(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】MMP-12阻害薬の安全な投与
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4178 20060101AFI20240517BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240517BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240517BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20240517BHJP
A61K 9/48 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
A61K31/4178
A61P11/06
A61P11/00
A61P37/06
A61K47/40
A61K9/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575950
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 US2022072790
(87)【国際公開番号】W WO2022261624
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522191369
【氏名又は名称】フォアシー ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100202603
【氏名又は名称】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】リー ユーフア
(72)【発明者】
【氏名】チエン ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC07
4C076CC15
4C076EE39
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086GA02
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA06
4C086NA11
4C086ZA59
4C086ZB08
(57)【要約】
マトリックスメタロプロテイナーゼ12(MMP-12)阻害薬を経口投与によって安全に投与する方法を記述する。また、MMP-12阻害薬の経口投与によって、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、又は肺線維症の臨床的に証明された安全な処置を提供する方法を記述する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】
の化合物又はその医薬的に許容される塩を、それを必要とするヒト被験者に安全に投与する方法であって、式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩と、シクロデキストリンとを含む医薬組成物を前記被験者に経口投与することを含み、投与される前記式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、投与毎に約25mg~約600mgである、
前記方法。
【請求項2】
投与毎に投与される前記式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記医薬組成物が、1日1回又は1日2回経口投与される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記医薬組成物が1日2回経口投与され、かつ投与毎に投与される前記式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記医薬組成物が、1日2回経口投与され、かつ1日に投与される前記式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、若しくは1200mg、又は中間の任意の用量である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記医薬組成物の投与が重篤有害作用をもたらさない、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記重篤有害作用が、重症の疲労、アレルギー反応、及び関節痛から成る群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記医薬組成物の投与が、研究室評価、バイタルサイン又は心電図(ECG)に、投与前ベースラインからの臨床的に有意な変化をもたらさない、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記医薬組成物が1日1回経口投与され、かつ前記医薬組成物の投与が、前記被験者の血漿中で、約1680ng.hr/mL~約26000ng.hr/mLである、時間0から無限大まで外挿した濃度時間曲線下平均面積(AUC
0-inf)を達成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記医薬組成物が1日1回経口投与され、かつ前記医薬組成物の投与が、前記被験者の血漿中で、約2570ng/mL以下の平均最大観察濃度(C
max )を達成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記医薬組成物が1日1回経口投与され、かつ前記医薬組成物の投与が、約6時間~約7時間、好ましくは約6.2時間~約6.9時間の平均終末相消失半減期(T
1/2)を達成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記医薬組成物が1日1回経口投与され、かつ前記医薬組成物の投与が、約1時間~約6時間、好ましくは約1時間~約3時間の最大血漿中濃度到達時間(T
max)を達成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記医薬組成物が1日1回経口投与され、かつ前記医薬組成物の投与が、約17.9L/h~約31.8L/hである、見掛けの全身クリアランス(CL/F)の平均を達成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記医薬組成物が1日1回経口投与され、かつ前記医薬組成物の投与が、約169L~約253Lである、見掛けの分布容積(V
z/F)の平均を達成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記医薬組成物が1日2回経口投与され、かつ前記医薬組成物の投与が、前記被験者の血漿中で、約3550ng.hr/mL~約36300ng.hr/mLである、時間0から無限大まで外挿した濃度時間曲線下平均面積(AUC
0-inf)を達成する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記医薬組成物が1日2回経口投与され、かつ前記医薬組成物の投与が、前記被験者の血漿中で、約3710ng/mL以下の平均最大観察濃度(C
max )を達成する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記医薬組成物が1日2回経口投与され、かつ前記医薬組成物の投与が、前記被験者の血漿中で、6日以内に式(I)の化合物の定常状態条件を達成する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記医薬組成物が1日2回経口投与され、かつ前記医薬組成物の投与が、約6時間~約9時間、好ましくは約6.6時間~約8.4時間の平均終末相消失半減期(T
1/2)を達成する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記医薬組成物が1日2回経口投与され、かつ前記医薬組成物の投与が、約0.5時間~約6時間、好ましくは約1時間~約3時間の最大血漿中濃度到達時間(T
max)を達成する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記医薬組成物が1日2回経口投与され、かつ前記医薬組成物の投与が、約16.2L/h~約23.1L/hである、見掛けの全身クリアランス(CL/F)の平均を達成する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記医薬組成物が1日2回経口投与され、かつ前記医薬組成物の投与が、約158L~約291Lである、見掛けの分布容積(V
z/F)の平均を達成する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ヒト被験者が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び肺線維症から成る群より選択される疾患の処置を必要としている、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
それを必要とするヒト被験者の疾患の処置方法であって、シクロデキストリンと、下記式(I):
【化2】
の化合物又はその医薬的に許容される塩とを含む医薬組成物を前記被験者に経口投与することを含み、投与される前記式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、投与毎に約25mg~約600mgであり、かつ前記疾患が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び肺線維症から成る群より選択される、前記方法。
【請求項24】
投与毎に投与される前記式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記医薬組成物が、1日1回又は1日2回経口投与される、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記医薬組成物が1日2回経口投与され、かつ投与毎に投与される前記式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記医薬組成物が1日2回経口投与され、かつ1日に投与される前記式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、若しくは1200mg、又は中間の任意の用量である、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が前記式(I)の化合物を含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記式(I)の化合物が非晶質である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記シクロデキストリンがヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(HPBCD)である、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
