(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】パワー半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20240517BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L29/78 301B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575649
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 KR2022008225
(87)【国際公開番号】W WO2022260476
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0076036
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0070240
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504210651
【氏名又は名称】ジュスン エンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン チュル ジュ
【テーマコード(参考)】
5F045
5F140
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明の実施形態は、SiC基板の上に活性層を形成するステップを含むパワー半導体素子の製造方法であって、活性層を形成するステップは、SiC基板の上にソースガスを噴射するステップと、ソースガスの噴射の中断後にパージガスを噴射する1次パージステップと、1次パージの噴射の中断後にリアクタントガスを噴射するステップと、リアクタントガスの噴射の中断後にパージガスを噴射する2次パージステップと、を含んでいてもよい。
したがって、本発明の実施形態によれば、低温下で活性層を形成することができる。このため、基板又はその上部に形成された薄膜が高温の熱によって損傷されることを防ぐことができる。また、活性層の形成のために基板を昇温させる電力又は時間を節減することができ、全体の工程時間を短縮させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiC基板の上に活性層を形成するステップを含むパワー半導体素子の製造方法であって、
前記活性層を形成するステップは、
前記SiC基板の上にソースガスを噴射するステップと、
前記ソースガスの噴射の中断後にパージガスを噴射する1次パージステップと、
前記1次パージの中断後にリアクタントガスを噴射するステップと、
前記リアクタントガスの噴射の中断後にパージガスを噴射する2次パージステップと、
を含む、パワー半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記ソースガスは、Ga、In、Zn及びSiのうちのいずれか1種又は2種以上を含む、請求項1に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記リアクタントガスは、As、P、O及びCのうちのいずれか1種又は2種以上を含む、請求項2に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記活性層を形成するステップは、
前記ソースガス噴射ステップと、1次パージステップと、リアクタントガス噴射ステップ、及び2次パージステップがこの順に行われる一つの工程サイクルを繰り返し行うステップを含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記活性層を形成するステップは、
前記リアクタントガスを噴射するステップの後にプラズマを生じさせるステップを含む、請求項1に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記リアクタントガスを噴射するステップの後にプラズマを生じさせるステップは、2次パージステップの後に行われ、
前記活性層を形成するステップは、
前記ソースガス噴射ステップと、1次パージステップと、リアクタントガス噴射ステップと、2次パージステップ、及びプラズマ発生ステップがこの順に行われる一つの工程サイクルを繰り返し行うステップを含む、請求項5に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項7】
前記活性層を形成するステップは、
前記ソースガス噴射ステップとリアクタントガス噴射ステップとの間にプラズマを生じさせるステップを含む、請求項1に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項8】
前記プラズマを生じさせるステップは、水素ガスを噴射するステップを含む、請求項5又は請求項7に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記活性層を形成するステップの前に、前記SiC基板の上に結晶質のバッファー層を形成するステップを含む、請求項1に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項10】
前記バッファー層は、AlNから形成されている、請求項9に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項11】
前記活性層を形成した後に前記活性層の上にウェル領域を形成するステップを含み、
前記ウェル領域を形成するステップは、
前記ウェル領域が形成されるべき前記活性層の一部の領域を露出させるステップと、
露出された前記活性層の一部の領域をエッチングするステップと、
前記エッチングの後に、ソースガスの噴射と、パージガスの噴射と、リアクタントガスの噴射、及びパージガスの噴射をこの順に行って、前記活性層の露出された領域にウェル領域を形成するステップと、
を含む、請求項1に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項12】
前記活性層を形成するステップ及び前記ウェル領域を形成するステップのうちの少なくとも一方は、ドーピングガスを噴射するステップを含み、
前記ドーピングガスを前記ソースガスと混合して噴射するか、あるいは、前記ソースガスを噴射した後に前記ドーピングガスを噴射する、請求項11に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項13】
前記ドーピングガスは、Mg、Si、In、Al、Znのうちのいずれか1種を含む、請求項12に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項14】
前記活性層の上部にゲート絶縁層を形成するステップと、
前記ゲート絶縁層を挟んで水平方向に互いに離れるように、前記ウェル領域の上にソース電極及びドレイン電極を形成するステップと、
前記ゲート絶縁層の上にゲート電極を形成するステップと、
を含む、請求項11に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体素子の製造方法に関し、より詳細には、原子層蒸着法により活性層を形成するパワー半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果トランジスター(field effect transistor)は、基板の上に形成された活性層と、活性層の上側に形成されたソース及びドレイン電極と、活性層の上側におけるソース電極とドレイン電極との間に位置するように形成されたゲート電極と、ソース電極及びドレイン電極と活性層との間に設けられたウェル(well)領域と、を備える。
【0003】
活性層は、有機金属化学気相蒸着(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法により形成する。このとき、基板の温度を約1200℃の高温に調節した状態で薄膜を蒸着して活性層を蒸着する。すなわち、基板が約1200℃の高温に保たれるときに、基板の上に活性層が蒸着されることが可能になる。
【0004】
ところが、このように基板を高温に加熱した状態で活性層を形成することに起因して、基板又は前記基板の上に形成された薄膜が損傷されてしまうという問題が生じる。そして、これは、電界効果トランジスターの機能を低下させたり不良を引き起こしたりする要因として働く。特に、電界効果トランジスターを電子機器の電力の変換や制御の用途に用いる場合、高温下で活性層を形成する際に生じた損傷は、品質又は機能を大幅に低下させる要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国登録特許公報第2571583号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低温下で製造することのできるパワー半導体素子(電力用半導体素子)の製造方法を提供する。
