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特表2024-520920イミダゾリジノン類化合物の多形体、調製方法及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-27
(54)【発明の名称】イミダゾリジノン類化合物の多形体、調製方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 498/04 20060101AFI20240520BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240520BHJP
   A61K 31/553 20060101ALI20240520BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C07D498/04 CSP
A61P35/00
A61P35/04
A61P35/02
A61K31/553
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569913
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 CN2022092465
(87)【国際公開番号】W WO2022237871
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/093552
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210506024.9
(32)【優先日】2022-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519223169
【氏名又は名称】貝達薬業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BETTA PHARMACEUTICALS CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】355 Xingzhong Road,Yuhang,Hangzhou,Zhejiang 311100,China
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】祖厚賢
(72)【発明者】
【氏名】陳亮
(72)【発明者】
【氏名】宋西鎭
(72)【発明者】
【氏名】趙新涛
(72)【発明者】
【氏名】陳凱
(72)【発明者】
【氏名】劉暁雲
(72)【発明者】
【氏名】王進
(72)【発明者】
【氏名】夏志芳
(72)【発明者】
【氏名】徐影
(72)【発明者】
【氏名】周遠征
(72)【発明者】
【氏名】丁列明
(72)【発明者】
【氏名】王家炳
【テーマコード(参考)】
4C072
4C086
【Fターム(参考)】
4C072AA01
4C072AA06
4C072BB02
4C072BB06
4C072CC02
4C072CC11
4C072DD10
4C072EE09
4C072FF05
4C072GG08
4C072HH01
4C072HH07
4C072HH08
4C072JJ02
4C072UU01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、(S)-1-(2-((S)-3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミドの多形体、前記多形体を含む組成物、前記多形体の使用方法及び調製方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S)-1-(2-((S)-3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミドの多形体であって、
前記多形体は、結晶形Aであり、
前記結晶形Aの粉末X線回折パターンは、回折角2θが約6.2°±0.2°、7.3°±0.2°、9.1°±0.2°、13.6°±0.2°、14.2°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、多形体。
【請求項2】
粉末X線回折パターンは、回折角2θが約6.2°±0.2°、7.3°±0.2°、9.1°±0.2°、13.6°±0.2°、14.2°±0.2°、14.9°±0.2°、17.1°±0.2°、17.3°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項1に記載の多形体。
【請求項3】
粉末X線回折パターンは、回折角2θが約6.2°±0.2°、7.3°±0.2°、9.1°±0.2°、11.5°±0.2°、13.6°±0.2°、14.2°±0.2°、14.9°±0.2°、17.1°±0.2°、17.3°±0.2°、18.1°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の多形体。
【請求項4】
粉末X線回折パターンは、実質的に図1に示すものであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の多形体。
【請求項5】
(S)-1-(2-((S)-3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミドの多形体であって、
前記多形体は、結晶形B-1であり、
前記結晶形B-1の粉末X線回折パターンは、回折角2θが約6.1°±0.2°、7.6°±0.2°、9.3°±0.2°、15.4°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、多形体。
【請求項6】
粉末X線回折パターンは、回折角2θが約6.1°±0.2°、7.6°±0.2°、9.3°±0.2°、11.6°±0.2°、15.4°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項5に記載の多形体。
【請求項7】
粉末X線回折パターンは、回折角2θが約6.1°±0.2°、7.6°±0.2°、9.3°±0.2°、11.6°±0.2°、14.1°±0.2°、15.4°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項5又は6に記載の多形体。
【請求項8】
粉末X線回折パターンは、回折角2θが約6.1°±0.2°、7.6°±0.2°、9.3°±0.2°、11.6°±0.2°、14.1°±0.2°、15.4°±0.2°、16.9°±0.2°、17.2°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項5~7のいずれか1項に記載の多形体。
【請求項9】
粉末X線回折パターンは、実質的に図18に示すものであることを特徴とする、請求項5~8のいずれか1項に記載の多形体。
【請求項10】
(S)-1-(2-((S)-3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミドの多形体であって、
前記多形体は、結晶形Cであり、
前記結晶形Cの粉末X線回折パターンは、回折角2θが約7.0°±0.2°、8.4°±0.2°、10.9°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、多形体。
【請求項11】
粉末X線回折パターンは、回折角2θが約5.5°±0.2°、7.0°±0.2°、8.4°±0.2°、10.2°±0.2°、10.9°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項10に記載の多形体。
【請求項12】
粉末X線回折パターンは、回折角2θが約5.5°±0.2°、7.0°±0.2°、8.4°±0.2°、9.8°±0.2°、10.2°±0.2°、10.9°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項10又は11に記載の多形体。
【請求項13】
粉末X線回折パターンは、回折角2θが約5.5°±0.2°、7.0°±0.2°、8.4°±0.2°、9.8°±0.2°、10.2°±0.2°、10.9°±0.2°、13.5°±0.2°、13.9°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項10~12のいずれか1項に記載の多形体。
【請求項14】
粉末X線回折パターンは、実質的に図21に示すものであることを特徴とする、請求項10~13のいずれか1項に記載の多形体。
【請求項15】
治療有効量の(S)-1-(2-((S)-3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミドの多形体、並びに、薬学的に許容される補助材料、補助剤及び/又は担体を含むことを特徴とする、医薬品組成物。
【請求項16】
前記多形体は、請求項1~14のいずれか1項に記載の多形体から選択される1種又は多種であることを特徴とする、請求項15に記載の医薬品組成物。
【請求項17】
前記医薬品は、癌又は癌転移の発生又は進行の治療、予防、遅延又は阻止に使用されることを特徴とする、医薬品の調製における請求項1~14のいずれか1項に記載の多形体又は請求項15~16のいずれか1項に記載の医薬品組成物の使用。
【請求項18】
前記医薬品は、PI3Kによって媒介される疾患の治療に使用されることを特徴とする、医薬品の調製における請求項1~14のいずれか1項に記載の多形体又は請求項15~16のいずれか1項に記載の医薬品組成物の使用。
【請求項19】
前記PI3Kは、PI3Kαであることを特徴とする、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記疾患は癌であることを特徴とする、請求項18又は19に記載の使用。
【請求項21】
前記癌は、肉腫、前立腺癌、乳癌、膵臓癌、肺癌、胃腸癌、結腸直腸癌、甲状腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、副腎癌、神経膠腫、子宮内膜癌、黒色腫、腎臓癌、膀胱癌、子宮癌、膣癌、卵巣癌、多発性骨髓腫、食道癌、白血病、脳癌、口腔・咽癌、喉頭癌、リンパ腫、基底細胞癌、真性赤血球増加症、本態性血小板血症から選択されることを特徴とする、請求項17又は20に記載の使用。
【請求項22】
治療対象に治療有効量の請求項1~14のいずれか1項に記載の多形体又は請求項15~16のいずれか1項に記載の医薬品組成物を投与する癌の治療方法であって、前記癌は、肉腫、前立腺癌、乳癌、膵臓癌、肺癌、胃腸癌、結腸直腸癌、甲状腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、副腎癌、神経膠腫、子宮内膜癌、黒色腫、腎臓癌、膀胱癌、子宮癌、膣癌、卵巣癌、多発性骨髓腫、食道癌、白血病、脳癌、口腔・咽癌、喉頭癌、リンパ腫、基底細胞癌、真性赤血球増加症、本態性血小板血症から選択されることを特徴とする、癌の治療方法。
【請求項23】
請求項10~14のいずれか1項に記載の多形体の調製方法であって、
前記多形体は、化合物1の結晶形Cであり、化合物1は、(S)-1-(2-((S)-3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミドであり、
前記多形体の調製方法は、
【化1】

a.塩基性条件で、化合物1-5と化合物M-5とを触媒及び触媒配位子の作用でカップリング反応させて、化合物1-6を得るステップと、
b.塩基性条件で、化合物1-6と化合物M-12とを触媒の作用でカップリング反応させて、化合物1-7を得るステップと、
c.塩基性条件で、化合物1-7とNH3とを縮合剤の作用で縮合反応させて、化合物1を形成するステップと、
g.化合物1を良溶媒に加え加熱溶解し、貧溶媒を滴下して固体を析出させ、濾過、乾燥して前記化合物1の結晶形Cを得るステップと、
を含むことを特徴とする、多形体の調製方法。
【請求項24】
前記良溶媒は、酢酸エチル、酢酸エチルとジメチルスルホキシドとの混合溶液、酢酸エチルとメタノールとの混合溶液から選択される1種であり、前記貧溶媒は、n-ヘプタン、メチルt-ブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジエチルエーテルから選択される1種又は多種であることを特徴とする、請求項23に記載の多形体の調製方法。
【請求項25】
請求項10~14のいずれか1項に記載の多形体の調製方法であって、前記多形体は、化合物1の結晶形Cであり、化合物1は、(S)-1-(2-((S)-3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミドであり、前記多形体の調製方法は、化合物1の結晶形Aを、酢酸エチル、メタノール、メタノール/水混合液、n-ブタノール、メチルイソブチルケトン、酢酸イソプロピル、メチルt-ブチルエーテルから選択される1種又は多種の溶媒に加え、室温で1~5日間懸濁して撹拌するステップを含むことを特徴とする、多形体の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(S)-1-(2-((S)-3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミドの多形体に関する。また、本発明は、前記多形体の調製方法、この多形体を含む医薬品組成物に関し、PI3Kによって媒介される疾患の治療における前記多形体及びその医薬品組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)シグナル経路は、細胞内で成長、増殖、生存、分化、転移及びアポトーシスなどの生命活動を制御する重要なシグナル伝達経路である。PI3K、Akt及びmTORは、この経路での重要なサイトであるため、PI3K/Akt/mTORシグナル経路と呼ばれる。近年、PI3K阻害剤は、国内外の抗腫瘍薬研究のホットスポットの1つになっている。
【0003】
PI3Kは、RTK又はRasによって活性化された後、ホスファチジルイノシトール-3,4-ビスリン酸(PIP2)を触媒して、ホスファチジルイノシトール-3,4,5-トリスリン酸(PIP3)を産生させる。PIP3は、Akt及び3-ホスファチジルイノシトール(PIP)依存性プロテインキナーゼ(PDK)などのプロテインキナーゼに結合し、Aktをリン酸化して活性化し、Aktを細胞質から細胞核内に転移させる。活性化されたAktは、細胞の生存、細胞周期、成長などの細胞活動に影響を与えるように、下流エフェクターをさらにリン酸化することができる(Ma K,Cheung SM,Marshall AJなど、Cell Signal,2008,20:684-694)、したがって、PI3K/Akt/mTORシグナル経路の活性化は、細胞のアポトーシスを阻害し、細胞の耐性を高め、細胞の生存や増殖を促進し、そして、血管の形成に関与し、腫瘍の成長及び転移を促進する。
【0004】
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)は、脂質キナーゼ(Lipid kinase)ファミリーに属し、このファミリーのメンバーは、PI3Kの活性化メカニズム及び構造特徴によって、クラスI型、クラスII型及びクラスIII型との3つのクラスに分類される(Vanhaesebroeck B,Waterfield MD; Exp Cell Res,1999,253:239-254)。現在、より詳しく研究されているのは、クラスI型のPI3Kである。クラスI型のPI3Kは、細胞表面受容体の種類によって、さらにIA及びIBとの2つの異なるサブタイプに分類され、この2つのサブタイプは、それぞれチロシンキナーゼ受容体(RTKs)及びGタンパク質共役受容体(GPCRs)から伝達シグナルを受信する(Wu P,Liu T,Hu Y; Curr Med Chem,2009,16:916-930)。IA類のPI3Kは、PI3Kα、PI3Kβ及びPI3Kδとの3つのサブタイプを含み、IB類のPI3Kは、PI3Kγとの1つのサブタイプのみを含む。クラスII型のPI3Kキナーゼは、C末端構造によって、PI3KC2α、PI3KC2β及びPI3KC2γとの合計3つのサブタイプに分類されるが、生体内における基質はまだ明らかではなく、その作用メカニズム及び具体的な機能の理解も比較的に限られている(Falasca M,T.Muffucci; Biochem Soc Trans,2007,35:211-214)。クラスIII型のPI3Kキナーゼには、Vps34(Vacuolar Protein Sorting 34)との1つのメンバーのみを有し、それは、下流mTORシグナル伝達カスケードを調整する時に、タンパク質レベルで修正の機能を発揮する(Schu P、Takegawa.K,Fry.Mなど、Science,1993,260:88-91)。
【0005】
クラスI型のPI3Kの4つのサブタイプについて、PI3Kα及びPI3Kβは、さまざまな臓器で発現するが、PI3Kδ及びPI3Kγは、主に骨髓細胞に分布する(Kong D,Yamori T; Cancer Sci,2008,99:1734-1740)。PI3Kαは腫瘍の発生及び進行と最も密接に関連しており、PI3Kαの触媒サブユニットp110αをコードする遺伝子は、PIK3CAであり、その突然変異は、乳癌、結腸癌、子宮内膜癌、胃癌、卵巣癌及び肺癌などを含むさまざまな悪性腫瘍に広く存在している(Steelman.LS,Chappell.WH,Abrams.SLなどの,Aging,2011,3:192-222)。PI3Kαの異常な活性化は、PI3Kシグナル経路のアップレギュレーション及び活性化を引き起こし、細胞の過剰な増殖、成長及び転移を促進し、これによって、腫瘍を形成する。一方、他の3つのサブタイプであるPI3Kβ、PI3Kδ及びPI3Kγは、それぞれ血栓症の形成、免疫機能及びアレルギー、並びに炎症反応において機能するが、触媒活性、物理化学的特性、相互作用及び認識に影響を与えることにより、腫瘍の発生中にも重要な役割を果たすようにすることができる。
【0006】
従来、多く研究されているPI3K阻害剤は、ワートマニン(wortmannin)及びLY294002である。ワートマニン及びLY294002は、PI3Kの生理学的機能及びシグナル経路の作用メカニズムの研究において重要な役割を果たし、その後の研究の重要な基盤を提供し、第一世代のPI3K阻害剤と呼ばれる。ワートマニン及びLY294002を研究することにより、モルホリンアリール類、イミダゾピリジン類、及びイミダゾリウムキノリン類などを含む、より新しい構造、より高い活性、より優れた薬物動態特性を備えた第2世代のPI3K阻害剤が開発され、腫瘍の治療に新たな希望がもたらされる。数10種類のPI3K阻害剤が臨床研究の段階にあり、主に汎PI3K阻害剤、PI3K/mTOR二重阻害剤、PI3Kサブタイプ特異的阻害剤に分類される。
【0007】
Pictilisib(GDC-0941又はRG7321)は、強力なマルチターゲットI類(pan)PI3Kアイソタイプの阻害剤、p110β及びp110γに対して適切な選択性を有し、競争的にPI3KのATP結合ポケットと結合し、PI3Kの下流シグナルを伝達するセカンドメッセンジャーであるホスファチジルイノシトール3,4,5-トリスリン酸(PIP3)の形成を阻害する。
Taselisib(GDC-0032又はRG7604)は、GeneTech株式会社が開発した効果的なPI3K阻害剤であり、強力なPI3K活性(WO2011036280)を有し、PI3Kの触媒サブユニットのβ-アイソタイプの保持阻害剤であり、βサブユニットに比べて、αサブユニットに対する選択性がより高くなり、31倍となる。
【0008】
Alpelisib(BYL719)は、ノバルティス社が開発した1種目のPI3Kα選択性阻害剤であり、p110αに対する阻害活性が5nMである。臨床前のデータから、BYL719は、Aktのリン酸化を阻害してPI3Kシグナル経路を阻害し、PIK3CAの突然変異を含有する乳癌細胞の成長を抑制することができる(Dejan Juricなど、Cancer Res,2012,72:1)ことが示される。この化合物は、既に2019年にアメリカ食品医薬品局(FDA)によって発売が承認され、フルベストラントと併用し、PIK3CAの遺伝子突然変異を持つ、HR+/HER2-末期又は転移性乳癌に罹患している、内分泌療法での治療中又は治療後で疾患が進行する閉経後の女性患者及び男性患者の治療に使用されている。同時に、前期の結果から、このPI3Kα特異的な小分子阻害剤は、頭頸部癌、卵巣癌、トリプルネガティブ乳癌、HER2+乳癌、PIK3CA関連の過剰な成長スペクトルなどの疾患の治療に対して有望であることが示されている。
【0009】
WO2017001658にPI3K調整活性又は機能を有するベンゾオキサゼピンオキサゾリジノン化合物が開示され、明細書には、本発明の代表的な化合物は、Taselisib及びAlpelisibに比べる場合、PI3Kαに対する強い活性を有し、他のアイソタイプのPI3Kβ、PI3Kδ及びPI3Kγに対して顕著に強化された選択性が示されている。
【0010】
より良好な腫瘍の治療効果を達成し、市場の需要をさらに良好に満たし、臨床使用に新たな薬剤の選択肢を提供するために、より高い活性、より優れた薬物動態、及びより低い毒性を備える次世代のPI3K阻害剤の開発が期待されている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、化合物:(S)-1-(2-((S)-3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミド(以下、「化合物1」と呼ばれる。)の多形体に関し、化合物1は、以下の構造で表される。
【化1】

