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▶ シージェイ チェイルジェダン コーポレーションの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-27
(54)【発明の名称】新規なプロモーター及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/53 20060101AFI20240520BHJP
   C12N 15/77 20060101ALI20240520BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240520BHJP
   C12N 9/06 20060101ALI20240520BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240520BHJP
   C12P 13/08 20060101ALI20240520BHJP
   C12P 13/06 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C12N15/53
C12N15/77 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N9/06 Z
C12N1/21
C12P13/08 A
C12P13/08 C
C12P13/06 C
C12P13/06 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569978
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 KR2022002984
(87)【国際公開番号】W WO2022239942
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2021-0061306
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513178894
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】パク、ゴウン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ソジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ハン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ウソン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒジョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジェミン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AE06
4B064AE07
4B064AE09
4B064AE10
4B064CA03
4B064CA19
4B065AA24X
4B065AA24Y
4B065AB10
4B065BA02
4B065CA27
(57)【要約】
本出願は、新規なプロモーター及びこれを用いた目的物質生産方法に関し、より詳しくは、プロモーター活性を有する新規なポリヌクレオチド、これを含むベクター及びコリネバクテリウム属微生物、及び上記微生物を用いた目的物質の生産方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のポリヌクレオチド配列において27番、28番、31番、32番及び36番のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換された、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド。
【請求項2】
66番及び261番のヌクレオチドが他のヌクレオチドでさらに置換されたものである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
66番のヌクレオチドが他のヌクレオチドでさらに置換されたものである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号1のポリヌクレオチド配列において27番のヌクレオチドであるアデニン(A)がチミン(T)で、28番のヌクレオチドであるシトシン(C)がグアニン(G)で、31番のヌクレオチドであるシトシン(C)がグアニン(G)で、32番のヌクレオチドであるシトシン(C)がチミン(T)で、36番のヌクレオチドであるアデニン(A)がシトシン(C)で置換されたものである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号2で示されるものである、請求項4に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号1のポリヌクレオチド配列において27番のヌクレオチドであるアデニン(A)がチミン(T)で、28番のヌクレオチドであるシトシン(C)がグアニン(G)で、31番のヌクレオチドであるシトシン(C)がグアニン(G)で、32番のヌクレオチドであるシトシン(C)がチミン(T)で、36番のヌクレオチドであるアデニン(A)がシトシン(C)で、66番のヌクレオチドであるシトシン(C)がチミン(T)で、261番のヌクレオチドであるアデニン(A)がグアニン(G)で置換されたものである、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号3で示されるものである、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号1のポリヌクレオチド配列において27番のヌクレオチドであるアデニン(A)がチミン(T)で、28番のヌクレオチドであるシトシン(C)がグアニン(G)で、31番のヌクレオチドであるシトシン(C)がグアニン(G)で、32番のヌクレオチドであるシトシン(C)がチミン(T)で、36番のヌクレオチドであるアデニン(A)がシトシン(C)で、66番のヌクレオチドであるシトシン(C)がチミン(T)で置換されたものである、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号4で示されるものである、請求項8に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記ポリヌクレオチドは、目的タンパク質をコードする遺伝子と作動可能に連結される、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド;及び前記ポリヌクレオチドと作動可能に連結された目的タンパク質をコードする遺伝子を含む発現カセット。
【請求項12】
前記目的タンパク質は、グルタミン酸脱水素酵素(glutamate dehydrogenase,gdh)である、請求項10に記載の発現カセット。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド;または請求項1~9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド及び前記ポリヌクレオチドと作動可能に連結された目的タンパク質をコードする遺伝子を含む、コリネバクテリウム属微生物。
【請求項14】
前記目的タンパク質は、グルタミン酸脱水素酵素(glutamate dehydrogenase,gdh)である、請求項13に記載のコリネバクテリウム属微生物。
【請求項15】
前記コリネバクテリウム属微生物は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)である、請求項13に記載の微生物。
【請求項16】
請求項13に記載のコリネバクテリウム属微生物を培地で培養する段階;及び前記の培地で目的物質を回収する段階を含む、目的物質を生産する方法。
【請求項17】
前記目的物質は、リシン、スレオニン、O-アセチルホモセリン、またはイソロイシンである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
配列番号1のポリヌクレオチド配列において27番、28番、31番、32番及び36番のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換された、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドの、プロモーターとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、新規なプロモーター及びこれを用いた目的物質の生産方法に関し、より詳しくはプロモーター活性を有する新規なポリヌクレオチド、これを含むベクター及びコリネバクテリウム属微生物、上記微生物を用いた目的物質の生産方法及びプロモーターの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物において目的物質(例えば、アミノ酸)を生産する工程は、環境にやさしく安全な生産方法で多様な研究が進められてきており、そのうち、コリネバクテリウム属微生物において目的物質を多量に生産するための研究が持続的に行われてきた。コリネバクテリウム(Corynebacterium sp.)属微生物、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)は、L-アミノ酸及びその他の有用物質の生産に多用されているグラム陽性の微生物である。上記L-アミノ酸及びその他の有用物質を生産するために、高効率生産微生物及び発酵工程技術開発のための様々な研究が行われている。
【0003】
コリネバクテリウム属微生物で生産される代表的な物質であるL-リシンは、動物飼料、ヒトの医薬品及び化粧品産業に使われており、コリネバクテリウム菌株を利用した発酵により生成されている。L-リシン生合成関連の遺伝子が強化された微生物及びこれを用いたL-リシン生産方法などが知られている(KR 10-0924065B1)。
【0004】
また、L-スレオニンは必須アミノ酸の一種であり、飼料及び食品添加剤として広く使用され、医薬用として輸液剤、医薬品の合成原料としても使用される。L-スレオニンは、植物性タンパク質に少なめに入っており、菜食中心の食習慣を有する動物に不足しがちなため、特に、動物飼料用添加剤として有用に用いられている。L-スレオニンは、主に、人工変異法または遺伝子組換え方法により開発された大腸菌またはコリネバクテリウム微生物などを利用した発酵法で生産される。代表的に、大腸菌由来のスレオニンオペロンをスレオニン生産菌株であるブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)に導入してL-スレオニンを生産する、遺伝子組換え菌株を利用する方法(TURBA E、et al,Agric.Biol.Chem.53:2269~2271,1989)などが知られている。
【0005】
O-アセチルホモセリンは、メチオニン生産の前駆体として使われる物質であり、メチオニン生合成経路上にある中間体である(WO2008/013432)。O-アセチル-L-ホモセリンは、ホモセリンO-アセチルトランスフェラーゼ(O-acetyl transferase)によりL-ホモセリン及びアセチル-CoAを基質として合成される。
【0006】
イソロイシンは、体内で合成されない必須アミノ酸の一種であり、成長促進、神経機能増進、肝機能強化及び筋肉強化などの効果を有することが知られており、通常、微生物を用いた発酵方法により生産される。
【0007】
いまだに多様な微生物、即ち、エシェリキア属微生物、コリネバクテリウム属微生物、またはバチルス属微生物などでも高い発現効率を示すシステムが必要であるところ、汎用的プロモーターの開発の必要性が依然として台頭している実情である。また、特定の目的物質に制限されない汎用的なプロモーターを開発する場合、多様な物質の生産に活用できるものと期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】KR 10-0924065B1
【特許文献2】WO2008/013432
【特許文献3】大韓民国登録特許第10-09240675号
【特許文献4】大韓民国登録特許第10-2011994号
【特許文献5】大韓民国登録特許第10-1947959号
【特許文献6】大韓民国登録特許第10-1996769号
【特許文献7】大韓民国公開番号第10-2020-0136813号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】TURBA E、et al,Agric.Biol.Chem.53:2269~2271,1989
【非特許文献2】Pearson et al (1988)[Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85]:2444
【非特許文献3】Rice et al.、2000,Trends Genet.16:276-277
【非特許文献4】Needleman and Wunsch、1970,J.Mol.Biol.48:443-453
【非特許文献5】Devereux,J.,et al,Nucleic Acids Research 12:387 (1984)
