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特表2024-520773鉄道軌道のきずの検出のための方法および鉄道車両
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  • 特表-鉄道軌道のきずの検出のための方法および鉄道車両 図1
  • 特表-鉄道軌道のきずの検出のための方法および鉄道車両 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】鉄道軌道のきずの検出のための方法および鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61K 9/08 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
B61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575541
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 NL2022050155
(87)【国際公開番号】W WO2022260508
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】2028399
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502053029
【氏名又は名称】テフニーシェ・ユニヴェルツィーテイト・デルフト
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジリ
(72)【発明者】
【氏名】シェン,チェン
(57)【要約】
鉄道車両(1)であって、鉄道車両(1)を鉄道軌道(2)に沿って案内するように適応された軌条輪(3、4)を有する鉄道車両(1)であり、車輪(3、4)のそれぞれが、車輪(3、4)用の軸受を備える中間軸箱(7、8)によって車両(1)に接続され、前記軸箱(7、8)が、少なくとも1つの加速度計(9)を備え、車両(1)に、または車両(1)の外部に、少なくとも1つの加速度計(9)からの信号のための受信部(11)を備える測定システム(10)が存在する、鉄道車両(1)で、測定システム(10)が、少なくとも1つの加速度計からの予想信号の推定を生成する車両-鉄道軌道相互作用モデル(12)を備え、受信部(11)および車両-鉄道軌道相互作用モデル(12)が、少なくとも1つの加速度計(9)からの測定信号と予想信号とを比較するために比較器(13)に接続し、比較器(13)が、測定システム(10)の調整部(14)に接続し、調整部(14)が、少なくとも1つの加速度計(9)からの予想信号の推定を少なくとも1つの加速度計(9)からの測定信号により近づけるように、車両-鉄道軌道相互作用モデル(12)のパラメータを調節するように構成される、鉄道車両(1)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両(1)であって、前記鉄道車両(1)を鉄道軌道(2)に沿って案内するように適応された軌条輪(3、4)を有する前記鉄道車両(1)であり、車輪(3、4)のそれぞれが、前記車輪(3、4)用の軸受を備える中間軸箱(7、8)によって前記鉄道車両(1)に接続され、前記中間軸箱(7、8)が、少なくとも1つの加速度計(9)を備え、前記鉄道車両(1)に、または前記鉄道車両(1)の外部に、前記少なくとも1つの加速度計(9)からの信号のための受信部(11)を備える測定システム(10)が存在する、前記鉄道車両(1)であって、
前記測定システム(10)が、前記少なくとも1つの加速度計(9)からの予想信号の推定を生成する車両-鉄道軌道相互作用モデル(12)を備え、
前記受信部(11)および前記車両-鉄道軌道相互作用モデル(12)が、前記少なくとも1つの加速度計(9)からの測定信号と予想信号とを比較するために比較器(13)に接続し、
前記比較器(13)が、前記測定システム(10)の調整部(14)に接続し、
前記調整部(14)が、前記少なくとも1つの加速度計(9)からの前記予想信号の前記推定を前記少なくとも1つの加速度計(9)からの前記測定信号により近づけるように、前記車両-鉄道軌道相互作用モデル(12)のパラメータ(15)を調節するように構成されることを特徴とする鉄道車両(1)。
【請求項2】
前記車両-鉄道軌道相互作用モデル(12)が、レール、軌道パッドを含む締結具、枕木、バラスト、スラブ、および基礎構造を含む群から選択された前記鉄道軌道(2)の各部分のモデルを含むことを特徴とする、請求項1に記載の鉄道車両(1)。
【請求項3】
前記車両-鉄道軌道相互作用モデル(12)の前記パラメータ(15)が、剛性、慣性、減衰、形状の凹凸を含む群から選択された前記鉄道軌道(2)の各部分の調整パラメータを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の鉄道車両(1)。
【請求項4】
鉄道軌道(2)のきずの検出のための方法であって、鉄道車両(1)の軸箱(7、8)の少なくとも1つの加速度計(9)を備える前記鉄道車両(1)が、鉄道を振動させるために前記鉄道軌道(2)に沿って移動させられ、前記少なくとも1つの加速度計(9)からの信号が、前記鉄道軌道(2)のきずの検出のために使用される、方法であって、
