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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】胸部大動脈の有窓内部プロテーゼ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20240517BHJP
   A61F 2/856 20130101ALI20240517BHJP
   A61F 2/89 20130101ALI20240517BHJP
【FI】
A61F2/07
A61F2/856
A61F2/89
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576011
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2022065404
(87)【国際公開番号】W WO2022258619
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】2106128
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510261625
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ クロード ベルナール リヨン 1
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE CLAUDE BERNARD LYON 1
(71)【出願人】
【識別番号】500379381
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシャルシュ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】Centre National de la Recherche Scientifique
【住所又は居所原語表記】3 rue Michel Ange, FR-75016 Paris, France
(71)【出願人】
【識別番号】508096666
【氏名又は名称】アンスティテュ ナショナル ド ラ サンテ エ ド ラ ルシェルシュ メディカル
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE
【住所又は居所原語表記】101,rue de Tolbiac, F-75654 Paris Cedex 13, France
(71)【出願人】
【識別番号】517125546
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ジャン モネ、サン テティエンヌ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE JEAN MONNET SAINT ETIENNE
【住所又は居所原語表記】MAISON DE L’UNIVERSITE 10 RUE TREFILERIE, 42100 SAINT ETIENNE, FRANCE
(71)【出願人】
【識別番号】523461531
【氏名又は名称】オスピス シヴィル ド リヨン
【氏名又は名称原語表記】HOSPICES CIVILS DE LYON
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】コセ,ブノワ
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC04
4C097DD10
4C267AA44
4C267BB03
4C267BB08
4C267CC08
4C267HH02
(57)【要約】
本発明は、第1のステント・メッシュ部2と、布から作製される主要管状内部プロテーゼ1とを備え、前記主要管状内部プロテーゼは、前記第1のステント・メッシュ部と一体であり、患者の大動脈弓内に収容されるように構成される弧状中心部12を有し、前記弧状中心部は、第1の端部10と、第2の端部11との間に延在し、それらはそれぞれ上行大動脈又は下行大動脈の一部分内に収容されるように構成され、更に布から作製され、かつ、第2のステント・メッシュ部4と結合するフランジ3を含み、前記フランジは、実質的に円錐台状の形状であり、基部30を備え、前記フランジ3の前記基部は、前記弧状中心部12の上面上に作製される開口13上に嵌合され、前記フランジ3は、患者の上大動脈幹の基部に収容されるように構成される、胸部大動脈の有窓内部プロテーゼに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のステント・メッシュ部(2)と、布から作製される主要管状内部プロテーゼ(1)とを備える、胸部大動脈の有窓内部プロテーゼであって、前記主要管状内部プロテーゼは、前記第1のステント・メッシュ部と一体であり、患者の大動脈弓内に収容されるように構成される弧状中心部(12)を有し、前記弧状中心部は、上行大動脈(AA)の一部分内に収容されるように構成される第1の端部(10)と、下行大動脈(AD)の一部分内に収容されるように構成される第2の端部(11)との間に延在する、胸部大動脈の有窓内部プロテーゼにおいて、前記胸部大動脈の有窓内部プロテーゼは、同様に布から作製され、かつ、第2のステント・メッシュ部(4)と結合するフランジ(3)を更に含み、前記フランジは、実質的に円錐台状の形状であり、基部(30)を備え、前記フランジ(3)の前記基部は、前記主要管状内部プロテーゼ(1)の前記弧状中心部(12)の上面上に作製される開口(13)上に嵌合され、前記フランジ(3)は、患者の上大動脈幹(TSA)の基部に収容されるように構成されることを特徴とする、胸部大動脈の有窓内部プロテーゼ。
【請求項2】
前記第2のステント・メッシュ部(4)は、主にメッシュから構成され、前記メッシュは、実質的に正弦曲線状又はジグザグ状の渦巻状態で前記フランジ(3)の全周上に延在し、前記メッシュ部の径方向力は、前記フランジ(3)を上大動脈幹(TSA)の基部の壁に対して押圧し、したがって、エンドリークの危険性の低減を可能にすることを特徴とする、請求項1に記載の胸部大動脈の有窓内部プロテーゼ。
【請求項3】
前記第2のステント・メッシュ部(4)は、主に複数のばらばらのメッシュから構成され、前記複数のばらばらのメッシュは、互いに径方向にずれ、実質的に正弦曲線状又はジグザグ状の渦巻状態で前記フランジ(3)の全周上に延在し、前記メッシュ部の径方向力は、前記フランジ(3)を上大動脈幹(TSA)の基部の壁に対して押圧し、したがって、エンドリークの危険性の低減を可能にすることを特徴とする、請求項1に記載の胸部大動脈の有窓内部プロテーゼ。
【請求項4】
前記第2のステント・メッシュ部(4)は、前記主要管状内部プロテーゼ(1)の前記弧状中心部(12)の上面上に作製される前記開口(13)を維持するように、前記フランジ(3)の前記基部(30)に楕円メッシュ(40)又は双曲放物面の外形を画定するメッシュ(40’)を更に含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の胸部大動脈の有窓内部プロテーゼ。
【請求項5】
前記第1のステント・メッシュ部(2)は、主に複数のばらばらのメッシュから構成され、前記複数のばらばらのメッシュはそれぞれ、実質的に正弦曲線状又はジグザグ状の渦巻状態で前記主要管状内部プロテーゼ(1)の全周上に延在し、前記メッシュ部の径方向力は、前記主要管状内部プロテーゼを大動脈壁に対して押圧し、したがって、エンドリークの危険性を低減し、前記内部プロテーゼの留置の補強を可能にすることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の胸部大動脈の有窓内部プロテーゼ。
【請求項6】
前記第1のステント・メッシュ部(2)は、前記主要管状内部プロテーゼ(1)の折畳みを防止するように、前記第2のステント・メッシュ部(4)に取り付けられる少なくとも1つのメッシュ(22)を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の胸部大動脈の有窓内部プロテーゼ。
【請求項7】
前記第1のステント・メッシュ部(2)は、前記主要管状内部プロテーゼ(1)の折畳みを防止するように、前記フランジ(3)の前記基部(30)の前記メッシュ(40、40’)に取り付けられる少なくとも1つのメッシュ(22)を含むことを特徴とする、請求項4に記載の胸部大動脈の有窓内部プロテーゼ。
【請求項8】
前記主要管状内部プロテーゼ(1)の端部の少なくとも一方又は前記フランジ(3)の自由端は、布のない見かけ上のメッシュ形成区域(20、21、41)であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の胸部大動脈の有窓内部プロテーゼ。
【請求項9】
