(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】希土類元素の分離のためのタンパク質を含む組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/14 20060101AFI20240517BHJP
C07K 1/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C07K1/14 ZNA
C07K1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577148
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 US2022033462
(87)【国際公開番号】W WO2022266120
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520098419
【氏名又は名称】ローレンス リバモア ナショナル セキュリティ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(71)【出願人】
【識別番号】505098708
【氏名又は名称】ザ ペン ステイト リサーチ ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100111501
【氏名又は名称】滝澤 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】パーク ダン マクファーランド
(72)【発明者】
【氏名】デブロンド ゴーチエ
(72)【発明者】
【氏名】ドン ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ ヨンチン
(72)【発明者】
【氏名】マトックス ジョセフ アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】コトルボ ジョセフ アルフレッド
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045EA60
(57)【要約】
この開示は、REEの優先的な分離のためのREE結合タンパク質、加えてその使用方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
REE含有材料中に存在する非REE元素から希土類元素(REE)を分離するための方法であって、
a)1種又は複数種のREEと選択的に結合できるタンパク質を提供する工程;
b)所定量の前記タンパク質をREE含有材料と接触させる工程であって、前記タンパク質が1種又は複数種のREEの少なくとも一部と結合して、1つ又は複数のタンパク質-REE複合体及びREE枯渇材料を形成する、前記工程;
c)前記REE枯渇材料の少なくとも一部から前記1つ又は複数のタンパク質-REE複合体を分離する工程;並びに
d)前記1種又は複数種のREEを前記タンパク質から分離して、前記1種又は複数のREEの精製された画分及び再生された前記タンパク質を生産する工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
再生されたタンパク質を再使用して、工程(a)~(d)を行う工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分離する工程(c)が、REE含有材料から1種又は複数種のREEを分離する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
分離する工程(c)が、1種若しくは複数種の個々のREE、REEのグループ、周期表において互いに隣接するREE、類似のイオン半径を有するREE、又はそれらの組合せを優先的に分離する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
タンパク質が、REE含有材料中の非REEと結合しない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
タンパク質が、LanMである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
LanMが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
LanMが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4からなる群から選択される配列と、少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
LanMが、C末端システイン残基、N末端システイン残基、又は内部システイン残基を含む、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
システイン残基が、グリシンセリンアミノ酸リンカーを介してLanMに連結されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
タンパク質が、工程(c)において、2~約10のpHで、1種又は複数種のREEの少なくとも一部と結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
REEが、工程(d)において、約2未満のpHでタンパク質から分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
REEが、工程(d)において、水溶性有機キレート化剤を使用してタンパク質から分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
REE材料が、希土類鉱石、地熱塩水、石炭、石炭副産物、採掘尾鉱、酸性鉱山排水、リン酸石膏、保守終了製品、電子機器廃棄物、産業排水、又はREE源から生じた総REE混合物、例えばこれらの鉱石から得られた塩(例えば酸化物、シュウ酸塩、炭酸塩など)から得られた浸出液である、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項15】
REE含有材料が、低グレードの材料、高グレードの材料、又はそれらの組合せである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項16】
希土類元素(REE)分離のための材料を調製するための方法であって、
a)REEと選択的に結合できるタンパク質と、コンジュゲーション剤で官能化した多孔質支持体材料とを提供する工程;
b)前記タンパク質を、前記コンジュゲーション剤により前記多孔質支持体材料に結合させる工程
を含む、前記方法。
【請求項17】
工程(a)の前に、多孔質支持体材料をコンジュゲーション剤で官能化する工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
コンジュゲーション剤が、マレイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ジベンゾシクロオクチン-N-ヒドロキシスクシンイミド(DBCO-NHS)、ビシクロノニン-N-ヒドロキシスクシンイミド(BCN-NHS)、及びジベンゾシクロオクチン-スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミド(DBCO-スルホ-NHS)、又はアルキン部分から選択される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
タンパク質が、LanMである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
LanMが、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
LanMが、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3からなる群から選択される配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
LanMが、C末端システイン残基、N末端システイン、又は内部システインを含む、請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
システインが、グリシンセリンアミノ酸リンカー又は親水性リンカーを介してLanMに連結されている、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
多孔質支持体材料がアガロースマイクロビーズである、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
タンパク質がシステイン残基を含むLanMであり、タンパク質を多孔質支持体材料に結合させる工程が、クリックケミストリーによりC末端システイン残基をコンジュゲーション剤と反応させることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
タンパク質を多孔質支持体材料に結合させる工程が、水性条件下で行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ビーズ材料が高濃度のLanMを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
高濃度が、多孔質支持体材料の総体積の1mL当たり、少なくとも約2μmol、約3μmol、約4μmol、約5μmol、約6μmol、約7μmol、約8μmol、約9μmol又は約10μmolのLanMである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
タンパク質が、多孔質支持体材料内に埋め込まれているか、及び/又はその表面上にある、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
ビーズをカラム、膜、ビーズ、又はそれらの組合せに組み込む工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1種のREEと選択的に結合できるタンパク質を含む、希土類元素(REE)分離のための生物吸着剤であって、前記タンパク質がビーズ内に埋め込まれているか又はその表面にある、前記生物吸着剤。
【請求項32】
タンパク質がLanMである、請求項31に記載のビーズ。
【請求項33】
LanMが、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
LanMが、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3からなる群から選択される配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
LanMが、C末端システイン残基、N末端システイン、又は内部システインを含む、請求項33又は34に記載のビーズ。
【請求項36】
システインが、グリシンセリンアミノ酸リンカー又は親水性リンカーを介してLanMに連結されている、請求項35に記載のビーズ。
【請求項37】
ビーズがアガロースを含む、請求項31に記載のビーズ。
【請求項38】
ビーズ中のタンパク質の濃度が、ビーズの総体積の1mL当たり、少なくとも約2μmol、約3μmol、約4μmol、約5μmol、約6μmol、約7μmol、約8μmol、約9μmol又は約10μmolのタンパク質である、請求項31に記載のビーズ。
【請求項39】
REE含有材料から希土類元素(REE)を優先的に分離する方法であって、
(a)1種又は複数種のREEと選択的に結合することができる複数のタンパク質を提供する工程;
(b)前記複数のタンパク質をREE含有材料と接触させる工程であって、前記複数のタンパク質は1種又は複数種のREEの少なくとも一部と結合して、複数のタンパク質-REE複合体及びREE枯渇材料を形成する、前記工程;
(c)前記REE枯渇材料の少なくとも一部から前記複数のタンパク質-REE複合体を分離する工程;
(d)前記複数のタンパク質-REE複合体を第1のpHを含む溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質から重REE(HREE)を優先的に分離する工程;
(g)前記複数のタンパク質-REE複合体を、キレート化剤を含む溶液又は第2のpHを有する溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質からMREEを分離する工程;及び
(h)前記複数のタンパク質-REE複合体を第3のpHを含む溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質からLREEを分離する工程
を含む、前記方法。
【請求項40】
第1の吸収/脱離サイクル(「第1のサイクル」)を含む、REE含有材料から希土類元素(REE)を分離するための方法であって、前記第1のサイクルが、
a)バイオソープション材料を含有するカラムを、REE含有材料でローディングする工程であって、前記バイオソープション材料が、前記REE含有材料中に存在するREEを吸着して、1つ又は複数のタンパク質-REE複合体を形成することが可能なタンパク質を含む、前記工程;及び
b)前記1つ又は複数のタンパク質-REE複合体から1種若しくは複数のREE又はREEの1つ若しくは複数のグループを優先的に分離させることが可能な第1の溶液で、第1のREEが富化された画分を溶出させる工程を含む脱離プロセスを使用して、前記1つ又は複数のタンパク質-REE複合体から1種若しくは複数のREE又はREEの1つ若しくは複数のグループを分離する工程
を含む、前記方法。
【請求項41】
第1の溶液が第1の選択されたpHを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
第1の選択されたpHが、約3.0又はそれ未満である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
第1の選択されたpHが、約2.5又はそれ未満である、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
第1の選択されたpHが、約2.0又はそれ未満である、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
第1の選択されたpHが、約1.5である、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
第1の溶液が、EDTA、クエン酸塩、ジメルカプロール、マロン酸塩、イミノ二酢酸塩、ジグリコール酸、ヒドロキシイソ酪酸、カテコール、ポリアミノカルボキシレート、ヒドロキシピリジノン、又はヒドロキサメートから選択されるキレート化剤を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
第1の溶液が約3.0mMのクエン酸塩を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
第1の溶液が約15.0mMのクエン酸塩を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
第1の溶液が約30.0mMのクエン酸塩を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
脱離プロセスが、1つ又は複数のタンパク質-REE複合体から1種又は複数種のREEを脱離させることが可能な第2の溶液を用いて、第2のREEが富化された画分をカラムから溶出させる第2の工程をさらに含む、請求項39~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
第2の溶液が第2の選択されたpHを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
第2の選択されたpHが第1の選択されたpHより低い、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
第2の選択されたpHが2.5又はそれ未満である、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
第2の選択されたpHが2.0又はそれ未満である、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
第2の選択されたpHが1.5又はそれ未満である、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
第2の溶液が、EDTA、クエン酸塩、ジメルカプロール、マロン酸塩、イミノ二酢酸塩、ジグリコール酸、ヒドロキシイソ酪酸、カテコール、ポリアミノカルボキシレート、ヒドロキシピリジノン、又はヒドロキサメートから選択されるキレート化剤を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
第2の溶液がクエン酸塩を第1の溶液より高い濃度で含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
第2の溶液が約15.0mMのクエン酸塩を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
第2の溶液が約25.0~約50.0mMのクエン酸塩を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
第2の溶液が約75.0mMのクエン酸塩を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
第1の溶液及び第2の溶液が約2.5~1.5の間のpHを有する、請求項50に記載の方法。
【請求項62】
第1の溶液が約2.0~約2.5のpHを含み、第2の溶液が約1.5~約2.0のpHを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項63】
第1の溶液が2.1のpHを含み、第2の溶液が1.7のpHを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
第1の溶液がクエン酸塩を約3.0mMの濃度で含み、第2の溶液がクエン酸塩を約15mMの濃度で含む、請求項50に記載の方法。
【請求項65】
第1の溶液がクエン酸塩を約15.0mMの濃度で含み、第2の溶液がクエン酸塩を約25mM~約50mMの濃度で含む、請求項50に記載の方法。
【請求項66】
脱離プロセスが、1つ又は複数のタンパク質-REE複合体から1種又は複数種のREEを脱離させることが可能な第3の溶液を用いて、第3のREEが富化された画分をカラムから溶出させる第3の工程をさらに含む、請求項39~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
第3の溶液が第3の選択されたpHを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
第3の選択されたpHが第2の選択されたpHより低く、第1の選択されたpHが第2の選択されたpHより低い、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
第3の選択されたpHが、約1.5又はそれ未満である、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
第3の選択されたpHが、約1.5である、請求項66に記載の方法。
【請求項71】
第3の溶液が、EDTA、クエン酸塩、ジメルカプロール、マロン酸塩、イミノ二酢酸塩、ジグリコール酸、ヒドロキシピリジノン、又はヒドロキサメートから選択されるキレート化剤を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項72】
第3の溶液がクエン酸塩を第2の溶液より高い濃度で含む、請求項66に記載の方法。
【請求項73】
第3の溶液が約75.0mMのクエン酸塩を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項74】
第1の溶液が約2.0~約2.5の間のpHを含み、第2の溶液が約1.5~約2.0の間のpHを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項75】
第1の溶液が約2.1のpHを含み、第2の溶液が約1.7のpHを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項76】
第1の溶液がクエン酸塩を約15.0mMの濃度で含み、第2の溶液がクエン酸塩を約25mM~約50mMの濃度で含み、第3の溶液が、約1.5のpHを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項77】
脱離プロセスが、1つ又は複数のタンパク質-REE複合体から1種又は複数種のREEを脱離させることが可能な第4の溶液を用いて、第4のREEが富化された(enrighted)画分をカラムから溶出させる第4の工程をさらに含む、請求項39~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
第1の溶液がScを優先的に脱離させるための30mMのマロン酸塩溶液であり、第2の溶液がYを優先的に脱離させるための15mMのクエン酸塩溶液であり、第3の溶液がMREE及びHREEを脱離させるための50~75mMのクエン酸塩溶液であり、第4の溶液がLa及びCeを脱離させるために約1.5のpHを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
第2の吸収/脱離サイクル(「第2のサイクル」)をさらに含み、前記第2のサイクルが、
a)バイオソープション材料を含有するカラムを、第1のREEが富化された画分でローディングして、1つ又は複数のタンパク質-REE複合体を形成する工程;及び
b)1つ又は複数の精製溶液を用いてカラムから第1の高純度REEが富化された画分を溶出させる工程を含む脱離プロセスを使用して、前記1つ又は複数のタンパク質-REE複合体から1種又は複数種のREEを分離する工程
を含む、請求項39~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
REEが富化された画分若しくは複数の画分、又は高純度REEが富化された画分若しくは複数の画分を溶出させた後に、クリアリング溶液を使用してタンパク質を再生する工程をさらに含む、請求項39~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
クリアリング溶液が緩衝液及び/又は約1.0のpHを含む溶液を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
REE材料が水溶液である、請求項39~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
タンパク質がLanMである、請求項39~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
LanMが、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
LanMが、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3からなる群から選択される配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
バイオソープション材料がビーズである、請求項39~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
ビーズがアガロースを含む、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
ビーズ中のタンパク質の濃度が、ビーズの総体積の1mL当たり、少なくとも約2μmol、約3μmol、約4μmol、約5μmol、約6μmol、約7μmol、約8μmol、約9μmol又は約10μmolのタンパク質である、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
LanMが、C末端システイン残基、N末端システイン、又は内部システインを含む、請求項86~88のいずれか1項に記載のビーズ。
【請求項90】
システインが、グリシンセリンアミノ酸リンカー又は親水性リンカーを介してLanMに連結されている、請求項89に記載のビーズ。
【請求項91】
分離する工程(c)が、1種又は複数種の個々のREE、REEのグループ、周期表において互いに隣接するREE、類似のイオン半径を有するREE又はそれらの組合せを優先的に分離する、請求項39~90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
タンパク質が、REE含有材料中の非REE金属と結合しない、請求項39に記載の方法。
【請求項93】
REE材料が、希土類鉱石、地熱塩水、石炭、石炭副産物、採掘尾鉱、酸性鉱山排水、リン酸石膏、保守終了製品、電子機器廃棄物、産業排水、又はREE源から生じた総REE混合物、例えばこれらの鉱石から得られた塩(例えば酸化物、シュウ酸塩、炭酸塩など)から得られた浸出液である、請求項39~92のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
REE含有材料からスカンジウム及びイットリウムを優先的に分離する方法であって、
(a)1種又は複数種のREEと選択的に結合することができる複数のタンパク質を提供する工程;
(b)前記複数のタンパク質をREE含有材料と接触させる工程であって、前記複数のタンパク質が1種又は複数のREEの少なくとも一部と結合して、複数のタンパク質-REE複合体及びREE枯渇材料を形成する、前記工程;
(c)前記REE枯渇材料の少なくとも一部から前記複数のタンパク質-REE複合体を分離する工程;
(d)前記複数のタンパク質-REE複合体を第1のキレート化剤溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質からスカンジウムを優先的に分離する工程;
(e)前記複数のタンパク質-REE複合体を、第2のキレート化剤溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質からイットリウムを優先的に分離する工程;
(f)前記複数のタンパク質-REE複合体を、第3のキレート化剤溶液を含む溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質から重(HREE)及び中REE(MREE)を分離する工程;及び
