(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-27
(54)【発明の名称】呼吸器系を訓練および監視するための装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20240520BHJP
A63B 23/18 20060101ALI20240520BHJP
A63B 24/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
A61B5/08
A63B23/18
A63B24/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569804
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 IB2022054308
(87)【国際公開番号】W WO2022238878
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】102021000012089
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501193001
【氏名又は名称】ポリテクニコ ディ ミラノ
【氏名又は名称原語表記】POLITECNICO DI MILANO
【住所又は居所原語表記】Piazza Leonardo da Vinci,3220133 MILANO-Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【氏名又は名称】吉田 新吾
(72)【発明者】
【氏名】グレーサー,オレリー マリー
(72)【発明者】
【氏名】マッフェイ,ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ビアンキーニ,マッシモ
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SS04
4C038ST01
(57)【要約】
呼吸器系を訓練および監視するための装置は本体(2)を備え、本体は吸気チャンバ(2a)および呼気チャンバ(2b)を規定し、吸気チャンバおよび呼気チャンバはそれぞれの外部シートを介して外部環境と連通し且つ中央チャンバ(21)によって相互接続される。マウスピース(3)はさらに、対応する一方向弁(4)を介して吸気チャンバ(2a)または呼気チャンバ(2b)と選択的に流体連通できる。測定センサ(5)は本体(2)に結合され呼吸プロセスを代表する値を測定し、独立して吸気および呼気の貢献を監視する。そのような代表値は制御ユニット(6)によって取得される。最後に、調整可能な負荷はマウスピースと中央チャンバの間に配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器系を訓練および監視するための装置であって、
- 本体(2)であって、
- 吸気チャンバ(2a)および呼気チャンバ(2b)であって、当該吸気チャンバ(2a)および当該呼気チャンバ(2b)を外部環境と流体連通させるように適合されたそれぞれの外部シートを有する吸気チャンバ(2a)および呼気チャンバ(2b)と、
- 前記吸気チャンバ(2a)と前記呼気チャンバ(2b)の間に配置された中央チャンバと、を規定する本体(2)と、
- 前記中央チャンバ(21)と関連付けられ且つ前記中央チャンバ(21)を介して前記吸気チャンバ(2a)または前記呼気チャンバ(2b)と選択的に流体連通するように構成されたマウスピース(3)と、
- 前記外部環境から前記吸気チャンバ(2a)のみを通って前記マウスピース(3)に向かう空気流の通過を可能にし、前記マウスピース(3)から前記呼気チャンバ(2b)のみを通って前記外部環境への空気流の通過を可能にするために、前記中央チャンバ(21)とそれぞれ前記吸気チャンバ(2a)および前記呼気チャンバ(2b)との間に配置された一対の一方向弁(4)と、
- 前記本体(2)に結合され且つ前記中央チャンバ(21)が前記吸気チャンバ(2a)または前記吸気チャンバ(2b)と流体連通するときにユーザの呼吸活動を代表する値を独立して測定するように構成された測定センサ(5)と、
- 前記マウスピース(3)と前記中央チャンバ(21)との間に配置された調整可能な負荷(7)であって、複数の負荷構成で動作可能であり、前記複数の負荷構成の各々が吸気訓練および呼気訓練を実行するために前記中央チャンバ(21)と前記マウスピース(3)との間の空気の通過に対する別個の抵抗を決定するように適合された調整可能な負荷(7)と、
- 前記代表値を取得するために前記測定センサ(5)に結合された制御ユニット(6)と、を備える装置。
【請求項2】
前記測定センサ(5)は、
- 前記中央チャンバ(21)内で第1の測定信号を取得するように構成された第1の測定端子と、
