(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ポリヌクレオチド組成物、関連する製剤及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7105 20060101AFI20240517BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240517BHJP
A61K 31/56 20060101ALI20240517BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240517BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240517BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240517BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240517BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K31/7105
A61P11/00
A61K31/56
A61P43/00 121
A61K48/00
A61K9/12
A61K47/20
A61K47/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576050
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 US2022032643
(87)【国際公開番号】W WO2022261185
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523462343
【氏名又は名称】レコード・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】トーレス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ブドク,ドミトリ
(72)【発明者】
【氏名】メレシュケビッチ,エラ
(72)【発明者】
【氏名】コクラン,メリッサ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076AA93
4C076BB25
4C076BB27
4C076CC04
4C076CC29
4C076DD57
4C076DD63
4C084AA13
4C084MA02
4C084MA13
4C084MA55
4C084MA59
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA08
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA55
4C086MA59
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZC75
(57)【要約】
(1又は複数の)ポリヌクレオチドの組成物、その医薬組成物、及びその使用方法が開示される。ポリヌクレオチドは、合成転移リボ核酸(tRNA)であり得るか、又はそれをコードし得る。ポリヌクレオチドは、対象の肺細胞又は肺等の細胞又は器官に送達するための脂質組成物とアセンブルされ得る。細胞における嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)タンパク質の発現又は活性を増強するための方法が提供される。CFTR関連症状を有するか又は有する疑いがある対象を治療する方法も提供される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質組成物とアセンブルされた合成転移リボ核酸(tRNA)を含む組成物であって、脂質組成物が双性イオン性脂質を含み、前記組成物がエアロゾル組成物である、組成物。
【請求項2】
脂質組成物とアセンブルされた合成転移リボ核酸(tRNA)を含む組成物であって、前記脂質組成物が双性イオン性脂質を含み、前記組成物がエアロゾル投与用に製剤化される、組成物。
【請求項3】
0.5マイクロメートル(μm)~10μmの液滴サイズを有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、0.5μm~10μmの中央液滴サイズを有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、0.5μm~10μmの平均液滴サイズを有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記合成tRNAが折り畳まれたtRNAである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記折り畳まれたtRNAが、Tアーム、Dアーム、アンチコドンアーム、可変ループ、アクセプターステム、又はそれらの組合せを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記合成tRNAが、未熟終止コドンを認識するように構成されたアンチコドンアームを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記合成tRNAが、アルギニンに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記tRNAが、配列番号1~20から選択される配列に対して少なくとも約80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記双性イオン性脂質対前記合成tRNAの質量比又は重量比が、約50:1、40:1、30:1、又は20:1以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記脂質組成物が、前記双性イオン性脂質を約1%~約60%のモルパーセントで含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記脂質組成物が、ステロイド又はステロイド誘導体を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記脂質組成物が、前記ステロイド又はステロイド誘導体を約20%~約60%のモルパーセントで含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記脂質組成物が、ポリマー複合脂質を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記脂質組成物が、前記ポリマー複合脂質を約0.5%~約12%のモルパーセントで含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記脂質組成物中の窒素と前記合成tRNAにおけるリン酸とのモル比(N/P比)が約50:1、40:1、30:1、20:1、又は10:1以下である、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記双性イオン性脂質がスルホン酸アニオンを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記双性イオン性脂質が第四級アンモニウムカチオンを更に含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記双性イオン性脂質が、アルキル化又はアルケニル化リン酸アニオンを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記アルキル化又はアルケニル化リン酸アニオンが構造式
【化1】
を有し、式中、Rはアルキル又はアルケニルであり、nは、1、2、3、4、5、又は6であり、*はアルキル化又はアルケニル化リン酸アニオンの結合点を示す、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
*が、前記アルキル化又はアルケニル化リン酸アニオンの第四級アンモニウムカチオンへの結合点を示す、請求項20又は21に記載の組成物。
【請求項23】
細胞における嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator:CFTR)タンパク質の発現又は活性を増強する方法であって、
前記細胞を、脂質組成物とアセンブルされた転移リボ核酸(tRNA)を含む組成物と接触させて、前記細胞におけるCFTRタンパク質の成長中のペプチド鎖にアミノ酸を導入し、
それによって、接触の少なくとも48時間後に、前記細胞においてCFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効量又は治療有効活性を生じさせ、CFTRタンパク質の前記機能的バリアントの前記治療有効活性は、前記接触の非存在下での参照の複数の細胞のものと比較して、前記細胞を含む複数の細胞に特徴的な経上皮イオン輸送の変化を測定することによって決定されていてもよい、方法。
【請求項24】
CFTR遺伝子に変異を示す又は示す疑いがある対象の細胞における嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)タンパク質の発現又は活性を増強する方法であって、
前記細胞を、脂質組成物とアセンブルされた転移リボ核酸(tRNA)を含む組成物と接触させて、前記細胞におけるCFTRタンパク質の成長中のペプチド鎖の、前記対象の前記CFTR遺伝子における前記変異に対応する位置にアミノ酸を導入し、
それによって、前記細胞におけるCFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効量又は治療有効活性がもたらされ、CFTRタンパク質の前記機能的バリアントの前記治療有効活性は、前記接触の非存在下での参照の複数の細胞のものと比較して、前記細胞を含む複数の細胞の経上皮イオン輸送特性の変化を測定することによって決定されていてもよい、方法。
【請求項25】
前記方法が、前記細胞におけるCFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効量又は活性を接触後少なくとも72時間でもたらす、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記接触が繰り返される、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記接触が少なくとも週に1回である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記接触が少なくとも週に2回である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
各接触の少なくとも24時間後に前記細胞においてCFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効量又は活性をもたらす、請求項23~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記接触が第1の接触であり、前記方法が、前記第1の接触の少なくとも約1、2、又は3日後に行われていてもよい第2の接触を含む、請求項23~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
第3の接触を更に含み、前記第3の接触が、前記第2の接触の少なくとも約1、2、又は3日後に行われていてもよい、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記方法が、第2の接触の少なくとも24時間後に、前記細胞においてCFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効量又は活性をもたらす、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記方法が、第3の接触の少なくとも24時間後に、前記細胞においてCFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効量又は活性をもたらす、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
各接触における前記組成物が同一である、請求項23~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞が肺気道細胞である、請求項23~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞が肺分泌細胞である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞が気管支上皮細胞である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞が未分化である、請求項23~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記細胞が分化される、請求項23~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞が前記対象に由来する、請求項23~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記接触がインビボである、請求項23~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記接触がインビトロである、請求項23~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記接触がエクスビボである、請求項23~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
CFTRタンパク質の前記機能的バリアントが野生型CFTRタンパク質である、請求項23~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
CFTRタンパク質の前記機能的バリアントが完全長CFTRタンパク質である、請求項23~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
CFTRタンパク質の前記機能的バリアントの前記治療有効活性が、例えば、インビトロアッセイで決定される場合、少なくとも約2マイクロアンペア(μA)の経上皮電流に対応する、請求項23~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
CFTRタンパク質の前記機能的バリアントの前記治療有効活性が、例えば、インビトロアッセイで決定される場合、約2マイクロアンペア(μA)~約30μAの経上皮電流に対応する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
CFTRタンパク質の前記機能的バリアントの前記治療有効活性が、例えばインビトロアッセイで決定される場合、少なくとも約2マイクロアンペア(μA)/平方センチメートル/分(μA・cm
-2・ 分
-1)の経上皮電流に対応する、請求項23~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
CFTRタンパク質の前記機能的バリアントの前記治療有効活性が、例えばインビトロアッセイで決定される場合、約2マイクロアンペア(μA)/平方センチメートル/分(μA・cm
-2・分
-1)~約30μA・cm
-2・分
-1の経上皮電流に対応する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記方法が、対応する対照(例えば、前記接触していない対応する細胞の細胞)と比較して、前記細胞におけるCFTRタンパク質の前記機能的バリアントの量又は活性を増加(例えば、少なくとも約1.1倍)させる、請求項23~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記方法が、対応する対照(例えば、前記接触していない対応する細胞の細胞)と比較して、前記細胞における(例えば、塩化物)イオン輸送を(例えば、少なくとも約1.1倍)増強する、請求項23~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記変異が機能喪失変異である、請求項23~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記変異がナンセンス変異又はフレームシフト変異である、請求項23~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記変異がCFTR遺伝子のエクソン11~27のうちの1又は複数にある、請求項23~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記変異がR553X又はF508delである、請求項23~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記tRNAがサプレッサーtRNAである、請求項23~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記tRNAが、配列番号1~20から選択される配列に対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む、請求項23~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記脂質組成物とアセンブルされた前記tRNAを含む前記組成物がエアロゾルである、請求項23~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記組成物がアピカル送達用に製剤化される、請求項23~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記組成物がネブライゼーション用に製剤化される、請求項23~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)関連症状を有する又は有する疑いがある対象を治療する方法であって、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項62】