【0007】
本発明は、低温下で活性層を形成することのできるパワー半導体素子の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係るパワー半導体素子の製造方法は、SiC基板の上に活性層を形成するステップを含むパワー半導体素子の製造方法であって、前記活性層を形成するステップは、前記SiC基板の上にソースガスを噴射するステップと、前記ソースガスの噴射の中断後にパージガスを噴射する1次パージステップと、前記1次パージの噴射の中断後にリアクタントガスを噴射するステップと、前記リアクタントガスの噴射の中断後にパージガスを噴射する2次パージステップと、を含んでいてもよい。
【0009】
前記ソースガスは、Ga、In、Zn及びSiのうちのいずれか1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0010】
前記リアクタントガスは、As、P、O及びCのうちのいずれか1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0011】
前記活性層を形成するステップは、前記ソースガス噴射ステップと、1次パージステップと、リアクタントガス噴射ステップ、及び2次パージステップがこの順に行われる一つの工程サイクルを繰り返し行うステップを含んでいてもよい。
【0012】
前記活性層を形成するステップは、前記リアクタントガスを噴射するステップの後にプラズマを生じさせるステップを含んでいてもよい。
【0013】
前記リアクタントガスを噴射するステップの後にプラズマを生じさせるステップは、2次パージステップの後に行われ、前記活性層を形成するステップは、前記ソースガス噴射ステップと、1次パージステップと、リアクタントガス噴射ステップと、2次パージステップ、及びプラズマ発生ステップがこの順に行われる一つの工程サイクルを繰り返し行うステップを含んでいてもよい。
【0014】
前記活性層を形成するステップは、前記ソースガス噴射ステップとリアクタントガス噴射ステップとの間にプラズマを生じさせるステップを含んでいてもよい。
【0015】
前記プラズマを生じさせるステップは、水素ガスを噴射するステップを含んでいてもよい。
【0016】
前記活性層を形成するステップの前に、前記SiC基板の上に結晶質のバッファー層を形成するステップを含んでいてもよい。
【0017】
前記バッファー層は、窒化アルミニウム(AlN)から形成されてもよい。
【0018】
前記パワー半導体素子の製造方法は、前記活性層を形成した後に前記活性層の上にウェル領域を形成するステップを含み、前記ウェル領域を形成するステップは、前記ウェル領域が形成されるべき前記活性層の一部の領域を露出させるステップと、露出された前記活性層の一部の領域をエッチングするステップと、前記エッチングの後に、ソースガスの噴射と、パージガスの噴射と、リアクタントガスの噴射、及びパージガスの噴射をこの順に行って、前記活性層の露出された領域にウェル領域を形成するステップと、を含んでいてもよい。
【0019】
前記活性層を形成するステップ及び前記ウェル領域を形成するステップのうちの少なくとも一方は、ドーピングガスを噴射するステップを含み、前記ドーピングガスを前記ソースガスと混合して噴射してもよいし、あるいは、前記ソースガスを噴射した後に前記ドーピングガスを噴射してもよい。
【0020】
前記ドーピングガスは、Mg、Si、In、Al、Znのうちのいずれか1種を含んでいてもよい。
【0021】
前記パワー半導体素子の製造方法は、前記活性層の上部にゲート絶縁層を形成するステップと、前記ゲート絶縁層を挟んで水平方向に互いに離れるように、前記ウェル領域の上にソース電極及びドレイン電極を形成するステップと、前記ゲート絶縁層の上にゲート電極を形成するステップと、を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施形態によれば、低温下で活性層を形成することができる。このため、基板又はその上部に形成された薄膜が高温の熱によって損傷されることを防ぐことができる。また、活性層の形成のために基板を昇温させる電力又は時間を節減することができ、全体の工程時間を短縮させることができる。
【0023】
また、活性層を結晶化させて形成することができる。すなわち、低温下で活性層を形成しながらも、結晶化された活性層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る方法により活性層が形成された基板を示す概念図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る方法により製造される電界効果トランジスターの一例を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る方法により電界効果トランジスターの活性層を形成する方法を説明するための概念図である。
【
図4】活性層と基板との間にバッファー層が形成された変形例を示す概念図である。
【
図5】実施形態の変形例に係る電界効果トランジスターの一例を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るパワー半導体素子の製造方法に用いられる蒸着装置を概略的に示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るパワー半導体素子の製造方法に用いられる蒸着装置の他の例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態についてより詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化されることが可能なものであって、以下の実施形態は、単に本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範ちゅうを完全に知らせるために提供されるものである。本発明の実施形態を説明するために図面は誇張されていてもよく、図中の同一の符号は、同一の構成要素を指す。
【0026】
本発明の実施形態は、パワー半導体素子の製造方法に関する。より詳しくは、原子層蒸着(ALD:Atomic Layer deposition)法により活性層を形成する方法を含むパワー半導体素子の製造方法に関する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る方法により活性層が形成された基板を示す概念図である。
【0028】
図1を参照すると、活性層10は、基板Sの上に形成される層であって、パワー半導体素子、より具体的には、電界効果トランジスターを構成する層であってもよい。このような活性層10は、原子層蒸着(ALD)法により形成可能である。また、原子層蒸着法により活性層10を形成するに際して、リアクタントガスの噴射を中断もしくは終了した後にプラズマを生じさせて形成してもよい。このとき、水素(H
2)ガスを用いたプラズマ(以下、水素プラズマと称する。)を生じさせて活性層10を形成してもよい。
【0029】
図2は、本発明の実施形態に係る方法により製造される電界効果トランジスターの一例を示す断面図である。
図3は、本発明の実施形態に係る方法により電界効果トランジスターの活性層を形成する方法を説明するための概念図である。
【0030】
以下、
図1から
図3に基づいて、本発明の実施形態に係る方法により形成される活性層を備えるパワー半導体素子の製造方法について説明する。このとき、パワー半導体素子の一つである電界効果トランジスター(field effect transistor)を例にとって説明する。
【0031】
図2を参照すると、本発明の実施形態に係る方法により製造される電界効果トランジスターは、基板Sと、基板Sの上に形成された活性層10と、活性層10の上側において水平方向に互いに離れるように形成されたソース及びドレイン電極41、42と、活性層10の上側におけるソース電極41とドレイン電極42との間に位置するように形成されたゲート電極50と、ソース電極41と活性層10との間及びドレイン電極42と活性層10との間のそれぞれに形成されたウェル層(well layer)21、22と、ソース電極41とドレイン電極42との間に位置するように、活性層10とウェル層21、22とゲート電極50との間に形成されたゲート絶縁層30と、を備えていてもよい。
【0032】
ここで、ソース電極41と接するように、もしくはソース電極41の下側に形成されたウェル層21は、電界効果トランジスターのソースとして機能する層であってもよい。また、ドレイン電極42と接するように、もしくはドレイン電極42の下側に形成されたウェル層22は、電界効果トランジスターのドレインとして機能する層であってもよい。
【0033】
