(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】遺伝性ヘモクロマトーシスの治療のためのヘプシジン模倣体
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20240517BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240517BHJP
C07K 14/00 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P3/00
A61P19/02
C07K14/00 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577141
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 US2022033378
(87)【国際公開番号】W WO2022266060
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515092183
【氏名又は名称】プロタゴニスト セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,スニール クマール
(72)【発明者】
【氏名】リウ,デイビッド ワイ
(72)【発明者】
【氏名】モディ,ニシット バチュラル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァロン、フランク ホレス
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084BA01
4C084BA02
4C084BA18
4C084BA19
4C084BA26
4C084CA59
4C084NA14
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZC211
4C084ZC212
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA50
4H045CA40
4H045DA30
4H045EA20
4H045FA33
4H045GA21
(57)【要約】
本開示は、遺伝性ヘモクロマトーシスなどの鉄過剰症の治療及び/又は予防のための方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象において、遺伝性ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス関節症、又は遺伝性ヘモクロマトーシス関節症に関連する関節痛を治療する方法であって、前記対象に有効量のヘプシジン模倣体を投与することを含み、前記有効量が、約5mg~約40mgの範囲の用量を含み、任意選択で、前記対象が、治療過程にわたって異なる期間中に異なる用量を投与される、方法。
【請求項2】
前記対象が、前記治療過程中の少なくとも一部の期間に、1週間に約1回又は1週間に約2回、前記有効量の前記ヘプシジン模倣体を投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象が、前記治療過程中の少なくとも一部の期間に、1週間に約2回、約5mg~約20mgの前記ヘプシジン模倣体を投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象が、前記治療過程中の少なくとも一部の期間に、1週間に約1回、約10mg~約40mgの前記ヘプシジン模倣体を投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記有効量が、前記対象のトランスフェリン飽和度(TSAT)レベル及び/又は血清鉄レベルの低減を引き起こす、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象のTSATレベルが、45%未満に低減される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記対象のTSATレベルが、40%未満に低減される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記対象のTSATレベルが、前記ヘプシジン模倣体を用いた前記治療過程にわたって45%未満に維持され、任意選択で、前記治療過程が、少なくとも24週間を含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
ヘプシジン模倣体が、式Iを有するペプチド:
R1-X-Y-R2 (I)
又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物であり、
式中、
R1が、水素、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C20アルカノイル、又はpGluであり、
R2が、NH
2又はOHであり、
Xが、式IIのアミノ酸配列であり、
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10 (II)
式中、
X1が、Asp、Ala、Ida、pGlu、bhAsp、Leu、D-Asp、又は不存在であり、
X2が、Thr、Ala、又はD-Thrであり、
X3が、His、Lys、D-His、又はLysであり、
X4が、Phe、Ala、Dpa、又はD-Pheであり、
X5が、Pro、Gly、Arg、Lys、Ala、D-Pro、又はbhProであり、
X6が、Ile、Cys、Arg、Lys、D-Ile、又はD-Cysであり、
X7が、Cys、Ile、Leu、Val、Phe、D-Ile、又はD-Cysであり、
X8が、Ile、Arg、Phe、Gln、Lys、Glu、Val、Leu、又はD-Ileであり、
X9が、Phe又はbhPheであり、
X10が、Lys、Phe、又は不存在であり、
Yが不存在である場合、X7はIleであり、
Yが、式IIIのアミノ酸配列であり、
Y1-Y2-Y3-Y4-Y5-Y6-Y7-Y8-Y9-Y10-Y11-Y12-Y13-Y14-Y15 (III)
式中、
Y1が、Gly、Cys、Ala、Phe、Pro、Glu、Lys、D-Pro、Val、Ser、又は不存在であり、
Y2が、Pro、Ala、Cys、Gly、又は不存在であり、
Y3が、Arg、Lys、Pro、Gly、His、Ala、Trp、又は不存在であり、
Y4が、Ser、Arg、Gly、Trp、Ala、His、Tyr、又は不存在であり、
Y5が、Lys、Met、Arg、Ala、又は不存在であり、
Y6が、Gly、Ser、Lys、Ile、Ala、Pro、Val、又は不存在であり、
Y7が、Trp、Lys、Gly、Ala、Ile、Val、又は不存在であり、
Y8が、Val、Thr、Gly、Cys、Met、Tyr、Ala、Glu、Lys、Asp、Arg、又は不存在であり、
Y9が、Cys、Tyr、又は不存在であり、
Y10が、Met、Lys、Arg、Tyr、又は不存在であり、
Y11が、Arg、Met、Cys、Lys、又は不存在であり、
Y12が、Arg、Lys、Ala、又は不存在であり、
Y13が、Arg、Cys、Lys、Val、又は不存在であり、
Y14が、Arg、Lys、Pro、Cys、Thr、又は不存在であり、
Y15が、Thr、Arg、又は不存在であり、
前記式Iのペプチドが、任意選択で、R1、X、又はY上でPEG化され、
前記ペプチドのアミノ酸の側鎖が、任意選択で、親油性置換基又はポリマー部分にコンジュゲートされ、
前記式Iのペプチドが、任意選択で、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有し、
Idaが、イミノ二酢酸であり、pGluが、ピログルタミン酸であり、bhAspが、β-ホモアスパラギン酸であり、bhProが、β-ホモプロリンである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
R1が、水素、イソ吉草酸、イソ酪酸又はアセチルである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
Xが、式IVのアミノ酸配列であり、
X1-Thr-His-X4-X5-X6-X7-X8-Phe-X10 (IV)
式中、
X1が、Asp、Ida、pGlu、bhAsp、又は不存在であり、
X4が、Phe又はDpaであり、
X5が、Pro又はbhProであり、
X6が、Ile、Cys、又はArgであり、
X7が、Cys、Ile、Leu、又はValであり、
X8が、Ile、Lys、Glu、Phe、Gln、又はArgであり、
X10が、Lys又は不存在である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
Xが、式Vのアミノ酸配列であり、
X1-Thr-His-X4-X5-Cys-Ile-X8-Phe-X10 (V)
式中、
X1が、Asp、Ida、pGlu、bhAsp、又は不存在であり、
X4が、Phe又はDpaであり、
X5が、Pro又はbhProであり、
X8が、Ile、Lys、Glu、Phe、Gln又はArgであり、
X10が、Lys又は不存在である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記ペプチドが、式VI:
R
1-X-Y-R
2 (VI)
又はその薬学的に許容される塩を有し、式中、
R
1が、水素、イソ吉草酸、イソ酪酸、又はアセチルであり、
R
2が、NH
2又はOHであり、
Xが、式VIIのアミノ酸配列であり、
X1-Thr-His-X4-X5-Cys-Ile-X8-Phe-X10 (VII)
式中、
X1が、Asp、Ida、pGlu、bhAsp、又は不存在であり、
X4が、Phe又はDpaであり、
X5が、Pro又はbhProであり、
X8が、Ile、Lys、Glu、Phe、Gln、又はArgであり、
X10が、Lys又は不存在であり、
Yが、式VIIIのアミノ酸配列であり、
Y1-Pro-Y3-Ser-Y5-Y6-Y7-Y8-Cys-Y10 (VIII)
式中、
Y1が、Gly、Glu、Val、又はLysであり、
Y3が、Arg又はLysであり、
Y5が、Arg又はLysであり、
Y6が、Gly、Ser、Lys、Ile、又はArgであり、
Y7が、Trp又は不存在であり、
Y8が、Val、Thr、Asp、Glu、又は不存在であり、
Y10が、Lys又は不存在であり、
前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有し、
前記ペプチドが、任意選択で、R
1、X、又はY上でPEG化され、
前記ペプチドのアミノ酸の側鎖が、任意選択で、親油性置換基又はポリマー部分にコンジュゲートされ、
Idaが、イミノ二酢酸であり、pGluが、ピログルタミン酸であり、bhAspが、β-ホモアスパラギン酸であり、bhProが、β-ホモプロリンである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記ペプチドが、以下の配列のうちの1つを有し、
DTHFPICIFGPRSKGWVC(配列番号46)、
DTHFPCIIFGPRSKGWVCK(配列番号47)、
DTHFPCIIFEPRSKGWVCK(配列番号48)、
DTHFPCIIFGPRSKGWACK(配列番号49)、
DTHFPCIIFGPRSKGWVCKK(配列番号50)、
DTHFPCIIFVCHRPKGCYRRVCR(配列番号51)、
DTHFPCIKFGPRSKGWVCK(配列番号52)、
DTHFPCIKFKPRSKGWVCK(配列番号53)、
DTHFPCIIFGPRSRGWVCK(配列番号54)、
DTHFPCIKFGPKSKGWVCK(配列番号55)、
DTHFPCIKFEPRSKGCK(配列番号56)、
DTHFPCIKFEPKSKGWECK(配列番号57)、
DTHFPCIKFEPRSKKCK(配列番号58)、
DTHFPCIKFEPRSKGCKK(配列番号59)、
DTHFPCIKFKPRSKGCK(配列番号60)、
DTHFPCIKFEPKSKGCK(配列番号61)、
DTHFPCIKF (配列番号62)、
DTHFPCIIF(配列番号63)、又は
DTKFPCIIF(配列番号64)、
前記ペプチドが、任意選択で、R1、X、又はY上でPEG化され、
前記ペプチドのアミノ酸の側鎖が、任意選択で、親油性置換基又はポリマー部分にコンジュゲートされる、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ペプチドが、以下の配列又は構造のうちの1つを有し、
イソ吉草酸-DTHFPICIFGPRSKGWVC-NH
2(化合物1、配列番号1)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSKGWVCK-NH
2(化合物2、配列番号2)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFEPRSKGWVCK-NH
2(化合物3、配列番号3)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSKGWACK-NH
2(化合物4、配列番号4)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSKGWVCKK-NH
2(化合物5、配列番号5)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFVCHRPKGCYRRVCR-NH
2(化合物6、配列番号6)
、
イソ吉草酸-DTHFPCI(K(PEG8))FGPRSKGWVCK-NH
2(化合物7、配列番号7)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIKF(K(PEG8))PRSKGWVCK-NH
2(化合物8、配列番号8)
、
イソ吉草酸-DTHFPICIFGPRS(K(PEG8))GWVC-NH
2(化合物9、配列番号9)
、
イソ吉草酸-DTHFPICIFGPRS(K(PEG4))GWVC-NH
2(化合物10、配列番号10)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSRGWVC(K(PEG8))-NH
2(化合物11、配列番号11)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSRGWVC(K(PEG4))-NH
2(化合物12、配列番号12)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSRGWVC(K(PEG2))-NH
2(化合物13、配列番号13)
、
イソ吉草酸-DTHFPCI(K(Palm))FGPRSKGWVCK-NH
2(化合物14、配列番号14)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIKF)K(Palm))PRSKGWVCK-NH
2(化合物15、配列番号15)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGP(K(Palm))SKGWVCK-NH
2(化合物16、配列番号16)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGPRS(K(Palm))GWVCK-NH
2(化合物17、配列番号17)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGPRSKGWVC(K(Palm))NH
2(化合物18、配列番号18)
、
イソ吉草酸-DTHFPCI(K(PEG3-Palm))FGPRSKGWVCK-NH
2(化合物19、配列番号19)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIKF(K(PEG3-Palm))PRSKGWVCK-NH
2(化合物20、配列番号20)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGP(K(PEG3-Palm))SKGWVCK-NH
2(化合物21、配列番号21)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGPRS(K(PEG3-Palm))GWVCK-NH
2(化合物22、配列番号22)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGPRSKGWVC(K(PEG3-Palm))-NH
2(化合物23、配列番号23)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGPRSKGWVC(K(PEG8))-NH
2(化合物24、配列番号24)
、
イソ吉草酸-DTHFPCI(K(isoGlu-Palm))FEPRSKGCK-NH
2(化合物25、配列番号25)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIKF-K(isoGlu-Palm)-PRSKGCK-NH
2(化合物26、配列番号26)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEP(K(isoGlu-Palm))SKGCK-NH
2(化合物27、配列番号27)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEP(K(isoGlu-Palm))SKGWECK-NH
2(化合物28、配列番号28)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRS(K(isoGlu-Palm))GCK-NH
2(化合物29、配列番号29)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRSK(K(isoGlu-Palm))CK-NH
2(化合物30、配列番号30)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRSKGCK(K(isoGlu-Palm))-NH
2(化合物31、配列番号31)
、
イソ吉草酸-DTHFPCI-K(Dapa-Palm)-FEPRSKGCK-NH
2(化合物32、配列番号32)
、
イソ吉草酸-DTHFPCIK(F(Dapa-Palm))PRSKGCK-NH
2(化合物33、配列番号33)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEP(K(Dapa-Palm))SKGCK-NH
