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特表2024-520889アサイーの抽出物、その製造方法および使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】アサイーの抽出物、その製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/889 20060101AFI20240517BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20240517BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240517BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20240517BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20240517BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240517BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
A61K36/889
A61P17/00
A61P43/00 111
A61P17/18
A61P17/04
A61Q19/08
A61Q19/00
A61K8/9794
A61K47/36
A61K47/04
A61P43/00 121
A61K31/352
A61K31/192
A61K31/7048
A61K31/353
A61P35/00
A61K131:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520086
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 GB2022051448
(87)【国際公開番号】W WO2022263793
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/210,332
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523470234
【氏名又は名称】ネイチャーズフィックス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Naturesphix Limited
【住所又は居所原語表記】5 Beauchamp Court, Victors Way, Barnet, London EN5 5TZ, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジョアン バチスタ カリクスト
(72)【発明者】
【氏名】メリーナ ヘラー
(72)【発明者】
【氏名】カミラ ギマライス モレイラ ツィマー
(72)【発明者】
【氏名】ジャルバス モタ シケイラ ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】クリスチーナ セチム フレイタス
(72)【発明者】
【氏名】ホドリゴ マルコン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C076BB31
4C076CC18
4C076CC27
4C076CC29
4C076DD29
4C076EE38
4C076FF04
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC841
4C083AC842
4C083AD391
4C083AD392
4C083CC02
4C083EE12
4C083EE13
4C083FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086EA11
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC75
4C088AB83
4C088AC04
4C088BA08
4C088BA10
4C088BA37
4C088CA01
4C088CA02
4C088CA06
4C088CA08
4C088CA11
4C088CA17
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB26
4C088ZC20
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA18
4C206DA21
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZB26
4C206ZC20
4C206ZC75
(57)【要約】
アサイーの抽出物および組成物、調製方法、および使用方法を本明細書に記載する。抽出物および組成物は、種々の形態のスキンケア、例えば、抗酸化剤、光保護剤として、皮膚の不快感を和らげるため、かつ皮膚に対する加齢の影響を低減または予防するために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アサイー抽出物を調製する方法であって、
(a)アサイー材料を沸騰未満の第1の温度で第1の溶媒と接触させて第1の湿潤混合物を生成した後、該第1の湿潤混合物を粉砕して第2の混合物を得るか、またはアサイー材料を粉砕して第1の乾燥混合物を生成した後、該第1の乾燥混合物を沸騰未満の第1の温度で第1の溶媒と接触させて第2の混合物を得る工程;
(b)前記第2の混合物を抽出液と接触させて粗抽出物を得る工程;
(c)前記粗抽出物を濾過して精製抽出物を得る工程;および
(d)凍結乾燥および噴霧乾燥からなる群から選択される乾燥プロセスを使用して、前記精製抽出物を乾燥させて前記アサイー抽出物を生成する工程
を含み、
噴霧乾燥工程以外には、約1気圧で少なくとも沸点まで加熱することを含む工程が1つしかない、
方法。
【請求項2】
アサイー抽出物を調製する方法であって、
(a)アサイー材料を粉砕して第1の乾燥混合物を生成した後、該第1の乾燥混合物を沸騰未満の第1の温度で第1の溶媒と接触させて第2の混合物を得る工程;
(b)前記第2の混合物を抽出液と接触させて粗抽出物を得る工程;
(c)前記粗抽出物を濾過して精製抽出物を得る工程;および
(d)噴霧乾燥を使用して、前記精製抽出物を乾燥させて前記アサイー抽出物を生成する工程
を含み、
噴霧乾燥工程以外には、約1気圧で少なくとも沸点まで加熱することを含む工程が1つしかない、
方法。
【請求項3】
アサイー抽出物を調製する方法であって、
(a)アサイー材料を沸騰未満の第1の温度で第1の溶媒と接触させて第1の湿潤混合物を生成し、該第1の湿潤混合物を粉砕して第2の混合物を得る工程;
(b)前記第2の混合物を抽出液と接触させて粗抽出物を得る工程;
(c)前記粗抽出物を濾過して精製抽出物を得る工程;および
(d)前記精製抽出物を凍結乾燥させて前記アサイー抽出物を生成する工程
を含み、
約1気圧で少なくとも沸点まで加熱することを含む工程が1つしかない、
方法。
【請求項4】
工程(a)において、前記第1の溶媒が水であり、前記第1の温度が約20℃~約30℃である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程(a)の前に、前記アサイー材料を流水で洗浄し、約20℃~約30℃の温度で乾燥させる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程(a)において、粉砕後に第2の混合物を沸騰するまで加熱することをさらに含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
1気圧で少なくとも前記沸点まで加熱することを含む工程がない、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
60℃超、50℃超、40℃超、または30℃超の温度で加熱することを含む工程がない、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記第1の混合物の粉砕中または粉砕後に、粉砕された前記第1の混合物を4~16mmまたは約8mmのメッシュに通して、前記第2の混合物を得る、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
工程(b)において、前記抽出液がエタノールを含む、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
抽出液と接触させた前記第2の混合物を約1日間~約10日間、約1℃~約5℃の温度に維持することを含む、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
抽出液と接触させた前記第2の混合物を約1日間~約7日間、約1℃~約5℃の温度に維持することを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
抽出液と接触させた前記第2の混合物を約1日間~約3日間、約1℃~約5℃の温度に維持することを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
工程(b)が、反応器内で24時間未満実施される、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
工程(b)が、反応器内で4時間未満、3時間未満、2時間未満、または1時間未満実施される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
工程(b)が、実質的に一定の撹拌を加えながら30~60℃、35~55℃、約40℃、または約50℃の温度で実施される、請求項14また15記載の方法。
【請求項17】
工程(b)において、粒子状材料と前記抽出液との比が、重量/体積で約1:6~約6:1である、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
工程(b)において、粒子状材料と前記抽出液との比が、重量/体積で約1:4~約4:1である、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
工程(b)において、粒子状材料と前記抽出液との比が、約1:2~約1:10または約1:4である、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記抽出液がエタノールを含み、前記第1の溶媒が水を含む、請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
工程(b)におけるエタノールと水との割合(v/v)が、75%エタノールおよび25%水である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
工程(b)におけるエタノールと水との割合(v/v)が、85%エタノールおよび15%水である、請求項20記載の方法。
【請求項23】
工程(b)におけるエタノールと水との比(v/v)が、約0.1:1~約1:1である、請求項20記載の方法。
【請求項24】
工程(b)において、エタノールと水との比(v/v)が、約1:1である、請求項20記載の方法。
【請求項25】
工程(c)において、前記粗抽出物を濾過することが、
(i)前記粗抽出物を、ボイル地のファブリックからなる第1のフィルターに通すことと、
(ii)前記粗抽出物を、坪量が約50~80.0g/mである第2のフィルターに通すことと
を含む、請求項1から24までのいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記第1のフィルターが紙を含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記第2のフィルターが、重量が約50g/m~約80g/mの紙を含む、請求項25または26記載の方法。
【請求項28】
工程(d)において、前記精製抽出物を凍結乾燥させることが、
(i)回転式蒸発によって前記精製抽出物から前記抽出液を除去して、濃縮した抽出物を得ることと、
(ii)前記濃縮した抽出物を凍結乾燥させて前記アサイー抽出物を生成することと
を含む、請求項1から27までのいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
回転式蒸発によって前記粗抽出物から前記抽出液を除去することが、約30℃~約70℃の温度で行われる、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記濃縮した抽出物を凍結乾燥させることが、約-35℃~約-55℃の温度および約200μmHg~約300μmHgの圧力で行われる、請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記第2の混合物を約90~110℃に加熱する工程と、前記第2の混合物を抽出液と接触させた後、前記粗抽出物を濾過する前に、前記第2の混合物を約20℃~約30℃の温度に冷却する工程とをさらに含む、請求項1から6までおよび8から30までのいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
