(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】N-ホルミル-ハロゲン化メチオニン残基を含むペプチドおよびその操作された抗体-ペプチドコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
C07K 16/00 20060101AFI20240517BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20240517BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240517BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240517BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240517BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20240517BHJP
A61K 38/06 20060101ALI20240517BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20240517BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20240517BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C07K16/00 ZNA
C07K7/06
C07K16/46
A61K47/68
A61P35/00
A61K38/05
A61K38/06
A61K38/08
A61K38/07
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576218
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 US2022032545
(87)【国際公開番号】W WO2022261124
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ブレナン,シーマス パトリック
(72)【発明者】
【氏名】リニク,マシュー デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】バレンスエラ,フランシスコ アルシデス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076EE23
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA14
4C084BA15
4C084BA16
4C084BA17
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA59
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA14
4C085AA25
4C085BB36
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA10
4H045GA25
(57)【要約】
メチオニンの側鎖のメチル基が1つまたはそれ以上のハロゲン(例えば、フッ素)で置換されているN-ホルミルメチオニンを含むペプチドが提供される。N-ホルミル-ハロゲン置換メチオニンは、酸化に対する耐性を示す。N-ホルミル-ハロゲン置換メチオニンを含むペプチドは、ホルミルペプチド受容体-1(FPR-1)のアゴニストとして有用であり、抗体またはその抗原結合フラグメントにコンジュゲートされていてもよい。それにより調製された抗体コンジュゲートは、細胞を標的とし、標的とした細胞に対するFPR-1を含む免疫細胞を誘発し、活性化するのに有用でありうる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端にN-ホルミル-ハロゲン化メチオニン残基を含むペプチドにコンジュゲートされている抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、コンジュゲートされた抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記N-ホルミル-ハロゲン化メチオニン残基が、N-ホルミル-三フッ素化メチオニンである、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項3】
前記抗体が、リンカーを介して前記ペプチドにコンジュゲートされている、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項4】
前記コンジュゲートされた抗体が、
【化1】
として表される式を有する、請求項3に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項5】
前記ペプチドが、C末端グルタミン酸残基を含み、前記ペプチドが、前記グルタミン酸のガンマカルボキシル基と前記リンカーのアミノ基との間で形成されたアミド結合により前記リンカーにコンジュゲートされている、請求項3に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項6】
前記ペプチドが、C末端リジン残基を含み、前記ペプチドが、前記リジンのイプシロンアミノ基と前記リンカーのカルボキシル基との間で形成されたアミド結合により前記リンカーにコンジュゲートされている、請求項3に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項7】
前記コンジュゲートされた抗体が、
【化2】
として表される式を有する、請求項3に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項8】
前記ペプチドが、2~10アミノ酸を含む、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項9】
前記ペプチドが、D-アミノ酸から選択される2~10アミノ酸を含む、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項10】
前記ペプチドが、α-炭素と側鎖との間の1つまたはそれ以上のメチレン基を欠いているアミノ酸のホモログ、またはα-炭素と側鎖との間にさらなるメチレン基を有しているアミノ酸のホモログから選択される、2~10アミノ酸を含む、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項11】
前記ペプチドが、α-炭素と側鎖との間の1つまたはそれ以上のメチレン基を欠いているアミノ酸のホモログから選択される、請求項10に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項12】
前記ペプチドが、ホモアミノ酸から選択される2~10アミノ酸を含む、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項13】
前記ペプチドが、ビスホモアミノ酸から選択される2~10アミノ酸を含む、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項14】
前記ペプチドが、α-炭素にアルキル置換基を含むアルキル化アミノ酸から選択される2~10アミノ酸を含む、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項15】
前記ペプチドが、α-炭素にジアルキル置換基を含むジアルキル化アミノ酸から選択される2~10アミノ酸を含む、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項16】
前記ペプチドが、アミノ基にアルキル置換基を含むアルキル化アミノ酸から選択される2~10アミノ酸を含む、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項17】
前記ペプチドが、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、プロリン、ナフチルアラニンから選択される2~10アミノ酸を含む、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項18】
前記ペプチドが、ノルアミノ酸および線状コアアミノ酸から選択される2~10アミノ酸を含む、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項19】
前記ペプチドが、アルキニル、アジド、チオフェニル、チエニル、ピリジル、アンスレニル、シクロアルキル、ジフェニル、フリル、およびナフチルから選択される置換基を含むアミノ酸から選択される2~10アミノ酸を含む、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項20】
前記ペプチドが、式:NH
2-CH
2-CH
2-(O-CH
2-CH
2)
n-COOH(式中、nは、1~24から選択される)で示されるアミノ酸から選択される2~10アミノ酸を含む、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項21】
前記ペプチドが、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸、ε-アミノ酸、およびζ-アミノ酸から選択される2~10アミノ酸を含む、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項22】
前記ペプチドが、シクロアミノ酸から選択される2~10アミノ酸を含む、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項23】
前記ペプチドが、アミノ保護基を含む、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項24】
前記リンカーが、約10~50オングストロームの距離を有するスペーサーアームを含む、請求項3に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項25】
前記リンカーが、スペーサーアームを含み、前記リンカーが、
【化3】
および
【化4】
から選択される式を有する、請求項3に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項26】
前記リンカーが、
【化5】
および
【化6】
(式中、nは、3~24から選択される整数である)
から選択される式を有する、請求項25に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項27】
前記スペーサーアームが、グリシン、セリン、およびアラニンから選択されるアミノ酸を含むペプチド配列である、請求項24に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項28】
前記リンカーが、ポリエチレングリコール(Peg)部分(すなわち、(-O-CH
2-CH
2)
1-24)を含む、請求項3に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項29】
前記リンカーが、-((Peg)
1-24)-(AA)
1-2-((Peg)
1-24)-[式中、AAは、その側鎖ガンマカルボキシル基により結合したグルタミン酸残基、またはその側鎖イプシロンアミノ基により結合したリジン残基である]として表される分断したポリエチレングリコール部分を含む、請求項3に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項30】
前記ペプチド-リンカーが、
frm-M(CF
3)-Ile-Phe-Leu-Peg12-NH-(CH
2)
2-Y、
frm-M(CF
3)-Leu-Phe-Peg12-NH-(CH
2)
2-Y、
frm-M(CF
3)-Dpg-2Nal-αMeF-Nle-γE-Peg12-NH-(CH
2)
2-Y、
frm-M(CF
3)-Dpg-2Nal-αMeF-D-Nle-γE-Peg12-NH-(CH
2)
2-Y、
frm-M(CF
3)-Dpg-2Nal-αMeF-Nle-γE-Peg6-γE-γE-Peg6-NH-(CH
2)
2-Y、
frm-M(CF
3)-Dpg-2Nal-αMeF-Nle-γE-Peg6-εK-εK-Peg6-NH-(CH
2)
2-Y、
frm-M(CF
3)-Dpg-2Nal-αMeF-D-Nle-γE-Peg12-NH-(CH
2)
2-Y、
frm-M(CF
3)-Dpg-2Nal-αMeF-γE-Peg12-NH-(CH
2)
2-Y、および
frm-M(CF
3)-Dpg-4Pal-αMeF-Nle-γE-Peg12-NH-(CH
2)
2-Y
[式中、Yは、前記ペプチド-リンカーを前記抗体にコンジュゲートするためのアミノ基またはシステイン反応部分を含む]
から選択される式を有する、請求項3に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項31】
前記システイン反応部分が、マレイミド、マレイミド-ジアミノプロピオン、ヨードアセトアミド、またはビニルスルホンから選択される、請求項30に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項32】
前記リンカーが、マレイミド部分を含み、前記リンカーが、前記マレイミド部分と前記抗体のシステイン残基との間に形成されるチオエーテル結合により前記抗体にコンジュゲートされている、請求項3に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項33】
前記抗体が、IgG重鎖定常領域および軽鎖領域を含むものであって、前記システイン残基が、前記C
H1ドメインの残基124、前記C
H3ドメインの残基378、あるいは前記C
H1ドメインの残基124および前記C
H3ドメインの残基378の両方から選択される、請求項32に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項34】
前記抗体が、ヒト抗体、キメラもしくはハイブリッド抗体、またはヒト化抗体である、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項35】
前記抗体が、ヒトIgG1アイソタイプまたはヒトIgG4アイソタイプから選択されるIgG重鎖定常領域を含む、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項36】
前記抗体が、EUインデックスナンバリングに基づいてナンバリングすると、残基247で置換されたイソロイシン、残基332で置換されたグルタミン酸、あるいは残基247で置換されたイソロイシンおよび残基332で置換されたグルタミン酸の両方を含む、IgG重鎖定常領域を含む、請求項35に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項37】
前記抗体が、配列番号12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、52、53、54、55、56、または57のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、請求項36に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項38】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項39】
前記抗体が、二特異性抗体である、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項40】
前記抗体が、HER2、PSMA、TROP2、MUC-1、ネクチン4、LIV-1、メソセリン、MUC-16、葉酸受容体-R1、CEACAM5、GPNMB、CD56、STEAP1、ENPP3、グアニル酸シクラーゼC、SLC44A4、NaPi2b、CD70、CA9炭酸脱水酵素、5T4、SC-16、組織因子、P-カドヘリン、フィブロネクチンエクストラドメインB、エンドセリン受容体ETB、VEGFR2、テネイシンc、ペリオスチン、DLL3、EGFR、CD30、CD22、CD79b、CD19、CD138、CD74、CD37、CD33、およびCD98から選択される抗原に結合する、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項41】
前記抗体が、T-DM1、ARX788、SYD985、MLN2704、PSMA-ADC、TACSTD2、サシツズマブ ゴビテカン、(IMMU-132)、SAR-566658、エンホルツマブ ベドチン(ASG-22M6E)、ASC-22CE、ZIP6、SGN-LIV1A、DMOT4039A、アネトゥマブ ラヴタンシン(BAY-94-9343)、BMS-986148、ソフィツズマブ ベドチン、ミルベツキシマブ ソラヴタンシン(IMGN-853)、ビンタフォリド、ラベツズマブ SN-38、グレンバツムマブ べドチン、ロルボツズマブ メルタンシン(IMGN-901)、バンドルツズマブ ベドチン(RG-7450)、AGS-16M8F、インデュサツマブ ベドチン(MLN-0264)、ASG-5ME、リファスツズマブ ベドチン、TNFSF7、DNIB0600A、AMG-172、MDX-1243、ボルセツズマブ マホドチン(SGN-75)、BAY79-4620、TPBG、PF06263507、SLTRK6(ASG-15ME)、抗Fyn3、SC16LD6.5、HuMax-TF-ADC(TF-011-MMAE)、PCA062、ヒトmAb L19、ヒトmAb F8、RG-7636、抗VEGFR-2ScFv-As2O3-ステルスナノ粒子、抗TnC-A1抗体SIP(F16)、抗ペリオスチン抗体、ロバルピツズマブ ソラヴタンシン、ABT-414、IMGN289 AMG-595、ブレンツキシマブ ベドチン、イラツムマブ MDX-060、イノツズマブ オゾガマイシン(CMC-544)、ピナツズマブ ベドチン、エプラツズマブ SN38、ポラツズマブ ベドチン、コルツキシマブ ラヴタンシン、SAR-3419、SGN-CD19A、インダツキシマブ ラヴタンシン、ミラツズマブ ドキソルビシン、MGN-529、ゲムツズマブ オゾガマイシン、IMGN779、SGN CD33A、およびIGN523から選択される抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項42】
