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特表2024-520856FGFR4選択的阻害剤の塩及びその製造方法と用途
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  • 特表-FGFR4選択的阻害剤の塩及びその製造方法と用途 図1
  • 特表-FGFR4選択的阻害剤の塩及びその製造方法と用途 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】FGFR4選択的阻害剤の塩及びその製造方法と用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/12 20060101AFI20240517BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C07D403/12 CSP
A61K31/506
A61P43/00 111
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576317
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 CN2022096523
(87)【国際公開番号】W WO2022262577
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】202110673090.0
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510116819
【氏名又は名称】浙江海正薬業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Zhejiang Hisun Pharmaceutical CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.46 Waisha Road,Jiaojiang District,Taizhou,Zhejiang 318000,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鐘金清
(72)【発明者】
【氏名】張▲しん▼龍
(72)【発明者】
【氏名】▲こん▼永祥
(72)【発明者】
【氏名】陳▲れい▼
(72)【発明者】
【氏名】鄭暁鶴
(72)【発明者】
【氏名】毛利飛
(72)【発明者】
【氏名】李譯
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC51
4C086GA07
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA02
4C086NA11
4C086ZB26
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、式(I)で示される化合物のメタンスルホン酸塩又はエタンスルホン酸塩及びその製造方法、前記塩を含む医薬組成物並びに前記塩の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

メタンスルホン酸塩又はエタンスルホン酸塩である上記の式(I)で表される遊離塩基の塩。
【請求項2】
エタンスルホン酸塩である、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
式(I)で表される遊離塩基とメタンスルホン酸又はエタンスルホン酸とを含む、アセトンと水が(40~10):1で混合した混合溶液から塩を生成する工程を含む、請求項1又は2に記載の塩の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の塩と、薬学的に許容される担体、賦形剤又はそれらの組み合わせとを含む、医薬組成物。
【請求項5】
FGFR4阻害剤として使用するための医薬品の製造における、請求項1又は2に記載の塩或いは請求項4に記載の医薬組成物の使用。
【請求項6】
FGFR4過剰発現の疾患を治療するための医薬品の製造における、請求項1又は2に記載の塩或いは請求項4に記載の医薬組成物の使用。
【請求項7】
FGFR4増幅による疾患を治療するための医薬品の製造における、請求項1又は2に記載の塩或いは請求項4に記載の医薬組成物の使用。
【請求項8】
がんを治療するための医薬品の製造における、請求項1又は2に記載の塩或いは請求項4に記載の医薬組成物の使用。
【請求項9】
前記がんは、非小細胞肺癌、胃癌、多発性骨髄腫、肝臓癌及び胆管癌からなる群から選択され、好ましくは肝臓癌又は胆管癌である、請求項8に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[相互参照]