- 前記マウスピース(3)で第2の測定信号を取得するように構成された第2の測定端子と、を備え、
前記代表信号は、前記第1の測定信号と前記第2の測定信号との差の関数として計算され、前記代表信号は、好ましくは、空気流の圧力値、体積または流量のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の測定端子は、前記マウスピース(3)に面する前記調整可能な負荷(7)の表面に配置され、前記第2の測定端子は、前記中央チャンバ(21)に面する前記調整可能な負荷(7)の表面に配置される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記調整可能な負荷(7)は、前記本体(2)に結合され且つ異なるサイズの複数の穴(7b)を有する負荷本体(7a)を備え、前記負荷本体(7a)は、各負荷構成において、前記中央チャンバ(21)と前記マウスピース(3)との間の通路セクション上に対応する穴(7b)を配置するように、前記本体(2)に対して回転移動可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記複数の穴は、それぞれのベンチュリ管を規定する、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記調整可能な負荷(7)は、空気の通過に対して270cmH
2O以下の抵抗を及ぼす最大負荷構成と、空気の通過に対して0cmH
2O以上の抵抗を及ぼす最小負荷構成との間で動作可能である、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記測定センサ(5)は圧電差動測定センサ(5)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記測定センサ(5)は防水性である、または防水加工されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記負荷本体(7a)に取り付けられ且つ前記調整可能な負荷(7)がとる前記負荷構成を識別する負荷信号を前記制御ユニット(6)に送信するように構成されたエンコーダを備える、請求項4から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
好ましくは無線通信プロトコルによって、さらに好ましくはWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)およびセルラーネットワークのうちの少なくとも1つを含む無線通信プロトコルによって、前記代表値をリモート端末に、好ましくはリアルタイムで、送信するように構成された伝送モジュールを備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも前記代表値を表示するように構成されたスクリーンを備える、または前記スクリーンに接続可能である、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記代表値を受信して記憶するために、前記本体に結合され且つ前記制御ユニット(6)とインタフェース可能な可逆的に読み取り可能な記憶媒体を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記装置のエラー状態をユーザに知らせるように構成された信号装置を備え、前記エラー状態は、好ましくは、前記測定センサ(5)の故障によって判定され、前記信号装置は、好ましくは、光学信号装置、音響信号装置および振動モータのうちの少なくとも1つを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記マウスピース(3)に可逆的に結合可能な少なくとも1つのマウスピースアタッチメント(3a)を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記マウスピース(3)と前記中央チャンバ(21)との間、および/または前記中央チャンバ(21)と前記吸気チャンバ(2a)および前記呼気チャンバ(2b)の少なくとも一方との間に配置された少なくとも1つのフィルタを備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記装置は、前記代表値を記憶し且つリモートデータベースから動作情報の1つまたは複数の項目を取得するために前記リモートデータベース、好ましくはコンピューティングクラウドとインタフェース可能であり、前記動作情報は、好ましくは、少なくとも、予め定められた時間間隔における装置の使用回数によって、および/または各使用のための負荷構成によって定義される少なくとも1つの訓練計画を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記制御ユニットは、前記代表値を、前記装置の使用パラメータを表す1つまたは複数の予め定められた閾値と比較し、前記比較に応じて警告信号を生成するように構成される、請求項16に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ収集および訓練目的に焦点を合わせた医療装置の技術分野に関する。
