IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インスメッド, インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-520789リポソームアミノグリコシド製剤のインビトロ放出アッセイ法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】リポソームアミノグリコシド製剤のインビトロ放出アッセイ法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7036 20060101AFI20240517BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K31/7036
A61K9/127
A61P31/04
A61P11/00
A61K9/72
A61K47/28
A61K47/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575723
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 US2022032629
(87)【国際公開番号】W WO2022261174
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】63/208,894
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513204012
【氏名又は名称】インスメッド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シャラー,トニ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC15
4C076CC32
4C076DD63
4C076DD70
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA09
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA24
4C086MA56
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZA59
4C086ZB35
(57)【要約】
本開示は、リポソームアミノグリコシド製剤、特にリポソームアミカシン製剤のためのインビトロ放出(IVR)法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリポソーム内に封入されたアミノグリコシドを含むリポソームアミノグリコシド製剤のアミノグリコシド放出プロファイルを評価する方法であって、
(a)溶解容器内の溶解装置を操作することであって、前記溶解容器が、(i)各々が所定の体積と、所定の分子量カットオフ(MWCO)を有する透析膜とを有する一つ以上の透析装置中の所定量の前記リポソームアミノグリコシド製剤と、(ii)所定量の界面活性剤を有する溶解媒体と、を含み、各透析膜が、前記アミノグリコシド、前記溶解媒体、および前記界面活性剤に対して透過性であり、かつ、リポソームに対して実質的に不透過性であり、
前記溶解装置および前記一つ以上の透析装置が、前記溶解媒体中に浸漬される、操作することと、
(b)所定の時間間隔の後、前記溶解媒体のアリコートを除去することと、
(c)遊離アミノグリコシド含有量について前記アリコートを分析することと、
(d)任意選択的に、一つ以上の追加の時間間隔の後に工程(b)および(c)を繰り返すことと、を含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、前記溶解装置を操作する前に、
(a)所定量の前記リポソームアミノグリコシド製剤を、前記一つ以上の透析装置に添加することと、
(b)前記一つ以上の透析装置を前記溶解媒体内に配置することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一つ以上の透析装置が、それぞれ、約20kD~約1500kDの分子量カットオフ(MWCO)を有する透析膜を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記一つ以上の透析装置が、それぞれ、約1000kDの分子量カットオフ(MWCO)を有する透析膜を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各透析膜が、セルロースエステルから構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶解容器が、二つの透析装置を含み、各々が前記リポソームアミノグリコシド製剤の一部分を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶解媒体が、緩衝液を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記界面活性剤が、5mM未満の臨界ミセル濃度(CMC)を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記界面活性剤が、1mM未満のCMCを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記非イオン性界面活性剤が、オクチルフェノールエトキシレートである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記溶解媒体が、リン酸緩衝生理食塩水中のオクチルフェノールエトキシレートを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記溶解媒体が、リン酸緩衝生理食塩水中に約0.5~約10%v/vのオクチルフェノールエトキシレートを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記溶解媒体が、リン酸緩衝生理食塩水中に約1~約6%v/vのオクチルフェノールエトキシレートを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記溶解媒体が、リン酸緩衝生理食塩水中に約5%v/vのオクチルフェノールエトキシレートを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記リン酸緩衝生理食塩水が、Dulbeccoリン酸緩衝生理食塩水である、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記溶解装置を操作することが、前記溶解媒体をパドルで撹拌することを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記パドルを、約75rpm~約150rpmで操作する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記パドルを、約150rpmで操作する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記溶解装置を操作することが、前記溶解媒体を撹拌バーで撹拌することを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記撹拌バーを、約75rpm~約150rpmで操作する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記撹拌バーを、約150rpmで操作する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記溶解装置を、37℃で操作する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記溶解装置が、約150rpmで操作されるUSP装置2(パドル)である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
工程(b)が、遊離アミノグリコシド含有量について前記アリコートを分析する前に界面活性剤を除去するために、前記アリコート上で固相抽出を行うことを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記固相抽出が、陽イオン交換吸収剤材料を用いて実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記溶解媒体のアリコートが、1、2、6、および24時間後に採取される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記溶解媒体のアリコートが、1、2、3、4、6、および24時間後に採取される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記溶解媒体のアリコートが、1、2、3、6、および24時間後に採取される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記溶解媒体のアリコートが、1、2、4、および24時間後に採取される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記溶解媒体のアリコートが、1、2、4、6および24時間後に採取される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記アミノグリコシドが、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、イセパマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロドストレプトマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシンまたはベルダマイシン、AC4437、K-4619、シソマイシン、ダクチマイシン、アルベカシン、エチマイシン、KA-5685、ソルビスチン、アプラマイシン、スポラリシン、ベカナマイシン、H107、ボホルマイシン、パロモマイシン、トブラマイシン、ブルラマイシン、ハイグロマイシンB、プラゾマイシン、ベルダマイシン、イノサマイシン、ベルチルマイシン、それらの薬学的に許容される塩、または上記の任意の組み合わせである、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記アミノグリコシドが、アミカシンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記アミノグリコシドが、硫酸アミカシンである、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記複数のリポソームの前記脂質成分が、正味の中性脂質を含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記複数のリポソームの前記脂質成分が、正味の中性リン脂質およびステロールを含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記ステロールが、コレステロールである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記正味の中性脂質が、正味の中性ホスファチジルコリンである、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
前記正味の中性ホスファチジルコリンが、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
複数のリポソームに封入されたアミノグリコシドを含むリポソームアミノグリコシド製剤からのアミノグリコシドの放出プロファイルを測定する方法であって、
(a)所定量の前記リポソームアミノグリコシド製剤を一つの透析装置にまたは二つ以上の透析装置に分割して添加することであって、各透析装置が所定の体積を有し、かつセルロースエステル透析膜を含む、添加することと、
(b)リン酸緩衝生理食塩水中に所定量のオクチルフェノールエトキシレートを含む溶解容器に、前記透析装置を配置することと、
(c)前記溶解容器内の溶解装置を操作することであって、前記溶解装置が、約150rpmで37℃で操作されるUSP装置2(パドル)である、操作することと、
(d)所定の時間間隔の後、溶解媒体のアリコートを除去することと、
(e)遊離アミノグリコシド含有量について前記アリコートを分析することと、
(f)任意選択的に、一つ以上の追加の時間間隔の後に工程(d)および(e)を繰り返すことと、を含む、方法。
【請求項41】
複数のリポソームに封入されたアミノグリコシドを含むリポソームアミノグリコシド製剤を調製するための方法であって、
(a)複数のリポソームに封入されたアミノグリコシドを含む前記リポソームアミノグリコシド製剤の製造バッチから試料を得ることと、
(b)前記試料の放出プロファイルを評価することであって、
(i)所定量のリポソームアミノグリコシド製剤を一つの透析装置にまたは二つ以上の透析装置に分割して添加することであって、各透析装置が所定の体積を有し、かつセルロースエステル透析膜を含む、添加することと、
(ii)リン酸緩衝生理食塩水中の所定量のオクチルフェノールエトキシレートを含む溶解容器に、前記透析装置を配置することと、
(iii)前記溶解容器を用いて溶解装置を操作することであって、前記溶解装置が、37℃で約150rpmで操作されるUSP装置2(パドル)である、操作することと、
(iv)所定の時間間隔の後、前記溶解媒体のアリコートを除去することと、
(v)遊離アミノグリコシド含有量について前記アリコートを分析することと、
(vi)任意選択的に、一つ以上の追加の時間間隔の後に工程(iv)および(v)を繰り返すことと、を含む、評価することと、
(c)任意選択的に、前記放出プロファイルが所定の基準を満たす場合、前記リポソームアミノグリコシド製剤の前記バッチを一つ以上の剤形に組み込むことと、を含む、方法。
【請求項42】
前記アミノグリコシドが、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、イセパマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロドストレプトマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシンまたはベルダマイシン、AC4437、K-4619、シソマイシン、ダクチマイシン、アルベカシン、エチマイシン、KA-5685、ソルビスチン、アプラマイシン、スポラリシン、ベカナマイシン、H107、ボホルマイシン、パロモマイシン、トブラマイシン、ブルラマイシン、ハイグロマイシンB、プラゾマイシン、ベルダマイシン、イノサマイシン、ベルチルマイシン、それらの薬学的に許容される塩、それらの組み合わせ、または上記の任意の組み合わせである、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記アミノグリコシドが、アミカシンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項40または41に記載の方法。
【請求項44】
前記アミノグリコシドが、硫酸アミカシンである、請求項40または41に記載の方法。
【請求項45】
前記複数のリポソームの前記脂質成分が、正味の中性脂質を含む、請求項40~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記複数のリポソームの前記脂質成分が、正味の中性リン脂質およびステロールを含む、請求項40~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記ステロールが、コレステロールである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記正味の中性リン脂質が、正味の中性ホスファチジルコリンである、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
前記正味の中性ホスファチジルコリンが、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記透析膜が、約20kD~約1500kDの分子量カットオフ(MWCO)を有する、請求項40~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記透析膜が、約1000kDの分子量カットオフ(MWCO)を有する、請求項40~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記リン酸緩衝生理食塩水が、Dulbeccoリン酸緩衝生理食塩水である、請求項40~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
