(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】炎症状態の治療における置換5-(4-メチル-6-フェニル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-1,2,4-オキサジアゾールの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5517 20060101AFI20240517BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240517BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20240517BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240517BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240517BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240517BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240517BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20240517BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240517BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240517BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20240517BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240517BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240517BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240517BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20240517BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240517BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240517BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240517BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240517BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20240517BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240517BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240517BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K31/5517
A61P29/00
A61P43/00 111
A61P11/00
A61P11/06
A61P11/02
A61P37/08
A61P31/00
A61P1/00
A61P1/04
A61P1/18
A61P1/16
A61P17/00
A61P17/04
A61P17/06
A61P31/04
A61P31/22
A61P37/02
A61P37/06
A61P27/02
A61P27/06
A61P19/02
A61P9/00
A61P9/10 101
A61P3/10
A61P13/12
A61P13/10
A61P25/16
A61P25/14
A61P21/00
A61P25/00
A61P9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575371
(86)(22)【出願日】2021-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 US2021036215
(87)【国際公開番号】W WO2022260648
(87)【国際公開日】2022-12-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515076769
【氏名又は名称】ユーダブリューエム・リサーチ・ファウンデーション,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド,アレクサンダー イー.
(72)【発明者】
【氏名】スタッフォード,ダグラス シー.
(72)【発明者】
【氏名】クック,ジェームス エム.
(72)【発明者】
【氏名】ニーマン,アマンダ エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ポー,マイケル ミン-ジン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ガンガン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB12
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA57
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA08
4C086ZA33
4C086ZA34
4C086ZA36
4C086ZA45
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB15
4C086ZB31
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC02
4C086ZC35
(57)【要約】
置換5-(4-メチル-6-フェニル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-1,2,4-オキサジアゾール化合物は、κオピオイド受容体に対するリガンドであり、誘導型一酸化窒素合成酵素を阻害する。本化合物は、NO産生を阻害し、関連する炎症状態を治療するのに有用である。
【選択図】
図1-3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において炎症性疾患または障害を治療する方法であって、治療有効量の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む方法
【化1】
(式中、
R
1は、C
3~4シクロアルキル、ハロゲン、エチニル、-OC
1~2アルキル、またはフェニルであり、
R
2は、メチルであり、
R
3は、C
1~4アルキルまたはC
3~4シクロアルキルであり、
R
4は、水素またはハロゲンである)。
【請求項2】
対象において誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)を阻害する方法であって、前記対象においてiNOSを阻害するのに有効な量の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む方法
【化2】
(式中、
R
1は、C
3~4シクロアルキル、ハロゲン、エチニル、-OC
1~2アルキル、またはフェニルであり、
R
2は、メチルであり、
R
3は、C
1~4アルキルまたはC
3~4シクロアルキルであり、
R
4は、水素またはハロゲンである)。
【請求項3】
対象においてκ-オピオイド受容体(KOR)を活性化する方法であって、前記対象においてKORを活性化するのに有効な量の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む方法
【化3】
(式中、
R
1は、C
3~4シクロアルキル、ハロゲン、エチニル、-OC
1~2アルキル、またはフェニルであり、
R
2は、メチルであり、
R
3は、C
1~4アルキルまたはC
3~4シクロアルキルであり、
R
4は、水素またはハロゲンである)。
【請求項4】
R
1が、シクロプロピルである、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
R
1が、エチニルである、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
R
1が、ブロモである、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
R
3が、C
1~4アルキルである、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
R
3が、メチルである、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
R
3が、エチルである、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
R
3が、イソプロピルである、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
R
4が、フルオロである、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
式(I)が、式(Ia)である、請求項1から11のいずれかに記載の方法
【化4】
。
【請求項13】
式(I)が、式(Ib)である、請求項1から11のいずれかに記載の方法
【化5】
。
【請求項14】
前記式(I)の化合物が、
【化6】
からなる群から選択される、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記対象が、炎症性疾患または障害を患っている、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記炎症性疾患または障害が、急性の炎症性疾患または障害である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記炎症性疾患または障害が、慢性の炎症性疾患または障害である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記炎症性疾患または障害が、呼吸器の疾患または状態である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記呼吸器の疾患または状態が、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、肺気腫、アレルギー性鼻炎およびアレルギー性副鼻腔炎などの上気道の炎症性疾患、急性肺損傷、急性呼吸促拍症候群(ARDS)、肺感染症、間質性肺疾患、または狭窄性細気管支炎である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記炎症性疾患または障害が、消化管疾患または状態である、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記疾患または障害が、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、食道炎、過敏性腸症候群、セリアック病、胃炎、膵炎、直腸炎、肝炎、憩室炎、または熱帯性スプルーである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記炎症性疾患または障害が、皮膚科学的疾患または状態である、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記疾患または障害が、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、発疹、掻痒、湿疹、ざ瘡、フケ、蜂巣炎、乾癬、酒さ、蕁麻疹、帯状疱疹、エリテマトーデス、扁平苔癬、皮膚炎、血管炎、または水疱性疾患である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記炎症性疾患または障害が、敗血症性ショック、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、出血性ショック、サイトカイン療法(インターロイキン-2、腫瘍壊死因子、免疫チェックポイント阻害)により誘導されるショック状態、臓器移植および移植片拒絶反応、頭部外傷、またはぶどう膜炎、緑内障、および結膜炎などの炎症性の眼の状態である、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記炎症性疾患または障害が、関節リウマチ、強直性脊椎炎、変形性関節症、および痛風性関節炎などの関節障害、心筋症および心筋炎などの心臓障害、アテローム性動脈硬化症、神経原性炎症、糖尿病、糸球体腎炎;過活動膀胱および膀胱炎などの泌尿器系障害、パーキンソン病、ハンチントン病誘導性認知症(Huntington’s induced dementias)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症;結節性多発動脈炎、血清病、ウェゲナー肉芽腫症、川崎症候群などの壊死性血管炎;片頭痛、慢性緊張型頭痛、群発頭痛、および血管性頭痛などの頭痛、または心筋および脳虚血/再灌流傷害である、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記化合物、またはその薬学的に許容される塩が、経口的に、局所的に、非経口的に、または吸入により投与される、請求項1から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、ヒトまたは非ヒト動物である、請求項1から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
【化7】
からなる群から選択される化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項29】
請求項28に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府資金に関する声明
本発明は、国立衛生研究所(NIH)から授与された助成金番号R01 MH096463、R01NS076517およびR01HL118561、ならびに国立科学財団から授与された助成金番号CHE-1625735の政府支援を受けて行われた。政府は本発明において一定の権限を有する。
【0002】
技術分野
本開示は、一酸化窒素(NO)により誘導されるまたは悪化する疾患または障害(例えば、炎症性疾患)を治療または予防するための化合物、組成物、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の活性により生成される一酸化窒素(NO)は、乾癬、ぶどう膜炎、1型糖尿病、敗血症性ショック、疼痛、片頭痛、関節リウマチ、変形性関節症、炎症性腸疾患、喘息、免疫複合体病、多発性硬化症、虚血性脳浮腫、毒素性ショック症候群、心不全、潰瘍性大腸炎、アテローム性動脈硬化症、糸球体腎炎、パジェット病および骨粗鬆症、ウイルス感染の炎症性後遺症、網膜炎、酸化剤誘導性肺損傷、湿疹、急性同種移植片拒絶反応、ならびにNOを産生する侵入性微生物により引き起こされる感染症を含む様々な疾患および状態に関与している。
【0004】
実験動物では、リポ多糖または腫瘍壊死因子アルファにより誘導される低血圧は、NOS阻害剤により逆転させることができる。サイトカイン誘導性低血圧を引き起こす条件は、敗血症性ショック、血液透析、およびがん患者におけるインターロイキン療法を含む。iNOS阻害剤は、サイトカイン誘導性低血圧、炎症性腸疾患、脳虚血、変形性関節症、および喘息を治療するのに有効であることが示されている。さらに、炎症組織に多量に局在する一酸化窒素(NO)は、局所的に疼痛を誘導し、中枢および末梢の刺激を増強することが示されている。
【0005】
したがって、一酸化窒素の過剰産生が有害な状況では、NOの産生を減少させるiNOSの特異的阻害剤を見出すことが有利であろう。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本発明は、対象において炎症性疾患または障害を治療する方法であって、治療有効量の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む方法を提供する
【0007】
【化1】
(式中、
R
1は、C
3~4シクロアルキル、ハロゲン、エチニル、-OC
1~2アルキル、またはフェニルであり、
R
2は、メチルであり、
R
3は、C
1~4アルキルまたはC
3~4シクロアルキルであり、
R
4は、水素またはハロゲンである)。
【0008】
別の態様では、本発明は、対象において誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)を阻害する方法であって、対象においてiNOSを阻害するのに有効な量の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0009】
別の態様では、本発明は、対象においてκ-オピオイド受容体(KOR)を活性化する方法であって、対象においてKORを活性化するのに有効な量の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0010】
別の態様では、本発明は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1-1】
図1A~1Dは、不死化ミクログリアにおける機能的GABA
ARの発現の検証を示し、細胞を-80mVでパッチクランプし、漸増濃度のGABAの3秒間の適用に対して電流応答を取得した。
図1Aは、HMC3ヒトミクログリア細胞を用いた電流応答を示す。
【
図1-2】
図1Bは、HMC3細胞を用いた、GABA濃度の上昇の10秒間の平均電流スイープを示す。
【
図1-3】
図1Cは、ヒトおよびマウスの不死化ミクログリア細胞を用いた電流応答を示す。
【
図1-4】
図1Dは、ヒトの不死化ミクログリア細胞を用いた、GABA濃度の上昇の10秒間の平均電流スイープを示す。
【
図2-1】
図2A~2Bは、ヒトおよびマウスの不死化ミクログリア細胞から単離したGABA
ARサブユニットmRNAの発現を示す。mRNA(脳抽出物では10ng、ミクログリアでは50ng)を、QuantiFast SYBR green RT-qPCRキット(Quiagen)を用いて増幅し、各サブユニットのサイクル数を、ΔCt法を使用してGAPDHに対して正規化した(n=3)。
図2Aは、ヒト脳抽出物から単離したGABA
ARサブユニットmRNAの発現を示す。
【
図2-2】
図2Bは、ヒトミクログリアから単離したGABA
ARサブユニットmRNAの発現を示す。
【
図2-3】
図2Cは、マウス小脳抽出物から単離したGABA
ARサブユニットmRNAの発現を示す。
【
図2-4】
図2Dは、マウスミクログリアから単離したGABA
ARサブユニットmRNAの発現を示す。
【
図3-1】
図3A~3Bは、MP-IV-010およびGABA
AR受容体アンタゴニストの存在下でのNOの減少を示す。データは、平均値およびSEM(n=8)として表される。
***はp<0.001を示し、nsは有意ではない(ANOVA)。
図3Aは、LPS/IFNγで活性化し、表記された化合物の組合せで処理したマウスミクログリアを示す。14時間後、培地のNOレベルをGriessアッセイで定量化した。
【
図3-2】
図3Bは、CellTiter-Gloで定量化した細胞のATPレベルを示す。データは、平均値およびSEM(n=8)として表され、
***はp<0.001を示し、nsは有意ではないことを示す(ANOVA)。
【
図4-1】
図4A~4Cは、MP-IV-010の濃度依存的受容体結合アッセイを示す。データは、平均値およびSEM(n=8)として表される。非線形回帰を使用してIC
50値を決定した。
図4Aは、ラット脳ホモジネートを
3H-フルニトラゼパムとインキュベートしたGABA
AR結合アッセイを示す。
【
図4-2】
図4Bは、細胞溶解物が、
3H-U69593とインキュベートした安定的にトランスフェクトされたHEK細胞からのものである、κ-オピオイド受容体結合アッセイを示す。
【
図4-3】
図4Cは、細胞溶解物が、
3H-ジトリルグアニジンとインキュベートした安定的にトランスフェクトされたHEK細胞からのものである、σ2受容体結合アッセイを示す。
【
図5-1】
図5A~5Bは、MP-IV-010および受容体アンタゴニストの存在下でのNOの減少を示す。データは、平均値およびSEM(n=8)として表され、
**および
***はp<0.01およびp<0.001を示し、nsは有意ではない(ANOVA)。
図5Aは、LPS/IFNγで活性化し、表記された化合物の組合せで処理したマウスミクログリアを示す。14時間後、培地のNOレベルをGriessアッセイで定量化した。
【
図5-2】
図5Bは、CellTiter-Gloで定量化した細胞のATPレベルを示す。
【
図6-1】
図6A~6Dは、ビヒクルまたはMP-IV-010またはGL-IV-03で処理した活性化および非活性化マウスミクログリアにおけるiNOSのmRNA、タンパク質、および活性の測定を示す。
図6Aは、活性化ミクログリアからの細胞タンパク質抽出物が、非活性化ミクログリアからの抽出物よりも有意に高いiNOS活性を示したことを示す。MP-IV-010(50μM)で24時間処理すると、活性化ミクログリアにおいてiNOS活性の上昇が完全に阻害された。細胞タンパク質を、ビヒクルで処理したマウスミクログリア、およびIFNγ/LPSで活性化しビヒクルまたは50μM MP-IV-010で24時間処理したマウスミクログリアから単離した。特異的iNOS活性を、Abcam iNOS Activity Assayキットで決定した(n=4)。
【
図6-2】
図6Bは、MP-IV-010がiNOSを直接阻害しないことを示しており、活性化ミクログリアからの細胞抽出物をMP-IV-010で2時間インキュベートした後、iNOS活性のアッセイを行った。ここで、iNOS活性は、ビヒクルで処理した細胞抽出物とは異ならなかった。細胞タンパク質を、マウスミクログリア、およびIFNγ/LPSで24時間活性化したマウスミクログリアから単離した。活性化ミクログリアからの細胞タンパク質を50μM MP-IV-010で2時間処理し、すべてのタンパク質抽出物についてiNOS活性をAbcam iNOS Activity Assayキットで決定した(n=3)。
【
図6-3】
図6Cは、GL-IV-03(10μM)処理後15、60、および180分で、活性化ミクログリアにおいてiNOS mRNAレベルが低下したことを示す。マウスミクログリアをIFNγ/LPSで活性化し、ビヒクルまたは10μM GL-IV-03で処理した。15分、1時間、3時間、および6時間後にmRNAを単離し、RT-qPCRを使用してiNOSを定量化した。各試料のサイクル数を、ΔCt法を使用してGAPDHに対して正規化した(n=3)。マウスミクログリアをIFNγ/LPSで活性化し、ビヒクルまたは10μM GL-IV-03で24時間処理した。細胞タンパク質を抽出し、AbcamからのマウスiNOS ELISAキットで分析した(n=3)。
*、(p<0.05)、
