(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-27
(54)【発明の名称】リンパ球除去療法後の二次的自己免疫に関する新規予測バイオマーカー
(51)【国際特許分類】
G01N 33/49 20060101AFI20240520BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240520BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240520BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240520BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
G01N33/49 X
A61K45/00
A61P37/06
A61P25/00
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569824
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 US2022029262
(87)【国際公開番号】W WO2022241259
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ダレン・フィリップ・ベイカー
(72)【発明者】
【氏名】エマヌエーレ・デ・リナルディス
(72)【発明者】
【氏名】リチャ・ハナームサガー
(72)【発明者】
【氏名】エヴィス・ハヴァリ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァージニア・サヴォヴァ
(72)【発明者】
【氏名】シュリーニヴァス・シャンカラ
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA24
4C084AA17
4C084NA20
4C084ZB081
4C084ZB082
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE01
(57)【要約】
本発明は、リンパ球除去療法(例えば、抗CD52抗体療法)後の原発性自己免疫疾患(例えば、MS)患者において、患者からの生体試料における、全細胞中の血小板系細胞(PLC)と呼ばれる新規細胞型の比率、および/または幼若血小板比率(IPF)値に基づいて、二次的自己免疫のリスクを評価する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンパ球除去療法後に原発性自己免疫疾患を有する患者において、二次的自己免疫を発症するリスクを評価する方法であって:
a)患者から血液試料を採取することと、
b)(i)血液試料の全細胞中の血小板系細胞(PLC)の比率であって、第1の基準と比較したPLCの比率の減少は、治療後に患者が二次的自己免疫を発症するリスクの高まりを示す、比率、および/または
(ii)血液試料中の幼若血小板比率(IPF)であって、第2の基準と比較したIPFの増加は、治療後に患者が二次的自己免疫を発症するリスクの高まりを示す、比率
を決定することを含む、前記方法。
【請求項2】
原発性自己免疫疾患の患者を治療する方法であって:
a)リンパ球除去療法後に二次的自己免疫を発症するリスクが高まらないと診断された患者を選択することであって、前記リスクは、
(i)患者からの血液試料の全細胞中の血小板系細胞(PLC)の比率であって、第1の基準と比較したPLCの比率の減少は、治療後に患者が二次的自己免疫を発症するリスクの高まりを示す、比率、および/または
(ii)血液試料中の幼若血小板比率(IPF)であって、第2の基準と比較したIPFの増加は、治療後に患者が二次的自己免疫を発症するリスクの高まりを示す、比率
を決定することによって診断されたことと、
b)治療有効量のリンパ球除去療法を患者に投与こと
を含む方法。
【請求項3】
前記決定する工程は、(i)および(ii)の両方を決定することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
原発性自己免疫疾患は、多発性硬化症(MS)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
リンパ球除去療法は、リンパ球除去抗体療法である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体は、抗CD52抗体またはその抗原結合部分である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
抗CD52抗体は、アレムツズマブの6つのCDRを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
抗CD52抗体は、アレムツズマブの重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
抗CD52抗体は、アレムツズマブである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
第1および第2の基準は、リンパ球除去治療後に二次的自己免疫を発症しない前記原発性自己免疫疾患の患者、または健康な被験者から得られる、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
血液試料は、赤血球が溶解した血液試料である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
血液試料は、末梢血単球細胞(PBMC)試料であり、場合により試料中の好中球が除去されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
PLC比率は、対照被験者の比率と比較して2標準偏差を超えて減少する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
IPF値は、対照被験者の値と比較して2標準偏差を超えて増加する、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
PLCは、CD41
+CD61
+SPARC
+TREML1
+であることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
患者からの生体試料中の全PLC集団のうち幼若PLCの比率を決定する工程をさらに含み、第3の基準と比較した幼若PLCの比率の増加は、治療後に患者が二次的自己免疫を発症するリスクの高まりを示す、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記幼若PLCは、CD41
低CD61
低PDGFA
高PDCD10
高であり、場合によりさらにDAB2
高RGS10
高RGS18
高TSC22D1
高であることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第3の基準は、リンパ球除去治療後に二次的自己免疫を発症しない前記原発性自己免疫疾患の患者、または健康な被験者から得られる、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
二次的自己免疫は、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、バセドウ病、橋本病、グッドパスチャー病、膜性糸球体腎炎、赤血球無形成、自己免疫性甲状腺疾患、一過性甲状腺炎、自己免疫性溶血性貧血、1型糖尿病、円形脱毛症/全身脱毛症、白斑、筋痛症、サルコイドーシス、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性肝炎、および自己免疫性リンパ球減少症からなる群から選択される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
原発性自己免疫疾患は、再発性MSである、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
原発性自己免疫疾患は、再発寛解型多発性硬化症(RR-MS)である、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
原発性自己免疫疾患は、二次性進行型MS(SPMS)である、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
患者における原発性自己免疫疾患の治療に使用するためのリンパ球除去療法であって、患者は、リンパ球除去療法後に二次的自己免疫を発症するリスクが高まっていないものとして選択されており、前記リスクは、
(i)患者からの血液試料の全細胞中の血小板系細胞(PLC)の比率であって、第1の基準と比較したPLCの比率の減少は、治療後に患者が二次的自己免疫を発症するリスクの高まりを示す、比率、および/または
(ii)血液試料中の幼若血小板比率(IPF)であって、第2の基準と比較したIPFの増加は、治療後に患者が二次的自己免疫を発症するリスクの高まりを示す、比率
を決定することによって診断された、リンパ球除去療法。
【請求項24】
患者における原発性自己免疫疾患を治療するための医薬品の製造におけるリンパ球除去療法の使用であって、患者は、リンパ球除去療法後に二次的自己免疫を発症するリスクが高まっていないものとして選択されており、前記リスクは、
(i)患者からの血液試料の全細胞中の血小板系細胞(PLC)の比率であって、第1の基準と比較したPLCの比率の減少は、治療後に患者が二次的自己免疫を発症するリスクの高まりを示す、比率、および/または
(ii)血液試料中の幼若血小板比率(IPF)であって、第2の基準と比較したIPFの増加は、治療後に患者が二次的自己免疫を発症するリスクの高まりを示す、比率
を決定することによって診断された、前記使用。