2(化合物34、配列番号34)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRS(K(Dapa-Palm))GCK-NH
2(化合物35、配列番号35)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRSK(K(Dapa-Palm))CK-NH
2(化合物36、配列番号36)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRSKGC(K(Dapa-Palm))K-NH
2(化合物37、配列番号37)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRSKGC(K(Dapa-Palm))-NH
2(化合物38、配列番号38)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKF(K(PEG11-Palm))PRSK[Sar]CK-NH
2(化合物39、配列番号39)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKF-NH
2(化合物40、配列番号40)、
Hy-DTHFPCIKF-NH
2(化合物41、配列番号41)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIF-NH
2(化合物42、配列番号42)、
Hy-DTHFPCIIKF-NH
2(化合物43、配列番号43)、
イソ吉草酸-DTKFPCIIF-NH
2(化合物44、配列番号44)、又は
Hy-DTKFPCIIF-NH
2(化合物45、配列番号45)、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSKGWVCK-NH
2(化合物2、配列番号2)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項17】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCIIFEPRSKGWVCK-NH
2(化合物3、配列番号3)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項18】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCI(K(PEG8))FGPRSKGWVCK-NH
2(化合物7、配列番号7)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項19】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCIKF(K(PEG8))PRSKGWVCK-NH
2(化合物8、配列番号8)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項20】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSRGWVC(K(PEG8))-NH
2(化合物11、配列番号11)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項21】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCI(K(Palm))FGPRSKGWVCK-NH
2(化合物14、配列番号14)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項22】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCIKF(K(Palm))PRSKGWVCK-NH
2(化合物15、配列番号15)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項23】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCIKFGP(K(Palm))SKGWVCK-NH
2(化合物16、配列番号16)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項24】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCIKFGPRSKGWVC(K(Palm))-NH
2(化合物18、配列番号18)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項25】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCI(K(PEG3-Palm))FGPRSKGWVCK-NH
2(化合物19、配列番号19)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項26】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCIKF(K(PEG3-Palm))PRSKGWVCK-NH
2(化合物20、配列番号20)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項27】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCIKFGP(K(PEG3-Palm))SKGWVCK-NH
2(化合物21、配列番号21)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項28】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCIKFGPRS(K(PEG3-Palm))GWVCK-NH
2(化合物22、配列番号22)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項29】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCIKFGPRSKGWVC(K(PEG3-Palm))-NH
2(化合物23、配列番号23)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項30】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCIKFGPRSKGWVC(K(PEG8))-NH
2(化合物24、配列番号24)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項31】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCI(K(isoGlu-Palm))FEPRSKGCK-NH
2(化合物25、配列番号25)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項32】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCIKF(K(isoGlu-Palm))PRSKGCK-NH
2(化合物26、配列番号26)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項33】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCIKFEP(K(isoGlu-Palm))SKGCK-NH
2(化合物27、配列番号27)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項34】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRS(K(isoGlu-Palm))GCK-NH
2(化合物28、配列番号28)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項35】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCI(K(Dapa-Palm))FEPRSKGCK-NH
2(化合物32、配列番号32)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項36】
前記ペプチドが、イソ吉草酸-DTHFPCIKFEP(K(Dapa-Palm))SKGCK-NH
2(化合物34、配列番号34)であり、
任意選択で、前記ペプチドが、2つのシステイン残基のチオール基の間に形成されたジスルフィド結合を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項37】
前記ペプチドが、
【化1】
イソ吉草酸-DTHFPCIKF(K(PEG3-Palm))PRSKGWVCK-NH
2(化合物20、配列番号20)、
【化2】
イソ吉草酸-DTHFPCI(K(isoGlu-Palm))FEPRSKGCK-NH
2(化合物25、配列番号25)、
【化3】
イソ吉草酸-DTHFPCIKF(K(isoGlu-Palm))PRSKGCK-NH
2(化合物26、配列番号26)、
【化4】
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEP(K(isoGlu-Palm))SKGCK-NH
2(化合物27、配列番号27)、及び
【化5】
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRS(K(isoGlu-Palm))GCK-NH
2(化合物28、配列番号28)からなる群から選択され、
前記アミノ酸が、L-アミノ酸である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項38】
前記方法が、前記ヘプシジン模倣体が前記対象に投与される前及び後の前記対象において、TSAT及び/又は血清鉄レベルを測定することを含み、任意選択で、前記TSATレベルが、前記対象への投与後の前記ヘプシジン模倣体のトラフレベルで測定される、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記ヘプシジン模倣体が、前記対象に皮下投与される、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記対象が、治療前に少なくとも6か月間、任意選択で1か月当たり0.25回~1回の瀉血の瀉血頻度で、瀉血を受けていた、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記治療中、前記対象が、任意選択で1か月当たり0.1回未満、0.05回未満、又は瀉血なしの瀉血頻度で、実質的により少ない瀉血を必要としたか、又は瀉血を必要としなかった、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ヒト対象において遺伝性ヘモクロマトーシスを治療する方法であって、前記対象に、有効量の以下の式を有する化合物25:
【化6】
又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、前記有効量が、約5mg~約40mgの範囲の用量を含み、任意選択で、前記対象が、治療過程にわたって異なる期間中に異なる用量を投与される、方法。
【請求項43】
ヒト対象において遺伝性ヘモクロマトーシスを治療する方法であって、前記対象に、有効量のイソ吉草酸-DTHFPCI(K(isoGlu-Palm))FEPRSKGCK-NH
2(配列番号25)の配列を有するペプチド、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、前記ペプチド中の2つのシステイン残基のチオール基が、任意選択でジスルフィド結合を形成し、前記有効量が、約5mg~約40mgの範囲の用量を含み、任意選択で、前記対象が、治療過程にわたって異なる期間中に異なる用量を投与される、方法。
【請求項44】
ヒト対象において遺伝性ヘモクロマトーシス関節症又は遺伝性ヘモクロマトーシス関節症に関連する関節痛を治療する方法であって、有効量のヘプシジン模倣体を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項45】
前記有効量が、約5mg~約40mgの範囲の用量を含み、任意選択で、前記対象が、治療過程にわたって異なる期間中に異なる用量を投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ヘプシジン模倣体が、化合物25である、請求項44又は45に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年6月14日に出願された米国仮特許出願第63/210,453号、2021年10月4日に出願された米国仮特許出願第63/252,001号、及び2022年6月7日に出願された米国仮特許出願第63/349,841号に対する優先権を主張し、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、EFS-Webを介して電子的に出願されており、.txt形式の電子的に提出された配列表を含む。.txtファイルには、2022年6月13日に作成され、24キロバイトのサイズであるPRTH_070_02WO_ST25.txtという名称の配列表が含まれる。この.txtファイルに含まれる配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、とりわけ、遺伝性ヘモクロマトーシスなどの鉄過剰症の治療及び/又は予防のための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
鉄は、細胞分裂から酸素輸送までの多くの細胞及び生物の活動において重要な役割を果たしている(例えば、Casu, C.et al., Blood 2018;131(16):1790-1794を参照)。しかし、過剰な鉄は、毒性の活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)の形成を促進し、これらは、DNA、タンパク質、及び脂質膜を損傷し、臓器の機能不全又は不全につながる可能性があり、ヒト及び他の脊椎動物は、鉄の吸収及び臓器分布を最適化するための調節系を進化させてきた。しかし、残念なことに、鉄恒常性のいくつかの遺伝的又は後天性の障害は、鉄の吸収又は分布を調節せず、臓器損傷を引き起こし、関連する罹患率及び死亡率を伴う、重篤な感染症又は炎症の状態を作り出す。
【0005】
ヘプシジンは、血漿鉄濃度及び鉄貯蔵量に比例して主に肝臓で生成される25アミノ酸ペプチドホルモンである。ヘプシジンは、鉄の吸収、リサイクル、及び貯蔵に関与する細胞の表面上に発現する唯一の知られている鉄排出体であるフェロポーチン-1に結合し、分解するため、鉄恒常性の主要調節因子である。
【0006】
様々な疾患及び障害における鉄恒常性の中心的な役割を考慮して、鉄レベル(例えば、赤血球及び臓器中の)を調節することができる薬剤が治療薬として開発されている。しかし、例えば遺伝性ヘモクロマトーシスの治療のため、鉄恒常性を回復させるために鉄調節剤を使用する方法に対する必要性が依然として存在する。本発明は、この必要性に対処する。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、ヒト、例えば遺伝性ヘモクロマトーシスを有するヒトにおいて鉄恒常性を回復させるヘプシジン模倣体の方法、臨床的な有効投与量、及び投与レジメンを提供する。特定の実施形態では、本方法は、例えば遺伝性ヘモクロマトーシス(hereditary hemochromatosis、HH)を含む鉄過剰症及び障害などの、鉄恒常性の調節不全に関連する疾患及び障害の治療における有効性に関連する薬力学的マーカーを調節する。特定の実施形態では、本明細書に開示される投与量、投与レジメン、及び方法は、遺伝性ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス関節症、又は遺伝性ヘモクロマトーシス関節症に関連する関節痛を治療するために使用される。
【0008】
一態様では、本開示は、ヒト対象における鉄過剰症、例えばHHを治療する方法を提供し、本方法は、化合物25などのヘプシジン模倣体の有効量を対象に提供することを含む。特定の実施形態では、対象は、遺伝性ヘモクロマトーシスと診断されている。特定の実施形態では、対象は、本明細書に開示される治療の前に、瀉血治療を受けているか、又は必要とする。特定の実施形態では、対象は、第1の期間に第1の有効量、及び第2の期間に第2の有効量を投与される。特定の実施形態では、対象は、第3の期間又はそれ以降の期間に、第3の有効量又はそれ以降の有効量を投与される。特定の実施形態では、第1の期間中の投与頻度と第2の期間中の投与頻度とは、同じであるか、又は異なる。特定の実施形態では、第3の期間又はそれ以降の期間中の投与頻度は、各々、第1及び第2の期間、並びに互いの投与頻度と同じであるか、又は異なる。特定の実施形態では、各期間は、独立して、約1週間、約2週間、約4週間、約1か月、約2か月、約4か月、約6か月、又は約1年を含む。特定の実施形態では、投与量及び又は投与頻度は、本明細書に開示されるパラメータを達成するように、治療期間後の対象の血清鉄及び/又はTSAT飽和レベルを試験した後に変更される。
【0009】
関連する態様では、本開示は、ヒト対象において遺伝性ヘモクロマトーシス関節症又は遺伝性ヘモクロマトーシス関節症に関連する関節痛を治療する方法を提供し、本方法は、有効量のヘプシジン模倣体を対象に投与することを含む。特定の実施形態では、有効量は、約5mg~約40mgの範囲の用量を含み、任意選択で、対象は、治療過程にわたって異なる期間中に異なる用量を投与される。いくつかの実施形態では、ヘプシジン模倣体は、化合物25である。特定の実施形態では、有効用量は、治療された患者のTSAT%が45%以下又は40%以下に低減される結果をもたらす用量である。
【0010】
