(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-27
(54)【発明の名称】螺旋状ジェットミル及び螺旋状ジェットミル内で粉砕される材料の粉砕方法
(51)【国際特許分類】
B02C 19/06 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
B02C19/06 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569927
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2022063088
(87)【国際公開番号】W WO2022238573
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【氏名又は名称】細井 勇
(72)【発明者】
【氏名】バルトロモイス ルクザック
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ティム ペッシュ
【テーマコード(参考)】
4D067
【Fターム(参考)】
4D067CA03
4D067CA06
4D067GA10
4D067GA20
(57)【要約】
本発明は、底部11と、蓋12と、底部11及び蓋12を接続する壁13とによって区画される粉砕チャンバ10を有し、壁13を貫通して粉砕ガス源に接続される複数の粉砕ガスノズル14を有する螺旋状ジェットミル1に関し、粉砕ガスノズル14の少なくとも一部の各々には、粉砕ガス源への接続を独立して開閉することができる関連の切替え可能な遮断機構15が設けられた構成であり、更に、螺旋状ジェットミルで粉砕材を粉砕する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状ジェットミル(1)であって、底部(11)と、蓋(12)と、前記底部(11)と前記蓋(12)とを接続する壁(13)とによって区画される粉砕チャンバ(10)を有し、前記壁(13)を貫通して粉砕ガス源に接続される複数の粉砕ガスノズル(14)を有し、前記粉砕ガスノズル(14)の少なくとも一部の各々には、前記粉砕ガス源への前記接続を独立して開閉することができる関連の切替え可能な遮断機構(15)が設けられていることを特徴とする、螺旋状ジェットミル(1)。
【請求項2】
各粉砕ガスノズル(14)には、関連する切替え可能な遮断機構(15)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の螺旋状ジェットミル(1)。
【請求項3】
前記粉砕ガス源が、それぞれの粉砕ガスノズル(14)に通じる供給ライン(16)を介して前記粉砕ガスノズル(14)と連通し、前記切替え可能な遮断機構(15)が前記供給ライン(16)に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の螺旋状ジェットミル(1)。
【請求項4】
3~40の粉砕ガスノズル(14)が設けられていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の螺旋状ジェットミル(1)。
【請求項5】
前記粉砕ガスノズル(14)がデラバルノズルとして具現化されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の螺旋状ジェットミル(1)。
【請求項6】
遮断機構(15)を独立してトリガするための制御ユニットが設けられていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の螺旋状ジェットミル(1)。
【請求項7】
壁(13)が円筒状として具現化されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の螺旋状ジェットミル(1)。
【請求項8】
