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特表2024-520842単結晶シリコン棒を引き上げための結晶引き上げ炉、方法及び単結晶シリコン棒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】単結晶シリコン棒を引き上げための結晶引き上げ炉、方法及び単結晶シリコン棒
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
C30B29/06 502E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576133
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 CN2022122976
(87)【国際公開番号】W WO2023130780
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】202210007056.4
(32)【優先日】2022-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522248559
【氏名又は名称】西安奕斯偉材料科技股▲ふん▼有限公司
【住所又は居所原語表記】Room 1-3-029, No.1888 South Xifeng Rd., Hi-Tech Zone Xi’an, Shaanxi 710100, P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】宋 振亮
(72)【発明者】
【氏名】宋 少傑
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF10
4G077EG20
4G077EH09
4G077HA12
(57)【要約】
本開示の実施例は、単結晶シリコン棒を引き上げための結晶引き上げ炉、方法及び単結晶シリコン棒を開示した。前記結晶引き上げ炉は、水冷ジャケットの上方に配置する円筒状の加熱装置と、前記加熱装置の上方に配置する円筒状の冷却装置とを含み、前記加熱装置は、単結晶シリコン棒が、鉛直方向に沿って上向きに移動する際に前記加熱装置の規定する熱処理室の内に入って熱処理が行われることができるように構成され、前記冷却装置は、熱処理後の前記単結晶シリコン棒が、鉛直方向に沿って上向きに引き続き移動する際に前記冷却装置の規定する冷却室の内に入って冷却処理が行われることができるように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シリコン棒を引き上げための結晶引き上げ炉であって、
前記結晶引き上げ炉は、水冷ジャケットの上方に配置する円筒状の加熱装置と、前記加熱装置の上方に配置する円筒状の冷却装置とを含み、
前記加熱装置は、単結晶シリコン棒が、鉛直方向に沿って上向きに移動する際に前記加熱装置の規定する熱処理室の内に入って熱処理が行われることができるように構成され、
前記冷却装置は、熱処理後の前記単結晶シリコン棒が、鉛直方向に沿って上向きに引き続き移動する際に前記冷却装置の規定する冷却室の内に入って冷却処理が行われることができるように構成される
結晶引き上げ炉。
【請求項2】
前記結晶引き上げ炉は、さらに、引張機構を含み、
前記引張機構は、前記単結晶シリコン棒が鉛直方向に沿った上向きの引張速度Vと、前記単結晶シリコン棒の軸方向上の平均温度勾配Gとの比率パラメータV/Gが、1.1(V/G)臨界から1.2(V/G)臨界の間にあるように構成され、
ここで、(V/G)臨界は、PV領域とPI領域との境界位置におけるV/G値である
請求項1に記載の結晶引き上げ炉。
【請求項3】
前記加熱装置は、600℃~800℃の熱処理温度を提供するように構成される
請求項1に記載の結晶引き上げ炉。
【請求項4】
前記冷却装置は、熱処理後の前記単結晶シリコン棒の冷却速度が2.7℃/minを超えるように構成される
請求項1に記載の結晶引き上げ炉。
【請求項5】
前記結晶引き上げ炉は、さらに、水冷ジャケットを含み、
