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▶ エステーベー イーエンエン、アクチエボラグの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】医療用筋電図システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/296 20210101AFI20240517BHJP
   A61B 5/313 20210101ALI20240517BHJP
   A61B 5/257 20210101ALI20240517BHJP
【FI】
A61B5/296
A61B5/313
A61B5/257
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519133
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 EP2022064974
(87)【国際公開番号】W WO2022253926
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】2107978.5
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523457682
【氏名又は名称】エステーベー イーエンエン、アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨンソン、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンストレム、ヨハンナ ヘンリクソン
(72)【発明者】
【氏名】スヴェンソン、シグネ
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA04
4C127DD00
4C127LL02
4C127LL15
(57)【要約】
表面筋電図システムは、筋肉の電気的活動を検出するための複数のセンサと、該複数のセンサに接続可能な出力ユニットとを有し、該出力ユニットは、前記複数のセンサの各々の出力を表す出力を提供するように動作することができる。前記複数のセンサの各センサは一つの電極対を含み、複数の電極間の電位差を表す出力を提供するように動作することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用の表面筋電図システムであって、
筋肉の電気的活動を検出するための複数のセンサであって、前記複数のセンサの各々のセンサは、一つの電極対を含み、該一つの電極対の間の電位差を示す出力を提供するように動作することができる、複数のセンサ、と
前記複数のセンサに接続可能な出力ユニットであって、前記複数のセンサのそれぞれの出力を表す出力を提供するように動作可能な出力ユニットと、を含むこと
を特徴とする表面筋電図システム。
【請求項2】
前記複数のセンサの各々の前記電極対の電極の間が、3mmから50mmの範囲内の距離だけ離間しており、オプションで、前記距離が、(i)3mmから40mm、3mmから20mm、または3mmから5mm、または(ii)15mmから40mm、15mmから30mm、または15mmから25mmのいずれかの範囲内であり、かつ/または
前記電極対の少なくとも一つは、直径が1mmから5mmの間の円形電極を有すること
を特徴とする、請求項1に記載の表面筋電図システム。
【請求項3】
前記複数のセンサは、前記複数のセンサのうちの少なくとも一つのセンサが被験者の外腹斜筋の電気的活動を測定するために配置され、同時に、前記複数のセンサのうちの少なくとも一つの他のセンサが前記被験者の内腹斜筋の電気的活動を測定するために配置されること
を特徴とする、請求項1または2に記載の表面筋電図システム。
【請求項4】
前記複数のセンサが少なくとも4つのセンサを含むこと
を特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の表面筋電図システム。
【請求項5】
前記センサの前記電極対を取り外しすることができること
を特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の表面筋電図システム。
【請求項6】
前記複数のセンサの前記電極対が電極パッドを含み、該電極パッドが前記複数のセンサに取り外し可能に取り付けられ、かつ/または
前記センサの各々が、該センサを被験者の皮膚に固定するための手段であって、粘着パッドまたは粘着層を有する手段を含み、かつ/または
前記センサの各々は、前記電極対の皮膚接触インピーダンスを低減するための導電性物質を有すること
を特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の表面筋電図システム。
【請求項7】
前記表面筋電図システムの使用中に被験者に加えられた刺激を検出するように構成されていること
を特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の表面筋電図システム。
【請求項8】
前記表面筋電図システムは、前記刺激の振幅およびタイミングの少なくとも一方を示すように構成されていること
を特徴とする、請求項7に記載の表面筋電図システム。
【請求項9】
前記表面筋電図システムが検査対象の被験者に加える刺激には、前記表面筋電図システムの使用中に前記被験者に加えられる力が含まれること
を特徴とする、請求項7または8に記載の表面筋電図システム。
【請求項10】
前記複数のセンサのうちの一つまたは複数のセンサに接続可能な一つまたは複数の力センサを有し、前記一つまたは複数の力センサは、前記複数のセンサのうちの前記一つまたは複数のセンサに加えられる力を測定するように動作すること
を特徴とする、請求項9に記載の表面筋電図システム。
【請求項11】
前記複数のセンサのうちの各センサは、力感応ボタンを有する力センサをそれぞれ備えること
を特徴とする、請求項10に記載の表面筋電図システム。
【請求項12】
前記複数のセンサの各センサが、各センサの有する前記電極対の少なくとも一部分を収容するように構成された一つまたは複数の凹部を有すること
を特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の表面筋電図システム。
【請求項13】
前記複数のセンサの各センサが、それぞれの前記電極対によって検出された信号のアナログ-デジタル変換を実行し、そして、デジタル信号を前記出力ユニットに送信するように構成されていること
を特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載の表面筋電図システム。
【請求項14】
前記各センサは、前記アナログ-デジタル変換を行う前に、それぞれの前記電極対によって検出された前記信号のアナログ処理を行うように構成され、前記アナログ処理は、第1の増幅、ローパスフィルタリング、ハイパスフィルタリング、第2の増幅、およびコモンモード電圧の反転のうちの少なくとも一つを含むこと
を特徴とする、請求項13に記載の表面筋電図システム。
【請求項15】
前記各センサがそれぞれのローカルクロックを維持し、前記各センサの前記ローカルクロックが同期していること
を特徴とする、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の表面筋電図システム。
【請求項16】
前記複数のセンサのうちの一つまたは複数の前記センサの前記出力を増幅するための一つまたは複数の増幅器を有し、前記センサの各々の前記出力を少なくとも合計利得1000まで増幅するように構成されていること
を特徴とする、請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の表面筋電図システム。
【請求項17】
前記一つまたは複数の増幅器は、前記複数のセンサのうちの一つまたは複数の前記センサの前記出力を増幅するように動作可能な第1の増幅器と、前記第1の増幅器の出力を増幅するように動作可能な第2の増幅器とを備えること
を特徴とする、請求項16に記載の表面筋電図システム。
【請求項18】
前記表面筋電図システムの逆コモンモード電圧を含む信号を出力するように動作可能な電気回路と、
前記電気回路の出力を前記複数のセンサにフィードバックするように動作可能な基準電極と、をさらに含むこと
を特徴とする、請求項16または17に記載の表面筋電図システム。
【請求項19】
前記出力ユニットが、前記複数のセンサのそれぞれの前記出力を表す出力を表示するためのディスプレイを備え、好ましくは、前記出力ユニットが、前記ディスプレイに別個に同時に表示される前記センサの各々の前記出力を提供すること
を特徴とする、請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の表面筋電図システム。
【請求項20】
一つまたは複数のハイパスフィルタを備え、該一つまたは複数のハイパスフィルタは、10Hzと20Hzとの間のカットオフ周波数以下の前記複数のセンサの少なくとも一つの前記出力を減衰させるように動作することができ、かつ/または、
一つまたは複数のローパスフィルタを備え、該一つまたは複数のローパスフィルタは、400Hzと500Hzとの間のカットオフ周波数を超える、前記複数のセンサのうちの少なくとも一つの前記センサの前記出力を減衰させるように動作することができ、かつ/または、
電力線干渉を除去するための一つまたは複数のノッチフィルタを有し、
前記複数のセンサの前記出力にウェーブレットフィルタを適用するように動作することができること
を特徴とする、請求項1から19のいずれか1項に記載の表面筋電図システム。
【請求項21】
前記表面筋電図システムは、10μV未満、5μV未満、3μV未満、または1μV未満の前記電極対の各々の間の電位差を検出するように動作することができること
を特徴とする、請求項1から19のいずれか1項に記載の表面筋電図システム。
【請求項22】
被験者の皮膚の表面の一つの領域にわたって筋肉の電気的活動を測定するために使用する表面筋電図システムであって、請求項1から19のいずれか1項に記載の表面筋電図システムを含むこと
を特徴とする表面筋電図システム。
【請求項23】
筋肉の電気的活動を検出するための表面筋電図システムで使用するための複数のセンサであって、前記複数のセンサの中の各センサは、それぞれの電極対を収容するように構成され、前記センサに取り付けられたときに、それぞれの前記電極対から信号を受信するように構成され、
前記複数のセンサの各センサは、それぞれの力センサを有し、それぞれの前記電極対から信号を受信すると同時に、それぞれの前記力センサから力信号を受信するように構成され、
前記複数のセンサの各センサは、それぞれの前記電極対および前記力センサから受信した信号を示す信号を出力するように構成されること
を特徴とするセンサ。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか1項に記載の表面筋電図システムを用いて被験者の皮膚の表面の領域にわたって筋肉の電気的活動を測定する方法であって、
複数の前記電極対が前記被験者の前記皮膚に接触するように、前記複数のセンサを前記被験者の前記皮膚に取り付けるステップと、
前記電極対の間の電位差を検出するステップと、
複数の前記電極対の各々によって検出された前記電位差を示す出力を提供すること
を特徴とする方法。
【請求項25】
複数の前記電極対によって検出された前記電位差の振幅を閾値振幅と比較することをさらに含むこと
を特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
被験者に力を加えることと、
前記表面筋電図システムが、加えられた前記力の振幅とタイミングのうちの少なくとも一つを示す出力を提供することを
さらに含むこと
を特徴とする、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
複数の前記電極対のうちの一つまたは複数によって検出された前記電位差を示す出力に基づいて、腹膜炎を示す一つまたは複数の状態を判定することをさらに含むこと
を特徴とする請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載した技術は、医療用筋電図システム、特に表面筋電図システムに関する。
【背景技術】
【0002】
筋電図(EMG、Electromyography)は、骨格筋肉の電気的活動を検出することによって筋肉活動を測定する診断技術である。この電気的活動を分析することで、医学的な異常を検出することができる。筋電図には、筋肉内筋電図と表面筋電図(sEMG: surface EMG)の2種類がある。筋肉内筋電図検査では、筋肉に電極を挿入し、筋肉の電気的活動を検出する。一方、表面筋電図では、筋肉の上にある皮膚の表面から筋肉活動を検出する。
【0003】
表面筋電図は、電気的活動の検出が表層筋に限定され、測定値が記録部位の皮下組織の深さに影響されるという点で限界がある。さらに、表面筋電図では隣接する筋肉の放電と確実に区別することができない。
【0004】
このような限界はあるものの、表面筋電図は筋肉内筋電図に比べて侵襲性が低いため、リハビリや医学研究に利用することは有益である。例えば、これまでの研究では、表面筋電図を用いた腹部活動の測定により、腹膜炎を発見できる可能性があることが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本願出願人は、筋電図、特に表面筋電図のシステムの設計と使用において改善の必要性があることを認識している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載された技術の第1の態様によれば、医療用の表面筋電図システムが提供され、該システムは、筋肉の電気的活動を検出するための複数のセンサと、該複数のセンサに接続された出力ユニットを含む。
各センサは一つの電極対を有し、該一つの電極対の間の電位差を示す出力を提供するように動作することができる。前記出力ユニットは、前記複数のセンサのそれぞれの出力値を示す出力を提供するように動作することができる。
【0007】
本明細書に記載の技術はまた、本明細書に記載の技術のシステムを用いて被験者の皮膚の表面の領域にわたって筋肉の電気的活動を測定する試験を実施することにも及ぶ。したがって、本明細書に記載の技術の第2の態様によれば、本明細書に記載の技術のシステムを用いて被験者の皮膚の表面の領域にわたって筋肉の電気的活動を測定する方法が提供され、該方法は、前記電極の対が被験者の皮膚と接触するように複数のセンサを被験者の皮膚に取り付けることと、前記電極の対の間の電位差を検出することと、前記電極の対の間で検出された前記電位差を示す出力を提供することとを含む。
【0008】
本明細書に記載の技術は、さらに、被験者の皮膚の表面の領域にわたって筋肉の電気的活動を測定するための、本明細書に記載の技術のシステムの使用または方法にも及ぶ。したがって、本明細書に記載の技術の第3の態様は、被験者の皮膚の表面の領域にわたって筋肉の電気的活動を測定するための、本明細書に記載の技術の表面筋電図システムの使用を含む。
【発明の効果】
【0009】
本明細書に記載された技術は、医学的に有用な、また、医学的診断を構成するための補助として使用することができる筋肉の電気信号を検出および分析するための方法および装置を提供する。例えば、前記装置は、腹膜炎の診断を補助するために腹部筋肉の電気的活動を検出するために使用することができる。