前記粉砕材を前記粉砕チャンバ(10)内に供給するための入口開口部(120)と、前記粉砕チャンバ(10)内で粉砕された前記粉砕材を排出するための排出開口部(125)とが、前記蓋(12)内に具現化されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の螺旋状ジェットミル(1)。
【請求項9】
螺旋状ジェットミル(1)において粉砕材を粉砕するための方法であって、前記螺旋状ジェットミル(1)が、底部(11)、蓋(12)、及び壁(13)によって区画され、前記壁(13)を貫通する複数の粉砕ガスノズル(14)からの粉砕ガス流によって前記粉砕材が導入され、前記粉砕ガス流の作用を受ける粉砕チャンバ(10)を有し、前記粉砕ガス流が、前記粉砕ガス流の作用を受ける粉砕ガスノズル(14)の数を変えることによって調整されることを特徴とする、螺旋状ジェットミル(1)内で粉砕される材料の粉砕方法。
【請求項10】
粉砕ガスノズル(14)が、前記粉砕ガス流によって開かれ作用されるか、又は閉じられ、前記他の粉砕ガスノズル(14)とは別個に独立して前記粉砕ガス流から切り離されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
粉砕ガス流を調整するために、前記粉砕ガス流によって作用される粉砕ガスノズル(14)の数を変更することによって、単位時間当りの前記粉砕チャンバ(10)への粉砕ガスの流量が変更されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記壁(13)の前記外周の周りの方向に見て、規則的な一連の粉砕ガスノズル(14)が交互に開閉されることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記壁(13)の前記外周の周りの方向に見て、互いに隣接する多くの粉砕ガスノズル(14)が順次に開閉されることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記粉砕ガスノズル(14)が、前記粉砕チャンバ(10)が前記粉砕ガス流に作用している間に開閉されることを特徴とする、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記粉砕ガスノズル(14)からの前記粉砕ガス流が超音速で前記粉砕チャンバ(10)に導入されることを特徴とする、請求項9~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記粉砕ガスノズル(14)の開閉が、前記粉砕材の所望の粒径、前記粉砕材の硬度、及び/又は前記粉砕チャンバ(10)内の圧力の関数として変化することを特徴とする、請求項9~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底部、蓋、底部と蓋とを接続する壁によって区画される粉砕チャンバを有し、壁を貫通して粉砕ガス源に接続される複数の粉砕ガスノズルを有する螺旋状ジェットミルに関する。更に、本発明はまた、粉砕材が導入され、壁を貫通する複数の粉砕ガスノズルからの粉砕ガス流の作用を受ける螺旋状ジェットミルで粉砕材を粉砕する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に述べたタイプの螺旋状ジェットミルは、長い間知られており、現在では、特に製薬産業、特殊化学産業、及びファインケミカル産業において、約10μm未満の直径を有する粒子を製造する必要がある産業用途において非常に頻繁に使用されている。螺旋状ジェットミルの動作原理は、粉砕チャンバに導入された粉砕材が、毎秒数百メートルの速度まで加速され壁を貫通する粉砕ガスノズルから粉砕チャンバに入る強力な粉砕ガス流の作用を受けるということに基づいている。粉砕ガスノズルは通常、ほぼ接線角で粉砕チャンバ内に向けられるため、流入する粉砕ガスの流れは粉砕チャンバ内で螺旋状となる。供給された粉砕材は、ガスジェットによって捕捉され、加速され、粒子の相互衝突によって粉砕される。