記式(I)の化合物と前記シクロデキストリンの質量比が、1:1~1:10である、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本出願は、マトリックスメタロプロテイナーゼ12(MMP-12)阻害薬を安全に投与する方法並びにマトリックスメタロプロテイナーゼ12(MMP-12)阻害薬の経口投与によって、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び肺線維症の臨床的に証明された安全な処置を提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)は、20を超える亜鉛依存性プロテアーゼのファミリーを構成し、広範な生物活性を示す。分類として、MMPは、構造的類似性を示し、共通の基質のアレイを共有するが、個々のMMPは、それらの環境によって決まる別個の機能を有する。
MMPファミリーの中で、MMP-12は、主に肺胞マクロファージ内で検出されるマクロファージエラスターゼである。その上、MMP-12は、気管支上皮細胞及び気道平滑筋細胞によって産生される。動物及びヒトの両方で、このプロテアーゼは、2型炎症のみならず、全ライフサイクル中にエラスチンを代謝回転するその能力を通じた組織リモデリングに関与する。累積証拠が慢性炎症性気道疾患の病態生理におけるMMP-12の関与を示唆した。喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び/又は肺線維症を有する患者では、気道リモデリングの程度及び/又は疾患重症度が、遺伝子発現、局所的気道濃度、及び/又はMMP-12の活性と相関する。
喘息、COPD、及び肺線維症は、世界中で流行性の肺障害である。それらは気道構築における気流閉塞及び変化を特徴とする。従って、重篤有害作用なしでMMP-12阻害薬の効果を及ぼすMMP-12阻害薬果による新しい処置を提供することが望ましいだろう。特に、喘息、COPD、及び肺線維症の処置のため、経口投与できるMMP-12阻害薬を用いて、最小の有害作用で治療に適切な曝露を達成することが望ましいだろう。
【発明の概要】
【0003】
概要
本願では、喘息、COPD、又は肺線維症の臨床的に証明された安全な処置を含むMMP-12阻害薬の被験者への安全な投与方法を開示する。
ある一般的態様では、本願に記載の方法は、下記式(I):
【化1】
の化合物又はその医薬的に許容される塩を、それを必要とするヒト被験者に安全に投与する方法であって、式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩と、シクロデキストリンとを含む医薬組成物を被験者に経口投与することを含む、方法である。
【0004】
いくつかの実施形態では、投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、投与毎に約25mg~約600mgである。
いくつかの実施形態では、投与毎に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回、1日2回、又は1日3回経口投与される。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回経口投与される。該実施形態では、1日に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日2回経口投与される。該実施形態では、投与毎に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物が1日2回経口投与されるとき、1日に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、若しくは1200mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日3回経口投与される。該実施形態では、投与毎に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物が1日3回経口投与されるとき、1日に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約150mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600、1700mg、若しくは1800mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物の投与は、重篤有害作用をもたらさない。特定実施形態では、重篤有害作用は、重症の疲労、アレルギー反応、及び関節痛を含む。
いくつかの実施形態では、医薬組成物の投与は、研究室評価、バイタルサイン又は心電図(ECG)に、投与前ベースラインからの臨床的に有意な変化をもたらさない。
いくつかの実施形態では、ヒト被験者は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、又は肺線維症の処置を必要としている。
【0005】
別の一般的態様では、本発明は、それを必要とするヒト被験者の疾患の処置方法であって、シクロデキストリンと、下記式(I):
【化2】
又はその医薬的に許容される塩とを含む医薬組成物を被験者に経口投与することを含み、投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、投与毎に約25mg~約600mgであり、かつ疾患が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び肺線維症から成る群より選択される、方法に関する。
【0006】
いくつかの実施形態では、処置は、臨床的に証明された安全な処置である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回、1日2回、又は1日3回経口投与される。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回経口投与される。該実施形態では、医薬組成物は、1日約25mg、1日50mg、1日100mg、1日200mg、1日300mg、1日400mg、1日500mg、又は1日600mgの式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を与えるのに十分な量で被験者に投与される。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日2回経口投与される。該実施形態では、医薬組成物は、1日約100mg、1日200mg、1日300mg、1日400mg、1日500mg、1日600mg、1日700mg、1日800mg、1日900mg、1日1000mg、1日1100mg、又は1日1200mgの式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を与えるのに十分な量で1日2回被験者に投与される。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日3回投与される。該実施形態では、医薬組成物は、1日約150mg、1日200mg、1日300mg、1日400mg、1日500mg、1日600mg、1日700mg、1日800mg、1日900mg、1日1000mg、1日1100mg、1日1200mg、1日1300mg、1日1400mg、1日1500mg、1日1600mg、1日1700mg、又は1日1800mgの式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を与えるのに十分な量で1日3回被験者に投与される。
下記説明に本発明の1つ以上の実施形態の詳細を示す。他の特徴及び利点は、下記詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかだろう。
図面の簡単な説明
本発明の前述の概要、並びに下記詳細な説明は、添付図面と併せて読むと、より良く分かるだろう。本発明は、図面に示す正確な実施形態に限定されないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】式(I)の化合物を用いる単一漸増用量に関する臨床研究の研究デザインのダイアグラム表示を示す。
【
図2】単一漸増研究における用量に対する式(I)の化合物の最大血漿中濃度(C
max)を示す。
【
図3】単一漸増研究における用量に対する式(I)の化合物の血漿中濃度曲線下面積(AUC
t)を示す。
【
図4】式(I)の化合物を用いる複数漸増用量及び食物効果パートに関する臨床研究の研究デザインのダイアグラム表示を示す。
【
図5A】複数漸増用量研究における日1の時間に対する式(I)の化合物の平均血漿中濃度を示す。
【
図5B】複数漸増用量研究における日8の時間に対する式(I)の化合物の平均血漿中濃度を示す。
【
図6】食物効果研究における時間に対する式(I)の化合物の平均血漿中濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
背景において及び本明細書全体を通して種々の出版物、論文及び特許が引用され;これらの各参考文献は、参照することによりその内容全体がここに組み込まれる。本明細書に含めた文書、行為、材料、装置、論文等の考察は、本発明に文脈を与える目的のためである。該考察は、これらの事項のいずれか又はすべてが、開示又はクレームしたいずれかの発明に関する先行技術の一部を形成することを認めるものではない。
別段の定義がない限り、本願で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。さもなければ、本願で使用する特定の用語は、本明細書に明記するとおりの意味を有する。本明細書で引用される全ての特許、公開された特許出願及び出版物は、参照することによりあたかも全体的に明記されたかのように本明細書に組み込まれる。
【0009】
定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、複数の言及が含まれることに注意しなければならない。
本明細書で使用する場合、数値又は一連の数値に先行する用語「約」は、別段の指示がない限り、数値の±10%を意味する。例えば、「約100mg」は、90~110mgを意味する。
別段の指示がない限り、一連の要素に先行する用語「少なくとも」は、一連のあらゆる要素を指すものと理解すべきである。当業者は、ただ日常の実験法を利用するだけで、本明細書に記載の発明の具体的実施形態に対する多くの等価物を認識するか又は確認する能力があるだろう。該等価物は、本発明に包含されるよう意図される。
