(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-27
(54)【発明の名称】試料処理装置及び試料処理方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569922
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 CN2022092434
(87)【国際公開番号】W WO2022237868
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/093357
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523425935
【氏名又は名称】コヨーテ バイオサイエンス カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】リ,シアン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ユグアン
(72)【発明者】
【氏名】フェン,フイイン
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA23
4B029BB01
4B029CC01
4B029DG01
4B029DG06
4B029FA02
4B029GA02
4B029GB02
(57)【要約】
試料処理装置であって、少なくとも1つのチャンバを有する筐体(101)と、弁体(301)と、を備え、弁体(301)は筐体(101)に結合され、弁体(301)は、流体交換キャビティ(3012)と、流体ポート(3013)と、流体交換キャビティ(3012)と流体ポート(3013)とを流体接続する流体チャネル(3014)とを有し、流体交換キャビティ(3012)は圧力調整装置(1027)に結合され、圧力調整装置(1027)は、流体交換キャビティ(3012)内の圧力を変更するように構成されており、弁体(301)は、弁体(301)の流体ポート(3013)が筐体(101)の少なくとも一方のチャンバと選択的に流体連通するように筐体(101)に対して調整可能である、試料処理装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料処理装置であって、
少なくとも1つのチャンバを有する筐体と、
前記筐体に結合された弁体であって、前記弁体は、流体置換チャンバと、1つ以下の流体ポートと、1つ以下の流体チャネルと、を有し、前記1つ以下の流体チャネルは、前記流体置換チャンバと前記流体ポートとを流体的に接続し、前記流体置換チャンバは、前記流体置換チャンバ内の圧力を変化させるように構成された圧力調整部材に結合されている、弁体と、を備え、
前記弁体は、前記弁体の前記流体ポートが前記筐体の前記少なくとも1つのチャンバと選択的に流体連通するように、前記筐体に対して調整可能である、試料処理装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのチャンバは、生体試料を内部に受容するように構成された試料チャンバを含む、請求項1に記載の試料処理装置。
【請求項3】
前記試料チャンバは、前記生体試料を処理するための少なくとも1つの試薬を内部に収容するように構成される、請求項2に記載の試料処理装置。
【請求項4】
前記試料チャンバには、前記試料チャンバの開口端を密封する取り外し可能な密封部材が設けられている、請求項2に記載の試料処理装置。
【請求項5】
前記試料チャンバはフィルタを備える、請求項2に記載の試料処理装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つのチャンバは、前記生体試料を処理するための少なくとも1つの試薬を内部に収容するように構成された少なくとも1つの試薬チャンバを更に備える、請求項2に記載の試料処理装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの試薬は、固体試薬又は液体試薬を含む、請求項6に記載の試料処理装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの試薬チャンバは、その中に磁気ビーズを収容するように構成され、前記磁気ビーズは、前記生体試料の核酸抽出を容易にするように構成されている、請求項6に記載の試料処理装置。
【請求項9】
前記磁気ビーズを収容する前記少なくとも1つの試薬チャンバは、外部磁場に磁気的に結合される、請求項8に記載の試料処理装置。
【請求項10】
前記磁気ビーズを収容する前記少なくとも1つの試薬チャンバは、高い透磁率を有する構成要素を介して外部磁場に磁気的に結合される、請求項9に記載の試料処理装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つのチャンバは、試薬が収容されていない予備チャンバを含む、請求項1に記載の試料処理装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つのチャンバは密封されている、請求項1に記載の試料処理装置。
【請求項13】
前記弁体は、前記筐体に対して回転可能である、請求項1に記載の試料処理装置。
【請求項14】
前記圧力調整部材は、プランジャ又はピストンを含む、請求項1に記載の試料処理装置。
【請求項15】
前記流体置換チャンバ内の前記圧力の低下が、流体を前記流体置換チャンバに引き込み、前記流体置換チャンバ内の前記圧力の上昇が、流体を前記流体置換チャンバから排出する、請求項1に記載の試料処理装置。
【請求項16】
前記筐体に取り外し可能に結合するように構成された反応容器を更に備える、請求項1に記載の試料処理装置。
【請求項17】
前記弁体の前記流体ポートは、前記反応容器と選択的に流体連通している、請求項16に記載の試料処理装置。
【請求項18】
前記反応容器は、第1のポートと、第2のポートと、前記第1のポート及び前記第2のポートと流体連通する反応領域と、を備える、請求項16に記載の試料処理装置。
【請求項19】
前記反応領域は第1の側及び第2の側を備え、前記第1の側及び前記第2の側は膜を備える、請求項18に記載の試料処理装置。
【請求項20】
前記第2のポートは膨張可能な膜で密封されている、請求項18に記載の試料処理装置。
【請求項21】
前記反応容器は、核酸増幅又は核酸検出を実施するように構成された装置で動作するような寸法及び形状である、請求項16に記載の試料処理装置。
【請求項22】
前記反応容器を覆うように構成された被覆部材を更に備える、請求項1に記載の試料処理装置。
【請求項23】
試料を処理するための方法であって、
請求項1に記載の試料処理装置を提供することと、
前記圧力調整部材を前記流体置換チャンバに結合することであって、前記圧力調整部材は、前記流体置換チャンバ内の圧力を変化させるように動作する、ことと、
前記弁体の前記流体ポートが前記筐体内の前記少なくとも1つのチャンバと選択的に流体連通するように、前記筐体に対する前記弁体の位置を調整することと、
を含む、方法。
【請求項24】
生体試料を試料チャンバ内に配置することを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記弁体の前記流体ポートが前記筐体内の前記試料チャンバと流体連通するように、前記筐体に対して前記弁体の位置を調整することと、
前記生体試料の少なくとも一部を含む溶液を前記流体置換チャンバに移送するように前記圧力調整部材を動作させることと、
を更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記弁体の前記流体ポートが前記筐体内の前記少なくとも1つのチャンバと流体連通するように、前記筐体に対して前記弁体の位置を調整することと、
前記生体試料の少なくとも一部を含む溶液を前記少なくとも1つのチャンバに移送するように前記圧力調整部材を動作させることと、
を更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記弁体の前記流体ポートが反応容器と流体連通するように、前記筐体に対して前記弁体の位置を調整することと、
前記生体試料の少なくとも一部を含む溶液を前記反応容器に移送するように前記圧力調整部材を動作させることと、
を更に含む、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試料ローディング、処理及び反応のための一体化された装置、試料を測定するためのシステム、及び試料を処理するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸増幅法は、生体試料などの複合混合物からの目的の核酸の選択された増幅及び同定を可能にする。生体試料中の核酸を検出するために、生体試料は、典型的には、生体試料の他の成分及び核酸及び/又は増幅を妨害し得る他の薬剤から核酸を単離するように処理される。生体試料から目的の核酸を単離した後、目的の核酸を、例えば、熱サイクルに基づく手段(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR))などの増幅方法によって増幅することができる。目的の核酸の増幅後、増幅産物を検出することができ、検出結果をエンドユーザが解釈することができる。
【発明の概要】
【0003】
一態様において、本開示は、試料処理装置を提供する。試料処理装置は、少なくとも1つのチャンバを有する筐体であって、少なくとも1つのチャンバは、生体試料を処理するために少なくとも1つの試薬を内部に収容するように構成されている、筐体と、筐体に結合された弁体であって、弁は、1つの流体置換チャンバと、1つの流体ポートと、1つの流体チャネルと、を有し、1つの流体チャネルは、流体置換チャンバと流体ポートとを流体的に接続し、流体置換チャンバは、流体置換チャンバ内の圧力を変化させるように構成された圧力調整部材に結合されている、弁体と、を備えることができる。弁体は、弁体の流体ポートが筐体の少なくとも1つのチャンバと選択的に流体連通するように、筐体に対して調整可能である。
【0004】
別の態様では、本開示は、試料処理方法を提供する。本方法は、本開示の試料処理装置を提供することと、圧力調整部材を流体置換チャンバに結合することであって、圧力調整部材は、流体置換チャンバ内の圧力を変化させるように動作する、ことと、弁体の流体ポートが筐体の少なくとも1つのチャンバと選択的に流体連通できるように、筐体に対する弁体の位置を調整することと、を含むことができる。
【0005】
本開示の更なる態様及び利点は、本開示の例示的な実施形態のみが示され説明される以下の詳細な説明から当業者には容易に明らかになるであろう。理解されるように、本開示は、他の異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、すべて本開示から逸脱することなく、様々な明白な点で修正が可能である。したがって、図面及び説明は、本質的に例示と見なされるべきであり、限定と見なされるべきではない。
[参照による組み込み]
【0006】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許、又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、及び添付の図面を参照することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の例示的な試料処理装置を示す概略図である。
【0009】
【
図2A】本開示の例示的な試料処理装置の構造を示す概略図である。
【
図2B】本開示の例示的な試料処理装置の構造を示す概略図である。
【0010】
【
図3】本開示の例示的な試料処理装置のチャンバを示す概略図である。
【0011】
【
図4】本開示の例示的な試料処理装置の弁体を示す概略図である。