所望の粒径を有する粉砕材は、粗すぎる粒子が追加の粉砕作用を受ける間に、螺旋流の回転中心点で流速が静まった粉砕ガスと共に粉砕チャンバから排出される。この限りにおいて、螺旋状ジェットミルは、粉砕チャンバ内で組み込まれた要素を動かす必要がなく、粒径分布が比較的狭く、機械的摩耗が実質的にない、特に微細な粉砕材の製造を可能にする。しかしながら、上記の螺旋状ジェットミルの利点には、比較的大きいエネルギー投入量及び、粉砕チャンバの寸法、粉砕ガスノズルの入口角度、又は粉砕ガスの質量流量、又は製造された粒子の比率などの多くの影響パラメータが、特に粉砕材の関数として広い範囲内で変化し得るため、最適な動作点に関する複雑な調整が必要となるという欠点が伴う。このような螺旋状ジェットミルの基本的な設計は、例えば欧州特許公開第3613508号に見ることができる。
【0003】
今日までの先行技術では、粉砕の強度及び作用は、粉砕ガス源と螺旋状ジェットミルとの間にある粉砕ガス用の中央供給ラインに絞り弁を挿入して粉砕ガス質量流量又は粉砕ガス圧力を調整するか、又は粉砕ガス源自体、例えば圧縮機を調整することによって達成される。例えば、国際公開第2019/155038号、国際公開第2017/042341号、米国特許第2004211849号、及び国際公開第2013/156465号を参照することができる。しかしながら、粉砕ガス流の圧力を下げ続けると、粉砕ガスノズルから粉砕チャンバへの放出口におけるこの流れの速度も同様に低下し、粉砕作用及び効率に非常に大きな悪影響を及ぼし、改善が必要であることが判明した。
【0004】
中国実用新案登録第203990833号はまた、対向する位置に配置された2つの空気ノズルが垂直上方に配向された底部ノズルと組み合わされたジェットミルを開示している。圧縮機の共有供給ラインからの圧縮空気の供給は、3つ全てのノズルから正確に同一の空気流が出るように、粉砕手順の開始時に、ノズルに配置された別個の制御弁及び流量測定装置によって調整される。このような平衡状態が達成されたときにのみ材料供給部が開き、材料供給部の開口部断面は、粉砕材に適合するように変更することができる。これは非常に複雑であり、粉砕タスク(grinding task)の変化に合わせて調整することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許公開第3613508号
【特許文献2】国際公開第2019/155038号
【特許文献3】国際公開第2017/042341号
【特許文献4】米国特許第2004211849号
【特許文献5】国際公開第2013/156465号
【特許文献6】中国実用新案登録第203990833号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、螺旋状ジェットミル及び螺旋状ジェットミルでバルク材料を粉砕するための方法を提案することであり、この方法は、粉砕手順の制御性が改善されるにもかかわらず、高出力で著しく効率的な粉砕を行うことができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明は、請求項1の特徴を具現化する螺旋状ジェットミルを提案する。記載された目的を達成するための本発明による方法は、請求項9の主題である。本発明の有用な実施形態及び変形例の形態は、それぞれの従属請求項の主題である。
【0008】
本発明による提案は、存在する粉砕ガスノズルの少なくとも一部の各々に、他の遮断機構とは独立して粉砕ガス源への接続を開閉することができる、関連する切替え可能な遮断機構を備える螺旋状ジェットミルの実施形態を提供する。
【0009】