【0010】
既存の筋電図システムとは対照的に、本明細書に記載の技術は、複数のセンサを用いて、複数の異なる領域における電気的活動を同時に検出することを可能にする。
【0011】
本願 は、筋肉の電気的活動を検出するために複数のセンサを同時に使用することで、既存の筋電図システムおよび方法に比べていくつかの利点が得られることを理解した。例えば、筋電図を利用した多くの診断法では、複数の異なる部位から測定値を得る必要がある。既存のシステムでは、各評価の過程で一つのセンサの位置を数回変える必要がある。このセンサの再配置の必要性は、例えば、再配置処理中の患者の動きによって信号品質が損なわれる可能性があるため、測定の誤差の原因となる。加えて、各領域の電気的活動の測定を同時に行うことができるようにすることで、本明細書に記載の技術では、各領域における測定値をリアルタイムで互いに直接比較することができる。これは、例えば、一つまたは複数のセンサの不適切な配置や最適でない配置を検出する点で役に立つ。複数のセンサを同時に使用することで、測定精度の向上に関連するさらに別の利点が得られる。例えば、偽陽性または偽陰性の結果となる可能性は、追加のセンサの使用によって低減される。
【0012】
一実施形態では、前記システムは4つのセンサを含む。しかし、前記システムは、2以上の数のセンサを含むことができ、2、3、4、5またはそれ以上のセンサを含むがこれらに限定されない。センサの数は、個々の筋電図検査の要件に基づいて選択することができる。
【0013】
上述のように、本システムは、複数のセンサを用いて複数の異なる領域における電気的活動を同時に検出することを可能にする。前記複数のセンサのセンサは、該複数のセンサの任意のセンサの位置が該複数のセンサの他のセンサの位置に物理的に依存(影響)しないように、互いに物理的に離間されている。したがって、前記複数のセンサは、被験者(患者)の皮膚上の異なる位置に独立して(同時に)配置することができる。
【0014】
一つの実施形態において、複数のセンサは、該複数のセンサのうちの少なくとも一つのセンサを被験者の外腹斜筋の電気的活動を測定するために配置し、複数のセンサのうちの少なくとも一つの(他の)センサを被験者の内腹斜筋の電気的活動を測定するために同時に配置するように、配置することができる。
【0015】
一つの実施形態において、前記複数のセンサのうちの複数のセンサが、被験者の腹部の異なる位置に(同時に)配置することができる。一つの実施形態において、前記複数のセンサは、被験者の腹部の異なる四分割部分に(同時に)配置可能な4つのセンサを有する。一つの実施形態において、前記複数のセンサのうちの複数のセンサは、被験者の左側外腹斜筋、右側外腹斜筋、左側内腹斜筋、及び右側内腹斜筋の各々の電気的活動を同時に測定するために(異なる)センサが配置されるように配置することができる。
【0016】
前記複数のセンサの各々は、被験者の皮膚に配置されたときに電極間の電位を検出するように構成された一つの電極対を有する。この電極対は、一つの実施形態では、単一差動(SD: Single Differential)構成で配置される。前記電極対の電極は、電極間距離(IED: Inter-Electrode Distance)だけ離間される。該IEDは2つの電極のそれぞれの中心間の距離である。一つの実施形態では、複数の電極対のそれぞれのIEDは、3mmから50mmの間であり、さらに一つの実施形態では、3mmと40mmの間、3mmと20mmの間、または3mmと5mmの間である。本願出願人は、この範囲のIEDが、表面筋電図に関連のある信号を検出するのに適したセンサを提供することを発見した。代替的に、50mmより大きい離間距離、または例えば15mmと40mm、15mmと30mm、または15mmと25mmの間の離間距離を用いることもできる。一つの実施形態では、24mmの離間距離(IED)が用いられる。例えば、50mmを超えるIEDは、感知位置に多量の皮下組織を有する被験者への使用に適する場合がある。
【0017】
本願出願人は、IEDが大きいほどsEMG信号の歪みの程度が大きくなるため、sEMG信号の品質はIEDに大きく依存することを認識した。一般的に、IEDが10mmを超えると(またはそれ以下の場合は、評価対象の筋肉の筋繊維の全長の1/4を超えると)、sEMG信号に歪みが生じる。しかし、筋肉深度が深くなるにつれて、皮膚におけるsEMGの振幅は減少する。つまり、sEMG信号の振幅は、例えばセンサがおかれた部位の皮下組織の深さに影響される。皮下組織の深さは患者の体重(または肥満度指数、「BMI (Body Mass Index)」)によって大きく変化する。例えば、体重(またはBMI)が重いほど、信号が相対的に弱くなる可能性がある。本願出願人は、IEDを増加させることによってsEMG信号の振幅を増加させることができるが、その代償として、隣接する筋肉からの干渉が増加し、クロストークのリスクが増加し、sEMG信号のスペクトルコンテンツが損なわれる可能性があることを認識した。
【0018】
センサは、(恒久的に)不変のIEDを有するように構成することができる。しかし、一実施形態では、センサのIEDを変化させることができる。一実施形態では、IEDは、3mmと50mm、3mmと40mm、3mmと20mm、または3mmと5mmの間の任意の長さに調整することができる。例えば、センサは、電極対のIEDが可変になるように、可動電極を有することができる。電極の位置は、一実施形態では固定することができ、電極を確実に配置し、それによりセンサの使用時に固定のIEDを維持することができる。あるいは、電極の位置は固定(移動不可)であってもよいが、電極は取り外し可能であり、異なるサイズの(したがって異なるIEDを有する)電極と交換することができる。このように、複数の実施形態で、複数のセンサは、多様な(異なる複数の)サイズの電極を収容できるように(異なるサイズの電極のペアをセンサに取り付けることによって、電極のIEDを調整できるように)構成されている。
【0019】
複数の実施形態では、電極対はセンサから取り外し可能である。そのような実施形態では、複数のセンサは、複数の電極対を収容するように構成される。そのような実施形態では、所望のサイズおよび/または所望のIEDを有する電極対を、必要に応じてセンサに取り付けることができる(そして、電極の位置を移動することができるセンサについては、所望の位置に移動させることができる)。
【0020】
したがって、一実施形態において、本明細書に記載された技術うちのの表面筋電図システムは、装置一式であって、
筋肉の電気的活動を検出するための複数のセンサであって、該複数のセンサのうちの各センサが一つの電極対を収容するように動作可能であり、前記複数のセンサのうちの各センサは、該センサに取り付けられたときに、一つの電極対間の電位差を示す出力を提供するように動作することができるような複数のセンサ、および、
前記複数のセンサに接続可能な出力ユニットであって、前記複数のセンサのそれぞれの出力を示す出力を提供するように動作可能な出力ユニット、および
前記複数のセンサのセンサ内に取り付けるように構成された複数の電極であって、オプションで、複数の異なるサイズの電極を含むような複数の電極、を含む装置一式を有する。
【0021】
同様に、一実施形態では、本明細書に記載の技術によるシステムを用いて被験者の皮膚表面の一つの領域にわたって電気的活動を測定する方法は、以下の処理を含む。
複数のセンサの各センサ内に一つの電極対を取り付けること、
複数の前記電極対が被験者の皮膚に接触するように、前記複数のセンサを被験者の皮膚に取り付けること、
複数の前記電極対の間の電位差を検出すること
複数の前記電極対の各々によって検出された電位差を示す出力を提供すること。
【0022】
前記複数の電極対は、例えば、センサハウジング内に取り付け可能な(そしてセンサハウジングから取り外し可能な)電極パッド上に(その一部として)設けることができる。各電極対は、(単一の)電極パッド上に設けることができる。あるいは、各電極は、(各電極対が一つの電極パッドの対として設けられるように)それぞれの電極パッド上に設けることもできる。一つの実施形態における電極パッドは、センサへの接続を形成するための一つまたは複数のコネクタをさらに備える。コネクタ(複数可)は、(各々)電気接点(例えば、スナップコネクタ等)、導電性接着剤、または任意の他の適切なコネクタを含むこともできる。電極パッドは、使い捨ての単回使用パッドでもよい。一実施形態では、センサの電極対は、(使用時に)同じIED毎に離間される。他の実施形態では、複数のセンサの一部または全部が異なるIEDを有する。例えば、システムは、2つセンサが15mmのIEDを有し、2つのセンサが21mmのIEDを有する4つのセンサを含むことができる。第2の例では、すべてのセンサが、特定の部位の筋肉深度等の要因に基づいてパーソナライズされた(したがって異なる可能性が高い)IEDを持つことができる。各センサに最適なIEDは患者毎に異なり、同一の患者でも検査毎に異なる場合があることが分かる。または、すべてのセンサが同じIEDを持つこともある。
【0023】
一実施形態では、前記システムは各試験に使用されるパラメータを自動的に記録する。例えば、前記システムは各センサのIED間隔(または電極対の選択)を記録することができる。あるいは、前記システムは、IED間隔のような試験パラメータを手動で記録する手段を備えていてもよい。
【0024】
一つの実施形態では、電極対の電極は、1mmと20mmの間、1mmと15mmの間、1mmと10mmの間、または1mmと5mmの間の最大寸法を有する。例えば、電極は、1mmと15mmの間の一実施形態では1mmと20mmの間の直径を有する円形電極、または辺の長さがこの範囲内にある正方形電極であってもよい。一つの実施形態では、直径18mmの円形電極が使用される。IEDは、一つの実施形態では、電極対の電極間に少なくとも0.5mmまたは1mmの間隙が存在するほどに十分な大きさである。いくつかの実施形態では、電極間に少なくとも3mm、または少なくとも4mm、または少なくとも5mmの間隙がある。いくつかの実施形態では、IEDと電極の最大寸法との比は、2:1から5:1の間、例えば3:1または4:1の実施形態の範囲にある。本願出願人は、sEMG信号のスペクトル特性が電極のサイズによって影響を受けることを認識している。例えば、円形電極の直径が大きくなるほど、sEMG信号の高周波成分が減衰する。これは、電極の導電面積が電極の下の電圧分布を平均化し、実際の空間電位分布が平滑化されたバージョンを生成するためと考えられている。その結果、電極はローパスフィルタを形成し、そのカットオフ周波数は表面積が大きくなるにつれて減少する。しかし、表面積が小さくなると、代償として、皮膚表面インピーダンスが増加し、ノイズが増加する。上述した範囲のいずれかに入る電極対の各々のIEDを用いて、一つの実施形態では、IEDと電極の最大寸法との比を2:1から5:1の間にすることで、これらの様々な考慮事項のバランスを良好にすることができることが分かった。
【0025】
電極は一実施形態ではAg/AgCl電極である。Ag/AgCl電極は、電極-皮膚インピーダンスが低いため、比較的低レベルのノイズで出力を出すことができる。しかし、他の適切な電極材料を使用してもよい。電極対が電極パッド上に(電極パッドの一部として)設けられる実施形態では、各電極は、電極パッド内の層(例えば、Ag/AgCl層)を含むこともできる(または電極は、電極パッド内の層になってもよい)。センサは、一つの実施形態では、表面筋電図システム、すなわち被験者の皮膚の表面上の電位を検出するための使用に適している。したがって、一実施形態における各センサは、センサを患者の皮膚に固定するための手段、例えば粘着パッドまたは粘着層を含んでいる。
【0026】
複数の電極対が複数の電極パッド上に(例えば、電極パッドのAg/AgCl導電層として)設けられる実施形態では、各電極パッドは、使用時に被験者の皮膚に接触し、被験者の皮膚へのセンサの付着を補助する粘着層および/または導電性ゲル層を含むことができる。
【0027】
一つの実施形態では、センサは、(センサ本体を被験者に接続するために別の接着剤を必要としないように)電極に及び/又はその周囲に(例えば電極パッドの一部として)塗布された導電性ゲル層又は接着剤層によって被験者の皮膚(のみ)に接着される。あるいは、センサに付随する粘着パッド等、センサを患者の皮膚に固定するための他の適切でかつ望ましい手段を設けてもよい。
【0028】
被験者に固定されるとき、センサの電極対は患者の皮膚に接触する。
【0029】
一実施形態におけるセンサは、(少なくとも使用時における)電極と皮膚の接触のインピーダンスを低減するための導電性物質を含む。例えば、導電性ゲルを電極の上及び/又は周囲に(例えば、電極パッドの導電性ゲル層として)塗布することができる。代替的に、または追加的に、前記電極の上および/または周囲に塗布される接着剤(例えば、電極パッドの接着剤層として)は、導電性接着剤にすることができる。一実施形態では、各センサは、粘着パッド/粘着層を有する電極パッドと、一つの電極対、例えば前記粘着パッド/粘着層の表面から突出した電極対と、を備える。
【0030】
センサは出力ユニットに結合(接続)することができる。この接続は、一つの実施形態では有線接続、すなわち接続ケーブルによる接続であるが、他には、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))等の無線接続であってもよい。一つの実施形態では、各センサは、例えば対応する有線または無線接続によって、出力ユニットに個別に結合可能(接続可能)である。
【0031】
一つの実施形態におけるセンサ(各々)は、センサを出力ユニットに接続するための手段、例えば、ケーブルレスチップ、またはケーブルを接続するためのプラグ(例えば、ケーブルをセンサのプリント回路基板(PCB: Printed Circuit Board)に接続するためのケーブル・基板コネクタ等)を備える。この接続手段は、一つの実施形態では、センサの使用中にアクセス可能な状態を維持できるように、センサ上の電極とは反対側にある。ケーブルレスセンサは、さらにバッテリ等の電源を有する場合があり、有線センサは出力ユニットから電力を受け取る場合がある。
【0032】
一つの実施形態におけるシステムは、センサの電極によって検出されたsEMG信号を処理する。例えば、前記システムは、sEMG信号を増幅および/またはフィルタリングして、信号ノイズを低減および/または前記sEMG信号の不要な周波数成分を低減することができる。各処理ステップは、ハードウェアまたはソフトウェア、あるいはハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実行することができる。例えば、前記システムは、sEMG信号を増幅およびフィルタリングするように構成されたハードウェア構成要素を含む場合があり、さらに、追加のフィルタリングステップを実行するように構成されたソフトウェアを含む場合がある。前記処理は、センサと出力ユニットとの間またはセンサと出力ユニットにおいて実行することができる。例えば、前記処理の一部または全部はセンサで実行され、処理したsEMG信号を該センサが出力ユニットに出力することができる。一つの実施形態では、各センサは、電極によって検出されたsEMG信号の処理を実行するように動作可能な(構成された)処理回路(複数可)および/または処理手段(プロセッサ(複数可))を有する。一つの実施形態では、(各々の)センサの処理回路(複数可)および/または処理手段は、前記センサのプリント回路基板(PCB)と一体化されている。代替的に(または追加的に)、前記処理の一部または全部は、sEMG信号がセンサから出力された後に、例えば出力ユニットに含まれる構成要素によって実行される場合がある。