(g)前記複数のタンパク質-REE複合体を、第4のキレート化剤溶液又は低いpH(<1.7)を有する溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質から軽REE(La及びCe)を分離する工程
を含む、前記方法。
【請求項95】
第1の溶液がマロン酸塩を約20~50mMの濃度で含み、第2の溶液がクエン酸塩を約15.0mMの濃度で含有し、第3の溶液がクエン酸塩を約25mM~約50mMの濃度で含み、第4の溶液が、約1.5のpHを有する、請求項93に記載の方法。
【請求項96】
REE含有材料からスカンジウムを優先的に分離する方法であって、
(a)1種又は複数種のREEと選択的に結合することができる複数のタンパク質を提供する工程;
(b)前記複数のタンパク質を、REE含有材料と接触させる工程であって、前記複数のタンパク質が1種又は複数種のREEの少なくとも一部と結合して、複数のタンパク質-REE複合体及びREE枯渇材料を形成する、前記工程;
(c)前記REE枯渇材料の少なくとも一部から前記複数のタンパク質-REE複合体を分離する工程;
(d)前記複数のタンパク質-REE複合体を第1のpHの溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質からイットリウム及びHREEを優先的に分離する工程;
(e)前記複数のタンパク質-REE複合体を第2のpHの溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質からMREE及びLREEを優先的に分離する工程;
(f)前記複数のタンパク質-REE複合体を、第3のpHの溶液を含む溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質からスカンジウムを分離する工程
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示が、全ての参考文献及びそれと共に提出された付録を含め全て本明細書に明示されているかのように参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、2021年6月14日に出願された米国特許出願第63/210,311号の利益を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する陳述
米国政府は、ローレンス・リバモア国立研究所(Lawrence Livermore National Laboratory)のオペレーションのための、米国エネルギー省とローレンス・リバモア・ナショナル・セキュリティLLC(Lawrence Livermore National Security,LLC)との間の契約番号DE-AC52-07NA27344、及び米国エネルギー省とペンシルバニア州立大学との間の契約番号SC-DE0021007に従って本出願において権利を有する。
【背景技術】
【0003】
希土類元素(「REE」)は、地球の地殻から採掘される。その独特な物理的及び化学特性のために、これらの元素は、例を挙げると、高性能磁石、レーザー、コンピューターメモリー、携帯電話、触媒コンバーター、カメラ及び望遠鏡レンズ、並びに環境技術、例えば風力タービン及びハイブリッド車などを含む、ますます多くの先端技術製品において重要である。
米国を含む多くの国々がREEを生産するが、中国がREEの優勢な生産国であり続けており、世界の供給量の70~90%を占めている。REEは採掘が難しく、その理由の一つは、経済的な抽出に十分な高い濃度でそれらが見出されることが稀であることである。GPS制御ドリルとガンマ線サンプリングとを使用することにより、地質学者が、より多くのREEを含有する鉱石を特定することが可能になる。鉱石は、トリウムなどの天然放射活性物質が混ざっていることが多く、REEの抽出及び加工のための現在の方法は、有機溶媒、アンモニア塩、アルキルリン含有抽出溶媒、及び強い鉱酸などの発癌性のある毒素を大量に必要とする。金属のリーチング及び分離は、高いエネルギー/資本コスト、高いCO2放出、及び多くの好ましくない健康及び環境への影響を有する。
REEに対する需要が急増し続けているため、REE供給の増加と多様化を助け、クリーンで低コストの抽出プロセスを開発し、効率を改善し、再使用や再利用によりREEを再び獲得するためのツールの必要が未だにある。特には、効率を最大化し廃棄物を最小化することに重点を置いて、特に、REE含量が非REEと比べて低いREE供給材料からREEを優先的に分離することが可能なツールの開発が求められている。
【発明の概要】
【0004】
REE含有材料における非REEからの希土類元素(REE)の優先的な分離、並びに個々に、及びグループでの両方での特定のREEの他のREEからの分離のための方法及び材料が提供される。ある特定の実施形態において、このような方法は、(a)1種又は複数種のREEと選択的に結合できるタンパク質を提供する工程;(b)前記タンパク質を、REE含有材料と接触させる工程であって、前記タンパク質が1種又は複数種のREEの少なくとも一部と結合して、1つ又は複数のタンパク質-REE複合体及びREE枯渇材料を形成する、前記工程;(c)前記REE枯渇材料の少なくとも一部から前記1つ又は複数のタンパク質-REE複合体を分離する工程;並びに(d)前記1種又は複数のREEを前記タンパク質から分離して、前記1種又は複数種のREEの精製された画分及び再生された前記タンパク質を生産する工程を含む。
他の実施形態において、希土類元素(REE)分離のための材料を調製するための方法が提供される。このような方法は、(a)REEと選択的に結合できるタンパク質と、コンジュゲーション剤で官能化した多孔質支持体材料、とを提供する工程;及び(b)前記タンパク質を、前記コンジュゲーション剤により多孔質支持体材料に結合させる工程を含む。
【0005】
ある特定の実施形態において、REE含有材料から希土類元素(REE)を優先的に分離する方法が提供される。前記方法は、(a)1種又は複数種のREEと選択的に結合することができる複数のタンパク質を提供する工程;(b)前記複数のタンパク質をREE含有材料と接触させる工程であって、前記複数のタンパク質が1種又は複数のREEの少なくとも一部と結合して、複数のタンパク質-REE複合体及びREE枯渇材料を形成する、前記工程;(c)前記REE枯渇材料の少なくとも一部から前記複数のタンパク質-REE複合体を分離する工程;(d)前記複数のタンパク質-REE複合体を、キレート化剤を含む第1の溶液又は第1のpHを有する第1の溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質から重REE(HREE)を優先的に分離する工程;(g)前記複数のタンパク質-REE複合体を、キレート化剤を含む第2の溶液又は第2のpHを有する第2の溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質から中REE(MREE)を分離する工程;及び(h)前記複数のタンパク質-REE複合体を、キレート化剤を含む第3の溶液又は第3のpHを有する第3の溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質から軽REE(LREE)を分離する工程を含む。
【0006】
ある特定の実施形態において、キレート化剤を使用して、REE含有材料からスカンジウム及びイットリウムを優先的に分離する方法が提供される。前記方法は、(a)1種又は複数種のREEと選択的に結合することができる複数のタンパク質を提供する工程;(b)前記複数のタンパク質をREE含有材料と接触させる工程であって、前記複数のタンパク質が1種又は複数のREEの少なくとも一部と結合して、複数のタンパク質-REE複合体及びREE枯渇材料を形成する、前記工程;(c)前記REE枯渇材料の少なくとも一部から前記複数のタンパク質-REE複合体を分離する工程;(d)前記複数のタンパク質-REE複合体を第1のキレート化剤溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質からスカンジウムを優先的に分離する工程、(e)前記複数のタンパク質-REE複合体を第2のキレート化剤溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質からイットリウムを優先的に分離する工程;(f)前記複数のタンパク質-REE複合体を第3のキレート化剤溶液を含む溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質から重(HREE)及び中REE(MREE)を分離する工程;及び(g)前記複数のタンパク質-REE複合体を第4のキレート化剤溶液又は低いpH(<1.7)を有する溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質から軽REE(LREE、この場合、La及びCe)を分離する工程を含む。ある特定の実施形態において、第1の溶液はマロン酸塩を20~50mMの濃度で含み、第2の溶液はクエン酸塩を約15.0mMの濃度で含有し、第3の溶液はクエン酸塩を約25mM~約50mMの濃度で含み、第4の溶液は約1.5のpHを有する。
【0007】
ある特定の実施形態において、pHを使用して、REE含有材料からスカンジウムを優先的に分離する方法が提供される。前記方法は、(a)1種又は複数種のREEと選択的に結合することができる複数のタンパク質を提供する工程;(b)前記複数のタンパク質をREE含有材料と接触させる工程であって、前記複数のタンパク質が1種又は複数種のREEの少なくとも一部と結合して、複数のタンパク質-REE複合体及びREE枯渇材料を形成する、前記工程;(c)前記REE枯渇材料の少なくとも一部から前記複数のタンパク質-REE複合体を分離する工程;(d)前記複数のタンパク質-REE複合体を第1のpHの溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質からイットリウム及びHREEを優先的に分離する工程、(e)前記複数のタンパク質-REE複合体を第2のpHの溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質からMREE及びLREEを優先的に分離する工程;(f)前記複数のタンパク質-REE複合体を、第3のpHの溶液を含む溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質からスカンジウムを分離する工程を含む。
【0008】
ある特定の実施形態において、REE含有材料から希土類元素(REE)を分離するための方法は、吸収/脱離サイクルを含む。このような実施形態において、吸収/脱離サイクルは、バイオソープション材料を含有するカラムを、REE含有材料でローディングする工程であって、バイオソープション材料が、REE含有材料中に存在するREEを吸着して、1つ又は複数のタンパク質-REE複合体及びREE枯渇材料を形成することが可能なタンパク質を含む、前記工程;及び1つ又は複数のタンパク質-REE複合体から1種若しくは複数のREE又はREEの1つ若しくは複数のグループを優先的に分離させることが可能な第1の溶液で、第1のREEが富化された画分を溶出させる工程を含む脱離プロセスを使用して、1つ又は複数のタンパク質-REE複合体から1種若しくは複数のREE又はREEの1つ若しくは複数のグループを分離する工程を含む。一部の実施形態において、脱離プロセスは、1つ又は複数のタンパク質-REE複合体から1種又は複数種のREEを脱離させることが可能な第2の溶液を用いて、第2のREEが富化された画分をカラムから溶出させる第2の工程を含む。他の実施形態において、脱離プロセスは、1つ又は複数のタンパク質-REE複合体から1種又は複数種のREEを脱離させることが可能な第3の溶液を用いて、第3のREEが富化された画分をカラムから溶出させる第3の工程を含む。富化された画分のそれぞれは、フィード溶液(すなわち、REE含有材料)より高い濃度のREEを有し得る。
【0009】
一部の実施形態において、第1の吸着/脱離サイクルの後に、第2の吸収/脱離サイクルが実行されてもよい。このような実施形態において、第2の吸着/脱離サイクルは、バイオソープション材料を含有するカラムを第1のREEが富化された画分でローディングして、1つ又は複数のタンパク質-REE複合体を形成する工程;及び第1の溶液を用いて第1の高純度REEが富化された画分をカラムから溶出させる工程を含む脱離プロセスを使用して、1種又は複数種のREEを、1つ又は複数のタンパク質-REE複合体から分離する工程を含む。一部の実施形態において、第2のサイクルの脱離プロセスは、第2の溶液を用いて第2の高純度REEが富化された画分をカラムから溶出させる第2の工程を含む。他の実施形態において、脱離プロセスは、第3の溶液を用いて第3の高純度REEが富化された画分をカラムから溶出させる第3の工程をさらに含む。
【0010】
ある特定の実施形態において、第1、第2及び第3の溶液のそれぞれは、特許請求される優先的な分離を達成するために、特定の選択されたpHを有するように設計されているか、キレート化剤を含むか、又はその両方である。一部の実施形態において、第1の溶液は第1の選択されたpHを有する。一部の態様において、第1の選択されたpHは、3.0若しくはそれ未満、2.5若しくはそれ未満、2.0若しくはそれ未満、又は約1.5若しくはそれ未満であってもよい。他の実施形態において、第1の溶液はキレート化剤を含む。ある特定の態様において、キレート化剤は、クエン酸塩である。一部の実施形態において、クエン酸塩は、第1の溶液中に約3.0mM又は約15.0mMの濃度で存在する。キレート化剤が使用される場合、このような溶液のpHは3.0より高く、一部の実施形態において、キレート化剤溶液は4.0より高い、約4~7の間の、又は7を超えるpHを有する。
【0011】
一部の実施形態において、第2の溶液は第2の選択されたpHを含む。一部の実施形態において、第2の選択されたpHは第1の選択されたpHより低い。ある特定の態様において、第2の選択されたpHは、2.5若しくはそれ未満、2.0若しくはそれ未満、又は1.5若しくはそれ未満である。他の実施形態において、第2の溶液は、キレート化剤を含む。ある特定の態様において、キレート化剤はクエン酸塩である。一部の実施形態において、第2の溶液はクエン酸塩を第1の溶液より高い濃度で含む。一部の実施形態において、クエン酸塩は、第2の溶液中に約15.0mMのクエン酸塩の濃度で存在する。一部の実施形態において、クエン酸塩は、第2の溶液中に約25.0~約50.0mMの間のクエン酸塩の濃度で存在する。一部の実施形態において、クエン酸塩は、第2の溶液中に約75.0mMのクエン酸塩の濃度で存在する。キレート化剤が使用される場合、このような溶液のpHは3.0より高く、一部の実施形態において、キレート化剤溶液は、4.0より高い、5.0より高い、約5~7の間の、又は7を超えるpHを有する。
【0012】
一部の実施形態において、第1の溶液及び第2の溶液は約2.5~1.5の間のpHを有する。他の実施形態において、第1の溶液は約2.0~約2.5の間のpHを含み、第2の溶液は約1.5~約2.0の間のpHを含む。他の実施形態において、第1の溶液は2.1のpHを含み、第2の溶液は1.7のpHを含む。一部の実施形態において、第1の溶液は、クエン酸塩を約3.0mMの濃度で含み、第2の溶液は、クエン酸塩を約15mMの濃度で含む。他の実施形態において、第1の溶液は、クエン酸塩を約15.0mMの濃度で含み、第2の溶液は、クエン酸塩を約25mM~約50mMの濃度で含む。
他の実施形態において、第3の溶液は第3の選択されたpHを含む。他の実施形態において、第3の選択されたpHは第2の選択されたpHより低く、第1の選択されたpHは第2の選択されたpHより低い。他の実施形態において、第3の選択されたpHは約1.5若しくはそれ未満又は約1.5である。他の実施形態において、第3の溶液は、EDTA、クエン酸塩、ジメルカプロール、マロン酸塩、イミノジアセテート、ジグリコール酸、ヒドロキシピリジノン、ヒドロキサメート、カテコール、ポリアミノカルボキシレート、酢酸塩、ニトリロトリアセテート、ジピコリン酸、α-ヒドロキシイソ酪酸、又は他のモノ、ジ、及びトリカルボン酸から選択されるキレート化剤を含む。他の実施形態において、第3の溶液は、クエン酸塩を、第2の溶液より高い濃度で含む。他の実施形態において、第1の溶液は、約75.0mMのクエン酸塩を含む。
【0013】
他の実施形態において、第1の溶液はクエン酸塩を約15.0mMの濃度で含み、第2の溶液はクエン酸塩、約25mM~約50mMの濃度で含み、第3の溶液は約1.5のpHを有する。
ある特定の実施形態において、本明細書に記載される方法はまた、REEが富化された画分若しくは複数の画分、又は高純度REEが富化された画分若しくは複数の画分を溶出させた後に、クリアリング溶液を使用してタンパク質を再生する工程も含む。ある特定の実施形態において、クリーニング(又はクリアリング)溶液は、緩衝液及び/又は約1.0のpHを含む溶液(例えば、HCl又はH2SO4又はHCl/H2SO4混合物)を含む。
【0014】
ある特定の実施形態において、本開示に従って使用されるタンパク質は、ランモジュリン(LanM)である。一部の実施形態において、LanMは、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。他の実施形態において、LanMは、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3からなる群から選択される配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
一部の実施形態において、バイオソープション材料が提供される。バイオソープション材料は、少なくとも1種のREEと選択的に結合できるタンパク質を含む、希土類元素(REE)分離のためのマイクロビーズで構成されていてもよく、タンパク質は、ビーズに埋め込まれているか又はその表面上にある。ある特定の実施形態において、タンパク質は、LanMである。
【0015】
ある特定の実施形態において、バイオソープション材料はマイクロビーズで構成されている。ある特定の実施形態において、ビーズはアガロースを含む。ある特定の実施形態において、ビーズ中のタンパク質の濃度は、ビーズの総体積の1mL当たり、少なくとも約2μmol、約3μmol、約4μmol、約5μmol、約6μmol、約7μmol、約8μmol、約9μmol又は約10μmolのタンパク質である。一部の実施形態において、LanMはC末端システイン残基、N末端システイン、又は内部システインを含む。一部の実施形態において、システインは、グリシン-セリン-グリシンアミノ酸リンカー又は親水性リンカーを介してLanMに連結されている。
【0016】
一部の実施形態において、分離する工程は、1種若しくは複数の個々のREE、REEのグループ、周期表において互いに隣接するREE、類似のイオン半径を有するREE又はそれらの組合せを優先的に分離する。ある特定の実施形態において、タンパク質はREE含有材料中の非REE金属と結合しない。
【0017】
ある特定の実施形態において、REE材料は、希土類鉱石、地熱塩水、石炭、石炭副産物、採掘尾鉱、酸性鉱山排水、リン酸石膏、保守終了製品、電子機器廃棄物、産業排水、又はREE源から生じた総REE混合物、例えばこれらの鉱石から得られた塩(例えば酸化物、シュウ酸塩、炭酸塩など)から得られた浸出液である。一部の実施形態において、REE材料は水溶液である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の開示の実施形態に従って固定化LanMを使用するREEの分離のための例示的な方法を示す図である。
【
図2A-2D】本発明の開示の実施形態によるアガロースマイクロビーズ上へのLanMの固定化を確認する例示的なスキーム、プロット、及び画像を示す図である。チオール-マレイミドクリックケミストリーを介したアガロースマイクロビーズ上へのLanMの固定化(
図2A)は、アミノアガロース、N-スクシンイミジル4-(マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、マレイミドアガロース、及びLanMアガロースのフーリエ変換赤外分光法(FTIR)(
図2B)、LanM固定化動態(
図2C)、及び蛍光顕微鏡法(
図2D、スケールバーは、100μmであり、下の画像は、上の画像の分割チャンネルである)によって確認された。
【
図3A-3G】固定化LanMが低いpHでREEと結合する能力を保持し、本発明の開示の実施形態による再使用に関して安定であることを確認する例示的なプロットを示す図である。プロットは、pHの関数としてのNd破過曲線(
図3A)、HCl濃度の関数としてのNd脱離曲線(
図3B)、10回の連続した吸収/脱離サイクルを用いたNd破過曲線に基づくカラム再使用性を確認するプロット(
図3C)、pH3におけるY、La、Nd、Dy及びLuの独立した単一元素の破過曲線(
図3D)、非REEに対するLanMカラムのNd選択性を確認するための合成フィード溶液を使用した金属イオン破過曲線(
図3E)、pH1.5のHClでの処理後の金属イオンの脱離プロファイル(
図3F)、並びにFeからNdを優先的に分離するLanMの能力を評価するためのクエン酸塩を含有する二成分Nd/Fe溶液を使用した破過実験(
図3G)を含む。
【
図4A-4B】溶液中のLanMが本発明の開示の実施形態に従って3当量のREEと結合することを確認する例示的なプロットを示す図である。プロットは、インジケーターとしてキシレノールオレンジを使用した競合滴定アッセイ(
図4A)、及びA275nmにおける吸光度の増加として追跡されたランタンに対するLanMの構造的な応答を示すプロットを含む(
図4B)。
【
図5A-5B】本発明の開示の実施形態に従って、溶液中でのリガンド競合がREE種内分離を引き起こし得ることを示唆する例示的なプロットを示す図である。プロットは、タンパク質の固有なチロシン蛍光発光の変化によってモニターされた化学量論的な滴定(
図5A)及びクエン酸塩を使用したREE脱離(
図5B)を含む。
【
図6A-6F】本発明の開示の実施形態に従って2段階のpHスキームを使用してREEの対を分離する固定化LanMの能力を確認する例示的なプロットを示す図である。REEの対を分離する固定化LanMの能力は、段階的なpHスキームを使用して、単一元素がローディングされたカラムの累積的な脱離プロファイルを分析することによって確認され(
図6A、REEイオン脱離を、脱離した総REEに対して正規化した;実験条件:90%飽和までカラムをローディングするのに、独立した単一のREE溶液を使用した)、Dy:Ndの50:50混合物で構成される供給材料を、90%カラム飽和までローディングし、次いで2段階pH脱離スキーム(2.1及び1.7)に供し(
図6B)、Dy:Ndの5:95混合物で構成される供給材料を、90%カラム飽和までローディングし、次いで2段階pH脱離スキーム(2.2及び1.7)に供し(
図6C);Y:Ndの22:78混合物で構成される供給材料を、90%カラム飽和までローディングし、次いで2段階pH脱離スキーム(2.3及び1.7)に供した(
図6D)。
図6Eに、2段階pHスキームを使用することによる供給材料及び3つの脱離ゾーン中のREE組成の要約を提供する。
【
図7A-7D】本発明の開示の実施形態に従って段階的なキレート化剤濃度及びpHスキームを使用してREEの対を分離する固定化LanMの能力を確認する例示的なプロットを示す図である。REEの対を分離する固定化LanMの能力は、段階的なクエン酸塩濃度(pH5)スキームを使用した単一元素がローディングされたカラムの累積的な脱離プロファイルを分析することによって確認された(
図7A);Dy:Ndの5:95混合物で構成される供給材料を、15mMのクエン酸塩(pH5)、続いてpH1.7を使用した2段階の脱離スキームに供した(
図7B);Dy:Ndの50:50混合物で構成される供給材料を、90%カラム飽和までローディングし、次いで10mMのクエン酸塩(pH5)、続いてpH1.7を使用した2段階の脱離スキームに供し(
図7C)、Y:Ndの22:78混合物で構成される供給材料を、90%カラム飽和までローディングし、次いで10mMのクエン酸塩(pH5)、続いてpH1.7を使用した2段階の脱離スキームに供した(
図7D)(各パネルの上の値は、垂直の点線で分割した各溶出ゾーンを超えるREEの純度を示す)。
図6Fに、クエン酸塩-pHスキームを使用することによる供給材料及び3つの脱離ゾーン中のREE組成の要約を提供する。
【
図8A-8F】低グレードの供給材料浸出液からREEを分離し、抽出する固定化LanMの能力を確認する例示的なプロットを示す図である。低グレードの供給材料浸出液からREEを分離し、抽出する固定化LanMの能力は、パウダー川盆地(PRB)フライアッシュ浸出溶液からのREE回収のためのLanMカラムを使用して確認され、結果は、金属イオンの吸着プロファイル(
図8A、吸着条件:pH5、0.5mL/分。1ベッド体積=0.8mL)、PRBフィード中の金属組成及び回収されたバイオソープション溶液(
図8B);PRBフィード及び回収されたバイオソープション溶液中の金属イオン(ただし1価イオンは除く)のパーセンテージ(
図8C)、選択された非REEに対する総REEの分離係数(
図8D)、2段階のpHスキームによるHREE(Tb-Lu+Y)及びLREE(La-Gd)の選択的な脱離(
図8E)、並びにPRBフィード及び3つの溶出ゾーン中の総REEに対するREE比率(
図8F)によって分析された。
【
図9】LanMアガロースカラム(脱離条件:pH1.5のHCl)を使用することによるPRBフライアッシュ浸出液の脱離プロファイルを示す例示的なプロットを示す図である。
【
図10A-10B】本発明の開示の実施形態に従ってREE分離の基準を形成するREEのなかでもLanM-REE安定性における主要な差を実証する例示的なプロットを示す図である。プロットは、LanM-アガロースカラムを使用したランタニド系列の破過曲線(
図10A、フィード:各REEの濃度:13μM;pH3.0、10mMのグリシン)及びイオン半径の関数としての個々のREEの破過点(
図10B)を含む。
【
図11A-11D】本発明の開示の実施形態に従って段階的なpHでの脱離スキームに供される場合の、総REEをHREE、MREE、及びLREE画分に分離することを可能にするLanMカラム(90%容量までローディングした)の有効性を実証する例示的なプロットを示す図である。プロットは、ベッド体積に対する各REEの正規化した濃度(
図11A及び11C)及びベッド体積に対する各REEの累積的な脱離(
図11B及び11D)を示す。
