(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】新規なMdtH変異体及びそれを用いたO-ホスホセリン、システイン及びその誘導体の生産方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20240517BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240517BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20240517BHJP
C12P 1/04 20060101ALI20240517BHJP
C12P 13/06 20060101ALI20240517BHJP
C12P 13/12 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C12N1/21
C12N15/09 Z ZNA
C12N15/31
C12P1/04 Z
C12P13/06 D
C12P13/12 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576022
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 KR2021011995
(87)【国際公開番号】W WO2022260215
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0075859
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513178894
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】シム、ヒ-ジン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヘ ミン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ジン-グン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジン ナム
(72)【発明者】
【氏名】チョン、フィ-ミン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AE08
4B064AE14
4B064CA02
4B064CA19
4B064DA20
4B065AA26X
4B065AA26Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA17
(57)【要約】
本出願は、新規なMdtH変異体及びそれを用いたO-ホスホセリン、システイン及びシステインの誘導体の生産方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列の125番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換された、MdtH変異体。
【請求項2】
前記他のアミノ酸は、イソロイシンである、請求項1に記載のMdtH変異体。
【請求項3】
前記125番目の位置に対応するアミノ酸は、バリンである、請求項2に記載のMdtH変異体。
【請求項4】
前記変異体は、O-ホスホセリン排出活性を有する、請求項1に記載のMdtH変異体。
【請求項5】
前記変異体は、前記配列番号1のアミノ酸配列において60番目の位置に対応するアミノ酸がグルタミンまたはアルギニンである、請求項1に記載のMdtH変異体。
【請求項6】
前記変異体は、前記配列番号1のアミノ酸配列において180番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンまたはロイシンである、請求項1に記載のMdtH変異体。
【請求項7】
前記変異体は、前記配列番号1のアミノ酸配列において398番目の位置に対応するアミノ酸がロイシンまたはプロリンである、請求項1に記載のMdtH変異体。
【請求項8】
前記変異体は、前記配列番号1で記載されたアミノ酸配列と80%以上及び100%未満の配列同一性を有する、請求項1に記載のMdtH変異体。
【請求項9】
前記変異体は、配列番号2または配列番号3のアミノ酸配列で記載されたポリペプチドからなる、請求項1に記載のMdtH変異体。
【請求項10】
請求項1に記載の変異体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項11】
配列番号1のアミノ酸配列の125番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたMdtH変異体または前記変異体をコードするポリヌクレオチドを含む、組換えエシェリキア属微生物。
【請求項12】
前記組換え微生物は、さらにホスホセリンホスファターゼ(phosphoserine phosphatase,SerB)の活性が内在的活性に比べて弱化された、請求項11に記載の微生物。
【請求項13】
配列番号1のアミノ酸配列の125番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたMdtH変異体または前記変異体をコードするポリヌクレオチドを含む微生物を培地で培養する段階を含む、O-ホスホセリンの生産方法。
【請求項14】
a)配列番号1のアミノ酸配列の125番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたMdtH変異体または前記変異体をコードするポリヌクレオチドを含む微生物を培地で培養してO-ホスホセリンまたはそれを含む培地を生産する段階と;
b)O-ホスホセリンスルフヒドリラーゼ(O-phosphoserine sulfliydrylase,OPSS)またはそれを発現する微生物及びa)段階で生産されたO-ホスホセリンまたはそれを含む培地を硫化物と反応させる段階と;を含む、システインまたはその誘導体の生産方法。
【請求項15】
配列番号1のアミノ酸配列の125番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換された、MdtH変異体のOPS、システインまたはシステインの誘導体生産への使用。
【請求項16】
配列番号1のアミノ酸配列の125番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換された、MdtH変異体の、OPSを微生物から排出するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、MdtH変異体及びそれを用いたO-ホスホセリン、システイン及びシステインの誘導体の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
L-システインは、あらゆる生物体の硫黄代謝において重要なアミノ酸であり、毛髪のケラチンなど、生体内タンパク質、グルタチオン、ビオチン、メチオニン及びその他の硫黄を含有した代謝産物の合成に使用されるだけでなく、コエンザイムA生合成の前駆物質として使用される。
【0003】
微生物を用いてL-システインを生産する方法として1)微生物を用いてD,L-ATC(D,L-2-aminothiazoline-4-carboxylic acid)を生物学的に転換する方法、2)大腸菌を利用したL-システインを生産する直接発酵方法(欧州登録特許EP0885962B;Wada M andTakagi H、Appl. Microbiol. Biochem.,73:48-54,2006)、3)微生物を利用してO-ホスホセリン(O-phosphoserine、以下「OPS」)を発酵生産した後、O-ホスホセリンスルフヒドリラーゼ(O-phosphoserine sulfhydrylase、以下「OPSS」)の触媒の作用下に硫化物と反応させてL-システインに転換させる方法(欧州公開特許EP 2444481)が公知となっている。
【0004】
ただし、L-システインの需要増加により効果的なL-アミノ酸の生産方法に関する研究が依然として必要である。特に、前記3)方法で高収率のシステインを生産するためには、前駆体であるOPSを過量生産しなければならない必要性が存在した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州登録特許EP0885962B
【特許文献2】欧州公開特許EP 2444481
【特許文献3】米国公開特許US 2012-0190081
【特許文献4】米国登録特許US 7662943 B2
【特許文献5】米国登録特許US 10584338 B2
【特許文献6】米国登録特許US 10273491 B2
【特許文献7】米国登録特許US 9127324
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Wada M andTakagi H、Appl. Microbiol. Biochem.,73:48-54,2006
【非特許文献2】Pearson et al (1988) [Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]:2444
【非特許文献3】Rice et al.,2000,Trends Genet. 16:276-277
【非特許文献4】Needleman and Wunsch、1970,J. Mol. Biol. 48:443-453
【非特許文献5】Devereux,J.,et al,Nucleic Acids Research 12:387 (1984)
【非特許文献6】Atschul,[S.] [F.,] [ET AL,J MOLEC BIOL 215]:403 (1990)
【非特許文献7】Guide to Huge Computers,Martin J. Bishop,[ED.,] Academic Press,San Diego、1994
【非特許文献8】[CARILLO ETA/。](1988) SIAM J Applied Math 48:1073
【非特許文献9】Smith and Waterman,Adv. Appl. Math (1981) 2:482
【非特許文献10】Schwartz and Dayhoff,eds.,Atlas Of Protein Sequence And Structure,National Biomedical Research Foundation,pp. 353-358 (1979)
【非特許文献11】Gribskov et al(1986) Nucl. Acids Res. 14:6745
【非特許文献12】J. Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual、2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,New York、1989
【非特許文献13】F.M. Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,New York、9.50-9.51,11.7-11.8
【非特許文献14】Ahmed Zahoor,Computational and structural biotechnology journal,vol 3,2012 October
【非特許文献15】Wendisch V F et al.,Curr Opin Microbiol. 2006 Jun;9(3):268-74
【非特許文献16】Peters-Wendisch P et al.,Appl Environ Microbiol. 2005 Nov;7 1( l l):7 139-44.
