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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】歯科材料製造用モノマー混合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/887 20200101AFI20240517BHJP
【FI】
A61K6/887
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023581089
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2022063002
(87)【国際公開番号】W WO2022253551
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】102021113969.4
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514200420
【氏名又は名称】ミュールバウアー・テクノロジー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MUEHLBAUER TECHNOLOGY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ネフゲン,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ネアンダー,スウェン
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA06
4C089AA07
4C089AA08
4C089AA09
4C089BD02
4C089BE02
(57)【要約】
本発明は、歯科材料を製造するためのモノマー混合物に関し、前記歯科材料は、
a.少なくとも1種の下記式1:PG-S-A-S-[OOC-K-COO-S-A-S]n-PG(式1)(式中、PG=OOC-CH=CH2および-OOC-C(CH3)=CH2から選択される重合性基;S=非分岐状および分岐状アルキレンから選択されるスペーサー基、スペーサー基がC1~C10炭素原子を有し、炭素鎖中に酸素または-OOC-を含むこともできる、またはSは省略される;A=脂肪族多環式基;K=C1~C10炭素原子を有する脂肪族非環式または環式飽和または不飽和単位;およびn=1~9)で表されるベースモノマーM1;b.下記式2:PG’-S’-A’-S’-PG’(式2)(式中、PG’=OOC-CH=CH2および-OOC-C(CH3)=CH2から選択される重合性基;S’=非分岐状および分岐状アルキレンから選択されるスペーサー基であって、C1~C10炭素原子を有し、炭素鎖中に酸素または-OOC-を含むことができるスペーサー基;またはS’は省略される;およびA’=脂肪族多環式基であり、ここでベースモノマーM2-対-M1の質量比Y=m(M2)/m(M1)は、0.9≦Y≦20である)で表される少なくとも1つのベースモノマーM2を含む。また、本発明は、モノマー混合物の使用、かかるモノマー混合物を含む重合性歯科材料、治療方法に使用するための重合性歯科材料、および硬化歯科材料に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科材料を製造するためのモノマー混合物であって、
a.下記式1:
【化1】
(式中、PG= OOC-CH=CHおよび-OOC-C(CH)=CHから選択される重合性基;
S= 炭素鎖中に酸素または-OOC-をさらに含み得るC1-C10炭素原子を有する非分岐状および分岐状アルキレンから選択されるスペーサー基、好ましくはメチレン、
またはSが不存在である;
A= 脂肪族多環式基、好ましくは脂肪族三環式炭化水素基、ここに、1個以上の水素原子は、それぞれ互いに独立して、C1~C4アルキルラジカル、C1~C4アルコキシラジカル、フッ素原子、塩素原子またはトリフルオロメチル基で置換され得、より好ましくはトリシクロデカニレン、さらに好ましくはトリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカニレンである;
K= C1~C10炭化水素、好ましくはC3~C10炭化水素を有する脂肪族非環式または環式、飽和または不飽和単位、より好ましくは飽和シクロ脂肪族単位、さらにより好ましくは1,4-シクロヘキサニレンである;
n=1~9、好ましくは1~5、より好ましくは1~4である)
で表される少なくとも1種のベースモノマーM1;
b.下記式2:
【化2】
(式中、PG’= OOC-CH=CHおよび-OOC-C(CH)=CHから選択される重合性基;
S’= 炭素鎖中に酸素または-OOC-をさらに含み得るC1~C10炭素原子を有する非分岐状および分岐状アルキレンから選択されるスペーサー基、好ましくはメチレンである、
または、S’が存在しない;
A’= 脂肪族多環式基、脂肪族三環式炭化水素基、ここに、1個以上の水素原子が、それぞれ互いに独立して、C1~C4アルキルラジカル、C1~C4アルコキシラジカル、フッ素原子、塩素原子またはトリフルオロメチル基で置換され得、より好ましくはトリシクロデカニレン、さらにより好ましくはトリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカニレンである)
で表される少なくとも1つのベースモノマーM2;
ここで、ベースモノマーM2-対-M1の質量比Y=m(M2)/m(M1)は、0.9≦Y≦20、好ましくは0.9≦Y≦10、より好ましくは0.95≦Y≦3である
を含む、前記モノマー混合物。
【請求項2】
前記モノマー混合物中に、2種以上のベースモノマーM1、好ましくは少なくとも2種のベースモノマーM2、より好ましくは2種を超えるベースモノマーM1、さらにより好ましくは3種を超えるベースモノマーM1が存在し、さらにより好ましくは4種を超えるベースモノマーM1が存在する、請求項1に記載のモノマー混合物。
【請求項3】
前記ベースモノマーM2が、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカンおよびそれらの混合物から選択され、前記ベースモノマーM2が好ましくはビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカンである、請求項1または2に記載のモノマー混合物。
【請求項4】
前記モノマー混合物が、式1で表されるベースモノマーM1および式2で表されるベースモノマーM2とは異なるベースモノマーM3を含む、請求項1~3のいずれかに記載のモノマー混合物。
【請求項5】
前記ベースモノマーM3が、ウレタン系モノマーから選択され、前記ベースモノマーM3が、好ましくは、7,7,9-トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジイルビス(2-メチルアクリレート)、7、9,9-トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジイルビス(2-メチルアクリレート)、7,7,9-トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジオールジアクリレート、7,9,9-トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジオールジアクリレート、およびそれらの混合物から選択される、請求項4に記載のモノマー混合物。
【請求項6】
前記ベースモノマーが、それぞれ、モノマー混合物の総質量に対して、以下の質量分率:
-2重量%~52.5重量%、好ましくは5重量%~52.5重量%、より好ましくは12.5重量%~52.5重量%のベースモノマーM1;
-23重量%~96重量%、好ましくは47.5重量%~95.5重量%、より好ましくは47.5重量%~87.5重量%のベースモノマーM2;
-0重量%~50重量%、好ましくは0.1重量%~30重量%、より好ましくは1重量%~15重量%のベースモノマーM3
で含まれ得る、請求項1~5のいずれかに記載のモノマー混合物。
【請求項7】
前記モノマー混合物が、モノマー混合物の総質量に対して、95重量%~100重量%、好ましくは99重量%~100重量%、より好ましくは100重量%の質量分率のベースモノマーM1、M2および任意にM3を含む、またはより成る、請求項1~6のいずれかに記載のモノマー混合物。
【請求項8】
前記モノマー混合物中に、ビスフェノールA構造を有するモノマーが含まれず、好ましくは、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン(ビスGMA)が含まれず、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(ビスEMA)が含まれない、請求項1~7のいずれかに記載のモノマー混合物。
【請求項9】
前記モノマー混合物中に、低分子量および低粘度のモノ-およびジ(メタ)アクリレートから選択されるモノマーが存在せず、0.05Pa s未満の23℃の温度における粘度および/または部分的水溶性を有するモノマーが存在せず、および/またはヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA)、トリエチレングリコールジアクリレート(TEGDA)およびトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)から選択されるモノマーが存在しない、請求項1~8のいずれかに記載のモノマー混合物。
【請求項10】
23℃の温度におけるモノマー混合物が、0.2~10、好ましくは1~6Pa sの粘度を有する、請求項1~9のいずれかに記載のモノマー混合物。
【請求項11】
ラジカル重合性歯科材料、好ましくは歯科用コンポジット、コアビルドアップ、根管充填、充填、アンダーフィリング、固定、クラウン、ブリッジ、修復および/または補綴材料を製造するための、請求項1~10のいずれかに記載のモノマー混合物の使用。
【請求項12】
a)請求項1~10のいずれかに記載のモノマー混合物;
b)任意に、ラジカル重合のための少なくとも1種の開始剤または開始剤系;
c)任意に、フィラー;
d)任意に、慣用歯科用添加剤
を含む、重合性歯科材料。
【請求項13】
前記成分が、前記歯科材料の総質量に対して、以下の質量分率:
a)1重量%~99重量%、好ましくは20重量%~95重量%の前記モノマー混合物;
b)0重量%~5重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%のラジカル重合のための前記少なくとも1つの開始剤または開始剤系;
c)0重量%~95重量%、好ましくは1重量%~95重量%、より好ましくは1重量%~85重量%、さらにより好ましくは20重量%~80重量%の前記フィラー;
d)0重量%~5重量%、好ましくは0.001重量%~5重量%の前記慣用歯科用添加剤
