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特表2024-520878グラフェンと水素を製造するための機器および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】グラフェンと水素を製造するための機器および方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/184 20170101AFI20240517BHJP
   C01B 3/26 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C01B32/184
C01B3/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518945
(86)(22)【出願日】2022-06-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 CA2022050904
(87)【国際公開番号】W WO2022251979
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】63/196,690
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523456559
【氏名又は名称】イノーバ ハイドロゲン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】アリソン,ノーマン レロイ
(72)【発明者】
【氏名】アルフォード,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ボボセル,ドナルド カミル
(72)【発明者】
【氏名】デロシュ,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ジャイルズ,カメリア リー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,サード,ハウエル ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
4G140
4G146
【Fターム(参考)】
4G140DA03
4G140DC02
4G146AA01
4G146AB07
4G146BA01
4G146BA12
4G146BC02
4G146BC08
4G146BC32A
4G146BC34A
4G146BC44
4G146DA30
4G146DA48
(57)【要約】
炭化水素供給原料から炭化水素の熱分解によりグラフェンを生成し、熱分解の副産物であり、炭化水素供給原料中に存在し得る水素ガスを回収する、方法および機器について記載する。当該機器は、第1の端部および第2の端部を有する細長い反応器を有し、前記第1の端部は、炭化水素供給原料を受容するように構成され、前記第1の端部と前記第2の端部の間には、流体を搬送するためのチャネルが定められ、前記流体は、炭化水素供給原料を含む反応混合物である。当該機器は、第2の端部に取り付けられた端部区画であって、該端部区画は、水素ガスに対して選択的に透過性であり、前記反応混合物の他の成分に対して不透過性である、端部区画と、前記第2の端部に取り付けられ、前記端部区画から水素ガスを受容する水素回収区画であって、水素ガスに対して不透過な水素回収区画と,を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンと水素を生成する機器であって、
当該機器は、細長い反応器を有し、該反応器は、
第1の端部および第2の端部であって、前記第1の端部は、炭化水素供給原料を受容するように構成される、第1の端部および第2の端部と、
前記第1の端部と前記第2の端部の間で流体を運ぶために定められたチャネルであって、前記流体は、前記炭化水素供給原料を含む反応混合物である、チャネルと、
前記第2の端部に取り付けられた端部区画であって、水素ガスに対して選択的に透過性であり、前記反応混合物の他の成分に対して不透過性である、端部区画と、
前記第2の端部に取り付けられ、前記端部区画からの水素ガスを受容する水素回収区画であって、水素ガスに対して不透過性の水素回収区画と、
を有する、機器。
【請求項2】
前記反応器は、さらに、前記第1および第2の端部の間の入口を有し、
該入口は、前記反応混合物に触媒金属粒子を添加するためのものである、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記反応器は、鉄で構成される、請求項1または2に記載の機器。
【請求項4】
前記端部区画は、ステンレス鋼で構成される、請求項1または2に記載の機器。
【請求項5】
前記反応器は、さらに、前記チャネル内で前記反応混合物を加熱するための少なくとも1つの加熱素子を有する、請求項1または2に記載の機器。
