(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】癌の組み合わせ処置
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20240517BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240517BHJP
A61K 31/437 20060101ALI20240517BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240517BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240517BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240517BHJP
C07K 16/22 20060101ALI20240517BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240517BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240517BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
A61K45/06
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/437
A61K38/17
A61P35/00
A61P43/00 121
C07K16/28 ZNA
C07K16/22
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575430
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2022065408
(87)【国際公開番号】W WO2022258622
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504104899
【氏名又は名称】アレス トレーディング ソシエテ アノニム
(71)【出願人】
【識別番号】522174155
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン インテレクチュアル プロパティ(ナンバー 4)リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】ライナット ザイナゲトディノブ
(72)【発明者】
【氏名】カリヤン チャクラバーシー ナラパラジュ
(72)【発明者】
【氏名】ナターリャ ベロウソバ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ラン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA21
4C084BA01
4C084BA41
4C084CA53
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZC412
4C084ZC422
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB17
4C085DD62
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB27
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、癌の処置に有用な組み合わせ療法に関する。特に、本発明は、癌を処置するためのPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤の組み合わせた使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における癌を処置する方法において使用するためのPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、並びにアデノシンA
2A及び/又はA
2B受容体阻害剤であって、
前記方法は、前記PD-1阻害剤、前記TGFβ阻害剤、並びに前記アデノシンA
2A及び/又はA
2B受容体阻害剤を前記対象に投与することを含む、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、並びにアデノシンA
2A及び/又はA
2B受容体阻害剤。
【請求項2】
前記PD-1阻害剤が、抗PD-L1抗体、又はPD-L1に結合することができるその断片であり、前記TGFβ阻害剤が、TGFβRII、若しくはTGF-βに結合することができるその断片、又は抗TGFβ抗体、若しくはTGFβに結合することができるその断片である、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
前記抗PD-L1抗体又はその断片が、配列番号1の配列を有するCDRH1、配列番号2の配列を有するCDRH2、及び配列番号3の配列を有するCDRH3を含む重鎖配列と、配列番号4の配列を有するCDRL1、配列番号5の配列を有するCDRL2、及び配列番号6の配列を有するCDRL3を含む軽鎖配列とを含む、又は
前記抗PD-L1抗体又はその断片が、配列番号19の配列を有するCDRH1、配列番号20の配列を有するCDRH2、及び配列番号21の配列を有するCDRH3を含む重鎖配列と、配列番号22の配列を有するCDRL1、配列番号23の配列を有するCDRL2、及び配列番号24の配列を有するCDRL3を含む軽鎖配列とを含む、請求項1又は2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
前記TGFβ阻害剤が、TGFβRIIの細胞外ドメイン又はTGFβに結合することができるその断片である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
前記PD-1阻害剤及び前記TGFβ阻害剤が、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質として融合されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
前記抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質の前記軽鎖配列及び前記重鎖配列が、(1)配列番号7及び配列番号8、(2)配列番号15及び配列番号17、並びに(3)配列番号15及び配列番号18からなる群から選択される前記軽鎖配列及び前記重鎖配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項5に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
前記抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質のアミノ酸配列が、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列に対応する、請求項5に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
前記抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質が、1200mgの用量でQ2Wで、又は2400mgの用量でQ3Wで投与される、請求項5~7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
前記アデノシンA
2A及び/又はA
2B受容体阻害剤が、表1及び表2から選択される化合物の1つである、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
前記アデノシンA
2A及び/又はA
2B受容体阻害剤が、(S)-7-オキサ-2-アザ-スピロ[4.5]デカン-2-カルボン酸[7-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-4-メトキシ-チアゾロ[4,5-c]ピリジン-2-イル]-アミド、又はその薬学的に許容される塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグ及び立体異性体(全ての比率でのその混合物を含む)である、請求項9に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
前記アデノシンA
2A及び/又はA
2B受容体阻害剤が、50~150mgの用量でBIDで経口投与される、請求項9又は10に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
対象における癌を処置する方法において使用するためのPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、並びにアデノシンA
2A及び/又はA
2B受容体阻害剤であって、前記方法は、前記PD-1阻害剤、前記TGFβ阻害剤、並びに前記アデノシンA
2A及び/又はA
2B受容体阻害剤を前記対象に投与することを含み、前記PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有する分子として融合され、前記アデノシンA
2A及び/又はA
2B受容体阻害剤は、(S)-7-オキサ-2-アザ-スピロ[4.5]デカン-2-カルボン酸[7-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-4-メトキシ-チアゾロ[4,5-c]ピリジン-2-イル]-アミド又はその薬学的に許容される塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグ及び立体異性体(全ての比率でのその混合物を含む)である、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、並びにアデノシンA
2A及び/又はA
2B受容体阻害剤。
【請求項13】
前記癌が、CD73陽性及び/又はアデノシンリッチである、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
前記アデノシンリッチ癌が、アデノシンA
2B受容体媒介性シグナル伝達に十分なアデノシンレベルを有する、請求項13に記載の使用のための化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の処置に関する。特に、本発明は、癌の処置に使用するための、PD-1、TGFβ、及びアデノシンを阻害するための化合物の組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
アデノシンは、特に心血管系、神経系、及び免疫系内での多数の生理活性の普遍的なモジュレーターである。アデノシンは、構造的にも代謝的にも、生物活性ヌクレオチドであるアデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)及び環状アデノシン一リン酸(cAMP)に、生化学的メチル化剤であるS-アデノシル-L-メチオニン(SAM)に、並びに構造的には補酵素NAD、FAD及び補酵素Aに、並びにRNAに関連している。
【0003】
生理的条件下で、内因性アデノシンは、正常組織の細胞外空間に低濃度(30~300nM)で存在する(Fredholm et al.,Drug Dev Res 52:274-282(2001))。しかしながら、炎症及び癌を含む代謝的にストレスの多い条件下でのエネルギー消費の増加又は低酸素は、細胞外アデノシン濃度の劇的な増加をもたらす(Cronstein,B.N.J Appl Physiol,1994;76(1),5-13;Ohta,A.Front Immunol,2016;7,109,1-11)。細胞外区画におけるアデノシン蓄積の重要な駆動因子は、それぞれアデノシン三リン酸(ATP)及びアデノシン二リン酸(ADP)からアデノシン一リン酸(AMP)への、及びAMPからアデノシンへの分解に触媒作用を及ぼす酵素であるCD39及びCD73である。これと一致して、アデノシン濃度は、CD73を欠くマウスにおいて低下する(Grenz,A.et al.,J Am Soc Nephrol,2007;18:833-845)。アデノシンレベルはまた、細胞外空間へのアデノシンの受動的漏出をもたらす可能性のある細胞への制御されない損傷に起因して上昇し得る。更に、炎症組織において、増加したアデノシンは、活性化された多形核細胞を含む炎症エフェクター細胞からの放出と関連し得る(レノン,P.F.et al.J Exp Med,1998;188,8,1433-1443)。
【0004】
アデノシンの調節機能は、A1、A2A、A2B、及びA3を含むアデノシンファミリーのGタンパク質-共役受容体(GPCR)を介して媒介される(Fredholm,B.B.et al.Pharmacol Rev,2001;53(4),527-552)。これらのアデノシン受容体サブタイプは、アデニル酸シクラーゼに対するそれらの効果に基づいて分類される。高アデノシン-感受性A1及びA3受容体(それぞれ、300nM及び100nM)は、GPCRのGiサブユニットを介してアデニル酸シクラーゼを阻害する。対照的に、A2A及びA2Bアデノシン受容体は、アデノシンに対してより低い親和性を示し(それぞれ700nM及び24μM)、したがって、より高いアデノシン濃度でシグナル伝達を媒介する。A2A及びA2Bの下流のシグナル伝達は、GPCRのGsサブユニットを介して媒介され、環状アデノシン一リン酸(cAMP)応答エレメント結合タンパク(CREB)のリン酸化を誘導し(Nemeth,Z.H.et al.BBRC,2003;312:883-888;Gao,Z.G.et al.Biochemical Pharmacology,2018;151,201-213)、免疫細胞活性化の抑制をもたらす(Penix,L.A.et al.J Biol Chem,1996;271:31964-31972)。重要なことに、A2Bアデノシン受容体はまた、GPCRのGqサブユニットを介してシグナル伝達することができ、ホスホリパーゼCβ、プロテインキナーゼC(PKC)、及びp38MAPキナーゼを含む他の腫瘍形成促進性経路を活性化することができる(Schulte,G.Cellular Signalling,2003;15,813-827)。
【0005】
A2Aアデノシン受容体は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及び骨髄細胞機能のアデノシン-駆動抑制のための重要な受容体として認識されている(Cekic,C.,et al.Cancer Res,2014;74(24),7250-7259)。A2Aは、免疫細胞機能の直接的な抑制を通じて、又は調節性T細胞(Treg)を含む他の免疫調節性細胞の動員を通して、アデノシン-駆動性免疫抑制を支持し得る。まとめると、これらの知見は、A2Aアデノシン受容体の阻害が、アデノシン-駆動性免疫抑制から抗腫瘍免疫応答を保護し得ることを示唆する。しかしながら、A2A受容体は、アデニル酸シクラーゼのGs-サブユニット活性化を介して低親和性A2Bアデノシン受容体とシグナル伝達を共有する。これに関して、A2B受容体は、アデノシン-リッチな腫瘍微小環境(TME)におけるA2Aの阻害を補償することができる。更に、A2Bを遮断することは、アデノシン-媒介性腫瘍促進のGq-媒介性機構的態様に対処し、骨髄細胞及び腫瘍細胞による血管内皮増殖因子(VEGF)の産生の減少を通じて腫瘍血管新生の減少をもたらすことが予想される(Sorrentino,C.et al.Oncotarget,2015;6(29),27478-27489)。加えて、A2Bを遮断することは、腫瘍への白血球の浸潤を促進し得る血管透過性を支持すると予想される(Eckle,T.et al.Blood,2008;111(4),2024-2035)。更に、A2Bの阻害は、樹状細胞(dendritic cells、DC)の免疫-抑制性前駆体の蓄積(Novitskiy,S.V.et al.Blood,2008;112(5),1822-1831)及び腫瘍形成促進性M2マクロファージ細胞の極性化(Csoka,B.et al.FASEB,2012;26(1),376-386)を防止することが期待される。総合すると、A2Aアデノシン受容体の阻害に加えて、A2Bアデノシン受容体の阻害は、アデノシン-駆動性腫瘍促進からのより強固な保護を提供すると予想される。
【0006】
抗PD-L1抗体アベルマブなどの、プログラム死1(PD-1)とそのリガンドPD-L1との相互作用を遮断するモノクローナル抗体は、癌に対する免疫応答を増強することができ、最も有望な免疫チェックポイントアンタゴニストである。しかしながら、説得力のある臨床的有効性の結果は、抗PD(L)-1薬物のいくつかの新たな承認をもたらしたが、全ての患者が現在の免疫チェックポイントアンタゴニストに対する永続的な臨床応答を経験するわけではない。実際、前立腺癌、結腸直腸癌、及び膵臓癌を含む特定の腫瘍型を有する患者は、臨床試験において抗PD(L)-1単剤療法に対してほとんど応答を示さない。他のチェックポイントアンタゴニストとの組み合わせ療法は、非応答患者において相乗的抗腫瘍活性を誘発するために、又は部分応答者において抗腫瘍免疫応答を増強するために必要な戦略であり得る。前臨床マウスモデルにおいて、アデノシンA2A受容体及びPD-1の共阻害は、単剤療法と比較して腫瘍増殖阻害の増強において顕著な相乗作用を実証している(Beavis,P.A.et al.Cancer Immunol Res,2015;3(5),506-517;Willingham,S.B.,et al.Cancer Immunol Res、2018;6(10),1136-1149)。
【0007】
国際公開第2015/118175号は、PD-L1を遮断するヒトIgG1抗体に融合されたTGF-β「トラップ」として機能する腫瘍増殖因子β受容体II型(TGFβRII)の細胞外ドメインから構成される二官能性融合タンパク質を記載している。詳細には、抗PD-L1抗体の2つの免疫グロブリン軽鎖と、ヒトTGFβRIIの細胞外ドメインにフレキシブルなグリシン-セリンリンカーを介して遺伝的に融合された抗PD-L1抗体の重鎖をそれぞれ含む2つの重鎖と、からなるヘテロテトラマーである(
図1を参照)。この融合分子は、腫瘍微小環境における免疫抑制に対抗するために、PD-L1経路及びTGFβ経路の両方を標的とするように設計される。
【0008】
癌の処置のための新規な治療選択肢を開発する必要性が依然として存在する。更に、既存の治療法よりも高い有効性を有する治療法が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、PD-1、TGFβ及びアデノシンシグナル伝達経路を阻害する化合物を組み合わせることによって、癌の処置における治療上の利益を達成することができるという発見から生じる。そのような治療上の利益は、CD73陽性又はアデノシンリッチである癌などの、高いアデノシン媒介性シグナル伝達を有する癌の処置において特に顕著である。
【0010】
したがって、第1の態様では、本開示は、対象における癌を処置する方法において使用するための、悪性腫瘍を有する対象における腫瘍増殖若しくは進行を阻害するのに使用するための、対象における悪性細胞の転移を阻害するのに使用するための、対象における転移発生及び/若しくは転移増殖のリスクを減少させるのに使用するための、又は悪性細胞を有する対象における腫瘍退縮を誘導するのに使用するための、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤などのアデノシン阻害剤を提供し、使用は、当該化合物を対象に投与することを含む。
【0011】
本開示はまた、対象における癌を処置するための、悪性腫瘍を有する対象における腫瘍増殖若しくは進行を阻害するための、対象における悪性細胞の転移を阻害するための、対象における転移発生及び/若しくは転移増殖のリスクを減少させるための、又は悪性細胞を有する対象における腫瘍退縮を誘導するための医薬の製造のための、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤などのアデノシン阻害剤の使用を提供する。
【0012】
別の態様では、本開示は、対象における癌を処置する方法、悪性腫瘍を有する対象における腫瘍増殖若しくは進行を阻害する方法、対象における悪性細胞の転移を阻害する方法、対象における転移発生及び/若しくは転移増殖のリスクを減少させる方法、又は悪性細胞を有する対象における腫瘍退縮を誘導する方法であって、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤などのアデノシン阻害剤を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0013】
更なる態様では、本開示は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤などのアデノシン阻害剤による処置を宣伝するための方法であって、例えば、対象から採取された腫瘍試料などの試料中のPD-L1発現に基づいて、癌を有する対象を処置するための組み合わせの使用を標的オーディエンスに推奨することを含む方法に関する。
【0014】
本明細書では、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤などのアデノシン阻害剤、並びに少なくとも薬学的に許容される賦形剤又はアジュバントを含む医薬組成物も提供される。一実施形態では、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は、そのような医薬組成物中で融合されている。PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤は、単一の又は別個の単位剤形で提供される。
【0015】
更なる態様では、本開示は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤などのアデノシン阻害剤と、当該化合物を使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットに関する。更なる態様では、本発明は、PD-1阻害剤と、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤などのアデノシン阻害剤を使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットに関する。更なる態様では、本発明は、TGFβ阻害剤と、TGFβ阻害剤、PD-1阻害剤、並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤などのアデノシン阻害剤を使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットに関する。更なる態様では、本発明は、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤などのアデノシン阻害剤と、アデノシン阻害剤、PD-1阻害剤、及びTGFβ阻害剤を使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットに関する。更なる態様では、本発明は、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質と、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質及びアデノシン受容体阻害剤などのアデノシン阻害剤を使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットに関する。キットの化合物は、1つ以上の容器中に含まれ得る。説明書は、医薬が、免疫組織化学(IHC)アッセイによってPD-L1発現について陽性を示す癌を有する対象の処置における使用を意図したものであることを記載し得る。
【0016】
特定の実施形態では、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は、融合される。一実施形態では、融合分子は、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質である。一実施形態では、融合分子は、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質である。一実施形態では、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質のアミノ酸配列は、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を示す。(A)配列番号8は、ビントラフスプアルファの重鎖配列を表す。配列番号1、2、及び3のアミノ酸配列を有するCDRに下線を付す。(B)配列番号7は、ビントラフスプアルファの軽鎖配列を表す。配列番号4、5、及び6のアミノ酸配列を有するCDRに下線を付す。
【0018】
【
図2】抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質の例示的な構造を示す。
【0019】
【
図3】インビボでの4T1及びMC38マウス腫瘍におけるAMP及びアデノシンの濃度、又は4T1、MC38、E0771、EMT6、MC38、H22、及びMBT2腫瘍細胞によるCD73発現。雌マウスの右乳腺脂肪体に、5×10
4個の4T1細胞を、又は1×10
6個のMC38細胞を皮下に接種した。腫瘍を収集し、LC-MS-MS質量分析を用いて(A)AMP又は(B)アデノシン濃度について分析した。AMP及びアデノシンについての平均濃度は、4T1モデルについてそれぞれ296.5±250.5(±SD)nM/g及び210.2±158.2nM/gであり、MC38モデルについてそれぞれ850.4±215.6nM/g及び87.2±51.9nM/gであった。各ドットは個々のマウスを表し、線は各モデルにおける代謝産物の中央値を表す。マウス(C)4T1乳癌、(D)MC38結腸癌、(E)E0771及び(F)乳癌、(G)H22肝細胞癌腫、及び(H)MBT2膀胱腫瘍細胞によるCD73の発現をフローサイトメトリーによって評価した。
【0020】
【
図4】ビントラフスプアルファは、CD73
hiアデノシンリッチ4T1腫瘍モデルにおいてA
2Bの発現を増加させるが、CD73
lowアデノシン低MC38腫瘍モデルにおいては増加させない。4T1腫瘍モデルについては、雌BALB/cマウスの右乳腺脂肪体に2×10
5個の4T1細胞を接種した。MC38腫瘍モデルについては、雌C57BL/6マウスの右側腹部にMC38細胞(1×10
6個)を皮下接種した。両方の研究における動物を無作為に群に分け、平均腫瘍サイズがおよそ100~150mm
3に達したときに処置を開始した。両方のモデルについて、各群に15匹のマウスが存在した。0、1、及び2日目に、アイソタイプ対照(20mg/kg、iv)又はビントラフスプアルファ(24.6mg/kg、iv)で動物を処置した。処置開始後6日目に腫瘍を採取し、急速冷凍し、RNASeq分析に使用した。(A)NT5E、(B)ADORA2A(A
2A)、及び(C)ADORA2B(A
2B)の遺伝子発現レベルは、平均±SEMとして表される。P値は、二元配置ANOVAを用いて計算した。
【0021】
【
図5】化合物A及びビントラフスプアルファは、CD73
hi、アデノシンリッチ4T1腫瘍モデルにおいて組み合わせ効果を示した。雌BALB/cマウスの右乳腺脂肪体に5×10
4個の4T1細胞を接種し、平均腫瘍体積が約60mm
3に達したときに、化合物A(300mg/kg po、bid)、ビントラフスプアルファ(24.6mg/kg iv、0、3、6日目)、化合物A+ビントラフスプアルファで処置した。ビヒクル(po、bid)及びアイソタイプ対照抗体注射(20mg/kg iv、0、3、6日目)を対照として使用した。(A)SEMによる平均腫瘍体積、及び(B)個々の腫瘍体積を提示する。腫瘍体積データを、二元配置ANOVA、続いてテューキーの多重比較検定を使用して分析した。
【0022】
【
図6】化合物Aとビントラフスプアルファの組み合わせは、いずれかの単剤療法と比較して、CD73
hiEMT6腫瘍モデルにおいて抗腫瘍効果を増強した。雌BALB/cマウスの右乳腺脂肪体に2.5×10
5個のEMT6細胞を接種し、平均腫瘍体積が約60mm
3に達したときに、化合物A(300mg/kg po、BID)、ビントラフスプアルファ(24.6mg/kg iv、0、3、6日目)、化合物A+ビントラフスプアルファで処置した。ビヒクル(po、BID)及びアイソタイプ対照抗体注射(20mg/kg iv、0、3、6日目)を対照として使用した。(A)SEMによる平均腫瘍体積、及び(B)個々の腫瘍体積を提示する。腫瘍体積データを、二元配置ANOVA、続いてテューキーの多重比較検定を使用して分析した。
【0023】
【
図7】化合物A及びビントラフスプアルファは、CD73
hiE0771腫瘍モデルにおいて組み合わせ抗腫瘍活性を示した。雌C57BL/6マウスの右乳腺脂肪体に1.5×10
5個のE0771細胞を接種し、平均腫瘍体積が約75mm
3に達したときに、化合物A(300mg/kg po、BID)、ビントラフスプアルファ(8.2mg/kg iv、0、3、6日目)、化合物A+ビントラフスプアルファで処置した。ビヒクル(po、BID)及びアイソタイプ対照抗体注射(6.65mg/kg iv、0、3、6日目)を対照として使用した。(A)SEMによる平均腫瘍体積、及び(B)個々の腫瘍体積を提示する。腫瘍体積データを、二元配置ANOVA、続いてテューキーの多重比較検定を使用して分析した。
【0024】
【
図8】化合物Aは、CD73
lowMC38腫瘍モデルにおいてビントラフスプアルファとの組み合わせ抗腫瘍活性を示さない。雌C57BL/6マウスの右下側腹部に1×10
6のMC38細胞を接種し、平均腫瘍体積が約70mm
3に達したときに、化合物A(300mg/kg po、BID)、ビントラフスプアルファ(24.6mg/kg iv、0、3、6日目)、化合物A+ビントラフスプアルファで処置した。ビヒクル(po、BID)及びアイソタイプ対照抗体注射(20mg/kg iv、0、3、6日目)を対照として使用した。(A)SEMによる平均腫瘍体積、及び(B)個々の腫瘍体積を提示する。腫瘍体積データを、二元配置ANOVA、続いてテューキーの多重比較検定を使用して分析した。
【0025】
【
図9】化合物Aとビントラフスプアルファとの組み合わせは、単剤療法と比較して、CD73
lowH22腫瘍モデルにおいて抗腫瘍効果を増強しない。雌BALB/cマウスの右上側腹部に1×10
6個のH22細胞を接種し、平均腫瘍体積が約55mm3に達したときに、化合物A(300mg/kg po、BID)、ビントラフスプアルファ(24.6mg/kg iv、0、3、6日目)、化合物A+ビントラフスプアルファで処置した。ビヒクル(po、BID)及びアイソタイプ対照抗体注射(20mg/kg iv、0、3、6日目)を対照として使用した。(A)SEMによる平均腫瘍体積、及び(B)個々の腫瘍体積を提示する。腫瘍体積データを、二元配置ANOVA、続いてテューキーの多重比較検定を使用して分析した。
【0026】
【
図10】化合物Aとビントラフスプアルファとの組み合わせは、単剤療法と比較して、CD73
lowMBT2腫瘍モデルにおいて抗腫瘍効果を増強しない。雌C3Hマウスの右上側腹部に1×10
6個のMBT2細胞を接種し、平均腫瘍体積がおよそ53mm
3に達したときに、化合物A(300mg/kg po、BID)、ビントラフスプアルファ(24.6mg/kg iv、0、3、6日目)、化合物A+ビントラフスプアルファで処置した。ビヒクル(po、BID)及びアイソタイプ対照抗体注射(20mg/kg iv、0、3、6日目)を対照として使用した。(A)SEMによる平均腫瘍体積、及び(B)個々の腫瘍体積を提示する。腫瘍体積データを、二元配置ANOVA、続いてテューキーの多重比較検定を使用して分析した。
【0027】
【
図11】化合物Aとビントラフスプアルファとの組み合わせは、NECAによって抑制されたMDA-MB-231腫瘍細胞と共培養したヒトT細胞からのIFNγ産生の有意なレスキューを支持する。EBV特異的T細胞を、丸底96ウェルプレート中で、化合物A(100nM)若しくはDMSO対照及び/又は1μg/mlのビントラフスプアルファ若しくはアイソタイプ対照(hIgG1不活性抗PD-L1)抗体と共に15分間プレインキュベートした。次いで、10μMのNECAを対応する群に添加し、100μl容量中の1.3×10
4個のT細胞を、10%FBSを補充した100μlのRPMI1640培地中のEBVペプチド(30ng/ml、CLGGLLTMV、21
st Century)を予めロードした2.6×10
4個の細胞/ウェルのMDA-MB-231腫瘍細胞と共に、96ウェル平底プレートのウェルごとに移した。T細胞:MDA-MB-231腫瘍細胞の最終比=0.5:1。74時間の共培養後に細胞培養上清を収集し、ヒトIFNγELISAキット(R&D Systems)を製造業者の説明書に従って使用してIFNγレベルを測定した。IFNγ分泌レスキューのパーセンテージを、以下の式を使用して計算した:100%-(NECA及び化合物A単独又はビントラフスプアルファとの組み合わせで処置した試料中のIFNγ-対照試料中のIFNγ)÷(NECAを有する試料中のIFNγ-対照試料中のIFNγ)*100%。結果を処置群当たり3つの試料の平均±SEMとして示す代表的なグラフ。P値は、一元配置ANOVAテューキー比較検定を使用して計算される。
【0028】
【
図12】化合物A及びビントラフスプアルファは、CD73-KO 4T1腫瘍モデルにおいて組み合わせ効果を示さなかった。雌BALB/cマウスの右乳腺脂肪体に1×10
5個のCD73 KO 4T1腫瘍細胞を接種し、平均腫瘍体積がおよそ60mm
3に達したときに、化合物A(300mg/kg po、bid)、ビントラフスプアルファ(24.6mg/kg iv、0、3、6日目)、化合物A+ビントラフスプアルファで処置した。ビヒクル(po、bid)及びアイソタイプ対照抗体注射(20mg/kg iv、0、3、6日目)を対照として使用した。(A)SEMによる平均腫瘍体積、及び(B)個々の腫瘍体積を提示する。腫瘍体積データを、二元配置ANOVA、続いてテューキーの多重比較検定を使用して分析した。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書に記載の実施形態の各々は、それが組み合わされる実施形態と矛盾しない、本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる。更に、所与の文脈において不適合でない限り、イオン化(例えば、プロトン化又は脱プロトン化)が可能である化合物が規定されている場合はいつでも、当該化合物の定義は、その任意の薬学的に許容される塩を含む。したがって、「又は薬学的に許容されるその塩」という語句は、本明細書に記載される全ての化合物の記述において言外に含まれる。以下に記載される態様内の実施形態は、同じ態様又は異なる態様内で矛盾しない任意の他の実施形態と組み合わせることができる。例えば、本発明の処置方法のいずれかの実施形態は、本発明の組み合わせ製品又は本発明の医薬組成物のいずれかの実施形態と組み合わせることができ、逆もまた同様である。同様に、本発明の処置方法について与えられる任意の詳細又は特徴は、矛盾しない場合、本発明の組み合わせ製品及び本発明の医薬組成物の詳細又は特徴に適用され、逆もまた同様である。
【0030】
本発明は、本発明の特定の好ましい実施形態の上記及び下記の詳細な記述並びに本明細書に含まれる実施例を参照することによって、より容易に理解され得る。本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態を記載することのみを目的としており、限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。本明細書で具体的に定義されない限り、本明細書で使用される用語は、関連技術分野で知られているその従来の意味を与えられるべきであることが更に理解されるべきである。本発明をより容易に理解することができるように、特定の技術用語及び科学用語を以下に具体的に定義する。本文書の他の場所で別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての他の技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。
【0031】
定義
「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上明らかに別段の定めがない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、抗体への言及は、1つ以上の抗体又は少なくとも1つの抗体を指す。したがって、「1つの(a)」(又は「1つの(an)」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0032】
「約」という用語は、数値的に定義されたパラメータを修飾するために使用される場合、全体的な効果、例えば、疾患又は障害の処置における薬剤の有効性を変化させない、そのようなパラメータにおける任意の最小限の変化を指す。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、パラメータが、そのパラメータについて記載された数値の上下に最大で10%変動し得ることを意味する。
【0033】
「アデノシン阻害剤」は、アデノシン媒介性シグナル伝達を阻害する分子である。このような阻害の可能な効果としては、腫瘍微小環境における免疫抑制の除去及び/又はアデノシン媒介性シグナル伝達の腫瘍形成促進効果の除去が挙げられる。いくつかの実施形態では、アデノシン阻害剤は、アデノシン又はアデノシン受容体に結合して、これらの分子間の相互作用を阻害する。いくつかの実施形態では、アデノシン阻害剤は、CD73、CD39、CD38、アデノシン受容体A2A及びアデノシン受容体A2Bからなる群から選択される1つ以上のタンパク質の活性を阻害する。
【0034】
「高いアデノシン媒介性シグナル伝達」を有する癌は、正常な非癌性組織と比較して、アデノシン媒介性シグナル伝達のレベルが上昇している癌を指す。アデノシンシグナル伝達経路の活性を測定する方法は、当業者に周知であり、腫瘍微小環境におけるアデノシン及び/又はCD73の濃度を測定すること、並びにアデノシン応答遺伝子の発現などの経路の下流効果を測定することを含む。いくつかの実施形態では、高いアデノシン媒介性シグナル伝達を有する癌は、アデノシンリッチ癌を指す。いくつかの実施形態では、アデノシンリッチ癌は、腫瘍微小環境において少なくとも0.5μM、少なくとも0.75μM、少なくとも1μM、少なくとも1.5μM、少なくとも2μM、少なくとも5μM、少なくとも10μM、少なくとも15μM、少なくとも20μM、又は少なくとも25μMのアデノシンを有する。腫瘍微小環境におけるアデノシン濃度は、例えば、患者由来異種移植片(PDX)において測定され得る。そのような場合、PDXからの細胞外液を微小透析によって得ることができ、アデノシンをLC-MSによって定量することができる。アデノシン濃度はまた、Goodwin et al.,Anal Biochem 2019;568:78-88;Blay et al.,Cancer Res.(1997)57:2602-5によって記載される方法に従って判定され得る。Hatfieldet al.,J Mol Med.(2014)92:1283-92もまた、腫瘍における細胞外アデノシンレベルを測定するための方法を記載している。いくつかの実施形態では、アデノシンリッチ癌は、アデノシンA2B受容体がシグナル伝達を媒介するのに十分高い腫瘍微小環境におけるアデノシンレベルを有する。いくつかの実施形態では、高いアデノシン媒介性シグナル伝達を有する癌は、アデノシン媒介性シグナル伝達が免疫抑制効果を発揮する癌を指す。いくつかの実施形態では、高いアデノシン媒介性シグナル伝達を有する癌は、CD73陽性である癌を指す。いくつかの実施形態では、癌は、アデノシン遺伝子発現シグネチャーによって反映される高いアデノシン媒介性シグナル伝達を有し、これは、例えば、末梢血又は腫瘍試料において測定され得る。いくつかの実施形態では、アデノシン遺伝子発現シグネチャーは、CD73及び/又は組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)の発現を評価することを含む。いくつかの実施形態では、アデノシン遺伝子発現シグネチャーは、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)において測定され得る、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL8、IL1β、及びPTGS2の発現を評価することを含む。いくつかの実施形態では、アデノシン遺伝子発現シグネチャーは、PPARG、CYBB、COL3A1、FOXP3、LAG3、APP、CD81、GPI、PTGS2、CASP1、FOS、MAPK1、MAPK3、及びCREB1のうちの1つ以上の発現を評価することを含む。いくつかの実施形態では、アデノシン遺伝子発現シグネチャーは、CD39、CD73、アデノシンA2A受容体及びアデノシンA2B受容体などのアデノシンシグナル伝達経路の1つ以上の酵素の発現を評価することを含む。
【0035】
「アデノシン受容体」は、Gタンパク質共役受容体である。アデノシン受容体には、A1、A2A、A2B、及びA3と呼ばれる4つの主要なサブタイプがある。同じアデノシン受容体が異なるGタンパク質に結合することができるが、アデノシンA1及びA3受容体は、通常、アデニル酸シクラーゼを阻害し、細胞cAMPレベルを下方制御する、Gi及びG0と呼ばれる阻害性Gタンパク質に結合する。対照的に、アデノシンA2A及びA2B受容体は、アデニル酸シクラーゼを活性化し、cAMPの細胞内レベルを増加させる、GSと呼ばれる刺激性Gタンパク質に結合する(Linden J.,Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol.,41:775-87 2001)。
【0036】