前記水冷ジャケットは、引き上げられた前記単結晶シリコン棒が1150℃~1020℃の間で急速に冷却されて前記単結晶シリコン棒の冷却速度が2.7℃/minを超えるように構成される
請求項1に記載の結晶引き上げ炉。
【請求項6】
単結晶シリコン棒を引き上げための方法であって、
前記方法は、
多結晶シリコン原料を石英坩堝に入れて溶融した後、種結晶を下げて単結晶シリコン棒を引き上げる工程と、
前記単結晶シリコン棒が、鉛直方向に沿って所定の引張速度Vで上向きに引張され、加熱装置の規定する熱処理室の内に移動して熱処理が行われる工程と、
熱処理後の前記単結晶シリコン棒が、鉛直方向に沿って所定の引張速度Vで上向きに引き続き引張され、冷却装置の規定する冷却室の内に移動して冷却処理が行われる工程と、を含む
単結晶シリコン棒を引き上げための方法。
【請求項7】
前記単結晶シリコン棒が鉛直方向に沿った上向きの引張速度Vと、前記単結晶シリコン棒の軸方向上の平均温度勾配Gとの比率パラメータV/Gが1.1(V/G)臨界から1.2(V/G)臨界の間にあり、
ここで、(V/G)臨界は、PV領域とPI領域との境界位置におけるV/G値である
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱装置は、600℃~800℃の熱処理温度を提供するように構成される
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記冷却装置は、熱処理後の前記単結晶シリコン棒の冷却速度が2.7℃/minを超えるように構成される
請求項6に記載の方法。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載の方法で引き上げられた単結晶シリコン棒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本開示は、2022年01月05日に中国に提案された出願番号が202210007056.4の中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全ての内容が参照によって本開示に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施例は、半導体製造技術分野に関し、特に単結晶シリコン棒を引き上げための結晶引き上げ炉、方法及び単結晶シリコン棒に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、半導体デバイスの製造過程における微細化の進展に伴い、必要なシリコンウェハに対する要求が高まっており、シリコンウェハ表面領域の欠陥が少ないだけでなく欠陥もないことが要求されているだけでなく、電子部品が設置されたシリコンウェハ領域を重金属不純物に汚染されないように保護するために、シリコンウェハに十分なバルク微細欠陥(Bulk Micro Defects、BMD)が要求されている。一方、シリコンウェハに含まれる重金属不純物は、半導体デバイス品質に影響を与える重要な要素となっているため、重金属不純物の含有量は、シリコンウェハの生産過程で極力減少する必要がある。現在、シリコンウェハ内部に十分な量のBMDが形成されると、これらのBMDは、重金属不純物を捕捉する真性ゲッタリング(Intrinsic Gettering、IG)作用を有し、重金属不純物による半導体デバイス品質不良の問題を大幅に改善できることが知られている。近年、BMDの含有密度が1×108個/cm3以上のシリコンウェハの需要が増加しているため、シリコンウェハを電子部品製造工場に供給する際に、基材シリコンウェハに十分なBMDコアを持つ必要があり、高いBMD密度を得ることができる。
【0004】
エピタキシャルシリコンウェハは、シリコンウェハ上に気相堆積反応成長により成長した単結晶層(エピタキシャル層とも呼ばれる)であり、エピタキシャル層は、高い結晶完全性を有し、欠陥がほとんどない特性を有するため、現在、エピタキシャルシリコンウェハは、半導体デバイスの基板材料として広く使用されている。しかしながら、エピタキシャル成長過程では、シリコンウェハが1000℃以上の高温環境にさらされると、小さなBMDコアが除去されるため、エピタキシャルシリコンウェハ中に十分な量のBMDコアを提供することができず、上記エピタキシャルシリコンウェハを用いた製造半導体デバイス時に十分な密度のBMDを引き出すことができず、さらに製造された半導体デバイスの品質が不良になる。