請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体、および1つまたはそれ以上の医薬的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項43】
固形がんまたは液性腫瘍を治療するための方法であって、有効量の請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体または請求項42に記載の医薬組成物を、治療を必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項44】
乳がん、肺がん、前立腺がん、皮膚がん、大腸がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、甲状腺がん、子宮体がん、筋肉がん、骨がん、中皮がん、血管がん、線維性腫瘍、白血病、またはリンパ腫を治療するための、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
治療において使用するための、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項46】
固形がんまたは液性腫瘍の治療に使用するための、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項47】
乳がん、肺がん、前立腺がん、皮膚がん、大腸がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、甲状腺がん、子宮体がん、筋肉がん、骨がん、中皮がん、血管がん、線維性腫瘍、白血病、またはリンパ腫の治療に使用するための、請求項46に記載のコンジュゲートされた抗体。
【請求項48】
固形がんまたは液性腫瘍の治療薬の製造のための、請求項1に記載の抗体の使用。
【請求項49】
前記固形がんまたは液性腫瘍が、乳がん、肺がん、前立腺がん、皮膚がん、大腸がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、甲状腺がん、子宮体がん、筋肉がん、骨がん、中皮がん、血管がん、線維性腫瘍、白血病、またはリンパ腫から選択される、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
好中球における活性酸素種(ROS)生成を活性化するための方法であって、請求項1に記載のコンジュゲートされた抗体が好中球でROS生成を活性化する条件において、前記好中球を前記コンジュゲートされた抗体と接触させることを含む、方法。
【請求項51】
前記コンジュゲートされた抗体の前記リンカーが、少なくとも12モノマーを含むポリエチレングリコールスペーサーを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
式:R-P
1-P
2-P
3-NH-(CH
2CH
2O)
n-CH
2CH
2-Y
[式中、
Rは、HC(=O)-であり、
P
1は、Met(C(ハロゲン)
m)[式中、mは、1~3である]であり;
P
2は、P
1に相互にペプチド結合により結合した1~6個のタンパク質構成または非タンパク質構成アミノ酸であり;
P
3は、-COOH部分または-NH
2部分を含む側鎖を含むアミノ酸であり、P
3は、ペプチド結合によりP
2に結合し;
nは、3~24から選択される整数であり;ならびに
Yは、アミノまたはシステイン反応部分を含む]
で示される化合物またはその塩。
【請求項53】
式:R-P
1-P
2-P
3-NH-(CH
2CH
2O)
n-CH
2CH
2-Y
[式中、
Rは、HC(=O)-であり、
P
1は、MetまたはMet(C(ハロゲン)
m)[式中、mは、1~3である]であり;
P
2は、P
1に相互にペプチド結合により結合した1~6個のタンパク質構成または非タンパク質構成アミノ酸であり;
P
3は、-COOH部分を含む側鎖を含むアミノ酸であり、P
3は、ペプチド結合によりP
2に結合し;
nは、3~24から選択される整数であり;ならびに
Yは、アミノまたはシステイン反応部分を含む]
で示される化合物またはその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月11日出願の米国仮特許出願第63/209,762号および2021年6月14日出願の米国仮特許出願第63/210,292号の優先権の利益を請求するものであって、これらの全体の開示が参照により本明細書に取り込まれる。
【0002】
配列表
配列表は、本出願とともに、162,084バイトのサイズの「083389_01624_ST25.txt」と呼ばれ、2022年6月7日に作成された配列表のASCIIテキストファイルとして提出されている。前記配列表は、本出願とともにEFS-ウェブにより電子的に提出され、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
本発明の分野は、N-ホルミル-ハロゲン化メチオニン残基を含むペプチド、および前記ペプチドを含む改変抗体コンジュゲートに関する。前記ペプチドおよび抗体コンジュゲートは、疾患および障害、例えば、細胞増殖性疾患および障害を治療するための方法に用いられうる。
【0004】
抗体およびその抗原結合フラグメントは、インビボおよびインビトロ適用のための治療用、細胞傷害用、および診断用ペプチドまたは他の小分子を含む様々なペイロード分子にコンジュゲートされうる。特に、抗体コンジュゲートは、ペイロード分子と直接、またはチオール抱合による様々なリンカーを介して安定な化学結合を形成するための反応性求核剤として、免疫グロブリン重鎖または軽鎖残基の表面上に作成された天然のまたは改変された遊離システインスルフヒドリル基を用いて合成されうる。
【0005】
ペイロード分子に抱合させるための抗体およびその抗原結合フラグメントは、当該技術分野で公知である。それゆえ、ペイロード分子を含めて改変される抗体は、がん免疫療法で特に有用でありうる。がん免疫療法は、がん細胞を攻撃するために体の免疫系を利用するものであって、腫瘍創薬および開発におけるダイナミックな分野である。よって、がん免疫療法は、オフターゲット毒性を示しうる殺腫瘍剤(例えば、標的化殺腫瘍剤)の使用に基づく療法とは対照的に、宿主の免疫系が腫瘍細胞を認識し、破壊することに用いられるパラダイムシフトを表す。2つの成功したがん免疫療法ストラテジーは、(1)適応および/または自然免疫系の活性化を可能にする免疫系、特に、腫瘍に対する細胞傷害性T細胞(すなわち、免疫チェックポイント障害)の抑制を阻害すること、ならびに(2)抗体依存性細胞傷害(ADCC)に関与し、および/または高めるように設計された抗体改変である。
【0006】
成功した臨床的成果は、最近、T細胞介在の腫瘍細胞の破壊を引き起こすために、T細胞表面受容体(例えば、PD-1およびCTLA-4)と同族リガンドとの相互作用を改変するように設計された免疫チェックポイント調節因子を用いて行われている。PD-1を標的とするがん免疫療法(例えば、ニボルマブ(オプジーボ(登録商標))およびペムブロリズマブ(キイトルーダ(登録商標)))およびCTLA-4(例えば、イピリムマブ(ヤーボイ(登録商標))は、扁平上皮非小細胞肺がんおよび転移性メラノーマなどのがんの治療についてFDAで承認された。
【0007】
ADCCは、免疫細胞から細胞溶解タンパク質を放出し、後に標的とする腫瘍細胞の破壊を生じる、標的化抗体の抗体Fcドメインと、免疫系細胞(例えば、ナチュラルキラーまたは「NK」細胞)の表面上に局在する受容体(例えば、Fcガンマ受容体IIIa)との相互作用に関連する。ADCCを示す承認された抗体療法には、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)、Arzerra(登録商標)(オファツムマブ)、Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ)およびCampath(登録商標)(アレムツズマブ)が含まれる。Fc受容体の結合を高めることによりADCC活性を改善させた抗体を改変する試みは、同様の標的特異性と低いADCC活性を有する抗体が疾患に無効であるか、もはや適度に有効でない患者に有用であった(例えば、Gazyva(登録商標)オビヌツズマブ)。
【0008】
現在のがん免疫療法の進歩にもかかわらず、がんを治療するために免疫系に関連する別の方法について必要性がいまだ存在している。例えば、T細胞に対する免疫療法に反応する患者の割合は異なっており、どの患者が反応するかを同定する信頼できる予測アッセイが欠如している。さらに、治療で誘発される自己免疫疾患は、免疫チェックポイント阻害剤療法に関連する重度の副作用である。免疫チェックポイント阻害剤による自己免疫疾患の出現は、T細胞レパートリーの抑制を取り除くことに腫瘍特異的T細胞が出現し、増殖し、そして活性化されるように設計されるため、それらの作用メカニズムに関連する可能性が高い。よって、それらは比較的非特異的であり、この特異性の欠如の1つの結果は、自己反応性T細胞が、必ずしも治療の中断により可逆的ではない耐性を破壊し、自己免疫疾患を誘導することを可能とする。ADCCを高める方法は、腫瘍細胞を死滅するためにNK細胞を用いるように設計されている。しかしながら、NK細胞は、血中の総白血球集団の約5%のみである。
【0009】
腫瘍細胞の死滅に関与する自然免疫系を標的とする多形核細胞(PMN)は、がん免疫療法の別の方法を示す。PMNは、総白血球集団に50%より多く含まれ、共生および外部細菌を含む病原体に対する主な防御線である。自然免疫応答の間、病原体によって提示される病原体関連分子パターン(PAMP)は、好中球などの免疫細胞の表面上に局在するパターン認識受容体(PRR)によって認識される。1つのこのようなPRRの1つは、ホルミルペプチド受容体1(FPR-1)であり、好中球の細胞表面上で発現される膜結合Gタンパク質共役受容体である。FPR-1は、感染後の細菌によって産生され、放出されるものを含むN-ホルミル-メチオニンを有するタンパク質およびペプチドを検出する。N-ホルミル-メチオニンを含むペプチドと好中球の表面上のFPR-1の関与は、感染部位への好中球の運動性/走化性の引き金となる。ホルミルペプチドによるFPR-1の活性化はまた、病原体を破壊するために、細胞傷害性分子が放出される脱顆粒、活性酸素種(ROS)の生成、およびファゴサイトーシスなどの病原体を死滅させるメカニズムを引き起こす。文献中に天然および非天然のFPR-1アゴニストの詳細な記載が存在する(例えば、He HQ and Ye RD, Molecules. 2017 Mar 13;22(3). pii: E455. doi: 10.3390/molecules22030455; Hwang TL et al., Org Biomol Chem. 2013 Jun 14;1 1 (22): 3742-55. doi: 10.1039/c3ob40215k; Cavicchioni G et al., Bioorg Chem. 2006 Oct;34(5):298-318; Higgins JD et al., J Med Chem. 1996 Mar 1 ;39(5): 1013-5; Vergelli C et al., Drug Dev Res. 2017 Feb;78(1):49-62. doi: 10.1002/ddr.21370; Kirpotina LN et al., Mol Pharmacol. 2010 Feb;77(2): 159-70. doi: 10.1124/mol.109.060673; Cilibrizzi A et al., J Med Chem. 2009 Aug 27;52(16):5044-57. doi: 10.1021/jm900592h.を参照のこと)。
【0010】
腫瘍細胞の破壊に関与する自然免疫系のPMN好中球細胞を関与させることができる腫瘍標的化治療用抗体はまた、現在のがん免疫療法において利点を供しうる。例えば、このような治療用抗体は、腫瘍に対するT細胞応答を高めることができ、腫瘍細胞の死滅を促進するために腫瘍特異的T細胞の存在を必要とし得ない。PMN好中球による抗腫瘍活性の関与は、全ての患者が好中球上で元々発現しているFPR(例えば、FPR-1)の存在に依存する。さらに、腫瘍細胞の死滅にPMN好中球を関与させることができる薬剤は、1x1011個の好中球が1日ごとに酸性されることが推定されているため、腫瘍死滅細胞の強力で継続的な供給から利益を享受しうる。腫瘍細胞の死滅に好中球を関与されることができる腫瘍標的化抗体は、免疫チェックポイント調節因子より安全性の利点を有しうる。チェックポイント調節因子とは異なり、好中球を標的とした治療は、血中好中球が短命であるため、免疫細胞の増殖を誘発せず、必要とすることもない。さらに、腫瘍標的化抗体は、好中球が、結合した抗体とともに標的の腫瘍細胞を死滅させるために排除され、治療用抗体が標的エフェクター細胞によって消耗されるため、免疫刺激を減少するネガティブフィードバックループを供する。
【0011】
腫瘍細胞中でFPR-1陽性自然免疫細胞を関与させることができる腫瘍標的化治療用抗体が有用であることを証明しうる別の方法は、低い変異負荷を有し、それゆえ免疫系によって容易に認識されない非炎症性腫瘍(cold tumor)の治療のためである。好中球介在の腫瘍細胞の死滅の誘導と活性化は、適応免疫系細胞が腫瘍を認識する能力を獲得し、排除のためにそれを標的とするようなサイトカインが豊富な環境下でネオ抗原の局所産生を生じさせることができる。
【0012】
腫瘍細胞の死滅に好中球を関与させることができる腫瘍標的化抗体はまた、典型的に、腫瘍細胞に内部移行後に毒性ペイロードを放出するように設計されている毒性薬剤を基にした抗体薬物コンジュゲート(ADC)より有利であり得る。ADCと同様に、腫瘍細胞の死滅に好中球を関与させることができる腫瘍標的化抗体は、腫瘍細胞で高発現であり、正常の組織で低発現である抗原を認識する必要がある。しかしながら、ADCとは異なり、腫瘍細胞の死滅に好中球を関与されることができる腫瘍標的化抗体は、自然免疫系の表面上の受容体へのアゴニストの曝露が必要とされ、それにより内部移行の可能性が比較的低い標的抗原がより優れた機能を発揮することが期待される。
【0013】
n-ホルミルペプチドにコンジュゲートされた抗体は、当該技術分野で公知であり、細菌中のn-ホルミルペプチドの存在に基づいて「バクトボディ(bactabodies)」と称されうる(例えば、WO2018/232088(その内容は、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる)を参照のこと)。FPR-1受容体を含む細胞を誘発し、活性化するために標的薬剤およびアゴニストとして、N-ホルミル-メチオニンを含むペプチドにコンジュゲートされた抗体を使用する際に困難なことの1つは、N-ホルミル-メチオニンが、インビボで硫黄原子が酸化され、メチル-スルホキシドを形成し、またはMet(O)を発生することである。メチオニン残基の硫黄原子の酸化は、FPR-1のアゴニストとしてのN-ホルミルメチオニンの有効性を著しく減少させる。よって、酸化に耐性を有し、FPR-1のアゴニストとして機能するN-ホルミル-メチオニンおよびN-ホルミルメチオニンを含むペプチドが所望されている。
【発明の概要】
【0014】
メチオニンの側鎖のメチル基が1つまたはそれ以上のハロゲン(例えば、フッ素)で置換されうるN-ホルミルメチオニンを含むペプチドが開示される。N-ホルミルのハロゲン置換メチオニンは、酸化しにくいことが示されている。N-ホルミルのハロゲン置換メチオニンを含むペプチドは、ホルミルペプチド受容体(FPR)のアゴニストとして用いられ、抗体またはその抗原結合フラグメンにコンジュゲートされうる。上記のように調製された前記抗体コンジュゲートは、細胞を標的化し、標的化した細胞に対してFPRを含む免疫細胞を誘導し、活性化するために用いられうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、N-ホルミルメチオニンのN-ホルミルメチオニンS-オキシドへの酸化を示す。N-ホルミルメチオニン(CF
3)は、S-酸化に抵抗性を有する。
【
図2】
図2は、典型的な合成ペプチド-リンカーを示す。frm:ホルミル;MIFL:Met-Ile-Phe-Leu;Peg:ポリエチレングリコールモノマー;M(CF
3):トリフルオロメチルメチオニン;Dpg:ジ-n-プロピルグリシン;2Nal:2-ナフチルアラニン;αMeF:アルファ-メチル-フェニルアラニン;Nle:ノルロイシン;γE:その側鎖ガンマカルボキシル基により結合したグルタミン酸残基;εK:その側鎖イプシロンアミノ基により結合したリジン残基。
【
図3】
図3は、典型的な合成ペプチド-リンカーを示す。frm:ホルミル;MIFL:Met-Ile-Phe-Leu;Peg:ポリエチレングリコールモノマー; Mal:マレイミド;MLF:Met-Leu-Phe;Dpg:ジ-n-プロピルグリシン;2Nal:2-ナフチルアラニン;αMeF:アルファ-メチル-フェニルアラニン;Nle:ノルロイシン;D-Nle:D-ノルロイシン;γE:その側鎖ガンマカルボキシル基により結合したグルタミン酸残基;M(O):酸化されたメチオニン(コントロール);M(CF
3):トリフルオロメチルメチオニン。提供される式は、FRM-046(FRM-047 w/o Mal)についてである。
【
図4】
図4は、典型的な合成ペプチド-リンカーを示す。frm:ホルミル;MIFL:Met-Ile-Phe-Leu;Peg:ポリエチレングリコールモノマー;Mal:マレイミド;MLF:Met-Leu-Phe;Dpg:ジ-n-プロピルグリシン;2Nal:2-ナフチルアラニン;αMeF:アルファ-メチル-フェニルアラニン;Nle:ノルロイシン;D-Nle:D-ノルロイシン;γE:その側鎖ガンマカルボキシル基により結合したグルタミン酸残基;M(O):酸化されたメチオニン(コントロール);M(CF
3):トリフルオロメチルメチオニン;4-Pal:4-ピリジル-アラニン
【
図5】
図5は、Fmoc-S-トリチル-L-ホモシステインからFmoc-L-トリフルオロメチオニンを調製するための化学反応を示す。
【
図6】
図6は、様々なペプチドで活性化された好中球での活性酸素種(ROS)の生成を示す。
【
図7】
図7は、様々なペプチドで活性化された好中球での活性酸素種(ROS)の生成を示す。
【
図8】
図8は、ペプチドへの曝露後の好中球の走化性を示す。
【
図9】
図9は、トラスツズマブにコンジュゲートされたペプチドで活性化された好中球での活性酸素種(ROS)の生成を示す。
【
図10B】
図10Bは、ペプチドFRM047にコンジュゲートされたトラスツズマブの薬物動態を示す。
【
図11】
図11は、トラスツズマブ親抗体およびfrm-Met(CF
3)FRM-058を有するトラスツズマブバクタボディ(bactabody)の曝露プロファイルがTmab親と比較してTmabバクタボディで同様の曝露を示すことを表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