図11A及び11Bにおいて、フィード組成は以下の通りであった:Y:72.7μM;La:53.4μM;Ce:113.5μM;Pr:13.4μM;Nd:51.5μM;Sm:10.2μM;Eu:2.2μM;Gd:9.5μM;Tb:1.4μM;Dy:7.9μM;Ho:1.4μM;Er:4.0μM;Tm:0.5μM;Yb:3.0μM;Lu:0.4μM。
図11C及び11Dにおいて、
図11A及び11Bで使用されるフィード組成に、スカンジウムを各ランタニドと等価な濃度で追加した。
【
図12】本発明の開示の実施形態による抽出物Scに対するLanMの親和性を示す例示的なプロットを示す図である。プロットは、LanMが、pH5において1.3E-13M(0.13pM)のScの熱力学的な解離定数(Kdとして公知)を呈示することを示す。
【
図13】溶液中のLanMからのマロン酸塩によって誘導されたSc及びLuの解離が高度に選択的であることを示す例示的なプロットを示す図であり、これから、Scは最も重いREEであるLuから分離できることが示唆され、したがって、本発明の開示の実施形態に従って同様に他のランタニド及びYでも分離できる可能性がある(実験は、100mMのKCl、30mMのMOPS、pH5において、20μMのタンパク質を用いて実行された)。
【
図14】Lu、La、Ceのクエン酸塩によって誘導された解離データを示す例示的なプロットを示す図であり、本発明の開示の実施形態に従ってY及びMREEからLuを分離するためにクエン酸塩を使用する可能性を実証する。(この図に示されるNd、Dy、及びYのデータは、
図5と同じである)。
【
図15A-15B】クエン酸塩は、本発明の開示の実施形態に従って、LanMアガロースカラムからイオン半径の昇順で優先的にスカンジウムを、次いでHREE、次いでMREE、次いでLREEを脱離させることを示す例示的なプロットを示す図である。プロットは、LanMアガロースカラムを使用したクエン酸塩によってキレート化されたREEの破過曲線[
図15A、フィード:pH3.5条件における、20mMのクエン酸塩中の等モル(各0.013mM)のREE(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Yb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLu)]及び異なるクエン酸塩濃度を使用したREEの段階的な脱離(
図15B、プロットは、ベッド体積に対する各REEの累積的な脱離を描写する)を示す。
図15Bの場合、実験条件:ベッド体積の21倍量のREE溶液をLanMカラムにポンプ注入して、約90%カラム飽和を達成し、続いてベッド体積の10倍量の脱イオン水で洗浄した。次いでクエン酸塩濃縮工程を含むpH5脱離溶液(3~75mM)を、カラムにポンプ注入した。フィード:pH3.0の10mMのグリシン中の等モルのREE(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Yb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLu)。段階的なクエン酸塩脱離スキームに供される場合、総REEをHREE、MREE、及びLREE画分に分離することを可能にするLanMカラム(90%容量までローディングした)の有効性を実証する。
【
図16A-16B】LanM(配列番号3)の残基1~40を除去することで、本発明の開示の実施形態に従って、REE対タンパク質が2:1の化学量論的な比率でREEと結合できる機能性タンパク質が得られることを実証する例示的なプロットを示す図である。固有なチロシン蛍光によって判断される通り、LanMΔ1-40は、約2当量のLa及びDyと結合し(
図16A)、このようなLanMΔ1-40は、wt-LanMと類似した(ただし同一ではない)溶液状の金属解離特性を示すことから(脱着剤としてクエン酸塩を使用して)、生産的なEFハンドが保存されており、類似の分離戦略がこのバリアントにも適用することが可能であることが示唆される(
図16B)。プロットは、LanMΔ1-40バリアントが、その第1の非生産的なEFハンドが除去されており、REE結合の化学量論(
図16A)及びpH5における100mMのKCl、30mMのMOPS中のクエン酸塩によって誘導された金属解離(
図16B)に関して試験された(全ての実験は、20μMのタンパク質を用いて実行された)LanMΔ1-40蛍光測定器実験を含む。
【
図17A-17C】本発明の開示の実施形態による二重LanMバリアント(配列番号4)による化学量論的なREE結合を実証する例示的なプロットを示す図である。プロットは、pH6におけるマイクロモルより強い親和性を呈示する約5当量の金属結合を示唆するキシレノールオレンジ競合アッセイ(
図17A)、約4当量のREE結合ことを示唆するチロシン吸光度アッセイ(
図17B)、及びpH5における4当量のREE結合ことを示唆するチロシン蛍光アッセイ(
図17C)を含む。
【
図18】二重LanMバリアントの金属解離特性が、wt-LanMに類似していることを実証する例示的なプロットを示す図であり、二重LanMが、本発明の開示の実施形態に従ってカラム容量を増加させるための生産的な手段であることを示唆している。プロットは、100mMのKCl、30mMのMOPS中、pH5で試験された二重LanMバリアント(20μM)のクエン酸塩によって誘導された金属解離曲線を含む。
【
図19】本発明の開示の実施形態に従って3つのカラムローテーションスキームを用いた固定化LanMを使用したREEの連続フロー分離の例示的な方法を示す図である。
【
図20】本発明の開示の実施形態に従ってLanMアガロースカラムを使用した金属イオン破過曲線の例示的なプロットを示す図である(フィード:バイオリキシビバントをpH3.5で使用して生成された電子機器廃棄物浸出液。バイオリキシビバントは、グルコノバクター属(Gluconobacter)培養物の上清から調製されたものであり、リーチング剤として主としてグルコン酸及び他の有機酸を含む)。
【
図21】LanMはNd/Dy分離後の高純度のNd及びDyの生産を可能にすることを示すグラフである。Dy:Ndの5:95混合物(pH3)を含む溶液を、2回のカップリングされた吸着/脱離サイクルに供した。第1のサイクル(左のパネル)は、高純度のNd溶液(99.9%)及びアップグレードされたDy(44%Dy/56%Nd)溶液を生成した。アップグレードされたDy溶液を、第2の吸着/脱離サイクル(右のパネル)でのフィード溶液として使用して、高純度のDy及びNd画分を生成した。各pH工程の持続時間は、濃い灰色の破線によって描写され、第2の軸に対応する。
【
図22】電子機器廃棄物のバイオ浸出液(bioleachate)からのREE回収及び分離を示す図である。(A)段階的なNd/Pr及びDy回収並びに分離プロセスの概略図。(B)流出液中の金属の相対濃度(流入液と比較した)。パネルAに示される工程間の移行は、垂直の灰色の点線によって描写される。ストリップ溶液のpH値は、より濃い灰色の水平な点線で示される。(C)カラムから溶出させたREEの絶対濃度。(D)電子機器廃棄物試験の前及び後におけるカラムのNd破過曲線によるカラム再使用性の実証。
【
図23】電子機器廃棄物供給材料からの例示的なDy対Nd/Pr分離を示すグラフである。第1の抽出工程からのDyが富化された画分(29%のDy)と同一な組成を有する合成溶液を2段階の脱離プロセスに供して、高純度のDy及びNd画分を生成した。
【
図24】(A)LREE(La+Ce)除去戦略を試験するために使用された合成REE溶液の元素組成を示すグラフである。REE組成は、典型的な鉱石ベースの浸出溶液(例えば、褐廉石)中のREE比率を反映する。(B)段階的なクエン酸塩濃度(pH5)スキームを使用した、パネルAに描写された合成REE供給材料でローディングされたLanMカラムの累積的なHREE/MREE/LREE脱離プロファイル。REE脱離を、各グループにおいて脱離した総REEに対して正規化した。
【
図25】(A)段階的なクエン酸塩濃度(ゾーンI:15mM;ゾーンII:50mM、pH5)及びpH(ゾーンIII:pH1.5)スキームを使用した、REEがローディングされたカラム(供給材料組成は
図2Aに描写される)の脱離プロファイル。(B)クエン酸塩-pHスキームを使用した、フィード溶液中の総REEに対する最初の供給材料及び3つの脱離領域におけるREE分布の要約を示すグラフである。
【
図26】Scを含有する鉱石(例えば、褐廉石)及び廃棄物(例えば、ボーキサイト)供給材料におけるREE組成と類似した合成溶液の相対的なREE組成を示すグラフである。
【
図27】(A)クエン酸塩はREEからのスカンジウムの高純度及び高収率の分離を可能にすることを示す図である。脱離プロファイル及び(B)段階的なクエン酸塩(3mM及び15mM、pH5で)及びpH1.5脱離スキーム後のREEがローディングされたLanMカラムの累積的な脱離(収率)を示すグラフである。(C)最初の供給材料及び3つの脱離画分におけるREE分布。
【
図28】マロン酸塩がREEからのスカンジウムの高純度及び高収率の分離を可能にすることを示す。LanMカラムを、典型的なScを含有する鉱石ベースの供給材料浸出溶液におけるREE組成と類似した合成REE溶液でローディングした。30mM及び50mMのマロン酸塩での処理後の(A)脱離プロファイル及び(B)累積的な脱離(収率)。
【
図29】Scが富化された画分を生成するための段階的なpH脱離スキームの使用を示すグラフである。LanMカラムを、典型的なScを含有する鉱石ベースの供給材料浸出溶液におけるREE組成と類似した合成REE溶液でローディングした。段階的なpH勾配での処理後の(A)脱離プロファイル及び(B)累積的な脱離(収率)及び(C)相対組成。
【
図30】REE間の選択性の定量的な尺度を提供する、固定化LanMのREEシリーズにわたる分配係数を示すグラフである。カラムを最初に脱イオン水で洗浄し、次いでカラムに空気を吹き入れることによって除去した。次に、5mLのフィード溶液1又は2(合計15μmolのREE)を0.5mL/分で2時間カラムに循環させ、次いでカラムに空気を押し込むことによって除去した。平衡状態の液体を[M]adとして収集した。次いで4mLの0.1MのHClをカラムに通し、流出液を[M]deとして収集した。カラム:WT-LanM(0.9mL、約3.5μmol/mLのNd吸着容量)。カラムはそれでもなお、水素処理される場合に約0.8mLの水を含有する。自由水をカラムに空気を吹き入れることによって除去した。溶液1。pH5における等モルの(各0.33mM、合計3mM)La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy。溶液2。pH5における等モルの(各0.33mM、合計3mM)Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y。
【発明を実施するための形態】
【0019】
希土類元素(REE)は、イットリウム、スカンジウム、及びランタニドで構成されており、これらは電気自動車、風力タービン、及びLEDなどのクリーンエネルギー技術にとって重要であるため、化石燃料時代から低炭素時代への移行に必須である。1しかしながら、これに対して現在のREE抽出及び分離プロセスは、高いエネルギー消費を必要とし、多様なREEサプライチェーンの開発を妨害する深刻な環境的な負担をもたらし、クリーンエネルギー技術の環境上の利益を損なう。2、3新たに出現したクリーンエネルギー技術市場のREEの要求を満たすために、含まれるREE含有資源、低グレードの源及び再利用可能な廃棄物からの環境に優しいREE抽出を可能にする新しい処理手法を開発することは避けられない。
【0020】
REE間の分離は、それらの類似した物理化学的な特性とREEを含有する堆積物中における同時出現とのために4、5特に難しく、REE生産中の環境への全影響の約30%を占める2、6、7。現在、REE分離は、酸浸出溶液中での不純物からの一次的なREE分離とそれに続く液体-液体抽出によるグループ又は個々のREE分離を含む化学集約的な湿式冶金プロセスによるものが主流である5。許容できるレベルのREE富化を達成するために、液体-液体抽出は、大量の液体廃棄物を生じる何百もの段階(すなわち、ミキサーセトラー又はパルスカラム)を必要とする場合がある。さらに、液体-液体抽出にとって、従来と異なる源、例えば産業廃棄物や保守終了消費者用電子機器(例えば、電子機器廃棄物)からの変動しやすい又は薄いREE浸出溶液を処理することは極めて難しく、このような処理は、膨大な量の浸出溶液を有機溶媒と接触させる必要があり、結果として、大規模な分離ユニット(すなわち、高CAPEX)及び水系に分散された溶媒の損失が生じる。
【0021】
溶媒損失を低減するために、有機溶媒中にREE選択的リガンド(抽出溶媒)を溶解させ、固体支持体内にローディングすることによって、液体-液体抽出プロセスをカラムクロマトグラフィーに適合させてきた8、9。しかしながら、それでもなおこの物理的な含浸戦略は、静止している液相のリーチングを必然的に生じ、交差汚染及び再使用性の限定を引き起こす10。化学的リガンド(抽出溶媒)が固体支持体樹脂上に共有結合で固定化されている固体-液体抽出(SLE)は、液体-液体抽出に比べて、固体吸着剤とREE含有溶液との間のより速い相分離、プロセス中に存在する有機希釈剤の量の著しい低減、及び最小の抽出溶媒損失15、などの数々の利点を提供する11~14。しかしながら、REE分離に採用されるSLE吸着剤のほとんどが液体-液体抽出に使用される既存の合成有機抽出溶媒(リガンド)(例えばHDEHP、TBP、TODGA、又はCyanex誘導体)に基づいており、REE抽出及び分離に関するその選択性は通常、限定される16。
【0022】
生物学的なリガンドをSLEプロセスに組み込むことは、新規の化学及び環境的に持続可能なREE分離プロセスの開発の可能性をもたらす17。例えば、ランタニド結合タグ(LBT)は、REEに対する高親和性及び選択性に関して操作された短いペプチドであり、これはバイオマテリアル表面(細胞、curli繊維など)上に提示され、様々な供給材料浸出液からの中及び重REEの選択的な回収のためにSLEで採用されている18、19。しかしながら、それでもなお、Zn2+、Cu2+、及び大量のCa2+に対する選択性、pH5未満のREE結合の増加、REE供給材料に適合する条件を有する方法への必要性が未だある18。
【0023】
REE抽出にとって特に重要なのはランモジュリン(LanM)であり、これは、近年発見された、小さい(12kDa)ペリプラズムタンパク質であり、メチロトローフ細菌におけるランタニド取り込み及び利用経路の一部である20。LanMの生化学及び生物物理学的な特徴付けから、他の非REEカチオンに対してREEへの驚くべき選択性、ほぼ2.5もの低いpHまでREEと結合する能力、及び繰り返しの酸処理サイクルに対する驚くべきロバスト性が明らかにされた16。このタンパク質の高親和性にもかかわらず、脱離は相対的に穏やかな処理(pHを低下させること、又は水溶性カルボキシレートのような一般的なキレート化剤)によって誘導でき、REEと結合し、それを脱離させることを複数回行うことができる。さらに、LanMはまた、重REEよりも中-軽REEに対する稀な選好も示す;控えめではあるが、このような選好は、軽/重REEグループの効率的な分離を可能にし、又は重要なREE対の効率的な分離をも可能にする20。
【0024】
現在のREE分離アプローチの技術的、経済的、及び環境的な制限に対処するために、タンパク質ベースのREE分離方法が本明細書で提供される。タンパク質ベースのREE分離方法は、REE選択的なLanMタンパク質キレート化剤又はその誘導体を使用するバイオマテリアルベースの全て水性のREE抽出及び分離スキームである。容易なタンパク質再使用を可能にするために、固定化LanMは、生物学的に再生可能であり商業的に入手可能な多孔質アガロースマイクロビーズ上に固定化される21。得られたバイオマテリアルにより、従来と異なる低グレードのREE供給材料からグループ分けされたREEの効果的な抽出が可能になった。さらに、中-軽REEへのLanMの選好を利用することによって、本明細書に記載されるREE分離方法は、REE対(Nd/Dy、及びY/Nd)間の高純度の分離、及び重REE(HREE)と軽REE(LREE)との間のグループ分けされた分離を提供する。したがって、このアプローチの液体-液体抽出を超える主な利点は、単一の全て水性の吸着/脱離サイクル内における非REEからの一次REE抽出と重及び軽REE間の二次分離との組合せである。
【0025】
この説明を読んだ後、様々な代替の実施形態及び代替の適用においてどのように本発明を実行するかが当業者に明らかになるであろう。しかしながら、全ての本発明の様々な実施形態が本明細書に記載されるわけではない。ここで提示される実施形態は、単に一例として提示され、限定ではないことが理解されるであろう。したがって、様々な代替の実施形態のこの詳細な説明は、以下に記載される本発明の範囲又は幅を限定するものと解釈されるべきではない。
詳細な説明は、読み手の利便性のために様々なセクションに分けられ、いずれのセクションで見出される開示も、別のセクションにおける開示と組み合わせることができる。明細書において読み手の利便性のためにタイトル又はサブタイトルが使用される場合があり、これらが本発明の開示の範囲に影響を及ぼすことは意図されない。
文脈上別段の指定がない限り、本明細書に記載される発明の様々な特徴は、あらゆる組合せで使用できることが具体的に意図される。さらに、本開示はまた、一部の実施形態において、本明細書に記載されるいずれの特徴又は特徴の組合せも排除又は省略できることも予期する。例示のために、本明細書において複合体が成分A、B及びCを含むと述べられる場合、A、B若しくはCのいずれか、又はそれらの組合せを、単独で、又はあらゆる組合せで省略したり放棄したりできることが具体的に意図される。
【0026】
定義
全ての数値の表示、例えば、pH、温度、時間、濃度、及び分子量は、範囲を含めて、1.0又は0.1の増加量で、必要に応じて、又は代替として、+/-15%、又は代替として10%、又は代替として5%、又は代替として2%の変動で(+)又は(-)に変動する近似値である。必ずしも明示的に述べられるとは限らないが、全ての数値の表示は、用語「約」が前につくことが理解されるものとする。ことが理解されるであろうこのような範囲の様式は、利便性と簡潔さのために使用され、範囲の限定として明示的に特定された数値を含むだけでなく、その範囲内に含まれる全ての個々の数値又は部分範囲も、各数値及び部分範囲が明示的に特定されているかのように含むものとして柔軟に理解されるべきである。例えば、約1~約200の範囲内の比率は、約1及び約200の明示的に列挙された上下限を含むだけでなく、個々の比率、例えば約2、約3、及び約4、並びに部分範囲、例えば約10~約50、約20~約100なども含むと理解されるべきである。また、必ずしも明示的に述べられるとは限らないが、本明細書に記載される試薬は、単に例示的なものであり、その均等物が当業界において公知であることも理解されるものとする。
【0027】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形の指示対象を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「タンパク質(a protein)」への言及は、複数のタンパク質を含む。
本明細書で使用される場合、以下の用語は以下の意味を有する。
用語「約」は、本明細書で使用される場合、例えば量又は濃度などの測定可能な値を指す場合、特定された量の、20%、10%、5%、1%、0.5%の変動を包含すること、又は0.1%ほどの変動も包含することを意味する。
用語又は「許容できる」、「有効な」、又は「十分な」は、本明細書で開示されるいずれかの成分、範囲、用量の形態などの選択を記載するのに使用される場合、前記成分、範囲、用量の形態などが、開示された目的に好適であることを意図する。
【0028】
語句「ない」又は「実質的にない」は、任意の競合する金属が、精製されたREE材料、組成物、又は溶出した溶液の総質量又は体積の、約0.0001%未満、約0.001%未満、約0.01%未満、約0.1%未満、約1%未満、約5%未満、又は約10%未満の量で存在することを指す。
語句「クリックケミストリー」は、本明細書で使用される場合、分子構成要素を共有結合で連結させる穏やかな条件下で迅速に選択的に進行する有機反応の一群を指す。
「及び/又は」はまた、本明細書で使用される場合、関連する列挙された項目の1つ又は複数のありとあらゆる可能性のある組合せに加えて、二者択一(「又は」)として解釈される場合、組合せの除外も指し、それらを包含する。
【0029】
タンパク質
本開示の態様は、EE選択的なランモジュリン(LanM)タンパク質を含む、REEの分離における使用のためのタンパク質を提供する。
【0030】
ランモジュリン(LanM)は、一部のメチル栄養生物によって生産される約12kDaの低分子量タンパク質であり、天然のランタニド調節タンパク質である。野生型M.エキストロクエンス(M.extorquens)のLanMタンパク質は、配列番号1の配列を有し、任意に、N又はC末端にHis-タグ付けされていてもよい。本開示の方法及び組成物はLanMタンパク質を利用する。好適なLanMタンパク質としては、野生型M.エキストロクエンスのLanMタンパク質、又は少なくとも2つのEFハンドモチーフを有する他の生物由来のホモログが挙げられ、少なくとも1つのEFハンドモチーフは、少なくとも3個のカルボン酸残基を有し、EFハンドモチーフのうち少なくとも2つは、10~15残基のスペースによって隔てられている。本明細書における言及は、一般的に「ランモジュリン」、「LanM」又は「LanMタンパク質」に対してなされ、本明細書に記載される野生型及びホモログを含むことが理解されるべきである。「LanM」は、1つ若しくは複数のLanM単位を有する全長タンパク質、又は1つ若しくは複数のLanM単位を含むその一部を含み得る。LanM単位は、少なくとも2つのEFハンドモチーフを含み、少なくとも1つのEFハンドモチーフは、少なくとも3個のカルボン酸残基を有し、EFハンドモチーフの少なくとも2つは、10~15残基のスペースによって隔てられている。言及を簡易化するために、ランモジュリン、LanM又はLanMタンパク質への言及により議論がなされ、全長タンパク質及び好適なLanM単位を有する全長タンパク質の一部の両方を含むことが理解されるべきである。
【0031】
このタンパク質のEFハンドの固有な特徴は、これまでにタンパク質の最初の特徴付けにおいて論じられている(Cotruvo et al., J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 44, 15056-15061)。M.エキストロクエンスのAM1ランモジュリンに加えて他の生物由来のホモログの生化学的及び構造的な研究に基づいて、ランモジュリンタンパク質ドメインは、特定の主要な特徴を有する。多くの例において、EFハンドの少なくとも1つは、第2の位置にプロリン残基を含有していた。しかしながら、全てのLanMホモログがこのような残基を有しているわけではない;その上それらは、例えば隣接するEFハンドの少なくとも2つの間の間隔(10~15残基、例えば12~13残基)、及びEFハンドにおける追加のカルボン酸残基などの、同定されたLanMの他の主要な特徴を呈示する。特に、隣接するEFハンド間の間隔が、カルモジュリンなどの従来のEFハンドを含有するタンパク質からそれらを区別するこれらのタンパク質の顕著な特徴であると考えられる。M.エキストロクエンスのLanMに対して極めて低い(<40%)同一性を有する配列でさえも、上述した他の一般的な特徴が保存されている場合、類似した特性を有する可能性がある。実施形態において、LanMは、配列番号1の配列を有するM.エキストロクエンスの野生型LanMであり、任意に末端Hisタグ付けされていてもよい。実施形態において、LanMは野生型LanMのホモログであってもよい。好適なホモログは、少なくとも2つのEFハンドモチーフを有し、少なくとも1つのEFハンドモチーフは、少なくとも3つのカルボン酸残基を有し、EFハンドモチーフの少なくとも2つは、10~15残基(12~13残基を含む)のスペーサーによって隔てられている。例えば、タンパク質は、以下の形態:(D/N)-X1-(D/N)-X2-(D/N)-X3-X4-X5-X6-X7-X8-(E/D)を有する、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのEFハンドモチーフを含んでいてもよく、ここで、番号付けされた各Xは、任意の残基であり(各位置において必ずしも同じ残基とは限らない);X6及び/又はX8は、D又はEであり、グリシンが好ましいが、X3においては必ずしもそうではない。
本実施形態において、LanMは、これらのEFハンドに、又はタンパク質中のそれ以外の場所に置換された、任意の天然又は天然にはないアミノ酸を含んでいてもよい。実施形態において、本開示の方法で使用されるタンパク質は、適切なアミノ酸スペーサーと一緒に、単一のポリペプチド単位に連結されたあらゆる数のランモジュリンドメイン(本明細書ではLanM単位として言及される)を含んでいてもよい。実施形態において、LanMは、1つのみのLanMタンパク質単位を含む。実施形態において、LanMは、本明細書で使用される場合、第2の位置にプロリン残基を含む。実施形態において、LanMは、本明細書で使用される場合、少なくとも2つの隣接するEFハンド間に、10~15残基、例えば12~13残基を含む。一部の実施形態において、LanMは、本明細書で使用される場合、EFハンドの1つ又は複数において、追加のカルボン酸残基を含み、例えば、3個若しくはそれより多く、4個若しくはそれより多く、又は5個若しくはそれより多くのカルボン酸残基を含む。
【0032】
野生型M.エキストロクエンスのLanMの配列番号1(EFハンドモチーフは下線で示される)
APTTTTKVDIAAFDPDKDGTIDLKEALAAGSAAFDKLDPDKDGTLDAKELKGRVSEADLKKLDPDNDGTLDKKEYLAAVEAQFKAANPDNDGTIDARELASPAGSALVNLIR
野生型のホモログの一部の例としては、以下が挙げられる(注:配列は、予測されるシグナル配列の除去後に示される)。
【0033】
例A:RH AL1
AKMDMKAIDPDSDGTVSLAEAQDAAAKKFAAMDPDNDGTIDLKEAKGKMAKAKFKKTDADNDGTVDKAEYSALVESAFKAADPDGDGTLDAKELKTPAGQKLLSLIQ
このタンパク質において、EFハンドの1つは、プロリンを欠如しており、EF1は、9位及び11位においてカルボキシレートを欠如しているが、それでもなおピコモル濃度範囲の希土類元素の遊離濃度で構造的な応答を受ける。
【0034】
B:ハンシュレゲリア属種(Hansschlegelia sp.)
