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特表2024-520816暗色クロム層を電着させるための方法、それを含む基材、及びそれの電気めっき浴
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】暗色クロム層を電着させるための方法、それを含む基材、及びそれの電気めっき浴
(51)【国際特許分類】
   C25D 15/02 20060101AFI20240517BHJP
   C25D 3/06 20060101ALI20240517BHJP
   C25D 3/10 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C25D15/02 G
C25D3/06
C25D3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575932
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2022065531
(87)【国際公開番号】W WO2022258680
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】21178841.9
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511188635
【氏名又は名称】アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハー ウント コ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ベルケム・オズカヤ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・キュールカンプ
(72)【発明者】
【氏名】オレクサンドラ・エフトゥシェンコ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヨナト
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ヴァハター
【テーマコード(参考)】
4K023
【Fターム(参考)】
4K023AA11
4K023BA03
4K023CA01
4K023CA09
(57)【要約】
本発明は、基材上に暗色クロム層を電着させるための方法、そのような暗色クロム層を析出させるためのそれぞれの電気めっき浴、及び前記暗色クロム層を含むそれぞれの基材に関する。電気めっき浴は、化学元素アルミニウムを含有するコロイド粒子を含む。前記暗色クロム層を含む基材は、主として装飾的な目的に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に暗色クロム層を電着させるための方法であって、
(a)プラスチック基材を含む前記基材を用意する工程と、
(b)
(i)三価クロムイオンと、
(ii)前記三価クロムイオンのための1種又は1種より多くの錯化剤と、
(iii)化学元素アルミニウムを含有するコロイド粒子と、
(iv)+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する第1の硫黄含有化合物と、
(v)任意選択で、(iv)とは異なる、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する第2の硫黄含有化合物と
を含む水性三価クロム電気めっき浴を用意する工程と、
(c)前記電気めっき浴と前記基材を接触させ、電流を印加して、前記基材上に前記暗色クロム層を電解析出させる工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記水性三価クロム電気めっき浴が、コロイド懸濁液、好ましくはゾルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コロイド粒子が、ナノ粒子を含む、好ましくはナノ粒子である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記コロイド粒子が、体積基準で、100nm以下の、好ましくは80nm以下の、より好ましくは60nm以下の、更により好ましくは50nm以下の、最も好ましくは40nm以下の、非常に最も好ましくは30nm以下の、更に最も好ましくは25nm以下の平均粒子径D50を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記コロイド粒子が、少なくとも、100nm以下の、好ましくは80nm以下の、より好ましくは60nm以下の、更により好ましくは50nm以下の、最も好ましくは40nm以下の、非常に最も好ましくは30nm以下の、更に最も好ましくは20nm以下の粒径を有する粒子を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記コロイド粒子が、前記水性三価クロム電気めっき浴の全体積基準で、0.05g/Lから15g/Lまでの、好ましくは0.1g/Lから12g/Lまでの、より好ましくは0.5g/Lから10g/Lまでの、更により好ましくは1.0g/Lから8g/Lまでの、最も好ましくは1.5g/Lから6g/Lまでの、更に最も好ましくは1.9g/Lから4g/Lまでの範囲の全量で存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記コロイド粒子が酸化アルミニウムを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記コロイド粒子が、Al2O3を含む、好ましくは実質的にAl2O3からなる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する前記第1の硫黄含有化合物が、窒素原子を含む、より好ましくはアミノ基を含む、最も好ましくはアミノ酸を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の硫黄含有化合物がメチオニンを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の硫黄含有化合物が、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する無機硫黄含有化合物を含む、好ましくはチオシアン酸アニオンを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
(i)三価クロムイオンと、
(ii)前記三価クロムイオンのための1種又は1種より多くの錯化剤と、
(iii)化学元素アルミニウムを含有するコロイド粒子と、
(iv)+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する第1の硫黄含有化合物と、
(v)任意選択で、(iv)とは異なる、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する第2の硫黄含有化合物と
を含む水性三価クロム電気めっき浴。
【請求項13】
暗色クロム層を含む基材であって、前記暗色クロム層が化学元素アルミニウムを含み、L*a*b表色系に従って、60以下、好ましくは58以下、より好ましくは56以下、更により好ましくは53以下、最も好ましくは51以下のL*値を有し、
プラスチック基材を含む、
基材。
【請求項14】
前記暗色クロム層が、-0.5から+3.0までの、好ましくは0から2.5までの、より好ましくは+0.3から+2までの、最も好ましくは+0.5から1.5までの範囲のa*値を有する、請求項13に記載の基材。
【請求項15】
前記暗色クロム層が、+3.1から+7までの、好ましくは3.5から6.5までの、より好ましくは+4から+6までの、最も好ましくは+4.5から5.5までの範囲のb*値を有する、請求項14に記載の基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に暗色クロム層を電着させるための方法、そのような暗色クロム層を析出させるためのそれぞれの電気めっき浴、及び前記暗色クロム層を含むそれぞれの基材に関する。電気めっき浴は、化学元素アルミニウムを含有するコロイド粒子を含む。前記暗色クロム層を含む基材は、主として装飾的な目的に適している。
【背景技術】
【0002】
