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特表2024-520801MCL-1阻害剤と抗がん剤との組み合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】MCL-1阻害剤と抗がん剤との組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/553 20060101AFI20240517BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/52 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K31/553
A61P35/00
A61K45/00
A61P35/04
A61P11/00
A61K31/337
A61K31/7068
A61K31/4985
A61K31/52
A61K31/519
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K47/68
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575816
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 US2022032805
(87)【国際公開番号】W WO2022261301
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】63/209,682
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500029420
【氏名又は名称】ギリアード サイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ケニー, トーマス エフ.
(72)【発明者】
【氏名】マトソン, クリントン ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ベンカタラマニ, チャンドラセカール
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC202
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086CB05
4C086CB06
4C086CB07
4C086CB31
4C086EA17
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
(57)【要約】
本開示は、一般に、MCL-1阻害剤及び抗がん剤を投与することによってがんを治療する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを治療する方法であって、
治療有効量の抗がん剤、及び治療有効量のMCL-1阻害剤を、必要とするヒト患者に投与することを含み、
前記MCL-1阻害剤は、式(I)であるか:
【化10】
又はその薬学的に許容される塩であって、
式中、Rは、1~2個のヘテロ原子を含む5~10員ヘテロアリールであり;各ヘテロ原子は、独立して、窒素、硫黄、及び酸素から選択され;
の前記5~10員ヘテロアリールは、ハロ、ヒドロキシル、-CN、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、-OR、及びC3~6シクロアルキルから独立して選択される1~3個の置換基で任意選択的に置換されており;
各R、R、R及びRは、独立して、水素又はC1~6アルキルであり;
は、水素又はハロであり;
は独立して、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、及びC3~10シクロアルキルである、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記MCL-1阻害剤が、化合物A:
【化11】
又はその薬学的に許容される塩である、方法。
【請求項3】
前記MCL-1阻害剤が、AMG-397、AMG-176、PRT-1419及びS64315から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記がんが、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、上皮卵巣がん、食道がん、濾胞性甲状腺がん、胃がん又は胃食道接合部腺がん、頭頸部がん、肺がん、肝細胞がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、尿路上皮がん、及び尿路から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記がんが、TNBC、HR+/HER2-BC、UC、NSCLC、SCLC、HNSCC及びMIBCから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記がんが転移性である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記がんが転移性非扁平上皮非小細胞肺がん(mNSCLC)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記がんが転移性トリプルネガティブ乳がん(mTNBC)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記がんが、非特異的組織学を有する転移性軟部組織肉腫である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ヒト患者が、前記MCL-1阻害剤と前記抗がん剤との併用療法による治療の前に、少なくとも1回の他の療法を受けたことがある者である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒト患者が、前記MCL-1阻害剤と前記抗がん剤との併用療法による治療の前に、抗PD1剤又は抗PDL1剤による療法に失敗した者である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び前記抗がん剤が同時に又は別々に投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩が経口投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の量が、約5mg/kg、約15mg/kg又は約50mg/kgの投与量で投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩が、約5mg/kgの投与量で投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩が、2日間の投薬とそれに続く5日間の休薬を伴う21日サイクルで投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩が、各21日サイクルの1、2、8、9、15及び16日目に、105週間まで投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗がん剤が化学療法剤である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記抗がん剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、及びゲムシタビンから選択される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記抗がん剤がパクリタキセルである、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記抗がん剤がBTK阻害剤である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗がん剤が、アカラブルチニブ、チラブルチニブ、ザヌブルチニブ及びPCI-32765から選択されるBTK阻害剤である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗がん剤が、抗PD-1剤、抗PD-L1剤、抗PD-1/PD-L1相互作用阻害剤、抗CTLA4剤及び抗TIGIT剤から選択されるチェックポイント阻害剤である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記チェックポイント阻害剤が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、ジンベリマブ、及びピジリズマブから選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、ラムブロリズマブ、トレメリムマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、ドンバナリマブ、及びチラゴルマブから選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
抗体-薬物コンジュゲートを投与することを更に含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体-薬物コンジュゲートがサシツズマブゴビテカンである、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年6月11日に出願された米国仮出願第63/209,682号の利益を主張する。本出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
(発明の分野)
本出願は一般に、MCL-1阻害剤と抗がん剤との併用療法に関する。
【背景技術】
【0003】
アポトーシス(プログラム細胞死)は、望ましくない又は潜在的に危険な細胞を生物から除去するためのプロセスである。アポトーシスの回避は、腫瘍の発現及び持続的成長に重要である。骨髄細胞白血病1タンパク質(MCL-1;Mcl-1又はMCL1とも略される)は、タンパク質のBcl-2ファミリーの抗アポトーシスメンバーである。MCL-1は、多くのがんで過剰発現する。MCL-1の過剰発現は、がん細胞がアポトーシスを遂げることを防止する。
【0004】
研究は、MCL-1阻害剤を使用して様々ながんを治療できることを示している。例えば、以下を参照されたい:「The MCL1 inhibitor S63845 is tolerable and effective in diverse cancer models」、A.Kotschy et al.,Nature,2016(538):477-482;「Structure Based Design of Non-Natural Peptidic Macrocyclic Mcl-1 Inhibitors」、J.Johannes et al.,ACS Med.Chem.Lett.,2017,8(2):239-244&ACS Med.Chem.Lett.,2017,8(11):1204;「Synergistic action of the MCL-1 inhibitor S63845 with current therapies in preclinical models of triple-negative and HER2-amplified breast cancer」、D.Merino et al.,Sci.Transl.Med.,2017 Aug.2,9(401):eaam7049;「Discovery of Mcl-1-specific inhibitor AZD5991 and preclinical activity in multiple myeloma and acute myeloid leukemia」、A.Tron et al.,Nature Comm.2018(9):Article No.5341;「AMG 176,a Selective MCL1 Inhibitor,Is Effective in Hematologic Cancer Models Alone and in Combination with Established Therapies」、S.Caenepeel et al.,Cancer Discov.,2018 Dec 8(12):1582-1597;「Discovery of S64315,a Potent and Selective Mcl-1 Inhibitor」、Z.Szlavik at al.,J.Med.Chem.,2020,63(22):13762-13795。
がんの治療のためのより有効な方法を提供する必要性が残っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「The MCL1 inhibitor S63845 is tolerable and effective in diverse cancer models」、A.Kotschy et al.,Nature,2016(538):477-482
【非特許文献2】「Synergistic action of the MCL-1 inhibitor S63845 with current therapies in preclinical models of triple-negative and HER2-amplified breast cancer」、D.Merino et al.,Sci.Transl.Med.,2017 Aug.2,9(401):eaam7049
【非特許文献3】「Discovery of Mcl-1-specific inhibitor AZD5991 and preclinical activity in multiple myeloma and acute myeloid leukemia」、A.Tron et al.,Nature Comm.2018(9):Article No.5341
【非特許文献4】「AMG 176,a Selective MCL1 Inhibitor,Is Effective in Hematologic Cancer Models Alone and in Combination with Established Therapies」、S.Caenepeel et al.,Cancer Discov.,2018 Dec 8(12):1582-1597
【非特許文献5】「Discovery of S64315,a Potent and Selective Mcl-1 Inhibitor」、Z.Szlavik at al.,J.Med.Chem.,2020,63(22):13762-13795
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態では、がんを治療する方法であって、治療有効量の抗がん剤、及び治療有効量のMCL-1阻害剤を、必要とするヒト患者に投与することを含む方法が本明細書において提供され、
MCL-1阻害剤は、式(I)のものであるか、又はその薬学的に許容される塩であり:
【化1】
式中、Rは、1~2個のヘテロ原子を含む5~10員ヘテロアリールであり;各ヘテロ原子は、独立して、窒素、硫黄、及び酸素から選択され;
の5~10員ヘテロアリールは、ハロ、ヒドロキシル、-CN、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、-OR、及びC3~6シクロアルキルから独立して選択される1~3個の置換基で任意選択的に置換されており;
各R、R、R及びRは、独立して、水素又はC1~6アルキルであり;
は、水素又はハロであり;
は独立して、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、及びC3~10シクロアルキルである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】パクリタキセル治療は、TNBC細胞においてFBXW7タンパク質を増加させ、MCL1タンパク質並びにMCL1-BAK及びMCL1-BIMタンパク質二量体を減少させる。
【0008】
図2】HCC70阻害及び95%CI相乗作用応答表面。
【0009】
図3】MDA-MB-468阻害及び95%CI相乗作用応答表面。
【0010】
図4】HCC1806阻害及び95%CI相乗作用応答表面。
【0011】
図5】TNBC PDXモデルCTG-1909腫瘍成長。
【0012】
図6】TNBC PDXモデルCTG-2010腫瘍成長。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
文脈上他に要求されない限り、本明細書及び特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」という単語及びその変形、例えば「含む(comprises)」、すなわち「含む(comprising)」は、オープンかつ包括的な意味で、すなわち「含むが、限定されない」として解釈されるべきである。
【0014】
「Cu~v」、すなわち(C~C)などのプレフィックスは、それに続く基がu~v個の炭素原子を有することを示し、u及びvは整数である。例えば、「C1~6アルキル」は、アルキル基が1~6個の炭素原子を有することを示す。
【0015】
2つの文字又は記号の間にはないダッシュ(「-」)は、置換基についての結合点を示すために使用される。例えば、-C(O)NHは、炭素原子を介して結合している。化学基の前部又は末端のダッシュは、便宜上のものであり、化学基は、それらの通常の意味を失うことなく、1つ以上のダッシュを伴うか又は伴わずに示され得る。化学的又は構造的に必要とされない限り、化学基が書かれている又は呼称されている順序によって、方向性が示されている又は含意されているものではない。
【0016】
