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特表2024-520799ギ酸を含む過飽和溶液中のAPIの噴霧乾燥
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  • 特表-ギ酸を含む過飽和溶液中のAPIの噴霧乾燥 図1
  • 特表-ギ酸を含む過飽和溶液中のAPIの噴霧乾燥 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ギ酸を含む過飽和溶液中のAPIの噴霧乾燥
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/14 20060101AFI20240517BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240517BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/34
A61K31/506
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575798
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2022065703
(87)【国際公開番号】W WO2022258759
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】63/209,095
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21179380.7
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591192661
【氏名又は名称】ロンザ・ベンド・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・モルゲン
(72)【発明者】
【氏名】モリー・アダム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・バウマン
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン・ベネット
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・グラス
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレン・ミラー
(72)【発明者】
【氏名】アマンダ・プランツァ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・リーガン
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィット・ヴォダーク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076CC27
4C076EE07
4C076EE11
4C076EE12
4C076EE16
4C076EE32
4C076EE33A
4C076EE48
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA43
4C086NA20
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、活性医薬成分(API)及び分散ポリマー(DISPPOL)を含む噴霧乾燥固体分散体(SDD)の調製のための方法を開示し、噴霧乾燥は、2つの溶媒を含む溶媒混合物中のAPIの過飽和溶液で行われ、この過飽和溶液は、DISPPOLを更に含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性薬剤AA及び分散ポリマーDISPPOLを含む噴霧乾燥固体分散体SDDを調製するための方法SPRAYDRYであって、
前記方法SPRAYDRYが、
●第1の溶媒SOL1中のAAの溶液SOLUTION1を提供することと、
●SOLUTION1を第2の溶媒SOL2と混合して、溶液SUPSATSOLを提供することと、
●噴霧乾燥機内でSUPSATSOLを噴霧乾燥することと、を含み、
AAが、薬物、薬品、医薬、治療薬、栄養補助食品、又は活性医薬成分であり、
SUPSATSOLが、溶媒混合物SOLMIX及びAAを含み、SOLMIXが、SOL1及びSOL2の混合物であり、
SUPSATSOLが、SOLMIX中のAAの過飽和溶液であり、
SUPSATSOLが、固体形態のAAを含有せず、
DISPPOLが、SOLUTION1とSOL2との混合前に、SOLUTION1中、SOL2中、又はそれらの両方の中に含有され、
SOL1が、90~100重量%のギ酸を含み、前記重量%が、SOL1の重量に基づき、
AAが、SOL1、SOL2及びSOLMIX中で安定である、方法SPRAYDRY。
【請求項2】
DISPPOLが、薬学的に許容される分散ポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
DISPPOLが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリレート)、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
DISPPOLが、HPMCAS又はPVP-VAである、請求項1~3のうちの一項以上に記載の方法。
【請求項5】
SOL1が、ギ酸からなる、請求項1~4のうちの一項以上に記載の方法。
【請求項6】
SOL2が、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アセトン、2-ブタノン、THF、酢酸メチル、酢酸エチル、ジクロロメタン、1,3-ジオキソラン、又はそれらの混合物を含む、請求項1~5のうちの一項以上に記載の方法。