本明細書及び下記特許請求の範囲全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、語「含む(comprise)」、及び「comprises」や「comprising」等の変形は、明言された整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を含めるが、いずれの他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群をも除外しない意味であると理解される。本明細書で使用するとき、用語「含む(comprising)」は用語「含有する(containing)」又は「含める(including)」と置き換えることができ、或いは本明細書で使用するときには「有する(having)」と置き換えることができることもある。
本明細書で使用するとき、「から成る(consisting of)」は、クレーム要素に規定されていないいずれの要素、ステップ、又は成分をも除外する。本明細書で使用するとき、「から本質的に成る(consisting essentially of)」は、クレームの基本的及び新規の特徴に実質的に影響を与えない材料又はステップを除外しない。上述の用語「含む」、「含有する」、「含める」、及び「有する」のいずれも、本発明の態様又は実施形態の文脈で本明細書で使用されるときはいつでも、用語「から成る」又は「から本質的に成る」と交換して開示の範囲を変えることができる。
【0010】
本明細書で使用する場合、複数の列挙要素間の結合用語「及び/又は」は、個々の選択肢と組み合わせた選択肢の両方を包含すると理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」で結合されている場合、第1の選択肢は、第2の要素なしで第1の要素を適用することを指す。第2の選択肢は、第1の要素なしで第2の要素を適用することを指す。第3の選択肢は、第1の要素と第2の要素を一緒に適用することを指す。これらの選択肢のいずれの選択肢も意味の範囲に入り、ひいては本明細書で用いる用語「及び/又は」の要件を満たすものと理解される。1つより多くの選択肢の同時適用も意味の範囲に入り、ひいては用語「及び/又は」の要件を満たすものと理解される。
本明細書で使用する場合、特段の記載がない限り、用語「臨床的に証明された」(独立に又は用語「安全な」を修飾するために使用される)は、それがヒト被験者の臨床研究であって、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)、欧州医薬品審査庁(European Medicines Evaluation Agency)(EMEA)又は対応する国家規制庁(national regulatory agency)の承認基準を満たした臨床研究によって証明されたことを意味するものとする。本出願の一実施形態では、臨床研究は、健康ヒト被験者における、MMP-12阻害薬である式(I)の化合物のファーストインヒューマン、フェーズI、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、単一漸増用量研究である。本出願の別の実施形態では、臨床研究は、健康ヒト被験者における式(I)の化合物のフェーズI、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、複数漸増用量及び食物効果研究である。
【0011】
本明細書で使用する場合、表現「有害事象(AE)」、「処置下で発現した有害事象」、「有害反応」、及び「有害作用」は、医薬組成物又は治療薬の投与と関連するか又は該投与によって引き起こされるいずれの有害な、好ましくない、意図されない又は望まれない徴候又はアウトカムをも意味する。しかしながら、異常な値又は知見は、研究者又は医師によって臨床的に有意とみなされない限り、有害事象として報告されない。
本明細書で使用する場合、表現「重篤有害事象(SAE)」及び「重篤有害作用」は、食品医薬品局(FDA)の連邦規制基準(Code of Federal Regulations)(CFR)、21章によって定義される重篤であるいずれの有害事象をも意味する。SAEは、研究者又は医師の視点で、下記アウトカムのいずれかをもたらすいずれのAE又は疑われる有害反応でもあり得る:死亡、生命を脅かす有害事象、入院患者の入院又は現存入院期間の延長、持続的若しくは顕著な無能又は正常な生活機能を果たす能力の実質的な崩壊、又は先天異常/出生時欠損。死をもたらすか、生命を脅かすか、又は入院を必要とする可能性のない重要な医学的事象は、適切な医学的判断に基づいて、それらが患者又は被験者を危うくする可能性があり、上記定義で列挙したアウトカムの1つを予防するために医学的又は外科的処置を必要とし得るときに重篤とみなされる可能性がある。このような医学的事象の例としては、限定するものではないが、重症の疲労、アレルギー反応、及び関節痛が挙げられる。
【0012】
MMP-12阻害薬の投与の安全性評価を指すときに本明細書で使用する場合、「臨床的に有意な変化」は、当業者に受け入れられる基準を用いて医師又は研究者によって判断される臨床的に明白な変化を意味する。有害事象の被害又は望ましくないアウトカムがこのような重症度レベルに達すると、規制庁は、その医薬組成物又は治療薬を提唱用途に容認できないとみなすことができる。このような変化は、身体検査、例えば呼吸器、心血管、及び胃腸管系の検査;研究室評価、例えば血液学、血液化学、尿検査、ウイルス血清学、尿薬物スクリーニング検査、アルコール呼気検査、コチニン検査、卵胞刺激ホルモン(FSH)及び尿妊娠検査;バイタルサイン、例えば体温、呼吸数、血圧及び心拍数;及び心電図(ECG)モニタリング、例えば12誘導安全性ECG等によって測定可能である。
【0013】
本明細書で使用する場合、「処置」又は「処置する」は、患者、例えば哺乳動物(特にヒト)の疾患、障害、又は医学的状態(例えば胃腸の炎症性疾患)の処置を指し、下記の1つ以上を含む:
(a)疾患、障害、又は医学的状態が生じないようにすること、すなわち、該疾患若しくは医学的状態の再発を予防すること又は該疾患若しくは医学的状態に罹りやすい患者の予防処置;
(b)疾患、障害、又は医学的状態を改善すること、すなわち、他の治療薬の効果を相殺することを含め、患者の疾患、障害、又は医学的状態を排除するか又は退縮させること;
(c)疾患、障害、又は医学的状態を抑制すること、すなわち、患者の疾患、障害、又は医学的状態の発症を遅くするか又は停止させること;又は
(d)患者の疾患、障害、又は医学的状態の症状を軽減すること。
【0014】
本明細書において用量、投与レジメン、処置又は方法の文脈で用いる用語「効力」及び「有効な」は、特定の用量、投与レジメン又は処置レジメンの有効性を指す。効力は、疾患の経過中に本発明の薬剤に応じた変化に基づいて測定することができる。例えば、式(I)の化合物は、処置している障害の重症度を反映する少なくとも1つの指標の改善、好ましくは持続的改善を誘導するのに十分な量で十分な時間にわたって被験者に投与することができる。処置の量及び時間が十分かどうかを判断するために被験者の疾病、疾患又は状態の程度を反映する種々の指標を評価することができる。該指標としては、例えば、疾患の重症度、症状、又は問題になっている障害の顕在化の臨床的に認められた指標が挙げられる。改善の程度は、一般的に、徴候、症状、生検、又は他の試験結果に基づいてこの判断を下すことができ、かつ被験者に与えられる質問票、例えば所与の疾患のために展開された生活の質の質問票を利用することもできる医師によって決定される。例えば、式(I)の化合物を投与して、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、又は肺線維症に関連する被験者の状態の改善を達成することができる。
用語「治療有効量」は、処置を必要とする患者に投与するときに処置を達成するのに十分な量を意味する。
【0015】
安全な投与方法
ある一般的態様では、本発明は、下記式(I):
【化3】
の化合物又はその医薬的に許容される塩を、それを必要とするヒト被験者に安全に投与する方法であって、式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩と、シクロデキストリンとを含む医薬組成物を被験者に経口投与することを含む方法に関する。
【0016】
本発明の実施形態によれば、式(I)の化合物はMMP-12阻害薬としての活性を有する。式(I)の化合物、その合成、生物活性、使用又はその他の関連情報は、例えば、参照することによりその内容全体をここに援用する2006年2月23日に公開された米国特許出願公開第US2006/0041000号に記載されている。さらに、式(I)の化合物を含む医薬組成物は、例えば、参照することによりその内容全体をここに援用する2018年2月22日に公開された国際特許出願公開第WO2018/035459号に記載されている。
投与毎の式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、臨床試験で決定される安全/有効な投与及び/又は安全/有効な処置をもたらすように選択される。本発明の実施形態によれば、投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、投与毎に約25mg~約600mg、例えば、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。
好ましい実施形態では、投与毎に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約50mg~約450mg、例えば、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、若しくは450mg、又は中間の任意の用量である。
別の好ましい実施形態では、投与毎に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約400mg、例えば、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、若しくは400mg、又は中間の任意の用量である。
