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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】筋疲労定量方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20240517BHJP
   A61B 5/22 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61B5/16 200
A61B5/22 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575425
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2022061932
(87)【国際公開番号】W WO2022258263
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】17/342,903
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/342,924
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/080477
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/080484
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/080450
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/080458
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17/565,790
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523129033
【氏名又は名称】ミオセネ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リゴー、ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ミニョレ、ジャン - イヴ
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038PP01
4C038PR00
4C038PS07
(57)【要約】
筋疲労定量方法は、異なる周波数である電荷で筋肉を電気刺激するステップを含む。電荷は、電気刺激に応答して筋肉の信頼性が高く、正確な力を発生させるために、反復的に決定される。方法は、それらに基づいてこれらの力及び筋疲労を定量するステップをさらに含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋肉の筋疲労を定量するための方法であって、以下の順序で以下のステップ:
(a)電荷(E)及び筋力の目標数値範囲(I)を設定するステップ、
(b)前記電荷(E)での孤立パルスで前記筋肉を電気刺激するステップ、
(c)ステップ(b)の前記電気刺激に応答して前記筋肉によって発せられる力(F)を定量するステップ、
(d)ステップ(c)において定量された前記力(F)が前記筋力の目標数値範囲(I)に属さない場合に、
(d.1)ステップ(c)において定量された前記力(F)を前記筋力の目標数値範囲(I)と比較するサブステップ、
(d.2)サブステップ(d.1)の前記比較に応じて前記電荷(E)を修正するサブステップ、及び
(d.3)ステップ(b)~(d)を繰り返すサブステップ、
(i)異なる周波数(μ、μ、μ、・・・、μ)で前記電荷(E)で前記筋肉を電気刺激するステップ、
(ii)ステップ(i)の前記電気刺激に応答して前記筋肉によって発せられる力(F、F、F、・・・、F)を定量するステップ、
(iii)ステップ(ii)において定量された前記力(F、F、F、・・・、F)に基づいて前記筋疲労を定量するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記電荷(E)が、電気刺激を構成するパルスの電気的強度によって規定され、その結果、サブステップ(d.2)における前記電荷(E)の前記修正が、前記電気的強度の修正に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
サブステップ(d.1)の前記比較が、ステップ(c)において定量された前記力(F)に対する前記筋力の目標数値範囲(I)の基準力の比率の決定を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記基準力が、前記筋力の目標数値範囲の下限若しくは上限、力の段階により増加した前記下限、又は力の段階により減少した前記上限のうちから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電荷(E)の前記修正が、式E’F=EF’によってサブステップ(d.2)において決定され、ここで、
・Eは前記電荷であり、
・E’は決定される修正された前記電荷であり、
・Fはステップ(c)において定量された前記力であり、
・F’は前記基準力である、
請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(c)及び(ii)が、ステップ(c)及び(ii)において定量される前記力(F、F、F、F、・・・、F)を測定するために配置される計器(4)によって実行され、前記電荷(E)及び/又は前記筋力の目標数値範囲(I)が、前記筋肉に、及び/又は前記計器(4)の少なくとも1つの技術的特徴に応じて、ステップ(a)において設定される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
・ステップ(a)において設定された前記電荷(E)が、10~40mAに含まれる、及び/又は
・ステップ(a)において設定された前記筋力の目標数値範囲(I)の下限(L)が、2~10Nに含まれる、
請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(iii)の後に以下のステップ:
(iv)(iv.1)電荷の段階(S)によって前記電荷(E)を増加させるサブステップ、
(iv.4)ステップ(i)~(iii)を繰り返すサブステップ
を数回行うことを含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(iv)が、サブステップ(iv.1)とサブステップ(iv.4)との間に以下のサブステップ:
(iv.2)ステップ(b)及び(c)を実行するサブステップ
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(c)が、ステップ(b)の前記電気刺激に応答して前記筋肉が前記力(F)を発するための時間(T)を定量することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(iv)が、サブステップ(iv.2)とサブステップ(iv.4)との間に以下のサブステップ:
(iv.3)ステップ(i)を最初に行う前のステップ(c)を最後に行うときに定量される時間(T)に対して、前出のサブステップ(iv.2)に起因するステップ(c)を行うときに定量される前記時間(T)を比較するサブステップ
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法の実行が、サブステップ(iv.3)において比較された前記時間(T、T)がその後に少なくとも10ミリ秒乖離する、サブステップ(iv.3)を任意に行った後に停止される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
各周波数(μ、μ、μ、・・・、μ)でのステップ(i)の各電気刺激が、10~100mAに含まれる電気的強度でのパルスの繰り返しを含み、サブステップ(iv.1)における前記電荷(E)の前記増加が、前記パルスの前記電気的強度の増加に対応し、前記電荷の段階(S)が、+0.5~+5mAに含まれる、請求項8から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(iv)を行う回数が、5~30回に含まれる、請求項8から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
各周波数(μ、μ、μ、・・・、μ)でのステップ(i)の各電気刺激が、少なくとも300ミリ秒の休息期間によって先行及び/又は後続される、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
各周波数(μ、μ、μ、・・・、μ)でのステップ(i)の各電気刺激が、最大で500ミリ秒持続する、請求項1から15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(i)の前記周波数が、
・0~50Hzに含まれる第1の周波数(μ)、及び
・50~200Hzに含まれる第2の周波数(μ
を含み、
前記第1の周波数(μ)が前記第2の周波数(μ)と少なくとも10%異なり、
ステップ(ii)において定量される前記力が、
・前記第1の周波数(μ)でステップ(i)の前記電気刺激に応答して前記筋肉によって発せられる第1の力(F)、及び
・前記第2の周波数(μ)でステップ(i)の前記電気刺激に応答して前記筋肉によって発せられる第2の力(F
を含み、
ステップ(iii)が、以下のサブステップ:
(iii.1)前記第2の力(F)に対する前記第1の力(F)の比率を計算するサブステップ、
(iii.2)閾値に対してサブステップ(iii.1)において計算された前記比率を比較するサブステップ、及び
(iii.3)サブステップ(iii.2)の前記比較に基づいて前記筋疲労を定量するサブステップ
を含む、請求項1から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記筋疲労が、長時間持続性末梢性筋疲労である、請求項1から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
スポーツ活動を計画するための方法であって、以下のステップ:
(0)前記スポーツ活動中に刺激される筋肉を特定するステップ、
(1)ステップ(0)において特定された前記筋肉の筋疲労を定量するために、請求項1から18までのいずれか一項に記載の方法を実行するステップ、及び
(2)ステップ(1)において定量された前記筋疲労に基づいて前記スポーツ活動を計画するステップ
を含む方法。
【請求項20】
前記筋肉が、人の下肢の筋肉であり、前記方法が、ステップ(a)の前に以下のステップ:
(α)
- 電気刺激のパラメータを選択するための制御装置を備える、ステップ(b)及び(i)の前記電気刺激を発生させるための機器、
- 筋力測定装置(1)であって、
□座位で前記人を受容するように、及び水平支持体に位置付けられるように調整される座部(10)、
□前記下肢の脚の少なくとも部分を受容するように、及びそれを安定して維持するように調整される脚支持要素(3)、
□ステップ(b)及び(i)において前記機器によって発生させられる前記電気刺激に応答して、前記脚支持要素(3)のレベルでステップ(c)及び(ii)において定量される前記力(F、F、F、F、・・・、F)を測定するように調製される計器(4)、及び
□前記座部(10)と前記脚支持要素(3)とを機械的に連結し、前記脚支持要素(3)のレベルで前記計器(4)への接続部材(5)を備える機械式構造(2)
を備える筋力測定装置(1)、並びに
- 論理ユニットであって、
□前記計器(4)へ接続され、その結果、前記論理ユニットが前記計器(4)からステップ(c)及び(ii)において定量される前記力(F、F、F、F、・・・、F)の測定値を受け取るように調整され、
