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特表2024-520818急性呼吸促迫症候群を処置するためのMMP阻害薬の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】急性呼吸促迫症候群を処置するためのMMP阻害薬の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4166 20060101AFI20240517BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20240517BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K31/4166
A61K47/69
A61P11/00
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575949
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 US2022072789
(87)【国際公開番号】W WO2022261623
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】63/208,268
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522191369
【氏名又は名称】フォアシー ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100202603
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】リー ユーフア
(72)【発明者】
【氏名】チエン ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076BB01
4C076BB25
4C076CC15
4C076EE39
4C076FF36
4C076FF63
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086GA02
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA52
4C086MA59
4C086NA03
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZC20
(57)【要約】
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害薬の投与によって、急性呼吸促迫症候群(ARDS)を処置する方法を記述する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする患者の急性呼吸促迫症候群(ARDS)の処置方法であって、前記患者に医薬組成物を治療有効量で投与することを含み、前記医薬組成物は、シクロデキストリンと、下記式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩とを含む、前記方法。
【化1】
【請求項2】
投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約50mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mg、若しくは500mg、又は中間の任意の用量である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記医薬組成物が、1日1回又は2回投与される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約100~約300mgである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約200~約600mgである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記医薬組成物が、経口で又は経鼻胃管を介して投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記医薬組成物が、式(F-I)の化合物を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記シクロデキストリンが、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(HPBCD)である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
式(F-I)の化合物とシクロデキストリンのモル比が、1:0.1~1:10である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ARDSが、コロナウイルスによって引き起こされ、好ましくはSARS-CoV-2によって引き起こされる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
随伴性急性呼吸促迫症候群(ARDS)を有するCOVID-19患者の処置方法であって、前記患者に医薬組成物を治療有効量で投与することを含み、前記医薬組成物は、シクロデキストリンと、下記式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩とを含む、前記方法。
【化2】
【請求項13】
投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約50mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mg、若しくは500mg、又は中間の任意の用量である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記医薬組成物が、1日1回又は2回投与される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約100~約300mgである、請求項12~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約200~約600mgである、請求項12~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記医薬組成物が、経口で又は経鼻胃管を介して投与される、請求項12~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記医薬組成物が、式(F-I)の化合物を含む、請求項12~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記シクロデキストリンが、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(HPBCD)である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
式(F-I)の化合物とシクロデキストリンのモル比が、1:0.1~1:10である、請求項12~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
COVID-19を処置するための1種以上の追加薬物又は処置を前記患者に与えることをさらに含む、請求項12~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
それを必要とする患者の急性呼吸促迫症候群(ARDS)の処置方法であって、前記患者に下記式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【化3】
【請求項24】
投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約50mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mg、若しくは500mg、又は中間の任意の用量である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩が、1日1回又は2回投与される、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約100~約300mgである、請求項23~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約200~約600mgである、請求項23~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩が、経口で又は経鼻胃管を介して投与される、請求項23~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
式(F-I)の化合物が前記患者に投与される、請求項23~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
ARDSが、コロナウイルスによって引き起こされ、好ましくはSARS-CoV-2によって引き起こされる、請求項23~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
随伴性急性呼吸促迫症候群(ARDS)を有するCOVID-19患者の処置方法であって、前記患者に下記式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【化4】
【請求項33】
投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約50mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mg、若しくは500mg、又は中間の任意の用量である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩が、1日1回又は2回投与される、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である、請求項32~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約100~約300mgである、請求項32~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約200~約600mgである、請求項32~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩が、経口で又は経鼻胃管を介して投与される、請求項32~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
式(F-I)の化合物が前記患者に投与される、請求項32~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