【0017】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日に約25mg~1日に約1800mg、例えば、25mg、50mg、75mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、若しくは1800mg、又は中間の任意の用量の式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を与えるのに十分な量で被験者に投与される。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日約100mg~1日約1200mg、例えば、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、若しくは1200mg、又は中間の任意の用量の式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を与えるのに十分な量で被験者に投与される。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日約150mg~1日約1800mg、例えば、150mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600、1700mg、若しくは1800mg、又は中間の任意の用量の式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を与えるのに十分な量で被験者に投与される。
【0018】
本発明の実施形態によれば、医薬組成物を1日1回、1日2回、1日3回、1週間に1回、2週間に2回など投与することができる。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回経口投与される。該実施形態では、1日に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約25mg~約600mg、例えば、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回経口投与される。該実施形態では、1日に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約50mg~約450mg、例えば、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日2回経口投与される。該実施形態では、投与毎に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約50mg~約600mg、例えば、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日2回経口投与される。該実施形態では、投与毎に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約400mg、例えば、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、若しくは400mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日2回経口投与される。該実施形態では、1日に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約1200mg、例えば、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、若しくは1200mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日2回経口投与される。該実施形態では、1日に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約200mg~約800mg、例えば、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、若しくは800mg、又は中間の任意の用量である。
【0019】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日3回経口投与される。該実施形態では、投与毎に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約50mg~約600mg、例えば、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日3回経口投与される。該実施形態では、投与毎に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約400mg、例えば、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、若しくは400mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日3回経口投与される。該実施形態では、1日に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約150mg~約1800mg、例えば、150mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600、1700mg、若しくは1800mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日3回経口投与される。該実施形態では、1日に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約300mg~約1200mg、例えば、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、若しくは1200mg、又は中間の任意の用量である。
【0020】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の医薬的に許容される塩は、患者又は哺乳動物、例えばヒトへの投与が許容されている塩(例えば、所与の投与レジメンに容認できる哺乳動物安全性を有する塩)を意味する。代表的な医薬的に許容される塩としては、限定するものではないが、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、エジシル酸、フマル酸、ゲンチジン酸、グルコン酸、グルコロン酸、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オロト酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸及びキシナホ酸等の塩が挙げられる。
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は非晶質である。
【0021】
いくつかの実施形態では、医薬組成物の投与は重篤有害作用をもたらさない。特定実施形態では、重篤有害作用は、重症の疲労、アレルギー反応、又は関節痛である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物の投与は、研究室評価、バイタルサイン又は心電図(ECG)に、投与前ベースラインからの臨床的に有意な変化をもたらさない。
特定実施形態では、研究室評価は、血液学、血液化学、尿検査、ウイルス血清学、尿薬物スクリーニング検査、アルコール呼気検査、コチニン検査、卵胞刺激ホルモン(FSH)及び尿妊娠検査から成る群より選択される。
特定実施形態では、バイタルサインは、心拍数、体温、座位収縮期血圧(SBP)、座位拡張期血圧(DBP)、立位SBP、及び立位DBPから成る群より選択される。
特定実施形態では、ECGは、安全性12誘導心電図である。
本発明の実施形態によれば、臨床試験、例えば上述したものによって種々の因子を分析して、特定用量の式(I)の化合物が安全な経口投与をもたらすかどうか判断することができる。例えば、ある特定用量の経口投与されたMMP-12阻害薬の安全性は薬物動態研究(例えば、濃度時間曲線下面積(AUC)、及び最大観察濃度(Cmax))によって評価することができる。経口投与されたMMP-12阻害薬の安全性は、被験者の身体検査;アレルギー反応;心電図;臨床研究室試験;バイタルサイン;及び他の有害事象のモニタリングによって監視することもできる。
【0022】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の臨床的に証明された安全な投与は、被験者の血漿中の阻害薬の薬物動態(PK)パラメーター、例えば濃度時間曲線下面積(AUC)、及び最大観察濃度(Cmax)によって判断される。本開示を考慮して技術上周知のいずれかの方法で血漿サンプルを分析して阻害薬の濃度が決定される。次に薬物動態パラメーターを例えば、ノンコンパートメント解析(NCA)より分析して薬物動態パラメーター、例えばAUC、Cmax、終末相半減期(T1/2)、バイオアベイラビリティーに関する全身クリアランス(total systemic clearance over bioavailability)(CL/F)及びバイオアベイラビリティーに関する終末相分布容積(volume of distribution at terminal phase over bioavailability)(Vz/F)が計算される。特に、AUCは、時間0~12時間時点の濃度時間曲線下面積(AUC0-12)、時間0~24時間時点の濃度時間曲線下面積(AUC0-24)、時間0から無限大まで外挿した濃度時間曲線下面積(AUC0-inf)、時間0から最後の非ゼロ観察濃度時間(t)までの濃度時間曲線下面積(AUC0-t)、定常状態での投与間隔(τ)中の濃度時間曲線下面積(AUC0-τ)、又は時間0から定常状態での最後の非ゼロ観察濃度時間(t)までの濃度時間曲線下面積(AUCss0-t)であり得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、約25mg~約600mgの式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を与えるのに十分な量での医薬組成物の単回投与は、被験者の血漿中で、約1680ng.hr/mL~約26000ng.hr/mLである、時間0から無限大まで外挿した濃度時間曲線下平均面積(AUC0-inf)を達成する。
いくつかの実施形態では、約25mg~約600mgの式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を与えるのに十分な量での医薬組成物の単回投与は、被験者の血漿中で、1580ng.hr/mL~約25400ng.hr/mLである、時間0から最後の非ゼロ観察濃度時間(t)までの濃度時間曲線下平均面積(AUC0-t)を達成する。
いくつかの実施形態では、約25mg~約600mgの式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を与えるのに十分な量での医薬組成物の単回投与は、被験者の血漿中で、約2570ng/mL以下の平均最大観察濃度(Cmax)を達成する。
いくつかの実施形態では、医薬組成物の単回投与は、約1時間~約6時間、好ましくは約1時間~約3時間の最大血漿中濃度到達時間(Tmax)を達成する。
いくつかの実施形態では、医薬組成物の単回投与は、約6時間~約7時間、好ましくは約6.2時間~約6.9時間の平均終末相消失半減期(T1/2)を達成する。
いくつかの実施形態では、医薬組成物の単回投与は、約17.9L/h~約31.8L/hである見掛けの全身クリアランス(apparent total clearance)(CL/F)の平均を達成する。
