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特表2024-520755変力剤として使用するためのピペリジン尿素誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】変力剤として使用するためのピペリジン尿素誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 211/58 20060101AFI20240517BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C07D211/58 CSP
A61K31/445
A61P9/04
A61P31/04
A61P9/10
A61P9/12
A61P9/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575394
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 EP2022065013
(87)【国際公開番号】W WO2022253941
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】21177292.6
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505180070
【氏名又は名称】ヘルシン ヘルスケア ソシエテ アノニム
(71)【出願人】
【識別番号】523456009
【氏名又は名称】アナカルディオ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ラーシュ ルンド
(72)【発明者】
【氏名】アルベールト ベルナレッジ
(72)【発明者】
【氏名】エマヌエーラ ロバティ
(72)【発明者】
【氏名】クラウディオ ジュリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】クラウディオ ピエトラ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC21
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA37
4C086ZA38
4C086ZA42
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、変力剤としての、式(I)で表される化合物の使用に関する。好ましいものとして1-[(1S)-1-(2,3-ジクロロ-4-メトキシフェニル)エチル]-3-メチル-3-[(4R)-1-メチル-3,3-ジメチル-4-ピペリジル]-尿素及びその塩酸塩を含む式(I)の化合物は、正常及び心筋梗塞誘導性心不全動物モデルの両方からの心筋細胞に対して有意な変力活性を有することが本明細書において報告されており、これにより、それらは、それを必要とする心血管患者を処置するのに有用になる。既知の変力剤とは異なり、本発明の化合物は、カルシウム動員に影響を及ぼすことなく心筋細胞収縮性に有効である。したがって、それらは、有利なことに、酸素要求量の増加、頻脈、不整脈、虚血などの、カルシウム濃度の増加によって引き起こされる悪影響がない。それにより、全体として、新規で安全かつ有効な変力治療が利用可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変力剤として使用するための、式I:
【化1】
の化合物又はその薬学的に許容される塩であって、
式(I)中、
、R、Rは、互いに独立して、C~Cアルキルであり、
、Rは、互いに独立して、水素又はC~Cアルキルであり、
は、C~Cアルキル、ハロ、C~Cアルコキシ、又はC~Cハロアルキルであり、
nは、2~3であり、
mは、1~3である、化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記変力剤が、カルシウム濃度の増加によって引き起こされる副作用がない、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
が水素である、請求項1又は2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
nが2である、請求項3に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
がメチルである、請求項4に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
前記2つのR基が、式(I)のピペリジン環の同じ炭素環に、好ましくは3-イル位で結合している、請求項5に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
以下の条件:
及びRの両方が、C~Cアルキル、好ましくはメチルであること、
mが、3であること、
が、ハロ及び/又はアルコキシ、好ましくは少なくとも1つのRが、アルコキシであること;
のうちの1つ以上が該当する、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
1-[(1S)-1-(2,3-ジクロロ-4-メトキシフェニル)エチル]-3-メチル-3-[(4R)-1-メチル-3,3-ジメチル-4-ピペリジル]-尿素である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
前記薬学的に許容される塩が、一塩酸塩である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
それを必要とする患者における低下した及び/又は無効な心臓収縮性に関連する状態を処置するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
心不全、心臓発作、心源性ショック、敗血性ショック、心筋梗塞、心筋症、肺動脈性高血圧症(PAH)から選択される状態を処置するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
前記心筋症が、拡張型心筋症(DCM)、特に家族性DCMである、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
重度、末期、慢性、又は急性心不全を処置するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
心臓駆出率が低下した重度、末期、慢性、又は急性心不全を処置するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項15】
カルシウム濃度の増加による前記副作用が、心筋酸素要求量の増加、虚血、不整脈、及び低血圧から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変力剤として使用するためのピペリジン尿素誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
鬱血性心不全としても知られる心不全(Heart failure、HF)は、身体の代謝に必要な血流の速度を維持することができないか、又は神経ホルモン活性化に対して二次的にのみ維持することができ、とりわけ、体液貯留並びに心不全の徴候及び症状をもたらす、不十分な心臓拍動能力を特徴とする一般的な重篤な病理学的状態である。HFは、高齢者における入院の主な原因である。2015年には、世界中で約4000万人が罹患していた。全体として、成人の約2%が心不全を有し、65歳を超える成人では、これは6~10%に増加する。HFは致命的な結果をもたらす場合があり、診断後1年で約35%が死亡するリスクがある。
【0003】
心不全の徴候及び症状としては、一般的に、息切れ、過度の倦怠感、及び脚の腫脹が挙げられる。息切れは、通常、運動により、又は横になっている間に悪化し、夜間に人を目覚めさせる場合がある。心不全の一般的な原因としては、冠動脈疾患(以前の心筋梗塞(心臓発作)を含む)、高い血圧、心房細動、心臓弁膜症、過剰なアルコールの使用、感染、及び未知の原因の心筋症が挙げられる。これらの因子は、心臓の構造及び/又は機能を変化させることによって心不全を引き起こす。HFは、収縮又は弛緩する左心室の生理学的能力が失われているか保存されているかに応じて、駆出率の低下(HFrEF)又は駆出率の維持(HFpEF)と関連付けられ得る。
【0004】
HFの処置は、疾患の重症度及び原因に依存する。駆出率に関係なく慢性の安定心不全を有する人々において、処置は、一般的に、喫煙の停止、身体運動、及び食事の変更などの生活習慣の改善、高血圧などの根底にあるリスク因子の処置、並びに利尿剤による症状の軽減からなる。HFを処置するのに有用な薬物のクラスは、本質的に非常に多様であり、以下のものなどの異なる効果及び作用機構を有する分子を含む:血管を拡張し、血流を容易にし、血圧を下げることを目的とする、血管拡張薬;体液貯留を助けることを目的とする、利尿剤及びアルドステロン拮抗薬;心機能及び平均余命を改善することを目的とする、ACE阻害剤、ARB又はARNi薬;心臓の収縮を強化することを目的とする、ジギタリス配糖体;血液凝固を防止するための抗凝固剤又は抗血小板物質;心機能を改善するためのβ遮断薬;複雑で有益な効果を有するSGLT2阻害剤、不安を軽減するための精神安定剤。例えば、駆出率の低下による心不全の患者では、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、アンギオテンシン受容体遮断薬、又はサクビトリル/バルサルタン(ARNi)と、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、及びナトリウム-グルコース共輸送体2阻害剤(SGLT2阻害剤)との併用が推奨される。