基板Sは、シリコン(Si)を含む基板であってもよいし、p型(p-type)の基板であってもよい。より具体的には、基板は、p型のSiC基板であってもよい。
【0034】
活性層10は、ガリウムヒ素(GaAs:Gallium Arsenic)、リン化インジウム(InP:Indium Phosphide)、アルミニウムガリウムインジウムリン化物(AlGaInP:Aluminum Gallium Indium Phosphide)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO:Indium Gallium Zinc Oxide)、インジウム亜鉛酸化物(IZO:Indium Zinc Oxide)、炭化ケイ素(SiC:Silicon Carbide)のうちのいずれか1種の層又は薄膜として形成されてもよい。すなわち、活性層10は、GaAs層、InP層、AlGaInP層、IGZO層、IZO層及びSiC層のうちのいずれか1種として形成されてもよい。
【0035】
そして、活性層10は、原子層蒸着(ALD)法により形成されてもよい。また、原子層蒸着法により活性層10を形成するに際して、リアクタントガスの噴射を中断もしくは終了した後にプラズマを生じさせてもよい。このとき、水素(H2)ガスを用いたプラズマ(以下、水素プラズマと称する。)を生じさせて活性層10を形成してもよい。
【0036】
原子層蒸着法を用いて活性層10を形成する方法について
図3に基づいてさらに詳しく説明すれば、活性層10を形成するステップは、ソースガスを噴射するステップと、パージガスを噴射するステップ(1次パージ)と、リアクタントガスを噴射するステップと、パージガスを噴射するステップ(2次パージ)と、を含んでいてもよい。そして、活性層10を形成するステップは、リアクタントガスを噴射するステップの後にプラズマを生じさせるステップを含んでいてもよい。このとき、プラズマを生じさせるステップは、たとえば、リアクタントガスを噴射し、2次パージが終了された後に行われてもよい。このような場合、ソースガスの噴射、パージガスの噴射(1次パージ)、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射(2次パージ)、プラズマの発生の順に行われてもよい。また、2次パージの後に生じさせるプラズマは、水素プラズマであってもよい。すなわち、2次パージの終了後にプラズマを生じさせるに際して、水素ガスを噴射し、前記水素ガスを放電してプラズマを生じさせてもよい。
【0037】
また、リアクタントガスを噴射するステップにおいてプラズマを生じさせてもよい。すなわち、リアクタントガスを噴射し、前記リアクタントガスを放電してプラズマを生じさせてもよい。
【0038】
活性層10を形成するに際して、上述したような「ソースガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)-プラズマの発生」を活性層10の形成のための一つの工程サイクル(cycle)にしてもよい。また、上述した工程サイクルを複数回繰り返し行うことにより、複数回の原子層の蒸着が行われる。そして、工程サイクルの実施回数を調整することにより、狙いの層厚の活性層10を形成することができる。
【0039】
上述したような工程サイクルにおいて、ソースガスの噴射、パージガスの噴射(1次パージ)の後にリアクタントガスが噴射されれば、基板Sの上においてソースガスとリアクタントガスとの反応が起きて反応物、たとえば、AlGaInPが生成される。そして、この反応物が基板Sの上に堆積もしくは蒸着され、これにより、基板Sの上にAlGaInPからなる薄膜が形成される。
【0040】
一方、従来には、基板の上に活性層を形成するために薄膜を蒸着するに際して、チャンバーの内部又は基板の温度を約1200℃の高温に保っていた。換言すれば、チャンバーの内部又は基板の温度が1200℃の高温に保たれなければ、基板の上面に薄膜が蒸着されることができない。このようにして高温下で活性層を形成する場合、基板又は基板の上に形成されている薄膜が損傷される虞があり、しかも、活性層が損傷される虞もある。これにより、素子の機能又は品質が低下するという問題が生じる。
【0041】
しかしながら、実施形態においては、原子層蒸着法を用いて薄膜を蒸着するに際して、プラズマを生じさせる。すなわち、リアクタントガスが噴射された後に、又はリアクタントガスの噴射の終了後に、プラズマ、たとえば、水素プラズマを生じさせる。より具体的に述べると、リアクタントガスの噴射及びパージガスの噴射(2次パージ)が終了された後、水素ガスを用いたプラズマを生じさせる。
【0042】
このとき、プラズマは、ソースガスとリアクタントガスとの反応率を向上させることができ、ソースガスとリアクタントガスとの反応物が基板Sに容易に堆積もしくは付着されるようにすることができる。したがって、チャンバー100の内部又は基板Sの温度が低温、たとえば、600℃以下である状態で、原子層蒸着法により活性層10が形成されることが可能になる。さらに好ましくは、300℃以上、かつ、550℃以下の状態で、原子層蒸着法により活性層10が形成され得る。すなわち、従来のように、基板を高温に加熱した状態で活性層10を形成せず、低温下で活性層10を形成することができる。これにより、高熱による基板S、基板の上に形成されている薄膜又は活性層10の損傷を防ぐことができる。
【0043】
また、プラズマは、ソースガスとリアクタントガスとの反応により基板Sの上に蒸着される薄膜が結晶質になるようにすることができる。より具体的には、多結晶質の活性層10が形成されるようにすることができる。すなわち、原子層蒸着法により活性層10を形成するに際して、リアクタントガスの噴射後にプラズマを生じさせることにより、前記プラズマにより結晶質又は多結晶質の活性層10を形成することができる。
【0044】
さらに、プラズマは、チャンバー100の内部に残留する不純物を分解して取り除き易いようにすることができる。したがって、蒸着膜、すなわち、活性層10の形成の際に不純物による汚染を防止又は抑止することができる。
【0045】
以上においては、2次パージの終了後、又はリアクタントガスの噴射後にプラズマを生じさせることについて説明した。しかしながら、本発明はこれに何ら制限されるものではなく、ソースガスの噴射とリアクタントガスの噴射との間のステップにおいて水素プラズマを生じさせてもよい。より具体的には、ソースガス噴射ステップと1次パージステップとの間に水素プラズマを生じさせてもよい。すなわち、「ソースガスの噴射-プラズマの発生-パージガスの噴射(1次パージ)-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)」を一つの工程サイクルとしてもよい。
【0046】
他の例として、1次パージステップとリアクタントガス噴射ステップとの間に水素プラズマを生じさせてもよい。このため、「ソースガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-プラズマの発生-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)」を一つの工程サイクルとしてもよい。
【0047】
さらに他の例として、ソースガスの噴射とリアクタントガスの噴射との間のステップ及びリアクタントガス噴射ステップ後のそれぞれにおいてプラズマを生じさせてもよい。すなわち、「ソースガスの噴射-プラズマの発生-パージガスの噴射(1次パージ)-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)-プラズマの発生」を工程サイクルとしてもよいし、あるいは、「ソースガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-プラズマの発生-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)-プラズマの発生」を工程サイクルとしてもよい。
【0048】
上述したような工程サイクルにより活性層10を形成するに際して、形成しようとする活性層10の種類に応じて、ソースガス及びリアクタントガスの物質が決定されてもよい。
【0049】
活性層10は、GaAs層、InP層、AlGaInP層、IGZO層、IZO層及びSiC層のうちのいずれか1種から形成されてもよい。このような場合、ソースガスは、Ga、In、Zn及びSiのうちのいずれか1種を含むか、あるいは、2種以上を含むガスであってもよい。すなわち、ソースガスは、Gaを含有するガス、Inを含有するガス、Al、Ga及びInを含有するガス(AlGaIn含有ガス)、In、Ga及びZnを含有するガス(IGZ含有ガス)、In及びZnを含有するガス(IZ含有ガス)、Siを含有するガスのうちのいずれか1種又は2種以上を含むガスであってもよい。また、リアクタントガスは、As、P、O及びCのうちのいずれか1種又は2種以上を含むガスであってもよい。すなわち、リアクタントガスは、As含有ガス、P含有ガス、O含有ガス、C含有ガスのうちのいずれか1種又は2種以上を含むガスであってもよい。
