角膜の切開部を形成するために必要な時間を大きく短縮することが可能であることを実証した。比較的高い程度の平滑性を有する切開部を形成し、そのことが視力の結果および術後の自己治癒プロセスを改善することが可能であることも示された。
【0092】
合併症を招く可能性のあるさらなる作用は気泡の発生であり、これはレーザービームの焦点において角膜組織のレーザー誘起光学破壊によって生じる。気化した組織がキャビテーションバブルを形成し、それらがつぶれて気泡を残す。気泡は、主成分として二酸化炭素(CO)、窒素(N)、および水(HO)から構成される。角膜内に気泡が捕捉されると、不透過性気泡層(OBL)が生成されることがある。過剰な不透過性気泡層は、フラップの作製、実質ベッド残存実質ベッド厚の測定、およびレーシック処置においてエキシマーレーザーを位置決めするための眼のトラッキングなど、手術処置の多くの段階で、妨害を引き起こすことがある。
【0093】
ボーマン膜の異常など、前部角膜に異常がある場合は、気泡が垂直に移動してボーマン膜に向かって上方にそれを裂いて上皮を通る(垂直方向の気体による破壊)可能性がある。そのことがレーシック手術における傷を招く恐れがあるため、処置を終了しなければならなくなる。気泡は前眼房に移動することもあり、そこで気泡は、レーシック手術処置で切削に使用されるエキシマーレーザーのアイトラッカーと干渉する恐れがある。
【0094】
しかし、以下でさらに詳細に記載するように、本発明者らは、上述の合併症を効率的に最小化できるように、角膜の薄板を形成するために使用される表面下の切開部から気泡を効率的に除去できることを実証した。
【0095】
図2は、図1に示す例示的な実施形態によるレーザーシステムのさらなる概略図である。レーザー光源5はレーザービーム9を生成し、レーザービーム9は、軸方向走査システム6およびビーム偏向走査システム7を含む走査システム43を横断する。軸方向走査システム6は、レーザービームのビーム軸に沿った方向に、眼内でレーザービームの焦点を走査するように構成されている。ビーム偏向走査システム7は、2つの角度次元でレーザービームを角度方向に偏向するように構成されている。
【0096】
したがって、軸方向走査システムおよびビーム偏向走査システムは一緒になって、眼内でレーザー焦点を3次元で走査できるような3自由度を有する走査システムを提供する。例示的な実施形態による眼治療システムにおいて、ビーム偏向走査システム7は、ビーム経路において軸方向走査システム6の下流に配置されている。ただし、本開示はこのような構成に限定されず、ビーム偏向走査システム7がビーム経路においてレーザー光源5と軸方向走査システム6との間に配置されることも考えられる。
【0097】
図2に示す例示的な実施形態において、レーザービームのうちのビーム偏向走査システム7から出る部分は、集光光学システム8に入射する。レーザービーム9は、集光光学システム8と、患者の角膜の前面と直接接触する接触素子10とを横断する。図2にさらに示すように、眼治療システムはさらに、患者の眼の角膜内でレーザービーム9のレーザー焦点を制御可能に走査するレーザー光源5およびレーザー光学システム43を制御するコントローラー11を含む。
【0098】
図3Aは、接触素子10の一方をレーザー光学システムに、他方を患者の眼46に結合するために用いられる、例示的な実施形態の眼治療システムの接触素子10およびさらなる構成素子を概略分解図に示す。眼治療システム1は結合部分11を含み、結合部分11は、レーザー光学システムと強固に連結できるか、またはレーザー光学システムの光軸に平行な方向に移動可能に支持される。接触素子10および結合部分11は、接触素子10が結合部分11に取り外しおよび取り付けが可能となるように構成されている。接触素子10は、結合された状態で、レーザー光学システムに対して実質的に所定の位置およびレーザー光学システムの光軸Aに対して予め定められた傾斜角にあってよい。代替的に、接触素子10がレーザー光学システムの光軸に対して平行な方向に移動可能に支持されている実施形態において、接触素子10は、結合された状態で、光軸に対して予め定められた径方向位置にあり、光軸Aに対して予め定められた傾斜角を有する。接触素子10は、吸引供給源45を含む吸引機構を用いて、結合部分11に取り付けられる。
【0099】
眼治療システム1はさらに吸引リング12を含み、吸引リング12は眼46に固定でき、接触素子10は吸引リング12に強固に取り付けることが可能である。吸引リング12は、溝を形成するスカートを含み、溝は、スカートと眼46の前面との間の吸引チャネルを画定する。したがって、真空供給源44を用いて真空通路内に真空を生成すると、吸引リング12が眼46の前面に固定され取り付けられる。
【0100】
吸引リング12は、クランプ機構14に強固に取り付けられるか、または単一部片としてクランプ機構14と共に形成されている。クランプ機構14は、接触素子10を吸引リング12に固定させるために使用される。このようなクランプ機構14の一例が、米国特許出願公開第2007/0093795(A1)号の文献に開示されており、その内容はあらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。ただし、本発明は、接触素子10がクランプ機構を用いて吸引リング12に固定される構成に限定されない。特に、単一部片として形成されるかまたは単一アセンブリーに組み込まれるなど、接触素子10および吸引リング12が一体形成されることが考えられる。
【0101】
例示的な実施形態において、接触素子10は、単一部片または1部片のアセンブリーとして一体形成されている。ただし、接触素子10を別々の複数の部片から作製することも可能である。例示的な実施形態において、接触素子10は、パルス状レーザービームのレーザー光に対して透過性または実質的に透過性の材料から作製されたレンズ形部分17を有する。一例として、患者インターフェースは、シクロオレフィンポリマー(COP)から作製される。ただし、接触素子がポリメチルメタクリレート(PMMA)、ガラス、マクロロン、ポリエステル、またはポリカーボネートなどの異なる材料から作製されることも考えられる。
【0102】
図3Bは、接触素子10の拡大断面図である。接触素子10のレンズ形部分17は、角膜の前面に接触するための接触面15を含む。接触面15は、眼に向かって凸形の形状を有する。吸引リング12を用いて接触素子10が眼46に取り付けられた後で、接触面15の凸形状は、角膜の前面を変形させて前面の一部分が凹形になるようにする。
【0103】
本発明者らは、凸形状によって、軸方向走査システムの走査状態を変更することなく前面から一定または実質的に一定の深さを有する表面下の切開部を角膜に生成できるような、レンズ形部分17の接触面15および近位面18を形成できることを実証した(図4Aと関連付けてより詳細に説明される)。言い換えると、軸方向走査システム(図2で参照番号6が付されている)を用いてレーザー焦点の軸方向位置を変えることなく、ビーム偏向走査システム(図2で参照番号7が付されている)だけを用いて表面下の切開部を形成することが可能である。
【0104】
図4Aが示すのは、レンズ形部分17が眼の角膜20と接触した状態の接触素子のレンズ形部分17の断面であり、眼の光軸Aに沿った概略断面図である。横方向に延びる一点鎖線(参照番号18が付されている)は湾曲面を通る断面を概略的に示し、その湾曲面は、軸方向走査システムが一定の走査状態にありビーム偏向システムが異なる偏向角度にある場合の、レーザービーム9のレーザー焦点の位置に相当する。したがって、湾曲面は、軸方向走査システムの一定の走査状態に対応する走査面18に相当する。
【0105】
軸方向走査システムの一定の状態が角膜20内に湾曲した走査面18を生成する理由は、レーザー光学システムが、具体的には集光光学システムが像面湾曲を有するからであり、そのため、軸方向走査システムが一定の走査状態にありビーム偏向走査システムが異なる偏向角度にある場合、レーザー焦点が角膜20内の湾曲した面内にあるからである。
【0106】
本発明者らは、接触素子が走査面18の少なくとも一部分の深さのばらつきを低減させるように接触素子のレンズ形部分17を構成できることを実証した。深さは角膜20の前面19に対して測定される。したがって、走査面18のその部分は、角膜20の前面19から測定したときに一定または実質的に一定の深さdの位置にある。
【0107】
走査面18の少なくとも一部分の深さのばらつきを少なくとも部分的に低減させるために接触素子のレンズ形部分17を用いることは、レーザー光学システムにまたはレーザービームのビーム経路におけるレーザー光学システムと接触素子のレンズ形部分17との間に付加的な補正用光学要素を設ける必要がないという利点を有する。
【0108】
接触素子のレンズ形部分17は、少なくともレーザー光学システムの光軸Aから2ミリメートル未満、または4ミリメートル未満、または5.5ミリメートル未満、または6ミリメートル未満の距離Sを有する各点について、走査面18の深さのばらつきが30マイクロメートル未満、または20マイクロメートル未満、または10マイクロメートル未満、または6マイクロメートル未満、または2マイクロメートル未満になるように構成できる。
【0109】
このような正確さによって意図した一定の厚さを有するフラップの形成が可能になる。特に、意図した厚さは、70マイクロメートル超または100マイクロメートル超でよい。意図した厚さは、170マイクロメートル未満または150マイクロメートル未満でよい。形成されるフラップの厚さは、意図したフラップの厚さの+/-10%の範囲内または+/-5%の範囲内にすることができる。
【0110】