【0005】
HFrEFにおける有害な構造的及び/又は機能的心臓変化を遮断し、潜在的に逆転させることを目的とした上記のアプローチは、心不全及び死亡についての入院のリスクも低減する。しかしながら、それらは、HFの根底にある病理:心臓収縮性の低下に対処することができない。収縮性を増大させる薬物(従来、変力物質と呼ばれている)も利用可能である:それらとしては、ホスホジエステラーゼ-3(PDE3)阻害剤(例えば、ミルリノン)及びアドレナリン作動薬(例えば、ドブタミン)が挙げられる。これらの薬剤は、概して、カルシウム濃度を増加させることによって作用し、これは、心筋酸素要求量の増加、虚血、不整脈を含むいくつかの有害作用を引き起こし、また、様々な機構を介して過剰な低血圧を引き起こす。レボシメンダンは、いくつかの国で利用可能であり、カルシウム感受性を増大させることによって部分的に作用するが、PDE3阻害を介しても作用し、カルシウム濃度を増加させ、不整脈を引き起こし、血管系にも作用し、低血圧を引き起こす。
【0006】
新しいクラスの変力物質であるミオシン活性化因子が開発中であるが、それらは虚血を誘導し、トロポニンの上昇を引き起こす場合があるという懸念があり、第3相の結果は、CV死亡率に対する利益がないことを示唆している(New England Journal of Medicine 2021 Jan 14;384(2):105-116)。トロポニンレベルの増加は、敗血症、腎臓疾患、肺塞栓症、心臓感染症、及び心不全の場合にも報告されており、有意な予後値を有する。
【0007】
グレリンは、胃腸管の細胞によって産生されるホルモンであり、成長ホルモンの放出を刺激し、胃の運動性/分泌を増加させ、食欲及び食物摂取を刺激する。グレリンはまた、報酬認知学習及び記憶、睡眠覚醒サイクル、味覚、報酬行動、並びにグルコース代謝の調節に関与する。グレリンについて心血管効果も報告されている:健康な対象において、グレリンは動脈を拡張し、血圧を低下させ、心臓後負荷を減少させ、心拍出量を増加させる(Hypertension,2014,64,450-454)。グレリンの可能な変力作用に関して、矛盾する報告が文献に存在する。Endocrinology 2010,15(1),4446-4454において、虚血後のグレリンの心臓灌流は、心筋細胞に対する変力作用を生じることが見出された。しかしながら、Peptides,2006,27(7),1616-1623において、グレリンは、KCaチャネルによって部分的に媒介される負の変力作用を生じることが見出された。刊行物International Journal of Cardiology,2009,137(3),267-275は、心不全のラットモデルにおいて心機能に対するヒトグレリンの効果がないことを報告している。同様に、単離されたペーシングされた心房においてグレリンについて変力作用は見出されなかった(Cardiovascular Research,2006,69,227-235)。
【0008】
成長ホルモン分泌促進物質は、グレリンと同様に成長ホルモンの分泌を刺激する合成ペプチドである。それらのいくつかは、冠動脈抵抗の増加、心拍数の加速、及び強心効果などの心血管効果を示し得、後者はカルシウム動員を介して得られる(Endocrinology,2003,144(11),5050-5057)。
【0009】
グレリン媒介疾患の処置に使用するための、グレリン調節活性を有する不斉尿素誘導体のファミリーは、国際公開第2012/116176号及び国際公開第2015/134839号に開示されている。これらの文献には、開示された化合物のいずれについても心臓への作用の実験的証拠は存在しない。更なる出願である国際公開第2019/179878号は、3-(1-(2,3-ジクロロ-4-メトキシフェニル)エチル)-1-メチル-(1,3,3-トリメチルピペリジン-4-イル)尿素の塩酸塩に焦点を当てており、脳透過特性を増強し、多くの神経障害を処置するために使用されている。この化合物はまた、中枢媒介徐脈性効果を有することが報告されている。徐脈は、重篤である場合には明白な心不全を促進し得るが、軽度である場合には心不全において保護的であり得る、可能な因子として文献で考察されている(European Heart Journal,1999,20,252-255)。刊行物Endocrinology,2010,151(9),pp.4446-4454は、天然成長ホルモン分泌促進物質グレリン(28アミノ酸ポリペプチド)及びその類似体ヘキサレリンについてのカルシウム媒介による正の変力作用を報告している。この論文はまた、負の変力作用の報告された事例を含む、成長ホルモン分泌促進物質の全般的なクラスの効果に関する矛盾する報告の存在を認めている。
【0010】
上記の先行技術を考慮すると、安全であり、有害作用、特にカルシウム動員によって引き起こされる有害作用がない、HFの中核的な問題及び根底にある原因、すなわち、心臓収縮性の低下に対処することができる薬剤に対する必要性が依然として高い。
【発明の概要】
【0011】
本発明者らは、予期せぬことに、式(I)で表される化合物
【化1】
[式中、ラジカルR~R及び添え字m、nは、詳細な説明において定義される]が、心筋細胞に対して明確な変力活性(inotropic activity)を有し、これにより、それらは、それを必要とする心血管患者を処置するのに有用になることを見出した。
本発明の化合物としては、好ましいものとして1-[(1S)-1-(2,3-ジクロロ-4-メトキシフェニル)エチル]-3-メチル-3-[(4R)-1-メチル-3,3-ジメチル-4-ピペリジル]-尿素及びその塩酸塩が挙げられ、それによると、低下した及び/又は無効な心臓収縮性を特徴とする又はそれに関連する病理学的状態の処置において有効である。これらの状態の例としては、心不全、心臓発作、心源性ショック、敗血性ショック、心筋梗塞、心筋症、肺動脈性高血圧症(pulmonary artery hypertension、PAH)などがある。好ましい適応症は心不全であり、これはタイプ(すなわち、急性又は慢性、及び駆出率の低下又は維持)、重症度(軽度、中等度、又は重度)及び段階(すなわち、初期又は末期)のいずれであってもよい。より好ましい適応症は、急性又は慢性のいずれかの末期心不全である。最も好ましい適応症は、駆出率が低下した(HFrEF)、急性又は慢性のいずれかの末期心不全である。心筋症の好ましい例は、拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy、DCM)、特に遺伝的変異によるDCM(家族性DCMとしても知られる)である。PAHの好ましい例は、右心室収縮機能でのPAHである。
【0012】
化合物1-[(1S)-1-(2,3-ジクロロ-4-メトキシフェニル)エチル]-3-メチル-3-[(4R)-1-メチル-3,3-ジメチル-4-ピペリジル]-尿素及びその塩酸塩を含む式(I)の化合物は、カルシウム動員に影響を及ぼすことなく変力活性を発揮する点で更に有用であり、実際、心筋細胞サイトゾル中のカルシウム濃度を増強するのではなく、既存のカルシウムレベルに対する心筋細胞サルコメア感受性を増強することによって作用する。その結果、本発明の化合物により、それを必要とする患者において有意な変力応答を得る一方で、酸素要求量の増加、頻脈、不整脈、虚血などの、本明細書では簡単に「カルシウム濃度の増加」と呼ばれる心筋細胞サイトゾル中のカルシウム濃度の増加によって引き起こされる既知の変力剤の一般的な有害作用を回避する。このようにして、全体として、新しく安全で有効な変力処置が利用可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(上)AC01/HM01は、マウス心筋細胞における収縮性の用量依存的増大を誘導した(上パネル)。AC01/HM01の収縮作用は、長さ短縮率(fractional shortening、FS%)の変化を読み取り値として使用し、異なる濃度(0.2、0.5、及び1μM)で、心筋細胞(SHAM、すなわち、心筋梗塞を誘導せずに偽処置を受けた心筋細胞)で測定された。1μMのAC01/HM01は、ビヒクルと比較して最大の収縮作用を示した(p<0.05、**p<0.01)。棒グラフは、記載のように分析されたN細胞の平均短縮率を示す。(下)AC01/HM01は、SHAMマウスと心不全(HF)マウス(マウスは左前下行枝の結紮を受け、心筋梗塞を引き起こした。数週間後、マウスは心不全を発症した。)との両方の心臓から単離された心筋細胞において、D-Lys3(特異的グレリン拮抗薬)によって阻害される収縮性の増大を誘導した。心筋細胞収縮性はグレリン受容体拮抗薬AC01/HM01(1μM)で増加したが、グレリン受容体拮抗薬D-Lys3-GHRP-6(3μM)での前処置は収縮作用を遮断した。SHAM群(左)及びMI群(右)の両方から単離された心筋細胞は、それらの収縮性を増大させることによって、AC01/HM01に対して正に応答した。(p<0.05、**p<0.01)。棒グラフは、記載のように分析されたN細胞の平均を示す。
【0014】
図2】(左及び右上)ビヒクル又は異なる濃度のAC01/HM01で処置したSHAMの心臓から単離された心筋細胞における代表的なラインスキャン画像(左)及びCa2+過渡(動員)曲線(右上)である。AC01/HM01による処置は、いずれの濃度においてもCa2+過渡振幅の変化を引き起こさなかった。これは、図1における収縮性の増大が、Ca2+過渡ではなくCa2+感受性の増大に起因することを示す。(右下)棒グラフは、記載のように分析されたN細胞の平均Ca2+過渡を示す(p=全ての比較について有意ではない)。