前記第2の混合物を90~110℃に加熱することが、前記第2の混合物を約10分間、90~110℃に保持することをさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記第2の混合物が約20℃の温度まで冷却される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
工程(d)において、前記精製抽出物を噴霧乾燥させることが、
(i)回転式蒸発によって前記精製抽出物から前記抽出液を除去して、濃縮した精製抽出物を得ることと、
(ii)前記濃縮した抽出物を噴霧乾燥させて前記アサイー抽出物を生成することと
を含む、請求項1から29までのいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
賦形剤が、噴霧乾燥前の前記濃縮した精製抽出物に、噴霧乾燥前の前記濃縮した精製抽出物の体積を基準として、40~60%w/vの量で添加される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記賦形剤が、マルトデキストリンおよび二酸化ケイ素を含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
噴霧乾燥中の最終温度が、85~105℃である、請求項34から36までのいずれか1項記載の方法。
【請求項38】
前記アサイー抽出物が、6%の最大含水量を有する、請求項1から37までのいずれか1項記載の方法。
【請求項39】
前記アサイー抽出物が、バニリン酸、イソバニリン酸、フェルラ酸、イソフェルラ酸、ヒスピズリン、ルチン、ナリンゲニン、ケルセチン、p-クマル酸、o-クマル酸、プロシアニジン、エピカテキン、カテキン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上のフェノール系化合物を含む、請求項1から38までのいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
請求項1から39までのいずれか1項に従って調製され、
約0.5μg/g~約50μg/gのバニリン酸;
バニリン酸と同じ分子量を有する、約5μg/g~約100μg/gの特性不明の化合物;
約2μg/g~約120μg/gのフェルラ酸;
フェルラ酸と同じ分子量を有する、約5μg/g~約200μg/gの特性不明の化合物;
約0μg/g~約250μg/gのp-クマル酸;
約2μg/g~約80μg/gのヒスピズリン;
約10μg/g~約70μg/gのルチン;
約0mg/g~約20mg/gのプロシアニジン;
約0.5mg/g~約30mg/gのエピカテキンおよびカテキン;
約0μg/g~約25μg/gのナリンゲニン;ならびに
約0μg/g~約10μg/gのケルセチン
を含み、
HPLCで測定したとき、約20~約30℃の温度で約16週間安定である、
アサイー抽出組成物。
【請求項41】
請求項1から39までのいずれか1項に従って調製され、
約5μg/g~約50μg/gのバニリン酸;
バニリン酸と同じ分子量を有する、約50μg/g~約100μg/gの特性不明の化合物;
約10μg/g~約50μg/gのフェルラ酸;
フェルラ酸と同じ分子量を有する、約100μg/g~約200μg/gの特性不明の化合物;
約100μg/g~約250μg/gのp-クマル酸;
約10μg/g~約50μg/gのヒスピズリン;
約30μg/g~約60μg/gのルチン;
約10mg/g~約20mg/gのプロシアニジン;
約15mg/g~約30mg/gのエピカテキンおよびカテキン;
約5μg/g~約15μg/gのナリンゲニン;ならびに
約0μg/g~約10μg/gのケルセチン
を含み、
HPLCで測定したとき、約20~約30℃の温度で約16週間安定である、
アサイー抽出組成物。
【請求項42】
請求項1から39までのいずれか1項に従って調製され、
約1μg/g~約4μg/gのバニリン酸;
バニリン酸と同じ分子量を有する、約8μg/g~約46μg/gの特性不明の化合物;
約2.5μg/g~約45μg/gのフェルラ酸;
フェルラ酸と同じ分子量を有する、約7μg/g~約105μg/gの特性不明の化合物;
約0μg/g~約15μg/gのp-クマル酸;
約2μg/g~約20μg/gのヒスピズリン;
約10μg/g~約70μg/gのルチン;
約0mg/g~約20mg/gのプロシアニジン;
約100μg/g~約1,000μg/gのエピカテキンおよびカテキン;
約5μg/g~約15μg/gのナリンゲニン;ならびに
約0μg/g~約10μg/gのケルセチン
を含み、
HPLCで測定したとき、約20~約30℃の温度で約16週間安定である、
アサイー抽出組成物。
【請求項43】
対象の皮膚を治療する方法であって、有効量の、請求項1から39までのいずれか1項記載のプロセスに従って生成されたアサイー抽出物または請求項40から42までのいずれか1項記載の抽出物を前記皮膚に接触させることを含む、方法。
【請求項44】
対象の前記皮膚を治療することが、対象の前記皮膚においてメタロプロテイナーゼ-1活性を阻害することを含み、前記方法が、有効量の、請求項1から39までのいずれか1項記載のプロセスに従って生成されたアサイー抽出物または請求項40から42までのいずれか1項記載の抽出物を前記皮膚に接触させることを含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
対象の前記皮膚を治療することが、治療を必要とする対象の前記皮膚において活性酸素種の濃度を低減することを含み、前記方法が、有効量の、請求項1から39までのいずれか1項記載のプロセスに従って生成されたアサイー抽出物または請求項40から42までのいずれか1項記載の抽出物を前記皮膚に接触させることを含む、請求項43記載の方法。
【請求項46】
対象の前記皮膚を治療することが、紫外線B(UVB)照射に曝露された対象の皮膚における細胞損傷および機能的損傷を低減することを含み、前記方法が、有効量の、請求項1から39までのいずれか1項記載のプロセスに従って生成されたアサイー抽出物または請求項40から42までのいずれか1項記載の抽出物を前記皮膚に接触させることを含む、請求項43記載の方法。
【請求項47】
対象の前記皮膚を治療することが、治療を必要とする対象の前記皮膚において、しわ、小じわ、および他の皮膚科的加齢兆候を低減することを含み、前記方法が、有効量の、請求項1から39までのいずれか1項記載のプロセスに従って生成されたアサイー抽出物または請求項40から42までのいずれか1項記載の抽出物を前記皮膚に局所適用することを含む、請求項43記載の方法。
【請求項48】
対象の前記皮膚を治療することが、治療を必要とする対象の前記皮膚において光発癌を予防することを含み、前記方法が、有効量の、請求項1から39までのいずれか1項記載のプロセスに従って生成されたアサイー抽出物または請求項40から42までのいずれか1項記載の抽出物を皮膚に局所適用することを含む、請求項43記載の方法。
【請求項49】
対象の前記皮膚を治療することが、治療を必要とする対象の前記皮膚においてUV関連の皮膚損傷を予防することを含み、前記方法が、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を前記皮膚に局所適用することを含む、請求項43記載の方法。
【請求項50】
対象の前記皮膚を治療することが、治療を必要とする対象の前記皮膚において掻痒感または不快感を緩和することを含み、前記方法が、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を前記皮膚に局所適用することを含む、請求項43記載の方法。
【請求項51】
対象の前記皮膚を治療することが、治療を必要とする対象の前記皮膚において滑らかな外観を提供することを含み、前記方法が、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を前記皮膚に局所適用することを含む、請求項43記載の方法。
【請求項52】
前記皮膚に接触させることが、真皮および表皮に接触させることを含み、前記皮膚に局所適用することが、前記真皮および前記表皮に適用することを含む、請求項43から51までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月14日に出願された米国仮特許出願第63/210,332号に対する優先権を主張し、その開示内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
背景
植物であるアサイー(Euterpe oleracea)の果実および種子には、健康増進を可能にする幾つかの化合物が含有されている。こうした化合物として種々の抗酸化物質が挙げられ、これは、数ある用途のうち、特に種々のヒト組織に対する酸化損傷を治療または予防することができる。植物成分の抽出物を調製することにより、エウテルペ(Euterpe)属の有益な化合物の投与を容易にすることができる。エウテルペ抽出物を調製する方法のひとつが、欧州特許第2051721号明細書に報告されている。しかしながら、ヒトの皮膚への損傷を含むヒト疾患の治療または予防での使用、および美容用途での使用またはその他のヒトの健康促進での使用を目的とする、有効レベルの有益な植物化学成分を含むエウテルペ属の抽出物を調製する代替方法が必要とされている。
【0003】
概要
一態様では、アサイー抽出物を調製する方法であって、
(a)アサイー材料を沸騰未満の第1の温度で第1の溶媒と接触させて第1の湿潤混合物を生成した後、第1の湿潤混合物を粉砕して第2の混合物を得るか、またはアサイー材料を粉砕して第1の乾燥混合物を生成した後、第1の乾燥混合物を沸騰未満の第1の温度で第1の溶媒と接触させて第2の混合物を得る工程;
(b)第2の混合物を抽出液と接触させて粗抽出物を得る工程;
(c)粗抽出物を濾過して精製抽出物を得る工程;および
(d)凍結乾燥および噴霧乾燥からなる群から選択される乾燥プロセスを使用して、精製抽出物を乾燥させてアサイー抽出物を生成する工程
を含み、
噴霧乾燥工程以外には、約1気圧で少なくとも沸点まで加熱することを含む工程が1つしかない、
方法を本明細書で提供する。
【0004】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って調製されたアサイー抽出物であって、
約0.5μg/g~約50μg/gのバニリン酸;
バニリン酸と同じ分子量を有する、約5μg/g~約100μg/gの特性不明の化合物;
約2μg/g~約120μg/gのフェルラ酸;
フェルラ酸と同じ分子量を有する、約5μg/g~約200μg/gの特性不明の化合物;
約0μg/g~約250μg/gのp-クマル酸;
約2μg/g~約80μg/gのヒスピズリン;
約10μg/g~約70μg/gのルチン;
約0mg/g~約20mg/gのプロシアニジン;
約0.5mg/g~約30mg/gのエピカテキンおよびカテキン;
約0μg/g~約25μg/gのナリンゲニン;ならびに
約0μg/g~約10μg/gのケルセチン
を含み、
HPLCで測定したとき、約20~約30℃の温度で約16週間安定である、
抽出物を本明細書で提供する。
【0005】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って調製されたアサイー抽出物であって、
約5μg/g~約50μg/gのバニリン酸;
バニリン酸と同じ分子量を有する、約50μg/g~約100μg/gの特性不明の化合物;
約10μg/g~約50μg/gのフェルラ酸;
フェルラ酸と同じ分子量を有する、約100μg/g~約200μg/gの特性不明の化合物;
約100μg/g~約250μg/gのp-クマル酸;
約10μg/g~約50μg/gのヒスピズリン;
約30μg/g~約60μg/gのルチン;
約10mg/g~約20mg/gのプロシアニジン;
約15mg/g~約30mg/gのエピカテキンおよびカテキン;
約5μg/g~約15μg/gのナリンゲニン;ならびに
約0μg/g~約10μg/gのケルセチン
を含み、
HPLCで測定したとき、約20~約30℃の温度で約16週間安定である、
抽出物を本明細書で提供する。
【0006】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って調製されたアサイー抽出物であって、
約0.5μg/g~約2μg/gのバニリン酸;
バニリン酸と同じ分子量を有する、約2μg/g~約6μg/gの特性不明の化合物;
約5μg/g~約50μg/gのフェルラ酸;
フェルラ酸と同じ分子量を有する、約100μg/g~約40μg/gの特性不明の化合物;
約0μg/g~約1μg/gのp-クマル酸;
約2μg/g~約20μg/gのヒスピズリン;
約10μg/g~約70μg/gのルチン;
約0mg/g~約20mg/gのプロシアニジン;
約100μg/g~約1000μg/gのエピカテキンおよびカテキン;
約5μg/g~約15μg/gのナリンゲニン;ならびに
約0μg/g~約10μg/gのケルセチン
