(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】医療用インプラント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/82 20130101AFI20240517BHJP
A61F 2/02 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61F2/82
A61F2/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576063
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 NL2022050316
(87)【国際公開番号】W WO2022260516
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523462572
【氏名又は名称】チョイス ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】CHOICE B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ フラーフ,ペーテル
(72)【発明者】
【氏名】シュトレートツェル,イェルク トーマス
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA30
4C097BB01
4C097BB06
4C097BB08
4C097CC18
4C267AA03
4C267BB03
4C267BB26
4C267BB33
4C267BB42
4C267CC26
4C267EE07
4C267HH07
(57)【要約】
植え込み可能なチューブと、チューブの内側に取り付けられておりかつ開位置と閉位置との間で枢動可能な弁部材と、弁部材を枢動させるためのアクチュエータと、を備え、弁部材は枢動部を備え、上記枢動部は、単一のくちばし部として形成されており、上記弁部材は付勢要素、アクチュエータ、および枢動部を含む安全機構を備えており、くちばし部は、くちばし部にかかる圧力が予め定められた圧力を上回ると枢動部を開位置に向けて枢動させるように構成されている、尿路内に植え込まれる植え込み型チューブ弁を提供することが提案される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの軸方向チューブ端部の間に延在するチューブ内壁を有する植え込み可能なチューブと、
前記チューブの内側に取り付けられておりかつ開位置と閉位置との間で枢動可能な弁部材と、
前記弁部材を前記開位置と前記閉位置との間で枢動させるためのアクチュエータであって、前記弁部材を開位置または閉位置に付勢するための付勢要素を備えている、前記アクチュエータと、を備え、
前記弁部材は、前記チューブに対して横方向に向けられている枢動軸を中心に枢動するように構成されている枢動部を備え、
前記枢動部は、前記枢動軸のある側に、開位置にあるときに前記チューブと一直線になる実質的に管状のオリフィスとして形成されており、かつ前記枢動部は、前記枢動軸の他方側に単一のくちばし部を備えており、
前記くちばし部は前記閉位置に枢動させると前記チューブ内壁と接触する封止縁部を有し、
前記弁部材は以って前記植え込み可能なチューブを通る通路を閉鎖し、
前記弁部材は前記付勢要素、前記アクチュエータ、および前記枢動部を含む安全機構を備えており、
前記くちばし部は、前記くちばし部にかかる圧力が予め定められた圧力を上回ると前記枢動部を前記開位置に向けて枢動させるように構成されている、
尿路内に植え込まれる植え込み型チューブ弁。
【請求項2】
前記くちばし部は、開位置にあるときに前記チューブ内壁と共形かつ一続きになる外面を更に備え、
前記くちばし部は、前記開位置に枢動すると前記外面と共形になり以って前記植え込み可能なチューブを通る遮るもののない通路を提供する内面を備える、請求項1に記載の植え込み型チューブ弁。
【請求項3】
前記くちばし部は、外面と10%未満の厚さの違いで共形となる内面を有する、請求項1または2に記載の植え込み型チューブ弁。
【請求項4】
前記枢動部は、前記チューブ内壁上に設けられた突出した隆起部に当接して枢動する円周状の後縁部を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の植え込み型チューブ弁。
【請求項5】
前記枢動部は部分円周状の後縁部を有し、
前記枢動部は開位置において外壁に設けられた凹部内に少なくとも部分的に埋め込まれ、この結果前記部分円周状の後縁部がチューブ内壁と位置合わせされる、請求項1から4のいずれか一項に記載の植え込み型チューブ弁。