本明細書で使用される「アデノシン受容体阻害剤」は、例えば、アデノシンとアデノシン受容体との間の相互作用を阻害することによって、アデノシン受容体の活性を阻害する分子を指す。このような阻害の可能な効果としては、アデノシンシグナル伝達軸上のシグナル伝達から生じる免疫抑制の除去が挙げられる。この文脈における阻害は、完全又は100%である必要はない。その代わりに、阻害は、アデノシンとアデノシン受容体との間の結合を低減、減少、若しくは排除すること、及び/又はアデノシン媒介性シグナル伝達を低減、減少、若しくは排除することを意味する。いくつかの実施形態では、アデノシン受容体阻害剤は、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤であり、すなわち、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体の活性を阻害する。いくつかの実施形態では、アデノシン受容体阻害剤は、アデノシンA2A及びA2B受容体阻害剤である。いくつかの実施形態では、アデノシン受容体阻害剤は、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体を主に又は選択的に阻害する、すなわち、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体に対するその阻害活性は、他のアデノシン受容体に対するよりも実質的に高い。いくつかの実施形態では、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤は、他のA1及びA3アデノシン受容体に対して少なくとも10倍又は少なくとも100倍の選択性を示す。いくつかの実施形態では、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤は、他のA1アデノシン受容体に対して少なくとも50倍の選択性を示し、他のA3アデノシン受容体に対して少なくとも1000倍の選択性を示す。いくつかの実施形態では、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤は、他のA1アデノシン受容体に対して少なくとも100倍の選択性を示し、他のA3アデノシン受容体に対して少なくとも1000倍の選択性を示す。アデノシンA2A受容体に対するアデノシン受容体阻害剤のアンタゴニスト活性は、例えば、アデノシンA2A受容体を介してアデノシンによって抑制されるヒトT細胞によるインターロイキン-2(IL-2)産生を測定するアッセイによって定量化することができる。具体的には、ヒトT細胞を抗CD3/抗CD28でコーティングしたDynabeadsで刺激した後、10μMのアデノシン類似体NECAの存在下でアデノシン受容体阻害剤の連続希釈物で48時間処置する。次いで、アデノシン受容体阻害剤のアンタゴニスト活性を、10μMのNECAによって抑制されたヒトT細胞からのIL-2分泌のレスキューをELISAで測定することによって定量化する。いくつかの実施形態では、そのようなIL-2レスキューアッセイにおけるアデノシン受容体阻害剤の対応するIC50は、1000nm未満、500nm未満、200nm未満、又は100nm未満である。アデノシンA2B受容体に対するアデノシン受容体阻害剤の阻害活性は、例えば、ヒトマクロファージからのアデノシン依存性A2B駆動性VEGF産生を測定するアッセイによって定量化することができる(Ryzhov,S.et al.Neoplasia,2008;10(9),987-995;Ryzhov,S.et al.Mol Pharmacol,2014;85,62-73;Sorrentino,C.et al.Oncotarget,2015;6(29),27478-27489)。具体的には、マクロファージを10ng/mLのLPSで刺激し、10μMのアデノシン類似体NECAの存在下でアデノシン受容体阻害剤の連続希釈で48時間処置する。次いで、アデノシン受容体阻害剤のアンタゴニスト活性を、ELISAを使用してマクロファージの細胞培養上清中のVEGF濃度を測定することによって定量化する。いくつかの実施形態では、そのようなVEGF阻害アッセイにおけるアデノシン受容体阻害剤の対応するIC50は、1000nm未満、500nm未満、200nm未満、100nm未満、又は50nm未満である。いくつかの実施形態では、アデノシンA2A及びA2B受容体阻害剤は、そのようなIL-2レスキューアッセイにおいてアデノシンA2A受容体活性を阻害するための500nm未満の対応するIC50、及びそのようなVEGF阻害アッセイにおいてアデノシンA2B受容体活性を阻害するための500nm未満の対応するIC50を有する。いくつかの実施形態では、アデノシンA2A及びA2B受容体阻害剤は、そのようなIL-2レスキューアッセイにおいてアデノシンA2A受容体活性を阻害するための100nm未満の対応するIC50、及びそのようなVEGF阻害アッセイにおいてアデノシンA2B受容体活性を阻害するための50nm未満の対応するIC50を有する。アデノシンA2A受容体に対するアデノシン受容体阻害剤の阻害活性は、アデノシンA2A受容体を介してアデノシンによって促進されるヒト全血CD8+T細胞におけるCREBのリン酸化を測定するアッセイによっても定量化することができる(Sassone-Corsi,P.Cold Spring Harb Perspect Biol,2012;4,a011148)。具体的には、6人の独立したドナーからのヒト全血を、アデノシン受容体阻害剤の連続希釈物と共に15分間インキュベートし、続いて10μMのNECAで45分間刺激し、続いてフローサイトメトリーによってCD8+T細胞内のpCREBシグナルを分析する。いくつかの実施形態では、そのようなpCREB阻害アッセイにおけるアデノシン受容体阻害剤の対応するIC50は、1000nm未満、500nm未満、又は200nm未満である。
【0037】
患者への薬物の「投与すること」又は「投与」(及びこの語句の文法的相当語句)は、医療専門家による患者への投与であり得るか、若しくは自己投与であり得る直接投与、及び/又は薬物を処方する行為であり得る間接投与を指し、例えば、薬物を自己投与するように患者に指示するか、又は薬物の処方を患者に提供する医師は、薬物を患者に投与している。
【0038】
「アミノ酸差異」とは、アミノ酸の置換、欠失、又は挿入を指す。
【0039】
「抗体」は、その可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、例えば、糖質、ポリヌクレオチド、リピド、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合し得る免疫グロブリン(Ig)分子である。本明細書中で使用される場合、「抗体」という用語は、完全なポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体だけでなく、他に特定されない限り、特異的結合について完全な抗体と競合するその任意の抗原結合断片又は抗体断片、並びに融合タンパク質(例えば、抗体-薬物結合体、サイトカインに融合された抗体又はサイトカイン受容体に融合された抗体)、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、及び多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を含む、このようなその抗原結合断片又は抗体断片を含む任意のタンパク質も包含する。基本的な4鎖抗体単位は、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、J鎖と呼ばれる更なるポリペプチドと共に5個の基本的なヘテロ四量体単位からなり、10個の抗原結合部位を含む一方、IgA抗体は、重合してJ鎖と組み合わせて多価集合体を形成することができる2~5個の基本的な4鎖単位からなる。IgGの場合、4鎖単位は一般的に約150,000ダルトンである。各L鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に連結されているが、2つのH鎖は、H鎖アイソタイプに応じて1つ以上のジスルフィド結合によって互いに連結されている。各H鎖及びL鎖はまた、規則的に間隔を空けた鎖内ジスルフィド架橋を有する。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(VH)を有し、続いて、α鎖及びγ鎖の各々については3つの定常ドメイン(CH)を、μアイソタイプ及びεアイソタイプについては4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(VL)を有し、続いて、その他方の末端に定常ドメインを有する。VLはVHと整列され、CLは重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列される。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間の界面を形成すると考えられている。VH及びVLの対形成は、単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造及び特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology,8th Edition,Sties et al.(eds.),Appleton & Lange,Norwalk,CT,1994,page 71 and Chapter 6を参照されたい。任意の脊椎動物種由来のL鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明確に異なる型のうちの1つに割り当てることができる。それらの重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、異なるクラス又はアイソタイプに割り当てることができる。5つのクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、それぞれα、δ、ε、γ及びμと称される重鎖を有する。γ及びαクラスは、CH配列及び機能における比較的小さな差異に基づいてサブクラスに更に分類され、例えば、ヒトは、以下のサブクラス:IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgK1を発現する。
【0040】
抗体の「抗原結合断片」又は「抗体断片」は、完全な抗体の一部を含み、これは依然として抗原結合することができる。抗原結合断片としては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、及びFv断片、ドメイン抗体(dAb、例えば、サメ及びラクダ科抗体)、CDRを含む断片、単鎖可変断片抗体(scFv)、単鎖抗体分子、抗体断片から形成される多重特異性抗体、マキシボディ、ナノボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、及びビス-scFv、直鎖状抗体(例えば、米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapata et al.(1995)Protein Eng.8HO:1057を参照)、及びポリペプチドに特異的抗原結合を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含有するポリペプチドが挙げられる。抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、容易に結晶化する能力を反映する名称である残りの「Fc」断片とを生成する。Fab断片は、H鎖の可変領域ドメイン(VH)及び1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と共に全L鎖からなる。各Fab断片は、抗原結合に関して一価である、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体をペプシン処理することにより、単一の大きなF(ab’)2断片が生じ、これは、異なる抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合したFab断片にほぼ対応し、なお抗原を架橋することができる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む、CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の追加の残基を有することにより、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’についての本明細書における名称である。F(ab’)2抗体断片は、元々、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学結合もまた公知である。
【0041】
「抗PD-L1抗体」又は「抗PD-1抗体」は、それぞれPD-L1又はPD-1に特異的に結合し、PD-L1のPD-1への結合を遮断する抗体又はその抗原結合断片を意味する。ヒト対象が処置される本発明の処置方法、医薬、及び使用のいずれかにおいて、抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1に特異的に結合し、ヒトPD-L1のヒトPD-1への結合を遮断する。ヒト対象が処置される本発明の処置方法、医薬、及び使用のいずれかにおいて、抗PD-1抗体は、ヒトPD-1に特異的に結合し、ヒトPD-L1のヒトPD-1への結合を遮断する。抗体は、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体であってもよく、ヒト定常領域を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4定常領域からなる群から選択され、いくつかの実施形態では、ヒト定常領域は、IgG1又はIgG4定常領域である。いくつかの実施形態において、抗原結合断片は、Fab、Fab’-SH、F(ab’)2、scFv、及びFv断片からなる群より選択される。
【0042】
「抗PD(L)1抗体」は、抗PD-L1抗体又は抗PD-1抗体を指す。
【0043】
M7824としても知られる「ビントラフスプアルファ」は、当該技術分野においてよく理解されている。ビントラフスプアルファは、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質であり、CAS登録番号1918149-01-5で記載されている。それはまた、国際公開第2015/118175号に記載されており、Lanら(Lanet al,Sci.Transl.Med.10,2018,p.1-15)において更に詳しく説明されている。特に、ビントラフスプアルファは、ヒトTGF-β受容体II(TGFβRII)の細胞外ドメインに融合されたヒトPD-L1に対する完全ヒトIgG1モノクローナル抗体である。したがって、ビントラフスプアルファは、PD-L1及びTGF-β経路を同時に遮断する二官能性融合タンパク質である。特に、国際公開第2015/118175号は、その実施例1の34頁に以下のようにビントラフスプアルファを記載している(ビントラフスプアルファは、この節では「抗PD-L1/TGFβトラップ」と称される)。抗PD-L1/TGFβトラップは、抗PD-L1抗体-TGFβ受容体II融合タンパク質である。分子の軽鎖は、抗PD-L1抗体の軽鎖(配列番号1)と同一である。分子の重鎖(配列番号3)は、フレキシブル(Gly4Ser)4 Glyリンカー(配列番号11)を介して可溶性TGFβ受容体II(配列番号10)のN末端に遺伝的に融合された抗PD-L1抗体の重鎖(配列番号2)を含む融合タンパク質である。融合接合部において、抗体重鎖のC末端リジン残基をアラニンに変異させて、タンパク質分解切断を減少させた。
「バイオマーカー」は、一般に、疾患状態を示す生物学的分子、並びにその定量的及び定性的測定を指す。「予後バイオマーカー」は、治療とは無関係に、疾患転帰と相関する。例えば、腫瘍低酸素は、陰性予後マーカーであり、腫瘍低酸素が高いほど、疾患の転帰が陰性である可能性が高い。「予測バイオマーカー」は、患者が特定の治療に陽性に応答する可能性があるかどうかを示し、例えば、HER2プロファイリングは、乳癌患者において、それらの患者がハーセプチン(トラスツズマブ、Genentech)に応答する可能性があるかどうかを判定するために一般的に使用される。「応答バイオマーカー」は、治療に対する応答の尺度を提供し、したがって、治療が有効であるかどうかの指標を提供する。例えば、前立腺特異的抗原のレベルの減少は、一般的に、前立腺癌患者に対する抗癌療法が有効であることを示す。マーカーが、本明細書中に記載される処置のために患者を同定又は選択するための基礎として使用される場合、マーカーは、処置の前及び/又は間に測定され得、得られた値は、以下のいずれかを評価する際に臨床医によって使用される:(a)処置(複数可)を最初に受ける個体の有望な又は可能性のある適合性;(b)処置(複数可)を最初に受ける個体の有望な又は可能性のある不適合性;(c)処置に対する応答性;(d)処置(複数可)を受け続ける個体の有望な又は可能性のある適合性;(e)処置(複数可)を受け続ける個体の起こりそうな又は起こる可能性のある不適合性;(f)投与量の調節;(g)臨床的利益の可能性を予測;又は(h)毒性。当業者によって十分に理解されるように、臨床設定におけるバイオマーカーの測定は、このパラメータが、本明細書に記載される処置の投与を開始、継続、調整、及び/又は停止するための基礎として使用されたことの明確な指標である。
【0044】
「癌」とは、異常な様式で増殖する細胞の集合を意味する。本明細書中で使用される場合、「癌」という用語は、白血病、癌腫、及び肉腫を含む、哺乳動物において見出される全ての型の癌、新生物、悪性又は良性腫瘍を指す。例示的な癌としては、乳癌、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、膵臓癌、膠芽腫が挙げられる。更なる例としては、脳腫瘍、肺癌、非小細胞肺癌、黒色腫、肉腫、前立腺癌、子宮頸癌、胃癌、頭頸部癌、子宮癌、中皮腫、転移性骨癌、髄芽細胞腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞種、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、膀胱癌、前悪性皮膚病変、精巣癌、リンパ腫、甲状腺癌、神経芽細胞種、食道癌、尿生殖路癌、悪性カルシウム血症、子宮内膜癌、副腎皮質癌、並びに内分泌及び外分泌膵臓癌の新生物が挙げられる。
【0045】
「CD73陽性」癌は、それらの細胞表面に存在するCD73を有する腫瘍微小環境中の細胞を含むもの、及び/又はアデノシンのレベルが正常な非癌性組織と比較して腫瘍微小環境中で上昇するように、その細胞の表面に十分なレベルのCD73を産生するものである。CD73発現を検出するための方法を以下に記載する。いくつかの実施形態では、腫瘍微小環境中の細胞の少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、又は少なくとも75%が、それらの細胞表面に存在するCD73を有する。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞の少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、又は少なくとも75%が、それらの細胞表面に存在するCD73を有する。いくつかの実施形態では、CD73陽性腫瘍は、腫瘍の試料を蛍光標識抗CD73抗体を使用して分析した場合に、対応する健常組織と比較して右にシフトした別個のピークがFACSプロットにおいて観察される腫瘍である。そのような別個のピークが観察可能である例示的なFACSプロットを
図3に示す(MC38、H22及びMBT2試料と比較して、4T1、EMT6及びE0771試料について観察された別個のピークを参照されたい)。いくつかの実施形態では、CD73発現は、細胞当たりのCD73タンパク質のコピー数として評価される。いくつかの実施形態では、CD73陽性腫瘍は、対応する健常組織と比較して細胞当たりのCD73タンパク質のコピー数が増加した腫瘍である。細胞当たりのCD73タンパク質のコピー数を定量化する1つの方法は、以下の通りである。腫瘍試料を生死判別色素及び抗CD73抗体で染色し、フローサイトメトリーを使用して生細胞上のCD73発現の評価を可能にする。同時に、Quantum(商標)Simply Cellular(登録商標)キットからのビーズを、同じ抗CD73抗体を使用して飽和するまで標識する。このキットは、5つのビーズ集団を含み、1つはブランクであり、4つは増加するレベルでFc特異的捕捉抗体を有している。ビーズ及び細胞を、同じ設定を使用して同じ日にフローサイトメトリーによって分析する。各ビーズ集団の抗体結合能(ABC)に関連する蛍光チャネル値を使用して、検量線を算出する。次いで、ABC値を、検量線を使用して染色細胞サンプルに割り当てる。一価抗体-受容体結合を仮定すると、割り当てられたABC値は、所与の試料中の細胞当たりの表面CD73コピー数の数に等しい。いくつかの実施形態では、CD73陽性癌における細胞当たりのCD73タンパク質の数は、少なくとも1000、少なくとも5000、少なくとも10000、少なくとも20000、又は少なくとも40000である。いくつかの実施形態では、CD73陽性癌は、EO771(ATCC CRL-3461)、EMT6(ATCC CRL-2755)、及び4T1(ATCC CRL-2539)からなる群から選択される細胞株のうちの1つのCD73発現と少なくとも同程度に高いCD73発現を有する癌である。
【0046】
「CDR」は、抗体、抗体断片又は抗原結合断片の相補性決定領域アミノ酸配列である。これらは、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の超可変領域である。免疫グロブリンの可変部分には、3つの重鎖及び3つの軽鎖CDR(又はCDR領域)が存在する。
【0047】
「臨床転帰」、「臨床パラメータ」、「臨床応答」、又は「臨床エンドポイント」は、治療に対する患者の反応に関する任意の臨床観察又は測定を指す。臨床転帰の非限定的な例としては、腫瘍応答(TR)、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、無病生存期間、腫瘍再発までの時間(TTR)、腫瘍進行までの時間(TTP)、相対リスク(RR)、毒性、又は副作用が挙げられる。
【0048】
本明細書で使用される「組み合わせ」は、1つ以上の更なる有効なモダリティに加えて第1の有効なモダリティを提供することを指す(1つ以上の有効なモダリティは融合され得る)。単一又は複数の化合物及び組成物に包含される、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン受容体阻害剤の組み合わせなどの、組み合わせモダリティ又はパートナー(すなわち、活性化合物、成分、又は薬剤)の任意のレジメンが、本明細書に記載の組み合わせの範囲内で企図される。単一の組成物、製剤又は単位剤形(すなわち、固定用量の組み合わせ)内の任意のモダリティが、同一の用量レジメン及び送達経路を有しなければならないことは理解される。モダリティが一緒に(例えば、同じ組成物、製剤又は単位剤形で)送達されるように製剤化されなければならないことを意味することを意図するものではない。組み合わせモダリティは、同じ又は異なる製造業者によって製造及び/又は製剤化され得る。したがって、組み合わせパートナーは、例えば、互いに独立して販売される完全に別個の医薬剤形又は医薬組成物であり得る。いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤は、PD-1阻害剤に融合され、したがって、単一の組成物内に包含され、同一の用量レジメン及び送達経路を有する。
【0049】
本明細書で使用される「組み合わせ療法」、「と組み合わせて」又は「と併せて」は、少なくとも2つの別個の処置モダリティ(すなわち、化合物、成分、標的化剤、又は治療薬)による併用、並行、同時、連続、又は断続処置の任意の形態を示す。したがって、これらの用語は、対象への他の処置モダリティの投与前、投与中、又は投与後の1つの処置モダリティの投与を指す。組み合わせモダリティは、任意の順序で投与することができる。治療的に有効なモダリティは、一緒に(例えば、同じ又は別個の組成物、製剤又は単位剤形で同時に)、又は別個に(例えば、同じ日又は異なる日に、及び別個の組成物、製剤又は単位剤形のための適切な投薬プロトコルに従うような任意の順序で)、医師によって処方された又は規制機関に従う様式及び投薬レジメンで投与される。一般に、各処置モダリティは、その処置モダリティについて決定された用量及び/又はタイムスケジュールで投与される。任意選択的に、4つ以上のモダリティが、組み合わせ療法において使用され得る。加えて、本明細書で提供される組み合わせ療法は、他のタイプの処置と併せて使用され得る。例えば、他の抗癌処置は、対象に対する現在の標準治療に関連する他の処置の中でも特に、化学療法、手術、放射線療法(放射線)、及び/又はホルモン療法からなる群から選択され得る。
【0050】
「完全応答」又は「完全寛解」とは、処置に応答し癌の全ての徴候が消失することを指す。これは必ずしも癌が治癒したことを意味するわけではない。
【0051】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」は、組成物及び方法が列挙された要素を含むが、他のものを排除しないことを意味することが意図される。「から本質的になる」は、組成物及び方法を定義するために使用される場合、組成物又は方法に対する任意の本質的に重要な他の要素を除外することを意味するものとする。「からなる」は、請求される組成物における微量を超える量の他の成分及び実質的な方法工程を除外することを意味するものとする。これらの移行語の各々によって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。したがって、方法及び組成物は、追加の工程及び成分を含むことができるか(を含む)、あるいは重要でない工程及び組成物を含む(から本質的になる)、あるいは記載された方法工程又は組成物のみを意図する(からなる)ことが意図される。
【0052】
「用量」及び「投与量」は、投与のための活性剤又は治療剤の特定の量を指す。このような量は、「剤形」に含まれ、これは、ヒト対象及び他の哺乳動物のための単位投与量として適切な物理的に別個の単位をいい、各単位は、1つ以上の適切な薬学的賦形剤(例えば、担体)と関連して、所望の開始、忍容性、及び処置効果を生じるように計算された所定量の活性薬剤を含む。
【0053】
「Fc」は、ジスルフィドによって一緒に保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む断片である。抗体のエフェクター機能は、Fc領域における配列によって判定され、この領域はまた、特定の型の細胞上に見出されるFc受容体(FcR)によって認識される。
【0054】
「融合分子」という用語は、当技術分野において十分に理解されており、本明細書で言及される融合PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤を含む分子は、Ig:TGFβR融合タンパク質、例えば、抗PD-1:TGFβR融合タンパク質又は抗PD-L1:TGFβR融合タンパク質を含むと理解される。Ig:TGFβR融合タンパク質は、TGF-β受容体に融合された抗体(いくつかの実施形態において、例えばホモ二量体型のモノクローナル抗体)又はその抗原結合断片である。抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質という命名は、TGF-βに結合することができるTGF-β受容体II又はその細胞外ドメインの断片に融合された抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片を示す。抗PD-1:TGFβRII融合タンパク質という命名は、TGF-βに結合することができるTGF-β受容体II又はその細胞外ドメインの断片に融合された抗PD-1抗体又はその抗原結合断片を示す。抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質という命名は、TGF-βに結合することができるTGF-β受容体II又はその細胞外ドメインの断片に融合された、抗PD-1抗体若しくはその抗原結合断片、又は抗PD-L1抗体若しくはその抗原結合断片を示す。
【0055】
「Fv」は、完全な抗原認識部位と抗原結合部位とを含有する最小の抗体断片である。この断片は、強固な非共有結合で会合した1つの重鎖可変領域ドメイン及び1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これらの2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖からそれぞれ3つのループ)が生じる。しかし、単一可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)であっても、結合部位全体よりも低い親和性であるが、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0056】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体、及び/又は本明細書に開示されるヒト抗体を作製するための技術のいずれかを使用して作製された抗体である。ヒト抗体のこの定義は、特に、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む、当該技術において既知な様々な技術を使用して産生することができる(例えば、Hoogenboom and Winter(1991),JMB 227:381;Marks et al.(1991)JMB 222:581を参照)。また、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能なのは、Cole et al.(1985)Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,page 77;Boerner et al.(1991),J.Immunol 147(l):86;van Dijk、及びvan de Winkel(2001)Curr.Opin.Pharmacol 5:368に記載されている方法である。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してこのような抗体を産生するように改変されているが、その内因性遺伝子座が無能化されているトランスジェニック動物、例えば、免疫されたキセノマウスに抗原を投与することによって調製され得る(例えば、XENOMOUSE技術に関する米国特許第6,075,181号;及び同第6,150,584号を参照)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体に関しては、Li et al.(2006)PNAS USA,103:3557も参照されたい。
【0057】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、所望の特異性、親和性及び/又は能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のHVR由来の残基によって置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基も、対応する非ヒト残基で置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体において見出されない残基を含み得る。これらの修飾は、結合親和性などの抗体性能を更に洗練するために行われ得る。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリン配列のものに相当し、FR領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むが、FR領域は、結合親和性、異性化、免疫原性などの抗体性能を改善する1つ以上の個々のFR残基置換を含み得る。FRにおけるこれらのアミノ酸置換の数は、典型的にはH鎖で6以下であり、L鎖で3以下である。ヒト化抗体は、任意選択的に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も含む。更なる詳細については、例えば、Jones et al.(1986)Nature 321:522;Riechmann et al.(1988)Nature 332:323;Presta(1992)Curr.Op.Struct.Biol.2(593):Vaswani and Hamilton(1998),Ann.Allergy,Asthma & Immunol.1:105;Harris(1995)Biochem.Soc.Transactions 23:1035;Hurle and Gross(1994)Curr.Op.Biotech.5:428;並びに米国特許第6,982,321号及び同第7,087,409号を参照されたい。
【0058】
「注入」又は「注入する」は、治療目的のために静脈を通して体内に薬物含有溶液を導入することを指す。一般に、これは静脈内(IV)バッグを介して達成される。
【0059】
「転移性」癌は、身体の一部(例えば、肺)から身体の別の部分に広がった癌を指す。
【0060】
「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な天然の突然変異及び/又は翻訳後修飾(例えば、異性化及びアミド化)を除いて同一である。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原部位に対して向けられている。異なる決定基(エピトープ)に向けられた異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原の単一の決定基に向けられている。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養によって合成され、他の免疫グロブリンによって汚染されないという点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明によって使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495;Hongo et al.(1995)Hybridoma 14(3):253;Harlow et al.(1988)Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.;Hammerling et al.(1981)In:Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563(Elsevier,N.Y.)、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.(1991)Nature 352:624;Marks et al.(1992)JMB 222:581;Sidhu et al.(2004)JMB 338(2):299;Lee et al.(2004)JMB 340(5):1073;Fellouse(2004)PNAS USA 101(34):12467;及びLee et al.(2004)J.Immunol.Methods 284(1-2):119を参照)、及びヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座又は遺伝子の一部又は全部を有する動物においてヒト又はヒト様抗体を産生するための技術などの様々な技術によって作製され得る:(例えば、国際公開第1998/24893号、国際公開第1996/34096号、国際公開第1996/33735号、国際公開第1991/10741号、Jakobovits et al.(1993)PNAS USA 90:2551、Jakobovits et al.(1993)Nature 362:255、Bruggemann et al.(1993)Year in Immunol.7:33、米国特許第 5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、Marks et al.(1992)Bio/Technology 10:779、Lonberg et al.(1994)Nature 368:856、Morrison(1994)Nature 368:812、Fishwild et al.(1996)Nature Biotechnol.14-845、Neuberger(1996),Nature Biotechnol.14:826、及びLonberg and Huszar(1995),Intern.Rev.Immunol.13:65-93を参照されたい)。本明細書におけるモノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同であり、鎖の残りが、別の種に由来する抗体又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同であるキメラ抗体(免疫グロブリン)、並びにこのような抗体の断片を、それらが所望の生物学的活性を示す限り含む(例えば、米国特許第4,816,567号;Morrison et al.(1984)PNAS USA,81:6851を参照)。
【0061】
「客観的応答」は、完全応答(CR)又は部分応答(PR)を含む測定可能な応答を指す。
【0062】
「部分応答」は、処置に応答した、1つ以上の腫瘍若しくは病変のサイズの減少、又は体内の癌の程度の減少を指す。
【0063】
「患者」及び「対象」は、癌の処置を必要とする哺乳動物を指すために本明細書で互換的に使用される。一般に、患者は、癌の1つ以上の症状に罹患していると診断された、又は罹患するリスクがあるヒトである。ある特定の実施形態では、「患者」又は「対象」は、非ヒト哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、マウス、若しくはラット、又は例えば、薬物及び療法のスクリーニング、特徴付け、及び評価において使用される動物を指してもよい。
【0064】
本明細書で使用される「PD-1阻害剤」は、例えば、PD-1受容体とPD-L1及び/又はPD-L2リガンドとの間などの、PD-1軸結合パートナーの相互作用を阻害することによって、PD-1経路を阻害する分子を指す。そのような阻害の可能な効果には、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達から生じる免疫抑制の除去が含まれる。この文脈における阻害は、完全又は100%である必要はない。その代わりに、阻害は、PD-1とそのリガンドのうちの1つ以上との間の結合を低減、減少、若しくは排除すること、及び/又はPD-1受容体を介したシグナル伝達を低減、減少、若しくは排除することを意味する。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、PD-L1又はPD-1に結合して、これらの分子間の相互作用を阻害するものであり、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体などである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、PD-L1抗体であり、そのような抗体は、例えば、TGFβ阻害剤に、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質として融合され得る。
【0065】
本明細書で使用される「PD-L1発現」は、細胞表面上のPD-L1タンパク質の、又は細胞若しくは組織内のPD-L1 mRNAの任意の検出可能なレベルの発現を意味する。PD-L1タンパク質発現は、腫瘍組織切片のIHCアッセイにおいて診断用PD-L1抗体を用いて、又はフローサイトメトリーによって検出され得る。あるいは、腫瘍細胞によるPD-L1タンパク質発現は、PD-L1に特異的に結合する結合剤(例えば、抗体断片、アフィボディなど)を使用して、PETイメージングによって検出され得る。PD-L1 mRNA発現を検出及び測定するための技術には、RT-PCR及びリアルタイム定量的RT-PCRが含まれる。
【0066】
「PD-L1陽性」又は「PD-L1高」癌は、抗PD-L1抗体が、当該抗PD-L1抗体のPD-L1への結合によって媒介される治療効果を有するように、その細胞表面に存在するPD-L1を有する細胞を含むもの、及び/又はその細胞の表面に十分なレベルのPD-L1を産生するものである。例えば、癌又は腫瘍上のPD-L1又はCD73などのバイオマーカーを検出する方法は、当技術分野において通常の手順であり、本明細書において企図される。非限定的な例としては、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光、及び蛍光活性化細胞選別(FACS)が挙げられる。腫瘍組織切片のIHCアッセイにおいてPD-L1タンパク質発現を定量化するためのいくつかのアプローチが記載されている。PD-L1陽性細胞の比率は、多くの場合、腫瘍割合スコア(TPS)又は複合陽性スコア(CPS)として表される。TPSは、部分的又は完全な膜染色(例えば、PD-L1についての染色)を有する生存腫瘍細胞のパーセンテージを記載する。CPSは、PD-L1染色細胞(腫瘍細胞、リンパ球、マクロファージ)の数を、生存腫瘍細胞の総数で割り、100を掛けたものである。例えば、いくつかの実施形態では、「高PD-L1」は、PD-L1 Dako IHC 73-10アッセイによって判定される80%以上のPD-L1陽性腫瘍細胞、又はDako IHC 22C3 PharmDxアッセイによって判定される50%以上の腫瘍割合スコア(TPS)を指す。IHC73-10及びIHC22C3アッセイの両方は、それらのそれぞれのカットオフで類似の患者集団を選択する。ある特定の実施形態では、22C3 PharmDxアッセイとの高い一致を有するVentana PD-L1(SP263)アッセイ(Sughayer et al.,Appl.Immunohistochem.Mol.Morphol.,27:663-666(2019))を使用して、PD-L1発現レベルを判定することもできる。癌におけるPD-L1発現を判定するための別のアッセイは、Ventana PD-L1(SP142)アッセイである。いくつかの実施形態では、癌は、腫瘍細胞の少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、又は少なくとも80%がそれぞれPD-L1又はCD73発現を示す場合に、PD-L1又はCD73陽性としてカウントされる。
【0067】
ペプチド又はポリペプチド配列に関する「パーセント(%)配列同一性」は、配列を整列させ、最大パーセント配列同一性を達成するために必要に応じてギャップを導入した後、配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮しない、特定のペプチド又はポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を判定する目的のための整列は、例えば、BLAST、BLAST-2、又はALIGNソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当技術分野の技術の範囲内である様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大の整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、整列を測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0068】
「薬学的に許容される」は、物質又は組成物が、製剤を構成する他の成分、及び/又はそれを用いて処置される哺乳動物と化学的及び/又は毒物学的に適合性でなければならないことを示す。「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合性である、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容される担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、並びにそれらの組み合わせのうちの1つ以上が挙げられる。
【0069】
「プロドラッグ」は、例えば、アルキル又はアシル基(以下のアミノ及びヒドロキシル保護基も参照)、糖又はオリゴペプチドによって修飾されており、生物中で迅速に切断又は遊離されて有効な分子を形成する、本発明の化合物の誘導体を指す。これらはまた、例えば、Int.J.Pharm.115(1995),61-67に記載されるように、本発明の化合物の生分解性ポリマー誘導体も含む。
【0070】
「再発性」癌は、手術などの初期治療に対する応答後に、初期部位又は遠隔部位のいずれかで再増殖した癌である。局所「再発性」癌は、以前に処置された癌と同じ場所で処置後に再発する癌である。
【0071】
症状(単数又は複数)の「低減」(及びこの語句の文法的相当語句)は、症状(単数又は複数)の重症度若しくは頻度の減少、又は症状(単数又は複数)の排除を指す。
【0072】