COVID-19を処置するための1種以上の追加薬物又は処置を前記患者に与えることをさらに含む、請求項32~39のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本出願は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害薬の投与によって急性呼吸促迫症候群(ARDS)を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
急性呼吸促迫症候群(ARDS)は、肺内の小さい弾性気嚢に流体が蓄積すると、体の生命維持に不可欠な臓器に肺が十分な酸素を供給できない、生命を脅かすな状態である。それは、通常は重篤な既存の健康状態の合併症である。これは、ARDSを発症する時までにほとんどの人が既に入院していることを意味する。ARDSの症状としては、重度の息切れ、速く浅い呼吸、疲労、眠気又は錯乱、及び失神を挙げることができる。
ARDSの機械的原因は、肺内の最小血管から、血液が酸素化される小気嚢に漏出した流体である。通常は、保護膜がこの流体を血管内に保持する。しかしながら、重篤な疾病又は傷害は、膜に損傷を引き起こすことがあり、ARDSの流体漏出をもたらす。ARDSの根底にある一般的原因には、敗血症、重度の胸部傷害、有害物質の吸入、重症肺炎、急性膵炎、輸血に対する有害反応、並びにコロナウイルス感染症2019(COVID-19)が挙げられる。
アメリカ疾病管理センター(United States Centers for Disease Control)(2020年6月30日更新、https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/clinical-guidance-management-patients.html)によれば、約3%~17%のCOVID-19患者がARDSを発症する。入院患者の中では、この数は20%~40%に増加し、集中治療室(ICU)に搬送された患者については67%~85%まで増加する。
従って、COVID-19の現在のパンデミック下では、ARDS、特に重篤~危篤のCOVID-19患者を処置するための安全かつ有効な手段を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0003】
概要
本願では、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害薬の投与による急性呼吸促迫症候群(ARDS)の処置方法を開示する。
ある一般的態様では、本願は、それを必要とする患者の急性呼吸促迫症候群(ARDS)の処置方法であって、患者に医薬組成物を治療有効量で投与することを含み、この医薬組成物は、シクロデキストリンと、下記式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩とを含む、方法に関する。
【化1】
【0004】
いくつかの実施形態では、投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約50mg~500mgである。
いくつかの実施形態では、投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約50mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mg、又は500mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回又は2回投与される。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約200mg~約600mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約200mg~約600mg、又は中間の任意の用量である。
【0005】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、経口で又は経鼻胃管を介して投与される。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、式(F-I)の化合物を含む。
いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(HPBCD)である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1:0.1~1:10である式(F-I)の化合物とシクロデキストリンのモル比を有する。
いくつかの実施形態では、ARDSは、コロナウイルスによって引き起こされ、好ましくはSARS-CoV-2によって引き起こされる。
いくつかの実施形態では、方法は、臨床的に証明された安全な処置である。
いくつかの実施形態では、方法は、臨床的に証明された有効な処置である。
【0006】
別の一般的態様では、本出願は、それを必要とする患者の急性呼吸促迫症候群(ARDS)の処置方法であって、患者に式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を投与することを含む、方法に関する。
【化2】
【0007】
いくつかの実施形態では、投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約50mg~500mgである。
いくつかの実施形態では、投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約50mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mg、又は500mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日1回又は2回投与される。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約200mg~約600mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約200mg~約600mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、経口で又は経鼻胃管を介して投与される。
いくつかの実施形態では、ARDSは、コロナウイルスによって引き起こされ、好ましくはSARS-CoV-2によって引き起こされる。
いくつかの実施形態では、方法は、臨床的に証明された安全な処置である。
いくつかの実施形態では、方法は、臨床的に証明された有効な処置である。
【0008】
別の一般的態様では、本出願は、随伴性急性呼吸促迫症候群(ARDS)を有するCOVID-19患者の処置方法であって、患者に医薬組成物を治療有効量で投与することを含み、この医薬組成物は、シクロデキストリンと、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩とを含む、方法に関する。
【化3】
【0009】
いくつかの実施形態では、投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約50mg~500mgである。
いくつかの実施形態では、投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約50mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mg、又は500mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回又は2回投与される。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約200mg~約600mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約200mg~約600mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、経口で又は経鼻胃管を介して投与される。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、式(F-I)の化合物を含む。
いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(HPBCD)である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1:0.1~1:10である式(F-I)の化合物とシクロデキストリンのモル比を有する。
いくつかの実施形態では、ARDSは、コロナウイルスによって引き起こされ、好ましくはSARS-CoV-2によって引き起こされる。
いくつかの実施形態では、方法は、臨床的に証明された安全な処置である。
いくつかの実施形態では、方法は、臨床的に証明された有効な処置である。
いくつかの実施形態では、方法は、COVID-19を処置するための1種以上の追加の薬物又は処置を患者に投与することをさらに含む。
【0010】
別の一般的態様では、本出願は、随伴性急性呼吸促迫症候群(ARDS)を有するCOVID-19患者の処置方法であって、患者に式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を投与することを含む、方法に関する。
【化4】
【0011】
いくつかの実施形態では、投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約50mg~500mgである。
いくつかの実施形態では、投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約50mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mg、又は500mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日1回又は2回投与される。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約200mg~約600mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約200mg~約600mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、経口で又は経鼻胃管を介して投与される。
いくつかの実施形態では、ARDSは、コロナウイルスによって引き起こされ、好ましくはSARS-CoV-2によって引き起こされる。
いくつかの実施形態では、方法は、臨床的に証明された安全な処置である。
いくつかの実施形態では、方法は、臨床的に証明された有効な処置である。
いくつかの実施形態では、方法は、COVID-19を処置するための1種以上の追加の薬物又は処置を患者に投与することをさらに含む。
【0012】
下記説明に本発明の1つ以上の実施形態の詳細を示す。他の特徴及び利点は、下記詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかだろう。