【0002】
詳細には、本発明は、呼吸器系を訓練および監視するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
人々のケアおよび健康状態の監視は、質の高い生活を確保するための基本的な側面である。
【0004】
そのような状況において、呼吸器系の健康の促進および維持に関連する装置および技術は特に興味深いものである。
【0005】
実際、呼吸器系は、その機能を損ない且つ呼吸を困難にすることによって個人の健康にとって重大な障害となる可能性がある多くの疾患にかかり得る。
【0006】
疾患がない場合でも、呼吸器系の健康状態を訓練および監視することを可能にする新しい技術および手順を開発することが依然として望ましい。
【0007】
呼吸活動を強化することを可能にする一連の運動においてユーザを支援する、呼吸器系を訓練するための装置が知られている。
【0008】
そのような装置の一例は、チャンバ内に取り付けられる測定センサの使用を含み、当該チャンバはその中に、ユーザの呼吸活動によって引き起こされる空気流がチャンバ内を通過することを可能にするように適合された一対の開口部を有する。
【0009】
実際、測定センサを用いて、ユーザが呼吸活動中に発揮できる力を検証することが可能であり、これは、ユーザの健康状態に対する評価を実行することを可能にする(例えば、特に低い値の最大力は、呼吸器系に特定の疾患が存在することを示し得る)。
【0010】
しかしながら、今提示した装置は、当該分野で知られている他の装置と同様に、構造的および機能的欠点からまだ免れておらず、依然として満足のいくものではない。
【0011】
特に、説明された装置は汎用性に乏しく、したがって、個々のユーザのニーズにあまり適応できない。
【0012】
さらに、そのような装置は、測定された特定の圧力値を、それを生じさせた吸気または呼気活動と関連付けることにおいて本質的な困難さを有する。
【発明の概要】
【0013】
これに関連して、本発明の基礎となる技術的課題は、従来技術の前述の欠点の少なくとも一部を克服する、呼吸器系を訓練するための装置を提案することである。
【0014】
特に、本発明の目的は、特定の使用状況/使用状態に関係なく、ユーザが呼吸中に生成する圧力を効果的且つ効率的に測定できる、呼吸器系を訓練および監視するための装置を提供することである。
【0015】
記載された技術的課題および特定された目的は、添付の特許請求の範囲の請求項の1つまたは複数に開示された技術的特徴を含む、呼吸訓練および肺活量測定ツールの特徴を組み合わせた、呼吸器系を訓練するための装置によって実質的に達成される。
【0016】
本発明によれば、呼吸器系を訓練および監視するための装置が示される。
【0017】
そのような装置は基本的に、本体、マウスピース、一対の一方向弁、測定センサ、制御ユニットおよび調整可能な負荷を備える。
【0018】
本体は、中央チャンバによって相互に接続された吸気チャンバおよび呼気チャンバを規定する。
【0019】
マウスピースは中央チャンバと関連付けられており、中央チャンバと流体連通し得る。
【0020】
各チャンバは、当該チャンバを外部環境と流体連通させるそれぞれの外部シートを有する。
【0021】
これらのチャンバは、さらに、一方向弁を介して交互に中央チャンバと流体連通する。
【0022】
吸気チャンバのみを通って中央チャンバを経由して外部環境からマウスピースへの空気流の通過を可能にするように、且つ呼気チャンバのみを通って常に前述の中央チャンバを経由してマウスピースから外部環境への空気流の通過を可能にするように、特に、一方向弁の一方は中央チャンバと吸気チャンバとの間に、他方は中央チャンバと呼気チャンバとの間に配置される。
【0023】
測定センサは本体に結合されており、ユーザの呼吸活動を代表する値を測定するように構成される。
【0024】
そのような代表値は、以下の少なくとも1つを含み得る。すなわち、中央チャンバが吸気チャンバまたは呼気チャンバと流体連通している場合の中央チャンバ内の空気流の圧力値、体積または流量のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0025】
したがって、測定センサは特に圧力センサであり得る。
【0026】
制御ユニットは測定センサに結合される。
【0027】
調整可能な負荷はマウスピースと中央チャンバとの間に配置される。
【0028】