本明細書に開示される方法の特定の実施形態では、ヘプシジン模倣体の有効量は、治療過程中の少なくとも一部の期間で、約10mg~約40mgである。特定の実施形態では、ヘプシジン模倣体の有効量は、治療過程中の少なくとも一部の期間に、1週間に約1回又は1週間に約2回対象に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、治療過程中の少なくとも一部の期間に、1週間に約2回、約10mg~約15mg、約15mg~約20mg、又は約10mg~約20mgのヘプシジン模倣体を投与され、別の実施形態では、対象は、治療過程中の少なくとも一部の期間に、1週間に約1回、約20mg~約30mg、約20mg~約40mg、又は約30mg~約40mgのヘプシジン模倣体を投与される。特定の実施形態では、対象は、治療過程中の少なくとも一部の期間に、1週間に約2回、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、約20mg、約21mg、約22mg、約23mg、約24mg、又は約25mgのヘプシジン模倣体を投与される。特定の実施形態では、対象は、治療過程中の少なくとも一部の期間に、1週間に約2回、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、約20mg、約21mg、約22mg、約23mg、約24mg、約25mg、約26mg、約27mg、約28mg、約29mg、約30mg、約31mg、約32mg、約33mg、約34mg、約35mg、約36mg、約37mg、約38mg、約39mg、約40mg、約41mg、約42mg、約43mg、約44mg、又は約45mgのヘプシジン模倣体を投与される。特定の実施形態では、ヘプシジン模倣体は、皮下投与される。
【0011】
本明細書に開示される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、本方法は、対象のTSATレベルが、約50%未満のTSAT(%)、又は約45%未満のTSAT(%)、又は約40%未満のTSAT(%)、又は35%未満のTSAT、又は30%未満のTSATに低減される結果をもたらす。いくつかの実施形態では、本方法は、対象の血清鉄レベルが約150ug/dL未満に低減されることをもたらす。いくつかの実施形態では、本方法は、対象の肝鉄濃度が実質的に維持される、例えば著しく変化しないという結果をもたらす。いくつかの実施形態では、本方法は、対象の血清フェリチン及び血清トランスフェリンのレベル又は濃度が実質的に維持される、例えば著しく変化しないという結果をもたらす。いくつかの実施形態では、本方法は、心理的転帰及び/又は身体的転帰が改善された対象をもたらす。特定の実施形態では、対象は、治療前に少なくとも6か月間、任意選択で1か月当たり0.25回~1回の瀉血の瀉血頻度で、瀉血を受け、特定の実施形態では、治療中に、対象は、任意選択で1か月当たり0.1回未満、0.05回未満、又は瀉血なしの瀉血頻度で、実質的により少ない瀉血を必要としたか、又は瀉血を必要としなかった。開示される方法の特定の実施形態では、対象は、本明細書に開示される治療方法の過程中に、低減された瀉血治療を必要とするか、又は瀉血治療を必要としない。例えば、本明細書に開示される治療過程を受けている対象は、本明細書に開示される治療過程にわたって、1か月当たりに瀉血を必要としなくてもよく、又は1か月当たりに1回以下の瀉血を必要としてもよい。特定の実施形態では、本明細書に開示される治療過程を受けている対象は、本開示によるヘプシジン模倣体を用いた治療の前に受けていたものよりも少ない瀉血を必要とし得る。特定の実施形態では、本開示による治療は、1か月当たりの瀉血数の少なくとも25%、少なくとも50%、又は少なくとも75%の低減をもたらす。特定の実施形態では、本明細書に開示される治療過程は、少なくとも12週間、少なくとも24週間、少なくとも6か月、少なくとも1年間、少なくとも2年間、少なくとも5年間、又はそれ以上であってもよい。
【0012】
本明細書に開示される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、ヘプシジン模倣体は、本明細書に開示される式I~VIIIのいずれか1つのペプチドを含む。特定の実施形態では、ペプチドは、以下の配列又は構造のうちの1つを含むか、又はそれからなる:
イソ吉草酸-DTHFPICIFGPRSKGWVC-NH2(化合物1、配列番号1)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSKGWVCK-NH2(化合物2、配列番号2)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFEPRSKGWVCK-NH2(化合物3、配列番号3)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSKGWACK-NH2(化合物4、配列番号4)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSKGWVCKK-NH2(化合物5、配列番号5)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFVCHRPKGCYRRVCR-NH2(化合物6、配列番号6)、
イソ吉草酸-DTHFPCI(K(PEG8))FGPRSKGWVCK-NH2(化合物7、配列番号7)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKF(K(PEG8))PRSKGWVCK-NH2(化合物8、配列番号8)、
イソ吉草酸-DTHFPICIFGPRS(K(PEG8))GWVC-NH2(化合物9、配列番号9)、
イソ吉草酸-DTHFPICIFGPRS(K(PEG4))GWVC-NH2(化合物10、配列番号10)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSRGWVC(K(PEG8))-NH2(化合物11、配列番号11)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSRGWVC(K(PEG4))-NH2(化合物12、配列番号12)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSRGWVC(K(PEG2))-NH2(化合物13、配列番号13)、
イソ吉草酸-DTHFPCI(K(Palm))FGPRSKGWVCK-NH2(化合物14、配列番号14)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKF)K(Palm))PRSKGWVCK-NH2(化合物15、配列番号15)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGP(K(Palm))SKGWVCK-NH2(化合物16、配列番号16)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGPRS(K(Palm))GWVCK-NH2(化合物17、配列番号17)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGPRSKGWVC(K(Palm))NH2(化合物18、配列番号18)、
イソ吉草酸-DTHFPCI(K(PEG3-Palm))FGPRSKGWVCK-NH2(化合物19、配列番号19)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKF(K(PEG3-Palm))PRSKGWVCK-NH2(化合物20、配列番号20)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGP(K(PEG3-Palm))SKGWVCK-NH2(化合物21、配列番号21)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGPRS(K(PEG3-Palm))GWVCK-NH2(化合物22、配列番号22)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGPRSKGWVC(K(PEG3-Palm))-NH2(化合物23、配列番号23)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGPRSKGWVC(K(PEG8))-NH2(化合物24、配列番号24)、
イソ吉草酸-DTHFPCI(K(isoGlu-Palm))FEPRSKGCK-NH2(化合物25、配列番号25)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKF-K(isoGlu-Palm)-PRSKGCK-NH2(化合物26、配列番号26)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEP(K(isoGlu-Palm))SKGCK-NH2(化合物27、配列番号27)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEP(K(isoGlu-Palm))SKGWECK-NH2(化合物28、配列番号28)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRS(K(isoGlu-Palm))GCK-NH2(化合物29、配列番号29)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRSK(K(isoGlu-Palm))CK-NH2(化合物30、配列番号30)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRSKGCK(K(isoGlu-Palm))-NH2(化合物31、配列番号31)、
イソ吉草酸-DTHFPCI-K(Dapa-Palm)-FEPRSKGCK-NH2(化合物32、配列番号32)、
イソ吉草酸-DTHFPCIK(F(Dapa-Palm))PRSKGCK-NH2(化合物33、配列番号33)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEP(K(Dapa-Palm))SKGCK-NH2(化合物34、配列番号34)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRS(K(Dapa-Palm))GCK-NH2(化合物35、配列番号35)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRSK(K(Dapa-Palm))CK-NH2(化合物36、配列番号36)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRSKGC(K(Dapa-Palm))K-NH2(化合物37、配列番号37)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRSKGC(K(Dapa-Palm))-NH2(化合物38、配列番号38)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKF(K(PEG11-Palm))PRSK[Sar]CK-NH2(化合物39、配列番号39)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKF-NH2(化合物40、配列番号40)、
Hy-DTHFPCIKF-NH2(化合物41、配列番号41)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIF-NH2(化合物42、配列番号42)、
Hy-DTHFPCIIKF-NH2(化合物43、配列番号43)、
イソ吉草酸-DTKFPCIIF-NH2(化合物44、配列番号44)、又は
Hy-DTKFPCIIF-NH2(化合物45、配列番号45)。
【0013】
本明細書に開示される方法のいずれかの特定の実施形態では、TSAT%レベル及び/又は血清鉄レベルの低減は、薬剤を用いた治療後の最大の低減であり、他の実施形態では、TSAT%レベル及び/又は血清鉄レベルの低減は、対象への投与後の薬剤のトラフレベルで観察される低減である。いくつかの実施形態では、TSAT%は、試験された時点で、約45%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約10%~約40%、約5%~約20%、又は約10%~約20%に低減される。いくつかの実施形態では、血清鉄は、試験された時点で、約150マイクログラム/dL以下、約100マイクログラム/dL以下、約75マイクログラム/dL以下、約600マイクログラム/dL以下に低減される。いくつかの実施形態では、TSAT%レベル及び/又は血清鉄レベルは、正常で健康なボランティアで観察されるレベルの90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、又は50%未満のレベルに低減される。
【0014】
本明細書に開示される方法のいずれかの様々な実施形態では、例えば化合物25などのヘプシジン模倣ペプチドなどの薬剤は、塩形態として、及び/又は医薬組成物で対象に提供され、特定の実施形態では、非経口的に、例えば皮下に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】5mg/kgの化合物25を用いたHHマウスの治療後の様々な組織における血清鉄レベル、血清フェリチンレベル、及び総鉄を示すグラフを提供する。
【
図2A-B】低鉄食(
図2A)又は正常鉄食(
図2B)後の化合物25を用いた治療後のHHマウスの肝臓における非ヘム鉄レベルを示すグラフである。
【
図3】ヘプシジン模倣体を用いた遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)の治療のための第2相研究デザインの概要を示す。
【
図4A-B】瀉血頻度における化合物25を用いた治療の効果を示す。
図4Aは、ヘプシジン模倣体を用いた治療の前及び後のHH患者の瀉血治療を示すチャートである。
図4Bは、化合物25を用いた治療後の瀉血治療の低減を示すグラフである。
【
図5A-B】ヘプシジン模倣体を用いた治療後の経時的なHH患者におけるTSATレベルを示すグラフを提供する。
図5Aは、個々の患者の治療過程にわたるTSATレベルを示す。
図5Bについて、左のグラフでは、ベースラインのトランスフェリン飽和度(%)は45.0000であり、化合物25後は30.3948である。右のグラフでは、ベースラインのトランスフェリン飽和度(%)は45.0000であり、化合物25後は36.2500である。
【
図6】治療前のHH患者における血清鉄レベル及びヘプシジン模倣体を用いた治療後の平均血清鉄レベルを示すグラフを提供する。右のグラフでは、ベースラインは25.5454であり、化合物25後は17.6591である。
【
図7】ヘプシジン模倣体を用いた治療後の血清鉄及びTSATの用量依存的低減及び濃度依存的低減を示すグラフを提供する。
【
図8】ヘプシジン模倣体を用いた治療前及び治療後のHH患者における血清フェリチンレベル及び血清トランスフェリンレベルを示すグラフを提供する。左上のグラフでは、ベースラインは82.3431であり、化合物25後は85.0126である。左下のグラフでは、ベースラインは82.3431であり、化合物25後は114.4775である。右上のグラフでは、ベースラインは2.2869であり、化合物25後は2.4531である。右下のグラフでは、ベースラインは2.2869であり、化合物25後は2.4169である。
【
図9】ヘプシジン模倣体を用いた治療前及び治療後のHH患者における肝鉄含量を示すグラフを提供する。
【
図10】ヘプシジン模倣体を用いた治療後のHH患者報告結果の概要である。日常役割機能(精神)及び日常役割機能(身体)で最も内側の点はスクリーニングに対応し、日常役割機能(精神)及び日常役割機能(身体)で最も外側の点は化合物25治療後に対応する。
【
図11】各対象に投与される化合物25の投与量を示すダイアグラムである。
【
図12】化合物25の指示用量の投与後6日間にわたるトランスフェリン飽和度(%)を示すグラフである。
【
図13】化合物25のHH患者への投与のベースライン及び24週間後、並びにβ-サラセミア輸血依存性二次鉄過剰患者におけるベースライン及び4週間後及び8週間後のTST(%)及びMCHC(g/dL)を示すグラフを含む。
【
図14】化合物25を用いた6か月間の治療後のHH患者における結果を示すグラフを含む。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)などの鉄調節不全に関連する疾患及び障害の治療に有用なヘプシジン模倣体の治療有効投与量及び投与レジメンを特定する。特定の実施形態では、本明細書に開示される方法は、遺伝性ヘモクロマトーシスを治療するために化合物25を使用して実施される。
【0017】
定義及び命名法
本明細書に別段の定義がない限り、本出願で使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。概して、本明細書に記載の化学、分子生物学、細胞及びがん生物学、免疫学、微生物学、薬理学、並びにタンパク質及び核酸化学に関連して使用される命名法、並びにそれらの技術は、当技術分野でよく知られており、一般に使用されている。
【0018】
本明細書で使用される場合、以下の用語は、別段の指定がない限り、それらに帰属する意味を有する。
【0019】
本明細書を通して、「含む(comprise)」という単語又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変型は、示された整数(若しくは構成要素)又は整数(若しくは構成要素)の群を含むことを意味するが、任意の他の整数(若しくは構成要素)又は整数(若しくは構成要素)の群も除外するものではないと理解されるであろう。
【0020】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数を含む。
【0021】
「含む(including)」という用語は、「含むが、これらに限定されない(including but not limited to)」を意味するために使用される。「含む」及び「含むが、これらに限定されない」は、互換的に使用される。
【0022】
「患者」、「対象」、及び「個体」という用語は、互換的に使用され得、ヒト又は非ヒト動物のいずれかを指し得る。これらの用語には、ヒト、霊長類、家畜動物(例えば、ウシ、ブタ)、コンパニオン動物(例えば、イヌ、ネコ)、及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳類が含まれる。「哺乳類」という用語は、ヒト、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ハムスター、モルモット、ウサギ、家畜などの任意の哺乳類種を指す。
【0023】
「ペプチド」という用語は、本明細書で使用される場合、ペプチド結合によって一緒に結合された2つ以上のアミノ酸の配列を広範に指す。この用語が、特定の長さのアミノ酸のポリマーを暗示するものでもなければ、ポリペプチドが組換え技術、化学合成若しくは酵素合成を使用して生成されるか、又は天然に存在するかどうかを意味する又は区別するようにも意図されていないことを理解されたい。