本発明の前述の概要、並びに下記詳細な説明は、添付図面と併せて読むと、より良く分かるだろう。本発明は、図面に示す正確な実施形態に限定されないことを理解すべきである。
特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面を有する本特許又は特許出願公開のコピーは、要求及び必要な料金の支払いをすれば特許庁により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】式(F-I)の化合物が、急性肺傷害(ALI)モデルの気管支肺胞洗浄(BAL)液中の総炎症細胞数を減らしたこと示し、**p<0.01対モデル;***p<0.001対モデル;###p<0.001対F-I-1mpk-8h;$$p<0.001対F-I-3mpk-8h;&&p<0.05対F-I-10mpk-4hである。
図1B】式(F-I)の化合物が、急性肺傷害(ALI)モデルの気管支肺胞洗浄(BAL)液中の総好中球数を減らしたこと示し、*p<0.05対モデル;**p<0.01対モデル;***p<0.001対モデル;##p<0.01対F-I-1mpk-8h;###p<0.01対F-I-1mpk 8h;$$p<0.01対F-I-3mpk-8h;&p<0.05対F-I-10mpk-4hである。
図2A-2J】ALI後4時間での肺組織構造の変化:シャム動物(図2A);ビヒクル動物(図2B);ALI後4時間でのデキサメタゾン(DEX)(図2C);ALI後8時間でのDEX(図2D);ALI後4時間での式(F-I)の化合物1mg/kg(図2E);ALI後4時間での式(F-I)の化合物3mg/kg(図2F);ALI後4時間での式(F-I)の化合物10mg/kg(図2G);ALI後8時間での式(F-I)の化合物1mg/kg(図2H);ALI後8時間での式(F-I)の化合物3mg/kg(図2I);ALI後8時間での式(F-I)の化合物10mg/kg(図2J)を示す。青矢印:正常な肺胞壁;黒矢印:炎症のある肺胞;赤矢印:炎症性浸潤のある肺胞壁。ヘマトキシリン・エオシン染色、画像の拡大率:200倍。
図3】ALI後全ての異なる時間と異なる用量でのDEX処置及び式(F-I)の化合物処置による全肺傷害の軽減を示す。***p<0.001対モデル。
図4】ALI後全ての異なる時間と異なる用量でのDEX処置及び式(F-I)の化合物処置による気管支損傷及び細動脈損傷の軽減を示す。*p<0.05対モデル;**p<0.01対モデル;***p<0.001対モデル。
図5】ALI後全ての異なる時間と異なる用量でのDEX処置及び式(F-I)の化合物処置による肺胞損傷の軽減を示す。*p<0.05対モデル;**p<0.01対モデル;***p<0.001対モデル。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
背景において及び本明細書全体を通して種々の出版物、論文及び特許が引用され;これらの各参考文献は、参照することによりその内容全体がここに組み込まれる。本明細書に含めた文書、行為、材料、装置、論文等の考察は、本発明に文脈を与える目的のためである。該考察は、これらの事項のいずれか又はすべてが、開示又はクレームしたいずれかの発明に関する先行技術の一部を形成することを認めるものではない。
別段の定義がない限り、本願で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。さもなければ、本願で使用する特定の用語は、本明細書に明記するとおりの意味を有する。本明細書で引用される全ての特許、公開された特許出願及び出版物は、参照することによりあたかも全体的に明記されたかのように本明細書に組み込まれる。
【0015】
定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、複数の言及が含まれることに注意しなければならない。
本明細書で使用する場合、数値又は一連の数値に先行する用語「約」は、別段の指示がない限り、数値の±10%を意味する。例えば、「約100mg」は、90~110mgを意味する。
別段の指示がない限り、一連の要素に先行する用語「少なくとも」は、一連のあらゆる要素を指すものと理解すべきである。当業者は、ただ日常の実験を利用するだけで、本明細書に記載の発明の具体的実施形態に対する多くの等価物を認識するか又は確認する能力があるだろう。該等価物は、本発明に包含されるよう意図される。
本明細書及び下記特許請求の範囲全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、語「含む(comprise)」、及び「comprises」や「comprising」等の変形は、明言された整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を含めるが、いずれの他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群をも除外しない意味であると理解される。本明細書で使用するとき、用語「含む(comprising)」は用語「含有する(containing)」又は「含める(including)」と置き換えることができ、或いは本明細書で使用するときには「有する(having)」と置き換えることができることもある。
本明細書で使用するとき、「から成る(consisting of)」は、クレーム要素に規定されていないいずれの要素、ステップ、又は成分をも除外する。本明細書で使用するとき、「から本質的に成る(consisting essentially of)」は、クレームの基本的及び新規の特性に実質的に影響を与えない物質又はステップを除外しない。上述の用語「含む」、「含有する」、「含める」、及び「有する」のいずれも、本発明の態様又は実施形態の文脈で本明細書で使用されるときはいつでも、用語「から成る」又は「から本質的に成る」と交換して開示の範囲を変えることができる。
【0016】
本明細書で使用する場合、複数の列挙要素間の結合用語「及び/又は」は、個々の選択肢と組み合わせた選択肢の両方を包含すると理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」で結合されている場合、第1の選択肢は、第2の要素なしで第1の要素を適用することを指す。第2の選択肢は、第1の要素なしで第2の要素を適用することを指す。第3の選択肢は、第1の要素と第2の要素を一緒に適用することを指す。これらの選択肢のいずれの選択肢も意味の範囲に入り、ひいては本明細書で用いる用語「及び/又は」の要件を満たすものと理解される。1つより多くの選択肢の同時適用も意味の範囲に入り、ひいては本明細書で用いる用語「及び/又は」の要件を満たすものと理解される。
本明細書で使用する場合、特段の記載がない限り、用語「臨床的に証明された」(独立に又は用語「安全な」若しくは「有効な」を修飾するために使用される)は、それがヒト被験者の臨床試験であって、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)、欧州医薬品審査庁(European Medicines Evaluation Agency)(EMEA)、又は対応する国家規制庁(national regulatory agency)の承認基準を満たした臨床試験によって証明されたことを意味するものとする。本出願の一実施形態では、臨床試験は、随伴性急性呼吸促迫症候群(ARDS)を有する重篤~危篤のCOVID-19患者における式(F-I)の化合物の有効性及び安全性を評価するためのフェーズ2/3、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、多施設治験である。
【0017】
用語「臨床的に証明された安全な」は、それが用量、投与レジメン、本発明のMMP阻害薬(例えば、式(F-I)の化合物)による処置又は方法を指すとき、行われた治験、例えば、フェーズ2及びより早期の治験から処置下で発現した有害事象(treatment-emergent adverse event)(AE又はTEAEと呼ぶ)が、標準治療又は別の対照治療に比べて低いか若しくは減少した頻度及び/又は低いか若しくは減少した重度であること意味する。
本明細書で使用する場合、表現「有害事象(adverse event)(AE)」、「処置下で発現した有害事象」、「有害反応」、及び「有害作用」は、医薬組成物又は治療薬の投与と関連するか又は該投与によって引き起こされるいずれの有害な、好ましくない、意図されない又は望まれない徴候又はアウトカムをも意味する。しかしながら、異常な値又は知見は、研究者又は医師によって臨床的に有意であると見なされない限り、有害事象として報告されない。
本明細書で使用する場合、表現「重篤有害事象(serious adverse event)(SAE)」及び「重篤有害作用(serious adverse effect)」は、食品医薬品局(FDA)の連邦規制基準(Code of Federal Regulations)(CFR)、21章によって定義される重篤であるいずれの有害事象をも意味する。SAEは、研究者又は医師の視点で、下記アウトカムのいずれかをもたらすいずれのAE又は疑われる有害反応でもあり得る:死亡、生命を脅かす有害事象、入院患者の入院又は現存入院期間の延長、持続的若しくは顕著な無能又は正常な生活機能を果たす能力の実質的な崩壊、又は先天異常/出生時欠損。死をもたらすか、生命を脅かすか、又は入院を必要とする可能性のない重要な医療事象は、適切な医学的判断に基づいて、それらが患者又は被験者を危うくする可能性があり、上記定義で列挙したアウトカムの1つを予防するために医学的又は外科的処置を必要とし得るときに重篤と見なされる可能性がある。
【0018】
MMP阻害薬の投与の安全性評価に言及するときに本明細書で使用する場合、「臨床的に有意な変化」は、当業者に受け入れられる基準を用いて医師又は研究者によって判断される臨床的に明白な変化を意味する。有害事象の被害又は望ましくないアウトカムがこのような重症度レベルに達すると、規制庁は、その医薬組成物又は治療薬を提唱用途に容認できないとみなすことができる。このような変化は、身体検査、例えば臨床研究室評価、例えば臨床化学、血液学、及び尿検査;バイタルサイン、例えば体温、心拍数、呼吸数、血圧及び抹消毛細血管酸素飽和度(peripheral capillary oxygen saturation)(SpO2);身体検査、例えば全身状態、皮膚、眼/耳/鼻/口/喉、首/甲状腺、胸部/肺、心臓、血管系、リンパ節、腹部、四肢、神経系/反射、筋骨格系、及び脊椎の評価;及び心電図(ECG)モニタリング、例えば12誘導安全性ECG等によって測定可能である。
本明細書で使用する場合、「処置」又は「処置する」は、患者、例えば哺乳動物(特にヒト)の疾患、障害、又は医学的状態(例えば急性呼吸促迫症候群[ARDS])の処置を指し、下記の1つ以上を含む:
(a)疾患、障害、又は医学的状態が生じないようにすること、すなわち、該疾患若しくは医学的状態の再発を予防すること又は該疾患若しくは医学的状態に罹りやすい患者の予防処置;
(b)疾患、障害、又は医学的状態を改善すること、すなわち、他の治療薬の効果を相殺することを含め、患者の疾患、障害、又は医学的状態を排除するか又は退縮させること;