【請求項6】
前記くちばし部は前記枢動軸から延びておりかつ第1の仮想体と第2の仮想体との交差曲線によって形成されており、
前記第1の仮想体は前記チューブ内壁と一致しており、
前記第2の仮想体は前記枢動部上で前記第1の仮想体を枢動させることによって形成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の植え込み型チューブ弁。
【請求項7】
前記枢動部は、前記枢動軸に近接する前記交差曲線を回転させることによって形成される第3の仮想体と一致する近接した端面を有する、請求項6に記載の植え込み型チューブ弁。
【請求項8】
前記チューブは前記軸方向端部同士の間に連続的に延びている円筒形のチューブ内壁を有し、
前記第1の仮想体は閉位置に枢動すると前記チューブ内壁と交差曲線を形成する円筒であり、
前記第3の仮想体は球である、請求項7に記載の植え込み型チューブ弁。
【請求項9】
前記アクチュエータは、
前記弁部材に接続されている枢動可能なカムと、
前記枢動可能なカムにかかる過剰な力の影響下で枢動可能な双安定枢動機構と、を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の植え込み型チューブ弁。
【請求項10】
前記アクチュエータは取り付け構造部と前記取り付け構造部に対して枢動可能な作動部材とを備え、
延長軸を有する前記取り付け構造部は、
加熱回路と、
前記延長軸に沿って整列されている第1のテンション・ワイヤおよび第2のテンション・ワイヤであって、前記第1および第2テンション・ワイヤは、形状金属合金で形成されており、前記加熱回路に接続されており、前記作動部材に偏心係合し以って前記作動部材を前記取り付け構造部を基準とした位置へと枢動させ、その場合使用時に、前記第1のテンション・ワイヤを加熱することによって前記作動部材が第1の位置に枢動され、前記第2のテンション・ワイヤを加熱することによって前記作動部材が第2の位置に枢動されるようになっている、前記第1のテンション・ワイヤおよび前記第2のテンション・ワイヤと、を備える、請求項9に記載の植え込み型チューブ弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病気、事故、または他の理由で失われた尿流を再び自己決定で管理できるようにする医療用インプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
尿失禁の治療のための多種類の人工尿道括約筋が知られている。これらが使用されるのは、外来治療、薬物療法、骨盤再教育などの治療法が有効でない場合である。人工尿道括約筋は、膀胱支持構造を再建する従来の外科的手法の代替としても使用される。通常このような人工括約筋は、男性または女性の患者の特に尿道内に植え込まれる弁構造体によって提供することができ、これは例えば、様々な弁設計を示すWO2013144770(特許文献1)に開示されている種類のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
尿道括約筋として使用される弁設計の課題は、尿路が腎結石または尿路結石などの不純物で汚染される場合のあることである。尿失禁の問題に悩む患者は他の病気にかかりやすい場合が多く、そのような疾患が生じているときに、人工括約筋の存在が問題になる可能性がある。尿失禁問題への対処に関するもう一つの課題は、排尿されないと膀胱が破裂して、深刻な健康状態をもたらす可能性のあることである。
【0005】
本発明はこのような問題を軽減することを目的として、チューブの内側に取り付けられておりかつ開位置と閉位置との間で枢動可能な枢動部を有する弁部材を備える、尿路内に植え込まれる植え込み型チューブ弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
2つの軸方向チューブ端部の間に延在するチューブ内壁を有する植え込み可能なチューブと、チューブの内側に取り付けられておりかつ開位置と閉位置との間で枢動可能な弁部材と、弁部材を開位置と閉位置との間で枢動させるためのアクチュエータと、を備え、弁部材はチューブに対して横方向に向けられている枢動軸を中心に枢動するように構成されている枢動部を備え、上記枢動部は、枢動軸のある側に、開位置にあるときにチューブと一直線になる実質的に管状のオリフィスとして形成されており、かつ上記枢動部は、枢動軸の他方側に単一のくちばし部として形成されており、くちばし部は閉位置に枢動させるとチューブ内壁と接触する封止縁部を有し、弁部材は以って植え込み可能なチューブを通る通路を閉鎖し、上記弁部材は付勢要素、アクチュエータ、および枢動部を含む安全機構を備えており、くちばし部は、くちばし部に作用する圧力が予め定められた圧力を上回ると枢動部を開位置に向けて枢動させるように構成されている、尿路内に植え込まれる植え込み型チューブ弁を提供することが提案される。