クロム被覆のまさに始まりから、装飾的な用途に関するその大きな魅力に起因して、暗色クロム被覆への高い関心が見られた。
【0003】
更に暗色の六価クロム被覆に始まり、今日の焦点は、より高い環境受容性に起因して三価クロム被覆に大きくシフトした。数年来、例えば装飾的な自動車部品のための暗色三価クロム被覆への需要はますます増大している。しかしながら、様々な暗色調を作り出して様々な装飾的な目的を果たすように若干の色調修正が求められることが多いようないくつかの場合において、非常に暗い色調は冷たすぎると見られる可能性がある。典型的には、暗色調の度合いは、析出パラメーター及び浴成分に応じて著しく変動する。
【0004】
わずかにより暖かい色調又はわずかにより暗い色調のいずれかで微調整することを可能にする暗色クロム層の提供への継続的な需要がある。取り扱い容易な方法におけるそのような微調整を可能にする調節手段を有することが望ましい。
【0005】
原則的には、暗色三価クロム層は公知である。
【0006】
US 2011/155286 A1は、三価クロムイオン及び任意選択で無機シリカゾル又はアルミナゾルを含む、化成処理のための組成物に言及する。
【0007】
JP 5890394 B2は、三価クロム及びセラミック粒子を含有するクロムめっき溶液に言及する。
【0008】
RU 2231581 C1は、三価クロムイオン及びAl2O3粉末を含有するクロム電解質に言及する。
【0009】
US 2012/312694 A1は、三価クロムイオン及びコロイド状シリカを含む水性酸性三価クロム電解質に言及する。
【0010】
US 2015/354085 A1は、三価クロムめっき浴効率を維持するための装置に言及し、装置は、浴のめっき効率の低下を抑制するように、水性電気めっき浴にUV照射を供給する紫外線(UV)照射源を利用する。
【0011】
US 2007/0227895 A1は、基材上に結晶性クロム析出物を電着させるための方法に言及する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】US 2011/155286 A1
【特許文献2】JP 5890394 B2
【特許文献3】RU 2231581 C1
【特許文献4】US 2012/312694 A1
【特許文献5】US 2015/354085 A1
【特許文献6】US 2007/0227895 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、暗色クロム層を電着させる方法であって、ベース暗さから出発するが、それに加えて、(I)更に低減された暗さ、及び(II)要求される仕様に応じて明度L*(L*a*b*色空間系に従う)を減少させたり増大させたりすることによって、暗さを更に低減させる度合いをわずかに変化させて特定の目標暗さにするための、電気めっき浴における高程度の柔軟性を同時に提供する方法を提供することである。更に、この柔軟性により、好ましくは、電気めっき浴を廃棄することなく、ベース暗さに戻ることが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的は、基材上に暗色クロム層を電着させるための方法であって、
(a)プラスチック基材を含む基材を用意する工程と、
(b)
(i)三価クロムイオンと、
(ii)前記三価クロムイオンのための1種又は1種より多くの錯化剤と、
(iii)化学元素アルミニウムを含有するコロイド粒子と、
(iv)+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する第1の硫黄含有化合物と、
(v)任意選択で、(iv)とは異なる、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する第2の硫黄含有化合物と
を含む水性三価クロム電気めっき浴を用意する工程と、
(c)前記電気めっき浴と基材を接触させ、電流を印加して、基材上に暗色クロム層を電解析出させる工程と
を含む方法によって解決される。
【0015】
化学元素アルミニウムを含有するコロイド粒子によって、更に低減された暗さが得られることが、独自の実験により示されており(本文中の以下の実施例を参照されたい)、これは主として、前記コロイド粒子を含まないそれぞれの電気めっき浴と比較して更に低減されたL*値によって表される。これは、具体的には水性三価クロム電気めっき浴が、前記第1の硫黄含有化合物、最も好ましくはメチオニンを含む場合に当てはまる。しかしながら、アルミニウムを含まないコロイド粒子、例えばコロイドシリカを用いては、この効果は必ずしも起こらないことも独自の実験により示されている。
【0016】
本発明の方法の別の大きい恩恵は、水性三価クロム電気めっき浴が、(iii)と(iv)との組み合わせを含むことである。最も好ましくは、両方とも本発明の文脈において暗色化剤(darkening agent)として働く。しかしながら、それらは両方とも性質が著しく変動する。(iii)が粒子の形状をなす場合、(iv)は好ましくは可溶性化合物である。これは、そのようなコロイド粒子を加えることによるか、又は電気めっき浴からそれらを部分的に(又は完全に)除去することによるかのいずれかで、(iii)はその濃度が適合され得ることを意味する。最も好ましくは、そのような除去は、物理的/機械的分離手段、例えばろ過によって達成される。これにより典型的に、存在する量に応じて明度L*を微調整することが可能になる。そのような除去は典型的に、(iv)の存在に著しい影響を及ぼさない。換言すると、(iii)の全濃度は好ましくは、(iv)の全濃度に影響を及ぼすことなく、物理的手段によって可逆的に適合される。これにより、理想的には同じベースの電気めっき浴を用いた多種の暗い色調が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
非常に好ましくは、暗色クロム層は装飾的なクロム層である。典型的な用途は、最も好ましくは車の内装のための、自動車部品である。本発明の方法において利用される電気めっき浴は、そのような暗色クロム層、最も好ましくは本文全体にわたって定義されるような暗色クロム層を得るために、非常に好適である。
【0018】
本発明の文脈における暗色クロム層は、別段に記載がない限り、好ましくはCommission Internationale de I'Eclairage(国際照明委員会)によって1976年に導入されたようなL*a*b*表色系によって定義される。
【0019】
本発明の方法の工程(a)において、基材が用意される。
【0020】
本発明の方法において、基材はプラスチック基材を含む。
【0021】
好ましいのは、プラスチック基材が、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン-ポリカーボネート(ABS-PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、ポリエポキシド(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトン(PEK)、それらの混合物、及び/又はそれらの複合体;好ましくは、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン-ポリカーボネート(ABS-PC)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、ポリエポキシド(PE)、ポリアクリレート、それらの混合物、及び/又はそれらの複合体を含む、本発明の方法である。そのようなプラスチック基材は多くの場合、自動車部品等の装飾的な用途において、具体的にはABS及びABS-PCにおいて使用される。
【0022】
好ましいのは、プラスチック基材が、少なくとも1つの金属層を含む(最も好ましくは追加で)、本発明の方法である。好ましくは、少なくとも1つの金属層は、銅若しくは銅合金層、及び/又はニッケル若しくはニッケル合金層を含む。
【0023】
本発明によらない、いくつかの他の場合において、基材は、好ましくは鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、それらの混合物、及び/又はそれらの合金を含む、金属基材である。非常に好ましい鉄を含む金属基材は鋼鉄である。それらの混合物は好ましくは、複合体を含む。
【0024】
好ましいのは、工程(a)後且つ工程(c)前に、
(a1)基材を前処理する工程、好ましくは基材を清浄にする工程、最も好ましくは脱脂する工程及び/又は基材を酸洗いする工程