□ステップ(a)において設定される前記電荷(E)及び前記筋力の目標数値範囲(I)を受け取るように調整され、
□ステップ(a)において設定される前記電荷(E)及び前記筋力の目標数値範囲(I)から、及びステップ(c)及び(ii)において前記計器によって測定される前記力(F、F、F、F、・・・、F)から、サブステップ(d.1)及び(d.2)、及びステップ(iii)を実行するように構成される、論理ユニット
を備えるシステムを設けるステップ、
(β)前記水平支持体に前記座部(10)を位置付けるステップ、
(γ)前記下肢が前記筋力測定装置(1)と直接的に外面で物理的に接触するのみであるように、前記座位で前記座部(10)に前記人を位置付け、前記脚支持要素(3)に前記脚の少なくとも部分を位置付けるステップ
をさらに含み、
ステップ(a)において設定される前記電荷(E)及び前記筋力の目標数値範囲(I)が、前記論理ユニットによって受け取られ、ステップ(b)及び(i)の前記電気刺激が、前記機器によって発生させられ、ステップ(c)及び(ii)において定量される前記力(F、F、F、F、・・・、F)が、前記計器(4)によって測定され、サブステップ(d.1)の前記比較、サブステップ(d.2)の前記電荷(E)の前記修正、及びステップ(iii)の前記筋疲労の前記定量が、ステップ(a)において設定される前記電荷(E)及び前記筋力の目標数値範囲(I)に、及びステップ(c)及び(ii)において前記計器(4)によって測定される前記力(F、F、F、F、・・・、F)に基づいて、前記論理ユニットによって実行され、
前記筋力測定装置(1)が、前記座部(10)のレベルで作用する前記人の全体重により、ステップ(b)、(c)、(i)及び(ii)の実行中に前記水平支持体に対して静止して維持される、請求項1から19までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、筋疲労定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動物の活動、特に人の活動は、「疲労」を誘発する。そのような疲労は、神経性(すなわち、知的若しくは精神的活動によって誘発される)及び/又は肉体的(すなわち、肉体的作業によって誘発される)であり得る。肉体的疲労は、それが筋肉の働きに起因し、影響を受ける筋肉によってもたらされ得る力の減少につながるので、「筋疲労」と呼ばれる。特に、筋疲労は、肉体的負荷を維持する及び/又は繰り返すことが不可能になり得る。
【0003】
筋疲労の識別、測定及び/又はモニタリングは、例えば、スポーツ運動において(例えば、練習効率の最適化、怪我の予防、個人的なスポーツ練習プログラムの考案、筋肉の準備等の目的で)、並びに筋肉のリハビリテーションのための理学療法において(例えば、身体運動のモニタリング、治療の最適化、過剰な治療の予防等の目的で)、重要な役割を果たす。
【0004】
対象のそのような筋疲労を評価するための公知の方法は、複数回繰り返される、前記筋肉の最大随意収縮(例えば、随意運動によって)を要求する試験を行うことである。筋疲労は、モニタリングされるデータ(時間、速度、力、出力、加速度等)に応じた所定の最大筋力に達することができない場合に、特定されると考えられる。そのような筋肉の最大収縮のための対象の動機づけは、しかしながら、そのような筋疲労評価に影響を及ぼし得る。この試験はまた、著しい筋疲労を誘発し、その結果、それは、方法によって得られる結果に影響を及ぼす。特に、試験は、複数回再現することができず、それは、激しい筋肉の働きの後に行うことができない。方法は、対象を怪我の危険にさらす欠点をさらに有する。
【0005】
上述の問題を解決するために、現在は公開されていない特許文献1は、以下のステップ:
(i)異なる周波数で筋肉を電気刺激するステップ、
(ii)ステップ(i)の電気刺激に応答して筋肉によって発せられる力を定量するステップ、
(iii)ステップ(ii)において定量された力に基づいて筋疲労を定量するステップ
を含む、筋疲労定量方法を提供する。
【0006】
この方法は、対象を怪我の危険にさらすことなく、筋肉をその疲労及びその状態がどれほどでも不随意に刺激するために、ステップ(i)の電気刺激を使用する。筋疲労は、その後、筋疲労がステップ(ii)において測定される力を電気刺激の周波数に対して不均一に変化させるので、ステップ(iii)において容易に定量され得る。この方法は、対象の標準データ、予備測定、又は特定の実行条件とのいずれの比較も必要としないので、有利である。
【0007】
ステップ(iii)から定量される筋疲労は、しかしながら、ステップ(ii)における力の定量に由来する誤差によって損なわれ得る。例えば、測定器による力の定量の場合に、測定される力が小さいほど、測定の誤差は大きい。これは、典型的には、計器の感度限界によるものであり得る。さらに、2人の異なる対象における同じ筋肉の同じ条件における同じ電気刺激は、筋肉それ自体の関数として、2つの非常に異なる力の定量につながり得る。例えば、高齢の対象、高い身体指数、又はいずれかの筋肉の変化(例えば、萎縮)は、ステップ(ii)において定量される力を減少させる。一部の場合において、これらの要素は、これらの力が定量技術に(例えば、測定器の感度に)由来して起こる誤差の比較において小さくなるように、ステップ(ii)において定量される力に影響を及ぼし、その結果、筋疲労の定量を不正確にし得る。
【0008】
より正確で信頼性が高い筋疲労定量方法を提供することが、望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国出願第17/091,468号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示される主題の目的は、筋疲労を定量するための信頼性が高くより正確な方法を提供することである。この目的で、開示される主題は、筋肉の筋疲労を定量するための方法であって、以下の順序で以下のステップ:
(a)電荷及び筋力の目標数値範囲を設定するステップ、
(b)該電荷での孤立パルスで筋肉を電気刺激するステップ、
(c)ステップ(b)の電気刺激に応答して筋肉によって発せられる力を定量するステップ、
(d)ステップ(c)において定量された力が筋力の目標数値範囲に属さない場合に、
(d.1)ステップ(c)において定量された力を筋力の目標数値範囲と比較するステップ、
(d.2)サブステップ(d.1)の比較に応じて電荷を修正するステップ、及び
(d.3)ステップ(b)~(d)を繰り返すステップ、
(i)異なる周波数で該電荷で筋肉を電気刺激するステップ、
(ii)ステップ(i)の電気刺激に応答して筋肉によって発せられる力を定量するステップ、
(iii)ステップ(ii)において定量された力に基づいて筋疲労を定量するステップ
を含む、方法を提供する。
【0011】
本開示による方法は、特許文献1に記載される方法より、筋疲労を定量することに関して信頼性が高く、より正確でありながら、その全ての利点を再現する。
【0012】
実際に、この方法のステップ(i)~(iii)は、開示される主題の方法の一部であり、ステップ(iii)における筋疲労の定量に従う。特に、方法は、したがって、筋肉をその疲労がどれほどでも刺激すること、及び電気刺激に応答して筋肉に不随意に力を発せさせることを可能にする、ステップ(i)における電気刺激の使用により、筋疲労を定量するために効率的で、安全で、順応性が高い。このステップは、いかなるときでも、スポーツ練習後も、対象を怪我の危険にさらすことなく、実行されることが可能である。それは、筋肉を最大収縮させようとする対象の意志に依存しない。ステップ(i)はまた、筋肉の反応を観察するために、及びステップ(ii)において力を定量するために、電気刺激の回数が好ましくは限定され、短時間で実行されるので、著しい筋疲労を誘発しない。ステップ(iii)における筋疲労の定量は、筋疲労が、ある周波数での電気刺激に応答して筋肉によって発せられる、この周波数の関数としての力の曲線グラフを不均一に変形させるという事実から利益を得るので、効率的である。したがって、この曲線グラフ上の少なくとも2点に基づいて、ステップ(iii)において筋疲労を定量することが容易に可能である。そのような筋疲労の定量は、方法の実行の状況に依存しない。対象についての休憩時のそのような標準的な曲線グラフとの比較も、予備測定も、及び制限的な実行条件も、必要とすることはない。
【0013】
本方法の信頼性が高く、正確であるという特徴は、新規のパラメータである電荷を考慮することに起因する。
【0014】
ステップ(i)の各電気刺激は、周波数のうちの1つでのパルスの繰り返しを含む。「電荷」は、典型的には、パルスの電気的強度によって、及び/又は個々のパルス持続時間(又はパルス幅)によって、及び/又は固定された電流でのパルスの電圧によって、規定される。本文書において、電荷は、好ましくは、パルスの電気的強度に対応し、その結果、パルスの電荷のいずれの修正(以降のような)も、好ましくは、パルスの電気的強度の修正にのみ対応する。この好ましい実施例は、別の種類の「電荷」が用語「電荷」の包括性から理解され得るので、開示される主題の範囲からそれを除外しない。特に、電荷の修正はまた、固定された電流での電気的強度、電圧又は幅のうちの1つ又は複数のパルスのパラメータを修正することによって為され得る。
【0015】
ステップ(i)において明示されるように、電気刺激は、方法の新規のステップ(a)~(d)から発せられる特定電荷で発生させられる。方法において、電荷は、初期に、ステップ(b)~(d)において反復パラメータとして使用される。ステップ(a)において設定される電荷は、例えば一般的な又は中間的な電荷(例えば、15、20、又は25mAのパルスの電気的強度)で構成される。それは、主に、反復を初期化するために使用される。ステップ(b)~(d)によって導かれる反復は、先行技術の欠点を回避しつつ、ステップ(i)~(iii)を実行するために適切なパルスの電荷を決定することを目的とする。
【0016】
より詳細には、ステップ(i)において筋肉を電気刺激するためにステップ(a)において設定される電荷を使用することの適合性は、ステップ(b)における単一の孤立パルスを通して試験される。このパルスは、ステップ(c)において筋肉によって発せられる力を定量するために、筋肉の応答を観察するために使用される。この力は、その後、それが筋肉の性質(例えば、対象の年齢、肥満度指数、及び/又は筋肉の変化)及び/又は使用される力の定量技術(例えば、ステップ(ii)において使用される測定器の感度)という観点で低すぎない、及び/又は高すぎないという意味において、ステップ(i)~(iii)を実行するために十分であるか否か、評価される。
【0017】
この評価は、ステップ(a)において筋力の目標数値範囲を設定することによって、開示される主題において非常に単純に行われる。ステップ(a)における筋力の目標数値範囲の設定は、ステップ(i)~(iii)の実行という観点で、ステップ(b)において得られ得る、許容可能な(厳密には正の)力の範囲を規定することを目的とし、筋肉に(及び、したがって、対象に)及び/又は方法を実施するために使用されるシステムに(例えば、測定機器の感度に)依存する。この数値範囲は、したがって、典型的には、少なくとも半分限定される、すなわち、下限のみ、上限のみ、又はその両方で限定される。
【0018】
好ましくは、筋力の目標数値範囲は、(少なくとも)下限を有する。それは、典型的には、ステップ(c)及び(ii)において使用される感度の定量技術を考慮して、非常に信頼性が高くあるための最小の許容可能な力に対応する。加えて、有利には、この下限は、随意収縮又は外部振動などの、ステップ(c)及び(ii)の実行中に見られ得る、軽微な潜在的乱れに対処するために、十分に高く、その結果、それらのステップにおいて定量される力の誤差は、最小化される。
【0019】