を含み、
HPLCで測定したとき、約20~約30℃の温度で約16週間安定である、
抽出物を本明細書で提供する。
【0007】
別の態様では、対象の皮膚を治療する方法であって、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を皮膚に接触させることを含む、方法を本明細書で提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】エウテルペ抽出物の数種の成分のHPLCトレースを重ね合わせた図である(強度対保持時間(分)のグラフ)。
図2】抗酸化活性(%)対TI-35濃度(μg/mL)のグラフである。
図3】抗酸化活性(%)対アスコルビン酸濃度(μg/mL)のグラフである。
図4】24時間後のケラチノサイト生存率(%)対TI-35濃度(μg/mL)のグラフである。
図5】48時間後のケラチノサイト生存率(%)対TI-35濃度(μg/mL)のグラフである。
図6】96時間後のケラチノサイト生存率(%)対TI-35濃度(μg/mL)のグラフである。
図7】96時間後のケラチノサイト増殖率(対ビヒクル%)対TI-35濃度(μg/mL)のグラフである。
図8】ROS生成(対ビヒクル%)対種々の作用物質の濃度(μg/mL)のグラフである。
図9】ケラチノサイトにおけるスカベンジャー能を決定するための、ROS生成(対ビヒクル+UVB%)対種々の作用物質の濃度(μg/mL)のグラフである。
図10】ケラチノサイトにおける抗酸化能を決定するための、ROS生成(対ビヒクル+UVB%)対種々の作用物質の濃度(μg/mL)のグラフである。
図11】MMP-1活性(対ビヒクル%)対種々の作用物質の濃度(μg/mL)のグラフである。
図12】24時間後の線維芽細胞生存率(対ビヒクル%)対TI-35濃度(μg/mL)のグラフである。
図13】48時間後の線維芽細胞生存率(対ビヒクル%)対TI-35濃度(μg/mL)のグラフである。
図14】線維芽細胞におけるスカベンジャー能を決定するための、ROS生成(対ビヒクル+UVB%)対種々の作用物質の濃度(μg/mL)のグラフである。
図15】線維芽細胞における抗酸化能を決定するための、ROS生成(対ビヒクル+UVB%)対種々の作用物質の濃度(μg/mL)のグラフである。
図16】チロシナーゼ活性(対ビヒクル%)対TI-35濃度(μg/mL)のグラフである。
図17】チロシナーゼ活性(対ビヒクル%)対コウジ酸濃度(μg/mL)のグラフである。
図18】細胞生存率(対ビヒクル%)対ST-035濃度(μg/mL)のグラフである。
図19】細胞生存率(対ビヒクル%)対コウジ酸濃度(μg/mL)のグラフである。
図20】ビヒクルおよびTI-35についてのメラニン生成(μg/mL)のグラフである。
図21】SDSおよびTI-35についての皮膚刺激(対PBS%)のグラフである。
図22】S9活性の非存在下でのTI-35の変異原性の図表である。
図23】S9活性の非存在下でのTI-35の変異原性の図表である。
図24】S9活性の非存在下でのTI-35の変異原性の図表である。
図25A】S9活性の存在下でのTI-35の変異原性の図表である。
図25B】S9活性の存在下でのTI-35の変異原性の図表である。
【0009】
詳細な説明
一態様では、アサイー抽出物を調製する方法であって、
(a)アサイー材料を沸騰未満の第1の温度で第1の溶媒と接触させて第1の湿潤混合物を生成した後、第1の湿潤混合物を粉砕して第2の混合物を得るか、またはアサイー材料を粉砕して第1の乾燥混合物を生成した後、第1の乾燥混合物を沸騰未満の第1の温度で第1の溶媒と接触させて第2の混合物を得る工程;
(b)第2の混合物を抽出液と接触させて粗抽出物を得る工程;
(c)粗抽出物を濾過して精製抽出物を得る工程;および
(d)凍結乾燥および噴霧乾燥からなる群から選択される乾燥プロセスを使用して、精製抽出物を乾燥させてアサイー抽出物を生成する工程
を含み、
噴霧乾燥工程以外には、約1気圧で少なくとも沸点まで加熱することを含む工程が1つしかない、
方法を本明細書で提供する。
【0010】
幾つかの実施形態では、アサイー抽出物を調製する方法であって、
(a)アサイー材料を粉砕して第1の乾燥混合物を生成した後、第1の乾燥混合物を沸騰未満の第1の温度で第1の溶媒と接触させて第2の混合物を得る工程;
(b)第2の混合物を抽出液と接触させて粗抽出物を得る工程;
(c)粗抽出物を濾過して精製抽出物を得る工程;および
(d)噴霧乾燥を使用して、精製抽出物を乾燥させてアサイー抽出物を生成する工程
を含み、
噴霧乾燥工程以外には、約1気圧で少なくとも沸点まで加熱することを含む工程が1つしかない、
方法を本明細書で提供する。
【0011】
一態様では、アサイー抽出物を調製する方法であって、
(a)アサイー材料を沸騰未満の第1の温度で第1の溶媒と接触させて第1の湿潤混合物を生成し、第1の湿潤混合物を粉砕して第2の混合物を得る工程;
(b)第2の混合物を抽出液と接触させて粗抽出物を得る工程;
(c)粗抽出物を濾過して精製抽出物を得る工程;および
(d)精製抽出物を凍結乾燥させてアサイー抽出物を生成する工程
を含み、
約1気圧で少なくとも沸点まで加熱することを含む工程が1つしかない、
方法を本明細書で提供する。
【0012】
幾つかの実施形態では、工程(a)において、第1の溶媒は水であり、第1の温度は約20℃~約30℃である。
【0013】
幾つかの実施形態では、工程(a)の前に、アサイー材料を水で洗浄し、約20℃~約30℃の温度で乾燥させる。
【0014】
幾つかの実施形態では、この方法は、工程(a)において、粉砕後に第2の混合物を沸騰するまで加熱することをさらに含む。
【0015】
幾つかの実施形態では、1気圧で少なくとも沸点まで加熱することを含む工程がない。
【0016】
幾つかの実施形態では、60℃超、50℃超、40℃超、または30℃超の温度で加熱することを含む工程がない。
【0017】
幾つかの実施形態では、第1の混合物の粉砕中または粉砕後に、粉砕された第1の混合物を4~16mmまたは約8mmのメッシュに通して、第2の混合物を得る。
【0018】
幾つかの実施形態では、工程(b)において、抽出液はエタノールを含む。
【0019】
幾つかの実施形態では、この方法は、抽出液と接触させた第2の混合物を約1日間~約10日間、約1℃~約5℃の温度に維持することを含む。
【0020】
幾つかの実施形態では、この方法は、抽出液と接触させた第2の混合物を約1日間~約7日間、約1℃~約5℃の温度に維持することを含む。
【0021】
幾つかの実施形態では、この方法は、抽出液と接触させた第2の混合物を約1日間~約3日間、約1℃~約5℃の温度に維持することを含む。
【0022】
幾つかの実施形態では、工程(b)は、反応器内で24時間未満実施される。
【0023】
幾つかの実施形態では、工程(b)は、反応器内で4時間未満、3時間未満、2時間未満、または1時間未満実施される。
【0024】
幾つかの実施形態では、工程(b)は、実質的に一定の撹拌を加えながら30~60℃、35~55℃、約40℃、または約50℃の温度で実施される。
【0025】
幾つかの実施形態では、工程(b)において、粒子状材料と抽出液との比は、重量/体積で約1:6~約6:1である。
【0026】
幾つかの実施形態では、工程(b)において、粒子状材料と抽出液との比は、重量/体積で約1:4~約4:1である。
【0027】
幾つかの実施形態では、工程(b)において、粒子状材料と抽出液との比は、重量/体積で約1:2~約1:10または約1:4である。
【0028】
幾つかの実施形態では、抽出液はエタノールを含み、第1の溶媒は水を含む。
【0029】
幾つかの実施形態では、工程(b)におけるエタノールと水との割合(v/v)は、75%エタノールおよび25%水である。
【0030】
幾つかの実施形態では、工程(b)におけるエタノールと水との割合(v/v)は、85%エタノールおよび15%水である。
【0031】
幾つかの実施形態では、工程(b)におけるエタノールと水との比(v/v)は、約0.1:1~約1:1である。
【0032】
幾つかの実施形態では、工程(b)において、エタノールと水との比(v/v)は、約1:1である。
【0033】
幾つかの実施形態では、工程(c)において、粗抽出物を濾過することは、
(i)粗抽出物を、ボイル地のファブリックからなる第1のフィルターに通すことと、
(ii)粗抽出物を、坪量が約50~80.0g/mである第2のフィルターに通すことと
を含む。
【0034】
幾つかの実施形態では、第1のフィルターは紙を含む。
【0035】
幾つかの実施形態では、第2のフィルターは、重量が約50g/m~約80g/mの紙を含む。
【0036】
幾つかの実施形態では、精製抽出物は、工程(d)の前に低温殺菌される。幾つかの実施形態では、低温殺菌は、精製抽出物の沸点未満の温度に加熱することにより実施される。
【0037】
幾つかの実施形態では、工程(d)において、精製抽出物を凍結乾燥させることは、
(i)回転式蒸発によって精製抽出物から抽出液を除去して、濃縮した抽出物を得ることと、
(ii)濃縮した抽出物を凍結乾燥させてアサイー抽出物を生成することと
を含む。
【0038】
幾つかの実施形態では、回転式蒸発によって粗抽出物から抽出液を除去することは、約30℃~約70℃の温度で行われる。
【0039】
幾つかの実施形態では、濃縮した抽出物を凍結乾燥させることは、約-35℃~約-55℃の温度および約200μmHg~約300μmHgの圧力で行われる。
【0040】
幾つかの実施形態では、この方法は、第2の混合物を約90~110℃に加熱する工程と、第2の混合物を抽出液と接触させた後、粗抽出物を濾過する前に、第2の混合物を約20℃~約30℃の温度に冷却する工程とをさらに含む。
【0041】
幾つかの実施形態では、第2の混合物を90~110℃に加熱することは、第2の混合物を約10分間、90~110℃に保持することをさらに含む。
【0042】
幾つかの実施形態では、第2の混合物は約20℃の温度まで冷却される。
【0043】
幾つかの実施形態では、工程(d)において、精製抽出物を噴霧乾燥させることは、
(i)回転式蒸発によって精製抽出物から抽出液を除去して、濃縮した精製抽出物を得ることと、
(ii)濃縮した精製抽出物を噴霧乾燥させてアサイー抽出物を生成することと
を含む。
【0044】
幾つかの実施形態では、賦形剤が、噴霧乾燥前の濃縮した精製抽出物に、噴霧乾燥前の濃縮した精製抽出物の体積を基準として40~60%w/vの量で添加される。
【0045】
幾つかの実施形態では、賦形剤は、マルトデキストリンおよび二酸化ケイ素を含む。幾つかの実施形態では、賦形剤は、噴霧乾燥前の濃縮した精製抽出物の体積を基準として、1~4%w/vの二酸化ケイ素および40~60%w/vのマルトデキストリンを含む。
【0046】
幾つかの実施形態では、噴霧乾燥中の最終温度は、85~105℃である。
【0047】
幾つかの実施形態では、アサイー抽出物は、6%の最大含水量を有する。
【0048】
幾つかの実施形態では、アサイー抽出物は、バニリン酸、イソバニリン酸、フェルラ酸、イソフェルラ酸、ヒスピズリン、ルチン、ナリンゲニン、ケルセチン、p-クマル酸、o-クマル酸、プロシアニジン、エピカテキン、カテキン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上のフェノール系化合物を含む。
【0049】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って調製されたアサイー抽出物であって、
約0.5μg/g~約50μg/gのバニリン酸;
バニリン酸と同じ分子量を有する、約5μg/g~約100μg/gの特性不明の化合物;
約2μg/g~約120μg/gのフェルラ酸;
フェルラ酸と同じ分子量を有する、約5μg/g~約200μg/gの特性不明の化合物;
約0μg/g~約250μg/gのp-クマル酸;
約2μg/g~約80μg/gのヒスピズリン;
約10μg/g~約70μg/gのルチン;
約0mg/g~約20mg/gのプロシアニジン;
約0.5mg/g~約30mg/gのエピカテキンおよびカテキン;
約0μg/g~約25μg/gのナリンゲニン;ならびに
約0μg/g~約10μg/gのケルセチン
を含み、
HPLCで測定したとき、約20~約30℃の温度で約16週間安定である、
抽出物を本明細書で提供する。
【0050】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って調製されたアサイー抽出物であって、
約5μg/g~約50μg/gのバニリン酸;
バニリン酸と同じ分子量を有する、約50μg/g~約100μg/gの特性不明の化合物;
約10μg/g~約50μg/gのフェルラ酸;
フェルラ酸と同じ分子量を有する、約100μg/g~約200μg/gの特性不明の化合物;
約100μg/g~約250μg/gのp-クマル酸;
約10μg/g~約50μg/gのヒスピズリン;
約30μg/g~約60μg/gのルチン;
約10mg/g~約20mg/gのプロシアニジン;
約15mg/g~約30mg/gのエピカテキンおよびカテキン;
約5μg/g~約15μg/gのナリンゲニン;ならびに
約0μg/g~約10μg/gのケルセチン