【非特許文献6】Atschul,[S.] [F.,] [ET AL,J MOLEC BIOL 215]:403 (1990)
【非特許文献7】Guide to Huge Computers,Martin J.Bishop,[ED.,] Academic Press,San Diego、1994
【非特許文献8】[CARILLO ETA/.](1988) SIAM J Applied Math 48:1073
【非特許文献9】Smith and Waterman,Adv.Appl.Math (1981) 2:482
【非特許文献10】Schwartz and Dayhoff,eds.,Atlas Of Protein Sequence And Structure,National Biomedical Research Foundation,pp.353-358 (1979)
【非特許文献11】Gribskov et al(1986) Nucl.Acids Res.14:6745
【非特許文献12】J.Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual、2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,New York、1989
【非特許文献13】F.M.Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,New York
【非特許文献14】Sambrook et al.,supra、9.50-9.51,11.7-11.8
【非特許文献15】Manual of Methods for General Bacteriology by the American Society for Bacteriology,Washington D.C.,USA、1981
【非特許文献16】J.Microbiol.Biotechnol.18:639-647,2008
【非特許文献17】Appl.Microbiol.Biothcenol.(1999) 52:541-545
【非特許文献18】FEMS Microbiology Letters 194,127-133,2001
【非特許文献19】Binder et al.Genome Biology 2012,13:R40
【非特許文献20】Appl.Enviro.Microbiol.,Dec.1996,p.4345-4351
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願は、新規合成プロモーターを開発して公知となったプロモーターに比べて正方向に存在時、下位の遺伝子に対して高い発現活性を有し、これにより多様な目的物質を生産し得ることを確認した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願の一つの目的は、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドを提供することにある。
【0012】
本出願のもう一つの目的は、上記ポリヌクレオチド;及び上記ポリヌクレオチドと作動可能に連結された目的タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターまたは発現カセットを提供することにある。
【0013】
本出願の他の一つの目的は、上記ポリヌクレオチド;または上記ポリヌクレオチド及び上記ポリヌクレオチドと作動可能に連結された目的タンパク質をコードする遺伝子を含むコリネバクテリウム属微生物を提供することにある。
【0014】
本出願の他の一つの目的は、上記コリネバクテリウム属微生物を培地で培養する段階;及び上記の培地で目的物質を回収する段階を含む、目的物質を生産する方法を提供することにある。
【0015】
本出願の他の一つの目的は、配列番号1のポリヌクレオチド配列において27番、28番、31番、32番及び36番のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換された、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドの、プロモーターとしての使用を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本出願の新規なプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、目的物質を生産する微生物に導入され、目的物質の生産量を増加させることができる。向上した生産収率により、産業的な面で生産の利便性と共に製造原価の節減などの効果が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
これを具体的に説明すると、次の通りである。一方、本出願で開示されたそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの異なる説明及び実施形態にも適用できる。即ち、本出願で開示された多様な要素のすべての組合が本出願の範疇に属する。また、下記の具体的な記述により本出願の範疇が制限されるとは見られない。
【0018】
また、当該技術分野における通常の知識を有する者は、通常の実験のみを使用し、本出願に記載された本出願の特定様態に対する多数の等価物を認知したり、確認することができる。また、このような等価物は本出願に含まれることが意図される。
【0019】
本出願の一つの様態は、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドを提供する。
具体的には、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、配列番号1のポリヌクレオチド配列に一つ以上のヌクレオチド置換を含む、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドであってもよい。
【0020】
本出願において用語「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド単位体(monomer)が共有結合により長く鎖状につながったヌクレオチドの重合体(polymer)で一定の長さ以上のDNA鎖である。
【0021】
本出願において用語、「プロモーター活性を有するポリヌクレオチド」は、発現させようとする遺伝子、即ち、目的遺伝子の発現のためにRNAポリメラーゼまたはエンハンサーなどが結合する部位を含む目的遺伝子の転写が起きる部位の近くに存在するDNA領域を意味する。
【0022】
本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、汎用的強化プロモーターとして利用され得る。一例として、グルタミン酸脱水素酵素(glutamate dehydrogenase,gdh)活性を有するポリペプチドの発現を強化させるプロモーターとして利用され得る。また、上記ポリヌクレオチドは、目的物質、具体的には、リシン、スレオニン、O-アセチルホモセリンまたはイソロイシンの生産、または生産量を増加させるのに関与するポリヌクレオチドであってもよい。
【0023】
本出願のポリヌクレオチドは、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド配列であれば制限なく含まれ得る。具体的には、本出願において、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、配列番号1のポリヌクレオチド配列に1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、または7以上のヌクレオチド置換を含む、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドであってもよい。
【0024】
本出願において、配列番号1のポリヌクレオチド配列は、グルタミン酸脱水素酵素のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドの一例として挙げられる。また、プロモーター活性を有する限り、配列番号1のポリヌクレオチド配列において特定ヌクレオチドが置換されたポリヌクレオチドもグルタミン酸脱水素酵素のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドであってもよい。配列番号1のポリヌクレオチド配列は、変異位置を表示するための代表的なポリヌクレオチド配列であってもよく、プロモーター活性を有する、これに対応する他のポリヌクレオチド配列も変異を導入できる配列に含まれる。例えば、グルタミン酸脱水素酵素(glutamate dehydrogenase,gdh)あるいはこれに対応する活性を有するポリペプチドのプロモーターの役割を果たせるポリヌクレオチド配列であれば、本出願の変異を導入できる配列の範囲に制限なく含まれ得る。
【0025】
上記配列番号1のヌクレオチド配列は、公知のデータベースであるNCBI Genbankでその配列を確認することができ、上記グルタミン酸脱水素酵素のプロモーターの役割を果たせる配列として、上記配列番号1に対応する配列はコリネバクテリウム(Corynebacterium sp.)由来であってもよく、具体的には、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)の配列であってもよいが、上記ポリヌクレオチドと同等またはそれ以上の活性を有する配列は、本出願のプロモーターに制限なく含まれ得る。
【0026】
本出願において提供する、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、既存のプロモーター活性を有するポリヌクレオチド配列において、特異的位置のヌクレオチドが置換されてプロモーター活性が強化したものであってもよい。
【0027】
一つの具体例として、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、配列番号1のヌクレオチド配列中の一つ以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換された、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含むものであってもよい。具体的には、配列番号1のヌクレオチド配列中の一つ以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換された、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドからなるものであってもよい。上記プロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、本願において「変異型プロモーター」と混用され得る。
【0028】
一つの具体例として、上記変異型プロモーターは、配列番号1の27番、28番、31番、32番及び36番のヌクレオチドで構成された群から選択されるいずれか一つ以上のヌクレオチドの他のヌクレオチドでの置換を含む、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドであってもよい。具体的には、上記変異型プロモーターは、上記位置においていずれか一つ以上、二つ以上、三つ以上、四つ以上、または五つの位置ともまたはこれらの対応する位置で他のヌクレオチドで置換されたものであってもよい。また、66番及び/又は261番の位置でヌクレオチドが追加に、置換されたものであってもよい。
【0029】
上記「他のヌクレオチド」は、置換前のヌクレオチドと異なるものであれば、制限されない。配列番号1の27番のヌクレオチドであるアデニン(A)を例に挙げると、「配列番号1において27番のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換された」と記載する場合、アデニンを除いたシトシン(C)、チミン(T)、グアニン(G)で置換されることを意味する。また、特に表示しなくても、本出願において、あるヌクレオチドが「置換された」と記載する場合、置換前のヌクレオチドと他のヌクレオチドで置換されることを意味する。
【0030】
一方、当業者であれば、当業界に知られている配列アラインメントを通じて任意のポリヌクレオチド配列において本出願の配列番号1の27番、28番、31番、32番、36番、66番、261番のヌクレオチドに対応する位置のヌクレオチドを把握することができ、本出願において、別途に記載しなくても「特定配列番号において特異的位置のヌクレオチド」を記載する場合、任意のポリヌクレオチド配列においてそれと「対応する位置のヌクレオチド」まで含む意味であることは自明である。したがって、プロモーター活性を有する任意のポリヌクレオチド配列内で配列番号1のポリヌクレオチド配列の27番、28番、31番、32番、36番、66番、及び261番に対応する位置のヌクレオチドで構成された群から選択されるいずれか一つ以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換されたポリヌクレオチド配列も本出願の範囲に含まれる。
【0031】
一つの具体例として、本出願においてプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、配列番号1のポリヌクレオチド配列において27番、28番、31番、32番、36番、66番、及び261番のヌクレオチドで構成された群から選択されるいずれか一つ以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換されたものであってもよい。