この出願は、2021年6月17日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号202110673090.0、発明名「FGFR4選択的阻害剤の塩及びその製造方法と用途」である中国特許出願の優先権を主張し、その全部内容は参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、医薬品化学の分野に属し、FGFR選択的阻害剤の塩及びその製造方法と用途に関する。特に、本発明は、N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチル-4,7-ジアザスピロ[2.5]ノナン-7-イル)フェニル)アクリルアミドの塩及びその製造方法、それらを含む医薬組成物及びそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0003】
特願(PCT/CN2017/085135)には、FGFR経路阻害剤である新たな種類のピリミジン誘導体について報告された。肺癌、卵巣がん、前立腺がん、肝臓癌及び胆管癌などにおいてFGFR遺伝子の増幅変異が存在するという証拠が多く示されている。FGFR選択的阻害剤は、他のFGFR阻害剤よりも毒性が低い(Brow,AP et al(2005),Toxocol.Pathol.,449-455)ということがある。現在利用可能な薬物の安全性と有効性の欠点、特にFGFR選択的阻害剤の応用可能性を考慮すると、抗肝臓癌などに対するFGFR選択的阻害剤の研究は十分ではなく、新たなFGFR阻害剤の研究及び開発が必要である。
【0004】
PCT/CN2017/085135で報告された化学物は、化学名がN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチル-4,7-ジアザスピロ[2.5]ノナン-7-イル)フェニル)アクリルアミドであり、下記の式(I)で示される構造を有する遊離塩基化合物である。
【0005】
【化1】
【0006】
式(I)で示される化合物は、肝臓癌細胞Hep3Bに対して良好な阻害活性を有し、IC50値が0.019μMであり、良好な開発の見通しがあることがインビトロ細胞活性検出により判明された。しかしながら、本発明の発明者は、式(I)で示される化合物の薬剤学的特性について研究を行ったところで、式(I)で示される化合物の常用な薬学的に許容される塩が、生体利用率や、水溶性、吸湿性などの物理的及び化学的特性及び薬剤学的特性の点で満足のいくものではないことを見出した。従って、医薬品開発のニーズを満たすために、薬剤的に適した新しい形態のN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチル-4,7-ジアザスピロ[2.5]ノナン-7-イル)フェニル)アクリルアミドを見つけるための鋭意検討が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、驚くべきことに、研究により、下記の式(I)で示される化合物のメタンスルホン酸塩又はエタンスルホン酸塩が水溶性や生体利用率などの薬剤学的特性に優れていることを発見し、さらに驚くべきことに、前記メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩が他の塩よりもインビボ抗腫瘍試験において著しく有効であることを発見した:
【0008】
【化2】
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の知見に基づいて、第1の態様において、本発明は、前記式(I)で示される化合物のメタンスルホン酸塩又はエタンスルホン酸塩の形態を提供する。
【0010】
前記メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩は、それぞれ下記式(I-1)及び式(I-2)で表されるメタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩であることが特に好ましい。
【0011】
【化3】
【0012】
本発明の別の態様において、前記式(I)で示される化合物のメタンスルホン酸塩又はエタンスルホン酸塩を製造する方法が提供され、前記方法は、式(I)の遊離塩基化合物をメタンスルホン酸又はエタンスルホン酸と溶媒中で反応させる工程を含む。いくつかの好ましい実施形態において、式(I)で示される化合物とメタンスルホン酸又はエタンスルホン酸との反応に用いられる溶媒は、アルコール、ケトン、メチル-tert-ブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される。さらに好ましい実施形態において、式(I)で示される化合物とメタンスルホン酸又はエタンスルホン酸との反応に用いられる溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、メチル-tert-ブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される。よりさらに好ましい実施形態において、式(I)で示される化合物とメタンスルホン酸又はエタンスルホン酸との反応に用いられる溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、メチル-tert-ブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0013】