したがって、本発明によれば、それぞれ関連する遮断機構の開閉により、設置された粉砕ガスノズルのオンとオフを個別に切り替えることができ、関連する粉砕ガスノズルの粉砕ガス源への接続を開閉することができる螺旋状ジェットミルが提供される。したがって、本発明による螺旋状ジェットミルでは、オンに切り替えられたノズルの数と、粉砕ガスを受け入れるために利用可能なノズル断面積とによってのみ、粉砕チャンバの中に入る粉砕ガスの流量を調整することが可能である。この場合、現在開いている遮断機構及び関連する粉砕ガスノズルの数にかかわらず粉砕ガス源の最適な最高使用圧力が常に存在しており、それに応じて、粉砕ガスは開いている粉砕ガスノズルを介して最適な高速で粉砕チャンバ内に導入される。開かれた遮断機構及び関連する粉砕ガスノズルの数が減少又は増加しても、粉砕ガスノズルに存在する粉砕ガスの圧力に変化はなく、粉砕チャンバへの吐出速度に変化はない。したがって、粉砕作用及び粉砕効率は、今までは圧力調整されていた螺旋状ジェットミルと比較して大幅に改善されている。
【0010】
本発明の文脈において、粉砕ガスノズルの少なくとも一部は、本発明による態様において、関連する切替え可能な遮断機構を装備することが提供される。
【0011】
したがって、本発明によれば、粉砕ガスノズルの少なくとも一部にはそれぞれ、粉砕ガスノズルのオンとオフを切り替えるために、粉砕ガスノズルと粉砕ガス源とのそれぞれの接続を独立して開閉することができる、関連する切替え可能な遮断機構が設けられる。関連する遮断機構を備えた各粉砕ガスノズルは、他の粉砕ガスノズルとは独立して、粉砕ガスを粉砕チャンバに導入するために、関連する遮断機構を開位置に対応して作動させることによって粉砕ガス源に接続することができ、又は粉砕ガスを粉砕チャンバに導入しないために、関連する遮断機構を作動させることによって粉砕ガス源から切り離すことができる。このようにして、粉砕ガス源に接続され粉砕ガスを粉砕チャンバ内に導入する粉砕ガスノズルの数を、それぞれの関連する遮断機構を開いて増やすか、又はそれぞれの関連する遮断機構を閉じてこの数を減らすことによって、粉砕ガス流を変化させることが可能である。
【0012】
本発明の1つの提案によれば、特に、本発明による螺旋状ジェットミルの全ての粉砕ガスノズルが、必要に応じてオンとオフに切り替えることができるように、それぞれに関連する切替え可能な遮断機構をそれぞれ装備することも可能である。
【0013】
本発明の目的のために、可能な遮断機構には、特に、開状態と閉状態との間の迅速な切替えを可能にする遮断弁、ボール弁、ゲート弁、及び同様の遮断装置が含まれる。本発明の別の提案によれば、粉砕ガス源は、各粉砕ガスノズルにそれぞれ通じる別個の供給ラインを介してこれらの粉砕ガスノズルと連通しており、切替え可能な遮断機構は供給ラインに設けられる。これにより、遮断機構の省スペース配置が可能になり、各粉砕ガスノズルを、粉砕ガス源からの個別に制御可能な粉砕ガス供給と関連付けることが可能になる。
【0014】
本発明による螺旋状ジェットミルの実施形態の特に有用な点は、個々の粉砕ガスノズルへの粉砕ガス供給の変更及び関連する遮断機構の統合を除いて、螺旋状ジェットミルの残りの構成要素-特に、底部、蓋、及び底部と蓋とを接続する壁によって区画される粉砕チャンバ、並びに粉砕材の対応する供給開口部及び排出開口部-は変更されないため、本発明による実施形態を既存の螺旋状ジェットミルの改造又は改修の一部として実現することもできることである。
【0015】
本発明による螺旋状ジェットミルは、1つの粉砕ガスノズルを含むが、好ましくは、壁の外周の周りに分配された複数の粉砕ガスノズルを含み、本発明の一提案によれば、特に3~40のこのような粉砕ガスノズルが設けられ、これらの粉砕ガスノズルは、壁の外周の周りに一定の間隔で配置されるか、又は壁の外周の周りに分散したグループとして組み合わされる。
【0016】
本発明によれば、粉砕ガスノズルは、粉砕結果に有効な、粉砕チャンバ内への粉砕ガスの特に高い吐出速度をもたらすデラバルノズル(de Laval nozzle)として具現化することができる。これまで、このようなデラバルノズルとしての粉砕ガスノズルの実施形態を実現するのは困難であったが、これは、存在する粉砕ガス圧力による螺旋状ジェットミルの従来の調整では、デラバルノズルの最適な動作点を非常に限られた程度でしか利用できなかったためである。しかしながら、本発明による実施形態では、存在する粉砕ガス圧力を調整する必要がないため、デラバルノズルの最適な動作点を利用し、粉砕ガスを音速の数倍まで加速することがほぼ常に可能であり、その結果、最適化された粉砕作用が得られる。
