(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】頭蓋顎顔面インプラントおよびその設計方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/28 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
A61F2/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023575651
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 TH2021000031
(87)【国際公開番号】W WO2022260609
(87)【国際公開日】2022-12-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523458645
【氏名又は名称】メティキュリー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シリチャットチャイ,カニン
(72)【発明者】
【氏名】パクディーウィセトクル,カンタパット
(72)【発明者】
【氏名】チャロエンスリソンブーン,ターニャ
(72)【発明者】
【氏名】ティエンスリ,タナコーン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA01
4C097BB01
4C097BB10
4C097CC01
4C097DD06
4C097DD10
4C097EE13
4C097FF05
4C097SC10
(57)【要約】
本発明による態様は、実質的に一様な厚さを有する剛性プレートである頭蓋顎顔面インプラントを設計する方法、およびその方法により得られる患者特有の頭蓋顎顔面インプラントに関する。この方法は、上記プレートの表面要素をベースアウトライン内の参照位置からの逸脱として位置決めすることを含み、この逸脱は、上記参照位置から解剖学的関心領域内の支持位置の所定の軟組織層に投影される垂直経路の長さの一部割合によって表され、この一部割合は、上記支持位置における所要の患者特有サポートに基づく。この患者特有の頭蓋顎顔面インプラントは、実質的に一様な厚さを有する反った剛性のプレートに形成される。この反りは、(i)少なくとも頭蓋顎顔面骨および/または頭蓋顎顔面骨の上にある軟組織層上にセットされてそれにより支持され、(ii)少なくとも上記頭蓋顎顔面骨の代わりに軟組織層を支持することによって軟組織層の上昇を補償または増補するように、インプラントを適応させるように術前に構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に一様な厚さを有する剛性プレートである頭蓋顎顔面インプラントを設計する方法であって、前記方法は、前記プレートの表面要素をベースアウトライン内の参照位置からの逸脱として位置決めすることを含み、前記逸脱は、前記参照位置から解剖学的関心領域内の支持位置の所定の軟組織層に投影される垂直経路の長さの一部割合によって表され、前記一部割合は、前記支持位置における所要の患者特有サポートに基づく、方法。
【請求項2】
前記ベースアウトラインは、術後頭蓋顎顔面画像および術前頭蓋顎顔面画像に基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ベースアウトラインは、前記術後頭蓋顎顔面画像によって表される前記軟組織層の湾曲にさらに基づいて決定される表面拘束を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記支持位置における前記患者特有サポートは、(i)前記術後頭蓋顎顔面画像から決定される前記軟組織層の術後体積と(ii)前記術前頭蓋顎顔面画像から決定される前記軟組織層の術前体積との間の体積差にさらに基づく、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記術後頭蓋顎顔面画像は、前記術前頭蓋顎顔面画像上で解剖学的参照領域を見当合わせすることによって取得され、前記解剖学的参照領域は、手術対象の頭蓋顎顔面骨の最も近くにも位置する最も密度の高い軟組織層を有する頭蓋顎顔面領域に応じて定義される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記術後頭蓋顎顔面画像は、ミラーリングされた対側の頭蓋顎顔面画像に基づいて生成される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記術後頭蓋顎顔面画像は、複数の頭蓋顎顔面テンプレートを含むライブラリ内で検索可能な頭蓋顎顔面テンプレートに基づいて生成される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記ライブラリは、前記術前頭蓋顎顔面画像の解剖学的ランドマークをライブラリ内に含まれる前記頭蓋顎顔面テンプレートの解剖学的ランドマークと比較することによって検索可能である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ライブラリは、臨床転帰データを含むフィードバック情報に基づいて前記頭蓋顎顔面テンプレートを更新するように構成される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記頭蓋顎顔面テンプレートの前記更新は、人工知能によって実施される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記一部割合は、前記ベースアウトライン内の前記参照位置のうちの複数にわたって変化する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記一部割合は、臨床転帰データで訓練された人工知能によって決定される相関因子にさらに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記垂直経路の長さは、前記ベースアウトライン内の前記参照位置のうちの複数にわたって変化する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記所要の患者特有サポートは、前記解剖学的関心領域内の前記参照位置のうちの複数にわたって変化する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記支持位置における前記所要の患者特有サポートは、前記軟組織層の幾何学的形状および最終位置にさらに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記プレートの孔隙を構成するステップをさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記プレートの機械的補強を構成するステップをさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
頭蓋インプラントまたは前頭インプラントを設計するための、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
上顎骨インプラントまたは頬骨インプラントを設計するための、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
眼窩インプラントを設計するための、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
鼻インプラント、顎インプラント、または下顎骨インプラントを設計するための、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
実質的に一様な厚さを有する反った剛性のプレートに形成された患者特有の頭蓋顎顔面インプラントであって、前記反りは、
少なくとも頭蓋顎顔面骨および/または前記頭蓋顎顔面骨の上にある軟組織層上にセットされてそれにより支持され、
少なくとも前記頭蓋顎顔面骨の代わりに前記軟組織層を支持することによって前記軟組織層の上昇を補償または増補する
ように、前記インプラントを適応させるように術前に構成される、
患者特有の頭蓋顎顔面インプラント。
【請求項23】
前記反りは、少なくとも前記頭蓋顎顔面骨の代わりに前記軟組織層を支持することによって前記軟組織層の前記上昇を補償または増補するように前記インプラントを適応させるように術前に構成され、前記支持は、前記頭蓋顎顔面骨の対側部分によって与えられる支持とは非対称である、請求項22に記載のインプラント。
【請求項24】
前記実質的に一様な厚さは、0.2~0.8mmの範囲内である、請求項22に記載のインプラント。
【請求項25】
前記軟組織層は、筋肉、脂肪、および皮膚のうちの1つまたは複数である、請求項22に記載のインプラント。
【請求項26】
前記プレートは、多孔性でもある、請求項22に記載のインプラント。
【請求項27】
術前に構成された機械的補強をさらに含む、請求項26に記載のインプラント。
【請求項28】
前記機械的補強は、前記プレートの前記孔隙を局所的に埋めるものである、請求項27に記載のインプラント。
【請求項29】
前記機械的補強は、前記プレートを局所的に厚くするものである、請求項27に記載のインプラント。
【請求項30】
前記頭蓋顎顔面骨上で前記インプラントを固定する、かつ/または前記頭蓋顎顔面骨上の前記インプラントの安定性を高める手段をさらに含む、請求項22に記載のインプラント。
【請求項31】
前記反りは、少なくとも前記頭蓋顎顔面骨の代わりに前記軟組織層を受けることによって前記軟組織層を支持するように前記インプラントを適応させるように術前に構成される、請求項22から30のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項32】
前記反りは、少なくとも前記頭蓋顎顔面骨の上で前記軟組織層を持ち上げることによって前記軟組織層を支持するように前記インプラントを適応させるように術前に構成される、請求項22から30のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項33】
欠損した頭蓋顎顔面骨および前記欠損した頭蓋顎顔面骨の上にある欠損した軟組織層を再建するための前記インプラントであって、前記反りは、
少なくとも前記欠損した頭蓋顎顔面骨の非欠損部分および/または前記欠損した軟組織層の欠損部分の上にセットされてそれにより支持され、
前記欠損した頭蓋顎顔面骨の欠損部分、および
前記欠損した軟組織層の前記欠損部分
の代わりに前記欠損した軟組織層を支持する
ように、前記インプラントを適応させるように術前に構成される、請求項22から32のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項34】
前記欠損した頭蓋顎顔面骨は、頭蓋であり、前記欠損した軟組織層は、その上にある側頭筋および脂肪を含む、請求項33に記載のインプラント。
【請求項35】
前記欠損した頭蓋顎顔面骨は、上顎骨または頬骨であり、前記欠損した軟組織層は、その上にある大頬骨筋、小頬骨筋、および脂肪を含む、請求項33に記載のインプラント。
【請求項36】
前記欠損した頭蓋顎顔面骨は、眼窩であり、前記欠損した軟組織層は、その上にある眼輪筋、下直筋、下斜筋、眼球、および脂肪を含む、請求項33に記載のインプラント。
【請求項37】
美容手術のための前記インプラントであって、前記反りは、
少なくとも前記頭蓋顎顔面骨および/または前記軟組織層上にセットされてそれにより支持され、
少なくとも前記頭蓋顎顔面骨の代わりに前記軟組織層を支持することによって前記頭蓋顎顔面骨の見かけの輪郭を改変する
ように、前記インプラントを適応させるように術前に構成される、請求項22から32のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項38】
前記美容手術は、鼻骨または前頭に対して行われる、請求項37に記載のインプラント。
【請求項39】
前記美容手術は、上顎骨または頬骨に対して行われる、請求項37に記載のインプラント。
【請求項40】
前記美容手術は、下顎骨に対して行われる、請求項37に記載のインプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨手術用の医療機器、特に人間の骨インプラントに関し、さらに詳細には、頭蓋顎顔面、すなわち人間の頭骨および顔の骨のインプラントに関する。本発明は、さらに、このような機器を設計および製造する方法、特にコンピュータ支援またはコンピュータ実施されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
頭蓋顎顔面インプラントは、再建手術および美容手術に適用される。この2種類の手術は、異なる目的を有する。再建手術は、外傷または病気によって生じ得る頭蓋顎顔面骨の欠損(すなわち不健康)部分を修復または置換するために行われるが、美容手術は、欠損部分が本来ない患者の頭蓋顎顔面の特徴の外観を改善することを目的とするものである。しかしながら、美しさという点で、またおそらくは生活の質という点でも重要な意味を持つ人体部分である患者の顔に関係があることから、術後の患者の見た目が良好であることは、どちらの種類の処置にとっても重要である。実際に、再建処置の後に少なくとも数回の美容処置が行われること、および顔の見た目がかなり復元されるまでは患者が完全に回復したとみなされないということは珍しいことではない。顔の美しさは顔の対側対称性に基づくので、美しさがわずかに損なわれただけでも気付かれやすいが、完全な復元を実現することは困難である。
【0003】
従来は多数回のフォローアップ処置を必要とする頭蓋顎顔面移植の1つの難題は、主として骨と周囲の軟組織層との間の関係にある。この技術分野の文脈では、特に関係がある軟組織層は、脂肪、筋肉、および/または皮膚を含む。この層の萎縮およびその後の体積喪失は、特に再建手術に関係がある。徐々に、また予測不能に進行するので、最終的な体積喪失は、数週間から数年に及ぶ不確実な期間にわたって顕在化する傾向がある。
【0004】
両種類の頭蓋顎顔面移植をさらに制約する別の難題は、処置の侵襲性によって引き起こされる可能性がある外傷である。頭蓋顎顔面領域は、脳、副鼻腔および眼球、ならびにそれらを繋ぐ神経など、身体の繊細で重要な器官を覆う薄い骨および軟組織層しか含まない。理想的には、頭蓋顎顔面インプラントは、小さくて薄いのがよく、そうでなければ移植に大きな切開が必要となり、それにより萎縮および体積喪失の可能性がさらに高くなり、そうした萎縮および体積喪失が、後に顕在化して顔面の対称性/美しさのより大きな部分に影響を及ぼすことになる。
【0005】
満足のいく術後の顔の美しさに関する上記の障害は、関連する技術分野における長年の問題であった。