**(p<0.01)、または
***(p<0.001)有意性はANOVAで計算した。
【
図6-4】
図6Dは、GL-IV-03で24時間処理後のマウスミクログリアから単離したiNOSタンパク質の量が、ビヒクル処理細胞と比較して有意に低かったことを示す。
【
図7-1】
図7A~7Cは、MP-IV-010およびGL-IV-03のインビボ評価を示す。
図7Aは、GL-IV-03を10mg/kgで経口投与したとき、急性疼痛(第1相)および炎症介在性疼痛(第2相)の両方において抗侵害受容性作用を示したことを示す。ウェブスターマウスを、右後足に2%ホルマリンを注射する前に、表記された化合物および用量で4日前に経口的に処置した。マウスを最初の5分間(第1相)および20分後(第2相)に、5秒間隔で5分間評価した。5秒間隔の間の右後足を舐めることおよび噛むことを記録し、注射した足に対処する(addressing)合計時間として合わせた。データは、平均値とSEMとして示す(n=8)。
**は、p<0.01を示す(対応のないt検定)。
【
図7-2】
図7Bは、ホルマリン試験における有効用量の4倍でp.o.投与したGL-IV-03およびMP IV-10の両方が、ロータロッドで測定した際、感覚運動欠損を引き起こさなかったことを示す。スイスウェブスターマウスを、表記された用量および投与での化合物処置後、10、30、および60分で、15rpmで3分間ロータロッドで試験した。落下時間は、3分より前に落下した場合に記録した。データは、平均値±SEMとして表す(n=10)。
*、(p<0.05)、
**(p<0.01)、または
***(p<0.001)有意性は、ビヒクル処置マウスと比較した(2元配置ANOVA)。
【
図7-3】
図7Cは、10および40mg/kgでのGL-IV-03の腹腔内注射が、回転ロッド上で3分間バランスをとるマウスの能力に影響しなかったことを示す。データは、平均値±SEMとして表す(n=10)。
*、(p<0.05)、
**(p<0.01)、または
***(p<0.001)有意性は、ビヒクル処置マウスと比較した(2元配置ANOVA)。
【
図8】
図8は、GL-I-30が完全なKORアゴニストであることを実証するBRETリクルートメントアッセイ(BRET recruitment assay)を示す。HEK293細胞にGα
oA-RLuc、Gβ3、Gγ8-GFP2、およびヒトKORをトランスフェクトし、漸増濃度のGL-I-30または完全なアゴニストであるサルビノリンAで処理した。
【
図14】
図14は、本明細書に記載の様々な他の化合物を示す。
【
図15-1】
図15A~15Bは、マウスミクログリアのNO産生を有意に減少させる化合物の濃度応答を示す。平均値±SEMを示す(n=12、
*、
**、および
***は、それぞれp<0.05、p<0.01、およびp<0.001を示す)。
図15Aは、細胞をLPSおよびIFNγで活性化し、1μM GABAおよび1nM~50μMの化合物で24時間処理したことを示す。上清中のNOをGriessアッセイで定量化した。
【
図15-2】
図15Bは、生存率の尺度としてCell Titer Gloにより定量化した残存細胞中のATPを示す。
【
図16-1】
図16A~16Bは、マウスマクロファージ(RAW267.4)のNO産生を有意に減少させる化合物の濃度応答を示す。
図16Aは、LPSおよびIFNγで活性化し、1μM GABAおよび100nM~50μMの化合物で24時間処理した細胞を示す。上清中のNOをGriessアッセイで定量化した。
【
図16-2】
図16Bは、生存率の尺度として残存細胞中のATPをCell Titer Gloにより定量化したことを示す。平均値±SEMをn=12に関して示す。
*、
**、および
***は、それぞれp<0.05、p<0.01、およびp<0.001を示す。(ANOVA)
【
図17-1】
図17A~17Bは、マウスミクログリアのNO産生を有意に減少させる化合物の濃度応答を示す。
図17Aは、LPSおよびIFNγで活性化し、1μM GABAおよび100nM~30μMの化合物で24時間処理した細胞のデータを示す。上清中のNOをGriessアッセイで定量化した。
【
図17-2】
図17Bは、生存率の尺度として残存細胞中のATPをCell Titer Gloにより定量化したことを示す。平均値±SEMをn=12に関して示す。
*、
**、および
***は、それぞれp<0.05、p<0.01、およびp<0.001を示す。(ANOVA)
【
図18-1】
図18A~18Bは、マウスマクロファージ(RAW267.4)のNO産生を有意に減少させる化合物の濃度応答を示す。
図18Aは、LPSおよびIFNγで活性化し、1μM GABAおよび1nM~10μMのイミダゾジアゼピン化合物で24時間処理した細胞のデータを示す。上清中のNOをGriessアッセイで定量化した。
【
図18-2】
図18Bは、生存率の尺度として残存細胞中のATPをCell Titer Gloにより定量化したことを示す。平均値±SEMをn=12に関して示す。
*、
**、および
***は、それぞれp<0.05、p<0.01、およびp<0.001を示す。(ANOVA)
【
図19】
図19は、プレート1からの化合物の存在下でのHepG2(肝臓)およびHEK293(腎臓)の濃度依存的生存率を示す。細胞を384ウェルプレートに分注し、異なる濃度の化合物で24時間処理した。細胞生存率をCellTiter-Gloで決定した。(各濃度n=8)
【
図20】
図20は、プレート2からの化合物の存在下でのHepG2(肝臓)およびHEK293(腎臓)の濃度依存的生存率を示す。細胞を384ウェルプレートに分注し、異なる濃度の化合物で24時間処理した。細胞生存率をCellTiter-Gloで決定した。(各濃度n=8)
【
図21】
図21は、プレート3からの化合物の存在下でのHepG2(肝臓)およびHEK293(腎臓)の濃度依存的生存率を示す。細胞を384ウェルプレートに分注し、異なる濃度の化合物で24時間処理した。細胞生存率をCellTiter-Gloで決定した。(各濃度n=8)
【
図22】
図22は、プレート4からの化合物の存在下でのHepG2(肝臓)およびHEK293(腎臓)の濃度依存的生存率を示す。細胞を384ウェルプレートに分注し、異なる濃度の化合物で24時間処理した。細胞生存率をCellTiter-Gloで決定した。(各濃度n=8)
【
図23】
図23は、プレート5からの化合物の存在下でのHepG2(肝臓)およびHEK293(腎臓)の濃度依存的生存率を示す。細胞を384ウェルプレートに分注し、異なる濃度の化合物で24時間処理した。細胞生存率をCellTiter-Gloで決定した。(各濃度n=8)
【
図24】
図24は、プレート6からの化合物の存在下でのHepG2(肝臓)およびHEK293(腎臓)の濃度依存的生存率を示す。細胞を384ウェルプレートに分注し、異なる濃度の化合物で24時間処理した。細胞生存率をCellTiter-Gloで決定した。(各濃度n=8)
【
図25】
図25は、プレート7からの化合物の存在下でのHepG2(肝臓)およびHEK293(腎臓)の濃度依存的生存率を示す。細胞を384ウェルプレートに分注し、異なる濃度の化合物で24時間処理した。細胞生存率をCellTiter-Gloで決定した。(各濃度n=8)
【
図26】
図26は、プレート8からの化合物の存在下でのHepG2(肝臓)およびHEK293(腎臓)の濃度依存的生存率を示す。細胞を384ウェルプレートに分注し、異なる濃度の化合物で24時間処理した。細胞生存率をCellTiter-Gloで決定した。(各濃度n=8)
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本開示の実施形態を詳細に説明する前に、本開示は、その適用において、以下の説明に記載されるまたは以下の図面に図示される構成の詳細および構成要素の配置に限定されないことが理解されるべきである。本開示は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施するまたは行うことが可能である。
【0013】
1.定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本文書が優先する。好ましい方法および材料を下記に記載するが、本明細書に記載のものと同様または同等の方法および材料を、本発明の実施または試験に使用することができる。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。本明細書に開示された材料、方法、および例は、例示に過ぎず、限定することを意図していない。
【0014】
本明細書で使用される「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「できる(can)」、「含む(contain(s))」という用語、およびそれらの変形は、追加的な行為または構造の可能性を除外しない、オープンエンドの移行句、用語、または単語であることを意図している。単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、複数の言及を含む。本開示は、明示的に記載されていてもいなくても、本明細書に提示された実施形態または要素を「含む」、「それからなる」、および「それから本質的になる」他の実施形態も企図している。
【0015】
量に関連して使用される「約」という修飾語は、記載された値を包含し、文脈により指示される意味を有する(例えば、特定の量の測定に関連する誤差の程度を少なくとも含む)。修飾語「約」はまた、2つの端点の絶対値により定義される範囲を開示すると考えるべきである。例えば、「約2~約4」という表現は、「2~4」という範囲も開示する。「約」という用語は、表記された数のプラスまたはマイナス10%を指す場合がある。例えば、「約10%」は、9%~11%の範囲を指す場合があり、「約1」は0.9~1.1を意味する場合がある。「約」の他の意味は、四捨五入など、文脈から明らかな場合があり、したがって、例えば「約1」は、0.5~1.4を意味する場合もある。
【0016】
特定の官能基および科学用語の定義は、下記でより詳しく説明する。この開示の目的のために、化学元素は、Periodic Table of the Elements, CAS version, Handbook of Chemistry and Physics, 75th Ed., inside coverに従って同定され、特定の官能基は、そこに記載されているように一般に定義される。さらに、有機化学の一般原則、および特定の官能部分および反応性は、Organic Chemistry, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito, 1999、Smith and March March's Advanced Organic Chemistry, 5th Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York, 2001、Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, Inc., New York, 1989、Carruthers, Some Modern Methods of Organic Synthesis, 3rd Edition, Cambridge University Press, Cambridge, 1987に記載され、これらのそれぞれの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、直鎖状または分岐状の飽和炭化水素鎖を意味する。「低級アルキル」または「C1~6アルキル」という用語は、1~6個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の炭化水素を意味する。「C1~4アルキル」という用語は、1~4個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の炭化水素を意味する。アルキルの代表的な例は、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、およびn-デシルを含むが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書で使用される「シクロアルキル」または「シクロアルカン」という用語は、すべての炭素原子を環員として含み、二重結合がゼロの飽和環系を指す。「シクロアルキル」という用語は、置換基として存在するとき、シクロアルカンを指すために本明細書で使用される。シクロアルキルは、単環式シクロアルキル(例えば、シクロプロピル)、縮合二環式シクロアルキル(例えば、デカヒドロナフタレニル)、または環の2個の非隣接原子が、1、2、3、もしくは4個の炭素原子のアルキレン架橋により連結されている架橋シクロアルキル(例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル)であってもよい。シクロアルキルの代表的な例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、アダマンチル、およびビシクロ[1.1.1]ペンタニルを含むが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書で使用される「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、Cl、Br、I、またはFを意味する。
【0020】
「アルキル」、「シクロアルキル」、「アルキレン」などの用語は、特定の例において、その基に存在する原子の数を示す指定が先行する場合がある(例えば、「C1~4アルキル」、「C3~6シクロアルキル」、「C1~4アルキレン」)。これらの指定は、当業者により一般に理解されるように使用されている。例えば、「C」の後に下付き数字が続く表現は、後に続く基に存在する炭素原子の数を示す。したがって、「C3アルキル」は、3個の炭素原子を有するアルキル基(すなわち、n-プロピル、イソプロピル)である。「C1~4」のように範囲が与えられる場合、後ろに続く基の構成員は、列挙された範囲内の任意の数の炭素原子を有することができる。「C1~4アルキル」は、例えば、どんな配置であっても(すなわち、直鎖であっても分岐鎖であっても)、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0021】
2.化合物
式(I)の化合物
本発明において有用な化合物は、以下の番号付けされた実施形態に記載される。第1の実施形態をE1と表示し、別の実施形態をE2などと表示する。
【0022】
E1.式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、
【0023】
【化2】
(式中、
R
1は、C
3~4シクロアルキル、ハロゲン、エチニル、-OC
1~2アルキル、またはフェニルであり、
R
2は、メチルであり、
R
3は、C
1~4アルキルまたはC
3~4シクロアルキルであり、
R
4は、水素またはハロゲンである)。
【0024】
E2.R1が、シクロプロピルである、E1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0025】
E3.R1が、エチニルである、E1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0026】
E4.R1が、ブロモである、E1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0027】
E4.1.R1が、C3~4シクロアルキルである、E1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0028】
E4.2.R1が、ハロゲンである、E1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0029】
E4.3.R1が、-OC1~2アルキルである、E1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0030】
E4.4.R1が、フェニルである、E1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0031】
E5.R3が、C1~4アルキルである、E1からE4.4のいずれかに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0032】
E5.1.R3が、C3~4シクロアルキルである、E1からE4.4のいずれかに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0033】
E6.R3が、メチルである、E1からE5のいずれかに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0034】
E7.R3が、エチルである、E1からE5のいずれかに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0035】
E8.R3が、イソプロピルである、E1からE5のいずれかに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0036】
E9.R4が、フルオロである、E1からE8のいずれかに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0037】
E9.1.R4が、水素である、E1からE8のいずれかに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0038】
E9.2.R4が、ハロゲンである、E1からE8のいずれかに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0039】
E10.式(I)が、式(Ia)である、E1からE9.2のいずれかに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩
【0040】
【0041】
E11.式(I)が、式(Ib)である、E1からE9.2のいずれかに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩
【0042】
【0043】
E12.
【0044】
【化5】
からなる群から選択される、E1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0045】
E13.
【0046】
【化6】
からなる群から選択される、E12に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0047】
E14.E13に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【0048】
化合物名は、CHEMDRAW(登録商標) ULTRAの一部としてのStruct=Name命名アルゴリズムを使用することにより割り当てることができる。
【0049】
化合物は、不斉中心またはキラル中心が存在する立体異性体として存在し得る。立体異性体は、キラル炭素原子の周りの置換基の立体配置に応じて「R」または「S」である。本明細書で使用される「R」および「S」という用語は、IUPAC 1974 Recommendations for Section E, Fundamental Stereochemistry, in Pure Appl. Chem., 1976, 45: 13-30に定義される立体配置である。本開示は、様々な立体異性体およびその混合物を企図しており、これらは特に本発明の範囲内に含まれる。立体異性体は、鏡像異性体およびジアステレオマー、ならびに鏡像異性体またはジアステレオマーの混合物を含む。化合物の個々の立体異性体は、不斉中心またはキラル中心を含む市販の出発物質から合成的に調製することができ、またはラセミ混合物の調製後、当業者によく知られている分割の方法により調製することができる。これらの分割の方法は、(1)鏡像異性体の混合物のキラル補助基への付着、得られたジアステレオマーの混合物の、再結晶またはクロマトグラフィーによる分離、および任意選択で、Furniss, Hannaford, Smith, and Tatchell, "Vogel's Textbook of Practical Organic Chemistry", 5th edition (1989), Longman Scientific & Technical, Essex CM20 2JE, Englandに記載される光学的に純粋な生成物の補助基からの遊離、または(2)光学的鏡像異性体の混合物のキラルクロマトグラフィーカラムでの直接分離、または(3)分別再結晶法により例証される。
【0050】
化合物は、幾何異性体だけでなく互変異性型を有してもよく、これらも本発明の態様を構成することが理解されるべきである。
【0051】
式(I)および任意の下位式の化合物において、あらゆる「水素」または「H」は、構造中明示的に列挙されていても暗黙的であっても、水素同位体1H(プロチウム)および2H(重水素)を包含する。
【0052】
B.医薬塩
開示化合物は、薬学的に許容される塩として存在し得る。「薬学的に許容される塩」という用語は、水溶性または油溶性または分散性で、過度の毒性、刺激、およびアレルギー反応を伴わずに、障害の治療に適しており、妥当な利益/リスク比に見合った、その意図した使用に有効な化合物の塩または双性イオンを指す。塩は、化合物の最終的な単離および精製の間に調製してもよいし、化合物のアミノ基を適切な酸と反応させることにより別に調製してもよい。例えば、化合物は、これらに限定されないがメタノールおよび水などの適切な溶媒に溶解し、塩酸のような少なくとも1当量の酸で処理することができる。得られた塩は沈殿して、ろ過により単離され、減圧下で乾燥させることができる。あるいは、溶媒および過剰な酸を減圧下で除去して塩を提供することができる。代表的な塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ギ酸塩、イセチオン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチネート(pectinate)、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、グルタミン酸塩、パラ-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩などを含む。化合物のアミノ基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ラウリル、ミリスチル、ステアリルなどのアルキル塩化物、臭化物、およびヨウ化物で四級化することもできる。
【0053】
塩基性付加塩は、カルボキシル基と、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、もしくはアルミニウムなどの金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩、もしくは重炭酸塩、または有機第1級、第2級、もしくは第3級アミンなどの適切な塩基との反応により、開示化合物の最終的な単離および精製の間に調製することができる。メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N-ジベンジルフェネチルアミン、1-エフェナミンおよびN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジンなどに由来するものなどの第4級アミン塩を調製することができる。