前記CFTR関連状態が、嚢胞性線維症、遺伝性気腫、又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)である、請求項44に記載の方法。
【請求項63】
前記対象が哺乳動物である、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項64】
前記対象がヒトである、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項65】
前記投与がネブライゼーションによる吸入を含む、請求項44~47のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2021年6月9日に出願された米国仮出願第63/208,957号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
転移RNA(tRNA)等の核酸は、タンパク質及びポリペプチドを発現するために細胞によって使用され得る。いくつかの細胞は、特定のタンパク質又は核酸が欠損しており、疾患状態をもたらし得る。細胞はまた、タンパク質合成反応において使用され得る外因性tRNAを取り込み、使用することができるが、多くの因子がtRNAの効率的な取り込み及び翻訳に影響を及ぼす。例えば、免疫系は、多くの外因性RNAを外来RNAとして認識し、RNAを不活性化することを目的とした応答を誘発する。
【発明の概要】
【0003】
核酸を送達するための組成物及び方法がここに提供される。核酸を治療薬として使用してもよい。特に、tRNAは対象の細胞に送達され得る。細胞に核酸を送達すると、その核酸を使用してポリペプチドを合成することができる。疾患又は障害を有する細胞又は対象の場合、核酸は、ポリペプチドの発現を増加させることによって治療薬として作用するのに有効であり得る。障害又は疾患が引き起こされるか、又はポリペプチドの異常な発現又は活性と相関する場合、ポリペプチドの発現の増加は有益であり得る。しかし、細胞は、外因性核酸の取り込みが制限されている可能性があり、核酸の送達は、核酸の取り込みを増加させることを可能にする組成物から利益を得ることができる。
【0004】
更に、治療は、臓器特異的送達から利益を得ることができる。化学療法剤等の多くの異なる種類の化合物は、有意な細胞傷害性を示す。これらの化合物が所望の器官への送達に向けてより良好に方向付けられ得る場合、標的外効果はより少なく見られる。
【0005】
一態様では、本開示は、脂質組成物とアセンブルされた合成転移リボ核酸(tRNA)を含む組成物を提供し、脂質組成物が双性イオン性脂質を含み、組成物がエアロゾル組成物である。
【0006】
別の態様では、本開示は、脂質組成物とアセンブルされた合成転移リボ核酸(tRNA)を含む組成物であって、脂質組成物が双性イオン性脂質を含み、組成物がエアロゾル投与用に製剤化される、組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、0.5マイクロメートル(μm)~10μmの液滴サイズを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、0.5μm~10μmの中央液滴サイズを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、0.5μm~10μmの平均液滴サイズを有する。いくつかの実施形態では、合成tRNAは、折り畳まれたtRNAである。いくつかの実施形態では、折り畳まれたtRNAは、Tアーム、Dアーム、アンチコドンアーム、可変ループ、アクセプターステム、又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、合成tRNAは、未熟終止コドンを認識するように構成されたアンチコドンアームを含む。いくつかの実施形態では、合成tRNAは、アルギニンに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含む。いくつかの実施形態では、tRNAは、配列番号1~20から選択される配列に対して少なくとも約80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む。双性イオン性脂質対合成tRNAの(例えば、重量又は質量)比が、約50:1、40:1、30:1、又は20:1以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、双性イオン性脂質を約1%~約60%のモルパーセントで含む。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、ステロイド又はステロイド誘導体を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、ステロイド又はステロイド誘導体を約20%~約60%のモルパーセントで含む。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、ポリマー複合脂質を更に含む。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、約0.5%~約12%のモルパーセントでポリマー複合脂質を含む。いくつかの実施形態では、合成tRNAにおけるリン酸に対する脂質組成物中の窒素のモル比(N/P比)は、約50:1、40:1、30:1、20:1又は10:1以下である。いくつかの実施形態では、双性イオン性脂質は、スルホン酸アニオンを含む。いくつかの実施形態では、双性イオン性脂質は、第四級アンモニウムカチオンを更に含む。いくつかの実施形態では、双性イオン性脂質は、アルキル化又はアルケニル化リン酸アニオンを含む。いくつかの実施形態では、アルキル化又はアルケニル化リン酸アニオンが構造式
【化1】
を有し、式中、Rはアルキル又はアルケニルであり、nは、1、2、3、4、5、又は6であり、*はアルキル化又はアルケニル化リン酸アニオンの結合点を示す。いくつかの実施形態では、*は、アルキル化又はアルケニル化リン酸アニオンの第4級アンモニウムカチオンへの結合点を示す。
【0007】
別の態様では、本開示は、細胞における嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator:CFTR)タンパク質の発現又は活性を増強する方法であって、細胞を、脂質組成物とアセンブルされた転移リボ核酸(tRNA)を含む組成物と接触させて、細胞におけるCFTRタンパク質の成長中のペプチド鎖にアミノ酸を導入し、それによって、接触の少なくとも48時間後に、細胞においてCFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効量又は活性を生じさせ、CFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効活性は、接触の非存在下での参照の複数の細胞のそれと比較して、細胞を含む複数の細胞に特徴的な経上皮イオン輸送の変化を測定することによって決定されていてもよい、方法を提供する。
【0008】
別の態様では、本開示は、CFTR遺伝子に変異を示す又は示す疑いがある対象の細胞における嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)タンパク質の発現又は活性を増強する方法であって、細胞を、脂質組成物とアセンブルされた転移リボ核酸(tRNA)を含む組成物と接触させて、細胞におけるCFTRタンパク質の成長中のペプチド鎖の、対象のCFTR遺伝子における変異に対応する位置にアミノ酸を導入し、それによって、細胞におけるCFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効量又は活性がもたらされ、CFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効活性は、接触の非存在下での参照の複数の細胞のものと比較して、細胞を含む複数の細胞の経上皮イオン輸送特性の変化を測定することによって決定されていてもよい、方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、細胞におけるCFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効量又は活性を、接触の少なくとも72時間後にもたらす。いくつかの実施形態では、接触が繰り返される。いくつかの実施形態では、接触は、少なくとも週に1回である。いくつかの実施形態では、接触は、少なくとも週に2回である。いくつかの実施形態において、方法は、細胞におけるCFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効量又は活性を、各接触の少なくとも24時間後にもたらす。いくつかの実施形態では、接触は第1の接触であり、方法は、第1の接触の少なくとも約1、2、又は3日後に行われていてもよい第2の接触を含む。いくつかの実施形態では、方法は、第3の接触を更に含み、第3の接触は、第2の接触の少なくとも約1、2、又は3日後に行われていてもよい。いくつかの実施形態において、方法は、細胞におけるCFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効量又は活性を、第2の接触の少なくとも24時間後にもたらす。いくつかの実施形態において、方法は、細胞におけるCFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効量又は活性を、第3の接触の少なくとも24時間後にもたらす。いくつかの実施形態では、各接触における組成物は同一である。いくつかの実施形態では、細胞は肺気道細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は肺分泌細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は気管支上皮細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は未分化である。いくつかの実施形態では、細胞は分化している。いくつかの実施形態において、細胞は対象に由来する。いくつかの実施形態では、接触はインビボである。いくつかの実施形態では、接触はインビトロである。いくつかの実施形態では、接触はエクスビボである。いくつかの実施形態では、CFTRタンパク質の機能的バリアントは、野生型CFTRタンパク質である。いくつかの実施形態では、CFTRタンパク質の機能的バリアントは、完全長CFTRタンパク質である。いくつかの実施形態では、CFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効活性は、例えば、インビトロアッセイで決定される場合、少なくとも約2マイクロアンペア(μA)の経上皮電流に対応する。いくつかの実施形態では、CFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効活性は、例えば、インビトロアッセイで決定される場合、約2マイクロアンペア(μA)~約30μAの経上皮電流に対応する。いくつかの実施形態では、CFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効活性は、例えばインビトロアッセイで決定される場合、少なくとも約2マイクロアンペア(μA)/平方センチメートル/分(μA・cm-2・ 分-1)の経上皮電流に対応する。いくつかの実施形態では、CFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効活性は、例えばインビトロアッセイで決定される場合、約2マイクロアンペア(μA)/平方センチメートル/分(μA・cm-2・分-1)~約30μA・cm-2・分-1の経上皮電流に対応する。いくつかの実施形態では、方法は、対応する対照(例えば、接触していない対応する細胞の細胞)と比較して、細胞(例えば、少なくとも約1.1倍)におけるCFTRタンパク質の機能的バリアントの量又は活性を増加させる。いくつかの実施形態では、方法は、対応する対照(例えば、接触していない対応する細胞の細胞)と比較して、細胞(例えば、少なくとも約1.1倍)におけるイオン輸送を増強(例えば、塩化物)する。いくつかの実施形態では、変異は、機能喪失変異である。いくつかの実施形態では、変異は、ナンセンス変異又はフレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、変異は、CFTR遺伝子のエクソン11~27のうちの1又は複数中にある。いくつかの実施形態では、変異は、R553Xである。いくつかの実施形態において、tRNAはサプレッサーtRNAである。いくつかの実施形態では、tRNAは、配列番号1~20から選択される配列に対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、脂質組成物とアセンブルされたtRNAを含む組成物はエアロゾルである。いくつかの実施形態では、組成物は、アピカル送達用に製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は噴霧(ネブライゼーション)のために製剤化される。
【0009】
別の態様では、本開示は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)関連症状を有する又は有する疑いがある対象を治療する方法であって、本明細書の他の箇所に記載される組成物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、CFTR関連状態は、嚢胞性線維症、遺伝性気腫、又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、投与は、噴霧(ネブライゼーション)による吸入を含む。
【0010】
本開示の更なる態様及び利点は、本開示の例示的な実施形態のみが示され説明される以下の詳細な説明から当業者には容易に明らかになるであろう。理解されるように、本開示は、他の異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、全て本開示から逸脱することなく、様々な明白な点で修正が可能である。したがって、図面及び説明は、本質的に例示と見なされるべきであり、限定と見なされるべきではない。
参照による組込み
【0011】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許、又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる刊行物及び特許又は特許出願が本明細書に含まれる開示と矛盾する限り、本明細書は、そのような矛盾する材料に取って代わる及び/又は優先することを意図している。
【0012】
特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。(1又は複数の)カラー図面を伴うこの特許又は特許出願公開の写しは、請求及び必要な料金の支払いに応じて特許庁によって提供される。
【0013】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、及び添付の図面(本明細書では「図」及び「FIG」もまた)を参照することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】単回投与による本開示のtRNA-LNP組成物を使用したCFTRの機能の救済を示す図である。
【
図1B】単回投与による本開示のtRNA-LNP組成物を使用したCFTRの機能の救済を示す図である。
【0015】
【
図2A】反復投与後の本開示のtRNA-LNP組成物を用いたCFTRの機能のレスキューを示す図である。
【
図2B】反復投与後の本開示のtRNA-LNP組成物を用いたCFTRの機能のレスキューを示す図である。
【0016】
【
図3A】G542X/F508delヒト気管支上皮細胞(hBE)における経時研究にわたる本開示のtRNA組成物を使用したCFTRの機能の救済を示す図である。
【
図3B】G542X/F508delヒト気管支上皮細胞(hBE)における経時研究にわたる本開示のtRNA組成物を使用したCFTRの機能の救済を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の様々な実施形態を本明細書に示し説明してきたが、そのような実施形態が例としてのみ提供されることは当業者には明らかであろう。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、及び置換を行うことができる。本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替形態が使用され得ることを理解されたい。
【0018】
本明細書で使用される「疾患」という用語は、一般に、対象の一部又は全部に影響を及ぼす異常な生理学的状態、例えば、病気(例えば、原発性毛様体ジスキネジア)、又は例えば気道の内壁(上下、洞、エウスタキオ管、中耳)、様々な肺細胞、卵管内、又は精子細胞の鞭毛における繊毛の作用に欠陥を引き起こす別の異常を指す。