【請求項6】
さらに、前記少なくとも1つの加熱素子の近傍の前記反応器の周囲に設けられたスリーブを有し、
前記スリーブは、水素不透過性材料で構成され、前記スリーブと前記反応器との間の密閉された空間を規定する、請求項5に記載の機器。
【請求項7】
前記水素不透過性材料は、セラミック材料である、請求項6に記載の機器。
【請求項8】
前記チャネルは、金属ビーズの形態の触媒パッキングを有する、請求項1または2に記載の機器。
【請求項9】
前記金属ビーズは、鉄化合物である、請求項8に記載の機器。
【請求項10】
グラフェンと水素を製造する方法であって、
当該方法は、
反応器の第1の領域に炭化水素フィードを導入するステップと、
前記第1の領域を約300℃以上に加熱して、炭化水素を分解し、新生な炭素を含む反応混合物を生成するステップと、
前記反応器の第2の領域に前記反応混合物を導入するステップと、
前記第2の領域を約1000℃以上に加熱して、前記新生な炭素を触媒金属粒子と反応させてグラフェンファイバを生成するステップと、
前記反応混合物から水素ガスを抽出するステップであって、前記混合物は、前記第2の領域から排出され、水素ガスのみが透過できる材料で被覆された前記反応器の終端部に接触する、ステップと、
を有する、方法。
【請求項11】
前記反応混合物は、同搬送された触媒金属粒子を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記炭化水素フィードが前記反応器に導入される前に、前記第2の領域の内表面は、金属粒子で核形成される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
グラフェンと水素を製造する方法であって、
当該方法は、
反応器の第1の領域に炭化水素フィードを導入するステップと、
前記第1の領域を約300℃以上に加熱して、炭化水素を分解し、新生な炭素を含む反応混合物を生成するステップと、
前記反応器の第2の領域に前記反応混合物を導入するステップと、
前記第2の領域を約1000℃以上に加熱して、前記新生な炭素を触媒金属粒子と反応させてグラフェンファイバを生成するステップと、
前記反応混合物から水素ガスを抽出するステップであって、前記混合物は、前記第2の領域から排出され、水素ガスのみが透過できる材料で被覆された前記反応器の終端部に接触する、ステップと、
を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、全般に、炭化水素の熱分解によるグラフェンの生成に関する。より詳細には、本開示は、触媒の存在下、メタンのような炭化水素の熱分解によりグラフェンを生成し、水素副生成物を分離、回収するための機器および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、二次元格子状に配置された原子の単一層で構成された、炭素の同素体である。その開発以来、グラフェンは、これに限られるものではないが、水質浄化、医療、建設、電子チップ、量子コンピュータなど、多くの分野で有用であることが認められている。通常、これらの使用の各々では、例えば、グラフェン材料を形成するグラフェン層の長さおよび数に応じて変化し得る、特定の特性を有するグラフェン材料が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
グラフェンを形成する一部の既存の方法には、メタンまたは天然ガスのような炭化水素を触媒的に熱分解して、固体炭素および水素にするものが含まれる。そのようなプロセスでは、生成された水素は、しばしば、未使用のまたは望ましくない副生成物である。
【0004】
グラフェンと水素の両方に対する工業的需要は、益々増大している。従って、グラフェンおよび水素を生成するための改良された方法ならびに装置を開発することに対しては、今もなおニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願では、炭化水素供給原料からの炭化水素の熱分解によりグラフェンを生成し、熱分解の副生成物であり、炭化水素供給原料中にも存在し得る水素ガスを回収する、方法および機器が提供される。
【0006】
ある態様では、グラフェンと水素を生成する機器であって、
当該機器は、細長い反応器を有し、該反応器は、
第1の端部および第2の端部であって、前記第1の端部は、炭化水素供給原料を受容するように構成される、第1の端部および第2の端部と、
前記第1の端部と前記第2の端部の間で流体を運ぶために定められたチャネルであって、前記流体は、前記炭化水素供給原料を含む反応混合物である、チャネルと、
前記第2の端部に取り付けられた端部区画であって、水素ガスに対して選択的に透過性であり、前記反応混合物の他の成分に対して不透過性である、端部区画と、
前記第2の端部に取り付けられ、前記端部区画からの水素ガスを受容する水素回収区画であって、水素ガスに対して不透過性の水素回収区画と、
