(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】抗力保持リングを有する底部装填骨アンカー組立体及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/70 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
A61B17/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575868
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2022065675
(87)【国際公開番号】W WO2022258747
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514046806
【氏名又は名称】メドス・インターナショナル・エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】Medos International SARL
【住所又は居所原語表記】Chemin-Blanc 38, CH-2400 Le Locle, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ・エレン
(72)【発明者】
【氏名】ビースター・エリック
(72)【発明者】
【氏名】ミツキェビッチ・クリストファー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL24
4C160LL42
4C160LL62
(57)【要約】
低減された外形を有し、種々のサイズの骨ねじと共に利用することができる、底部装填骨アンカー組立体及びその構成要素が開示される。本開示の骨アンカー組立体(200)は、受け部材(206)と、抗力保持リング(204)と、シャンク(202)とを含む。保持リング及びシャンクは、受け部材の穴内に近位方向に挿入することができる。抗力リングは、基部と、そこから近位方向に延在する壁部と、を有することができる。抗力保持リングは、受け部材の溝内に配置することができ、基部は、受け部材内にシャンクを保持することができるシャンクヘッドのための座部を形成する。抗力保持リングの壁部は、基部に着座したシャンクヘッドに抗力を加えて、シャンクと受け部材との間の意図しない移動を防止することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨アンカー組立体であって、
近位端と遠位端とを有する受け部材であって、前記近位端と前記遠位端との間に中心長手方向軸が延在し、前記受け部材の前記遠位端に開口部を有する長手方向穴を有する、受け部材と、
前記受け部材に形成された溝に配置された保持リングであって、基部と、前記基部から近位方向に延在する壁部と、を有し、前記基部が、前記壁部の最大外径よりも大きい最大外径を有する、保持リングと、
前記保持リングの前記基部内に着座したヘッド部と、前記受け部材から遠位方向に延在する骨係合部と、を有するシャンクと、を備え、
前記保持リングの前記壁部は、前記シャンクの前記ヘッド部に抗力を加えてその回転に抵抗するように構成されている、骨アンカー組立体。
【請求項2】
前記保持リング及び前記シャンクは、前記受け部材の前記遠位端を通って近位方向に挿入されるように構成されている、請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記溝は、前記受け部材の前記遠位端の内面に形成されている、請求項1に記載の組立体。
【請求項4】
前記保持リングの前記基部の前記最大外径は、前記受け部材の前記遠位端における前記開口部の直径よりも大きい、請求項1に記載の組立体。
【請求項5】
前記保持リングの前記基部の遠位部の内径は、前記シャンクの前記ヘッドの最大直径よりも小さい、請求項1に記載の組立体。
【請求項6】
前記保持リングの前記基部の遠位部の内径は、前記シャンクの前記骨係合部の最大外側ねじ山直径よりも小さい、請求項1に記載の組立体。
【請求項7】
前記保持リングの前記壁部は、前記シャンクの前記ヘッドにその最大直径のところで接触するように構成されている、請求項1に記載の組立体。
【請求項8】
前記シャンクが前記保持リングの前記基部内に着座したときに、前記保持リングの前記壁部の近位端は、前記シャンクの前記ヘッドの前記最大直径を越えて近位方向に延在している、請求項7に記載の組立体。
【請求項9】
前記保持リングの前記壁部は、第1の壁セグメントと、前記第1の壁セグメントから周方向に分離された第2の壁セグメントと、を含む、請求項1に記載の組立体。
【請求項10】
前記保持リングは、前記保持リングの選択的な半径方向の拡張及び圧縮を可能にするように構成された、前記基部及び前記壁部を通って延在する分割部を含む、請求項1に記載の組立体。
【請求項11】
前記保持リングより近位で前記穴内に配置され、前記シャンクヘッドに遠位方向の力を加えるように構成された、サドルを更に備える、請求項1に記載の組立体。
【請求項12】
骨アンカー組立体を組み立てる方法であって、
シャンクの周りに配置された保持リングを半径方向に圧縮することであって、前記シャンクは、ヘッド及び骨係合部を含み、前記保持リングは、基部と前記基部から近位方向に延在する壁部とを含み、前記壁部は、前記基部の最大外径よりも小さい最大外径を有する、ことと、
前記圧縮状態の前記シャンク及び前記保持リングを、受け部材の遠位端における開口部を通して近位方向に通過させることと、
前記基部の少なくとも一部が前記受け部材内に形成された溝の第1の環状凹部と整列するように、前記保持リングを前記受け部材内で近位方向に前進させることと、
前記保持リングを拡張して、前記基部の少なくとも一部を前記溝の前記第1の環状凹部内に保持することと、
前記シャンクの前記ヘッドの最大直径が前記保持リングの前記壁部に接触し、前記シャンクの前記骨係合部が前記保持リングから遠位方向に延在するように、前記シャンクの前記ヘッドを前記保持リングの前記基部内に着座させることと、を含む、方法。
【請求項13】
前記受け部材を前記シャンクに対して所望の位置に位置決めすることと、
前記シャンクの前記ヘッドに対して前記保持リングの前記壁部によって加えられる抗力によって、前記受け部材を前記所望の位置に保持することと、を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記受け部材を前記所望の位置に位置決めすることは、前記受け部材を前記シャンクに対して多軸方向に移動させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗力は、前記保持リングの前記基部と前記壁部との間の境界面において前記保持リングによって加えられる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記抗力は、前記保持リングの前記壁部の近位端によって加えられる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記シャンクを骨に埋め込むことと、
閉止機構を締め付けて、前記シャンクに対して前記所望の位置に前記受け部材をロックすることと、を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記受け部材の前記遠位開口部を通してサドルを近位方向に前進させることと、
前記サドルによって前記シャンクの前記ヘッドに対して加えられる遠位方向の力によって、前記シャンクを遠位方向に付勢することと、を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記シャンクのネックの周りに前記保持リングを圧縮することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記保持リングの前記基部の少なくとも一部が前記溝の前記第1の環状凹部内に保持された状態で、前記保持リングの遠位面が前記受け部材の遠位面と面一である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、抗力保持リングを有する底部装填骨アンカー組立体及び関連方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
骨アンカー組立体は、治癒、癒合、又は他のプロセス中に骨を固定するために整形外科手術で用いることができる。例えば、脊椎手術では、骨アンカー組立体は、ロッド又は他の脊椎固定要素を1つ以上の脊椎骨に固定し、脊椎を堅固に又は動的に安定化させるために使用することができる。12222da
【0003】
骨アンカー組立体は、典型的には、骨に固定されるように構成されたねじ付きシャンク部と、シャンク部に取り付けられ、ロッド又は他の固定要素をその中に受け取るように構成されたヘッド又は受け部材と、を含むことができる。シャンク及び受け部材は、シャンクのヘッドが受け部材内に保持され、シャンクのねじ付き部がそこから遠位方向に延在するように組み立てることができる。いくつかの構造では、シャンク及び受け部材は、多軸組立体として提供することができ、それによって、受け部材は、シャンクに対して自由角移動を有する。この移動の自由度は、骨アンカー組立体の複数の構成要素を整列させる際に有用であり得るが、これはまた、課題をもたらす可能性がある。例えば、組立体をロックする前に、受け部材とシャンクとの間の所望の角度配向を維持することは困難であり得る。このため、骨に埋め込まれた組立体を暫定的に位置決めする間、受け部材は「浮き上がる」又は落下する傾向を有することがあり、所望の位置合わせを達成するためにユーザによるその後の再位置決めを必要とし、又はロッド若しくは他の固定要素の導入中に受け部材を所望の位置に保持するためにユーザ又は助手を必要とする。これは、ユーザにとって面倒であり、外科的処置に不必要な長さを追加する可能性がある。