【0006】
この問題に対処しようとする過去の試みは、患者特有の頭蓋顎顔面インプラントならびにその設計方法を教示する共通のパテントファミリー(まとめて「Gordon他」)の米国特許第9,216,084(B2)号および米国特許第10,020,662(B2)号を含む。このインプラントは、特に頭蓋の再建処置(さらに詳細には空隙の充填)を対象とするものである。さらに、このインプラントは、第1の体積を有するベース部分と、第2の体積を有し、空隙の少なくとも一部分の上に位置する、軟組織の喪失を補う術前に設計される湾曲増補部分とを含む。この頭蓋顎顔面インプラントの外側表面は、頭骨の対側の骨に対して非対称である。このインプラントの主な機能が部分的に増強された体積に依存することにより、このインプラントはかさばり、侵襲性が高くなるだけでなく、その適用が、頭蓋顎顔面領域の中でもこの侵襲性の影響を最も受けない比較的大きく厚い部分である頭蓋に制限されることになる。さらに、Gordon他のインプラントモデルの設計は、軟組織の喪失の正確な推定が得られない患者の頭蓋の欠損部の対側の骨の画像または事前入手可能なデータに基づいている。
【0007】
他の注目すべき過去の試みは、米国特許第9895211(B2)号(「Yaremchuk」)および米国特許第10792141(B2)号(「Brogan」他)である。Yaremchukは、締結要素によって固定される第1の本体部分および第2の本体部分と、インプラントが下顎骨に隣接して位置決めされたときに少なくとも1つの方向に下顎骨に対して相対的にインプラントが動くのを防止するための少なくとも1つの見当合わせフランジとを含む頭蓋顔面インプラントを対象としている。一方、Brogan他は、可撓性高分子の軟組織の仮インプラントを対象としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、頭蓋顎顔面領域に共通の難題すなわち軟組織層の喪失および侵襲性に対処することができると同時に、この領域内の複数の特定の部位に適用可能でもある、新規の頭蓋顎顔面インプラントおよびその新規の設計方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
「術後画像」、「テンプレート」、および「臨床転帰」などの特定の用語は、以降の詳細な説明の項で提供するそれぞれの定義に従う。
【0010】
第1の態様では、本発明は、実質的に一様な厚さを有する剛性プレートである頭蓋顎顔面インプラントを設計する方法によって実施される。この方法は、上記プレートの表面要素をベースアウトライン内の参照位置からの逸脱として位置決めすることを含む。この逸脱は、上記参照位置から解剖学的関心領域内の支持位置の所定の軟組織層に投影される垂直経路の長さの一部割合によって表される。この一部割合は、上記支持位置における所要の患者特有サポートに基づく。
【0011】
第1の態様は、第1の態様による頭蓋顎顔面インプラントを実現するために必要な方法に関する。特に、第1の態様は、(i)少なくとも頭蓋顎顔面骨および/または頭蓋顎顔面骨の上にある軟組織層上にセットされてそれにより支持され、(ii)少なくとも上記頭蓋顎顔面骨の代わりに軟組織層を支持することによって軟組織層の上昇を補償または増補する、有用性をインプラントに与えるために第2の態様(以降に要約する)によるインプラントのプレートの反りに必要とされる術前構成に関する。
【0012】
さらに、従来技術による設計方法は患者の頭蓋顎顔面骨の画像の2次元断面平面から決定される接線から構成された曲線に基づくが、本発明の第1の態様による設計方法は、参照位置からの逸脱の観点で位置決めした表面要素に基づく。第1の態様のこの際立った特徴により、局所補償から美容目的までカバーし得る幅広い状況に応じた患者のニーズに対処するためのより深いカスタマイズが可能になる。この特徴により、また、実施形態のトポロジ/反りをミリメートル以下のスケールで構成することも可能になる。
【0013】
好ましくは、ベースアウトラインは、術後頭蓋顎顔面画像および術前頭蓋顎顔面画像に基づいて決定される。
【0014】
さらに好ましくは、ベースアウトラインは、上記術後頭蓋顎顔面画像によって表される軟組織層の湾曲にさらに基づいて決定される表面拘束を含む。また、さらに好ましくは、支持位置における所要の患者特有サポートは、(i)術後頭蓋顎顔面画像から決定される軟組織層の体積と(ii)術前頭蓋顎顔面画像から決定される軟組織層の体積との間の体積差にさらに基づく。本発明者等は、以上の参照およびベースをそれらから決定されるパラメータとともに実施すると、方法の結果が有意に改善されることを発見した。このようにして決定される表面拘束は、ベースアウトラインの面積を最小にするので、得られるインプラントの侵襲性も最小にする。このようにして決定される所要の患者特有サポートは、所期の手術結果に必要な物理的調整を正確に表す。
【0015】
一実施形態では、術後頭蓋顎顔面画像は、術前頭蓋顎顔面画像上で解剖学的参照領域を見当合わせすることによって取得される。この解剖学的参照領域は、手術対象の頭蓋顎顔面骨の最も近くにも位置する最も密度の高い軟組織層を有する頭蓋顎顔面領域に応じて定義される。このようにして定義される解剖学的参照領域は、最も密度の高い軟組織層を有する付近の頭蓋顎顔面領域を考慮することになる。この領域の変形(萎縮、体積喪失など)が、治療の精度に影響を及ぼす可能性が最も高く、また治療の精度に最も有意な影響を及ぼす。
【0016】
あるいは、術後頭蓋顎顔面画像は、ミラーリングされた対側の頭蓋顎顔面画像に基づいて生成することもあるし、ミラーリングされた画像を生成することができない場合(例えば前頭骨欠損の場合)には、代替として、上記術後頭蓋顎顔面画像は、複数の上記頭蓋顎顔面テンプレートを含むライブラリ内で検索可能な頭蓋顎顔面テンプレートに基づいて生成してもよい。ライブラリを用いる代替形態では、上記ライブラリは、術前頭蓋顎顔面画像の解剖学的ランドマークをライブラリ内に含まれる頭蓋顎顔面テンプレートの解剖学的ランドマークと比較することによって検索可能であることが好ましい。さらに好ましくは、ライブラリは、臨床転帰データを含むフィードバック情報に基づいて頭蓋顎顔面テンプレートを更新するように構成される。ライブラリが頭蓋顎顔面テンプレートを更新するように構成される実施形態では、頭蓋顎顔面テンプレートの更新は、人工知能によって実施されるのが最も好ましい。
【0017】
ライブラリを用いる実施形態は、設計中のインプラントが、美容手術または対側の頭蓋顎顔面骨が損傷するなどして利用できない再建手術のためのものであるときに特に有用であることに留意されたい。ライブラリは、(ミラーリングされた頭蓋顎顔面画像のように)患者自身の体では見ることができない術後の結果のすぐに使用できる参照の集合を提供する。
【0018】
任意選択で、上記の一部割合は、ベースアウトライン内の参照位置のうちの複数にわたって変化する。好ましくは、この一部割合は、臨床転帰データで訓練された人工知能によって決定される相関因子にさらに基づく。このようにして訓練される人工知能は、長期にわたって進行する可能性がある軟組織層の変形があればそれをさらに補償し、それによりそのような進行の美的影響および/または手術を繰り返さなければならなくなるリスクを低減する。任意選択で、上記垂直経路の長さは、ベースアウトライン内の参照位置のうちの複数にわたって変化する。また、任意選択で、所要の患者特有サポートは、解剖学的関心領域内の参照位置のうちの複数にわたって変化する。
【0019】
好ましくは、支持位置における所要の患者特有サポートは、軟組織層の幾何学的形状および最終位置にさらに基づく。本発明者等は、幾何学的形状および位置を別個のパラメータとみなすことの重要性を想定している。この重要性は、後に眼窩インプラントに関する例示的なケースにおいて分類する。
【0020】
第1の態様による実施形態は、プレートの孔隙を構成するステップ、およびプレートの機械的補強を構成するステップのうちのいずれか1つ、またはそれらのステップの任意の組合せをさらに含むことがある。実際には、これらのステップは、以降に要約する第2の態様によるインプラントの任意選択の構成要素または好ましい構成要素の設計および構成を対象とする。
【0021】
第1の態様による実施形態を実施して、幅広い頭蓋顎顔面インプラントを設計することができる。これらの実施形態で設計されるインプラントの例示的なケースは、頭蓋骨インプラント、前頭インプラント、上顎骨インプラント、頬骨インプラント、眼窩インプラント、鼻骨インプラント、顎インプラント、および下顎骨インプラントを含む。
【0022】
第2の態様では、本発明は、頭蓋顎顔面インプラントによって実施される。このインプラントは、患者特有であり、実質的に一様な厚さを有する反った剛性のプレートに形成される。この反りは、(i)少なくとも頭蓋顎顔面骨および/または頭蓋顎顔面骨の上にある軟組織層上にセットされてそれにより支持され、(ii)少なくとも頭蓋顎顔面骨の代わりに軟組織層を支持することによって軟組織層の上昇を補償または増補するように、インプラントを適応させるように術前に構成される。
【0023】
第2の態様によれば、反った剛性プレートは、嵩を減少させ、目的への適応性を高めるインプラントの特徴的な特徴のうちの1つである。体積を増やすのではなく、反りに依拠することにより、プレート/インプラントは、薄く、また全体的に実質的に一様な厚さに保たれ、これにより必要な切開の大きさが減少し、例えば痛み、出血、および付近の組織の損傷など手術中に生じ得る合併症が低減される。この第2の態様は、年配の患者または他の健康異常を患っている患者の場合のように、患者の頭蓋顎顔面皮膚が薄い、または柔軟性に乏しいときに特に有利である。こうした患者群は、従来技術によるインプラントではその侵襲性によって皮膚びらんを生じる恐れがあるので、この第2の態様によるインプラントが有用である。
【0024】
この反った剛性プレートの特徴的な特徴により、さらに多くのカスタマイズが可能になる。本発明者等は、実施形態のトポロジ/反りがミリメートル以下のスケールで構成され得ることも想定しており、これは上記で要約した本発明の第1の態様によって可能になる。
【0025】
上記の反りは、少なくとも上記頭蓋顎顔面骨の代わりに軟組織層を支持することによって軟組織層の上昇を補償または増補するようにもインプラントを適応させるように術前に構成することができ、この支持は、頭蓋顎顔面骨の対側部分によって与えられる支持とは非対称である。この実施形態によるインプラントの反りは、状況により必要になることがある、軟組織層の喪失を補う、かつ/または所期の美容結果を実現するための上記対側の非対称性を提供する。
【0026】
好ましくは、上記の実質的に一様な厚さは、0.2~0.8mmの範囲内である。インプラントは、生体適合性材料、特にチタンもしくはその化合物/合金、人工材料、またはシリコーンで構成されることが好ましく、また特に水酸化アパタイトなどの生体適合性セラミックで構成されることが好ましい。
【0027】
本発明者等は、上記軟組織層は、ほとんどの場合には、筋肉、脂肪、および皮膚のうちの1つまたは複数であると想定している。これは、そもそも占めているスペースが小さく、骨の上で層を形成しない他の種類の軟組織層では、患者の顔の美しさに及ぼす影響がかなり小さくなるからである。しかしながら、本発明による実施形態は、他の種類の軟組織層にも完全に適用可能である。
【0028】
状況により、手術計画が、インプラントが少なくとも頭蓋顎顔面骨および軟組織層の両方の上にセットされてそれにより支持される(すなわち頭蓋顎顔面骨および軟組織層の両方がインプラントの下に配置される)ことを必要とすることがある。後述するように、本発明によれば、このような状況による要件を満たすように実施形態を適応させることができる。
【0029】
好ましくは、プレートは、多孔性でもあり、これにより、嵩および総重量はさらに減少する。いくつかの実施形態では、孔隙は、メッシュの形態で構成することがさらに好ましいこともある。孔隙に伴う強度の低下には、術前に構成する機械的補強をさらに含む実施形態で対処することができる。この機械的補強は、孔隙を局所的に埋めるもの、およびプレートの厚さを局所的に増すものなど、多くの形態をとり得る。孔隙を埋める位置またはプレートを厚くする位置は、プレートの全体的な強度を補強する正規分布によって、かつ/またはプレートの高負荷領域を選択的に位置特定することによって、事前に決定することができる。
【0030】
好ましくは、インプラントは、頭蓋顎顔面骨上でインプラントを固定する、かつ/または頭蓋顎顔面骨上のインプラントの安定性を高める手段をさらに含む。この手段の例は、骨ねじを受ける開口を有する、プレートの境界から側方に突出する固定具である。この手段の別の注目すべき例は、プレートの境界内に位置する、骨ねじのための開口である固定具である。任意の形態の上記固定具およびその周囲のプレート領域は、患者の頭蓋顎顔面骨および/または軟組織層のトポロジに応じて屈曲して、固定具をその骨および/または組織上により高い安定度で取り付けることができるように適応させることもできる。実際に、この第2の態様による実施形態の主要な特徴、すなわちインプラントが実質的に一様な厚さを有する反った剛性のプレートに形成されるという特徴により、単純なねじ穴よりも高い有用性を与えるためのこのような細かい固定具のカスタマイズが可能になる。
【0031】
任意選択で、上記の反りは、少なくとも上記頭蓋顎顔面骨の代わりに上記軟組織層を受けることによって軟組織層を支持するようにインプラントを適応させるように術前に構成される、または任意選択で、上記の反りは、少なくとも上記頭蓋顎顔面骨の上で軟組織層を持ち上げることによって軟組織層を支持するようにインプラントを適応させるように術前に構成される。これらの代替形態によって、本発明による実施形態が、再建手術(すなわちインプラントが、失われたり変形したりするなどして欠損した頭蓋顎顔面骨の代用になる)にも美容手術(すなわちインプラントが、健康な頭蓋顎顔面骨によって既に与えられている支持を修正する)にも利用される可能性があることが明らかになる。
【0032】
一実施形態は、欠損した頭蓋顎顔面骨および上記欠損した頭蓋顎顔面骨の上にある欠損した軟組織層を再建するためのインプラントであることがある。好ましくは、この実施形態は、(i)少なくとも欠損した頭蓋顎顔面骨の非欠損部分および/または上記欠損した軟組織層の欠損部分の上にセットされてそれにより支持され、(ii)上記欠損した頭蓋顎顔面骨の欠損部分および上記欠損した軟組織層の欠損部分の代わりに上記欠損した軟組織層を支持するように、インプラントを適応させるように術前に構成される反りを有する。この欠損した頭蓋顎顔面骨の例示的なケースは、頭蓋であり、この場合の欠損した軟組織層は、その上にある側頭筋および脂肪を含む。上記欠損した頭蓋顎顔面骨の別の例示的なケースは、上顎骨または頬骨であり、この場合の欠損した軟組織層は、その上にある大頬骨筋、小頬骨筋、および脂肪を含む。上記欠損した頭蓋顎顔面骨のさらに別の例示的なケースは、眼窩であり、この場合の欠損した軟組織層は、その上にある眼輪筋、下直筋、下斜筋、眼球、および脂肪を含む。