【0012】
さらに、前記化合物1の多形体は、化合物1の無水結晶形、水和物及び/又は溶媒和物である。
また、本発明は、前記化合物1の多形体、並びに、薬学的に許容される補助材料、補助剤及び/又は担体を含む医薬品組成物に関する。
また、本発明は、PI3Kによって媒介される疾患の治療における前記化合物1の多形体及び前記医薬品組成物の使用。
また、本発明は、治療対象に治療有効量の化合物1の多形体又は前記医薬品組成物を投与することを含む癌の治療方法に関する。
また、本発明は、化合物1及びその多形体の調製方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、化合物1の結晶形Aの粉末X線回折パターンを示す。
図2図2は、化合物1の結晶形Aの熱重量分析(TGA)図を示す。
図3図3は、化合物1の結晶形Aの示差走査熱量(DSC)図を示す。
図4図4は、化合物1の結晶形B-2の粉末X線回折パターンを示す。
図5図5は、化合物1の結晶形B-3の粉末X線回折パターンを示す。
図6図6は、化合物1の結晶形D-1の粉末X線回折パターンを示す。
図7図7は、化合物1の結晶形D-2の粉末X線回折パターンを示す。
図8図8は、化合物1の結晶形D-3の粉末X線回折パターンを示す。
図9図9は、化合物1の結晶形E-1の粉末X線回折パターンを示す。
図10図10は、化合物1の結晶形E-2の粉末X線回折パターンを示す。
図11図11は、化合物1の結晶形E-3の粉末X線回折パターンを示す。
図12図12は、化合物1の結晶形Fの粉末X線回折パターンを示す。
図13図13は、化合物1の結晶形Gの粉末X線回折パターンを示す。
図14図14は、化合物1の結晶形Hの粉末X線回折パターンを示す。
図15図15は、化合物1の結晶形Iの粉末X線回折パターンを示す。
図16図16は、化合物1の結晶形Jの粉末X線回折パターンを示す。
図17図17は、化合物1の結晶形Kの粉末X線回折パターンを示す。
図18図18は、化合物1の結晶形B-1の粉末X線回折パターンを示す。
図19図19は、化合物1の結晶形B-1のTGA図を示す。
図20図20は、化合物1の結晶形B-1のDSC図を示す。
図21図21は、化合物1の結晶形Cの粉末X線回折パターンを示す。
図22図22は、化合物1の結晶形CのTGA図を示す。
図23図23は、化合物1の結晶形CのDSC図を示す。
図24図24は、化合物1の結晶形D-1の加熱前後におけるXRPD重ね合わせ図を示す。
図25図25は、化合物1の結晶形E-1の加熱前後におけるXRPDの重ね合わせ図を示す。
図26図26は、化合物1の結晶形Fの加熱前後におけるXRPD重ね合わせ図を示す。
図27図27は、化合物1の結晶形Gの加熱前後におけるXRPD重ね合わせ図を示す。
図28図28は、化合物1の結晶形Hの加熱前後におけるXRPD重ね合わせ図を示す。
図29図29は、化合物1の結晶形Iの加熱前後におけるXRPD重ね合わせ図を示す。
図30図30は、化合物1の結晶形Jの加熱前後におけるXRPD重ね合わせ図を示す。
図31図31は、化合物1の結晶形B-1の研磨感度の試験結果を示す。
図32図32は、化合物1の結晶形Cの研磨感度の試験結果を示す。
図33図33は、化合物1の結晶形MのXRPDパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、化合物:(S)-1-(2-((S)-3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミド(以下、「化合物1」と呼ばれる。)の多形体に関し、化合物1は、以下の構造で表される。
【化2】

【0015】
上記のように、化合物1は、本発明の多形体において遊離塩基、即ち、非塩の形態で存在する。したがって、「化合物1」という用語は、(S)-1-(2-((S)-3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミド(遊離塩基)を表す。
【0016】
本発明が提供する化合物1は、多種の溶媒と結晶溶媒和物を形成すること見出した。具体的には、本発明は、化合物1のジクロロメタン、アセトン、n-プロパノール、2-ブチルケトン、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン及びクロロホルムとの溶媒和物に関する。
【0017】
いくつかの実施形態において、化合物1の多形体は、結晶形Aであり、前記結晶形Aの粉末X線回折パターンは、回折角2θが6.2°±0.2°、7.3°±0.2°、9.1°±0.2°、13.6°±0.2°、14.2°±0.2°である特徴的なピークを有する。
【0018】
好ましくは、前記結晶形Aの粉末X線回折パターンは、回折角2θが6.2°±0.2°、7.3°±0.2°、9.1°±0.2°、13.6°±0.2°、14.2°±0.2°、14.9°±0.2°、17.1°±0.2°、17.3°±0.2°である特徴的なピークを有する。
【0019】
好ましくは、前記結晶形Aの粉末X線回折パターンは、回折角2θが6.2°±0.2°、7.3°±0.2°、9.1°±0.2°、11.5°±0.2°、13.6°±0.2°、14.2°±0.2°、14.9°±0.2°、17.1°±0.2°、17.3°±0.2°、18.1°±0.2°である特徴的なピークを有する。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記結晶形Aは、化合物1のジクロロメタン溶媒和物である。
いくつかの実施形態において、前記結晶形Aの粉末X線回折パターンの主な特徴的なピークは、以下の表に示す。
【0021】
【表A】