【0050】
例えば、活性層10としてGaAs層を形成する場合、ソースガスとしてGaを含有するガスを用い、リアクタントガスとしてAsを含有するガスを用いてもよい。また、活性層10としてInP層を形成する場合、ソースガスとしてInを含有するガスを用い、リアクタントガスとしてPを含有するガスを用いてもよい。他の例として、活性層10としてAlGaInP層を形成する場合、ソースガスとしてAlを含有するガス、Gaを含有ガス、Inを含有するガスを用い、リアクタントガスとしてPを含有するガスを用いてもよい。さらに他の例として、活性層10としてIGZO層を形成する場合、ソースガスとしてInを含有するガス、Gaを含有するガス、Znを含有するガスを用い、リアクタントガスとしてOを含有するガスを用いてもよい。そして、活性層10としてIZO層を形成する場合、ソースガスとしてInを含有するガス、Znを含有するガスを用い、リアクタントガスとしてOを含有するガスを用いてもよい。さらに、活性層10としてSiC層を形成する場合、ソースガスとしてSiを含有するガス、リアクタントガスとしてCを含有するガスを用いてもよい。
【0051】
ここで、Ga含有ガスとして、たとえば、トリメチルガリウム(Trimethyl Gallium; Ga(CH3)3)(TMGa)を含有するガスを用いてもよく、In含有ガスとして、たとえば、トリメチルインジウム(Trimethyl Indium; In(CH3)3)(TMIn)及びジエチルアミノプロピルジメチルインジウム(Diethylamino Propyl Dimethyl Indium)(DADI)のうちの少なくとも1種を含有するガスを用いてもよい。また、Al含有ガスとして、たとえば、TMA(Trimethyl Aluminum, Al(CH3)3)を含有するガスを用いてもよく、Zn含有ガスとして、ジエチル亜鉛(Diethyl Zinc; Zn(C2H5)2)(DEZ)及びジメチル亜鉛(Dimethyl Zinc; Zn(CH3)2)(DMZ)のうちの少なくとも一方を含有するガスを用いてもよい。そして、Si含有ガスとしては、たとえば、SiH4、Si2H6のうちの少なくとも1種を含有するガスを用いてもよい。
【0052】
また、As含有ガスとしては、AsH3及びAsH4のうちのどちらか一方を含有するガスを用いてもよく、P含有ガスとしては、たとえば、ホスフィン(PH3)を含むガスを用いてもよい。また、O含有ガスは酸素であってもよく、C含有ガスとしては、たとえば、SiH3CH3を含有するガスを用いてもよい。
【0053】
上述したようにしてGaAs層の活性層10を形成する場合、ソースガスとしてGa含有ガスを用い、InP層の活性層10を形成する場合、ソースガスとしてIn含有ガスを用い、SiC層の活性層10を形成する場合、ソースガスとしてSi含有ガスを用いる。このため、GaAs層、InP層、SiC層のうちのいずれか1種から活性層10を形成する場合、1種のソースガスを用いると説明できる。
【0054】
他の例として、AlGaInP層の活性層10を形成する場合、ソースガスとして3種のガス、すなわち、Al含有ガス、Ga含有ガス、In含有ガスを用いる。他の例として、IGZO層として活性層10を形成する場合、ソースガスとして3種のガス、すなわち、In含有ガス、Ga含有ガス、Zn含有ガスを用いる。このため、AlGaInP層又はIGZO層として活性層10を形成する場合、2種以上の複数種のソースガスを用いると説明できる。
【0055】
複数種のソースガスを用いて、又は噴射して活性層10を形成するに際して、複数種のソースガスが混合されたソースガスを噴射して活性層10を形成してもよい。複数種のソースガスを混合して噴射する方法の詳細については、蒸着装置の説明に際して後述する。
【0056】
また、活性層10を形成するに際して、ドーピングガスを噴射してドープされた活性層を形成してもよい。このとき、ドーピングガスは、Mg、Si、In、Al、Znのうちのいずれか1種を含むガスであってもよい。より具体例として、Siを含有するドーピングガスとして、例えば、ポリシラン(H3Si-(SiH2)n-SiH3)を含有するガスを用いてもよい。他の例として、Mgを含有するドーピングガスとしてビズ(シクロペンタジエニル)マグネシウム(Cp2Mg)を含有するガスを用いてもよい。さらに、敷衍すれば、第2のドーピングガスは、Si、In、Al、Znのうちのいずれか1種又は1種以上のガスを混合してもよい。
【0057】
そして、ドーピングガスは、ソースガスと混合されて一緒に噴射されてもよい。いうまでもなく、ソースガスとドーピングガスを別途の段階に分けて噴射してもよい。すなわち、「ソースガスの噴射-ドーピングガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)-プラズマの発生」を工程サイクルとして活性層10を形成してもよい。
【0058】
そして、上述した工程サイクルを複数回繰り返し行って活性層10を形成する。このとき、活性層10の形成のための最初の、すなわち、第1回目の工程サイクルにおいては、ドーピングガスを噴射するステップなしに行われることが好ましい。すなわち、活性層10の形成のために第1回目に行われる工程サイクルは、「ソースガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)-プラズマの発生」であってもよく、ソースガスの噴射に際してドーピングガスを一緒に噴射するか、あるいは、ドーピングガスを別途に噴射しない。そして、それ以降の回からはソースガスの噴射に際してドーピングガスを一緒に噴射するか、あるいは、ソースガスの噴射後にドーピングガスを噴射する。このため、活性層10の上に活性層10が形成されるに際して、第1回目の工程サイクルにより蒸着された薄膜はドープされていない薄膜であり、この後に行われる工程サイクルにより蒸着される薄膜はドープされた薄膜であり得る。
【0059】
活性層10は、
図2に示すように、表面の高さが異なるように段付きの形状に設けられてもよい。換言すれば、活性層10は、基板Sの上部面に形成された第1の層11及び第1の層11の一部の領域に形成された第2の層12を備えるものであると説明できる。このため、活性層10中の第2の層12が形成されている領域の厚さが他の領域に比べて厚くなり得る。これを別の言い方で言い換えると、活性層10は、第2の層12が形成された領域の高さが第1の層11のみ形成された部分に比べて高い形状、すなわち、段付きの形状に設けられてもよい。
【0060】
活性層10の形状は、上述したような段付きの形状に設けることに何ら限定されるものではなく、ソース電極41と活性層10との間及びドレイン電極42と活性層10との間にウェル層21、22が設けられる限り、いかなる形状に設けられても構わない。
【0061】
ウェル層(well layer)21、22は、通常、電界効果トランジスターにおいてウェル領域(well region)と称される層であってもよい。このとき、原子層蒸着法により蒸着されて活性層の上にウェル領域が形成されるため、説明のしやすさのために、ウェル層21、22と命名する。このようなウェル層21、22は、ソース及びドレイン電極41、42と活性層10との間に位置するように設けられてもよい。このため、ウェル層21、22は、
図2に示すように、活性層10の第1の層11とソース電極41との間、前記第1の層11とドレイン電極42との間に位置するように設けられてもよい。
【0062】
このようなウェル層21、22は、活性層10と同じ材料にn型又はp型の不純物がドープされるように設けられてもよい。例えば、活性層10がAlGaInPから形成される場合、ウェル層21、22は、AlGaInPに不純物、たとえば、Siをドープしてn型にして設けてもよい。また、ドーピングガスとしてはIn、Al、Znのうちのいずれか1種又は1種以上のガスを混合してn型のウェル層21、22を設けてもよい。このため、ウェル層21、22は、Siがドープされたn型のAlGaInP層であると説明できる。
【0063】
ウェル層21、22は、原子層蒸着法により形成してもよい。すなわち、「ソースガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)」を工程サイクルとしてウェル層21、22を形成してもよい。このとき、ウェル層21、22の形成のために噴射されるソースガス、リアクタントガス、パージガスは、活性層10の形成に際して用いられたガスと同種のものであってもよい。また、ドーピングガスは、ソースガス噴射ステップにおいて一緒に噴射されてもよい。すなわち、ソースガスとドーピングガスとを混合し、混合されたガスを噴射してもよい。
【0064】