【請求項25】
前記治療および/または前記選択は、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法に従っている、請求項23に記載の使用または請求項24に記載の使用のためのリンパ球除去療法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月13日に出願された米国仮特許出願第63/188,302号からの優先権を主張するものである。その優先権出願の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
多発性硬化症(MS)は、中枢神経系を侵す、免疫介在性の慢性炎症性神経変性疾患である。炎症、脱髄、ならびに軸索の損傷および喪失に起因する運動機能および感覚機能の喪失が特徴である(非特許文献1、非特許文献2)。MS患者は、病気の進行に伴い、身体障害、疲労、疼痛、および認知機能障害が増加し、幅広い重篤な臨床症状を示す。MSは全世界で200万人以上が罹患しており、男性より女性の方が少なくとも2~3倍多い。MSは患者のQOLに大きな影響を与え、平均で5年から10年余命を縮める。
【0003】
ヒト化抗CD52モノクローナル抗体であるアレムツズマブは、再発型MS(RMS)の治療薬として承認されている。その有効性は臨床試験で証明されているが、その使用は、治療後数か月あるいは数年たって現れる予測不可能な非MSの二次的自己免疫と関連している。アレムツズマブ治療患者のおよそ40%が自己免疫性甲状腺イベントを呈し、2%が血小板欠乏症(免疫性血小板減少症;ITP)(非特許文献3)であり、0.34%が自己免疫性腎症(非特許文献4)である。二次的自己免疫の予測バイオマーカーがないため、臨床診療では、これらの自己免疫イベントを早期に発見するために、医薬品リスク管理計画またはリスク評価・リスク緩和戦略(RMP/REMS)を実施し、注意深くモニタリングする必要がある。
【0004】
したがって、アレムツズマブのようなリンパ球除去療法による治療を検討している患者において、二次的自己免疫の発症リスクを予測するための新規バイオマーカーを同定する必要性が満たされていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Frieseら、Nat Rev Neurol.(2014年)10(4):225-38
【非特許文献2】TrappおよびNave、Ann Rev Neurosci.(2008年)231:247-69
【非特許文献3】Cukerら、Mult Scler Houndmills Basingstoke Engl.(2020年)26:48-56
【非特許文献4】Phelpsら、Mult Scler Houndmills Basingstoke Engl.(2019年)25:1273-88
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、MSのような自己免疫疾患の治療におけるリスク管理を改善するための、新規かつ有用な方法を提供する。本方法は、二次的自己免疫のような治療副作用を軽減し、医療提供者および患者が自己免疫疾患治療のための治療計画を選択し、治療後のモニタリングを行う際に役立つ。本開示の方法は、MS患者において、リンパ球除去療法(例えば、アレムツズマブ療法)の前であっても検出される低含有量の血小板系細胞(PLC)および/または幼若血小板比率(IPF)の高値が、療法後に二次的自己免疫を発症するリスクの増大と相関するという発見に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本開示は、リンパ球除去療法後に原発性自己免疫疾患を有する患者において二次的自己免疫を発症するリスクを評価する方法であって:
a)患者から血液試料を採取することと、
b)(i)血液試料の全細胞中の血小板系細胞(PLC)(例えば、成熟PLC)の比率であって、第1の基準と比較したPLC(例えば、成熟PLC)の比率の減少は、治療後に患者が二次的自己免疫を発症するリスクの高まりを示す、比率、および/または
(ii)血液試料中の幼若血小板比率(IPF)であって、第2の基準と比較したIPFの増加は、治療後に患者が二次的自己免疫を発症するリスクの高まりを示す、比率
を決定することを含む、前記方法を提供する。
特定の実施形態では、本方法は、(i)および(ii)の両方を決定することを含む。
【0008】
別の態様では、本開示は、原発性自己免疫疾患を有する患者を治療するための方法であって:
a)リンパ球除去療法後に二次的自己免疫を発症するリスクが高まらないと診断された患者を選択することであって、そのリスクは、
(i)血液試料の全細胞中の血小板系細胞(PLC)(例えば、成熟PLC)の比率であって、第1の基準と比較したPLC(例えば、成熟PLC)の比率の減少は、治療後に患者が二次的自己免疫を発症するリスクの高まりを示す、比率、および/または
(ii)血液試料中の幼若血小板比率(IPF)であって、第2の基準と比較したIPFの増加は、治療後に患者が二次的自己免疫を発症するリスクの高まり示す、比率
を決定することによって診断されたことと、
b)治療有効量のリンパ球除去療法を患者に投与すること
を含む方法を提供する。
特定の実施形態では、本方法は、(i)および(ii)の両方を決定することを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、原発性自己免疫疾患は多発性硬化症(MS)である。特定の実施形態では、原発性自己免疫疾患は、再発性MS、再発寛解型MS(RR-MS)、または二次進行型MS(SPMS)である。
【0010】
いくつかの実施形態では、リンパ球除去療法は、抗CD52抗体またはその抗原結合部分などのリンパ球除去抗体療法である。特定の実施形態では、抗CD52抗体はアレムツズマブの6つのCDRを有する。特定の実施形態では、抗CD52抗体はアレムツズマブの重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを有する。特定の実施形態では、抗CD52抗体はアレムツズマブである。
【0011】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、第1および第2の基準は、リンパ球除去治療後に二次的自己免疫を発症しない当該原発性自己免疫疾患の患者から、または健康な被験者から得られる。
【0012】
いくつかの実施形態では、血液試料は赤血球が溶解した血液試料である。いくつかの実施形態では、血液試料は末梢血単球細胞(PBMC)試料である(例えば、試料中の好中球は除去されている)。
【0013】
いくつかの実施形態では、PLC比率は対照被験者の比率と比較して2標準偏差を超えて減少する。いくつかの実施形態では、IPF値は対照被験者の値と比較して2標準偏差を超えて減少する。
【0014】
いくつかの実施形態では、PLCはCD41+CD61+SPARC+TREML1+であることを特徴とする。
【0015】
本開示の方法は、患者からの生体試料中の全PLC集団のうち幼若PLCの比率を決定する工程をさらに含むことができ、第3の基準と比較して幼若PLCの比率が増加することは、治療後に患者が二次的自己免疫を発症するリスクが高まることを示している。いくつかの実施形態では、幼若PLCはCD41低CD61低PDGFA高PDCD10高であり、場合によりさらにDAB2高RGS10高RGS18高TSC22D1高であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、第3の基準は、リンパ球除去治療後に二次的自己免疫を発症しない当該原発性自己免疫疾患の患者から、または健康な被験者から得られる。
【0016】
いくつかの実施形態では、二次的自己免疫は、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、バセドウ病、橋本病、グッドパスチャー病(抗糸球体基底膜(GBM)病)、膜性糸球体腎炎(膜性腎症)、赤血球無形成、自己免疫性甲状腺疾患、一過性甲状腺炎、自己免疫性溶血性貧血、1型糖尿病、円形脱毛症/全身脱毛症、白斑、筋痛症、サルコイドーシス、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性肝炎、および自己免疫性リンパ球減少症からなる群から選択される。
【0017】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、以下の詳細な説明で明らかである。しかしながら、詳細な説明は、本発明の実施形態および態様を示すものではあるが、限定ではなく例示のためにのみ与えられるものであることを理解されたい。本発明の範囲内での様々な変更および修正は、詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】すべての主要な免疫細胞型(T細胞、単球、B細胞、およびNK細胞)、ならびに希少細胞型(形質細胞様樹状細胞(pDC)、および血小板様細胞)の相対的存在量を示す棒グラフ、ならびに血小板様細胞が、二次的自己免疫を発症する患者と比較して、二次的自己免疫を発症しない患者において有意に濃縮されていることを示す散布図である(平均値±S.E.M;スチューデントt検定
**p<0.01)。実線の円は二次的自己免疫を発症した患者から採取した試料を表し;実線の四角形は二次的自己免疫を発症しなかった患者から採取した試料を表す。
【
図2】二次的自己免疫を発症した患者(sAI)と二次的自己免疫を発症しなかった患者(非sAI)における、アレムツズマブ治療前後のsc-RNAseqデータに基づく個々の患者におけるPLC存在量を示す散布図である。大きな四角形で表された非sAI患者は、T24(第1クールの24か月後)でPLC数の減少を示し、追跡期間4年から7年の間にsAIを発症した。
【