【0054】
3.医薬組成物
開示化合物は、対象(例えば、ヒト、または哺乳動物などの非ヒト動物であり得る患者など)への投与に適した医薬組成物に組み込むことができる。
【0055】
医薬組成物は、「治療有効量」または「予防有効量」の薬剤を含むことができる。「治療有効量」とは、所望の治療結果を達成するために必要な投与量および期間での有効な量を指す。組成物の治療有効量は、当業者が決定することができ、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重などの因子、ならびに個体において所望の応答を引き出す組成物の能力によって異なり得る。治療有効量は、治療上有益な作用が本発明の化合物(例えば、式(I)の化合物)の毒性または有害作用を上回る量でもある。「予防有効量」とは、所望の予防結果を達成するために必要な投与量および期間での有効な量を指す。典型的には、予防用量は、疾患に罹患する前または疾患の初期段階の対象において使用されるため、予防有効量は治療有効量よりも少なくなる。
【0056】
化合物、および化合物を含む組成物の適切な投与量は、患者によって異なり得ることが理解されよう。最適な投与量の決定には、一般に、本発明の治療法の任意のリスクまたは有害副作用に対する治療上の利益のレベルのバランスをとる必要がある。選択される投与量レベルは、特定の化合物の活性、投与経路、投与時間、化合物の排出速度、治療期間、併用される他の薬物、化合物、および/または材料、ならびに患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康、および前病歴を含むがこれらに限定されない様々な因子に依存する。化合物の量および投与経路は、最終的に医師の裁量に委ねられるが、一般には、投与量は、実質的に悪影響を及ぼすまたは有害な副作用を引き起こすことなく所望の効果を達成する作用部位の局所濃度を達成するものとなる。
【0057】
インビボでの投与は、1回の用量で、治療過程を通じて連続的にまたは断続的に(例えば、適切な間隔で分割用量で)で達成することができる。投与の最も有効な手段および投与量を決定する方法は、当業者によく知られており、治療に使用される製剤、治療の目的、治療される標的細胞、および治療される対象により異なり得る。単回または複数回の投与を行うことができ、用量のレベルおよびパターンは治療する医師により選択される。一般には、化合物の適切な用量は、1日あたり対象の体重1キログラムあたり約100μg~約250mgの範囲である。
【0058】
組成物は、1回、連続的に(例えば、点滴により)、または定期的/断続的に投与することができ、約1時間に1回、約2時間に1回、約4時間に1回、約8時間に1回、約12時間に1回、約1日に1回、約2日に1回、約3日に1回、約1週間に2回、約1週間に1回、および約1カ月に1回を含む。組成物は、所望の症状軽減が達成されるまで投与することができる。
【0059】
本化合物、組成物、および方法は、治療レジメンの一部として、治療される特定の損傷または疾患に適切な他の治療と共に投与することができる。
【0060】
例えば、式(I)の化合物の治療有効量は、約1mg/kg~約1000mg/kg、約5mg/kg~約950mg/kg、約10mg/kg~約900mg/kg、約15mg/kg~約850mg/kg、約20mg/kg~約800mg/kg、約25mg/kg~約750mg/kg、約30mg/kg~約700mg/kg、約35mg/kg~約650mg/kg、約40mg/kg~約600mg/kg、約45mg/kg~約550mg/kg、約50mg/kg~約500mg/kg、約55mg/kg~約450mg/kg、約60mg/kg~約400mg/kg、約65mg/kg~約350mg/kg、約70mg/kg~約300mg/kg、約75mg/kg~約250mg/kg、約80mg/kg~約200mg/kg、約85mg/kg~約150mg/kg、および約90mg/kg~約100mg/kgであり得る。
【0061】
医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含むことができる。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、無毒性で不活性な固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料または任意の種類の製剤補助剤を意味する。薬学的に許容される担体として役目を果たすことができる材料のいくつかの例は、糖、例えば、これらに限定されないが、ラクトース、グルコース、およびスクロース;デンプン、例えば、これらに限定されないが、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、これらに限定されないが、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、これらに限定されないが、ココアバターおよび坐薬ワックス;油、例えば、これらに限定されないが、ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油;グリコール、例えばプロピレングリコール;エステル、例えばこれらに限定されないが、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、これらに限定されないが、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール、ならびにリン酸緩衝溶液であり、他の無毒性の相溶性滑沢剤、例えば、これらに限定されないが、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、防腐剤および抗酸化剤も、製剤者の判断に従って組成物中に存在することができる。
【0062】
したがって、化合物およびその生理学的に許容される塩および溶媒和物は、例えば、固体投与、点眼、油性の局所製剤、注射、吸入(口または鼻からのいずれか)、インプラント、または経口、頬側、非経口、もしくは直腸投与による投与のために製剤化され得る。技術および製法は、一般に"Remington's Pharmaceutical Sciences", (Meade Publishing Co., Easton, Pa.)に記載されている。治療用組成物は、通常、製造および保管の条件下で無菌で安定でなければならない。
【0063】
開示化合物が投与される経路、および組成物の形態が、使用される担体の種類を決定付ける。組成物は、例えば、全身投与(例えば、経口、直腸、経鼻、舌下、頬側、インプラント、または非経口)または局所投与(例えば、経皮、肺、経鼻、耳、眼球、リポソーム送達系、またはイオントフォレーシス)に適した様々な形態であり得る。
【0064】
全身投与用の担体は、典型的には、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、着色料、香味料、甘味料、抗酸化剤、防腐剤、流動促進剤、溶媒、懸濁化剤、湿潤剤、界面活性剤、それらの組合せ、およびその他のうちの少なくとも1つを含む。すべての担体は組成物において任意選択である。
【0065】
適切な希釈剤は、糖、例えばグルコース、ラクトース、デキストロース、およびスクロース;ジオール、例えばプロピレングリコール;炭酸カルシウム;炭酸ナトリウム;糖アルコール、例えばグリセリン;マンニトール;およびソルビトールを含む。全身用または局所用組成物中の希釈剤の量は、典型的には約50~約90%である。
【0066】
適切な滑沢剤は、シリカ、タルク、ステアリン酸およびそのマグネシウム塩とカルシウム塩、硫酸カルシウム、ならびに液体の滑沢剤、例えばポリエチレングリコールおよびピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびカカオ属(theobroma)の油などの植物油を含む。全身用または局所用組成物中の滑沢剤の量は、典型的には約5~約10%である。
【0067】
適切な結合剤は、ポリビニルピロリドン;ケイ酸マグネシウムアルミニウム;デンプン、例えばトウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;ゼラチン;トラガカント;ならびにセルロースとその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。全身用組成物中の結合剤の量は、典型的には約5~約50%である。
【0068】
適切な崩壊剤は、寒天、アルギン酸およびそのナトリウム塩、発泡性混合物、クロスカルメロース、クロスポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、粘土、およびイオン交換樹脂を含む。全身用または局所用組成物中の崩壊剤の量は、典型的には約0.1~約10%である。
【0069】
適切な着色料は、FD&C色素などの着色料を含む。使用するとき、全身用または局所用組成物中の着色料の量は、典型的には約0.005~約0.1%である。
【0070】
適切な香味料は、メントール、ペパーミント、および果実香味料を含む。使用するとき、全身用または局所用組成物中の香味料の量は、典型的には約0.1~約1.0%である。
【0071】
適切な甘味料は、アスパルテームおよびサッカリンを含む。全身用または局所用組成物中の甘味料の量は、典型的には約0.001~約1%である。
【0072】
適切な抗酸化剤は、ブチル化ヒドロキシアニソール(「BHA」)、ブチル化ヒドロキシトルエン(「BHT」)、およびビタミンEを含む。全身用または局所用組成物中の抗酸化剤の量は、典型的には約0.1~約5%である。
【0073】
適切な防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン、および安息香酸ナトリウムを含む。全身用または局所用組成物中の防腐剤の量は、典型的には約0.01~約5%である。
【0074】
適切な流動促進剤は、二酸化ケイ素を含む。全身用または局所用組成物中の流動促進剤の量は、典型的には約1~約5%である。
【0075】
適切な溶媒は、水、等張食塩水、オレイン酸エチル、グリセリン、ヒドロキシル化ヒマシ油、アルコール、例えばエタノール、およびリン酸緩衝溶液を含む。全身用または局所用組成物中の溶媒の量は、典型的には約0~約100%である。
【0076】
適切な懸濁化剤は、AVICEL RC-591(FMC Corporation、Philadelphia、PA)およびアルギン酸ナトリウムを含む。全身用または局所用組成物中の懸濁化剤の量は、典型的には約1~約8%である。
【0077】
適切な界面活性剤は、レシチン、ポリソルベート80、およびラウリル硫酸ナトリウム、およびAtlas Powder Company、Wilmington、DelawareのTWEENSを含む。適切な界面活性剤は、C.T.F.A. Cosmetic Ingredient Handbook, 1992, pp.587-592、Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th Ed. 1975, pp. 335-337、およびMcCutcheon's Volume 1, Emulsifiers & Detergents, 1994, North American Edition, pp. 236-239に開示されているものを含む。全身用または局所用組成物中の界面活性剤の量は、典型的には約0.1%~約5%である。
【0078】
全身用組成物中の成分の量は、調製される全身用組成物の種類に応じて異なり得るが、一般に、全身用組成物は、0.01%~50%の活性物質[例えば、式(I)の化合物]および50%~99.99%の1つまたは複数の担体を含む。非経口投与用の組成物は、典型的には0.1%~10%の活性および90%~99.9%の、希釈剤および溶媒を含む担体を含む。
【0079】
経口投与用の組成物は、様々な剤形を有することができる。例えば、固体形態は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、および原末(bulk powder)を含む。これらの経口剤形は、安全で有効な量、通常少なくとも約5%、より具体的には約25%~約50%の活性物質を含む。経口投与組成物は、約50%~約95%の担体を含み、より具体的には約50%~約75%の担体を含む。
【0080】
錠剤は、圧縮、粉薬錠剤化(tablet triturate)、腸溶コーティング、糖衣コーティング、フィルムコーティング、または多重圧縮することができる。錠剤は、典型的には、活性成分と、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、着色料、香味料、甘味料、流動促進剤、およびそれらの組合せから選択される成分を含む担体とを含む。具体的な希釈剤は、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、マンニトール、ラクトース、およびセルロースを含む。具体的な結合剤は、デンプン、ゼラチン、およびスクロースを含む。具体的な崩壊剤は、アルギン酸およびクロスカルメロースを含む。具体的な滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、およびタルクを含む。具体的な着色料は、FD&C色素であり、外観のために加えることができる。チュアブル剤は、好ましくは、アスパルテームおよびサッカリンなどの甘味料、またはメントール、ペパーミント、果実香味料、もしくはそれらの組合せなどの香味料を含む。
【0081】
カプセル剤(インプラント、時間放出型(time release)製剤および徐放性製剤を含む)は、典型的には、ゼラチンを含むカプセル中に活性化合物[例えば、式(I)の化合物]と、1つまたは複数の上記で開示された希釈剤を含む担体とを含む。顆粒剤は、典型的には、開示化合物と、好ましくは流動特性を改善するための二酸化ケイ素などの流動促進剤とを含む。インプラントは、生分解性タイプまたは非生分解性タイプであり得る。
【0082】
経口組成物用担体の成分の選択は、味、費用、および保存安定性などの二次的な考慮事項に左右されるが、これらは本発明の目的にとっては重要ではない。
【0083】
固体組成物は、典型的にはpHまたは時間依存性コーティングにより、開示化合物が、所望の適用の近傍で、または所望の作用が延長するように様々な箇所および時間で胃腸管内で放出されるように、従来の方法によりコーティングすることができる。コーティングは、典型的には、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、エチルセルロース、EUDRAGITコーティング(Rohm&Haas G.M.B.H.、Darmstadt、Germanyから入手可能)、ワックス、およびシェラックからなる群から選択される1つまたは複数の成分を含む。
【0084】
経口投与用の組成物は、液体形態を有することができる。例えば、適切な液体形態は、水溶液、エマルジョン、懸濁液、非発泡性顆粒から復元した溶液、非発泡性顆粒から復元した懸濁液、発泡性顆粒から復元した発泡性調製物、エリキシル剤、チンキ剤、シロップ剤などを含む。液体経口投与組成物は、典型的には、開示化合物および担体、すなわち、希釈剤、着色料、香味料、甘味料、防腐剤、溶媒、懸濁化剤、および界面活性剤から選択される担体を含む。経口液体組成物は、好ましくは着色料、香味料、および甘味料から選択される1つまたは複数の成分を含む。
【0085】
非経口投与の場合、薬剤は、生理学的に許容される希釈剤、例えば、可溶化剤、界面活性剤、分散剤、または乳化剤を含むまたは含まない水、緩衝液、油などに溶解または懸濁することができる。油としては、例えば、限定するものではないが、オリーブ油、ピーナッツ油、綿実油、ダイズ油、ヒマシ油、およびゴマ油を使用することができる。より一般的に述べると、非経口投与の場合、薬剤は、水性、脂質性、油性または他の種類の溶液または懸濁液の形態であってもよく、さらにはリポソームまたはナノ懸濁液の形態で投与することができる。
【0086】
本明細書で使用される「非経口的」という用語は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下、および関節内注射および注入を含む投与様式を指す。
【0087】
対象化合物の全身送達を達成するのに有用な他の組成物は、舌下剤形、頬側剤形、および経鼻剤形を含む。このような組成物は、典型的には、可溶性充填剤物質、例えばスクロース、ソルビトール、およびマンニトールを含む希釈剤;ならびに結合剤、例えばアカシア、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースのうちの1つまたは複数を含む。このような組成物は、滑沢剤、着色料、香味料、甘味料、抗酸化剤、および流動促進剤をさらに含むことができる。
【0088】
本発明の医薬組成物は、噴霧器、乾燥粉末吸入器、または定量吸入器の使用を通じて、鼻エアロゾルまたは吸入により投与することもできる。このような組成物は、医薬製剤の技術分野でよく知られている技術に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の適切な防腐剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、ハイドロフルオロカーボン、および/または他の従来の溶解補助剤または分散剤を用いて、生理食塩水中の溶液として調製することができる。
【0089】
医薬組成物が相当な圧力下でエアロゾルとして送達される場合には、エアロゾル噴射剤が必要となる。このような噴射剤は、例えば、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、およびトリクロロモノフルオロメタンなどの許容されるフルオロクロロ炭化水素;窒素;またはブタン、プロパン、イソブタン、もしくはそれらの混合物などの揮発性炭化水素を含む。
【0090】
開示化合物は、局所的に投与することができる。皮膚に局所的に適用することができる局所用組成物は、固体、溶液、油、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、シャンプー、リーブオンおよびリンスアウト毛髪コンディショナー、ミルク、クレンザー、保湿剤、スプレー、皮膚パッチを含む任意の形態であり得る。局所用組成物は、開示化合物(例えば、式(I)の化合物)および担体を含む。局所用組成物の担体は、好ましくは、化合物の皮膚への浸透を助ける。担体は、1つまたは複数の任意選択の成分をさらに含んでもよい。
【0091】
開示化合物と共に用いられる担体の量は、医薬の単位用量あたりの投与に実用的な量の組成物を提供するのに十分である。本発明の方法において有用な剤形を製造するための技術および組成物は、以下の参考文献に記載されている:Modern Pharmaceutics, Chapters 9 and 10, Banker & Rhodes, eds. (1979)、Lieberman et al., Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets (1981)、およびAnsel, Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 2nd Ed., (1976)。
【0092】
担体は、単一の成分または2つ以上の成分の組合せを含むことができる。局所用組成物では、担体は、局所用担体を含む。適切な局所用担体は、リン酸緩衝生理食塩水、等張水、脱イオン水、単官能性アルコール、対称性アルコール、アロエベラゲル、アラントイン、グリセリン、ビタミンAおよびE油、鉱油、プロピレングリコール、プロピオン酸PPG-2ミリスチル、ジメチルイソソルビド、ヒマシ油、それらの組合せなどから選択される1つまたは複数の成分を含む。より具体的には、皮膚適用用の担体は、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビド、および水を含み、さらに具体的には、リン酸緩衝生理食塩水、等張水、脱イオン水、単官能性アルコール、および対称性アルコールを含む。
【0093】
局所用組成物の担体は、皮膚軟化薬、噴射剤、溶媒、保水剤、増粘剤、粉末、香料、顔料、および防腐剤から選択される1つまたは複数の成分をさらに含んでもよいが、これらのすべては任意選択である。
【0094】
適切な皮膚軟化薬は、ステアリルアルコール、グリセリルモノリシノレート、モノステアリン酸グリセリン、プロパン-1,2-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ミンク油、セチルアルコール、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸、パルミチン酸イソブチル、ステアリン酸イソセチル、オレイルアルコール、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オクタデカン-2-オール、イソセチルアルコール、パルミチン酸セチル、セバシン酸ジ-n-ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ラノリン、ゴマ油、ココナツ油、ラッカセイ油、ヒマシ油、アセチル化ラノリンアルコール、石油、鉱油、ミリスチン酸ブチル、イソステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸イソプロピル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル、およびそれらの組合せを含む。具体的な皮膚用皮膚軟化薬は、ステアリルアルコールおよびポリジメチルシロキサンを含む。皮膚を基本とする局所用組成物中の皮膚軟化薬の量は、典型的には約5%~約95%である。
【0095】
適切な噴射剤は、プロパン、ブタン、イソブタン、ジメチルエーテル、二酸化炭素、亜酸化窒素、およびそれらの組合せを含む。局所用組成物中の噴射剤の量は、典型的には約0%~約95%である。
【0096】
適切な溶媒は、水、エチルアルコール、塩化メチレン、イソプロパノール、ヒマシ油、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、およびそれらの組合せを含む。具体的な溶媒は、エチルアルコールおよびホモトピック(homotopic)アルコールを含む。局所用組成物中の溶媒の量は、典型的には約0%~約95%である。
【0097】
適切な保水剤は、グリセリン、ソルビトール、2-ピロリドン-5-カルボン酸ナトリウム、可溶性コラーゲン、フタル酸ジブチル、ゼラチン、およびそれらの組合せを含む。具体的な保水剤は、グリセリンを含む。局所用組成物中の保水剤の量は、典型的には0%~95%である。
【0098】
局所用組成物中の増粘剤の量は、典型的には約0%~約95%である。
【0099】
適切な粉末は、ベータ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、チョーク(chalk)、タルク、フラー土(fullers earth)、カオリン、デンプン、ガム、コロイド状二酸化ケイ素、ポリアクリル酸ナトリウム、テトラアルキルアンモニウムスメクタイト、トリアルキルアリールアンモニウムスメクタイト、化学変性ケイ酸アルミニウムマグネシウム、有機変性モンモリロナイト粘土、水和ケイ酸アルミニウム、ヒュームドシリカ、カルボキシビニルポリマー、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、モノステアリン酸エチレングリコール、およびそれらの組合せを含む。局所用組成物中の粉末の量は、典型的には0%~95%である。