で前記歯科材料に含まれ得る、請求項12に記載の歯科材料。
【請求項14】
歯科用コンポジット、充填、アンダーフィリング、固定、コアビルドアップ、根管充填、クラウン、ブリッジ、修復および/または補綴材料として治療方法に使用するための請求項12および13のいずれかに記載の歯科材料。
【請求項15】
請求項12および13のいずれかに記載の重合性歯科材料から製造された硬化歯科材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科材料製造用モノマー混合物、前記モノマー混合物の使用方法、かかるモノマー混合物を含む重合性歯科材料、治療方法に使用するためのかかるモノマー混合物を含む重合性歯科材料、および硬化した歯科材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合性歯科材料は、主として、(メタ)アクリレートモノマーを含む。歯科充填物および歯科補綴物のごとき歯科修復材料および補綴材料について、迅速なラジカル重合、良好な機械的特性および審美的外観のごときそれらの特性の理由から、ジメタクリレート系が通常使用される。慣用ベースモノマーは、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン(ビスGMA)および7,7,9-トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジイルビス(2-メチルアクリレート)(UDMA)のごとき、高分子量を有する末端メタクリレート官能基を有する直鎖脂肪族または芳香族基含有構造である。
【0003】
ビスGMAをほとんど使用せず、少なくとも部分的に他の化合物で置換される努力が、しばらくの間なされてきた。本明細書においての焦点は、主にウレタンモノマーおよびウレタンオリゴマーに関する。歯科材料部門におけるビスGMAの少なくとも部分的な置換のための最も商業的に普及している化合物は、UDMAである。
【0004】
ビスGMAおよびUDMAのごときベースモノマーは、広範囲の商業的に入手可能なラジカル重合性歯科材料に含まれているにも拘らず、ある種の不利を有する。一般的には、それらは高粘度の物質または固形物である。この理由ため、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)のごとき、実質的に低粘度のモノマーとの混合物が使用される。TEGDMAは非常に柔軟な、低粘度(0.01Pa・s)を有する低分子量モノマーであり、重合中に高い移動度を有し、その重合転化を促進する。
【0005】
しかしながら、これらのモノマー混合物およびそれらから得られる歯科材料は、臨床処置における成功に有害となり得るある種の問題のある特性を有する。例えば、これらのジメタクリレートモノマーのモノマー混合物は、比較的低い重合転化、激しい重合収縮、貧弱な靭性(または、強靭性:toughness)、望ましくない吸水性を示す。公知の系は、二重結合の比較的低い転化のみをしばしば達成でき、これは、不十分な機械的特性および耐摩耗性に寄与するだけではなく、重合された歯科材料の毒性および生体適合性についても不利である。さらに、現在使用されているジメタクリレートモノマーの体積収縮(または、体積収縮率:volume shrinkage)および歯科充填物の収縮応力は、歯と充填物との間の接着の破壊(または、不成功:failure)に導き、微小漏洩、結果的には二次う蝕に導きかねなく、これは、今度は、修復の寿命(longevity)をかなり低下させ得る。未転化モノマーを低下させるために二重結合転化を増加させる試みは、あいにく重合収縮および収縮応力の増加に導く。
【0006】
TEGDMAのごときオリゴ[エチレンオキシ]基を有し、ある種の水溶性およびしたがって生物学的利用能を示す低分子量モノマーは、それらの毒性学的特性および、生分解プロセスに対する感受性のため、今や批判的に評価されている。また、構造要素ビス-2,2-[p-オキシフェニル]プロパンを有するモノマー、すなわち、ビスフェノールAに基づくモノマーも、これらの構造要素を有するモノマー混合物を含む歯科材料が、検出可能な量のビスフェノールAを放出することが判明しており、毒性学的に非常に重要な特性が付与されているので、批判的に評価さている。
【0007】
転化(または、転化率、コンバージョン、転換もしくは変換:conversion)を増大し、および/または体積収縮を低下させることには、種々のアプローチが存在する。有機樹脂マトリックス中にフィラー(または、充填材:filler)を含む歯科充填用コンポジット(または、複合材料:composite)の場合、フィラー含有量を高めることにより体積収縮を低減する試みがなされている。しかしながら、フィラーの含有量が高すぎると、フィラーと有機樹脂とを混合するのが困難になる。また、歯科用コンポジットにはフィラーの含有量に限界(または、制限:limit)が存在し、ある種(または、一定の:certain)の流動性を有さなければならない。さらに、転化を増大し、重合収縮を低下させるために、新しいモノマーが開発されており、その例は、高分子量を有するウレタンメタクリレートモノマーである。これらのモノマーの合成は高価で複雑であり、典型的に精製工程も必要となるため、かかるモノマーの生成はそれらの入手において限定的にしている。モノマーの所与の官能性については、一般的に分子量の上昇は、硬化した歯科材料の機械的特性における低下を伴う。さらに、かかるモノマーの粘度上昇は、歯科用コンポジットに使用するためには、比較的多量の低粘度のモノマーを使用しなければならず、これは、収縮に悪影響を有する。
【0008】
EP2436365B1は、モノマー(b1)および(b2)を1:20~5:1の比率で含むモノマー混合物を含む低収縮性歯科用組成物を記載する。例示(example)組成物は、各ケースにおいて、4.8~76.6重量%のビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(b1)、90.9~19.1重量%のUDMA(b2)、および4.3重量%のTEDMA(b2)を含む。b1):(b2)の比率とは無関係に、これらの複合材料は、約1.50%の重合収縮(または、重合収縮率:polymerization shrinkage)を有する。比較例11のように、フィラーの割合(または、フラクションもしくは分画:fraction)を低下させ、TEDMAの割合を増やすならば、重合収縮における増加が存在する。
【0009】
Vaidyanathan et al., Visible light cure characteristics of a cycloaliphatic polyester dimethacrylate alternative oligomer to bisGMA; Acta Biomater Odontol Scand. 2015; 1:59-65(Vaidyanathanら,ビスGMAに対するシクロ脂肪族ポリエステルジメタクリレート代替オリゴマーの可視光硬化特性;Acta Biomater Odontol Scand.2015;1:59-65)は、30重量%または50重量%のTEGDMAと組み合わせたビスGMAのBPAフリー代替品としてのPEM-665の使用を開示する。これらの混合物の重合転化率を調べたところ、PEMとTEGDMAの組合せは、ビスGMAとTEGDMAの組合せよりも高いパーセント重合転化(または、重合転化百分率:percentage polymerization conversion)を有した。
【0010】
したがって、毒性ポテンシャルを低減し、体積収縮を低減すると同時に、製造される歯科材料につき良好な機械的特性を可能にし、かつ容易に入手可能なモノマーおよびモノマー混合物についての必要性が存在している。
【0011】
したがって、本発明の目的は、先行技術について前記した不利を克服し、特に、改善された体積収縮および改善された曲げ強度を有する歯科材料、特に、歯科用コンポジットの製造を可能にするモノマー混合物を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、歯科材料を製造するためのモノマー混合物を用いてこの目的を達成し、モノマー混合物は:
a.下記式1:
【化1】
(式中、PG= OOC-CH=CHおよび-OOC-C(CH)=CHから選択される重合性基;
S= 炭素鎖中に酸素および/または-OOC-をさらに含み得るC1-C10炭素原子を有する非分岐状および分岐状アルキレンから選択されるスペーサー基、好ましくはメチレン、
またはSが不存在である;
A= 脂肪族多環式基、好ましくは脂肪族三環式炭化水素基、ここに、1個以上の水素原子は、それぞれ互いに独立して、C1~C4アルキルラジカル、C1~C4アルコキシラジカル、フッ素原子、塩素原子またはトリフルオロメチル基で置換され得、より好ましくはトリシクロデカニレン、さらにより好ましくはトリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカニレンである;
K= C1~C10炭化水素、好ましくはC3~C10炭化水素を有する脂肪族非環式または環式、飽和または不飽和単位(または、ユニット:unit)、より好ましくは飽和シクロ脂肪族単位、さらにより好ましくは1,4-シクロヘキサニレンである;
n=1~9、好ましくは1~5、より好ましくは1~4である);
で表される少なくとも1種のベースモノマーM1;
n=1~9、好ましくは1~5、より好ましくは1~4である;
b.下記式2:
【化2】
(式中、PG’= OOC-CH=CHおよび-OOC-C(CH)=CHから選択される重合性基;
S’= 炭素鎖中に酸素および/または-OOC-をさらに含み得るC1~C10炭素原子を有する非分岐状および分岐状アルキレンから選択されるスペーサー基、好ましくはメチレンである、
または、S’が存在しない;
A’= 脂肪族多環式基、脂肪族三環式炭化水素基、ここに、1個以上の水素原子は、それぞれ互いに独立して、C1~C4アルキルラジカル、C1~C4アルコキシラジカル、フッ素原子、塩素原子またはトリフルオロメチル基で置換され得、より好ましくはトリシクロデカニレン、さらにより好ましくはトリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカニレンである)
で表される少なくとも1つのベースモノマーM2;
ここで、ベースモノマーM2-対-M1の質量比Y= m(M2)/m(M1)は、0.9≦Y≦20、好ましくは0.9≦Y≦10、より好ましくは0.95≦Y≦3であるを含む。
【0013】
好ましい実施形態は、従属請求項に見出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本発明の文脈で使用される多数の用語について説明する。
【0015】
重合性(または、重合可能な:polymerizable)歯科材料は、本発明によれば、特に、エナメル質および象牙質のごとき硬歯質に関する、または顎骨のごとき骨組織に関する(生体)医療((bio)medical use)用材料であると理解される。
【0016】