特に、本発明者らは、レーザー光学システムおよびレンズ形部分を設計するときに、接触面の開始面の曲率半径を、レンズ形部分の代わりに平行平面式圧平板が用いられるときの走査面の曲率半径に実質的に等しいかまたは等しくなるように選択できることを実証した。次に、レーザー光学システムおよびレンズ形部分は、光学計算によって角膜の前面に対して測定される、走査面の深さのばらつきに関する制限を設定する境界条件を用いて最適化され得る。最適化は、1つまたは複数のパラメーターの最適化でよい。1つまたは複数の最適化されたパラメーターのうちの1つは、角膜におけるレーザービームの焦点の直径でよいかまたはその直径に応じて変わってよい。
【0111】
一方のレーザー光源5と他方の集光光学システム8との間に軸方向走査システム6およびビーム偏向走査システム7を含む走査システム43(図2に示す)の配置によって、接触面15(図4に示す)の凸形状の必要な曲率が小さくなり(すなわち、曲率半径が大きくなり)、そのため、接触面15の凸形状によって生成される眼内圧の上昇が患者にとって許容できる範囲内に維持されることがさらに示された。必要な曲率が小さくなるため、接触面の凸形状の最適化の後に残る深さのばらつきがより小さいことがさらに示された。
【0112】
一例として、図3Bを参照すると、少なくとも接触面15の頂点21から3ミリメートル未満の距離、または4ミリメートル未満の距離、または6ミリメートル未満の距離を有する接触面15上の各箇所について、接触面15の局所曲率半径は、10ミリメートル超、または15ミリメートル超、または30ミリメートル超、または50ミリメートル超、または100ミリメートル超、または150ミリメートル超である。
【0113】
頂点21は、ビーム経路においてレンズ形部分の上流にあるレーザー光学システムの光軸に沿って見たときの、接触面15の凸形部分の最も遠位の点と定義できる。接触素子10がレーザー光学システムに対して結合される状態では、レーザー光学システムの光軸(図4Aで参照番号Aが付されている)は、頂点21を通って延びることができる。
【0114】
表面下の切開部が形成される間に軸方向走査システムの走査状態が時間に対して一定である場合は、切開部を比較的短時間で形成できる。一般に、手術時間が短い方が、患者にとってストレスが少なくなり、患者が過剰に動くことで起こるエラーの可能性を低下させることができる。また、軸方向走査システムを用いたビーム軸に沿ったレーザー焦点の動きによって起こり得る切開部の形状のむらが避けられる。したがって、接触面の凸形状は平滑な切開部を作製し、そのことが視力の結果を改善できる。
【0115】
さらに、軸方向走査システムに必要な調整がないかまたは軽微なものに過ぎないため走査プロセスは時間効率が良く、蛇行走査パターンまたはラスター走査パターンを用いることが可能であり、それらの走査パターンは、はるかに平滑な表面下の切開部の生成を可能にするが、その走査プロセス以外では時間効率がずっと低くなる。言い換えると、軸方向走査システムの一定の走査状態によって、蛇行走査パターンおよびラスター走査パターンであってもより高速の走査が可能になり、したがって、それ以外で必要とされる、スパイラルまたは円形の治療パターンと比べたときの治療速度の低下がなくなる。
【0116】
例示的な実施形態による接触素子は、一定の深さを有しないが一定の深さからの偏りが比較的小さい、横方向に延びる表面下の切開部を形成するためにも効果的に使用できる。そのような表面下の切開部は、必要となる屈折率の矯正が軽微なもの過ぎないときに、例えば、FLExまたはSMILE手術処置で使用できる。本発明者らによって、レーザービームの軸に沿って焦点の位置を調節するための軸方向走査システムの数および調節範囲の少なくとも一方が比較的小さいため、このような切開部を比較的高速で形成することも可能であると実証された。
【0117】
図4Bのグラフは、角膜に接触するためにレンズ形部分の代わりに平行平面式圧平板が用いられる構成における、第1の例示的な実施形態のレーザー光学システムの走査面の深さのばらつきを示す曲線をあらわす。図4Bのグラフの凡例に示すように、曲線のそれぞれは、軸方向走査システムの異なる走査状態を表し、そのため、曲線のそれぞれは、角膜の前面に対してかつ光軸に沿って測定される走査面の様々な深さを表す。x軸はレーザー光学システムの光軸からの距離を示す。曲線は、y軸に沿ってオフセットしており、それらの間の比較を容易にする。
【0118】
図4Cのグラフは、接触素子のレンズ形部分が角膜に接触するために用いられる場合の、第1の例示的な実施形態のレーザー光学システムの走査面の深さのばらつきを示す曲線をあらわす。図4Bの曲線を図4Cの対応する曲線と比較すると分かるように、平行平面式圧平板と比べると、接触素子のレンズ形部分は、走査面の深さのばらつきを低減させている。特に、深さ500マイクロメートルに位置する走査面(矩形で示す)であっても、走査面の深さのばらつきは、光軸から5.5ミリメートル未満の距離を有する各点において6マイクロメートル未満である。
【0119】
したがって、レンズ形部分を有する接触素子を用いることで、走査面の様々な深さについて像面湾曲を補正できることが示された。凸形接触面を有する接触素子のレンズ形部分と一緒に集光光学システムの上流に走査システムを配置することによって、より広い範囲の異なる深さに対し、像面湾曲のより改善された補正を可能にすることがさらに示された。したがって、広い範囲の異なる深さ位置について、角膜の前面に対して一定深さの位置にあり深さのばらつきが低減された、表面下の切開部を生成することが可能である。一例として、レーシック治療処置において、そのことによって、異なるフラップ厚さのフラップの形成が可能になり、フラップのそれぞれが、より一定のフラップ厚さおよびより改善されたフラップ床切開部の平滑性を有する。
【0120】
図2と関連付けて説明したように、例示的な実施形態のレーザーシステムでは、ビーム偏向走査システム7は、レーザービームのビーム経路9において軸方向走査システム6と集光光学システム8との間にある。したがって、軸方向走査システムを横断するレーザービームは偏向されず(すなわち、光軸に沿ってまたは実質的に沿って延び)、そのため、軸方向走査システム6の光学素子は、比較的小さい有効直径を有するように構成できる。そのことは、走査プロセス中に変位されるレンズの質量が比較的小さいため、軸方向走査システムの走査速度を上昇させる。走査速度の上昇はレーシック手術処置においてフラップの縁の切開部を形成するために特に効果的である可能性がある。なぜなら縁の切開部の形成には、フラップ床切開部を角膜の前面に接続するために、ビーム軸に沿ってレーザー焦点を変位させて異なる深さの光切断を生成することが必要になるからである。
【0121】
軸方向走査システム6の構成が図5Aに示されている。軸方向走査システム6は、負の屈折力屈折力を有する第1の光学システム25(レンズまたはレンズアセンブリーを含む)を含む。レーザービームのうちの第1の光学システム25から出る部分は、正の屈折力屈折力を有する第2の光学システム26(レンズまたはレンズアセンブリーを含む)に入射する。軸方向走査システム6は、ビーム軸に沿って焦点を変位させることが、第1の光学システム25と第2の光学システム26との間の距離aを変更することを含むように構成されている。一例として、第1の光学システム25および第2の光学システム26の少なくとも一方は、眼治療システムのコントローラーと信号通信するアクチュエーター(図5Aに示さない)が用いられることにより、軸方向走査システム6の光軸Bに沿って制御され、配置される。第1および第2の光学システム25、26は、第1の光学システム25と第2の光学システム26との間の距離aを変えるとレーザービームのうちの軸方向ビーム走査システム6から出る部分の集束または発散の角度βが変更されるように構成されている。
【0122】
例示的な実施形態では、第1の光学システム25は、光軸に沿って制御および移動可能であり、第2の光学システム26は静止している。そうすることによって、軸方向走査システム6の走査状態を変更するためには、軸方向走査系の走査状態を変更するために第2の光学システム26よりも小さい有効直径を有する第1の光学システム25だけが変位される。これにより、軸方向走査システムの走査速度がさらに上昇する。
【0123】
図5Bは、2つの角度走査次元を提供するように構成された、例示的な実施形態による眼治療システムのビーム偏向走査システム7の概略図である。ビーム偏向走査システム7は3ミラーのシステムである。ただし、本開示は、そのようなビーム偏向走査システムに限定されない。特に、ビーム偏向走査システムが2ミラーのシステムであり、走査ミラーのそれぞれが角度走査次元の1つを提供するように構成されることも考えられる。
【0124】
図5Bに示される3ミラー走査システムにおいて、2つの走査ミラー39および40は、角度走査次元の第1の次元を提供し、第3の走査ミラー41は、角度走査次元の第2の次元を提供する。走査ミラーのそれぞれは、静止した回転軸を中心に回転可能なように搭載されている。図5Bは、レーザービームが第1および第2の走査ミラーによって異なる量で偏向されるビーム偏向走査システムの2つの走査状態を示し、そのため、図5Bは、レーザービーム9に関する異なる2つのビーム経路9a、9bを示す。第1および第2の走査ミラー39および40は、第1および第2の走査ミラー39、40の下流に位置するピボット点42を中心にレーザービームの向きを変えるように協働して走査ビームを偏向するように構成されている。特に、図5Bに示すようにピボット点42は、第3の走査ミラーの表面上に、具体的には、第3の走査ミラー41の回転軸の位置あるいは実質的に回転軸の位置にあり得る。
【0125】
本発明者らは、走査システム7のこのような3ミラー構成がレーザー光学システムの像面湾曲を低減し、角膜におけるスポットサイズを最適化することを実証した。そうすることによって、手術処置中に眼内圧が患者にとって許容できる範囲内に維持されるように、比較的大きい曲率半径を有する接触素子の接触面を提供することが可能である。