本発明は、下記または本出願を通して示されるように、いくつかの定義を用いて本明細書で記載される。
【0017】
特に示されているか、または文脈で示されていない限り、用語「a」、「an」、および「the」は、「1つまたはそれ以上」を意味する。例えば、「ペプチド」、「リンカー」、および「抗体」は、それぞれ、「1つまたはそれ以上のペプチド」、「1つまたはそれ以上のリンカー」、および「1つまたはそれ以上の抗体」を意味するよう解釈されるべきである。
【0018】
本明細書で用いられるように、「約(about)」、「おおよそ(approximately)」、「実質的に(substantially)」、および「顕著に(significantly)」は、当業者によって理解され、それらが用いられる文脈上である程度変化する。それらが用いられる文脈を考慮しても当業者によって明確ではないこれらの用語の使用がある場合、「約(about)」および「おおよそ(approximately)」は、特定の用語の10%以内のプラスまたはマイナスを意味し、「実質的に(substantially)」および「顕著に(significantly)」は、特定の用語より10%より大きいプラスまたはマイナスを意味する。
【0019】
本明細書で用いられるように、用語「含む(include)」および「含む(including)」は、用語「含む(comprise)」および「含む(comprising)」と同一の意味を有しており、これらの後半の用語は、請求項をこれらの移行語に続く列挙される構成要素にのみ限定しない「オープン」移行語である。用語「からなる(consisting of)」は、用語「含む(comprising)」のように包含されるが、請求項をこの移行語に続く列挙される構成要素にのみ限定する「クローズド」移行語として解釈されるべきである。用語「から必須としてなる(consisting essentially of)」は、用語「含む(comprising)」のように包含されるが、この移行語に続くさらなる構成要素を可能にする「部分クローズド」移行語として解釈されるべきであるが、それらのさらなる構成要素がその請求項の基本的で新規な性質に実質的に影響しない場合に限る。
【0020】
本明細書で用いられるように、「それを必要とする対象」は、ヒトまたは非ヒト哺乳類、より好ましくは、本明細書で開示されるペプチドおよびコンジュゲートによる治療または投与が適応される疾患または障害に罹っているとして診断されたヒトを意味する。
【0021】
本明細書で用いられるように、「それを必要とする対象」には、その対象における免疫応答を調節することによって治療され、および/または予防されうる疾患または障害に罹っているか、または発症するリスクを有する対象が含まれうる。本明細書で開示されるように、「調節」には、対象における免疫応答の誘導および/または亢進が含まれうる。
【0022】
それを必要とする対象には、細胞増殖性疾患または障害に罹っているか、または発症するリスクを有する対象が含まれうる。細胞増殖性疾患および障害には、以下に限定されないが、がん、例えば、乳がん、肺がん、前立腺がん、皮膚がん、大腸がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、甲状腺がん、子宮体がん、筋肉がん、骨がん、中皮がん、血管がん、線維性腫瘍、白血病、またはリンパ腫が含まれうる。
【0023】
本明細書で用いられる用語「有効量」は、患者への単一または複数用量投与により患者において所望される薬理効果を供する本発明のコンジュゲートされた抗体化合物の量または用量を意味する。有効量は、多くの因子、例えば、哺乳類の種類;その大きさ、年齢、および総体的な健康;具体的な疾患または関連する外科的方法;疾患または病気の程度または重症度;各患者の応答性;投与される具体的な化合物または組成物;投与様式;投与される医薬のバイオアベイラビリティ特性;選択される投薬レジメン;およびいずれかの併用薬の使用を考慮することによって当業者として担当の診断医が容易に決定することができる。
【0024】
本開示の対象は、融合ポリペプチドおよびコンジュゲートを含みうるペプチドおよびポリペプチドに関する。本明細書で用いられるように、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」または「タンパク質」は、アミノ酸のポリマーを意味するために交換可能に用いられうる。典型的には、「ポリペプチド」または「タンパク質」は、典型的に、50、60、70、80、90、または100アミノ酸以上の長さのアミノ酸のより長い重合体として定義される。「ペプチド」は、典型的に、50、40、30、20またはそれ以下のアミノ酸の短い重合体として定義される。
【0025】
本明細書で意図されている「ポリペプチド」、「タンパク質」、または「ペプチド」は、典型的に、本明細書で意図されるタンパク質構成アミノ酸(例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン)または非タンパク質構成アミノ酸の重合体を含む。
【0026】
用語「タンパク質構成アミノ酸」は、天然に存在するタンパク質中で見出されるアミノ酸を意味し、「コードアミノ酸」と呼ばれ得、用語「非タンパク質構成アミノ酸」は、天然に存在するタンパク質中で見出されないアミノ酸を意味し、「非コードアミノ酸」と称され得る。よって、用語「非タンパク質構成アミノ酸」は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン以外のアミノ酸を意味する。
【0027】
用語「融合」は、天然アミノ酸配列に融合された外因性アミノ酸配列を含むポリペプチド配列を意味する。外因性配列は、天然アミノ酸配列のN末端、天然アミノ酸配列のC末端、または天然アミノ酸配列の内部内で融合して、その結果として、融合タンパク質が、天然アミノ酸配列のN末端部分、外因性アミノ酸配列、および天然アミノ酸配列のC末端部分を含んでいてもよい。
【0028】
用語「コンジュゲート」は、元々共有結合していない2つの構成要素が、直接または連結基を介して共有結合している分子を意味する。コンジュゲートには、抗体またはその抗原結合フラグメントに共有結合されたペプチドまたはポリペプチドが含まれうる。開示されたコンジュゲートは、ペプチドまたはポリペプチド上に存在する反応基と、抗体またはその抗原結合フラグメント上に存在する反応基との間で形成された結合により共有結合されてもよい。ある実施態様において、前記結合は、ペプチドまたはポリペプチド上に存在する求電子性反応基と、抗体またはその抗原結合フラグメント上に存在する求核性反応基との間で形成されていてもよい。求電子性反応基には、以下に限定されないが、マレイミド基、マレイミド-ジアミノプロピオネート基、ヨードアセトアミド基、またはビニルスルホン基が含まれうる。求核性反応基には、以下に限定されないが、遊離チオール基(すなわち、還元ジチオ結合)が含まれうる。
【0029】
本開示の対象は、抗体およびその抗原結合フラグメントに関する。他で示されていない限り、用語「抗体」は、ジスルフィド結合により相互に結合された2つの重鎖および2つの軽鎖を含む免疫グロブリン分子を意味する。各鎖のアミノ末端部分には、そこに含まれる相補性決定領域(CDR)により抗原認識に主に関与する約100~約110アミノ酸の可変領域が含まれる。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に主に関与する定常領域を定義する。
【0030】
本明細書で用いられるように、用語「抗原結合フラグメント」は、その抗原に結合する能力を保持する抗体フラグメントを意味する。このような「抗原結合フラグメント」には、以下に限定されないが、Fv、scFv、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFv-Fcフラグメント、およびジアボディが含まれうる。抗体の抗原結合フラグメントは、典型的に、少なくとも1つの可変領域を含む。好ましくは、抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)を含む。より好ましくは、本明細書で用いられる抗原結合フラグメントは、エピトープまたは標的の抗原に対する抗原結合特異性を有するHCVRおよびLCVRを含む。
【0031】
本明細書で用いられるように、用語「軽鎖可変領域(LCVR)」は、相補性決定領域(CDR;すなわち、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)、およびフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む抗体分子のLC部分を意味する。
【0032】
本明細書で用いられるように、用語「重鎖可変領域(HCVR)」は、相補性決定領域(CDR;すなわち、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)、およびフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む抗体分子のHC部分を意味する。
【0033】
本明細書で用いられるように、用語「相補性決定領域」および「CDR」は、抗体またはその抗原結合フラグメントのLCおよびHCポリペプチドの可変領域内で見出される隣接しない抗原の結合部位を意味する。
【0034】
CDRは、フレームワーク領域(「FR」)と呼ばれるより保存されている領域で散在されている。各LCVRおよびHCVRは、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順番で配列されている:PRE CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。軽鎖の3つのCDRは、「LCDR1、LCDR2、およびLCDR3」と称され、HCの3つのCDRは、「HCDR1、HCDR2、およびHCDR3」と称される。CDRは、抗原と特異的な相互作用を形成する残基の大半を含有する。LCVRおよびHCVR領域内のCDRアミノ酸残基のナンバリングと位置付けは、公知の方法に従う。
【0035】
一般的に用いられるナンバリングの方法には、「Kabatナンバリング」および「EUインデックスナンバリング」システムが含まれる。「Kabatナンバリング」または「Kabatナンバリングシステム」は、本明細書で用いられるように、抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインおよび定常ドメインの両方におけるアミノ酸残基を指定するためにKabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)の著者らによって考案され、示されたナンバリングシステムを意味する。「EUインデックスナンバリング」または「EUインデックスナンバリングシステム」は、本明細書で用いられるように、抗体の重鎖定常ドメインにおけるアミノ酸残基を指定するためのナンバリング法を意味し、Kabat et al (1991)でも説明されている。可変ドメインのための補正または別のナンバリングシステムを含む他の方法として、Chothia(Chothia C, Lesk AM (1987), J Mol Biol 196: 901-917; Chothia, et al. (1989), Nature 342: 877-883)、IMGT(Lefranc, et al. (2003), Dev Comp Immunol 27: 55-77)、およびAHo(AHo (Honegger A, Pluckthun A (2001) J Mol Biol 309: 657-670)が含まれる。本明細書で明確に特に示されていない限り、本明細書、実施例および特許請求の範囲で示す免疫グロブリン重鎖定常領域C|-|1、ヒンジ、C|-|2、およびC|-|3アミノ酸残基に対する全ての対象(すなわち、数)は、EUインデックスナンバリングに基づく。
【0036】
「IgG抗体」の一般的な構造は、周知である。IgG型の野生型(WT)抗体は、鎖間および鎖内ジスルフィド結合により架橋されている4つのポリペプチド鎖(2つの同一の重鎖および2つの同一の軽鎖)のヘテロ-テトラマーである。各重鎖(HC)は、N末端重鎖可変領域(「VH」)および重鎖定常領域(「CH」)から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2、およびCH3)、ならびにCH1とCH2ドメインとの間のヒンジ領域(「ヒンジ」)から構成される。各軽鎖(LC)は、N末端軽鎖可変領域(「VL」)および軽鎖定常領域(「CL」)から構成される。VLおよびCL領域は、カッパ(「κ」)またはラムダ(「λ」)アイソタイプ(それぞれ、「Cκ」または「Cλ」)でありうる。各重鎖は、重鎖および軽鎖可変ドメイン(VH/VL接触)と重鎖定常CH1および軽鎖定常ドメイン(CH1/CL接触)との接触により1つの軽鎖と結合している。VH-CH1およびVL-CL断片の各々の結合は、同一の抗原標的またはエピトープに結合する抗体に対する2つの同一の抗原結合フラグメント(Fab)を形成する。各重鎖は、抗体のFc領域を形成する2つのCH2-CH3断片間で結合する各重鎖のヒンジ-CH2-CH3断片間の接触により、もう一方の重鎖に結合している。同時に、各FabおよびFcは、各Fabが「Y」の「アーム」を表すIgG抗体の特有の「Y型」構造を形成する。IgG抗体は、例えば、lgG1、lgG2、lgG3、およびIgG4などのサブタイプにさらに分類することができ、これらは、ヒンジ領域の長さ、鎖内および鎖間ジスルフィド結合の数および位置、ならびに各HC定常領域のアミノ酸配列によって異なる。
【0037】
各重鎖-軽鎖ペアの可変領域は、結合して結合部位を形成する。重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)は、より保存されたフレームワーク領域(「FR」)の領域が散在する、相補性決定領域(「CDR」)である超可変性の領域に分割することができる。各VHおよびVLは、下記の順番:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端まで配列された3つのCDRおよび4つのFRから構成される。重鎖のCDRは、「CDRH1、CDRH2、およびCDRH3」と称され、軽鎖の3つのCDRは、「CDRL1、CDRL2、およびCDRL3」と称されうる。重鎖のFRは、HFR1、HFR2、HFR3、およびHFR4と称され、軽鎖のFRは、LFR1、LFR2、LFR3、およびLFR4と称されうる。CDRは、抗原と特異的な相互作用を形成する残基の大部分を含む。
【0038】
開示のコンジュゲートに使用するための抗体およびその抗原結合フラグメントは、哺乳類または酵母細胞における組換え発現などの当該技術分野で周知の技術を用いて生成することができる。特に、本明細書の実施例の方法および手順は、容易に用いられうる。さらに、本発明の抗体および抗原結合フラグメントは、全長ヒトフレームワークに由来するフレームワーク領域を含むようにさらに改変されうる。様々な異なるヒトフレームワーク配列は、本発明の実施態様を実施するために用いられうる。特定の実施態様として、本発明のコンジュゲートの抗体および抗原結合フラグメントで用いられるフレームワーク領域は、ヒト由来または実質的にヒトである(ヒト由来の少なくとも95%、97%または99%)。ヒト由来のフレームワーク領域の配列は、当該技術分野で公知であり、The Immunoglobulin Factsbook, by Marie-Paule Lefranc, Gerard Lefranc, Academic Press 2001, ISBN 012441351から取得されてもよい。
【0039】
操作可能に結合されている遺伝子の発現を指揮することができる発現ベクターは、当該技術分野で周知である。発現ベクターは、プロモーター配列および複製開始部位などの適当な調節配列を含む。それらはまた、宿主細胞からの所望されるポリペプチド生成物の分泌を促進する適切な選択マーカーならびにシグナルペプチドもコードしうる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチドでありうる。所望されるポリペプチド、例えば、本発明のコンジュゲートされたIgG抗体のHCおよびLC構成因子をコードする核酸は、単一のベクター中に操作可能に結合されている異なるプロモーターを用いて独立して発現されてもよく、あるいは、所望される生成物をコードする核酸は、別のベクター中に操作可能に結合されている異なるプロモーターを用いて独立して発現されてもよい。本発明のシステインで改変されたIgG抗体のHCおよびLCの両方の構成因子をコードする単一の発現ベクターは、標準的な方法を用いて調製されてもよい。
【0040】
本明細書で用いられるように、「宿主細胞」は、所望されるポリペプチド産物をコードするヌクレオチド配列で安定的に、または一過的にトランスフェクトされ、形質転換され、導入され、または感染される細胞を意味する。本発明で使用するためのIgG抗体を生成する宿主細胞株の作成および単離は、当該技術分野で公知の標準的な技術を用いて行うことができる。哺乳類細胞は、本発明によるシステインで改変されたIgG抗体の発現のための好ましい宿主細胞である。ある哺乳類細胞として、HEK293、NSO、DG-44、およびCHO細胞が挙げられる。好ましくは、構築されるタンパク質は、宿主細胞が培養され、タンパク質を回収し、単離することができる培地に分泌される。タンパク質が分泌された培地は、従来技術によって精製されてもよい。例えば、前記培地は、従来の方法を用いてプロテインAまたはGカラムに付し、溶出されてもよい。可溶性の凝集体および多量体は、サイズ排除、疎水性相互作用、イオン交換、ヒドロキシアパタイト、または混合モードクロマトグラフィーを含む一般的な技術によって効率的に回収されうる。回収された生成物は、例えば、-70℃ですぐに凍結されてもよく、あるいは凍結乾燥されてもよい。当業者が評価するように、ある生物系、例えば、哺乳類細胞株で発現される場合、抗体は、グリコシル化を減少させるために変異がFcに導入されない限り、Fc領域がグリコシル化される。さらに、抗体は、他の位置でもグリコシル化されうる。
【0041】
新規な化学物質および化学物質の使用は、例えば、ペプチドおよび開示のペプチドのコンジュゲートの形態において本明細書で開示される。前記化学物質は、当該技術分野で公知の用語を用いて記載され、下記でさらに説明されうる。
【0042】
本明細書で用いられる用語「アルキル」には、その異性体形態の全てにおける直鎖または分岐鎖アルキル基、例えば、C1-C12アルキル、C1-C10-アルキル、およびC1-C6-アルキルと本明細書でそれぞれ称される1~12、1~10、または1~6個の炭素原子の直鎖または分岐鎖基が含まれる。
【0043】
用語「アルキレン」は、直鎖または分岐鎖アルキル基のジラジカル(すなわち、直鎖または分岐鎖C1-C6アルキル基のジラジカル)を意味する。典型的なアルキレン基には、下記に限定されないが、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-、-CH(CH2CH3)CH2-などが含まれる。