【0005】
エピタキシャルシリコンウェハ中のBMD密度低下の問題を解決するために、通常は単結晶シリコン棒の引き上げ過程で窒素ドーピング処理を行って安定したBMDコアを取得するが、窒素ドーピングシリコンウェハは、その外周に酸素誘起積層欠陥(Oxidation Induced Stacking Faults、OSF)領域が存在することにより、BMDの密度低下及びエッチングピット(Etch Pit、EP)欠陥化を引き起こす。
【発明の概要】
【0006】
これに鑑みて、本開示の実施例は、単結晶シリコン棒中のBMDコアを向上し、ひいては単結晶シリコン棒中のBMD密度を向上することができる単結晶シリコン棒を引き上げための結晶引き上げ炉、方法及び単結晶シリコン棒を提供することが望ましい。
【0007】
本開示の実施例の技術的解決手段は、以下のように実現する。
【0008】
第1態様では、本開示の実施例は、単結晶シリコン棒を引き上げための結晶引き上げ炉を提供し、前記結晶引き上げ炉は、水冷ジャケットの上方に配置する円筒状の加熱装置と、前記加熱装置の上方に配置する円筒状の冷却装置とを含み、
前記加熱装置は、単結晶シリコン棒が、鉛直方向に沿って上向きに移動する際に前記加熱装置の規定する熱処理室の内に入って熱処理が行われることができるように構成され、
前記冷却装置は、熱処理後の前記単結晶シリコン棒が、鉛直方向に沿って上向きに引き続き移動する際に前記冷却装置の規定する冷却室の内に入って冷却処理が行われることができるように構成される。
【0009】
第2態様では、本開示の実施例は、単結晶シリコン棒を引き上げための方法を提供し、前記方法は、
多結晶シリコン原料を石英坩堝に入れて溶融した後、種結晶を下げて単結晶シリコン棒を引き上げる工程と、
前記単結晶シリコン棒が、鉛直方向に沿って所定の引張速度Vで上向きに引張され、加熱装置の規定する熱処理室の内に移動して熱処理が行われる工程と、
熱処理後の前記単結晶シリコン棒が、鉛直方向に沿って所定の引張速度Vで上向きに引き続き引張され、冷却装置の規定する冷却室の内に移動して冷却処理が行われる工程と、を含む。
【0010】
第3態様では、本開示の実施例は、第2態様に記載の方法で引き上げられた単結晶シリコン棒を提供する。
【0011】
本開示の実施例に係る単結晶シリコン棒を引き上げための結晶引き上げ炉、方法及び単結晶シリコン棒によれば、結晶引き上げ炉に加熱装置を設置して単結晶シリコン棒が鉛直方向に沿って上向きに移動する過程で単結晶シリコン棒を熱処理し、加熱装置の上方に冷却装置を設置して熱処理後の単結晶シリコン棒を冷却処理し、該結晶引き上げ炉は、単結晶シリコン棒がBMDコアの形成と成長に適した温度にあるように単結晶シリコン棒の温度場を変更することができ、冷却装置によって単結晶シリコン棒の冷却速度を制御してBMDの核形成数を向上し、さらに単結晶シリコン棒内のBMD密度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】関連技術における結晶引き上げ炉構造の概略図である。
図2】本開示の実施例に係る単結晶シリコン棒を引き上げための結晶引き上げ炉の構造概略図である。
図3】本開示の実施例に係る単結晶シリコン棒の内部欠陥分布とV/G関係分布の概略図である。
図4】本開示の実施例に係る単結晶シリコン棒を引き上げための方法のフロー概略図である。
図5】本開示の実施例に係る単結晶シリコン棒を引き上げための結晶引き上げ炉の数値シミュレーションを用いた単結晶シリコン棒の温度場の概略図である。
図6】関連技術における結晶引き上げ炉の数値シミュレーションを用いた単結晶シリコン棒の温度場の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施例における図面を参照しながら本開示の実施例における技術的解決手段について明確に、完全に説明する。