【0007】
本発明の別の態様は、ワイヤレス充電デバイスと本明細書で開示するような植え込み型チューブ・デバイスとのシステムに関する。
【0008】
本発明を各図で更に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】尿路内に植え込まれる植え込み型チューブ弁の実施形態を示す図である。
【
図2A】枢動軸に取り付けられる枢動可能なカム部材を示す図である。
【
図2B】枢動軸に取り付けられる枢動可能なカム部材を示す図である。
【
図4】安全機構を設計するための詳細な計算サンプルを示す図である。
【
図5】開示されている弁部材を構成する方法の詳細図である。
【
図7】植え込み型弁チューブの更なる代替の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
別様に定義されていない限り、本明細書で使用する全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示が属する技術の当業者が本開示および図面の文脈で読んだ場合に一般に理解するのと同じ意味を有する。一般に使用される辞書において定義されているような用語などの用語は、関連技術の文脈におけるその意味と矛盾しない意味を有するものとして解釈するべきであり、本明細書において明示的にそうであると定義しない限りは、理想化されたまたは過度に形式ばった意味に解釈されないことが、更に理解されよう。場合によっては、本発明のシステムおよび方法の説明を不明瞭にしないように、よく知られているデバイスおよび方法の詳細な説明を省略することがある。特定の実施形態について記述するために使用される専門用語は、本発明を限定するものとなることを意図していない。本明細書で使用する場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上そうでないことが明確に示されていない限り、複数形も含むことを意図している。「および/または」という用語は、関連する列挙された事物のうちの1つまたは複数の、ありとあらゆる組合せを含む。「~を備える(comprises)」および/または「~を備える(comprising)」という用語は、記載された特徴の存在を明示するが、1つまたは複数の他の特徴の存在または追加を排除するものではないことが、更に理解されよう。本明細書で言及する全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参照文献は、参照によりその全体が組み込まれる。対立する場合は、定義を含め、本明細書が優先する。
【0011】
「装着部」という用語は、多くの取り付け構成部が可能であることを強調するために、その通常の意味で使用されている。これらの構成部には、物理的シャフト装着部、ボールベアリング装着部、または装着部内に取り付けられた弁部材に回転自由度を与える任意の他の機械的構成が含まれる。回転自由度によって、植え込み可能なチューブに対して横方向の回転軸または枢動軸が定まる。好ましくは、装着部は部分的にチューブによって形成され、対応する装着部部分は弁部材によって形成される。
【0012】
「~と共形の」という用語は、特定された特徴の形態追随性(form following nature)を示すその通常の意味で使用され、上記特徴の実質的な部分について形状およびサイズが類似していることを意味する。数学的な意味では共形とは、特徴が局所的なスケールで形状を保持することを示す。ある程度の逸脱が許容され得ることを説明するために、用途の詳細に応じて、特定の特徴、例えば弁部材の外面および内面は、両者の間の違いが例えば10%未満である場合に、共形と見なされると考えられる。
【0013】
より厳密な意味において、「~と一続きの」とは、形態が類似しているだけでなく、2つの特徴の間に実質的に間隙がないかまたは例えば0.1mm未満といった非常に小さい隙間しかないという意味で、同一であることを意味するものと見なされる。より抽象的な意味において、「~と一致する」という用語は、ある特徴が、上記特徴の実質的な部分の外面と一致する仮想の特徴によって覆われていることを示すものとして使用される。
【0014】