を有する、機器が提供される。
【0007】
ある実施形態では、前記反応器は、さらに、前記第1および第2の端部の間の入口を有し、該入口は、前記反応混合物に触媒金属粒子を添加するためのものである。
【0008】
別の実施形態では、前記反応器は、鉄で構成される。
【0009】
さらに別の実施形態では、前記端部区画は、ステンレス鋼で構成される。
【0010】
さらに別の実施形態では、前記反応器は、さらに、前記チャネル内で前記反応混合物を加熱するための少なくとも1つの加熱素子を有する。
【0011】
さらに別の実施形態では、前記反応器は、さらに、前記少なくとも1つの加熱素子の近傍の前記反応器の周囲に設けられたスリーブを有し、前記スリーブは、水素不透過性材料で構成され、前記スリーブと前記反応器との間の密閉された空間を規定する。
【0012】
さらに別の実施形態では、前記水素不透過性材料は、セラミック材料である。
【0013】
別の態様では、グラフェンと水素を製造する方法であって、
当該方法は、
反応器の第1の領域に炭化水素フィードを導入するステップと、
前記第1の領域を約300℃以上に加熱して、炭化水素を分解し、新生な炭素を含む反応混合物を生成するステップと、
前記反応器の第2の領域に前記反応混合物を導入するステップと、
前記第2の領域を約1000℃以上に加熱して、前記新生な炭素を触媒金属粒子と反応させてグラフェンファイバを生成するステップと、
前記反応混合物から水素ガスを抽出するステップであって、前記混合物は、前記第2の領域から排出され、水素ガスのみが透過できる材料で被覆された前記反応器の終端部に接触する、ステップと、
を有する、方法が提供される。
【0014】
ある実施形態では、前記反応混合物は、同搬送された触媒金属粒子を含む。
【0015】
別の実施形態では、前記炭化水素フィードが前記反応器に導入される前に、前記第2の領域の内表面は、金属粒子で核形成される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】グラフェンと水素を製造する機器の一実施形態の断面図である。
図2】グラフェンと水素の製造の機器の別の一実施形態の断面図である。機器は、さらに、水素含有量を制御するように構成される。
図3】グラフェンと水素を製造するための反応器および加熱システムを概略的に示した図である。
図4】グラフェンと水素を生成するためのシステムを示した図である。
図5】グラフェンと水素を生成するためのシステムを示した図である。
図6】グラフェンと水素を製造するための充填床反応器を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して実施形態について説明する。
【0018】
本明細書を通して、用語「前方」、「後方」、「後」、「垂直な」、「垂直に」、「水平な」、「水平に」、「上部」、「底部」、「上方に」、「下方に」、「内部に」、「外部に」、「上」、「下」、「右」および「左」の1つ以上が使用される。これらの用語は、限定することを意図するものではないことが理解される。これらの用語は、便宜上、および、例えば、添付図面に例示されているように、本願に記載の特徴を説明する際の一助として使用される。
【0019】
以下、炭化水素供給原料から炭化水素の熱分解によりグラフェンを生成し、熱分解の副産物であり、炭化水素供給原料中に存在し得る水素ガスを回収するための方法および機器について説明する。以下に示すように、グラファイト/カーボンブラックの代わりにグラフェンを製造することは、いくつかの方法で触媒を導入することにより、促進される。
【0020】
図1には、グラフェンと水素の製造のための機器、または反応器10を示す。反応器10は、管12を有し、該管12は、管12の第1の端部または入口1と、第2の端部または出口11との間の連続したガス通路3を画定する。メタンまたは天然ガスのような炭化水素を含む供給原料34は、入口を通って流れることができる。反応器10の周囲には、螺旋電気抵抗加熱素子18を含む炉16が提供され、管12内の第1の反応ゾーン13が加熱される。同様に、反応器10の周囲に、螺旋電気抵抗加熱素子22を含む第2の炉20が提供され、管12内の第2の反応ゾーン15が加熱されてもよい。
【0021】
別の実施形態では、複数の管12が存在し、および/または管12は、湾曲したまたは直線状の連続したガス通路3を画定してもよい。2つの加熱素子(18,22)および加熱炉(16,20)が示されているが、反応器10は、任意の数の加熱素子/加熱炉(まとめて「加熱素子」)を含んでもよい。加熱素子は、例えば、標準的な、誘導的なまたは火炎の加熱素子のような、任意の好適な種類であってもよい。
【0022】