を含む本発明の方法である。
【0025】
好ましくは、脱脂する工程は電解脱脂する工程を含む。
【0026】
好ましくは、酸洗いする工程は、酸、好ましくは無機酸と接触させる工程を含む。
【0027】
工程(a1)は好ましくは、水すすぎが後に続く。
【0028】
本発明の方法の工程(b)において、前記水性三価クロム電気めっき浴が用意される。
【0029】
前記電気めっき浴は水を含み、電気めっき浴の全体積基準で、好ましくは少なくとも55vol.-%以上が、より好ましくは65vol.-%以上、更により好ましくは75vol.-%以上、なお更により好ましくは85vol.-%以上、なおもより好ましくは90vol.-%以上、最も好ましくは95vol.-%以上が、水である。最も好ましくは、水は唯一の溶媒である。
【0030】
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、好ましくは1.5から5.0までの、より好ましくは2.1から4.6までの、更により好ましくは2.4から4.2までの、なおより好ましくは2.7から3.8までの、最も好ましくは3.0から3.5までのpH範囲を有する酸性である、本発明の方法である。pHは好ましくは、塩酸、硫酸、アンモニア、水酸化カリウム、及び/又は水酸化ナトリウムで調節される。
【0031】
水性三価クロム電気めっき浴は、(i)三価クロムイオンを含む。
【0032】
好ましいのは、前記電気めっき浴において、三価クロムイオンが、電気めっき浴の全体積基準で、5g/Lから35g/Lまでの、好ましくは6g/Lから32g/Lまでの、より好ましくは7g/Lから29g/Lまでの、更により好ましくは8g/Lから26g/Lまでの、なお更により好ましくは9g/Lから23g/Lまでの、最も好ましくは10g/Lから22g/Lまでの範囲の全濃度を有する、本発明の方法である。
【0033】
好ましくは、三価クロムイオンは、三価クロム塩由来、好ましくは無機クロム塩及び/又は有機クロム塩由来、最も好ましくは無機クロム塩由来である。好ましい無機クロム塩は、塩化物及び/又は硫酸アニオン、好ましくは硫酸アニオンを含む。非常に好ましい無機クロム塩は、塩基性硫酸クロムである。好ましい有機クロム塩は、カルボン酸アニオン、好ましくはギ酸、酢酸、リンゴ酸、及び/又はシュウ酸アニオンを含む。
【0034】
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴において、三価クロムイオンが任意選択の鉄イオン(鉄イオンに関して、これは任意選択であるがいくつかの場合において好ましく、下記の文章を参照されたい)と一緒に、水性三価クロム電気めっき浴の全体積基準で、水性三価クロム電気めっき浴中のすべての遷移金属イオンの80mol-%以上、好ましくは90mol-%以上、より好ましくは93mol-%以上、更により好ましくは96mol-%以上、最も好ましくは98mol-%以上を表す、本発明の方法である。
【0035】
水性三価クロム電気めっき浴は、(ii)前記三価クロムイオンのための1種又は1種より多くの錯化剤を含む。
【0036】
そのような化合物は、溶液中に三価クロムイオンを保持する。好ましくは、1種又は1種より多くの錯化剤は(iv)の化合物ではなく、したがって(v)は好ましくはそれとは異なる。
【0037】
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴において、1種又は1種より多くの錯化剤は、有機酸及び/又はそれらの塩、好ましくは有機カルボン酸及び/又はそれらの塩、最も好ましくは1、2、又は3個のカルボキシル基を含む有機カルボン酸及び/又はそれらの塩を含む、本発明の方法である。
【0038】
有機カルボン酸及び/又はそれらの塩(好ましくは1、2、又は3個のカルボキシル基を含む有機カルボン酸及び/又はそれらの塩も)は、好ましくは置換基で置換されている又は非置換である。好ましい置換基は、アミノ基及び/又はヒドロキシル基を含む。好ましくは、置換基は、SH部分及び/又はSCN部分を含まない。より好ましくは、前記三価クロムイオンのための1種又は1種より多くの錯化剤は、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する硫黄含有化合物ではない。
【0039】
より好ましくは、有機カルボン酸及び/又はそれらの塩(好ましくは1、2、又は3個のカルボキシル基を含む有機カルボン酸及び/又はそれらの塩も)は、アミノカルボン酸(好ましくはアルファ-アミノカルボン酸)、ヒドロキシルカルボン酸、及び/又はそれらの塩を含む。好ましい(アルファ-)アミノカルボン酸は、グリシン、アスパラギン酸、及び/又はそれらの塩を含む。好ましくは、アミノカルボン酸(好ましくはそれぞれアルファ-アミノカルボン酸)は、(iv)に従う化合物ではない、より好ましくは硫黄含有アミノカルボン酸ではない(好ましくはそれぞれ硫黄含有アルファ-アミノカルボン酸ではない)、最も好ましくはメチオニンではない。1種又は1種より多くの錯化剤が、(iv)及び(v)とは別個であることが特に好ましい。
【0040】
より好ましいのは、1種又は1種より多くの錯化剤が、ギ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グリシン、アスパラギン酸、及び/又はそれらの塩、好ましくはギ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、及び/又はそれらの塩、より好ましくはギ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、及び/又はそれらの塩、更により好ましくはギ酸、酢酸、及び/又はそれらの塩、最も好ましくはギ酸及び/又はそれらの塩を含む、本発明の方法である。
【0041】
好ましいのは、1種又は1種より多くの錯化剤が、水性三価クロム電気めっき浴の全体積基準で、5g/Lから200g/Lまでの範囲の、好ましくは8g/Lから150g/Lまでの範囲の、より好ましくは10g/Lから100g/Lまでの範囲の、更により好ましくは12g/Lから75g/Lまでの、なお更により好ましくは15g/Lから50g/Lまでの範囲の、最も好ましくは20g/Lから35g/Lまでの範囲の全濃度を有する、本発明の方法である。
【0042】
水性三価クロム電気めっき浴は、(iii)化学元素アルミニウムを含有するコロイド粒子を含む。
【0043】
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、コロイド懸濁液、好ましくはゾルである、本発明の方法である。これは、前記コロイド粒子の存在に起因しており、前記コロイド粒子は好ましくは、それに応じて小さい。
【0044】
好ましいのは、前記コロイド粒子が、ナノ粒子を含む、好ましくはナノ粒子である、本発明の方法である。好ましくは、化学元素アルミニウムを含有するコロイド粒子は、1000nm未満の、好ましくは500nm未満の粒径を有し、より好ましくは少なくとも90%のコロイド粒子が500nm未満の粒径を有し、最も好ましくは少なくとも90%のコロイド粒子が150nm未満の粒径を有する。
【0045】
好ましいのは、前記コロイド粒子が、体積基準で、100nm以下の、好ましくは80nm以下の、より好ましくは60nm以下の、更により好ましくは50nm以下の、最も好ましくは40nm以下の、非常に最も好ましくは30nm以下の、更に最も好ましくは25nm以下の平均粒子径D50を有する、本発明の方法である。
【0046】
より好ましいのは、前記コロイド粒子が、100nm以下の、好ましくは80nm以下の、より好ましくは60nm以下の、更により好ましくは50nm以下の、最も好ましくは40nm以下の、非常に最も好ましくは30nm以下の、更に最も好ましくは20nm以下の粒径を有する少なくとも粒子を含む、本発明の方法である。
【0047】
好ましいのは、前記コロイド粒子が、水性三価クロム電気めっき浴の全体積基準で、0.05g/Lから15g/Lまでの、好ましくは0.1g/Lから12g/Lまでの、より好ましくは0.5g/Lから10g/Lまでの、更により好ましくは1.0g/Lから8g/Lまでの、最も好ましくは1.5g/Lから6g/Lまでの、更に最も好ましくは1.9g/Lから4g/Lまでの範囲の全量で存在する、本発明の方法である。
【0048】
より好ましいのは、前記コロイド粒子が酸化アルミニウムを含む、本発明の方法である。
【0049】
