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特表2024-520796化学療法に関連する胃腸副作用を治療するための化合物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】化学療法に関連する胃腸副作用を治療するための化合物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240517BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P1/00
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/513
A61K31/704
A61K31/519
A61K31/506
A61K31/7068
A61K31/4745
A61K31/282
A61K31/475
A61K31/337
A61K33/243
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575784
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 CN2022097792
(87)【国際公開番号】W WO2022258001
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】202110650388.X
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520401952
【氏名又は名称】オンクオリティー ファーマシューティカルズ チャイナ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シアン、ジンナン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウェンシー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、リナン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シーイー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA06
4C084NA07
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC202
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BC42
4C086BC43
4C086CB05
4C086CB09
4C086CB22
4C086DA32
4C086EA10
4C086EA17
4C086HA12
4C086HA28
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA07
4C086ZA66
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB15
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA75
4C206NA05
4C206NA06
4C206NA07
4C206ZB26
(57)【要約】
特に、薬物の調製におけるCDK阻害剤の使用に関する、化学療法に関連する胃腸副作用を治療するための方法。薬物は、対象に対する化学療法に関連する胃腸副作用を予防、緩和及び/又は治療するために使用される。CDK阻害剤は、CDK1阻害剤、CDK2阻害剤、CDK3阻害剤、CDK4阻害剤、CDK5阻害剤、CDK6阻害剤、CDK7阻害剤、CDK8阻害剤及び/又はCDK9阻害剤を含む。化学療法剤は、フルオロウラシル、オキサリプラチン、トポテカン、イリノテカン、テトラヒドロ葉酸、ドセタキセルなどから選択され得る。胃腸副作用には、下痢、便秘などが含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬の調製におけるサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤の使用であって、前記医薬が、対象における化学療法に関連する胃腸副作用を予防、軽減及び/又は治療するために使用される、医薬の調製におけるCDK阻害剤の使用。
【請求項2】
前記CDK阻害剤が、CDKの発現を低下させる試薬及び/又はCDKの活性を低下させる試薬を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記CDK阻害剤が、CDKタンパク質、CDKタンパク質をコードする核酸、サイクリン及び/又はサイクリンをコードする核酸に直接作用する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記CDK阻害剤が、CDK1阻害剤、CDK2阻害剤、CDK3阻害剤、CDK4阻害剤、CDK5阻害剤、CDK6阻害剤、CDK7阻害剤、CDK8阻害剤及び/又はCDK9阻害剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記CDK阻害剤が、CDK2阻害剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記CDK阻害剤が、CDK4阻害剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記CDK阻害剤が、CDK6阻害剤を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記CDK阻害剤が、CDK9阻害剤を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記CDK阻害剤が、CDK4/6阻害剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記CDK阻害剤が、CDK2/4/6阻害剤を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記CDK阻害剤が、CDK4/6/9阻害剤を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記CDK阻害剤が、局所腸曝露のためのCDK阻害剤を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記CDK阻害剤が、小分子化合物、タンパク質及び/又は核酸分子を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記小分子CDK阻害剤が、CDKに可逆的に結合する小分子CDK阻害剤、CDKに不可逆的に結合する小分子CDK阻害剤及び/又は変異CDKに特異的に結合する小分子CDK阻害剤を含む、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記小分子CDK阻害剤が、2000ダルトン以下、1500ダルトン以下、1200ダルトン以下、1000ダルトン以下、900ダルトン以下、800ダルトン以下、700ダルトン以下、600ダルトン以下、500ダルトン以下、400ダルトン以下、300ダルトン以下、200ダルトン以下及び/又は100ダルトン以下である分子量を有する、請求項13又は14に記載の使用。
【請求項16】
前記CDK阻害剤が、以下の群:トリラシクリブ、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブ、FLX-925、SHR-6390、BPI-1178、BPI-16350、FCN 437、G2T28、XZP-3287、BEBT-209、TY-302、TQB-3616、HS-10342、PF-06842874、CS-3002、MM-D37K、ゾチラシクリブ、XZP-3287、リゴサチブ、KRX-0601、リビシクリブ、ロニシクリブ、ミルシクリブ、セリシクリブ、ロスコビチン、インジスラム、アルボシジブ、NUV-422、BEY-1107、GLR-2007、FN-1501、BCD-115、TP-1287、BAY-1251152、アツベシクリブ、SEL-120、HX-301、ボルシクリブ、ファドラシクリブ、AGM-130、PHA-793887、PHA-690509、ディナシクリブ、RO4584820、R547、AT-7519、RGB-286638、ZK-304709、IIIM-290、PF-07104091及びG1T38から選択される1つ以上の化合物を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記化学療法が、化学療法剤の投与を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記化学療法剤が、細胞傷害剤である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記化学療法剤が、以下の群:DNA合成阻害剤、RNA合成阻害剤、タンパク質合成阻害剤、細胞分裂阻害剤、DNA塩基類縁体、トポイソメラーゼ阻害剤、及び/又はテロメラーゼ合成阻害剤のうちの1つ以上から選択される、請求項17又は18に記載の使用。
【請求項20】
前記化学療法剤が、フルオロウラシル、オキサリプラチン、トポテカン、イリノテカン、テトラヒドロ葉酸、ドセタキセル、ゲムシタビン、カルボプラチン、シスプラチン、エトポシド、メトトレキサート、ドキソルビシン、シタラビン、ビノレルビン及びカペシタビン、並びにそれらの組み合わせから選択される、請求項17~19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
前記化学療法剤が、連続的及び/又は非連続的に投与される、請求項17~20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
前記化学療法剤が、連続投与時間が7日以上である化学療法剤を含まない、請求項17~21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記化学療法が、1つ以上の他の療法と組み合わせて用いられる、請求項1~22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記化学療法に関連する胃腸副作用が、前記化学療法によって引き起こされる胃腸副作用を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
前記化学療法に関連する胃腸副作用が、前記化学療法剤の投与後に起こるか又は悪化する胃腸有害事象を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
前記胃腸有害事象が、予防又は治療の非存在下で、前記化学療法剤の投与の約1時間後、約2時間後、約3時間後、約4時間後、約5時間後、約6時間後、約7時間後、約8時間後、約9時間後、約10時間後、約11時間後、約12時間後、約1日後、約2日後、約4日後、約7日後、約2週間後、約3週間後、約1ヶ月後、約2ヶ月後又はそれより後に起こるか又は悪化する、請求項17~25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
前記胃腸副作用が、胃粘膜損傷疾患及び/又は腸粘膜損傷疾患を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
前記胃腸副作用が、下痢、腹痛、悪心、嘔吐、粘膜炎、食欲不振、胃潰瘍、胃炎、便秘、腸炎、腸穿孔、腸出血、潰瘍及び/又は腸壊死を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の使用。
【請求項29】
前記胃腸副作用が、下痢及び/又は便秘を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の使用。
【請求項30】
前記胃腸副作用の重症度が、NCI-CTCAEに従って評価した場合に、グレード1以上、グレード2以上、グレード3以上、グレード4以上、又はグレード5である、請求項1~29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
前記対象が、癌患者を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
前記医薬が、前記化学療法の治療効果に実質的に影響を及ぼさない、請求項1~31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
前記医薬が、前記化学療法の投与の約0.5時間前、約1時間前、約2時間前、約3時間前、約4時間前、約5時間前、約6時間前、約7時間前、約8時間前、約9時間前、約10時間前、約11時間前、約12時間前、約13時間前、約14時間前、約15時間前、約16時間前、約17時間前、約18時間前、約19時間前、約20時間前又はそれより前に投与される、請求項1~32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
前記医薬が、前記化学療法の投与の約0.5~12時間前に投与される、請求項1~33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
前記医薬が、経口投与、静脈内注射、皮下注射、腹腔内注射及び/又は筋肉内注射用に調製される、請求項1~34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項36】
前記医薬が、経口投与用に調製される、請求項1~35のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
前記医薬が、錠剤及び/又はカプセルとして調製される、請求項1~36のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
前記医薬が、1つ以上の他の有効成分を更に含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項39】
前記CDK阻害剤が、前記胃腸副作用を独立して改善又は低減することができる、請求項1~38のいずれか一項に記載の使用。
【請求項40】
対象における化学療法に関連する胃腸副作用を予防、軽減及び/又は治療する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1~39のいずれか一項に記載の使用において記載の前記CDK阻害剤を投与することを含む、対象における化学療法に関連する胃腸副作用を予防、軽減及び/又は治療する方法。
【請求項41】
対象における化学療法に関連する胃腸副作用を予防、軽減及び/又は治療するために使用される、請求項1~39のいずれか一項に記載の使用において記載のCDK阻害剤。
【請求項42】
請求項1~39のいずれか一項に記載の使用において記載の前記CDK阻害剤及び前記化学療法剤を含む、医薬組み合わせ。
【請求項43】
請求項1~39のいずれか一項に記載の使用において記載の前記CDK阻害剤及び前記化学療法剤を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、生物医学の分野に関し、特に、CDK阻害剤を使用して化学療法に関連する胃腸副作用を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍化学療法は、臨床的に腫瘍を治療するための最も一般的に使用される手段の1つであり、主に化学薬品(化学療法剤)を利用して癌細胞の増殖、浸潤、及び転移を予防し、最終的に癌細胞を死滅させる。しかしながら、化学療法剤の投与は、急速に成長し単離された腫瘍細胞を死滅させることができるだけでなく、正常細胞及び免疫細胞も同時に死滅させる可能性があり、したがって、悪心、嘔吐、貧血、炎症及び感染症などを含む重篤な副作用を引き起こす可能性がある。そのような副作用は、化学療法剤の中止又は投与量の減少をもたらし、患者の腫瘍に対する治療効果に大きく影響し、患者の生活の質を損ない、重篤な場合に患者の生活を危険にさらす可能性がある。
【0003】
化学療法剤の投与に関連する副作用を制御するための成功した治療レジメンは、先行技術ではまだ利用可能ではない。したがって、これらの副作用を首尾よく制御することができる治療レジメンが緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本出願は、対象における化学療法に関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を予防、軽減及び/又は治療する方法であって、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤を対象に投与することを含む方法を提供する。本出願の医薬は、化学療法に関連する胃腸副作用を効果的に軽減することができる。
【0005】
一態様では、本出願は、対象における化学療法に関連する胃腸副作用を予防、軽減及び/又は治療するために使用される医薬の調製におけるサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤の使用を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、CDK阻害剤は、CDKの発現を低下させる試薬及び/又はCDKの活性を低下させる試薬を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、CDK阻害剤は、CDKタンパク質、CDKタンパク質をコードする核酸、サイクリン及び/又はサイクリンをコードする核酸に直接作用する。
【0008】
いくつかの実施形態では、CDK阻害剤は、CDK1阻害剤、CDK2阻害剤、CDK3阻害剤、CDK4阻害剤、CDK5阻害剤、CDK6阻害剤、CDK7阻害剤、CDK8阻害剤及び/又はCDK9阻害剤を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、CDK阻害剤は、CDK2阻害剤を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、CDK阻害剤は、CDK4阻害剤を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、CDK阻害剤は、CDK6阻害剤を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、CDK阻害剤は、CDK9阻害剤を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、CDK阻害剤は、CDK4/6阻害剤を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、CDK阻害剤は、CDK2/4/6阻害剤を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、CDK阻害剤は、CDK4/6/9阻害剤を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、CDK阻害剤は、局所腸曝露のためのCDK阻害剤を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、CDK阻害剤は、小分子化合物、タンパク質及び/又は核酸分子を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、CDK阻害剤は、小分子CDK阻害剤、CDKに特異的に結合するタンパク質高分子、CDKタンパク質の発現を阻害するRNAi及び/又はCDKタンパク質の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、小分子CDK阻害剤は、CDKに可逆的に結合する小分子CDK阻害剤、CDKに不可逆的に結合する小分子CDK阻害剤及び/又は変異CDKに特異的に結合する小分子CDK阻害剤を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、小分子CDK阻害剤は、2000ダルトン以下、1500ダルトン以下、1200ダルトン以下、1000ダルトン以下、900ダルトン以下、800ダルトン以下、700ダルトン以下、600ダルトン以下、500ダルトン以下、400ダルトン以下、300ダルトン以下、200ダルトン以下及び/又は100ダルトン以下である分子量を有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、CDK阻害剤は、以下の群:トリラシクリブ、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブ、FLX-925、SHR-6390、BPI-1178、BPI-16350、FCN 437、G2T28、XZP-3287、BEBT-209、TY-302、TQB-3616、HS-10342、PF-06842874、CS-3002、MM-D37K、ゾチラシクリブ、XZP-3287、リゴサチブ、KRX-0601、リビシクリブ、ロニシクリブ、ミルシクリブ、セリシクリブ、ロスコビチン、インジスラム、アルボシジブ、NUV-422、BEY-1107、GLR-2007、FN-1501、BCD-115、TP-1287、BAY-1251152、アツベシクリブ、SEL-120、HX-301、ボルシクリブ、ファドラシクリブ、AGM-130、PHA-793887、PHA-690509、ディナシクリブ、RO4584820、R547、AT-7519、RGB-286638、ZK-304709、IIIM-290、PF-07104091及びG1T38から選択される1つ以上の化合物を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、化学療法は化学療法剤の投与を含む。いくつかの実施形態では、化学療法剤は細胞傷害剤である。
【0023】
いくつかの実施形態では、化学療法剤は、以下の群:DNA合成阻害剤、RNA合成阻害剤、タンパク質合成阻害剤、細胞分裂阻害剤、DNA塩基類縁体、トポイソメラーゼ阻害剤、及び/又はテロメラーゼ合成阻害剤から選択される1つ以上である。
【0024】
いくつかの実施形態では、化学療法剤は、フルオロウラシル、オキサリプラチン、テトラヒドロ葉酸、イリノテカン、トポテカン、ドセタキセル、ゲムシタビン、エトポシド、カルボプラチン、メトトレキサート、ドキソルビシン、シタラビン、ビノレルビン及びカペシタビン、並びにそれらの組み合わせから選択される。
【0025】
いくつかの実施形態では、化学療法剤は、腫瘍標的化薬を含まない。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、チロシンキナーゼ阻害剤を含まない。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、EGFR標的化抗腫瘍薬を含まない。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、PI3K標的化抗腫瘍薬を含まない。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、FGFR4標的化抗腫瘍薬を含まない。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、アファチニブ、イデラリシブ、フィソガチニブ、イマチニブ及びオシメルチニブを含まない。
【0026】
いくつかの実施形態では、化学療法剤は、連続的及び/又は非連続的に投与される。
【0027】
いくつかの実施形態では、化学療法剤は、連続投与時間が7日以上である化学療法剤を含まない。
【0028】
いくつかの実施形態では、化学療法は、1つ以上の他の療法と組み合わせて投与される。
【0029】
いくつかの実施形態では、化学療法に関連する胃腸副作用は、化学療法によって引き起こされる胃腸副作用を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、化学療法に関連する胃腸副作用は、化学療法剤の投与後に起こるか又は悪化する胃腸有害事象を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、胃腸有害事象は、予防又は治療の非存在下で、化学療法剤の投与の約1時間後、約2時間後、約3時間後、約4時間後、約5時間後、約6時間後、約7時間後、約8時間後、約9時間後、約10時間後、約11時間後、約12時間後、約1日後、約2日後、約4日後、約7日後、約2週間後、約3週間後、約1ヶ月後、約2ヶ月後又はそれより後に起こるか又は悪化する。
【0032】
いくつかの実施形態では、胃腸副作用は、胃粘膜損傷疾患及び/又は腸粘膜損傷疾患を含む。いくつかの実施形態では、胃腸副作用は、骨髄抑制によって引き起こされる副作用ではない。
【0033】
いくつかの実施形態では、胃腸副作用は、下痢、腹痛、悪心、嘔吐、粘膜炎、食欲不振、胃潰瘍、胃炎、便秘、腸炎、腸穿孔、腸出血、潰瘍、腸壊死を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、胃腸副作用は、下痢、便秘を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、胃腸副作用の重症度は、NCI-CTCAE V5.0に従って評価した場合に、グレード1以上、グレード2以上、グレード3以上、グレード4以上、又はグレード5である。
【0036】
いくつかの実施形態では、対象は、癌患者を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、医薬は、化学療法の治療効果に実質的に影響を及ぼさない。
【0038】