重合性歯科材料は一般的に、硬化可能な異なる成分の混合物である樹脂ベースの材料である。本発明の文脈において、樹脂は実質的にモノマー混合物と、例えば、開始剤(または、重合開始剤:initiator)、安定剤などのごときモノマーに可溶なさらなる成分より成る。
【0017】
本発明の文脈において、モノマー混合物は、重合性歯科材料のベースモノマーM1およびM2、さらに任意に(または、所望により、もしくは任意選択的に:optionally)、ベースモノマーM3および/または他のモノマーを含む混合物である。重合性歯科材料のさらなる成分、例えば、開始剤、フィラー、慣用歯科添加剤などは、モノマー混合物の成分ではない。
【0018】
本発明の文脈において、ベースモノマーM1は、n=1の場合はモノマーを含み、n=2~9の場合はオリゴマーを含む。n=1~9のモノマーおよびオリゴマーは、ベースモノマーM1と現在(presently)参照される。
【0019】
モノマー混合物中に、好ましくは2種以上のベースモノマーM1が存在し、より好ましくは少なくとも2種のベースモノマーM1が存在し、さらにより好ましくは2種を超えるベースモノマーM1が存在し、さらにまたより好ましくは3種を超えるベースモノマーM1が存在し、さらにまたより好ましくは4種を超えるベースモノマーM1が存在する。
【0020】
一実施形態において、n=1~9、好ましくはn=1~5、より好ましくはn=1~4を有するモノマー/オリゴマー系列のベースモノマーM1のすべてが、互いに一緒に(alongside one another)存在し得る。換言すれば、n=1~9では、少なくとも9種の化合物(すなわち、1種のモノマーと8種のオリゴマー)が存在し、n=1~5では、少なくとも5種の化合物(すなわち、1種のモノマーと4種のオリゴマー)が存在し、n=1~4では、少なくとも4種の化合物(すなわち、1種のモノマーと3種のオリゴマー)が存在する。
【0021】
ベースモノマーM1の質量分布は、広範囲内で変動し得る。ベースモノマーM1の総質量分率(または、フラクションもしくは分画:fraction)に対して、n=2~5またはn=2~4のベースモノマーM1が最高の質量分率を有する場合も有り得る。別法として、n=1を有するベースモノマーまたは複数のベースモノマーM1が、モノマー混合物に含まれるn=2~9を有する個々のベースモノマーM1と比較して最高の質量分率を有する場合も有り得る。
【0022】
ベースモノマーM2は、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカンおよびそれらの混合物から選択し得る。より好ましくは、ベースモノマーM2はビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ-[5.2.1.0/2,6]デカンである。ベースモノマーM2は、商業的に入手可能なモノマー、例えば、Polyscienceからのトリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカンジメタノールジアクリレートで有り得る。当該モノマーは、別法として、例えば、EP0235836B1またはUS4131729/DE2816823の調製例によるエステル化反応によって得られるモノマーで有り得る。原則として、トリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレートをベースとする工業的に入手可能なベースモノマーM2は、外環式メチレン基が異性体によって異なる骨格炭素原子に結合している異性体混合物を含む。
【0023】
モノマー混合物は、式1のベースモノマーM1および式2のベースモノマーM2とは異なるベースモノマーM3を含み得る。
【0024】
ベースモノマーM3は、好ましくはウレタン系モノマーから選択される。
【0025】
適切なベースモノマーM3は、二官能性ウレタン(メタ)アクリレート、多官能性ウレタン(メタ)アクリレート、およびそれらの混合物から選択し得る。
【0026】
ベースモノマーM3は、好ましくはウレタンジ(メタ)アクリレートを含む。好ましいのは、直鎖状または分岐状のアルキレン官能化ウレタンジ(メタ)アクリレートおよびウレタンジ(メタ)アクリレート官能化ポリエーテルから選択されるウレタンジ(メタ)アクリレートである。
【0027】
二価のアルキレン基を有する二官能性ウレタン(メタ)アクリレート、および二価の環状脂肪族炭化水素基を有する二官能性ウレタン(メタ)アクリレートから選択される二官能性ウレタン(メタ)アクリレートに優先が付与される。かかる二価のアルキレン基を有する二官能性ウレタン(メタ)アクリレートは、好ましくは、二価のアルキレン基で官能化された直鎖状または分岐状のウレタンジ(メタ)アクリレート、ビス(メタクリロキシ-2-エトキシカルボニルアミノ)アルキレン、ビス(メタクリロキシ-2-エトキシカルボニルアミノ)置換ポリアルキレンエーテルのごときアルキレン基を有するウレタンジ(メタ)アクリレート官能化ポリエーテルから選択される。C3~C20、好ましくはC3~C9の直鎖状または分岐状のアルキレン基を含むビス(メタクリロキシ-2-エトキシカルボニルアミノ)アルキレンに優先が付与される。メチル基により置換されたアルキレンに特に優先が付与される。二価のアルキレンは、好ましくは、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンおよび/または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンを含む。
【0028】
また、ベースモノマーM3は、3-ヒドロキシプロピルメタクリレートとトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、または3-ヒドロキシプロピルアクリレートとトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物で有り得る。
【0029】
2モルの2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)または2モルの2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)と1モルの環状脂肪族ジイソシアネートとの反応を介して、2価の環状脂肪族炭化水素基を有するウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる。適切なジイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート(1-イソシアナト-3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン)またはH12-MDI(1-イソシアナト-4-[(4-イソシアナトシクロヘキシル)メチル]シクロヘキサン、および他の環状ジイソシアネートである。その例としては、2分子の2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)と1分子のイソホロンジイソシアネート(IPDI)の反応生成物、および2分子の2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と1分子のイソホロンジイソシアネートの付加物である。
【0030】
適切なベースモノマーM3は、例えば、以下の商標またはブランド名:Ebecryl 230(脂肪族ウレタンジアクリレート)、Actilane 9290、Craynor 9200(ジウレタンアクリレートオリゴマー)、Ebecryl 210(芳香族ウレタンジアクリレートオリゴマー)、Ebecryl 270(脂肪族ウレタンジアクリレートオリゴマー)、Actilane 165、Actilane 250、Photomer 6210(脂肪族ウレタンジアクリレート)、Photomer 6623(6官能脂肪族ウレタン樹脂)、Photomer 6891(脂肪族ウレタントリアクリレート)、UDMA、Roskydal LS 2258(脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー)、Roskydal XP 2513(不飽和脂肪族ウレタンアクリレート)、Genomer 4256、Genomer 4267(ウレタンアクリレート)、Genomer 4259(脂肪族ウレタンジメタクリレート)、RCX 18-059(脂肪族ウレタンジメタクリレート)、UN 963CG(脂肪族ウレタンメタクリレート)、UN 1963CG(脂肪族ウレタンメタクリレート)、PRO 21252(脂肪族ウレタンアクリレート)、H1391(ヒドロキシプロピルウレタンジメタクリレート)、H1391(ウレタンジメタクリレート)、X851-1066(ウレタンジメタクリレート、IPDI)、X726-000(PEG 400伸長(または拡張:extended)ウレタンジメタクリレート)、ウレタンメタクリレート11-70およびウレタンメタクリレート14-774のもと入手可能である。
【0031】
1つの好ましい実施形態において、ベースモノマーM3は、7,7,9-(または7,9,9-)トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジイル ビス(2-メチルアクリレート)(UDMA)、7,7,9-(または7,9,9-)トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジオールジアクリレート(UDA)およびそれらの混合物から選択される。
【0032】
ベースモノマーはそれぞれ、モノマー混合物の総質量に対して、以下の質量分率:
-2重量%~52.5重量%、好ましくは5重量%~52.5重量%、より好ましくは12.5重量%~52.5重量%のベースモノマーM1;
-23重量%~96重量%、好ましくは47.5重量%~95.5重量%、より好ましくは47.5重量%~87.5重量%のベースモノマーM2;
-0重量%~50重量%、好ましくは0.1重量%~30重量%、より好ましくは1重量%~15重量%のベースモノマーM3
で含まれ得る。
【0033】
モノマー混合物は、モノマー混合物の総質量に対して、25重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、さらにより好ましくは100重量%の質量分率でベースモノマーM1およびM2を含む、またはより成ることが好ましい。
【0034】
モノマー混合物は、モノマー混合物の総質量に対して、95重量%~100重量%、好ましくは99重量%~100重量%、より好ましくは100重量%の質量分率のベースモノマーM1、M2およびM3を含む、またはよりなり得る。
【0035】
本発明において、モノマー混合物がビスフェノールA構造を有するモノマーを含まないことが好ましい。特に、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン(ビスGMA)および/またはエトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(ビスEMA)は含まない。重合性歯科材料に関しても同様である。