【0033】
したがって、一つの実施形態では、前記システムは、センサの電極対によって検出されたsEMG信号を増幅するための一つまたは複数の増幅器を含んでいる。
【0034】
一つの実施形態では、各センサのsEMG信号の合計利得は少なくとも1000であるが、この利得はセンサから期待される出力振幅に応じて変化することができる。A/Dコンバータ等の一般的なデジタイザの入力範囲は約±5Vである。このため、期待される信号強度(典型的には、EMG信号の場合、約0.1μV~2mV)をこの入力範囲内に増幅するために、合計利得を選択することができる。
【0035】
実施形態における一つまたは複数の増幅器は、sEMG信号を増幅するための一つまたは複数のフロントエンド増幅器を有する。該フロントエンド増幅器は、一つの実施形態では、少なくとも100MΩの入力インピーダンスを有する差動増幅器である。
【0036】
一実施形態では、フロントエンド増幅器は中程度の利得(例えば約100の利得)しか適用しない。有利なことに、この小さい利得は過飽和を避けるのに役立つ。十分な総利得を得るためには、上述のように、増幅器を追加することができる。一実施形態では、第1の(フロントエンド)増幅器がsEMG信号を増幅し、第2の(追加の)増幅器が、信号がフィルタリングされた後の前記第1の増幅器の出力を増幅する(これについては後述する)。一例では、第1の増幅器の利得を100、第2の増幅器の利得を101とし、合計利得を10100とすることができる。
【0037】
一つの実施形態では、センサのsEMG信号は個別に増幅される。例えば、システムは、センサの各々に対して個別の第1および第2の増幅器を含むことができる。あるいは、一つまたは複数の増幅器が、センサのすべてまたはいくつかの出力を増幅するように構成されてもよい。例えば、システムは、すべてのセンサからの出力を増幅するように構成された単一の第1増幅器と単一の第2増幅器を含むこともできる。または、システムは、各センサ用の個別の第1増幅器と、すべての第1増幅器からの出力を増幅するように構成された単一の第2増幅器を含むこともできる。
【0038】
検出されたsEMG信号は、一つの実施形態では、不要な周波数やノイズを除去するために処理される。これは、システムノイズがsEMG信号の大きさと同じオーダー内にある場合があるため、一般的に小さいsEMG信号を生成する筋肉を検査する場合に特に有益である。例えば、本明細書に記載の技術の一つの実施形態では、腹部筋肉の測定は通常、深い呼吸運動中に約5μVから約10μVの平均整流信号を生成するが、これらの測定に対するノイズは約1μVから約3μVの間になる場合がある。
【0039】
したがって、一つの実施形態では、システムは、センサの電極対によって検出されたsEMG信号の不要な周波数を減衰させるように構成された一つまたは複数のフィルタを備える。この場合も、一つの実施形態では、センサのsEMG信号は個別にフィルタリングされる。例えば、システムは、センサの各々に対して個別のローパス周波数フィルタおよびハイパス周波数フィルタを有することができる。前記一つまたは複数のフィルタは、代替的に、または追加的に、すべてまたはいくつかのセンサの出力をフィルタリングするように構成された一つまたは複数のフィルタを含んでよい。例えば、システムは、フィルタセンサからの出力信号をフィルタリフィルタように構成された一つフィルタ数のノッチフィルタを含むことができる。
【0040】
フィルタタ 一つの実施形態では、前記一つまたは複数のフィルタは、最も高い関連筋高調波の周波数に基づくローパスフィルタを有し、一つの実施形態では最も高い関連筋高調波の周波数でのカットオフ周波数を有するローパスフィルタを有する。一つの実施形態において、ローパスフィルタは、約400Hzから約450Hzの範囲内のカットオフ周波数を有する。
【0041】
一実施形態では、一つまたは複数のフィルタは、約10Hzと約20Hzとの間のカットオフ周波数を有するハイパスフィルタで構成される。例えば、ハイパスフィルタのカットオフ周波数は16Hzである。例えば、モーションアーティファクトや電極スライディングに起因するノイズは、通常、比較的低い周波数範囲にある。したがって、一実施形態では、ハイパスフィルタは、これらのノイズ源の影響を低減するために、低周波信号を除去または低減する。
【0042】
ローパスフィルタもハイパスフィルタも、一つの実施形態では2次以上のフィルタである。
【0043】
一実施形態では、一つまたは複数のフィルタは一つまたは複数のノッチフィルタを有する。検出された信号の電力線干渉(PLI: Power Line Interference)を低減するために、ノッチフィルタの少なくとも一つは、電力線周波数(地域によって異なるが、典型的には50Hzまたは60Hz)を中心とすることができる。システムは、電力線周波数を中心としたノッチフィルタと、電力線周波数の高調波を中心とした追加のノッチフィルタを含むこともできる。例えば、一実施形態におけるシステムは、50Hz、100Hz、150Hz、200Hz、250Hz、300Hz、350Hzを中心とするノッチフィルタで構成される。50Hz以外の電力線周波数を持つ地域では、異なる周波数が適用されることが理解されよう。
【0044】
ノッチフィルタの代わりに、あるいはノッチフィルタに加えて、スペクトル補間や右脚駆動(DRL: Driven-Right-Leg)回路など、PLIを低減するために他の技術を使用することもできる。
【0045】
一実施形態では、システムは、システムのコモンモード電圧を反転させるためのDRL回路を備える。一実施形態では、基準電極は、反転されたコモンモード電圧を複数のセンサにフィードバックするために使用され、例えば、基準電極を被験者の皮膚に取り付ける。一実施形態では、単一の基準電極がすべてのセンサにフィードバックを提供し、検査される領域から離れた被験者に取り付けられてもよい。例えば、センサが腹部筋肉の電気的活動を検出している場合、基準電極は被験者の腕に接続してもよい。有益なことに、システムのコモンモード電圧を反転させることにより、DRL回路は増幅器やフィルタ等のハードウェア構成要素から注入されるコモンモード電圧も反転させます。例えば、フロントエンド増幅器を含むシステムでは、DRL回路は増幅器に由来するコモンモード電圧からの干渉も低減する。
【0046】
一実施形態では、システムはさらに、電力網から電力を供給される装置(出力装置など)からセンサを絶縁し、それによって回路、ユーザ、被験者を保護するための絶縁装置を備える。
【0047】
一つの実施形態では、sEMG信号は、例えば心電図(ECG: ElectroCardioGram)信号からのアーティファクトや干渉を低減するためにさらに処理される。これは実施形態ではウェーブレットフィルタリング技術を用いて行われる。
【0048】
一つの実施形態において、ウェーブレットフィルタリングは、ドーベシー(DB4: Dauechies4)・ウェーブレットを利用し、ウェーブレット分解のレベル4、5、6および7に閾値詳細係数を適用する処理を含む。閾値は、一つの実施形態では、筋肉からの弛緩信号の最大振幅を使用して決定される。その理由は、弛緩信号は、筋肉からの干渉なしにECGアーティファクトを含むからである。弛緩信号は、レベル4、5、6および7の各々について個別の閾値を決定するために分解される。一実施形態では、閾値は基準分解の最大振幅の10%上に設定され、その特定のレベルの閾値を下回るすべての詳細係数はゼロにされる。このようにして、ECGアーティファクトが低減される一方で、筋肉活動等による同じ周波数帯域の大きな信号成分は大きい影響を受けない。
【0049】
sEMG信号のノイズをさらに低減するために、一つの実施形態では、ウェーブレット分解のレベル1およびレベル2の詳細係数がゼロにされる。これらの詳細係数は、通常、約450Hz以上の高周波帯域幅成分を含む。従って、ウェーブレットフィルタリングは、ローパスフィルタのカットオフ周波数より高い方に残っている望ましくない高周波信号も低減するので有益である。
【0050】
上述のように、各処理ステップは、ハードウェア部品、またはソフトウェアを介して実行することができる。例えば、一つまたは複数のフィルタの各々は、ハードウェアフィルタであってもソフトウェアフィルタであってもよい。一実施形態では、システムは、同一またはほぼ同一のカットオフ周波数を有するアナログ・ハードウェア・フィルタとデジタル・ソフトウェア・フィルタの両方を有し、信号品質を改善しノイズを低減する。
【0051】
一実施形態では、システムはハードウェア処理ステップとソフトウェア処理ステップの両方を含む。例えば、処理ステップは、信号のデジタル化処理前の一連のハードウェア処理ステップと、信号のデジタル化処理後の一連のソフトウェア処理ステップとを含むことができる。ハードウェアステップは、第1の増幅段、ローパスフィルタリング、ハイパスフィルタリング、第2の増幅段、および/またはコモンモード電圧を反転させるDRL回路の使用のいずれか一つまたは複数を含むことができる。ソフトウェア処理ステップは、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、ノッチフィルタ、および/またはウェーブレットフィルタリングのいずれか一つまたは複数を含むことができる。
【0052】
一つの実施形態では、複数のセンサのうちの一つまたは複数のセンサ(一つの実施形態では各々のセンサ)は、対応する電極対からのsEMG信号のアナログ処理処理(例えばハードウェア処理)を実行するように構成され、該アナログ処理は、第1の増幅段、ローパスフィルタリング、ハイパスフィルタリング、第2の増幅段、および/または(例えば上述のような)コモンモード電圧を反転させるためのDRL回路の使用のうちの一つまたは複数の処理(一つの実施形態では複数の処理、一つの実施形態ではすべての処理)を含む。一つの実施形態では、一つまたは複数のセンサ(一つの実施形態では、各々のセンサ)は、(また、)対応するデジタル(デジタル化された)信号を生成するために(処理された)sEMG信号のアナログ/デジタル変換(ADC: Analogue-to-Digital Conversion、デジタル化)を行うように構成され、一つの実施形態では、デジタル信号を出力ユニットに送信するように構成される。そのような実施形態では、出力ユニットは、デジタル信号を受信し、一つの実施形態では、上述のように、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、ノッチフィルタ、および/またはウェーブレットフィルタリングのうちの一つまたは複数(一実施形態では複数、一実施形態ではすべて)を適用する処理等の、デジタル信号のさらなる処理(例えばソフトウェア処理)を実行するように構成することができる。
【0053】
上述のように、腹膜炎を検出する目的で測定される腹部筋肉活動から生じるsEMG信号は、μVオーダーの小さな振幅を有する可能性があるため、本願出願人は、sEMG信号に影響を与える可能性のあるノイズや他のアーティファクトを軽減することが重要であることを認識している。本願出願人は、この点に関して、センサの一部として患者の近くでアナログ信号処理を提供することが、sEMG信号にノイズやアーティファクトを入り込ませることを回避するのに役立つと認識している。
【0054】
さらに、センサの一部として(内部に)アナログ・デジタル変換機能を設けることにより、デジタル信号を、適切な接続、例えばWi-Fi、Bluetooth、または有線接続等を介して出力ユニットに送信することができる。一つの実施形態では、前記接続は、各センサと出力ユニットとの間の有線接続であり、この接続を介してセンサは電力も受け取る。一つの実施形態では、有線接続(ケーブル)はシールドされていない。この点に関して、本願出願人は、デジタル信号の伝送では、(ノイズやアーティファクトの混入を避けるために太いシールドされたケーブルを必要とするアナログ信号の伝送と比較して)比較的細く柔軟なシールドされていないケーブルを使用することができ、センサシステムが比較的嵩張らず、使いやすくなることを認識している。一実施形態では、システムは、各センサによって検出された電圧をデジタル信号に変換するためのデジタイザをさらに備える。センサの電極によって検出される電位は、一般的にはアナログ信号であるため、例えばソフトウェアによる処理を補助するためにデジタル信号に変換することが有益である。デジタイザは、複数のセンサから受信した複数のアナログ信号を一つのデジタル信号にデジタル化(変換)するように動作可能な任意の適切なデジタイザとすることができ、例えばA/Dコンバータでよい。上述のように、各センサは、その電極対からのsEMG信号をデジタル化するためのデジタイザを含むことができる。上述のように、一般的なデジタイザの入力範囲は約±5Vである。従って、システム内の(例えばセンサ内の)増幅段からの総利得は、予想される信号強度(典型的には、sEMG信号の場合約0.1μV~2mV)をこの入力範囲内に増幅するように選択することができる。
【0055】
一つの実施形態では、システムは少なくとも1000Hz、一つの実施形態では2048Hzまたはその近傍のサンプリング周波数を有する。エイリアシングを避けるため、またナイキスト・サンプリン定理に従って、デジタイザの最小サンプリング周波数は、信号の最大周波数の2倍より大きくする必要がある。したがって、デジタイザのサンプリング周波数は、ほとんどのsEMG用途で、1000Hzでほぼ十分である。
【0056】
本システムは、複数のセンサに結合可能な(接続された)出力ユニットを備える。該出力ユニットは、センサから検出された信号を受信し、検出されたsEMG信号を示す出力を提供するように動作することができる。例えば、出力は、センサによって検出された処理された信号であってもよい。あるいは、出力は、sEMG信号の平均振幅または最大振幅を表す数値であってもよいし、または、sEMG信号の振幅の指示値を提供する他の適切な方法であってもよい。
【0057】
出力ユニットは、各センサから受信した信号を重畳または結合した出力を提供することができるが、一つの実施形態では、別々に、例えば並べて表示することができる各センサの出力を提供する。一実施形態では、出力ユニットは、検出されたsEMG信号をテスト中に相互に直接比較できるように、センサの各々によって検出された電位を示す結果を同時に出力する。この比較は、ソフトウェア(例えば数学的解析)またはユーザ(例えば視覚的比較)によって行うことができる。
【0058】
一実施形態では、センサからの信号は同期され、異なるセンサによって同一時刻に検出されたsEMG信号が同一(例えばグローバル)時刻に整列される。一つの実施形態では、センサからのsEMG信号が同期されるグローバル時間(グローバルクロック)が(例えば出力ユニットによって)保持される。本願出願人は、このような同期化により、異なるセンサからの信号を直接比較することができ、患者の異なる腹部位置にある異なるセンサ間で筋肉反応(例えば、咳や加えられた圧力等のトリガに応答する腹部防御等)を比較することができることを認識している。本願出願人は、このような同期化が、各センサが信号処理を実行するための独自の回路を有する(したがって、分散処理システムを形成する)構成において、特に確実に行うことができることを認識している。