【0044】
用語「ハロアルキル」は、少なくとも1つのハロゲンで置換されたアルキル基を意味する。例えば、-CH2F、-CHF2、-CF3、-CH2CF3、-CF2CF3などである。
【0045】
本明細書で用いられる用語「ヘテロアルキル」は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子(例えば、O、N、またはS原子)で置換されている「アルキル」基を意味する。ヘテロアルキル基の1つのタイプは、「アルコキシ」基である。
【0046】
本明細書で用いられる用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和直鎖または分岐鎖炭化水素、例えば、C2-C12-アルケニル、C2-C10-アルケニル、およびC2-C6-アルケニルとそれぞれ本明細書で称される2~12、2~10、または2~6個の炭素原子の直鎖または分岐鎖基を意味する。
【0047】
本明細書で用いられる用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する不飽和直鎖または分岐鎖炭化水素、例えば、C2-C12-アルキニル、C2-C10-アルキニル、およびC2-C6-アルキニルと本明細書でそれぞれ称される2~12、2~10、または2~6個の炭素原子の直鎖または分岐鎖基を意味する。
【0048】
用語「シクロアルキル」は、シクロアルカンから派生する、例えば、「C4-8-シクロアルキル」と称される3~12、3~8、4~8、または4~6個の炭素の一価飽和環状、二環式、または架橋環状(例えば、アダマンチル)炭化水素基を意味する。特に断りがなければ、シクロアルキル基は、例えば、アルカノイル、アルコキシ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、アミドまたはカルボキシアミド、アミジノ、アミノ、アリール、アリールアルキル、アジド、カルバメート、炭酸塩、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロ、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、ヒドロキシル、イミノ、ケトン、ニトロ、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、硫酸塩、スルフィド、スルホンアミド、スルホニル、またはチオカルボニルで1つまたはそれ以上の環位置において適宜置換されている。ある実施態様において、シクロアルキル基は、置換されておらず、すなわち、無置換である。
【0049】
用語「シクロヘテロアルキル」は、シクロアルカンの少なくとも1つの炭素がヘテロ原子(例えば、N、O、および/またはSなど)で置換されている3~12、3~8、4~8、または4~6個の炭素の一価飽和環状、二環式、または架橋環状炭化水素基を意味する。
【0050】
用語「シクロアルキレン」は、1つまたはそれ以上の環結合で不飽和であるシクロアルキル基を意味する。
【0051】
用語「部分不飽和炭素環」は、炭素環の少なくとも1つの環が芳香族ではない、環原子間に少なくとも1つの二重結合を含む一価環状炭化水素を意味する。部分不飽和炭素環は、環炭素原子の数によって特徴付けられうる。例えば、部分不飽和炭素環は、5~14、5~12、5~8、または5~6個の環炭素原子を含み、それにより5~14、5~12、5~8、または5~6員部分不飽和炭素環とそれぞれ称されうる。部分不飽和炭素環は、単環式炭素環、二環式炭素環、三環式炭素環、架橋炭素環、スピロ環炭素環、または他の炭素環基の形態でありうる。典型的な部分不飽和炭素環基には、部分不飽和であるシクロアルケニル基および二環式炭素環基が含まれる。特に断りがなければ、部分不飽和炭素環基は、例えば、アルカノイル、アルコキシ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、アミドまたはカルボキシアミド、アミジノ、アミノ、アリール、アリールアルキル、アジド、カルバメート、炭酸塩、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロ、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、ヒドロキシル、イミノ、ケトン、ニトロ、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、硫酸塩、スルフィド、スルホンアミド、スルホニル、またはチオカルボニルで1つまたはそれ以上の環位置において適宜置換される。ある実施態様において、前記部分不飽和炭素環は、置換されておらず、すなわち、無置換である。
【0052】
用語「アリール」は、当該技術分野で認識されており、炭素環芳香族基を意味する。代表的なアリール基には、フェニル、ナフチル、アントラセニルなどが含まれる。用語「アリール」には、2つまたはそれ以上の炭素が2つの隣接する環に共通する2つまたはそれ以上の炭素環を有する多環式環基(前記環が「縮合環」である)であって、環の少なくとも1つが、芳香族であり、例えば、もう一方の環が、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、および/またはアリールでありうる基が含まれる。特に断りがなければ、芳香族環は、例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミドまたはカルボキシアミド、カルボン酸、-C(O)アルキル、-CO2アルキル、カルボニル、カルボキシル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロサイクリル、アリールまたはヘテロアリール部分、-CF3、-CNなどで1つまたはそれ以上の環位置において置換されていてもよい。ある実施態様において、芳香族環は、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシル、またはアルコキシルで1つまたはそれ以上の環位置において置換されている。ある他の実施態様において、芳香族環は、置換されておらず、すなわち、無置換である。ある実施態様において、アリール基は、6~10員環構造である。
【0053】
用語「ヘテロサイクリル」および「ヘテロ環基」は、当該技術分野で認識されており、飽和、部分不飽和、または芳香族3~10員環構造、あるいは3~7員環であって、これらの環構造には、1~4個のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、および硫黄)が含まれる基を意味する。ヘテロサイクリル基における環原子の数は、5個のCx-Cx表記法(式中、xは、環原子の数を特定する整数である)を用いて特定することができる。例えば、C3-C7ヘテロサイクリル基は、1~4個のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、および硫黄)を含む飽和または部分不飽和3~7員環構造を意味する。表記「C3-C7」は、ヘテロ環が、環原子位置を占めるヘテロ原子を含む3~7個の環原子の総数を含むことを示す。
【0054】
用語「アミン」および「アミノ」は、当該技術分野で認識されており、無置換および置換の両方のアミン(例えば、一置換アミンもしくは二置換アミン)であって、置換基として、例えば、アルキル、シクロアルキル、ヘテロサイクリル、アルケニル、およびアリールが含まれうるものを意味する。
【0055】
用語「アルコキシ」または「アルコキシル」は、当該技術分野で認識されており、酸素基が結合されている上記で定義されるアルキル基を意味する。代表的なアルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、tert-ブトキシなどが含まれる。
【0056】
「エーテル」は、酸素原子または硫黄原子によって共有結合された2つの炭化水素である。よって、アルキルにエーテルを付与するアルキルの置換は、アルコキシルまたはチオールであるか、またはそれらに類似する。
【0057】
本明細書で用いられる用語「カルボニル」は、基-C(O)-を意味する。
【0058】
用語「オキソ」は、二価の酸素原子-O-を意味する。
【0059】
本明細書で用いられる用語「カルボキシアミド」は、基-C(O)NRR’であって、RおよびR’が、同一または異なりうる基を意味する。RおよびR’は、例えば、独立して、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロサイクリルであってもよい。本明細書で用いられる用語「カルボキシ」は、基-COOHまたはその対応する塩、例えば、-COONaなどを意味する。
【0060】
本明細書で用いられる用語「アミド(amide)」、「アミド(amido)」または「アミジル」は、-R1C(O)N(R2)-、-R1C(O)N(R2)R3-、-C(O)NR2R3、または-C(O)NH2の基であって、式中、R1、R2、およびR3は、例えば、各々独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、水素、ヒドロキシル、ケトン、またはニトロである基を意味する。
【0061】
本開示の化合物(例えば、ペプチドおよびそのコンジュゲート)は、1つまたはそれ以上のキラル中心および/または二重結合を含んでいてもよく、それゆえ、立体異性体、例えば、幾何異性体、エナンチオマーまたはジアステレオマーとして存在しうる。用語「立体異性体」は、本明細書で用いられる場合、全ての幾何異性体、エナンチオマーまたはジアステレオマーからなる。これらの化合物は、立体中心炭素原子を含む置換基の配置および/または実測された旋光度に応じて、記号「R」もしくは「S」または「+」もしくは「-」によって表記されうる。本発明は、これらの化合物の様々な立体異性体およびそれらの混合物を包含する。立体異性体には、エナンチオマーおよびジアステレオマーが含まれる。エナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物は、命名上、(±)“と表記されうるが、当業者は、構造が黙示的にキラル中心を示すことを理解する。化学構造の図示、例えば、一般化学構造には、特に示されていない限り、示される化合物の全ての立体異性形態を包含することが理解される。鏡像異性的に純粋な化合物を含み、から必須としてなり、またはからなる組成物もまた本明細書で意図されており、組成物は、所定の化合物の単一エナンチオマーを少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%(例えば、所定の化合物のRエナンチオマーを少なくとも約99%)含み、から必須としてなり、またはからなりうる。
【0062】
本明細書で記載されるポリペプチド鎖は、左から右に読んだ場合、N末端からC末端のアミノ酸のそれらの配列によって示され、各アミノ酸がそれらの一文字または三文字アミノ酸略記によって表されうる。本明細書で特に示されていない限り、本発明のポリペプチドの調製に用いられる全てのアミノ酸は、L-アミノ酸であり、立体異性体がD-アミノ酸である。アミノ酸またはポリペプチド鎖の「N末端」(またはアミノ末端)は、アミノ酸上の遊離アミン基、またはポリペプチド鎖の最初のアミノ酸残基上の遊離アミン基を意味する。さらに、用語「N末端アミノ酸」は、ポリペプチド鎖における最初のアミノ酸を意味する。同様に、アミノ酸またはポリペプチド鎖の「C末端」(またはカルボキシ末端)は、アミノ酸上の遊離カルボキシ基、またはポリペプチド鎖の最後のアミノ酸残基上の遊離カルボキシ基を意味する。さらに、用語「C末端アミノ酸」は、ポリペプチド鎖における最後のアミノ酸を意味する。
【0063】
本明細書で用いられるように、用語「残基...で置換された[アミノ酸名]」は、重鎖または軽鎖ポリペプチドに関して、親アミノ酸の示されるアミノ酸への置換を意味する。一例として、「残基235で置換されたアラニン」を含む重鎖は、親アミノ酸配列が、残基番号235において親アミノ酸の代わりにアラニンを含むように変異が入れられた重鎖を意味する。このような変異はまた、特定のアミノ酸残基数に、親アミノ酸を前に、置換アミノ酸を後に表記することによって示されうる。例えば、「F235A」は、残基235におけるフェニルアラニンをアラニンで置換したことを意味する。同様に、「235A」は、親アミノ酸をアラニンで置換したことを意味する。「改変」システインは、親アミノ酸をシステインで置換したことを意味する。
【0064】
本明細書で用いられるように、「N-ホルミル-メチオニンペプチド」は、N末端アミノ酸がホルミル化メチオニンであるペプチドを意味する。本開示のペプチドのN-ホルミル-メチオニン残基は、1つまたはそれ以上のハロゲン置換基を含んでいてもよい。それゆえ、N-ホルミル、ハロゲン置換メチオニン残基は:
【化1】
として表される式を有していてもよく、R
1、R
2、およびR
3は、独立して、水素およびハロゲン(例えば、F、Cl、Br、またはI)から選択され、R
1、R
2、およびR
3の少なくとも1つ、好ましくは、R
1、R
2、およびR
3の少なくとも2つは、ハロゲンであり、より好ましくは、R
1、R
2、およびR
3の各々は、ハロゲンである(例えば、前記メチオニン残基は、側鎖末端にC(ハロゲン)
3を含む)。本明細書で用いられるように、「N-ホルミル-CF
3-メチオニンペプチドは、N末端アミノ酸が、メチオニン側鎖の末端にトリフルオロ置換メチル基を含むホルミル化メチオニンである、ペプチドを意味する。
【0065】
本明細書で用いられるように、「リンカー」は、2つまたはそれ以上のさらなる構造を連結する構造を意味する。リンカーの例として、ペプチドリンカー、タンパク質リンカー、PEGリンカー、およびこれらの組み合わせが挙げられる。本明細書で用いられる「マレイミド-PEGリンカー」は、式「-(O-CH2-CH2)n-」(式中、「n」は、3~24である)のポリエチレングリコール(PEG)ポリマー、および誘導体化マレイミド官能基を含む化学部分を意味し、前記リンカーは、マレイミド官能基と、抗体または抗原結合フラグメントにおけるシステイン残基との間のチオエーテル結合を介して抗体またはその抗原結合フラグメントに対して共有結合を形成していてもよく、ならびに/あるいはN-ホルミル-メチオニンペプチドのC末端リジンのイプシロンアミノ側鎖に対するアミド結合、またはN-ホルミル-メチオニンペプチドのC末端グルタミン酸のガンマカルボキシル基に対するアミド結合を介してN-ホルミル-メチオニンペプチドに対して共有結合を形成していてもよい。
【0066】
示されるように、本開示のペプチドおよびコンジュゲートには、配列を連結する1つまたはそれ以上のポリエチレングリコール(PEG)ポリマーが含まれてもよく、ペグ化されるべきものと考えられてもよい。当業者が評価するように、ペグ化試薬は、多くの場合、試薬中のPEG含有化合物のPEGポリマー部分の分子量(ダルトンまたはキロダルトン)に関して記載される。さらに、多くの市販品として入手可能なPEG含有試薬は、一般的に、試薬内に含まれるエチレングリコールモノマー単位を繰り返す数(「n」)が、ある範囲間で、典型的には、狭い範囲間で変動することを意味するある程度の分子量分散を示す。よって、試薬中のPEGポリマー分子量とは、典型的に、試薬内に含まれるPEGポリマーの平均分子量を対象とする。本発明のコンジュゲート抗体化合物を調製するために用いられる試薬のエチルオキシモノマー-(O-CH2-CH2)-は、約44g/molまたは44ダルトンの分子量である。よって、当業者は、その平均分子量によって表記されるペグ化試薬を用いる場合の「n」の値、同様に、生じるコンジュゲート抗体化合物における「n」の値を容易に決定することができる。
【0067】
本明細書で用いられるように、ホルミル基は、水素に結合したカルボニルからなり、式CH(O)-、または
【化2】
によって示される。
【0068】
N末端メチオニン残基には、ホルミル基(すなわち、N末端窒素原子上のN-ホルミル置換基)が含まれうる。
【0069】
【0070】
本明細書に記載の分子をコンジュゲートするために用いられうるマレイミド含有部分には、構造:
【化4】
を有するマレイミドジアミノプロピオン酸および構造:
【化5】
を有するマレイミドプロピオン酸が含まれてもよい。
【0071】
N-ホルミル-ハロゲン化メチオニン残基を含むペプチド、およびその改変された抗体-ペプチドコンジュゲート
本開示の主な特徴は、メチオニン側鎖のメチル基が、1つまたはそれ以上のハロゲン(例えば、フッ素)で置換されたN-ホルミルメチオニンを含むペプチドに関する。N-ホルミル-ハロゲン置換メチオニンは、酸化に対する耐性を示す。N-ホルミル-ハロゲン置換メチオニンを含むペプチドは、ホルミルペプチド受容体(FPR-1)のアゴニストとして利用され、抗体またはその抗原結合フラグメントにコンジュゲートされうる。これにより調製されたコンジュゲートは、細胞を標的とし、標的とする細胞に対してFPR-1を含む免疫細胞を誘発し、活性化するために用いられうる。
【0072】
ある実施態様において、本開示の主な特徴は、コンジュゲートされた抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。コンジュゲートには、N-ホルミル-ハロゲン置換メチオニン残基をペプチドのN末端に含むペプチドにコンジュゲートされている抗体またはその抗原結合フラグメントが含まれる。適切なN-ホルミル-ハロゲン化メチオニン残基には、下記に限定されないが、N-ホルミル-三フッ化メチオニンが含まれうる。N-ホルミル、フッ素置換メチオニンは、当該技術分野で開示された方法を用いて調製されてもよい(例えば、Houston et al., Biorg & Medic. Chem. Lett," Vol. 7, No. 23, pp.3007-3012, 1997(その内容は、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる)を参照のこと)
【0073】
ペプチドおよび抗体またはその抗原結合フラグメントは、ペプチドにおける反応基および抗体または抗原結合フラグメントにおける反応基を介して直接コンジュゲートされてもよい。あるいは、ペプチドおよび抗体またはその抗原結合フラグメントは、ペプチドをコンジュゲートするための反応基を有し、抗体またはその抗原結合フラグメントをコンジュゲートするための反応基を有するリンカーを介してコンジュゲートしていてもよい。ある実施態様において、コンジュゲートは、
【化6】
として表される式を有していてもよい。
【0074】