患者において肺感染症を治療する方法であって、アミノグリコシド封入リポソームを含む治療有効量のリポソームアミノグリコシド製剤を前記患者に投与することを含み、前記リポソームアミノグリコシド製剤が、リポソームアミノグリコシド製剤の製造バッチ由来であり、かつ所定のインビトロ放出プロファイルを有することが検証され、前記放出プロファイルが、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法によって決定される、方法。
【請求項54】
前記アミノグリコシドが、硫酸アミカシンである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
複数のバイアルを含むキットであって、各バイアルが、複数のリポソームに封入されたアミノグリコシドを含むリポソームアミノグリコシド製剤を含有し、各バイアル中の前記リポソームアミノグリコシド製剤が、所定のインビトロ放出プロファイルを有することが検証されている製造バッチ由来であり、前記放出プロファイルが、請求項1~54のいずれか一項に記載の方法によって決定される、キット。
【請求項56】
複数のリポソームに封入されたアミノグリコシドを含むリポソームアミノグリコシド製剤の放出プロファイルを評価する方法であって、
(a)所定量の界面活性剤を所定量の前記リポソームアミノグリコシド製剤に添加して、放出溶液を得ることと、
(b)所定の時間間隔の後、前記放出溶液のアリコートを除去し、前記アリコートを総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することと、
(c)前記放出溶液中の前記リポソームアミノグリコシド製剤に対する前記界面活性剤の比率を増加させることと、
(d)所定の時間間隔の後、前記放出溶液のアリコートを除去し、前記アリコートを総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することと、
(e)任意選択的に、工程(c)および(d)を1回以上繰り返すことと、
(f)任意選択的に、一つ以上の追加の時間間隔の後に、工程(d)を1回以上繰り返すことと、を含む、方法。
【請求項57】
前記界面活性剤が、前記界面活性剤および緩衝液を含む溶解媒体の形態で添加される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
アミノグリコシド封入リポソームを含むリポソームアミノグリコシド製剤の放出プロファイルを評価する方法であって、
(a)界面活性剤および緩衝液を含む所定量の溶解媒体を所定量の前記リポソームアミノグリコシド製剤に添加して、放出溶液を得ることと、
(b)所定の時間間隔の後、前記放出溶液のアリコートを除去し、前記アリコートを総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することと、
(c)所定量の前記溶解媒体を放出溶液に添加する工程と、
(d)所定の時間間隔の後、前記放出溶液のアリコートを除去し、前記アリコートを総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することと、
(e)任意選択的に、工程(c)および(d)を1回以上繰り返すことと、
(f)任意選択的に、一つ以上の追加の時間間隔の後に工程(d)を1回以上繰り返すこと、を含む、方法。
【請求項59】
前記所定量のリポソームアミノグリコシド製剤が、前記製剤の単一の製造バッチに由来する前記製剤の二つ以上のバイアルからプールされる所定量である、請求項56~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、請求項56~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記界面活性剤が、陰イオン界面活性剤である、請求項56~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記界面活性剤が、5mM未満の臨界ミセル濃度(CMC)を有する、請求項56~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記界面活性剤が、1mM未満のCMCを有する、請求項56~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記非イオン性界面活性剤が、オクチルフェノールエトキシレートである、請求項60に記載の方法。
【請求項65】
複数のリポソームに封入されたアミカシンを含むリポソームアミノグリコシド製剤からのアミカシンの放出プロファイルを測定する方法であって、USP装置2(パドル)中、37℃で、約150rpmの撹拌器を用いて、
(a)溶解装置内で約0.5mLの溶解媒体を約30 mLの前記リポソームアミカシン製剤に添加して、放出溶液を形成することと、
(b)工程(a)の30分後[時間=0.5時間]、(i)前記放出溶液の約3 mLのアリコートを除去しかつ総アミカシン含有量および遊離アミカシン含有量について分析することと、(ii)前記放出溶液の残りの部分に、約1.7mLの溶解媒体を添加することと、
(c)工程(b)の30分後[時間=1時間]、(i)前記放出溶液の約3mLのアリコートを除去しかつ総アミカシン含有量および遊離アミカシン含有量について分析することと、(ii)前記放出溶液の残りの部分に、約4.0mLの溶解媒体を添加することと、
(d)工程(c)の30分後[時間=1.5時間]、(i)前記放出溶液の約3mLのアリコートを除去しかつ総アミカシン含有量および遊離アミカシン含有量について分析することと、(ii)前記放出溶液の残りの部分に、約16mLの溶解媒体を添加することと、
(e)工程(d)の30分後[時間=2時間]、(i)前記放出溶液の約20mLのアリコートを除去しかつ総アミカシン含有量および遊離アミカシン含有量について分析することと、(ii)前記放出溶液の残りの部分に、約100mLの溶解媒体を添加することと、
(f)工程(e)の30分後[時間=2.5時間]、放出溶液の約20mLのアリコートを除去しかつ総アミカシン含有量および遊離アミカシン含有量について分析することと、
(g)工程(f)の30分後[時間=3時間]、前記放出溶液の約20mLのアリコートを除去しかつ総アミカシン含有量および遊離アミカシン含有量について分析することと、を含み、
前記溶解媒体が、リン酸緩衝生理食塩水中にオクチルフェノールエトキシレートを含む、方法。
【請求項66】
前記リン酸緩衝生理食塩水が、Dulbeccoリン酸緩衝生理食塩水である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
工程(a)の前記約30mLのリポソームアミカシン製剤が、前記製剤の単一の製造バッチに由来する前記製剤の二つ以上のバイアルからプールされる、請求項65または66に記載の方法。
【請求項68】
前記溶解媒体が、リン酸緩衝生理食塩水中で9.5のエトキシレートモル含有量を有する200ppmのオクチルフェノールエトキシレートを含む、請求項56~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記リン酸緩衝生理食塩水が、Dulbeccoリン酸緩衝生理食塩水である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記アリコートが、分析前に2~8℃で保存され、総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量を分析することが、その保存から1週間以内の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を含む、請求項56~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
工程(a)の前に、前記製剤が37℃に平衡化される、請求項56~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記複数のリポソームの前記脂質成分が、正味の中性脂質を含む、請求項56~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記複数のリポソームの前記脂質成分が、正味の中性リン脂質およびステロールを含む、請求項56~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記ステロールが、コレステロールである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記正味の中性リン脂質が、正味の中性ホスファチジルコリンである、請求項73または74に記載の方法。
【請求項76】
前記正味の中性ホスファチジルコリンが、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記アミノグリコシドが、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、イセパマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロドストレプトマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシンまたはベルダマイシン、AC4437、K-4619、シソマイシン、ダクチマイシン、アルベカシン、エチマイシン、KA-5685、ソルビスチン、アプラマイシン、スポラリシン、ベカナマイシン、H107、ボホルマイシン、パロモマイシン、トブラマイシン、ブルラマイシン、ハイグロマイシンB、プラゾマイシン、ベルダマイシン、イノサマイシン、ベルチルマイシン、それらの薬学的に許容される塩、または上記の任意の組み合わせである、請求項56~64および68~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記アミノグリコシド製剤が、アミカシンまたはその薬学的に許容可能な塩を含む、請求項56~64および68~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記アミノグリコシド製剤が、硫酸アミカシンを含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
アミノグリコシド封入リポソームを含むリポソームアミノグリコシド製剤を調製するための方法であって、
(a)複数のリポソームに封入されたアミノグリコシドを含む前記リポソームアミノグリコシド製剤の製造バッチから試料を得ることと、
(b)前記試料の前記放出プロファイルを評価することであって、
(i)界面活性剤および緩衝液を含む所定量の溶解媒体を前記試料に添加して、放出溶液を得ることと、
(ii)所定の時間間隔の後、前記放出溶液の一部分を除去し、前記部分を総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することと、
(iii)前記放出溶液中の前記封入されたアミノグリコシドに対する界面活性剤の比を増加させることと、
(iv)所定の時間間隔の後、前記放出溶液の一部分を除去し、前記部分を総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することと、
(v)任意選択的に、工程(iii)および(iv)を1回以上繰り返すことと、
(vi)任意選択的に、工程(iv)を1回以上繰り返すことと、を含む、評価することと、
(c)任意選択的に、前記放出プロファイルが所定の基準を満たす場合、前記リポソームアミノグリコシド製剤の前記バッチを一つ以上の剤形に組み込むことと、を含む、方法。
【請求項81】
前記アミノグリコシド製剤が、アミカシンまたはその薬学的に許容可能な塩を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記アミノグリコシド製剤が、硫酸アミカシンを含む、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
工程(a)の前記試料が、前記製剤の単一製造バッチに由来する前記製剤の二つ以上のバイアルからプールすることによって得られる、請求項80~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
患者において肺感染症を治療する方法であって、治療有効量の複数のリポソーム内に封入されたアミノグリコシドを含むリポソームアミノグリコシド製剤を前記患者に投与することを含み、前記リポソームアミノグリコシド製剤が、リポソームアミノグリコシド製剤の製造バッチ由来であり、かつ所定のインビトロ放出プロファイルを有することが検証され、前記放出プロファイルが、
(i)界面活性剤および緩衝液を含む所定量の溶解媒体を、前記バッチからのリポソームアミノグリコシド製剤の試料に添加して、放出溶液を得ることと、
(ii)所定の時間間隔の後、前記放出溶液の一部分を除去し、前記部分を総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することと、
(iii)前記放出溶液中の前記封入されたアミノグリコシドに対する前記界面活性剤の比を増加させることと、
(iv)所定の時間間隔の後、前記放出溶液の一部分を除去し、前記部分を総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することと、
(v)任意選択的に、工程(iii)および(iv)を1回以上繰り返すことと、
(vi)任意選択的に、工程(iv)を1回以上繰り返すことと、
(c)治療有効量のリポソームアミノグリコシドを前記バッチから前記患者に投与することと、により決定される、方法。
【請求項85】
前記アミノグリコシド製剤が、硫酸アミカシンを含む、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
工程(i)の前記試料が、前記製剤の単一の製造バッチに由来する前記製剤の二つ以上のバイアルからプールすることによって得られる、請求項84または85に記載の方法。
【請求項87】
複数のバイアルを含むキットであって、各バイアルが、複数のリポソームに封入されたアミノグリコシドを含むリポソームアミノグリコシド製剤を含有し、各バイアル中の前記リポソームアミノグリコシド製剤が、製造バッチ由来であり、所定のインビトロ放出プロファイルを有することが検証されており、前記放出プロファイルが、
(i)界面活性剤および緩衝液を含む所定量の溶解媒体を、前記バッチからのリポソームアミノグリコシド製剤の試料に添加して、放出溶液を得ることと、
(ii)所定の時間間隔の後、前記放出溶液の一部分を除去し、前記部分を総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することと、
(iii)前記放出溶液中の前記封入されたアミノグリコシドに対する前記界面活性剤の比を増加させることと、
(iv)所定の時間間隔の後、前記放出溶液の一部分を除去し、前記部分を総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することと、
(v)任意選択的に、工程(iii)および(iv)を1回以上繰り返すことと、
(vi)任意選択的に、工程(iv)を1回以上繰り返すことと、により決定される、キット。
【請求項88】
前記アミノグリコシド製剤が、硫酸アミカシンを含む、請求項87に記載のキット。
【請求項89】
前記キットが、28個の前記バイアルを含む、請求項87または88に記載のキット。
【請求項90】
工程(i)の前記試料が、前記製剤の単一製造バッチに由来する前記製剤の二つ以上のバイアルからプールすることによって得られる、請求項87~89のいずれか一項に記載のキット。
【請求項91】
請求項65に記載のインビトロ放出方法を特徴とするリポソームアミカシン製剤であって、
(i)工程(b)で測定される前記遊離アミカシン含有量が、20%以下であるか、
(ii)工程(d)で測定される前記遊離アミカシン含有量が、50%以下であるか、
(iii)工程(g)で測定される前記遊離アミカシン含有量が、80%以上であるか、または
(iv)上記のいずれかの任意の組み合わせである、製剤。
【請求項92】
請求項65に記載のインビトロ放出方法を特徴とするリポソームアミカシン製剤であって、
(i)工程(b)で測定される前記遊離アミカシン含有量が、約2~約3%の範囲であり、
(ii)工程(c)で測定される前記遊離アミカシン含有量が、約8~約12%の範囲であり、
(iii)工程(d)で測定される前記遊離アミカシン含有量が、約28~約35%の範囲であり、
(iv)工程(e)で測定される前記遊離アミカシン含有量が、約71~約80%の範囲であり、
(v)工程(f)で測定される前記遊離アミカシン含有量が、約86~約100%の範囲であり、かつ、
(vi)工程(g)で測定される前記遊離アミカシン含有量が、約88~約100%の範囲である、製剤。
【請求項93】
請求項65に記載のインビトロ放出方法を特徴とするリポソームアミカシン製剤であって、
(i)工程(b)で測定される前記遊離アミカシン含有量が、約4~約7%の範囲であり、
(ii)工程(c)で測定される前記遊離アミカシン含有量が、約10~約14%の範囲であり、
(iii)工程(d)で測定される前記遊離アミカシン含有量が、約29~約34%の範囲であり、