図3】T0(治療前)とT24(アレムツズマブの第1クールの24か月後)の両時点で、二次的自己免疫を発症していない患者において血小板系細胞(PLC)が濃縮されていることを示す散布図である(平均値±S.E.M;二元配置分散分析、AI状態の全体的効果
**p<0.01)。実線の円は二次的自己免疫を発症した患者から採取した試料を表し;実線の四角形は二次的自己免疫を発症しなかった患者から採取した試料を表す。
【
図4-1】SPARC、TREML1、GP9、ITGB3、ITGA2B、およびGP1Bの遺伝子発現レベルを示す散布図とそれに付随するSPRINGプロットを示す図である(平均値±S.E.M;シダックの多重比較検定による二元配置分散分析
*p<0.05、
**p<0.001、および
***p<0.001)。実線の円は二次的自己免疫を発症した患者から採取した試料を表し;実線の四角形は二次的自己免疫を発症しなかった患者から採取した試料を表す。
【
図5】フローサイトメトリーによる全血、新鮮PBMC、および凍結PBMC中の血小板の割合を示す棒グラフである(平均値±S.E.M.)。
【
図6】フローサイトメトリーによる全血、新鮮PBMC、および凍結PBMC中のPLCの割合を示す棒グラフである(平均値±S.E.M.)。
【
図7】1)TREML1
高SPARC
+または2)TREML1
低SPARC
+である細胞のうち、RBCが溶解した血液、新鮮PBMC、および凍結PBMC中のPLCの割合を定量化した棒グラフである。
【
図8】サブセット1(幼若/休止トランスクリプトーム状態)またはサブセット2(成熟/活性化トランスクリプトーム状態)に属するsAI群および非sAI群内の細胞の割合を示す棒グラフである。
【
図9A】アレムツズマブ治療前のMS患者に由来する161のベースライン試料からのRNAseqデータの教師なしクラスタリング解析を示すヒートマップである。
図9Aは、二次的自己免疫を発症した患者(「AI濃縮患者」、左)と二次的自己免疫を発症しなかった患者(「非AI濃縮患者」、右)における、6つの成熟PLC遺伝子(GP1BA、PPBP、ITGA2B、ITGB3、SPARC、およびTREML1)と5つの幼若PLC遺伝子(PDCD10、RGS10、DAB2、TSC22D1、およびRGS18)の相対発現レベルを示している。
図9Bは、
図9Aと同じヒートマップを示し、さらにヒートマップの下部に甲状腺活動、人種、および性別などの患者の特徴に関する情報を示している。
【
図9B】アレムツズマブ治療前のMS患者に由来する161のベースライン試料からのRNAseqデータの教師なしクラスタリング解析を示すヒートマップである。
図9Aは、二次的自己免疫を発症した患者(「AI濃縮患者」、左)と二次的自己免疫を発症しなかった患者(「非AI濃縮患者」、右)における、6つの成熟PLC遺伝子(GP1BA、PPBP、ITGA2B、ITGB3、SPARC、およびTREML1)と5つの幼若PLC遺伝子(PDCD10、RGS10、DAB2、TSC22D1、およびRGS18)の相対発現レベルを示している。
図9Bは、
図9Aと同じヒートマップを示し、さらにヒートマップの下部に甲状腺活動、人種、および性別などの患者の特徴に関する情報を示している。
【
図10A】異なるサンプリング時間(0か月、12か月、および24か月)における
図9Aおよび9Bに示した特定の遺伝子の発現レベルを示すプロットであり、成熟PLC遺伝子を
図10Aに示し、幼若PLCを10Bに示している。二次的自己免疫を発症した患者(「AI」、上)および二次的自己免疫を発症しなかった患者(「非AI」、下)のデータを示す。
【
図10B】異なるサンプリング時間(0か月、12か月、および24か月)における
図9Aおよび9Bに示した特定の遺伝子の発現レベルを示すプロットであり、成熟PLC遺伝子を
図10Aに示し、幼若PLCを10Bに示している。二次的自己免疫を発症した患者(「AI」、上)および二次的自己免疫を発症しなかった患者(「非AI」、下)のデータを示す。
【
図11】MS患者ベースライン試料からのRNAseqデータの教師なしクラスタリング解析を示すヒートマップであり、患者の一部はIFNβ-1aで治療されている。
図9Aおよび9Bに示したものと同じ成熟PLC遺伝子および幼若PLC遺伝子についてのデータを提供する。「AI」:二次的自己免疫を発症した患者。「非AI」:二次的自己免疫を発症しなかった患者。
【
図12A】二次的自己免疫を発症した患者(sAI;実線の円)および二次的自己免疫を発症していない患者(非sAI;実線の四角形)におけるT0(ベースライン)での幼若血小板比率(IPF)臨床値の箱ひげプロットであり;正常範囲は赤色の括弧で示されている(エラーバーは10~90パーセンタイルの範囲にまたがる)。
【
図12B】二次的自己免疫を発症する患者(sAI;実線の円)と二次的自己免疫を発症しない患者(非sAI;実線の四角形)におけるIPF臨床値の経時的変化(0~24か月)を示すプロットである(平均値±S.E.M.;二元配置分散分析、全体的なsAI状態の差
***p=0.0001)。
【
図13】T0(ベースライン)における、二次的自己免疫を発症する患者(sAI;実線の円)と二次的自己免疫を発症しない患者(非sAI;実線の四角形)のIPF臨床値と単一細胞データからのPLCの割合の相関グラフである。左:IPF値のみ、またはIPF値とPLC値の割合のいずれかに基づく、今回のコホート内の患者の真のsAIおよび真の非sAI同定の事後解析。右:所定の患者コホートでの治療前のAI状態の同定における臨床IPF値と単一細胞PLCデータの組み合わせ使用の表図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、リンパ球除去療法後の原発性自己免疫疾患(例えば、MS)を有する患者における二次的自己免疫の発症は、リンパ球除去前であっても、対照被験者と比較して、血小板系細胞(PLC)の存在量が低いこと、および/または幼若血小板比率(IPF)の値が高いことと関連するという発見に基づいている。対照被験者は、例えば、健康な被験者、またはリンパ球除去療法後に二次的自己免疫を発症しない原発性自己免疫疾患の患者であることができる。したがって、PLCの比率の減少および/またはIPFの増加は、リンパ球除去後の二次的自己免疫の発生リスクを評価するための予測バイオマーカーとなる。
【0020】
上記の知見に基づき、本開示は、抗CD52抗体(例えば、アレムツズマブ)による治療などのリンパ球除去療法を検討する際に、原発性自己免疫疾患(例えば、MS)を有する患者のリスク管理を改善する方法を提供する。例えば、MS患者が療法後に二次的自己免疫を発症するリスクが高いか高くないかを医療提供者が判断できるようにすることで、医療提供者は、患者が療法を受けるべきか(例えば、患者のリスクが増大していない場合)、あるいは患者が療法を受けるべきではないか、療法後に二次的自己免疫のモニタリングを強化すべきか(例えば、患者がリスクを高めている場合)を判断することができる。
【0021】
例えば、本開示は、リンパ球除去療法後に二次的自己免疫疾患を発症するリスクが増大する原発性自己免疫疾患(例えば、MS)を有する患者において、二次的自己免疫を発症するリスクを評価する方法を提供する。いくつかの実施形態では、リスクが増大しないと評価された患者をリンパ球除去療法で治療する。いくつかの実施形態では、リスクが増大すると評価された患者をリンパ球除去療法で治療しない。いくつかの実施形態では、リスクが増大すると評価された患者はリンパ球除去療法を受け、その後、リスクが増大しないと評価された患者と比較して、モニタリングを強化される。
【0022】
本開示はまた、リンパ球除去療法後に二次的自己免疫疾患を発症するリスクが増大しない原発性自己免疫疾患を有する患者(例えば、MS患者)を治療するための方法を提供する。
【0023】
本開示はまた、リンパ球除去療法後に二次的自己免疫疾患を発症するリスクが増大する原発性自己免疫疾患を有する患者(例えば、MS患者)を治療する方法であって、療法後に(リスクが増大しない患者に対するモニタリングと比較して)二次的自己免疫の発症に対するモニタリングを強化する方法を提供する。このようなモニタリングの強化は、リンパ球除去療法後に医療提供者が決定する適切なモニタリング計画に従うことができる。リスクのある患者に対する適切なモニタリング計画は、限定されるものではないが、例えば1週間、2週間、1か月、2か月、3か月、6か月、または1年の間隔で、リンパ球除去療法後に二次的自己免疫についてより頻繁にモニタリングすることを含むことができる。例えば、1年超、2年超、3年超、4年超、5年超、またはそれより長く、長期間にわたってモニタリングを続けることができ、これは、患者によっては、リンパ球除去療法後1年以上経過するまで、二次的自己免疫が認められないことがあるからである。また、二次的自己免疫の徴候がないか、専門医による綿密な医学的検査(血液検査など)を行うなど、モニタリングを強化する必要がある場合もある。さらに、MSの治療のためにリンパ球除去薬を患者に配布する薬剤師または臨床スタッフは、患者がPLCレベルの低下および/またはIPF値の上昇(場合により幼若PLCレベルの上昇を伴う)を示した場合、薬剤使用後に二次的自己免疫を発症するリスクが増大することについて患者にカウンセリングを行うことが求められる可能性がある。また、薬剤師または臨床スタッフは、患者に薬剤を配布する前に、患者からインフォームド・コンセントを得ることが求められる場合もある。
【0024】
I.リスク評価の方法
自己免疫疾患(例えばMS)患者が、リンパ球除去後に二次的自己免疫を発症するリスクは、以下を判定することによって評価することができる:
i)患者からの生体(例えば、血液)試料の全細胞中の血小板系細胞(PLC)(例えば、成熟PLC)の比率であって、対照被験者と比較したPLC(例えば、成熟PLC)の比率の減少がリスクの上昇を示す、比率;および/または
ii)生体試料中の幼若血小板比率(IPF)であって、対照被験者と比較したIPFの増加は、リスクの高まりを示す、比率。
【0025】