それにも関わらず、これらの力は、それらが対象にとって不快な方法の実行となるほど強いものであるべきではない。特に、下限は、力の定量を信頼性が高くするために十分に高く、及び方法の実行を対象にとって十分に快適に保つために十分に低く、定められるべきである。例えば、そのような下限は、筋肉及び力の定量技術に応じて、3N、4N、5N、6N、7N、8N、9N、又は10Nであり得る。例えば、8Nの下限が、中間的な対象(年齢において、肥満度指数において、及び筋肉の変化のない)の筋肉として四頭筋について好都合であり得る場合に、4Nの下限は、同じ対象の筋肉として二頭筋についてより良好であり得る。いずれの場合においても、この下限は、ステップ(c)及び(ii)において力を定量するために使用される定量技術に依存する。調整された下限は、好ましくは少なくとも5N、及びより好ましくはおよそ5Nである。下限は、より一般的には、2~10Nに含まれる。
【0020】
方法の実行を対象にとって快適に保つために、筋力の目標数値範囲は、上限を有し得る。例えば、上限は、下限についてのように、筋肉に(及び、したがって、対象に)及び/又は力の定量技術に応じて、50N、60N、70N、80N、90N、又は100Nであり得る。筋力の目標数値範囲は、好ましくは、下限を有するが、説明されたような単独の上限を有するそのような数値範囲の場合も、開示される主題の範囲から除外されない。
【0021】
筋力の目標数値範囲のデータは、存在するならば、その下限及び/又は上限のデータと同等であり、その結果、ステップ(a)においてこの数値範囲を設定することは、そのような限界値を設定することと同等に言い換えることができ、ステップ(c)において定量される力が数値範囲に属するかをステップ(d)において確認することは、この力が、存在するならば、上限より小さく(又はそれに等しい)、存在するならば、下限より大きい(又はそれに等しい)かを確認することと言い換えることができる。数値範囲は、実数での通常のトポロジに関して、半分開放、半分閉塞、開放、若しくは閉塞であり得る、及び/又は限定若しくは半分限定され得る。理解されるように、上の用語「又はそれに等しい」は、考えられた限界値で閉塞した数値範囲に適用される。
【0022】
方法のステップ(d)は、電荷の反復を規定する。特に、ステップ(b)において筋肉を電気刺激するために使用される電荷が、筋力の目標数値範囲に含まれる力をもたらす、すなわち、電荷が、方法を実施するために使用されるシステムという観点で(例えば、力の測定器の感度という観点で)、及び対象という観点で、信頼性が高い場合に、それは、その後、ステップ(i)~(iii)を実行するために維持され得る。そうでない場合に、電荷は、ステップ(b)において定量された力とステップ(a)において設定された筋力の目標数値範囲とのサブステップ(d.1)での比較により、サブステップ(d.2)において修正される。そのような比較の実施例が、以降で提示される。
【0023】
電荷の段階による修正は、力の定量の信頼性の低さを矯正し、したがって、ステップ(iii)における筋疲労の定量を改善することを目的とする。この修正された電荷の段階は、したがって、サブステップ(d.3)において導かれるように、ステップ(b)~(d)を新規に行うために使用される電荷の段階となる。ステップ(b)~(d)は、したがって、有利には、ステップ(i)~(iii)から元来規定される筋疲労定量方法の正確さ及び信頼性を改善する、力の定量における信頼性の低さを漸進的に低減するために、ステップ(i)~(iii)において使用される電荷を反復的に決定することを可能にする。特に、ステップ(i)を最初に行うときに使用される「電荷」は、反復により、ステップ(a)において設定される電荷、又はステップ(d.2)を最後に行うときに修正される電荷である。
【0024】
典型的には、ステップ(i)を最初に行うときに使用される電荷は、25~40mAに含まれ、ステップ(a)において初期に設定される電荷は、一般的に、15~30mAに含まれる。したがって、ステップ(a)において25mAの電荷を設定することが好ましい場合がある。これらのデータは、開示される主題の範囲を限定するものではない。特に、ステップ(a)において設定される電荷は、より一般的には、10~40mAに含まれる。
【0025】
上で述べられたように、ステップ(c)及び(ii)は、好ましくは、ステップ(c)及び(ii)において定量される力を測定するために配置される計器によって実行される。この場合に、ステップ(a)において設定される電荷及び/又は筋力の目標数値範囲は、筋肉に、及び/又は計器の少なくとも1つの技術的特徴に依存する。
【0026】
特に、ステップ(i)の前にステップ(b)~(d)を介して電荷を調整することは、有利である。実際に、電荷がステップ(i)の電気刺激中に調節されるならば、それは、電気的疲労及び/又は増強を発生させることによって、筋疲労の定量に影響を及ぼし得る(以降で説明されるように)、無用な電気的衝撃を与え、対象にとって不快である。
【0027】
上で説明されたように、電荷は、好ましくは、サブステップ(d.2)における電荷の修正が電気的強度の修正に対応するように、電気刺激(ステップ(b)及び(i)の)を構成するパルスの電気的強度によって規定される。電気的強度は、方法の実行中に修正し易く、モニタリングし易いという利点を有する。電気的強度、又はより一般的には電荷は、方法が適用される運動単位又は筋繊維の品質に対応し、その結果、それは、電気刺激に対する筋肉の応答に影響を及ぼす。
【0028】
ステップ(i)を最初に行う前に電荷を修正するためのサブステップ(d.1)及び(d.2)の好ましい実施例が、以下で説明される。この実施例において、サブステップ(d.1)の比較は、ステップ(c)において定量される力に対する筋力の目標数値範囲の基準力の比率の決定を含む。この比率は、計算が容易であり、ステップ(c)において定量される力と基準力及びしたがって数値範囲との割合の相違に関する正確な情報をもたらす。場合により、この基準力のデータは、数値範囲のデータと同等であり得る。例えば、基準力が限定された数値範囲の中央として、又は半分限定された数値範囲の下限として常に選択される場合が、当てはまる。
【0029】
基準力は、好ましくは、筋力の目標数値範囲の下限又は上限である。基準力が数値範囲の下(上)限に対応する場合に、及びステップ(c)において定量された力が下(上)限より小さい(大きい)場合に、比率は、ステップ(c)を次に行うときに数値範囲内の力をもたらすために、サブステップ(d.2)における電荷へ適用する割合を示す。
【0030】
パルスの電気的強度に対応する電荷に関して、本発明者は、ある電荷での孤立パルスでの筋肉の電気刺激に応答して筋肉によって発せられる力が、電荷に関して主に線形的に変化するならば、この比率が、電荷へ適用する修正に正確に対応することを発見した。この線形性は、高い相関指数を有する統計的回帰から導かれた。それゆえに、電荷の修正は、好ましくは、式E’F=EF’によってサブステップ(d.2)において決定され、ここで、
・Eは電荷であり、
・E’は決定される修正された電荷であり、
・Fはステップ(c)において定量された力であり、
・F’は基準力である。
【0031】
留意され得るように、サブステップ(d.1)の比率計算は、この式から暗示される。式は、ステップ(b)及び(c)を2回(又は最大で3回)行うことで、ステップ(i)~(iii)を実行するために適切な電荷を得ることを可能にし、それにより、電気的強度に対応する電荷の場合に、方法を効率的にするという主な利点を有する。
【0032】
この式はまた、サブステップ(d.1)の比率が、上記で説明されたように、サブステップ(d.2)の修正を少なくとも依然として示すので、他の「電荷」に関しても包括的に論じ得る。代替的な手法において、そのような線形関数より複雑な他の関数(その係数がサブステップ(d.1)の比率によって定義される)がまた、サブステップ(d.2)における電荷の修正を規定するために使用され得る。しかしながら、そのような関数は、方法の実行をより困難に及び遅くし得る。
【0033】
数値例がここで提示される。ステップ(a)において設定された電荷が15mAである場合に、ステップ(c)において定量された力が3Nである場合に、及び筋力の目標数値範囲が、基準力として下限を5Nとみなして、閉塞した半分限定された数値範囲[5N,+∞[である場合に、サブステップ(d.1)の比率は5/3であり、修正された電荷は25mAである。サブステップ(d.3)によって導かれるように、ステップ(b)及び(c)を新規に行うことを通してこの電荷を試験することによって、ステップ(c)において新規に定量される力は、5Nに近似することになる。基準力は数値範囲の限界値として選択されるので、力の定量技術の感度又は他の外乱による誤差を考慮すると、ステップ(c)をこの2回目に行うときに定量される力は、依然として5Nより小さく、したがって、数値範囲外であり得る。この場合に、ステップ(b)及び(c)を3回目に行うことが、ステップ(d)によって導かれる。例えば、この新規の力が4.5Nである場合に、サブステップ(d.1)からの10/9の比率は、25mAの現在の電荷へ適用される。修正された電荷は、したがって、28mA(単位まで丸められた)である。ステップ(b)及び(c)を3回目に行うことが、その後実行され、さらに、ステップ(c)において5.5Nの力を最終的にもたらす。この力が数値範囲に属する場合に、ステップ(d)は、それ以上実行されず、ステップ(i)が、この電荷で実行され得る。
【0034】
この実例から推定され得るように、ステップ(b)及び(c)をこの3回目に行うことを回避するために、この下限に正確に対応することなく、下限に近接する基準力を使用することは、より有利であり得る。実際に、基準力が6Nとして選択されるならば、修正された電荷は、30mAであろうし、ステップ(c)を2回目に行うときに定量される力は、確実に、まさに5Nより大きいであろう。そのため、より一般的には、基準力が、好ましくは、数値範囲の下限若しくは上限、力の段階により増加した下限、又は力の段階により減少した上限のうちから選択される。優先的には、そのような「力の段階」は、1~5Nに含まれ、例えば、それは、1N、2N、3N、4N又は5Nである。
【0035】
上記で詳細に説明された好ましい実施例とは代替的に、サブステップ(d.1)及び(d.2)の他の実施は、開示される主題の範囲の完全に一部である。そのような他の実施の実例として、サブステップ(d.1)は、ステップ(c)において定量される力が、筋力の目標数値範囲に含まれる全ての力より大きいか又は小さいかを決定することを含む場合があり、サブステップ(d.2)は、これらの場合の各々において、それぞれ、所定の段階(例えば、0.5、1、2、3、4又は5mA)によって電荷を減少又は増加させることで構成される場合がある。1mAのそのような段階での前出の数値例を考慮すると、値3Nが数値範囲[5N,+∞[の全ての力より小さいならば、電荷は1mA増加され、その結果、修正された電荷は、ステップ(b)及び(c)を2回目に行う場合について、16mAである。この場合に、この電荷でステップ(c)を2回目に行ったときに定量された力は、十分ではない。3回目、4回目などに行う場合についても同様である。ステップ(b)及び(c)を約14回行うことが、このように、28mAの電荷に達するために必要である。
【0036】
サブステップ(d.1)及び(d.2)のこの他の実施は、非常に単純で系統的なものである。それは、いずれの実際の計算も必要としない。それにも関わらず、それは、実行されるためにより長い時間を要し得る。
【0037】
いずれの場合においても、ステップ(d)は、ステップ(b)~(d)における反復を規定し、サブステップ(d.2)における電荷の修正は、典型的には、反復的に行われる。
【0038】
本開示による方法は、広範囲の適用に、特に、練習又は競技の前、最中又はさらに後の専門的スポーツ選手の筋疲労、並びに筋肉のリハビリテーション中の怪我人及び/又は高齢者の筋疲労を定量するために利便性が高い。
【0039】
本開示による定量方法は、特に、スポーツ練習を計画するために利便性が高い。本開示による方法は、一般的に、治療目的に適用されることを計画されず、病理を特定又は解明することは意図されない。この点において、開示される主題の実施例は、以下のように読み解くことができる。