(iv)工程(e)で測定される前記遊離アミカシン含有量が、約68~約76%の範囲であり、
(v)工程(f)で測定される前記遊離アミカシン含有量が、約88~約94%の範囲であり、かつ、
(vi)工程(g)で測定される前記遊離アミカシン含有量が、約90~約96%の範囲である、製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月9日に出願された米国仮特許出願第63/208,894号の優先権を主張するものであり、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書中で援用される。
本発明は、リポソームアミノグリコシド製剤、特にリポソームアミカシン製剤からのアミノグリコシド放出プロファイルを測定するためのインビトロ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗生物質アミカシンを封入したリポソームの経口吸入が、特定の肺感染症を治療するために提案されている。そのような製剤の1つであるアミカシンリポソーム吸入用懸濁液(ALIS)は、多剤併用背景療法を6カ月以上続けても喀痰培養が陰性にならない患者における抗菌薬併用レジメンの一環としてのマイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス(MAC)肺疾患の治療のため、代替治療の選択肢が限られているかまたはない成人による経口吸入のために、2018年に米国食品医薬品局(FDA)によって最初に認可された。
ALISリポソームは、感染部位で高濃度で抗生物質の局所送達を提供する一方で、全身曝露、それゆえに毒性を最小化する。リポソームはまた、長期間の治療効果を提供し、マクロファージへのアミカシン取り込みを増加させる。特定のALIS製剤を含む、アミカシンを含有するリポソーム製剤は、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9および特許文献10に記載されており、それらの各々は、参照によりその全体が本明細書中で援用される。
【0003】
しかしながら、リポソームの吸入送達は、噴霧中のせん断誘起応力に対するそれらの感受性によって複雑であり、物理的特徴の変化をもたらし得る。リポソームの脂質二重層膜(複数可)の完全性に影響を与える特定の条件下で(例えば、界面活性剤、タンパク質、エタノールの添加、浸透圧ストレス、および/または温度上昇)、リポソーム内部の内容物は、急激におよび/またはある期間にわたって漏出するように誘導され得る。しかしながら、特性の変化が再現可能であり、かつ許容可能な基準を満たす限り、それらは医薬品開発を禁止する必要はない。
【0004】
FDAの2018年4月の産業ガイダンスである非特許文献1によれば、原薬のインビトロ放出プロファイルは、リポソーム薬物製剤を特徴解析するための有用な特性であり、検証された分析手順が確立されるべきである。リポソーム医薬品が生理学的条件下で極めて安定である場合、インビトロ品質管理放出試験は、非生理学的条件下で実施されて、リポソームからの原薬の放出を加速することができる。しかしながら、吸入用のリポソーム製剤はこれまでFDAに承認されていないため、検証済みの分析試験方法を開発するためのさらなるガイダンスは提供されていない。本発明は、このニーズおよび他のニーズに取り組むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,544,369号
【特許文献2】米国特許第7,718,189号
【特許文献3】米国特許第8,226,975号
【特許文献4】米国特許第8,632,804号
【特許文献5】米国特許第8,642,075号
【特許文献6】米国特許第8,679,532号
【特許文献7】米国特許第8,802,137号
【特許文献8】米国特許第9,566,234号
【特許文献9】米国特許第9,827,317号
【特許文献10】米国特許第9,895,385号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Liposome Drug Products: Chemistry, Manufacturing and Controls; Human Pharmacokinetics and Bioavailability; and Labeling Documentation
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、リポソームアミノグリコシド製剤、例えば、吸入に適したリポソームアミカシン製剤からのアミノグリコシド放出プロファイルを評価するためのインビトロ放出(IVR)法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
リポソームアミノグリコシド製剤からのアミノグリコシド放出プロファイルを評価するためのIVR法の一態様は、撹拌部材(撹拌部材はまた、本明細書で溶解装置とも称される)を含む溶解媒体(緩衝液など)中に配置される(または設置される)一つ以上の透析装置において、リポソームアミノグリコシド製剤を用いた溶解試験を実施することによる。リポソームアミノグリコシド製剤は、複数のリポソーム内に封入されたアミノグリコシドを含む。一つ以上の透析装置は、各々所定の体積を有し、各々は、所定の分子量カットオフ(MWCO)を有する透析膜を備える。溶解媒体は、緩衝液中に所定量の界面活性剤を含む。透析膜は、アミノグリコシド、溶解媒体、および界面活性剤に対して透過性であり、その結果、二方向通過が透析膜(複数可)にわたって生じる。具体的には、界面活性剤は、経時的に一つ以上の透析膜内に、かつ一つ以上の透析膜を通って拡散し、界面活性剤は、リポソームの透過性を増加させて、リポソームからの遊離アミノグリコシド放出を可能にし、遊離アミノグリコシドは、一つ以上の透析膜にわたって溶解媒体内に拡散する。溶解試験中、撹拌部材が操作される。一実施形態では、撹拌部材が、USP溶解装置2(パドル)である。
好ましくは、透析膜は、アミノグリコシド封入リポソームに対して透過性ではないか、または実質的に不透過性である。好ましい実施形態では、透析膜が、約20kD~約1500kDの所定のMWCOを有する。さらなる実施形態では、透析膜が、約1000kDの所定のMWCOを有する。
【0009】
IVR法の一実施形態は、
(a)溶解容器内の溶解装置を操作することであって、溶解容器が、(i)各々が所定の体積と、所定の分子量カットオフ(MWCO)を有する透析膜とを有する一つ以上の透析装置における所定量のリポソームアミノグリコシド製剤と、(ii)所定量の界面活性剤を有する溶解媒体と、を含み、各透析膜が、アミノグリコシド、溶解媒体、および界面活性剤に対して透過性であり、一つ以上の透析装置が、溶解媒体に浸漬される、操作することと、
(b)所定の時間間隔の後、溶解媒体のアリコートを除去することと、
(c)遊離のアミノグリコシド含有量についてアリコートを分析することと、
(d)任意選択的に、一つ以上の追加の時間間隔の後に工程(b)および(c)を繰り返すことと、を含む。
溶解媒体から除去されたアリコートは、遊離アミノグリコシド含有量に対するアリコートの分析の前に、界面活性剤を除去するために固相抽出(カチオン交換吸収剤材料など)に供され得る。
【0010】
一実施形態では、工程(b)が、合計3回、4回、5回、または6回実施される。さらに別の実施形態では、工程(b)が、4回実施される。さらなる実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤が、ALIS製剤である。一実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤が、複数のリポソームに封入されたアミノグリコシドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む。一実施形態では、複数のリポソームの脂質成分が、電気的に中性の脂質を含む。さらなる実施形態では、電気的に中性な脂質が、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびコレステロールからなる。
一実施形態では、遊離アミノグリコシド含有量についてアリコートを分析することが、アリコート上で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を実施することを含む。さらなる実施形態では、HPLCが、蒸発光散乱検出(ELSD)または荷電エアロゾル検出(CAD)を用いて実施されて、遊離アミノグリコシド含有量を決定する。さらなる実施形態では、HPLCを使用して、アリコートの総アミノグリコシド含有量を決定する。
一実施形態では、溶解装置を操作する工程(a)が、(i)界面活性剤が一つ以上の透析膜内に、かつ一つ以上の透析膜内を通って拡散することを可能にし、かつ(ii)遊離アミノグリコシドが一つ以上の透析膜を通って溶解媒体内に拡散することを可能にするのに十分な時間にわたって実行される。さらなる実施形態では、溶解装置が、USP装置2(パドル)である。
【0011】
別の実施形態では、溶解装置を操作する工程(a)が、溶解装置を含む溶解容器内の溶解媒体内に一つ以上の透析装置を配置または設置すること(例えば、USP装置2(パドル)または攪拌バー)を含み、かつ、(i)界面活性剤が一つまたは複数の透析膜内に、かつ一つまたは複数の透析膜を通って拡散することを可能にし、かつ(ii)遊離アミノグリコシドが一つまたは複数の透析膜を通って、かつ溶解媒体内に拡散することを可能にするのに十分な時間にわたって実施される。
一実施形態では、一つ以上の透析装置が溶解媒体に浸漬され、溶解媒体中で浮揚性である。一つ以上の透析装置は、溶解媒体に完全に浸漬または部分的に浸漬させることができ、かつ、操作時に溶解装置に干渉しない。
リポソームアミノグリコシド製剤からのアミノグリコシド放出プロファイルを評価するためのIVR法の別の態様では、方法は、所定量の界面活性剤(例えば、界面活性剤および緩衝液(例えば、界面活性剤および緩衝液を含む溶解媒体))を、各所定の時点でリポソームアミノグリコシド製剤に添加して、各所定の時点で放出溶液を形成することと、各添加後所定の時間間隔(例えば、30分で)、放出溶液のアリコートを除去することと、各アリコートを総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することと、を含む。方法は、界面活性剤の最終添加後の1回以上の所定の時点に、放出溶液のアリコートを除去し、かつ総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することをさらに含み得る。一実施形態では、総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量の分析は、HPLCにより実施される。
【0012】
この態様の一実施形態では、IVR法は、
(a)界面活性剤および緩衝液を含む所定量の溶解媒体を所定量のリポソームアミノグリコシド製剤に添加して、放出溶液を得ることと、
(b)所定の時間間隔の後、放出溶液のアリコートを除去し、かつアリコートを総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することと、
(c)放出溶液中のリポソームアミノグリコシド製剤に対する界面活性剤の比率を(例えば、溶解媒体の添加によって)増加させることと、
(d)所定の時間間隔の後、放出溶液のアリコートを除去し、アリコートを総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することと、
(e)任意選択的に、工程(c)および(d)を1回以上繰り返すことと、
(f)任意選択的に、工程(d)を1回以上繰り返すことと、を含む。
一実施形態では、工程(e)が、合計で3回、4回、5回、または6回実施される。さらに別の実施形態では、工程(e)が3回実施され、次いで工程(f)が1回実施される。さらなる実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤が、ALIS製剤である。
【0013】
本明細書に記載されるIVR法は、リポソームアミカシン製剤を含む、リポソームアミノグリコシド製剤およびリポソームアミノグリコシド製剤を作製するために使用される製造条件の特徴付けに有用である。アミノグリコシドは、遊離塩基形態または塩形態、例えば、アミノグリコシド硫酸塩(例えば、アミカシン硫酸塩)であり得る。本明細書に記載されるIVR法によって生成される放出プロファイルは、ある期間にわたって(瞬間的にではなく)能動的に漏れる産物を反映し、かつ、封入されたアミノグリコシドを完全に放出する能力を示す。本明細書に記載されるIVR法は、通常の勤務日内で完了することができ、区別可能であり(すなわち、それらは、例えば、脂質とアミノグリコシドとの重量比の違いにより、十分な品質を有するものとは有意に異なる放出速度を有するリポソームアミノグリコシド製剤のバッチを区別することができる)、品質管理環境における実施に適合可能である。さらに、本方法で使用される条件および培地は、生理学的関連性を有する。
【0014】
特定の条件下でのリポソームアミノグリコシド製剤の典型的な漏出プロファイルは、IVR法を用いて 確立され、次いで、異なるバッチ、異なるプロセス、または異なるスケールで製造されたリポソームアミノグリコシド製剤の品質の一貫性を検証するために使用され得る。好ましくは、試験の開始時の漏れは低いが、試験の終了時の漏れは約100%に近づくか、または完全な漏れである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の態様は、アミノグリコシドが複数のリポソーム内に封入されているリポソームアミノグリコシド製剤からのアミノグリコシド放出を評価するためのインビトロ放出(IVR)法に関する。本明細書に記載される実施形態では、IVR法は、以下の特徴のうちの一つ以上を有する。
・IVR法は、リポソームアミノグリコシド製剤からのアミノグリコシドのインビボ放出プロファイルを表すものではない。
・本方法から得られたIVRプロファイルは、経時的にアミノグリコシドを能動的に放出するリポソーム産物を反映するものである。
・IVR法は、リポソームアミノグリコシド製剤からアミノグリコシドの全てまたは実質的に全てを放出する能力を示す。
・IVR法で採用される条件は、いくつかの生理学的参照を有する。
・IVR法は、品質管理環境での実施に適合可能である。
・IVR法は、通常の勤務日内に完了することができる。
・IVR法は、リポソーム製剤からのアミノグリコシド放出の初期バーストを誘導しない。これは、製剤の「用量ダンピング」の証拠を隠す可能性があるためである。
【0016】
本明細書に記載されるIVR法は、部分的には、リポソーム膜との界面活性剤結合および/または界面活性剤相互作用による、アミノグリコシド、例えば、アミカシンに対するリポソームの透過性の増加に基づく。他の方法とは異なり、本明細書に記載のIVR法によるアミノグリコシド放出は、リポソーム膜破裂に基づいていない。リポソーム膜を溶解するための血清の使用は、正味の中性荷電リポソームからほぼ完全なアミノグリコシド放出を誘導するには不十分であることが見出された。
驚くべきことに、以前のIVR法の基盤としての役目を果たした高温および低浸透圧は、リポソームの脂質膜の浸透性を十分に増加させて、本明細書に記載されるリポソームアミノグリコシド製剤からの完全なアミノグリコシド放出に影響を与えるのに不十分であった。結果として、本明細書に提供される方法では、透過性を増加させるための活性リポソーム膜破壊が採用される。本明細書で採用される能動的な破壊技術は、膜を破壊することなく膜透過性を増加させる。一実施形態では、活性破壊は、リポソームアミノグリコシド製剤への界面活性剤の添加によって生じる。
【0017】
さらに、界面活性剤破壊剤を使用してリポソームアミノグリコシド製剤からのアミノグリコシドの放出を加速させることには生物学的関連性がある。リポソームと生物学的因子との間の正確な分子相互作用は完全には解明されていないが、リポソームアミノグリコシド製剤からのアミノグリコシドの放出は、嚢胞性線維症患者からの液化シュードモナス感染喀痰試料とのエクスビボインキュベーション時に有意に加速されたことが見出された(Meers et al. (2008). Journal of Antimicrobial Chemotherapy 61, pp. 859-868、その開示は参照によりその全体がすべての目的のために本明細書中で援用される)。この活性の実質的な部分は、二つの小さな有機溶媒可溶性分子、(i)モノラムノ脂質および(ii)ジラムノ脂質と関連していることが見出された。
【0018】