前記ステント・メッシュ部は、形状記憶合金、好ましくはニッケルチタン合金、から作製され、前記ステント・メッシュ部を覆う前記布は、編組ポリエステル、編組ダクロン、PTFEによって規定されるリストから選択されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の胸部大動脈の有窓内部プロテーゼ。
【請求項10】
前記有窓内部プロテーゼは、放射線不透過性マーカー(5)を備え、前記放射線不透過性マーカー(5)は、好ましくは、前記主要管状内部プロテーゼ(1)の両端部及び前記フランジ(3)の自由端(31)に配設されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の胸部大動脈の有窓内部プロテーゼ。
【請求項11】
前記第1のステント・メッシュ部(2)は、前記フランジ(3)上に突出することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の胸部大動脈の有窓内部プロテーゼ。
【請求項12】
前記第2のステント・メッシュ部(4)は、前記主要管状内部プロテーゼ(1)上に突出することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の胸部大動脈の有窓内部プロテーゼ。
【請求項13】
補強部(6)が、前記主要管状内部プロテーゼ(1)の前記弧状中心部(12)の凸面に沿って、好ましくは前記主要管状内部プロテーゼの全長上に、延在することを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の胸部大動脈の有窓内部プロテーゼ。
【請求項14】
前記補強部は、前記布上に、ニチノールから作製されるか又は縫合ワイヤから構成されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の胸部大動脈の有窓内部プロテーゼ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部プロテーゼの分野に関し、より詳しくは胸部大動脈の内部プロテーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
動脈瘤は、動脈壁の局所的な膨張である。動脈瘤は、血管の縁部の間の平行が失われた際に生じ、その寸法は、正常の1.5倍を超える。
【0003】
主たるリスクは動脈瘤の破裂であり、通常は死に至る。
【0004】
全ての動脈は冒され得るが、大動脈はしばしば影響を受ける。それは人体の中の最大の動脈である。
【0005】
全ての大動脈瘤は時の経過とともに容赦なくサイズを増し、大動脈の直径が5cmを超えると、破裂のリスクが重大になる。
【0006】
しかし、動脈瘤が適時に検出された場合、開胸手術によって動脈瘤の破裂を防止することが可能であり、この破裂の徴候は、直径が5.5cmを超えた際に明らかである。しかし、この種類の胸部手術は、高い罹患率及び死亡率に関連する。1990年代初頭以来、大腿動脈からの内部プロテーゼの配置、即ち血管内修復を含め、あまり侵襲性ではない治療が下行大動脈の動脈瘤に施されている。
【0007】
大動脈解離は、大動脈の壁が裂かれ、血液が壁に浸潤し、壁を2つに分割することに相当する。この大動脈解離により2つの通路が生成される。大動脈解離は、100,000人あたり3人に影響を及ぼす重大な状態である。大動脈解離は、上行大動脈、下行大動脈又はこれらの両方に影響を及ぼし得る。大動脈解離が上行大動脈に影響を及ぼす場合、標準治療は、開胸手術による大動脈の緊急置換である。下行大動脈の場合、標準治療は、内科的治療のみである。合併症の場合、内部プロテーゼを使用する血管内治療が実施される。
【0008】
内部プロテーゼ(endoprosthesis)は、ステント(即ち、「ばね」として一般に公知であるメッシュ状管状金属デバイス)であり、ステントは、封止壁(「ステント・グラフト」又は仏語では「被覆ステント」)と結合され、動脈瘤部位において動脈の内部で広げられる。内部プロテーゼは、動脈瘤を血流から分離し、円筒形動脈区分を内部プロテーゼの場所で再現する。
【0009】
大動脈は、2つの部分に分割され、上行大動脈は、胸部レベルにあり、下行大動脈は、胸部レベル及び腹部レベルにある。
【0010】
動脈瘤及び下行大動脈解離の血管内治療は標準治療となっている。
【0011】
しかしながら、上行大動脈に対しては、開胸手術が依然として標準治療である。これは主として、その区域の解剖学的な複雑さ:大動脈はかぎ形構造の形態をとり、閉塞に耐えることのできない立派な管により囲まれている:冠状動脈口(coronary ostia)、脳の血管を形成する上大動脈幹(supra-aortic trunks)、によるものである。