【0014】
図1に関連技術における結晶引き上げ炉1Aを示す。図1に示すように、該結晶引き上げ炉1Aは、炉体101、石英坩堝102、黒鉛坩堝103、坩堝ヒーター104、炉体側壁保温素子105、逆円錐筒状の導流筒106、円筒状の水冷ジャケット107、円環形の平板状保温カバー108、坩堝トレイ109、及び坩堝回転機構110を含み得る。
【0015】
該炉体101は、炉体キャビティFCを規定する。
【0016】
該石英坩堝102は、炉体101の規定する炉体キャビティFCの底部に設けられ、単結晶シリコン棒SAの製造の初期段階で固体の多結晶シリコン原料を収容するために用いられる。
【0017】
該黒鉛坩堝103は、石英坩堝102の外周に設けられ、石英坩堝102を支持及び固定するために用いられる。
【0018】
該坩堝ヒーター104は、黒鉛坩堝103の外周に設けられ、石英坩堝102内に収容されている多結晶シリコン原料をシリコン溶融液に溶融させるために石英坩堝102と黒鉛坩堝103を加熱する。
【0019】
該炉体側壁保温素子105は、炉体101の円筒状炉体側壁の内側に設けられ、坩堝ヒーター104で発生する熱の炉体側壁を介した散逸を低減するために用いられる。
【0020】
該導流筒106は、石英坩堝102の上方に設けられ、アルゴンガスなどの不活性ガスを上から下へ石英坩堝102内のシリコン溶融液の上方に導くために用いられる。ここで、導流筒106の頂部の径方向寸法は、炉体101の径方向寸法より小さく、それによって、水平な導流筒ホルダ(図示せず)を介して炉体101の側壁に固定される。
【0021】
該水冷ジャケット107の径方向寸法は、導流筒106の頂部の径方向寸法よりも小さく、それによって、導流筒106と鉛直方向に重なるように導流筒106の上方に設けられ、引き上げられた単結晶シリコン棒SAを冷却するために用いられる。
【0022】
該保温カバー108は、例えば黒鉛制の単層カバー板であり、該保温カバー108は、その外リング縁が炉体101の側壁に接触し、その内リング縁が導流筒106に接触するように炉体側壁保温素子105の導流筒ホルダの上方に水平に設けられ、坩堝ヒーター104で発生する熱が炉体101の頂部を介して散逸するのを防止するために用いられる。
【0023】
該坩堝トレイ109は、例えば黒鉛支持であり、黒鉛坩堝103を支持するために用いられる。
【0024】
該坩堝回転機構110は、石英坩堝102と黒鉛坩堝103を回転駆動するために用いられる。
【0025】
結晶引き上げ炉1Aを用いて単結晶シリコン棒SAを引き上げる際に、まず、高純度の多結晶シリコン原料を石英坩堝102内に入れ、坩堝回転機構110によって石英坩堝102を回転駆動しながら、石英坩堝102内に収容されている多結晶シリコン原料を溶融状態に溶融させる(即ち、シリコン溶融液に溶融させる)ように坩堝ヒーター104を用いて石英坩堝102を絶えず加熱する。ここで、加熱温度は、約千度以上に維持され、炉内のガスは通常不活性ガスであり、それによって、多結晶シリコン原料を溶融させ、同時に不要な化学反応を起こさない。坩堝ヒーター104から提供される熱場を制御することでシリコン溶融液の液面温度を結晶の臨界点に制御すると、液面の上方に位置する種結晶(図示せず)を液面から鉛直方向に上方に引張することにより、シリコン溶融液は、種結晶の引張、上昇に伴い、種結晶の結晶方向に従って単結晶シリコン棒SAを成長させる。最終的に製造されたシリコンウェハに高いBMD密度を持たせるためには、単結晶シリコン棒SAの引き上げ過程で窒素をドーピングすることを選択することができ、例えば、引き上げ過程で結晶引き上げ炉1Aの炉室内に窒素ガスを注入することができ、あるいは石英坩堝102内のシリコン溶融液に窒素含有シリコンウェハをドーピングさせることができ、これにより、引き上げられた単結晶シリコン棒SA及び単結晶シリコン棒SAによって切断されたシリコンウェハに窒素がドーピングされる。
【0026】