いくつかの実施形態では、医薬組成物の単回投与は、約169L~約253Lである見掛けの分布容積(apparent volume of distribution)(Vz/F)の平均を達成する。
【0024】
いくつかの実施形態では、医薬組成物が1日2回経口投与され、かつ投与毎に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が約50mg~約600mgであるとき、医薬組成物の投与は、被験者の血漿中で、約3550ng.hr/mL~約36300ng.hr/mLである、時間0から無限大まで外挿した濃度時間曲線下平均面積(AUC0-inf)の平均を達成する。
いくつかの実施形態では、医薬組成物が1日2回経口投与され、かつ投与毎に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が約50mg~約600mgであるとき、医薬組成物の投与は、被験者の血漿中で、約3710ng/mL以下の平均最大観察濃度(Cmax)を達成する。
いくつかの実施形態では、医薬組成物が1日2回経口投与されるとき、医薬組成物の投与は、約0.5時間~約6時間、好ましくは約1時間~約3時間の最大血漿中濃度到達時間(Tmax)を達成する。
いくつかの実施形態では、医薬組成物が1日2回経口投与されるとき、医薬組成物の投与は、投与後6日以内に式(I)の化合物の定常状態条件を達成する。
いくつかの実施形態では、医薬組成物が1日2回経口投与されるとき、医薬組成物の投与は、約6時間~約9時間、好ましくは約6.6時間~約8.4時間である平均終末相消失半減期(T1/2)を達成する。
いくつかの実施形態では、医薬組成物が1日2回経口投与されるとき、医薬組成物の投与は、約16.2L/h~約23.1L/hである見掛けの全身クリアランス(CL/F)の平均を達成する。
いくつかの実施形態では、医薬組成物が1日2回経口投与されるとき、医薬組成物の投与は、約158L~約291Lである見掛けの分布容積(Vz/F)の平均を達成する。
いくつかの実施形態では、ヒト被験者は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び肺線維症から成る群より選択される疾患の処置を必要としている。
【0025】
別の一般的態様では、本発明は、それを必要とするヒト被験者の疾患の処置方法であって、シクロデキストリンと下記式(I):
【化4】
の化合物又はその医薬的に許容される塩とを含む医薬組成物を被験者に経口投与することを含み、投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量が、投与毎に約25mg~約600mgであり、かつ疾患が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び肺線維症から成る群より選択される、方法に関する。
【0026】
好ましい実施形態では、投与毎に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約50mg~約450mg、例えば、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、若しくは450mg、又は中間の任意の用量である。
別の好ましい実施形態では、投与毎に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約400mg、例えば、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、若しくは400mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、処置は、臨床的に証明された安全な処置である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回、1日2回、又は1日3回経口投与される。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日1回経口投与される。該実施形態では、医薬組成物は、1日約25mg~1日約600mg、例えば、1日約25mg、1日50mg、1日100mg、1日200mg、1日300mg、1日400mg、1日500mg、若しくは1日600mg、又は中間の任意の用量の式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を与えるのに十分な量で被験者に投与される。特定実施形態では、医薬組成物は、1日約50mg~1日約450mg、例えば、1日50mg、1日100mg、1日150mg、1日200mg、1日250mg、1日300mg、1日350mg、1日400mg、若しくは1日450mg、又は中間の任意の用量の式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を与えるのに十分な量で被験者に投与される。
【0027】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日2回経口投与される。該実施形態では、投与毎に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約50mg~約600mg、例えば、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。特定実施形態では、投与毎に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約400mg、例えば、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、若しくは400mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日2回経口投与される。該実施形態では、医薬組成物は、1日約100mg~1日約1200mg、例えば、1日100mg、1日200mg、1日300mg、1日400mg、1日500mg、1日600mg、1日700mg、1日800mg、1日900mg、1日1000mg、1日1100mg、若しくは1日1200mg、又は中間の任意の用量の式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を与えるのに十分な量で1日2回被験者に投与される。特定実施形態では、医薬組成物は、1日約200mg~1日約800mg、例えば、1日200mg、1日300mg、1日400mg、1日500mg、1日600mg、1日700mg、若しくは1日800mg、又は中間の任意の用量の式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を与えるのに十分な量で1日2回被験者に投与される。
【0028】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日3回経口投与される。該実施形態では、投与毎に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約50mg~約600mg、例えば、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、若しくは600mg、又は中間の任意の用量である。特定実施形態では、投与毎に投与される式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の総用量は、約100mg~約400mg、例えば、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、若しくは400mg、又は中間の任意の用量である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1日3回経口投与される。該実施形態では、医薬組成物は、1日に約150mg~1日に約1800mg、例えば、1日150mg、1日200mg、1日300mg、1日400mg、1日500mg、1日600mg、1日700mg、1日800mg、1日900mg、1日1000mg、1日1100mg、1日1200mg、1日1300mg、1日1400mg、1日1500mg、1日1600mg、1日1700mg、若しくは1日1800mg、又は中間の任意の用量の式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を与えるのに十分な量で1日3回被験者に投与される。特定実施形態では、医薬組成物は、1日に約300mg~1日に約1200mg、例えば、1日300mg、1日400mg、1日500mg、1日600mg、1日700mg、1日800mg、1日900mg、1日1000mg、1日1100mg、若しくは1日1200mg、又は中間の任意の用量の式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を与えるのに十分な量で1日3回被験者に投与される。
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、非晶質形で存在する。
【0029】
医薬組成物
本発明の実施形態によれば、本明細書で医薬組成物に用いるシクロデキストリンは、水溶性非置換又は置換αシクロデキストリン(ACD)、βシクロデキストリン(BCD)、又はγシクロデキストリン(GCD)である。いくつかの実施形態では、βシクロデキストリンは、メチルβシクロデキストリン(MBCD)、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(HPBCD)、及びスルホブチルエーテルβシクロデキストリン(SBEBCD)から成る群より選択される。いくつかの実施形態では、βシクロデキストリンは、メチルβシクロデキストリン又はヒドロキシプロピルβシクロデキストリンである。いくつかの実施形態では、γシクロデキストリンは、ヒドロキシプロピルγシクロデキストリン(HPGCD)である。1つの好ましい実施形態では、シクロデキストリンは、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(HPBCD)又はメチルβシクロデキストリン(MBCD)である。
【0030】
本発明の実施形態によれば、医薬組成物において、式(I)の化合物とシクロデキストリンの質量比は、1:1~1:300、好ましくは1:1~1:50、さらに好ましくは1:1~1:10である。
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物とヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(HPBCD)の質量比は、1:1~1:300、好ましくは1:1~1:50、さらに好ましくは1:1~1:10である。