【0022】
いくつかの実施形態において、前記結晶形Aは、実質的に図1に示す粉末X線回折パターンを有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記結晶形Aは、実質的に図2に示す熱重量分析(TGA)図及び/又は図3に示す示差走査熱量(DSC)図をさらに有する。
【0024】
いくつかの実施形態において、化合物1のアセトニトリル溶媒和物I(結晶形B-2)に関し、前記化合物1のアセトニトリル溶媒和物I(結晶形B-2)は、回折角2θが約6.1°±0.2°、7.7°±0.2°、9.3°±0.2°、14.1°±0.2°、15.4°±0.2°、16.9°±0.2°、17.3°±0.2°である特徴的なピークを有することが示される。いくつかの実施形態において、前記結晶形B-2は、粉末X線回折パターンが実質的に図4に示すものであることを特徴とする。
【0025】
いくつかの実施形態において、化合物1のジクロロメタン溶媒和物II(結晶形B-3)に関し、前記化合物1のジクロロメタン溶媒和物II(結晶形B-3)は、回折角2θが約6.1°±0.2°、7.7°±0.2°、9.3°±0.2°、14.1°±0.2°、15.4°±0.2°、16.9°±0.2°、17.2°±0.2°である特徴的なピークを有することが示される。さらに、前記結晶形B-3は、粉末X線回折パターンが実質的に図5に示すものであることを特徴とする。
【0026】
いくつかの実施形態において、化合物1のアセトン溶媒和物(結晶形D-1)に関し、前記化合物1のアセトン溶媒和物(結晶形D-1)は、回折角2θが約6.1°±0.2°、6.5°±0.2°、6.8°±0.2°、7.6°±0.2°、8.9°±0.2°、9.3°±0.2°である特徴的なピークを有することが示される。さらに、前記結晶形D-1は、粉末X線回折パターンが実質的に図6に示すものであることを特徴とする。
いくつかの実施形態において、化合物1のn-プロパノール溶媒和物(結晶形D-2)に関し、前記化合物1のn-プロパノール溶媒和物(結晶形D-2)は、回折角2θが約6.1°±0.2°、6.4°±0.2°、6.9°±0.2°、7.6°±0.2°、8.9°±0.2°、9.3°±0.2°である特徴的なピークを有することが示される。さらに、前記結晶形D-2は、粉末X線回折パターンが実質的に図7に示すものであることを特徴とする。
【0027】
いくつかの実施形態において、化合物1の2-ブチルケトン溶媒和物(結晶形D-3)に関し、前記化合物1の2-ブチルケトン溶媒和物(結晶形D-3)は、回折角2θが約6.1°±0.2°、6.6°±0.2°、7.6°±0.2°、8.8°±0.2°、9.3°±0.2°、17.2°±0.2°、24.2°±0.2°、25.2°±0.2°である特徴的なピークを有することが示される。さらに、前記結晶形D-3は、粉末X線回折パターンが実質的に図8に示すものであることを特徴とする。
【0028】
いくつかの実施形態において、化合物1の1,4-ジオキサン溶媒和物(結晶形E-1)に関し、前記化合物1の1,4-ジオキサン溶媒和物(結晶形E-1)は、回折角2θが約6.2°±0.2°、6.9°±0.2°、8.8°±0.2°、9.2°±0.2°、16.9°±0.2°、17.4°±0.2°、17.7°±0.2°である特徴的なピークを有することが示される。さらに、前記結晶形E-1は、粉末X線回折パターンが実質的に図9に示すものであることを特徴とする。
【0029】
いくつかの実施形態において、化合物1のテトラヒドロフラン溶媒和物I(結晶形E-2)に関し、前記化合物1のテトラヒドロフラン溶媒和物I(結晶形E-2)は、回折角2θが約6.3°±0.2°、7.0°±0.2°、7.6°±0.2°、8.8°±0.2°、9.3°±0.2°、17.0°±0.2°、17.5°±0.2°、17.7°±0.2°である特徴的なピークを有することが示される。さらに、前記結晶形E-2は、粉末X線回折パターンが実質的に図10に示すものであることを特徴とする。
【0030】
いくつかの実施形態において、化合物1のイソプロパノール溶媒和物I(結晶形E-3)に関し、前記化合物1のイソプロパノール溶媒和物I(結晶形E-3)は、回折角2θが約6.3°±0.2°、6.9°±0.2°、7.6°±0.2°、8.9°±0.2°、9.2°±0.2°、17.6°±0.2°、21.0°±0.2°である特徴的なピークを有することが示される。さらに、前記結晶形E-3は、粉末X線回折パターンが実質的に図11に示すものであることを特徴とする。
【0031】
いくつかの実施形態において、化合物1のジメチルスルホキシド溶媒和物(結晶形F)に関し、前記化合物1のジメチルスルホキシド溶媒和物(結晶形F)は、回折角2θが約6.4°±0.2°、6.8°±0.2°、8.8°±0.2°、12.5°±0.2°、13.7°±0.2°、20.7°±0.2°である特徴的なピークを有する。さらに、前記結晶形Fは、粉末X線回折パターンが実質的に図12に示すものであることを特徴とする。
【0032】
いくつかの実施形態において、化合物1のN,N-ジメチルホルムアミド溶媒和物(結晶形G)に関し、前記化合物1のN,N-ジメチルホルムアミド溶媒和物(結晶形G)は、回折角2θが約6.2°±0.2°、7.0°±0.2°、8.9°±0.2°、14.0°±0.2°、21.2°±0.2°である特徴的なピークを有する。さらに、前記結晶形Gは、粉末X線回折パターンが実質的に図13に示すものであることを特徴とする。
【0033】
いくつかの実施形態において、化合物1のテトラヒドロフラン溶媒和物II(結晶形H)に関し、前記化合物1のテトラヒドロフラン溶媒和物II(結晶形H)は、回折角2θが約6.3°±0.2°、7.0°±0.2°、8.9°±0.2°、12.5°±0.2°、13.6°±0.2°、14.0°±0.2°、15.0°±0.2°、17.0°±0.2°、17.5°±0.2°、18.6°±0.2°である特徴的なピークを有することが示される。さらに、前記結晶形Hは、粉末X線回折パターンが実質的に図14に示すものであることを特徴とする。
【0034】
いくつかの実施形態において、化合物1のアセトニトリル溶媒和物II(結晶形I)に関し、前記化合物1のアセトニトリル溶媒和物II(結晶形I)は、回折角2θが約6.1°±0.2°、6.5°±0.2°、6.8°±0.2°、7.1°±0.2°、7.6°±0.2°、8.8°±0.2°、9.1°±0.2°、9.3°±0.2°である特徴的なピークを有することが示される。さらに、前記結晶形Iは、粉末X線回折パターンが実質的に図15に示すものであることを特徴とする。
【0035】
いくつかの実施形態において、化合物1のイソプロパノール溶媒和物II(結晶形J)に関し、前記化合物1のイソプロパノール溶媒和物II(結晶形J)は、回折角2θが約6.4°±0.2°、6.7°±0.2°、8.7°±0.2°、8.8°±0.2°、11.6°±0.2°、13.0°±0.2°、13.4°±0.2°、21.0°±0.2°である特徴的なピークを有することが示される。さらに、前記結晶形Jは、粉末X線回折パターンが実質的に図16に示すものであることを特徴とする。
【0036】
いくつかの実施形態において、化合物1のクロロホルム溶媒和物(結晶形K)に関し、前記化合物1のクロロホルム溶媒和物(結晶形K)は、回折角2θが約6.5°±0.2°、8.9°±0.2°、13.1°±0.2°、17.5°±0.2°、17.8°±0.2°である特徴的なピークを有することが示される。さらに、前記結晶形Kは、粉末X線回折パターンが実質的に図17に示すものであることを特徴とする。
【0037】
医薬分野における化合物の応用のため、化合物1の結晶形は、薬学的に許容される結晶形であることが好ましい。これらの薬学的に許容される結晶形は、溶媒和物の形態及び非溶媒和物の形態を含む。「ヒト用医薬品規制調和国際会議、ICHガイドライン、不純物:残留溶媒のガイドラインQ3C(R8)」(The International Council For Harmonisation Of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human use,ICH Harmonisedguideline, Impurities:gUIDELINE FOR RESIDUAL SOLVENTS Residual Solvents Q3C(R8))は、医薬品においてどれほどの量の残留溶媒が安全であると考えられるのかに関して推奨している。「一日曝露許容量」(PDE)という用語は、残留溶媒の薬学上の摂取許容量として定義されている。残留溶媒のヒトの健康に対する潜在的な的リスクを評価し、以下の3つのクラスに分類される。
【0038】
クラス1溶媒:回避すべき溶媒であり、既知のヒト発癌性物質であり、許容されない毒性又は環境有害性を有し、ヒト発癌性物質の疑いが強いもの。
クラス2溶媒:制限すべき溶媒であり、ある程度の毒性を有し、非遺伝毒性の動物発癌性物質又は神経毒性或いは奇形発生などのその他の不可逆的毒性の潜在的な的原因物質であり、可逆的であるがその他の顕著な毒性が疑われる溶媒。
クラス3溶媒:毒性が低い溶媒;ヒトに対して潜在的な毒性が低く、有害性が低く、健康の観点から摂取制限が必要ないもの。クラス3溶媒の1日あたりの一日曝露許容量(PDE)は、50mg程度である。
【0039】
一般的に薬学的に許容される溶媒和物に存在する溶媒は、クラス3のそれらの溶媒を含む。本発明に開示される溶媒和物では、アセトン、n-プロパノール、イソプロパノール及びジメチルスルホキシドは、クラス3溶媒である。クラス3溶媒は、薬学的に許容されるが、その含有量を一日曝露許容量(PDE)内に制御しなければならず、それでも潜在的な悪影響を除去することはできないため、医薬品の開発に不利である。
【0040】
研究によると、本発明の化合物1の結晶は、特殊の特性を有し、一般的な有機溶媒のほとんどは、化合物1の結晶化中に格子に入り込むことができ、さらに対応する溶媒和物を形成し、これが医薬品の開発に大きな障害となっていることを見出した。多くの実験、研究及び努力を通して、驚くべきことに化合物1の無水結晶形が開発された。化合物1の無水結晶形は、溶媒和物に比べて特に有利であり、溶媒による潜在的な溶媒毒性の問題をほぼ解消したため、医薬品の使用により適している。一方、本発明が提供する無水結晶形B-1及び無水結晶形Cは、溶媒和物に比べて、熱力学的により安定であるため、加工及び医薬品組成物の調製により有利である。
【0041】
いくつかの実施形態において、本発明は、化合物1の無水結晶形B-1を提供し、前記化合物1の無水結晶形B-1の粉末X線回折パターンは、回折角2θが6.1°±0.2°、7.6°±0.2°、9.3°±0.2°、15.4°±0.2°である特徴的なピークを有する。
【0042】
好ましくは、前記結晶形B-1の粉末X線回折パターンは、回折角2θが6.1°±0.2°、7.6°±0.2°、9.3°±0.2°、11.6°±0.2°、15.4°±0.2°である特徴的なピークを有する。
【0043】
好ましくは、前記結晶形B-1の粉末X線回折パターンは、回折角2θが6.1°±0.2°、7.6°±0.2°、9.3°±0.2°、11.6°±0.2°、14.1°±0.2°、15.4°±0.2°である特徴的なピークを有する。
【0044】
好ましくは、前記結晶形B-1の粉末X線回折パターンは、回折角2θが6.1°±0.2°、7.6°±0.2°、9.3°±0.2°、11.6°±0.2°、14.1°±0.2°、15.4°±0.2°、16.9°±0.2°、17.2°±0.2°である特徴的なピークを有する。
【0045】
好ましくは、前記結晶形B-1の粉末X線回折パターンの主な特徴的なピークは、以下の表に示す。
【表B】

【0046】
好ましくは、前記結晶形B-1は、実質的に図18に示す粉末X線回折パターンを有する。
【0047】
一方、前記結晶形B-1は、実質的に図19に示す熱重量分析(TGA)図及び/又は図20に示す示差走査熱量(DSC)図をさらに有する。
【0048】
いくつかの実施形態において、本発明は、化合物1の無水結晶形Cを提供し、前記化合物1の無水結晶形Cの粉末X線回折パターンは、回折角2θが7.0°±0.2°、8.4°±0.2°、10.9°±0.2°である特徴的なピークを有する。
【0049】
好ましくは、前記結晶形Cの粉末X線回折パターンは、回折角2θが5.5°±0.2°、7.0°±0.2°、8.4°±0.2°、9.8°±0.2°、10.2°±0.2°、10.9°±0.2°である特徴的なピークを有する。
好ましくは、前記結晶形Cの粉末X線回折パターンは、回折角2θが5.5°±0.2°、7.0°±0.2°、8.4°±0.2°、9.8°±0.2°、10.2°±0.2°、10.9°±0.2°、13.5°±0.2°、13.9°±0.2°である特徴的なピークを有する。
【0050】
好ましくは、前記結晶形Cの粉末X線回折パターンは、回折角2θが5.5°±0.2°、7.0°±0.2°、8.4°±0.2°、9.8°±0.2°、10.2°±0.2°、10.9°±0.2°、11.9°±0.2°、13.5°±0.2°、13.9°±0.2°、15.9°±0.2°である特徴的なピークを有する。
【0051】
好ましくは、前記結晶形Cの粉末X線回折パターンは、回折角2θが5.5°±0.2°、7.0°±0.2°、8.4°±0.2°、9.8°±0.2°、10.2°±0.2°、10.9°±0.2°、11.9°±0.2°、13.5°±0.2°、13.9°±0.2°、15.9°±0.2°、17.1°±0.2°である特徴的なピークを有する。
【0052】
好ましくは、前記結晶形Cの粉末X線回折パターンの主な特徴的なピークは、以下の表に示す。
【表C】
【0053】
好ましくは、前記結晶形Cは、実質的に図21に示す粉末X線回折パターンを有する。
【0054】
一方、前記結晶形Cは、実質的に図22に示す熱重量分析(TGA)図及び図23に示す示差走査熱量(DSC)図をさらに有する。
【0055】
特に断らない限り、前記粉末X線回折パターンは、いずれもCuターゲットのKα線により測定される。
特に断らない限り、本発明の実験温度は、いずれも室温である。
【0056】
いくつかの実施形態において、化合物1の調製方法を提供する。
いくつかの実施形態において、前記化合物1の調製方法は、
【化3】


a.塩基性条件で、化合物1-5と化合物M-5とを触媒及び触媒配位子の作用でC-Nカップリング反応させて、化合物1-6を得るステップと、
b.塩基性条件で、化合物1-6と化合物M-12とを触媒の作用でC-Nカップリング反応させて、化合物1-7を得るステップと、
c.塩基性条件で、化合物1-7とNHとを縮合剤の作用で縮合反応させて、化合物1を形成するステップと、を含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、前記触媒は、本発明の目的を達成できれば、特に制限されない。例えば、ステップaにおいて、前記触媒は、CuI、塩化銅(I)、銅粉、酸化銅(I)、醋酸銅、アセチルアセトン銅、硫酸銅から選択される1種又は多種であってもよく、好ましくは、CuI又は醋酸銅である。ステップbにおいて、前記触媒は、CuI、塩化銅(I)、銅粉、酸化銅(I)、チオフェン-2-ギ酸銅(I)から選択される1種又は多種であってもよく、好ましくはCuIである。
【0058】
いくつかの実施形態において、前記触媒配位子は、本願の目的を達成できれば、特に制限されない。例えば、ステップaにおいて、前記触媒配位子は、トランス-N,N’-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジアミン、o-フェナントロリン、N,N’-ジメチルエチレンジアミンから選択される1種又は多種であってもよく、好ましくは、トランス-N,N’-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジアミン又はo-フェナントロリンである。
【0059】
いくつかの実施形態において、前記縮合剤は、本願の目的を達成できれば、特に制限されない。例えば、ステップcにおいて、前記縮合剤は、HATU、HBTU、PyBOP、BOP、DCC/HOBT、EDCI/HOBT、EDCI/HOSu、T3P、CDI、クロロギ酸エステル、MsCl、TsCl、NsCl及びBoc2Oから選択される1種又は多種であってもよく、好ましくはHATU又はHBTUである。いくつかの実施形態において、前記塩基性条件で用いられる塩基は、本願の目的を達成できれば、特に制限されない。例えば、ステップaにおいて、前記塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸ナトリウムから選択される1種又は多種であってもよく、好ましくは炭酸カリウム、リン酸カリウム又は炭酸セシウムである。ステップbにおいて、前記塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸ナトリウムから選択される1種又は多種であってもよく、好ましくはリン酸カリウム、炭酸カリウム又は炭酸セシウムである。ステップcにおいて、前記塩基は、NMM、DIPEA及びTEAから選択されてもよく、好ましくはNMM又はTEAである。
【0060】
いくつかの実施形態において、ステップaの反応、ステップbの反応及びステップcの反応は、それぞれ独立して反応溶媒に行われ、ステップaの反応溶媒、ステップbの反応溶媒及びステップcの反応溶媒は、いずれも本願の目的を達成できれば、特に制限されない。例えば、ステップaにおいて、前記溶媒は、DMF、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、2-MeTHF及びエチレングリコールジメチルエーテルから選択される1種又は多種であってもよく、好ましくはDMF及び/又は2-MeTHFである。ステップbにおいて、前記溶媒は、DMF、DMSO、NMP、THFから選択される1種又は多種であってもよく、好ましくはDMSO及び/又はDMFである。ステップcにおいて、前記溶媒は、DCM、DMSO、イソプロパノール、THF、酢酸エチルから選択される1種又は多種であってもよく、好ましくはDCM及び/又はDMSOである。
【0061】
いくつかの実施形態において、ステップa、ステップb及びステップcは、それぞれ、一定の反応温度で行われる。前記反応温度は、本願の目的を達成できれば、特に制限されない。例えば、ステップaにおいて、前記反応温度は、60~130℃であってもよく、好ましくは70~90℃である。ステップbにおいて、前記反応温度は、60~130℃であってもよく、好ましくは80~110℃である。ステップcにおいて、前記反応温度は-5~25℃であってもよく、好ましくは0~20℃である。
【0062】
いくつかの実施形態において、化合物1-7は、溶媒において、NHと対応するアンモニウム塩1-7Bを形成することができる。いくつかの実施形態において、前記溶媒は、酢酸エチル、2-MeTHF、THF、ジオキサン、メタノールから選択される1種又は多種であってもよい。
【化4】