【0032】
具体的には、本出願においてプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、配列番号1のポリヌクレオチド配列において27番、28番、31番、32番及び36番のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換されたり、27番、28番、31番、32番、36番、66番及び261番のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換されたり、27番、28番、31番、32番、36番、及び66番のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0033】
一例として、配列番号1のポリヌクレオチドの27番、28番、31番、32番、36番、66番、及び261番に対応する位置中、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、または7個のヌクレオチドを他のヌクレオチドで置換する場合、非置換された(非変形された)プロモーター配列より高い活性を有するプロモーターを提供することができる。具体的には、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、配列番号1のポリヌクレオチド配列において27番、28番、31番、32番及び36番のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換されたものであってもよい。また、追加に、66番及び261番のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換されたり、66番のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換された、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドであってもよい。
【0034】
具体的な例として、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、配列番号1のポリヌクレオチド配列において27番のヌクレオチドであるアデニン(A)がチミン(T)で、28番のヌクレオチドであるシトシン(C)がグアニン(G)で、31番のヌクレオチドであるシトシン(C)がグアニン(G)で、32番のヌクレオチドであるシトシン(C)がチミン(T)で、36番のヌクレオチドであるアデニン(A)がシトシン(C)で置換されたものであってもよく;配列番号1のポリヌクレオチド配列において27番のヌクレオチドであるアデニン(A)がチミン(T)で、28番のヌクレオチドであるシトシン(C)がグアニン(G)で、31番のヌクレオチドであるシトシン(C)がグアニン(G)で、32番のヌクレオチドであるシトシン(C)がチミン(T)で、36番のヌクレオチドであるアデニン(A)がシトシン(C)で、66番のヌクレオチドであるシトシン(C)がチミン(T)で、261番のヌクレオチドであるアデニン(A)がグアニン(G)で置換されたものであってもよく;配列番号1のポリヌクレオチド配列において27番のヌクレオチドであるアデニン(A)がチミン(T)で、28番のヌクレオチドであるシトシン(C)がグアニン(G)で、31番のヌクレオチドであるシトシン(C)がグアニン(G)で、32番のヌクレオチドであるシトシン(C)がチミン(T)で、36番のヌクレオチドであるアデニン(A)がシトシン(C)で、66番のヌクレオチドであるシトシン(C)がチミン(T)で置換されたポリヌクレオチドであってもよい。
【0035】
より具体的な例として、配列番号2~4のいずれか一つのポリヌクレオチド配列で示されるポリヌクレオチドであってもよい。具体的には、本出願において、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、配列番号2、3または4のポリヌクレオチド配列を含むか、(必須に)構成されるものであってもよい。
【0036】
また、前述の実現例に限定されず、プロモーター活性を大きく減少させない範囲でポリヌクレオチド配列に、多様な変形も含むことができる。
【0037】
本出願においてプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、配列番号2、3、または4と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の相同性(homology)または同一性(identity)を有するポリヌクレオチド配列であってもよい。相同性または同一性を有するヌクレオチド配列は、上記範疇中、100%の同一性を有する配列は除外されたり、100%未満の同一性を有する配列であってもよい。
【0038】
一方、本出願において「特定の配列番号で記載されたヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド」、「特定の配列番号で記載されたヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド」と記載されていても、当該配列番号のヌクレオチド配列で構成されたポリヌクレオチドと同一あるいは対応する活性を有する場合であれば、一部の配列が欠失、変形、置換または付加されたヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドも本出願で使用できることは自明である。
【0039】
例えば、上記ポリヌクレオチドと同一あるいは対応する活性を有する場合であれば、当該配列番号のヌクレオチド配列内部や末端に無意味な配列が付加され、あるいは当該配列番号のヌクレオチド配列の内部や末端の一部の配列が欠失したポリヌクレオチドも本願の範囲内に属することが自明である。
【0040】
相同性(homology)及び同一性(identity)は、二つの与えられた塩基配列と関連した程度を意味し、百分率で表示することができる。
【0041】
用語、相同性及び同一性は、しばしば相互交換的に利用できる。
【0042】
保存された(conserved)ポリヌクレオチドの配列相同性または同一性は標準配列アルゴリズムにより決定され、使用されるプログラムにより確立されたデフォルトギャップペナルティが共に利用できる。実質的に、相同性を有したり(homologous)または同一な(identical)配列は、一般に、配列の全体または全長の少なくとも約50%、60%、70%、80%または90%について中程度または高いストリンジェントな条件(stringent conditions)でハイブリダイゼーションすることができる。ハイブリダイゼーションはポリヌクレオチドにおいてコドンの代わりに縮退コドンを含有するポリヌクレオチドも考慮される。
【0043】
任意の二つのポリヌクレオチド配列が相同性、類似性または同一性を有するかどうかは、例えば、Pearson et al (1988)[Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85]:2444でのようなデフォルトパラメータを利用して「FASTA」プログラムなどの既知のコンピュータアルゴリズムを利用して決定することができる。または、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.、2000,Trends Genet.16:276-277)(バージョン5.0.0または以降のバージョン)で行われるような、ニードルマン-ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(Needleman and Wunsch、1970,J.Mol.Biol.48:443-453)を使用して決定することができる。(GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.,et al,Nucleic Acids Research 12:387 (1984))、BLASTP,BLASTN,FASTA (Atschul,[S.] [F.,] [ET AL,J MOLEC BIOL 215]:403 (1990);Guide to Huge Computers,Martin J.Bishop,[ED.,] Academic Press,San Diego、1994、及び[CARILLO ETA/.](1988) SIAM J Applied Math 48:1073を含む)。例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLAST、またはClustalWを用いて相同性、類似性または同一性を決定することができる。
【0044】
ポリヌクレオチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math (1981) 2:482において公知となっているように、例えば、Needleman et al.(1970)、J Mol Biol.48:443のようなGAPコンピュータプログラムを用いて配列情報を比較することにより決定することができる。要約すると、GAPプログラムは、2つの配列中、より短いものにおける記号の総数であり、類似の配列された記号(即ち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を除した値と定義する。GAPプログラムのためのデフォルトパラメータは、(1)2進法比較マトリックス(同一性のために1、そして非同一性のために0の値を含む)及びSchwartz and Dayhoff,eds.,Atlas Of Protein Sequence And Structure,National Biomedical Research Foundation,pp.353-358 (1979)により開示された通り、Gribskov et al(1986) Nucl.Acids Res.14:6745の加重比較マトリックス(またはEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス);(2)各ギャップのための3.0のペナルティ及び各ギャップにおいて各記号のための追加の0.10ペナルティ(またはギャップ開放ペナルティ10,ギャップ延長ペナルティ0.5);及び(3)末端ギャップのための無ペナルティを含むことができる。したがって、本願で使用されたものとして、用語「相同性」または「同一性」は配列間の関連性(relevance)を示す。
【0045】
また、公知の遺伝子配列から製造できるプローブ、例えば、前述のポリヌクレオチド配列の全体または一部に対する相補配列とストリンジェントな条件の下、ハイブリダイゼーションし、同一の活性を有するポリヌクレオチド配列であれば、制限なく含むことができる。上記「ストリンジェントな条件(stringent condition)」とは、ポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件を意味する。このような条件は、文献(例えば、J.Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual、2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,New York、1989;F.M.Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,New York)に具体的に記載されている。例えば、相同性(homology)または同一性(identity)が高い遺伝子同士、40%以上、具体的には、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、より具体的には、95%以上、さらに具体的には、97%以上、特に具体的には、99%以上の相同性または同一性を有する遺伝子同士ハイブリダイゼーションし、それより相同性または同一性が低い遺伝子同士ハイブリダイゼーションしない条件、または通常のサザンハイブリダイゼーション(southern hybridization)の洗浄条件である60℃、1XSSC、0.1% SDS、具体的には、60℃、0.1XSSC、0.1% SDS、より具体的には、68℃、0.1XSSC、0.1% SDSに相当する塩濃度及び温度で1回、具体的には、2回~3回洗浄する条件を列挙することができる。
【0046】
ハイブリダイゼーションは、たとえハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて塩基間のミスマッチ(mismatch)が可能であっても、二つの核酸が相補的配列を有することを要求する。用語「相補的」は、互いにハイブリダイゼーションが可能なヌクレオチド塩基間の関係を記述するのに用いられる。例えば、DNAに関し、アデニンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。したがって、本出願は、また、実質的に類似の核酸配列だけでなく、全体配列に相補的な単離された核酸断片を含むことができる。
【0047】
具体的には、相同性または同一性を有するポリヌクレオチドは、55℃のTm値でハイブリダイゼーション段階を含むハイブリダイゼーション条件を用い、上述の条件を用いて探知することができる。また、上記Tm値は、60℃、63℃または65℃であってもよいが、これに限定されるものではなく、その目的に応じて当業者により適切に調節することができる。