【0126】
図5Cは、図2にも図示されている、眼治療システムのビームコンバイナー56の概略的である。ビームコンバイナー56は、レーザービームのビーム経路9において走査システム43と接触素子10との間にある。ビームコンバイナー56は、図5Cに示すように、レーザービームのビーム経路において集光光学システムの2つの構成素子8Aと8Bとの間にあってよい。構成素子8Aおよび8Bのそれぞれは、レンズなど、1つまたは複数の光学素子を含むことができる。ただし、本開示はそのような構成に限定されない。ビームコンバイナー56がレーザービームのビーム経路9において走査システム43と集光光学システム8との間またはレーザービームのビーム経路9において集光光学システム8と接触素子10との間にあることも考えられる。
【0127】
ビームコンバイナーは、半透過性のミラーまたはプリズムを含むことができる。半透過性のミラーまたはプリズムは、ダイクロイックミラーまたはダイクロイックプリズムとして構成できる。図2および図5Cに概略的に示すように、ビームコンバイナー56は、一方で光干渉断層撮影システム57の測定ビーム経路61、他方で2次元の感光性撮像センサーを有する撮像システム58の観測ビーム経路60と、レーザービーム9のビーム経路を合成するように構成されている。感光性撮像センサーは、2次元アレイの感光画素を有することができる。光干渉撮像システムは、眼の角膜および水晶体の少なくとも一方の断面画像を取得するように構成できる。撮像センサーを有する撮像システムは、眼の2次元の正面画像を取得するように構成できる。
【0128】
眼治療のコントローラーは、取得した眼の全体画像および光干渉システムを用いて取得した断面画像の少なくとも一方に基づいて、薄板の位置および向きの少なくとも一方、具体的には、眼に対するヒンジ接続されたフラップの位置および向きの少なくとも一方を決定するように構成できる。
【0129】
例示的な実施形態による眼治療システムにおいて、光干渉システム57の測定ビーム経路と撮像システム58の観測ビーム経路とは、パルス状レーザービーム9のビーム経路の外にある第2のビームコンバイナー59を用いて合成される。第2のビームコンバイナーは、ミラーまたはプリズムを含むことができる。
【0130】
走査システム(図2で参照番号43が付されている)はレーザービーム9のビーム経路において集光光学システム8の上流にあるため、図5Cに示すように、治療レーザービーム9のビーム経路と、撮像システム58および光干渉撮像システム57の少なくとも一方のビーム経路を合成することが可能である。
【0131】
以下で説明するように、接触面15の凸形状は、角膜内に表面下の切開部を形成するときさらに効果的な作用を有する。上記で説明したように、角膜内の表面下の切開部の形成中に、角膜組織の光切断によって生じる気泡が、不透過性気泡層、垂直方向の気体による破壊、または前眼房の気泡など、望ましくない作用を招く可能性がある。しかし、本発明者らは、接触面の凸形状を用いると、表面下の切開部からの気泡を少なくとも部分的に取り除く、および表面下の切開部の周縁部に向かって気泡を動かす、の少なくとも一方が可能であることを実証した。これについて、図6Aから図12を参照しながらより詳細に説明する。
【0132】
図6Aおよび図6Bに示すように、接触面15の凸形状によって、単位面積当たりの局所的な圧力p/Aは、角膜の前面に生成され、凸形接触面15の頂点21からの径方向距離rが大きくなるにつれて小さくなる。径方向距離rが大きくなるにつれて単位面積当たりの局所的な圧力p/Aが小さくなることは、図6Bのグラフに概略的に示されている。
【0133】
単位面積当たりの押圧力p/Aが小さくなる結果、気泡(気泡27などに関して図6Aに空の円で概略的に示す)は、表面下の切開部31内で実質的に径方向28に、光軸A上に位置してよい凸形接触面15の頂点21から離れる方に、表面下の切開部の周縁部32に向かって誘導される。そうすることによって、表面下の切開部31のうちの頂点21に近い中央領域は気泡なしに維持できる。維持できない場合は、表面下の切開部31の中央領域を生成するときに患者の視線における不透過性気泡層を招く恐れがある。
【0134】
本発明者らはさらに、凸形接触面15を有する接触素子10を用いて気泡を表面下の切開部31から取り除くことが可能であることを実証した。
【0135】
特に、図7に示すように、レーザーシステムは、貯留切開部33を形成するように構成でき、その貯留切開部33は、表面下の切開部であり、表面下の切開部31の中央部分から離れる方に誘導される気泡のための貯留部として機能する。貯留切開部33は、表面下の切開部31を完全にまたは部分的に取り囲むことができる。貯留切開部33は、表面下の切開部31と気体流体連通していてよい。表面下の切開部31を中心に外周に分散された複数の貯留切開部33が設けられることも考えられる。図7に示すように、貯留切開部33は、表面下の切開部31の周縁部から始まり、角膜内で径方向により深い方に延びる。ただし、本開示は、貯留切開部33のこのような構成に限定されない。貯留切開部33が径方向により浅い方に延びるか、または表面下の切開部31と同じかもしくは実質的に同じ深さに位置することも考えられる。
【0136】
付加的にまたは代替的に、眼治療システムは、表面下の切開部と流体連通し角膜の前面に延びる気体放出切開部を生成するように構成されている。そうすることによって、気体を眼の外に放出できる。一例として、図8Aおよび図8Bに示すように、ヒンジ接続されたフラップのフラップ床を形成するために表面下の切開部31を形成するプロセスにおいて、表面下の切開部31が形成される前に、角膜20の前面19に延びる気体放出切開部24および50の少なくとも一方が形成される。
【0137】
図8Aは、眼の光軸に沿った断面図であり、図8Bは、フラップおよび気体放出切開部の特徴部を示す上面図である。破線51は、実質ベッドを形成する表面下の切開部31の範囲に相当し、一点鎖線53は、角膜20の前面19の範囲を示し、前面19は接触素子10の湾曲面15に接触している。
【0138】
図8Bを見ると分かるように、気体放出切開部50は、フラップのヒンジとして機能する組織領域23に設けられている。気体放出切開部50は接触面15が角膜20の前面19に接触していない位置で前面に開口しているため、図8Aおよび図8Bで矢印52によって概略的に示すように、気泡は直接周囲の外気に放出される。レンズ形素子の遠位面と角膜の前面19との間の空間のうちで気体放出切開部50が角膜の前面19に開口する部分は、液体(例えば、生理食塩水などの生理的な液体)で満たすことができる。液体は、気体放出切開部50を生成するときにレーザービーム9のより小さい焦点直径を得ることを可能にする。ただし、液体なしでも、すなわちレンズ形素子の遠位面と角膜の前面19との間の空間のうちで気体放出切開部50が前面19に開口する部分に空気があっても、十分に満足な結果を得ることができる。代替的に、気体放出切開部50は、気体放出切開部24に関して図8Aに示すように、接触面15が角膜20に接触する位置で気体放出切開部50が角膜の前面19と気体流体連通するように構成できる。
【0139】
一方で、気体放出切開部24は、フラップ側面切開部を後から形成する組織領域に設けられており、したがって、接触素子10の接触面15が角膜20の前面19と接触状態にある位置で角膜20の前面19に開口している。
【0140】
本発明者らは、気体放出切開部24については、図8Aおよび図8Bで矢印48によって示すように、接触面15が湾曲した形状のため、前面19と接触面15との間のインターフェース49を介して気体を周囲の雰囲気により効率的に放出することが可能であることを実証した。インターフェース49を介して外に気体を放出するために接触面が凸形状を有する必要がないことに留意されたい。ただし、本発明者らは、接触面の凸形の表面によって、外への気体のより効率的な放出を可能にすることをも実証した。
【0141】
図8Aおよび図8Bに示す気体放出切開部24、50の形状が単なる例示であることに留意されたい。特に、気体放出切開部24は角膜20の前面19に対して、直角に配置せず斜めに配置することが可能である。
【0142】
図に示していないさらなる例示的な実施形態では、薄板は、薄板の後面の少なくとも一部分が角膜の後面の一部分になるように構成されている。一例として、このような薄板は、レーザー角膜内皮移植術を行うために形成することができる。薄板は、レーザービームを用いて周囲の角膜組織から部分的に切り離されるフラップ、またはレーザービームを用いて周囲の角膜組織から完全に切り離されるレンティクルでよい。
【0143】
薄板は、薄板の前面の少なくとも一部分に相当する表面下の切開部と、薄板の縁の少なくとも一部分に相当する側面切開部とを用いて形成することができる。
【0144】
眼治療システムのコントローラーは、気体を誘導誘導する1つまたは複数の気体放出切開部を角膜に形成するようにレーザー光学システムを制御する構成にできる。気体放出切開部のそれぞれは、角膜の前面または後面に延びる。一例として、角膜の前面に延びる気体放出切開部は、角膜からレンティクルを分離するための機器および眼からレンティクルを取り出すための機器の少なくとも一方など、手術機器のアクセス用のアクセス切開部として構成できる。
【0145】
1つまたは複数の気体放出切開部の形成後に、薄板の前面の少なくとも一部分は表面下の切開部を用いて形成される。前面に延びる気体放出切開部は、表面下の切開部と角膜の前面との間に気体を誘導する接続を提供し、後面に延びる気体放出切開部は、表面下の切開部と角膜の後面との間に気体を誘導する接続を提供する。
【0146】