いくつかの実施形態では、医薬は、化学療法の投与の約0.5時間前、約1時間前、約2時間前、約3時間前、約4時間前、約5時間前、約6時間前、約7時間前、約8時間前、約9時間前、約10時間前、約11時間前、約12時間前、約13時間前、約14時間前、約15時間前、約16時間前、約17時間前、約18時間前、約19時間前、約20時間前又はそれより前に投与される。
【0039】
いくつかの実施形態では、医薬は、化学療法の投与の約0.5~12時間前に投与される。
【0040】
いくつかの実施形態では、医薬は、経口投与、静脈内注射、皮下注射、腹腔内注射及び/又は筋肉内注射用に調製される。
【0041】
いくつかの実施形態では、医薬は注射投与用に調製される。いくつかの実施形態では、医薬は注射液として調製される。
【0042】
いくつかの実施形態では、医薬は経口投与用に調製される。いくつかの実施形態では、医薬は、錠剤及び/又はカプセルとして調製される。
【0043】
いくつかの実施形態では、医薬は、1つ以上の他の有効成分を更に含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、CDK阻害剤は、胃腸副作用を独立して改善又は低減することができる。
【0045】
別の態様では、本出願は、対象における化学療法に関連する下痢を予防又は治療するために使用される、医薬の調製におけるサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤の使用を提供する。
【0046】
別の態様では、本出願は、対象における化学療法に関連する便秘を予防又は治療するために使用される、医薬の調製におけるサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤の使用を提供する。
【0047】
別の態様では、本出願は、化学療法に関連する胃腸副作用を予防、軽減及び/又は治療する方法であって、それを必要とする対象に本出願のCDK阻害剤を投与することを含む方法を提供する。
【0048】
別の態様では、本出願は、化学療法に関連する胃腸副作用を予防、軽減及び/又は治療するために使用されるCDK阻害剤を提供する。
【0049】
別の態様では、本出願は、化学療法に関連する下痢を予防、軽減及び/又は治療する方法であって、それを必要とする対象に本出願のCDK阻害剤を投与することを含む方法を提供する。
【0050】
別の態様では、本出願は、化学療法に関連する便秘を予防、軽減及び/又は治療する方法であって、それを必要とする対象に本出願のCDK阻害剤を投与することを含む方法を提供する。
【0051】
別の態様では、本出願は、CDK阻害剤と、化学療法に使用される医薬とを含む医薬組成物を提供する。
【0052】
別の態様では、本出願は、CDK阻害剤及び化学療法剤を含むキットを提供する。
【0053】
本出願の他の態様及び利点は、以下の詳細な説明から当業者には容易に明らかになるであろう。以下の詳細な説明では、本出願の例示的な実施形態のみが示され説明される。当業者には理解されるように、本出願の開示は、当業者が、本出願に含まれる本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、開示された実施形態を修正することを可能にする。したがって、本出願明細書における図面及び説明は例示に過ぎず、限定的なものではない。
【0054】
本出願に含まれる本発明の特定の特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。本出願に含まれる本発明の特徴及び利点は、以下に詳述する例示的な実施形態及び添付の図面を参照することによってよりよく理解することができる。図面の簡単な説明は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1図1は、例1~229の化学療法剤群における典型的なマウスの下痢の写真を示す。
図2図2は、対照群、化学療法剤群及び例1~229のCDK阻害剤群における一部の下痢グレード分類の結果を示す。
図3図3は、対照群、化学療法剤群及び例230~271のCDK阻害剤群における一部の下痢グレード分類の結果を示す。
図4】図は、対照群、化学療法剤群及び例272~342のCDK阻害剤群における大便の数及び形状を示す写真である。
図5図5は、対照群、化学療法剤群及び例272~342のCDK阻害剤群の一部の大便減少率の結果を示す。
図6図6は、対照群、化学療法剤群、並びに例343~381のCDK阻害剤の経口投与群及びCDK阻害剤の静脈内注射群における一部の下痢グレード分類の結果を示す。
図7図7は、対照群、化学療法剤群、例382~405のCDK阻害剤の経口投与群及びCDK阻害剤の他の投与様式の群における一部の下痢グレード分類の結果を示す。
図8図8は、対照群、化学療法剤群、例406~443のCDK阻害剤の経口投与群、及びCDK阻害剤の他の投与様式群における一部の大便減少率の結果を示す。
図9図9は、対照群、化学療法剤群及び例444~469のCDK阻害剤群における一部の下痢グレード分類の結果を示す。
図10図10は、対照群、化学療法剤群及び例470~481のCDK阻害剤群の一部の大便減少率の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の実施形態は、具体例として以下に記載され、当業者は、本明細書の開示から本発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。
【0057】
用語の定義
本出願において、「CDK阻害剤」という用語は、一般に、当技術分野で知られているか、又は将来見出されるであろう、CDK(サイクリン依存性キナーゼ)の活性又は機能を遮断、低減又は阻害することができる任意の分子を指し、限定されないが、小分子化合物、ポリヌクレオチド(例えば、DNA又はRNA)、及び/又はポリペプチド(例えば、抗体又はその抗原結合部分)を含む。CDK阻害剤は、例えばCDKへの結合を介してCDKに直接作用することができるか、又は例えばCDKとそのリガンドとの間の相互作用を妨げること、サイクリンを阻害すること、又は基質の活性を阻害することを介して間接的に作用することができる。CDKは、細胞周期を調節するために使用することができ、神経細胞の転写、mRNAプロセシング及び分化の調節にも関与する、タンパク質キナーゼファミリーのキナーゼのクラスである。本出願におけるCDKは、インタクトなCDK又はキナーゼドメインフラグメントを指す場合があり、様々な脊椎動物(例えば、ヒト、サル、マウス、イヌ、ウサギなど)由来のCDKも包含する。異なる結合サイクリンによれば、CDKは異なるタイプに分けることができる。本出願において、CDK阻害剤は、CDK1、CDK2、CDK3、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8、CDK9、CDK10、CLK、Cdc、CDK11、CDK12、CDK13及びCDK19のうちの1つ以上を阻害することができる。例えば、細胞増殖に明らかに関与している4つのCDK、すなわち、主にG2期からM期への移行を調節するCDK1、G1期からS期への移行を制御するCDK2、CDK4及びCDK6がある。本出願のCDK阻害剤は、選択的CDK阻害剤及び広域スペクトルCDK阻害剤を含み得る。
【0058】
本出願において、「CDK2阻害剤」という用語は、一般に、CDKファミリーのCDK2に作用する阻害剤を指す。CDKファミリーの全てのメンバーにおいて、主にCDK2に対する阻害効果を有するが、CDK2以外のCDKファミリーのメンバーに対する阻害効果を有する可能性を排除するものではなく、CDKファミリー以外の他の分子に対する阻害効果を有する可能性も排除するものではない。例示的なCDK2阻害剤には、A-674563、MK-8776(SCH 900776)、ディナシクリブ(SCH727965)、JNJ-7706621、R547、AZD5438、PHA-793887、BMS-265246、SU9516、SNS-032(BMS-387032)、フラボピリドール(アルボシジブ)、フラボピリドール(アルボシジブ)HCl、ミルシクリブ(PHA-848125)、AT7519、P276-00、PHA-767491、ロスコビチン(セリシクリブ、CYC202)、NU6027及び/又はLDC000067が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0059】
本出願において、「CDK4阻害剤」という用語は、一般に、CDKファミリーのCDK4に作用する阻害剤を指す。CDKファミリーの全てのメンバーにおいて、主にCDK4.に対する阻害効果を有するが、CDK4以外のCDKファミリーのメンバーに対する阻害効果を有する可能性を排除するものではなく、CDKファミリー以外の他の分子に対する阻害効果を有する可能性も排除するものではない。例示的なCDK4阻害剤には、R547、LY2835219、パルボシクリブ(PD-0332991)HCl、パルボシクリブ(PD0332991)イセチオナート、フラボピリドール(アルボシジブ)、フラボピリドール(アルボシジブ)HCl、PHA-793887、P276-00、AT7519、ミルシクリブ(PHA-848125)、SU9516、BMS-265246、JNJ-7706621、SNS-032(BMS-387032)、LDC000067及び/又はLEE011が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0060】
本出願において、「CDK6阻害剤」という用語は、一般に、CDKファミリーのCDK6に作用する阻害剤を指す。CDKファミリーの全てのメンバーにおいて、主にCDK6に対する阻害効果を有するが、CDK6以外のCDKファミリーのメンバーに対する阻害効果を有する可能性を排除するものではなく、CDKファミリー以外の他の分子に対する阻害効果を有する可能性も排除するものではない。例示的なCDK6阻害剤には、LY2835219、パルボシクリブ(PD-0332991)HCl、パルボシクリブ(PD0332991)イセチオナート、フラボピリドール(アルボシジブ)、フラボピリドール(アルボシジブ)HCl、AT7519、JNJ-7706621、P276-00及び/又はLEE011が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0061】
本出願において、「CDK9阻害剤」という用語は、一般に、CDKファミリーのCDK9に作用する阻害剤を指す。CDKファミリーの全てのメンバーにおいて、主にCDK9に対する阻害効果を有するが、CDK9以外のCDKファミリーのメンバーに対する阻害効果を有する可能性を排除するものではなく、CDKファミリー以外の他の分子に対する阻害効果を有する可能性も排除するものではない。例示的なCDK9阻害剤には、LY2835219、パルボシクリブ(PD-0332991)HCl、パルボシクリブ(PD0332991)イセチオナート、フラボピリドール(アルボシジブ)、フラボピリドール(アルボシジブ)HCl、AT7519、JNJ-7706621、P276-00及び/又はLEE011が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0062】
本出願において、「CDK2/4/6阻害剤」という用語は、一般に、CDKファミリーのCDK2、CDK4及びCDK6の全てに作用する阻害剤を指す。CDKファミリーの全てのメンバーにおいて、主にCDK2、CDK4及びCDK6に対する阻害効果を有するが、CDK2、CDK4及びCDK6以外のCDKファミリーのメンバーに対する阻害効果を有する可能性を排除するものではなく、CDKファミリー以外の他の分子に対する阻害効果を有する可能性も排除するものではない。CDK2/4/6阻害剤は、CDK2、CDK4及びCDK6に対して同一又は同様の効果を有する必要はない。例示的なCDK2/4/6阻害剤には、AT7519 HCl、塩酸リビシクリブ(P276-00)、フラボピリドールHCl、AT7519、JNJ-7706621及び/又はフラボピリドール(L86-8275)が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0063】
本出願において、「CDK4/6阻害剤」という用語は、一般に、CDKファミリーのCDK4及びCDK6の両方に作用する阻害剤を指す。CDKファミリーの全てのメンバーにおいて、主にCDK4及びCDK6に対する阻害効果を有するが、CDK4及びCDK6以外のCDKファミリーのメンバーに対する阻害効果を有する可能性を排除するものではなく、CDKファミリー以外の他の分子に対する阻害効果を有する可能性も排除するものではない。CDK4/6阻害剤は、CDK4及びCDK6に対して同一又は同様の効果を有する必要はない。例示的なCDK4/6阻害剤としては、限定されないが、コハク酸リボシクリブ、塩酸リボシクリブ、パルボシクリブ、トリラシクリブ、G1T38、アベマシクリブ、ON123300、AT7519 HCl、リボシクリブ(LEE011)、メシル酸アベマシクリブ(LY2835219)、塩酸リビシクリブ(P276-00)、パルボシクリブ(PD0332991)イセチオナート、フラボピリドールHCl、AT7519、JNJ-7706621、フラボピリドール(L86-8275)及び/又はパルボシクリブ(PD-0332991)HClが挙げられ得る。
【0064】
本出願において、「CDK4/6/9阻害剤」とは、一般に、CDKファミリーのCDK4、CDK6及びCDK9の全てに作用する阻害剤をいう。CDKファミリーの全てのメンバーにおいて、主にCDK4、CDK6及びCDK9に対する阻害効果を有するが、CDK4、CDK6及びCDK9以外のCDKファミリーのメンバーに対する阻害効果を有する可能性を排除するものではなく、CDKファミリー以外の他の分子に対する阻害効果を有する可能性も排除するものではない。CDK4/6/9阻害剤は、CDK4、CDK6及びCDK9に対して、同一又は同様の効果を有する必要はない。例示的なCDK4/6/9阻害剤には、G1T38、AT7519 HCl、リビシクリブ塩酸塩(P276-00)、AT7519及び/又はフラボピリドール(L86-8275)が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0065】
本出願において、「化学療法」という用語は、一般に、腫瘍を治療するために化学療法剤を使用する療法を指し、それは癌細胞の死をもたらし得るか、又は癌細胞の分裂、修復、成長及び/又は機能を妨害し得る。化学療法に使用される医薬は、化学療法剤である。化学療法剤は、癌細胞の死を引き起こすか、又は癌細胞の成長、分裂、修復及び/又は機能を妨害することができる化学物質又は生物学的物質を含む。例えば、化学療法は、腫瘍細胞を死滅させ、腫瘍細胞の成長若しくは転移を阻害し、又は急速に増殖する細胞の細胞周期を破壊することができる細胞傷害剤、細胞阻害剤及び抗腫瘍剤を含み得る。化学療法剤は、動物及び植物に見られる天然化合物又は人工化学物質を含む。本出願において、化学療法又は化学療法剤は、腫瘍細胞及び正常細胞に対して低い選択性を有するので、正常細胞(例えば、骨髄細胞、毛包細胞又は消化管細胞)の増殖、分裂、修復及び/又は機能を妨害し、最終的に正常細胞の死をもたらし得る。本出願における化学療法剤は、腫瘍標的化薬を含まない場合があり、すなわち、本出願における化学療法剤は、腫瘍細胞、腫瘍組織、腫瘍器官又は腫瘍細胞によって特異的に発現されるタンパク質(例えば、腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原)を特異的に認識することができる物質を含まない。遺伝子変異又は他の要因のために、いくつかのキナーゼ又はリン酸キナーゼが活性化され、癌細胞の再生を引き起こす。本出願の化学療法剤は、異常に活性化されたキナーゼを阻害することによって癌細胞の分裂を防止するキナーゼ阻害剤も含まない。本出願の化学療法剤は、抗体及び/又は血管新生阻害剤も含まない。
【0066】
本出願において、化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、メクロレタミン、エチレンイミン化合物、アルキルスルホナート及びアルキル化効果を有する他の化合物、例えば、ニトロソ尿素、シスプラチン及びダカルバジン;代謝拮抗剤、例えば、葉酸、プリン又はピリミジン拮抗剤;有糸分裂阻害剤、例えばビンカアルカロイド及びポドフィロトキシン誘導体;細胞傷害性抗生物質及びカンプトテシン誘導体が挙げられ得るが、これらに限定されない。化学療法剤はまた、アミフォスチンシスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ストレプトマイシン、シクロホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン、ドキソルビシンリポソーム、ゲムシタビン、エリスロマイシン、ダウノルビシンリポソーム、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル(5-FU)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT-11、10-ヒドロキシル-7-エチル-カンプトテシン(SN38)、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、インターフェロンα、インターフェロンβ、イリノテカン、ミトキサントロン、トポテカン、ルプロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、オンカスパーゼ、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テニポシド、テストステロン、チオグアニン、チオテパ、ウラムスチン、ビノレルビン、クロラムブシルアロマターゼ阻害剤及びそれらの組み合わせを含み得る。
【0067】
本出願において、「細胞傷害剤」という用語は、一般に、細胞の生物学的プロセスを阻害するための、又は細胞の生存能若しくは増殖能を低下させるための試薬を指す。細胞傷害剤は、例えば、限定されないが、DNA損傷の誘導、細胞周期停止の誘導、DNA合成の阻害、転写の阻害、翻訳又はタンパク質合成の阻害、細胞分裂の阻害又はアポトーシスの誘導を介して、様々な方法で作用し得る。
【0068】
本出願において、「実質的に影響を及ぼさない」という用語は、一般に、化学療法単独を使用する治療効果と比較して、本出願の医薬と化学療法との組み合わせの使用が同等の治療効果を有するか、又は顕著な不利益をもたらさないことを指す。例えば、任意の対象について、化学療法単独を使用する治療効果と比較して、医薬と化学療法との組み合わせの使用は、同程度の腫瘍サイズ縮小を引き起こすか、又は縮小度は、約5%以上、約4%以上、約3%以上、約2%以上、約1%以上、約0.5%以上、約0.1%以上、約0.01%以上、約0.001%以上若しくはそれより小さい。
【0069】
本出願において、「連続投与」という用語は、一般に、毎日同じ医薬の反復投与を指す。毎日の反復投与は、1日1回、1日2回、1日3回以上であり得る。例えば、連続投与は、少なくとも2日を超えて1日1回の投与であり得る。例えば、2日間の連続投与時間は、1日1回(2回、3回以上)の2日間にわたる連続的な投与を意味し得る。例えば、3日間の連続投与時間は、1日1回(2回、3回以上)の3日間にわたる連続的な投与を意味し得る。例えば、5日間の連続投与時間は、1日1回(2回、3回以上)の5日間にわたる連続的な投与を意味し得る。例えば、7日間の連続投与時間は、1日1回(2回、3回以上)の7日間にわたる連続的な投与を意味し得る。例えば、10日間の連続投与時間は、1日1回(2回、3回以上)の10日間にわたる連続的な投与を意味し得る。例えば、14日間の連続投与時間は、1日1回(2回、3回以上)の14日間にわたる連続的な投与を意味し得る。例えば、7日間を超える連続投与時間は、7日間を超える1日1回(2回、3回以上)の連続的な投与を意味し得る。
【0070】
本出願において、「非連続投与」という用語は、一般に、同じ医薬が、間欠投与及び/又はパルス投与としても知られる投与サイクルで毎日投与されない投与様式を指す。非連続投与は、規則的であってもよく、又は不規則的であってもよい。非連続投与において、投与周期が7日より長い場合、任意の連続期間、毎日投与し、7日以上継続する場合も「7日以上の連続投与時間」の場合に属する。
【0071】
本出願において、「胃腸有害事象」という用語は、一般に、特定の医薬又は化学療法若しくは外科手術などの他の医学的治療によって引き起こされる、胃腸管に関連する又は胃腸管領域に現れる有害かつ望ましくない反応、効果、作用、帰結、結果又は影響を指す。それらは、胃腸有害作用、胃腸副作用、又は胃腸有害結果としても知られている。胃腸有害事象は、消化器系の様々な部分(例えば、消化管及び腺)における有害事象を含む。例えば、胃腸有害事象には、腹部膨満、腹痛、裂傷、痔瘻、肛門出血、肛門粘膜炎、肛門壊死、肛門痛、肛門狭窄、肛門潰瘍、腹水、しゃっくり、盲腸出血、口唇炎、乳び性腹水、大腸炎、結腸瘻、結腸出血、結腸閉塞、結腸穿孔、結腸狭窄、結腸潰瘍、便秘、虫歯、下痢、口腔乾燥症、十二指腸瘻、十二指腸出血、十二指腸閉塞、十二指腸穿孔、十二指腸狭窄、十二指腸潰瘍、消化不良、嚥下障害、腸炎、腸瘻、食道瘻、食道出血、食道壊死、食道閉塞、食道痛、食道穿孔、食道狭窄、食道潰瘍、食道静脈瘤出血、食道炎、便失禁、腸内ガス、胃瘻孔、胃出血、胃壊死、胃穿孔、胃狭窄、胃潰瘍、胃炎、胃食道逆流症、胃腸疾患(その他、留意されたい)、胃腸瘻、胃腸痛、胃不全麻痺、歯肉痛、痔出血、痔、回腸瘻孔、回腸出血、回盲、回腸穿孔、回腸狭窄、回腸潰瘍、回腸、腹腔内出血、空腸瘻孔、空腸出血、空腸閉塞、空腸穿孔、空腸狭窄、空腸潰瘍、口唇痛、下部胃腸出血、吸収不良、口腔粘膜炎、悪心、胃閉塞、口腔瘻、口腔内感覚異常、口腔出血、口腔痛、膵管狭窄、膵瘻、膵臓出血、膵臓壊死、膵炎、歯周疾患、腹膜壊死、直腸炎、直腸破裂、直腸瘻、直腸出血、直腸粘膜炎、直腸壊死、直腸閉塞、直腸痛、直腸穿孔、直腸狭窄、直腸潰瘍後腹膜出血、唾液管炎症、唾液腺瘻、小腸粘膜炎、小腸閉塞、小腸穿孔、小腸狭窄、小腸潰瘍、腹痛、歯の発達障害、歯の着色、歯痛、虫垂炎、上部消化管出血、内臓動脈虚血、嘔吐が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0072】
本出願において、「胃腸副作用」という用語は、一般に、予防薬又は治療薬によって引き起こされる、胃腸管に関連する又は胃腸管領域で示される害のある及び有害な作用を指す。有害作用は常に望ましくないが、望ましくない作用は必ずしも有害ではない。予防薬又は治療薬の有害作用は、有害、不適切又は危険であり得る。胃腸副作用には、消化器系の様々な部分(例えば、消化管及び腺)における副作用が含まれる。化学療法に関連する胃腸副作用は、化学療法剤の使用時間に関連する胃腸管の異常な臨床症状を指し得るが、これらの異常症状と化学療法剤の投与との間に因果関係はない可能性がある。
【0073】
本出願において、「胃粘膜損傷疾患」という用語は、一般に、胃粘膜の異常な色、出血斑、うっ血及びびらんを含み得る、胃粘膜損傷の症状を伴う疾患又は障害を指す。
【0074】
本出願において、「腸粘膜損傷疾患」という用語は、一般に、腸粘膜の異常な色、出血斑、うっ血及びびらんを含み得る、腸粘膜損傷の症状を伴う疾患又は障害を指す。
【0075】
本出願において、「下痢」という用語は、一般に、蠕動頻度の増加及び/又は弛緩若しくは水様性蠕動の特徴を有する疾患又は障害を指す。本出願において、下痢は、化学療法剤の投与後に発生又は悪化し得る。場合によっては、下痢は、動物実験を参照して評価することもでき、例えば、下痢の重症度は、Akinobu Kurita(Cancer Chemother Pharmacol 2000;46:211-20.)の方法に従ってスコア化され、ここでは、グレード0:正常な糞便;グレード1:軽度の下痢、便がわずかに湿って軟らかい;グレード2:中等度の下痢、軟便及び軽度の肛門周囲汚染;グレード3:重度の下痢、水様性便、及び重度の肛門周囲の着色を伴う。
【0076】
本出願において、「便秘」という用語は、一般に、不規則な排便、頻繁でない排便又は腸の困難な排便の特徴を有する疾患又は障害を指す。本出願において、化学療法の投与後に便秘が起こるか又は悪化することがある。
【0077】
本出願において、「予防又は治療の非存在下」という用語は、一般に、胃腸有害事象に対して予防又は治療を実施せず、胃腸有害事象を弱化又は消失させるための措置を講じない状態を指す。胃腸有害事象を減弱又は消失させるための措置は、例えば、胃腸有害事象を予防又は治療するための医薬又は他の手段の投与、医薬又は胃腸有害事象を引き起こす他の手段(CDK阻害剤又は本出願の医薬の投与を含む)の投与の停止であり得る。本出願において、本出願の化学療法を投与した後、胃腸有害事象を減弱又は消失させるための措置を講じなければ、胃腸有害事象は、化学療法の投与の1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、9時間後、10時間後、11時間後、12時間後、1日後、2日後、4日後、7日後、2週間後、3週間後、1ヶ月後、2ヶ月後又はそれより後に起こるか又は悪化する。CDK阻害剤又は本出願の医薬が投与される場合、胃腸有害事象は減弱又は消失し得る。
【0078】
本出願において、「NCI-CTCAE」という用語は、一般に、国立癌研究所(NCI)によって発行された有害事象の標準化された定義-有害事象共通用語規準(CTCAE)を指し、癌について治療された患者における臓器毒性の重症度を記載するために使用される。科学的証拠の発達により、基準を継続的に更新することができる。本出願において、「NCI-CTCAE」の評価基準を参考にして、下痢を評価することができる場合がある。NCI-CTCAEは、任意のバージョンの「NCI-CTCAE」を含み得る。CTCAE V5.0では、表1及び表2に示すように、便秘及び下痢をそれぞれ5つのグレードに規定している。
【表1】