本発明の一態様では、IVR法が提供される。本態様の一実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤が、各々が所定の体積および透析膜を有する一つ以上の透析装置内に存在する。一実施形態では、一つの透析装置の所定の体積が、5mLである。別の実施形態では、一つの透析装置の所定の体積が、10mLである。一つ以上の透析装置が、溶解装置およびその中に配置された溶解媒体を有する容器中に存在する。溶解媒体は、界面活性剤を含む。本明細書に記載の実施形態では、一つ以上の透析装置が、溶解媒体に浸漬または実質的に浸漬される一方、溶解媒体中で浮揚性である。溶解装置が操作され、界面活性剤が透析膜(複数可)を通して拡散してリポソームからのアミノグリコシドの放出を誘発する。次いで、遊離アミノグリコシドが、透析膜を通して外部溶解媒体に拡散し、そこからアリコートが所定の時間間隔で採取され、遊離アミノグリコシド含有量について試験される。適切な分子量カットオフ(MWCO)透析膜の選択は、リポソームの外部溶解媒体への拡散を防止する一方、外部溶解媒体からの遊離アミカシンのみのサンプリングを可能にする。
一実施形態では、遊離アミノグリコシド含有量についてアリコートを分析することが、アリコート上で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を実施することを含む。さらなる実施形態では、HPLCを、蒸発光散乱検出(ELSD)または荷電エアロゾル検出(CAD)を用いて実施して、遊離アミノグリコシド含有量を決定する。さらなる実施形態では、HPLCを実施して、総アミノグリコシド含有量を決定する。
【0019】
別の態様では、追加の界面活性剤がリポソームアミノグリコシド製剤に経時的に添加される段階的アプローチに部分的に基づくIVR法が提供される。理論に束縛されることを望むものではないが、このアプローチは、リポソームアミノグリコシド製剤が患者に投与されると、リポソーム膜と相互作用するタンパク質および他の生物学的因子の連続的な蓄積をシミュレートし、品質管理分析に適切な時間枠内の完全なアミノグリコシド放出を促進すると考えられる。この態様の一実施形態では、品質管理分析に適した時間枠は、約2時間~約5時間、または約2.5時間~約5時間、または約3時間~約5時間、または約2.5時間~約4時間である。さらなる実施形態では、品質管理分析に適切な時間枠は、約3時間である。一実施形態では、品質管理分析に適切な時間枠が、放出後アリコートの組成物の貯蔵および潜在的な変化を回避するために、得られる放出溶液のアリコートのその後の即時処理および試験を同日内に行うことを可能にする時点である。
本発明の追加の態様および実施形態を、以下で詳細に論じる。
【0020】
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、概して、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
「含む」という用語は、オープン・エンドであり、組成物に関連して、記載される要素を指す。本明細書に記載の組成物に関連して使用される場合、「含む」という用語は、列挙された構成要素「から本質的になる」または列挙された構成要素「からなる」組成物を代替的に包含することができる。
本明細書で使用される場合、「リポソーム(複数可)」という用語は、閉じ込められた水性体積を含む完全に閉じた脂質二重層膜を指す。リポソームは、単層小胞(単一の膜二重層を保有)または多重小胞(複数の膜二重層により特徴付けられるタマネギ状の構造であり、それぞれ、水層によって隣同士が分離されている)またはそれらの組み合わせであり得る。二重層は、疎水性の「尾」領域と、親水性の「頭」領域を有する二つの脂質単層から構成される。膜二重層の構造は、脂質単層の疎水性(非極性)の「尾」が二重層の中心に向いている一方で、親水性の「頭」が水相に向いている。
【0021】
「アミノグリコシド封入リポソーム」または「リポソームアミノグリコシド」という用語は、アミノグリコシドを封入しているリポソームを指し、アミノグリコシドは、塩形態または遊離塩基形態などの任意の形態であり得る。一実施形態では、アミノグリコシドが、アミカシンまたは硫酸アミカシンである。本明細書に記載される実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤が、複数のリポソームに封入されたアミノグリコシドを含む。
「アミカシン封入リポソーム」または「リポソームアミカシン」という用語は、アミカシンを封入しているリポソームを指し、アミカシンは任意の形態(塩形態など)であり得る。一実施形態では、リポソームが、硫酸アミカシンを封入する。本明細書に記載される実施形態では、リポソームアミカシン製剤が、複数のリポソームに封入されたアミカシンを含む。
「封入」という用語は、(i)リポソームとの複合体の一部として、(ii)リポソームの水相内で、(iii)疎水性リポソーム二重層内で、(iv)リポソーム二重層の界面頭部基領域で、または(v)それらの組み合わせでのいずれかで、リポソームと会合しているアミノグリコシドを指す。
「アミカシンリポソーム吸入懸濁液」または「ALIS」という用語は、アミカシンが硫酸アミカシンとして存在し、リポソームの脂質成分がジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびコレステロールからなる、アミカシン封入リポソーム製剤を指す。ALISは、約70 mg/mLの濃度(アミカシン塩基、例えば、70 mg/mL±10%)のアミカシン、約40~56 mg/mLの総脂質(DPPCおよびコレステロールとして表される)(例えば、約47 mg/mLの総脂質、ならびに約2:1の重量比(DPPC:コレステロール)のDPPCおよびコレステロール、ならびに約0.60(脂質):1(アミカシン)~約0.80(脂質):1(アミカシン)(例えば、約0.65(脂質):1(アミカシン)~約0.75(脂質):1(アミカシン)の脂質対アミカシン重量比として表される。
【0022】
本明細書で使用される場合、「溶解媒体」という用語は、界面活性剤および緩衝液を含み、いくつかの例では、本明細書で「界面活性剤/緩衝液混合物」と呼ばれる。一実施形態では、界面活性剤を緩衝液と混合して、溶解媒体を得る。一実施形態では、溶解媒体が、使用前に平衡化される。
リポソームアミノグリコシド製剤からのアミノグリコシド放出プロファイルを評価する方法が、本明細書に記載される。本明細書に記載の方法に供されるリポソームアミノグリコシド製剤は、複数のリポソームに封入された、アミノグリコシドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む。一実施形態では、複数のリポソームの脂質成分が、電気的に中性の脂質からなる。
本明細書に記載のIVR法の一態様では、一つ以上の透析装置、溶解装置、および溶解媒体が用いられる。リポソームアミノグリコシド製剤は、一つ以上の透析装置内に存在し、各透析装置は、所定の体積および透析膜を有する。リポソームアミノグリコシド製剤は、一つ以上の透析装置内に存在し、装置(複数可)は、(i)界面活性剤濃縮溶解媒体、および(ii)溶解媒体に浸漬された溶解装置を含む容器内に置かれる。一実施形態では、一つ以上の透析装置が、溶解媒体に浸漬されかつ浮揚性であり、溶解装置が操作されるときに溶解装置に干渉しない。理論に束縛されることを望むものではないが、二方向通過は、溶解装置の操作中に一つ以上の透析膜にわたって起こり、例えば、界面活性剤は、透析膜(複数可)を通して経時的に一つ以上の透析装置内に拡散し、これにより、リポソームのリポソーム二重層が透過性になり、遊離アミノグリコシド放出が誘導される。遊離アミノグリコシドは、透析膜(複数可)を通って溶解媒体内に経時的に拡散する。溶解装置を操作し、溶解媒体のアリコートを、遊離アミノグリコシドレベルの分析のために時間間隔で採取する。方法はまた、遊離アミノグリコシド分析の前に、アリコートから過剰な界面活性剤を除去するために、固相抽出(SPE)プロセスを採用してもよい。
【0023】
一実施形態では、透析装置(例えば、一つの透析装置または二つの透析装置)が、浮揚リング(複数可)の中心を通して挿入されて、溶解媒体中の浮揚性を維持する。
この態様の一実施形態では、IVR法が、溶解装置、例えば、米国薬局方(USP)装置2(パドル)(United States Pharmacopeia (USP) General Chapters Dissolution (2011)を参照のこと。その開示は、すべての目的のために参照によりその全体が組み込まれる)、または撹拌バーを有する撹拌プレートを用いた撹拌を用いて実施される。さらなる実施形態では、IVR法は、制御された温度、例えば、約30℃~約40℃、約32℃~約40℃、約34℃~約40℃または約36℃~約40℃で実施される。好ましい実施形態では、IVR法は、37℃±3℃で実施される。一実施形態では、溶解装置は、約75~約150rpm(例えば、150rpm)で実行される。一実施形態では、溶解装置が、パドルまたは撹拌バーを備え、約75rpm~約150rpm(例えば、150rpm)で操作される。
一実施形態では、界面活性剤が、その臨界ミセル濃度(CMC)を超える濃度で添加される。
一実施形態では、透析装置の所定の体積が、5mLである。別の実施形態では、透析装置の所定の体積が、10mLである。さらに別の実施形態では、透析装置の所定の体積が、約4mL~約11mL、または約5mL~約10mLである。
【0024】
一実施形態では、IVR法が、
(a)溶解容器内の溶解装置を操作することであって、溶解容器が、(i)一つ以上の透析装置に所定量のリポソームアミノグリコシド製剤と、(ii)所定量の界面活性剤(例えば、DPBS中の5% Triton X-100)とを含み、各透析膜が、アミノグリコシドに対して透過性であり、溶解媒体と、界面活性剤および溶解装置とが、溶解容器内の溶解媒体に浸漬される、操作することと、
(b)所定の時間間隔の後、溶解媒体のアリコートを除去することと、
(c)遊離アミノグリコシド含有量についてアリコートを分析することと、
(d)任意選択的に、一つ以上の追加の時間間隔の後に工程(b)および(c)を繰り返すことと、を含む。
【0025】
一実施形態では、溶解装置を操作することが、溶解媒体を撹拌することを含む。さらなる実施形態では、撹拌することが、パドル(例えば、USP装置2)を備える溶解装置を用いて実施される。別の実施形態では、攪拌することが、攪拌バーを備える溶解装置を用いて実施される。さらなる実施形態では、溶解容器が、攪拌プレート上に、かつ攪拌バーを操作する前に配置される。
一実施形態では、溶解装置を操作する工程(a)が、(i)界面活性剤が一つ以上の透析膜内に、かつ一つ以上の透析膜を通って拡散することを可能にし、かつ(ii)遊離アミノグリコシドが一つ以上の透析膜を通って溶解媒体内に拡散することを可能にするのに十分な時間にわたって実施される。
別の実施形態では、溶解装置を操作する工程(a)が、溶解装置(例えば、USP装置2(パドル)または攪拌バー)を含む溶解容器内の溶解媒体内に一つまたは複数の透析装置を配置または設置することを含み、かつ、溶解装置が、(i)界面活性剤が一つ以上の透析膜内に、かつ一つ以上の透析膜を通って拡散することを可能にし、かつ(ii)遊離アミノグリコシドが一つ以上の透析膜を通って溶解媒体内に拡散することを可能にするのに十分な時間、操作される。撹拌バーが溶解装置として用いられる場合、容器は、溶解装置を操作するために撹拌プレート上に配置されることが理解されるべきである。
【0026】
溶解装置を操作する前に、以下の工程
(i)所定量のリポソームアミノグリコシド製剤を、一つ以上の透析装置に添加する工程、および
(ii)所定量の界面活性剤を含む溶解媒体を有する溶解容器内に、一つ以上の透析膜を配置する工程を実施してもよい。。
一実施形態では、界面活性剤が、工程(a)の前に溶解容器内で平衡化される。平衡化は、攪拌ありまたはなしで起こり得る。さらなる実施形態では、初期平衡化が、約30℃~約40℃、例えば、約35℃~約40℃、または約37℃で実施される。
【0027】
一実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤が、例えば、製剤を一つ以上の透析装置に添加するか、または溶解装置を操作する前に、少なくとも約45分間、周囲温度に平衡化される。さらなる実施形態では、工程(a)の前に、リポソームアミノグリコシド製剤が、目視検査によって均一で十分に混合されているように見えるまで振盪および/またはボルテックスされる。さらなる実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤が、別個の溶解容器に移されて、工程(a)で使用される所定量のリポソームアミノグリコシド製剤を提供し、撹拌(例えば、パドルを有するUSP溶解装置または撹拌棒を有する撹拌プレート)で平衡化される。一実施形態では、平衡化が、約30、約60、約90、約120、または約150分間実施される。さらなる実施形態では、攪拌を用いた平衡化が、約30℃~約40℃、例えば、約35℃~約40℃、または約37℃で実施される。
【0028】
一実施形態では、工程(a)の前に、リポソームアミノグリコシド製剤および/または溶解媒体(緩衝液中に界面活性剤を含む)が、別個の溶解容器内で、例えば、少なくとも30分間平衡化される。一実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤が、(例えば、少なくとも45分間)周囲温度に平衡化される。一実施形態では、溶解媒体が、パドルまたは撹拌バーを用いて(例えば、少なくとも30分間)約75rpm~約150rpmの撹拌で、約37℃に平衡化される。さらなる実施形態では、蒸発カバーが、平衡化中に溶解媒体を含む容器上に配置される。
一実施形態では、透析膜が、セルロースエステルから構成される。一実施形態では、一つ以上の透析装置が、一つ以上のFloat-A-Lyzer透析装置(例えば、Repligen Corp., Rancho Dominguez, California, USAから入手可能)である。一実施形態では、遊離アミノグリコシド(アミカシンなど)の少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%が、IVR法の間、約12または24時間以内に膜にわたって拡散する。
一実施形態では、透析膜が、約20kD~約1500kD、例えば約100kD~約1000kD、例えば約20kD、約100kD、約300kDまたは約1000kDの分子量カットオフ(MWCO)を有する。好ましい実施形態では、透析膜が、約1000kDのMWCOを有する。好ましくは、透析膜が、遊離アミノグリコシド、界面活性剤、および溶解媒体が透析膜を横切って自由に移動することを可能にする一方で、リポソームが膜を通過するのを防止または実質的に防止するMWCOを有する。
【0029】
一実施形態では、一つの透析装置がIVR法で使用される。さらなる実施形態では、透析装置が、約1000kDのMWCOを有するセルロースエステル膜を含む。セルロースエステル膜は、単一のエステル種または複数のエステル種を含むことができる。
一実施形態では、IVR法が、(a)所定量のリポソームアミノグリコシド製剤を、二つのFloat-A-Lyzer透析装置(例えば、各々が約1000kDのMWCOを有する)などの二つの透析装置に添加することを含む。さらなる実施形態では、各透析装置が、約5mLまたは約10 mLの所定の体積を有する。別の実施形態では、各透析装置が、約5mL~約10mLの所定の体積を有する。
【0030】
二つの透析装置を用いる一実施形態では、各装置が、約5mLの所定の体積およびセルロースエステル膜を有する。さらなる実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤の体積が、約8mL~約10mLであり、各デバイスにほぼ均等に分割される。さらなる実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤の体積が、約8mL~約9mL、例えば、約8.4mLである。2つの透析装置を用いる場合、IVR法に供されるリポソームアミノグリコシド製剤が、2つの装置間で均等または実質的に均等に分割され得る。一実施形態では、溶解装置が操作されている間、溶解媒体中に両方の溶解装置浮揚剤を保持するために、単一の束状フロートリングが使用される。
【0031】
アリコートは、溶解試験を開始した1、2、6、および24時間後など、様々な時点で除去することができる。別の実施形態では、アリコートが、溶解試験を開始した1、2、3、6、および24時間後に除去される。さらに別の実施形態では、アリコートが、溶解試験を開始した1、2、4、6、および24時間後に除去される。さらに別の実施形態では、アリコートが、溶解試験を開始した1、2、3、4、6、および24時間後に除去される。さらに別の実施形態では、アリコートが、溶解試験を開始した1、3、4、6、および24時間後に除去される。さらに別の実施形態では、アリコートが、溶解試験を開始した1、2、3、4、および24時間後に除去される。一実施形態では、工程(b)で溶解媒体から除去されたアリコートが、遊離アミノグリコシド含有量についてアリコートを分析する前に、固相抽出(SPE)に供される。SPEは、アリコートの分析前に過剰な界面活性剤を除去するために使用され得る。SPEは、カチオン交換吸収剤材料を用いて実施することができる。
【0032】