【0004】
多くの骨アンカー組立体は、骨ねじを受け部材内の近位開口部を通して挿入し、ねじのヘッドを受け部材内に着座させるように遠位方向に移動させ、ねじ付きシャンクを遠位開口部を通して遠位方向に通過させる、「上部装填」とすることができる。しかしながら、そのような上部装填組立体は、骨ねじシャンクの直径が受け部材の直径及びサイズによって制限されるので、用途が限定される。したがって、大きな直径のシャンクが望ましい場合には、骨アンカー組立体は、シャンクのヘッドを受け部材の遠位端の開口部内へ近位方向に通過させることによって装填される「底部装填」構成で組み立てられることが多い。底部装填骨アンカー組立体は、例えば、より大きなシャンクと、シャンクを受け部材内に保持するのに必要な追加の構成要素とを収容するために、受け部材の増大したサイズ又は外形を有することができ、これにより、骨に対する脊椎固定要素の配置を決定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の設計の欠点に対処する改良された骨アンカー組立体、例えば、骨係合構成要素の直径とは無関係に組み立てて使用することができる、低減された外形及び改善された仮位置決めを有する骨アンカー組立体が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、低減された全体的組立体サイズを有し、多種多様な外科的処置にわたって利用することができる、骨アンカー組立体及び関連方法を提供する。本明細書に開示される骨アンカー組立体は、様々な骨アンカー構成要素の受け部材への底部装填を可能にすることができ、それによって、骨係合構成要素、例えば、骨シャンクの最大外径とは関係なく共通の組立手順を提供する。本明細書に開示される骨アンカー組立体は、組立中に受け部材内に近位方向に前進させて、その遠位部内に保持することができる抗力保持リングを含むことができる。抗力保持リングは、受け部材と骨シャンクとの間の所望の多軸移動を可能にするが、それらの間の意図しない又は偶発的な移動に対する抵抗を提供することができるように、骨シャンクのヘッドを受け部材内に保持することができる。より具体的には、抗力保持リングは、骨シャンクのヘッドを着座させるように構成された基部と、基部から近位方向に延在する壁部と、を含むことができる。壁部は、シャンクのヘッドに接触し、意図しない移動に抵抗してシャンクヘッドに半径方向内向きの抗力又は摩擦力を加えることができる。このようにして、本開示の骨アンカー組立体は、例えば、外科医又は他のユーザによって、受け部材をシャンクに対して所望の位置に配置することができ、保持リングの壁部によってシャンクのヘッドに加えられる摩擦力によって所望の位置に維持することができる。
【0007】
一態様では、骨アンカー組立体が開示され、この骨アンカー組立体は、近位端と遠位端とを有し、近位端と遠位端との間に中心長手方向軸が延在し、長手方向穴が内部に形成され、遠位端に開口部が設けられた受け部材と、保持リングと、シャンクとを含む。保持リングは、受け部材内に形成された溝内に配置され、基部と、基部から近位方向に延在する壁部と、を含み、保持リングの基部は、壁部の最大外径よりも大きい最大外径を有する。シャンクは、保持リングの基部内に着座するヘッド部と、受け部材から遠位方向に延在する骨係合部と、を有する。保持リングの壁部は、シャンクのヘッド部に抗力を加えてその回転に抵抗するように構成されている。
【0008】
本明細書に説明される器具及び方法は、多くの追加の特徴及び/又は変形形態を有することが可能であり、それらの全ては、本開示の範囲に含まれる。例えば、保持リング及びシャンクは、受け部材の遠位端を通して近位方向に挿入するように構成することができる。受け部材に形成された溝は、受け部材の遠位端の内面に形成することができる。いくつかの実施形態では、骨アンカー組立体は、保持リングより近位で受け部材の穴内に配置されたサドルを更に含むことができ、サドルは、保持リング内に着座したシャンクヘッドに遠位方向の力を加えるように構成されている。
【0009】
保持リングの壁部は、その最大直径でシャンクのヘッドに接触するように構成することができる。いくつかの実施形態では、壁部の近位端は、シャンクが保持リングの基部内に着座すると、シャンクのヘッドの最大直径を越えて近位方向に延在することができる。他の実施形態では、壁部の近位端は、その最大直径でシャンクのヘッドに接触するように構成することができる。保持リングの壁部は、場合によっては、第1の壁セグメントと、第1の壁セグメントから周方向に分離された第2の壁セグメント、とを含むことができる。保持リングは、保持リングの選択的な半径方向の拡張及び圧縮を可能にするように構成された、基部及び壁部を通して延在する分割部を含むことができる。
【0010】
保持リングの基部は、受け部材の遠位端における開口部の直径よりも大きい最大外径を有することができる。保持リングの基部の遠位部は、シャンクのヘッドの最大直径よりも小さい内径を有することができる。いくつかの実施形態では、保持リングの基部の遠位部の内径は、シャンクの骨係合部の最大外側ねじ山直径より小さくすることができる。
【0011】
別の態様では、骨アンカー組立体を組み立てるための方法が開示され、この方法は、シャンクの周りに配置された保持リングを半径方向に圧縮することを含み、シャンクは、ヘッド及び骨係合部を含み、保持リングは、基部と基部から近位方向に延在する壁部とを含む。基部の壁部は、基部の最大外径よりも小さい最大外径を有する。本方法は、シャンクと圧縮状態の保持リングとを受け部材の遠位端における開口部を通して近位方向に通過させることと、基部の少なくとも一部分が受け部材内に形成された溝の第1の環状凹部と整列するように、保持リングを受け部材内で近位方向に前進させることと、を更に含む。本方法はまた、溝の第1の環状凹部内に基部の少なくとも一部分を保持するように保持リングを拡張することと、シャンクのヘッドの最大直径が保持リングの壁部に接触し、シャンクの骨係合部が保持リングから遠位方向に延在するように、シャンクのヘッドを保持リングの基部に着座させることと、を含む。
【0012】
上述したように、任意の様々な追加の工程及び/又は変形が可能であり、本開示の範囲内である。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、シャンクに対して所望の位置に受け部材を位置決めすることと、シャンクのヘッドに対して保持リングの壁部によって加えられる抗力によって受け部材を所望の位置に保持することと、を更に含むことができる。受け部材を所望の位置に位置決めすることは、場合によっては、受け部材をシャンクに対して多軸方向に移動させることを含むことができる。いくつかの実施形態では、抗力は、保持リングの基部と壁部との間の界面において、保持リングによって加えることができる。他の実施形態では、抗力は、保持リングの壁部の近位端によって加えることができる。特定の実施形態では、本方法は、シャンクを骨に埋め込むことと、閉止機構を適用して、シャンクに対して所望の位置に受け部材をロックすることと、を更に含むことができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、本方法は、受け部材の遠位開口部を通してサドルを近位方向に前進させることと、サドルによってシャンクのヘッドに対して加えられる遠位方向の力によってシャンクを遠位方向に付勢することと、を更に含むことができる。いくつかの実施形態では、シャンクの周りに配置された保持リングを半径方向に圧縮する上述の方法工程は、保持リングをシャンクのネックの周りに半径方向に圧縮することを更に含むことができ、これは、保持リングを受け部材に組み立てるのを助けることができる。いくつかの実施形態では、保持リングの基部の少なくとも一部分が溝の第1の環状凹部内に保持された状態で、保持リングの遠位面は受け部の遠位面と面一であり得る。
【0014】
上で説明される特徴又は変形例のいずれも、いくつかの異なる組み合わせで、本開示の任意の特定の態様又は実施形態に適用することができる。任意の特定の組み合わせの明確な記述はないが、それは単に本概要での重複を回避するためである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて検討することで、より完全な理解がなされるであろう。
【
図1A】底部装填骨アンカー組立体の斜視分解図である。
【
図2】多要素骨アンカーを有する骨アンカー組立体の分解斜視図である。
【
図3】本開示の骨アンカー組立体の一実施形態の正面断面図である。
【
図4】
図3の骨アンカー組立体の斜視分解図である。
【
図5】
図3の骨アンカー組立体の抗力保持リングの一実施形態の斜視図である。
【
図7】
図6の線A-Aに沿った、
図5の抗力保持リングの正面断面図である。
【
図8】
図3の骨アンカー組立体の受け部材の一実施形態の斜視図である。
【
図9】
図8の線B-Bに沿った、
図8の受け部材の正面断面図である。
【
図10】本開示の骨アンカー組立体の別の実施形態の正面断面図である。
【
図12】
図10の骨アンカー組立体の抗力保持リングの一実施形態の斜視図である。
【
図13】
図10の骨アンカー組立体の受け部材の一実施形態の斜視図である。
【
図14】
図10の骨アンカー組立体の組立方法の一実施形態の一工程を示す図である。
【
図15】脊椎固定要素に連結された