【0015】
図3】SHAMマウスの心臓から単離された心筋細胞における代表的なラインスキャン及びCa2+過渡曲線である。代表的なCa2+過渡ラインスキャン(左)、代表的な振幅変化曲線(右)、及びSHAMマウスの心臓から単離された心筋細胞における平均Ca2+過渡振幅(下)である。D-Lys3 GHRP-6による又はよらないAC01/HM01処置(1μM)は、Ca2+過渡振幅を変化させなかった。棒グラフは、記載のように分析されたN細胞の平均を示す。
【0016】
図4】ウェスタンブロットによって評価したホスホ(セリン22~23)cTnIレベルである。 (上):リン酸化cTnI及び総cTnIの代表的なブロットである。SHAM心筋細胞のAC01/HM01(1μM;中央カラム)による処置により、残基セリン22~23での心筋トロポニンIのリン酸化のレベルを低下させた。グレリン受容体拮抗薬、D-Lys3-GHRP-6(3μM、右カラム)による前処置により、心筋細胞においてAC01/HM01によって活性化されたシグナル伝達を遮断し、cTnIのリン酸化レベルをビヒクル処置心筋細胞において観察された生理学的レベルに回復させた(左カラム)。 (下):ビヒクル処置心筋細胞に対する倍率変化として表されるホスホ-TnIの発現レベルを示す棒グラフである。心筋細胞のバッチ(約10細胞)をチューブに回収し、記載のように処置した。棒グラフは、記載のように分析したNバッチの平均を示す(p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
図5】単離された心筋細胞におけるプロテインキナーゼA(Protein kinase A、PKA)活性である。AC01/HM01(1μM)により処置した心筋細胞は、PKA活性の低下を示した(灰色バー)。D-Lys3-GHRP-6は、AC01/HM01細胞内シグナル伝達を遮断し、ビヒクルで処置した心筋細胞(白色バー)と同様に、PKA活性を生理学的レベル(赤色バー)に回復させた。心筋細胞のバッチ(約10細胞)をチューブに回収し、記載のように処置した。棒グラフは、Nバッチの平均を示す。
【0017】
図6】AC01/HM01とグレリン受容体との相互作用によって誘発される分子シグナル伝達:AC01/HM01は、Gαiシグナル伝達を活性化し、これは、PKAの活性の低下及びセリン22~23におけるcTnIのリン酸化の減少に関連する。この機構は、心筋細胞におけるCa2+に対する感受性の増強及びAC01/HM01刺激後の収縮性の改善に関与する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の主な目的は、変力剤として使用するための、式(I)の化合物又は式(I)のその薬学的に許容される塩の提供である。
【化2】
本発明の式(I)において、
、R、Rは、互いに独立して、C~Cアルキルであり、
、Rは、互いに独立して、水素又はC~Cアルキルであり、
は、C~Cアルキル、ハロ、C~Cアルコキシ、又はC~Cハロアルキルであり、
nは、2~3であり、
mは、1~3である。
【0019】
全体として、本発明の式(I)において、「アルキル」という用語は、直鎖アルキル及び分岐アルキルの両方を含む。「C~C」という用語は、1~nの範囲の単一同族体の各々を開示し、例えば、C~Cという用語は、C、C、C、C、C、Cと同等である。
【0020】
全般的な好ましい実施形態では、Rは水素である。
【0021】
より好ましい実施形態では、Rは水素であり、nは2である。
【0022】
更により好ましい実施形態では、Rは水素であり、nは2であり、Rはメチルである。
【0023】
更により好ましい実施形態では、Rは水素であり、nは2であり、Rはメチルであり、2個のR基は、ピペリジン環の同じ炭素原子、特にピペリジン窒素原子に直接結合していない炭素原子に結合しており、すなわち、それらはピペリジン環の3-イル位(5-イル位と等価)に結合している。
【0024】
好ましい変形形態では、上記に提示された実施形態は全て、以下の条件のうちの1つ以上、好ましくは全てによって更に特徴付けることができる。
及びRの両方が、C~Cアルキル、好ましくはメチルであること、
mが、3であること、
が、ハロ及び/又はアルコキシであり、好ましくは少なくとも1つのRが、アルコキシであること。
【0025】
がC~Cアルキルである式(I)の化合物は、全般的に適用可能な変形形態を表す。あるいは、Rが水素である式(I)の化合物は、別の全般的に適用可能な変形形態を表す。
【0026】
「ハロ」という用語は、本明細書では、塩素、フッ素、臭素、又はヨウ素を示す。好ましくは、「ハロ」という用語は、塩素を示す。好ましくは、アルコキシという用語は、メトキシ又はエトキシを示す。
【0027】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書では、薬学的実践において通常非毒性とみなされる任意の塩を意味する。特に、式(I)の化合物が塩形成アミンである場合、任意の好適な塩形成酸を薬学的実践において使用して、式(I)の遊離塩基から薬学的に許容される塩を形成することができる。典型的な薬学的に許容される塩は、塩化水素酸塩(hydrochloric acid salt)(塩酸塩(hydrochloride))、特に一塩酸塩である。
【0028】
式(I)の化合物は、2個の不斉炭素原子を含有し、異なる立体異性体形態及びそれらの混合物で存在することができ、全て本発明の式(I)に含まれる。これらの中で、以下の構造に対応する1(S)、4(R)型が好ましい:
【化3】
式中、R、R、R、R、R、R、m、及びnは、上で定義した意味を有する。特に好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、1-[(1S)-1-(2,3-ジクロロ-4-メトキシフェニル)エチル]-3-メチル-3-[(4R)-1-メチル-3,3-ジメチル-4-ピペリジル]-尿素、又はその薬学的に許容される塩、特に、以下の構造(Ia)を有する一塩酸塩である。
【化4】
【0029】
構造(Ia)の化合物は、例えばFrontiers in Pharmacology,2018,Vol.9,article 869,pp.1-16からそれ自体公知であり、本明細書では区別せずに略してAC01又はHM01と呼ぶ。
【0030】
本発明の式(I)の化合物の活性に言及する場合、用語「変力剤」及び用語「変力活性」又は「変力作用」は、問題の化合物が患者の心臓の収縮性及び力を刺激する、すなわち増強することができることを示す。変力という用語は、本明細書では、「正の」変力活性を意味し、すなわち、筋肉に対する作用は刺激性のものであり、反対の負の変力作用に拡張されない。本発明の化合物の変力活性は、心筋の細胞(heart muscle cell)(すなわち、心筋細胞(myocardial cell))に対して有効であり、これは、関連する筋肉器官(すなわち、心臓)の収縮性の増強の形で現れる。収縮性の増大は、心機能、特にその収縮の強さを改善し、その結果、拍動能力が増強され、結果として、血液送達及び様々な身体部位の酸素化が改善される。
【0031】
利用可能な変力剤とは異なり、本発明の式(I)の化合物の変力作用は、カルシウム濃度の増加によって媒介されるものではない。この作用は、心筋細胞サイトゾルにおけるカルシウム濃度の増加がない、すなわち、細胞外空間及び筋小胞体からのカルシウムの放出及び流動がないという証拠によって実験的に導き出される。したがって、予期せぬことに、これらの化合物は、筋細胞の基礎カルシウム濃度を増加させることなく収縮に有効であること、すなわち、それらはむしろ既存のレベルのカルシウムに対する細胞の感受性を増強することが見出された。したがって、「変力剤」という用語は、より正確には、「カルシウム感作に基づく」変力剤として、あるいは「カルシウムレベルが中性の」変力剤として定義することができる。したがって、本発明の式(I)の化合物に典型的な、対応する変力活性は、心筋酸素要求量の増加、虚血、不整脈、及び過度の低血圧などの細胞カルシウム濃度の増加による副作用が含まれないという点で、利用可能な変力剤とは有利に異なる。したがって、問題の医療用の使用は、細胞カルシウム濃度の増加に関連する上述の副作用がないことを更に特徴とする。
【0032】
本発明の式(I)の化合物は、減少した及び/又は無効な心臓収縮性を特徴とする又はそれに関連するヒト又は動物患者の任意の病理学的状態の処置における使用に有効である。これらの状態の例は、心不全(鬱血性心不全とも呼ばれる)、心臓発作、心源性ショック、敗血性ショック、心筋梗塞、心筋症、肺動脈性高血圧症(PAH)などである。好ましい適応症は心不全であり、これはいずれのタイプ(すなわち、急性又は慢性、駆出率の低下又は維持)、重症度(軽度、中等度、又は重度)及び段階(すなわち、初期又は末期)であってもよい。本処置が特に必要とされる/有効である心不全状態は、駆出率が低下した心不全(HFrEF)、特に末期HFrEFであり、当該心不全は急性又は慢性のいずれかである。特に指示される処置は、初期又は末期段階のいずれかの慢性HFrEFである。心筋症の好ましい例は、拡張型心筋症(DCM)、特に遺伝的変異によるDCM(家族性DCMとしても知られる)である。PAHの好ましい例は、右心室収縮機能でのPAHである。
【0033】
本発明による使用は、変力剤による長期にわたる処置を必要とする状態、例えば、慢性形態の心不全において特に有利であり、これらの全ての場合において、カルシウム関連副作用の付随する発症を回避することは、長期的には致命的であり得る危険な結果に長期間曝露されることを防止し、それにより、より長い生存期間の観点からより安全な変力療法を利用可能にするという点で、患者にとって特に有益である。
【0034】