【0048】
ポリヌクレオチドをハイブリダイゼーションする適切なストリンジェンシーは、ポリヌクレオチドの長さ及び相補性の程度に依存し、変数は当該技術分野においてよく知られている(Sambrook et al.,supra、9.50-9.51,11.7-11.8を参照)。
【0049】
本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、プロモーターとして利用され得る。
【0050】
上記プロモーターは、mRNAへの転写開始部位の5′部位に位置することができる。
【0051】
上記プロモーターは、従来のプロモーターに比べて増加したプロモーター活性を有することができる。即ち、宿主細胞において目的遺伝子の発現だけでなく、目的遺伝子によりコードされるタンパク質の発現及び/又は活性を増加させることができる。本出願の目的上、生産しようとする産物に応じて発現の強化のための目的遺伝子を変更することができ、上記プロモーターは、目的遺伝子の強化のための汎用的プロモーターとして使用することができる。
【0052】
上記「目的遺伝子」は、本出願の目的上、本出願のプロモーター配列により発現を調節しようとする遺伝子を意味する。上記目的遺伝子によりコードされるタンパク質は「目的タンパク質」と表現することができ、上記「目的タンパク質」をコードする遺伝子は「目的遺伝子」と表現することができる。
【0053】
また、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、コドンの縮退性(degeneracy)により、または上記ポリヌクレオチドを発現させようとする生物で好まれるコドンを考慮し、ポリペプチド配列を変化させない範囲内でコード領域に多様な変形が行われ得る。ポリヌクレオチド配列に関する説明は、前述した通りである。
【0054】
一つの具体例として、上記目的タンパク質は、グルタミン酸脱水素酵素(glutamate dehydrogenase,gdh)活性を有するポリペプチドであってもよい。即ち、上記プロモーターの目的遺伝子は、グルタミン酸脱水素酵素(glutamate dehydrogenase,gdh)活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子であってもよい。
【0055】
本出願において「グルタミン酸脱水素酵素(glutamate dehydrogenase,gdh)」は、「グルタメートデヒドロゲナーゼ」などとも称され、上記グルタミン酸脱水素酵素は、グルタメートの2-オキソグルタレートへの代謝に関与し、その活性調節を通じて、リシン、スレオニン、O-アセチルホモセリン、イソロイシンなどの有用物質の生産性向上の効果を得ることができる。
【0056】
グルタミン酸脱水素酵素をコードする遺伝子の例としては、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032のgdh遺伝子(NCgl1999)などがあるが、これに制限されるものではない。当業者は、公知のデータベース(GenBankなど)で、グルタミン酸脱水素酵素をコードする遺伝子情報を容易に得ることができる。
【0057】
また、上記グルタミン酸脱水素酵素を構成するアミノ酸配列は、公知のデータベースであるNCBIのGenBankでその配列を得ることができる。一例として、コリネバクテリウム・グルタミカム由来であってもよい。
【0058】
また、本出願の「グルタミン酸脱水素酵素活性を有するポリペプチド」は、上記グルタミン酸脱水素酵素の野生型、非変異型あるいは自然型だけでなく、これと同じ活性を有するか、これより活性が強化した変異体も含む。
【0059】
本出願において、「変異型ポリペプチド」は、「変異体(variant)」と同様の意味であり、一つ以上のアミノ酸が保存的置換(conservative substitution)及び/又は変形(modification)において上記列挙された配列(the recited sequence)と異なるが、上記タンパク質の機能(functions)または特性(properties)が維持されるタンパク質を指す。
【0060】
変異体は、数個のアミノ酸の置換、欠失または付加により識別される配列(identified sequence)と異なる。このような変異体は、一般に、上記タンパク質のアミノ酸配列中の一つ以上のアミノ酸を変形し、上記変形されたタンパク質の特性を評価して識別できる。即ち、変異体の能力は、原タンパク質(native protein)に比べて増加することがある。また、一部の変異体は、N-末端リーダー配列または膜貫通ドメイン(transmembrane domain)のような一つ以上の部分が除去された変異体を含むことができる。
【0061】
上記用語「変異体」は、変異型、変形、変異されたタンパク質、変異などの用語(英文表現ではmodification、modified protein、modified polypeptide、mutant、mutein、divergent、variantなど)が使用でき、変異された意味で使用される用語であれば、これに制限されない。本出願の目的上、上記変異体は、天然の野生型または非変形タンパク質に比べて変異されたタンパク質の活性が増加したものであってもよいが、これに制限されない。
【0062】
本出願において用語「保存的置換(conservative substitution)」は、あるアミノ酸を類似した構造的及び/又は化学的性質を有するもう一つのアミノ酸で置換させることを意味する。上記変異体は、一つ以上の生物学的活性を依然として保有しながら、例えば、一つ以上の保存的置換を有することができる。このようなアミノ酸の置換は、一般に、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び/又は両親媒性(amphipathic nature)における類似性に基づいて発生することができる。
【0063】
また、変異体は、ポリペプチドの特性と2次構造に最小限の影響を有するアミノ酸の欠失または付加を含むことができる。例えば、ポリペプチドは、翻訳と同時に(co-translationally)または翻訳後に(post-translationally)タンパク質の移転(transfer)に関与するタンパク質N-末端のシグナル(またはリーダー)配列とコンジュゲートすることができる。また、上記ポリペプチドは、ポリペプチドを確認、精製、または合成できるように他の配列またはリンカーとコンジュゲートできる。
【0064】
本出願のグルタミン酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子は「gdh遺伝子」と称することができる。
【0065】
上記遺伝子は、コリネバクテリウム属微生物由来、具体的には、コリネバクテリウム・グルタミカム由来であってもよい。
【0066】
本出願において「gdh遺伝子」、即ち、グルタミン酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、コドンの縮退性(degeneracy)により、または上記ポリペプチドを発現させようとする生物で好まれるコドンを考慮し、ポリペプチドのアミノ酸配列を変化させない範囲内でコード領域に多様な変形が行われてもよい。
【0067】
本出願のグルタミン酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドは、変異体配列も含み、具体的には、グルタミン酸脱水素酵素の強化した活性を示すように変異したタンパク質変異体も含むことができる。
【0068】
本出願のもう一つの様態は、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含む遺伝子発現用組成物を提供する。
【0069】
上記遺伝子発現用組成物は、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドにより発現させ得る遺伝子を発現できる組成物を意味する。
【0070】
その例として、上記遺伝子発現用組成物は、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含み、さらに上記ポリヌクレオチドをプロモーターで作動させる構成を制限なく含むことができる。
【0071】
本出願の遺伝子発現用組成物において、上記ポリヌクレオチドは、導入された宿主細胞で作動可能に連結された遺伝子を発現させるようにベクター内に含まれた形態であってもよい。
【0072】
本出願のもう一つの形態は、上記プロモーター活性を有するポリヌクレオチド、上記ポリヌクレオチド及び目的タンパク質をコードする遺伝子を含む発現カセットを含む。
【0073】
本出願において用語「発現カセット」とは、上記プロモーター活性を有するポリヌクレオチドと目的タンパク質をコードする遺伝子を含んでおり、プロモーターの下流に作動可能に連結されている目的遺伝子を発現させ得る単位カセットを意味する。具体的には、上記発現カセットは、上記プロモーター活性を有するポリヌクレオチドと目的タンパク質をコードする遺伝子が作動可能に連結されたものであってもよい。本出願において用語「作動可能に連結」されたとは、本出願の目的タンパク質をコードする遺伝子の転写を開始及び媒介させるプロモーター活性を有するポリヌクレオチドと上記遺伝子配列が機能的に連結されていることを意味する。
【0074】
このような遺伝子発現カセットの内部又は外部には、上記目的遺伝子の効率的な発現に役立つ多様な因子がさらに含まれ得る。上記遺伝子発現カセットは、通常、上記目的遺伝子に作動可能に連結されているプロモーター(promoter)以外に転写終結信号、リボソーム結合部位及び翻訳終結信号を含むことができる。
【0075】
一つの具体例として、上記目的タンパク質は、グルタミン酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドであってもよい。
【0076】
本出願のもう一つの形態は、上記プロモーター活性を有するポリヌクレオチド、または上記ポリヌクレオチド及び目的タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターを含む。
【0077】
一つの具体例として、上記目的タンパク質は、グルタミン酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドであってもよい。
【0078】
本出願において用いられた用語「ベクター」は、適した宿主内で目的タンパク質を発現させるように適した調節配列に作動可能に連結された上記目的タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含有するDNA製造物を意味する。
【0079】
本出願の目的上、上記調節配列には、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドが含まれ得る。
【0080】
一方、上記調節配列は、転写を開始できるプロモーター、そのような転写を調節するための任意のオペレーター配列、適したmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、及び転写及び解読の終結を調節する配列などの構成を含むことができる。ベクターは、適当な宿主細胞内に形質転換された後、宿主ゲノムと関係がなく複製されたり、機能することができ、ゲノムそのものに統合することができる。本出願で使用されるベクターは、宿主細胞内で発現可能なものであれば、特に制限されず、当業界において知られた任意のベクターを用いて宿主細胞を形質転換させることができる。通常使用されるベクターの例としては、天然状態または組換え状態のプラスミド、コスミド、ウイルス及びバクテリオファージが挙げられる。
【0081】
例えば、ファージベクターまたはコスミドベクターとしてpWE15、M13、λLB3、λBL4、λIXII、λASHII、λAPII、λt10、λt11、Charon4A、及びCharon21Aなどを使用することができ、プラスミドベクターとしてpBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系及びpET系などを使用することができる。
【0082】
また、宿主細胞内染色体挿入用ベクターを通じて染色体内に内在的プロモーターを本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドで交換させることができる。例えば、pECCG117、pDZ、pACYC177、pACYC184、pCL、pUC19、pBR322、pMW118、pCC1BAC、pCES208、pXMJ19ベクターなどを使用してもよいが、これに制限されない。または、公知となった技術のベクターを利用することができる(大韓民国登録特許第10-09240675号)。
【0083】
上記ポリヌクレオチドの染色体内への挿入は、当業界に知られている任意の方法、例えば、相同組換えにより行われてもよいが、これに限定されない。上記染色体挿入の有無を確認するための選別マーカー(selection marker)をさらに含むことができる。選別マーカーは、ベクターで形質転換された細胞を選別、即ち、目的核酸分子の挿入の有無を確認するためのものであり、薬品耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面タンパク質の発現のような選択可能表現型を付与するマーカーが使用され得る。選択剤(selective agent)が処理された環境では、選別マーカーを発現する細胞のみが生存したり、他の表現形質を示すため、形質転換された細胞を選別することができる。一例として、細胞内染色体挿入用ベクターを通じて染色体内に野生型ポリヌクレオチドを変異されたポリヌクレオチドで交換させることができる。