図10の骨アンカー組立体の側面図である。
【
図16】本開示の骨アンカー組立体の2つの実施形態、及びロッドに連結された1つの従来の骨アンカー組立体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
低減された骨アンカー組立体の外形を提供し、ねじ山直径とは無関係に様々な骨シャンクと共に利用することができる、底部装填骨アンカー組立体が本明細書に開示される。したがって、本開示は、広範囲の外科的処置にわたって使用するのに適した一般的な骨アンカー組立体の方法及び構成を提供する。より具体的には、本開示の骨アンカー組立体は、(i)骨係合シャンクと受け部材との間の分離を防止し、(ii)シャンクと受けヘッドとの間の多軸方向の移動に抵抗してシャンクのヘッドに抗力を加え、例えば、外科医がねじに対して受け部材を所望の位置合わせで位置決めすることを可能にする抗力保持リングを含む。抗力保持リング(本明細書では「保持リング」とも呼ばれる)は、シャンクヘッドを着座又は保持するように構成された基部と、シャンクヘッドに半径方向内向きの摩擦抗力を加えることができる、基部から近位方向に延在する壁部と、を含むことができる。保持リングによって加えられる抗力は、骨アンカーを係止する前に受け部材とシャンクとの間の相対位置を維持するのを助けることができ、これは、ユーザによって意図されたときに依然として自由な移動を可能にしながら、意図されない移動を防止することができる。保持リング及びシャンクは、本開示の骨アンカー組立体が小径、中径、又は大径の骨シャンクとの使用のために適合されるように、受け部材内に底部から装填することができる、すなわち、受け部材の遠位開口部を通して近位方向に挿入することができる。
【0017】
本明細書に開示されるデバイス、システム、及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理が総括的に理解されるように、ある特定の例示的な実施形態について、これから説明する。これらの実施形態の1つ又は2つ以上の実施例が、添付の図面に例解されている。本明細書に具体的に説明され、添付の図面に例解されるデバイス、システム、及び方法は、非限定的な実施形態である。一実施形態に関連して例解又は説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わされ得る。かかる修正及び変形例は、本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【0018】
追加的に、直線又は円形の寸法が、開示されるデバイス及び方法の説明で使用される限りにおいて、そのような寸法は、そのようなデバイス及び方法と共に使用され得る形状のタイプを限定することを意図しない。そのような線形及び円形の寸法に対する等価物は、異なる幾何学的形状に対して決定され得る。更に、実施形態の同様の番号が付けられた構成要素は、概して同様の特徴を有することができる。なお更に、デバイスのサイズ及び形状、並びにその構成要素は、デバイスが使用される主体の解剖学的形態、デバイスが共に使用される物体のサイズ及び形状、並びにデバイスが使用される方法及び処置に少なくとも依存し得る。
【0019】
図1A及び1Bは、アンカー部又はシャンク102と、脊椎ロッド106などの、シャンク102に連結される脊椎固定要素を受け取るためのヘッド又は受け部材104と、受け部材内に脊椎固定要素を捕捉し、受け部材に対して脊椎固定要素を固定するための締着具又は閉止機構108と、を含む骨アンカー100を示す。シャンク102は、近位ヘッド110と、骨を係合させるように構成された遠位シャフト112と、を含む。受け部材104は、離間して配置された一対のアーム114A、114Bを有する近位端であって、アームの間に凹部又はチャネル116を画定する、近位端と、開口部を画定する遠位端面を有する遠位端であって、シャンク102の少なくとも一部分がその開口部を貫通して延在する、遠位端と、を有する。閉止機構108は、アーム114A、114Bの間に位置付け可能であり、アーム114A、114Bに係合して、受け部材104内に脊椎固定要素(例えば、脊椎ロッド106)を捕捉し、受け部材に対して脊椎固定要素を固定することができる。
【0020】
シャンク102の近位ヘッド110は、概して、平面状の近位面と略球形状の遠位面を有する切頭球体の形状である。図示された骨アンカー100は、脊椎骨の椎弓根又は外側塊内に後方埋め込みするために設計された多軸の骨ねじである。シャンク102の近位ヘッド110は、近位ヘッド及び遠位シャフト112が受け部材に対して枢動することができる、ボール及びソケットのような仕組みで、受け部材104の遠位端と係合する。シャンク102の近位ヘッド110の遠位面及び受け部材104の遠位端内の合わせ面は、この仕組みを容易にする任意の形状を有することができ、例えば、球状(図示されるように)、トロイダル、円錐形、円錐台形、及びこれらの形状の任意の組み合わせを含む。
【0021】
シャンク102の遠位シャフト112は、骨と係合するように構成され得、図示した実施形態では、骨と係合する雄ねじを含む。ねじ山の数、ピッチ、外径及び内径、並びにねじ山の形状を含む遠位シャフト112のねじ山形態は、骨との接続を容易にするように選択することができる。例示的なねじ山形態は、2011年5月18日出願の米国特許出願公開第2011/0288599号、及び2012年8月22日出願の米国特許出願公開第2013/0053901号に開示されており、開示内容はいずれも参照により本明細書に組み込まれる。遠位シャフト112はまた、フックなどの、骨と係合するためのその他の構造体を含み得る。例えば、最小侵襲性の処置におけるガイドワイヤ上でのシャンクの送達を容易にするために、シャンク102の遠位シャフト112は、シャンクの長さを延在させる中央通路又はカニューレを有して、カニューレ処置され得る。例えば、閉止機構108、受け部材104、及び圧縮キャップ又はサドル118(以下で論ずる)を含む、骨アンカー100の他の構成要素は、カニューレ処置され得、あるいはガイドワイヤ上での送達を可能にするための開口部を有し得る。骨の内殖を可能にするため、又は、シャンク102を通って骨セメント若しくは他の材料を分配することを可能にするために、遠位シャフト112はまた、カニューレと連通する1つ以上の側壁開口部又は開窓を含むことができる。側壁開口部は、カニューレから遠位シャフト112の側壁を通って半径方向に延在することができる。骨セメントを骨アンカー100に送達するための例示的なシステム、及びセメント送達を容易にするための骨アンカーの代替形態は、2009年10月29日出願の米国特許出願公開第2010/0114174号に説明されており、その開示内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。シャンク102の遠位シャフト112はまた、例えば、ハイドロキシアパタイトなどの骨の成長を可能にする材料で被覆されることができ、骨アンカー100は、例えば、トリクロサンなどの抗感染材料で、部分的に又は完全に被覆されることができる。
【0022】
受け部材104の近位端は、離間された一対のアーム114A、114Bであって、脊椎固定要素(例えば、脊椎ロッド106)を受容するためのU字形の凹部116をその間に画定する、アーム114A、114Bを含む。アーム114A、114Bの各々は、受け部材104の遠位端から自由端まで延在することができる。アーム114A、114Bの各々の外表面は、受け部材104の器具への接続を容易にするために、例えば、凹部、くぼみ、ノッチ、突起などの特徴を含むことができる。例えば、各アーム114A、114Bの外表面は、アームのそれぞれの自由端でアーチ形の溝を含むことができる。こうした溝は、2007年2月20日発行の米国特許第7,179,261号により詳細に説明され、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
受け部材104の遠位端は、シャンク102の少なくとも一部分が延在して通る円形の開口部を画定する概して環状の形状である遠位端面を含む。例えば、シャンク102の遠位シャフト112は、開口部を通って延在することができる。
【0024】
シャンク102は、受け部材104に対して選択的に固定されることができる。固定前に、シャンク102は、受け部材の遠位端とシャンク102の近位ヘッド110との幾何学的形状によって一般に画定される角形成の円錐内で、受け部材104に対して可動である。骨アンカー100は、例えば、2005年12月13日付けで発行の米国特許第6,974,460号、及び2004年5月18日付けで発行の同第6,736,820号に開示されるような、フェイバードアングルスクリューであることができ、双方の開示内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。あるいは、骨アンカー100は、シャンク102が全ての方向に同じ量だけ枢動する、従来の(偏倚されていない)多軸ねじであることができる。
【0025】
脊椎固定要素(例えば、脊椎ロッド106)は、シャンク102の近位ヘッド110と直接接触することができるか、又は中間要素、例えば、圧縮部材又はサドル118と接触することができる。サドル118は、受け部材104内で、かつ脊椎ロッド106とシャンク102の近位ヘッド110との間に介在して位置決めされ得、近位ヘッドの遠位外面を、受け部材104の遠位内面と直接固定した係合に圧縮することができる。サドル118は、脊椎ロッド106を受け取るためにU字形の座面122を画定する、離間して配置された一対のアーム120A、120B、及びシャンク102の近位ヘッド110と係合するための遠位面を含むことができる。