を含み、
HPLCで測定したとき、約20~約30℃の温度で約16週間安定である、
抽出物を本明細書で提供する。
【0051】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って調製されたアサイー抽出物であって、
約0.5μg/g~約2μg/gのバニリン酸;
バニリン酸と同じ分子量を有する、約2μg/g~約6μg/gの特性不明の化合物;
約5μg/g~約50μg/gのフェルラ酸;
フェルラ酸と同じ分子量を有する、約100μg/g~約40μg/gの特性不明の化合物;
約0μg/g~約1μg/gのp-クマル酸;
約2μg/g~約20μg/gのヒスピズリン;
約10μg/g~約70μg/gのルチン;
約0mg/g~約20mg/gのプロシアニジン;
約100μg/g~約1,000μg/gのエピカテキンおよびカテキン;
約5μg/g~約15μg/gのナリンゲニン;ならびに
約0μg/g~約10μg/gのケルセチン
を含み、
HPLCで測定したとき、約20~約30℃の温度で約16週間安定である、
抽出物を本明細書で提供する。
【0052】
アサイー抽出物を含む本発明の組成物は、美容成分および医薬品有効成分などの追加成分を含み得る。
【0053】
美容成分としては、UV吸収剤、保湿剤、酸化防止剤、構造形成剤、乳化剤、シリコーン含有化合物、精油、増粘剤、および防腐剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
医薬品有効成分としては、抗座瘡剤、抗炎症剤、およびステロイドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
本明細書および特許請求の範囲を通じて開示される組成物のいずれか1つを含むキットもまた企図される。ある特定の実施形態では、組成物は容器に収容されている。容器は、ボトル、ディスペンサー、またはパッケージであり得る。容器とは、所定量の組成物を分配できるものであり、ある特定の態様では、スプレー、半流動体、または液体で組成物が分配される。容器は、その表面に表示を含むことがある。表示は、単語、略語、絵、または記号であり得る。
【0056】
本発明の組成物を含む製品もまた企図される。非限定的な態様では、製品は化粧品であり得る。化粧品は、本明細書の他のセクションに記載されているもの、または当業者に公知のものであり得る。製品の非限定的な例としては、保湿剤、クリーム、ローション、皮膚柔軟剤、ファンデーション、夜用クリーム、口紅、洗顔料、収斂化粧水、日焼け止め剤、マスク、または抗加齢製品が挙げられる。
【0057】
ある特定の実施形態では、組成物は、局所スキンケア組成物に配合される。組成物は、美容組成物であり得る。他の態様では、化粧品基剤に組成物を含めることができる。化粧品基剤の非限定的な例は、本明細書の他のセクションに開示されており、当業者には公知である。化粧品基剤の例としては、乳剤(例えば、水中油型乳剤および油中水型乳剤)、クリーム、ローション、溶液(例えば、水溶液または水性アルコール溶液)、無水基剤(例えば、口紅または粉末)、ジェル、および軟膏が挙げられる。他の非限定的な実施形態では、本発明の組成物を抗加齢製品、洗顔製品、または保湿製品に含めることができる。組成物はまた、使用時に、1日に少なくとも1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、またはそれ以上、皮膚に局所適用するために配合することができる。本発明の他の態様では、組成物は、貯蔵安定性もしくは色安定性、またはその両方であり得る。目的を達成するために、組成物の粘度を選択できることも企図される。
【0058】
組成物は、非限定的な態様において、pHが約6~約9であり得る。他の態様では、pHは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14であり得る。本発明の組成物は、UVAおよびUVB吸収特性を有し得る。組成物は、日焼け止め指数(SPF)が、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、もしくはそれ以上、またはその間の任意の整数もしくは微分であり得る。組成物は、日焼け止めローション、スプレー、またはクリームであり得る。
【0059】
別の態様では、対象の皮膚を治療する方法であって、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を皮膚に接触させることを含む、方法を本明細書で提供する。
【0060】
幾つかの実施形態では、対象の皮膚を治療することは、対象の皮膚においてメタロプロテイナーゼ-1活性を阻害することを含み、本方法は、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を皮膚に接触させることを含む。
【0061】
幾つかの実施形態では、対象の皮膚を治療することは、治療を必要とする対象の皮膚において活性酸素種の濃度を低減することを含み、本方法は、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を皮膚に接触させることを含む。
【0062】
幾つかの実施形態では、対象の皮膚を治療することは、紫外線B(UVB)照射に曝露された対象の皮膚における細胞損傷および機能的損傷を低減することを含み、本方法は、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を皮膚に接触させることを含む。
【0063】
幾つかの実施形態では、対象の皮膚を治療することは、治療を必要とする対象の皮膚において、しわ、小じわ、および他の皮膚科的加齢兆候を低減することを含み、本方法は、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を皮膚に局所適用することを含む。
【0064】
幾つかの実施形態では、対象の皮膚を治療することは、治療を必要とする対象の皮膚において光発癌を予防することを含み、本方法は、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を皮膚に局所適用することを含む。
【0065】
幾つかの実施形態では、対象の皮膚を治療することは、治療を必要とする対象の皮膚においてUV関連の皮膚損傷を予防することを含み、本方法は、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を皮膚に局所適用することを含む。
【0066】
幾つかの実施形態では、対象の皮膚を治療することは、治療を必要とする対象の皮膚において掻痒感または不快感を緩和することを含み、本方法は、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を皮膚に局所適用することを含む。
【0067】
幾つかの実施形態では、対象の皮膚を治療することは、治療を必要とする対象の皮膚において滑らかな外観を提供することを含み、本方法は、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を皮膚に局所適用することを含む。
【0068】
幾つかの実施形態では、皮膚に接触させることは、真皮および表皮に接触させることを含み、皮膚に局所適用することは、真皮および表皮に適用することを含む。
【0069】
使用方法
本明細書に開示される方法に従って製造される抽出物および組成物は、多くの治療用途および美容用途を有する。
【0070】
抽出物および組成物は、種々の形態のスキンケア、例えば、抗酸化剤、光保護剤として、皮膚の不快感を和らげるため、かつ皮膚に対する加齢の影響を低減または予防するために使用することができる。
【0071】
一態様では、対象の皮膚の外観を改善するために化粧品として使用する方法であって、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を対象に局所適用する(皮膚に接触させる)ことを含む、方法を本明細書で提供する。
【0072】
一態様では、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を、皮膚病態を有する対象または皮膚病態を有する危険性のある対象に局所適用する(皮膚に接触させる)ことを含む、皮膚病態を治療または予防する方法を本明細書で提供する。この場合の皮膚病態への組成物の局所適用は、皮膚病態を治療するか、または皮膚病態の形成を予防することである。特定の実施形態では、皮膚病態とは、小じわまたはしわ、乾燥肌もしくは鱗屑肌、紅斑、敏感肌、または炎症肌である。特定の態様では、紅斑、敏感肌、または炎症肌は、皮膚の日焼け、皮膚の電気的処置、皮膚熱傷、接触アレルギー、全身性アレルギー、皮膚毒性、運動、虫刺され、細菌感染、ウイルス感染、真菌感染、原虫感染、マッサージ、または風傷によって引き起こされる。他の態様では、本明細書および特許請求の範囲を通じて開示される方法および組成物に従って、以下の追加の皮膚病態を治療または予防することができる:掻痒症、クモ状血管腫、黒子、老人斑、老年性紫斑、角化症、肝斑、発疹、小結節、日焼け損傷肌、皮膚炎(脂漏性皮膚炎、貨幣状皮膚炎、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、剥脱性皮膚炎、口囲皮膚炎、およびうっ血性皮膚炎を含むがこれらに限定されない)、乾癬、毛嚢炎、酒さ、座瘡、膿痂疹、丹毒、紅色陰癬、湿疹、およびその他の炎症性皮膚病態。ある特定の非限定的な態様では、皮膚病態は、紫外光への曝露、年齢、放射線照射、慢性的な日光曝露、環境汚染物質、大気汚染、風、寒さ、熱、化学物質、疾患病状、喫煙、または栄養不足によって引き起こされ得る。皮膚は、顔の皮膚または顔以外の皮膚(例えば、腕、脚、手、胸、背中、足など)であり得る。この方法は、皮膚治療を必要とする人を同定することをさらに含み得る。
【0073】
方法はまた、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を局所適用して、皮膚の角質層の代謝回転速度を増加させること、線維芽細胞におけるコラーゲン合成を増加させること、細胞の抗酸化物質防御機構を増加させること(例えば、抗酸化物質の外因性添加により、皮膚細胞(例えば、ケラチノサイト、メラノサイト、ランゲルハンス細胞など)において、皮膚、細胞、タンパク質、および脂質への酸化損傷を低減または予防するカタラーゼまたはグルタチオンなどの細胞抗酸化物質を強化、補充する、またはその損失を予防することができる)、メラノサイトにおけるメラニン生成を阻害すること、皮膚への酸化損傷を低減または予防すること(皮膚内の過酸化脂質および/または酸化タンパク質の量を低減することを含む)ができる。
【0074】
別の実施形態では、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を紅斑のある肌、敏感肌、または炎症肌に局所適用することを含む、紅斑、敏感肌、または炎症肌に関連する疼痛を軽減する方法であって、紅斑のある肌、敏感肌、または炎症肌に組成物を局所適用することにより、紅斑、敏感肌、または炎症肌に関連する疼痛を軽減する方法を開示する。
【0075】
別の態様では、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を、コラーゲン生成を必要とする皮膚細胞に局所適用することを含む、皮膚細胞におけるコラーゲン生成を増加させる方法であって、皮膚細胞に組成物を局所適用することにより、皮膚細胞におけるコラーゲン生成を増加させる方法を開示する。当該細胞の非限定的な例としては、ヒト表皮ケラチノサイト、ヒト皮膚線維芽細胞、ヒトメラノサイト、ヒトケラチノサイト、ヒト線維芽細胞、もしくはヒトメラノサイトを含む3次元ヒト細胞由来のin vitro組織同等物、またはそれらの任意の組み合わせ(例えば、ヒトケラチノサイトとヒト線維芽細胞との組み合わせ、またはヒトケラチノサイトとヒトメラノサイトとの組み合わせ)が挙げられる。
【0076】
幾つかの実施形態では、対象の皮膚を治療することは、対象の皮膚においてメタロプロテイナーゼ-1活性を阻害することを含み、本方法は、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を皮膚に接触させることを含む。
【0077】
幾つかの実施形態では、対象の皮膚を治療することは、治療を必要とする対象の皮膚において活性酸素種の濃度を低減することを含み、本方法は、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を皮膚に接触させることを含む。
【0078】
幾つかの実施形態では、対象の皮膚を治療することは、紫外線B(UVB)照射に曝露された対象の皮膚における細胞損傷および機能的損傷を低減することを含み、本方法は、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を皮膚に接触させることを含む。
【0079】
幾つかの実施形態では、対象の皮膚を治療することは、治療を必要とする対象の皮膚において、しわ、小じわ、および他の皮膚科的加齢兆候を低減することを含み、本方法は、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を皮膚に局所適用することを含む。