加熱素子18および22は、好適な温度に加熱され、管12内に所望の温度プロファイルが形成され、グラフェンファイバが成長してもよい。例えば、加熱素子18および22は、管12が入口1近傍のゾーン13において低い温度(例えば、300℃)を有し、出口11近傍のゾーン15において高い温度(例えば、1000℃)を有するように作動されてもよい。炭化水素供給原料34は、水素のような他のガスで希釈されてもよい。管12内への供給原料34の流量は、必要に応じて調節されてもよい。管12への供給材料34の流量がより高い場合、より長いおよび/またはより薄いグラフェンファイバ6が生成されてもよい。各種元素、主に金属が、例えば有機塩または無機塩の形態で、ゾーン13でのガス流3と組み合わされてもよい。
【0023】
ある実施形態では、ゾーン13にまたはその上流に、鉄ペンタカルボニル蒸気が供給されてもよい。ガスが加熱ゾーン13を通過すると、金属化合物-この例では鉄化合物-は、分解して、鉄粒子36を生成できる。そのサイズは、図1および2では、説明を容易にするため誇張されている。前述のように、金属触媒化合物は、鉄であってもよい、これは、以降「触媒」と称され得る。
【0024】
鉄粒子36は、ガス流と共搬送され、出口11に向かって管12を通って搬送される。加熱ゾーン15内では、天然ガスからメタンが分解されてもよい。生じた新生炭素は、鉄粒子36と反応して、微細なグラフェンフィラメント6を生成してもよい。追加の新生炭素の堆積により、グラフェンフィラメント6上に追加の個々のフィラメントが積層されることによって、グラフェンフィラメント6が厚くなってもよい。いったん反応が完了すると、グラフェンフィラメント6は、任意の好適な方法で収集されてもよい。例えば、管12に挿入するように構成されたリングまたは一組のリングのような、適切なツールが使用され、管12の内壁からグラフェンを擦り落としたり、はたき落としたりしてもよい。
てもよい。
【0025】
反応器10は、端部区画7を有してもよく、該端部区画7は、水素ガスを透過する材料であって、管12内の他のガス、例えばメタンガスまたは不活性ガスに対して実質的にまたは完全に不透過な材料で構成される。端部区画7は、(例えば、ねじ式に、または溶接によって)管12の出口11に取り付けられてもよい。炭化水素供給原料の熱分解の間、水素は、端部区画7を通り(矢印19を参照)、水素回収区画2に入り得る。水素回収区画2は、水素に対して不透過性であり、または水素の通過に対して抵抗を有する、セラミック材料または鉄のような、材料で構成されてもよい。次に、水素5は、出口4を通って回収区画2から排出されてもよく、さらに処理されまたは貯蔵されてもよい(図示せず)。
【0026】
高熱および/または高圧のような特定の条件下では、本実施形態において鉄で構成された管12は、一部の水素を通過させてもよい。従って、必要な場合、機器10は、管12の周囲に設けられた(水素に対して)不透過性のスリーブ8と、ヒータ20とを有し、管12を通過する可能性のある任意の水素を回収してもよい。スリーブ8は、例えば、セラミック材料または鉄のような水素不透過性材料で製造され、あるいはこれを含んでもよい。必要に応じて、任意の数のそのようなスリーブ8が取り付けられてもよい。
【0027】
図2を参照すると、機器10は、さらに、例えば304ステンレス鋼のような水素透過性材料で構成された、1つ以上の水素回収ライン35を有してもよい。ライン35を用いて、管12内から水素を除去することができ、反応器10内の水素含有量に対して、ある程度の制御が提供されてもよい。これは、熱分解反応に有益であり得る。また、そのようなライン35は、管12内の乱流を高めてもよい。乱流が増加すると、管12の壁面でのグラフェン分布の均一性が高まり得る。単独で、または管路35と組み合わせて、管12に対する他の物体または修正を使用して、乱流を高めてもよい。ある実施形態では、プラズマおよび/またはマイクロ波加熱が単独で、または前述のヒータと組み合わせて使用されてもよい。ある実施形態では、管12は、水素ガスに対して不透過性のセラミック材料または他の材料で構成されてもよい。ある実施形態では、布またはメッシュフィルタのような、グラフェンを収集するための装置が管12内に設置されてもよい。いくつかの実施形態では、管12は、管状の鉄反応器であり、グラフェンファイバ6は、管12の内壁上、および主に領域15内で成長してもよい。グラフェンファイバ6の成長の主な位置は、管12の寸法およびその中の温度プロファイルのような要因に依存して、変化し得る。
【0028】