【0024】
「ヘプシジン模倣体」という用語は、本明細書で使用される場合、ヘプシジン又はその機能的領域と共通する1つ以上の構造的特徴及び/又は機能的活性を含むペプチド単量体及びペプチド二量体を広範に指す。特定の実施形態では、へプシジン模倣体には、ヘプシジンと実質的なアミノ酸配列同一性を共有するペプチド、例えば、野生型ヘプシジン、例えばヒトヘプシジンのアミノ酸配列と比較して、1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失、又は置換を含むペプチドが含まれる。特定の実施形態では、へプシジン模倣体は、例えば、別の化合物へのコンジュゲートなどの1つ以上の追加の修飾を含む。本明細書に開示される任意のペプチド単量体又はペプチド二量体は、「ヘプシジン模倣体」という用語に包含される。いくつかの実施形態では、ヘプシジン模倣体は、ヘプシジンの1つ以上の機能的活性を有する。
【0025】
「アミノ酸」又は「任意のアミノ酸」という用語は、本明細書で使用される場合、天然に存在するアミノ酸(例えば、a-アミノ酸)、非天然(unnatural)アミノ酸、修飾アミノ酸、及び非天然(non-natural)アミノ酸を含む、ありとあらゆるアミノ酸を指す。これには、D-アミノ酸及びL-アミノ酸の両方が含まれる。天然アミノ酸には、自然界で見られるもの、例えば、組み合わさってペプチド鎖になり多様なタンパク質の構成要素を形成する23個のアミノ酸などが含まれる。これらは主にL立体異性体であるが、細菌エンベロープ及びいくつかの抗生物質ではわずかな数のD-アミノ酸が発生する。「非標準」の天然アミノ酸は、ピロリシン(メタン生成生物及び他の真核生物中に見られる)、セレノシステイン(多くの非真核生物に存在し、ほとんどの真核生物にも存在する)、及びN-ホルミルメチオニン(細菌、ミトコンドリア及び葉緑体中の開始コドンAUGによってコードされる)である。「非天然(unnatural)」又は「非天然(non-natural)」アミノ酸は、天然に存在するか、又は化学的に合成されるかのいずれかの非タンパク質生成アミノ酸(すなわち、天然にコードされていないか、又は遺伝子コード中に見られないアミノ酸)である。140を超える天然アミノ酸が知られており、数千のより多くの組み合わせが可能である。「非天然(unnatural)」アミノ酸の例としては、β-アミノ酸(β3及びβ2)、ホモ-アミノ酸、プロリン及びピルビン酸誘導体、3置換アラニン誘導体、グリシン誘導体、環置換フェニルアラニン及びチロシン誘導体、直鎖状コアアミノ酸、ジアミノ酸、D-アミノ酸、並びにN-メチルアミノ酸が挙げられる。非天然(unnatural)アミノ酸又は非天然(non-natural)アミノ酸には、修飾アミノ酸も含まれる。「修飾」アミノ酸には、アミノ酸には天然に存在しない基、複数の基、又は化学的部分を含むように化学修飾されたアミノ酸(例えば、天然アミノ酸)が含まれる。
【0026】
当業者には明らかであるように、本明細書に開示されるペプチド配列は、左から右に向かって示されており、配列の左端がペプチドのN末端であり、配列の右端がペプチドのC末端である。本明細書に開示される配列の中には、配列のアミノ末端(N末端)に「Hy」部分、及び配列のカルボキシ末端(C末端)に「-OH」部分又は「-NH2」部分のいずれかを組み込んだ配列がある。そのような場合、別段で示されていない限り、問題となっている配列のN末端における「Hy」部分は、N末端における遊離一級又は二級アミノ基の存在に対応する水素原子を指し、配列のC末端における「-OH」又は「-NH2」部分は、それぞれ、C末端におけるアミド(CONH2)基の存在に対応するヒドロキシ基又はアミノ基を指す。本発明の各配列では、C末端「-OH」部分は、C末端「-NH2」部分で置換されてもよく、その逆もまた同様である。アミノ末端又はカルボキシ末端における部分は、特にアミノ末端又はカルボキシ末端がリンカー又は別の化学的部分、例えばPEG部分に結合している状況において、結合、例えば共有結合であり得ることが更に理解される。
【0027】
「NH2」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基を指す。「OH」という用語は、本明細書で使用される場合、ペプチドのカルボキシ末端に存在する遊離カルボキシ基を指す。更に、「Ac」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリペプチドのC末端又はN末端のアシル化によるアセチル保護を指す。
【0028】
「カルボキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、-CO2Hを指す。
【0029】
ほとんどの場合には、本明細書で使用される天然に存在するアミノアシル残基及び天然に存在しないアミノアシル残基の名称は、“Nomenclature of α-Amino Acids(Recommendations,1974)”Biochemistry,14(2),(1975)に記載のように有機化学命名法に関するIUPAC委員会及び生化学命名法に関するIUPAC-IUB委員会によって提案されている命名規則に従う。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられるアミノ酸及びアミノアシル残基の名称及び略称がそれらの提案と異なる範囲では、それらは読者に対して明確にされるであろう。本発明を説明するのに有用ないくつかの略称は、次の表1で以下に定義される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0030】
本明細書を通して、天然に存在するアミノ酸がそれらの完全名称(例えば、アラニン、アルギニンなど)で言及されない限り、それらは、それらの従来の3文字の略称又は単一文字の略称(例えば、アラニンの場合、Ala又はA、アルギニンの場合、Arg又はR、など)で表される。あまり一般的ではないアミノ酸又は天然に存在しないアミノ酸の場合、それらが完全名称(例えば、サルコシン、オルニチンなど)で言及されない限り、Sar又はSarc(サルコシン、すなわち、N-メチルグリシン)、Aib(α-アミノイソ酪酸)、Daba(2,4-ジアミノブタン酸)、Dapa(2,3-ジアミノプロパン酸)、γ-Glu(γ-グルタミン酸)、pGlu(ピログルタミン酸)、Gaba(γ-アミノブタン酸)、β-Pro(ピロリジン-3-カルボン酸)、8Ado(8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸)、Abu(4-アミノ酪酸)、bhPro(β-ホモ-プロリン)、bhPhe(β-ホモ-L-フェニルアラニン)、bhAsp(β-ホモ-アスパラギン酸])、Dpa(β,βジフェニルアラニン)、Ida(イミノ二酢酸)、hCys(ホモシステイン)、及びbhDpa(β-ホモ-β,β-ジフェニルアラニン)を含む、頻繁に用いられている3文字コード又は4文字コードがそれらの残基に用いられる。
【0031】
更に、R1は、全ての配列において、イソ吉草酸又は同等物で置換され得る。本発明のペプチドが、酸性化合物、例えば、イソ吉草酸、イソ酪酸、吉草酸などにコンジュゲートされるいくつかの実施形態では、そのようなコンジュゲーションの存在は、酸形態で言及される。したがって、例えば、決して限定されるものではないが、イソバレロイルに言及することによってペプチドへのイソ吉草酸のコンジュゲーションを示す代わりに、いくつかの実施形態では、本出願は、そのようなコンジュゲーションをイソ吉草酸として言及してもよい。
【0032】
「L-アミノ酸」という用語は、本明細書で使用される場合、ペプチドの「L」異性体形態を指し、逆に、「D-アミノ酸」という用語は、ペプチドの「D」異性体形態を指す。特定の実施形態では、本明細書に記載のアミノ酸残基は、「L」異性体形態であるが、所望の官能基がペプチドによって保持される限り、「D」異性体形態の残基を任意のL-アミノ酸残基に置換することができる。
【0033】
別段で示されていない限り、キラル中心を有する問題となっている天然アミノ酸及び非天然アミノ酸のL異性体形態が言及される。適切な場合、アミノ酸のD異性体形態は、従来の3文字コードの前の接頭辞「D」によって従来の様式で示される(例えば、Dasp、(D)Asp又はD-Asp;Dphe、(D)Phe又はD-Phe)。
【0034】
「二量体」という用語は、本明細書で使用される場合、2つ以上の単量体サブユニットを含むペプチドを広範に指す。特定の二量体は、2つのDRPを含む。本発明の二量体には、ホモ二量体及びヘテロ二量体が含まれる。二量体の単量体サブユニットは、そのC末端又はN末端で連結されていてもよく、又は内部アミノ酸残基を介して連結されていてもよい。二量体の単量体サブユニットは、各々、同じ部位を介して連結されていてもよく、又は各々異なる部位(例えば、C末端、N末端、又は内部部位)を介して連結されていてもよい。
【0035】
本明細書で使用される場合、本明細書に開示される特定のペプチド配列との関連において、丸括弧、例えば(__)は、側鎖のコンジュゲーションを表し、角括弧、例えば[__]は、非天然アミノ酸置換又はアミノ酸及びコンジュゲートされた側鎖を表す。概して、リンカーがペプチド配列のN末端に示される場合、それは、ペプチドが別のペプチドと二量体化され、リンカーが2つのペプチドのN末端に結合していることを示す。概して、リンカーがペプチド配列又は構造のC末端に示される場合、それは、ペプチドが別のペプチドと二量体化され、リンカーが2つのペプチドのC末端に結合していることを示す。
【0036】
「環化」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリペプチド分子の一部がポリペプチド分子の別の部分に連結して、例えばジスルフィド架橋又は他の類似の結合を形成することによって、閉環を形成するようになる反応を指す。
【0037】
「サブユニット」という用語は、本明細書で使用される場合、結合して二量体ペプチド組成物を形成する一対のポリペプチド単量体のうちの1つを指す。
【0038】
「リンカー部分」という用語は、本明細書で使用される場合、2つのペプチド単量体サブユニットを一緒に連結又は結合して二量体を形成することができる化学構造を広範に指す。
【0039】
本発明の文脈での「溶媒和物」という用語は、溶質(例えば、本発明によるヘプシジン類似体又はその薬学的に許容される塩)と溶媒との間に形成される定義された化学量論の複合体を指す。この関連での溶媒は、例えば、水、エタノール、又は別の薬学的に許容される、典型的には小分子の有機種(酢酸又は乳酸などであるが、これらに限定されない)であり得る。問題となっている溶媒が水である場合、そのような溶媒和物は、通常、水和物と称される。
【0040】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書で使用される場合、水溶性若しくは油溶性又は分散性であり、過度の毒性、刺激、及びアレルギー反応がなく疾患の治療に好適であり、合理的な利益/リスク比に相応し、かつそれらの意図される使用に有効である、本発明のペプチド又は化合物の塩又は双性イオン形態を表す。この塩は、化合物の最終単離及び精製中に調製することができるか、又はアミノ基を好適な酸と反応させることによって別個に調製することができる。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メシレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、パラ-トルエンスルホン酸塩、及びウンデカン酸塩が挙げられる。また、本発明の化合物中のアミノ基は、メチル、エチル、プロピル、及びブチルの塩化物、臭化物、及びヨウ化物;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチル、及び硫酸ジアミル;デシル、ラウリル、ミリスチル、及びステリルの塩化物、臭化物、及びヨウ化物;並びに臭化ベンジル及び臭化フェネチルで四級化することができる。治療的に許容される付加塩を形成するために用いることができる酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸などの無機酸、並びにシュウ酸、マレイン酸、コハク酸、及びクエン酸などの有機酸が挙げられる。薬学的に許容される塩は、好適には、例えば、酸付加塩及び塩基性塩から選択される塩であり得る。酸付加塩の例としては、塩化塩、クエン酸塩、及び酢酸塩が挙げられる。塩基性塩の例としては、カチオンが、ナトリウムイオン又はカリウムイオンなどのアルカリ金属カチオン、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンなどのアルカリ土類金属カチオン、並びにN(R1)(R2)(R3)(R4)+(ここで、R1、R2、R3及びR4は、独立して、典型的には、水素、任意選択で置換されたC1-6アルキル、又は任意選択で置換されたC2-6アルケニルを表す)タイプのイオンなどの置換アンモニウムイオンから選択される塩が挙げられる。関連するC1-6アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、1-プロピル基及び2-プロピル基が挙げられる。可能な関連性のあるC2-6アルケニル基の例としては、エテニル、1-プロペニル及び2-プロペニルが挙げられる。薬学的に許容される塩の他の例は、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”,17th edition,Alfonso R.Gennaro(Ed.),Mark Publishing Company,Easton,PA,USA,1985(及びそのより最近の版)、“Encyclopaedia of Pharmaceutical Technology”,3rd edition,James Swarbrick(Ed.),Informa Healthcare USA(Inc.),NY,USA,2007、及びJ.Pharm.Sci.66:2(1977)に記載されている。また、好適な塩に関する総説については、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use by Stahl and Wermuth(Wiley-VCH,2002)を参照されたい。他の好適な塩基塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成される。代表的な例としては、アルミニウム塩、アルギニン塩、ベンザチン塩、カルシウム塩、コリン塩、ジエチルアミン塩、ジオールアミン塩、グリシン塩、リジン塩、マグネシウム塩、メグルミン塩、オラミン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、トロメタミン塩、及び亜鉛塩が挙げられる。酸及び塩基のヘミ塩(Hemisalt)、例えばヘミ硫酸塩及びヘミカルシウム塩も形成され得る。
【0041】
「アルキル」という用語は、直鎖状又は分枝状、非環状又は環状の、1~24個の炭素原子を含む飽和脂肪族炭化水素を含む。代表的な飽和直鎖アルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されず、飽和分岐状アルキルとしては、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。代表的な飽和環状アルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されず、不飽和環状アルキルとしては、シクロペンテニル、シクロヘキセニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」の本発明のペプチドアゴニストは、本明細書に記載の疾患及び障害(例えば、鉄代謝疾患)のうちのいずれかを含むが、これらに限定されない、ヘプシジン関連疾患を治療するのに十分な量のペプチドアゴニストを記載することを意図する。特定の実施形態では、治療有効量は、任意の医学的治療に適用可能な所望の利益/リスク比を達成する。
【0043】
ヘプシジン模倣体の使用方法
ヘプシジンは、主要な鉄輸送体フェロポーチンを標的とし、その内部移行及びその後の分解を引き起こす。ヘプシジン調節は、細胞機能に必要な十分な鉄を提供するのに重要であるのと同時に、鉄毒性を防止するのにも重要である。遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)では、食事からの鉄の過剰吸収は、一次鉄過剰につながる。トランスフェリンが飽和しているこれらの鉄過剰条件下で(例えば、トランスフェリン飽和度(Transferrin SATuration、TSAT)%>80%)、過剰な鉄沈着は、臓器障害をもたらし得る。更に、不安定な鉄の存在は、全体的な全身鉄毒性を増加させる。本開示は、遺伝性ヘモクロマトーシスなどの鉄過剰に関連する疾患及び障害の治療のための、治療効果を有するヘプシジン模倣体を投与する方法及び使用する方法を特定する。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、調節不全鉄レベルに関連する疾患又は障害(例えば、鉄代謝の疾患又は障害、鉄過剰に関連する疾患又は障害、及び異常なヘプシジン活性又は発現に関連する疾患又は障害)の予防、阻害、又は治療に適用される。特定の実施形態では、疾患又は障害は、鉄代謝の疾患、例えば、鉄過剰症又は鉄代謝の別の障害などである。
【0045】
特定の実施形態では、鉄代謝の疾患は、ヘモクロマトーシス、例えば、遺伝性ヘモクロマトーシス、HFE変異ヘモクロマトーシス、フェロポーチン変異ヘモクロマトーシス、トランスフェリン受容体2変異ヘモクロマトーシス、ヘモジュベリン変異ヘモクロマトーシス、ヘプシジン変異ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、又は新生児ヘモクロマトーシスなどである。特定の実施形態では、疾患は、遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)である。特定の実施形態では、疾患は、瀉血を必要とするHH、例えば維持段階のHHである。
【0046】