【0063】
いくつかの実施形態において、化合物1-7Bは、縮合剤の作用で、NHと縮合反応させて、化合物1を形成することができる。
【化5】


ステップd:化合物1-aと化合物1-2とを置換反応又は縮合剤の作用で縮合反応させて、化合物1-3を形成する;
ステップe:化合物1-3は、酸性条件又は塩基性条件又は触媒の作用で、脱保護反応を経て、化合物1-4又はその対応する塩を得る;
ステップf:化合物1-4は、閉環試薬の作用で、閉環反応を経て、化合物1-5を形成する。
【0064】
ここで、前記Rは、保護基であり、-Boc、-Cbz、-Fmoc、トリフルオロアセチルから選択される1種であってもよく、好ましくは-Boc基であり、
前記Rは、-Cl、イミダゾール又は-ORから選択され、
前記Rは、H、-C1-4アルキル、フェニル、ニトロ置換フェニル、-C(O)-O-C1-4アルキル、-C(O)-O-フェニル又は-C(O)-O-ニトロ置換フェニルから選択される。
【0065】
いくつかの実施形態において、前記縮合剤は、本願の目的を達成できれば、特に制限されない。例えば、ステップdにおいて、前記縮合試薬は、HATU、HBTU、PyBOP、BOP、DCC/HOBT、EDCI/HOBT、EDCI/HOSu、T3P、CDI、クロロギ酸エステル、MsCl、TsCl、NsCl及びBocOから選択される1種又は多種であってもよく、好ましくはHATUである。
【0066】
いくつかの実施形態において、前記閉環試薬は、本願の目的を達成できれば、特に制限されない。例えば、ステップfにおいて、前記閉環試薬は、トリホスゲン、CDI、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸p?ニトロフェニルから選択される1種又は多種であってもよい。
【0067】
いくつかの実施形態において、ステップd及びステップfの反応は、それぞれ独立して反応溶媒に行われ、ステップd及びステップfの反応溶媒は、いずれも本願の目的を達成できれば、特に制限されない。例えば、ステップdにおいて、前記反応溶媒は、DCM、DMF又は上記の2種の溶媒の任意の割合で混合された溶媒から選択されてもよい。ステップfにおいて、前記反応溶媒は、DCM、THF、2-MeTHF、アセトニトリル及びDMFから選択される1種又は多種であってもよい。
【0068】
いくつかの実施形態において、前記酸性条件又は塩基性条件は、本願の目的を達成できれば、特に制限されない。例えば、ステップdにおいて、前記塩基性条件は、NMM、DIPEA及びTEAから選択されてもよい。ステップeにおいて、前記塩基性条件は、ジエチルアミン、ピペリジンから選択されてもよく、好ましくはジエチルアミンである。ステップfにおいて、前記塩基性条件は、NMM、DIPEA、炭酸水素ナトリウム及びTEAから選択される1種又は多種であってもよい。ステップeにおいて、前記酸性条件は、TFA、HSO、HCl、HBFから選択される1種又は多種であってもよく、好ましくはHClである。
【0069】
いくつかの実施形態において、前記触媒は、本願の目的を達成できれば、特に制限されない。例えば、在ステップeにおいて、前記触媒は、H/Pd-C、HCOONH/Pd-Cから選択されてもよく、好ましくはH/Pd-Cである。いくつかの実施形態において、化合物1の結晶形Cを調製する方法1を提供し、前記方法1は、
化合物1の結晶形Aを酢酸エチル、メタノール、メタノール/水の混合液、n-ブタノール、メチルイソブチルケトン、酢酸イソプロピル、メチルt-ブチルエーテルから選択される1種又は多種の溶媒に加え、室温で1~5日間懸濁して撹拌し、化合物1の結晶形Cを得るステップを含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記方法1は、また、化合物1をメタノールとジクロロメタンとの混合溶液に溶解し、清澄し、徐々に逆溶媒を滴下し、固体を析出させ、乾燥させて、化合物1の結晶形Aを得るステップを含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、化合物1の結晶形Cを調製する方法2を提供し、前記方法2は、化合物1を酢酸エチル、酢酸エチルとジメチルスルホキシドとの混合溶液又はメタノールと酢酸エチルとの混合溶液に加熱・溶解し、逆溶媒を徐々に滴下し、固体を析出させ、室温に冷却して、ろ過し、乾燥させて、化合物1の結晶形Cを得るステップを含む。前記逆溶媒は、n-ヘプタン、メチルt-ブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジエチルエーテルから選択される1種であり、好ましくはメチルt-ブチルエーテルである。本発明が提供する化合物1のさまざまな結晶形は、いずれも優れた細胞増殖の阻害活性を有し、優れた抗腫瘍効果を有する。驚くべきことに、その優位な無水結晶形は、既存のPI3Kα阻害剤(例えば、WO2017001658における実施例102、又はWO2017001645における実施例101)よりも優れた薬物動態特性をさらに有することを見出した。
【0072】
いくつかの実施形態において、治療有効量の本発明の前記化合物1の多形体又は多形体の混和物、及び薬学的に許容される補助材料、補助剤又は担体を含有する医薬品組成物を提供する。
【0073】
いくつかの実施形態において、前記医薬品組成物の好ましい実施形態をさらに提供する。
【0074】
好ましくは、前記医薬品組成物は、経口投与に使用される。
好ましくは、前記医薬品組成物は、錠剤又はカプセルに使用される。
好ましくは、前記医薬品組成物は、0.01重量%~99重量%の本発明の結晶形を含有する。
好ましくは、前記医薬品組成物は、0.01重量%~20重量%の本発明の結晶形を含有する。
好ましくは、前記医薬品組成物は、1重量%~10重量%の本発明の結晶形を含有する。
【0075】
いくつかの実施形態において、医薬品の調製における前記結晶形又は医薬品組成物の使用を提供する。
【0076】
いくつかの実施形態において、前記使用の好ましい実施形態を提供する。
好ましくは、前記医薬品は、癌又は癌転移の発生又は進行の治療、予防、遅延又は阻止に使用される。
好ましくは、前記医薬品は、PI3K阻害剤として使用される。
好ましくは、前記医薬品は、PI3Kによって媒介される疾患の治療に使用される。
好ましくは、前記PI3KはPI3Kαである。
好ましくは、前記PI3Kによって媒介される疾患は癌である。
【0077】
好ましくは、前記癌は、肉腫、前立腺癌、乳癌、膵臓癌、肺癌、胃腸癌、結腸直腸癌、甲状腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、副腎癌、神経膠腫、子宮内膜癌、黒色腫、腎臓癌、膀胱癌、子宮癌、膣癌、卵巣癌、多発性骨髓腫、食道癌、白血病、脳癌、口腔・咽癌、喉頭癌、リンパ腫、基底細胞癌、真性赤血球増加症、本態性血小板血症から選択される。
【0078】
いくつかの実施形態において、PI3Kによって媒介される疾患に罹患している患者の治療及び/又は予防の方法を提供し、前記方法は、必要とする患者に治療有効量の化合物1の無水結晶形又は溶媒和物、或いは化合物1の無水結晶形又は溶媒和物を含有する医薬品組成物を投与することである。
【0079】
好ましくは、上記の方法において、前記PI3Kは、PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kδ及び/又はPI3Kγを含む。
好ましくは、上記の方法において、前記PI3KはPI3Kαである。
好ましくは、上記の方法において、前記PI3Kによって媒介される疾患は癌である。
【0080】
好ましくは、上記の方法において、前記癌は、肉腫、前立腺癌、乳癌、膵臓癌、肺癌、胃腸癌、結腸直腸癌、甲状腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、副腎癌、神経膠腫、子宮内膜癌、黒色腫、腎臓癌、膀胱癌、子宮癌、膣癌、卵巣癌、多発性骨髓腫、食道癌、白血病、脳癌、口腔・咽癌、喉頭癌、リンパ腫、基底細胞癌、真性赤血球増加症、本態性血小板血症である。
【0081】
いくつかの実施形態において、癌の治療方法を提供し、前記方法は、治療対象に治療有効量の化合物1の無水結晶形又は溶媒和物、或いは化合物1の無水結晶形又は溶媒和物を含有する医薬品組成物を投与し、前記癌は、肉腫、前立腺癌、乳癌、膵臓癌、肺癌、胃腸癌、結腸直腸癌、甲状腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、副腎癌、神経膠腫、子宮内膜癌、黒色腫、腎臓癌、膀胱癌、子宮癌、膣癌、卵巣癌、多発性骨髓腫、食道癌、白血病、脳癌、口腔・咽癌、喉頭癌、リンパ腫、基底細胞癌、真性赤血球増加症、本態性血小板血症である。
【0082】
好ましくは、上記の方法において、前記治療対象はヒトである。
本明細書における結晶形は、いずれも実質的に純粋である。
本明細書で用いられる「実質的に純粋である」という用語とは、前記結晶形の含有量は、重量で、85%以上であり、好ましくは95%以上であり、より好ましくは98%以上である。
【0083】
特に断らない限り、本明細書で用いられる「固体形態」という用語及び関連用語とは、主に液状又はガス状ではない物理形態と指し、半固体を包含する。固体形態は、結晶性、非晶質、無秩序な結晶性、部分的に結晶性、部分的に非晶質、又はそれらの混和物であってもよい。
【0084】
特に断らない限り、本明細書で用いられる「結晶形」、「結晶形態」という用語及び関連用語は、互換的に用いられてもよく、結晶の固体形態を指す。結晶形態は、単一成分結晶形態及び多成分結晶形態を含み、無溶媒形態(例えば、無水結晶形)、溶媒和物、水和物、共晶及び他の分子複和物及びそれらの多形体、並びに塩、塩の溶媒和物、塩の水和物、塩の共結晶、塩の他の分子複和物及びそれらの多形体を含んでもよいが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、物質の結晶形態は、非晶質及び/又は他の結晶形態を実質的に含まなくてもよい。いくつかの実施形態において、物質の結晶形態は、重量で、約50%未満の1種又は多種の非晶質及び/又は他の結晶形態を含んでもよい。いくつかの実施形態において、物質の結晶形態は、物理的及び/又は化学的純粋であってもよい。
【0085】
特に断らない限り、本明細書で用いられる「多形体」、「多結晶形態」、「多形」という用語及びその関連用語とは、実質的に同じ分子及び/又はイオンからなる固形物の2種又は2種以上の結晶形態を指す。異なる結晶形と同様に、異なる多形は、異なる化学的及び/又は物理的特性を有することができ、例えば、安定性、溶解度、溶出速度、光学特性、融点、機械的特性及び/又は密度などを含んでもいが、これらに限定されない。これらの特性は、原薬の加工及び/又は制造、医薬品の安定性、溶出及び/又はバイオアベイラビリティなどに影響を与えることができる。したがって、多形現象は、医薬品の少なくとも1種の特性に影響を与えることができ、質量、安全性及び/又は薬効を含んでもいが、これらに限定されない。
特に断らない限り、本明細書で用いられる「溶媒和物」という用語とは、原薬及び化学量論又は非化学量論量の溶媒分子の分子複和物を含み、前記原薬は、遊離塩基、又はその薬理学的に許容される塩、共晶、塩の共晶又は他の分子複和物であってもよい。溶媒は水であると、溶媒和物は「水和物」である。
【0086】
特に断らない限り、本明細書で用いられる「非晶質」という用語とは、分子及び/又はイオンの無秩序な固体形態を指し、結晶性ではない。非晶質は、シャープで明確なピークを有する明確なX線回折パターンを示さない。特に断らない限り、化合物1は、遊離塩基の任意の単一の固体形態、又は複数の固体形態の混合物を包含することを意図する。
【0087】
特に断らない限り、本明細書で用いられる「無水結晶形」という用語は、水及び他の非水溶媒を含有しない結晶形を指す。
【0088】
本明細書において、「無水結晶形C」、「結晶形C」及び「化合物1の結晶形C」などは互換的に用いられてもよく、「無水結晶形B-1」、「結晶形B-1」及び「化合物1の結晶形B-1」などは互換的に用いられてもよく、「結晶形A」及び「化合物1の結晶形A」は互換的に用いられてもよい。
【0089】
本明細書において、「約図1に示す粉末X線回折パターンを有する」又は「粉末X線回折パターンが実質的に図1に示す」に用いられる「約」及び「実質的に」という用語は、図面におけるピークの正確な位置は絶対値として理解すべきではない。当業者にとって分かるように、粉末X線回折パターンの2θ値が、異なる測定条件(例えば、用いられた設備及び機器)及び異なるサンプル(例えば、異なるパッチのサンプル)によって誤差を発生する可能性がある。粉末X線回折パターンの回折角の測定誤差は5%以下であるので、通常、所定の値の±0.2°の差が適切であると考えられる。ピークの相対強度は、試験条件及びサンプルにおける粒子の優先配向などのサンプルの調製によって変動する可能性があることも理解すべきである。自動又は固定の発散スリットの使用も、相対強度の算出に影響を与える。ここに含まれるXRD曲線で示される強度は、例示的なものに過ぎず、絶対的な比較には使用されない。
【0090】
当業者は、サンプルの純度、サンプルの調製条件と測定条件(例えば、機器、加熱速度)の変化により、DSC及び/又はTGAによって測定されたデータがわずかに変化する可能性があることを理解すべきである。取り替え可能な融点の読出データは、他のタイプの機器によって、又は以下に説明する条件と異なる条件を用いることによって与えられる可能性があることを理解すべきである。したがって、本発明で引用されているDSC図及び/又はTGA図は絶対値ではなく、且つDSC及び/又はTGAデータを解釈するときにこのような測定誤差が考慮される。本明細書で使用される「治療有効量」という用語とは、ある化合物を治療対象に投与し、1種の疾患又は病症の少なくとも一つの臨床症候を治療する時に、疾患、病症又は症候に影響を与えることに充分な治療の量を指す。「治療有効量」は、化合物、疾患、病症及び/又は疾患或いは病症の症候、疾患の重症度、病症の重症度及び/又は疾患或いは病症の症候の重症度、治療される患者の年齢及び/又は治療される患者の体重などによって変化することができる。任意の特定の場合、適切な量は、当業者にとって自明なものであってもよく、通常の試験により確定されるものであってもよい。併用療法の場合、「治療有効量」は、疾患、病症又は症候を有効に治療するための併用されるものの全量を指す。
【0091】
本明細書に記載される無水結晶形及び/又は溶媒和物は、有効成分として併用することができ、医薬品担体と混合して医薬品組成物を形成することができる。前記医薬品担体は、例えば、経口又は注射(静脈内注射を含む)などの所望の投与様式に応じて、様々な形態を用いることができる。したがって、本発明の医薬品組成物は、経口投与に適した単独のユニットの形態を用いることができる。例えば、用量が予め確定された有効成分を含むカプセル剤、カシェ(cachet)剤、又は錠剤などを用いることができる。さらに、本発明の医薬品組成物は、粉末、粒子、溶液、水性懸濁液、非水性液体、水中油型エマルジョン又は油中水型エマルジョンの形態を用いることができる。なお、上述した一般的な剤形に加えて、本発明の塩形又は結晶形は、放出制御の方式及び/又は搬送装置によって投与されてもよい。本発明の医薬品組成物は、任意の製薬学における方法によって調製することができる。一般的には、この方法は、有効成分を1つ又は複数の必要な成分を構成する担体と結合するステップを含む。一般的には、前記医薬品組成物は、有効成分を液体担体又は細かく分割された固体担体又は両方の混合物と均一且つ密接に混合することによって調製される。なお、この製品は、所望の外観に容易に調製することができる。
【0092】
「薬学的に許容される担体」は、所望の医薬品製剤に適する通常の薬用担体を指し、例えば、水;さまざまな有機溶媒などの希釈剤;賦形剤;澱粉、アルファ化澱粉、ショ糖、デキストリン、マンニトール、乳糖、噴霧乾燥乳糖、微結晶性セルロース、ケイ化微結晶性セルロース、無機塩などの充填剤;でんぷんシロップ、デキストリン、粉砂糖、シロップ、ラバーセメント、ポリエチレングリコール、セルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、コポビドン及びポリビニルピロリドン(PVP)などの粘着剤;蒸留水、エタノール、グリセリンなどの濡れ剤;乾燥澱粉、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル澱粉、寒天、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、ナトリウムカルボキシメチル澱粉などの崩壊剤;第四級アンモニウム化合物、アミノ酸エチルアミン誘導体、アセトアセテート、β-ジカルボキシレート、芳香族酸化合物、脂肪族酸化合物などの吸収促進剤;セチル硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルコハク酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、臭化ベンザルコニウム、塩化ベンザルコニウム、ドミフェン、レシチン、ヘキサデシルアルカノール、ラウリル硫酸ナトリウム、トゥイーン(tween)及びスパンなどの界面活性剤;ポリエチレングリコール、カルボマー、セルロース誘導体、グリセリンゼラチン、ポリビニルアルコール、ココアバター、合成又は完全合成脂肪酸グリセリド、ポリビニルアルコール40ステアレート、ワセリン、固体パラフィン、液体パラフィン、ジメチコン、ラノリン、蜜蝋及びラードなどの薬物のマトリックス;カオリン及びベントナイトなどの吸収担体;タルク、微粉化シリカゲル、二酸化ケイ素、水添植物油、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリエチレングリコールなどの潤滑剤であってもよい。なお、医薬品組成物には、例えば、酸化防止剤、着色剤、保存剤、pH調整剤、硬化剤、乳化剤、推進剤、分散剤、安定剤、増粘剤、錯化剤、緩衝液、浸透促進剤、ポリマー、香料、甘味料及び染料というその他の薬学的に許容される補助材料を加えてもよい。好ましくは、所望の剤形と所望の投与方式に適する補助材料を使用する。
【0093】
「疾患」又は「病症」又は「症候」という用語は、任意の疾患、不快感、病気、症状又は適応症を指す。
【実施例
【0094】
本発明をより十分に理解するために、下記の実施例を記載する。これらの実施例は、本発明の実施形態を例示するために用いられ、本発明の範囲を決して制限するものと解釈されない。当業者は、本発明がこれらの詳細を用いなくても実施できることを理解すべきである。本開示全体を通して使用されているタイトルは便宜上のものであり、いかなる意味においても特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。任意のタイトルで例示された実施形態は、任意の他のタイトルで例示された実施形態と組み合わせることができる。
【0095】
以下の実施例に使用される反応物は、本明細書に記載のように得てもよく、又は本明細書に記載されていない場合、それは入手可能であるか、もしくは当技術分野に公知の方法によって市販の材料から調製してもよい。特に断らない限り、当業者は、使用可能な溶媒、温度、圧力、反応物仕込みの比及び他の反応条件を容易に選択することができる。典型的には、反応の進行は、薄層クロマトグラフィー又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってモニタリングし、必要であれば、中間体および生成物は、シリカゲルクロマトグラフィー、塩形成及び/又は再結晶によって精製される。
【0096】
機器の詳細
粉末X線回折(XRPD)
Lynxeye検出器を用いてバルク粉末X線回折計(型番:Bruker D8 Advance)でデータを取得した。収集条件は、放射線:Cu Kα、発生器の電圧:40kV、発生器の電流:40mA、開始角度3.0°2θ、終了角度:40.0°2θ、ステップ幅:0.02°2θ、各ステップ走査時間:0.2秒、0.3秒又は0.6秒である。サンプルを作る時に、適量のサンプルをバックグラウンドのないシリコンシートサンプル皿に置き、平らにして、サンプル表面を滑らかで平らにした。
【0097】
示差走査熱量法(DSC)
TA機器のDiscovery DSC 2500示差走査熱量計を用い、50ml/min Nパージで、10℃/minの昇温速度でDSCサーモグラム分析図を得た。
【0098】
熱重量分析(TGA)
TA機器のDiscovery TGA 550熱重量分析計を用い、40ml/min Nパージで、10℃/minの昇温速度でTGAサーモグラム分析図を得た。
【0099】
プロトン核磁気共鳴分光分析( H-NMR)
H-NMR(Bruker AVANCE NEO 500):500MHzプロトン周波数を用い、パルス及び1sのリサイクル遅延を励起し、H-NMRスペクトルを記録した。16の走査回数を積算し、重水素化DMSOを溶媒として用いた。溶媒ピークを参照として、TMSスケールで化学シフトを報告した。
【0100】
動的水蒸気分析(DVS)
Surface Measurement Systems動的水蒸気吸着計(型番:DVS Resolution)を用い、N流速:200sccm、検出温度:25℃、バランス時間の選択範囲:5分間~360分間、RH勾配:10%(50%RH~90%RH,90%RH~0%RH~90%RH)、5%(90%RH~95%RH,95%RH~90%RH)で動的水蒸気吸着分析図を得た。
【0101】
単結晶X線回折
Bruker D8 Venture Photon IIの回折計を用い、回折強度データを收集し、光源をCuK放射線とし、走査方式をφ/?走査とした。
【0102】
略語:
API:原薬、
Boc:t?ブトキシカルボニル、
CsCO:炭酸セシウム、
CDI:N,N’-カルボニルジイミダゾール、
CuI:ヨウ化銅(I)、
DSC:示差走査熱量、
DVS:動的水蒸気吸着、
DCM:ジクロロメタン、
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド、
DMSO:ジメチルスルホキシド、
EA:酢酸エチル、
EDCI:1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、
hrs/h:時間、
HPLC:高速液体クロマトグラフィー、
HOBT:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、
HATU:2-(7-アゾベンゾトリアゾール)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、
IPAc:酢酸イソプロピル、
LC-MS/LC-MS:液体クロマトグラフ-質量分析の併用、
min:分間、
MIBK:メチルイソブチルケトン、
MTBE:メチルt-ブチルエーテル、
MeOH:メタノール、
NMM:N-メチルモルホリン、
NIS:N-ヨードスクシンイミド、
PE:石油エーテル、
Pre-HPLC:高速液体クロマトグラフィー、
RH:相対湿度、
rt or RT:室温、
RRT:相対保持時間、
Solutol:15-ヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコールエステル
TEA:トリエチルアミン、
THF:テトラヒドロフラン、
TGA:熱重量分析、
H-NMR/HNMR/1H NMR:プロトン核磁気共鳴分光分析、
XRD/XRPD:粉末X線回折、
BOP:ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、
Cbz:ベンジルオキシカルボニル、
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン、
EtOH:エタノール、
Fmoc:9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、
HBTU:2-(7-ベンゾトリアゾールオキシド)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、
HOSu:N-ヒドロキシブタジイミド、
Hex:n-ヘキサン、
CO:炭酸カリウム、
PO:リン酸カリウム、
MsCl:メチルスルホニルクロリド、
NMP:N-メチルピロリドン、
NsCl:p-ニトロベンゼンスルホニルクロリド、
T3P:1-プロピルリン酸無水物、
TFA:トリフルオロ酢酸、
TsCl:p?トルエンスルホニルクロリド、
2-MeTHF:2-メチルテトラヒドロフラン、
【0103】
中間体M-5の調製:
【化6】