【0012】
【
図5】本開示の例示的な試料処理装置の弁体を示す断面図である。
【0013】
【
図6】本開示の例示的な試料処理装置の動作原理を示す図である。
【0014】
【
図7A】本開示の例示的な試料処理装置の筐体内のチャンバの配置を示す。
【
図7B】本開示の例示的な試料処理装置の弁体の底部を示す。
【0015】
【
図8】本開示の別の例示的な試料処理装置の筐体内のチャンバの配置を示す図である。
【0016】
【
図9】本開示の例示的な試料処理装置の構造を示す。
【0017】
【
図10】本開示の試料処理装置に結合された例示的な反応容器を示す断面図である。
【0018】
【0019】
【
図12】反応容器を覆うように構成された被覆部材を示す図である。
【0020】
【
図13】試料処理装置と嵌合された本開示の例示的な試料処理装置を操作するための消耗操作機構を示す図である。
【0021】
【
図14】本開示によって提供される試料処理方法及び/又は検出方法を実施するようにプログラム又は他の方法で構成されたコンピュータシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の様々な実施形態を本明細書に示し説明してきたが、そのような実施形態が例としてのみ提供されることは当業者には明らかであろう。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、及び置換を行うことができる。本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替形態を使用することができることを理解されたい。
【0023】
本明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、脈絡による別段の明らかな要求のない限り、複数形の言及を含む。例えば、用語「細胞(a cell)」は、細胞の混合物を含めた複数の細胞を含む。
【0024】
本明細書において、用語「増幅すること」及び「増幅」は、一般に、核酸の1又は複数のコピー又は「増幅産物」を生成することを指す。用語「DNA増幅」は一般に、DNA分子又は「増幅DNA産物」の1又は複数のコピーを生成することを指す。用語「逆転写増幅」は一般に、逆転写酵素を用いてリボ核酸(RNA)鋳型からのデオキシリボ核酸(DNA)の生成を指す。
【0025】
本明細書において、用語「変性化」及び「変性」は、一般に、二本鎖核酸のへリックス構造の完全又は部分的な巻き戻し、及び一部の場合では、一本鎖核酸の二次構造の巻き戻しを指す。変性は、病原体の(1又は複数の)細胞壁又はウイルスの殻の不活化、及び阻害剤の(1又は複数の)タンパク質の不活性化を含み得る。変性が起こり得る条件には、一般に変性が起こり得る温度を指す「変性温度」、及び一般に変性が行われることに割り当てられる時間を指す「変性継続時間」が含まれる。
【0026】
本明細書において、用語「伸長」は一般に、鋳型指向様式での核酸へのヌクレオチドの組込みを指す。伸長は、酵素、例えば、ポリメラーゼ又は逆転写酵素などの助けを介して起こり得る。伸長が起こり得る条件には、一般に伸長が起こり得る温度を指す「伸長温度」、及び一般に伸長が行われることに割り当てられる時間を指す「伸長継続時間」が含まれる。
【0027】
本明細書において、用語「核酸」は一般に、デオキシリボヌクレオチド(dNTP)若しくはリボヌクレオチド(rNTP)、又はこれらの類似体の任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。核酸は、任意の3次元構造を有し得、公知又は未知の任意の機能を実施し得る。核酸の非限定的な例としては、DNA、RNA、遺伝子又は遺伝子断片のコード領域又は非コード領域、連鎖解析から定義される遺伝子座(loci)(遺伝子座(locus))、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、短鎖干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA、(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換え核酸、分枝核酸、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、及びプライマーがある。核酸は、1又は複数の修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体などを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、核酸をアセンブリする前又は後に行われ得る。核酸のヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されていてもよい。核酸は、レポーター剤とのコンジュゲーション又は結合などによって重合後に更に修飾され得る。
【0028】
本明細書において、用語「プライマーエクステンション反応」は一般に、二本鎖核酸の変性化、変性核酸の一方又は両方の鎖へのプライマーの結合、その後の(1又は複数の)プライマーの伸長を指す。
【0029】
本明細書において、用語「反応混合物」は一般に、核酸増幅(例えば、DNA増幅、RNA増幅)を完了するのに使用される試薬を含む組成物を指し、このような試薬の非限定例としては、標的RNA又は標的DNAに対して特異性を有するプライマーセット、RNAの逆転写から生成されるDNA、DNAポリメラーゼ、逆転写酵素(例えば、RNAの逆転写のための)、適当な緩衝液(双性イオン緩衝液を含む)、補助因子(例えば、二価及び一価陽イオン)、dNTP、並びに他の酵素(例えば、ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UNG))など)がある。一部の場合では、反応混合物は、1種又は複数のレポーター剤も含むことができる。
【0030】
本明細書において、用語「標的核酸」は一般に、その存在、量、及び/若しくは配列、又はこれらの1又は複数の変化が判定されるように望まれているヌクレオチド配列を有する核酸分子の出発集団中の一核酸分子を指す。標的核酸は、DNA、RNA、及びこれらの類似体を含めた任意のタイプの核酸であり得る。本明細書において、「標的リボ核酸(RNA)」は一般に、RNAである標的核酸を指す。本明細書において、「標的デオキシリボ核酸(DNA)」は一般に、DNAである標的核酸を指す。
【0031】
本明細書において、用語「対象」は一般に、検査可能又は検出可能な遺伝情報を有するエンティティ又は媒体を指す。対象は、人又は個体であり得る。対象は、例えば、哺乳動物などの脊椎動物であり得る。哺乳動物の非限定的な例としては、マウス、サル、ヒト、家畜、競技動物、及びペットがある。対象の他の例としては、食物、植物、土壌、及び水がある。
【0032】
図1は、本開示の例示的な実施形態による試料処理装置を示す。試料処理装置は、筐体101を備えることができる。筐体101は、生体試料を受け取り、生体試料に対して1又は複数のプロセスを実行し、反応混合物を生成するように構成することができる。反応混合物は、筐体101に流体的に結合された反応容器201に移送され、反応容器内で例えば核酸増幅反応に供され得る。いくつかの例では、試料処理装置は、試料中の目的の核酸を増幅し、増幅産物を検出するために熱サイクル装置(例えば、PCRサーマルサイクラ)と共に動作する消耗品であり得る。例えば、反応容器201を熱サイクル装置によって加熱及び冷却して、反応容器内の生体試料を含む反応混合物をポリメラーゼ連鎖反応に供することができる。いくつかの例では、反応容器は薄い形状で提供され得る。一例では、反応容器は、反応容器が熱サイクル装置内のヒータ及び/又はヒートシンクと熱的に結合され得るように、熱サイクル装置への挿入に適した厚さで寸法決めされ得る。本開示の試料処理装置は、閉鎖可能である。例えば、生体試料が試料処理装置に加えられると、生体試料の任意の処理及び反応を試料処理装置内で行うことができる。
【0033】
反応容器201内で標的核酸を増幅して増幅産物を生成することができる。標的核酸は、標的RNA又は標的DNAであり得る。いくつかの実施形態において、標的RNAはウイルスRNAである。いくつかの実施形態では、ウイルスRNAは対象に対して病原性であり得る。病原性ウイルスRNAの非限定的な例としては、ヒト免疫不全ウイルスI(HIV I)、ヒト免疫不全ウイルスII(HIV II)、オルソミクソウイルス、エボラウイルス、デングウイルス、インフルエンザウイルス(例えば、H1N1、H3N2、H7N9、又はH5N1)、肝炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス(例えば、RNA-HCVウイルス)、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、G型肝炎ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、単核球症ウイルス、サイトメガロウイルス、SARSウイルス、西ナイル熱ウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス又はコロナウイルス(例えば、新型コロナウイルスCOVID-19)がある。標的核酸が標的DNAである場合では、標的DNAは、本明細書の他の場所で記載されるDNAのタイプを含めて、任意のタイプのDNAであり得る。一部の実施形態では、標的DNAは、ウイルスDNAである。一部の実施形態では、ウイルスDNAは、対象に対して病原性であり得る。DNAウイルスの非限定的な例としては、単純ヘルペスウイルス、天然痘、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス55型、アデノウイルス7型)、及び水痘(Varicella)ウイルス(例えば、水痘(chickenpox))がある。一部の場合では、標的DNAは、細菌DNAであり得る。細菌DNAは、例えば、結核を引き起こすことが知られている細菌であるMycobacterium tuberculosisなどの対象に対して病原性である細菌に由来し得る。一部の場合では、標的DNAは、病原性原虫、例えば、マラリアを引き起こし得るPlasmodiumタイプの1種又は複数の原虫などに由来するDNAであり得る。
【0034】
当技術分野で公知の任意のタイプの核酸増幅反応を、標的核酸を増幅し、増幅産物を生成するのに使用することができる。更に、核酸の増幅は、線形、指数関数的、又はこれらの組合せであり得る。増幅は、エマルジョンベースであってもよく、又は非エマルジョンベースであってもよい。核酸増幅法の非限定的な例としては、逆転写、プライマーエクステンション、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応、ヘリカーゼ依存性増幅、非対称増幅、ローリングサークル増幅、及び多置換増幅(MDA)がある。一部の実施形態では、増幅産物は、DNAであり得る。標的RNAが増幅される場合では、DNAは、RNAの逆転写によって得ることができ、後続のDNAの増幅を使用して増幅DNA産物を生成することができる。増幅DNA産物は、生体試料中の標的RNAの存在を示すことができる。DNAが増幅される場合では、当技術分野で公知の任意のDNA増幅法が使用され得る。DNA増幅法の非限定的な例としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、PCRの変形(例えば、リアルタイムPCR、対立遺伝子特異的PCR、アセンブリPCR、非対称PCR、デジタルPCR、エマルジョンPCR、ダイヤルアウトPCR(dial-out PCR)、ヘリカーゼ依存性PCR(helicase-dependent PCR)、ネステッドPCR、ホットスタートPCR、逆PCR、メチル化特異的PCR、ミニプライマーPCR、マルチプレックスPCR、ネステッドPCR、オーバーラップ-エクステンションPCR、熱非対称インタレースPCR(thermal asymmetric interlaced PCR)、タッチダウンPCR)、及びリガーゼ連鎖反応(LCR)がある。一部の場合では、DNA増幅は、線形である。一部の場合では、DNA増幅は、指数関数的である。一部の場合では、DNA増幅は、ネステッドPCRで実現され、これは、増幅DNA産物を検出する感度を改善することができる。