(c)疾患、障害、又は医学的状態を抑制すること、すなわち、患者の疾患、障害、又は医学的状態の発症を遅くするか又は停止させること;又は
(d)患者の疾患、障害、又は医学的状態の症状を軽減すること。
【0019】
本明細書において用量、投与レジメン、処置又は方法の文脈で用いる用語「臨床的に証明された有効な」は、特定の用量、投与レジメン又は処置レジメンの有効性を指す。有効性は、疾患の経過中に本発明の薬剤に応じた変化に基づいて測定することができる。例えば、式(F-I)の化合物は、処置している障害の重症度を反映する少なくとも1つの指標の改善、好ましくは持続的改善を誘導するのに十分な量で十分な時間にわたって被験者に投与することができる。処置の量及び時間が十分かどうかを判断するために被験者の疾病、疾患又は状態の程度を反映する種々の指標を評価することができる。該指標としては、例えば、疾患の重症度、症状、又は問題になっている障害の顕在化の臨床的に認められた指標が挙げられる。改善の程度は、一般的に、徴候、症状、生検、又は他の試験結果に基づいてこの判断を下すことができ、かつ被験者に与えられる質問票、例えば所与の疾患のために展開された生活の質の質問票を利用することもできる医師によって決定される。例えば、式(F-I)の化合物を投与して、急性呼吸促迫症候群(ARDS)に関連する被験者の状態の改善を達成することができる。改善は、疾患活性指数の改善、臨床症状の寛解又は疾患活性の任意の他の尺度によって示すことができる。該指標の例は、限定するものではないが、患者生存率、侵襲的換気中の患者の割合、非侵襲的又は侵襲的換気を必要としない患者の割合、肺線維症の定量的評価、換気装置なしの日数、集中治療室(ICU)外の日数、入院日数、抹消毛細血管酸素飽和度のベースラインからの変化、PaO2/FiO2のベースラインからの変化、疾患進行(NIAIDの8ポイント順序尺度スコアの≧2ポイント低下と定義されるか又は死亡)を有する患者の比率、NIAIDの8ポイント順序尺度スコアについて≧2ポイント改善する患者の比率、肺機能、eGFRのベースラインからの変化、血中尿素窒素、及び血清クレアチニン、及びEQ-5D-5Lによって測定されるHRQoLのベースラインからの変化である。
用語「治療有効量」は、処置を必要とする患者に投与すると処置を達成するのに十分な量を意味する。
【0020】
処置方法
ある一般的態様では、本出願は、それを必要とする患者の急性呼吸促迫症候群(ARDS)の処置方法であって、患者に医薬組成物を治療有効量で投与することを含み、この医薬組成物は、シクロデキストリンと、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩とを含む、方法に関する。
【化5】
【0021】
本発明の実施形態によれば、式(F-I)の化合物は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害薬としての活性を有する。(F-I)の化合物、その合成、生物活性、その使用又は他の関連情報は、例えば、参照することによりその内容全体をここに援用する2006年2月23日に公開された米国特許出願公開第US2006/0041000号に記載されている。さらに、式(F-I)の化合物を含む医薬組成物は、例えば、参照することによりその内容全体をここに援用する2018年2月22日に公開された国際米国特許出願公開第WO2018/035459号に記載されている。
投与毎の式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、治験で決定された安全/有効な投与及び/又は安全/有効な処置をもたらすように選択される。本発明の実施形態によれば、投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、投与毎に約50mg~約500mg、例えば、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、若しくは500mg、又は中間の任意の用量である。
好ましい実施形態では、投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、投与毎に約100mg~約300mg、例えば100mg、150mg、200mg、250mg、若しくは300mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日に約100mg~1日に約1000mg、例えば、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量の式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を与えるのに十分な量で被験者に投与される。
好ましい実施形態では、医薬組成物は、1日に約200mg~1日に約600mg、例えば、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量の式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を与えるのに十分な量で被験者に投与される。
【0022】
本発明の実施形態によれば、医薬組成物は、1日1回、1日2回、1日3回、1週間に1回、1週間に2回等投与され得る。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約1000mg、例えば、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約200mg~約600mg、例えば、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約1000mg、例えば、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約200mg~約600mg、例えば、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。
【0023】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、経口で又は経鼻胃管を介して投与される。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物の医薬的に許容される塩は、患者又は哺乳動物、例えばヒトへの投与が許容されている塩(例えば、所与の投与レジメンに容認できる哺乳動物安全性を有する塩)を意味する。代表的な医薬的に許容される塩としては、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、エジシル酸、フマル酸、ゲンチジン酸、グルコン酸、グルコロン酸、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オロト酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸及びキシナホ酸等の塩が挙げられる。
本発明の実施形態によれば、ARDSは、疾病又は傷害、例えばウイルス感染症、敗血症、有害物質の吸入、重症肺炎、膵炎、大量輸血、及び体の頭部、胸部又は他の領域への外傷によって引き起こされ得る。
好ましい実施形態では、ARDSはコロナウイルス、例えば重症急性呼吸器症候群(SARS)-CoV-1、中東呼吸器症候群(MERS)-CoV、及びSARS-CoV-2によって引き起こされる。
いくつかの実施形態では、患者は、COVID-19と診断される。
いくつかの実施形態では、方法は、臨床的に証明された安全な処置である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物の投与は、重篤有害作用をもたらさない。特定実施形態では、医薬組成物の投与は、有害作用をもたらさない。
いくつかの実施形態では、方法は、臨床的に証明された有効な処置である。
【0024】
別の一般的態様では、本出願は、それを必要とする患者の急性呼吸促迫症候群(ARDS)の処置方法であって、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を患者に投与することを含む方法に関する。
【化6】
【0025】
本発明の実施形態によれば、投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、投与毎に約50mg~約500mg、例えば、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、若しくは500mg、又は中間の任意の用量である。
好ましい実施形態では、投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、投与毎に約100mg~約300mg、例えば100mg、150mg、200mg、250mg、若しくは300mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約1000mg、例えば、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である。
好ましい実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約200mg~約600mg、例えば、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。
本発明の実施形態によれば、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日1回、1日2回、1日3回、1週間に1回、1週間に2回等投与され得る。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約1000mg、例えば、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約200mg~約600mg、例えば、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約1000mg、例えば、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約200mg~約600mg、例えば、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。
【0026】
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、経口で又は経鼻胃管を介して投与される。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物の医薬的に許容される塩は、患者又は哺乳動物、例えばヒトへの投与が許容されている塩(例えば、所与の投与レジメンに容認できる哺乳動物安全性を有する塩)を意味する。代表的な医薬的に許容される塩としては、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、エジシル酸、フマル酸、ゲンチジン酸、グルコン酸、グルコロン酸、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オロト酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸及びキシナホ酸等が挙げられる。