【0100】
局所用組成物中の香料の量は、典型的には約0%~約0.5%、特に約0.001%~約0.1%である。
【0101】
適切なpH調整添加剤は、局所用医薬組成物のpHを調整するのに十分な量のHClまたはNaOHを含む。
【0102】
4.治療の方法
A.疾患および障害
NO合成酵素には3つのアイソフォームが存在し、2つのクラスに分類され、生理学的機能および分子特性が異なる。構成型NO合成酵素として知られる第1のクラスは、内皮型NO合成酵素および神経型NO合成酵素を含む。両方のアイソザイムが様々な種類の細胞で構成的に発現しているが、血管壁の内皮細胞(したがって内皮型NO合成酵素、eNOS、またはNOS-IIIと呼ばれる)および神経細胞(したがって神経型NO合成酵素、nNOSまたはNOS-Iと呼ばれる)で最も顕著である。
【0103】
構成型アイソフォームとは対照的に、第2のクラスの唯一の構成員である誘導型NO合成酵素(iNOS、NOS-II)の活性化は、iNOSプロモーターの転写活性化により行われる。例えば、炎症誘発性刺激は、細胞内Ca2+濃度の上昇なしで触媒活性を示す誘導型NO合成酵素の遺伝子の転写を引き起こす。誘導型NO合成酵素の半減期が長く、酵素の活性が制御されないため、高いマイクロモル濃度のNOが長時間にわたり生成される。これらの高いNO濃度は、単独で、または他の反応性ラジカルと協力して、細胞毒性を示す。したがって、微生物感染の状況では、iNOSは、初期の非特異的免疫応答において、マクロファージおよび他の免疫細胞による細胞死滅に関与している。
【0104】
NOSの3つのアイソフォーム(神経型、上皮型、および誘導型またはiNOS)の中で、iNOSは、マクロファージなどの免疫細胞に発現しており、それはミクログリアで報告されている唯一のNOSの形態である(Sierra et al., PLoS One 9, e106048)。ミクログリアの活性化はiNOSの発現を誘導し、次にそれが細胞毒性をもたらす大量のNOを産生する。
【0105】
多くの炎症誘発性サイトカインおよび内毒素(細菌のリポ多糖、LPS)も、マクロファージ、血管平滑筋細胞、上皮細胞、線維芽細胞、グリア細胞、心筋細胞、ならびに血管平滑筋細胞および非血管平滑筋細胞を含む多くの細胞でiNOSの発現を誘導する。炎症において、単球/マクロファージはiNOSの主な供給源であるが、LPSおよび他のサイトカインは、同様の応答をアストロサイトおよびミクログリアで誘導する。
【0106】
特に誘導型NO合成酵素の高発現とそれに付随する高NOにより特徴付けられる病態生理学的状況は多くある。これらの高いNO濃度は、単独で、または他のラジカル種と組み合わさって、組織および臓器の損傷を引き起こし、これらの病態生理に因果的に関与していることが示されている。炎症は、誘導型NO合成酵素を含む炎症誘発性酵素の発現により特徴付けられるため、誘導型NO合成酵素の選択的阻害剤を、急性および慢性の炎症過程が関与する疾患の治療薬として使用することができる。誘導型NO合成酵素からの高NO産生を伴う他の病態生理は、いくつかの形態のショック(例えば、敗血症性ショック、出血性ショック、およびサイトカイン誘導性ショック)である。
【0107】
現在、iNOSが様々な疾患の病態形成において重要な役割を果たしているという十分な証拠がある。さらに、過剰なNO産生が、敗血症性ショックおよび毒素ショックなどの全身性低血圧に関与する障害を含むいくつかの障害、ならびに特定のサイトカインを用いた療法に関与している。様々な病因による循環性ショックは、体内のNOホメオスタシスの大規模な変化に関連している。内毒素ショックの動物モデルでは、内毒素は初期段階で一酸化窒素合成酵素の構成型アイソフォームからのNOの急性放出を引き起こし、続いてiNOSが誘導される。マクロファージ、ミクログリア、およびアストロサイトに由来するNOは、多発性硬化症などの脱髄障害における、ミエリン産生オリゴデンドロサイトの損傷、および脳外傷を含む神経変性状態における神経細胞死に関与している。
【0108】
脳の主要なグリア成分であるアストロサイトも、細菌のリポ多糖(LPS)と、インターロイキン-1β(IL-1β)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、およびインターフェロン-γ(IFN-γ)を含む一連の炎症誘発性サイトカインに応答してiNOSを誘導することが示されている。
【0109】
細胞外シグナル伝達に関連するサイトカインは、感染および損傷に対する宿主防御の正常な過程、自己免疫機構、および慢性炎症性疾患の病態形成に関与している。一酸化窒素合成酵素(NOS)により合成される一酸化窒素(NO)が、サイトカインの有害作用を媒介すると考えられている。例えば、サイトカイン(例えば、TNF-α、IL-1、およびインターロイキン-6(IL-6))による刺激の結果としてのNOは、多発性硬化症、関節リウマチ、および変形性関節症などの自己免疫疾患に関与している。iNOSにより産生されるNOは、マクロファージの殺菌特性に関連している。近年、一連の炎症誘発性サイトカイン、例えば、IL-1、TNF-α、インターフェロン-γ(IFN-γ)、および細菌のリポ多糖(LPS)に応答してiNOSを誘導することが示されている細胞の数が増えている(筋肉細胞、マクロファージ、ケラチノサイト、肝細胞、および脳細胞など)。
【0110】
iNOSにより生成されるNOは、炎症性疾患の病態形成に関与している。LPSまたはTNF-αにより誘導された動物の低血圧は、NOS阻害剤により逆転することができ、L-アルギニンにより再び起こることが実験で実証されている。サイトカイン誘導性低血圧を引き起こす条件は、敗血症性ショック、血液透析、およびがん患者におけるIL-2療法を含む。動物モデルでの研究は、炎症および疼痛の病態形成におけるNOの役割を示唆しており、NOS阻害剤は、炎症性腸疾患、脳虚血、および関節炎のモデルで見られる炎症および組織変化のいくつかの側面に対して有益な作用を有することが示されている。
【0111】
iNOS活性により生成されるNOは、皮膚炎、乾癬、ぶどう膜炎、1型糖尿病、敗血症性ショック、疼痛、片頭痛、関節リウマチ、変形性関節症、炎症性腸疾患、喘息、免疫複合体病、多発性硬化症、虚血性脳浮腫、毒素性ショック症候群、心不全、潰瘍性大腸炎、アテローム性動脈硬化症、糸球体腎炎、パジェット病および骨粗鬆症、ウイルス感染の炎症性後遺症、網膜炎、酸化剤誘導性肺損傷、湿疹、急性同種移植片拒絶反応、ならびにNOを産生する侵入性微生物により引き起こされる感染症を含む様々な疾患および状態に関与している。
【0112】
敗血症性ショックのインビボ動物モデルにおいて、NOスカベンジャーまたは誘導型NO合成酵素の阻害により循環血漿NOレベルを低下させると、全身血圧が回復し、臓器損傷が軽減し、生存期間が延びることが示されている(deAngelo, Exp. Opin. Pharmacother. 19-29, 1999、Redl et al., Shock 8, Suppl. 51, 1997、Strand et al., Crit. Care Med. 26, 1490-1499, 1998)。敗血症性ショック時のNO産生の増加が、心機能抑制(cardiac depression)および心筋機能不全の一因となることも示されている(Sun et al. J. Mal., Cell Cardiol. 30, 989-997, 1998)。NO合成酵素阻害剤の存在下で、閉塞後の左前方冠動脈の梗塞面積が減少したことを示す報告もある(Wang et al. Am. J., Hypertens. 12, 174-182, 1999)。ヒトの心筋症および心筋炎では、かなりの誘導型NO合成酵素活性が見られ、NOがこれらの病態形成において拡張および収縮力低下の少なくとも部分的な原因であるという仮説を支持している(de Seider et al., Br. Heart. J. 4, 426-430, 1995)。
【0113】
急性または慢性炎症の動物モデルにおいて、誘導型NO合成酵素をアイソフォーム選択的もしくは非選択的阻害剤または遺伝子ノックアウトにより遮断すると、治療結果が改善する。実験的関節炎(Connor et al., Eur. J. Pharmacol. 273, 15-24, 1995)および変形性関節症(Pelletier et al., Arthritis & Rheum. 41, 1275-1286, 1998)、実験的胃腸管炎症(Zingarelli et al., Gut 45, 199-209, 1999)、実験的糸球体腎炎(Narita et al., Lab. Invest. 72, 17-24, 1995)、実験的糖尿病(Corbett et al., PNAS 90, 8992-8995, 1993)、およびリポ多糖誘導性実験的肺損傷が、誘導型NO合成酵素の阻害またはiNOSノックアウトマウスにおいて軽減することが報告されている(Kristof et al., Am. J. Crit. Care. Med. 158, 1883-1889, 1998)。誘導型NO合成酵素由来のNOまたはO2-の病態生理学的役割は、喘息、気管支炎、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの慢性炎症性疾患においても議論されている。
【0114】
中枢神経系の神経変性疾患、例えばMPTP誘導性パーキンソニズム(MPTP=1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン)、アミロイドペプチド誘導性アルツハイマー病(Ishii et al., FASEB J. 14, 1485-1489, 2000)、マロネート誘導性ハンチントン病(Connop et al., Neuropharmacol. 35, 459-465, 1996)、実験的髄膜炎(Korytko & Boje, Neuropharmacol. 35, 231-237, 1996)、および実験的脳炎(Parkinson et al., J. Mal. Med.75, 174-186, 1997)のモデルにおいて、NOおよび誘導型NO合成酵素が原因となることが示されている。
【0115】
他の研究では、一酸化窒素が、多発性硬化症の特徴であるミクログリア依存性の原発性脱髄の潜在的メディエーターとして関連づけられている(Parkinson et al., J. Mal. Med. 75, 174-186, 1997)。
【0116】
誘導型NO合成酵素の発現と同時に起こる炎症反応は、脳虚血および再灌流時でも起こる(Iadecola et al., Stroke 27, 1373-1380, 1996)。その結果生じるNOは、浸潤好中球からの超酸化物と共に、細胞および臓器損傷の原因となると考えられている。
【0117】
その誘導型NO合成酵素阻害特性により、本発明による化合物は、誘導型NO合成酵素の活性の増加に起因する過剰なNOが関与している人間医学および獣医学において用いることができる。特に、それは以下の炎症性疾患、障害、または状態の治療および予防に限定なしに使用することができる。
【0118】
急性炎症性疾患:敗血症性ショック、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、出血性ショック、サイトカイン療法(インターロイキン-2、腫瘍壊死因子、免疫チェックポイント阻害)により誘導されるショック状態、臓器移植および移植片拒絶反応、頭部外傷、急性肺損傷、急性呼吸促拍症候群(ARDS)、日焼けなどの炎症性皮膚状態、ぶどう膜炎、緑内障、および結膜炎などの炎症性の眼の状態。
【0119】
慢性炎症性疾患、特に末梢臓器およびCNSの慢性炎症性疾患:クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎などの胃腸炎症性疾患、喘息、慢性気管支炎、肺気腫、およびCOPDなどの肺炎症性疾患、アレルギー性鼻炎およびアレルギー性副鼻腔炎などの上気道の炎症性疾患、アレルギー性結膜炎などの炎症性の眼の状態、関節リウマチ、変形性関節症、痛風性関節炎などの関節障害、心筋症および心筋炎などの心臓障害、アテローム性動脈硬化症、神経原性炎症、乾癬、掻痒、皮膚炎、および湿疹などの皮膚疾患、糖尿病、糸球体腎炎;パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症;結節性多発動脈炎、血清病、ウェゲナー肉芽腫症、川崎症候群などの壊死性血管炎;片頭痛、慢性緊張型頭痛、群発頭痛、および血管性頭痛などの頭痛;過活動膀胱および膀胱炎などの泌尿器系障害;ならびに心筋および脳虚血/再灌流傷害。
【0120】
次を含む呼吸器の疾患または状態:アレルゲン誘導性喘息、運動誘導性喘息、公害誘導性喘息、低温誘導性喘息、およびウイルス誘導性喘息を含む喘息状態;気流が正常な慢性気管支炎、気道が閉塞した慢性気管支炎(慢性閉塞性気管支炎)、肺気腫、喘息性気管支炎、および水疱性疾患を含む慢性閉塞性肺疾患;ならびに炎症を伴う他の肺疾患、例えば気管支拡張症(bronchioectasis)、嚢胞性線維症、ハト飼育者疾患(pigeon fancier's disease)、農夫肺、急性呼吸促拍症候群、肺炎、吸引または吸入傷害、肺における脂肪塞栓症、肺のアシドーシス炎症(acidosis inflammation of the lung)、急性肺水腫、急性高山病、急性肺高血圧症、新生児遷延性肺高血圧症、周産期吸引症候群(perinatal aspiration syndrome)、硝子膜症、急性肺血栓塞栓症、ヘパリン-プロタミン反応、敗血症、喘息発作重積状態、および低酸素症。
【0121】
炎症性疼痛、眼痛などの疼痛症候群、外科的鎮痛、または発熱の治療のための解熱薬としての疼痛、心臓手術後を含む様々な外科処置の術後疼痛、歯痛/抜歯、がんから生じる疼痛、筋肉痛、乳房痛、皮膚損傷から生じる疼痛、腰痛、片頭痛を含む様々な病因による頭痛など、接触性アロディニアおよび痛覚過敏などの疼痛関連障害。
【0122】
典型的には、過剰な炎症性シグナル伝達に関連している、インスリン抵抗性および他の代謝障害、例えばアテローム性動脈硬化症。
【0123】
関節リウマチ、脊椎関節症、痛風性関節炎、変形性関節症、全身性エリテマトーデス、若年性関節炎、急性リウマチ性関節炎、腸炎性関節炎、神経障害性関節炎、乾癬性関節炎、および化膿性関節炎を含むがこれらに限定されない関節炎。
【0124】
骨粗鬆症および他の関連骨障害。
【0125】
逆流性食道炎、下痢、炎症性腸疾患、クローン病、胃炎、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、セリアック病、胃炎、膵炎、直腸炎、肝炎、憩室炎、および熱帯性スプルーなどの胃腸状態。
【0126】
ウイルス感染および嚢胞性線維症に関連するものなどの肺炎症。
【0127】
皮膚炎(dermatitis)、アトピー性皮膚炎、発疹、掻痒、強直性脊椎炎、湿疹、ざ瘡、フケ、蜂巣炎、乾癬、酒さ、蕁麻疹、帯状疱疹、エリテマトーデス、扁平苔癬、皮膚炎(dermatitides)、血管炎、水疱性疾患、および白斑などの皮膚科学的疾患または状態。
【0128】
血管疾患、片頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、強皮症、リウマチ熱、I型糖尿病、重症筋無力症などの神経筋接合部疾患、多発性硬化症を含む白質疾患、サルコイドーシス、腎炎、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、多発性筋炎、歯肉炎、歯周炎、過敏症、損傷後に生じる腫脹、心筋虚血、心血管虚血、および心停止に続発する虚血を含む虚血などの疾患における組織損傷。
【0129】
脳卒中から生じる中枢神経系損傷、脳虚血(局所虚血、血栓性脳卒中、および全体的虚血(例えば、心停止に続発する)の両方)を含む虚血、および外傷などの中枢神経系障害。
【0130】
多種多様な薬剤;TNF、IL-1およびIL-2などのサイトカインを用いた療法により誘導される敗血症性ショックおよび/または毒素性出血性ショックに関連する全身性低血圧。
【0131】
大腸がん、ならびに乳房、肺、前立腺、膀胱、子宮頸部、および皮膚のがんなどの、一酸化窒素合成酵素を発現しているがん、新生物、例えば、これらに限定されないが、脳がん、骨がん、白血病、リンパ腫、基底細胞癌などの上皮細胞由来新生物(上皮癌)、腺癌、口唇がん、口腔がん、食道がん、小腸がんおよび胃がんなどの胃腸がん、結腸がん、肝臓がん、膀胱がん、膵臓がん、卵巣がん、子宮頸がん、肺がん、乳がん、ならびに扁平上皮がんおよび基底細胞がんなどの皮膚がん、前立腺がん、腎細胞癌、ならびに全身の上皮細胞に影響を与える他の既知のがん。
【0132】
緑内障、網膜神経節変性、眼の虚血、網膜炎、網膜症、ぶどう膜炎、眼の羞明などの眼疾患、ならびに眼組織に対する急性損傷に関連する炎症および疼痛、緑内障性網膜症および/または糖尿病性網膜症、白内障手術および屈折矯正手術などの眼科手術からの術後の炎症または疼痛。
【0133】
本発明は、それを必要とする、ヒトを含む哺乳動物において上述の疾患のうちの1つを治療または予防する方法であって、治療有効量の本発明による化合物の少なくとも1つを投与することを含む方法にさらに関する。
【0134】
特に、本発明は、それを必要とする、ヒトを含む哺乳動物において、誘導型一酸化窒素合成酵素の阻害により軽減される疾患を治療または予防する方法であって、治療有効量の本発明による化合物の少なくとも1つを投与することを含む方法にさらに関する。
【0135】
特に、本発明は、それを必要とする、ヒトを含む哺乳動物において急性または慢性炎症性疾患、特に敗血症、敗血症性ショック、全身性炎症反応症候群、出血性ショック、サイトカイン療法により誘導されるショック状態、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、心筋症、または心筋炎を治療または予防する方法であって、治療有効量の本発明による化合物の少なくとも1つを投与することを含む方法にさらに関する。
【0136】
本発明の化合物は、κ-オピオイド受容体(KOR)に結合し、これを活性化することができる。理論に拘泥されるものではないが、本発明の化合物は、KORの活性化によりNO産生を阻害し、その結果iNOSの発現を低下させることができる。オピオイド受容体アゴニストであるビファリン(biphalin)は、二量体エンケファリンであるが、LPSで処理した初代ミクログリア細胞において、IL-1β、IL-18、COX-2、およびNLRP3などの炎症誘発性因子に加えて、iNOSの発現を低下させた(Popiolek-Barczyk et al. Neural Plast. 2017, 3829472)。この転写作用は、p-NF-κB、p-IκB、p-p38MAPK、およびTRIFのレベルの低下により媒介され、オピオイド受容体アンタゴニストであるナロキソンにより逆転させることが可能であった。選択的KORアゴニストであるサルビノリンA(SA)が、様々な炎症誘発性および抗炎症性サイトカインを産生し放出して免疫応答を調節するマクロファージである、リポ多糖(LPS)で活性化した肺胞マクロファージ(AM)において、iNOSおよびCOX-2発現を阻害することが観察されている。SA処理は、LPS処理の2時間以内にNO産生を減少させた(Zeng et al., Transl Perioper Pain Med, 2020, 7(3), 225-233)。この知見と一致して、KORアゴニストが、NOの安定な代謝物である亜硝酸レベルを下方制御することが観察され、NO産生の減少を示した。したがって、iNOS/NO経路を優先的に標的とするKORアゴニストの使用は、NOにより誘導されるまたは悪化する疾患または障害を治療することができる。
【0137】
本発明の一態様は、対象において炎症性疾患または障害を治療する方法であって、治療有効量のE1~E13のいずれかに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0138】
本発明の別の態様は、対象において誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)を阻害する方法であって、対象においてiNOSを阻害するのに有効な量のE1~E13のいずれかに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0139】
本発明の別の態様は、対象においてκ-オピオイド受容体(KOR)を活性化する方法であって、対象においてKORを活性化するのに有効な量のE1~E13のいずれかに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0140】
本発明の別の態様は、炎症性疾患または障害を治療するための医薬の製造における、E1~E13のいずれかに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0141】
本発明の別の態様は、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)を阻害するための医薬の製造における、E1~E13のいずれかに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0142】
本発明の別の態様は、κ-オピオイド受容体(KOR)を活性化するための医薬の製造における、E1~E13のいずれかに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0143】
B.併用療法
追加の治療剤を、開示化合物および組成物と同時にまたは連続して投与することができる。連続投与は、開示化合物および組成物の前または後に投与することを含む。いくつかの実施形態では、追加の治療剤または薬剤は、開示化合物と同じ組成物で投与することができる。他の実施形態では、追加の治療剤と開示化合物の投与の間に時間間隔があり得る。いくつかの実施形態では、追加の治療剤と開示化合物の投与は、他の治療剤の用量を低くすること、および/または間隔を空けて投与することができる。1つまたは複数の他の活性成分と併用して使用するとき、本発明の化合物および他の活性成分は、それぞれを単独で使用するときよりも低い用量で使用することができる。したがって、本発明の医薬組成物は、式(I)~(III)のいずれか1つの化合物に加えて、1つまたは複数の他の活性成分を含む医薬組成物を含む。
【0144】