【0017】
本発明の別の提案によれば、各遮断機構及び関連する粉砕ガスノズルを、それぞれの調整タスク(regulating task)に適合した方法で開閉するように作動させるために、遮断機構を独立して作動させる制御ユニットが設けられる。本発明によれば、遮断機構は、完全に開いた状態と完全に閉じた状態(開/閉)との間で排他的に切り替えられるように具現化されることが好ましい。しかしながら、ミルの運転開始前に次の粉砕タスク(grinding task)のための螺旋状ジェットミルのプリセット(presetting)の一環として、個々のプロセスパラメータを調整するために、螺旋状ジェットミルの連続運転中に遮断機構の切替えを同様に実行することもできる。本発明による螺旋状ジェットミルの各粉砕ガスノズルのオンとオフの切替えは、例えば、粉砕材のタイプ及び硬度並びに/又は粉砕チャンバの内圧に応じた所望の細分化の程度に基づいて行うことができる。
【0018】
別の提案によれば、本発明による螺旋状ジェットミルはまた、特に、円筒状の壁を有するように具現化することもでき、対応する円形の円筒状の粉砕チャンバが底部と蓋との間に画定され、その中に、関連する遮断機構で切り替えることができる個々の粉砕ガスノズルが所定の入口角度で供給する。この場合、粉砕チャンバを円筒状又はレンズ状とするために、底部及び蓋を平坦又はアーチ状にして具現化することができる。更に、粉砕チャンバ内に粉砕材を供給するための入口開口部、及び粉砕チャンバ内で粉砕された粉砕材を排出するための排出開口部は、本発明による螺旋状ジェットミルの蓋に具現化される。
【0019】
螺旋状ジェットミルで粉砕材を粉砕するための本発明による方法は、螺旋状ジェットミルが粉砕チャンバを有し、この粉砕チャンバが底部、蓋、及び壁によって区画され、この粉砕チャンバに粉砕材が導入され、壁を貫通する複数の粉砕ガスノズルからの粉砕ガス流がこの粉砕材に作用することに基づく。本発明によれば、粉砕ガス流は、粉砕ガス流が作用する粉砕ガスノズルの数を変えることによって調整される。
【0020】
一方、従来技術による螺旋状ジェットミルでは、粉砕手順の調整は、通常、中央入口を経由する粉砕ガスの流れを調整すること、特に絞りによって達成されるが、この限りでは必然的に全ての粉砕ガスノズルにおける圧力及び速度の損失を伴うが、本発明による方法では、粉砕ガス流が作用する粉砕ガスノズルの数によって粉砕チャンバへの粉砕ガスの流量を適合させることが可能であり、粉砕ガス流が作用する粉砕ガスノズルから出る粉砕ガスは、常に最大圧力と最高速度で粉砕チャンバに流入する。
【0021】
本発明の文脈において、この手法は、従来技術で可能であったよりも広い範囲で、螺旋状ジェットミルの調整/制御を可能にすることが判明した。特に、本発明は、粉砕ガスノズルは他の粉砕ガスノズルとは別個にかつ独立して開かれて粉砕ガス流の作用を受けるか、又は閉じられて粉砕ガス流から切り離されることを提案する。特に、この開閉は、粉砕ガスノズルに対応して関連付けられ、かつ個々の粉砕ガスノズルにつながる粉砕ガス用の個別の供給ラインに配置された切替え可能な遮断機構によって実行することができる。
【0022】
本発明の別の提案によれば、単位時間当りの粉砕チャンバへの粉砕ガスの流量は、粉砕ガス流が作用する粉砕ガスノズルの数を変更することによって調整されるので、本発明による方法は、螺旋状ジェットミルにおける粉砕手順を、粉砕材の特定の特性及びそれぞれの粉砕タスクに特に効率的かつ可変的に適合させることができる。粉砕ガス流を各粉砕ガスノズルに印加したり、所望の調整に応じて流れを遮断したりすることは、ほとんどどのような構成でも実行することができる。
【0023】