【表2】
【0079】
本出願において、「局所腸曝露」という用語は、化合物を説明するために使用される場合、一般に、化合物が「腸限定」又は「腸限定化合物」としても知られる全身循環に完全に曝露されるのではなく、特定の投与又は送達方法によって腸腔内で優先的に作用することを意味する。局所腸曝露は、化合物又はその誘導体の全身曝露を減少させ、所望の疾患治療に関連しない細胞、組織及び器官/器官系に対する影響を減少させ、したがって分子の安全性を改善することができる。化合物は、化合物の種類、投与経路、剤形、投与様式、投与量を調整し、デバイスなどの補助手段を使用することによって、腸管に局所的に送達され得るか又は標的化され得、それによって局所腸曝露が達成され得る。局所腸曝露のための化合物は、以下の特性の1つ以上を有する:(1)腸内標的曝露(投与様式等に起因して、)、及び(2)全身医薬濃度が最小阻害濃度(IC50)より低い。例えば、投与は、経口投与又は人工経路、例えば挿管によるものであり得る。
【0080】
本出願において、「独立して改善又は低減する」という用語は、一般に、他の医薬又は療法の助けを借りずに、本出願の医薬又は医薬組成物のみを使用することによって胃腸副作用を改善又は低減することができることを意味する。
【0081】
本出願において、「癌」という用語は、一般に、腫瘍又は悪性細胞の成長、増殖又は転移によって媒介され、固形腫瘍及び非固形腫瘍(例えば、白血病)を引き起こす任意の医学的状態を指す。本出願における癌には、悪性上皮腫瘍(上皮由来癌)、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、乳癌、皮膚癌、膀胱癌、結腸癌、胃腸(GI)癌、前立腺癌、膵臓癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、食道癌、頭頸部癌、胃癌及び咽喉癌が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0082】
発明の詳細な説明
一態様では、本出願は、対象における化学療法に関連する胃腸副作用を予防又は治療するために使用される医薬の調製におけるCDK阻害剤の使用を提供する。別の態様では、本出願は、対象における化学療法に関連する胃腸副作用を予防、軽減及び/又は治療する方法であって、CDK阻害剤を、それを必要とする対象に投与することを含む、対象における化学療法に関連する胃腸副作用を予防、軽減及び/又は治療する方法を提供する。
【0083】
CDK阻害剤
本出願において、CDK阻害剤は、CDKキナーゼのドメインに直接結合して、キナーゼの活性を遮断することができるか、又はCDKリガンドのリガンド結合部位若しくはその一部を占有するか、又はサイクリンのCDK結合部位若しくはその一部を占有して、CDKの生物学的活性を低減又は遮断する。
【0084】
本出願において、CDK阻害剤は、CDKの非特異的阻害剤であってもよく、すなわち、これらの阻害剤は、CDK以外の他の標的も阻害する。
【0085】
本出願において、CDK阻害剤は、CDKのタンパク質又はCDKのタンパク質をコードする核酸に直接作用する。いくつかの実施形態では、CDK阻害剤はCDKタンパク質に直接作用する。本出願において、阻害剤及び標的タンパク質を記載する場合、「直接作用する」という用語は、一般に、阻害剤が他の分子の助けを借りずに標的タンパク質に直接結合し得る(共有結合及び非共有結合を含む)ことを意味する。いくつかの実施形態では、CDK阻害剤は、小分子EGFR阻害剤、EGFRに特異的に結合するタンパク質高分子、RNAi又はEGFRタンパク質の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態では、CDK阻害剤は小分子CDK阻害剤であり得る。
【0086】
本出願において、CDK阻害剤は、ATP競合阻害剤、アロステリック部位阻害剤、共有結合阻害剤及び非ATP競合ポリペプチド模倣物であり得る。
【0087】
例えば、CDK阻害剤は、CDK1、CDK2、CDK3、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK9、CLK、Cdc、CDK8、CDK10、CDK12、CDK13、CDK19及びCDK11から選択される1つ以上を阻害するCDK阻害剤であってもよい。例えば、CDK阻害剤は、CDK6及びCDK4を同時に阻害することができるCDK4/6阻害剤であってもよい。例えば、CDK阻害剤は、CDK2、CDK4及びCDK6を同時に阻害することができるCDK2/4/6阻害剤であってもよい。例えば、CDK阻害剤は、CDK9、CDK4及びCDK6を同時に阻害することができるCDK4/6/9阻害剤であってもよい。
【0088】
例えば、CDK阻害剤の例は、限定されないが、トリラシクリブ、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブ、FLX-925、SHR-6390、BPI-1178、BPI-16350、FCN 437、G2T28、XZP-3287、BEBT-209、TY-302、TQB-3616、HS-10342、PF-06842874、CS-3002、MM-D37K、ゾチラシクリブ、XZP-3287、リゴサチブ、KRX-0601、リビシクリブ、ロニシクリブ、ミルシクリブ、セリシクリブ、ロスコビチン、インジスラム、アルボシジブ、NUV-422、BEY-1107、GLR-2007、FN-1501、BCD-115、TP-1287、BAY-1251152、アツベシクリブ、SEL-120、HX-301、ボルシクリブ、ファドラシクリブ、AGM-130、PHA-793887、PHA-690509、ディナシクリブ、RO4584820、R547、AT-7519、RGB-286638、ZK-304709、IIIM-290、PF-07104091及びG1T38、並びにこれらの他の塩、塩形態、結晶形態、溶媒和物及びプロドラッグであってもよい。
【0089】
CDK阻害剤は、当技術分野で周知の方法によって、例えば、試験される化合物を投与した後のCDKの発現レベル又はキナーゼの活性の変化を検出することによって、同定又はスクリーニングされ得る。CDKの発現レベル又はキナーゼの活性は、当技術分野で周知の方法、例えば、免疫組織化学、PCR、RT-PCR、インサイチュハイブリダイゼーション、サザンブロット、ウェスタンブロット、ノーザンブロット、分光光度法及びELISAなどによって検出され得る。
【0090】
化学療法
本出願において、化学療法に使用される化学療法剤は、当業者に公知のものから選択される癌を治療するために使用される任意の1種の化合物又は医薬であり得る。作用機序に関して、化学療法剤は、DNA合成阻害剤、RNA合成阻害剤、タンパク質合成阻害剤、細胞分裂阻害剤、DNA塩基類縁体、トポイソメラーゼ阻害剤及び/又はテロメラーゼ合成阻害剤を含み得る。
【0091】
本出願において、化学療法剤は細胞に対して毒性であり得る。本出願において、化学療法剤は細胞増殖を阻害し得る。本出願において、投与される化学療法剤は、DNA損傷のための化学療法剤であってもよい。本出願において、化学療法剤は、タンパク質合成阻害剤、DNA損傷化学療法剤、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、RNA合成阻害剤、DNA複合体結合剤、チオラートアルキル化剤、グアニンアルキル化剤、チューブリン結合剤、DNAポリメラーゼ阻害剤、抗癌酵素、RAC1阻害剤、チミジル酸シンテターゼ阻害剤、オキサゾホスホリン化合物、インテグリン阻害剤(シレンギチド、カンプトテシン、ホモカンプトテシン等)、葉酸代謝拮抗剤、葉酸抗代謝剤、テロメラーゼ阻害剤及び/又はテロメアDNA結合化合物である。
【0092】
例えば、アルキル化剤は、アルキルスルホナート(ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン等)、アジリジン(ベンゾジゼパ、カルボコン、メトレデパ及びウレデパ等)、エチレンイミン及びメチルメラミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスファミド、トリエチレンチオホスファミド及びトリメチロールメラミン等)、メクロレタミン(クロラムブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド、エストラムスチン、ジクロロメチルジエチルアミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド及びウラシルマスタード等)、及びニトロソ尿素(カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン及びラニムスチン等)を含み得る。他の化学療法剤は、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、マイトマイシン及びストレプトゾトシンを含み得る。化学療法のための代謝拮抗薬は、ゲムシタビン、メルカプトプリン、チオグアニン、クラドリビン、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン、シタラビン、ペントスタチン、メトトレキサート、アザチオプリン、アシクロビル、アデニンβ-1-D-アラビノシド、アメトプテリン、アミノプテリン、2-アミノプリン、アフィディコリン、8-アザグアニン、アザセリン、6-アザウラシル、2’-アジド-2’-デオキシヌクレオシド、5-ブロモデオキシシチジン、シトシンβ-1-D-アラビノシド、ジアゾキソノロールロイシン、ジデオキシヌクレオシド、5-フルオロデオキシシチジン、5-フルオロデオキシウリジン及びヒドロキシ尿素を含み得る。
【0093】
例えば、タンパク質合成阻害剤は、アブリン、オーリントリカルボン酸、クロラムフェニコール、コリシンE3、シクロヘキシミド、ジフテリア毒素、エデインA、エメチン、エリスロマイシン、エチオニン、フッ化物、5-フルオロトリプトファン、フシジン酸、メチレンビスホスホナート及びイミノ二リン酸グアニリル、カナマイシン、カスガマイシン、キロマイシン及びO-メチルトレオニンを含み得る。他のタンパク質合成阻害剤は、モデシン、ネオマイシン、ノルバリン、パクタマイシン、パロモマイシン、ピューロマイシン、リシン、志賀毒素、ショウドマイシン、スパーソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、チオストレプトトン及びトリメトプリムを含む。
【0094】
例えば、DNA合成阻害剤は、硫酸ジメチル、メクロレタミン及びサルファマスタード等のアルキル化剤;アクリジン色素、アクチノマイシン、アントラセン、ベンゾピレン、臭化エチジウム、二ヨウ化プロピジウム相互関係(propidium diiodide-intertwining)などのインターカレート剤;イリノテカン、テニポシド、クメルマイシン、ナリジクス酸、ノボビオシン、及びオキソリン酸等のトポイソメラーゼ阻害剤;デメコルシン、ミトキサントロン、コルヒチン、ビンブラスチン及びビンクリスチンを含む細胞分裂阻害剤;並びに他の医薬、例えばジスタマイシン及びネトロプシンなどを含み得る。
【0095】
本出願において、化学療法剤は、DNA複合体結合剤、例えばカンプトテシン又はエトポシド;チオラートアルキル化剤、例えばニトロソウレア、BCNU、CCNU、ACNU又はフォテスムスチン;グアニンアルキル化剤、例えばテモゾロミド;チューブリン結合剤(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ビンフルニン、クリプトフィシン52等)、ハリコンドリン(ハリコンドリンB等)、アプリシアトキシン(アプリシアトキシン10及びアプリシアトキシン15等)、ヘミアステリン(ヘミアステリンA及びヘミアステリンB等)、コルヒチン、コンブレスタチン、2-メトキシエストラジオール、E7010、パクリタキセル、ドセタキセル、エポチロン、ジスコデルモリド;DNAポリメラーゼ阻害剤、例えばシタラビン;抗癌酵素、例えばアスパラギナーゼ;RAC1阻害剤、例えば6-チオグアニン;チミジル酸シンテターゼ阻害剤、例えば、カペシタビン又は5-FU;オキサゾホスホリン化合物、例えば、エンドキサン;インテグリン阻害剤、例えばシレンギチド;葉酸代謝拮抗剤、例えばプララトレキセート;葉酸代謝拮抗剤、例えばペメトレキセド;又はカンプトテシン若しくはホモカンプトテシン、例えばジフロモテカンであってもよい。
【0096】
本出願において、CDK阻害剤は、上記の1つ以上の化学療法に関連する胃腸副作用を治療するために使用することができる。本出願において、CDK阻害剤は、以下の化学療法剤:フルオロウラシル、オキサリプラチン、イリノテカン(CPT-11)、ドセタキセル(DTX)、ゲムシタビン(GEM)、パクリタキセル、カルボプラチン、ドキソルビシン(Dox)、メトトレキサート(MTX)、シタラビン(Ara-C)、ビノレルビン(NVB)、トポテカン(TP)、エトポシド及びシスプラチン、並びに上記の任意の組み合わせの投与に関連する胃腸副作用を治療するために使用することができる。
【0097】
本出願において、CDK阻害剤は、以下の化学療法剤:フルオロウラシル、オキサリプラチン、トポテカン、イリノテカン、テトラヒドロ葉酸、ドセタキセル、ゲムシタビン、カルボプラチン、シスプラチン、エトポシド、メトトレキサート、ドキソルビシン、シタラビン、ビノレルビン及びカペシタビン、並びに上記の任意の組み合わせの投与に関連する胃腸副作用を治療するために使用することができる。
【0098】
本出願において、CDK阻害剤は、以下の化学療法剤:フルオロウラシル、オキサリプラチン、イリノテカン、ドセタキセル、ゲムシタビン、カルボプラチン、メトトレキサート、ドキソルビシン、シタラビン、ビノレルビン及びカペシタビン、並びに上記の任意の組み合わせの投与に関連する胃腸副作用を治療するために使用することができる。
【0099】
本出願において、化学療法剤は腫瘍標的化薬を含まなくてもよい。本出願において、化学療法剤は、異常に活性化されたキナーゼを阻害することによって癌細胞の分裂を防止するキナーゼ阻害剤を含まなくてもよい。本出願において、化学療法剤は、抗体及び/又は血管形成阻害剤を含まなくてもよい。
【0100】
本出願において、化学療法は連続的に投与されてもよい。例えば、化学療法は、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間又はそれを超えて連続的に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、化学療法の連続投与のための日数は7日以下である。例えば、化学療法は、2日間、3日間、4日間、5日間又は6日間連続して投与されてもよい。本出願において、化学療法の投与頻度は、1日1回、1日2回、1日3回などであってもよい。
【0101】
本出願において、化学療法は非連続的に投与されてもよい。本出願において、化学療法の投与頻度は、2日に1回、3日に1回、3日に2回などであってもよい。
【0102】
本出願において、化学療法剤の投与頻度は、1日1回であってもよく、7日未満及び/又は7日以内であってもよい。
【0103】
本出願において、化学療法剤の投与サイクルは、3日間、5日間、7日間、2週間、20日間、1ヶ月間、2ヶ月間又はそれ以上であってもよい。
【0104】