スポーツ活動を計画するための方法であって、以下のステップ:
(a)電荷及び筋力の目標数値範囲を設定するステップ、
(b)該電荷での孤立パルスで筋肉を電気刺激するステップ、
(c)ステップ(b)の電気刺激に応答して筋肉によって発せられる力を定量するステップ、
(d)ステップ(c)において定量された力が筋力の目標数値範囲に属さない場合に、
(d.1)ステップ(c)において定量された力を筋力の目標数値範囲と比較するステップ、
(d.2)サブステップ(d.1)の比較に応じて電荷を修正するステップ、及び
(d.3)ステップ(b)~(d)を繰り返すステップ、
(i)異なる周波数で該電荷で筋肉を電気刺激するステップ、
(ii)ステップ(i)の電気刺激に応答して筋肉によって発せられる力を定量するステップ、
(iii)ステップ(ii)において定量された力に基づいて少なくとも1つの筋肉データ情報を定量するステップ、
(v)筋肉データ情報に基づいてスポーツ活動を計画するステップ
を含む方法。
【0040】
好ましくは、ステップ(iii)において定量される筋肉データ情報の全て、いずれか、一部又は少なくとも1つは、スポーツ活動を計画するためにステップ(v)において使用される。
【0041】
好ましくは、スポーツ活動は、スポーツ練習である。好ましくは、筋肉データ情報は、筋疲労(データ)を含む(又は場合により、それで構成される)。
【0042】
スポーツ活動を計画するための本方法は、非治療的、及び/又は非医療的、及びに/又は非療法的である。特に、ステップ(v)は、治療的な診断を下すことを目的としない。好ましくは、ステップ(v)は、筋肉データ情報に依存する時間データを定量することを含む(又は場合により、それで構成される)。
【0043】
筋肉データ情報が筋疲労(データ)を含む(又は場合により、それで構成される)場合に、このスポーツ活動計画方法は、以下のステップ:
(0)スポーツ活動中に刺激される筋肉を特定するステップ、
(1)ステップ(0)において特定された筋肉の筋疲労(又は少なくとも1つの筋疲労データ情報)を定量するために、本開示による方法を実行するステップ、及び
(2)ステップ(1)において定量された筋疲労(又は少なくとも1つの筋疲労データ情報)に基づいてスポーツ活動を計画するステップ
を含むと言い換えることができる。
【0044】
換言すると、ステップ(1)は、前出のステップ(a)~(iii)に対応する。ステップ(1)において定量される筋疲労(データ情報)は、好ましくは、異なるステップ(iii)を行うときに定量される筋疲労(データ)の全て、いずれか、一部又は少なくとも1つから、より好ましくは、全てのこれらの筋疲労(データ)の平均値を算出することによって得られる。
【0045】
一般に、本開示による方法は、典型的には、ステップ(a)~(iii)を含む、筋肉の筋疲労の非治療的及び/又は非医療的及び/又は非療法的定量方法に対応する。そのような場合において、ステップ(iii)から治療的な診断が下されることはない。
【0046】
本開示の序文において包括的に述べられたような、本開示による方法の前出及び以下の実施例及び利点のいずれもが、必要な変更を加えて、上記で開示された方法の具体的な特定の場合へ、並びに特に、スポーツ活動計画方法及びいずれかの非治療的実施例へ適用される。特に、請求項において提示される実施例のいずれか1つは、単独で又はこれらの方法との組合せで考察され得る。
【0047】
本開示の定量方法の別の一般的な恩恵は、それが特定の筋疲労を定量することを可能にすることである。実際には、筋疲労は、多くの生理的要因に依存する。特に、筋疲労は、神経筋の神経制御がそれ以上筋繊維を最大能力まで刺激することができない場合の、神経筋の神経制御の欠陥(いわゆる「中枢性筋疲労」につながる)によって、又は筋繊維の直接的なレベルでの収縮力の変更(いわゆる「末梢性筋疲労」につながる)によって、引き起こされ得る。本開示の枠組み内で、定量方法は、ステップ(i)の電気刺激が筋肉収縮の中枢神経制御から独立して末梢筋繊維に直接的に影響を及ぼすならば、ステップ(iii)において末梢性筋疲労を直接的に定量することを可能にする。方法はまた、しかしながら、場合により、例えば、定量される末梢性筋疲労を別の全体的疲労測定から差し引くことによる、中枢性筋疲労の定量を含むことができる。
【0048】
さらに、末梢性筋疲労は、それ自体が、どれほど長時間で筋疲労が筋肉に影響を及ぼすかに依存する、2種類の筋疲労を含む。本質的にエネルギー的及び/又は代謝的要因に関係する、いわゆる「短時間持続性末梢性筋疲労」であり、短時間持続性末梢性筋疲労は、それらの要因から急速に(すなわち、数分後)回復され得る、及び数時間及び数日間さえも継続する(例えば、有意な身体的努力の後で)、いわゆる「長時間持続性末梢性筋疲労」である。
【0049】
ステップ(iii)において定量される筋疲労は、好ましくは、長時間持続性末梢性筋疲労である。場合により、短時間持続性末梢性筋疲労もまた、本開示の方法の実行に続くある時間の間隔を空けた筋疲労の追加の定量、及び得られた結果を差し引くことによって、方法により定量され得る。
【0050】
本開示の枠組み内で、用語「電気刺激」及びその変形のいずれもが、好ましくは、神経筋の電気的刺激、又は試験される筋肉の運動ニューロンのいずれかの種類の刺激を指す。そのような刺激は、好ましくは、電気パルスの発生器、並びに筋肉の近位及び/又は傍らで、対象の皮膚に設置されるように調整される電極であって、電流が電極によって筋肉へ伝達され得るように発生器へ接続される、電極を備える機器を備える、刺激装置によって行われる。機器は、好ましくは、電気パルスの強度及び周波数などの電気刺激のパラメータを選択するための制御装置を備える。そのような機器は、当業者に公知である。
【0051】
本開示の枠組み内で、ステップ(ii)において定量される各「力」は、好ましくは、周波数のうちの1つでのステップ(i)の電気刺激の全パルスに応答して発せられる最大力に対応する。同様に、ステップ(c)において定量される各「力」は、好ましくは、ステップ(b)の電気刺激の孤立パルスに応答して達せられる最大力に対応する。
【0052】
本文書の枠組み内で、ある要素を提示するための不定冠詞「a」、「an」又は定冠詞「the」の使用は、複数のこれらの要素の存在を除外しない。本文書において、用語「第1の」、「第2の」、「第3の」などは、要素を区別するためにのみ使用され、これらの要素におけるいずれの順序も含意しない。本文書において、用語「のレベルで(at level of)」及び「のレベルで(at the level of)」は、同等に使用される。本文書の枠組み内で、用語「に基づく(on basis of)」及び「に基づく(on the basis of)」は、同等に使用される。後者は、さらに、限定的なものではなく、第1の数量が第2の数量に基づいて定量されるという事柄は、第1の数量がまた第1の数量と共に第3の数量に基づいて定量されることを除外しない。
【0053】
本文書の枠組み内で、動詞「含む(comprise)」、「含む(include)」、「含む(involve)」、又はいずれかの変形、並びにそれらの活用形の使用により、述べられたもの以外の要素の存在が除外されることはない。動詞「含む(comprise)」が、用語「(2つの値間)に含まれる(comprised between)」によってある数値範囲を規定するために使用される場合に、これらの2つの値は、その数値範囲から除外されると解釈されるべきではない。
【0054】
本文書の枠組み内で、用語「好ましい」、「好ましくは」、「好まれる」の使用は、開示される主題の範囲に関して、又は請求項の解釈について、限定するものとみなされるべきではない。より詳細には、本開示において「好まれる」限定範囲又は実施例を含むことは、「好まれる」実施例のみを含むように、特許請求される主題の範囲を限定することを意図しない。この点において、「好まれる」実施例を含むことは、そのように特定されない主題の放棄を表明すると解釈されるべきではない。
【0055】
本開示の主題の方法の正確さ及び信頼性をさらに改善するために、いずれかの前出の実施例と完全に適合する、方法の別の好ましい実施例が、以下に提示される。この好ましい実施例によると、方法は、ステップ(iii)の後にステップ(iv)を数回行うことを含む。ステップ(iv)は、以下のサブステップ:
(iv.1)電荷の段階によって電荷を増加させるサブステップ、
(iv.4)ステップ(i)~(iii)を繰り返すサブステップ
を含む。
【0056】
このステップ(iv)は、したがって、ステップ(a)~(d)から、しかしステップ(i)を最初に行った後に、規定される電荷の段階をさらに修正することを企図する。この修正は、ステップ(i)を2回行う間に、現在の電荷へ電荷の段階を系統的に追加することにより行われる。例えば、前出の数値例、及びステップ(iv)を10回行うという回数を想定すると、これは、ステップ(i)~(iii)が、28mAの電荷で最初に実行され、その後、29mAの電荷で2回目に実行されるなど、38mAの電荷でのステップ(i)~(iii)の11回目の実行まで行われることを意味する。
【0057】
ステップ(iv)は、それが、ステップ(ii)における力、及びステップ(iii)における筋疲労の広範囲な定量(例えば、測定)を行うことを可能にするので、方法の全体的な正確さ及び信頼性を改善することを可能にする。このステップ(i)~(iii)の繰り返しは、特に、これらのデータの平均値を算出すること、及び確実に筋疲労が非常に小さい誤差範囲で正確に定量されることを可能にする。
【0058】
それにも関わらず、ステップ(i)~(iii)の繰り返しは、筋肉生理に関する科学文献において公知であり、説明されるような、「増強」(又は活動後増強、階段現象、反復刺激後増強)と呼ばれる筋肉生理現象に対処することを必要とする。
【0059】
この現象は、後続の筋肉収縮の向上への先行する筋肉活動の効果として定義される。筋肉活動は、筋疲労及びさらに増強ももたらし、これは、末梢性筋疲労とは反対の現象である。増強は、それゆえに、筋疲労と同時に起こり、それを多少補うことができる。増強のこの現象は、全ての種類の筋肉活動で起こる。それゆえに、筋疲労を定量するためにステップ(i)の筋肉の電気刺激を行う場合に、電気で誘発された筋肉収縮が、筋疲労を隠し、その定量を乱す、筋繊維の増強を発生させる。定量の擾乱は、電気刺激パルスが多数であり、ある時間内で繰り返されるので、より一層重大である。
【0060】
この増強を緩和又は回避さえもするために、ステップ(iv)は、ステップ(i)~(iii)を繰り返すことだけでなく、ステップ(i)を2回行う間にステップ(a)~(d)から規定される電荷を増加させることも企図する。実際に、電荷におけるこの増大は、前出の電気刺激によって増強されていない、各ステップ(i)を行うときの新規の筋繊維を含むことを可能にする。結果として、筋繊維の空間的増大は、ステップ(iv)によって導かれる各ステップ(i)を行うときに、修正される。
【0061】
ステップ(iv)は、したがって、ステップ(i)~(iii)を繰り返すことによって方法の正確さを改善するという利点、及び筋肉の増強を強力に緩和して、その結果、方法の正確さを効率的に改善するという利点の両方を兼ね備える。
【0062】
好ましくは、ステップ(i)の各電気刺激は、10~100mAに含まれる電気的強度でのパルスの繰り返しを含み、サブステップ(iv.1)における電荷の増加は、パルスの電気的強度の増加で構成される。この場合に、パルスは、共に10~100mAで、電気的強度のより低い値からより高い値まで増加する。より低い値は、ステップ(a)~(d)によって反復的に決定される。それは、典型的には、15~40mAに含まれ、より好ましくは、それは、対象がステップ(i)において穏やかな第1の電気刺激を感じるために、約25mA~30mAである。より高い値は、好ましくは、30~60mAに含まれ、より好ましくは、それは、筋肉への高すぎる負荷を避けるために、約40mA~50mAである。
【0063】