一実施形態では、SPEフィルター(例えば、SPEカートリッジ)が、例えば、Oasis MCX(1 cc/30 mg)(Waters of Milford, MAから入手可能)などの強力なカチオン交換材料を含む。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、プロトン化アミノグリコシド(アミカシンなど)がSPEカラム上に保持される一方で、界面活性剤(例えば、Triton X-100、例えばPBS中の5% Triton X-100など)は洗い流されてもよいと理論付ける。次いで、アミノグリコシド(アミカシンなど)を塩基性溶出溶液で溶出して、アミノグリコシド(アミカシンなど)アリコートを得、アリコートはその後分析されてもよい。一般的なSPEプロセスを、以下の図に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
SPEの後、遊離アミノグリコシド(例えば、アミカシン)の量が、HPLC分析によって決定され得る。
このIVR法の好ましいパラメータの一部は以下の通りである:(i)溶解装置:150 RPMで操作されるUSP装置2(パドル)、(ii)溶解媒体:DPBS1倍中の5%オクチルフェノールエトキシレート(Triton X-100)を、約37℃に維持し、(iii)媒体体積は、溶解容器内で、約7.1のpHで約900 mLであり、(iv)ALIS薬製品の1バイアルの全量(すなわち、全用量8.4mL)の試験を可能にするため、1容器につきFloat-A Lyzer透析装置(1000kD MWCO膜(セルロースエステル膜)付き)を2台使用し、かつ(v)SPEは、HPLCによる遊離アミノルギコシド分析の前に試料プル(アリコート)上で実施されて、アリコートからオクチルフェノールエトキシレート(Triton X-100)を除去する。
【0035】
別の好ましい実施形態では、IVR法は、
(a)セルロースエステル膜を含む透析装置に、所定量のリポソームアミノグリコシド(例えば、アミカシン)製剤を添加することと、
(b)緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水またはDulbeccoリン酸緩衝生理食塩水)中に所定量の界面活性剤(例えば、オクチルフェノールエトキシレート)を含む溶解媒体を含む溶解容器に透析装置を配置することと、
(c)界面活性剤が透析膜を通してリポソームアミノグリコシド(例えば、アミカシン)製剤内に拡散することを可能にし、それによってリポソームからのアミノグリコシドの放出を促進することと、
(d)遊離アミカシンを、セルロースエステル膜を通して溶解媒体中に拡散させることと、
(e)所定の時間(複数可)(例えば、4(4)以上、1、2、3、4、6、12および24時間)で溶解媒体の一つ以上のアリコートを除去することと、
(f)遊離アミノグリコシド(例えば、アミカシン)含有量についてアリコートを分析することと、を含む。
遊離アミノグリコシド含有量の分析の前に、アリコートをSPEに供して、陽イオン交換吸収剤材料などの界面活性剤を除去することができる。一実施形態では、容器が、透析装置が溶解容器内に定置されると操作される溶解装置を備える。
【0036】
好ましい一実施形態は、複数のリポソームに封入されたアミノグリコシドを含むリポソームアミノグリコシド製剤からのアミノグリコシドの放出プロファイルを測定するための方法であって、
(a)所定量のリポソームアミノグリコシド製剤を一つの透析装置に添加すること、または二つ以上の透析装置に分割することであって、各透析装置が、所定の体積と、セルロースエステルまたはセルロースエステルの組み合わせからなる透析膜とを有する、添加することと、
(b)Dulbeccoリン酸緩衝生理食塩水中の所定量のオクチルフェノールエトキシレートと溶解装置とを含む溶解容器に、一つ以上の透析装置を定置することと、
(c)溶解容器内で溶解装置を操作することであって、溶解装置が、約150rpmで37℃で操作されるUSP装置2(パドル)である、操作することと、
(d)所定の時間間隔の後、溶解媒体のアリコートを除去することと、
(e)遊離アミノグリコシド含有量についてアリコートを分析することと、
(f)任意選択的に、一つ以上の追加の時間間隔の後に工程(d)および(e)を繰り返すことと、を含む、方法である。
本発明の別の態様では、IVR法は、界面活性剤が最初に所定量のリポソームアミノグリコシド製剤に添加されて放出溶液を得る段階的アプローチを用い、かつ、界面活性剤対脂質比を増加させるために、追加の界面活性剤が一つ以上の後続の時点で放出溶液に添加される。
【0037】
この態様の一実施形態では、IVR法は、
(a)界面活性剤および緩衝液を含む所定量の溶解媒体を所定量のリポソームアミノグリコシド製剤に添加して、放出溶液を得ることと、
(b)所定の時間間隔の後、放出溶液のアリコートを除去し、アリコートを総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することと、
(c)放出溶液中のリポソームアミノグリコシド製剤に対する界面活性剤の比率を増加させる(例えば、界面活性剤添加、例えば溶解媒体の添加による)ことと、
(d)所定の時間間隔の後、放出溶液のアリコートを除去し、アリコートを総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することと、
(e)任意選択的に、工程(c)および(d)を1回以上繰り返すことと、
(f)任意選択的に、工程(d)を1回以上繰り返すことと、を含む。
界面活性剤の各添加は、例えば、緩衝液中に界面活性剤を含む溶解媒体を添加することによって実施され得る。一実施形態では、界面活性剤の各添加は、同じ溶解媒体を有するが、溶解媒体の量(体積)は、各添加について変化し得る。別の実施形態では、界面活性剤の各添加は、同じ界面活性剤および同じ緩衝液を含有する混合物を用いて行われるが、(i)溶解媒体の量および/または(ii)溶解媒体中の界面活性剤の量は、各添加について変化し得る。
【0038】
一実施形態では、方法は、容器内の溶解装置を操作する間に実施される。
一実施形態では、所定量のリポソームアミノグリコシド製剤は、同じ製造バッチに由来する製剤の二つ以上のバイアルからプールされる所定量である。理論に束縛されることを望むものではないが、リポソームアミノグリコシド製剤は均質な懸濁液であるため、複数のバイアルの複合物は、それぞれのバッチを同程度に反映すると考えられる。
さらなる実施形態では、工程(e)が、1回、2回、3回、または4回実施される。さらなる実施形態では、工程(e)が、3回実施される。
一実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤が、ALIS製剤である。
放出溶液中の界面活性剤とリポソームアミノグリコシド製剤との比の段階的な増加は、一実施形態では、連続的添加により界面活性剤と脂質との比の概して対数曲線を引き起こすように設計される。したがって、一実施形態では、添加された界面活性剤の体積が、工程(c)が行われるたびに増加する。一実施形態では、界面活性剤体積の増加が、リポソーム膜透過性を増加させるのに十分なおよび/または必要な界面活性剤濃度を提供するために添加される。
【0039】
別の実施形態では、IVR法が、
(a)緩衝液中に界面活性剤を含む所定量の溶解媒体を所定量のリポソームアミノグリコシド製剤に添加して、放出溶液を得ることと、
(b)所定の時間間隔の後、放出溶液のアリコートを除去し、アリコートを総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することと、
(c)所定量の溶解媒体を放出溶液に添加する工程と、
(d)所定の時間間隔の後、放出溶液のアリコートを除去し、アリコートを総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することと、
(e)任意選択的に、工程(c)および(d)を1回以上繰り返すことと、
(f)任意選択的に、工程(d)を1回以上繰り返すことと、を含む。
【0040】
別の実施形態では、IVR法は、
(a)0.5mLの溶解媒体を、溶解装置を備える容器内の30mLのリポソームアミノグリコシド製剤に添加して、放出溶液を形成することと、
(b)工程(a)の30分後[時間=0.5時間]、(i)3mLの放出溶液を除去して、総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析し、(ii)1.7mLの溶解媒体を放出溶液の残りの部分に添加することと、
(c)工程(b)の30分後[時間=1時間]、(i)3mLの放出溶液を除去して、総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析し、(ii)4.0mLの溶解媒体を放出溶液の残りの部分に添加することと、
(d)工程(c)の30分後[時間=1.5時間]、(i)3mLの放出溶液を除去して、総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析し、(ii)16mLの溶解媒体を放出溶液の残りの部分に添加することと、
(e)工程(d)の30分後[時間=2時間]、(i)20mLの放出溶液を除去して、総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析し、(ii)100mLの溶解媒体を放出溶液の残りの部分に添加することと、
(f)工程(e)の30分後[時間=2.5時間]、20mLの放出溶液を除去して、総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することと、
(g)工程(f)の30分後[時間=3時間]、20mLの放出溶液を除去して、総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量について分析することと、を含み、
溶解媒体が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Dulbeccoリン酸緩衝生理食塩水など)中のオクチルフェノールエトキシレート(例えば、Triton(商標)X-100として)を含み、溶解装置が、方法中に操作される。なおもさらなる実施形態では、アミノグリコシドは、アミカシンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、硫酸アミカシン)である。さらなる実施形態では、溶解装置は、USP装置2(パドル)であり、方法は、150(±20)rpmで約37℃(例えば、37℃±3℃)で実施される。一実施形態では、PBS中のオクチルフェノールエトキシレートは、PBS pH 7.2または7.4中の200ppmのオクチルモノノールエトキシレートである。さらなる実施形態では、PBS pHは約7.2である。
【0041】
一実施形態では、溶解媒体は、撹拌ありまたはなしで、工程(a)の前に溶解容器中で平衡化される。さらなる実施形態では、初期平衡化は、約30℃~約40℃、例えば、約35℃~約40℃、または約37℃である。
本明細書に提供されるIVR法の一実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤は、例えば、工程(a)の前に少なくとも約45分間、周囲温度に平衡化される。さらなる実施形態では、工程(a)の前に、リポソームアミノグリコシド製剤は、均一に見え、十分に混合されるまで振盪および/またはボルテックスされる。さらなる実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤は、別個の溶解容器に移されて、工程(a)で使用される所定量のリポソームアミノグリコシド製剤を提供し、撹拌部材(例えば、パドルを有するUSP溶解装置または撹拌バーを有する撹拌プレート)を用いた撹拌で平衡化される。一実施形態では、平衡化は、約30分、約60分、約90分、約120分、または約150分間実施される。さらなる実施形態では、攪拌を用いた平衡化は、約30℃~約40℃、例えば、約35℃~約40℃、または約37℃で実施される。
【0042】
本明細書に記載される方法のさらなる実施形態のうちの一つでは、工程(a)の前に、リポソームアミノグリコシド製剤および/または溶解媒体(緩衝液中に界面活性剤を含む)が、別個の溶解容器内で、例えば、少なくとも30分間平衡化される。一実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤が、(例えば、少なくとも45分間)周囲温度に平衡化される。一実施形態では、溶解媒体が、パドルまたは撹拌バーなどの撹拌部材を用いて(例えば、少なくとも30分間)、約75RPM~約150RPMの撹拌で約37℃に平衡化される。さらなる実施形態では、蒸発カバーが、平衡化中に容器上に配置される。
本明細書に記載される方法では、溶解媒体中に存在する界面活性剤は、陰イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤などの任意のタイプの界面活性剤であり得る。一実施形態では、界面活性剤が非イオン性である。さらなる実施形態では、界面活性剤が、親水性ポリエチレンオキシド鎖を含む。さらなる実施形態では、親水性ポリエチレンオキシド鎖を含む界面活性剤が、親油性または疎水性である芳香族炭化水素基をさらに含む。一実施形態では、界面活性剤が、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(商品名Nonidet P-40またはIGEPAL CAで販売される)を含む。一実施形態では、界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である。さらなる実施形態では、非イオン性界面活性剤が、オクチルフェノールエトキシレート(St. Louis, MOのSigma AldrichからTriton(商標) X-100として入手可能)である。本明細書で用いられる溶解媒体で使用するための好適な陰イオン界面活性剤には、ラムノ脂質が含まれる。一実施形態では、界面活性剤が、約5mM未満、約2mM未満、または約1mM未満の臨界ミセル濃度(CMC)を有する。例えば、非イオン性界面活性剤が、約0.1mM、0.2mM、0.3mM、0.4mM、もしくは0.5mMのCMC、または約0.1~約1mM、例えば約0.1~約0.5mMの範囲のCMCを有し得る。
【0043】
溶解媒体は、界面活性剤および緩衝液を含有する。一実施形態では、界面活性剤が、緩衝液中に溶解されて溶解媒体を提供する。適切な緩衝液としては、Dulbeccoリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)などのリン酸緩衝生理食塩水が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい一実施形態では、溶解媒体が、DPBS中のオクチルフェノールエトキシレートである。溶解媒体は、例えばエタノールなどのアルコールを含まないか、または実質的に含まなくてもよい(例えば、約5%未満、例えば、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.1%未満、約0.05%未満、または約0.01%v/v未満を含有する)。
一実施形態では、透析膜の使用を伴う方法で使用される溶解媒体は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Dulbeccoリン酸緩衝生理食塩水、DPBSなど)中の約0.5~約10%v/v、約1%~約5%または6%(v/v)Triton X-100(オクチルフェノールエトキシレート)を含む。一実施形態では、溶解媒体が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Dulbeccoリン酸緩衝生理食塩水など)中の約5%(v/v)オクチルフェノールエトキシレートを含む。好ましい実施形態では、溶解媒体が、マグネシウムおよびカルシウム(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Dulbeccoリン酸緩衝生理食塩水など)を含まないリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Dulbeccoリン酸緩衝生理食塩水DPBS 1×など)中の5%(v/v)オクチルフェノールエトキシレートである。
【0044】
方法は、好ましくは、放出溶液または溶解媒体中の撹拌部材(例えば、パドル、撹拌バー)を用いて実施される。好ましい実施形態では、方法が、約150rpmで操作される約37℃のUSP装置2(パドル)を用いて実施される(すなわち、放出溶液/溶解媒体が、150rpm±20rpmで37℃で操作されるUSP装置2(パドル)を含む容器内にある)。一実施形態では、IVR法が、150mLの容器内で実施される。一実施形態では、溶解媒体が、約7.1または7.2~約7.4のpHを有する。一実施形態では、溶解媒体が、約7.2のpHを有する。別の実施形態では、溶解媒体が、約7.4のpHを有する。
【0045】
本明細書に記載される方法のいずれかの好ましい実施形態では、アミノグリコシドが、アミカシンまたはその薬学的に許容可能な塩、例えば硫酸アミカシンである。