したがって、好ましい実施形態では、本発明の医療用の使用は、有利には、心筋細胞中のカルシウム濃度の増加に関連する副作用が特に回避される患者の亜集団、すなわち、虚血、不整脈、及び/又は低血圧を有したか、有するか、又は有するリスクがある患者に向けられ、これは、上記の副作用の発生が非常に危険であり、場合によっては致命的であり得る、より脆弱な心血管患者の亜群に対応する。
【0035】
本明細書において処置される心不全は、心筋を弱める任意の疾患、又は心筋の硬化を引き起こす疾患、又は心臓が送達する能力を超えて体組織による酸素要求量を増加させる疾患によって引き起こされ得る。多くの疾患は、心室の拍動活動を損なう場合がある。例えば、心室の筋肉は、以前の心臓発作又は炎症(心筋炎)によって弱められ得、経時的に末期心不全につながる。筋肉弱化による心室の拍動能の低下は、収縮機能障害と呼ばれる。各心室収縮(心収縮)の後、心室筋は、心房からの血液が心室を満たすことを可能にするために弛緩する必要がある。心室のこの弛緩は、拡張期と呼ばれる。ヘモクロマトーシス又はアミロイドーシスなどの疾患は、心筋の硬化を引き起こし、心室の弛緩及び充満能力を損なう場合がある。これは、拡張機能障害と呼ばれる。この最も一般的な原因は、長期にわたる高い血圧により心臓が肥厚(肥大)することである。加えて、一部の患者では、心臓の拍動活動及び充満能力は正常であり得るが、身体組織による異常に高い酸素要求量(例えば、甲状腺機能亢進症による)により、心臓が適切な血流を供給することを困難にし得る(高拍出性心不全と呼ばれる)。一部の患者では、これらの因子の1つ以上が存在することで、鬱血性心不全を引き起こし得る。鬱血性心不全は、身体の多くの器官に影響を及ぼし得る。例えば、弱った心筋は、腎臓に十分な血液を供給することができない場合があり、腎臓はその後、塩(ナトリウム)及び水を排泄する正常な能力を失い始める。この腎機能の低下は、身体により多くの体液を保持させ得る。肺は体液で鬱血し(肺水腫)、人の運動能力が低下する。体液は同様に肝臓に蓄積し、それによって身体から毒素を除去し、必須タンパク質を産生するその能力を損なう場合がある。腸は、栄養素及び薬剤を吸収する効率が低下する場合がある。処置されていないか、又は既存の処置で最適に処置されている場合であっても、経時的に、鬱血性心不全の悪化は、身体の実質的に全ての器官に影響を及ぼす。これは、その後の心不全の発症につながる元の事象に関係なく起こる。したがって、本処置は更に、心不全の上述の症状及び作用の全てを処置することを対象とする。
【0036】
本発明は更に、上記の病理学的状態のいずれかを処置するための変力薬剤の製造における、上記で定義した式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用として特徴付けることができる。本発明は更に、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与することを含む、上記の病理学的状態のいずれかを処置する方法として特徴付けられる。
【0037】
本処置の対象となる好適な対象としては、哺乳動物対象が挙げられる。哺乳動物としては、いずれかの性別及び任意の発達段階のヒト対象が挙げられる。哺乳動物としては更に、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ブタ、げっ歯類、ウサギ、霊長類などが挙げられるがこれらに限定されず、子宮内の哺乳動物も包含する。
【0038】
有用な用量範囲は、好ましくは0.1~10mg/日、例えば0.2~10mg/日の範囲であり得る。1日用量は、1日2回以上の投与、好ましくは1日2回の投与、例えば0.1~5mgでBID(1日2回)に分割することができる。
【0039】
本発明の式(I)の化合物は、上記の1日用量を投与するのに好適な薬学的に投与可能な剤形で製剤化することができる。例えば、それらは、式(I)の化合物を0.1~10mgの範囲の量で含有してもよく、又は毎日の反復投与を意図する場合には、この量の一部を含有してもよい。
【0040】
当業者は、過度の実験を行うことなく、個人の知識及び本出願の開示に依存して、製造される特定の医薬形態に関してこれらの範囲を最適化することができる。
【0041】
経口投与のための固体剤形は、例えば、各々が所定量の少なくとも1つの開示された化合物を含有する、ハード又はソフトカプセル、丸剤、カシェ剤、トローチ剤、サシェ剤、錠剤又はミニ錠剤などの個別の単位で提供され得る。いくつかの形態では、経口投与は、粉末又は顆粒形態であり得る。いくつかの形態では、経口剤形は、舌下であり、例えば、トローチ剤又は経口フィルムなどである。このような固体剤形において、式Iの化合物は、通常、1つ以上の補助剤と組み合わされる。このようなカプセル又は錠剤は、制御放出製剤であり得る。カプセル剤、錠剤、ミニ錠剤、及び丸剤の場合、剤形は緩衝剤を含むこともでき、又は腸溶コーティングを用いて調製することもできる。
【0042】
経口投与用の液体剤形としては、例えば、当技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤(例えば、水)を含有する薬学的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、及びエリキシル剤が挙げられる。このような組成物はまた、補助剤、例えば、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、香味剤(例えば、甘味剤)、及び/又は芳香剤を含み得る。
【0043】
いくつかの形態では、開示される組成物は、非経口剤形を構成し得る。「非経口投与」には、例えば、皮下注射、静脈内注射、腹腔内、筋肉内注射、胸骨内注射、及び注入が含まれる。注射用調製物(例えば、滅菌注射用水性又は油性懸濁液)は、好適な分散剤、湿潤剤、及び/又は懸濁化剤を使用して、公知の技術に従って製剤化することができる。典型的には、製剤を等張性にするために、適切な量の薬学的に許容される担体が製剤中で使用される。薬学的に許容される担体の例としては、生理食塩水、リンガー溶液、及びデキストロース溶液が挙げられるが、これらに限定されない。他の許容される賦形剤としては、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存剤、界面活性剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
開示される化合物は、任意の好適な経路によって、好ましくはそのような経路に適合された医薬組成物の形態で、意図される処置又は予防に有効な用量で投与することができる。活性化合物及び組成物は、例えば、経口投与、直腸投与、非経口投与、眼内投与、吸入投与、又は局所投与することができる。特に、投与は、皮膚上、吸入、浣腸、結膜、点眼剤、点耳剤、肺胞、鼻、鼻腔内、膣、膣内、経膣、眼、眼内、経眼、経腸、経口、口腔内、経口、腸、直腸、直腸内、経直腸、注射、注入、静脈内、動脈内、筋肉内、脳内、心室内(intraventricular)、脳室内(intracerebroventricular)、心臓内、皮下、骨内、皮内、髄膜下腔内、腹腔内、膀胱内、海綿体腔内、髄内、眼内、頭蓋内、経皮、経粘膜、経鼻、吸入、大槽内、硬膜外、硬膜外、硝子体内などであり得る。好ましい投与経路は、経口又は静脈内である。
【0045】
本発明の式(I)の化合物は、概ね治療有効量で投与される。治療有効量は、疾患の重症度、対象の年齢及び相対的健康状態、使用される化合物の効力、並びに他の因子に応じて広く変動し得る。式(I)の化合物の治療有効量は、約0.001mg/Kg体重~約0.1mg/Kg体重、好ましくは約0.001mg/Kg体重~約0.01mg/Kg体重の範囲であってよい。当業者は、過度の実験を行うことなく、個人の知識及び本出願の開示に依存して、上述の様々な病理学的状態の各々に関してこれらの範囲を最適化することができる。
【0046】
本出願全体を通して、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、本出願が関係する現況技術をより完全に説明するために、その全体が参照により本出願に組み込まれる。開示された参考文献はまた、その参考文献が依拠される文章において論じられる、それらに含まれる材料について、参照により本明細書に個々にかつ具体的に組み込まれる。
【0047】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数の対象物を含む。したがって、例えば、「病理学的状態」の処置への言及は、同じ対象において同時に起こる場合であっても、2つ以上のそのような状態の処置を含む。
【0048】
本明細書で使用される「又は(or)」という単語又は同様の用語は、特定のリストの任意の1つのメンバーを意味し、そのリストのメンバーの任意の組み合わせも含む。
【0049】
「任意選択の(Optional)」又は「任意選択で(optionally)」は、その後に記載される事象又は状況が起こっても起こらなくてもよく、その説明には、当該事象又は状況が起こる場合と起こらない場合が含まれることを意味する。
【0050】
「約(approximately)」という用語は、任意のパラメータの値及びその範囲を変更するために使用される場合、例えば、化合物、組成物などを製造するために使用される典型的な測定及び取り扱い手順により、これらの手順における不注意な誤りにより、これらの方法を実施するために使用される出発物質又は成分の製造、供給源、又は純度における差異により、及び同様の考慮事項により発生し得る数値量の実験的変動を指す。「約」という用語はまた、特定の初期濃度又は混合物を有する組成物又は製剤の老化に起因する異なる量、及び特定の初期濃度又は混合物を有する組成物又は製剤の混合又は加工に起因する異なる量も包含する。これら全ての実験的変動は、通常、所与の値の±5%以内に維持される。「約」という用語によって修飾されるかどうかにかかわらず、本明細書に添付される特許請求の範囲は、これらの量の均等物を含む。