特定の実施形態では、疾患又は障害は、関節症に関連するHH、又はHH関連関節症である。慢性関節症は、HH患者の37~80%で発生する。これらの場合、関節痛は、疾患の早期兆候であり得、多くの場合、HHの最初の診断の原因である。これは、X線及び/又はMRI撮像によって行われてもよく、しばしば、検証された関節痛及び/又は機能スコアリング計器の結果と組み合わされてもよい。特定の実施形態では、関節症は、年齢、フェリチン、及びTSATレベルの上昇と関連し得る。HHの鉄蓄積は、酸化ストレスの増加、基質代謝の乱れ、及び軟骨変性と関連している可能性があり、これは変形性関節症に類似した関節症の発症に寄与しうる。持続性関節症は、特にHH患者の最大16%が関節置換手術を受けるため、生活の質を低下させ、高い医療利用及び関連するコストをもたらす可能性がある。例えば、Whalen,N.“Association of Transferrin Saturation with the Arthropathy of Hereditary Hemochromatosis”2017;Nguyen,C.“Bone and joint complications in patients with hereditary hemochromatosis:a cross-sectional study of 93 patients”2020;Carroll,GJ.“Hereditary Hemochromatosis is characterized by a clinically definable arthropathy that correlate with iron load”2011;Karim,A.“The role of disrupted iron homeostasis in the development and progression of arthropathy”2022;及びBurton,LH.“Systemic administration of a pharmacologic iron chelator reduces cartilage lesion development in the Dunkin-Hartley model of primary osteoarthritis”2022を参照されたい。
【0047】
一態様では、本開示は、ヒト対象において、鉄過剰症、例えばHH、関節症に関連するHH、又はHH関連関節症を治療する方法を提供し、本方法は、化合物25などの本明細書に開示されるものを含むがこれに限定されない、ヘプシジン模倣体の有効量を対象に提供することを含む。特定の実施形態では、ヘプシジン模倣体は、皮下に提供される。特定の実施形態では、対象は、遺伝性ヘモクロマトーシスと診断されている。特定の実施形態では、対象は、本明細書に開示される治療の前に、瀉血治療を受けているか、又は必要とする。特定の実施形態では、開示される方法によるヘプシジン模倣体を用いた治療の前に、対象は、1年当たり少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、又は少なくとも6回の瀉血治療を受けていた。特定の実施形態では、対象は、1年当たり約5回~約6回の瀉血を受けていた。特定の実施形態では、対象のHHは維持段階にあり、対象は、1週間当たり1回未満、例えば、1か月当たり約1回、又は2~4か月毎に約1回、瀉血によって治療されている。特定の実施形態では、対象は、HHを確認しており、1か月当たり約0.25回~1回の瀉血頻度で、本開示による治療の前の少なくとも3か月間又は少なくとも6か月間、安定的な瀉血を受けていた。特定の実施形態では、対象は、臨床的に意義のある検査所見の異常を有さず、及び/又は鉄キレート療法若しくは赤血球アフェレシス(erythrocytapheresis)を受けていない。特定の実施形態では、患者は、例えば、経時的に複数の瀉血により蓄積された針刺しに起因する静脈アクセスの問題のために、瀉血が困難である。特定の実施形態では、対象は鉄欠乏性貧血を有し、特定の実施形態では、対象は針恐怖症である。
【0048】
特定の実施形態では、ヘプシジン模倣体、例えば化合物25の有効量は、約1mg~約100mg、又は約10mg~約80mgである。特定の実施形態では、ヘプシジン模倣体、例えば化合物25の有効量は、約5mg~約80mg、又は約10mg~約80mgである。特定の実施形態では、ヘプシジン模倣体、例えば化合物25の有効量は、約10mg~約40mg、又は約5mg~約50mgである。特定の実施形態では、ヘプシジン模倣体、例えば化合物25の有効量は、約10mg~約40mg、又は約5mg~約50mgである。特定の実施形態では、ヘプシジン模倣体の有効量は、1週間に約1回又は1週間に約2回対象に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、1週間に約2回、約10mg~約20mg、約10mg~約15mg、又は約15mg~約20mgのヘプシジン模倣体を投与され、別の実施形態では、対象は、1週間に約1回、約20mg~約30mg、約20mg~約40mg、又は約30mg~約40mgのヘプシジン模倣体を投与される。特定の実施形態では、対象は、1週間に約2回、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、約20mg、約21mg、約22mg、約23mg、約24mg、又は約25mgのヘプシジン模倣体を投与される。特定の実施形態では、対象は、1週間に約2回、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、約20mg、約21mg、約22mg、約23mg、約24mg、約25mg、約26mg、約27mg、約28mg、約29mg、約30mg、約31mg、約32mg、約33mg、約34mg、約35mg、約36mg、約37mg、約38mg、約39mg、約40mg、約41mg、約42mg、約43mg、約44mg、又は約45mgのヘプシジン模倣体を投与される。特定の実施形態では、ヘプシジン模倣体は、皮下投与される。特定の実施形態では、ヘプシジン模倣体は、化合物25である。特定の実施形態では、対象に投与される量は、治療過程にわたって変化し得る。
【0049】
実施形態では、本方法は、対象におけるトランスフェリン飽和度(TSAT)レベル及び/又は血清鉄レベル及び/又は平均赤血球ヘモグロビン濃度(mean corpuscular hemoglobin concentration、MCHC)レベルを、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも60%低減させる。いくつかの実施形態では、有効量は、対象のトランスフェリン飽和度(TSAT)レベル及び/又は血清鉄を、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%低減させる。特定の実施形態では、TSAT%及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルは、約40%~約90%、約50%~約90%、又は50%~75%低減される。いくつかの実施形態では、TSAT%レベル及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルは、同じ哺乳類タイプの正常で健康なボランティアで観察されるレベルの90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、又は50%未満のレベルに低減される。特定の実施形態では、TSAT%レベル及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルの低減は、薬剤を用いた治療後の対象で観察される最大の低減であり、他の実施形態では、TSAT%レベル及び/又は血清鉄レベルの低減は、対象への投与後の薬剤のトラフレベルで観察される低減である。いくつかの実施形態では、TSAT%レベル及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルの低減は、例えば複数の対象において、観察される平均低減である。
【0050】
いくつかの実施形態では、対象のTSATレベルは、60%以下のTSAT、50%以下のTSAT、45%以下のTSAT、40%以下のTSAT、30%以下のTSAT、20%以下のTSAT、又は10%以下のTSATに低減される。 特定の実施形態では、対象のTSATレベルは、45%以下のTSAT、又は40%以下のTSATに低減される。 特定の実施形態では、対象のTSATレベルは、40%以下のTSAT、又は35%以下のTSATに低減される。 特定の実施形態では、TSATレベルは、約20%のTSAT~約50%のTSAT、例えば、約25%のTSAT~約40%のTSATに低減される。特定の実施形態では、TSAT%及び/又は血清鉄レベルは、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも90%低減される。特定の実施形態では、TSAT%値は、約0%~約60%、約0%~約40%、約10%~約40%、約10%~約30%、約10%~約20%、約20%~約60%、約20%~約40%、又は約20%~約30%に低減される。いくつかの実施形態では、TSAT%は、試験された時点で、50%以下のTSAT、45%以下のTSAT、40%以下のTSAT、35%以下のTSAT、30%以下のTSAT、20%以下のTSAT、15%以下のTSAT、10%以下のTSAT、約10%のTSAT~約45%のTSAT、約5%のTSAT~約20%のTSAT、又は約10%のTSAT~約20%のTSATに低減される。いくつかの実施形態では、TSAT%レベル及び/又は血清鉄レベルは、同じ哺乳類タイプの正常で健康なボランティアで観察されるレベルの90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、又は50%未満のレベルに低減される。
【0051】
特定の実施形態では、血清鉄レベルは、約0uM~約30uM、約0uM~約5uM、約0uM~約20uM、約0uM~約15uM、約0uM~約10uM、又は約0uM~約5uMに低減される。特定の実施形態では、対象の血清鉄レベルは、20umol/L以下、18umol/L以下、16umol/L以下、14umol/L以下、12umol/L以下、10umol/L以下、8umol/L以下、6umol/L以下、又は4umol/L以下に低減される。 いくつかの実施形態では、対象の血清鉄レベルは、約2umol/L~約100umol/L、例えば、2~約10umol/L、又は約10umol/L~約50umol/L、又は約10umol/L~約30umol/Lに低減される。いくつかの実施形態では、対象の血清鉄レベルは、約2umol/L~約100umol/L、例えば、2~約10umol/L、又は約10umol/L~約50umol/L、又は約10umol/L~約30umol/Lに低減される。いくつかの実施形態では、対象の血清鉄レベルは、約50mcg/dL~約200mcg/dL、又は約60mcg/dL~約170mcg/dLに低減される。特定の実施形態では、血清鉄レベルは、約150ug/dL未満、約100ug/dL未満、又は約75ug/dL未満に低減される。
【0052】
いくつかの実施形態では、対象のMCHCレベルは、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも90%低減される。特定の実施形態では、MCHC値(g/dL)は、約35未満、約34未満、約33未満、約32未満、約31未満、約30未満、又は約29未満に低減される。
【0053】
実施形態では、本方法は、対象におけるトランスフェリン飽和度(TSAT)レベル及び/又は血清鉄及び/又はMCHCレベルを、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも60%低減する。いくつかの実施形態では、有効量は、対象のトランスフェリン飽和度(TSAT)レベル及び/又は血清鉄及び/又はMCHCレベルを、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%低減する。特定の実施形態では、TSAT%及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルは、約40%~約90%、約50%~約90%、又は50%~75%低減される。いくつかの実施形態では、TSAT%レベル及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルは、同じ哺乳類タイプの正常で健康なボランティアで観察されるレベルの90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、又は50%未満のレベルに低減される。特定の実施形態では、TSAT%レベル及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルの低減は、薬剤を用いた治療後の対象で観察される最大の低減であり、他の実施形態では、TSAT%レベル及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルの低減の低減は、対象への投与後の薬剤のトラフレベルで観察される低減である。いくつかの実施形態では、TSAT%レベル及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルの低減は、例えば複数の対象において、観察される平均低減である。
【0054】
いくつかの実施形態では、TSAT%レベル及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルは、同じ哺乳類タイプの正常で健康なボランティアで観察されるレベルの200%未満、150%未満、100T未満、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、又は50%未満のレベルに低減される。
【0055】
特定の実施形態では、ヘプシジン模倣体、例えば化合物25を用いた治療後、HH患者は、45%以下若しくは40%以下のTSATレベル、150ug/dL未満、100ug/dL未満、若しくは75ug/dL未満の血清鉄レベル、及び/又は35g/dL未満若しくは30g/dL未満のMCHCレベルを呈する。特定の実施形態では、これらのレベルは、ヘプシジン模倣体のトラフ濃度で、例えば最終投与から約7日後に生じる。
【0056】
特定の実施形態では、対象のトランスフェリン飽和度(TSAT)レベル及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルの低減は、ヘプシジン模倣体の投与後、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、又は少なくとも1週間発生する。特定の実施形態では、対象は、例えば単回用量として又はある期間にわたって、1週間に約2回、又は1週間に約1回、ヘプシジン模倣体を提供される。特定の実施形態では、対象のトランスフェリン飽和度(TSAT)レベル及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルの低減は、投与後から少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、又は少なくとも4日間、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも80%である。特定の実施形態では、TSAT及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCの低減は、治療過程にわたって維持され、治療過程は、例えば、少なくとも2か月間、少なくとも4か月間、少なくとも6か月間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、少なくとも3年間又はそれ以上で、1週間に1回又は1週間に2回であってもよい。特定の実施形態では、対象に対する投与レジメンは、治療過程全体を通して変化し得るが、特定の実施形態では、ヘプシジン模倣体(例えば、化合物25)の投与は、治療過程にわたって1週間に約1回又は1週間に約2回起こり、投与量は、1投与当たり約5mg~約40mg、又は約10mg~約40mgである。特定の実施形態では、対象は、治療過程の異なる期間の間に、異なる投与量(同じ頻度又は異なる頻度で)、又は異なる頻度で同じ投与量を投与されるが、特定の実施形態では、治療過程全体を通しての頻度は、1週間当たり約1回又は2回であり、投与される各投与量は、約5mg~約40mgの範囲内である。いくつかの実施形態では、薬剤は、本明細書に開示されるヘプシジン模倣ペプチド、例えば、式I~VIIIのうちのいずれか1つ又は化合物1~34のうちのいずれか(例えば化合物25)のペプチドである。特定の実施形態では、対象のトランスフェリン飽和度(TSAT)レベル及び/又は血清鉄レベルの低減は、少なくとも1日間で、少なくとも60%である。
【0057】
特定の実施形態では、対象は、開示される方法に従って、ヘプシジン模倣体、例えば化合物25を用いた治療後に、より少ない瀉血を必要とする。いくつかの実施形態では、対象は、本開示による治療中に、1か月当たり0.1回未満の瀉血、又は1か月当たり0.05回未満の瀉血を必要とする。
【0058】
一実施形態では、本方法は、HHを有する対象を治療することを含み、治療前に、対象は、有効量のヘプシジン模倣体、例えば化合物25を対象に投与することによって、少なくとも6か月間、1か月当たり0.25回~1.0回の安定的な瀉血頻度にある。特定の実施形態では、対象は、約5~約20mg(例えば、約5mg、約10mg、約15mg又は約20mg)のヘプシジン模倣体を1週間に2回投与され、及び/又は約10~約40mg(例えば、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg又は約40mg)のヘプシジン模倣体を1週間に1回投与される。特定の実施形態では、対象は、異なる期間の間に異なる頻度で異なる投与量を投与される。特定の実施形態では、対象は、ヘプシジン模倣体を、少なくとも1か月間、少なくとも2か月間、少なくとも4か月間、少なくとも6か月間、又は少なくとも1年間投与される。特定の実施形態では、対象の瀉血頻度は、治療過程にわたって、1か月当たり0.1回未満の瀉血、又は1か月当たり0.05回未満の瀉血まで低減される。
【0059】
特定の実施形態では、対象は、例えばX線、MRI、関節痛、及び/又は機能スコアリング計器の使用などの、例えば当技術分野で利用可能な方法によって決定される、治療後の改善された関節症を有する。
【0060】
特定の実施形態では、対象は、治療後に、低減された酸化ストレス、低減された乱れた基質代謝、及び/又は低減された軟骨変性を有する。
【0061】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法は、低減された循環トランスフェリン飽和度(TSAT)及び/若しくは低減された毒性非トランスフェリン結合鉄(non-transferrin bound iron、NTBI)、並びに/又は臓器、例えば肝臓、膵臓、心臓及び骨などにおける低減された鉄蓄積を有する対象をもたらす。
【0062】