可能な併用療法の具体的で非限定的な例は、本発明の化合物と、a)ジプロピオン酸ベタメタゾン(増強型および非増強型)、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、二酢酸ジフロラゾン、プロピオン酸ハロベタソール、アムシノニド、デキソシメタゾン(dexosimethasone)、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ハルシノニド、クロコルタロンピバレート(clocortalone pivalate)、デスオキシメタゾン、およびフルランドレノリドを含むコルチコステロイド;b)ジクロフェナク、ケトプロフェン、およびピロキシカムを含む非ステロイド性抗炎症薬;c)シクロベンザプリン、バクロフェン、シクロベンザプリン/リドカイン、バクロフェン/シクロベンザプリン、およびシクロベンザプリン/リドカイン/ケトプロフェンを含む筋弛緩薬および他の薬剤とのその組合せ;d)リドカイン、リドカイン/デオキシ-D-グルコース(抗ウイルス性)、プリロカイン、およびEMLAクリーム[局所麻酔薬の共融混合物(リドカイン2.5%およびプリロカイン2.5%;油相がリドカインとプリロカインの重量比1:1の共融混合物であるエマルジョン。この共融混合物は、室温未満の融点を有し、したがって、両方の局所麻酔薬が結晶としてではなく、液体の油として存在する)]を含む麻酔薬および他の薬剤とのその組合せ;e)グアイフェネシンおよびグアイフェネシン/ケトプロフェン/シクロベンザプリンを含む去痰薬および他の薬剤とのその組合せ;f)三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン、ドキセピン、デシプラミン、イミプラミン、アモキサピン、クロミプラミン、ノルトリプチリン、およびプロトリプチリン)、選択的セロトニン/ノルエピネフリン再取込み阻害剤(例えば、デュロキセチンおよびミルタザピン)、および選択的ノルエピネフリン再取込み阻害剤(例えば、ニソキセチン、マプロチリン、およびレボキセチン)、選択的セロトニン再取込み阻害剤(例えば、フルオキセチンおよびフルボキサミン)を含む抗うつ薬;g)ガバペンチン、カルバマゼピン、フェルバメート、ラモトリギン、トピラマート、チアガビン、オクスカルバゼピン、カルバメジピン(carbamezipine)、ゾニサミド、メキシレチン、ガバペンチン/クロニジン、ガバペンチン/カルバマゼピン、およびカルバマゼピン/シクロベンザプリンを含む抗けいれん薬およびその組合せ;h)クロニジンを含む降圧薬;i)ロペラミド、トラマドール、モルヒネ、フェンタニル、オキシコドン、レボルファノール、およびブトルファノールを含むオピオイド;j)メントール、ウィンターグリーン、樟脳の油、ユーカリ油、およびテレビン油を含む局所反対刺激剤;k)選択的および非選択的CB1/CB2リガンドを含む局所カンナビノイド;およびカプサイシンなどの他の薬剤の使用を含む。
【0145】
本化合物は、ステロイド、NSAIDs、COX-2選択的阻害剤、5-リポキシゲナーゼ阻害剤、LTB4アンタゴニスト、およびLTA4加水分解酵素阻害剤と共になど、他の従来の抗炎症療法の代わりに、部分的にまたは完全に共同療法において使用することもできる。対象発明の化合物は、抗菌剤または抗ウイルス剤と治療的に併用するとき、組織損傷を予防するために使用することもできる。
【0146】
開示化合物は、その化合物[例えば、1つまたは複数の式(I)の化合物]、上述の全身用もしくは局所用組成物、またはその両方;およびキットの使用が哺乳動物(特にヒト)の病状の治療を提供するという情報、使用説明書、またはその両方を含むキットに含むことができる。情報および使用説明書は、言葉、絵、または両方の形態であり得る。追加的または代替的に、キットは、医薬、組成物、またはその両方;および好ましくは哺乳動物(例えば、ヒト)における病状を治療または予防する利益を有する医薬または組成物の適用の方法に関する情報、使用説明書、またはその両方を含み得る。
【0147】
本発明の化合物およびプロセスは、本発明の範囲を例示するものであって限定するものではないことが意図される以下の実施例を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
【0148】
5.実施例
A.化合物の合成
式(I)の化合物は、合成プロセスまたは代謝プロセスにより調製することができる。代謝プロセスによる化合物の調製は、ヒトもしくは動物の体内(インビボ)で起こるプロセス、またはインビトロで起こるプロセスを含む。
【0149】
化合物および中間体は、有機合成の当業者によく知られている方法により単離し、精製することができる。化合物を単離および精製する従来の方法の例は、これらに限定されないが、シリカゲル、アルミナ、またはアルキルシラン基で誘導体化されたシリカなどの固体担体でのクロマトグラフィー、活性炭による任意選択の前処理を伴う高温または低温での再結晶化、薄層クロマトグラフィー、様々な圧力での蒸留、真空下での昇華、およびトリチュレーションを含むことができ、例えば、"Vogel's Textbook of Practical Organic Chemistry", 5th edition (1989), by Furniss, Hannaford, Smith, and Tatchell, pub. Longman Scientific & Technical, Essex CM20 2JE, Englandに記載されている。
【0150】
開示化合物は、少なくとも1個の塩基性窒素を有してもよく、これにより化合物を酸で処理して所望の塩を形成することができる。例えば、化合物は、室温以上で酸と反応させて所望の塩を提供することができ、これを沈殿させ、冷却後にろ過により回収する。この反応に適した酸の例は、酒石酸、乳酸、コハク酸、およびマンデル酸、アトロラクチン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、炭酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸、酢酸、プロピオン酸、サリチル酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、クエン酸、ヒドロキシ酪酸、カンファースルホン酸、リンゴ酸、フェニル酢酸、アスパラギン酸、またはグルタミン酸などを含むが、これらに限定されない。
【0151】
個々のステップにおける最適な反応条件および反応時間は、用いる特定の反応物および使用する反応物に存在する置換基に応じて異なり得る。具体的な手順は、実施例の項で提供する。反応は、例えば、残渣から溶媒を除去することにより従来の方法でワークアップし、当技術分野で一般に知られている方法、例えば、これらに限定されないが、結晶化、蒸留、抽出、トリチュレーション、およびクロマトグラフィーに従ってさらに精製することができる。別段の記載がない限り、出発物質および試薬は、市販されている、または化学文献に記載されている方法を使用して市販の材料から当業者により調製され得る。出発物質は、市販されていない場合、標準的な有機化学技術、既知の構造的に類似した化合物の合成に類似した技術、または上述のスキームもしくは合成例の項に記載の手順に類似した技術から選択される手順により調製することができる。
【0152】
反応条件、試薬、および合成経路の順序の適切な操作、反応条件に適合できない化学官能性の保護、通常の実験方法および方法の反応順序の適切な時点での脱保護を含む定型的な実験が、本発明の範囲に含まれる。適切な保護基およびそのような適切な保護基を使用して異なる置換基を保護および脱保護する方法は、当業者によく知られており、その例は、PGM Wuts and TW Greene, in Greene’s book titled Protective Groups in Organic Synthesis (4th ed.), John Wiley & Sons, NY (2006)に見ることができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の化合物の合成は、本明細書で上述した合成スキームおよび具体例に記載した合成スキームに記載の方法に類似した方法により達成することができる。
【0153】
開示化合物の光学活性体が必要なとき、それは、光学活性出発物質(例えば、適切な反応ステップでの不斉誘導により調製される)を使用して、本明細書に記載の手順のうちの1つを行うこと、または標準的な手順(クロマトグラフィー分離、再結晶化、または酵素的分割など)を使用した化合物もしくは中間体の立体異性体の混合物の分割により得ることができる。
【0154】
同様に、化合物の純粋な幾何異性体が必要なとき、それは、出発物質として純粋な幾何異性体を使用して、上記の手順のうちの1つを行うこと、またはクロマトグラフィー分離などの標準的な手順を使用した化合物もしくは中間体の幾何異性体の混合物の分割により得ることができる。
【0155】
記載された合成スキームおよび具体例は、例示であり、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲を限定するものとして読まれるものではないことが理解できる。合成方法および具体例のすべての代替形態、改変形態、および均等物は、特許請求の範囲内に含まれる。
略語:
t-BuOK カリウムtert-ブトキシド
ClPO(OEt)2 クロロリン酸ジエチル
CNCH2CO2Et イソシアノ酢酸エチル
eq 当量
EtOAc 酢酸エチル
Et3N トリエチルアミン
h 時間
IPA イソプロピルアルコール
min 分
Pd(OAc)2 酢酸パラジウム
rt 室温
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
【0156】
【0157】
【0158】
(R)-7-ブロモ-5-(2-フルオロフェニル)-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン-2-オンの調製。無水トルエン(2200mL)中の2-アミノ-5-ブロモ-2’-フルオロベンゾフェノン(140.7g、478.4mmol)とトリフルオロ酢酸(73.3mL、956.7mmol)の混合物を室温で30分撹拌して、溶液とした。N-カルボキシ-D-アラニン無水物(66.0g、574.0mmol)を加え、反応混合物を50℃で1時間加熱した。2-アミノ-5-ブロモ-2’-フルオロベンゾフェノンが95%を超えて変換されたことを確認した後(TLC、ヘキサン中50%酢酸エチル)、トリエチルアミン(133.3mL、956.7mmol)を、温度を50℃に維持しながら30分かけて反応混合物に滴下添加した。50℃で2時間後、中間体TFA塩が消費された(TLC、ヘキサン中50%酢酸エチル)。反応混合物を室温に冷却後、溶媒を減圧下で除去し、残渣を酢酸エチル(1500mL)および水(1500mL)に溶解した。得られた二相混合物を分離し、有機層を5%重炭酸ナトリウム水溶液(1500mL)で洗浄し、続いて10%塩化ナトリウム水溶液(1500mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で蒸発させた。10%酢酸エチル/へプタンを残渣に加えて蒸発させ(25mL×2)、残渣をへプタン中10%酢酸エチル(1700mL)で60℃で30分間処理し、未反応の出発物質を溶解させた。反応混合物を室温に冷却し、さらに2時間撹拌した後、生成物をろ過により回収し、へプタン中10%酢酸エチル(50mL×2)で洗浄し、続いてへプタン(50mL×2)で洗浄した。固体を真空下、40℃で乾燥させ、表題化合物をオフホワイトの化合物として得た(127.0g、77.0%):1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 9.69 (s, 1H), 7.63 - 7.59 (m, 1H), 7.59 (dd, J = 8.5, 2.3 Hz, 1H), 7.47 (dddd, J = 8.2, 7.0, 5.0, 1.8 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.26 (td, J = 7.5, 1.1 Hz, 1H), 7.12 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.08 (ddd, J = 10.2, 8.3, 1.1 Hz, 1H), 3.79 (q, J = 6.5 Hz, 1H), 1.78 (d, J = 6.5 Hz, 3H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 172.39 (s), 164.53 (s), 160.45 (d, 1JCF = 251.9 Hz), 136.47 (s), 134.74 (s), 132.19 (d, 3JCF = 8.3 Hz), 132.03 (d, JCF = 1.5 Hz, NOEカップリング), 131.56 (d, 3JCF = 2.2 Hz), 130.15 (s), 127.13 (d, 2JCF = 12.4 Hz), 124.46 (d, 4JCF = 3.6 Hz), 122.98 (s), 116.54 (s), 116.29 (d, 2JCF = 21.5 Hz), 58.85 (s), 16.93 (s); 19F NMR (471 MHz, CDCl3) δ -112.53; HRMS (ESI/IT-TOF): m/z [M + H]+ C16H13BrFN2Oの計算値: 347.0190; 実測値: 347.0181; HPLC純度: 99.2%; 光学純度: 98.8% ee
【0159】
【0160】
【0161】
エチル(R)-8-ブロモ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート。無水テトラヒドロフラン(2000mL)中の(R)-7-ブロモ-5-(2-フルオロフェニル)-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン-2-オン(125.0g、360.0mmol)を、ドライアイス/IPA浴を使用して-20℃に冷却した。テトラヒドロフラン(300mL)中のt-BuOK(52.5g、468.0mmol)の溶液を、温度を-20℃に維持しながら30分かけて反応混合物に滴下添加した。添加完了後、反応混合物を-20℃でさらに60分撹拌させた。それから、クロロリン酸ジエチル(72.8mL、504.1mmol)を-20℃で15分かけて反応混合物に滴下添加した。-20℃で2時間後、出発物質は消費された(TLC、100%酢酸エチル)。イソシアノ酢酸エチル(51.2mL、468.0mmol)を、-20℃に維持しながら15分かけて滴下添加し、続いてテトラヒドロフラン(300mL)中のt-BuOK(52.5g、468.0mmol)の溶液を-20℃で30分かけて滴下添加した。添加完了後、反応混合物を室温に温めさせ、さらに1時間撹拌させ、その時点で中間体は完全に消費された(TLC、100%酢酸エチル)。反応混合物を5%重炭酸ナトリウム水溶液(2000mL)および酢酸エチル(2000mL)で希釈した。得られたエマルジョンをろ過し、30分後に層を分離した。水層を酢酸エチル(2000mL)で抽出し、合わせた有機層を10%重炭酸ナトリウム水溶液(2000mL)および20%塩化ナトリウム水溶液(2000mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で蒸発させた。t-ブチルメチルエーテルを残渣に加えて蒸発させ(200mL×2)、残渣をt-ブチルメチルエーテル(1000mL)で55℃で30分間処理した。混合物を室温で12時間撹拌後、ろ過し、t-ブチルメチルエーテル(100mL×4)で洗浄した。固体を真空下、40℃で乾燥させ、表題化合物を白色粉末として得た(96.6g、60.7%):1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.92 (s, 1H), 7.73 (dd, J = 8.5, 2.2 Hz, 1H), 7.60 (dt, J = 7.3, 3.9 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.50 - 7.42 (m, 1H), 7.42 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.26 (td, J = 7.5, 1.1 Hz, 1H), 7.10 - 7.02 (m, 1H), 6.71 (q, J = 7.3 Hz, 1H), 4.54 - 4.28 (m, 2H), 1.42 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.29 (d, J = 7.4 Hz, 3H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 162.93 (s), 162.67 (s), 160.10 (d, 1JCF = 250.7 Hz), 141.59 (s), 134.85 (s), 134.75 (s), 133.68 (s), 133.05 (s), 132.12 (d, 3JCF = 8.2 Hz), 131.17 (s), 129.59 (s), 128.42 (d, 2JCF = 12.3 Hz), 124.57 (d, 4JCF = 3.3 Hz), 123.65 (s), 120.96 (s), 116.25 (d, 2JCF = 21.4 Hz), 60.82 (s), 50.12 (s), 14.87 (s), 14.43 (s); 19F NMR (471 MHz, CDCl3) δ -112.36; HRMS (ESI/IT-TOF): m/z [M + H]+ C21H18BrFN3O2の計算値: 442.0561; 実測値: 442.0563; HPLC純度: 97.5%; 光学純度: 99.0% ee.
【0162】
【0163】
オキサジアゾールの調製の一般手順。エチルエステル(0.52mmol)をアルゴン下、室温で乾燥THF(20mL)に溶解する。3Åモレキュラーシーブを入れた別のフラスコで、対応するアミドオキシムR3C(=NOH)NH2(2.08mmol)をアルゴン下、乾燥THF(30mL)に溶解し、水素化ナトリウム(鉱油中60%分散、0.57mmol)で処理する。得られた混合物を15分間撹拌し、その時点でエチルエステルを含む溶液を加える。得られた反応混合物を、TLC(シリカゲル)による分析で示されるように、出発物質が消費されるまで室温で2時間撹拌する。反応混合物を、飽和NaHCO3水溶液(50mL)でクエンチする。それから、水(50mL)を加え、生成物をEtOAc(3×100mL)で抽出する。有機層を合わせ、ブライン(30mL)で洗浄し、乾燥させる(Na2SO4)。溶媒を減圧下で除去する。得られた固体をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により精製し、オキサジアゾールを得る。
【0164】
【0165】
(S)-5-(8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール(GL-I-65)。N’-ヒドロキシアセトイミドアミド(hydroxyacetimidamide)(0.154g、2.08mmol)を用いて、オキサジアゾールの一般手順に従って、GL-I-65を、エチル(S)-8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレートから調製した。粗残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン 3:2)により精製し、表題化合物を白色粉末として得た(0.174g、85%):mp 225~226℃;[α]D
25=+32.52(c 2.86、CHCl3);1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.08 (s, 1H), 7.74 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.63 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.48 (dd, J = 18.1, 11.6 Hz, 2H), 7.27 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 7.06 (t, J = 9.2 Hz, 1H), 6.75 (q, J = 7.1 Hz, 1H), 3.18 (s, 1H), 2.47 (s, 3H), 1.35 (d, J = 7.2 Hz, 3H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3): δ 170.75 (s), 167.42 (s), 163.40 (s), 160.09 (d, JC-F = 250.5 Hz), 139.26 (s), 136.32 (s), 135.34 (s), 134.17 (s), 134.05 (s), 132.06 (d, JC-F = 8.5 Hz), 131.20 (s), 129.63 (s), 128.55 (d, JC-F= 12.3 Hz), 124.83 (s), 124.50 (d, JC-F = 3.2 Hz), 122.21 (s), 121.88 (s), 116.21 (d, JC-F = 21.4 Hz), 81.34 (s), 79.95 (s), 50.16 (s), 14.94 (s), 11.66 (s); HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M + H]+ C23H17FN5Oの計算値398.1412; 実測値 398.1419.
【0166】
【0167】
(S)-3-エチル-5-(8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-1,2,4-オキサジアゾール(GL-I-66)。N’-ヒドロキシプロピオンイミドアミド(hydroxypropionimidamide)(0.183g、2.08mmol)を用いて、オキサジアゾールの一般手順に従って、GL-I-66を、エチル(S)-8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレートから調製した。粗残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン 3:2)により精製し、表題化合物を白色粉末として得た(0.168g、79%):mp 199~200℃;[α]D
25=+50.00(c 0.22、CHCl3);1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.08 (s, 1H), 7.75 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.63 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.54 - 7.40 (m, 2H), 7.27 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 7.06 (t, J = 9.2 Hz, 1H), 6.75 (q, J = 14.4, 7.2 Hz, 1H), 3.18 (s, 1H), 2.84 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.40 (d, J = 7.6 Hz, 3H), 1.36 (t, J = 3.6 Hz, 3H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3): δ 171.88 (s), 170.70 (s), 163.41 (s), 160.10 (d, JC-F = 251.4 Hz), 139.22 (s), 136.26 (s), 135.33 (s), 134.22 (s), 134.07 (s), 132.04 (d, JC-F = 8.7 Hz), 131.15 (s), 129.58 (d, JC-F = 6.0 Hz), 128.58 (d, JC-F = 11.9 Hz), 124.99 (s), 124.51 (d, JC-F= 3.2 Hz), 122.18 (s), 121.88 (s), 116.22 (d, JC-F = 21.5 Hz), 81.34 (s), 79.90 (s), 50.23 (s), 19.74 (s), 14.97 (s), 11.51 (s); HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M + H]+ C24H19FN5Oの計算値412.1568; 実測値 412.1569.