さらに、表面下の切開部の形成後、気体放出切開部のそれぞれについて、それぞれの気体放出切開部の少なくとも一部分が側面切開部の一部分を形成するよう、薄板の縁の少なくとも一部分を形成する側面切開部が完成する。
【0147】
図8Aおよび図8Bの気体放出切開部24のように配置される1つまたは複数の気体放出切開部の形成は、図9Aから図12を参照しながら以下でより詳細に論じる。図9Aから図12の説明は前面薄板に相当するフラップ(レーシックのフラップなど)に関するものであるが、この説明の特徴は、(SMILE処置およびFLEx処置などの)実質内薄板および(角膜内皮移植術などの)後面薄板にも当てはまることに留意されたい。したがって、図9Aから図12と関連付けて説明される作用の効果は、表面下の切開部から眼の前眼房に気体が放出されるように角膜の後面に延びる気体放出切開部の場合にも得ることができる。図9Aから図9Bのそれぞれは、実質ベッドを形成する表面下の切開部31の横方向の範囲が破線34によって示されている、角膜の上面図に相当する。ヒンジが位置する組織部分は、参照番号23で示されている。二重線矢印は、ビーム偏向走査システムを用いて表面下の切開部31を形成するための蛇行走査パターンのライン走査方向に沿った走査の動きに相当する。連続したライン走査の間でレーザー焦点を動かすための走査パターンの走査方向が矢印35によって概略的に示されている。
【0148】
図9Aは、ラスター走査プロセスの初期セクション55を概略的に示し、図9Bは、ラスター走査プロセスの最終セクションを概略的に示す。表面下の切開部31の形成後に、側面切開部(図9Cで参照番号38が付されている)が形成され、側面切開部は、表面下の切開部31と接続されており、その外周全体にわたって角膜の前面に延びることができる。代替的な実施形態において、側面切開部は、角膜の前面に全体的に延びることなく上皮に延び、そのため、側面切開部の一部分が実質的に角膜前面に延びるに過ぎない。ヒンジを形成する組織領域23には側面切開部が形成されない。
【0149】
図9Aに戻ると、表面下の切開部31を形成するための蛇行走査またはラスター走査プロセスが開始される前に、レーザーシステムは、気体放出切開部36aおよび36bを生成する。気体放出切開部36aおよび36bは、角膜の前面に延び、表面下の切開部31の形成後に表面下の切開部31が気体放出切開部36a、36bのそれぞれに気体流体連通するように構成されており、そのため気体放出切開部36a、36bは表面下の切開部31の形成によって生成される気体を角膜の前面に放出できる。
【0150】
図9Aに示すように、気体放出切開部36aおよび36bは、表面下の切開部31を形成するための走査プロセスの間は実質的にずっと、表面下の切開部31の形成中に生成される気体を外に放出できるように配置されている。そのことは、図9Aおよび図9Bの矢印37aおよび37bによって概略的に示されている。特に、眼治療システムのコントローラーは、気体放出切開部が表面下の切開部に接触する位置で、その位置が走査経路の初期セクション55によって走査されるように、気体放出切開部37a、37bの少なくとも一方を形成するようにレーザー光学システムを制御するよう構成されており、初期セクション55は、表面下の切開部31を形成するための全走査経路の60%未満、または50%未満、または30%未満、または20%未満に対応する。
【0151】
表面下の切開部31の形成後に、眼治療システムは、図9Cに示すように側面切開部38を形成する。図9Cを見ると分かるように、レーザーシステムは、気体放出切開部32aおよび32bがフラップの側面切開部38の一部を形成するように、側面切開部38を形成するよう構成されている。一方の図9Aおよび図9Bを他方の図9Cと比較すると分かるように、気体放出切開部32aおよび32bのそれぞれは、側面切開部38の外周部を形成するかまたは備える。
【0152】
したがって、角膜にフラップが形成された後に、表面下の切開部31の形成中に気体を外に放出するために形成された付加的な切開部が残らない。本発明者らは、そのことがフラップ形成後の角膜の安定性を高めることを実証した。特に、気体放出切開部が、後から形成される側面切開部38の一部を形成するため、角膜を不安定化させることなく気体をより効率的に外に放出できるように、より多くの気体放出切開部を形成するか、またはより大きい直径を有する気体放出切開部を形成することが可能である。そうすることによって、気泡は表面下の切開部からさらに効率的に除去できる。図9Aおよび図9Bを見ると分かるように、気体放出切開部36aおよび36bの合算された外周長さ(すなわち、側面切開部の外周に沿って測定したときのそれらの外周長さの和)は、側面切開部38の外周長さの60%未満または50%未満である。
【0153】
図10は、ラスター走査パターンの初期セクション55がヒンジ23の反対側の横方向位置にある、フラップ形成プロセスのさらなる例示的な実施形態を示す。これによると、気体放出切開部36cは、走査パターンの初期セクション55によって走査される気体放出切開部36cが表面下の切開部31に少なくとも1箇所で接するように形成され、初期セクション55は、表面下の切開部31を形成するための全走査経路の60%未満、または50%未満、または30%未満、または20%未満に対応する。
【0154】
図11は、表面下の切開部がスパイラル走査パターンを用いて形成されるフラップ形成プロセスのさらなる例示的な実施形態である。走査パターンの初期セクション55(全走査経路に占める割合が上記に定義されている)は表面下の切開部31の周縁部を形成し、走査パターンは表面下の切開部31の中心に向かって進む。走査パターンの初期セクションが表面下の切開部31の周縁部を形成するため、気体放出切開部36d、36e、36f、36g、および36hのそれぞれは、走査経路の初期セクション55に位置する。スパイラル走査パターンはさらに、(図3Bで参照番号21が付された)頂点を有する接触素子10の接触面15が湾曲しているため、気泡が径方向の経路に沿って表面下の切開部31の周縁部に効率的に誘導されるという利点を有する。図11を見るとさらに分かるように、例えば5つの気体放出切開部が設けられ、それらは、後から形成される側面切開部によって順次接続される。ヒンジ23が位置するスパイラルまたはリング走査パターンの外周部65では、レーザービームは消える。しかし、放出用の切り口が不連続な走査パターンで個別に生成されることも考えられる。
【0155】
コントローラーは、表面下の切開部31を形成するための複数の予め定められた走査パターンまたは設定可能な走査パターン(図9Aから図11と関連付けて説明された走査パターンの1つなど)の1つを自動的にまたは対話形式で選択するように構成できる。コントローラーはさらに、表面下の切開部を形成するために用いられる選択された走査パターンに基づいて、i)気体放出切開部の少なくとも1つについて、a)幾何形状、b)位置、およびc)向きの少なくとも1つのパラメーターを決定するように構成できる。付加的にまたは代替的に、コントローラーは、1つまたは複数の気体放出切開部の数を決定することができる。
【0156】
一例として、コントローラーが図10の走査パターンを対話形式でまたは自動的に選択する場合に、コントローラーは、走査パターンの初期セクションに位置する、図10に示す気体放出切開部36cなどの単一の気体放出切開部を設けることを決定する。さらに、一例として、コントローラーが図9Aおよび図9Bの走査パターンを自動的にまたは対話形式で選択する場合に、コントローラーは、2つの気体放出切開部(図9Aおよび図9B示す気体放出切開部36aおよび36bなど)が設けられ、気体放出切開部のそれぞれがヒンジ23にまたはその近くに設けられることを決定する。
【0157】
走査パターンは、1つまたは複数のデータ構造によって表すことができ、そのデータ構造に基づいて、眼治療システムは、走査システムを制御するための制御信号を生成する。データ構造は、眼治療システムのユーザーインターフェースを介して受信されるユーザーインプットを用いて設定可能にできる。ユーザーインプットは、走査パターンのライン間の間隔(例えば、蛇行走査パターンのライン間の間隔)および走査パターンの開始点の少なくとも一方など、走査パターンの1つまたは複数のパラメーターを含むことができる。
【0158】
図12は、気体放出切開部36iなどの多数の気体放出切開部が形成されるフラップ形成プロセスのさらにほかの例示的な実施形態である。表面下の切開部31の形成後に、気体放出切開部は、フラップ床切開部の周縁で外周に分散されている。気体放出切開部のそれぞれは、40度未満、または20度未満、または10度未満の周縁範囲を有する。さらに、気体放出切開部の数は比較的大きい。一例として、気体放出切開部の数は5超、または10超、または20超、または50超である。本発明者らは、比較的多数の気体放出切開部が外への気体の放出を促すことを実証した。特に、表面下の切開部31の外側周縁で外周に分散した気体放出切開部が多数あるため、径方向に移動する気泡は、気体放出切開部の1つに直接的に向かう可能性が比較的高い。さらに、気体放出切開部の合算された断面は比較的大きい。表面下の切開部31の形成後に、図9Cに示すように、気体放出切開部は接続されて側面切開部を形成する。
【0159】
図13は、第2の例示的な実施形態による眼治療システム1aの概略図である。図13の第2の例示的な実施形態の要素は、図1から図5Cに示す第1の例示的な実施形態の要素と類似しており、第2の例示的な実施形態の要素を第1の例示的な実施形態の対応する要素と区別するために用いられる接尾文字「a」を有する同様の参照番号によって識別される。
【0160】