【0035】
内部構成を示すために試料処理装置のエンクロージャが除去されている
図2A及び
図2Bでは、筐体101は、その中に少なくとも1つのチャンバを囲むことができる。例示的な例では、少なくとも一方のチャンバは、生体試料を内部に受容するように構成された試料チャンバ1011を含むことができる。試料チャンバ1011には、生体試料が加えられた後に試料チャンバの開口部を密封するための取り外し可能な密封部材(例えば、ねじ蓋、スナップ蓋、又はフリップ蓋)を設けることができる。いくつかの例では、核酸増幅(例えば、DNA増幅、RNA増幅)を実施するために必要な試薬を試料チャンバに予め保存することができる。
【0036】
核酸を含む任意の適当な生体試料を対象から得ることができる。生体試料は、固形物(例えば、生物組織)であってもよく、又は流体(例えば、生体液)であってもよい。一般に、生体液として、生命体と関連した任意の流体を挙げることができる。生体試料の非限定的な例としては、対象の任意の解剖学的位置(例えば、組織、循環系、骨髄)から得られる血液(若しくは血液の成分-例えば、白血球、赤血球、血小板)、対象の任意の解剖学的位置から得られる細胞、皮膚、心臓、肺、腎臓、呼気、骨髄、糞便、精液、膣液、腫瘍性組織に由来する間質液、乳房、膵臓、脳脊髄液、組織、咽頭スワブ、生検、胎盤流体、羊水、肝臓、筋肉、平滑筋、膀胱、胆嚢、結腸、腸、脳、腔流体(cavity fluid)、痰、膿汁、微生物叢(microbiota)、胎便、母乳、前立腺、食道、甲状腺、血清、唾液、尿、胃液及び消化液、涙、眼液、汗、粘液、耳あか、油状物、腺分泌物、脊髄液、毛髪、爪、皮膚細胞、血漿、鼻腔スワブ若しくは上咽頭洗浄液(nasopharyngeal wash)、脊髄液、臍帯血、並びに/又は他の排泄物若しくは体組織がある。
【0037】
生体試料は、当技術分野で公知の様々な手段を使用して対象から得ることができる。対象から直接生体試料を得るための手段の非限定的な例としては、循環系へのアクセス(例えば、シリンジ又は他の針を介して静脈内又は動脈内に)、分泌された生体試料(例えば、糞便、尿、痰、唾液など)の収集、外科的(例えば、生検)、スワビング(例えば、頬側スワブ、口咽頭スワブ)、ピペット操作、及び呼吸がある。更に、生体試料は、所望の生体試料が位置している対象の任意の解剖学的部分から得ることができる。例示的な実施形態では、続いて試料チャンバに配置される頬側スワブを使用して、核酸を含む対象の唾液を対象の口腔から収集することができる。別の例示的な例では、シリンジを使用して、対象の静脈から対象の血液を得ることができ、血液は試料チャンバに加えられる。いくつかの場合、生体試料は対象から直接得られる。対象から直接得られる生体試料は、一般に、対象から得られた後に更に処理されていない生体試料を指し、更なる処理のために対象から生体試料を採取するために使用される任意の手段を除く。例えば、血液は、対象の循環系にアクセスし、対象から血液を取り出し(例えば、針を介して)、取り出した血液を入れ物に入れることによって、対象から直接得られる。容器は、血液試料が更なる分析に有用であるように試薬(例えば、抗凝血剤)を含むことができる。血液は、本開示の試料処理装置の試料チャンバに直接滴下することもできる。別の例では、スワブを使用して、対象の口咽頭表面上の上皮細胞にアクセスすることができる。対象から生体試料を得た後、生体試料を含有するスワブを流体(例えば、緩衝液)と接触させてスワブから生体液を回収することができ、又は生体試料を含有するスワブを本開示の試料処理装置の試料チャンバに直接入れることができる。いくつかの実施形態では、生体試料は、反応容器に提供されたときに精製されていない。いくつかの実施形態では、生体試料の核酸は、生体試料が試料チャンバに提供されるときには抽出されていない。例えば、本開示の試料処理装置の試料チャンバに生体試料を供給する際に、生体試料中のRNA又はDNAを生体試料から抽出しなくてもよい。更に、いくつかの実施形態では、生体試料中に存在する標的核酸(例えば、標的RNA又は標的DNA)は、生体試料を本開示の試料処理装置の試料チャンバに提供する前に濃縮されなくてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、試料処理装置の筐体は、ただ1つのチャンバ、すなわち試料チャンバを有することができる。試料処理及び核酸増幅(例えば、DNA増幅、RNA増幅)を行うために必要なすべての試薬は、試料チャンバに予め保存することができる。生体試料の処理に必要な試薬は、逆転写及び核酸増幅に必要な試薬(例えば、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、dNTP、補助因子、プライマー、適切な緩衝液など)及びレポーター剤(例えば、FAM色素を含むオリゴヌクレオチドプローブ)を含み得る。対象の生体試料が加えられると、核酸増幅に必要な試料の任意の処理を試料チャンバ内で行うことができる。
【0039】
他の実施形態では、試料チャンバに加えて、試料処理装置の筐体は、生体試料を処理するのに必要な1又は複数の試薬を内部に収容するように構成された少なくとも1つの試薬チャンバ1013を有することができる。試薬チャンバの数は、試料のタイプ、その後の核酸増幅のタイプなどに基づいて決定することができる。試薬チャンバの数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上であり得る。少なくとも1つの試薬チャンバは、延長軸が互いに実質的に平行である試料チャンバと同じベース上に設けることができる。少なくとも1つの試薬チャンバの各々は開口端を有することができ、その開口端は試料チャンバの開口端と同じ方向に設けることができる。密封部材1014を少なくとも1つの試薬チャンバに設けてその開口端を密封することができる。場合によっては、別個の密封部材を各試薬チャンバに設けることができる。場合によっては、試薬チャンバのすべての開口端を密封するために単一の密封部材を設けることができる。密封部材は、弾性材料で作ることができる。
【0040】
密封部材は、破裂することなく試薬チャンバ内の圧力変化を一定範囲内にすることができる。いくつかの例では、試薬チャンバ内の圧力は大気圧であり得る。いくつかの例では、試薬チャンバ内の圧力は、大気圧の少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2.0倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3.0倍、3.5倍、4.0倍、4.5倍又は5.0倍であり得る。いくつかの例では、試薬チャンバ内の圧力は、大気圧の少なくとも0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.2倍、0.1倍、0.09倍、0.08倍、0.07倍、0.06倍、0.05倍、0.04倍、0.03倍、0.02倍、0.01倍、0.005倍又は0.001倍であり得る。試薬チャンバ内の圧力は、前述の数値のうちの任意の2つの間の任意の値とすることができる。
【0041】
各試薬チャンバは、生体試料の処理に必要な1又は複数の試薬をその中に予め保存することができる。例示的な実施形態では、試料チャンバに加えて、試料処理装置の筐体内に3つの試薬チャンバを設けることができる。試料チャンバは、試料保存溶液で予め保存することができる。サンプリングスワブを試料チャンバに直接入れ、試料保存溶液と接触させることができる。第1の試薬チャンバは、試料処理溶液が予め充填された処理溶液チャンバとすることができる。試料処理溶液と生体試料とを予め設定された割合で混合し、処理済み試料を得ることができる。第2の試薬チャンバは、PCR反応溶液を調製するための固体試薬(例えば、凍結乾燥粉末、試薬ペレットなど)がプレロードされた固体試薬チャンバであり得る。PCR反応溶液の調製に用いられる固体試薬は、例えば、RT酵素、taq酵素、プライマープローブなどの成分を含むことができる。第3の試薬チャンバは、PCR反応溶液凍結乾燥粉末用再構成緩衝液が予め充填された再構成緩衝液チャンバであり得る。第2の試薬チャンバ内のPCR反応液凍結乾燥粉末を再構成緩衝液で溶解させて、第1の試薬チャンバ内の試料処理溶液で処理した試料と混合して、PCR増幅反応を行うための反応混合物を得ることができる。
【0042】
図3は、例示的な試料処理装置のチャンバ構造を示す別の概略図である。
図3に示すように、試料処理装置の筐体は、その中に試料チャンバ1011と、場合により、1又は複数の試薬チャンバ1013と、を収容することができる。筐体は、反応混合物が核酸増幅反応のために反応容器に輸送され得るように、反応容器と結合するように構成された反応容器インタフェース1016を更に含むことができる。反応容器インタフェース1016は、反応容器の反応容器流体入口及び反応容器流体出口にそれぞれ結合された反応容器流体入口インタフェース及び反応容器流体出口インタフェースを含むことができる。反応容器インタフェースの反応容器流体入口インタフェースは、試料処理装置内の反応混合物チャネルと結合することができる。反応容器インタフェースの反応容器流体入口インタフェースは、例えば増幅反応のために反応混合物を反応容器に輸送するように構成することができる。試料チャンバ1011には、生体試料中の不純物を濾過するように構成されたフィルタ1015を設けることができる。フィルタは、可撓性又は剛性であり得る。例えば、綿棒を使用して対象の唾液を収集し、次に綿棒を試料チャンバに落下させる状況では、フィルタは、綿繊維がその後の試料処理に入るのを防ぐことができる。フィルタのメッシュの孔径は、収集される生体試料のタイプ、生体試料を収集するために使用されるツール、試料に対して行われる処理などに応じて変化し得る。試料処理装置の筐体は、密封用底部部材を更に備えることができる。密封用底部部材はディスク形状で提供されることができ、試料チャンバの底部開口部及び1又は複数の試薬チャンバの底部開口部を密封するように構成することができる。密封用底部部材は、ゴム又はシリコーンゴムなどの弾性材料で作ることができる。場合によっては、流体が貫通孔を介して試料チャンバ及び(1又は複数の)試薬チャンバに出入りできるように、試料チャンバ及び(1又は複数の)試薬チャンバに対応する貫通孔を密封用底部部材に設けることができる。
【0043】
本開示の試料処理装置は、
図2A及び
図2Bに示すように、筐体101に結合された弁体301を更に備えることができる。
図4は、弁体の例示的な構造を示す図である。
図5は、本開示の例示的な試料処理装置の弁体の断面図である。弁体301は、ベース部3011と、ベース部と連通する流体置換チャンバ3012と、を含むことができる。一実施形態では、弁体の流体置換チャンバは、筐体と弁体との組み立てを仕上げるために、試料処理装置の筐体の密封用底部部材の貫通孔を介して筐体に挿入することができる。組み立てられると、弁体の流体置換チャンバの長手方向軸は、試料チャンバの長手方向軸及び筐体の試薬チャンバの長手方向軸に実質的に平行であり得る。弁体のベース部は、筐体の下に配置され、
図2A及び
図2Bに示すように、筐体の密封用底部部材としっかりと(例えば、液密に)嵌合するように構成することができる。
【0044】