【0026】
受け部材104の近位端は、受け部材のアーム114Aと114Bとの間に位置付け可能であり、かつアーム114A、114Bと係合する、閉止機構108を受容するように構成され得る。閉止機構108は、受け部材104内で脊椎固定要素、例えば、脊椎ロッド106、を捕獲し、受け部材に対して脊椎ロッドを固定し、かつ受け部材に対してシャンク102を固定するように構成され得る。閉止機構108は、受け部材104のアーム114A、114Bに設けられた雌ねじ山と係合するための雄ねじ山が付けられた、単一の止めねじであり得る。しかしながら、図示した実施形態では、閉止機構108は、サドル118に作用するように動作可能な外側止めねじ124、及びロッド106に作用するように動作可能な内側止めねじ126を含む。代わりに、又は加えて、受け部材104の外周の周りに延在するナット、側部から受け部材上に摺動するキャップ若しくは締着具、又は4分の1回転によって受け部材にロックするキャップ若しくは締着具など、様々な他の閉止機構108を使用することができる。
【0027】
骨アンカー100は、剛性脊椎ロッド106のような脊椎固定要素と共に使用することができる。他の実施形態では、脊椎固定要素は、器具を装着した椎骨間の制御された運動性を可能にする、動的安定化部材とすることができる。
【0028】
使用に際して、骨は、一般に、シャンク102を受容するように適切にサイズ決定される孔を骨にドリル加工することによって、骨アンカー組立体100を受容するように調製することができる。まだ完成していない場合、骨アンカー100は、遠位シャフト112が受け部材104の遠位端の開口部を通して延在し、シャンク102の近位ヘッド110が受け部材104の遠位端に受け取られるように、組み立てられ得る。ドライバツールは、シャンクを骨に打ち込むために、シャンク102に備え付けることができる。サドルのアーム120A、120Bが受け部材104のアーム114A、114Bと整列し、サドル118の下面がシャンク102の近位ヘッド110と接触するように、サドル118は、受け部材104内に位置決めされ得る。脊椎固定要素(例えば、脊椎ロッド106)は、受け部材104の凹部116に位置決めされ得る。閉止機構108は、受け部材104のアーム114A、114Bに提供される雌ねじ山と係合され得る。ねじり力は、外側止めねじ124に加えられ得、サドル118をシャンク102の近位ヘッド110へ押し付けるように、外側止めねじを凹部116内で動かし、それにより、受け部材104に対してシャンク102の角度位置をロックする。ねじり力は、内側止めねじ126に加えられ得、脊椎ロッド106をサドル118との係合へと押し込め、それにより、受け部材104に対して脊椎ロッド106を固定する。
【0029】
骨アンカー100の更なる情報は、2017年5月10日出願の米国特許出願第2018/0325569号に見出すことができ、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
図2は、
図1A及び
図1Bの骨アンカー組立体100と同様の骨アンカー組立体100’を示すが、骨アンカー組立体100’は、多要素骨アンカー101’を含み、シャンク112’が受け部材104’内に近位方向に前進して、球形ヘッド又はボール110’と係合する。クリップ111’は、ヘッド110’をシャンク112’にロックする。球形ヘッド110は、それに連結される近位ヘッド及び遠位シャフト112が受け部材に対して枢動することができる、ボール及びソケットのような仕組みで、受け部材104’の遠位端と係合する。骨アンカー組立体100’は、上述したように、閉止機構108’及び圧縮部材118’を含むことができる。閉止機構108’は、外側止めねじ124’及び内側止めねじ126’を含むことができ、受け部材104’内に脊椎固定要素、例えば脊椎ロッド106’を捕捉し、受け部材に対して脊椎固定要素を固定するように構成することができる。
【0031】
骨アンカー100’の更なる詳細は、参照により本明細書に組み込まれる、2013年3月14日に出願された米国特許出願第9,775,660号に見出すことができる。
【0032】
図3~
図9は、本開示の骨アンカー組立体200の一実施形態を例示する。骨アンカー組立体200及びその様々な構成要素の構造及び構成は、骨アンカー組立体のサイズの低減をもたらし、骨アンカーねじ山サイズとは関係なく共通の組立手順を可能にすることができる。この目的のために、骨アンカー組立体200の複数の構成要素は、骨アンカーの受け部材内に骨シャンクを保持し、そこに抗力を加える役割を果たすことができる抗力保持リングを含む受け部材内に底部から装填することができる(以下で詳細に説明する)。
図3及び
図4に示すように、骨アンカー組立体200は、シャンク202と、抗力保持リング204と、受け部材206とを含むことができる。骨アンカー200はまた、圧縮キャップ又はサドル208、及び締結具又は閉止機構210を含むことができる(
図8を参照)。本明細書に記載されている場合又は本開示から明らかである場合を除き、シャンク202、受け部材205、圧縮キャップ208、及び閉止機構210は、上述した骨アンカー100の対応する構成要素の特徴のいずれかを含むことができる。例えば、シャンク202は、ヘッド202a及び遠位シャンク又は骨係合部202bを有することができる。骨係合部202bは、外側骨係合ねじ山を含むことができる。受け部材206は、間に凹部209を画定する一対の離間したアーム207a、207bを含むことができる。閉止機構210は、アーム214Aとアーム214Bとの間に位置決め可能で、アーム207a、207bと係合することができ、受け部材206内で、脊椎固定要素(例えば、脊椎ロッド206)を補足し、受け部材に対して脊椎固定要素を固定し、シャンク202に対して受け部材を固定する。受け部材106は、近位端206p、遠位端206d、及びそれらの間に延在する中心長手方向軸A1を有することができる。受け部材206は、シャンク202、保持リング204、圧縮キャップ208、及び閉止機構210の少なくとも一部分を受け入れることができる長手方向穴211を含むことができる。シャンク202は、中心長手方向軸A2を含むことができる。シャンク202は、受け部材の中心長手方向軸A1を中心に受け部材206に対して回転及び枢動させることができる。
【0033】
図3を参照すると、保持リング204は、シャンク202のヘッド202aと受け部材206の遠位部206dとの間に配置されて、(i)シャンクヘッドを受け部材内に保持し、(ii)シャンクヘッドに抗力を加えることができる。より具体的には、保持リング204は、受け部材206の溝312内に少なくとも部分的に保持することができ(
図9)、シャンクヘッド202aは、シャンク202が保持リング及び受け部材に対して枢動及び回転することができるように、ボール及びソケットのような構成で保持リング内に多軸方向に着座させることができる。
図3の同一直線上の配向では、すなわち、シャンク202の長手方向軸A2が受け部材206の長手方向軸A1と整列した状態では、保持リング204は、その赤道又は最大直径Dに沿ってシャンクヘッド202aに半径方向内向きの摩擦力を加えることができる。保持リング204によって加えられるこの力は、シャンクヘッド202aと受け部材206との間の相対移動に抵抗することができ、それにより、シャンク202を受け部材に対して所望の位置に配置して一時的に保持することができ、受け部材が落下したり、「浮き上がったり」することがない。以下に詳細に説明するように、保持リング204によって加えられる抗力は、保持リングの壁部402(
図5)とシャンクヘッドの外径との間の締まり嵌めから生じることができる。ここで、骨アンカー組立体200の様々な構成要素について、
図5~
図9を参照してより詳細に説明する。
【0034】
保持リング204の一実施形態は、
図5~7により詳細に示されている。保持リング204は、シャンクヘッド202aを着座させるように構成された基部300と、基部から近位方向に延在する壁部302と、を有する略円筒形とすることができる。保持リング204は、シャンク202を受け部材206の穴211内へ近位方向に挿入するように構成し、受け部材の遠位端206dに形成された溝212内に保持することができる。管腔301は、基部300の遠位面300dを通る遠位開口301dを有する保持リング204を通って延在することができる(
図7)。基部の遠位開口301dは、シャンク202のヘッド202aの最大直径Dよりも小さい直径D
Lを有することができ、それにより、シャンクの少なくとも一部分を保持リング204内に保持することができる。いくつかの実施形態では、基部の遠位開口301dの直径D
Lは、シャンク202の骨係合部202bの最大外側ねじ山直径より小さくすることができる。
【0035】
基部300の近位部は、基部の遠位部306の外径D2よりも大きい外径D1を有する環状ボス304から形成することができる。壁部302は、環状ボス304から近位方向に延在することができる。ボス304の外径D1は、ボスの外径が保持リング204の最大外径を表すように、壁部302の外径D3よりも大きくすることができる。保持リング204は、保持リングの選択的な半径方向の拡張及び圧縮を可能にする半径方向分割部308を含むことができる。保持リング204は、基部300及び壁部302を通って延在する半径方向分割部308と共に示されているが、保持リングは、スリットや切欠きなど、半径方向の拡張及び圧縮を可能にするための追加又は代替の特徴を含むことができる。このようにして、保持リング204の直径は、例えば、受け部材206内への近位方向の挿入のために保持リングの外径を縮小し、その後、直径を拡張して保持リングを受け部材溝412内に着座させるように、選択的に調節することができる。