【0033】
さらに、一実施形態は、美容手術のためのインプラントでもあり得る。好ましくは、この実施形態は、(i)少なくとも頭蓋顎顔面骨および/または軟組織層上にセットされてそれにより支持され、(ii)少なくとも上記頭蓋顎顔面骨の代わりに軟組織層を支持することによって頭蓋顎顔面骨の見かけの輪郭を改変するように、インプラントを適応させるように術前に構成される反りを有する。この美容手術の例示的なケースは、鼻骨または前頭に対して行われる。上記美容手術の別の例示的なケースは、上顎骨または頬骨に対して行われる。美容手術のさらに別の例示的なケースは、下顎骨に対して行われる。
【0034】
本発明の原理およびその利点は、次の添付の図面を考慮して以下の説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】好ましい実施形態による、頭蓋顎顔面インプラントを設計する方法を示す概略流れ図である。
【
図2】好ましい実施形態による、術後頭蓋顎顔面画像を生成するステップを示す概略流れ図である。
【
図3A】好ましい実施形態の第1の代替形態による、頭蓋顎顔面画像のテンプレートを取得するステップを示す概略流れ図である。
【
図3B】好ましい実施形態の第2の代替形態による、頭蓋顎顔面画像のテンプレートを取得するステップを示す概略流れ図である。
【
図4】好ましい実施形態による、位置合わせした術前頭蓋顎顔面画像上で解剖学的参照領域を見当合わせするステップで得られる術後頭蓋顎顔面画像を示す前面図(一定の縮尺ではない)である。
【
図5A】好ましい実施形態による、セグメント化されている術前頭蓋顎顔面画像を示す斜視図(一定の縮尺ではない)である。
【
図5B】好ましい実施形態による、セグメント化されている術後頭蓋顎顔面画像を示す斜視図(一定の縮尺ではない)である。
【
図6】好ましい実施形態による、ベースアウトラインを決定するステップを示す概略流れ図である。
【
図7A】好ましい実施形態による、ベースアウトラインを決定するステップの一部として決定される境界および表面拘束を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図7B】好ましい実施形態による、ベースアウトラインを決定するステップの一部として決定される解剖学的関心領域を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図8】好ましい実施形態による、ベースアウトラインから支持位置までの垂直経路を決定するステップを示す概略流れ図である。
【
図9A】好ましい実施形態による、支持対象の軟組織層が筋肉、脂肪、および皮膚を含むシナリオにおけるベースアウトラインの割当てを示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図9B】好ましい実施形態による、支持対象の軟組織層が脂肪および皮膚のみを含むシナリオにおけるベースアウトラインの割当てを示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図10A】好ましい実施形態による、(1)支持対象の軟組織層が筋肉、脂肪、および皮膚を含み、(2)インプラントの縁部が閉じた支持可能縁部であるシナリオにおける支持位置の割当てを示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図10B】好ましい実施形態による、(1)支持対象の軟組織層が脂肪および皮膚のみを含み、(2)インプラントの縁部が閉じた支持可能縁部であるシナリオにおける支持位置の割当てを示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図10C】好ましい実施形態による、(1)支持対象の軟組織層が筋肉、脂肪、および皮膚を含み、(2)インプラントの縁部が開いた支持可能縁部であるシナリオにおける支持位置の割当てを示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図10D】好ましい実施形態による、(1)支持対象の軟組織層が脂肪および皮膚のみを含み、(2)インプラントの縁部が開いた支持可能縁部であるシナリオにおける支持位置の割当てを示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図11】好ましい実施形態で決定される、ベースアウトラインから支持位置までの垂直経路を示す概略図(一定の縮尺ではない)である。
【
図12】好ましい実施形態による、支持対象の軟組織層の体積差を決定するステップを示す概略流れ図である。
【
図13A】好ましい実施形態で計算される、同じ種類の軟組織層の術前体積と術後体積の間の差を示す前面斜視図(一定の縮尺ではない)である。
【
図13B】好ましい実施形態で計算される、同じ種類の軟組織層の術前体積と術後体積の間の差を示す後面断面図(一定の縮尺ではない)である。
【
図14】好ましい実施形態による、垂直経路に沿った参照位置からの逸脱を決定するステップを示す概略流れ図である。
【
図15A】好ましい実施形態による、関連する骨が頭蓋であるときに決定される、表面拘束湾曲の第1の軸に対する垂直経路に沿った参照位置からの逸脱を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図15B】好ましい実施形態による、関連する骨が頭蓋であるときに決定される、表面拘束湾曲の第2の軸に対する垂直経路に沿った参照位置からの逸脱を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図15C】好ましい実施形態による、関連する骨が頭蓋であるときに決定される、設計中のインプラントの境界に対する垂直経路に沿った参照位置からの逸脱を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図16】好ましい実施形態による、方面要素を位置決めするステップを示す概略流れ図である。
【
図17】好ましい実施形態による、表面要素を位置決めすることによってその表面が形成されている頭蓋インプラントの画像を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図18A】参照位置が頭蓋顎顔面骨と一致する例示的な実施形態を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図18B】参照位置が軟組織層と一致する例示的な実施形態を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図19】好ましい実施形態による、孔隙および機械的補強を構成するステップを示す概略流れ図である。
【
図20A】好ましい実施形態の第1の代替形態に従って孔隙および機械的補強が構成されているインプラントの概略画像を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図20B】好ましい実施形態の第2の代替形態に従って孔隙および機械的補強が構成されているインプラントの概略画像を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図21】好ましい実施形態による、機械的補強の様式の種類を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図22】好ましい実施形態による、支持対象の軟組織層が脂肪および筋肉のみであるシナリオにおけるベースアウトラインの割当てを示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図23A】好ましい実施形態による、関連する骨が眼窩であるときに決定される、表面拘束湾曲の第1の軸に対する垂直経路に沿った参照位置からの逸脱を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図23B】好ましい実施形態による、関連する骨が眼窩であるときに決定される、表面拘束湾曲の第2の軸に対する垂直経路に沿った参照位置からの逸脱を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図23C】好ましい実施形態による、関連する骨が眼窩であるときに決定される、設計中のインプラントの境界に対する垂直経路に沿った参照位置からの逸脱を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図24】好ましい実施形態による、表面要素を位置決めすることによってその表面が形成されている眼窩インプラントの画像を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図25A】好ましい実施形態による、関連する骨が上顎骨および頬骨を含むときに決定される、表面拘束湾曲の第1の軸に対する垂直経路に沿った参照位置からの逸脱を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図25B】好ましい実施形態による、関連する骨が上顎骨および頬骨を含むときに決定される、表面拘束湾曲の第2の軸に対する垂直経路に沿った参照位置からの逸脱を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図25C】好ましい実施形態による、関連する骨が上顎骨および頬骨を含むときに決定される、設計中のインプラントの境界に対する垂直経路に沿った参照位置からの逸脱を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図26】好ましい実施形態による、表面要素を位置決めすることによってその表面が形成されている上顎骨および頬骨のインプラントの画像を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図27A】好ましい実施形態による、関連する骨が鼻骨であるときに決定される、表面拘束湾曲の軸に対する垂直経路に沿った参照位置からの逸脱を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図27B】好ましい実施形態による、関連する骨が鼻骨であるときに決定される、設計中のインプラントの境界に対する垂直経路に沿った参照位置からの逸脱を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図28】好ましい実施形態による、表面要素を位置決めすることによってその表面が形成されている鼻骨インプラントの画像を示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図29A】好ましい実施形態による、頭蓋インプラントの適用を概略的に示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図29B】好ましい実施形態による、頭蓋インプラントの反りを概略的に示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図30A】好ましい実施形態による、頭蓋インプラントを示す前面斜視図(一定の縮尺ではない)である。
【
図30B】好ましい実施形態による、頭蓋インプラントを示す後面斜視図(一定の縮尺ではない)である。
【
図31A】好ましい実施形態による、眼窩インプラントの適用を概略的に示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図31B】好ましい実施形態による、眼窩インプラントの反りを概略的に示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図32A】好ましい実施形態による、眼窩インプラントを示す前面斜視図(一定の縮尺ではない)である。
【
図32B】好ましい実施形態による、眼窩インプラントを示す後面斜視図(一定の縮尺ではない)である。
【
図33A】好ましい実施形態による、上顎骨/頬骨インプラントの適用を概略的に示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図33B】好ましい実施形態による、上顎骨/頬骨インプラントの反りを概略的に示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図34A】好ましい実施形態による、上顎骨/頬骨インプラントを示す前面斜視図(一定の縮尺ではない)である。
【
図34B】好ましい実施形態による、上顎骨/頬骨インプラントを示す後面斜視図(一定の縮尺ではない)である。
【
図35A】好ましい実施形態による、鼻骨インプラントの適用を概略的に示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図35B】好ましい実施形態による、鼻骨インプラントの反りを概略的に示す図(一定の縮尺ではない)である。
【
図36A】好ましい実施形態による、鼻骨インプラントを示す前面斜視図(一定の縮尺ではない)である。
【
図36B】好ましい実施形態による、鼻骨インプラントを示す後面斜視図(一定の縮尺ではない)である。
【
図37】好ましい実施形態による、下顎骨インプラントの適用を概略的に示す図(一定の縮尺ではない)である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の詳細な説明は、単に本発明の概念を説明するための例として提供する実施形態を対象としたものであることを理解されたい。本発明は、実際には、記載する特定の実施形態に限定されないので、言うまでもなく様々に変化し得る。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるので、本明細書で用いる用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定することを意図したものではないことも理解されたい。
【0037】
本発明の詳細な説明は、様々な項に分割されているが、これは単に読者の便利のためのものに過ぎず、任意の項に見られる開示は、別の項の開示と組み合わせることもできる。
【0038】
特に定義しない限り、本明細書で用いる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。
【0039】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる「a」、「an」、および「the」の単数形は、文脈から明らかにそうではないことが分かる場合を除き、複数形の概念も含むことに留意されたい。