本開示のコンジュゲートの構成因子、すなわち、ペプチド、任意のリンカー、および抗体またはその抗原結合フラグメントは、いずれかの適切な反応基間で形成される結合を介してコンジュゲートされていてもよい。ある実施態様において、ペプチドは、C末端グルタミン酸残基を含み、ペプチドは、グルタミン酸のガンマカルボキシル基とリンカーのアミノ基との間で形成されるアミド結合によりリンカーにコンジュゲートされる。他の実施態様において、ペプチドは、C末端リジン残基を含み、ペプチドは、リジンのイプシロンアミノ基とリンカーのカルボキシル基との間で形成されるアミド結合によりリンカーにコンジュゲートされる。
【0075】
本開示のコンジュゲートは、複数のペプチド、複数のリンカー、および/または複数の抗体またはその抗原結合フラグメントを含んでいてもよい。ある実施態様において、コンジュゲートは、少なくとも2つのペプチドおよびリンカーを含み、分岐構造を形成していてもよい。ある実施態様において、コンジュゲートは、
【化7】
として表される式を有し、分岐構造として特徴付けられてもよい。
【0076】
本明細書に開示されるペプチドには、典型的に、N末端、N-ホルミル、ハロゲン置換メチオニン残基が含まれる。ペプチドは、典型的に、さらなるアミノ酸を含み、ある実施態様において、ペプチドは、アミノ酸の骨格または側鎖中のアミノ基とカルボキシル基との間に形成されたペプチド結合により結合された2~50アミノ酸(または2~40、2~30、2~20、または2~10アミノ酸)アミノ酸を含んでいてもよい。好ましくは、本開示のペプチドは、エンドペプチダーゼ、例えば、好中球に関連するエンドペプチダーゼ、特に、膜内在性エンドペプチダーゼによる切断に耐性を有する。ある実施態様において、本開示のペプチドは、エンドペプチダーゼ24.11(EP24.11;E.C.3.4.24.11(エンケファリナーゼ中性エンドペプチダーゼとも呼ばれる)、CALLA、CD10、またはネプリライシン);および/またはエンドペプチダーゼ24.15(EP24.15;E.C.3.4.24.15)(肺胞マクロファージ、単球、Tリンパ球、およびBリンパ球内で発見されたメタロペプチターゼ);および/またはCD13/アミノペプチダーゼN(CD13/APN);および/またはBP-1/6C3/アミノペプチダーゼA(BP-1/6C3/APA);およびCD26/ジペプチジルペプチダーゼIV(CD26/DPPIV)による切断に耐性を有する。
【0077】
ある実施態様において、本開示のペプチドおよびそのコンジュゲートは、N-ホルミル、ハロゲン置換メチオニンを含む1つまたはそれ以上の非タンパク質構成アミノ酸をN末端に含み、N-ホルミル、ハロゲン置換メチオニン以外の1つまたはそれ以上の非タンパク質構成アミノ酸を適宜含んでいてもよい。好ましくは、非タンパク質構成アミノ酸および/または非タンパク質構成アミノ酸間に形成された結合は、ペプチドに本明細書に開示されるエンドペプチダーゼによる切断に対して耐性を付与する。
【0078】
当該技術分野で理解されるように、非タンパク質構成アミノ酸は、生体内のコードアミノ酸ではなく、タンパク質中に天然に存在することが観察されないアミノ酸である。タンパク質構成アミノ酸には、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンのL-アミノ酸型が含まれる。それゆえ、非タンパク質構成アミノ酸は、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-システイン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、およびL-バリンのいずれでもないアミノ酸(すなわち、α-炭素原子に結合した遊離アミノ基および遊離カルボキシル基を含む分子)として定義されうる。例えば、非タンパク質構成アミノ酸は、式:NH2-C(R)-COOH(式中、Rは、コードするタンパク質構成アミノ酸のいずれの側鎖でもない)を有していてもよい。
【0079】
ある実施態様において、本開示のペプチドおよびそのコンジュゲートは、D-アミノ酸から選択される1つまたはそれ以上の非タンパク質構成アミノ酸を含む。適切なD-アミノ酸には、以下に限定されないが、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、および/またはバリンのD-アミノ酸が含まれうる。
【0080】
ある実施態様において、本開示のペプチドは、アミノ酸のα-炭素と側鎖との間の1つまたはそれ以上のメチレン基(-CH2-)を欠如しているコードアミノ酸のホモログである非タンパク質構成アミノ酸を含む。本開示のペプチドおよびそのコンジュゲートの非タンパク質構成アミノ酸として用いるために適当なホモログには、以下に限定されないが、2-アミノイソ酪酸、2-アミノ-2-ヒドロキシ酢酸、2α-メチル-2-ヒドロキシ-グリシン、2-アミノ-2-メチル酪酸(すなわち、イソバリン)、メチルシステイン、アゼチジン-2-カルボン酸、フェニルグリシン、4-ヒドロキシフェニルグリシン、3-インドリルグリシン、アミノマロン酸、2,3-ジアミノ-3-オキソプロパン酸、2-アミノ-2-(1H-イミダゾール-5-イル)酢酸、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、および2-アミノ-4-(ジアミノメチリデンアミノ)ブタン酸が含まれうる。
【0081】
ある実施態様において、本開示のペプチドは、α-炭素と側鎖との間に1つまたはそれ以上のさらなるメチレン基(-CH2-)を有するコードアミノ酸のホモログ(例えば、単一のさらなるメチレン基(-CH2-)を有するホモ-アミノ酸、2つのさらなるメチレン基(-CH2-CH2-)を有するビスホモ-アミノ酸など)である非タンパク質構成アミノ酸を含む。本開示のペプチドおよびそのコンジュゲートの非タンパク質構成アミノ酸として用いるための適当なホモログには、以下に限定されないが、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンのホモ-アミノ酸、例えば、ホモ-アラニン、ホモ-アルギニン、ホモ-グルタミン、ホモ-グルタミン酸、ホモ-イソロイシン、ホモ-ロイシン、ホモ-リジン、ホモ-メチオニン、ホモ-フェニルアラニン、ホモ-プロリン(すなわち、ピペリジン-2-カルボン酸)、ホモ-セリン、ホモ-スレオニン、ホモ-トリプトファン、およびホモ-チロシンが含まれうる。本開示のペプチドおよびそのコンジュゲートの非タンパク質構成アミノ酸として用いるための適当なホモログには、以下に限定されないが、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンのビスホモ-アミノ酸が含まれうる。
【0082】
ある実施態様において、本開示のペプチドは、アルキル置換基(例えば、メチルなどのC1-C6アルキル置換基)をα-炭素上に含むアルキル化アミノ酸である非タンパク質構成アミノ酸を含む。適切なアルキル置換アミノ酸には、α-炭素、アルキル置換アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン、例えば、2-メチル-セリン(すなわち、α-メチル-セリン)、2-メチル-スレオニン(すなわち、α-メチル-スレオニン)、α-メチル-バリン、α-メチル-ロイシン、2-アミノ-2,3-ジメチル-ペンタン酸(すなわち、α-メチル-イソロイシン)、α-メチル-メチオニン、α-メチル-システイン、2-メチル-プロリン、α-メチル-フェニルアラニン、α-メチル-チロシン、α-メチル-トリプトファン、2-メチル-アスパラギン酸、2-メチル-グルタミン酸、2,4-ジアミノ-2-メチル-4-オキソブタン酸(すなわち、α-メチル-アスパラギン)、2,5-ジアミノ-2-メチル-5-オキソペンタン酸(すなわち、α-メチル-グルタミン)、α-メチル-ヒスチジン、α-メチル-リジン、および2-メチル-アルギニン(すなわち、α-メチル-リジン)が含まれうる。ある実施態様において、本開示のペプチドは、ジアルキル置換基(例えば、ジメチルなどのC1-C6ジアルキル置換基)をα-炭素上に含むジアルキル化アミノ酸である非タンパク質構成アミノ酸を含む。適切なジアルキル化置換アミノ酸は、α-炭素、ジアルキル置換グリシン、例えば、ジ-n-プロピルグリシン(Dpg)を含みうる。
【0083】
ある実施態様において、本開示のペプチドは、アルキル置換基(例えば、メチルなどのC1-C6アルキル置換基)をアミノ基上に含むアルキル化アミノ酸である非タンパク質構成アミノ酸を含む。適切なN-アルキル化アミノ酸は、N-アルキル化アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン(例えば、N-メチル-アラニン、N-メチル-アルギニン、N-メチル-アスパラギン、N-メチル-アスパラギン酸、N-メチル-システイン、N-メチル-グルタミン酸、N-メチル-グルタミン、N-メチル-グリシン、N-メチル-ヒスチジン、N-メチル-イソロイシン、N-メチル-ロイシン、N-メチル-リジン、N-メチル-メチオニン、N-メチル-フェニルアラニン、N-メチル-プロリン、N-メチル-セリン、N-メチル-スレオニン、N-メチル-トリプトファン、N-メチル-チロシン、およびN-メチル-バリン)を含みうる。
【0084】
ある実施態様において、本開示のペプチドは、C1-C6アルキル置換基、ハロゲン置換基、およびシアノ置換基から選択される環置換基を適宜含んでいてもよい、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、プロリン、ナフチルアラニンから選択される非タンパク質構成アミノ酸を含む。適切な非タンパク質構成アミノ酸には、2-フルオロ-フェニルアラニン、2-メチル-チロシン、および2-ナフチルアラニンが含まれうる。
【0085】
ある実施態様において、本開示のペプチドは、ノルアミノ酸および/または線状コアアミノ酸から選択される非タンパク質構成アミノ酸を含む。適切なノルアミノ酸および/または線状コアアミノ酸には、以下に限定されないが、ノルロイシン(Nle)、ノルバリン(Nva)、12-アミノ-ドデカン酸、8-アミノ-カプリル酸、7-アミノ-エナント酸、6-アミノ-カプロン酸(carpoic acid)、および5-アミノ-ペンタン酸が含まれうる。
【0086】
ある実施態様において、本開示のペプチドは、置換基で置換されているコードタンパク質構成アミノ酸である非タンパク質構成アミノ酸を含む。適切な非タンパク質構成アミノ酸には、アルキニル(例えば、プロパルギルグリシン)、アジド(例えば、4-アジド-ホモ-アラニン)、チオフェニル、チエニル(例えば、3-(2-チエニル)-アラニン)、ピリジル(例えば、3-(4-ピリジル-アラニン(4-Pal))、アントレニル、シクロアルキル、ジフェニル、フリル、およびナフチル(例えば、2-ナフチルアラニン)から選択される置換基で置換されているアラニンが含まれうる。
【0087】
ある実施態様において、本開示のペプチドは、エチレン-オキシ部分を含む非タンパク質構成アミノ酸を含む。適切な非タンパク質構成アミノ酸には、式NH2-CH2-CH2-(O-CH2-CH2)n-COOH(式中、nは、1~24から選択される)で示されるアミノ酸が含まれうる。
【0088】
ある実施態様において、本開示のペプチドは、α-アミノ酸ではない非タンパク質構成アミノ酸を含む。適切な非α-アミノ酸には、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸、ε-アミノ酸、およびζ-アミノ酸(例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンのβ-、γ-、δ、ε-、およびζ-アミノ酸)が含まれうる。
【0089】
ある実施態様において、本開示のペプチドは、シクロアミノ酸である非タンパク質構成アミノ酸(例えば、プロリン以外のシクロアミノ酸)を含む。シクロアミノ酸は、窒素原子およびカルボキシル基によって形成された環状基を含むアミノ酸である。適切なシクロアミノ酸には、以下に限定されないが、アジリジン-2-カルボン酸、アゼチジン-2-カルボン酸、ピペリジン-2-カルボン酸、アゼパン-2-カルボン酸、シクロロイシン、ホモシクロロイシン、1-ピペリジン-4-カルボン酸、ピペリジン-3-カルボン酸、1-ピペラジン酢酸、4-ピペリジン酢酸、および1-ピペリジン酢酸が含まれうる。
【0090】
ある実施態様において、本開示のペプチドは、アミノ保護基を適宜含んでいてもよいタンパク質構成アミノ酸および/または非タンパク質構成アミノ酸を含む。適切なアミノ保護基には、以下に限定されないが、アリルオキシカルボニル(Alloc)、9-フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、t-ブチルカルボニル(BOC)、およびベンジルカルボニル(Cbz)が含まれうる。
【0091】
本開示のペプチドは、抗体またはその抗原結合フラグメントに直接コンジュゲートされていてもよい。他の実施態様において、本開示のペプチドは、リンカーを介して抗体またはその抗原結合フラグメントに間接的にコンジュゲートされていてもよい。ある実施態様において、リンカーは、選択される直線距離を有する。適切な選択される直線距離には、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50オングストロームまたはそれ以上、あるいはこれらの値によって囲まれる範囲(例えば、5~10オングストローム、10~20オングストローム、15~20オングストローム、15~25オングストローム、20~35オングストローム、30~40オングストローム、35~40オングストローム、35~50オングストローム、および40~50オングストローム)が含まれうる。
【0092】
ある実施態様において、本開示のリンカーは、選択される距離のリンカーを提供しうるスペーサーアームを有する。例えば、本開示のリンカーは、
【化8】
または
【化9】
として表される式を有していてもよい。
【0093】
適切なスペーサーアームは、ポリエチレングリコールなどのポリマー部分を含みうる。
【0094】
ある実施態様において、リンカーは、
【化10】
および
【化11】
[式中、nは、3~24から選択される整数である]
から選択される式を有する。
【0095】
特定の実施態様として、リンカーは、マレイミド部分およびPEG部分を含んでいてもよく、N-ホルミル-CF
3-メチオニンを抗体にコンジュゲートする「マレイミド-PEGリンカー」とも称されうる。例示的なコンジュゲートは、
【化12】
および
【化13】
から選択される式を有していてもよい。
【0096】
ある実施態様において、スペーサーアームは、1~20アミノ酸のペプチド配列を含む。ある実施態様において、スペーサーアームは、グリシン、セリン、およびアラニンから選択されるアミノ酸を含むペプチド配列(例えば、(G4S)m[式中、mは、1~5から選択される整数])である。
【0097】
本開示のリンカーは、例えば、スペーサーアームまたは他の部分として、ポリエチレングリコール部分を含んでいてもよい。ある実施態様において、リンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)部分(すなわち、(-O-CH2-CH2)1-24)を含む。
【0098】
ある実施態様において、本開示のリンカーは、アミノ酸部分などの非PEG部分によって分断されている2つまたはそれ以上のPEG部分を含んでいてもよい。ある実施態様において、本開示のリンカーは、-((PEG)1-24)-(AA)1-2-((PEG)1-24)-[式中、AAは、ガンマアミノアシル化により結合したグルタミン酸であるか、またはイプシロンアミノアシル化により結合したリジンである]として示される分断されたポリエチレングリコール部分を含む。
【0099】
本明細書で開示される適切なペプチド-リンカーは、
frm-M(CF3)-Ile-Phe-Leu-Peg12-NH-(CH2)2-Y、
frm-M(CF3)-Leu-Phe-Peg12-NH-(CH2)2-Y、
frm-M(CF3)-Dpg-2Nal-αMeF-Nle-γE-Peg12-NH-(CH2)2-Y、
frm-M(CF3)-Dpg-2Nal-αMeF-D-Nle-γE-Peg12-NH-(CH2)2-Y、
frm-M(CF3)-Dpg-2Nal-αMeF-Nle-γE-Peg6-γE-γE-Peg6-NH-(CH2)2-Y、
frm-M(CF3)-Dpg-2Nal-αMeF-Nle-γE-Peg6-εK-εK-Peg6-NH-(CH2)2-Y、
frm-M(CF3)-Dpg-2Nal-αMeF-D-Nle-γE-Peg12-NH-(CH2)2-Y、
frm-M(CF3)-Dpg-2Nal-αMeF-γE-Peg12-NH-(CH2)2-Y、
frm-M(CF3)-Dpg-4Pal-αMeF-Nle-γE-Peg12-NH-(CH2)2-Y
から選択される式を有していてもよく、式中、Yは、ペプチド-リンカーを抗体にコンジュゲートするためのアミノ基またはシステイン反応部分を含む。適切なシステイン反応部分として、以下に限定されないが、マレイミド、マレイミド-ジアミノプロピオン、ヨードアセトアミド、またはビニルスルホンが含まれうる。
【0100】
本開示のコンジュゲートのある実施態様において、リンカーは、マレイミド部分を含み、前記リンカーは、マレイミド部分と抗体のシステイン残基との間で形成されるチオエーテル結合により抗体またはその抗原結合フラグメントにコンジュゲートされる。
【0101】
本開示のペプチドおよびリンカーをコンジュゲートするための適切なアミノ酸残基には、システイン残基が含まれていてもよい。適切なシステイン残基は、抗体またはその抗原結合フラグメントにおいて改変されていてもよく、システイン残基は、抗体またはその抗原結合フラグメントの内在性システイン残基であるか、抗体またはその抗原結合フラグメントの非内在性システイン残基である。ある実施態様において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、IgG重鎖定常領域および軽鎖領域を含むものであって、前記システイン残基は、EUナンバリングインデックスに基づいて、CH1ドメインの残基124、CH3ドメインの残基378、またはCH1ドメインの残基124およびCH3ドメインの残基378の両方から選択される。ある実施態様において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、EUナンバリングインデックスに基づいて、システインについて残基247で置換されたイソロイシン、システインについて残基332で置換されたグルタミン酸、またはシステインについて残基247で置換されたイソロイシンおよびシステインについて残基332で置換されたグルタミン酸の両方を含む、IgG重鎖定常領域を含む。ある実施態様において、抗体は、配列番号12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、52、53、54、55、56、または57のアミノ酸配列を含む、重鎖定常領域を含む。
【0102】
本開示のコンジュゲートおよび方法のための適切な抗体には、ヒト抗体が含まれうる。他の適切な抗体には、マウス抗体、ラット抗体、またはウサギ抗体が含まれうる。適切な治療用抗体には、ヒト抗体、キメラまたはハイブリッド抗体、およびヒト化抗体が含まれうる。