【0036】
基部300の内面300iは、シャンクヘッド202aのための座部を形成することができる。より具体的には、基部300の内面300iは、基部に対するシャンクヘッドの多軸方向の移動を可能にするように、シャンクヘッド202aの少なくとも一部分をその中に保持することができるようなサイズ及び形状にすることができる。いくつかの実施形態では、内面300iは、シャンクヘッド202aの外面の形状に適合させることができる。例えば、内面300iの少なくとも一部分は、シャンクヘッド202aの外側球面に対応し得る球形状を有することができる。図示の実施形態は、球形状を有するシャンクヘッド202aと、相補的な球面を有する保持リング204の内面300iと、を示しているが、シャンクヘッド及び/又は内面の他の形状も本開示の範囲内である。例えば、いくつかの実施形態では、基部300の内面300iは、球形シャンクヘッド202aを着座させる、又は受容することができる面取り面(
図11の300i’を参照)とすることができる。他の実施形態では、シャンクヘッド202aは、異なる形状を有することができ、基部の内面400iの形状は、シャンクヘッド202aがその中に受容又は着座され得るように形成することができる。
【0037】
上記で紹介したように、壁部302は、シャンクヘッドが基部300内に着座しているときに、シャンクヘッド202aに摩擦力又は抗力を与えることができる。抗力は、保持リング204に対するシャンク202の多軸方向の移動に抵抗することができる。壁部302の内面302iは、シャンク202のヘッド202aに抗力を加えるように構成された幾何学的形状を有することができる。例えば、壁部302の内面302iは円筒形状を有することができ、基部300の球状内面300iと壁部302の円筒状内面302iとの間の境界面310は、シャンクヘッド202aの最大直径Dよりも小さい静止直径を有することができる。このようにして、壁部302は、境界面310においてシャンクヘッド202aとの単一の接触線に沿って半径方向内向きの抗力を加えることができる。シャンクヘッドが保持リング基部300内に着座し、境界面310がシャンクヘッドの最大直径と整列したとき、壁部302は、壁部の近位端302pが、シャンクヘッド202aの赤道又は最大直径Dを越えて近位方向に延在するような高さHを有することができる。壁部の高さHは、環状ボス304の近位対向面302pにおける壁部の遠位端304dから壁部の近位端302pまでで測定することができる。保持リング204及び他の骨アンカー組立体200の構成要素の相対的な寸法は、少なくとも部分的に、保持リングとシャンクヘッド202aとの間の所望の抗力及び接触を達成するように選択することができる。非限定的な例として、いくつかの実施形態では、壁部402の高さHは、約0.5mmであり得る。したがって、いったん組み立てられると、すなわち、保持リング204が受け部材の溝412内に受容され、シャンクヘッド202aがその中に着座すると、保持リングの壁部302は、シャンク202のヘッド202aに対して界面310において半径方向内向きの摩擦抗力を加えることができ、シャンクのヘッドと受け部材206との間の多軸方向の移動に抵抗する。
【0038】
いくつかの実施形態では、壁部302は、凹部又は間隙314によって周方向に分離され得る2つの壁セグメント312a、312bを有することができる。壁セグメント312a、312bの間の凹部314は、保持リング204が受け部材206の中へ近位方向に前進させられるときに滑らかな引き込みを支援することができる。例えば、いくつかの実施形態では、凹部414は、実質的に「U」字形状を有することができ、凹部は、壁セグメント312a、312bの近位端302pから壁セグメントの遠位端302dまで延在する。更なる非限定的な例として、間隙314は、実質的に切頭「V」字形状(
図11)を有することができる。壁セグメント312a、312bは、保持リング304のスロット308に対向する点の周りで枢動又は屈曲することができる。いくつかの実施形態では、スカラップ形切欠き311(
図3)が、壁部302又は壁セグメント312a、312bの外面302oに沿って、その遠位端302dに設けられ得る。スカラップ形切欠き311は、壁部302又は壁セグメント312a、312bに更なる可撓性を提供することができる。
【0039】
図8及び
図9に、受け部材206をより詳細に示す。
図8は、受け部材206の斜視図であり、
図9は、
図8の軸A-Aに沿った受け部材の正面断面図である。
図9を参照すると、受け部材206の遠位端206dは、その内面に形成された溝212を含むことができる。溝212は、保持リング204を受容し、少なくとも部分的に着座させるように構成することができる。溝212は、遠位、中間、及び近位環状凹部又は環状部212a、212b、212cを有することができ、その各々は、少なくとも部分的に、それぞれ、基部300の遠位部306、環状ボス304、及び保持リング204の壁部306の対応する外側寸法に対応してサイズ決定することができる。例えば、遠位環状凹部212aの内径D4は、基部300の遠位部306の外径D2と等しいか、又はそれよりわずかに大きくすることができる。同様に、中間環状凹部212bの内径D5及び近位環状凹部212cの内径D6は、それぞれ、環状ボス304及び保持リング204の壁部302の外径D1、D3と等しいか、又はわずかに大きくすることができる。
【0040】
遠位環状凹部212aは、溝212の最遠位部とすることができ、受け部材206の遠位面212から近位方向に延在することができ、それによって受け部材内に遠位開口部216を形成する。遠位環状凹部212aは、遠位環状凹部の内径D4が受け部材の遠位開口部と等しくなるように、受け部材206dに対する遠位開口部を形成することができる。中間環状凹部212bは、遠位環状凹部212aに近位方向に隣接することができ、中間環状凹部の内径D5は、遠位環状凹部の内径D4よりも大きい。近位環状凹部212cは、中間環状凹部212bに近位方向に隣接することができる。近位環状凹部212cの内径D6は、中間環状凹部212bの内径D5よりも小さくし、いくつかの実施形態では、遠位環状凹部212aの内径D4よりも大きくすることができる。長手方向穴211は、内径D7で近位環状凹部212cから近位方向に延在することができ、内径D7は、いくつかの実施形態では、近位環状凹部の内径D6よりも小さくすることができる。このようにして、溝312内に受容された保持リング204は、溝212を越えて近位方向に摺動することを防止することができる。
【0041】
ここで
図3及び4を参照して、骨アンカー200の別の実施形態を説明する。本方法は、
図3~9の骨アンカー組立体200に関連して示されているが、本方法は、本明細書に開示される骨アンカー組立体又はその変形例のいずれかと共に使用することができる。骨アンカー組立体200は、製造中、手術前、又は手術中にシャンク202を骨に埋め込む前に組み立てることができる。使用される場合、圧縮キャップ208は、受け部材の遠位開口部216を通して穴211の中へ近位方向に前進させることができる。シャンク202を受け部材206に挿入する前に、保持リング204をシャンクの一部の周りにスナップ留めするか、又は別様に配置することができる。いくつかの実施形態では、保持リング204は、シャンクヘッド202aと骨係合部202bのねじ山、すなわち、シャンクのネック202cとの間のシャンク202のねじ山のない部分の周りにスナップ留めされるか、又は別様に配置することができる。例えば、シャンクのネック202cは、例えば、シャンクネックが保持リングの管腔301内に位置するように、シャンクネック202cに対して横方向に保持リングスロット308を通過させることによって、保持リング204に挿入することができる。保持リングは、例えば、半径方向圧縮力Fc(
図14を参照)を加えることで圧縮され、それによって、保持リングの最大直径D1を一時的に減少させることができる。保持リング204は、保持リングの最大直径、すなわち環状ボス304の外径D1が、溝212内の遠位環状凹部214a及び受け部材206の遠位開口部216の直径D4よりも小さくなり得るように圧縮することができる。
【0042】
保持リング204が圧縮状態にあり、シャンク202の周りに配置された状態で、シャンク及び保持リングは、受け部材206の遠位開口部216を通して近位方向に前進させることができる、すなわち、受け部材内に底部から装填することができる。保持リング204が近位方向に前進すると、保持リングの環状ボス304は、受け部材206内に形成された溝212の中間環状凹部212bと整列することができる。上述したように、溝212の中間環状部212bの内径D5は、環状ボスの外径D1と実質的に等しいか、又はそれよりわずかに大きくすることができる。したがって、保持リング204のボス304が溝212の中間環状凹部212bと整列すると、保持リング204は、保持リングが溝(
図3)内に着座するように、その圧縮状態から元の状態又は静止状態へ拡張することができる。より具体的には、基部300の遠位部306、環状ボス304、及び保持リング204の壁部302は、それぞれ、溝212の遠位環状凹部212a、中間環状凹部212b、及び近位環状凹部212c内に延在し、その中に保持することができる。いくつかの実施形態では、保持リング204が溝212内に着座した状態で、保持リングの遠位対向面300dは、受け部材206の遠位対向面214と面一とすることができる。
【0043】