治療しない場合、鉄過剰は、肝腫大、糖尿病、皮膚の色素過剰、心筋症、拡張機能障害、心不全、肝硬変などを引き起こす可能性がある。特定の実施形態では、本明細書に開示される治療方法は、HHなどの鉄過剰に関連するこれらの症状又は病態のいずれかを低減、軽減、又は改善する。
【0063】
特定の実施形態では、本方法は、ヘプシジン模倣体を用いた治療の前及び/又は後の対象におけるTSATレベル及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルを決定することを更に含む。特定の実施形態では、対象は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、又は少なくとも80%のTSAT及び/又は血清鉄及び/又はMCHCの低減を有し、薬剤を提供される。特定の実施形態では、本方法は、対象に薬剤を提供する前及び/又は後の対象におけるTSAT%レベルを測定することを含み、いくつかの実施形態では、本方法は、追加の薬剤を対象に提供して、低減されたTSAT%レベル、例えば、45%以下のTSAT又は40%以下のTSATを達成又は維持することを含む。特定の実施形態では、薬剤は、本明細書に開示されるもののうちのいずれかであり、例えば、式I~VIIIのうちのいずれか1つ又は化合物1~34のうちのいずれか(例えば化合物25)のペプチドなどのプシジン模倣ペプチドである。
【0064】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヘプシジン模倣体を対象に投与する前及び後の対象におけるTSAT%及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルを決定することと、次いで、対象のTSAT%及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルが、ヘプシジン模倣体の投与後に所望のレベルに低減されたかどうかを決定することとを含む。いくつかの実施形態では、対象は、TSAT%及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルが所望のレベルに低減されるまで、増加する量のヘプシジン模倣体を与えられる。いくつかの実施形態では、対象は、治療過程にわたって(及び潜在的に異なる頻度で、例えば、1週間に1回及び/又は1週間に2回)、複数の異なる用量のヘプシジン模倣体を与えられ、TSAT%及び/又は血清鉄レベルを所望のレベルに低減するために必要な最小又は適切な用量及び/又は濃度を特定するために、並びに/又は、対象のTSAT%及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルを所望のレベルに維持するためには対象をどの程度の頻度で治療すべきかを特定するために、対象のTSAT%及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルは、治療過程中の様々な時点で監視される。特定の実施形態では、本方法は、ヘプシジン模倣体を対象に投与する前及び/又は後の対象におけるTSAT%レベルを測定することを含み、いくつかの実施形態では、本方法は、追加のヘプシジン模倣体を対象に提供して、低減されたTSAT%レベル、例えば、45%以下のTSATを達成又は維持することを含む。特定の実施形態では、ヘプシジン模倣体は、式I~VIIIのうちのいずれか1つ又は化合物1~34のうちのいずれか(例えば化合物25)のペプチドである。
【0065】
特定の実施形態では、本開示は、HH、関節症に関連するHH、又はHH関連関節症を治療する方法を提供し、本方法は、
a)HH、例えば、瀉血依存性HH、関節症に関連するHH、又はHH関連関節症と診断された対象に、約5~約25mg(任意選択で10mg又は20mg)の本明細書に開示されるヘプシジン模倣体、例えば化合物25を皮下投与することと、
b)任意選択でトラフ薬物レベルで、例えばステップa)から約7日後、ステップa)後の対象のTSAT%を決定することと、
c)対象のTSAT%が、約40%超又は約45%超である場合、
(i)対象に、増加させた量のヘプシジン模倣体を、例えば、約20mg~約80mg、任意選択で約20mg又は約40mg、約週1回又は約週2回のスケジュールで皮下投与することと、又は
(ii)対象に、同じ量又は増加させた量のヘプシジン模倣体を、例えば、約10mg又は約20mg又は約40mg、増加させた投与スケジュールで、例えば約週2回、皮下投与することと、を含む。
特定の実施形態では、本方法は、対象のTSAT%レベルを、例えば初回の毎週投与から約7日後に、監視することと、TSAT%が40%超又は45%超である場合に、用量を増加させるか又は投与頻度を増加させることによって、投与を調整することと、を含む。本方法は、対象の血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルを決定及び/又は監視することと、投与の量又は頻度をいずれか又は両方に基づいて調整することと、を更に含んでもよい。
【0066】
本明細書に開示される方法のいずれかの様々な実施形態では、TSAT%レベル及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルは、パーセンテージで低減されるか、又は、例えば治療有効薬剤又は投与レジメンと関連付けられるために、特定のTSAT%レベル又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベル以下に低減される。特定の実施形態では、TSAT%レベル及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルの低減は、一定の期間、例えば、12時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、又は1週間、維持される。理解され得るように、これらのレベルのいずれかの低減パーセンテージは、例えば、TSAT%レベル及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルを監視して患者のための投与又は投与レジメンを決定する場合には、特定の患者における低減パーセンテージであり得、又はTSAT%レベル及び/又は血清鉄レベル及び/又はMCHCレベルの低減パーセンテージは、所定の値(例えば、特定の患者集団に関連する、平均(average)若しくは平均(mean)TSAT%レベル、又は血清鉄レベル、又はMCHCレベル)と比較した低減であり得る。特定の実施形態では、TSAT%の低減は、正常で健康なボランティアと比較した低減である。
【0067】
血清鉄は、比色分析を含む様々な方法によって測定することができる。TSATは、血清中の鉄が実際に占めるトランスフェリン鉄結合能のパーセンテージを表す。これは、血清鉄に100を掛け、総鉄結合能で割って計算される(Coyne.Kidney International 69:54-58)。
【0068】
ヘプシジン模倣体
本明細書に開示される方法は、化合物25などの本明細書に記載されるものを含むがこれらに限定されない、様々なヘプシジン模倣体を実施することができる。特定の実施形態では、薬剤は、例えば、様々な組織に鉄を一時的に隔離又は再分配すること、及び/又は食物からの鉄の更なる吸収を防止することによって、血清鉄レベルを調節する。いくつかの実施形態では、鉄隔離化合物は、鉄の排出を防止する。様々な実施形態では、薬剤は、様々な組織/臓器における血清鉄レベル及び/又は鉄の負荷若しくは分布に影響を及ぼす。本開示は、本明細書に開示される薬剤のいずれかにおける薬学的に許容される塩及び溶媒和物に更に関することが理解される。
【0069】
特定の実施形態では、ヘプシジン模倣体は、以下のいずれかに記載されている。米国特許のUS9,822,157及びUS10,030,061は、ヘプシジン類似体及び鉄過剰症(遺伝性ヘモクロマトーシス及び鉄負荷貧血を含む)を治療するためのそれらの使用を記載しており、PCT出願公開のWO15200916は、追加のヘプシジン類似体及び鉄過剰症を治療するためのそれらの使用を記載しており、PCT出願公開のWO17117411は、インビボ半減期が改善された追加のヘプシジン類似体、及び鉄過剰症を治療するためのそれらの使用を記載しており、PCT出願公開のWO18048944は、追加のヘプシジン類似体、及び対象における鉄過剰症の治療予防のためのそれらの使用、及び/又は対象における血清鉄レベルの低減を記載しており、PCT出願公開のWO18128828は、ヘモクロマトーシスなどの鉄過剰症、サラセミアなどの鉄負荷貧血、及び非効果的又は増強された赤血球生成に関連する疾患の予防及び治療を含む、追加のヘプシジン類似体及びヘプシジン関連障害を治療するためのそれらの使用を記載しており、PCT出願公開のWO17068089は、追加のヘプシジン類似体(フェロポーチン阻害剤)、並びにサラセミア及びヘモクロマトーシスを治療するためのそれらの使用を記載しており、又は米国特許のUS9315545は、追加の新規類似体、及び鉄代謝の疾患、ベータサラセミア、ヘモクロマトーシス、鉄負荷貧血、アルコール性肝疾患、又は慢性C型肝炎を治療するためのそれらの使用を記載している。
【0070】
特定の実施形態では、ヘプシジン模倣体は、式Iを含むか、又は式Iからなるペプチド:
R1-X-Y-R2 (I)
又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物であり、
式中、
R1は、水素、C1-C6アルキル、C6-C12アリール、C1-C20アルカノイル、又はpGluであり、
R2は、NH2又はOHであり、
Xは、式IIのアミノ酸配列であり、
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10 (II)
式中、
X1は、Asp、Ala、Ida、pGlu、bhAsp、Leu、D-Asp、又は不存在であり、
X2は、Thr、Ala、又はD-Thrであり、
X3は、His、Lys、D-His、又はLysであり、
X4は、Phe、Ala、Dpa、又はD-Pheであり、
X5は、Pro、Gly、Arg、Lys、Ala、D-Pro、又はbhProであり、
X6は、Ile、Cys、Arg、Lys、D-Ile、又はD-Cysであり、
X7は、Cys、Ile、Leu、Val、Phe、D-Ile、又はD-Cysであり、
X8は、Ile、Arg、Phe、Gln、Lys、Glu、Val、Leu、又はD-Ileであり、
X9は、Phe又はbhPheであり、
X10は、Lys、Phe、又は不存在であり、
Yが不存在である場合、X7はIleであり、
Yは、式IIIのアミノ酸配列であり、
Y1-Y2-Y3-Y4-Y5-Y6-Y7-Y8-Y9-Y10-Y11-Y12-Y13-Y14-Y15 (III)
式中、
Y1は、Gly、Cys、Ala、Phe、Pro、Glu、Lys、D-Pro、Val、Ser、又は不存在であり、
Y2は、Pro、Ala、Cys、Gly、又は不存在であり、
Y3は、Arg、Lys、Pro、Gly、His、Ala、Trp、又は不存在であり、
Y4は、Ser、Arg、Gly、Trp、Ala、His、Tyr、又は不存在であり、
Y5は、Lys、Met、Arg、Ala、又は不存在であり、
Y6は、Gly、Ser、Lys、Ile、Ala、Pro、Val、又は不存在であり、
Y7は、Trp、Lys、Gly、Ala、Ile、Val、又は不存在であり、
Y8は、Val、Thr、Gly、Cys、Met、Tyr、Ala、Glu、Lys、Asp、Arg、又は不存在であり、
Y9は、Cys、Tyr、又は不存在であり、
Y10は、Met、Lys、Arg、Tyr、又は不存在であり、
Y11は、Arg、Met、Cys、Lys、又は不存在であり、
Y12は、Arg、Lys、Ala、又は不存在であり、
Y13は、Arg、Cys、Lys、Val、又は不存在であり、
Y14は、Arg、Lys、Pro、Cys、Thr、又は不存在であり、
Y15は、Thr、Arg、又は不存在であり、
式Iを含むペプチドは、任意選択で、R1、X、又はY上でPEG化され、
ペプチドのアミノ酸の側鎖は、任意選択で、親油性置換基又はポリマー部分にコンジュゲートされ、
Idaは、イミノ二酢酸であり、pGluは、ピログルタミン酸であり、bhAspは、β-ホモアスパラギン酸であり、bhProは、β-ホモプロリンである。
【0071】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるペプチドのいずれかは、ペプチド中に存在する2つのCysアミノ酸残基間にジスルフィド結合を含み、例えば、ペプチド中の2つのシステイン残基のチオール基はジスルフィド結合を形成する。
【0072】
特定の実施形態では、R1は、水素、イソ吉草酸、イソ酪酸又はアセチルである。
【0073】
特定の実施形態では、Xは、式IVのアミノ酸配列であり、
X1-Thr-His-X4-X5-X6-X7-X8-Phe-X10(IV)
式中、
X1は、Asp、Ida、pGlu、bhAsp、又は不存在であり、
X4は、Phe又はDpaであり、
X5は、Pro又はbhProであり、
X6は、Ile、Cys、又はArgであり、
X7は、Cys、Ile、Leu、又はValであり、
X8は、Ile、Lys、Glu、Phe、Gln、又はArgであり、
X10は、Lys又は不存在である。
【0074】
特定の実施形態では、Xは、式Vのアミノ酸配列であり、
X1-Thr-His-X4-X5-Cys-Ile-X8-Phe-X10(V)
式中、
X1は、Asp、Ida、pGlu、bhAsp、又は不存在であり、
X4は、Phe又はDpaであり、
X5は、Pro又はbhProであり、
X8は、Ile、Lys、Glu、Phe、Gln又はArgであり、
X10は、Lys又は不存在である。
【0075】
特定の実施形態では、ペプチドは、式VI:
R1-X-Y-R2 (VI)
又はその薬学的に許容される塩を含み、
式中、
R1は、水素、イソ吉草酸、イソ酪酸、又はアセチルであり、
R2は、NH2又はOHであり、
Xは、式VIIのアミノ酸配列であり、
X1-Thr-His-X4-X5-Cys-Ile-X8-Phe-X10(VII)
式中、
X1は、Asp、Ida、pGlu、bhAsp、又は不存在であり、
X4は、Phe又はDpaであり、
X5は、Pro又はbhProであり、
X8は、Ile、Lys、Glu、Phe、Gln、又はArgであり、
X10は、Lys又は不存在であり、
Yは、式VIIIのアミノ酸配列であり、
Y1-Pro-Y3-Ser-Y5-Y6-Y7-Y8-Cys-Y10(VIII)
式中、
Y1は、Gly、Glu、Val、又はLysであり、
Y3は、Arg又はLysであり、
Y5は、Arg又はLysであり、
Y6は、Gly、Ser、Lys、Ile、又はArgであり、
Y7は、Trp又は不存在であり、
Y8は、Val、Thr、Asp、Glu、又は不存在であり、
Y10は、Lys又は不存在であり、
ペプチドは、2つのCysの間にジスルフィド結合を含み、
ペプチドは、任意選択で、R1、X、又はY上でPEG化され、
ペプチドのアミノ酸の側鎖は、任意選択で、親油性置換基又はポリマー部分にコンジュゲートされ、
Idaは、イミノ二酢酸であり、pGluは、ピログルタミン酸であり、bhAspは、β-ホモアスパラギン酸であり、bhProは、β-ホモプロリンである。
【0076】
特定の実施形態では、ペプチドは、以下の配列のうちの1つを含むか、又はそれからなり、
DTHFPICIFGPRSKGWVC(配列番号46)、
DTHFPCIIFGPRSKGWVCK(配列番号47)、
DTHFPCIIFEPRSKGWVCK(配列番号48)、
DTHFPCIIFGPRSKGWACK(配列番号49)、
DTHFPCIIFGPRSKGWVCKK(配列番号50)、
DTHFPCIIFVCHRPKGCYRRVCR(配列番号51)、
DTHFPCIKFGPRSKGWVCK(配列番号52)、
DTHFPCIKFKPRSKGWVCK(配列番号53)、
DTHFPCIIFGPRSRGWVCK(配列番号54)、
DTHFPCIKFGPKSKGWVCK(配列番号55)、
DTHFPCIKFEPRSKGCK(配列番号56)、
DTHFPCIKFEPKSKGWECK(配列番号57)、
DTHFPCIKFEPRSKKCK(配列番号58)、
DTHFPCIKFEPRSKGCKK(配列番号59)、
DTHFPCIKFKPRSKGCK(配列番号60)、
DTHFPCIKFEPKSKGCK(配列番号61)、
DTHFPCIKF(配列番号62)、
DTHFPCIIF(配列番号63)、又は
DTKFPCIIF(配列番号64)、
当該ペプチドは、任意選択で、R1、X、又はY上でPEG化され、
ペプチドのアミノ酸の側鎖は、任意選択で、親油性置換基又はポリマー部分にコンジュゲートされ、
ペプチドは、任意選択で、ペプチドの2つのCysアミノ酸残基の間にジスルフィド結合を含む。
【0077】
特定の実施形態では、ペプチドは、以下の配列のうちの1つを含むか、又はそれからなり、
イソ吉草酸-DTHFPICIFGPRSKGWVC-NH2(配列番号1)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSKGWVCK-NH2(配列番号2)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFEPRSKGWVCK-NH2(配列番号3)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSKGWACK-NH2(配列番号4)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSKGWVCKK-NH2(配列番号5)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFVCHRPKGCYRRVCR-NH2(配列番号6)、
イソ吉草酸-DTHFPCI(K(PEG8))FGPRSKGWVCK-NH2(配列番号7)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKF(K(PEG8))PRSKGWVCK-NH2(配列番号8)、
イソ吉草酸-DTHFPICIFGPRS(K(PEG8))GWVC-NH2(配列番号9)、
イソ吉草酸-DTHFPICIFGPRS(K(PEG4))GWVC-NH2(配列番号10)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSRGWVC(K(PEG8))-NH2(配列番号11)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSRGWVC(K(PEG4))-NH2(配列番号12)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIFGPRSRGWVC(K(PEG2))-NH2(配列番号13)、