【0012】
国際公開第2007/028086号パンフレットは、3本の血管に面するステントの壁内の「窓」の存在により、大動脈弓に適合する胸部内部プロテーゼを記載しており、これらの窓は、プロテーゼを通じた血液の通過、したがって、頭、首及び腕に行く血管の血管形成を可能にする。
【0013】
しかしながら、このステントの挿入は難手術である。その理由は、挿入中に回転しないことが確保される必要があり、そうしないと、前記窓は、血管に面して配置されないことになり、全部又は一部が閉塞して、患者が死に至り得る。
【0014】
それに加えて、内部プロテーゼを配置する処置に要する時間は、依然として3~5時間であり、これは全身麻酔下での厳しい手術である。この処置の複雑さは、該処置は経験を積んだ手術者により専門施設で実施することを必要とし、そのため、この処置の普及及び大衆化を制限している、ことを意味する。
【0015】
この手術は、首の血管内へのガイドの配置を必要とし、したがって、脳血管障害(CVA)の高い危険性を伴っている。血流方向で内部プロテーゼが移動しないようにするために、内部プロテーゼを留置することの問題もある。
【0016】
最後に、これらの種類の内部プロテーゼは、患者のCTスキャンから注文製作する必要があり、したがって、長い引渡し時間(平均1ヶ月)を必要とし、こうした病態の緊急治療には適合しない。
【0017】
国際公開2011/041773(A1)号パンフレットは、2つの側枝部が上大動脈幹に挿入される内部プロテーゼに関する。このタイプの内部プロテーゼも、患者のCTスキャンから注文製作する必要があり、枝部も上大動脈幹に挿入する必要があるので、患者の体内に配置するのに著しく長い手術時間を必要とする。この処置の複雑さは、専門施設での熟練手術者による埋込みを必要とするため、この治療の普及及び大衆化を制限している。
【0018】
米国特許出願公開第2011/270380(A1)号明細書は、管状体と、管状体に対して折畳み構成から展開位置まで拡張可能な外側接続部とを備える血管内プロテーゼを記載している。
【0019】
これまでの先行文献についても同じだが、このタイプの内部プロテーゼは、カスタマイズされた設計と、それが有する枝部により長い手術時間を必要とする。この処置の複雑さは、専門施設での熟練手術者による埋込みを必要とするため、この治療の普及及び大衆化を制限している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
この目的で、本発明の目的は、大動脈弓を含む上行大動脈の動脈瘤及び解離に対する、胸部レベルでの治療を最大の安全性で可能にする一方で、手術処置の複雑さを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
より詳細には、本発明の1つの形態は、第1のステント・メッシュ部と、布から作製される主要管状内部プロテーゼとを備える、胸部大動脈の有窓内部プロテーゼ(fenestrated endoprosthesis)であって、前記主要管状内部プロテーゼは、前記第1のステント・メッシュ部と一体であり、患者の大動脈弓内に収容されるように構成される弧状中心部を有し、前記弧状中心部は、上行大動脈の一部分内に収容されるように構成される第1の端部と、下行大動脈の一部分内に収容されるように構成される第2の端部との間に延在する、胸部大動脈の有窓内部プロテーゼにおいて、前記胸部大動脈の有窓内部プロテーゼは、同様に布から作製され、かつ、第2のステント・メッシュ部と結合するフランジを更に含み、前記フランジは、実質的に円錐台状の形状であり、基部を備え、前記フランジの前記基部は、前記主要管状内部プロテーゼの前記弧状中心部の上面上に作製される開口上に嵌合され、前記フランジは、患者の上大動脈幹の基部に収容されるように構成される、胸部大動脈の有窓内部プロテーゼである。
【0022】
任意の、補足的な又は代替の本発明の特徴を以下に述べる。
【0023】
いくつかの特徴によれば、前記第2のステント・メッシュ部は、主にメッシュから構成され、前記メッシュは、実質的に正弦曲線状の渦巻状態で前記フランジの全周上に延在し、前記メッシュ部の径方向力は、前記フランジを上大動脈幹の基部の壁に対して押圧し、したがって、エンドリークの危険性の低減を可能にすることができる。
【0024】
他の特徴によれば、前記第2のステント・メッシュ部は、主に複数のばらばらのメッシュから構成され、前記複数のばらばらのメッシュは、互いに径方向にずれ、実質的に正弦曲線状の渦巻状態で前記フランジの全周上に延在し、前記メッシュ部の径方向力は、前記フランジを上大動脈幹の基部の壁に対して押圧し、したがって、エンドリークの危険性の低減を可能にすることができる。