【0019】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」という用語は、一般に、プリン及びピリミジン塩基、プリン及びピリミジン類似体、化学的又は生化学的に修飾された、天然又は非天然の、又は誘導体化されたヌクレオチド塩基を含む、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドには、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、又はリボ核酸(cDNA)のDNAコピーの配列が含まれ、それらは全て、組換え生産され得るか、人工的に合成され得るか、又は天然源から単離及び精製され得る。ポリヌクレオチド及び核酸は、一本鎖又は二本鎖として存在し得る。ポリヌクレオチドの骨格は、典型的にはRNA若しくはDNA、又は類似体若しくは置換された糖若しくはリン酸基に見られるように、糖及びリン酸基を含むことができる。ポリヌクレオチドは、天然に存在するヌクレオチド又は天然に存在しないヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体(又は類似体)を含み得る。
【0020】
本明細書で使用される「ポリリボヌクレオチド」という用語は、一般に、リボ核酸を含むポリヌクレオチドポリマーを指す。この用語はまた、化学修飾リボヌクレオチドを含むポリヌクレオチドポリマーを指す。ポリリボヌクレオチドは、天然に見られ得るd-リボース糖から形成され得る。
【0021】
本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、一般に、アミド結合(ペプチド結合)を介して互いに結合されたアミノ酸残基モノマーで構成されるポリマー鎖を指す。ポリペプチドは、少なくとも3つのアミノ酸、タンパク質、組換えタンパク質、抗原、エピトープ、酵素、受容体、又は構造類似体若しくはそれらの組合せの鎖であり得る。本明細書で使用される場合、ポリペプチドを形成するl-エナンチオマーアミノ酸の略語は以下の通りである:アラニン(A、Ala);アルギニン(R、Arg);アスパラギン(N、Asn);アスパラギン酸(D、Asp);システイン(C、Cys);グルタミン酸(E、Glu);グルタミン(Q、Gln);グリシン(G、Gly);ヒスチジン(H、His);イソロイシン(I、Ile);ロイシン(L、Leu);リジン(K、Lys);メチオニン(M、Met);フェニルアラニン(F、Phe);プロリン(P、Pro);セリン(S、Ser);トレオニン(T、Thr);トリプトファン(W、Trp);チロシン(Y、Tyr);バリン(V、Val)。X又はXaaは、任意のアミノ酸を示すことができる。
【0022】
本明細書で使用される「操作された」という用語は、一般に、ポリヌクレオチドを細胞内に提供するように遺伝子設計及び操作されたポリヌクレオチド、ベクター、及び核酸構築物を指す。操作されたポリヌクレオチドは、インビトロで部分的又は完全に合成され得る。操作されたポリヌクレオチドもクローニングすることができる。操作されたポリリボヌクレオチドは、メッセンジャーRNAに天然には見られないリボヌクレオチド等の1又は複数の塩基又は糖類似体を含有することができる。操作されたポリリボヌクレオチドは、転移RNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ガイドRNA(gRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、SmY RNA、スプライシングされたリーダーRNA(SL RNA)、CRISPR RNA、長鎖非翻訳RNA(lncRNA)、マイクロRNA(miRNA)、又は別の適切なRNAに存在するヌクレオチド類似体を含むことができる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「患者」又は「対象」という用語は、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、又はそれらのトランスジェニック種等の生きている哺乳動物生物を指す。ある特定の実施形態では、患者又は対象は、霊長類(例えば、非ヒト霊長類)である。特定の実施形態では、患者又は対象はヒトである。ヒト対象の非限定的な例は、成人、若年者、乳児及び胎児である。
【0024】
本明細書で使用される「集合する」又は「アセンブルされた」という用語は、ペイロードの(1又は複数の)標的細胞への送達に関連して、一般に、例えば治療薬又は予防薬が脂質組成物と複合体を形成するか又は脂質組成物に封入されるような、共有結合又は非共有結合の(1又は複数の)相互作用又は(1又は複数の)会合を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「脂質組成物」という用語は、一般に、リポプレックス、リポソーム、脂質粒子を含むがこれらに限定されない(1又は複数の)脂質化合物を含む組成物を指す。脂質組成物の例としては、懸濁液、エマルジョン、及び小胞組成物が挙げられる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「検出可能」という用語は、観察又は計測のいずれかによって直接的又は間接的に検出可能な信号の発生又は変化を指す。典型的には、検出可能な応答は、フルオロフォアが本質的に蛍光性であり、金属イオン又は生物学的化合物に結合したときにシグナルの変化を生じないシグナルの発生である。あるいは、検出可能な応答は、波長分布パターン又は吸光度若しくは蛍光の強度の変化、又は光散乱、蛍光寿命、蛍光偏光、又は上記パラメータの組合せの変化をもたらす光応答である。他の検出可能な応答としては、例えば、化学発光、リン光、放射性同位体からの放射線、磁気引力、及び電子密度が挙げられる。
【0027】
別段の指示がない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される量、範囲、条件等を表す全ての数は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。したがって、反対のことが示されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本出願によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。一般に、重量、時間、用量等の量等の測定可能な値を指すときに本明細書で使用される「約」という用語は、1つの例では指定された量から±20%又は±10%、別の例では±5%、別の例では±1%、更に別の例では±0.1%の変動を包含することを意味し、そのような変動は開示された方法を実行するのに適している。
【0028】
本明細書で使用される場合、「比」という用語は、一般に、1又は複数の分子の(1又は複数の)別の分子に対する相対量を指す。(1又は複数の)比の非限定的な例には、(1又は複数の)モル比、(1又は複数の)重量比、又は(1又は複数の)質量比が含まれる。
【0029】
化学基の文脈で使用される場合:「水素」は-Hを意味し、「ヒドロキシ」は-OHを意味し、「オキソ」は=Oを意味し、「カルボニル」は、-C(=O)-を意味し、「カルボキシ」は、-C(=O)OH(-COOH又は-CO2Hとも表記)を意味し、「ハロ」は、独立して、-F、-Cl、-Br又は-Iを意味し、「アミノ」は-NH2を意味し、「ヒドロキシアミノ」は-NHOHを意味し、「ニトロ」は-NO2を意味し、イミノは、=NHを意味し、「シアノ」は-CNを意味し、「イソシアネート」は、-N=C=Oを意味し、「アジド」は-N3を意味し、一価の文脈において、「ホスフェート」は、-OP(O)(OH)2又はその脱プロトン化形態を意味し、二価の文脈において、「ホスフェート」は、-OP(O)(OH)O-又はその脱プロトン化形態を意味し、「メルカプト」は-SHを意味し、「チオ」は=Sを意味し、「スルホニル」は、-S(O)2-を意味し、「ヒドロキシスルホニル」は-S(O)2OHを意味し、「スルホンアミド」は、-S(O)2NH2を意味し、「スルフィニル」は、-S(O)-を意味する。
【0030】
化学式の文脈において、記号「-」は単結合を意味し、「=」は二重結合を意味し、「≡」は三重結合を意味する。記号「
【化2】
」は、存在する場合には単結合又は二重結合のいずれかである任意の結合を表す。記号「
【化3】
」は、単結合又は二重結合を表す。したがって、例えば、式
【化4】
は、
【化5】
、
【化6】
、
【化7】
、
【化8】
及び
【化9】
を含む。そして、1つのそのような環原子は、2つ以上の二重結合の一部を形成しないことが理解される。更に、共有結合記号「-」は、1個又は2個の立体原性原子を連結する場合、いかなる好ましい立体化学も示さないことに留意されたい。代わりに、それは全ての立体異性体並びにそれらの混合物を包含する。記号「
【化10】
」は、結合(例えば、メチルの場合は
【化11】
)を横切って垂直に描かれる場合、基の結合点を示す。結合点は、典型的には、読者が結合点を明確に識別するのを助けるために、より大きな群に対してこのようにしてのみ識別されることに留意されたい。記号「
【化12】
」は、くさびの厚い端部に結合した基が「ページ外」である単結合を意味する。記号「
【化13】
」は、くさびの厚い端部に結合した基が「ページ内」にある単結合を意味する。記号「
【化14】
」は、二重結合(例えば、E又はZのいずれか)の周りの幾何学的形状が定義されていない単結合を意味する。したがって、両方の選択肢及びそれらの組合せが意図される。本出願に示される構造の原子上の任意の定義されていない原子価は、その原子に結合した水素原子を暗黙的に表す。炭素原子上の太いドットは、その炭素に結合した水素が紙の面外に配向していることを示す。
【0031】
基「R」が環系上の「浮動基」として示される場合、例えば、式:
【化15】
、
Rは、安定な構造が形成される限り、図示された、暗示された、又は明示的に定義された水素を含む、環原子のいずれかに結合した任意の水素原子を置き換えてもよい。基「R」が縮合環系上の「浮動基」として示される場合、例えば、式:
【化16】
、
Rは、特に明記しない限り、縮合環のいずれかの環原子のいずれかに結合した任意の水素を置換し得る。置換可能な水素には、安定な構造が形成される限り、図示された水素(例えば、上記式中の窒素に結合した水素)、暗示された水素(例えば、図示されていないが存在すると理解される上記式の水素)、明示的に定義された水素、及び存在が環原子の同一性に依存する任意の水素(例えば、Xが-CH-に等しい場合、基Xに結合した水素)が含まれる。図示の例では、Rは、縮合環系の5員環又は6員環のいずれかに存在し得る。上記の式において、括弧で囲まれた基「R」の直後の下付き文字「y」は、数値変数を表す。別段の指定がない限り、この変数は、環又は環系の置換可能な水素原子の最大数によってのみ制限される、0、1、2、又は2より大きい任意の整数であり得る。
【0032】
化学基及び化合物クラスについて、基又はクラスの炭素原子の数は以下のように示される:「Cn」は、基/クラスの炭素原子の正確な数(n)を定義する。「C≦n」は、基/クラスにあり得る炭素原子の最大数(n)を定義し、問題の基/クラスについて可能な限り小さい最小数であり、例えば、基「アルケニル(C≦8)」又はクラス「アルケン(C≦8)」中の炭素原子の最小数は2であることが理解される。1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基を示す「アルコキシ(C≦10)」と比較されたい。「Cn-n’」は、基中の炭素原子の最小数(n)及び最大数(n’)の両方を定義する。したがって、「アルキル(C2-10)」は、2~10個の炭素原子を有するアルキル基を示す。これらの炭素数指示薬は、それが修飾する化学基又はクラスの前又は後にあってもよく、意味の変化を示さずに括弧で囲まれていてもいなくてもよい。したがって、「C5オレフィン」、「C5-オレフィン」、「オレフィン(C5)」、及び「オレフィンC5」という用語は全て同義である。
【0033】
「飽和」という用語は、化合物又は化学基を修飾するために使用される場合、以下に記載される場合を除いて、化合物又は化学基が炭素-炭素二重結合及び炭素-炭素三重結合を有さないことを意味する。この用語が原子を修飾するために使用される場合、それは、原子が二重結合又は三重結合の一部ではないことを意味する。飽和基の置換型の場合、1又は複数の炭素酸素二重結合又は炭素窒素二重結合が存在してもよい。そして、そのような結合が存在する場合、ケト-エノール互変異性又はイミン/エナミン互変異性の一部として起こり得る炭素-炭素二重結合は排除されない。「飽和」という用語が物質の溶液を修飾するために使用される場合、それはその物質がもはやその溶液に溶解できないことを意味する。
【0034】
「脂肪族」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、そのように修飾された化合物又は化学基が非環式又は環式であるが非芳香族炭化水素化合物又は基であることを意味する。脂肪族化合物/基では、炭素原子は、直鎖、分枝鎖、又は非芳香族環(脂環式)で一緒に結合することができる。脂肪族化合物/基は、単一の炭素-炭素結合(アルカン/アルキル)によって結合された飽和であってもよく、又は1つ若しくは複数の炭素-炭素二重結合(アルケン/アルケニル)若しくは1つ若しくは複数の炭素-炭素三重結合(アルキン/アルキニル)を有する不飽和であってもよい。
【0035】
「芳香族」という用語は、化合物又は化学基原子を修飾するために使用される場合、化合物又は化学基が、環を形成する結合の相互作用によって安定化される原子の平面不飽和環を含むことを意味する。
【0036】
「アルキル」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、接続点として炭素原子を含み、直鎖又は分枝鎖の非環状構造を含み、炭素及び水素以外の原子を含まない、一価の飽和脂肪族基を指す。-CH3(Me)、-CH2CH3(Et)、-CH2CH2CH3(n-Pr又はプロピル)、-CH(CH3)2(i-Pr、iPr又はイソプロピル)、-CH2CH2CH2CH3(n-Bu)、-CH(CH3)CH2CH3(sec-ブチル)、-CH2CH(CH3)2(イソブチル)、-C(CH3)3(tert-ブチル、t-ブチル、t-Bu又はtBu)及び-CH2C(CH3)3(ネオペンチル)の基は、アルキル基の非限定的な例である。「アルカンジイル」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、1個又は2個の飽和炭素原子を(1又は複数の)結合点として有し、直鎖又は分枝鎖の非環式構造を有し、炭素-炭素二重結合又は三重結合を有さず、炭素及び水素以外の原子を有さない、二価の飽和脂肪族基を指す。基-CH2-(メチレン)、-CH2CH2-、-CH2C(CH3)2CH2-、及び-CH2CH2CH2-は、アルカンジイル基の非限定的な例である。「アルカン」は、式H-Rを有する化合物のクラスを指し、式中、Rは、この用語が上に定義されるようなアルキルである。これらの用語のいずれかが、「置換」という修飾語と共に使用される場合、1個以上の水素原子が、独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3、-C(O)N(CH3)2、-OC(O)CH3、-NHC(O)CH3、-S(O)2OH、又は-S(O)2NH2によって置き換えられている。以下の基は、置換アルキル基の非限定的な例である:-CH2OH、-CH2Cl、-CF3、-CH2CN、-CH2C(O)OH、-CH2C(O)OCH3、-CH2C(O)NH2、-CH2C(O)CH3、-CH2OCH3、-CH2OC(O)CH3、-CH2NH2、-CH2N(CH3)2、及び-CH2CH2Cl。「ハロアルキル」という用語は、置換アルキルのサブセットであり、水素原子の置換は、炭素、水素及びハロゲン以外の他の原子が存在しないようにハロ(すなわち、-F、-Cl、-Br、又は-I)に限定される。-CH2Cl基は、ハロアルキルの非限定的な例である。「フルオロアルキル」という用語は、置換アルキルのサブセットであり、水素原子の置換は、炭素、水素及びフッ素以外の他の原子が存在しないようにフルオロに限定される。基-CH2F、-CF3及び-CH2CF3は、フルオロアルキル基の非限定的な例である。
【0037】
「シクロアルキル」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、結合点として炭素原子を含み、炭素原子が1又は複数の非芳香族環構造の一部を形成し、炭素-炭素二重結合又は三重結合を含まず、炭素及び水素以外の原子を含まない、一価の飽和脂肪族基を指す。非限定的な例としては、-CH(CH
2)
2(シクロプロピル)、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシル(Cy)が挙げられる。「シクロアルカンジイル」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、結合点として2個の炭素原子を有し、炭素-炭素二重結合又は三重結合を有さず、炭素及び水素以外の原子を有さない二価の飽和脂肪族基を指す。基
【化17】
は、シクロアルカンジイル基の非限定的な例である。「シクロアルカン」は、式H-Rを有する化合物のクラスを指し、式中、Rは、この用語が上に定義されるようなシクロアルキルである。これらの用語のいずれかが、「置換」という修飾語と共に使用される場合、1個以上の水素原子が、独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、又は-S(O)
2NH
2によって置き換えられている。
【0038】