【0040】
例えば範囲も含めて寸法、時間、および量などの数値指定の前に用いられる「約」という用語は、プラスまたはマイナスの10%、5%、または1%、あるいはそれらの間の任意の部分範囲または部分値だけ変動する可能性がある概算を示す。
【0041】
「含む(comprising)」または「含む(comprises)」は、構成物および方法が、列挙されている要素を含んでいるが、他の要素を排除してはいないことを意味するものと意図されている。構成物および方法を定義するために使用されるときの「から本質的になる」は、述べられている目的のための組合せにとって本質的な意義を有する他の要素を排除することを意味するものとする。したがって、本明細書に定義される要素から本質的になる機器または方法は、請求対象の発明の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない他の材料またはステップは排除しないことになる。「からなる」は、他の成分の微量以上の元素および実質的な方法ステップを排除することを意味するものとする。これらの移行句それぞれによって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0042】
「患者特有の構成」とは、個別の患者のニーズに特有の指定された実施形態の特徴に適用可能な1つまたは複数の構成を指す。特に、この用語は、骨および/または組織の画像からすぐに明らかな構成だけでなく、その構成が実施形態の一部に適用され得る限り、患者から得られる任意の情報を処理することによって得られる構成もカバーするものと意図されている。さらに詳細には、本願における患者特有の構成の注目すべき事例は、実施形態による頭蓋顎顔面インプラントの寸法、トポロジ、および反りを含む。
【0043】
「軟組織」または「軟組織層」は、特に圧力または撓みが加わったときに適応可能な細胞構造および輪郭を有する体組織を指す。一般に、軟組織は、血管、脂肪、腱、靭帯、筋肉、神経、および皮膚を含み、中でも筋肉、脂肪、および皮膚は、詳細な説明の以下の部分で最も良く言及されることになる。しかし、他の種類の軟組織も、特に明示されない限り本発明の範囲から排除されない。
【0044】
「術後頭蓋顎顔面画像」などにおける「術後画像」は、指定人体部位の医療画像であって、関連する外科処置の手術後のその人体部位を視覚化したものを指す。この意味による術後画像は、実際の手術後に撮影された画像ではなく、画像処理(ミラーリング、見当合わせ、レンダリングなど)によって、かつ/または画像のライブラリから、手術前に決定される。
【0045】
骨または他の人体部位に関連して用いられる「テンプレート」は、手術の理想的な結果を表す、対応する骨または人体部位の事前視覚化画像を指す。
【0046】
「臨床転帰」は、任意の期間にわたる、処置すなわち外科手術の結果として生じる医学的な健康状態を指す。この用語は、定量的状態であることも定性的状態であることもある、任意の観察可能な状態を含むものとする。定性的状態は、限定されるわけではないが、医療画像を含む。臨床転帰が医療画像である場合には、その画像は、実際の手術後に患者を撮影したものであるので、上記で定義した「術後画像」とは区別される。
【0047】
頭蓋顎顔面インプラントを設計する方法
【0048】
本発明の第1の態様は、第2の態様による新規の頭蓋顎顔面インプラントを可能にするために必要な新規の方法を対象とする。以下の図面に示し、以下の説明で言及するステップおよびその下位要素の順序は、この詳細な説明および図面を完全に理解した当業者なら修正し得ることに留意されたい。
【0049】
図1は、好ましい実施形態による、頭蓋顎顔面インプラントを設計する方法を示す概略流れ図である。この実施形態で設計されている頭蓋顎顔面インプラントは、実質的に均一な厚さの剛性プレートである。この実施形態では、方法100は、画像処理ステップ1000から始まり、この画像処理ステップ1000は、術前頭蓋顎顔面画像を取得する下位要素1200と、術後頭蓋顎顔面画像を生成する下位要素1400と、次いで頭蓋顎顔面画像をセグメント化する下位要素1600とをさらに含む。この方法100の実施形態は、患者特有サポートステップ2000も含み、この患者特有サポートステップ2000は、ベースアウトラインを決定する下位要素2200と、ベースアウトラインから支持位置までの垂直経路を決定する下位要素2400と、支持対象の軟組織層の体積差を決定する下位要素2600とをさらに含む。この実施形態では、ベースアウトラインを決定するステップ2200では、頭蓋顎顔面画像のセグメント化1600によって得られる情報を処理し、ベースアウトラインから支持位置までの垂直経路を決定するステップ2400では、ベースアウトラインの決定2200によって得られる情報を処理し、支持対象の軟組織層の体積差を決定するステップ2600では、頭蓋顎顔面画像のセグメント化1600およびベースアウトラインから支持位置までの垂直経路の決定2400によって得られる情報を処理する。この実施形態によれば、患者特有サポートステップ2000の全ての下位要素2200、2400、および2600によって得られる情報は、垂直経路に沿った参照位置からの逸脱を決定するステップ3000でさらに処理される。この好ましい方法100は、その後、表面要素を位置決めするステップ4000に進み、さらに孔隙および機械的補強を構成するステップ5000に進む。
【0050】
図1に示す術前頭蓋顎顔面画像を取得する下位要素ステップ1200は、手術前に患者の関連する頭蓋顎顔面骨に対して当技術分野で既知の適当な医療撮像技術を実行することによって実施することができる。この既知の技術は、X線蛍光透視法、コンピュータ断層撮影(CT)、および磁気共鳴撮像(MRI)を含む。
【0051】
図2は、好ましい実施形態による、術後頭蓋顎顔面画像を生成するステップを示す概略流れ図である。ここで、以前に
図1に示した術後頭蓋顎顔面画像を生成するステップ1400は、次の下位要素、すなわち頭蓋顎顔面画像のテンプレートを取得する下位要素1410をさらに含み、この取得されるテンプレートは、その後、術前頭蓋顎顔面画像をテンプレートと位置合わせするステップ1420およびテンプレート上で解剖学的参照領域を定義するステップ1430で処理される。次いで、この解剖学的参照領域を、対応するステップ1440でテンプレートから抽出する。上記の下位要素1410、1420、1430、および1440で得られる情報を、位置合わせした術前頭蓋顎顔面画像上で解剖学的参照領域を見当合わせするステップ1450でさらに処理する。次いで、術後頭蓋顎顔面画像を、対応するステップ1460で取得する。
【0052】
図2に示す頭蓋顎顔面画像のテンプレートを取得するステップ1410は、
図3Aおよび
図3Bに示す好ましい代替形態で実施されることもある。
【0053】
図3Aは、好ましい実施形態による、第1の代替形態を示す概略流れ図である。この第1の代替形態では、頭蓋顎顔面画像のテンプレートは、対側の頭蓋顎顔面画像、すなわち手術を受けない側をミラーリングすることによって得られる。したがって、この頭蓋顎顔面画像のテンプレートを取得する第1の代替形態1410Aは、対側の頭蓋顎顔面画像を取得する下位要素ステップ1412Aと、その後に対側の頭蓋顎顔面画像をミラーリングする下位要素ステップ1414Aとを含む。ステップ1410Aは、手術前に患者の対側の頭蓋顎顔面骨に対して当技術分野で既知の適当な医療撮像技術を実行することによって実施することができる。この既知の技術は、X線蛍光透視法、コンピュータ断層撮影(CT)、および磁気共鳴撮像(MRI)を含む。また、ステップ1410Aは、上述の術前頭蓋顎顔面画像を取得するステップ1200、およびこの医療撮像技術と同時に実施してもよい。この頭蓋顎顔面画像のテンプレートを取得する第1の代替形態1410Aは、患者の対側の骨が欠損の影響を受けていないことを前提として、関連する手術の目的が欠損した頭蓋顎顔面骨を再建することであるときに特に用いられる。
【0054】
図3Bは、好ましい実施形態による、第2の代替形態を示す概略流れ図である。この第2の代替形態では、複数のテンプレートがライブラリ内に含まれている。この複数のテンプレートは、患者自身の頭蓋顎顔面画像に基づくものではなく、過去の手術例に基づくもの、および/または人工的に生成されたものである。この好ましい実施形態では、患者の頭蓋顎顔面骨の解剖学的構造とテンプレートの対応する解剖学的ランドマークとの間のマッチングに基づいて、複数のテンプレートからテンプレートを選択する。この解剖学的ランドマークの注目すべき例は、頬骨弓、下顎頭、鼻骨、および骨縫合を含む。患者の解剖学的ランドマークは、上述の対応するステップ1200で得られる術前頭蓋顎顔面画像から識別することができる。好ましくは、ライブラリは、事前にライブラリにロードされた複数のテンプレートを有するデジタルライブラリであり、この好ましいライブラリは、術前頭蓋顎顔面画像の解剖学的ランドマークをライブラリ内に含まれる頭蓋顎顔面テンプレートの解剖学的ランドマークと比較することによって検索可能でもある。したがって、この頭蓋顎顔面画像のテンプレートを取得する第2の代替形態1410Bは、術前頭蓋顎顔面画像の解剖学的ランドマークを識別する下位要素ステップ1412Bと、それらの解剖学的ランドマークをライブラリ内で入手可能な複数のテンプレートとマッチングする下位要素ステップ1414Bと、最もマッチングするテンプレートを選択する下位要素ステップ1416Bとを含む。さらに好ましくは、ライブラリは、臨床転帰データを含むフィードバック情報に基づいて頭蓋顎顔面テンプレートを更新するように構成される。この頭蓋顎顔面テンプレートの更新は、機械学習に基づくアルゴリズム、統計的形状モデリング(SSM)、多目的形状最適化、およびトポロジ最適化のうちのいずれか1つ、またはこれらの任意の組合せを含み得る人工知能によって実施されるのが最も好ましい。この頭蓋顎顔面画像のテンプレートを取得する第2の代替形態1410Bは、設計中のインプラントが、美容手術、または対側の頭蓋顎顔面骨が損傷するなどして利用できない再建手術用のものであるときに特に用いられる。ライブラリは、(ミラーリングされた頭蓋顎顔面画像のように)患者自身の体では見ることができない術後の結果のすぐに使用できる参照の集合を提供する。
【0055】
図2に関連して上述した術前頭蓋顎顔面画像をテンプレートと位置合わせするステップ1420は、当技術分野で既知の画像データ位置合わせ技術、すなわち2つの画像データの1つの参照フレーム内への組込みと関係がある。この既知の技術は、ボクセルベースの見当合わせ、表面ベースの見当合わせ、および反復最近点アルゴリズム(ICP)を含む。
【0056】
図2に関連して上述した、対応するステップ1430でテンプレート上で定義され、その後に対応するステップ1440でテンプレートから抽出される解剖学的参照領域は、手術対象の頭蓋顎顔面骨の最も近くにも位置する最も密度の高い軟組織層を有する頭蓋顎顔面領域に対応する。例示的な実施形態では、手術対象の骨が頭蓋である場合には、解剖学的参照領域は、頬骨および/または側頭骨に対応し、手術対象の骨が眼窩である場合には、解剖学的参照領域は、蝶形骨および/または上顎骨の前頭突起に対応し、手術対象の骨が上顎骨/頬骨(すなわち中顔面の骨)である場合には、解剖学的参照領域は、上顎骨および/または前頭骨に対応し、手術対象の骨が鼻骨である場合には、解剖学的参照領域は、鼻骨、上顎骨、および/または前頭骨に対応する。抽出後に、この解剖学的参照領域を、対応するステップ1450で、事前に対応するステップ1420でテンプレートと位置合わせした術前頭蓋顎顔面画像上で見当合わせする。これで、このようにして見当合わせした画像は、対応するステップ1460で取得される術後頭蓋顎顔面画像となる。このように取得される術後頭蓋顎顔面画像の例を、
図4に示す。
【0057】
図4は、好ましい実施形態による、位置合わせされた術前頭蓋顎顔面画像上で解剖学的参照領域を見当合わせするステップで得られる術後頭蓋顎顔面画像を示す前面図である。ここで、術後頭蓋顎顔面画像1452は、テンプレートと位置合わせした術前頭蓋顎顔面画像1454(斜線なし)上で解剖学的参照領域1456(斜線部)を見当合わせすることによる生成物である。この例示的な実施形態では、手術は、患者の損傷した右頭蓋の再建に関し、したがって、解剖学的参照領域は、右頬骨1458と決定される。この右頭蓋および右頬骨1458は、解剖学的参照領域1456(斜線部)で覆われている。
【0058】
図1に関連して上述した頭蓋顎顔面画像をセグメント化するステップ1600は、医療画像から軟組織層のうちのいくつかの層を認識して区別するために利用される画像処理技術に関係する。このような画像処理技術の既知の例は、領域併合、適応しきい値、大域的しきい値、レベルセッティング法、およびK平均クラスタリングを含む。好ましい実施形態では、このセグメント化は、対応するステップ1200で取得される術前頭蓋顎顔面画像、および対応するステップ1400によって生成される術後頭蓋顎顔面画像の両方に対して実行される。このようにしてセグメント化される術前頭蓋顎顔面画像および術後頭蓋顎顔面画像の例を、それぞれ
図5Aおよび
図5Bに示す。
【0059】
図5Aは、好ましい実施形態による、セグメント化されている術前頭蓋顎顔面画像を示す斜視図であり、一方
図5Bは、好ましい実施形態によるセグメント化されている術後頭蓋顎顔面画像を示す斜視図である。これらの例示的な実施形態のいずれにおいても、手術は、患者の損傷した右頭蓋の再建に関する。
【0060】
特に、
図5Aは、セグメント化後の、最内層から最外層に向かって頭蓋顎顔面骨1612、この実施形態では側頭筋である筋肉層1614、脂肪層1616、および皮膚層1618を表す術前頭蓋顎顔面画像1610を示している。同様に、
図5Bは、セグメント化後の、最内層から最外層に向かって頭蓋顎顔面骨1622、筋肉層1624、脂肪層1626、および皮膚層1628を表す術後頭蓋顎顔面画像1620を示している。
【0061】
代替の実施形態では、手術は、患者の眼窩に関し、筋肉層は、眼球、眼輪筋、下直筋、および/または下斜筋であり、さらに別の代替の実施形態では、手術は患者の上顎骨/頬骨に関し、筋肉層は、大頬骨筋および/または小頬骨筋である。
【0062】
次に、
図6は、好ましい実施形態による、ベースアウトラインを決定するステップを示す概略流れ図である。ここで、以前に