【0084】
本出願において用語「形質転換」は、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞内に導入し、宿主細胞内で上記目的タンパク質が発現できるようにするものであってもよい。
【0085】
形質転換されたポリヌクレオチドは、宿主細胞内で発現することができれば、宿主細胞の染色体内に挿入されて位置したり染色体外に位置したりに関係なく、これらすべてを含むことができる。また、上記目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、目的タンパク質をコードするDNA及びRNAを含むことができる。上記目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、宿主細胞内に導入されて発現できるものであれば、如何なる形態で導入されるものでも構わない。例えば、上記目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、自主的に発現するのに必要なすべての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入することができる。
【0086】
上記発現カセットは、通常、上記目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終結信号、リボソーム結合部位及び翻訳終結信号を含むことができる。また、上記目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、それ自体の形態で宿主細胞に導入されて宿主細胞で発現に必要な配列と作動可能に連結されているものであってもよく、これに限定されない。
【0087】
また、上記において用語「作動可能に連結」されたとは、本出願の目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの転写を開始及び媒介させるプロモーター配列と上記遺伝子配列が機能的に連結されていることを意味する。
【0088】
本出願の目的上、上記プロモーターは、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドであってもよい。
【0089】
本出願のベクターを形質転換させる方法は、核酸を細胞内に導入する如何なる方法も含まれ、宿主細胞により当分野において公知となった通り、適した標準技術を選択して行うことができる。例えば、電気穿孔法(electroporation)、リン酸カルシウム(CaPO4)の沈殿、塩化カルシウム(CaCl2)の沈殿、微量注入法(microinjection)、ポリエチレングリコール(PEG)法、DEAE-デキストラン法、陽イオンリポソーム法、及び酢酸リチウム-DMSO法などがあるが、これに制限されない。
【0090】
本出願のもう一つの様態は、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチド;上記ポリヌクレオチド及び目的タンパク質をコードする遺伝子を含む発現カセット;または上記ポリヌクレオチド及び目的タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターを含む微生物を提供する。
【0091】
本出願において用語「微生物」は、野生型微生物や、自然的または人為的に遺伝的変形が起きた微生物をすべて含み、外部遺伝子が挿入されたり内在的遺伝子の活性が強化されたり弱化されるなどの原因により特定の機序が弱化されたり強化された微生物をすべて含む概念である。具体的には、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドと目的タンパク質を含む微生物であってもよい。
【0092】
上記目的タンパク質は、グルタミン酸脱水素酵素(glutamate dehydrogenase,gdh)活性を有するポリペプチドであってもよい。本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチド、目的タンパク質、グルタミン酸脱水素酵素(glutamate dehydrogenase,gdh)活性を有するポリペプチド、ベクター、及び発現カセットについては前述した通りである。
【0093】
上記微生物は、コリネバクテリウム属微生物であってもよく、具体的には、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)であってもよい。
【0094】
上記微生物は、グルタミン酸脱水素酵素を発現する微生物、またはグルタミン酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドを発現する微生物、またはグルタミン酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドが導入された微生物であってもよいが、これに制限されない。
【0095】
本出願において、上記微生物は、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含むことができ、具体的には、上記ポリヌクレオチド及び/又は上記ポリヌクレオチドと作動可能に連結され、目的タンパク質をコードする遺伝子を含むことができる。または、上記微生物は、上記ポリヌクレオチドまたは遺伝子発現調節配列及び目的タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターまたは発現カセットを含んでもよいが、これに制限されない。また、上記ポリヌクレオチド、上記目的タンパク質をコードする遺伝子、ベクター、及び発現カセットは形質転換により上記微生物に導入されてもよいが、これに制限されない。さらに、上記微生物は、上記遺伝子が発現できるものであれば、上記ポリヌクレオチド及び目的タンパク質をコードする遺伝子が、染色体上に位置したり、染色体外に位置することとは無関係である。
【0096】
本出願において用語、タンパク質が「発現されるように/される」は、目的タンパク質、例えば、グルタミン酸脱水素酵素あるいはその変異体が微生物内に導入されたり、微生物内で発現するように変形された状態を意味する。上記目的タンパク質が微生物内存在するタンパク質である場合、内在的または変形前に比べてその活性が強化された状態を意味し得る。
【0097】
具体的には、「タンパク質の導入」は、微生物が本来有していなかった特定のタンパク質の活性を示すことまたは当該タンパク質の内在的活性または変形前の活性に比べて向上した活性を示すことであってもよい。例えば、特定のタンパク質をコードするポリヌクレオチドが微生物内染色体に導入されたり、特定のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターまたは発現カセットが微生物内に導入され、その活性が示されることであってもよい。
【0098】
また、「活性の強化」は、微生物が有する特定のタンパク質の内在的活性または変形前の活性に比べて活性が向上したものであってもよい。「内在的活性」は、自然的、または人為的要因による遺伝的変異で微生物の形質が変化する場合、形質変化前の親株が本来有していた特定のタンパク質の活性を意味するものであってもよい。
【0099】
本出願の目的上、上記活性の強化は、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチド配列を目的タンパク質の発現調節配列として使用して行われるものであってもよい。上記目的タンパク質は、前述したように、自然型もしくは変異型であってもよいため、上記発現調節配列は、タンパク質変異体をコードする遺伝子の発現調節配列であってもよく、染色体上の自然型タンパク質をコードする遺伝子の発現調節配列であってもよい。
【0100】
その他、他の活性強化方法も組み合わせて用いることができる。例えば、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチド配列を目的タンパク質の発現調節配列として使用する以外にも、目的タンパク質をコードする遺伝子の細胞内コピー数の増加、染色体上の自然型タンパク質をコードする遺伝子を上記タンパク質変異体をコードする遺伝子で交換する方法、上記タンパク質変異体の活性が強化するように、上記タンパク質をコードする遺伝子に変異を追加に導入させる方法、及び微生物にタンパク質変異体を導入する方法からなる群から選択されるいずれか一つ以上の方法を使用してもよいが、これに制限されない。
【0101】
本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを微生物で目的タンパク質の発現調節として使用することにより、目的タンパク質の活性が強化されてもよい。
【0102】
例えば、対応するタンパク質の活性または濃度が野生型や非変形微生物菌株におけるタンパク質の活性または濃度を基準にして一般に、少なくとも1%、10%、25%、50%、75%、100%、150%、200%、300%、400%または500%、最大1000%または2000%まで増加されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0103】
本出願において用語「非変形微生物」は、微生物に自然的に発生しうる突然変異を含む菌株を除外するものではなく、天然型の菌株自体であるか、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含まない微生物、または本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換されていない微生物も含む。
【0104】
本出願において「目的物質を生産する微生物」は、自然的または人為的に遺伝的変形が起きた微生物をすべて含み、外部遺伝子が挿入されたり内在的遺伝子の活性が強化されたり不活性化するなどの原因により特定の機序が弱化されたり強化された微生物であり、目的とする物質生産のための遺伝的変異が起きたり活性を強化させた微生物であってもよい。本出願の目的上、上記目的物質を生産する微生物は、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含み、野生型や非変形微生物と比較して目的とする物質を過量に生産できる微生物を意味し得る。
【0105】
上記「目的物質を生産する微生物」は、「目的物質生産微生物」、「目的物質生産能を有する微生物」、「目的物質生産菌株」、「目的物質生産能を有する菌株」などの用語と混用され得る。
【0106】
上記目的物質は、アミノ酸、具体的には、リシン、スレオニン、O-アセチルホモセリン、またはイソロイシンであってもよい。より具体的な例として、上記リシンはL-リシン、上記スレオニンはL-スレオニン、上記イソロイシンはL-イソロイシンであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0107】
本出願の目的上、上記目的物質を生産する微生物は目的物質、具体的には、リシン、スレオニン、O-アセチルホモセリン、またはイソロイシンの生産能が向上したものであってもよい。
【0108】
一方、上記目的物質生産微生物は野生型微生物であってもよく、または組換え微生物であってもよい。上記組換え微生物は、前述した通りである。上記微生物は、さらに目的物質生産能の増加のための生合成経路強化、フィードバック阻害解除、分解経路あるいは生合成経路を弱化させる遺伝子不活性化などの変異を含んでもよく、このような変異は、人工的に、例えば、UV照射により起こってもよいが、自然なことを排除するものではない。
【0109】
具体的には、上記目的物質の生産微生物は、上記目的物質を生産できるように変異したものであってもよい。例えば、目的物質の生産能がない微生物を目的物質の生産能を有するように変異されたり、生産能を強化させた微生物であってもよい。一例として、野生型微生物に目的物質を生産できるように生合成経路に関与するタンパク質またはその変異体が導入された微生物であってもよい(KR 10-2011994、KR 10-1947959、KR 10-1996769)。
【0110】
具体的な例として、本出願の目的物質生産微生物は、アスパルトキナーゼ(aspartokinase,lysC)、ホモセリンデヒドロゲナーゼ(homoserine dehydrogenase,hom)、ピルビン酸カルボキシラーゼ(pyruvate carboxylase,pyc)、L-スレオニンデヒドラターゼ(L-threonine dehydratase,ilvA)またはこれらの組合せを含むコリネバクテリウム属微生物であってもよい。上記アスパルトキナーゼ、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、またはL-スレオニンデヒドラターゼは野生型タンパク質であるか、活性が弱化または強化されて目的物質の生産に有益に変異されたタンパク質変異体であってもよい。
【0111】