【0059】
したがって、センサが(上述のように)sEMG信号処理を実行するように構成された複数の実施形態において、一つの実施形態における各センサはローカル時間(ローカルクロック)を有する。このような実施形態では、センサのローカル時間(ローカルクロック)は、一つの実施形態では、同期信号を(例えば出力ユニットから)センサのそれぞれ(すべて)に定期的に送信することによって、グローバル時間(グローバルクロック)に同期される。一つの実施形態では、sEMGの各々の測定中、各センサは、そのローカルクロックを出力させ(使用し)、sEMGの測定の間は、ローカルクロックは、(同期信号に応答して)更新される。一つの実施形態では、センサのローカルクロックは、同じ患者の異なる測定の間、および/または異なる患者の測定の間に更新される。つまり、各センサは、sEMG信号測定中(sEMG信号を取得中)、そのローカルクロックを出力させる。
【0060】
一実施形態における出力ユニットは、出力結果を表示するためのディスプレイを有する。あるいは、出力ユニットは、出力結果を外部表示装置に送信してもよい。外部表示装置は、例えばモニタ、テレビ、モバイル機器、または専用表示システム等、任意の適切なディスプレイにすることができる。
【0061】
一実施形態では、例えばsEMG信号を処理するためのソフトウェアは、出力ユニットによって提供される。
【0062】
一実施形態において、出力ユニットは、センサ及び/又は処理ステップを制御するための手段を有する。例えば、出力ユニットは、タッチスクリーン、ボタン、ダイヤル、または任意の他の適切な制御手段を有することもできる。この実施形態では、出力ユニットまたは制御ユニットは、選択されたセンサの作動/作動停止、sEMG信号の処理の設定、および/または出力結果の特性の設定を行うときにユーザを支援することができる。
【0063】
いくつかの診断法には、加えられた圧力(または、咳や他の刺激手段によって誘発されるような他の刺激)に対する筋肉反応を評価することが含まれる。例えば、腹膜炎の患者は、腹壁への刺激に反応して、腹壁に不随意的な筋肉反応(腹部防御)を示すことがある。腹部防御は、患者の腹部に手を当てた医師が感知することがあるが、筋肉の動きは非常に小さく、感じにくいため、経験豊富な医師が必要である。
【0064】
したがって、一つの実施形態では、システムは、システムの使用中に被験者の刺激(被験者に加えられる刺激、一つの実施形態では、被験者に加えられる力(圧力))を検出するように構成される。一実施形態において、システムは、(加えられた)刺激(例えば力)の振幅(大きさ)及び/又はタイミング(それらをを示す出力)を表示するように構成される。複数の実施形態において、システムは、システムの使用中に刺激(例えば力(圧力))が被験者に加えられた(開始された)時間、システムの使用中に刺激(例えば力(圧力))が被験体から解放(除去)された(停止した)時間、およびシステムの使用中に被験体に加えられた刺激(例えば力(圧力))の量(大きさ)のうちの少なくとも一つ(一実施形態では複数、一実施形態では全て)を示す(検出する)ように構成される。。
【0065】
一つの実施形態において、システムは、被験者に加えられる力(圧力)を測定するための一つまたは複数の力センサ(圧力センサ)を備える。一実施形態において、前記一つまたは複数の力センサは、複数のセンサのうちの一つまたは複数に結合可能であり、したがって、センサに加えられる圧力を測定することができる。一実施形態において、センサの一つまたは複数(一実施形態において複数のセンサ、一実施形態において各々のセンサ)は、力センサと結合される(力センサを含む)。一つの実施形態では、力センサは、複数センサのうちの少なくとも一つ(一実施形態では複数のセンサ、一実施形態では全てのセンサ)に組み込まれ、(それぞれの)センサに加えられる(したがって、センサを介して被験者に加えられる)圧力を測定する。このように、一つの実施形態では、複数のセンサの各センサは、それぞれの(一体化された)力センサを有する。
【0066】
任意の適切かつ所望の力センサを使用することができる。一つの実施形態では、(各々の)力センサはロードセルを含む。あるいは、一つまたは複数の力センサは、任意の適切かつ所望のピエゾ抵抗または圧電センサ(複数可)を有する。
【0067】
この点に関して、本願出願人は、力センサを有する(各)センサを設けることは、(例えば、患者の任意の、未知の、位置に力を加えることと比較して)加えられた力の位置、タイミング、および振幅をより確実に識別することができるという利点を有することを認識している。さらに、複数のセンサにそれぞれ力センサを設けることで、センサを移動させることなく、一人の患者の複数の場所に(例えば順番に)力を加えることが可能になる。これにより、異なる場所での筋肉反応を比較することが可能になる。
【0068】
したがって、本明細書に記載の技術の一態様では、筋肉の電気的活動を検出するための表面筋電図システムで使用するための複数のセンサが提供され、該複数のセンサの各センサは、それぞれの電極対を収納するように構成され、センサに取り付けられたときに、それぞれの電極対から信号を受信するように構成され、
前記複数のセンサの各センサは、それぞれの力検出器を有し、各センサは、その一つの電極対から信号を受信すると同時に、それぞれの力検出器から力信号を受信するように構成され、
前記複数のセンサの各センサは、それぞれの一つの電極対および力センサから受信した信号を示す信号を出力するように構成される。
【0069】
複数の実施形態において、力センサは、センサユニットの上面(使用時)に設けられた力感知ボタンを有する。一実施形態において、力感知ボタンは、力検出器と係合可能なボタンを有する。一つの実施形態では、力検出器はロードセルを有する。本願出願人は、このような力センサの配置が、圧力の印加および除去に比較的迅速に応答する、堅牢で信頼性の高い構成を提供できることを認識している。あるいは、他のタイプの力センサ、例えば他のピエゾ抵抗力センサや圧電センサを使用することもできる。
【0070】
複数の実施形態(力センサがシステムのセンサに一体化されている実施形態等)では、センサ(センサユニット)は、印加された力に応じた変形に抵抗する(印加された力に応じたボタンの移動には無関係に)ように構成されている。この点に関して、出願人は、センサの内部構成要素の変形または移動が、sEMG信号の品質に悪影響を及ぼす可能性があることを認識している。複数の実施形態では、センサ(センサユニット)は剛性があり、一つの実施形態では、(センサの力検出器および他の処理回路が収容される)固い筐体を有する。一つの実施形態では、センサユニットの筐体は、プラスチック等の丈夫で非導電性の材料で構成される。
【0071】
この点で、各センサに非導電性の筐体を設けることで、力を加えるためにセンサに触れるユーザからの電気的干渉を低減することができる。センサ(またはPCB等の部品)は、必要に応じて電気的にシールドすることもできる。
【0072】
一つの実施形態(力センサがシステムのセンサに組み込まれている実施形態等)では、該センサ(センサユニット)は、電極によって得られるsEMG信号に対する圧力の影響を緩和するように構成(構築)されている。この点に関して、本願出願人は、(例えば圧力印加による)電極の変形がsEMG信号品質を損なう可能性があることを認識している。したがって、一実施形態において、センサ(センサユニット、例えばセンサユニットのハウジング)は、一つの電極対(電極パッド(複数可))の(皮膚接触面が)概略平坦になるように、該電極対(電極パッド(複数可))の少なくとも一部を収納するように構成された一つまたは複
数の凹部を有する。これによって、センサ(センサユニット)に圧力が加えられたときに電極にかかる変形力を低減す助けになる可能性がある。一実施形態では、一つまたは複数の凹部は、センサ(センサユニット)との電気的接続を形成する電極(電極パッド)の少なくとも一部(例えば、突出コネクタまたは嵌合電気コネクタ等)を含むように構成される。
【0073】
複数の実施形態では、(例えば、単一の電極パッドまたは一対の電極パッドとして)一つの電極対を収容するために、単一の凹部がセンサ(センサユニット)に設けられる。あるいは、(それぞれの電極(電極パッド)を収容するために)一対の凹部を設けるか、または他の構成の凹部を設けることができる。
【0074】
複数の実施形態において、(各)センサの一つまたは複数の凹部は、一つの電極対が一つまたは複数の凹部内に(横方向に)収まるように構成(寸法調整)される。複数の実施形態において、一つの電極対は、電極の皮膚接触面がセンサユニットとほぼ同一平面にある(センサユニットから突出しない)ように、一つまたは複数の凹部内にほぼ完全に収納される。したがって、複数の実施形態で、センサ(センサユニット)の一つまたは複数の凹部は、センサ(センサユニット)に加えられる圧縮力から電極を実質的に遮ぎる。このような実施形態では、電極が圧縮されることなく、センサユニットが被験者の皮膚上に置かれたときに、電極と皮膚を接触させることができる。
【0075】
電極パッド(複数可)が使用される実施形態において、電極パッド(複数可)および一つまたは複数の凹部は、電極パッド(複数可)が一つまたは複数の凹部を越えて(横方向に)延在し、センサ(センサユニット)の底面上で支持される(底面に対して安置する)ような寸法で形成する(大きさを決める)ことができる(しかし一方では、一つの実施形態における複数の電極は、電極パッド全体のサイズよりも小さいため、一つまたは複数の凹部内に収まることができる)。一実施形態では、電極パッドはセンサの底面を越えて(横方向に)延在しない(センサの設置面積を越えて延在しない)。これにより、電極パッド(複数可)全体に均一に圧力を加えることができる。または、電極パッド(複数可)はセンサの底面を越えて(横方向に)延在することもできる。
【0076】
このように、一つまたは複数の凹部を設けることは、電極によって得られるsEMG信号の品質に影響を及ぼす可能性のある前記電極(電極パッド)にかかる押圧力を抑止するのに役立つことができる。一つの電極対(電極パッド(複数可))が導電性ゲルを含む(または導電性ゲルと組み合わせて提供される)複数の実施形態では、一つまたは複数の凹部は、導電性ゲル上の不均一な圧力を防止することにも役立ち、防止できなければ、sEMG信号の品質に影響を与える可能性のあるゲルの移動または漏れを引き起こす可能性がある。一つの実施形態では、一つまたは複数の凹部は、導電性ゲル(および電極)が(両方とも)一つまたは複数の凹部内に横方向に収まるように構成され、一つの実施形態では、導電性ゲル(および電極)が(両方とも)一つまたは複数の凹部内にほぼ完全に収まるように構成される。ゲルの移動または漏れの可能性(程度)を(さらに)低減するために、比較的粘度の高い導電性ゲルを使用することができ、複数の実施形態で前記のようなゲルを使用している。
【0077】
代替の実施形態では、センサ(センサユニット)と一つの電極対(電極パッド(複数可))との間に平坦な電気接続を設けることができ、この場合、一つまたは複数の凹部をなくすることができる(一つの電極対を収容するセンサ(センサユニット)の底面はほぼ平坦である)。
【0078】
一実施形態では、フィードバックシステムが(力センサまたは圧力センサの一部として)設けられ、適切なレベルの圧力が加えられたときを示す。例えば、フィードバックシステム(力センサ)は、加えられた圧力をモニタし、加えられた圧力を閾値圧力と比較することができる。加えられた圧力が閾値を超えると、フィードバックシステム(力センサ)はフィードバック、例えば、視覚的フィードバック、音声フィードバック、および触覚フィードバックのうちの一つまたは複数(またはすべて)を提供することができる。一実施形態では、一つまたは複数の光のような視覚フィードバックが、正しい圧力が加えられていることを示すために設けられる。視覚的フィードバック(例えば、一つまたは複数の光)は、力センサをその一部として含むセンサユニットによって提供されることもできる。あるいは、視覚的フィードバックは、出力ユニットのディスプレイ上などに、出力ユニットによって提供されることもできる。あるいは、フィードバックシステム(力センサ)は、加えられた圧力を所望の圧力範囲と比較し、加えられた圧力がこの所望の範囲より低いか、高いか、または範囲内かによって異なる表示をすることができる。
【0079】
一つの実施形態において出力ユニットによって出力される結果は、圧力が加えられたおよび/または解放された時間の示度情報を提供する。例えば、出力ユニットの出力が(例えば、時間に関して)処理されたsEMG信号を含む場合、前記表示は、圧力が加えられたおよび/または解放された時間に対して破線を含むこともできる。別の例では、信号線は、検出された力に基づいて色を変えることもでき、または、前記出力は、印加された力の時間に対するグラフを追加的に含むこともできる(ここで、印加力のグラフは、sEMG信号に関する一つまたは複数のグラフとは別に表示してもよく、または、sEMG信号に対するグラフに重ねて表示してもよい)。
【0080】
本実施形態のシステムは、1μV程度の低電位の測定に適している。電極対によって測定される電位は、筋肉収縮中に発生する活動電位の和である。sEMG信号の振幅は、典型的には0.1μV~2mVの範囲であり、筋肉と収縮強度の両方に依存する。例えば、本明細書に記載の技術の一実施形態では、弛緩した斜角筋信号の平均整流値は一般に0.5μV~2μVの範囲であり、緊張時の信号は25μV~175μVの範囲である。したがって、0.1μVくらいの低電位の感度を有するシステムを提供することは有益である。しかし、測定ノイズは通常1~3μVの範囲に収まると予想される。その結果、一実施形態では、システムは例えば1μV、3μV、5μVまたは10μVの感度を有し、検出された信号をノイズから区別するのに役立つ。
【0081】
筋電図システムは、一実施形態では、筋肉状態の診断の補助に使用するのに適した表面筋電図システムである。例えば、本システムは、被験者が腹膜炎などに罹患していることを示す不随意の腹部固縮の検出を支援するために使用することができる。本システムはまた、筋電図を用いて検出可能な他のあらゆる状態の検出を支援することもできる。
【0082】
一つの実施形態において、本明細書に記載の技術のシステムを用いて筋肉の電気的活動を検出する方法は、複数のセンサを被験者の皮膚に取り付けることを含み、一つの実施形態では、クロストークや他の信号歪みを低減するために、複数のセンサを神経感応域と筋腱の間に取り付ける。システムが基準電極を含む場合、一実施形態では基準電極にも取り付けられる。センサは、一つの実施形態では、複数の電極が筋繊維の方向と平行に離間して配置される。
【0083】
センサを被験者に取り付けることは、電極と皮膚の接触を改善するために導電性ゲルを被験者またはセンサに塗布すること、および/またはセンサを所定の位置に固定し、センサの不要な動きを抑えるために接着剤を塗布することを含む場合がある。
【0084】