保持リング204が溝212内に着座した状態で、すなわち、(上述したように)保持リングの一部が溝の対応する凹部内に保持された状態で、シャンク202を受け部材206の長手方向穴211内で遠位方向に移動させて、シャンクのヘッド202aを保持リングの基部300内に着座させることができる。より具体的には、シャンク202は、シャンクヘッド202aの赤道Dが保持リング204の壁部302の内面302iに接触し、シャンクヘッドの遠位対向部が基部300の内面300iに接触するように、遠位方向に移動させることができる。シャンク202のネック202c及び骨係合部202bは、保持リング204及び受け部材206から遠位方向に延在することができる。シャンクヘッド202aの一部分はまた、保持リング204及び受け部材206を越えて遠位方向に延在することができる。保持リング204は、シャンクヘッド202aが遠位開口301dを通過するのを防止するようにサイズ決めされているため、シャンクのヘッドは、保持リング204内に、したがって受け部材206内に維持される。
【0044】
骨アンカー組立体200は、骨(図示せず)に埋め込まれ、既知の技術を使用して、例えば、シャンク202の骨係合部202bを骨にねじ込むためのドライバツールを使用して、所望の軌道に沿って所望の深さまで駆動させることができる。埋め込まれると、受け部材206は、シャンク202に対して所望の配向で位置決めすることができる。例えば、受け部材206は、シャンク202のヘッド202aを中心に多軸方向に回転させることができる。閉止機構210を骨アンカー200に取り付ける、及び/又は締め付ける前に、受け部材206は、例えば、保持リング204とシャンクヘッド202aとの間の抗力を介して、より具体的には、保持リング204の壁部302とシャンクヘッドとの間の抗力を介して、所望の配向に維持することができる。脊椎固定要素、例えば、脊椎ロッド(
図15)は、受け部材206の凹部209に位置決めすることができる。脊椎ロッドが所望の位置にあるとき、閉止機構210を締め付けて、ロッド及び圧縮キャップ208(使用される場合)を受け部材206に対して遠位方向に付勢し、それによって骨アンカー200をロックすることができる。具体的には、閉止機構210を適用することは、シャンク202に対する受け部材206の動きをロックするのに有効であり得る。例えば、ロッド及び圧縮キャップ208は、シャンクが保持リング基部300の内面300iに接触して、保持リング基部300の外径D1、D2、又はD3のいずれかが受け部の内径D4、D5、又はD6のうちの1つに接触するまで保持リング204を半径方向に拡張させるように、シャンク202に遠位方向の力を加えることができる。保持リング基部のこの半径方向の拡張の間、シャンクヘッド202aは、例えば、圧縮嵌合によって、保持リング204の壁部302内に保持することができる。閉止機構210を適用することは、受け部材206に対するロッド206の動きをロックするのにも有効であり得る。
【0045】
このようにして、本開示の骨アンカー組立体は、底部装填技術を使用した組立を可能にする。これは、受け部の近位端を通して遠位方向に前進させられるようなサイズにされていない大径シャンクで特に有利であり得る。というのも、例えば、そのような大径シャンクを収容するように受け部材をサイズ決定することは、法外に大きい受け部材を必要とするためである。更に、単一の構成要素、すなわち保持リングは、受け部材と骨シャンクとの連結を維持することができ、2つの構成要素間の意図しない移動を防止しながら、受け部材に対する所望の位置への骨シャンクの多軸方向の調整を可能にする。
【0046】
図10~
図14は、本開示の骨アンカー組立体400の別の実施形態を例示する。骨アンカー組立体400は、シャンク402、抗力保持リング404、受け部材406、圧縮キャップ408、及び閉止機構(図示せず)を含むことができる。以下に示す場合を除いて、この実施形態の構造、動作、及び使用は、骨アンカー組立体200のものと同様又は同一であり、同様の番号が付けられた構成要素は、概して、同様の特徴を有する。したがって、そのような特徴の構造、動作、及び使用の説明は、簡潔にするために、本明細書では省略される。上述の実施形態と同様に、抗力保持リング404は、シャンク402のヘッド402aに摩擦力又は抗力を加えて、それらの間の多軸方向の移動に抵抗することができる。
図10に示す組立構成では、すなわち、シャンク402が受け部材406の中心軸B1と同軸に延在している状態では、保持リング404は、上述の骨アンカー組立体と同様に、シャンクヘッド402aの赤道又は最大直径D’に沿って摩擦力を加えることができる。しかしながら、保持リング402は、上述の保持リング204と比較して代替的な構造を有することができ、それにより、保持リング402の壁部502の近位端502p(
図12)は、シャンクヘッド402aに対して半径方向内向き方向に抗力を加えることができる。
【0047】
図12は、骨アンカー組立体400の保持リング404をより詳細に示す。保持リング404は、シャンクヘッド402aを着座させるように構成された基部500と、基部から近位方向に延在する壁部502と、を有する略円筒形とすることができる。基部500の近位部は、基部の遠位部506の外径D2’(
図10を参照)よりも大きい外径D1’(
図10を参照)を有する環状ボス504から形成することができる。壁部502は、ボスの外径D1’よりも小さい外径D3’(
図10を参照)で、環状ボス504から近位方向に延在することができる。このような構造では、保持リングは、3つの「段付き」部、すなわち、外径が変化する部分である、遠位基部506、環状ボス504、及び壁部502を含むことができる。骨アンカー組立体400の組立構成(例えば、
図10)において、保持リング404は、その遠位端406dにおいて受け部材406の内面に形成された溝412内に受容され得る。上述したように、溝412は、3つの環状凹部、すなわち、遠位環状凹部412a、中間環状凹部412b、及び近位環状凹部412cを含むことができ、これらはそれぞれ、基部500の遠位部506、環状ボス504、及び保持リング404の壁部502を受容するように構成されている。したがって、保持リング404を、受け部材406の遠位端406dにおいて溝412内にしっかりと保持することができる。
【0048】
保持リング404及び
図12に戻ると、保持リングは、保持リングの選択的な半径方向の拡張及び圧縮を可能にすることができる半径方向分割部508、又は他のスロット、切欠き、ノッチなどを有することができる。いくつかの実施形態では、分割部508は、シャンク402の一部分、例えばシャンクのネック402cが、分割部508を通過して保持リング404内に入ることを可能にするようなサイズにすることができる。基部500の内面500iは、面取り縁部を有し、シャンクヘッド402aのための座部を形成することができる。面取り縁部は、基部500の遠位部506の内面500iに沿った点から、環状ボス504の近位端504pにおける内面に沿った点まで延在することができる。壁部502は、自立近位端502pから遠位端502dまで円筒状に延在し、環状ボスの近位端504pを終端とすることができる。
図10に示すように、シャンクが保持リング基部500内に同軸に着座したときに、壁部502の近位端502pは、シャンクヘッド402aの赤道において抗力を加えるように構成することができる。例えば、壁部502の近位端502pは、シャンクヘッドの最大直径D’よりも小さい内径を有することができる。いくつかの実施形態では、壁部502の内面502iは、その近位端502pにおいて、シャンクヘッド402aに接触し、そこに摩擦力を加えて、シャンクヘッドと保持リングとの間の多軸方向の移動に抵抗することができる面取り縁部を有することができる。壁部502は、壁部502の近位端502pが、基部500内に同一直線上に又は同軸上に着座したとき(例えば、
図14に示される配向)、最大直径D’においてシャンクヘッド402aに接触することができるように高さH’で延在することができる。
【0049】
上述したように、いくつかの実施形態では、壁部502は、第1の壁512aセグメントと、間隙又は凹部514によって第1の壁セグメントから周方向に分離された第2の壁セグメント512bと、を含むことができる。いくつかの実施形態では、凹部514は、実質的に切頭「V」字形状を有することができる。ノッチ511、溝、又は他の同様の切欠き特徴は、遠位端502dにおいて、壁部502又は壁セグメント512a、512bの外面に沿って延在することができる。
【0050】
図13は、受け部材406をより詳細に例示する。受け部材406は、その近位端206pに一対の離間したアーム207a、207bを有する上述の受け部材206と比較して、「閉鎖」構成を有することができる。閉鎖構成は、受け部材のサイズの低減を可能にしながら、高負荷用途における使用のために、例えば、腸骨棘内への埋込みのために、受け部材406に十分な強度を提供することができる。受け部材406の近位端406pは、受け部材の近位端から受け部材本体内に遠位方向に延在する長手方向穴411を周方向に囲むことができる。切欠き413は、そこを通るロッド受け凹部409を形成するように、受け部本体の両側に形成することができる。切欠き413はそれぞれ、受け部本体によって形成された閉鎖した外周を有することができる。このような構造は、例えば
図3及び
図4に示される受け部材206のロッド受け凹部209とは対照的であり、ロッド受け凹部は、離間したアーム207a、207bの間に形成され、近位方向に開放されている。
図13に戻ると、切欠き413は、脊椎固定要素が長手方向穴411に対して横方向に受け部材406を通って延在することができるように、それを通って脊椎固定要素、例えば脊椎ロッドを横方向に受容するようなサイズ及び形状にすることができる。例えば、