いくつかの特定の実施形態において、式(I)で示される化合物とメタンスルホン酸又はエタンスルホン酸とがアセトン及びメチル-tert-ブチルエーテル溶媒中、室温下、一定の比例で5時間反応し、その塩が得られる。
【0014】
いくつかの特定の実施形態において、前記式(I)で示される化合物のメタンスルホン酸塩又はエタンスルホン酸塩を製造するための方法は、式(I)で表される遊離塩基とメタンスルホン酸又はエタンスルホン酸とを含むアセトンと水とが(40~10):1で混合した混合溶液から塩を生成する工程を含む。
【0015】
第3の態様において、本発明は、式(I)で示される化合物のエタンスルホン酸塩又はメタンスルホン酸塩と、薬学のに許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0016】
第4の態様において、本発明は、FGFR4阻害剤として使用するための医薬品の製造における、式(I)で示される化合物のエタンスルホン酸塩又はメタンスルホン酸塩、或いは前記メタンスルホン酸塩又はエタンスルホン酸塩を含む医薬組成物の使用を提供する。
【0017】
本発明はさらに、FGFR4過剰発現の疾患を治療するための医薬品の製造における、式(I)で示される化合物のエタンスルホン酸塩又はメタンスルホン酸塩、或いは前記メタンスルホン酸塩又はエタンスルホン酸塩を含む医薬組成物の使用を提供する。
【0018】
本発明はさらに、FGFR4増幅による疾患を治療するための医薬品の製造における、式(I)で示される化合物のエタンスルホン酸塩又はメタンスルホン酸塩、或いは前記メタンスルホン酸塩又はエタンスルホン酸塩を含む医薬組成物の使用を提供する。
【0019】
本発明はさらに、がんを治療するための医薬品の製造における、式(I)で示される化合物のエタンスルホン酸塩又はメタンスルホン酸塩、或いは前記メタンスルホン酸塩又はエタンスルホン酸塩を含む医薬組成物の使用を提供する。前記がんは、非小細胞肺癌、胃癌、多発性骨髄腫、肝臓癌及び胆管癌からなる群から選択されることが好ましく、肝臓癌又は胆管癌であることがより好ましい。
【0020】
従って、本発明はまた、FGFR4過剰発現の疾患を治療するため又はFGFR4増幅による疾患を治療するための方法であって、本発明による式(I)で示される化合物のエタンスルホン酸塩又はメタンスルホン酸塩、或いは前記メタンスルホン酸塩又はエタンスルホン酸塩を含む医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0021】
本発明はまた、がんを治療するための方法であって、本発明に記載の式(I)で示される化合物のエタンスルホン酸塩又はメタンスルホン酸塩、或いは前記メタンスルホン酸塩又はエタンスルホン酸塩を含む医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含る方法を提供する。前記がんは、非小細胞肺癌、胃癌、多発性骨髄腫、肝臓癌及び胆管癌からなる群から選択されることが好ましく、肝臓癌又は胆管癌であることがより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、Hep3Bモデルにおける各群のマウスの腫瘍体積を示す成長曲線である。
図2図2は、Hep3Bモデルにおける各群のマウスの体重変化を示す曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施例を参照しながら本発明をより詳細に説明するが、本発明の実施例は本発明の技術的態様を説明するために使用されたものに過ぎなく、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0024】
式(I)で示される化合物の製造については、PCT/CN2017/085135の実施例5を参照のこと。この特開の内容は全体として本明細書に組み込まれる。
【0025】
式(I-1)の化合物の製造:
式(I)の遊離塩基化合物(2000mg、3.0mmol)をフラスコに入れ、アセトン50ml及び水2.5mlを加え、均一に攪拌し、メタンスルホン酸(0.63g、6.6mmol)を加えて攪拌して溶解させ、室温下で攪拌して溶解させ、反応液を濃縮してアセトンを除去し、ろ過し、乾燥させ、非晶質固体2.2gを収率85%で得た。