前記少なくとも1つの加速度計(9)からの予想信号が、車両-鉄道軌道相互作用モデル(12)を用いて推定され、
前記少なくとも1つの加速度計からの測定信号と比較され、
前記車両-鉄道軌道相互作用モデル(12)のパラメータが、前記少なくとも1つの加速度計(9)からの前記予想信号の前記推定を前記少なくとも1つの加速度計(9)からの前記測定信号により近づけるように調整されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道軌道のきずの検出のための方法および鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第2750955号は、鉄道車両を鉄道軌道に沿って案内するように適応された軌条輪を有する鉄道車両を開示し、ここでは、車輪のそれぞれは、車輪用の軸受を備える中間軸箱によって車両に接続され、上記軸箱は、少なくとも1つの加速度計を備え、車両に、または車両の外部に、少なくとも1つの加速度計からの信号のための受信部を備える測定システムが存在する。この目的のために、知られている鉄道車両は、鉄道軌道表面の振動性の動きを測定するように配置された非接触型振動計を備えており、車両の、または車両の外部の測定システムは、非接触型振動計を用いて測定された鉄道軌道表面の振動を、少なくとも1つの加速度計からの振動信号と比較するために使用される。
【0003】
欧州特許第2750955号に開示されているように、列車の車輪と軌道との間の相互作用により、車輪とレールとの間に動的な力が生じ、それは、全体として、構成要素および軌道システムの品質や性能を低下させる。また、構成要素間の接続部分も劣化する。(徐々に)劣化する構成要素としては、レール、ポイントおよびクロッシング、絶縁継目、軌道パッド、留め具(緩みおよび脱落)、枕木(損傷または浮き)、ならびにそれらの接続部分が含まれる。また、バラストおよびスラブの質の局所的な低下も懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第2750955号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄道軌道の各部分の劣化を早期に検出し、鉄道軌道の劣化が問題となる前に、鉄道軌道のこれらの各部分の保守を開始することを可能にするための迅速で信頼性の高いシステムまたは方法に対する必要性がある。したがって、本目的は、詳細には、保守を必要とする鉄道軌道の部分の検出を可能にすることである。これに関して、劣化はまた、当初の設計と比較された(新しい)構造物のずれとして理解することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、添付の特許請求項の1つまたは複数に記載の方法および鉄道車両が提示される。
【0007】
本発明の第1の態様では、測定システムは、少なくとも1つの加速度計からの予想信号の推定を生成する車両-鉄道軌道相互作用モデルを備え、受信部および車両-鉄道軌道相互作用モデルは、少なくとも1つの加速度計からの測定信号と予想信号とを比較するために比較器に接続し、比較器は、測定システムの調整部に接続し、この調整部は、少なくとも1つの加速度計からの予想信号の推定を少なくとも1つの加速度計からの測定信号により近づけるように、車両-鉄道軌道相互作用モデルのパラメータを調節するように構成される。
【0008】
したがって、本発明はまた、鉄道軌道のきず(a flaw or flows)の検出のための方法に具現化され、ここでは、車両の軸箱に少なくとも1つの加速度計を備える鉄道車両が、鉄道を振動させるために鉄道軌道に沿って移動させられ、少なくとも1つの加速度計からの信号が、鉄道軌道のきずの検出のために使用され、少なくとも1つの加速度計からの予想信号が、車両-鉄道軌道相互作用モデルを用いて推定され、少なくとも1つの加速度計からの測定信号と比較され、その後、車両-鉄道軌道相互作用モデルのパラメータが、少なくとも1つの加速度計からの予想信号の推定を少なくとも1つの加速度計からの測定信号により近づけるように調整される。
【0009】
したがって、車両-鉄道軌道の相互作用モデルの信頼性は連続的に改善され、それに応じて、車両-鉄道軌道相互作用モデルの調整されたパラメータは、したがって、保守が必要となる可能性があることを信頼性高く示すことができる。従来技術の方法と比較して、本発明は、鉄道軌道およびその各部分の許容可能な劣化のレベルを事前に科学的に決定することができ、過去のデータや経験に基づくデータに基づく必要がないという利点を提供する。
【0010】
本発明の他の利点の1つは、本発明の方法を実施するために特定の検査車両を必要としないことである。本発明では、標準の鉄道車両を適用することができる。このことは、鉄道軌道をより多く使用することができるため、鉄道軌道自体の運用コストの削減を含め、コストを大幅に削減する。
【0011】
車両-鉄道軌道相互作用モデルは、レール、軌道パッドを含む締結具、枕木、バラスト、および基礎構造を含む群から選択された鉄道軌道の各部分のモデルを含むことが好ましい。これにより、保守を必要とする鉄道軌道の特定の部分を同定することができる。
【0012】
車両-鉄道軌道相互作用モデルのパラメータが、剛性、慣性、減衰、形状の凹凸を含む群から選択された鉄道軌道の各部分の調整パラメータを含むときに最良の結果を達成することができることが分かる。
【0013】