【0025】
他の特徴によれば、前記第2のステント・メッシュ部は、前記主要管状内部プロテーゼの前記弧状中心部の上面上に作製される前記開口を維持するように、前記フランジの前記基部に、楕円メッシュ又は双曲放物面の外形を画定するメッシュを更に含むことができる。
【0026】
他の更なる特徴によれば、前記第1のステント・メッシュ部は、主に複数のばらばらのメッシュから構成され、前記複数のばらばらのメッシュはそれぞれ、前記主要管状内部プロテーゼの全周上に周回的に延在する。
【0027】
他の更なる特徴によれば、前記第1のステント・メッシュ部は、前記主要管状内部プロテーゼの折畳みを防止するように、前記第2のステント・メッシュ部に取り付けられる少なくとも1つのメッシュを含むことができる。折畳みは、内部プロテーゼが不正確に展開される場合、又は著しい外部応力がある場合、内部プロテーゼの本体によって形成されるしわに相当し、単純狭窄による血流不良からプロテーゼの閉塞までをもたらし得る。
【0028】
他の更なる特徴によれば、前記第1のステント・メッシュ部は、前記主要管状内部プロテーゼの折畳みを防止するように、前記フランジの前記基部で前記メッシュに取り付けられる少なくとも1つのメッシュを含むことができる。
【0029】
有利には、前記主要管状内部プロテーゼの端部の少なくとも一方又は前記フランジの自由端は、布のない見かけ上のメッシュ形成区域であることができる。
【0030】
前記ステント・メッシュ部を覆う前記布は、好ましくは編組ポリエステル、編組ダクロン、PTFEによって規定されるリストから選択することができる。
【0031】
望ましくは、前記ステント・メッシュ部は、形状記憶合金、好ましくはニッケルチタン合金から作製されることができる。
【0032】
有利には、前記胸部大動脈の有窓内部プロテーゼは、放射線不透過性マーカーを備え、前記放射線不透過性マーカーは、好ましくは、前記主要管状内部プロテーゼの両端部及び/又は前記フランジの自由端に配設されることができる。
【0033】
特定の実施形態の1つによれば、前記第1のステント・メッシュ部は、前記フランジ上に突出することができる。
【0034】
他の特定の実施形態によれば、前記第2のステント・メッシュ部は、前記主要管状内部プロテーゼ上に突出することができる。
【0035】
有利には、補強部が、前記主要管状内部プロテーゼの前記弧状中心部の凸面に沿って、好ましくは前記主要管状内部プロテーゼの全長上に、延在することができる。
【0036】
好ましくは、この補強部は、ニチノール又は縫合ワイヤから作製される。
【0037】
本発明の更なる有利な点及び特徴は、実施及び非限定的な実施形態の詳細な説明と以下の添付図面を読み取ることで明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の特定の一実施形態による、胸部内部プロテーゼの概略側面図である。
図2】本発明の特定の一実施形態による、患者の大動脈弓内に配置された胸部内部プロテーゼの概略側面図である。
図3】本発明の特定の一実施形態による、胸部内部プロテーゼの概略上面図である。
図4】本発明による胸部内部プロテーゼの寸法を持つ概略側面図である。
図5】本発明による胸部内部プロテーゼの寸法を持つ概略上面図である。
図6】本発明の特定の一実施形態による胸部内部プロテーゼを装着した患者の大動脈弓の概略側面図である。
図7】本発明の特定の一実施形態による胸部内部プロテーゼの概略側面図である。
図8】本発明の特定の一実施形態による胸部内部プロテーゼの概略上面図である。
図9】本発明の特定の一実施形態による患者の大動脈弓に配置された胸部内部プロテーゼの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に述べる実施形態は決して限定的なものではなく、記載された他の特徴から分離された、記載された特徴の選択だけを含む、本発明に対する代替を考慮することは、たとえこの選択がこれらの他の特徴を含む文の中から分離されたものであっても、この特徴の選択が、技術的有利な点を与えるのに十分であるか、又は従来技術の情報から本発明を区別するのに十分であるならば可能である。
【0040】
この選択は少なくとも1つの特徴、好ましくは構造的詳細を持たない機能的特徴、又は構造的詳細の一部を持つ特徴を、この一部のみが技術的有利な点を与えるか、又は従来技術の情報から本発明を区別するの であれば、含む。