【非特許文献17】Sitnicka et al. Functional Analysis of Genes. Advances in Cell Biology. 2010,Vol. 2. 1-16
【非特許文献18】Sambrook et al. Molecular Cloning 2012
【非特許文献19】Nakashima N et al.,Bacterial cellular engineering by genome editing and gene silencing. Int J Mol Sci. 2014;15(2):2773-2793
【非特許文献20】Weintraub,H. et al.,Antisense-RNA as a molecular tool for genetic analysis,Reviews - Trends in Genetics,Vol. 1(1) 1986
【非特許文献21】Mino K and Ishikawa K、FEBSletters、551:133-138,2003
【非特許文献22】Bums K E et al. J. Am. Chem. Soc、127:11602-11603,2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、高収率のシステインを生産するために、その前駆体であるOPSを過量生産しようと鋭意努力した結果、新規なMdtH変異体がOPS生産能を向上させることを確認することにより、本出願を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願の一つの目的は、配列番号1のアミノ酸配列の125番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換された、MdtH変異体を提供することにある。
【0009】
本出願のもう一つの目的は、本出願の変異体をコードするポリヌクレオチドを提供することにある。
【0010】
本出願の他の一つの目的は、本出願のポリヌクレオチドを含むベクターを提供することにある。
【0011】
本出願の他の一つの目的は、配列番号1のアミノ酸配列の125番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたMdtH変異体または前記変異体をコードするポリヌクレオチドを含む、組換えエシェリキア属微生物を提供することにある。
【0012】
本出願の他の一つの目的は、配列番号1のアミノ酸配列の125番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたMdtH変異体または前記変異体をコードするポリヌクレオチドを含む微生物を培地で培養する段階を含む、O-ホスホセリンの生産方法を提供することにある。
【0013】
本出願の他の一つの目的は、a)配列番号1のアミノ酸配列の125番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたMdtH変異体または前記変異体をコードするポリヌクレオチドを含む微生物を培地で培養してO-ホスホセリンまたはそれを含む培地を生産する段階と;b)O-ホスホセリンスルフヒドリラーゼ(O-phosphoserine sulfliydrylase,OPSS)またはそれを発現する微生物及びa)段階で生産されたO-ホスホセリンまたはそれを含む培地を硫化物と反応させる段階と;を含む、システインまたはその誘導体の生産方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0014】
本出願の新規なOPS排出活性を有する変異型ポリペプチドを用いてOPS生産能を有する微生物を培養する場合、既存の非変形または変異体タンパク質を利用した場合に比べて高収率のOPS生産が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
これを具体的に説明すると、次の通りである。一方、本出願で開示されたそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの他の説明及び実施形態にも適用することができる。即ち、本出願で開示された多様な要素のすべての組み合わせが本出願の範疇に属する。また、以下に記載される具体的な記述により本出願のカテゴリが制限されるとは見られない。
【0016】
本出願の一態様は、配列番号1のアミノ酸配列の125番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換された、MdtH変異体である。
【0017】
一つの具現例として、前記他のアミノ酸は、イソロイシンであってもよい。
【0018】
本出願の変異体は、前記親配列である配列番号1で記載されたアミノ酸配列を基準として125番目の位置に対応するアミノ酸であるバリンがイソロイシンで置換され、前記配列番号1で記載されたアミノ酸配列と少なくとも70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、99.7%以上または100%未満の相同性または同一性を有する変異体であってもよい。例えば、本出願の変異体は、前記配列番号1で記載されたアミノ酸配列において配列番号1のアミノ酸配列を基準として125番目の位置に対応するアミノ酸はイソロイシンであり、前記配列番号1で記載されたアミノ酸配列と少なくとも70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、99.7%以上または100%未満の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を有するか、含むことができ、または前記アミノ酸配列からなるか、必須に構成されてもよい。また、そのような相同性または同一性を有し、本出願の変異体に対応する効能を示すアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠失、変形、置換、保存的置換または付加されたアミノ酸配列を有する変異体も本出願の範囲内に含まれることは自明である。
【0019】
例えば、前記アミノ酸配列のN末端、C末端及び/または内部に本出願の変異体の機能を変更しない配列の追加または欠失、自然に起こり得る突然変異、サイレント突然変異(silent mutation)または保存的置換を有する場合である。
【0020】
前記「保存的置換(conservative substitution)」とは、あるアミノ酸を類似の構造的及び/又は化学的性質を有する他のアミノ酸で置換させることを意味する。そのようなアミノ酸の置換は、一般に、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び/又は両親媒性(amphipathic nature)における類似性に基づいて起こり得る。通常、保存的置換はタンパク質またはポリペプチドの活性にほとんど影響を及ぼさないか、または影響を及ぼさない。
【0021】
本出願において、用語「変異体(variant)」とは、特定のタンパク質の親配列において一つ以上のアミノ酸が保存的置換(conservative substitution)及び/又は変形(modification)され、前記親配列と配列は相異するが、前記特定のタンパク質の機能(functions)または特性(properties)が維持されるタンパク質を指す。変異体は、数個のアミノ酸の置換、欠失または付加により識別される配列(identified sequence)と異なる。このような変異体は、一般に、前記特定のタンパク質のアミノ酸配列中の一つ以上のアミノ酸を変形し、前記変形されたタンパク質の特性を評価して識別することができる。即ち、変異体の能力は、原タンパク質(native protein)に比べて増加したり、変わらなかったり、または減少する。また、一部の変異体は、N末端リーダー配列または膜貫通ドメイン(transmembrane domain)のような一つ以上の部分が除去された変異体を含むことができる。他の変異体は、成熟タンパク質(mature protein)のN及び/又はC末端から一部分が除去された変異体を含むことができる。前記用語「変異体」は、変異型、変形、変異されたタンパク質、変異型ポリペプチド、変異などの用語(英語表現ではmodification,modified protein,modified polypeptide,mutant,mutein,divergent,variantなど)が用いられ、変異された意味で用いられる用語であれば、これに制限されない。本出願の目的上、前記変異体は、天然の野生型または非変形タンパク質に比べて変異されたタンパク質の活性が増加したものであってもよいが、これに制限されない。
【0022】
また、変異体は、ポリペプチドの特性と2次構造に最小限の影響を有するアミノ酸の欠失または付加を含み得る。例えば、変異体のN末端には、翻訳と同時に(co-translationally)または翻訳後に(post-translationally)タンパク質の移動(translocation)に関与するシグナル(またはリーダー)配列がコンジュゲートすることができる。また、前記変異体は、確認、精製、または合成できるように他の配列またはリンカーとコンジュゲートすることができる。
【0023】
本出願において、「親配列(parent sequence)」とは、変形(modification)を導入して変異型ポリペプチドとなる基準配列を意味する。即ち、親配列は、開始配列(starting sequence)として置換、挿入及び/又は欠失などの変異を導入する対象であってもよい。前記親配列は、天然型(naturally occurring)あるいは野生型(wild type)であってもよく、または前記天然型または野生型に一つ以上の置換、挿入または欠失が発生した変異体(variant)であるか、または人為的に合成された配列であってもよい。
【0024】
本出願において、用語、「相同性(homology)」または「同一性(identity)」とは、二つの与えられたアミノ酸配列または塩基配列相互間の類似度を意味し、百分率で表すことができる。用語の相同性及び同一性はしばしば互換的に使用することができる。
保存された(conserved)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列相同性または同一性は、標準的な配列アルゴリズムにより決定され、使用されるプログラムにより確立されたデフォルトギャップペナルティが共に使用することができる。実質的に、相同性を有したり(homologous)または同一の(identical)配列は、一般に、配列の全部または一部と中程度または高いストリンジェントな条件(stringent conditions)でハイブリダイゼーションすることができる。ハイブリダイゼーションは、ポリヌクレオチドにおける一般のコドンまたはコドン縮退性を考慮したコドンを含有するポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションも含まれることが自明である。
【0025】