【0103】
適切な抗体には、IgGアイソタイプが含まれうる。適切なIgGアイソタイプには、ヒトIgG1アイソタイプまたはヒトIgG4アイソタイプから選択されるIgG重鎖定常領域を有するアイソタイプが含まれうる。
【0104】
適切な抗体には、モノクローナル抗体が含まれうる。適切な抗体には、単一特異性抗体および二特異性抗体が含まれうる。
【0105】
本開示のペプチドおよび任意のリンカーは、当該技術分野で公知の抗体またはその抗原結合フラグメントのコンジュゲートを調製するために用いられてもよい。例えば、本開示のペプチドおよび任意のリンカーは、N-ホルミル-Met(CF3)ペプチド-コンジュゲート免疫療法薬を調製するために既存のがん治療用抗体にコンジュゲートされてもよい。
【0106】
ペプチドコンジュゲートを調製するために用いられる典型的ながん治療薬には、固形腫瘍、例えば、HER-2を発現する腫瘍(すなわち、トラスツズマブおよびペルツズマブなどのlgG1抗体)、液性腫瘍、例えば、CD20を発現する液性腫瘍(すなわち、lgG1およびlgG1亢進ADCC抗体、例えば、リツキシマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、およびAME133v)を標的とするIgG1治療用抗体、ならびにc-Met発現腫瘍を標的とする抗体(すなわち、エルロチニブ)が含まれうる。
【0107】
本明細書で開示されるN-ホルミル-Met(CF3)-ペプチドは、さらなる治療薬として機能するために、細胞毒性剤を含む治療用抗体にコンジュゲートされてもよい。あるいは、本明細書で開示されるN-ホルミル-Met(CF3)-ペプチドは、がん細胞で過剰発現する抗原を標的とする新たな治療用抗体を作り出すために、治療用抗体における細胞毒性剤を置き換えてもよい。標的抗原および代表的な治療用抗体には、以下に限定されないが、GPNMB(グレンバツムマブ べドチン)、CD56(ロルボツズマブ メルタンシン(IMGN-901))、TACSTD2(TROP2;サシツズマブ ゴビテカン、(IMMU-132))、CEACAM5(ラベツズマブ SN-38)、葉酸受容体-a(ミルベツキシマブ ソラヴタンシン(IMGN-853)、ビンタフォリド)、ムチン1、シアログリコトープ CA6;SAR-566658、STEAP1(バンドルツズマブ ベドチン(RG-7450))、メソテリン(DMOT4039A、アネトゥマブ ラヴタンシン(BAY-94-9343)、BMS-986148)、ネクチン4(エンホルツマブ ベドチン(ASG-22M6E);ASC-22CE)、ENPP3(AGS-16M8F)、グアニル酸シクラーゼC(インデュサツマブ ベドチン(MLN-0264))、SLC44A4(ASG-5ME)、NaPi2b(リファスツズマブ ベドチン)、CD70(TNFSF7;DNIB0600A、AMG-172、MDX-1243、ボルセツズマブ マホドチン(SGN-75))、CA9炭酸脱水酵素(BAY79-4620)、5T4(TPBG;PF06263507)SLTRK6(ASG-15ME)、SC-16(抗Fyn3;SC16LD6.5)、組織因子(HuMax-TF-ADC(TF-011-MMAE))、LIV-1(ZIP6;SGN-LIV1A)、P-カドヘリン(PCA062)、PSMA(MLN2704、PSMA-ADC)、フィブロネクチンエクストラドメインB(ヒトmAb L19およびF8)、エンドセリン受容体ETB(RG-7636)、VEGFR2(CD309;抗VEGFR-2ScFv-As203-ステルスナノ粒子)、テネイシンc(抗TnC-A1抗体SIP(F16))、ペリオスチン(抗ペリオスチン抗体)、DLL3(ロバルピツズマブ、ソラヴタンシン)、HER2(T-DM1、ARX788、SYD985)、EGFR(ABT-414、IMGN289 AMG-595)、CD30(ブレンツキシマブ ベドチン、イラツムマブ MDX-060)、CD22(イノツズマブ オゾガマイシン(CMC-544)、ピナツズマブ ベドチン、エプラツズマブ SN38)、CD79b(ポラツズマブ ベドチン)、CD19(コルツキシマブ ラヴタンシン、SAR-3419、SGN-CD19A)、CD138(インダツキシマブ ラヴタンシン)、CD74(ミラツズマブ ドキソルビシン)、CD37(IMGN-529)、CD33(ゲムツズマブ オゾガマイシン、IMGN779、SGN CD33A)、およびCD98(IGN523)が含まれうる(例えば、参照によりその内容全体が本明細書に取り込まれる、Thomas et al, Lancet Oncol. 2016 Jun; 17(6)e254-62 and Diamantis and Banerji, Brit. Journ. Cancer, 2016; 1 14, 362-367を参照のこと)。
【0108】
ある実施態様において、本開示のコンジュゲートの抗体またはその抗原結合フラグメントは、グレンバツムマブ べドチン、ロルボツズマブ メルタンシン(IMGN-901)、TROP2;サシツズマブ ゴビテカン(IMMU-132)、ラベツズマブSN-38、ミルベツキシマブ ソラヴタンシン(IMGN-853)、ビンタフォリド、シアログリコトープ CA6;SAR-566658、エンホルツマブ ベドチン(ASG-22M6E)、ASC-22CE)、ZIP6、SGN-LIV1A、DMOT4039A、アネトゥマブ ラヴタンシン(BAY-94-9343)、BMS-986148、ソフィツズマブ ベドチン、ミルベツキシマブ ソラヴタンシン(IMGN-853)、ビンタフォリド、ラベツズマブ SN-38、グレンバツムマブ べドチン、ロルボツズマブ メルタンシン(IMGN-901)、バンドルツズマブ ベドチン(RG-7450)、AGS-16M8F、インデュサツマブ ベドチン(MLN-0264)、ASG-5ME、リファスツズマブ ベドチン、TNFSF7、DNIB0600A、AMG-172、MDX-1243、ボルセツズマブ マホドチン(SGN-75)、BAY79-4620、TPBG、PF06263507、SLTRK6(ASG-15ME)、抗Fyn3、SC16LD6.5)、HuMax-TF-ADC(TF-011-MMAE)、PCA062、ヒトmAb L19、ヒトmAb F8、RG-7636、CD309;抗VEGFR-2ScFv-As2O3-ステルスナノ粒子、抗TnC-A1抗体SIP(F16)、抗ペリオスチン抗体、ロバルピツズマブ ソラヴタンシン、ABT-414、IMGN289 AMG-595、ブレンツキシマブ ベドチン、イラツムマブ MDX-060、イノツズマブ オゾガマイシン(CMC-544)、ピナツズマブ ベドチン、エプラツズマブ SN38、ポラツズマブ ベドチン、コルツキシマブ ラヴタンシン、SAR-3419、SGN-CD19A、インダツキシマブ ラヴタンシン、ミラツズマブ ドキソルビシン、IMGN-529、ゲムツズマブ オゾガマイシン、IMGN779、SGN CD33A、およびIGN523から適宜選択されてもよい公知抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のうちの1つまたはそれ以上を含む。
【0109】
ペプチドおよびそのコンジュゲートは、医薬組成物として製剤化されていてもよい。ある実施態様において、本開示の医薬組成物は、(i)本明細書に開示されるコンジュゲートされた抗体またはその抗原フラグメント;および(ii)1つまたはそれ以上の医薬的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む。
【0110】
本開示のペプチド、コンジュゲート、およびその医薬組成物は、治療を必要とする対象において疾患および障害を治療する方法に用いられうる。ある実施態様において、本開示の方法は、固形がんまたは液性腫瘍を治療する方法であって、有効量の本明細書で開示されるコンジュゲートされた抗体またはその医薬組成物を、治療を必要とする患者に投与することを含む方法を含む。本開示のペプチド、コンジュゲート、医薬組成物、および方法を用いて治療するための適切ながんには、以下に限定されないが、乳がん、肺がん、前立腺がん、皮膚がん、大腸がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、甲状腺がん、子宮体がん、筋肉がん、骨がん、中皮がん、血管がん、線維性腫瘍、白血病、またはリンパ腫が含まれうる。
【0111】
本開示のペプチド、コンジュゲート、および医薬組成物は、治療を必要とする対象の治療に用いられうる。ある実施態様において、本開示のペプチド、コンジュゲート、および医薬組成物は、乳がん、肺がん、前立腺がん、皮膚がん、大腸がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、甲状腺がん、子宮体がん、筋肉がん、骨がん、中皮がん、血管がん、線維性腫瘍、白血病、またはリンパ腫から適宜選択されてもよい固形がんまたは液性腫瘍の治療に用いられうる。
【0112】
好中球を活性化するための方法、特に、インビボまたはインビトロで好中球の活性酸素種(ROS)の生成を活性化するための方法も本明細書で開示される。前記方法は、コンジュゲートが好中球におけるROS生成を活性化する条件下において、好中球を本明細書で開示されるコンジュゲートと接触させることを含む。ある実施態様において、前記コンジュゲートは、好中球におけるROS生成を誘導するための適切な長さのスペーサーを含む。例えば、前記コンジュゲートは、ROS生成を誘導するための適切な長さのポリエチレングリコール(PEG)スペーサー(例えば、少なくとも12個のモノマーを含むPEGスペーサー)を含みうる。
【0113】
本明細書においてペプチドとも称されうる化合物が本明細書で開示される。ある実施態様において、化合物は、式:
R-P1-P2-P3-NH-(CH2CH2O)n-CH2CH2-Y
[式中:
Rは、HC(=O)-であり、
P1は、Met(C(ハロゲン)m)[式中、mは、1~3である](例えば、Met(CF3)、Met(CHF2)、またはMet(CH2F))であり;
P2は、P1に相互にペプチド結合により結合した1~6個のタンパク質構成または非タンパク質構成アミノ酸であり;
P3は、-COOH部分(例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸)または-NH2部分(例えば、リジン)を含む側鎖を含み、適宜、その側鎖ガンマカルボキシル基により結合したグルタミン酸残基、またはその側鎖イプシロンアミノ基により結合したリジン残基を含んでいてもよいアミノ酸であり、P3は、ペプチド結合によりP2に結合し;
nは、3~24から選択される整数であり;ならびに
Yは、アミノまたはシステイン反応部分を含むものであって、適宜、Yは、マレイミド、マレイミド-ジアミノプロピオン、ヨードアセトアミド、またはビニルスルホンから選択される]
またはその塩で示される。
【0114】
他の実施態様において、本開示の化合物は、式:
R-P1-P2-P3-NH-(CH2CH2O)n-CH2CH2-Y
[式中、
Rは、HC(=O)-であり、
P1は、MetまたはMet(C(ハロゲン)m)[式中、mは、1~3である](例えば、Met(CF3)、Met(CHF2)、またはMet(CH2F))であり;
P2は、P1に相互にペプチド結合により結合した1~6個のタンパク質構成または非タンパク質構成アミノ酸であり;
P3は、-COOH部分(例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸)または-NH2部分(例えば、リジン)を含む側鎖を含み、適宜、その側鎖ガンマカルボキシル基により結合したグルタミン酸残基、またはその側鎖イプシロンアミノ基により結合したリジン残基を含んでいてもよいアミノ酸であり、P3は、ペプチド結合によりP2に結合し;
nは、3~24から選択される整数であり;ならびに
Yは、アミノまたはシステイン反応部分を含むものであって、適宜、Yは、マレイミド、マレイミド-ジアミノプロピオン、ヨードアセトアミド、またはビニルスルホンから選択される]
またはその塩で示される。
【0115】
本開示のペプチドおよびコンジュゲートは、好ましくは、ホルミルペプチド受容体ファミリーの1つまたはそれ以上のアゴニストである。好ましくは、本開示のペプチドおよびコンジュゲートは、ホルミルペプチド受容体1(FPR-1)のアゴニストである。好ましくは、本開示のペプチドおよびコンジュゲートは、ホルミルペプチド受容体ファミリーの1つまたはそれ以上に結合する。好ましくは、本開示のペプチドおよびコンジュゲートは、好中球の表面上に存在するホルミルペプチド受容体ファミリーの1つまたはそれ以上に結合する。好ましくは、本開示のペプチドおよびコンジュゲートは、少なくとも約10uM、1uM、100nM、50nM、10nMまたはそれ以下のKdにおいて、ホルミルペプチド受容体ファミリーの1つまたはそれ以上に結合する。それゆえ、本開示のペプチドおよびコンジュゲートは、ホルミルペプチド受容体を拮抗する方法であって、ホルミルペプチド受容体をペプチドまたはコンジュゲートと接触させることを含む方法で用いられうる。
【実施例】
【0116】
以下の実施例は、例示であって、請求項の特徴の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0117】
コンジュゲートを調製するためのホルミル-Met(CF
3
)およびPEGペプチド
要約
天然のホルミル-メチオニンペプチドを、インビボでメチオニン残基の硫黄原子を酸化させ、メチル-スルホキシドを生成させるか、またはmet(O)を生じさせる(
図1を参照)。メチオニン残基の硫黄原子の酸化は、ホルミルペプチド受容体1(FPR-1)アゴニスト活性を著しく減少させる(例えば、10×近くまで)。それゆえ、酸化に耐性を有するホルミル-トリフルオロ-メチオニンを基にしたペプチド(すなわち、frm-Met(CF
3)含有ペプチド)を調製した。さらなる非タンパク質構成アミノ酸およびポリエチレンリンカー/スペーサーを含有するペプチドも調製した。前記ペプチドは、それらが、自然免疫細胞によるFPR-1を介在し、標的とした細胞死滅を促進する抗体バイオコンジュゲートを調製するのに適当であるかどうかを調べるために、FPR-1アゴニストとして機能しうるかどうかを調べるために試験した。
【0118】
frm-Met(CF3)含有ペプチドは、好中球上のヒトホルミルペプチド受容体(FPR-1)を活性化することができ、これにより、それらが抗体を改変し、FPR-1を介在し、標的とする細胞死滅を示す抗体コンジュゲートを作り出すのに適切であることが観察された。ポリエチレンリンカーに関するリンカーの長さが、好中球において活性酸素種(ROS)生成を誘導するために重要であることがさらに観察された。最終的に、frm-Met(CF3)含有ペプチドにコンジュゲートされた抗体がコンジュゲートされていない抗体と同様のクリアランスプロファイルを示すことが知見された。
【0119】
背景
バクトボディ(Bactabodies)は、標的の細胞死滅における自然免疫系に関与する抗体バイオコンジュゲートである。それらは、標的細胞を死滅させる自然免疫細胞を活性化することができる病原体関連分子パターン(PAMP)にコンジュゲートされた特異的な細胞を標的とする抗体からなる。
【0120】
ホルミルペプチドは、バクトボディを調製するために抗体にコンジュゲートすることができるPAMPを提供する。ホルミル-Met-Leu-Phe(fMLF)およびホルミル-Met-Ile-Phe-Leu(fMIFL)の2つは、十分に特徴付けられたホルミルペプチドである。fMLFおよびfMIFLは、ホルミルペプチド受容体(FPR)アゴニストであり、FPR-1受容体は、自然免疫細胞上に存在する活性化受容体である。fMLFは、ヒトFPR-1の有効なアゴニストであり、fMIFLは、ヒトおよびマウスFPR-1受容体の両方の有効なアゴニストである。
【0121】
ホルミルメチオニンに基づくFPR-1アゴニストのインビボ活性の1つの懸念事項は、メチオニンの酸化がfrm-Metペプチドの活性も減少させることである(
図1を参照)。また、天然アミノ酸を有するfrm-Metペプチドは、インビトロで十分に機能するが、インビボでは、おそらくFPR-1を生成する細胞表面上に存在する内在性エンドペプチダーゼまたは血中エンドペプチダーゼによって分解される。前記代謝安定性に対処するために、インビボ使用に安定な非タンパク質構成アミノ酸を含む改変されたFPR-1アゴニストペプチドを調製した。よって、frm-Metペプチドは、それ自体アゴニストとして機能するが、本実験は、frm-Metペプチドが最大活性のためにはリンカーを介して示される必要があることを示す。
【0122】
FPR-1拮抗を保ちつつメチオニン酸化の可能性を排除するメチオニンのトリフルオロ改変を有するペプチドが本明細書に記載される。本開示のペプチドにはまた、エンドペプチダーゼによる消化を阻害する非タンパク質構成アミノ酸が含まれる。本開示のペプチドには、本発明者らが最大アゴニスト活性のために重要であることを示した、PEGを含むリンカーも含まれる。
【0123】
結果および考察
ペプチド調製
図2、
図3、および
図4で示されるように、本発明者らは、FPR-1のアゴニストとしてインビトロおよびインビボ活性のためのfrm-Met(CF
3)、非タンパク質構成アミノ酸、およびPEGリンカーを有するペプチドの一組を調製した。
【0124】
frm-Met(CF
3)の合成化学を
図5に示す。Fmoc-S-トリチル-L-ホモシステイン(化合物1,1.695g,2.713mmol)を、DCM(25mL)およびトリイソプロピルシラン(4mL,19.5mmol)中に溶解させ、続いてTFA(15mL,198.4mmol)を21℃で加え、該反応混合物を1時間攪拌した。減圧中で濃縮し、MeOHで共蒸留させて、化合物
2(0.973g,2.72mmol)を得た。化合物
2をDCM(25mL)中に溶解させ、該溶液を-78℃に冷却した。化合物
3(1.00g,2.94mmol)をDCM中に溶解させ、該反応混合物を加え、-78℃で30分間攪拌した。反応混合液をセライト上に吸着させ、逆相クロマトグラフィー(50%~70% 0.1% FA(水/アセトニトリル中))により精製して、Fmoc-S-トリフルオロメチル-L-ホモシステイン(4,153mg,0.33mmol,12.2%)を得た。
1H NMR (500 HMz, DMSO) δ 12.7 (bs, 1H), 7.89 (d, 2H), 7.73-7.70 (m, 3H), 7.42 (t, 2H), 7.33 (t, 2H), 4.31-4.30 (m, 2H), 4.24-4.23 (m, 1H), 4.12-4.08 (m, 1H), 2.80-2.70 (m, 2H), 2.16-1.95 (m, 2H);
19F (352 MHz, DMSO) δ -40 (s, 3F); MS [M
++Na] 448; 純度 90% (HPLC-UV (300 nm)による).