ステップ1:化合物M-2の調製
1000mLの1つ口フラスコに4-ブロモ-2-ヒドロキシベンズアルデヒド(40g)及びMeOH(400mL)を加え、アイスバスに撹拌しながら、アンモニア水(136.50g)を滴下し、35℃のオイルバスに加熱して反応した。反応が終了するまでLC-MSでモニタリングし、反応液を濃縮し、水を加えて希釈し、EAで4回抽出し、有機相を合併して乾燥させて、濃縮してカラムクロマトグラフィーにより精製し(PE:EA=3:1)、濃縮して34.55g化合物M-2を得た。
LC-MS[M+H]:239。
【0104】
ステップ2:化合物M-3の調製
1000mLの1つ口フラスコに化合物M-2(34.55g)、CsCO(133g)及びDMF(300mL)を加え、常温で20min撹拌した後、1,2-ジブロモエタン(54.30g)を滴下し、その後に80℃のオイルバスに入れて還流反応し、反応が完全になるまでLC-MSでモニタリングした。反応液を濃縮し、水を加えて希釈し、EAで3回抽出し、有機相を合併して、乾燥させ、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製し(PE:EA=70:30)、濃縮して21.37gの化合物M-3を得た。
LC-MS[M+H]:265。
H NMR(500MHz,クロロホルム-d)δ8.38(d,J=8.5Hz,1H),7.30~7.15(m,3H),6.99(s,1H),4.47~4.43(m,2H),4.41~4.35(m,2H)。
ステップ3:化合物M-4の調製
1000mLの1つ口フラスコに化合物M-3(21.37g)及びDMF(100mL)を加え、撹拌して溶解し、NIS(50.78g)を滴下し、DMF(100mL)の溶液に溶解し、その後に60℃のオイルバスに入れて一晩反応させ、反応終了までLC-MSでモニタリングし、反応液に水を入れ、固体を析出させ、吸引ろ過して乾燥させ、35gの化合物M-4を得た。
LC-MS[M+H]:517。
H NMR(500MHz,クロロホルム-d)δ8.30(d,J=8.6Hz,1H),7.25~7.16(m,2H),4.46~4.41(m,2H),4.36~4.32(m,2H)。
ステップ4:化合物M-5の調製
【0105】
500mLの3つ口フラスコに化合物M-4(35g)及びTHF(150mL)を加え、窒素ガスで保護し、-40℃で反応系に100mLのエチル臭化マグネシウム(1MのTHF溶液)を滴下し、その後に-40℃で撹拌して反応した。反応が完全になるまでLC-MSでモニタリングし、アイスバスの条件で飽和塩化アンモニウム溶液を加え、反応をクエンチし、EAを加えて3回抽出し、有機相を合併し、乾燥させて濃縮し、メチルt-ブチルエーテルで叩解し、吸引ろ過した後に乾燥させ、19.8g化合物M-5を得た。
LC-MS[M+H]:391。
H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ8.22(d,J=8.6Hz,1H),7.55(s,1H),7.31-7.23(m,2H),4.47~4.39(m,4H)。
【実施例1】
【0106】
(S)-1-(2-(3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾール[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミド(化合物A)の調製
【化7】