好ましくは、電気的強度の点で表される電荷の段階は、+0.5~+5mAに含まれる。より好ましくは、それは、約+1mAであり、そのようなステップの値は、その他のものに対してステップ(i)~(iii)を1回行うときと十分に異なる筋繊維を電気刺激するために、及びその結果、増強を緩和するために十分である。
【0064】
好ましくは、行う回数は、5~30回に、より好ましくは、10~20回に含まれる。例えば、それは、力及び筋疲労の十分な定量(例えば、測定)を行うために、及びその結果、方法からの誤差範囲を非常に小さくするために、約15回であり得る。
【0065】
ステップ(iv)の非限定的な実例としての実施例によると、ステップ(a)~(d)から規定される電荷は、ステップ(iv)を通して+1mAの15回の電荷の段階によって漸進的に増加される。強度におけるそのような増加は、前回のステップ(i)を行ったときの電気刺激によって影響を受けず、それゆえに、まだ増強されていない、筋繊維の新規の層を各回で増やすことを可能にする。これは、方法をより一層正確に、及び実施し易くする。
【0066】
方法の好ましい実施例によると、ステップ(iv)は、サブステップ(iv.1)とサブステップ(iv.4)との間に以下のサブステップ:
(iv.2)ステップ(b)及び(c)を実行するサブステップ
をさらに含む。
【0067】
さらに、サブステップ(iv.2)のこの導入は、このサブステップの各実行において考慮された「電荷」と共に理解される必要がある。例えば、前出の数値例に続いて、サブステップ(iv.2)を最初に行うことにより、その後、28mAの電荷でのステップ(b)及び(c)の実行が誘発される。
【0068】
このサブステップ(iv.2)は、ステップ(i)~(iii)を2回行う間の孤立パルスによる電気刺激を誘発する。有利には、連続した筋肉の応答、並びにステップ(c)をこのように行うときに定量される力は、ステップ(i)~(iii)の実行の繰り返し中に筋肉データ情報を推定及び/若しくは測定及び/若しくはモニタリングするために、並びに/又はこの実行を調整するために使用され得る。
【0069】
モニタリングすることが特に有利である、そのような筋肉データ情報は、サブステップ(iv.2)を行った後のステップ(b)の電気刺激に応答して筋肉が力を発する時間である。実際に、以下に説明されるように、この時間は、電荷を増加させるときに、ステップ(i)の実行の繰り返しにわたって増やされた筋繊維の同質性をモニタリングするために使用され得る。
【0070】
四頭筋などの人の筋肉は、2種類の繊維:「遅筋繊維」及び「速筋繊維」を含む。一方で、遅筋繊維は、低レベルの力を発し、低速に収縮するが、それらは主に酸化的代謝を有し、それらは疲労に対して耐性がある。他方で、速筋繊維は、高レベルの力を発し、急速に収縮するが、主に解糖的代謝を有し、疲労に対して耐性がない。
【0071】
したがって、遅筋繊維と速筋繊維の割合が、ステップ(iv)によって導かれる電荷を増加させるときの筋肉の電気刺激中に、同じままであるか判断することは、適切である。実際に、増やされた速筋繊維と遅筋繊維の割合が、方法の実行中に電荷の関数として変化する場合に、これは、それらが疲労に対して異なる耐性を有するならば、ステップ(iii)における筋疲労の定量に影響を及ぼすであろう。
【0072】
方法の実行中にこのパラメータをモニタリングするための手法は、孤立パルスによる電気刺激に応答して筋肉がステップ(c)において定量される力を発するために(すなわち、それに達するために)必要な時間を定量(例えば、測定)することである。実際に、遅筋繊維及び速筋繊維はまた、異なる速度でそれらの力を発するので、この時間の変動は、電気刺激された遅筋繊維及び速筋繊維の割合の変動と解釈され得る。
【0073】
そのため、ステップ(c)は、好ましくは、ステップ(b)の電気刺激に応答して筋肉が力を発する時間を定量することを含む。この場合に、ステップ(iv)は、好ましくは、サブステップ(iv.2)とサブステップ(iv.4)との間に以下のサブステップ:
(iv.3)ステップ(i)を最初に行う前のステップ(c)を最後に行うときに定量される時間に対して、前出のサブステップ(iv.2)に起因するステップ(c)を行うときに定量される時間を比較するサブステップ
を含む。
【0074】
したがって、有利には、新規に増加した電荷での孤立パルスによる電気刺激から得られる時間と、ステップ(i)を最初に行うために使用される電荷の確認に従って、ステップ(b)及び(c)を行うことと関連する元来の時間を連続的に比較することが可能である。これは、筋疲労の定量の信頼性に影響を及ぼし得る、ステップ(i)の実行の繰り返しにわたって増やされた筋繊維の同質性の潜在的変化を検出することを可能にする。
【0075】
実際には、この時間は、一般的に、対象の遅筋繊維と速筋繊維の割合に応じて、50~100ミリ秒に含まれる。実例として、それは、60、70、80又は90ミリ秒であり得る。
【0076】
方法の実行は、サブステップ(iv.3)において比較された時間がその後に少なくとも10ミリ秒、より好ましくは少なくとも5ミリ秒乖離する、サブステップ(iv.3)を任意に行った後に停止され得る。実際に、この場合に、ステップ(i)の実行の繰り返しにわたって増やされた遅筋繊維と速筋繊維の割合は、筋疲労の定量が信頼性が高く確認されるためには変化が大きすぎる。
【0077】
本開示の別の好ましい実施例によると、いずれかの周波数でのステップ(i)のいずれかの電気刺激が、少なくとも300ミリ秒の休息期間によって先行及び/又は後続される。これは、サブステップ(iv.2)(又はより一般的にはステップ(iv))が方法の一部として実行されるか否かに関わらず、適用される。
【0078】
この休息期間は、それが電気刺激(サブステップ(iv.2)又はステップ(i)の)から別の電気刺激(サブステップ(iv.2)又はステップ(i)の)への擾乱を緩和(又はより良好には回避)し得るので、有利である。そのような擾乱は、例えば、筋肉「強直」、すなわち、時間が接近しすぎる2回の電気刺激の各々に応答して、時間の関数として筋肉によって発せられる力の曲線グラフの融合によるものであり得る。300ミリ秒の最小限界値は、2回の連続の電気刺激の間に、正常な及び/又は弛緩した状態(すなわち、収縮も、発せられて残存する力もない)への筋肉の少なくとも一度のほぼ完全な復帰を可能にするために選択される。
【0079】
これは、非常に低い定量の擾乱で、又はそれがなく、ステップ(i)の周波数の各々について各ステップ(ii)を行うときに、及びサブステップ(iv.2)に起因する各ステップ(c)を行うときに、筋肉によって発せられる力を直接的に定量することを可能にする。
【0080】
有利には、休息期間はまた、上記で提示された増強を緩和することに寄与し、したがって、筋疲労の定量の正確さ及び信頼性をさらに高める。実際に、連続の電気刺激の時間の間隔を開けることにより、単位時間当たりの電気インパルスの回数を減少させ、したがって、これらの電気刺激によって増やされる筋繊維における増強も低減する。
【0081】
休息期間についての2/5、3/5、4/5、1、6/5、7/5、8/5、9/5、2、3、4又は5秒などの値は、一方で、それらが上述の擾乱及び前記増強を強力に緩和(及び回避さえも)するために十分に長く、他方で、それらが全体的に短い時間で十分に短く、容易に適用可能な方法を実行するために十分に短いので、好ましい。
【0082】
先行する開示による異なる休息期間が適用され得る。例えば、第1の休息期間は、同じステップ(i)を行う場合の2回の電気刺激の間に適用され得る。したがって、第2の休息期間は、ステップ(i)の全実行後に適用され得る。最後に、第3の休息期間は、存在するならば、サブステップ(iv.2)に起因するステップ(b)の実行とステップ(i)の実行との間に適用され得る。これらの休息期間のいずれもが、上述の擾乱を緩和又は回避することに寄与するが、第2の休息期間が、これ及び増強の緩和又は回避に最も大きな効果を有するものである。そのため、第2の休息期間は、好ましくは第1及び/又は第3の休息期間より長い。好ましくは、第2の休息期間は330ミリ秒以上であり、第1及び第3の休息期間は300ミリ秒以上である。より好ましくは、第2の休息期間は1秒以上であり、これらの第1及び第3の休息期間は0.5秒以上である。例えば、第2の休息期間は約5秒であり、第1及び第3の休息期間は約1秒である。
【0083】
特に、本開示の枠組み内で、ステップ(b)において使用される用語「孤立」は、孤立パルスが、いずれかの他の電気刺激のいずれかの他のパルスから時間を隔てられ、達成される又は少なくともほぼ達成される(すなわち、正常な及び/又は弛緩した状態への筋肉のほぼ完全な復帰を伴う)孤立パルスに対する筋肉の応答のために好ましくは十分に隔てられるという事柄を指す。好ましくは、このパルスは、ステップ(b)及び(i)のいずれかの他の電気刺激から、少なくとも300ミリ秒、より好ましくは少なくとも1秒隔てられる。
【0084】
本開示の好ましい実施例によると、ステップ(iii)の筋疲労の定量の信頼性及び正確さを高めるさらなる手法が、提示される。この実施例によると、各周波数でのステップ(i)の各電気刺激は、最大で500ミリ秒持続する。換言すると、ステップ(i)の周波数の各々におけるパルスの繰り返しは、最大で500ミリ秒の短い時間において行われる。
【0085】
この短い時間は、非常に短いので、それは、有利には、そうでなければ、筋肉収縮が加わることによって力を増加させる、又はその反対に、筋肉に対する拮抗筋を収縮させることによってそれを減少させる可能性がある、対象の随意の又は反射による擾乱を回避することを可能にする。これは、ステップ(ii)における力の定量、及びしたがって、全体の方法の実行をより正確で信頼性が高くする。この短い時間は、さらに、依然として、500ミリ秒を超える時間において各周波数でパルスを繰り返すことによる場合に当てはまるように、各周波数でステップ(ii)において定量される同じ最大力に達することを可能にする。この短い時間はまた、有利には、方法の実行の全時間を減少させる。
【0086】
好ましくは、短い時間は、150~250ミリ秒にさらに含まれる。例えば、それは、200、210、220、230、240又は250ミリ秒である。上述の利点は、250ミリ秒の短い時間で強化される。
【0087】
正確な時間データT(秒単位)が、所与の周波数μ(Hz単位)でのパルスデータの正確な回数Nと等価であることが指摘され得る。それらの数は、式T=N/μを満たしている。好ましくは、パルスは、周波数の各々でのステップ(i)の各電気刺激中に、5~20回繰り返される。
【0088】
本開示の代表的な実施例によると、ステップ(i)において述べられた周波数は、0~200Hzに含まれる。そのような上限は、定量方法の実行による筋疲労の誘発を緩和する。好ましくは、周波数は、第1の周波数μ及び第2の周波数μを含む。第1の周波数は、好ましくは、μ-μ≧μ/10という意味において、第2の周波数と少なくとも10%異なる。
【0089】
周波数間のこの差は、ある周波数での電気刺激に応答して筋肉によって発せられる、この周波数の関数の力の曲線グラフ上の2点が、ステップ(iii)をより正確に実行するために、一方が他方から十分に離されることを確実にするために有利である。これは、予め存在する筋疲労に依存する、この曲線グラフの変形の不均一性及び非線形性から導かれる。低周波数(0~50Hzなど)での電気刺激に応答して筋肉によって発せられる力は、実際に、高周波(50~200Hzなど)での電気刺激に応答して筋肉によって発せられる力より、この筋疲労によってさらに大きく影響を受ける。
【0090】
そのため、上述の差μ-μは、第2の周波数μのより好ましくは少なくとも20%、及びさらにより好ましくは少なくとも50%である。好ましくは、第1の周波数は、0~50Hzに含まれ、及び/又は第2の周波数は、50~200Hzに含まれる。好ましくは、第1の周波数は約20Hzであり、及び/又は第2の周波数は約120Hz又は120Hzである。第1及び第2の周波数についてのいずれかの他の同様の値の組が使用されることがあり、例えば、10Hzと50Hz、20Hzと100Hz、30Hzと80Hz、50Hzと150Hzなどである。