そして、センサの電極対は、被験者の皮膚全体の筋肉の電気的活動を検出する。検出された信号は、一つの実施形態では上述のように処理が行われる。一つの実施形態では、前記処理は、sEMG信号を第1の増幅器で増幅すること、第1のカットオフ周波数(例えば約450Hz)以上の信号を減衰させるローパスフィルタを適用すること、第2のカットオフ周波数(例えば16Hz)未満の信号を減衰させるハイパスフィルタを適用すること、第1および第2の増幅器の利得の合計が少なくとも1000になるように信号を第2の増幅器で増幅すること、そして次にsEMG信号をデジタル化することを含む。デジタル化後、一つの実施形態では、信号はソフトウェアでさらに処理される。一実施形態におけるソフトウェア処理は、同じ第1および第2のカットオフ周波数を有する第2のローパスフィルタおよびハイパスフィルタを適用すること、PLIを低減するために電力線周波数、例えば50Hzを中心とする信号にノッチフィルタを適用すること、および最後にウェーブレットフィルタリング技術を適用することを含む。出力ユニットは、処理された信号を出力し、一実施形態では、複数のセンサの各々に関して別々の出力を提供する。
【0085】
一実施形態における前記方法は、一連の検査を含む。この検査は、例えば、弛緩した筋肉の電位を検出すること、緊張した筋肉の電位を検出すること、緊張した筋肉の弛緩後の残留電位を検出すること、(咳等の)不随意運動(刺激)の途中および後の筋肉の電位を検出すること、被験者による意識的な深呼吸中の筋肉の電位を検出すること、及び/又は被験者の身体の一部に圧力を加えた後の筋肉の電位を検出することを含むことができる。
【0086】
一実施形態では、被験者の身体の一部に圧力を加えることは、加えられた圧力を検出するのに適した一つまたは複数の力センサを用いて、またはそれを介して圧力を加えることを含む。力センサは、被験者の身体に直接取り付けてもよいし、そうでなければ、例えば力センサを複数のセンサのうちの一つまたは複数に接続することによって、被験者の身体に間接的に取り付けてもよい。
【0087】
検出された信号は、不随意的な腹部防御の検出を支援するためのいくつかの手段を提供することができる。例えば、腹膜炎患者では、腹部筋肉の安静時の活動が高く、また、随意的および不随意的な(例えば、緊張および/または咳嗽および/または圧力印加によって刺激(誘発)される可能性がある)筋肉収縮後の残存活動の増加が予想される。
【0088】
一実施形態では、本明細書に記載のシステムを使用する方法は、一つまたは複数のセンサの電極の対のいずれか一つまたは複数(またはすべて)によって検出された電位差を示す出力に基づいて、腹膜炎等の病状を示す一つまたは複数の状態を決定することを含む。
【0089】
一つの実施形態において、医学的状態(腹膜炎など)を示す一つまたは複数の状態を判定することは、(健康な患者に対して)予想されるベースライン活動に対して(センサの一つまたは複数、またはすべてからの)出力を比較すること、および一実施形態において、前記予想されるベースライン活動から前記出力が大きく逸脱する場合の状態を検出することを含む。一実施形態において、(腹膜炎等の)医学的状態を示す一つまたは複数の状態を判定することは、(センサの一つまたは複数、またはすべてからの)出力を一つまたは複数の閾値と比較すること(一実施形態において、閾値レベル以上の出力(複数可)において示される筋肉活動は、腹膜炎等の医学的状態を示す)を含む。
【0090】
一つの実施形態において、医学的状態(腹膜炎など)を示す一つまたは複数の状態を判定することは、筋肉刺激を誘発した後(患者に圧迫を加えた後、または患者から咳を誘発した後など)の残留筋肉活動を識別することを含む。一実施形態では、閾値振幅より大きい振幅および/または閾値持続時より長い持続時間の残存筋肉活動が、腹膜炎等の病状を示すと判定される。
【0091】
一つの実施形態では、一つまたは複数の条件の決定は、ユーザが出力データを視覚的に検査することによって行われる(例えば、出力ユニットによって表示される、センサの一つまたは複数、またはすべてからの出力データを示すグラフを視覚的に検査する)。あるいは、一つまたは複数の条件の決定は、出力ユニットによって(少なくとも部分的に)実行することができる。
【0092】
この点に関して、出力ユニットは、(上述したような)出力データに基づいて判定を実行するように構成されたコンピュータを含むことができる。出力ユニット(コンピュータ)によって実行される処理は、適切に構成されたプロセッサを用いて実行することができる。
【0093】
出力ユニット(コンピュータ)は、汎用目的または特殊目的のコンピューティングシステムと一致して実装されてもよい。例示的なコンピューティングシステムは、パーソナルコンピューティングデバイス、ポータブル(例えば、ハンドヘルド)またはラップトップデバイス、医療用コンピューティングデバイス、マイクロプロセッサシステム、および分散コンピューティングシステム(例えば、クラウドベースのコンピューティングシステム等)の中にソフトウェアまたは他の(例えば、ハードウェア)コンポーネントを含むが、これらに限定されない。出力ユニットは、一つまたは複数のプロセッサと、一つまたは複数のプロセッサと通信する一つまたは複数の機械可読メモリとを含むことができる。プロセッサは、一つまたは複数のセンサからデータを受信すること、データの処理を実行すること、及びデータを表示することを支援することができる。メモリは、出力ユニット(およびそのプロセッサ)に所望の処理およびデータの表示を実行させるための命令を格納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
次に、本明細書に記載の技術の多くの実施形態を、例示としてのみ、添付図面を参照しながら説明する。
図1】本明細書に記載の技術の一実施形態による筋電図システムの概略図である。
図2】本明細書に記載の技術の一実施形態によるセンサ電極の構成を示す説明図である。
図3】本明細書に記載の技術の一実施形態による、使用中の電圧センサの配置の例を示す図である。
図4】本明細書に記載の技術の一実施形態で実行される信号処理ステップの例を示すフローチャートである。
図5】本明細書に記載の技術の一実施形態によるsEMGセンサの回路図の例である。
図6】本明細書に記載の技術の一実施形態による一連の出力結果の図である。
図7】本明細書に記載の技術の一実施形態による筋肉の電気的活動の測定方法のフローチャートである。
図8】本明細書に記載の技術の一実施形態による出力例である。
図9】本明細書に記載の技術の一実施形態による出力例である。
図10a】本明細書に記載の技術の一実施形態によるセンサの図である。
図10b】本明細書に記載の技術の一実施形態によるセンサの図である。
図10c】本明細書に記載の技術の一実施形態によるセンサの図である。
図10d】本明細書に記載の技術の一実施形態によるセンサの図である。
図10e】本明細書に記載の技術の一実施形態によるセンサの図である。
図10f】本明細書に記載の技術の一実施形態によるセンサの図である。
図11a】本明細書に記載の技術の別の実施形態によるセンサの図である。
図11b】本明細書に記載の技術の別の実施形態によるセンサの図である。
図11c】本明細書に記載の技術の別の実施形態によるセンサの図である。
図11d】本明細書に記載の技術の別の実施形態によるセンサの図である。
図11e】本明細書に記載の技術の別の実施形態によるセンサの図である。
図12】本明細書に記載の技術のセンサで実施形態に使用される可能性のある電極パッドの例である。
図13a】本明細書に記載の技術の一実施形態による出力結果の例であり、印加圧力が示されている。
図13b】本明細書に記載の技術の一実施形態による出力結果の例であり、印加圧力が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0095】
図中、適宜、同様の構成要素には同様の参照符号が使用されている。
【0096】
ここで、本明細書に記載の技術の一実施形態について説明する。
図1は、本明細書に記載の技術の一実施形態による筋電図システムの一実施形態の構成を概略的に示している。筋電図システムのこの実施形態は、主に腹筋、特に外腹斜筋と内腹斜筋の電気的活動の測定に使用することを意図している。例えば、この図に示す実施形態は、腹膜炎の診断検査中に腹部筋肉の電気的活動を検出するために使用することができる。しかし、他の骨格筋、特に表層筋肉の電気的活動を検出するために、同じまたは類似の筋電図システムの設計を使用することができることが理解されるであろう。
【0097】
筋電図システム100は、一組のセンサ104a~104dに接続された出力ユニット102を有する。筋電図システム100は、4つのセンサが示されているが、より一般的には、システム100は、意図された用途に適した任意の数のセンサを含むことができることが理解されよう。
【0098】
各センサは、図2に示すように、単一差動(SD)構成で配置された一つの電極対106を含む。電極は任意の適切な電極でよく、例えば、一実施形態における電極は1mmから15mmの間の最大寸法を有し、さらに本実施形態ではAg/AgCl電極である。例えば、電極は直径10mmの円形電極であってもよい。隣接する2つの電極106の電位を比較することにより、センサは被験者の皮膚の2点間の電位差を測定する。一般的に、この2点は、その点の皮膚の下にある筋繊維の方向と一致し、神経感応領域に対して同じ側にある必要がある。2点間の電圧差をとることで、SD電極構成はコモンモード信号からの干渉を減らすことができる。モノポーラ(MP: Mono-Polar)構成等の他の電極構成と比較すると、SD構成はノイズに対する感度が低いが、表面および近傍のソースしか検出できない。したがって、SD構成は主に表層筋肉の電気的活動を測定する場合に適する。MPやダブルディファレンシャル(DD: Double Differential)を含む他の電極構成も使用できる。
【0099】
SD構成では、電極106は、図2に示すように電極間距離(IED)だけ離れている。IEDが10mmを超えると、SD構成によって導入されるバンドパス空間フィルタのために筋電図信号が歪む可能性がある。また、IEDを小さくすると、センサ104a~104d間のクロストークが減少する。その結果、IEDは一般に小さい方が好ましい。しかし、IEDが小さいと、検査される筋肉の長さが短くなるため、一般に筋電図信号の振幅も小さくなる。これは、センシング部位に皮下組織(脂肪など)が多い患者に関しては、筋肉までの距離が長くなり、表面筋電図信号の振幅が小さくなる可能性があるため、特に問題となる可能性がある。
【0100】
したがって、IEDは、一般に、3mmから50mmの範囲内がよく、一実施形態では、3mmから40mm、3mmから20mm、または3mmから5mmの範囲内がよい。一実施形態では、各センサは固定されたIEDを有することができる。
【0101】
代替案として、センサ104a~104dは、適切なIEDを選択することができるように、離間距離が可変な電極対106を含むことができる。この場合、IEDは、一実施形態において、センサが使用されているときにはIEDを固定してもよいようなIED値範囲で固定することができる。
【0102】
さらに別の代替案では、センサ104は、複数の電極対106を取り外しすることができるように構成することができ、異なるIEDを有する電極対106をセンサに取り付けてもよい。例えば、電極対106は電極パッド上に設けられてもよく、センサ104は、電極パッドを保持するのに適した台を有するハウジングを有することができる。
【0103】
使用中、各センサ104は、例えばセンサの一部を形成する粘着パッドや他の適切な手段を用いて患者の身体に取り付けられる。図3は、腹膜炎の検査中のセンサ構成例を示す。センサ104a~104dは、左右の外腹斜筋と内腹斜筋の電気的活動を同時に検出するために使用される。センサ104a~104dの各々は、図3に示す腹部四分割領域の一つ、例えば位置304a~304dに配置することができ、一方、基準電極110は検査領域から離れた位置、例えば位置310に配置することができる。
【0104】
出力ユニット102は、センサ104a~104dに接続され、センサ104の各々によって取得された測定値を記録し、これらの測定値を示す出力を提供する。出力ユニット102は、センサ104a~104dから出力されたsEMG信号の処理に適したソフトウェア102aを含むことができる。該出力ユニットは、出力結果を表示するためのディスプレイ102bを含んでもよいし、モニタ、モバイル機器、テレビ等の外部表示装置に結果を送信してもよい。
【0105】
システム100は、検出された信号を処理するための一つまたは複数のハードウェア構成要素114をオプションで含むことができる。ハードウェア構成要素114の各々は、センサ104a~104dまたは出力ユニット102に統合されてもよいし、センサ104および出力ユニット102とは独立して設けることもできる。
【0106】
システム100は、オプションとして、右脚駆動(DRL)回路112を含むことができる。DRL回路112は、システムのコモンモード電圧を反転し、反転されたコモンモード電圧を、上述のように被験者の身体にも接続される基準電極110を介して電極106にフィードバックする。前記反転されたコモンモード電圧は、単一の基準電極110を介してすべてのセンサ104にフィードバックすることができる。その結果、一つの実施形態では、DRL回路112は、複数のセンサのうちの一つのセンサ(例えば、図1に示すようにセンサ104d)からの信号のみに基づいてコモンモード電圧を反転させる。DRL回路112は、生体電位信号を減衰させることなく電力線干渉(PLI)を低減し、それにより信号ノイズをさらに低減するので有利である。PLIを低減するために、DRL回路112に加えて、またはDRL回路112の代わりに、ノッチフィルタまたはスペクトル補間等の他の構成要素または技術をシステム100に組み込むことができる。
【0107】
システム100は、オプションで、一つまたは複数の力センサまたは圧力センサ108を含むことができる。力センサ108は、抵抗センサなど、被験者に加えられる力を測定するための任意の適切なセンサにすることができる。一実施形態では、センサは、0~100Ib(0~45.5kg)の体重に相当する加えられた力を測定するように動作することができる。適切な力センサの非限定的な一例はFlexiforce A201抵抗式力センサである。力センサ108は、被験者に加えられる力を測定するためにセンサ104から独立して使用することができ、あるいは、力センサはセンサ104の一つまたは複数に結合できてもよい。例えば、力センサ104a~104dはセンサ104cに取り付けられ、センサ104cに加えられた力を測定することができる。
【0108】
一つの実施形態における力センサ108は、所望の圧力が被験者に加えられたことを示すために、光等によるフィードバックをユーザに提供する。
【0109】
電極対によって検出された表面筋電図(sEMG)信号は、一連の処理ステップを経て処理されることができる。これらのステップは、ハードウェア処理ステップおよびソフトウェア処理ステップを含むことができる。図4のフロー図400は、システム100を用いた典型的な表面筋電図検査において適用することができる処理ステップの実施形態を示す。しかし、これらのステップは、一般に、任意の順序で出て来てもよく、かつ/または、スキップしてもよく、一方、追加の処理を実行してもよいことが理解されるであろう。
【0110】