【0036】
本発明において、モノマー混合物が、低分子量、低粘度のモノ-およびジ(メタ)アクリレートから選択されるいずれのモノマーも含まないことが好ましい。また、0.05Pa s未満の23℃における粘度を有し、および/または部分的な水溶性を有するモノマーを含まないことが好ましい。特に、オリゴ[エチレンオキシ]基または直鎖状もしくは分岐状のC1~C10アルキレン基と、1種または2種の(メタ)アクリレート基より成るモノマー混合物中のモノマーは存在しない。モノマー混合物は、好ましくはヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA)、トリエチレングリコールジアクリレート(TEGDA)および/またはトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)を含まない。重合性歯科材料に関しても同様である。
【0037】
モノマーや有機樹脂の粘度は、通常製造者により指定され、粘度計(例えば、Malvern Instruments Ltd.のKinexus DSR)を用いて決定し得る。
【0038】
本発明のモノマー混合物は、好ましくは0.2~10、より好ましくは1~6Pa sの23℃の温度での粘度を有する。
【0039】
本発明の有利さは、本発明のモノマー混合物、かくして、本発明の重合性歯科材料も、先行技術について前記した不利を克服することである。モノマー混合物および重合性歯科材料は、容易に入手でき、さらに低減した毒性ポテンシャルを有するベースモノマーから製造し得る。歯科材料を製造するための本発明のモノマー混合物の使用は、得られる歯科材料における良好な機械的特性と共に(in conjunction with)、低下した重合収縮を生じる。このモノマー混合物を用いると、特に、改善された体積収縮および改善された曲げ強度を有する歯科材料、より詳細には歯科用コンポジットを得ることができる。これは、関連する期待が架橋密度および曲げ強度の低下であるので、ベースモノマーM1の分子サイズおよび構造に照らして驚くべきことである。
【0040】
したがって、モノマー混合物および重合性歯科材料は、ビスフェノールAに由来する構造要素を有するモノマーまたは他の化合物を好ましくは含まず、また、部分的に水溶性を有する低分子量のモノ-およびジ(メタ)アクリレート、特にTEGDMAも含まないことが好ましい。
【0041】
本発明のさらなる対象は、ラジカル重合性歯科材料、好ましくは歯科用コンポジット、コアビルドアップ、根管充填、充填、アンダーフィリング(underfilling)、固定(securing)、クラウン、ブリッジ、修復および/または補綴材料を製造するための、好ましくは請求項1~10のいずれかに記載の本発明のモノマー混合物の使用である。
【0042】
また、本発明のさらなる対象は、重合性歯科材料であり、重合性歯科材料は:
a)本発明のモノマー混合物、好ましくは請求項1~9のいずれかに記載のモノマー混合物;
b)任意に、ラジカル重合のための少なくとも1種の開始剤または開始剤系(initiator system);
c)任意に、フィラー;
d)任意に、慣用歯科用添加剤
を含む。
【0043】
重合性歯科材料は、キットの形態で構築し得る。キットは、1つまたは複数のコンポーネントを含み得る。多成分キットまたはシステムの場合において、歯科材料は、使用直前に、成分を所定の割合で混合し、次いで、その混合物を硬化させることによって製造される。
【0044】
b)開始剤(複数可)
適切な開始剤または開始剤系(開始剤システム:initiator system)は、ラジカル重合反応を開始できる。かかる開始剤および開始剤系は当業者に知られている。
【0045】
開始剤系は、少なくとも開始剤と、例えば、共開始剤(co-initiator)のごとき少なくとも1種のさらなる化合物より成る。これらの化合物は、重合性歯科材料の異なる成分にわたって分布し得る。本発明の歯科材料は、熱的に、化学的に、または光化学的に、すなわち、UVおよび/または可視光の照射によって硬化し得る。
【0046】
光開始剤(または、光重合開始剤:photoinitiator)は、適切な開始剤の例である。これらは、300nm~700nm、好ましくは350nm~600nm、より好ましくは380nm~500nmの波長範囲での光の吸収と、任意に(または、任意選択的にもしくは所望により:optionally)1種以上の共開始剤とのさらなる反応を介して、材料の硬化をもたらすことができる点で特徴付けられる。本明細書に好ましく使用されるのは、ホスフィンオキシド、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシドおよびそれらの誘導体、アシルゲルマナン(例えば、EP2649981A1、WO2017/055209A1およびEP3153150A1に記載されているごとき)、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ビスイミダゾール、メタロセン、フルオロン、α-ジカルボニル化合物、アリールジアゾニウム塩、アリールスルホニウム塩、アリールヨードニウム塩、フェロセニウム塩、フェニルホスホニウム塩、またはこれらの化合物の混合物である。
【0047】
ジフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド、フェニルビス-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジアルキルケタール、α-ヒドロキシアセトフェノン、ジアルコキシアセトフェノン、α-アミノアセトフェノン、イソプロピルチオキサントン、カンファーキノン、フェニルプロパンジオン、5,7-ジヨード-3-ブトキシ-6-フルオロン、(エタ-6-クメン)(エタ-5-シクロペンタジエニル)ヘキサフルオロリン酸鉄(または、鉄ヘキサフルオロリン酸塩:hexafluorophosphate)、(エタ-6-クメン)(エタ-5-シクロペンタジエニル)テトラフルオロホウ酸鉄(または、鉄テトラフルオロホウ酸塩:tetrafluoroborate)、(エタ-6-クメン)(エタ-5-シクロペンタジエニル)ヘキサフルオロアンチモン酸鉄(または、鉄ヘキサフルオロアンチモン酸塩:hexafluoroantimonate)、置換ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、またはこれらの化合物の混合物に優先が付与される。
【0048】
光化学的硬化に使用される共開始剤は、好ましくは、第三級アミン、ホウ酸塩、有機ホスファイト、ジアリールヨードニウム化合物、チオキサントン、キサンテン、フルオレン、フルオロン、α-ジカルボニル化合物、WO2021/048313A1に記載されるようなジカルボニル系、縮合多環芳香族またはこれらの化合物の混合物である。使用に特に好ましいのは、N,N-ジメチル-p-トルオリジン、N,N-ジアルキル-アルキルアニリン、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン、p-(ジメチルアミノ)安息香酸2-エチルヘキシル、p-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル、トリフェニルブチルホウ酸ブチルコリンまたはこれらの化合物の混合物である。
【0049】
また、使用される開始剤は、熱開始剤と呼ばれるものも含み、これは高温での熱エネルギーの取り込みを介して材料の硬化をもたらすことができる。この場合、無機および/または有機過酸化物、無機および/または有機ヒドロペルオキシド、α,α’-アゾビス(イソブチロエチルエステル)、α,α’-アゾビス(イソブチロニトリル)、ベンゾピナコールまたはこれらの化合物の混合物の使用に優先が付与される。使用に特に好ましいのは、例えば、ベンゾイルペルオキシドまたはラウロイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ベンゾピナコール、2,2’-ジメチルベンゾピナコールまたはこれらの化合物の混合物のごときジアシルペルオキシドである。
【0050】
室温での化学的硬化について、一般的に、1種または2種以上の開始剤と、活性化剤として機能する1種以上の共開始剤より成るレドックス開始剤(または、酸化還元開始剤:redox initiator)系が使用される。保存安定性の理由のため、開始剤系の個々の成分は、相互に空間的に分離された本発明の歯科材料の一部に組み込まれ-これは、材料が多成分材料、好ましくは2成分材料であることを意味する。使用される開始剤または複数の開始剤は、好ましくは、無機および/または有機過酸化物、無機および/または有機ヒドロペルオキシド、バルビツール酸誘導体、マロニルスルファミド、プロトン酸、ルイス酸もしくはブレンステッド酸、またはかかる酸を遊離する化合物、例えば、メチルトリフレートもしくはトリエチルペルクロレートのごときカルベニウムイオン供与体、またはこれらの化合物の混合物であり、使用される共開始剤または複数の共開始剤は、好ましくは第三級アミン、重金属化合物、特に周期表の第8族および第9族の化合物(「鉄族および銅族」)、例えば、ハロゲン化第四級アンモニウムのごとき、イオン結合したハロゲンまたは擬ハロゲンを有する化合物、例えば、アルコールおよび水のごとき弱ブレンステッド酸、またはこれらの化合物の混合物である。
【0051】
また、本発明の歯科材料は、上記の開始剤と共開始剤の考えられる任意の組合せを含み得る。この例は、いわゆるデュアルキュアリング(二重硬化型:dual-curing)歯科材料を含み、これは光化学的硬化のための光開始剤と任意に、対応する共開始剤だけでなく、室温での化学的硬化のための開始剤と対応する共開始剤も含む。
【0052】
本発明の重合性歯科材料は、好ましくは光硬化性である。好ましい一実施形態において、開始剤としてカンファーキノン(CQ)が、共開始剤としてp-(ジメチルアミノ)安息香酸2-エチルヘキシル(EHA)が含まれる。
【0053】
c)フィラー
本発明の重合性歯科材料は、慣用歯科用添加剤をさらに含み得る。フィラー粒子はいずれかの特定の粒子形状に縛られ(tied)ない。代わりに、球状、薄片状、板状、針状、葉状、または不規則な形状を有するフィラーを良好に使用できる。フィラー粒子は、好ましくは5nm~100μm、より好ましくは5nm~50μmの平均粒径を有する。
【0054】
適切なフィラーは、歯科用製品(または、生成物:product)に一般的に使用される多種多様な材料から選択し得る。フィラーの選択を介して、例えば、歯科材料の流動性、粘度、コンシステンシー(または、均一性:consistency)、色、X線可視性、機械的安定性を調整することができる。フィラーは、その化学的性質に基づいて、無機フィラー、有機フィラー、有機-無機複合フィラーの3種に大別し得る。フィラーは正に個別に使用し得るだけでなく、相互に組み合わせて使用し得る。
【0055】