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物とヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(HPBCD)は、非晶質固体分散系(ASD)の形態である。
本発明の実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、典型的に治療有効量の式(I)の化合物を含有する。しかしながら、医薬組成物が治療有効量より多い式(I)の化合物を含有することがあり、例えば、バルク組成物、又は治療有効量未満、例えば、治療有効量を達成するように複数投与用にデザインされた個々の単位用量を含有し得ることを当業者なら認識するだろう。
典型的に、該医薬組成物は、質量で約0.1%~約95%の式(I)の化合物、例えば質量で約5%~約70%の式(I)の化合物を含有する。
【0031】
式(I)の化合物とシクロデキストリンとを含む本発明の医薬組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含むことができる。
本明細書で使用する場合、用語「担体」は、いずれの賦形剤、希釈剤、緩衝液、安定剤、又は医薬製剤の技術で周知の他の物質をも指す。医薬的に許容される担体は特に無毒であり、かつ活性成分の有効性を妨害すべきでない。医薬的に許容される担体には、例えば、参照することによりその開示内容全体をここに援用する“Remington: The Science & Practice of Pharmacy”, 19th ed., Williams & Williams, (1995)、及び“Physician's Desk Reference”, 52nd ed., Medical Economics, Montvale, N.J. (1998)にリストアップされているように、医薬組成物に用いるのに適した技術上周知の賦形剤及び/又は添加剤が含まれる。本発明の医薬組成物にはいずれの従来の担体又は賦形剤を使用してもよい。
特定の担体若しくは賦形剤、又は担体若しくは賦形剤の組み合わせの選択は、特定の患者を処置するために使用される投与様式又は医学的状態若しくは疾患状態のタイプによって決まるだろう。この点に関して、特定の投与様式に適した医薬組成物の調製は、医薬品分野の当業者の十分範囲内である。さらに、本発明の医薬組成物に用いられる担体又は賦形剤は商業的に入手可能である。さらなる実例として、従来の製剤技術は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, Lippincott Williams & White, Baltimore, Maryland (2000);及びH.C. Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 7th Edition, Lippincott Williams & White, Baltimore, Maryland (1999)に記載されている。
【0032】
医薬的に許容される担体として働き得る材料の代表例としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;セルロース、例えば、微結晶性セルロース、及びその誘導体、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及び酢酸セルロース;トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばココアバター及び座薬ワックス;油、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油;グリコール、例えばプロピレングリコール;ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;及び医薬組成物に利用される無毒の他の適合性物質が挙げられる。
【0033】
本開示の医薬組成物は、好ましくは単位剤形で包装される。用語「単位剤形」は、患者に投与するのに適した物理的に別々の単位を指し、すなわち、各単位は、単独で又は1つ以上の追加単位と組み合わせて所望の治療効果をもたらすように計算された予め決められた量の活性薬を含有する。例えば、該単位剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤等、又は非経口投与に適した単位包装であってよい。
本発明の実施形態によれば、経口投与に適した医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、丸剤、ロゼンジ剤、カシェ剤、ドラジェ剤、散剤、顆粒剤;又は水性若しくは非水性液体中の溶液又は懸濁液として;又は水中油若しくは油中水液体エマルションとして;又はエリキシル剤若しくはシロップ剤として等の形態であり得、それぞれ予め定められた量の本開示の化合物を活性成分として含有する。
【0034】
固体剤形で(例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤等として)経口投与を意図するときは、医薬組成物は、典型的に活性薬(式(I)の化合物)と、シクロデキストリンと、1種以上の医薬的に許容される担体をと含むだろう。場合により、該固体剤形は、以下のものを含んでよい:フィラー又は増量剤、例えばデンプン、微結晶性セルロース、ラクトース、リン酸二カルシウム、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/又はケイ酸;結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び/又はアカシア;保水剤、例えばグリセロール;崩壊剤、例えばクロスカルメロースナトリウム、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプン若しくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び/又は炭酸ナトリウム;溶解遅延剤、例えばパラフィン;吸収促進剤、例えば四級アンモニウム化合物;湿潤剤、例えばセチルアルコール及び/又はモノステアリン酸グリセロール;吸収剤、例えばカオリン及び/又はベントナイト粘土;潤沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及び/又はこれらの混合物;着色剤;及び緩衝剤。
【0035】
離型剤、湿潤剤、コーティング剤、甘未剤、香味剤及び芳香剤、保存剤及び抗酸化剤が本開示の医薬組成物に存在することもできる。医薬的に許容される抗酸化剤の例としては、以下のものが挙げられる:水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等;油溶性抗酸化剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、αトコフェロール等;及び金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビトール、酒石酸、リン酸等。錠剤、カプセル剤、丸剤等のためのコーティング剤としては、腸溶コーティングのために用いられるもの、例えば酢酸フタル酸セルロース、ポリ酢酸ビニルフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、メタクリル酸、メタクリル酸エステルコポリマー、酢酸トリメリット酸セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
【0036】
例として、種々の割合でヒドロキシプロピルメチルセルロース;又は他のポリマーマトリックス、リポソーム及び/若しくはミクロスフェアを用いて活性薬の緩徐又は制御放出をもたらすように本発明の医薬組成物を製剤することもできる。さらに、本発明の医薬組成物は、場合により不透明化剤を含有することができ、それらは胃腸管の特定部分内で、場合により、遅延様式で活性成分のみ、又は活性成分を優先的に放出するように製剤してよい。使用できる包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスがある。また活性薬は、適宜、上記賦形剤の1種以上と共にマイクロカプセル化された形態であり得る。
経口投与に適した液体剤形としては、実例として、医薬的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ剤及びエリキシル剤が挙げられる。液体剤形は、典型的に活性薬と、不活性希釈剤、例えば、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、オレイン酸、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにこれらの混合物等とを含む。これとは別に、例えば、噴霧乾燥によって、特定の液体製剤を散剤に変換することができ、これを用いて従来の手順で固体剤形が調製される。
懸濁液は、活性成分に加えて、懸濁化剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天及びトラガント、並びにこれらの混合物を含有し得る。
本発明の実施形態によれば、医薬組成物は、経鼻胃管を介して投与され得る。該実施形態では、固体剤形は、開かれる(カプセル剤及び丸剤)か又は散剤に粉砕され(錠剤)てから、液体中溶液の懸濁液として供給され、この液体剤形は、そのまま供給されるか又は別の液体と共に供給される。
【実施例】
【0037】
例1:研究I:健康被験者における式(I)の化合物のフェーズ1、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、単一漸増用量研究
この臨床床研究は、Taipei Veterans General Hospital, Taipei, Taiwanで行われた式(I)の化合物のファーストインヒューマン(first in human)研究だった。この研究の目的は、健康被験者における単一漸増用量投与によって式(I)の化合物の安全性、忍容性及び薬物動態(PK)を評価することだった。
方法及び被験者
被験者
適格参加者は、18歳と65歳の間の年齢の健康な男性であり、病歴並びに身体、バイタルサイン、研究室及び心電図(ECG)検査により判断して全般的に良好な心身の健康状態であった。他の組入れ基準は、18kg/m2と30kg/m2の間の肥満度指数、50拍動/分と100拍動/分の間の安静時脈拍数及び収縮期血圧≦140mmHgかつ拡張期血圧≦90mmHgの安静時血圧から成った。男性被験者は、研究中及び研究完了後3カ月まで適切な避妊を行わなければならなかった。主要な除外基準は、アルコール若しくは薬物乱用の歴史、又は現在喫煙者であるか、若しくは他のニコチン製品を使用している;初回投与前2週間以内(又はいずれかの摂取薬物の組入れ前5半減期以内、どちらか長い方)のいずれかの処方薬若しくは非処方薬、薬草剤、ビタミン、又はミネラルの使用;又はB型若しくはC型肝炎ウイルス、又はヒト免疫不全ウイルスについての陽性試験、又は450ミリ秒超のQT間隔(Bazett補正後のECG検査による)から成った。