「置換された」という用語は、炭化水素上の1個以上の水素原子が水素以外の1個以上の原子又は基で置換されていることを意味し、指定された炭素原子の正常な原子価は超えないことを条件とする。「置換基」は、「置換されている」ときに炭化水素上の水素原子を置換する原子又は基である。別段の指定がない限り、基が任意選択的に置換されたものとして説明されている場合、基のいかなる置換基もそれ自体が非置換である。
【0017】
本明細書における「約」の値又はパラメータへの言及は、その値又はパラメータそれ自体に関する実施形態を含む(及び説明する)。ある特定の実施形態では、「約」という用語は、示された量±10%を含む。他の実施形態では、「約」という用語は、示された量±5%を含む。ある特定の他の実施形態では、「約」という用語は、示された量±1%を含む。また、その用語に対して、「約X」は、「X」の説明を含む。また、「a」及び「the」という単数形は、文脈上他に明確に示されない限り、複数への言及を含む。したがって、例えば、「化合物」への言及は、複数のこのような化合物を含み、「アッセイ」への言及は、当業者に公知の1つ以上のアッセイ及びその等価物への言及を含む。
【0018】
「アルキル」は、非分枝状又は分岐状の飽和炭化水素鎖を指す。本明細書で使用される場合、アルキルは、1~20個の炭素原子を有する(すなわち、C1~20アルキル)、1~12個の炭素原子を有する(すなわち、C1~12アルキル)、1~8個の炭素原子を有する(すなわち、C1~8アルキル)、1~6個の炭素原子を有する(すなわち、C1~6アルキル)、1~4個の炭素原子を有する(すなわち、C1~4アルキル)、1~3個の炭素原子を有する(すなわち、C1~3アルキル)、又は1~2個の炭素原子を有する(すなわち、C1~2アルキル)。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、2-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、及び3-メチルペンチルが挙げられるが、これらに限定されない。特定の数の炭素を有するアルキル基が化学名によって呼称されている、又は分子式によって同定されているとき、その炭素数を有する全ての位置異性体が包含されることができ、したがって、例えば、「ブチル」には、n-ブチル(すなわち、-(CHCH)、sec-ブチル(すなわち、-CH(CH)CHCH)、イソブチル(すなわち、-CHCH(CH)及びtert-ブチル(すなわち、-C(CH)があり、「プロピル」には、n-プロピル(すなわち、-(CHCH)及びイソプロピル(すなわち、-CH(CH)がある。
【0019】
「アリール」は、単環を有する(例えば、単環式)、又は縮合系を含む多環を有する(例えば、二環式又は三環式)、芳香族炭素環式基を指す。本明細書で使用される場合、アリールは、6~20個の環の炭素原子を有する(すなわち、C6~20アリール)、6~12個の炭素環原子を有する(すなわち、C6~12アリール)、又は6~10個の炭素環原子を有する(すなわち、C6~10アリール)。アリール基の非限定的な例としては、フェニル、ナフチル、フルオレニル、及びアントリルなどが挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、アリールは、以下に定義されるヘテロアリールを、いかようにも包含せず、かつこのヘテロアリールと重複しない。1個以上のアリール基がヘテロアリール環と縮合している場合、結果として生じる環系はヘテロアリールである。
【0020】
「シクロアルキル」は、縮合した環系、架橋した環系、及びスピロ環系を含む単環又は多環を有する飽和又は部分飽和環状アルキル基を指す。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0021】
本明細書で使用する場合、「ハロ」又は「ハロゲン」は、フルオロ(-F)、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)、及びヨード(-I)を指す。
【0022】
本明細書で使用する場合、「ハロアルキル」という用語は、本明細書で定義されるようにアルキルを指し、アルキルの1個以上の水素原子は、同一であり得る、又は異なり得るハロゲン置換基で独立して置換される。例えば、C1~6ハロアルキルはC1~6アルキルであり、C1~6アルキルの水素原子のうちの1個以上は、ハロ置換基で置換されている。ハロアルキル基の例としては、フルオロメチル、フルオロクロロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロクロロメチル、トリフルオロメチル、1,1,1-トリフルオロエチル、及びペンタフルオロエチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
「ヘテロアリール」は、環内に少なくとも1個のヘテロ原子、すなわち、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される1個以上の環ヘテロ原子を有する、単環、多環、若しくは複数の縮合環を有する芳香族互変異性体又は共鳴構造を有する基を含む、芳香族基を指し、ここで、窒素又は硫黄は、酸化されていてもよい。したがって、この用語は、1つ以上の環状O、N、S、S(O)、S(O)、及びN-オキシド基を有する環を含む。この用語は、1つ以上の環状C(O)基を有する環を含む。本明細書で使用される場合、ヘテロアリールは、5~20個の環原子(すなわち、5~20員ヘテロアリール)、5~12個の環原子(すなわち、5~12員ヘテロアリール)、又は5~10個の環原子(すなわち、5~10員ヘテロアリール)、及び独立して、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~5個のヘテロ原子、並びにヘテロ原子の酸化形態を含む。ヘテロアリール基の例としては、ピリジン-2(1H)-オン、ピリダジン-3(2H)-オン、ピリミジン-4(3H)-オン、キノリン-2(1H)-オン、ピリミジニル、プリニル、ピリジル、ピリダジニル、ベンゾチアゾリル、及びピラゾリルが挙げられる。ヘテロアリールは、先に定義したようにアリールを包含せず、かつアリールと重複しない。
【0024】
「ヘテロシクリル」、「複素環」、又は「複素環式」という用語は、環内に窒素、硫黄、リン、及び/又は酸素から選択される1個以上のヘテロ原子を有する単環又は複数の縮合環を有するモノラジカル又はジラジカル飽和又は不飽和基を指す。「ヘテロシクリル」内のヘテロ原子は、酸化され得、例えば、-N(O)-、-S(O)-、-S(O)-であり得る。ヘテロシクリルは、単環又は多環であってもよく、多環は、縮合、架橋、又はスピロであってもよい。
【0025】
「異性体」は、同一分子式を有する異なる化合物である。異性体には、立体異性体、鏡像異性体、及びジアステレオマーが含まれる。
【0026】
「立体異性体」は、同じ結合によって結合している同じ原子で構成されているが、互換的ではない、異なる三次元構造を有する化合物を指す。本開示は、様々な立体異性体及びこれらの混合物を意図し、その分子が互いに重ね合わせることができない鏡像である2つの立体異性体を指す「鏡像異性体」を含む。
【0027】
「互変異性体」は、分子の一方の原子から同じ分子の別の原子へのプロトン移動を指す。本開示は、任意の当該化合物の互変異性体を含む。
【0028】
「溶媒和物」は、溶媒と化合物との相互作用によって形成される。本明細書に記載の化合物の塩の溶媒和物も提供される。本明細書に記載の化合物の水和物も提供される。
【0029】
本明細書で使用する場合、「プロドラッグ」という用語は、ヒト体内への投与の際に、いくつかの化学的経路又は酵素経路に従って生物学的に活性な親薬物に変換される、薬物の生物学的に不活性な誘導体である。
【0030】
「鏡像異性体」とは、互いに重ね合わせることができない鏡像である、一対の立体異性体である。一対の鏡像異性体の1:1混合物は、「ラセミ」混合物である。「(±)」という記号は、適宜、ラセミ混合物を呼称するために使用される。
【0031】
「ジアステレマー異性体」とは、少なくとも2個の不斉原子を有するが、互いに鏡像ではない、立体異性体である。
【0032】
本明細書で使用する場合、「治療」又は「治療すること」は、有益な又は所望の結果を得るためのアプローチである。本開示の目的のために、有益な又は所望の結果としては、症状の緩和及び/又は疾患若しくは病態に関連する症状の減少が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、「治療」又は「治療する」は、a)疾患若しくは状態を阻害すること(例えば、疾患若しくは状態から生じる1つ以上の症状を減少させること、及び/又は疾患若しくは状態の程度を減少させること)、b)疾患又は状態に関連する1つ以上の症状の発症を遅延又は停止すること(例えば、疾患又は状態を安定化させること、疾患又は状態の悪化又は進行を遅延すること)、及びc)疾患又は病態を緩和すること、例えば、臨床症状を退縮させること、疾患状態を改善すること、疾患の進行を遅延させること、生活の質を高めること、及び/又は生存期間を延長することのうちの1つ以上を含む。
【0033】
本明細書で使用する場合、「予防」又は「予防すること」とは、疾患又は障害の臨床症状が発症しないように、疾患又は障害の発病に対して保護するレジメンを指す。したがって、「予防」は、対象において疾患の徴候が検出可能である前の対象への治療の投与に関する。対象は、疾患又は障害の発症又は発病と関連することが知られている1つ以上のリスク因子を有する個体など、疾患又は障害を発症するリスクのある個体であってもよい。
【0034】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」又は「有効量」という用語は、疾患を治療するために対象に投与された場合、疾患のそのような治療を行うのに十分な薬剤の量を含む、所望の生物学的又は医学的応答を誘発するのに有効な量を指す。有効量は、特定の薬剤、並びに年齢、体重など治療対象の特徴に応じて様々である。有効量は、量の範囲を含むことができる。当該技術分野において理解されるように、有効量は、1回以上の用量であり得、すなわち、所望の治療エンドポイントを達成するために単回用量又は複数回用量が必要とされ得る。1つ以上の治療剤の投与に関連して有効量が検討されてもよく、単一の薬剤が、1つ以上の他の薬剤と併用して、望ましいか、又は有益な結果が達成され得るか、又は達成される場合に、有効量で投与されることが検討され得る。任意の共投与される薬剤の適切な用量は、薬剤の併用作用(例えば、相加効果又は相乗効果)のために任意選択的に低下されてもよい。
【0035】
本明細書で使用する場合、「同時投与」は、1つ以上の追加の治療薬の単位投与量の投与前又は投与後に、本明細書に開示の薬剤の単位用量を投与すること、例えば、1つ以上の追加の治療薬の投与の数秒、数分、又は数時間以内に、本明細書に開示の薬剤を投与することを含む。例えば、いくつかの実施形態では、本開示の薬剤の単位用量が最初に投与され、続いて、数秒又は数分以内に、1つ以上の追加の治療薬の単位用量が投与される。代替的に、他の実施形態では、1つ以上の追加の治療剤の単位用量が最初に投与され、続いて、数秒又は数分以内に、本開示の化合物の単位用量が投与される。いくつかの実施形態では、本開示の化合物の単位用量が最初に投与され、続いて、数時間(例えば、1~12時間)後に、1つ以上の追加の治療剤の単位用量が投与される。他の実施形態では、1つ以上の追加の治療剤の単位用量が最初に投与され、続いて、数時間(例えば、1~12時間)後に、本開示の化合物の単位用量が投与される。
【0036】
1つ以上の更なる治療薬と「組み合わせて」投与することは、任意の順序での同時(simultaneous)(同時(concurrent))及び連続的又は逐次的な投与を含む。
【0037】
「同時に」という用語は、本明細書では、2つ以上の治療薬の投与を指すために使用され、投与の少なくとも一部分が時間的に重複するか、又は1つの治療薬の投与が他の治療薬の投与に対して短期間内にある。例えば、2つ以上の治療薬は、特定の約数分以下の時間間隔で投与される。
【0038】
「逐次的に」という用語は、1つ以上の他の薬剤の投与を中止した後に、1つ以上の薬剤の投与が続くか、又は1つ以上の他の薬剤の投与前に1つ以上の薬剤の投与が始まる、2つ以上の治療薬の投与を指すために本明細書で使用される。例えば、2つ以上の治療薬は、特定の約数分より長い時間間隔で投与される。
【0039】
本明細書で使用される場合、「併せて」は、別の治療モダリティに加えて1つの治療モダリティの投与を指す。したがって、「併せて」は、個体への他の治療モダリティの投与前、投与中、又は投与後の1つの治療モダリティの投与を指す。
【0040】
「コンジュゲート」又は「抗体-薬物コンジュゲート」という用語は、治療薬又は細胞毒性剤などの第2の化学部分に化学的に連結されている抗体を指す。「薬剤」という用語は、化学化合物、化学化合物の混合物、生物学的高分子、又は生物学的材料から作製された抽出物を含む。いくつかの実施形態では、治療薬又は細胞毒性剤には、百日咳毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン、並びにそれらの類似体又はホモログが含まれるが、これらに限定されない。イムノアッセイの文脈で用いられる場合、コンジュゲート抗体は、検出抗体として使用される検出可能に標識された抗体であり得る。
【0041】
「静脈内投与」は、静脈又は「静脈内」への物質の投与である。他の投与経路と比較して、静脈内(intravenous:IV)経路は、体内を通して流体及び薬品を送達するためのより速い方法である。注入ポンプは、送達される薬品の流量及び総量に対する正確な制御を可能にし得る。しかしながら、流量の変化が深刻な結果を有していないか、又はポンプが利用できない場合、点滴はしばしば、単にバッグを患者の高さより上に配置し、クランプを用いて速度を調節することによって、流れるように放置される。あるいは、患者が高い流量を必要とし、IVアクセス装置がそれを収容するのに十分大きな直径である場合、ラピッドインフューザを使用することができる。これは、流体を患者に流し込むために流体バッグの周りに配置された膨張式カフ、又は注入される流体を加熱することもできる同様の電気装置のいずれかである。患者が特定の時間にのみ薬品を必要とする場合、追加の流体を必要としない間欠注入が使用される。これは、静脈点滴(ポンプ又は重力点滴)と同じ技術を使用することができるが、薬品の完全な用量が与えられた後、管はIVアクセス装置から切り離される。いくつかの薬品はまた、IVプッシュ又はボーラスによっても与えられる。つまり、注射器がIVアクセス装置に接続され、薬品が直接(静脈を刺激するか、又は急速な効果を引き起こす場合には、ゆっくりと)注射される。医薬がIVチューブの流体流に注入されると、これがチューブから患者に到達することを確実にする何らかの手段がなければならない。通常、これは、流体流が正常に流れることを可能にし、それによって医薬を血流へ運ぶことによって達成される。しかしながら、医薬をより迅速に血流へと流し込むために、注射後に「洗い流し」として2回目の流体注射が使用されることがある。したがって、1つの実施形態では、本明細書に説明する薬剤(複数可)又は薬剤の組み合わせは、単独で、又は経口若しくは非経口経路による治療レジメンの特定の構成成分の投与と組み合わせて、IV投与によって投与してもよい。
【0042】
「経口投与」は、物質が口を通して摂取される投与経路であり、薬品が口腔粘膜のいずれとも直接接触していないように、例えばチューブを介して行われない限り、頬側投与、口唇下(sub labial)投与、及び舌下投与、並びに経腸投与、及び気道を通じた投与を含む。治療剤の経口投与のための典型的な形態には、錠剤又はカプセルの使用が含まれる。したがって、1つの実施形態では、本明細書に説明する化合物(複数可)又は化合物の組み合わせは、単独で、又はIV若しくは非経口経路による治療レジメンの特定の構成成分の投与と組み合わせて、経口経路によって投与してもよい。
【0043】
本明細書ではまた、本明細書に記載の式(I)の化合物の薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形体、及びプロドラッグも提供される。「薬学的に許容される」又は「生理学的に許容される」は、ヒトの医薬の使用に適している化合物、塩、組成物、剤形、及び他の材料を指す。
【0044】
本明細書に記載の式(I)の化合物は、薬学的に許容される塩として調製及び/又は製剤化してもよい。薬学的に許容される塩は、遊離塩基の所望の薬理活性を有する化合物の遊離塩基形態の非毒性塩である。これらの塩は、無機若しくは有機酸又は無機若しくは有機塩基から誘導され得る。例えば、塩基性窒素を含有する化合物は、当該化合物を無機酸又は有機酸と接触させることによって、薬学的に許容される塩として調製され得る。薬学的に許容される塩の非限定的な例としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ホスフェート、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-二酸塩、ヘキシン-1,6-二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、プロピルスルホン酸塩、ベシル酸塩、キシレンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、及びマンデル酸塩が挙げられる。他の好適な薬学的に許容される塩のリストは、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,Lippincott Wiliams and Wilkins,Philadelphia,Pa.,2006に見出される。
【0045】
本明細書に開示の式(I)の化合物の「薬学的に許容される塩」の非限定的な例はまた、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウム、及びNX (式中、XはC-Cアルキルである)など適切な塩基に由来する塩を含む。ナトリウム塩又はカリウム塩などの塩基付加塩も挙げられる。