本発明の実施形態によれば、ARDSは、疾病又は傷害、例えばウイルス感染症、敗血症、有害物質の吸入、重症肺炎、膵炎、大量輸血、及び体の頭部、胸部又は他の領域への外傷によって引き起こされ得る。
好ましい実施形態では、ARDSはコロナウイルス、例えば重症急性呼吸器症候群(SARS)-CoV-1、中東呼吸器症候群(MERS)-CoV、及びSARS-CoV-2によって引き起こされる。
いくつかの実施形態では、患者は、COVID-19と診断される。
いくつかの実施形態では、方法は、臨床的に証明された安全な処置である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の投与は、重篤有害作用をもたらさない。特定実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の投与は、有害作用をもたらさない。
いくつかの実施形態では、方法は、臨床的に証明された有効な処置である。
【0027】
別の一般的態様では、本出願は、随伴性急性呼吸促迫症候群(ARDS)を有するCOVID-19患者の処置方法であって、患者に医薬組成物を治療有効量で投与することを含み、この医薬組成物は、シクロデキストリンと、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩とを含む、方法に関する。
【化7】
【0028】
本発明の実施形態によれば、投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、投与毎に約50mg~約500mg、例えば、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、若しくは500mg、又は中間の任意の用量である。
好ましい実施形態では、投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、投与毎に約100mg~約300mg、例えば、100mg、150mg、200mg、250mg、若しくは300mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日約100mg~1日約1000mg、例えば、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量の式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を与えるのに十分な量で被験者に投与される。
好ましい実施形態では、医薬組成物は、1日約200mg~1日約600mg、例えば、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量の式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を与えるのに十分な量で被験者に投与される。
【0029】
本発明の実施形態によれば、医薬組成物は、1日1回、1日2回、1日3回、1週間に1回、1週間に2回等投与され得る。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約1000mg、例えば、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約200mg~約600mg、例えば、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約1000mg、例えば、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約200mg~約600mg、例えば、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。
【0030】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、経口で又は経鼻胃管を介して投与される。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物の医薬的に許容される塩は、患者又は哺乳動物、例えばヒトへの投与が許容されている塩(例えば、所与の投与レジメンに容認できる哺乳動物安全性を有する塩)を意味する。代表的な医薬的に許容される塩としては、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、エジシル酸、フマル酸、ゲンチジン酸、グルコン酸、グルコロン酸、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オロト酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸及びキシナホ酸等の塩が挙げられる。
いくつかの実施形態では、方法は、臨床的に証明された安全な処置である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物の投与は、重篤有害作用をもたらさない。特定実施形態では、医薬組成物の投与は、有害作用をもたらさない。
いくつかの実施形態では、方法は、臨床的に証明された有効な処置である。
いくつかの実施形態では、患者は、重篤~危篤のCOVID-19と診断される。
いくつかの実施形態では、方法は、COVID-19を処置するための1種以上の追加の薬物又は処置を患者に投与することをさらに含む。追加の薬物又は処置には、COVID-19のための標準治療及び緊急使用許可(emergency use authorization )(EUA)薬物及び処置が含まれる。薬物の例としては、限定するものではないが、レムデシビル(ベクルリー)、デキサメタゾン、バムラニビマブ、カシリビマブ、イムデビマブ、及び抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体が挙げられる。処置の例としては、限定するものではないが、気管内挿管、機械的換気、補充酸素送達(supplemental oxygen delivery)、及び非侵襲的陽圧換気が挙げられる。
【0031】
別の一般的態様では、本出願は、随伴性急性呼吸促迫症候群(ARDS)を有するCOVID-19患者の処置方法であって、患者に式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を投与することを含む、方法に関する。
【化8】
【0032】
本発明の実施形態によれば、投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、投与毎に約50mg~約500mg、例えば、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、若しくは500mg、又は中間の任意の用量である。
好ましい実施形態では、投与毎に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、投与毎に約100mg~約300mg、例えば100mg、150mg、200mg、250mg、若しくは300mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約1000mg、例えば、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である。
好ましい実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約200mg~約600mg、例えば、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。
本発明の実施形態によれば、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日1回、1日2回、1日3回、1週間に1回、1週間に2回等投与され得る。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約1000mg、例えば、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である。
【0033】
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日1回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約200mg~約600mg、例えば、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約1000mg、例えば、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、若しくは1000mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、1日2回投与される。該実施形態では、1日に投与される式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約200mg~約600mg、例えば、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩は、経口で又は経鼻胃管を介して投与される。
【0034】
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物の医薬的に許容される塩は、患者又は哺乳動物、例えばヒトへの投与が許容されている塩(例えば、所与の投与レジメンに容認できる哺乳動物安全性を有する塩)を意味する。代表的な医薬的に許容される塩としては、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、エジシル酸、フマル酸、ゲンチジン酸、グルコン酸、グルコロン酸、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オロト酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸及びキシナホ酸等の塩が挙げられる。
いくつかの実施形態では、方法は、臨床的に証明された安全な処置である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の投与は、重篤有害作用をもたらさない。特定実施形態では、式(F-I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の投与は、有害作用をもたらさない。
いくつかの実施形態では、方法は、臨床的に証明された有効な処置である。
いくつかの実施形態では、患者は、重篤~危篤のCOVID-19と診断される。