使用される無機フィラーは、種々のサイズおよび状態(単分散、多分散)の天然または合成ガラスまたは結晶性無機物質の粉砕粉末を含み得る。適切な例としては、石英、クリストバライト、ガラスセラミック、長石、バリウムシリケートガラス(例えば、Kimble RAY-SORB T3000、Schott 8235、Schott GM27884、Schott G018-053およびSchott GM39923の商標下入手可能である)、バリウムフルオロシリケートガラス、ストロンチウムシリケートガラス、ストロンチウムボロシリケートガラス(例えば、RAY-SORB T4000、Schott G018-093、Schott G018-163、およびSchott GM32087の商標下入手可能である)、リチウムアルミニウムシリケートガラス、バリウムガラス、カルシウムシリケート、ナトリウムアルミニウムシリケート、フルオロアルミニウムシリケートガラス(例えば、Schott G018-091およびSchott G018-117の商標下入手可能である)、ジルコニウムまたはセシウムボロアルミニウムシリケートガラス(例えば、Schott G018-307、G018-308およびG018-310の商標下入手可能である)、ゼオライトおよびアパタイトが挙げられる。フィラーは、好ましくは0.01~15μmの平均粒径d50、好ましくは0.2~5μmの平均粒径d50、より好ましくは0.2~1.5μmの平均粒径を有する。平均粒径d50が0.1~0.5μmであることが好ましくできる。かかる場合において、平均粒径d90が1.0μm未満であることが特に好ましい。加えて、歯科材料のより均一な充填を生成し、硬度および耐摩耗性を増大させるために、離散的で非凝集の、有機的に表面改質された(または、表面改変された、もしくは表面修飾された:surface-modified)ナノ粒子を使用し得る。
【0056】
ナノ粒子は、この文脈において、200nm未満の平均粒径を有する球状粒子であると理解される。平均粒径は好ましくは100nm未満、より好ましくは60nm未満である。ナノ粒子が小さい程、より粗い粒子間の空隙を充填するという機能をより良好に満たすことができる。ナノ粒子用材料は、好ましくは酸化物または混合酸化物であり、より好ましくは元素ケイ素、チタン、イットリウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、タングステン、ビスマス、モリブデン、スズ、亜鉛、イッテルビウム、ランタン、セリウム、アルミニウムおよびそれらの混合物の酸化物および混合酸化物よりなる群から選択される。好ましい酸化ナノ粒子は非凝集性である。ナノ粒子のコンポジットのポリマーマトリックスへの良好な組み込みを促進するために、ナノ粒子の表面は有機的に改質される(または、修飾される:modified)。フィラーは、好ましくはシラン化剤で表面処理される。特に適切な接着促進剤は、メタクリロキシプロピルトリメトキシシランである。使用し得る商業的に入手可能なナノスケールの非凝集および非凝集シリカゾルは、例えば、「NALCO COLLOIDAL SILICAS」(Nalco Chemical Co.)、「Ludox colloidal silica」」(Grace)または「Highlink OG」(Clariant)の名称下で商業目的にある。
【0057】
特に、それらの比表面積(Brunauer、Emmet、Tellerに従って決定された)が100~400m/gの範囲にある場合に、凝集したナノスケール粒子より成るサブミクロンフィラーまたはマイクロフィラーも同様に使用し得る。フュームドシリカまたは湿式沈殿シリカが好ましい。使用し得る適切な非表面処理二酸化ケイ素フィラー製品は、AEROSIL(商標)(「OX50」、「90」、「130」、「150」、「200」、「300」および「380」、Evonik Industries AG, Essen,ドイツの「R8200」)、Cab-O-Sil(Cabot Corp., Tuscola, ILからの「LM-150」、「M-5」、「H-5」、「EH-5」)、HDK(商標)(「S13」、「V15」、「N20」、「T30」、「T40」 Wacker-Chemie AG、ミュンヘン、ドイツ)およびOrisil(商標)(「200」、「300」、「380」Orisil, Lviv, Ukraine)の名称下で商業的に入手可能である。
【0058】
二酸化ケイ素と二酸化ジルコニウムの混合酸化物をベースとする凝集ナノスケール粒子の使用を介して、歯科材料において特に有利な耐摩耗特性(または、耐摩耗性もしくは摩耗抵抗:abrasion resistance)および光沢安定特性(gloss stability property)を実現し得る。適切なフィラーは、例えば、US6,730,156(実施例A)に記載されたプロセスにより製造し得る。かくして製造されたフィラーは、US6,730,156(例えば、調製例B)に記載されたプロセスにより表面処理し得る。
【0059】
DE19524362A1またはUS2020/0121564A1に記載されたケイ素ジルコニウム混合酸化物をベースとする球状サブミクロン粒子の使用は、高い審美性および摩耗安定性と共に高レベルの充填を達成するために特に有利である。
【0060】
凝集フィラーは、好ましくは1~15μmの平均二次粒子径(または、粒子サイズ:particle size)、好ましくは1~10μmの平均二次粒子径、より好ましくは2~5μmの平均二次粒子径を有する。
【0061】
また、相当量の選択されたX線不透過性フィラーも存在し得る。歯科材料へのX線可視性(visible)粒子の添加は、無傷の硬歯質と修復物との区別を可能にするので有利である。適切なX線可視フィラーは、金属酸化物、金属フッ化物または硫酸バリウムの粒子を含む。28を超える原子番号を有する重金属の酸化物およびフッ化物が好ましい。金属酸化物およびフッ化物は、それらが修復物の色にほとんど効果を有さないように選択すべきである。より適切な金属酸化物およびフッ化物は、30を超える原子番号を有するものである。適切な金属酸化物は、イットリウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、タングステン、ビスマス、モリブデン、スズ、亜鉛、ランタニド(57~71の原子番号を有する元素)、セリウム、およびそれらの組合せの酸化物である。適切な金属フッ化物は、例えば、三フッ化イットリウムおよび三フッ化イッテルビウムである。本明細書で特に好ましい適性は、40nm~1.5μmの平均一次粒径を有する不規則な形状または球状のYbFもしくはYF粒子であり、YFまたはYbFコアおよびSiOシェルを含むコア-シェル組合せ製品(または、生成物:product)に優先が付与され;非常に特に好ましいのは、SiOシェルの表面がシラン化されていることである。特に、この種のコア-シェル組合せ製品は、1.48~1.54の屈折率を有し、0.5~5μmの測定された平均凝集粒子径を有する。
【0062】
適切な有機フィラーの例は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、(PBMA)、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン(PU)、ポリウレア、メチルメタクリレート-エチルメタクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体およびスチレン-ブタジエン共重合体をベースとする充填および非充填の粉砕ポリマーまたはコポリマーである。有機フィラーは、製造プロセス中に添加される生物学的活性成分、規定された色素(または、顔料:pigment)、重合開始剤、安定剤、またはそれらに相当するものをさらに含み得る。有機フィラーは単独または混合物として使用し得る。
【0063】
いわゆる有機-無機複合フィラーを採用するならば、歯科材料において、より高レバルの充填性と共に有利な研磨特性を達成し得る。これらのフィラーは、重合性モノマーを無機フィラーで処理してペーストを形成し、次いで、重合によってペーストを硬化させ、生成物を微粉砕に付した後、フィラーとして使用することによって製造し得る。本明細書において、無機フィラーとしてマイクロフィラーが好ましく使用される。粉砕後に、フィラーは、好ましくは0.05~100μmの平均粒径、好ましくは0.5~50μmの平均粒径、より好ましくは1~30μmの平均粒径を有する。
【0064】
歯科材料中のフィラーは、表面改質されていることが好ましい。この目的のために、例えば、記載された無機または有機-無機複合フィラーは、使用前に、相溶性(または、互換性もしくは両立性:compatibility)、親和性、および樹脂混合物へのフィラーの組込み能力を改善するために表面処理に付される。この処理は、無機粒子の表面に有機改質(または、有機改変もしくは有機修飾:organic modification)を提供し、それは、その表面が有機的構造要素を示すことを意味する。この文脈において、当業者に知られているすべてのプロセスを採用できる。表面にOH基を持つ無機フィラーについて、シラン化剤が好ましい。ここでの例としては、γ-メタクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン(メタクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素原子数:3~12)、γ-メタクリロイルオキシアルキルトリエトキシシラン(メタクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素原子数:3~12)、またはビニルトリメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシランのごときシリコーン化合物が挙げられる。特に好ましいシラン化剤は、メタクリロキシプロピルトリメトキシシランである。
【0065】
表面にOH基をほとんどまたは全く持たない無機フィラーは、好ましくは、例えば、チタネート、アルミネート、ジルコアルミネート、界面活性剤、脂肪酸、有機酸、無機酸または金属アルコキシドのごとき種々の表面改質剤で表面処理される。バリウム、ストロンチウムおよび希土類金属の塩に特に好ましい表面改質剤は、N-、P-、S-および/またはO-含有官能基(例えば、ポリオール、スルホキシド、ホスフィン酸エステル、ホスホン酸エステル、トリアルキルホスフィン、カルボン酸およびカルボン酸エステル)を持つ有機化合物である。本明細書において特に適切なのは、10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェートである。
【0066】