すなわち、単一のモジュール式の負荷であって、その特定の位置および構成により、吸気チャンバおよび呼気チャンバに対して同時に作用できる単一のモジュール式の負荷が存在する。
【0029】
調整可能な負荷は複数の負荷構成で動作可能であり、複数の負荷構成の各々は、吸気および呼気訓練活動に適合するマウスピースと中央チャンバとの間の空気の通過に対する別個の抵抗を決定するように適合される。
【0030】
有利なことに、本明細書に記載の装置は、ユーザの呼吸活動を識別する様々なパラメータの正確且つ精密な評価を可能にし、ユーザの吸気活動と呼気活動によって与えられる寄与を互いに独立して明確且つ正確に識別する。
【0031】
参照により本明細書に組み込まれる従属請求項は、本発明の種々の実施形態に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の追加の特徴および利点は、添付の図面に示される、呼吸器系を訓練するための装置の好ましいが排他的ではない実施形態のおおよその、したがって非限定的な説明からより明確に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0033】
添付の図面において、参照番号1は、呼吸器系を訓練および監視するための装置を一般に示しており、当該装置は、本明細書の以下では単に装置1として言及される。
【0034】
特に、本発明は、呼吸筋、呼吸活動を実行するために関与する必要不可欠な筋肉、すなわち横隔膜、肋間筋および補助筋を訓練すること、並びにこれらの筋肉の強度と抵抗および呼吸量を監視することを含む。
【0035】
本明細書の目的上、「訓練」および「監視」という用語は、個人の呼吸器系の訓練および健康状態を制御および/または改善するために実行され得る任意の動作および手順を含むことを意図している。
【0036】
すなわち、本明細書に記載の装置は、呼吸器系の健康状態および機能を監視および/または改善するために使用され得る。
【0037】
構造の観点から、装置1は、本体2、マウスピース3、一対の弁4、測定センサ5、抵抗負荷7および制御ユニット6を備える。
【0038】
本体2は、容易に持ち運びできる寸法であって、装置1を携帯装置として構成するような寸法を有する。
【0039】
有利なことに、本体2は、人間工学に基づいた形状を有しており、例えば射出成形プロセスを通じて作製でき、ユーザのために掴むことも使用することも特に簡単且つ容易にする。
【0040】
より詳細には、本体2は、その内部に吸気チャンバ2aおよび呼気チャンバ2bを規定する。
【0041】
そのようなチャンバは明確に区別でき且つ離れており、すなわち、以下に説明する弁4の存在および特定の動作モードにより、一方から他方への空気の直接通過は不可能である。
【0042】
両方のチャンバ2a、2bは、それらを外部環境と流体連通させるそれぞれの外部シートを有する。
【0043】
すなわち、吸気チャンバ2aおよび呼気チャンバ2bは両方とも、それぞれの外部シートを介して外部環境に面し、それぞれの外部シートは、外部環境と対応するチャンバ2a、2bとの間で空気が通過できる通路を動作可能に画定する。
【0044】
本体2はさらに、吸気チャンバ2aと呼気チャンバ2bとの間に配置される中央チャンバ21を規定する。すなわち、2つのチャンバ2a、2bは相互に中央チャンバ21から分離して/間隔を置いて配置されており、中央チャンバ21は(以下で説明されるように)、一度にそのうちの1つのみと選択的に流体連通できる。
【0045】
そのようなチャンバ2a、2bはさらに、マウスピース3と流体連通できるが、常に中央チャンバ21を介する。
【0046】
すなわち、中央チャンバ21はマウスピース3と流体連通して、マウスピース3が吸気チャンバ2aまたは呼気チャンバ2bのいずれかと連通することを可能にする。
【0047】
調整可能な負荷7は、中央チャンバ21とマウスピース3との間に配置されており、その構造および動作は以下で検討される。
【0048】
好ましくは、チャンバ2a、2bは、細長い形状、例えば円筒形の形状を有し、各チャンバ2a、2bの外部シートは、チャンバ2a、2bが中央チャンバ21に結合されている端部に対して反対側の端部に配置されている。
【0049】
中央チャンバ21およびマウスピース3も実質的に円筒形の形状を有し、マウスピース3および吸気チャンバ2aと呼気チャンバ2bとの一方が中央チャンバ2cのそれぞれ反対側の端部に結合され、残りのチャンバはその側面に結合されている。
【0050】
そのような特定の形状は、使用中に肺活量測定の医学的要件を満たす空気流を確立するのに特に適している。
【0051】
したがって、動作に関して、マウスピース3は、唯一の中央チャンバ21を介して独立した態様で、吸気チャンバ2aまたは呼気チャンバ2bと流体連通するように構成されることになる。
【0052】