最初のステップ402では、センサ104が、検査対象となる筋肉の電気的活動を検出する。この検出は、例えば各電極からの電気信号間の差を決定することにより、一つの電極対の電極間の電位差を検出することを含む。この検出された電位がsEMG信号を形成し、時間とともに変化する。
【0111】
ステップ404では、電極によって検出されたsEMG信号が、差動増幅器等のフロントエンド増幅器によって増幅される。このような差動増幅器は、ステップ402で説明したように、各電極からの電気信号間の差を決定するためにも使用することができる。前記フロントエンド増幅器は、アナログ・デバイスAD621増幅器など、信号に十分な利得を与えるように動作可能な任意の適切な増幅器である。表面筋電図検査の信号は、典型的には0.1μV~2mVの範囲であり、したがって、典型的なデジタイザの入力範囲に入るようにピーク・ツー・ピーク振幅を増大させるために増幅されることが有益である。デジタイザの入力範囲は±5V程度であることが多いため、一つの実施形態では使用される合計利得は少なくとも1,000である。しかし、好ましい利得は予想される信号振幅によって変わり、結局は検査される筋肉によって変わる。例えば、腹斜筋肉のような腹部筋肉は通常、呼気中に約5μV~約10μVの表面筋電図信号を生成するため、検査によっては100,000以上の利得が使用されることがある。
【0112】
信号の初期増幅406に続いて、前記信号は不要な周波数やノイズを除去するために処理される。例えばモーションアーティファクトや電極のスライディングに起因するノイズは、一般的に比較的低い周波数範囲にある。そのため、ステップ406では、ハイパスフィルタを使用して、低周波数の信号を減少させる、または、理想的には除去する。ハイパスフィルタのカットオフ周波数は、10~20Hzの範囲とすることができる。本実施例では、システム100はカットオフ周波数が約16Hzのハイパスフィルタを利用している。
【0113】
第2のフィルタリングステップ408では、ローパスフィルタを使用して、約450Hz以上の周波数の信号を除去する。一般に、腹部筋肉の場合、関連性のある最も高い筋肉の高調波は400~450Hzの範囲にある。したがって、より一般的には、ローパスフィルタのカットオフ周波数は、400Hzと500Hzの間、または実施形態では400Hzと450Hzの間とすることができる。これらの値は単なる例示であり、最も高い関連筋ハーモニクスの周波数は、検査される筋肉に依存することが理解されよう。一つの実施形態では、ローパスフィルタとハイパスフィルタの両方が少なくとも2次フィルタである。フィルタは、10~20Hz未満および/または400~500Hz以上の周波数をカットオフするように動作可能な、任意の適切なローパスフィルタおよびハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタとすることができる。適切なフィルタの非限定的な一例は、サレン・キー・フィルタ、特に2次のサレン・キー・フィルタである。
【0114】
周波数フィルタリングステップ406および408に続いて、sEMG信号は、第2の増幅ステップ410でさらに増幅される。第2の増幅器は、テキサス・インスツルメンツ社の TL072CP等、十分な利得を適用するように動作可能な任意の増幅器とすることができる。有益なことに、第2増幅ステップ410を含むことは、第1増幅ステップ404においてより低い利得を適用することができることを意味し、それにより信号の飽和を回避または低減することができる。この例では、第1増幅ステップ404は100の利得を適用し、第2増幅ステップ410は101の利得を適用し、ステップ404と410にわたって合計10,100の利得を適用する。
【0115】
この例では、フィルタリングステップ406と408は、増幅ステップ404と410の間に発生するように示されているが、代わりに、信号の増幅の前または後に発生してもよいことが理解されよう。同様に、フィルタリングステップ406と408の順序を逆にし、ローパスフィルタリングステップ408をハイパスフィルタリングステップ406の前に発生させてもよい。
【0116】
ステップ412では、sEMG信は、任意の適切なデジタイザ、たとえばA/Dコンバータを使用してデジタル化される。検出されたsEMG信号は通常アナログ信号である。そのため、これらのsEMG信号のデジタル化は、出力ユニット102のソフトウェア102a等のソフトウェアによる次の信号処理を支援する。エイリアシングを避けるためには、ナイキストサンプリングの定理に従って、最小サンプリング周波数は信号の最大周波数の2倍より大きくなければならない。したがって、一般に、デジタイザは1000Hz以上のサンプリング周波数を有することができる。例えば、デジタイザは2048Hzのサンプリング周波数を持つことができる。
デジタル化の後、デジタル化されたsEMG信号にさらに次の処理ステップを適用することができる。
【0117】
ステップ414と416では、デジタル化された信号は、ノイズと不要なアーティファクトをさらに低減するために、デジタルフィルタによってフィルタ処理される。一実施形態におけるハイパスフィルタとローパスフィルタは、ハードウェア・アナログ・ハイパスフィルタとローパスフィルタとほぼ同じカットオフ周波数を有する。ステップ414と416は、単一のバンドパスフィルタによって、一つの実施形態では2次バンドパスフィルタによって、または別々のハイパスフィルタとローパスフィルタによって実行することができる。
【0118】
ステップ418では、PLIを除去するためにノッチフィルタが適用される。一実施形態では、ステップ418は、電力線周波数とその高調波を中心とした複数のノッチフィルタを含む。例えば、電力線周波数が50Hzの地域では、ステップ418は、50Hzを中心とするノッチフィルタと、オプションでその一つまたは複数の高調波である100Hz、150Hz、200Hz、250Hz、300Hz、350Hzを中心とするノッチフィルタを含むことができる。同様に、電力線周波数が60Hzの地域では、ステップ418は、60Hzを中心とするノッチフィルタと、任意で120Hz、170Hz、240Hz、300Hz、360Hz、420Hzの一つまたは複数の高調波を中心とするノッチフィルタとを含むことができる。但し、多くのノッチフィルタは筋電図信号の波形を変化させるが、本明細書に記載の技術では、多くの用途で関心のある特性は波形よりもむしろ信号の振幅であるため、この欠点は差し引いて考えられる。
【0119】
ステップ420では、さらに、sEMG信号を、ウェーブレットフィルタリング技術を用いて処理し、例えば心電図(ECG)信号(通常、数μV程度)からのアーティファクトおよび干渉を低減する。一例では、ウェーブレットフィルタリングはドーベシー4(DB4: Dauechies 4)・ウェーブレットを利用し、本処理は、筋肉からの弛緩信号の最大振幅に基づいて設定された閾値を超えるレベル4、5、6および7のすべての詳細係数をゼロにすることを適用することを含む。前記閾値は、例えば、この最大振幅より約10%上にすることができる。
【0120】
信号のノイズをさらに低減するために、一つの実施形態では、ウェーブレット分解のレベル1とレベル2の詳細係数がゼロにされる。これらの詳細係数は、通常、450Hz以上の高周波帯域幅成分を含む。従って、ウェーブレットフィルタリングは、ローパスフィルタのカットオフ周波数以上に残る望ましくない高周波信号も低減するので有益である。
【0121】
前記処理の後、出力ユニットはステップ422で結果を出力する。一実施形態における出力ユニットは、センサ104a~104dの各々について個別の出力を提供する。例えば、該出力は、各センサからの処理されたsEMG信号を時間に関して示す4つのグラフを含むこともできる。あるいは、前記出力には、例えば、センサ104a~104dの各々によって検出されたsEMG信号の平均値または最大値を表す数値を含むこともできる。さらに別の選択肢として、出力ユニットは、センサ104a~104dによって検出された生のSEMGデータを、追加処理なしで出力してもよい。
【0122】
各処理ステップ404~422は、ハードウェアによって実行されてもよいし、ソフトウェアによって実行されてもよい。図1の例示的なシステム100では、処理ステップ404~410(すなわちデジタル化前)はシステム100のハードウェア構成要素によって実行され、処理414~420(すなわちデジタル化後)は出力ユニット102のソフトウェア102aによって実行される。しかし、代替的に、任意のソフトウェア処理が、例えばセンサ104a~104dに設けられるソフトウェアによって実行されてもよく、センサ104a~104dは、表示に適するように処理された信号を出力してもよい。
【0123】
図5は、上述のステップ404~422の実行に適したハードウェア構成要素を示す回路図の一例である。各構成要素は、センサ104または出力ユニット102の一部を形成してもよいし、さもなければセンサ104と出力ユニット102の間に配置してもよい。一実施形態では、ステップ404~410の各々を実行するための別個の構成要素が、センサ104a~104dの各々に対して設けられる。一つの実施形態では、デジタイザ412も、センサ104a~104dの各々に対して(内部に)設けられる。あるいは、単一のデジタイザ410を、すべてのセンサ104a~104dから受信された信号をデジタル化するために設けることができる。オプションで、システム100は、デジタル化の前に、電力網によって電力が供給される装置から本回路を絶縁し、それによって本回路、ユーザおよび被験者を保護するための絶縁ステージをさらに含むことができる。該絶縁ステージは、本回路を絶縁するために動作可能な任意の適切なデバイス、例えばテキサス・インスツルメンツ社のISO122とすることができる。
【0124】
増幅器、フィルタ、アイソレーターに加え、図5にはDRL回路112の例が示されている。PLIに加え、アンプなど多くのコンポーネントがコモンモード電圧を出力する。したがって、システムからのコモンモード電圧を反転し、反転されたコモンモード電圧を、基準電極110を介して電極106にフィードバックするDRL回路112を設けることは有益である。上述のように、反転されたコモンモード電圧は、単一の基準電極を介してすべてのセンサ104にフィードバックすることができる。結果的に、一つの実施形態では、複数のセンサ104のうちの一つだけがDRL回路112を含めばよい。
【0125】
この例のシステム100では、電源電圧Vsは、2個の9Vバッテリで供給され、±9Vの範囲となる。第2の電源電圧Vs2はデジタイザから供給され、アイソレーション・ステージに±15Vを供給する。しかし、主電源のような他の電源を代わりに使用してもよい。
【0126】
システム100の出力例を図6に示す。
図6は、2人の被験者の緊張時の腹部4象限の出力結果の例を示す。この例では、出力は10秒間の検査中に収集された処理データを含む。該データは、適切な出力を提供するために、当業者には公知の任意の方法で処理することができることが理解されよう。例えば、出力は、信号の平均振幅又は最大振幅を表す数値を含むこともできる。一実施形態では、出力は各センサ104の個別の結果を含むが、代わりに単一の平均化された結果を提供してもよいし、各センサ104からの結果を単一のグラフに重ね合わせてもよい。
【0127】
すべてのセンサから同時に結果を得ることで、本明細書に記載された技術は、信号を比較するための、より正確な手段を提供するために有益である。例えば、被験者2の左内斜部のセンサからの信号は、他のセンサからの信号と比較して異常に低い。これは、被験者の左内斜部に問題があることを示している可能性があり、あるいは、より大きな可能性として、センサの位置が悪いために良くない結果が出てきたことを示している可能性がある。本明細書に記載の技術によって提供されるように、各センサの同時点の生の信号を比較する能力がなければ、通常、測定された振幅は、測定によって、さらには複数の筋肉の個々の収縮によって変化するため、センサの配置不良を特定することは不可能であろう。さらに、センサの再配エラー置が不要であるため、信号をより速く、被験者に不快感を与えることなく取得することができ、信号の質を損なう可能性のある被験者の動きなど、センサの再配置に関連する源を誘引することもない。システムの感度は、被験者が動くと信号が乱れ、信号の解釈が難しくなることを意味する。したがって、センサの再配置は、被験者の動きのアーティファクトのリスクを増加させる。
【0128】
さらに、複数のセンサを使用することで、いずれか一つまたは複数のセンサを被験者の基準信号として使用できるため、信号処理とその後のデータの解釈が容易になる。したがって、システムはセンシング位置を比較することができ、正常な筋肉反応と病的な筋肉反応の違いの解釈と視覚化を支援する。この違いは、従来のシステムとは対照的に、生でリアルタイムに示すことができる。
【0129】
さらに、複数のセンサを使用することで、電極の直径とIEDを各センシング位置に最適化することができ、各位置での詳細な評価を支援する。複数のセンサを使用するため、IEDは明確に定義された領域の筋肉活動を検出するために必要なだけ短くすることができる。対照的に、センサが一つのシステムでは、より大きなIEDを持つ電極が必要となる。複数のセンサによって可能になる本明細書に記載された技術の、より小さなIEDは、感知領域内のより小さな変化の検出を支援する。このことは、本明細書に記載された技術によるセンサが、不随意活動から生じる筋肉の電気的活動の変化を検出するシステムでのセンサ間のライブ比較に必要な十分の感度を有することを意味する。さらに、IEDを小さくすることで、隣接する筋肉の電気的活動などによるノイズを低減することができる。
【0130】
さらに、複数の測定ポイントを同時に使用することで、異常値や信号エラー等の異常の検出を支援する。
従って、複数のセンサを使用することで、信号ノイズやその他の異常の区別だけでなく、随意筋活動と不随意筋活動の区別が容易になり、病気による病的活動の検出能力が向上する。
【0131】
図7は、本明細書に記載の技術の筋電図システムを用いて腹部筋肉の電気的活動を測定するプロセスの一例を示すフロー図700である。以下のステップは、例えば、腹膜炎の診断を支援するための検査中に適用することができる。ただし、本システムは腹部筋肉の電気的活性を測定することに限定されるものではなく、以下のステップのいずれか一つまたは複数を任意の筋肉、特に表層筋肉の電気的活性を測定するために適用することができる。本方法の各段階において、検出された筋電図信号が処理され、上述のような結果が出力される。
【0132】
ステップ702では、複数のセンサと基準電極を、例えば粘着パッドを用いて被験者に装着する。正確で安定した測定値を得るためには、電極と皮膚のインピーダンスが低いことが重要である。したがって、ステップ702では、電極と皮膚の間に導電性ゲルを塗布してインピーダンスをさらに下げたり、研磨ペーストで皮膚をこすって死んだ細胞を除去したり、皮膚の厚さを最小限にするなど、皮膚の準備を適切に行うことができる。
【0133】
ステップ704では、筋肉が弛緩した状態(すなわち、緊張または収縮していない状態)で測定が行われる。この状態では健康な被験者には筋肉活動がないため、どのような活動も残存ノイズの結果であり、したがってステップ704は検査ノイズのベースラインを提供することができる。例えば、腹部筋肉の場合、このステップの間、ノイズは0.5~2μVの範囲内になることがある。しかし、腹膜炎に罹患している患者の安静時の活動は、随意収縮中の健常者に見られる活動のほぼ22%に等しい。したがって、リラックスした健常者の信号が0.5~2μVの範囲であるのに対して、想定される腹膜炎の号の範囲は約30~70μVの間で変化する。この違いは、本実施形態のシステムの感度で容易に識別することができる。