イソ吉草酸-DTHFPCI(K(Palm))FGPRSKGWVCK-NH2(配列番号14)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKF)K(Palm))PRSKGWVCK-NH2(配列番号15)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGP(K(Palm))SKGWVCK-NH2(配列番号16)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGPRS(K(Palm))GWVCK-NH2(配列番号17)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGPRSKGWVC(K(Palm))NH2(配列番号18)、
イソ吉草酸-DTHFPCI(K(PEG3-Palm))FGPRSKGWVCK-NH2(配列番号19)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKF(K(PEG3-Palm))PRSKGWVCK-NH2(配列番号20)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGP(K(PEG3-Palm))SKGWVCK-NH2(配列番号21)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGPRS(K(PEG3-Palm))GWVCK-NH2(配列番号22)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGPRSKGWVC(K(PEG3-Palm))-NH2(配列番号23)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFGPRSKGWVC(K(PEG8))-NH2(配列番号24)、
イソ吉草酸-DTHFPCI(K(isoGlu-Palm))FEPRSKGCK-NH2(配列番号25)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKF-K(isoGlu-Palm)-PRSKGCK-NH2(配列番号26)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEP(K(isoGlu-Palm))SKGCK-NH2(配列番号27)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEP(K(isoGlu-Palm))SKGWECK-NH2(配列番号28)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRS(K(isoGlu-Palm))GCK-NH2(配列番号29)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRSK(K(isoGlu-Palm))CK-NH2(配列番号30)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRSKGCK(K(isoGlu-Palm))-NH2(配列番号31)、
イソ吉草酸-DTHFPCI-K(Dapa-Palm)-FEPRSKGCK-NH2(配列番号32)、
イソ吉草酸-DTHFPCIK(F(Dapa-Palm))PRSKGCK-NH2(配列番号33)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEP(K(Dapa-Palm))SKGCK-NH2(配列番号34)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRS(K(Dapa-Palm))GCK-NH2(配列番号35)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRSK(K(Dapa-Palm))CK-NH2(配列番号36)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRSKGC(K(Dapa-Palm))K-NH2(配列番号37)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRSKGC(K(Dapa-Palm))-NH2(配列番号38)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKF(K(PEG11-Palm))PRSK[Sar]CK-NH2(配列番号39)、
イソ吉草酸-DTHFPCIKF-NH2(配列番号40)、
Hy-DTHFPCIKF-NH2(配列番号41)、
イソ吉草酸-DTHFPCIIF-NH2(配列番号42)、
Hy-DTHFPCIIKF-NH2(配列番号43)、
イソ吉草酸-DTKFPCIIF-NH2(配列番号44)、又は
Hy-DTKFPCIIF-NH2(配列番号45)、
任意選択で、ペプチドは、ペプチドの2つのCysアミノ酸残基の間にジスルフィド結合を含む。
【0078】
特定の実施形態では、ペプチドは、
【化1】
イソ吉草酸-DTHFPCIKF(K(PEG3-Palm))PRSKGWVCK-NH
2(配列番号20)、
【化2】
イソ吉草酸-DTHFPCI(K(isoGlu-Palm))FEPRSKGCK-NH
2(配列番号25)、
【化3】
イソ吉草酸-DTHFPCIKF(K(isoGlu-Palm))PRSKGCK-NH
2(配列番号26)、
【化4】
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEP(K(isoGlu-Palm))SKGCK-NH
2(配列番号27)、及び
【化5】
イソ吉草酸-DTHFPCIKFEPRS(K(isoGlu-Palm))GCK-NH
2(配列番号29)からなる群から選択され、
アミノ酸は、L-アミノ酸である。
【0079】
ヘプシジン模倣体を含む本明細書に開示されるペプチドは、化学合成、組換えDNA法を使用する生合成又はインビトロ合成、及び固相合成を含む当技術分野で知られている方法を使用して生成されてもよい。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、PCT出願公開番号WO2014/145561及びWO2015/200916、Kelly&Winkler(1990)Genetic Engineering Principles and Methods, vol.12,J.K.Setlow ed.,Plenum Press,NY,pp.1-19、Merrifield(1964)J Amer Chem Soc 85:2149、Houghten(1985)PNAS USA 82:5131-5135、及びStewart&Young(1984)Solid Phase Peptide Synthesis,2ed.Pierce,Rockford,ILを参照されたい。本明細書に開示されるペプチドは、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、イオン交換若しくは免疫親和性クロマトグラフィー、濾過若しくはサイズ排除、又は電気泳動などの当技術分野で知られているタンパク質精製技術を使用して精製され得る。参照により本明細書に組み込まれる、Olsnes,S.and A.Pihl(1973)Biochem.12(16):3121-3126、及びScopes(1982)Protein Purification,Springer-Verlag,NYを参照されたい。あるいは、ペプチドは、当技術分野で知られている組換えDNA技術によって作製されてもよい。
【0080】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるペプチドは、PEG化されてもよい。本明細書で使用される場合、「ポリエチレングリコール」又は「PEG」は、一般式H-(O-CH2-CH2)n-OHのポリエーテル化合物である。PEGは、それらの分子量に応じて、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide、PEO)又はポリオキシエチレン(polyoxyethylene、POE)としても知られている。PEG、PEO、又はPOEは、本明細書で使用される場合、エチレンオキシドのオリゴマー又はポリマーを指す。これらの3つの名称は化学的に同義であるが、PEGは、20,000Da未満の分子量を有するオリゴマー及びポリマーを、PEOは、20,000Da超の分子量を有するポリマーを、POEは、任意の分子量のポリマーを指す傾向がある。PEG及びPEOは、それらの分子量に応じて、液体又は低融点固体である。本開示を通して、これらの3つの名称は、区別することなく使用される。PEGは、エチレンオキシドの重合によって調製され、300Da~10,000,000Daの広範な分子量にわたって市販されている。異なる分子量を有するPEG及びPEOは、異なる用途で利用されており、鎖長効果に起因して異なる物理的特性(例えば、粘度)を有するが、それらの化学的特性はほぼ同一である。PEG部分としては、ポリエチレングリコール(PEG)、PEGのホモポリマー若しくはコポリマー、PEGのモノメチル置換ポリマー(mPEG)、又はポリオキシエチレングリセロール(POG)が挙げられる。例えば、Int.J.Hematology 68:1(1998)、Bioconjugate Chem.6:150(1995)、及びCrit.Rev.Therap.Drug Carrier Sys.9:249(1992)を参照されたい。半減期延長の目的のために調製されるPEG、例えば、モノ-メトキシ末端ポリエチレングリコール(mPEG)などのモノ活性化アルコキシ末端ポリアルキレンオキシド(POA)も包含され、ビス活性化ポリエチレンオキシド(グリコール)又は他のPEG誘導体も企図される。好適なPEGは、例えば、約200Da~約40,000Da、又は約200Da~約60,000Daの範囲の重量で実質的に変化し、それらのいずれかが本開示の目的のために使用され得る。特定の実施形態では、200Da~2,000Da又は200Da~500Daの分子量を有するPEGが使用される。異なる形態のPEGはまた、重合プロセスに使用される開始剤に応じて、使用されてもよく、一般的な開始剤は、単官能性メチルエーテルPEG、又はメトキシポリ(エチレングリコール)(略して、mPEG)である。低分子量PEGは、単分散、均一、又は個別と称される、純粋なオリゴマーとしても入手可能である。これらは、本開示の特定の実施形態で使用される。
【0081】
PEGは、異なる形状でも入手可能であり、分岐状PEGは、中心コア基から出る3~10個のPEG鎖を有し、星状PEGは、中心コア基から出る10~100個のPEG鎖を有し、櫛状PEGは、ポリマー骨格上に通常グラフトされた複数のPEG鎖を有する。PEGは、直鎖状でもあり得る。PEGの名称にしばしば含まれる数字は、それらの平均分子量を示し(例えば、n=9のPEG)は、およそ400ダルトンの平均分子量を有し、PEG400とラベル付けされるであろう。
【0082】
本明細書で使用される場合、「PEG化」は、本発明のペプチド阻害剤にPEG構造を共有結合する作用であり、そしてこれは「PEG化ペプチド阻害剤」と呼ばれる。特定の実施形態では、PEG化側鎖のPEGは、約200Da~約40,000Daの分子量を有するPEGである。
【0083】
様々な実施形態では、薬剤は、1つ以上の薬学的に許容される希釈剤、担体、又は賦形剤を含む医薬組成物中に存在する。薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とは、任意のタイプの非毒性の固体、半固体、又は液体充填剤、希釈剤、封入材料、又は製剤補助剤を指す。「薬学的に許容される担体」という用語には、標準の医薬担体のうちのいずれかが含まれる。治療的使用のための薬学的に許容される担体は、薬学分野でよく知られており、例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”,17th edition,Alfonso R.Gennaro(Ed.),Mark Publishing Company,Easton,PA,USA,1985に記載されている。例えば、弱酸性又は生理的pHの滅菌生理食塩水及びリン酸緩衝生理食塩水が使用され得る。好適なpH緩衝剤は、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、重炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、ヒスチジン、アルギニン、リジン若しくは酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウムとして)、又はそれらの混合物であり得る。この用語は、ヒトを含む動物に使用するために米国薬局方に列記されている任意の担体剤を更に包含する。
【実施例】
【0084】
以下の実施例は、本発明の特定の具体的な実施形態を示す。別途詳細に記載した場合を除いて、以下の実施例は、当業者によく知られており、日常的な標準技術を使用して実施した。これらの実施例が例証のみを目的としており、本発明の条件又は範囲に関して完全に決定的であると主張するものではないことを理解されたい。したがって、それらは、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
略称:
DCM:ジクロロメタン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
NMP:N-メチルピロリドン
HBTU:O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HATU:2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド
NHS:N-ヒドキシスクシンイミド
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
EtOH:エタノール
Et2O:ジエチルエーテル
Hy:水素
TFA:トリフルオロ酢酸
TIS:トリイソプロピルシラン
ACN:アセトニトリル
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
ESI-MS:エレクトロスプレーイオン化質量分析
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
Boc:t-ブトキシカルボニル
Fmoc:フルオレニルメチルオキシカルボニル
Acm:アセトアミドメチル
IVA:イソ吉草酸(又はイソバレリル)
【0085】
K( ):本明細書に提供されるペプチド配列では、化合物又は化学基がリジン残基の直後の括弧内に提示されており、括弧内の化合物又は化学基は、リジン残基にコンジュゲートされた側鎖であると理解されたい。したがって、例えば、決して限定されるものではないが、K-[(PEG8)]-は、PEG8部分がこのリジンの側鎖にコンジュゲートされていることを示す。
【0086】
Palm:パルミチン酸(パルミトイル)のコンジュゲーションを示す。
【0087】
本明細書で使用される場合、「C()」は、特定のジスルフィド架橋に関与するシステイン残基を指す。例えば、ヘプシジンでは、4つのジスルフィド架橋があり、1つ目は2つのC(1)残基の間にあり、2つ目は2つのC(2)残基の間にあり、3つ目は2つのC(3)残基の間にあり、4つ目は2つのC(4)残基の間にある。したがって、いくつかの実施形態では、ヘプシジンの配列は、以下:
Hy-DTHFPIC(1)IFC(2)C(3)GC(2)C(4)HRSKC(3)GMC(4)C(1)KT-OH(配列番号65)のように記述され、他のペプチドの配列も任意選択で同じ様式で記述され得る。
【0088】
実施例1
ペプチド類似体の合成
別段で特定しない限り、以下で用いた試薬及び溶媒は、標準実験室試薬又は分析グレードで市販されているものであり、更に精製することなく使用した。
【0089】
ペプチド固相合成の手順
本発明のペプチド類似体を、最適化された9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)固相ペプチド合成プロトコルを使用して化学的に合成した。C末端アミドについては、リンクアミド樹脂を使用したが、C末端酸を生成するためにWang樹脂及びトリチル樹脂も使用した。側鎖保護基は、以下のとおり、Glu、Thr、及びTyr:O-tブチル;Trp及びLys:t-Boc(t-ブチルオキシカルボニル);Arg:N-ガンマ-2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル;His、Gln、Asn、Cys:トリチルであった。選択的なジスルフィド架橋形成のために、Acm(アセトアミドメチル)もCys保護基として使用した。カップリングのために、DMF中にFmocアミノ酸、HBTU、及びDIPEA(1:1:1.1)を含有する4~10倍過剰の溶液を、膨潤した樹脂に添加した[HBTU:O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン、DMF:ジメチルホルムアミド]。HATU(O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3,-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)をHBTUの代わりに使用して、困難な領域におけるカップリング効率を改善した。Fmoc保護基の除去を、DMF、ピペリジン(2:1)溶液で処理することにより達成した。
【0090】
樹脂からのペプチド切断の手順
本発明のペプチド類似体(例えば、化合物2)の側鎖脱保護及び切断を、トリフルオロ酢酸、水、エタンジチオール、及びトリ-イソプロピルシラン(90:5:2.5:2.5)を含有する溶液中で、乾燥樹脂を2~4時間撹拌することによって達成した。TFA除去の後、氷冷ジエチルエーテルを使用してペプチドを沈殿させた。溶液を遠心分離し、エーテルをデカントし、続いて、第2のジエチルエーテル洗浄を行った。0.1%TFA(トリフルオロ酢酸)を含有するアセトニトリル、水(1:1)溶液中にペプチドを溶解させ、得られた溶液を濾過した。エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)を用いて直鎖状ペプチドの質を評価した。
【0091】
ペプチド精製の手順