より詳細には、したがって、マウスピース3は、吸気チャンバ2aまたは呼気チャンバ2bと選択的に流体連通するように構成される。
【0053】
すなわち、マウスピース3(これを通じてユーザは装置1と関わり合う)は、装置1の使用と同時に、吸気チャンバ2aまたは呼気チャンバ2bのみと流体連通し得る。
【0054】
マウスピース3の選択的な接続は、一対の一方向弁4であって、一方が吸気チャンバ2aと中央チャンバ21との間に、他方が呼気チャンバ2bと中央チャンバ21との間に配置される一対の一方向弁4の存在によって可能になる。
【0055】
特に、そのような一方向弁4は、吸気チャンバ2aからマウスピース3の方向に、およびマウスピース3から呼気チャンバ2bの方向にのみ、中央チャンバ21を通過する空気流の通路および確立を可能にするように設置される。
【0056】
すなわち、一対の一方向弁4は、吸気チャンバ2aのみを通って外部環境からマウスピース3への空気流の通過を可能にし、呼気チャンバ2bのみを通ってマウスピース3から外部環境への空気流の通過を可能にするように、中央チャンバ21とそれぞれ吸気チャンバ2aおよび呼気チャンバ2bとの間に配置される。
【0057】
これにより、装置1の使用中、ユーザの吸入活動によって生成された空気流は、吸気チャンバ2aから中央チャンバ21を通ってマウスピース3に到達するように延びる経路のみをたどることができる。
【0058】
これに対応して、呼気活動によって生成された空気流は、マウスピース3から中央チャンバ21を通って呼気チャンバ2bに到達するように延びる経路のみをたどることができる。
【0059】
そのような特徴は、有利なことに、ユーザの呼吸によって生成された空気流を分離した状態に保つことを可能にし、したがって、2つの個別の活動(吸気と呼気)に関連する正確な測定および評価を独立して且つ2つの活動が干渉するリスクなしに実行することを可能にする。
【0060】
さらに、一対の弁4の特定の配置は、ユーザの呼吸活動から生じる通常の空気流の確立を妨げることなく、同時に、中央チャンバ21内に制御され且つ安定した環境を形成することを保証する(特に正確且つ精密な測定を可能にする)。
【0061】
有利なことに、装置1は、マウスピース3に可逆的に結合可能な少なくとも1つのマウスピースアタッチメント3aをさらに備えることができ、マウスピースアタッチメント3aは、装置1の動作中にユーザによって口の中に保持され得る。
【0062】
有利なことに、マウスピースアタッチメント3aの取り外し可能性、したがって交換可能性により、特に安全且つ衛生的な態様で長期間且つ異なるユーザによる装置1の後続の使用が可能になるだけでなく、様々な構造、サイズおよび形状を有するマウスピースアタッチメント3aを結合することも可能になる。
【0063】
特に、そのようなマウスピースアタッチメント3aは、医療用マウスピースアタッチメント、スポーツ用マウスピースアタッチメント、マスクまたはユーザが装置1の内部で吸入することを可能にするように構造化された類似の装置を含み得る。
【0064】
さらに、マウスピースアタッチメント3aの存在により、測定センサ5による読み取りエラーを生じさせ得る、ユーザがマウスピース3に口で直接圧力を加えることが防止される。
【0065】
装置1は、マウスピース3と中央チャンバ21との間、および/または中央チャンバ21と吸気チャンバ2aおよび呼気チャンバ2bの少なくとも一方との間に配置された少なくとも1つのフィルタをさらに備えることができる。
【0066】
そのようなフィルタは、ユーザの気道内部の空気中に存在する汚染物質の侵入、またはユーザの息に存在する汚染物質の装置1への移動を防止する機能を実行する。
【0067】
前者の場合には、ほこりおよびアレルゲンなどの汚染物質が特に言及され、後者の場合には、例として細菌およびウイルスが示される。
【0068】
有利なことに、フィルタも取り外し可能であり、必要に応じて装置1から取り外して交換することができる。
【0069】
測定センサ5は本体2に結合されており、特に装置1の使用中に、吸気チャンバ2a内および呼気チャンバ2b内でのユーザの呼吸活動を代表する値を測定するように構成される。
【0070】
そのような代表値は、例として、ユーザの呼吸活動によって生成され且つ吸気活動および呼気活動について独立して測定/評価される空気流の圧力値、体積または流量のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0071】
本発明の一態様によれば、測定センサ5は、差動圧電圧力センサを用いて作られた測定センサを含む。
【0072】
一般に、測定センサ5は、中央チャンバ21において第1の測定信号を取得するように構成された第1の端子と、マウスピース3で第2の測定信号を取得するように構成された第2の測定端子と、を備える。
【0073】