【0125】
簡単に説明すると、FRM-023およびFRM063は、ヒトペプチドMIFLを含み、FRM-063がfrm-Met(CF3)を含み、FRM-023がfrm-Metを含む点のみで異なる。
【0126】
同様に、FRM-050およびFRM-054は、マウスペプチドMFLを含み、FRM-054がfrm-Met(CF3)を含み、FRM-50がfrm-Metを含む点のみで異なる。
【0127】
FRM-052は、酸化された対照ペプチドを示す。
【0128】
FRM-059は、FRM-047のfrm-Met(CF3)誘導体を示す。
【0129】
FRM-055は、FRM-047のD-Nle誘導体を示す。
【0130】
FRM-060およびFRM-061には、FRM-059に存在するPEG12リンカーの可撓性を減少させるために、2つの「分断された」PEG6リンカーが含まれる。
【0131】
FRM-041およびFRM-051は、それぞれ、末端マレイミドを有するFRM-023およびFRM-050の対応型である。
【0132】
FRM-053は、末端マレイミドを有するFRM-052の対応型である。
【0133】
FRM-058は、末端マレイミドを有するFRM-055の対応型である。
【0134】
FRM-048およびFRM-049は、2つのペプチドを含むFRM-047の分岐型であって、末端マレイミドを欠いているか(FRM-048)、または末端マレイミドを有する(FRM-049)。
【0135】
FRM-057は、N末端メトキシニン残基(すなわち、硫黄原子が酸素原子で置換されたメチオニン)を有するFRM-047の誘導体である。
【0136】
FRM-056は、frm-Met(CF3)を有し、Nleを欠いているFRM-047の誘導体である。
【0137】
FRM-062は、frm-Met(CF3)および4-Palを有するFRM-047の誘導体である。
【0138】
インビトロ
frm-Metペプチドおよびfrm-Met(CF
3)ペプチドのC末端ペグ化は、初代ヒト好中球からのFPR-1を介在する活性酸素種(ROS)生成を高める。
図6および
図9で示されるように、frm-Metペプチドおよびfrm-Met(CF
3)ペプチドのC末端ペグ化は、好中球におけるROS生成の活性を高めた。初代ヒト好中球からのROS生成もまた、タンパク質構成アミノ酸(およびPEG)を有するfrm-Met(CF
3)ペプチドと比較して、非タンパク質構成アミノ酸(およびPEG)を有するfrm-Met(CF
3)ペプチドで高まった。
【0139】
図8で示されるように、初代ヒト好中球の遊走は、タンパク質構成アミノ酸(MLFおよびPEG)を有するfrm-Metペプチドとタンパク質構成アミノ酸(frm-M(CF
3)LFおよびPEG)を有するfrm-Met(CF
3)ペプチドとで同様であった。
【0140】
本発明者らはまた、コンジュゲートされたペプチドを試験した。
図9で示されるように、マレイミドによってトラスツズマブ上の特定のeCys部位にコンジュゲートされたペプチドによる初代ヒト好中球からのROS生成は、リンカー/スペーサー(例えば、PEGリンカー/スペーサー)を必要とする。トラスツズマブにコンジュゲートされ、スペーサーを欠いているfrm-Metペプチドは、ヒト好中球からのROS生成を活性化することができなかった。
【0141】
インビボ
frm-Metペプチドおよび非タンパク質構成アミノ酸を有するトラスツズマブバクトボディは、トラスツズマブ親抗体より速くクリアランスされ、バクトボディでより低い曝露となった。
図10Aおよび
図10B(ならびに
図10Cおよび
図10D)で示されるように、ペプチドFRM-047をコンジュゲートすることにより、コンジュゲートされていない親抗体に対してコンジュゲートされた抗体についてより高いクリアランスとなった。AUC0-∞に基づいて算出された曝露は、FRM-047ペプチドを有するTmabバクトボディと比較したTmab親について3.8倍高い曝露を示す。しかしながら、トラスツズマブ(Tmab)がペプチドFRM-058にコンジュゲートされた場合(frm-Met(CF
3)部分を有するペプチドFRM-047誘導体である)、クリアランスは親トラスツズマブと同様であった(
図11を参照)。よって、トラスツズマブバクトボディのfrm-Met(CF
3)におけるトリフルオロ置換は、frm-Metペプチドを有する同等のバクトボディに対して減少したクリアランスを供し、クリアランスは、Tmab親抗体と同様である。
【0142】
方法
ROS生成
ヒト好中球は、以前に記載されたように、新鮮な血液吸引物から精製した。初代ヒト好中球による活性酸素種の生成は、ルミノール増幅化学発光を用いて測定した。単離後、PMNを、0.25% ヒト血清アルブミン(Gemini Bio製品#800-120)および50μM Luminol(Sigma-Aldrich#123072-2.5G)を補充したカルシウムおよびマグネシウム(Gibco#14025-092)を含むHBSS中で1x106細胞/mlにおいて懸濁した。次いで、100μlの細胞懸濁液(合計1x105細胞)を、発光測定に適切な96ウェルプレート(Greiner #655098)の各ウェルに分注し、温度を37℃で5分間平衡化させた。平衡化後、10x溶液のアゴニストを前記ウェルに加え、1x最終濃度とした。アゴニストの添加直後、化学発光シグナルをルミノメーターによって記録した。曲線下面積(AUC)値を、各ランの最初の5分から発光シグナルを用いて算出した。数値を比較発光単位で示す。
【0143】
走化性
改変ボイデンチャンバーアッセイにおいてアゴニストに対してトランズウェル(Corning #3415)を通した好中球走化性を測定した。好中球を豊富に含む調製物からの約2~4x105細胞を3.0□mの孔を有する膜上の上部トランズウェルチャンバーに播種した。下部トランズウェルチャンバーには、試験薬剤を含むか、含まない緩衝液を含有した。トランズウェルに播種後、細胞を加湿インキュベーター内で37℃に置いた。1時間後、前記上部チャンバーの細胞を除去し、下部チャンバーへの移動に成功した細胞の割合を、CellTiter-Glo(登録商標)(Promega #G7571)を製造業者の特定のプロトコールに従って用いて定量した。最大細胞インプット値に対して遊走が成功した割合を、標準曲線を用いて調べた。値を細胞インプット開始時に対する割合として示す。U字型用量応答曲線が予測される。上部チャンバーから下部チャンバーへの遊走は、濃度グラジエントを必要とし、ペプチド濃度が増加すると、ペプチドの上部チャンバーへの核酸の上昇が、上部チャンバーから下部チャンバーへの遊走を必要とする濃度グラジエントの低下を生じる。
【0144】
結論
frm-Metペプチドおよびfrm-Met(CF3)ペプチドのペグ化は、初代ヒト好中球からのFPR-1を介在した活性酸素種(ROS)生成を高める。非タンパク質構成アミノ酸を有するfrm-Met(CF3)ペプチドは、初代ヒト好中球からのFPR-1を介在したROS生成の促進について、天然アミノ酸を有するfrm-Met(CF3)ペプチドより効果的である。
【0145】
前記記載において、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、様々な置換と改変が本明細書に記載の発明になされうることは当業者によって容易に理解される。本明細書に例示として記載される本発明は、本明細書に具体的に開示されていないいずれの構成要素や限定なしで適切に行われうる。用いられている用語および表現は、記載の用語として用いられ、限定されるものではなく、示され、記載される特徴またはその部分のいずれの均等物を除くこのような用語および表現の使用を意図していないが、様々な改変が本発明の範囲内で可能であることが認められる。よって、本発明は、具体的な実施態様および任意の特徴によって例示されているが、開示の本明細書の概念の改変および/またはバリエーションは、当業者によって可能であり、このような改変とバリエーションは、本発明の範囲内であると考えられるものと理解されるべきである。
【0146】
多くの特許および非特許文献の引用が本明細書でなされうる。引用された参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に取り込まれる。引用された参考文献中の用語の定義と本明細書の用語の定義に矛盾が存在する場合、その用語は、本明細書の定義に基づいて解釈されるべきである。
【0147】
特定の実施態様を1~53と番号付けし、以下で示す:
【0148】
(1)N末端にN-ホルミル-ハロゲン化メチオニン残基を含むペプチドにコンジュゲートされている抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、コンジュゲートされた抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0149】
(2)前記N-ホルミル-ハロゲン化メチオニン残基が、N-ホルミル-三フッ素化メチオニンである、実施態様1に記載のコンジュゲートされた抗体。
【0150】
(3)前記抗体が、リンカーを介して前記ペプチドにコンジュゲートされている、実施態様1または2に記載のコンジュゲートされた抗体。
【0151】
(4)前記コンジュゲートされた抗体が、
【化14】
として表される式を有する、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0152】
(5)前記ペプチドが、C末端グルタミン酸残基を含み、前記ペプチドが、前記グルタミン酸のガンマカルボキシル基と前記リンカーのアミノ基との間で形成されたアミド結合により前記リンカーにコンジュゲートされている、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0153】
(6)前記ペプチドが、C末端リジン残基を含み、前記ペプチドが、前記リジンのイプシロンアミノ基と前記リンカーのカルボキシル基との間で形成されたアミド結合により前記リンカーにコンジュゲートされている、実施態様1~5のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0154】
(7)前記コンジュゲートされた抗体が、
【化15】
として表される式を有する、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0155】
(8)前記ペプチドが、非タンパク質構成アミノ酸であってもよく、ハロゲン置換アミノ酸(例えば、N末端でN-ホルミル-三フッ化メチオニン)を含む、2~10アミノ酸を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0156】
(9)前記ペプチドが、D-アミノ酸(例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンのD-アミノ酸)から選択される非タンパク質構成アミノ酸であってもよい、2~10アミノ酸を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0157】
(10)前記ペプチドが、α-炭素と側鎖との間の1つまたはそれ以上のメチレン基を欠いているアミノ酸のホモログ、またはα-炭素と側鎖との間にさらなるメチレン基を有しているアミノ酸のホモログ(例えば、ホモアミノ酸、ビスホモアミノ酸など)から選択される、2~10アミノ酸を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0158】
(11)前記ペプチドが、α-炭素と側鎖との間の1つまたはそれ以上のメチレン基を欠いているアミノ酸のホモログ(2-アミノイソ酪酸、2-アミノ-2-ヒドロキシ酢酸、2α-メチル-2-ヒドロキシ-グリシン、2-アミノ-2-メチル酪酸(すなわち、イソバリン)、メチルシステイン、アゼチジン-2-カルボン酸、フェニルグリシン、4-ヒドロキシフェニルグリシン、3-インドリルグリシン、アミノマロン酸、2,3-ジアミノ-3-オキソプロパン酸、2-アミノ-2-(1H-イミダゾール-5-イル)酢酸、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、および2-アミノ-4-(ジアミノメチリデンアミノ)ブタン酸)から選択される非タンパク質構成アミノ酸であってもよい、2~10アミノ酸を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0159】
(12)前記ペプチドが、前記ペプチドが、ホモアミノ酸(例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンのホモアミノ酸、例えば、ホモアラニン、ホモアルギニン、ホモグルタミン、ホモグルタミン酸、ホモイソロイシン、ホモロイシン、ホモリジン、ホモメチオニン、ホモフェニルアラニン、ホモプロリン(すなわち、ピペリジン-2-カルボン酸)、ホモセリン、ホモスレオニン、ホモトリプトファン、およびホモチロシン)から選択される非タンパク質構成アミノ酸であってもよい、2~10アミノ酸を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0160】
(13)前記ペプチドが、ビスホモアミノ酸(例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンのビスホモアミノ酸)から選択される非タンパク質構成アミノ酸であってもよい、2~10アミノ酸を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0161】
(14)前記ペプチドが、α-炭素(例えば、α-炭素、アルキル置換アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン、例えば、2-メチル-セリン(すなわち、α-メチル-セリン)、2-メチル-スレオニン(すなわち、α-メチル-スレオニン)、α-メチル-バリン、α-メチル-ロイシン、2-アミノ-2,3-ジメチル-ペンタン酸(すなわち、α-メチル-イソロイシン)、α-メチル-メチオニン、α-メチル-システイン、2-メチル-プロリン、α-メチル-フェニルアラニン、α-メチル-チロシン、α-メチル-トリプトファン、2-メチル-アスパラギン酸、2-メチル-グルタミン酸、2,4-ジアミノ-2-メチル-4-オキソブタン酸(すなわち、α-メチル-アスパラギン)、2,5-ジアミノ-2-メチル-5-オキソペンタン酸(すなわち、α-メチル-グルタミン)、α-メチル-ヒスチジン、α-メチル-リジン、および2-メチル-アルギニン(すなわち、α-メチル-リジン))にアルキル置換基(例えば、C1-C6アルキル置換基)を含むアルキル化アミノ酸から選択される非タンパク質構成アミノ酸であってもよい、2~10アミノ酸を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0162】
(15)前記ペプチドが、α-炭素(例えば、α-炭素、ジアルキル置換グリシン、例えば、ジプロピルグリシン(Dpg))にジアルキル置換基(例えば、C1-C6アルキル置換基)を含むジアルキル化アミノ酸から選択される非タンパク質構成アミノ酸であってもよい、2~10アミノ酸を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0163】
(16)前記ペプチドが、アミノ基(例えば、N-アルキル化アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン、例えば、N-メチル-アラニン、N-メチル-アルギニン、N-メチル-アスパラギン、N-メチル-アスパラギン酸、N-メチル-システイン、N-メチル-グルタミン酸、N-メチル-グルタミン、N-メチル-グリシン、N-メチル-ヒスチジン、N-メチル-イソロイシン、N-メチル-ロイシン、N-メチル-リジン、N-メチル-メチオニン、N-メチル-フェニルアラニン、N-メチル-プロリン、N-メチル-セリン、N-メチル-スレオニン、N-メチル-トリプトファン,N-メチル-チロシン、およびN-メチル-バリン)にアルキル置換基(例えば、C1-C6アルキル置換基)を含むアルキル化アミノ酸から選択される非タンパク質構成アミノ酸であってもよい、2~10アミノ酸を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0164】
(17)前記ペプチドが、C1-C6アルキル置換基、ハロゲン置換基、およびシアノ置換基(例えば、2-フルオロ-フェニルアラニン、2-メチル-チロシン、および2-ナフチルアラニン)から選択される1つまたはそれ以上の環置換基を適宜含んでいてもよい、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、プロリン、ナフチルアラニンから選択される非タンパク質構成アミノ酸であってもよい、2~10アミノ酸を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0165】