ASGADALKALNKDNDDSLEIAEVIHAGATTFTAINPDGDTTLESGETKGRLTEKDWARANKDGDQTLEMDEWLKILRTRFKRADANKDGKLTAAELDSKAGQGVLVMIMK
このタンパク質において(31%の同一性)、EFハンドのうち1つのみが第2の位置にプロリンを有し、1つのみが第1の位置にAsp残基を有する。しかしながら、それは、それでもなお、ピコモル濃度範囲の希土類元素の遊離濃度に対して構造的な応答を受け、他の金属(例えばカルシウム)に対してはそれよりかなり弱い構造的な応答を受ける。
【0035】
例C:キサントモナス・アクソノポディス
AQAQVQVQDSQQYLQRMDTDGDGRVSLDEYLAWMSYAFDQRDTDHDGVLQGDELPG RRGKPITRAAHRATLIARFARQDANGDGYLSARELLAPPR
このタンパク質は、M.エキストロクエンスのLanMと約33%の配列同一性を有し、3つのみのEFハンド(下線で示される;M.エキストロクエンスのLanMとの配列アライメントに基づいてEF1、EF2、及びEF4と称される)を含有し、これらのうちどれもプロリンを有さないが、それでもピコモル濃度範囲の希土類元素の遊離濃度に対して構造的な応答を受け、他の元素(例えばカルシウム)に対してはそれよりかなり弱い構造的な応答を受ける。ここで留意すべきことに、EF1及びEF2は、わずか13残基離れているだけにもかかわらず、この配列における隣接するEF2とEF4との間の距離は、EFハンドの1つ(EF3)が失われているため、ほとんどのランモジュリンの場合より長い(25アミノ酸)。
【0036】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供されるLanMタンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列若しくはそれらの一部、又は配列番号1と、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有する配列を含む、それからなる、又はそれから本質的になる。
【0037】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供されるLanMタンパク質は、配列番号2に記載のアミノ酸配列若しくはそれらの一部、又は配列番号2と、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する配列を含む、それからなる、又はそれから本質的になる。
【0038】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供されるLanMタンパク質は、配列番号3に記載のアミノ酸配列若しくはそれらの一部、又は配列番号3と、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する配列を含む、それからなる、又はそれから本質的になる。
ある特定の実施形態において、本明細書で提供されるLanMタンパク質は、配列番号3に記載のアミノ酸配列若しくはそれらの一部、又は配列番号4と、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有する配列を含む、それからなる、又はそれから本質的になる。
LanMタンパク質が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、又はそれらの一部と100%未満の同一性を有するアミノ酸配列を含むある特定の実施形態において、配列の差をもたらす置換の全ては、保存的置換である。他の実施形態において、本明細書で提供されるLanMタンパク質は、LanMタンパク質に対する1つ又は複数の非保存的置換を含んでいてもよい。ある特定の実施形態において、本明細書で提供されるLanMタンパク質は、LanMタンパク質に対する1、2、3、4、若しくは5つ又はそれより多くの保存的置換を含む。
【0039】
【0040】
REEは、イットリウムと15種のランタニド元素とを含む17種の化学元素のグループである。スカンジウムは、ほとんどのREE鉱床で見出され、多くの場合そこに含まれている。
表2: 希土類元素
【0041】
REE結合タンパク質は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、又はそれらのあらゆる組合せのいずれかと結合することができる。REE結合リガンドは、あらゆる酸化状態の元素(例えば、Ln2+、Ln3+、Ln4+など)のいずれとも結合することができる。
【0042】
一部の実施形態において、REE結合タンパク質(例えば、LanM)は、約0.1pM~約1μMの間の結合親和性(すなわち、Kd、タンパク質複合体に一般的に使用される熱力学的解離定数)を有する3価のランタニドイオン(例えばREE)と結合する。一部の実施形態において、Kdは、約0.1pM、約100pM、約500pM、約1nM、約10nM、約50nM、約100nM、約500nM、又は約1μMである。さらに他の実施形態においてKdはpMの範囲内である。親和性は、当業者に公知のあらゆる好適な手段によって決定することができる。非限定的な例としては、REEでの滴定、及び蛍光、円偏光二色性、ICP、NMR又は熱量測定を使用する検出が挙げられる。固い結合の配列の場合、競合実験を採用することが必要な場合がある。
【0043】
一部の実施形態において、LanMはシステイン残基を含む。一部の実施形態において、システイン残基は、C末端システイン残基、N末端システイン残基、又は内部システイン残基である。一部の実施形態において、短い、親水性のフレキシブルなリンカーは、LanMからシステイン残基を分離する。例示的なリンカーとしては、GlyxSeryの1~10回の繰り返しを含むグリシン-セリンアミノ酸鎖を有するものが挙げられ、ここで、x及びyは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、ただしxとyとが両方とも0であることは無い(例えば、GlySerGly、(Gly4Ser)2;(Gly3Ser)2;Gly2Ser;又はそれらの組合せ、例えば(Gly3Ser)2Gly2Ser)。
【0044】
一部の実施形態において、本明細書で提供されるLanMタンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列又はそれらの一部及びC末端システイン残基、例えば、GSGCを含む、それからなる、又はそれから本質的になる。一部の実施形態において、本明細書で提供されるLanMタンパク質は、配列番号2に記載のアミノ酸配列又はそれらの一部及びC末端システイン残基、例えば、GSGCを含む、それからなる、又はそれから本質的になる。一部の実施形態において、本明細書で提供されるLanMタンパク質は、配列番号3に記載のアミノ酸配列又はそれらの一部及びC末端システイン残基、例えば、GSGCを含む、それからなる、又はそれから本質的になる。
【0045】
バイオソープション系
また、LanMタンパク質を含む所定量のタンパク質を含む、REE抽出及び優先的な分離のための系(すなわち、バイオソープション/吸着媒体)も提供される。
バイオソープションは、吸着、吸収、イオン交換、表面複合体形成、及び沈殿などの様々なメカニズムに基づく化学的プロセスである。タンパク質又はバイオマスなどの生物学的な起源からの材料とカップリングされる場合、この材料はバイオソープション材料と称される。バイオソープション材料は、例えば、REEに結合して、それらをREE含有材料(例えば、供給材料)から分離することができる。REE含有材料からREEを優先的に分離するためのタンパク質を含むバイオソープション材料が本明細書で提供される。REE抽出及び優先的な分離は所定量のタンパク質を含む。
【0046】
これらのバイオソープション媒体としては、例えば、バイオフィルム、マイクロビーズ、及びカーボンナノチューブが埋め込まれた膜が挙げられ、これらは、連続フロー下での吸着に使用することができる。フロースルーセットアップでの使用のためのバイオソープション媒体におけるタンパク質固定化は、単一工程での、例えば、液体-液体分離、遠心分離、ろ過を必要とすることのない、又はその両方での、混合金属溶液中の他のREEからのREEの分離を含む、REEを含有する混合金属溶液からの完全な(又は実質的に完全な)REEの分離を可能にすることが予期される。
一部の実施形態において、バイオソープション材料は、ビーズ及び/又はカプセルである。一部の実施形態において、ビーズ及び/又はカプセルはREEの分離に好適なものである。一部の実施形態において、ビーズ及び/又はカプセルはREE選択的タンパク質を含む。一部の実施形態において、バイオソープション材料はマイクロビーズである。本明細書で使用される場合、用語「カプセル」は「ビーズ」と互換的に使用される。
【0047】
一部の実施形態において、タンパク質は、固体支持体、例えば、カラム、膜、ビーズなどに付着されている。一部の実施形態において固体支持体は多孔質支持体材料である。固体支持体は、当業者に公知のあらゆる好適な組成物であってもよく、例えば、ポリマー、アガロース、アルギネート、アクリルアミド、再生セルロース、セルロースエステル、プラスチック、又はガラスが挙げられる。
一実施形態において、タンパク質は、ビーズ内に、又はビーズの表面に結合している(すなわち、埋め込まれている)。一部の実施形態において、ビーズはポリマーである。好適なポリマーとしては、PEG(例えば、約10%PEG)、アルギネート(例えば、約2%アルギン酸カルシウム)、アクリルアミド(例えば、約10%ポリアクリルアミド)、及びアガロースが挙げられる。他の実施形態において、ビーズは、ガラス、プラスチック、又は鋼である。
【0048】
他の実施形態において、本開示は、REE分離のためのマイクロビーズ溶液を調製する方法を提供する。一部の実施形態において、REE分離のためのビーズを調製するための本方法は、(a)REEと選択的に結合できるタンパク質と、コンジュゲーション剤で官能化した多孔質支持体材料、とを提供する工程;及び(b)タンパク質を、コンジュゲーション剤を介して多孔質支持体材料に結合させる工程を含む。
一部の実施形態において、本方法は、支持体材料を末端アミン(例えば、-NH2)で官能化する工程を含む。一部の実施形態において、多孔質支持体材料は、アガロースを含む。一部の実施形態において、多孔質支持体材料は、アミンによって官能化されたアガロースである。
【0049】
一部の実施形態において、コンジュゲーション剤はマレイミドである。このような実施形態において、本方法は、末端アミンをマレイミドと反応させて、マレイミドによって官能化されたアガロースビーズを形成する工程をさらに含んでいてもよい。一部の実施形態において、マレイミドは、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)である。
一部の実施形態において、本方法は、マレイミドで官能化した多孔質支持体材料をREE選択的タンパク質と結合させる工程をさらに含む。一部の実施形態において、タンパク質は、システイン残基を含む。一部の実施形態において、多孔質支持体材料は、多孔質支持体材料のマレイミド及びタンパク質のシステイン残基を介してREE選択的タンパク質に結合させる。一部の実施形態において、システイン残基を含むREE選択的タンパク質は、「クリック」ケミストリーにより多孔質支持体材料のマレイミドに結合させる。REE選択的タンパク質を、「クリック」ケミストリーにより多孔質支持体材料に結合させることは、生体適合性の反応条件下、すなわち有機溶媒がない水性条件下での結合を可能にすることから有利である。
【0050】
一部の実施形態において、タンパク質を多孔質支持体材料に結合させることは、コンジュゲーション剤を使用するあらゆるバイオコンジュゲーション手法を含み得る。一部の実施形態において、バイオコンジュゲーション方法は、チオール-エン「クリック」ケミストリーを使用する。一部の実施形態において、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)は、多孔質支持体構造へのタンパク質のバイオコンジュゲーションのためのコンジュゲーション剤として使用することができる。コンジュゲーション剤としても使用できる例示的なNHS架橋剤としては、ジベンゾシクロオクチン(dibenzycyclooctyne)-N-ヒドロキシスクシンイミド(DBCO-NHS)、ビシクロノニン-N-ヒドロキシスクシンイミド(BCN-NHS)、及びジベンゾシクロオクチン-スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミド(DBCO-スルホ-NHS)が挙げられる。一部の実施形態において、バイオコンジュゲーション方法はアルキン/アザイド「クリック」ケミストリーを使用する。例えば、アルキン/アザイド「クリック」ケミストリーは、コンジュゲーション剤として使用されるアルキン部分を含む多孔質支持体材料に、アザイド部分を含むタンパク質を結合させるために利用することができる。
【0051】
一部の実施形態において、ビーズは高濃度のREE選択的なタンパク質を有する。タンパク質の高度なローディングは、少なくとも部分的に、利用可能なREE結合部位の数を増加させることによってバイオソープション材料の飽和容量を強化するように作用できることが予期される。REE結合部位の数の増加は、REE結合リガンドと複合体化してタンパク質-REE複合体を形成するREE含有材料からのREEの、より大きいパーセンテージをもたらす(例えば、飽和容量の増加)。一部の実施形態において、飽和容量の増加は、吸着容量の増加(すなわち、REE含有材料の単位体積又は単位質量当たりのREE選択的タンパク質と複合体化するREEの数の増加)と相関する。飽和及び吸着容量の増加は、REE分離プロセスにおける遠心分離及びろ過などの追加のエネルギーを消耗する工程の必要性をなくすことが予期される。
【0052】
一部の実施形態において、タンパク質(例えば、LanM)の高濃度は、総多孔質支持体材料(例えば、マイクロビーズ)の1mL当たり、約2μmol(μmol/mL)のタンパク質、2.2μmol/mL、2.4μmol/mL、2.6μmol/mL、2.8μmol/mL、3.0μmol/mL、3.2μmol/mL、3.4μmol/mL、3.6μmol/mL、3.8μmol/mL、4μmol/mL、5μmol/mL、10μmol/mL、15μmol/mL、20μmol/mL、25μmol/mL、30μmol/mL、35μmol/mL、40μmol/mL、45μmol/mL、又は50μmol/mLのタンパク質である。一部の実施形態において、タンパク質(例えば、LanM)の高濃度は、総多孔質支持体材料(例えば、マイクロビーズ)の1mL当たり、約2μmol/mL~約4μmol/mL、約3μmol/mL~約4μmol/mL、約2.2μmol/mL~約3μmol/mL、約3.2μmol/mL~約4μmol/mL、約2μmol/mL~約3.6μmol/mL、約10μmol/mL~約30μmol/mL、約20μmol/mL~約30μmol/mL、約10μmol/mL~約40μmol/mL、約20μmol/mL~約40μmol/mL、又は約25μmol/mL~約50μmol/mLである。
【0053】
一部の実施形態において、タンパク質の高濃度は、ビーズの総質量の、少なくとも約20質量パーセント(質量%)、少なくとも約5質量%、少なくとも約10質量%、少なくとも約15質量%、少なくとも約20質量%、少なくとも約25質量%、少なくとも約30質量%、少なくとも約35質量%、少なくとも約40質量%、少なくとも約45質量%、少なくとも約50質量%、少なくとも約55質量%、少なくとも約60質量%、少なくとも約65質量%、少なくとも約70質量%、少なくとも約75質量%、少なくとも約80質量%、少なくとも約85質量%、少なくとも約90質量%、少なくとも約95質量%、若しくはそれより多くであるか、又は総多孔質支持体材料(例えば、マイクロビーズ)の、少なくとも約20体積パーセント(vol%)、少なくとも約5vol%、少なくとも約10vol%、少なくとも約15vol%、少なくとも約20vol%、少なくとも約25vol%、少なくとも約30vol%、少なくとも約35vol%、少なくとも約40vol%、少なくとも約45vol%、少なくとも約50vol%、少なくとも約55vol%、少なくとも約60vol%、少なくとも約65vol%、少なくとも約70vol%、少なくとも約75vol%、少なくとも約80vol%、少なくとも約85vol%、少なくとも約90vol%、少なくとも約95vol%、若しくはそれより多くである。
【0054】
一部の実施形態において、タンパク質の高い吸着容量は、タンパク質1グラム(g)当たり、少なくとも約1ミリグラム(mg)、少なくとも約2mg、少なくとも約3mg、少なくとも約4mg、少なくとも約5mg、少なくとも約6mg、少なくとも約7mg、少なくとも約8mg、少なくとも約9mg、少なくとも約10mg、少なくとも約11mg、少なくとも約12mg、少なくとも約13mg、少なくとも約14mg、少なくとも約15mg、少なくとも約16mg、少なくとも約17mg、少なくとも約18mg、少なくとも約19mg、少なくとも約20mg、少なくとも約21mg、少なくとも約22mg、少なくとも約23mg、少なくとも約24mg、少なくとも約25mg、少なくとも約26mg、少なくとも約27mg、少なくとも約28mg、少なくとも約29mg、少なくとも約30mg、少なくとも約31mg、少なくとも約32mg、少なくとも約34mg、少なくとも約35mg、少なくとも約36mg、少なくとも約37mg、少なくとも約38mg、少なくとも約39mg、少なくとも約40mg、少なくとも約41mg、少なくとも約42mg、少なくとも約43mg、少なくとも約44mg、少なくとも約45mg、少なくとも約46mg、少なくとも約47mg、少なくとも約48mg、少なくとも約49mg、又は少なくとも約50mgのREEである。
【0055】
一部の実施形態において、タンパク質の高い吸着容量は、タンパク質1グラム(g)当たり、少なくとも約1ミリグラム(mg)、少なくとも約2mg、少なくとも約5mg、少なくとも約10mg、少なくとも約15mg、少なくとも約20mg、少なくとも約25mg、少なくとも約30mg、少なくとも約35mg、少なくとも約40mg、少なくとも約45mg、少なくとも約50mg、少なくとも約60mg、少なくとも約65mg、少なくとも約70mg、少なくとも約75mg、少なくとも約80mg、少なくとも約85mg、少なくとも約90mg、少なくとも約95mg、又は少なくとも約100mgのREEである。一部の実施形態において、タンパク質は、タンパク質1g当たり約30~約70mgの間のREEの吸着容量を有する。
【0056】
一部の実施形態において、タンパク質の高い吸着容量は、バイオソープション媒体(例えば、系及び/又は材料)1グラム(g)当たり、少なくとも約0.1ミリグラム(mg)、少なくとも約2mg、少なくとも約5mg、少なくとも約10mg、少なくとも約15mg、少なくとも約20mg、少なくとも約25mg、少なくとも約30mg、少なくとも約35mg、少なくとも約40mg、少なくとも約45mg、少なくとも約50mg、少なくとも約60mg、少なくとも約65mg、少なくとも約70mg、少なくとも約75mg、少なくとも約80mg、少なくとも約85mg、少なくとも約90mg、少なくとも約95mg、少なくとも約100mgのREEである。一部の実施形態において、タンパク質は、バイオソープション媒体1g当たり約30~約70mgの間のREEの吸着容量を有する。
【0057】
別の実施形態において、タンパク質は、ビーズ内に、及び/又はビーズの表面上に封入されている。タンパク質がビーズ内に、及び/又はビーズの表面上に封入されている場合、ビーズは、REEと効率的に結合することができる。REE含有材料がビーズ上を流れるか及び/又はビーズを通ると、固定化LanMタンパク質は、ビーズ内とビーズの表面上の両方にREEを捕獲することができ、これは、ビーズの総体積に対する利用可能な結合部位(すなわち、結合リガンド)の比率を増加させることによってビーズの吸着容量を最適化する。
【0058】
一部の実施形態において、支持体材料(例えば、マイクロビーズ)は多孔質である。一部の実施形態において、支持体材料は、繊維状材料である。例えば、一部の実施形態において、支持体材料は、電界紡糸繊維(electrospun fiber)を用いて生産された繊維状材料である。多孔質支持体材料は、REE含有材料のフローが、ビーズの外表面だけでなく内表面にも接触することを可能にし、それによってREEの支持体材料の飽和及び吸着容量を増加させる(すなわち、接近しやすさを増加させる)。一部の実施形態において、多孔質支持体材料は、少なくとも約0.10nm、少なくとも約1.0nm、少なくとも約10nm、少なくとも約50nm、少なくとも約100nm、少なくとも約150nm、少なくとも約200nm、少なくとも約250nm、少なくとも約300nm、少なくとも約350nm、少なくとも約400nm、少なくとも約450nm、少なくとも約500nm、少なくとも約550nm、少なくとも約600nm、少なくとも約650nm、少なくとも約700nm、少なくとも約750nm、少なくとも約800nm、少なくとも約850nm、少なくとも約900nm、少なくとも約950nm、又は少なくとも約1000nmの孔径を有する。一部の実施形態において、多孔質支持体材料は、約1.0nm~約500nm、約0.10nm~約10nm、約150nm~約1000nm、約300nm~約600nm、約200nm~約800nm、約300nm~約500nm、約500nm~約1000nm、又は約600nm~約800nmの孔径を有する。
【0059】
方法
また、REE含有材料からREEを優先的に分離するために、さらに、他のREEからREEを分離するために、タンパク質、例えばLanMを使用する方法も提供される。
REE含有材料からのREEの優先的な分離は、電池、磁石、及びエレクトロニクスなどの技術の開発にとって重要であるが、REEの化学的特性が類似していることにより、互いに分離すること、および、他の非REEから分離することが極めて困難になる。一般的な技術は、特にREEが競合する金属、例えば非REE(例えば、アルカリ、アルカリ性、及び他の遷移金属)の混合物の存在下にある場合、REEに対する低い選択性が妨げになっている。より一層困難なのは、競合する金属がREEよりはるかに高い濃度で存在する場合、それら競合する金属からREEを分離することである。REE分離における内在的な困難性のために、従来の技術は、REEを高純度で分離する能力において限界があり、さらに、工業的なバルクスケールでREEを優先的に分離することが可能な系の開発を妨げてきた。本発明の開示は、高い選択性、高い効率、及び低コストでのREEの優先的な分離のための方法であって、それぞれ大規模な工業スケールでREEを分離することが可能な系に役立つことを特徴とする方法を提供する。一部の実施形態において、REE含有材料からREEを優先的に分離するための方法は、他のREE又は非REEから個々のREE又はREEのグループを分離する工程を含む。個々のREEの優先的な分離は、別のREE(例えば、Er)、REEのグループ、又は非REEのいずれかからのREE(例えば、La)の単離であって、分離後に存在する(すなわち、溶出した溶液中に)他の元素、REE若しくは非REEが存在しないか又は実質的に存在しないような単離を指す。例えば、本明細書で提供される優先的な分離方法は、Y、Dy、及びTb(すなわち、REEのグループ)からの、並びに/又は、競合する金属(すなわち、非REE)からのNd(すなわち、個々のREE)の分離を可能にする。一部の実施形態において、優先的な分離は、分離後に(すなわち、溶出した溶液中に)他の個々のREE、REEのグループ及び/若しくは非REEが存在しないか又は実質的に存在しない、個々のREEの高純度の分離を提供する。
【0060】
一態様において、REE含有材料からREEを優先的に分離するための方法であって、(a)1種又は複数種のREEと選択的に結合できるタンパク質を提供する工程;(b)前記タンパク質をREE含有材料と接触させる工程であって、前記タンパク質が1種又は複数種のREEの少なくとも一部と結合してタンパク質-REE複合体及びREE枯渇材料を形成する、前記工程;(c)前記REE枯渇材料の少なくとも一部から前記タンパク質-REE複合体を分離する工程;並びに(d)前記タンパク質からREEを分離して、再生された前記タンパク質を生産する工程、を含む前記方法、が本明細書で提供される。一部の実施形態において、記載された工程は1度実行される。他の実施形態において、工程又は工程の一部は、1回より多く、例えば、2、3、4、5回、又はそれより多くの回数実行される。一部の実施形態において、工程又は工程の一部は、1つより多くのREE含有材料を用いて、例えば1、2、3、4、5、又はそれより多くのREE含有材料を用いて、1回より多く実行される。
【0061】
一部の実施形態において、工程又は工程の一部は、REEの少なくとも約100%、少なくとも約90%、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、又は少なくとも約10%がタンパク質-REE複合体から分離されるまで繰り返される。
【0062】
一部の実施形態において、タンパク質は、そのタンパク質をREE含有材料と接触させる工程の前にカラムに添加される。一部の実施形態において、カラムにタンパク質を添加する前に、タンパク質は、固体構造物(例えば、ビーズ及び/又はカプセル)内に、又はその表面に結合される。タンパク質は、カラムに添加されると、カラムクロマトグラフィーにおいて慣習的に定義される通り、固定相として使用される。これにより、REE含有材料がカラムに導入され、カラムを通って流動する、連続フロー系が可能になる。一部の実施形態において、フローはカラムの上から下である。一部の実施形態において、フローは逆転し、フローはカラムの下から上である。
【0063】