第2の例示的な実施形態の眼治療システム1aは、ビームマルチプライヤー60aを含むレーザー光学システム63aを有し、ビームマルチプライヤー60aは、レーザー光源5aによって放射されたパルス状レーザー光を受信するためにレーザー光源5aの下流に配置される。ビームマルチプライヤー60aは、複数のビーム62aを生成するように構成されている。図13を見ると分かるように、レーザー光学システム63aは、3本のビームを生成するように構成されている。ただし、本開示は、3本のビームを生成する眼治療システムに限定されない。特に、眼治療システム1aが2、4、またはそれ以上のビームを生成する構成にすることが考えられる。ビーム62aの数は、500未満、または200未満、または100未満でよい。レーザー手術システム63aの光軸に直角な面で見ると、ビームは、規則的または不規則的な1次元、2次元、または3次元のアレイに相当し得る。
【0161】
ビームマルチプライヤー60aは、マイクロレンズアレイなど、規則的または不規則的なレンズアレイとして構成されている。レンズの主平面は、共通の平面に配置されているかまたは実質的に配置されている。したがって、レンズには、入射するレーザービーム9aが並列に(すなわち連続的にではなく)照射される。第2の例示的な実施形態がビームマルチプライヤー60aのそのような構成に限定されないことに留意されたい。特に、付加的にまたは代替的に、ビームマルチプライヤー60aは、規則的または不規則的なミラーアレイ、具体的にはマイクロミラーアレイを含むことができる。ミラーは、入射するパルス状レーザービームが並列に照射されるようにパルス状レーザーのビーム経路に配置することができる。付加的にまたは代替的に、ビームマルチプライヤー60aは、位相マスクまたは空間光変調器(SLM)を含むことができる。
【0162】
図13にさらに示すように、レーザー光学システム63aは、患者の眼の角膜20内でビーム62aのそれぞれを3次元で走査する走査システム43aを含む。走査システム43aは、軸方向走査システムおよびビーム偏向走査システム(図13に示さない)を含むことができる。同様に、第1の例示的な実施形態と関連付けて説明したように、ビーム偏向走査システムはミラーを2つまたは3つ含むことができ、走査ミラーのそれぞれは、ビーム偏向走査システムによってビームが2つの角度次元で同時に角度方向に偏向されるようにビーム62aのそれぞれを受信する。軸方向走査システムは、ビーム62aのそれぞれについて、第1の光学システムおよび第2の光学システムを含むことができ、第1の光学システムおよび第2の光学システムは、互いに対して位置変更が可能であり、そのためそれらの間の距離が制御により変更可能である。第1および第2の光学システムは、第1の例示的な実施形態と関連付けて説明したように構成できる。特に、第1の光学システムは負の屈折力を有することができ、第2の光学システムは正の屈折力を有することができる。
【0163】
一例として、軸方向走査システムは第1のレンズアレイを含むことができ、第1のレンズアレイは、ビーム62aのそれぞれについて、第1の光学システムを提供する。さらに、軸方向走査システムは第2のレンズアレイを含むことができ、第2のレンズアレイは、ビーム62aのそれぞれについて、第2の光学システムを提供する。第1および第2のレンズアレイは、互いに対して制御により位置変更が可能であり、そのため、ビーム62aのそれぞれについて、第1の光学システムと第2の光学システムとの間の距離が制御により変更される。レーザー光学システム63aを含むときの眼治療システム1(ここから1aと称する)は、ビーム62aのそれぞれについてそれぞれのビームの焦点がそれぞれのビームの軸に沿って変位されるように、軸方向走査システムの第1のレンズアレイと第2のレンズアレイとの間の距離を制御により変更するアクチュエーターを含むこともできる。そうすることによって、角膜20内でビーム62aの焦点を同時に軸方向に走査することが可能である。第2の例示的な実施形態による眼治療システム1aにおいて、軸方向走査システムは、パルス状レーザー光においてレーザー光源5aとビーム偏向走査システムとの間にあってよい。ただし、本開示は、走査システム43aのこのような構成に限定されず、ビーム偏向走査システムがパルス状レーザー光においてレーザー光源5aと軸方向走査システムとの間にあることも考えられる。
【0164】
したがって、眼治療システム1aの走査システム43aは、眼の角膜内でビーム62aの焦点を3次元で同時に走査するように構成されている。
【0165】
図13を見るとさらに分かるように、レーザー光源5aと走査システム43aとの間でビーム62aのビーム経路に負の視野レンズ64aが配置されている。負の視野レンズ64aは、ビーム62aのうち負の視野レンズ64aから出る部分が相互に発散するように構成されている。ビーム62aのうち負の視野レンズ64aから出る相互に発散する部分は、相互に発散する部分をビーム62aの相互に平行な部分に変換するように構成されたコリメーターレンズ65aに入射する。しかし、視野レンズ64aおよびコリメーターレンズ65aなしで十分な性能を有する眼治療システムを取得できることが示された。
【0166】
図13を見るとさらに分かるように、接触素子10aは、ビーム経路においてレーザー光学システム63aと患者の眼の角膜20との間に配置されている。図を簡単にするために、接触素子10aのレンズ形部分17aだけが図13に示されている。第2の例示的な実施形態の眼治療システムの接触素子10aの構成、ならびにレーザー光学システム63aおよび眼の角膜20に対して接触素子10aが結合される状態は、第1の例示的な実施形態の眼治療システム1aと関連付けて説明した構成および変形例に対応する。
【0167】
第1の例示的な実施形態の眼治療システム1aと関連付けて説明してきたように、接触素子10aは、ビーム62aのそれぞれについて、それぞれのビームの焦点の走査面の少なくとも一部分の深さのばらつきを接触素子10aが低減させるように構成されており、走査面は軸方向走査システムの一定の走査状態に対応する。
【0168】
第2の例示的な実施形態の眼治療システム1aは、ビーム62aの走査面が、作製される側面切開部または気体放出切開部もしくは気体貯留切開部の傾斜と実質的に同一であるかまたは一致するように構成されている。それらの構成のそれぞれにおいて、平滑な切開部表面および適度な速度によって像面湾曲を事実上矯正することが不可欠であり、そうでなければ、その時点の頂点からの距離に応じて互いに対して焦点をオフセットさせることになる。したがって、ビームのそれぞれについておよび互いに対するビームについて凸形接触面を有する接触素子を用いると、それぞれのレーザービームの走査面の深さのばらつきを効率的に低減できることが示された。
【0169】
したがって、第2の例示的な実施形態の眼治療システム1aは、角膜内に表面下の切開部をさらに高速で形成することを可能にする。
【0170】
眼治療システムは、表面下の切開部を形成するための多焦点モードと、側面切開部を形成するための単焦点モードとの間で切換え可能になるように構成できる。特に、眼治療システムは、切換えが開口部およびビームマルチプライヤーの少なくとも一方をビーム経路に選択的に挿入することまたはそこから引き出すことを含むように構成できる。
【0171】
付加的にまたは代替的に、眼治療システムは、複数の焦点を用いて気体放出切開部および側面切開部の少なくとも一方を形成するように構成できる。特に、ビームマルチプライヤーは、線状の焦点を生成するように構成でき、それらの焦点は、一定の深さで延びる直線上または湾曲線上に配置されるかまたは実質的に配置され、その深さは軸方向走査システムを用いて調節できる。一例として、焦点は、湾曲線の曲率半径が側面切開部の曲率半径に対応するように湾曲線上に実質的に配置できる。一例として、湾曲線の曲率半径および側面切開部の曲率半径は、4ミリメートルと4.9ミリメートルとの間の範囲内の値を有する。
【0172】
眼治療システムは、焦点平面内の線状の焦点の向きを調節するために、回転可能なように搭載された位相板、マイクロミラーアレイ、およびマイクロレンズアレイの少なくとも1つを含むことができる。側面切開部を形成するときに、眼治療システムは、円形または実質的に円形の側面切開部が生成されるように、線状の焦点の向きを側面切開部の様々な外周位置に調節するように構成できる。
【0173】
代替的な実施形態では、側面切開部を様々な深さで同時に形成できるように、焦点は様々な深さに位置する。この代替的な実施形態でも、眼治療システムは、焦点アレイの向きが側面切開部の様々な外周位置に調節可能になるように、レーザーシステムの光軸に沿ってまたは平行に延びる軸に対して定形または不定形の焦点アレイの向きを調節するための、位相板、マイクロミラーアレイ、およびマイクロレンズアレイの少なくとも1つを含むことができる。
特許請求の範囲を詳述する前にまず、本開示の一定の実施形態のいくつかの顕著な特徴を説明する以下の項目を詳述する。
【0174】
1.眼にレーザー手術を行うための眼治療システムであって、1ピコ秒未満のパルス持続時間を有するパルス状レーザー光を生成するように構成されたレーザー光源を有する、レーザー光学システムを備え、レーザー光学システムは、眼の角膜内でレーザー光のレーザービームの焦点を3次元で走査する走査システムと、集光光学システムと、を備え、走査システムは、レーザービームのビーム経路においてレーザー光源と集光光学システムとの間にあり、眼治療システムはさらに、レーザービームのビーム経路において集光光学システムと眼との間にある接触素子を備え、接触素子は、眼の角膜に接触する接触面を有し、接触面の少なくとも一部分は、角膜に向かって凸形の形状を有する、眼治療システム。
【0175】
2.項目1に記載の眼治療システムであって、走査システムは、レーザービームの軸に沿ってレーザー焦点を走査する軸方向走査システムと、レーザービームの偏向を介してレーザービームを走査するビーム偏向走査システムと、を備える、眼治療システム。
【0176】