「sFv」又は「scFv」とも略される「単鎖Fv」は、単一ポリペプチド鎖に接続されたVH及びVL抗体ドメインを含む抗体断片である。いくつかの実施形態では、sFvポリペプチドは、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーを更に含む。sFvの総説については、例えば、Pluckthun (1994),In:The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore (eds.),Springer-Verlag,New York,pp.269を参照されたい。
【0073】
「溶媒和物」とは、本発明の化合物上への不活性溶媒分子の付加物であって、それらの相互引力によって形成されるものを指す。溶媒和物は、例えば、一水和物若しくは二水和物などの水和物、又はアルコラート、すなわち、例えばメタノール若しくはエタノールなどのアルコールとの付加化合物である。
【0074】
「実質的に同一」とは、(1)対象アミノ酸配列に対して少なくとも75%、85%、90%、95%、99%、若しくは100%のアミノ酸配列同一性を示すクエリアミノ酸配列、又は(2)対象アミノ酸配列のアミノ酸配列とそのアミノ酸位置が20%、30%、20%、10%、5%、1%若しくは0%を超えて異ならないクエリアミノ酸配列を意味し、アミノ酸位置における差異は、アミノ酸の置換、欠失、若しくは挿入のいずれかである。
【0075】
「全身性」処置は、薬物物質が血流を通って移動し、全身の細胞に到達して影響を及ぼす処置である。
【0076】
本明細書で使用される「TGFβ阻害剤」は、例えば、TGFβとTGFβ受容体(TGFβR)との間の相互作用を阻害することによって、TGFβ経路を阻害する分子を指す。このような阻害の可能な効果としては、TGFβシグナル伝達軸上のシグナル伝達から生じる免疫抑制の除去が挙げられる。この文脈における阻害は、完全又は100%である必要はない。その代わりに、阻害とは、TGF-βとTGFβRとの間の結合を低減、減少、若しくは排除すること、及び/又はTGFβRを介したシグナル伝達を低減、減少、若しくは排除することを意味する。いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤は、TGFβ又はTGFβRに結合して、これらの分子間の相互作用を阻害する。いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤は、TGFβに結合することができるTGFβRIIの細胞外ドメイン又はTGFβRIIの断片を含む。いくつかの実施形態では、そのようなTGFβ阻害剤は、PD-1阻害剤に、例えば、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質として融合される。
【0077】
「TGF-β受容体」(TGFβR)、並びに「TGF-β受容体I」(TGFβRI又はTGFβR1と略される)又は「TGF-β受容体II」(TGFβRII又はTGFβR2と略される)という用語は、当該分野で周知である。本開示の目的のために、このような受容体への言及は、完全な受容体及びTGF-βに結合し得る断片を含む。いくつかの実施形態では、TGF-βに結合することができるのは、受容体の細胞外ドメイン又は細胞外ドメインの断片である。いくつかの実施形態では、TGFβRIIの断片は、配列番号11、配列番号12、及び配列番号13からなる群から選択される。
【0078】
PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、又はVEGF阻害剤の「治療有効量」は、本発明の各場合において、癌を有する患者に投与された場合に、意図された治療効果、例えば、患者における癌の1つ以上の徴候の緩和、改善、軽減、若しくは排除、又は癌患者を処置する過程における任意の他の臨床結果を有する、必要な投与量及び期間での有効量を指す。治療効果は、必ずしも1用量の投与によって生じるわけではなく、一連の用量の投与後にのみ生じてもよい。よって、治療有効量は、1回以上の投与で投与され得る。そのような治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体において所望の応答を誘発するPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、又はVEGF阻害剤の能力などの因子に応じて変動し得る。治療有効量はまた、治療上有益な効果が、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、又はVEGF阻害剤の任意の毒性又は有害な効果を上回る量である。
【0079】
状態又は患者を「処置すること」又はその「処置」は、臨床結果を含む有益な又は所望の結果を得るための措置をとることを指す。本発明の目的のために、有益な又は所望の臨床結果としては、癌の1つ以上の症状の緩和、改善;疾患の程度の低下;疾患進行の遅延若しくは減速;疾患状態の改善、軽減、若しくは安定化;又は他の有益な結果が挙げられるが、これらに限定されない。「処置すること」又は「処置」への言及は、予防、並びに状態の確立された症状の緩和を含むことが理解されるべきである。したがって、状態、障害、若しくは病状を「処置すること」又は、状態、障害、若しくは病状の「処置」は、(1)状態、障害、若しくは病状に罹患しているか若しくは罹患しやすい可能性があるが、状態、障害、若しくは病状の臨床的若しくは臨床前症状をまだ経験していない若しくは示していない対象において発症する状態、障害、若しくは病状の臨床症状の出現を予防又は遅延させること、(2)状態、障害、若しくは病状を阻害すること、すなわち、疾患の発症若しくはその再発(維持処置の場合)、又はその少なくとも1つの臨床的若しくは臨床前症状を停止、低減、若しくは遅延させること、又は(3)疾患を軽減若しくは減弱させること、すなわち、状態、障害、若しくは病状、又はその少なくとも1つの臨床的若しくは臨床前症状の退行を引き起こすことを含む。
【0080】
本明細書で使用される「単位剤形」は、処置される対象のために適した治療製剤の物理的に別個の単位を指す。しかし、本発明の組成物の総1日使用量が、妥当な医学的判断の範囲内で主治医によって判定されることは理解されるであろう。任意の特定の対象又は生物に対する特定の有効用量レベルは、処置される障害及び障害の重篤度;使用される特定の活性剤の活性;使用される特定の組成物;対象の年齢、体重、全体的健康、性別、及び食事;投与時間、及び使用される特定の活性剤の排出速度;処置の持続時間;使用される特定の化合物(複数可)と組み合わせて又は同時に使用される薬物及び/又は追加の療法、並びに医学分野で周知の同様の因子を含む種々の因子に依存する。
【0081】
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ「VH」及び「VL」と称され得る。これらのドメインは、一般に、(同じクラスの他の抗体と比較して)抗体の最も可変的な部分であり、抗原結合部位を含有する。
【0082】
本明細書で使用される場合、複数の項目、構造要素、組成要素、及び/又は材料は、便宜上、共通のリストに提示され得る。しかしながら、これらのリストは、リストの各メンバーが別個の固有のメンバーとして個々に識別されるかのように解釈されるべきである。
【0083】
濃度、量、及び他の数値データは、本明細書において範囲形式で表現又は提示され得る。そのような範囲形式は、単に便宜上及び簡潔さのために使用され、したがって、範囲の限界として明示的に列挙された数値を含むだけでなく、各数値及び部分範囲が明示的に列挙されているかのように、その範囲内に包含される全ての個々の数値又は部分範囲も含むように柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。例示として、「約1~約5」の数値範囲は、約1~約5の明示的に列挙された値だけでなく、示された範囲内の個々の値及び部分範囲も含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、2、3、及び4などの個々の値、並びに1~3、2~4、及び3~5などの部分範囲、並びに個々に1、2、3、4、及び5が含まれる。これと同じ原理が、最小値又は最大値として1つの数値のみを記載する範囲に適用される。更に、そのような解釈は、記載されている範囲又は特徴の幅にかかわらず適用されるべきである。
【0084】
記述的実施形態
治療組み合わせ及びその使用方法
本発明は、部分的には、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤の組み合わせ利益の驚くべき発見から生じた。処置スケジュール及び用量は、潜在的な相乗作用を明らかにするように設計された。前臨床データは、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤と組み合わせた場合のアデノシン阻害剤の相乗作用を実証した。
【0085】
したがって、一態様では、本発明は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を対象に投与することを含む、対象における癌を処置するための方法において使用するための、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤、例えばアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤、並びにPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤、例えばアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤を対象に投与することを含む、対象における癌を処置するための方法、並びにPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を対象に投与することを含む、対象における癌を処置するための医薬の製造における、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤、例えばアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤、の使用を提供する。治療有効量のPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤が各処置方法において適用されることが理解されるべきである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は抗PD(L)1抗体であり、TGFβ阻害剤はTGFβRII又は抗TGFβ抗体である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、TGFβ阻害剤に融合される。例えば、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質又は抗PD-1:TGFβRII融合タンパク質に含まれ得る。いくつかの実施形態では、融合分子は、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質であり、軽鎖配列及び重鎖配列が、それぞれ配列番号7及び配列番号8に対応する。いくつかの実施形態では、アデノシン阻害剤は、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤である。いくつかの実施形態では、アデノシン阻害剤は、アデノシンA2A及びA2B受容体阻害剤である。いくつかの実施形態では、アデノシン阻害剤は、(S)-7-オキサ-2-アザ-スピロ[4.5]デカン-2-カルボン酸[7-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-4-メトキシ-チアゾロ[4,5-c]ピリジン-2-イル]-アミドである。
【0086】
PD-1阻害剤は、PD-1と、PD-L1又はPD-L2などのそのリガンドのうちの少なくとも1つとの間の相互作用を阻害し、それによってPD-1経路、例えば、PD-1の免疫抑制シグナルを阻害し得る。PD-1阻害剤は、PD-1又はそのリガンドの1つ、例えばPD-L1に結合し得る。一実施形態では、PD-1阻害剤は、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害することができる抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体などの抗PD(L)1抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、スパルタリズマブ、カンレリズマブ、シンチリマブ、チスレズマブ、トリパリマブ、セミプリマブ、並びに抗体の軽鎖配列及び重鎖配列がそれぞれ配列番号7及び配列番号16、又は配列番号15及び配列番号14に対応する抗体、又はこの群の抗体のいずれかと結合について競合する抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体は、PD-1又はPD-L1に依然として結合することができ、アミノ酸配列が、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、スパルタリズマブ、カンレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、セミプリマブ、並びに抗体の軽鎖配列及び重鎖配列が配列番号7及び配列番号16、又は配列番号15及び配列番号14に対応する抗体からなる群から選択される抗体の1つの配列と実質的に同一である、例えば、少なくとも90%の配列同一性を有する抗体である。
【0087】
いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害することができる抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、配列番号19(CDRH1)、配列番号20(CDRH2)及び配列番号21(CDRH3)のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含む重鎖と、配列番号22(CDRL1)、配列番号23(CDRL2)及び配列番号24(CDRL3)のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含む軽鎖とを含む。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、配列番号1(CDRH1)、配列番号2(CDRH2)、及び配列番号3(CDRH3)のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含む重鎖と、配列番号4(CDRL1)、配列番号5(CDRL2)、及び配列番号6(CDRL3)のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含む軽鎖とを含む。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、それぞれ配列番号25及び配列番号26を含む。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体の軽鎖配列及び重鎖配列は、それぞれ、配列番号7及び配列番号16、又は配列番号15及び配列番号14に対応する。
【0088】
いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、抗PD-L1抗体であり、軽鎖及び重鎖配列の各々は、ビントラフスプアルファの抗体部分の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性、例えば、90%以上の配列同一性、95%以上の配列同一性、99%以上の配列同一性、又は100%の配列同一性を有し、PD-1阻害剤は、依然としてPD-L1に結合することができる。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、抗PD-L1抗体であり、軽鎖及び重鎖配列の各々は、ビントラフスプアルファの抗体部分の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性、例えば、90%以上の配列同一性、95%以上の配列同一性、99%以上の配列同一性、又は100%の配列同一性を有し、CDRは、ビントラフスプアルファのCDRと完全に同一である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ビントラフスプアルファの抗体部分の重鎖配列及び軽鎖配列の各々と50以下、40以下、又は25以下のアミノ酸残基が異なるアミノ酸配列を有する抗PD-L1抗体であり、PD-1阻害剤は、依然としてPD-L1に結合することができる。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ビントラフスプアルファの抗体部分の重鎖及び軽鎖配列の各々と50以下、40以下、25以下、又は10以下のアミノ酸残基が異なるアミノ酸配列を有する抗PD-L1抗体であり、CDRは、ビントラフスプアルファのCDRと完全に同一である。
【0089】
いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤は、TGFβとTGFβ受容体との間の相互作用を阻害することができるものであり;例えば、TGFβ受容体、TGFβリガンド又は受容体遮断抗体、TGFβ結合パートナー間の相互作用を阻害する小分子、及びTGFβ受容体に結合し、内因性TGFβとの結合に関して競合する不活性変異TGFβリガンドである。いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤は、可溶性TGFβ受容体(例えば、可溶性TGFβ受容体II若しくはIII)又はTGFβに結合することができるその断片である。いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤は、ヒトTGFβ受容体II(TGFβRII)の細胞外ドメイン、又はTGFβに結合することができるその断片である。いくつかの実施形態では、TGFβRIIは、野生型ヒトTGF-β受容体2型アイソフォームA配列(例えば、NCBI参照配列(RefSeq)アクセッション番号NP_001020018(配列番号9)のアミノ酸配列)、又は野生型ヒトTGF-β受容体2型アイソフォームB配列(例えば、NCBI RefSeqアクセッション番号NP_003233(配列番号10)のアミノ酸配列)に対応する。いくつかの実施形態、TGFβ阻害剤は、配列番号11に対応する配列又はTGFβに結合することが可能なその断片を含むか、又はそれからなる。例えば、TGFβ阻害剤は、配列番号11の全長配列に対応し得る。あるいは、それは、N末端欠失を有してもよい。例えば、配列番号11のN末端26以下のアミノ酸(例えば、14~21又は14~26のN末端アミノ酸)が欠失され得る。いくつかの実施形態では、配列番号11のN末端14、19、又は21のアミノ酸が欠失している。いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤は、配列番号11、配列番号12、及び配列番号13からなる群より選択される配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤は、配列番号11、配列番号12、及び配列番号13のいずれか1つのアミノ酸配列と実質的に同一であり、例えば、少なくとも90%の配列同一性を有し、TGFβに結合することができるタンパク質である。別の実施形態では、TGFβ阻害剤は、配列番号11のアミノ酸配列と実質的に同一であり、例えば、少なくとも90%の配列同一性を有し、TGFβに結合することができるタンパク質である。一実施形態では、TGFβ阻害剤は、配列番号11と25を超えるアミノ酸が異ならないアミノ酸配列を有し、TGFβに結合することができるタンパク質である。
【0090】
いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤は、ビントラフスプアルファのTGFβRのアミノ酸配列と実質的に同一であり、例えば、少なくとも90%の配列同一性を有し、依然としてTGFβに結合することができるタンパク質である。いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤は、ビントラフスプアルファのTGFβRとは50以下、40以下、又は25以下のアミノ酸残基が異なるアミノ酸配列を有し、依然としてTGFβに結合することができるタンパク質である。いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤は、100~160アミノ酸残基又は110~140アミノ酸残基を有する。いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤のアミノ酸配列は、ビントラフスプアルファのTGFβRの1~136位に対応する配列、ビントラフスプアルファのTGFβRの20~136位に対応する配列、及びビントラフスプアルファのTGFβRの22~136位に対応する配列からなる群より選択される。
【0091】
いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤は、レルデリムマブ、XPA681、XPA089、LY2382770、LY3022859、1D11、2G7、AP11014、A-80-01、LY364947、LY550410、LY580276、LY566578、SB-505124、SD-093、SD-208、SB-431542、ISTH0036、ISTH0047、ガルニセルチブ(LY2157299一水和物、TGF-βRIの小分子キナーゼ阻害剤)、LY3200882(Pei et al.(2017)CANCER RES 77(13 Suppl):Abstract 955によって開示される小分子キナーゼ阻害剤TGF-βRI)、メテリムマブ(TGF-β1を標的とする抗体、Colak et al.(2017)TRENDS CANCER 3(1):56-71を参照)、フレソリムマブ(GC-1008;TGF-β1及びTGF-β2を標的とする抗体)、XOMA089(TGF-β1及びTGF-β2を標的とする抗体);Mirza et al.(2014)IINVESTIGATIVE OPHTHALMOLOGY & VISUAL SCIENCE 55:1121)、AVID200(TGF-β1及びTGF-β3トラップ、Thwaites et al.(2017)BLOOD 130:2532を参照)、Trabedersen/AP12009(TGF-β2アンチセンスオリゴヌクレオチド、Jaschinski et al.(2011)CURR PHARM BIOTECHNOL.12(12):2203-13を参照)、Belagen-pumatucel-L(TGF-β2を標的とする腫瘍ワクチン、例えば、Giaccone et al.(2015)EUR CANCER 51(16):2321-9を参照)、Ki26894、SD208、SM16、IMC-TR1、PF-03446962、TEW-7197、及びGW788388を含む、Colak et al.(2017)に記載されたTGB-β経路標的化剤からなる群から選択される。
【0092】
いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は、例えば、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質として融合される。いくつかの実施形態では、融合分子は、抗PD-1:TGFβRII融合タンパク質又は抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質は、国際公開第2015/118175号、国際公開第2018/205985号、国際公開第2020/014285号、又は国際公開第2020/006509号に開示されている抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質のうちの1つである。いくつかの実施形態では、TGFβRII又はその断片の配列のN末端は、抗体又はその断片の各重鎖配列のC末端に融合される。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片及びTGFβRIIの細胞外ドメイン又はその断片は、リンカー配列を介して遺伝的に融合される。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、短い柔軟なペプチドである。一実施形態では、リンカー配列は、(G4S)xGであり、式中、xは3~6、例えば、4~5又は4である。
【0093】
例示的な抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質を
図2に示す。示されたヘテロテトラマーは、抗PD-L1の2つの軽鎖配列と、C末端がリンカー配列を介してTGFβRIIの細胞外ドメイン又はその断片のN末端に遺伝的に融合された抗PD-L1抗体の重鎖配列をそれぞれ含む2つの配列と、からなる。
【0094】
一実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質のTGFβRIIの細胞外ドメイン又はその断片は、配列番号11と25を超えるアミノ酸が異ならないアミノ酸配列を有し、TGFβに結合することができる。いくつかの実施形態では、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質は、国際公開第2015/118175号、国際公開第2018/205985号、又は国際公開第2020/006509号に開示されている抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質の1つである。例えば、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質は、それぞれ、国際公開第2015/118175号の配列番号1及び配列番号3の軽鎖配列及び重鎖配列を含み得る。別の実施形態では、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質は、国際公開第2018/205985号の表2に列挙される構築物のうちの1つ、例えば、その構築物9又は15である。他の実施形態では、国際公開第2018/205985号の配列番号11の重鎖配列及び配列番号12の軽鎖配列を有する抗体は、連結配列(G4S)xG(式中、xは4~5である)を介して、国際公開第2018/205985号の配列番号14(式中、リンカー配列の「x」は4である)又は配列番号15(式中、リンカー配列の「x」は5である)のTGFβRII細胞外ドメイン配列に融合される。別の実施形態では、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質は、SHR1701である。更なる実施形態では、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質は、国際公開第2020/006509号に開示されている融合分子の1つである。一実施形態では、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質は、国際公開第2020/006509号に開示されているBi-PLB-1、Bi-PLB-2、又はBi-PLB-1.2である。一実施形態では、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質は、国際公開第2020/006509号に開示されているBi-PLB-1.2である。一実施形態では、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質は、国際公開第2020/006509号に開示されている配列番号128及び配列番号95を含む。いくつかの実施形態では、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質の軽鎖配列及び重鎖配列のアミノ酸配列は、本開示の(1)配列番号7及び配列番号8、(2)配列番号15及び配列番号17、(3)配列番号15及び配列番号18、並びに(4)国際公開第2020/006509号に開示されている配列番号128及び配列番号95からなる群から選択される軽鎖配列及び重鎖配列にそれぞれ対応する。いくつかの実施形態では、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質は、依然としてPD-L1及びTGFβに結合することができ、その軽鎖配列及び重鎖配列のアミノ酸配列はそれぞれ、本開示の(1)配列番号7及び配列番号8、(2)配列番号15及び配列番号17、(3)配列番号15及び配列番号18、並びに(4)国際公開第2020/006509号に開示されている配列番号128及び配列番号95からなる群から選択される軽鎖配列及び重鎖配列と実質的に同一であり、例えば、少なくとも90%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質のPD-1阻害剤の軽鎖配列及び重鎖配列のアミノ酸配列は、ビントラフスプアルファの抗体部分の軽鎖配列及び重鎖配列とそれぞれ50以下、40以下、25以下、又は10以下のアミノ酸残基が異なり、CDRは、ビントラフスプアルファのCDRと完全に同一であり、及び/又はPD-1阻害剤は、依然としてPD-L1に結合することができる。いくつかの実施形態では、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質のアミノ酸配列は、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列と実質的に同一であり、例えば、少なくとも90%の配列同一性を有し、PD-L1及びTGF-βに結合することができる。いくつかの実施形態では、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質のアミノ酸配列は、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列に対応する。いくつかの実施形態では、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質は、ビントラフスプアルファである。
【0095】
特定の実施形態では、抗PD-1:TGFβRII融合タンパク質は、国際公開第2020/014285号に開示され、PD-1及びTGF-βの両方に結合する融合分子の1つであり、例えば、その中の
図4に示されるように、又は実施例1に記載されるように、表2~9に同定されるもの、その中の表16に指定されるものを含み、特に、PD-1及びTGF-βの両方に結合し、配列番号15又は配列番号296と実質的に同一である、例えば少なくとも90%の配列同一性を有する配列、及びその中の配列番号16、配列番号143、配列番号144、配列番号145、配列番号294又は配列番号295と実質的に同一である、例えば少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む融合タンパク質である。一実施形態では、抗PD-1:TGFβIIR融合タンパク質は、国際公開第2020/014285号の配列番号15及び配列番号16を含む。一実施形態では、抗PD-1:TGFβIIR融合タンパク質は、国際公開第2020/014285号の配列番号15及び配列番号143を含む。一実施形態では、抗PD-1:TGFβIIR融合タンパク質は、国際公開第2020/014285号の配列番号15及び配列番号144を含む。一実施形態では、抗PD-1:TGFβIIR融合タンパク質は、国際公開第2020/014285号の配列番号15及び配列番号145を含む。一実施形態では、抗PD-1:TGFβIIR融合タンパク質は、国際公開第2020/014285号の配列番号15及び配列番号294を含む。一実施形態では、抗PD-1:TGFβIIR融合タンパク質は、国際公開第2020/014285号の配列番号15及び配列番号295を含む。一実施形態では、抗PD-1:TGFβIIR融合タンパク質は、国際公開第2020/014285号の配列番号296及び配列番号16を含む。一実施形態では、抗PD-1:TGFβIIR融合タンパク質は、国際公開第2020/014285号の配列番号296及び配列番号143を含む。一実施形態では、抗PD-1:TGFβIIR融合タンパク質は、国際公開第2020/014285号の配列番号296及び配列番号144を含む。一実施形態では、抗PD-1:TGFβIIR融合タンパク質は、国際公開第2020/014285号の配列番号296及び配列番号145を含む。一実施形態では、抗PD-1:TGFβIIR融合タンパク質は、国際公開第2020/014285号の配列番号296及び配列番号294を含む。一実施形態では、抗PD-1:TGFβIIR融合タンパク質は、国際公開第2020/014285号の配列番号296及び配列番号295を含む。更なる実施形態では、抗PD-1:TGFβIIR融合タンパク質は、国際公開第2020/006509号に開示されている融合分子の1つである。一実施形態では、抗PD-1:TGFβIIR融合タンパク質は、国際公開第2020/006509号に開示されているBi-PB-1、Bi-PB-2、又はBi-PB-1.2である。一実施形態では、抗PD-1:TGFβIIR融合タンパク質は、国際公開第2020/006509号に開示されているBi-PB-1.2である。一実施形態では、抗PD-1:TGFβIIR融合タンパク質は、国際公開第2020/006509号に開示されている配列番号108及び配列番号93を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、アデノシン阻害剤は、アデノシン受容体阻害剤である。いくつかの実施形態では、アデノシン阻害剤は、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤である。いくつかの実施形態では、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤は、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体へのアデノシンの結合を競合的に阻害する小分子である。
【0097】
いくつかの実施形態では、アデノシン阻害剤は、アデノシンA2A受容体阻害剤である。いくつかの実施形態では、アデノシンA2A受容体阻害剤は、イストラデフィリン(KW-6002)、プレラデナント(SCH420814)、シフォラデナント、SCH58261、SCH-442,416、ZM-241,385、CGS-15943、トザデナント、ビパデナント(V-2006)、V-81444(CPI-444)、AZD-4635(HTL-1071)、NIR-178(PBF-509)、Medi-9447、PNQ-370、ZM-241385、ASO-5854、ST-1535、ST-4206、DT1133、DT-0926、MK-3814、CGS-2168、CGS-21680、ZM241385、及びNECAからなる群から選択される。
【0098】
いくつかの実施形態では、アデノシン阻害剤は、アデノシンA2B受容体阻害剤である。いくつかの実施形態では、アデノシンA2B受容体阻害剤は、キサンチン類(DPSPX(1,3-ジプロピル-8-スルホフェニルキサンチン)、DPCPX(1,3-ジプロイル-8-シクロペンチルキサンチン)、DPX(1,3ジエチルフェニルキサンチン)、抗喘息薬エンプロフィリン(3-n-プロピルキサンチン))、非キサンチン化合物2,4-ジオキソベンゾプテリジン(アロキサジン)、ATL801、CVT-6833、PSB-603、PSB-605、PSB-0788、PSB-1115、ISAM-140、GS6201、MRS1706及びMRS1754からなる群から選択される。
【0099】
いくつかの実施形態では、アデノシン阻害剤は、アデノシンA2A及びA2B受容体阻害剤である。いくつかの実施形態では、アデノシンA2A及びA2B受容体阻害剤は、チアゾロピリジン誘導体である。いくつかの実施形態では、アデノシンA2A及びA2B受容体阻害剤は、AB928、並びに国際公開第2019/038214号、国際公開第2019/038215、国際公開第2019/025099号、国際公開第2020/083878、国際公開第2020/083856号、及び国際公開第2020/152132号に開示されているアデノシンA2A及びA2B受容体阻害剤のうちの1つからなる群から選択され、特に、これらの刊行物の特許請求の範囲で言及されている化合物から選択される。
【0100】
いくつかの実施形態では、アデノシン受容体阻害剤は、以下の実施形態E1~E13から選択される。
E1.式Iの化合物であって、
【化1】
式中、
R
1は、非置換であるか、又はR
5によって一置換、二置換、若しくは三置換されている、1~10個のC原子を有する直鎖若しくは分岐アルキルであり、1~4個のC原子は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NH、NCH
3、-OCO-、-NHCONH-、-NHCO-、-NR
6SO
2R
7-、-COO-、-CONH-、-NCH
3CO-、-CONCH
3-、-C≡C-基及び/若しくは-CH=CH-基で置換されていてもよく、並びに/又は、加えて、1~10個のH原子は、F及び/若しくはClで置換されていてもよく、あるいは、非置換であるか、又はR
5で一置換、二置換、若しくは三置換されている、3~7個のC原子を有する単環式又は二環式の環状アルキルで置換されていてもよく、1~4個のC原子は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NH、NCH
3、-OCO-、-NHCONH-、-NHCO-、-NR
6SO
2R
7-、-COO-、-CONH-、-NCH
3CO-、-CONCH
3-、-C≡C-基及び/若しくは-CH=CH-基によって置換されていてもよく、並びに/又は、加えて、1~10個のH原子は、F及び/若しくはClによって置換されていてもよく、あるいは、3~14個の炭素原子と、N、O及びSから独立して選択される0~4個のヘテロ原子とを含有し、非置換であるか、又はR
5によって一置換、二置換、若しくは三置換されている、単環式若しくは二環式ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリール又は環式アルキルアリールで置換されていてもよく、
R
2は、非置換であるか、又はR
5によって一置換、二置換、若しくは三置換されている、1~10個のC原子を有する直鎖若しくは分岐アルキルであり、1~4個のC原子は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NH、NCH
3、-OCO-、-NHCONH-、-NHCO-、-NR
6SO
2R
7-、-COO-、-CONH-、-NCH
3CO-、-CONCH
3-、-C≡C-基及び/若しくは-CH=CH-基で置換されていてもよく、並びに/又は、加えて、1~10個のH原子は、F及び/若しくはClで置換されていてもよく、あるいは、非置換であるか、又はR
5で一置換、二置換、若しくは三置換されている、3~7個のC原子を有する環状アルキルで置換されていてもよく、1~4個のC原子は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NH、NCH
3、-OCO-、-NHCONH-、-NHCO-、-NR
6SO
2R
7-、-COO-、-CONH-、-NCH
3CO-、-CONCH
3-、-C≡C-基及び/若しくは-CH=CH-基によって置換されていてもよく、並びに/又は、加えて、1~11個のH原子は、F及び/若しくはClによって置換されていてもよく、あるいは、3~14個の炭素原子と、N、O及びSから独立して選択される0~4個のヘテロ原子とを含有し、非置換であるか、又はR
5によって一置換、二置換、若しくは三置換されている、単環式若しくは二環式ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリール又は環式アルキルアリールで置換されていてもよく、
R
3は、非置換であるか、又はH、=S、=NH、=O、OH、3~6個のC原子を有する環状アルキル、COOH、Hal、NH
2、SO
2CH
3、SO
2NH
2、CN、CONH
2、NHCOCH
3、NHCONH
2若しくはNO
2によって一置換、二置換、又は三置換されている、1~6個のC原子を有する直鎖若しくは分岐のアルキル若しくはO-アルキル又は3~6個のC原子を有する環状アルキルであり、
R
4は、H、D、1~6個のC原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル、又はHalであり、
R
5は、H、R
6、=S、=NR
6、=O、OH、COOH、Hal、NH
2、SO
2CH
3、SO
2NH
2、CN、CONH
2、NHCOCH
3、NHCONH
2、NO
2、又は非置換であるか、若しくはR
6によって一置換、二置換、又は三置換されている、1~10個のC原子を有する直鎖若しくは分岐アルキルであり、1~4個のC原子は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NH、NCH
3、-OCO-、-NHCONH-、-NHCO-、-NR
6SO
2R
7-、-COO-、-CONH-、-NCH
3CO-、-CONCH
3)、-C≡C-基及び/若しくは-CH=CH-基で置換されていてもよく、並びに/又は、加えて、1~10個のH原子は、F及び/若しくはClで置換されていてもよく、あるいは、非置換であるか、又はR
6で一置換、二置換、若しくは三置換されている、3~7個のC原子を有する単環式又は二環式の環状アルキルで置換されていてもよく、1~4個のC原子は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NH、NCH
3、-OCO-、-NHCONH-、-NHCO-、-NR
6SO
2R
7-、-COO-、-CONH-、-NCH
3CO-、-CONCH
3、-C≡C-基及び/若しくは-CH=CH-基によって置換されていてもよく、並びに/又は、加えて、1~10個のH原子は、F及び/若しくはClによって置換されていてもよく、あるいは、3~14個の炭素原子と、N、O及びSから独立して選択される0~4個のヘテロ原子とを含有し、非置換であるか、又はR
6によって一置換、二置換、若しくは三置換されている、単環式若しくは二環式ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリール又は環式アルキルアリールで置換されていてもよく、
R
6、R
7は、互いに独立して、H、=S、=NH、=O、OH、COOH、Hal、NH
2、SO
2CH
3、SO
2NH
2、CN、CONH
2、NHCOCH
3、NHCONH
2、NO
2、及び1~10個のC原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキルからなる群から選択され、1~4個のC原子は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NH、NCH
3、-OCO-、-NHCONH-、-NHCO-、-COO-、-CONH-、-NCH
3CO-、-CONCH
3-、-C≡C-基及び/若しくは-CH=CH-基によって置換されていてもよく、並びに/又は、加えて、1~10個のH原子は、F及び/若しくはClによって置換されていてもよく、
Halは、F、Cl、Br、又はIであり、
Dは、重水素である、化合物、
並びにその薬学的に許容される塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグ、及び立体異性体(全ての比率でのそれらの混合物を含む)。
【0101】
E2.