【請求項7】
SOL2が、メタノール、エタノール、アセトン、又はそれらの混合物を含む、請求項1~6のうちの一項以上に記載の方法。
【請求項8】
SUPSATSOLが、SOLUTION1とMIXSOL2DISPPOL又はSOL2とを混合することによって調製されるとき、SOL1:SOL2の量の比(w:w)が、1:1~1:20である、請求項1~7のうちの一項以上に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性医薬成分(API)及び分散ポリマー(DISPPOL)を含む噴霧乾燥固体分散体(SDD)の調製のための方法を開示し、噴霧乾燥は、2つの溶媒を含む溶媒混合物中のAPIの過飽和溶液で行われ、2つの溶媒のうちの1つは、ギ酸であり、この過飽和溶液は、DISPPOLを更に含む。
【背景技術】
【0002】
活性医薬成分(API)及び分散ポリマー(DISPPOL)を含む噴霧乾燥固体分散体(SDD)は、典型的に、分散ポリマー及びAPIを、メタノール若しくはアセトンなどの揮発性溶媒中、又は溶媒混合物中に溶解させ、続いて噴霧乾燥することによって生成される。噴霧乾燥溶媒中のAPIの溶解度が限られている場合、例えば、室温で4重量%未満の場合、API懸濁液を、大気圧での溶媒の沸点より低い温度又は高い温度のいずれかまで加熱することができ、これは、「高温噴霧乾燥プロセス」として既知であり、APIのより高い溶解濃度をもたらす。場合によっては、温度がより高くても、噴霧乾燥プロセスほど経済的である適切なAPI濃度が得られず、又はAPIの化学的分解、若しくは熱交換器内でのAPI溶解の不完全な可能性などの他の問題を引き起こす。代替の好ましくない揮発性溶媒は、APIの溶解度を改善することができるが、これらの溶媒には、例えば、高コスト、毒性、機器適合性の悪さ、商業的入手可能性の低さ、高い廃棄コスト、十分に低レベルまで除去を行う課題という、それらをあまり望ましくなくさせる、他の欠点を有する。
【0003】
懸濁液の噴霧乾燥は、懸濁液が噴霧乾燥機のノズルを詰まらせる可能性があるため、通常、避けられる。更に、噴霧乾燥の意図が、分散ポリマー中のAPIの非晶質固体分散体(ASD)の提供である場合、この目標は、API及び分散ポリマーの両方を、それらの両方が噴霧乾燥混合物中に販売時の形態で存在しないように、噴霧乾燥溶媒中に溶解させるときに最良に達成され、それによって、ASDと分散ポリマーとの所望の密接で均質な非晶質混合物が最良に得られる。
【0004】
WO2019/220282A1は、実施例1において、メタノール中のエルロチニブ及び分散ポリマー(PMMAMA又はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートHグレード)の溶液を噴霧乾燥して、噴霧乾燥分散体を提供することを開示している。
【0005】
US2020/0261449A1は、メタノール中の酒石酸ニロチニブ、HPMC-AS、及び酒石酸の混合物の噴霧乾燥を開示している。
【0006】
US2019/0083629A1は、APIとしてのベムラフェニブ又はイトラコナゾランと、賦形剤としてのBSAと、メタノールと、ギ酸との混合物の噴霧乾燥を開示している。
【0007】
API及び分散ポリマーの噴霧乾燥固体分散体を調製するための方法に対する必要性があり、この方法では、容易に処理可能な噴霧乾燥溶媒中にAPIを適度な温度、すなわち、大気圧での沸点を下回る温度で、十分な高濃度で溶解させることが可能になり、SDDの経済的なスループットが可能になる。SDDは、より長期間にわたって安定している必要がある。
【0008】
ギ酸中にAPIを高濃度まで溶解させ、それによって、比較的高い粘度を有するギ酸中のAPIの溶液を提供し、次いで、このAPI溶液を、比較的低い粘度を有し(例えば、メタノール、エタノール、又はアセトン)、所望の分散ポリマーを含有する好ましい噴霧乾燥溶媒を用いて、分散ポリマーを含有し、かなり低い粘度を有し、かつ効率的に噴霧乾燥することができる溶媒混合物中のAPIの準安定な過飽和溶液をもたらす比で希釈することを含む、溶媒シフト経路が見出された。溶媒混合物中のAPIの準安定な過飽和溶液は、APIが溶解状態で溶媒混合物中に存在し、固体APIは存在しないことを意味し、過飽和溶液中では、APIは、熱力学的平衡濃度を超える濃度で存在する。
【0009】
そのような過飽和溶液は、単にAPIを混合溶媒に添加することによって調製することはできず、それは、それぞれ、溶解API及び分散ポリマーを含有する2つの溶媒を混合することによって生成されなければならない。ギ酸中のAPIの溶液を好ましい噴霧乾燥溶媒で希釈することによって、得られる準安定な過飽和溶液の粘度を、ギ酸中のAPIの溶液の粘度よりも顕著に低くなるように選択され得ることが、利点であり、それは、粘度が、ある程度、純粋な好ましい噴霧乾燥溶媒中の溶液の粘度の範囲内にあることを意味する。溶媒シフト経路の別の利点は、噴霧乾燥溶液中のAPIの熱力学的最大溶解度と比較して、噴霧乾燥溶液中の溶解APIの濃度をより高くすることを可能にし、API、特に典型的な噴霧乾燥溶媒中への溶解度がかなり低いAPIのSDDの製造のための、より高い噴霧乾燥効率及びより高いスループットをもたらすことである。噴霧乾燥溶液中のより高いAPI及び分散ポリマー濃度では、噴霧乾燥粒子の特性の向上、例えば、剤形製造又は生成物回収に利点をもたらすより大きい粒子もまた可能になり得る。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【発明の概要】
【0010】
本発明の主題は、活性薬剤AA及び分散ポリマーDISPPOLを含む噴霧乾燥固体分散体SDDを調製するための方法SPRAYDRYであって、
方法SPRAYDRYが、
●第1の溶媒SOL1中のAAの溶液SOLUTION1を提供することと、
●SOLUTION1を第2の溶媒SOL2と混合して、溶液SUPSATSOLを提供することと、
●噴霧乾燥機内でSUPSATSOLを噴霧乾燥することと、を含み、