弁体のベース部は円盤形状で提供されることができる。弁体の流体置換チャンバは、円筒形状で提供されることができる。弁体の流体置換チャンバは、所定の容積を有するチャンバを備えることができる。流体置換チャンバの断面は、円形、楕円形、長方形、正方形、三角形などとすることができる。流体置換チャンバの遠位端(すなわち、弁体のベース部から離れた端部)は開いていることができるが、流体置換チャンバの近位端(すなわち、弁体のベース部に結合された端部)は、ベース部の流体チャネルと流体連通することができる。流体チャネルは、熱溶着又は熱接合プロセスを使用して形成することができる。流体チャネルの断面積は、流体移送を可能にすることができる。流体ポート3013は、弁体のベース部に設けることができる。流体チャネル3014をベース部に設けて、流体置換チャンバ3012の内部容積を流体ポート3013と流体連通させることができる。場合によっては、流体ポートは、試料処理装置の筐体に面するベースの側面の半径方向縁部に近接した位置に設けることができる。1つの流体ポート及び1つの流体チャネルのみが
図4及び
図5の実施形態に示されているが、複数の流体ポート及び複数の流体チャネルを弁体のベース部に設けることができ、複数の流体チャネルの各々は、流体置換チャンバの内部容積を対応する流体ポートと流体連通する。
【0045】
場合によっては、弁体のベース部は、本開示の試料処理装置を動作させるための消耗操作機構と結合するためのベース係合3015を含むことができる。場合によっては、弁嵌合部3016をベース係合部に設けることができる。弁嵌合部分は、例えば、消耗操作機構の対応する突起又は溝と係合するように構成された溝又は突起を含むことができ、それによって消耗操作機構によって筐体に対して弁体を調整する(例えば、回転)。
【0046】
弁体の流体置換チャンバは、圧力調整部材1027と結合することができる。圧力調整部材は、流体置換チャンバ内の圧力を変化させるように構成することができる。試料処理装置の弁体の断面図である
図5に示すように、圧力調整部材は、流体置換チャンバの内壁と強固に嵌合するプランジャ又はピストンとすることができる。本開示の試料処理装置が消耗操作機構に結合されると、圧力調整部材を消耗操作機構のシャフトに結合することができ、消耗操作機構のシャフトの作用下で、弁体のベース部に対する(例えば、
図5の上下方向において)圧力調整部材の流体置換チャンバ内の移動を可能にする。圧力調整部材の置換を制限するために、1又は複数の置換制限部材を流体置換チャンバに設けることができる。場合によっては、圧力調整部材が置換制限部材と係合するときに圧力調整部材の更なる移動を防止するために、流体置換チャンバの内壁に1又は複数の突起、フランジリング、段部又は縮径部品を設けることができる。場合によっては、圧力調整部材は、流体置換チャンバ内で1又は複数の置換制限部材を横切って移動することができる。圧力調整部材が置換制限部材を横切って移動すると、流体置換チャンバ内の圧力調整部材の置換量を示す信号を生成することができる。いくつかの例では、圧力調整部材は、置換制限部材の少なくとも1つを横切って移動することができず、その結果、流体置換チャンバ内の圧力調整部材の更なる移動は、置換制限部材によって阻止される。
【0047】
流体置換チャンバ内の圧力の変化は、流体置換チャンバ内の圧力調整部材の直線運動によって発生させることができる。流体置換チャンバ内の圧力が低下すると、流体ポート3013及び流体チャネル3014を介して流体を流体置換チャンバに引き込むことができる。流体置換チャンバ内の圧力が上昇すると、流体チャネル3014及び流体ポート3013を介して流体を流体置換チャンバから排出することができる。流体置換チャンバ内の1又は複数の置換制限部材を使用して、流体置換チャンバ内の圧力変化量を制御又は示すことができる。場合によっては、圧力調整部材は、本開示の試料処理装置の一部であってもよい。例えば、製造される試料処理装置の一部として、弁体の流体置換チャンバにプランジャ又はピストンを設けることができる。別の例では、圧力調整部材は、本開示の試料処理装置の一部でなくてもよい。この場合、圧力調整部材は、本開示の試料処理装置が消耗操作機構に結合されたときに、消耗操作機構によって設けられ、弁体の流体置換チャンバ内に配置され得る。
【0048】
図6は、例示的な試料処理装置の動作原理を示す概略図である。弁体301のベース部3011は、筐体101の下方に位置することができる。弁体の流体置換チャンバ3012は、筐体の底部から(例えば、筐体の密封用底部部材の貫通孔を介して)筐体に挿入することができる。弁体の流体置換チャンバが筐体に挿入される位置は、筐体の底部の幾何学的中心の近くにあるか、又は筐体の底部の幾何学的中心からオフセットすることができる。弁体の流体置換チャンバが筐体に挿入されると、流体置換チャンバの長手方向軸は、試料チャンバ1011及び1又は複数の試薬チャンバ1013の長手方向軸と実質的に平行であり得る。
図7Aは、例示的な試料処理装置における、筐体内のチャンバ及び弁体の流体置換チャンバの配置及び相対位置を示す図である。いくつかの例では、弁体の流体置換チャンバ3012は、試料チャンバ1011及び1又は複数の試薬チャンバ1013によって囲まれ得る。(
図7Aに示すように)弁体の流体置換チャンバの長手方向軸に垂直な方向において、弁体の流体置換チャンバの長手方向軸は、試料チャンバ及び1又は複数の試薬チャンバの長手方向軸によって囲まれた幾何学的形状の幾何学的中心に配置されることができる。
図7Aに示す例では、試料チャンバ及び試薬チャンバの長手方向軸は、上面図で実質的に正方形又は円形を形成することができ、弁体の流体置換チャンバは、長手方向軸を実質的に正方形又は円形の幾何学的中心に配置されることができる。
【0049】
弁体は、試料処理装置の筐体に対してその長手方向軸の周りで回転可能に調整可能であり得る。いくつかの実施形態では、試料処理装置が消耗操作機構と嵌合すると、弁体のベース部に設けられた弁嵌合部3016(例えば、溝又は突起)は、消耗操作機構の対応する突起又は溝と係合することができ、消耗操作機構の駆動下で試料処理装置の筐体に対する弁体の回転を可能にする。筐体に対する弁体の相対回転は、弁体のベース部の流体ポート3013を、試料チャンバ1011の底部開口部、1又は複数の試薬チャンバ1013のうちの1つの底部開口部、又は反応容器201の流体入口と、選択的に流体連通するように配置することができ、それにより、弁体の流体置換チャンバ3012の内部容積は、弁体のベース部の流体チャネル3014及び流体ポート3013を介して、試料チャンバ1011の内部容積、1又は複数の試薬チャンバ1013のうちの1つの内部容積、及び/又は反応容器201の流体入口と、選択的に流体連通する。1つの流体ポート及び1つの流体チャネルのみが
図6に示されているが、複数の流体ポート及び複数の流体チャネルを弁体のベース部に設けることができ、複数の流体チャネルの各々は、流体置換チャンバの内部容積を対応する流体ポートと流体連通する。このようにして、弁体の流体置換チャンバの内部容積は、試料チャンバ1011の内部容積及び1又は複数の試薬チャンバ1013のうちの1又は複数の内部容積と同時に流体連通することができる。複数の流体ポート及び複数の流体チャネルが弁体のベース部に設けられる実施形態では、弁体の流体置換チャンバの内部容積と流体連通する試料チャンバの内部容積及び1又は複数の試薬チャンバの内部容積の数は、弁体のベース部上の複数の流体ポートの位置及び配置を変更することによって同時に制御することができる。例えば、筐体が1つの試料チャンバ及び3つの試薬チャンバを有する実施形態では、筐体に対する弁体の回転位置を制御することによって、弁体の流体置換チャンバの内部容積は、特定のタイミングで、(i)試料チャンバの内部容積のみ、(ii)3つの試薬チャンバの内部容積のうちの1つのみ、(iii)3つの試薬チャンバの内部容積のうちの2つ、(iv)3つの試薬チャンバのすべての内部容積、(v)試料チャンバの内部容積及び3つの試薬チャンバの内部容積のうちの1つ、(vi)試料チャンバの内部容積及び3つの試薬チャンバの内部容積のうちの2つ、又は(vii)試料チャンバの内部容積及び3つの試薬チャンバのすべての内部容積と選択的に流体連通することができる。
【0050】
圧力調整部材1027は、弁体の流体置換チャンバ内に少なくとも部分的に配置することができる。圧力調整部材は、弁体の流体置換チャンバの内壁としっかりと嵌合するプランジャ又はピストンと、プランジャ又はピストンに結合された接続ロッドとを備えることができる。プランジャ又はピストン及び/又は接続ロッドは、本開示の試料処理装置の構成要素であり得る。あるいは、プランジャ又はピストン及び/又は接続ロッドは、本開示の試料処理装置を操作する消耗操作機構の構成要素であり得る。弁体の流体置換チャンバ内の圧力調整部材の移動は、流体置換チャンバ内の圧力を変化させることができる。流体置換チャンバ内の圧力の低下は、試料チャンバ及び/又は(1又は複数の)試薬チャンバの(1又は複数の)底部開口部、弁体のベース部の流体ポート3013、及び弁体のベース部の流体チャネル3014を介して、試料チャンバ及び/又は試薬チャンバから流体を流体置換チャンバの容積内に引き込むことができる。流体置換チャンバ内の圧力の増加は、流体を、流体置換チャンバの容積から、弁体のベース部の流体チャネル3014、弁体のベース部の流体ポート3013、並びに試料チャンバ及び/又は(1又は複数の)試薬チャンバの(1又は複数の)底部開口部を介して、試料チャンバ、試薬チャンバ及び/又は反応容器に追い出すことができる。引き込まれる又は排出される流体の量は、弁体の流体置換チャンバ内の圧力調整部材の置換を制御することによって調整することができる。本明細書で上述したように、弁体の流体置換チャンバの内部容積と流体連通する試料チャンバの内部容積及び1又は複数の試薬チャンバの内部容積の数は、弁体のベース部上の複数の流体ポートの位置及び配置を変更することによって同時に制御することができる。例えば、筐体に対して弁体のベース部を回転させることによって、弁体の流体置換チャンバは、試料チャンバ、1又は複数の試薬チャンバ及び/又は反応容器の流体入口のうちの1又は複数と選択的に流体連通することができる。続いて、弁体の流体置換チャンバ内の圧力調整部材の置換の方向及び量を操作することによって、所定量の流体を試料チャンバ及び/又は試薬チャンバから弁体の流体置換チャンバ内に引き込むことができ、あるいは所定量の流体を弁体の流体置換チャンバから選択された試料チャンバ、試薬チャンバ及び/又は反応容器内に駆動することができる。
【0051】
筐体に対する弁体のベース部の回転位置は、弁体のベース係合3015上のインジケータによって視覚的に示すことができる。
図7Bに示す例では、弁体のベース係合3015の底面上の矢印記号は、弁体のベース部3011における流体ポート3013の位置に対応することができる(例えば、
図7Bでは、流体ポート3013及び矢印記号は、弁体のベース部3011の両側に配置することができる)。このようにして、筐体に対する弁体の回転中に、流体ポートの位置と、試料チャンバ、1又は複数の試薬チャンバ及び/又は反応容器の流体入口のうちのいずれが現在流体ポートと流体連通しているかを示す視覚的表示を提供することができる。
図7Bに示すように、弁体のベース部上の流体ポートは、反応容器の流体入口と流体連通することができる。圧力調整部材を操作して(例えば、弁体の流体置換チャンバ内で圧力調整部材を下方に押圧する)、弁体の流体置換チャンバ内の圧力を上昇させることができ、その結果、弁体の流体置換チャンバ内の流体の少なくとも一部が、本体のベース部内の流体チャネル、弁体のベース部上の流体ポート、及び反応容器の流体入口を介して反応容器内に駆動される。
図7Bに示す位置から開始して、弁体の流体置換チャンバは、弁体を時計回り又は反時計回りに回転させることによって、試料チャンバ又は1又は複数の試薬チャンバと選択的に流体連通することができる。初期状態では、本開示の試料処理装置の弁体の流体置換チャンバは、試料処理装置の筐体内の試料チャンバ又は任意の試薬チャンバから流体的に隔離され得る。例えば、初期状態では、試料処理装置の弁体のベース部上の流体ポートは、試料処理装置の筐体内の任意のチャンバの底部開口部からオフセットされ得る。