【0134】
ステップ706では、随意筋収縮中に測定が行われる。腹部筋肉の場合、検出される振幅は通常25~175μVの範囲である。しかし、測定された随意収縮強度は、被験者、収縮部位、測定期間、電極位置によって異なることに注意すべきである。
【0135】
ステップ708では、被験者に腹部筋肉の収縮と弛緩を交互に行わせることにより、インターバル測定を行うことができる。腹膜炎に罹患している被験者の場合、検出された信号は、緊張状態から弛緩状態に移行する際に、残留活動(例えば振幅)のより高いレベルおよび/または検出された活動の振幅のより長い減衰期間を示す可能性がある。したがって、信号の振幅の減衰パターンは、いくつかの検査において有用な指標を提供する可能性がある。
【0136】
ステップ710では、被験者による意識的な深呼吸の期間中に測定を行うことができる。健康な患者の場合、深呼吸は約10μVの活動電位を生成する可能性があり、これは上述のように0.5~2μVのシステムノイズの上に可視化される。対照的に、腹膜炎に罹患している患者では、腹部筋肉のベースライン弛緩活動が高いため、呼吸活動は見えにくい。
【0137】
ステップ712では、咳の間の測定値が記録される。咳活動は、典型的には200~300ms持続し、100~500μVの間の振幅を有する。咳の期間は、出力結果から視覚的に特定することができる。腹膜炎の患者は、最初の咳活動の後200msの間、電気的活動が残存することがある。
【0138】
ステップ714では、一つまたは複数のセンサに力または圧力が加えられ、対応する信号が反対側のセンサで観測される。例えば、被験者の右手に圧力が加えられると、筋肉の緊張に関連する電気的活動が、解放時に左手の検出器で観察されることがある。圧力の印加は、適切な圧力が印加されたときを検出するように構成された力センサ108の使用により補助することができる。力センサ108は、被験者に加えられた圧力の時刻、持続時間および/または大きさ示度情報を出力ユニットに提供してもよく、出力ユニットはこの示度情報を出力結果に含めてもよい。オプションとして、力センサ108は、一つまたは複数のセンサ104に取り付けられてもよい。
【0139】
上述のように、様々な検査704、706、708、710、712、714は、様々な動作(弛緩呼吸、腹部緊張、深呼吸、咳、および圧力印加など)がそれぞれ腹膜表面を刺激し、腹膜炎に罹患している患者内に不随意の筋肉収縮を引き起こすことができるため、腹膜炎を示す筋肉反応を引き起こす可能性がある。図7のプロセスでは複数の検査706、708、710、712、714を設定しているが、これらすべてを実施することもできるが、代替的に(のみ)図7に設定した検査の一つまたは複数を実施することも、腹膜表面を刺激する他の検査を実施することもできる。
【0140】
図8および図9は、腹膜炎のような状態の診断を支援するために出力信号がどのように使用されるかの例を示している。図8では、内腹斜筋と外腹斜筋(IO: Internal ObliqueとEO: External Oblique)の測定による腹膜炎の仮想信号が、同じ筋肉の測定による健常な呼吸信号と比較されている。上述のように、健康な被験者からのsEMG信号は、システムノイズと同じオーダー(約0.5~2μV)であることが予想され、深い呼吸運動中でさえ、仮想の健康な患者からの信号が10μVを超えることはほとんどない。対照的に、腹膜炎に罹患している患者からの仮想sEMG信号は、20~50μVの範囲になると予想される。その結果、弛緩期間中に例えば30~40μVの閾値を超えるsEMG信号があれば、腹膜炎の兆候を示している可能性がある。同様に、弛緩期間中に20μVを超える期間が長く続くと、腹膜炎の診断に使用できる別の徴候が得られる。
【0141】
図9は対照的に、約0.2秒から始まり約0.4秒で終わる咳信号の測定値を示している。健康な患者の場合、測定された咳信号はほとんどすぐに終了し、残存活動はほとんどない。しかし、腹膜炎患者の仮想的なsEMG信号では、咳の終了後約200msの間、sEMG信号が残存活動を示すと予想される。したがって、不随意性筋肉収縮(咳など)または随意性筋肉収縮(緊張など)後の残存活動は、腹膜炎のさらに別の指標にできる可能性がある。
【0142】
図13aは、健康な患者のセンサからのsEMG出力信号1200の例と、センサユニット内に統合された力センサ(sEMG測定中に力が加えられた)から出力された力信号1201を時間に対して示したグラフである。
【0143】
グラフから、圧力が加えられた時間1202と解放された時間1204を見ることができる。加えられた圧力の大きさ1206も見ることができる。力は1秒間の間加えられているが、必要であれば、力はより長い時間加えられる。
【0144】
あるいは、力センサの出力全体を時間に対応させてグラフに表示する代わりに、力が加えられたおよび/または解放された時間の表示を行うこともできる。また、力が加えられたタイミングや大きさに関する他の表示もすることができる。
【0145】
図13aに示す例は、健康な患者1200について測定されたsEMG信号であり、この場合、圧力印加によってベースライン筋肉活動以上の残存筋肉活動は生じない。
図13bは同様に、健康な患者のsEMG信号1200と、加えられた力1201を示している。図13bはさらに、腹膜炎患者の仮想的なsEMG信号1203を示す。図13bに示すように、腹膜炎患者では、圧力印加中に筋肉活動が存在し、圧力印加後に残存筋肉活動が存在する可能性がある(図9の咳の後に見られる残存活動と同様)。しかし、咳テストと比較すると、圧迫を加える利点は、圧迫を加えた(および解放した)特定の時間を決定することができるため、腹部の筋肉がいつ誘発されたかを解釈しやすいことである(一方、咳が終了した時間を決定することは困難である)。
【0146】
図13aおよび13bに示すデータでは、本明細書で論じるような統合圧力センサによってsEMG信号を検出しているセンサに圧力が加えられている。本明細書で説明するように、センサは、センサに圧力を加えることによって生じる可能性のあるsEMG信号の干渉(例えば、ノイズまたは他のアーティファクト)を低減するように構成することができる。その結果、例えば図13aに示すように、このような構成では、圧力印加がsEMG信号の品質にほとんど影響を及ぼさない可能性がある。図13bに示すように、(本明細書に開示するような)実施形態では、圧力の解放は、予想される残存筋肉活動の持続時間よりも(著しく)速い。sEMG信号が圧力印加によって影響を受ける場合、迅速な圧力解放は(継続的な)障害を回避するのに役立つ。
これらの徴候は、単なる単一の筋肉の状態についての例であり、本明細書に記載された技術は、代わりに、それぞれが異なるまたは同じsEMG信号特性を示す可能性のある多数の他の状態の診断を支援するために使用できることが理解されるであろう。
【0147】
図10a-10eは、単一のセンサユニット1000の様々な図を示す。図10aは、上面1006と下面1004を有するセンサユニット1000の側面図である。センサユニット1000は、ケーブル1002を介して出力ユニットに接続されている。ケーブル1002は、出力ユニットからセンサ1000に電力を供給し、また、測定されたsEMG信号をセンサユニット1000から出力ユニットに伝送する。
【0148】
図10bは、センサユニット1000の上面図である。センサユニット1000は、統合型力センサ1008を含む。力センサ1008は、例えば、押されたときに加えられた力の示度情報を提供することができるボタン型でよい。
【0149】
図10cは、センサユニット1000の底面図である。センサユニット1000は、一つの電極対1010を有する取り外し可能な電極パッド1012を含む。使用時、センサユニット1000は、電極対1010が被験者の皮膚と電気的に接触するように配置される。電極パッド1012は、一つの実施形態では、センサ1000を被験者に固定するための粘着層、および/または、使用時に電極-皮膚接触インピーダンスを低減するための電極対1010上の導電層を含むことができる。
【0150】
図10dは、電極パッド1012を取り外したセンサユニット1000の底面図である。センサユニット1000は、電極パッドの接点1016を挿入するためのスロット1014を含む。
【0151】
図10eは、電極パッド1012の一例を示す。電極パッドは、2つの電極1010のそれぞれの中心間で測定される電極間距離(IED)だけ離れた電極1010と、電極パッド1012をセンサユニット1004に取り付ける際にスロット1014に挿入するための接点1016とを含む。接点1016は、電極パッド1012をセンサユニット1000に固定すると同時に、電極1010によって検出されたsEMG信号を出力ユニットによってさらに処理および/または表示するために、センサユニット1000に伝送する手段を提供する。
【0152】
図10fは電極パッド1012の上面図であり、電極パッド1012をセンサユニット1004に取り付ける際にスロット1014に挿入するための接点1016と電極1010を含む。
【0153】
図11a-11eは、本明細書に記載の技術の別の実施形態に従った単一のセンサユニット2000の様々な図を示す。図11aは、上面2006と下面2004を有するセンサユニット2000の上面斜視図であり、下面2004は使用中の被験者の皮膚に向かって置かれている。センサユニット2000は、ケーブル2002を介して出力ユニットに接続されている。ケーブル2002は、出力ユニットからセンサ2000に電気を供給し、またセンサユニット2000から出力ユニットに伝送する。
【0154】
センサユニット2000は、センサユニット2000の上面2006に設けられた、力が加えられるボタン2017を有する一体型の力センサ2008を有しており、センサユニットが患者の皮膚上に置かれると、加えられた力が使用中の患者に伝達される。上述のように、力センサは、押されたときに加えられた力の示度情報を提供する。上述のように、力センサは、正しい圧力が加えられていることを示すために、センサユニット上の一つまたは複数の光のような視覚的フィードバックを提供することができる。あるいは、視覚的フィードバックは、例えば出力ユニットに結合されるディスプレイを介して提供することもできる。代替的に(または追加的に)、音声および/または触覚フィードバック等、他のタイプのフィードバックが提供される可能性もある。
【0155】
図11bは、センサユニット2000の底面図である。図11cおよび図11dは、センサユニット2000の分解斜視図である。図11eは、センサユニットの断面図である。
【0156】
図11bから分かるように、センサユニット2000の底面2004は、例えば一つの電極対パッドの形態で(電極パッドのそれぞれの対応する相手側コネクタに接続することによって)一つの電極対との電気的接続を形成するための一対のコネクタ2014を有する。あるいは、単一のパッド(2つの電気的接続を有する)を一対のコネクタ2014に取り付けることもできる。電極パッド(複数可)は、単回使用で使い捨てであってもよい。
【0157】
センサユニット2000によって受支されるように構成された電極パッド(複数可)は、上述したタイプのものであってもよく、例えば、電極パッドを被験者の皮膚に固定するための粘着層、および/または、使用時に電極-皮膚接触インピーダンスを低減するための導電性(例えばゲル)層を備えることもできる。
【0158】
図12は、本明細書に記載された技術に従って、例えばセンサユニット2000と組み合わせて使用することが可能な電極パッド3000の例を示している。電極パッドは、センサとの電気的接続を形成するためのコネクタ3004をそれぞれ含む一つの電極対3001を有する。コネクタは、突出嵌合コネクタでよい。電極には、中心間距離(電極間距離、IED)が定義される。
【0159】
図12の電極パッド3000も一対の導電性ゲル層3002を含み、各導電性ゲル層3002はそれぞれの(下層の)電極3001に接触している。図示の例では、各導電性ゲル層3002はそれぞれの電極3001と同じ大きさである。そのため、電極間の間隔は「ゲル間隔」に相当する。あるいは、導電性ゲル層は電極と比較して異なるサイズであってもよい。図12の電極パッド3000はまた、電極3001とゲル層3002の範囲を越えて横方向に延びる基材層(この例では、粘着フォーム)3003を含み、基材層3003は電極パッドの全体サイズ(パッド長およびパッド幅)を規定する。
【0160】
図12に示す例は、一つの電極対を有する電極パッドである。本明細書で説明するように、各々が単一の電極を有する一つの電極対パッドを代わりに使用することもできる。
【0161】
図11a-11eに戻って、センサユニット2000のコネクタ2014は、出力ユニットによるさらに次の処理および/または表示のために、電極によって検出されたsEMG信号をセンサユニット2000に伝送する手段を提供する。図示のコネクタ2014は、嵌合・「スナップフィット」コネクタタイプである。しかし、所望に応じて、センサユニットと電極との間の、他のタイプのコネクタまたは他のタイプの電気的接続を使用することもできる。例えば、嵌合コネクタを設ける代わりに、導電性接着剤を使用して、電極または電極パッド(複数可)との電気的接続を確実に提供することができる。この場合、電極(電極パッド)上のコネクタは平らであってもよい。
【0162】
図11a-11eに示す実施形態では、コネクタ2014は位置が固定されている。しかしながら、コネクタは、必要であれば、例えば、異なる電極間隔および電極(または電極パッド)サイズへの対応を補助するために、移動可能にできる。
【0163】
センサユニット2000の底面2004は、一つの電極対(電極パッド(複数可))の少なくとも一部を受支するための凹部2015を構成する。図示の実施形態では、コネクタ2014は凹部2015に設けられている。
【0164】
凹部2015は、(少なくとも)電極(電極パッド)への電気接続(インターフェース)が凹部内にほぼ収容されるように(例えば、図12に示すコネクタ3004が凹部内に収容されるように)構成される(例えば、深さがDの大きさを有する)。この点で、凹部は、センサユニット2000への電気的接続を形成する電極の突出部または嵌合部にもかかわらず、電極(電極パッド(複数可))が実質的に平坦に置かれることを可能にする。電極(例えば、図12の電極3001)は、凹部2015内に横方向に篏合してもよく、また、電極がセンサユニットの底面2018と概略同一平面になるように、凹部の深さD内に概略収まることができる。電極と一緒に提供されるゲル(例えば、ゲル層3002)もまた、凹部2015内に横方向に嵌合することができ、凹部2015内に大体収まることができる。
【0165】
一つの実施形態における電極パッド(複数可)(例えば、電極パッドの基板層3003)は、電極パッドが凹部を越えて(横方向に)延び、センサユニットの底面2018に対して安置するように、凹部よりも大きなサイズ(面積)を有する。この点で、電極パッド(複数可)は、センサユニット2000の底面2018によってほぼ全面が(電極パッド(複数可)がセンサユニット2000の底面2018を越えて延びないように)支持されてもよい。これは、ボタン2017が押されたときに均等に圧力を加えることを助ける。あるいは、センサ(底面2018)の設置面積を超えて延びる、より大きな電極パッド(複数可)を提供することもできる。