各種金属粒子が好適な前駆体化合物から得られ、これがグラフェンフィラメント形成のための核として使用されてもよい。例えば、鉄粒子は、好適な表面上で硝酸第二鉄溶液を蒸発させ、得られた酸化鉄残留物を分解することによって形成されてもよい。核形成の有効性は、少なくとも部分的に、金属粒子サイズに依存し、従って、金属粒子サイズ(元素金属の合体の度合い)は、例えば、所望のグラフェンフィラメントの成長速度および特性に応じて、調整されてもよい。当業者には理解されるように、解離速度および粒子形成速度は、温度に依存し、使用する金属前駆体に依存して変化し得る。一般に、1つ以上の変数、例えば、管12にわたる温度プロファイル、管12の寸法および構成、金属前駆体の導入位置、金属核の種類、ならびにガス流の流量などが調整され、所望の種類のグラフェンが得られてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、ファイバは、金属核が堆積された管12の内表面に成長してもよい。熱分解の開始に先立ち、内壁は、鉄カルボニル化合物のような金属前駆体化合物のin-situ分解により、核形成されてもよい。ある実施形態では、金属前駆体は、鉄ペンタカルボニル、Fe(CO)5であってもよく、これは、周囲温度の不活性ガス(例えば、アルゴン)のストリームに注入され、これにより、鉄カルボニルが気化してもよい。不活性ガスのストリームは、蒸気を反応器に搬送し、ストリームの流速は、管12内での鉄粒子の所望の分散が達成されるように制御されてもよい。
【0030】
後述するように、いくつかの態様では、触媒は、ストリーム(102)と反応してもよく、このストリームは、主としてメタンガスで構成され、少量の他の炭化水素ガス、例えば、エタン、プロパン、または油田生成ガス中にしばしば微量認められる他のガスを含んでもよい。油田ガスに添加されまたは含まれるガスは、H2S、メルカプタン、および/または他の硫黄含有化合物であってもよい。そのような硫黄ガスは、各種グラファイトおよびグラフェンの形成に重要である。
【0031】
ある実施形態では、例えば、反応器システム100を示す図3に示すように、触媒は、ガスサスペンションとして提供され、これは、ヒータ(110)で500℃に予熱されたメタンガスを主に含む供給ストリーム102(「メタンガス」または「メタンガスストリーム」と称され得る)と混合されてもよい。供給ストリーム102は、ヒータ110で予熱する前は、周囲温度であってもよい。複数の予備ヒータが含まれてもよい。メタンガスストリーム(すなわち、供給ストリーム102)の一部は、まず、触媒溶液118を通して分流され、液体を通って泡立てられ、懸濁された触媒を担持した状態のままにされてもよい。拡散器116を使用して、別の容器108において液体触媒溶液118を通して、液体をバブリングしてもよい。次に、組み合わされたストリーム106は、開放反応器114に入り、ここで、使用される触媒に応じて、950から1100℃に加熱されてもよい。予備ヒータ110(例えば、抵抗、誘導、プラズマ、マイクロ波、または火炎駆動のヒータであってもよい)は、開放反応器114に入る予備加熱された反応器供給フィード112を生成してもよい。グラフェンのナノチューブは、水素、メタン、および反応副生成物とともに、そのような反応器114内で生成され、より一般的には、図3に示した反応器システム100の出力120として、生成されてもよい。前述のように、これは、オプションとして、予備ヒータ110に加えて、液体触媒リサイクルを含んでもよい。
【0032】
あるいは、触媒は、反応器114全体に、単独で、または液体触媒溶液118の特徴物と組み合わせて、分配されてもよい。これは、金属回折格子を取り付けることにより、または各種サイズおよび形状の蒸留カラムにおけるラッチリングを用いて実施される方法と同様の方法で、実施されてもよい。このアプローチが使用される場合、反応器は、迅速に開くことができ、触媒マトリックスの大部分または全てが容易におよび/または迅速に排出され、新しい触媒と置換されてもよい。この一例の実施形態では、グラファイトまたはグラフェンのより大きなストライプが生成されてもよい。作動温度は、950℃から1050℃の間であってもよい。
【0033】
また、触媒は、反応器114の壁を触媒溶液で湿らせることにより、導入されてもよい。反応器114は、950から1150℃で作動され、ガスフィードは、反応器に入る前に500℃に予備加熱される。このアプローチでは、全長8cmから全長3乃至6ミクロンのサイズの混合物のグラファイトおよびグラフェンが製造されてもよい。
【0034】
図4に示すように、反応器システム100は、グラフェンと水素を製造するためのシステム300の一部であってもよい。このシステム300は、反応器システム100の出力120を受容する濾過システム306を有してもよい。濾過システム306は、出口に向かって徐々に微細化される、1つ以上のフィルタ(例えば、粗フィルタ304および微細フィルタ308)を有してもよい。濾過システム306は、必要に応じて閉止され、周期的に開放され、例えば、揺さぶりまたは振動によって、そこからグラフェンが除去されてもよく、また、ガスの出口ストリームが生成されてもよい。このガスは、微量のグラフェン(312)を含み、これは、必要な場合、静電フィルタ314を用いてさらに濾過され、例えば、周期的な揺さぶりまたは振動により、空にされてもよい。次に、実質的にまたは完全にグラフェンのないガス316は、熱交換器320に搬送され、冷却され、水素およびメタンを含む、冷却された出口ガス322が生成されてもよい。次に、出口ガスは、圧力スイング吸着(PSA)システム324のような、濾過システムに搬送され、水素326が生成され、これが貯蔵庫330に搬送されてもよい。またPSAシステム324は、再循環された炭化水素フィード328を生成し、これは、反応器システム100に送り返されてもよい。必要な場合、導入フィード102は、熱交換器320により加熱され、予備加熱ストリーム112が形成され、これが再循環ストリーム328と組み合わされ、組み合わされ再循環された予備加熱ストリーム113が生成されてもよい。必要な場合、再循環され予備加熱されたストリーム113は、反応器システム100内でさらに予備加熱されてもよい。