いうまでもなく、ソースガスとドーピングガスとを別途の段階に分けて噴射してもよい。すなわち、ソースガスを噴射した後にドーピングガスを噴射してもよい。このため、「ソースガスの噴射-ドーピングガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)」を工程サイクルとしてウェル層21、22を形成することができる。
【0065】
そして、上述した工程サイクルを複数回繰り返し行ってウェル層21、22を形成する。このとき、ウェル層21、22の形成のために最初に、すなわち、第1回目の工程サイクルにおいては、ドーピングガスを噴射するステップなしに行われることが好ましい。すなわち、ウェル層21、22の形成のために第1回目に行われる工程サイクルは、「ソースガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)」であってもよく、ソースガスの噴射に際してドーピングガスを一緒に噴射するか、あるいは、ドーピングガスを別途に噴射しない。そして、それ以降の回からはソースガスの噴射に際してドーピングガスを一緒に噴射するか、あるいは、ソースガスの噴射後にドーピングガスを噴射する。このため、活性層10の上にウェル層21、22が形成されるに際して、第1回目の工程サイクルにより蒸着された薄膜はドープされていない薄膜であり、この後に行われる工程サイクルにより蒸着される薄膜はドープされた薄膜であり得る。
【0066】
また、ウェル層21、22を形成するに際して、リアクタントガスの噴射に際してプラズマを生じさせたり、2次パージの後にプラズマをさらに生じさせたりしてもよい。そして、2次パージの後に生じるプラズマは、水素プラズマであってもよい。
【0067】
このようにして形成されたウェル層21、22は、電界効果トランジスターにおいてソース及びドレイン領域として機能する。すなわち、ソース電極41の下側に形成されたウェル層21は電界効果トランジスターのソースとして機能し、ドレイン電極42の下側に形成されたウェル層22は電界効果トランジスターのドレインとして機能する。
【0068】
以上においては、ソース電極41及びドレイン電極42の下側に設けられたウェル層21、22がn型のものとして設けられることについて説明した。しかしながら、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、製造しようとする電界効果トランジスターのタイプに応じて、ウェル層21、22がp型のものとして設けられる場合もある。
【0069】
ゲート絶縁層30は、活性層10の上部に形成されてもよい。より具体的に、上下方向を基準として、ゲート絶縁層30は、ゲート電極50と活性層10との間に位置するように形成されてもよい。また、ゲート絶縁層30は、幅方向又は長手方向を基準として、ソース電極41とドレイン電極42との間に位置するように形成されてもよい。このようなゲート絶縁層30は、SiO2、SiON、Al2O3のうちのいずれか1種から形成されてもよい。そして、ゲート絶縁層30は、化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition:CVD)法、有機金属化学気相蒸着(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法及び原子層蒸着(ALD)法のうちのいずれか1つの方法により形成してもよい。
【0070】
ソース及びドレイン電極41、42は、それらの間にゲート絶縁層30及びゲート電極50が位置するようにウェル層21、22の上に形成されてもよい。すなわち、ゲート絶縁層30を基準として、一方の側にソース電極41が形成され、他方の側にドレイン電極42が形成されてもよい。このとき、ソース及びドレイン電極41、42は、金属を含む材料から形成され、たとえば、Ti及びAuのうちの少なくとも一方の材料から形成されてもよい。また、ソース及びドレイン電極41、42は、たとえば、化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition:CVD)法、有機金属化学気相蒸着(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法及び原子層蒸着(ALD)法、スパッターリング蒸着法などにより形成されてもよい。
【0071】
ゲート電極50は、ゲート絶縁層30の上部に形成されてもよい。別の言い方で言い換えると、ゲート電極50は、ソース電極41とドレイン電極42との間に位置するようにゲート絶縁層30の上部に形成されてもよい。このとき、ゲート電極50は、金属を含む材料から形成されてもよく、例えば、Ti及びAuのうちの少なくとも一方を含む材料から形成されてもよい。また、ゲート電極50は、スパッターリング蒸着法により形成されてもよい。
【0072】
図4は、活性層と基板との間にバッファー層が形成された変形例を示す概念図である。
図5は、実施形態の変形例に係る電界効果トランジスターの一例を示す図である。
【0073】
図4及び
図5を参照すると、基板Sと活性層10との間にバッファー層60が形成されてもよい。そして、
図5に示すように、変形例に係る電界効果トランジスターは、基板Sと活性層10との間に形成されたバッファー層60を備えていてもよい。すなわち、変形例に係る電界効果トランジスターは、実施形態と比較して、基板Sと活性層10との間に形成されたバッファー層60を備える点で相違点があり、他の構成は同一である。
【0074】
バッファー層60は、活性層10を形成する前に基板Sの上に先に形成される層であって、原子層蒸着法により形成される活性層10がより一層効果的に結晶化できるように補助するシード層(seed layer)であってもよい。別の言い方で言い換えると、バッファー層60は、原子層蒸着法により活性層10を形成するとき、水素プラズマによる結晶化に加えて、活性層10の結晶化をさらに補助するシード層であってもよい。このようなバッファー層60は、AlNから形成されてもよく、原子層蒸着法、化学気相蒸着方法などにより形成されてもよい。
【0075】
結晶質であるバッファー層60の上に原子層蒸着法により活性層10を蒸着すると、前記下地層であるバッファー層60の結晶方向に活性層10が成長できる。このため、結晶質、より具体的には多結晶質の活性層10をより一層容易に形成することができる。
【0076】
以上においては、パワー半導体素子として電界効果トランジスターを例にとって説明した。しかしながら、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、実施形態に係る製造方法は、電界効果トランジスターに限らず、活性層を備える多種多様なパワー半導体素子を製造するのに適用可能である。
【0077】
図6は、本発明の実施形態に係るパワー半導体素子の製造方法に用いられる蒸着装置を概略的に示す図である。
【0078】
蒸着装置は、原子層蒸着(ALD)法により薄膜を蒸着する装置であってもよい。このとき、蒸着装置は、パワー半導体素子、たとえば、電界効果トランジスターの構成要素のうちの少なくとも活性層10を形成するための装置であってもよい。また、蒸着装置は、活性層10及びウェル層21、22を形成するための装置であってもよい。
【0079】
このような蒸着装置は、
図6に示すように、チャンバー100と、チャンバー100内に配設されて基板Sを支持するための支持台200と、支持台200と向かい合うように配置されてチャンバー100の内部に工程のためのガス(以下、工程ガスと称する。)を噴射する噴射部300と、噴射部300に工程ガスを与えるガス供給部400と、互いに異なる経路を有するように噴射部300に連結され、ガス供給部400からのガスを噴射部300に供給する第1及び第2のガス供給管500a、500bと、チャンバー100内にプラズマを生じさせるように電源を供給するRF電源部600と、を備えていてもよい。
【0080】
また、蒸着装置は、支持台200に昇降及び回転の動作のうちの少なくとも一方の動作を行わせる駆動部700と、チャンバー100に連結されるように配設された排気部(図示せず)と、をさらに備えていてもよい。
【0081】
チャンバー100は、内部に搬入された基板Sの上に薄膜が形成可能な内部空間を備えていてもよい。たとえば、その断面の形状が四角い形状、五角形、六角形などの形状であってもよい。いうまでもなく、チャンバー100の内部の形状は種々に変更可能であり、基板Sの形状と対応するように設けられることが好ましい。
【0082】
支持台200は、噴射部300と向かい合うようにチャンバー100の内部に配設されて、チャンバー100の内部に装入された基板Sを支持する。このような支持台200の内部にはヒーター210が設けられてもよい。このため、ヒーター210を動作させると、支持台200の上に載置された基板S及びチャンバー100の内部が加熱されることが可能になる。
【0083】
また、基板S又はチャンバー100の内部を加熱するための手段として、支持台200に設けられたヒーター210の他に、チャンバー100の内部又はチャンバー100の外部に別途のヒーターが設けられてもよい。