R
1は、非置換であるか、又はR
4によって一置換、二置換、若しくは三置換されている、1~10個のC原子を有する直鎖又は分岐アルキルであり、1~4個のC原子は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NH、NCH
3、-OCO-、-NHCONH-、-NHCO-、-NR
5SO
2R
6-、-COO-、-CONH-、-NCH
3CO-、-CONCH
3-、-C≡C-基及び/若しくは-CH=CH-基によって置換されていてもよく、並びに/又は、加えて、1~10個のH原子は、F及び/若しくはCl、あるいは、非置換であるか、又はR
5で一置換、二置換、若しくは三置換されている以下の構造のうちの1つによって置換されていてもよく、
【化2】
式中、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、実施形態E1に開示されている意味を有する、実施形態E1に記載の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグ、及び立体異性体(全ての比率でのそれらの混合物を含む)。
【0102】
E3.
R
1は、以下の構造のうちの1つであり、
【化3】
式中、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、実施形態E1に開示されている意味を有する、実施形態E1又は実施形態E2に記載の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグ、及び立体異性体(全ての比率でのそれらの混合物を含む)。
【0103】
E4.
R1は、フェニル、メチルピラゾール、又はジヒドロピランであり、
式中、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は、実施形態E1にあるとおりの意味を有する、実施形態E1~E3のいずれか1つに記載の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグ、及び立体異性体(全ての比率でのそれらの混合物を含む)。
【0104】
E5.
R
2は、非置換であるか、又はR
5で一置換、二置換、若しくは三置換されている以下の構造のうちの1つであり、
【化4】
式中、R
1、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、実施形態E1に開示されている意味を有する、実施形態E1~E4のいずれか1つに記載の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグ、及び立体異性体(全ての比率でのそれらの混合物を含む)。
【0105】
E6.
R
2は、以下の構造のうちの1つであり、
【化5】
【化6】
式中、R
1、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、実施形態E1に開示されている意味を有する、実施形態E1~E5のいずれか1つに記載の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグ、及び立体異性体(全ての比率でのそれらの混合物を含む)。
【0106】
E7.
R
3は、以下の構造のうちの1つであり、
【化7】
R
1、R
2、R
4、R
5、R
6及びR
7は、実施形態E1に開示されている意味を有する、実施形態E1~E6のいずれか1つに記載の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグ、及び立体異性体(全ての比率でのそれらの混合物を含む)。
【0107】
E8.
R3は、OMeであり、
R1、R2、R4、R5、R6及びR7は、実施形態E1に開示されている意味を有する、実施形態E1~E7のいずれか1つに記載の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグ、及び立体異性体(全ての比率でのそれらの混合物を含む)。
【0108】
E9.
R1は、フェニル、メチルピラゾール、又はジヒドロピランであり、
R3は、OMeであり、
R2、R4、R5、R6、及びR7は、実施形態E1に開示されている意味を有する、実施形態E1~E8のいずれか1つに記載の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグ、及び立体異性体(全ての比率でのそれらの混合物を含む)。
【0109】
E10.
R4は、H、D、メチル、エチル、F、Br、又はClであり、
式中、R1、R2、R3、R5、R6、及びR7は、実施形態E1に開示されている意味を有する、実施形態E1に記載の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグ、及び立体異性体(全ての比率でのそれらの混合物を含む)。
【0110】
E11.
R4は、Hであり、
式中、R1、R2、R3、R5、R6、及びR7は、実施形態E1に開示されている意味を有する、実施形態E1又はE2に記載の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグ、及び立体異性体(全ての比率でのそれらの混合物を含む)。
【0111】
E12.表1の化合物の群から選択される化合物:
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
並びにその薬学的に許容される塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグ、及び立体異性体(全ての比率でのそれらの混合物)。
【0112】
E13.表2の化合物の群から選択される化合物:
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
並びにその薬学的に許容される塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグ、及び立体異性体(全ての比率でのそれらの混合物)。
【0113】
一実施形態では、本発明の治療組み合わせは、ヒト対象の処置において使用される。治療組み合わせによる処置において予想される主な利益は、これらのヒト患者に対するリスク/利益比の増加である。本発明の組み合わせの投与は、組み合わせが、単一の治療剤単独の個々の投与と比較した場合に、以下の改善された特性:i)最も活性な単一の薬剤よりも大きな抗癌効果、ii)相乗的又は高度に相乗的な抗癌活性、iii)副作用プロファイルの減少と共に増強された抗癌活性を提供する投薬プロトコル、iv)毒性効果プロファイルの減少、v)治療ウインドウの増加、及び/又はvi)治療剤の一方又は両方の生物学的利用能の増加、の1つ以上を提供し得るという点で、個々の治療剤よりも有利であり得る。
【0114】
特定の実施形態では、本発明は、過剰又は異常な細胞増殖を特徴とする疾患、障害、及び病状の処置を提供する。このような疾患としては、増殖性疾患又は過剰増殖性疾患が挙げられる。増殖性及び過剰増殖性疾患の例としては、癌及び骨髄増殖性疾患が挙げられる。
【0115】
別の実施形態では、癌は、癌腫、リンパ腫、白血病、芽細胞腫、及び肉腫から選択される。このような癌のより具体的な例としては、扁平上皮細胞癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、グリオーマ、ホジキン・リンパ腫、非ホジキン・リンパ腫、急性骨髄白血病、多発性ミエローマ、胃腸(管)癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽細胞種、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸部癌、脳癌、胃癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、胆道癌、及び頭頸部癌が挙げられる。問題の疾患又は医学的障害は、国際公開第2015118175号、国際公開第2018029367号、国際公開第2018208720号、PCT/US18/12604号、PCT/US19/47734号、PCT/US19/40129号、PCT/US19/36725号、PCT/US19/732271号、PCT/US19/38600号、PCT/EP2019/061558号に開示されているもののいずれかから選択され得る。いくつかの実施形態では、癌は、肺腺癌、頭頸部扁平上皮癌、食道癌、胃腺癌、膵臓腺癌、直腸腺癌、及び結腸腺癌から選択される。
【0116】
いくつかの実施形態では、癌は、CD73発現癌である。いくつかの実施形態では、癌は、腫瘍微小環境においてアデノシンレベル、例えば、細胞外アデノシンレベルが上昇している癌である。いくつかの実施形態では、癌は、アデノシンのレベルの増加を反映するアデノシン遺伝子発現シグネチャーを有し、これは、例えば、末梢血又は腫瘍試料において測定され得る。そのような遺伝子発現シグネチャーは、Fong et al.2019,Cancer Discov.10:40-53;DiRenzo et al.2019,Abstract 3168,Cancer Res.79:3168、及びSidders et al.Clin.Cancer Res.26,2176-2187(2020)に概説されているものを含む。いくつかの実施形態では、アデノシン遺伝子発現シグネチャーは、CD73及び/又は組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)の発現を評価することを含む。いくつかの実施形態では、アデノシン遺伝子発現シグネチャーは、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)において測定され得る、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL8、IL1β、及びPTGS2のうちの1つ以上の発現を評価することを含む。いくつかの実施形態では、アデノシン遺伝子発現シグネチャーは、PPARG、CYBB、COL3A1、FOXP3、LAG3、APP、CD81、GPI、PTGS2、CASP1、FOS、MAPK1、MAPK3、及びCREB1のうちの1つ以上の発現を評価することを含む。いくつかの実施形態では、アデノシン遺伝子発現シグネチャーは、CD39、CD73、アデノシンA2A受容体及びアデノシンA2B受容体などのアデノシンシグナル伝達経路の1つ以上の酵素の発現を評価することを含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、癌は、アデノシンA2B受容体媒介性シグナル伝達を伴う癌である。
【0118】
様々な実施形態では、本発明の方法は、第一、第二、第三、又はそれ以降の選択処置として使用される。選択処置とは、患者が受けた異なる薬剤又は他の療法による処置の順序における位置を指す。第一選択療法レジメンは、最初に行われる処置であり、第二選択療法又は第三選択療法は、それぞれ、第一選択療法の後又は第二選択療法の後に行われる。したがって、第一選択療法は、疾患又は状態の最初の処置である。癌患者では、一次療法又は一次処置と呼ばれることもある第一選択療法は、外科手術、化学療法、放射線療法、又はこれらの療法の組み合わせであり得る。典型的には、患者は、陽性の臨床転帰を示さなかったか、又は第一又は第二選択療法に対して準臨床応答しか示さなかったか、又は陽性の臨床応答を示したが、後に再発を経験したかのいずれかであり、時には、以前の陽性応答を誘発した以前の処置に対して現在耐性である病気を伴うため、その後の化学療法レジメン(第二又は第三選択療法)を受ける。
【0119】
いくつかの実施形態では、本発明の治療組み合わせは、後の選択処置、特に癌の第二選択又はそれ以上の選択の処置に適用される。対象が少なくとも1ラウンドの以前の癌治療を受けていれば、以前の治療回数に制限はない。以前の癌治療のラウンドは、例えば、1つ以上の化学療法薬、放射線療法、又は化学放射線療法で対象を処置するための定義されたスケジュール/相を指し、対象は、このような以前の処置に失敗し、それは完了したか、又は予定より前に終了した。1つの理由は、癌が以前の治療に対して耐性であったか、又は耐性になったことであり得る。癌患者を処置するための現在の標準治療(SoC)は、毒性の古い化学療法レジメンの投与を伴うことが多い。そのようなSoCは、生活の質に干渉する可能性が高い強い有害事象(続発性癌など)の高いリスクを伴う。一実施形態では、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤の組み合わせ投与は、癌患者においてSoCと同程度に有効であり、SoCよりも忍容性が良好であり得る。PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤の作用機序は異なるため、本発明の治療的処置の投与が免疫関連有害事象(irAE)の増強をもたらし得る可能性は小さいと考えられる。
【0120】
一実施形態では、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤は、前処置された再発性転移性NSCLC、切除不能な局所進行性NSCLC、前処置されたSCLC ED、全身処置に不適切なSCLC、前処置された再発性(再発性)又は転移性SCCHN、再照射に適格な再発性SCCHN、及び前処置されたマイクロサテライト状態不安定低(MSI-L)又はマイクロサテライト状態安定(MSS)転移性結腸直腸癌(mCRC)の群から選択される癌の第二選択又はそれ以降の処置において投与される。SCLC及びSCCHNは、特に全身的に前処置される。MSI-L/MSS mCRCは、全mCRCの85%で起こる。
【0121】
一実施形態では、癌は、マイクロサテライト不安定性(MSI)を示す。マイクロサテライト不安定性(「MSI」)は、マイクロサテライト(DNAの短い反復配列)の反復の数が、それが遺伝したDNAに含まれていた反復の数と異なる、特定の細胞(腫瘍細胞など)のDNAにおける変化であるか、又はそれを含む。マイクロサテライト不安定性は、欠陥DNAミスマッチ修復(MMR)系による複製関連エラーを修復できないことから生じる。この失敗は、ゲノム全体にわたるが、特にマイクロサテライトとして知られる反復DNAの領域におけるミスマッチ突然変異の持続を可能にし、突然変異負荷の増加をもたらす。MSI-Hによって特徴付けられる少なくともいくつかの腫瘍が、特定の抗PD-1剤に対する改善された応答を有することが実証されている(Le et al.(2015)N.Engl.J.Med.372(26):2509/2520;Westdorp et al.(2016)Cancer Immunol.Immunother.65(10):1249-1259)。
【0122】
いくつかの実施形態では、癌は、高マイクロサテライト不安定性のマイクロサテライト不安定性状態(例えば、MSI-H状態)を有する。いくつかの実施形態では、癌は、低マイクロサテライト不安定性のマイクロサテライト不安定性状態(例えば、MSI-L状態)を有する。いくつかの実施形態では、癌は、マイクロサテライト安定性のマイクロサテライト不安定性状態(例えば、MSS状態)を有する。いくつかの実施形態では、マイクロサテライト不安定性状態は、次世代配列判定(NGS)ベースのアッセイ、免疫組織化学(IHC)ベースのアッセイ、及び/又はPCRベースのアッセイによって評価される。いくつかの実施形態では、マイクロサテライト不安定性は、NGSによって検出される。いくつかの実施形態では、マイクロサテライト不安定性は、IHCによって検出される。いくつかの実施形態では、マイクロサテライト不安定性は、PCRによって検出される。
【0123】
いくつかの実施形態では、癌は、高い腫瘍突然変異負荷(TMB)と関連する。いくつかの実施形態では、癌は、高TMB及びMSI-Hと関連する。いくつかの実施形態では、癌は、高TMB及びMSI-L又はMSSと関連する。いくつかの実施形態では、癌は、高TMBに関連する子宮内膜癌である。いくつかの関連する実施形態では、子宮内膜癌は、高TMB及びMSI-Hと関連する。いくつかの関連する実施形態では、子宮内膜癌は、高TMB及びMSI-L又はMSSと関連する。
【0124】
いくつかの実施形態では、癌はミスマッチ修復欠損(dMMR)癌である。マイクロサテライト不安定性は、欠陥DNAミスマッチ修復(MMR)系によって、複製関連エラーを修復できないことから生じ得る。この失敗は、ゲノム全体にわたるが、特にマイクロサテライトとして知られる反復DNAの領域におけるミスマッチ変異の持続を可能にし、特定の治療剤に対する応答を改善し得る変異負荷の増加をもたらす。
【0125】
いくつかの実施形態では、癌は、超突然変異癌である。いくつかの実施形態では、癌は、ポリメラーゼイプシロン(POLE)における変異を有する。いくつかの実施形態では、癌は、ポリメラーゼデルタ(POLD)における変異を有する。
【0126】
いくつかの実施形態では、癌は、子宮内膜癌(例えば、MSI-H又はMSS/MSI-L子宮内膜癌)である。いくつかの実施形態では、癌は、POLE又はPOLDにおける変異を含むMSI-H癌(例えば、POLE又はPOLDにおける変異を含むMSI-H非子宮内膜癌)である。
【0127】
いくつかの実施形態では、癌は、進行癌である。いくつかの他の実施形態では、癌は、転移性癌である。いくつかの実施形態では、癌は、再発性癌(例えば、再発性上皮性卵巣癌、再発性卵管癌、再発性原発性腹膜癌、又は再発性子宮内膜癌などの再発性婦人科癌)である。一実施形態では、癌は、再発性又は進行性である。
【0128】
一実施形態では、癌は、虫垂癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌(特に食道扁平上皮癌)、ファロピウス管癌、胃癌、グリオーマ(例えば、びまん性内在性橋グリオーマ)、頭頸部癌(特に頭頸部扁平上皮癌及び中咽頭癌)、白血病(特に急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病)、肺癌(特に非小細胞肺癌)、リンパ種(特にホジキンリンパ種、非ホジキンリンパ腫)、黒色腫、中皮腫(特に悪性胸膜中皮腫)、メルケル細胞癌、神経芽細胞種、口腔癌、骨肉種、卵巣癌、前立腺癌、腎癌、唾液腺腫瘍、肉腫(特にユーイング肉腫又は横紋筋肉腫)扁平上皮癌、軟部組織肉腫、胸腺腫、甲状腺癌、尿路上皮癌、子宮癌、膣癌、外陰癌、又はウイルムス腫瘍から選択される。更なる実施形態では、癌は、虫垂癌、膀胱癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、食道癌、頭頸部癌、黒色腫、中皮腫、非小細胞肺癌、前立腺癌、及び尿路上皮癌から選択される。更なる実施形態では、癌は、子宮頸癌、子宮内膜癌、頭頸部癌(特に頭頸部扁平上皮癌及び中咽頭癌)、肺癌(特に非小細胞肺癌)、リンパ種(特に非ホジキンリンパ腫)、黒色腫、口腔癌、甲状腺癌、尿路上皮癌、又は子宮癌から選択される。別の実施形態では、癌は、頭頸部癌(特に頭頸部扁平上皮癌及び中咽頭癌)、肺癌(特に非小細胞肺癌)、尿路上皮癌、黒色腫、又は子宮頸部癌から選択される。
【0129】
一実施形態では、ヒトは、固形腫瘍を有する。一実施形態では、固形腫瘍は、進行固形腫瘍である。一実施形態では、癌は、頭頸部癌、頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN又はHNSCC)、胃癌、黒色腫、腎細胞癌(RCC)、食道癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、及び膵臓癌から選択される。一実施形態では、癌は、結腸直腸癌、子宮頸癌、膀胱癌、尿路上皮癌、頭頸部癌、黒色腫、中皮腫、非小細胞肺癌、前立腺癌、食道癌、及び食道扁平上皮細胞癌からなる群から選択される。一態様では、ヒトは、以下の1つ以上:SCCHN、結腸直腸癌、食道癌、子宮頸癌、膀胱癌、乳癌、頭頸部癌、卵巣癌、黒色腫、腎細胞癌(RCC)、食道扁平上皮癌、非小細胞肺癌、中皮腫(例えば、胸膜悪性中皮腫)、及び前立腺癌を有する。
【0130】
別の態様では、ヒトは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、多発性骨髄腫、慢性リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、急性骨髄性白血病、及び慢性骨髄性白血病などの液性腫瘍を有する。
【0131】
一実施形態では、癌は、頭頸部癌である。一実施形態では、癌は、HNSCCである。扁平上皮癌は、扁平上皮細胞と呼ばれる特定の細胞から生じる癌である。扁平上皮細胞は、皮膚の外層、並びに気道及び腸などの体腔の内側を覆う湿潤組織である粘膜に見出される。頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)は、口、鼻、及び喉の粘膜において発症する。HNSCCは、SCCHN及び頭頸部の扁平上皮癌としても知られている。
【0132】
HNSCCは、口(口腔)、口の近くの咽喉の中間部分(中咽頭)、鼻の後ろの空間(鼻腔及び副鼻腔)、鼻腔の近くの咽喉の上部(鼻咽頭)、ボイスボックス(喉頭)、又は喉頭の近くの咽喉の下部(下咽頭)で起こり得る。場所に依存して、癌は、口及び咽喉における異常な斑点若しくは開放創(潰瘍)、口における異常な出血若しくは疼痛、除去されない洞鬱血、咽喉炎、耳痛、嚥下痛若しくは嚥下困難、声嗄れ、呼吸困難、又はリンパ節の拡大を引き起こし得る。
【0133】
HNSCCは、リンパ節、肺、又は肝臓などの身体の他の部分に転移し得る。
【0134】
タバコの使用及びアルコールの消費は、HNSCCの発症の2つの最も重要な危険因子であり、それらのリスクへの寄与は相乗的である。更に、ヒトパピローマウイルス(HPV)、特にHPV-16は、現在、十分に確立された独立した危険因子である。HNSCC患者は、比較的予後不良である。再発性/転移性(R/M)HNSCCは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の状態にかかわらず特に困難であり、現在、当該技術分野において利用可能な有効な処置選択肢はほとんどない。HPV陰性HNSCCは、HPV陽性HNSCCのそれぞれ9~18%及び5~12%の割合と比較して、標準治療後の19~35%の局所領域再発率及び14~22%の遠隔転移率と関連する。R/M疾患を有する患者についての全生存期間中央値は、第一選択化学療法の設定において10~13ヶ月であり、第二選択設定において6ヶ月である。現在の標準治療は、セツキシマブを伴うか、又は伴わない白金ベースの併用化学療法である。第二選択の標準治療選択肢としては、セツキシマブ、メトトレキサート、及びタキサンが挙げられる。これらの化学療法剤は全て、有意な副作用を伴い、患者の10~13%のみが処置に応答する。既存の全身療法からのHNSCC退縮は一過性であり、有意に寿命を延長させず、実質的に全ての患者がその悪性腫瘍で死亡する。
【0135】
一実施形態では、癌は、頭頸部癌である。一実施形態では、癌は、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)である。一実施形態では、癌は、再発性/転移性(R/M)HNSCCである。一実施形態では、癌は、再発性/難治性(R/R)HNSCCである。一実施形態では、癌は、HPV陰性又はHPV陽性HNSCCである。一実施形態では、癌は、局所進行HNSCCである。一実施形態では、癌は、≧1%のCPS又は≧50%のTPSを有するPD-L1陽性患者における(R/M)HNSCCなどのHNSCCである。CPS又はTPSは、Dako IHC 22C3 PharmDxアッセイなどのFDA又はEMA承認試験によって判定される。一実施形態では、癌は、PD-1阻害剤経験患者又はPD-1阻害剤未経験患者におけるHNSCCである。一実施形態では、癌は、PD-1阻害剤経験患者又はPD-1阻害剤未経験患者におけるHNSCCである。
【0136】
一実施形態では、頭頸部癌は、中咽頭癌である。一実施形態では、頭頸部癌は、口腔(oral)癌(すなわち、口(mouth)癌)である。
【0137】
一実施形態では、癌は、肺癌である。いくつかの実施形態では、肺癌は、肺の扁平上皮癌である。いくつかの実施形態では、肺癌は、小細胞肺癌(SCLC)である。いくつかの実施形態では、肺癌は、扁平上皮NSCLCなどの非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、肺癌は、ALK転座肺癌(例えば、ALK転座NSCLC)である。いくつかの実施形態では、癌は、同定されたALK転座を有するNSCLCである。いくつかの実施形態では、肺癌細胞は、EGFR変異肺癌細胞(例えば、EGFR変異NSCLC)である。いくつかの実施形態では、癌は、同定されたEGFR突然変異を有するNSCLCである。一実施形態では、癌は、TPS≧1%又はTPS≧50%のPD-L1陽性患者におけるNSCLCである。TPSは、Dako IHC 22C3 PharmDxアッセイ又はVENTANA PD-L1(SP263)アッセイなどのFDA又はEMA承認試験によって判定される。
【0138】
一実施形態では、癌は、黒色腫である。いくつかの実施形態では、黒色腫は、進行性黒色腫である。いくつかの他の実施形態では、黒色腫は、転移性黒色腫である。いくつかの実施形態では、黒色腫は、MSI-H黒色腫である。いくつかの実施形態では、黒色腫は、MSS黒色腫である。いくつかの実施形態では、黒色腫は、POLE変異黒色腫である。いくつかの実施形態では、黒色腫は、POLD変異黒色腫である。いくつかの実施形態では、黒色腫は、高TMB黒色腫である。
【0139】
一実施形態では、癌は、結腸直腸癌である。いくつかの実施形態では、結腸直腸癌は、進行結腸直腸癌である。いくつかの実施形態では、結腸直腸癌は、転移性小児癌である。いくつかの実施形態では、結腸直腸癌は、MSI-H結腸直腸癌である。いくつかの実施形態では、結腸直腸癌は、MSS結腸直腸癌である。いくつかの実施形態では、結腸直腸癌は、POLE変異結腸直腸癌である。いくつかの実施形態では、結腸直腸癌は、POLD変異結腸直腸癌である。いくつかの実施形態では、結腸直腸癌は、高TMB結腸直腸癌である。
【0140】
いくつかの実施形態では、癌は、婦人科癌(すなわち、卵巣癌、卵管癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、子宮癌、若しくは原発性腹膜癌、又は乳癌などの女性生殖器系の癌)である。いくつかの実施形態では、女性生殖器系の癌としては、卵巣癌、卵管癌、腹膜癌、及び乳癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
いくつかの実施形態では、癌は、卵巣癌(例えば、漿液性又は明細胞卵巣癌)である。いくつかの実施形態では、癌は、卵管癌(例えば、漿液性又は明細胞卵管癌)である。いくつかの実施形態では、癌は、原発性腹膜癌(例えば、漿液性又は明細胞原発性腹膜癌)である。
【0142】
いくつかの実施形態では、卵巣癌は、卵巣上皮癌である。卵巣上皮癌癌は、卵巣癌の85%~90%を占める。歴史的には卵巣の表面で始まると考えられてきたが、新しい証拠は、少なくともいくつかの卵巣癌が卵管の一部の特殊な細胞で始まることを示唆している。卵管は、女性の卵巣を女性の生殖器系の一部である子宮に連結する小さな管である。正常な女性生殖系では、子宮の各側に1つずつ、2つの卵管がある。卵管内で始まる癌細胞は、早期に卵巣の表面に行く可能性がある。「卵巣癌」という用語は、しばしば、卵巣、卵管、及び腹膜と呼ばれる腹腔の内層から始まる上皮癌を記載するために使用される。いくつかの実施形態では、癌は胚細胞性腫瘍であるか、又はそれを含む。胚細胞腫瘍は、卵巣の卵産生細胞において発生する卵巣癌の一種である。いくつかの実施形態では、癌は、間質腫瘍であるか、又はそれを含む。間質腫瘍は、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンを作る組織であることもある、卵巣を一緒に保持する結合組織細胞において発生する。いくつかの実施形態では、癌は、顆粒膜細胞腫瘍である、又はそれを含む。顆粒膜細胞腫はエストロゲンを分泌し、診断時に異常な膣出血をもたらす場合がある。いくつかの実施形態では、婦人科癌は、相同組換え修復欠損/相同修復欠損(HRD)及び/又はBRCA1/2変異(複数可)に関連する。いくつかの実施形態では、婦人科癌は、白金感受性である。いくつかの実施形態では、婦人科癌は、白金ベースの治療に応答している。いくつかの実施形態では、婦人科癌は、白金ベースの治療に対する耐性を進展させている。いくつかの実施形態では、婦人科癌は、ある時点で、白金ベースの治療に対する部分的又は完全な応答(例えば、最後の白金ベースの治療又は最後から2番目の白金ベースの治療に対する部分的又は完全な応答)を示している。いくつかの実施形態では、婦人科癌は、現在、白金ベースの治療に対して耐性がある。
【0143】
特定の実施形態では、癌は、乳癌である。通常、乳癌は、小葉として知られる乳汁産生腺の細胞又は管のいずれかで始まる。あまり一般的ではないが、乳癌は、間質組織において始まり得る。これらには、乳房の脂肪及び線維性結合組織が含まれる。経時的に、乳癌細胞は、転移として知られるプロセスにおいて、腋窩リンパ節又は肺などの近くの組織に浸潤する可能性がある。乳癌の病期、腫瘍の大きさ、及びその増殖速度は全て、提供される処置のタイプを判定する因子である。処置の選択肢には、腫瘍を除去する手術、化学療法及びホルモン療法を含む薬物処置、放射線療法、及び免疫療法が含まれる。予後及び生存率は大きく変動し、5年相対生存率は、発生する乳癌のタイプに応じて98%から23%まで変化する。乳癌は、世界で2番目に多い癌であり、2012年に約170万件の新たな症例があり、癌による5番目に多い死因であり、約521,000人が死亡している。これらの症例のうち、約15%がトリプルネガティブであり、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体(PR)、又はHER2を発現しない。いくつかの実施形態では、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)は、エストロゲン受容体発現陰性(細胞の<1%)、プロゲステロン受容体発現陰性(細胞の<1%)、及びHER2陰性である乳癌細胞として特徴付けられる。一実施形態では、癌は、≧1%のPD-L1発現腫瘍浸潤免疫細胞(IC)を有するPD-L1陽性患者におけるTNBCである。ICは、Ventana PD-L1(SP142)アッセイなどのFDA又はEMA承認試験によって判定される。
【0144】
いくつかの実施形態では、癌は、エストロゲン受容体(ER)陽性乳癌、ER陰性乳癌、PR陽性乳癌、PR陰性乳癌、HER2陽性乳癌、HER2陰性乳癌、BRCA1/2陽性乳癌、BRCA1/2陰性癌、又はTNBCである。いくつかの実施形態では、乳癌は、転移性乳癌である。いくつかの実施形態では、乳癌は、進行乳癌である。いくつかの実施形態では、癌は、ステージII、ステージIII、又はステージIVの乳癌である。いくつかの実施形態では、癌は、ステージIVの乳癌である。いくつかの実施形態では、乳癌は、トリプルネガティブ乳癌である。
【0145】
一実施形態では、癌は、子宮内膜癌である。子宮内膜癌は、女性の生殖管の最も一般的な癌であり、年に100000人当たり10~20人を占める。子宮内膜癌(EC)の新たな症例の年間数は、世界中で約32万5000人と推定される。更に、ECは、閉経後の女性において最も一般的に発生する癌である。子宮内膜癌症例の約53%は、先進国で発生する。2015年には、米国において約55000症例のECが診断され、標的療法は現在、ECにおける使用について承認されていない。1L及び2Lの状況において進行性及び再発性ECの生存率を改善する薬剤及びレジメンが必要とされている。2016年の米国では、約10170人がECで死亡すると予測されている。最も一般的な組織学的形態は類内膜腺癌であり、診断された症例の約75~80%に相当する。他の組織学的形態としては、子宮乳頭漿液性(10%未満)、明細胞4%、粘液性1%、扁平上皮1%未満、及び混合約10%が挙げられる。
【0146】
病原性の観点から、ECは2つの異なる型、いわゆるI型及びII型に分類される。I型腫瘍は、低グレードのエストロゲン関連類内膜癌(EEC)であり、II型は、非類内膜癌(NEEC)(主に漿液性及び明細胞)である。世界保健機関は、ECの病理学的分類を更新し、ECの9つの異なるサブタイプを認識したが、EEC及び漿液性癌(SC)が症例の大部分を占める。EECは、閉経周辺期の患者に生じ、前駆病変(子宮内膜増殖症/類内膜上皮内腫瘍)が先行するエストロゲン関連の癌である。顕微鏡的に、低グレードEEC(EEC1~2)は、腺及び篩状パターンの融合を伴う構造的複雑性を有する、増殖性子宮内膜にいくらか類似する管状腺を含有する。高グレードEECは、堅調な成長パターンを示す。対照的に、SCは、高エストロゲン症の非存在下で閉経後患者において生じる。顕微鏡では、SCは、腫瘍細胞の顕著な層化、細胞出芽、及び大きな好酸球性細胞質を有する未分化細胞を有する、厚い線維性又は浮腫性の乳頭を示す。EECの大部分は、低グレード腫瘍(グレード1及び2)であり、それらが子宮に限定される場合、良好な予後と関連する。グレード3のEEC(EEC3)は、リンパ節転移の頻度が増加した侵襲性腫瘍である。SCは非常に侵襲性であり、エストロゲン刺激とは無関係であり、主に年配の女性に生じる。EEC3及びSCは、高グレード腫瘍と考えられる。SC及びEEC3は、1988年~2001年の監視疫学遠隔成績(SEER)プログラムデータを使用して比較されている。それらは、それぞれECの10%及び15%を示したが、それぞれ癌死亡の39%及び27%を占めた。子宮内膜癌はまた、以下の4つの分子サブグループに分類することができる:(1)超変異(ultramutated)/POLE-変異体、(2)超突然変異(hypermutated)MSI+(例えば、MSI-H又はMSI-L)、(3)低コピー数/マイクロサテライト安定(MSS)、及び(4)高コピー数/漿液様。症例の約28%が、MSI高である。(Murali,Lancet Oncol.(2014)。いくつかの実施形態では、患者は、2L子宮内膜癌のミスマッチ修復欠損サブセットを有する。いくつかの実施形態では、子宮内膜癌は、転移性子宮内膜癌である。いくつかの実施形態では、患者は、MSS子宮内膜癌を有する。いくつかの実施形態では、患者は、MSI-H子宮内膜癌を有する。
【0147】
一実施形態では、癌は、子宮頸癌である。いくつかの実施形態では、子宮頸癌は、進行子宮頸癌である。いくつかの実施形態では、子宮頸癌は、転移性子宮頸癌である。いくつかの実施形態では、子宮頸癌は、MSI-H子宮頸癌である。いくつかの実施形態では、子宮頸癌は、MSS子宮頸癌である。いくつかの実施形態では、子宮頸癌は、POLE変異子宮頸癌である。いくつかの実施形態では、子宮頸癌は、POLD変異子宮頸癌である。いくつかの実施形態では、子宮頸癌は、高TMB子宮頸癌である。一実施形態では、CPS≧1%のPD-L1陽性患者における子宮頸癌である。CPSは、Dako IHC 22C3 PharmDxアッセイなどのFDA又はEMA承認試験によって判定される。
【0148】
一実施形態では、癌は、子宮癌である。いくつかの実施形態では、子宮癌は、進行子宮癌である。いくつかの実施形態では、子宮癌は、転移性子宮癌である。いくつかの実施形態では、子宮癌は、MSI-H子宮癌である。いくつかの実施形態では、子宮癌は、MSS子宮癌である。いくつかの実施形態では、子宮癌は、POLE変異子宮癌である。いくつかの実施形態では、子宮癌は、POLD変異子宮癌である。いくつかの実施形態では、子宮癌は、高TMB子宮癌である。
【0149】
一実施形態では、癌は、尿路上皮癌である。いくつかの実施形態では、尿路上皮癌は、進行尿路上皮癌である。いくつかの実施形態では、尿路上皮癌は、転移性尿路上皮癌である。いくつかの実施形態では、尿路上皮癌は、MSI-H尿路上皮癌である。いくつかの実施形態では、尿路上皮癌は、MSS尿路上皮癌である。いくつかの実施形態では、尿路上皮癌は、POLE変異尿路上皮癌である。いくつかの実施形態では、尿路上皮癌は、POLD変異尿路上皮癌である。いくつかの実施形態では、尿路上皮癌は、高TMB尿路上皮癌である。一実施形態では、癌は、CPS≧10%のPD-L1陽性患者における尿路上皮癌である。CPSは、Dako IHC 22C3 PharmDxアッセイなどのFDA又はEMA承認試験によって判定される。一実施形態では、癌は、≧5%のPD-L1発現腫瘍浸潤免疫細胞(IC)を有するPD-L1陽性患者における尿路上皮癌である。ICは、Ventana PD-L1(SP142)アッセイなどのFDA又はEMA承認試験によって判定される。
【0150】
一実施形態では、癌は、甲状腺癌である。いくつかの実施形態では、甲状腺癌は、進行甲状腺癌である。いくつかの実施形態では、甲状腺癌は、転移性甲状腺癌である。いくつかの実施形態では、甲状腺癌は、MSI-H甲状腺癌である。いくつかの実施形態では、甲状腺癌は、MSS甲状腺癌である。いくつかの実施形態では、甲状腺癌は、POLE変異甲状腺癌である。いくつかの実施形態では、甲状腺癌は、POLD変異甲状腺癌である。いくつかの実施形態では、甲状腺癌は、高TMB甲状腺癌である。
【0151】
腫瘍は、造血器(又は血液系(hematologic)若しくは血液学的(hematological)又は血液関連)癌、例えば、血液細胞又は免疫細胞に由来する癌であってもよく、これは「液性腫瘍」と称され得る。血液腫瘍に基づく臨床病状の具体例としては、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、及び急性リンパ性白血病などの白血病;多発性骨髄腫、未確認(又は未知若しくは不明)の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症などのプラズマ細胞性悪性腫瘍;非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫などのリンパ腫などが挙げられる。
【0152】
一実施形態では、癌は、胃癌(GC)又は胃食道接合部癌(GEJ)である。一実施形態では、癌は、CPS≧1%のPD-L1陽性患者におけるGC又はGEJである。CPSは、Dako IHC 22C3 PharmDxアッセイなどのFDA又はEMA承認試験によって判定される。
【0153】
一実施形態では、癌は、食道扁平上皮癌(ESCC)である。一実施形態では、癌は、CPS≧10%のPD-L1陽性患者におけるESCCである。CPSは、Dako IHC 22C3 PharmDxアッセイなどのFDA又はEMA承認試験によって判定される。
【0154】
癌は、異常な数の芽細胞又は望ましくない細胞増殖が存在するか、又はリンパ系及び骨髄性悪性腫瘍の両方を含む血液癌として診断される任意の癌であり得る。骨髄性悪性腫瘍としては、急性骨髄性(又は骨髄球性若しくは骨髄性若しくは骨髄芽球性)白血病(未分化若しくは分化)、急性前骨髄性(又は前骨髄球性若しくは前骨髄性若しくは前骨髄芽球性)白血病、急性骨髄単球性(又は骨髄単芽球性)白血病、急性単球性(又は単芽球性)白血病、赤白血病及び巨核球性(又は巨核芽球性)白血病が挙げられるが、これらに限定されない。これらの白血病は、急性骨髄性(又は骨髄球性若しくは骨髄性)白血病と総称され得る。骨髄性悪性腫瘍はまた、限定されないが、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、本態性血小板血症(又は血小板増加症)、及び真性多血症(PCV)を含む骨髄増殖性障害(MPD)を含む。骨髄性悪性腫瘍はまた、骨髄異形成(又は脊髄形成異常症候群若しくはMDS)を含み、これは、難治性貧血(RA)、芽細胞過剰性難治性貧(RAEB)、及び変異芽細胞過剰性難治性貧血(RAEBT)、並びに原因不明の骨髄化生を伴う又は伴わない骨髄線維症(MFS)も含み得る。