「連続的に延びている」という用語は、植え込み可能なチューブに関して、例えば軸方向チューブ端部同士の間で、上記延びた部分同士の間に実質的な逸脱が存在しないこと、特に、外側の突出した特徴がないかまたは非常に限られていることを示す。特に、軸方向チューブ端部同士の間に連続的に延びている植え込み可能なチューブは、チューブ全体に沿ってチューブの形態からの空間的な逸脱がないか、または非常に限られていることを示す。それにも関わらず、連続的という用語は、例えば、アクチュエータのハウジング、封止縁部、取り付け座、もしくは弁座をより小さいスケールで形成するための、または、例えばステントで知られているような形態で例えば人間の脈管内に固定挿入するための、凸凹表面を形成するための、小さな突起または窪みの存在を排除するものではない。対象物を通る一般的な流れがチューブの連続的な形態に起因して妨げられない可能性のあること、または、対象物自体がチューブの形状から実質的に逸脱しないことが、より大きなスケールで示される。特に、弁部材を作動させるアクチュエータはその用途に応じて、周囲の組織、例えば尿路を引き延ばすことで受け入れ可能となる(can be absorbed)ような、細長い形態に成形される。
【0015】
「加熱回路」は、他の様々なモジュール構成要素に制御信号を供給するなど、本発明のシステムおよび方法に従って動作行為を実行するように構成された、1つまたは複数のアナログまたはデジタルのハードワイヤ要素を備え得る。プロセッサは、本システムに従って実行を行うための専用プロセッサであってもよく、または、本システムに従って実行を行うために多くの機能のうちの1つだけが動作する汎用プロセッサであってもよい。プロセッサはプログラム部分、複数のプログラム・セグメントを利用して動作してもよく、または、専用もしくは多目的集積回路を利用したハードウェア・デバイスであってもよい。専用プロセッサまたは共有プロセッサなどの任意のタイプのプロセッサが使用され得る。プロセッサは、マイクロ・コントローラ、中央処理装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ASIC、または、デジタル光デバイスもしくはアナログ電気回路などの、同じ機能を実行し電子技術および電子アーキテクチャを採用する他のプロセッサもしくはコントローラを含み得る。コントローラまたはプロセッサは、コントローラの一部であるかまたはコントローラに動作可能に結合されたメモリを更に備え得る。メモリは、データが記憶される任意の好適なタイプのメモリでよい。本発明のシステムおよび方法とともに使用するのに適した、情報を記憶および/または伝送することのできる、知られているまたは開発された任意の媒体を、メモリとして使用することができる。メモリは、本発明のシステムおよび方法に従って動作行為を実行するようにコントローラを構成できるように、コントローラによってアクセス可能な使用者の選好および/またはアプリケーション・データを記憶してもよい。
【0016】
システムおよび方法に関する例示の実施形態が示されているが、本開示から利点を得る当業者によって、同様の機能および結果を達成するための代替の方法も企図され得る。例えば、いくつかの構成要素を組み合わせること、または1つもしくは複数の代替の構成要素へと分割することができる。最後に、これらの実施形態は単に本システムを例示することを意図しており、添付の特許請求の範囲を任意の特定の実施形態または実施形態の群に限定するものとして解釈されるべきではない。したがって、本システムについてその特定の例示的な実施形態を参照して特に詳細に説明してきたが、続く特許請求の範囲に規定されている本発明のシステムおよび方法の範囲から逸脱することなく、当業者によって多数の修正形態及び代替の実施形態が考案され得ることも、諒解されるべきである。明細書および図面はこのように例示的なものとして検討されるべきものであり、添付の特許請求の範囲を限定することは意図していない。
【0017】
特許請求の範囲中の参照符号はいずれもその範囲を限定するものではない。いくつかの「手段」が、同じもしくは異なる事物、または実装される構造もしくは機能によって表されてもよい。開示されるデバイスまたはその一部はいずれも、特に断りのない限り、1つに組み合わせること、または更なる部分へと分離することができる。特定の手段が互いに異なる請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用され得ないことを示すものではない。
【0018】
図1には、尿路内に植え込まれる植え込み型チューブ弁デバイス100の実施形態が図示されている。チューブ弁100はカテーテル挿入によって植え込まれてもよい。同様に、このデバイスは、例えば失禁の問題に対抗するために、精管などの他の脈管、腸、もしくは尿管内に植え込まれてもよく、または、流体もしくは(微小)粒子を輸送する任意のチューブ内に植え込まれてもよい。このことは、例えば2~8mmの直径d1のチューブ内壁111と、例えば3~10mmのチューブ外壁とを有する、植え込み可能なチューブによって達成される。内壁は2つの軸方向チューブ端部112の間に延びており、弁部材120は上記チューブ110の内側に取り付けられ、開位置と閉位置との間で枢動可能である。弁デバイス100の利点として、開位置に枢動させたときに、例えば2~8mmの直径を有する内径d2において、チューブを通る流れを遮るものがない。