任意の二つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が相同性、類似性または同一性を有するかどうかは、例えば、Pearson et al (1988) [Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]:2444でのようなデフォルトパラメータを用いて「FASTA」プログラムなどの既知のコンピュータアルゴリズムを使用して決定することができる。または、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet. 16:276-277)(バージョン5.0.0または以降のバージョン)で行われるような、ニードルマン-ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(Needleman and Wunsch、1970,J. Mol. Biol. 48:443-453)を使用して決定することができる(GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.,et al,Nucleic Acids Research 12:387 (1984))、BLASTP,BLASTN,FASTA (Atschul,[S.] [F.,] [ET AL,J MOLEC BIOL 215]:403 (1990);Guide to Huge Computers,Martin J. Bishop,[ED.,] Academic Press,San Diego、1994、及び[CARILLO ETA/。](1988) SIAM J Applied Math 48:1073を含む)。例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLASTまたはClustalWを用いて相同性、類似性または同一性を決定することができる。
【0026】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、Smith and Waterman,Adv. Appl. Math (1981) 2:482において公知となっているように、例えば、Needleman et al. (1970)、J Mol Biol. 48:443のようなGAPコンピュータプログラムを用いて配列情報を比較することにより決定することができる。要約すると、GAPプログラムは、2つの配列中、より短いものにおける記号の総数であり、類似の配列された記号(即ち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を除した値と定義することができる。GAPプログラムのためのデフォルトパラメータは、(1)二進法比較マトリックス(同一性のために1、そして非同一性のために0の値を含む)及びSchwartz and Dayhoff,eds.,Atlas Of Protein Sequence And Structure,National Biomedical Research Foundation,pp. 353-358 (1979)により開示されているように、Gribskov et al(1986) Nucl. Acids Res. 14:6745の加重比較マトリックス(またはEDNAFULL (NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス);(2)各ギャップのための3.0のペナルティ及び各ギャップにおいて各記号のための追加の0.10ペナルティ(またはギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5);及び(3)末端ギャップのための無ペナルティを含むことができる。
【0027】
本出願において、用語「対応する(corresponding to)」とは、ポリペプチドで列挙される位置のアミノ酸残基であるか、またはポリペプチドで列挙される残基と類似または同一または相同のアミノ酸残基を指す。対応する位置のアミノ酸を確認することは、特定の配列を参照する配列の特定のアミノ酸を決定することであってもよい。本出願で使用される「対応する領域」は、一般に、関連タンパク質または比較(reference)タンパク質における類似または対応する位置を指す。
【0028】
例えば、任意のアミノ酸配列を配列番号1と整列(align)させ、これに基づいて、前記アミノ酸配列の各アミノ酸残基は、配列番号1のアミノ酸残基と対応するアミノ酸残基の数字の位置を参照して番号付けすることができる。例えば、本出願に記載されているような配列整列アルゴリズムは、クエリシーケンス(「参照配列」ともいう)に比べてアミノ酸の位置、または置換、挿入または欠失などの変形が発生する位置を確認することができる。
【0029】
このような整列には、例えば、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman及びWunsch、1970,J. Mol. Biol. 48:443-453)、EMBOSSパッケージのNeedleプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000、Trends Genet. 16:276-277)などを用いることができるが、これに制限されず、当業界に知られている配列整列プログラム、ペアワイズ配列(pairwise sequence)比較アルゴリズムなどを適宜用いることができる。
【0030】
本出願において、用語「MdtH」は、化学要求的勾配に反応して細胞膜を横切って小さい溶質の移動を容易にする膜輸送タンパク質のスーパーファミリーである主要促進剤スーパーファミリー(Major facilitator superfamily,MFS)トランスポーターの一種であり、過量のOPSが存在する条件の下で生育阻害が解除された大腸菌からOPS排出の活性を示すタンパク質として知られている。本出願において前記MdtHは、O-ホスホセリン(O-phosphoserine,OPS)の細胞外へ排出できる活性を有する膜タンパク質を意味する。前記MdtHは、公知のデータベースであるNCBIのGenBankからその配列を得ることができる。一例として、前記MdtHは、mdtH遺伝子によりコードされるOPS排出活性を有するポリペプチドであってもよいが、これに制限されない。
【0031】
本出願の変異体は、野生型ポリペプチドに比べてOPS排出能を増加させる活性を有することができる。
【0032】
本出願において、用語「O-ホスホセリン(O-phosphoserine、以下「OPS」)」は、セリンのリン酸(phosphoric acid)エステルであり、種々のタンパク質の構成要素である。前記OPSはL-システインの前駆体であり、OPSスルフヒドリラーゼ(OPS sulfhydrylase,OPSS)の触媒の作用下に硫化物と反応してシステインに転換され得るが、これに制限されない(米国公開特許US 2012-0190081)。
【0033】
本出願の変異体は、配列番号1のアミノ酸配列において60番目、180番目及び398番目の位置に対応するアミノ酸中、いずれか一つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸でさらに置換されたものであってもよい。一例として、本出願の変異体は、配列番号1のアミノ酸配列において125番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換され、さらに60番、180番及び398番目の位置に対応するアミノ酸中、1個以上、2個以上または3個のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0034】
具体的には、本出願の変異体は、配列番号1のアミノ酸配列のN末端からi)125番目の位置に対応するアミノ酸残基であるバリンがバリン以外の他のアミノ酸残基で置換されたり、これに対し、さらにii)60番目の位置に対応するアミノ酸残基であるグルタミン、iii)180番目に対応する位置のアミノ酸残基であるフェニルアラニン、及び/又はiv)398番目の位置に対応するアミノ酸残基であるロイシンがそれぞれ他のアミノ酸残基で置換された、OPS排出活性を示す変異型ポリペプチドであってもよい。
【0035】
前記配列番号1のアミノ酸配列のN末端からi)125番目の位置に対応するアミノ酸残基であるバリン以外のアミノ酸は、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、セリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、アルギニン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、リシン、ヒスチジン、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む、ii)60番目の位置に対応するアミノ酸残基であるグルタミン以外のアミノ酸は、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、セリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、アルギニン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、バリン、リシン、ヒスチジン、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む、iii)180番目の位置に対応するアミノ酸残基であるフェニルアラニン以外のアミノ酸は、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、セリン、プロリン、バリン、トリプトファン、メチオニン、アルギニン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、リシン、ヒスチジン、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む、及び/又はiv)398番目の位置に対応するアミノ酸残基であるロイシン以外のアミノ酸は、グリシン、アラニン、イソロイシン、セリン、プロリン、フェニルアラニン、バリン、トリプトファン、メチオニン、アルギニン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、リシン、ヒスチジン、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含むものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0036】
より具体的には、本出願の変異体は、配列番号1のアミノ酸配列のN末端からi)125番目の位置に対応するアミノ酸残基であるバリンがイソロイシンで置換されたり、これに対し、さらにii)60番目の位置に対応するアミノ酸残基がグルタミンまたはアルギニンであり、iii)180番目の位置に対応するアミノ酸残基がフェニルアラニンまたはロイシンであり、iv)398番目の位置に対応するアミノ酸残基がロイシンまたはプロリンであってもよい。
【0037】
さらに具体的には、本出願の変異体は、配列番号1のアミノ酸配列のN末端からi)125番目の位置に対応するアミノ酸残基であるバリンがイソロイシンで置換されたり、これに対し、さらにii)60番目の位置に対応するアミノ酸であるグルタミンがアルギニンで置換、iii)180番目の位置に対応するアミノ酸であるフェニルアラニンがロイシンで置換及び/又はiv)398番目の位置に対応するアミノ酸であるロイシンがプロリンで置換されたものであってもよい。
【0038】
一つの具現例として、本出願の変異体は、配列番号2または配列番号3から選択されるいずれか一つ以上のアミノ酸配列と99%以上の配列の同一性を有するアミノ酸配列からなる変異体であってもよい。
【0039】
また、本出願の変異体は、配列番号2または配列番号3から選択されるいずれか一つ以上のアミノ酸配列を有するか、含むか、からなるか、前記アミノ酸配列で必須的に成る(essentially consisting of)ものであってもよいが、これに制限されない。