【0080】
幾つかの実施形態では、対象の皮膚を治療することは、治療を必要とする対象の皮膚において光発癌を予防することを含み、本方法は、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を皮膚に局所適用することを含む。
【0081】
幾つかの実施形態では、対象の皮膚を治療することは、治療を必要とする対象の皮膚においてUV関連の皮膚損傷を予防することを含み、本方法は、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を皮膚に局所適用することを含む。
【0082】
幾つかの実施形態では、対象の皮膚を治療することは、治療を必要とする対象の皮膚において掻痒感または不快感を緩和することを含み、本方法は、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を皮膚に局所適用することを含む。
【0083】
幾つかの実施形態では、対象の皮膚を治療することは、治療を必要とする対象の皮膚において滑らかな外観を提供することを含み、本方法は、有効量の、本明細書に記載の方法に従って生成されたアサイー抽出物を皮膚に局所適用することを含む。
【0084】
幾つかの実施形態では、皮膚に接触させることは、真皮および表皮に接触させることを含み、皮膚に局所適用することは、真皮および表皮に適用することを含む。
【0085】
化学的定義
具体的な官能基および化学用語の定義を下記で詳細に説明する。化学元素は、元素周期表(CAS版、Handbook of Chemistry and Physics, 75th Ed.,内表紙)に従って特定され、具体的な官能基は一般に、その中に記載される通りに定義される。加えて、有機化学の通則、ならびに具体的な官能性部分および反応性は、Thomas Sorrell, Organic Chemistry, University Science Books, Sausalito, 1999、Smith and March, March’s Advanced Organic Chemistry, 5th Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York, 2001、Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, Inc., New York, 1989、およびCarruthers, Some Modern Methods of Organic Synthesis, 3rd Edition, Cambridge University Press, Cambridge, 1987に記載されている。
【0086】
冠詞「a」および「an」は、本明細書で、その冠詞の文法上の目的語の1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指して使用される場合がある。例として、「類似体(an analogue)」は、1つの類似体または複数の類似体を意味する。
【0087】
ある範囲の値が列挙される場合、その範囲内の各値および部分範囲を包含することを意図する。
【0088】
以下の用語は、それに関して以下に提示される意味を有することが意図され、本明細書および本発明の意図される範囲を理解する際に有用である。
【0089】
上記および他の例示的な置換基は、詳細な説明および特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明は、いかなる方法によっても、上記に例示的に列挙する置換基によって限定されることを意図しない。
【0090】
その他の定義
投与が企図される「対象」としては、ヒト(すなわち、任意の年齢群、例えば、小児対象(例えば、乳児、小児、青年)または成人対象(例えば、若年成人、中年成人、または高齢成人)の男女)が挙げられるが、これに限定されるものではない。ある特定の実施形態では、対象はヒトである。「ヒト」、「患者」、および「対象」という用語は、本明細書で同義に使用される。
【0091】
疾患、障害、および病態は、本明細書で同義に使用される。
【0092】
本明細書で使用される場合、特に指定のない限り、「治療する」、「治療すること」、および「治療」という用語は、対象が特定の疾患、障害、または病態に罹患している間に行われ、その疾患、障害、または病態の重篤度を低減するか、または疾患、障害、または病態の進行を遅延または緩徐化する行為(「治療的治療」)を企図するとともに、対象が特定の疾患、障害、または病態を患い始める前に行われる行為(「予防的治療」)も企図する。「治療」を施し得る病態には美容的病態も含まれ、この場合の「治療」には、障害または損傷の治療ではなく皮膚機能の改善(「美容的治療」)を含み得る。
【0093】
「局所適用」とは、組成物を角質組織の表面に塗布することまたは伸ばすことを意味する。「局所皮膚組成物」としては、角質組織への局所適用に適した組成物が挙げられる。当該組成物は通常、皮膚に適用した場合に過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応などを有さないという点で皮膚科学的に許容される。本発明の局所スキンケア組成物は、皮膚への適用後に著しい滴りまたは溜まりがないように選択された粘度を有することができる。
【0094】
一般に、化合物の「有効量」とは、望ましい生物学的応答を誘発する、例えば、皮膚障害を治療するために十分な量であり、麻酔または鎮静を誘導するために十分な量を指す。当業者であれば理解されるであろうが、本発明の化合物の「有効量」は、目的とする生物学的エンドポイント、化合物の薬物動態、治療される疾患、投与方式、ならびに対象の年齢、体重、健康、および病態などの要因に応じて変化し得る。有効量は、治癒的治療および予防的治療を包含する。
【0095】
本明細書で使用される場合、「アサイー材料」とは、種子を含むアサイー植物の果実を指す。
【0096】
本明細書で使用される場合、特に指定のない限り、化合物の「治療有効量」とは、疾患、障害、もしくは病態の治療において治療上の利点を提供するか、または疾患、障害、もしくは病態に関連する1種以上の症状を遅延させるかもしくは最小限に抑えるために十分な量である。化合物の治療有効量とは、治療薬単独での量、または疾患、障害、もしくは病態の治療において治療上の利点を提供する他の療法と併用したときの治療薬の量を意味する。「治療有効量」という用語は、治療全体を改善させる量、疾患もしくは病態の症状もしくは原因を軽減もしくは回避する量、または別の治療薬の治療効力を増強する量を包含し得る。
【0097】
本明細書で使用される場合、特に指定のない限り、化合物の「予防的有効量」とは、疾患、障害、もしくは病態、または疾患、障害、もしくは病態に関連する1種以上の症状を予防するか、その再発を予防するために十分な量である。化合物の予防的有効量とは、治療薬単独での量、または疾患、障害、もしくは病態の予防において予防上の利点を提供する他の薬剤と併用したときの治療薬の量を意味する。「予防的有効量」という用語は、予防全体を改善させる量、または別の予防薬の予防効力を増強する量を包含し得る。
【0098】
実施例
本明細書に記載される発明をより完全に理解できるようにするために、以下の実施例を記載する。本出願に記載の合成および生物学的な実施例は、本明細書で提供する化合物、医薬組成物、および方法を例示するために提供するものであり、いかなる場合もその範囲を限定すると解釈されない。
【0099】
略語
ACN:アセトニトリル;DCFH-DA:2’,7’-ジクロロフルオレセインジアセテート;DMSO:ジメチルスルホキシド;DPPH:α-ジフェニル-β-ピクリルヒドラジル;EL:抽出液;EROs:活性酸素種必須物質(タンパク質);HPLC:高速液体クロマトグラフィー;LC:液体クロマトグラフィー;MI:変異原性指数;MSMS:質量分析-質量分析(タンデム質量分析);MTT:3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド;PBS:リン酸緩衝生理食塩水;ROS:活性酸素種;SDS:ドデシル硫酸ナトリウム;ST-035:TI-35と同様のアサイー抽出物;TI-35:ST-035と同様のアサイー抽出物;UVB:紫外線B波;VM:植物性物質。
【0100】
実施例1.アサイー高温抽出物の生成プロセス
約1.0キロの抽出物を調製した。抽出プロセスに含まれる手順は、1)材料の洗浄、2)乾式粉砕と抽出または湿式粉砕/浸軟、3)濾過、4)蒸発、5)凍結乾燥または噴霧乾燥、および6)保存であった。
【0101】
「工業プロセス」では、工程2は反応器内での乾式粉砕と抽出であり、工程5は噴霧乾燥である。
【0102】
洗浄段階
種子を含むアサイー果実55キロを入手した。洗浄後、流水で材料を洗浄し不純物を除去した。
【0103】
次の工程で過剰な水を除去し、室温で乾燥させた。その後、材料を清潔なビニール袋に詰め、使用時まで温度-20℃の冷凍庫に保管した。
【0104】
乾式粉砕および抽出の段階
粉砕工程の最初に、洗浄したアサイー材料を8mmメッシュのふるいを装備したハンマーミルで処理する。ふるいに保持されなかった材料を次の抽出工程に送った。
【0105】
この高温抽出では、水アルコール抽出物を反応器内で30℃超の温度で24時間未満撹拌する。例えば、円筒型バッチ式反応器内にて、撹拌速度40Hz、温度40+/-20℃、エタノール/水1:1の抽出液、および粒子状材料と抽出液との比が約1:2~1:10、総抽出時間が約1~5時間でパドル撹拌しながら高温浸軟を実施することができる。
【0106】
湿式粉砕/浸軟段階
洗浄段階で得た洗浄済み材料200.0グラム分(概算)を用いて、洗浄済み材料(植物性物質;VM)1部対抽出液(EL)4部の割合で最初の抽出を実施した。抽出に使用したELは、無水エタノールと脱イオン水が1:1(v/v)比の混合物であった。
【0107】
植物性材料はガラスビーカーに秤量し、水で完全に洗浄して不純物を除去した。秤量質量の2倍に相当する体積の脱イオン水をビーカーに加えた(例えば、VMが200.0グラムの場合、400.0mLの水を加えた)。ビーカーの内容物をステンレス鋼容器に移し、材料を約1分間粉砕した。粉砕した材料塊と水を再度ビーカーに移し、内容物を10分間煮沸した。水抽出物の入ったビーカーを温度が約30℃に達するまで氷浴中で冷却した。
【0108】
最後に、ビーカーの内容物を浸軟容器(パラフィルムで密封したステンレス鋼容器)に移し、水に使用したのと同じ計量法を使用して無水エタノールを加え、最終的に、植物性物質(VM)1部対抽出液(EL)4部の割合にした。
【0109】
水アルコール抽出物50%(v/v)の浸軟時間は、温度約4℃の冷蔵庫内で7~10日間であった。
【0110】
濾過段階
湿式粉砕/抽出段階での浸軟期間の後、抽出物を「ボイル」地のファブリックで重力により濾過し、「半固形の」植物性材料(大型粒子形態)を除去した後、80.0g/m、多孔度3ミクロンの濾紙で真空濾過して、種子の粉砕により生じるサイズの小さい粒子状材料を除去した。水アルコール抽出物は、ロータリーエバポレーター中での溶媒蒸発時点まで、茶色のガラス瓶に入れるか、アルミホイルに包み(密閉)、4℃の冷蔵庫に保管した。
【0111】
乾式粉砕および抽出段階の後、抽出物を目開きが90~187μ、好ましくは154μのバッグフィルターに通して濾過した。
【0112】
回転式蒸発段階
濾過プロセスの後、水アルコール抽出物50%(v/v)に回転式蒸発プロセスを施し、有機溶媒を除去した。蒸発フラスコに入れた溶液の体積は常時、フラスコの総容積の半分未満であった(各回約800.0mL)。エタノール蒸発プロセスには、2台のロータリーエバポレーターを使用した。1台はSolab製(モデルSL-126)、もう1台はBuchi製(モデルR-100)であり、いずれも加熱槽、冷却用チラー、および真空ポンプ装備である。いずれの種類のエバポレーターも、加熱槽およびチラーの温度はそれぞれ60℃および10℃に調整した。例えば、60~80KPaの真空、温度40~70℃、および30Hzの一定撹拌下で濃縮を実施することができる。これにより、濃縮した水アルコール抽出物が生成される。
【0113】
低温殺菌
必要に応じて、凍結乾燥工程または噴霧乾燥工程の前に、抽出物を低温殺菌することができる。この低温殺菌は、種々の温度および条件で実施できるが、抽出物の沸点未満であることが好ましい。
【0114】
凍結乾燥段階
抽出物からエタノールを蒸発させた後、得られた溶液をホウケイ酸ガラス容器に分配し、アルミホイルで包み、パラフィルムで密閉した。各容器に入れた抽出物の量は、その容積の最大半分に相当した(例えば、250.0mLビーカーには、約125.0mLの抽出物を入れた)。分配後、抽出物を-20℃で少なくとも24時間凍結した後、凍結乾燥プロセスを行った。これにより、凍結された水アルコール抽出物が生成される。
【0115】