図1では、弁部材120は開位置に図示されている。外面114はくちばし部114および枢動部115に沿って延びており、チューブ内壁111と共形である。弁部材120は、閉位置に枢動させるとチューブ内壁111と接触し以って植え込み可能なチューブ110を通る通路を閉鎖する、封止縁部116を備える。理解を容易にするため、弁部材120を開位置と閉位置との間で枢動させるためのアクチュエータは図示されていない。示されている実施形態では、弁部材からチューブ壁を貫通して突出している対向する軸部材(図示せず)によって装着部が形成され、以って回転軸または他の好適な取り付け構成部が形成されてもよい。
【0019】
次に
図2A,Bに目を向けると、枢動可能なカム部材410は好ましいものとして、枢動部115(
図1を参照)と接続されている枢動軸415に取り付けるための中心孔を有して示されている。カム部材410は示されている例では、枢動軸415から半径距離に離れた位置にアクチュエータ・コネクタ450を取り付けることのできる、円筒状に丸みを帯びた切り欠きを備えるが、この枢動部材410は、作動力を枢動軸415に対する作動トルクとして伝達するのに適した別の形状の物体、例えば、1つまたは複数のクランクまたはレバーを含む物体であってもよい。閉位置では枢動部115は付勢力によって閉じた状態に保たれることになるが、この付勢力は例えば、枢動部材410に接続され、枢動部材410を弁部材120を開位置または閉位置に向けて双安定的に付勢するよう予圧するように構成された、付勢要素800によって与えられる。枢動軸415は、弁部材120を開位置と閉位置との間で回転させる。
【0020】
枢動可能なカム部材410はチューブ110の外側の別個の部品として設計されるのが好ましく、このことによりチューブ外形113の横方向への広がりはごく僅かとなる。枢動可能なカム部材410は、チューブ外形113の広がりを更に制限するために、チューブ110と同心に位置合わせされた湾曲した内側および外側の表面を有するように設計されてもよい。
【0021】
加熱回路425は好ましくはワイヤレス充電デバイス(図示せず)に連動している(geared)が、他の手段、例えばバッテリ・パック等によって電力供給されてもよい。
【0022】
外部制御ユニットはインプラントとのワイヤレス接続を確立することができ、電力と開閉のための制御信号とを供給する。インプラント自体は電力貯蔵装置を有しても有さなくてもよく、開閉動作中は非作動状態になる。内発の制御能力に限界がある装着者の場合、膀胱から排尿すべきときに制御ユニットが等間隔で信号を発することを想定することが可能である。医療施設または類似の施設にいる装着者の場合、より詳細に定義するように、制御ユニットによって、スタッフに膀胱排尿が保留されていることを知らせるための、より上位の患者管理システムへの接続が可能になってもよい。
【0023】
示されている実施形態では、加熱回路は、植え込み型チューブ弁100に沿って配置された充電アンテナ430(
図2A)に電気接続された充電コンデンサ(図示せず)を備える。加熱回路425は、充電コンデンサが例えば充電アンテナ430によって充電され閾値充電量で充電されたときに、第1のテンション・ワイヤM1または第2のテンション・ワイヤM2を加熱するための、対応するロジックを備える。
【0024】
このロジックは、更なる連動オプション、例えば、状態チェック・オプションまたはリセット・オプションなどの(ワイヤレスの)読み出しオプションを有してもよく、好ましくは、対応するセキュリティ・コードが送信されたときにのみ加熱回路425を作動させる、コード化された信号によって動作する。ワイヤレス充電システムは、その最も単純な形態では、初期配置に応じて弁部材120を開位置から閉位置へと、または閉位置から開位置へと切り替える、双安定スイッチとして機能する。
【0025】
チューブ110の外側表面は下地190によって覆われていてもよく、この下地190は、植え込み型チューブ弁100が中に植え込まれる人間の脈管の内腔への接着を促進する材料、例えば、生体適合性のあるメッシュ状の、多孔質の、または布製の材料を含む。別法として、下地190またはチューブ110は、周囲組織と機械的結合を形成し以って植え込み型チューブ弁100を脈管の内腔に固定する、半径方向に延びる突起、例えばスパイクまたはフックを備えてもよい。