【0052】
図8は、本開示の別の例示的な試料処理装置の筐体内のチャンバの配置を示す図である。弁体の流体置換チャンバ8012は、試料チャンバ8011及び1又は複数の試薬チャンバによって取り囲まれ得る。弁体の流体置換チャンバの長手方向軸に垂直な方向において、弁体の流体置換チャンバの長手方向軸は、試料チャンバ及び1又は複数の試薬チャンバの長手方向軸によって囲まれた幾何学的形状(例えば、円)の幾何学的中心(例えば、中心点)に配置することができる。いくつかの例では、複数の試薬チャンバは、すすぎ溶液チャンバ8022、再構成緩衝液チャンバ8023、付着防止すすぎ溶液チャンバ8024、核酸抽出チャンバ8025及び凍結乾燥ペレットチャンバ8026から選択されるチャンバを含むことができる。いくつかの実施形態では、試料処理装置の筐体は、1又は複数の廃液チャンバ8021及び/又は予備チャンバなどの1又は複数の非試薬チャンバを更に含むことができる。
【0053】
図9は、生体試料から核酸を抽出する際に磁気ビーズを使用することができる、本開示の例示的な試料処理装置の構造を示す。いくつかの実施形態では、磁気ビーズを核酸抽出チャンバ内に予め保存することができる。磁気ビーズは、高塩、低PH溶液中で核酸を吸着し、低塩溶液中で磁気ビーズの表面から核酸を放出するように構成することができる。このようにして、磁気ビーズを使用して生体試料から核酸を抽出することができる。磁気ビーズは、ナノ磁気ビーズ、例えばシリコーンヒドロキシル磁気ビーズ又はカルボキシル磁気ビーズであり得る。いくつかの例では、磁気ビーズは、酸化鉄又は酸化第2鉄の磁気微小球体と、活性官能基を含有するシリカなどの様々な材料と、を含む球状粒子であり得る。磁気ビーズは、瞬間的な磁気応答性、すなわち超常磁性で構成することができる。したがって、磁気ビーズは、外部磁場の下で位置決め、誘導及び分離することができる。
【0054】
図9に示すように、試料処理装置の筐体101には開口部を設けることができ、この開口部を通して磁性導電性構成要素9010を核酸抽出チャンバに磁気的に結合させることができ、それによって外部磁場を核酸抽出チャンバに結合させることができる。外部磁場は、核酸抽出チャンバ内の磁気ビーズを操作するように調整することができる。磁性導電性構成要素9010は、鉄、ニッケルなどの高い透磁率を有する材料で作ることができる。
【0055】
図10は、試料処理装置に結合された例示的な反応容器の断面図である。試料処理装置は、筐体101及び弁体を備えることができる。筐体は、試料チャンバと、場合により、1又は複数の試薬チャンバと、を有することができる。弁体は、ベース部と、ベース部と連通する流体置換チャンバと、を備えることができる。弁体の流体置換チャンバは、弁体を筐体と嵌合させるために、試料処理装置の筐体の底部の貫通孔を通して筐体に挿入することができる。消耗操作機構の制御下で、弁体は、筐体に対して回転可能に調整可能であり、弁体の流体置換チャンバを、流体チャネル及び弁体のベース部の流体ポートを介して筐体の試料チャンバ又は(1又は複数の)試薬チャンバと選択的に結合することができる。筐体は、反応容器の反応容器流体入口に結合された第1の端部(例えば、上端部)と、弁体のベース部の流体ポートに選択的に結合された第2の端部(例えば、下端部)と、を有する反応混合物チャネルを含むことができる。
図10に示す状態では、弁体の流体置換チャンバ3012は、流体チャネル及び弁体のベース部の流体ポートを介して筐体内の反応混合物チャネルの第2の一端(例えば、下端部)と流体連通することができる。
図10に示すように、反応容器201は、筐体101と流体的に結合することができる。例えば、反応容器201を筐体の反応容器インタフェースに挿入することができ、反応容器201の反応容器流体入口を筐体の反応混合物チャネルの第1端(例えば、上端部)と流体的に結合させることができる。
【0056】
プランジャなどの圧力調整部材は、弁体の流体置換チャンバ内に設けることができる。流体置換チャンバ内の圧力は、圧力調整部材を操作することによって変更することができ、それによって液体を流体置換チャンバ内に駆動するか、又は流体置換チャンバから液体を排出する。
図10に示す状態では、圧力調整部材を操作して(例えば、プランジャを弁体のベース部に向かって押し下げる)、流体(例えば、反応混合物)を、弁体のベース部の流体チャネル及び流体ポートを介して反応容器の反応容器流体入口に向かって駆動することによって、弁体の流体置換チャンバ内の圧力を上昇させることができる。弁体の流体置換チャンバ内の圧力が更に上昇すると、反応混合物は、反応容器の反応容器流体入口を介して反応容器内の反応領域内に駆動される。
【0057】
本開示の例示的な反応容器は、薄板形状で提供され得る。反応容器は、核酸増幅のための熱サイクル装置及び/又は反応生成物を検出するための検出装置との嵌合に適した寸法及び形状にすることができる。場合によっては、反応容器は、熱サイクル装置及び/又は検出装置に設けられたスロットへの挿入に適した寸法及び形状にすることができる。いくつかの例では、反応容器は、フレームと、フレームを挟む2つの壁と、を含むことができる。フレームは、複数のブラケットを有する剛性構造とすることができる。2つの壁は、弾性材料で作ることができる。2つの壁は、フレームに取り付けられ、それによってフレーム内に少なくとも1つの反応領域、並びに反応領域と流体連通する反応容器流体入力チャネル及び反応容器流体出力チャネルを形成するシート又はフィルムであり得る。場合によっては、2つの壁は、熱サイクル装置内の加熱部材及び/又は冷却部材と接触することができ、それによって反応領域内の反応混合物を効率的に加熱及び/又は冷却することができる。反応容器流体入力チャネル及び反応容器流体出力チャネルはそれぞれ、反応容器流体入口及び反応容器流体出口と流体連通することができる。試料処理装置の筐体内のチャンバ又は弁体の流体置換チャンバからの流体は、反応容器の反応容器流体入口を介して反応容器内に、続いて反応容器流体入力チャネルを介して反応領域内に駆動され、反応領域内で増幅反応を受けることができる。気体及び液体を含む流体は、反応容器流体出力チャネル及び反応容器流体出口を介して反応容器の反応領域から排出されることができる。
【0058】
図11に示す例示的な実施形態では、反応容器の反応容器流体出口2013に弾性密封部材2017を設けることができる。弾性密封部材は、反応容器の反応容器流体出口を気密かつ液密に密封するように構成することができる。弾性密封部材は、弾性材料で作ることができる。圧力調整部材によって生成された上昇した圧力下で反応混合物が弁体の流体置換チャンバから反応容器の反応容器流体入口を介して反応容器に入ると、反応容器流体入力チャネル、反応領域及び反応容器流体出力チャネル内に存在する空気は、反応容器流体出口2013を介して弾性密封部材2017内に駆動され得る。圧力調整部材によって生成される圧力が更に増加するにつれて、反応混合物の一部は弾性密封部材2017内に駆動され得る。弾性密封部材の容積は、弾性密封部材に入る空気及び/又は反応混合物により増加させることができる。弾性材料の弾性により、弾性密封部材の容積の増加は、反応容器流体出口2013及び反応容器流体出力チャネルを介して反応領域に作用する逆圧力を生成することができる。逆圧力下では、反応領域の2つの壁は外側に膨張することができ、それにより、反応領域の2つの壁を熱サイクル装置の加熱及び/又は冷却部材に更に適合させることができる。このようにして、増幅反応を促進する反応領域内の反応混合物の効率的な加熱及び冷却を達成することができる。弾性密封部材は、様々な内部容積で構成することができる。いくつかの例では、弾性密封部材の内部容積は、反応容器の寸法、反応容器流体入力チャネルの寸法、反応領域の寸法、反応容器流体出力チャネルの寸法、反応容器内で起こる反応のタイプ、及び反応混合物の量のうちの少なくとも1つに基づいて決定することができる。弾性密封部材の内部容積は、反応プロセス中に、反応領域の2つの壁が弾性密封部材によって生成された逆圧力下で外側に膨張し、熱サイクル装置の加熱及び/又は冷却部材にしっかりと嵌合するように決定することができる。
【0059】
図10のA部の拡大図である
図11を参照すると、プロセスにおいて、反応混合物は、弁体のベース部の流体チャネルを介して弁体の流体置換チャンバから反応容器に入り、反応混合物チャネル3017、反応容器流体入力チャネル2014、反応領域及び反応容器流体出力チャネル2015に元々存在する空気は、反応容器201の反応容器流体出口2013を密封する弾性密封部材2017内に駆動されることができる。弾性密封部材は空気と共に膨張し、反応領域に作用する逆圧力を生成する。逆圧力の作用下では、反応領域の2つの壁は外側に移動することができ、それにより、反応領域の2つの壁を熱サイクル装置の加熱及び/又は冷却部材に更に適合させることができる。このようにして、増幅反応を促進する反応領域内の反応混合物の効率的な加熱及び冷却を達成することができる。弾性密封部材は、バルーンとして提供されることができる。弾性密封部材のベース部は、反応容器201の反応容器流体出口2013の近くに設けられた溝内に固定することができる。反応容器が試料処理装置の筐体に結合されている場合(例えば、
図3に示す反応容器インタフェース1016において)、反応容器の反応容器流体出口付近の溝と試料処理装置の筐体との間に隙間を形成することができる。この隙間には、
図11に示すように、弾性密封部材のベース部を収容固定することができる。
【0060】
反応容器が試料処理装置の筐体に結合されたときに、反応容器の反応容器流体入口と筐体の反応混合物チャネル3017との間の気密/液密接続を確実にするために、筐体101の反応容器インタフェース1016と反応容器の反応容器流体入口との間に弾性密封部材部材(ガスケットなど)を設けることができる。いくつかの例では、弾性密封部材部材を収容するために、反応容器の反応容器流体入口の近く及び/又は筐体の反応容器インタフェースに溝を設けることができる。弾性密封部材部材は、半径方向及び軸方向の両方で密封する密封特徴部(例えば、突起)を有することができ、それによって軸方向及び半径方向の両方で液体の密封を達成する。
【0061】
場合によっては、
図12に示すように、反応容器を覆うために被覆部材1210を設けることができる。被覆部材は取り外し可能であり得る。例えば、PCR反応のために反応容器を熱サイクル装置に結合する前に、被覆部材は反応容器を覆ったままにして、オペレータ又は他の物体が反応容器に触れるのを防ぐことができる。PCR反応を行うために反応容器を熱サイクル装置に結合すると、被覆部材を取り外すことができる。
【0062】
本開示の試料処理装置は、自動消耗操作機構によって操作され、試料の自動処理を実現することができる。
図13は、本開示の例示的な試料処理装置と嵌合する消耗操作機構を示す図である。
図13に示すように、消耗操作機構900は、位置決めアセンブリ901及び押圧アセンブリ902を含むことができる。位置決めアセンブリ901は、消耗操作機構の操作プラットフォームの予め設定された位置に本開示の試料処理装置100を正確に位置決めし、試料処理装置が水平方向に移動するのを防止するように構成することができる。押圧アセンブリ902は、消耗操作機構の操作プラットフォーム上の予め設定された位置で本開示の試料処理装置100を押圧して、試料処理装置が垂直方向に移動するのを防止するように構成することができる。消耗操作機構は、プランジャロッドプッシュプル機構903と、プランジャロッドプッシュプル機構903に結合されたプランジャロッド904と、を更に備えることができる。プランジャロッドプッシュプル機構は、モータによって駆動され、プランジャロッドの上下方向の動きを制御することができる。プランジャロッドプッシュプル機構によって駆動されるプランジャロッドの垂直方向の移動の精度は、少なくとも1mm、0.5mm、0.1mm、50ミクロン(μm)、40μm、30μm、20μm、10μm、5μm、4μm、3μm、又は1μmであり得る。プランジャロッドの垂直方向の並進速度は、少なくとも1mm/s、2mm/s、3mm/s、4mm/s、5mm/s、6mm/s、7mm/s、8mm/s、9mm/s、10mm/s、11mm/s、12mm/s、13mm/s、14mm/s、15mm/s、16mm/s、17mm/s、18mm/s、19mm/s、20mm/s、25mm/s、30mm/s、35mm/s、40mm/s、45mm/s又は50mm/sである。プランジャロッドの垂直方向のスラスト力は、少なくとも50ニュートン(N)、60N、70N、80N、90N、100N、110N、120N、130N、140N、150N、160N、170N、180N、190N、又は200Nとすることができる。