以下、本発明による方法および鉄道車両の例示的な実施形態の図面を参照して本発明をさらに説明するが、これは、添付の特許請求の範囲に関して限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の鉄道車両の概略図である。
図2】本発明の鉄道車両に関連して使用される車両-鉄道軌道相互作用モデルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図の中で、同じ参照数字が付されているときは常に、これらの数字は同じ部品を指す。
【0016】
図1は、異常のある、または異常のない軌道2に沿って特定の速度で走行する車両1を示す。車輪3、4が動くと、レール17および基礎構造5を含む軌道2の振動を引き起こすので、車輪とレールの動的な相互作用が引き起こされる。バラスト16(またはスラブ)がある場合、これも振動を引き起こされる場合がある。枕木6がレール17を離散的に支持していることにより、車両1の速度と枕木6の間隔に対応する通過周波数およびその高調波で、上記レール17の周期的な振動が引き起こされる。
【0017】
車両1は、車輪3、4用の軸受を備える軸箱7、8を有する。加速度計9は、車輪3、4の軸受の振動、車輪3、4とレール17との動的な車輪-レール接触の振動、車輪3、4およびレール17の表面の振動、ならびに鉄道2軌道自体の振動に対応する信号を提供する。
【0018】
本発明は、剛性など、時間的および空間的に変化する異なる軌道パラメータが、加速度計9からの加速度信号での異なる特性周波数をもたらすという見識に基づいている。提示する本発明の方法および鉄道車両1は、鉄道2軌道の異常が、鉄道軌道2の構成要素内および構成要素間の力、応力、およびひずみによって引き起される劣化により発生し、これらの力、応力、およびひずみが、車輪-レール相互作用の最終的な結果であることを認識する。この劣化により、鉄道2軌道とその各構成要素の応答は、劣化がどこでどのように発生したかに応じて、当初の応答を発達させ、当初の応答からずれる。この点で、鉄道2軌道システムの異なる構成要素および接続部分が、異なる剛性、減衰、波長特性でシステムのそれぞれの機能を果たすように設計されていることが認められる。それに対応して、これらの応答は異なる周波数コンテンツおよび大きさを示す。これらの応答は、構成要素および接続部分の劣化、ならびにこれらの構成要素間の相互作用にしたがって生じ、その結果、入力と応答の関係が変化し、したがって、システムの状態、ならびにその構成要素および接続部分の状態は、応答の振動解析によって評価することができる。
【0019】
本発明の車両1は、少なくとも1つの加速度計9からの信号のための受信部11を備える、車両1の、または車両1の外部の測定システム10を備える。例えば、鉄道2軌道の異なる部分のパラメータの剛性と加速度計9からの加速度信号との間の定量的関係は、車両-鉄道軌道相互作用モデル12によって適切に提供することができる。したがって、測定システム10は、少なくとも1つの加速度計9からの予想信号の推定を生成する車両-鉄道軌道相互作用モデル12をさらに備える。受信部11および車両-鉄道軌道相互作用モデル12は、少なくとも1つの加速度計9からの測定信号と予想信号とを比較するために比較器13に接続する。ここで、比較器13は、測定システム10の調整部14に接続し、この調整部14は、少なくとも1つの加速度計9からの予想信号の推定を少なくとも1つの加速度計9からの測定信号により近づけるように、車両-鉄道軌道相互作用モデル12のパラメータを調節するように構成される。
【0020】
鉄道2軌道は、例えば、2層の離散的な支持モデルによって表すことができる(図2参照)。レールおよび枕木は梁要素としてモデル化することができる。バラストおよび軌道パッドは、離散的なばね-ダンパの対としてモデル化することができる。車輪は剛体質量として単純化することができる。懸架ばねからの荷重は、車輪への鉛直方向の荷重として加えられる。車輪-レールの接触はヘルツばねとしてモデル化することができる。したがって、車両-鉄道軌道相互作用モデル12は、レール、軌道パッドを含む締結具、枕木、バラスト、および基礎構造を含む群から選択された鉄道軌道の各部分のモデルを含む。車両-鉄道軌道相互作用モデル12のパラメータは、剛性、慣性、減衰、形状の凹凸を含む群から選択された鉄道軌道の各部分の調整パラメータを含む。これらのパラメータは、鉄道2軌道の各部分の保守が必要か否かを決定するために、参照符号15によって表されるように利用可能である。
【0021】
以上、本発明の方法および車両の例示的な実施形態を参照して本発明を論じてきたが、本発明は、この特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明から逸脱することなく様々に変えることができる。したがって、論じた例示的な実施形態は、それに従って、添付の特許請求の範囲を厳密に解釈するために用いてはならない。逆に、この実施形態は、添付の特許請求の範囲をこの例示的な実施形態に限定することを意図するのではなく、単に特許請求の範囲の文言を説明することを意図している。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲のみにしたがって解釈されるものとし、特許請求の範囲の文言においてあり得る曖昧さは、この例示的な実施形態を用いて解明されるものとする。
図1
図2
【国際調査報告】