「アルケニル」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、接続点として炭素原子を含み、直鎖又は分枝鎖の非環式構造を含み、少なくとも1つの非芳香族炭素-炭素二重結合を含み、炭素-炭素三重結合を含まず、炭素及び水素以外の原子を含まない、一価の不飽和脂肪族基を指す。非限定的な例としては、-CH=CH2(vinyl)、-CH=CHCH3、-CH=CHCH2CH3、-CH2CH=CH2(allyl)、-CH2CH=CHCH3、及び-CH=CHCH=CH2が挙げられる。「アルケンジイル」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、接続点として2個の炭素原子、直鎖又は分枝鎖、直鎖又は分枝鎖の非環式構造、少なくとも1つの非芳香族炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合なし、並びに炭素及び水素以外の原子なしの二価不飽和脂肪族基を指す。基-CH=CH-、-CH=C(CH3)CH2-、-CH=CHCH2-、and-CH2CH=CHCH2-は、アルケンジイル基の非限定的な例である。アルケンジイル基は脂肪族であるが、一旦両端で結合すると、この基は芳香族構造の一部を形成することを排除しないことに留意されたい。「アルケン」及び「オレフィン」という用語は同義であり、式H-Rを有する化合物のクラスを指し、ここで、Rは、この用語が上に定義されるようにアルケニルである。同様に、「末端アルケン」及び「α-オレフィン」という用語は同義であり、ただ1つの炭素-炭素二重結合を有するアルケンを指し、その結合は分子の末端のビニル基の一部である。これらの用語のいずれかが、「置換」という修飾語と共に使用される場合、1個以上の水素原子が、独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3、-C(O)N(CH3)2、-OC(O)CH3、-NHC(O)CH3、-S(O)2OH、or-S(O)2NH2によって置き換えられている。基-CH=CHF、-CH=CHCl及び-CH=CHBrは、置換アルケニル基の非限定的な例である。
【0039】
「アルキニル」の用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、接続点として炭素原子を含み、直鎖又は分枝鎖の非環状構造を含み、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含み、炭素及び水素以外の原子を含まない、一価の不飽和脂肪族基を指す。本明細書で使用される場合、アルキニルという用語は、1又は複数の非芳香族炭素-炭素二重結合の存在を排除しない。基-C≡CH、-C≡CCH3、及び-CH2C≡CCH3は、アルキニル基の非限定的な例である。「アルキン」は、Rがアルキニルである式H-Rを有する化合物のクラスを指す。これらの用語のいずれかが、「置換」という修飾語と共に使用される場合、1個以上の水素原子が、独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3、-C(O)N(CH3)2、-OC(O)CH3、-NHC(O)CH3、-S(O)2OH、or-S(O)2NH2によって置き換えられている。
【0040】
「アリール」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、結合点として芳香族炭素原子を有し、炭素原子が1又は複数の6員芳香族環構造の一部を形成し、環原子が全て炭素であり、基が炭素及び水素以外の原子からなるものではない一価不飽和芳香族基を指す。2つ以上の環が存在する場合、それらの環は縮合していても、縮合していなくてもよい。本明細書中で使用される場合、この用語は、第1の芳香環又は存在する任意の更なる芳香環に結合した1又は複数のアルキル基又はアラルキル基(炭素数の制限が可能である)の存在を排除しない。アリール基の非限定的な例としては、フェニル(Ph)、メチルフェニル、(ジメチル)フェニル、-C
6H
4CH
2CH
3(エチルフェニル)、ナフチル、及びビフェニルから誘導される一価基が挙げられる。「アレーンジイル」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、結合点として2個の芳香族炭素原子を有し、炭素原子が1個又は複数の6員芳香族環構造の一部を形成し、環原子が全て炭素であり、一価基が炭素及び水素以外の原子からなっていない二価芳香族基を指す。本明細書中で使用される場合、この用語は、第1の芳香環又は存在する任意の更なる芳香環に結合した1又は複数のアルキル、アリール又はアラルキル基(炭素数の制限が可能である)の存在を排除しない。2つ以上の環が存在する場合、それらの環は縮合していても、縮合していなくてもよい。非縮合環は、共有結合、アルカンジイル、又はアルケンジイル基(炭素数制限が可能である)の1又は複数を介して連結されてもよい。アレーンジイル基の非限定的な例としては、以下が挙げられる。
【化18】
、
【化19】
、
【化20】
、
【化21】
、
【化22】
、
【化23】
、及び
【化24】
。
「アレーン」は、式H-Rを有する化合物のクラスを指し、式中、Rは、その用語が上に定義されるようなアリールである。ベンゼン及びトルエンは、アレーンの非限定的な例である。これらの用語のいずれかが、「置換」という修飾語と共に使用される場合、1個以上の水素原子が、独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、or-S(O)
2NH
2によって置き換えられている。
【0041】
「アラルキル」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、一価の基-アルカンジイル-アリールを指し、アルカンジイル及びアリールという用語はそれぞれ、上に提供される定義と一致する方法で使用される。非限定的な例は、フェニルメチル(ベンジル、Bn)及び2-フェニル-エチルである。アラルキルとの用語が、「置換」という修飾語と共に使用される場合、アルカンジイル基及び/又はアリール基からの1個以上の水素原子が、独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3、-C(O)N(CH3)2、-OC(O)CH3、-NHC(O)CH3、-S(O)2OH、又は-S(O)2NH2によって置き換えられている。置換アラルキルの非限定的な例は、(3-クロロフェニル)-メチル及び2-クロロ-2-フェニル-エチル-1-イルである。
【0042】
「ヘテロアリール」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、結合点として芳香族炭素原子又は窒素原子を有し、炭素原子又は窒素原子が1又は複数の芳香族環構造の一部を形成し、環原子の少なくとも1つが窒素、酸素又は硫黄であり、ヘテロアリール基が炭素、水素、芳香族窒素、芳香族酸素及び芳香族硫黄以外の原子からなるものではない一価芳香族基を指す。ヘテロアリール環は、窒素、酸素及び硫黄から選択される1、2、3又は4個の環原子を含み得る。2つ以上の環が存在する場合、それらの環は縮合していても、縮合していなくてもよい。本明細書で使用される場合、この用語は、芳香環又は芳香環系に結合した1又は複数のアルキル、アリール及び/又はアラルキル基(炭素数の制限が可能である)の存在を排除しない。ヘテロアリール基の非限定的な例としては、フラニル、イミダゾリル、インドリル、インダゾリル(Im)、イソオキサゾリル、メチルピリジニル、オキサゾリル、フェニルピリジニル、ピリジニル(ピリジル)、ピロリル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリル、キナゾリル、キノキサリニル、トリアジニル、テトラゾリル、チアゾリル、チエニル及びトリアゾリルが挙げられる。「N-ヘテロアリール」という用語は、結合点として窒素原子を有するヘテロアリール基を指す。「ヘテロアレーンジイル」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、2つの芳香族炭素原子、2つの芳香族窒素原子、又は1つの芳香族炭素原子及び1つの芳香族窒素原子を結合点として有し、原子が1又は複数の芳香族環構造の一部を形成し、環原子の少なくとも1つが窒素、酸素又は硫黄であり、二価基が炭素、水素、芳香族窒素、芳香族酸素及び芳香族硫黄以外の原子からなるものではない、二価芳香族基を指す。2つ以上の環が存在する場合、それらの環は縮合していても、縮合していなくてもよい。非縮合環は、共有結合、アルカンジイル、又はアルケンジイル基(炭素数制限が可能である)の1又は複数を介して連結されてもよい。本明細書で使用される場合、この用語は、芳香環又は芳香環系に結合した1又は複数のアルキル、アリール及び/又はアラルキル基(炭素数の制限が可能である)の存在を排除しない。ヘテロアレーンジイル基の非限定的な例としては、以下が挙げられる。
【化25】
、
【化26】
及び
【化27】
。
「ヘテロアレーン」は、式H-R(式中、Rはヘテロアリールである)を有する化合物のクラスを指す。ピリジン及びキノリンは、ヘテロアレーンの非限定的な例である。これらの用語が「置換」という修飾語と共に使用される場合、1個以上の水素原子が、独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、又は-S(O)
2NH
2によって置き換えられている。
【0043】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、結合点として炭素原子又は窒素原子を有し、炭素原子又は窒素原子が1又は複数の非芳香族環構造の一部を形成し、環原子の少なくとも1つが窒素、酸素又は硫黄であり、ヘテロシクロアルキル基が炭素、水素、窒素、酸素及び硫黄以外の原子からなるものではない一価の非芳香族基を指す。ヘテロシクロアルキル環は、窒素、酸素又は硫黄から選択される1、2、3又は4個の環原子を含み得る。2つ以上の環が存在する場合、それらの環は縮合していても、縮合していなくてもよい。本明細書で使用される場合、この用語は、環又は環系に結合した1又は複数のアルキル基(炭素数の制限が可能である)の存在を排除しない。また、この用語は、得られる基が非芳香族のままであるならば、環又は環系における1又は複数の二重結合の存在を排除しない。ヘテロシクロアルキル基の非限定的な例としては、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、テトラヒドロピラニル、ピラニル、オキシラニル及びオキセタニルが挙げられる。「N-ヘテロシクロアルキル」という用語は、窒素原子を結合点として有するヘテロシクロアルキル基を指す。N-ピロリジニルは、そのような基の例である。「ヘテロシクロアルカンジイル」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、2つの炭素原子、2つの窒素原子、又は1つの炭素原子及び1つの窒素原子を結合点として有し、それらの原子が1又は複数の環構造の一部を形成し、それらの環原子の少なくとも1つが窒素、酸素又は硫黄であり、それらの二価基が炭素、水素、窒素、酸素及び硫黄以外の原子からなるものではない、二価の環式基を指す。2つ以上の環が存在する場合、それらの環は縮合していても、縮合していなくてもよい。非縮合環は、共有結合、アルカンジイル、又はアルケンジイル基(炭素数制限が可能である)の1又は複数を介して連結されてもよい。本明細書で使用される場合、この用語は、環又は環系に結合した1又は複数のアルキル基(炭素数の制限が可能である)の存在を排除しない。また、この用語は、得られる基が非芳香族のままであるならば、環又は環系における1又は複数の二重結合の存在を排除しない。ヘテロシクロアルカンジイル基の非限定的な例としては、以下が挙げられる。
【化28】
、
【化29】
及び
【化30】
。
これらの用語が「置換」という修飾語と共に使用される場合、1個以上の水素原子が、独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、又は-S(O)
2NH
2によって置き換えられている。
【0044】
「アシル」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、-C(O)R基を指し、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル又はヘテロアリールであり、これらの用語は上に定義される通りである。-CHO、-C(O)CH3(アセチル、Ac)、-C(O)CH2CH3、-C(O)CH2CH2CH3、-C(O)CH(CH3)2、-C(O)CH(CH2)2、-C(O)C6H5、-C(O)C6H4CH3、-C(O)CH2C6H5、-C(O)(イミダゾリル)基は、アシル基の非限定的な例である。「チオアシル」は、基-C(O)Rの酸素原子が硫黄原子、-C(S)Rで置き換えられていることを除いて、同様に定義される。「アルデヒド」という用語は、水素原子の少なくとも1つが-CHO基で置換されている、上で定義したアルカンに対応する。これらの用語のいずれかが、「置換」という修飾語と共に使用される場合、1個以上の水素原子(存在する場合、カルボニル基又はチオカルボニル基の炭素原子に直接結合した水素原子を含む)が、独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3、-C(O)N(CH3)2、-OC(O)CH3、-NHC(O)CH3、-S(O)2OH、又は-S(O)2NH2によって置き換えられている。基-C(O)CH2CF3、-CO2H(カルボキシル)、-CO2CH3(メチルカルボキシル)、CO2CH2CH3、-C(O)NH2(カルバモイル)及び-CON(CH3)2は、置換アシル基の非限定的な例である。
【0045】
「アルコキシ」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、-OR基を指し、Rはアルキルであり、この用語は上に定義される通りである。非限定的な例としては、-OCH3(メトキシ)、-OCH2CH3(エトキシ)、-OCH2CH2CH3、-OCH(CH3)2(イソプロポキシ)、-OC(CH3)3(tert-ブトキシ)、-OCH(CH2)2、-O-シクロペンチル及び-O-シクロヘキシルが挙げられる。「シクロアルコキシ」、「アルケニルオキシ」、「アルキニルオキシ」、「アリールオキシ」、「アラルコキシ」、「ヘテロアリールオキシ」、「ヘテロシクロアルコキシ」、及び「アシルオキシ」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、Rがそれぞれシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、及びアシルである-ORとして定義される基を指す。「アルコキシジイル」という用語は、二価の基-O-アルカンジイル-、-O-アルカンジイル-O-、又は-アルカンジイル-O-アルカンジイル-を指す。「アルキルチオ」及び「アシルチオ」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、-SR基を指し、Rはそれぞれアルキル及びアシルである。「アルコール」という用語は、水素原子の少なくとも1つがヒドロキシ基で置き換えられている、上で定義したようなアルカンに対応する。「エーテル」という用語は、水素原子の少なくとも1つがアルコキシ基で置き換えられている、上で定義したようなアルカンに対応する。これらの用語のいずれかが、「置換」という修飾語と共に使用される場合、1個以上の水素原子が、独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3、-C(O)N(CH3)2、-OC(O)CH3、-NHC(O)CH3、-S(O)2OH、又は-S(O)2NH2によって置き換えられている。
【0046】
「アルキルアミノ」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、-NHR基を指し、Rはアルキルであり、この用語は上に定義される通りである。非限定的な例としては、-NHCH3及び-NHCH2CH3が挙げられる。「ジアルキルアミノ」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、-NRR’基を指し、ここで、R及びR’は同じ又は異なるアルキル基であってもよく、又はR及びR’は一緒になってアルカンジイルを表すことができる。ジアルキルアミノ基の非限定的な例としては、-N(CH3)2及び-N(CH3)(CH2CH3)が挙げられる。「シクロアルキルアミノ」、「アルケニルアミノ」、「アルキニルアミノ」、「アリールアミノ」、「アラルキルアミノ」、「ヘテロアリールアミノ」、「ヘテロシクロアルキルアミノ」、「アルコキシアミノ」及び「アルキルスルホニルアミノ」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、-NHRとして定義される基を指し、ここで、Rは、それぞれ、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ及びアルキルスルホニルである。アリールアミノ基の非限定的な例は、-NHC6H5である。「アルキルアミノジイル」という用語は、二価の基-NH-アルカンジイル-、-NH-アルカンジイル-NH-、又は-アルカンジイル-NH-アルカンジイル-を指す。「アミド」(アシルアミノ)という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、-NHR基を指し、Rはアシルであり、その用語は上に定義される通りである。アミド基の非限定的な例は、-NHC(O)CH3である。「アルキルイミノ」という用語は、「置換」という修飾語を用いずに使用される場合、この用語が上に定義されるように、Rがアルキルである二価基=NRを指す。これらの用語のいずれかが、「置換」という修飾語と共に使用される場合、炭素原子に結合した1個以上の水素原子が、独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3、-C(O)N(CH3)2、-OC(O)CH3、-NHC(O)CH3、-S(O)2OH、or-S(O)2NH2によって置き換えられている。基-NHC(O)OCH3及び-NHC(O)NHCH3は、置換アミド基の非限定的な例である。
【0047】
特許請求の範囲及び/又は明細書において「含む(comprising)」という用語と組み合わせて使用される場合の「a」又は「an」という単語の使用は、「1つ」を意味し得るが、「1又は複数」、「少なくとも1つ」、及び「1又は複数」の意味とも一致する。
【0048】