【0038】
単一漸増用量(SAD)
それぞれ8名の被験者(活性薬に6名及びプラセボに2名)の8つのコホートを登録した。式(I)の化合物の2種の異なる経口製剤を試験した。初期製剤は経口カプセルに詰めた式(I)の化合物の純粋な医薬品有効成分(active pharmaceutical ingredient)(API)(カプセル中API)で、3つの用量レベル:200mg、400mg、及び800mgで試験した。その後、改良経口製剤、すなわち式(I)の化合物の非晶質固体分散系(ASD)(カプセル中ASD)を5つの用量レベル:50mg、100mg、200mg、350mg、及び450mgで試験した(
図1)。
カプセル中APIコホート:200mg、400mg、及び800mg。
カプセル中ASDコホート:50mg、100mg、200mg、350mg、及び450mg。
研究薬
ASDは、米国特許第10,532,102号の実施例6に記載の手順に従って調製した。ASDは質量で25%の式(I)の化合物及び75%のヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(HPBCD)から成った。この研究では、釣り合う用量のプラセボカプセル剤をも試験した。
【0039】
研究評価
安全性及び忍容性の評価
研究全体を通して事前に決められた時点でAE報告、バイタルサイン測定、身体検査、研究室試験、及びECG検査によって安全性及び忍容性を評価した。
薬物動態評価
各単一用量後0.5、1、2、3、4、6、8、12、16、20、24、及び36時間で式(I)の化合物の血漿中濃度のための血液サンプル(6mL/サンプル)を採取した。収集後15分以内に、血液サンプルを2000rpmで10分間4℃で遠心分離させ、その後に、血漿を等分し、凍結させ、PK解析まで-70℃で貯蔵した。
サンプルを液体クロマトグラフィーに掛けた後、タンデム質量分析法で解析した。式(I)の化合物の定量化の下限は5ng/mLだった。
血漿PKパラメーターは、Phoenix(登録商標)WinNonlin(登録商標)バージョン6.3以上(Pharsight Corporation Inc., Mountain View, CA, USA)を用いてノンコンパートメント解析(non-compartmental analyses)により誘導した。算術平均、標準偏差、メジアン、最小、最大、変動係数パーセント、幾何平均、及び算術平均と幾何平均の両側95%信頼区間限界を用いてPK変量を要約した。
【0040】
統計手法
処置母集団(少なくとも1用量の研究薬物を摂取した全ての参加者)について安全性及び忍容性データを評価した。PK解析は、少なくとも1つのPKパラメーターを計算することができ、かつこれらの評価を妨げる可能性のあるいずれのプロトコル違反をも侵さなかった処置参加者からのデータに基づいた。記述統計学を用いて安全性及び忍容性データを評価し、式(I)の化合物の血漿中濃度及びPKパラメーターについて評価した。
サンプルサイズの正式な計算は行わなかった。記述研究の性質に基づいて、各コホートに登録された参加者数は、これらのフェーズI研究の目的を達成し、PKパラメーターの評価を可能にするのに十分とみなされた。
式(I)の化合物のPKプロファイルに関する食物効果の評価のために、分散分析(ANOVA)モデルに、SAS(登録商標)混合モデル手法を用いて固定効果として順序、処置、及び期間並びにランダム効果として順序内でネスト化された被験者を含めた。各ANOVAには最小二乗平均値(LSM)、絶食状態(Reference)と比較した食後状態(Test)のLSM間の差異、及びこの差異に伴う標準誤差の計算を含めた。
各時点で、数値パラメーターによって平均、メジアン、標準偏差、最小、最大、利用可能知見数、及びベースラインからの変化を要約した。
【0041】
結果及び考察
被験者の素質及び盲検化
この研究では、88名の男性被験者をスクリーニングし、64名をランダム化した(
図1)。全ての被験者が研究を完了した。全体的に、異なる用量レベルの被験者は、年齢、体重、身長及びBMI分布に関して類似していた(表1)。
【0042】
表1 SADに関与する被験者の人口統計学的特徴及びベースラインの特徴
【表1】
注:規定のない限り、データは平均(標準偏差)で提示してある。
API=医薬品有効成分;ASD=非晶質固体分散系。
【0043】
安全性結果
全ての報告されたAEは自己限定的であり、軽強度であるとみなされた。重症又は重篤のAEは報告されなかった。AEのために研究を中断した被験者はいなかった。任意の時点での式(I)の化合物の投与後の体重、バイタルサイン、身体検査、研究室又はECGデータにベースライン評価からの臨床的に関連する変化は観察されなかった。
SAD研究中に1つだけ関連する可能性のあるAEが報告された(表2)。このAE、軽度の下痢は、1名の被験者がカプセル中API-カプセル800mg投与後に経験し、フォローアップ訪問前に自然に回復した。
【0044】
表2:SAD中に報告された薬物投与に関連する可能性のある有害事象
【表2】
注:API=医薬品有効成分;ASD=非晶質固体分散系。
【0045】
薬物動態結果
カプセル中APIコホートでは、メジアンT
maxが200及び400mg用量については類似、すなわち、それぞれ5時間及び6時間だったが、一方で800mg用量についてはメジアンT
maxが短く現れた(3.5時間)。200~400mgの用量範囲にわたっては平均C
max、AUC
0-t、及びAUC
0-infは用量比例様式を超えて増加したが、以降は用量に伴って減少した(表3、
図2及び
図3)。一般的に、カプセル中API製剤を用いると、式(I)の化合物の曝露が低く、実質的な被験者間変動と一致しなかった。
【0046】
表3:SAD後の式(I)の化合物の薬物動態パラメーター
【表3】
注:データは、メジアン(範囲)で報告しているT
maxを除き算術平均(標準偏差)である。
いくつかのパラメーターでは総数が3未満だったので標準偏差を計算しなかった。
API=医薬品有効成分;ASD=非晶質固体分散系;AUC
0-t=時間ゼロから時間tまでの最小測定可能濃度からのAUC;AUC
0-inf=時間ゼロから無限大までのAUC;C
max=観察された最大血漿中濃度;CL/F=見掛けの全身クリアランス;T
1/2=見掛けの終末相消失半減期;T
max=最大血漿中濃度到達時間;V
z/F=見掛けの総分布容積;λz=終末相消失速度定数。
【0047】
対照的に、カプセル中ASDコホートでは、メジアンT
maxは50~450mgの用量範囲にわたって単一用量の摂取後1~2.5時間の範囲だった。平均C
max、AUC
0-t及びAUC
0-infは、50~100mgの間の用量範囲にわたって用量比例様式を超えて増加した。薬物曝露(平均C
max、AUC
0-t、及びAUC
0-inf)は、式(I)の化合物の単一用量の摂取後100から450mgまでほぼ用量比例様式で増加した(表3、
図2及び
図3)。式(I)の化合物の単一用量後100~450mgの用量範囲にわたってC
max、AUC
0-t、及びAUC
0-infについて用量比例性が見られた。
【0048】
結論
式(I)の化合物のこの非晶質形態のユニークな特徴は、それがカプセル中APIに比べて顕著にバイオアベイラビリティーを上昇させるのみならず、API自体によって設定される曝露飽和を破壊することである。これはかなり驚くべきことで、完全に予想外である。典型的に、曝露飽和のため、より多量のAPIを単に投与するだけでは、同一のバイオアベイラビリティーを達成できるだけなので、カプセル中API製剤では、AUCが約1380ng.h/mLの点でプログラムを停止しなければならないことになる(
図3参照)。しかしながら、本発明のカプセル中ASD製剤を使用すると、カプセル中ASD製剤で、ずっと高いAUC、すなわち25000ng.h/mLのAUCが、ある程度線形様式で達成された(
図2及び
図3)。
T
1/2の平均値は、式(I)の化合物の単一経口用量後50~450mgの範囲にわたって投与された用量に依存しなかった。式(I)の化合物の見掛けの全身クリアランス(CL/F)の平均及び見掛けの分布容積(V
z/F)の平均は、100~350mgの範囲にわたって投与された用量に依存しなかった。
式(I)の化合物の曝露は、低溶解度の薬物の経口吸収を改善するために一般的に使用されてきた(Jermain SV, et al., Int J Pharm, Jan. 15, 2018, 535(1-2):379-392)ASDをベースとする製剤で実質的に増加したようである。最高の曝露は450mg群で観察された(表3)。カプセル中API製剤に比べて、カプセル中ASD製剤を用いる投与は、より高くかつより一貫した曝露のみならず、より低い被験者間変動を達成した。
【0049】
要約すると、式(I)の化合物の曝露は、ASDをベースとする製剤で実質的に増加したと思われる。我々は、カプセル中ASD製剤が、より短いピーク時間、ピーク濃度増加、及びより高い全体的血漿曝露をもたらすことをも見出した。さらに、PKパラメーターの被験者間変動は、カプセル中ASD群でより少なく、試験した用量範囲の大半で全体的な用量比例増加が観察された。例えば、200mg用量では、カプセル中ASD製剤は、カプセル中API製剤と比較して30倍高いCmax及びAUC0-infをもたらした。これらのパラメーターの変動係数パーセントも約30~40%から30%未満に低減した。被験者間変動の低減は、用量が大きいほど明らかだった。
研究した全ての用量レベルにわたって、式(I)の化合物の投与は、安全であち、一般的に良い忍容性を示した。
【0050】
例2:研究II:健康被験者における式(I)の化合物のフェーズ1、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、複数用量研究
この研究の目的は、複数経口漸増用量投与後のMMP-12阻害薬の安全性、忍容性、及び薬物動態を評価すること、並びに健康被験者における単一経口用量投与後の食物効果を評価することだった。このフェーズI研究は、2パートから成った。第1パートは8名の被験者(6名は活性;2名はプラセボ)の3つの処置群でのランダム化、二重盲検、プラセボ対照デザインによる複数漸増用量(MAD)パートだった。第2パートは8名の被験者のランダム化、非盲検、2期間、2ウェイクロスオーバー、単一用量デザインによる食物効果(FE)パートである。この研究は、QPS-Netherlands、Groningen、the Netherlandsで行われた。
【0051】
方法及び被験者
被験者