3.項目1または2に記載の眼治療システムあって、平行平面式圧平板と比べると、接触素子は、レーザー焦点の走査面の少なくとも一部分の深さのばらつきを低減させるように構成されており、深さは、前面に対して測定され、走査面は、レーザービームの軸に沿ってレーザー焦点を走査する走査システムの軸方向走査システムの一定の走査状態に対応する、眼治療システム。
【0177】
4.先行する項目1から3のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、接触素子は、少なくともレーザー光学システムの光軸から2ミリメートル未満、または4ミリメートル未満、または5.5ミリメートル未満、または6ミリメートル未満の距離を有する各点について、レーザー焦点の走査面の深さのばらつきが30マイクロメートル未満または20マイクロメートル未満になるように構成されており、走査面は、レーザービームの軸に沿ってレーザー焦点を走査するように構成された、眼治療システムの軸方向走査システムの一定の走査状態に対応する、眼治療システム。
【0178】
5.項目2から4のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、軸方向走査システムは、レーザービームのビーム経路においてレーザー光源とビーム偏向走査システムとの間にある、眼治療システム。
【0179】
6.先行する項目2から5のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、軸方向走査システムは、負の屈折力を有する第1の光学システムと、正の屈折力を有する第2の光学システムと、を含み、第2の光学システムは、レーザービームのビーム経路において第1の光学システムと偏向走査システムとの間にあり、軸方向走査システムは、第1の光学システムと第2の光学システムとの間の距離が制御により変更可能に構成されている、眼治療システム。
【0180】
7.先行する項目1から6のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、眼治療システムは、レーザービームの偏向を介してレーザービームを走査するビーム偏向走査システムを含み、ビーム偏向走査システムは走査ミラーを3つ備える、眼治療システム。
【0181】
8.先行する項目1から7のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、レーザーシステムは、接触素子がレーザー光学システムに対して取り外しおよび取り付けが可能となるように構成されており、眼治療システムは、接触素子がレーザービームのビーム経路においてレーザー光学システムと眼との間にある唯一の光学素子になるように構成されている、眼治療システム。
【0182】
9.先行する項目1から8のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、レーザー光学システムは、レーザービームのビーム経路において走査システムと眼との間にあるビームコンバイナーを備える、眼治療システム。
【0183】
10.先行する項目1から9のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、眼治療システムは、レーザービームのビーム経路を眼治療システムの撮像システムのビーム経路と合成するように構成されたビームコンバイナーを備える、眼治療システム。
【0184】
11.先行する項目1から10のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、接触面の凸形状の少なくとも一部分は、10ミリメートル超または50ミリメートル超および500ミリメートル未満または300ミリメートル未満の少なくとも一方である曲率半径を有する、眼治療システム。
【0185】
12.先行する項目1から11のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、接触面は、少なくとも接触面の頂点から2ミリメートル未満、または4ミリメートル未満、または6ミリメートル未満の距離を有する各点について凸形状を有する、眼治療システム。
【0186】
13.先行する項目1から12のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、レーザーシステムは、接触素子が集光光学システムに対して取り外しおよび取り付けが可能となるように構成されており、接触素子は、結合された状態において、集光光学システムの光軸に対する所定の径方向位置およびレーザー光学システムの光軸に対する所定の傾斜角の少なくとも一方にある、眼治療システム。
【0187】
14.先行する項目1から13のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、レーザー光学システムは、レーザービームを用いて、実質的に横方向に延びる表面下の切開部を角膜内に生成するように構成されており、凸形状は、実質的に横方向に延びる表面下の切開部の形成によって生じる気体が凸形状の頂点から離れる方向に実質的に誘導されるように構成されている、眼治療システム。
【0188】
15.先行する項目1から14のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、レーザービームは、眼治療システムのビームマルチプライヤーを用いるレーザー光学システムによって生成される複数のレーザービームのうちの1つであり、ビームマルチプライヤーは、パルス状レーザー光がビームマルチプライヤーに当たるように配置されており、走査システムは、複数のレーザービームを用いるレーザー光学システムによって生成される、規則的または不規則的な1次元、2次元または3次元の焦点アレイを角膜内で走査するように構成されている、眼治療システム。
【0189】
16.先行する項目1から15のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、レーザーシステムは、角膜組織の薄板、特に、角膜フラップ、角膜内レンティクル、または角膜表面薄板を形成するように構成されており、眼治療システムはコントローラーを備え、コントローラーは、表面下の切開部および側面切開部を用いて周囲の角膜組織から薄板を少なくとも部分的に切り離すために、角膜内で焦点を走査するようにレーザー光学システムを制御するように構成されており、表面下の切開部は、薄板の前面または後面の少なくとも一部分に相当し、側面切開部は、薄板の縁の少なくとも一部分に相当し、コントローラーは、薄板を形成するために、気体を誘導する1つまたは複数の気体放出切開部を角膜に形成し、気体放出切開部のそれぞれについて、それぞれの切開部が角膜の前面または後面に延び、気体放出切開部の少なくとも一部分が薄板の縁の少なくとも一部分を形成するように、1つまたは複数の気体放出切開部の形成後に、表面下の切開部の少なくとも一部分を形成するように、および表面下の切開部の形成後に、気体放出切開部のそれぞれについてそれぞれの気体放出切開部の少なくとも一部分が側面切開部の一部分を形成するように側面切開部を完成させるように、レーザー光学システムを制御するように構成されている、眼治療システム。
【0190】
17.角膜組織の薄板、特に、角膜フラップ、角膜内薄板、または角膜表面薄板を形成するための眼治療システムであって、眼治療システムは、1ピコ秒未満のパルス持続時間を有するパルス状レーザービームを生成するように構成されたレーザー光源を有する、レーザー光学システムと、表面下の切開部および側面切開部を用いて周囲の角膜組織から薄板を少なくとも部分的に切り離すために、角膜内でレーザービームの焦点を走査するようにレーザー光学システムを制御するように構成された、コントローラーと、を備え、表面下の切開部は、薄板の前面または後面の少なくとも一部分に相当し、側面切開部は、薄板の縁の少なくとも一部分に相当し、コントローラーは、薄板を形成するために、気体を誘導する1つまたは複数の気体放出切開部を角膜に形成し、気体放出切開部のそれぞれについて、それぞれの切開部が角膜の前面または後面に延び、気体放出切開部の少なくとも一部分が薄板の縁の少なくとも一部分を形成するように、1つまたは複数の気体放出切開部の形成後に、表面下の切開部の少なくとも一部分を形成するように、および表面下の切開部の形成後に、気体放出切開部のそれぞれについてそれぞれの気体放出切開部の少なくとも一部分が側面切開部の一部分を形成するように側面切開部を完成させるように、レーザー光学システムを制御するように構成されている、眼治療システム。
【0191】
18.項目16または17に記載の眼治療システムであって、気体放出切開部の1つまたは複数またはそれぞれについて、それぞれの気体放出切開部は側面切開部の外周部を備える、眼治療システム。
【0192】
19.項目16から18のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、気体放出切開部の1つまたは複数のうちの少なくとも1つは、120度未満または90度未満および5度超または10度超の少なくとも一方である外周範囲を有する、眼治療システム。
【0193】
20.項目16から19のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、側面切開部の完成後には、表面下の切開部から気体を放出するために使用された各気体放出切開部について、それぞれの気体放出切開部の少なくとも一部分は側面切開部の一部である、眼治療システム。
【0194】
21.項目16から20のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、薄板はヒンジ接続されたフラップであり、側面切開部は、ヒンジ接続されたフラップの縁である、眼治療システム。
【0195】