【0040】
本出願の他の一態様は、本出願の変異体をコードするポリヌクレオチドである。
前記変異体は、前述の通りである。
【0041】
本出願において、用語「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド単位体(monomer)が共有結合により長く鎖状につながったヌクレオチドの重合体(polymer)で、一定の長さ以上のDNAまたはRNA鎖であり、より具体的には、前記変異体をコードするポリヌクレオチド断片を意味する。
【0042】
本出願の変異体をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2または配列番号3で記載されたアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むことができる。本出願の一例として、本出願のポリヌクレオチドは、配列番号4または配列番号5の核酸塩基配列を有するか、または含むことができる。また、本出願のポリヌクレオチドは、配列番号4または配列番号5の核酸塩基配列からなるか、必須に構成されてもよい。
【0043】
本出願のポリヌクレオチドは、コドンの縮退性(degeneracy)または本出願の変異体を発現させようとする生物において好まれるコドンを考慮し、本出願の変異体のアミノ酸配列を変化させない範囲内でコード領域に多様な変形が行われてもよい。具体的には、本出願のポリヌクレオチドは、配列番号4または配列番号5の核酸塩基配列と相同性または同一性が70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、及び100%未満の塩基配列を有するか、含むか、または配列番号4または配列番号5の核酸塩基配列と相同性または同一性が70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、及び100%未満の塩基配列からなるか、または必須に構成されてもよいが、これに制限されない。このとき、前記相同性または同一性を有する配列において、配列番号1の125番目の位置に対応するアミノ酸をコードするコドンは、イソロイシンをコードするコドンのうちの一つであってもよい。
【0044】
また、本出願のポリヌクレオチドは、公知の遺伝子配列から製造することができるプローブ、例えば、本出願のポリヌクレオチド配列の全体または一部に対する相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションすることができる配列であれば、制限なく含まれる。前記「ストリンジェントな条件(stringent condition)」とは、ポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件を意味する。このような条件は、文献(J.Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual、2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,New York、1989;F.M. Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,New York、9.50-9.51,11.7-11.8参照)に具体的に記載されている。例えば、相同性または同一性の高いポリヌクレオチド同士、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の相同性または同一性を有するポリヌクレオチド同士ハイブリダイゼーションし、それより相同性または同一性の低いポリヌクレオチド同士ハイブリダイゼーションしない条件、または通常のサザンハイブリダイゼーション(southern hybridization)の洗浄条件である60℃、1ХSSC、0.1% SDS、具体的には60℃、0.1ХSSC、0.1% SDS、より具体的には68℃、0.1ХSSC、0.1% SDSに相当する塩濃度及び温度で、1回、具体的に2回~3回洗浄する条件を列挙することができる。
【0045】
ハイブリダイゼーションは、たとえハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて塩基間のミスマッチ(mismatch)が可能であっても、二つの核酸が相補的配列を有することを要求する。用語「相補的」は、互いにハイブリダイゼーション可能なヌクレオチド塩基間の関係を記述するのに使用される。例えば、DNAに関し、アデニンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。したがって、本出願のポリヌクレオチドは、また、実質的に類似の核酸配列だけでなく、配列全体に相補的な単離された核酸断片を含み得る。
【0046】
具体的には、本出願のポリヌクレオチドと相同性または同一性を有するポリヌクレオチドは、55℃のTm値でハイブリダイゼーション段階を含むハイブリダイゼーション条件を用い、上述の条件を用いて探知することができる。また、前記Tm値は、60℃、63℃または65℃であってもよいが、これに限定されるものではなく、その目的に応じて当業者により適宜調節することができる。
【0047】
前記ポリヌクレオチドをハイブリダイゼーションする適切なストリンジェンシーは、ポリヌクレオチドの長さ及び相補性の程度に依存し、変数は当該技術分野においてよく知られている(例えば、J. Sambrook et al.,同上)。
【0048】
本出願のもう一つの態様は、本出願のポリヌクレオチドを含むベクターである。前記ベクターは、前記ポリヌクレオチドを宿主細胞で発現させるための発現ベクターであってもよいが、これらに制限されない。
【0049】
前記ポリヌクレオチドは、前述の通りである。
【0050】
本出願のベクターは、適切な宿主内で目的ポリペプチドを発現させることができるように、適切な発現調節領域(または発現調節配列)に作動可能に連結された前記目的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列を含むDNA製造物を含んでもよい。前記発現調節領域は、転写を開始し得るプロモーター、そのような転写を調節するための任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、及び転写及び解読の終結を調節する配列を含み得る。ベクターは、適切な宿主細胞内に形質転換された後、宿主ゲノムとは無関係に複製または機能することができ、ゲノム自体に統合することができる。
【0051】
本出願で使用されるベクターは、特に限定されず、当業界に知られている任意のベクターを利用することができる。通常使用されるベクターの例としては、天然状態または組換え状態のプラスミド、コスミド、ウイルス及びバクテリオファージが挙げることができる。例えば、ファージベクターまたはコスミドベクターとしてpWE15、M13、MBL3、MBL4、IXII、ASHII、APII、t10、t11、Charon4A、及びCharon21Aなどを用いることができ、プラスミドベクターとしてpBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系、pSK系、pSKH系及びpET系などを用いることができる。具体的には、pCL、pDC、pDCM2、pSK、pSKH130、pDZ、pACYC177、pACYC184、pECCG117、pUC19、pBR322、pMW118、pCC1BACベクターなどを用いることができる。
【0052】
一例として、細胞内における染色体挿入用ベクターを通じて目的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを染色体内に挿入することができる。前記ポリヌクレオチドの染色体内への挿入は、当業界に知られている任意の方法、例えば、相同組換え(homologous recombination)により行われてもよいが、これらに限定されない。前記染色体の挿入有無を確認するための選別マーカー(selection marker)をさらに含んでもよい。前記選別マーカーは、ベクターで形質転換された細胞を選別、即ち、目的核酸分子の挿入有無を確認するためのものであり、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面ポリペプチドの発現のような選択可能表現型を付与するマーカーを使用することができる。選択剤(selective agent)が処理された環境では、選別マーカーを発現する細胞のみが生存するか、または他の表現形質を示すため、形質転換された細胞を選別することができる。
【0053】
本出願における用語「形質転換」とは、標的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞または微生物内に導入し、宿主細胞内で前記ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドが発現できるようにすることを意味する。形質転換されたポリヌクレオチドは、宿主細胞内で発現できる限り、宿主細胞の染色体内に挿入されて位置するか、または染色体外に位置するかに関係なく、それらの全部を含み得る。また、前記ポリヌクレオチドは、目的のポリペプチドをコードするDNA及び/又はRNAを含む。前記ポリヌクレオチドは、宿主細胞内に導入されて発現できるものであれば、如何なる形態でも導入することができる。例えば、前記ポリヌクレオチドは、自体で発現するのに必要な全ての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入することができる。前記発現カセットは、通常、前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終結信号、リボソーム結合部位、及び翻訳終結信号を含み得る。前記発現カセットは、自己複製が可能な発現ベクターの形態であってもよい。また、前記ポリヌクレオチドは、それ自体の形態で宿主細胞に導入され、宿主細胞で発現に必要な配列と作動可能に連結されているものであってもよく、これに制限されない。
【0054】
また、前記において、用語「作動可能に連結」されたとは、本出願の目的変異体をコードするポリヌクレオチドの転写を開始及び媒介させるプロモーター配列と前記ポリヌクレオチド配列が機能的に連結されていることを意味する。
【0055】
本出願のもう一つの態様は、配列番号1のアミノ酸配列の125番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたMdtH変異体または前記変異体をコードするポリヌクレオチドを含む、エシェリキア属微生物である。
【0056】
本出願の菌株は、本出願の変異型ポリペプチド、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び/又は本出願のポリヌクレオチドを含むベクターを含むことができる。
【0057】
前記変異体、ポリヌクレオチド及びベクターは、前述の通りである。
【0058】
本出願において、用語「微生物(または、菌株)」とは、野生型微生物や天然または人為的に遺伝的変形が生じた微生物を全て含み、外部遺伝子が挿入されたり、または内在的遺伝子の活性が強化されたり、不活性化されるなどの原因により、特定の機序が弱化または強化された微生物であり、所望のポリペプチド、タンパク質または産物の生産のために遺伝的変形(modification)を含む微生物であってもよい。
【0059】