本明細書に記載される方法のいずれかの好ましい実施形態では、溶解媒体が、例えば、約7.1、約7.2または約7.4のpHで、DPBSなどのPBS中にオクチルフェノールエトキシレートを含む。本明細書に記載される方法のいずれかのさらなる実施形態では、溶解媒体が、約100、150、200、250、300、350、または400ppmのオクチルフェノールエトキシレートなど、DPBS中に約20~約600ppmのオクチルフェノールエトキシレートを含む。オクチルフェノールエトキシレートは、約8~約12など、約4~約16のエトキシレートモル含有量を有してもよい。好ましい一実施形態では、オクチルフェノールエトキシレートが、約9.5のエトキシレートモル含有量を有する。別の好ましい実施形態では、溶解媒体が、DPBS中の約9.5のエトキシレートモル含有量を有する約200ppmのオクチルフェノールエトキシレートを含む。一実施形態では、溶解媒体が、緩衝液中の5%の界面活性剤、例えば、PBS中の5%のオクチルフェノールエトキシレートを含む(体積)。
【0046】
本明細書に記載される方法のいずれかのさらなる実施形態では、アリコートが、さらなる分析の前に、例えば、遊離および/または総アミノグリコシド(例えば、アミカシン)含有量の分析の前に、約2~8℃で保存される。
本明細書に記載される方法のいずれかのさらなる実施形態では、放出溶液の除去されたアリコートをHPLC分析によって試験して、それらの収集から1週間以内に遊離アミカシン含有量および任意選択的に総アミカシン含有量を決定する。
本明細書に記載される方法のいずれかの一実施形態では、溶解媒体または放出溶液の除去されたアリコートが、約2~8℃で保存され(試験されるまで)、HPLC分析によって試験されて、アリコート採取の1週間以内に遊離アミカシン含有量および任意選択的に総アミカシン含有量が決定される。
【0047】
製造中、本明細書に記載のインビトロ方法を使用して、リポソームアミノグリコシド製剤の個々のバッチを試験し得る。例えば、一実施形態は、アミノグリコシド封入リポソームを含むリポソームアミノグリコシド製剤を調製するための方法である。方法は、
(a)アミノグリコシド封入リポソームを含むリポソームアミノグリコシド製剤の製造バッチを取得することと、
(b)本明細書に記載されるIVR方法のいずれかによって、バッチ内の製剤の試料の放出プロファイルを決定することと、
(c)任意選択的に、放出プロファイルが所定の基準を満たす場合、リポソームアミノグリコシド製剤の残りのバッチの一部またはすべてを一つ以上の剤形(例えば、バイアル)に組み込むことと、を含む。
【0048】
リポソームアミノグリコシド製剤
リポソームアミノグリコシド製剤は、複数のリポソームに封入されたアミノグリコシドまたはその薬学的に許容可能な塩、および任意選択的に、遊離形態の(すなわち、封入されていない)アミノグリコシドを含む。好ましい実施形態では、アミノグリコシドが、アミカシンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、硫酸アミカシン)である。
リポソーム関連アミノグリコシドの割合は、リポソーム内に封入されるリポソームアミノグリコシド製剤中に存在するアミノグリコシドの割合を指す(製剤中の任意の形態のアミノグリコシドの100%の総含有量に基づく)。リポソームアミノグリコシド製剤(噴霧前または噴霧後など)中の総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定することができる。一実施形態では、HPLCが、蒸発光散乱検出(ELSD)または荷電エアロゾル検出(CAD)を用いて実施され、総アミノグリコシド含有量および遊離アミノグリコシド含有量を決定する。
【0049】
一実施形態では、本明細書に記載のIVR法のうちの一つに供される製剤のリポソーム関連アミノグリコシドの割合が、約70%~約100%の範囲である。別の実施形態では、本明細書に記載のIVR法のうちの一つに供される製剤のリポソーム関連アミノグリコシドの割合が、約80%~約100%の範囲である。さらに別の実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤中のリポソーム関連アミノグリコシドの割合(IVR法を実施する前)が、約80%~約100%、約80%~約99%、約90%~約100%、約90%~約99%、または約95%~約99%の範囲である。一実施形態では、アミノグリコシドの少なくとも約95%が、本明細書に記載のIVR法のうちの一つに供される前にリポソーム的に会合している。さらなる実施形態では、アミノグリコシドの少なくとも約97%が、本明細書に記載されるIVR法のうちの一つに供される前にリポソーム的に会合している。製剤のリポソーム関連アミノグリコシドの割合は、出発材料および特定のIVR法を実施するために使用される条件に応じて、本明細書に記載されるIVR法のうちの一つを実施するときに変化する。
一実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤が、実施例1に記載されるIVR法に従って、以下の放出プロファイルのうちの一つを有する。以下に提供される放出プロファイルは、単一のバッチからの、またはバッチからの単一の試料からの複数の試料の平均とすることができる。一実施形態では、試料が、同じリポソームアミノグリコシドバッチに由来する複数のバイアル(6または12バイアルなど)からプールすることができる。
【0050】
【表2】
【0051】
一実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤(例えば、ALIS)が、実施例2に記載のIVR法に従って、(i)0.5時間の時点で約20%以下、(ii)1.0時間の時点で約35%以下、(iii)1.5時間の時点で約50%以下、(iv)2.0時間の時点で約65%以下、(v)3.0時間の時点で約75%以下、(vi)4.0時間の時点で約83%以下、(vii)6.0時間の時点で約84%以下、(viii)12.0時間の時点で約97%以下、(ix)24時間の時点で約70%以下、または(x)前述のいずれかの任意の組み合わせを放出し、ここで、放出されたアミノグリコシドの割合=[遊離アミノグリコシド(mg/mL)/総アミノグリコシド(mg/mL)]×100%)である。提供される放出プロファイルは、単一のバッチからの、またはバッチからの単一の試料からの複数の試料の平均とすることができる。一実施形態では、試料は、同じリポソームアミノグリコシドバッチに由来する複数のバイアルからプールすることができる。
代替的な実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤が、実施例2に記載されるIVR法に従って、以下の放出プロファイルのうちの一つを有する。以下に提供される放出プロファイルは、単一のバッチからの、またはバッチからの単一の試料からの複数の試料の平均とすることができる。一実施形態では、試料は、同じリポソームアミノグリコシドバッチに由来する複数のバイアルからプールすることができる。
【0052】
【表3】
【0053】
一実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤(例えば、ALIS)が、実施例2に記載されるIVR法に従って、(i)0.5時間の時点で20%以下のアミノグリコシド、(ii)1.5時間の時点で50%以下のアミノグリコシド、(iii)3.0時間の時点で80%以上のアミノグリコシド、または(iv)前述のいずれかの任意の組み合わせを放出する(ここで、放出されたアミノグリコシドの割合=[遊離アミノグリコシド(mg/mL)/総アミノグリコシド(mg/mL)]×100%である)。提供される放出プロファイルは、単一のバッチからの、またはバッチからの単一の試料からの複数の試料の平均とすることができる。一実施形態では、試料は、同じリポソームアミノグリコシドバッチに由来する複数のバイアルからプールすることができる。
【0054】
リポソームアミノグリコシド製剤は、溶媒(好ましくは水)、等張化剤(塩化ナトリウムなど)およびpH調整剤(水酸化ナトリウムなど)などの吸入製剤用の一つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含み得る。
リポソームアミノグリコシド製剤は、バイアルに含まれ得る。
一実施形態は、複数のバイアルを含むキットであり、各バイアルは、アミノグリコシド封入リポソームを含むリポソームアミノグリコシド製剤を含有する。各バイアル中のリポソームアミノグリコシド製剤は、リポソームアミノグリコシド製剤の製造バッチ由来であってもよく、バッチは、本明細書に記載されるインビトロ方法によって所定のインビトロ放出プロファイルを有することが検証されている。一実施形態では、キットが、28個のバイアルを含む。別の実施形態では、キットが、7、14、21、35、42、49、または56個のバイアルを含む。キットは、ネブライザーをさらに含んでもよい。
【0055】
アミノグリコシド
さらなる実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤中のアミノグリコシドは、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、カプレオマイシン、ジベカシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシンB、イセパマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロデストレプトマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシンもしくはベルダマイシン、または前述の1つの薬学的に許容される塩、または前述のいずれかの任意の組み合わせである。さらなる実施形態では、アミノグリコシドが、AC4437、ジベカシン、K-4619、シソマイシン、アミカシン、ダクチマイシン、イセパマイシン、ロデストレプトマイシン、アルベカシン、エチマイシン、KA-5685、ソルビスチン、アプラマイシン、フラマイセチン、カナマイシン、スペクチノマイシン、アストロマイシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、スポラリシン、ベカナマイシン、H107、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、ボホルマイシン、ハイグロマイシン、パロモマイシン、トブラマイシン、ブルラマイシン、ハイグロマイシンB、プラゾマイシン、ベルダマイシン、カプレオマイシン、イノサマイシン、リボスタマイシン、バーティルマイシン、それらの薬学的に許容される塩、または上述のいずれかの任意の組み合わせである。アミノグリコシドは、遊離塩基または塩形態であり得る。アミノグリコシドが一つ以上のキラル中心を有する場合、別段の指定がない限り、各固有の立体異性体およびそれらの任意の組み合わせの混合物(ラセミ混合物を含む)が含まれる。アミノグリコシドが一つ以上の不飽和炭素-炭素二重結合を有する場合、シス(Z)異性体およびトランス(E)異性体の両方が本明細書に含まれる。アミノグリコシドが互変異性型(ケト-エノール互変異性体など)で存在する場合には、各互変異性型は、本明細書に含まれるものとして企図される。
【0056】
一つの好適な実施形態では、アミノグリコシドは、アミカシンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、硫酸アミカシン)である。アミカシン硫酸塩は、C22H43N5O13・2H2SO4の化学式および781.76の分子量を有する、アミカシンのジ硫酸塩、すなわち、D-ストレプタミン、O-3-アミノ-3-デオキシ-α-D-グルコピラノシル-(1→6)-O-[6-アミノ-6-デオキシ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)]-N1-(4-アミノ-2-ヒドロキシ-1-オキソブチル)-2-デオキシ-、(S)-、硫酸塩(1:2)を指す。
本明細書に記載されるリポソームは、一つ以上のアミノグリコシド(2つのアミノグリコシドなど)を含有し得る。好ましい一実施形態では、リポソームは、アミカシンまたはその薬学的に許容可能な(例えば、硫酸アミカシン)などの一つのアミノグリコシドのみを含む。
【0057】
リポソーム
本明細書に記載されるリポソームは、一つ以上の脂質を含む脂質成分を含有する。脂質は、リン脂質、トコフェロール、ステロール、脂肪酸、負電荷脂質、およびカチオン性脂質を含む、合成脂質、半合成脂質または天然脂質であり得る。一実施形態では、アミノグリコシドが、リポソームの二重層に対して不透過性である。
本明細書に記載される方法のいずれかの一実施形態では、リポソームの脂質成分が、一つ以上の正味の中性脂質を含むか、またはそれらからなる。
一実施形態では、リポソームの脂質成分が、正味の中性リン脂質およびコレステロールを含むか、またはそれらからなる。さらなる実施形態では、正味の中性脂質が、ホスファチジルコリンである。一実施形態では、ホスファチジルコリンがジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である。
一実施形態では、複数のリポソームの脂質成分がリン脂質を含む。一実施形態では、リン脂質が、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ホスファチジルコリン(EPC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびホスファチジン酸(PA)、前述の大豆対応物、例えば大豆ホスファチジルコリン(SPC)、SPG、SPI SPS、SPE、およびSPA、水素化卵および大豆の対応物(例えば、HEPCおよびHSPC)、12~26個の炭素原子の鎖を含有するグリセロール位置の2位および3位における脂肪酸のエステル結合、およびコリンを含むグリセロールの1位における異なる頭部基から成るリン脂質、グリセロール、イノシトール、セリン、またはエタノールアミン、ならびに対応するホスファチジン酸を含む。これら脂肪酸上の鎖は、飽和または不飽和であってもよく、リン脂質は、異なる鎖長、および異なる不飽和度の脂肪酸から構成されてもよい。
【0058】
脂質のその他の例には、限定されるものではないが、ジミリストイルホスファチジコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチドコリン(DPPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレイルホスファチジル-エタノールアミン(DOPE)、混合リン脂質、例えばパルミトイルステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、単一のアシル化リン脂質、例えばモノ-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(MOPE)が挙げられる。
さらなる実施形態では、脂質成分がステロールを含む。さらなる実施形態では、脂質成分が、ステロールおよびリン脂質を含むか、またはステロールおよびリン脂質から本質的になるか、またはステロールおよびリン脂質からなる。本発明での使用のためのステロールとしては、限定されないが、コレステロール、コレステロールヘミスクシナートを含むコレステロールのエステル、硫酸水素コレステロールおよび硫酸コレステロールを含むコレステロールの塩、エルゴステロール、エルゴステロールヘミスクシナートを含むエルゴステロールのエステル、硫酸水素エルゴステロールおよび硫酸エルゴステロールを含むエルゴステロールの塩、ラノステロール、ラノステロールヘミスクシナートを含むラノステロールのエステル、硫酸水素ラノステロール、硫酸ラノステロールおよびトコフェロールを含むラノステロールの塩、が挙げられる。トコフェロール類としては、トコフェロール、トコフェロールヘミスクシナートを含むトコフェロールのエステル類、硫酸水素トコフェロールおよび硫酸トコフェロールを含むトコフェロールの塩類が挙げられ得る。用語「ステロール化合物」は、ステロール類およびトコフェロール類を含む。
【0059】
1つの実施形態では、脂質成分は、天然の肺サーファクタントの主要な構成物質であるジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を含むことができる。一実施形態では、脂質成分は、DPPCおよびコレステロールを含むか、またはDPPCおよびコレステロールから本質的になるか、またはDPPCおよびコレステロールからなる。さらなる実施形態では、DPPCおよびコレステロールが、約19:1~約1:1、または約9:1~約1:1、または約4:1~約1:1、または約2:1~約1:1、または約1.86:1~約1:1の範囲のモル比を有する。さらにさらなる実施形態では、DPPCおよびコレステロールが、約2:1または約1:1のモル比を有する。
さらなる実施形態では、脂質成分がDPPCおよびコレステロールを含む。例えば、リポソームは、アミカシン硫酸を含んでもよく、脂質成分としてDPPCおよびコレステロールを含んでもよい。さらなる実施形態では、アミノグリコシドが、アミカシン、例えば硫酸アミカシンである。一実施形態では、アミノグリコシド(例えば、アミカシン)が、リポソームの二重層に対して不透過性である。