【0051】
「含む(comprise)」という用語、並びに「含む(comprising)」及び「含む(comprises)」などの単語の変形は、「含むが、これらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味し、例えば、他の添加剤、構成要素、整数、又はステップを除外することを意図しない。
【0052】
「処置する(treating)」又は「処置(treatment)」という用語は、疾患、病理学的状態、又は障害を治癒、改善、安定化、又は予防する意図での患者の医学的管理を意味する。これらの用語は、積極的処置、すなわち、疾患、病理学的状態、又は障害からの改善に特に向けられた処置を含み、また、原因処置、すなわち、関連する疾患、病理学的状態、又は障害の原因の除去に向けられた処置であって、心臓収縮性などの病理学的に減少した任意のパラメータを増加させることを含む、疾患前の患者の元のパラメータの回復を伴う、処置も含む。これらの用語は、根底にある疾患の症状が低減されること、及び/又は症状を引き起こす根底にある細胞性、生理学的、若しくは生化学的原因若しくは機構のうちの1つ以上が低減されることを意味し得る。この文脈で使用される場合、低減されるとは、疾患の生理学的状態だけでなく、疾患の分子状態を含む疾患の状態に対して相対的であることを意味することが理解される。加えて、これらの用語は、対症処置、すなわち、疾患、病理学的状態、又は障害の治癒ではなく症状の軽減のために設計された処置;予防的処置、すなわち、関連する疾患、病理学的状態、又は障害の発症を最小限に抑えるか、又は部分的若しくは完全に阻害することに向けられた処置;及び支持的処置、すなわち、関連する疾患、病理学的状態、又は障害の改善に向けられた別の特定の療法を補足するために用いられる処置を含む。これらの用語は、治癒又は軽減の目的を有する処置、及び予防の目的を有する処置の両方を意味する。処置は、救急で、又は長期にわたってのいずれかで行うことができる。処置は、1つ以上の症状又は特徴を、対照と比較して少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、99.9%、99.99%、100%低減することを意味し得ることが理解される。これらの用語の文脈において、予防は、疾患を有すると診断された患者、又はそのような疾患を発症するリスクがある患者において、本明細書において特定される疾患を予防する、化合物又は組成物(例えば、開示される化合物及び組成物)の能力を指す。この文脈において、予防には、対照と比較して疾患の発症を遅延させることが含まれる。これらの用語は、処置が実際に意図される結果のいずれかをもたらすのに有効であることを要件としない。結果が意図されるものであると、十分である。
【0053】
当業者に周知の略語が、本明細書で使用され得る(例えば、時間を表す「h」又は「hr」、グラムを表す「g」又は「gm」、ミリリットルを表す「mL」、及び室温を表す「rt」、ナノメートルを表す「nm」、モルを表す「M」などの略語)。
【0054】
以下の実施例は、特許請求される化合物、組成物、物品、デバイス、及び/又は方法がどのように作製され評価されるかの完全な開示及び説明を当業者に本明細書で提供するために提示され、純粋に例示的であることが意図され、本開示を限定することは意図されない。数(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保するための努力がなされているが、いくらかの誤差及び偏差を計算に入れる必要がある。別段の指示がない限り、部は重量部であり、温度は℃単位である。言及されない場合、温度は周囲温度であり、圧力は大気圧又はその付近である。
実験
【0055】
実施例1
心筋梗塞誘導性心不全のマウスモデル及び対照マウスの心筋細胞に対するHM01の作用
方法
動物試験のための倫理的承認
試験は、Karolinska Institutet(Stockholm,Sweden)で実施した。この試験は、動物実験に関するストックホルム北倫理委員会(Stockholm North Ethical Committee)によって承認された。動物実験は、スウェーデン動物福祉法、スウェーデン福祉条例、及びスウェーデン当局からの勧告及び適用可能な規則(Ethical permit 2155-2020及びN273-15)に従った。動物試験は、科学的目的のために使用される動物の保護に関する欧州議会の指令2010/63/EUからのガイドラインに従った。マウスを12時間の明/暗サイクルで維持し、食物及び水を自由に与えた。
【0056】
心筋梗塞誘導性心不全のマウスモデル
12~16週齢のC57BL/6マウスを、酸素及びイソフルランのガス混合物で麻酔した。心筋梗塞(Myocardial infarction、MI)を、以前に記載されたように、左冠動脈の永久結紮によって誘導した。SHAM手術した動物は、冠動脈結紮術なしで同じ手順を受けた(SHAM)。心不全(HF)の徴候がMI群において明らかになったとき、動物を手順後4週間で殺した:心エコー検査では、左心室短縮率(FS)の低下及び非収縮性梗塞前壁を示した(%FS MI=29.3±1.1、SHAM=61.4±2.1)。鎮静後、マウスを頸部脱臼により安楽死させ、心臓を収集し、心筋細胞単離のために処理した。心臓肥大症を評価するためのパラメータとして、心臓重量対体重比を使用した(心臓重量/体重MI=9.5±1.3、SHAM=6.0±0.4)。更に、MIを有するマウスの心臓は、左心室の約1/3を覆う、冠動脈閉塞の下の前LV壁上の壊死性梗塞領域が明らかであった。合計で、5匹のSHAMマウス及び3匹のMIマウスを試験に使用した。
【0057】
心筋細胞の単離
心筋細胞を、Alliance for Cellular Signalling(AfCS Procedure Protocol ID PP00000125)によって開発されたプロトコルに従って、SHAMマウス及びHFマウスから別々に心室から新たに単離した。5個のSHAM心臓及び3個のHF心臓の各々から細胞懸濁液を作製し、各々10個のアリコートに分割し、合計でSHAM心臓から50個のアリコート及びHF心臓から30個のアリコートとした。これらのアリコートを、記載のようにビヒクル、AC01/HM01、又はD-Lys3-GHPR-6+AC01/HM01で処置し、その後の生理学的及び生化学的実験に使用した。
【0058】
試薬
AC01/HM01をリン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS:mM単位:NaCl 137、KCl 7、NaHPO 10、KH2PO4 1.8 M)中に懸濁し、希釈して3つの異なる濃度:タイロード液中0.2、0.5、又は1μMを得た。本発明者らは、0.2~1μM内の濃度範囲を使用して、受容体が活性化されることを確保した。D-Lys3 GHRP-6(グレリン受容体拮抗薬;Sigma Aldrich(Stockholm、Sweden);拮抗活性についてのIC50=0.9μM)を、PBS中に懸濁し、タイロード液中の最終的な濃度として3μMで使用した(mM単位:NaCl 121、KCl 5.0、CaCl2 1.8、MgCl2 0.5、NaH2PO4 0.4、NaHCO3 24、EDTA 0.1、グルコース 5.5)。収縮性及びCa2+シグナル伝達測定並びに生化学的アッセイの前に、SHAM心臓及びHF心臓からの心筋細胞懸濁液を、3つのタイプの処置:ビヒクル、AC01/HM01、又はD-Lys3-GHPR-6+AC01/HM01に無作為化した。異なる薬剤による処置は、室温で15分間行った。いくつかの細胞懸濁液アリコートを液体N中で急速冷凍し、後の生化学分析のために-80℃で保存した。全ての実験は、心筋細胞の処置に関して盲検で実施した。
【0059】
共焦点撮像
新鮮な単離された心筋細胞を1.5mLチューブにアリコートし、細胞透過性形態の蛍光Ca2+指示薬Fluo-3 AMと共にインキュベートした後、5分間以上洗浄した。異なる試薬で刺激する前に、細胞をラミニン被覆ガラス底ディッシュ(Mattek(Ashland,MA,USA))に播種し、これは特注の灌流/刺激チャンバを構成し、ビヒクル溶液を表す、次の組成(mM単位:NaCl 121、KCl 5.0、CaCl2 1.8、MgCl2 0.5、NaH2PO4 0.4、NaHCO3 24、EDTA 0.1、グルコース 5.5)のO2/CO2(95/5%)泡状タイロード液で継続的に灌流した。心筋細胞のSHAMからの15バッチ及びHFからの9バッチを異なる処置:ビヒクル、AC01/HM01(0.2、0.5、又は1μM)又はD-Lys3-GHPR-6(3μM)、続いてAC01/HM01(1μM)での前処置に無作為化した。灌流/刺激チャンバに取り付けられた2つの白金電極間の電場を使用して、心筋細胞を1Hz、閾値超え電圧で刺激して収縮させた。ラインスキャン蛍光画像は、電気刺激時に収縮し正常な形態(例えば、横紋のある「レンガ状」)を示した心筋細胞についてのみ、共焦点顕微鏡(Biorad;40x油浸レンズ)を使用して撮影した。自発的収縮を示した細胞は分析しなかった。ImageJソフトウェア(NIH(Bethesda,USA)によって開発されたオープンソースソフトウェア)を使用して、単一心筋細胞の蛍光(Ca2+過渡)及び収縮性の変化を定量化した。
【0060】
心筋細胞収縮性の測定