図1に示したベースアウトラインを決定するステップ2200は、次の下位要素、すなわち表面拘束を決定する下位要素2220と、境界を決定する下位要素2240と、解剖学的関心領域を決定する下位要素2260とをさらに含み、対応する下位要素ステップ2220および2260で決定される表面拘束および解剖学的関心領域を、その後に対応する下位要素ステップ2280で、対応する下位要素ステップ2240で決定される境界に適用して、ベースアウトラインを生成する。さらに、表面拘束を決定する下位要素2220は、術後頭蓋顎顔面画像が表す表面湾曲を取得し(2222)、次いで表面湾曲に基づいて表面拘束を生成する(2224)ことによって実施され、境界を決定する下位要素2240は、術前頭蓋顎顔面画像が表す手術対象の骨の縁部を位置特定し(2242)、次いでその手術対象の骨の縁部に基づいて境界を生成する(2244)ことによって実施され、最後に、解剖学的関心領域を決定する下位要素2260は、術前画像および術後画像が表す軟組織層を比較し(2262)、次いで軟組織層が手術の影響を受けている領域に基づいて解剖学的関心領域を位置特定する(2264)ことによって実施される。以上の下位要素ステップおよびそれらに関係するアクションの詳細および生成物を、
図7Aおよび
図7Bに示す。
【0063】
図7Aは、好ましい実施形態による、ベースアウトラインを決定するステップの一部として決定される境界および表面拘束を示している。ここで、術前頭蓋顎顔面画像2300は、この実施形態の手術対象の骨である、損傷した右頭蓋を有する患者の頭蓋顎顔面骨2310を表す。損傷した右頭蓋は、手術対象の骨の縁部2320で定義される。
図7Aは、境界2330が手術対象の骨の縁部2320を囲むように決定されること、および表面拘束2340がこの境界2330に対応する術後頭蓋顎顔面画像の領域内の表面湾曲を表すように決定されることをさらに示す。上記の境界2330および表面拘束2340は、対応する下位要素ステップ2200で決定される好ましいベースアウトラインに必要な3つの要素のうちの2つになる。次に、
図7Bは、残りの要素、すなわち解剖学的関心領域を示す。
【0064】
図7Bは、好ましい実施形態による、ベースアウトラインを決定するステップの一部として決定される解剖学的関心領域を示している。ここで、術前頭蓋顎顔面画像2300は、上記で
図7Aに示したのと同じ患者の頭蓋顎顔面骨2310を右側から見た図である。
図7Bでは、手術対象の骨の縁部2320が、損傷した右頭蓋である手術対象の骨2350を定義している。
図7Bは、破線で定義される領域をさらに示し、この領域は、術前画像および術後画像が示す軟組織層を比較することによって決定される、手術の影響を受ける軟組織層の関心部分2360を示す。手術対象の骨2350が軟組織層の関心部分2360と交差する領域は、解剖学的関心領域2370となるように決定される。この詳細な説明の後の部分でさらに明らかになるように、その後、この解剖学的関心領域2370を、表面拘束2340(
図7Aに示す)によって修正された境界2330(
図7Aに示す)に投影して、参照位置が割り当てられた、表面要素がそこから逸脱するインプラント内の領域を定義する。
【0065】
図8は、好ましい実施形態による、ベースアウトラインから支持位置までの垂直経路を決定するステップを示す概略流れ図である。ここで、以前に
図1に示したベースアウトラインから支持位置までの垂直経路を決定するステップ2400は、次の下位要素、すなわち支持対象の軟組織層を決定する下位要素2410と、支持対象の軟組織層の最内層の最下部の下に隣接するようにベースアウトラインを割り当てる下位要素2430と、次いで解剖学的関心領域内でベースアウトラインに参照位置を割り当てる下位要素2450と、その後に解剖学的関心領域内で支持対象の軟組織層の最外層の最上部に支持位置を割り当てる下位要素2470と、最後に参照位置を支持位置とマッチングして垂直経路を形成する下位要素2490とをさらに含む。これらの下位要素ステップは、患者の手術対象の骨が損傷した右頭蓋である例示的な実施形態に全て関係する以降の
図9A、
図9B、
図10A、
図10B、
図10C、
図10D、および
図11に示す、軟組織層の支持方式を幅広くカスタマイズして設計されるインプラントを提供する。
【0066】
図9Aおよび
図9Bは、支持対象の軟組織層を決定する下位要素ステップ2410、および支持対象の軟組織層の最内層の最下部の下に隣接するようにベースアウトラインを割り当てる下位要素ステップ2430により生じ得る結果を例示している。
【0067】
図9Aは、最内層から最外層に向かって、骨層2421、この実施形態では側頭筋である筋肉層2422、脂肪層2423、および皮膚層2424を含む右頭蓋2420Aの概略断面術後画像を示している。ここで、支持対象の軟組織層は、筋肉層2422、脂肪層2423、および皮膚層2424を全て含むように、対応する下位要素ステップで決定される。したがって、ベースアウトライン2425Aは、この場合には筋肉層2422の最下部である支持対象の軟組織の最内層の最下部の下に隣接するように、対応する下位要素ステップで割り当てられる。また、設計中のインプラントがベースアウトライン2425Aから逸脱する場合には、その逸脱は筋肉層2422、脂肪層2423、および皮膚層2424の全てに与えられる支持に影響を及ぼすことも分かる。
【0068】
一方、
図9Bは、最内層から最外層に向かって、骨層2421、この実施形態では側頭筋である筋肉層2422、脂肪層2423、および皮膚層2424を含む右頭蓋2420Bの概略断面術後画像を示している。代替として、ここでの支持対象の軟組織層は、脂肪層2423および皮膚層2424のみを含むように、対応する下位要素ステップで決定される。したがって、ベースアウトライン2425Bは、この場合には脂肪層2423の最下部である支持対象の軟組織の最内層の最下部の下に隣接するように、対応する下位要素ステップで割り当てられる。この場合には、筋肉層2422は、支持されないままであり、設計中のインプラントがベースアウトライン2425Bから逸脱する場合には、その逸脱は脂肪層2423および皮膚層2424に与えられる支持のみに影響を及ぼすことも分かる。
【0069】
図10A、
図10B、
図10C、および
図10Dは、解剖学的関心領域内で実施される、ベースアウトラインに参照位置を割り当てる下位要素ステップ2450、および支持対象の軟組織層の最外層の最上部に支持位置を割り当てる下位要素ステップ2470により生じ得る結果を例示している。この解剖学的関心領域は、
図6、
図7A、および
図7Bに関連する説明に従って決定されていることに留意されたい。
【0070】
図10Aは、第1の代替形態の
図9Aの続きを示している。ここでは、右頭蓋2460Aの概略断面術後画像は、最内層から最外層に向かって、骨層2461、この実施形態では側頭筋である筋肉層2462、脂肪層2463、および皮膚層2464を含む。ベースアウトラインは、筋肉層2462の最下部に割り当てられており、この位置に、参照位置2465Aが対応する下位要素ステップで割り当てられる。さらに、支持位置2466Aは、対応する下位要素ステップで、この場合には皮膚層2464の最上部である支持対象の軟組織層の最外層の最上部に割り当てられる。支持位置2466Aは、手術で予想される軟組織層の幾何学的形状および最終位置、したがってこの場合に得られ得る最大支持を示すものであり、必ずしも設計中のインプラントが実際にたどるアウトラインではない。解剖学的関心領域は、参照位置2465Aおよび支持位置2466Aを表す線が分岐する箇所をカバーする。この代替形態では、支持位置2466Aは、参照位置2465Aに収斂して、骨2461によって支持される閉じた支持可能縁部2467Aを形成するように予め決定されている。
【0071】
図10Bは、第1の代替形態の
図9Bの続きを示している。ここでは、右頭蓋2460Bの概略断面術後画像は、最内層から最外層に向かって、骨層2461、この実施形態では側頭筋である筋肉層2462、脂肪層2463、および皮膚層2464を含む。ベースアウトラインは、脂肪層2463の最下部に割り当てられており、この位置に、参照位置2465Bが対応する下位要素ステップで割り当てられる。さらに、支持位置2466Bは、対応する下位要素ステップで、この場合には皮膚層2464の最上部である支持対象の軟組織層の最外層の最上部に割り当てられる。支持位置2466Bは、手術で予想される軟組織層の幾何学的形状および最終位置、したがってこの場合に得られ得る最大支持を示すものであり、必ずしも設計中のインプラントが実際にたどるアウトラインではない。解剖学的関心領域は、参照位置2465Bおよび支持位置2466Bを表す線が分岐する箇所をカバーする。この代替形態では、支持位置2466Bは、参照位置2465Bに収斂して、筋肉層2462によって支持される閉じた支持可能縁部2467Bを形成するように予め決定されている。
【0072】
図10Cは、第2の代替形態の
図9Aの続きを示している。ここでは、右頭蓋2460Cの概略断面術後画像は、最内層から最外層に向かって、骨層2461、この実施形態では側頭筋である筋肉層2462、脂肪層2463、および皮膚層2464を含む。ベースアウトラインは、筋肉層2462の最下部に割り当てられており、この位置に、参照位置2465Cが対応する下位要素ステップで割り当てられる。さらに、支持位置2466Cは、対応する下位要素ステップで、この場合には皮膚層2464の最上部である支持対象の軟組織層の最外層の最上部に割り当てられる。支持位置2466Cは、手術で予想される軟組織層の幾何学的形状および最終位置、したがってこの場合に得られ得る最大支持を示すものであり、必ずしも設計中のインプラントが実際にたどるアウトラインではない。解剖学的関心領域は、参照位置2465Cおよび支持位置2466Cを表す線が分岐する箇所をカバーする。この代替形態では、支持位置2466Cは、参照位置2465Cから分岐したままとなり、骨2461、筋肉層2462、脂肪層2463、および皮膚層2464のいずれによっても支持されない開いた支持可能縁部2467Cを形成するように予め決定されている。
【0073】
図10Dは、第2の代替形態の
図9Bの続きを示している。ここでは、右頭蓋2460Dの概略断面術後画像は、最内層から最外層に向かって、骨層2461、この実施形態では側頭筋である筋肉層2462、脂肪層2463、および皮膚層2464を含む。ベースアウトラインは、脂肪層2463の最下部に割り当てられており、この位置に、参照位置2465Dが対応する下位要素ステップで割り当てられる。さらに、支持位置2466Dは、対応する下位要素ステップで、この場合には皮膚層2464の最上部である支持対象の軟組織層の最外層の最上部に割り当てられる。支持位置2466Dは、手術で予想される軟組織層の幾何学的形状および最終位置、したがってこの場合に得られ得る最大支持を示すものであり、必ずしも設計中のインプラントが実際にたどるアウトラインではない。解剖学的関心領域は、参照位置2465Dおよび支持位置2466Dを表す線が分岐する箇所をカバーする。この代替形態では、支持位置2466Dは、参照位置2465Dから分岐したままとなり、骨2461、筋肉層2462、脂肪層2463、および皮膚層2464のいずれによっても支持されない開いた支持可能縁部2467Dを形成するように予め決定されている。
【0074】
次に、
図11は、
図8に関連して上述した参照位置を支持位置とマッチングして垂直経路を形成する下位要素ステップ2490で決定される、ベースアウトラインから支持位置までの垂直経路を示す概略図である。特に、
図11は、損傷した右頭蓋に適用される開いた支持可能縁部を有するインプラントの場合(すなわち上記の
図10Cまたは
図10Dの続き)に関する、簡略化した垂直経路
図2500の好ましい例を示している。この垂直経路
図2500は、参照位置2510および支持位置2530を表す線をさらに含む。参照位置2510上の点は、参照ノード2512(丸印)であり、同様に、支持位置2530上の点は、支持ノード2532(四角印)である。垂直経路2520は、参照ノード2512からそれぞれの支持ノード2532に垂直に投影され、それにより参照位置2510と支持位置2530の間の隙間を埋める経路である。当業者なら、状況に応じて最適な結果を実現するためにノード2512および2532のそれぞれの位置2510および2530上での密度を調節し得ること、ならびに
図11に示す密度は図示のために簡略化したものであり、この方法の実際の実施におけるノードの密度を表しているわけではなく、実際の実施では、より小さいインプラントを設計するためにノードの密度をさらに高くすることが好ましかったり、またその逆であったりすることに留意されたい。
【0075】
図12は、好ましい実施形態による、支持対象の軟組織層の体積差を決定するステップを示す概略流れ図である。ここで、以前に
図1に示した支持対象の軟組織層の体積差を決定するステップ2600は、次の下位要素、すなわちセグメント化した術前頭蓋顎顔面画像および術後頭蓋顎顔面画像から同じ種類の軟組織層をグループ化する下位要素2610と、次いで同じ種類の軟組織層の術前体積と術後体積の差を計算する下位要素2630と、この術前体積と術後体積の差を対応する支持対象の軟組織層に適用する下位要素2640と、全ての支持対象の軟組織層の体積差を合計する下位要素2650とをさらに含む。これらの下位要素ステップによって決定される体積差は、この好ましい実施形態による方法に、参照位置からの総逸脱に加えられる定量化可能な拘束をもたらし、これにより設計中のインプラントによって与えられる支持が最適化される。
図12に示すいくつかの下位要素ステップの詳細および生成物を、
図13Aおよび
図13Bの以下の例にさらに示す。
【0076】
図13Aは、好ましい実施形態で計算される、同じ種類の軟組織層の術前体積と術後体積の間の差を示す前面斜視図である。
図13Bは、好ましい実施形態で計算される、同じ種類の軟組織層の術前体積と術後体積の間の差を示す後面断面図である。
図13Aおよび
図13Bは両方とも、損傷した右頭蓋2712を有する患者の頭蓋顎顔面骨2710を有する同じ頭蓋顎顔面図を示す異なる図である。
図13Aおよび
図13Bは、
図1で上述した対応するセグメント化ステップ1600でそれぞれ得られている術後軟組織層2713および術前軟組織層2714をさらに示す。
図13Aおよび
図13Bに例示される術後軟組織層2713および術前軟組織層2714は、
図5Aおよび
図5Bに示す通りの筋肉層(すなわち側頭筋)である。術後軟組織層2713と術前軟組織層2714とを共通の参照フレーム内で視覚的に重ね合わせることにより、軟組織交差部2715を生じる。この場合には、対応する下位要素ステップ2630で計算される筋肉層に関する体積差は、術後軟組織層2713と術前軟組織層2714の体積から軟組織交差部2715の体積を除いたものとなる。
【0077】
次いで、対応する下位要素ステップ2640で、この体積差を対応する支持対象の筋肉層に適用する。その後、手術の状況に応じて残りの支持対象の軟組織層について(例えば
図13Aおよび
図13Bの損傷した右頭蓋の場合なら、残りの支持対象の軟組織層は脂肪層および皮膚層となる)、同じ下位要素ステップ2630および2640を繰り返し行う。次いで、対応する下位要素ステップ2650で、全ての支持対象の軟組織層の体積差を合計する。