【0084】
噴射部300は、支持台200の延在方向に並べられて互いに離れるように配置された複数本の孔(以下、孔と称する。)311を有し、チャンバー100の内部において支持台200と向かい合うように配置された第1のプレート310と、少なくとも一部が複数本の孔311のそれぞれに挿し込まれるように設けられた複数のノズル320と、チャンバー100の内部における前記チャンバー100内の上部壁と第1のプレート310との間に位置するように配設された第2のプレート330と、を備えていてもよい。
【0085】
また、噴射部300は、第1のプレート310と第2のプレート330との間に位置している絶縁部340をさらに備えていてもよい。
【0086】
ここで、第1のプレート310は、RF電源部600と接続され、第2のプレート330は接地されてもよい。そして、絶縁部340は、第1のプレート310と第2のプレート330との電気的な接続を防ぐ役割を果たすことができる。
【0087】
第1のプレート310は、支持台200の延在方向に延設された板状であってもよい。そして、第1のプレート310には複数本の孔311が設けられるが、複数本の孔311のそれぞれは、第1のプレート310を上下方向に貫通するように設けられてもよい。そして、複数本の孔311は、第1のプレート310又は支持台200の延在方向に並べられてもよい。
【0088】
複数のノズル320のそれぞれは、上下方向に延びた形状であってもよく、その内部には、ガスが通過可能な通路が設けられており、上端及び下端が開口された形状であってもよい。そして、複数のノズル320のそれぞれは、少なくともその下部が第1のプレート310に設けられた孔311に挿し込まれ、上部は第2のプレート330と連結されるように配設されてもよい。このため、ノズル320は、第2のプレート330から下部へと突出した形状であると説明できる。
【0089】
ノズル320の外径は孔311の内径に比べて小さいように設けられてもよい。そして、ノズル320が孔311の内部に挿し込まれるように配設されるに際して、ノズル320の外周面が孔311の周りの壁(すなわち、第1のプレート310の内側壁)と離れるように配設されてもよい。これにより、孔311の内部を、ノズル320の外側の空間とノズル320の内側の空間とに分離することができる。
【0090】
孔311の内部空間において、ノズル320内の通路は、第1のガス供給管500aからのガスが移動、噴射される通路である。そして、孔311の内部空間におけるノズル320の外側の空間は、第2のガス供給管500bからのガスが移動、噴射される通路である。したがって、以下では、ノズル320内の通路を第1の経路360aと命名し、孔311の内部におけるノズル320の外側の空間を第2の経路360bと命名する。
【0091】
第2のプレート330は、その上部面がチャンバー100内の上部壁と離れるように、かつ、下部面が第1のプレート310と離れるように配設されてもよい。このため、第2のプレート330と第1のプレート310との間及び第2のプレート330とチャンバー100の上部壁との間のそれぞれに空いた空間(空きスペース)が設けられることが可能になる。
【0092】
ここで、第2のプレート330の上側の空間は、第1のガス供給管500aからのガスが拡散・移動する空間(以下、拡散空間350と称する。)であって、複数のノズル320の上側の開口と連通していてもよい。別の言い方で言い換えると、拡散空間350は、複数の第1の経路360aと連通している空間である。このため、第1のガス供給管500aを通過したガスは、拡散空間350において第2のプレート330の延在方向に拡散された後、複数の第1の経路360aを通過して下側に噴射されることが可能である。
【0093】
また、第2のプレート330の内部には、ガスが移動する通路である深穴(図示せず)が設けられており、前記深穴は第2のガス供給管500bと連結され、第2の経路360bと連通するように設けられてもよい。したがって、第2のガス供給管500bからのガスは、第2のプレート330の深穴、第2の経路360bを経て基板Sに向かって噴射されることが可能になる。
【0094】
ガス供給部400は、原子層蒸着法により薄膜を蒸着するのに必要となるガスを与える。このようなガス供給部400は、ソースガスが貯留されたソースガス貯留部410と、ソースガスと反応するリアクタントガスが貯留されたリアクタントガス貯留部420と、パージガスが貯留されたパージガス貯留部430と、ソースガス貯留部410と第1のガス供給管500aとを繋ぐように配設された第1の搬送管470aと、リアクタントガス貯留部420及びパージガス貯留部430と第2のガス供給管500bとを繋ぐように配設された第2の搬送管470bと、を備えていてもよい。
【0095】
ここで、パージガス貯留部430に貯留されたパージガスは、たとえば、N2ガス又はArガスであってもよい。
【0096】
また、ガス供給部400は、リアクタントガスの噴射後に、又は2次パージ後にチャンバー100の内部にプラズマを生じさせるステップにおいて供給されるガス(以下、プラズマ発生用ガスと称する。)が貯留されたプラズマ発生用のガス貯留部440を備えていてもよい。このとき、プラズマ発生用のガスは、たとえば、水素ガスであってもよい。
【0097】
そして、ガス供給部400は、ドーピングガスが貯留されたドーピングガス貯留部450と、複数種のガスを混合するように第1の搬送管470aに配設された混合部460と、を備えていてもよい。
【0098】
ここで、ドーピングガス貯留部450に貯留されたガスは、ドープしようとする物質に応じて異なってくる。例えば、ドーピングガス貯留部450にn型のドーパント物質を含むガスが貯留されてもよく、たとえば、Siを含有するガスであってもよい。このとき、Si含有ガスとして、例えば、ポリシラン(H3Si-(SiH2)n-SiH3)を含有するガスを用いてもよい。他の例として、ドーピングガス貯留部450にp型のドーパント物質を含むガスが貯留されてもよく、例えば、Mgを含有するガスであってもよい。このとき、Mg含有ガスとして、例えば、Cp2Mgを含有するガスを用いてもよい。また、ドーピングガスは、Si、In、Al、Znのうちのいずれか1種又は1種以上のガスを混合したものであってもよい。
【0099】
また、ガス供給部400は、ソースガス貯留部410及びドーピングガス貯留部450のそれぞれと第1の搬送管470aとを繋ぐ複数本の第1の連結管480aと、複数本の第1の連結管480aのそれぞれに配設された弁と、リアクタントガス貯留部420と、パージガス貯留部430と、プラズマ発生用のガス貯留部440のそれぞれと第2の搬送管470bとを繋ぐ複数本の第2の連結管480bと、複数本の第2の連結管480bのそれぞれに配設された弁と、を備えていてもよい。
【0100】
ソースガス貯留部410は、複数で設けられてもよく、複数のソースガス貯留部410(410a、410b、410c)には互いに異なる種類のソースガスが貯留されるように設けられてもよい。そして、複数のソースガス貯留部410a、410b、410cのそれぞれに第1の連結管480aが連結されてもよく、前記複数のソースガス貯留部410a、410b、410cのそれぞれに連結された第1の連結管480aが第1の搬送管470aと連結されてもよい。
【0101】
混合部460は、複数のソースガス貯留部410a、410b、410cからのガスを混合したり、ソースガス貯留部410からのガスとドーピングガス貯留部450からのガスとを混合したりする手段であってもよい。このような混合部460は、ガスが混合可能な内部空間を有するように設けられてもよい。また、混合部460は、複数のソースガス貯留部410a、410b、410c及びドーピングガス貯留部450のそれぞれに連結された第1の連結管480aと第1の搬送管470aとを繋ぐように配設されてもよい。このため、混合部460の内部に流れ込んだ複数種のガスが前記混合部460の内部において混合された後、第1の搬送管470aを介して第1のガス供給管500aに搬送されることが可能になる。
【0102】
図7は、本発明の実施形態に係るパワー半導体素子の製造方法に用いられる蒸着装置の他の例を概略的に示す図である。
【0103】
実施形態に係るパワー半導体素子の活性層10、ウェル層21、22を形成するための蒸着装置は、
図6に示される装置に何ら限定されるものではなく、
図7に示される蒸着装置を用いてもよい。
【0104】
図7を参照すると、蒸着装置は、チャンバー100と、チャンバー100内に配設されて基板Sを支持するための支持台200と、それぞれが支持台200と向かい合うようにチャンバー100の内部に配設された第1及び第2のガス噴射部300a、300bと、第1及び第2のガス噴射部300a、300bに工程ガスを与えるガス供給部400と、プラズマの発生のためにチャンバー100内に電場を誘導するためのコイルを備えるアンテナ610、及びアンテナ610と接続された電源部620を備えていてもよい。