特に、二酸化ケイ素ベースの凝集ナノフィラーの場合において、表面改質は、前述のメタクリロイルオキシアルキル基のごときラジカル反応性基、あるいはラジカル非反応性基を含み得る。適切な非反応性基は、例えば、トリメチルシリル基、ジメチルシリレン基またはメチルシリリデン基であり、これらはそれぞれ、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジメトキシシランまたはメチルトリメトキシシランでのシラン化によって表面に適用し得る。適切な未反応表面改質凝集ナノフィラーは、例えば、Aerosil R8200、Aerosil R812S、Aerosil R805、Aerosil R202、Aerosil R974(Evonik Industries AG, Essen,ドイツ)またはHDKH2000、HDKH200/4(Wacker Chemie, Burghausen,ドイツ)の名称下で商業的に入手可能である。さらに好ましくは、凝集したナノフィラーは、例えば、メタクリロイル基のように、ラジカルプロセスにおいて反応性である基で改質し得る。商業的に入手可能なラジカル反応改質凝集ナノフィラー製品は、Aerosil R7200(Evonik Industries AG, Essen,ドイツ)の名称下で入手可能である。
【0067】
凝集したナノフィラーは、好ましくは、例えば、EP1720206に記載されているように、大部分が脱凝集した形態で有り得る。
【0068】
本発明の歯科材料は、重合性歯科材料の総質量に対して、0重量%~95重量%、好ましくは1重量%~95重量%のフィラー粒子の分率を含み得る。フィラー画分の量は、歯科用製品の表示に合わせて選択される。例えば、垂れのない(non-sagging)、模型化可能な(modelable)充填用コンポジットについて、インレー、オンレーまたはオーバーレーの製造のための歯科用組成物について、および歯科用CAD-CAM材料を製造するための組成物について、可能な限り高い充填量が使用される。一般的に、これらの組成物は、組成物全体に対して、75重量%~92重量%までのフィラー含有量を有する。流動性歯科用コンポジット、固定用コンポジット、コアビルドアップ材料、クラウン材料およびブリッジ材料は、一般的に、組成物全体に対して40重量%~80重量%の範囲を有する中程度フィラーを有するが、歯科用バーニッシュ、歯科用シーリング材料、歯科用浸透材料または歯科用接着剤については、組成物全体に対して1重量%~40重量%の範囲のフィラーが使用される。前記に示したフィラーの範囲は、単にガイドライン値として理解されるべきであり、選択されたフィラーに応じて、これを逸脱もし得る。
【0069】
d)慣用(または、通常:customary)歯科用添加剤
本発明の重合性歯科材料は、慣用歯科用添加剤をさらに含み得る。慣用歯科用添加剤は当業者に知られ;好ましい添加剤は、抑制剤(または、阻害剤:inhibitor)、安定剤、促進剤、染料、フッ素化剤、再石灰化剤、X線不透明化剤(X-ray opacity agent)およびフィルム形成剤である。
【0070】
抑制剤および安定剤の目的は、特に早期重合を防止することである。これらは反応性ラジカルと反応して、より安定したスカベンジャー生成物を与える物質である。抑制剤/安定剤の添加は、まだ硬化している組成物の貯蔵安定性を改善する。加えて、抑制剤は、硬化系の作業時間を適切な範囲にするために供し得る。適切な阻害剤の例として、ヒドロキノンモノメチルエーテル(HQME)または2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)のごときフェニル誘導体が挙げられる。さらなる阻害剤、例えば、tert-ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル、ガルビノキシルおよびトリフェニルメチルラジカル、2,3,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシルラジカル(TEMPO)およびTEMPOまたはフェノチアジンの誘導体、またこの化合物の誘導体は、EP0783880B1に記載されている。代替(alternative)阻害剤は、DE10119831A1またはEP1563821A1に見出すことができる。
【0071】
重合性歯科材料における安定剤は、特に、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を含み得る。
【0072】
本発明の歯科材料は、慣用歯科用添加剤としてUV安定剤を含み得る。UV安定剤は、特に、UV照射による劣化または変色に関して歯科材料を安定させるために使用される。UV吸収剤の例としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、サリチル酸フェニル、3-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾールまたは2,5-ジヒドロキシテレフタル酸ジエチルが挙げられる。
【0073】
本発明の歯科用材料は、慣用歯科用添加剤として、細かく分割された粒子状の1種以上のフッ化物供与物質を含み得る。フッ化物供与物質は、フッ化ナトリウムまたはフッ化アミンのごとき水溶性フッ化物で有り得る。さらに適切なフッ化物供与物質は、第2主族の難溶性フッ化物である。フッ化物含有ガラスも同様に、適切なフッ化物源である。
【0074】
さらに適切な添加剤は、カルシウムおよび/またはリン酸塩を遊離し、再石灰化効果(または、ミネラル補給効果:remineralizing effect)を有する微粒子である。適切な再石灰化物質は、ヒドロキシルアパタイト、ブラサイト、リン酸一カルシウム、フルオロアパタイトのごときリン酸カルシウム化合物、およびDE10111449A1、DE102005053954A1またはUS9517186B2に特定されているガラスのごとき生体活性ガラスである。
【0075】
本発明の歯科材料は、蛍光染料、蛍光顔料、有機着色顔料、無機着色顔料、およびそれらの混合物から選択される着色剤または着色剤混合物を含み得る。
【0076】
蛍光着色剤または顔料は、好ましくは有機蛍光染料または有機蛍光顔料であり、より詳細には、任意にアリールカルボン酸エステルを含む非重合性有機蛍光着色剤、例えば、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸ジエチル、アリールカルボン酸、クマリン、ローダミン、ナフタレンイミドまたはそれらの誘導体である。無機蛍光顔料は、例えば、CaAl:Mn2+(Ba0.98Eu0.02)MgAl1017、BaMgF:Eu2+、Y(1.995)Ce(0.005)SiOを含み得る。本発明の歯科材料に含み得る着色顔料は、有機顔料、また、無機顔料、例えば、N,N’-ビス(3,5-キシリル)ペリレン-3,4:9,10-ビス(ジカルビイミド)、銅フタロシアニン、チタネート顔料、特にチタン酸クロムアンチモン(ルチル構造)、スピネルブラック、特に黒色酸化鉄(Fe)をベースとする顔料を含み、ここに、鉄は、部分的にクロムおよび銅またはニッケルおよびクロムまたはマンガンにより置換されている、亜鉛鉄クロムスピネルブラウンスピネル、((Zn,Fe)(Fe,Cr))コバルト亜鉛アルミン酸ブルースピネルおよび/または酸化チタンを含む。
【0077】
歯科材料中の成分は、本発明の歯科材料の総質量に対して、以下の質量分率:
-1重量%~99重量%、好ましくは20重量%~95重量%のモノマー混合物;
-0重量%~5重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%のラジカル重合のための少なくとも1つの開始剤または開始剤系;
-0重量%~95重量%、好ましくは1重量%~95重量%、より好ましくは5重量%~85重量%、さらに好ましくは20重量%~80重量%のフィラー;
-0重量%~5重量%、好ましくは0.001重量%~5重量%の慣用歯科用添加剤
を含み得る。
【0078】
歯科材料は、好ましくはビスフェノールAベースの構造要素を有する化合物を含まない。
【0079】
本発明のさらなる対象は、歯科用コンポジット、充填、アンダーフィリング、固定、コアビルドアップ、根管充填、クラウン、ブリッジ、修復および/または補綴材料として、治療方法における使用のための、好ましくは請求項11~13のいずれかに特許請求の本発明の歯科材料である。
【0080】
本発明の対象は、さらにまた、本発明の重合性歯科材料から製造される硬化(または、硬化した:cured)歯科材料であり、より詳細には、請求項11~13のいずれかに特許請求されるものである。
【0081】
本発明をいくつかの有利な実施形態を用いて、今や例示的に説明する。
【0082】
実施例
実施例において、オリゴエステルジメタクリレートおよびビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ-[5.2.1.0/2,6]デカン(TCDDMA)を含む混合物を使用した。実施例で使用したn=1~4を有するOEDMAとn=0を有するTCDDMAの混合物の構造式を以下に示す。
【0083】
【化3】
【0084】
使用した混合物は、トリシクロデカンジメタノールと、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸とのおよびメタクリル酸との従来技術で知られているエステル化反応によって調製し得る。
【0085】
使用したOEDMAとTCDDMAとの混合物の成分の質量比は、GPC測定を介して分析した。これは、31:29:18:16:7のTCDDMA:オリゴエステル n=1:オリゴエステル n=2:オリゴエステルn=3:オリゴエステル n=4の質量分率を生成した。したがって、OEDMA混合物中のTCDDMAの質量分率は、OEDMAとTCDDMAの混合物の総質量に対して31重量%であった。
【0086】
加えて、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカン(TCDDA)、7,7,9-(または7,9,9-)トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジオールジメタクリレート(UDMA)、7,7,9-(または7,9,9-)トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジオールジアクリレート(UDA)、1モルのイソホロンジイソシアネートと2モルの2-ヒドロキシエチルメタクリレートの反応生成物(UDMA-IPDI)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA)、ビスフェノールAグリシジルメタクリレート(ビスGMA)を使用した。
【0087】
樹脂の調製
後記の表1および表2に従い、モノマー混合物を調製し、開始剤系を添加した(すべての数値は、いずれの場合も重合性歯科材料の総質量に対する重量%である)。すべての実施例において、この系は、カンファーキノン(CQ)と2-エチルヘキシルp-(ジメチルアミノ)ベンゾエート(EHA)を共開始剤として同量使用したものである。2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)は、安定剤としてすべての混合物に同じ濃度で使用した。得られた樹脂をマグネチックスターラーで一晩ホモジナイズ(または、均質化:homogenized)した。
【0088】
【表1】