【0107】
ステップ1:化合物2-2の調製
250mLの1つ口フラスコに化合物1-1(5.0g)、DCM(100mL)及びHATU(9.55g)を加え、窒素ガスで保護し、アイスバスの条件でTEA(8.15g)及び化合物2-1(1.45g)を加え、室温で2h反応した。反応が完了するまでLC-MSモニタリングし、反応液を濃縮し、EAを加えて希釈し、洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて濃縮し、5.0gの化合物2-2を得て、そのまま次のステップに供した。
LC-MS[M-Boc+H]:157。
H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ7.91(s,1H),6.54(d,J=9.0Hz,1H),3.69-3.58(m,1H),2.65-2.55(m,1H),1.88-1.80(m,1H),1.37(s,9H),0.79(d,J=6.0Hz,6H),0.62-0.58(m,2H),0.42-0.30(m,2H)。
【0108】
ステップ2:化合物2-3の調製
250mLの1つ口フラスコに化合物2-2(5g)、DCM(20mL)及びHCl/ジオキサン(20mL、4.0mol/L)を加え、室温で2h反応した。反応が完了するまでLC-MSでモニタリングし、反応液を濃縮し、3.75gの化合物2-3を得た。
LC-MS[M+H]:157。
【0109】
ステップ3:化合物2-4の調製
250mLの3つ口フラスコに化合物2-3(2.0g)、DCM(50mL)及びTEA(4.20g)を加え、窒素ガスで保護し、アイスバスの条件で反応系にトリホスゲン(1.54g)を滴下し、DCM(50mL)の溶液に溶解し、アイスバスの条件で撹拌しながら2h反応し、反応が完了するまでLC-MSでモニタリングした後、氷水で反応をクエンチし、反応液を濃縮し、EAで抽出し、無水NaSOで乾燥させ、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(PE:EA=100:0~50:50)、810mgの化合物2-4を得た。
LC-MS[M+H]:183。
H NMR(500MHz,クロロホルム-d)δ6.28(s,1H),3.85(d,J=3.6Hz,1H),2.66-2.48(m,J=3.7Hz,1H),2.25-2.15(m,1H),1.03(d,J=6.5Hz,3H),0.98-0.91(m,4H),0.88(d,J=7.0Hz,3H)。
【0110】
ステップ4:化合物2-5の調製
50mLの1つ口フラスコに化合物2-4(431mg)、化合物M-5(700mg)、DMF(10mL)、CuI(102mg)、トランス-N,N’-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジアミン(77mg)及びKPO(760mg)を加え、窒素ガスで保護し、120℃に昇温し、撹拌しながら2h反応した。反応が完了するまでLC-MSでモニタリングした後、EAで希釈し、洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(PE:EA=100:0~60:40)、642mgの化合物2-5を得た。
LC-MS[M+H]:445/447。
H NMR(500MHz,クロロホルム-d)δ8.23(d,J=8.5Hz,1H),7.27(s,1H),7.22(d,J=8.7Hz,1H),7.20(s,1H),4.63-4.59(m,1H),4.51-4.38(m,2H),4.36(t,J=4.3Hz,2H),2.79-2.71(m,1H),2.68-2.60(m,1H),1.24(d,J=7.1Hz,3H),1.02-0.94(m,4H),0.81(d,J=6.9Hz,3H)。
【0111】
ステップ5:化合物2-6の調製
30mLのマイクロウェーブバイアルに化合物2-5(642mg)、化合物M-12(415mg)、KPO(919mg)及びDMSO(10mL)を加え、窒素ガスパージを行い、その中にCuI(83mg)を加え、120℃に昇温し、1hマイクロウェーブ反応した。反応が完了するまでLC-MSでモニタリングし、反応液をそのまま次のステップに供した。
LC-MS[M+H]:480。
【0112】
ステップ6:化合物Aの調製
50mLの1つ口フラスコにステップ5で得られた反応液を加え、窒素ガスで置換し、DCM(10mL)、NHCl(462mg)及びTEA(1.46g)を加え、反応系を0℃に冷却し、アイスバスの条件でHATU(3.28g)を加え、0℃で撹拌しながら1h反応した。反応が完了するまでLC-MSでモニタリングした後、DCMを入れて反応液を希釈し、洗浄し、有機相を無水NaSOで乾燥させ、濃縮し、得られた粗生成物をPre-HPLCを介して精製し(C18カラム、HO:MeOH=95:5~50:50)、85mgの一対のジアステレオ異性体の混和物としての化合物Aを得た。
LC-MS[M+H]:479。
H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ8.03(d,J=9.0Hz,1H),7.40(s,1H),7.24(s,1H),7.05(s,1H),6.32(d,J=8.9Hz,1H),6.03(d,J=2.6Hz,1H),4.48(s,1H),4.41-4.29(m,4H),3.94(d,J=8.8Hz,1H),3.55(t,J=8.1Hz,1H),3.25-3.19(m,1H),2.74-2.55(m,2H),2.25-2.14(m,1H),2.07-1.85(m,3H),1.13(d,J=7.0Hz,3H),0.88(d,J=7.2Hz,2H),0.81(d,J=3.9Hz,2H),0.71(d,J=6.8Hz,3H)。
【実施例2】
【0113】
(S)-1-(2-((S)-3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミド(化合物1)及び(S)-1-(2-((R)-3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミド(化合物2)の調製
【0114】
この実施形態において、以下の条件のキラルカラムで化合物Aを分割することにより、化合物1(後ろのピーク)及び化合物2(前のピーク)を得た。
キラルHPLCの条件:
【表D】


化合物2:LC-MS[M+H]:479。
H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ8.03(d,J=9.0Hz,1H),7.40(s,1H),7.24(s,1H),7.05(s,1H),6.32(d,J=8.9Hz,1H),6.03(d,J=2.6Hz,1H),4.48(s,1H),4.41-4.29(m,4H),3.94(d,J=8.8Hz,1H),3.55(t,J=8.1Hz,1H),3.25-3.19(m,1H),2.74-2.55(m,2H),2.25-2.14(m,1H),2.07-1.85(m,3H),1.13(d,J=7.0Hz,3H),0.88(d,J=7.2Hz,2H),0.81(d,J=3.9Hz,2H),0.71(d,J=6.8Hz,3H)。
化合物1:LC-MS[M+H]:479。
H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ8.03(d,J=9.0Hz,1H),7.40(s,1H),7.24(s,1H),7.05(s,1H),6.32(d,J=8.9Hz,1H),6.03(d,J=2.6Hz,1H),4.48(s,1H),4.41-4.29(m,4H),3.94(d,J=8.8Hz,1H),3.55(t,J=8.1Hz,1H),3.25-3.19(m,1H),2.74-2.55(m,2H),2.25-2.14(m,1H),2.07-1.85(m,3H),1.13(d,J=7.0Hz,3H),0.88(d,J=7.2Hz,2H),0.81(d,J=3.9Hz,2H),0.71(d,J=6.8Hz,3H)。
【0115】
得られた化合物1について、構造を同定した結果、実質的に図32に示すXRPDパターンを有し、粉末X線回折パターンは、回折角2θが6.1°±0.2°、6.2°±0.2°、7.3°±0.2°、7.6°±0.2°、9.1°±0.2°、9.3°±0.2°、17.2°±0.2°である特徴的なピークを有し、結晶形Mと定義した。得られた化合物2について、構造を同定した結果、非晶質物として示した。
【実施例3】
【0116】
化合物1の調製
【化8】