【0105】
また、蒸着装置は、支持台200と対向するように配設された加熱部500と、支持台200を昇降させたり回転させたりする駆動部700と、チャンバー100の内部のガス及び不純物を排気する排気部800と、を備えていてもよい。
【0106】
チャンバー100は、内部に搬入された基板Sの上に薄膜が形成可能な内部空間を有する筒状であって、例えば、
図7に示すように、ドームの形状であってもよい。より具体的には、チャンバー100は、チャンバー胴体110と、チャンバー胴体110の上部に配設された上胴体120、及びチャンバー胴体110の下部に配設された下胴体130を備えていてもよい。チャンバー胴体110は、上部及び下部が開かれた筒状であってもよく、チャンバー胴体110の上部の開口を覆うように上胴体120が配設され、チャンバー胴体110の下部の開口を覆うように下胴体130が配設されてもよい。そして、上胴体120は、その幅方向の中心に向かって進むにつれて高さが次第に増加する斜面を有するドーム(dome)状であってもよい。また、下胴体130は、その幅方向の中心に向かって進むにつれて高さが次第に減少する斜面を有するドーム(dome)状であってもよい。このようなチャンバー100、すなわち、チャンバー胴体110と、上胴体120及び下胴体130のそれぞれは、透光可能な透明材質から作製されてもよく、たとえば、石英(quartz)製のものであってもよい。
【0107】
ガス供給部400は、
図6において説明した構成と同様に設けられてもよい。すなわち、ガス供給部400は、ソースガスが貯留されたソースガス貯留部410と、ソースガスと反応するリアクタントガスが貯留されたリアクタントガス貯留部420と、パージガスが貯留されたパージガス貯留部430と、ソースガス貯留部410と第1のガス噴射部300aとを繋ぐように配設された第1の搬送管470aと、リアクタントガス貯留部420とパージガス貯留部430と第2のガス噴射部300bとを繋ぐように配設された第2の搬送管470bと、を備えていてもよい。
【0108】
また、ガス供給部400は、リアクタントガスの噴射後に、又は2次パージ後にチャンバー100の内部にプラズマを生じさせるステップにおいて供給されるガス(以下、プラズマ発生用のガスと称する。)が貯留されたプラズマ発生用のガス貯留部440を備えていてもよい。このとき、プラズマ発生用のガスは、たとえば、水素ガスであってもよい。
【0109】
そして、ガス供給部400は、ドーピングガスが貯留されたドーピングガス貯留部450と、複数種のガスを混合するように第1の搬送管470aに配設された混合部460と、を備えていてもよい。
【0110】
さらに、ガス供給部400は、ソースガス貯留部410及びドーピングガス貯留部450のそれぞれと第1の搬送管470aとを繋ぐ複数本の第1の連結管480aと、複数本の第1の連結管480aのそれぞれに配設された弁と、リアクタントガス貯留部420と、パージガス貯留部430と、プラズマ発生用のガス貯留部440のそれぞれと第2の搬送管470bとを繋ぐ複数本の第2の連結管480bと、複数本の第2の連結管480bのそれぞれに配設された弁と、を備えていてもよい。
【0111】
アンテナ610は、チャンバー100の上胴体120の上部に配設されてもよい。このとき、アンテナ610は、複数のターン(turn)数にて巻き付けられた螺旋状に設けられてもよいし、同心円の形状に配置されて互いに繋がっている多数の円形コイルを備える構成であってもよい。いうまでもなく、アンテナ610は、螺旋状のコイル又は同心円の形状の円形コイルに何ら限定されるものではなく、他の形状を有する多種多様な形状のアンテナが適用可能である。
【0112】
アンテナ610の両終端のうちの一方の端には電源部620が接続され、他方の端は接地端子と接続されてもよい。したがって、電源部620を介してアンテナ610に電源、例えば、RF電源が供給されれば、チャンバー100の内部に噴射されたガスがイオン化又は放電されてチャンバー100の内部にプラズマを生じさせることになる。
【0113】
加熱部500は、チャンバー100の内部及び支持台200を加熱する手段であって、チャンバー100の外部に配設されてもよい。より具体的には、加熱部500は、チャンバー100の外部の下側において少なくとも一部が支持台200と向かい合うように配設されてもよい。このような加熱部500は、複数のランプを備える手段であってもよく、複数のランプは、支持台200の幅方向に並ぶように配設されてもよい。そして、複数のランプは、輻射熱を放出するハロゲンなどのランプを備えていてもよい。
【0114】
以下、
図2及び
図3に基づいて、本発明の実施形態に係るパワー半導体素子の製造方法について説明する。このとき、
図6の蒸着装置を用いて説明し、電界効果トランジスターを例にとって説明する。
【0115】
まず、支持台200に設けられたヒーター210を動作させて支持台200を加熱する。このとき、支持台200又は前記支持台200に載置されるべき基板Sの温度が工程温度、例えば、500℃~520℃になるようにヒーターを動作させる。
【0116】
次いで、基板S、たとえば、SiCからなる基板Sをチャンバー100の内部に装入して支持台200の上に載置する。このとき、基板Sは、1枚以上の複数枚の基板を支持台200に設けてもよい。この後、支持台200の上に載置された基板Sが狙いの工程温度、たとえば、500℃~520℃になると、基板Sの上に活性層10を形成する。
【0117】
このとき、原子層蒸着法を用いて活性層10を形成する。そして、原子層の蒸着は、ソースガスの噴射、パージガスの噴射(1次パージ)、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射(2次パージ)の順に行われるが、このとき、2次パージ後にチャンバー100の内部にプラズマを生じさせる。すなわち、原子層蒸着法により活性層10を形成する工程サイクルは、「ソースガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)-プラズマの発生」であってもよい。そして、上述した工程サイクルを複数回繰り返し行って狙いの層厚の活性層10を形成する。
【0118】
以下、噴射部300及びガス供給部400を用いてチャンバー100の内部に工程ガスを噴射して活性層10を形成する方法についてさらに詳しく説明する。このとき、AlGaInPからなる活性層10を形成する場合を例にとって説明する。
【0119】
まず、チャンバー100の内部にソースガスを噴射する。このために、第1のソースガス貯留部410に貯留されているAl含有ガス、第2のソースガス貯留部410に貯留されているGa含有ガス、第3のソースガス貯留部410に貯留されているIn含有ガスのそれぞれを混合部460に供給する。このため、混合部460の内部において3種類のソースガス、すなわち、Al含有ガス、Ga含有ガス、In含有ガスが混合される。
【0120】
混合されたソースガスは、第1の搬送管470a及び第1のガス供給管500aを経て噴射部300内の拡散空間350に流れ込む。そして、混合されたソースガスは、拡散空間350内において拡散された後、複数のノズル320、すなわち、複数の第1の経路360aを通過して基板Sに向かって噴射される。
【0121】
ソースガスの噴射が中断又は終了されれば、パージガス貯留部430を介してパージガスを与えてチャンバー100の内部にパージガスを噴射する(1次パージ)。このとき、パージガス貯留部430から排出されたパージガスは、第2の連結管480bと、第2の搬送管470b及び第2のガス供給管500bを経た後、第2の経路360bを介して下側に噴射されてもよい。
【0122】
次いで、リアクタントガス貯留部420からリアクタントガス、たとえば、P含有ガスが与えられてチャンバー100の内部に噴射される。このとき、リアクタントガスは、パージガスと同一の経路を介してチャンバー100の内部に噴射されてもよい。すなわち、リアクタントガスは、第2の連結管480bと、第2の搬送管470b及び第2のガス供給管500bを経た後、第2の経路360bを介して下側に噴射されてもよい。リアクタントガスが噴射されれば、基板Sの上に吸着されているソースガスと前記リアクタントガスとの反応が起きて反応物、すなわち、AlGaInPが生成できる。そして、この反応物が基板Sの上に堆積又は蒸着され、このため、基板Sの上にAlGaInPからなる薄膜が形成される。
【0123】
このように、チャンバー100の内部にリアクタントガスが噴射されるとき、RF電源部600を動作させて第1のプレート310にRF電源を供給してもよい。第1のプレート310にRF電源が供給されれば、噴射部300内の第2の経路360b及び第1のプレート310と支持台200との間の空間にプラズマが生成できる。
【0124】
リアクタントガスの噴射が中断されれば、パージガス貯留部430を介してパージガスを与えてチャンバー100の内部にパージガスを噴射する(2次パージ)。このとき、2次パージによりソースガスとリアクタントガスとの反応による副産物などがチャンバー100の外部に排出できる。