最も好ましいのは、前記コロイド粒子が、Al2O3を含む、好ましくは実質的にAl2O3からなる、本発明の方法である。最も好ましくは、水性三価クロム電気めっき浴において、これらは唯一のコロイド粒子である。
【0050】
水性三価クロム電気めっき浴は、(iv)+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する第1の硫黄含有化合物を含む。好ましくは、それらの酸、塩、アイソフォーム、及びベタインが含まれる。しかしながら、硫酸アニオンは、(iv)及び(v)に属するものと考えられない。
【0051】
任意選択で、水性三価クロム電気めっき浴は、(v)(iv)とは異なる、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する第2の硫黄含有化合物を含む。改めて、これは好ましくは、それらの酸、塩、アイソフォーム、及びベタインを含む。
【0052】
いくつかの場合において、水性三価クロム電気めっき浴が(iv)及び(v)を含む、本発明の方法が好ましい。したがって、この場合、(v)は任意選択ではない。
【0053】
一般に好ましいのは、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する第1の及び任意選択で第2の硫黄含有化合物は、二価硫黄原子を含む、本発明の方法である。それらは好ましくは無機又は有機である。
【0054】
いくつかの場合において、好ましくは第1の硫黄含有化合物は、1種又は1種より多くの有機硫黄含有化合物を含み(好ましくは本文全体にわたって説明されるように)、好ましくは第2の硫黄含有化合物は、1種又は1種より多くの無機硫黄含有化合物を含む(好ましくは本文全体にわたって説明されるように)。
【0055】
より一般に好ましいのは、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する第1の及び任意選択で第2の硫黄含有化合物が、
(1)2-(2-ヒドロキシ-エチルスルファニル)-エタノール、
(2)チアゾリジン-2-カルボン酸、
(3)チオジグリコールエトキシレート、
(4)2-アミノ-3-エチルスルファニル-プロピオン酸、
(5)3-(3-ヒドロキシ-プロピルスルファニル)-プロパン-1-オール、
(6)2-アミノ-3-カルボキシメチルスルファニル-プロピオン酸、
(7)2-アミノ-4-メチルスルファニル-ブタン-1-オール、
(8)2-アミノ-4-メチルスルファニル-酪酸、
(9)2-アミノ-4-エチルスルファニル-酪酸、
(10)3-カルバムイミドイルスルファニル-プロパン-1-スルホン酸、
(11)3-カルバムイミドイルスルファニル-プロピオン酸、
(12)チオモルホリン、
(13)2-[2-(2-ヒドロキシ-エチルスルファニル)-エチルスルファニル]-エタノール、
(14)4,5-ジヒドロ-チアゾール-2-イルアミン、
(15)チオシアン酸、
(16)2-アミノ-4-メタンスルフィニル-酪酸、
(17)1,1-ジオキソ-1,2-ジヒドロ-1ラムダ*6*-ベンゾ[d]イソチアゾール-3-オン、
(18)プロパ-2-イン-1-スルホン酸、
(19)メタンスルフィニルメタン、及び
(20)2-(1,1,3-トリオキソ-1,3-ジヒドロ-1ラムダ*6*-ベンゾ[d]イソチアゾール-2-イル)-エタンスルホン酸
(その塩を含む)からなる群から選択される、本発明の方法である。
【0056】
一般に好ましいのは又、(iv)及び(v)が一緒に、電気めっき浴の全体積基準で、16mmol/Lから1150mmol/Lまでの、好ましくは45mmol/Lから1000mmol/Lまでの、より好ましくは80mmol/Lから900mmol/Lまでの、更により好ましくは120mmol/Lから800mmol/Lまでの、なお更により好ましくは150mmol/Lから700mmol/Lまでの、最も好ましくは180mmol/Lから650mmol/Lまでの範囲の全濃度を有する、本発明の方法である。これは最も好ましくは、水性三価クロム電気めっき浴における+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する硫黄含有化合物すべてに該当する(即ち、すべてのそのような化合物の全濃度)。
【0057】
特に好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、電気めっき浴の全体積基準で、15mmol/Lから750mmol/Lまでの、好ましくは40mmol/Lから650mmol/Lまでの、より好ましくは70mmol/Lから600mmol/Lまでの、更により好ましくは100mmol/Lから550mmol/Lまでの、なお更により好ましくは120mmol/Lから500mmol/Lまでの、最も好ましくは140mmol/Lから470mmol/Lまでの範囲の全濃度で(iv)を含む、本発明の方法である。
【0058】
特に好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、電気めっき浴の全体積基準で、1mmol/Lから400mmol/Lまでの、好ましくは5mmol/Lから350mmol/Lまでの、より好ましくは10mmol/Lから300mmol/Lまでの、更により好ましくは20mmol/Lから250mmol/Lまでの、なお更により好ましくは30mmol/Lから200mmol/Lまでの、最も好ましくは40mmol/Lから180mmol/Lまでの範囲の全濃度で(v)を含む、本発明の方法である。
【0059】
好ましいのは、(iv)が(v)より高いモル濃度を有する、本発明の方法である。いくつかの場合において、好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴において、(iv)の(v)に対するモル比が、1より大きい、好ましくは1.1以上、最も好ましくは1.2以上である、本発明の方法である。最も好ましくは、前記第1の硫黄含有化合物は、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する硫黄を含有する化合物の最も高い濃度を有する。
【0060】
いくつかの場合において、より好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴において、(iv)の(v)に対するモル比が、1.05から15までの、好ましくは1.10から12までの、より好ましくは1.15から10までの、更により好ましくは1.20から9までの、最も好ましくは1.25から8までの範囲である、本発明の方法である。改めて、最も好ましくは、前記第1の硫黄含有化合物は、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する硫黄を含有する化合物の最も高い濃度を有する。
【0061】
いくつかの場合において、好ましいのは、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する第1の硫黄含有化合物が、窒素原子を含む、より好ましくはアミノ基を含む、最も好ましくはアミノ酸を含む、本発明の方法である。
【0062】
好ましくは、前記アミノ酸は、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有するアルファ-アミノ酸、最も好ましくは+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有するタンパク質原性アミノ酸を含む。最も好ましくは、これはメチオニン及びシステインを含む。
【0063】
いくつかの場合において、より好ましいのは、第1の硫黄含有化合物がメチオニンを含む、本発明の方法である。上述のモル比は最も好ましくは、第1の硫黄含有化合物がメチオニンを含む場合、該当する。しかしながら、他の場合において、第2の硫黄含有化合物が、第1のものの代わりにメチオニンを含む本発明の方法が好ましい。
【0064】
好ましいのは、メチオニンが、電気めっき浴の全体積基準で、100mmol/Lから500mmol/Lまでの、好ましくは110mmol/Lから450mmol/Lまでの、より好ましくは120mmol/Lから400mmol/Lまでの、更により好ましくは130mmol/Lから350mmol/Lまでの、なお更により好ましくは140mmol/Lから300mmol/Lまでの、最も好ましくは150mmol/Lから250mmol/Lまでの範囲の全濃度を有する、本発明の方法である。しかしながら、いくつかの場合において、メチオニンが、好ましくは15mmol/Lから100mmol/Lまでの、より好ましくは20mmol/Lから80mmol/Lまでの範囲の、更により低い全濃度を有することが好ましい。