【0155】
一実施形態では、癌は非ホジキンリンパ腫である。造血器癌はまた、リンパ系悪性腫瘍を含み、これはリンパ節、脾臓、骨髄、抹消血、及び/又は結節外部位に影響を及ぼし得る。リンパ系癌には、B細胞悪性腫瘍が含まれ、これにはB細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)が含まれるが、これに限定されない。B-NHLは、無痛性(又は低グレード)、中グレード(又は高悪性度)又は高グレード(非常に高悪性度)であり得る。無痛性B細胞リンパ腫は、濾胞性リンパ腫(FL);小リンパ球性リンパ腫(SLL);節性MZL、結節外MZL、脾臓MZL、及び絨毛リンパ球を有する脾臓MZLを含む辺縁帯リンパ種(MZL);リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL);及び粘膜関連リンパ組織(MALT又は結節外辺縁帯)リンパ種を含む。中グレードB-NHLには、白血病の関与を伴う又は伴わないマントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性大細胞(又はグレード3若しくはグレード3B)リンパ腫、及び原発性縦隔リンパ腫(PML)が含まれる。高グレードB-NHLには、バーキットリンパ腫(BL)、バーキット様リンパ腫、小非切断型細胞リンパ腫(SNCCL)、及びリンパ芽球性リンパ腫が含まれる。他のB-NHLとしては、免疫芽球性リンパ腫(又は免疫細胞腫)、原発性滲出リンパ腫、HIV関連(又はAIDS関連)リンパ腫、及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)又はリンパ腫が挙げられる。B細胞悪性腫瘍にはまた、慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(WM)、ヘアリーセル白血病(HCL)、大顆粒リンパ球(LGL)白血病、急性リンパ性白血病(又はリンパ性若しくはリンパ芽球性)白血病、及びキャッスルマン病が含まれるが、これらに限定されない。NHLはまた、T細胞性非ホジキンリンパ腫(T-NHL)を含んでもよく、T細胞性非ホジキンリンパ腫(T-NHL)としては、限定されないが、他に特定されないT細胞性非ホジキンリンパ腫(NOS)、末梢T細胞性リンパ腫(PTCL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、血管免疫芽球性リンパ系障害(AILD)、鼻ナチュラルキラー(NK)細胞性/T細胞性リンパ腫、γ/δ型リンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、菌状息肉症、及びセザリー症候群が挙げられる。
【0156】
造血器癌はまた、古典的ホジキンリンパ腫、結節性硬化性ホジキンリンパ腫、混合細胞性ホジキンリンパ腫、リンパ球優位型(LP)ホジキンリンパ腫、結節性LPホジキンリンパ腫、及びリンパ球枯渇型ホジキンリンパ腫を含むホジキンリンパ腫(又は疾患)を含む。造血器癌はまた、形質細胞性疾患又は癌、例えば、くすぶり型MMを含む多発性ミエローマ(MM)、意義不明(又は未知若しくは不明)の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)、形質細胞腫(骨、髄外)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、形質細胞白血病、及び原発性アミロイドーシス(AL)を含む。造血器癌はまた、多形核白血球(又は好中球)、好塩基球、好酸球、樹状細胞、血小板、赤血球、及びナチュラルキラー細胞を含む更なる造血細胞の他の癌を含み得る。本明細書中で「造血細胞組織」と呼ばれる造血細胞を含む組織は、骨髄;末梢血;胸腺;及び末梢リンパ系組織、例えば、脾臓、リンパ節、粘膜に関連するリンパ系組織(例えば、腸管関連リンパ系組織)、扁桃腺、パイエル板及び虫垂、並びに他の粘膜に関連するリンパ系組織、例えば、気管支内層を含む。
【0157】
一実施形態では、処置は、HNSCCの第一選択処置又は第二選択処置である。一実施形態では、処置は、再発性/転移性HNSCCの第一選択又は第二選択処置である。一実施形態では、処置は、再発性/転移性(1LR/M)HNSCCの第一選択処置である。一実施形態では、処置は、PD-L1陽性である1LR/M HNSCCの第一選択処置である。一実施形態では、処置は、再発性/転移性(2LR/M)HNSCCの第二選択処置である。
【0158】
一実施形態では、処置は、PD-1/PD-L1未経験HNSCCの第一選択、第二選択、第三選択、第四選択、又は第五選択処置である。一実施形態では、処置は、PD-1/PD-L1経験HNSCCの第一選択、第二選択、第三選択、第四選択、又は第五選択処置である。
【0159】
いくつかの実施形態では、癌の処置は、癌の第一選択処置である。一実施形態では、癌の処置は、癌の第二選択処置である。いくつかの実施形態では、処置は、癌の第三選択処置である。いくつかの実施形態では、処置は、癌の第四選択処置である。いくつかの実施形態では、処置は、癌の第五選択処置である。いくつかの実施形態では、癌の第二選択、第三選択、第四選択、又は第五選択処置に対する前処置は、放射線療法、化学療法、外科手術、又は放射線化学療法のうちの1つ以上を含む。
【0160】
一実施形態では、前処置は、パクリタキセル、nab-パクリタキセル又はドセタキセルなどのジテルペノイド;ビンブラスチン、ビンクリスチン、又はビノレルビンなどのビンカアルカロイド;シスプラチン又はカルボプラチンなどの白金配位錯体;シクロホスファミド、メルファラン、又はクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード;ブスルファンなどのアルキルスルホネート;カルムスチンなどのニトロソウレア;ダカルバジンなどのトリアゼン;ダクチノマイシンなどのアクチノマイシン;ダウノルビシン又はドキソルビシンなどのアントラサイクリン;ブレオマイシン;エトポシド又はテニポシドなどのエピポドフィロトキシン;フルオロウラシル、メトトレキサート、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、又はゲムシタビンなどの代謝拮抗性抗新生物薬;メトトレキサート;イリノテカン又はトポテカンなどのカンプトテシン;リツキシマブ;オファツムマブ;トラスツズマブセツキシマブベキサロテン;ソラフェニブ;ラパチニブ、エルロチニブ、又はゲフィチニブなどのerbB阻害剤;ペルツズマブ;イピリムマブ;ニボルマブ;FOLFOX;カペシタビン;FOLFIRI;ベバシズマブ;アテゾリズマブ;セレクレルマブ;オビノツズマブ、又はそれらの任意の組み合わせによる処置を含む。一実施形態では、癌の第二選択処置、第三選択処置、第四選択処置、又は第五選択処置の前処置は、イピリムマブ及びニボルマブを含む。一実施形態では、癌の第二選択処置、第三選択、第四選択又は第五選択処置の前処置は、FOLFOX、カペシタビン、FOLFIRI/ベバシズマブ、及びアテゾリズマブ/セレクレルマブを含む。一実施形態では、癌の第二選択処置、第三選択処置、第四選択処置、又は第五選択処置の前処置は、カルボプラチン/Nab-パクリタキセルを含む。一実施形態では、癌の第二選択処置、第三選択、第四選択、又は第五選択処置の前処置は、ニボルマブ及び電気化学療法を含む。一実施形態では、癌の第二選択処置、第三選択、第四選択、又は第五選択処置の前処置は、放射線療法、シスプラチン、及びカルボプラチン/パクリタキセルを含む。
【0161】
一実施形態では、処置は、頭頸部癌(特に頭頸部扁平上皮癌及び中咽頭癌)の第一選択又は第二選択処置である。一実施形態では、処置は、再発性/転移性HNSCCの第一選択又は第二選択処置である。一実施形態では、処置は、再発性/転移性(1LR/M)HNSCCの第一選択処置である。一実施形態では、処置は、PD-L1陽性である1LR/M HNSCCの第一選択処置である。一実施形態では、処置は、再発性/転移性(2LR/M)HNSCCの第二選択処置である。
【0162】
一実施形態では、処置は、PD-1/PD-L1未経験HNSCCの第一選択、第二選択、第三選択、第四選択、又は第五選択処置である。一実施形態では、処置は、HNSCC経験PD-1/PD-L1の第一選択、第二選択、第三選択、第四選択、又は第五選択処置である。
【0163】
いくつかの実施形態では、処置は、処置前のレベル(例えば、ベースラインレベル)と比較して、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、及びNK細胞を含む腫瘍浸潤リンパ球の増加、T細胞の増加、グランザイムB+細胞の増加、増殖性腫瘍細胞の減少、並びに活性化T細胞の増加のうちの1つ以上をもたらす。活性化T細胞は、より大きなOX40及びヒト白血球抗原DR発現によって観察され得る。いくつかの実施形態では、処置は、処置前のレベル(例えば、ベースラインレベル)と比較して、PD-1及び/又はPD-L1の上方制御をもたらす。
【0164】
一実施形態では、本発明の方法は、少なくとも1つの新生物薬又は癌アジュバントを当該ヒトに投与することを更に含む。本発明の方法はまた、癌処置の他の治療方法と共に使用され得る。
【0165】
典型的には、処置される感受性腫瘍などの腫瘍に対して活性を有する任意の抗新生物薬又は癌アジュバントを、本発明における癌の処置において同時投与することができる。このような薬剤の例は、Cancer Principles and Practice of Oncology by V.T.Devita,T.S.Lawrence、及びS.A.Rosenberg(editors),10th edition(December 5,2014),Lippincott Williams&Wilkins Publishers.に見出すことができる。
【0166】
一実施形態では、ヒトは、1つ以上の異なる癌処置モダリティで以前に処置されている。いくつかの実施形態では、癌患者集団における患者の少なくとも一部は、手術、放射線療法、化学療法、又は免疫療法などの1つ以上の療法で以前に処置されている。いくつかの実施形態では、癌患者集団における患者の少なくとも一部は、化学療法(例えば、白金ベースの化学療法)で以前に処置されている。例えば、2つの癌選択処置を受けた患者は、2L癌患者(例えば、2LNSCLC患者)として特定することができる。いくつかの実施形態では、患者は、2つ以上の癌選択処置を受けている(例えば、2L+子宮内膜癌患者などの2L+癌患者)。いくつかの実施形態では、患者は、抗PD-1療法などの抗体療法で以前に処置されていない。いくつかの実施形態では、患者は、少なくとも1つの癌選択処置を以前に受けている(例えば、患者は、少なくとも1つの又は少なくとも2つの癌選択処置を以前に受けている)。いくつかの実施形態では、患者は、転移性癌のための少なくとも1つの選択処置を以前に受けている(例えば、患者は、転移性癌のための1つ又は2つの選択処置を以前に受けている)。いくつかの実施形態では、対象は、PD-1阻害剤による処置に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、対象は、PD-1阻害剤による処置に対して不応性である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、対象をPD-1阻害剤による処置に対して感作させる。
【0167】
特定の実施形態では、処置される癌は、PD-L1陽性である。例えば、特定の実施形態では、処置される癌は、PD-L1+発現(例えば、高いPD-L1発現)を示す。例えば、癌又は腫瘍上のPD-L1又はCD73などのバイオマーカーを検出する方法は、当技術分野において通常の手順であり、本明細書において企図される。非限定的な例としては、免疫組織化学、免疫蛍光、及び蛍光活性化細胞選別(FACS)が挙げられる。いくつかの実施形態では、PD-L1高癌を有する対象又は患者は、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質を約1200mgの用量でQ2Wで静脈内投与することによって処置される。いくつかの実施形態では、PD-L1高癌を有する対象又は患者は、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質を約1800mgの用量でQ3Wで静脈内投与することによって処置される。いくつかの実施形態では、PD-L1高癌を有する対象又は患者は、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質を約2100mgの用量でQ3Wで静脈内投与することによって処置される。いくつかの実施形態では、PD-L1高癌を有する対象又は患者は、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質を約2400mgの用量でQ3Wで静脈内投与することによって処置される。いくつかの実施形態では、PD-L1高癌を有する対象又は患者は、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質を約15mg/kgの用量でQ3Wで静脈内投与することによって処置される。
【0168】
特定の実施形態では、処置される癌は、CD73陽性である。例えば、特定の実施形態では、癌は、CD73+発現(例えば、高いCD73発現)を示す。
【0169】
特定の実施形態では、処置される癌は、腫瘍微小環境において上昇したアデノシンレベルを有する。
【0170】
特定の実施形態では、投薬レジメンは、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものを、約0.01~3000mgの用量(例えば、約0.01mgの用量、約0.08mgの用量、約0.1mgの用量、約0.24mgの用量、約0.8mgの用量、約1mgの用量、約2.4mgの用量、約8mgの用量、約10mgの用量、約20mgの用量、約24mgの用量、約30mgの用量、約40mgの用量、約48mgの用量、約50mgの用量、約60mgの用量、約70mgの用量、約80mgの用量、約90mgの用量、約100mgの用量、約160mgの用量、約200mgの用量、約240mgの用量、約300mgの用量、約400mgの用量、約500mgの用量、約600mgの用量、約700mgの用量、約800mgの用量、約900mgの用量、約1000mgの用量、約1100mgの用量、約1200mgの用量、約1300mgの用量、約1400mgの用量、約1500mgの用量、約1600mgの用量、約1700mgの用量、約1800mgの用量、約1900mgの用量、約2000mgの用量、約2100mgの用量、約2200mgの用量、約2300mgの用量、約2400mgの用量、約2500mgの用量、約2600mgの用量、約2700mgの用量、約2800mgの用量、約2900mgの用量、又は約3000mgの用量)で投与することを含む。いくつかの実施形態では、用量は約500mgの用量である。いくつかの実施形態では、用量は約1200mgである。いくつかの実施形態では、用量は約2400mgである。いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものの用量は、約0.001~100mg/kg(例えば、約0.001mg/kgの用量、約0.003mg/kgの用量、約0.01mg/kgの用量、約0.03mg/kgの用量、約0.1mg/kgの用量、約0.3mg/kgの用量、約1mg/kgの用量、約2mg/kgの用量、約3mg/kgの用量、約10mg/kgの用量、約15mg/kgの用量、又は約30mg/kgの用量)である。
【0171】
本明細書に開示される全ての固定用量は、80kgの基準体重に基づく体重投与量に匹敵すると考えられる。したがって、2400mgの固定用量に言及する場合、30mg/kgの体重用量も同様に開示される。
【0172】
いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質の軽鎖及び重鎖配列は、それぞれ、配列番号15及び配列番号17又は配列番号15及び配列番号18に対応し、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質の用量は、30mg/kgである。
【0173】
一実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものは、2~6週間(例えば2、3、又は4週間、特に3週間)に1回投与される。一実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものは、2週間に1回(「Q2W」)投与される。一実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものは、3週間に1回(「Q3W」)投与される。一実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えばビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものは、6週間に1回(「Q6W」)投与される。一実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えばビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものが、2~6投与サイクル(例えば、最初の3、4又は5投与サイクル、特に最初の4投与サイクル)で、Q3Wで投与される。
【0174】
いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質軽鎖配列及び重鎖配列は、それぞれ、配列番号15及び配列番号17又は配列番号15及び配列番号18に対応し、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質は、Q3Wで投与される。
【0175】
特定の実施形態では、約1200mgの抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものは、対象にQ2Wで投与される。特定の実施形態では、約2400mgの抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものは、対象にQ3Wで投与される。
【0176】
いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質軽鎖配列及び重鎖配列は、それぞれ、配列番号15及び配列番号17又は配列番号15及び配列番号18に対応し、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質は、30mg/kgの用量でQ3Wで投与される。
【0177】
いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、アデノシン阻害剤を約0.01~5000mgの用量(例えば、約0.01mgの用量、約0.08mgの用量、約0.1mgの用量、約0.24mgの用量、約0.8mgの用量、約1mgの用量、約2.4mgの用量、約8mgの用量、約10mgの用量、約20mgの用量、約24mgの用量、約30mgの用量、約40mgの用量、約48mgの用量、約50mgの用量、約60mgの用量、約70mgの用量、約80mgの用量、約90mgの用量、約100mgの用量、約160mgの用量、約200mgの用量、約240mgの用量、約300mgの用量、約400mgの用量、約500mgの用量、約600mgの用量、約700mgの用量、約800mgの用量、約900mgの用量、約1000mgの用量、約1100mgの用量、約1200mgの用量、約1300mgの用量、約1400mgの用量、約1500mgの用量、約1600mgの用量、約1700mgの用量、約1800mgの用量、約1900mgの用量、約2000mgの用量、約2100mgの用量、約2200mgの用量、約2300mgの用量、約2400mgの用量、約2500mgの用量、約2600mgの用量、約2700mgの用量、約2800mgの用量、約2900mgの用量、約3000mgの用量、約3100mgの用量、約3200mgの用量、約3300mgの用量、約3400mgの用量、約3500mgの用量、約3600mgの用量、約3700mgの用量、約3800mgの用量、約3900mgの用量、約4000mgの用量、約4100mgの用量、約4200mgの用量、約4300mgの用量、約4400mgの用量、約4500mgの用量、約4600mgの用量、約4700mgの用量、約4800mgの用量、約4900mgの用量、又は約5000mgの用量)で投与することを含む。いくつかの実施形態では、アデノシン阻害剤の用量は、約0.001~250mg/kg(例えば、約0.001mg/kgの用量、約0.003mg/kgの用量、約0.01mg/kgの用量、約0.03mg/kgの用量、約0.1mg/kgの用量、約0.3mg/kgの用量、約1mg/kgの用量、約2mg/kgの用量、約3mg/kgの用量、約10mg/kgの用量、約15mg/kgの用量、約30mg/kgの用量又は約100mg/kgの用量)である。一実施形態では、そのような用量のアデノシン阻害剤は、経口投与される。
【0178】
一実施形態では、アデノシン阻害剤は、1日1回、2回、3回、又は4回投与される。一実施形態では、アデノシン阻害剤は、1日1回(「QD」)、特に連続的に投与される。一実施形態では、アデノシン阻害剤は、1日2回(「BID」)、特に連続的に投与される。一実施形態では、アデノシン阻害剤は、1日3回(「TID」)、特に連続的に投与される。一実施形態では、アデノシン阻害剤は、1日4回(「QID」)、特に連続的に投与される。
【0179】
一実施形態では、アデノシン阻害剤は、2~6週間(例えば、2、3又は4週間、特に3週間)ごとに1回投与される。一実施形態では、アデノシン阻害剤は、2週間に1回(「Q2W」)投与される。一実施形態では、アデノシン阻害剤は、3週間に1回(「Q3W」)投与される。一実施形態では、アデノシン阻害剤は、6週間に1回(「Q6W」)投与される。一実施形態では、アデノシン阻害剤は、2~6回の投与サイクル(例えば、最初の3回、4回、又は5回の投与サイクル、特に、最初の4回の投与サイクル)で、Q3Wで投与される。
【0180】
特定の実施形態では、約50~150mgのアデノシン受容体阻害剤がBID投与される。特定の実施形態では、約50~150mgのアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤、例えば、(S)-7-オキサ-2-アザ-スピロ[4.5]デカン-2-カルボン酸[7-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-4-メトキシ-チアゾロ[4,5-c]ピリジン-2-イル]-アミド又はその薬学的に許容される塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグ、及び立体異性体(全ての比率でのその混合物を含む)は、Q2Wでの約1200mgの抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するもの、又はQ3Wでの約2400mgの抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えばビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものと共に、BID投与される。
【0181】
本発明の組み合わせによる処置に加えて、患者の健康のために必要であると考えられる同時処置は、処置する医師の裁量で行われ得る。いくつかの実施形態では、本発明は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を、化学療法、放射線療法、又は化学放射線療法などの追加の治療と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む、本明細書に記載されている1つ以上の疾患又は障害を処置する、安定化させる、又はその重篤度若しくは進行を減少させる方法を提供する。
【0182】
一実施形態では、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、又はドセタキセルなどのジテルペノイド;ビンブラスチン、ビンクリスチン、又はビノレルビンなどのビンカアルカロイド;シスプラチン又はカルボプラチンなどの白金配位錯体;シクロホスファミド、メルファラン、又はクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード;ブスルファンなどのアルキルスルホネート;カルムスチンなどのニトロソウレア;ダカルバジンなどのトリアゼン;ダクチノマイシンなどのアクチノマイシン;ダウノルビシン又はドキソルビシンなどのアントラサイクリン;ブレオマイシン;エトポシド又はテニポシドなどのエピポドフィロトキシン;フルオロウラシル、ペメトレキセド、メトトレキサート、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、又はゲムシタビンなどの代謝拮抗性抗新生物薬;メトトレキサート;イリノテカン又はトポテカンなどのカンプトテシン;リツキシマブ;オファツムマブ;トラスツズマブセツキシマブベキサロテン;ソラフェニブ;ラパチニブ、エルロチニブ、又はゲフィチニブなどのerbB阻害剤;ペルツズマブ;イピリムマブ;トレメリムマブ;ニボルマブ;ペンブロリズマブ;FOLFOX;カペシタビン;FOLFIRI;ベバシズマブ;アテゾリズマブ;セレクレルマブ;オビノツズマブ又はその任意の組み合わせは、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤と同時に又は連続して更に投与される。
【0183】
一実施形態では、化学療法は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤と同時に又は連続して更に投与される。一実施形態では、化学療法は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤と同時に又は連続して更に投与される。一実施形態では、化学療法は、白金ベースの化学療法である。一実施形態では、化学療法は、白金ベースの化学療法及びフルオロウラシルである。一実施形態では、白金ベースの化学療法は、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、カルボプラチン、又はそれらの任意の組み合わせである。一実施形態では、白金ベースの化学療法は、フルオロウラシル、シスプラチン、カルボプラチン、又はそれらの任意の組み合わせである。一実施形態では、化学療法は、シスプラチン又はカルボプラチンと、ペメトレキセド、パクリタキセル、ゲムシタビン、又はフルオロウラシルのいずれか1つとの白金併用である。一実施形態では、化学療法は更に、PD-1阻害剤未経験患者に、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤と同時に又は連続して投与される。
【0184】
一実施形態では、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤は、PD-L1陽性患者及び/又はCD73陽性患者に同時に又は連続して投与される。
【0185】
一実施形態では、放射線療法が更に、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤と同時に又は順次に投与される。いくつかの実施形態では、放射線療法は、全身放射線療法、外照射療法、画像誘導放射線療法、トモセラピー、定位放射線手術、定位全身放射線療法、及び陽子線療法からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、放射線療法は、外部ビーム放射線療法、内部放射線療法(近接照射療法)、又は全身放射線療法を含む。例えば、Amini et al.,Radiat Oncol.「Stereotactic body radiation therapy(SBRT)for lung cancer patients previously treated with conventional radiotherapy:a review」9:210(2014);Baker et al.,Radiat Oncol.「A critical review of recent developments in radiotherapy for non-small cell lung cancer」11(1):115:2016);Ko et al.,Clin Cancer Res「The Integration of Radiotherapy with Immunotherapy for the Treatment of Non Small Cell Lung Cancer」(24)(23)5792-5806;及びYamoah et al.,Int J Radiat Oncol Biol Phys「Radiotherapy Intensification for Solid Tumors:A Systematic Review of Randomized Trials」93(4):737-745(2015)を参照されたい。
【0186】
いくつかの実施形態では、放射線療法は、外照射療法を含み、外照射療法は、強度変調放射線処置(IMRT)、画像誘導放射線療法(IGRT)、トモセラピー、定位放射線手術、定位全身放射線療法、陽子線処置、又は他の荷電粒子ビームを含む。
【0187】
いくつかの実施形態では、放射線療法は、定位全身放射線療法を含む。
【0188】
PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤は、上記で提供される障害の重症度を処置又は低減するのに有効な任意の量及び任意の投与経路を使用して投与される。必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、及び全身状態、感染の重症度、特定の薬物、投与様式等に応じて、対象ごとに異なり得る。
【0189】
いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤は、同時に、別々に、又は逐次的に、任意の順序で投与される。PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤は、任意の順序で(すなわち、同時に又は逐次的に)患者に投与され、化合物は、別々の組成物、製剤、若しくは単位剤形であってもよく、又は単一の組成物、製剤、若しくは単位剤形で一緒であってもよい。一実施形態では、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤は、同時に又は任意の順序で逐次的に、共同して治療有効量(例えば、相乗的有効量)で、例えば、本明細書に記載の量に対応する毎日又は間欠的投与量で投与される。PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤の個々の組み合わせパートナーは、治療過程中の異なる時点で別々に、又は同時に投与され得る。典型的には、そのような組み合わせ療法において、個々の化合物は、別々の医薬組成物又は医薬に製剤化される。化合物が別々に製剤化される場合、個々の化合物は、任意選択的に異なる経路を介して、同時に又は逐次的に投与することができる。任意選択的に、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤の各々のための処置レジメンは、異なるが重複する送達レジメン、例えば、1日1回、1日2回対単回投与、又は週1回、を有する。特定の実施形態では、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を含む同じ組成物中で同時に投与される。特定の実施形態では、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤は、別個の組成物で同時に投与され、すなわち、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤の各々は、別個の単位剤形で同時に投与される。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は、融合されており、アデノシン阻害剤とは別個の単位剤形で投与され、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は、アデノシン阻害剤と同時に又は任意の順序で逐次的に投与される。PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤は、同じ日又は異なる日に、適切な投薬プロトコルに従って任意の順序で投与されることが理解されるであろう。したがって、本発明は、同時又は交互処置の全てのそのようなレジメンを包含すると理解されるべきであり、「投与する」という用語は、それに応じて解釈されるべきである。一実施形態では、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤はQ2W又はQ3Wで投与され、アデノシン阻害剤はBIDで投与される。
【0190】
いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤は、同時に、別々に、又は逐次的に、任意の順序で投与される。抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤は、別個の組成物、製剤若しくは単位剤形で任意の順序で(すなわち、同時に若しくは逐次的に)、又は単一の組成物、製剤若しくは単位剤形で一緒に患者に投与される。一実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤は、同時に又は任意の順序で逐次的に、共同して治療有効量で(例えば、相乗的有効量で)、例えば、本明細書に記載の量に対応する毎日又は間欠的投与量で投与される。抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質とアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤との個々の組み合わせパートナーは、治療の過程の間の異なる時点で別々に投与されてもよく、又は分割された若しくは単一の組み合わせ形態で同時に投与されてもよい。典型的には、そのような組み合わせ療法において、個々の化合物は、別々の医薬組成物又は医薬に製剤化される。別々に製剤化される場合、個々の化合物は、任意選択的に異なる経路を介して、同時に又は逐次的に投与することができる。任意選択的に、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤の各々の処置レジメンは、異なるが重複する送達レジメン、例えば、1日1回、1日2回対単回投与、又は週1回、を有する。抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質は、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤の前に、それと実質的に同時に、又はその後に送達され得る。特定の実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質は、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤を含む同じ組成物中で同時投与される。特定の実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤は、別々の組成物で同時に投与される、すなわち、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤は、それぞれ別個の単位剤形で同時に投与される。抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤は、同じ日又は異なる日に、適切な投薬プロトコルに従って任意の順序で投与されることは理解される。一実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質は、例えば、静脈内注入又は注射によって、Q2W又はQ3Wで投与され、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤は、BIDで経口投与される。一実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質は、例えば、静脈内注入又は注射によって、1200mg、Q2W又は2400mg、Q3Wで投与され、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤は、投与あたり25~300mg又は50~150mgでBIDで経口投与される。
【0191】
いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤のうちの1つ以上は、処置を必要とする患者に、第1の期間にわたって第1の間隔で第1の用量で、及び第2の期間にわたって第2の間隔で第2の用量で投与される。そのような第1及び第2の期間は、処置の導入フェーズ及び維持フェーズであり得る。組み合わせ中のPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤の1つ以上が患者に投与されない場合、第1の期間と第2の期間との間に休止期間があってもよい。いくつかの実施形態では、第1の期間と第2の期間との間に休止期間がある。いくつかの実施形態では、休止期間は1日~30日である。いくつかの実施形態では、休止期間は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、又は31日である。いくつかの実施形態では、休止期間は、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、又は15週間である。
【0192】
いくつかの実施形態では、第1の用量及び第2の用量は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤の各々について同じである。いくつかの実施形態では、第1の用量及び第2の用量は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤の各々について異なる。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤の各々の第1の用量及び第2の用量は同じであるが、アデノシン阻害剤の第1の用量及び第2の用量は異なる。いくつかの実施形態では、アデノシン阻害剤の第1の用量及び第2の用量は同じであるが、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤の各々の第1の用量及び第2の用量は異なる。
【0193】
いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えばビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものの第1の用量及び第2の用量は、約1200mgである。いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものの第1の用量及び第2の用量は、約2400mgである。いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものの第1の用量は約1200mgであり、第2の用量は約2400mgである。いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものの第1の用量は約2400mgであり、第2の用量は約1200mgである。
【0194】
いくつかの実施形態では、第1の間隔及び第2の間隔は、同じである。いくつかの実施形態では、第1の間隔及び第2の間隔は、Q2Wである。いくつかの実施形態では、第1の間隔及び第2の間隔は、Q3Wである。いくつかの実施形態では、第1の間隔及び第2の間隔は、Q6Wである。いくつかの実施形態では、第1の間隔及び第2の間隔は、異なる。いくつかの実施形態では、第1の間隔はQ2Wであり、第2の間隔はQ3Wである。いくつかの実施形態では、第1の間隔はQ3Wであり、第2の間隔はQ6Wである。
【0195】
いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤の第1の間隔及び第2の間隔は、同じである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤の第1の間隔及び第2の間隔は、Q2Wである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤の第1の間隔及び第2の間隔は、Q3Wである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤の第1の間隔及び第2の間隔は、Q6Wである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤の第1の間隔及び第2の間隔は、異なる。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤の第1の間隔はQ2Wであり、第2の間隔はQ3Wである。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤の第1の間隔はQ3Wであり、第2の間隔はQ6Wである。
【0196】
いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものは、2~6投与サイクル(例えば、最初の3、4、又は5回の投薬サイクル、特に最初の4回の投薬サイクル)の第1の期間に1200mgの第1の用量でQ2Wで投与され、治療が中断されるまで(例えば、疾患の進行、有害事象に起因して、又は医師によって判定される際)2400mgの第2の用量でQ3Wで投与される。いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものは、最初の3回の投与サイクルでは1200mgの第1の用量でQ2Wで投与され、治療が中断されるまで(例えば、疾患の進行、有害事象に起因して、又は医師によって判定される際)2400mgの第2の用量でQ3W以上で投与される。いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものは、最初の4回の投与サイクルでは1200mgの第1の用量でQ2Wで投与され、治療が中断されるまで(例えば、疾患の進行、有害事象に起因して、又は医師によって判定される際)2400mgの第2の用量でQ3W以上で投与される。いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものは、最初の5回の投与サイクルでは、1200mgの第1の用量でQ2Wで投与され、治療が中断されるまで(例えば、疾患の進行、有害事象に起因して、又は医師によって判定される際)2400mgの第2の用量でQ3W以上で投与される。
【0197】
アデノシン阻害剤、PD-1阻害剤、及びTGFβ阻害剤のうちの1つ又は2つの化合物による最初の処置、続いて3つ全ての化合物による処置があり得ることが理解されるであろう。単剤療法としてのアデノシン阻害剤、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、又は融合PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤の患者への最初の投与と、本明細書に記載される組み合わせ療法としてのPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤の投与との間に、非処置又は非投与の期間が、例えば、規定数のサイクルの間で実施され得る。例えば、単剤療法での最初の投与後、患者は、本明細書に記載される組み合わせ療法を投与される前に、3週間、6週間、又は12週間の1サイクル又は2サイクルの間、処置を施されなくてもよい。したがって、一実施形態では、患者は、本明細書に記載される単剤療法としてアデノシン阻害剤を最初に投与され、次いで、3週間、6週間、又は12週間の1サイクル又は2サイクルの間、処置を施されず、その後、患者は、本明細書に記載される組み合わせ療法としてアデノシン阻害剤をPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤と共に投与される。一実施形態では、患者は、最初に、本明細書に記載される単剤療法としてPD-1阻害剤及び/又はTGFβ阻害剤を投与され、次いで、3週間、6週間、若しくは12週間の1サイクル又は2サイクルの間、処置を施されず、その後、患者は、本明細書に記載される組み合わせ療法としてPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤をアデノシン阻害剤と共に投与される。
【0198】
本発明の組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、経直腸的に、経鼻的に、頬側に、経膣的に、又は埋め込まれたリザーバを介して投与される。本明細書で使用される「非経口」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内及び頭蓋内注射又は注入技術を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、経口的に、腹腔内に、皮下に、又は静脈内に投与される。一実施形態では、組成物は、静脈内注入又は注射によって投与される。好ましい実施形態では、医薬組成物は、筋肉内注射又は皮内注射によって投与される。一実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質は、静脈内注入又は注射によって投与される。別の実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質は、筋肉内注射又は皮下注射によって投与される。一実施形態では、アデノシン阻害剤は、経口投与される。一実施形態では、アデノシン阻害剤は、静脈内注入又は注射によって投与される。一実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質は、静脈内注入又は注射によって投与され、アデノシン阻害剤は、静脈内注入又は注射によって投与される。一実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質は、静脈内注入又は注射によって投与され、アデノシン阻害剤は、経口投与される。
【0199】
いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものは、静脈内投与(例えば静脈内注入として)又は皮下投与される。いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものは、静脈内注入として投与される。いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものは、約1200mg又は約2400mgの用量で静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものは、約1200mgの用量でQ2Wで静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものは、約2400mgの用量でQ3Wで静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものは、約15mg/kgの用量でQ3Wで静脈内投与される。
【0200】
いくつかの実施形態では、アデノシン阻害剤は、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤であり、上記の用量のうちの1つで経口投与される。いくつかの実施形態では、アデノシン阻害剤は、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤であり、上記の用量のうちの1つで静脈内投与される。いくつかの実施形態では、アデノシン阻害剤は、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤であり、投与あたり25~300mgのBIDで経口投与される。いくつかの実施形態では、アデノシン阻害剤は、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤であり、上記の用量のうちの1つでQ2W又はQ3Wで静脈内投与される。
【0201】
いくつかの実施形態では、患者は、最初に、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものを、単剤療法レジメンとして約1200mgの用量で、次いで、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質を、組み合わせ療法レジメンとしてアデノシン阻害剤と共に約1200mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、患者は、最初に、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものを、単剤療法レジメンとして約2400mgの用量で、次いで、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質を組み合わせ療法レジメンとしてアデノシン阻害剤と共に約2400mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、患者は、最初に単剤療法レジメンとしてアデノシン阻害剤を投与され、次いで、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものを、約1200mgの用量で、組み合わせ療法レジメンとして投与される。いくつかの実施形態では、患者は、最初に単剤療法レジメンとしてアデノシン阻害剤を投与され、次いで、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものを、約2400mgの用量で、組み合わせ療法レジメンとして投与される。
【0202】
いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医師の指示又は制御下で、対象が、アデノシン阻害剤の最初の投与前にPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤を投与される工程と、(b)医師の指示又は制御下で、対象が、アデノシン阻害剤を投与される工程と、を含む。いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医師の指示又は制御下で、対象が、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤の最初の投与前にアデノシン阻害剤を投与される工程と、(b)医師の指示又は制御下で、対象が、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤を投与される工程と、を含む。いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医師の指示又は制御下で、対象が、TGFβ阻害剤及びアデノシン阻害剤の最初の投与前にPD-1阻害剤を投与される工程と、(b)医師の指示又は制御下で、対象が、TGFβ阻害剤及びアデノシン阻害剤を投与される工程とを含む。いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医師の指示又は制御下で、対象が、PD-1阻害剤の最初の投与前にTGFβ阻害剤及びアデノシン阻害剤を投与される工程と、(b)医師の指示又は制御下で、対象がPD-1阻害剤を投与される工程と、を含む。いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医師の指示又は制御下で、対象がPD-1阻害剤及びアデノシン阻害剤の最初の投与前にTGFβ阻害剤を投与される工程と、(b)医師の指示又は制御下で、対象がPD-1阻害剤及びアデノシン阻害剤を投与される工程と、を含む。いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医師の指示又は制御下で、対象が、TGFβ阻害剤の最初の投与前にPD-1阻害剤及びアデノシン阻害剤を投与される工程と、(b)医師の指示又は制御下で、対象が、TGFβ阻害剤を投与される工程と、を含む。
【0203】
いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医師の指示又は制御下で、対象が、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤の最初の投与前に抗PD(L)1抗体及びTGFβRII又は抗TGFβ抗体を投与される工程と、(b)医師の指示又は制御下で、対象が、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤を投与される工程と、を含む。いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医師の指示又は制御下で、対象が、抗PD(L)1抗体及びTGFβRII又は抗TGFβ抗体の最初の投与前にアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤を投与される工程と、(b)医師の指示又は制御下で、対象が、抗PD(L)1抗体及びTGFβRII又は抗TGFβ抗体を投与される工程と、を含む。いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医師の指示又は制御下で、対象が、TGFβRII又は抗TGFβ抗体並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤の最初の投与前に抗PD(L)1抗体を投与される工程と、(b)医師の指示又は制御下で、対象が、TGFβRII又は抗TGFβ抗体並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤を投与される工程と、を含む。いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医師の指示又は制御下で、対象が、抗PD(L)1抗体の最初の投与前にTGFβRII又は抗TGFβ抗体並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤を投与される工程と、(b)医師の指示又は制御下で、対象が、抗PD(L)1抗体を投与される工程と、を含む。いくつかの実施形態は、組み合わせレジメンは、(a)医師の指示又は制御下で、対象が、抗PD(L)1抗体並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤の最初の投与前にTGFβRII又は抗TGFβ抗体を投与される工程と、(b)医師の指示又は制御下で、対象が、抗PD(L)1抗体並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤を投与される工程と、を含む。いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医師の指示又は制御下で、対象が、TGFβRII又は抗TGFβ抗体の最初の投与前に抗PD(L)1抗体並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤を投与される工程と、(b)医師の指示又は制御下で、対象が、TGFβRII又は抗TGFβ抗体を投与される工程と、を含む。
【0204】
いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医師の指示又は制御下で、対象が、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤、例えば、実施形態E1~E13のいずれか1つに記載のものの最初の投与前に、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有する抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質を投与される工程と、(b)医師の指示又は制御下で、対象が、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤を投与される工程と、を含む。いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医師の指示又は制御下で、対象が、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有する抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質の最初の投与前にアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤、例えば、実施形態E1~E13のいずれか1つに記載のものを投与される工程と、(b)医師の指示又は制御下で、対象が、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質を投与される工程とを含む。いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医師の指示又は制御下で、対象が、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤、例えば、実施形態E1~E13のいずれか1つに記載のものの最初の投与前に、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有する抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質を投与される工程と、(b)医師の指示又は制御下で、対象が、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤を投与される工程と、を含む。いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医師の指示又は制御下で、対象が、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有する抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質の最初の投与前にアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤、例えば、実施形態E1~E13のいずれか1つに記載のものを投与される工程と、(b)医師の指示又は制御下で、対象が、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質を投与される工程と、を含む。
【0205】
PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を含む組み合わせも提供される。抗PD(L)1抗体、TGFβRII又は抗TGFβ抗体、並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤を含む組み合わせも提供される。アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤並びに融合PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤を含む組み合わせも提供される。抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤を含む組み合わせも提供される。いくつかの実施形態では、当該組み合わせのいずれかは、医薬として使用するため、又は癌の処置において使用するためのものである。
【0206】
上記の様々な実施形態では、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は、例えば、抗PD-L1:TGFβRII融合タンパク質又は抗PD-1:TGFβRII融合タンパク質として融合することができることが理解されるものとする。
【0207】
医薬製剤及びキット
本明細書に記載のPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤はまた、医薬製剤又はキットの形態であってもよい。
【0208】
いくつかの実施形態では、本発明は、PD-1阻害剤を含む薬学的に許容される組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、TGFβ阻害剤を含む薬学的に許容される組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、融合PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤を含む薬学的に許容される組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質を含む薬学的に許容される組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有する抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質を含む薬学的に許容される組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、アデノシン阻害剤を含む薬学的に許容される組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤を含む薬学的に許容される組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、実施形態E1~E13のいずれか1つに記載のアデノシン阻害剤を含む薬学的に許容される組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、TGFβ阻害剤及びアデノシン阻害剤を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、PD-1阻害剤及びアデノシン阻害剤を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、アデノシン阻害剤並びに融合PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有する抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質と、実施形態E1~E13のいずれか1つに記載のアデノシン阻害剤とを含む医薬組成物を提供する。薬学的に許容される組成物は、少なくとも更なる薬学的に許容される賦形剤又はアジュバント、例えば薬学的に許容される担体を含み得る。
【0209】
いくつかの実施形態では、融合PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤、例えば、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質を含む組成物は、アデノシン阻害剤を含む組成物から分離されている。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は、例えば、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質として融合されており、同じ組成物中にアデノシン阻害剤と共に存在する。
【0210】
このような薬学的に許容される組成物の例は、以下及び本明細書中で更に記載される。
【0211】
本発明の組成物は、様々な形態であり得る。これらには、例えば、液体溶液(例えば、注射用及び注入用溶液)、分散液又は懸濁液、錠剤、丸剤、散剤、リポソーム、及び坐剤などの液体、半固体、及び固体剤形が含まれる。
【0212】
本発明の組成物において使用される薬学的に許容される担体、アジュバント又はビヒクルとしては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム)、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及び羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0213】
経口投与用の液体剤形としては、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、及びエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されない。液体剤形は、例えば、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物などの、当技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を更に含有してもよい。不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味剤、香味剤、並びに芳香剤などのアジュバントも含むことができる。
【0214】
注射用調製物、例えば、滅菌注射用水性又は油性懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用して、公知の技術に従って製剤化され得る。滅菌注射用調製物はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液、懸濁液、又はエマルジョン(例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として)であり得る。上記のうち、採用され得る許容されるビヒクル及び溶媒の中でも特に、水、リンガー溶液、U.S.P.、及び等張食塩水である。更に、無菌の不揮発性油は、溶媒又は懸濁媒体として従来から用いられている。この目的のために、合成モノ又はジグリセリドを含む任意の無刺激性不揮発性油を使用することができる。更に、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製に使用される。
【0215】
注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルタを通す濾過によって、又は使用前に滅菌水若しくは他の滅菌注射用媒体に溶解若しくは分散させることができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。
【0216】
本発明の化合物の効果を延長するために、皮下注射又は筋肉内注射からの吸収を遅らせることが望ましいことが多い。これは、水溶性の低い結晶性又は非晶質物質の液体懸濁液の使用によって達成され得る。次いで、吸収速度は、その溶解速度に依存し、溶解速度は、結晶サイズ及び結晶形態に依存し得る。あるいは、非経口投与されたPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及び/又はアデノシン阻害剤の遅延吸収は、油ビヒクル中に化合物を溶解又は懸濁することによって達成される。注射可能なデポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中にPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及び/又はアデノシン阻害剤のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製される。化合物対ポリマーの比及び使用される特定のポリマーの性質に依存して、化合物放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用製剤は、体組織と適合性のリポソーム又はマイクロエマルジョン中に化合物を封入することによっても調製される。
【0217】
直腸又は膣内投与のための組成物は、本発明の化合物を適切な非刺激性賦形剤又は担体、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール又は坐剤ワックスと混合することによって調製され得る坐剤であり得、これらは、周囲温度で固体であるが、体温で液体であり、従って、直腸又は膣腔において融解し、そして活性化合物を放出する。
【0218】
経口投与用の剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、及び顆粒剤、水性懸濁剤、又は液剤が挙げられる。固体剤形では、活性化合物は、クエン酸ナトリウム若しくはリン酸二カルシウムなどの少なくとも1つの不活性な薬学的に許容される賦形剤若しくは担体、並びに/又はa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及びケイ酸などの充填剤若しくは増量剤、b)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース及びアカシアなどの結合剤、c)グリセロールなどの湿潤剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ若しくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩及び炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶解遅延剤、f)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えばセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、h)カオリン及びベントナイト粘土などの吸収剤、並びにi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びそれらの混合物などの潤滑剤と混合される。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、剤形は緩衝剤も含み得る。
【0219】
同様のタイプの固体組成物も、ラクトース又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として使用され得る。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、及び顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティング及び医薬製剤分野で周知の他のコーティングなどのコーティング及びシェルを用いて調製することができる。それらは任意選択的に不透明化剤を含有してもよく、それらが活性成分(複数可)のみを、又は優先的に腸管の特定の部分で、任意選択的に遅延様式で放出する組成物であってもよい。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。
【0220】
PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及び/又はアデノシン阻害剤はまた、上記のような1つ以上の賦形剤を有するマイクロカプセル化形態とすることができる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、及び顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティング、放出制御コーティング、及び医薬製剤分野で周知の他のコーティングなどのコーティング及びシェルを用いて調製することができる。そのような固体剤形において、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及び/又はアデノシン阻害剤は、スクロース、ラクトース、又はデンプンなどの少なくとも1種の不活性希釈剤と混合され得る。このような投薬形態はまた、通常の実施のように、不活性希釈剤以外の更なる物質(例えば、錠剤化潤滑剤及び他の錠剤化補助剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム及び微結晶性セルロース))を含み得る。カプセル剤、錠剤、及び丸剤の場合、剤形は緩衝剤も含み得る。それらは任意選択的に不透明化剤を含有してもよく、それらが活性成分(複数可)のみを、又は優先的に腸管の特定の部分で、任意選択的に遅延様式で放出する組成物であってもよい。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。
【0221】
PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及び/又はアデノシン阻害剤の局所又は経皮投与のための剤形としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤、又はパッチが挙げられる。活性成分は、滅菌条件下で、薬学的に許容される担体及び必要とされ得る任意の必要な防腐剤又は緩衝剤と混合される。この化合物の局所投与のための例示的な担体は、鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、及び水である。あるいは、提供される薬学的に許容される組成物は、1つ以上の薬学的に許容され担体中に懸濁又は溶解された活性成分を含む適切なローション又はクリームに製剤化することができる。適切な担体としては、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、及び水が挙げられるが、これらに限定されない。眼科用製剤、点耳剤、及び点眼剤もまた、本発明の範囲内であることが企図される。更に、本発明は、身体への化合物の制御された送達を提供する更なる利点を有する経皮パッチの使用を企図する。そのような剤形は、適切な媒体中に化合物を溶解又は分散させることによって作製することができる。吸収促進剤もまた、皮膚を通り抜ける化合物の流動を高めるために使用され得る。速度は、速度制御膜を提供することによって、又はポリマーマトリックス若しくはゲル中に化合物を分散させることによって制御することができる。
【0222】
本発明の薬学的に許容される組成物は、任意選択的に、経鼻エアロゾル又は吸入によって投与される。このような組成物は、薬学的処方の分野で周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコール又は他の適切な保存剤、生物学的利用能を増強するための吸収促進剤、フッ化炭素、及び/又は他の従来の可溶化剤若しくは分散剤を使用して、生理食塩水中の溶液として調製される。
【0223】