そのような測定信号はまた、ユーザの呼吸活動を識別する関連情報を含む。
【0074】
特に、代表信号は、第1の測定信号と第2の測定信号との間の差の関数として計算される。
【0075】
より詳細には、構造の観点から、第1の測定端子は、マウスピース3に面する調整可能な負荷7の表面に配置され、第2の測定端子は、中央チャンバ21に面する調整可能な負荷7の表面に配置される。
【0076】
通常の条件下では、個人の呼吸活動は、通常200cmH2Oから100cmH2O未満の低圧力値を生成する(100cmH2Oは9.8Kpaに相当することに留意すべきである)。
【0077】
したがって、測定される値のスケールを考慮すると、その絶対的な測定は困難であり、十分に正確な結果を得るには高価で複雑な機器の使用が必要になる。
【0078】
それとは対照的に、圧電差動測定センサは、圧力の絶対値ではなくむしろ、装置1の使用中のその変動を評価することを可能にし、したがって、比較的単純な構造であっても、正確で信頼性が高く意味のある結果を取得することを可能にする。
【0079】
有利なことに、測定センサ5は、その特定のタイプに関係なく、防水性である、または防水加工されている。
【0080】
実際、そのような測定センサ5は、吸気チャンバ2aおよび呼気チャンバ2bの内部に挿入されるので、ユーザの呼吸および空気中に通常存在する湿気に継続的に、場合によっては長期間さらされる。
【0081】
これに関連して、測定センサ5の防水加工は、したがって、湿気による測定センサ5の損傷を防ぎ、その耐用年数を延ばすことを可能にする。
【0082】
示されるように、調整可能な負荷7は、中央チャンバ21とマウスピース3との間に配置される。
【0083】
調整可能な負荷7は、複数の負荷構成で動作可能であり、複数の負荷構成の各々は、空気の通過に対する別個の抵抗を決定し且つ吸気訓練活動および呼気訓練活動を実行するように適合されている。
【0084】
言い換えれば、調整可能な負荷7は、吸気チャンバ2aおよび呼気チャンバ2bに対する中央チャンバ21を通る空気の通過の容易さを決定することを目的とした装置1の要素を表す。
【0085】
これにより、ユーザの呼吸活動に対する抵抗が調整可能な負荷7を介して積極的に対抗されるような努力状況において、呼吸器系を訓練する、および/またはその動作を監視することが可能である。
【0086】
詳細には、調整可能な負荷7は、本体2に結合され且つ異なるサイズの複数の穴7bを有する負荷本体7aを備える。
【0087】
好ましくは、そのような複数の穴は、使用時にそれぞれのベンチュリ管を画定する、または画定に寄与するような形状を有する。
【0088】
これにより、モジュール式の負荷7を通過した後、空気流は層流状態で移動し、このようにして、測定センサ5が特に正確且つ精密な態様で代表値を取得することを可能にする。
【0089】
そのような複数の穴7bは、呼吸活動中に空気流が流れることができる通路セクションを効果的に変化させるように、中央チャンバ21をマウスピース3と流体連通させる通路セクションと選択的に重なることができる。
【0090】
すなわち、吸気チャンバ2aおよび呼気チャンバ2bに対してマウスピース3への空気流およびマウスピース3からの空気流の流れを可能にする通路セクションは、最大サイズを有し、好ましくは円形の穴7bの場合には直径を有し、これは、可変であり、通路セクションを重ねることによってアクティベートされる特定の穴7bのサイズによって決定される。
【0091】
好ましくは、穴は直径2ミリメートルの最小値から増加するサイズ範囲を有する。
【0092】
動作に関して、穴7bが小さいほど空気の通過が難しくなり、穴7bが大きいほど装置1の使用中の抵抗が小さくなり、したがって、ユーザが吸ったり吐いたりしやすくなる。
【0093】
詳細には、VT(一回換気量)、FEV1(努力呼気量)、FVC(努力肺活量)、VC(肺活量)タイプの呼吸テストでは、より大きな穴を使用することは、中央チャンバ2cの内部の圧力に影響を与えない層流の形成を保証する。
【0094】
対照的に、MIP(最大吸気圧)およびMEP(最大呼気圧)テストの実施には、2mmに等しい小さな穴(直径)を使用することは、このタイプのテストの実施を最適にする。
【0095】
より詳細には、負荷本体7aは、各負荷構成において、通路セクション上に対応する穴7bを配置するように、本体2bに対して回転移動可能である。
【0096】
代替的または追加的に、調整可能な負荷7は、2つの負荷本体7a、特に、吸気チャンバ2aの外部シートに結合された第1の負荷本体7aと、呼気チャンバ2bの外部シートに結合された第2の負荷本体7aとを備え、これらは、そのようなチャンバ2a、2bに対して外部環境からの空気の通過に対する抵抗を調節するように構成される。
【0097】
これにより、装置1の使用中に2つのチャンバ2a、2bがとる特定の負荷構成を独立して決定することが可能になる。