本出願の菌株は、本出願の変異体、本出願のポリヌクレオチド及び本出願のポリヌクレオチドを含むベクターのいずれか一つ以上を含む菌株;本出願の変異体または本出願のポリヌクレオチドを発現するように変形された菌株;本出願の変異体、または本出願のポリヌクレオチドを発現する菌株(例えば、組換え菌株);または本出願の変異体活性を有する菌株(例えば、組換え菌株)であってもよいが、これらに制限されない。
【0060】
本出願の菌株は、OPS排出能を有する菌株であってもよい。
【0061】
本出願の菌株は、天然にMdtHまたはOPS排出能を有している微生物、またはMdtHまたはOPS排出能がない親株に本出願の変異体またはそれをコードするポリヌクレオチド(または前記ポリヌクレオチドを含むベクター)が導入されるか、及び/又はOPS排出能が与えられた微生物であってもよいが、これに制限されない。
【0062】
一例として、本出願の菌株は、本出願のポリヌクレオチドまたは本出願の変異体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換され、本出願の変異体を発現する細胞または微生物であり、本出願の目的上、本出願の菌株は、本出願の変異体を含めてOPSを排出できる微生物をすべて含むことができる。例えば、本出願の菌株は、天然の野生型微生物またはOPSを排出する微生物に本出願の変異体をコードするポリヌクレオチドが導入されることによりMdtH変異体が発現され、OPS排出能が増加した組換え菌株であってもよい。前記OPS排出能が増加した組換え菌株は、天然の野生型微生物またはMdtH非変形微生物(即ち、野生型MdtH(配列番号1)を発現する微生物または変異型(配列番号2または配列番号3)タンパク質を発現しない微生物)に比べてOPS排出能が増加した微生物であってもよいが、これらに制限されるものではない。その例として、前記OPS排出能の増加有無を比較する対象菌株である、MdtH非変形微生物は、内在的ホスホセリンホスファターゼ(phosphoserine phosphatase,serB)の活性を弱化させた菌株であるCA07-0012(KCCM 11121P、欧州公開特許EP 2444481または米国公開公報第2012-0190081号)であってもよいが、これに制限されない。
【0063】
一例として、前記OPS排出能の増加によりOPS生産能が増加した組換え菌株は、変異前の親株または非変形微生物のOPS生産能に比べて約1%以上、具体的には、約1%以上、約2.5%以上、約5%以上、約7.5%以上、約10%以上、約12.5%以上、約15%以上、約17.5%以上、約20%以上、約22.5%以上、約25%以上、約27.5%以上、約30%以上、約32.5%以上、約35%以上、約37.5%以上、約40%以上、約42.5%以上、約45%以上、約47.5%以上、約50%以上、約52.5%以上、約55%以上、約57.5%以上、約60%以上、約62.5%以上、約65%以上、約67.5%以上、約70%以上、約72.5%以上、約75%以上、約77.5%以上、約80%以上、約82.5%以上、約90%以上、約92.5%以上、約95%以上、約97.5%以上、約100%以上、約102.5%以上、約105%以上、約107.5%以上、約110%以上、約112.5%以上、約115%以上、約117.5%以上、約120%以上、約122.5%以上、約125%以上、約127.5%以上、約130%以上、約132.5%以上、約135%以上、または約137%以上(上限値に特別な制限はなく、例えば、約300%以下、約200%以下、約150%以下、約100%以下、約50%以下、約40%以下、または約30%以下であってもよい)が増加されたものであってもよいが、変異前の親株または非変形微生物の生産能に比べて+値の増加量を有する限り、これに制限されない。他の例において、前記OPS排出能の増加によりOPS生産能が増加した組換え菌株は、変異前の親株または非変形微生物に比べて、OPS生産能が約1.01倍以上、約1.025倍以上、約1.05倍以上、約1.075倍以上、約1.10倍以上、約1.125倍以上、約1.15倍以上、約1.175倍以上、約1.20倍以上、約1.225倍以上、約1.25倍以上、約1.275倍以上、約1.30倍以上、約1.325倍以上、約1.35倍以上、約1.375倍以上、約1.50倍以上、約1.525倍以上、約1.55倍以上、約1.60倍以上、約1.625倍以上、約1.65倍以上、約1.675倍以上、約1.70倍以上、約1.725倍以上、約1.75倍以上、約1.775倍以上、約1.8倍以上、約1.825倍以上、約1.85倍以上、約1.875倍以上、約1.90倍以上、約1.925倍以上、約1.95倍以上、約1.975倍以上、約2.0倍以上、約2.025倍以上、約2.05倍以上、約2.075倍以上、約2.10倍以上、約2.125倍以上、約2.15倍以上、約2.175倍以上、約2.20倍以上、約2.225倍以上、約2.25倍以上、約2.275倍以上、約2.30倍以上、約2.325倍以上、約2.35倍以上、または約2.37倍以上(上限値に特別な制限はなく、例えば、約10倍以下、約5倍以下、約3倍以下、または約2倍以下であってもよい)が増加されたものであってもよいが、これに制限されない。前記用語「約(about)」は、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1などを全て含む範囲であり、約という用語に続く数値と同等又は類似の範囲の数値を全て含むが、これに制限されない。
【0064】
本出願において、用語「非変形微生物」とは、微生物に自然に生じ得る突然変異を含む菌株を除外するものではなく、野生型菌株または天然型菌株自体であるか、自然的または人為的要因による遺伝的変異で形質が変化する前の菌株を意味する。例えば、前記非変形微生物は、本明細書に記載のMdtH変異体が導入されないか、または導入される前の菌株を意味する。前記「非変形微生物」は、「変形前の菌株」、「変形前の微生物」、「非変異菌株」、「非変形菌株」、「非変異微生物」または「基準微生物」と混用され得る。
【0065】
本出願のまた他の一例として、本出願の微生物は、OPSを生産できれば、その種類に特に制限されず、原核細胞または真核細胞がいずれも可能であるが、具体的には原核細胞であってもよい。前記原核細胞は、一例として、エシェリキア(Escherichia)属、エルウィニア(Erwinia)属、セラチア(Seratia)属、プロビデンシア(Providencia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属及びブレビバクテリウム(Brevibacterium)属に属する微生物菌株を含むことができ、具体的にはエシェリキア属微生物、より具体的には大腸菌、即ち、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)であってもよいが、これに制限されない。
【0066】
特に、本出願のエシェリキア属微生物の場合、L-セリン(L-serine)の生合成経路の酵素であるSerA、SerC及びSerBを通じて、OPS及びL-セリンを生産することができる(Ahmed Zahoor,Computational and structural biotechnology journal,vol 3,2012 October;Wendisch V F et al.,Curr Opin Microbiol. 2006 Jun;9(3):268-74;Peters-Wendisch P et al.,Appl Environ Microbiol. 2005 Nov;7 1( l l):7 139-44.)。ホスホセリンホスファターゼ(phosphoserine phosphatase)のSerBは、OPSをL-セリンに変換させる活性を有するため、前記SerB活性が弱化されるように変異された微生物は、OPSを蓄積する特徴を有し、OPSの生産に有用である。一例として、本出願の微生物は、本出願の変異体導入以外に、さらにSerBの活性が内在的活性に比べて弱化された組換え微生物であってもよい。
【0067】
本出願のSerBは、NCBI Accession NO. AAC77341.1で記載されるアミノ酸配列を有するか、または含むタンパク質、またはAAC77341.1で記載されるアミノ酸配列からなるか、必須で構成されるタンパク質であってもよいが、これに制限されるものではない。また、本出願のSerBは、OPSのL-セリンへの変換活性を示す限り、AAC77341.1で記載されるアミノ酸配列と相同性または同一性が少なくとも70%、80%、90%、95%または99%以上のアミノ酸配列を有するか、含むことができる。さらに、本出願のSerBは、AAC77341.1で記載されるアミノ酸配列と相同性または同一性が少なくとも70%、80%、90%、95%または99%以上のアミノ酸配列からなるか、必須で構成されるものであってもよいが、これに制限されない。
【0068】
また、本出願のSerBをコードするポリヌクレオチドは、NCBI NP_415583.4で記載される塩基配列を有するか、含むことができる。本出願のSerBをコードするポリヌクレオチドは、NP_415583.4の塩基配列と相同性または同一性が少なくとも70%、80%、90%、95%または99%以上、そして100%未満の塩基配列を有するか、含むことができる。さらに、本出願のSerBをコードするポリヌクレオチドは、NP_415583.4の塩基配列と相同性または同一性が少なくとも70%、80%、90%、95%または99%以上、そして100%未満の塩基配列で行われるか、必須で構成されてもよいが、これに制限されない。
【0069】
本出願において用語、ポリペプチド活性の「強化」とは、ポリペプチドの活性が内在的活性に比べて増加することを意味する。前記強化は、活性化(activation)、上方制御(up-regulation)、過剰発現(overexpression)、増加(increase)などの用語と混用され得る。ここで、活性化、強化、上方制御、過剰発現、増加は、本来有していなかった活性を示すこと、または内在的活性または変形前の活性に比べて向上した活性を示すようになることを全て含むことができる。前記「内在的活性」とは、天然または人為的要因による遺伝的変異で形質が変化した場合、形質変化前の親株または非変形微生物が本来有していた特定のポリペプチドの活性を意味する。これは、「変形前の活性」と混用され得る。ポリペプチドの活性が、内在的活性に比べて「強化」、「上方制御」、「過剰発現」または「増加」するとは、形質変化前の親株または非変形微生物が本来有していた特定のポリペプチドの活性及び/又は濃度(発現量)に比べて向上したことを意味する。
【0070】
前記強化は、外来のポリペプチドを導入するか、または内在的なポリペプチドの活性強化及び/又は濃度(発現量)を通じて達成することができる。前記ポリペプチドの活性の強化有無は、当該ポリペプチドの活性度、発現量または当該ポリペプチドから排出される産物の量の増加から確認することができる。
【0071】
前記ポリペプチドの活性の強化は、当該分野においてよく知られた多様な方法の適用が可能であり、目的のポリペプチドの活性を変形前の微生物より強化させることができる限り、制限されない。具体的には、分子生物学の日常的な方法である当業界の通常の技術者によく知られた遺伝子工学及び/又はタンパク質工学を利用したものであってもよいが、これに制限されない(例えば、Sitnicka et al. Functional Analysis of Genes. Advances in Cell Biology. 2010,Vol. 2. 1-16,Sambrook et al. Molecular Cloning 2012など)。
【0072】
具体的には、本出願のポリペプチド活性の強化は、
1)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの細胞内コピー数の増加;