しかしながら、上記方法で製造されたシリコンウェハは、エピタキシャル堆積反応によりエピタキシャルシリコンウェハを生成する過程で、エピタキシャル堆積反応温度が1000℃であることでシリコンウェハ中の小さなBMDコアが除去されるため、エピタキシャルシリコンウェハ中に十分な量のBMDコアを提供することができない。このような問題を回避するために、関連技術では、より太い直径の単結晶シリコン棒SAを引き上げ、ロールミルの方式で単結晶シリコン棒SAエッジのOSF部分を去除しているが、このような操作により、単結晶シリコン棒SAの損失を引き起こし、時間コストが高すぎる。
【0027】
また、関連技術においても、上記シリコンウェハを熱処理してより多くのBMDコアを取得するが、熱処理中にシリコンウェハは金属汚染を受けやすく、熱処理の時間が長く、コストが高くなる。
【0028】
上記説明に基づき、単結晶シリコン棒SA及びそれから製造されるシリコンウェハ内のBMD密度を向上するために、図2に本開示の実施例に係る結晶引き上げ炉1を示し、図2に示すように、該結晶引き上げ炉1は、具体的に、水冷ジャケット107の上方に配置する円筒状の加熱装置201と、前記加熱装置201の上方に配置する円筒状の冷却装置202とを含む。
【0029】
前記加熱装置201は、単結晶シリコン棒Sが、鉛直方向に沿って上向きに移動する際に前記加熱装置201の規定する熱処理室2011の内に入って熱処理が行われることができるように構成される。
【0030】
前記冷却装置202は、熱処理後の前記単結晶シリコン棒Sが、鉛直方向に沿って上向きに引き続き移動する際に前記冷却装置202の規定する冷却室2021の内に入って冷却処理が行われることができるように構成される。
【0031】
図2に示す結晶引き上げ炉1では、水冷ジャケット107の上方に円筒状の加熱装置201を配置しており、加熱装置201は、単結晶シリコン棒Sが、鉛直方向に沿って上向きに移動する際に、加熱装置201の規定する熱処理室2011の内に入って熱処理が行われることができるように構成され、そして、加熱装置201の上方に呈円筒状の冷却装置202を配置しており、冷却装置202は、熱処理後の単結晶シリコン棒Sが、鉛直方向に沿って上向きに引き続き移動する際に、冷却装置202の規定する冷却室2021の内に入って冷却処理が行われることができるように構成され、該結晶引き上げ炉1は、単結晶シリコン棒SがBMDコアの形成と成長に適した温度にあるように単結晶シリコン棒Sの温度場を変更することができ、冷却装置202によって単結晶シリコン棒Sの冷却速度を制御してBMDの核形成数を向上し、さらに単結晶シリコン棒S内のBMD密度を向上することができる。
【0032】
図2に示す技術的解決手段について、単結晶シリコン棒Sに窒素がドーピングされない場合、又は、単結晶シリコン棒Sから作製されたシリコンウェハを熱処理しない場合、エピタキシャルシリコンウェハ中のBMD密度をクライアントの仕様要件に達成することができることが理解される。
【0033】
図2に示す技術的解決手段について、いくつかの可能な実現方式では、図2に示すように、前記結晶引き上げ炉1は、さらに、引張機構203を含み、前記引張機構203は、前記単結晶シリコン棒Sが鉛直方向に沿った上向きの引張速度V(mm/min)と、前記単結晶シリコン棒Sの軸方向上の平均温度勾配G(℃/mm)との比率パラメータV/Gが1.1(V/G)臨界から1.2(V/G)臨界の間にあるように構成される。ここで、(V/G)臨界は、PV領域とPI領域との境界位置におけるV/G値である。
【0034】
なお、図3に示すように、単結晶シリコン棒SにおけるBMD密度が1×108個/cm3以上の領域は、酸素析出促進領域(以下「Pv領域」と略称する)、OSF領域、及び空孔富化領域(以下「V-rich領域」と略称する)を含むと定義される。ここで、OSF領域は、P-バンド領域(以下P-band領域と略称する)とも呼ばれる。一方、BMD密度が1×108個/cm3未満の領域は、酸素析出抑制領域(以下「Pi領域」と略称する)、B-バンド領域(以下B-band領域と略称する)、及び隙間シリコン富化領域(以下「I-rich領域」と略称する)を含むと定義される。PV領域とPI領域との間の境界位置におけるV/G値は、(V/G)臨界と定義される。