MCL-1阻害剤
化合物
【0046】
いくつかの実施形態では、がんを治療する方法であって、治療有効量の抗がん剤、及び治療有効量のMCL-1阻害剤を、必要とするヒト患者に投与することを含む方法が本明細書において提供され、
MCL-1阻害剤は、式(I)のものであるか、又はその薬学的に許容される塩であり:
【化2】
式中、Rは、1~2個のヘテロ原子を含む5~10員ヘテロアリールであり;各ヘテロ原子は、独立して、窒素、硫黄、及び酸素から選択され;
の5~10員ヘテロアリールは、ハロ、ヒドロキシル、-CN、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、-OR、及びC3~6シクロアルキルから独立して選択される1~3個の置換基で任意選択的に置換されており;
各R、R、R及びRは、独立して、水素又はC1~6アルキルであり;
は、水素又はハロであり;
は独立して、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、及びC3~10シクロアルキルである。
【0047】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、MCL-1阻害剤は、式(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩であり:
【化3】
各R、R、R、R、R、及びRは、上記又は本開示の他の箇所で定義される方法が本明細書において提供される。
【0048】
いくつかの実施形態では、MCL-1阻害剤は、式(III)の化合物、
【化4】
又はその薬学的に許容される塩である:
【0049】
いくつかの実施形態では、MCL-1阻害剤は、式(I)、式(II)若しくは式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩であり、Rは水素である。いくつかの実施形態では、Rは、C1~3アルキルである。Rはメチルである。
【0050】
いくつかの実施形態では、MCL-1阻害剤は、式(I)、式(II)若しくは式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩であり、RはC1~3アルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、メチルである。
【0051】
いくつかの実施形態では、MCL-1阻害剤は、式(I)、式(II)若しくは式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩であり、Rは水素である。いくつかの実施形態では、Rは、C1~3アルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、メチルである。いくつかの実施形態では、RはClである。
【0052】
いくつかの実施形態では、MCL-1阻害剤は、式(I)、式(II)若しくは式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩であり、RはC1~4アルキル及びC1~4アルコキシルで任意選択的に置換された
【化5】
である。いくつかの実施形態では、Rは、-CH及び-OCHで任意選択的に置換された
【化6】
である。いくつかの実施形態では、Rは、-CH及び-OCHで置換された
【化7】
である。いくつかの実施形態では、R
【化8】
である。
【0053】
いくつかの実施形態では、MCL-1阻害剤は、化合物A、N-[(4S,7aR,9aR,10S,11E,14S)-6-クロロ-10-メトキシ-14-メチル-16-オキシド-18-オキソ-3’,4’,7,7a,8,9,9a,10,13,14,15,18-ドデカヒドロ-2’H-スピロ[1,19-(エタンジイリデン)-16λ-シクロブタ[i][1,4]オキサゼピノ[3,4-f][1,2,7]チアジアザシクロヘキサデシン-4,1’-ナフタレン]-16-イル]-3-メトキシ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドであり、以下の構造を有する:
【化9】
化合物Aは、USPN 10,703,733及びWO2019/222112の実施例154に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
いくつかの実施形態では、投与することができるMCL-1阻害剤としては、米国特許第10,703,733号(Gilead Sciences)、AMG-397、AMG-176、PRT-1419、S64315、AZD59991、ABBV-467、国際公開第2019222112号(Gilead Sciences)、同第2021096860号(Gilead Sciences)、同第2017147410号(Amgen)、同第2019046150号(Amgen)、同第2019036575号(Amgen)、同第2021021259号(Amgen)、同第2019173181号(Amgen)、同第2018183418号(Amgen)、同第2016033486号(Amgen)、同第2018178226号(AstraZeneca)、同第2017182625号(AstraZeneca)、同第2018178227号(AstraZeneca)、同第2020099470号(AstraZeneca)、同第2019211721号(AstraZeneca)、同第2020097577号(Prelude)、同第2020123994号(Prelude)、同第2008104386号(AbbVie)、同第2008104385号(AbbVie)、同第2008131000号(AbbVie)、同第2008130970号(AbbVie)、同第2019035911号(AbbVie)、同第2019035927号(AbbVie)、同第2019035899号(AbbVie)、同第2010049816号(Servier)、同第2020160157号(Servier)、同第2020115183号(Servier)、同第2020099542号(Servier)、同第2015097123号(Servier)、同第2018078064号(Servier)、同第2020254299号(Servier)、同第2018127575号(Servier)、同第2018234433号(Servier)、同第018015526号(Servier)、同第2016207225号(Servier)、同第2020078875号(Servier)、同第2017125224号(Servier)、同第2020236817号(Servier)、同第2016207226号(Servier)、同第2016207217号(Servier)、同第2016207216号(Servier)、及び同第2007147613号(Novartis)に開示されている化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
いくつかの実施形態では、MCL-1阻害剤は、AMG-397、AMG-176、PRT-1419及びS64315から選択される。いくつかの実施形態では、MCL-1阻害剤は、AMG-176である。いくつかの実施形態では、MCL-1阻害剤は、AMG-397である。いくつかの実施形態では、MCL-1阻害剤は、PRT-1419である。いくつかの実施形態では、MCL-1阻害剤は、S64315である。
【0056】
本明細書に開示の化合物は、1個以上の不斉中心を含んでもよく、したがって、絶対立体化学に関して、(R)-若しくは(S)-として定義され得る鏡像異性体、ジアステレオマー、及び他の立体異性体形態を生じさせ得る。本開示は、全てのそのような可能な異性体、並びにそれらのラセミ体形態及び光学的に純粋な形態を含むことを意味する。光学的に活性な(+)及び(-)、又は(R)-及び(S)-異性体は、キラルシントン若しくはキラル試薬を使用して調製されてもよく、又は従来の技術、例えば、クロマトグラフィー及び分別結晶化を使用して分解されてもよい。個々の鏡像異性体の調製/単離のための従来の技術は、好適な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、又は例えば、キラル高圧液体クロマトグラフィー(high pressure liquid chromatography、HPLC)を使用したラセミ化合物(又は塩若しくは誘導体のラセミ化合物)の分割を含む。同様に、全ての互変異性体形態もまた含まれることが意図される。
製剤
【0057】
本明細書で提供される方法では、MCL-1阻害剤は医薬組成物として投与することができる。特定の実施形態では、医薬組成物は、式(I)、(II)、(III)の化合物若しくは化合物A、又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される賦形剤を含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、以下により完全に記載するように、1つ以上の追加治療薬を含む。
【0058】
本明細書に開示のMCL-1阻害剤、又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、通常の慣例に従って選択され得る1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を用いて調製してもよい。「薬学的に許容される賦形剤」としては、限定されるものではないが、ヒト又は家畜における使用が許容可能であるとアメリカ食料医薬品局により認められている、任意のアジュバント、担体、賦形剤、グリダント、甘味剤、希釈剤、防腐剤、色素/着色剤、調味料、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶媒、又は乳化剤が挙げられる。
【0059】
特定の実施形態では、医薬組成物は、錠剤など固体経口剤形を含む固体剤形として提供される。錠剤は、滑剤、充填剤、結合剤などを含む賦形剤を含有してもよい。水性組成物は、無菌形態で調製され得、経口投与以外による送達が意図される場合、一般に等張であってもよい。全ての組成物は、Rowe et al,Handbook of Pharmaceutical Excipients,6th edition,American Pharmacists Association,2009に記載されているものなどの賦形剤を含有してもよい。賦形剤は、アスコルビン酸及び他の酸化防止剤、EDTAなどのキレート剤、デキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ステアリン酸などの炭水化物を含むことができる。
【0060】
本明細書に開示の医薬組成物は、経口投与を含む様々な投与経路に適したものを含む。組成物は単位剤形で提示されてもよく、薬学の分野において公知の方法のいずれかによって調製されてもよい。そのような方法は、活性成分(例えば、本開示の化合物又はその薬学的塩)を1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と会合させる工程を含む。組成物は、活性成分を液体賦形剤又は細かく分割された固体賦形剤又はその両方と、均一かつ密接に会合させ、次いで、必要に応じて製品を成形することによって調製されてもよい。技術及び製剤は、概して、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,Lippincott Wiliams and Wilkins,Philadelphia,Pa.,2006に見られる。
【0061】
経口投与に適切な本明細書に記載される組成物は、各々が所定量の活性成分を含有するカプセル、カシェー、又は錠剤を含むが、これらに限定されない別個の単位(単位剤形)として提示され得る。一実施形態では、医薬組成物は錠剤である。
【0062】
いくつかの実施形態では、錠剤は、化合物Aを5mg及び25mgの強度で含む。いくつかの実施形態では、錠剤は、コポビドン、ラクトース一水和物、微結晶性セルロース、クロスポビドン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルアルコール、二酸化チタン、ポリエチレングリコール及びタルクを含有する。
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)
【0063】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるがんを治療する方法は、治療有効量の抗がん剤、治療有効量のMCL-1阻害剤、及び治療有効量の抗体-薬物コンジュゲートを、必要とするヒト患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、抗Trop-2抗体と抗がん薬とを含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、米国特許第7,999,083号に開示されているサシツズマブゴビテカンである。いくつかの実施形態では、ADCは、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,999,083号に開示される抗体-薬物コンジュゲートを含む。いくつかの実施形態では、サシツズマブゴビテカンは、サシツズマブゴビテカン-hziyである。
【0065】
いくつかの実施形態では、抗Trop-2抗体-薬物コンジュゲートは、ダトポタマブデルクステカンである。いくつかの実施形態では、投与することができる抗Trop-2抗体-薬物コンジュゲートには、米国特許第9,850,312号、同第9,850,312号、国際公開第20240467号、及び同第18036438号に開示されているコンジュゲートが含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
いくつかの実施形態では、ADCの抗体部分は、IgG抗体又は抗原結合抗体断片である。抗体は、様々なアイソタイプ、好ましくはヒトIgG1、55 IgG2、IgG3又はIgG4、より好ましくはヒトIgG1ヒンジ及び定常領域配列を含むものであることができる。抗体又はその断片は、ヒト-マウスのキメラ、ヒト-霊長類のキメラ、ヒト化(ヒトフレームワーク及びマウス超可変(CDR)領域)、又は完全ヒト抗60体、並びにその変形、例えば半IgG4抗体(「ユニボディ」と呼ばれる)であることができる(van der Neut Kolfschoten et al.(Science 2007;317:1554-1557)に記載される通りである)。より好ましくは、抗体又はその断片は、特定のアロタイプに属するヒト定常領域65配列を含むように設計又は選択されてもよく、これは、抗体又はADCがヒト対象に投与された場合に免疫原性の低減をもたらし得る。投与に好ましいアロタイプとしては、非Glmlアロタイプ(nGlml)、例えばGlm3、Glm3,1、Glm3,2又はGlm3,1,2が挙げられる。より好ましくは、アロタイプは、nGlml、Glm3、nGlml,2及びKm3アロタイプからなる群から選択される。
【0067】
いくつかの実施形態では、ADCの抗体部分は抗Trop-2抗体である。いくつかの実施形態では、抗Trop-2抗体としては、TROP2-XPAT(Amunix)、BAT-8003(Bio-Thera Solutions)、TROP-2-IR700(Chiome Bioscience)、ダトポタマブデルクステカン(Daiichi Sankyo、AstraZeneca)、GQ-1003(Genequantum Healthcare、Samsung BioLogics)、DAC-002(Hangzhou DAC Biotech、Shanghai Junshi Biosciences)、サシツズマブゴビテカン(Gilead Sciences)、E1-3s(Immunomedics/Gilead、IBC Pharmaceuticals)、TROP2-TRACTr(Janux Therapeutics)、LIV-2008(LivTech/Chiome、Yakult Honsha、Shanghai Henlius BioTech)、LIV-2008b(LivTech/Chiome)、抗TROP-2a(Oncoxx)、抗TROP-2b(Oncoxx)、OXG-64(Oncoxx)、OXS-55(Oncoxx)、ヒト化抗Trop2-SN38抗体コンジュゲート(Shanghai Escugen Biotechnology、TOT Biopharma)、抗Trop2抗体-CLB-SN-38コンジュゲート(Shanghai Fudan-Zhangjiang Bio-Pharmaceutical)、SKB-264(Sichuan Kelun Pharmaceutical/Klus Pharma)、TROP2-Ab8(Abmart)、Trop2-IgG(Nanjing Medical University(NMU))、90Y-DTPA-AF650(Peking University First Hospital)、hRS7-CM(SynAffix)、89Zr-DFO-AF650(University of Wisconsin-Madison)、抗Trop2抗体(Mediterranea Theranostic、LegoChem Biosciences)、及びKD-065(Nanjing KAEDI Biotech)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
抗TROP-2治療薬の更なる例としては、限定されないが、E1.BB.3z-92MI(Immunomedics/Gilead)、抗Trop-2 CAR-T(Gilead)、Trop-2CAR-T(Hangzhou Lonzyme Biological Technology)、ARB-001(Arbele)、及びMT-103(Myeloid Therapeutics)が挙げられる。