22.項目16から21のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、側面切開部は、表面下の切開部の周縁部で表面下の切開部に接続されている、眼治療システム。
【0196】
23.項目16から22のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、1つまたは複数の気体放出切開部の合算された外周長さは、側面切開部の外周に沿って測定されたときに、側面切開部の外周長さの60%未満または50%未満になる、眼治療システム。
【0197】
24.項目16から23のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、表面下の切開部を形成することは、表面下の切開部を形成するための複数の予め定められた走査パターンの1つを自動的にまたは対話形式で選択することを含み、コントローラーはさらに、表面下の切開部を形成するために用いられる選択された走査パターンに基づいて、i)気体放出切開部の少なくとも1つについて、a)幾何形状、b)位置、およびc)向きの少なくとも1つのパラメーター、ならびにii)1つまたは複数の気体放出切開部の数の少なくとも一方を決定するように構成されている、眼治療システム。
【0198】
25.項目16から24のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、コントローラーは、表面下の切開部を形成するための全走査経路の60%未満または50%未満に対応する走査経路の初期セクションによって走査される少なくとも1箇所で気体放出切開部が表面下の切開部に接するように、気体放出切開部の少なくとも1つを形成するように、レーザー光学システムを制御するように構成されている、眼治療システム。
【0199】
26.項目16から25のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、側面切開部の外周に沿って測定すると、気体放出切開部のそれぞれは、40度未満または20度未満または10度未満である外周範囲を有し、気体放出切開部の数は、5超または10超または20超または50超である、眼治療システム。
【0200】
27.項目16から26のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、眼治療システムは、レーザービームのビーム経路においてレーザー光学システムと眼との間にある接触素子を備え、接触素子は接触面を有し、接触面は、角膜に接触し、頂点を形成するように角膜に向かって凸形であり、気体放出切開部のそれぞれは、接触面が角膜に接触する箇所で角膜の前面に開口している、眼治療システム。
【0201】
28.角膜組織の薄板、特に、角膜フラップ、角膜内薄板、または角膜表面薄板を形成するための眼治療システムであって、眼治療システムは、1ピコ秒未満のパルス持続時間を有するパルス状レーザービームを生成するように構成されたレーザー光源を有する、レーザー光学システムと、レーザービームのビーム経路においてレーザー光学システムと眼との間にある接触素子であって、接触素子は角膜に接触する接触面を有し、接触面は頂点を形成するように角膜に向かって凸形である、接触素子と、表面下の切開部を用いて周囲の角膜組織から薄板を少なくとも部分的に切り離すために、接触素子が角膜と接触しているときにレーザービームの焦点を角膜内で走査するようにレーザー光学システムを制御するように構成された、コントローラーと、を備え、コントローラーはさらに、表面下の切開部を形成する前に1つまたは複数の気体放出切開部を角膜に形成するようにレーザー光学システムを制御するように構成されており、気体放出切開部のそれぞれは、接触面が角膜に接触する箇所で角膜の前面と気体流体連絡している、眼治療システム。
【0202】
29.項目27または28に記載の眼治療システムであって、レーザー光学システムは、眼内でレーザービームの焦点を3次元で走査する走査システムを備え、走査システムは、レーザービームの軸に沿ってレーザー焦点を走査する軸方向走査システムと、レーザービームの偏向を介してレーザービームを走査するビーム偏向走査システムとを備える、眼治療システム。
【0203】
30.項目27から29のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、平行平面式圧平板と比べると、接触素子は、レーザー焦点の走査面の少なくとも一部分の深さのばらつきを低減させるように構成されており、深さは、前面に対して測定され、走査面は、レーザービームの軸に沿ってレーザー焦点を走査するように構成された眼治療システムの軸方向走査システムの一定の走査状態に対応する、眼治療システム。
【0204】
31.項目27から30のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、接触素子は、少なくともレーザー光学システムの光軸から2ミリメートル未満、または4ミリメートル未満、または5.5ミリメートル未満、または6ミリメートル未満の距離を有する各点について、レーザー焦点の走査面の少なくとも一部分の深さのばらつきが30マイクロメートル未満または20マイクロメートル未満になるように構成されており、走査面は、レーザービームの軸に沿ってレーザー焦点を走査する、眼治療システムの軸方向走査システムの一定の走査状態に対応する、眼治療システム。
【0205】
32.項目27から31のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、レーザー光学システムは、角膜内でレーザービームの焦点を走査する走査システムを備え、走査システムは、レーザービームのビーム経路において集光光学システムと眼との間にある、眼治療システム。
【0206】
33.項目27から32のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、凸形状の少なくとも一部分は、10ミリメートル超または50ミリメートル超、および500ミリメートル未満または300ミリメートル未満の少なくとも一方である曲率半径を有する、眼治療システム。
【0207】
34.項目27から33のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、凸形状は、表面下の切開部の形成中に生成される気体が凸形状の頂点から離れる方向に実質的に誘導されるように構成されている、眼治療システム。
【0208】
35.項目1から34のいずれか1つに記載の眼治療システムであって、接触素子は、レーザービームのビーム経路にあり接触面の反対側にある近位面を含み、近位面の少なくとも一部分は、入射レーザービームに向かって凸形もしくは凹形の形状または平坦な形状を有する、眼治療システム。
【0209】
36.1ピコ秒未満のパルス持続時間を有するパルス状レーザービームを生成するように構成されたレーザー光源と、表面下の切開部および側面切開部を用いて周囲の角膜組織から薄板を少なくとも部分的に切り離すために、角膜内でレーザービームの焦点を走査する走査システムと、を有するレーザー光学システムを用いて、角膜組織の薄板、特に、角膜フラップ、角膜内薄板、または角膜表面薄板を形成するための、眼を治療する方法であって、表面下の切開部は薄板の前面または後面の少なくとも一部分に相当し、側面切開部は、薄板の縁の少なくとも一部分に相当し、本方法は、レーザー光学システムを用いて、気体を誘導する1つまたは複数の気体放出切開部を角膜に形成することであって、気体放出切開部のそれぞれについて、それぞれの切開部が角膜の前面または後面に延びる、気体放出切開部を形成することと、1つまたは複数の気体放出切開部の形成後に、レーザー光学システムを用いて表面下の切開部の少なくとも一部分を形成することと、表面下の切開部の形成後に、気体放出切開部のそれぞれについてそれぞれの気体放出切開部の少なくとも一部分が側面切開部の一部分を形成するように、レーザー光学システムを用いて側面切開部を完成させることと、を含む、方法。
【0210】
記載されているような上記の実施形態は、単なる例示に過ぎず、本発明の技術的手法を限定する意図はない。好ましい実施形態を参照しながら本発明を詳細に説明しているが、本発明の請求項の保護範囲から逸脱することなく本発明の技術的手法を修正できるかまたは等価に置き換えることができることを当業者は理解するであろう。特許請求の範囲において、「備える(comprising)」という用語は、他の要素またはステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は複数を除外するものではない。特許請求の範囲における参照符号はいずれも、範囲を限定するものと解釈するべきではない。

図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2024-02-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼にレーザー手術を行うための眼治療システム(1)であって、
1ピコ秒未満のパルス持続時間を有するパルス状レーザー光を生成するように構成されたレーザー光源(5)を有する、レーザー光学システムを備え、
前記レーザー光学システムは、
前記眼の角膜内で前記レーザー光のレーザービームの焦点を3次元で走査する走査システム(43)と、
集光光学システム(8)と、を備え、前記走査システム(43)は、前記レーザービームのビーム経路において前記レーザー光源(5)と前記集光光学システム(8)との間にあり、
前記眼治療システムはさらに、前記レーザービームの前記ビーム経路において前記集光光学システム(8)と前記眼との間にある接触素子(10)を備え、