【0098】
個々のチャンバに関連付けられた負荷本体7aと通路セクションに関連付けられた負荷本体7aとが存在する場合、通路セクションに関連付けられた負荷本体7aが吸気プロセスおよび呼気プロセスが受ける共通の抵抗を決定し、一方、個々の吸気チャンバ2aまたは呼気チャンバ2bに直接関連付けられた個々の負荷本体7aがそれぞれの活動に対する任意の特定の抵抗値を特に細かく正確な態様で調節することを可能にすることが観察される。
【0099】
好ましくは、調整可能な負荷7は、すなわち、その調整可能な負荷7aの各々は、空気の通過に対して270cmH2O以下の抵抗を及ぼす最大負荷構成と、空気の通過に対して0cmH2O以上の抵抗を及ぼす最小負荷構成との間で動作可能である。
【0100】
そのような広範囲の抵抗値は、装置1を特に汎用的にし且つ広範囲の異なる状況での使用に適合させ、呼吸器系の訓練工程および臨床分野でのその機能評価に容易に適応可能にする。
【0101】
有利なことに、装置1は、負荷本体7aに取り付けられ且つその角度位置を測定するように構成されたエンコーダをさらに備えることができる。
【0102】
その結果、負荷本体7aの位置は、継続的に監視され、有利なことに、調整可能な負荷7がとる負荷構成を一意に識別することを可能にする負荷信号の形で制御ユニット6に送信され得る。
【0103】
すなわち、エンコーダを用いて、制御ユニット6はいつでも本体7aの回転角度を検出でき、その後、どの穴7bがアクティブであるかを推定できる、すなわち、それは、ユーザの呼吸活動によって生成された空気流が通過する通路セクションのサイズを決定している。
【0104】
これは、ユーザの呼吸活動に対抗する特定の抵抗をいつでも自動的且つ自律的に決定することを可能にする。
【0105】
より一般的には、制御ユニットは主に、エンコーダによって提供される情報を取得し、それを活用して、測定センサによって受信された代表値をより正確に分析および/または評価および/または解釈するように構成される。
【0106】
したがって、加えられた負荷値を継続的に監視することは、高い測定精度を保証し、代表値に対する測定値の実際の妥当性を常に正しく評価することを可能にする。
【0107】
一般に、制御ユニットは、装置1の使用中に代表値を受信する。
【0108】
そのような代表値は、ユーザがそれぞれ吸気および呼気に及ぼす努力を全体的に示し、したがって、ユーザの健康状態、特に呼吸器系の健康状態についてなされる評価を可能にする。
【0109】
実際、健康な個人は、呼吸器系の動作に影響を与えるほど呼吸器系に影響を及ぼす疾患を患っている個人よりも、大きな圧力を加えることができる。
【0110】
さらに、装置1の使用は、特に調整可能な負荷7の存在下で、例えば、特定の頻度で、または特定の目標圧力値の達成で、実行される吸入/呼気を繰り返すことによって、呼吸器系の動作を改善することを目的とした訓練サイクルを実行することを可能にする。
【0111】
装置1はまた、さらなるセンサを備えることができ、および/または測定センサ5は、さらなる値、特にユーザの生体パラメータに関連する値を測定するように構成され得る。
【0112】
有利なことに、制御ユニットによって得られた圧力値は、装置1に含まれる(特に本体2に結合された)スクリーン、または装置に接続可能なスクリーンを介して表示することができる。
【0113】
そのようなスクリーンはさらに、装置1がその制御ユニット6を介して処理できる任意の情報、および装置1の動作状態に関する一般的な情報も表示することができる。
【0114】
そのような情報、すなわち圧力値および任意のさらなる処理可能な情報は、本体2に結合可能な可逆的に読み取り可能な記憶媒体に記憶することもできる。
【0115】
すなわち、読み取り可能な記憶媒体は、本体に結合することができ、その結果、制御ユニット6とインタフェースしてデータ/情報を交換でき、特に複数の圧力値を記憶することができる。
【0116】
読み取り可能な記憶媒体は、制御ユニット6によって取得された圧力値をさらなる識別データ、例えばそのような圧力値が取得された日時と関連付けることもできる。
【0117】
非限定的な例として、読み取り可能な記憶媒体はSDカードを含むことができる。
【0118】
特に、様々な取り外し可能な要素の装置1への結合は、それらを、本体2内に形成され且つ例えばスナップ式クロージャ、具体的にはスナップフィットタイプのクロージャによって閉鎖される/開閉可能な特別なハウジング内に挿入することによって得ることができる。
【0119】
装置1は、装置1自体のエラー状態をユーザに知らせるように構成された信号装置を備えることもできる。好ましくは、エラー状態は、測定センサ5の故障によって判定される。
【0120】
すなわち、測定センサ5が正しく動作しない場合、および/または損傷した場合にはいつでも、インジケータがアラームを生成してユーザに通知する。