【0063】
本開示の試料処理装置が消耗操作機構の操作プラットフォームの予め設定された位置に位置決めされると、プランジャロッドは、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバに正確に挿入され、弁体の流体置換チャンバ内の圧力調整部材(例えば、プランジャ)と結合され得る。消耗操作機構は、モータによって駆動されるように構成された弁回転機構905を更に備えることができる。弁回転機構は、弁体のベース位相を回転させることができるように、試料処理装置の弁体のベース部と結合することができる。いくつかの例では、弁回転機構は、試料処理装置のベース部上の弁嵌合部と嵌合する結合特徴部(例えば、突起又は溝)を備えることができ、それによって試料処理装置の筐体に対して試料処理装置の弁体のベース部を回転させる。弁回転機構によって駆動される試料処理装置の弁体のベース部の回転の精度は、少なくとも5度、4度、3度、2度、1度、0.5度、0.1度、0.05度又は0.01度の中心角とすることができ、試料処理装置の弁体のベース部上の流体ポートと試料処理装置の各チャンバの底部開口部との正確な位置合わせを可能にする。弁回転機構によって駆動される試料処理装置の弁体のベース部の回転速度は、少なくとも10度/秒、20度/秒、30度/秒、40度/秒、50度/秒、60度/秒、70度/秒、80度/秒、90度/秒、100度/秒、110度/秒、120度/秒、130度/秒、140度/秒、150度/秒、160度/秒、170度/秒又は180度/秒とすることができる。弁回転機構によって駆動される試料処理装置の弁体のベース部のトルクは、少なくとも1ニュートンメートル(Nm)、2Nm、3Nm、4Nm、5Nm、6Nm、7Nm、8Nm、9Nm、10Nm、11Nm、12Nm、13Nm、14Nm、15Nm、16Nm、17Nm、18Nm、19Nm、又は20Nmとすることができる。
【0064】
消耗操作機構は、予め設定されたワークフローに基づいて試料処理装置を操作するように構成することができる。消耗操作機構のワークフローは、測定される生体試料のタイプ、測定されるパラメータ、及び試料処理装置のモデルに基づいて変化し得る。オペレータは、ワークフローのパラメータを手動で入力することができる。あるいは、オペレータは、一連の事前設定パラメータからワークフローの適切なパラメータを選択することができる。あるいは、オペレータは、試料処理装置及び/又は実験室要求フォームに添付された情報コード(例えば、バーコード、QRコード(登録商標))をスキャンして試料処理及び/又は反応に関する要件を受信することができ、制御システムは、一連の事前設定パラメータからワークフローの適切なパラメータを自動的に選択することができる。あるいは、システムは、試料処理装置及び/又は実験室要求フォームに添付された情報コード(例えば、バーコード、QRコード(登録商標))を自動的にスキャンして、試料処理及び/又は反応に関する要件を受信し、一連の事前設定パラメータからワークフローの適切なパラメータを自動的に選択することができる。
【0065】
本開示は、本明細書に記載の方法を実施するようにプログラムされたコンピュータシステムを提供する。
図14は、本開示によって提供される試料処理方法/検出方法を実施するようにプログラム又は他の方法で構成されたコンピュータシステム1401を示す。コンピュータシステム1401は、本開示の方法の様々な態様を処理することができる。コンピュータシステム1401は、ユーザの電子デバイス、又は電子デバイスに対して遠隔に配置されたコンピュータシステムとすることができる。電子デバイスは、モバイル電子デバイスとすることができる。
【0066】
コンピュータシステム1401は、シングルコア若しくはマルチコアプロセッサ、又は並列処理のための複数のプロセッサとすることができる中央処理装置(CPU、本明細書では 「プロセッサ」 及び 「コンピュータプロセッサ」)1405を備える。コンピュータシステム1401はまた、メモリ又はメモリ位置1410(例えば、ランダムアクセスメモリ、読み出し専用メモリ、フラッシュメモリ)と、電子記憶ユニット1415(例えば、ハードディスク)と、1又は複数の他のシステムと通信するための通信インタフェース1420(例えば、ネットワークアダプタ)と、キャッシュ、他のメモリ、データストレージ、及び/又は電子ディスプレイアダプタなどの周辺デバイス1425と、を備える。メモリ1410、記憶ユニット1415、インタフェース1420及び周辺デバイス1425は、マザーボードなどの通信バス(実線)を介してCPU1405と通信する。記憶ユニット1415は、データを記憶するためのデータ記憶ユニット(又はデータリポジトリ)とすることができる。コンピュータシステム1401は、通信インタフェース1420の助けを借りてコンピュータネットワーク(「ネットワーク」)1430に動作可能に結合することができる。ネットワーク1430は、インターネット、インターネット及び/若しくはエクストラネット、又はインターネットと通信するイントラネット及び/若しくはエクストラネットとすることができる。ネットワーク1430は場合によっては、電気通信及び/又はデータネットワークである。ネットワーク1430は、クラウドコンピューティングなどの分散コンピューティングを可能にすることができる1又は複数のコンピュータサーバを含むことができる。ネットワーク1430は、場合によっては、コンピュータシステム1401の助けを借りて、コンピュータシステム1401に結合されたデバイスがクライアント又はサーバとして動作することを可能にすることができるピアツーピアネットワークを実装することができる。
【0067】
CPU1405は、プログラム又はソフトウェアで具現化することができる一連の機械可読命令を実行することができる。命令は、メモリ1410などのメモリ位置に記憶することができる。命令は、CPU1405に向けることができ、CPU1405は、その後、本開示の方法を実施するようにCPUをプログラム又は構成することができる。CPU1405によって実行される動作の例は、フェッチ、デコード、実行、及びライトバックを含むことができる。
【0068】
CPU1405は、集積回路などの回路の一部とすることができる。システム1401の1又は複数の他の構成要素を回路に含めることができる。場合によっては、回路は特定用途向け集積回路(ASIC)である。
【0069】
記憶ユニット1415は、ドライバ、ライブラリ及び保存されたプログラムなどのファイルを記憶することができる。記憶ユニット1415は、ユーザデータ、例えば、ユーザプレファレンス及びユーザプログラムを記憶することができる。コンピュータシステム1401は、場合によっては、イントラネット又はインターネットを介してコンピュータシステム1401と通信するリモートサーバ上に位置するなど、コンピュータシステム1401の外部にある1又は複数の追加のデータ記憶ユニットを含むことができる。
【0070】
コンピュータシステム1401は、ネットワーク1430を介して1又は複数のリモートコンピュータシステムと通信することができる。例えば、コンピュータシステム1401は、ユーザのリモートコンピュータシステムと通信することができる。リモートコンピュータシステムの例には、パーソナルコンピュータ(例えば、ポータブルPC)、スレート若しくはタブレットPC(例えば、Apple(登録商標)iPad(登録商標)、Samsung Galaxy Tab(SAMSUNG及びSAMSUNG GALAXY TABは登録商標)、電話、スマートフォン(例えば、Apple(登録商標)iPhone(登録商標)、Android(登録商標)対応デバイス、Blackberry(登録商標))、又は携帯情報端末が含まれる。ユーザは、ネットワーク1430を介してコンピュータシステム1401にアクセスすることができる。
【0071】
本明細書に記載の方法は、例えばメモリ1410又は電子記憶ユニット1415などのコンピュータシステム1401の電子記憶場所に記憶された機械(例えば、コンピュータプロセッサ)実行可能コードによって実施することができる。機械実行可能又は機械可読コードは、ソフトウェアの形態で提供することができる。使用中、コードはプロセッサ1405によって実行することができる。場合によっては、コードは、記憶ユニット1415から取得され、プロセッサ1405による容易なアクセスのためにメモリ1410に記憶され得る。場合によっては、電子記憶ユニット1415を除外することができ、機械実行可能命令はメモリ1410に記憶される。
【0072】
コードは、コードを実行するように適合されたプロセッサを有する機械で使用するために事前コンパイル及び構成することができ、又はランタイム中に解釈又はコンパイルすることができる。コードは、コードが予めコンパイルされ、解釈され、又はコンパイルされたように実行することを可能にするように選択することができるプログラミング言語で供給することができる。
【0073】
コンピュータシステム1401など、本明細書で提供されるシステム及び方法の態様は、プログラミングにおいて具現化することができる。本技術の様々な態様は、典型的には機械(又はプロセッサ)実行可能コード及び/又はある種の機械可読媒体上に担持される若しくは機械可読媒体内で具現化される関連データの形態の 「製品」 又は 「製造物品」 と考えることができる。機械実行可能コードは、メモリ(例えば、読み出し専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)又はハードディスクなどの電子記憶ユニットに記憶することができる。「ストレージ」 タイプの媒体は、コンピュータ、プロセッサなどの有形メモリ、又は様々な半導体メモリ、テープドライブ、ディスクドライブなどの関連モジュールのいずれか又はすべてを含むことができ、ソフトウェアプログラミングのためにいつでも非一時的記憶を提供することができる。ソフトウェアの全部又は一部は、インターネット又は様々な他の電気通信ネットワークを介して通信することができる。そのような通信は、例えば、あるコンピュータ又はプロセッサから別のコンピュータ又はプロセッサへの、例えば管理サーバ又はホストコンピュータからアプリケーションサーバのコンピュータプラットフォームへのソフトウェアのローディングを可能にすることができる。したがって、ソフトウェア要素を担持することができる別のタイプの媒体は、ローカルデバイス間の物理インタフェース、有線及び光の地上ネットワーク、並びに様々なエアリンクを介して使用されるような、光波、電気波、及び電磁波を含む。有線又は無線リンク、光リンクなど、そのような波を搬送する物理的要素も、ソフトウェアを担持する媒体と考えることができる。本明細書で使用される場合、非一時的で有形の「ストレージ」媒体に限定されない限り、コンピュータ又は機械の「可読媒体」などの用語は、実行のためにプロセッサに命令を提供することに関与する任意の媒体を指す。
【0074】