本出願において、1つ以上の異なる化学療法剤を使用してもよい。本出願において、2つ以上の異なる化学療法剤を組み合わせて使用してもよい。いくつかの実施形態では、CDK阻害剤を、1つ以上の他の癌治療と組み合わせて使用してもよい。他の癌治療は、当技術分野で癌を治療するために使用される一般的な方法、例えば、細胞傷害性抗癌剤、免疫療法抗癌剤又はホルモン療法抗癌剤であってもよい。本出願によれば、癌を治療するために使用される医薬はまた、放射線療法又は外科手術と組み合わせて使用されてもよい。いくつかの実施形態では、CDK阻害剤と他の抗癌剤との併用の場合、それらは同時に対象に投与されてもよく、又は一定の間隔で別々に投与されてもよい。
【0105】
胃腸副作用
本出願において、CDK阻害剤は、対象における化学療法の投与に関連する胃腸副作用を予防、軽減及び/又は治療することができる。本出願において、化学療法に関連する胃腸副作用は、胃腸副作用が化学療法の投与によって引き起こされ、化学療法剤の投与後に起こるか又は悪化することを意味し得る。予防又は治療の非存在下では、胃腸副作用は、化学療法剤の投与後の1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、9時間後、10時間後、11時間後、12時間後、1日後、2日後、4日後、7日後、2週間後、3週間後、1ヶ月後、2ヶ月後又はそれより後に起こるか又は悪化する。
【0106】
いくつかの実施形態では、化学療法剤を対象に投与する前に、対象は胃腸副作用を発症せず、化学療法剤を対象に投与した後、対象は胃腸副作用を発症する。
【0107】
いくつかの実施形態では、化学療法剤を対象に投与する前に、対象は胃腸副作用を発症しており、化学療法剤を対象に投与した後、対象における胃腸副作用の重症度が上昇する。
【0108】
本出願において、化学療法剤の投与後、対象の胃腸副作用の症状は、少なくとも約10%、例えば約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%又はそれ以上悪化し得る。
【0109】
例えば、NCI-CTCAEの基準に従って、対象に化学療法剤を投与後、対象における胃腸副作用(例えば、下痢、又は便秘)の重症度は、グレード1からグレード2、グレード1からグレード3、グレード1からグレード4、グレード1からグレード5、グレード2からグレード3、グレード2からグレード4、グレード2からグレード5、グレード3からグレード4、グレード3からグレード5、又はグレード4からグレード5に上昇し得る。例えば、Akinobu Kuritaの方法によれば、対象に化学療法剤を投与後、対象の便秘のスコアリングは、グレード0からグレード1、グレード0からグレード2、グレード0からグレード3、グレード1からグレード2、グレード1からグレード3又はグレード2からグレード3に上昇する。
【0110】
いくつかの実施形態では、胃腸副作用は、胃粘膜損傷疾患及び/又は腸粘膜損傷疾患を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、胃腸副作用は、下痢、腹痛、悪心、嘔吐、粘膜炎、食欲不振、胃潰瘍、胃炎、便秘、腸炎、腸穿孔、腸出血、潰瘍、及び/又は腸壊死を含む。いくつかの実施形態では、胃腸副作用は、異常な排便を含む。いくつかの実施形態では、胃腸副作用は、下痢及び/又は便秘を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、化学療法に関連する胃腸副作用は、化学療法に関連する胃粘膜損傷疾患及び/又は化学療法に関連する腸粘膜損傷疾患を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、化学療法に関連する胃腸副作用には、化学療法に関連する下痢、化学療法に関連する腹痛、化学療法に関連する悪心、化学療法に関連する嘔吐、化学療法に関連する粘膜炎、化学療法に関連する食欲不振、化学療法に関連する胃潰瘍、化学療法に関連する胃炎、化学療法に関連する便秘、化学療法に関連する腸炎、化学療法に関連する腸穿孔、化学療法に関連する腸出血、化学療法に関連する潰瘍及び/又は化学療法に関連する腸壊死が含まれる。いくつかの実施形態では、化学療法に関連する胃腸副作用は、化学療法に関連する異常な排便を含む。いくつかの実施形態では、化学療法に関連する胃腸副作用は、化学療法に関連する下痢及び/又は化学療法に関連する便秘を含む。
【0114】
本出願において、本出願のCDK阻害剤の投与後、対象における化学療法に関連する胃腸副作用の重症度が軽減される。本出願において、緩和は、一般に、対象における胃腸副作用の発生又は発症が遅延することを意味し得る。本出願において、CDK阻害剤の投与後、対象における胃腸副作用の症状が改善され得る。本出願において、CDK阻害剤の投与後、対象における胃腸副作用の症状は、少なくとも約10%、例えば約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%又はそれを超えて改善され得る。
【0115】
例えば、NCI-CTCAEの基準によれば、CDK阻害剤の投与後、対象における胃腸副作用の症状(例えば、下痢及び/又は便秘)は、グレード5からグレード4、グレード5からグレード3、グレード5からグレード2、グレード5からグレード1、グレード4からグレード3、グレード4からグレード2、グレード4からグレード1、グレード3からグレード2、グレード3からグレード1又はグレード2からグレード1に低下し得る。
【0116】
あるいは、Akinobu Kuritaの方法によれば、CDK阻害剤を投与後、対象における下痢のスコアリングは、グレード3からグレード2、グレード3からグレード1、グレード3からグレード0、グレード2からグレード1、グレード2からグレード0又はグレード1からグレード0に低下し得る。
【0117】
本出願において、CDK阻害剤の投与後、対象における胃腸副作用の症状が解消され得る。しかしながら、CDK阻害剤の投与を中止した後、胃腸副作用が再発又は再び悪化する場合を排除するものではない。
【0118】
治療方法
本明細書で使用される場合、「予防」という用語は、一般に、疾患又はその1つ以上の症状の発生、再発、又は拡散の予防を指す。本出願の文脈において、「予防」は、「予防的処置」と交換可能に使用され得る。いくつかの実施形態では、「予防」は、一般に、本出願に記載される疾患又は障害に罹患している患者に、任意の症状の発生前に本出願に記載される他の医薬を投与するか、又は投与せずに、本出願による医薬を提供する治療を指す。いくつかの実施形態では、特定の疾患の家族歴を有する患者が予防プログラムの候補であり得る。いくつかの実施形態では、再発性症状の病歴を有する患者も予防の潜在的な対象である。
【0119】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、一般に、疾患又は疾患に関連する1つ以上の症状を排除又は改善することを指す。いくつかの実施形態では、治療は、一般に、疾患に罹患している患者に1つ以上の治療剤を投与することによって疾患を排除又は改善することを指す。いくつかの実施形態では、「治療」は、特定の疾患の症状の発生後に他の治療剤(複数可)の存在下又は非存在下で医薬を投与することであり得る。
【0120】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、一般に、疾患、特にCDK阻害剤を使用することによる治療又は予防を必要とする疾患の診断、予後診断、改善、予防、軽減及び/又は治療を必要とするヒト又は非ヒト動物(哺乳動物を含む)を指す。いくつかの実施形態では、対象は、癌患者を含み得る。例えば、癌患者は、化学療法と共に投与されたことがあり得る、投与されている、及び/又は投与されることになる。
【0121】
いくつかの実施形態では、対象は、ヒト又は非ヒト哺乳動物であり得る。非ヒト哺乳動物は、ヒト以外の任意の哺乳動物種、例えば、家畜(例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、ウサギ又はウマ)、又はげっ歯類(例えば、ラット及びマウス)、又は霊長類(例えば、ゴリラ及びサル)、又は飼育動物(例えば、犬及び猫)を含み得る。「対象」は、男性であってもよく、又は女性であってもよく、異なる年齢であってもよい。
【0122】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、一般に、対象の疾患若しくは症状を改善若しくは排除することができる、又は疾患若しくは症状の発生を予防的に阻害若しくは妨げることができる医薬の量を指す。有効量は、対象において1つ以上の疾患若しくは症状をある程度改善することができる医薬の量;疾患若しくは症状の原因に関連する1つ以上の生理学的若しくは生化学的パラメータを正常に部分的若しくは完全に回復させることができる医薬の量;及び/又は疾患若しくは症状の発生の可能性を低減することができる医薬の量であり得る。
【0123】
本出願において、化学療法の投与前、例えば、化学療法の投与の0.5時間前、1時間前、2時間前、3時間前、4時間前、5時間前、6時間前、7時間前、8時間前、9時間前、10時間前、11時間前、12時間前、13時間前、14時間前、15時間前、16時間前、17時間前、18時間前、19時間前、20時間前又はそれより前に、医薬又はCDK阻害剤を投与して、胃腸副作用の発生又は悪化を予防、軽減及び/又は治療することができる。例えば、医薬又はCDK阻害剤は、胃腸副作用の発生又は悪化を予防、軽減及び/又は治療するために、化学療法の投与の0.5~12時間前に投与される。
【0124】
本出願において、CDK阻害剤の投与部位は、癌の発生部位又は癌の潜在的な転移部位であってもよいし、そうでなくてもよい。
【0125】
本出願のCDK阻害剤は、当技術分野で公知の方法で、例えば注射(例えば、皮下、腹腔内、関節内、動脈内、髄腔内、胸骨内、髄腔内、病巣内、頭蓋内、筋肉内、皮内及び静脈内注射又は注入)、又は非注射(例えば、経口、経鼻、舌下、膣、直腸、又は局所投与)によって投与され得る。本出願のCDK阻害剤は、医薬組み合わせ又はキットの形態で投与され得る。いくつかの実施形態では、本出願のCDK阻害剤は、化学療法の投与経路と同じ投与経路又は異なる経路で投与され得る。
【0126】
本出願において、医薬及び/又はCDK阻害剤は、経口投与用に調製され得る。本出願において、CDK阻害剤は、全身循環に曝露されるのではなく、腸腔内で優先的に作用し得るか、又は腸腔内に優先的に到達し得る。CDK阻害剤は、腸腔内への送達又は腸腔内での効果(例えば、胃腸副作用を予防、軽減及び/又は治療する効果)に適した剤形として調製され得る。CDK阻害剤は、それを腸腔内に送達するのに適した、又はそれが腸腔内で効果を発揮するのを促進するのに適した経路若しくは様式で投与することができるか、あるいいは装置などの補助手段を使用して、CDK阻害剤を腸腔内に送達するか、又は腸腔内でその効果を発揮させることもできる。本出願において、CDK阻害剤の全身医薬濃度は、最小阻害濃度(IC50)よりも低い。
【0127】
本出願において、医薬及び/又はCDK阻害剤は、胃腸投与のために調製され得る(例えば、散剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、乳剤及び/又は懸濁剤)。本出願において、医薬及び/又はCDK阻害剤は、経管投与に適した剤形、例えば坐剤及び/又は滴丸剤として調製され得る。本出願において、医薬及び/又はCDK阻害剤は、人工補助手段によって、例えば挿管によって胃腸管に送達されるのに適した剤形に調製され得る。
【0128】
本出願において、医薬及び/又はCDK阻害剤は、胃腸への曝露に適した剤形として調製される。胃腸曝露に適した剤形は、胃腸管に送達されるのに適した剤形、胃腸投与に適した剤形、経管投与に適した剤形、経口投与に適した剤形及び/又は人工補助手段によって胃腸管に送達されるのに適した剤形であり得る。
【0129】
本出願において、CDK阻害剤の投与量は、約0.01~1000mg/kgであってもよく、例えば、約0.01~800mg/kg、約0.01~900mg/kg、約0.01~800mg/kg、約0.01~700mg/kg、約0.01~600mg/kg、約0.01~500mg/kg、約0.01~400mg/kg、約0.01~300mg/kg、約0.01~200mg/kg、約0.01~100mg/kg、約0.1~1000mg/kg、約1~1000mg/kg、約10~1000mg/kg、約50~1000mg/kg、約100~1000mg/kg、約0.1~800mg/kg、約1~600mg/kg、約10~500mg/kg、約10~400mg/kg、約15~300mg/kg、約50~250mg/kg又は約50~200mg/kgであってもよい。
【0130】
例えば、経口投与におけるCDK阻害剤の投与量は、約0.01~1000mg/kgであってもよく、例えば、約0.01~800mg/kg、約0.01~900mg/kg、約0.01~800mg/kg、約0.01~700mg/kg、約0.01~600mg/kg、約0.01~500mg/kg、約0.01~400mg/kg、約0.01~300mg/kg、約0.01~200mg/kg、約0.01~100mg/kg、約0.1~1000mg/kg、約1~1000mg/kg、約10~1000mg/kg、約50~1000mg/kg、約100~1000mg/kg、約0.1~800mg/kg、約1~600mg/kg、約10~500mg/kg、約10~400mg/kg、約15~300mg/kg、約50~250mg/kg又は約50~200mg/kgであってもよい。
【0131】
特定の投与量は、多数回、例えば、1日に1回、1日に2回以上、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、1ヶ月に1回、又は2ヶ月以上に1回間隔で投与され得る。いくつかの実施形態では、投与量は、治療の経過とともに変化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、初期投与量は、その後の投与量よりも高くてもよい。いくつかの実施形態では、投与量は、投与対象の応答に従って治療の過程で調整される。本出願のCDK阻害剤は、対象の状態を改善するために使用される場合、必要に応じて維持用量で投与されてもよい。次いで、投与量若しくは投与頻度又はその両方を、症状が所望のレベルまで改善されたときに改善された状態を維持するためのレベルまで減少させることができる。いくつかの実施形態では、医薬は、対象の疾患の状態に応じた間隔で投与され得る。
【0132】
例えば、CDK阻害剤は、化学療法剤の投与の約0.5時間~約24時間前に投与されてもよく、経口投与されてもよく、投与量は約30~200mg/kgであってもよく、投与サイクルは、週に1回~2週間に1回であってもよい。
【0133】
例えば、CDK阻害剤は、化学療法剤の投与の約0.5時間~約24時間前に投与されてもよく、経口投与されてもよく、投与量は約50~200mg/kgであってもよく、投与サイクルは、1~2週間に1回であってもよい。
【0134】
例えば、CDK阻害剤は、化学療法剤の投与の約0.5時間~約24時間前に投与され得、経口投与され得、投与量は約30~200mg/kgであってもよく、投与サイクルは、7日ごとに1回、8日ごとに1回、9日ごとに1回、又は10日ごとに1回であってもよい。