【0117】
ステップ1:化合物1-3の調製
5Lの3つ口フラスコに化合物1-a(257g)、DCM(2.5L)及びNMM(274g)を加え、窒素ガスで保護し、アイスバスの条件でEDCI(250g)、HOBT(200g)及び化合物1-2(74g)をこの順に加え、室温で一晩反応した。反応が完了するまでLC-MSでモニタリングした後、水を加え、DCMで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、乾燥させ、減圧濃縮して残留物を得て、残留物をMTBEで叩解し、278gの白い固体を得た。
LC-MS[M-Boc+H]:157。
H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ7.91(s,1H),6.54(d,J=9.0Hz,1H),3.69-3.58(m,1H),2.65-2.55(m,1H),1.88-1.80(m,1H),1.37(s,9H),0.79(d,J=6.0Hz,6H),0.62-0.58(m,2H),0.42-0.30(m,2H)。
【0118】
ステップ2:化合物1-4の調製
3Lの1つ口フラスコに化合物1-3(278g)、DCM(1.0L)及びHCl/ジオキサン(1.0L、4.0M/L)を加え、室温で一晩反応した。反応が完了するまでLC-MSでモニタリングした後、反応液を濃縮し、209gの化合物1-4を得た。
LC-MS[M+H]:157。
【0119】
ステップ3:化合物1-5の調製
5Lの3つ口フラスコに化合物1-4(169g)、DCM(2.0L)及びNMM(329g)を加え、窒素ガスで保護し、50℃に昇温し、CDI(229g)を加え、50℃で30min反応した。冷却してろ過し、ろ液を減圧濃縮した後、2Mの塩酸でpH2に調整し、酢酸エチルを加えて抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮して粗生成物を得て、粗生成物をPE/EAで叩解し、ろ過し、乾燥させ、生成物1-5(100g)を得た。
LC-MS[M+H]:183。
H NMR(500MHz,クロロホルム-d)δ6.28(s,1H),3.85(d,J=3.6Hz,1H),2.66-2.48(m,J=3.7Hz,1H),2.25-2.15(m,1H),1.03(d,J=6.5Hz,3H),0.98-0.91(m,4H),0.88(d,J=7.0Hz,3H)。
【0120】
ステップ4:化合物1-6の調製
500mLの1つ口フラスコに化合物1-5(6.1g)、化合物M-5(13.09g)、DMF(131mL)、CuI(2.25g)、トランス-N,N’-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジアミン(1.90g)、モレキュラーシーブ(13.09g)及びKCO(9.25g)を加え、窒素ガスで保護し、85℃に昇温し、撹拌しながら3h反応した。反応が完了するまでLC-MSでモニタリングした後、EAで希釈し、洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(PE:EA=100:0~60:40)、6.89gの化合物1-6を得た。
LC-MS[M+H]:445/447。
H NMR(500MHz,クロロホルム-d)δ8.23(d,J=8.5Hz,1H),7.27(s,1H),7.22(d,J=8.7Hz,1H),7.20(s,1H),4.63-4.59(m,1H),4.51-4.38(m,2H),4.36(t,J=4.3Hz,2H),2.79-2.71(m,1H),2.68-2.60(m,1H),1.24(d,J=7.1Hz,3H),1.02-0.94(m,4H),0.81(d,J=6.9Hz,3H)。
【0121】
ステップ5:化合物1-7の調製
500mLの1つ口フラスコに化合物1-6(6g)、化合物M-12(4.65g)、CuI(2.57g)、KCO(3.72g)及びDMSO(180mL)を加え、窒素ガスで置換し、110℃に昇温し、撹拌しながら1h反応した。反応が完了するまでLC-MSでモニタリングした後、反応液をろ過し、ろ過ケークを170mLのDCMで洗浄し、得られたろ液をそのまま次のステップに供した。
LC-MS[M+H]:480。
【0122】
ステップ6:化合物1の調製
500mLの1つ口フラスコにステップ5で得られたろ液を加え、窒素ガスで置換し、NHCl(6.60g)及びNMM(12.49g)を加え、反応系を0℃に冷却し、アイスバスの条件でHATU(18.63g)を加え、0℃で撹拌しながら1h反応した。反応が完了するまでLC-MSでモニタリングした後、水を加えて反応をクエンチし、酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濃縮した。得られた粗生成物を34mLのメタノール及び54mLのジクロロメタンに加え、溶解・清澄するまで加熱した。自然に室温に冷却し、徐々にジエチルエーテルを滴下し、固体を析出させ、ろ過し、ろ過ケークをジエチルエーテルでリンスし、乾燥させ、2.88gの化合物1を得た。
粉末X線回折で同定したところ、化合物1の結晶形は結晶形Aであり、粉末X線回折パターンが実質的に図1に示されている。
LC-MS[M+H]:479。
H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ8.03(d,J=9.0Hz,1H),7.40(s,1H),7.24(s,1H),7.05(s,1H),6.32(d,J=8.9Hz,1H),6.03(d,J=2.6Hz,1H),5.76(s,1.56H,DCM),4.48(s,1H),4.41-4.29(m,4H),3.94(d,J=8.8Hz,1H),3.55(t,J=8.1Hz,1H),3.25-3.19(m,1H),2.74-2.55(m,2H),2.25-2.14(m,1H),2.07-1.85(m,3H),1.13(d,J=7.0Hz,3H),0.88(d,J=7.2Hz,2H),0.81(d,J=3.9Hz,2H),0.71(d,J=6.8Hz,3H)。
【実施例4】
【0123】
化合物1の多形
遊離塩基性化合物1について、多形のスクリーニング及び評価を行い、室温/高温懸濁撹拌結晶化、気液浸透結晶化、気固浸透結晶化、逆溶媒添加結晶化及びゆっくり揮発結晶化などの複数の方式及び手段を設置し、複数の多形体をスクリーニングし、特性を評価した。多形体は、以下を含むが、これらに限定されない。
【0124】
結晶形A
結晶形Aは、ジクロロメタン溶媒和物であり、H-NMRの結果から、結晶形Aのサンプルに約12.00wt%のジクロロメタン溶媒を含有することが示された。
【0125】
結晶形B-1
結晶形Aを150℃に加熱し、室温に冷却した後にXRPD特性評価を行ったところ、図18に示すように、無水結晶形B-1を得た。TGA及びDSCの結果から、結晶形B-1は、200℃になるまで明らかな減量が観察されず、186℃程度(ピーク値の温度)で吸熱ピークが観察されるとともに189℃程度(ピーク値の温度)で1つの放熱ピークを有し、229℃程度(ピーク値の温度)で吸熱ピークが観察されたことが示された。
【0126】
結晶形B-2
結晶形Aをアセトニトリル雰囲気に置き、13日気固拡散し、アセトニトリル溶媒和物としての結晶形B-2を得た。このサンプルについて、XRPD特性評価(図4)及びH-NMR特性評価を行った。H-NMRの結果から、結晶形B-2のサンプルに約7wt%のアセトニトリル溶媒を含有することが示された。TGA/DSCの結果から、サンプルは100℃になるまで約5.14wt%を減量し、165℃、167℃及び236℃程度において3つの吸熱ピークを有することが示された。
【0127】
結晶形B-3
結晶形Aをジクロロメタン雰囲気に置き、13日気固拡散し、ジクロロメタン溶媒和物としての結晶形B-3を得た。このサンプルについて、XRPD特性評価を行った(図5)。TGA/DSCの結果から、サンプルは、144.55℃になるまで約4.91wt%を減量し、191℃程度において吸熱ピークが現れ、236℃程度において放熱ピークが現れたことが示された。結晶形B-3のXRPDパターンは、結晶形Aと異なることがわかった。これは、結晶形Aと異なるジクロロメタン溶媒和物の結晶形が現れたことを示している。
結晶形B-1は無水結晶形であり、結晶形B-2はアセトニトリル溶媒和物であり、結晶形B-3はジクロロメタン溶媒和物であった。この3種の結晶形格子に溶媒が含まれなく或いはそこに含まれる溶媒の種類は異なるが、XRPDパターンにおいて回折ピークの数及び回折ピークの位置は実質的に同じであるため、結晶形B-1、結晶形B-2及び結晶形B-3は、同形性の構造(isomorphic structure)を有すると見なされている。
【0128】
結晶形D-1
室温で結晶形Aのサンプルをアセトンに1日間懸濁して撹拌し、アセトン溶媒和物としての結晶形D-1を得た。サンプルについて、XRPD(図6)及びH-NMR特性評価を行った。H-NMRの結果から、結晶形D-1のサンプルに約5.62wt%のアセトン溶媒を含有することが示された。TGA/DSCの結果から、サンプルは153℃になるまで約5.94wt%を減量し、185℃程度(ピーク値の温度)において吸熱ピークを有し、188℃程度において放熱ピークが現れ、231℃程度においても吸熱ピークが観察された。結晶形D-1を90℃に加熱し、加熱されたサンプルについてXRPD特性評価を行った。図24の結果から、加熱されたサンプルは、結晶形B-1と結晶形D-1との混和物であることが示された。
【0129】
結晶形D-2
室温で結晶形Aのサンプルをn-プロパノールに1日間懸濁して撹拌し、n-プロパノール溶媒和物としての結晶形D-2を得た。サンプルについて、XRPD特性評価を行った(図7)。TGA/DSCの結果から、サンプルは、200℃になるまで約1.9wt%を減量し、183℃程度(ピーク値の温度)において1つの放熱ピークを有し、在231℃程度(ピーク値の温度)において1つの吸熱ピークを有することが示された。
【0130】
結晶形D-3
室温で結晶形Aのサンプルを2-ブチルケトンに1日間懸濁して撹拌し、2-ブチルケトン溶媒和物としての結晶形D-3を得た。サンプルについて、XRPD特性評価(図8)及びH-NMR特性評価を行った。H-NMRの結果から、結晶形D-3のサンプルに約11.04wt%の2-ブチルケトン溶媒を含有することが示された。TGA/DSCの結果から、サンプルは120℃になるまで約11.07wt%を減量し、143℃程度において吸熱シグナルピークを有し、153℃程度において放熱ピークが現れた後、230℃程度において吸熱ピークが観察されたことが示された。
同様に、結晶形D-1、結晶形D-2及び結晶形D-3との3種の結晶形が、非常に似ているXRPDパターンを有し、それらは同形性の構造(isomorphic structure)を有すると見なされている。
【0131】
結晶形E-1
室温で結晶形Aを1,4-ジオキサンに懸濁して撹拌し、1,4-ジオキサン溶媒和物としての結晶形E-1を得た。サンプルについて、XRPD特性評価(図9)及びH-NMR特性評価を行った。H-NMRの結果から、結晶形E-1のサンプルに約14.26wt%の1,4-ジオキサン溶媒を含有することが示された。結晶形E-1を150℃に加熱し、加熱された後サンプルについて、XRPD特性評価を行った。図25の結果から、加熱されたサンプルは、化合物1の結晶形B-1であることが示された。
【0132】
結晶形E-2
室温で結晶形Aをテトラヒドロフランに懸濁して撹拌し、実質的に図10に示すXRPDパターンを有するテトラヒドロフラン溶媒和物としての結晶形E-2を得た。
【0133】
結晶形E-3
室温で結晶形Aをイソプロパノールに懸濁して撹拌し、イソプロパノール溶媒和物としての結晶形E-3を得た。サンプルについて、XRPD特性評価(図11)及びH-NMR特性評価を行った。H-NMRの結果から、結晶形E-3サンプルに約2.0wt%のイソプロパノール溶媒を有することが示された。TGA/DSCの結果から、サンプルは149℃になるまで約3.10wt%を減量し、188℃程度において吸熱シグナルピークを有し、196℃程度まで昇温すると、放熱ピークが現れ、その後、230℃程度においても吸熱ピークが観察されたことが示された。
同様に、結晶形E-1、結晶形E-2及び結晶形E-3との3種の結晶形は、非常に似ているXRPDパターンを有し、それらは同形性の構造(isomorphic structure)を有すると見なされている。
【0134】
結晶形C
室温で結晶形Aを酢酸エチルに加え、48h撹拌し、実質的に図21に示すXRPDパターンを有する無水結晶形としての結晶形Cを得た。TGA及びDSCの結果から、サンプルは150℃に加熱するまで明らかな減量が見られず、233℃程度(ピーク値の温度)において吸熱ピークが観察されたことが示された。
【0135】
結晶形F
室温で結晶形Aをジメチルスルホキシド溶媒に加え、溶解・清澄した後に反応液を純水の雰囲気に置き、7日気液拡散し、実質的に図12に示すXRPDパターンを有するジメチルスルホキシド溶媒和物としての結晶形Fを得た。結晶形Fを180℃に加熱し、加熱されたサンプルについてXRPD特性評価を行った。図26の結果から、加熱された結晶形Fは結晶形Cに変化することが示された。
【0136】
結晶形G
室温で結晶形AをN,N-ジメチルホルムアミド溶媒に加え、溶解・清澄した後に反応液を純水の雰囲気に置き、7日気液拡散し、実質的に図13に示すXRPDパターンを有するN,N-ジメチルホルムアミド溶媒和物としての結晶形Gを得た。結晶形Gを180℃に加熱し、加熱されたサンプルについてXRPD特性評価を行った。図27の結果から、加熱された結晶形Gは結晶形Cに変化することが示された。
【0137】
結晶形H
室温で結晶形Cをテトラヒドロフラン溶媒系に懸濁して撹拌し、実質的に図14に示すXRPDパターンを有するテトラヒドロフラン溶媒和物としての結晶形Hを得た。この結晶形Hを150℃に加熱し、加熱されたサンプルについて、XRPD特性評価を行った。図28の結果から、加熱された結晶形Hは結晶形B-1に変化することが示された。
【0138】
結晶形I
室温で結晶形Cをジメチルスルホキシドに加え、溶解した後に逆溶媒であるアセトニトリルを添加し、室温で懸濁して撹拌し、実質的に図15に示すXRPDパターンを有するアセトニトリル溶媒和物としての結晶形Iを得た。この結晶形Iを220℃に加熱し、加熱されたサンプルについて、XRPD特性評価を行った。図29の結果から、加熱された結晶形Iは結晶形Cに変化することが示された。
【0139】
結晶形J
室温で結晶形CをN-メチルピロリドンに加え、溶解した後に逆溶媒であるイソプロパノールを添加し、室温で懸濁して撹拌し、実質的に図16に示すXRPDパターンを有するイソプロパノール溶媒和物としての結晶形Jを得た。このサンプルを220℃に加熱し、加熱されたサンプルについて、XRPD特性評価を行った。図30の結果から、加熱された結晶形Jは結晶形Cに変化することが示された。
【0140】
結晶形K
室温で結晶形Cをアセトニトリルとクロロホルムとの混合溶媒に加え、溶解し、室温で自然に5日揮発させ、実質的に図17に示すXRPDパターンを有するクロロホルム溶媒和物としての結晶形Kの単結晶を得た。単結晶の解析結果は次のように示す。
Bruker D8 VENTUREを用いて単結晶を検出したところ、結晶は直方晶に属し、空間群はP2であり、格子パラメータ:a=7.2213(3)、b=14.5964(7)、c=26.9474(12)A、α=β=γ=90°□、格子体積V=2840.4(2)A3、格子内非対称単位数Z=4であることが示された。
直接法(Shelxs97)を用いて結晶の構造を解析し、39つの非水素原子の位置をすべて得て、最小2乘法を用いて構造のパラメータを修正し、原子の種類を判別し、幾何学計算法及び差分フェリア法(Fourier)を用いて水素原子の位置をすべて取得し、修正した後、R=0.0995、wR=0.3135(w=1/σ|F|)、S=1.082であった。最終的に化学量論式をC2530・CHClと決定し、分子量を597.92と算出し、結晶の密度を1.398g/cmと算出した。
【0141】
化合物1の無水結晶形B-1及び無水結晶形Cは、化合物1溶媒和物の潜在的な毒性問題を解決しただけでなく、結晶形の安定性を大幅に高め、溶媒和物結晶形のほとんどは、一定の温度で無水結晶形B-1又は無水結晶形Cに変化した。
驚くべきことに、無水結晶形B-1及び無水結晶形Cは、熱力学的安定性、圧力感度及び研磨感度などの多方面で一定の優位性をさらに持っている。無水結晶形B-1及び無水結晶形Cは、いずれも優れた安定性を有し、しかも無水、結晶、吸湿しにくく、高融点を有し、薬物製剤への応用に適している。
【実施例5】
【0142】
化合物1の結晶形Cの調製方法
化合物1(0.6g)を6mLのEAとDMSOとの混合溶液に加え(1:1、v/v)、50℃に加熱し、完全に溶解した後、メチルt-ブチルエーテル(6mL)を滴下した。滴下終了後、加熱を停止し、自然に室温に冷却し、撹拌して結晶化し、ろ過した後、45℃で16h真空乾燥させ、得られた固体は結晶形Cであり、粉末X線回折パターンが実質的に図21に示す。
化合物1(0.6g)を12mLのEAとMeOHとの混合溶液に加え(1:1、v/v)、50℃に加熱し、完全に溶解した後、メチルt-ブチルエーテル(24mL)を滴下した。滴下終了後、加熱を停止し、自然に室温に冷却し、撹拌して結晶化し、ろ過した後に、45℃で16h真空乾燥させ、得られた固体は結晶形Cであり、粉末X線回折パターンが実質的に図21に示す。
15mgの化合物1の結晶形Aを取り、それぞれ表1における溶媒(1~1.5mL)に加え、室温で約3日間懸濁して撹拌した後、得られた固体について、XRPD検出を行い、いずれも結晶形Cであった。結晶形Cの粉末X線回折パターンが実質的に図21に示す。
【0143】
【表1】

【0144】
なお、本発明の化合物1の結晶形Cは、強い優先配向を有し、異なるサンプルのXRPDパターンにおいて、個々のピークの強度が大きく異なるため、図21及びそれに対応するピークリストにおける2θ角の強度データは、例示的なものに過ぎず、絶対的な比較には使用されない。サンプル又は検出条件が異なる場合、それに対応するXRPDパターンにおいて、図21におけるいくつかの強くないピークはより高い強度を示す可能性があり、及び/又はいくつかの強いピークの強度は弱くなるが、パターン全体のマッチングには影響しない。
【実施例6】
【0145】
圧力感度試験
適量の化合物1の結晶形B-1及び結晶形Cを取り、それぞれ200kg/cm、300kg/cm及び500kg/cmの圧力で原薬について打錠試験を行い、試験の結果を表2に示す。
【表2】

【0146】
試験の結果から、化合物1の結晶形B-1及び結晶形Cは、200kg/cm~500kg/cmの圧力範囲で、押出された後、結晶形は、いずれも変わらず、XRPDパターンは、元のパターンと一致し、結晶形B-1及び結晶形Cは、いずれも、優れた圧力安定性を有し、工業的な利用として適していることが分かった。
【実施例7】
【0147】
研磨感度試験
適量の化合物1の結晶形B-1及び結晶形Cを取り、乳鉢に加えて手動で研磨し、研磨時間を1minとし、研磨が完了されたサンプルについてXRPD検出し、結果を図31及び図32に示す。
図31及び図32に示すように、化合物1の結晶形B-1及び結晶形Cは、研磨試験を行った後、XRPDパターンは元のパターンと一致し、結晶形B-1及び結晶形Cは、いずれも優れた研磨安定性を有する。
【実施例8】
【0148】
DVS測定実験
結晶形B-1及び結晶形Cの異なる湿度条件における安定性を評価するために、25oCの条件で、0~95%RHの間に結晶形B-1及び結晶形CについてDVS試験を行った。結果から、結晶形B-1が80%RHで、質量の増加量が1.9%であり、結晶形Cが80%RHで、質量の増加量が0.7%であることが示された。結晶形B-1及び結晶形Cは、やや吸湿性を有すると推測された。
【実施例9】
【0149】
化合物1の異なる結晶形の影響因子実験
化合物1の結晶形M、結晶形B-1及び結晶形Cについて影響因子試験を行い、試験条件及び0日目、5日目及び30日目における関連物質の総不純物の含有量の試験結果を表3に示す。
【表3】

上記の表から、影響因子実験において、化合物1の結晶形Mは、考察された各条件で、総不純物の含有量が0日目の含有量に比べて一定の増加があり、結晶形B-1及び結晶形Cは、考察された各条件で、総不純物の含有量が0日目の含有量に比べていずれも明らかな変化がなく、いずれも限度の範囲内(質量基準での総不純物の含有量の限度≦1.5%)にあり、化合物1の結晶形B-1及び結晶形Cが優れた安定性を有することが分かった。
【実施例10】
【0150】
化合物1の結晶形Cの安定性試験
化合物1の結晶形Cの安定性試験の条件及び方法は、主に2020年版《中国薬局方》4部通則の「9001原薬及び医薬品制剤安定性試験指導原則」の要求にしたがって行われ、具体的に表4に示す。
【表4】