【0078】
次に、
図14は、好ましい実施形態による、垂直経路に沿った参照位置からの逸脱を決定するステップを示す概略流れ図である。ここで、以前に
図1に示した垂直経路に沿った参照位置からの逸脱を決定するステップ3000は、次の下位要素、すなわち術前の支持対象の軟組織層と術後の支持対象の軟組織層の間で、体積差を補償するために必要となる上昇を決定する下位要素3200と、参照位置から支持位置に投影される垂直経路の長さのうち、その上昇を生じる一部割合を決定する下位要素3400と、その一部割合に人工知能によって決定される相関因子を適用する下位要素3500と、次いでその一部割合によって表される逸脱のベクトルを取得する下位要素3600とをさらに含む。ここでは、対応するステップ2600で決定される総体積差を、総逸脱の拘束として利用する。
図14による下位要素ステップの詳細および生成物を、以下の
図15A、
図15B、および
図15Cに示す。
図15A、
図15B、および
図15Cは全て、設計中のインプラントが患者の損傷した右頭蓋に対して行われる再建手術用のものである例示的な実施形態に関する図である。
【0079】
好ましい実施形態によれば、
図15A、
図15B、および
図15Cは、それぞれ設計中のインプラントの第1の軸、第2の軸、および境界に対する垂直経路に沿った参照位置からの逸脱を示している。なお、第一に、
図15Aおよび
図15Bの第1の軸と第2の軸は直交するように配置されているが、この角度関係は、手術の状況に合うように当業者が調整することができるものであり、したがって本発明の態様の範囲を限定するものではないこと、第二に、
図11に関連する説明の前半と同様に、
図15A、
図15B、および
図15Cに示す参照ノードおよび支持ノードの密度は図示のためだけに簡略化したものであり、したがってこの方法の好ましい実施形態の実際の実施におけるノードの密度を表すものではないことに留意されたい。これらの留意点は、異なる頭蓋顎顔面骨を対象とする代替の実施形態に関する後続の図面にも完全に当てはまるものである。
【0080】
図15A、
図15B、および
図15Cは、境界3122、表面拘束3112、および解剖学的関心領域3120の要素を含むインプラントベースアウトライン3100を示している。ベースアウトライン3100を形成するこれら3つの要素は、
図6、
図7A、および
図7Bに既に示し、それらに従って説明した、対応するステップ2200で決定されている。
図15A、
図15B、および
図15Cによれば、ベースアウトライン3100は、2つの大ゾーン、すなわち逸脱を含まないベースライン表面3110と、逸脱を含む可能性がある解剖学的関心領域3120とに分離される。この2つの大ゾーン3110および3120は、分岐線3121によって視覚的に分離されている。図示のために、この分岐線3121は、
図15A、
図15B、および
図15Cから見える異なる視角の基準としての役割も果たす。
【0081】
図15Aおよび
図15Bは両方とも、好ましくは表面拘束3112に沿って走る複数の参照位置3126、およびベースライン表面3110内では参照位置3126に重なり、解剖学的関心領域3120内では参照位置3126から分岐するように示されている複数の支持位置3127をさらに示している。
図15Aおよび
図15Bは、全ての支持位置3127を組み合わせることでもたらされる最大可能上昇に対応する支持境界3124も視覚化している。参照位置3126によって示される極限(すなわちベースライン表面3110からの逸脱0%)および支持位置3127によって示される極限(すなわちベースライン表面3110からの逸脱100%)という2つの生じ得る極限の間に、複数の逸脱位置3128(すなわちxが0%~100%の間の一部割合で表されるものとしてベースライン表面3110からのx%の一部割合の逸脱)がある。上記の
図11と同様に、
図15Aおよび
図15Bは、参照位置3126に沿った参照ノード(逸脱0%、〇)の各々から支持位置3127に沿った支持ノード(逸脱100%、□)の各々に投影される垂直経路を示している。この垂直経路の各々の間で、逸脱ノード(逸脱x%、△)が、その特定の位置におけるベースライン表面3110からの実際の逸脱を示している。
図15Aおよび
図15Bは、参照位置3126のうちの複数にわたって逸脱の長さが変化すること、および参照位置3126のうちの複数にわたって垂直経路の長さが変化することも示している。このことから、
図15Aおよび
図15Bによる好ましい実施形態では解剖学的関心領域3120内の複数の参照位置3126にわたって必要とされる異なる患者特有サポートを考慮するので、逸脱位置3128のx%という逸脱を表す一部割合も、参照位置3126のうちの複数にわたって変化するということになる。人工知能によって決定される相関因子をこの一部割合に適用するステップ3500が利用される
図14に示す好ましい実施形態によれば、逸脱位置3128のx%という逸脱を表す一部割合が、同じ逸脱位置3128内で変化することもある。例えば、上記の相関因子の適用によって、同じ逸脱位置3128内の異なる逸脱ノード(△)における逸脱を表す
図15Bに示すx
1、x
2、およびx
3が、有意に異なる値になることもある。
【0082】
図15Cは、解剖学的関心領域3120の縁部における境界3122と、支持境界3124と、逸脱境界3125との間の比較を強調している。上記の
図15Aおよび
図15Bに鑑みて、垂直経路の逸脱および/または一部割合は、特定の位置で必要とされる患者特有サポートによっては解剖学的関心領域3120全体で変化することもあり、そのため逸脱境界3125が示す逸脱/一部割合は、必ずしも解剖学的関心領域3120内で最大のものとは限らないことも強調しておく。
【0083】
さらに、
図16は、好ましい実施形態による、方面要素を位置決めするステップを示す概略流れ図である。ここで、以前に
図1に示した表面要素を位置決めするステップ4000は、次の下位要素、すなわちベースアウトライン内の対応する参照位置に逸脱のベクトルを適用する下位要素4200と、このベクトルの端部に表面要素を位置決めする下位要素4400と、最後に全ての表面要素を含むインプラント表面を生成する下位要素4600とをさらに含む。この表面要素の例は、設計中のインプラントの最終表面の一部であるピクセルまたはボクセルを含む。この逸脱のベクトルは、それぞれの参照ノードから始まり、その垂直経路に沿ってそれぞれの支持ノード寄りに位置する逸脱ノードで終端する。逸脱がない箇所(例えばベースライン表面内の位置、または解剖学的関心領域内であるが逸脱が割り当てられない位置)では、この逸脱ベクトルのサイズはゼロであり、したがって、表面要素はベースライン表面上に位置決めされる。この好ましい実施形態では、最初の2つの下位要素ステップ4200および4400は、最終的に対応するステップ4600でインプラント表面が完全に生成されるまで、境界内の全ての表面要素に対して繰り返し行われる。上記の下位要素ステップの生成物および詳細を、次の
図17に示す。
【0084】
図17は、好ましい実施形態による、表面要素を位置決めすることによってその表面が形成されている頭蓋インプラントの画像を示している。特に、
図17は、インプラント表面4120が視覚的に適用されている損傷した右頭蓋4112を有する患者の頭蓋顎顔面骨4110を含む頭蓋顎顔面画像4100を示している。
図17は、解剖学的関心領域内に可能な範囲4122および4124をさらに示しており、インプラント表面4120は、この範囲内で、上記の図面に関連して完全に述べたようにベースアウトラインからの逸脱および/または一部割合に変換されている患者特有サポートに応じて位置決めされ得る。最小表面4122は、ベースアウトラインからの逸脱が決定されておらず(すなわちインプラント表面の全体にわたって逸脱0%)、そのため解剖学的関心領域でありながら全ての表面要素がベースアウトライン上に残っている場合を表し、最大表面4124は、解剖学的関心領域内の全ての逸脱が支持境界と一致する(すなわち解剖学的関心領域の全体にわたって逸脱100%)場合を表す。この実施形態では、
図16の表面要素を位置決めするステップの後で、全ての表面要素は、最小表面4122と最大表面4124の間に位置する最適表面4126を形成するように位置決めされている。
【0085】
参照位置は、必ずしも頭蓋顎顔面骨の層と一致していなくてもよいことにさらに留意されたい。以上の説明は、参照位置が骨層に位置し、支持位置および逸脱位置がこの骨層からその上に重なる軟組織層のうちの1つまでの上昇を表す実施形態を対象にしているが、第1の態様による方法は、必ずしもそのようになっていなくてもよい。以下の
図18Aおよび
図18Bは、本発明の概念内のそのような変形形態を示す例示的な実施形態を示している。
【0086】
図18Aは、参照位置が頭蓋顎顔面骨と一致する例示的な実施形態を示している。代替として、
図18Bは、参照位置が軟組織層と一致する別の例示的な実施形態を示している。
図18Aおよび
図18Bは両方とも、損傷した右頭蓋4112を有する頭蓋顎顔面骨4110と、これらの実施形態では皮膚層である軟組織層4130とを含む患者の頭蓋顎顔面画像4100を示している。
図18Aでは、参照位置およびそれぞれの参照ノード(逸脱0%、〇)を有する境界3122は、頭蓋顎顔面骨4110と一致し、支持位置およびそれぞれの支持ノード(逸脱100%、□)を有する支持境界3124は、皮膚層4130と一致し、逸脱位置およびそれぞれの逸脱ノード(逸脱x%、△)を有する逸脱境界3125は、参照位置(すなわち頭蓋顎顔面骨4110)から支持位置(すなわち皮膚層3124)に向かう上昇を表している。
図18Aに示す逸脱の方向は、上述した
図17までの実施形態に従う。一方、
図18Bは、このような逸脱の逆方向を示しており、参照位置およびそれぞれの参照ノード(逸脱0%、〇)を有する境界3122は、皮膚層4130と一致し、支持位置およびそれぞれの支持ノード(逸脱100%、□)を有する支持境界3124は、頭蓋顎顔面骨4110と一致し、逸脱位置およびそれぞれの逸脱ノード(逸脱x%、△)を有する逸脱境界3125は、参照位置(すなわち皮膚層4130)から支持位置(すなわち頭蓋顎顔面骨4110)に向かう降下を表している。
【0087】
次に、
図19は、好ましい実施形態による、孔隙および機械的補強を構成するステップを示す概略流れ図である。ここで、以前に
図1に示した孔隙および機械的補強を構成するステップ5000は、次の下位要素、すなわちインプラント表面に孔隙を適用するかどうかを決定する下位要素5100をさらに含み、そこでイエスである場合には、対応するステップ5200で孔隙がインプラント表面に適用され、その後、この方法は、機械的補強が必要かどうかを決定する下位要素5300に進み、そこでイエスである場合には、この方法は、後に補強の位置を決定する後の下位要素ステップ5500の基礎となる荷重分布を決定する下位要素5400、および補強の様式を決定する下位要素に進み、上述の機械的補強要素が対応する下位要素ステップ5400、5500、および5600で決定された後で、最終的に、この方法は、補強位置にこの様式を適用する下位要素5700に進む。あるいは、それぞれの下位要素ステップ5100および5300のいずれかで「ノー」の判定である場合は、この孔隙および機械的補強を構成するステップ5000は終了するので、設計中のインプラントは、本発明の範囲を逸脱することなく、孔隙および/または機械的補強を含まないことになる。孔隙および機械的補強の問題を1つの判断ループに含めることは、本発明者等にとって好ましい。これは、孔隙をインプラント表面に適用することが必要または好ましい状況では、この孔隙が最終的なインプラントの機械的強度に影響を及ぼす可能性が高いので、それに続いて機械的補強に関する判断を行うのがよいからである。また、機械的補強は、手術の付随的な要件に応じて選択的に適用されることもあることにも留意されたい。例えば、補強は、インプラント表面に一様に適用されることもあるし、特定の条件に基づいて非一様に適用されることもある。さらに別の例で、インプラント表面上の特定の位置では補強を排除して、手術中にインプラントのその位置に行われる可能性がある手作業の調整に対応することもある。上記の下位要素ステップの詳細および生成物を、以下の
図20A、
図20B、および
図21に示す。
【0088】
任意選択で、
図20Aは、好ましい実施形態の第1の代替形態に従って孔隙および機械的補強が構成されているインプラントを示す概略図である。この実施形態では、簡略なインプラント5800は、インプラント表面5810と境界5820とを含む。一様に分散した六角穴の形態の孔隙5830が、対応する下位要素ステップ5100および5200で決定され、インプラント表面5810に適用されている。さらに、孔隙5810の周りのインプラント表面5810の厚みを局所的に増す一様に分布した湾曲トラックの形態の第1の代替形態の機械的補強5840Aが、対応する下位要素ステップ5300、5400、5500、5600、および5700で決定され、インプラント表面5810に適用されている。
【0089】
任意選択で、
図20Bは、好ましい実施形態の第2の代替形態に従って孔隙および機械的補強が構成されているインプラントを示す概略図である。この実施形態では、簡略なインプラント5800は、インプラント表面5810と境界5820とを含む。一様に分散した六角穴の形態の孔隙5830が、対応する下位要素ステップ5100および5200で決定され、インプラント表面5810に適用されている。さらに、それぞれインプラント表面5810を横切るように対称に走り、インプラント表面510の厚みを増し、孔隙5830を部分的に塞ぐ、2本の交差する直線バーの形態の第2の代替形態の機械的補強5840Bが、対応する下位要素ステップ5300、5400、5500、5600、および5700で決定され、インプラント表面5810に適用されている。
【0090】
図21は、好ましい実施形態による、機械的補強の様式の種類を示している。これらは、対応する下位要素ステップ5600で手術の状況および/またはインプラントに適すると決定される可能性がある機械的補強の様式例である。インプラント表面の断面図によって概略的に示されるこれらの例は、細い補強5920Aを補うことによってインプラント表面5910Aの厚みを増す、細いトラック5900A、幅広の補強5920Bを補うことによってインプラント表面5910Bの厚みを増す、幅広のトラック5900B、孔隙(図示せず)の上に走っていることもあるバー5920Cをインプラント表面5910Cに取り付ける、バー5900C、およびインプラント表面5910Dの厚みは増さないが、孔隙の一部に充填5920Dを適用して所要の機械的補強を実現する、充填5900Dを含む。
【0091】
他の頭蓋顎顔面骨を対象とする代替の実施形態
【0092】