いくつかの実施形態では、リスクはi)(および場合によりii))、さらにiii)生体試料中の全PLC集団中の幼若PLCの比率を決定することによって評価され、対照被験者と比較して幼若PLCの比率が増加することは、リスクが高まることを示している。いくつかの実施形態では、リスクはiii)、またはii)およびiii)を決定することによって評価される。
【0026】
いくつかの実施形態では、リスクは、i)、ii)、iii)、またはそれらの任意の組み合わせを決定し、さらにiv)生体試料中の成熟血小板または活性化血小板に対する抗体の存在について試験することによって評価され、対照被験者と比較して抗(成熟/活性化)血小板抗体が増加することは、リスクが高まることを示している。いくつかの実施形態では、リスクはiv)を決定することによって評価される。
【0027】
特定の実施形態では、患者から得られた生体試料は、血液(例えば、全血、新鮮に単離された末梢血単核細胞(PBMC)、または凍結PBMC)、血清、血漿、尿、唾液、リンパ液、または脳脊髄液などの体液試料である。特定の実施形態では、生体試料は、赤血球(RNA)が溶解した血液である。
【0028】
特定の実施形態では、治療後に二次的自己免疫を発症した患者における相対的PLC存在量、IPF値、および/または幼若PLC比率は、対照被験者、例えば健康な被験者を基準としている。この文脈での健康な被験者とは、自己免疫疾患のない(例えば、自己免疫疾患の検出可能な症状のない)人を含め、既知の炎症性状態のない人のことである。いくつかの実施形態では、健康な被験者はリンパ球減少症ではない。いくつかの実施形態では、対照被験者は、リンパ球除去後に二次的自己免疫を発症しない自己免疫疾患患者である。
【0029】
自己免疫疾患(例えば、MS)患者由来の生体試料中の相対的PLC存在量、IPF値、および/または幼若PLC比率に関する情報を得ることは、その患者の治療および治療後のモニタリング計画を選択する上で有用である。リンパ球除去療法の前に情報を得ることができれば、療法後に二次的自己免疫を発症する相対的リスクを患者に知らせることができ、それに応じて治療を決定することができる。また、「リスクがある」と分類された患者には、治療後のモニタリングを強化する必要性、例えば、専門医によるより頻繁でより綿密な検査の必要性を伝えることもできる。したがって、この情報は自己免疫疾患の治療における(医師、薬剤師、および患者による)リスク管理を改善する。リンパ球除去治療中または治療後の情報を得ることも、二次的自己免疫の発症をモニタリングし、治療を決定するのに有用である可能性がある。
【0030】
A.血小板系細胞
血小板系細胞(PLC)は、血小板に強く類似しているが、そのより大きいサイズ、粒状性、および転写産物含量において血小板とは異なる、新規で稀な血小板様細胞型である。PLCは、CD41およびCD61のような古典的な血小板マーカーを発現している他、SPARC(Secreted Protein Acidic and Rich in Cysteine)およびTREML1(Triggering Receptor Expressed on Myeloid Cells Like 1)など、血小板と高いレベルで普遍的には結合していない追加の表面マーカーも発現している。
【0031】
以下の実施例で詳述するように、PLCはいくつかのマーカーの発現が異なる2つの異なるサブセットを含むことが見出された。第1のサブセット(サブセット1)は、血小板マーカーの発現がより低く、血小板由来増殖因子サブユニットA(PDGFA)、抑制マーカー(例えば、プログラム細胞死10(PDCD10))、および核タンパク質(例えば、DAB2、RGS10、RGS18、およびTSC22D1)の発現がより高いことが特徴である。第2のサブセット(サブセット2)は、アクチン遺伝子ACTBおよびACTG1、ならびに好中球の強力な化学誘引および活性化因子である血小板由来増殖因子PPBPの発現が比較的高い。第2のサブセットはまた、SPARC遺伝子およびTREML1遺伝子の発現も豊富である。サブセット1には、治療後に二次的自己免疫を発症した患者のほとんどのPLCが含まれる。本発明者らはさらに、2つのサブセットの間には成熟度と活性化状態に違いがあり、サブセット1は幼若PLCまたは休止状態のPLC(治療後の二次的自己免疫を呈する患者に豊富)を表し、サブセット2は成熟PLCまたは活性化PLCを表すことを発見した。
【0032】
したがって、PLCは、特定の細胞表面マーカーの発現に基づいて同定することができる。いくつかの実施形態では、PLCは、CD41、CD61、SPARC、および/またはTREML1の同時発現(例えば、CD41+CD61+SPARC+TREML1+)に基づいて同定することができる。特定の実施形態では、成熟PLCまたは活性化PLCは、MYL9、CLU、PPBP、SPARC、TREML1、ACTB、NCOA4、TMSB4X、AP001189.4、F13A1、PARVB、ALOX12、RBPMS2、PVALB、PF4V1、ARPC1B、SH3BGRL3、PKM、TAGLN2、TGFB1I1、HLA.E、FERMT3、LTBP1、GSN、CD9、C6orf25、ITGA2B、SERF2、およびC19orf33の任意の組み合わせの同時発現に基づいて同定することができる。特定の実施形態では、成熟PLCまたは活性化PLCは、GP1BA、ITGA2B、ITGB3、ACTB、ACTG1、PPBP、SPARC、および/またはTREML1の同時発現、例えば、当該マーカーのうち任意の2、3、4、5、6、7、または8種すべての組み合わせ(例えば、ACTB高ACTG1高PPBP高SPARC高TREML1高)の同時発現に基づいて同定される。特定の実施形態では、幼若PLCまたは休止状態のPLCは、RGS18、ACRBP、PTCRA、TSC22D1、HIST1H3H、HIST1H2AC、MYL4、HIST1H2BJ、TMEM40、SLC40A1、SMIM5、TAL1、PEGFA、FAM110A、THEM5、ARHGAP6、NFE2、MMD、NEXN、SCGB1C1、DNM3、GP6、GFI1B、LIMS1、GSTO1、DAB2、ERV3.1、ELOVL7、およびLCN2の任意の組み合わせの同時発現に基づいて同定することができる。特定の実施形態では、幼若PLCまたは休止状態のPLCは、PDGFA、PDCD10、DAB2、RGS10、RGS18、および/またはTSC22D1の同時発現、例えば、当該マーカーのうち任意の2、3、4、5、または6種すべての組み合わせ(例えば、DAB2高RGS10高RGS18高TSC22D1高)の同時発現に基づいて同定することができる。例えば、幼若PLCは、CD41低CD61低PDGFA高PDCD10高であると特徴付けることができる。
【0033】
本開示の方法では、相対的PLC存在量(全細胞中のPLC、例えば成熟PLCの比率)は、当業者に周知の多くの技法で測定することができる。いくつかの実施形態では、生体試料が被験者から得られ、試料中の相対的PLC存在量が、RNA含有細胞の検出に適した任意の方法またはアッセイによって測定される。特定の実施形態では、相対的PLC存在量は、蛍光活性化細胞分取(FACS)アッセイなどのフローサイトメトリー分析(例えば、高次元フローサイトメトリー分析)、またはnCounter(登録商標)を使用して測定される。特定の他の実施形態では、相対的PLC存在量は、シングルセルRNAシーケンシング(scRNA-seq)を使用して測定される。特定の実施形態では、scRNA-seqは液滴ベースのパラレルscRNA-seqである。
【0034】
いくつかの実施形態では、リンパ球除去療法(例えば、アレムツズマブなどの抗CD52抗体療法)後に二次的自己免疫を発症するリスクが増大する自己免疫疾患(例えば、MS)患者は、対照被験者と比較して、生体試料(例えば、血液)中の全細胞のうちPLCの比率が減少しており、PLCの比率は、対照被験者の比率と比較して、>1.5、>2、>3、>4、または>5(例えば、>2)の標準偏差で減少している。
【0035】
いくつかの実施形態では、リンパ球除去療法(例えば、アレムツズマブなどの抗CD52抗体療法)後に二次的自己免疫を発症するリスクが増大する自己免疫疾患(例えば、MS)患者は、対照被験者と比較して、生体試料(例えば、血液)中の全PLCのうち幼若PLCの比率が増加しており、幼若PLCの比率は、対照被験者の比率と比較して、>1.5、>2、>3、>4、または>5(例えば、>2)の標準偏差で増加している。
【0036】
特定の統計解析を適用して、試験試料中の相対的PLC存在量または幼若PLC比率が基準レベル(例えば、対照被験者からのもの)と有意に異なるかどうかを判定することができる。このような統計解析は当業者には周知であり、パラメトリック(例えば、両側スチューデントのt検定)またはノンパラメトリック(例えば、ウィルコクソン・マン・ホイットニーのU検定)検定が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
B.幼若血小板比率(IPF)
リンパ球除去治療後に二次的自己免疫を発症した自己免疫疾患患者は、治療後に二次的自己免疫を発症しない患者とは、血小板成熟度の臨床的指標が異なる可能性がある。具体的には、本発明者らは、アレムツズマブ治療後に甲状腺自己免疫を発症した患者は、甲状腺自己免疫を発症しない患者と比較して、治療前の幼若血小板比率(IPF)値が有意に高いことを発見した。
【0038】
IPFは、RNAを依然として保持している循環血小板の比率を反映している。IPFは末梢血中の若い網状血小板を測定するパラメータである。急激な血小板破壊が観察される状況では、IPFは通常高値になる。
【0039】