【0069】
抗TROP-2抗体の例としては、国際公開第2020016662号(Abmart)、同第2020249063号(Bio-Thera Solutions)、米国特許出願公開第20190048095号(Bio-Thera Solutions)、国際公開第2013077458号(LivTech/Chiome)、欧州特許第20110783675号(Chiome)、国際公開第2015098099号(Daiichi Sankyo)、同第2017002776号(Daiichi Sankyo)、同第2020130125号(Daiichi Sankyo)、同第2020240467号(Daiichi Sankyo)、米国特許出願公開第2021093730号(Daiichi Sankyo)、米国特許第9850312号(Daiichi Sankyo)、中国特許第112321715号(Biosion)、米国特許出願公開第2006193865号(Immunomedics/Gilead)、国際公開第2011068845号(Immunomedics/Gilead)、米国特許出願公開第2016296633号(Immunomedics/Gilead)、同第2017021017号(Immunomedics/Gilead)、同第2017209594号(Immunomedics/Gilead)、同第2017274093号(Immunomedics/Gilead)、同第2018110772号(Immunomedics/Gilead)、同第2018185351号(Immunomedics/Gilead)、同第2018271992号(Immunomedics/Gilead)、国際公開第2018217227号(Immunomedics/Gilead)、米国特許出願公開第2019248917号(Immunomedics/Gilead)、中国特許第111534585号(Immunomedics/Gilead)、米国特許出願公開第2021093730号(Immunomedics/Gilead)、同第2021069343号(Immunomedics/Gilead)、米国特許第8435539号(Immunomedics/Gilead)、同第8435529号(Immunomedics/Gilead)、同第9492566号(Immunomedics/Gilead)、国際公開第2003074566号(Gilead)、同第2020257648号(Gilead)、米国特許出願公開第2013039861号(Gilead)、国際公開第2014163684号(Gilead)、米国特許第9427464号(LivTech/Chiome)、同第10501555号(Abruzzo Theranostic/Oncoxx)、国際公開第2018036428号(Sichuan Kelun Pharma)、同第2013068946号(Pfizer)、同第2007095749号(Roche)、及び同第2020094670号(SynAffix)に記載されたものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
抗TROP-2治療薬の更なる例には、国際公開第2016201300号(Gilead)、及び中国特許第108440674号(Hangzhou Lonzyme Biological Technology)に記載されているものが含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
いくつかの実施形態では、抗Trop-2抗体は、hRS7、Trop-2-XPAT、及びBAT-8003から選択される。
【0072】
いくつかの実施形態では、抗Trop-2抗体は、hRS7である。いくつかの実施形態では、hRS7は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,238,785号、同第7,517,964号及び同第8,084,583号に開示されている通りである。
【0073】
いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、リンカーによって結合された抗Trop-2抗体と抗がん薬とを含む。いくつかの実施形態では、リンカーとしては、米国特許第7,999,083号に開示nリンカーが挙げられる。いくつかの実施形態では、リンカーは、CL2Aである。
【0074】
いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートの薬物部分は、化学療法剤である。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、ドキソルビシン(doxorubicin、DOX)、エピルビシン、モルホリノドキソルビシン(モルホリノ-DOX)、シアノモルホリノ-ドキソルビシン(シアノモルホリノ-DOX)、2-ピロリン-ドキソルビシン(2-pyrrolino-doxorubicin、2-PDOX)、CPT、10-ヒドロキシカンプトテシン、SN-38、トポテカン、ルートテカン、9-アミノカンプトテシン、9-ニトロカンプトテシン、タキサン、ゲルダンマイシン、アンサマイシン、及びエポチロンから選択される。いくつかの実施形態では、化学療法部分は、SN-38である。
製剤
【0075】
ADCの適切な投与経路には、経口、非経口、皮下、直腸、経粘膜、腸投与、筋肉内、髄内、髄腔内、直接脳室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内又は眼内注射が含まれるが、これらに限定されない。或いは、例えば、固形腫瘍に直接化合物を注射することによって、全身的ではなく局所的に化合物を投与してもよい。
【0076】
ADCは、薬学的に有用な組成物を調製するための既知の方法に従って製剤化することができ、それによって、ADCが、薬学的に好適な賦形剤と混合物中で組み合わされる。ADCは、例えば、ボーラス注射、緩徐注入、又は連続注入による静脈内投与用に製剤化することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、約4時間未満の期間にわたって注入される。いくつかの実施形態では、抗体は、約3時間未満の期間にわたって注入される。例えば、最初の25~50mgを30分以内、又は15分以内に注入し、残りを次の2~3時間にわたって注入することができる。注射用製剤は、単位剤形で、例えば、アンプル内に、又は複数回投与容器内に、予備防腐剤を添加して提供することができる。組成物は、油性又は水性媒体中の懸濁液、溶液又はエマルションなどの形態をとってよく、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤など処方剤を含有してよい。或いは、有効成分は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、発熱性物質除去蒸留水で構成するための粉末形態であってもよい。
治療方法
【0077】
いくつかの実施形態では、本開示は、がんを治療するためのMCL-1と抗がん剤との組み合わせを提供する。いくつかの実施形態では、MCL-1阻害剤は、化合物Aである。
【0078】
いくつかの実施形態では、がんは、Trop-2発現がんである。
【0079】
いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、がんは、固形悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、がんは、進行性固形悪性腫瘍である。
【0080】
いくつかの実施形態では、がんは、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、上皮卵巣がん、食道がん、濾胞性甲状腺がん、胃がん又は胃食道接合部腺がん、頭頸部がん、肺がん、肝細胞がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、尿路上皮がん、及び尿路がんから選択される。
【0081】
いくつかの実施形態では、がんは、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、HR+/HER2-乳がん、尿路上皮がん、非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、及び筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)から選択される。
【0082】
いくつかの実施形態では、がんは、転移性である。いくつかの実施形態では、がんは、難治性である。
【0083】
いくつかの実施形態では、がんは、転移性非扁平上皮非小細胞肺がん(mNSCLC)、転移性トリプルネガティブ乳がん(mTNBC)、及び非特異的組織学を有する転移性軟組織肉腫から選択される。
【0084】
いくつかの実施形態では、がんは、転移性非扁平上皮非小細胞肺がん(mNSCLC)である。いくつかの実施形態では、がんは、転移性トリプルネガティブ乳がん(mTNBC)である。いくつかの実施形態では、がんは、非特異的組織学を有する転移性軟部組織肉腫である。
【0085】
いくつかの実施形態では、ヒト患者は、MCL-1阻害剤と抗がんコンジュゲートとの併用療法による治療の前に、少なくとも1回の他の療法を受けたことがある。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、本明細書に開示される治療の前に他の療法に失敗した者である。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、1回の化学療法に失敗した者である。
【0086】
いくつかの実施形態では、ヒト患者は、MCL-1阻害剤と抗がん剤との併用療法による治療の前に、抗PD1剤又は抗PDL1剤による療法に失敗した者である。
【0087】
いくつかの実施形態では、MCL-1阻害剤及び抗がん剤は、同時に、又は別々に投与される。
【0088】
いくつかの実施形態では、MCL-1阻害剤は化合物Aである。一般に、ヒトに対して投与される化合物Aの投与量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全般的な病状、及び既往歴などの因子に応じて変化するであろう。単回静脈内注入として約1mg/kg~24mg/kgの範囲の抗体-コンジュゲートの投与量をレシピエントに提供することが望ましい場合があるが、状況に応じて、より低い又はより高い投与量が投与されてもよい。例えば、70kgの患者に対する1~20mg/kgの投与量は70~1,400mgである。投与量は、必要に応じて、例えば、週に1回4~10週間、週に1回8週間、又は週に1回4週間繰り返してもよい。また、維持療法においては必要に応じて、頻度を落として、例えば、数ヶ月間隔週、又は何ヶ月にもわたって毎月若しくは四半期毎に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、投与量としては、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、22mg/kg、24mg/kg、26mg/kg、28mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、55mg/kg、65mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、120mg/kg、140mg/kg、150mg/kg、160mg/kg、180mg/kg、200mg/kg、220mg/kg、240mg/kg、250mg/kg、260mg/kg、280mg/kg、300mg/kg、350mg/kg、400mg/kg、450mg/kg、550mg/kg、600mg/kg、650mg/kg、700mg/kg、750mg/kg、及び800mg/kgが挙げられるが、これらに限定されない。1~300mg/kgの範囲の任意の量を使用してもよい。1~100mg/kgの範囲の任意の量を使用してもよい。いくつかの実施形態では、投与量は、複数回、週に1回又は2回投与される。いくつかの実施形態では、投与量は、4週間、8週間、16週間又はそれよりも長い最小投与スケジュールを使用してもよい。投与スケジュールは、(i)毎週、(ii)隔週、(iii)1週間治療後、2週間、3週間、又は4週間休止、(iv)2週間治療後、1週間、2週間、3週間、又は4週間休止、(v)3週間治療後、1週間、2週間、3週間、4週間、又は5週間休止、(vi)4週間治療後、1週間、2週間、3週間、4週間、又は5週間休止、(vii)5週間治療後、1週間、2週間、3週間、4週間、又は5週間休止;及び(viii)毎月、からなる群から選択されるサイクルで、週に1回又は2回の投与を含んでもよい。サイクルは、4、6、8、10、12、16、又は20回以上繰り返してもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、経口投与される。
【0090】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の量は、約5mg/kg、15mg/kg又は50mg/kgの投与量で投与される。
【0091】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約5mg/kgの投与量で投与される。
【0092】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、2日間の投薬とそれに続く5日間の休薬を伴う21日サイクルで投与される。
【0093】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、各21日サイクルの1、2、8、9、15及び16日目に、105週間まで投与される。
【0094】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、静脈内注入として投与される。
【0095】
一般に、ヒトに対して投与される抗がん剤の投与量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全般的な病状、及び既往歴などの因子に応じて変化するであろう。単回静脈内注入として約1mg/kg~24mg/kgの範囲の抗体-コンジュゲートの投与量をレシピエントに提供することが望ましい場合があるが、状況に応じて、より低い又はより高い投与量が投与されてもよい。例えば、70kgの患者に対する1~20mg/kgの投与量は、70~1,400mgである。投与量は、必要に応じて、例えば、週に1回4~10週間、週に1回8週間、又は週に1回4週間繰り返すことができる。また、維持療法においては必要に応じて、頻度を落として、例えば、数ヶ月間隔週、又は何ヶ月にもわたって毎月若しくは四半期毎に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、投与量には、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、1 7mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、22mg/kg、及び24mg/kgが含まれるが、これらに限定されない。1~24mg/kgの範囲の任意の量を使用してもよい。いくつかの実施形態では、投与量は、複数回、週に1回又は2回投与される。4週間、8週間、16週間又はそれよりも長い最小投与スケジュールを使用してもよい。投与スケジュールは、(i)毎週、(ii)隔週、(iii)1週間治療後、2週間、3週間、又は4週間休止、(iv)2週間治療後、1週間、2週間、3週間、又は4週間休止、(v)3週間治療後、1週間、2週間、3週間、4週間、又は5週間休止、(vi)4週間治療後、1週間、2週間、3週間、4週間、又は5週間休止、(vii)5週間治療後、1週間、2週間、3週間、4週間、又は5週間休止;及び(viii)毎月、からなる群から選択されるサイクルで、週に1回又は2回の投与を含んでもよい。サイクルは、4、6、8、10、12、16、又は20回以上繰り返してもよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、2週間又は3週間毎に1回投与、合計で少なくとも3回投与量を繰り返して、投与されてもよい。又は、週に2回、4~6週間。投与量が約200~300mg/m(1.7mの患者に対して340mg、又は70kgの患者に対して4.9mg/kg)まで下げられる場合、週に1回又は更には2回、4~10週間投与されてもよい。いくつかの実施形態では、投与量スケジュールを短縮、すなわち、2週間又は3週間毎に2~3ヶ月間に短縮してもよい。しかしながら、2mg/kgを週1回又は2~3週間毎に1回などのより高い用量が、繰り返し投与サイクルにおいて緩徐静脈内注入によって投与することができることが決定されている。投与スケジュールは、任意選択的に、他の間隔で繰り返すことができ、投与量は、用量及びスケジュールを適切に調整して、様々な非経口経路によって投与されてもよい。いくつかの実施形態では投与量は、各21日サイクルの1日目及び8日目に投与される。
【0097】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、抗体-薬物コンジュゲートを約4mg/kg~約12mg/kgの投与量で更に投与することを含む。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、約8mg/kg~約12mg/kgの投与量として投与される。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、約8mg/kg、約10mg/kg、又は約12mg/kgの投与量として投与される。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートはサシツズマブゴビテカンである。
【0098】