2)ポリペプチドをコードする染色体上の遺伝子発現調節領域の変形;
3)ポリペプチドをコードする遺伝子転写体の開始コドンまたは5’-UTR領域をコードする塩基配列の変形;
4)ポリペプチド活性が強化されるように前記ポリペプチドのアミノ酸配列の変形;
5)ポリペプチド活性が強化されるように前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の変形(例えば、ポリペプチドの活性が強化されるように変形されたポリペプチドをコードするように前記ポリペプチド遺伝子のポリヌクレオチド配列の変形);
6)ポリペプチドの活性を示す外来ポリペプチドまたはそれをコードする外来ポリヌクレオチドの導入;
7)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのコドン最適化;
8)ポリペプチドの三次構造を分析して露出部位を選択して変形するか、または化学的に修飾;または
9)前記1)~8)から選択された2以上の組み合わせであってもよいが、これに、特に制限されるものではない。
【0073】
より具体的には、
前記1)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの細胞内コピー数の増加は、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが作動可能に連結された、宿主とは無関係に複製して機能し得るベクターの宿主細胞内への導入により達成されるものであってもよい。または、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、宿主細胞内の染色体内に1コピーまたは2コピー以上の導入により達成されるものであってもよい。前記染色体内への導入は、宿主細胞内の染色体内に前記ポリヌクレオチドを挿入することができるベクターが宿主細胞内に導入されることにより行うことができるが、これらに制限されない。前記ベクターは、前述の通りである。
【0074】
前記2)ポリペプチドをコードする染色体上の遺伝子発現調節領域(または発現調節配列)の変形は、例えば、前記発現調節領域の活性をさらに強化するように欠失、挿入、非保存的若しくは保存的置換またはそれらの組み合わせにより配列上の変異の発生、より強い活性を有する配列への交換であってもよい。前記発現調節領域は、特にこれに制限されないが、プロモーター、オペレーター配列、リボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写及び解読の終結を調節する配列などを含み得る。一例として、本来のプロモーターを強力なプロモーターと交換させることであってもよいが、これらに制限されない。
【0075】
公知となった強力なプロモーターの例としては、cj1~cj7プロモーター(米国登録特許US 7662943 B2)、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、ラムダファージPRプロモーター、PLプロモーター、tetプロモーター、gapAプロモーター、SPL7プロモーター、SPL13(sm3)プロモーター(米国登録特許US 10584338 B2)、O2プロモーター(米国登録特許US 10273491 B2)、tktプロモーター、yccAプロモーターなどがあるが、これらに制限されない。
【0076】
前記3)ポリペプチドをコードする遺伝子転写体の開始コドンまたは5’-UTR領域をコードする塩基配列の変形は、例えば、内在的開始コドンに比べてポリペプチド発現率がより高い他の開始コドンをコードする塩基配列で置換することであってもよいが、これらに制限されない。
【0077】
前記4)及び5)のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列の変形は、ポリペプチドの活性を強化するように、前記ポリペプチドのアミノ酸配列または前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を欠失、挿入、非保存的若しくは保存的置換、またはこれらの組み合わせにより配列上の変異の発生、またはより強い活性を有するように改良されたアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列または活性が増加するように改良されたアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列への交換であってもよいが、これらに限定されるものではない。前記交換は、具体的には、相同組換えによりポリヌクレオチドを染色体内に挿入することにより行うことができるが、これらに制限されない。このときに使用されるベクターは、染色体の挿入有無を確認するための選別マーカー(selection marker)をさらに含んでもよい。前記選別マーカーは、前述の通りである。
【0078】
前記6)ポリペプチドの活性を示す外来ポリヌクレオチドの導入は、前記ポリペプチドと同一/類似の活性を示すポリペプチドをコードする外来ポリヌクレオチドの宿主細胞内の導入であってもよい。前記外来ポリヌクレオチドは、前記ポリペプチドと同一/類似の活性を示す限り、その由来や配列に制限はない。前記導入に用いられる方法は、公知の形質転換方法を当業者が適宜選択して行うことができ、宿主細胞内で前記導入されたポリヌクレオチドが発現されることによりポリペプチドが生成し、その活性が増加され得る。
【0079】
前記7)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのコドン最適化は、内在ポリヌクレオチドが宿主細胞内で転写または翻訳が増加するようにコドン最適化したものであるか、または外来ポリヌクレオチドが宿主細胞内で最適化された転写、翻訳が行われるようにそのコドンを最適化したものであってもよい。
【0080】
前記8)ポリペプチドの三次構造を分析して露出部位を選択して変形または化学的に修飾することは、例えば、分析しようとするポリペプチドの配列情報を既知のタンパク質の配列情報が格納されたデータベースと比較することにより、配列の類似性の程度にしたがって、鋳型タンパク質の候補を決定し、それに基づいて構造を確認し、変形または化学的に修飾する露出部位を選択して変形または修飾することであってもよい。
【0081】
このようなポリペプチド活性の強化は、対応するポリペプチドの活性または濃度発現量が野生型や変形前の微生物菌株で発現されたポリペプチドの活性または濃度を基準にして増加するか、または当該ポリペプチドから生産される産物の量の増加することであってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0082】
本出願における用語、ポリペプチド活性の「弱化」は、内在的活性に比べて活性が減少または活性がないことを全て含む概念である。前記弱化は、不活性化(inactivation)、欠乏(deficiency)、下方制御(down-regulation)、減少(decrease)、低下(reduce)、減衰(attenuation)などの用語と混用され得る。
【0083】
前記弱化は、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの変異などにより、ポリペプチド自体の活性が本来微生物が有しているポリペプチドの活性に比べて減少または除去された場合、それをコードするポリヌクレオチドの遺伝子の発現阻害またはポリペプチドへの翻訳(translation)阻害などにより細胞内で全体的なポリペプチド活性程度及び/又は濃度(発現量)が天然型菌株に比べて低い場合、前記ポリヌクレオチドの発現が全く行われていない場合、及び/又はポリヌクレオチドの発現にもかかわらず、ポリペプチドの活性がない場合も含むことができる。前記「内在的活性」とは、天然または人為的要因による遺伝的変異により形質が変化した場合、形質変化前の親株、野生型または非変形微生物が本来有していた特定のポリペプチドの活性を意味する。これは、「変形前の活性」と混用され得る。ポリペプチドの活性が内在的活性に比べて「不活性化、欠乏、減少、下方制御、低下、減衰」するということは、形質変化前の親株または非変形微生物が本来有していた特定のポリペプチドの活性に比べて低下したことを意味する。
【0084】
そのようなポリペプチドの活性の弱化は、当業界に知られた任意の方法により行うことができるが、これらに制限されるものではなく、当該分野においてよく知られている多様な方法の適用により達成することができる(例えば、Nakashima N et al.,Bacterial cellular engineering by genome editing and gene silencing. Int J Mol Sci. 2014;15(2):2773-2793,Sambrook et al. Molecular Cloning 2012など)。
【0085】
具体的には、本出願のポリペプチド活性の弱化は、
1)ポリペプチドをコードする遺伝子の全部または一部の欠損;
2)ポリペプチドをコードする遺伝子の発現が減少するように発現調節領域(または発現調節配列)の変形;
3)ポリペプチドの活性が除去または弱化されるように、前記ポリペプチドを構成するアミノ酸配列の変形(例えば、アミノ酸配列上の1以上のアミノ酸の削除/置換/付加);
4)ポリペプチドの活性が除去または弱化されるように、前記ポリペプチドをコードする遺伝子配列の変形(例えば、ポリペプチドの活性が除去または弱化されるように変形されたポリペプチドをコードするように、前記ポリペプチド遺伝子の核酸塩基配列上の1以上の核酸塩基の削除/置換/付加);
5)ポリペプチドをコードする遺伝子転写体の開始コドンまたは5’-UTR領域をコードする塩基配列の変形;
6)ポリペプチドをコードする前記遺伝子の転写体に相補的で結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスRNA)の導入;
7)リボソーム(ribosome)の付着が不可能な二次構造物を形成させるためにポリペプチドをコードする遺伝子のシャイン・ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列の前にシャイン・ダルガノ配列と相補的な配列の付加;
8)ポリペプチドをコードする遺伝子配列のORF(open reading frame)の3’末端に反対方向に転写されるプロモーターの付加(Reverse transcription engineering,RTE);または
9)前記1)~8)から選択された2以上の組み合わせであってもよいが、これに特に制限されるものではない。
【0086】
例えば、
前記1)ポリペプチドをコードする前記遺伝子の一部または全部の欠損は、染色体内の内在的目的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド全体の除去、一部のヌクレオチドが欠失したポリヌクレオチドへの交換またはマーカー遺伝子への交換であってもよい。
また、前記2)発現調節領域(または発現調節配列)の変形は、欠失、挿入、非保存的若しくは保存的置換、またはそれらの組み合わせにより発現調節領域(または発現調節配列)上の変異が発生、又は更に弱い活性を有する配列への交換であってもよい。前記発現調節領域には、プロモーター、オペレーター配列、リボソーム結合部位をコードする配列、及び転写と解読の終結を調節する配列を含むが、これらに限定されるものではない。
【0087】
また、前記5)ポリペプチドをコードする遺伝子転写体の開始コドンまたは5’-UTR領域をコードする塩基配列変形は、例えば、内在的開始コドンに比べてポリペプチド発現率がより低い他の開始コドンをコードする塩基配列で置換するものであってもよいが、これらに制限されない。