【0065】
いくつかの場合において、好ましいのは、第2の硫黄含有化合物が、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する無機硫黄含有化合物を含む、好ましくはチオシアン酸アニオンを含む、本発明の方法である。しかしながら、いくつかの他の場合において、第1の硫黄含有化合物が、第2のものの代わりにチオシアン酸アニオンを含む本発明の方法が好ましい。本発明の文脈において、チオシアン酸アニオン(即ち、SCN-)は、無機であると考えられ、チオシアネート部分を含む有機化合物は、有機チオシアネートであると考えられる。好ましくは、チオシアン酸アニオンは、チオシアネート塩(例えば、カリウム、ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム)を通して、及び/又はチオシアン酸を通して存在する。
【0066】
好ましいのは、チオシアン酸アニオンが、電気めっき浴の全体積基準で、1mmol/Lから400mmol/Lまでの、好ましくは3mmol/Lから350mmol/Lまでの、より好ましくは5mmol/Lから300mmol/Lまでの、更により好ましくは8mmol/Lから250mmol/Lまでの、なお更により好ましくは12mmol/Lから200mmol/Lまでの、最も好ましくは15mmol/Lから180mmol/Lまでの範囲の全濃度を有する、本発明の方法である。
【0067】
好ましくは、水性三価クロム電気めっき浴は、更なる化合物を含むか、又は好ましくは、以下に概説されるような特定の化合物を含有しない。
【0068】
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、電気めっき浴の全体積基準で、好ましくは0.1mmol/Lから10mmol/Lまでの、好ましくは0.4mmol/Lから8mmol/Lまでの、より好ましくは0.8mmol/Lから6mmol/Lまでの、更により好ましくは1.2mmol/Lから5mmol/Lまでの、最も好ましくは1.5mmol/Lから4.5mmol/Lまでの範囲の濃度でFe(II)イオンを更に含む、本発明の方法である。多くの場合において、前記Fe(II)イオンは、電気めっきの性能に肯定的な影響を及ぼす。更に、いくつかの場合において、暗色クロム層は鉄を含むことが好ましい。
【0069】
好ましいのは、工程(b)において、水性三価クロム電気めっき浴が、前記電気めっき浴の全体積基準で、好ましくは0.2mol/Lから1.3mol/Lまでの、より好ましくは0.3mol/Lから1.1mol/Lまでの、更により好ましくは0.4mol/Lから1.0mol/Lまでの、なお更により好ましくは0.5mol/Lから0.9mol/Lまでの、最も好ましくは0.6mol/Lから0.8mol/Lまでの範囲の濃度で硫酸アニオンを更に含む、本発明の方法である。好ましくは、硫酸イオンは、三価クロムイオンの供給源、例えば塩基性硫酸クロムに起因して存在する。硫酸イオンは、前記電気めっき浴の導電性に優れて寄与する。
【0070】
好ましいのは、工程(b)において、水性三価クロム電気めっき浴が、ハロゲンアニオンを、前記電気めっき浴の全体積基準で、好ましくは0.1mol/Lから6mol/Lまでの範囲の全濃度で、より好ましくは0.5mol/Lから5mol/Lまでの、更により好ましくは1mol/Lから4.5mol/Lまでの、なお更により好ましくは1.5mol/Lから4.2mol/Lまでの、最も好ましくは2mol/Lから3.9mol/Lまでの範囲の全濃度でハロゲンアニオンを更に含む、本発明の方法である。
【0071】
より好ましいのは、ハロゲンアニオンが、前記電気めっき浴の全体積基準で、好ましくは0.5mol/Lから5mol/Lまでの、より好ましくは0.8mol/Lから4.7mol/Lまでの、更により好ましくは1.3mol/Lから4.5mol/Lまでの、なお更により好ましくは1.8mol/Lから4mol/Lまでの、最も好ましくは2.3mol/Lから3.7mol/Lまでの範囲の全濃度で塩化物アニオンを含む、本発明の方法である。塩化物イオンは、好ましくは塩化物塩及び/又は塩酸由来であり、好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化クロム(少なくともすべての塩化物イオンの一部として)、及び/又はそれらの混合物由来である。典型的には、塩化物イオンは、導電性塩のアニオンとして存在する。非常に好ましい導電性塩は、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウムであり、塩化アンモニウムが最も好ましい。
【0072】
好ましいのは、工程(b)において、ハロゲンアニオンは、いくつかの場合において好ましくは塩化物アニオンに加えて、臭化物アニオンを含む、本発明の方法である。臭化物イオンは典型的に、望ましくない六価クロム種のアノード形成を回避する。好ましくは、臭化物イオンは、水性三価クロム電気めっき浴の全体積基準で、3g/Lから20g/Lまでの範囲の、好ましくは4g/Lから18g/Lまでの範囲の、より好ましくは5g/Lから16g/Lまでの範囲の、更により好ましくは6g/Lから14g/Lまでの範囲の、最も好ましくは7g/Lから12g/Lまでの範囲の濃度を有する。臭化物イオンは、好ましくは臭化物塩由来であり、好ましくは臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化アンモニウム、及び/又はそれらの混合物由来である。好ましくは、硫酸イオンが水性三価クロム電気めっき浴において利用される場合、臭化物イオンも存在する。
【0073】
好ましいのは、工程(b)において、水性三価クロム電気めっき浴がアンモニウムイオンを更に含む、本発明の方法である。
【0074】
好ましいのは、工程(b)において、水性三価クロム電気めっき浴が、1種又は1種より多くのpH緩衝化合物を更に含む、本発明の方法である。最も好ましくは、1種又は1種より多くのpH緩衝化合物は、(ii)とは別個である(即ち、異なる)。これは好ましくは、1種又は1種より多くのpH緩衝化合物がカルボン酸を含まない、好ましくは有機酸を含まないことを意味する。
【0075】
多くの場合において、水性三価クロム電気めっき浴において、1種又は1種より多くのpH緩衝化合物が、ホウ素含有化合物、好ましくはホウ酸及び/又はボレート、最も好ましくはホウ酸を含む、本発明の方法が好ましい。好ましいボレートはホウ酸ナトリウムである。
【0076】
一般に好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴において、1種又は1種より多くのpH緩衝化合物が、水性三価クロム電気めっき浴の全体積基準で、30g/Lから250g/Lまでの範囲の、好ましくは35g/Lから200g/Lまでの範囲の、より好ましくは40g/Lから150g/Lまでの範囲の、更により好ましくは45g/Lから100g/Lまでの範囲の、最も好ましくは50g/Lから75g/Lまでの範囲の全濃度を有する、本発明の方法である。これは、更により好ましくは前記ホウ素含有化合物に、なお更により好ましくは前記ボレートと一緒の前記ホウ酸に、最も好ましくは前記ホウ酸に該当する。最も好ましくは、1種又は1種より多くのpH緩衝化合物は、ホウ酸を含むがボレートは含まない。したがって、最も好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、水性三価クロム電気めっき浴の全体積基準で、好ましくは35g/Lから90g/Lまでの、好ましくは40g/Lから80g/Lまでの、より好ましくは50g/Lから70g/Lまでの、最も好ましくは56g/Lから66g/Lまでの範囲の全量濃度でホウ酸を含む、本発明の方法である。
【0077】
しかしながら、いくつかの他の場合において、水性三価クロム電気めっき浴は、別個のpH緩衝化合物を明示的に含まない。どちらかと言えば、前記三価クロムイオンのための1種又は1種より多くの錯化剤は、三価クロムイオンのための錯化剤としてのみ働くのではなく、追加的にpH緩衝化合物として働くような量で存在し、そのように選択される。本発明の文脈において、これはあまり好ましくないが可能である。
【0078】