【0026】
テンション・ワイヤM1、M2は、加熱回路によって加熱されると可逆的に収縮し、冷却されると膨張し、以って枢動可能なカム部材410に作動力を与えることができる。別法として、テンション・ワイヤM1、M2は加熱回路によって加熱されると可逆的に膨張し、冷却されると収縮する。好ましくは、テンション・ワイヤM1、M2は、加熱されると収縮する形態のものである。このようなものに用途に適した形状金属合金(形状記憶合金)は例えば、ニチノールとして知られるNiTi合金であるが、他の形状金属合金を適宜使用することができる。
【0027】
作動力は、テンション・ワイヤM1、M2を枢動可能なカム部材410に、例えば互いにはんだ付け、溶接、接着、またはねじ止めすることで、直接結合することによって得られてもよい。好ましくは、テンション・ワイヤM1、M2の少なくとも一方はコネクタに結合されており、上記コネクタは枢動可能なカム部材410に取り付けられている。例えば、テンション・ワイヤM1、M2の各々は、アクチュエータ・コネクタ450によって枢動可能なカム部材に取り付けられてもよい。アクチュエータ・コネクタ450は、回転可能な接続部を形成するために、枢動可能なカム部材上の円筒状に丸みを帯びた切り欠きと係合可能な、円筒状に丸みを帯びた端部を備えてもよい。アクチュエータ・コネクタ450と枢動可能なカム部材410との間に円筒状に丸みを帯びた接触表面を有することの利益は、アクチュエータ・コネクタ450に対する作動力が専ら枢動可能なカム部材410に対するトルクに変換され、このことにより枢動可能なカム部材とアクチュエータ・コネクタとの間の適切な位置合わせの維持が容易になり得ることであり得る。逆に、例えば円錐形の接触表面では、作動力がトルクにだけでなく軸方向の力にも変換されて、場合によっては枢動可能なカム部材410とアクチュエータ・コネクタ450との間の接続が不安定になるか、またはロックされる。アクチュエータ・コネクタ450は、テンション・ワイヤM1、M2の一体に形成された部分であってもよい。別法として、アクチュエータ・コネクタ450は、例えばはんだ付け、溶接、糊着、またはねじ切りによってテンション・ワイヤM1、M2の各々に組み付けられる、別個の部品であってもよい。
【0028】
テンション・ワイヤM1、M2は、電流が枢動可能なカム部材410に分岐することなくテンション・ワイヤM1、M2をそれぞれ通って流れるように、一方の端部では、加熱回路の少なくとも2つの対応する端子(+)(-)に、そこを通って流れる電流を提供するべく機械的に接続されてもよく、もう一方の端部では、枢動可能なカム部材410に機械的に接続されてもよい。テンション・ワイヤM1、M2の各々は、コネクタ450から枢動可能なカム部材410に電流が流れない閉じた電流ループが形成されるように、加熱回路425上の正端子および負端子に電気接続されてもよい。このことの利点としては、コネクタ450から枢動可能なカム部材410へと電流が流れず、このためそのような電流があれば生じたであろう微小溶接部による固定が生じることがなく、コネクタ450を自由に取り付けできることが保証されることがある。
【0029】
図3は、本発明の本質的な態様を、すなわち、
図1および
図2A,Bに描かれている弁部材が付勢要素800と枢動部115とを含む安全機構を備えており、くちばし部114が、くちばし部114に作用する力が予め定められた圧力を上回ると、枢動部115を開位置に向けて枢動させるように構成されていることを示す。安全機構にはアクチュエータの設計も含まれており、このアクチュエータは作動していないときには機械的に切り離されてもよく、または少なくとも枢動部115の回転を妨げないようにされ得る。枢動部115およびくちばし部114はこの場合、枢動部115を開位置へと枢動させるトルクを作用させるように設計されている。このような設計は例えば、枢動部115に対するくちばし部114の非対称な設計を利用することによって実現することができる。付勢要素800を枢動カム部材410に接続し、弁部材120を開位置または閉位置に向けて双安定的に付勢するように構成してもよい。枢動部115は、膀胱B内の圧力がある閾値を超えると、例えば1.2バールよりも大きくなると、付勢要素800とともに、作用する圧力に力学的に従うように設計されており、非対称のくちばし部に作用する圧力によってトルクが付与され、これにより枢動部115が回転する。
【0030】
最初に、
図3(ステップ3A)に描かれているように、膀胱圧に応じてくちばし部114によって特定のトルクが与えられるが、このトルクは付勢要素800が及ぼす付勢力を打ち消すには小さ過ぎ、くちばし部は閉位置に留まる。
【0031】