したがって、コンピュータ実行可能コードなどの機械可読媒体は、有形記憶媒体、搬送波媒体、又は物理伝送媒体を含むがこれらに限定されない多くの形態をとることができる。不揮発性記憶媒体は、例えば、図面に示されるデータベースなどを実装するために使用することができる任意の(1又は複数の)コンピュータなどの記憶デバイスのいずれかなどの光ディスク又は磁気ディスクを含む。揮発性記憶媒体は、そのようなコンピュータプラットフォームのメインメモリなどの動的メモリを含む。有形伝送媒体は同軸ケーブルと、コンピュータシステム内にバスを備えるワイヤを含む、銅ワイヤ及び光ファイバと、を含む。搬送波伝送媒体は、電気信号若しくは電磁信号、又は無線周波数(RF)及び赤外線(IR)データ通信中に生成されるような音響波若しくは光波の形態をとることができる。したがって、コンピュータ可読媒体の一般的な形態は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD-ROM、DVD又はDVD-ROM、任意の他の光学媒体、パンチカード紙テープ、穴のパターンを有する任意の他の物理的記憶媒体、RAM、ROM、PROM及びEPROM、FLASH-EPROM、任意の他のメモリチップ又はカートリッジ、データ又は命令を搬送する搬送波、そのような搬送波を搬送するケーブル又はリンク、又はコンピュータがプログラミングコード及び/又はデータを読み取ることができる任意の他の媒体を含む。これらの形態のコンピュータ可読媒体の多くは、実行のために1又は複数の命令の1又は複数のシーケンスをプロセッサに搬送することに関与することができる。
【0075】
コンピュータシステム1401は、例えば、核酸配列、濃縮核酸試料、メチル化プロファイル、発現プロファイル、及びメチル化又は発現プロファイルの分析を提供するためのユーザインタフェース(UI)1440を含む電子ディスプレイ1435を含むか、又はそれと通信することができる。UIの例には、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)及びウェブベースのユーザインタフェースが含まれるが、これらに限定されない。
[実施例]
[実施例1]
1つの試料チャンバ及び3つの試薬チャンバを有する試料処理装置
【0076】
例示的な実施形態では、試料チャンバと、試料処理装置の筐体内に3つの試薬チャンバと、を設けることができる。試料保存溶液は、試料チャンバに予め充填することができる。生物学的サンプリングの後、サンプリングスワブを試料チャンバ内に直接配置して、サンプリングスワブを試料保存溶液と接触させることができる。第1の試薬チャンバは、試料処理溶液が予め充填された処理溶液チャンバとすることができる。試料処理溶液と生体試料とを比例的に混合して処理済み試料を作製することができる。第2の試薬チャンバは、再構成緩衝液が予め充填された再構成緩衝液チャンバであり得る。第3の試薬チャンバは、PCR反応溶液凍結乾燥粉末や試薬ペレット等の固体試薬が予め充填された固体試薬チャンバとすることができる。PCR反応液凍結乾燥粉末は、例えば、RT酵素、taq酵素及びプライマープローブを含み、PCR反応溶液を調製することができる。PCR反応液凍結乾燥粉末は、再構成緩衝液で溶解した後、第1の試薬チャンバで試料処理溶液を調製した処理済み試料と混合することができる。このようにして、PCR増幅反応を行うための反応混合物を調製することができる。
【0077】
例示的な実施形態では、本開示の試料処理装置を使用して試料を処理するための例示的なワークフローは、以下のステップを含むことができる。
【0078】
ステップ1.第1のステップは、試料処理装置の試料チャンバの取り外し可能な密封部材を取り外すステップと、生体試料(例えば、喉スワブ又は鼻スワブ)を含むスワブを試料チャンバに配置するステップと、密封部材を締めるステップとを含むことができる。試料チャンバに設けられたフィルタは、生体試料中の不純物等の大きな粒子状物質を濾過することができる。試料処理装置は、遠心分離のために遠心分離機に配置されていてもよい。これにより、試料処理装置の各チャンバ内の液体を各チャンバの底部に移動させることができる。例えば、液体は、各チャンバ内の液体が密封用底部部材の貫通孔を介して弁体のベース部内の流体チャネル内に駆動され得るように、
図3に示す密封用底部部材の貫通孔に隣接してすぐに置換され得る。
【0079】
ステップ2:第2のステップは、予め設定された試料処理が試料処理装置内で実行されるように、消耗操作機構上に試料処理装置を位置決めして固定し、予め設定されたワークフローに基づいて消耗操作機構を操作することを含むことができる。
【0080】
例示的な実施形態では、消耗操作機構による試料処理装置の操作は、以下のプロセスを含むことができる。
【0081】
(a)消耗操作機構の位置決めアセンブリ及び押圧アセンブリの助けを借りて、試料処理装置を消耗操作機構の操作プラットフォーム上の予め設定された位置に固定することができ、それにより、水平方向及び垂直方向の両方における試料処理装置の移動を回避することができる。
【0082】
(b)消耗操作機構のプランジャロッドプッシュプル機構のプランジャロッドは、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバに挿入され、弁体の流体置換チャンバ内の圧力調整部材(例えば、プランジャ)と結合することができる。試料処理装置の初期状態では、流体置換チャンバは、試料チャンバ又は弁体の任意の試薬チャンバから流体的に隔離することができる。いくつかの例では、試料処理装置の弁体のベース部上の流体ポートは、試料処理装置内の任意のチャンバの底部開口部と整列していない。いくつかの例では、試料処理装置の弁体のベース部上の流体ポートは、試料処理装置の筐体内の反応混合物チャネル3017と整列させることができる。
【0083】
(c)消耗操作機構の弁回転機構は、試料処理装置の弁体のベース部(例えば、弁体のベース部に設けられた弁嵌合部)に結合可能である。試料処理装置の弁体のベース部は、弁体のベース部上の流体ポートを試料チャンバの底部開口部と位置合わせする角度で回転(例えば、時計回り)することができる。
【0084】
(d)消耗操作機構のプランジャロッドプッシュプル機構のプランジャロッドは、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバ内のプランジャを上方に移動させることができる。弁体の流体置換チャンバ内のプランジャの上方への移動は、弁体の流体置換チャンバ内の圧力を低下させることができ、それによって、生体試料の量を試料処理装置の試料チャンバから、試料チャンバの底部開口部、弁体のベース部上の流体ポート、及び弁体のベース部内の流体チャネルを通って弁体の流体置換チャンバに(例えば、図面)移送することができる。
【0085】
(e)消耗操作機構の弁回転機構は、弁体のベース部上の流体ポートを処理溶液チャンバの底部開口部に合わせる角度で試料処理装置の弁体のベース部を時計回りに回転させることができる。
【0086】
(f)消耗操作機構のプランジャロッドプッシュプル機構のプランジャロッドは、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバ内のプランジャを下方に移動させることができる。弁体の流体置換チャンバ内のプランジャの下方への移動は、弁体の流体置換チャンバ内の圧力を上昇させることができ、それによって、弁体の流体置換チャンバから、弁体のベース部内の流体チャネル、弁体のベース部上の流体ポート、及び処理溶液チャンバの底部開口部を介して、処理溶液チャンバ内に生体試料の量を移送する(例えば、押圧)。処理溶液チャンバでは、生体試料と、予め充填された試料処理溶液と、を混合することができる。
【0087】
(g)消耗操作機構のプランジャロッドプッシュプル機構のプランジャロッドは、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバ内のプランジャを上方に移動させることにより、生体試料と試料処理溶液との混合液である液体の量を試料処理装置の処理溶液チャンバから試料処理装置の弁体の流体置換チャンバに引き込むことができる。
【0088】
(h)消耗操作機構の弁回転機構は、弁体のベース部上のh流体ポートを再構成緩衝液チャンバの底部開口部に合わせる角度で試料処理装置の弁体のベース部を時計回りに回転させることができる。
【0089】
(i)消耗操作機構のプランジャロッドプッシュプル機構のプランジャロッドは、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバ内のプランジャを下方に移動させることにより、生体試料と試料処理溶液との混合液である液体の量を弁体の流体置換チャンバから再構成緩衝液チャンバに駆動することができる。再構成緩衝液チャンバでは、生体試料と試料処理溶液との混合物と、予め充填された再構成緩衝液と、を混合することができる。
【0090】
(j)消耗操作機構のプランジャロッドプッシュプル機構のプランジャロッドは、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバ内のプランジャを上方に移動させることにより、生体試料、試料処理溶液及び再構成緩衝液の混合液である液体の量を再構成緩衝液チャンバから流体置換チャンバに引き込むことができる。
【0091】
(k)消耗操作機構の弁回転機構は、弁体のベース部上の流体ポートを固体試薬チャンバの底部開口部と位置合わせする角度で試料処理装置の弁体のベース部を時計回りに回転させることができる。
【0092】
(l)消耗操作機構のプランジャロッドプッシュプル機構のプランジャロッドは、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバ内のプランジャを下方に移動させることができ、それによって生体試料、試料処理溶液及び再構成緩衝液の混合物である液体の量を弁体の流体置換チャンバから固体試薬チャンバに押し込む。液体混合物は、固体試薬チャンバ内で、予め充填された凍結乾燥粉末を溶解する。
【0093】
(m)消耗操作機構のプランジャロッドプッシュプル機構のプランジャロッドは、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバ内のプランジャを上方に移動させることができ、それによって、生体試料、試料処理溶液、再構成緩衝液及び溶解した凍結乾燥粉末の混合物である液体の量を固体試薬チャンバから流体置換チャンバに引き込む。
【0094】
(n)消耗操作機構の弁回転機構は、弁体のベース部上の流体ポートを試料処理装置内の反応混合物チャネルと位置合わせする角度で試料処理装置の弁体のベース部を時計回りに回転させることができる。
図8を参照して上述したように、試料処理装置内の反応混合物チャネル3017は、反応容器201の反応容器流体入口と流体連通することができる。
【0095】
(o)消耗操作機構のプランジャロッドプッシュプル機構のプランジャロッドは、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバ内のプランジャを下方に移動させることができ、それにより、生体試料、試料処理溶液、再構成緩衝液及び溶解した凍結乾燥粉末の混合物である液体の量を流体置換チャンバから反応容器201内の反応領域に駆動する。(o)が完了すると、生体試料を処理することができ、流体を移送することができる。
【0096】
(p)所定の反応(例えば、増幅反応)及び検出が完了すると、消耗操作機構の弁回転機構は、弁体のベース部内の流体ポートを試料処理装置の筐体内の反応混合物チャネルから係合解除する角度で時計回りに試料処理装置の弁体のベース部を回転させることができる。
【0097】
(q)消耗操作機構のプランジャロッドプッシュプル機構のプランジャロッドは、消耗操作機構のプランジャロッドが弁体の流体置換チャンバ内の圧力調整部材(例えば、プランジャ)と切り離されて係合解除されるように、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバ内のプランジャを上方に移動させることができる。これにより、消耗操作機構から試料処理装置を取り外すことができる。