MS m/z(ESI):655.2321[M-2CH4O3S+H]
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6)δ11.25(s, 1H),9.73(s,1H), 9.47(s, 1H), 9.33(s, 1H), 8.45 (s, 1H), 7.39 (s, 1H), 7.34(d, J=8.8Hz, 1H), 6.91(s, 1H), 6.91-6.88(m,1H), 6.54-6.47(m, 2H), 6.25(d, J=17Hz, 1H), 5.75(d, J=10.4Hz, 1H), 3.94(s, 6H), 3.70-3.66(m, 1H), 3.62-3.55(m, 4H), 3.39-3.34(m, 5H), 3.12-3.09(m, 1H) , 2.41(s, 6H), 1.28-1.25(m, 5H), 1.06-0.98 (m, 2H)
【0026】
式(I-2)の化合物の製造:
式(I)の遊離塩基化合物(1000mg、1.5mmol)をフラスコに入れ、アセトン25ml及び水1.25mlを加え、均一に攪拌し、エタンスルホン酸(0.39g、3.3mmol)を加え、室温下で攪拌して溶解させ、反応液を濃縮してアセトンを除去し、ろ過し、乾燥させ、非晶質固体1.2gを収率90%で得た。
MS m/z(ESI):655.2322[M-2C2H6O3S+H]
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6)δ10.88 (brs, 1H),9.83 (s,1H), 9.67 (s, 2H), 8.54 (s, 1H), 7.44 (s, 1H), 7.31(d, J=8.7Hz, 1H), 6.91-6.88(m,2H), 6.67(s, 1H), 6.51(dd, J1=10.4Hz, 1H, J2=16.9Hz, 1H), 6.22(d, J=17.1Hz, 1H), 5.73(d, J=10.5Hz, 1H), 3.93(s, 6H), 3.71-3.69(m, 1H), 3.61-3.54(m, 4H), 3.40 (s, 3H),3.37-3.35(m, 2H), 3.11(d, J=13.4Hz, 1H),2.58-2.52(m, 4H) , 1.36-1.34(m, 2H), 1.28(t, J=6.9Hz, 3H), 1.11(t, J=7.4Hz, 6H) ,1.05-0.98 (m, 2H)
【0027】
実験例1 各種塩形態の薬物動態研究(SDラット)
投与製剤の調製
SDラット強制経口投与製剤の調製:供試品である式(I)の遊離塩基化合物及びそのメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、塩酸塩、マレイン酸塩をそれぞれ正確に量り、適量の体積の0.5%CMC-Na水溶液を加え、ボルテックスした後に超音波処理し、必要に応じて均一に混合するまでせん断して乳化するか又は研磨することにより、濃度2mg・mL-1の投与製剤が得られた。
【0028】
実験動物
実験動物の供給源と数を表1に示す。実験動物は動物室で飼育された。動物室は、換気が良く、空調設備が整っており、温度が20~25°C、湿度が40%~70%に維持され、明暗照明の周期を12時間とし、実験動物が自由に食料と水を摂取できるようにした。通常の給餌を約5日間行った後、獣医師の検査により健康状態良好と確認されたラットをこの実験に選択した。各ラットには尾の番号が付けられていた。
【0029】
【表1】
【0030】
実験の概要
動物実験の投与計画の詳細を表2に示す。実験前日、すべてのSDラットを一晩(12h以上)絶食させた。実験当日、体重を秤量した後、次の式に従って各ラットの理論的投与体積を計算した。投与製剤は実験当日に使用直前に調製したものであり、調製と投与の間の間隔を2時間以内とした。各ラットの実際の投与量と血漿試料の採取時間は、対応する表に詳細に記録された。なお、SDラットは投与4時間後に摂食を再開し、実験中に自由飲水させることにした。
理論的投与体積(mL)=投与量(mg・kg-1)/試液濃度(mg・mL-1)×動物の体重(kg)
【0031】
【表2】
【0032】
実験当日、A群のSDラットに20mg・kg-1遊離塩基投与製剤を単回強制経口投与し、B群のSDラットに20mg・kg-1エタンスルホン酸塩投与製剤を単回強制経口投与し、C群のSDラットに20mg・kg-1メタンスルホン酸塩投与製剤を単回強制経口投与し、D群のSDラットに20mg・kg-1マレイン酸塩投与製剤を単回強制経口投与し、E群のSDラットに20mg・kg-1塩酸塩投与製剤を単回強制経口投与し、投与前及び投与後0.25、0.5、1、2、4、8、12及び24時間で、頸静脈から血液0.15mLを採取し、EDTA-K2を含む抗凝固剤チューブに入れた。