【0088】
また、前記3)及び4)のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列の変形は、ポリペプチドの活性を弱化するように、前記ポリペプチドのアミノ酸配列または前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を欠失、挿入、非保存的若しくは保存的置換、またはそれらの組み合わせにより配列上の変異の発生、またはより弱い活性を有するように改良されたアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列もしくは活性がないように改良されたアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列への交換であってもよいが、これに限定されるものではない。例えば、ポリヌクレオチド配列内の変異を導入して終結コドンを形成することにより、遺伝子の発現を阻害または弱化させることができるが、これに制限されない。
【0089】
前記6)ポリペプチドをコードする前記遺伝子の転写体に相補的に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスRNA)の導入は、例えば、文献[Weintraub,H. et al.,Antisense-RNA as a molecular tool for genetic analysis,Reviews - Trends in Genetics,Vol. 1(1) 1986]を参考することができる。
【0090】
前記7)リボソーム(ribosome)の付着が不可能な二次構造物を形成させるために、ポリペプチドをコードする遺伝子のシャイン・ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列の前にシャイン・ダルガノ配列と相補的な配列の付加はmRNA翻訳を不可能にするか、または速度を低下させるものであってもよい。
【0091】
前記8)ポリペプチドをコードする遺伝子配列のORF(open reading frame)の3’末端に反対方向に転写されるプロモーターの付加(Reverse transcription engineering,RTE)は、前記ポリペプチドをコードする遺伝子の転写体に相補的なアンチセンスヌクレオチドを作って活性を弱化するものであってもよい。
【0092】
本出願の微生物においてポリヌクレオチドの一部または全部の変形は、(a)微生物内の染色体挿入用ベクターを用いた相同組換えまたは遺伝子はさみ(engineered nuclease,e.g.,CRISPR-Cas9)を用いたゲノム編集及び/又は(b)紫外線及び放射線などのような光及び/又は化学物質の処理により誘導されてもよいが、これらに制限されない。前記遺伝子の一部または全体の変形方法には、DNA組換え技術による方法を含むことができる。例えば、目的遺伝子と相同性のあるヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列またはベクターを前記微生物に注入して相同組換え(homologous recombination)を起こさせるようにして、遺伝子の一部または全体の欠損がなされてもよい。前記注入されるヌクレオチド配列またはベクターは、優性選別マーカーを含んでもよいが、これらに制限されるものではない。
【0093】
また、前記微生物は、さらにOPSの細胞中への流入及び分解能力を減少させた微生物であってもよい。
【0094】
前記のようなOPS生産微生物に関する内容は、前記内容以外にも欧州公開特許EP 2444481または米国公開公報第2012-0190081号などに開示された内容が本出願の参考資料として用いられるが、これに制限されない。
【0095】
本出願の微生物において、変異体、ポリヌクレオチド及びOPSなどは、前記他の様態で記載した通りである。
【0096】
本出願のもう一つの態様は、配列番号1のアミノ酸配列の125番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたMdtH変異体または前記変異体をコードするポリヌクレオチドを含む微生物を培地で培養する段階を含む、O-ホスホセリンの生産方法である。
【0097】
本出願のOPS生産方法は、本出願の変異体または本出願のポリヌクレオチドまたは本出願のベクターを含む微生物を培地で培養する段階を含むことができる。
【0098】
本出願において、用語「培養」とは、本出願の微生物を適切に調節された環境条件で生育させることを意味する。本出願の培養過程は、当業界に知られている適当な培地と培養条件に応じて行うことができる。このような培養過程は、選択される菌株に応じて当業者が容易に調整して使用することができる。具体的には、前記培養は、回分式、連続式及び/又は流加式であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0099】
本出願において、用語「培地」とは、本出願の微生物を培養するために必要とする栄養物質を主成分として混合した物質を意味し、生存及び発育に不可欠な水をはじめとする栄養物質及び発育因子などを供給する。具体的には、本出願の微生物の培養に用いられる培地及びその他の培養条件は、通常の微生物の培養に使用される培地であれば、特に制限なくいずれも使用できるが、本出願の微生物を適当な炭素源、窒素源、リン源、無機化合物、アミノ酸及び/又はビタミンなどを含有する通常の培地内で好気性条件下で温度、pHなどを調節しながら培養することができる。
【0100】
前記培地に含まれる炭素源は、グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、澱粉、セルロースのような糖及び炭水化物、大豆油、ひまわり油、ひまし油、ココナッツ油などのようなオイル及び脂肪、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸のような脂肪酸、グリセロール、エタノールのようなアルコール、酢酸のような有機酸を含むことができ、これらの物質は、個別的にまたは混合物として使用されてもよいが、これらに制限されるものではない。
【0101】
前記培地に含まれる窒素源として、ペプトン、酵母抽出物、肉汁、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液及び大豆粕のような有機窒素源及び尿素、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び硝酸アンモニウムのような無機窒素源が含まれ、これらの窒素源は、単独または組み合わせて使用されてもよいが、これらに制限されるものではない。
【0102】
前記培地に含まれるリン源として、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム及び対応するナトリウム含有塩が含まれてもよいが、これらに制限されるものではない。
【0103】
また、前記培地は、硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄のような金属塩を含むことができ、それ以外にアミノ酸、ビタミン及び適切な前駆体などが含まれてもよい。これらの培地または前駆体は、培養物に回分式または連続式で添加されてもよいが、これらに制限されるものではない。
【0104】
培養中に水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アンモニア、リン酸及び硫酸のような化合物を培養物に適切な方式で添加し、培養物のpHを調整することができる。また、培養中は脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を用いて気泡生成を抑制することができる。また、培地の好気状態を維持するために、培地内に酸素または酸素含有気体を注入したり、嫌気及び微好気状態を維持するために、気体の注入なしに、あるいは窒素、水素または二酸化炭素ガスを注入することができ、これらに限定されるものではない。
【0105】
本出願の培養において、培養温度は25℃~40℃、具体的には30℃~35℃を維持することができ、培養期間は、所望の有用物質の生産量が得られるまで続けるが、具体的には10~100時間であってもよい。しかし、これらの例示に制限されるものではない。
【0106】
本出願の培養により生産されたOPSは、培地中に分泌することができる。
【0107】
本出願のOPS生産方法は、本出願の微生物を準備する段階、前記微生物を培養するための培地を準備する段階、またはこれらの組み合わせ(順は無関係、in any order)を、例えば、前記培養する段階の前に、さらに含むことができる。
【0108】
本出願のOPS生産方法は、前記培養による培地(培養が行われた培地)または本出願の微生物からOPSを回収する段階をさらに含むことができる。前記回収する段階は、前記培養する段階の後にさらに含むことができる。
【0109】
前記OPSを回収する方法は、本出願の微生物の培養方法、例えば、回分式、連続式または流加式培養方法などにより当該技術分野において公知となった適切な方法を用いて所望のOPSを収集(collect)することであってもよい。例えば、遠心分離、濾過、結晶化タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、抽出、超音波破砕、限外濾過、透析法、モレキュラーシーブクロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィー、HPLCまたはそれらの方法を組み合わせて使用することができ、当該分野において公知となった適切な方法を用いて培地または微生物から所望のOPSを回収することができる。
【0110】
また、本出願のOPS生産方法は、さらに精製段階を含んでもよい。前記精製は、当該技術分野において公知となった適切な方法を用いて行うことができる。一例として、本出願のOPS生産方法が回収段階と精製段階の両方を含む場合、前記回収段階及び精製段階は、順序に関係なく連続的または非連続的に行われるか、または同時にまたは一つの段階に統合されて行うことができるが、これに制限されるものではない。
【0111】
本出願の方法において、変異体、ポリヌクレオチド、ベクター及び菌株などは、前記他の様態で記載した通りである。
【0112】
本出願のもう一つの態様は、システインまたはその誘導体の生産方法である。
【0113】
具体的には、前記方法は、a)配列番号1のアミノ酸配列の125番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたMdtH変異体または前記変異体をコードするポリヌクレオチドを含む微生物を培地で培養し、O-ホスホセリンまたはそれを含む培地を生産する段階と;b)O-ホスホセリンスルフヒドリラーゼ(O-phosphoserine sulfliydrylase,OPSS)またはそれを発現する微生物及びa)段階で生産されたO-ホスホセリンまたはそれを含む培地を硫化物と反応させる段階と;を含むものであってもよい。
【0114】
本出願において、用語「誘導体」はある化合物の一部を化学的に変化させて得られる類似の化合物として、たいてい化合物のうち水素原子または特定原子団が違う原子または原子団によって置換された化合物を意味する。
【0115】