いくつかの実施形態では、方法は、COVID-19を処置するための1種以上の追加の薬物又は処置を患者に投与することをさらに含む。追加の薬物又は処置には、COVID-19のための標準治療及び緊急使用許可(EUA)薬物及び処置が含まれる。薬物の例としては、限定するものではないが、レムデシビル(ベクルリー)、デキサメタゾン、バムラニビマブ、カシリビマブ、イムデビマブ、及び抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体が挙げられる。処置の例としては、限定するものではないが、気管内挿管、機械的換気、補充酸素送達及び非侵襲的陽圧換気が挙げられる。
【0035】
医薬組成物
本発明の実施形態によれば、本明細書で医薬組成物に用いるシクロデキストリンは、水溶性非置換又は置換αシクロデキストリン(ACD)、βシクロデキストリン(BCD)、又はγシクロデキストリン(GCD)である。いくつかの実施形態では、βシクロデキストリンは、メチルβシクロデキストリン(MBCD)、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(HPBCD)、及びスルホブチルエーテルβシクロデキストリン(SBEBCD)から成る群より選択される。いくつかの実施形態では、βシクロデキストリンは、メチルβシクロデキストリン又はヒドロキシプロピルβシクロデキストリンである。いくつかの実施形態では、γシクロデキストリンは、ヒドロキシプロピルγシクロデキストリン(HPGCD)である。1つの好ましい実施形態では、シクロデキストリンは、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(HPBCD)又はメチルβシクロデキストリン(MBCD)である。
【0036】
本発明の実施形態によれば、医薬組成物において、式(F-I)の化合物とシクロデキストリンのモル比は、1:0.1~1:300、好ましくは1:0.1~1:50、さらに好ましくは1:0.1~1:10である。
いくつかの実施形態では、式(F-I)の化合物とヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(HPBCD)は、非晶質固体分散系(ASD)の形態である。
本発明の実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、典型的に治療有効量の式(F-I)の化合物を含有する。しかしながら、医薬組成物が治療有効量より多い式(F-I)の化合物を含有することがあり、例えば、バルク組成物、又は治療有効量未満、例えば、治療有効量を達成するように複数の投与用にデザインされた個々の単位用量を含有し得ることを当業者なら認識するだろう。
典型的に、該医薬組成物は、質量で約0.1%~約95%の式(F-I)の化合物、例えば質量で約5%~約70%の式(F-I)の化合物を含有する。
【0037】
式(F-I)の化合物とシクロデキストリンを含む本発明の医薬組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含むことができる。
本明細書で使用する場合、用語「担体」は、いずれの賦形剤、希釈剤、緩衝液、安定剤、又は医薬製剤の技術で周知の他の物質をも指す。医薬的に許容される担体は特に無毒であり、かつ活性成分の有効性を妨害すべきでない。医薬的に許容される担体には、例えば、参照することによりその開示内容全体をここに援用する“Remington: The Science & Practice of Pharmacy”, 19th ed., Williams & Williams, (1995)、及び“Physician's Desk Reference”, 52nd ed., Medical Economics, Montvale, N.J. (1998)にリストアップされているように、医薬組成物に用いるのに適した技術上周知の賦形剤及び/又は添加剤が含まれる。本発明の医薬組成物にはいずれの従来の担体又は賦形剤を使用してもよい。
特定の担体若しくは賦形剤、又は担体若しくは賦形剤の組み合わせの選択は、特定の患者を処置するために使用される投与様式又は医学的形態若しくは疾患状態のタイプによって決まるだろう。この点に関して、特定の投与様式に適した医薬組成物の調製は、医薬品分野の当業者の十分範囲内である。さらに、本発明の医薬組成物に用いられる担体又は賦形剤は商業的に入手可能である。さらなる実例として、従来の製剤技術は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, Lippincott Williams & White, Baltimore, Maryland (2000);及びH.C. Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 7th Edition, Lippincott Williams & White, Baltimore, Maryland (1999)に記載されている。
【0038】
医薬的に許容される担体として働き得る材料の代表例としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;セルロース、例えば、微結晶性セルロース、及びその誘導体、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及び酢酸セルロース;トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばココアバター及び座薬ワックス;油、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油;グリコール、例えばプロピレングリコール;ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;及び医薬組成物に利用される無毒の他の適合性物質が挙げられる。
【0039】
本開示の医薬組成物は、好ましくは単位剤形で包装される。用語「単位剤形」は、患者に投与するのに適した物理的に別々の単位を指し、すなわち、各単位は、単独で又は1つ以上の追加単位と組み合わせて所望の治療効果をもたらすように計算された予め決められた量の活性薬を含有する。例えば、該単位剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤等、又は非経口投与に適した単位包装であってよい。
本発明の実施形態によれば、経口投与に適した医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、丸剤、ロゼンジ剤、カシェ剤、ドラジェ剤、散剤、顆粒剤;又は水性若しくは非水性液体中の溶液又は懸濁液として;又は水中油若しくは油中水液体エマルションとして;又はエリキシル剤若しくはシロップ剤として等の形態であり得、それぞれ予め定められた量の本開示の化合物を活性成分として含有する。
【0040】
固体剤形で(例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤等として)経口投与を意図するときは、医薬組成物は、典型的に活性薬(式(F-I)の化合物)と、シクロデキストリンと、1種以上の医薬的に許容される担体とを含むだろう。場合により、該固体剤形は、以下のものを含んでよい:フィラー又は増量剤、例えばデンプン、微結晶性セルロース、ラクトース、リン酸二カルシウム、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/又はケイ酸;結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び/又はアカシア;保水剤、例えばグリセロール;崩壊剤、例えばクロスカルメロースナトリウム、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプン若しくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び/又は炭酸ナトリウム;溶解遅延剤、例えばパラフィン;吸収促進剤、例えば四級アンモニウム化合物;湿潤剤、例えばセチルアルコール及び/又はモノステアリン酸グリセロール;吸収剤、例えばカオリン及び/又はベントナイト粘土;潤沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及び/又はこれらの混合物;着色剤;及び緩衝剤。
【0041】
離型剤、湿潤剤、コーティング剤、甘未剤、香味剤及び芳香剤、保存剤及び抗酸化剤が本開示の医薬組成物に存在することもできる。医薬的に許容される抗酸化剤の例としては、以下のものが挙げられる:水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等;油溶性抗酸化剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、αトコフェロール等;及び金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビトール、酒石酸、リン酸等。錠剤、カプセル剤、丸剤等のためのコーティング剤としては、腸溶コーティングのために用いられるもの、例えば酢酸フタル酸セルロース、ポリ酢酸ビニルフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、メタクリル酸、メタクリル酸エステルコポリマー、酢酸トリメリット酸セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
【0042】
例として、種々の割合でヒドロキシプロピルメチルセルロース;又は他のポリマーマトリックス、リポソーム及び/若しくはミクロスフェアを用いて活性薬の緩徐又は制御放出をもたらすように本発明の医薬組成物を製剤することもできる。さらに、本発明の医薬組成物は、場合により不透明化剤を含有することができ、それらは胃腸管の特定部分内で、場合により、遅延様式で活性成分のみ、又は活性成分を優先的に放出するように製剤してよい。使用できる包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスがある。また活性薬は、適宜、上記賦形剤の1種以上と共にマイクロカプセル化された形態であり得る。
経口投与に適した液体剤形としては、実例として、医薬的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ剤及びエリキシル剤が挙げられる。液体剤形は、典型的に活性薬と、不活性希釈剤、例えば、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、オレイン酸、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにこれらの混合物等とを含む。これとは別に、例えば、噴霧乾燥によって、特定の液体製剤を散剤に変換することができ、これを用いて従来の手順で固体剤形が調製される。
懸濁液は、活性成分に加えて、懸濁化剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天及びトラガント、並びにこれらの混合物を含有し得る。
本発明の実施形態によれば、医薬組成物は、経鼻胃管を介して投与され得る。該実施形態では、固体剤形は、開かれる(カプセル剤及び丸剤)か又は散剤に粉砕され(錠剤)てから、液体中溶液の懸濁液として供給され、この液体剤形は、そのまま供給されるか又は別の液体と共に供給される。