圧力が増加すると、くちばし部114が及ぼす付勢要素800に対抗するトルクも増加することになる。この結果くちばし部114が部分的に開き、圧力が幾分か解放され、膀胱圧が閾値圧力未満に保たれることになるが、このことは、過圧に起因する膀胱破裂は致命的な結果をもたらし得るので、患者の安全にとって重要である。
【0032】
付勢要素の設計によっては、(例えばスナップ力設計による)付勢要素の双安定性に起因して、
図3(ステップ3C)に描かれている、くちばし部の開位置への(突然の)降伏が生じる可能性がある。この場合膀胱の排尿が行われ、残圧はなくなることになる。
【0033】
描かれているステップ3A~3Cは、
図2Bに描かれている設計などのアクチュエータによって枢動部115を能動的に枢動させることにより、閉位置から開位置への弁部材の随意の移動に、追加して行われる。この場合ステップ3A~3Cは、緊急の状況において、アクチュエータによって開始される随意の移動とは無関係に実行されるが、チューブ弁の使用者がアクチュエータ入力を介して弁部材を能動的に制御しているかどうかに関係なく、閾値圧力を超えたときに枢動部を枢動させるトルクを作用させるように構成されている構造設計に従うことになる。このことが行われる可能性があるのは例えば、膀胱充満の感覚がない、当事者の意識がない、またはアクチュエータを制御するための外部デバイスが利用できないもしくは動作しない場合である。
【0034】
図4は、安全機構を設計するための詳細な計算サンプルを示す。この計算は、付勢要素800の設計が、弁部材を開位置または閉位置に向けて双安定的に付勢するために望まれる枢動部材410への予圧力に合わせただけのものであるべきではなく、くちばし部に作用する圧力が予め定められた圧力を超えたときに、枢動部を開位置に向けて枢動させるような設計でもあるべきである、という洞察に基づいている。例えば1.2バールの過圧を閾値とした場合、このことは差圧が0.2バールであることを意味する。
【0035】
直径(内径)が7mmの例示的なチューブおよび角度αが30°のくちばし部であるときの実際的な寸法設定では、これは、長軸a=d/2tan(α/2)を有する楕円形となり、aは約13mmとなる。ここから、投影面積はA=πa×d、回転軸に対して偏心した有効力接触点はx=4a/3πとなる。
【0036】
得られるトルクはこの場合、M=p×A×xによって与えられ、これは以下のように置き換えることができる。
【0037】
【0038】
d=7mm、α(alpha)が30°、差圧が0.2バールの場合、付勢要素800によって与えられることになる最大トルクは、7×9×10-3N・mになると考えられる。
【0039】
付勢要素800は閉位置におけるくちばし角度によって決定される反トルクを与え、その結果、付勢部材によって枢軸部材に及ぼされる結果的な付勢力は、次式で表すことのできるトルクFd×dをもたらす。ここで、Fdは付勢力、dは枢動部の回転軸に対して偏心した有効力接触点によって決まる有効腕の長さである。この力はくちばし部を閉位置において閉じた状態に安全に保持する「安全力」であり、くちばし部の範囲に依存するが、その理由は、押圧力によって及ぼされる結果的なトルクがくちばし部114の長さに依存するからであり、くちばし部114の長さは、有効腕の長さp、および対応するトルクFp×pをもたらす。ここで、Fpは、差圧によって発生し、衝突の投影面積および腕の長さpに依存する有効力であり、衝突の投影面積および腕の長さpはいずれも腕の長さに依存する。
【0040】
Fp×p>Fd×dの場合、枢動部115は開位置に向かって枢動することになる。
【0041】
図5は、
図1に開示されている弁部材を円筒および球などの知られている形状から構成する方法を詳細に示す。実際の構成においては、例えば、弁部材は機械加工技術、成形技術、または3Dプリント技術によって形成され得る。
【0042】
第1のステップS1では最初に、内径d1を有する中空チューブAに、同じく直径d1を有する第1の仮想体Bを詰める。この結果、チューブ壁111と一続きの内側部材として、中実の内側体が形成される。第2のステップS2では、仮想体Bを同じく直径d1の別の仮想体Cと角度αで交差させ、その結果、残った円筒BおよびCの交差体を得る。第1の仮想体Bと第2の仮想体Cとの交差曲線によってこうして弁部材、特にその封止縁部が形成され、第1の仮想体Bはチューブ内壁Aと一致しており、第2の仮想体Cは第1の仮想体Bを枢動部D上で枢動させることによって形成される。仮想体Bはこのように、この中空内側円筒と同じ形状であるがチューブAの長手軸線に対して角度の付いた、交差形状部Cによって切断される。
【0043】