【0135】
例えば、CDK阻害剤は、化学療法剤の投与の約0.5時間~約12時間前に投与され得、経口投与され得、投与量は約50~200mg/kgであってもよく、投与サイクルは、7日ごとに1回、8日ごとに1回、9日ごとに1回、又は10日ごとに1回であってもよい。
【0136】
例えば、CDK阻害剤は、化学療法剤の投与の約0.5時間~約12時間前に投与され得、経口投与され得、投与量は約50~100mg/kgであってもよく、投与サイクルは、7日ごとに1回、8日ごとに1回、9日ごとに1回、又は10日ごとに1回であってもよい。
【0137】
例えば、CDK阻害剤は、化学療法剤の投与の約0.5時間~約12時間前に投与され得、経口投与され得、投与量は約100~200mg/kgであってもよく、投与サイクルは、7日ごとに1回、8日ごとに1回、9日ごとに1回、又は10日ごとに1回であってもよい。
【0138】
例えば、CDK阻害剤は、化学療法剤の投与の約0.5時間~約24時間前に投与されてもよく、注射投与されてもよく、投与量は約30~200mg/kgであってもよく、投与サイクルは、週に1回~2週間に1回であってもよい。
【0139】
例えば、CDK阻害剤は、化学療法剤の投与の約0.5時間~約12時間前に投与され得、注射投与され得、投与量は約50~200mg/kgであってもよく、投与サイクルは、7日ごとに1回、8日ごとに1回、9日ごとに1回、又は10日ごとに1回であってもよい。
【0140】
本出願において、パルボシクリブは、化学療法剤の投与に関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、パルボシクリブは、化学療法剤の投与の約0.5時間~約12時間前に投与され得、パルボシクリブは、経口投与され得、投与量は、約10~200mg/kgであり得る。化学療法剤は、経口又は注射によって投与され得る。
【0141】
本出願において、パルボシクリブは、フルオロウラシル(5-Fu)の投与に関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、パルボシクリブは、フルオロウラシル(5-Fu)の投与の約0.5時間~約12時間前に投与されてもよく、パルボシクリブは、経口投与されてもよく、投与量は、約125mg/kg~約150mg/kgであってもよい。例えば、フルオロウラシル(5-Fu)は、経口投与又は注射によって投与され得る。
【0142】
本出願において、パルボシクリブは、オキサリプラチンの投与に関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、パルボシクリブは、オキサリプラチンの投与の約0.5時間~約12時間前(例えば、約6時間)に投与されてもよく、パルボシクリブは、経口投与されてもよく、投与量は、約125mg/kg~約150mg/kgであってもよい。例えば、オキサリプラチンは注射によって投与され得る。
【0143】
本出願において、パルボシクリブは、イリノテカンの投与に関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、パルボシクリブはイリノテカンの投与の約0.5時間~約24時間前に投与されてもよく、パルボシクリブは経口投与されてもよく、投与量は約50mg/kg~約200mg/kgであってもよい。例えば、イリノテカンは注射によって投与され得る。
【0144】
本出願において、パルボシクリブは、ゲムシタビンの投与に関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、パルボシクリブは、ゲムシタビンの投与の約0.5時間~約12時間前に投与されてもよく、パルボシクリブは経口投与されてもよく、投与量は約50mg/kg~約200mg/kgであってもよい。例えば、ゲムシタビンは注射によって投与され得る。
【0145】
本出願において、パルボシクリブは、ドセタキセルの投与に関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、パルボシクリブは、ドセタキセルの投与の約0.5時間~約12時間前に投与されてもよく、パルボシクリブは経口投与されてもよく、投与量は約150mg/kg~約200mg/kgであってもよい。例えば、ドセタキセルは注射によって投与され得る。
【0146】
本出願において、パルボシクリブは、ゲムシタビンとパクリタキセルの併用投与に関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、パルボシクリブは、ゲムシタビンとパクリタキセルの併用投与の約0.5時間~約12時間前に投与されてもよく、パルボシクリブは経口投与されてもよく、投与量は約150mg/kg~約200mg/kgであり得る。例えば、ゲムシタビン及びパクリタキセルは注射によって投与され得る。
【0147】
本出願において、パルボシクリブは、カペシタビンに関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、パルボシクリブは、カペシタビンの投与の約0.5時間~約12時間前に投与されてもよく、パルボシクリブは経口投与されてもよく、投与量は約150mg/kg~約200mg/kgであってもよい。例えば、カペシタビンは注射によって投与され得る。
【0148】
本出願において、パルボシクリブは、エトポシドとカルボプラチンの併用投与に関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、パルボシクリブは、エトポシドとカルボプラチンの併用投与の約0.5時間~約12時間前に投与されてもよく、パルボシクリブは経口投与されてもよく、投与量は約150mg/kg~約200mg/kgであり得る。例えば、エトポシド及びカルボプラチンは注射によって投与され得る。
【0149】
本出願において、リボシクリブは、化学療法に関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、リボシクリブは、化学療法剤の投与の約0.5時間~約24時間前に投与されてもよく、リボシクリブは、経口投与されてもよく、投与量は、約20mg/kg~約200mg/kgであってもよい。例えば、化学療法剤は、注射又は経口投与され得る。
【0150】
本出願において、リボシクリブは、フルオロウラシル(5-FU)に関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、リボシクリブは、フルオロウラシル(5-FU)の投与の約0.5時間~約12時間前に投与されてもよく、リボシクリブは、経口投与されてもよく、投与量は、約150mg/kg~約200mg/kgであってもよい。例えば、フルオロウラシル(5-FU)は注射によって投与され得る。
【0151】
本出願において、リボシクリブは、イリノテカンに関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、リボシクリブはイリノテカンの投与の約0.5時間~約24時間前に投与されてもよく、リボシクリブは経口投与されてもよく、投与量は約100mg/kg~約200mg/kgであってもよい。例えば、イリノテカンは経口投与され得る。
【0152】
本出願において、リボシクリブは、エトポシドとカルボプラチンの併用投与に関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、リボシクリブは、エトポシドとカルボプラチンの投与の約0.5時間~約12時間前に投与されてもよく、リボシクリブは経口投与されてもよく、投与量は約50mg/kg~約200mg/kgであり得る。例えば、エトポシド及びカルボプラチンは注射によって投与され得る。
【0153】
本出願において、リボシクリブは、ドセタキセル(DTX)の投与に関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、リボシクリブはドセタキセル(DTX)の投与の約0.5時間~約24時間前に投与されてもよく、リボシクリブは経口投与されてもよく、投与量は約100mg/kg~約200mg/kgであってもよい。例えば、ドセタキセル(DTX)は注射によって投与され得る。
【0154】
本出願において、アベマシクリブは、化学療法剤の投与に関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、アベマシクリブは、化学療法剤の投与の約0.5時間~約12時間前に投与されてもよく、アベマシクリブは、経口投与されてもよく、投与量は、約150mg/kg~約200mg/kgであってもよい。例えば、化学療法剤は、注射又は経口投与され得る。
【0155】
本出願において、アベマシクリブは、フルオロウラシル(5-Fu)に関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、アベマシクリブは、フルオロウラシル(5-Fu)の投与の約0.5時間~約12時間前に投与されてもよく、アベマシクリブは、経口投与されてもよく、投与量は、約150mg/kg~約200mg/kgであってもよい。例えば、カペシタビンは注射によって投与され得る。
【0156】
本出願において、アベマシクリブは、イリノテカンに関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、アベマシクリブは、イリノテカンの投与の約0.5時間~約24時間前に投与されてもよく、アベマシクリブは、経口投与されてもよく、投与量は、約10mg/kg~約200mg/kgであってもよい。例えば、イリノテカンは注射によって投与され得る。
【0157】
本出願において、ゲムシタビン(GEM)に関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために、アベマシクリブを使用することができる。例えば、アベマシクリブは、ゲムシタビン(GEM)の投与の約0.5時間~約24時間前に投与されてもよく、アベマシクリブは、経口投与されてもよく、投与量は、約150mg/kg~約200mg/kgであってもよい。例えば、ゲムシタビン(GEM)は注射によって投与され得る。
【0158】
本出願において、G1T28は、化学療法剤の投与に関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、G1T28は、化学療法剤の投与の約0.5時間~約24時間前に投与されてもよく、G1T28は、経口投与されてもよく、投与量は、約150mg/kg~約200mg/kgであってもよい。例えば、化学療法剤は、注射又は経口投与され得る。
【0159】
本出願において、G1T28は、フルオロウラシル(5-Fu)に関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、G1T28は、フルオロウラシル(5-Fu)の投与の約0.5時間~約24時間前に投与されてもよく、G1T28は、経口投与されてもよく、投与量は、約100mg/kg~約200mg/kgであってもよい。例えば、フルオロウラシル(5-Fu)は注射によって投与され得る。
【0160】
本出願において、G1T28は、トポテカンに関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、G1T28は、トポテカンの投与の約0.5時間~約12時間前に投与されてもよく、G1T28は、経口投与されてもよく、投与量は、約100mg/kg~約200mg/kgであってもよい。例えば、トポテカンは注射によって投与され得る。本出願において、G1T28は、オキサリプラチンに関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、G1T28は、オキサリプラチンの投与の約0.5時間~約24時間前に投与されてもよく、G1T28は、経口投与されてもよく、投与量は、約100mg/kg~約200mg/kgであってもよい。例えば、オキサリプラチンは注射によって投与され得る。
【0161】
本出願において、G1T28は、ゲムシタビン(GEM)に関連する胃腸副作用(例えば、下痢又は便秘)を治療するために使用することができる。例えば、G1T28は、ゲムシタビン(GEM)の投与の約0.5時間~約24時間前に投与されてもよく、G1T28は、経口投与されてもよく、投与量は、約100mg/kg~約200mg/kgであってもよい。例えば、ゲムシタビン(GEM)は注射によって投与され得る。
【0162】
本出願において、医薬は、1つ以上の薬学的に許容され得る担体を更に含み得る。薬学的に許容され得る担体としては、例えば、薬学的に許容され得る液体、ゲル又は固体担体、水性媒体、非水性媒体、抗菌物質、等張性物質、緩衝液、酸化防止剤、麻酔剤、懸濁剤/分散剤、キレート剤、乳化剤、希釈剤、アジュバント、賦形剤、非毒性補助物質、充填剤、結合剤、崩壊剤、緩衝液、保存剤、潤滑剤、香味剤、増粘剤、着色剤、乳化剤、当技術分野で周知の他の成分又は上記の様々な組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0163】
別の態様では、本出願は、CDK阻害剤を用いて化学療法に関連する胃腸副作用を予防、軽減及び/又は治療する方法を提供する。別の態様では、本出願は、化学療法に関連する胃腸副作用を予防、軽減及び/又は治療するための医薬の調製におけるCDK阻害剤の使用を提供する。別の態様では、本出願は、化学療法に関連する胃腸副作用を予防又は治療するために使用されるCDK阻害剤を提供する。いくつかの実施形態では、化学療法は、7日以上の連続投与時間を有する化学療法を含まない。いくつかの実施形態では、化学療法は腫瘍標的化療法を含まない。いくつかの実施形態では、化学療法は経口投与される。
【0164】
別の態様では、本出願は、CDK阻害剤を用いて化学療法に関連する下痢を予防、軽減及び/又は治療する方法を提供する。別の態様では、本出願は、化学療法に関連する下痢を予防、軽減及び/又は治療するための医薬の調製におけるCDK阻害剤の使用を提供する。別の態様では、本出願は、化学療法に関連する下痢を予防、軽減及び/又は治療するために使用されるCDK阻害剤を提供する。いくつかの実施形態では、化学療法は、7日以上の連続投与時間を有する化学療法を含まない。いくつかの実施形態では、化学療法は腫瘍標的化療法を含まない。いくつかの実施形態では、化学療法は経口投与される。
【0165】
別の態様では、本出願は、CDK阻害剤を用いて化学療法に関連する便秘を予防、軽減及び/又は治療する方法を提供する。別の態様では、本出願は、化学療法に関連する便秘を予防、軽減及び/又は治療するための医薬の調製におけるCDK阻害剤の使用を提供する。別の態様では、本出願は、化学療法に関連する便秘を予防、軽減及び/又は治療するために使用されるCDK阻害剤を提供する。いくつかの実施形態では、化学療法は、7日以上の連続投与時間を有する化学療法を含まない。いくつかの実施形態では、化学療法は腫瘍標的化療法を含まない。いくつかの実施形態では、化学療法は経口投与される。
【0166】
以下の例は、いかなる理論にも限定されるものではないが、本出願の様々な技術的スキームを例示するためのものに過ぎず、本出願の発明範囲を限定することを意図するものではない。
【0167】