AAが、薬物、薬品、医薬、治療薬、栄養補助食品、又は活性医薬成分であり、
SUPSATSOLが、溶媒混合物SOLMIX及びAAを含み、SOLMIXが、SOL1及びSOL2の混合物であり、
SUPSATSOLが、SOLMIX中のAAの過飽和溶液であり、
SUPSATSOLが、固体形態のAAを含有せず、
DISPPOLが、SOLUTION1とSOL2との混合前に、SOLUTION1中、SOL2中、又はそれらの両方の中に含有され、
SOL1が、90~100重量%のギ酸を含み、重量%が、SOL1の重量に基づき、
AAが、SOL1、SOL2及びSOLMIX中で安定である、方法SPRAYDRYである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】HPMCAS-MG中のニロチニブ分散体を表す、SDDの非晶質性を示す、PXRD回折図。
図2】ギ酸及びメタノールの様々な混合物中のHPMCAS-M溶液の粘度。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の意味での過飽和とは、所与の温度、とりわけSUPSATSOLが噴霧乾燥機内に供給されるときのSUPSATSOLの温度で、SOLMIX中のAAの飽和溶液の濃度を上回るSOLMIX中のAAの濃度を意味し、したがって、SOLMIX中のAAの濃度は、SOLMIX中のAAのそれぞれの熱力学的平衡濃度を上回る。SUPSATSOLは、SOLMIX中のAAの準安定な過飽和溶液である。本発明の意味での準安定とは、SUPSATSOLの調製とその噴霧乾燥との間に、AAがSUPSATSOLから沈殿しないことを意味する。
【0013】
したがって、AAは、完全に溶解した状態でSUPSATSOL中に存在する。SUPSATSOLは、固体形態のAAを含有しない。
【0014】
SUPSATSOLは、1つの液相のみを有する。
【0015】
AA、SOLMIX、及びDISPPOLの量は、それぞれ選択することができる。SUPSATSOL中のAAの過飽和はまた、SOLMIX中のAAの溶解度と比較して表すこともでき、SUPSATSOL中に溶解したAAの濃度は、SOLMIX中のAAの飽和溶液中のAAの濃度、すなわち、所与の温度、とりわけSUPSATSOLが噴霧乾燥機内に供給されるときのSUPSATSOLの温度でのSOLMIX中のAAの溶解度の、少なくとも1.1倍、好ましくは少なくとも1.25倍、より好ましくは少なくとも1.5倍、更により好ましくは少なくとも1.75倍、特には少なくとも2倍、より特には少なくとも2.5倍、更により特には少なくとも3倍、具体的には少なくとも4倍、より具体的には少なくとも5倍、更により具体的な場合には少なくとも10倍であってもよい。
【0016】
SUPSATSOL中のAAの可能な量は、0.5重量%~10重量%、好ましくは1重量%~7.5重量%、より好ましくは1重量%~5重量%であってもよく、重量%は、SUPSATSOLの重量に基づく。
【0017】
SOLUTION1とSOL2との混合前にSOL2中にDISPPOLが含まれる場合、DISPPOLとSOL2とのこの混合物は、本明細書ではMIXSOL2DISPPOLと呼ばれる。
【0018】
したがって、
一実施形態では、SUPSATSOLは、SOL1中のAAの溶液であるSOLUTION1と、MIXSOL2DISPPOLとを混合することによって調製され、
別の実施形態では、SUPSATSOLは、DISPPOLを含むSOL1中のAAの溶液であるSOLUTION1と、SOL2とを混合することによって調製され、
更に別の実施形態では、SUPSATSOLは、DISPPOLを含むSOL1中のAAの溶液であるSOLUTION1と、MIXSOL2DISPPOLとを混合することによって調製され、
好ましくは、SUPSATSOLは、SOL1中のAAの溶液であるSOLUTION1と、MIXSOL2DISPPOLとを混合することによって調製される。
【0019】
SOLUTION1と、MIXSOL2DISPPOL又はSOL2とを混合して、SUPSATSOLを調製することは、例えば、T字型ミキサーなどのインラインミキサーを用いることによる、又は例えば、容器内でバッチ式混合することによる、連続混合などの液体の混合について当業者に既知の任意の方式で行うことができる。
【0020】
連続混合の場合、SUPSATSOLの混合及び噴霧乾燥は、連続的かつ継続的に行われてもよく、すなわち、混合と噴霧乾燥との間にSUPSATSOLのいかなる単離又は保持もなく行われてもよい。それにより、SUPSATSOLの混合と噴霧乾燥との間の時間は、短くあることができ、この時間は、数ミリ秒~数秒ほど短くてもよく、これは、SUPSATSOLの準安定性が短い持続時間だけのものである場合に有利である可能性がある。
【0021】
SOLUTION1とMIXSOL2DISPPOL又はSOL2とを混合して、SUPSATSOLを調製することは、
SOLUTION1が、4℃~大気圧でのSOLUTION1の沸点の温度、好ましくは4℃~大気圧でのSOLUTION1の沸点未満の温度、とりわけSUPSATSOLが噴霧乾燥機内に供給されるときにSUPSATSOLが有する所与の温度である状態で、かつ
MIXSOL2DISPPOL又はSOL2が、4℃~大気圧でのMIXSOL2DISPPOLの沸点の温度、好ましくは4℃~大気圧でのMIXSOL2DISPPOLの沸点未満の温度、とりわけSUPSATSOLが噴霧乾燥機内に供給されるときにSUPSATSOLが有する所与の温度である状態で、
好ましくは、
SOLUTION1が、4~60℃、好ましくは室温~60℃、とりわけSUPSATSOLが噴霧乾燥機内に供給されるときにSUPSATSOLが有する所与の温度である状態で、かつ
MIXSOL2DISPPOL又はSOL2のが、4~60℃の温度、好ましくは室温~60℃、とりわけSUPSATSOLが噴霧乾燥機内に供給されるときにSUPSATSOLが有する所与の温度である状態で、行うことができる。
【0022】