【0091】
これらの実施例によると、ステップ(i)において使用される電気刺激の周波数は、好ましくは、第1及び第2の周波数で構成される。有利には、以降で説明されるように、これらの2つの力を考察することによってのみ、ステップ(iii)において筋疲労を定量することが可能である。利点は、回数及び周波数においてステップ(i)における電気刺激を限定することによって、筋疲労の誘発を回避することである。別の利点は、限定された数のデータのみを考察することによって、ステップ(iii)の実行を容易にすることである。実例として、ステップ(i)は、
- 150~250ミリ秒に含まれる短い時間において、約10、15、20又は25Hzの第1の周波数での3、4、5又は6回のパルスの繰り返しで、筋肉を電気刺激すること、
- 150~250ミリ秒に含まれる短い時間において、約100、110、120又は130Hzの第2の周波数での16、17、18又は19回のパルスの繰り返しで、筋肉を電気刺激すること
で構成され得る。
【0092】
開示される主題は、しかしながら、第1及び第2の周波数のみで構成される周波数に限定されない。周波数の他の数値には、3、4、5、6、7、8、又はそれを超える周波数などが考慮され、これらの周波数はまた、周波数の範囲内で等間隔であり得る。
【0093】
本開示の好ましい実施例によると、ステップ(iii)は、好ましくは、
- ステップ(ii)において定量される力の比較、及び
- この比較に基づく筋疲労の定量
を含む。
【0094】
第1及び第2の周波数を含む周波数の上述の場合に、ステップ(ii)において定量される力は、したがって、
・第1の周波数でステップ(i)の電気刺激に応答して筋肉によって発せられる第1の力、及び
・第2の周波数でステップ(i)の電気刺激に応答して筋肉によって発せられる第2の力
を含み、
好ましくは、ステップ(iii)は、以下のサブステップ:
(iii.1)第2の力に対する第1の力の比率を計算するサブステップ、
(iii.2)閾値に対してサブステップ(iii.1)において計算された比率を比較するサブステップ、及び
(iii.3)サブステップ(iii.2)の比較に基づいて筋疲労を定量するサブステップ
を含む。
【0095】
特に、サブステップ(iii.1)及び(iii.2)は、したがって、力の上述の比較の好ましい実施である。
【0096】
ステップ(iii)のこの特定の実施は、筋疲労を定量するための容易で、速やかで、複雑性が低い計算を可能にする。それはまた、非常に効率的である。実際に、第1の周波数は、第2の周波数と少なくとも10%異なるので、比率は、筋疲労の関数の前述の曲線グラフの変形の不均一性によって影響を受ける。サブステップ(iii.2)において特定されるいずれの差も、それゆえに、特に、疲労していない筋肉について予期される比率に対応する閾値に関して、少なくとも暗示的に、及びより好ましくは明示的にさらに定量され得る、筋疲労の基礎となり得る。
【0097】
第2の力に対する第1の力の比率が比較される閾値は、好ましくは数値F(μ)/F(μ)で構成され、ここで、
・Fは、電気刺激に応答して疲労していない筋肉によって発せられる力を表す、この電気刺激の周波数の関数として、人に依存せず増加する正則関数であり、
・μ及びμは、それぞれ第1及び第2の周波数である。
【0098】
このように比率を表すことは、それが人に依存せず、第1及び第2の周波数のいずれかの組について関数Fを通して間接的に与えられるので、有利である。この実施例は、開示される主題の範囲を限定するものではない。第1及び第2の周波数のみを含む上述の実施例について、これらの周波数に対応する数値が十分なものであるので、全体の関数Fを考察する必要はない。
【0099】
実例として、第1の周波数は、10~40Hzに含まれる場合があり、第2の周波数は、90~130Hzに含まれる場合があり、閾値は、40~90%に含まれる場合がある。より好ましくは、第1の周波数は約20Hzであり、第2の周波数は約120Hzであり、閾値は約60%、又は65%、又は70%、又は75%、又は80%である。
【0100】
本文書の枠組み内で、用語「定量すること」、「定量する」、「定量」及びいずれかの他の変形は、筋疲労が、好ましくは、特定されるだけでなく、明示的に測定及び/又は計算されるという意味において、好ましくは、用語「量を定めること」、「量を定める」、及び「定量化」に対応する。例えば、前出の実施例では、明示的な測定及び/又は計算は、閾値に対する計算された比率の比較から、及び/又は定量された筋疲労の平均値を算出することから導出され得る。ステップ(iii)の範囲は、それにも関わらず、好ましくは、例えば関連する回転力などの、ステップ(c)及び/又は(ii)において定量される力から少なくとも部分的に導出される、他の物理量に基づく筋疲労の定量を除外しない。交換的に、ステップ(c)及び(ii)は、例えば変位量、加速度、及び/又は回転力などの、ステップ(b)及び(i)の電気刺激に応答して測定され得る力に関連する物理量に基づき得る、力の定量を除外しない。
【0101】
方法の開示される別の実施例によると、力は、ステップ(c)及び(ii)において、好ましくは歪み計又は力量計による、直接的な力の測定によって定量される。特に、ステップ(c)及び(ii)における力の定量は、適切な技術により、及びいずれの中間的な又は間接的な測定及び/又は観察(筋電図検査によってなど)にも、力の定量誤差のリスクの増加を引き起こす推定又は評価にもよらず、力(ニュートン単位)を測定することによって、直接的に行われる。これらの直接的な力の測定は、好ましくは、以降で提示される専用の筋力測定装置によって実行される。
【0102】
好ましくは、関与する筋肉は、人(すなわち、対象)の下肢の筋肉で構成される。好ましくは、この筋肉は、四頭筋又は膝屈曲筋で構成される。これらの場合において、本開示の代表的な実施例によると、方法は、ステップ(a)の前に以下のステップ:
(α)
- 電気刺激のパラメータを選択するための制御装置を備える、ステップ(b)及び(i)の電気刺激を発生させるための機器、

□座位で人を受容するように、及び水平支持体に位置付けられるように調整される座部、
□下肢の脚の少なくとも部分を受容するように、及びそれを安定して維持するように調整される脚支持要素、
□ステップ(b)及び(i)において機器によって発生させられる電気刺激に応答して、脚支持要素のレベルでステップ(c)及び(ii)において定量される力を測定するように調製される計器、及び
□座部と脚支持要素とを機械的に連結し、脚支持要素のレベルで計器への接続部材を備える機械式構造
を備える筋力測定装置、並びに
- 論理ユニットであって、
□計器へ接続され、その結果、論理ユニットが計器からステップ(c)及び(ii)において定量される力の測定値を受け取るように調整され、
□ステップ(a)において設定される電荷及び筋力の目標数値範囲を受け取るように調整され、
□ステップ(a)において設定される電荷及び筋力の目標数値範囲から、及びステップ(c)及び(ii)において計器によって測定される力から、サブステップ(d.1)及び(d.2)、及びステップ(iii)を実行するように構成される、論理ユニット
を備えるシステムを設けるステップ、
(β)水平支持体に座部を位置付けるステップ、
(γ)下肢が筋力測定装置と直接的に外面で物理的に接触するのみであるように、座位で座部に人を位置付け、脚支持要素に脚の少なくとも部分を位置付けるステップ
を含む。
【0103】
当業者によって理解されるように、ステップ(α)において設けられるシステムは、本開示の方法のステップを実行するように、完全に設計及び構成される。特に、好ましくは、ステップ(a)において設定される電荷及び筋力の目標数値範囲は、論理ユニットによって受け取られ、ステップ(b)及び(i)の電気刺激は、機器によって発生させられ、ステップ(c)及び(ii)において定量される力は、計器によって測定される。加えて、好ましくは、サブステップ(d.1)の比較、サブステップ(d.2)の電荷の修正、及びステップ(iii)の筋疲労の定量は、ステップ(a)において設定される電荷及び筋力の目標数値範囲に、及びステップ(c)及び(ii)において計器によって測定される力に基づいて、論理ユニットによって実行される。論理ユニットはまた、機器、並びに/又はアルゴリズム的に機器を作動させる、及び/若しくは電気刺激のパラメータを選択するためのその制御装置へ接続され得る。
【0104】
前記電気刺激のパラメータは、好ましくは、電気刺激の周波数、電荷、及び各電気刺激のパルスの回数を少なくとも含む。好ましくは、電気刺激の周波数は、例えば0~200Hzの周波数の範囲で変化し得る。好ましくは、電荷の選択は、パルスの電気的強度の選択を少なくとも含む。これらの電気刺激のパラメータはまた、上述の第1、第2及び/又は第3の休息期間を含み得る。制御装置は、好ましくは、方法に関連する所定の電荷プログラムを実行するように構成され得る。代替的に、この実行は、上で説明されたように、論理ユニットの制御下で行われ得る。
【0105】
ステップ(c)及び(ii)を実行するための筋力測定装置の使用は、特に有利である。この装置は、非常に単純で、移動が容易であり、一方で、非常に正確に、ステップ(c)及び(ii)において力を直接的に定量することを可能にする。ステップ(b)及び(i)の実行はまた、ステップ(γ)において述べられたように、人が座部に座ると、その人物の脚が脚支持要素に位置付けられ、安定して維持されるように、非常に単純にされる。
【0106】
好ましくは、下肢が筋力測定装置と直接的に外面で物理的に接触するのみであるので、
・下肢の足が空中に垂れ下がり、及び/又は、好ましくはさらに、
・下肢の全体の大腿が座部に置かれ、及び/又は、好ましくはさらに、
・下肢の膝の裏が座部の側面と接触する。
【0107】
有利には、これは、ステップ(c)及び(ii)における力の測定条件を完全に知ること、及びしたがって、物理的乱れ(例えば、地面などの支持体に足によって作用される力によって引き起こされるもの)が回避されるので、力の定量をより正確で、信頼性が高くすることを可能にする。好ましくは、人は、その背中が直立し、下肢の大腿と実質的に直角を形成するようにステップ(b)及び(c)において位置付けられる。装置の単純な構造、及び人の位置付けの容易さにより、計器による力の測定は、再現可能である。これは、同じ場所で及び同じ条件で方法を実行する必要がなく、人の位置付けに関するパラメータの多様性を気にすることなく、座部が水平支持体に位置付けられ得るという条件で、ステップ(iii)において定量される筋疲労が、いつでも及びどこでも、一日中比較され得るので、開示される方法の目的に有利ある。
【0108】
好ましくは、筋力測定装置は、座部のレベルで作用する人の全体重により、ステップ(b)、(c)、(i)及び(ii)の実行中に水平支持体に対して静止して維持される。特に、人を受容し、方法を実行するために、複雑な構造も、重い構造も、必要とされることはない。機械式構造によって脚支持要素へ連結される単純な平面が、ステップ(β)において述べられたように、座部として使用され、台又は別の座部などいずれの場所の水平支持体にも位置付けられ得る。特に、人が、その人物の筋疲労を定量するために特定の医療又はスポーツ施設に行く必要はない。座部は、好ましくは、それに座った人物を完全に位置付けるために十分に広い。それは、2つの垂直軸に沿って、少なくとも40cm、好ましくは少なくとも50cm又は少なくとも60cmで、好ましくは連続して延在する。
【0109】
脚部を受容し、単純に支持しないことにより、脚支持要素は、定位置に脚の部分を維持することを可能にし、例えば、説明されたような、力の正確で再現可能な測定を確実にする。脚支持要素は、好ましくは、脚の部分の曲率と適合し、この脚の部分を横方向に動かなくするための、半円筒状の中空部を備える。脚支持要素はまた、脚の部分をより良好に動かなくするためのストラップを備え得る。
【0110】