本開示の方法では、IPFは、当業者に周知の多くの技法で測定することができる。IPFは通常、フローサイトメトリー(高次元フローサイトメトリーなど)または血液学的分析によって測定される。例えば、幼若血小板の残存RNA量はチアゾールオレンジ(TO)などの色素で容易に染色でき、IPFはフローサイトメトリーで測定できる。あるいは、自動血液システムの網状赤血球/光学的血小板チャネルで行われる光学的蛍光法を使用してIPFを定量することもできる。この方法では、ポリメチン蛍光色素を使用して網状細胞、血小板膜、および顆粒のRNA/DNAを染色する。この方法では、網状赤血球、赤血球、および蛍光血小板を同時に計数することができる。IPFを定量化する他の方法としては、例えば、生体(例えば末梢血)試料中のIPFの特異的トランスクリプトームシグネチャ、および/または生体(例えば全血)試料中のIPF濃縮細胞集団を探すこと;あるいはnCounter(登録商標)が挙げられる。
【0040】
したがって、いくつかの実施形態では、リンパ球除去療法後に二次的自己免疫を発症する自己免疫疾患(例えば、MS)患者のリスクを評価するための本明細書に記載の任意の方法は、患者からの生体試料中のIPF値を決定する工程を含むことができる。いくつかの実施形態では、リンパ球除去療法(例えば、アレムツズマブなどの抗CD52抗体療法)後に二次的自己免疫を発症するリスクが増大する患者は、生体試料(例えば、血液)においてIPF値が増加しており、IPF値は、対照被験者のIPF値と比較して、>1.5、>2、>3、>4、または>5(例えば、>2)の標準偏差で増加している。
【0041】
いくつかの実施形態では、リスクの増加は、対照被験者と比較して、IPF値の増加およびPLC存在量の低下と相関している。
【0042】
II.リンパ球除去療法
本明細書で使用される場合、「リンパ球除去療法」とは、リンパ球減少をもたらす循環リンパ球、例えばT細胞および/またはB細胞の治療的減少による免疫抑制の一種を指す。多発性硬化症の治療に、例えば自家骨髄移植(BMT)または全リンパ球照射を使用した場合、リンパ球除去が長期化する。例えば、Coxら、Eur J Immunol.(2005年)35:3332-42を参照されたい。例えば、リンパ球除去は、チモグロブリン、シクロホスファミド、および全身照射を併用することで達成することができる。MS患者のリンパ球除去はまた、多くの薬物治療によっても達成することができる。例えば、ヒト化抗CD52モノクローナル抗体、アレムツズマブ(CAMPATH-1H)は、MS患者を治療するリンパ球除去療法に使用されている。アレムツズマブ誘導リンパ球減少は、臨床的にも放射線学的にも中枢神経系の炎症を効果的に低減することが示されている(Colesら、Ann.Neurol.(1999年)46:296-304;Colesら、N.Engl.J.Med.(2008年)359:1786-1801)。
【0043】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のリンパ球除去療法は、CD52発現細胞を標的とする薬剤である。特定の実施形態では、リンパ球除去療法は、抗CD52抗体またはその抗原結合部分である。抗体は、例えば、モノクローナル、ポリクローナル、オリゴクローナル、または二機能性であることができる。特定の実施形態では、抗CD52抗体または抗原結合部分は、アレムツズマブと同じエピトープに結合する。抗体または抗原結合部分は、アレムツズマブの6つのCDRアミノ酸配列または重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を含むことができる。特定の実施形態では、抗CD52抗体はアレムツズマブである。
【0044】
本明細書で使用される場合「抗原結合部分」という用語は、その部分が由来する抗体全体と同じ抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数のフラグメントを指す。「抗原結合部分」の例としては、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、dAbフラグメント、単離された相補性決定領域(CDR)、scFv、およびダイアボディが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載される抗体およびその抗原結合部分は、当該技術分野で周知の任意の方法によって作製することができる。
【0045】
自己免疫疾患(例えば、MS)患者を治療するためのリンパ球標的療法では、他の薬剤も使用することができる。これらの薬剤は、リンパ球細胞死を引き起こすか、またはリンパ球機能を阻害するものであることができる。(1)アレムツズマブと生物学的に類似した薬剤、すなわち、アレムツズマブと同じもしくは異なるエピトープに結合するか、またはCD52への結合についてアレムツズマブと競合する他の抗CD52抗体(例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体)など、CD52を有する細胞を標的とする薬剤;(2)抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)、抗CD38抗体、抗TCR抗体、および抗インテグリン抗体(例えば、ナタリズマブ)などのリンパ球上の細胞表面分子を標的とするペプチド、タンパク質、および抗体(例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体)などの生体分子;(3)リンパ球に特異的または非特異的に送達される細胞毒素(例えば、アポトーシス誘導剤、シクロホスファミド、アルキル化剤、およびDNAインターカレーター);(4)前述の抗体の抗原結合部分、(5)IMiD(例えば、テリフルノミド)、ならびに(6)BTK阻害剤(例えば、トレブルチニブ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
III.患者集団
本開示の方法は、自己免疫疾患(二次的自己免疫と区別するために、「原発性」自己免疫疾患)を有する患者の文脈で使用することができる。原発性自己免疫疾患は、例えば、多発性硬化症(MS)、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎、強皮症、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)スペクトラム障害(MOGSD)、または視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)であることができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、原発性自己免疫疾患は、MS、例えば再発寛解型MS、原発性進行型MS、または二次進行型MSである。本開示の文脈におけるMS患者とは、例えば、症状の病歴、ならびに磁気共鳴画像法(MRI)、脊髄穿刺、誘発電位検査、および血液試料の実験室分析などの検査を用いた神経学的検査によって、MSの一種であると診断された患者である。
【0048】
MSは散在性硬化症としても知られ、臨床的、病理学的、および放射線学的症状がかなり異質であることを特徴とする複雑な疾患である。MSは、免疫系が中枢神経系を攻撃し、脱髄を引き起こす自己免疫状態である(CompstonおよびColes、Lancet(2008年)372(9648):1502-17)。MSは、神経線維を包んで電気的に絶縁しているミエリン鞘と呼ばれる脂肪層を破壊する。この疾患では、ほとんどの神経症状が現れる可能性があり、身体障害および認知障害へと進行することが多い(CompstonおよびColes、2008年)。新しい症状は、個別の発作で起こることもあれば(再発型)、時間をかけてゆっくりと蓄積していくこともある(進行型)(Lublinら、Neurology(1996年)46(4):907-11)。発作と発作の間に、症状が完全に消失することもあるが(寛解)、特に疾患が進行すると、永続的な神経学的問題が生じることが多い(Lublinら、1996年)。いくつかの亜型、すなわち進行のパターンが報告されており、それらは予後や治療法の決定にとって重要である。1996年、米国国立多発性硬化症学会は、4つの亜型の定義を標準化した:再発寛解型、二次性進行型、一次性進行型、および進行性再発型(Lublinら、1996年)。
【0049】
再発寛解型亜型(RRMS)は、増悪または再発と呼ばれる予測不能な急性発作が起こり、その後、数か月から数年間、新たな疾患活動性の徴候が認められない比較的平穏な期間(寛解)が続くのが特徴である。これは、ほとんどのMS患者の初期経過を表している。RRMSはこの疾患の中で最も不均一で複雑な表現型であり、特に初期には異なるレベルの疾患活動性と重症度とによって特徴付けられる。炎症が優勢だが、神経変性もある。脱髄は数日から数か月続く急性再発時に生じ、その後、疾患活動性のない寛解期に部分的または完全に回復する。RRMSはMS集団の約65~70%が罹患し、二次進行型MSに進行する傾向がある。
【0050】
二次性進行型MS(SPMS)は、再発寛解型の経過で始まるが、その後、明確な寛解期はなく、時折、再発、軽度の寛解、または停滞が現れることがあり、急性発作の間に進行性の神経減少へと進展する。承認された疾患修飾療法が利用可能になる以前は、MSの自然史研究のデータから、RRMS患者の半数が10年以内にSPMSに移行し、90%が25年以内にSPMSに移行することが実証された。SPMSは、MS患者全体のおよそ20~25%が罹患している。
【0051】
一次進行性亜型(PPMS)は、MSの初期症状が現れた後、明らかな寛解はなく、徐々にではあるが着実に障害が進行するのが特徴である(Millerら、Lancet Neurol.(2007年)6(10):903-12)。発症から障害の進行が特徴で、一時的に軽度の改善または停滞が見られることもある。PPMS患者のごく一部に再発が起こる場合がある。MS患者全体のおよそ10%がPPMSである。原発性進行性亜型の発症年齢は、通常、他の亜型よりも遅い(Millerら、2007年)。男性も女性も同じように影響を受ける。
【0052】
進行性再発型MS(PRMS)は、急性発作を伴う着実な神経減少を特徴とし、その後いくらか回復することもあれば、回復しないこともある。これは、本明細書の上記に記載したすべての亜型の中で最も一般的でないものである。