SOLMIXは、SOLUTION1とMIXSOL2DISPPOL又はSOL2とを混合したときに得られる、SOL1とSOL2との溶媒混合物である。
【0023】
一実施形態では、SUPSATSOLは、AA、DISPPOL、SOL1、及びSOL2からなり、AA、DISPPOL、SOL1、及びSOL2は、本明細書で定義されるとおりであり、また、それらの実施形態を有する。
【0024】
SDDは、DISPPOL中のAAの噴霧乾燥固体分散体である。AA及びDISPPOLは、SDD中で均一に混合されることが好ましい。
【0025】
DISPPOL中のAAの固体分散体において、AAは、DISPPOL中に均一に、好ましくは分子的にも分散していてもよい。AAとDISPPOLとは、SDDで固溶体を形成する場合がある。
【0026】
AAは、SDD中で非晶質又は実質的に非晶質であり、実質的には、AAの少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、更により好ましくは少なくとも98重量%、特には少なくとも99重量%が非晶質であることを意味し、重量%は、SDD中のAAの総重量に基づく。したがって、SDDは非晶質SDDであってもよい。AAの非晶質性は、粉末X線回折(PXRD)によってSDDを分析した場合、X線パターンに鋭いブラッグ回折ピークが見られないことによって証明することができる。X線回折計の可能なパラメータ及び設定は、Cu-Kalpha線源を備えた機器と、2シータが3°~40°の修正平行ビーム形状の設定と、0.0°のステップサイズで2°/分の走査速度と、である。SDD中のAAの非晶質性に関する別の証拠は、単一のガラス転移温度(Tg)である可能性がある。単一のTgは、非晶質AAとポリマーとの均一な混合物の証拠でもある。いかなる更なる試料調製も行わずに、試料をそれ自体としてTgの決定に使用することができ、その決定は、例えば、2.5℃/分の走査速度、±1.5℃/分の変調、及び0℃~180℃の走査範囲で行われる。AAの非晶質性は、純粋なDISPPOLのTgと等しいか、又はポリマーのTgとAAのTgとの間にあるTgを示す。SDDのTgは、AAのTgとDISPPOLのTgとの加重平均と同様であることが多い。SDDは、非晶質又は実質的に非晶質であり、SDDは、ASDとも呼ばれることがある。
【0027】
SUPSATSOL中のDISPPOLの濃度は、所与の温度、とりわけSUPSATSOLが噴霧乾燥機内に供給されるときのSUPSATSOLの温度での、SOLMIX中のDISPPOLの飽和濃度を上回っても下回ってもよく、好ましくは下回ってもよい。
【0028】
一実施形態では、DISPPOLは、溶解状態でSUPSATSOL中に存在し、DISPPOL及びSOLMIXの量は、それぞれ選択される。
【0029】
SUPSATSOL中のDISPPOLの量は、0.5重量%~25重量%、好ましくは1重量%~20重量%、より好ましくは2.5重量%~15重量%、更により好ましくは5重量%~10重量%であってもよく、重量%は、SUPSATSOLの重量に基づく。
【0030】
SUPSATSOL中のDISPPOL及びAAの量は、SDD中に所定の量のDISPPOL及びAAが提供されるように選択される。
【0031】
SDDは、1~99重量%、好ましくは10~95重量%、より好ましくは10~80重量%、更により好ましくは20~60重量%のAAを含んでもよく、重量%は、SDDの重量に基づく。
【0032】
SDDは、1~99重量%、好ましくは20~90重量%、より好ましくは40~80重量%のDISPPOLを含んでもよく、重量%は、SDDの重量に基づく。
【0033】
好ましくは、SDD中のAA及びDISPPOLの合計含有量は、65~100重量%、より好ましくは67.5~100重量%、更により好ましくは80~100重量%、特には90~100重量%、より特には95~100重量%であってもよく、
重量%はSDDの重量に基づき、
一実施形態では、SDDは、AA及びDISPPOLからなる。
【0034】
SDD中のAA対DISPPOLの相対量は、50:1~1:50、好ましくは25:1~1:25、より好ましくは10:1~1:10(w/w)であってもよい。
【0035】
AAは、任意の生物学的に活性な化合物であってもよい。生物学的に活性な化合物は、活性薬剤を必要とする患者に投与されることが望ましい場合がある。
【0036】
AAは、薬物、薬品、医薬、治療薬、栄養補助食品農薬、肥料、駆除剤、除草剤、栄養素、又は活性医薬成分(API)、好ましくはAPIであってもよい。
【0037】
AAは、一般に2000ダルトン以下の分子量を有する「小分子」であってもよい。
【0038】
AAは、少なくとも3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上の塩基性pKを有するブレンステッド塩基であってもよい。好ましくは、AAがブレンステッド塩基である場合、その遊離塩基形態のAAは、ギ酸と組み合わされる。AAは、その遊離塩基形態又はそのプロトン化形態でSUPSATSOL中に存在してもよい。遊離塩基形態のAAを、遊離塩基形態のギ酸と組み合わせると、噴霧乾燥後にAAが再びその遊離塩基形態で得られるため、SPRAYDRYは、AAをその遊離塩基形態で回収及び提供するため、AAの本質的に全てが得られ、その遊離塩基形態でSDD中に存在する。
【0039】
AAは、ニロチニブであってもよい。
【0040】
AAは、1つ以上の活性薬剤であってもよく、SDDは、1つ以上のAAを含有してもよい。
【0041】
DISPPOLは、1つ以上の分散ポリマー、好ましくは1つ、2つ、3つ、又は4つ、より好ましくは1つ、2つ、又は3つ、更により好ましくは1つ又は2つの分散ポリマーを含むことができる。
【0042】
DISPPOLは、薬学的に許容される分散ポリマーであってもよい。
【0043】