【0168】
【0169】
(S)-5-(8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-3-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール(GL-I-81)。N’-ヒドロキシイソブチルイミドアミド(hydroxyisobutyrimidamide)(0.212g、2.08mmol)を用いて、オキサジアゾールの一般手順に従って、GL-I-81を、エチル(S)-8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレートから調製した。粗残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン 3:2)により精製し、表題化合物を白色粉末として得た(0.180g、82%):mp 205~206℃;[α]D
25=+22.37(c 0.76、CHCl3);1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.06 (s, 1H), 7.66 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.60 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.53 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 7.44 - 7.30 (m, 2H), 7.17 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 6.96 (t, J = 9.2 Hz, 1H), 6.67 (q, J = 7.0 Hz, 1H), 3.14 (s, 1H), 3.09 (q, J = 7.0 Hz, 1H), 1.32 (d, J = 7.0 Hz, 6H), 1.28 (d, J = 7.5 Hz, 3H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3): δ 175.24 (s), 170.61 (s), 163.38 (s), 160.03 (d, JC-F = 251.5 Hz), 139.17 (s), 136.34 (s), 135.36 (s), 134.17 (s), 133.98 (s), 132.01 (d, JC-F = 8.3 Hz), 131.10 (s), 129.48 (s), 128.58 (d, JC-F = 12.3 Hz), 124.96 (s), 124.48 (d, JC-F = 3.1 Hz), 122.28 (s), 121.82 (s), 116.16 (d, JC-F= 21.4 Hz), 81.30 (s), 80.03 (s), 50.22 (s), 26.70 (s), 20.57 (s), 20.51 (s), 14.94 (s); HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M + H]+ C25H21FN5Oの計算値426.1725; 実測値 426.1728.
【0170】
【0171】
(R)-5-(8-ブロモ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール(GL-III-60)。N’-ヒドロキシアセトイミドアミド(3g、40.5mmol)およびNaH(鉱油中60%分散、0.8g、14.9mmol)を用いて、オキサジアゾールの一般手順に従って、GL-III-60を、エチル(R)-8-ブロモ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート(6g、13.5mmol)から調製した。粗残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン 3:2)により精製し、表題化合物を白色粉末として得た(5.6g、91.8%):1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.08 (s, 1H), 7.76 (dd, J = 8.5, 1.9 Hz, 1H), 7.61 (t, J = 7.0 Hz, 1H), 7.55 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.52 - 7.42 (m, 2H), 7.26 (td, J = 7.6, 0.9 Hz, 1H), 7.11 - 6.99 (m, 1H), 6.74 (q, J = 7.3 Hz, 1H), 2.45 (s, 3H), 1.35 (d, J = 7.3 Hz, 3H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 170.69 (s), 167.46 (s), 161.09 (s), 161.06 (d, J = 495.1 Hz), 139.12 (s), 136.31 (s), 135.16 (s), 133.37 (s), 133.25 (s), 132.36 (d, J = 7.7 Hz), 131.26 (s), 131.02 (s), 128.15 (d, J = 11.0 Hz), 124.87 (s), 124.61 (d, J = 3.3 Hz), 123.71 (s), 121.26 (s), 116.29 (d, J = 21.4 Hz), 50.15 (s), 14.98 (s), 11.69 (s); HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M + H] C21H16BrFN5Oの計算値452.0517, 実測値 452.0542.
【0172】
【0173】
(R)-5-(8-ブロモ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-3-エチル-1,2,4-オキサジアゾール(GL-III-98)。N’-ヒドロキシプロピオンイミドアミド(2.0g、22.6mmol)およびNaH(0.25g、6.2mmol)を用いて、オキサジアゾールの一般手順に従って、GL-III-98を、エチル(R)-8-ブロモ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート(2.5g、5.65mmol)から調製した。粗残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン 2:3)により精製し、表題化合物を白色粉末として得た(2.2g、83.7%):1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.05 (s, 1H), 7.71 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.53 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.44 - 7.31 (m, 2H), 7.19 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 6.98 (t, J = 9.2 Hz, 1H), 6.69 (q, J = 7.1 Hz, 1H), 2.77 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.32 (t, J = 7.6 Hz, 6H);13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 171.82 (s), 170.67 (s), 162.84 (s), 160.03 (d, J = 250.7 Hz), 139.10 (s), 136.28 (s), 135.07 (s), 133.35 (s), 133.11 (s), 132.18 (d, J = 8.0 Hz), 131.16 (s), 131.00 (s), 128.30 (d, J = 12.4 Hz), 124.54 (d, J = 3.0 Hz), 123.75 (s), 121.13 (s), 116.20 (d, J = 21.4 Hz), 50.20 (s), 19.72 (s), 14.95 (s), 11.50 (s); HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M + H] C22H18BrFN5Oの計算値468.0655, 実測値 468.0659.
【0174】
【0175】
(R)-5-(8-ブロモ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-3-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール(GL-IV-01)。N’-ヒドロキシイソブチルイミドアミド(3.2g、31.6mmol)およびNaH(鉱油中60%分散、0.35g、8.7mmol)を用いて、オキサジアゾールの一般手順に従って、GL-IV-01を、エチル(R)-8-ブロモ-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート(3.5g、7.91mmol)から調製した。粗残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン 1:1)により精製し、表題化合物を白色粉末として得た(3.0g、78.2%):1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.04 (s, 1H), 7.70 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.53 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.43 - 7.31 (m, 2H), 7.19 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 6.98 (t, J = 9.1 Hz, 1H), 6.69 (q, J = 7.0 Hz, 1H), 3.11 (dt, J = 13.8, 6.9 Hz, 1H), 1.33 (d, J = 7.0 Hz, 6H), 1.31 (d, J = 9.3 Hz, 3H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 175.26 (s), 170.58 (s), 162.85 (s), 160.02 (d, J = 250.7 Hz), 139.06 (s), 136.26 (s), 135.08 (s), 133.37 (s), 133.11 (s), 132.60 (s), 132.18 (d, J = 8.0 Hz), 131.11 (s), 130.96 (s), 128.31 (d, J = 12.3 Hz), 124.57 (s), 123.75 (s), 121.11 (s), 116.20 (d, J = 21.4 Hz), 50.25 (s), 26.72 (s), 20.59 (s), 20.53 (s), 14.96 (s); HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M + H] C23H20FN5Oの計算値482.0812, 実測値 482.0804.
【0176】
【0177】
(R)-3-エチル-5-(8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-1,2,4-オキサジアゾール(MP-IV-005)。N’-ヒドロキシプロピオンイミドアミド(273mg、3.10mmol)およびNaH(鉱油中60%分散、77mg、1.94mmol)を用いて、オキサジアゾールの一般手順に従って、MP-IV-005を、エチル(R)-8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート(300mg、0.774mmol)から調製した。粗残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc:ヘキサン 4:1)により精製し、表題化合物を白色粉末として得た(232mg、72.8%):1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.09 (s, 1H), 7.76 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.63 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.47 (d, J = 11.7 Hz, 2H), 7.33 - 7.24 (m, 1H), 7.06 (t, J = 9.1 Hz, 1H), 6.76 (dd, J = 14.1, 7.0 Hz, 1H), 3.18 (s, 1H), 2.83 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 1.40 (dd, J = 14.7, 7.1 Hz, 6H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 171.93, 170.51, 161.79, 158.45, 138.81, 136.34, 135.83, 134.44, 134.29, 132.61, 131.37, 125.16, 124.63, 124.58, 122.33, 122.07, 116.46, 116.18, 81.19, 80.11, 49.96, 19.76, 15.07, 11.52; HRMS (LCMS-IT-TOF) C24H18FN5O (M + H)+の計算値412.1501, 実測値 412.1497.
【0178】
【0179】
(R)-5-(8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-3-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール(MP-IV-010)。N’-ヒドロキシイソブチルイミドアミド(310mg、3.10mmol)およびNaH(鉱油中60%分散、77mg、1.94mmol)を用いて、オキサジアゾールの一般手順に従って、MP-IV-010を、エチル(R)-8-エチニル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-カルボキシレート(300mg、0.774mmol)から調製した。粗残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc:ヘキサン 4:1)により精製し、表題化合物を白色粉末として得た(216mg、65.7%):1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.09 (s, 1H), 7.75 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.63 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.46 (d, J = 12.1 Hz, 2H), 7.27 (dd, J = 9.4, 5.5 Hz, 1H), 7.06 (t, J = 9.2 Hz, 1H), 6.74 (q, J = 7.0 Hz, 1H), 3.24 - 3.10 (m, 2H), 1.38 (t, J = 8.3 Hz, 9H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 175.35, 170.27, 161.77, 158.43, 138.51, 136.39, 135.58, 134.70, 134.32, 133.01, 131.47, 128.52, 125.31, 124.67, 122.48, 122.19, 116.52, 116.23, 81.04, 80.31, 49.76, 26.76, 20.59, 20.54, 15.13; HRMS (LCMS-IT-TOF) C25H20FN5O (M + H)+の計算値426.1663, 実測値 426.1659.
【0180】
【0181】
(R)-5-(8-シクロプロピル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール(GL-III-63)。トルエン(100mL)および水(1.3mL)中のGL-III-60(1.6g、3.6mmol)の溶液に、シクロプロピルボロン酸(0.55g、6.4mmol)、リン酸カリウム(3.18g、15.0mmol)、および二酢酸ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(bis(triphenylphosphine)palladium(II) diacetate)(0.56g、0.75mmol)をアルゴン下で加えた。還流冷却器を取り付け、混合物を真空下、アルゴンで脱気し、この工程を4回繰り返した。混合物を撹拌して100℃に加熱した。4時間後、反応の進行は、TLC(シリカゲル)による分析で完了し、その後それを室温に冷却した。それから、水(20mL)を加えて、混合物をEtOAc(3×25mL)で抽出し、その後ろ液をブライン(20mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、減圧下で濃縮した。得られた黒色残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc)により精製し、所望のGL-III-63を白色固体として得た(1.05g、72%):1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.03 (s, 1H), 7.59 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 7.51 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.47 - 7.36 (m, 1H), 7.24 (dd, J = 14.9, 7.4 Hz, 2H), 7.08 - 6.95 (m, 2H), 6.69 (q, J = 7.3 Hz, 1H), 2.44 (s, 3H), 1.87 (dt, J = 12.6, 6.8 Hz, 1H), 1.32 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.00 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 0.64 (dd, J = 10.7, 4.7 Hz, 2H);13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 170.97 (s), 167.38 (s), 161.81 (s), 161.50 (d, J = 454.5 Hz), 144.23 (s), 139.19 (s), 136.30 (s), 131.91 (s), 131.80 (s), 131.30 (s), 129.12 (s), 128.99 (s), 128.69 (s), 128.11 (s), 127.32 (s), 124.38 (s), 121.93 (s), 116.06 (d, J = 21.8 Hz), 50.09 (s), 15.09 (s), 14.75 (s), 11.67 (s), 9.99 (s); HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M + H] C24H21FN5Oの計算値414.1725, 実測値 414.1728.
【0182】
【0183】
(R)-5-(8-シクロプロピル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-3-エチル-1,2,4-オキサジアゾール(GL-IV-03)。トルエン(30mL)および水(0.65mL)中のGL-III-98(1.1g、2.38mmol)、トリ(O-トリル)ホスフィン(85.5mg、0.28mmol)、シクロプロピルボロン酸(0.724g、8.43mmol)、およびリン酸カリウム(2.56g、12.1mmol)の溶液に、Pd(OAc)2(31.5mg、0.14mmol)をAr下、室温で加えて、オレンジ色の濁った溶液とした。還流冷却器を取り付けた。混合物を室温で5分間、インサイチュで生成したPd錯体の形成を示す黄色に溶液の色が変わるまで撹拌させた。それから、混合物を、予め加熱した100℃の油浴に入れた。2時間後、反応の進行は、TLC(シリカゲル)による分析で完了し、その後それを室温に冷却した。それから、水(20mL)を加えて、混合物をEtOAc(3×25mL)で抽出し、その後ろ液をブライン(20mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、減圧下で濃縮した。得られた黒色残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、DCMおよび5%MeOH)により精製し、所望のGL-IV-03を白色固体として得た(815.5mg、81.6%):1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.98 (s, 1H), 7.46 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.38 - 7.25 (m, 1H), 7.13 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 6.93 (t, J = 9.1 Hz, 2H), 6.63 (q, J = 7.0 Hz, 1H), 2.73 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.84 - 1.65 (m, 1H), 1.27 (dd, J = 14.1, 6.6 Hz, 6H), 0.90 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 0.54 (dd, J = 10.1, 4.8 Hz, 2H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 171.70 (s), 170.95 (s), 164.32 (s), 160.06 (d, J = 250.5 Hz), 144.12 (s), 139.17 (s), 136.28 (s), 131.72 (s), 131.62 (s), 131.17 (s), 129.05 (t, J = 6.2 Hz), 128.61 (s), 127.96 (s), 127.20 (s), 124.36 (d, J = 8.0 Hz), 122.68 (s), 121.94 (s), 115.94 (d, J = 21.6 Hz), 50.13 (s), 19.69 (s), 15.02 (s), 14.68 (s), 11.49 (s), 9.89 (s); HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M + H] C25H23FN5Oの計算値428.1881, 実測値 428.1889.
【0184】
【0185】
(R)-5-(8-シクロプロピル-6-(2-フルオロフェニル)-4-メチル-4H-ベンゾ[f]イミダゾ[1,5-a][1,4]ジアゼピン-3-イル)-3-イソプロイル-1,2,4-オキサジアゾール(GL-IV-04)。トルエン(40mL)および水(0.96mL)中のGL-IV-01(2.0g、4.16mmol)、トリ(O-トリル)ホスフィン(126.6mg、0.416mmol)、シクロプロピルボロン酸(1.07g、12.5mmol)、およびリン酸カリウム(3.8g、17.9mmol)の溶液に、Pd(OAc)2(46.7mg、0.21mmol)をAr下、室温で加えて、オレンジ色の濁った溶液とした。還流冷却器を取り付けた。混合物を室温で5分間、インサイチュで生成したPd錯体の形成を示す黄色に溶液の色が変わるまで撹拌させた。それから、混合物を、予め加熱した100℃の油浴に入れた。2.5時間後、反応の進行は、TLC(シリカゲル)による分析で完了し、その後それを室温に冷却した。それから、水(20mL)を加えて、混合物をEtOAc(3×25mL)で抽出し、その後ろ液をブライン(20mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、減圧下で濃縮した。得られた黒色残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、DCMおよび5%MeOH)により精製し、GL-IV-04を白色固体として得た(1.45g、78.8%):1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.00 (s, 1H), 7.70 - 7.43 (m, 1H), 7.42 - 7.30 (m, 1H), 7.26 - 7.11 (m, 1H), 6.98 (d, J = 13.2 Hz, 1H), 6.65 (q, J = 7.1 Hz, 1H), 3.11 (dt, J = 13.8, 6.9 Hz, 1H), 1.81 (ddd, J = 13.1, 8.4, 5.0 Hz, 1H), 1.31 (dd, J = 15.3, 7.1 Hz, 4H), 0.95 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 0.58 (dd, J = 10.3, 4.8 Hz, 1H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 175.19 (s), 170.88 (s), 164.35 (s), 160.09 (d, J = 250.5 Hz), 144.11 (s), 139.14 (s), 136.21 (s), 131.80 (s), 131.64 (s), 131.15 (s), 129.32 - 128.95 (m), 128.65 (s), 128.02 (s), 127.25 (s), 124.47 (d, J = 18.9 Hz), 122.68 (s), 121.92 (s), 116.00 (d, J = 21.5 Hz), 50.21 (s), 26.71 (s), 20.60 (s), 20.54 (s), 15.04 (s), 14.74 (s), 9.89 (s); HRMS (ESI/IT-TOF) m/z: [M + H] C26H25FN5Oの計算値442.2038, 実測値 442.2046.