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴は、亜鉛を含むイオン及び/又は化合物を、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の方法である。好ましくは、暗色クロム層は、亜鉛を実質的に含まない、好ましくは含まない。
【0079】
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が化成処理組成物ではない、本発明の方法である。換言すると、水性三価クロム電気めっき浴は、化成被覆に、及び/又は亜鉛若しくは亜鉛合金層への適用に好適ではない。なお更に換言すると、本発明の方法は化成被覆法ではない。
【0080】
好ましいのは、基材が、亜鉛及び亜鉛合金層を、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の方法である。
【0081】
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、フッ化イオンを、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の方法である。好ましくは、暗色クロム層は、フッ素を実質的に含まない、好ましくは含まない。
【0082】
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、リン酸アニオンを、実質的に含まない、好ましくは含まない、より好ましくは亜リン酸含有化合物を、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の方法である。好ましくは、暗色クロム層は、亜リン酸を実質的に含まない、好ましくは含まない。
【0083】
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、亜硫酸アニオンを、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の方法である。
【0084】
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、酸化数+6を有するクロムを含む化合物を、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の方法である。したがって、前記電気めっき浴は、六価クロムを、実質的に含まない、好ましくは含まない。これは具体的には、六価クロムは、少なくとも意図的には水性三価クロム電気めっき浴に加えられないことを意味する。
【0085】
いくつかの場合において、好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴は、コバルトを含むイオン及び/又は化合物を、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の方法である。好ましくは、暗色クロム層は、コバルトを、実質的に含まない、好ましくは含まない。しかしながら、他の場合において、水性三価クロム電気めっき浴が、コバルトを含むイオン及び/又は化合物を含む、本発明の方法が好ましい。好ましくは、暗色クロム層はコバルトを含む。コバルトは、環境的に疑問の余地があるが、いくつかの場合において追加の暗色化効果を与える。
【0086】
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、可溶性アルミニウム化合物(それらの塩を含む)を実質的に含まない、好ましくは含まない、好ましくは溶解したアルミニウムイオンを含まない、本発明の方法である。
【0087】
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、ニッケルイオンを、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の方法である。いくつかの場合において、最大150ppmまでの典型的なNi汚染が観察され、これは基本的に許容され、したがってニッケルイオンを実質的に含まないと考えられる。したがって、いくつかの場合において、ニッケルイオンは、水性三価クロム電気めっき浴の全質量基準で、0ppmから200ppmまでの、好ましくは1ppmから150ppmまでの、最も好ましくは2ppmから100ppmまでの範囲の濃度を有することが好ましい。しかしながら、最も好ましくは、水性三価クロム電気めっき浴はニッケルを含まない。好ましくは、暗色クロム層は、ニッケルを、実質的に含まない、好ましくは含まない。
【0088】
環境的に疑問の余地があるニッケル及びコバルト種を回避することが一般に好ましい。これにより一般に、廃水処理及び浴の処分の複雑さが減少する。加えて、ニッケルもコバルトも一般に、暗い色調を得るために必要とされない。
【0089】
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、スルファミン酸及びそれらの塩を、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の方法である。
【0090】
本発明の方法の工程(c)において、基材は水性三価クロム電気めっき浴と接触され、暗色クロム層が基材上に電解析出されるように電流が適用される。
【0091】
好ましいのは、工程(c)における電流が、好ましくは3A/dm2から30A/dm2までの、より好ましくは4A/dm2から25A/dm2までの、更により好ましくは5A/dm2から20A/dm2までの、最も好ましくは6A/dm2から18A/dm2までの範囲の直流である、本発明の方法である。
【0092】
好ましいのは、工程(c)において、少なくとも1つのアノードが利用される、本発明の方法である。少なくとも1つのアノードは好ましくは、グラファイトアノード、貴金属アノード、及び混合金属酸化物アノード(MMO)からなる群から選択される。
【0093】
好ましい貴金属アノードは、白金めっきチタンアノード及び/又は白金アノードを含む。
【0094】
好ましい混合金属酸化物アノードは、酸化白金被覆チタンアノード及び/又は酸化イリジウム被覆チタンアノードを含む。
【0095】
好ましいのは、工程(c)において電解析出される暗色クロム層が、0.05μmから1μmまでの、好ましくは0.1μmから0.8μmまでの、より好ましくは0.125μmから0.6μmまでの、最も好ましくは0.15μmから0.5μmまでの範囲の層厚さを有する、本発明の方法である。
【0096】
好ましいのは、工程(c)において、接触させる工程が、1分~20分間、好ましくは2分~15分間、より好ましくは3分から10分まで行われる、本発明の方法である。
【0097】
好ましいのは、工程(c)において、接触させる工程が、20℃から60℃までの、好ましくは25℃から52℃までの、より好ましくは30℃から45℃までの範囲の温度で行われる、本発明の方法である。
【0098】
本発明の方法の工程(c)において、暗色クロム層は、基材上に電解析出され(即ち、それは電気めっきされたクロム層である)、好ましくは、L*a*b*色空間系に従う、60以下の、より好ましくは58以下の、更により好ましくは56以下の、なお更により好ましくは53以下の、最も好ましくは51以下の明るさの値L*を有する。
【0099】
より好ましいのは、工程(c)において、暗色クロム層が、L*a*b表色系に従って、45から59までの、好ましくは47から55までの、最も好ましくは49から53までの範囲のL*値を有する、本発明の方法である。最も好ましくは、暗色クロム層は化学元素アルミニウムを含む。これは、好ましくは前記コロイド粒子が暗色クロム層に組み込まれることを意味する。
【0100】
好ましいのは、工程(c)において、暗色クロム層が、L*a*b表色系に従って、-0.5から+3.0までの、好ましくは0から2.5までの、より好ましくは+0.3から+2までの、最も好ましくは+0.5から1.5までの範囲のa*値を有する、本発明の方法である。
【0101】
好ましいのは、暗色クロム層が、L*a*b表色系に従って、+3.1から+7までの、好ましくは3.5から6.5までの、より好ましくは+4から+6までの、最も好ましくは+4.5から5.5までの範囲のb*値を有する、本発明の方法である。
【0102】
好ましいのは、工程(c)の前の、少なくとも1つの金属又は金属合金層を析出させるための少なくとも1つの金属めっき工程、最も好ましくは少なくとも1つのニッケル又はニッケル合金層を析出させるための少なくとも1つのニッケルめっき工程を更に含む、本発明の方法である。多くの場合において、好ましくは、2つ又は更には3つのそのような金属めっき工程が関与する。