【0089】
実施例1~4は、比較のために先行技術のモノマー混合物の特性を示す。比較例3は、EP2436365B1のモノマー混合物を含む重合性歯科材料に対応する。
【0090】
【表2】
【0091】
実施例5~9は、本発明の重合性歯科用材料に対応する。実施例7において、体積収縮および曲げ強度が著しく改善された。実施例5および6は、体積収縮がさらに低下し、良好な曲げ強度が同様に得られたことを示す。
【0092】
歯科用コンポジットの製造
歯科用コンポジットは、後記の表3および表4に従い製造した。歯科用コンポジットの製造のために、SCHOTT AGからの歯科用ガラスG018-053(平均粒径0.7μm、6重量%シラン)の合計75重量%を、歯科用コンポジットの総質量分率に対して、予め得られた樹脂に順次添加し、混合物をSpeedmixer(Hauschild製)を用いて均質化した。次いで、コンポジットを脱気した。
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
曲げ強度および弾性率の決定
曲げ強度および弾性率を決定した。この目的のため、ISO 4049:2009に従い試験片(または、試験標本:test specimen)を作製した。試験片は、HiLite(登録商標)power光重合装置(Heraeus社製)を用いる曝露により作製した。この目的のために、歯科用コンポジットを試験片型(40mm×2mm×2mm)中で両側からそれぞれ90秒間曝露(expose)させた。試験片は37℃の蒸留水中で24時間保存した。曲げ強度および弾性率は、Zwick万能試験機を用いて決定した。6回の個別測定による平均値が、標準偏差と共に報告されている。
【0096】
体積収縮
体積収縮は、硬化前(VA)および硬化24時間後(NA)の歯科用コンポジットの密度ρの差から算出した。各コンポジットについて、3つのサンプルを測定し;その平均値を密度として使用した。硬化後のコンポジットの密度決定のために、円柱状試験片(直径8mm、高さ2mm)を、HiLiteパワー光重合装置(Heraeus社製)を用いる曝露によって作製した。曝露は試験片の両側から90秒間行った。試験片は23℃にて24時間乾燥保存した。硬化および未硬化のコンポジットの密度は、ヘリウムガスピクノメーター(Accupyc III 1340)を用いて測定した。
【0097】
体積収縮VSは以下の式:
【0098】
【数1】
【0099】
で与えられた。
【0100】
動的粘度(せん断速度)
動的粘度は、Malvern Instruments社製のKinexus DSRを用いて測定した。測定は、トッププレート直径25mm、ギャップ幅0.1mmのプレート/プレート形状を用いて行った。測定中、1Pa~50Paのせん断応力をトラバース(traverse)した。評価には、せん断応力50Paでの読みを採用した。測定は、23℃の一定温度でなされ、モニターし、装置の内部温度調整によって一定を保った。
【0101】
GPC測定
GPCは、カラムオーブンおよびRI検出器を備えたGPCシステム(PSS SECcurity GPC System、PSS Polymer Standards Service GmbH製)で測定した。成分の分離に使用したカラム組合せは以下の通りである:プレカラムVA 50/7.7 Nucleogel GP 5 P、分離カラムVA 300/7.7 Nucleogel GPC 104-5およびVA 300/7.7 Nucleogel GPC 500-5(すべてMacherey & Nagel製)。カラムは20℃で恒温とした。サンプル濃度は1%であった。20μlのサンプルを注入し、使用した溶離液はTHF(Merck 109731)であった。溶離液の流量は0.5ml/分であった。
【0102】
本開示の主題はさらに、0.9≦Y≦20、好ましくは0.9≦Y≦10、より好ましくは0.95≦Y≦3のベースモノマーM2-対-M1との比質量比Y=m(M2)/m(M1)でなくとも、本質的な発明内容を有する、さらなる態様も同様に含む。開示のさらなる態様は、(欧州特許庁審判部審決J15/81の意味において)以下の項の形態で記載される:
【0103】
第1項. 歯科材料を製造するためのモノマー混合物であって、
a.下記式1:
【化4】
(式中、PG= OOC-CH=CHおよび-OOC-C(CH)=CHから選択される重合性基;
S= 炭素鎖中に酸素または-OOC-をさらに含み得るC1-C10炭素原子を有する非分岐状および分岐状アルキレンから選択されるスペーサー基、好ましくはメチレン、
またはSが不存在である;
A= 脂肪族多環式基、好ましくは脂肪族三環式炭化水素基、ここに、1個以上の水素原子は、それぞれ互いに独立して、C1~C4アルキルラジカル、C1~C4アルコキシラジカル、フッ素原子、塩素原子またはトリフルオロメチル基で置換され得、より好ましくはトリシクロデカニレン、さらにより好ましくはトリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカニレンである;
K= C1~C10炭化水素、好ましくはC3~C10炭化水素を有する脂肪族非環式または環式、飽和または不飽和単位、より好ましくは飽和シクロ脂肪族単位、さらにより好ましくは1,4-シクロヘキサニレンである;
n=1~9、好ましくは1~5、より好ましくは1~4である)
で表される少なくとも1種のベースモノマーM1;
b.下記式2:
【化5】
(式中、PG’= OOC-CH=CHおよび-OOC-C(CH)=CHから選択される重合性基;
S’= 炭素鎖中に酸素または-OOC-をさらに含み得るC1~C10炭素原子を有する非分岐状および分岐状アルキレンから選択されるスペーサー基、好ましくはメチレンである、
または、S’が存在しない;
A’= 脂肪族多環式基、脂肪族三環式炭化水素基、ここに、1個以上の水素原子が、それぞれ互いに独立して、C1~C4アルキルラジカル、C1~C4アルコキシラジカル、フッ素原子、塩素原子またはトリフルオロメチル基で置換され得、より好ましくはトリシクロデカニレン、さらにより好ましくはトリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカニレンである)
で表される少なくとも1つのベースモノマーM2
を含む、前記モノマー混合物。
【0104】
第2項. 前記モノマー混合物中に、2種以上のベースモノマーM1が存在し、好ましくは少なくとも2種のベースモノマーM2、より好ましくは2種を超えるベースモノマーM1、さらにより好ましくは3種を超えるベースモノマーM1、さらにより好ましくは4種を超えるベースモノマーM1が存在する、第1項に記載のモノマー混合物。
【0105】
第3項. 前記ベースモノマーM2が、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカンおよびそれらの混合物から選択され、前記ベースモノマーM2が好ましくはビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカンである、第1項または第2項に記載のモノマー混合物。
【0106】
第4項. 前記モノマー混合物が、式1で表されるベースモノマーM1および式2で表されるベースモノマーM2とは異なるベースモノマーM3を含む、第1項~第3項のいずれかに記載のモノマー混合物。
【0107】
第5項. 前記ベースモノマーM3が、ウレタン系モノマーから選択され、好ましくは、二官能性ウレタン(メタ)アクリレート、多官能性ウレタン(メタ)アクリレート、およびそれらの混合物から選択され、より好ましくは、ウレタンジ(メタ)アクリレート、さらにより好ましくは、直鎖状または分岐状のアルキレン官能化ウレタンジ(メタ)アクリレートおよびウレタンジ(メタ)アクリレート官能化ポリエーテルから選択されるウレタンジ(メタ)アクリレートである、第4項に記載のモノマー混合物。
【0108】
第6項. 前記ベースモノマーM3が、好ましくは、7,7,9-トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジイルビス(2-メチルアクリレート)、7、9,9-トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジイルビス(2-メチルアクリレート)、7,7,9-トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジオールジアクリレート、7,9,9-トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジオールジアクリレート、およびそれらの混合物から選択される、第4項または第5項に記載のモノマー混合物。
【0109】
第7項. 前記ベースモノマーが、それぞれ、モノマー混合物の総質量に対して、以下の質量分率:
-2重量%~52.5重量%、好ましくは5重量%~52.5重量%、より好ましくは12.5重量%~52.5重量%のベースモノマーM1;
-23重量%~96重量%、好ましくは47.5重量%~95.5重量%、より好ましくは47.5重量%~87.5重量%のベースモノマーM2;
-0重量%~50重量%、好ましくは0.1重量%~30重量%、より好ましくは1重量%~15重量%のベースモノマーM3
で含まれ得る、第1項~第6項のいずれかに記載のモノマー混合物。
【0110】
第8項. 前記モノマー混合物が、モノマー混合物の総質量に対して、25重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらにより好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、さらにより好ましくは100重量%の質量分率のベースモノマーM1およびM2を含む、またはそれらより成る、第1項~第7項のいずれかに記載のモノマー混合物。
【0111】
第9項. 前記モノマー混合物が、モノマー混合物の総質量に対して、95重量%~100重量%、好ましくは99重量%~100重量%、より好ましくは100重量%の質量分率のベースモノマーM1、M2および任意にM3を含む、またはより成る、第1項~第8項のいずれかに記載のモノマー混合物。
【0112】
第10項. 前記モノマー混合物中に、ビスフェノールA構造を有するモノマーが含まれず、好ましくは、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン(ビスGMA)が含まれず、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(ビスEMA)が含まれない、第1項~第9項のいずれかに記載のモノマー混合物。
【0113】
第11項. 前記モノマー混合物中に、低分子量および低粘度のモノ-およびジ(メタ)アクリレートから選択されるモノマーが存在せず、0.05Pa s未満の23℃の温度における粘度および/または部分的水溶性を有するモノマーが存在しない、第1項~第10項のいずれかに記載のモノマー混合物。
【0114】