好適なDISPPOLには、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)(PVP-VA)、ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリレート)(PMMAMA)、ポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリレート)、[酢酸エテニルエステル、1-エテニルヘキサヒドロ-2H-アゼピン-2-オン及び.アルファ.-ヒドロ-.オメガ.-ヒドロキシポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)を有するポリマー、グラフト]、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
好適なPMMAMAポリマーには、ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリレート)1:1(例えば、Eudragit(登録商標)L100)、及びポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリレート)1:2(例えば、Eudragit(登録商標)S100)が挙げられるが、これらに限定されない。Eudragit(登録商標)は、ドイツ、エッセン45128の、エボニックインダストリーズAGのポリマー製品である。
【0045】
ポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリレート)は、ポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリレート)1:1であってもよい。
【0046】
[酢酸エテニルエステル、1-エテニルヘキサヒドロ-2H-アゼピン-2-オン及び.アルファ.-ヒドロ-.オメガ.-ヒドロキシポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)を有するポリマー、グラフト]は、ポリメタクリレートであり、BASF、67056 Ludwigshafen,GERMANYからSoluplus(登録商標)として入手可能である。
【0047】
好ましい一実施形態では、分散ポリマーは、HPMCAS、HPMC、PVP-VA、PVP、ポリメタクリレート、HPMCP、CMEC、CAPから選択される。
【0048】
別の好ましい実施形態では、分散ポリマーは、HPMCAS、HPMC、PVP-VA、PVP、ポリメタクリレート、HPMCP、CMEC、CAP、[酢酸エテニルエステル、並びに1-エテニルヘキサヒドロ-2H-アゼピン-2-オン及び.アルファ.-ヒドロ-.オメガ.-ヒドロキシポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)を有するポリマー、グラフト]から選択される。
【0049】
別のより好ましい実施形態では、分散ポリマーは、HPMCAS、PVP-VA、ポリメタクリレート、HPMCP、CMEC、CAPから選択される。
【0050】
別の好ましい実施形態では、分散ポリマーは、HPMCAS、PVP-VA、ポリメタクリレート、HPMCP、CMEC、CAP、[酢酸エテニルエステル、並びに1-エテニルヘキサヒドロ-2H-アゼピン-2-オン及び.アルファ.-ヒドロ-.オメガ.-ヒドロキシポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)を有するポリマー、グラフト]から選択される。
【0051】
一実施形態では、分散ポリマーは、PMMAMA、HPMCAS、HPMC、PVP-VA又はPVPであり、
別の実施形態では、分散ポリマーは、HPMCであり、
別の実施形態では、分散ポリマーは、PMMAMA、HPMCAS、PVP-VA、又はPVPであり、
別の実施形態では、分散ポリマーは、PMMAMA、HPMCAS、又はPVP-VAであり、
別の実施形態では、DISPPOLは、HPMCAS又はPVP-VAであり、
別の実施形態では、分散ポリマーは、PVP-VAであり、
別の実施形態では、分散ポリマーは、PVPであり、
別の実施形態では、分散ポリマーは、HPMCASである。
【0052】
HPMCASの好ましい実施形態は、
●5~9重量%のアセチル含有量及び14~18重量%のスクシノイル含有量を有するHPMCAS、
●7~11重量%のアセチル含有量及び10~14重量%のスクシノイル含有量を有するHPMCAS、又は
●10~14重量%のアセチル含有量及び4~8重量%のスクシノイル含有量を有するHPMCAS、
より好ましくは
●5~7重量%のアセチル含有量及び14~16重量%のスクシノイル含有量を有するHPMCAS、
●7~9重量%のアセチル含有量及び10~12重量%のスクシノイル含有量を有するHPMCAS、又は
●11~13重量%のアセチル含有量及び5~7重量%のスクシノイル含有量を有するHPMCASであり、
重量%は、HPMCASの重量に基づく。
【0053】
SOL1は、1つの液相のみを有する。
【0054】
SOL1は、90~100重量%、好ましくは95~100重量%、より好ましくは97.5~100重量%、更により好ましくは98~100重量%、特には99~100重量%のギ酸を含んでもよく、重量%は、SOL1の重量に基づく。
【0055】
好ましくは、SOL1は、ギ酸からなる。本発明の意味での「ギ酸からなる」という用語は、98%の純度を有するギ酸などの、一般的な技術グレードの市販のギ酸を含む。
【0056】
SOL1のギ酸含有量が100重量%未満の場合、SOL1は、ギ酸の他に、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アセトン、2-ブタノン、THF、酢酸メチル、酢酸エチル、ジクロロメタン、1,3-ジオキソラン、又はそれらの混合物、
好ましくは水、メタノール、アセトン、又はそれらの混合物、
より好ましくは水などの、更なる溶媒を含んでもよい。
【0057】
SOLUTION1は、AAをSOL1中に溶解させ、任意のDISPPOLを任意で添加することによって調製される。