本出願の微生物は、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含まない微生物に比べて少なくとも1%、5%、10%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、22%、25%、29%、33%、38%、44%、45%、または48%以上の目的物質の生産能を有するものであってもよい。
【0112】
本出願のもう一つの形態は、上記微生物を培地で培養する段階を含む目的物質の製造方法を提供する。上記微生物、目的物質については前述した通りである。
【0113】
本出願において上記ポリヌクレオチドを含む微生物を用いて目的物質を生産する方法は、当業界に広く知られている方法を用いて行うことができる。具体的には、上記培養は、バッチ工程、注入バッチまたは反復注入バッチ工程(fed batch or repeated fed batch process)で連続式で培養できるが、これに制限されるものではない。培養に使用される培地は、適切な方式で特定菌株の要件を満たさなければならない。コリネバクテリウム菌株に対する培養培地は公知となっている(例えば、Manual of Methods for General Bacteriology by the American Society for Bacteriology,Washington D.C.,USA、1981)。
【0114】
本出願の菌株の培養に用いられる培地及びその他培養条件は通常のコリネバクテリウム属微生物の培養に使用される培地であれば、特に制限なくいずれも使用することができ、具体的には、本出願の菌株を適当な炭素源、窒素源、リン源、無機化合物、アミノ酸及び/又はビタミンなどを含有した通常の培地内で好気性または嫌気性の条件下で温度、pHなどを調節して培養することができる。
【0115】
本出願において上記炭素源としては、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトースなどのような炭水化物;マンニトール、ソルビトールなどのような糖アルコール、ピルビン酸、乳酸、クエン酸などのような有機酸;グルタメート、メチオニン、リシンなどのようなアミノ酸などが含まれてもよいが、これに制限されない。また、澱粉加水分解物、糖蜜、ブラックストラップ糖蜜、米ぬか、キャッサバ、バガス及びトウモロコシ浸漬液のような天然の有機栄養源を使用することができ、グルコース及び殺菌された前処理糖蜜(即ち、還元糖で転換された糖蜜)などのような炭水化物が用いられ、その他の適正量の炭素源を制限なく多様に利用することができる。これら炭素源は、単独で用いられたり2種以上が組合わせて用いられる。
【0116】
上記窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのような無機窒素源;アミノ酸、ペプトン、NZ-アミン、肉類抽出物、酵母抽出物、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液、カゼイン加水分解物、魚類またはその分解生成物、脱脂大豆ケーキまたはその分解生成物などのような有機窒素源が用いられる。これら窒素源は、単独で用いられたり2種以上が組合わせて用いられるが、これに制限されない。
【0117】
上記リン源としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、またはこれに対応するナトリウム含有塩などが含まれ得る。無機化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化鉄、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、炭酸カルシウムなどが用いられる。
【0118】
その他に、上記培地には、アミノ酸、ビタミン及び/又は適切な前駆体などが含まれ得る。具体的には、上記菌株の培養培地には、L-アミノ酸などを添加することができる。具体的には、グリシン(glycine)、グルタメート(glutamate)、及び/又はシステイン(cysteine)などを添加することができ、必要によっては、リシン(lysine)などのL-アミノ酸がさらに添加されてもよいが、必ずしもこれに制限されない。
【0119】
上記培地または前駆体は、培養物に回分式または連続式で添加されてもよく、これに制限されない。
【0120】
本出願において、菌株の培養中に水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アンモニア、リン酸、硫酸などのような化合物を培養物に適切な方式で添加し、培養物のpHを調整することができる。また、培養中には脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を用いて気泡生成を抑制することができる。また、培養物の好気状態を維持するために、培養物内に酸素または酸素含有気体を注入したり嫌気及び微好気状態を維持するために、気体の注入なしであるいは窒素、水素または二酸化炭素ガスを注入することができる。
【0121】
培養水の温度は25℃~40℃であってもよく、より具体的には、28℃~37℃であってもよいが、これに制限されない。培養期間は、希望する有用物質の生産量が得られるまで続けることができ、具体的には、1時間~160時間、10時間~100時間であってもよいが、これに制限されない。
【0122】
上記目的物質の製造方法は、上記培養段階の後、追加的な工程をさらに含むことができる。上記追加工程は、目的物質用途に応じて適切に選択することができる。
【0123】
具体的には、上記目的物質の製造方法は、上記培養段階の後、上記微生物、上記培地、上記微生物の乾燥物、上記微生物の抽出物、上記微生物の培養物、上記培養物の上澄液、上記微生物の破砕物から選択された一つ以上の物質から目的物質を回収する段階を含むことができる。
【0124】
上記方法は、上記回収段階以前、あるいは同時に微生物(菌株)を溶菌させる段階をさらに含むことができる。菌株の溶菌は、本出願が属する技術分野において通常用いられる方法、例えば、溶菌用緩衝溶液、ソニケーター、熱処理及びフレンチプレスなどにより実施することができる。また、上記溶菌段階は、細胞壁分解酵素、核酸分解酵素、核酸移転酵素、タンパク質分解酵素など酵素反応を含むことができるが、これに制限されない。
【0125】
本出願において「微生物の乾燥物」は、「菌株乾燥物」などの用語と交換的に用いられる。上記微生物の乾燥物は、目的物質を蓄積した菌体を乾燥させて製造することができ、具体的には、飼料用組成物、食品用組成物などに含まれてもよいが、これに制限されない。
【0126】
本出願において微生物の抽出物は、「菌株抽出物」などの用語と相互交換的に用いられる。上記菌株抽出物は、上記菌株の菌体で細胞壁を分離して残った物質を意味し得る。具体的には、菌体を溶菌させて収得した成分から細胞壁を除いた残りの成分を意味し得る。上記菌株抽出物は目的物質を含み、目的物質以外の成分としてはタンパク質、炭水化物、核酸、繊維質の一つ以上の成分が含まれてもよいが、これに制限されない。
【0127】
上記回収段階は、当該技術分野において公知となった適切な方法を利用し、目的物質である目的物質を回収することができる。
【0128】
上記回収段階は、精製工程を含むことができる。上記精製工程は、菌株から目的物質だけを分離して純粋精製するものであってもよい。上記精製工程を通じて、純粋精製された目的物質を製造することができる。
【0129】
必要に応じて、上記目的物質の製造方法は、上記培養段階の後、得られた菌株、その乾燥物、抽出物、培養物、破砕物及びこれらから回収された目的物質から選択された物質と賦形剤を混合する段階をさらに含むことができる。
【0130】
上記賦形剤は、目的とする用途や形態に応じて適切に選択して使用することができ、例えば、澱粉、グルコース、セルロース、ラクトース、グリコーゲン、D-マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、マルトデキストリン、炭酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸一水素カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、精製ラノリン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、コロイド性シリカゲル、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プロピレングリコール、カゼイン、乳酸カルシウム、プリモゲル、アラビアゴムから選択されるものであってもよく、具体的には、澱粉、グルコース、セルロース、ラクトース、デキストリン、グリコーゲン、D-マンニトール、マルトデキストリンから選択される一つ以上の成分であってもよいが、これに制限されない。
【0131】
上記賦形剤は、例えば、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤または等張化剤などを含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0132】
本出願のもう一つの様態は、配列番号1のポリヌクレオチド配列において27番、28番、31番、32番及び36番のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換された、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドの、プロモーターとしての使用を提供する。
上記ポリヌクレオチドについては前述した通りである。
【実施例
【0133】
以下、本出願を実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、これら実施例は、本出願を例示的に説明するためのものであり、本出願の範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
【0134】
実施例1.新規なプロモーターの目的遺伝子発現誘導活性の確認
実施例1-1.ランダム突然変異法を用いたgdhプロモーター変異ライブラリー
まず、米国国立衛生研究所の遺伝子銀行(NIH GenBank)を根拠にして野生型(wild type)コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032のgdh遺伝子(NCBI登録番号NCgl1999)のプロモーター部位を含む塩基配列(配列番号1)を確保した。配列番号1の塩基配列からなるgdh遺伝子のプロモーターを鋳型にDiversify PCR Random Mutagenesis Kit(takara)を用い、配列番号5及び配列番号6のプライマーを用いてメーカーのマニュアル通りにランダムに突然変異を誘発させて配列が異なるgdhプロモーター変異PCR産物(Pmgdh)を得た。また、GFP遺伝子のORF(Open Reading Frame)はpGFPuvベクター(clontech、米国)を鋳型に、配列番号7及び8のプライマーを用いてPCRを行い、PCRは94℃で5分間変性後、94℃で30秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、72℃で1分間の重合を30回繰り返した後、72℃で7分間の重合反応を行い、GFPのORFを含む遺伝子切片を得た。
【0135】
上記増幅産物であるgdhプロモーター変異PCR産物(Pmgdh)及びGFPをBamHI/SalI制限酵素で切断して準備した大腸菌-コリネバクテリウムのシャトルベクター(shuttle vector)であるpCES208(J.Microbiol.Biotechnol.18:639-647,2008)と混合し、In-Fusion(登録商標) HDクローニングキット(clontech)を用いてPmgdhがGFPと連結されている組換えベクターライブラリーを製作した。各ベクターは、pCES_Pm1gdh_gfpからpCES_Pm100gdh_gfpまでと命名した。
【0136】
Pmgdhライブラリーの活性を確認するための対照群としては、野生型gdh遺伝子のプロモーター(配列番号1)とGFPが連結されている組換えベクターを用いた。野生型(wild type)コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032を鋳型に、配列番号5と配列番号6のプライマーを用いて野生型gdh遺伝子のプロモーター遺伝子切片を得た。また、GFP遺伝子のORF(Open Reading Frame)はpGFPuvベクター(clontech、米国)を鋳型に、配列番号7及び8のプライマーを用いてPCRを行い、PCRは94℃で5分間変性後、94℃で30秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、72℃で1分間の重合を30回繰り返した後、72℃で7分間の重合反応を行い、GFPのORFを含む遺伝子切片を得た。
【0137】
上記増幅産物であるgdh野生型プロモーターPCR産物(Pgdh)及びGFPをBamHI/SalI制限酵素で切断し、準備した大腸菌-コリネバクテリウムのシャトルベクター(shuttle vector)のpCES208(J.Microbiol.Biotechnol.18:639-647,2008)と混合し、In-Fusion(登録商標) HDクローニングキット(clontech)を用いてPgdhがGFPと連結されている組換えベクターを製作し、これをpCES_Pgdh_gfpと命名した。
【0138】
実施例1-2.形質転換菌株の製作