本出願で使用される場合、「平均分子量」という用語は、各ポリマー種のモル数とその種のモル質量との間の関係を指す。特に、各ポリマー分子は、異なるレベルの重合、したがって異なるモル質量を有し得る。平均分子量は、複数のポリマー分子の分子量を表すために使用することができる。平均分子量は、典型的には、平均モル質量と同義である。特に、3つの主要なタイプの平均分子量:数平均モル質量、重量(質量)平均モル質量、及びZ平均モル質量がある。本出願の文脈では、別段の指定がない限り、平均分子量は、式の数平均モル質量又は重量平均モル質量のいずれかを表す。いくつかの実施形態では、平均分子量は、数平均モル質量である。いくつかの実施形態では、平均分子量は、脂質中に存在するPEG成分を記載するために使用され得る。
【0049】
「備える(comprise)」、「有する(have)」、及び「含む(include)」という用語は、オープンエンドの連結動詞である。「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「有する(has)」、「有すること(having)」、「含む(includes)」、及び「含むこと(including)」等のこれらの動詞の1又は複数の任意の形態又は時制もオープンエンドである。例えば、1又は複数の工程を「含む(comprises)」、「有する(has)」又は「含む(includes)」任意の方法は、それらの1又は複数の工程のみを有することに限定されず、他の列挙されていない工程も包含する。
【0050】
「有効な」という用語は、その用語が本明細書及び/又は特許請求の範囲で使用される場合、所望の、予想される、又は意図された結果を達成するのに十分であることを意味する。「有効量」、「治療有効量」又は「薬学的有効量」は、患者又は対象を化合物で治療するという文脈で使用される場合、疾患を治療するために対象又は患者に投与された場合に、疾患のそのような治療を行うのに十分な化合物の量を意味する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「IC50」という用語は、得られる最大応答の50%である阻害用量を指す。この定量的尺度は、所与の生物学的、生化学的又は化学的プロセス(又はプロセスの成分、すなわち酵素、細胞、細胞受容体又は微生物)を半分阻害するために必要な特定の薬物又は他の物質(阻害剤)の量を示す。
【0052】
第1の化合物の「異性体」は、各分子が第1の化合物と同じ構成原子を含むが、それらの原子の立体配置が異なる別個の化合物である。
【0053】
本明細書で使用される場合、「患者」又は「対象」という用語は、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、又はそれらのトランスジェニック種等の生きている哺乳動物生物を指す。特定の実施形態では、患者又は対象は霊長類である。ヒト対象の非限定的な例は、成人、若年者、乳児及び胎児である。
【0054】
本明細書で一般的に使用される場合、「薬学的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合った過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症なしに、ヒト及び動物の組織、器官、及び/又は体液と接触して使用するのに適した化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。
【0055】
「薬学的に許容される塩」は、上で定義されるように薬学的に許容され、所望の薬理学的活性を有する本開示の化合物の塩を意味する。そのような塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸で形成された酸付加塩;又は1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、3-フェニルプロピオン酸、4,4’-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、4-メチルビシクロ[2.2.2]オクタ-2-エン-1-カルボン酸、酢酸、脂肪族モノ-及びジカルボン酸、脂肪族硫酸、芳香族硫酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクロペンタンプロピオン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヒドロキシナフトエ酸、乳酸、ラウリル硫酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、o-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、シュウ酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、フェニル置換アルカン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、ターシャリーブチル酢酸、トリメチル酢酸等の有機酸で形成された酸付加塩が挙げられる。薬学的に許容される塩には、存在する酸性プロトンが無機塩基又は有機塩基と反応することができる場合に形成され得る塩基付加塩も含まれる。許容される無機塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム及び水酸化カルシウムが挙げられる。許容される有機塩基としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミン等が挙げられる。本開示の任意の塩の一部を形成する特定のアニオン又はカチオンは、その塩が全体として薬理学的に許容される限り、重要ではないことが認識されるべきである。薬学的に許容される塩並びにそれらの調製方法及び使用方法の更なる例は、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,and Use(P.H.Stahl&C.G.Wermuth eds.,Verlag Helvetica Chimica Acta,2002)に提示されている。
【0056】
「予防」又は「予防すること」は、(1)疾患のリスク及び/又は素因があるかもしれないが、疾患の病態又は総体症状のいずれか又は全てをまだ経験又は示していない対象又は患者における疾患の発症を阻害すること、並びに/あるいは(2)疾患のリスク及び/又は素因があるかもしれないが、疾患の病態又は総体症状のいずれか又は全てをまだ経験又は示していない対象又は患者における疾患の病態又は総体症状の発症を遅らせることを含む。
【0057】
「繰り返し単位」は、有機、無機又は金属有機にかかわらず、特定の材料、例えばフレームワーク及び/又はポリマーの最も単純な構造的実体である。ポリマー鎖の場合、反復単位は、ネックレスのビーズのように、鎖に沿って連続的に一緒に連結される。例えば、ポリエチレン、-[-CH2CH2-]n-では、繰り返し単位は-CH2CH2-である。下付き文字「n」は、重合度、すなわち互いに連結された繰り返し単位の数を示す。「n」の値が未定義のままであるか、又は「n」が存在しない場合、それは単に括弧内の式の繰り返し及び材料のポリマー性を示す。繰り返し単位の概念は、金属有機構造体、修飾ポリマー、熱硬化性ポリマー等において、繰り返し単位間の接続性が三次元的に広がる場合にも等しく適用される。デンドリマーの文脈内で、繰り返し単位は分岐単位、内部層、又は世代として説明されてもよい。同様に、終端基を表面基と記載することもできる。
【0058】
「立体異性体」又は「光学異性体」は、同じ原子が同じ他の原子に結合しているが、それらの原子の三次元での配置が異なる所与の化合物の異性体である。「エナンチオマー」は、左手及び右手のように、互いに鏡像である所与の化合物の立体異性体である。「ジアステレオマー」は、エナンチオマーではない所与の化合物の立体異性体である。キラル分子は、立体中心又は立体中心とも呼ばれるキラル中心を含み、これは、任意の2つの基の交換が立体異性体をもたらすような基を有する分子中の任意の点であるが、必ずしも原子であるとは限らない。有機化合物では、キラル中心は、典型的には炭素、リン又は硫黄原子であるが、他の原子が有機及び無機化合物の立体中心であることも可能である。分子は複数の立体中心を有することができ、多くの立体異性体を与える。立体異性が四面体立体中心に起因する化合物(例えば、四面体炭素)では、仮定上可能な立体異性体の総数は2nを超えず、nは四面体立体中心の数である。対称性を有する分子は、多くの場合、可能な最大数より少ない数の立体異性体を有する。エナンチオマーの50:50混合物はラセミ混合物と呼ばれる。あるいは、エナンチオマーの混合物は、1つのエナンチオマーが50%を超える量で存在するようにエナンチオマー的に濃縮することができる。典型的には、エナンチオマー及び/又はジアステレオマーは、当技術分野で公知の技術を用いて分割又は分離することができる。立体化学が定義されていない任意の立体中心又はキラリティー軸について、その立体中心又はキラリティー軸は、そのR形態、S形態で、又はラセミ混合物及び非ラセミ混合物を含むR形態とS形態の混合物として存在し得ることが企図される。本明細書で使用される場合、「他の立体異性体を実質的に含まない」という語句は、組成物が15%以下、より好ましくは10%以下、更により好ましくは5%以下、又は最も好ましくは1%以下の(1又は複数の)別の立体異性体を含むことを意味する。
【0059】
「治療」又は「治療すること」は、(1)疾患の病態又は総体症状を経験又は示す対象又は患者において疾患を阻害すること(例えば、病態及び/又は総体症状の更なる発展を阻止すること)、(2)疾患の病態又は総体症状を経験又は示す対象又は患者において疾患を改善すること(例えば、病態及び/又は症状を逆転させること)、並びに/あるいは(3)疾患の病態又は総体症状を経験又は示す対象又は患者において疾患の任意の測定可能な減少をもたらすことを含む。
【0060】
(1又は複数の)脂質組成物に関連して本明細書で使用される「モルパーセント」又は「モル%」という用語は、一般に、脂質組成物に製剤化された又は存在する全ての脂質と比較した、その成分脂質のモル比率を指す。
【0061】
上記の定義は、参照により本明細書に組み込まれる任意の参考文献における任意の矛盾する定義に取って代わる。しかしながら、特定の用語が定義されているという事実は、定義されていない用語が不明確であることを示すと見なされるべきではない。むしろ、使用される全ての用語は、当業者が本開示の範囲及び実施を理解することができるような用語で本開示を説明すると考えられる。
嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)
【0062】
嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)は、CFTR遺伝子によってコードされる脊椎動物の膜タンパク質及び塩化物チャネルである。CFTR遺伝子は、第7染色体長腕の位置q31.2にある。クロライドイオンチャネル機能に影響を及ぼすCFTR遺伝子の突然変異は、肺、膵臓及び他の器官における上皮液輸送の調節不全をもたらし、嚢胞性線維症(CF)をもたらす。
【0063】
嚢胞性線維症(CF)は、米国では乳児2,500人に約1人が罹患している。一般的な米国集団内では、最大1000万人の人々が、明らかな悪影響を伴わずに欠陥遺伝子の単一コピーを保有している。対照的に、CF関連遺伝子の2つのコピーを有する個体は、慢性肺疾患を含むCFの消耗性及び致死性の影響を被る。嚢胞性線維症の合併症には、頻繁な呼吸器感染症を伴う肺の粘液の肥厚、並びに栄養失調及び糖尿病を引き起こす膵臓機能不全が含まれる。これらの状態は、慢性的な障害及び平均余命の短縮をもたらす。男性患者では、進行性の閉塞並びに発達中の精管(精索)及び精巣上体の破壊は、異常な管腔内分泌物に起因すると思われ、精管の先天性欠如及び男性不妊症を引き起こす。
【0064】
これまでに1000近くの嚢胞性線維症を引き起こす変異が記載されている。大部分の突然変異はまれである。変異の分布及び頻度は、異なる集団間で異なる。変異は、CFTR遺伝子における置換、重複、欠失又は短縮からなる。これは、活性がより低い、より迅速に分解される、又は不十分な数で存在する機能不全タンパク質をもたらし得る。最も一般的な突然変異DeltaF508(ΔF508)は、タンパク質の508番目のアミノ酸フェニルアラニン(F)の喪失をもたらす3つのヌクレオチドの欠失(Δ)に起因する。その結果、タンパク質は正常に折り畳まれず、より迅速に分解される。
組成物
【0065】
一態様では、本開示は、本明細書に記載の脂質組成物と組み合わせた本明細書に記載の合成転移リボ核酸(tRNA)を含む組成物を提供する。脂質組成物は双性イオン性脂質を含み得る。組成物はエアロゾル組成物であってもよい。組成物は、エアロゾル投与のために製剤化され得る。
移入リボ核酸(tRNA)
【0066】
本明細書で使用される場合、転移RNA又はtRNAという用語は、特に明記しない限り、従来のtRNA分子及び1又は複数の修飾を有するtRNA分子の両方を指す。転移RNAは、約70~100ヌクレオチド長のRNAポリマーである。タンパク質合成中、tRNAは、成長中のペプチド鎖に付加するためにアミノ酸をリボソームに送達する。活性tRNAは、その合成中にtRNAに転写され得るか、又は転写後プロセシング中に後で付加され得る3’CCAテールを有する。アミノ酸は、3’末端リボースの2’又は3’ヒドロキシル基に共有結合して、アミノアシル-tRNA(aa-tRNA)を形成し、アミノ酸は、2’-OHから3’-OHに、及びその逆に自発的に移動することができるが、3’-OH位置からリボソームで成長中のタンパク質鎖に組み込まれる。折り畳まれたaa-tRNA分子の他端のループは、アンチコドンとして知られる3塩基の配列を含む。このアンチコドン配列がリボソーム結合メッセンジャーRNA(mRNA)中の3塩基コドン配列と塩基対合すると、aa-tRNAがリボソームに結合し、そのアミノ酸が新生タンパク質鎖に組み込まれる。特定のコドンと塩基対合する全てのtRNAが単一の特定のアミノ酸でアミノアシル化されるので、遺伝暗号の翻訳はtRNAによって行われる:mRNA中の61個の非終結コドンのそれぞれは、その同族のaa-tRNAの結合及び単一の特定のアミノ酸の成長中のタンパク質ポリマーへの付加を指示する。いくつかの実施形態では、tRNAは、aa-tRNAがmRNA上の異なるコドンと塩基対を形成するように、tRNAのアンチコドン領域に配列を含み得る。特定の実施形態では、変異tRNAは、mRNAによってコードされるアミノ酸とは異なるアミノ酸を成長中のタンパク質鎖に導入する。他の実施形態では、変異tRNAは終止コドンと塩基対合し、タンパク質合成を終結させる代わりにアミノ酸を導入し、それによって新生ペプチドが成長し続けることを可能にする。いくつかの実施形態では、野生型又は変異型のtRNAは、終止コドンを読み取り、タンパク質合成を終結させる代わりにアミノ酸を導入し得る。いくつかの実施形態では、tRNAは、3’末端CCAヌクレオチドが含まれる完全長tRNAを含み得る。他の実施形態では、3’末端-A、-CA又はCCAを欠くtRNAは、CCA付加酵素によってインビボで完全長にされる。
【0067】
他の態様では、本組成物は、アシル化tRNA;アルキル化tRNA;アデニン、シトシン、グアニン、又はウラシル以外の1又は複数の塩基を含むtRNA;特異的リガンド又は抗原性、蛍光性、親和性、反応性、スペクトル又は他のプローブ部分の結合によって共有結合的に修飾されたtRNA;メチル化又は他の様式で修飾された1又は複数のリボース部分を含むtRNA;20個の天然アミノ酸以外のアミノ酸(試薬、特異的リガンドのためのキャリアとして、又は抗原性、蛍光性、反応性、親和性、スペクトル、若しくは他のプローブとして機能する非天然アミノ酸が含まれる)でアミノアシル化されたtRNA;又はこれらの組成物の任意の組合せを含む1又は複数の修飾tRNA分子を更に含み得る。修飾tRNA分子のいくつかの例は、全て参照により本明細書に組み込まれる、Soll,et al.,1995;El Yacoubi,et al.,2012;Grosjean and Benne,et al.,1998;Hendrickson,et al.,2004;Ibba and Soll,2000;Johnson,et al.,1995;Johnson,et al.,1982;Crowley,et al.,1994;Beier and Grimm,2001;Tones,et al.,2014;and Bjork,et al.,1987によって教示される。
【0068】