例1~229化学療法剤による下痢に対するCDK阻害剤の経口投与の軽減効果
マウス動物モデルの構築:Balb/cマウスの化学療法剤誘発性下痢モデルを、表3に示す化学療法剤の投与様式及び頻度に従って構築した。数日間の投与後、マウスは様々な程度の下痢症状(図1に示すように、)を発症し、これはヒトにおける状態と類似していた。したがって、マウスの化学療法剤起因性下痢モデルは、化学療法剤によって引き起こされるヒトの下痢を模倣するための非常に良好なモデルである。
【0168】
Balb/cマウスに1週間給餌し、次いで、群に分けた。実験を、それぞれが10匹のマウスを含む、対照群、化学療法剤群、及びCDK阻害剤群に分けて投与実験を行い、その投与量、様式、時間及び頻度を表3に示した。対照群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を胃内投与し(時間を表3に示した)、次いで化学療法剤群で使用したものと同じ溶媒を注射/胃内投与する(投与様式を表3に示した);化学療法剤群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を胃内投与し(表3に時間を示した)、次いで、化学療法剤を注射/胃内投与する(種類、投与様式及び投与量を表3に示した);CDK阻害剤群:CDK阻害剤を胃内投与し(様式及び投与量を表3に示した)、次いで、化学療法剤を投与する(表3に時間を示した)。
【0169】
下痢の観察
下痢のスコアリングは、Akinobu Kurita(Cancer Chemother Pharmacol 2000;46:211-20.)の方法を参照することができ、グレード0:正常便;グレード1:軽度の下痢、便がわずかに湿って軟らかい;グレード2:中等度の下痢、軟便及び軽度の肛門周囲汚染;グレード3:重度の下痢、水様便、及び重度の肛門周囲の着色を伴う(図1を参照)。CDK阻害剤群のマウスの下痢グレード分類が、化学療法剤群のマウスの平均下痢グレードと比較して低下している場合、有効な寛解とする。
【0170】
マウスの下痢グレード分類を毎日観察及び記録した。実験終了時に、化学療法剤群のマウスよりも下痢グレード分類が低いCDK阻害剤群のマウスの数を記録した。表3は、化学療法剤及びCDK阻害剤の様々な動物実験の組み合わせ、並びに対応する実験結果を列挙する。(相対寛解率%=下痢が効果的に軽減されたCDK阻害剤群のマウスの数/CDK阻害剤群のマウスの総数×100%。化学療法剤群における下痢モデルの確立率は50%~70%であり、すなわち実験中に10匹のマウスのうち約5匹~7匹が下痢を発症し、個々のマウスが死亡するか又は下痢を発症しない場合があった)
【表3-1】