【0041】
本発明によれば、図1及び図6に示されるように、胸部大動脈の有窓内部プロテーゼは、第1のステント・メッシュ部2と、封止ジャケットを形成する生体適合性布から作製される主要管状内部プロテーゼ1とを含み、主要管状内部プロテーゼ1は、円筒血管を再現し、動脈瘤によって形成される嚢を血液循環から分離する。
【0042】
前記主要管状内部プロテーゼは、患者の大動脈弓内に収容されるように構成される弧状中心部12を有する。この弧状中心部12は、上行大動脈AAの一部分内に収容されるように構成される第1の端部10と、下行大動脈ADの一部分内に収容されるように構成される第2の端部11との間に延在する。
【0043】
有利には、前記主要管状内部プロテーゼを構成する前記布は、編組ポリエステル、編組ダクロン、及びPTFEによって規定されるリストから選択され得る。
【0044】
この布は、例えば、テフロン(Teflon 登録商標)などのPTFE又はダクロン(Dacron 登録商標)であり、これらの材料は簡単な内部プロテーゼにおいて一般に使用されている。
【0045】
更に、広げられた前記主要管状内部プロテーゼの外径及び長さは、有利には、それぞれ25から60mmの間、及び180から450mmの間であるように選択される。これらの寸法は、患者の大動脈弓(横行大動脈としても公知である)の形態に主要管状内部プロテーゼ1を完全に適合させることを可能にする。
【0046】
しかしながら、本発明は特定の寸法又は材料に限定されない。当業者はそれを個々のケースに適応させることができる。
【0047】
本発明によれば、主要管状内部プロテーゼ1は、その弧状中心部12の上面上に開口13を含む。
【0048】
「上面」とは、弧状中心部12の凸部分、即ち、上大動脈幹の基部に面する凸部分を意味する。
【0049】
本発明によれば、前記胸部大動脈の有窓内部プロテーゼは、同様に布から作製され、かつ、第2のステント・メッシュ部4と結合するフランジ3を更に含む。
【0050】
このフランジ3は、患者の上大動脈幹(TSA)の基部に収容されるように構成される。
【0051】
「上大動脈幹の基部に収容される」とは、前記フランジが上大動脈幹に面していること、したがって、上大動脈幹に差し込まれないことを意味する。
【0052】
前記内部プロテーゼの「遍在性」(universality)だけでなく、埋込みの単純さ及び迅速さを可能にしているのは、大動脈における前記フランジのまさにこの位置である。
【0053】
フランジ3は、実質的に円錐台状の形状であり、その基部は、実質的に楕円形である。
【0054】
前記フランジの基部は、有利には、双曲放物面の外形も画定し得る。この形状は、前記フランジの可能な最も広い開口を可能にし、前記フランジを上大動脈幹のほとんどの解剖学的ばらつきに適合させる。言い換えれば、双曲放物面の3次元性は、空間の3つの平面、即ち、前-後、横、上-下における開口13の最大の拡大を可能にする。有利には、円錐台状フランジ3の基部及び頂部の長軸の寸法は、患者の大動脈弓の形態に完全に適合するように、それぞれ50から150mmの間、及び50から130mmの間であるように選択される。
【0055】
同様に、円錐台状フランジ3の基部及び頂部の短軸の寸法は、患者の大動脈弓の形態に完全に適合するように、それぞれ25から60mmの間、及び10から50mmの間であるように選択される。
【0056】
円錐台状フランジ3は、好ましくは8から40mmの間の長さで延在する。
【0057】
しかしながら、本発明は、特定の寸法又は材料に限定されない。当業者はそれを各ケースに適応させることができる。
【0058】
前記フランジ3の前記基部は、前記主要管状内部プロテーゼ1の前記弧状中心部12の上面上に作製される開口13上に嵌合される。
【0059】
嵌合されることにより、フランジ3は、開口13において前記主要管状内部プロテーゼに取り付けられることを意味する。
【0060】
前記主要管状内部プロテーゼ及び前記フランジによって形成される組立体は、例えば3Dプリントによって単一の一体部品として作製し得る。
【0061】
代替的に、フランジ3は、接合又は縫うことによって前記主要管状内部プロテーゼ1に縫合でき、例えば、開口13は、縫合前に主要管状内部プロテーゼ1内に穿孔される。縫合は、主要管状内部プロテーゼ1とフランジ3との間の接合部の封止を保証しなければならない。
【0062】
フランジ3は、好ましくは主要管状内部プロテーゼ1と同じ布からなる。
【0063】