【0166】
あるいは、電極パッド(複数可)は、凹部2015内に完全に収まってもよく、例えば、電極パッド(複数可)がセンサユニットの底面2018とほぼ同一平面に置かれ、従って、患者の皮膚との間の接触を維持できるようにすることができる。
【0167】
凹部2015を設けることは、電極によって得られるsEMG信号の品質に影響を及ぼす可能性のある電極(電極パッド)上の不均一な押圧力を防止するのに役立つことができる。電極パッドが導電性ゲルを含む(または導電性ゲルと組み合わせて提供される)場合、凹部は、導電性ゲル上の不均一な圧力を防止することにも役立ち、凹部がなければ、sEMG信号の品質に影響を与える可能性のあるゲルの移動または漏れを引き起こす可能性がある。ゲルの動きや漏れの可能性(程度)を(さらに)減らすために、比較的粘度の高い導電性ゲルを使用することもできる。
【0168】
代替的に、センサユニットと電極(電極パッド)の間に平坦な電気的接続を設けることもでき、その場合は凹部を省略することができる。
【0169】
図11c-eから分かるように、本実施形態では、力センサ2008はボタン2017を有し、ボタン2017はボタン2017の下に配置されたセンサ2009と連通する(接触する)。ボタン2017は、センサ2009と係合し、ボタンに加えられた圧力をセンサに伝達する係合部材2011を含むことができる。センサ2009は、加えられた圧力に応答して(かつ、圧力に比例して)電気信号を生成する。電気信号は、センサユニット2000によって処理されてもよく、および/または、ケーブル2002を介して出力ユニットに伝送されてもよい。
【0170】
図示のセンサ2009はロードセルであり、(ボタン2017に加えられた圧力がセンサ2009に伝達された結果)加えられた荷重に応じて電気信号を発生する。ロードセルは、加えられた荷重(圧力)に応じて変形し、荷重(圧力)が取り除かれると元の形状に戻るように構成されている。一実施形態におけるロードセルは、ロードセルの変形に応答して電気信号を生成する一つまたは複数の一体型ひずみゲージを備えた金属製の本体を有する。あるいは、ロードセルは他の適切かつ所望の材料で作ることもできる。また、他のタイプの力(圧力)センサを使用することもできる。
【0171】
本願出願人は、ロードセルに接触したボタン2017の使用によって、センサユニット2000を介して患者に加えられる圧力を測定するための比較的堅牢で信頼できる機構を提供することを発見した。この配置はまた、圧力解放に対して感度があり、かつ測定することができる。また、使用中は比較的堅牢で、可動部品が少ないため、センサユニット2000の製造において組み立てが容易である。代替策として、ピエゾ抵抗力センサや圧電センサなど、他の力センサを使用することもできる。
【0172】
ボタン2017とセンサ2009との間の緊密な接触を確実にするために、ボタン2017とセンサ2009とは、非導電性の接続(例えばプラスチック製のネジ)によって結合することができる。あるいは、他の結合手段が提供されるか、または結合手段が提供されないこともある(例えば、ボタンが単にセンサ上に載置される、および/またはセンサに係合する場合等)。
【0173】
センサユニット2000は、(装着時の)電極から受信したsEMG信号を処理するための回路と、力センサ2009からの信号を処理するための回路(一体または別々の複数回路)を有する。図11c-11eに示すように、センサユニット2000は、電極および力センサ2009からの信号を処理するための各種処理素子(回路)2007を含む(取り付けた)プリント基板(PCB)2005を備える。電極はコネクタ2014を介してPCB 2005に取り付けられ、力センサ2009も該PCBに取り付けられている。一つの実施形態では、センサユニット2000は、電極から受信したsEMG信号の必要なアナログ処理(例えば、増幅、ハイパスフィルタおよび/またはローパスフィルタの適用等)を実行するように構成され、処理されたsEMG信号のデジタル化(アナログ-デジタル変換)を実行するように構成される。センサユニット2000は、力センサ2008から受信した信号のデジタル化も行う。センサユニット2000は、デジタル化されたsEMG信号と力センサ信号を、ケーブル2002を介して出力ユニットに送信するように構成される。
【0174】
力センサ2008と電極を前記PCBに取り付け、前記PCBに処理回路を設けることで、センサユニット2000内には配線が不要(または最小)になる(データを出力ユニットに転送するケーブル2002は別として)。これにより、センサユニット2000内の可動部の数が減り、堅牢で組み立てやすい構成となる。さらに、ケーブルの使用を避け、センサユニット2000内の可動部品を減らすことは、電極からのsEMG信号との干渉を避ける役に立ち、したがって、(腹膜炎を示す腹部筋肉活動を測定するために検出されることが必要な)μVオーダーの小さな信号を可能にするのみ役立つことができる。
【0175】
さらに、アナログ信号処理を(PCB2005に設けられた回路を使用して)センサユニット2009で行うことにより、信号処理は患者の近くで行われる。また、アナログ信号はセンサユニット2009内を短距離の間だけ伝送され、センサユニットの外側にある外部プロセッサに伝送されないため、信号品質を向上させ、アーティファクト/干渉を回避する役に立つ。
【0176】
さらに、ケーブル2002はデジタル化された信号の伝送にのみ必要であるため(センサユニットの回路はEMG信号と力センサ信号のアナログ-デジタル変換を行うので)、デジタル化された信号を送信するように構成されたケーブルを使用することが可能であり、つまり、シールドされていない比較的細く柔軟なケーブルを使用することができる。(これに比べ、アナログ信号をセンサユニットから外部に伝送するためには、より太く、電磁気的にシールドされたケーブルが必要となる場合がある)。ケーブル2002がセンサユニット2000に入る箇所には、緊張を緩和する部品や材料、例えば接着剤等、を設けてもよい。
【0177】
複数(たとえば4つ)のセンサが、複数(たとえば4つ)の位置(たとえば患者の腹部の4つの異なる象限)で同時にsEMG信号を測定するために提供される実施形態では、各センサは、上記で図示され説明されたタイプのものとすることができる。このように、各センサは、(例えば、センサユニットのPCB上に設けられた処理回路によって)sEMG信号および圧力センサ信号の各センサ自体におけるそれぞれの処理を実行することができる。従って、複数のセンサを含むシステムは、分散処理を実行するように構成することができる。各センサ(センサユニット1000、2000)は、それぞれタイミングを調整する(それぞれのクロックを持つ)ことができる。センサのクロックは、グローバルクロック(例えば、出力ユニットによって維持される)に同期させることができる。これは、同期信号を(出力ユニットから、センサユニットを出力ユニットに接続するそれぞれのケーブル1002、2002を介して)センサユニットに定期的に送信することによって行われる。センサクロックは、センサが患者のsEMG信号の記録を開始する前に(同期信号を送信することによって)同期され、その後、当該患者の測定を実行している間、それぞれのクロックを使用し続けることができる。センサクロックは、異なる患者に使用する間、および/または同じ患者の異なる測定の間(同期信号を送信することにより)同期させることができる。
【0178】
本明細書で説明するように、センサを同じグローバルクロックに同期させることは、異なるセンサから同時に収集されたデータを(例えば、複数のセンサからの出力を同時に適切なディスプレイに表示することによって)比較することができるという利点があり、腹膜炎等の健康上の問題を示す可能性のあるsEMG活動を識別するために患者の異なる場所で測定されたsEMG活動を比較することを助け、本明細書で説明するインターバルテスト、呼吸テスト、咳テスト、または圧力テストのいずれかからのデータをすべてのセンサの場所にわたって同期させることを支援することができる。また、同期化によって、センサによって検出されたすべてのsEMG信号に関連して、圧力の印加と解放の時間を特定することができ、(圧力が印加されたセンサユニットだけでなく)任意のセンサ位置での圧力印加に応答するsEMG活動を特定するのに役立つ。
【0179】
センサユニット1000、2000へのデータ(例えば同期信号)の送信、およびセンサユニット1000、2000からの信号(例えばデジタル化されたsEMGおよび力センサ信号)の受信は、上記の実施形態では、ケーブル1002、2002を使用して行われるが、代替実施形態では、データは、無線通信手段(例えばWi-Fi、Bluetooth、または他の無線通信手段)によってセンサユニットに送信することができる(およびセンサユニットから受信することができる)。
【0180】
図11a-11eに示す実施形態では、センサユニット2000は、少なくとも力センサ2009とPCB2005を共に囲む上部ハウジング部品2001と下部ハウジング部品2003を含む剛性の筐体を有する。センサユニットのハウジング部品2001、2003は、例えばプラスチックのような、一つまたは複数の剛性の非導電性材料を含むことができる。
【0181】
センサユニットは、sEMG信号に影響を及ぼす可能性のある可動部間の機械的衝撃(「妨害」)および/または抵抗(摩擦など)を低減する(回避を補助する)ための一つまたは複数の機能を有することができる。例えば、センサユニットは、機械的可動部間の間隙(間隔)および/または機械的可動部の制動機能を含むことができる。例えば、図11eに示す実施形態では、センサユニットは、上部および下部ハウジング構成要素2001、2003の間に間隙を有し、一つの実施形態では、この間隙は、センサユニット(ボタン2017)に圧力が加えられたときにも維持される。
【0182】
本明細書に記載された技術の実施形態(図10a-10fおよび図11a-11eを参照して図示され説明されたような実施形態)では、力センサは、sEMG信号も検出するように構成されたセンサユニットに組み込まれる。一つの実施形態では、力センサは、sEMG信号を検出するように構成された複数のセンサユニットのそれぞれに組み込まれる。センサユニットに力センサを組み込むことで、患者に力を加えることと患者からのsEMG信号を測定することの両方に単一のユニットが必要となるという利点があり、したがって、システムの簡単な配置と使用が可能になる。さらに、このことは、患者の身体の同じ部位に圧力を加え、sEMG信号を測定できることを意味します(sEMG信号測定のために圧力が加えられる位置が既知であるため、例えば、ユーザが被験者の不特定の部位に圧力を加える場合と比較して)。
【0183】
さらに、ユーザはボタン2017を押すことによって被験者に圧力を加えることができるので、ユーザは患者に直接触れる必要がない。患者に直接触れると、患者との電気的干渉が生じ、sEMG信号に影響を与える可能性があるため、これは有利である。一つの実施形態では、センサのハウジングは非導電性材料であるため、電気的絶縁バリアを提供し、ユーザがボタン2017に触れることによる電気的干渉の低減の助けになる。上述のように、一実施形態において、本明細書に記載の技術は、医療用の表面筋電図システムを提供し、このシステムは、筋肉の電気的活動を検出するための複数のセンサと、複数のセンサに結合可能で複数のセンサの各々の出力を表す出力を提供するように動作可能な出力ユニット、とを備える。
【0184】
一つの実施形態では、本システムを使用する際、ユーザは、電気的筋肉活動が検出される患者の詳細情報を入力するようにシステムから促されることがある。患者の詳細情報は、例えば、患者の体重(またはBMI)、患者の身長、および患者の性別のうちの一つまたは複数(実施形態では複数、一つの実施形態ではすべて)を含む場合がある。一実施形態において、システムは、当該患者に使用されるべき電極(または電極パッド)のサイズおよび/または電極間隔の指示(提案)を出力することができる。提案されたサイズ及び/又は間隔は、複数のセンサの全てのセンサに対して同じでもよく、あるいは、複数のセンサの異なるセンサ毎に異なっていてもよい。
【0185】
ユーザは、提案に応じて、複数のセンサの各センサに(例えば、提案されたサイズの及び/又は提案された間隔で)電極(電極パッド)を取り付けることができる。システムは、異なるサイズの複数の電極(電極パッド)を記憶するストレージを有することができ、ここからユーザが所望の電極を選択することができる。一つの実施形態では、ユーザが電極を取り付けたことに応答して、システムは、どの電極サイズが使用されたかを確認するようユーザに促すことができる。システムは、複数のセンサの各センサに電極が取り付けられたかどうか(およびどの電極が取り付けられたか)を検出するように構成してもよい。
【0186】
一つの実施形態では、(一旦電極が複数のセンサの各センサに取り付けられると)センサは、接着剤によって患者の皮膚に取り付けることができる。一つの実施形態では、電極(電極パッド)は、接着剤の層を露出させるために除去することができる保護フィルムを有する。
【0187】
複数の実施形態では、システムは、センサを(同時に)取り付けるべき一つまたは複数の(実施形態では複数の)位置にユーザをガイドするように構成される。一実施形態において、前記位置は、ユーザの4つの腹部象限上の位置を含む。一実施形態において、システムは、どのセンサがどの場所(象限)に割り当てられたかを、例えばディスプレイ上に表示することによって、ユーザに示すことができる。
【0188】
センサを配置するようユーザをガイドした後(実施形態では、センサが配置されたことをユーザがシステムを介して確認した後)、システムは、測定セッションを開始するようユーザに促すことができる。システムは、(その後)ユーザからの入力に応答して測定セッションを開始し、複数のセンサからの筋肉活動を示す出力の表示を開始するように構成することができる。一つの実施形態では、出力は、各センサからの検出されたsEMG信号の時間に対するグラフを含み、一つの実施形態では、各センサについて同時に表示される。ユーザは、患者に咳をするように依頼し、これが筋肉活動に及ぼす影響を、システムディスプレイを見ることによって観測することができる。表示(グラフなど)が正しくないように見える場合、ユーザは電極を取り外して交換し、正しい電極配置を確認することができる。
【0189】
各センサがそれぞれの力センサを有する実施形態では、(測定セッションが開始されると)システムは、ユーザにセンサを順番に押すように促すことができる。システムは、各センサに十分な圧力が加えられたときを(例えば、押されているセンサの信号を介して、および/または、出力ユニットのディスプレイ上の信号を介して)ユーザに示すように構成することができる。
【0190】
一つの実施形態では、システムは、各センサに加えられた力の表示を、一つの実施形態ではセンサからのsEMG信号と同時に、一つの実施形態ではsEMG信号と加えられた力の両方を時間に対してグラフ化するように構成される。ユーザは、腹膜炎を示す信号を識別するために、グラフ化された応答を参照することができる。
図1
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【国際調査報告】