【0053】
非標準的な行動をとる症例も記載されており、MSの境界型と呼ばれることもある(Fontaine、Rev Neurol.(Paris)(2001年)157(8-9 Pt2):929-34)。これらの型には、デビック病、バロー同心性硬化症、シルダーびまん性硬化症、およびマールブルク多発性硬化症が含まれる(Capelloら、Neurol Sci.25 Suppl(2004年)4:S361-3;Hainfellnerら、J Neurol Neurosurg Psychiatr.(1992年)55(12):1194-6)。
【0054】
一般に、「再発型MS」(RMS)という規制表現は、RRMSと再発を伴うSPMSの両方を含んでいる。このフレーズは一般的に患者の3種の異なる亜型を指す:RRMS、再発を伴うSPMS、ならびにMRIで病変の時間的および空間的播種が認められる臨床的に孤立した脱髄イベント(例えば、欧州医薬品庁、医薬品委員会の「多発性硬化症治療のための医薬品の臨床試験に関するガイドライン」(改訂2版、2015年)を参照されたい)。
【0055】
IV.二次的自己免疫
自己免疫は、最初の(「原発性」)疾患、例えば「原発性」自己免疫疾患、例えばMSの発症後に生じる場合、本明細書では「二次的自己免疫」(sAI)と呼ばれる。二次的自己免疫は、例えばリンパ球除去療法後にリンパ球減少を起こした、あるいは起こしたことのあるMS患者に生じることがある。一部の患者では、リンパ球除去療法(例えばアレムツズマブによる治療)の直後に二次的自己免疫が生じる。他の患者では、二次的自己免疫は、リンパ球除去療法の数か月後あるいは数年後まで生じない場合もあり;そのような患者の中には、二次的免疫が生じるまでに、リンパ球(総リンパ球数)がかなり回復し、もはやリンパ球減少ではなくなっている場合もある。したがって、場合によっては、抗CD52抗体などのリンパ球除去療法を受けた患者は、二次的自己免疫の徴候がないか注意深くモニタリングし、適時に治療を受ける必要がある。
【0056】
二次的自己免疫としては、自己免疫性甲状腺疾患(グレーブス病、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、橋本病、および甲状腺炎(例えば、一過性甲状腺炎))、自己免疫性血球減少症(特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性リンパ球減少症、および赤血球無形成を含む)、1型糖尿病、円形脱毛症(例えば、全身脱毛症)、白斑、筋痛症、サルコイドーシス、自己免疫性肝炎、ならびに糸球体腎炎(例えば、膜性糸球体腎炎)および抗糸球体基底膜(GBM)病(グッドパスチャー症候群)を含む腎症が挙げられるが、これらに限定されない。このような二次的自己免疫疾患を診断およびモニタリングする技術は、症状の評価および血液分析などの医学的検査を含め、当業者には周知である。本発明は、あらゆる既知の方法の使用を想定している。例えば、二次的自己免疫の徴候を検出する手段として、患者の体液(例えば血液)中の自己抗体レベルを測定することができる。具体的には、抗核抗体、抗平滑筋抗体、および抗ミトコンドリア抗体を測定することができる。抗核抗体が検出された場合は、抗二本鎖DNA抗体、抗リボ核タンパク質抗体、および抗La抗体を測定するための追加アッセイを行うことができる。自己免疫性甲状腺疾患を検出するために、抗甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)抗体および抗甲状腺刺激ホルモン(TSH)レセプター抗体を測定することができ;抗TPO抗体または抗TSHレセプター抗体が検出された場合は、遊離T3、遊離T4、およびTSHレベルを測定することにより、甲状腺機能が影響を受けているかどうかを測定することができる。自己免疫性血小板減少症を検出するために、抗血小板抗体を測定することができ;血小板レベルの測定は抗血小板抗体の存在が血小板数の減少を引き起こしているかどうかを判定するのに役立つ可能性がある。
【0057】
V.自己免疫疾患患者の治療および検査用キット
本発明は、多発性硬化症などの原発性自己免疫疾患を治療するためのキットを提供する。本発明のキットは、例えば、リンパ球除去薬(例えば、アレムツズマブ)、およびこの薬剤の禁忌、例えば、この薬剤による治療後に二次的自己免疫疾患を発症するリスクが増大する可能性を患者または医療提供者に知らせるための説明書を含むことができる。リスクの増大は、対照被験者と比較して、患者から採取した生体(例えば、血液)試料において、(i)全細胞中の血小板系細胞(PLC)の比率の減少、(ii)IPF値の増加、および/または(iii)全PLC集団中の幼若PLCの比率の増加、これらの任意の組み合わせ、および場合により(iv)成熟血小板または活性化血小板に対する抗体の増加と関連するか、またはこれらによって示される。
【0058】
他の実施形態では、本発明は、自己免疫疾患患者からの生体(例えば、血液)試料中の、全血球中のPLCの比率、IPF値、および/または全PLC中の幼若PLCの比率を検出するためのキット、および/またはリンパ球除去後に二次的自己免疫疾患を発症するリスクが増大する患者を同定するためのキットを提供する。このようなキットは、CD41、CD61、SPARC、および/もしくはTREML1などのPLCマーカー(および/または本明細書に記載される任意の他のPLC/成熟PLCマーカー);PDGFA、PDCD10、DAB2、RGS10、RGS18、および/もしくはTSC22D1などの幼若PLCマーカー(および/または本明細書に記載される任意の他の幼若PLCマーカー);ならびに/またはIPF値を検出するための試薬;ならびに場合により患者から生体試料(例えば、血液試料)を採取するよう使用者に指示する指示書を含むことができる。このようなキットは、MS患者などの患者の医療診断を行うために、適切な規制当局によって検証または承認されている。
【0059】
本明細書において特に定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。例示的な方法および材料を以下に記載するが、本明細書に記載したものと類似または同等の方法および材料も、本開示の実施または試験に使用することができる。矛盾がある場合は、定義を含む本明細書が優先される。一般に、本明細書に記載される免疫学、医学、薬化学および製薬化学、ならびに細胞生物学に関連して使用される用語、および技術は、当該技術分野において周知かつ一般的に使用されるものである。さらに、文脈上別途要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。本明細書および実施形態全体を通して、「有する(have)」および「含む(comprise)」という語、または「有する(has)」、「有すること(having)」、「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などの変形は、記載された整数または整数群を含むことを意味するが、任意の他の整数または整数群を排除することを意味しないと理解される。本明細書で使用される場合、目的の1つまたは複数の値に適用される「およそ」または「約」という用語は、明記された基準値に類似した値を指す。特定の実施形態では、この用語は、特に記載がない限り、またはさもなければ文脈から明らかな場合を除き、記載された基準値から10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ以下のいずれかの方向(より大きい、またはより小さい)に収まる値の範囲を指す。
【0060】
本明細書に記載されたすべての刊行物およびその他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。本明細書には多くの文献が引用されているが、この引用は、これらの文献のいずれかが当技術分野における共通の一般的な知識の一部を形成していることを認めるものではない。
【0061】
本発明をよりよく理解するために、以下の実施例を示す。これらの実施例は例示のみを目的としたものであり、いかなる様式においても本発明の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
【実施例1】
【0062】
アレムツズマブ治療患者における免疫細胞型構成の決定
方法:
臨床試験および試料採取
凍結保存されたPBMC試料は、CAMM323試験(CARE-MS I、Clinicaltrials.gov識別子NCT00530348)から入手した。本試験では、再発寛解型多発性硬化症(RR-MS)と診断され、以前、MS疾患修飾療法による治療歴のない患者を、ベースライン時(T0)に連続5日間および12か月後(T12)に連続3日間、アレムツズマブで治療し、またはインターフェロンβ-1a皮下注射(44μg、週3回)で治療した。全血(6~8mL)を、T0、T12(第1クールの12か月後)、およびT24(第2クールの12か月後)の時点で、クエン酸ナトリウムを含むCPT(商標)チューブに採取した。この研究では、合計32人の患者のT0時点およびT24時点の試料を分析し、そのうち11人はアレムツズマブ治療後に二次的自己免疫(sAI、甲状腺イベントの発生で定義)を発症し、18人は発症せず(非sAI)、3人の患者は自己抗体の存在で定義される臨床検査値異常(LA)を有していた(Jonesら、J Clin Invest.(2009年)119:2052-61)。判定では、甲状腺イベントは検査所見(例えば、TSH異常)または臨床的有害事象(AE)のいずれかを有することと定義された。診断された場合、臨床AEはグレーブス病(すなわち甲状腺機能亢進症)、橋本病(すなわち甲状腺機能低下症)、一過性甲状腺炎、グレーブス病から甲状腺機能低下症への移行、橋本病から甲状腺機能亢進症への移行、または不明と分類された。年齢、性別、またはBMIなどの人口統計学的共変量はsAIとの関連を示さなかった(データは示さず)。自己免疫発症のタイムラインは、先行研究に記載されている(Bergerら、CNS Drugs(2017年)31:33-50;Havrdovaら、Neurology(2017年)89:1107-16)。