前記接触素子(10)は、前記眼の角膜(20)に接触する接触面(15)を有し、前記接触面(15)の少なくとも一部分は、前記角膜(20)に向かって凸形の形状を有する、眼治療システム(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の眼治療システム(1)であって、前記走査システム(43)は、
前記レーザービームの軸に沿って前記レーザー焦点を走査する軸方向走査システム(6)と、
前記レーザービームの偏向を介して前記レーザービームを走査するビーム偏向走査システム(7)と、
を備える、眼治療システム(1)。
【請求項3】
請求項2に記載の眼治療システム(1)であって、
平行平面式圧平板と比べると、前記接触素子(10)は、前記レーザー焦点の走査面(18)の少なくとも一部分の深さのばらつきを低減させるように構成されており、
前記深さは、前面(19)に対して測定され、前記走査面(18)は、前記軸方向走査システム(6)の一定の走査状態に対応する、眼治療システム(1)。
【請求項4】
請求項3に記載の眼治療システム(1)であって、
前記接触素子(10)は、少なくとも前記レーザー光学システムの光軸(A)から2ミリメートル未満、または4ミリメートル未満、または5.5ミリメートル未満、または6ミリメートル未満の距離を有する各点について、前記深さのばらつきが30マイクロメートル未満または20マイクロメートル未満になるように構成されている、眼治療システム(1)。
【請求項5】
請求項3に記載の眼治療システム(1)であって、
前記軸方向走査システム(6)は、前記レーザービームの前記ビーム経路において前記レーザー光源(5)と前記ビーム偏向走査システム(7)との間にある、眼治療システム(1)。
【請求項6】
請求項5に記載の眼治療システム(1)であって、
前記軸方向走査システム(6)は、
負の屈折力を有する第1の光学システム(25)と、
正の屈折力を有する第2の光学システム(26)と、
を備え、
前記第2の光学システム(26)は、前記レーザービームの前記ビーム経路において前記第1の光学システム(25)と前記偏向走査システム(7)との間にあり、
前記軸方向走査システム(6)は、前記第1の光学システム(25)と前記第2の光学システム(6)との間の距離が制御により変更可能に構成されている、
眼治療システム(1)。
【請求項7】
請求項26のいずれか1項に記載の眼治療システム(1)であって、
前記ビーム偏向走査システム(7)は走査ミラーを3つ備える、眼治療システム(1)。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の眼治療システム(1)であって、
前記レーザーシステムは、前記接触素子(10)が前記レーザー光学システムに対して取り外しおよび取り付けが可能となるように構成されており、
前記眼治療システム(1)は、前記接触素子(10)が前記レーザービームの前記ビーム経路において前記レーザー光学システムと前記眼との間にある唯一の光学素子になるように構成されている、眼治療システム(1)。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の眼治療システム(1)であって、
前記レーザー光学システムは、前記レーザービームの前記ビーム経路において前記走査システム(43)と前記眼との間にあるビームコンバイナー(56)を備える、眼治療システム(1)。
【請求項10】
請求項9に記載の眼治療システム(1)であって、
前記ビームコンバイナー(56)は、前記レーザービームの前記ビーム経路を前記眼治療システムの撮像システム(58)のビーム経路と合成するように構成されている、眼治療システム(1)。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載の眼治療システム(1)であって、
前記接触面(15)の前記凸形状の少なくとも一部分は、10ミリメートル超または50ミリメートル超、および500ミリメートル未満または300ミリメートル未満の少なくとも一方である曲率半径を有する、眼治療システム(1)。
【請求項12】
請求項1~のいずれか1項に記載の眼治療システム(1)であって、
前記接触面(15)は、少なくとも前記接触面(15)の頂点(21)から2ミリメートル未満、または4ミリメートル未満、または6ミリメートル未満の距離を有する各点について凸形状を有する、眼治療システム(1)。
【請求項13】
請求項1~のいずれか1項に記載の眼治療システム(1)であって、
前記レーザーシステムは、前記接触素子(10)が前記集光光学システムに対して取り外しおよび取り付けが可能となるように構成されており、前記接触素子(10)は、前記結合された状態において、
前記集光光学システムの光軸(A)に対する所定の径方向位置および前記レーザー光学システムの前記光軸(A)に対する所定の傾斜角の少なくとも一方にある、眼治療システム(1)。
【請求項14】
請求項1~のいずれか1項に記載の眼治療システム(1)であって、
前記レーザー光学システムは、前記レーザービーム(9)を用いて、実質的に横方向に延びる表面下の切開部を前記角膜(20)内に生成するように構成されており、
前記凸形状は、前記実質的に横方向に延びる表面下の切開部の前記形成によって生じる気体が前記凸形状の頂点(21)から離れる方向に実質的に誘導されるように構成されている、眼治療システム(1)。
【請求項15】
角膜組織の薄板、特に、角膜フラップ、角膜内薄板、または角膜表面薄板を形成するための眼治療システムであって、前記眼治療システムは、
1ピコ秒未満のパルス持続時間を有するパルス状レーザービームを生成するように構成されたレーザー光源を有する、レーザー光学システムと、
表面下の切開部および側面切開部を用いて周囲の角膜組織から前記薄板を少なくとも部分的に切り離すために、角膜内で前記レーザービームの焦点を走査するように前記レーザー光学システムを制御するように構成された、コントローラーと、
を備え、
前記表面下の切開部は、前記薄板の前面または後面の少なくとも一部分に相当し、前記側面切開部は、前記薄板の縁の少なくとも一部分に相当し、
前記コントローラーは、前記薄板を形成するために、
気体を誘導する1つまたは複数の気体放出切開部を前記角膜に形成し、前記気体放出切開部のそれぞれについて、前記それぞれの切開部が前記角膜の前面または後面に延び、前記気体放出切開部の少なくとも一部分が前記薄板の前記縁の少なくとも一部分を形成するように、
前記1つまたは複数の気体放出切開部の形成後に、前記表面下の切開部の少なくとも一部分を形成するように、および
前記表面下の切開部の形成後に、前記気体放出切開部のそれぞれについて前記それぞれの気体放出切開部の少なくとも一部分が前記側面切開部の一部分を形成するように前記側面切開部を完成させるように、
前記レーザー光学システムを制御するように構成されている、眼治療システム
【請求項16】
請求項15に記載の眼治療システムであって、前記気体放出切開部の1つまたは複数またはそれぞれについて、前記それぞれの気体放出切開部は前記側面切開部の外周部を備える、眼治療システム
【請求項17】
角膜組織の薄板、特に、角膜フラップ、角膜内薄板、または角膜表面薄板を形成するための眼治療システムであって、
前記眼治療システムは、
1ピコ秒未満のパルス持続時間を有するパルス状レーザービームを生成するように構成されたレーザー光源を有する、レーザー光学システムと、前記レーザービームのビーム経路において前記レーザー光学システムと前記眼との間にある接触素子であって、前記接触素子は前記角膜に接触する接触面を有し、前記接触面は頂点を形成するように前記角膜に向かって凸形である、接触素子と、
表面下の切開部を用いて周囲の角膜組織から前記薄板を少なくとも部分的に切り離すために、前記接触素子が前記角膜と接触しているときにレーザービームの焦点を角膜内で走査するように前記レーザー光学システムを制御するように構成された、コントローラーと、
を備え、
前記コントローラーはさらに、前記表面下の切開部を形成する前に1つまたは複数の気体放出切開部を前記角膜に形成するように前記レーザー光学システムを制御するように構成されており、
前記気体放出切開部のそれぞれは、前記接触面が前記角膜に接触する箇所で前記角膜の前面と気体流体連絡している、眼治療システム
【請求項18】
請求項17に記載の眼治療システムであって、平行平面式圧平板と比べると、前記接触素子は、前記レーザー焦点の走査面の少なくとも一部分の深さのばらつきを低減させるように構成されており、
前記深さは、前記前面に対して測定され、前記走査面は、前記レーザービームの軸に沿って前記レーザー焦点を走査するように構成された前記眼治療システムの軸方向走査システムの一定の走査状態に対応する、眼治療システム
【請求項19】
請求項17または18に記載の眼治療システムであって、前記接触素子は、少なくとも前記レーザー光学システムの光軸から2ミリメートル未満、または4ミリメートル未満、または5.5ミリメートル未満、または6ミリメートル未満の距離を有する各点について、前記レーザー焦点の走査面の少なくとも一部分の前記深さのばらつきが30マイクロメートル未満または20マイクロメートル未満になるように構成されており、
前記走査面は、前記レーザービームの軸に沿って前記レーザー焦点を走査する、前記眼治療システムの軸方向走査システムの一定の走査状態に対応する、眼治療システム
【請求項20】
請求項17または18に記載の眼治療システムであって、前記レーザー光学システムは、前記角膜内で前記レーザービームの前記焦点を走査する走査システムを備え、
前記走査システムは、前記レーザービームの前記ビーム経路において前記集光光学システムと前記眼との間にあり、
前記軸方向走査システム(6)は、前記レーザービームの前記ビーム経路において前記レーザー光源(5)と前記ビーム偏向走査システム(7)との間にある、眼治療システム
【国際調査報告】