新鮮な単離された心筋細胞を1.5mLチューブにアリコートし、細胞透過性形態の蛍光Ca2+指示薬Fluo-3 AMと共に約20分間インキュベートした後、5分間超洗浄した。細胞をラミニン被覆ガラス底ディッシュ(35mm(Mattek(Ashland,MA,USA))に播種し、次いで、特注の灌流/刺激チャンバに取り付けた。細胞を、ビヒクル溶液を表す、次の組成(mM単位)(NaCl 121、KCl 5.0、CaCl2 1.8、MgCl2 0.5、NaH2PO4 0.4、NaHCO3 24、EDTA 0.1、グルコース 5.5)のO2/CO2(95/5%)泡状タイロード液で継続的に灌流した。
【0061】
SHAMからの心筋細胞懸濁液の15アリコート及びHFからの9アリコートを異なる処置:ビヒクル、AC01/HM01(0.2、0.5、又は1μM)又はD-Lys3-GHPR-6(3μM)、続いてAC01/HM01(1μM)での前処置に無作為化した。灌流/刺激チャンバに取り付けられた2つの白金電極を使用して、心筋細胞を1Hz、閾値超の電圧で電気刺激して収縮させた。ラインスキャン蛍光画像は、共焦点顕微鏡(Biorad;40x油浸レンズ)を使用して撮影した。画像は、電気刺激時に収縮し正常な形態(例えば、横紋のある「レンガ状」)を示した心筋細胞についてのみ記録した。自発的収縮を示した細胞は分析しなかった。ImageJソフトウェア(NIH(Bethesda,USA)によって開発されたオープンソースソフトウェア)を使用して、単一心筋細胞の蛍光(Ca2+過渡)及び収縮性の変化を定量化した。
細胞内Ca2+の測定
【0062】
Ca2+過渡を、ラインスキャンモードで共焦点顕微鏡(Biorad)を使用して測定した。491nmの波長を励起に使用し、発光を波長515nm超で収集した。ラインスキャンは、心筋細胞の長軸に沿って配向された。蛍光シグナル(F/F0)を、Ca2+過渡の開始前の静止蛍光(F0)とCa2+過渡のピーク蛍光(F)との比として計算した。
心筋細胞収縮性の測定
【0063】
心筋細胞の収縮性は、長さの短縮のパーセント(短縮率;%FS)として測定した。単離された心筋細胞を、上記の試薬:ビヒクル又はAC0/HM01(タイロード液中0.2、0.5、又は1μM)に、グレリン受容体拮抗薬D-Lys3-GHPR-6(タイロード液中3μM)の存在下又は非存在下で、灌流チャンバ中で曝露した。
タンパク質免疫ブロット法
【0064】
凍結心筋細胞懸濁液のアリコートを、ホスファターゼ阻害剤(Sigma-Aldrich P2850-1ML,P5726-1ML(Stockholm,Sweden))で補充したNP40緩衝液(Thermo Fisher FNN0021(Stockholm,Sweden))を使用して溶解した。タンパク質溶解物を電気泳動によって分離し、膜上に移した。膜を一次抗体:ウサギ抗ホスホ(セリン22~23)心筋トロポニンI(cTnI,Cell Signalling(Leiden,The Netherlands)#4004S)及びウサギ抗cTnI(Cell Signalling #4002S(Leiden,The Netherlands))とインキュベートした。その後、赤外標識二次抗体(IRDye 680及びIRDye 800、1:5000、Licor)を使用した。免疫反応性バンドを、Odyssey Infrared Imaging System(Li-Cor(Bad Homburg,Germany))を使用して分析した。バンド密度をImage J(NIH(Bethesda,USA))で定量化し、総cTnIに対して正規化し、最終データを、ビヒクル処置細胞から抽出されたタンパク質を表すバンドと比較した増加倍率として表した。
心筋細胞におけるPKA活性アッセイ
【0065】
ElisaベースPKAキナーゼ活性アッセイキット(ab139435,Abcam(Cambridge,UK))を使用して、心筋細胞におけるPKA活性を決定した。凍結心筋細胞のアリコートを解凍し、以下(mM)を含む溶解緩衝液と混合した:20 MOPS、50 β-グリセロールリン酸、5 EGTA、2 EDTA、1 ベンズアミジン、1 オルトバナジン酸ナトリウム、1% NP40、1 DTT、完全プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Diagnostics(West Sussex,UK))、及びホスファターゼ阻害剤3(Sigma(Gillingham,UK))。各サンプルの約2μgのタンパク質を、製造業者の説明書27に従ってアッセイした。
統計
【0066】
2群間の統計的比較は、スチューデントt検定(対応なし)を使用して実施した。>2群間の比較のために、ANOVA分析を使用した。p<0.05を統計的有意性とみなした。平均データは、平均値±平均値の標準誤差(standard error of the mean、SEM)として表した。図中、P値は、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001である。
結果
【0067】
AC01/HM01は、心筋細胞収縮性を増大させた(図1
収縮性を、ビヒクルに対して異なる濃度(0.2、0.5、及び1μM)のAC01/HM01に応答して単離された心筋細胞において測定した。図1上は、長さ短縮率のパーセント(FS%)として測定されたSHAM心筋細胞の収縮性が、0.5及び1μMのAC01/HM01でかなりの統計的に有意な応答を伴って用量依存的に増大したことを示す。図1下は、AC01/HM01(1μM)で処置した心筋細胞が、SHAM及びHFの両方においてビヒクルと比較して短縮率の%(FS%)として表される収縮性の有意な増大を示したこと、並びにグレリン受容体拮抗薬、D-Lys3 GHRP-6(3μM)での前処置がAC01/HM01の収縮作用を遮断したことを示しており、これは、分子機構がグレリン受容体シグナル伝達に特異的であることを示唆している。本発明者らは、対照(SHAM)及び心筋梗塞誘導性心不全(HF)マウスの両方から単離された心筋細胞を使用して、収縮性を測定した。AC01/HM01による処置とは無関係に、心筋細胞収縮性は、SHAMと比較してHF心筋細胞においてより高いようであった。心臓の非虚血部分に由来するMI誘導性HFからの生存心筋細胞は、Ca2+サイクリング及び筋フィラメント感受性の増強によりそれらの収縮性を改善することによって、梗塞/壊死心筋を補償する。しかしながら、ビヒクル処置心筋細胞と比較して、AC01/HM01によって誘導される収縮性の増大は、SHAM及びHFの両方において観察され、この分子が心筋細胞の状態に関係なく収縮性を更に改善することができることを示唆した。
AC01/HM01は、Ca2+過渡振幅を増加させることなく、心筋細胞収縮性を増大させた(図2図3
【0068】
全ての臨床的に利用可能な変力物質は、細胞内Ca2+濃度を増加させることによって収縮性を増大させ、これはそれらの有害な安全性プロファイルの原因である。したがって、図1で観察された収縮性の増大が、Ca2+過渡を変化させることなく達成されたことが観察されたことは驚きであった:図2は、Ca2+過渡振幅の有意な変化が、AC01/HM01のいずれの試験濃度でも観察されなかったことを示す。更に図1に見られるように、AC01/HM01は短縮率(収縮性)を増大させた。これは、収縮作用がCa2+放出の増加よりもむしろCa2+感受性の増強に関連していることを示唆している。図3は、AC01/HM01がSHAM心筋細胞においてCa2+過渡を増加させなかったことを示す。SHAMマウス由来の心筋細胞において、D-Lys3前処置の有無にかかわらずAC01/HM01は、ビヒクル処置細胞と比較して、Ca2+過渡振幅に対していかなる影響も及ぼさなかった(図3)。これは、AC01/HM01の収縮作用が、図2におけるように、Ca2+感作機構の増強によって駆動されることを更に確認するものである。
AC01/HM01は、Ca2+感受性の増強に関連するcTnIリン酸化を低減した(図4
【0069】
心臓サルコメアタンパク質cTnIのセリン残基22~23におけるリン酸化の変化は、cAMP-PKA依存性機構を介して、除膜したマウス及びラット筋細胞における筋フィラメントCa2+感受性に影響を与えることが以前に示されている。本発明者らの実験モデルにおいてCa2+感受性及び収縮性の増強の背後にある分子機構を調査するために、SHAMマウス心筋細胞懸濁液を、D-Lys3の有無にかかわらずビヒクル又はAC01/HM01で処置し、次いで、生化学分析のために処理した。図4は、タンパク質抽出物のウェスタンブロットアッセイにおいて、AC01/HM01で処置した心筋細胞が、ビヒクルで処置した心筋細胞(左列、白色の棒)と比較して、cTnI(セリン22~23)のリン酸化レベルの低下(中央列、灰色の棒)を示した一方、D-Lys3による前処置はこの作用を遮断した(右列、赤色の棒)ことを示す。これらのデータは、AC01/HM01がグレリン受容体を活性化し、cTnIリン酸化の低下によってCa2+感受性を増大させるモデルと一致する。
AC01/HM01は、心筋細胞PKA活性を低下させ、cTnIリン酸化を低下させた(図5
【0070】
cTnIリン酸化(セリン22~23)は、PKAによって媒介される。したがって、本発明者らは、AC01/HM01がPKAの酵素活性に影響を及ぼすかどうかを調べた。図5は、ビヒクルと比較してAC01/HM01で処置した心筋細胞においてPKA活性が低下したこと、及びこの作用がAC01/HM01刺激前のD-Lys3での前処置によって遮断されたことを示す。これは、驚くべきことに、グレリン受容体拮抗薬AC01/HM01が、アデニル酸シクラーゼ活性を阻害してPKA活性の低下をもたらすGα阻害(Gαi)シグナル伝達を活性化し得ることを示唆している。
考察
【0071】