適格参加者は、18歳と65歳の間の妊娠の可能性のない健康な男性及び女性であり、病歴並びに身体、バイタルサイン、研究室及び心電図(ECG)検査により判断して全般的に良好な心身の健康状態であった。他の組入れ基準は、18kg/m2と30kg/m2の間の肥満度指数、50拍動/分と100拍動/分の間の安静時脈拍数及び収縮期血圧≦140mmHgかつ拡張期血圧≦90mmHgの安静時血圧から成った。被験者は、研究中及び研究完了後3カ月まで適切な避妊を行わなければならなかった。主要な除外基準は、アルコール若しくは薬物乱用の歴史、又は現在喫煙者であるか、若しくは他のニコチン製品を使用している;初回投与前2週間以内(又はいずれかの摂取薬物の組入れ前5半減期以内、どちらか長い方)のいずれかの処方薬若しくは非処方薬、薬草剤、ビタミン、又はミネラルの使用;又はB型若しくはC型肝炎ウイルス、又はヒト免疫不全ウイルスについての陽性試験、又は450ミリ秒超のQT間隔(Bazett補正後のECG検査による)から成った
【0052】
パートI-複数漸増用量(MAD)
それぞれ8名の被験者(活性に6名及びプラセボに2名)の3つのコホートを登録し、被験者は下記処置を経口的に受けた:100mg、200mg、及び400mgのカプセル中ASDを1日2回(日1及び日8に1用量、日2~日7は1日2回の用量)(
図4)。
パートII-食物効果(FE)
このパートでは、8名の被験者が、ランダム化様式で、絶食状態で1回及び高脂肪朝食の摂取後に1回、連続投与間に1週間のウォッシュアウト期間を設けて200mgのカプセル中ASDを単一用量として経口的に受けた(
図4)。
研究薬
カプセル中API及びカプセル中ASDは、例1と同様に調製した。
【0053】
研究評価
安全性及び忍容性の評価
研究全体を通して事前に決められた時点でAE報告、バイタルサイン測定、身体検査、研究室試験、及びECG検査によって安全性及び忍容性を評価した。
薬物動態評価
日1に投与後(0.5、1、2、3、4、6、8、12、及び16時間)及び日8に投与後(0.5、1、2、3、4、6、8、10、12、16、20、24、30、36、及び48時間)並びに日2~7には朝の投与直前に及び日4と日6には朝の投与後2時間で血液サンプルを収集した。収集後15分以内に、血液サンプルを2000rpmで10分間4℃で遠心分離させ、その後、血漿を等分し、凍結させ、PK解析まで-70℃で貯蔵した。
サンプルを液体クロマトグラフィーに掛けた後、タンデム質量分析により解析した。式(I)の化合物の定量化の下限は5ng/mLだった。
血漿PKパラメーターは、Phoenix(登録商標)WinNonlin(登録商標)バージョン6.3以上(Pharsight Corporation Inc., Mountain View, CA, USA)を用いてノンコンパートメント解析により誘導した。算術平均、標準偏差、メジアン、最小、最大、変動係数パーセント、幾何平均、及び算術平均と幾何平均の両側95%信頼区間限界を用いてPK変量を要約した。
【0054】
統計手法
処置母集団(少なくとも1用量の研究薬物を摂取した全ての参加者)について安全性及び忍容性データを評価した。PK解析は、少なくとも1つのPKパラメーターを計算することができ、かつこれらの評価を妨げる可能性のあるいずれのプロトコル違反をも侵さなかった処置参加者からのデータに基づいた。記述統計学を用いて安全性及び忍容性データを評価し、式(I)の化合物の血漿中濃度及びPKパラメーターについて評価した。
サンプルサイズの正式な計算は行わなかった。記述研究の性質に基づいて、各コホートに登録された参加者数は、これらのフェーズI研究の目的を達成し、PKパラメーターの評価を可能にするのに十分とみなされた。
式(I)の化合物のPKプロファイルに関する食物効果の評価のために、分散分析(ANOVA)モデルに、SAS(登録商標)混合モデル手法を用いて固定効果として順序、処置、及び期間並びにランダム効果として順序内でネスト化された被験者を含めた。各ANOVAには最小二乗平均値(LSM)、絶食状態(Reference)と比較した食後状態(Test)のLSM間の差異、及びこの差異に伴う標準誤差の計算を含めた。
各時点で、数値パラメーターによって平均、メジアン、標準偏差、最小、最大、利用可能知見数、及びベースラインからの変化を要約した。
【0055】
結果及び考察
被験者の素質及び盲検化
この研究では、76名の男性及び女性被験者をスクリーニングし、複数用量パートではそのうち24名をランダム化し、一方で本研究の食物効果パートでは8名の被験者をランダム化した(
図4)。全ての被験者が研究を完了した。全体的に、異なる用量レベルの被験者は、年齢、体重、身長及びBMI分布に関して類似していた(表4)。
【0056】
表4:MAD及びFEに関与する被験者の人口統計学的特徴及びベースラインの特徴
【表4】
注:規定のない限り、データは平均(標準偏差)で提示してある。
API=医薬品有効成分;ASD=非晶質固体分散系。
処置A=100mgのカプセル中ASDの経口用量;
処置B=200mgのカプセル中ASDの経口用量;
処置C=400mgのカプセル中ASDの経口用量;
処置D=絶食状態における200mgのカプセル中ASDの単一経口用量;
処置E=高脂肪、高カロリー朝食摂取後の食後状態における200mgのカプセル中ASDの単一経口用量。
【0057】
安全性結果
全ての報告されたAEは自己限定的であり、軽強度であるとみなされた。重症又は重篤のAEは報告されなかった。AEのために研究を中断した被験者はいなかった。任意の時点での式(I)の化合物の投与後の体重、バイタルサイン、身体検査、研究室又はECGデータにベースライン評価からの臨床的に関連する変化は観察されなかった。
MAD研究では、式(I)の化合物による処置に関連する可能性のあるAEが全部で7つ報告された(表5)。これらの事象の2つは、疲労と咳を含み、100mg群の2名の被験者によって報告された。他の5つの事象は、200mg群の3名の被験者によって報告された。すなわち、それぞれ、1名の被験者には、眼刺激及び紅斑という2つのエピソードがあり、1名の被験者にはめまいがあり、1名の被験者には皮疹があった。
研究の食物効果パートでは、式(I)の化合物による処置に関連する可能性のあるAEが2つだけ1名の被験者で報告された。両事象は頭痛であり、食後及び絶食の両状態で起こった。
【0058】
表5:MAD及びFE中に報告された薬物投与に関連する可能性のある有害事象
【表5】
注:ASD=非晶質固体分散系。
【0059】
薬物動態結果
研究のMAD及びFEの両パートで式(I)の化合物の血漿中濃度を測定した。MADパートでは、18名の被験者が用量漸増スキーム(100mg、200mg、及び400mg)でASDを受け、6名の被験者がプラセボを受けたので、ASDを受けた18名の被験者だけをPK解析に含めた。FEパートでは、8名の被験者が200mgのASDを絶食又は食後(高脂肪、高カロリー朝食の摂取後)状態で受け、PK解析に含めた。
MAD及びFEパートにおける式(I)の化合物のPKパラメーターの要約統計量をそれぞれ表6及び表7にまとめる。FEパートのPKパラメーターの統計比較を表8に示す。
【0060】
表6:MAD後の式(I)の化合物の薬物動態パラメーター
【表6】
a:メジアン(範囲);
RAUC1:AUC
0-12(日8)/AUC
0-12(日1);
RAUC2:AUC
0-12(日8)/AUC
0-inf(日1);
平均:算術平均;SD:標準偏差;
処置A:8日で100mgの式(I)の化合物(n=6)又はプラセボ(n=2)の14経口用量;
処置B:8日で200mgの式(I)の化合物(n=6)又はプラセボ(n=2)の14経口用量;
処置C:8日で400mgの式(I)の化合物(n=6)又はプラセボ(n=2)の14経口用量;
日1及び日8には、研究薬物を1日1回(q.d.)与え、日2~日7には、研究薬物を1日2回(b.i.d.)与えた。参照文献源:ポストテキスト(Post-text)表14.4.2
【0061】
式(I)の化合物のピーク曝露(C
max)及び全身曝露(AUC)は、1週間の複数用量後に100~200mgの用量比例様式を超えて増加し、200~400mgのほぼ用量比例様式で増加した。式(I)の化合物のメジアンT
maxは、日1及び日8の両方で3つの漸増用量レベル間で同様だった(
図5A及び
図5Bをも参照)。100、200、及び400mgの単一用量での式(I)の化合物のT
1/2は、それぞれ、日1に6.90、6.02、及び6.48時間であり;複数用量の摂取後の対応する値は、それぞれ日8に8.37、8.14、及び6.57時間だった。CL/Fは、100、200、及び400mgの単一用量後に、それぞれ、28.7、20.3、及び24.0L/hだった。複数用量後の対応する値は、それぞれ、23.1、16.2、及び18.2L/hだった。同様に、推定V/Fは、日1と日8の間で同様だった。3つ全ての用量レベルについて日6までに定常状態が達成された。式(I)の化合物のAUC比(日8/日1)は、3つ全ての用量レベルで1日2回の投与後の約1.7倍だった。
【0062】
表7:FE後の式(I)の化合物の薬物動態パラメーター
【表7】
a:メジアン(範囲);
平均:算術平均;SD:標準偏差;
処置D:絶食状態下の200mgの式(I)の化合物の単一経口用量;
処置E:高脂肪、高カロリー朝食の摂取後(食後状態)の200mgの式(I)の化合物の単一経口用量。参照文献源:ポストテキスト表14.4.3
【0063】
表8:FE後の薬物動態パラメーターの統計比較
【表8】
最小二乗平均及び信頼区間;
GM=幾何最小二乗平均;GMR=幾何最小二乗平均比;CI=信頼区間;
GMR及び90% CI:百分率として報告;
処置D:絶食状態下の200mgの式(I)の化合物の単一経口用量;
処置E:高脂肪、高カロリー朝食摂取後(食後状態)の200mgの式(I)の化合物の単一経口用量;
【0064】
表7及び表8に示されるように、式(I)の化合物と食物の同時投与は全体的曝露に影響を与えないようである(食物の有無にかかわらず類似AUCが得られた)が、ピーク時間は1時間から2.5時間に増加し、より低いピーク濃度が観察された(1050ng/mL対787ng/mL、
図6参照)。T
1/2は、絶食状態及び食後状態下でそれぞれ9.36及び8.09時間だった。CL/Fは、絶食及び食後の両状態について32.3L/hだった。Vz/Fは、絶食及び食後状態下でそれぞれ446L及び383Lだった。式(I)の化合物は慢性疾患処置のために開発されるので、PKプロファイルのわずかな変化は、食物の有無にかかわらずマンデート(mandate)投与に重要でない可能性がある。
【0065】
結論
研究した全ての用量レベル及び投与レジメンにわたって、式(I)の化合物は、安全であり、一般的に良い忍容性を示した。軽度で短期間かつ自己限定的なほんのわずかなAEがあっただけである。より高い用量レベルでもAEの頻度又は強度は上昇しなかった。我々のデータは、非選択的であることが多い、以前に試験されたMMP阻害薬を用いた十分でない臨床研究を拡張及び補完する。
上記実施形態にその広い発明概念を逸脱することなく変更を加えることができることを当業者なら認めるだろう。従って、本発明は、開示した特定の実施形態に限定されるのではなく、明確な記述によって定義される本発明の精神及び範囲内の変更形態を包含する意図であるという共通認識がある。
【国際調査報告】