【表3-2】

【表3-3】

【表3-4】

【表3-5】

【表3-6】

【表3-7】

【表3-8】

【表3-9】

【表3-10】

【表3-11】

【表3-12】

【表3-13】

【表3-14】

【表3-15】
【0171】
図1は、表3の化学療法剤群のマウスの異なる下痢グレード分類を示す典型的な写真を示す。図2は、表3の対照群、化学療法剤群及びCDK阻害剤群の部分的な下痢グレード分類結果を示す。
【0172】
表3及び図2の結果から、CDK阻害剤群では、化学療法剤群と比較して、下痢グレード分類が異なる程度に軽減されていることが分かる。したがって、CDK阻害剤を予め経口投与することにより、化学療法剤による下痢を効果的に軽減することができる。
【0173】
例230~271化学療法剤による下痢に対するCDK阻害剤の経口投与の軽減効果
Balb/cマウスに1週間給餌し、次いで、群に分けた。実験を、それぞれが10匹のマウスを含む、対照群、化学療法剤群、及びCDK阻害剤群に分けて投与実験を行い、その投与量、様式、時間及び頻度を表4に示した。対照群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を胃内投与し(時間を表4に示した)、次いで化学療法剤群で使用したものと同じ溶媒を注射/胃内投与する(投与様式を表4に示した);化学療法剤群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を胃内投与し(表4に時間を示した)、次いで、化学療法剤を注射/胃内投与する(種類、投与様式及び投与量を表4に示した);CDK阻害剤群:CDK阻害剤を胃内投与し(様式及び投与量を表4に示した)、次いで、化学療法剤を投与する(表4に時間を示した)。
【0174】
下痢の観察
下痢のスコアリングは、Akinobu Kurita(Cancer Chemother Pharmacol 2000;46:211-20.)の方法を参照することができ、グレード0:正常便;グレード1:軽度の下痢、便がわずかに湿って軟らかい;グレード2:中等度の下痢、軟便及び軽度の肛門周囲汚染;グレード3:重度の下痢、水様便、及び重度の肛門周囲の着色を伴う(図1を参照)。CDK阻害剤群のマウスの下痢グレード分類が、化学療法剤群のマウスの平均下痢グレードと比較して低下している場合、有効な寛解とする。
【0175】
マウスの下痢グレード分類を毎日観察及び記録した。実験終了時に、化学療法剤群のマウスよりも下痢グレード分類が低いCDK阻害剤群のマウスの数を記録した。表4は、化学療法剤及びCDK阻害剤の様々な動物実験の組み合わせ、並びに対応する実験結果を列挙する。(相対寛解率%=下痢が効果的に軽減されたCDK阻害剤群のマウスの数/CDK阻害剤群のマウスの総数×100%。化学療法剤群における下痢モデルの確立率は50%~70%であり、すなわち実験中に10匹のマウスのうち約5匹~7匹が下痢を発症し、個々のマウスが死亡するか又は下痢を発症しない場合があった)
【表4-1】

【表4-2】
【0176】
図3は、表4の対照群、化学療法剤群及びCDK阻害剤群の部分的な下痢グレード分類結果を示す。
【0177】
表4及び図3の結果から、CDK阻害剤群では、化学療法剤群と比較して、下痢グレード分類が異なる程度に軽減されていることが分かる。したがって、CDK阻害剤を予め経口投与することにより、化学療法剤による下痢を効果的に軽減することができる。
【0178】
例272~342 化学療法剤によって引き起こされる便秘に対するCDK阻害剤の経口投与の軽減効果
マウス動物モデルの構築:Balb/cマウスの化学療法剤誘発性便秘モデルを、表5に示す化学療法剤の投与様式及び頻度に従って構築した。数日間の投与後、マウスは便量の減少(図4に示す)を示し、これはヒトにおける化学療法剤によって引き起こされる便秘の症状と一致していた。したがって、マウスの化学療法剤誘発性便秘モデルは、化学療法剤によって引き起こされる便秘を模倣するための非常に良好なモデルである。
【0179】
Balb/cマウスに1週間給餌し、次いで、群に分けた。実験を、それぞれが10匹のマウスを含む、対照群、化学療法剤群、及びCDK阻害剤群に分けて投与実験を行い、その投与量、様式、時間及び頻度を表5に示した。対照群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を胃内投与し(時間を表5に示した)、次いで化学療法剤群で使用したものと同じ溶媒を注射/胃内投与する(投与様式を表5に示した);化学療法剤群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を胃内投与し(時間を表5に示した)、次いで、化学療法剤を注射/胃内投与する(種類、投与様式及び投与量を表5に示した);CDK阻害剤群:CDK阻害剤を胃内投与し(様式及び投与量を表5に示した)、次いで、化学療法剤を投与する(表5に時間を示した)。
【0180】
便秘の観察
3時間以内のマウスの糞便を回収し、これを形状について観察し、電子天秤で秤量した。糞便減少率を、Ji Eun Kim(Lab Anim Res.2016 Dec;32(4):231-240.)の方法を参照して算出した。便減少率(%)=(対照群-化学療法剤群又はCDK阻害剤群)/対照群×100%
【0181】
CDK阻害剤群では、化学療法剤群と比較してマウスの糞便減少率が低下している場合、有効な寛解とする。
【0182】
3時間以内のマウスの糞便量を観察し、毎日記録した。実験終了時に、化学療法剤群のマウスよりも糞便減少率が低いCDK阻害剤群のマウスの数を記録した。表5は、化学療法剤及びCDK阻害剤の様々な動物実験の組み合わせ、並びに対応する実験結果を列挙する。(相対寛解率%=効果的に軽減されたCDK阻害剤群のマウスの数/CDK阻害剤群のマウスの総数×100%。化学療法剤群における便秘モデルの確立率は30%~60%であり、実験中に約10匹中3匹~6匹のマウスが便量の減少を示し、個々のマウスが死亡したり、便量の変化や増加がない場合があった)。
【表5-1】

【表5-2】

【表5-3】

【表5-4】
【0183】
図4は、表5の対照群、化学療法剤群及びCDK阻害剤群の3時間以内の便量を示す代表的な写真である。図5は、表5の対照群、化学療法剤群及びCDK阻害剤群の一部の大便減少率の結果を示す。
【0184】
表5及び図4~5の結果から、CDK阻害剤群では、化学療法剤群と比較して、便減少率が異なる程度に減少されていることが分かる。したがって、CDK阻害剤を予め経口投与することにより、化学療法剤による便秘を効果的に軽減することができる。
【0185】
例343~381 CDK阻害剤の経口投与及びCDK阻害剤の静脈内注射の両方が、化学療法剤によって引き起こされる下痢を軽減することができる
Balb/cマウスに1週間給餌し、次いで、群に分けた。実験を、それぞれ10匹のマウスを含む対照群、化学療法剤群、CDK阻害剤の経口投与群、及びCDK阻害剤の静脈内注射群に分けて投与実験を行い、投与量、様式、時間及び頻度を表6に示した。対照群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を注射/胃内投与し(時間を表6に示した)、次いで化学療法剤群で使用したものと同じ溶媒を注射/胃内投与する(投与様式を表6に示した);化学療法剤群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を注射/胃内投与し(表6に時間を示した)、次いで、化学療法剤を注射/胃内投与する(種類、投与様式及び投与量を表6に示した);CDK阻害剤の経口投与群:CDK阻害剤を胃内投与し(様式及び投与量を表6に示した)、次いで、化学療法剤を投与する(表6に時間を示した);CDK阻害剤の静脈内注射群:尾静脈からCDK阻害剤を注射し(時間を表6に示した)、次いで、化学療法剤を投与する(様式及び投与量を表6に示した)。
【0186】
下痢の観察
下痢のスコアリングは、Akinobu Kurita(Cancer Chemother Pharmacol 2000;46:211-20.)の方法を参照することができ、グレード0:正常便;グレード1:軽度の下痢、便がわずかに湿って軟らかい;グレード2:中等度の下痢、軟便及び軽度の肛門周囲汚染;グレード3:重度の下痢、水様便、及び重度の肛門周囲の着色を伴う(図1を参照)。CDK阻害剤の経口投与群/CDK阻害剤の静脈内注射群のマウスの下痢グレード分類が、化学療法剤群のマウスの平均下痢グレード分類と比較して低下している場合、有効な寛解とする。
【0187】
マウスの下痢グレード分類を毎日観察及び記録した。実験終了時に、CDK阻害剤の経口投与群/CDK阻害剤の静脈内注射群において、化学療法剤群に比べて下痢グレード分類が低いマウスの数を記録した。表6は、化学療法剤及びCDK阻害剤の様々な動物実験の組み合わせ、並びに対応する実験結果を列挙する。(相対寛解率%=下痢が効果的に軽減されたCDK阻害剤の経口投与又は静脈内注射群のマウス数/CDK阻害剤の経口投与又は静脈内注射群のマウス総数×100%。化学療法剤群における下痢モデルの確立率は50%~70%であり、すなわち実験中に10匹のマウスのうち約5匹~7匹が下痢を発症し、個々のマウスが死亡するか又は下痢を発症しない場合があった)
【表6-1】

【表6-2】

【表6-3】
【0188】
図6は、表6中の対照群、化学療法剤群、CDK阻害剤の経口投与群及びCDK阻害剤の静脈内注射群の典型的な下痢グレード分類の結果を示す。表6及び図6から、パルボシクリブ、アベマシクリブ、トリラシクリブ、リボシクリブ、SHR-6390、ディナシクリブ、KR-0601、リビシクリブの経口投与及び注射投与はいずれも、エトポシド、シスプラチンと組み合わせたエトポシド、カルボプラチン、ゲムシタビン、カルボプラチンと組み合わせたゲムシタビン、及びトポテカンによって引き起こされる下痢を効果的に軽減することができ、経口投与が最も顕著な効果を有することが分かる。
【0189】
例382~405 CDK阻害剤の様々な投与様式は、化学療法剤によって引き起こされる下痢を軽減することができる
Balb/cマウスに1週間給餌し、次いで、群に分けた。実験を、それぞれが10匹のマウスを含む対照群、化学療法剤群、CDK阻害剤群(CDK阻害剤の経口投与群、CDK阻害剤の腹腔内注射群、CDK阻害剤の筋肉内注射群、CDK阻害剤の局所投与群を含む)に分けて投与実験を行い、その投与量、様式、時間及び頻度を表7に示した。対照群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を投与し(時間及び様式を表7に示した)、次いで化学療法剤群で使用したものと同じ溶媒を注射/胃内投与する(投与様式を表7に示した);化学療法剤群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を投与し(時間及び様式を表7示した)、次いで、化学療法剤を注射/胃内投与する(種類、投与様式、及び投与量を表7に示した);CDK阻害剤の経口投与群:CDK阻害剤を胃内投与し(時間を表7に示す)、次いで、化学療法剤を投与する(様式及び投与量を表7に示す);CDK阻害剤の腹腔内注射群:CDK阻害剤を腹腔内注射し(時間を表7に示す)、次いで、化学療法剤を投与する(様式及び投与量を表7に示す);CDK阻害剤の筋肉内注射群:CDK阻害剤を筋肉内注射し(時間を表7に示す)、次いで、化学療法剤を投与する(様式及び投与量を表7に示す);及びCDK阻害剤の局所投与群:マウスの腹部の毛を剃毛(約2cm×2cm)し、CDK阻害剤を塗布し(時間を表7に示す)、次いで、化学療法剤を投与する(様式及び投与量を表7に示す)。
【0190】
下痢の観察
下痢のスコアリングは、Akinobu Kurita(Cancer Chemother Pharmacol 2000;46:211-20.)の方法を参照することができ、グレード0:正常便;グレード1:軽度の下痢、便がわずかに湿って軟らかい;グレード2:中等度の下痢、軟便及び軽度の肛門周囲汚染;グレード3:重度の下痢、水様便、及び重度の肛門周囲の着色を伴う(図1を参照)。CDK阻害剤群のマウスの下痢グレード分類が、化学療法剤群のマウスの平均下痢グレードと比較して低下している場合、有効な寛解とする。
【0191】
マウスの下痢グレード分類を毎日観察及び記録した。実験終了時に、化学療法剤群のマウスよりも下痢グレード分類が低いCDK阻害剤群のマウスの数を記録した。表7は、化学療法剤及びCDK阻害剤の様々な動物実験の組み合わせ、並びに対応する実験結果を列挙する。(相対寛解率%=下痢が効果的に軽減されたCDK阻害剤群のマウスの数/CDK阻害剤群のマウスの総数×100%。化学療法剤群における下痢モデルの確立率は50%~70%であり、すなわち実験中に10匹のマウスのうち約5匹~7匹が下痢を発症し、個々のマウスが死亡するか又は下痢を発症しない場合があった)
【表7-1】