【0033】
全血試料を10分間遠心(5500r/分)した後、血漿を分離し、-30~-10°Cの冷蔵庫に保存した。
【0034】
薬物動態パラメータ
Pharsight Phoenix 7.0の非コンパートメントモデルを使用して、対応する薬物動態パラメータを計算した結果を以下の表3に示す。
【0035】
【表3】
【0036】
上記の結果から、AUC0-tやCmaxなどのパラメータに反映されるように、各種塩形態は遊離塩基よりも薬物動態学特性に著しく優れており、また、驚くべきことに、メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩は他の塩形態よりも薬物動態学特性に著しく優れていることが分かった。
【0037】
実験例2 各種塩形態の薬物動態研究(ICRマウス)
投与製剤の調製
ICRマウス強制経口投与製剤の調製:供試品であるメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、リン酸塩及び塩酸塩をそれぞれ正確に量り、適量の体積の生理食塩水を加え、ボルテックスした後に超音波処理し、必要に応じて均一に混合するまでせん断して乳化するか又は研磨することにより、濃度7.5mg・mL-1の投与製剤を得ることもできる。
【0038】
実験動物
実験動物の供給源と数を表1に示す。実験動物は動物室で飼育された。動物室は換気が良く、空調設備が整っており、温度が20~25°C、湿度が40%~70%に維持され、明暗照明の周期を12時間とし、実験動物が自由に食料と水を摂取できるようにした。通常の給餌を約5日間行った後、獣医師の検査により健康状態良好と確認されたラットをこの実験に選択した。各ラットには尾の番号が付けられていた。
【0039】
【表4】
【0040】
実験の概要
ICRマウスの実験計画の詳細を表5に示す。実験前日、すべてのICRマウスを一晩(12h以上)絶食させた。実験当日、体重を秤量した後、次の式に従って各マウスの理論的投与体積を計算した。実験当日、体重を秤量した後、次の式に従って各ラットの理論的投与体積を計算した。投与製剤は実験当日に使用直前に調製したものであり、調製と投与の間の間隔を2時間以内とした。各ラットの実際の投与量と血漿試料の採取時間は、対応する表に詳細に記録された。なお、ICRマウスは投与4時間後に摂食を再開し、実験中に自由飲水させることにした。
理論的投与体積(mL)=投与量(mg・kg-1)/試液濃度(mg・ mL-1)×動物の体重(kg)
【0041】
【表5】
【0042】
実験当日、A群のICRマウスに75mg・kg-1リン酸塩投与製剤を単回強制経口投与し、B群のICRマウスに75mg・kg-1エタンスルホン酸塩投与製剤を単回強制経口投与し、C群のICRマウスに75mg・kg-1メタンスルホン酸塩投与製剤を単回強制経口投与し、D群のICRマウスに75mg・kg-1塩酸塩投与製剤を単回強制経口投与し、投与前及び投与後0.25、0.5、1、2、4、8、10、12及び24時間で、眼底静脈叢から血液0.15mLを採取し、EDTA-K2を含む抗凝固剤チューブに入れた。
【0043】
すべての全血試料を10分間遠心(5500r/分)した後、血漿を分離し、-30~-10°Cの冷蔵庫に保存した。
【0044】
薬物動態パラメータ
Pharsight Phoenix 7.0の非コンパートメントモデルを使用して、対応する薬物動態パラメータを計算した結果を以下の表6に示す。
【0045】
【表6】
【0046】
上記の結果から、CmaxやAUC0-tなどのパラメータに反映されるように、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩は他の塩形態よりも薬物動態学特性に著しく優れていることが分かった。
【0047】
実験例3 Hep3Bヒト肝臓癌皮下移植モデルにおける式(I)で示される化合物及びその塩形態の化合物の薬力学的評価
投与製剤の調製
強制経口投与製剤の調製:ソラフェニブ、式(I)の遊離塩基化合物及びそのマレイン酸塩、リン酸塩、塩酸塩、メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩をそれぞれ正確に量り、適量の体積の生理食塩水を加え、均一に混合するまでボルテックスすることにより、使用直前に投与製剤を調製した。
【0048】
実験動物
BALB/c ヌードマウス、メス、GemPharmatech Co., Ltd.から購入した。ライセンス番号:SCXK(Su)2019-0009、動物証明番号:202102418。
【0049】
動物が到着から実験環境に7日間飼育された後に実験を開始した。すべての実験動物は、温度と湿度が一定のインテリジェント独立換気ケージ(IVC)で飼育された。温度を20~26℃とし、湿度を40~70%に維持し、昼夜の明暗周期時間を10h/14hとし、実験動物が自由に食料と水を摂取できるようにした。実験動物は耳標法を使用してマークされた。