【0186】
B.化合物の評価
化合物は、エクスビボおよびインビボでの方法を含むいくつかの方法を使用して分析することができる。
【0187】
放射性リガンド結合アッセイ。一次および二次放射性リガンド結合アッセイの詳細プロトコルは、National Institute of Mental Health’s Psychoactive Drug Screening Program (NIMH PDSP) Assay Protocol Book (Roth, 2018)に見ることができる。簡潔に述べると、一次および二次放射性リガンド結合アッセイは、適切な結合緩衝液中で、1ウェルあたり125μLの最終容量で行うことができる。放射性リガンド濃度は、Kdに近い([3H]-U69593 0.83nM、[3H]-DAMGO 1.20nM、および[3H]-DADLE 2.69nM)。全結合および非特異的結合は、10μMの適切な参照化合物(ナルトリンドールDOR、サルビノリンA KOR、およびDAMGO MOR)の非存在下および存在下で決定される。簡潔に述べると、プレートを通常、室温、暗所で90分間インキュベートする。96ウェルFiltermateハーベスターを使用して、0.3%ポリエチレンイミン(PEI)に浸した96ウェルフィルターマット上に吸引ろ過し、その後冷PBS緩衝液で3回洗浄することにより反応を停止する。それから、シンチレーションカクテルを、ホットプレート上でマイクロ波乾燥フィルター上に融解させ、Microbetaカウンターで放射能を計数する。データ(n=6)は、非線形回帰により分析した。
【0188】
[実施例1]
KOR、DOR、MOR、およびBZR受容体に対するリガンド親和性の評価
KOR(κオピオイド受容体)、DOR(δオピオイド受容体)、およびMOR(μオピオイド受容体)に対して、10,000nMのスクリーニング濃度での放射性リガンド結合アッセイを使用して、リガンド親和性を決定した。これらのアッセイには、KOR、MOR、およびDORを過剰発現したHEK293細胞からの細胞ホモジネートを、それぞれ[3H]-U69593、[3H]-DAMGO、および[3H]-DADLEと組み合わせて使用した。放射性リガンド置換が50%を超えた化合物は、Ki値を決定するために濃度依存的実験でさらに調査した。ガンマアミノ酪酸A型受容体(GABAAR)結合は、ラット脳ホモジネートおよび3H-フルニトラゼパムを用いて決定した。フルニトラゼパムは、2つのαおよび2つのβサブユニットおよび1つのγまたはδサブユニットからなるGABAARサブタイプと結合する。フルニトラゼパムについて、α1~3,5,6β1~3γ1~y/δ GABAARに対する強い親和性が報告されている。脳における追加のシナプスGABAARサブタイプ発現は、43%α1β2γ2、15%α2β3γ2+8%α2βγ1、10%α3β3γ2、6%α4βγ/δ、4%α5β3γ2、および4%α6β2γ2/δを含む。したがって、シナプスのベンゾジアゼピン感受性受容体(BZR)に対して親和性の高い化合物は、α1~3β2~3γ1~2 GABAARと優位に結合する。一方、BZR結合が弱い化合物は、α4~6βγ/δ GABAARに選択的である可能性がある。
【0189】
α1β2γ2 GABAARに対して親和性が弱く、α2,3,5β3γ2 GABAARに対して親和性の良好な抗不安薬候補として当初開発されたいくつかのイミダゾジアゼピンは、驚くことに強いKOR親和性を示した。表1は、2’-フルオロフェニル環を有するキラルおよびアキラルのイミダゾジアゼピンのカルボン酸誘導体の要約である。
【0190】
【0191】
【0192】
測定されたKOR親和性が最も強かったイミダゾジアゼピンは、GL-I-30(Ki=27nM)(例えば、表1、エントリー1)であった。興味深いことに、それは、一連のものの中で、MORに対しても明らかな親和性を示した唯一のリガンドであった(Ki=1850nM)。全般的に、(S)メチル立体配置の化合物は、KORに対して優れたリガンドであった。(R)リガンドと(S)リガンドの親和性の差は、1.3~4.9倍に及んだ(表1、エントリー5対9および13対29)。4つの異なるR3置換基を検討した。エントリー4、5、および10では、シクロプロピルがブロモおよびアセチレンよりも優れていることが観察された。このSARを支持する他の例は、エントリー20対28および26対28であった。R6(エステル、チオエステル、およびアミド)については、t-ブチルのような大きな疎水基が、プロピル、エチル、またはメチルなどの小さな置換基よりも優れたKORを実証した(例えば、表1、エントリー1、6、10、および13)。t-ブチルエステルとメチルエステルのKOR親和性の差は、4.5倍であった。エチルエステルからトリフルオロエチルエステルへの変更は、KOR親和性を4.5分の1に低下させた(表1、エントリー10対25)。同様の傾向がアミドで観察された。t-ブチルアミドからメチルアミドへの変更は、KOR結合を3.1分の1に低下させた(例えば、表1、エントリー3対12)。チオエステルGL-I-77は、対応するエステルの親和性と同様のKOR親和性を示した(例えば、表1、エントリー10対14)。N,N’-ジメチルアミドは、不十分なKORリガンドであった。N-メチルアミドからN,N’-ジメチルアミドへの変更は、KOR親和性を6.6分の1に低下させた(例えば、表1、エントリー12対29)。非置換アミドおよびカルボン酸リガンドは、非常に低いKOR親和性を示した。GL-II-93(MIDD0301)では、KOR親和性は観察されなかった(表1、エントリー37)。興味深いことに、非置換アミドおよびカルボン酸イミダゾジアゼピンのBZR親和性は、100nM未満であった(例えば、表1、エントリー32~37)。KOR親和性を向上させたR3シクロプロピル基は、ブロモ置換基と比較してBZR親和性を著しく低下させた(例えば、表1、エントリー4対5、9対17、および26対30)。KORと同様に、(S)-メチルイミダゾジアゼピンは、(R)異性体よりも優れたBZR親和性を示した。場合によっては、親和性の差は、5.6倍であった(例えば、表1、エントリー29対31)。
【0193】
同じ骨格(scaffold)に対して、ペンダント芳香環は、KOR結合に重大な影響を与えた。2’-ピリジン置換基を有するリガンドの結合を表2に要約する。
【0194】
【0195】
2’-ピリジン置換基を有する化合物は、2’-フルオロフェニル置換基を有する化合物よりも低いKOR親和性を示した。KOR親和性の差は、2~4.7倍に及んだ(例えば、表2、エントリー2対表1、エントリー9)。表1の化合物と同様に、大きな疎水基を有するリガンドは、より強力であった(例えば、エチルエステルGL-II-19対メチルエステルGL-II-32、表2、エントリー4対6)。カルボン酸リガンドは、弱いKOR親和性を示した(例えば、表2、エントリー8~10)。HZ-166およびMP-III-024などのアキラルなイミダゾジアゼピンは、(R)立体配置を有するそのキラルな対応物よりもKORに対してわずかに強い親和性を示した(例えば、表2、エントリー3対4および5対6)。R3での置換では、ブロモ官能基を有する化合物は、アセチレン基を有する化合物よりも活性が高かった(例えば、表2、エントリー2対4、および8対10)。対照的に、2’-ピリジンを有するリガンドは、良から優であるBZR結合を示した。アキラルなリガンドである化合物(compounds with achiral ligands)(例えば、MP-II-68およびSR-II-54-表2、エントリー1および9)が、特に活性であった。さらに、この一連のものの中で、カルボン酸誘導体が良好なBZRリガンドであった(表2、エントリー8~10)。
【0196】
次に、エステルおよびアミドの生物学的等価体を調査した。一連のオキサジアゾールの結合を表3に要約する。
【0197】
【0198】
この一連のものの中で、KOR親和性が最も高かったイミダゾジアゼピンは、GL-I-81であった(表3、エントリー1)。さらに、GL-I-81は、この一連のものの中で、明らかなMOR親和性を示した唯一のリガンドであった(Ki=2920nM)。興味深いことに、イミダゾジアゼピンオキサジアゾールは、イミダゾジアゼピンエステルおよびアミドと同様のSARを示した。2’-フルオロフェニル置換化合物は、対応する2’-ピリジンリガンドよりも優れたKOR親和性を実証した(例えば、表3、エントリー9対10)。イソプロピル置換オキサジアゾールは、対応するエチルまたはメチル置換イミダゾジアゼピンオキサジアゾールよりも活性が高かった(例えば、表3、エントリー1、3、および4)。メチル置換とエチル置換との間にKOR親和性の大きな差は観察されなかった(例えば、表2、エントリー3対4、6対7、および8対9)。(S)メチル立体配置の化合物は、対応する(R)リガンドよりも優れたKOR親和性を示した(例えば、表3、エントリー1対2、および4対7)。R3置換では、ブロモが、アセチレンおよびシクロプロピルよりも優れていた(例えば、表2、エントリー6、7、および9)。すべてのオキサジアゾールは、2’-ピリジン置換基を有するアキラルなリガンドを除き、BZRよりもKORに対して優れた親和性を示した(表2、エントリー11および12)。
【0199】
次に、オキサゾールイミダゾジアゼピンを検討した。その結合を表4に要約する。
【0200】
【0201】
R3位にブロモ置換基を有するイミダゾジアゼピンオキサゾールは、アセチレン基を有するイミダゾジアゼピンオキサゾールと比較して優れたKORリガンドであった(例えば、表4、エントリー1対4、2対7、3対6、5対9、8対11、12対13、および14対15)。メチル置換オキサゾールを有するリガンドは、非置換オキサゾールを有するリガンドよりも活性が低かった(例えば、表4、エントリー1対5、8対9、4対10、12対14、および13対15)。他のすべての骨格と同様に、2’-フルオロフェニル基を有する化合物は、フェニルまたは2’-ピリジン置換を有する化合物よりも高いKOR親和性を示した(例えば、表4、エントリー1、8、および12、ならびにエントリー5、9、および14)。アキラルなオキサゾールリガンドは、キラルなリガンドよりもKORに対して優れた親和性を示した(例えば、表4、エントリー1対2および4対6)。R1メチル基の立体配置は、KOR結合に大きな影響を与えなかった(例えば、表4、エントリー2対3および6対7)。アキラルなオキサゾールは、キラルなオキサゾールよりも優れたBZR親和性を示し、フェニルまたは2’-フルオロフェニル置換を有するもので特にそうであった。(S)立体配置のキラルなイミダゾジアゼピンオキサゾールは、その対応する(R)異性体よりもBZRに対する優れたリガンドであった(例えば、表4、エントリー2対3および6対7)。メチル置換オキサゾールを有するイミダゾジアゼピンは、それを有さないイミダゾジアゼピンよりもわずかに低いBZR親和性を示した。最後に、2’-ピリジン置換は、イミダゾジアゼピンオキサゾールの低いBZR親和性をもたらした。
【0202】
[実施例2]
KORアゴニズムを評価するためのGL-I-30を用いたBRETリクルートメントアッセイ
BRETリクルートメントアッセイを、以前報告された手順に従って、わずかな改変を加えて、HEK293T細胞において行った。簡潔に述べると、細胞に、GαoA-RLuc、Gβ3、Gγ8-GFP2、およびヒトKOR受容体を1:1:1:1の比で一晩同時にトランスフェクトした。翌日、ポリ-L-リジンコート96ウェル白色透明底細胞培養プレートに、1%透析済みFBSを含むDMEM中で細胞を播種した(約40,000細胞/ウェル)。24時間後、96ウェルプレートの底を白色バッキング(backing)(PerkinElmer)で覆い、培養培地を除去した。直ちに、細胞をアッセイ緩衝液(1×HBSS、20mM HEPES、1mg/ml BSA、pH7.4)80μL/ウェルで洗浄した。それから、細胞を、アッセイ緩衝液中薬物80μLで、室温で10分間処理し、その後RLuc基質20μL/ウェルを加え、さらに10分間インキュベートした。プレートをMithras LB940リーダーで、RLuc発光(400nm)およびGFP2(515nm)発光について読み取り、GFP2/RLucの比(n=24)をGraphPad Prism 8を使用して非線形回帰により分析した。
【0203】
GL-I-30は、32.3nMのEC
50で、Gα
oAタンパク質のKORへのリクルートメントを誘導した(
図2)。完全なアゴニストであるサルビノリンAと比較して、有効性は100%であった(
図8)。この実験結果は、GL-I-30が完全なKORアゴニズムを実証することを立証している。
【0204】
[実施例3]
誘導型NO阻害のリガンドライブラリーの評価
不死化ミクログリアにおける機能的GABA
ARの発現を検証するため、細胞を-80mVでパッチクランプし、漸増濃度のGABAの3秒間の適用に対して電流応答を取得した(
図1A~1D)。市販のHMC3細胞は、GABA存在下で強い電流変化を示した(
図1B)。GABAの適用中、負電流は増加し、GABAが外部の細胞溶液で洗い流されると急速に回復した。自動パッチクランプ技術は、パッチクランプした20個の細胞の平均シグナルを同時に記録し、同じプレート上で8つの独立したマイクロ流体システムを用いて実験を実施することを可能にした。時間依存的な電流の結果、GABAのEC
50値は270nMであった(
図1A)。文献報告は、HMC3細胞(CHME-5細胞とも呼ばれる)が本当にヒト由来であるかどうか疑問視している。したがって、追加でヒトおよびマウスの不死化ミクログリア細胞株をCase Western Reserve University(Cleveland、OH)から入手した。HMC3細胞で説明したように、両方の細胞株を培養し、パッチクランプで分析した(
図1C~1D)。1mM GABAに対する最大電流応答は、ヒトの細胞で1245pAであり、マウスの細胞で1514pAであった。GABA濃度依存的研究は、マウスおよびヒトのミクログリアで、それぞれ260nMおよび1940nMのEC
50を立証した(
図1C)。
【0205】
RT-PCRを使用して、ヒトおよびマウスのミクログリアにおけるGABA
ARサブユニットの発現を決定し(
図2Bおよび2D)、マウス小脳およびヒト脳抽出物における対応するmRNAレベルと比較した(
図2Aおよび2C)。全般的に、GABA
ARサブユニットの発現は、ヒトのミクログリアでは、すべての種類の脳細胞を含む抽出物ほど顕著ではない(
図2A~2B)。アルファサブユニットについては、ヒトミクログリアではα
3が最も豊富なサブユニットであるのに対し、脳(主にニューロン)ではα
1が最も豊富である(
図2A)。ヒトミクログリアにおいて機能的GABA
AR受容体を形成する可能性のある結合パートナーは、β
1およびγ
2/δである(
図2B)。マウスミクログリアは、α
4またはα
6GABA
ARサブユニットを発現しなかったが、α
2、α
3、およびα
5のmRNAは同様の量で観察された(
図2D)。他の発現GABA
ARサブユニットは、β
1~3、γ
1~2、およびδであった。このように、マウスミクログリアは、ヒトミクログリアよりも多様なGABA
ARのサブセットを発現している。この知見は、GABAが、マウスミクログリアにおいてヒトミクログリアよりも低い濃度で電流変化を誘導するという先の観察を支持する。
【0206】
次に、抗炎症活性の指標としての、NOの産生を減少させる化合物を同定するために、GABAARリガンドのライブラリーを調査した。マウスミクログリアおよびマクロファージ株RAW264.7をインターフェロンガンマ(IFNγ)および大腸菌(E. coli)リポ多糖(LPS)で活性化し、その後1μM GABAの存在下で、50または10μMの化合物に24時間曝露した。NOをGriessアッセイで定量化した。細胞生存率をCellTiter-Gloで決定した。結果を表5に要約する。
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
スクリーニングにより、活性化ミクログリアおよびマクロファージにおいてNOを減少させる化合物をいくつか同定した。試験化合物は、アキラルおよびキラルなイミダゾジアゼピンおよびベンゾジアゼピンを含んだ。一般に、ミクログリアは、マクロファージよりも化合物処理に対して感受性が高く、NOの減少がより顕著であった。最も強力な化合物は、表5および
図9~14に表記された濃度で分析した。試験したどの化合物も、50μMで顕著な毒性を示さなかった。HEK293(腎臓)細胞およびHepG2(肝臓)細胞を用いて、濃度依存的に細胞生存率アッセイを実施した。120μMの化合物曝露後のパーセント生存率を表5に要約する。GL-III-63、GL-III-76A、およびGL-III-77などの限られた数の化合物は、120μMで毒性があった。ほとんどの化合物は、両方の細胞株に対して100μMを超えるLD
50を示した。
【0211】
多様な化合物の集まりの中で、多くのイミダゾジアゼピン-[1,2,4]-オキサジアゾールは、活性化ミクログリアによるNO産生を減少させた。一般構造は、
【0212】
【0213】
すべての活性イミダゾジアゼピン-[1,2,4]-オキサジアゾールは、ペンダント2-フルオロフェニル基を共有している。GL-II-33などの、2-ピリジン置換基を有する化合物は、NO産生を減少させなかった。第二に、R1=メチル置換基は、GL-III-23により実証されるR1=Hよりも優れていた。第三に、R1=メチルの立体化学が(R)の化合物は、対応する(S)立体配置の化合物よりも活性が高かった。R3位にブロモ基またはシクロプロピル基を有する化合物では、R4置換基の中で、エチル基がメチル基またはイソプロピル基よりも優れていた。この群の中でGL-IV-03は最も活性の高い化合物であり、NO産生を、ミクログリアでは90%、マクロファージでは75%減少させた。アセチレン置換基を有する化合物では、MP-IV-010が、R4イソプロピル基を有する最も活性の高い化合物であった。GL-IV-03およびMP-IV-010の両方で、50μMではミクログリアおよびマクロファージに対して重大な毒性は観察されなかったが、120μMではHEK293細胞に対していくらかの細胞毒性が観察され、HEPG2細胞に対してはより低い程度で観察された。
【0214】
[実施例4]
KORアゴニズムおよびNO減少に関するMP-IV-010の評価
活性化ミクログリアにおける、MP-IV-010が媒介するNO減少におけるGABA
AR活性を確認するために、3つのGABA
ARアンタゴニストを使用した。アンタゴニストは、受容体の塩化物ポア(chloride pore)内に結合し塩化物の流動(flux)を阻止するピクロトキシン、および受容体のGABA部位に競合的に結合し、内因性の活性化を妨げるビククリンを含んだ。フルマゼニルは、GABA
ARのベンゾジアゼピン部位の直接的アンタゴニストである。競合実験では、ミクログリアをLPSおよびIFNγで活性化し、それからMP-IV-010およびGABAの存在下で各アンタゴニストで処理した。各条件での細胞生存率をCellTiter-Gloで測定した。結果を
図3A~4Bに要約する。
【0215】
陽性対照化合物であるデキサメタゾンは、100nMで細胞毒性を示すことなく、活性化ミクログリアのNO産生を減少させた(
図3A)。1μMのGABAは、分泌されたNOレベルに影響を与えなかったが、MP-IV-010(50μM)では有意な減少が実証された。50μMフルマゼニル、50μMピクロトキシン、または100μMビククリンと、50μM MP-IV-010の投与は、そのNO効果を逆転させなかった。どの処理条件でも細胞毒性は観察されなかった(
図3B)。
【0216】
NOの減少がGABAARアンタゴニストにより逆転しなかったため、他の細胞受容体へのMP-IV-010の結合の可能性を、NIMH Psychoactive Drug Screening Programと共同して評価した。スクリーニング中、46の受容体競合アッセイのうち、MP-IV-010は3つの受容体に対してのみ50%を超える活性を実証し、したがってGABAARのベンゾジアゼピン部位へのその結合が確認されたが、κ-オピオイド受容体およびσ2受容体への結合も確認された(表6)。
【0217】
【0218】
これらの受容体に対するMP-IV-010の親和性を決定するために
図4A~4Cに示すように、濃度依存的アッセイを行った。結果は、MP-IV-010が、GABA
ARのベンゾジアゼピン部位に2.5μM(IC
50)の親和性で結合することを実証した(