【表7-2】
【0192】
図7は、表7中の対照群、化学療法剤群、CDK阻害剤の経口投与群、及びCDK阻害剤の他の投与様式群の下痢グレード分類結果の比較を示す。
【0193】
表7及び図7の結果から、特定の条件下でのパルボシクリブ、アベマシクリブ、トリラシクリブ、リボシクリブ、SHR-6390の経口投与、注射投与及び局所投与はいずれも、ドセタキセル、カルボプラチン、ゲムシタビン、及びゲムシタビンとカルボプラチンの組み合わせによって引き起こされる下痢を軽減することができ、経口投与の効果が最も顕著であることが分かる。
【0194】
例406~443 CDK阻害剤の様々な投与様式は、化学療法剤によって引き起こされる便秘を軽減することができる
Balb/cマウスに1週間給餌し、次いで、群に分けた。実験を、それぞれが10匹のマウスを含む対照群、化学療法剤群、CDK阻害剤群(CDK阻害剤の経口投与群、CDK阻害剤の静脈内注射群、CDK阻害剤の腹腔内注射群、CDK阻害剤の筋肉内注射群、CDK阻害剤の局所投与群を含む)に分けて投与実験を行い、その投与量、様式、時間及び頻度を表8に示した。対照群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を投与し(時間及び様式を表8に示した)、次いで化学療法剤群で使用したものと同じ溶媒を注射/胃内投与する(投与様式を表8に示した);化学療法剤群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を投与し(時間及び様式を表8に示した)、次いで、化学療法剤を注射/胃内投与する(種類、投与様式及び投与量を表8に示した);CDK阻害剤の経口投与群:CDK阻害剤を胃内投与し(時間を表8に示した)、次いで、化学療法剤を投与する(様式及び投与量を表8に示した);CDK阻害剤の静脈内注射群:尾静脈よりCDK阻害剤を注射し(時間を表8に示した)、次いで、化学療法剤を投与する(様式及び投与量を表8に示した);CDK阻害剤の腹腔内注射群:CDK阻害剤を腹腔内注射した(時刻を表8に示した)、次いで、化学療法剤を投与する(様式及び投与量を表8に示した);CDK阻害剤の筋肉内注射群:CDK阻害剤を筋肉内注射し(時刻を表8に示した)、次いで、化学療法剤を投与する(様式及び投与量を表8に示す);及びCDK阻害剤の局所投与群:マウスの腹部の毛を剃毛(約2cm×2cm)し、CDK阻害剤を塗布し(時間を表8に示した)、次いで、化学療法剤を投与する(様式及び投与量を表8に示した)。
【0195】
便秘の観察
3時間以内のマウスの糞便を回収し、これを形状について観察し、電子天秤で秤量した。糞便減少率を、Ji Eun Kim(Lab Anim Res.2016 Dec;32(4):231-240.)の方法を参照して算出した。便減少率(%)=(対照群-化学療法剤群又はCDK阻害剤群)/対照群×100%
【0196】
CDK阻害剤群では、化学療法剤群と比較してマウスの糞便減少率が低下している場合、有効な寛解とする。
【0197】
3時間以内のマウスの糞便量を観察し、毎日記録した。実験終了時に、化学療法剤群のマウスよりも糞便減少率が低いCDK阻害剤群のマウスの数を記録した。表8は、化学療法剤及びCDK阻害剤の様々な動物実験の組み合わせ、並びに対応する実験結果を列挙する。(相対寛解率%=効果的に軽減されたCDK阻害剤群のマウスの数/CDK阻害剤群のマウスの総数×100%。化学療法剤群における便秘モデルの確立率は30%~60%であり、実験中に約10匹中3匹~6匹のマウスが便量の減少を示し、個々のマウスが死亡したり、便量の変化や増加がない場合があった)。
【表8-1】

【表8-2】

【表8-3】
【0198】
図8は、表8中の対照群、化学療法剤群、CDK阻害剤の経口投与群、及びCDK阻害剤の他の投与様式の群の糞便減少率結果の比較を示す。
【0199】
表8及び図8の結果から、パルボシクリブ、アベマシクリブ、トリラシクリブ、リボシクリブ、SHR-6390、ドニシクリブ、セリシクリブの一定条件下での経口投与、腹腔内注射、筋肉内注射、局所投与はいずれも、ドキソルビシン、エトポシド、エトポシドとシスプラチンとの組み合わせ、カルボプラチン、ゲムシタビン、ゲムシタビンとカルボプラチンとの組み合わせによって引き起こされる便秘を有意に改善することができ、経口投与の軽減効果が最も顕著であることが分かる。
【0200】
例444~469化学療法剤の連続投与による下痢に対するCDK阻害剤の経口投与の軽減効果
Balb/cマウスに1週間給餌し、次いで、群に分けた。実験を、それぞれが10匹のマウスを含む、対照群、化学療法剤群、及びCDK阻害剤群に分けて投与実験を行い、その投与量、様式、時間及び頻度を表9に示した。対照群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を胃内投与し(時間を表9に示した)、次いで化学療法剤群で使用したものと同じ溶媒を注射/胃内投与する(投与様式を表9に示した);化学療法剤群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を胃内投与し(時間を表9に示した)、次いで、化学療法剤を注射/胃内投与する(種類、投与様式、投与量及び持続時間を表9に示した);CDK阻害剤群:CDK阻害剤を胃内投与し(種類、投与様式、投与量及び持続時間を表9に示した)、次いで、化学療法剤を投与する(表9に時間を示した)。
【0201】
下痢の観察
下痢のスコアリングは、Akinobu Kurita(Cancer Chemother Pharmacol 2000;46:211-20.)の方法を参照することができ、グレード0:正常便;グレード1:軽度の下痢、便がわずかに湿って軟らかい;グレード2:中等度の下痢、軟便及び軽度の肛門周囲汚染;グレード3:重度の下痢、水様便、及び重度の肛門周囲の着色を伴う(図1を参照)。CDK阻害剤群のマウスの下痢グレード分類が、化学療法剤群のマウスの平均下痢グレードと比較して低下している場合、有効な寛解とする。
【0202】
マウスの下痢グレード分類を毎日観察及び記録した。実験終了時に、化学療法剤群のマウスよりも下痢グレード分類が低いCDK阻害剤群のマウスの数を記録した。表9は、化学療法剤及びCDK阻害剤の様々な動物実験の組み合わせ、並びに対応する実験結果を列挙する。(相対寛解率%=下痢が効果的に軽減されたCDK阻害剤群のマウスの数/CDK阻害剤群のマウスの総数×100%。化学療法剤群における下痢モデルの確立率は50%~80%であり、すなわち実験中に10匹のマウスのうち約5匹~8匹が下痢を発症し、個々のマウスが死亡するか又は下痢を発症しない場合があった)
【表9-1】

【表9-2】
【0203】
図9は、表9の対照群、化学療法剤群及びCDK阻害剤群における下痢グレード分類の部分的結果の比較を示す。
【0204】
表9及び図9から、パルボシクリブ、アベマシクリブ、トリラシクリブ、及びリボシクリブはいずれも、7日未満のフルオロウラシルの連続投与によって引き起こされる下痢に対して有意な軽減効果を有するが、7日以上のフルオロウラシル及びカペシタビンの連続投与によって引き起こされる下痢に対するそれらの軽減効果は有意ではないことが分かる。
【0205】
例470~481化学療法剤の連続投与による便秘に対するCDK阻害剤の経口投与の軽減効果
Balb/cマウスに1週間給餌し、次いで、群に分けた。実験を、それぞれが10匹のマウスを含む、対照群、化学療法剤群、及びCDK阻害剤群に分けて投与実験を行い、その投与量、様式、時間及び頻度を表10に示した。対照群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を胃内投与し(時間を表10に示した)、次いで化学療法剤群で使用したものと同じ溶媒を注射/胃内投与する(投与様式を表10に示した);化学療法剤群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を胃内投与し(表10に時間を示した)、次いで、化学療法剤を注射/胃内投与する(種類、投与様式、投与量及び持続時間を表10に示した);CDK阻害剤群:CDK阻害剤を胃内投与し(種類、投与様式、投与量及び持続時間を表10に示した)、次いで、化学療法剤を投与する(表10に時間を示した)。
【0206】
便秘の観察
3時間以内のマウスの糞便を回収し、これを形状について観察し、電子天秤で秤量した。糞便減少率を、Ji Eun Kim(Lab Anim Res.2016 Dec;32(4):231-240.)の方法を参照して算出した。便減少率(%)=(対照群-化学療法剤群又はCDK阻害剤群)/対照群×100%
【0207】
CDK阻害剤群では、化学療法剤群と比較してマウスの糞便減少率が低下している場合、有効な寛解とする。
【0208】
3時間以内のマウスの糞便量を観察し、毎日記録した。実験終了時に、化学療法剤群のマウスよりも糞便減少率が低いCDK阻害剤群のマウスの数を記録した。表10は、化学療法剤及びCDK阻害剤の様々な動物実験の組み合わせ、並びに対応する実験結果を列挙する。(相対寛解率%=効果的に軽減されたCDK阻害剤群のマウスの数/CDK阻害剤群のマウスの総数×100%。化学療法剤群における便秘モデルの確立率は30%~60%であり、実験中に約10匹中3匹~6匹のマウスが便量の減少を示し、個々のマウスが死亡したり、便量の変化や増加がない場合があった)。
【表10】
【0209】
図10は、表10の対照群、化学療法剤群及びCDK阻害剤群の一部の大便減少率の結果を示す。
【0210】
表10及び図10から、パルボシクリブは、一定条件下で経口投与した場合、7日間未満のフルオロウラシルの連続投与による便秘の有意な軽減効果を有するが、7日間以上のフルオロウラシルの連続投与による下痢の軽減効果は有意ではないことが分かる。
【0211】
例482~485他の抗腫瘍薬によって引き起こされる下痢に対するCDK阻害剤の経口投与の軽減効果
Balb/cマウスに1週間給餌し、次いで、群に分けた。実験を、それぞれが10匹のマウスを含む、対照群、抗腫瘍薬群、及びCDK阻害剤群に分けて投与実験を行い、その投与量、様式、時間及び頻度を表11に示した。対照群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を胃内投与し(時間を表11に示した)、次いで抗腫瘍薬群で使用したものと同じ溶媒を注射/胃内投与する(投与様式を表11に示した);抗腫瘍薬群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を胃内投与し(時間を表11に示した)、次いで、抗腫瘍薬を注射/胃内投与する(種類、投与様式、投与量及び持続時間を表11に示した);CDK阻害剤群:CDK阻害剤を胃内投与し(種類、投与様式、投与量及び持続時間を表11に示した)、次いで、抗腫瘍薬を投与する(時間を表11に示した)。
【0212】
下痢の観察
下痢のスコアリングは、Akinobu Kurita(Cancer Chemother Pharmacol 2000;46:211-20.)の方法を参照することができ、グレード0:正常便;グレード1:軽度の下痢、便がわずかに湿って軟らかい;グレード2:中等度の下痢、軟便及び軽度の肛門周囲汚染;グレード3:重度の下痢、水様便、及び重度の肛門周囲の着色を伴う(図1を参照)。CDK阻害剤群のマウスの下痢グレード分類が、抗腫瘍薬群のマウスの平均下痢グレード分類と比較して低下している場合、有効な寛解とする。
【0213】
マウスの下痢グレード分類を毎日観察及び記録した。実験終了時に、抗腫瘍薬群のマウスよりも下痢グレード分類が低いCDK阻害剤群のマウスの数を記録した。表11は、抗腫瘍薬及びCDK阻害剤の様々な動物実験の組み合わせ、並びに対応する実験結果を列挙する。(相対寛解率%=下痢が効果的に軽減されたCDK阻害剤群のマウスの数/CDK阻害剤群のマウスの総数×100%。化学療法剤群における下痢モデルの確立率は50%~80%であり、すなわち実験中に10匹のマウスのうち約5匹~8匹が下痢を発症し、個々のマウスが死亡するか又は下痢を発症しない場合があった)
【表11】
【0214】
表11の実験結果から、CDK阻害剤は、標的抗腫瘍薬の連続投与によって引き起こされる下痢の軽減効果を有さないことが分かる。
【0215】
例486~487 他の抗腫瘍薬によって引き起こされる便秘に対するCDK阻害剤の経口投与の軽減効果
Balb/cマウスに1週間給餌し、次いで、群に分けた。実験を、それぞれが10匹のマウスを含む、対照群、抗腫瘍薬群、及びCDK阻害剤群に分けて投与実験を行い、その投与量、様式、時間及び頻度を表12に示した。対照群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を胃内投与し(時間を表12に示した)、次いで抗腫瘍薬群で使用したものと同じ溶媒を注射/胃内投与する(投与様式を表12に示した);抗腫瘍薬群:CDK阻害剤群で使用したものと同じ溶媒を胃内投与し(時間を表12に示した)、次いで、抗腫瘍薬を注射/胃内投与する(種類、投与様式、投与量及び持続時間を表12に示した);CDK阻害剤群:CDK阻害剤を胃内投与し(種類、投与様式、投与量及び持続時間を表12に示した)、次いで、抗腫瘍薬を投与する(時間を表12に示した)。
【0216】
便秘の観察
3時間以内のマウスの糞便を回収し、これを形状について観察し、電子天秤で秤量した。糞便減少率を、Ji Eun Kim(Lab Anim Res.2016 Dec;32(4):231-240.)の方法を参照して算出した。便減少率(%)=(対照群-抗腫瘍薬群又はCDK阻害剤群)/対照群×100%
【0217】
CDK阻害剤群では、抗腫瘍薬群と比較してマウスの糞便減少率が低下している場合、有効な寛解とする。
【0218】
3時間以内のマウスの糞便量を観察し、毎日記録した。実験終了時に、抗腫瘍薬群のマウスよりも糞便減少率が低いCDK阻害剤群のマウスの数を記録した。表12は、抗腫瘍薬及びCDK阻害剤の様々な動物実験の組み合わせ、並びに対応する実験結果を列挙する。(相対寛解率%=効果的に軽減されたCDK阻害剤群のマウスの数/CDK阻害剤群のマウスの総数×100%。化学療法剤群における便秘モデルの確立率は30%~50%であり、実験中に約10匹中3匹~5匹のマウスが便量の減少を示し、個々のマウスが死亡したり、便量の変化や増加がない場合があった)。
【表12】
【0219】
表12の実験結果から、CDK阻害剤は、標的抗腫瘍薬の連続投与によって引き起こされる便秘の軽減効果を有さないことが分かる。
【0220】
前述の詳細な説明は、説明及び例によって提供されるが、添付の特許請求の範囲を限定することを意図しない。本出願に列挙された実施形態に対する様々な変更は、現在、当業者に明らかであり、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等範囲に保持される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】