次に、続く
図22から
図28は、本発明の第1の態様(すなわち頭蓋顎顔面インプラントを設計する方法)に関係するいくつかの代替の実施形態を示している。これらの代替の実施形態は、これ以前の図面および付随する説明によって既に対処した頭蓋以外の頭蓋顎顔面骨の設計にこの方法を適用することに関する。また、これらの図面は、本発明の概念が、本発明の範囲を逸脱することなく他の頭蓋顎顔面骨にも完全に適用され得ることを示すものである。簡潔にするために、続く
図22から
図28およびそれらに付随する説明は、頭蓋用のインプラントの設計と他の各頭蓋顎顔面骨用のインプラントの設計の間の顕著な相違点のみを対象としていることに留意されたい。この方法およびその下位要素の言及していない詳細は、頭蓋インプラントの設計に適用される上記の実施形態の対応する詳細に実質的に従うものとみなされるものとする。
【0093】
詳細には、
図22~
図24は、この実施形態の眼窩インプラントの設計への適用を示し、
図25A~
図26は、この実施形態の上顎骨/頬骨(すなわち中顔面)インプラントの設計への適用を示し、
図27A~
図28は、この実施形態の鼻インプラントの設計への適用を示している。
【0094】
眼窩インプラントの設計
【0095】
図22は、代替の実施形態による、支持対象の軟組織層が脂肪および筋肉のみを含むシナリオにおけるベースアウトラインの割当てを示している。詳細には、
図22は、上記の
図8、
図9A、および
図9Bに見られる支持対象の軟組織層を決定する下位要素ステップ2410と、支持対象の軟組織層の最内層の最下部の下に隣接するようにベースアウトラインを割り当てる下位要素ステップ2430とを眼窩インプラントの設計に適用するシナリオを示している。ここで、右眼窩2420Cの断面術後画像は、最内層から最外層に向かって、骨層2421、脂肪層2423、次いで筋肉層2422を含む。頭蓋骨の場合と異なり、皮膚層はこの手術には関係がなく、脂肪層2423の方が筋肉層2422よりも骨層2421の近くにあり、眼窩の場合、筋肉層2422は眼球である。支持対象の軟組織層は、対応する下位要素ステップで、筋肉層2422および脂肪層2423の両方を含むものと決定されるので、ベースアウトライン2425Cは、対応する下位要素ステップで、この場合には脂肪層2423の最下部である支持対象の軟組織の最内層の最下部の下に隣接するように割り当てられる。また、設計中のインプラントがベースアウトライン2425Cから逸脱する場合には、その逸脱は脂肪層2423に与えられる支持のみに影響を及ぼすことも分かる。これは、前述のように、皮膚層が関係なく、筋肉2422層が眼球であるからである。
【0096】
次に、
図23A、
図23B、および
図23Cは、境界3122、表面拘束3112、および解剖学的関心領域3120の要素を含むインプラントベースアウトライン3100を示している。ベースアウトライン3100を形成するこれら3つの要素は、
図6、
図7A、および
図7Bに既に示し、それらに従って説明した、対応するステップ2200で決定されている。詳細には、
図23A、
図23B、および
図23Cは、上記の
図14、
図15A、および
図15Bに見られる垂直経路に沿った参照位置からの逸脱を決定する下位要素ステップ3000を眼窩インプラントの設計に適用するシナリオを示している。
【0097】
さらに詳細には、
図23A、
図23B、および
図23Cによれば、ベースアウトライン3100はまた、2つの大ゾーン、すなわち逸脱を含まないベースライン表面3110と、逸脱を含む可能性がある解剖学的関心領域3120とに分離される。この2つの大ゾーン3110および3120は、分岐線3121によって視覚的に分離されている。
【0098】
図23Aおよび
図23Bは両方とも、好ましくは表面拘束3112に沿って走る複数の参照位置3126、およびベースライン表面3110内では参照位置3126に重なり、解剖学的関心領域3120内では参照位置3126から分岐するように示されている複数の支持位置3127をさらに示している。
図23Aおよび
図23Bは、全ての支持位置3127を組み合わせることでもたらされる最大可能上昇に対応する支持境界3124も視覚化している。参照位置3126によって示される極限(すなわちベースライン表面3110からの逸脱0%)および支持位置3127によって示される極限(すなわちベースライン表面からの逸脱100%)という2つの生じ得る極限の間に、複数の逸脱位置3128(すなわちxが0%~100%の間の一部割合で表されるものとしてベースライン表面3110からのx%の一部割合の逸脱)がある。
図23Aおよび
図23Bは、参照位置3126に沿った参照ノード(逸脱0%、〇)の各々から支持位置3127に沿った支持ノード(逸脱100%、□)の各々に投影される垂直経路をさらに示している。この垂直経路の各々の間で、逸脱ノード(逸脱x%、△)が、その特定の位置におけるベースライン表面3110からの実際の逸脱を示している。
図23Aおよび
図23Bは、参照位置3126のうちの複数にわたって逸脱の長さが変化すること、および参照位置3126のうちの複数にわたって垂直経路の長さが変化することも示している。このことから、
図23Aおよび
図23Bによる代替の実施形態では解剖学的関心領域3120内の複数の参照位置3126にわたって必要とされる異なる患者特有サポートを考慮するので、逸脱位置3128のx%という逸脱を表す一部割合も、参照位置3126のうちの複数にわたって変化するということになる。
【0099】
図23Cは、解剖学的関心領域3120の縁部における境界3122と、支持境界3124と、逸脱境界3125との間の比較を強調している。上記の
図23Aおよび
図23Bに鑑みて、垂直経路の逸脱および/または一部割合は、特定の位置で必要とされる患者特有サポートによっては解剖学的関心領域3120全体で変化することもあり、そのため逸脱境界3125が示す逸脱/一部割合は、必ずしも解剖学的関心領域3120内で最大のものとは限らないことも強調しておく。
【0100】
図24は、代替の実施形態による、表面要素を位置決めすることによってその表面が形成されている眼窩インプラントの画像を示している。詳細には、
図24は、上記の
図16および
図17に見られる表面要素を位置決めする下位要素ステップ4000を眼窩インプラントの設計に適用するシナリオを示している。
【0101】
図24は、代替の実施形態による、表面要素を位置決めすることによってその表面が形成されている眼窩インプラントの画像を示している。特に、
図24は、インプラント表面4120が視覚的に適用されている損傷した右眼窩4112を有する患者の頭蓋顎顔面骨4110を含む頭蓋顎顔面画像4100を示している。
図24は、解剖学的関心領域内に可能な範囲4122および4124をさらに示しており、インプラント表面4120は、この範囲内で、上記の図面に関連して完全に述べたようにベースアウトラインからの逸脱および/または一部割合に変換されている患者特有サポートに応じて位置決めされ得る。最小表面4122は、ベースアウトラインからの逸脱が決定されておらず(すなわちインプラント表面の全体にわたって逸脱0%)、そのため解剖学的関心領域でありながら全ての表面要素がベースアウトライン上に残っている場合を表し、最大表面4124は、解剖学的関心領域内の全ての逸脱が支持境界と一致する(すなわち解剖学的関心領域の全体にわたって逸脱100%)場合を表す。この実施形態では、上記の
図16の表面要素を位置決めするステップの後で、全ての表面要素は、最小表面4122と最大表面4124の間に位置する最適表面4126を形成するように位置決めされている。
【0102】
上顎骨/頬骨(すなわち中顔面)インプラントの設計
【0103】
図25A、
図25B、および
図25Cは、境界3122、表面拘束3112、および解剖学的関心領域3120の要素を含むインプラントベースアウトライン3100を示している。ベースアウトライン3100を形成するこれら3つの要素は、
図6、
図7A、および
図7Bに既に示し、それらに従って説明した、対応するステップ2200で決定されている。詳細には、
図25A、
図25B、および
図25Cは、上記の
図14、
図15A、
図15B、および
図15Cに見られる垂直経路に沿った参照位置からの逸脱を決定する下位要素ステップ3000を上顎骨/頬骨インプラントの設計に適用するシナリオを示している。
【0104】
さらに詳細には、
図25A、
図25B、および
図25Cによれば、ベースアウトライン3100はまた、2つの大ゾーン、すなわち逸脱を含まないベースライン表面3110と、逸脱を含む可能性がある解剖学的関心領域3120とに分離される。この2つの大ゾーン3110および3120は、分岐線3121によって視覚的に分離されている。状況的に、この代替の実施形態における解剖学的関心領域3120は、4つの分離したベースライン表面3110の真ん中に位置する。
【0105】
図25Aおよび
図25Bは両方とも、好ましくは表面拘束3112に沿って走る複数の参照位置3126、およびベースライン表面3110内では参照位置3126に重なり、解剖学的関心領域3120内では参照位置3126から分岐するように示されている複数の支持位置3127をさらに示している。
図25Aおよび
図25Bは、全ての支持位置3127を組み合わせることでもたらされる最大可能上昇に対応する支持境界3124も視覚化している。参照位置3126によって示される極限(すなわちベースライン表面3110からの逸脱0%)および支持位置3127によって示される極限(すなわちベースライン表面3110からの逸脱100%)という2つの生じ得る極限の間に、複数の逸脱位置3128(すなわちxが0%~100%の間の一部割合で表されるものとしてベースライン表面3110からのx%の一部割合の逸脱)がある。
図25Aおよび
図25Bは、参照位置3126に沿った参照ノード(逸脱0%、〇)の各々から支持位置3127に沿った支持ノード(逸脱100%、□)の各々に投影される垂直経路をさらに示している。この垂直経路の各々の間で、逸脱ノード(逸脱x%、△)が、その特定の位置におけるベースライン表面3110からの実際の逸脱を示している。
図25Aおよび
図25Bは、参照位置3126のうちの複数にわたって逸脱の長さが変化すること、および参照位置3126のうちの複数にわたって垂直経路の長さが変化することも示している。このことから、
図25Aおよび
図25Bによる代替の実施形態では解剖学的関心領域3120内の複数の参照位置3126にわたって必要とされる異なる患者特有サポートを考慮するので、逸脱位置3128のx%という逸脱を表す一部割合も、参照位置3126のうちの複数にわたって変化するということになる。
【0106】
図25Cは、解剖学的関心領域3120の縁部における境界3122と、支持境界3124と、逸脱境界3125との間の比較を強調している。上記の
図25Aおよび
図25Bに鑑みて、垂直経路の逸脱および/または一部割合は、特定の位置で必要とされる患者特有サポートによっては解剖学的関心領域3120全体で変化することもあり、そのため逸脱境界3125が示す逸脱/一部割合は、必ずしも解剖学的関心領域3120内で最大のものとは限らないことも強調しておく。
【0107】
図26は、代替の実施形態による、表面要素を位置決めすることによってその表面が形成されている上顎骨/頬骨インプラントの画像を示している。詳細には、
図26は、上記の
図16および
図17に見られる表面要素を位置決めする下位要素ステップ4000を上顎骨/頬骨インプラントの設計に適用するシナリオを示している。
【0108】
図26は、代替の実施形態による、表面要素を位置決めすることによってその表面が形成されているインプラントの画像を示している。特に、
図26は、インプラント表面4120が視覚的に適用されている損傷した右上顎骨/頬骨4112を有する患者の頭蓋顎顔面骨4110を含む頭蓋顎顔面画像4100を示している。
図26は、解剖学的関心領域内に可能な範囲4122および4124をさらに示しており、インプラント表面4120は、この範囲内で、上記の図面に関連して完全に述べたようにベースアウトラインからの逸脱および/または一部割合に変換されている患者特有サポートに応じて位置決めされ得る。最小表面4122は、ベースアウトラインからの逸脱が決定されておらず(すなわちインプラント表面の全体にわたって逸脱0%)、そのため解剖学的関心領域でありながら全ての表面要素がベースアウトライン上に残っている場合を表し、最大表面4124は、解剖学的関心領域内の全ての逸脱が支持境界と一致する(すなわち解剖学的関心領域の全体にわたって逸脱100%)場合を表す。この実施形態では、上記の
図16の表面要素を位置決めするステップの後で、全ての表面要素は、最小表面4122と最大表面4124の間に位置する最適表面4126を形成するように位置決めされている。
【0109】
鼻インプラントの設計
【0110】
図27Aおよび
図27Bは、境界3122、表面拘束3112、および解剖学的関心領域3120の要素を含むインプラントベースアウトライン3100を示している。ベースアウトライン3100を形成するこれら3つの要素は、
図6、
図7A、および
図7Bに既に示し、それらに従って説明した、対応するステップ2200で決定されている。詳細には、
図27Aおよび
図27Bは、上記の
図14、
図15A、
図15B、および
図15Cに見られる垂直経路に沿った参照位置からの逸脱を決定する下位要素ステップ3000を鼻インプラントの設計に適用するシナリオを示している。
【0111】
さらに詳細には、
図27Aによれば、ベースアウトライン3100はまた、2つの大ゾーン、すなわち逸脱を含まないベースライン表面3110と、逸脱を含む可能性がある解剖学的関心領域3120とに分離される。この2つの大ゾーン3110および3120は、分岐線3121によって視覚的に分離されている。
【0112】
図27Aは、好ましくは表面拘束3112に沿って走る複数の参照位置3126、およびベースライン表面3110内では参照位置3126に重なり、解剖学的関心領域3120内では参照位置3126から分岐するように示されている複数の支持位置3127をさらに示している。
図27Aは、全ての支持位置3127を組み合わせることでもたらされる最大可能上昇に対応する支持境界3124も視覚化している。参照位置3126によって示される極限(すなわちベースライン表面3110からの逸脱0%)および支持位置3127によって示される極限(すなわちベースライン表面3110からの逸脱100%)という2つの生じ得る極限の間に、複数の逸脱位置3128(すなわちxが0%~100%の間の一部割合で表されるものとしてベースライン表面3110からのx%の一部割合の逸脱)がある。