いくつかの実施形態では、本方法は、抗体、コンジュゲート、遺伝子療法、化学療法、放射線療法、外科療法、BTK阻害剤、及びチェックポイント阻害剤から選択される1つ以上の追加の治療モダリティを更に含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、本方法は放射線療法を更に含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、化学療法剤、チェックポイント阻害剤、FLT3アゴニスト及びBTK阻害剤から選択される。
【0101】
いくつかの実施形態では、FLT3阻害剤は、GS-3583である。FLT3アゴニストには、CDX-301及びPCT公開第2020/263830号に開示されている薬剤も含まれる。
【0102】
いくつかの実施形態では、FLT3アゴニストは、国際公開第2022/031876号に開示されるFc融合タンパク質である。
【0103】
いくつかの実施形態では、本開示は、がんを治療するための方法を提供する。本方法は、がんの治療のためにMCL-1阻害剤及び化学療法剤を投与することを含み;本方法は、1つ以上の追加の治療薬を投与することを更に含むが、但し、追加の治療薬はFLT3アゴニストではない。いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、FLT3-Fc融合タンパク質ではない。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートはサシツズマブゴビテカンであり、MCL-1阻害剤は化合物Aであり;追加の治療薬はFLT3アゴニストではない。いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、国際公開第2020/263830号に開示されるFLT3アゴニストではない。いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、米国特許第11/124,582号の配列番号14のアミノ酸配列を含む融合タンパク質ではない。
【0104】
いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、抗PD-1剤、抗PD-L1剤、抗PD-1/PD-L1相互作用阻害剤、抗CTLA4剤及び抗TIGIT剤から選択される。
【0105】
いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、抗PD-1剤、抗PD-L1剤、抗PD-1/PD-L1相互作用阻害剤、抗CTLA4剤及び抗TIGIT剤から選択される。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、ジンベリマブ及びピジリズマブから選択される。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ、ラムブロリズマブ、トレメリムマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、ドンバナリマブ、及びチラゴルマブから選択される。
【0106】
共投与され得るCTLA4の阻害剤の例としては、イピリムマブ、トレメリムマブ、BMS-986218、AGEN1181、AGEN1884、BMS-986249、MK-1308、REGN-4659、ADU-1604、CS-1002、BCD-145、APL-509、JS-007、BA-3071、ONC-392、AGEN-2041、JHL-1155、KN-044、CG-0161、ATOR-1144、PBI-5D3H5、BPI-002、並びに多重特異性阻害剤FPT-155(CTLA4/PD-L1/CD28)、PF-06936308(PD-1/CTLA4)、MGD-019(PD-1/CTLA4)、KN-046(PD-1/CTLA4)、MEDI-5752(CTLA4/PD-1)、XmAb-20717(PD-1/CTLA4)、及びAK-104(CTLA4/PD-1)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
同時投与され得るPD-L1(CD274)又はPD-1(PDCD1)の阻害剤の例としては、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ピジリズマブ、AMP-224、MEDI0680(AMP-514)、スパルタリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ALN-PDL、BMS-936559、CK-301、PF-06801591、BGB-108、BGB-A317(ティスレリズマブ)、GLS-010(WBP-3055)、AK-103(HX-008)、GB-226、AK-105、CS-1003、HLX-10、MGA-012、BI-754091、PDR-001、AGEN-2034、JS-001(トリパリマブ)、JNJ-63723283、ゲノリムズマブ(CBT-501)、LZM-009、BCD-100、LY-3300054、SHR-1201、SHR-1210(カムレリズマブ)、Sym-021、ABBV-181、PD1-PIK、BAT-1306、RO-6084(PD-L1アンチセンスオリゴヌクレオチド)、STI-1110、GX-P2、RG-7446、mDX-400、(MSB0010718C)、CX-072、CBT-502、TSR-042(ドスタルリマブ)、MSB-2311、JTX-4014、BGB-A333、SHR-1316、CS-1001(WBP-3155)、MEDI-0680、エンバフォリマブ(KN-035)、KD-033、KY-1003、IBI-308(シンチリマブ)、HLX-20、KL-A167、STI-A1014、STI-A1015(IMC-001)、BCD-135、FAZ-053、TQB-2450、MDX1105-01、MSB-0010718C、GS-4224、GS-4416、INCB086550、MAX10181、並びに多重特異性阻害剤FPT-155(CTLA4/PD-L1/CD28)、PF-06936308(PD-1/CTLA4)、MGD-013(PD-1/LAG-3)、FS-118(LAG-3/PD-L1)、MGD-019(PD-1/CTLA4)、KN-046(PD-1/CTLA4)、MEDI-5752(CTLA4/PD-1)、RO-7121661(PD-1/TIM-3)、XmAb-20717(PD-1/CTLA4)、AK-104(CTLA4/PD-1)、M7824(PD-L1/TGFβ-ECドメイン)、CA-170(PD-L1/VISTA)、CDX-527(CD27/PD-L1)、LY-3415244(TIM3/PDL1)、GNS-1480(上皮成長因子受容体アンタゴニスト;プログラム細胞死リガンド1阻害剤)、M-7824(PD L1/TGFβ二官能性融合タンパク質)、及びINBRX-105(4-1BB/PDL1)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
PD-1阻害剤の例としては、国際公開第2017112730号(Incyte Corp)、同第2017087777号(Incyte Corp)、同第2017017624号、同第2014151634号(BristolMyers Squibb Co)、同第201317322号(BristolMyers Squibb Co)、同第2018119286号(Incyte Corp)、同第2018119266号(Incyte Corp)、同第2018119263号(Incyte Corp)、同第2018119236号(Incyte Corp)、同第2018119221号(Incyte Corp)、同第2018118848号(BristolMyers Squibb Co)、同第20161266460号(BristolMyers Squibb Co)、同第2017087678号(BristolMyers Squibb Co)、同第2016149351号(BristolMyers Squibb Co)、同第2015033299号(Aurigene Discovery Technologies Ltd)、同第2015179615号(Eisai Co Ltd;Eisai Research Institute)、同第2017066227号(BristolMyers Squibb Co)、同第2016142886号(Aurigene Discovery Technologies Ltd)、同第2016142852号(Aurigene Discovery Technologies Ltd)、同第2016142835号(Aurigene Discovery Technologies Ltd;Individual)、同第2016142833号(Aurigene Discovery Technologies Ltd)、同第2018085750号(BristolMyers Squibb Co)、同第2015033303号(Aurigene Discovery Technologies Ltd)、同第2017205464号(Incyte Corp)、同第2016019232号(3M Co;Individual;Texas A&M University System)、同第2015160641号(BristolMyers Squibb Co)、同第2017079669号(Incyte Corp)、同第2015033301号(Aurigene Discovery Technologies Ltd)、同第2015034820号(BristolMyers Squibb Co)、同第2018073754号(Aurigene Discovery Technologies Ltd)、同第2016077518号(BristolMyers Squibb Co)、同第2016057624号(BristolMyers Squibb Co)、同第2018044783号(Incyte Corp)、同第2016100608号(BristolMyers Squibb Co)、同第2016100285号(BristolMyers Squibb Co)、同第2016039749号(BristolMyers Squibb Co)、同第2015019284号(Cambridge Enterprise Ltd)、同第2016142894号(Aurigene Discovery Technologies Ltd)、同第2015134605号(BristolMyers Squibb Co)、同第2018051255号(Aurigene Discovery Technologies Ltd)、同第2018051254号(Aurigene Discovery Technologies Ltd)、同第2017222976号(Incyte Corp)、同第2017070089号(Incyte Corp)、同第2018044963号(BristolMyers Squibb Co)、同第2013144704号(Aurigene Discovery Technologies Ltd)、同第2018013789号(Incyte Corp)、同第2017176608号(BristolMyers Squibb Co)、同第2018009505号(BristolMyers Squibb Co)、同第2011161699号(Aurigene Discovery Technologies Ltd)、同第2015119944号(Incyte Corp;Merck Sharp&Dohme Corp)、同第2017192961号(Incyte Corp)、同第2017106634号(Incyte Corp)、同第2013132317号(Aurigene Discovery Technologies Ltd)、同第2012168944号(Aurigene Discovery Technologies Ltd)、同第2015036927号(Aurigene Discovery Technologies Ltd)、同第2015044900号(Aurigene Discovery Technologies Ltd)、及び同第2018026971号(Arising International)に記載される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
PD-1/PD-L1阻害剤は、当業者に公知の任意の好適な量で投与することができる。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、0.1~1000mgの量で対象に投与される。対象に投与されるPD-1/PD-L1阻害剤の代表的な量としては、0.1~500mg、1~100mg、1~50mg、又は10~50mgが挙げられるが、これらに限定されない。対象に投与されるPD-1/PD-L1阻害剤の他の量としては、約1mg、又は2、3、4、5、6、7、8、9、10,15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは約100mgが挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、BMS-986207、RG-6058、又はAGEN-1307などの抗TIGIT抗体を投与することを更に含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、BTK(ブルトン型チロシンキナーゼ)阻害剤を投与することを更に含む。このようなBTK阻害剤の例は、米国特許第7,405,295号に開示されている化合物である。BTK阻害剤の追加の例としては、(S)-6-アミノ-9-(1-(ブタ-2-イノイル)ピロリジン-3-イル)-7-(4-フェノキシフェニル)-7H-プリン-8(9H)-オン、アカラブルチニブ(ACP-196)、BGB-3111、HM71224、イブルチニブ、M-2951、チラブルチニブ(ONO-4059)、PRN-1008、スペブルチニブ(CC-292)、及びTAK-020が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、アカラブルチニブ、チラブルチニブ、ザヌブルチニブ及びPCI-32765から選択される。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、化学療法剤である。
【0113】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、表21に列挙される実施例3の薬剤から選択される。いくつかの実施形態では、化学療法剤はドセタキセルである。いくつかの実施形態では、化学療法剤はゲムシタビンである。いくつかの実施形態では、化学療法剤はパクリタキセルである。
【0114】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、ドキソルビシン(doxorubicin、DOX)、エピルビシン、モルホリノドキソルビシン(モルホリノ-DOX)、シアノモルホリノ-ドキソルビシン(シアノモルホリノ-DOX)、2-ピロリン-ドキソルビシン(2-pyrrolino-doxorubicin、2-PDOX)、CPT、10-ヒドロキシカンプトテシン、SN-38、トポテカン、ルートテカン、9-アミノカンプトテシン、9-ニトロカンプトテシン、タキサン、ゲルダンマイシン、アンサマイシン、及びエポチロンから選択される。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、抗体-薬物コンジュゲートを投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、抗Trop-2抗体を含む。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートはサシツズマブゴビテカンである。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、ダトポタマブデルクステカンである。
【0116】
ある実施形態では、本開示の薬剤を本明細書に記載の1つ以上の追加の治療薬と組み合わせる場合、組成物の成分は、同時又は連続レジメンとして投与される。順次投与される場合、組み合わせは、2回以上の投与で投与されてもよい。ある実施形態では、本開示の薬剤を本明細書に記載の1つ以上の追加の治療薬と組み合わせる場合、組成物の成分は、同時又は連続レジメンとして投与される。順次投与される場合、組み合わせは、2回以上の投与で投与されてもよい。ある実施形態では、本開示の薬剤を本明細書に記載の1つ以上の追加の治療薬と組み合わせる場合、組成物の成分は、同時又は連続レジメンとして投与される。順次投与される場合、組み合わせは、2回以上の投与で投与されてもよい。
【0117】
本明細書に開示される薬剤と1つ以上の追加の治療薬との共投与は、概して、本明細書に開示される薬剤と1つ以上の追加の治療薬との、治療有効量の各剤が患者の体内に存在するような、共投与又は連続投与を指す。
【0118】
共投与は、1つ以上の追加の治療薬の単位投与量の投与前又は投与後の、本明細書に開示される薬剤の単位投与量の投与を含む。本明細書に開示される薬剤は、1つ以上の追加の治療薬の投与の数秒、数分、又は数時間以内に投与され得る。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される薬剤の単位用量を最初に投与し、続いて数秒又は数分以内に1つ以上の追加の治療薬の単位用量を投与する。或いは、他の実施形態では、1つ以上の追加の治療薬の単位用量を最初に投与し、続いて本明細書に開示される薬剤の単位用量を数秒又は数分以内に投与する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される薬剤の単位用量を最初に投与し、続いて数時間(例えば、1~12時間)後に、1つ以上の追加の治療薬の単位用量を投与する。他の実施形態では、1つ以上の追加の治療薬の単位用量を最初に投与し、続いて、数時間(例えば、1~12時間)後に、本明細書に開示される薬剤の単位用量を投与する。