本発明の1つの提案によれば、壁の外周の周りの方向に見ると、規則的な一連の粉砕ガスノズルは、例えば、開-閉-開-閉などの交互パターンで交互に開閉される。また、粉砕ガス流をそれぞれ隣接する粉砕ガスノズルに同時に印加することも、又はそこから切り離すことも可能であり、例えば、2つ以上の隣接する粉砕ガスノズルを開き、それに対応して後続の数の隣接する粉砕ガスノズルを閉じることができる。
【0024】
本発明の別の提案によれば、壁の外周の周りの方向に見ると、多数の隣接する連続する粉砕ガスノズルをセクター(sector)の形態で閉じ、残りの粉砕ガスノズルを開くことも考えられ、これにより、閉じたセクターに含まれる粉砕ガスノズルの数、及びそれに対応して、残りの開いた粉砕ガスノズルの数を自由に選択することができる。したがって、本発明による方法は、極めて広い調整幅を特徴とする。しかしながら、粉砕ガスの供給は、エネルギー的に非効率な絞りを受けないことが最も重要である。むしろ、それぞれの粉砕ガスノズルが開いていて粉砕ガス流が作用しているか、又は閉じていて粉砕ガス流から切り離されているかに関係なく、各粉砕ガスノズルには粉砕ガス源の可能な限り高い動作圧力が存在する。
【0025】
したがって、本発明による螺旋状ジェットミルで達成可能な細分化の効果や強度は、粉砕ガス源を調整することによって調整されるのではなく、むしろ各粉砕ガスノズルのオンとオフを切り替えて、粉砕ガスが粉砕ガスノズルに作用することによって適合される。粉砕チャンバに導入される粉砕ガス流全体を調整するために、粉砕ガス流が作用する粉砕ガスノズルの数は変化するが、各粉砕ガスノズルの上流における粉砕ガスの圧力は可能な限り高く維持され、粉砕ガス流が作用する粉砕ガスノズルを介して粉砕チャンバへ流入する粉砕ガスの達成可能な吐出速度も相応して高く維持され、結果として、粉砕ガスの運動エネルギーが効率的に利用される。
【0026】
最も単純な場合には、使用される粉砕ガスノズルは、円筒状又は円錐状のノズル断面を有することができる。しかしながら、本発明の変形例では、粉砕ガスノズルをデラバルノズルとして具現化することもでき、流出する粉砕ガスを音速の1倍~数倍の範囲の速度まで加速することができる。本発明の別の提案によれば、粉砕ガスノズルはまた、特に、粉砕チャンバが粉砕ガス流から作用を受けている間にも開閉され、それにより、連続運転中であっても、例えば運転中の他の影響パラメータや外乱変数(disturbance
variables)の変化に対応するために、螺旋状ジェットミルを調整することが容易に可能となる。粉砕ガスノズルの開閉は、好ましくは、所望の粒径、粉砕材の硬度、及び/又は粉砕チャンバの圧力の関数として行われ、当業者は要求に応じて選択しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明による螺旋状ジェットミルの概略図である。
【
図2】
図1による螺旋状ジェットミルの断面を示す拡大図である。
【
図3】
図1に示す本発明による螺旋状ジェットミルの粉砕材供給部を示す別の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のその他の実施形態及び詳細を例示的な実施形態を示す図面に基づいて以下に説明する。これらの図は、例えば、製薬産業、特殊化学産業及びファインケミカル産業において、例えば粒子状固体を粉砕するために使用される種類の粉砕材を粉砕するための螺旋状ジェットミル1の非常に簡略化された概略図を示す。
【0029】
これに関連して、「粒子状固体」は、例えば、酸化鉄、特にα-、β-、γ-及び/又はδ-FeOOH相及び/又はFe(OH)2相、フェリヒドライト相、並びにそれらの混合相及び中間相、特に好ましくはヘマタイト、変態α-Fe2O3、γ-Fe2O3マグヘマイト、マグネタイト、マンガン-又は亜鉛フェライト、ルチルもしくはアナターゼ変性などの二酸化チタン、又はルチル混相顔料、酸化クロム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ウルトラマリン、ニッケル-又はクロムアンチモン二酸化チタン、コバルトブルー、コバルトグリーン、クロム酸化物、又はカーボンブラック、グラファイト又はグラフェンなどの炭素形態を含むと理解される。上記の群からの無機顔料が特に好ましいものとして挙げられる。