図4A)。ラット脳ホモジネートにおいて最も豊富なGABA
ARは、α
1β
2/3γ
2 立体配置を示す。α
3β
3γ
2 GABA
ARに対する親和性は、膜電位赤色色素アッセイにより決定した14.3μM(EC
50)であった(データは示さず)。κオピオイド受容体に対してはより高い親和性が観察され、IC
50は351nMであった(
図4B)。σ2受容体に対する親和性は、5.2μM(IC
50)であった(
図4C)。
【0219】
κ-オピオイド受容体およびσ2受容体の関与の可能性を確認するため、選択的κ-オピオイド受容体アンタゴニストであるノルビナルトルフィミンおよび選択的σ2受容体アンタゴニストであるSM-21がMP-IV-010によるNOの減少に対抗することができるかどうかを調査した。SM-21(30μM)の存在下では、MP-IV-010(50μM)によるNO産生の逆転は観察されなかった(
図5A)。しかし、ノルビナルトルフィミン(30μM)は、MP-IV-010の効果を逆転させた。どちらの処理も細胞生存率を低下させなかった(
図5B)。
【0220】
κ-オピオイド受容体アンタゴニストであるノルビナルトルフィミンによるMP-IV-010の効果の逆転は、κ-オピオイド受容体がミクログリアにより発現されていることを意味し、κ-オピオイド受容体の活性化がNO産生を制御することを確認する。このデータは、MP-IV-010がiNOSの酵素活性を直接阻害せず、むしろその発現を調節することを実証している。
【0221】
次に、活性化ミクログリアにおける、MP-IV-010(および構造的に同様の化合物であるGL-IV-03)が媒介するNOの減少におけるiNOSの関与の可能性を調査した。MP-IV-010で24時間処理した後、活性化ミクログリアにおけるiNOS活性を測定した。第二に、LPS/INFγで24時間活性化したミクログリアからタンパク質を回収し、MP-IV-010で2時間処理した後、iNOS活性を測定した。最後に、iNOSの転写制御を調べるために、GL-IV-03で処理した活性化ミクログリアのmRNAおよびタンパク質レベルを定量化した。活性化ミクログリアからの細胞タンパク質抽出物は、非活性化ミクログリアからの抽出物よりも有意に高いiNOS活性を示した。MP-IV-010(50μM)で24時間処理すると、活性化ミクログリアにおいてiNOS活性の上昇が完全に阻害された(
図6A)。MP-IV-010がiNOSを直接阻害しないことを実証するために、活性化ミクログリアからの細胞抽出物をMP-IV-010で2時間インキュベートした後、iNOS活性のアッセイを行った。ここで、iNOS活性は、ビヒクルで処理した細胞抽出物とは異ならなかった(
図6B)。しかし、GL-IV-03(10μM)処理後15、60、および180分で、活性化ミクログリアにおいてiNOS mRNAレベルが低下した(
図6C)。興味深いことに、iNOS mRNAレベルの上昇が6時間後に観察された。それにもかかわらず、GL-IV-03で24時間処理後のミクログリアから単離したiNOSタンパク質の量は、ビヒクル処理細胞と比較して有意に低かった(
図6D)。
【0222】
[実施例5]
GL-IV-03およびMP-IV-010の抗侵害受容性作用の評価
GL-IV-03の抗侵害受容性作用をホルマリン試験で調査した。ホルマリンを足に注射すると、時間的な隔たりのある(1~5分および20~60分)二相性の疼痛応答を引き起こした。侵害受容の実証として、損傷した後足を舐めることおよび噛むことを、損傷していない反対側の足と比較して評価した。各処置に対して、5分間隔の間にこの行動に関わった時間を
図7Aに示す。3分間にわたって回転ロッド上でバランスをとるように訓練されたマウスを用いて、感覚運動障害および鎮静状態を調査した(ロータロッド)。GL-IV-03およびMP-IV-010で腹腔内(i.p.)および経口(p.o.)処置後、マウスがロッド上でバランスを保っていた時間を
図7B~7Cに要約する。GL-IV-03を10mg/kgで経口投与したとき、急性疼痛(第1相)および炎症介在性疼痛(第2相)の両方において抗侵害受容性作用を示した(
図8A)。この作用は、30mg/kgの非ステロイド性抗炎症薬ケトプロフェンと同様であった。鎮静状態および感覚運動協調の阻害は、舐めることおよび噛むことの疼痛行動に影響を与える可能性があり、GL-IV-03およびMP-IV-010に関するロータロッド研究を促す。ホルマリン試験における有効用量の4倍でp.o.投与した両方の化合物は、ロータロッドで測定した際、感覚運動欠損を引き起こさなかった(
図7B)。さらに、10および40mg/kgでのGL-IV-03の腹腔内注射は、回転ロッド上で3分間バランスをとるマウスの能力に影響しなかった(
図7C)。ジアゼパムとは対照的に、α
1β
2/3γ
2および他のGABA
ARサブタイプに対して親和性の高いベンゾジアゼピンは、5mg/kgで鎮静作用があった。
【0223】
実施例3~5の詳細プロトコル
動物。5~10週齢の雄のスイスウェブスターマウス(Charles River Laboratory、WIL、MA)を、湿度、温度、および制御された12時間の明暗サイクル、および餌と水を自由に(ad libidum)摂取できる標準的な条件下、特定の病原体のない条件下で飼育した。すべての動物実験は、University of Wisconsin-Milwaukee Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)に従って実施した。
【0224】
細胞培養。A)HMC3ミクログリア(CRL-3304)は、10%熱非働化FBS(Corning、35011CV)および100U/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシン(Hyclone、SV30010)を添加したEMEM(Corning、10010CV)を入れた処理済み細胞培養フラスコ(Nunc、156472)で維持した。培養物は、37℃および5%CO2で維持した。細胞が7x104細胞/mLの密度に達したとき、培養物を0.25%トリプシン(Corning、25-053-CI)で継代し、10,000細胞/mL以上の密度に再懸濁した。B)ヒトおよびマウスのミクログリア細胞株は、Case Western Reserve University(Cleveland、OH)のDr. David Alvarez-Carbonellから贈られた。ミクログリアは、10%熱非働化FBS(Corning、35011CV)、100U/mLペニシリン/100μg/mLストレプトマイシン(Hyclone、SV30010)、およびノルモシン(Invivogen、ant-nr)を添加したDME/F12培地(Hyclone、SH30023.01)を入れた細胞培養処理フラスコ(Nunc、156472)で培養した。培養物は、37℃および5%CO2で維持した。細胞がおよそ500,000細胞/mLの密度に達したとき、培養物を0.25%トリプシン(Corning、25-053-CI)で継代し、50,000細胞/mL以上の密度で再懸濁した。C)RAW264.7マウスマクロファージ(ATCC、TIB-71)は、10%熱非働化FBS(Corning、35011CV)、100U/mLペニシリン/100μg/mLストレプトマイシン(Hyclone、SV30010)、およびノルモシン(Invivogen、ant-nr)を添加したDMEM/高グルコース培地(Hyclone、SH30243.01)を入れた非処理フラスコ(CellStar、658195)で培養した。培養物は、37℃および5%CO2で維持した。細胞がおよそ3x106細胞/mLの密度に達したとき、フラスコの表面から細胞を浮かせるためにセルスクレーパー(VWR、10062-906)を使用して細胞を継代し、およそ500,000細胞/mLの密度で再懸濁した。
【0225】
自動パッチクランプ。単離後、ミクログリアを380gで2分間遠心分離し、細胞外溶液(単位mMで、NaCl 140、KCl 5、CaCl2 2、MgCl2 1、グルコース 5、HEPES 10、NaOHによりpH7.4)に5×106細胞/mlの濃度で穏やかに再懸濁した。自動パッチクランプアッセイは、IonFlux16装置を用いて以前記載されたように実施した(Yuan et al., J. Pharmacol. Toxicol. Methods 82, 109-114; Chen et al., Assay Drug Dev. Technol. 10, 325-335)。簡潔に述べると、IonFlux16プレートは8つのパターンからなり、それぞれが8つの濃度のウェル、細胞供給用の注入口1つ、廃棄物回収用の排出口1つ、および1つの実験あたり20個の細胞をパッチできるコームを含む2つのトラップ(1パターンあたり合計40個の細胞)を含む。注入口ウェルは、細胞内溶液(単位mMで、CsCl 140、CaCl2 1、MgCl2 1、EGTA 11、およびHEPES 10、CsOHによりpH7.2)を含む。細胞を、細胞外溶液に懸濁した。8つの濃度のウェルに、細胞外溶液で希釈したGABAを入れた。細胞は、吸引のパルスによりトラップに捕捉され、それから膜を破る2回目の強い吸引のパルスにより全細胞の記録アクセスが得られる。GABAの適用は、適切なウェルに圧力をかけることにより達成した。細胞を-80mVの保持電位で電圧クランプする。電流データ(n=16)を、1mM GABAで測定した最大電流に対応して正規化し、平均値およびSEMとして示した。EC50値を非線形回帰により計算した。
【0226】
GABAARサブユニットRT-qPCR。mRNAを、5x106ミクログリア細胞または雌のCFWマウス(Charles River、024CFW)からの23.5mgの脳組織から、QIAshredder(Qiagen、79654)およびRNeasy Mini Kit(Qiagen、74104)を使用して回収した。ヒト全脳RNAを購入した(BioChain、R1434035-50)。ミクログリアmRNAは50ng/反応、全脳mRNAは10ng/反応を、QuantiFast SYBR Green RT-PCRキット(Qiagen、204154)を使用して分析した。データは、Eppendorf Mastercycler Proを使用して取得し、デルタCt法により分析した。各測定は3連で行った。すべてのPCR産物をアガロースゲル電気泳動(2%)で分離し、各プライマーペアの単一バンドを確認した。
【0227】
一酸化窒素産生(Griessアッセイ)および生存率アッセイ(CellTiter-Glo)。マウスミクログリア培養物(1x106細胞/mL)80μLを、滅菌384ウェルプレートにプレーティングし、非活性化ウェルとした。残りの培養物を50ng/mL LPS(Invivogen、NC9836)および150U/mL IFNγ(R&D Systems、485MI100)で活性化し、384ウェルプレートに分配した。MilliQ水で希釈した800μM GABA、0.1μL(最終濃度1μM)、およびDMSOで希釈した適切な濃度の興味のある化合物を、100nLピンツール(V&P Scientific)を備えたTECAN EVOリキッドハンドリングシステムを介して加えた。アッセイプレートを37℃でおよそ24時間(特に断りのない限り)インキュベートし、遠心分離し、上清40μLをGriessアッセイ(Promega、Madison、WI)を使用した分析のために新しいプレートに移した。530nmでの吸光度をTECAN Infinite M1000プレートリーダーを使用して測定した。細胞を含む残りの40μLは、CellTiter-Gloアッセイ(Promega、Madison、WI)により毒性を分析した。発光をTECAN Infinite M1000プレートリーダーを使用して読み取った。
【0228】
生存率アッセイ。ヒト肝臓肝細胞癌(HEPG2)細胞株およびヒト胎児腎臓293T(HEK293T)細胞株を購入し(ATCC)、75cm2フラスコ(CellStar)で培養した。細胞は、非必須アミノ酸(Hyclone、#SH30238.01)、10mM HEPES(Hyclone、#SH302237.01)、ペニシリンおよびストレプトマイシン5×106単位(Hyclone、#SV30010)、ならびに10%熱非働化ウシ胎仔血清(Gibco、#10082147)を加えたDMEM/高グルコース(Hyclone、#SH3024301)培地中で増殖させた。0.05%トリプシン(Hyclone、#SH3023601)を使用して細胞を回収し、PBSで洗浄し、滅菌白色光学底(optical bottom)384ウェルプレート(NUNC、#142762)に分注した。3時間後、小分子DMSO溶液を、100nLピンツール(V&P Scientific)を備えたTecan Freedom EVOリキッドハンドリングシステムを用いて移した。対照は、3-ジブチルアミノ-1-(4-ヘキシル-フェニル)-プロパン-1-オン(DMSO中25mM、陽性対照)およびDMSO(陰性対照)であった。細胞を48時間インキュベートした後、発光に基づく細胞生存率アッセイであるCellTiter-Glo(商標)(Promega、Madison、WI)を加えた。すべての発光の読み取りは、Tecan Infinite M1000プレートリーダーで行った。アッセイは、2つの独立した実行で4連で行った。データは、非線形回帰により分析した。
【0229】
向精神薬スクリーニングプログラム。一次および二次放射性リガンド結合アッセイの詳細プロトコルは、National Institute of Mental Health’s Psychoactive Drug Screening Program (NIMH PDSP) Assay Protocol Bookに見ることができる。簡潔に述べると、一次および二次放射性リガンド結合アッセイは、適切な結合緩衝液中で、1ウェルあたり125μLの最終容量で行うことができる。放射性リガンド濃度は、Kdに近い。全結合および非特異的結合は、それぞれ10μMの適切な参照化合物の非存在下および存在下で決定される。簡潔に述べると、プレートを通常、室温、暗所で90分間インキュベートする。96ウェルFiltermateハーベスターを使用して、0.3%ポリエチレンイミン(PEI)に浸した96ウェルフィルターマット上に吸引ろ過し、その後冷PBS緩衝液で3回洗浄することにより反応を停止する。それから、シンチレーションカクテルを、ホットプレート上でマイクロ波乾燥フィルター上に融解させ、Microbetaカウンターで放射能を計数する。データ(n=6)は、非線形回帰により分析した。
【0230】
iNOS活性アッセイ。マウスミクログリアを50ng/mL LPS(Invivogen、NC9836)および150U/mL IFNγ(R&D Systems、485MI100)で活性化し、6ウェルプレートで2または24時間、興味のある化合物で処理した。最終DMSO濃度は、0.1%を超えなかった。タンパク質を回収し、定量化し、Nitric Oxide Synthase Activityキット(Abcam、ab211083)で、確立されたプロトコルにわずかな変更を加えて分析した。簡潔に述べると、タンパク質を96ウェルプレートで補因子および基質とともに37℃および5%CO2で2.5時間インキュベートした。エンハンサーを各ウェルに加え、10分間インキュベートした後、Griess試薬を加えてインキュベートした。540nmでの吸光度をTECAN Infinite M1000プレートリーダーを使用して測定した。有意性(n=3)をANOVAにより分析した。
【0231】
iNOS RT-qPCR。1x106個のマウスミクログリア細胞を、6ウェルプレート(VWR、10062-892)中、1~2mLの培地にプレーティングし、50ng/mL LPS(Invivogen、NC9836)および150U/mL IFNγ(R&D Systems、485MI100)で活性化し、興味のある化合物で処理した。最終DMSO濃度は、0.1%を超えなかった。プレートを37℃および5%CO2で所定の時間インキュベートした。mRNAをQIAshredder(Qiagen、79654)およびRNeasy Mini Kit(Qiagen、74104)を使用して回収した。mRNAは、QuantiFast SYBR Green RT-PCRキット(Qiagen、204154)をiNOSプライマー(F:5’-ACA TCA GGT CGG CCA TCA CT-3’、R:5’-CGT ACC GGA TGA GCT GTG AAT-3’)とともに使用して分析した。予想される産物サイズは87bpであった。データは、Eppendorf Mastercycler Proを使用して取得し、デルタCt法により分析した。各測定は3連で行い、有意性をANOVAにより分析した。すべてのPCR産物をアガロースゲル電気泳動(2%)で分離し、各プライマーペアの単一バンドを確認した。
【0232】
iNOS ELISA。マウスミクログリア(500,000細胞/mLの細胞溶液2mL)を50ng/mL LPS(Invivogen、NC9836)および150U/mL IFNγ(R&D Systems、485MI100)で活性化し、6ウェルプレート(VWR、10062-892)で24時間、興味のある化合物で処理した。最終DMSO濃度は、0.1%を超えなかった。細胞をRIPA緩衝液で溶解し、タンパク質濃度をPierce Rapid Gold BCA Protein Assay Kit(Thermo Scientific、A53227)で定量化した。50μg/mLの試料をMouse iNOS ELISAキット(ABCAM、ab253219)で分析した。吸光度(λ:450nm)をTECAN Infinite M1000プレートリーダーを使用して測定した。各測定はn=3で行い、有意性をANOVAにより分析した。
【0233】
ホルマリン試験。GL-IV-03およびケトプロフェンを2.5%ポリエチレングリコールおよび2%ヒドロキシプロピルメチルセルロース中で製剤化した。各処置を1日1回10mL/kgで4日間にわたり強制経口投与した。投与の20分後、拘束した状態で、0.9%生理食塩水中2%ホルマリン20μLを右後足に足底内(intraplantar)注射により投与した。後足注射の直後、マウスを解放し、5分間観察チャンバー内に入れ、侵害受容器の直接活性化により媒介される急性末梢疼痛を表す第I相行動を測定した。動物を5秒間隔で観察し、注射した足を舐めることおよび噛むことの出現を記録して、DubuissonおよびDennisのモデルで定義された疼痛スコア3を判定した。15分の休止時間としてマウスをホームケージに戻し、5分間再分析して炎症応答および/または神経原性応答の表れである第II相行動を測定した。群の大きさは6匹であり、ビヒクル群との比較で有意性を決定するために、対応のないt検定を使用した。
【0234】
ロータロッド試験:雌のスイスウェブスターマウスをロータロッド装置(Omnitech Electronics Inc.、Nova Scotia、Canada)で15rpmの一定速度でバランスを維持するように訓練し、連続した3つの時点で3分間行えるようにした。別々の群のマウス(n=10)は、化合物(10%DMSO、40%プロピレングリコール、および50%PBS)の腹腔内(i.p.)注射を5mL/kgで、または経口投与化合物(2.5%プロピレングリコールおよび2%ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を10mL/kgで受けた。各注射の10、30、および60分後、マウスをロータロッドに3分間乗せた。3分が経過する前にマウスが落下した場合、それを再びロッドに乗せた。マウスが2度目に落下した場合、落下した時間を記録した。有意性を2元配置ANOVAにより計算した。
【0235】
前述の詳細な説明および付随する例は、単なる例示であり、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ定義される本発明の範囲を限定するものとして捉えられるものではないことが理解される。
【0236】
開示された実施形態に対する様々な変更および改変が、当業者には明らかであろう。このような変更および改変は、本発明の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、組成物、製剤、または使用方法に関連するものを限定なしに含めて、その趣旨および範囲から逸脱することなく行うことができる。
【国際調査報告】