【0063】
PBMCの処理および保存
採血後、CPT(商標)チューブを臨床現場で遠心分離し、赤血球(RBC)をゲルバリア内に捕捉した。PBMCの血漿層および白色バフィーコートを出荷前に混合した。CPT(商標)チューブを室温で検査室に送り、採取後60時間以内に処理した。PBMCの採取はクラスIIの生物学的安全キャビネット内で行った。細胞を血漿中に静かに5~10回、転倒混和した後、CPT(商標)チューブを開け、ゲル上の懸濁液全体を滅菌した15mLコニカルチューブに移した。溶液の体積を記録した。試料を300gで10~15分間遠心分離した後、細胞ペレットを乱すことなく血漿を除去および廃棄した。ペレットを穏やかにピペッティングして再懸濁し、ダルベッコPBS(1X)を加えて容量を10~13mLにした。次いで、試料を300gで10~15分間遠心分離した。ペレットを乱すことなく上清を吸引し、ダルベッコPBS(1X)を加えて容量を10mLにした。試料を転倒混和し、静かに混合した。白血球数、およびリンパ球%および単球%は、Gen-S血液分析装置を使用して決定した。細胞の生存率は、ヨウ化プロピジウムで染色し、FACSCalibur(商標)で処理することにより決定した。続いて、試料を300gで10~15分間遠心分離し、上清を吸引した。ペレットをピペッティングで静かに再懸濁した。凍結溶液Cryostor(登録商標)CS10(Stemcell Technologies、カタログ番号07930)2mLを加え、1mLピペットを使用して混合した。細胞溶液1mLをクライオバイアル2個に分注し、-80℃で最低24時間、最大72時間保存した後、液体窒素で長期保存した。
【0064】
シングルセルワークフローのためのPBMCの解凍および前処理
Hanamsagarら、Sci Rep.(2020年)10:2219に以前に記載されているように、凍結保存したPBMCを、小さな結晶が残るまで37℃の水浴中で1~2分間解凍した(一度にバイアル2個)。クライオバイアルを水浴から取り出し、ワイドボアピペットチップを使用して細胞溶液を滅菌済み2mL Eppendorf(登録商標)チューブに移した。クライオバイアルを1mLの0.04%BSA/PBSで洗浄し、溶液をEppendorf(登録商標)チューブに移した。試料を150g、5分間、室温(RT)で遠心分離した。上清を注意深く除去し、ワイドボアピペットチップを使用して1mLの0.04%BSA/PBSで試料を洗浄した。試料を上記と同じ条件でさらに2回、合計3回洗浄した。最終洗浄後、細胞を1mLの0.04%BSA/PBSに再懸濁し、トリパンブルー(0.4%、GIBCO(商標)カタログ番号15250061)を染色液として、血球計数器(C-Chip(商標)、SKC、カタログ番号DHCF015)を使用して計数した。生存率が75%未満であることが判明した場合、試料をDead Cell Removal kit(Miltenyi Biotec、カタログ番号130-090-101)を使用した「クリーンアップ」工程に供した。細胞を再度洗浄し、500μLの0.04%BSA/PBSに再懸濁し、計数した。容量を0.04%BSA/PBSで1×106細胞/mLに調整した。10X Genomics Chromium装置で細胞をカプセル化した。
【0065】
シングルセルトランスクリプトミクス
細胞容量を1×106細胞/mLに調整した後、10X Genomics 5’遺伝子発現ライブラリー調製のプロトコルを使用した。試料あたり8000個の細胞を標的とした。2100バイオアナライザー装置(Agilent)を使用して、High Sensitivity DNAキット(Agilent、カタログ番号5067-4626)を用いて一意にインデックス化されたライブラリーの質を決定し、QuantStudio(商標)7 Flex Real-Time PCRシステムでKapa(商標)ライブラリー定量キット(Kapa Biosystems、カタログ番号KK4824-07960140001)を使用して定量した。ライブラリーを10mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)で希釈し、シーケンシングのために等モル濃度(2nM)でプールした。
【0066】
シーケンシングは、NOVAseq(商標)6000システム(Illumina)で、NOVAseq(商標)6000 S2試薬キット(300サイクル、Illumina、カタログ番号20028314)を使用して行った。シーケンス深度およびサイクル数は10X Genomicsの推奨:Read1=26サイクル、i7 index=8サイクル、Read2=98サイクルに従い、細胞あたり35,000回の読み取りのシーケンス深度を目指した。
【0067】
シングルセルパイプライン、前処理、およびQC
単一細胞解析は、以前に記載された通りに行った(Hanamsagarら、Sci Rep.(2020年)10:2219)。簡単に説明すると、BCL変換後、FASTqをCellRanger(商標)バージョンv2.1.1で処理し、デマルチプレックス、アライメント、フィルタリング、バーコードカウンティング、UMIカウンティング、および遺伝子×バーコードマトリックスの作成を行った。続いて、社内で構築した前処理パイプラインを実行し、周囲のRNAのバックグラウンド除去と、空のバーコード、ならびにストレス遺伝子およびミトコンドリア遺伝子のフィルタリングを行った。次いで、得られたhdf5ファイルを、SPRING(Weinreb、Wolock、およびKlein、Bioinforma Oxf Engl.(2018年)34:1246-8)と呼ばれる内部の単一細胞可視化ツールに入力した。SPRINGはまた、大規模なシングルセルデータセットのサイズを圧縮/縮小して、高速に可視化することもできる。次いで、社内で開発したツールを使用して、細胞型および細胞亜型の自動注釈付けを行い、新規細胞型の同定も行った。精査の結果、質の悪い試料を分析から除外した。簡単に説明すると、各試料のCellRanger(商標)ウェブサマリーを評価した。「クリフグラフ」がQCに合格すると判断された場合、シーケンシング深度が評価された。シーケンシング深度が低い試料については、低リード試料を考慮してライブラリーを再プールし、再シーケンシングした。全シーケンシングランのデータを統合し、CellRanger(商標)で再実行した。ウェブサマリーを再度評価し、細胞数が少なく、「クリフグラフ」が悪い試料にフラグを立てた。除染およびフィルタリングのために内部パイプラインですべての試料を処理し(上記の通り)、SPRINGポータルで可視化した。SPRINGレイアウト上でクラスタリングが不十分な試料、または細胞数が100未満の試料にはフラグを立てた。したがって、CellRanger(商標)QCおよびSPRINGクラスタリングに不合格となった試料を解析から除外した。そのような試料を7つ特定し、除外した。得られた新しいデータセットにLemtrada_SC(試料クリーンアップ)のラベルを付けた。これらの試料は異なる患者の異なる時点に属していたため、Lemtrada_SCデータセットの患者からの対応のある試料を除外した別のデータセットを作成した。この新しいデータセットをLemtrada_PC(患者クリーンアップ)と呼んだ。
【0068】
結果:
アレムツズマブ治療前後の細胞型の相対的存在量の変化
以前に観察されたように(Bakerら、JAMA Neurol.(2017年)74:961)、治療後の時点(第2クールの12カ月後;T24)でB細胞の増加およびT細胞の減少が検出された(データは示さず)。
【0069】
さらに、シングルセルRNAシーケンシング(scRNA-seq)を使用して決定された、各試料におけるこれらの細胞型の個々の割合は、臨床的に記録されたリンパ球数と強い相関があった。このことは、開発したパイプラインを使用して測定したscRNA-seq相対的存在量測定が、細胞数に関する信頼性の高い見解を提供することを示している。さらに、日常的に使用されている標準的な蛍光標識細胞分取(FACS)よりも、細胞型に関してより深い解像度を提供した。いずれの群でも、単球数とNK細胞数との合計に差は認められなかった(データは示さず)。シングルセルデータからのNK細胞量も臨床値と強い相関があり(データは示さず)、scRNA-seqデータを臨床値の代理として使用する可能性がさらに強まった。
【0070】
アレムツズマブ治療前後のsAI患者対非sAI患者におけるB細胞とT細胞の差
これまでの知見(Bakerら、2017年;Evanら、Expert Opin Biol Ther.(2018年)18:323-34)と一致して、ナイーブB細胞数は有意に増加したが、CD4およびCD8 T細胞数は治療後に減少したことが見出された(データは示さず)。B細胞およびT細胞の亜型については、sAI患者対非sAI患者で差は認められなかった(データは示さず)。
【0071】
未知の細胞型の分類
甲状腺イベントの有無にかかわらず、既知の細胞型や亜型の相対的存在量に差は見られなかったため、自動化アルゴリズムによって未知と分類された細胞型の存在量を分析した。驚くべきことに、甲状腺イベントを経験した人では、経験していない人に比べて、稀な血小板様細胞型(PLC)が有意に低いことが明らかになった(
図1、sAIが0.07%;非sAIが0.52%)。この効果は任意の特定の患者によるものではなかった(
図2)。PLCの割合は低かった(0.1%未満)が、sAIと非sAIとの差は非常に有意であり、治療前と治療後の両時点で維持された(
図3)。マーカー発現に基づくと(