【0030】
螺旋状ジェットミル1は、底部11と、底部11から離間した蓋12と、底部11と蓋12とを接続する壁13とによって区画される円筒状の閉じた粉砕チャンバ10を備える。したがって、壁13は、同様に円筒状の実施形態を有する。底部11及び/又は蓋12の対応するアーチ形により、粉砕チャンバ10はレンズ形を有することもできる。壁13には、多数の粉砕ガスノズル14(ここに示す例では合計4つ)が貫通しており、これらのノズルは、ほぼ接線方向に所定の入口角度で粉砕チャンバ10内に供給する。粉砕ガスノズル14は、図示された供給ライン16だけを介して、図示されていない粉砕ガス源、例えばコンプレッサと連通し、そこから供給される対応する粉砕ガス流、例えば圧縮空気の作用を受ける。粉砕ガスは、粉砕ガスノズルを介して、ほぼ接線方向に粉砕チャンバ10内に入り、図示の例示的な実施形態では、粉砕チャンバ10内に反時計回りの螺旋状の粉砕ガス流を生成する。
【0031】
粉砕材は、蓋12の領域の中心から外れて配置された
図3でより詳細に示されている入口開口部120を通り、対応する貯蔵容器から漏斗121を介して、インジェクタノズル122から放出されるガス流によって供給され、インジェクタチューブ123内で加速され、粉砕チャンバ10内に導入される。このチャンバ内で、粉砕材は、捕捉され、螺旋状に回転する粉砕ガス流に巻き込まれ、粉砕材の個々の断片の加速力と衝突により、粉砕材の所望の細分化及び粉砕が行われる。粉砕材が所望の粒径を下回ると螺旋流の遠心力が減少するため、粉砕チャンバ10の中央領域に集まり、そこから、おそらくはここには示されていないフィルタ又はサイクロンを使用して、同様に蓋12に設けられた中央排出開口部125を介して、流速が静まった粉砕ガスと共に螺旋状ジェットミル1から排出される。
【0032】
図示の螺旋状ジェットミルの本質的な特徴は、粉砕チャンバ10内の粉砕手順を調整するために、個々の粉砕ガスノズル14が粉砕ガス用供給ライン16の領域に別個に独立して制御可能な遮断機構15を備えていることであり、これらは、各粉砕ガスノズル14のいずれか1つに粉砕ガス流を作用させ、それに応じてノズルを作動させるか、又はノズルを粉砕ガス流から切り離して、それに応じてノズルを動作停止させることができる。遮断機構15が開かれると同時に、対応する粉砕ガスノズル14に粉砕ガス源の粉砕ガスが作用し、逆に、関連する遮断機構15が閉じられると同時に粉砕ガスから切り離される。遮断機構15は、例えば、開位置と閉位置との間で切り替えることができる遮断弁によって具現化することができる。このようにして、粉砕ガス源からの粉砕ガスを全ての供給ライン16に常に高い動作圧力で印加し、個別又は全ての遮断機構15を開くことによって対応する数の関連する粉砕ガスノズル14を作動させ、次いで粉砕ガス流は一定の圧力とそれに対応する一定の最高速度で粉砕チャンバ10内に流入することができる。
【0033】
このような個々の粉砕ガスノズル14のオンとオフを切り替えて、粉砕チャンバ10への粉砕ガスの吐出速度を低下させることなく、粉砕チャンバ10への粉砕ガスの総流量を変化させて、螺旋状ジェットミル1の細分化の作用と強度を調整することができる。これにより、粉砕ガスは可能な限り最も効率的に利用され、螺旋状ジェットミル1の運転はエネルギー効率が大幅に向上する。
【0034】