図27Aは、参照位置3126に沿った参照ノード(逸脱0%、〇)の各々から支持位置3127に沿った支持ノード(逸脱100%、□)の各々に投影される垂直経路をさらに示している。この垂直経路の各々の間で、逸脱ノード(逸脱x%、△)が、その特定の位置におけるベースライン表面3110からの実際の逸脱を示している。
図27Aは、参照位置3126のうちの複数にわたって逸脱の長さが変化すること、および参照位置3126のうちの複数にわたって垂直経路の長さが変化することも示している。このことから、
図27Aによる代替の実施形態では解剖学的関心領域3120内の複数の参照位置3126にわたって必要とされる異なる患者特有サポートを考慮するので、逸脱位置3128のx%という逸脱を表す一部割合も、参照位置3126のうちの複数にわたって変化するということになる。
【0113】
図27Bは、解剖学的関心領域3120内の境界3122と、支持境界3124と、逸脱境界3125との間の比較を強調している。上記の
図27Bに鑑みて、垂直経路の逸脱および/または一部割合は、特定の位置で必要とされる患者特有サポートによっては解剖学的関心領域3120全体で変化することもあり、そのため逸脱境界3125が示す逸脱/一部割合は、必ずしも解剖学的関心領域3120内で最大のものとは限らないことも強調しておく。
【0114】
図28は、代替の実施形態による、表面要素を位置決めすることによってその表面が形成されている鼻インプラントの画像を示している。詳細には、
図28は、上記の
図16および
図17に見られる表面要素を位置決めする下位要素ステップ4000を鼻インプラントの設計に適用するシナリオを示している。
【0115】
図28は、代替の実施形態による、表面要素を位置決めすることによってその表面が形成されている鼻インプラントの画像を示している。特に、
図28は、相応に視覚化されたインプラント表面4120を有する鼻インプラントを適用することによって美容手術が実施される鼻骨4112(本記述の文脈では、この鼻骨は鼻軟骨を含む)を有する患者の頭蓋顎顔面骨4110を含む頭蓋顎顔面画像4100を示している。
図28は、解剖学的関心領域内に可能な範囲4122および4124をさらに示しており、インプラント表面4120は、この範囲内で、上記の図面に関連して完全に述べたようにベースアウトラインからの逸脱および/または一部割合に変換されている患者特有サポートに応じて位置決めされ得る。最小表面4122は、ベースアウトラインからの逸脱が決定されておらず(すなわちインプラント表面の全体にわたって逸脱0%)、そのため解剖学的関心領域でありながら全ての表面要素がベースアウトライン上に残っている場合を表し、最大表面4124は、解剖学的関心領域内の全ての逸脱が支持境界と一致する(すなわち解剖学的関心領域の全体にわたって逸脱100%)場合を表す。この実施形態では、上記の
図16の表面要素を位置決めするステップの後で、全ての表面要素は、最小表面4122と最大表面4124の間に位置する最適表面4126を形成するように位置決めされている。
【0116】
頭蓋顎顔面インプラント
【0117】
本発明の第2の態様は、第1の態様による設計方法によって可能になる新規の頭蓋顎顔面インプラントを対象とする。以降の図面に示し、以下の説明で言及するインプラントの下位要素は、この詳細な説明および図面を完全に理解した当業者によって修正され得ることに留意されたい。
【0118】
頭蓋インプラント
【0119】
図29Aは、好ましい実施形態による、頭蓋インプラントの適用を概略的に示す図である。この実施形態では、頭蓋顎顔面インプラントは、患者の頭蓋顎顔面骨10、詳細には損傷した右頭蓋12に適用される頭蓋インプラント200の形態である。この頭蓋インプラント200は、第1の態様によって可能になる設計に従って、実質的に一様な厚さを有する反った剛性のプレートに形成される。反り220は、少なくとも頭蓋顎顔面骨(すなわち右頭蓋12)上にセットされてそれにより支持され、少なくともその頭蓋顎顔面骨の代わりに軟組織層(図示せず)を支持することによって軟組織層の上昇を補償または増補するように、頭蓋インプラント200を適応させるように術前に構成される。頭蓋顎顔面骨の上の軟組織層上にセットされてそれにより支持されるように頭蓋インプラント200を適応させるように反り220が術前に構成されるシナリオ例は、得られるインプラントが筋肉層によって支持される上記の
図10Bに示してある。次の
図29Bは、反り220が、トポロジマッピング222によって示されるようにインプラント200上で非一様に分布していることをさらに示している。
図29Aおよび
図29Bの両方によれば、反り220によって軟組織層に与えられる支持は、頭蓋顎顔面骨10の対側部分11によって与えられる支持とは非対称である。
【0120】
図30Aは、好ましい実施形態による、頭蓋インプラントを示す前面斜視図である。この実施形態では、頭蓋インプラント200は、チタン合金で構成され、0.2~0.8mmの範囲内の実質的に一様な厚さを有する剛性プレートに形成される。この厚さの範囲も、第1の態様によって可能になる重要な新規の特徴である。上記の
図29Aおよび
図29Bと同様に、頭蓋インプラント200は、インプラント200上に非一様に分布する反り220を含む。また、
図30Aは、頭蓋インプラント200が、それぞれが複数の細い支柱で接続された非一様に分布した円形穴の形態の孔隙230と、好ましくは頭蓋インプラント200を頭蓋顎顔面骨上で固定するための4つの手段240とをさらに含むように示している。また、孔隙の形態は、例えば必要な強度および通気性など、状況に応じた手術の必要に合わせるように構成することもできることにも留意されたい。この実施形態では、上記の固定手段240のそれぞれは、頭蓋インプラント200の境界210から側方外向きに突出するフィンの形態である。この固定手段240は、ねじ(図示せず)を挿入するためのねじ穴242を特徴とする。
図30Bの後面斜視図によれば、頭蓋インプラント200は、孔隙230の周りのインプラント表面の厚みを局所的に増す非一様に分布した湾曲トラックの形態の機械的補強250をさらに含む。
【0121】
眼窩インプラント
【0122】
図31Aは、好ましい実施形態による、眼窩インプラントの適用を概略的に示す図である。この実施形態では、頭蓋顎顔面インプラントは、患者の頭蓋顎顔面骨10、詳細には損傷した右眼窩13に適用される眼窩インプラント300の形態である。この眼窩インプラント300は、第1の態様によって可能になる設計に従って、実質的に一様な厚さを有する反った剛性のプレートに形成される。反り320は、少なくとも頭蓋顎顔面骨(すなわち右眼窩13)上にセットされてそれにより支持され、少なくともその頭蓋顎顔面骨の代わりに軟組織層(図示せず)を支持することによって軟組織層の上昇を補償または増補するように、眼窩インプラント300を適応させるように術前に構成される。次の
図31Bは、反り320が、トポロジマッピング322によって示されるようにインプラント300上で非一様に分布していることをさらに示している。反り320によって軟組織層に与えられる支持は、頭蓋顎顔面骨の対側部分によって与えられる支持とは非対称である。
【0123】
図32Aは、好ましい実施形態による、頭蓋インプラントを示す前面斜視図である。この実施形態では、眼窩インプラント300は、チタン合金で構成され、0.2~0.8mmの範囲内の実質的に一様な厚さを有する剛性プレートに形成される。やはり第1の態様によって可能になる重要な新規の特徴であるこの厚さの範囲は、インプラントが頭蓋よりも侵襲性の影響を受けやすい眼窩用であるときには特に有利である。上記の
図31Aおよび
図31Bと同様に、眼窩インプラント300は、インプラント300上に非一様に分布する反り320を含む。また、
図32Aは、眼窩インプラント300が、非一様に分布した六角穴の形態の孔隙330と、好ましくは眼窩インプラント300を頭蓋顎顔面骨上で固定するための手段340とをさらに含むように示している。この実施形態では、固定手段340は、眼窩インプラント300の境界310内に位置する。この固定手段340は、それぞれねじ(図示せず)を挿入するためのねじ穴342を特徴とする。眼窩骨の性質によりインプラント300のさらなる安定性が必要となるこの実施形態では、固定手段340は、屈曲して、
図31Aおよび
図31Bに既に示したように眼窩の下側縁部に隣接する追加の表面を提供し、それにより安定性を高めるようにも適応される。同じ理由で、この実施形態は、頭蓋顎顔面骨上にセットされてそれによって支持されるときの眼窩インプラント300の安定性をさらに高めるように適応されたリッジ360も含む。
図32Bの後面斜視図によれば、眼窩インプラント300は、このようなリッジ360を2つ含み、また、孔隙330の周りのインプラント表面の厚みを局所的に増す非一様に分布した湾曲トラックの形態の機械的補強350も含む。
【0124】
上顎骨/頬骨(すなわち中顔面)インプラント
【0125】
図33Aは、好ましい実施形態による、上顎骨/頬骨インプラントの適用を概略的に示す図である。この実施形態では、頭蓋顎顔面インプラントは、患者の頭蓋顎顔面骨10、詳細には損傷した右上顎骨/頬骨14に適用される上顎骨/頬骨インプラント400の形態である。この上顎骨/頬骨インプラント400は、第1の態様によって可能になる設計に従って、実質的に一様な厚さを有する反った剛性のプレートに形成される。反り420は、少なくとも頭蓋顎顔面骨(すなわち右上顎骨/頬骨14)上にセットされてそれにより支持され、少なくともその頭蓋顎顔面骨の代わりに軟組織層(図示せず)を支持することによって軟組織層の上昇を補償または増補するように、上顎骨/頬骨インプラント400を適応させるように術前に構成される。次の
図33Bは、反り420が、トポロジマッピング422によって示されるようにインプラント400上で非一様に分布していることをさらに示している。反り420によって軟組織層に与えられる支持は、頭蓋顎顔面骨の対側部分によって与えられる支持とは非対称である。
【0126】
図34Aは、好ましい実施形態による、上顎骨/頬骨インプラントを示す前面斜視図である。この実施形態では、上顎骨/頬骨インプラント400は、チタン合金で構成され、0.2~0.8mmの範囲内の実質的に一様な厚さを有する剛性プレートに形成される。この厚さの範囲も、第1の態様によって可能になる重要な新規の特徴である。上記の
図33Aおよび
図33Bと同様に、上顎骨/頬骨インプラント400は、インプラント400上に非一様に分布する反り420を含む。また、
図34Aは、上顎骨/頬骨インプラント400が、非一様に分布した六角穴の形態の孔隙430と、好ましくは上顎骨/頬骨インプラント400を頭蓋顎顔面骨上で固定するための3つの手段440とをさらに含むように示している。この実施形態では、上記の固定手段440のそれぞれは、上顎骨/頬骨インプラント400の境界410から側方外向きに突出するフィンの形態である。この固定手段440は、それぞれねじ(図示せず)を挿入するための2つのねじ穴442を特徴とする。
図34Bの後面斜視図によれば、上顎骨/頬骨インプラント400は、孔隙430の周りのインプラント表面の厚みを局所的に増す非一様に分布した湾曲トラックの形態の機械的補強450をさらに含む。
【0127】
鼻インプラント
【0128】
図35Aは、好ましい実施形態による、鼻インプラントの適用を概略的に示す図である。この実施形態では、頭蓋顎顔面インプラントは、患者の頭蓋顎顔面骨10、詳細には美容手術が行われる鼻骨15(本記述の文脈では、鼻骨は鼻軟骨を含む)に適用される鼻インプラント500の形態である。この鼻インプラント500は、第1の態様によって可能になる設計に従って、実質的に一様な厚さを有する反った剛性のプレートに形成される。反り520は、少なくとも頭蓋顎顔面骨(すなわち鼻骨15)上にセットされてそれにより支持され、少なくともその頭蓋顎顔面骨の代わりに軟組織層(図示せず)を支持することによって軟組織層の上昇を補償または増補するように、鼻インプラント500を適応させるように術前に構成される。次の
図35Bは、反り520が、トポロジマッピング322によって示されるようにインプラント500上で非一様に分布していることをさらに示している。
【0129】
図36Aは、好ましい実施形態による、鼻インプラントを示す前面斜視図である。この実施形態では、鼻インプラント500は、シリコーンで構成され、0.2~0.8mmの範囲内の実質的に一様な厚さを有する剛性プレートに形成される。やはり第1の態様によって可能になる重要な新規の特徴であるこの厚さの範囲は、インプラントが頭蓋よりも侵襲性の影響を受けやすい鼻骨用であるときには特に有利である。上記の
図35Aおよび
図35Bと同様に、鼻インプラント500は、インプラント500上に非一様に分布する反り520を含む。また、
図36Aは、鼻インプラント500が、非一様に分布した六角穴の形態の孔隙530と、好ましくはともに鼻インプラント500を頭蓋顎顔面骨上で固定するための2つの第1の固定手段540Aおよび2つの第2の固定手段540Bとをさらに含むように示している。この実施形態では、第1の固定手段540Aのそれぞれは、鼻インプラント500の境界510から側方外向きに突出するフィンの形態であり、また、第1の固定手段540Aのそれぞれは、それぞれねじ(図示せず)を挿入するための2つのねじ穴542Aを特徴とする。さらに、第2の固定手段540Bのそれぞれは、鼻インプラント500の境界510から側方外向きに突出するフィンの形態であり、また、第2の固定手段540Bのそれぞれは、ねじ(図示せず)を挿入するための1つのねじ穴542Bを特徴とする。
図36Bの後面斜視図によれば、鼻インプラント500は、孔隙530の周りのインプラント表面の厚みを局所的に増す非一様に分布した湾曲トラックの形態の機械的補強550をさらに含む。
【0130】
下顎骨インプラント
【0131】
図37は、好ましい実施形態による、下顎骨インプラントの適用を概略的に示す図である。この実施形態では、頭蓋顎顔面インプラントは、患者の下方の頭蓋顎顔面骨20、詳細には損傷した左下顎骨22に適用される下顎骨インプラント600の形態である。この下顎骨インプラント600は、第1の態様によって可能になる設計に従って、実質的に一様な厚さを有する反った剛性のプレートに形成される。反り620は、少なくとも頭蓋顎顔面骨(すなわち左下顎骨22)上にセットされてそれにより支持され、少なくともその頭蓋顎顔面骨の代わりに軟組織層(図示せず)を支持することによって軟組織層の上昇を補償または増補するように、下顎骨インプラント600を適応させるように術前に構成される。反り620によって軟組織層に与えられる支持は、頭蓋顎顔面骨の対側部分によって与えられる支持とは非対称である。
【0132】
下顎骨インプラント残りの詳細、および他の種類の頭蓋顎顔面骨に適用するための他の可能な代替の実施形態は、上記の例示的な実施形態の知識があれば当業者なら理解することができるので、簡潔にするために省略するが、それにより本発明の概念が制限されることはない。
【国際調査報告】