凍結された水アルコール抽出物50%(v/v)の乾燥抽出物への変換は、水が固体状態(氷)から気体状態へと変化する凍結乾燥プロセスによって達成することができる。この物理的状態の変化は、極低温(-55℃)および真空下の水でのみ起こる。フラスコ16個分(または容器を含め氷3.0kg)の容量を備えた、Terroni製の凍結乾燥機(モデルLS3000)を使用した。本手順は、抽出物を少なくとも24時間凍結し、ボトルを覆うために使用したパラフィルムに針で穴を開け、事前に温度を安定させた装置に容器を配置することで構成された。
【0116】
凍結乾燥プロセスには、各容器内の抽出物の体積に応じて、抽出物が完全に乾燥するまで7~10日を要した。
【0117】
噴霧乾燥段階
凍結乾燥の代替策として、濃縮した水アルコール抽出物から乾燥抽出物への変換を噴霧乾燥プロセスによって達成することができる。例えば、噴霧乾燥は、必要に応じて噴霧乾燥賦形剤を添加した後、初期温度190+/-10℃、最終温度95+/-10℃、および噴霧乾燥機のディスク速度300+/-90Hzで噴霧乾燥することによって達成することができる。例えば、濃縮した精製抽出物に添加する噴霧乾燥賦形剤は、噴霧乾燥前の濃縮した精製抽出物の体積を基準として、SiOおよびマルトデキストリンを含み、40~60%w/vであり得る。
【0118】
幾つかの例では、凍結乾燥または噴霧乾燥のいずれかによって生成されたアサイー抽出物は、6%の最大含水量を有する。
【0119】
乾燥抽出物の保存
凍結乾燥プロセスの終了時、各容器内の得られた乾燥抽出物量を、事前に秤量したフラスコに入れて秤量した。抽出物をホモジナイズして、アルミホイルで包んだボトルに分取し、使用時点まで-20℃の冷凍庫に保管した。使用した抽出方法では、約4.5%の収率が確保された。
【0120】
抽出物の化学的特性評価
質量分析と連動した高速液体クロマトグラフィー分析
抽出物のサンプルをスクリーニング分析にかけ、同定した物質の確定をパターン分析追加試験によって実施した。
【0121】
抽出物中に存在する化合物の特性評価に使用した装置
UPLC-MSMS型装置(超高速液体クロマトグラフィー;MSMS、タンデム質量分析)を使用してサンプルを分析した。システムの構成は、Xevo TQS質量分析計とWaters(United Kingdom)トリプル四重極質量分析計である。質量分析計は、同じくWaters製の脱気装置、クォータナリーポンプシステム、クロマトグラフィーカラムオーブン、温度制御サンプラー、および自動インジェクター搭載の高効率液体クロマトグラフ(Acquity H-Class)に連結されている。データの取得および処理は、MassLynxソフトウェアバージョン4.1を用いて実施した。
【0122】
検量用リン酸標準溶液を用いて、正イオンモードと負イオンモードの両方で質量分析計を検量した。ネブライザーガス(流量150L/時)および乾燥ガス(流量1,000L/時)として窒素を使用した。その他のMSパラメーター:イオン化源、エレクトロスプレー;キャピラリー電圧、4,000V;ソース温度、500℃;コーン電圧、40V。コリジョンセルのパラメーター:コリジョンガス流(アルゴン)、0.15mL/分;コリジョンエネルギー、28eV。
【0123】
抽出物の成分を決定するための分析方法
抽出物中で同定された化合物を定量するために、2つの分析方法を開発する必要があった。これは、提示した最初の手法がカテキン、エピカテキン、およびプロシアニジンといった化合物にとって適切ではなかったためである。この事実は本方法の検証プロセス中に確認された。
【0124】
フェルラ酸、ルチン、ケルセチン、バニリン酸、ナリンゲニン、およびヒスピズリン化合物の分析にはフェノール系-MeOH法を使用した。カテキン、エピカテキン、およびプロシアニジンB2化合物は、フェノール系-ACNと呼ぶ方法で分析した。いずれの方法にも、逆相C18クロマトグラフィーカラム(Kinetex50mm×2.1mm、粒子サイズ2.6μm、PheNamenex商標)を使用した。
【0125】
フェノール系-MeOH法の移動相の構成溶媒は、それぞれ、脱イオン水中0.1%ギ酸(溶媒A)およびメタノール(溶媒B)であった。フェノール系-ACN法でも溶媒Aは脱イオン水中0.1%ギ酸であり、溶媒Bはアセトニトリル中0.1%ギ酸であった。
【0126】
いずれの方法でも、線形グラジエント溶出モードにより、他の夾雑干渉物から分析対象物を最適に分離できた。移動相の流量は400.00μL min-1に固定した。全試験のランにおいて注入量は1.00μLであった。すべての分析ランでオーブンの温度を30℃に調整し、サンプル、品質コントロール、または検量溶液が装置内に残存する場合は、必ずサンプラーの温度を10℃に維持した。表1および表2は、それぞれフェノール系-MeOH法とフェノール系-ACN法に使用したグラジエント編成を示している。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
分析方法の検証
提示した分析方法を、標準追加試験によって同定された抽出物中の化合物、すなわちフェノール系-MeOH法におけるフェルラ酸、ルチン、ケルセチン、バニリン酸、ナリンゲニン、およびヒスピズリンについてのみ検証した。フェノール系-ACN法では、カテキン、エピカテキン、およびプロシアニジンB2化合物を検証した。
【0130】
線形性/検量線
フェノール系-MeOH法の線形性評価のために、25.0~475.0ng mL-1を適用範囲とするメタノール検量線を作成した。検量溶液は次のように調製した。まず、ストック溶液1.0mg mL-1を希釈して、各参照物質(RS)を加えた最終濃度10.0μg mL-1の個々のストック溶液を作製した。次に、6つの化合物を合一した溶液10.0μg mL-1を希釈して、濃度500.0ng mL-1の作業溶液を作製した。検量溶液の調製手順の後、目的とする適用範囲の曲線を取得した。
【0131】
高温抽出物中の化合物の分析
上記のように調製した高温抽出物TI-035の4回のランの結果を表3に示す。TI-35中の化合物のLCトレースを重ね合わせた例を図1に示す。
【0132】
【表3】
【0133】
実施例2.高温抽出物の生物学的分析
以下のアッセイにおいて、高温抽出物をTI-35またはST-035と記載する場合があり、これらの用語は同義に使用される。
【0134】
試験物質、参照物質、およびビヒクルの調製
秤量を除いて、試験物質、参照物質、およびビヒクルの処理は、生物学的安全キャビネット内にて無菌条件下で実施した。濃度25mg/mLのST-035試験物質のストック溶液(SS)をDMSO100%で調製した。続いて、ST-035を可溶化するために当該溶液を超音波装置内に10分間静置した。その後、採用した手法に応じて、培養培地またはリン酸緩衝液(PBS)を補充して、SSから0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30、および100μg/mLに濃度を調製した。25mg/mLのST-035をDMSO100%に置き換えることにより、ビヒクル群または対照をST-035と全く同様に調製した。ST-035の各濃度に存在するDMSOの最大比率は0.4%であり、これは両方の系統の組織(ヒトケラチノサイトおよび線維芽細胞)を用いて実施した以下に記載の試験に干渉しない。アスコルビン酸参照物質は、補充した培養培地に溶解させた。ただし、フェルラ酸参照物質はDMSO100%に溶解させ、2mg/mLのストック溶液を作製し、その後、希釈して、0.2%DMSOを含有する4μg/mL濃度の調製物にした。
【0135】
α-ジフェニル-β-ピクリルヒドラジル(DPPH)活性の評価
上記の記載(試験物質、参照物質、およびビヒクルの調製)に従って、試験物質と参照物質アスコルビン酸の濃度(0.1、0.3、1、3、または10μg/mL)を調製し、各濃度の225μLをウェルに添加した。次に、75μLのメタノール(DPPHビヒクル)または60μMのDPPH溶液を添加し、30~40分後、分光光度計(SpectraMax i3x - Molecular Devices)で515nmの読み取りを実施した。ビヒクル群におけるDMSOの比率は0.04%であった(濃度10μg/mLでのDMSOの比率に相当)。図2および3に示すように、TI-35は間接的な抗酸化活性を有し、アスコルビン酸よりも強力である。
【0136】
MTT法による細胞生存率の評価
本アッセイでは、ウェルあたり7×10個のヒトケラチノサイト細胞(HEKn)を96ウェル培養プレートに播種した。COインキュベーター内にて37±0.1℃、5±0.1%COで約24時間インキュベートした後、培養培地を、ビヒクル(DMSO0.12%)または濃度1、3、10、または30μg/mLの試験物質を含有する培地に交換し、同じ条件下で再度インキュベートした。
【0137】
インキュベーション時間(24、48、または96時間)の後、細胞生存率を次の通りのMTT法によって分析した。
【0138】
MTT還元呈色試験によって、細胞生存率アッセイを両方の系統(ケラチノサイトおよび線維芽細胞)に対して実施した。本試験では、生細胞がMTT塩を還元して自身のミトコンドリア内にホルマザン複合体を形成する。本アッセイでは、処理剤との種々のインキュベーション時間(ケラチノサイトの場合は24、48、または96時間、線維芽細胞の場合は24または48時間)の後、MTT(0.5mg/mL)を含有する培地に培養培地を交換し、5%±0.1%COを含有する加湿雰囲気中にて37℃±0.1℃で約4時間、細胞をインキュベートした。続いて、MTT溶液を除去し、100μLのジメチルスルホキシド(DMSO;100%)を添加した。SpectraMax i3x装置(Molecular Devices)を使用して、570nmの吸光度を測定した。結果を、対照(0.12%DMSOを含有するビヒクル群)に対する生細胞の比率で表した。
【0139】
上記の記載(試験物質、参照物質、およびビヒクルの調製)に従って、試験物質の濃度(1、3、10、および30μg/mL)を調製した。
【0140】
図4~6に示すように、ビヒクル群(0.12%DMSO)および濃度1、3、および10μg/mLのST-035では、24時間(A)、48時間(B)、または96時間(C)のインキュベーション後にケラチノサイトの生存率が変化していない。しかしながら、濃度30μg/mLでは、24、48、および96時間で生存率がそれぞれ37.3±3.7%、43.6±6.1%、および47.5±5.7%減少する。濃度30μg/mLは細胞毒性であるため、以降のアッセイでは当該濃度は除外した。
【0141】
スルホローダミンB法を使用した細胞増殖の評価
ウェルあたり7×10個のヒトケラチノサイト細胞(HEKn)を96ウェル培養プレートに播種した。約24時間のインキュベーション後、0時間(T0)の評価のための時間群を20%トリクロロ酢酸溶液で固定し、残りの群では、培養培地を、ビヒクル(DMSO0.04%)または濃度1、3、または10μg/mLの試験物質を含有する培地に交換し、同じ条件下で再度インキュベートした。96時間後、スルホローダミンB法によって細胞増殖を分析した。
【0142】
化合物の抗増殖活性の評価方法は、Vichai, V. and Kirtikara, K., Sulforhodamine B colorimetric assay for cytotoxicity screening, Nat Protoc. 2006; 1(3): 1112-6に記載される手法に従って実施した。本方法は、スルホローダミンBが、トリクロロ酢酸によって固定された細胞のタンパク質成分に結合する能力によって細胞増殖を分析する。本アッセイでは、ケラチノサイトを播種して、一晩インキュベートし、未処理細胞を含有する群を以下に記載するように固定し、試験のプロトコール終了まで室温に維持した(0時間-T0)。次に、残りの細胞をビヒクル群(0.04%DMSO)または濃度1、3、または10μg/mLの試験物質で96時間処理した。このインキュベーション期間後、処理剤を除去し、冷却した20%トリクロロ酢酸100μLを各ウェルに添加して細胞を固定した。4℃で1時間固定した後、プレートを洗浄し、数分間放置して乾燥させた。続いて、50μLのスルホローダミンB(0.1%)を各ウェルに添加し、30分間置いた。次に、プレートを1%酢酸で4回洗浄した。最後に、スルホローダミンBを可溶化するために10mMのトリズマ塩基100μLを添加した。開始時間(T0)に固定した群と96時間インキュベートした群の吸光度を、SpectraMax i3x equipment(Molecular Devices)を使用して540nmで定量した。結果は、対照群(ビヒクル)に対する比率で表した。
【0143】
ヒトケラチノサイトを、ビヒクル群(0.04%DMSO)または試験物質1、3、または10μg/mLの存在下で96時間インキュベートした。ケラチノサイト増殖の結果を図7に示す。0時間で得られた値は、96時間より減少した。バーは、3連による2回の個別アッセイの平均値±平均値の標準誤差を表す。統計解析では、一元配置分散分析(ANOVA)に続いてニューマン・コイルス検定を使用した(は、ビヒクル群との比較でp<0.05)。
【0144】
上記の記載(試験物質、参照物質、およびビヒクルの調製)に従って、試験物質の濃度(1、3、および10μg/mL)を調製した。
【0145】
図7に示すように、TI-35濃度(1、3、または10μg/mL)による96時間のインキュベーション後、スルホローダミンBアッセイで評価すると、これらの細胞の増殖に変化はなかった。