開閉遮断機構15及び関連する粉砕ガスノズル14の数は、螺旋状ジェットミルの運転前及び運転中に選択して変更することができる。図示の例示的な実施形態では、例えば、他の全ての粉砕ガスノズル14は、関連する遮断機構15を開くことによって、粉砕ガス流から作用を受けるが、単一の個々の粉砕ガスノズル14だけを開くことも、又は3つの隣接する粉砕ガスノズル14を開くことも、粉砕ガスノズル14の全てを開くこともできる。同様のことが、粉砕ガスノズルの数が多い又は少ない螺旋状ジェットミル1にも当てはまり、このような粉砕ガスノズル10の数は、本発明の文脈において好適なものとして3~40の範囲にあると考えられる。個々の遮断機構15の現在望まれるそれぞれの作動は、好適には、例えば電子システム制御に従って、対応する制御ユニットによって実行することができる。
【0035】
従来使用されていた螺旋状ジェットミルの実施形態と比較して、図示された螺旋状ジェットミル1の実施形態は、個々の粉砕ガスノズル14への粉砕ガスの供給領域においてのみ変更が加えられており、その際、個別の粉砕ガスノズル14にはそれぞれ、独立して切替え可能な遮断機構15が設けられた別個の供給ライン16が装備されている。しかしながら、これまで慣例的であった、供給される粉砕ガス用のプレディストリビュータ(pre-distributors)や圧力調整装置は除外できる。
【0036】
粉砕ガスの粉砕チャンバ10への流れを制御するために従来用いられていた粉砕ガスの圧力調整と比較して、上記で説明した実施形態では、粉砕ガスノズルの入口で理想的に一定の高圧が達成されている。これにより、粉砕ガスノズルを円筒状や円錐状だけでなく、デラバルノズルの形態でも具現化することが可能になる。粉砕チャンバ10内の圧力は、上記のように、個々の粉砕ガスノズルのオンとオフを切り替えることによって、場合によっては粉砕材の吐出流量を適合させることによって適合させることができるが、開いている粉砕ガスノズルの圧力は常に高くなる。したがって、個々の開放型粉砕ガスノズルは、常に最適動作点の近傍で動作することができ、特にデラバルノズルとして具現化される場合、低ジェットダイバージェンス(low jet divergence)で音速の数倍にも達する超高速の粉砕ガス出口速度を実現できるため、エネルギー効率の高い運転が保証される。これは、はるかにエネルギー効率の良い粉砕作用に反映される。
【0037】
細分化に寄与せず、ドラバルノズルとして具現化された粉砕ガスノズル14の最適動作点より上又は下での動作による圧縮衝撃又は高ジェットダイバージェンス(large
jet divergence)に起因するエネルギー損失は、粉砕ガス圧力と粉砕チャンバ10内の圧力を一定に保つことによって確実に回避することができる。例えば円筒状の粉砕ガスノズル14が使用される場合であっても、所定の粉砕材流量の状態で動作して開いている粉砕ガスノズル14の数を制限することによって、粉砕チャンバ10への粉砕ガスの出口速度を音速まで上げることができ、同様にエネルギー効率の良い粉砕が可能になる。
【0038】
従来の粉砕ガスの圧力調整による流量制限もまた、必然的に、粉砕ガスノズルで存在する粉砕ガスの圧力が低下し、それに伴って、粉砕ガスノズルから吐出される粉砕ガス流の速度が低下し、エネルギーバランスに悪影響を及ぼす。上記で説明したように、粉砕ガス流から作用を受ける利用可能な粉砕ガスノズル14の数を減少させることで流量を調整すると、粉砕ガスの流量も所望の程度まで同様に減少するが、開いた粉砕ガスノズル14には依然として最大圧力が存在しており、このことは、吐出される粉砕ガスの最高流速も依然として何ら変わることなく実現されることを意味する。これにより、これまで避けられなかったエネルギー効率の悪い螺旋状ジェットミルの運転が大幅に改善される。
【0039】
上記で説明した螺旋状ジェットミル及びその方法は、新設の螺旋状ジェットミルだけでなく、従来技術による既存の螺旋状ジェットミルの比較的簡単な改造の一部としても実現することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 螺旋状ジェットミル
10 粉砕チャンバ
11 底部
12 蓋
13 壁
14 粉砕ガスノズル
15 遮断機構
16 供給ライン
120 入口開口部
121 漏斗
122 インジェクタノズル
123 インジェクタチューブ
125 排出開口部
【国際調査報告】