本発明のペプチド(例えば、化合物2)の精製は、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を使用して達成した。分析は、C18カラム(3μm、50×2mm)を1mL/分の流量で使用して行った。直鎖状ペプチドの精製は、C18カラム(5μm、250×21.2mm)を用いた分取RP-HPLCを20mL/分の流量で使用して達成した。分離は、A中の緩衝液Bの線形勾配を使用して達成した(緩衝液A:0.05%TFA水溶液、緩衝液B:0.043%TFA、90%アセトニトリル水溶液)。
【0092】
ペプチド酸化の手順。
方法A(単一ジスルフィド酸化)。本発明の非保護ペプチドの酸化は、MeOH中のヨウ素(1mL当たり1mg)を溶液(ACN:H2O、7:3、0.5%TFA)中のペプチドに滴下添加することによって達成した。2分間撹拌した後、溶液が透明になるまでアスコルビン酸を少量ずつ添加し、精製のために試料をHPLCに直ちに充填した。
【0093】
方法B(2つのジスルフィドの選択的酸化)。2つ以上のジスルフィドが存在する場合、選択的酸化がしばしば実施された。遊離システインの酸化は、1mg/10mLのペプチドでpH7.6のNH4CO3溶液で達成した。24時間撹拌した後で、精製の前に、溶液をTFAでpH3に酸性化し、続いて凍結乾燥した。次いで、得られた単一の酸化ペプチド(ACM保護システインを含む)を、ヨウ素溶液を使用して酸化/選択的脱保護した。ペプチド(2mL当たり1mg)をMeOH/H20に溶解し、反応溶媒に溶解した80:20ヨウ素を室温で反応物(最終濃度:5mg/mL)に添加した。溶液を7分間撹拌した後、溶液が透明になるまでアスコルビン酸を少量ずつ添加した。次いで、溶液をHPLCに直接充填した。
【0094】
方法C(自然酸化)。2つ以上のジスルフィドが存在し、選択的酸化を行わない場合、自然酸化を行った。酸化及び還元されたグルタチオン(ペプチド/GSH/GSSG、1:100:10モル比)(ペプチド:GSSG:GSH、1:10、100)の存在下で、100mMのNH4CO3(pH7.4)溶液を用いて自然酸化を達成した。24時間撹拌した後で、RP-HPLC精製の前に、溶液をTFAでpH3に酸性化し、続いて凍結乾燥した。
【0095】
二量体を生成するためのシステイン酸化の手順。本発明の非保護ペプチドの酸化は、MeOH中のヨウ素(1mL当たり1mg)を溶液(ACN:H2O、7:3、0.5%TFA)中のペプチドに滴下添加することによって達成した。2分間撹拌した後、溶液が透明になるまでアスコルビン酸を少量ずつ添加し、精製のために試料をHPLCに直ちに充填した。
【0096】
二量体化の手順。
1当量(「eq」と略される)の酸を、0.1Mの最終濃度で、2.2当量のNMP(N-メチルピロリドン)中のN-ヒドキシスクシンイミド(NHS)及びジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)の両方を用いて処理することによって、グリオキシル酸(DIG)、IDA、又はFmoc-β-Ala-IDAを、N-ヒドキシスクシンイミドエステルとして予め活性化した。PEG13リンカー及びPEG25リンカーについては、これらの化学物質を購入し、活性化スクシンイミドエステルとして予め形成した。約0.4当量の活性化エステルを、NMP中のペプチド(1mg/mL)に少量ずつゆっくりと添加した。溶液を10分間撹拌したままにした後、約0.05当量のリンカーの2~3つの追加のアリコートをゆっくりと添加した。溶液を更に3時間撹拌したままにした後、溶媒を真空下で除去し、残渣を逆相HPLCにより精製した。追加の逆相HPLC精製の前に、DMF中の20%ピペリジン中のペプチドを撹拌する追加のステップ(2×10分)を実施した。
【0097】
当業者は、ペプチド合成の標準的な方法が本発明の化合物を生成するのに使用され得ることを理解するであろう。
【0098】
リンカーの活性化及び二量体化
以下に記載されるように、ペプチド単量体サブユニットを連結して、ヘプシジン類似体ペプチド二量体を形成した。
【0099】
小規模のDIGリンカー活性化手順:5mLのNMPを、IDA二酸(304.2mg、1mmol)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS、253.2mg、2.2当量、2.2mmol)及び撹拌バーを含むガラスバイアルに添加した。混合物を室温で撹拌して、固体出発材料を完全に溶解した。次いで、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、453.9mg、2.2当量、2.2mmol)を混合物に添加した。沈殿物は10分以内に現れ、反応混合物を室温で一晩更に撹拌した。次いで、反応混合物を濾過して、沈殿したジシクロヘキシル尿素(DCU)を除去した。活性化リンカーを、二量体化に使用する前に、密閉したバイアルに保持した。活性化リンカーの公称濃度は、およそ0.20Mであった。
【0100】
PEGリンカーを使用した二量体化については、予めの活性化ステップは関与しなかった。市販の予め活性化された二官能性PEGリンカーを使用した。
【0101】
二量体化手順:2mLの無水DMFを、ペプチド単量体(0.1mmol)を含むバイアルに添加した。ペプチドのpHは、DIEAで8~9に調整した。次いで、活性化リンカー(IDA又はPEG13、PEG25)(単量体に対して0.48eq、0.048mmol)を単量体溶液に添加した。反応混合物は、室温で1時間撹拌した。二量体化反応の完了は、分析HPLCを使用して監視した。二量体化反応の完了にかかった時間は、リンカーに応じて異なった。反応の完了後、ペプチドを冷エーテル中で沈殿させ、遠心分離した。上清エーテル層は、廃棄した。沈殿ステップは、2回繰り返した。次いで、逆相HPLC(Luna C18支持体、10u、100A、移動相A:0.1%TFAを含む水、移動相B:0.1%TFAを含むアセトニトリル(ACN)、15%Bの勾配及び60分間にわたって45%Bに変化、流量15ml/分)を使用して、粗製の二量体を精製した。次いで、純粋な生成物を含む画分を凍結乾燥機で凍結乾燥した。
【0102】
半減期延長部分のコンジュゲーション
ペプチドのコンジュゲーションは樹脂上で行った。Lys(ivDde)を主要なアミノ酸として使用した。樹脂上にペプチドを構築した後、3×5分のDMF中の2%ヒドラジンを使用して、ivDde基の選択的脱保護を5分間行った。3時間のHBTU、DIEA 1~2当量を使用したリンカーの活性化及びアシル化、並びにFmoc除去に続いて、脂質酸を用いた第2のアシル化により、コンジュゲートされたペプチドを得た。
【0103】
実施例2
遺伝性ヘモクロマトーシスマウスにおけるヘプシジン模倣ペプチドの薬力学
鉄及び他のマーカーを調節するヘプシジン模倣体の能力を、遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)のマウスモデルで決定した。HHマウス(129S-Hjv
tm1Nca/J)を、8週齢まで低鉄食(約2ppmの鉄)下で維持し、次いで、正常食(約260ppmの鉄)で5週間鉄負荷した。次いで、マウスを、正常鉄食下で化合物25(2.5mg/kg、Q2D)を用いて治療した。全ての測定は、最終投与から48時間後(トラフ薬物レベルにおいて)であった。化合物25は、遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)マウスにおいて、鉄過剰条件下で、TSAT%の持続的な低減及び脾臓への鉄の再分布を引き起こした(
図1)。鉄過剰のHHマウスでは、化合物25(5mg/kg、Q2D)の12回投与後に、TSAT%は、トラフ薬物レベルで約10%低減された。これには、フェリチンの低下、及び脾臓への鉄の再分布が伴った。肝臓、膵臓、及び腎臓において鉄蓄積が低減された。
【0104】
HHマウスでは、それほど重度でない鉄過剰条件下で、化合物25で2週間治療した群において肝臓の鉄蓄積が防止された(
図2A及び
図2B)。HHマウスは、療法開始時に異なるレベルの鉄過剰を達成するために、低鉄食又は正常鉄食のいずれかで2週間維持することによって、異なるレベルまで鉄負荷された。次いで、マウスを、正常鉄食下で化合物25(2.5mg/kg、Q2D)を用いて治療した。臓器鉄濃度は、ICP-MS法(総鉄)又は比色アッセイ(非ヘム鉄)によって評価した。統計分析:ダネットの多重比較を伴う一元配置ANOVA又はウェルチ補正を伴うt検定。
【0105】
図2Aに示されるように、療法開始まで鉄蓄積を防止するために低鉄食で維持された「非疾患」マウスは、肝臓鉄の低減を示し、化合物25が食事からの鉄の過剰吸収を防止して、したがって肝臓におけるTSAT%及び鉄蓄積の上昇を防止することを証明している。
図2Bに示されるように、部分的な鉄過剰を可能にするために、治療前の2週間、正常食を維持したマウスも、鉄肝臓の低減を示した。この場合、化合物25は、肝臓での更なる鉄蓄積を防止した(ビヒクルと比較して)だけでなく、肝臓から離れて鉄を再分配した。
【0106】
これらの研究は、高い鉄過剰状態(TSAT%>90%、重度の疾患)から開始して、脾臓マクロファージ(大量の鉄を貯蔵する機能を備えている)に鉄を閉じ込める結果としてのTSAT%の低下が、臓器(例えば、膵臓、腎臓)における鉄蓄積の低減と関連することを証明している。それらはまた、トラフ薬物レベル、特に正常レベル未満のTSAT%が、臨床的有効性の血清バイオマーカー(例えば、臓器の鉄過剰)であることも示している。
【0107】
これらの研究は、ヘプシジン模倣ペプチド、例えば化合物25を用いた治療が、例えば、脾臓マクロファージでの鉄の隔離を通して血清TSAT%及び不安定な鉄を低下させて、鉄負荷を防止及び逆転させることにより、一次鉄過剰及び二次鉄過剰のヘモクロマトーシス患者に潜在的に利益をもたらすことを示している。
【0108】
実施例3
遺伝性ヘモクロマトーシス患者におけるヘプシジン模倣ペプチドの有効性
HH患者において臨床的有効性研究を実施した。対象は、最大24週間、皮下の化合物25を与えられた。対象は、皮下で1週間当たり10mgの初期用量で開始された。用量は、忍容性及び薬力学的マーカーTSATに基づいて、1週間当たり20mg、続いて、必要に応じて1週間当たり40mg及び80mgに増加させた。更に、週2回の10mg、20mg、30mg、及び40mgの皮下投与スケジュール(1日目及び4日目又は5日目のいずれかを試験した)。大多数の患者は、1週間当たり20mg以下の用量を投与された。対象の安全性及び血中鉄パラメータ(血清鉄、血清フェリチン、トランスフェリン、及びTSAT)を収集して、化合物25の薬力学的効果を監視した。瀉血の必要性及びQoLデータにおける効果(36項目短形式健康調査(36-Item Short Form Health Survey)[SF-36]、及び変化の患者全般的印象(Patient’s Global Impression of Change)[PGI-C])も収集し、集計した。
【0109】
個々の対象の用量及びスケジュールは、投与後の2つの時点で測定された薬力学(pharmacodynamic、PD)マーカーTSATに基づいて決定した(投与の1日後にピークPD効果において1回、トラフPD効果において1回)。用量及びスケジュール調整の意図は、TSAT及び血清鉄レベルを低減することであった。必要に応じて、化合物25の用量を、10mgから20mgに、及び必要に応じて、TSATが、投与の1日後のピークPD効果及び化合物25の次の投与前のトラフPD効果において約40%未満になるまで、30mg、40mg、及び80mgに順次毎週増加させた。投与は、1週間に1回又は1週間に2回であった。トラフPD効果は、週1回の投与については化合物25の投与の7日後(及び次の投与の前)に、又は週2回の投与については1週間において初回の投与の7日後に測定されたTSAT値であった。週2回のレジメンについては、用量を少なくとも3日間隔(例えば、各週の1日目及び4日目又は5日目)で与えた。週2回の化合物25用量は、週2回最大40mgまで増加させた。用量増加及び治療用量の特定を容易にするために、研究者らは、任意の用量調整のために対象がクリニックに来た日のTSAT値を評価した。
【0110】
患者は、少なくとも1か月当たり0.25回の以前の瀉血頻度(例えば、過去12か月間に少なくとも3回の瀉血、又は過去15か月間に少なくとも4回の瀉血を受けた)、及び1か月当たり1回未満の瀉血頻度、11.5g/dL超のヘモグロビン、及び300ng/mL未満の血清フェリチンをスクリーニング時(瀉血スクリーニングの前)に有した。
方法:この単一群、非盲検、用量設定第2相研究は、1か月当たり0.25回~1回の瀉血頻度での治療の前に、少なくとも6か月間(mos)、記録された安定した瀉血(phl)を受けていた、確認されたHHを有する患者(pts)における皮下ヘプシジン模倣体(化合物25)を調査した。臨床的に意義のある検査所見の異常を有する患者、及び鉄キレート療法又は赤血球アフェレシスを受けている患者は除外された。
図3に概説されるように、患者は、トランスフェリン飽和度(TSAT)を45%未満に維持するために個々に漸増された化合物25用量を1週間に1回又は2回与えられ、6か月間追跡された。個々の用量を
図11に示す。評価項目には、TSAT、血清鉄、血清トランスフェリン及び血清フェリチン、フェリスキャンMRIによって測定される肝鉄含量(liver iron content、LIC)、有害事象、並びに変化の患者全般的印象(PGI-C)及び医学的転帰研究アンケートの短形式健康調査(SF-36)に関する患者報告結果が含まれた。化合物25は、緩衝水溶液中で製剤化した。
結果:16人の患者(男性10人/女性6人)が登録された。平均の年齢及び体重は、それぞれ62.5歳及び88.1kgであった。LIC値は、研究期間中の瀉血の最小限の使用で、研究前のレベルに維持された。研究前の6か月間では、研究中の0.03phb/月と比較して、研究前の平均瀉血(phl)率は0.27phl/月であった(p<0.0001)。研究評価項目には、安全性、瀉血の低減、血清鉄、TSAT、トランスフェリン、フェリチン、MRIによる肝鉄含量、有害事象が含まれた。化合物25は、治療期間中、大多数の対象において瀉血を排除することができた(
図4A及び
図4B)。化合物25を用いた治療はまた、平均TSATレベルの統計的に有意な低減を示した(
図5A及び
図5B)。平均ベースラインTSATは、研究中の30.4%と比較して45%であった(p=0.0025)。ベースラインで45%超のTSATを有する特定の患者については、化合物25を用いた治療は、瀉血ができなかった場合、TSATを45%未満に、又は45%近くに低減させた。化合物25を用いた治療は、平均血清鉄の低減を更にもたらした(
図6)。血清鉄は、研究前の24.5μmol/Lから、研究中に平均17.7μmol/mLに低減し(p=0.0059)、又はベースラインで137ug/dLから、化合物25を用いた治療後に98.6ug/dLに低減した。血清鉄及びTSATにおいて用量依存的及び濃度依存的な低減があった(
図7)。血清フェリチンレベル及び血清トランスフェリンレベルは、ベースラインから化合物25を用いた治療後まで比較的一定に維持された(
図8)。化合物25を用いた治療は、ベースライン又は化合物25を用いた治療後で統計的に有意な差なしに、肝鉄含量を維持した(
図9)。ヘマトクリット、赤血球、白血球、又は血小板などの血液パラメータに顕著な変化はなかった。患者報告結果を決定し、化合物25を用いた治療後のSF-36の日常役割機能(身体)サブコンポーネント及び日常役割機能(精神)サブコンポーネントに改善が認められた(
図10)。化合物25は、概して良好な忍容性であった。全ての治療関連有害事象は、CTCAEグレード1又は2として特徴付けられた。
【0111】
6か月間以上の安定的な研究前瀉血(12か月当たり3回以上の瀉血又は15か月当たり4回以上の瀉血を必要とする)を伴う鉄減少の維持段階にあるHH患者16人における6か月間の非盲検研究から得られた結果の概要を、
図14に示す。
結論:化合物25は、血清鉄及びTSATレベルの低減において薬理学的効果を証明した。これらの薬力学的効果は、瀉血の必要性の低減、LICの制御、及び患者報告結果における臨床的に意義のある変化に対応していた。これらのデータは、化合物25が瀉血の非存在下でLICを制御することを示している。化合物25は、HHを有する患者において良好な忍容性であった。これらのデータは、HHの治療としての化合物25及び他のヘプシジン模倣体を支持している。
【0112】
実施例4
ヘプシジン模倣ペプチドの薬力学的制御
鉄は、正常な細胞機能の重要な成分であり、代謝の調節不全は、疾患の形成及び/又は進行に寄与する。化合物25は、食事からの鉄の吸着を遮断し、血清鉄を脾臓マクロファージに迅速に再分布させることによって、体内の鉄貯蔵を制御する。化合物25による鉄恒常性の回復は、健康な鉄貯蔵、鉄欠乏、及び組織鉄過剰を有する対象において証明された。
【0113】
本実施例では、皮下投与された化合物の薬力学的制御を健康なボランティア及びHH患者において調べた。
【0114】
第1の研究では、健康なヒトボランティアに、プラセボ又は化合物25の単回用量(1mg、3mg、10mg、20mg、40mg、又は80mg)を皮下投与した。対象の血清TSATレベルは、投与後6日間にわたる血清鉄貯蔵量の代用として決定し、対象の平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)レベルは、投与後6日間にわたる赤血球の完全性の代用として決定した。
図12に示されるように、対象は、1日未満でTSATレベルの用量応答性の低減を示し、これは、次の5~6日間にわたって徐々に増加した。
【0115】
第2の研究では、維持段階のHH患者及び輸血依存性β-サラセミア患者に化合物25を皮下投与し、それらのTSATレベル及びMCHCレベルを、化合物25投与の前及び化合物25投与の24週間後に決定した。
図13に示されるように、対象のTSATレベル及びMCHCレベルは、治療後に低減された。
【0116】
これらの研究は、ヒトにおける化合物25の用量関連で一貫した薬力学的制御、並びに化合物25を用いたHH患者の治療後の血清鉄貯蔵及びRBC完全性の両方における改善を証明し、過剰な鉄によるHH及び関節症を含むがこれらに限定されない、HHを治療するために化合物25及び他のヘプシジン模倣体を使用することを支持している。
【0117】
本明細書中で言及され、及び/又は本出願データシートに列挙される上記の米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願書、外国特許、外国特許出願書、及び非特許公報は全て、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0118】
前述から、本発明の具体的な実施形態が例証目的のために本明細書に説明されているが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正が加えられてもよいことが理解されるであろう。
【配列表】
【国際調査報告】