ベクターpCES208及び上記実施例1-1で製作された組換えベクターpCES_Pmgdh_gfpライブラリー(pCES_Pm1gdh_gfpからpCES_Pm100gdh_gfp)及びpCES_Pgdh_gfpをコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032に電気穿孔法(Appl.Microbiol.Biothcenol.(1999)52:541-545)で形質転換した後、カナマイシン(kanamycin)25mg/Lを含有した選別培地で形質転換された菌株を選別し、これをそれぞれATCC13032/pCES、ATCC13032/pCES_Pmgdh_gfp(ATCC13032/pCES_Pm1gdh_gfpからATCC13032/pCES_Pm100gdh_gfp)及びATCC13032/pCES_Pgdh_gfpと命名した。
【0139】
実施例1-3.gdhプロモーター変異選別
gdhプロモーター変異体の活性を確認するために、上記実施例1-2で取得した形質転換菌株であるコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032/pCES、ATCC13032/pCES_Pgdh_gfp及びATCC13032/pCES_Pmgdh_gfp(ATCC13032/pCES_Pm1gdh_gfpからATCC13032/pCES_Pm100gdh_gfp)を下記のような方法で培養し、GFPの活性を測定した。
【0140】
具体的には、培地(ブドウ糖20g、硫酸アンモニウム5g、酵母抽出物5g、尿素1.5g、KHPO 4g、KHPO 8g、MgSO・7HO 0.5g、ビオチン150μg、チアミン塩酸塩1.5mg、パントテン酸カルシウム3mg、ニコチンアミド3mg(蒸溜水1Lを基準)、pH 7.2)25mlが含まれたフラスコに形質転換されたコリネバクテリウム・グルタミカム菌株をそれぞれ接種し、30℃で20時間振盪培養した。遠心分離(5,000rpm、15分間)を通じて培養液から菌体を回収し、50mM Tris-HCl(pH 8.0)緩衝溶液で2回洗浄した後、同緩衝溶液で懸濁した。懸濁液1.5ml当たり1.25gのガラスビード(glass bead)を添加した後、ビードビーター(bead beater)を用いて、6分間菌体を破砕した後、遠心分離(15,000rpm、20分間)を通じて上層液を回収し、ブラッドフォード方法によるタンパク質濃度を定量した。同一量の菌体抽出物に対してLaure Goryらの方法(FEMS Microbiology Letters 194,127-133,2001)を用いて488nmで励起光を照射し、511nmの放出光をLS-50B spectrophotometer(Perkin-Elmer)機器を用いて測定することにより、GFP遺伝子の発現程度を測定した。対照群ATCC13032/pCES_Pgdh_gfp菌株のGFP遺伝子発現程度と比較し、最もGFP遺伝子発現の程度が高い菌株の上位3種を選別した(表1)。
【0141】
【表1】
【0142】
上記表1に示されるように、Pm3gdh、Pm16gdh、Pm78gdhプロモーターは、コリネバクテリウム・グルタミカムでプロモーター活性を示し、野生型gdhプロモーターより高い蛍光感度を示すことを確認した。上記で選別された4種菌株のgdhプロモーターに導入された変異を確認するために、gdhプロモーター変異体の配列を分析した。配列を決定するために、配列番号9及び配列番号10のプライマーを用いてPCRを行った後、配列分析を進めた。野生型gdhプロモーター配列である配列番号1の配列と比較し、これを通じて変異型gdhプロモーターの配列を確認した。選別された菌株のgdhプロモーター配列は、下記表2の通りである(表2)。
【0143】
【表2】
【0144】
実施例2.Pm3gdh、Pm16gdh、Pm78gdhプロモーター変異導入ベクターの製作
上記Pm3gdh、Pm16gdh、Pm78gdhプロモーター変異を導入するためのベクターを製作するために、配列番号13及び配列番号14のプライマーを用いてそれぞれpCES_Pm3gdh_gfp、pCES_Pm16gdh_gfp、pCES_Pm78gdh_gfpのベクターを鋳型にプロモーター変異に該当するPCR産物を得た。配列番号11及び配列番号12、配列番号15及び配列番号16のプライマーセットを利用して野生型コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032菌株の染色体を鋳型にgdhプロモーターアップストリーム(upstream)領域とgdhのORF一部を含む遺伝子切片を得た。PCRは、94℃で5分間変性後、94℃で30秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、72℃で1分間の重合を30回繰り返した後、72℃で5分間の重合反応を行い、それぞれのPCR産物を得た。上記三種の増幅産物をあらかじめSmaI制限酵素で切断して準備したpDCM2ベクター(大韓民国公開番号第10-2020-0136813号)と混合してIn-Fusion(登録商標) HDクローニングキット(clontech)を利用して組換えベクターを製作し、これをそれぞれpDCM2_Pm3gdh_gdh、pDCM2_Pm16gdh_gdh、pDCM2_Pm78gdh_gdhと命名した。
【0145】
実施例3.目的産物生産能の評価
3-1.リシン生産能の評価
3-1-1.gdhプロモーター変異体が導入されたL-リシン生産菌株の製作
実施例2で製作されたpDCM2_Pm3gdh_gdh、pDCM2_Pm16gdh_gdh、pDCM2_Pm78gdh_gdhベクターを利用してgdhプロモーター変異体が形質転換された菌株を製作するために、L-リシン生産菌株であるコリネバクテリウム・グルタミカムCJ3P(Binder et al.Genome Biology 2012,13:R40)菌株に上記ベクターを形質転換させ、染色体内にgdhプロモーター変異体配列を導入した。CJ3P菌株は、既に公知となった技術に基づいて野生株に3種の変異(pyc(Pro458Ser)、hom(Val59Ala)、lysC(Thr311Ile))を導入し、L-リシン生産能を有するようになったコリネバクテリウム・グルタミカム菌株である。
【0146】
具体的には、上記実施例2で製作したベクターを電気穿孔法でCJ3P菌株に導入した後、カナマイシン25mg/Lを含有した選別培地で形質転換菌株を取得した。2次組換え過程(cross-over)で染色体上に挿入されたDNA断片によりgdhプロモーター変異体が導入された菌株を配列番号9及び配列番号10のプライマーを用いてPCR及び塩基配列分析を通じて選別し、上記選別された菌株をコリネバクテリウム・グルタミカムCJ3P::Pm3gdh_gdh、CJ3P::Pm16gdh_gdh、CJ3P::Pm78gdh_gdhと命名した。
【0147】
3-1-2.gdhプロモーター変異体が導入された菌株のL-リシン生産能の評価
親株として利用したコリネバクテリウム・グルタミカムCJ3P菌株及び実施例3-1-1で製作されたコリネバクテリウム・グルタミカムCJ3P::Pm3gdh_gdh、CJ3P::Pm16gdh_gdh、CJ3P::Pm78gdh_gdh菌株のL-リシン生産能を評価するために、下記のような方法で菌株を培養した後、分析した。
【0148】
まず、種培地25mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに各菌株を接種し、30℃で20時間200rpmで振盪培養した。その後、生産培地24mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに1mlの種培養液を接種し、32℃で48時間、200rpmで振盪培養した。上記種培地及び生産培地の組成は、下記の通りである。
【0149】
<種培地(pH 7.0)>
ブドウ糖20g、ペプトン10g、酵母抽出物5g、尿素1.5g、KHPO 4g、KHPO 8g、MgSO・7HO 0.5g、ビオチン100μg、チアミン塩酸塩1000μg、パントテン酸カルシウム2000μg、ニコチンアミド2000μg(蒸留水1リットルを基準)
【0150】
<生産培地(pH 7.0)>
ブドウ糖45g、大豆タンパク質10g、糖蜜10g、(NHSO 15g、KHPO 0.55g、MgSO・7HO 0.6g、FeSO・7HO 9mg、MnSO・5HO 9mg、ビオチン0.9mg、チアミン塩酸塩4.5mg、CaCO 30g、パントテン酸カルシウム4.5mg、ニコチンアミド30mg、ZnSO 0.45mg、CuSO 0.45mg(蒸留水1リットルを基準)
【0151】
培養終了後、HPLCを利用してL-リシンの生産量を測定した。コリネバクテリウム・グルタミカムCJ3P、CJ3P::Pm3gdh_gdh、CJ3P::Pm16gdh_gdh及びCJ3P::Pm78gdh_gdh菌株に対する培養液中のL-リシン濃度及び濃度増加率は下記表3の通りである。
【0152】
【表3】
【0153】
上記表3に示すように、gdhプロモーター変異体が導入された三菌株が親株であるCJ3Pに比べてL-リシンの濃度が増加することを確認した。上記CJ3P::gdhPm3_gdhはCM03-1660と命名し、ブダペスト条約下の受託機関である韓国微生物保存センターに2021年4月5日付で寄託して受託番号KCCM12970Pの付与を受けた。
【0154】
実施例3-2.スレオニン生産能の評価
3-2-1.スレオニン生産菌株の製作
実施例2で製作されたpDCM2_Pm3gdh_gdh、pDCM2_Pm16gdh_gdh、pDCM2_Pm78gdh_gdhベクターを利用してgdhプロモーター変異体に形質転換された菌株を製作するために、まず、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032菌株を基盤にlysC(L377K)変異体(大韓民国登録特許第10-2011994号)とhom(R398Q)変異体(大韓民国登録特許第10-1947959号)を導入したL-スレオニン生産菌株を製作した。
【0155】
具体的には、L-スレオニン生産菌株を製作するために、まず、lysC(L377K)を導入するためのベクターを製作した。ベクターを製作するために、野生型コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032菌株の染色体を鋳型にして配列番号17及び18、配列番号19及び20のプライマーを用いてPCRを行った。95℃で5分間変性後、95℃で30秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、72℃で30秒間の重合を30回繰り返した後、72℃で7分間の重合反応を行い、それぞれのPCR産物を得た。上記増幅産物をあらかじめSmaI制限酵素で切断して準備したpDCM2ベクターと混合し、In-Fusion(登録商標) HDクローニングキットを利用して組換えベクターを製作した後、これをpDCM2_lysC(L377K)と命名した。
【0156】
上記で製作したpDCM2_lysC(L377K)ベクターをコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032菌株に電気穿孔法で導入した後、カナマイシン25mg/Lを含有した選別培地で形質転換菌株を取得した。2次組換え過程(cross-over)で染色体上に挿入されたDNA断片によりlysC遺伝子にヌクレオチド変異が導入された菌株を配列番号25及び配列番号26のプライマーを用いてPCR及び塩基配列分析を通じて選別し、上記選別された菌株をATCC13032::lysC(L377K)と命名した。
【0157】
また、hom(R398Q)を導入するベクターを製作するために、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032菌株の染色体を鋳型に配列番号21及び22のプライマー、配列番号23及び24のプライマーを用いてPCRを進めた。PCR条件は95℃で5分間変性後、95℃で30秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、72℃で30秒間の重合を30回繰り返した後、72℃で7分間の重合反応を行った。上記増幅産物をあらかじめSmaI制限酵素で切断して準備したpDCM2ベクターと混合し、In-Fusion(登録商標) HDクローニングキットを利用して組換えベクターを製作した後、これをpDCM2_hom(R398Q)と命名した。
【0158】
上記で製作したpDCM2_hom(R398Q)ベクターを上記で製作したコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032::lysC(L377K)菌株に電気穿孔法で導入した後、カナマイシン25mg/Lを含有した選別培地で形質転換菌株を取得した。2次組換え過程(cross-over)で染色体上に挿入されたDNA断片によりhom遺伝子にヌクレオチド変異が導入された菌株を配列番号27及び配列番号28のプライマーを用いてPCR及び塩基配列分析を通じて選別し、上記選別された菌株をコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032::lysC(L377K)_hom(R398Q)と命名した。
【0159】
3-2-2.gdhプロモーター変異体が導入されたL-スレオニン生産菌株の製作