【0119】
いくつかの実施形態では、本開示は、がんを治療又は予防する方法を提供する。特定の実施形態では、本開示は、治療有効量の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩を個体に投与することを含む、がんを治療又は予防する方法を提供する。いくつかの実施形態では、がんは、血液がんである。いくつかの実施形態では、がんは、多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、がんは、乳がん、結腸直腸がん、皮膚がん、黒色腫、卵巣がん、腎臓がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択される。
【実施例
【0120】
実施例1:TNBC及びNSCLC細胞株におけるSN-38とのMCL-1阻害剤のインビトロ相乗作用
化合物AとSN-38(トポイソメラーゼ阻害剤)との間の併用可能性を試験するために、相乗作用のブリス独立性モデルを使用して、トリプルネガティブ乳がん(TNBC、n=3)及び非小細胞肺がん(NSCLC、n=2)細胞株のパネルにおいてインビトロ研究を行った。細胞を、各化合物の単独及び組み合わせの用量滴定マトリックスに72時間曝露し、次いで、Cell Titer Glo試薬によって細胞生存率を決定した。強いブリス相乗作用スコア(>100)が、試験した全ての細胞株で観察された。
材料及び方法
細胞培養及び試薬
【0121】
HCC70(ATCC(登録商標)CRL-2315)、HCC1806(ATCC(登録商標)CRL-2335)、HCC1187(ATCC(登録商標)CRL-2322)、NCI-H522(ATCC(登録商標)CRL-5810)及びH820(ATCC(登録商標)HTB-181)細胞株を液体窒素保存から解凍し、ATCCガイドラインに従ってRPMI-1640(Gibco-12633)+10%HI-FBI(Gibco-16140)+Pen/Strep(100×Gibco-15140)中で維持した。細胞を、0.25%トリプシン/EDTA(1×GIBCO-25200)を用いてATCCガイドラインに従って継代した。
【0122】
SN-38及び化合物Aストック(Gileadサンプルバンクによって提供される)を、ビヒクル対照としてDMSO(Sigma-D2438)を0.1%v/vまで用いてD300e Digital Dispenser(販売者)を使用して処理ウェルに直接分注した。
【0123】
製造業者のマイクロウェルプレートプロトコルに従ってCell Titer Glo(商標)(Promega#G9241)を使用して生存率評価を行い、Biotek Synergy Neo2プレートリーダーで発光について読み取った。
細胞生存率組み合わせアッセイ
【0124】
相乗作用マトリックスアッセイのために、細胞株を、100μLの推奨される細胞培養培地中の透明底白色96ウェルプレート(Corning#3909)にウェル当たり5,000細胞で播種した。処理マップは、化合物Aについての単剤用量応答(7つの3倍希釈物+処理なし対照)又はSN-38(9つの3倍希釈物+処理なし対照)及び63の異なる組み合わせのチェッカーボードマトリックスからなった。濃度範囲は、化合物に対する各細胞株の相対的感受性に基づいて選択した。各組み合わせについて5枚のプレートを使用して、95%信頼区間(95%CI)で相乗作用スコアを計算するのに十分な反復を生成した。
【0125】
HP D300ディスペンサーを使用して化合物及びDMSOビヒクルを細胞に適用して、チェッカーボードマトリックスに従って培地に直接分注し、37℃/5%CO/100%相対湿度で72時間インキュベートした後、Cell Titer Gloによって生存率を測定した。
データ分析
【0126】
組み合わせ生存率データを、Prichard and Shipman{Prichard 1990}によって記載されたエクセルテンプレートを使用して相乗作用について評価した。具体的には、SN-38及び化合物Aの単一成分用量曲線を、各プレート上の生存率(%)に対して正規化し、5つの技術的反復実験にわたって平均して、ブリス独立性の原理に従って組み合わせの理論的相加的死滅を計算した。計算値を、63濃度チェッカーボードで生成された実験結果と比較した。相乗作用又は拮抗作用スコアは、観察された増殖阻害がそれぞれ計算値よりも大きいか小さいかに応じて作成した。
【0127】
例えば、所与の濃度の2つの化合物(B)及び(C)が各々60%の阻害をもたらした場合、それらの理論的な相加的阻害は、以下のブリス独立性の式に従って84%となる。
60%+60% (100%-60%)=84%B+C
実験結果が計算値より大きかった場合(例えば、90%阻害)、その差[6%]を相乗作用スコアに加える。結果がより小さかった場合(例えば、78%阻害)、その差[6%]を拮抗作用スコアに加える。
【0128】
これらの差をチェッカーボード全体(63ウェル)にわたって合計して、累積相乗作用及び拮抗作用スコアをμM%の単位で与えて、用量反応の2D表面を反映させた。95%信頼間隔調整を相乗作用及び拮抗作用スコアに適用し、各合計を原法に基づくスケールと比較した:50を超えるスコアは中等度の相乗作用とみなされ、100を超えるスコアは強い相乗作用とみなされ、インビボで併用効果を示す可能性が高い{Prichard 1990}。
【0129】
組み合わせアッセイのデータを3つの形式で示す。95%信頼区間での相乗作用スコアは、n=2アッセイから平均された。各細胞株についての例示的な表形式及びグラフ形式のパーセント阻害マトリックス。各細胞株について95%信頼区間での例示的な表形式及びグラフ形式の相乗作用マトリックス。
【0130】
化合物AとSN-38(トポイソメラーゼ阻害剤)との間の併用可能性を試験するために、相乗作用のブリス独立性モデルを使用して、TNBC(n=3)及びNSCLC(n=2)細胞株のパネルにおいてインビトロ研究を行った。細胞を、各化合物の単独及び組み合わせの用量滴定マトリックスに72時間曝露し、次いで、Cell Titer Glo試薬によって細胞生存率を決定した。強いブリス相乗作用スコア(>100)が、試験した全ての細胞株で観察された。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
SN-38用量応答を1.0μMの最高濃度がシフトし、大きな潜在的範囲の相乗活性を捕捉した。
実施例2:TNBC細胞におけるパクリタキセルとのMCL-1阻害剤のインビトロ相乗作用
材料及び方法
細胞培養及び試薬
【0131】
HCC70(ATCC(登録商標)CRL-2315)及びHCC1806(ATCC(登録商標)CRL-2335)を液体窒素保存から解凍し、ATCCガイドラインに従ってRPMI-1640(Gibco-12633)+10%HI-FBI(Gibco-16140)+Pen/Strep(100×Gibco-15140)中で維持した。MDA-MB-468(ATCC(登録商標)HTB-132)を解凍し、DMEM(Gibco-11995)+10%HI-FBS+Pen/Strep中で維持した。細胞を、0.25%トリプシン/EDTA(1×GIBCO-25200)を用いてATCCガイドラインに従って継代した。
【0132】
パクリタキセル)及び化合物Aストック(Gileadサンプルバンクによって提供される)を、ビヒクル対照としてDMSO(Sigma-D2438)を0.1%v/vまで用いてD300e Digital Dispenser(販売者)を使用して処理ウェルに直接分注した。
【0133】
製造業者のマイクロウェルプレートプロトコルに従ってCell Titer Glo(商標)(Promega#G9241)を使用して生存率評価を行い、Synergy Neo2プレートリーダーで発光について読み取った。
【0134】
MSDアッセイのための細胞溶解物は、1×溶解緩衝液(10×細胞シグナル伝達CST-9803)、100×プロテアーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤I、ホスファターゼ阻害剤II(Meso Scale Discovery Inhibitor Pack R70AA-1、及びPMSF(SIGMAカタログ番号7626)を使用して生成した。
【0135】
MCL-BAK及びMCL1-BIM二量体アッセイ並びに総MCL1アッセイは、MSD Custom Assay Servicesによって開発され、MSD U-PLEX Development Pack(K15227N)及びプロトコル改訂版「2018Mar rev 2」を使用して実行された。標準アッセイK151PWDを使用してMSDによってGAPDHを決定した。全てのプレートを、MSD Read Buffer T(R92TC)を使用してMSD SECTOR Imager 2400で読み取った。
【0136】
Protein Simple試薬:EZ Standard Pack1(PS-ST01EZ:ビオチン化ラダー、FL標準及びDTT)、過酸化物(044-379)、Luminal-S(043-311)、抗体希釈緩衝液(042-203)、ストレプトアビジンHRP(042-414)、二次抗体:ヤギ抗ウサギ(042-206)及びヤギ抗マウス(042-205)、分離マトリックス(042-512)、スタッキングマトリックス(042-513)、10Xサンプル緩衝液(042-195)、洗浄緩衝液(042-520)、上部泳動緩衝液(043-163)、下部泳動緩衝液(043-162)、384ウェルプレート(040-663)、サイズキャピラリー(55700)、Protein Simple Instruments Peggy Sue(商標)及びSally Sue(商標)。一次抗体:MCL1(CST-94296)、FBXW7(Abcam 109617及びAbcam 171961)。
細胞生存率組み合わせアッセイ
【0137】
相乗作用マトリックスアッセイのために、TNBC細胞株を、100μLの推奨される細胞培養培地中の透明底白色96ウェルプレート(Corning#3909)にウェル当たり10,000細胞で播種した。プレートを37℃及び100%RHで20時間インキュベートした後、化合物に曝露した。処理マップは、化合物A(3μM~4nMの7つの3倍希釈+処理なし対照)又はパクリタキセル(3μM~0.5nMの9つの3倍希釈+処理なし対照)及び63の異なる組み合わせのチェッカーボードマトリックスの単剤用量応答からなった。各組み合わせについて5枚のプレートを使用して、95%信頼区間(95%CI)で相乗作用スコアを計算するのに十分な反復を生成した。
【0138】
パクリタキセル及びDMSOビヒクルを、最初に、HP D300ディスペンサーを使用して細胞に適用し、チェッカーボードマトリックスに従って培地に直接アリコートした。パクリタキセルを4時間インキュベートし、次いで、培地除去によって洗い流し、予熱した完全培地で2×200μL洗浄し、最後に100μLの予熱した完全培地で置き換えた。次いで、細胞を、D300ディスペンサーを使用して同じチェッカーボードマトリックスで化合物Aに曝露し、Cell Titer Gloによる生存率の測定の前に48時間インキュベートした。
MSDアッセイ
【0139】
MSDアッセイのために、TNBC細胞株を、推奨される細胞培養培地中の透明底白色96ウェルプレート(Corning#3909)にウェル当たり25,000細胞で播種した。プレートを37℃及び100%RHで20時間インキュベートした後、化合物に曝露した。パクリタキセル及びDMSOビヒクルを、最初に、HP D300ディスペンサーを使用して細胞に適用し、培地に直接アリコートした。パクリタキセルを4時間インキュベートし、次いで、培地除去によって洗い流し、予熱した完全培地で2×150μL洗浄し、最後に100μLの予熱した完全培地で置き換えた。更に20時間後、上清を吸引除去することによってサンプルを回収し、125μlの1×溶解緩衝液を各ウェルに添加した。プレートを氷上に短時間置き、4℃のロッキングプラットフォームに20分間移した。プレートをドライアイス上に置き、10分間急速凍結し、次いで、試験するまで-80℃で保存した。
【0140】
MCL1及びMCL1-BAK及びMCL1-BIM二量体アッセイを、MSD Custom Assay Servicesによって提供される材料及びプロトコルを使用して、それらのU-Plex技術に基づいて実行した。最初に、標準的なU-PLEX捕捉抗体コーティングプロトコルを用いてプレートを調製し、次いで、150uLのMSD洗浄緩衝液で3回洗浄した。25μlのサンプル又は標準をプレートに直接添加し、プレートを密封し、振盪しながら室温で1時間インキュベートした。プレートをウェル当たり150μlの洗浄緩衝液で3回洗浄し、50μlの抗体検出溶液をMSDプレートの各ウェルに添加し、プレートを密封し、振盪しながら室温で1時間インキュベートした。プレートを再度、ウェル当たり150μlの洗浄緩衝液で3回洗浄した。150μlの2×読み取り緩衝液を各ウェルに添加し、プレートをMSD SECTOR Imager 2400で読み取った。
【0141】
GAPDHアッセイキット(MSD)を、プレートに直接添加したサンプル当たり25μLの溶解物を使用して、製造業者のプロトコルに従って実行した。プレートを密封し、振盪しながら室温で1時間インキュベートし、次いでウェル当たり150μlの洗浄緩衝液で3回洗浄した。25μlの抗体検出溶液を各ウェルに添加し、プレートを密封し、振盪しながら室温で1時間インキュベートし、次いでウェル当たり150μlの洗浄緩衝液で3回洗浄した。次いで、150μlの2×読み取り緩衝液を各ウェルに添加し、プレートをMSD SECTOR Imager 2400で電気化学発光(ECL)について測定した。
単純なタンパク質(Simple Western)
【0142】
Simple Westernイムノアッセイをキャピラリーで行う。サンプル及び試薬をアッセイプレートにロードし、Protein Simple Instrumentに入れる。細胞溶解物は、自動的にキャピラリーにロードされ、スタッキング及び分離マトリックスを通って移動する際にサイズによって分離される。次いで、分離されたタンパク質は、独自の光活性化捕捉化学を介してキャピラリー壁に固定化される。標的タンパク質は、一次抗体を用いて同定され、HRPコンジュゲート二次抗体及び化学発光基質を用いて免疫プローブされる。得られた化学発光シグナルを検出し、定量する。
【0143】
FBXW7発現を、1μMパクリタキセルの4時間投与後の細胞株において測定し、続いて洗い流し、Simple Westernを用いて一晩インキュベートした。溶解物を調製し、1×溶解緩衝液で0.5μg/mlに希釈した。Simple Westernプラットフォームを384ウェルプレート上で実行する。
【0144】
マーカー、内部ラダー及びDTTは、Simple Westernによって凍結乾燥形態で提供される。プロトコルに記載のように試薬を再懸濁する。20uLの水をマーカーに添加する。40μlの水をDTTに加え、20μlの10Xサンプル緩衝液及び20μlのDTTを混合し、Z緩衝液と呼ぶ。マーカーを1Aにロードする。5μlの溶解物を1.7mlのエッペンドルフチューブに加えた。1.2μlのZ試薬を各サンプルに添加した。サンプルを100Cで5分間加熱し、冷却した後、微量遠心機で30秒間回転させた。サンプルをウェルA2~12にロードする。一次抗体を抗体希釈緩衝液で1:50に希釈した(6μl+294μl希釈緩衝液)。20μlの各抗体をレーン2~12にロードした。各列の異なる抗体は最大8抗体である。1:300に希釈したアクチンをローディング対照として使用した。更に、ヤギ抗ウサギ又はヤギ抗マウスのいずれかの二次抗体を、必要に応じてロードする。プレートを2.6k 10分間RTで回転させ、装置にロードし、一晩実行させる。標的タンパク質は、一次抗体を用いて同定され、HRPコンジュゲート二次抗体及び化学発光基質を用いて免疫プローブされる。得られた化学発光シグナルを検出し、定量する。
データ分析
ブリス相乗作用について
【0145】
組み合わせ生存率データを、Prichard and Shipman{Prichard 1990}によって記載されたエクセルテンプレートを使用して相乗作用について評価した。具体的には、パクリタキセル及び化合物Aの単一成分用量曲線を、各プレート上の生存率(%)に対して正規化し、5つの技術的反復実験にわたって平均して、ブリス独立性の原理に従って組み合わせの理論的相加的死滅を計算した。計算値を、63濃度チェッカーボードで生成された実験結果と比較した。相乗作用又は拮抗作用スコアは、観察された増殖阻害がそれぞれ計算値よりも大きいか小さいかに応じて作成した。
【0146】
例えば、所与の濃度の2つの化合物(B)及び(C)が各々60%の阻害をもたらした場合、それらの理論的な相加的阻害は、以下のブリス独立性の式に従って84%となる。
60%+60% (100%-60%)=84%B+C
【0147】
実験結果が計算値より大きかった場合(例えば、90%阻害)、その差[6%]を相乗作用スコアに加える。結果がより小さかった場合(例えば、78%阻害)、その差[6%]を拮抗作用スコアに加える。
【0148】
これらの差をチェッカーボード全体(63ウェル)にわたって合計して、累積相乗作用及び拮抗作用スコアをμM%の単位で与えて、用量反応の2D表面を反映させた。95%信頼間隔調整を相乗作用及び拮抗作用スコアに適用し、各合計を原法に基づくスケールと比較した:50を超えるスコアは中等度の相乗作用とみなされ、100を超えるスコアは強い相乗作用とみなされ、インビボで併用効果を示す可能性が高い{Prichard 1990}。
【0149】
組み合わせアッセイのデータを3つの形式で示す。95%信頼区間での相乗作用スコアは、n=2アッセイから平均された。各細胞株についての例示的な表形式及びグラフ形式のパーセント阻害マトリックス。各細胞株について95%信頼区間での例示的な表形式及びグラフ形式の相乗作用マトリックス。
MSDアッセイ
【0150】