【0050】
実験の概要
Hep3B細胞皮下腫瘍モデルの確立:3.5×10個のHep3B細胞を含む細胞懸濁液0.2mLを、6週齢以上のメスBALB/cヌードマウスの背中の右側に皮下接種し、移植腫瘍を確立した。ノギスを用いて腫瘍直径を測定し、腫瘍体積=0.5×a×b(ただし、a及びbはそれぞれ腫瘍の長径及び短径を表す)の計算式で腫瘍体積を計算した。平均腫瘍体積が200~250mmに達したとき、担癌マウスをランダムに9つのグループに分け、実験計画に従って投薬した。各治療群及び溶媒対照群に10日間経口投与した。マウスの腫瘍体積を週に2回測定し、体重を毎日測定した。有効性は相対腫瘍阻害率TGI(%)に基づいて評価し、安全性は動物の体重変化及び死亡状況に基づいて評価した。
【0051】
相対腫瘍体積(RTV)、相対腫瘍増殖率(T/C)及び相対腫瘍阻害率(TGI)の計算式は次の通りである:
(1)RTV(relative tumor volume)=V/V(ただし、Vはグループ分け投与のときに(即ち第0日)測定した腫瘍体積であり、Vは各測定で得られた腫瘍体積である)
(2)T/C(%)=TRTV/CRTV×100%(ただし、TRTVは治療群のRTVを示し、CRTVは対照群のRTVを示す)
(3)TGI(%)=(1-T/C)×100%(ただし、T及びCはそれぞれ治療群及び対照群のある特定の時点での相対腫瘍体積である)
【0052】
動物投薬計画表を以下の表7に示す。
【0053】
【表7】
【0054】
実験結果
溶媒対照群のマウスは、投与後11日目で平均腫瘍体積が2073mmであった。ソラフェニブ治療群は、投与後11日目で平均腫瘍体積が1238mmであり、対照群と比較すると統計的に有意差があり(p=0.006)、相対腫瘍阻害率TGI(%)が42.9%であった。式(I)で示される化合物のマレイン酸塩治療群は、投与後11日目で平均腫瘍体積が202mmであり、対照群と比較すると統計的に有意差があり(p<0.001)、相対腫瘍阻害率TGI(%)が90.7%であった。式(I)で示される化合物の塩酸塩治療群は、投与後11日目で平均腫瘍体積が210mmであり、対照群と比較すると統計的に有意差があり(p<0.001)、相対腫瘍阻害率TGI(%)が89.9%であった。式(I)で示される化合物のリン酸塩治療群は、投与後11日目の平均腫瘍体積が169mmであり、対照群と比較すると統計的に有意差があり(p<0.001)、相対腫瘍阻害率TGI(%)が92.1%であった。式(I)で示される化合物のメタンスルホン酸塩治療群は、投与後11日目で平均腫瘍体積が93mmであり、対照群と比較すると統計的に有意差があり(p<0.001)、相対腫瘍阻害率TGI(%)が95.5%であった。式(I)で示される化合物治療群は、投与後11日目で平均腫瘍体積が314mmであり、対照群と比較すると統計的に有意差があり(p<0.001)、相対腫瘍阻害率TGI(%)が84.8%であった。式(I)で示される化合物のエタンスルホン酸塩治療群は、投与後11日目で平均腫瘍体積が121mmであり、対照群と比較すると統計的に有意差があり(p<0.001)、相対腫瘍阻害率TGI(%)が94.0%であった。
【0055】
このモデルは悪液質モデルであるため、対照群の動物体重は大幅に減少した。他の各治療群では実験中に実験動物が死亡したことはなく、投与量で動物が薬物によく耐えた。
【0056】
実験結果により、本実験における試験薬式(I)で示される化合物並びにそのマレイン酸塩、塩酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩は、すべて有意な抗腫瘍活性を示し、ソラフェニブよりも薬効が優れ、またその中の式(I)で示される化合物のメタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩は、式(I)で示される化合物よりも抗腫瘍活性が著しく優れ、他の塩よりも抗腫瘍活性が優れていることが示された。この結果は特に予想外であった。
【0057】
要するに、メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩は他の形態(遊離塩基化合物、マレイン酸塩、塩酸塩、リン酸塩)と比較すると抗腫瘍効果が著しく優れていることは予想外であった。以下の表に示すように、遊離塩基化合物群と比較する場合、メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩群は有意差があったが、マレイン酸塩、塩酸塩及びリン酸塩群は有意差がなかった(遊離塩基及び他の塩形態は、メタンスルホン酸塩群又はエタンスルホン酸塩群よりも腫瘍体積及び相対腫瘍体積の点で劣った)。
【0058】
【表8】

図1
図2
【国際調査報告】