【0125】
2次パージが終了されれば、プラズマ発生用のガス貯留部440からガス、たとえば、水素ガスを与え、RF電源を動作させて第1のプレート310にRF電源を供給する。このため、チャンバー100の内部に水素ガスを用いたプラズマ、すなわち、水素プラズマが生成される。
【0126】
このように、リアクタントガスの噴射後に、又は2次パージ後にチャンバー100の内部にプラズマを生じさせることにより、600℃以下の低温下でも基板Sの上に活性層10を形成することができる。また、結晶質、より具体的には多結晶質の活性層10を形成することができる。
【0127】
上述したような「ソースガスの噴射、パージガスの噴射(1次パージ)、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射(2次パージ)、プラズマの発生」の順に行われる工程サイクルは、複数回繰り返して行われてもよい。そして、狙いの層厚に応じて、工程サイクルの実施回数を決定してもよい。
【0128】
狙いの層厚の活性層10が形成されれば、活性層10の一部をエッチングする。たとえば、活性層10の幅方向又は長手方向の中心領域の外側の領域において、所定の厚さの活性層10をエッチングする。このために、例えば、活性層10の中心領域を閉じ、残りの領域を開くマスクを設け、前記マスクを活性層10の上側に配置する。そして、活性層10の上側からエッチング用のガスを噴射して開放領域に露出された活性層10の一部をエッチングする。このとき、マスクの開放領域と向かい合う活性層10が狙いの層厚で残留できるようにエッチングを行う。このとき、エッチングガスは、SF6、Cl2、CF4又はO2少なくともいずれか1種又は2種のガスの組み合わせ及びプラズマを印加してエッチングに用いてもよい。
【0129】
このようなエッチングにより、活性層10は、基板Sの上部面に形成された第1の層11及び第1の層11の中心領域に形成された第2の層12を備える形態に設けられてもよい。このため、活性層10は、第2の層12が形成された領域の高さが第1の層11のみ形成された部分に比べて高い形状、すなわち、段付きの形状になり得る。
【0130】
上述したように、活性層の一部をエッチングする工程は、
図6に示される蒸着装置とは別途の装置において行われてもよい。そして、エッチングが行われる装置は、蒸着装置とイン・サイチュにて連結された装置であってもよい。
【0131】
エッチングが終了されれば、活性層10の第1の層11の上部にウェル層21、22を形成する。このとき、ウェル層21、22は、例えば、原子層蒸着法により形成してもよく、活性層10の形成時と同一の蒸着装置を用いて形成してもよい。
【0132】
以下、ウェル層21、22を形成する方法について説明し、
図6に示される蒸着装置を用いて形成する方法について説明する。このとき、n型のAlGaInP層としてウェル層21、22を形成する場合を例にとって説明する。
【0133】
まず、活性層10が形成された基板Sをチャンバー100内に装入して支持台200の上に載置する。そして、活性層10の第2の層12と向かい合う領域が閉じられ、残りが開かれたマスクを前記活性層10の上側に配置する。
【0134】
次いで、チャンバー100の内部にソースガスを噴射する。このために、まず、第1のソースガス貯留部410に貯留されているAl含有ガス、第2のソースガス貯留部410に貯留されているGa含有ガス、第3のソースガス貯留部410に貯留されているIn含有ガス、ドーピングガス貯留部450に貯留されているSi含有ガスのそれぞれを混合部460に供給する。このため、混合部460の内部においてAl含有ガス、Ga含有ガス、In含有ガス、Si含有ガスが混合される。混合されたガスは、第1の搬送管470aと、第1のガス供給管500a、及び噴射部300の第1の経路360aを通過して基板Sに向かって噴射される。
【0135】
この後、パージガス貯留部430からパージガスを与えて、噴射部300の第2の経路360bを介してチャンバー100の内部にパージガスを噴射する(1次パージ)。
【0136】
次いで、リアクタントガス貯留部420からリアクタントガス、たとえば、P含有ガスを与えて、噴射部300の第2の経路360bを介してチャンバー100の内部に噴射する。そして、このとき、第1のプレート310にRF電源を供給してプラズマを生じさせてもよい。
【0137】
リアクタントガスが噴射されれば、基板Sの上に吸着されているソースガスとリアクタントガスとの反応が起きて、反応物、すなわち、AlGaInPが生成できる。このとき、ソースガスとドーピングガスとが混合されて噴射されたため、反応物は、SiがドープされたAlGaInPとなる。したがって、活性層10の第1の層11の上にn型のAlGaInP層からなるウェル層21、122が形成されることが可能になる。
【0138】
リアクタントガスの噴射が終了されれば、パージガス貯留部430からパージガスを与えてチャンバー100の内部にパージガスを噴射する(2次パージ)。
【0139】
2次パージが終了されれば、チャンバー100の内部にプラズマを生じさせるステップが追加されてもよい。すなわち、プラズマ発生用のガス貯留部440からガス、たとえば、水素ガスを与えてチャンバー100の内部に水素ガスを噴射し、第1のプレート310にRF電源を供給する。このため、チャンバー100の内部に水素ガスを用いたプラズマ、すなわち、水素プラズマが生成される。
【0140】
この後、「ソースガスの噴射(ソースガス+ドーピングガスの混合)、パージガスの噴射(1次パージ)、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射(2次パージ)、プラズマの発生」の順に行われる工程サイクルを複数回行って、狙いの層厚のウェル層21、22を形成する。このとき、ウェル層21、22は、
図2に示されるように、活性層10の第1の層11の上部において第2の層12を取り囲む形状に設けられてもよい。
【0141】
以上においては、ウェル層21、22を形成するに際して、2次パージ後にプラズマを生じさせることについて説明した。しかしながら、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、2次パージ後にプラズマを生じさせるステップが省略されてもよい。
【0142】
ウェル層21、22が形成されれば、活性層10及びウェル層21、22の上部にゲート絶縁層30を形成する。このとき、ゲート絶縁層30は、たとえば、Al2O3から形成されてもよく、化学気相蒸着法、有機金属化学気相蒸着法及び原子層蒸着法のうちのいずれか1つの方法により形成してもよい。
【0143】
この後、ゲート絶縁層30の一部をエッチングする。たとえば、ウェル層21、22の上部における周縁部に形成されたゲート絶縁層30をエッチングする。このため、
図1に
示されるように、活性層10の第2の層12の上部にゲート絶縁層30が設けられ、このとき、ゲート絶縁層30は、第2の層12に比べてさらに短い長さに設けられ得る。
【0144】
次いで、ウェル層21、22の上側におけるゲート絶縁層30の一方の側にソース電極41を、他方の側にドレイン電極42を形成する。このとき、Ti及びAuのうちの少なくとも一方の材料を用いてソース及びドレイン電極41、42を形成してもよく、例えば、スパッターリング蒸着法により形成されてもよい。
【0145】
そして、ゲート絶縁層30の上にゲート電極50を形成する。このとき、ゲート電極50は、ソース及びドレイン電極41、42と同一の材料及び同一の方法により設けられてもよい。例えば、ゲート電極50は、Ti及びAuのうちの少なくとも一方の材料から形成されてもよく、スパッターリング蒸着法により形成されてもよい。
【0146】
このように、実施形態に係るパワー半導体素子の製造方法によれば、低温下で活性層10を形成することができる。したがって、基板S又はその上部に形成された薄膜が高温の熱により損傷されることを防ぐことができる。また、活性層10の形成のために基板Sを昇温させる電力又は時間を節減することができ、全体の工程時間を短縮させることができる。
【0147】
また、活性層10を結晶化させて形成することができる。すなわち、低温下で活性層10を形成しながらも、結晶化された活性層を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明の実施形態によれば、低温下で活性層を形成することができる。このため、基板又はその上部に形成された薄膜が高温の熱によって損傷されることを防ぐことができる。また、活性層の形成のために基板を昇温させる電力又は時間を節減することができ、全体の工程時間を短縮させることができる。
【0149】
また、活性層を結晶化させて形成することができる。すなわち、低温下で活性層を形成しながらも、結晶化された活性層を形成することができる。
【国際調査報告】