ある特定の実施形態において、1つ又は複数の吸着/脱離サイクルを含む、REE含有材料から希土類元素(REE)を分離するための方法である。一部の実施形態において、本明細書で開示される方法は、2回又はそれより多くの吸着/脱離サイクルを含んでいてもよい。一部の実施形態において、各サイクルは、REEを、別々にタンパク質に吸着させ、タンパク質から脱離させる工程を含む。例えば、一部の実施形態において、タンパク質をREE含有材料と接触させる工程のとき、REEをタンパク質に吸着させ(すなわち、タンパク質-REE複合体を形成し)、次いで溶液を導入するときに、REEをREE結合リガンドから脱離させる(すなわち、タンパク質からREEを解離させることによって、タンパク質-REE複合体を壊して離れた状態にする)。一部の実施形態において、カラムが飽和するまで(すなわち、全ての、又は実質的に全てのタンパク質結合部位がREEに結合してタンパク質-REEを形成するまで)、タンパク質を含むカラム上にREE含有材料を流動させる。一部の実施形態において、タンパク質結合部位の、少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、又は少なくとも約50%が、REEと結合される。最初の吸着工程で、REEを保持しながら(すなわち、REE結合リガンドと結合したまま)、非REEの大部分(すなわち、50%より多く)がカラムを通り過ぎる。次いでカラムを溶液で洗浄して、残留した未結合のREE又は非REEを洗い流すか又はタンパク質-REE複合体から分離させる。飽和及び洗浄後、溶液を使用して、タンパク質からREEを差次的に分離する(すなわち、溶出させる)。本明細書で開示される実施形態によれば、差次的に分離/溶出させたREE溶液は、フィード溶液と比較してより高濃度のREEを有し得る、REEが富化された溶液である。
【0064】
一部の実施形態において、REEは、質量移行プロセス中に同時に、REE結合リガンドに吸着し、それから脱離される。例えば、一部の実施形態において、REE含有材料をタンパク質を含むカラム上に流動させ、タンパク質結合部位の一部のみがREEを吸着してタンパク質-REE複合体を形成する。次いで溶液はカラムを通って流動し、REEがカラムの上から下に進むにつれて、REEは一連の吸着及びREE結合リガンドからの脱離(すなわちこれは、動的なプロセスである)を受ける。REE結合リガンド(すなわち、固相)及び調整可能な溶液(すなわち、移動相)に対する各REEの親和性の差が、カラムを通るREEの移動速度を制御する。より重いREEとタンパク質とで形成される複合体は、より軽いREE及びタンパク質とで形成される複合体と比較して弱いため、より重いREEは軽いREEより速くカラムを通って移動し、これによりREEの優先的な分離のための方法が提供される。具体的には、ランモジュリンがScと最も強い複合体を形成することを考えれば、Yは、HREEと共に移動し、それに対してScは、最も遅くカラムを通って移動する。同時の吸着及び脱離プロセスは、個々のREE及び/又はREEのグループの高純度での分離を可能にする。この方法は、高度に精製されたREE及び/又はREEのグループを得るために、費用がかかる化学樹脂の使用又は有害な溶媒との使用を必要とする従来のREE分離プロセスを超える利点を提供する。
【0065】
一部の実施形態において、REE含有材料からREEを優先的に分離するための方法は、改変可能な溶液を導入する工程をさらに含む。改変可能な溶液は、REEをタンパク質に導入するのに使用される最初の溶液と比較して異なる濃度のキレート化剤及び/又は異なるpHを有する溶液である。改変可能な溶液は、REE含有材料からREEを優先的に分離する。溶液(すなわち、移動相)に対する個々のREE又はREEのグループの親和性は増加するが、REE結合リガンド(すなわち、固定相)に対する個々のREE又はREEのグループの親和性は減少する方式で溶液が改変される場合、優先的な分離を達成することができる。逆に、REE結合リガンド(すなわち、固定相)に対する個々のREE又はREEのグループの親和性は増加するが、REE溶液に対する個々のREE又はREEのグループの親和性は減少する様式で溶液が改変される場合にも、優先的な分離を達成することもできる。
【0066】
一部の実施形態において、他のREEから1種又は複数種のREEを選択的に脱離させるために、REEは、別々に、タンパク質に吸着させ、タンパク質から脱離させる。例えば、一部の実施形態において、カラムが飽和するまで(すなわち、全ての、又は実質的に全てのタンパク質結合部位がREEに結合して、タンパク質-REEを形成するまで)、タンパク質を含むカラム上にREE含有材料を流動させる。一部の実施形態において、タンパク質結合部位の、少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、又は少なくとも約50%が、REEに結合される。一部の実施形態において、飽和したら、1つ又は複数の溶液を使用して、逐次的な方式で、タンパク質から1種又は複数種のREEを差次的に分離する(すなわち、溶出させる)。例えば、一部の実施形態において、第1の溶液はHREEを分離するのに使用され、第2の溶液はMREEを分離するのに使用され、第3の溶液はLREEを分離するのに使用される。他の実施形態において、タンパク質から1種又は複数種のREEを優先的に分離するために、1つ又は複数の溶液が使用される。
【0067】
一部の実施形態において、REEを優先的に分離するための方法は連続的であり、REE分離は、遠心分離及び/又はろ過などの追加の多大なエネルギーを要する工程によって中断されない。他の実施形態において、REEを優先的に分離するための方法は、遠心分離、ろ過、又はその両方の追加の工程を含む。
一部の実施形態において、タンパク質-REE複合体は、約2.4~約7のpHで形成される。一部の実施形態において、タンパク質-REE複合体は、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、又は約10のpHで形成される。一部の実施形態において、タンパク質-REE複合体は約2.4~約10のpHで形成され、タンパク質はいかなる非REE成分(例えば、非REE金属)とも結合しない。
【0068】
一部の実施形態において、REE選択的タンパク質は、タンパク質1つ当たり2つのREEと結合する。例えば、一部の実施形態において、REE対タンパク質の化学量論的な比率は、2:1である。一部の実施形態において、タンパク質-REE複合体は1つのタンパク質当たり2つのREEを含む。一部の実施形態において、タンパク質は、LanMであり、REE対LanMの化学量論的な比率は2:1である。
一部の実施形態において、REE選択的タンパク質は、タンパク質1つ当たり3つのREEと結合する。例えば、一部の実施形態において、REE対タンパク質の化学量論的な比率は3:1である。一部の実施形態において、タンパク質-REE複合体は1つのタンパク質当たり3つのREEを含む。一部の実施形態において、タンパク質はLanMであり、REE対LanMの化学量論的な比率は、3:1である。
【0069】
一部の実施形態において、REE選択的タンパク質は、タンパク質1つ当たり4つのREEと結合する。例えば、一部の実施形態において、REE対タンパク質の化学量論的な比率は4:1である。一部の実施形態において、タンパク質-REE複合体は1つのタンパク質当たり4つのREEを含む。一部の実施形態において、タンパク質はLanMであり、REE対LanMの化学量論的な比率は4:1である。
【0070】
一部の実施形態において、REE選択的タンパク質はタンパク質1つ当たり5つのREEと結合する。例えば、一部の実施形態において、REE対タンパク質の化学量論的な比率は5:1である。一部の実施形態において、タンパク質-REE複合体は1つのタンパク質当たり5つのREEを含む。一部の実施形態において、タンパク質はLanMであり、REE対LanMの化学量論的な比率は5:1である。
一部の実施形態において、REE選択的タンパク質はタンパク質1つ当たり6つのREEと結合する。例えば、一部の実施形態において、REE対タンパク質の化学量論的な比率は6:1である。一部の実施形態において、タンパク質-REE複合体は1つのタンパク質当たり6つのREEを含む。一部の実施形態において、タンパク質はLanMであり、REE対LanMの化学量論的な比率は6:1である。
【0071】
一部の実施形態において、REE選択的タンパク質はタンパク質1つ当たり7つのREEと結合する。例えば、一部の実施形態において、REE対タンパク質の化学量論的な比率は7:1である。一部の実施形態において、タンパク質-REE複合体は1つのタンパク質当たり7つのREEを含む。一部の実施形態において、タンパク質はLanMであり、REE対LanMの化学量論的な比率は7:1である。
一部の実施形態において、REE選択的タンパク質はタンパク質1つ当たり8つのREEと結合する。例えば、一部の実施形態において、REE対タンパク質の化学量論的な比率は、8:1である。一部の実施形態において、タンパク質-REE複合体は1つのタンパク質当たり8つのREEを含む。一部の実施形態において、タンパク質はLanMであり、REE対LanMの化学量論的な比率は8:1である。
【0072】
一部の実施形態において、REE選択的タンパク質はタンパク質1つ当たり9つのREEと結合する。例えば、一部の実施形態において、REE対タンパク質の化学量論的な比率は9:1である。一部の実施形態において、タンパク質-REE複合体は1つのタンパク質当たり9つのREEを含む。一部の実施形態において、タンパク質はLanMであり、REE対LanMの化学量論的な比率は9:1である。
一部の実施形態において、REE選択的タンパク質はタンパク質1つ当たり10のREEと結合する。例えば、一部の実施形態において、REE対タンパク質の化学量論的な比率は10:1である。一部の実施形態において、タンパク質-REE複合体は10のREE1つのタンパク質当たり10個のREEを含む。一部の実施形態において、タンパク質はLanMであり、REE対LanMの化学量論的な比率は10:1である。
【0073】
一部の実施形態において、REE選択的タンパク質はLanMタンパク質であり、LanMタンパク質は、配列番号4に記載のアミノ酸配列又はそれらの一部を含むか、又はそれから本質的になり、タンパク質1つ当たり4つのREEと結合する。例えば、一部の実施形態において、REE対タンパク質の化学量論的な比率は、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、又は10:1である。一部の実施形態において、タンパク質-REE複合体は1つのタンパク質当たり4つのREEを含む。一部の実施形態において、タンパク質はLanM(配列番号4)であり、REE対LanMの化学量論的な比率は、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、又は10:1である。
一部の実施形態において、REEは、タンパク質-REE複合体を約2.4未満のpHを有する溶液と接触させることによってタンパク質から分離される。一部の実施形態において、溶液は、約2.4未満、約2.3未満、約2.2未満、約2.1未満、約2未満、約1.9未満、約1.8未満、約1.7未満、約1.6未満、約1.5未満のpH、又はそれ未満のpHを有する。本明細書に記載される実施形態によれば、具体的な、又は特定されたpHを有する溶液は、そのpHを生じることが当業界において公知のあらゆる溶液若しくは組成物、例えば、HCL溶液、H2SO4溶液、HNO3溶液、HCl/NaCl、H2SO4/KHSO4/Na2SO4の混合物、若しくは他の混合物を有する溶液、グリシンの溶液、又は所望の溶液を生産することが可能な他のあらゆる相溶性溶媒を使用することによって生成される。
【0074】
一部の実施形態において、REEは、REE-複合体をキレート化剤を含む溶液と接触させることによってタンパク質から分離される。キレート剤としては、非REE金属又はREEと結合することが可能な官能基を含むあらゆる化合物を挙げることができる。例えば、ある特定の実施形態において、キレート化剤又はキレート剤は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、又はトリカルボン酸であってもよい。キレート化剤又はキレート剤の非限定的な例としては、EDTA、クエン酸塩、ジメルカプロール、マロン酸塩、イミノ二酢酸塩、ジグリコール酸、ヒドロキシイソ酪酸、ポリアミノカルボキシレート、ヒドロキシピリジノン、カテコール、ヒドロキサメート、酢酸塩、ニトリロトリアセテート、ジピコリン酸、又はα-ヒドロキシイソ酪酸が挙げられる。
【0075】
一部の実施形態において、REE及び/又はREEのグループは、他のいずれかのREE及び/又はREEのグループに対して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約100%の純度で分離される。
一部の実施形態において、REE及び/又はREEのグループは、他のいずれかの元素に対して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約100%、の純度で分離される。
【0076】
一部の実施形態において、REE及び/又はREEのグループは、いずれかの非REE成分に対して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約100%の純度で分離される。一部の実施形態において、非REE成分は、Mg2+、Al3+、Ca2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Fe2+、Fe3+、Zn2+、U、Th、並びにREEを含有する供給材料に見出される他のアルカリ、アルカリ土類、及び遷移金属から選択される非REE元素である。
一部の実施形態において、本明細書で提供される方法は、Fe3+からのREEの優先的な分離を可能にする。一部の実施形態において、LanMは、Fe3+と比べてREEに対して、より高い選択性(すなわち、結合親和性)を有する。一部の実施形態において、Fe3+は、タンパク質-REE複合体を約4~約5のpHを有する溶液と接触させることによってREEから優先的に分離される。この場合、Fe3+は溶液から沈殿し、REEはタンパク質に結合したままである。一部の実施形態において、続いてREEはタンパク質-REE複合体を2.4又はそれ未満のpHを有する溶液と接触させることによって、タンパク質-REE複合体から分離される。
【0077】
一部の実施形態において、REE及び/又はREEのグループは、Fe3+に対して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約100%の純度で分離される。
【0078】
一部の実施形態において、本方法は、周期表において互いに隣接するREEの優先的な分離を提供する。例えば、一部の実施形態において、本方法は、CeからLaの、PrからCeの、NdからPrの、PmからNdの、SmからPmの、EuからSmの、GdからEuの、TbからGbの、DyからTbの、HoからDyの、ErからHoの、TmからErの、YbからTmの、及び/又はLuからYbの優先的な分離を提供する。
【0079】
一部の実施形態において、本方法は、類似したイオン半径を有する他のREE又は非REE金属からのREEの優先的な分離を提供する。例えば、一部の実施形態において、本方法は、YからLaの、YからCeの、YからPrの、YからNdの、YからPmの、YからSmの、YからEuの、YからGbの、YからTbの、YからDyの、YからHoの、YからErの、YからTmの、YからYbの、YからLuの、又はYからScの優先的な分離を提供する。
一部の実施形態において、方法は、ScからのREEの優先的な分離を提供する。例えば、一部の実施形態において、方法は、ScからLaの、ScからCeの、ScからPrの、ScからNdの、ScからPmの、ScからSmの、ScからEuの、ScからGbの、ScからTbの、ScからDyの、ScからHoの、ScからErの、ScからTmの、ScからYbの、ScからLuの、又はScからYの優先的な分離を提供する。
【0080】
一部の実施形態において、方法は、REEのイオン半径、原子半径、及び/又は質量に基づくREEの優先的な分離を提供する。一部の実施形態において、より小さいイオン半径を有するREEは、大きい原子半径を有するREEから優先的に分離される。一部の実施形態において、REEの優先的な分離は、ランタニド収縮の作用によって影響を受け、ランタニドのイオン半径は、周期表の左から右にかけて(すなわち、LaからLuにかけて)移動すると著しく減少する。一部の実施形態において、本方法は、REEのイオン半径、原子半径、及び/又は質量に基づく、2段階の脱離プロセスを使用するREEの優先的な分離を提供する。
【0081】
一部の実施形態において、2段階脱離プロセスは、タンパク質-REE複合体を、特定のpHを有する第1の溶液、及び、特定のpHを有する第2の溶液と接触させることを含む。一部の実施形態において、脱離プロセスの第1の工程は、タンパク質-REE複合体に第1のpHを有する溶液を導入することを含み、脱離プロセスの第2の工程は、タンパク質-REE複合体に第2のpHを有する溶液を導入することを含む。他の実施形態において、脱離プロセスは2回より多くの工程を含む。一部の実施形態において、脱離プロセスは、タンパク質-REE複合体に、特定のpHを含む第1の溶液を導入する第1の工程、特定のpHを含む第2の溶液を導入する第2の工程、及び特定のpHを含む第3の溶液を導入する第3の工程を含む。一部の実施形態において、脱離プロセスは、タンパク質-REE複合体に、特定のpHを含む第1の溶液を導入する第1の工程、特定のpHを含む第2の溶液を導入する第2の工程、及び特定のpHを含む第3の溶液を導入する第3の工程、及び特定のpHを有する第4の溶液を導入する第4の工程を含む。一部の実施形態において、第1のpHは、約1.9~約2.4である。例えば、一部の実施形態において、第1のpHは、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、又は約2.4である。一部の実施形態において、第2のpHは、約1.5~約1.7である。例えば、一部の実施形態において、第2のpHは、約1.5、約1.6、又は約1.7である。2回より多くの工程を含む他の実施形態において、pHは、逐次的に約2.4~約1.5の間又はそれ未満に低くされる。一部の実施形態において、第1のpH(すなわち、より高いpH)を有する溶液をタンパク質-REE複合体と接触させることは、REE-複合体から、より小さいイオン半径を有するREEを分離するが、より大きいイオン半径を有するREEは、REE-複合体から分離されない。一部の実施形態において、第2のpHを有する溶液を接触させること(すなわち、pHを低くすること)は、REE複合体から、より小さいイオン半径を有するREEを分離する。一部の実施形態において、より小さいイオン半径を有するREEは、Dy又はYであり、より大きいイオン半径を有するREEは、Nd又はPrである。一部の実施形態において、本方法は、NdからDyの、PrからDyの、又はNdからYの優先的な脱離を可能にする。一部の実施形態において、本方法は、LREE(例えば、La-Nd)、HREE(Ho-Luに加えてY)、及び中REE(MREE;Sm-Dy)の優先的な分離を可能にする。
【0082】
一部の実施形態において、2段階の脱離プロセスは、タンパク質-REE複合体を、キレート化剤を含む第1の溶液及び特定のpHを有する別の溶液(例えば、第2の溶液)と接触させることを含む。一部の実施形態において、脱離プロセスの第1の工程は、タンパク質-REE複合体にキレート化剤を含む溶液を導入することを含み、脱離プロセスの第2の工程は、タンパク質-REE複合体に特定のpHを有する溶液を導入することを含む。他の実施形態において、脱離プロセスは2段階より多くの工程を含む。一部の実施形態において、脱離プロセスは、タンパク質-REE複合体に、キレート化剤を含む第1の溶液を導入する第1の工程、キレート化剤溶液を含む第2の溶液を導入する第2の工程、及び特定のpHを有する第3の溶液を導入する第3の工程を含む。一部の実施形態において、脱離プロセスは、タンパク質-REE複合体に、キレート化剤を含む第1の溶液を導入する第1の工程、キレート化剤溶液を含む第2の溶液を導入する第2の工程、及びキレート化剤溶液を含む第3の溶液を導入する第3の工程、及び特定のpHを有する第4の溶液を導入する第4の工程を含む。一部の実施形態において、キレート化剤はクエン酸塩又はマロン酸塩である。一部の実施形態において、特定のpHは3.0未満である。一部の実施形態において、特定のpHは2.0未満である。一部の実施形態において、特定のpHは、約1.7~約2.4の間である。例えば、一部の実施形態において、pHは、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、又は約2.4である。一部の実施形態において、キレート化剤を含む溶液をタンパク質-REE複合体と接触させることは、REE-複合体から、より小さいイオン半径を有するREEを分離し、それに対して、より大きいイオン半径を有するREEは、REE-複合体から分離しない。一部の実施形態において、特定のpH(例えば、1.7~2.2)で溶液を接触させることは、REE複合体から、より小さいイオン半径を有するREEを分離する。一部の実施形態において、より小さいイオン半径を有するREEは、Dy又はYであり、より大きいイオン半径を有するREEは、Nd又はPrである。一部の実施形態において、方法は、NdからDyの、PrからDyの、又はNdからYの優先的な脱離を可能にする。一部の実施形態において、本方法は、LREE(例えば、La-Nd)、HREE(Ho-Luに加えてY)、及びMREE(Sm-Dy)の優先的な分離を可能にする。
【0083】
一部の実施形態において、LREE、例えばLa、Ce、Pr、Nd、Sm、又はEuは、HREE、例えばGd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sm、Y、又はScから優先的に分離される。一部の実施形態において、本方法は、(a)タンパク質-REE複合体を、第1の濃度のキレート剤(例えば、クエン酸塩)と接触させる工程であって、HREEがタンパク質-REE複合体から分離する、前記工程、及び(b)残存するタンパク質-REE複合体(例えば、LREEに結合したタンパク質)を、第2の濃度のキレート剤(例えば、クエン酸塩)と接触させて残存するREEを分離する工程、を含む、HREEからのLREEの優先的な分離を提供する。一部の実施形態において、キレート剤の第1の濃度は約5mM~約10mMである。例えば、一部の実施形態において、キレート剤の第1の濃度は、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、又は約10mMである。一部の実施形態において、キレート剤の第2の濃度は、約15mM~約50mMである。例えば、一部の実施形態において、キレート剤の第2の濃度は、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、又は約50mMである。
【0084】
一部の実施形態において、本開示は、単一工程でREEを優先的に分離するための方法を提供する。単一工程分離は、REE含有材料が1回タンパク質に導入され、分離後には異なるREEのグループ及び/又は非REEからの他の元素を含まずに、又は実質的に含まずに、個々のREE又はREEのグループの単離及び精製がなされる(すなわち、REE含有材料は、高い純度を達成するために2回以上カラムに導入される必要がない)場合に生じるものである。これは、REE含有材料の複数回の精製を必要とすることから非効率的なだけでなく費用もかかる従来のREE分離技術とは対照的である。
【0085】
本発明の開示の態様はまた、LanMなどのREE選択的タンパク質を使用してREE含有材料からScを優先的に分離する方法も提供する。Scは、タンパク質-REE複合体(例えば、タンパク質-Sc複合体)からScを選択的に脱離させることによって、REE及び非REE含有材料から優先的に分離することができる。一部の実施形態において、タンパク質-REE複合体を、タンパク質からScを分離するが他のREEは分離しないキレート化剤を含む溶液と接触させることによって、Scをタンパク質から選択的に脱離させる。一部の実施形態において、この溶液はマロン酸塩を含む。一部の実施形態において、タンパク質-REE複合体をマロン酸塩を含む溶液と接触させることは、タンパク質-REE複合体を破壊することなく(例えば、REEをタンパク質から分離することなく)Scを選択的に脱離させ、この場合REEはHREEである。非限定的な実施形態において、このような溶液(例えば、第1の溶液)はマロン酸塩を20~50mMの濃度で含む。別の非限定的な実施形態において、このような溶液(例えば、第1の溶液)はクエン酸塩を約3.0mMの濃度で含む。Scが第1の溶液を用いて脱離されたならば、1つ又は複数の追加の溶液を追加のREEを選択的に脱離させるのに使用することができる。例えば、一部の実施形態において、クエン酸塩を約15.0mMの濃度で含有する第2の溶液、及びクエン酸塩を約25mM~約50mMの濃度で含有する第3の溶液、及び約1.5のpHを有する第4の溶液を、逐次的にタンパク質-REE複合体上に流動させて、それぞれYの追加のREE、HREE/MREE、及びLa/Ceを除去することができる。
【0086】