上記実施例2で製作したベクターを電気穿孔法でコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032::lysC(L377K)_hom(R398Q)菌株に導入した後、カナマイシン25mg/Lを含有した選別培地で形質転換菌株を取得した。2次組換え過程(cross-over)で染色体上に挿入されたDNA断片によりgdhプロモーター変異体が導入された菌株を配列番号9及び配列番号10のプライマーを用いてPCR及び塩基配列分析を通じて選別し、上記選別された菌株をコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032::lysC(L377K)_hom(R398Q)::Pm3gdh_gdh、ATCC13032::lysC(L377K)_hom(R398Q)::Pm16gdh_gdh、ATCC13032::lysC(L377K)_hom(R398Q)::Pm78gdh_gdhと命名した。
【0160】
3-2-3.gdhプロモーター変異体が導入された菌株のL-スレオニン生産能の評価親株として利用したコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032::lysC(L377K)_hom(R398Q)、実施例3-2-2で製作されたATCC13032::lysC(L377K)_hom(R398Q)::Pm3gdh_gdh、ATCC13032::lysC(L377K)_hom(R398Q)::Pm16gdh_gdh及びATCC13032::lysC(L377K)_hom(R398Q)::Pm78gdh_gdh菌株のL-スレオニン生産能を評価するために、下記のような方法で菌株を培養した後、分析した。
【0161】
まず、種培地25mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに各菌株を接種し、30℃で20時間200rpmで振盪培養した。その後、生産培地24mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに1mlの種培養液を接種し、32℃で48時間、200rpmで振盪培養した。上記種培地及び生産培地の組成は下記の通りである。
【0162】
<種培地(pH 7.0)>
ブドウ糖20g、ペプトン10g、酵母抽出物5g、尿素1.5g、KHPO 4g、KHPO 8g、MgSO・7HO 0.5g、ビオチン100μg、チアミン塩酸塩1000μg、パントテン酸カルシウム2000μg、ニコチンアミド2000μg (蒸留水1リットルを基準)
【0163】
<生産培地(pH 7.0)>
ブドウ糖45g、大豆タンパク質10g、糖蜜10g、(NH4)2SO4 15g、KHPO 0.55g,MgSO・7HO 0.6g、FeSO・7HO 9mg、MnSO・5HO 9mg、ビオチン0.9mg、チアミン塩酸塩4.5mg、CaCO 30g、パントテン酸カルシウム4.5mg、ニコチンアミド30mg、ZnSO 0.45mg、CuSO 0.45mg(蒸留水1リットルを基準)
【0164】
培養終了後、HPLCを利用してL-スレオニンの生産量を測定した。コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032::lysC(L377K)_hom(R398Q)、ATCC13032::lysC(L377K)_hom(R398Q)::Pm3gdh_gdh、ATCC13032::lysC(L377K)_hom(R398Q)::Pm16gdh_gdh及びATCC13032::lysC(L377K)_hom(R398Q)::Pm78gdh_gdh菌株に対する培養液中のL-スレオニン濃度及び濃度増加率は、下記表4の通りである。
【0165】
【表4】
【0166】
上記表4で示されたように、gdhプロモーター変異体が導入された三菌株が親株であるATCC13032::lysC(L377K)_hom(R398Q)に比べてL-スレオニンの濃度が増加することを確認した。
【0167】
実施例3-3.O-アセチルホモセリン生産能の評価
3-3-1.gdhプロモーター変異体が導入されたO-アセチルホモセリン生産菌株の製作
上記実施例2で製作したベクターを電気穿孔法で野生型菌株であるコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032に導入した後、カナマイシン25mg/Lを含有した選別培地で形質転換菌株を取得した。2次組換え過程(cross-over)で染色体上に挿入されたDNA断片によりgdhプロモーター変異体が導入された菌株を配列番号9及び配列番号10のプライマーを用いてPCR及び塩基配列分析を通じて選別し、上記選別された菌株をコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032::Pm3gdh_gdh、ATCC13032::Pm16gdh_gdh、ATCC13032::Pm78gdh_gdhと命名した。
【0168】
3-3-2.gdhプロモーター変異体が導入された菌株のO-アセチルホモセリン生産能の評価
親株として利用したコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032、実施例3-3-1で製作されたATCC13032::Pm3gdh_gdh、ATCC13032::Pm16gdh_gdh及びATCC13032::Pm78gdh_gdh菌株のO-アセチルホモセリン生産能を評価するために、下記のような方法で菌株を培養した後、分析した。
【0169】
下記の培地25mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに菌株を1白金耳接種し、33℃で20時間、200rpmで振盪培養した。
【0170】
<生産培地(pH 7.2)>
ブドウ糖30g、KHPO 2g、尿素3g、(NHSO 40g、ペプトン2.5g、CSL(Corn steep liquor,Sigma) 5g(10ml)、MgSO・7HO 0.5g、CaCO 20g(蒸留水1リットルを基準)
【0171】
培養終了後、HPLCでO-アセチルホモセリンの生産能を測定した。コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032、ATCC13032::Pm3gdh_gdh、ATCC13032::Pm16gdh_gdh及びATCC13032::Pm78gdh_gdh菌株に対する培養液中のO-アセチルホモセリン濃度及び濃度増加率は、下記表5の通りである。
【0172】
【表5】
【0173】
上記表5で示されたように、gdhプロモーター変異体が導入された三菌株が親株である野生型菌株ATCC13032に比べてO-アセチルホモセリンの濃度が増加することを確認した。
【0174】
実施例3-4.L-イソロイシン生産能の評価
3-4-1.gdhプロモーター変異体が導入されたL-イソロイシン生産菌株の製作
実施例2で製作されたpDCM2_Pm3gdh_gdh、pDCM2_Pm16gdh_gdh、pDCM2_Pm78gdh_gdhベクターを利用してgdhプロモーター変異体が形質転換された菌株を製作するために、まず、コリネバクテリウム・グルタミカムCJP1(大韓民国登録特許第10-1996769号)菌株に上記ベクターを形質転換させ、染色体内にgdhプロモーター変異体配列を導入した。その後、既に公知となったL-スレオニンデヒドラターゼ(L-threonine dehydratase)をコードするilvA遺伝子の323番目のアミノ酸であるバリンがアラニンで変異されたilvA遺伝子(V323A)(Appl.Enviro.Microbiol.,Dec.1996,p.4345-4351)を含むベクターをさらに導入してL-イソロイシン生産菌株を製作した(大韓民国登録特許第10-1996769号)。
【0175】
具体的には、上記実施例2で製作したベクターを電気穿孔法でCJP1菌株に導入した後、カナマイシン25mg/Lを含有した選別培地で形質転換菌株を取得した。2次組換え過程(cross-over)で染色体上に挿入されたDNA断片によりgdhプロモーター変異体が導入された菌株を配列番号9及び配列番号10のプライマーを用いてPCR及び塩基配列分析を通じて選別し、上記選別された菌株をコリネバクテリウム・グルタミカムCJP1::Pm3gdh_gdh、CJP1::Pm16gdh_gdh、CJP1::Pm78gdh_gdhと命名した。
【0176】
上記製作された菌株にpECCG117-ilvA(V323A)ベクター(大韓民国登録特許第10-1996769号)を電気穿孔法で導入した後、カナマイシン25mg/Lを含有した選別培地で形質転換菌株を取得し、上記選別された菌株をそれぞれコリネバクテリウム・グルタミカムCJP1::Pm3gdh_gdh/pECCG117-ilvA(V323A)、CJP1::Pm16gdh_gdh/pECCG117-ilvA(V323A)及びCJP1::Pm78gdh_gdh/pECCG117-ilvA(V323A)と命名した。
【0177】
3-4-2.gdhプロモーター変異体が導入された菌株のL-イソロイシン生産能の評価
親株として利用したコリネバクテリウム・グルタミカムCJP1/pECCG117-ilvA(V323A)、実施例3-4-1で製作されたCJP1::Pm3gdh_gdh/pECCG117-ilvA(V323A)、CJP1::Pm16gdh_gdh/pECCG117-ilvA(V323A)及びCJP1::Pm78gdh_gdh/pECCG117-ilvA(V323A)菌株のL-イソロイシン生産能を評価するために下記のような方法で菌株を培養した後、分析した。
【0178】
まず、種培地25mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに各菌株を接種し、30℃で20時間200rpmで振盪培養した。その後、生産培地24mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに1mlの種培養液を接種し、32℃で48時間、200rpmで振盪培養した。上記種培地及び生産培地の組成は、下記の通りである。
【0179】
<種培地(pH 7.0)>
ブドウ糖20g、ペプトン10g、酵母抽出物5g、尿素1.5g、KHPO 4g、KHPO 8g、MgSO・7HO 0.5g、ビオチン100μg、チアミン塩酸塩1000μg、パントテン酸カルシウム2000μg、ニコチンアミド2000μg (蒸留水1リットルを基準)
【0180】
<生産培地(pH 7.0)>
ブドウ糖45g、大豆タンパク質10g、糖蜜10g、(NHSO 15g、KHPO 0.55g、MgSO・7HO 0.6g、SO・7HO 9mg、MnSO・5HO 9mg、ビオチン0.9mg、チアミン塩酸塩4.5mg、CaCO 30g、パントテン酸カルシウム4.5mg、ニコチンアミド30mg、ZnSO 0.45mg、CuSO 0.45mg(蒸留水1リットルを基準)
【0181】
培養終了後、HPLCを利用してL-イソロイシンの生産量を測定した。コリネバクテリウム・グルタミカムCJP1/pECCG117-ilvA(V323A)、CJP1::Pm3gdh_gdh/pECCG117-ilvA(V323A)、CJP1::Pm16gdh_gdh/pECCG117-ilvA(V323A)及びCJP1::Pm78gdh_gdh/pECCG117-ilvA(V323A)菌株に対する培養液中のL-イソロイシン濃度及び濃度増加率は、下記表6の通りである。
【0182】
【表6】
【0183】
上記表6で示されるように、gdhプロモーター変異体が導入された三菌株が親株である野生型菌株CJP1/pECCG117-ilvA(V323A)に比べてL-イソロイシンの濃度が増加することを確認した。以上の結果を通じて、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含む組換え微生物が産業に有用なL-リシン、L-スレオニン、O-アセチルホモセリン及びL-イソロイシンの生産性を増加させることを確認した。
【0184】
以上の説明から、本出願が属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願の範囲は上記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本出願の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【0185】
【配列表】
2024520928000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0142
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0142】
上記表1に示されるように、Pm3gdh、Pm16gdh、Pm78gdhプロモーターは、コリネバクテリウム・グルタミカムでプロモーター活性を示し、野生型gdhプロモーターより高い蛍光感度を示すことを確認した。上記で選別された種菌株のgdhプロモーターに導入された変異を確認するために、gdhプロモーター変異体の配列を分析した。配列を決定するために、配列番号9及び配列番号10のプライマーを用いてPCRを行った後、配列分析を進めた。野生型gdhプロモーター配列である配列番号1の配列と比較し、これを通じて変異型gdhプロモーターの配列を確認した。選別された菌株のgdhプロモーター配列は、下記表2の通りである(表2)。
【国際調査報告】