【0146】
DCFH-DAプローブによる抗酸化物質およびスカベンジャーの活性評価
試験物質および参照物質(ケラチノサイトの場合はアスコルビン酸、線維芽細胞の場合はアスコルビン酸およびフェルラ酸)によるEROs生成の阻害を、透過性2’,7’-ジクロロフルオレセインジアセテート(DCFH-DA)プローブを用いた蛍光分析法によって評価した。2’,7’ジクロロフルオレセインジアセテート(非蛍光)は、細胞内で脱エステル化され、酸化後に高蛍光性の2’,7’ジクロロフルオレセインになる。蛍光検出は、SpectraMax i3x(Molecular Devices)装置において、励起波長485nmおよび発光波長535nmで実施した。ケラチノサイトにおける固有の抗酸化活性の評価については、ビヒクル群(UVB刺激なし-100%)と比較したEROs生成の比率で結果を表した。DCFH-DAプローブ手法を使用した残りの試験については、ケラチノサイトと線維芽細胞の両方に関してビヒクル+UVB群(100%)と比較したROS生成率で結果を表した。上記の記載(試験物質、参照物質、およびビヒクルの調製)に従って、試験物質(10μg/mL)、アスコルビン酸参照物質(10μg/mL)、およびフェルラ酸参照物質(4μg/mL)の濃度を調製した。
【0147】
ヒトケラチノサイトにおける試験物質の固有の抗酸化活性は、以下のように評価した。ケラチノサイトをDCFH-DAプローブとともにインキュベートし、30分後、ビヒクル群(0.04%DMSO)、試験物質ST-035(10μg/mL)、アスコルビン酸(10μg/mL)、またはフェルラ酸(4μg/mL)とともに4時間または24時間、細胞をインキュベートした。その後、EROsの生成をマイクロプレートリーダー(485/535nm)によって評価した。3連による2回の個別アッセイを実施した。統計解析では、一元配置分散分析(ANOVA)に続いてニューマン・コイルス検定を使用した(は、ビヒクル群との比較でp<0.05)。
【0148】
図8に示すように、10μg/mLのST-035とケラチノサイトとのインキュベートでは、EROsの基礎生成が4時間および24時間でそれぞれ41.7±1.2%および42.6±3.5%減少した。フェルラ酸(4μg/mL)でも、EROsの基礎生成が26.8±2.4%(4時間)および45.8±6.6%(24時間)減少した。しかしながら、アスコルビン酸(10μg/mL)では、評価した2回において、EROsの基礎生成が変化しなかった。
【0149】
ケラチノサイトにおけるUVB照射に対する試験物質のスカベンジャー活性および抗酸化活性の評価
ヒトケラチノサイトにおけるST-035試験物質のスカベンジャー能を評価した。ヒトケラチノサイトをDCFH-DA(50μM)プローブとともに30分間インキュベートした。この期間の後、ケラチノサイトをビヒクル群(0.04%DMSO)、ST-035、またはアスコルビン酸(10μg/mL)とともにインキュベートし、続いて誘導作用のある90mJ/cmのUVBを細胞に照射した。化合物のスカベンジャー活性は、照射から45分後の485/535nmの励起/発光波長の測定値を取得することによって評価した。結果を図9および10に示す。バーは、3連による3回の個別アッセイの平均値±平均値の標準誤差を表す。統計解析では、一元配置分散分析(ANOVA)に続いてニューマン・コイルス検定を使用した(は、ビヒクル群との比較でp<0.05、は、ビヒクル群+UVB90mJ/cmとの比較でp<0.05)。
【0150】
図9は、UVB誘導性のEROs生成に関する、ヒトケラチノサイトにおけるST-035のスカベンジャー能を表す。UVB照射(90mJ/cm)により、活性種の生成が5.4倍に増加した。照射直前にST-035(10μg/mL)を添加すると、EROs生成が16.4±12.1%減少した。しかし、アスコルビン酸参照物質では46.2±2.0%減少した。
【0151】
ヒトケラチノサイトにおけるST-035試験物質の抗酸化能を以下のように評価した。ヒトケラチノサイトをDCFH-DA(50μM)プローブとともに30分間インキュベートした。この期間の後、ケラチノサイトをビヒクル群(0.04%DMSO)、ST-035、またはアスコルビン酸とともに24時間インキュベートし、これに続いて誘導作用のある90mJ/cmのUVBを細胞に照射した。化合物の抗酸化活性は、照射から45分後の485/535nmの励起/発光波長の測定値を取得することによって評価した。結果を図10に示す。バーは、3連による3回の個別アッセイの平均値±平均値の標準誤差を表す。統計解析では、一元配置分散分析(ANOVA)に続いてニューマン・コイルス検定を使用した(は、ビヒクル群との比較でp<0.05、は、ビヒクル群+UVB90mJ/cmとの比較でp<0.05)。
【0152】
ST-035(10μg/mL)またはアスコルビン酸(10μg/mL)による前処理後の抗酸化能力(図10)を、UVB照射(90mJ/cm)後に評価したところ、活性種の生成が5倍に増加した。照射前にST-035またはアスコルビン酸参照物質と24時間インキュベートすると、EROs生成がそれぞれ35.1±10.4%および44.3±11.4%減少した。
【0153】
メタロプロテイナーゼ-1(MMP-1)酵素活性の評価
ビヒクル(0.04%DMSO)、ST-035(10μg/mL)、アスコルビン酸参照物質(10μg/mL)、フェルラ酸参照物質(4μg/mL)、または本試験の陽性対照であるMMP-1酵素活性阻害剤GM6001とのインキュベーション後にMMP-1酵素を評価した。バーは、3連による1回のアッセイの平均値±平均値の標準誤差を表す。ビヒクル群に対する阻害率を算出した。統計解析では、一元配置分散分析(ANOVA)に続いてニューマン・コイルス検定を使用した(は、ビヒクル群との比較でp<0.05)。
【0154】
図11に示すように、TI-35(10μg/mL)は、MMP-1酵素活性を30.0±1.0%阻害したが、アスコルビン酸参照物質は9.2±1.5%しか阻害しなかった。フェルラ酸では、in vitroでのMMP-1活性は変化しなかった。アッセイの検証のために、1μMのGM6001(MMP-1特異的阻害剤)を使用し、これはMMP-1の活性を81.3±1.5%減少させた。
【0155】
MTT法による線維芽細胞の細胞生存率の評価
試験物質との24時間または48時間のインキュベーション後、MTTアッセイによってヒト線維芽細胞の生存率を評価した。ビヒクル群(0.12%DMSO)または濃度1、3、10、または30μg/mLの試験物質とともに細胞を24時間(図12)または48時間(図13)インキュベートした後、MTT法によって細胞生存率アッセイを行った。バーは、3連による4回の個別アッセイの平均値±平均値の標準誤差を表す。統計解析では、一元配置分散分析(ANOVA)に続いてニューマン・コイルス検定を使用した(は、ビヒクル群との比較でp<0.05)。ビヒクル群に対する阻害率を算出した。
【0156】
図12および13に示すように、ヒト線維芽細胞系統もMTTアッセイによって評価した。ビヒクル群(0.12%DMSO)および濃度1、3、および10μg/mLのST-035では、24時間(図12)または48時間(図13)のインキュベーション後に線維芽細胞の生存率が変化していない。しかし、48時間後では、30μg/mLの濃度で生存率が10.5±1.9%減少した。したがって、以降のアッセイではこれを除外する。
【0157】
線維芽細胞におけるUVB照射に対する試験物質のスカベンジャー活性および抗酸化活性の評価
ヒトケラチノサイトにおけるST-035試験物質のスカベンジャー能を評価した。ヒトケラチノサイトをDCFH-DA(50μM)プローブとともに30分間インキュベートした。この期間の後、ケラチノサイトをビヒクル群(0.04%DMSO)、ST-035、またはアスコルビン酸(10μg/mL)とともにインキュベートし、続いて誘導作用のある90mJ/cmのUVBを細胞に照射した。化合物のスカベンジャー活性は、照射から45分後の485/535nmの励起/発光波長の測定値を取得することによって評価した。結果を図14に示す。バーは、3連による3回の個別アッセイの平均値±平均値の標準誤差を表す。統計解析では、一元配置分散分析(ANOVA)に続いてニューマン・コイルス検定を使用した(は、ビヒクル群との比較でp<0.05、は、ビヒクル群+UVB90mJ/cmとの比較でp<0.05)。
【0158】
図14は、UVB誘導性のEROs生成に関する、ヒトケラチノサイトにおけるST-035のスカベンジャー能を表す。UVB照射(90mJ/cm)により、活性種の生成が5.4倍に増加した。照射直前にST-035(10μg/mL)を添加すると、EROs生成が16.4±12.1%減少した。しかし、アスコルビン酸参照物質では46.2±2.0%減少した。
【0159】
ヒト線維芽細胞におけるST-035試験物質の抗酸化能の評価
ヒト線維芽細胞をDCFH-DAプローブ(50μM)とともに30分間インキュベートした。この期間の後、線維芽細胞をインキュベートした。統計解析では、一元配置分散分析(ANOVA)に続いてニューマン・コイルス検定を使用した(は、ビヒクル群との比較でp<0.05、は、ビヒクル+UVB90mJ/cmとの比較でp<0.05)。
【0160】
ST-035 10μg/mLとのプレインキュベーションにより、活性酸素種の生成が18.4±0.6%減少した。図15に示すように、同濃度のアスコルビン酸では30.5±6.2%減少し、フェルラ酸(4μg/mL)では47.4±0.5%減少した。
【0161】
チロシナーゼ酵素活性の評価
チロシナーゼ酵素はメラニン形成の律速段階酵素であり、メラニン生成において幾つかの重要な段階を担っている(Gruber, James V. and Holtz, Robert, Oxid. Med. Cell Longev., 2013;(1):702120)。チロシナーゼ阻害物質として作用する化合物は、メラニンの合成に影響を及ぼす可能性がある。各濃度のST-035(10、30、100、300、または1,000μg/mL)、SR-31(10、30、100、300、または1,000μg/mL)、またはビヒクル10μLをそれぞれのウェルに添加した。続いて、20μLのチロシナーゼ(500U/mL、50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.5に溶解)を添加した。「白色」群(チロシナーゼ非含有群)のウェルに、20μLの50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)を添加した。その後、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)に溶解した1mMのL-チロシン基質170μLを添加した。30~40分間のインキュベーション後、プレートの490nmを読み取った。
【0162】
ST-035の色素脱失能を検証するための最初の工程は、メラニン合成の必須酵素であるチロシナーゼの活性を評価することであった。チロシナーゼ活性を低減できる物質は、色素脱失剤である可能性が極めて高い。ST-035の各濃度およびコウジ酸(10、30、100、300、または1,000μg/mL)を評価したところ、図5に観察されるように、どの濃度のST-035もチロシナーゼ酵素活性を低減しなかった。しかしながら、参照物質(コウジ酸)は、濃度300および1,000μg/mLでそれぞれ43%および84%の低減を示した。参照物質から得られたIC50値は、373.2μg/mL、信頼限界は257.5~541.0μg/mLであった。
【0163】
濃度の異なる試験物質(図16)または参照物質(図17)によるチロシナーゼ酵素の阻害をチロシン基質およびチロシナーゼ酵素の存在下で評価した。バーは、3連による3回の個別アッセイの平均値±平均値の標準誤差を表す。統計解析では、一元配置分散分析(ANOVA)に続いてニューマン・コイルス検定を使用した(は、ビヒクル群との比較でp<0.05)。ビヒクル群に対する阻害率を算出した。
【0164】
MTT法によるメラノサイトの細胞生存率の評価
試験物質との72時間のインキュベーション後、MTTアッセイによってヒトメラノサイトの生存率を評価した。濃度1、3、10、30、または100μg/mLの試験物質とともに細胞を72時間インキュベートした後、MTT法を使用して細胞生存率試験を実施した。結果を図18に示す。バーは、3連による3回の個別アッセイの平均値±平均値の標準誤差を表す。統計解析では、一元配置分散分析(ANOVA)に続いてニューマン・コイルス検定を使用した(は、ビヒクル群との比較でp<0.05)。ビヒクル群に対する阻害率を算出した。
【0165】
72時間のインキュベーション期間後、濃度100μg/mLのST-035試験物質(図18)により、ヒトメラノサイトの生存率が減少した結果、この期間後の生細胞は88.5±6.7%となった。評価した他の濃度では、ST-035は細胞生存率を変化させなかった。コウジ酸参照物質(図19)は、この系統の生存率を減少させる能力がなかった。
【0166】
メラニン生成の評価