【実施例
【0043】
例1:急性肺傷害(ALI)モデルにおいてリポ多糖(LPS)誘導マウスに及ぼす、経口投与した(F-I)の化合物の効果
LPS誘導マウスALIモデルで治療有効性について(F-I)の化合物を評価した。この研究では、2.5%のイソフルラン吸入で動物を麻酔した。LPSを用いて、直接気管内注射により50μl中3mg/kgの用量でALIを引き起こした。シャム動物については、等体積の生理食塩水を気管に直接注入した。LPS注入後、異なる単一経口用量及び異なる治療時点で、試験物質である式(F-I)の化合物を投与した。この研究では雄性C57BL/6マウス(n=100)を使用した。ポジティブコントロールとしてDEXを用いた。動物をランダムに10個の群に分割した。表1に投与レジメンを示す。注入後24時間で、全ての動物を安楽死させ、両側の肺からの気管支肺胞洗浄(BAL)液収集及び肺組織病理学研究のホルマリン固定のために処理した。
【0044】
表1. ALIモデルについての群評価及び投与レジメン
【表1】
【0045】
データは、BAL液中の総炎症細胞の有意なLPS誘導増加を示した(図1A~1B)。ほとんどの炎症細胞は好中球だった。ALI後4時間及び8時間におけるDEX処置は、ビヒクル群に比べてBAL液中の総炎症細胞(図1A)及び好中球(図1B)の有意な減少を有した。ALI後8時間におけるDEX処置は、ALI後4時間におけるより良好だった。ALI後4時間及び8時間における式(F-I)の化合物の処置は、全ての3処置群においてビヒクル群に比べてBAL液中の総炎症細胞及び好中球の用量依存性減少という明らかな傾向を有した。ALI後8時間における式(F-I)の化合物の処置は、ALI後4時間におけるより良い効果だった。10mg/kgの用量での式(F-I)の化合物の処置がBAL液分析では最良の有効性を示した。
ALI後24時間における肺組織評価(図2)は、ALI後全ての異なる時間及び異なる用量でのDEX及び(F-I)の化合物処置による、気管支、細動脈(図4)及び肺胞(図5)損傷を含めた全肺傷害(図3)の低減を示した。ALI後8時間におけるDEX処置は、ALI後4時間におけるDEX処置に比べてずっと良い有効性を示した。ALI後8時間における式(F-I)の化合物の処置は、ALI後4時間における式(F-I)の化合物の処置に比べて良い有効性を示した。ALI後4時間又は8時間におけるどちらの投与でも明白な用量依存性肺組織保護はなかった。
結論として、ALI後4時間又は8時間における式(F-I)の化合物の処置は、経口胃管栄養法を経て、より少ない量(1mg/kg)でも有意な治療有効性を示し、ALI後8時間における投与は、ALI後4時間におけるよりわずかに良かった。10mg/kgでの式(F-I)の化合物の有効性は、ALI後4時間及び8時間でより良好だった。
【0046】
例2:随伴性急性呼吸促迫症候群(ARDS)を有する重篤~危篤のCOVID-19患者における(F-I)の化合物の有効性及び安全性を評価するための臨床研究
この臨床研究は、フェーズ2/3、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、多施設研究である。この研究の目的は、随伴性急性呼吸促迫症候群(ARDS)を有する重篤~危篤のCOVID-19患者における(F-I)の化合物の有効性及び安全性を評価することである。
目的
主目的:
1)随伴性ARDSを有する重篤~危篤のCOVID-19成人患者において、COVID-19のための標準治療処置との併用時に、プラセボと比較した式(F-I)の化合物の有効性を評価すること;及び
2)随伴性ARDSを有する重篤~危篤のCOVID-19成人患者における式(F-I)の化合物の安全性及び忍容性を評価すること。
【0047】
副次的目的:
1)COVID-19のための標準治療処置との併用時に、COVID-19及び入院アウトカムに関する国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)の8ポイント順序尺度の経時変化によって測定される急性COVID-19アウトカムを改善する際に、プラセボと比較した式(F-I)の化合物の有効性を評価すること;
2)COVID-19のための標準治療処置との併用時に、定量的高分解能非造影コンピュータ断層撮影(CT)スキャンによって判定される肺線維症を減少させるか又は予防する際に、プラセボと比較した式(F-I)の化合物の有効性を評価すること;
3)COVID-19のための標準治療処置との併用時に、肺機能試験に及ぼす、プラセボと比較した式(F-I)の化合物の効果を評価すること;
4)COVID-19のための標準治療処置との併用時に、EuroQoL5次元質問票(Five Dimension Questionnaire)(EQ-5D-5L)を用いるCOVID-19後の健康関連の生活の質(health-related quality of life)(HRQoL)に及ぼす、プラセボと比較した式(F-I)の化合物の長期効果を評価すること;
5)随伴性ARDSを有する重篤~危篤のCOVID-19成人患者の腎機能に及ぼす、プラセボと比較した式(F-I)の化合物の長期効果を評価すること;及び
6)随伴性ARDSを有する重篤~危篤のCOVID-19成人患者における式(F-I)の化合物の薬物動態(PK)を評価すること。
予備的目的:
1)COVID-19のための標準治療処置との併用時に、血中の炎症バイオマーカー及び線維症バイオマーカーに及ぼす、プラセボと比較した式(F-I)の化合物の効果を評価すること。
【0048】
母集団
この研究の母集団には、随伴性ARDSを有する重篤~危篤のCOVID-19と診断された≧18歳の男性又は女性患者が含まれる。
研究のデザイン及び持続期間
これは、随伴性ARDSを有する重篤~危篤のCOVID-19成人患者における式(F-I)の化合物の有効性及び安全性を評価するためのフェーズ2/3、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、多施設研究である。各フェーズ(フェーズ2及びフェーズ3)の患者が別々に分析される。
各フェーズは、約60日の総研究持続期間にわたるスクリーニング訪問、処置期間、及びフォローアップ期間から成る。
【0049】
フェーズ2
適格性の確認後、約99名の患者が、28日間にわたって式(F-I)の化合物100mgを毎日2回(BID)若しくは300mgをBID、又はプラセボをBID受けるように1:1:1比でランダム化される。フェーズ2の間に、ランダム化された患者は、ランダム化時の侵襲的機械的換気の使用(イエス又はノー)によって階層化される。処置の利益を異なる重症度レベルの患者について確実に評価できるように、患者の少なくとも3分の1は、侵襲的機械的換気状態であるべきである。
機械的換気のための標準治療手順(例えば、少ない一回呼吸量の保護的機械的換気)及び機械的換気離脱(weaning)のための標準治療手順は、以下のとおりである。
ランダム化後の日1(訪問2)に研究薬物投与が始まる。全ての患者は、研究薬物に加えてCOVID-19のための標準治療及び/又はEUA処置を受ける。患者は、日28まで研究薬物処置BIDを続ける。日28前に患者が退院する場合、患者は、外来患者として自宅で、自分が割り当てられた処置(式(F-I)の化合物100mg BID若しくは300mg BID、又はプラセボBID)を日28まで続ける。退院前に投与説明書が提供される。入院患者と外来患者で処置は同一であるが、退院した患者は、遠隔医療訪問を特徴する異なる手順スケジュールに従う。日28の処置最後(End of Treatment)(EOT)の訪問は、全ての患者で同一であり(侵襲的又は非侵襲的換気状態の患者だけに行われる動脈酸素分圧[PaO2]/吸入酸素濃度(fractional inspired oxygen)[FiO2]比を除く)、他の評価に加えて、高分解能非造影CTスキャンを含む。
処置の完了後、全ての患者は、フォローアップ期間中に2つのフォローアップ評価を受ける。第1のフォローアップは、日45に同時投薬、有害事象(AE)、並びにCOVID-19及び入院アウトカムスコアに関するNIAIDの8ポイント順序尺度を評価するための電話訪問である。第2のフォローアップは、日60の対面訪問であり、他の評価に加えて、高分解能非造影CTスキャン及び肺機能試験を含む。
フェーズ3
フェーズ2の一次解析の結果に基づいて、フェーズ3に進めるために1つの至適用量が選択される。至適用量が選択されたら、研究がフェーズ3に進行し得る。患者は、28日間、式(F-I)の化合物又はプラセボを受けるように1:1比でランダム化される。フェーズ2についてと同様の手順が続けられる。
【0050】
剤形及び投与経路
(F-I)の化合物は、経口カプセル剤(カプセル中の非晶質固体分散系)として1カプセル当たり50mgの用量強度(dose strength)で投与される。カプセル剤は、質量で25%の式(F-I)の化合物と75%のヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(HPBCD)とから成る。カプセル剤は、経口で又は経鼻胃管を介して(カプセル剤を開けてオレンジジュース中の懸濁液として供給することによって)投与される。
フェーズ2の間、患者は、日1(訪問2)に開始して、28日間、式(F-I)の化合物100mg BID若しくは300mg BID、又はプラセボBIDを受けるように1:1:1比でランダム化される。各用量群の患者は、各投与期間中に以下のように全部で6個のカプセル剤を受けることになる:
・(F-I)の化合物100mg BID:2個の50mgカプセル剤及び4個のプラセボカプセル剤;
・(F-I)の化合物300mg BID:6個の50mgカプセル剤;及び
・プラセボ:6個のプラセボカプセル剤。
フェーズ2の一次解析の結果に基づいて、フェーズ3に進めるために1つの至適用量が選択され、患者は、28日間、式(F-I)の化合物又はプラセボを受けるように1:1比でランダム化される。腎機能障害については用量調整が行われない。
【0051】
有効性エンドポイント
事象によって定義される全てのエンドポイントに関して、時点はランダム化後の日数として定義される。
主要有効性エンドポイントは、各用量(フェーズ2)又は至適用量(フェーズ3)の式(F-I)の化合物を用いて、日28に生きていて非侵襲的又は侵襲的換気を必要としない(すなわち、高流量鼻カニューレ、非侵襲的陽圧換気、侵襲的機械的換気、又はECMOを受けていない)患者のプラセボと比較した比率である。
重要な副次的有効性エンドポイントには、各用量(フェーズ2)又は至適用量(フェーズ3)の式(F-I)の化合物を用いて、プラセボと比較した以下のものが含まれる:
・日28に侵襲的機械的換気状態の患者の比率;
・日28に生きている患者の比率;
・日60に生きていて非侵襲的又は侵襲的換気を必要としない(すなわち、高流量鼻カニューレ、非侵襲的陽圧換気、侵襲的機械的換気、又はECMOを受けていない)患者の比率;
・日60に侵襲的機械的換気状態の患者の比率;及び
・日60に生きている患者の比率。
【0052】
他の副次的有効性エンドポイントには、各用量(フェーズ2)又は至適用量(フェーズ3)の式(F-I)の化合物を用いて、プラセボと比較した以下のものが含まれる:
・日28及び日60における高分解能非造影CTスキャンを用いた肺線維症の定量的評価:
・機械的換気状態でランダム化された患者であって、日28及び日60に侵襲的機械的換気のない患者の比率;
・日28及び日60における換気のない日(すなわち、侵襲的機械的換気のない日)の数;
・日28及び日60における集中治療室(ICU)外の日数;
・日28及び日60における入院日数;
・日28及び日60における抹消毛細血管酸素飽和度のベースラインからの変化;
・日28及び日60におけるPaO2/FiO2比のベースラインからの変化(侵襲的又は侵襲的換気状態の患者のみ);
・日28及び日60に生きていて入院していない患者の比率;
・日28及び日60に疾患進行(NIAIDの8ポイント順序尺度スコアの≧2ポイント低下と定義されるか又は死亡)を有する患者の比率;
・NIAIDの8ポイント順序尺度スコアを日28に≧2ポイント改善する患者の比率及び日60に≧2ポイント改善する患者の比率;
・日28(研究者の判断によって患者の臨床状態に基づいて可能な限り)及び日60(全ての患者)における下記スコアに基いた肺機能:
○努力肺活量(Forced vital capacity)(FVC);
〇努力呼気1秒量(Forced expiratory volume in 1 second)(FEV1);
○FEV1/FVC比;及び
○一酸化炭素に対する肺の拡散能力;
・日28及び日60におけるeGFR、血中尿素窒素、及び血清クレアチニンのベースラインからの変化;及び
・日28及び日60におけるEQ-5D-5Lによって測定されるHRQoLのベースラインからの変化。
【0053】
予備的エンドポイントには、各用量(フェーズ2)又は至適用量(フェーズ3)の式(F-I)の化合物を用いて、日7、日14、日28、及び日60における肺炎症、線維症及び/又は肺傷害に関連するバイオマーカーの、プラセボと比較したベースライン(日1の投与前)からの変化が含まれ、バイオマーカーとしては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:
・MMP-12、MMP-7、及びMMP-9;
・トランスフォーミング増殖因子β;
・結合組織増殖因子;
・C反応性タンパク質(CRP);
・サイトカイン(インターフェロンγ、腫瘍壊死因子α、インターロイキン[IL]-6、L-1β、C-Cモチーフケモカインリガンド2[単単球走化性タンパク質-1]);
・フェリチン;
・III型コラーゲンの遊離N末端プロペプチド;
・IV型コラーゲンの7Sドメインの内部エピトープ;
・VI型コラーゲンα3鎖の遊離C5ドメインのC末端(エンドトロフィン(endotrophin));
・I型コラーゲンのMMP-2、MMP-9、及びMMP-13媒介分解のネオエピトープ;
・IV型コラーゲンのMMP-2、MMP-9、及びMMP-12媒介分解のネオエピトープ;
・VI型コラーゲンのMMP-2媒介分解のネオエピトープ;
・CRPのMMP-1及びMMP-8媒介分解のネオエピトープ;及び
・架橋化フィブリンのプラスミン媒介分解のネオエピトープ。
ここにはリストアップしないさらなるバイオマーカーが将来評価される可能性がある。
【0054】
薬物動態学的エンドポイント
PKエンドポイントは、各用量レベルにおける式(F-I)の化合物の血漿曝露である。サンプリング時間は以下のとおりである:
・日1(訪問2):投与前、朝の投与後1時間(±10分)、3時間(±10分)、及び8時間(±10分);
・日4、日7、日14、及び日21:朝の投与前1時間(±10分)以内;及び
・日28:朝の投与前1時間(±10分)以内及び朝の投与後1時間(±10分)以内。
【0055】
有効性評価
動脈酸素分圧/吸入酸素濃度比
侵襲的又は非侵襲的換気状態の患者についてだけ、動脈血ガスを介して得られるPaO2を用いてPaO2/FiO2比が計算される。
肺機能試験
デザインされた時間に肺機能試験(PFT)が行われる。PFTには、FVC、FEV1、FEV1/FVC比、及び一酸化炭素に対する肺の拡散能力の測定が含まれる。
コンピュータ断層撮影スキャン
肺線維症について評価するためにデザインされた時間に高分解能非造影CTスキャンを行なわれる。CTスキャンは、低減線量(すなわち、合計6mSv)の単一収集で得られる。研究適格性のためだけにはスクリーニング訪問時に高分解能非造影CTスキャンの代わりに胸部X線写真を使用できる。
【0056】
炎症及び線維症のバイオマーカー解析
デザインされた時間にバイオマーカー解析が行われる。バイオマーカーとしては、限定するものではないが、血中のMMP-12、MMP-7、MMP-9、TGFβ、結合組織増殖因子、CRP、サイトカイン(IFNγ、TNFα、IL-6、IL-1β、及びC-Cモチーフケモカインリガンド2[単球走化性タンパク質-1])、フェリチンレベル、III型コラーゲンの遊離N末端プロペプチド、IV型コラーゲンの7Sドメインの内部エピトープ、VI型コラーゲンα3鎖の遊離C5ドメインのC末端(エンドトロフィン)、I型コラーゲンのMMP-2、MMP-9、及びMMP-13媒介分解のネオエピトープ、IV型コラーゲンのMMP-2、MMP-9、及びMMP-12媒介分解のネオエピトープ、VI型コラーゲンのMMP-2媒介分解のネオエピトープ、CRPのMMP-1及びMMP-8媒介分解のネオエピトープ、並びに架橋化フィブリンのプラスミン媒介分解のネオエピトープの評価が挙げられる。
手順に同意した患者から血液が採取される。検査室取扱説明書によって血液サンプルが収集され、解析される。サンプルは、将来の解析のために中央検査室に貯蔵され得る。
国立アレルギー・感染症研究所の8ポイント順序尺度
NIAIDの8ポイント順序尺度スコアは、デザインされた時間に評価される。
EuroQoL 5次元質問票
デザインされた時間にEQ-5D-5Lを用いてHRQoLが評価される。病歴の値に基づいて患者を登録したらCOVID-19症状の発生前に可能な限り速やかにベースラインEQ-5D-5Lを収集すべきである。
【0057】
他の評価
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2検査
スクリーニング訪問時にSARS-CoV-2検査を行うことができる。患者は、本研究に含めるべき現在の入院直前又は該入院中に、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(又は等価検査)によって決定される文書化された検査室確証SARS-CoV-2感染を有しなければならない。
安全性エンドポイント
安全性エンドポイントには、以下のものが含まれる:
・有害事象(AE)及び重篤有害事象AE(SAE);
・臨床検査室評価(臨床化学、組織学、及び尿検査を含めて);
・バイタルサイン;
・身体検査;及び
・12誘導心電図(ECG)。
研究薬物の最初の投与時(日1[訪問2])から研究の最後(日60)までAEが監視及び記録される。研究薬物の最初の投与前に生じている全ての事象が病歴として記録される。
研究の最後(日60)に進行中のいずれのSAEも、SAEが沈静するまで又は状態が本質的に慢性化するまで、患者がCOVID-19のための代替処置を始めるまで、状態が安定するまで(持続的障害の場合)、又は患者が死亡するまで研究者によって追跡される。
患者の根底にあるCOVID-19診断の進行という事象が有効性エンドポイントとしてキャプチャーされるので、これらの事象は、研究薬物若しくは研究手順に関連するとみなされない限り、又はアウトカムが研究中に致命的であり、かつ安全性報告期間内である場合、AE又はASEとして報告する必要がない。さらに、機械的換気を有するICU環境下で処置されたARDSを有する患者の毎日の治療において妥当な頻度で起こると研究者によって認知されるARDSについて予想される事象は、AEとして報告されない。ARDSの経過中に予想される事象の例としては、一過性低酸素血症、激越、せん妄等が挙げられる。標準ICU治療の一部として予防努力の中心になることが多い該事象は、この事象が、研究者によって研究薬物若しくは研究手順と関連するとみなされない限り、又は予想外に重篤若しくは高頻度でない限り、又はARDSを有する個々の患者にとって重症度の変化でない限り、報告すべきAEとみなされない。
【0058】
安全性評価
AEは、医薬品を投与された臨床治験患者におけるいずれもの有害な医学的出来事と定義されるが、必ずしもこの処置と因果関係を有しない。従って、AEは、治験医薬品との関係の有無に係わらず、治験医薬品の使用と時間的に関連するいずれの望ましくない及び/若しくは意図されない徴候(異常な検査室知見を含めて)、症状、又は疾患でもあり得る。全てのAEは、観察されたか又は自発的に提供された問題、病訴、又は症状を含め、適切なeCRFに記録されることになる。
AE又は有害反応は、研究者又はスポンサーのどちらかの視点で、それが下記アウトカムのいずれかをもたらす場合に重篤とみなされる:
・死亡;
・生命を脅かすAE;
・入院又は現在の入院期間の延長を必要とする;
・持続的若しくは顕著な身体障害/無能又は正常な生活機能を果たす能力の実質的崩壊;
・先天異常/出生時欠損;又は
・重要な医学的事象。
【0059】
統計解析
研究薬物を中断する患者は、安全性及び有効性評価を行うため研究に留まる。研究時に観察されたデータは、いずれの介入事象にも関係なく解析のために使用される。評価時点(日28又は日60)前に死亡するか又は有効性の欠如のため処置を中断し、この時点で決定された臨床状態を有し得ない患者は、処置失敗とみなされる。
主要有効性エンドポイントに関して、論理的回帰モデル(Guo Y, Wu V, Li X, et al. PharmaSUG China 1st Conference. 2012; Ge M, Durham LK, Meyer RD, et al. Ther. Innov. Regul. Sci. 2011;45(4):481-493による)を用いて、対応する95%信頼区間及びp値と共に応答率の処置群差が提供され、層別因子について調整される(ランダム化時の侵襲的機械的換気の使用[イエス又はノー])。さらなる予後徴候のベースライン共変数(例えば、年齢、地域、肥満度指数)を共変数/因子としてモデルに追加して、比率の差異の評価の精度を高めることができる。
主要解析のための方法と同じ方法を用いて重要な副次的エンドポイントを解析される。
主要エンドポイント及び重要な副次的エンドポイントの結果の頑強性を評価するための感度解析として転換点(Tipping point)法が利用されるだろう。
PKデータが要約される。
受けた実際の処置によって、かつ選ばれた解析/要約について全体として、安全性母集団に基づいて、安全性データが要約される。これには以下のものが含まれる。
・AE及びSAE;
・臨床検査室評価(臨床化学、血液学、及び尿検査を含めて);
・バイタルサイン;
・身体検査;及び
・12誘導ECG。
【0060】
上記実施形態に、その広範な発明概念を逸脱することなく、変更を加えることができることが当業者なら分かるだろう。従って、本発明は、開示した特定の実施形態に限定されないが、具体的記述によって定義される本発明の精神及び範囲内の修正を包含するよう意図される。
図1A
図1B
図2A-J】
図3
図4
図5
【国際調査報告】