試験結果は、以下のとおりであった。このサンプルは、高温条件又は高湿条件で露出するように30日置きっても、性状、含有量、結晶形、異性体が0日目のサンプルに比べていずれも明らかな変化がなく、このサンプルは、6ヶ月の加速を経って、長期の6ヶ月の安定性試験を経っても、各検出指標は、0日目のサンプルに比べていずれも明らかな変化がなかった。化合物1の結晶形Cは、優れた物理化学的安定性を示していることが分かった。
【実施例11】
【0151】
化合物1のキナーゼ試験
PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγキナーゼは、その基質であるATP、PIP2:3PSと酵素学反応を行い、PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ酵素的活性(ATP最終濃度10μM)を反映するように、ADP-Glo試薬及び発光の方法で生成物の量を検出した。上記の方法で本発明の化合物1のPI3Kα、PI3Kβ及びPI3Kγキナーゼに対する阻害活性を測定した。
【0152】
検出方法:
試薬:基礎的なキナーゼ緩衝液(pH7.5)、PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ酵素溶液、PIP2:3PS及びATP溶液、ADP-Glo試薬キット(10mMのMgClを含有する)。
緩衝液の成分:50mMのHepes(pH7.2~7.5)、3mMのMgCl2、1mMのEGTA、0.03%のCHAPS、100mMのNaCl、2mMのDTTであった。
化合物の準備:本発明の化合物1をDMSOに完全に溶解し、特定の濃度に希釈し、インキュベート系における化合物の最終濃度を1000、333、111、37、12.4、4.1、1.4、0.46、0.15、0.05nM(PI3Kα);30000、10000、3333、1111、370、123、41、13.7、4.6、1.5nM(PI3Kβ、PI3Kγ)とした。
反応過程:
1)384反応プレート(6008280、PerkinElmer)にPI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγタンパク質溶液を加え、1000rpmで1分間遠心分離した。
2)上記の酵素のある384反応プレートに試験化合物と陰性対照物質のDMSO又は陽性対照物質のBYL719とを加え、1000rpmで1分間遠心分離し、25℃で15分間インキュベートした。
3)上記の384反応プレートにPIP2:3PS&ATP溶液を加え、1000rpmで1分間遠心分離し、25℃で60分間インキュベートした。
4)5μLのADP-Glo試薬(10mMのMgCl2を含有する)を384反応プレートに移し、1000rpmで1分間遠心分離し、25℃で40分間インキュベートした。
5)10μLのDetection試薬を384反応プレートに移し、1000rpmで1分間遠心分離し、25℃で40分間インキュベートした。
6)Envisionマルチモードプレートリーダーを用いてRLU(相対発光量、relative luminescence unit)の値を読み取った。RLU値の大きさは、酵素と基質との間の反応の程度を特徴づけ、IC50値を算出するために使用される。
【0153】
7)実験データの処理過程:
化合物の阻害率(%inh)=(陰性対照RLU-試験化合物RLU)/(陰性対照RLU-陽性対照RLU)×100%
化合物のIC50(半量阻害濃度)は、次の非線形フィッティング公式を用いて得られる。
Y=最小阻害率+(最大阻害率-最小阻害率)/(1+10^((LogIC50-X)×傾き))、
ここで、Xは、試験化合物の濃度の対数値(log value)であり、Yは試験化合物の阻害率(%inh)である。
実験の結果を表5に示す。AはIC50値≦5nMを、BはIC50値が5~20nMを、CはIC50値が300~600nMを、DはIC50値>600nMを表す。
【0154】
【表5】


表5から明らかなように、本発明が提供する化合物1は、良好なPI3Kαキナーゼ阻害活性を有し、良好なPI3Kβ及びPI3Kγキナーゼサブタイプ選択性を有し、これによって、マルチターゲット阻害によって引き起こされる潜在的な副作用を回避することができる。
【実施例12】
【0155】
細胞増殖試験
方法:CellTiterglo assay方法を用い、インビトロで培養されたヒト腫瘍細胞MCF-7及びHGC27に対する本発明の化合物1の成長阻害作用を観察した。
検出方法:MCF-7細胞をDMEM培地に懸濁させ、細胞懸濁液を形成し、細胞の濃度を25000cells/mLに調整した。HGC27細胞をRPMI-1640培地に懸濁し、細胞懸濁液を形成し、細胞の濃度を5000cells/mLに調整した。100μLの細胞懸濁液を96ウェルプレートに入れ、COインキュベーター内で一晩培養した。化合物1をDMSOに溶解し、3倍の勾配で希釈し、合計10つの濃度の試験化合物を得た。それぞれ10個の濃度の試験化合物又はDMSO陰性対照物質を100μLの培地を含有するウェルに移し、化合物最終濃度をそれぞれ30000、10000、3333、1111、370、123、41、13.7、4.6nMとした。37℃、5%COの条件下でインキュベートし、HGC27細胞を96時間インキュベートし、MCF-7細胞を120時間インキュベートした。そして、100μLのCellTiter-Glo試薬を上記の96ウェルプレートに入れ、室温で10分間インキュベートし、発光信号を安定させた。VICTOR TM X5機器でRLU(relative luminescence unit)値を記録し、そして、IC50値を算出した。
【0156】
化合物阻害率(%inh)=100%-(試験化合物RLU-ブランク対照RLU)/(陰性対照RLU-ブランク対照RLU)×100%
陰性対照:DMSOウェル、
ブランク対照:ブランク培地ウェル、化合物なし、細胞なし、
化合物のIC50(半数阻害濃度)は、次の非線形フィッティング公式を用いて得られた。
Y=最小阻害率+(最大阻害率-最小阻害率)/(1+10^((LogIC50-X)×傾き))
ここで、X:試験化合物の濃度log値、Y:試験化合物の阻害率(%inh)。
【0157】
実験データを表6及び表7に示す。
【表6】


【表7】


備考:対照化合物1は、WO2017001658における実施例102である。
【0158】
上記の表から明らかなように、本発明が提供する化合物1は、PI3Kα点突然変異を有する細胞系に対して、対照化合物より優れた細胞増殖阻害活性を有し、同様な濃度でより優れた抗腫瘍効果を有する。したがって、本発明が提供する化合物1は、より優れた抗腫瘍効果を有するPI3Kαキナーゼ阻害剤になると期待されている。
【実施例13】
【0159】
化合物1の結晶形の薬物動態試験
医薬品の調製:対照化合物を秤量し、実施例1で得られた化合物1の結晶形M及び化合物2非晶質を10%DMSOと10%Solutolと80%生理塩水との混合溶液に加え、10mg/mLの試験溶液を調製し、化合物1の結晶形Cを取り、5%のsolutolと95%の0.5%CMCNaとの混合溶液に加え、10mg/mLの試験溶液と調製した。
試験方法:オスSDラット15匹、体重:150~300gである。ランダムに5つの群に分けられ、それぞれの群にラット3匹があり、10mg/mLの実施例の化合物を単回胃内投与で与え、それぞれ指定された時点(5min、15min、30min、1h、2h、4h、7h、24h)で眼窩静脈叢から採血し、血漿を分離し、後で使用するために-80℃の冷蔵庫に保管された。上記の血漿サンプルのタンパク質をアセチルニトリルで沈殿させた後、上澄みを抽出し、水と1:1で混合し、10μLを採取し、LC-MS/MSで検測し、平均値を計算し、実験データを表8に示す。
【表8】

備考:対照化合物2は、WO2017001645における実施例101である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
【手続補正書】
【提出日】2023-11-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S)-1-(2-((S)-3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミドの多形体であって、
前記多形体は、結晶形Aであり、
前記結晶形Aの粉末X線回折パターンは、回折角2θが6.2°±0.2°、7.3°±0.2°、9.1°±0.2°、13.6°±0.2°、14.2°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、多形体。
【請求項2】
粉末X線回折パターンは、回折角2θが6.2°±0.2°、7.3°±0.2°、9.1°±0.2°、13.6°±0.2°、14.2°±0.2°、14.9°±0.2°、17.1°±0.2°、17.3°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項1に記載の多形体。
【請求項3】
粉末X線回折パターンは、回折角2θが6.2°±0.2°、7.3°±0.2°、9.1°±0.2°、11.5°±0.2°、13.6°±0.2°、14.2°±0.2°、14.9°±0.2°、17.1°±0.2°、17.3°±0.2°、18.1°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項1に記載の多形体。
【請求項4】
粉末X線回折パターンは、実質的に図1に示すものであることを特徴とする、請求項1に記載の多形体。
【請求項5】
(S)-1-(2-((S)-3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミドの多形体であって、
前記多形体は、結晶形B-1であり、
前記結晶形B-1の粉末X線回折パターンは、回折角2θが6.1°±0.2°、7.6°±0.2°、9.3°±0.2°、15.4°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、多形体。
【請求項6】
粉末X線回折パターンは、回折角2θが6.1°±0.2°、7.6°±0.2°、9.3°±0.2°、11.6°±0.2°、15.4°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項5に記載の多形体。
【請求項7】
粉末X線回折パターンは、回折角2θが6.1°±0.2°、7.6°±0.2°、9.3°±0.2°、11.6°±0.2°、14.1°±0.2°、15.4°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項5に記載の多形体。
【請求項8】
粉末X線回折パターンは、回折角2θが6.1°±0.2°、7.6°±0.2°、9.3°±0.2°、11.6°±0.2°、14.1°±0.2°、15.4°±0.2°、16.9°±0.2°、17.2°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項5に記載の多形体。
【請求項9】
粉末X線回折パターンは、実質的に図18に示すものであることを特徴とする、請求項5に記載の多形体。
【請求項10】
(S)-1-(2-((S)-3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミドの多形体であって、
前記多形体は、結晶形Cであり、
前記結晶形Cの粉末X線回折パターンは、回折角2θが7.0°±0.2°、8.4°±0.2°、10.9°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、多形体。
【請求項11】
粉末X線回折パターンは、回折角2θが5.5°±0.2°、7.0°±0.2°、8.4°±0.2°、10.2°±0.2°、10.9°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項10に記載の多形体。
【請求項12】
粉末X線回折パターンは、回折角2θが5.5°±0.2°、7.0°±0.2°、8.4°±0.2°、9.8°±0.2°、10.2°±0.2°、10.9°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項10に記載の多形体。
【請求項13】
粉末X線回折パターンは、回折角2θが5.5°±0.2°、7.0°±0.2°、8.4°±0.2°、9.8°±0.2°、10.2°±0.2°、10.9°±0.2°、13.5°±0.2°、13.9°±0.2°である特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項10に記載の多形体。
【請求項14】
粉末X線回折パターンは、実質的に図21に示すものであることを特徴とする、請求項10に記載の多形体。
【請求項15】
治療有効量の(S)-1-(2-((S)-3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミドの多形体、並びに、薬学的に許容される補助材料、補助剤及び/又は担体を含むことを特徴とする、医薬品組成物。
【請求項16】
前記多形体は、請求項1~14のいずれか1項に記載の多形体から選択される1種又は多種であることを特徴とする、請求項15に記載の医薬品組成物。
【請求項17】
前記医薬品は、癌又は癌転移の発生又は進行の治療、予防、遅延又は阻止に使用されることを特徴とする、医薬品の調製における請求項1~14のいずれか1項に記載の多形体又は請求項15に記載の医薬品組成物の使用。
【請求項18】
前記医薬品は、癌又は癌転移の発生又は進行の治療、予防、遅延又は阻止に使用されることを特徴とする、請求項16に記載の医薬品組成物の使用。
【請求項19】
前記医薬品は、PI3Kによって媒介される疾患の治療に使用されることを特徴とする、医薬品の調製における請求項1~14のいずれか1項に記載の多形体又は請求項15に記載の医薬品組成物の使用。
【請求項20】
前記医薬品は、PI3Kによって媒介される疾患の治療に使用されることを特徴とする、請求項16に記載の医薬品組成物の使用。
【請求項21】
前記PI3Kは、PI3Kαであることを特徴とする、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
前記疾患は癌であることを特徴とする、請求項19に記載の使用。
【請求項23】
前記癌は、肉腫、前立腺癌、乳癌、膵臓癌、肺癌、胃腸癌、結腸直腸癌、甲状腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、副腎癌、神経膠腫、子宮内膜癌、黒色腫、腎臓癌、膀胱癌、子宮癌、膣癌、卵巣癌、多発性骨髓腫、食道癌、白血病、脳癌、口腔・咽癌、喉頭癌、リンパ腫、基底細胞癌、真性赤血球増加症、本態性血小板血症から選択されることを特徴とする、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
請求項10~14のいずれか1項に記載の多形体の調製方法であって、
前記多形体は、化合物1の結晶形Cであり、化合物1は、(S)-1-(2-((S)-3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミドであり、
前記多形体の調製方法は、
【化9】
a.塩基性条件で、化合物1-5と化合物M-5とを触媒及び触媒配位子の作用でカップリング反応させて、化合物1-6を得るステップと、
b.塩基性条件で、化合物1-6と化合物M-12とを触媒の作用でカップリング反応させて、化合物1-7を得るステップと、
c.塩基性条件で、化合物1-7とNH3とを縮合剤の作用で縮合反応させて、化合物1を形成するステップと、
g.化合物1を良溶媒に加え加熱溶解し、貧溶媒を滴下して固体を析出させ、濾過、乾燥して前記化合物1の結晶形Cを得るステップと、
を含むことを特徴とする、多形体の調製方法。
【請求項25】
前記良溶媒は、酢酸エチル、酢酸エチルとジメチルスルホキシドとの混合溶液、酢酸エチルとメタノールとの混合溶液から選択される1種であり、前記貧溶媒は、n-ヘプタン、メチルt-ブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジエチルエーテルから選択される1種又は多種であることを特徴とする、請求項24に記載の多形体の調製方法。
【請求項26】
請求項10~14のいずれか1項に記載の多形体の調製方法であって、
前記多形体は、化合物1の結晶形Cであり、化合物1は、(S)-1-(2-((S)-3-シクロプロピル-5-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)ピロリジン-2-ホルムアミドであり、
前記多形体の調製方法は、化合物1の結晶形Aを、酢酸エチル、メタノール、メタノール/水混合液、n-ブタノール、メチルイソブチルケトン、酢酸イソプロピル、メチルt-ブチルエーテルから選択される1種又は多種の溶媒に加え、室温で1~5日間懸濁して撹拌するステップを含むことを特徴とする、多形体の調製方法。
【国際調査報告】