上述のように、計器は、脚支持要素のレベルで機械式構造へ機械的に接続されて、その結果、脚支持要素のレベルでステップ(c)及び(ii)において定量される力を測定する。計器は、典型的には、力の方向と整列されて、その結果、これらの力を直接的に及び正確に測定する。それは、脚支持要素と整列され、脚支持要素と単一の部品を形成する場合があり、その結果、換言すると、それは、脚支持要素へ直接的に固定される。上述のように、計器は、好ましくは、歪み計又は力量計である。それは、牽引において又は圧縮において動作するために配置されることが可能であり、その結果、力の再現可能で、直接的で、正確な測定が行われ得る。
【0111】
機械式構造は、好ましくは、機械式アーム又は機械式フレームで構成される。有利には、装置の構造は、したがって、非常に単純で軽い。アーム又はフレームは、座部に直交する少なくとも1つの平面において、単純な形状、例えば「I」、「L」、「T」、「U」、「S」又は「Z」の突出した形状を有し、好ましくは、座部と連結される(又は固定される)少なくとも1つの高位の先端、及び脚支持要素と連結される(又は固定される)少なくとも1つの低位の先端を備え得る。装置は、座部に対して機械式構造の位置及び/若しくは向き、並びに/又は機械式構造に対して脚支持要素の位置及び/若しくは向きを修正するための、位置調節要素を備え得る。そのような位置調節要素は、好ましくは、例えば空洞内で、機械式アーム又はフレームと協働するように構成される、ねじ、ボルト、ピン、ばねなどの、当業者に周知のいずれかの機械的要素を備え得る。
【0112】
筋力測定装置は、好ましくは、座部、脚支持要素、計器、機械式構造、及び存在するならば位置調節要素のみで構成される。それは、したがって、非常に単純で実用的な形態まで簡素化されるが、筋疲労を定量するために正確な手法で、方法のステップ(c)及び(ii)を実施することを可能にする。
【0113】
開示される主題はまた、筋肉の筋疲労を定量するためのシステムとして、上記で詳細に説明されたようなシステムを提供し、システムはまた、開示される方法を実施するように調整される。本開示による方法の全ての実施例、及びこれらの実施例の利点は、必要な変更を加えて、本開示による本システムへ適用される。特に、このシステムは、先で論じられたように、信頼性が高く、正確な筋疲労の定量を可能にする。
【0114】
開示される主題は、請求項においてさらに提示される。本開示から当業者によって理解されるように、これらの請求項において提示される実施例のいずれかの1つは、単独で又は組み合わせて考察され得る。特に、可能である場合に、請求項の従属は、より広範な方式で考えられる場合があり、その結果、請求項の可能な組合せのいずれの1つも、それらが、特に本開示を考慮して、技術的に可能であり、当業者によって理解される限り、本出願の一部である。
【0115】
開示される主題の他の特性及び利点が、以下の詳細な説明を読み解くことで明らかとなり、その理解のために、添付の図を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0116】
図1】本開示の代表的な実施例による、方法の流れ図である。
図2】本開示の代表的な実施例による方法のステップ(b)の実行中の、時間の関数としての、実験に基づく連続的な力の測定を例示する図である。
図3】ステップ(b)の孤立パルスの電気的強度に応じて、本開示の代表的な実施例による方法のステップ(c)において測定される力の実験に基づく曲線グラフである。
図4】ある周波数でのステップ(i)の電気刺激に応答して筋肉によって発せられる、この周波数の関数としての(全体的及び/又は最大)力の曲線グラフである。
図5】本開示の代表的な実施例による方法のステップ(i)の実行中の、時間の関数としての、実験に基づく連続的な力の測定を例示する図である。
図6】開示される方法の代表的な実施例を実施するためのシステムにおける、筋力測定装置を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0117】
図における図面は、縮尺通りではない。同様の要素は、図において同様の参照符号を割り当てられ得る。本文書の枠組み内で、同一又は類似の要素は同じ参照符号を有し得る。図面における参照番号の存在は、特に、これらの番号が請求項において示される場合に、限定的であるとみなされることはない。
【0118】
開示される主題の代用的な実施例の説明が、図を参照して以降に記載されるが、本開示は、これらの参照によって限定されない。特に、以下に説明される図面又は図は、概略的なものに過ぎず、決して限定することはない。
【0119】
図1に示されるように、例示される筋疲労定量方法は、ステップ(ii)において各周波数μ、μ、μ、・・・、μそれぞれでの電気刺激の各々に応答して筋肉によって発せられるそれぞれの(最大)力F、F、F、・・・、Fを定量するために、及び好ましくはそれらを測定するために、ステップ(i)において異なる周波数μ、μ、μ、・・・、μで筋肉を電気刺激すること、及び最終的に、ステップ(iii)においてそのように定量された力F、F、F、・・・、Fに基づいて筋肉の筋疲労を定量することを企図する。電気刺激の回数
【数1】

は、2回より多い又はそれに等しく、例えば2~50回に含まれる。好ましくは、数値nは2、3、4又は5に等しい。より好ましくは、数値nは2に等しい。
【0120】
ステップ(i)の電気刺激は、これらの電気刺激のいずれかが行われるパルスの電気的強度に対応する、電荷Eで実行される。電荷Eは、典型的には、10~100mAに含まれる。
【0121】
正確で、信頼性が高い、ステップ(ii)における力の定量及びステップ(iii)における筋疲労の定量を行うことを可能にする、電荷Eを使用するために、方法は、上で説明されたような、ステップ(a)~(d)を含む。ステップ(a)において、初期電荷Eは、例えば15mA、20mA又は25mAに設定される。この電荷は、ステップ(i)~(iii)を信頼性が高く実行するために、広い種類の対象に好都合な中間的な電荷として選択される。ステップ(a)はまた、筋力の目標数値範囲Iを設定することを企図する。好ましくは、数値範囲Iは、本主題の開示において詳述されるように、形態[L,+∞[又は]L,+∞[、Lは下限、例えば5Nである、の数値範囲である。
【0122】
図1で例示されるように、電荷E:=Eは、ステップ(b)における孤立パルスで筋肉の電気刺激を規定及び実行するために、及びステップ(c)の電気刺激に応答して筋肉によって発せられる(最大)力Fを定量するために使用される。F∈Iである場合に、ステップ(i)は、初期に設定されるように、E=Eで実行される。そうでない場合に、ステップ(d)を通して、電荷Eが、E’として修正され、ステップ(b)~(c)が、新規の電荷Eで再び実行され、新規の力Fの定量、及びステップ(d)を介した条件F∈Iの再評価をもたらす。特に、Eは、本主題の開示において完全に説明されるように、条件F∈Iが満たされるまで、E’と抽象的に記される修正値によって反復的に修正される、反復パラメータに対応する。
【0123】
有利には、図3に示されるように、変化する電荷(軸85でmA単位で読み取られる)でステップ(c)において定量されるいずれかのそのような力(軸82でニュートン単位で読み取られる)の実験に基づく測定を示す曲線グラフの66は、少なくとも、ステップ(b)~(d)の反復のための目的の範囲内の電荷について、実質的に線形である。実際に、殆どの状況において、ステップ(i)を最初に行うときに使用される電荷は、25~40mAに含まれることになる。結果として、単純に、曲線グラフの傾きによって導かれる割合を現在の電荷Eへ適用することによって、ステップ(d)において修正される電荷E’を決定することは、容易であり得る。曲線グラフの傾きは筋肉に依存するので、それは、ステップ(c)において最後に定量される力Fに対する基準力(好ましくはL、又はL+1/2N、又はL+1N)の比率によって得られる。
【0124】
筋肉がステップ(c)において定量される力Fを発する時間Tは、少なくとも、ステップ(i)を最初に行う前のステップ(c)を最後に行うときに、及び場合により、存在するならば、先行するステップ(c)の各々を行うときに、定量される。この時間は、図1に例示されるように、F∈Iである場合に、T:=Tとして省略される。
【0125】
図2は、ステップ(b)の実行中に時間(軸83でミリ秒単位で読み取られる)の関数として、ステップ(c)において定量される最大力Fだけではなく、連続的な力の測定(軸82でニュートン単位で読み取られる)を示す。特に、この測定から導かれる曲線グラフ65は、現在の電荷Eでの孤立パルスに対する筋肉の応答に対応する。この応答は、「攣縮」と呼ばれる。時間0は、パルスが筋肉のレベルで適用される瞬間に対応する。曲線グラフ65から得られ得るように、力Fは、50~100ミリ秒に一般的に含まれる時間T後に達せられる。筋肉によって発せられる力は、孤立パルスによる電気刺激によるいずれの収縮も、発せられて残存する力もなく、筋肉が正常な状態に戻るまで、漸進的に減少する。そのような正常な状態は、特に、180ミリ秒後にほぼ達せられ、300ミリ秒後に主に達せられる。
【0126】
方法の正確さ及び信頼性をさらに高めるために、ステップ(i)~(iii)は、上で説明され、図1に示されるように、電荷を増加させて繰り返される。電荷Eは、最初に、サブステップ(iv.1)においてE+として増加される。したがって、ステップ(b)及び(c)は、サブステップ(iv.2)においてこの電荷E(さらに、現在の電気刺激のパラメータとして記述される)で実行され、その結果、力F及び時間Tは、この更新された電荷でステップ(c)において新規に定量される。時間Tは、好ましくは、サブステップ(iv.3)においてTと比較され、ステップ(i)~(iii)の新規の繰り返しは、好ましくは、ステップ(i)の実行の繰り返しにわたって増やされる筋繊維が遅筋繊維と速筋繊維の点で同質のままであることを確実にするために、T-T≒0(例えば、|T-T|<5ミリ秒)である場合にのみ、サブステップ(iv.4)として実行される。
【0127】
各ステップ(iii)を行うときの筋疲労の定量は、例えば、2つの力F及びFの比率計算、及び/又は1≦j≦nについて、F~μに関する関数での離散積分計算、並びに少なくとも1つの予期される値に対するこれらの計算のうちの少なくとも1つの比較によって、行われ得る。
【0128】
図4は、周波数(軸81でヘルツ単位で読み取られる)の関数として、電気刺激に応答して筋肉によって発せられる(最大)力(軸82でニュートン単位で読み取られる)のグラフを示す。換言すると、各グラフの各点は、ステップ(i)の周波数のうちの1つでの電気刺激に応答してステップ(ii)において定量され得る、力を示す。曲線グラフ61は、可能な電気刺激の周波数の関数として、そのような電気刺激に応答して疲労していない筋肉によって発せられる力を表す、理論的に予期される関数Fのグラフに対応する。曲線グラフ62は、疲労した筋肉について測定される点(μ,F)、(μ,F)、(μ,F)、・・・、(μ,F)に対応するドット・クラウド(dots cloud)の連続的で規則的な広がりを示す。2つの曲線グラフ61及び62の間の間隔が、高周波数(例えば、90Hzより大きい)の上でより、低周波数(例えば、10~40Hz)の上で、より大きいことが留意される。この間隔は、それぞれ低及び高周波数での、筋肉について測定された力と、疲労していない筋肉についての関数Fから予期される力との間の、差71及び72に対応する。特に、差72は、非常に小さいので、2つの曲線グラフ61及び62が高周波数について実質的に同じであると仮定され得る。
【0129】
比率F(20)/F(120)が65%であると理論的に又は実践的に分かっていることが仮定される場合に、それは、筋疲労を定量するために、それぞれμ=20Hz及びμ=120Hzでの電気刺激に応答する力F及びFを測定するために、十分である。実際には、FがF(120)に実質的に対応するので、Fの測定は、基準測定にある意味において対応し、Fの測定は、Fに対する比率という観点で、期待値との乖離を明示することを可能にする。特に、比率F/Fが65%と著しく異なる場合に、筋疲労は、方法により定量されると考えられ、量が定められ得る。比率についての約65%というこの値は、具体的に指示するためのものであり、限定するものではない。約75%又は85%などの他の値がまた、考慮される関数Fによっては、都合がよい場合がある。同様に、μ及びμの値は、全く限定するものではない。例えば、全く同じ論考が、120Hzの代わりにμ=100Hzで成立し得る。