【0121】
特に、アラームは、存在する場合にはスクリーンに表示でき、または、信号装置は、装置1の動作におけるそれぞれの問題をユーザに知らせるために、特定のプロトコル(音、光、振動の組み合わせ)に従って作動させることができる音響信号装置、光学信号装置または振動モータのうちの1つまたは複数を備えることができる。有利なことに、装置1は、制御ユニット6によって取得された圧力値をコンピュータ、スマートフォンまたはリモートデータベースなどのリモート端末に送信するように構成された伝送モジュールをさらに備えることができる。
【0122】
好ましくは、送信は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)またはセルラーネットワークのうちの少なくとも1つを含むことができる無線通信プロトコルを用いて行われる。
【0123】
したがって、伝送モジュールは、リモート端末に送信することに加えて、圧力値の起こり得る受信だけでなく、制御ユニット6によって処理された/処理可能な任意の情報の起こり得る受信も管理および調整する。
【0124】
これにより、装置1の使用に関する情報をリモートで、例えば医療従事者の施設に送信することが可能となり、医療従事者はそのようなデータを分析でき、個々のユーザに対する特定の診断および/または訓練計画を策定できる。
【0125】
さらに、装置1、具体的には伝送モジュールは、代表値と経時的且つ装置の連続的使用におけるその変化とを記憶し、リモートデータベースから1つまたは複数の動作情報の項目を取得するために、前記リモートデータベース、好ましくはコンピューティングクラウドとインタフェース可能である。
【0126】
好ましくは、前記動作情報は、少なくとも、予め定められた時間間隔における装置1の使用回数および/または装置1の各使用の負荷構成によって定義される少なくとも1つの訓練計画を含む。
【0127】
すなわち、装置1は、ユーザが装置1の動作を管理するために使用できる複数の情報が収集および取得されるオンラインプラットフォームを規定できるリモートデータベースとインタフェースすることができる。
【0128】
そのようなデータベースは、追加のカスタマイズオプションも提供することができ、これにより、代表値から導出可能な情報と、ユーザ自身が提供できる、または医療施設から取得されるユーザの生体データおよび個人データとに従って、個々の訓練計画をカスタマイズできる。
【0129】
有利なことに、装置1、特に制御ユニットは、ユーザの関連する医療情報および生体情報(年齢、性別、身長、体重、病状)が挿入されるデータベースとリアルタイム通信する。
【0130】
この情報は、測定センサ5によってリアルタイムで取得されたデータを、データベースに保存、記憶、アーカイブされた対応する値と、および/またはユーザと(年齢、病状、または同様の分類パラメータの観点で)同一カテゴリに属する人々の訓練および監視手順についての医学的に予測可能な値と比較することを可能にする。
【0131】
そのようなデータの比較は、ユーザの健康状態を評価することを可能にし(例えば、同一カテゴリの人々に提供された値と異なる値は病気の発症を示している可能性がある)、また、同様のカテゴリに属するユーザの動作に関するデータベースに含まれる情報に応じて、(特に調整可能な負荷7を用いて適用される負荷の選択の観点から)ユーザの特定のニーズに従って適合されたカスタム訓練計画を作成することを可能にする。
【0132】
一般に、リモートデータベースは、診断目的に利用できる圧力値を収集することを目的とした装置1の使用計画または特定の訓練計画の実行に関する指示を毎日または定期的且つ事前に設定された間隔でユーザに提供するカレンダサービスを提供することができる。
【0133】
そのようなプラットフォームまたはデータベースには、また、施設や医療従事者がリモートからアクセス可能であり、既に示されたように、施設や医療従事者は、安定した訓練計画のために収集された情報を使用でき、またはユーザの病的状態の発生を判断できる。
【0134】
制御ユニット6はまた、統計的および予測的アルゴリズムの使用を通じて、特定の訓練計画の正しい実行を識別する可能な閾値を決定するように代表値を処理でき、その正しい実行に関するフィードバックをユーザに提供でき、また、偏差が予め定義された限界値より大きい場合、警告信号を生成でき、(例えば、そのような訓練計画を準備した医療施設によって識別可能になるように)場合によってはリモートデータベースに送信できる。
【0135】
有利なことに、本発明は、ユーザが呼吸するために発揮する努力の正確且つ精密な測定を保証し、さらに多種多様な状況での使用を可能にする高い汎用性を有する、呼吸器系を訓練するための装置をユーザに提供することによって、従来技術で不備が指摘されている欠点を克服して、提案された目的を達成する。
【国際調査報告】