【0058】
SOLUTION1は、4℃~大気圧でのSOL1の沸点の温度で、好ましくは4℃~大気圧でのSOL1の沸点未満の温度、より好ましくは室温~60℃の温度で、とりわけSUPSATSOLが噴霧乾燥機内に供給されるときにSUPSATSOLが有する所与の温度で、AAをSOL1中に溶解させ、任意のDISPPOLを任意で添加することによって調製することができる。
【0059】
SOLUTION1中のAAは、SOLUTION1中で溶解状態にあり、AA及びSOL1の量は、それぞれ選択される。
【0060】
SOLUTION1中のAAの濃度は、所与の温度で、とりわけSOLUTION1とMIXSOL2DISPPOL又はSOL2とをそれぞれ混合して、SUPSATSOLを提供するときのSOLUTION1の温度で、SOL1中のAAの飽和濃度未満である。
【0061】
一実施形態では、DISPPOLは、溶解状態でSOLUTION1中に存在し、DISPPOLの量は、それぞれ選択される。
【0062】
SOLUTION1中のDISPPOLの濃度は、好ましくは、所与の温度で、とりわけSOLUTION1とMIXSOL2DISPPOL又はSOL2とをそれぞれ混合して、SUPSATSOLを提供するときのSOLUTION1の温度で、SOL1中のDISPPOLの飽和濃度未満である。
【0063】
SOL1中のAAの典型的な溶解度は、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、更により好ましくは少なくとも10重量%、特には少なくとも20重量%のAAであってもよく、重量%は、SOLUTION1の重量に基づき、SOL1中のAAの溶解度は、好ましくは、所与の温度で、4℃~大気圧でのSOL1の沸点の温度、好ましくは4℃~大気圧でのSOL1の沸点未満の温度、より好ましくは室温~60℃、とりわけSUPSATSOLが噴霧乾燥機内に供給されるときにSUPSATSOLが有する所与の温度である。SOL1は、それぞれ選択することができる。
【0064】
SOLUTION1中のAAの量の下限は、少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも2.5重量%、更により好ましくは少なくとも5重量%、特には少なくとも7.5重量%、より特には少なくとも10重量%、更により特には少なくとも20重量%、具体的には少なくとも30重量%であってもよく、重量%は、SOLUTION1の重量に基づく。
【0065】
SOLUTION1中のAAの量は、最大50重量%、好ましくは最大40重量%、更により好ましくは最大35重量%であってもよく、重量%は、SOLUTION1の重量に基づく。
【0066】
SOLUTION1中のAAの量の下限のいずれも、SOLUTION1中のAAの量の上限のいずれかと組み合わせることができる。
【0067】
例えば、SOLUTION1中のAAの量は、0.5~50重量%、好ましくは0.5~40重量%、より好ましくは0.5~35重量%であってもよく、重量%は、SOLUTION1の重量に基づく。
【0068】
SOL2は、1つの液相のみを有する。
【0069】
SOL2は、噴霧乾燥のために一般的に使用される溶媒である。
【0070】
SOL2は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アセトン、2-ブタノン、THF、酢酸メチル、酢酸エチル、ジクロロメタン、1,3-ジオキソラン、又はそれらの混合物を含むことができる。
【0071】
SOL2は、SOL2が1つの液相のみを有するままであるような量で選択される水を含むことができる。SOL2の可能な非水溶媒中の水の溶解度は、既知である。可能な非水溶媒SOL2に応じて、SOL2は、30重量%以下、好ましくは27.5重量%以下、より好ましくは25重量%以下、更により好ましくは22.5重量%以下、特には20重量%以下、より特には15重量%以下、更により特には10重量%以下、具体的には5重量%以下の水を含むことができ、重量%は、SOL2の重量に基づき、
一実施形態では、SOL2は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アセトン、2-ブタノン、THF、酢酸メチル、酢酸エチル、ジクロロメタン、1,3-ジオキソラン、水、又はそれらの混合物からなり、
好ましくは、SOL2は、メタノール、エタノール、アセトン、又はそれらの混合物、任意で水もまた含み、好ましくは、SOL2は、0~25重量%の水を含み、重量%は、SOL2の重量に基づき、
より好ましくは、SOL2は、メタノール、アセトン、水、又はそれらの混合物からなり、好ましくは、SOL2は、0~25重量%の水を含み、重量%は、SOL2の重量に基づき、
更により好ましくは、SOL2は、メタノール又はメタノールと水との混合物からなり、好ましくは、SOL2は、0~25重量%の水を含み、重量%は、SOL2の重量に基づく。
【0072】
分散ポリマーがHPMCである場合、好ましくは、SOL2は、水を含み、水の量及びその全ての実施形態は、本明細書に記載されるとおりであり、例えば、10~30重量%、又は15~30重量%、又は20~30重量%であり、重量%は、SOL2の重量に基づく。
【0073】
好ましくは、AAは、メタノール、エタノール、アセトン中、特にはメタノール中などのSOL2中で、低い溶解度、例えば、室温~60℃などの所与の温度、とりわけSUPSATSOLが噴霧乾燥機内に供給されるときにSUPSATSOLが有する所与の温度で、SOL2中で、40mg/ml以下、又は30mg/ml未満、又は20mg/l未満、又は15mg/ml未満、又は10mg/ml未満、又は7.5mg/ml未満、又は5mg/ml未満、又は4mg/ml未満、又は3mg/ml未満、又は2mg/ml未満、又は1mg/ml未満、又は0.5mg/ml未満、又は0.25mg/ml未満の溶解度を有する。
【0074】
MIXSOL2DISPPOLは、DISPPOLとSOL2とを混合することによって調製される。