(18)前記ペプチドが、ノルアミノ酸および/または線状コアアミノ酸、例えば、ノルロイシン(Nle)、ノルバリン(Nva)、12-アミノ-ドデカン酸、8-アミノ-カプリル酸、7-アミノ-エナント酸、6-アミノ-カプロン酸(carpoic acid)、および5-アミノ-ペンタン酸から選択される非タンパク質構成アミノ酸であってもよい、2~10アミノ酸を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0166】
(19)前記ペプチドが、アルキニル(例えば、プロパルギルグリシン)、アジド(例えば、4-アジド-ホモアラニン)、チオフェニル、チエニル(例えば、3-(2-チエニル)-アラニン)、ピリジル(例えば、3-(4-ピリジル-アラニン(4-Pal))、アンスレニル(anthrenyl)、シクロアルキル、ジフェニル、フリル、およびナフチルから選択される置換基を含むアミノ酸(例えば、アラニン)から選択される非タンパク質構成アミノ酸であってもよい、2~10アミノ酸を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0167】
(20)前記ペプチドが、式:NH2-CH2-CH2-(O-CH2-CH2)n-COOH(式中、nは、1~24から選択される)で示されるアミノ酸から選択される非タンパク質構成アミノ酸であってもよい、2~10アミノ酸を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0168】
(21)前記ペプチドが、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸、ε-アミノ酸、およびζ-アミノ酸(例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンのβ-、γ-、δ-、ε-、およびζ-アミノ酸)から選択される非タンパク質構成アミノ酸であってもよい、2~10アミノ酸を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0169】
(22)前記ペプチドが、シクロアミノ酸(例えば、アジリジン-2-カルボン酸、アゼチジン-2-カルボン酸、ピペリジン-2-カルボン酸、アゼパン-2-カルボン酸、シクロロイシン、ホモシクロロイシン、1-ピペリジン-4-カルボン酸、ピペリジン-3-カルボン酸、1-ピペラジン酢酸、4-ピペリジン酢酸、および1-ピペリジン酢酸)から選択される非タンパク質構成アミノ酸であってもよい、2~10アミノ酸を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0170】
(23)前記ペプチドが、アミノ保護基(アリルオキシカルボニル(Alloc)、9-フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、t-ブチルカルボニル(BOC)、およびベンジルカルボニル(Cbz)から選択されてもよい-N-)を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0171】
(24)前記リンカーが、約10~50オングストローム(あるいは10~40オングストローム、または10~30オングストローム、または10~20オングストローム)の距離を有するスペーサーアームを含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0172】
(25)前記リンカーが、スペーサーアームを含み、前記リンカーが、
【化16】
および
【化17】
から選択される式を有する、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0173】
(26)前記リンカーが、
【化18】
および
【化19】
(式中、nは、3~24から選択される整数である)
から選択される式を有する、実施態様24または25に記載のコンジュゲートされた抗体。
【0174】
(27)前記スペーサーアームが、グリシン、セリン、およびアラニンから選択されるアミノ酸を含むペプチド配列(例えば、(G4S)m[式中、mは、1~5から選択される整数である])である、実施態様24または25に記載のコンジュゲートされた抗体。
【0175】
(28)前記リンカーが、ポリエチレングリコール(Peg)部分(すなわち、(-O-CH2-CH2)1-24)を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0176】
(29)前記リンカーが、-((Peg)1-24)-(AA)1-2-((Peg)1-24)-[式中、AAは、その側鎖ガンマカルボキシル基により結合したグルタミン酸残基、またはその側鎖イプシロンアミノ基により結合したリジン残基である]として表される分断したポリエチレングリコール部分を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0177】
(30)前記ペプチド-リンカーが、frm-M(CF3)-Ile-Phe-Leu-Peg12-NH-(CH2)2-Y、frm-M(CF3)-Leu-Phe-Peg12-NH-(CH2)2-Y、frm-M(CF3)-Dpg-2Nal-αMeF-Nle-γE-Peg12-NH-(CH2)2-Y、frm-M(CF3)-Dpg-2Nal-αMeF-D-Nle-γE-Peg12-NH-(CH2)2-Y、frm-M(CF3)-Dpg-2Nal-αMeF-Nle-γE-Peg6-γE-γE-Peg6-NH-(CH2)2-Y、frm-M(CF3)-Dpg-2Nal-αMeF-Nle-γE-Peg6-εK-εK-Peg6-NH-(CH2)2-Y、frm-M(CF3)-Dpg-2Nal-αMeF-D-Nle-γE-Peg12-NH-(CH2)2-Y、frm-M(CF3)-Dpg-2Nal-αMeF-γE-Peg12-NH-(CH2)2-Y、およびfrm-M(CF3)-Dpg-4Pal-αMeF-Nle-γE-Peg12-NH-(CH2)2-Y[式中、Yは、前記ペプチド-リンカーを前記抗体にコンジュゲートするためのアミノ基またはシステイン反応部分を含む]から選択される式を有する、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0178】
(31)前記システイン反応部分が、マレイミド、マレイミド-ジアミノプロピオン、ヨードアセトアミド、またはビニルスルホンから選択される、実施態様30に記載のコンジュゲートされた抗体。
【0179】
(32)前記リンカーが、マレイミド部分を含み、前記リンカーが、前記マレイミド部分と前記抗体のシステイン残基との間に形成されるチオエーテル結合により前記抗体にコンジュゲートされている、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0180】
(33)前記抗体が、IgG重鎖定常領域および軽鎖領域を含むものであって、前記システイン残基が、前記CH1ドメインの残基124、前記CH3ドメインの残基378、あるいは前記CH1ドメインの残基124および前記CH3ドメインの残基378の両方から選択される、実施態様32に記載のコンジュゲートされた抗体。
【0181】
(34)前記抗体が、ヒト抗体、キメラもしくはハイブリッド抗体、またはヒト化抗体である、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0182】
(35)前記抗体が、ヒトIgG1アイソタイプまたはヒトIgG4アイソタイプから選択されるIgG重鎖定常領域を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0183】
(36)前記抗体が、EUインデックスナンバリングに基づいてナンバリングすると、残基247で置換されたイソロイシン、残基332で置換されたグルタミン酸、あるいは残基247で置換されたイソロイシンおよび残基332で置換されたグルタミン酸の両方を含む、IgG重鎖定常領域を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0184】
(37)前記抗体が、配列番号12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、52、53、54、55、56、または57のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0185】
(38)前記抗体が、モノクローナル抗体である、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0186】
(39)前記抗体が、二特異性抗体である、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0187】
(40)前記抗体が、HER2、PSMA、TROP2、MUC-1、ネクチン4、LIV-1、メソセリン、MUC-16、葉酸受容体-R1、CEACAM5、GPNMB、CD56、STEAP1、ENPP3、グアニル酸シクラーゼC、SLC44A4、NaPi2b、CD70、CA9炭酸脱水酵素、5T4、SC-16、組織因子、P-カドヘリン、フィブロネクチンエクストラドメインB、エンドセリン受容体ETB、VEGFR2、テネイシンc、ペリオスチン、DLL3、EGFR、CD30、CD22、CD79b、CD19、CD138、CD74、CD37、CD33、およびCD98から選択される抗原に結合する、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0188】
(41)前記抗体が、T-DM1、ARX788、SYD985、MLN2704、PSMA-ADC、TACSTD2、サシツズマブ ゴビテカン、(IMMU-132))、ムチン1、シアログリコトープ CA6;SAR-566658、エンホルツマブ ベドチン(ASG-22M6E)、ASC-22CE)、ZIP6、SGN-LIV1A、DMOT4039A、アネトゥマブ ラヴタンシン(BAY-94-9343)、BMS-986148、ソフィツズマブ ベドチン、ミルベツキシマブ ソラヴタンシン(IMGN-853)、ビンタフォリド、ラベツズマブ SN-38、グレンバツムマブ べドチン、ロルボツズマブメルタンシン(IMGN-901)、バンドルツズマブ ベドチン(RG-7450)、AGS-16M8F、インデュサツマブ ベドチン(MLN-0264)、ASG-5ME、リファスツズマブ ベドチン、TNFSF7、DNIB0600A、AMG-172、MDX-1243、ボルセツズマブ マホドチン(SGN-75)、BAY79-4620、TPBG、PF06263507、SLTRK6(ASG-15ME)、抗Fyn3、SC16LD6.5、HuMax-TF-ADC(TF-011-MMAE)、PCA062、ヒトmAb L19およびF8、RG-7636、CD309;抗VEGFR-2ScFv-As2O3-ステルスナノ粒子、抗TnC-A1抗体SIP(F16)、抗ペリオスチン抗体、ロバルピツズマブ ソラヴタンシン、ABT-414、IMGN289 AMG-595、ブレンツキシマブ ベドチン、イラツムマブ MDX-060、イノツズマブ オゾガマイシン(CMC-544)、ピナツズマブ ベドチン、エプラツズマブ SN38、ポラツズマブ ベドチン、コルツキシマブ ラヴタンシン、SAR-3419、SGN-CD19A、インダツキシマブ ラヴタンシン、ミラツズマブ ドキソルビシン、IMGN-529、ゲムツズマブ オゾガマイシン、IMGN779、SGN CD33A、およびIGN523のうちの1つまたはそれ以上を含む、前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0189】
(42)前記実施態様のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体、および1つまたはそれ以上の医薬的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む、医薬組成物。
【0190】
(43)固形がんまたは液性腫瘍を治療するための方法であって、有効量の実施態様1~41のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体または実施例態様42に記載の医薬組成物を、治療を必要とする患者に投与することを含む、方法。
【0191】
(44)乳がん、肺がん、前立腺がん、皮膚がん、大腸がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、甲状腺がん、子宮体がん、筋肉がん、骨がん、中皮がん、血管がん、線維性腫瘍、白血病、またはリンパ腫を治療するための、実施態様43に記載の方法。
【0192】
(45)治療において使用するための、実施態様1~41のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0193】
(46)固形がんまたは液性腫瘍の治療に使用するための、実施態様1~41のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体。
【0194】
(47)乳がん、肺がん、前立腺がん、皮膚がん、大腸がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、甲状腺がん、子宮体がん、筋肉がん、骨がん、中皮がん、血管がん、線維性腫瘍、白血病、またはリンパ腫の治療に使用するための、実施態様46に記載のコンジュゲートされた抗体。
【0195】
(48)固形がんまたは液性腫瘍の治療薬の製造のための、実施態様1~47のいずれかに記載の抗体の使用。
【0196】
(49)前記固形がんまたは液性腫瘍が、乳がん、肺がん、前立腺がん、皮膚がん、大腸がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、甲状腺がん、子宮体がん、筋肉がん、骨がん、中皮がん、血管がん、線維性腫瘍、白血病、またはリンパ腫から選択される、実施態様48に記載の使用。
【0197】
(50)好中球における活性酸素種(ROS)生成を活性化するための方法であって、実施態様1~41のいずれかに記載のコンジュゲートされた抗体が好中球でROS生成を活性化する条件において、前記好中球を前記コンジュゲートされた抗体と接触させることを含む、方法。
【0198】
(51)前記コンジュゲートされた抗体の前記リンカーが、少なくとも12モノマーを含むポリエチレングリコールスペーサーを含む、実施態様48に記載の方法。
【0199】
(52)式:R-P1-P2-P3-NH-(CH2CH2O)n-CH2CH2-Y[式中、Rは、HC(=O)-であり、P1は、Met(C(ハロゲン)m)[式中、mは、1~3である](例えば、Met(CF3)、Met(CHF2)、またはMet(CH2F))であり;P2は、P1に相互にペプチド結合により結合した1~6個のタンパク質構成または非タンパク質構成アミノ酸であり;P3は、-COOH部分(例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸)または-NH2部分(例えば、リジン)を含む側鎖を含み、適宜、その側鎖ガンマカルボキシル基により結合したグルタミン酸残基、またはその側鎖イプシロンアミノ基により結合したリジン残基を含んでいてもよいアミノ酸であり、P3は、ペプチド結合によりP2に結合し;nは、3~24から選択される整数であり;ならびにYは、アミノまたはシステイン反応部分を含むものであって、適宜、Yは、マレイミド、マレイミド-ジアミノプロピオン、ヨードアセトアミド、またはビニルスルホンから選択される]で示される化合物またはその塩。
【0200】
(53)式:R-P1-P2-P3-NH-(CH2CH2O)n-CH2CH2-Y[式中:Rは、HC(=O)-であり、P1は、MetまたはMet(C(ハロゲン)m)[式中、mは、1~3である](例えば、Met(CF3)、Met(CHF2)、またはMet(CH2F))であり;P2は、P1に相互にペプチド結合により結合した1~6個のタンパク質構成または非タンパク質構成アミノ酸であり;P3は、-COOH部分(例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸)または-NH2部分(例えば、リジン)を含む側鎖を含み、適宜、その側鎖ガンマカルボキシル基により結合したグルタミン酸残基、またはその側鎖イプシロンアミノ基により結合したリジン残基を含んでいてもよいアミノ酸であり、P3は、ペプチド結合によりP2に結合し;nは、3~24から選択される整数であり;ならびにYは、アミノまたはシステイン反応部分を含むものであって、適宜、Yは、マレイミド、マレイミド-ジアミノプロピオン、ヨードアセトアミド、またはビニルスルホンから選択される]で示される化合物またはその塩。
【配列表】
【国際調査報告】