一部の実施形態において、REE選択的タンパク質を使用してScをREE含有材料から優先的に分離する方法は、(a)1種又は複数種のREEと選択的に結合できる複数のタンパク質を提供する工程;(b)前記複数のタンパク質をREE含有材料と接触させる工程であって、前記複数のタンパク質が1種又は複数種のREEの少なくとも一部と結合して複数のタンパク質-REE複合体及びREE枯渇材料を形成する、前記工程;(c)前記REE枯渇材料の少なくとも一部から前記複数のタンパク質-REE複合体を分離する工程;(d)前記複数のタンパク質-REE複合体を、キレート化剤、例えば、マロン酸塩又はクエン酸塩を含む溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質からScを分離する工程;(e)前記複数のタンパク質-REE複合体を、低濃度のキレート化剤を含む溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質からHREE(例えば、Lu、Yb)を分離する工程;(f)前記複数のタンパク質-REE複合体を、中濃度のキレート化剤(例えば、マロン酸塩又はクエン酸塩)を含む溶液又は約2.3のpHを含む溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質からYを分離する工程;(g)前記複数のタンパク質-REE複合体を、高濃度のキレート化剤を含む溶液又は中程度のpHを有する溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質からMREEを分離する工程;及び(h)前記複数のタンパク質-REE複合体を、低いpH(1.7)を含む溶液と接触させることによって、前記複数のタンパク質からLREEを分離する工程、を含む。一部の実施形態において、キレート化剤はクエン酸塩である。一部の実施形態において、低濃度のキレート化剤を含む溶液は、キレート化剤を約5mMの濃度で含む。一部の実施形態において、キレート化剤はクエン酸塩である。一部の実施形態において、中濃度のキレート化剤を含む溶液はキレート化剤を約15mMの濃度で含む。一部の実施形態において、高濃度のキレート化剤を含む溶液はキレート化剤を約30mMの濃度で含む。一部の実施形態において、より高いpHを有する溶液は約2.3のpHを有する。一部の実施形態において、中程度のpHを有する溶液は約2.1のpHを有する。一部の実施形態において、低いpHを有する溶液は約1.7のpHを有する。
【0087】
REE含有材料は、REEを含有することがわかっているか又はREEを含有すると疑われるあらゆる材料であり得る。一部の実施形態において、この材料は、固体材料、半固体材料、又は水性媒体である。好ましい実施形態において、この材料は水溶液である。REEの抽出における使用のための好適な材料の非限定的な例としては、希土類鉱石(例えば、バストネサイト、モナザイト、ロパライト、ゼノタイム、褐廉石、及びラテライトイオン吸着粘土)から得られた浸出液、地熱塩水、石炭、石炭副産物、採掘尾鉱、リン酸石膏、固体源材料の酸浸出液、イオン交換方法を介して固体材料から抽出されるREE溶液、又は他の鉱石材料、例えばREEを含有する粘土、火山灰、有機材料、及び火成岩や堆積岩と反応するあらゆる固体/液体が挙げられる。
【0088】
一部の実施形態において、REE含有材料は低グレードの材料であり、REEは低グレードの材料の総質量の約2質量%未満でしか存在しない。他の実施形態において、REE含有材料は高グレードの材料であり、REEは高グレードの材料の総質量の約2質量%より多くで存在する。
一部の実施形態において、REE含有材料は、REE含有材料の総質量の、約5質量%未満、約10質量%未満、約15質量%未満、約20質量%未満、約25質量%未満、約30質量%未満、約35質量%未満、約40質量%未満、約45質量%未満、約50質量%未満のREEを含む。
【0089】
タンパク質は、例えばコンパクトな蛍光電球、エレクトロセラミクス、燃料電池電極、NiMH電池、永久磁石、触媒コンバーター、カメラ及び望遠鏡レンズ、炭素照明(carbon lighting)用途、コンピューターハードドライブ、風力タービン、ハイブリッド車、X線及び磁気画像システム、テレビのスクリーン、コンピューターのスクリーン、流動クラッキング触媒、再利用されたランプからの蛍光体粉末などの再利用されたREEを含有する製品からREEを回収することにも使用することができる。これらの材料は、例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、プロメチウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、又はそれらのあらゆる組合せを含む所定量のREEを含有することを特徴とする。一部の実施形態において、REEは、所定の産業からの液体廃棄物ストリーム(例えば、そのREEからの汚染除去を必要とする工場からの排出液、又はガドリニウム回収の可能性がある病院の排出液)又はこれらのREE含有材料に由来する浸出溶液から回収される。
【0090】
一部の実施形態において、材料は、タンパク質を提供する前に前処理される。好適な前処理の非限定的な例としては、酸リーチング、バイオリーチング、イオン交換抽出、pH調整、酸化鉄沈殿、温度冷却(例えば、地熱塩水)が挙げられる。他の実施形態において、タンパク質を提供する前に、REE含有材料を精製して非REE金属の少なくとも一部を除去する。
一部の実施形態において、タンパク質の少なくとも一部は、REE含有材料を接触させる前に固体支持体の表面に付着される(すなわち、固定化される)。一部の実施形態において、固体支持体の表面へのタンパク質の付着は可逆的である。フロースルーセットアップにおける使用のためのバイオソープション媒体におけるタンパク質固定化は、単一工程でのREEを含有する混合金属溶液からの完全な(又は実質的に完全な)REEの分離を可能にすることが予期される。一実施形態において、REE含有材料(例えば、混合金属溶液)中のREEの、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約95%、約97%、約98%、約99%、又は100%が、単一工程で抽出される。一部の実施形態において、従来の抽出方法を使用した単一工程で抽出されたREEの量と比較して、約1%、5%、10%、15%、20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約95%、約97%、約98%、約99%、又は100%多くのREE含有材料(例えば、混合金属溶液)中のREEが単一工程で抽出される。
【0091】
タンパク質へのREEの結合は可逆的であってもよい。一部の実施形態において、タンパク質-REE複合体中のREEの少なくとも一部がタンパク質から脱離される(すなわち、除去又は分離される)。好適な方法の非限定的な例としては、酸処理(例えば、硫酸/HNO3及びHCl)、クエン酸塩、酢酸塩、マロン酸塩、及びグルコン酸塩が挙げられる。好ましい実施形態において、除去工程は酸ストリッピングによって実行される。別の好ましい実施形態において、除去工程は所定量のクエン酸塩を使用して実行される。
【0092】
タンパク質は再使用してもよい。一部の実施形態において、本方法は、タンパク質からREEを取り除いて、タンパク質を再生する工程をさらに含む。タンパク質は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30回、又はそれより多くの回数使用することができる。他の実施形態において、タンパク質は使い捨てである。タンパク質は、当業者公知のあらゆる手段によって再生することができる。例えば、クエン酸塩を洗い落とすために緩衝液でタンパク質をクリーニングして、タンパク質を再生してもよい。一実施形態において、本方法は、再生されたタンパク質を再使用してREE含有材料からのREEの抽出を行うことをさらに含む。
タンパク質は、その高い吸着容量も維持しながら、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30回、又はそれより多くの回数再使用することができる。一部の実施形態において、タンパク質は、吸着サイクルのそれぞれの間に、タンパク質1g当たり、約10mgのREE、約15mgのREE、約20mgのREE、約30mgのREE、約40mgのREE、約50mgのREE、約60mgのREE、又は約70mgのREEの吸着容量を維持する。一部の実施形態において、タンパク質は、9サイクルにわたり、タンパク質1g当たり約30~約70mgのREEの吸着容量を維持する。
【0093】
本開示の態様は、(a)REEと選択的に結合できるタンパク質、及び(b)REE含有材料からREEを差次的に分離するための指示書、を含むキットを提供する。一部の実施形態において、このタンパク質は多孔質支持体材料(例えば、マイクロビーズ)に結合している。
【0094】
実施例
【実施例1】
【0095】
REE分離のためのタンパク質ベースの方法
REEが結合している供給材料から開始する個々のREEの抽出及びそれに続く分離は、再生可能エネルギー技術の成長と持続可能性のために困難であるものの必須の課題の代表である。現在のREE処理方法の技術的及び環境上の限界を克服するための重要な工程として、以下の実施例は、REE選択的なランモジュリン(LanM)タンパク質を使用する、バイオベースであり全て水性のREE抽出及び分離スキームを実証する。LanMを、チオール-マレイミドクリックケミストリーを使用して多孔質支持体材料上に結合させて、フロースルー条件下でREE精製及び分離ができるようにした。固定化LanMは、驚くべきREE選択性や低いpHでREEと結合する能力などの、遊離タンパク質の魅力的な特性を維持する。この実施例はさらに、クリーンエネルギーにとって重要なREE対であるNd/Dy及びNd/Yの高純度の分離を達成し、単回のカラム実行で工業的に重要な低グレードの浸出液を別々の重及び軽REE画分に変換するLanMの能力を実証する。以下のプロセスの先行技術を超える主な利点は、低グレードの供給材料浸出液との適合性、有機溶媒を欠くこと、及びカラム容量の約90%を使用しながらも特定のREE対の効率的な分離を達成する能力であり、これらは、従来のイオン交換クロマトグラフィーとは対照的である。この技術は、REE供給材料に広く適用可能な、持続可能であり低コストのREE回収及び分離プロセスが可能になるように、さらに発展させることができる。
図1は、実施例1で概説したREE分離の全体的なプロセスを描写する、簡易化した概略図を提供する。
【0096】
方法
化学物質及び材料
REE塩化物塩(>99.9%)、溶媒、及び緩衝液を、Millipore Sigmaから購入した。アミンによって官能化されたアガロースビーズを、Nanocs Incから購入した。N-スクシンイミジル4-(マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)をChem-Impex International,Inc.から購入し、それ以上精製しなかった。NHS-フルオレセイン(5/6-カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)、混合された異性体をThermoFisher Scientificから購入した。
【0097】
LanMの調製物
LanM-GSGCをコードする遺伝子を含有するプラスミドを、Twist Bioscience(pET-29b(+)-LanM-GSGC)から得た。遺伝子配列は、停止コドンの前に(ggcagcggctgc)が挿入されたコドン最適化wt-LanM配列からなっていた20。0.6のOD600nmにおいて0.2mMのIPTGで誘導して大腸菌(E.coli)BL21(DE3)細胞(NEB)において、37℃にてタンパク質を過剰発現させた。精製は、全ての緩衝液が5mMのTCEPを含有していたことを除き、記載される通りに行った39。簡単に言えば、細胞を溶解させ、25mLの(2.5×5.0cm)Q-セファロースFast Flowカラムにローディングし、0.01~1MのNaCl濃度勾配を使用して溶出させた。LanM-GSGCを含有する画分を、さらに、30mMのMOPS、100mMのKCl、5mMのCaCl2、5%グリセロール、5mMのTCEP、pH7.0におけるゲルろ過クロマトグラフィー(HiLoad 16/600 Superdex 75 pgカラム(120mL))を使用して精製した。LanM-GSGCを含有する画分を、FPLCによって、20mMの酢酸塩、10mMのEDTA、100mMのNaCl、5%グリセロール、pH4.0に交換し、約3mMに濃縮し、貯蔵のために液体N2中で凍結した。
【0098】
アガロースビーズのマレイミドによる官能化
アミンによって官能化されたアガロースマイクロビーズ(1.2ml)を5mLのエッペンドルフチューブに移し、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄し、約1.7mL(1.2mLのマイクロビーズ及び0.5mLのPBS上清)の最終体積で再懸濁した。0.15gのSMCCを3.4mLのDMSOに溶解させ、次いでマイクロビーズと合わせた。室温における振盪ミキサー上で2.5時間のインキュベーション後、官能化したアガロースマイクロビーズを、DMSOで3回洗浄して未反応のSMCCを除去し、カップリング緩衝液(50mMのHEPES(pH7)、50mMのKCl、及び10mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA))で3回洗浄してDMSO溶媒を除去した。次いで2時間以内に、マレイミドマイクロビーズをLanM固定化に使用した。
【0099】
LanM固定化
チオール-マレイミドクリックケミストリーコンジュゲーション反応を使用してLanM固定化を行った。具体的には、固定化の直前に、LanM-GSGCタンパク質の緩衝液を、VivaSpin(登録商標)2遠心濃縮機(3,000g/molの分子量カットオフ、GE Healthcare)を使用してpH7.0のカップリング緩衝液(50mMのHEPES、50mMのKCl、及び10mMのEDTA)に交換して、約2mMの最終的なタンパク質濃度を得た。次いで2mLのLanM溶液を1mLのマレイミド-マイクロビーズと合わせ、コンジュゲーション反応を室温で16時間行った。結合していないLanMタンパク質をpH7のカップリング緩衝液で洗浄することによって除去し、LanM-マイクロビーズを、後続の試験のためにpH7のカップリング緩衝液中で貯蔵した。マレイミド-マイクロビーズはまた、結合していない対照サンプルとして、LanMタンパク質なしでカップリング緩衝液と共にインキュベートした。
【0100】
破過カラム実験
エコノカラム(Econo-Column)ガラスクロマトグラフィーカラム(Bio-Rad;5cm×0.5cm)を、LanM-マイクロビーズを重量測定によって添加する前にMilliQ水(18.2MΩ・cm-1)で充填した。カラムを25mMのHCl、MilliQ水で洗浄し、破過実験を行う前に緩衝溶液で調整した(破過実験の場合と同じ緩衝液、以下を参照されたい)。REEストック溶液を、1mMのHCl中に個々のREE塩化物塩を溶解させることによって調製した。ストック溶液を、10mMの緩衝液(pH5:ホモピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸、Homo-PIPES);pH4:酢酸(acetate acid);pH3.5~2.2:グリシン)又はHClのいずれかで、所望のpHにて釈した。REE溶液を、別段の規定がない限り0.5mL/分でポンプ注入し、カラム流出液を1.0mLで分取した。単一のREEイオン溶液の場合、REEイオン濃度をアルセナゾ IIIアッセイによって定量化した。具体的には、40μLのサンプルを、40μLの12.5質量%のトリクロロ酢酸(TCA)と合わせ、次いで6.25質量%のTCA中の0.1質量%のろ過した120μLのアルセナゾに添加した。652nmでの吸光度を測定し、標準品と比較して、REE金属イオン濃度を決定した。比色アッセイの正確さは、ICP-MSによる以前の研究でも確認されている。REE混合物又は浸出液を用いた実験のために、金属イオン濃度をICP-MSによって決定した。
【0101】
REE対分離実験の場合、金属イオン純度は以下の通りと定義される。
【数1】
式中、C
REE1及びC
REE2は、それぞれREE1及びREE2のモル濃度である。
【数2】
式中、Y
i及びY
jは、それぞれ溶離剤中の金属イオンi及びjのモル濃度である。X
i及びX
jは、それぞれフィード中の金属イオンi及びjのモル濃度である。
【0102】
ランモジュリンのREE間の選択性を決定するために、LanM相(結合した)及び液相(未結合の)間のREE分布係数(D)が以下の通り計算される。
【数3】
式中、[M]
LanM及び[M]
Liquidは、それぞれ平衡状態のLanM相及び液相における金属モル濃度である。ここで留意すべきことに、[M]
Liquid=[M]
adである;しかしながら、遊離REEを吸着プロセスから完全に除去することはできないため、[M]
LanM=([M]
de×4-[M]
ad×0.8)/4である。
分離係数(SF)は以下の通りと定義される。
【数4】
式中、D
REE1及びD
REE2は、それぞれREE1及びREE2の分布係数である。2つのバッチから収集されたD値を正規化するために、以下の方程式が使用される。
【数5】
【0103】
フルオレセインによるLanM標識
LanM(0.3mL、2mM)を、スピンカラム(Zeba(商標)スピン脱塩カラム、7K MWCO、ThermoFisher Scientific)を使用して、100mMのKCl及び8mMのNd3+を含む4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)緩衝液(10mM;pH7)に交換した。フルオレセインNHSエステル(1mg)をジメチルスルホキシド(DMSO、30μL)に溶解し、約3mg/mLの最終濃度でLanM溶液に添加した。室温で3時間のインキュベーション後、タグを有さない色素を、スピンカラム(Zeba(商標)スピン脱塩カラム、7K MWCO、ThermoFisher Scientific)を使用して除去した。
【0104】
共焦点顕微鏡法
共焦点顕微鏡法のために、フルオレセインで標識されたLanM(F-LanM)を、アガロースマイクロビーズ上への固定化のために使用した。次いでマイクロビーズを、VECTASHIELD(登録商標)褪色防止封入剤(Vectorlabs)の液滴と共に顕微鏡ガラスカバースリップ上に滴下した。40×NA1.1水浸顕微鏡対物レンズを備えたZeiss LSM710共焦点顕微鏡を使用して、サンプルを画像化した。Airyscanモードを使用してLanMアガロースの3D蛍光画像を獲得した。
【0105】
Sc及びNd定量のためのアルセナゾIIIアッセイ
バッチ実験におけるSc及びNd濃度並びに破過曲線を、アルセナゾIIIアッセイを使用して決定した。具体的には、Scの場合、80μLのサンプルを、100μLの0.2MのpH2.8グリシン緩衝液と合わせ、次いで20μLの0.2Mグリシン中の0.3質量%のろ過したアルセナゾに添加した。Ndの場合、40μLのサンプルを、40μLの12.5質量%トリクロロ酢酸(TCA)と合わせ、次いで120μLの6.25質量%TCA中の0.1質量%のろ過したアルセナゾに添加した。吸光度(Ndは652nmでの;Scは675nmでの)を測定し、標準と比較して金属イオン濃度を決定した。比色アッセイの正確さは、ICP-MSによる以前の研究でも確認された。
【0106】
wt-LanMの分光蛍光滴定
20μMのキレックス処理したLanMの溶液を、20mMの酢酸塩、100mMのKCl、pH5.0で調製した。金属化したLanMから開始した実験では、40μM(2当量)の金属も添加した。タンパク質溶液(600μL)を、10mmの石英分光蛍光分析キュベット(Starna Cells、18F-Q-10-GL14-S)に入れ、パーキンエルマー(PerkinElmer)蛍光分光計FL6500をカイネティックモード(80kWの出力、278nmの励起、2.5nmの励起スリット幅、307nmの放出、5nmの放出スリット幅)で使用してアッセイした。少なくとも0.6μLの滴定液(10mMの金属又は1mMのクエン酸塩、pH5.0、のいずれか)の添加、それに続き約1分間のシグナル平衡により滴定を行った。各データポイントにつき、平衡後に10秒のシグナルを平均した。これらの値を希釈のために補正し、アポタンパク質についてF307nm=1に正規化した。
【0107】
誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)
多元素合成溶液及び浸出溶液の元素組成をICP-MSを使用して決定した。Dy/Nd二成分合成溶液の場合、ICP-MS分析をICP-MSで実行した。全てのサンプル及び補正標準を、濃硝酸(70質量%、純度≧99.999%の微量金属ベース、Sigma-Aldrich)を2.5%(v/v)まで使用して酸性化し、In、Rh、及びBiの内部標準でスパイクして、分析中のシグナル強度のシフトを調整した。二重荷電及び多原子干渉を低減するために、水素(Ca及びSiの場合)とヘリウム(全ての他の元素の場合)反応ガスモードの両方でサンプルを分析した。石炭灰浸出液の複雑なマトリックスのために、45Sc及び153Euでの質量干渉を調整するための補正方程式を使用することが必要であった。破過曲線にわたる高いサンプリング頻度を考慮して、カラム破過試験には単一の複製を使用した。全てのフィード溶液は3連で実行した。複雑な合成溶液及び浸出溶液における金属イオン定量化の実験上の不確実性を説明するために、各金属イオン濃度につき3連のフィード溶液に基づいて変動係数を決定した。
【0108】
PRB石炭灰のリーチング及びpH調整
以前の研究に従って、PRB石炭灰のリーチング及びpH調整を実行した34、35。簡単に言えば、2017年に収集された微粉炭火力発電所からのPRB石炭フライアッシュサンプルを、40mLの1MのHCl溶液中で、85℃で4時間、100g/Lのパルプ密度でリーチングした。浸出液を室温に冷却し、3000gで15分間遠心分離して、全ての溶解していない粒子を除去した。次いで浸出溶液の上清を収集し、所望のエンドポイントpH値が達成されるまで10MのNaOHストック溶液を滴下添加した(組合せpH電極によってモニターしながら)。pH調整した浸出液を再び遠心分離してpH調整中に形成された沈殿を除去し、次いで0.2μmのポリプロピレンフィルターを使用してろ過した。
【0109】
結果及び議論
アガロースマイクロビーズ上へのLanMの固定化
フロースルー様式でのREE回収のためのLanMの適用を容易にするために、GSGスペーサーと共にC末端システイン残基を含有するLanMバリアント(以降、「LanM」)を、チオール-マレイミドクリックケミストリーを使用してアガロースマイクロビーズに固定化した(
図2A)
22、23。物理的な結合や封入などの他の固定化戦略と比較して、部位特異的な共有付着は、安定で表面接近可能なタンパク質提示を可能にし、これは、厳しい条件(例えば、低いpHや高いイオン強度)下での吸着/脱離の繰り返しのサイクルにとって望ましい。末端システイン残基のコードが容易であることとその低いpHでの安定性を考慮して(下記参照)、チオールマレイミドケミストリーに従った。精製されたLanMを低いpHで操作して(方法を参照)、LanM固定化に有害作用を与えることが見出された還元剤の使用(データは示されない)を回避しながら硫黄酸化を排除した。アガロースビーズのマレイミド及びLanM官能化をFT-IRによって確認し(
図2B)、16時間のコンジュゲーション反応にわたりコンジュゲーション溶液中の遊離のLanM濃度を定量化することによって、固定化動態をモニターした。
図2Bで示されるように、1060cm
-1のピークは、アガロースポリマーの主鎖を形成するグリコシド結合に割り当てられた。SMCCスペクトルにおいて、1200cm
-1及び1706cm
-1に配置されたピークは、それぞれスクシンイミド及びマレイミド基に割り振られた。アミン官能化したアガロースのSMCCとの反応後、1706cm
-1のピークの存在及び1200cm
-1のピークの欠如は、成功したマレイミド官能化を示す。最後に、チオール-マレイミドクリックケミストリーの後、LanMアガローススペクトルは、それぞれアミドI及びアミドIIに対応する1650cm
-1及び1520cm
-1において2つのピークを示したことから、LanMタンパク質の固定化が示唆される。
【0110】
添加されたLanMのおよそ97%が3時間以内に装荷され(
図2C)、結果として固定化密度は2.89±0.34μmol LanM/mLアガロースになった。アガロースビーズ中のLanMの分布を可視化するために、固定化中に、蛍光タグを有するLanMのバリアント(FITC-LanM、緑色)を組み込んだ。共焦点顕微鏡画像化により、アガロースマイクロビーズ中のFITC-LanMの均質な分布が確認された(
図2D)。
【0111】
固定化LanMは、低いpHでREEと結合する能力を保持し、再使用に関して安定である
フロースルー条件下でのREE抽出に関する固定化LanMの有効性を試験するために、固定ベッドカラムにLanM結合体をパッキングし、合成REEを含有する溶液を用いて流入液破過挙動を評価した。代表的なモデルREE系として、REE鉱床において豊富に存在することと、再生可能エネルギー技術にとって極めて重要であることにより、Nd
3+を選択した。
図3Aで示されるように、Nd破過へのpHの作用を評価した(実験条件:10mMのグリシン緩衝液中の0.2mMのNd(pH>2.2の条件;pH<2.1条件の場合、NdをHCl溶液で希釈した。)、0.5mL/分の流速;対照実験をマレイミドによって官能化されたアガロースをパッキングしたカラムをpH3で使用することにより実行した)。Nd破過点(pH5における)は、空隙容量の通過に起因する結合していないアガロースビーズでのベッド体積の1倍量とは対照的に、ベッド体積の約25倍量後に生じたことから、LanMが固定化されたときにREEへの高親和性を保持することが示される(
図3A)。
【0112】
LanMカラムの吸着容量は5.78μmol/mLであった。これは、固定化されたLanM当たりのNdの化学量論が2:1であることに対応する。これは、
図4A及び4Bで示されるように溶液中のLanMの吸収容量とは対照的である。特には、LanM-CysのLa(III)での化学量論的な滴定は、インジケーターとしてキシレノールオレンジを使用した競合滴定によって証明されたように(
図4A、滴定を、キレックス処理された20mMのMES、100mMのKCl、pH6.0で実行した)、3当量のREEの結合を実証し(
図4A及び4B)、LanMのLa(III)に対する構造的な応答を、A284nmにおけるシフトとして追跡した(