本発明者らのデータは、ビヒクルではなくAC01/HM01が、用量依存的に心筋細胞収縮性を増大させることを示した。驚くべきことに、既存の変力物質とは対照的に、AC01/HM01は、心筋細胞Ca2+過渡振幅を増加させることなく収縮性を増大させ、これは、収縮性の増大が、代わりに筋フィラメントCa2+感受性の増大によって生じたことを示唆している。
【0072】
特異的グレリン拮抗薬、D-Lys3 GHRP6は、心筋細胞収縮性に対するAC01/HM01の作用を遮断し、これは、収縮作用がグレリン受容体シグナル伝達によって制御されることを更に確認するものである。筋フィラメントCa2+感受性のAC01/HM01誘導性増大は、グレリン受容体G-α阻害(G-αi)シグナル伝達に関連しているようであり、これは、PKA活性の低下及びcTnIセリン22~23リン酸化の低下をもたらす。これは、筋フィラメント機能に影響を及ぼし収縮性を増大させる、新規な薬理学的方法を示唆するものである。これらの結果は、Ca2+濃度を増加させ、酸素要求量の増加、頻脈、不整脈、虚血、及び死亡率の増加を引き起こす従来の変力物質の機構を伴わずに収縮性及び心拍出量を増加させる、心不全の処置のためのこの新規なファーストインクラス分子及び新規な作用機構の潜在的な使用を強調するものである。
【0073】
血行動態調節の中心は、交感神経終末及び副腎からのカテコールアミン(アドレナリン及びノルアドレナリン)の放出を制御する自律神経系である。これの重要な機能は、心臓の変力状態の調節である。心臓内のβ-アドレナリン受容体の活性化は、cAMP-PKAシグナル伝達の刺激をもたらし、これは、心拍数の増加(変時性)、収縮力の増大(変力性)、及び弛緩速度の増加(変弛緩性)による心拍出量増加をもたらす。cAMP-PKA活性化による心臓収縮力の増大は、筋細胞におけるCa2+シグナル伝達の増強に依存する。Ca2+放出の毒性強化を必要としない、収縮性を増大させるための代替機構は、筋フィラメントCa2+感作である。実際、N末端のセリン残基22及び23(マウスではセリン22/23及びヒトではセリン23/24)でのcTnIのPKA依存性リン酸化によるCa2+感受性の調節のための生理学的機構が存在し、これはcTnCのCa2+結合親和性を調節する。cTnIがリン酸化されると、筋フィラメントCa2+感受性が低下し、力-Ca2+関係曲線が右にシフトするようになる(所与のCa2+濃度に対する力が小さくなる)。cTnIリン酸化(セリン22~23)と筋フィラメントのCa2+感受性との間の逆相関の証拠により、ドナー心臓と比較してcTnIのリン酸化の低下及びCa2+感受性の増大を示した終末期不全心臓における例が見出され、一方、PKAでの処置は、不全筋細胞と非不全筋細胞との間のCa2+感受性のあらゆる差異を消失させた。これは、不全心臓において、Ca2+感受性の増強により収縮性を改善するために活性化される代償機構が存在することを示唆するものである。驚くべきことに、AC01/HM01は、これらのCa2+感受性機構を強化するようであった。
【0074】
要約すると、本発明者らのデータは、新規分子AC01/HM01が、グレリン受容体に特異的に作用し心筋細胞収縮性を増大させる、ファーストインクラスの新しいタイプのミオトロープであることを実証するものである。Ca2+過渡の有害な増加によって作用する従来の変力物質とは対照的に、AC01/HM01は代わりに、場合によってはGαi媒介-受容体シグナル伝達により、PKA活性を低下させ、cTnIリン酸化を低下させ、それによりCa2+感受性を増大させる(図6)。これは、心筋細胞におけるAC01/HM01の収縮性の増大を示す最初の報告である。この試験は、HFにおける心臓収縮性の低下に対する処置としてのAC01/HM01の使用を裏付けるものである。
【0075】
実施例2
男性の健康な応募者における経口投与されたHM01の安全性及び薬物動態を評価するための、ヒトにおける単回漸増用量、第1相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験
第1目的
【0076】
10mgの最大用量まで調査した経口HM01の単回漸増用量の安全性及び忍容性の評価を通して最大忍容用量(maximum tolerated dose、MTD)を確立すること。
単回経口投与後のHM01及びその代謝産物(M2、M6、及びM9)の薬物動態(pharmacokinetics、PK)を評価すること。
第2目的
【0077】
薬力学(pharmacodynamics、PD)バイオマーカーを評価すること。
HM01の作用機構に関連する機能パラメータを評価すること。
試験設計
【0078】
単一施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、単回漸増用量(single ascending dose、SAD)試験。
【0079】
投薬前28日以内にスクリーニング検査を実施した。適格な対象は、-1日目の朝に試験センターに戻り、安全性の問題がなかった場合、投薬の72時間後(4日目の朝)に退院するまで入院患者として残った。経口用量を1日目の朝に投与した。対象は、処置の7日後、8日目の朝(±1日)に、安全性評価のためにクリニックに戻った。
【0080】
コホートの72時間評価全ての完了後、盲検安全性及び仮名化されたPKデータを検討し、次の用量増分を用量漸増委員会(dose escalation committee、DEC)によって決定した。
【0081】
安全性プロファイルの性質、頻度、及び厳しさに応じて、主題の専門家を含むDECは、適切な場合に、以下のことを行うかどうかを決定した:計画されたスキームで進行する用量漸増を継続すること;用量漸増を停止する(すなわち、試験薬を更に投与しない)こと;計画された用量、すなわち、用量>5mg(但し<10mg)まで更に用量漸増を続けること。
関与した対象
【0082】
肥満度指数(body mass index、BMI)が18.5kg/m2~29.9kg/m2である、18歳~50歳の健康な男性非喫煙対象。用量ステップごとに8人の対象のコホートを計画した。コホート1(10mg又はプラセボ)は、4人の対象の投与後に停止した。コホート2~4は、各々8人の対象からなり、すなわち、総数28人の対象を無作為化し、試験を完了した。離脱はなかった。
試験製品、用量、及び投与様式
【0083】
ゼラチンカプセル中のHM01 HCl粉末。コホート1については、0.1mg及び1.0mg及び10mgの強度を有するカプセルが利用可能であった。
コホート1:10mg HM01
コホート2:0.1mg HM01 コホート3:0.3mg HM01 コホート4:1.0mg HM01
【0084】
第1のコホートは、4人の対象(3人の実薬、1人のプラセボ)からなっていた。
【0085】
コホート2~4は8人の対象からなり、6人の対象はHM01の投与を受け、2人の対象はプラセボを受けた。安全性の理由のために、各コホートを2つの亜群:2人の対象(1人のHM01、1人のプラセボ)の第1の亜群及び6人の対象(5人のHM01、1人のプラセボ)の第2の亜群に分けた。第2の亜群は、少なくとも24時間の最短時間後に治験責任医師によって評価されるいかなる主要な安全性の懸念もない場合にのみ開始された。
【0086】
対象は絶食状態(少なくとも8時間食物なし)で投薬された。食物へのアクセスは、投与後4時間まで制限した。カプセルを240mLの水と共に経口投与した。
安全変数
【0087】
有害事象(Adverse event、AE)、バイタルサイン(血圧、脈拍数、及び体温)、12誘導ECG、ホルター-ECG、身体検査(physical examination、PE)、及び実験室試験(血液学、臨床化学、及び尿検査)を、スクリーニング中及び試験全体を通して数回評価した。
薬物動態変数
【0088】
HM01及び3つの主要な代謝産物(M2、M6、及びM9)の分析アッセイのための血液試料を、投与前(薬物投与前60分以内)、並びに投与後0.25、0.5、1、1.5、2、3、4、6、8、12、16、24、30、36、48、60、及び72時間に採取した(18試料)。尿を投与後24時間採取した。血液及び尿試料を、検証されたLC-MS/MS法を使用して、HM01及びその代謝産物濃度について分析した。
【0089】
概算されたPKパラメータは、Cmax(最大観察濃度)、Cmax/D(Cmax/用量単位)、tmax(ピーク時間)、Clast(定量下限を超えた最後の測定可能な濃度)、tlast(Clastの時間)、AUC(0-24)及びAUClast(それぞれ、時間0から24時間まで及び最後の測定可能な濃度tlastまでの血漿濃度-時間曲線下面積)、AUClast/D(AUClast/用量単位)、AUC(時間ゼロから無限までの血漿濃度-時間曲線下面積)、AUC/D(AUC/用量単位)、t1/2(見かけの終末半減期)、CL/F(血管外投与後の全身クリアランス(親薬物のみについて))、Vz/F(血管外投与後の見かけの分布容積(親薬物のみについて))、MRT(mean residence time)(平均滞在時間)を含んだ。
【0090】
更なるパラメータ、すなわち、Ae(0-24)である24時間で排泄された親薬物及び代謝産物の量、及びCLである腎クリアランスを、尿から得た。
薬力学変数
【0091】
投与前並びに投与後0.5、1、2、3、4、6、及び24時間の血清中の成長ホルモン(growth hormone、GH)、インスリン様成長因子-1(insulin-like growth factor-1、IGF-1)、副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone、ACTH)、プロラクチン、コルチゾール、及びアルドステロンの決定のための血液試料を静脈穿刺によって採取した。全てのバイオマーカーを、酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme linked immunosorbent assay、ELISA)を使用して決定した。-1日目の主たる食事後、及び1日目の投与前、投与後1、2、4、8、及び24時間後の食欲評価に基づく、簡略化された栄養食欲アンケート。1日目に開始し、4日目に退院するまでの便日誌。