主要管状内部プロテーゼ1は、第1のステント・メッシュ部は主要管状内部プロテーゼの外面に通常取り付けられるという点で、第1のステント・メッシュ部2に結合され、前記ステント・メッシュ部が、主要管状内部プロテーゼをその必要とされる形状で維持するようにする。
【0064】
前記ステント・メッシュ部を前記布内に植え付ける、又は主要管状内部プロテーゼ1の内面に対して配設する他の非限定的な構成も企図可能である。
【0065】
好ましくは、前記ステント・メッシュ部は、形状記憶合金、例えば、ニッケルチタン合金、特にニチノールから作製される。
【0066】
他の非限定的な構成によれば、前記ステント・メッシュ部は、例えば、クロムとコバルトの合金で作製されたZ-ステント(Z-stents、登録商標)であり得る。
【0067】
有利には、第1のステント・メッシュ部2は、主に複数のばらばらのメッシュから構成され、前記複数のばらばらのメッシュはそれぞれ、前記主要管状内部プロテーゼ1の全周上に周回的に延在する。
【0068】
好ましくは、これらのメッシュは、メッシュがばねのように変形するように、実質的に正弦曲線状又はジグザグ状の渦巻状態で延在し得る。
【0069】
したがって、前記メッシュ部の径方向力は、主要管状内部プロテーゼ1を大動脈壁に対して押圧し、エンドリークの危険性の低減を可能にする。
【0070】
他の非限定構成によれば、前記ステント・メッシュ部は、複数の接続手段によって対で接続し得る。該接続手段は、多くの実施形態の対象であり得るが、概して、例えば、ステント・メッシュ部を取り囲むループ又はフックにより、金属棒の2つの端部でステント・メッシュ部の構造体に固定される金属棒から構成し得る(例えば、クロムコバルト合金又はニチノールからも作製される)。
【0071】
フランジ3に関しては、これは、第2のステント・メッシュ部は前記フランジの外面に通常取り付けられるという点で、第2のステント・メッシュ部4に結合され、前記ステント・メッシュ部が、前記フランジをその必要とされる形状で維持するようにする。
【0072】
前記ステント・メッシュ部を前記布内に植え付ける、又は主要管状内部プロテーゼ1の内面に対して配設する他の非限定的な構成も企図可能である。
【0073】
好ましくは、第2のステント・メッシュ部4は、主に、フランジ3の全周上及び全長上に延在する単一のメッシュから構成される。
【0074】
好ましくは、このメッシュは、メッシュがばねのように変形するように、実質的に正弦曲線状又はジグザグ状の渦巻状態で延在し得る。
【0075】
したがって、第2のステント・メッシュ部4の径方向力は、上大動脈幹TSAの基部の壁に対してフランジ3を押圧し、エンドリークの危険性の低減を可能にする。
【0076】
図2及び図6に示されるように、上大動脈幹TSAの基部の壁は、フランジ3に圧力を加える性質があり、フランジ3は、第2のステント・メッシュ部4によって、上大動脈幹の基部の壁に対して対抗圧力を加えることがわかる。
【0077】
一代替実施形態によれば、第2のステント・メッシュ部4は、2つのステント・メッシュによって生成されるフランジの支持を補強するように、主に、互いから径方向にずれる2つのばらばらのメッシュから構成される。
【0078】
好ましくは、前記第2のステント・メッシュ部は、形状記憶合金、例えば、ニッケルチタン合金、特にニチノールから作製される。
【0079】
他の非限定的な構成によれば、前記ステントは、例えば、クロムとコバルトの合金で作製されたZ-ステント(Z-stents、登録商標)であり得る。
【0080】
有利には、第2のステント・メッシュ部4は、主要管状内部プロテーゼ1の弧状中心部12の上面上に作製された開口13を維持するように、フランジ3の基部30に楕円メッシュ40を更に含み得る。
【0081】
同じ目的のために、第2のステント・メッシュ部4は、双曲放物面の外形を画定するメッシュ40’を更に含むことができる。
【0082】
また有利には、前記主要管状内部プロテーゼ1の折畳みを防止するように、第1のステント・メッシュ部2は、第2のステント・メッシュ部4に取り付けられる少なくとも1つのメッシュ22を更に含むことができる。
【0083】
このメッシュ22は、好ましくは、前記主要管状内部プロテーゼ1の折畳みを防止するように、フランジ3の基部30の楕円メッシュ40又は双曲放物面の外形を画定するメッシュ40’に取り付けられる。
【0084】
図7図8及び図9に示されるように、フランジ3を可能な限り垂直に維持する、したがって、フランジ3が崩壊しないようにするため、第1のステント・メッシュ部2は、有利には、フランジの部分24を越えてフランジ3上に突出し、上大動脈幹に対するフランジの展開を補強する。