ヒトメラノサイト培養物においてメラニン生成を評価した。ヒトメラノサイトを試験物質10μg/mLの存在下で72時間インキュベートした。結果を図20に示す。バーは、3連による3回の個別アッセイの平均値±平均値の標準誤差を表す。統計解析では、スチューデントt検定を使用した。メラニン生成量(単位μg/mL)を合成メラニン曲線から算出した。
【0167】
ST-035はチロシナーゼ活性に影響を及ぼさないが、酵素活性以外のメカニズムによるメラニンの直接生成によっても、化合物の色素脱失能を評価することができる。そのため、図20に示すように、試験物質10μg/mLをヒトメラノサイトと72時間インキュベートした後、メラニン基礎生成に変化はみられなかった。
【0168】
皮膚刺激性アッセイ
OECD Guidelines for the Testing of Chemicals, Section 4, TG439 In Vitro Skin Irritation: Reconstructed Human Epidermis Test Methodに記載されている再構成ヒト組織モデルに対して、ST-035が及ぼす刺激作用の可能性を評価した。組織の受領後、処理時点まで増殖培地中で一晩、再順化させた。再順化後、陰性対照、陽性対照(参照物質)、または試験物質を16μL量で表皮に添加し、42分間(±1分間)保持した。続いて、各組織に25リン酸緩衝液の洗浄プロセスを施し、処理剤を除去した。引き続き、表皮をCOインキュベーター(5±0.1%)内の増殖培地中にて37±0.1℃で42時間(±1時間)保持した。この期間の後、組織を1mg/mLのMTT溶液と3時間(±15分間)、その後、イソプロパノールと2時間インキュベートし、ホルマザン複合体を抽出した。次に、各ウェル(2連)の200μLを96ウェルプレートに移し、570nmでの吸光度を読み取った。
【0169】
図21は、異なる処理剤と42分間インキュベートした組織の間接的な細胞生存率の測定値(570nmでの吸光度)を示す。この値は、各試験群の3種類の組織を表す。陰性対照(PBS)の生存率平均は1.760±0.116、陽性対照(参照物質)は0.018±0.001、ST-035試験物質の生存率は1.692±0.068を示した。比率に関しては、陰性対照の組織生存率は100%、陽性対照(参照物質)はわずか1.02%、試験物質は96.14%を表している。陽性対照SDS(参照物質)とのインキュベーション後に得られた結果で本モデルを検証したところ、生存率は40%未満を示した(承認基準に準拠)。
【0170】
再構成したヒト皮膚モデルにおける皮膚刺激性アッセイは、OECD TG439規格に準拠した代替方法であり、国際センターによって検証され、国際規制当局に承認されている。Globally Harmonized System of Classification and Labeling of Chemicals(GSH)に従って、試験物質の刺激能を、区分2の皮膚刺激性物質と未分類(皮膚刺激性を引き起こさない)に分類することができる。
【0171】
刺激性物質(区分2)とみなされるには、アッセイ終了時にその物質が陰性対照群と比較して50%以上の細胞生存率の減少を示さなければならない。物質が陰性対照と比較して50%超の生存率を示す場合は、非刺激性とみなされることになる。GSH基準によれば、ST-035は非刺激性物質とみなされる。
【0172】
TI-35の変異原性試験
試験物質ST-035で起こり得る変異原性能を、ネズミチフス菌(S.typhimurium)株TA97a、TA98、TA100、TA102、およびTA1535において、活性肝臓酵素(P450活性)を含有する肝抽出物であるS9による代謝活性の非存在下または存在下で評価した。
【0173】
S9の非存在下および存在下でTA100株を用いて実施した予備試験では、選択した濃度(8、40、200、1000、および5,000μg/プレート)においてST-035の変異原性効果は観察されなかった。そのため、S9の非存在下または存在下で、同じ濃度を使用して全株での最終試験を実施した。
【0174】
S9の非存在下で、ネズミチフス菌の5株とともに試験物質をインキュベートした後、復帰突然変異コロニー(変異原性)数の増加は観察されず、結果として変異原性指数(MI)値は0.80~1.16となった。5,000μg/プレートの濃度では、TA100株およびTA97a株において細胞毒性が観察され、変異原性指数(MI)はそれぞれ0.52および0.68であった(図22~24)。
【0175】
代謝活性の存在下では、MI値が0.73~1.09である復帰突然変異コロニー(変異原性)の数に変化は観察されなかった。細胞毒性は、濃度が5,000μg/プレートであるTA98株においてのみ観察され、MIは0.49であった(図23~25)。
【0176】
TA97a、TA98、TA100、およびTA102株の変異原性指数が2以上、またはTA1535株の値が3以上の物質は変異原性とみなされるため、上記の結果は陰性応答の基準を満たす。
【0177】
実施例3.低温抽出物および比較用の高温抽出物の調製手順
浸軟段階
TI-35を用いた以前の試験では、50%エタノール(v/v)水アルコール抽出物を、植物性物質200gおよび抽出液800mLの量で標準化(植物性物質には水400mLを室温で添加)した後、工業用ブレンダーで粉砕し、その後、混合物が沸騰するまで加熱し、冷蔵庫で7日間の浸軟時間を置いた。
【0178】
本試験では、浸軟時間を7日間から3日間へと短縮した。種子の粉砕を可能な限り強化するために、工業用ブレンダーを使用する代わりに穀物グラインダーを使用し、脱イオン水と混合した種々の割合の無水エタノールを抽出液として評価した。割合は75~85%アルコール(v/v)の間で変化させた(抽出物BおよびC)。さらに、抽出物BおよびCの調製では煮沸工程を省略した。
【0179】
抽出物の生成に使用した手順は次の通りである。穀物グラインダーで粉砕した約200グラムの植物性物質をガラスビーカーに秤量し、ビーカーに十分量の抽出液(種々の割合のエタノールと水)を加え、混合物を機械的撹拌によりホモジナイズして抽出物を生成した。すべての水アルコール抽出物の浸軟時間は、温度約4℃の冷蔵庫で3日間であった。75%アルコールで作製した抽出物を抽出物B、85%アルコールで作製した抽出物を抽出物Cとした。
【0180】
50%エタノールおよび50%水の抽出物である抽出物Aは、浸軟時間がわずか3日間であることを除いて、高温抽出物TI-35の調製と同じ方法で生成した。この抽出物でも、他の抽出物に使用したものと同じ手順、すなわち植物性物質200gと抽出液800mLを使用した。この抽出物は、工業用ブレンダー内の水400mLに種子を入れ、1分間粉砕することにより調製した。次に、水と種子の混合物を粉砕し、ガラスビーカーに入れ、沸騰するまで加熱した。容器を冷却した後、水と種子の混合物にエタノール400mlを添加し、内容物をホモジナイズし、温度4℃の冷蔵庫に3日間保管した。
【0181】
抽出液であるエタノールの割合を50%にした比較抽出試験も実施した。この抽出物は、欧州特許第2051721号明細書に記載されているものと同様であるが、植物性物質200グラム量に沸騰水400mlを添加し、この混合物を5分間静置したままにした。次に、ビーカーの内容物を工業用ブレンダーのステンレス鋼容器に移し、材料を約3分間粉砕した。粉砕した材料塊と水をビーカーに戻し、再度、内容物をさらに10分間煮沸した。続いて、水性抽出物の入ったビーカーを放冷し、そのときのみ、水に使用したものと同じ測定方法を使用して無水エタノールを添加して、最終的に、植物性物質1部対抽出液4部の比にした。この50%(v/v)水アルコール抽出物である抽出物Dの浸軟時間を、4℃の冷蔵庫にて7日間維持した。
【0182】
理解しやすくするために、実施した抽出試験の概要を以下に記載する:
【0183】
抽出物A=50%エタノールを含む高温抽出物、3日間浸軟。
【0184】
抽出物B=75%エタノールを含む低温抽出物、3日間浸軟。
【0185】
抽出物C=85%エタノールを含む低温抽出物、3日間浸軟。
【0186】
抽出物D=欧州特許第2051721号明細書と全く同様に生成した抽出物:50%エタノールを含む高温抽出物、7日間浸軟。
【0187】
濾過および回転式蒸発段階
上述の浸軟期間の後、得られた抽出物を濾過し、アルミホイルで包んだフラスコに入れて密閉し、冷蔵庫で保管した後、ロータリーエバポレーターによって溶媒を蒸発させた。表4は、濾過後の各抽出物で得られた体積を示している。
【0188】
【表4】
【0189】
抽出物ごとに一工程で蒸発を行い、濾過で得た全量を蒸発フラスコに入れた。加熱槽とチラーの温度はそれぞれ60℃と10℃に調整した。この条件下では、アルコールの体積が減少するまでの時間は約2時間であった。その期間の後、得られた抽出物は水性であるとみなした。
【0190】
浸軟および凍結乾燥により生成された抽出物を分析し、結果を表5に示す。
【0191】
【表5-1】
【表5-2】
【0192】
粉砕/抽出および噴霧乾燥により生成された抽出物を分析し、結果を表6に示す。
【0193】
【表6】
【0194】
浸軟および凍結乾燥により生成し、約10か月間熟成させた抽出物(抽出物H)、ならびに浸軟および凍結乾燥により生成し、約3~5年熟成させた抽出物の混合物(抽出物J)の分析を表7に示す。抽出物Hおよび抽出物Jについて得た同様のデータは、抽出物が相対的に経時安定性であること、および分析方法の再現性を示している。
【0195】
【表7】
【0196】
等価物および範囲
特許請求の範囲において、「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、反する記載のない限り、または文脈から明らかでない限り、1つ以上を意味し得る。ある群の1つ以上の要素の間に「または」を含む請求項または記載内容は、反する記載のない限り、または文脈から明らかでない限り、1つ、複数、またはすべての群要素が所与の生成物またはプロセスに存在する、用いられる、またはその他の方法で関連する場合に条件を満たすとみなされる。本発明は、群のうち正確に1つの要素が所与の生成物またはプロセスに存在するか、用いられるか、またはその他の方法で関連する実施形態を含む。本発明はまた、複数またはすべての群要素が所与の生成物またはプロセスに存在するか、用いられるか、またはその他の方法で関連する実施形態を含む。
【0197】
さらに、本発明は、列挙された請求項のうちの1つ以上からの1つ以上の限定、要素、条項、および記述用語が別の請求項に導入されている、あらゆる変形例、組み合わせ、および順列を包含する。例えば、別の請求項に従属する請求項はいずれも、同じ基本請求項に従属するいずれかの他の請求項に存在する1つ以上の限定を包含するように変更することができる。要素が列挙事項として提示されている場合、例えばマーカッシュ群形式では、要素の各部分群も開示されており、任意の要素を群から除外することができる。一般に、本発明または本発明の態様が特定の要素および/または特徴を含むものとして言及されている場合、本発明の特定の実施形態または本発明の態様はそのような要素および/または特徴からなる、または本質的にそれからなるものと理解されるべきである。簡潔にするために、こうした実施形態は、本明細書でその旨が具体的に記載されているわけではない。「含む(comprising)」および「含有する(containing)」という用語は、非限定的であることを意図しており、追加の要素または工程の包摂も可能であることを表している。範囲が示される場合、両端の値が含まれる。本明細書で使用される場合、指定値とともに使用される「約」という用語は、指定値の上下10%の数値を含む。別段の記載がない限り、「沸騰」温度または「沸点」とは、約1気圧で物質が沸騰する温度を指す。さらに、特に記載のない限り、または文脈および当業者の知見から明らかでない限り、範囲として表される値は、本発明の別の実施形態で指定された範囲内の任意の具体値または部分範囲を、文脈から特に明示されない限り、その範囲の下限の単位の10分の1までと想定することができる。
【0198】
本出願では、種々の申請特許、公開特許出願、学会論文、および他の刊行物を参照しており、そのすべてが参照により本明細書に援用される。援用された参考文献のいずれかと本明細書が矛盾する場合、本明細書を優先するものとする。加えて、先行技術の範囲内である本発明のいずれか特定の実施形態が、請求項のいずれか1項以上から明示的に除外される場合がある。このような実施形態は、当業者に公知であるとみなされるため、本明細書に除外が明示されていない場合であっても、除外され得る。先行技術の有無とは関係なく、本発明のいずれか特定の実施形態を、理由を問わず、任意の請求項から除外することができる。
【0199】
当業者は、本明細書に記載される具体的な実施形態に対する多くの等価物を認識しているか、または日常的な実験のみを用いて確認できるはずである。本明細書に記載の本発明の実施形態の範囲は、上記の説明に限定されることを意図するものではなく、添付の特許請求の範囲に記載される通りである。以下の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、この説明に対して種々の変更および改変がなされ得ることが当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25A
図25B
【国際調査報告】