図13の図示された実施形態では、切欠き413は、そこを通って脊椎ロッドを受容するように略楕円形を有する。長手方向穴411は、受け部材406に対してロッド受け凹部409内に脊椎固定要素を固定するために、止めねじ又は他の締結機構(図示せず)を受容することができる。溝412は、
図3~9に関して上述したように、シャンク402及び保持リング404が受け部材406内に近位方向に前進してその中に保持され得るように、受け部材の遠位面414(
図10)を通る開口部416を有する受け部材406の遠位端406dの内面に形成することができる。
【0051】
骨アンカー組立体400は、
図3~9の骨アンカー200に関して上述したのと同じ又は同様の組立手順で組み立てることができる。例えば、
図14を参照すると、圧縮キャップ408は、受け部材406の遠位開口部416を通して穴411内に近位方向に前進させることができる。あるいは、圧縮キャップ408は、受け部材406の近位端から穴411を通して遠位方向に前進させることによって装填することができる。いくつかの実施形態では、圧縮キャップは、加締めによって受け部材406内に保持させることができる。保持リング404は、シャンク402の周り、例えば、シャンクのネック406cの周囲にスナップ留めするか、又は別様に配置することができる。保持リング404は、環状ボス504の外径が受け部材506の遠位開口部516の直径未満に低減され得るように、例えば、半径方向圧縮力Fcを保持リングに加えることによって圧縮することができる。圧縮状態にあるシャンクヘッド402a及び保持リング404は、受け部材506の遠位開口部516を通して穴411内に近位方向に前進させることができる。保持リング404は、環状ボス504が溝412の中間環状凹部412bと整列するまで、穴411内で近位方向に前進することができる。環状ボス504が中間環状凹部412bと整列した状態で、保持リング404は、溝412内に半径方向に拡張することができ、その中に保持することができる。シャンク402は、シャンクヘッド402aが保持リング204の基部400内に着座し、シャンクヘッドの最大直径D’(
図10)で壁部502に接触するように、受け部材406に対して遠位方向に移動することができる。骨アンカーを骨(図示せず)に埋め込むことができ、受け部材406を操作して、受け部材をシャンク402に対して所望の配向に配置することができる。いくつかの実施形態では、受け部材406は、シャンク402に対して多軸方向に移動させることができる。
図15を参照すると、脊椎ロッド420は、ロッド受け凹部409を通して受け部材406内に横方向に挿入することができる。閉止機構410は、締め付けられて、脊椎ロッド420を受け部材406に対してロックすることができる。閉止機構410はまた、シャンク402に対して受け部材406をロックすることもできる。
【0052】
本開示の骨アンカー組立体200、400は、少なくとも部分的に、本明細書に開示される抗力保持リング204、404の組み込みに起因して、低減された全体サイズ及び外形を有することができる。
図16は、本開示の骨アンカー組立体の2つの実施形態500、510と、脊椎ロッド520に連結された1つの既知の骨アンカー組立体600と、を示す。様々な骨アンカー組立体500、510、600の3つの寸法X、Y、及びZが、以下に詳細に例示及び説明されており、「X」は、受け部材の最も近位の対向面から受け部材の最も遠位の対向面まで測定されたそれぞれの骨アンカー組立体の全高を表す。「Y」は、それぞれの受け部材が脊椎ロッドの下で遠位方向に延在する距離を表し、「Z」は、脊椎ロッドが骨アンカー組立体内に受容されたときに脊椎ロッドの長手方向軸に平行な方向に測定されるそれぞれの受け部材の最大横幅を表す。
【0053】
既知の骨アンカー組立体600は、大きな骨ねじと共に使用するための底部装填組立体とすることができる。本開示の第1の骨アンカー組立体500は、小型及び中型の骨ねじ(例えば、約4mm~約8mmの最大外側ねじ山直径を有する骨ねじ)と共に使用するようにサイズ決め及び構成することができる。本開示の第2の骨アンカー組立体502は、大型の骨ねじ(例えば、約7.5mmより大きい最大外側ねじ山直径を有する骨ねじ)と共に使用するようにサイズ決め及び構成することができる。特に、大型の骨ねじと共に使用するように構成された本開示の骨アンカー組立体510は、小型又は中型の骨ねじと共に使用するように構成された骨アンカー組立体500と同じ全高X’’を有することができ、脊椎ロッド520の下で遠位方向に同じ距離Y’’だけ延在することができる。非限定的な例として、いくつかの実施形態では、骨アンカー組立体500、510の全高X’、X’’は、約16mm未満、約15.5mm未満、又は約15mmとすることができる。いくつかの実施形態では、骨アンカー組立体500、510の受け部材の遠位端と脊椎ロッド510の遠位面との間の距離Y’、Y’’は、約6.5mm未満、約6mm未満、又は約5.5mm~約6mmとすることができる。対照的に、既知の骨アンカー組立体600は、約16.2mm以上の高さX’’’を有することができ、脊椎ロッドの下方に約6.9mm以上の距離Y’’’だけ延在することができる。本開示の骨アンカー組立体500、510はまた、既知の骨アンカー600の幅Z’’’と比較して、低減された幅Z’、Z’’を有することができる。非限定的な例として、骨アンカー組立体500、510の全幅Z’、Z’は、いくつかの実施形態では約12mmより小さく、いくつかの実施形態では約11mmより小さくすることができる。既知の骨アンカー600は、約12mmより大きいZ’’’を有することができる。本開示の骨アンカー組立体500、510の低減された寸法は、骨固定要素、例えば、脊椎ロッド520を、骨アンカー組立体が埋め込まれる骨のより近くに固定することを可能にすることができる。更に、より小さいサイズは、例えば、脊椎器具類によって占められる手術部位の部分を最小限にすることによって、配置及び操作のし易さを向上させることができる。
【0054】
本明細書に開示された組立体及び構成要素は、種々の既知の材料のうちの任意のものから構成され得る。例示的な材料としては、ステンレス鋼、チタン、コバルトクロム、又はそれらの合金及び組み合わせなどの金属、PEEKなどのポリマー、セラミックス、炭素繊維などを含む、外科用途で使用するのに適した材料が挙げられる。本明細書に開示される様々な構成要素は、それらの使用に適切な様々な程度の剛性又は可撓性を有することができる。組立体及び/又は構成要素のサイズもまた、使用目的及び手術部位の生体構造によって大きく異なり得る。更に、特定の構成要素は、他の構成要素とは異なる材料から形成され得る。器具の1つ以上の構成要素又は部分は、蛍光透視法及び他の撮像技術下の視覚化を容易にするために、放射線不透過性材料から形成され得るか、又は他の構造物の視覚化と干渉しないように、炭素繊維及び/若しくは高強度ポリマーなどの放射線透過性材料から形成され得る。
【0055】
本明細書で開示されたデバイス及び方法は、低侵襲手術及び/又は切開手術で使用することができる。本明細書に開示されるデバイス及び方法は、概して、ヒト患者における手術の文脈で説明されているが、本明細書に開示される方法及びデバイスは、任意のヒト若しくは動物の対象との様々な外科処置のいずれかで、又は非外科処置で使用することができることが理解されるであろう。
【0056】
具体的な実施形態が上で説明されているが、説明された概念の趣旨及び範囲内で変更がなされ得る。例えば、
図10~14の骨アンカー組立体400に関して説明したような「閉鎖」構成を有する受け部材を、
図3~9の骨アンカー組立体200の要素と共に利用することができる。
図3~9の骨アンカー組立体200に関して説明したように、「開放」構成を有する受け部材は、
図10~14の骨アンカー組立体400の要素と共に利用することができる。同様に、本明細書に記載の抗力保持リング204、404の様々な実施形態は、本明細書に記載の骨アンカー組立体200、400の様々な実施形態の構成要素と共に利用することができ、本開示の範囲内に含まれる。上で説明される実施形態に基づく更なる特徴及び利点が可能であり、それらは、本開示の範囲内である。したがって、本開示は、具体的に示され、かつ説明されている内容によって限定されるものではない。本明細書で引用される全ての刊行物及び参考文献は、任意の定義、主題の放棄、又は否認を除いて、及び組み込まれた文献が本明細書に明示された開示と矛盾する場合を除いて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、その場合、本開示内の文言が優先する。
【0057】
上で説明される実施形態の実施例は、以下を含むことができる。
1.骨アンカー組立体であって、
近位端と遠位端とを有する受け部材であって、近位端と遠位端との間に中心長手方向軸が延在し、受け部材の遠位端に開口部を有する長手方向穴を有する、受け部材と、
受け部材に形成された溝に配置された保持リングであって、基部と、基部から近位方向に延在する壁部と、を有し、基部が、壁部の最大外径よりも大きい最大外径を有する、保持リングと、
保持リングの基部内に着座したヘッド部と、受け部材から遠位方向に延在する骨係合部と、を有するシャンクと、を備え、
保持リングの壁部は、シャンクのヘッド部に抗力を加えてその回転に抵抗するように構成されている、骨アンカー組立体。
【0058】
2.保持リング及びシャンクは、受け部材の遠位端を通って近位方向に挿入されるように構成されている、請求項1に記載の組立体。
【0059】