図4)、PLCは血小板に強く類似していたが、血小板とは普遍的には関連しない2つの追加の表面マーカー:SPARCおよびTREMLを高レベルで発現していた。血小板は、PBMC調製物によく含まれる汚染物質である(McFarlandら、Cytom Part J Int Soc Anal Cytol.(2006年)69:86-94)が、しかしながら、血小板は小さく、RNAを含むとは想定されない。したがって、この細胞型は、sc-RNAseq捕捉に適した特別な物理的特徴(例えば、サイズがより大きい、転写産物含量が多い)を持つ血小板系細胞(PLC)を構成していると仮定された。
【実施例2】
【0072】
FACSを使用する血小板系細胞(PLC)の同定
PLCの同一性を確認するため、2人の健康なドナーの試料を使用してFACS実験を行い、試料の単離および処理工程を通してPLCの相対的存在量を推定した。
【0073】
方法:
フローサイトメトリー:
細胞の前処理
全血試料は、Framingham、MAのサノフィ社内のドナー・リサーチ・プログラムを利用して、2人の健康な被験者から採取した。クエン酸ナトリウムを含むCPT(商標)チューブ(BD Biosciences、カタログ番号362761)にドナー1人当たり75~100mLの血液を採取した。最初の実験では、上記のように血液からPBMCを単離した。この後、PBMCを1×PBSで2回洗浄し、Cellaca(商標)MX(Nexcelom、モデルMX-SYS1)でヨウ化プロピジウム/アクリジンオレンジ染色(Nexcelom、カタログ番号CS2-0106-5ML)を使用して計数した。新たに採取したPBMCの半分をCryostor(商標)CS10(Stemcell technologies、カタログ番号07930)に保存し、-80℃で24時間凍結した後、液体窒素で保存した。1週間後、細胞を解凍し、計数し、フローサイトメトリーにかけた。残りの半分の新鮮なPBMCを、抗体染色およびフロー解析のために処理した。第2の一連の実験では、健康なドナーを呼び戻し、上記のように血液を採取した。赤血球溶解は、ACK溶解緩衝液(Gibco(商標)、A10492-01、ロット番号2048611)を使用して、製造者の指示に従って行った。簡単に説明すると、各ドナーに対して50mLのFalcon(商標)コニカルチューブを2本使用した。血漿を除去するために最初の遠心分離を行った後、およそ10~12mLの全血を各50mLチューブに注いだ。ACK緩衝液45mLを添加し、VWR可変速ロッカーで10分間インキュベートした。3回目の10分間のインキュベーションの後、細胞ペレットはほとんど白色で、赤血球が溶解され、洗浄によって除去されたことを示した。この後、染色およびフローサイトメトリーのために細胞を処理した。
【0074】
補正、染色、およびフロー分析:
BD Influx(商標)(Becton Dickinson Influx Configurable、モデル646500、s/n X64650000137)で試料を実行する前に、Influxプロトコルに従って自動補正を行った。簡単に説明すると、2滴の補正ビーズ(下記参照)と1試験の染色液を混合し、暗所にて氷上で20分間インキュベートした後、5mLのファルコンチューブに入れた350μLの染色緩衝液に再懸濁した。
【0075】
すべての細胞を300g、5分間、4℃で遠心分離した。ペレットを3mLのBD染色緩衝液に再懸濁し、5mLのファルコンポリプロピレンチューブに移した。細胞を再度遠心分離し、次いでペレットを100μLの染色パネルに懸濁し、暗所にて氷上で30分間インキュベートした。染色パネルは:CD61-BV510(5μL/試験)、CD41A-APC(20μL/試験)、TREML/TLT-1-FITC(5μL/試験)、およびSPARC-(350)(5μL/試験)からなった。インキュベーション後、3mLの染色緩衝液を添加し、遠心分離した。上清を除去し、ペレットを2mLの染色緩衝液に再懸濁し、製造元の指示に従ってBD Influxで分析した。BD Influx(商標)の情報:振幅は4.91、ドロップ振動数は44.70、流束絞りは15、ドロップ位置は200、最大ドロップは101、ドロップディレイは28.43、チューブ向け流束曲げは-84、-33、33、86に設定した。
【0076】
【0077】
ゲーティング戦略:
死細胞を除いて、FSCとSSCの対数スケールから生細胞をゲーティングした。生細胞のうち、「小細胞」はサイズが小さい(2~3μm)ため、FSCおよびSSCで対数スケールを使用してゲーティングした。シングレットはトリガーパルス幅を使用してFSCおよびSSCゲートからゲーティングした。CD41A+およびCD61+を血小板のマーカーとみなし、シングルレットゲートからゲーティングした。CD41A+CD61+ゲートから、SPARCおよびTREML1の二重陽性によってPLCを同定した。
【0078】
統計解析
フローデータの分析にはFlowJo(商標)(バージョン10)を使用した。グラフの作成および統計解析の実行にはGraphPad Prism(バージョン8)を使用した。有意水準を:***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05により示す。
【0079】
PLC存在量の結果は、抗PLGY抗体の存在に対する頑強性を確認するため、この臨床検査値異常を示した1人のsAI患者(10553163)を除外して検査した。有意水準はp<0.015であり、この患者は除外された。
【0080】
結果:
PLCの識別
CD41
+CD61
+細胞の割合は、全血では35%であり、新鮮なPBMC(好中球除去後)では55%に増加し、凍結PBMCでは30%に減少することが観察された(
図5)。しかしながら、PLC(CD41
+CD61
+SPARC
+TREML1
+と定義)は全血のわずか0.55%、新鮮および凍結PBMCの0.1~0.2%を占めた(
図6および7)。PLCのサイズおよび粒状性の物理的特徴をよりよく理解するために、SSC/FSCゲーティングを用いて解析したところ、SPARC
-TREML1
-(二重陰性)血小板と比較して、より大きく、より粒状であることが示された(データは示さず)。
【0081】
アレムツズマブ治療前のsAI患者対非sAI患者のPLCの差
この新しい細胞型の正体を明らかにした後、PLCトランスクリプトームのクラスタリングを行い、アレムツズマブ治療前のPLCに甲状腺イベントを有する患者間の質的な違いがあるかどうかを決定した。いくつかのマーカーの発現およびその相対的な割合が異なる別個のPLCのサブセットが存在することが見出された(データは示さず)。サブセット1(「幼若/休止状態のPLC」)はsAI患者のほとんどのPLCを含み、5人の患者がその代表である。血小板マーカーの発現がより低く、PDGFA、抑制マーカー(PDCD10)、および核タンパク質(DAB2、RGS10、RGS18、およびTSC22D1)の発現がより高いことが特徴である。第2のサブセット(サブセット2、「成熟/活性化」PLC)は、アクチン遺伝子ACTBおよびACTG1、増殖因子、強力な化学誘引物質、ならびに好中球PPBPの活性化因子が比較的多い。このサブセットはまた、SPARC遺伝子およびTREML1遺伝子の発現も豊富であった。これらの結果から、2つのサブセット間の成熟度と活性化状態との違いが示唆され、PLCの幼若/休止状態を示すサブセットは甲状腺イベントを有するものに豊富であった(
図8)。
【0082】
実際、ベースライン患者の161個の試料のscRNA-seqデータを教師なしクラスタリング解析したところ、二次的自己免疫を発症しなかった患者では、成熟PLCのマーカーである可能性がある6つの遺伝子(GP1BA、PPBP、ITGA2B、ITGB3、SPARC、およびTREML1)の相対発現レベルがより高いことが明らかになった(
図9A)。この所見は、甲状腺の活動性、人種、および性別などの患者の特徴とは無関係であった(
図9B)。6つの成熟PLC遺伝子(
図10A)および5つの幼若PLC遺伝子(PDCD10、RGS10、DAB2、TSC22D1、およびRGS18)(
図10B)の発現レベルを、アレムツズマブ治療後0か月、12か月、および24か月で評価した。二次的自己免疫を発症した患者では、成熟PLC遺伝子の発現レベルが有意に低下していた。二次的自己免疫を発症した患者では、幼若PLC遺伝子の発現レベルはほぼ同じかわずかに減少していた。
【0083】
IFNβ-1aで治療したMS患者から得られた試料のscRNA-seqデータについても同様に教師なしクラスタリング解析を行ったところ、同じ成熟PLC遺伝子および幼若PLC遺伝子で異なるクラスタリングパターンが見られ、これらはアレムツズマブ治療後の二次的自己免疫発症リスクの特異的マーカーであることが示唆された(
図11)。
【0084】
これらの研究は、アレムツズマブ治療後の甲状腺イベントを有するかまたは有さない患者における血小板成熟度の臨床的測定値の違いを示唆している。この仮説を検証するために、コホートで利用可能な幼若血小板比率(IPF)データの解析を行い、甲状腺イベントのある患者は、ない患者と比較してT0でのIPFが有意に増加していることが見出された(
図12A)。さらに、甲状腺イベントのある患者は、2年の期間を通して毎月の測定でIPFの追跡率がより高かった(
図12B)。T0での高IPFはsAIに特異的ではない。しかしながら、相対的PLCの低値とIPFの高値は共に、IPFの高値単独よりもより特異的な指標であるように思われる(
図13)。
【0085】
PLC欠損がsAIの不顕性発現とどのように関連しているかを調べるために、臨床的なsAIイベントを認めなかったが自己抗体が検出されたコホート内の3人の追加の患者からデータを得て:2人は抗PLGLY抗体、もう1人は抗TPO抗体を有していた。PLCは3つの試料すべてに見られなかった(データは示さず)。
【0086】
次に、T0でのPLCの数値が4年後以降のAIの結果を示すかどうかを検討した。同じ患者について7年間の追跡データを得た。7年間のデータは、4年間の追跡後にAIを発症した1人の患者を除いて、4年間のデータとほぼ一致していた。この患者はT0と比較してT24でPLCが劇的に低下していることが観察された(
図2)。
【国際調査報告】