【0060】
好適なリポソームアミノグリコシド製剤は、米国特許第7,718,189号、同第8,226,975号、同第9,566,234号、および同第9,895,385号に記載されており、それらの各々は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書中で援用される。
用量体積を最小化し、患者の投与時間を減少させるために、一実施形態では、アミノグリコシド(例えば、アミノグリコシドアミカシン)のリポソーム封入は、非常に効率的であり、次いで、脂質対アミノグリコシドの重量比は、リポソームを患者の粘液およびバイオフィルムに浸透させるのに十分な程度に小さく保つ一方で、可能な限り低いおよび/または実用的な値である。一実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤中の脂質対アミノグリコシドの重量比(脂質:アミノグリコシドとして表される場合もある)は、約0.7(脂質):1.0(アミノグリコシド)、約0.5(脂質):1.0(アミノグリコシド)~約0.8(脂質):1.0(アミノグリコシド)、約0.55(脂質):1.0(アミノグリコシド)~約0.8(脂質):1.0(アミノグリコシド)、約0.55(脂質):1.0(アミノグリコシド)~約0.75(脂質):1.0(アミノグリコシド)、または約0.6(脂質):1.0(アミノグリコシド)~約0.8(脂質):1.0であり得る。さらなる実施形態では、本明細書中で提供されるリポソームは、細菌バイオフィルムを効果的に貫通するのに十分なほど小さい。リポソーム製品の持続的な活性プロファイルは、脂質膜の性質によって、および組成物中に他の賦形剤を含めることによって調節され得る。
【0061】
リポソームアミノグリコシド製剤は、噴霧前の一実施形態では、光散乱法により計測される場合、約0.01ミクロン~約3.0ミクロン、例えば、約0.2~約1.0ミクロンの範囲の平均直径を有するリポソームを含む。一実施形態では、組成物中のリポソームの平均直径が、約125nm~約360nm、約125nm~約350nm、約150nm~約350nm、約230nm~約280nm、約240nm~約280nm、約250nm~約280nm、または約260nm~約280nmである。さらなる実施形態では、複数のリポソームの平均直径(噴霧前)が、光散乱によって測定される場合、約200nm~約400nm、または約250nm~約400nm、または約250nm~約300nm、または約200nm~約300nmである。なおさらなる実施形態では、光散乱によって測定される複数のリポソームの平均直径が、約260nm~約280nmである。
【0062】
一実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤のpHが、約6.1~約6.8など、約6.1~約7.1の範囲である。
一実施形態では、本明細書に記載のリポソーム組成物が、米国特許出願公開第2013/0330400号および同第2008/0089927号ならびに米国特許第7,718,189号に記載された方法のうちの一つによって製造され、それらの特許文献の各々はあらゆる目的のためにその全体が参照により援用される。リポソームアミノグリコシド製剤を作製するための特定の方法は、米国特許出願公開第2021/0015750号およびPCT公開第WO2019/213398号に記載されており、その各々は、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれる。
一実施形態では、リポソームが、脂質溶液を形成する一つ以上の脂質を有機溶媒(例えば、エタノール)に溶解させ、アミノグリコシドの水溶液を脂質溶液と混合してアミノグリコシドコアセルベートを形成することにより形成され得る。好ましい一実施形態では、脂質溶液が、リン脂質、ならびに例えばDPPCおよびコレステロールなどのステロールを含む。
【0063】
リポソームは、超音波、押出、均一化、膨張、電鋳、インバーテッドエマルション(inverted emulsion)または逆蒸発法により製造することができる。Banghamの方法(J. Mol. Biol. 13:238-252, 1965)は、一般的な多重膜小胞(MLV)を作製する。Lenkら (米国特許第4,522,803号、同第5,030,453号および同第5,169,637号、そのそれぞれの全体が、参照により本明細書中で援用される)、Fountainら (米国特許第4,588,578号、その全体が参照により本明細書中で援用される)およびCullisら (米国特許第4,975,282号、その全体が参照により本明細書中で援用される)は、多重膜リポソームを製造する方法を開示しており、それらリポソームは、各々の水性区画内に、実質的に等しい膜間溶質分布を有している。米国特許第4,235,871号(その全体が参照により本明細書中で援用される)は、逆相蒸発によるオリゴ膜状リポソーム製剤を開示する。本方法の各々は、本発明で使用するためのリポソームアミノグリコシド製剤を調製するのに適している。
【0064】
単層小胞は、例えば米国特許第5,008,050号および米国特許第5,059,421号 (それら各々の開示は、参照によりその全体が本明細書中で援用される。)の押出法などの多くの技術により、MLVから作製され得る。超音波処理および均質化をそのように使用して、より大きなリポソームからより小さな単層リポソームを生成することができる。
Banghamら(J. Mol. Biol. 13, 1965, pp. 238-252)のリポソーム製剤は、有機溶媒中でリン脂質を懸濁させること、次いでそれを乾燥するまで蒸発させ、反応容器上にリン脂質膜を残すことを含む。次に、適切な量の水相を加え、混合物を「膨張」させ、リポソームを得る。得られたリポソームは多重膜小胞(MLV)からなり、機械的手段により分散される。この製剤は、Papahadjopoulosら(Biochim. Biophys. Acta. 135, 1967, pp. 624-638)に記載される小さなソニケート化単層小胞、および大きな単層小胞の開発の基礎を提供する。特許を含む前述の刊行物の各々の開示は、参照によりその全体が本明細書中で援用される。
【0065】
大きな単層小胞(LUV)を作製するための技術、例えば逆相蒸発法、注入法、および洗浄剤希釈などを使用して、本明細書に提示されるリポソームアミノグリコシド製剤における使用のためのリポソームを製造することができる。リポソームを製造するためのこれらおよび他の方法に関する概説は、参照により本明細書に援用される、テキストLiposomes, Marc Ostro, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1983, Chapter 1に見出され得る。また、Szoka, Jr.ら(Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9, 1980, p. 467)も参照されたく、当該文献もまた、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に援用される。
リポソームの他の作製方法としては、逆相蒸発小胞(REV:reverse-phase evaporation vesicles)を形成するものが挙げられ、米国特許第4,235,871号を参照されたい。実質的に同等の層状溶質分布を有すると特徴づけられている他種のリポソームを使用することもできる。この種のリポソームは、米国特許第4,522,803号に規定されるように安定複層小胞(SPLV:stable plurilamellar vesicles)と命名され、米国特許第4,588,578号に記載される単相小胞と、上述の凍結融解多重膜小胞(FATMLV:frozen and thawed multilamellar vesicles)とを含む。前述の特許の各々の開示は、参照によりその全体が本明細書中で援用される。
【0066】
様々なステロール、および例えばコレステロールヘミスクシナートなどのその水溶性誘導体を使用して、リポソームが形成されてきた。例えば、米国特許第 第4,721,612号を参照のこと。MayhewらのPCT公開公報第WO 85/00968号は、アルファ-トコフェロールおよびその特定の誘導体を含むリポソーム内に薬剤を封入することによって、その薬剤の毒性を低減させる方法を記載した。また、様々なトコフェロールおよびその水溶性誘導体を使用して、リポソームが形成されてきた。PCT公開公報第WO 87/02219号を参照のこと。前述の特許および特許出願公開の各々の開示は、参照によりその全体が本明細書中で援用される。
【0067】
治療
調製されたリポソームアミノグリコシド製剤は、例えば、米国特許第7,544,369号、同第7,718,189号、同第8,226,975号、同第8,632,804号、同第8,642,075号、同第8,679,532号、同第8,802,137号、同第9,566,234号、同第9,827,317号および同第9,895,385号(その各々は、参照によりその全体が本明細書中で援用される)に記載されるようなマイコバクテリア感染症(例えば、非管状のマイコバクテリウムによって引き起こされる肺感染症であり、本明細書では非結核性マイコバクテリア(NTM)感染症とも呼ばれる)などの様々な肺感染症を治療するために投与され得る。一実施形態では、リポソームアミノグリコシド製剤が、吸入により投与される。例えば、リポソームアミノグリコシド製剤は、ネブライザーなどでエアロゾル化され、吸入により投与され得る。ネブライザーを用いてリポソームアミノグリコシド製剤を投与するための適切な方法が、米国特許第9,566,234号(これは参照により本明細書中で援用される)に記載されている。
リポソームアミノグリコシド製剤は、噴霧により投与され得る。例えば、米国特許第9,566,234号または米国特許第9,895,385号(その各々の開示は、参照によりその全体が本明細書中で援用される)に開示されている方法のうちの一つまたは複数を使用して、リポソームアミノグリコシド製剤を投与することができる。別の実施形態では、噴霧後のリポソーム関連アミノグリコシドの割合が、約50%~約80%、例えば、約50%~約75%、約50%~約70%、約55%~約75%、または約60%~約70%である。別の実施形態では、噴霧後のリポソーム関連アミノグリコシドの割合が、約65%~約75%である。
【0068】
一実施形態は、患者における肺感染症を治療する方法であって、アミノグリコシド封入リポソームを含む治療有効量のリポソームアミノグリコシド製剤を患者に投与することを含み、リポソームアミノグリコシド製剤が、リポソームアミノグリコシド製剤の製造バッチ由来であり、かつ所定のインビトロ放出プロファイルを有することが検証され、放出プロファイルが、本明細書に記載されるインビトロ方法によって決定される、方法である。
本発明の方法で治療され得る肺感染症(嚢胞性線維症または気管支拡張症患者など)には、Pseudomonas(例えばP. aeruginosa, P. paucimobilis、P. putida、P. fluorescensおよびP. acidovorans)、staphylococcal、Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA)、streptococcal (Streptococcus pneumoniaeを含む)、Escherichia coli、Klebsiella、Enterobacter、Serratia、Haemophilus、Yersinia pesos、Burkholderia pseudomallei、B. cepacia、B. gladioli、B. multivorans、B. vietnarniensisおよびMycobacterium tuberculosis感染症が挙げられる。リポソームアミノグリコシド製剤はまた、例えば、肺非結核性抗酸菌(NTM)感染症、例えば、肺のM. avium、M. avium subsp. hominissuis(MAH)、M. abscessus、M. chelonae、M. bolletii、M. kansasii、M. ulcerans、M. avium、M. avium複合体(MAC)(M. aviumおよびM. intracellulare)、M. conspicuum、M. peregrinum、M. immunogenum、M. xenopi、M. marinum、M. malmoense、M. marinum、M. mucogenicum、M. nonchromogenicum、M. scrofulaceum、M. simiae、M. smegmatis、M. szulgai、M. terrae、M. terrae complex、M. haemophilum、M. genavense、M. gordonae、M. ulcerans、M. fortuitumまたはM. fortuitum複合体(M. fortuitumおよびM. chelonae)への感染を治療するために投与され得る。
【0069】
一実施形態では、患者が、MACによって引き起こされるNTM感染などのNTM感染を有する嚢胞性線維症(CF)患者である。別の実施形態では、患者が、MACなどによって引き起こされるNTM感染などのNTM感染を有する非CF患者である。一実施形態では、MAC患者が、事前治療に対して難治性である。事前治療は、例えば、マクロライド抗生物質およびエタンブトールの組み合わせを含む。さらなる実施形態では、マクロライド系抗生物質が、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、カルボマイシンA、ジョサマイシン、キタマイシン、ミデカマイシン、オレアンドマイシン、ソリスロマイシン、スピラマイシン、トロレアンドマイシン、タイロシン、ロキシスロマイシン、またはそれらの組み合わせである。別の実施形態では、事前治療が、マクロライド抗生物質、エタンブトールおよびリファマイシン化合物の組み合わせを含む。さらなる実施形態では、リファマイシン化合物が、リファンピンまたはリファブチンである。さらなる実施形態では、事前治療が、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、カルボマイシンA、ジョサマイシン、キタマイシン、ミデカマイシン、オレアンドマイシン、ソリスロマイシン、スピラマイシン、トロレアンドマイシン、タイロシン、ロキシスロマイシン、またはそれらの組み合わせから選択されるマクロライド系抗生物質、エタムブトールおよびリファマイシン化合物の組み合わせを含む。
別の実施形態では、本明細書に提示される方法のうちの一つで治療される患者が、NTM患者であり、かつNTM治療未感作である。
【0070】
実施例
ここで、以下の非限定的な実施例によって本発明をさらに説明する。これらの実施例の開示を適用する際、実施例は単に本発明の例示に過ぎず、本発明によって包含される多くの変形および均等物が本開示を読むことで当業者に明らかになるであろう限り、本発明の範囲をいかなる方法でも制限するものとして解釈されるべきではないことを明確に留意されたい。
【0071】
実施例1
ALISからのアミカシンの経時的な放出を決定する方法は、USP溶解装置II(パドル法)およびFloat-A-Lyzer(登録商標)透析装置(Rancho Dominguez, CA, USAのRepligen Corp.から入手可能)を用いて、界面活性剤(5% Triton(登録商標)X-100)の緩衝液(Dulbeccoリン酸緩衝生理食塩水(DPBS))溶液を培地として使用して実施される。ALIS医薬品をFloat-A-Lyzer(登録商標)透析装置に装填し、培地中に置く。一定の温度および混合速度は、溶解装置を使用して達成される。試料アリコートを、24時間までの指定された時点で容器から取り出し、固相抽出により濾過して界面活性剤を除去し、アミカシン放出率を決定するためにアミカシン含有量について分析する。
【0072】
計器および機器
・透析装置:1000kDa MWCO、5-mL体積、Float-A-Lyzer G2(セルロースエステル透析膜)、Repligen、カタログ 番号G235062。
・固相抽出(SPE)カートリッジ:Oasis MCX(1cc/30mg)、Waters、カタログ 番号186001881
【0073】
溶液の調製
すべての体積は、比が同じである限り調整されてもよい。
・DPBS 1X中の5.0% Triton X-100(培地)
6000 mLを調製するために、磁気撹拌棒および撹拌プレートを用いて混合しながら、300-mLのTriton X-100(BioXtra)を5700 mLのDPBS 1×緩衝液に緩徐に移す。
・H2O中の10%ペルフルオロペンタン酸(PFPA)
10 mLを調製するために、1-mLのPFPAを10-mLのメスフラスコに移す。HPLCグレードH2Oで体積に希釈し、よく混合する。
・20%EtOH(H2O:EtOH、80:20、v/v)