総MCL1については、ECLシグナルを記録し、MSDで開発された較正対照を用いて8点標準用量範囲(0~10,000pg/mL)を介して決定されるpg/mLに変換し、MSD WorkBenchソフトウェアにおいて4パラメータ曲線当てはめ関数を使用した。MCL1-BAK及びMCL1-BIM二量体の結果を、同じプロセスを使用してpg/mLに変換したが、標準濃度は0~50,000pg/mLの範囲であった。GAPDH結果を記録し、ECLとして報告し、各サンプルセット内のMCL1及びMCL1二量体の両方を正規化するために使用した。所与の細胞株の分析物間のグラフ比較のために、各pg/mLデータセットをビヒクル対照に対して100%で正規化し、タンパク質なしを0%とした。
【0151】
パクリタキセルは、プロテアソーム分解のためにMCL1を標的とするMCL1 E3-リガーゼFBXW7の上昇を部分的に介して、MCL1タンパク質レベルを下方制御することが報告されている{Wertz 2011}。この観察を確認するために、HCC70、MDA-MB-468、及びHCC1806 TNBC細胞株を、臨床的に適切な濃度のパクリタキセル(1μM)で4時間処理した(Gianni 1995)。パクリタキセル処理後、細胞を一晩インキュベートし、タンパク質レベルを決定した。パクリタキセル処理とビヒクル対照との比較により、FBXW7タンパク質レベルの上昇及びMCL1タンパク質レベルの低下が明らかになった(表13及び図1)。パクリタキセル処理はまた、MCL1-BAK及びMCL1-BIM二量体のタンパク質レベルの低下をもたらす(表13及び図1)。これらの結果は、3つ全てのTNBC細胞株にわたって観察された(n=3の生物学的反復)。
【0152】
HCC70、MDA-MB-468、及びHCC1806 TNBC細胞株を、臨床的に適切な濃度のパクリタキセル(1μM)で4時間処理した(Gianni 1995)。パクリタキセル処理は、3つ全ての細胞株において、FBXW7タンパク質レベルを上昇させ、MCL1タンパク質レベルを低下させ、MCL1-BAK及びMCL1-BIM二量体のタンパク質レベルを低下させた。HCC70、MDA-MB-468及びHCC1806をパクリタキセル用量漸増(タンパク質で調整したCmax=1μMを含む)で4時間前処理して臨床曝露を模倣し、次いで化合物Aの用量漸増に72時間曝露した場合、ブリス相乗作用(>100)が観察された。
【表13】
平均正規化タンパク質レベル(n=3生物学的反復)
【0153】
パクリタキセル処理後のMCL1タンパク質レベルの低下が化合物Aに対する感受性の増強をもたらしたかどうかを決定するために、ブリス相乗作用を使用した。HCC70、MDA-MB-468及びHCC1806をパクリタキセル用量漸増(タンパク質で調整したCmax=1μMを含む)で4時間前処理して臨床曝露を模倣し、次いで化合物Aの用量漸増に曝露した。細胞を72時間インキュベートし、CTG試薬を使用して生存率を決定した。ブリス相乗作用は、インビトロで化合物A及びパクリタキセルの組み合わせに曝露された3つ全てのTNBC細胞株にわたって観察された(表15)。100を超えるブリス相乗作用スコアは、強い作用と考えられる{Prichard 1990}。
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
実施例3:化合物Aと標的薬剤及び化学療法との組み合わせ可能性を、72時間インビトロ増殖アッセイを使用して乳がん細胞株のパネルにおいて試験した。組み合わせ試験の結果を表21に示す。
【表21-1】
【表21-2】
【表21-3】
【表21-4】
【表21-5】
【表21-6】
【表21-7】
【表21-8】
【表21-9】
【表21-10】
【表21-11】
【表21-12】
【表21-13】
【表21-14】
【表21-15】
【表21-16】
【表21-17】
【表21-18】
実施例4:化合物AとBTK阻害剤との組み合わせ可能性を、72時間インビトロ増殖アッセイを使用して血液がん細胞株のパネルで試験した。組み合わせ試験の結果を表22に示す。
【表22】
実施例5:化合物AとSN-38との組み合わせ可能性を、72時間インビトロ増殖アッセイを使用してTNBC及びNSCLCがん細胞株のパネルで試験した。組み合わせ試験の結果を表23に示す。
【表23】
実施例6:化合物Aとパクリタキセルの組み合わせ可能性を、抗腫瘍有効性研究においてインビボでTNBC PDXモデルで試験した(図5及び図6)。
実施例7:固形悪性腫瘍を有する対象における単剤療法としての、及び抗がん療法と組み合わせた化合物Aの安全性、忍容性、及び薬物動態を評価するための第1a/b相試験
【0154】
試験は、進行した固形悪性腫瘍を有する対象において、化合物A及び抗がん療法と組み合わせた化合物Aの安全性及び忍容性を特徴付けるために行われる。
試験設計
【0155】
これは、化合物Aの安全性、忍容性、及びPKプロファイルを評価し、任意のDLT(用量制限毒性)を記録し、進行した固形悪性腫瘍を有する対象における単剤療法として及び抗がん療法と組み合わせた化合物AのMTD(最大耐用量)及び/又はRP2D(推奨第2相用量)を決定するための、非盲検、多施設、用量漸増、及び用量拡大第1a/1b相試験である。RP2Dは、許容される忍容性、曝露、有効性、及びバイオマーカー活性を有する用量レベル(複数可)である。試験は、第1a相(用量拡大)と、それに続く第1b相(用量拡大)の2相からなる。
・第1a相用量漸増:パートA:単剤療法としての化合物Aの用量漸増
・第1b相用量拡大:パートB:パートAと並行して抗がん療法と組み合わせた化合物Aの任意選択的な疾患特異的コホート
パートC:パートA及びパートBの後の抗がん療法と組み合わせた化合物Aの安全性導入及び拡大。
【0156】
試験の各パートは、スクリーニング、治療、及び追跡期間からなる。スクリーニングは、試験治療の最初の投与の28日前までに行われ、その間に、対象の適格性及びベースライン特性が決定される。
パートA:単剤療法としての化合物Aの第1a相用量漸増。
【0157】
標準療法に失敗若しくは不耐性であるか、又は標準療法が存在しない進行した固形腫瘍を有する対象は、漸増的により高い用量レベルで単剤療法として化合物Aを受けるように連続的に登録される。
【0158】
用量漸増は、3+3規則に基づく用量漸増設計で行われる。
【0159】
化合物Aは、各21日サイクルの1日目、2日目、8日目、9日目、15日目及び16日目に105週間まで経口投与される。
【0160】
3~6人の対象を有する最大6つのコホート(すなわち、6つの用量レベル)は各々、単剤療法として漸増用量レベルの化合物Aを受ける。化合物Aの計画された開始用量は5mgであり、以下の2つのコホートの標的用量は15mg及び50mgである。開始用量に続くその後の用量レベルは、以前のコホートからの安全性、忍容性、及びPK(薬物動態)を含む全ての利用可能な臨床データに基づいて決定され、SRT(安全性審査チーム)によって承認され、潜在的に300mgまでである。用量レベルの増加は、その後の各用量漸増において半対数以下である。
【0161】
各用量レベルの安全性及び忍容性は、コホート内の全ての対象が化合物Aの最初の投与後少なくとも21日間追跡された後、又は対象が治験薬投与の最初の21日間にDLTを有した後に、SRTによって評価される。
【0162】
各用量の最初のブロックは、3人の対象からなる。治験薬投与の最初の21日間にDLTを経験する対象がない場合、用量漸増が行われる。3人の対象の最初のコホート内の1人の対象が、治験薬投与の最初の21日間にDLTを経験する場合、追加の3人の対象が同じ用量レベルで登録される。追加の3人の対象においてDLTが観察されない場合、用量漸増を行う。2人以上の対象が最初の21日以内にDLTを経験する場合、より低い用量への用量漸減が行われる。MTDは、治験薬投与の最初の21日間に33%未満のDLTの対象発生率を有する最も高い用量レベルである。
【0163】
適用する決定規則について、任意の所与のコホートにおける一貫したレジメンによる21日間の治療。
【0164】
試験を通して、生検が利用可能な悪性腫瘍を有する対象は、任意選択的な腫瘍生検を受けてもよい。これらの対象は同意しなければならず、別個の特定の書面による同意を与えなければならない。
用量漸増基準
【0165】
任意の所与のコホートについて、スポンサーは、予備的安全性並びに利用可能なPK及び/又は薬力学的データの検討に基づいて、投薬を保留すること、中間用量を選択すること、又は任意の時点で研究登録を停止することを選択してもよい。
【0166】
SRTによる関連する安全性及び利用可能なPK及び/又は薬力学的データの検討に基づいて、より高い用量コホートへの漸増は、DLTの非存在下及び/又は任意の予め特定された停止基準を満たす場合にのみ行われる。半対数より大きい規模での後続コホートへの用量漸増は、SRTの少なくとも3分の2による肯定を必要とする。
【0167】
用量制限毒性は、最初の21日以内(化合物Aの最初の投与後)に発症する以下の化合物A関連事象として定義される。
・ 21日を超えて持続するグレード4の血液毒性。
・ 7日を超えて持続する全ての化合物A関連グレード3非血液学的毒性及び持続期間にかかわらず全ての化合物A関連グレード4非血液学的毒性をDLTとみなす。
パートB:パートAと並行して抗がん療法と組み合わせた化合物Aの任意選択的な疾患特異的コホート
【0168】
パートAにおける単剤療法用量漸増の間、及びパートCにおける化合物Aとの併用療法を特徴とするスポンサー指名及び支持の疾患特異的コホートの正式な用量拡大の前に、スポンサーは、SRTによって安全かつ忍容性があるとみなされたパートAにおける任意の以前に評価された用量の化合物Aとの併用療法についてパートCのものと整列させた以下のコホートのうちの1つ以上を指名及び支持することを選択してもよい。
・ コホートB1:転移性NSCLC(化合物A+ドセタキセル)
・ コホートB2:転移性NSCLC(化合物A+サシツズマブゴビテカン)
・ コホートB3:転移性TNBC(化合物A+ドセタキセル)
・ コホートB4:転移性TNBC(化合物A+サシツズマブゴビテカン)
・ コホートB5:非特異的組織学を有するmSTS(化合物A+ドセタキセル及びゲムシタビン
【0169】
各追加コホートは、特定の組み合わせを有する単一のそのような集団からなる。
パートC:他の抗がん療法と組み合わせた化合物Aの安全性導入及び用量拡大
【0170】
これは、パートA及びBの完了後にスポンサーによって指名及び支持された以下の5つの疾患特異的コホートのうちの1つ以上の他の抗がん療法と組み合わせて与えられた化合物Aを用いる非盲検第1b相試験である。
・ コホートC1:転移性NSCLC(化合物A+ドセタキセル)
・ コホートC2:転移性NSCLC(化合物A+サシツズマブゴビテカン)
・ コホートC3:転移性TNBC(化合物A+ドセタキセル)
・ コホートC4:転移性TNBC(化合物A+サシツズマブゴビテカン)
・ コホートC5:非特異的組織学を有するmSTS(化合物A+ドセタキセル及びゲムシタビン)
【0171】
RP2Dは、許容される忍容性、曝露、及びバイオマーカー活性を有する用量レベル(複数可)である。
【0172】
SRTは、臨床、安全性、PK、及び薬力学的データの全体に基づいて、各コホートについて組み合わせて使用するための化合物Aの初回用量を推奨する。併用療法が各対象集団において安全かつ忍容性であることを確実にするために、少なくとも3人の対象及び6人以下の対象の安全性導入群が登録される。
【0173】
安全性導入は、パートAと同じ3+3設計及び用量漸増規則を採用し、パートAと同じDLT基準及びDLT評価ウィンドウを使用して、MTD及び/又はRP2Dを決定する。最低6人の対象が、この用量レベルを拡大することができる前に、ある用量レベルで治療される必要がある。パートBからの同族疾患特異的コホートがRP2Dで調査された場合、それらの対象は、カウントされ、安全性導入群要件に対して考慮されてもよい。
【0174】
拡大は、パートBの下で組み合わせて、及び任意の安全性導入において調査された同一のレジメンで治療された任意の疾患特異的同族対象よりも少ない約30人の対象を含む。各疾患特異的コホート(B1+C1、B2+C2、B3+C3、B4+C4、B5+C5)について、パートB及び/又は安全性導入からの任意の対象を含む、RP2Dにおける最低20人の対象が登録される。
コホートC1:転移性疾患のための単一ラインの療法後の転移性NSCLCにおけるドセタキセルと組み合わせた化合物A
【0175】
コホートC1は、転移性疾患のための単一ラインの療法後の転移性NSCLCを有する対象において、安全性及び忍容性を評価し、ドセタキセルと組み合わせた化合物AのDLT(複数可)並びにMTD及び/又はRP2Dを定義する。
【0176】
化合物Aは、21日サイクルの1、2、8、9、15、及び16日目に投与される。
【0177】
ドセタキセルは、対象の好中球数が投与日に許容される、具体的には≧1500細胞/mmであるという条件で、21日サイクル毎の1日目に1時間にわたってIV注入として投与される75mg/mの体表面積(BSA)で投薬される。
【0178】
治療は、1つ以上の中止基準が満たされない限り、最大105週間継続する。
コホートC2:転移性疾患のための単一ラインの療法後の転移性NSCLCにおけるサシツズマブゴビテカンと組み合わせた化合物A
【0179】
コホートC2は、転移性疾患のための単一ラインの療法後の転移性NSCLCを有する対象において、安全性及び忍容性を評価し、サシツズマブゴビテカンと組み合わせた化合物AのDLT(複数可)並びにMTD及び/又はRP2Dを定義する。
【0180】
化合物Aは、21日サイクルの1、2、8、9、15、及び16日目に投与される。
【0181】
サシツズマブゴビテカンは、対象の好中球数が投与日に許容される、具体的には任意のサイクルの1日目に≧1500細胞/mm又は任意のサイクルの8日目に絶対好中球数(ANC)≧1000細胞/mmであるという条件で、21日サイクル毎の1日目及び8日目に週1回、IV注入として10mg/kg投与される。第1の注入は、3時間にわたって投与されるべきであり、対象は、注入関連反応の徴候又は症状について、注入中及び注入後少なくとも30分間の両方で観察される。その後の注入は、先の注入が許容された場合、1~2時間にわたって投与されるべきであり、対象は、注入中及び注入後少なくとも30分間の両方で観察される。
【0182】
治療は、1つ以上の中止基準が満たされない限り、最大105週間継続する。
コホートC3:転移性疾患のための単一ラインの療法後の転移性TNBCにおけるドセタキセルと組み合わせた化合物A。
【0183】
コホートC3は、転移性疾患のための単一ラインの療法後の転移性TNBCを有する対象において、安全性及び忍容性を評価し、ドセタキセルと組み合わせた化合物AのDLT(複数可)並びにMTD及び/又はRP2Dを定義する。
【0184】
化合物Aは、21日サイクルの1、2、8、9、15、及び16日目に投与される。
【0185】
ドセタキセルは、対象の好中球数が投与日に許容される、具体的には≧1500細胞/mmであるという条件で、21日サイクル毎の1日目に1時間にわたってIV注入として投与される75mg/mのBSAで投薬される。
【0186】
治療は、1つ以上の中止基準が満たされない限り、最大105週間継続する。
コホートC4:転移性疾患のための単一ラインの療法後の転移性TNBCにおけるサシツズマブゴビテカンと化合物Aの組み合わせ
【0187】
コホートC4は、転移性疾患のための単一ラインの療法後の転移性TNBCを有する対象において、安全性及び忍容性を評価し、サシツズマブゴビテカンと組み合わせた化合物AのDLT(複数可)並びにMTD及び/又はRP2Dを定義する。
【0188】
化合物Aは、21日サイクルの1、2、8、9、15、及び16日目に投与される。
【0189】
サシツズマブゴビテカンは、対象の好中球数が投与日に許容される、具体的には任意のサイクルの1日目に≧1500細胞/mm又は任意のサイクルの8日目にANC≧1000細胞/mmであるという条件で、21日サイクル毎の1日目及び8日目に週1回、IV注入として10mg/kg投与される。第1の注入は、3時間にわたって投与されるべきであり、対象は、注入関連反応の徴候又は症状について、注入中及び注入後少なくとも30分間の両方で観察される。その後の注入は、先の注入が許容された場合、1~2時間にわたって投与されるべきであり、対象は、注入中及び注入後少なくとも30分間の両方で観察される。
【0190】
治療は、1つ以上の中止基準が満たされない限り、最大105週間継続する。
コホートC5:転移性疾患について以前に治療されていない非特異的組織学を有する転移性軟組織肉腫。
【0191】
コホートC5は、安全性及び忍容性を評価し、以前に治療されていない軟部組織肉腫を有する対象において、ゲムシタビン及びドセタキセルと組み合わせた化合物AのDLT(複数可)並びにMTD及び/又はRP2Dを定義する。
【0192】
化合物Aは、21日サイクルの1、2、8、9、15、及び16日目に投与される。
【0193】
ゲムシタビンは、1日目及び8日目に90分かけてIV注入として900mg/m2のBSAの固定用量率で投与され、ドセタキセルは、21日サイクル毎の8日目に60分かけて100mg/m2 BSA IVで投与される。
【0194】
治療は、1つ以上の中止基準が満たされない限り、最大105週間継続する。
治療の持続期間
【0195】
研究薬物化合物Aは、105週間まで、又は疾患進行、許容できない毒性、研究手順若しくは研究薬物の実質的なノンコンプライアンス、研究中断、研究からの離脱、若しくは他の理由のうち最初に起こるものまで投与される。
参考文献
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Youle RJ,Strasser A.The BCL-2 protein family:opposing activities that mediate cell death.Nat Rev Mol Cell Biol 2008;9(1):47-59.