【0103】
最も好ましくは、少なくとも1つのニッケル又はニッケル合金層は、少なくとも1つの光沢ニッケル層及び/又は(好ましくは又は)少なくとも1つのサテンニッケル層、最も好ましくは少なくとも1つの光沢ニッケル層を含む。
【0104】
より好ましいのは、少なくとも1つのニッケル又はニッケル合金層が、少なくとも1つの半光沢ニッケル層、好ましくは前記少なくとも1つの光沢ニッケル層及び/又は前記少なくとも1つのサテンニッケル層に加えて少なくとも1つの半光沢ニッケル層を含む、本発明の方法である。好ましくは、少なくとも1つの半光沢ニッケル層は任意選択である。最も好ましくは、前記少なくとも1つの光沢ニッケル層及び/又は前記少なくとも1つのサテンニッケル層の前に、少なくとも1つの半光沢ニッケル層が析出される(適用される場合)。
【0105】
好ましいのは又、少なくとも1つのニッケル又はニッケル合金層が、少なくとも1つのMPSニッケル層、好ましくは前記少なくとも1つの光沢ニッケル層及び/又は前記少なくとも1つのサテンニッケル層に加えて少なくとも1つのMPSニッケル層、最も好ましくは前記少なくとも1つの光沢ニッケル層及び/又は前記少なくとも1つのサテンニッケル層並びに更に前記少なくとも1つの半光沢ニッケル層に加えて少なくとも1つのMPSニッケル層を含む、本発明の方法である。本発明の文脈において、MPSは、MPSニッケル層が非導電性微小粒子を含むことを表し、非導電性微小粒子は、後に続くクロム層において、好ましくは暗色クロム層において、微小孔を生じる。少なくとも1つのMPSニッケル層は好ましくは任意選択である。
【0106】
いくつかの場合において、MPSニッケル層が暗色クロム層と隣り合う、本発明の方法が好ましい。
【0107】
他の場合において、暗色クロム層が少なくとも1つの光沢ニッケル層及び/又は少なくとも1つのサテンニッケル層と隣り合い、これは多くの場合において好ましく、最も好ましくは少なくとも1つの光沢ニッケル層との組み合わせにおいてである、本発明の方法が好ましい。
【0108】
好ましくは、暗色クロム層は層スタックの一部である。
【0109】
本発明は、
(i)三価クロムイオンと、
(ii)前記三価クロムイオンのための1種又は1種より多くの錯化剤と、
(iii)化学元素アルミニウムを含有するコロイド粒子と、
(iv)+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する第1の硫黄含有化合物と、
(v)任意選択で、(iv)とは異なる、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する第2の硫黄含有化合物と
を含む水性三価クロム電気めっき浴に更に関する。
【0110】
好ましくは、具体的には本発明の方法において利用される水性三価クロム電気めっき浴に関して、本発明の方法について上述されるものは、本発明の水性三価クロム電気めっき浴、最も好ましくは特に好ましいものとして説明される特徴に同様に該当する。
【0111】
更に、本発明は又、暗色クロム層を含む基材であって、暗色クロム層が化学元素アルミニウムを含み、L*a*b表色系に従って、60以下、好ましくは58以下、より好ましくは56以下、更により好ましくは53以下、最も好ましくは51以下のL*値を有し、プラスチック基材を含む、基材に関する。
【0112】
好ましくは、具体的には本発明の方法によって得られる暗色クロム層に関して、本発明の方法について上述されるものは、本発明の基材、最も好ましくは特に好ましいものとして説明される特徴に同様に該当する。最も好ましくは、これは、本発明の方法との関連で明示的に又は暗黙的に前に言及された暗色クロム層の外観及び成分に該当する。
【0113】
非常に好ましいのは、暗色クロム層が、化学元素アルミニウムを含み、L*a*b表色系に従って、45から59までの、好ましくは47から55までの、最も好ましくは49から53までの範囲のL*値を有する、本発明の基材である。
【0114】
特に好ましいのは、暗色クロム層が、-0.5から+3.0までの、好ましくは0から2.5までの、より好ましくは+0.3から+2までの、最も好ましくは+0.5から1.5までの範囲のa*値を有する、本発明の基材である。
【0115】
特に好ましいのは、暗色クロム層が、+3.1から+7までの、好ましくは3.5から6.5までの、より好ましくは+4から+6までの、最も好ましくは+4.5から5.5までの範囲のb*値を有する、本発明の基材である。
【0116】
最も好ましいのは、暗色クロム層が、コバルトを、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の基材である。それに対して、他の場合において、暗色クロム層はコバルトを含むことが好ましい。
【0117】
最も好ましいのは、暗色クロム層が、ニッケルを、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の基材である。
【0118】
好ましくは、暗色クロム層は、暗色クロム層と基材との間の唯一の金属層ではない。
【0119】
好ましいのは、暗色クロム層の下に少なくとも1つのニッケル層又はニッケル合金層を含む、本発明の基材である。
【0120】
好ましいのは、前記少なくとも1つのニッケル層又はニッケル合金層は、少なくとも1つの光沢ニッケル層又は少なくとも1つのサテンニッケル層を含む、本発明の基材である。これは多くの場合において、最も好ましい。
【0121】
好ましいのは、前記少なくとも1つのニッケル層又はニッケル合金層が、少なくとも1つの半光沢ニッケル層、好ましくは前記少なくとも1つの光沢ニッケル層及び/又は前記少なくとも1つのサテンニッケル層に加えて少なくとも1つの半光沢ニッケル層を含む、本発明の基材である。少なくとも1つの半光沢ニッケル層は好ましくは任意選択である。最も好ましくは、少なくとも1つの半光沢ニッケル層は、基材に最も近いニッケル層(すべてのニッケル層のうちの)である。
【0122】
好ましいのは、前記少なくとも1つのニッケル層又はニッケル合金層が、少なくとも1つのMPSニッケル層、好ましくは前記少なくとも1つの光沢ニッケル層及び/又は前記少なくとも1つのサテンニッケル層に加えて少なくとも1つのMPSニッケル層、最も好ましくは前記少なくとも1つの光沢ニッケル層及び/又は前記少なくとも1つのサテンニッケル層並びに更に前記少なくとも1つの半光沢ニッケル層に加えて少なくとも1つのMPSニッケル層を含む、本発明の基材である。本発明の文脈において、MPSは微多孔性を表す。
【0123】
好ましいのは、前記少なくとも1つのMPSニッケル層が、1つの面で暗色クロム層に、且つ他の面で前記少なくとも1つの光沢ニッケル層又は前記少なくとも1つのサテンニッケル層に面している、本発明の基材である。
【0124】
好ましいのは、前記少なくとも1つの半光沢ニッケル層が、前記少なくとも1つの光沢ニッケル層又は前記少なくとも1つのサテンニッケル層の下にある、本発明の基材である。
【0125】
更により好ましいのは、暗色クロム層が層スタックの一部であり、層スタックが、暗色クロム層から基材の方向に沿って(隣り合う又は隣り合っていない)、
(i)暗色クロム層、
(ii)任意選択で、少なくとも1つのMPSニッケル層、
(iii)少なくとも1つの光沢ニッケル層及び/又は(好ましくは又は)少なくとも1つのサテンニッケル層、及び
(iv)任意選択で、少なくとも1つの半光沢ニッケル層
を含む、本発明の基材である。
【0126】
別段に記載がない限り、好ましくは、本発明の基材についての上述の特定の特徴は、本発明の方法に同様に該当する。
【0127】
いくつかの場合において、層スタックは好ましくは、シーラー層及び/又は耐指紋層を、最も好ましくは暗色クロム層上に含む。両方が適用される場合、好ましくはシーラー層が最初に、続いて耐指紋層が適用され、好ましくはこれが最も外側の層を形成する。
【0128】
以下の実施例において、本明細書において特許請求の範囲で定義されるような本発明の範囲を限定することなく本発明の趣旨が更に例示される。
【実施例
【0129】
(a)基材を用意する工程:
以下の実施例のために、主として、銅層を析出させたプラスチック基材を模倣するために、基材として銅パネル(99mm×70mm)を使用した。
【0130】