【0085】
より詳細には、第1のメッシュ部の一部のメッシュは、不完全な円を形成するように前記フランジまで延在する。これらメッシュの存在は、第2のメッシュ部を前記フランジ上に制限し、したがって、有窓内部プロテーゼの全体サイズを低減可能にする。このように、内部プロテーゼは小型化され、より小さい寸法の大腿動脈に導入し得る、より小さな直径のランチャ(launchers)の使用を可能にする。
【0086】
当然のことながら、代替として、及び同じ目的のため、同じ原理により、第2のステント・メッシュ部4も主要管状内部プロテーゼ1上に突出する。
【0087】
有利には、補強部6が、前記主要管状内部プロテーゼ1の前記弧状中心部12の凸面に沿って、好ましくは前記主要管状内部プロテーゼの全長上に、延在する。したがって、この補強部は、長手方向において「アコーディオン」型の折畳みを回避可能にし、したがって、内部プロテーゼのその全長にわたる展開を促進する。
【0088】
この補強部6は、例えば、前記布上に、ニチノールから作製されるか又は縫合ワイヤから構成されることができる。
【0089】
主要管状内部プロテーゼの留置(anchoring)を促進するため、主要管状内部プロテーゼの端部の一方は、布のない見かけ上のメッシュ形成区域20、21とすることができ、この区域は「自由流」(free flow)と呼ばれる。
【0090】
同様に、フランジ3の自由端31は、布のない見かけ上のメッシュ形成区域41とすることができる。
【0091】
これらの見かけ上のメッシュ形成区域20、21及び41は、実際、実質的に正弦曲線状又はジグザグ状の渦巻状態で延在するメッシュで構成される。この場合、正弦曲線又はジグザグの頂部は、血流の流れに対応する方向に直交する方向である径方向に沿ってより近づくか又は離れ得る。
【0092】
これらの見かけ上のメッシュ形成区域20、21及び41は、20mm以下の距離で延在する。
【0093】
前記頂部は、有窓内部プロテーゼが円錐体及び送達ガイドにより胸部大動脈内に配置される場合、径方向に沿って一緒に近づき得る。
【0094】
大動脈内への配置が完了すると、前記メッシュは、その初期の形状に戻る性質があり、前記頂部は、径方向に沿って離れ、上行大動脈AAの壁内、下行大動脈ADの壁内及び上大動脈幹TSAの基部の壁内に留置する。
【0095】
胸部大動脈の有窓内部プロテーゼの挿入を促進するため、胸部大動脈の有窓内部プロテーゼは、好ましくは、主要管状内部プロテーゼ1の端部及び/又はフランジ3の自由端31に配設される放射線不透過性マーカー5を備え得る。
【0096】
したがって、本発明は、血流方向で有窓内部プロテーゼが移動しないようにすることにより、有窓内部プロテーゼの留置を最適化することを可能とする。
【0097】
このことは、特に、以下によって補強される:
- 前記プロテーゼの端部及び前記フランジにおける見かけ上のメッシュ形成区域(自由流とも呼ばれる)。
- 互いに直交して向けられる第1のステント・メッシュ部及び第2のステント・メッシュ部。
- 従来の内部プロテーゼの長さ(例えば、胸部下行大動脈の動脈瘤及び解離に最も一般に使用されているGore TAG内部プロテーゼの場合、10から20cm)より大きい内部プロテーゼの長さ。
- フランジ3及びフランジ3と結合される第2のステント・メッシュ部4は、上大動脈幹の壁の基部に対して展開する性質がある。
【0098】
この有窓内部プロテーゼは、既存の内部プロテーゼを用いた血管内治療に禁忌を示す患者の多数の解剖学的特徴(TSAの直径が不十分である、TSAの長さが不十分である、大動脈上のTSAの場所が特殊である、TSAが互いに密に関係しすぎている、等)の克服を可能にする。
【0099】
フランジ3及びフランジ3と結合される第2のステント・メッシュ部は、大動脈支柱の生成を回避可能にする。大動脈支柱は、ガイドを血管内に配置することから構成されるTSAへのカテーテル挿入のために、展開するのに、より長くかかり、より技術を必要とし、脳血管障害等の重大な合併症の危険性をより高くするものである。
【0100】
この有窓内部プロテーゼは、通常は3から6時間であるのと比較して1時間未満である、内部プロテーゼを展開し得る容易さのために、迅速な介入を可能にする。
【0101】
本発明の異なる特徴、形状、代替及び実施形態は、それらが両立しない、又は互いに排他的でない限り、種々の組み合わせにおいて、互いに結び付け得ることに留意すべきである。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】