このようにして、4つの区域B’、B’’、C’、C’’の交差曲線上に、内側チューブA内での安定した姿勢をもたらす枢動点D’が形成される。チューブAの長手軸線と形状C間のそれぞれの角度αは、このようにして形成された弁部材の回転角度を定める。
【0044】
第3のステップS3では、断面C*を枢動軸D’を中心にして断面B*に向けて、回転の外側に材料がないように、ならびに、仮想体Bの円筒表面が枢動部Dを形成する球セグメントE’およびE’’と一致する更なる仮想体Dを介して仮想体Cの円筒表面へと滑らかに移行するように、枢動させる。弁部材120はこの時点で、2つの位置B*とC*との間で回転角αだけ回転することができる。枢動部Dを球形態に成形することによって回転軸が定められる。枢動部Dは角度のある2つの円筒形態部BとCとの間の移行エリアを形成し、このとき弁部材は、交差曲線B*をC*に向けて枢動させることによって形成される仮想球体Dと一致する枢動点に近接した端面115-3を有する、封止縁部を有している。このように、セグメントE’およびE’’は仮想体BおよびCの円筒形態部から逸脱しており、その結果弁は、チューブ内壁の内側に隙間のない状態で、またはごくわずかな隙間だけで、滑らかに枢動できるようになっている。弁部材とチューブ内壁との隙間に尿または他の水様流体が進入するのを更に防ぐために、これらをまたはその一部を、疎水性材料で形成してもよい。
【0045】
第4のステップS4では、くちばし部のうちの1つB’を取り除き、円筒体Bと平行な内側円筒Fを直径d2で切り出すことにより、弁部材120が完成する。B’とCは依然として円筒表面であり、E’は依然として球セグメントである。
【0046】
図6(A)は、閉位置にある単一のくちばし部を有する追加の実施形態を示す。この場合枢動部は、チューブ内壁Aの周囲の一部にのみ沿う、部分円周状の後縁部Fを有する。枢動部は開位置において、外壁に設けられた凹部R内に少なくとも部分的に埋め込まれ、その結果部分円周状の後縁部がチューブ内壁と位置合わせされる。
図6(B)では、くちばし部は開位置において、チューブAの内壁と位置合わせされている。この目的のために、内壁は単一のくちばし部Bと共形である凹部を有してもよく、その場合くちばし部は、くちばし部Bの後縁部Fから枢動軸までにまたがる最大半径rまで、枢動軸Dを僅かに越えて延びている。この場合後縁部Fは、略半周の範囲でチューブ壁の一部にしか沿わず、閉じた円筒形状を形成しない。くちばし部の枢動を可能にするカム軸(図示せず)と枢軸Dが依然として強固に接続されている状態で、弁部材120の流路断面を最適化すべく、チューブの内壁内に完全に埋め込まれるようにくちばし形状Bを最適化することができる。
図6(C)は弁部材120の斜視図を示す。
【0047】
図7は、枢動部Dの回転を可能にし得る植え込み型弁チューブの更なる代替の実施形態を示す。この場合、弁部材120は、実質的に平面状の外形を有しかつ楕円形の形態である、封止縁部Eを有する。枢動部は、チューブ内壁上に設けられた突出した隆起部Rに当接して枢動する円周状の後縁部Fを有する。
【0048】
枢動部Dは球形状であってもよく、くちばし部Bの後縁部Fはチューブ内壁Aの全周に沿っている。突出した隆起部Rはくちばし部Bの後縁部Fと位置合わせされ得る。隆起部Rは、チューブAの内壁の断面を制限すると同時に、枢動部Dの回転のための球状接触面を形成する。隆起部Rは、小さな破片が枢動部Dの回転する外面に進入するのを防ぐことができる。隆起部は、チューブ壁の外側の略半周のみにわたって延びている。実施形態に描かれている構成は、3つの主要な構成要素、特に、弁部材と、アクチュエータ構成部と、動力デバイスとによって形成されている。これらの要素は、組み合わせて小寸法の植え込み可能なチューブを提供してもよいが、他の用途、特に植え込み可能なチューブを通る通路をより大きくする弁構成体では別々に使用してもよく、この場合アクチュエータは他の手段で形成され得る。また、これらの実施形態は理想化された形状に向けられていたが、実際には、例えば、丸みがあるが必ずしも円形ではない形態、および、回転対称であるが必ずしも球形状ではない非球形状、例えば楕円形状などに、適切に形成(変形)され得る。弁部材からチューブ壁を貫通して突出している対向する軸部材によって装着部が形成され、以って回転軸が形成されている、上に記載したような植え込み可能なチューブによって、本発明の更なる態様が形成される。加熱回路はワイヤレス充電装置と連動してもよく、加熱回路は植え込み可能なチューブに沿って配置された充電コンデンサおよび充電アンテナに電気接続されており、その場合加熱回路は、充電コンデンサが充電アンテナによって充電され閾値充電量で充電されたときに、第1または第2のテンション・ワイヤを加熱するためのロジックを備える。
【国際調査報告】