第1の工程において、室温(RT)でUniclean(登録商標)279(Atotech社の製品)100g/Lで電解脱脂することによって、基材を清浄にした。その後、10体積%のH2SO4で銅パネルを酸洗いし、水ですすいだ。
【0131】
第2の工程において、清浄にし、すすいだ基材をニッケルめっきに供して、銅パネルの上に光沢ニッケル層を得た(パラメーター:4A/dm2で10分;Makrolux(登録商標)NF電解質;Atotech社の製品)。
【0132】
(b)水性三価クロム電気めっき浴を用意する工程
以下の水性三価クロムベース電気めっき浴を使用した。
128g/Lの塩基性硫酸クロム
46g/Lのギ酸
60g/Lのホウ酸
12g/Lの臭化アンモニウム
100g/Lの塩化アンモニウム
110g/Lの塩化カリウム
25~45g/Lのメチオニン
0.1g/Lのスルホコハク酸ジアミルナトリウム
【0133】
更なる成分及び量を下記のTable 1(表1)及びTable 2(表2)に要約する。Table 1(表1)において、「E」は本発明による実施例を指し、Table 2(表2)において、「CE」は本発明によらない比較例を指す。
【0134】
最終pH値は約3であった。
【0135】
本発明による実施例すべて(即ち、E1~E11)において、25nmの粒径D50を有する酸化アルミニウムナノ粒子(Nanobyk-3603;BYK-Chemie GmbH社)を使用した。比較例のためには、粒子をまったく使用しないか、又は20nmの粒径を有するSiO2ナノ粒子(ThermoFisher社;43110;少なくとも40%の濃度)を使用するかのいずれかであった。
【0136】
(c)前記電気めっき浴と基材を接触させる工程
グラファイトアノード、及びカソードとして取り付けた基材を有するハルセル中で電気めっきを行った。5Aの電流を3分間、水性三価クロム電気めっき浴に適用し、すべての実施例(比較例を含む)に関して浴の温度は約35℃であった。
【0137】
結果として、ニッケルめっきされた銅パネルの上にそれぞれの暗色クロム層を析出させた。その後、暗色クロム層を有する基材を水ですすいだ。
【0138】
測色計(Konica Minolta社CM-700 D分光光度計)でL*a*b*色空間系に従う色を決定した。校正は白黒基準で行った。色の決定は基材の中央の領域で行った。左縁端部から1cm、下縁端部から2cmに測定領域を位置特定する(左縁端部はアノードに向いている)。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
比較例CE1及びCE5~CE7は、粒子がなく、むしろメチオニン等の有機着色剤のみを含有する条件を示す。興味深いことに、シリカナノ粒子の存在は、少なくともメチオニン含有めっき浴に関しては、L*値を著しく低下させない(CE1をCE2~CE4に対して比較されたい)。これらの場合において、L*値はおおよそ55にとどまる。それにもかかわらず、得られるクロム層はすべて既に暗色である。
【0142】
しかしながら、化学元素アルミニウムを含有するコロイド粒子、具体的には酸化アルミニウムナノ粒子を加えると、L*値の著しい更なる減少が観察される(即ち、更なる暗色化)。詳細には:CE1(L*55.8)=>E1~E3(L*48.9~49.9;約10%少なくとも低減される);CE5(L*61.7)=>E4~E6(L*55.2~56.0;約9%少なくとも低減される);CE6(L*61.6)=>E7~E9(L*55.7~57.6;約6%少なくとも低減される);並びにCE7(L*58.9)=>E10及びE11(L*52.1~53.9;約8%少なくとも低減される)。
【0143】
それぞれのシナリオにおいて、即ち、それぞれの比較例及びその対応する本発明の実施例において、L*値は、約6%から10%の間低減された。
【0144】
Table 1(表1)及びTable 2(表2)において更に示されるように、すべての実施例にわたって、a*値は基本的に一定のままである。しかしながら、化学元素アルミニウムを含有するコロイド粒子を加えると、b*値に著しい影響を及ぼし、基本的に常に増大する。詳細には:CE1(b*+3.2)=>E1~E3(b*約+5.6);CE5(b*0)=>E4~E6(b*+2.6~+3.1);CE6(b*+0.4)=>E7~E9(b*+1.9~+2.8);並びにCE7(b*+1.3)=>E10及びE11(b*+4.0~+4.7)。したがって、化学元素アルミニウムを含有するコロイド粒子を用いると、より暖かい褐色を帯びた色調が得られる。
【0145】
本発明を用いて得られる暗色クロム層は艶がある。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に暗色クロム層を電着させるための方法であって、
(a)プラスチック基材を含む前記基材を用意する工程と、
(b)
(i)三価クロムイオンと、
(ii)前記三価クロムイオンのための1種又は1種より多くの錯化剤と、
(iii)化学元素アルミニウムを含有するコロイド粒子と、
(iv)+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する第1の硫黄含有化合物と、
(v)任意選択で、(iv)とは異なる、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する第2の硫黄含有化合物と
を含む水性三価クロム電気めっき浴を用意する工程と、
(c)前記電気めっき浴と前記基材を接触させ、電流を印加して、前記基材上に前記暗色クロム層を電解析出させる工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記水性三価クロム電気めっき浴が、コロイド懸濁液である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コロイド粒子が、ナノ粒子を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記コロイド粒子が、体積基準で、100nm以下の平均粒子径D50を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コロイド粒子が、少なくとも、100nm以下の粒径を有する粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記コロイド粒子が、前記水性三価クロム電気めっき浴の全体積基準で、0.05g/Lから15g/Lまでの範囲の全量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記コロイド粒子が酸化アルミニウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コロイド粒子が、Al2O3を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する前記第1の硫黄含有化合物が、窒素原子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の硫黄含有化合物がメチオニンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の硫黄含有化合物が、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する無機硫黄含有化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
(i)三価クロムイオンと、
(ii)前記三価クロムイオンのための1種又は1種より多くの錯化剤と、
(iii)化学元素アルミニウムを含有するコロイド粒子と、
(iv)+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する第1の硫黄含有化合物と、
(v)任意選択で、(iv)とは異なる、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する第2の硫黄含有化合物と
を含む水性三価クロム電気めっき浴。
【請求項13】
暗色クロム層を含む基材であって、前記暗色クロム層が化学元素アルミニウムを含み、L*a*b表色系に従って、60以下のL*値を有し、
プラスチック基材を含む、
基材。
【請求項14】
前記暗色クロム層が、-0.5から+3.0までの範囲のa*値を有する、請求項13に記載の基材。
【請求項15】
前記暗色クロム層が、+3.1から+7までの範囲のb*値を有する、請求項14に記載の基材。
【国際調査報告】