図4B、滴定を、キレックス処理した30mMのMOPS、100mMのKCl、pH7で実行した)。興味深いことに、これらの結果は、溶液中ではLanMは3当量のREEと結合することを示しており(
図4A及び4B)、これは、固定化したとき又はカラム様式で、1つの金属部位が不安定化されることを示唆している。
先行の研究から、この発見に基づき、可溶化したLanMは、2.5~3もの低いpHでREEと結合できることが明らかにされ、1.7~5のpH範囲にわたるNd抽出性能への流入液のpHの作用を試験した(
図3A)。結果は、固定化LanMが、pH2.4まで下げてもNdと効果的に結合できることを示し、これは可溶化したLanMの結果と一致する
16。溶液中で観察された挙動と一致して、固定化LanMへのNdの結合はpH2.2で50%低減され、pH≦1.7では有意でなくなる。
【0113】
REE結合のpH依存性を利用して、HCl溶液をNd飽和カラムにポンプで通すことによってNd脱離を試験した。
図3Bで示されるように、Nd破過へのpH(HCl濃度)の作用を評価した(ベッド体積の40倍量のpH3の0.2mMのNdを前もってカラムに吸着させた)。pH1.7以下で、ベッド体積の1~6倍量の鋭い脱離ピークが観察され、Ndはフィード溶液と比べて1桁を超えて濃縮された(
図3B)。対照的に、pH2.0のHCl溶液は、次第に小さくなる脱離プロファイルをもたらし、Ndの>95%を脱離させるのにベッド体積の16.5倍量が必要であった。重要なことに、10回連続する吸収/脱離サイクル(それぞれpH3.0及び1.5)が吸着容量の低減をもたらさなかった(
図3C、実験条件:0.5mL/分の流速。脱離条件:ベッド体積の10倍量のpH1.5のHCl)ことを考えれば、LanMベースの吸着剤は、低いpHへの繰り返し曝露に対して強い。REEシリーズ全体に対する固定化LanMの親和性をさらに決定するために、他の代表的なREE(すなわち、Y、La、Dy、及びLu;
図3D、実験条件:フィード:0.2mM)での破過曲線をpH3.0で示したところ、Ndのものと区別できない結果が得られた。全体として、結果は、低いpH条件下における固定化LanMによる有効で可逆的なREE結合を実証する。
【0114】
LanMはREEの高純度回収及び濃縮を可能にする
固定化LanMのREE選択性を試験するために、Nd(0.2mM)破過実験を、REEを含有する供給材料が豊富なミリモルレベルのMg
2+、Al
3+、Ca
2+、Co
2+、Ni
2+、Cu
2+、及びZn
2+を含有するpH3.0の合成フィード溶液を用いて実行した
24。Ndの破過はベッド体積の24倍量の後に起こったが(
図3E、実験条件:14mMのNa、3.3mMのMg、9.1mMのAl、2.3mMのCa、1.9mMのCo、1.9mMのNi、1.8mMのCu、2.1mMのZn、及び0.2mMのNd、pH3を含有する合成フィード溶液を使用する、金属イオン破過曲線)、それに対して全ての非REEは空隙容量で出現した。重要なことに、Nd破過曲線及びそれに続く脱離曲線は、非REEが欠如した合成溶液を用いて観察された曲線と区別できなかったことから(
図3F、灰色のひし形は、競合する非REEイオンなしでのNd破過/脱離プロファイルを示す。実験条件:pH1.5のHClでの処理後の金属イオンの脱離プロファイルを収集した)、プロセス中、REE及び非REEの挙動はLanMの選択性のために完全に切り離されていることが示される。最後に、Fe
3+の限定的な溶解性が多元素実験におけるその使用を阻むため、配位によりFe溶解性を維持するためにクエン酸塩を含有する二成分Nd/Fe溶液を使用した破過実験によって、Fe
3+への選択性を上回るNd
3+へのLanMの選択性を確認した(
図3G、実験条件:フィード:Nd+クエン酸塩:0.2mMのNd、20mMのクエン酸塩、pH3;Nd+Fe+クエン酸塩:0.2mMのNd、0.9mMのFe、20mMのクエン酸塩、pH3)。以下の表3に、
図3Gで収集されたデータに関する合成フィードにおけるイオン濃度を列挙する。
【0115】
【0116】
Fe
3+イオンへの選択性を上回るNdへのLanMの選択性を、(1)pH3条件(<100μM)におけるそれらの低い溶解性、及び(2)Fe(OH)
3の形態でコロイド粒子を形成する可能性があるpH3~4範囲におけるFe
3+イオンの不安定のために、別々に研究した。以前の研究は、このようなコロイド粒子は、2年まで溶液中で懸濁液として安定して存在する可能性があるが、その小さいサイズのために0.22μmフィルターでさえも効果的に除去できないことを示した。加えて、このようなコロイド粒子は、フロースルー実験中に固体吸着剤材料及びカラムに物理的に付着する可能性がある。これに対処するために、20mMのクエン酸塩をNd/Fe合成溶液に添加して、pH3条件におけるFe
3+イオンの溶解性を改善し、Fe
3+に対するLanMのREE選択性の研究を可能にした。
図3Gで示されるように、Nd破過曲線は、Fe
3+の存在及び非存在でほとんど同一であることから、LanMはそれでもなお、固定化後もFe
3+に対して高いREE選択性を有することが示される。実際に、より高いpHではFe
3+溶解性がより低くなることから(pH4において<10μM、及びpH5において<0.01μM)、pHをpH4~5範囲に増加させることによってFe不純物の大部分を除去することができる。
【0117】
まとめると、これらの結果は、固定化LanMは溶液中のLanMの高いREE選択性を保持し、非REEからREEを分離するのに採用できることを示唆する。
【0118】
溶液中のリガンド競合はREE間の分離の可能性を明らかにする
LanMの初期の特徴付けにより、このタンパク質が、ほとんどのREEリガンドと比べて逆の親和性傾向を呈示することが明らかになり、La
3+-Nd
3+へは最大の、ほぼ類似した親和性を示し、Ho
3+へは約5分の1の親和性を示した
20。しかしながら、REE間の分離に関するこれらの差を利用するための溶液中
16及びカラム上でのREE抽出の以前の研究(上記参照)は未だ試みられていない。重REE選好を有する穏やかなキレート化剤、例えばクエン酸塩との競合
25は、脱着性のプロセスにおける強化された選択性を可能にし得ることが予期される。この原理を確立するために、まず溶液中のLanMとのリガンド競合を調査した。LanMにおけるチロシン残基単独の蛍光は、REE結合のときに消光されるという観察が利用され、これは、2つのタンパク質コンフォメーションにおける異なる溶媒曝露及び水素結合に起因する可能性がある
26。REEでのLanMの滴定は、2当量でチロシン蛍光における最大の変化を示した。REEは、第3の当量の結合で打ち消された(
図5A)。この第3の当量に関与するREE結合部位はまた、固定化のときに不安定化される部位にも対応すると仮定された。この蛍光の変化は、LanMからのREE脱離のための条件をアッセイするための便利な手掛かりを提供する。Y、Dy、又はNd結合したLanMでの個々の滴定を使用するこれらの研究は、LanMの見かけのK
dを考慮して予測された通りに、クエン酸塩が、LREEの前にHREEに関してLanMに選択的に打ち勝ったことを明らかにした(
図5B)。例えば、6mMのクエン酸塩は、LanMからほぼ完全にDyを脱離させるのに十分であり、それに対して、Ndは、それでもなおタンパク質に完全に結合している。鋭い脱離プロファイル(4倍の濃度範囲にわたり生じる)は、LanM金属の結合の挙動における協同性と一致する
20。これらの結果は、LanMの高いREE親和性にもかかわらず、REEを脱離させるのに穏やかなキレート化剤を使用できることを実証する。さらに、重要なことに、条件の調整は、LREE-LanM複合体を不安定化することなく、LanMからHREEを選択的に脱離させるのに使用でき、オンカラムでの分離のための段階を設定できる。以下の表4に、
図5A及び5Bで収集されたデータに関する合成フィード中のイオン濃度を列挙する。
【0119】
表4.
図5A~5Bにおける合成フィード溶液中のイオン濃度(mM)
【0120】
REE対間の分離
次の実験は、まずpHの所定範囲にわたり個々のREEがローディングされたLanMカラム(
図6A、REEイオン脱離を脱離した総REEに正規化した;実験条件:独立した単一のREE溶液を使用して、90%飽和までカラムをローディングした)及びクエン酸塩工程(
図7A、pH5)を使用して、脱離条件の慎重な選択が、REE間のオンカラムでの分離を可能にするかどうかを検査した。ランタニド(La及びLu)の全体のイオン半径の範囲を網羅するために、さらに、再生可能エネルギー技術に関するそれらの臨界に基づいて(Y、Pr、Nd、及びDy)、REEの代表的なセット(Y、La、Pr、Nd、Dy、及びLu)を独立して試験した。各REEにつき両方の脱離条件下で別個の溶出プロファイルを観察した(
図6A及び
図7A)。クエン酸塩の場合、REE溶出の順番はイオン半径と相関しており、LanM-REE及びクエン酸塩-REE複合体の相対的な親和性とほぼ一致した。Ndは、Laと比較して脱離により低いpHを必要としたという注目すべき例外を除いて、pHに関して類似した傾向が観察されたが、この結果は、LanM-Laと比較して、LanM-Nd複合体についてより相対的な安定性を示唆しており、Nd/Pr範囲におけるLanMに関する安定性の局所的な最大値と一致する
16、20。試験されたLanM REE複合体間の安定性の差は、特定のREE対間の分離を達成するのに活用できることが予期される。
【0121】
Dy/Nd分離のための単一の吸着/脱離サイクル。上記の結果に導かれて、50:50のモル比のNd及びDyの溶液でカラムを90%飽和までローディングし、それに続いて段階的な脱離プロセス(
図6B、Dy:Ndの50:50混合物で構成される供給材料を、90%カラム飽和までローディングし、次いで2段階pH脱離スキーム(2.1及び1.7)に供した。
図7B、Dy:Ndの50:50混合物で構成される供給材料を、15mMのクエン酸塩(pH5)、それに続いてpH1.7を使用した2段階の脱離スキームに供した)によって、LanMのREE分離の有効性を試験した。注目すべきことに、Dy及びNdは、2段階pH脱離スキームを採用するか、又は最初のクエン酸塩媒介Dy脱離と後続のNdのpH媒介溶出を組み合わせるかのいずれかによって、別の画分に高純度で溶出した。2段階pHスキームに関して、Dyの76.2%が、最初のpH2.1脱離で99.9%の純度で溶出し、一方でNdの76.8%が、第2のpH1.7脱離で99.9%の純度で溶出した。ローディングされたREE材料の24%未満が、ピークがオーバーラップする領域に存在していた;フィード溶液と同一なNd/Dy組成(50.8%Dy;
図8B)であることを考慮すると、この画分は、最初のフィード溶液と合わせて、将来の精製サイクル中に加工することができる(したがって、REEのいかなる損失も回避される)。15mMのクエン酸塩を使用する脱離は、吸着したDyの94.2%を99.1%の純度で溶出させ、一方で後続のpH脱離工程は、残存するNd(99.2%)を94.6%の純度で溶出させた。まとめると、これらの結果は、高純度のDy/Nd生成物は、両方の金属イオンの等モル混合物から開始した場合に得ることができることを示す。
【0122】
NdFeB磁石を含む電子機器廃棄物を反映する供給材料組成物を用いて試験するために、カラムを、95%Nd及び5%Dyで構成されるフィード溶液で90%の飽和までローディングした
27。合わせたNd/Pr含量(典型的には3:1のNd:Pr)の代用品としてのNdの使用は、pH又はクエン酸塩濃度の関数としての両方の金属イオンのほぼ同一な脱離プロファイルによって裏付けられる(
図6A及び7A)。Nd/PrからのDyの成功した分離は、磁石製造サプライチェーンにフィードバック可能な高い価値のジスプロシウム及びジジム酸化物生成物の生産を可能にすると予想される。
図6C(Dy:Ndの5:95混合物で構成される供給材料を90%カラム飽和までローディングし、次いで2段階pH脱離スキーム(2.2及び1.7)に供した)及び
図7C(Dy:Ndの50:50混合物で構成される供給材料を90%カラム飽和までローディングし、次いで10mMのクエン酸塩(pH5)、続いてpH1.7を使用した2段階の脱離スキームに供した)で示されるように、2段階pH及びクエン酸塩脱離スキームは両方とも、Dy純度を有意にアップグレードさせながら高純度のNd画分(それぞれ99.8%及び98.7%)をもたらした。例えば、pH2.2溶出工程は46.1%の純度で88.6%のDy含量をもたらし、一方でクエン酸塩脱離工程は48.9%の純度で73.9%のDyをもたらした。
【0123】
Dy/Nd分離のための2つの吸着/脱離サイクル。50:50混合物を用いた成功したDy/Nd分離の結果を考慮して(
図6B)、95%Nd/5%Dy供給材料から最初のカラム工程(すなわち、第1の吸着/脱離サイクル)で生成したおよそ50の純度のDy画分(
図6C)を試験して、これらの画分が、第2の吸着/脱離サイクルを実行することによってさらに高純度にアップグレードできるかどうかを決定した。この目的を達成するために、95%Nd/5%Dyフィードを使用したNd/Dy分離を5回繰り返して、第2の分離工程(又はサイクル)を可能にするのに十分な体積の44%純度のDy脱離画分を蓄積した(
図21)。Nd/Dyフィード溶液の薄い性質にもかかわらず、LanMカラムは高いローディング収率(>99%)を呈示し、pH脱離工程後にそれぞれ99.2%の純度の88%のDy及び99.9%の純度の82%のNdを達成した。これらの結果は、LanMカラムが、電子機器廃棄物浸出液に典型的な低純度のDy溶液から開始して、NdからDyを効果的に分離できることを示唆する。より一層高い収率及び生成物純度は、より高い操作体積を用いて達成される可能性がある。加えて、カラム操作条件、例えばpH、競合キレート化剤の同一性、並びに濃度、流速、及びカラムの幾何学的配置を入念に調整することで、さらなるREE分離が実現される可能性がある。
【0124】
電子機器廃棄物サンプルを用いたDy/Nd分離。合成溶液を用いた結果は、LanMが、2回の吸着/脱離サイクルで95%Nd/5%Dyフィードを高純度のNd及びDy生成物に効果的に分離できることを示唆した。実際の電子機器廃棄物からのREEの回収及び分離を実証するために、HDDスクラップ(INL)から調製されたバイオ浸出液を使用して段階的な分離スキームを試験した。電子機器廃棄物バイオ浸出液をLanMカラム上にローディングした後(吸着工程)、蒸留水での洗浄工程を使用して、未結合の金属イオン及びバイオリキシビアントを除去した。次いでpH2.2及びpH1.5における2段階脱離を使用して、Dyを選択的に脱離させ、それぞれ高純度のNd/Prを生成した。最終的に、1MのHCl処理工程を使用してFe沈殿を除去し、LanMカラムを再生した(
図22A~B)。
【0125】
このスキームを使用して、Dy濃縮物(28.9%;総REEに対して)及び高純度のNd/Pr(99.3%)溶液を得た。合成溶液を用いた先行の結果に基づいて、第2のカラム工程を使用して、さらにDy画分を高純度にアップグレードすることが可能である。中程度のレベルのFe不純物を各脱離画分中に共に抽出したが、以前の研究は、このFeは、溶液をpH6に調整することにより誘導された沈殿によって効果的に除去できることを示している。カラムに残存するFeは、1MのHCl(pH0)クリーニング工程によって除去してもよい(
図22C)。最後に、0.4mMのNd溶液(pH3)と再生されたカラムを用いた破過曲線を使用して、カラム安定性を試験した(
図22D)。吸着容量におけるREEの損失は観察されなかった。この研究は、電子機器廃棄物バイオ浸出液を処理してDy濃縮物及び高純度のNd/Prを生産するためにLanMカラムを使用できることを示した。
【0126】
28.9%のDy画分を高純度のDy及びNdへとさらに精製するための第2のカラム工程(すなわち、第2の吸着/脱離サイクル)の有効性を試験するために、合成の71%Nd/29%Dy供給材料溶液を、ランモジュリンカラム上にローディングし、2段階のpH脱離プロセスに供した。高純度のDy及びNd溶液を得た(
図23)。
上記で論じられた固定化LanMの分離及び精製プロセスと比較して、他の抽出方法は、それほど有効ではない。例えば、Nd/Dy分離のためにビス(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィン酸(Cyanex272)を使用した近年の液体-液体抽出研究において、6.7%のDyを含有するフィード溶液を、単回の抽出段階を使用して約47%純度のDyに濃縮し、85.8%のDy抽出収率を得た
28。2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステル(PC88A)リガンドでの向流抽出の配置を採用した別の研究は、それぞれ、20%Dy/80%Ndフィード溶液を76.7%及び95.2%純度のDy溶液にアップグレードするのに3及び4つの抽出段階を要した
29。したがって、固定化LanMは、高純度(99.9%まで)のNd及びDy分離を生じさせるための、有効で環境に優しい、液体-液体抽出の代替物として使用することができる。
【0127】
次に、NdからYを分離するLanMの能力を試験したところ(
図6D、Y:Ndの22:78混合物で構成される供給材料を、90%カラム飽和までローディングし、次いで2段階pH脱離スキーム(2.3及び1.7)に供した。
図7D、Y:Ndの22:78混合物で構成される供給材料を、90%カラム飽和までローディングし、次いで10mMのクエン酸塩(pH5)、続いてpH1.7を使用した2段階の脱離スキームに供した)、両方のREEは、一次REE鉱床(例えば、モナザイト、ゼノタイム、及び/又は褐廉石を含有するもの)中に豊富であり、グリーンエネルギー技術にとって重要であるとみなされる。フィード溶液中のY及びNdの比率をそれぞれ22%及び78%に設定して、典型的な石炭副産物浸出液におけるHREE対LREEの比率に類似させた
30、31。2段階pH脱離の後に2つの別個のピークを収集し、それぞれ95.6%のY純度及び99.8%Ndの純度が達成された。流入液フィード溶液(79.1%Nd+20.9%Y)とほぼ同一な組成の小さいオーバーラップ領域(吸着した金属の<25%)を収集し、後続の吸着/脱離サイクルでフィード溶液として再利用してもよい。注目すべきことに、クエン酸塩/pHの組合せは、ほぼ完全なY/Nd分離をもたらした;Yの95.8%が99.4%の純度で溶出し、一方でNdの99.7%が>99.9%の純度で溶出した。したがって、単一の吸着/脱離サイクルを用いて、Yは、Ndから分離することができる。2段階pHスキーム及びクエン酸塩-pHスキームを使用することによる供給材料及び3つの脱離ゾーン中のREE組成の要約をそれぞれ
図6E及び6Fに提供する。以下の表5に、
図6A~6Fで収集されたデータに関する合成フィード中のイオン濃度を列挙する。
【0128】
表5.
図6A~6Fにおける合成フィード溶液中のイオン濃度(μM)
【0129】
低グレードの供給材料浸出液からのグループ分けしたREEの抽出及び分離
石炭フライアッシュや赤泥などの豊富な廃棄物からREEを回収することは、採掘に固有の汚染を回避しながらREE供給を多様化するための見込みのある手段を提供する。しかしながら、このような低グレードのREEを含有する廃棄物から生産された浸出溶液は、Al3+、Ca2+、及びFe3+などの高レベルの金属イオン不純物を含有しており、従来の液体-液体抽出アプローチにとって問題がある5、24。例えば、Al3+は、一般的に、液体-液体抽出においてREEと共に抽出され、結果として低いREE純度及びゲル状の水酸化物を介したエマルジョンの形成を引き起こす24。同様に、他の不純物、例えばCa2+は、石膏形成を介して液体-液体抽出プロセス中に汚染を引き起こす可能性がある32。したがって、浸出溶液は、一般的に、液体-液体抽出ユニットにフィードする前に不純物を除去するための前処理沈殿工程に供される。選択的な沈殿は、Fe3+などの特定の不純物を除去するのに効果的であるが、Al3+の完全な除去は、REE水酸化物が水酸化アルミニウムと共沈するために大きな困難さをもたらす24、33。それゆえに、非REE不純物、特にAl3+及びCa2+と比べて高いREE選択性を有するREE抽出方法が非常に望ましい。
【0130】
工業的に関連する性能の試験として、LanMカラムベースのREEの抽出及び分離の概念を、亜歴青炭(PRB)フライアッシュから調製された低グレードの浸出液(0.043%のREE、1価イオンは排除された)を使用して実証した
34、35。浸出液は、Na、Mg、Al、Ca、及びSrのmMのレベル(表6A~6B)と比較して、約150μMの総REE、並びに著しい遷移金属含量(例えば、Zn、Ni、Cu、及びMn)を含有する。LanMベースのカラムを使用して、REEの破過はベッド体積の30倍量後に生じ、それに対して非REEは空隙容量に溶出した(
図8A、金属イオンの吸着プロファイル;吸着条件:pH5、0.5mL/分。ベッド体積の1倍量=0.8mL)。吸着した金属含量のREE純度を評価するために、pH1.5溶液を使用した非選択的な脱離後に金属イオン組成を決定した。REEの96.5%より多くが、最も濃縮された画分(総3.9ベッド体積)内に脱離し、平均富化係数6.9であった(
図8B及び
図9、PRBフィード中の金属組成及び回収されたバイオソープション溶液)。88.2%(
図8C、PRBフィード及び回収されたバイオソープション溶液中の金属イオンのパーセンテージ(1価イオンは除く)のパーセンテージ)の総REEの純度が観察され、これは、フィード溶液(0.043%のREE、1価イオンが排除されている)と比較して、純度において2050倍という著しい増加を示す。重要なことに、放射性核種のウランはPRB浸出液から濃縮されなかった。
【0131】
表6A. pH5におけるPRBフィード溶液中のイオン濃度(μM)
【0132】
表6B. PRB脱離溶液の3つの最も濃縮された画分におけるイオン濃度(μM)
*各元素の不確定要素を表5Aからの3連の試験に基づき仮定した。
【0133】
従来の液体-液体抽出アプローチを用いてLanMカラムベースの方法のREE選択性を評価するために(
図8D、点線より上の値は、非REEより高いREE親和性を示唆する)、卑金属イオンに対する総REEの分離係数を、匹敵する組成物の石炭フライアッシュ浸出液と共に広く市販されている抽出溶媒であるジ-2-エチル-ヘキシルリン酸(DEHPA)を使用して作成されたデータと比較した
36。LanMベースのアプローチがFe及びSiを除き全ての非REE不純物に抗して高い選択性を呈示したが、Mg
2+、Al
3+、及びCa
2+への選択性がそれより数桁高いことは、それらの豊富な低グレードの供給材料浸出液を考慮すると特に説得力がある
31、37。Si及びFeに対するより低い相対的な選択性は、カラム上に蓄積し、低pHでの脱離工程中に溶解するろ過不可能なコロイド粒子の形成を反映していることが予期される。したがって、現在のカラムベースのアプローチは、LanMの作用を最大化するためにFe/Si含量を除去するためのプレカラム方法を必要とする。要約すると、これらの結果から、多様な金属イオン不純物を含有する低グレードの浸出液からREEを選択的に濃縮する固定化LanMの能力が強調される。
【0134】
吸着段階中における非REE不純物の大部分の有効な除去を実証した後、2段階pH脱離スキームを使用したPRB浸出液からの吸着したREEのグループ分離(LREE(La-Gd):72%;HREE(Tb-Lu+Y):28%)を可能にするLanMの能力を試験した。HREE及びLREE画分にグループ分けしたREEの分離は、液体-液体抽出中における重要な初期工程であり、HREEを富化するための複数の抽出及びストリッピング段階を必要とし、典型的には、非REE不純物除去段階で使用されるものと比較して異なる抽出溶媒の使用を含む
5。主としてHREE又はLREEのいずれかで構成される2つの別個のピークを観察した(
図8E);HREEの82%が、pH2.3で72.6%の純度で溶出し、一方でLREEの80%が、pH1.7の脱離で98.8%の純度で溶出した。Scはまた、他のREEと共に抽出され、LREEグループと共に脱離した;しかしながら、その濃度はPRB浸出液中において特に低かった(0.02μM)。イオン吸着から生成した酸浸出液からの類似した純度のLREE分離を達成するために、段階的な液体-液体抽出プロセスを介して11段階の向流抽出が必要であり、2種の共通の抽出溶媒、2-エチル-ヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステル(HEH(EHP)、P507)及びジ-(2-エチルヘキシル)リン酸(HDEHP、P204)が逐次的に活用された
38。まとめると、これらの結果から、LanMカラムの主な利点:有機溶媒又は有害化学物質を使用することなく、単一の吸着/脱離工程で、低グレードの浸出液を用いて、非REE不純物の除去とグループ分けしたREE分離の両方を達成する能力が強調される。Nd/Dy、及びNd/Y対を用いた分離データに基づき、複数の吸着/脱離工程を連結することによって、及び/又は脱離工程における有機キレート化剤の慎重な組込みによって、HREE及びLREEグループ内でのより精密な分離が可能である。2段階のpHスキームによるHREE(Tb-Lu+Y)及びLREE(La-Gd)の選択的な脱離は、
図8Eに示され(パネルDの上の値は、総REE含量に対するLREE又はHREEの純度を示し、3つの溶出ゾーンを垂直の点線によって分割する)、PRBフィード及び3つの溶出ゾーン中の総REEに対するREE比率は、
図8Fに示される(実験条件:ベッド体積の29.1倍量のPRBフライアッシュ浸出液を、0.94mLのカラムにポンプ注入し、続いてベッド体積の10倍量のpH3.5の水での洗浄工程を行った。ベッド体積の16倍量のpH2.3のHCl溶液及びベッド体積の10倍量のpH1.7のHCl溶液を逐次的に用いて脱離を実行した)。
図8A~8Dで収集されたデータに関する合成フィード中のイオン濃度は、以下の表7に列挙され、
図8E及び8FにおけるPRB浸出液フィード、及び3つの脱離ゾーン中のイオン濃度(μM)は、以下の表8に列挙される。
【0135】
表7.