結果
薬物動態
【0092】
AUC及びCmaxの用量に比例した増加がHM01及びM6について観察された。HM01及びM6のAUClastに関して、用量に比例する増加よりもわずかに大きい増加が観察され、傾きはそれぞれ1.29及び1.26であり、90%信頼区間は1超であった。HM01の算術平均半減期(9~11時間)、中央値tmax(3~4時間)、幾何平均クリアランス(55.9~65.8L/h)、及び分布容積(801~911L)は、全ての用量について同様であった。0.1mg~10mgのHM01の投与後、M6の算術平均半減期は23~37時間の範囲であり、中央値tmaxは3.0~5.0時間の範囲であった。M6対HM01のAUCの比は、0.3及び1.0mgのHM01の投与後で同様であり(2.330、2.336)、10mg用量ではわずかに低かった(1.761)。10mg用量の約10%が親化合物HM01として尿中に排泄され、16%がM6として排泄された。
【0093】
【表1】
薬力学
【0094】
GHの濃度は、HM01投与後にベースラインから増加し、ピーク濃度は投与後2~3時間であった。GHの増加は、1.0及び10mgのHM01の投与後により高かったが、0.3及び0.1mgのHM01の投与後により低い増加が見られた。平均GH曲線は、1.0及び10mgのHM01の投与後に同様であった。ピーク後、GH濃度は急速に減少した。IGF-1血清レベルについて、用量群とプラセボとの間に関連する差異は観察されなかった。ACTH、プロラクチン、コルチゾール、及びアルドステロンの濃度は、より高い用量の1.0及び10mgのHM01の投与後に、ベースライン値を超えて急速に増加した。ピーク濃度は、概ね投与後2~3時間で観察された。その後、濃度は急速に減少した。増加は、1.0mgと比較して10mgの投与後に増加が高かったプロラクチン、及び1.0mgのHM01の投与後にのみレベルが決定されたACTHを除いて、1.0及び10mgのHM01の投与後に同様であった。食欲アンケートは、用量群とプラセボとの間に関連のある又は一貫した差異を示さなかった。1日当たりの腸運動の数及び腸運動を有する対象の数について、用量群の間に用量関連の差異はなかった。
【0095】
安全性
処置緊急有害事象(treatment emergent adverse event、TEAE)を報告した対象の数及びTEAEの数は用量依存的に増加した:0.1mgのHM01の投与後にはTEAEが報告されず、0.3mgの投与後には2人の対象(33.3%)が5件のTEAEを報告し、1.0mgの投与後には3人の対象(50.0%)が7件のTEAEを報告し、10mgのHM01の投与後には3人の対象(100%)が19件のTEAEを報告したのに対し、プラセボの投与後には5人の対象(71.4%)が5件のTEAEを報告した。
【0096】
最も頻繁に報告されたTEAEは、神経系障害(主に頭痛)及び心臓障害(主に洞性徐脈)であり、これらは主に投与直後に始まり、持続時間が短かった。ほとんどのTEAEは軽度の強度であり、中等度の強度のTEAEは、1.0mgのAC01(のぼせ)及び10mgのAC01(洞性徐脈)及びプラセボ(頭痛)の投与後に各々1人の対象で報告された。いずれの実験室パラメータについても、投与群間に臨床的に関連する差異はなかった。平均収縮期及び拡張期血圧並びに体温は、投与後の臨床的に関連する変化又は処置群間の差異を示さなかった。
【0097】
実施例3
駆出率低下を伴う心不全(HFrEF)の患者における経口グレリン拮抗薬AC01を用いた無作為化、二重盲検、複数漸増用量、プラセボ対照、多施設、安全性、忍容性、有効性、薬物動態(PK)及び薬力学(PD)の第1b/2a相試験。
【0098】
この試験は、心臓収縮性の低下、低心拍出量、心拍出量を維持するための神経ホルモン活性化の不適応、重篤な症状、並びに心不全の悪化及び死亡に関して入院率の高いHFrEF患者に焦点を当てており、上記の前臨床データは、AC01がカルシウム濃度を増加させるのではなく、カルシウム感作により心筋細胞収縮性を増大させることを示唆しており、それにより、従来の変力物質の有害作用なしに、心臓の収縮性、心拍出量、及び臨床転帰を改善することができる。
試験設計
【0099】
多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験は、逐次コホート用量漸増相(パートA)及びその後の並行コホート拡大相(パートB)の2つのパートで実施した。患者を3:1の比率で無作為化して、AC01又はプラセボミニ錠剤をBIDで、絶食状態で7日間(用量漸増相、パートA)又は28日間(コホート拡大相、パートB)投与する。
用量漸増相(パートA)
【0100】
最大40~56人の患者を、最大7つのコホートに等分した。1用量アーム当たり6人の実薬患者、2人のプラセボ患者。最初の5つの逐次用量コホートの各々における8人の患者は、7日間、複数漸増用量のAC01(0.1mgから1日2回、最大5つの逐次用量レベルで漸増)又はプラセボで、BIDで処置される。必要であるとみなされる場合、最大2つの更なるコホートが追加され得る。用量増分は、以前のコホートにおける用量レベルに対して3.3倍を超えず、25%以上高くならない。用量漸増は、1日2回の5mgの総1日用量に達すると停止する。患者は、(心室性不整脈及び重度の徐脈から保護するため)ICDを有する。2つの用量レベルが選択され、その後のコホート拡大相(パートB)において各群について1つである。しかしながら、用量漸増相(パートA)の結果に基づいて、コホート拡大相(パートB)のための追加の用量レベルを特定してもよい。用量評価期間は、AC01の最初の投与から12日目(各コホートにおける最後の治験薬[investigational medicinal product、IMP]投与の5日後)までである。安全性審査委員会(Safety Review Committee(SRC))によるデータの審査のための適切な時間を可能にするために、1つのコホートにおける最後のIMP投与後12日目と次のコホートにおける最初の用量との間に最低10日間がある。
コホート拡大相(パートB)
【0101】
パートAの完了時に、パートAとは異なる個体である40~60人の患者をパートB(コホート拡大)に登録する。これらの患者を2つの用量コホートに分割し、パートAにおいて特定された用量レベルで最長28日間、BIDで処置される。コホート拡大のために3つ以上の用量レベルが選択された場合、全ての可能な用量レベルを網羅するために、コホート当たりの患者の総数及び/又はコホートの総数が再評価される。
治験薬
【0102】
AC01は、0.05mg及び1mg強度のミニ錠剤として製剤化される。プラセボもまた、AC01錠剤と同じ外観、形状、匂い、及び味のミニ錠剤として送達される。
目的
用量漸増相(パートA)
【0103】
第1目的:1日2回(BID)、7日間処置される安定HFrEFを有する外来患者において、経口AC01の複数漸増用量の安全性及び忍容性を確証し、コホート拡大相(パートB)の推奨用量(RD)を評価すること。
第2目的:AC01のPKを決定すること;AC01のPD及びPK/PD関係を決定すること。
【0104】
探索的目的:AC01の作用機序及び標的関与に関連し、安定HFrEF患者の臨床転帰に関連する臨床変数(直接的な効果、例えば、循環GH;一回拍出量[stroke volume、SV]、及びCO)に対するAC01の作用を決定すること。
コホート拡大相(パートB)
【0105】
第1目的:安全性及び忍容性の評価を拡張し、用量漸増相(パートA)から出現したAC01の2つの用量レベルで、BIDで最大28日間処置される安定HFrEFを有する患者における有効性の探索的評価を実施すること。AC01の探索的有効性には、一次直接的(循環GH)及び二次直接的並びに間接的な血行動態及び疾患修飾効果(例えば、SV、CO、並びに心エコー指数及びNT-proBNPなどの他の機能パラメータ)が含まれるが、これらに限定されない。
第2目的:AC01のPKに関する追加データを生成すること;AC01のPD及びPK/PD関係に関する追加データを生成すること。
【0106】
以下の安全性結果(パートA及びB)を評価する。
第1結果:心拍数、収縮期血圧、平均動脈血圧、身体検査(肺、心臓、四肢(浮腫))、不整脈(ホルター心電図[electrocardiogram、ECG]、12誘導ECG、植込み型除細動器[implantable cardioverterdefibrillator、ICD]レポート、連続テレメトリー)、徐脈又は頻脈(ホルターECG、12誘導ECG、ICDレポート、連続遠隔測定[パートAのみ])、虚血(症状、ECG変化、及び/又はhs-トロポニンT/I)、ECG間隔、すなわち、心拍数、PR、QRS、及びQTcF、血漿NT-proBNP、eGFR(カリウム、ナトリウム)、血液学(ヘモグロビン、分画白血球、血小板)、肝酵素、有害事象(AE)、体重、血漿グルコース。
【0107】
第2結果:PK測定:各コホートについて、AC01及び潜在的に活性なM6代謝産物のPKパラメータを評価して、吸収、分布、及び排出の速度及び範囲を概算し、安全性及び有効性の所見の解釈を裏付ける。PD測定:PDは、上記に列挙された安全性測定によって、及び事象スケジュールにおける時点でのバイオマーカー、非侵襲性CO、心エコー検査を使用する探索的有効性測定によって評価される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】