【0035】
示されているように、多数のフィルタを使用して、粗いフィルタを出発点として、すべての炭素固体材料が除去されるまで、より微細なフィルタ、さらに別の微細なフィルタ、などのようにグラフェンと炭化水素/水素ガスの分離が実施されてもよい。各粗いフィルタは、微細炭素材料の一部を留めてもよく、最終フィルタは、1ミクロン以下であってもよく、各粗いフィルタは、別のフィルタまたは複数のフィルタと連携して作動し、一つのフィルタが濾過している間、他方のフィルタは洗浄されてもよい。最終フィルタは、炭素を定着させるため、その前にデッド領域を有してもよい。必要な場合、電気集じん器セパレータが含まれてもよい。
【0036】
一旦炭素が除去されると、炭化水素ストリーム(主にメタンで構成される)および水素ガスは、圧力スイング吸着システム、または膜分離システムのいずれかに進行し、水素および炭化水素ガスが分離される。膜分離システムは、最大99.99%またはこれに近い純度の水素を提供し、他の全てガスは、リサイクルされ戻されてもよい。ガス分離システムは、高温では難しくなる傾向にあるため、分離前の冷却相と、反応器の供給ガスに戻る前の再循環された炭化水素ガス用の加熱段階とが提供されてもよい。配管は、加熱および冷却に使用され、または流入ガスを使用して反応器に排出されるガスを加熱するために使用されてもよい。任意の残りの熱は、元のガスフィードを加熱するために使用されてもよい。
【0037】
図5には、グラフェンと水素を製造するためのシステムの別の例を示す。本システムは、炭化水素フィード402(前述)を有し、これは、金属触媒を含む流動床反応器400に導入され、フィード402は、これを通ってグラフェン、炭化水素、水素、および他の副生成物の混合物(ストリーム404)を生成してもよい。反応器は、代替的にまたは触媒流体と組み合わされ、反応器の壁に堆積された触媒を含んでもよく、および/または反応器400に入る際に、フィードと混合されたエーロゾルの形態の触媒を有してもよい。次に、ストリーム404は、予備ヒータ406に入り、これは、前述の手段のいずれかによって加熱され、必要な場合、生成された固体の通過を容易にするための音響素子を有してもよい。予備ヒータ406によって生成された予備加熱ストリーム408は、別のヒータ410に入り、該別のヒータ410は、音響素子(図示せず)を有し、前述のように、生成された固体の通過が容易となってもよい。ヒータ410は、炭化水素および水素の再循環ストリームを生成してもよい。
【0038】
説明を簡潔かつ明瞭にするため、適切と考えられる場合、図面を通して、参照番号が繰り返し使用され、対応する素子または類似の素子が表される。また、本願に記載された実施例の完全な理解を提供するため、多くの特定の詳細が記載されている。しかしながら、本願に記載の実施例は、これらの特定の詳細を使用せずに実施されてもよいことは、当業者には明らかである。他の例では、記載の実施例が不明瞭にならないように、既知の方法、手順および構成部材は、詳細に説明されていない。また、記載は、本願に記載の実施例の範囲を限定することを意図するものではない。
【0039】
本願で使用された実施例および対応する図面は、単なる例示を目的としている。本願で表現された原理から逸脱することなく、異なる構成および用語が使用されてもよい。例えば、部材およびモジュールは、これらの原理から逸脱することなく、異なる関係性で、追加され、削除され、修正され、または配置されてもよい。
【0040】
本願に記載されたフローチャートおよび図面におけるステップまたは動作は、単なる一例である。前述の原理から逸脱することなく、これらの工程または動作に対して多くの変形例が存在し得る。例えば、ステップは、異なる順番で実施されてもよく、またはステップは、追加、削除、または修正されてもよい。
【0041】
前述の原理は、ある特定の実施例を参照して説明されているが、添付の特許請求の範囲に記載されているように、その各種修正は、当業者には明らかである。
図1
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図5
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【国際調査報告】