【0130】
下肢の筋肉について力F、F、F、・・・、Fを測定するための筋力測定装置1が、図6に例示される。これは、好ましくは、本主題の開示において説明されるように、方法を実施するように調製される全体のシステムの一部である。
【0131】
装置1は、座位で人を受容するための平滑部11、平滑部11のための剛性フレーム12、及び水平支持体に座部を取外し可能に位置付けるための位置付け用下側部材13を備える、座部10を備える。剛性フレーム12は、特に、人の快適さのために柔軟な及び/又は詰め物の入った材料から製作され得る平滑部11のレベルで、座部10の剛性に寄与する。位置付け用下側部材13は、水平支持体上の座部10の安定性を改善するために、平滑部11の下、0から1/20メートルまで高さが調節可能であり得る。それらは、吸盤であり得る。それらは、保護された先端を有し得る。それらは、装置1の別の部分がそれらより一層低く延在するので、地面に設置されるようには配置されない。
【0132】
装置1は、例示されるように、機械式構造2によって座部10へ固定される脚支持要素3を備える。機械式構造2は、特に、図6に例示される装置1における機械式フレームである。脚支持要素3は、下肢の脚の下部を受容し、少なくとも部分的に動かなくするための、半円筒状の中空部を含む。計測器4はまた、特に電気刺激に応答して、それが脚支持要素3によって受容及び維持される場合に、脚支持要素3のレベルで筋肉によって発せられる、いずれかの力を測定するために設けられる。機械式構造2はまた、脚支持要素のレベルで計器4への接続部材5を備える。特に、図6の例示される構成において、計器4は、脚支持要素3と接続部材5との間に挟まれて、第1の方向に沿って固定される歪み計である。
【0133】
歪み計は、開示されるシステムの示されていない論理ユニットと装置1を接続するための、接続先端41を備える。論理ユニットは、周波数μ、μ、μ、・・・、μの各々での電気刺激に応答して装置1によって定量される、力F、F、F、・・・、Fのうちの少なくともいくつかに基づいて、筋疲労を定量するように構成される。
【0134】
接続部材5は、上述の第1の方向に垂直である第2の方向dに沿って、機械式構造2に対して脚支持要素3及び計器4の位置を変更するための、位置調節要素51を備える。
【0135】
をステップ(a)~(d)から規定される電荷Eに対応する電気的強度、又は換言すると、ステップ(i)を最初に行うために使用される電気的強度であるとする。この電気的強度は、好ましくは、10~50mAに含まれ、典型的には、約25mAである。+0.1mA~+5mAの、好ましくは約+1mAの電荷の段階Sを考察する。Kを5~30に含まれる、好ましくは約10又は15の整数(いわゆる「行う回数」)であるとする。その場合に、開示される主題の代表的な実施例による方法のステップ(i)~(iv)の実行は、以下のステップ:
連続的に、0~Kの各整数kについて、
- 250ミリ秒より短い時間TにおけるN回のパルスの繰り返しで、第1の周波数μ(好ましくは(約)20Hzの)で筋肉を電気刺激するステップであって、
パルスが一定の持続時間及び強度I+kSを有する、ステップ、
- この電気刺激に応答して筋肉によって発せられる(最大)力Fを定量するステップ、
- 300ミリ秒~5秒に含まれ、好ましくは(約)1秒の第1の休息期間Rにおいて、待機するステップ、
- 250ミリ秒より短い時間TにおけるN回のパルスの繰り返しで、第2の周波数μ(好ましくは(約)120Hzの)で筋肉を電気刺激するステップであって、
パルスが一定の持続時間及び強度I+kSを有する、ステップ、
- この最後の電気刺激に応答して筋肉によって発せられる(最大)力Fを定量するステップ、
- 定量された力F及びFに基づいて、少なくとも1つの筋肉データ情報、好ましくは筋肉の筋疲労を定量するステップ、
- 330ミリ秒~10秒に含まれ、好ましくは(約)5秒の第2の休息期間Rにおいて、待機するステップ
を含む。
【0136】
サブステップ(iv.2)及び(iv.3)は、上で述べられないが、それらは、明白に、本主題の開示において、及び詳細な説明において先で説明されたように、ステップの前出の一覧に一体化され得る。
【0137】
式T=N/μ及びT=N/μが、パルスの回数と電気刺激の時間と電気刺激の周波数との間の関係を表すことが留意され得る。特に、好ましくは、Nは、μが(約)20Hzである場合に、(約)5であり、Nは、μが(約)120Hzである場合に、(約)18である。これらのパルス回数は、前記最大力F及びFに達することを可能にし、力の測定の随意の乱れを回避するために、電気刺激の回数T及びTが250ミリ秒までに限定されることを可能にする。例えば、Nが25であるとみなされる場合に、Tは、依然として250ミリ秒未満であるが、(最大)力Fは、Nが18である場合のものと比較して、実質的に変化しないままである。N及びNのこれら値は、特に、μ及びμの上述の値と関連する本開示の好適な実施例として、本発明者らによって実験により導出された。
【0138】
図5は、先に提示された代表的な実施例に従う開示される方法の部分的な実行中に時間(軸83で読み取られる)の関数として、ステップ(c)において定量される最大力F又はFだけではなく、人の下肢の筋肉から発せられる連続的な力(典型的には収縮力)(軸82でニュートン単位で読み取られる)の純粋に概略的な曲線グラフ63を例示する。
【0139】
特に、この図は、任意のkについての電気刺激の効果を例示し、したがって、ステップ(i)の全体の実行を含む。曲線グラフ63が、各ステップ(i)を行う場合について、すなわち、各kについて、第2の休息期間R後に、それ自体を同様に繰り返すことが、容易に導かれ得る。サブステップ(iv.2)が考慮される実施例に含まれる場合に、図2の上述の曲線グラフ65と同様の曲線グラフは、単純に、曲線グラフ63を同様に繰り返す間に連続的に挿入される。曲線グラフ65と同様の各曲線グラフは、軸83の数値範囲[0,R]で制限され、ここで、R3は、300ミリ秒~5秒に含まれる、好ましくは(約)1秒の第3の休息期間である。
【0140】
上記で提示された符号T、R、F、T、R、Fは、図5へ同様に適用される。曲線グラフ65と同様に、曲線グラフ63は、実験に基づく測定に基づく。それは、明示的な実験データを示すことなく、概略的に再現される。加えて、図5の軸82及び83は、必ずしも均等目盛で与えられるわけではない。特に、明確にするために、図5の例示に対応する回数N及びNは、それぞれ3回及び5回であり、時間T、R、T及びRは、軸83上で均等に目盛を付されていない。
【0141】
筋肉が、パルスが一定の持続時間及びI+kSの強度を有して、250ミリ秒より短い時間Tにおける3回のパルスの繰り返しで、第1の周波数μで電気刺激されることが、図5で視認できる。各パルスの発生は、時間軸83上の目盛線84に対応する。曲線グラフ63へのパルスの効果は、64によって表され、筋肉の収縮、及びしたがって、筋肉の強直プロセスにより筋肉によって発せられる力の漸増として明確に視認できる。換言すると、84で発生させられたパルスは十分に近いので、各個々のパルスの筋肉への効果のある種の融合が、時間Tに沿って観察され、したがって、時間T上に曲線グラフ63のそのような階段状部分をもたらす。
【0142】
同じ論考が、パルスが同じ一定の持続時間及びI+kSの強度を有する、250ミリ秒より短い時間Tにおける5回のパルスの繰り返しでの、第2の周波数μ>μでのステップ(i)における筋肉の電気刺激へ適用される。
【0143】
それぞれの時間T及びTにおける周波数μ及びμでのこれらの電気刺激の各々は、図5の軸82で視認できるように、電気刺激に応答して筋肉によって発せられる最大力、それぞれF及びFに達し、それを定量すること、並びにそれに続いて、ステップ(iii)における筋疲労を定量することを可能にする。図5で視認できるように、第1及び第2の休息期間R及びRは、先の電気刺激によるいずれの収縮も、発せられて残存する力も、及び次の電気刺激の開始前のこれらもなく、筋肉が「正常な」及び/又は「弛緩した」状態に戻ることを可能にするために、十分長い。換言すると、休息期間R及びRは、曲線グラフ63がベースラインに戻ることを可能にする。休息期間Rは、形態I+kSの同じパルス強度で周波数μ及びμでの電気刺激の間に行われる。休息期間Rは、パルス強度I+kSで周波数μでの電気刺激と、パルス強度I+(k+1)Sで周波数μでの電気刺激(又はサブステップ(iv.2)が適用される場合に、パルス強度I+(k+1)Sでの孤立パルス)との間に行われる。
【0144】
本開示において説明されるように、本方法は、力F及びFの定量への擾乱効果を回避するために利便性が高い。図5はまた、曲線グラフ63上のそのような擾乱91、92及び93の効果の実例を、点線で例示する。それらは、方法がそれらを回避するために具体的に考えられるように、純粋に架空のものである。
【0145】
擾乱91は、第1の休息期間Rについての上記で論じられた下限に従わないことによる、曲線グラフ63への強直効果の実例を示す。この期間が十分に持続しない場合に、筋肉は、次の電気刺激が始まるときに、依然として収縮され、弛緩されず、それにより、Fの測定が影響を受け、周波数μ及びμでの電気刺激の効果の部分的(強直による)融合により過剰に高くなる。融合が部分的で非常に限定される場合に(すなわち、115ミリ秒を超えるRについて)、それにも関わらず、直接的な数学的処理(例えば、線形補間による)を適用して、観察された乱れた曲線グラフ91から力Fを定量することが可能である。同様の論考が、明らかに、第2の休息期間Rに適用され得る。
【0146】
擾乱92は、時間T上の曲線グラフ63への増強効果の実例を示す(しかし、当業者であれば、そのような効果がこの時間上に限定されないことを容易に理解するであろう)。ステップ(i)を連続して行う間に電荷の段階Sによりパルス強度を増加させないことによって、筋肉が増強され、その結果、実際の力Fは、筋繊維のある種の鍛錬により、乱され、特に、あるべきものより大きい。本開示によるステップ(i)を連続して行う間の強度の増加は、そのような増強効果を回避することを可能にする。
【0147】
最後に、擾乱93は、電気刺激と並行した、対象による随意及び/又は反射的筋肉収縮の実例を示す。対象は、パルス発生時に力を増加させ、パルス間又は後にそれを減少させる。有利には、そのような擾乱は、対象が電気刺激中に自身で反応できないほど、時間T及びTが非常に短い(最大で500ミリ秒、好ましくは250ミリ秒未満)ならば、発生することはない。
【0148】
この種類の実施例についての電気刺激の回数nが2に等しいこと、しかし、これらの実施例がいずれかの回数n>1へ容易に一般化され得ることが、当業者によって容易に理解されるであろう。
【0149】
換言すると、上記で詳述された開示される主題は、異なる周波数である電荷で筋肉を電気刺激するステップを含む、筋疲労定量方法に関する。前記電荷は、電気刺激に応答して筋肉の信頼性が高く、正確な力を発生させるために、反復的に決定される。方法は、それらに基づいてこれらの力及び筋疲労を定量するステップをさらに含む。
【0150】
開示される主題が、純粋に例示的であり、限定的であるとみなされるべきではない値を有する、特定の実施例に関連して上記で説明された。当業者であれば、開示される主題が、本明細書において上記で例示及び/又は説明される、実例に限定されないことを認知するであろう。開示される主題は、本文書において説明される新規の技術的特徴の各々、及びそれらの組合せを含む。方法の全ての実施例及び利点は、必要な変更を加えて、前述のスポーツ活動計画方法へ適用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】