【0098】
別の例示的な実施形態では、消耗操作機構による試料処理装置の操作は、以下のプロセスを含むことができる。
【0099】
(a1)消耗操作機構の位置決めアセンブリ及び押圧アセンブリの助けを借りて、試料処理装置を消耗操作機構の操作プラットフォームの予め設定された位置に固定することができ、それにより、水平方向及び垂直方向の両方における試料処理装置の移動を回避することができる。
【0100】
(b1)消耗操作機構のプランジャロッドプッシュプル機構のプランジャロッドは、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバに挿入され、弁体の流体置換チャンバ内の圧力調整部材(例えば、プランジャ)と結合することができる。
【0101】
(c1)消耗操作機構の弁回転機構は、試料処理装置の弁体のベース部(例えば、弁体のベース部に設けられた弁嵌合部)に結合可能である。試料処理装置の弁体のベース部は、弁体のベース部上の流体ポートを試料チャンバの底部開口部と位置合わせする角度で回転(例えば、時計回り)することができる。
【0102】
(d1)消耗操作機構のプランジャロッドプッシュプル機構のプランジャロッドは、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバ内のプランジャを上方に移動させることができ、それにより、生体試料の量を試料処理装置の試料チャンバから弁体の流体置換チャンバ内に引き込む。
【0103】
(e1)消耗操作機構の弁回転機構は、弁体のベース部上の流体ポートを処理溶液チャンバの底部開口部に合わせる角度で試料処理装置の弁体のベース部を時計回りに回転させることができる。
【0104】
(f1)消耗操作機構のプランジャロッドプッシュプル機構のプランジャロッドは、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバ内のプランジャを更に上方に移動させることにより、試料処理液の量を処理溶液チャンバから試料処理装置の弁体の流体置換チャンバ内に引き込む。(f1)が完了すると、弁体の流体置換チャンバ内の液体は、生体試料と試料処理溶液との混合物であり得る。
【0105】
(g1)消耗操作機構の弁回転機構は、弁体のベース部上の流体ポートを再構成緩衝液チャンバの底部開口部に合わせる角度で試料処理装置の弁体のベース部を時計回りに回転させることができる。
【0106】
(h1)消耗操作機構のプランジャロッドプッシュプル機構のプランジャロッドは、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバ内のプランジャを更に上方に移動させることができ、それによって再構成緩衝液の量を再構成緩衝液チャンバから試料処理装置の弁体の流体置換チャンバに引き込む。(h1)が完了すると、弁体の流体置換チャンバ内の液体は、生体試料、試料処理溶液及び再構成緩衝液の混合物であり得る。
【0107】
(i1)消耗操作機構の弁回転機構は、弁体のベース部上の流体ポートを固体試薬チャンバの底部開口部と位置合わせする角度で試料処理装置の弁体のベース部を時計回りに回転させることができる。
【0108】
(j1)消耗操作機構のプランジャロッドプッシュプル機構のプランジャロッドは、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバ内のプランジャを下方に移動させることができ、それによって流体置換チャンバ内の液体の少なくとも一部を固体試薬チャンバ内に移送し、固体試薬チャンバ内の固体試薬(凍結乾燥粉末又は試薬ペレットなど)を溶解する。続いて、消耗操作機構のプランジャロッドプッシュプル機構のプランジャロッドは、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバ内のプランジャを上方に移動させることにより、固体試薬が溶解した液体の少なくとも一部を固体試薬チャンバから試料処理装置の弁体の流体置換チャンバ内に引き込むことができる。流体置換チャンバ内の液体混合物は、凍結乾燥粉末を溶解することができる。(j1)が完了すると、弁体の流体置換チャンバ内の液体は、生体試料、試料処理溶液、再構成緩衝液及び溶解した凍結乾燥粉末の混合物であり得る。
【0109】
(k1)消耗操作機構の弁回転機構は、弁体のベース部上の流体ポートを試料処理装置内の反応混合物チャネルと位置合わせする角度で試料処理装置の弁体のベース部を時計回りに回転させることができる。
【0110】
(l1)消耗操作機構のプランジャロッドプッシュプル機構のプランジャロッドは、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバ内のプランジャを下方に移動させることができ、それにより、液体の量を流体置換チャンバから反応容器201内の反応領域に駆動する。(l1)が完了すると、生体試料を処理することができ、流体を移送することができる。
[実施例2]
1つの試料チャンバ及び2つの試薬チャンバを有する試料処理装置
【0111】
別の例示的な実施形態では、試料処理装置の筐体内に、試料チャンバ及び2つの試薬チャンバを設けることができる。試料チャンバには、試料保存溶液及び試料処理溶液の少なくとも一方又は両方を予め充填することができる。生物学的サンプリングの後、サンプリングスワブを試料チャンバ内に直接配置して、試料保存溶液及び試料処理溶液の少なくとも一方又は両方と接触させることができる。第1の試薬チャンバは、再構成緩衝液が予め充填された再構成緩衝液チャンバであり得る。第2の試薬チャンバは、PCR反応溶液凍結乾燥粉末などの固体試薬がプレロードされた固体試薬チャンバであり得る。PCR反応液凍結乾燥粉末は、再構成緩衝液で溶解した後、試料チャンバ内で試料保存溶液及び試料処理溶液の少なくとも一方で調製された処理済み試料と混合することができる。このようにして、PCR増幅反応を行うための反応混合物を調製することができる。
【0112】
実施例2における消耗操作機構を用いた試料処理装置の動作は、実施例1で説明した動作と同様とすることができる。試料処理装置は試薬チャンバが少ないため、消耗操作機構の弁回転機構による試料処理装置の弁体のベース部の対応する回転動作や流体の移送動作を省略することができる。
[実施例3]
1つの試料チャンバを有し、試薬チャンバを有さない試料処理装置
【0113】
更に別の例示的な実施形態では、試料処理装置の筐体は、試薬チャンバを含まず1つの試料チャンバを含む。試料チャンバには、生体試料の処理に必要なすべての試薬を予め充填することができる。生物学的サンプリングの後、サンプリングスワブを試料チャンバ内に直接配置して、サンプリングスワブを液体試薬と接触させることができる。このようにして、PCR増幅反応を行うための反応混合物を調製することができる。
【0114】
消耗操作機構による試料処理装置に対する操作は、以下の処理を含むことができる。
【0115】
(1)消耗操作機構の位置決めアセンブリ及び押圧アセンブリの助けを借りて、試料処理装置を消耗操作機構の操作プラットフォーム上の予め設定された位置に固定することができ、それにより、水平方向及び垂直方向の両方における試料処理装置の移動を回避することができる。
【0116】
(2)消耗操作機構のプランジャロッドプッシュプル機構のプランジャロッドは、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバに挿入され、弁体の流体置換チャンバ内の圧力調整部材(例えば、プランジャ)と結合することができる。
【0117】
(3)消耗操作機構の弁回転機構は、弁体のベース部上の流体ポートを試料処理装置内の反応混合物チャネルと位置合わせする角度で試料処理装置の弁体のベース部を回転させることができる。
【0118】
(4)消耗操作機構のプランジャロッドプッシュプル機構のプランジャロッドは、試料処理装置の弁体の流体置換チャンバ内のプランジャを下方に移動させることができ、それにより、液体の量を流体置換チャンバから反応容器201内の反応領域に駆動する。(4)が完了すると、生体試料を処理することができ、流体を移送することができる。
[実施例4]
1つの試料チャンバ及び5つの試薬チャンバを有する試料処理装置
【0119】
例示的な実施形態では、試料チャンバと、試料処理装置の筐体内に6つの試薬チャンバと、を設けることができる。6つの試薬チャンバは、核酸抽出チャンバ、すすぎ溶液チャンバ、再構成緩衝液チャンバ、付着防止すすぎ溶液チャンバ及び凍結乾燥ペレットチャンバを含むことができる。溶解溶液を核酸抽出チャンバに予め充填することができる。すすぎ溶液は、すすぎ溶液チャンバに予め充填することができる。再構成緩衝液は、再構成緩衝液チャンバに予め充填することができる。付着防止すすぎ溶液は、付着防止すすぎ溶液チャンバに予め充填することができる。凍結乾燥ペレットは、凍結乾燥ペレットチャンバに予め装填することができる。いくつかの例では、磁気ビーズを使用した核酸抽出のために、核酸抽出チャンバ内に磁気ビーズを更にプリロードすることができる。
【0120】
ステップ1:生体試料の少なくとも一部を試料チャンバから取り出し、核酸抽出チャンバに移送することができ、ここで生体試料の一部を核酸抽出チャンバ内の溶解溶液と完全に混合して、生体試料中の病原体を溶解することができる。一方、核酸抽出チャンバ内の磁気ビーズは、溶解によって放出された核酸物質を同時に吸着することができる。そして、磁気ビーズが核酸抽出チャンバの内壁に吸着されるように、核酸抽出チャンバ内の磁気ビーズに磁気透過性成分を介して外部磁場を印加することができる。その後、核酸抽出チャンバ内の液体を廃液チャンバに移送することができる。
【0121】
ステップ2:すすぎ溶液をすすぎ溶液チャンバから核酸抽出チャンバに引き込み、磁気ビーズに吸着された不純物をすすぎかつ除去することができる。すすぎによって残った廃液を廃液チャンバに移送することができる。
【0122】
ステップ3:核酸抽出チャンバに再構成緩衝液を抜き出して移送し、磁気ビーズから核酸物質を溶出させることができる。
【0123】
ステップ4:磁気ビーズが核酸抽出チャンバの内壁で固定されるように、核酸抽出チャンバ内の磁気ビーズに磁気透過性成分を介して外部磁場を印加することができる。続いて、核酸物質が溶出した再構成緩衝液を、凍結乾燥ペレットを完全に溶解させることができる凍結乾燥ペレットチャンバに移送することができる。
【0124】
ステップ5:凍結乾燥ペレットを溶解した反応混合物を反応チャンバに移送してPCR反応を行うことができる。
【0125】
上記の実施形態で教示された原理から、当業者は、試料処理装置の筐体内に試料チャンバ及び任意の数の試薬チャンバを設けることができることを理解することができる。試薬チャンバの数は、処理される生体試料のタイプ及び/若しくは量並びに/又は実行される反応のタイプ及び/若しくは数に基づいて決定することができる。例えば、試料処理装置の筐体内の試薬チャンバの数は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上とすることができる。
【0126】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し説明してきたが、そのような実施形態が例としてのみ提供されることは当業者には明らかであろう。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、及び置換を思い浮かぶであろう。本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替形態を、本発明を実施する際に使用することができることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造並びにそれらの均等物がそれによって包含されることが意図される。
【国際調査報告】