更なる態様では、本発明は、PD-1阻害剤と、アデノシン阻害剤及びTGFβ阻害剤と組み合わせてPD-1阻害剤を使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットに関する。アデノシン阻害剤と、アデノシン阻害剤をPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤と組み合わせて使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットも提供される。TGFβ阻害剤と、PD-1阻害剤及びアデノシン阻害剤と組み合わせてTGFβ阻害剤を使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットも提供される。抗PD-L1抗体と、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤、並びにTGFβRII又は抗TGFβ抗体と組み合わせて抗PD-L1抗体を使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットも提供される。アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤と、抗PD-L1抗体及びTGFβRII又は抗TGFβ抗体と組み合わせてアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤を使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットも提供される。TGFβRII又は抗TGFβ抗体と、抗PD-L1抗体及びアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤と組み合わせてTGFβRII又は抗TGFβ抗体を使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットも提供される。PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤と、アデノシン阻害剤と組み合わせてPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤を使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットも提供される。抗PD-L1抗体及びTGFβRII又は抗TGFβ抗体と、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤と組み合わせて抗PD-L1抗体及びTGFβRII又は抗TGFβ抗体を使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットも提供される。抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものと、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質を実施形態E1~E13のいずれか1つに記載のアデノシン阻害剤と組み合わせて使用して、対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットも提供される。PD-1阻害剤及びアデノシン阻害剤と、PD-1阻害剤及びアデノシン阻害剤をTGFβ阻害剤と組み合わせて使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットも提供される。TGFβ阻害剤及びアデノシン阻害剤と、TGFβ阻害剤及びアデノシン阻害剤をPD-1阻害剤と組み合わせて使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットも提供される。抗PD-L1抗体並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤と、抗PD-L1抗体並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤をTGFβRII又は抗TGFβ抗体と組み合わせて使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットも提供される。TGFβRII又は抗TGFβ抗体並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤と、TGFβRII又は抗TGFβ抗体並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤を抗PD-L1抗体と組み合わせて使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットも提供される。PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤と、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤を使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットも提供される。抗PD-L1抗体、TGFβRII又は抗TGFβ抗体、並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤と、抗PD-L1抗体、TGFβRII又は抗TGFβ抗体、並びにアデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤を使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットも提供される。抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するもの、及びアデノシン阻害剤、例えば、実施形態E1~E13のいずれか1つに記載のものと、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質とアデノシン阻害剤とを使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットも提供される。キットは、第1の容器、第2の容器、第3の容器及び添付文書を含むことができ、第1の容器は、少なくとも1用量のPD-1阻害剤を含み、第2の容器は、少なくとも1用量のアデノシン阻害剤を含み、第3の容器は、少なくとも1用量のTGFβ阻害剤を含み、添付文書は、3つの化合物を用いて癌について対象を処置するための説明書を含む。いくつかの実施形態では、キットは、第1の容器、第2の容器、及び添付文書を含み、第1の容器は、少なくとも1用量の抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものを含み、第2の容器は、例えば、実施形態E1~E13のいずれか1つによる少なくとも1用量のアデノシン阻害剤を含み、添付文書は、2つの化合物を使用して癌について対象を処置するための説明書を含む。第1、第2、及び第3の容器は、同じ又は異なる形状(例えば、バイアル、シリンジ、及びボトル)及び/又は材料(例えば、プラスチック又はガラス)から構成され得る。キットは、希釈剤、フィルタ、IVバッグ及びライン、針及びシリンジなどの、医薬の投与に有用であり得る他の材料を更に含み得る。説明書は、医薬が、例えば、免疫組織化学(IHC)アッセイ、FACS又はLC/MS/MSによって、PD-L1及び/又はCD73について陽性と試験される癌を有する対象の処置における使用を意図していることを記載し得る。
【0224】
更なる診断、予測、予後診断、及び/又は治療の方法
本開示は更に、本明細書に記載のPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を使用する診断、予測、予後診断及び/又は治療の方法を提供する。このような方法は、少なくとも部分的に、目的のバイオマーカーの発現レベルの同一性の判定に基づく。特に、癌患者試料中のヒトPD-L1、CD73及び/又はアデノシンのいずれか1つの量をバイオマーカーとして使用して、患者が本発明の治療組み合わせを利用する癌治療に有利に応答する可能性が高いかどうかを予測することができる。
【0225】
任意の適切な試料を本方法に使用することができる。そのようなものの非限定的な例としては、血清試料、血漿試料、全血、膵液試料、組織試料、腫瘍溶解物又は腫瘍試料のうちの1つ以上が挙げられ、これらは、針生検、コア生検、及び針吸引物から単離され得る。例えば、組織、血漿、又は血清試料は、処置前及び任意選択的に本発明の治療組み合わせによる処置時に患者から採取される。処置時に得られた発現レベルを、患者の処置開始前に得られた値と比較する。得られた情報は、患者が癌治療に対して有利に応答したか、又は不利に応答したかを示すことができるという点で予後診断的であり得る。
【0226】
本明細書中に記載される診断アッセイを使用して得られる情報は、単独で使用され得るか、又は他の情報(例えば、他の遺伝子の発現レベル、臨床化学パラメータ、組織病理学的パラメータ、又は対象の年齢、性別、及び体重が挙げられるが、これらに限定されない)と組み合わせて使用され得ることが理解されるべきである。他の情報と組み合わせて使用される場合、本明細書中に記載される診断アッセイを使用して得られる情報は、処置の臨床転帰の判定又は同定、処置のための患者の選択、又は患者の処置などに有用である。一方、他の情報と組み合わせて使用される場合、本明細書中に記載される診断アッセイを使用して得られる情報は、処置の臨床転帰の判定又は同定における補助、処置のための患者の選択における補助、又は患者の処置における補助などに有用である。特定の態様では、発現レベルは、最終診断パネルにおいて使用することができ、その各々は、患者のために選択される診断、予後診断、又は処置に寄与する。
【0227】
任意の適切な方法を使用して、バイオマーカータンパク質、DNA、RNA、又はバイオマーカーレベルについての他の適切な読取値をそれぞれ測定することができ、その例は、本明細書に記載されている、及び/又は当業者に周知である。
【0228】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーレベルを判定することは、バイオマーカー発現を判定することを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーレベルは、例えば、抗体又は特異的結合パートナーなどのバイオマーカー特異的リガンドを用いて、患者試料中のバイオマーカータンパク質濃度によって判定される。結合事象は、例えば、標識リガンド若しくはバイオマーカー特異的部分、例えば抗体、又は結合事象について標識タンパク質と競合する標識バイオマーカー標準を含む標識競合部分の使用を含む競合的又は非競合的方法によって検出することができる。バイオマーカー特異的リガンドがバイオマーカーと複合体を形成することができる場合、複合体形成は、試料中のバイオマーカー発現を示すことができる。様々な実施形態では、バイオマーカータンパク質レベルは、定量的ウェスタンブロット、多重免疫アッセイフォーマット、ELISA、免疫組織化学、組織化学、又は腫瘍溶解物のFACS分析の使用、免疫蛍光染色、ビーズベースの懸濁免疫アッセイ、Luminex技術、若しくは近接ライゲーションアッセイを含む方法によって判定される。一実施形態では、バイオマーカー発現は、バイオマーカーに特異的に結合する1つ以上の一次抗体を使用する免疫組織化学によって判定される。
【0229】
別の実施形態では、バイオマーカーRNAレベルは、マイクロアレイチップ、RT-PCR、qRT-PCR、マルチプレックスqPCR、又はin-situハイブリダイゼーションを含む方法によって判定される。本発明の一実施形態では、DNA又はRNAアレイは、固体表面上に固定化されたバイオマーカー遺伝子によって提示されるか、又はそれにハイブリダイズするポリヌクレオチドの配置を含む。例えば、バイオマーカーmRNAを判定する程度まで、サンプルのmRNAは、必要であれば、適切なサンプル調製工程、例えば、組織ホモジナイゼーションの後に単離することができ、そしてマーカー特異的プローブと、特に、増幅を伴うか若しくは伴わないマイクロアレイプラットフォーム上において、又はPCRベースの検出方法のための、例えば、マーカーmRNAの一部に特異的なプローブでのPCR伸長標識のためのプライマーと、ハイブリダイズすることができる。
【0230】
腫瘍組織切片のIHCアッセイにおいてPD-L1タンパク質発現を定量化するためのいくつかのアプローチが記載されている(Thompson et al.(2004)PNAS 101(49):17174;Thompson et al.(2006)Cancer Res.66:3381;Gadiot et al.(2012)Cancer 117:2192;Taube et al.(2012)Sci Transl Med 4,127ra37;及びToplian et al.(2012)New Eng.J Med.366(26):2443)。1つのアプローチは、PD-L1発現について陽性又は陰性の単純な二値エンドポイントを使用し、陽性結果は、細胞表面膜染色の組織学的証拠を示す腫瘍細胞のパーセンテージに関して定義される。
【0231】
バイオマーカーmRNA発現のレベルは、ユビキチンCなどの定量的RT-PCRにおいて頻繁に使用される1つ以上の参照遺伝子のmRNA発現レベルと比較され得る。いくつかの実施形態では、悪性細胞及び/又は腫瘍内の浸潤免疫細胞によるバイオマーカー発現(タンパク質及び/又はmRNA)のレベルは、適切な対照によるバイオマーカー発現(タンパク質及び/又はmRNA)のレベルとの比較に基づいて、「過剰発現」又は「上昇」していると判定される。例えば、対照バイオマーカータンパク質又はmRNA発現レベルは、同じタイプの非悪性細胞において、又は対応する正常組織からの切片において定量化されたレベルであり得る。
【0232】
一実施形態では、本発明の治療組み合わせの有効性は、腫瘍試料におけるPD-L1発現によって予測される。一実施形態では、本発明の治療組み合わせの有効性は、腫瘍試料におけるCD73発現によって予測される。一実施形態では、本発明の治療組み合わせの有効性は、腫瘍試料におけるアデノシン発現によって予測される。
【0233】
本開示はまた、本発明の組み合わせが癌患者の治療的処置に適しているかどうかを判定するためのキットであって、患者から単離された試料中のPD-L1、CD73、及び/若しくはアデノシンのうちの1つ以上のタンパク質レベル又はその若しくはそれらのRNAの発現レベルを判定するための手段と、使用のための説明書と、を含むキットを提供する。別の態様では、キットは、治療のためのPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を更に含む。本発明の一態様では、高PD-L1レベルの判定は、患者が本発明の治療組み合わせで処置される場合のPFS又はOSの増加を示す。本発明の一態様では、高CD73レベルの判定は、患者が本発明の治療組み合わせで処置される場合のPFS又はOSの増加を示す。本発明の一態様では、高アデノシンレベルの判定は、患者が本発明の治療組み合わせで処置される場合のPFS又はOSの増加を示す。キットの一実施形態では、バイオマーカータンパク質レベルを判定するための手段は、バイオマーカーへの特異的結合を有する抗体である。
【0234】
更に別の態様では、本発明は、TGFβ阻害剤及びアデノシン阻害剤と組み合わせたPD-1阻害剤を宣伝するための方法であって、任意選択的に、対象から採取された試料中のPD-L1、CD73及びアデノシンのうちの1つ以上の発現に基づいて、癌を有する対象を処置するための組み合わせの使用を標的オーディエンスに推奨することを含む、方法を提供する。更に別の態様では、本発明は、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤が融合され得る、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤と組み合わせたアデノシン阻害剤を宣伝するための方法であって、対象から採取した試料中のPD-L1、CD73、及びアデノシンのうちの1つ以上の発現に任意選択的に基づいて、癌を有する対象を処置するための組み合わせの使用を標的オーディエンスに推奨することを含む、方法を提供する。更に別の態様では、本発明は、PD-1阻害剤及びアデノシン阻害剤と組み合わせたTGFβ阻害剤を宣伝するための方法であって、任意選択的に、対象から採取された試料中のPD-L1、CD73、及びアデノシンのうちの1つ以上の発現に基づいて、癌を有する対象を処置するための組み合わせの使用を標的オーディエンスに推奨することを含む、方法を提供する。更に別の態様では、本発明は、アデノシン阻害剤と組み合わせた抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質、例えば、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有するものを宣伝するための方法であって、任意選択的に、対象から採取された試料中のPD-L1、CD73、及びアデノシンのうちの1つ以上の発現に任意選択的に基づいて、対象を処置するための組み合わせの使用を標的オーディエンスに対して推奨することを含む、方法を提供する。更に別の態様では、本発明は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を含む組み合わせを宣伝する方法であって、任意選択的に、対象から採取された試料中のPD-L1、CD73及びアデノシンのうちの1つ以上の発現に基づいて、癌を有する対象を処置するための組み合わせの使用を標的オーディエンスに推奨することを含む、方法を提供する。推奨は、利用可能な任意の手段によって行われ得る。いくつかの実施形態では、推奨は、本発明の治療組み合わせの市販製剤に付随する添付文書による。推奨はまた、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、アデノシン阻害剤、又は別の医薬(処置が本発明の治療組み合わせ及び更なる医薬による治療である場合)の市販製剤に付随する添付文書によるものであってもよい。いくつかの実施形態では、推奨は添付文書によるものであり、添付文書は、PD-L1、CD73、及びアデノシンの発現レベルのうちの1つ以上を測定した後に本発明の治療組み合わせによる治療を受けるための説明書を提供し、いくつかの実施形態では、別の医薬と組み合わせて提供する。いくつかの実施形態では、推奨の後に、別の医薬を伴うか、又は伴わずに本発明の治療組み合わせによる患者の処置が続く。いくつかの実施形態では、添付文書は、患者の癌試料が、高いPD-L1、CD73、及びアデノシンのバイオマーカーレベルのうちの1つ以上によって特徴付けられる場合、本発明の治療組み合わせが患者を処置するために使用されるべきであることを示す。いくつかの実施形態では、添付文書は、患者の癌試料が、低いPD-L1、CD73、及びアデノシンのバイオマーカーレベルのうちの1つ以上を発現する場合、本発明の治療組み合わせが患者を処置するために使用されるべきではないことを示す。いくつかの実施形態では、高いPD-L1、CD73、及び/又はアデノシンのバイオマーカーレベルは、患者が本発明の治療組み合わせで処置された場合のPFS及び/又はOSの増加の可能性と相関する測定されたPD-L1レベルを意味し、逆もまた同様である。いくつかの実施形態では、PFS及び/又はOSは、本発明の治療組み合わせで処置されていない患者と比較して減少する。いくつかの実施形態では、推奨は添付文書によって行われ、添付文書は、PD-L1、CD73、及びアデノシン発現レベルのうちの1つ以上を最初に測定した後、アデノシン阻害剤と組み合わせた抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質による治療を受けるための説明書を提供する。いくつかの実施形態では、推奨の後に、別の医薬を伴うか又は伴わずに、アデノシン阻害剤と組み合わせた抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質による患者の処置が続く。
【0235】
本開示の更なる実施形態は、以下の通りである。
1.対象における癌を処置する方法において使用するためのPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤であって、方法が、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤及びアデノシン阻害剤を対象に投与することを含む、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤。
【0236】
2.対象における癌を処置する方法において使用するためのPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤であって、
方法が、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を対象に投与することを含み、
PD-1阻害剤が、抗PD(L)1抗体であり、TGFβ阻害剤が、TGFβRII又は抗TGFβ抗体であり、アデノシン阻害剤が、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤である、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤。
【0237】
3.対象における癌を処置する方法において使用するためのPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤であって、
方法が、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を対象に投与することを含み、
PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤が、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質として融合され、及びアデノシン阻害剤が、アデノシンA2A及びA2B受容体阻害剤である、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤。
【0238】
4.対象における癌を処置する方法において使用するためのPD-1阻害剤であって、方法が、TGFβ阻害剤及びアデノシン阻害剤と組み合わせてPD-1阻害剤を対象に投与することを含む、PD-1阻害剤。
【0239】
5.対象における癌を処置する方法において使用するためのTGFβ阻害剤であって、方法が、PD-1阻害剤及びアデノシン阻害剤と組み合わせてTGFβ阻害剤を対象に投与することを含む、TGFβ阻害剤。
【0240】
6.対象における癌を処置する方法において使用するためのアデノシン阻害剤であって、方法が、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤と組み合わせてアデノシン阻害剤を対象に投与することを含む、アデノシン阻害剤。
【0241】
7.対象における癌を処置する方法において使用するためのPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤であって、方法が、アデノシン阻害剤と組み合わせてPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤を対象に投与することを含み、
PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤とが融合されている、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤。
【0242】
8.対象における癌を処置する方法であって、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を対象に投与することを含む、方法。
【0243】
9.対象における癌を処置する方法であって、方法が、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を対象に投与することを含み、
PD-1阻害剤が、抗PD(L)1抗体であり、TGFβ阻害剤が、TGFβRII又は抗TGFβ抗体であり、アデノシン阻害剤が、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤である、方法。
【0244】
10.対象における癌を処置する方法であって、方法が、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を対象に投与することを含み、
PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤が、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質として融合されており、アデノシン阻害剤が、アデノシンA2A及びA2B受容体阻害剤である、方法。
【0245】
11.対象における癌を処置する方法のための医薬の製造のための、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤の使用であって、方法が、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を対象に投与することを含む、使用。
【0246】
12.対象における癌を処置する方法のための医薬の製造のためのPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤の使用であって、
方法が、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を対象に投与することを含み、
PD-1阻害剤が、抗PD(L)1抗体であり、TGFβ阻害剤が、TGFβRII又は抗TGFβ抗体であり、アデノシン阻害剤が、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤である、使用。
【0247】
13.対象における癌を処置する方法のための医薬の製造のためのPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤の使用であって、
方法が、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を対象に投与することを含み、
PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤が、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質として融合されており、アデノシン阻害剤が、アデノシンA2A及びA2B受容体阻害剤である、使用。
【0248】
14.対象における癌を処置する方法のための医薬の製造のためのPD-1阻害剤の使用であって、方法が、PD-1阻害剤をTGFβ阻害剤及びアデノシン阻害剤と組み合わせて対象に投与することを含む、使用。
【0249】
15.対象における癌を処置する方法のための医薬の製造のためのTGFβ阻害剤の使用であって、方法が、PD-1阻害剤及びアデノシン阻害剤と組み合わせてTGFβ阻害剤を対象に投与することを含む、使用。
【0250】
16.対象における癌を処置する方法のための医薬の製造のためのアデノシン阻害剤の使用であって、方法が、アデノシン阻害剤をPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤と組み合わせて対象に投与することを含む、使用。
【0251】
17.対象における癌を処置する方法のための医薬の製造のためのPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤の使用であって、方法が、アデノシン阻害剤と組み合わせてPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤を対象に投与することを含み、
PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤とが融合されている、使用。
【0252】
18.PD-1阻害剤が、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害することができる、項目1~17のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0253】
19.PD-1阻害剤が、抗PD(L)1抗体である、項目18に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0254】
20.PD-1阻害剤が、抗PD-L1抗体である、項目19に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0255】
21.抗PD-L1抗体が、配列番号1の配列を有するCDRH1、配列番号2の配列を有するCDRH2、及び配列番号3の配列を有するCDRH3を含む重鎖配列、並びに配列番号4の配列を有するCDRL1、配列番号5の配列を有するCDRL2、及び配列番号6の配列を有するCDRL3を含む軽鎖配列を含む、項目20に記載の使用のための化合物、処置の方法、又は使用。
【0256】
22.TGFβ阻害剤が、TGFβとTGFβ受容体との間の相互作用を阻害することができる、項目1~21のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0257】
23.TGFβ阻害剤が、TGFβ受容体又はTGFβに結合することができるその断片である、項目1~22のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0258】
24.TGFβ受容体が、TGFβ受容体II又はTGFβに結合することができるその断片である、項目23に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0259】
25.TGFβ受容体が、TGFβ受容体IIの細胞外ドメイン又はTGFβに結合することができるその断片である、項目24に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0260】
26.TGFβ阻害剤が、配列番号11、配列番号12、及び配列番号13のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%、95%又は100%の配列同一性を有し、TGFβに結合することができる、項目1~25のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0261】
27.TGFβ阻害剤が、配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%、又は95%の配列同一性を有し、TGFβに結合することができる、項目1~26のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0262】
28.TGFβ阻害剤が、配列番号11、配列番号12、及び配列番号13のいずれか1つの配列を含む、項目1~25のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0263】
29.TGFβ阻害剤が、配列番号11の配列を含む、項目28に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0264】
30.PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤が、融合されている、項目1~29のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0265】
31.PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤が、(a)PD-L1又はPD-1に結合し、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害することができる抗体又はその断片、及び(b)TGFβに結合し、TGFβとTGFβ受容体との間の相互作用を阻害することができるTGFβRIIの細胞外ドメイン又はその断片、を含む分子として融合されている、項目1~30のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0266】
32.融合分子が、国際公開第2015/118175号又は国際公開第2018/205985号に開示されているそれぞれの融合分子のうちの1つである、項目31に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0267】
33.TGFβRIIの細胞外ドメイン又はその断片が、抗体又はその断片の重鎖配列の各々に融合されている、項目31に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0268】
34.TGFβRIIの細胞外ドメイン又はその断片と、抗体又はその断片の重鎖配列との間の融合が、リンカー配列を介して生じる、項目33に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0269】
35.軽鎖配列のアミノ酸配列と、重鎖配列及びTGFβRIIの細胞外ドメイン又はその断片を含む配列とが、それぞれ、(1)配列番号7及び配列番号8、(2)配列番号15及び配列番号17、並びに(3)配列番号15及び配列番号18からなる群から選択される配列に対応する、項目34に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0270】
36.PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤が融合されており、融合タンパク質がビントラフスプアルファのアミノ酸配列と少なくとも80%、90%、95%又は100%の配列同一性を有する、項目1~35のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0271】
37.PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤が融合されており、融合タンパク質がビントラフスプアルファである、項目1~35のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0272】
38.アデノシン阻害剤が、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤である、項目1~37のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0273】
39.アデノシン阻害剤が、アデノシンA2A及びA2B受容体阻害剤である、項目1~37のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0274】
40.アデノシン阻害剤が、式Iの化合物であり、
【化8】
式中、
R
1は、非置換であるか、又はR
5によって一置換、二置換、若しくは三置換されている、1~10個のC原子を有する直鎖若しくは分岐アルキルであり、1~4個のC原子は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NH、NCH
3、-OCO-、-NHCONH-、-NHCO-、-NR
6SO
2R
7-、-COO-、-CONH-、-NCH
3CO-、-CONCH
3-、-C≡C-基及び/若しくは-CH=CH-基で置換されていてもよく、並びに/又は、加えて、1~10個のH原子は、F及び/若しくはClで置換されていてもよく、あるいは、非置換であるか、又はR
5で一置換、二置換、若しくは三置換されている、3~7個のC原子を有する単環式又は二環式の環状アルキルで置換されていてもよく、1~4個のC原子は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NH、NCH
3、-OCO-、-NHCONH-、-NHCO-、-NR
6SO
2R
7-、-COO-、-CONH-、-NCH
3CO-、-CONCH
3-、-C≡C-基及び/若しくは-CH=CH-基によって置換されていてもよく、並びに/又は、加えて、1~10個のH原子は、F及び/若しくはClによって置換されていてもよく、あるいは、3~14個の炭素原子と、N、O及びSから独立して選択される0~4個のヘテロ原子とを含有し、非置換であるか、又はR
5によって一置換、二置換、若しくは三置換されている、単環式若しくは二環式ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリール又は環式アルキルアリールで置換されていてもよく、
R
2は、非置換であるか、若しくはR
5によって一置換、二置換、又は三置換されている、1~10個のC原子を有する直鎖若しくは分岐アルキルであり、1~4個のC原子は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NH、NCH
3、-OCO-、-NHCONH-、-NHCO-、-NR
6SO
2R
7-、-COO-、-CONH-、-NCH
3CO-、-CONCH
3-、-C≡C-基及び/若しくは-CH=CH-基で置換されていてもよく、並びに/又は、加えて、1~10個のH原子は、F及び/若しくはClで置換されていてもよく、あるいは、非置換であるか、又はR
5で一置換、二置換、若しくは三置換されている、3~7個のC原子を有する環状アルキルで置換されていてもよく、1~4個のC原子は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NH、NCH
3、-OCO-、-NHCONH-、-NHCO-、-NR
6SO
2R
7-、-COO-、-CONH-、-NCH
3CO-、-CONCH
3-、-C≡C-基及び/若しくは-CH=CH-基によって置換されていてもよく、並びに/又は、加えて、1~11個のH原子は、F及び/若しくはClによって置換されていてもよく、あるいは、3~14個の炭素原子と、N、O及びSから独立して選択される0~4個のヘテロ原子とを含有し、非置換であるか、又はR
5によって一置換、二置換、若しくは三置換されている、単環式若しくは二環式ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリール又は環式アルキルアリールで置換されていてもよく、
R
3は、非置換であるか、又はH、=S、=NH、=O、OH、3~6個のC原子を有する環状アルキル、COOH、Hal、NH
2、SO
2CH
3、SO
2NH
2、CN、CONH
2、NHCOCH
3、NHCONH
2若しくはNO
2によって一置換、二置換、又は三置換されている、1~6個のC原子を有する直鎖若しくは分岐のアルキル若しくはO-アルキル又は3~6個のC原子を有する環状アルキルであり、
R
4は、H、D、1~6個のC原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル、又はHalであり、
R
5は、H、R
6、=S、=NR
6、=O、OH、COOH、Hal、NH
2、SO
2CH
3、SO
2NH
2、CN、CONH
2、NHCOCH
3、NHCONH
2、NO
2、又は非置換であるか、若しくはR
6によって一置換、二置換、又は三置換されている、1~10個のC原子を有する直鎖若しくは分岐アルキルであり、1~4個のC原子は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NH、NCH
3、-OCO-、-NHCONH-、-NHCO-、-NR
6SO
2R
7-、-COO-、-CONH-、-NCH
3CO-、-CONCH
3)、-C≡C-基及び/若しくは-CH=CH-基で置換されていてもよく、並びに/又は、加えて、1~10個のH原子は、F及び/若しくはClで置換されていてもよく、あるいは、非置換であるか、又はR
6で一置換、二置換、若しくは三置換されている、3~7個のC原子を有する単環式又は二環式の環状アルキルで置換されていてもよく、1~4個のC原子は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NH、NCH
3、-OCO-、-NHCONH-、-NHCO-、-NR
6SO
2R
7-、-COO-、-CONH-、-NCH
3CO-、-CONCH
3、-C≡C-基及び/若しくは-CH=CH-基によって置換されていてもよく、並びに/又は、加えて、1~10個のH原子は、F及び/若しくはClによって置換されていてもよく、あるいは、3~14個の炭素原子と、N、O及びSから独立して選択される0~4個のヘテロ原子とを含有し、非置換であるか、又はR
6によって一置換、二置換、若しくは三置換されている、単環式若しくは二環式ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリール又は環式アルキルアリールで置換されていてもよく、
R
6、R
7は、互いに独立して、H、=S、=NH、=O、OH、COOH、Hal、NH
2、SO
2CH
3、SO
2NH
2、CN、CONH
2、NHCOCH
3、NHCONH
2、NO
2、及び1~10個のC原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキルからなる群から選択され、1~4個のC原子は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NH、NCH
3、-OCO-、-NHCONH-、-NHCO-、-COO-、-CONH-、-NCH
3CO-、-CONCH
3-、-C≡C-基及び/若しくは-CH=CH-基によって置換されていてもよく、並びに/又は、加えて、1~10個のH原子は、F及び/若しくはClによって置換されていてもよく、
Halは、F、Cl、Br、又はIであり、
Dは、重水素である、化合物、
並びにその薬学的に許容される塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグ、及び立体異性体(全ての比率でのそれらの混合物を含む)である、項目1~39のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0275】
41.アデノシン阻害剤が、実施形態E1~E13のいずれか1つに記載のアデノシン阻害剤である、項目1~40のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0276】