いくつかの実施形態では、合成tRNAは、折り畳まれたtRNAである。折り畳まれたtRNAは、tRNAが機能を果たすことができるように折り畳まれ得る。例えば、折り畳まれたtRNAは、コドンの認識を可能にする、又はアミノ酸のローディングを可能にする折り畳まれた形状を含み得る。折り畳まれたtRNAは、折り畳まれていないtRNAが行うことができない機能を果たし得る。折り畳まれたtRNAは、Tアーム、Dアーム、アンチコドンアーム、可変ループ、アクセプターステム、又はそれらの組合せを含み得る。折り畳まれたtRNAは、特定の機能を果たし得るモチーフ、構造、又は配列を含み得る。合成tRNAは、未熟終止コドンを認識するように構成されたアンチコドンアームを含み得る。合成tRNAは、アミノ酸又は終止コドンを通常コードし得るコドンを認識し得るアンチコドンアームを含み得、アクセプターステムは、非対応アミノ酸又は終止コドンに作動可能に連結されるように構成され得る。例えば、合成tRNAは、終止コドンを認識し得るアンチコドンアームを含み得、アクセプターステムは、アミノ酸に作動可能に連結されるように構成され得る。これは、tRNAが未熟終止コドンを認識することを可能にし得、翻訳の終結を引き起こすか又は可能にする代わりに、ポリペプチド鎖にアミノ酸を付加し得る。これは、tRNAがポリペプチド翻訳の早期終結を防止することを可能にし得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、合成tRNAは、アミノ酸に作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含む。合成tRNAは、アルギニンに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。合成tRNAは、グリシンに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。合成tRNAは、アラニンに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。合成tRNAは、システインに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。合成tRNAは、アスパラギン酸に作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。合成tRNAは、グルタミン酸に作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。合成tRNAは、フェニルアラニンに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。合成tRNAは、ヒスチジンに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。合成tRNAは、イソロイシンに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。合成tRNAは、リジンに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。合成tRNAは、ロイシンに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。合成tRNAは、メチオニンに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。合成tRNAは、アスパラギンに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。合成tRNAは、プロリンに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。合成tRNAは、グルタミンに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。合成tRNAは、セリンに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。合成tRNAは、トレオニンに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。合成tRNAは、バリンに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。合成tRNAは、トリプトファンに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。合成tRNAは、チロシンに作動可能に連結されるように構成されたアクセプターステムを含み得る。
【0070】
いくつかの実施形態において、tRNAはtRNAアンバーサプレッサーである。他の実施形態では、tRNAはtRNAオパール(opal)抑制因子である。他の実施形態では、tRNAはtRNAオーカーサプレッサーである。いくつかの実施形態において、tRNAはtRNAフレームシフトサプレッサーである。
【0071】
いくつかの実施形態では、合成tRNAは、配列番号1~20から選択される核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、合成tRNAは、配列番号1~20から選択される配列に対して少なくとも約80%の同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、合成tRNAは、配列番号1~20から選択される配列に対して少なくとも約85%の同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、合成tRNAは、配列番号1~20から選択される配列に対して少なくとも約86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%又はそれ以上の同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、合成tRNAは、配列番号1~20から選択される配列と同一の核酸配列を含む。
【表1-1】
【表1-2】
脂質組成物
双性イオン性脂質
【0072】
いくつかの実施形態では、本出願の脂質組成物は、双性イオン性脂質を約1%~約60%のモルパーセントで含む。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、双性イオン性脂質を、少なくとも(約)1%、少なくとも(約)5%、少なくとも(約)10%、少なくとも(約)15%、少なくとも(約)20%、少なくとも(約)25%、少なくとも(約)30%、少なくとも(約)35%、少なくとも(約)40%、少なくとも(約)45%、少なくとも(約)50%、少なくとも(約)55%、又は少なくとも(約)60%のモルパーセントで含む。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、最大(約)60%、最大(約)55%、最大(約)50%、最大(約)45%、最大(約)40%、最大(約)35%、最大(約)30%、最大(約)25%、最大(約)20%、少なくとも(約)15%、最大(約)10%、又は最大(約)5%のモルパーセントで双性イオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、(約)1%、(約)2%、(約)5%、(約)10%、(約)15%、(約)20%、(約)25%、(約)30%、(約)35%、(約)40%、(約)45%、(約)50%、(約)55%、若しくは(約)60%、又は前述の値のいずれか2つの間の範囲のモルパーセントで双性イオン性脂質を含む。
【0073】
脂質組成物のいくつかの実施形態では、双性イオン性脂質は双性イオン性リン脂質である。
【0074】
脂質組成物のいくつかの実施形態では、双性イオン性脂質はスルホン酸アニオンを含む。双性イオン性脂質は、第四級アンモニウムカチオンを更に含み得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、双性イオン性脂質は、構造式(I):
【化31】
(I)
又はその薬学的に許容される塩を有し、
X
1は、-S(O)
2O
-又は-OP(O)OR
eO
-であり、式中、
R
eは、水素、アルキル
(C≦6)又は置換アルキル
(C≦6)であり、
Y
1は、アルカンジイル
(C≦12)、アルケンジイル
(C≦12)又はその置換体であり、
Aは、-NR
a-、-S-、又は-O-であり、
R
a、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素、アルキル
(C≦6)又は置換アルキル
(C≦6)であり、又は
あるいは、R
aはR
3又はR
4と一緒になって、アルカンジイル
(C≦8)又は置換アルカンジイル
(C≦8)を形成し、
R
2は、水素、アルキル
(C≦8)、-アルカンジイル
(C≦6)-NH
2、-アルカンジイル
(C≦6)-アルキルアミノ
(C≦8)、-アルカンジイル
(C≦6)-ジアルキルアミノ
(C≦12)、-アルカンジイル
(C≦6)-NR’R”、これらの基のいずれかの置換された実施形態、及び-Z
3A”R
8からなる群から選択され、
R
5は、水素、アルキル
(C≦8)、-アルカンジイル
(C≦6)-NH
2、-アルカンジイル
(C≦6)-アルキルアミノ
(C≦8)、-アルカンジイル
(C≦6)-ジアルキルアミノ
(C≦12)、-アルカンジイル
(C≦6)-NR’R”、これらの基のいずれかの置換された実施形態、及び-Z
3A”R
8からなる群から選択され、
R
6は、水素、アルキル
(C≦8)、-アルカンジイル
(C≦6)-NH
2、-アルカンジイル
(C≦6)-アルキルアミノ
(C≦8)、-アルカンジイル
(C≦6)-ジアルキルアミノ
(C≦12)、-アルカンジイル
(C≦6)-NR’R”、これらの基のいずれかの置換された実施形態、及び-Z
3A”R
8からなる群から選択され、
式中、
R’及びR”は、それぞれ独立して、水素、アルキル
(C≦8)、置換アルキル
(C≦8)又はZ
2A’R
7であり、
式中、
Z
2は、アルカンジイル
(C≦4)又は置換アルカンジイル
(C≦4)であり、
A’は、-CHR
j-、-C(O)O-、又は-C(O)NR
b-であり、式中、
R
bは、水素、アルキル
(C≦6)又は置換アルキル
(C≦6)であり、及び
R
jは、水素、ハロ、ヒドロキシ、アシルオキシ
(C≦24)又は置換アシルオキシ
(C≦24)であり、
R
7は、アルキル
(C6~24)、置換アルキル
(C6~24)、アルケニル
(C6~24)又は置換アルケニル
(C6~24)であり、
Z
3は、アルカンジイル
(C≦4)又は置換アルカンジイル
(C≦4)であり、
A”は、-CHR
k-、-C(O)O-、又は-C(O)NR
l-であり、
R
lは、水素、アルキル
(C≦6)又は置換アルキル
(C≦6)であり、及び
R
kは、水素、ハロ、ヒドロキシ、アシルオキシ
(C≦24)又は置換アシルオキシ
(C≦24)であり、及び
R
8は、アルキル
(C6~24)、置換アルキル
(C6~24)、アルケニル
(C6~24)又は置換アルケニル
(C6~24)であり、
qは1又は2であり、
rは、1、2、又は3であり、及び
m及びpは、それぞれ独立して、0、1、2又は3である。
【0076】
式(I)の双性イオン性脂質のいくつかの実施形態では、X1は-S(O)2O-である。
【0077】
式(I)の双性イオン性脂質のいくつかの実施形態では、Y1はアルカンジイル(C≦12)又はアルケンジイル(C≦12)である。いくつかの実施形態では、Aは、-NRa-である。いくつかの実施形態では、Raは、水素、アルキル(C≦6)又は置換アルキル(C≦6)である。
【0078】
式(I)の双性イオン性脂質のいくつかの実施形態では、R3は、水素、アルキル(C≦6)又は置換アルキル(C≦6)である。
【0079】
式(I)の双性イオン性脂質のいくつかの実施形態では、R4は、水素、アルキル(C≦6)又は置換アルキル(C≦6)である。
【0080】
式(I)の双性イオン性脂質のいくつかの実施形態では、R2は、水素、アルキル(C≦8)、置換アルキル(C≦8)又は-Z3A”R8である。R2のいくつかの実施形態では、Z3はアルカンジイル(C≦4)であり、A”は、-CHRk-、-C(O)O-又は-C(O)NRl-であり、式中、Rlは、水素、アルキル(C≦6)又は置換アルキル(C≦6)であり、Rkは、水素、ハロ、ヒドロキシ、アシルオキシ(C≦24)又は置換アシルオキシ(C≦24)であり、R8はアルキル(C6~24)又はアルケニル(C6~24)である。
【0081】
式(I)の双性イオン性脂質のいくつかの実施形態では、R5は、水素、アルキル(C≦8)、置換アルキル(C≦8)又は-Z3A”R8である。R5のいくつかの実施形態では、Z3はアルカンジイル(C≦4)であり、A”は、-CHRk-、-C(O)O-又は-C(O)NRl-であり、式中、Rlは、水素、アルキル(C≦6)又は置換アルキル(C≦6)であり、Rkは、水素、ハロ、ヒドロキシ、アシルオキシ(C≦24)又は置換アシルオキシ(C≦24)であり、R8はアルキル(C6~24)又はアルケニル(C6~24)である。
【0082】
式(I)の双性イオン性脂質のいくつかの実施形態では、R6は、アルキル(C≦8)、-アルカンジイル(C≦6)-NH2、-アルカンジイル(C≦6)-アルキルアミノ(C≦8)、-アルカンジイル(C≦6)-ジアルキルアミノ(C≦12)、-アルカンジイル(C≦6)-NR’R”、又はこれらの基のいずれかの置換された実施形態である。いくつかの実施形態では、R6は、アルキル(C≦8)又は置換アルキル(C≦8)である。いくつかの実施形態では、R6は、-アルカンジイル(C≦6)-NR’R”である。R6のいくつかの実施形態では、R’は-Z2A’R7である。いくつかの実施形態では、Z2は、アルカンジイル(C≦4)であり、A’は、-CHRj-、-C(O)O-、又は-C(O)NRb-であり、ここで、Rbは、水素、アルキル(C≦6)、又は置換アルキル(C≦6)であり、Rjは、水素、ハロ、ヒドロキシ、アシルオキシ(C≦24)又は置換アシルオキシ(C≦24)であり、R7は、アルキル(C6~24)又はアルケニル(C6~24)である。いくつかの実施形態では、R”は-Z2A’R7である。R”のいくつかの実施形態では、Z2は、アルカンジイル(C≦4)であり、A’は、-CHRj-、-C(O)O-、又は-C(O)NRb-であり、ここで、Rbは、水素、アルキル(C≦6)、又は置換アルキル(C≦6)であり、Rjは、水素、ハロ、ヒドロキシ、アシルオキシ(C≦24)又は置換アシルオキシ(C≦24)であり、R7は、アルキル(C6~24)又はアルケニル(C6~24)である。
【0083】
式(I)の双性イオン性脂質のいくつかの実施形態では、qは2である。
【0084】
式(I)の双性イオン性脂質のいくつかの実施形態では、rは2又は3である。
【0085】
いくつかの実施形態では、双性イオン性脂質は、
【化32】
、
【化33】
、
【化34】
、
【化35】
、
【化36】
、
【化37】
からなる群から選択される構造式及びその薬学的に許容される塩を有し、式中、Rは、H、-CH
2CH(OH)R
8、-CH
2CH
2C(O)OR
8、及び-CH
2CH
2C(O)NHR
8からなる群から選択され、式中、R
8は、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、及びオクタデシルからなる群から選択される。
【0086】
いくつかの実施形態では、双性イオン性脂質は、構造式:
【化38】
又はその薬学的に許容される塩を有する。
【0087】
いくつかの実施形態では、双性イオン性脂質は、
【化39】
、
【化40】
、
【化41】
、
【化42】
、
【化43】
、
【化44】
、
【化45】
、
及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物である。
【0088】
脂質組成物のいくつかの実施形態では、双性イオン性脂質は、アルキル化又はアルケニル化リン酸アニオンを含む。アルキル化又はアルケニル化リン酸アニオンは、構造式
【化46】
を有し、式中、Rはアルキル又はアルケニルであり得、nは、1、2、3、4、5、又は6であり、*は、アルキル化又はアルケニル化リン酸アニオンの結合点を示してもよく、*により、アルキル化又はアルケニル化リン酸アニオンの第4級アンモニウムカチオンへの結合点が示されていてもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、脂質組成物は、双性イオン性脂質と、(第1の)双性イオン性脂質とは別個の第2の双性イオン性脂質とを含む2つ以上の双性イオン性脂質を含む。第2の双性イオン性脂質はリン脂質であり得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、(例えば、第1又は第2)双性イオン性脂質又はリン脂質には、1つ又は2つの長鎖(例えば、C6~C24)アルキル又はアルケニル基、グリセロール又はスフィンゴシン、1つ又は2つのリン酸基、及び有機小分子が含まれていてもよい。小有機分子は、アミノ酸、糖、又はアミノ置換アルコキシ基、例えばコリン又はエタノールアミンであり得る。いくつかの実施形態では、(例えば、第1又は第2)双性イオン性脂質又はリン脂質は、ホスファチジルコリンである。いくつかの実施形態では、(例えば、第1又は第2)双性イオン性脂質又はリン脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン又はジオレオイルホスファチジルエタノールアミンである。いくつかの実施形態では、他の双性イオン性脂質が使用され、双性イオン性脂質は、正電荷及び負電荷の両方を有する脂質及び脂質様分子を定義する。
【0091】
いくつかの実施形態では、2つ以上の双性イオン性脂質は、約1%~約60%のモルパーセントで脂質組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、2つ以上の双性イオン性脂質は、少なくとも(約)5%、少なくとも(約)10%、少なくとも(約)15%、少なくとも(約)20%、少なくとも(約)25%、少なくとも(約)30%、少なくとも(約)35%、少なくとも(約)40%、少なくとも(約)45%、少なくとも(約)50%、少なくとも(約)55%、又は少なくとも(約)60%のモルパーセントで脂質組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、2つ以上の双性イオン性脂質は、脂質組成物中に、多くとも(約)60%、多くとも(約)55%、多くとも(約)50%、多くとも(約)45%、多くとも(約)40%、多くとも(約)35%、多くとも(約)30%、多くとも(約)25%、多くとも(約)20%、少なくとも(約)15%、多くとも(約)10%、又は多くとも(約)5%のモルパーセントで存在する。いくつかの実施形態では、2つ以上の双性イオン性脂質は、(約)5%、(約)10%、(約)15%、(約)20%、(約)25%、(約)30%、(約)35%、(約)40%、(約)45%、(約)50%、(約)55%、又は(約)60%のモルパーセント、又は前述の値のいずれか2つの間の範囲で脂質組成物中に存在する。
【0092】