【0075】
MIXSOL2DISPPOLは、4℃~大気圧でのSOL2の沸点の温度で、好ましくは4℃~大気圧でのSOL2の沸点未満の温度、より好ましくは室温~60℃の温度で、とりわけSUPSATSOLが噴霧乾燥機内に供給されるときにSUPSATSOLが有する所与の温度で、DISPPOLとSOL2とを混合することによって調製することができる。
【0076】
一実施形態では、DISPPOLは、溶解状態でMIXSOL2DISPPOL中に存在し、DISPPOLの量は、それぞれ選択される。
【0077】
MIXSOL2DISPPOL中のDISPPOLの濃度は、好ましくは、それぞれ所与の温度で、とりわけMIXSOL2DISPPOLとSOLUTION1とを混合して、SUPSATSOLを提供するときのMIXSOL2DISPPOLの温度で、SOL2中のDISPPOLの飽和濃度未満である。
【0078】
SOL2は、大気圧で115℃以下の沸点を有することができる。
【0079】
例えば、MIXSOL2DISPPOL中又はSOLUTION1中のDISPPOLの量は、0.5重量%~20重量%、好ましくは1重量%~20重量%、より好ましくは2.5重量%~15重量%、更により好ましくは5重量%~10重量%であってもよく、重量%は、それぞれMIXSOL2DISPPOL又はSOLUTION1の重量に基づく。
【0080】
AAは、所与の温度、とりわけSOLUTION1とMIXSOL2DISPPOL又はSOL2とを混合して、SUPSATSOLを提供するときのSOLUTION1の温度でのSOL2中のAAの溶解度よりも、少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも50倍、更により好ましくは少なくとも100倍高いSOL1中の溶解度を有してもよく、SOL1及びSOL2は、それぞれ選択することができる。
【0081】
SUPSATSOLが、SOLUTION1とMIXSOL2DISPPOL又はSOL2とを混合することによって調製されるとき、SOL1:SOL2の量の比(w:w)は、1:1~1:20、好ましくは1:2~1:20、より好ましくは1:5~1:20、更により好ましくは1:8~1:20、特には1:8~1:16、より特には1:8~1:15、具体的な一実施形態では1:8~1:10、別の具体的な実施形態では1:13~1:15であってもよい。
【0082】
SOLMIX中のSOL1の量の下限は、5重量%、好ましくは6重量%、より好ましくは7.5重量%であってもよく、重量%は、SOLMIXの重量に基づく。
【0083】
SOLMIX中のSOL1の量の上限は、50重量%、好ましくは33重量%、より好ましくは25重量%、更により好ましくは20重量%、特には15重量%、より特には10重量%であってもよく、重量%は、SOLMIXの重量に基づく。
【0084】
SOLMIX中のSOL1の量の範囲については、下限のいずれも、上限のいずれかと組み合わせることができ、例えば、SOLMIX中のSOL1の量は、5~50重量%、好ましくは5~33重量%、より好ましくは5~25重量%、更により好ましくは5~20重量%、特には5~15重量%、より特には5~10重量%であってもよく、重量%は、SOLMIXの重量に基づく。
【0085】
SUPSATSOLは、最大で大気圧でのSUPSATSOLの沸点までのSUPSATSOLの所与の温度、好ましくは4℃~大気圧でのSUPSATSOLの沸点、好ましくは4℃~大気圧でのSUPSATSOLの沸点未満、より好ましくは室温~60℃で、噴霧乾燥機内に供給することができる。本発明の文脈では、「SUPSATSOLは、噴霧乾燥機内にSUPSATSOLの温度で供給されてもよい」という用語は、「SUPSATSOLは、SUPSATSOLの温度で噴霧乾燥される」ことを意味する。
【0086】
噴霧乾燥機内でのSUPSATSOLの噴霧乾燥は、SOL1及びSOL2の両方を蒸発させる。
【0087】
●SOLUTION1を調製するための温度、
●MIXSOL2DISPPOLを調製するための温度、
●SUPSATSOLを調製するための温度、及び
●噴霧乾燥機内にSUPSATSOLを供給するための温度
は、異なるものと同じであってもよく、それらは、室温~60℃の所与の温度であってもよく、
好ましくは、
●SOLUTION1を調製するための温度は、室温~60℃であってもよく、
●MIXSOL2DISPPOLを調製するための温度は、室温であってもよく、
●SUPSATSOLを調製するための温度は、室温~60℃であってもよく、
●噴霧乾燥機内にSUPSATSOLを供給するための温度は、室温~60℃であってもよい。
【0088】
噴霧乾燥は、60~165℃、好ましくは80~165℃、より好ましくは80~140℃の入口温度で行うことができる。
【0089】
噴霧乾燥は、20℃~最高沸点を有するSOLMIX中の溶媒の沸点よりも10℃低い温度の出口温度などの、最高沸点を有するSOLMIX中の溶媒の沸点以下の出口温度で行うことができる。
【0090】
噴霧乾燥は、噴霧乾燥に窒素などの一般的に使用される任意の不活性ガスで行うことができる。
【0091】
一実施形態では、SUPSATSOLは、ウシ血清アルブミン(BSA)を含有しない。
【0092】
SUPSATSOLは、界面活性薬剤SURFを更に含むことができる。
【0093】
SURFは、SUPSATSOLと混合しても、又はSURFは、SUPSATSOLの調製前に、SOLUTION1と、MIXSOL2DISPPOLと、SOL1と、若しくはSOL2と混合してもよい。
【0094】