図8A~8Dにおける合成フィード溶液のイオン濃度(μM)
【0136】
表8.
図8E及び8FにおけるPRB浸出液フィード、及び3つの脱離ゾーンにおけるイオン濃度(μM)
【0137】
pHベースの脱離を使用したREEの分離
REE間のLanMの差次的な親和性。固定化LanMのREE選択性の選好を特定するために、全てのREE(Pmを除く)を含有する合成溶液をカラム破過試験に使用した(
図10A及び10B)。カラムが、単一元素実験によって決定された破過点に達するまでREEは溶出しなかった。破過はLu、Yb、Tm、Y、Er、Ho、Dy、Tb、Gd、La、Ce、Eu、Nd、Pr、Sm、及びScの順番で起こったことから、重REEよりも中-軽REEへの選好が明らかになり、これは、可溶化タンパク質の結合親和性決定に一致する。興味深いことに、破過領域において、重い希土類の流出液濃度は、そのフィード濃度のものより高く、これは、LanMにより高い親和性を有するREEによる競合的な置き換えを示唆する。このREE間のLanMの差次的な親和性は、REE分離に活用することができる。
【0138】
ランモジュリンのREE間の選択性も定量化した。溶液と固定化ランモジュリンとの間のREEの平衡分布を定量化することによって分離係数を決定した(
図30)。より具体的には、REEシリーズをREEの等モル濃度で2つの溶液に分け、これを、固定化ランモジュリンを含有するカラム上に平衡が達成されるまで循環式で流動させた。その後、吸着の前及び後における溶液中の金属イオン濃度を定量化した。全体として、データは、重REEよりも軽-中REEへのランモジュリンの強い選好を明らかにし、これは、
図10の競合破過曲線データ及び遊離のタンパク質の結合親和性決定と強く一致する。隣接するREEと中REEとの間で分配係数の著しい差が観察されたことから(隣接する金属イオンでは1.4~1.8のSF;以下の表1)、これらの元素の分離にランモジュリンを採用する可能性があることが強調される。対照的に、CeからEuについて分配係数は最小の差であり(SFは、この領域中のいずれの対に対しても、1.3未満であるか又はそれに等しい)、これは、ランモジュリンのREEへの親和性にのみ頼る分離プロセスは、これらのREEの分離に有効である可能性が低いことを示唆する。
【0139】
表1. 1回の吸着サイクル後のREEシリーズの分離係数
(1/2)。
図30からの分配係数から決定された。
【0140】
REEの差次的な破過に導かれて、段階的pHを使用する、REEがローディングされたLanMカラムからREEグループを選択的に脱離させる工程の可能性を調査した。このような実験を実用的な条件下で実行するために、LanMカラムを、石炭フライアッシュ浸出液中のREE組成に類似した合成REE溶液で事前にローディングし、次いで多工程pH脱離を採用した(
図11A~11D)。特には、等モルのREEイオン溶液につき、13μMの各REE(Lu、Yb、Tm、Y、Er、Ho、Dy、Tb、Gd、La、Ce、Eu、Nd、Pr、Sm、及びSc)をpH3、10mMのグリシン溶液に溶解させた。REE溶液を、LanMカラムに0.5mL/分でポンプで通し、カラム流出液を1.0mLで分取した。流出液中のREE濃度をICP-MSによって決定した。REE溶出液を、3つのグループ:重REE(Ho-Lu+Y)、中REE(Gd-Dy)+La、及び軽REE(Ce-Eu)に分割した。まずpH2.3~2.5の範囲内で重REEが脱離し、それに対して、Laを除く全ての軽REEは、pHがpH2.1及びそれ未満に達するまでカラムに保持された。中REEは中間のpH範囲内で溶出した。これらの結果から、石炭フライアッシュ浸出液(又は他の鉱石ベースの供給材料浸出液)から共抽出されたREEは、単一の吸着/脱離サイクルで3つのサブグループに分離できることが示唆された。LanMカラムでの追加の吸着/脱離サイクルを使用して、分離したグループ中のREEをさらに分離できることも考えられる。
【0141】
有機キレート化剤の戦略的な選択を使用したREEの分離
LanMは、REEからのSc分離を可能にする。LanMは、ピコモル未満の濃度の見かけの解離定数でScと結合する(
図12)。この実験中、CD分光法を使用して、様々なマロン酸塩で緩衝化された遊離のSc
III濃度で[θ]
222nmをモニターし、データをヒル式に当てはめた。Hypspecコンピュータープログラム
40を使用して、20mMの酢酸塩、100mMのKCl、pH5中の様々なSc-マロン酸塩系の分種化のダイアグラムを計算した。得られた遊離金属濃度を、標準的なCD滴定プロトコールを使用して、親和性決定に使用した。Sc-マロン酸塩はシグナルに寄与していなかったため、1つのみのブランクが必要であった。印象的なことに、遊離のLanMを用いたデータは、キレート化剤であるマロン酸塩が、重REE-LanM結合に影響を与えない濃度でLanM-Sc複合体からScをストリッピングできることを示す(
図13)。したがって、マロン酸塩を採用して、最初の吸着工程でLanMカラムをREEでローディングすること、及び次いでScを選択的に回収するためにマロン酸塩を使用することによって、REE供給材料浸出液からScを高純度で分離することができる。次いで、さらなるREEの分離のために、他のキレート化剤を用いた、又はpHモジュレーションを介した後続の脱離工程を採用することができる。
【0142】
REE破過及び脱離へのクエン酸塩の作用。遊離のLanMに関する有望なクエン酸塩脱離データに基づき(
図14)、REE破過へのクエン酸塩の作用を調査した。全てのREE(Pmを除く)を含有する合成溶液を、カラム破過試験のためのpH3.5の20mMのクエン酸塩で調製した。REE溶出物の破過の順番は、イオン半径と相関していた。(
図15A)HREE(Lu-Tb、Y、Sc)は、第1のベッド体積の5倍量で破過し、それに対してLREE(La-Nd)は、ベッド体積の25倍量まで破過しなかった。等モルのREE破過実験に導かれて、REEがローディングされたLanMカラムからREEを選択的に脱離させるためにクエン酸塩工程を使用する可能性を調査した。(
図15B)。予想通りに、REE溶出物のREE脱離の順番もイオン半径に従っていた。しかしながら、驚くべきことに、Luを含む全ての他のREEの前に、薄いクエン酸塩(3mM)によってScの大部分(80%)が脱離した。このデータは、遊離のLanMを用いた以前の研究とあわせて、共抽出されたScは、薄いキレート化剤溶液を使用することによって全ての他のREEから効果的に分離できることを示唆する。クエン酸塩の代わりにマロン酸塩を使用することは、REEからのScのより一層クリーンな分離を可能にする(
図15A及び15B)。データはまた、クエン酸塩を用いた段階的な脱離プロセスが別々のHREE、MREE、及びLREEプールを生成するために採用できることも示唆する。
【0143】
クエン酸塩-pH段階的脱離による合成鉱石浸出液からのSc/Y分離。鉱石ベースの供給材料浸出溶液(例えば、ボーキサイト及びその廃棄物残留物、褐廉石、石炭及び石炭燃焼生成物;
図26)のREE組成に類似した合成REE溶液を使用して、ランタニドからSc及びYを分離するための脱離ベースのプロセスを開発した。Sc及び重REEへのクエン酸塩の優先的な結合を、ランモジュリン(LanM)による軽-中REEの優先的な結合と組み合わせて考慮して、複数のクエン酸塩工程を使用する脱離スキームを試験して、そのスキームがL-MREEからSc及びYを分離するのに使用できるかどうかを決定した。
図15Bに提示された研究から、3mMの及び15mMのクエン酸塩(pH5)濃度が、それぞれLanMカラムからのSc及びYの脱離において有効であったことが明らかにされた。さらに、3mMのクエン酸塩脱離工程は、96.4%の純度及び77%の回収収率を有するSc溶液をもたらした。
図27は、脱離プロファイル(A)及び累積的な収率(B)を示す。15~30mMのクエン酸塩を使用した後続の脱離工程から、Y溶液を88%の純度及び>90%の回収収率で得た。次に、75mMのクエン酸塩を使用して、高い有用性のMREE+Nd/Prが富化された画分を生成した。pH1.5溶液を使用して残存するREEを脱離させ、La/Ceが富化された溶液を得た。これらの結果は、クエン酸塩-pH脱離戦略を使用することによって、吸着したランタニド画分からSc及びYを効果的に取り出せることを示す。
【0144】
マロン酸塩脱離による合成鉱石浸出液からのSc/Y分離。
図13に描写された遊離のランモジュリンタンパク質及びマロン酸塩キレート化剤を用いた有望なSc/Lu分離の結果を考慮して、REEからの高純度のSc分離を達成するマロン酸塩の有効性を試験した。LanM-カラムを、鉱石ベースの供給材料浸出溶液(例えば、ボーキサイト及びその廃棄物残留物、褐廉石、石炭及び石炭燃焼生成物;
図26)でローディングし、増加するマロン酸塩の濃度を使用して脱離に供した。データは、30mMのマロン酸塩が、REEがローディングされたランモジュリンカラムから高い純度及び収率で(>99%純度;>99%収率)Scを分離するのに十分であることを示唆する(
図28)。
図25及び27のデータに基づいて、後続のクエン酸塩脱離工程が、Yが富化された画分、MREEが富化された画分、及びLa/Ceが富化された画分を得るために採用される可能性が十分ある。要約すると、これらのデータは、カルボキシレートを含有するキレート化剤などの脱着剤と連動した場合、高純度のSc溶液を得るランモジュリンの能力を強調する。
【0145】
Sc分離のためのpHベースの脱離。REEよりもScへのランモジュリンの優先的な結合を考慮して、pHを使用する脱離スキームを試験して、そのスキームがSc分離に使用できるかどうかを決定した。これを試験するために、LanM-カラムを、典型的なScを含有する鉱石ベースの供給材料浸出溶液(例えば、ボーキサイト及びその廃棄物残留物、褐廉石、石炭及びその得られた燃焼生成物)におけるREE組成と類似した合成REE溶液でローディングした。pHの段階的な減少を使用したところ、Scは、最後の画分に30%の純度で溶出することが観察された(
図29)。不純物は、HREEというよりLREE及びMREEであるため、キレート化剤(例えば、マロン酸塩又はクエン酸塩)を使用して、上述したロジック論理に従って、Scは後続の工程において高純度で容易に分離することができる。
【0146】
有機キレート化剤を使用したグループ分けしたREEの分離
上記で提示された差次的な脱離実験に基づいて(
図7A及び
図15A~B)、軽/中/重REEを分離するための有望な候補としてクエン酸塩を同定した。LREE/MREE/HREE間の脱離ベースのREE分離のための最も有効な戦略を決定するために、LanM-カラムを、典型的な鉱石ベースの供給材料浸出溶液におけるREE組成と類似した合成REE溶液(
図24A;LREE(La+Ce):MREE(Pr-Gd):HREE(Y、Tb-Lu)=約50%:25%:25%)でローディングし、段階的なクエン酸塩脱離スキームを採用した(
図24B)。LanMは中及び軽REEに対して類似の高親和性を有し、MREEとLREEとの分離のためのpHベースの脱離勾配の使用を妨げる。LREEよりもMREEへのクエン酸塩のより高い親和性を考慮して、クエン酸塩を使用する脱離スキームを試験して、そのスキームがLREE/MREE/HREEを別々のグループに分離するのに使用できるかどうかを決定した。HREEは15mMのクエン酸塩を使用してMREE及びLREEから選択的に分離でき、一方で25~50mMのクエン酸塩濃度は、LREEからMREEを効果的に分離できることが見出された。
【0147】
REE分離のための最適なクエン酸塩濃度を決定した後、追跡実験を実行して、段階的なクエン酸塩-pHスキームを介したグループ分けしたREE分離を実証した(
図25A~B)。HREEは、15mMのクエン酸塩脱離工程を使用してほぼ定量的に高純度で脱離された(93.6%のHREE純度)。その後、50mMのクエン酸塩工程は、MREEが富化された溶液を70.7%の純度で生産した。最後に、非選択的なpH1.5脱離工程は、残存するREEを脱離させ、濃縮されたLa/Ce溶液(90.6%の純度)を生産した。この結果は、合成REE組成物(一次鉱石におけるものの代表である)から開始する場合、軽REE(La及びCe)は、単一のクエン酸塩ベースの脱離工程でHREE及びMREEから効果的に枯渇させることができることを示唆する。したがって、LanMベースのアプローチは、単一の吸着/脱離プロセスにおけるREE対非REEの分離(吸着工程)及びグループ分けしたHREE/MREE/LREEの分離(脱離工程)を可能にする。
【0148】
この分離作用は、他の可溶性有機キレート化剤、例えばイミノ二酢酸(IDA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、[S,S]-エチレンジアミン-N,N’-ジグルタル酸(EDDG)などでも観察される可能性があると予想される。マロン酸塩及びHIBAなどのキレート化剤は、Sc及びHREE脱離には有効であるが、合理的な濃度でLanMと競合するには不十分なMREE親和性を有する。
【0149】
結論
以下の実施例は、REE選択的タンパク質キレート化剤を使用する、バイオマテリアルベースの、全て水性のREE抽出及び分離プラットフォームを実証した。この概念は、持続可能なREE生産と、一次REE資源への世界的な依存を最小化することとへの重要な一歩を象徴する。近年発見されたREE結合タンパク質キレート化剤であるLanMを、生物学的に再生可能なアガロース支持体樹脂上に固定化して、フロースルーREE抽出及び容易な再使用を可能にした。固定化LanMは、その驚くべきREE選択性を保持し、非REE不純物からのほぼ定量的なREE分離を容易にした。逐次的なpH勾配又は穏やかなキレート化剤処理に続いて、電子機器廃棄物回収にとって最も重要なREE対である共に抽出されたNd/Dyを、フィード比率に応じて1又は2回の吸着/脱離サイクルの内に、高純度(99.9%純度)まで分離した。研究からさらに、単一の吸着/脱離サイクルでの重及び軽REEグループへのREEの抽出及び分離のためのLanMの適用が実証された。開示されたプロセスの先行技術を超える主な利点は、低グレードの供給材料浸出液との適合性、有機溶媒の欠如、カラム容量全体を使用しながら特定のREEの高純度での分離を達成する能力、酸性供給材料との適合性、第1の吸着工程中におけるREEへの高い選択性、下流プロセスの最小化を可能にすること、及び放射性不純物(例えば、U及びTh)の濃縮がないことである。
【実施例2】
【0150】
炭素原子の経済性及びLanMカラムのローディング能力を改善すること
実施例1で論じられた通り、2:1の化学量論のNdとそれに対する固定化LanMを観察した。興味深いことに、溶液中ではLanMは3当量のREEと結合することから、固定化のときに、又はカラム様式では1つの金属部位が不安定化されるが示唆される。この結果は、2:1の化学量論を乱すことなくタンパク質を短くできる(すなわち、非機能的な結合部位を除去することによって)可能性があることを示唆した。2:1の化学量論を乱すことなくタンパク質の長さを短くすることは、カラムへのLanMの全体的な固定化率を増加させ、結果としてカラムにローディングできるREEの量を増加させることができ、それによってREE含有材料からのREE分離の有効性を増加させることができる。
【0151】
LanMのアミノ酸配列は、固定化LanMのREE:LanMの化学量論を乱すことなく短くすることができる
LanMの最初の40アミノ酸の除去(すなわち配列番号1のN末端からの19アミノ酸)は、分子量の10%低減及びREEとLanMの2:1の化学量論を有する機能性タンパク質をもたらし(
図16A及び16B)、さらに、意外なことに、Dy/La分離の見込みを改善した(
図16A及び16B);Dyは、LanM-La複合体の解離を引き起こさないクエン酸塩濃度で、LanMから完全に回収することができた。これは、LanMΔ1-40を使用する高純度のMREEとLREEとの分離の可能性(表1、配列番号2)を強調する。
【0152】
二重LanMタンパク質
LanMカラムのREE吸着容量を増加させるために、二重LanMコンストラクト(LanM-二重(2-1)と呼ばれる。表1、配列番号3)を作製し、REE結合の化学量論を試験した。化学量論は、溶液中、約4:1~5:1であるが(すなわち、LanM単位のうち1つにおける第3の結合部位が機能的と考えられる)、2:1という化学量論の固定化単一LanMに基づくと、固定化する場合は4:1である可能性が高い(
図17A~17C)。LanM-二重タンパク質は、末端システインが追加され、後続の試験のためのアガロース樹脂に固定化されると予想される。重要なことに、二重LanMのNd/Dy解離特性はWT LanMと極めて類似していた(
図18)。これは、二重LanMが、脱着剤としてクエン酸塩を使用してオンカラムでのNdからのDy分離を可能にすることを示唆する。
【実施例3】
【0153】
3つのカラムローテーションスキームを使用することによる連続的なHREE/LREE分離
以下の実施例は、
図19で示されるように3つのLanMカラムをローテーションで使用することによるREE分離のための連続的な方法を説明する。このようなスキームは、分離サイクルを完了させるのに4つの工程(工程A~D)を含み、高度に効率的な、高い収率のREE分離(すなわち>99.9%の純度、>99%の収率を有する単一のREE生成物)を可能にする。
【0154】
方法
エコノカラムガラスクロマトグラフィーカラム(Bio-Rad;5cm×0.5cm)を、LanM-マイクロビーズを重量測定によって添加する前に、脱イオン水で充填した。カラムを25mMのHCl、脱イオン水で洗浄し、破過実験の前に脱イオン水で調整した。REEフィード溶液(39μMのAl、2.3μMのMn、3.1mMのFe、54μMのCo、2.5μMのCu、5.6μMのZn、34.9μMのPr、371μMのNd、及び21.8μMのDy)を、バイオリキシビバントを使用することによって調製して、電子機器廃棄物(電子機器廃棄物)からREEを溶脱させた。フィードを0.5mL/分でカラムにポンプ注入し、流出液を1.0mLで分取した。流出液中のREE濃度をICP-MSによって決定した。
【0155】
結果及び議論
工程Aにおいて、REE溶液、例えばpH>2.5の条件でのNd及びDyは、カラムiにポンプ注入され、流出液はカラムiiによって収集される。カラムiの全容量に達する前に、NdとDyの両方がカラムiによって抽出され、これは、
図20で示される以前の破過実験(ベッド体積の1~10倍量)によって裏付けられる。しかしながら、カラムiが空になったら(ベッド体積の10倍量の後に)、Dyイオンが、LanMのHREEよりも高いLREE選択性のためにNdによって選択的に置き換えられると予想される。工程1は、カラムiにおいて全てのDyイオンがNdイオンで置き換えられたときに終わらせ、カラムiでのNd富化が可能になると予想される。カラムiiでDyイオンが収集されることは注目すべきことである。工程Bにおいて、カラムiにおいてこれまでに抽出されたNdは、低いpH又は穏やかなキレート化剤のいずれかにより脱離されて、高純度のNd(99.9%)を回収し、それに続く吸着のためにカラムiを再生することになる。その間、カラムii及びカラムiiiを直列に接続して、カラムiiが完全にNdでローディングされるまで、カラムiiでのNd富化とカラムiiiでのDy富化を反復する。工程Cにおいて、同じ脱離及びNd/Dy富化プロセスは、カラムの順番をローテーションして工程Bで記載されたように繰り返される。工程Dにおいて、Dy及びNdがそれぞれ回収されると予想される。次いで工程Aは、新しい分離サイクルを開始するために繰り返されると予想される。注目すべきことに、このプロセスは、カラムivが追加される場合、完全に連続的であってもよく、この場合、Dyがローディングされたカラムは独立してDy脱離を実行するためにカラムivと交換されてもよく、そのDy脱離は、Nd/Dy比率に応じてより低い頻度で実行されてもよい。
【0156】
前述のことから、本発明の具体的な実施形態は例示の目的で本明細書に記載されているが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な改変がなされ得ることが理解されるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲による限定を除き、限定されない。
【0157】
【配列表】
【国際調査報告】