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを治療するための組み合わせ物であって、
治療有効量の抗がん剤、及び治療有効量のMCL-1阻害剤を投与することを含み、
前記組み合わせ物が、必要とするヒト患者に投与されることを特徴とし、
前記MCL-1阻害剤は、式(I)であるか:
【化10】
又はその薬学的に許容される塩であって、
式中、Rは、1~2個のヘテロ原子を含む5~10員ヘテロアリールであり;各ヘテロ原子は、独立して、窒素、硫黄、及び酸素から選択され;
の前記5~10員ヘテロアリールは、ハロ、ヒドロキシル、-CN、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、-OR、及びC3~6シクロアルキルから独立して選択される1~3個の置換基で任意選択的に置換されており;
各R、R、R及びRは、独立して、水素又はC1~6アルキルであり;
は、水素又はハロであり;
は独立して、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、及びC3~10シクロアルキルである、組み合わせ物
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記MCL-1阻害剤が、化合物A:
【化11】
又はその薬学的に許容される塩である、組み合わせ物
【請求項3】
前記MCL-1阻害剤が、AMG-397、AMG-176、PRT-1419及びS64315から選択される、請求項1に記載の組み合わせ物
【請求項4】
前記がんが、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、上皮卵巣がん、食道がん、濾胞性甲状腺がん、胃がん又は胃食道接合部腺がん、頭頸部がん、肺がん、肝細胞がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、尿路上皮がん、及び尿路から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項5】
前記がんが、TNBC、HR+/HER2-BC、UC、NSCLC、SCLC、HNSCC及びMIBCから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項6】
前記がんが転移性である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項7】
前記がんが転移性非扁平上皮非小細胞肺がん(mNSCLC)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項8】
前記がんが転移性トリプルネガティブ乳がん(mTNBC)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項9】
前記がんが、非特異的組織学を有する転移性軟部組織肉腫である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項10】
前記ヒト患者が、前記MCL-1阻害剤と前記抗がん剤との併用療法による治療の前に、少なくとも1回の他の療法を受けたことがある者である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項11】
前記ヒト患者が、前記MCL-1阻害剤と前記抗がん剤との併用療法による治療の前に、抗PD1剤又は抗PDL1剤による療法に失敗した者である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項12】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び前記抗がん剤が同時に又は別々に投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項13】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩が経口投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項14】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の量が、約5mg/kg、約15mg/kg又は約50mg/kgの投与量で投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項15】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩が、約5mg/kgの投与量で投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項16】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩が、2日間の投薬とそれに続く5日間の休薬を伴う21日サイクルで投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項17】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩が、各21日サイクルの1、2、8、9、15及び16日目に、105週間まで投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項18】
前記抗がん剤が化学療法剤である、請求項1~17のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項19】
前記抗がん剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、及びゲムシタビンから選択される、請求項1~18のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項20】
前記抗がん剤がパクリタキセルである、請求項1~19のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項21】
前記抗がん剤がBTK阻害剤である、請求項1~17のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項22】
前記抗がん剤が、アカラブルチニブ、チラブルチニブ、ザヌブルチニブ及びPCI-32765から選択されるBTK阻害剤である、請求項1~17のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項23】
前記抗がん剤が、抗PD-1剤、抗PD-L1剤、抗PD-1/PD-L1相互作用阻害剤、抗CTLA4剤及び抗TIGIT剤から選択されるチェックポイント阻害剤である、請求項1~17のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項24】
前記チェックポイント阻害剤が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、ジンベリマブ、及びピジリズマブから選択される、請求項23に記載の組み合わせ物
【請求項25】
前記チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、ラムブロリズマブ、トレメリムマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、ドンバナリマブ、及びチラゴルマブから選択される、請求項23に記載の組み合わせ物
【請求項26】
前記組み合わせ物が、抗体-薬物コンジュゲートと併せて投与されることを特徴とする、請求項1~25のいずれか一項に記載の組み合わせ物
【請求項27】
前記抗体-薬物コンジュゲートがサシツズマブゴビテカンである、請求項26に記載の組み合わせ物
【請求項28】
治療有効量の抗がん剤を含む、がんを治療するための組成物であって、
前記組成物が、必要とするヒト患者に治療有効量のMCL-1阻害剤と組み合わせて投与されることを特徴とし、
前記MCL-1阻害剤は、式(I)であるか:
【化12】
又はその薬学的に許容される塩であって、
式中、R は、1~2個のヘテロ原子を含む5~10員ヘテロアリールであり;各ヘテロ原子は、独立して、窒素、硫黄、及び酸素から選択され;
の前記5~10員ヘテロアリールは、ハロ、ヒドロキシル、-CN、C 1~6 アルキル、C 1~6 ハロアルキル、-OR 、及びC 3~6 シクロアルキルから独立して選択される1~3個の置換基で任意選択的に置換されており;
各R 、R 、R 及びR は、独立して、水素又はC 1~6 アルキルであり;
は、水素又はハロであり;
は独立して、水素、C 1~6 アルキル、C 2~6 アルケニル、及びC 3~10 シクロアルキルである、組成物。
【請求項29】
治療有効量のMCL-1阻害剤を含む、がんを治療するための組成物であって、
前記組成物が、必要とするヒト患者に治療有効量の抗がん剤と組み合わせて投与されることを特徴とし、
前記MCL-1阻害剤は、式(I)であるか:
【化13】
又はその薬学的に許容される塩であって、
式中、R は、1~2個のヘテロ原子を含む5~10員ヘテロアリールであり;各ヘテロ原子は、独立して、窒素、硫黄、及び酸素から選択され;
の前記5~10員ヘテロアリールは、ハロ、ヒドロキシル、-CN、C 1~6 アルキル、C 1~6 ハロアルキル、-OR 、及びC 3~6 シクロアルキルから独立して選択される1~3個の置換基で任意選択的に置換されており;
各R 、R 、R 及びR は、独立して、水素又はC 1~6 アルキルであり;
は、水素又はハロであり;
は独立して、水素、C 1~6 アルキル、C 2~6 アルケニル、及びC 3~10 シクロアルキルである、組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
いくつかの実施形態では、がんを治療する方法であって、治療有効量の抗がん剤、及び治療有効量のMCL-1阻害剤を、必要とするヒト患者に投与することを含む方法が本明細書において提供され、
MCL-1阻害剤は、式(I)のものであるか、又はその薬学的に許容される塩であり:
【化1】
式中、Rは、1~2個のヘテロ原子を含む5~10員ヘテロアリールであり;各ヘテロ原子は、独立して、窒素、硫黄、及び酸素から選択され;
の5~10員ヘテロアリールは、ハロ、ヒドロキシル、-CN、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、-OR、及びC3~6シクロアルキルから独立して選択される1~3個の置換基で任意選択的に置換されており;
各R、R、R及びRは、独立して、水素又はC1~6アルキルであり;
は、水素又はハロであり;
は独立して、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、及びC3~10シクロアルキルである。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
がんを治療する方法であって、
治療有効量の抗がん剤、及び治療有効量のMCL-1阻害剤を、必要とするヒト患者に投与することを含み、
前記MCL-1阻害剤は、式(I)であるか:
【化10】
又はその薬学的に許容される塩であって、
式中、R は、1~2個のヘテロ原子を含む5~10員ヘテロアリールであり;各ヘテロ原子は、独立して、窒素、硫黄、及び酸素から選択され;
の前記5~10員ヘテロアリールは、ハロ、ヒドロキシル、-CN、C 1~6 アルキル、C 1~6 ハロアルキル、-OR 、及びC 3~6 シクロアルキルから独立して選択される1~3個の置換基で任意選択的に置換されており;
各R 、R 、R 及びR は、独立して、水素又はC 1~6 アルキルであり;
は、水素又はハロであり;
は独立して、水素、C 1~6 アルキル、C 2~6 アルケニル、及びC 3~10 シクロアルキルである、方法。
(項目2)
項目1に記載の方法であって、前記MCL-1阻害剤が、化合物A:
【化11】
又はその薬学的に許容される塩である、方法。
(項目3)
前記MCL-1阻害剤が、AMG-397、AMG-176、PRT-1419及びS64315から選択される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記がんが、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、上皮卵巣がん、食道がん、濾胞性甲状腺がん、胃がん又は胃食道接合部腺がん、頭頸部がん、肺がん、肝細胞がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、前立腺がん、腎細胞がん、小細胞肺がん、尿路上皮がん、及び尿路から選択される、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記がんが、TNBC、HR+/HER2-BC、UC、NSCLC、SCLC、HNSCC及びMIBCから選択される、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記がんが転移性である、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記がんが転移性非扁平上皮非小細胞肺がん(mNSCLC)である、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記がんが転移性トリプルネガティブ乳がん(mTNBC)である、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記がんが、非特異的組織学を有する転移性軟部組織肉腫である、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記ヒト患者が、前記MCL-1阻害剤と前記抗がん剤との併用療法による治療の前に、少なくとも1回の他の療法を受けたことがある者である、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記ヒト患者が、前記MCL-1阻害剤と前記抗がん剤との併用療法による治療の前に、抗PD1剤又は抗PDL1剤による療法に失敗した者である、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び前記抗がん剤が同時に又は別々に投与される、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩が経口投与される、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の量が、約5mg/kg、約15mg/kg又は約50mg/kgの投与量で投与される、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩が、約5mg/kgの投与量で投与される、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩が、2日間の投薬とそれに続く5日間の休薬を伴う21日サイクルで投与される、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩が、各21日サイクルの1、2、8、9、15及び16日目に、105週間まで投与される、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記抗がん剤が化学療法剤である、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記抗がん剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、及びゲムシタビンから選択される、項目1~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記抗がん剤がパクリタキセルである、項目1~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記抗がん剤がBTK阻害剤である、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記抗がん剤が、アカラブルチニブ、チラブルチニブ、ザヌブルチニブ及びPCI-32765から選択されるBTK阻害剤である、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記抗がん剤が、抗PD-1剤、抗PD-L1剤、抗PD-1/PD-L1相互作用阻害剤、抗CTLA4剤及び抗TIGIT剤から選択されるチェックポイント阻害剤である、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記チェックポイント阻害剤が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、ジンベリマブ、及びピジリズマブから選択される、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、ラムブロリズマブ、トレメリムマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、ドンバナリマブ、及びチラゴルマブから選択される、項目23に記載の方法。
(項目26)
抗体-薬物コンジュゲートを投与することを更に含む、項目1~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記抗体-薬物コンジュゲートがサシツズマブゴビテカンである、項目26に記載の方法。
【国際調査報告】