1000 mLを調製するために、200mLのEtOHを800mLの脱イオン水と混合する。
・洗浄溶液(H2O:MeOH:ギ酸、50:50:0.005、v/v)
1000 mLを調製するために、500mLのメタノール(MeOH)および50μLのギ酸を含む500mLのHPLCグレードH2Oを適切な容器に移し、よく混合する。
・溶出溶液(20%メタノール中0.05N NaOH)
500mLを調製するために、2.5mLの10N NaOHを、400mLのHPLCグレードH2Oおよび100mLのMeOHを含有する適切な容器にピペットで移す。よく混合する。
・希釈剤(H2O:n-PrOH:PFPA、70:30:0.3、v/v)
1000mLの希釈剤を調製するために、700mLの脱イオン水、300mLのn-プロパノール(n-PrOH)、および3mLのPFPAを適切な容器に移し、よく混合する。
・アミカシンリポソーム吸入用懸濁液(ALIS)
【0074】
機器の条件
USP溶解装置IIを、37℃(±2℃)およびパドル速度150 rpm(±10rpm)で操作する。培地は、DPBS 1X(900mL)中の5.0%v/v Triton X-100(±0.2%)である。5mLの試料を、1、2、6、および24時間の時点で採取する。
【0075】
アッセイ手順
900mLの培地を6つの異なる容器に移す。蒸発カバーを容器上に配置し、150rpmのパドル速度撹拌で37℃に平衡化する。
事前治療Twelve Float-A-Lyzer透析装置を以下のように前処理した。透析装置のキャップを取り外し、装置を20%のEtOHで充填した。キャップを交換し、透析装置を同じアルコール溶液(20% EtOH)中に30分間浸漬した。装置をアルコール溶液から除去し、20% EtOH溶液を装置から空にした。装置の内部および外部を脱イオン水の連続的な流れで完全に洗い流し、次いで、装置に脱イオン水を充填し、キャップを交換し、透析装置を水に30分間浸した。装置を脱イオン水から除去し、脱イオン水を装置内から空にした。次いで、装置の内部および外部を脱イオン水の連続的な流れで洗い流した。脱イオン水の残りのすべての滴を振盪および/またはタッピングして、装置を装填した。
【0076】
ALISバイアル(6バイアルまたは12バイアル)を周囲温度に平衡化した(最低45分)。試料が均一に見えてよく混合されるまで、バイアルを振盪またはボルテックスした。各ALISバイアルを特定の容器に割り当て、それに応じてラベル付けした。
各ALISバイアルの内容物を、各々が所定の体積5mLを有する、2対の前処理されたFloat-A-Lyzerに均等に分配することによって、透析装置(Float-A-Lyzers)に直接注いだ。透析デバイスが充填されると、デバイス上のキャップを交換した。Float-A-Lyzerの各対を、単一の溶解容器に割り当てた。このプロセスを、試験されるすべてのバイアルに対して繰り返した。
装填されたFloat-A-Lyzerを、溶解器具のカバー/アダプターアセンブリに取り付けた。溶解器具のパドルの回転を停止し、各Float-A-Lyzer/カバー/アダプターを容器に入れた。容器に入れた時にFloat-A-Lyzerが偶発的に捲縮されないことが保証された。アダプターの高さを、必要に応じて調整して、それぞれのFloat-A-Lyzerが溶解媒体に浸漬され続ける間、パドルに接触しないことを確実にした。
溶解を開始し、1、2、6、および24時間後に試料(5mLアリコート)を採取する。
【0077】
試料固相抽出(SPE)前処理
62.5μLの10%PFPAを5mLの試料プル(アリコート)にピペットで移し、十分に混合されるまで穏やかにボルテックスした。SPEカートリッジを、長い針弁を使用して抽出マニホールドに装填した。空の収集試験管を、抽出マニホールド試験管ラックに入れた。抽出マニホールドの真空圧を、15inHgの設定点に調整した。
HPLCグレードH2Oの一つのカートリッジ体積(約1mL)を各カートリッジに移した。使用中の長いニードルバルブをすべて開き、真空ポンプをオンにした。全てのH2Oが通過し、全ての長いニードルバルブが閉じられると、ポンプを遮断した。
1-mLのPFPA前処理試料を各カートリッジにピペットで移し、カートリッジ内に5分間置いた。すべての使用中の長いニードルバルブを開き、真空ポンプをオンにした。すべての試料が通過すると、ポンプを遮断した。
カートリッジを、6つのカートリッジ体積の洗浄溶液(約6mL)で洗浄した。洗浄後、ポンプを20分間オンのままにして、カートリッジを乾燥させた。完了時にポンプを停止し、すべての長いニードルバルブを閉じた。
廃棄試験管を、新鮮なかつ適切に標識された収集試験管と交換した。0.5mLの溶出溶液を各カートリッジにピペットで移し、各カートリッジ中に5分間置いた。使用中の長いニードルバルブをすべて開き、真空ポンプをオンにした。溶出溶液がすべてのカートリッジを通過した後、ポンプを遮断した。すべての長い針弁を閉じ、溶出手順を合計1-mLの溶出に対して繰り返した。試験管をボルテックスして、溶出した溶液を混合した。
【0078】
HPLC分析のための試料調製
混合溶出溶液からの最終希釈を、表1に従って行った。最終試料希釈物がボルテックスにより十分に混合されたことを確認した。
【表4】
すべての試料調製物を分析する。
試料を必要に応じて再希釈または濃縮して、較正曲線内に適合させた。溶出液をバイアルに入れ、必要に応じてそのまま注入して、可能な限り較正範囲に近づけた。
【0079】
計算
個々の溶解容器の放出率を以下のように計算する。
【数1】
式中、
C1hr=1時間での容器濃度、C2hr=2時間での容器濃度、C6hr=6時間での容器濃度、およびC24hr=24時間での容器濃度。
6回の反復の放出率を、各時点で報告可能な結果について平均化した。
個々の複製の放出率が表2の要件に適合しない場合、L2~L3までの試験を必要に応じて続けた。
【0080】
【表5】
【0081】
実施例2
材料
Triton(商標)X-100は、The Dow Chemical Company(Midland, MI)から入手可能な非イオン性界面活性剤である。Triton X-100は、曇り点が66℃であり(1重量%の活性水溶液)、HLBが13.4であり、モルエトキシレート(EO)が9.5であり、5%水溶液のpHが6であり、流動点が1(℃)であり、25℃での粘度で240cPであり、25℃での密度が1.061g/mLであり、かつASTM D93による引火点(閉じたカップ)が251℃であるオクチルフェノールエトキシレート(ポリエチレングリコールtert-オクチルフェニルエーテル(CAS番号9002-93-1としても知られる)を指す。
Dulbeccoリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、1X、Corning(登録商標)、カルシウムおよびマグネシウムを含まない)は、ThermoFischer Scientific(Waltham, MA)から入手可能な塩化カリウム(0.2g/L)、リン酸二水素カリウム(0.2g/L)、塩化ナトリウム(8g/L)、およびリン酸二ナトリウム(1.15g/L)を含有する水性塩溶液である。
【0082】
機器
高速液体クロマトグラフィー(HPLC):蒸発光散乱検出器(ELSD)(Sedex 85、Sedere)を装備。
HPLCカラム;3μm粒径、内径4.6mm×長さ150mm;Hypersil Gold、Thermo、カタログ 番号25003-154630
フィルター:Centrisart I逆遠心コンセントレータ、20,000分子量カットオフ、Sartorius、カタログ 番号13249E
少量の丸底溶解容器(150 mL)を備えたUSP溶解装置2(パドル)
【0083】
吸入のためのリポソームアミカシンのインビトロ放出の決定(ALIS)
ALISの経時的なアミカシンの放出率のアッセイを、緩衝液(Dulbeccoリン酸緩衝生理食塩水、pH 7.2)中のオクチルフェノールエトキシレート界面活性剤(Triton(商標)X-100、本実施例では簡潔さのために「Triton」と称される)の存在下でのALISの段階希釈を使用して行った。リポソームからのアミカシンの漏出率は、一定の温度および攪拌を維持するためにUSP溶解装置2(パドル)を利用して達成される。試料は、インキュベートされ、最大3時間攪拌されたままであり、試料アリコートは、30分毎に引かれて、経時的な放出速度を特徴付ける。収集された試料を、蒸発光散乱検出(ELSD)を用いた高速液体クロマトグラフィーにより、総アミカシン含有量および遊離アミカシン含有量について分析し、アミカシン放出率を決定する。
【0084】
1) 溶液の製剤化
すべての体積は、比が同じままである限り調整されてもよい。
DPBS緩衝液(Triton/PBS緩衝液)中の200 ppm Triton X-100
500 mLを調製するために、ポジティブディスプレイスメント式ピペットを使用して、100μLのTriton X-100を500mLのDPBS緩衝液に移し、よく混合した。
H 2 O(1.5%NaCl)中の1.5%塩化ナトリウム(NaCl):
1Lの1.5%NaClを調製するために、約15.0(±0.1)グラムのNaClを1000mLのH2O中に溶解し、よく混合した。
希釈剤:0.3%ペルフルオロペンタン酸(PFPa)を含む3:7(v/v)のn-プロピルアルコール(n-PrOH)/H 2 O
1Lの希釈剤を調製するために、700mLのH2O、300mLのn-PrOHおよび3mLのPFPAを適切な容器に移し、よく混合した。
溶媒A:0.5%PFPAを含む1:1(v/v)のn-PrOH:H 2 O
1Lの溶媒Aを調製するために、500mLのn-PrOH、500mLのH2Oおよび5mLのPFPAを適切な容器に移し、よく混合した。
移動相:0.3%PFPAを含む65:35(v/v)のMeOH:H 2 O
1Lの移動相を調製するために、650mLのMeOH、350mLのH2O、および3mLのPFPAを適切な容器に移し、よく混合した。
【0085】
2) 機器条件
USP溶解装置2(パドル)
速度:150(±20)RPM
温度:37℃(±3℃)
【0086】
3) アッセイ手順
試料の調製
Triton/PBS緩衝液を溶解容器中で37℃に平衡化した(攪拌は必要とされなかったが、任意に使用することができる)。
試料を(最低45分)周囲温度に平衡化した。試料が均一かつよく混合されているように見えるまで、試料を振盪またはボルテックスした。
30 mLのALISを別個の溶解容器に移し、撹拌しながら約1時間、37℃に平衡化した。
時間=0時間
0.5mLのTriton/PBS緩衝液を、30mLの平衡化ALIS試料に添加して、溶解容器内に「ALIS混合物」を形成した。
時間=0.5時間
3mLのALIS混合物を容器から取り出し、適切なラベル付き容器に移した。この試料を、総アミカシン含有量および遊離アミカシン含有量について分析する。t=0.5~3時間で除去された各試料は、2~8℃で最大1週間保存することができる。
容器内のALIS混合物の残りの部分に1.7mLのTriton/PBS緩衝液を加え、攪拌しながら0.5時間インキュベートした。
時間=1.0時間
3mLのALIS混合物を容器から取り出し、適切なラベル付き容器に移した。この試料を、総アミカシン含有量および遊離アミカシン含有量について分析する。
4.0mLのTriton/PBS緩衝液を、容器内のALIS混合物の残りの部分に添加し、撹拌しながら0.5時間インキュベートした。
時間=1.5時間
3mLのALIS混合物を容器から取り出し、適切なラベル付き容器に移した。この試料を、総アミカシン含有量および遊離アミカシン含有量について分析する。
容器内のALIS混合物の残りの部分に16mLのTriton/PBS緩衝液を加え、攪拌しながら0.5時間インキュベートした。
時間=2.0時間
20mLのALIS混合物を容器から取り出し、適切なラベル付き容器に移した。この試料を、総アミカシン含有量および遊離アミカシン含有量について分析する。
容器内のALIS混合物の残りの部分に100mLのTriton/PBS緩衝液を加え、攪拌しながら0.5時間インキュベートした。
時間=2.5時間
20mLのALIS混合物を容器から取り出し、適切なラベル付き容器に移した。この試料を、総アミカシン含有量および遊離アミカシン含有量について分析する。
ALIS混合物をインキュベートし、0.5時間撹拌した。
時間=3.0時間
20mLのALIS混合物を容器から取り出し、適切なラベル付き容器に移した。この試料を、総アミカシン含有量および遊離アミカシン含有量について分析する。
【0087】
4)HPLC分析用の試料製剤
総アミカシン含量
ポジティブディスプレイスメント式ピペットを使用して、最初に溶媒Aで、次に、表3に指示されるように各時点から採取した試料の希釈剤で、2段階希釈物を調製した。試料は、2~8℃で保存した場合、2週間で期限切れになる。
【0088】
【表6】
【0089】
遊離アミカシン含量
希釈物A: 1.5%NaCl中のALIS混合物の希釈物を、表4に記載されるように調製した。
【0090】
【表7】
【0091】
希釈物Aをフィルターに移した。Centrisartフィルター装置については、内側フィルター部分を取り外し、約2.5 mLの希釈物Aを外側Centrisartチューブに移した。内側管を再挿入して、試料表面と接触させた。フィルターを少なくとも5分間、試料と接触したままにした。
試料を、周囲条件で2500×gで15分間遠心分離した。
濾液を内側Centrisartチューブから収集し、適切な容器に保存した。
希釈物BおよびC: 各時点について収集された濾液のさらなる希釈を、表5および6に示すように調製した。試料(希釈物C)は、2~8℃で保存した場合、2週間で期限切れになる。
【0092】
【表8】
【0093】
【表9】
【0094】
すべての試料製剤を、HPLCおよびELSDにより、以下のように総アミカシン含有量および遊離アミカシン含有量について分析した。
【0095】
標準の調製
アミカシンストック標準溶液:3.3mg/mLのH2Oアミカシン溶液。約82.5mgのアミカシン標準品(USP、カタログ番号1019508)を計量し、定量的に25-mLのメスフラスコに移した。アミカシンをH2Oと適量溶解させ、よく混合した。実際のアミカシン濃度を計算した。
アミカシン作業標準溶液。ポジティブディスプレイスメント式ピペットを使用して、以下の表7に概説するように、希釈剤中で、アミカシンストック標準溶液の一連の希釈物を調製した。
【0096】
【表10】
【0097】
アミカシンチェックストック標準溶液。H2O中の3.3mg/mLのアミカシン。アミカシンストック標準溶液と同じ手順により調製した。
標準作業溶液をチェックする:希釈剤中56μg/mLのアミカシン。表7の作業標準3に従って、アミカシンチェックストック標準溶液の希釈物を調製した。
カナマイシンストック溶液:3.0mg/mLのH2O溶液。30mgの硫酸カナマイシン参照標準(USP、カタログ番号1355006)を計量し、10-mLのメスフラスコに移した。参照標準をH2O中に溶解し、体積まで希釈し、よく混合した。
溶解溶液:希釈剤中の56μg/mLのアミカシンおよび60μg/mLのカナマイシン。0.85mLのアミカシンストックまたはチェックストック溶液および1.0mLのカナマイシンストック溶液を、50-mLのメスフラスコにピペットで移し、希釈剤で体積まで希釈し、よく混合した。
【0098】
HPLC設定
アイソクラティック流量:1.1mL/分(±0.1mL/分)
注入量:15μL
カラム温度:30℃(±3℃)
実行時間:7.5分
HPLC注入スキーム
希釈剤ブランク:清浄なベースラインを得るために必要な回数の注入
注入の精度(作業標準3):6回の注入
解決溶液:単回注入
直線性標準(5レベル):低から高まで各2回の注入
作業標準のチェック:2回の注入(新しいストック標準が調製されたときのみ)
試料:各2回の注入(最大6回の試料または12回の注入)
直線性標準(5レベル):低から高まで各2回の注入
ELSD設定
これらのパラメータは、Sedex 85について検証される。パラメータは、異なるELSDモデルを利用する場合、変更する必要がある場合がある。
獲得:10
ドリフトチューブ温度:55°(±5°)C
圧力:3.0バール(±0.3バール)
フィルター: 5S
【0099】
5) 計算
アミカシン放出%は、以下によって決定される:
放出%=[遊離アミカシン(mg/ml)/総アミカシン(mg/ml)]×100%
放出対時間の%のグラフをプロットして、経時的なアミカシンの放出%を表した。
* * * * * * *
【0100】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されない。実際に、本明細書に記載のものに加えて、本発明の様々な変形例は、前述の説明から当業者に明らかになるであろう。かかる変形例は、添付される特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
特許、特許出願、公報、製品説明、およびプロトコルが本出願全体にわたり引用され、その開示は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書中で援用される。
【国際調査報告】