いくつかの実施形態では、双性イオン性脂質と合成tRNAとの(例えば、重量又は質量)比は、約50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、7.5:1又は5:1以下である。いくつかの実施形態では、双性イオン性脂質対合成tRNAの(例えば、重量又は質量)比は、少なくとも約1:1又は2:1である。いくつかの実施形態では、双性イオン性脂質と合成tRNAにとの(例えば、重量又は質量)比は、約1:1~約50:1又は約2:1~約50:1である。いくつかの実施形態では、双性イオン性脂質と合成tRNAにとの(例えば、重量又は質量)比は、約1:1~約40:1又は約2:1~約40:1である。いくつかの実施形態では、双性イオン性脂質と合成tRNAにとの(例えば、重量又は質量)比は、約1:1~約30:1又は約2:1~約30:1である。いくつかの実施形態では、双性イオン性脂質と合成tRNAにとの(例えば、重量又は質量)比は、約1:1~約20:1又は約2:1~約20:1である。
追加の脂質
【0093】
本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、脂質組成物は、ステロイド若しくはステロイド誘導体、ポリマー複合脂質(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)結合脂質)、又はそれらの組合せを含むがこれらに限定されない追加の脂質を更に含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、脂質組成物中の窒素と合成ポリヌクレオチド中のリン酸塩とのモル比(N/P比)は、約50:1以下、約40:1以下、約30:1以下、又は約20:1以下である。いくつかの実施形態では、脂質組成物中の窒素と合成ポリヌクレオチド中のリン酸塩とのモル比(N/P比)は、少なくとも約1:1、少なくとも約2:1、少なくとも約3:1、少なくとも約4:1、又は少なくとも約5:1である。いくつかの実施形態では、脂質組成物中の窒素と合成ポリヌクレオチド中のリン酸塩とのモル比(N/P比)は、約1:1~約50:1、少なくとも約2:1~約50:1、少なくとも約3:1~約50:1、少なくとも約4:1~約50:1、又は少なくとも約5:1~約50:1である。いくつかの実施形態では、脂質組成物中の窒素と合成ポリヌクレオチド中のリン酸塩とのモル比(N/P比)は、約1:1~約40:1、少なくとも約2:1~約40:1、少なくとも約3:1~約40:1、少なくとも約4:1~約40:1、又は少なくとも約5:1~約40:1である。いくつかの実施形態では、脂質組成物中の窒素と合成ポリヌクレオチド中のリン酸塩とのモル比(N/P比)は、約1:1~約30:1、少なくとも約2:1~約30:1、少なくとも約3:1~約30:1、少なくとも約4:1~約30:1、又は少なくとも約5:1~約30:1である。
ステロイド又はステロイド誘導体
【0095】
本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、脂質組成物は、ステロイド又はステロイド誘導体を更に含む。いくつかの実施形態において、ステロイド又はステロイド誘導体は、任意のステロイド又はステロイド誘導体を含む。本明細書で使用される場合、いくつかの実施形態では、「ステロイド」という用語は、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、オキソ基、アシル基、又は2つ以上の炭素原子間の二重結合を含む1又は複数の置換を更に含むことができる四環17炭素環式構造を有する化合物のクラスである。一態様において、ステロイドの環構造は、式:
【化47】
に示されるように、3つの縮合シクロヘキシル環及び縮合シクロペンチル環を含む。いくつかの実施形態では、ステロイド誘導体は、1又は複数の非アルキル置換を有する上記の環構造を含む。いくつかの実施形態において、ステロイド又はステロイド誘導体はステロールであり、式は更に以下のように定義される:
【化48】
。本出願のいくつかの実施形態では、ステロイド又はステロイド誘導体は、コレスタン又はコレスタン誘導体である。コレスタンでは、環構造は式:
【化49】
によって更に定義される。上記のように、コレスタン誘導体は、上記の環系の1又は複数の非アルキル置換を含む。いくつかの実施形態では、コレスタン又はコレスタン誘導体は、コレステン若しくはコレステン誘導体又はステロール若しくはステロール誘導体である。他の実施形態では、コレスタン又はコレスタン誘導体は、コレステア及びステロール又はその誘導体の両方である。
【0096】
脂質組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、約40~約46の総脂質組成物に対するステロイドのモルパーセントを更に含み得る。いくつかの実施形態では、モルパーセントは、約40、41、42、43、44、45~約46、又はその中の導出可能な任意の範囲である。他の実施形態では、総脂質組成物に対するステロイドのモル百分率は、約15~約40である。いくつかの実施形態では、モルパーセントは、15、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、若しくは40、又はそこから導出可能な任意の範囲である。
【0097】
いくつかの実施形態では、脂質組成物は、ステロイド又はステロイド誘導体を約1%~約60%、約5%~約60%、約10%~約60%、又は約20%~約60%のモルパーセントで含む。
【0098】
本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、脂質組成物は、ステロイド又はステロイド誘導体を約15%~約46%のモルパーセントで含む。本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、脂質組成物は、ステロイド又はステロイド誘導体を約20%~約40%のモルパーセントで含む。本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、脂質組成物は、ステロイド又はステロイド誘導体を約25%~約35%のモルパーセントで含む。本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、脂質組成物は、ステロイド又はステロイド誘導体を約30%~約40%のモルパーセントで含む。本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、脂質組成物は、ステロイド又はステロイド誘導体を約20%~約30%のモルパーセントで含む。本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、脂質組成物は、少なくとも(約)15%、少なくとも(約)20%、少なくとも(約)25%、少なくとも(約)30%、少なくとも(約)35%、少なくとも(約)40%、少なくとも(約)45%、又は少なくとも(約)46%のモルパーセントでステロイド又はステロイド誘導体を含む。本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、脂質組成物は、ステロイド又はステロイド誘導体を、多くとも(約)15%、多くとも(約)20%、多くとも(約)25%、多くとも(約)30%、多くとも(約)35%、多くとも(約)40%、多くとも(約)45%、又は多くとも(約)46%のモルパーセントで含む。
ポリマー共役脂質
【0099】
本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、脂質組成物は、ポリマーコンジュゲート脂質を更に含む。いくつかの実施形態では、ポリマーコンジュゲート化脂質はPEG脂質である。いくつかの実施形態では、PEG脂質は、グリセロール基に結合したPEG鎖も含むジグリセリドである。他の実施形態では、PEG脂質は、PEG鎖を有するリンカー基に結合した1又は複数のC6~C24長鎖アルキル若しくはアルケニル基又はC6~C24脂肪酸基を含む化合物である。PEG脂質のいくつかの非限定的な例としては、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジン酸、PEGセラミドコンジュゲート、PEG修飾ジアルキルアミン及びPEG修飾1,2-ジアシルオキシプロパン-3-アミン、PEG修飾ジアシルグリセロール及びジアルキルグリセロールが挙げられる。いくつかの実施形態では、PEG修飾ジアステアロイルホスファチジルエタノールアミン又はPEG修飾ジミリストイル-sn-グリセロール。いくつかの実施形態では、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン(PE)。いくつかの実施形態では、PEG修飾は、脂質のPEG成分の分子量によって測定される。いくつかの実施形態では、PEG修飾は、約100~約15,000の分子量を有する。いくつかの実施形態では、分子量は、約200~約500、約400~約5,000、約500~約3,000、又は約1,200~約3,000である。PEG修飾の分子量は、約100、200、400、500、600、800、1,000、1,250、1,500、1,750、2,000、2,250、2,500、2,750、3,000、3,500、4,000、4,500、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、12,500~約15,000である。本出願で使用され得る脂質のいくつかの非限定的な例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,820,873号、国際公開第2010/141069号、又は米国特許第8,450,298号によって教示される。
【0100】
本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、PEG脂質は、構造式:
【化50】
を有し、式中、R
12及びR
13は、それぞれ独立して、アルキル
(C≦24)、アルケニル
(C≦24)、又はこれらの基のいずれかの置換された実施形態であり、R
eは、水素、アルキル
(C≦8)又は置換アルキル
(C≦8)であり、xは1~250である。いくつかの実施形態では、R
eは、メチル等のアルキル
(C≦8)である。R
12及びR
13は、それぞれ独立して、アルキル
(C≦4~20)である。いくつかの実施形態では、xは、5~250である。一実施形態では、xは5~125であるか、又はxは100~250である。いくつかの実施形態では、PEG脂質は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコールである。
【0101】
本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、PEG脂質は、構造式:
【化51】
を有し、式中、n
1は1~100の整数であり、n
2及びn
3はそれぞれ独立して1~29の整数から選択される。いくつかの実施形態では、n
1は、5、10、15、20、25、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95若しくは100、又はそれらにおいて導出可能な任意の範囲である。いくつかの実施形態では、n
1は、約30~約50である。いくつかの実施形態では、n
2は、5~23である。いくつかの実施形態では、n
2は、11~約17である。いくつかの実施形態では、n
3は、5~23である。いくつかの実施形態では、n
3は、11~約17である。
【0102】
本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、全脂質組成物に対して約4.0~約4.6のPEG脂質のモル百分率を更に含み得る。いくつかの実施形態では、モルパーセントは、約4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5~約4.6、又はその中の導き出せる任意の範囲である。他の実施形態では、モルパーセントは、約1.5~約4.0である。いくつかの実施形態では、モルパーセントは、約1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、3、3.25、3.5、3.75~約4.0、又はその中の導き出せる任意の範囲である。
【0103】
いくつかの実施形態では、脂質組成物は、約0.5%~約12%のモルパーセントでポリマー複合脂質を含む。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、約1%~約12%のモルパーセントでポリマー複合脂質を含む。いくつかの実施形態では、脂質組成物は、約1.5%~約12%のモルパーセントでポリマー複合脂質を含む。
【0104】
本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、脂質組成物は、約0.5%~約10%のモルパーセントでポリマーコンジュゲート脂質を含む。本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、脂質組成物は、約1%~約10%のモルパーセントでポリマーコンジュゲート脂質を含む。本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、脂質組成物は、約2%~約10%のモルパーセントでポリマーコンジュゲート脂質を含む。本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、脂質組成物は、約3%~約10%のモルパーセントでポリマーコンジュゲート脂質を含む。本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、脂質組成物は、約4%~約10%のモルパーセントでポリマーコンジュゲート脂質を含む。本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、脂質組成物は、少なくとも(約)0.5%、少なくとも(約)1%、少なくとも(約)1.5%、少なくとも(約)2%、少なくとも(約)2.5%、少なくとも(約)3%、少なくとも(約)3.5%、少なくとも(約)4%、少なくとも(約)4.5%、少なくとも(約)5%、少なくとも(約)5.5%、少なくとも(約)6%、少なくとも(約)6.5%、少なくとも(約)7%、少なくとも(約)7.5%、少なくとも(約)8%、少なくとも(約)8.5%、少なくとも(約)9%、少なくとも(約)9.5%、又は少なくとも(約)10%のモルパーセントでポリマー複合脂質を含む。本出願の脂質組成物のいくつかの実施形態では、脂質組成物は、多くとも(約)0.5%、多くとも(約)1%、多くとも(約)1.5%、多くとも(約)2%、多くとも(約)2.5%、多くとも(約)3%、多くとも(約)3.5%、多くとも(約)4%、多くとも(約)4.5%、多くとも(約)5%、多くとも(約)5.5%、多くとも(約)6%、多くとも(約)6.5%、多くとも(約)7%、多くとも(約)7.5%、多くとも(約)8%、多くとも(約)8.5%、多くとも(約)9%、多くとも(約)9.5%、又は多くとも(約)10%のモルパーセントでポリマー複合脂質を含む。
製剤
【0105】
いくつかの実施形態では、組成物がエアロゾル組成物であるか、エアロゾル投与のために製剤化される場合、組成物は0.5マイクロメートル(μm)~10μmの液滴サイズを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、0.5μm~10μmの中央液滴サイズを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、0.5μm~10μmの平均液滴サイズを有する。液滴サイズは、カスケードインパクタ分析又はレーザ回折、又はエアロゾル液滴を測定するための他の適切な技術によって決定されてもよい。エアロゾル投与は、呼吸上皮に送達され得る。
【0106】
組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、当技術分野で公知の任意の適切な投与量として製剤化することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、ナノ粒子又はナノカプセルに製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、例えば、経口、直腸、膣、経粘膜、気管内若しくは吸入を含む肺、又は腸内投与;筋肉内、皮下、髄内注射、並びに髄腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内又は眼内注射を含む非経口送達を含む、当技術分野で公知の任意の適切な経路による投与のために製剤化される。
【0107】
本方法のいくつかの実施形態では、本出願の組成物は、全身的ではなく局所的な方法による投与のために、例えば、医薬組成物を標的組織に直接注射することによって、好ましくは持続放出製剤で製剤化される。局所送達は、標的化される組織に応じて様々な方法で影響を受け得る。
【0108】
方法のいくつかの実施形態では、本出願の組成物を含有するエアロゾルを吸入することができる(経鼻、気管、又は気管支送達用)。いくつかの実施形態では、本出願の組成物は、例えば、損傷、疾患症状発現、又は疼痛の部位に注射することができる。いくつかの実施形態では、本出願の組成物は、経口、気管、又は食道適用のためのロゼンジで提供することができる。いくつかの実施形態では、本願の組成物は、胃又は腸への投与のために液体、錠剤又はカプセル形態で供給することができる。いくつかの実施形態では、本出願の組成物は、直腸又は膣適用のために坐剤形態で供給することができる。いくつかの実施形態では、本出願の組成物は、クリーム、滴剤、又は注射剤の使用によって眼に送達することさえできる。
キット
【0109】
一態様では、本明細書に記載の組成物を含むキットが本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、キットは、容器と、容器上の又は容器に関連するラベル又は添付文書とを更に含む。
方法
(1又は複数の)細胞におけるCFTR発現又は活性を増強するための方法
【0110】