本出願において、用語「システイン誘導体」とは、システインの水素原子または特定の原子団が他の原子または原子団により置換された化合物を意味する。その例として、システインのアミン基(-NH2)の窒素原子またはチオール基(-SH)の硫黄原子に他の原子または原子団が付着した形態であってもよく、その例としてNAC(N-acetylcysteine)、SCMC(S-Carboxymetylcysteine)、BOC-CYS(ME)-OH、(R)-S-(2-Amino-2-carboxyethyl)-L-homocysteine、(R)-2-Amino-3-sulfopropionic acid、D-2-Amino-4-(ethylthio)butyric acid、3-sulfino-L-alanine、Fmoc-Cys(Boc-methyl)-OH、Seleno-L-cystine、S-(2-Thiazolyl)-L-cysteine、S-(2-Thienyl)-L-cysteine、S-(4-Tolyl)-L-cysteineなどがあるが、これに制限されない。
【0116】
本出願の方法によりシステインを生産しさえすれば、システイン誘導体への変換は、当業界に広く知られた方法で容易に多様なシステイン誘導体への変換が可能であってもよい。
【0117】
具体的には、前記システイン誘導体の生産方法は、前記b)段階で生成されたシステインをシステイン誘導体に変換させる段階をさらに含むものであってもよい。一例として、システインをアセチル化剤(acetylation agent)と反応させてNAC(N-acetylcysteine)を合成するか、またはシステインを塩基性条件でハロ酢酸(haloacetic acid)と反応させることによりSCMC(S-Carboxymetylcysteine)を合成することができるが、これらに制限されない。
【0118】
前記システイン誘導体は、主に、製薬原料として鎮咳剤、咳緩和剤、気管支炎、気管支喘息と咽喉炎などの治療剤として使用され得るが、これらに制限されない。
【0119】
本出願において、用語「O-ホスホセリンスルフヒドリラーゼ(O-phosphoserine sulfhydrylase,OPSS)」とは、OPSにチオール基(thiol,group、SH基)を提供して前記OPSをシステインに転換する反応を触媒する酵素を意味する。前記酵素は、アエロピルム・ペルニクス(Aeropymm pernix)、マイコバクテリウム・トゥバキュロウシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・スメグマティス(Mycobacterium megmatics)、トリコモナス・バギナリス(Trichomonas vaginalis)(Mino K and Ishikawa K、FEBSletters、551:133-138,2003;Bums K E et al. J. Am. Chem. Soc、127:11602-11603,2005)で初めて明らかになったことであってもよい。また、前記OPSSは、野生型OPSSタンパク質だけでなく、前記OPSSをコードするポリヌクレオチド配列中の一部の配列が欠失、置換または付加された配列であり、野生型OPSSタンパク質の生物学的活性と同等またはそれ以上の活性を示す変異体タンパク質も含み、欧州公開特許EP 2444481及び米国登録特許US 9127324に開示されたOPSSタンパク質及びその変異体タンパク質もすべて含むことができる。
【0120】
前記硫化物は、当該技術分野において通常用いる固形だけでなく、pH、圧力、溶解度の差により液体または気体の形態で提供され、サルファイド(sulfide,S2-)、チオサルフェイト(thiosulfate,S2O3
2-)などの形態でチオール基(thiol group、SH基)に転換され得る硫化物であれば、制限なく用いることができる。具体的には、チオール基をOPSに提供するNa2S、NaSH、H2S、(NH4)2S、NaSH及びNa2S2O3を使用することができるが、これらに制限されない。前記反応は、一つのOPS反応基に一つのチオール基を提供して一つのシステインまたはシステイン誘導体を製造する反応であり、前記反応時に硫化物の添加量は、OPSモル濃度の0.1~3倍であってもよく、具体的には1~2倍であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0121】
また、本出願においては、さらに前記反応段階を通じて生産されたシステインを回収する段階を含むことができる。そのとき、当該分野において公知となった適切な反応を用いて反応液から所望のシステインを分離及び精製して収集することができる。
【0122】
本出願のもう一つの態様は、配列番号1のアミノ酸配列の125番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたMdtH変異体または前記変異体をコードするポリヌクレオチドを含む微生物;それを培養した培地;またはそれらのうちの2以上の組み合わせを含むOPS生産用組成物である。
【0123】
本出願の組成物は、OPS生産用組成物に通常使用される任意の適切な賦形剤をさらに含むことができ、このような賦形剤は、例えば、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤または等張化剤などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0124】
本出願の組成物において、変異体、ポリヌクレオチド、ベクター、菌株、培地及びOPSなどは、前記他の様態で記載した通りである。
【0125】
本出願のもう一つの態様は、本出願のOPS排出活性を示す変異型ポリペプチドのOPS、システインまたはシステインの誘導体生産への使用である。
【0126】
本出願のもう一つの態様は、本出願のOPS排出活性を示す変異型ポリペプチドを有するポリペプチドの、OPSを微生物から排出するための使用である。
【0127】
本出願の使用において、変異体、ポリヌクレオチド、ベクター、菌株、培地及びOPSなどは、前記他の様態で記載した通りである。
【0128】
以下、本出願を実施例を通じてより詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は本出願を例示的に説明するためのものであり、本出願の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0129】
実施例1:mdtHライブラリーの製作及びスクリーニング
OPS排出活性が増加したMdtH変異体を選定するために、mdtH遺伝子変異体プラスミドのライブラリーを製作した。具体的な過程は、下記の通りである。
【0130】
E.coli K12 W3110(Genbank:NC_007779.1)のゲノムDNAを鋳型として、配列番号9及び10のプライマー対(primer 3及び8)を用いて任意の突然変異誘発PCRを行った(Takara Diversify PCR random mutagenesis kit,Cat no. 630703)。
【0131】
PCRは、94℃で5分間変性後、94℃で30秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、72℃で1分間の重合を20回繰り返した後、72℃で5分間重合反応を行った。
【0132】
このような過程で製作された突然変異の遺伝子断片をtrcプロモーターがあるpCL1920ベクター(GenBank No AB236930)に入れるために、まず、pCL_Ptrcを製作した。trcプロモーター断片を確保するために、配列番号7及び8のプライマー対(primer 1及び2)を用いてPCRを行った。PCRは、94℃で5分間変性後、94℃で30秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、72℃で1分間の重合を30回繰り返した後、72℃で5分間重合反応を行った。
【0133】
ここで使用されたプライマー配列は、下記表1の通りである。
【0134】
【0135】
EcoRIとSalIで切断されたpCL1920ベクターにtrcプロモーター断片をインフュージョンクローニングキット(in-fusion cloning kit,Clontech Laboratories,Inc.)を用いてクローニングし、pCL_Ptrcを確保した。確保したベクターpCL_PtrcベクターをPstI、EcoRVで切断した後、前記PCRを通じて得られた突然変異の遺伝子断片をインフュージョンクローニングキットを使用してクローニングした。クローニングは、50℃で60分間反応させて行われ、これを通じてpCL_Ptrc-mdtH遺伝子変異体プラスミドライブラリーを製作した。
【0136】
製作されたpCL_Ptrc-mdtH遺伝子変異体プラスミドライブラリーをCA07-0012(KCCM 11121P、欧州公開特許EP 2444481または米国公開公報第2012-0190081号)に電気穿孔法で形質転換させた。そのうち、変異体を含む菌株2種を選別し、それからプラスミドを得てシークエンシング技法を通じて塩基配列を分析した。
【0137】
塩基配列の分析結果、選別された2種の変異体は、野生型MdtHのアミノ酸配列で125番目のアミノ酸残基のバリンがイソロイシンで置換された変異体[mdtH(V125I)]、60番目アミノ酸残基のグルタミンがアルギニンで置換され、125番目のアミノ酸残基のバリンがイソロイシンで置換され、180番目のアミノ酸残基のフェニルアラニンがロイシンで置換され、398番目のアミノ酸残基のロイシンがプロリンで置換された変異体[mdtH(Q60R、V125I、F180L、L398P)]であることを確認した。前記変異体mdtH(V125I)が形質転換された菌株CA07-0012/pCL_Ptrc-mdtH(V125I)をE.coli CA07-0379と、前記変異体mdtH(Q60R、V125I、F180L、L398P)が形質転換された菌株CA07-0012/pCL_Ptrc-mdtH(Q60R、V125I、F180L、L398P)をE.coli CA07-0380と命名した。
【0138】
実施例2:MdtH変異体導入菌株のOPS生産能の評価
MdtH変異体が導入された菌株のOPS生産能を下記培地(表2)を用いて評価した。
【0139】
【0140】
具体的には、培養は、それぞれの菌株をLB固体培地に塗抹した後、33℃の培養器で一晩中培養した。LB固体培地で一晩中培養した菌株を表2の25mLの力価培地に接種した後、それを33℃の温度で200rpmで培養器で48時間培養し、OPS生産能を評価し、その結果を下記表3に示した。
【0141】
【0142】
その結果、mdtH(V125I)が導入された菌株CA07-0012/pCL_Ptrc-mdtH(V125I)の場合、野生型mdtHが導入された菌株CA07-0012/pCL_Ptrc-mdtHに比べて約180%の生産能を示した。また、mdtH(Q60R、V125I、F180L、L398P)が導入された菌株CA07-0012/pCL_Ptrc-mdtH(Q60R、V125I、F180L、L398P)の場合、菌株CA07-0012/pCL_Ptrc-mdtHに比べて約237%の生産能を示した。
【0143】
前記CA07-0012/pCL_Ptrc-mdtH(V125I)はCA07-0379と命名し、CA07-0012/pCL_Ptrc-mdtH(Q60R、V125I、F180L、L398P)はCA07-0380と命名した。
【0144】
以上の説明から、本出願が属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願の範囲は前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本出願の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】