SURFは、例えば、脂肪酸及びスルホン酸アルキル、ドクサートナトリウム(Mallinckrodt Spec.Chern.、St. Louis,Mo.から入手可能)、並びにポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ICI Americas Inc、Wilmington,Del.から入手可能なTween(登録商標)、Lipochem Inc、Patterson,N.J.から入手可能なLiposorb(登録商標)P-20、及びAbitec Corp.、Janesville,Wis.から入手可能なCapmul(登録商標)POE-0)、並びにタウロコール酸ナトリウムなどの天然界面活性薬剤、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、レシチン、他のリン脂質並びにモノグリセリド及びジグリセリド、ビタミンE TPGS、PEO、PEO-PPO-PEOトリブロック共重合体(例えば、プルロニックの商品名で既知)、並びにPEO(PEOは、PEG、ポリエチレングリコール(PEG)とも呼ばれる)であってもよい。
【0095】
SURFの量は、最大10重量%であってもよく、重量%は、SDDの重量に基づく。
【0096】
SUPSATSOLは、慣習的な目的及び当業者に既知の典型的な量で使用することができる、充填剤、崩壊剤、顔料、結合剤、潤滑剤、香味料などの薬学的に許容される賦形剤を更に含むことができる。
【0097】
SUPSATSOLの粘度は、SUPSATSOL中のDISPPOLの濃度と同じ濃度のDISPPOLを有するSOL1中のDISPPOLの混合物の粘度よりも、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍低くてもよい。
【0098】
SUPSATSOLの粘度は、SOLUTION1の粘度よりも、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍低くてもよい。
【0099】
SUPSATSOLの噴霧乾燥後、SDD中のあらゆる残留SOL1又はSOL2の量を低減するために、SDDを第2の乾燥に供することができる。二次乾燥は、トレイ乾燥機、又は固体を乾燥させるための当業者に既知の任意の撹拌乾燥機を使用して行うことができる。
【0100】
好ましくは、最終SDDは、5000ppm以下、好ましくは500ppm以下、より好ましくは100ppm以下のSOL1の含有量を有することができる。
【0101】
好ましくは、最終SDDは、5000ppm以下、好ましくは500ppm以下、より好ましくは100ppm以下のSOL2の含有量を有することができる。
【0102】
本発明の更なる主題は、噴霧乾燥固体分散体SDDであり、SDDは、方法SPRAYDRYによって得ることができ、
本明細書で定義されるSDD及びSPRAYDRY、また、全てのそれらの実施形態も有する。
【実施例
【0103】
【表2】
【表3】
【表4】
【0104】
方法
溶媒中のポリマーの溶液の粘度
表2は、ギ酸及びメタノールの混合物中のHPMCAS-Mの7.4重量%溶液の粘度を示す。約50:50w:wを超えるギ酸:MeOHの量は、粘度の非直線的な増加を示す。
【表5】
【0105】
図2は、グラフ形態で表2のデータ、ギ酸及びメタノールの様々な混合物中のHPMCAS-M溶液の粘度を示す。
【0106】
実施例1:メタノールによる溶媒シフトにギ酸を使用するSDD-25:75のニロチニブ:HPMCAS-MG
4.0gのギ酸を、SOL1としてフラスコ1に秤量し、36.0gのメタノールを、SOL2としてフラスコ2に秤量した。1.0055gのニロチニブ遊離塩基を、ギ酸を有するフラスコ1に添加し、磁気撹拌棒(20℃)で撹拌し、20重量%の溶液を得た。3.0040gのHPMCAS-MGを、メタノールを有するフラスコ2に添加し、フラスコ1と同じ方式で撹拌し、7.7重量%の溶液を得た。両方の溶液が完全に溶解した後、フラスコ1の内容物を、フラスコ2内にゆっくりと注ぎ、撹拌していると、SOLMIX中のニロチニブの過飽和溶液SUPSATSOLが得られ、これは、9:1(w:w)のメタノール:ギ酸であった。この過飽和溶液は、SOLMIX中で、2.28重量%のニロチニブ濃度及び6.83重量%のHPMCAS-MG濃度を有した。
【0107】
この過飽和溶液を、噴霧乾燥前に6分間撹拌し、それは、固体形態のニロチニブを含有せず、代わりにそれは、完全に溶解した状態のニロチニブを含有し、液相は、1つのみであった。
【0108】
20℃の温度を有するこの過飽和溶液を、カスタム構築の噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥した。この過飽和溶液を、蠕動ポンプを使用して、実験室スケールの直径0.3mのステンレス鋼噴霧乾燥チャンバ内にポンピングして、溶液を15g/分の流量でノズルに供給した。Spraying Systems Company、Glendale Heights,IL60187-7901,United States製の1650液体本体及び64エアキャップを備えた2流体ノズル1/4 Jシリーズ。窒素ガスをシースガスとして使用して、20psiの圧力で溶液を霧化した。加熱した窒素ガス(115℃入口、45~50℃出口、500g/分)を使用して、粒子を乾燥させた。得られたSDDを、サイクロンを使用して収集して、ガス流から固体を分離した。
【0109】
収集したSDDを、40℃の真空トレイ乾燥機に入れて、3.5slpm(標準-リットル/分)の窒素スイープで24時間、0.2atmの圧力で二次乾燥した。
【0110】
図1は、収集したSDDのPXRDを示し、これは、HPMCAS-MG中のニロチニブ分散体を表し、それは、SDDの非晶質性を確認する。
【0111】
比較実施例A
溶媒シフト方法を使用せずに、実施例1と同じ組成物の混合物を調製した。磁気撹拌棒を備えた20mlのガラスバイアル内で、0.100gのニロチニブ遊離塩基及び0.301gのHPMCAS-MGを組み合わせた。この混合物に、3.99gの予め混合した9:1のメタノール:ギ酸を添加した。この混合物を、25℃で24時間撹拌した。試料は溶解しなかったが、実質的な固体が存在して不均一なままであった。(重量%としての)混合物の組成は、2.28%のニロチニブ、6.83%のHPMCASであり、残りは溶媒である。
図1
図2
【国際調査報告】