【0035】
単結晶シリコン棒Sの引き上げ過程で、高い引張速度で単結晶シリコン棒Sの引き上げを行う際に、選択可能に、V/Gは、1.1(V/G)臨界から1.2(V/G)臨界の間にあり、このように、高い引張速度で単結晶シリコン棒SをV-rich領域で結晶成長させることにより単結晶シリコン棒Sの直径領域が空孔欠陥を主とするようにする。これは主にBMDが空孔欠陥中に不純物酸素が堆積して形成されるためであり、実際の生産では、単結晶シリコン棒S中のBMDは、空孔欠陥領域及び空孔富化領域に堆積するが、単結晶シリコン棒Sには空孔欠陥領域が含まれると、単結晶シリコン棒Sから製造されるシリコンウェハのゲート酸素化膜の完全性に影響を与える。一方、I-rich領域では、不純物酸素が堆積できないため、BMDを形成することができない。そのため、単結晶シリコン棒におけるV-rich領域でのみ高密度のBMDが生成され、さらに高清浄表面のシリコンウェハが取得され得る。
【0036】
図2に示す技術的解決手段について、選択可能に、前記加熱装置201は、600℃~800℃の熱処理温度を提供するように構成される。加熱装置201により単結晶シリコン棒Sを加熱して単結晶シリコン棒Sの熱処理温度を600℃~800℃に維持し、これは、熱処理温度が600℃~800℃である場合、BMDコアの形成と成長を促進しやすく、エピタキシャル成長過程で1000℃以上の高温環境による小さなBMDコアの除去を防止することができるためである。このように、最終的に得られたエピタキシャルシリコンウェハ中のBMD密度がクライアント仕様要件を満たすことを保証するのに有利である。
【0037】
図2に示す技術的解決手段について、選択可能に、前記冷却装置202は、BMDコアの密度を向上するために、熱処理後の前記単結晶シリコン棒の冷却速度が2.7℃/minを超えるように構成される。本開示の実施例では、加熱装置201の上方には、単結晶シリコン棒Sの熱処理後の冷却温度及び冷却速度を制御するための冷却装置202が設けられている。これは、飽和BMDの密度と単結晶シリコン棒Sの冷却速度との間に関係があり、高い冷却速度によりBMDコアの密度を向上することができるためである。熱処理後の単結晶シリコン棒Sを急速に冷却することで、単結晶シリコン棒S内部の空孔の再結合を抑制することができ、最終的に得られた単結晶シリコン棒S中に高い空孔濃度が残っていることを保証し、さらに、十分な量のBMDコアが得られることを保証する。なお、本開示の実施例では、異なるクライアント仕様要件のBMD密度に対して、冷却装置202により異なる冷却速度を単結晶シリコン棒Sに提供し、さらに単結晶シリコン棒S中のBMDコアの密度を制御することができる。
【0038】
図2に示す技術的解決手段について、前記結晶引き上げ炉1は、さらに、水冷ジャケット107を含み、前記水冷ジャケット107は、前記単結晶シリコン棒Sの冷却速度が2.7℃/minを超えて単結晶シリコン棒S中の空孔欠陥の再結合を抑制することにより、単結晶シリコン棒Sに空孔欠陥を主とするようにすることを保証するために、引き上げられた前記単結晶シリコン棒Sが1150℃~1020℃の間で急速に冷却されるように構成される。
【0039】
図4に本開示の実施例に係る単結晶シリコン棒を引き上げための方法を示し、前記方法は、以下のS401~S403を含む。
【0040】
S401では、多結晶シリコン原料を石英坩堝102に入れて溶融した後、種結晶を下げて単結晶シリコン棒Sを引き上げる。
【0041】
S402では、前記単結晶シリコン棒Sが、鉛直方向に沿って所定の引張速度Vで上向きに引張され、加熱装置201の規定する熱処理室2011の内に移動して熱処理が行われる。
【0042】
S403では、熱処理後の前記単結晶シリコン棒Sが、鉛直方向に沿って所定の引張速度Vで上向きに引き続き引張され、冷却装置202の規定する冷却室2021の内に移動して冷却処理が行われる。
【0043】