3.溝は、受け部材の遠位端の内面に形成されている、請求項1又は2に記載の組立体。
【0060】
4.保持リングの基部の最大外径は、受け部材の遠位端における開口部の直径よりも大きい、請求項1~3のいずれか一項に記載の組立体。
【0061】
5.保持リングの基部の遠位部の内径は、シャンクのヘッドの最大直径よりも小さい、請求項1~4のいずれか一項に記載の組立体。
【0062】
6.保持リングの基部の遠位部の内径は、シャンクの骨係合部の最大外側ねじ山直径よりも小さい、請求項1~5のいずれか一項に記載の組立体。
【0063】
7.保持リングの壁部は、シャンクのヘッドにその最大直径のところで接触するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の組立体。
【0064】
8.シャンクが保持リングの基部内に着座したときに、保持リングの壁部の近位端は、シャンクのヘッドの最大直径を越えて近位方向に延在している、請求項7に記載の組立体。
【0065】
9.保持リングの壁部は、第1の壁セグメントと、第1の壁セグメントから周方向に分離された第2の壁セグメントと、を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組立体。
【0066】
10.保持リングは、保持リングの選択的な半径方向の拡張及び圧縮を可能にするように構成された、基部及び壁部を通って延在する分割部を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組立体。
【0067】
11.保持リングより近位で穴内に配置され、シャンクヘッドに遠位方向の力を加えるように構成された、サドルを更に備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の組立体。
【0068】
12.骨アンカー組立体を組み立てる方法であって、
シャンクの周りに配置された保持リングを半径方向に圧縮することであって、シャンクは、ヘッド及び骨係合部を含み、保持リングは、基部と基部から近位方向に延在する壁部とを含み、壁部は、基部の最大外径よりも小さい最大外径を有する、ことと、
圧縮状態のシャンク及び保持リングを、受け部材の遠位端における開口部を通して近位方向に通過させることと、
基部の少なくとも一部が受け部材内に形成された溝の第1の環状凹部と整列するように、保持リングを受け部材内で近位方向に前進させることと、
保持リングを拡張して、基部の少なくとも一部を溝の第1の環状凹部内に保持することと、
シャンクのヘッドの最大直径が保持リングの壁部に接触し、シャンクの骨係合部が保持リングから遠位方向に延在するように、シャンクのヘッドを保持リングの基部内に着座させることと、を含む、方法。
【0069】
13.受け部材をシャンクに対して所望の位置に位置決めすることと、
シャンクのヘッドに対して保持リングの壁部によって加えられる抗力によって、受け部材を所望の位置に保持することと、を含む、請求項12に記載の方法。
【0070】
14.受け部材を所望の位置に位置決めすることは、受け部材をシャンクに対して多軸方向に移動させることを含む、請求項13に記載の方法。
【0071】
15.抗力は、保持リングの基部と壁部との間の境界面において保持リングによって加えられる、請求項13又は14に記載の方法。
【0072】
16.抗力は、保持リングの壁部の近位端によって加えられる、請求項13又は14に記載の方法。
【0073】
17.シャンクを骨に埋め込むことと、
閉止機構を締め付けて、シャンクに対して所望の位置に受け部材をロックすることと、を更に含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【0074】
18.受け部材の遠位開口部を通してサドルを近位方向に前進させることと、
サドルによってシャンクのヘッドに対して加えられる遠位方向の力によって、シャンクを遠位方向に付勢することと、を更に含む、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【0075】
19.シャンクのネックの周りに保持リングを圧縮することを更に含む、請求項12~18のいずれか一項に記載の方法。
【0076】
20.保持リングの基部の少なくとも一部が溝の第1の環状凹部内に保持された状態で、保持リングの遠位面が受け部材の遠位面と面一である、請求項12~19のいずれか一項に記載の方法。
【0077】
〔実施の態様〕
(1) 骨アンカー組立体であって、
近位端と遠位端とを有する受け部材であって、前記近位端と前記遠位端との間に中心長手方向軸が延在し、前記受け部材の前記遠位端に開口部を有する長手方向穴を有する、受け部材と、
前記受け部材に形成された溝に配置された保持リングであって、基部と、前記基部から近位方向に延在する壁部と、を有し、前記基部が、前記壁部の最大外径よりも大きい最大外径を有する、保持リングと、
前記保持リングの前記基部内に着座したヘッド部と、前記受け部材から遠位方向に延在する骨係合部と、を有するシャンクと、を備え、
前記保持リングの前記壁部は、前記シャンクの前記ヘッド部に抗力を加えてその回転に抵抗するように構成されている、骨アンカー組立体。
(2) 前記保持リング及び前記シャンクは、前記受け部材の前記遠位端を通って近位方向に挿入されるように構成されている、実施態様1に記載の組立体。
(3) 前記溝は、前記受け部材の前記遠位端の内面に形成されている、実施態様1に記載の組立体。
(4) 前記保持リングの前記基部の前記最大外径は、前記受け部材の前記遠位端における前記開口部の直径よりも大きい、実施態様1に記載の組立体。
(5) 前記保持リングの前記基部の遠位部の内径は、前記シャンクの前記ヘッドの最大直径よりも小さい、実施態様1に記載の組立体。
【0078】
(6) 前記保持リングの前記基部の遠位部の内径は、前記シャンクの前記骨係合部の最大外側ねじ山直径よりも小さい、実施態様1に記載の組立体。
(7) 前記保持リングの前記壁部は、前記シャンクの前記ヘッドにその最大直径のところで接触するように構成されている、実施態様1に記載の組立体。
(8) 前記シャンクが前記保持リングの前記基部内に着座したときに、前記保持リングの前記壁部の近位端は、前記シャンクの前記ヘッドの前記最大直径を越えて近位方向に延在している、実施態様7に記載の組立体。
(9) 前記保持リングの前記壁部は、第1の壁セグメントと、前記第1の壁セグメントから周方向に分離された第2の壁セグメントと、を含む、実施態様1に記載の組立体。
(10) 前記保持リングは、前記保持リングの選択的な半径方向の拡張及び圧縮を可能にするように構成された、前記基部及び前記壁部を通って延在する分割部を含む、実施態様1に記載の組立体。
【0079】
(11) 前記保持リングより近位で前記穴内に配置され、前記シャンクヘッドに遠位方向の力を加えるように構成された、サドルを更に備える、実施態様1に記載の組立体。
(12) 骨アンカー組立体を組み立てる方法であって、
シャンクの周りに配置された保持リングを半径方向に圧縮することであって、前記シャンクは、ヘッド及び骨係合部を含み、前記保持リングは、基部と前記基部から近位方向に延在する壁部とを含み、前記壁部は、前記基部の最大外径よりも小さい最大外径を有する、ことと、
前記圧縮状態の前記シャンク及び前記保持リングを、受け部材の遠位端における開口部を通して近位方向に通過させることと、
前記基部の少なくとも一部が前記受け部材内に形成された溝の第1の環状凹部と整列するように、前記保持リングを前記受け部材内で近位方向に前進させることと、
前記保持リングを拡張して、前記基部の少なくとも一部を前記溝の前記第1の環状凹部内に保持することと、
前記シャンクの前記ヘッドの最大直径が前記保持リングの前記壁部に接触し、前記シャンクの前記骨係合部が前記保持リングから遠位方向に延在するように、前記シャンクの前記ヘッドを前記保持リングの前記基部内に着座させることと、を含む、方法。
(13) 前記受け部材を前記シャンクに対して所望の位置に位置決めすることと、
前記シャンクの前記ヘッドに対して前記保持リングの前記壁部によって加えられる抗力によって、前記受け部材を前記所望の位置に保持することと、を更に含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記受け部材を前記所望の位置に位置決めすることは、前記受け部材を前記シャンクに対して多軸方向に移動させることを含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記抗力は、前記保持リングの前記基部と前記壁部との間の境界面において前記保持リングによって加えられる、実施態様13に記載の方法。
【0080】
(16) 前記抗力は、前記保持リングの前記壁部の近位端によって加えられる、実施態様13に記載の方法。
(17) 前記シャンクを骨に埋め込むことと、
閉止機構を締め付けて、前記シャンクに対して前記所望の位置に前記受け部材をロックすることと、を更に含む、実施態様13に記載の方法。
(18) 前記受け部材の前記遠位開口部を通してサドルを近位方向に前進させることと、
前記サドルによって前記シャンクの前記ヘッドに対して加えられる遠位方向の力によって、前記シャンクを遠位方向に付勢することと、を更に含む、実施態様12に記載の方法。
(19) 前記シャンクのネックの周りに前記保持リングを圧縮することを更に含む、実施態様12に記載の方法。
(20) 前記保持リングの前記基部の少なくとも一部が前記溝の前記第1の環状凹部内に保持された状態で、前記保持リングの遠位面が前記受け部材の遠位面と面一である、実施態様12に記載の方法。
【図】
【図】
【図】
【国際調査報告】