一態様では、細胞における嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)タンパク質の発現又は活性を増強する方法が本明細書で提供される。方法は、細胞を、本明細書に記載されるような組成物、例えば、本明細書に記載されるような脂質組成物とアセンブルされた本明細書に記載されるような転移リボ核酸(tRNA)を含む組成物と接触させて、細胞におけるCFTRタンパク質の成長中のペプチド鎖にアミノ酸を導入し、それにより、接触の少なくとも24時間後、48時間後、又は72時間後に、細胞におけるCFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効量又は活性をもたらすことを含み得る。
【0111】
一態様では、CFTR遺伝子に変異を示す又は示す疑いがある対象の細胞における嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)タンパク質の発現又は活性を増強する方法が本明細書で提供される。方法は、細胞を、脂質組成物とアセンブルされた移入リボ核酸(tRNA)を含む組成物と接触させて、対象のCFTR遺伝子における変異に対応する位置で細胞におけるCFTRタンパク質の成長中のペプチド鎖にアミノ酸を導入し、それにより、細胞におけるCFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効量又は活性をもたらすことを含み得る。
【0112】
CFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効活性は、参照の複数の細胞の経上皮イオン輸送特性(例えば、経上皮電流又は経上皮電圧)と比較して、例えば接触の非存在下で、細胞を含む複数の細胞の経上皮イオン輸送特性の変化を測定することによって決定され得る。
【0113】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、接触が繰り返される。接触は、1回、2回、3回、又はそれ以上繰り返されてもよい。いくつかの実施形態では、接触は、少なくとも週に1回である。いくつかの実施形態では、接触は、少なくとも週に2回である。いくつかの実施形態において、方法は、細胞におけるCFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効量又は活性を、各接触の少なくとも24時間後にもたらす。いくつかの実施形態では、第2の接触は、第1の接触の少なくとも約1、2、又は3日後に行われていてもよい。いくつかの実施形態では、方法は、第3の接触を更に含み、第3の接触は、第2の接触の少なくとも約1、2、又は3日後に行われていてもよい。いくつかの実施形態において、方法は、細胞におけるCFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効量又は活性を、第2の接触の少なくとも24時間後にもたらす。いくつかの実施形態において、方法は、細胞におけるCFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効量又は活性を、第3の接触の少なくとも24時間後にもたらす。各接触における組成物は、同じであっても同一であってもよい。CFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効量又は活性は、反復接触後に増加し得る。
【0114】
(1又は複数の)接触は、インビボで行われ得る。(1又は複数の)接触は、インビトロで行われ得る。(1又は複数の)接触は、エクスビボで行われ得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、方法は、CFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効活性を達成する。いくつかの実施形態では、治療有効活性は、経上皮アッセイによって測定され得る。経上皮アッセイは、機能性タンパク質の機能に対応し得る電圧又は電流を測定し得る。いくつかの実施形態では、CFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効活性は、約2マイクロアンペア(μA)~約30μAの経上皮電流に対応する。いくつかの実施形態では、CFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効活性は、少なくとも約2マイクロアンペア(μA)の経上皮電流に対応する。いくつかの実施形態では、CFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効活性は、少なくとも約2マイクロアンペア(μA)/平方センチメートル/分(μA・cm-2・分-1)の経上皮電流に対応する。いくつかの実施形態では、CFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効活性は、約2マイクロアンペア(μA)/平方センチメートル/分(μA・cm-2・分-1)~約30μA・cm-2・分-1の経上皮電流に対応する。経上皮電流は、本明細書の他の箇所に記載されているもの等、TECC24システムを使用した同等の経上皮電流アッセイを介して決定することができる。
【0116】
本明細書中に記載される方法のいくつかの実施形態では、方法は、対応するコントロールと比較して、細胞におけるCFTRタンパク質の機能的バリアントの量を増大させる。機能的バリアントは、野生型CFTRタンパク質であり得る。機能的バリアントは、完全長CFTRタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、方法は、対応するコントロールと比較して、細胞における機能的バリアントCFTRタンパク質の量を増大させる。いくつかの実施形態では、対照は、(1又は複数の)接触の1又は複数の工程がない対応する細胞を含む。いくつかの実施形態では、方法は、対応する対照と比較して、細胞において、CFTRタンパク質の機能的バリアントの量を、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.4倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約1.6倍、少なくとも約1.7倍、少なくとも約1.8倍、少なくとも約1.9倍、少なくとも約2.0倍、少なくとも約2.1倍、少なくとも約2.2倍、少なくとも約2.3倍、少なくとも約2.4倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約2.6倍、少なくとも約2.7倍、少なくとも約2.8倍、少なくとも約2.9倍、少なくとも約3.0倍、少なくとも約3.1倍、少なくとも約3.2倍、少なくとも約3.3倍、少なくとも約3.4倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約3.6倍、少なくとも約3.7倍、少なくとも約3.8倍、少なくとも約3.9倍、少なくとも約4.0倍、少なくとも約4.1倍、少なくとも約4.2倍、少なくとも約4.3倍、少なくとも約4.4倍、少なくとも約4.5倍、少なくとも約4.6倍、少なくとも約4.7倍、少なくとも約4.8倍、少なくとも約4.9倍、又は少なくとも約5.0倍増加させる。
【0117】
いくつかの実施形態において、方法は、細胞におけるCFTRタンパク質の機能的バリアントの治療有効量をもたらす。いくつかの実施形態において、方法は、細胞において治療有効量の野生型(WT)タンパク質又は完全長CFTRタンパク質をもたらす。
【0118】
いくつかの実施形態では、方法は、対応する対照と比較して細胞内のイオン輸送を増強する。いくつかの実施形態では、方法は、対応する対照と比較して細胞内の塩化物輸送を増強する。いくつかの実施形態では、対照は、接触していない対応する細胞を含む。いくつかの実施形態では、方法は、対応する対照と比較して、細胞において、イオン輸送を、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.4倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約1.6倍、少なくとも約1.7倍、少なくとも約1.8倍、少なくとも約1.9倍、少なくとも約2.0倍、少なくとも約2.1倍、少なくとも約2.2倍、少なくとも約2.3倍、少なくとも約2.4倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約2.6倍、少なくとも約2.7倍、少なくとも約2.8倍、少なくとも約2.9倍、少なくとも約3.0倍、少なくとも約3.1倍、少なくとも約3.2倍、少なくとも約3.3倍、少なくとも約3.4倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約3.6倍、少なくとも約3.7倍、少なくとも約3.8倍、少なくとも約3.9倍、少なくとも約4.0倍、少なくとも約4.1倍、少なくとも約4.2倍、少なくとも約4.3倍、少なくとも約4.4倍、少なくとも約4.5倍、少なくとも約4.6倍、少なくとも約4.7倍、少なくとも約4.8倍、少なくとも約4.9倍、又は少なくとも約5.0倍増強させる。
嚢胞性線維症の処置方法
【0119】
一態様では、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)関連状態を有する又は有する疑いがある対象を治療する方法が本明細書で提供される。方法は、本明細書に記載の組成物を対象に投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、CFTR関連状態は、嚢胞性線維症、遺伝性気腫、若しくは慢性閉塞性肺疾患(COPD)、又はそれらの組合せである。対象は哺乳動物であり得る。対象はヒトであり得る。いくつかの実施形態において、投与することは肺投与を含む。いくつかの実施形態では、投与は、噴霧(ネブライゼーション)による吸入を含む。いくつかの実施形態では、投与することは、アピカル投与を含む。
【0120】
本開示の方法は、製剤又は組成物の特性に基づいて、嚢胞性線維症を有する対象を治療することが可能であり得る。具体的には、本明細書の他の箇所に記載される組成物は、嚢胞性線維症に関連する粘液に浸透し、それによってポリヌクレオチドを細胞に送達することができる場合がある。
(1又は複数の)細胞
【0121】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、細胞は肺細胞である。いくつかの実施形態において、肺細胞は肺気道細胞である。本出願の送達によって標的化され得る例示的な肺気道細胞には、基底細胞、分泌細胞、例えば杯細胞及びクラブ細胞、線毛細胞、イオン細胞並びにそれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。本方法のいくつかの実施形態では、細胞は気道上皮細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は気管支上皮細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は気道上皮細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、p63マーカーの発現を特徴とする基底細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、FOXI1マーカーの発現を特徴とするイオン細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は未分化である。いくつかの実施形態では、細胞は分化している。いくつかの実施形態では、(1又は複数の)細胞は対象に由来する。対象は哺乳動物であり得る。対象はヒトであり得る。
(1又は複数の)変異
【0122】
いくつかの実施形態では、細胞又は対象は、CFTR遺伝子又は転写物における変異を示す。いくつかの実施形態において、細胞又は対象は、CFTR遺伝子のエクソン11~27のうちの1又は複数において変異を示す。細胞又は対象が、CFTR遺伝子のエクソン11~27のうちの1又は複数のエクソンにおいてナンセンス変異又はフレームシフト変異を示す。いくつかの実施形態では、変異は、変化がF508における変異、例えばF508delを有する変異体タンパク質を生じ得るCFTR遺伝子における位置に位置する。いくつかの実施形態では、変異は、CFTR遺伝子において、変化が、CFTR遺伝子におけるc.1657C>Tに対応するCFTRタンパク質におけるR553における変異、例えば、R553Xを有する変異体タンパク質を生じ得る位置に位置する。いくつかの実施形態では、細胞又は対象は複数の突然変異を有し得る。いくつかの実施形態では、変異は、嚢胞性線維症、遺伝性気腫、又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関連する。
[実施例]
[実施例1]tRNAの生成
【0123】
tRNAを生成するために、T7RNAポリメラーゼプロモーター配列の後ろの特定のtRNA配列をコードするDNA断片を化学的に合成した。T7プロモーター-tRNA DNA配列をPCRによって増幅し、次いで、Green and Sambrook,2012;Rio et al.,2011;Flanagan et al.,2003;及びJaniak et al.,1992に記載されているもの等の標準的な技術を使用して、T7RNAポリメラーゼを使用してインビトロで転写した。得られたtRNA転写物をフェノールで抽出し、高塩及びエタノール中で沈殿させ、MonoQイオン交換カラムを使用するHPLCによって精製した。精製したtRNAを沈殿させ、再懸濁し、水に透析した。
[実施例2]R553X/F508del対象からの分化初代hBE細胞における本出願のサプレッサーtRNA LNP製剤によるR553X/F508del CFTR変異の補償。
【0124】
LNPによってカプセル化されたアルギニンをコードするサプレッサーtRNAは、R553X/F508del CFTR hBEモデルにおいてCFTRの有意な救済を示した。簡潔には、サプレッサーtRNAをLNP組成物でカプセル化し、アピカル液体ボーラスとして、又は噴霧(ネブライゼーション)LNPエアロゾルへのALI hBEのアピカル曝露として、R553X/F508del CFTR hBE細胞に送達した。3継代目のR553X/F508del CFTR遺伝子型を有する嚢胞性線維症患者から単離したhBE細胞を24ウェルTranswell(登録商標)プレートに播種し、96時間後にエアリフトした。Vertex ALI培地を用いた3日間/週の給餌ルーチンの後に増殖させた細胞。5週間後、hBE細胞培養物は、完全に分化し、分極し、TECC24機能アッセイの準備ができていると考えられた。処置の4日前に、hBE培養物のアピカル側からPBS中の3mMのDTTで粘液を洗浄した。処理の24時間前に、細胞をPBSで洗浄し、更に処理日にPBSで洗浄し、液体ボーラス又はVitroCell噴霧(ネブライゼーション)製剤で根尖側に処理し、計画通り24又は24+n24時間のCO2インキュベーション後に試験した。具体的には、hBEアッセイ配列は、バックグラウンド電流/抵抗記録間隔(約25分)、6μMベンズアミルによるNa+コンダクタンスの阻害後のベースラインCl-電流記録間隔(約15分)、10μMフォルスコリン+1μMVX-770誘導CFTR活性化間隔(約25分)、及び20μMブメタニド誘導Cl-電流阻害間隔(約25分)を含む。時間に対するhBE経上皮等価電流トレース[Ieq=Vt/(Rt-50)、μA/cm]を再構築した。フォルスコリン/VX-770によって誘発されるCl
-電流応答を、フォルスコリン/VX770添加とINH-172添加との間の時点についてのIeq曲線下面積(IeqAUC)として計算した。Ieq AUC/分値を統計的に検証し、実験試料にわたって比較した。
図1Aに示すように、サプレッサーtRNAを含むLNPによるアピカルボーラス処理は、フォルスコリン依存性Cl
-電流を回収し、R553X/F508del hBEにおいて、CFTR機能の救済を実証する。アッセイを3つの時点(投与24時間後、投与48時間後、及び投与72時間後)で実行したところ、いずれもCFTR機能の救済を実証した。
図1A及び
図1Bは、DMSOで処理した細胞と比較した機能CFTRを示し、CFTR機能の増加が陰性対照と比較して有意であることを実証している。
【0125】
同様のアッセイでは、サプレッサーtRNA LNP製剤を週2回の投与スケジュールに基づいて繰り返し投与した。CFTR機能を決定するために同様のプロトコルを使用して、反復投与は、各用量後に改善されたCFTR機能を示した。
図2A及び
図2Bは、第1の用量及び第2の用量が陰性対照よりもCFTR機能を改善することができ、第3の用量がCFTRの機能を更に増加させることを示す。
【0126】
時間経過アッセイでは、tRNA製剤(アピカルボーラス製剤として及びCFTRモジュレーターとして細胞培養培地に添加された。24時間後に細胞培養培地を交換した。
図3A及び
図3Bは、72時間の時点における改善されたCFTR機能を示す。
【0127】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し説明してきたが、そのような実施形態が例としてのみ提供されることは当業者には明らかであろう。本発明は、本明細書内で提供される特定の例によって限定されることを意図しない。本発明を前述の明細書を参照して説明してきたが、本明細書の実施形態の説明及び例示は、限定的な意味で解釈されることを意味しない。本発明から逸脱することなく、当業者には多数の変形、変更、及び置換が思い浮かぶであろう。更に、本発明の全ての態様は、様々な条件及び変数に依存する本明細書に記載の特定の描写、構成又は相対的な割合に限定されないことを理解されたい。本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替形態が、本発明を実施する際に使用され得ることを理解されたい。したがって、本発明は、任意のそのような代替形態、修正形態、変形形態又は均等物も包含すると考えられる。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造並びにそれらの均等物がそれによって包含されることが意図される。
【国際調査報告】