42.対象における癌を処置する方法において使用するためのアデノシン阻害剤であって、方法が、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤と組み合わせてアデノシン阻害剤を対象に投与することを含み、
PD-1とTGFβ阻害剤が融合されており、融合分子のアミノ酸配列が、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列に対応し、
アデノシン阻害剤が、実施形態E1~E13のいずれか1つに記載のアデノシン阻害剤である、アデノシン阻害剤。
【0277】
43.対象における癌を処置する方法において使用するためのPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤であって、方法が、アデノシン阻害剤と組み合わせてPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤を対象に投与することを含み、
PD-1とTGFβ阻害剤が融合されており、融合分子のアミノ酸配列が、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列に対応し、
アデノシン阻害剤が、実施形態E1~E13のいずれか1つに記載のアデノシン阻害剤である、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤。
【0278】
44.対象における癌を処置する方法であって、方法が、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を対象に投与することを含み、
PD-1とTGFβ阻害剤が融合されており、融合分子のアミノ酸配列が、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列に対応し、
アデノシン阻害剤が、実施形態E1~E13のいずれか1つに記載のアデノシン阻害剤である、方法。
【0279】
45.対象における癌を処置する方法のための医薬の製造のための、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤の使用であって、方法が、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を対象に投与することを含み、
PD-1とTGFβ阻害剤が融合されており、融合分子のアミノ酸配列が、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列に対応し、
アデノシン阻害剤が、実施形態E1~E13のいずれか1つに記載のアデノシン阻害剤である、使用。
【0280】
46.対象における癌を処置する方法のための医薬の製造のためのアデノシン阻害剤の使用であって、方法が、アデノシン阻害剤をPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤と組み合わせて対象に投与することを含み、
PD-1とTGFβ阻害剤が融合されており、融合分子のアミノ酸配列が、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列に対応し、
アデノシン阻害剤が、実施形態E1~E13のいずれか1つに記載のアデノシン阻害剤である、使用。
【0281】
47.対象における癌を処置する方法のための医薬の製造のためのPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤の使用であって、方法が、アデノシン阻害剤と組み合わせてPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤を対象に投与することを含み、
PD-1とTGFβ阻害剤が融合されており、融合分子のアミノ酸配列が、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列に対応し、
アデノシン阻害剤が、実施形態E1~E13のいずれか1つに記載のアデノシン阻害剤である、使用。
【0282】
48.癌が、癌腫、リンパ腫、白血病、芽細胞腫、及び肉腫からなる群から選択される、項目1~47のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0283】
49.癌が、扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、グリオーマ、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、胃腸(管)癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽細胞種、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸部癌、脳癌、胃癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、胆道癌、及び頭頸部癌からなる群から選択される、項目1~48のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0284】
50.癌が、高いアデノシン媒介性シグナル伝達を有する、項目1~49のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0285】
51.癌が、アデノシンリッチである、項目1~50のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0286】
52.アデノシンリッチ癌が、腫瘍微小環境中に少なくとも0.5μM、少なくとも0.75μM、少なくとも1μM、少なくとも1.5μM、少なくとも2μM、少なくとも5μM、又は少なくとも10μMのアデノシンを有する、項目51に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0287】
53.癌が、アデノシンA2B受容体媒介性シグナル伝達を有する、項目1~52のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0288】
54.癌が、免疫抑制効果を発揮するアデノシン媒介性シグナル伝達を有する、項目1~53のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0289】
55.癌が、アデノシン遺伝子発現シグネチャーを有する、項目1~54のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0290】
56.アデノシン遺伝子発現シグネチャーが、CD73及び/又は組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)の発現を評価することを含む、項目55に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0291】
57.アデノシン遺伝子発現シグネチャーが、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL8、IL1β、及びPTGS2のうちの1つ以上の発現を評価することを含む、項目55又は56に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0292】
58.アデノシン遺伝子発現シグネチャーが、末梢血又は癌試料において測定される、項目55~58のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0293】
59.アデノシン遺伝子発現シグネチャーが、末梢血単核細胞において測定される、項目55~58のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0294】
60.癌が、CD73陽性である、項目1~59のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0295】
61.腫瘍微小環境中の細胞の少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%又は少なくとも75%が、それらの細胞表面に存在するCD73を有する、項目60に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0296】
62.CD73陽性癌における細胞当たりのCD73タンパク質の数が、少なくとも1000、少なくとも5000、少なくとも10000、少なくとも20000又は少なくとも40000である、項目60に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0297】
63.CD73発現が、EO771(ATCC CRL-3461)、EMT6(ATCC CRL-2755)、及び4T1(ATCC CRL-2539)からなる群から選択される1つの細胞株のCD73発現と少なくとも同じ高さである、項目60に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0298】
64.CD73陽性癌が、癌の試料を蛍光標識抗CD73抗体を用いて分析した場合に、それぞれのアイソタイプ対照と比較してFACSプロットにおいて別個のピークが観察される癌である、項目60に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0299】
65.PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤が癌の第一選択処置において投与される、項目1~64のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0300】
66.対象が、少なくとも1ラウンドの以前の癌治療を受けている、項目1~64のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0301】
67.癌が、以前の治療に対して耐性であったか、又は耐性になった、項目66に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0302】
68.PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤が、癌の第二選択処置又はそれ以降の選択処置において投与される、項目1~64のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0303】
69.癌が、前処置された再発性転移性NSCLC、切除不能局所進行性NSCLC、前処置されたSCLC ED、全身処置に不適切なSCLC、前処置された再発性又は転移性SCCHN、再照射に適格な再発性SCCHN、及び前処置されたマイクロサテライト状態不安定低(MSI-L)又はマイクロサテライト状態安定(MSS)転移性結腸直腸癌(mCRC)からなる群から選択される、項目68に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0304】
70.PD-L1阻害剤及びTGFβ阻害剤が融合されており、静脈内注入を介して投与される、項目1~69のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0305】
71.PD-L1阻害剤及びTGFβ阻害剤が融合されており、約1200mg又は約2400mgの用量で投与される、項目1~70のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0306】
72.PD-L1阻害剤及びTGFβ阻害剤が融合されており、約1200mgの用量でQ2Wで、又は約2400mgの用量でQ3Wで投与される、項目1~71のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0307】
73.アデノシン阻害剤が、経口投与される、項目1~72のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0308】
74.アデノシン阻害剤が、約25~300mgの用量又は約50~150mgの用量で投与される、項目1~73のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0309】
75.アデノシン阻害剤が、BIDで投与される、項目1~74のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0310】
76.方法が、導入フェーズを含み、任意選択的に導入フェーズの完了後に維持フェーズが続く、項目1~75のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0311】
77.化合物が、導入フェーズ若しくは維持フェーズのいずれかにおいて同時に投与され、任意選択的に他のフェーズにおいて非同時に投与されるか、又は化合物が、導入フェーズ及び維持フェーズにおいて非同時に投与されるか、又は化合物のうちの2つが、導入フェーズ及び維持フェーズにおいて同時に投与され、他の化合物が非同時に投与される、項目76に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0312】
78.同時投与が、いずれかの順序で逐次的に又は実質的に同時に行われる、項目77に記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0313】
79.PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤が融合されており、維持フェーズが、融合されたPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤を単独で又はアデノシン阻害剤と同時に投与することを含む、項目76~78のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0314】
80.導入フェーズが、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤の同時投与を含む、項目76~79のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0315】
81.癌が、対象から採取された試料中のPD-L1発現に基づいて選択されている、項目1~80のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0316】
82.癌が、対象から採取された試料中のCD73発現に基づいて選択されている、項目1~81のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0317】
83.癌が、対象から採取された試料中のアデノシンのレベルに基づいて選択されている、項目1~82のいずれか1つに記載の使用のための化合物、処置方法、又は使用。
【0318】
84.PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤、並びに少なくとも薬学的に許容される賦形剤又はアジュバントを含む医薬組成物。
【0319】
85.PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤、並びに少なくとも薬学的に許容される賦形剤又はアジュバントを含む医薬組成物であって、
PD-1阻害剤が、抗PD(L)1抗体であり、TGFβ阻害剤が、TGFβRII又は抗TGFβ抗体であり、アデノシン阻害剤が、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤である、医薬組成物。
【0320】
86.PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤、並びに少なくとも薬学的に許容される賦形剤又はアジュバントを含む医薬組成物であって、
PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤が、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質として融合されており、アデノシン阻害剤が、アデノシンA2A及びA2B受容体阻害剤である、医薬組成物。
【0321】
87.PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤、並びに少なくとも薬学的に許容される賦形剤又はアジュバントを含む医薬組成物であって、
PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤が、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有する抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質として融合されており、アデノシン阻害剤が、実施形態E1~E13のいずれか1つに記載のアデノシン阻害剤である、医薬組成物。
【0322】
88.治療に使用するための、例えば、癌の処置に使用するための、項目84~87のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0323】
89.PD-1阻害剤と、アデノシン阻害剤及びTGFβ阻害剤と組み合わせてPD-1阻害剤を使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキット。
【0324】
90.アデノシン阻害剤と、アデノシン阻害剤をPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤と組み合わせて使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキット。
【0325】
91.TGFβ阻害剤と、TGFβ阻害剤をPD-1阻害剤及びアデノシン阻害剤と組み合わせて使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキット。
【0326】
92.PD-1阻害剤と、PD-1阻害剤をアデノシン阻害剤及びTGFβ阻害剤と組み合わせて使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットであって、
PD-1阻害剤が、抗PD(L)1抗体であり、TGFβ阻害剤が、TGFβRII又は抗TGFβ抗体であり、アデノシン阻害剤が、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤である、キット。
【0327】
93.アデノシン阻害剤と、VEGF阻害剤をPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤と組み合わせて使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットであって、
PD-1阻害剤が、抗PD(L)1抗体であり、TGFβ阻害剤が、TGFβRII又は抗TGFβ抗体であり、アデノシン阻害剤が、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤である、キット。
【0328】
94.TGFβ阻害剤と、TGFβ阻害剤をPD-1阻害剤及びアデノシン阻害剤と組み合わせて使用して対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるための説明書を含む添付文書と、を含むキットであって、
PD-1阻害剤が、抗PD(L)1抗体であり、TGFβ阻害剤が、TGFβRII又は抗TGFβ抗体であり、アデノシン阻害剤が、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤である、キット。
【0329】
95.PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、並びに対象における癌を処置するか、又はその進行を遅延させるためにアデノシン阻害剤と組み合わせてPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤を使用するための説明書を含む添付文書を含むキットであって、
PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤が、抗PD(L)1:TGFβRII融合タンパク質として融合されており、アデノシン阻害剤が、アデノシンA2A及び/又はA2B受容体阻害剤である、キット。
【0330】
96.説明書に、医薬が、PD-L1発現について陽性反応を示す癌を有する対象の処置における使用を意図するものであることが記載されている、項目89~95のいずれか1つに記載のキット。
【0331】
97.説明書に、医薬が、CD73発現について陽性反応を示す癌を有する対象の処置における使用を意図していることが記載されている、項目89~95のいずれか1つに記載のキット。
【0332】
98.PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びアデノシン阻害剤を宣伝するための方法であって、対象から採取された試料中のPD-L1若しくはCD73の発現又はアデノシンのレベルに基づいて選択された癌などの癌を有する対象を処置するための組み合わせの使用を標的オーディエンスに推奨することを含む、方法。
【0333】
本明細書中に引用された全ての参考文献は、本発明の開示において参照によって組み込まれる。
【0334】
本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料を本発明の実施又は試験において使用することができるが、好適な実施例を以下に記載する。実施例では、汚染活性のない標準試薬及び緩衝液(実用的な場合はいつでも)が使用される。実施例は、特に、明示的に示された特徴の組み合わせに限定されないように解釈されるべきであるが、例示された特徴は、本発明の技術的問題が解決されるならば、再び無制限に組み合わされてもよい。同様に、任意の請求項の特徴は、1つ以上の他の請求項の特徴と組み合わせることができる。以上、本発明を要約して及び詳細に記載してきたが、本発明は以下に示される実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0335】
実施例1:アデノシンリッチ腫瘍モデル及びアデノシン低腫瘍モデルの選択
アデノシン阻害を試験するための適切なインビボモデルを選択するために、アデノシン及びAMPのレベルを4T1及びMC38腫瘍から測定した。BALB/cマウスの右乳腺脂肪体に、0.1mLのPBS中の5×10
4個の4T1細胞を接種し、C57BL/6マウスの右側腹部に、0.1mLのPBS中の1×10
6MC38細胞を皮下接種した。腫瘍を収集し、急速凍結し、50mgの組織を使用して、キャピラリー電気泳動飛行時間型質量分析(CE-TOFMS)及びキャピラリー電気泳動-三連四重極型質量分析(CE-QqQMS)によって腫瘍内アデノシン及びAMP濃度を測定した。AMP及びアデノシンの平均濃度は、それぞれ、MC38モデルについては850.4±215.6(±SD)nM/g及び87.2±51.9nM/gであり、4T1モデルについては296.5±250.5nM/g及び210.2±158.2nM/gであった(
図3A及びBを参照)。
【0336】
AMP及びアデノシン濃度が、MC38及び4T1腫瘍におけるCD73(AMPをアデノシンに分解する酵素)の細胞外発現に対応するかどうかを判定するために、細胞株を用いてフローサイトメトリー分析を行った。酵素の発現は、Quantum(商標)Simply Cellular(登録商標)キットからのビーズを使用して確立された抗CD73染色抗体の結合能力に基づいて、細胞当たりのCD73コピー数として定量した。4T1腫瘍細胞は、MC38腫瘍細胞と比較して、より高いレベルのCD73を発現した(それぞれ、CD73コピー数/細胞の128,106.07及び6174.57)(
図3C及びDを参照)。したがって、4T1腫瘍は、高レベルのCD73を発現し、AMPをアデノシンに効率的に変換し、腫瘍組織内で高レベルのアデノシンの蓄積をもたらす。逆に、MC38腫瘍は、おそらくCD73によるAMPのアデノシンへのより遅い変換に起因して、低レベルのCD73を発現し、より高いAMP及びより低いアデノシンレベルを含有する。
【0337】
更に、細胞外CD73タンパク質レベルを、5つの更なる同系マウス腫瘍細胞株:EMT6及びE0771乳腺、MBT2膀胱、H22肝細胞癌細胞株においてフローサイトメトリーによって評価した。EMT6及びE0771腫瘍細胞株におけるCD73の発現(それぞれ、1細胞当たり68,588.45及び47,966.98のCD73コピー数を示す)は、4T1腫瘍細胞と比較して低かったが、MC38腫瘍細胞と比較して高かった(
図3E及びFを参照)。MBT2及びH22腫瘍細胞では、有意なレベルのCD73発現は検出されなかった(
図3G及びHを参照)。
【0338】
実施例2:PD-1及びTGFβの二重阻害は、アデノシンリッチ腫瘍モデルにおいてアデノシン受容体A
2Bの発現を増加させる。
ビントラフスプアルファ処置が、A
2A若しくはA
2B受容体又はNT5E(CD73をコードする遺伝子)の発現を調節するかどうかを判定するために、確立された4T1及びMC38腫瘍を有するマウスを、20mg/kgアイソタイプ抗体又は24.6mg/kgのビントラフスプアルファで処置した。処置後6日目の腫瘍のRNAseq分析は、両方のモデルにおいてNT5E(CD73)又はA
2Aの発現に変化がないことを明らかにした(
図4A及びBを参照)。対照的に、
図4Cに示されるように、A
2Bの発現は、CD73
hi4T1モデルにおいてビントラフスプアルファでの処置によって増加したが、CD73
lowMC38モデルにおいては増加せず、これは、ビントラフスプアルファでの処置後に増加するA
2B発現が、アデノシンリッチな環境においてビントラフスプアルファの治療効力を潜在的に制限し得ることを示唆する。
【0339】
実施例3:PD-1、TGFβ、及びアデノシンシグナル伝達の共阻害は、アデノシンリッチ腫瘍モデルにおいて腫瘍体積を相乗的に減少させる。
二重A2A/A2B受容体阻害剤「化合物A」((S)-7-オキサ-2-アザ-スピロ[4.5]デカン-2-カルボン酸[7-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-4-メトキシ-チアゾロ[4,5-c]ピリジン-2-イル]-アミド)及びビントラフスプアルファによる組み合わせ処置が、CD73hi又はCD73lowモデルのいずれかにおいて腫瘍増殖を阻害することができるかどうかを判定するために、腫瘍増殖を7つの同系腫瘍モデルにおいてモニターした。動物に、CD73hi腫瘍細胞(4T1、E0771、若しくはEMT6)又はCD73lowMC38、H22、若しくはMBT2腫瘍細胞のいずれかを接種した。全ての腫瘍モデルについて、動物を、1)ビヒクル及びアイソタイプ、2)化合物A及びアイソタイプ、3)ビヒクル及びビントラフスプアルファ、又は4)化合物A及びビントラフスプアルファのいずれかで処置した。
【0340】
CD73
hi4T1腫瘍モデルにおいて、雌BALB/cマウスの右乳腺脂肪体に5×10
4個の4T1細胞を接種し、平均腫瘍体積が約60mm
3に達したときに、化合物A(300mg/kg po、bid)、ビントラフスプアルファ(24.6mg/kg iv、0、3、6日目)、化合物A+ビントラフスプアルファで処置した。ビヒクル(po、bid)及びアイソタイプ対照抗体注射(20mg/kg iv、0、3、6日目)を対照として使用した。
図5に反映されるように、ビントラフスプアルファによる処置は、ビヒクル対照と比較して、処置開始後13日目に、わずかであるが統計的に有意な腫瘍増殖阻害(T/C=86.2%及びp=0.0286)を誘導した。化合物Aは、ビントラフスプアルファ又はビヒクル対照と比較した場合、それぞれp=0.0022及びp<0.0001で、有意により強い腫瘍増殖阻害(T/C=68.5%)を誘導した。しかし、最も強い腫瘍増殖阻害は、化合物Aとビントラフスプアルファ(T/C=47.7%)との組み合わせで処置したマウスにおいて検出され、これは、化合物A(p=0.0002)又はビントラフスプアルファ(p<0.0001)単独での処置と比較して統計的に高かった。
【0341】
第2CD73
hiEMT6腫瘍モデルにおいて、雌BALB/cマウスの右乳腺脂肪体に2.5×10
5個のEMT6細胞を接種し、平均腫瘍体積が約60mm
3に達したときに、化合物A(300mg/kg po、BID)、ビントラフスプアルファ(24.6mg/kg iv、0、3、6日目)、化合物A+ビントラフスプアルファで処置した。ビヒクル(po、BID)及びアイソタイプ対照抗体注射(20mg/kg iv、0、3、6日目)を対照として使用した。このモデルにおいて、化合物A単独は、処置開始後10日目に腫瘍増殖阻害を示さなかったが、ビントラフスプアルファと組み合わせて腫瘍増殖阻害を有意に増強し、CR(完全応答)を有する4匹のマウスをもたらした(T/C=24.4%、ビヒクル対照及び化合物A単剤療法と比較してp<0.0001、又はビントラフスプアルファ単剤療法と比較してp=0.0002)(
図6を参照)。
【0342】
第3のCD73
hi腫瘍モデルでは、雌C57BL/6マウスの右乳腺脂肪体に1.5×10
5個のE0771細胞を接種し、平均腫瘍体積が約75mm
3に達したときに処置群に無作為化した。E0771腫瘍モデルは、ビントラフスプアルファの元の24.6mg/kg(iv、0、3、及び6日目)用量に対して高い感受性を示す。したがって、このモデルにおいて化合物Aとのその組み合わせ可能性を試験するために、本発明者らは、ビントラフスプアルファの用量を24mg/kg(iv、0日目、3日目、及び6日目)から8.2mg/kg(iv、0日目、3日目、6日目)に減少させなければならなかった。したがって、E0771腫瘍担持マウスを、化合物A(300mg/kg po、BID)、ビントラフスプアルファ(8.2mg/kg iv、0、3、6日目)、化合物A+ビントラフスプアルファで、0日目から(それらを処置群に無作為化したとき)開始して処置した。ビヒクル(po、BID)及びアイソタイプ対照抗体注射(6.65mg/kg iv、0、3、6日目)を対照として使用した。より低い用量(8.2mg/kg、iv、0、3、6日目)であっても、単剤療法としてのビントラフスプアルファは、このモデルにおいて処置開始後18日目に有意な腫瘍増殖阻害を誘導した(T/C=65.7%、p=0.02)(
図7を参照)。単剤療法としての化合物A(300mg/kg、po、BID)も1CRで腫瘍増殖阻害を誘導したが(T/C=72.9%)、その差はビヒクル対照と比較して統計的有意性に達しておらず(p=0.1348)、ビントラフスプアルファのみで処置した動物と比較して異ならなかった(p=0.93)。しかしながら、化合物Aは、ビントラフスプアルファと組み合わせて腫瘍成長阻害を有意に増加させ、CRを有する4匹のマウスをもたらした(T/C=49.3%、対照群と比較してp=0.0002)。
【0343】
化合物Aとビントラフスプアルファとの組み合わせ可能性が腫瘍中のアデノシンレベルに依存することを更に確認するために、より低いCD73発現を有する3つの更なる同系腫瘍モデル(MC38、H22及びMBT2)を使用した(
図3を参照)。MC38腫瘍モデルにおいて、雌C57BL/6マウスの右下側腹部に1×10
6個のMC38細胞を接種し、平均腫瘍体積が約70mm
3に達したときに、化合物A(300mg/kg po、BID)、ビントラフスプアルファ(24.6mg/kg iv、0、3、6日目)、化合物A+ビントラフスプアルファで処置した。ビヒクル(po、BID)及びアイソタイプ対照抗体注射(20mg/kg iv、0、3、6日目)を対照として使用した。この腫瘍モデルにおいて、化合物A単剤療法による処置後に腫瘍増殖阻害は観察されなかった。化合物A及びビントラフスプアルファでのマウスの組み合わせ処置は、有意な腫瘍増殖阻害(T/C=39.9%、p<0.0001)をもたらしたが、処置開始後22日目に、ビントラフスプアルファ単独での処置(T/C=42.1%、p=0.98)と比較して、いかなる有意な更なる利益も提供しなかった(
図8を参照)。
【0344】
第2のCD73
lowH22腫瘍モデルにおいて、雌BALB/cマウスの右上側腹部に、1×10
6個のH22細胞を接種し、平均腫瘍体積が約55mm3に達したときに、化合物A(300mg/kg po、BID)、ビントラフスプアルファ(24.6mg/kg iv、0、3、6日目)、化合物A+ビントラフスプアルファで処置した。ビヒクル(po、BID)及びアイソタイプ対照抗体注射(20mg/kg iv、0、3、6日目)を対照として使用した。H22腫瘍担持マウスにおいて、化合物A及びビントラフスプアルファによる組み合わせ処置は、処置開始後16日目に腫瘍増殖阻害(T/C=48.3%、p<0.0001)をもたらし、これは、ビントラフスプアルファ単独による処置(T/C=34.4%、p=0.6015)と統計的に異ならなかった(
図9を参照)。
【0345】
最後に、第3のCD73
lowMBT2腫瘍モデルにおいて、雌C3Hマウスの右上側腹部に1×10
6個のMBT2細胞を接種し、平均腫瘍体積が約53mm
3に達したときに、化合物A(300mg/kg po、BID)、ビントラフスプアルファ(24.6mg/kg iv、0、3、6日目)、化合物A+ビントラフスプアルファで処置した。ビヒクル(po、BID)及びアイソタイプ対照抗体注射(20mg/kg iv、0、3、6日目)を対照として使用した。CD73
lowMC38及びH22腫瘍モデルと同様に、MBT2腫瘍を有するマウスにおいて、化合物A及びビントラフスプアルファによる組み合わせ処置は、ビントラフスプアルファ単独(T/C=29.9%、p=0.9574)と比較して統計的に異ならない腫瘍増殖阻害をもたらした(T/C=23.1%、14日目の対照群と比較してp<0.0001)(
図10を参照)。
【0346】
まとめると、これらのデータは、CD73lowではなく、CD73hi、すなわちアデノシンリッチ腫瘍モデルにおいて、PD-1、TGFβ、及びアデノシンシグナル伝達の共阻害が有意な腫瘍増殖阻害を示すことを示唆する。
【0347】
実施例4:PD-1、TGFβ、及びアデノシンシグナル伝達の共阻害は、安定なアデノシン類似体NECAの存在下で腫瘍細胞と共培養したヒトT細胞からのIFNγの産生を相乗的にレスキューする。
MDA-MB-231ヒト乳癌細胞と共培養したEBV陽性ヒトPBMCを用いたインビトロアッセイにおいて、化合物A単独又はビントラフスプアルファとの組み合わせによる、アデノシン-駆動抑制からのヒトT細胞活性化の防御能を試験した。このアッセイは、EBV LMP-2ペプチドを負荷したMDA-MB-231腫瘍細胞と、化合物Aで、又はビントラフスプアルファ若しくはアイソタイプ対照抗体と組み合わせて前処置したEBV特異的T細胞とを、NECAの存在下で共培養することによって設定した。
【0348】
簡潔には、MDA-MB-231腫瘍細胞を、平底96ウェルプレートに2.6×104個の細胞/ウェルで播種し(10%FBSを補充した100μlのRPMI1640培地中)、EBVペプチド(30ng/ml、CLGGLLTMV、21st Century)をロードした。EBV特異的T細胞を、丸底96ウェルプレート中で、化合物A(100nM)及び/又は1μg/mlのビントラフスプアルファ若しくはアイソタイプ対照(hIgG1不活性抗PD-L1)抗体と共に15分間、予めインキュベートした。次いで、10μMのNECA又はDMSO対照を細胞に添加し、ウェル当たり1.3×104個のT細胞(100μl体積中)を、ペプチドをロードしたMDA-MB-231腫瘍細胞を有するプレートに、0.5:1のT細胞対腫瘍細胞比で移した。74時間の共培養後に細胞培養上清を収集し、ヒトIFNγELISAキット(R&D Systems)を製造業者の説明書に従って使用してIFNγレベルを測定した。IFNγ分泌レスキューのパーセンテージを、以下の式を使用して計算した:100%-(NECA及び化合物A単独又はビントラフスプアルファとの組み合わせで処置した試料中のIFNγ-対照試料中のIFNγ)÷(NECAを有する試料中のIFNγ-対照試料中のIFNγ)*100%。
【0349】
このアッセイにおいて、化合物Aは、ヒトT細胞からのIFNγ分泌を有意にレスキューしたが、ビントラフスプアルファ単剤療法はレスキューしなかった(NECA及びアイソタイプ対照抗体のみの存在下でMDA-MB-231腫瘍細胞と共培養したT細胞と比較して、化合物A及びビントラフスプアルファ単剤療法についてそれぞれ約71%及び24%、p=0.01及びp=0.66)。同時に、このアッセイにおける化合物A及びビントラフスプアルファによる組み合わせ処置は、IFNγ分泌の最大(約127%)レスキューをもたらし、これは、化合物A又はビントラフスプアルファ単剤療法と比較して有意に強力であった(それぞれp≦0.05及びp<0.001)(
図11)。
【0350】
実施例5:PD-1、TGFβ及びアデノシンシグナル伝達の共阻害は、CD73-KO腫瘍モデルにおいて腫瘍体積を相乗的に減少させない。
実施例3の結果に加えて、二重A2A/A2B受容体阻害剤「化合物A」((S)-7-オキサ-2-アザ-スピロ[4.5]デカン-2-カルボン酸[7-(3,6-ジヒドロ-2Hピラン-4-イル)-4-メトキシ-チアゾロ[4,5-c]ピリジン-2-イル]-アミド)及びビントラフスプアルファによる組み合わせ処置による腫瘍増殖阻害を、CD73がGenCRISPR(商標)遺伝子編集技術(GenScript USA,Inc)を用いてノックアウトされた同系4T1腫瘍モデルにおいて調べた。4T1腫瘍細胞におけるCD73ノックアウトの有効性をフローサイトメトリーによって確認した。雌BALB/cマウスの右乳腺脂肪体に1×105個のCD73 KO 4T1腫瘍細胞を接種し、平均腫瘍体積が約60mm3に達したときに、化合物A(300mg/kg po、bid)、ビントラフスプアルファ(24.6mg/kg iv、0、3、6日目)、化合物A+ビントラフスプアルファで処置した。ビヒクル(po、bid)及びアイソタイプ対照抗体注射(20mg/kg iv、0日目、3日目、6日目)を対照として使用した。すなわち、動物を、1)ビヒクル及びアイソタイプ、2)化合物A及びアイソタイプ、3)ビヒクル及びビントラフスプアルファ、又は4)化合物A及びビントラフスプアルファビヒクルのいずれかで処置した。
【0351】
図12に反映されるように、ビントラフスプアルファによる処置は、ビヒクル対照と比較して、処置開始後18日目に統計的に有意な腫瘍増殖阻害(T/C=75.4%及びp<0.001)を誘導した。対照的に、化合物Aは、ビヒクル対照と比較した場合、腫瘍増殖阻害を誘導しなかった(T/C=108%)。しかし、化合物Aとビントラフスプアルファとの組み合わせは、このCD73 KO 4T1腫瘍モデルにおいてビヒクル処置対照マウスと比較して統計的に有意な腫瘍増殖阻害を示し(T/C=85.2%及びp<0.001)、これは、ビントラフスプアルファ単独での処置と統計的に異ならなかった(p=0.16)(
図12を参照)。
【0352】
【配列表】
【国際調査報告】