図4に示す技術的解決手段について、結晶引き上げ炉1において、単結晶シリコン棒Sを熱処理した後に冷却処理を行い、単結晶シリコン棒SのV/Gパラメータ、熱処理温度及び熱処理時間、並びに熱処理工程後の冷却温度及び冷却時間を制御して単結晶シリコン棒Sの温度場を制御することにより、単結晶シリコン棒S内部BMDコアの形成と成長を制御し、さらに単結晶シリコン棒中のBMDの密度を向上する。
【0044】
図4に示す技術的解決手段について、選択可能に、前記単結晶シリコン棒Sが鉛直方向に沿った上向きの引張速度V(mm/min)と、前記単結晶シリコン棒Sの軸方向上の平均温度勾配G(℃/mm)との比率パラメータV/Gが1.1(V/G)臨界から1.2(V/G)臨界の間にあり、ここで、(V/G)臨界は、PV領域とPI領域との境界位置におけるV/G値である。
【0045】
図4に示す技術的解決手段について、選択可能に、前記加熱装置201は、600℃~800℃の熱処理温度を提供するように構成される。
【0046】
図4に示す技術的解決手段について、選択可能に、前記冷却装置202は、熱処理後の前記単結晶シリコン棒Sの冷却速度が2.7℃/minを超えるように構成される。
【0047】
例えば、図5に数値シミュレーション方法を用いた結晶引き上げ炉1により引き上げられた単結晶シリコン棒Sの温度場概略図を示す。ここで、引き上げ単結晶シリコン棒SのV/Gは、1.1(V/G)臨界から1.2(V/G)臨界の間にある。図5から分かるように、結晶引き上げ炉1において、パラメータV/Gを用いて引き上げられた単結晶シリコン棒Sの温度場が600℃~800℃にある領域範囲が広く、つまり、上記広い範囲内でBMDコアの形成と成長に有利である。なお、結晶引き上げ炉1において、パラメータV/Gを用いて単結晶シリコン棒Sを引き上げる際に、単結晶シリコン棒Sは、600℃~800℃の温度範囲内で約570min留まる。
【0048】
同様に、同じ数値シミュレーション条件を用いて結晶引き上げ炉1Aにより引き上げられた単結晶シリコン棒SAの温度場を数値シミュレーションして得られた温度場は、図6に示す。図6から分かるように、結晶引き上げ炉1Aにおいて、パラメータV/Gを用いて引き上げられた単結晶シリコン棒SAの温度場が600℃~800℃にある領域範囲が狭く、つまり、上記狭い範囲内でBMDコアの形成と成長に適することができる。なお、結晶引き上げ炉1Aにおいて、パラメータV/Gを用いて単結晶シリコン棒SAを引き上げる際に、単結晶シリコン棒SAは、600℃~800℃の温度範囲内で約158min留まる。
【0049】
最後に、本開示の実施例は、さらに、上述した技術的解決手段に記載の方法により引き上げられた単結晶シリコン棒を提供する。
【0050】
なお、本開示の実施例に記載した技術的解決手段間は、競合しない場合には、任意に組み合わせてもよい。
【0051】
上記は、本開示の具体的な実施形態にすぎないが、本開示の保護範囲はこれに限定されるものではなく、本開示が開示した技術範囲内において、当技術分野に精通している技術者は、容易に変更や置換を思いつくことができ、いずれも本開示の保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本開示の保護範囲は、特許請求の範囲に準じなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-12-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
該導流筒106は、石英坩堝102の上方に設けられ、アルゴンガスなどの不活性ガスを上から下へ石英坩堝102内のシリコン溶融液の上方に導くために用いられる。ここで、導流筒106の頂部の径方向寸法は、炉体101の径方向寸法より小さく、それによって、導流筒106は、水平な導流筒ホルダ(図示せず)を介して炉体101の側壁に固定される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
該水冷ジャケット107の径方向寸法は、導流筒106の頂部の径方向寸法よりも小さく、それによって、水冷ジャケット107は、導流筒106と鉛直方向に重なるように導流筒106の上方に設けられ、引き上げられた単結晶シリコン棒SAを冷却するために用いられる。
【国際調査報告】