第12項. 前記モノマー混合物が、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA)、トリエチレングリコールジアクリレート(TEGDA)および/またはトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)を含まない、第1項~第11項のいずれかに記載のモノマー混合物。
【0115】
第13項. 23℃の温度におけるモノマー混合物が、0.2~10、好ましくは1~6、Pa sの粘度を有する、第1項~第12項のいずれかに記載のモノマー混合物。
【0116】
第14項. ラジカル重合性歯科材料、好ましくは歯科用コンポジット、コアビルドアップ、根管充填、充填、アンダーフィリング、固定、クラウン、ブリッジ、修復および/または補綴材料を製造するための、第1項~第13項のいずれかに記載のモノマー混合物の使用。
【0117】
第15項. a)第1項~第13項のいずれかに記載のモノマー混合物;
b)任意に、ラジカル重合のための少なくとも1種の開始剤または開始剤系;
c)任意に、フィラー;
d)任意に、慣用歯科用添加剤
を含む、重合性歯科材料。
【0118】
第16項. 前記成分が、前記歯科材料の総質量に対して、以下の質量分率:
a)1重量%~99重量%、好ましくは20重量%~95重量%の前記モノマー混合物;
b)0重量%~5重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%のラジカル重合のための前記少なくとも1つの開始剤または開始剤系;
c)0重量%~95重量%、好ましくは1重量%~95重量%、より好ましくは1重量%~85重量%、さらにより好ましくは20重量%~80重量%の前記フィラー;
d)0重量%~5重量%、好ましくは0.001重量%~5重量%の前記慣用歯科用添加剤
で前記歯科材料に含まれ得る、第15項に記載の歯科材料。
【0119】
第17項. 歯科用コンポジット、充填、アンダーフィリング、固定、コアビルドアップ、根管充填、クラウン、ブリッジ、修復および/または補綴材料として治療方法に使用するための第15項および第16項のいずれかに記載の歯科材料。
【0120】
第18項. 前記歯科材料が、熱的、化学的および/または光化学的に、好ましくはUVおよび/または可視光線によって硬化される、第15項~第17項のいずれかに記載の歯科材料。
【0121】
第19項. 前記歯科材料が光硬化性である、第15項~第18項のいずれかに記載の歯科材料。
【0122】
第20項. 開始剤としてカンファーキノン(CQ)を含み、共開始剤としてp-(ジメチルアミノ)安息香酸2-エチルヘキシル(EHA)を含む、第15項~第19項のいずれかに記載の歯科材料。
【0123】
第21項. 前記歯科材料が、ビスフェノール含有化合物を含有せず、好ましくはビスフェノールAベースの構造要素を有する化合物を含有しない、第15項~第20項のいずれかに記載の歯科材料。
【0124】
第22項. 第15項~第21項のいずれかに記載の重合性歯科材料から製造された硬化性歯科材料。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科材料を製造するためのモノマー混合物であって、
a.下記式1:
【化1】
(式中、PG= OOC-CH=CHおよび-OOC-C(CH)=CHから選択される重合性基;
S= 炭素鎖中に酸素または-OOC-をさらに含み得るC1-C10炭素原子を有する非分岐状および分岐状アルキレンから選択されるスペーサー基、好ましくはメチレン、
またはSが不存在である;
A= 脂肪族多環式基、好ましくは脂肪族三環式炭化水素基、ここに、1個以上の水素原子は、それぞれ互いに独立して、C1~C4アルキルラジカル、C1~C4アルコキシラジカル、フッ素原子、塩素原子またはトリフルオロメチル基で置換され得、より好ましくはトリシクロデカニレン、さらに好ましくはトリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカニレンである;
K= C1~C10炭化水素、好ましくはC3~C10炭化水素を有する脂肪族非環式または環式、飽和または不飽和単位、より好ましくは飽和シクロ脂肪族単位、さらにより好ましくは1,4-シクロヘキサニレンである;
n=1~9、好ましくは1~5、より好ましくは1~4である)
で表される少なくとも1種のベースモノマーM1;
b.下記式2:
【化2】
(式中、PG’= OOC-CH=CHおよび-OOC-C(CH)=CHから選択される重合性基;
S’= 炭素鎖中に酸素または-OOC-をさらに含み得るC1~C10炭素原子を有する非分岐状および分岐状アルキレンから選択されるスペーサー基、好ましくはメチレンである、
または、S’が存在しない;
A’= 脂肪族多環式基、脂肪族三環式炭化水素基、ここに、1個以上の水素原子が、それぞれ互いに独立して、C1~C4アルキルラジカル、C1~C4アルコキシラジカル、フッ素原子、塩素原子またはトリフルオロメチル基で置換され得、より好ましくはトリシクロデカニレン、さらにより好ましくはトリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカニレンである)
で表される少なくとも1つのベースモノマーM2;
ここで、ベースモノマーM2-対-M1の質量比Y=m(M2)/m(M1)は、0.9≦Y≦20、好ましくは0.9≦Y≦10、より好ましくは0.95≦Y≦3である
を含む、前記モノマー混合物。
【請求項2】
前記モノマー混合物中に、2種以上のベースモノマーM1、好ましくは少なくとも2種のベースモノマーM、より好ましくは2種を超えるベースモノマーM1、さらにより好ましくは3種を超えるベースモノマーM1が存在し、さらにより好ましくは4種を超えるベースモノマーM1が存在する、請求項1に記載のモノマー混合物。
【請求項3】
前記ベースモノマーM2が、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカンおよびそれらの混合物から選択され、前記ベースモノマーM2が好ましくはビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0/2,6]デカンである、請求項1に記載のモノマー混合物。
【請求項4】
前記モノマー混合物が、式1で表されるベースモノマーM1および式2で表されるベースモノマーM2とは異なるベースモノマーM3を含む、請求項1に記載のモノマー混合物。
【請求項5】
前記ベースモノマーM3が、ウレタン系モノマーから選択され、前記ベースモノマーM3が、好ましくは、7,7,9-トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジイルビス(2-メチルアクリレート)、7、9,9-トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジイルビス(2-メチルアクリレート)、7,7,9-トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジオールジアクリレート、7,9,9-トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジオールジアクリレート、およびそれらの混合物から選択される、請求項4に記載のモノマー混合物。
【請求項6】
前記ベースモノマーが、それぞれ、モノマー混合物の総質量に対して、以下の質量分率:
-2重量%~52.5重量%、好ましくは5重量%~52.5重量%、より好ましくは12.5重量%~52.5重量%のベースモノマーM1;
-23重量%~96重量%、好ましくは47.5重量%~95.5重量%、より好ましくは47.5重量%~87.5重量%のベースモノマーM2;
-0重量%~50重量%、好ましくは0.1重量%~30重量%、より好ましくは1重量%~15重量%のベースモノマーM3
で含まれ得る、請求項1に記載のモノマー混合物。
【請求項7】
前記モノマー混合物が、モノマー混合物の総質量に対して、95重量%~100重量%、好ましくは99重量%~100重量%、より好ましくは100重量%の質量分率のベースモノマーM1、M2および任意にM3を含む、またはより成る、請求項1に記載のモノマー混合物。
【請求項8】
前記モノマー混合物中に、ビスフェノールA構造を有するモノマーが含まれず、好ましくは、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン(ビスGMA)が含まれず、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(ビスEMA)が含まれない、請求項1に記載のモノマー混合物。
【請求項9】
前記モノマー混合物中に、低分子量および低粘度のモノ-およびジ(メタ)アクリレートから選択されるモノマーが存在せず、0.05Pa s未満の23℃の温度における粘度および/または部分的水溶性を有するモノマーが存在せず、および/またはヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA)、トリエチレングリコールジアクリレート(TEGDA)およびトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)から選択されるモノマーが存在しない、請求項1に記載のモノマー混合物。
【請求項10】
23℃の温度におけるモノマー混合物が、0.2~10、好ましくは1~6Pa sの粘度を有する、請求項1に記載のモノマー混合物。
【請求項11】
ラジカル重合性歯科材料、好ましくは歯科用コンポジット、コアビルドアップ、根管充填、充填、アンダーフィリング、固定、クラウン、ブリッジ、修復および/または補綴材料を製造するための、請求項1~10のいずれかに記載のモノマー混合物の使用。
【請求項12】
a)請求項1~10のいずれかに記載のモノマー混合物;
b)任意に、ラジカル重合のための少なくとも1種の開始剤または開始剤系;
c)任意に、フィラー;
d)任意に、慣用歯科用添加剤
を含む、重合性歯科材料。
【請求項13】
前記成分が、前記歯科材料の総質量に対して、以下の質量分率:
a)1重量%~99重量%、好ましくは20重量%~95重量%の前記モノマー混合物;
b)0重量%~5重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%のラジカル重合のための前記少なくとも1つの開始剤または開始剤系;
c)0重量%~95重量%、好ましくは1重量%~95重量%、より好ましくは1重量%~85重量%、さらにより好ましくは20重量%~80重量%の前記フィラー;
d)0重量%~5重量%、好ましくは0.001重量%~5重量%の前記慣用歯科用添加剤
で前記歯科材料に含まれ得る、請求項12に記載の歯科材料。
【請求項14】
歯科用コンポジット、充填、アンダーフィリング、固定、コアビルドアップ、根管充填、クラウン、ブリッジ、修復および/または補綴材料として治療方法に使用するための請求項12に記載の歯科材料。
【請求項15】
請求項12に記載の重合性歯科材料から製造された硬化歯科材料。
【国際調査報告】