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特表2024-520938表面酸化物の破壊又はバルク物質を除去することなく炉の汚染を除去するための化学浸漬
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  • 特表-表面酸化物の破壊又はバルク物質を除去することなく炉の汚染を除去するための化学浸漬 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-27
(54)【発明の名称】表面酸化物の破壊又はバルク物質を除去することなく炉の汚染を除去するための化学浸漬
(51)【国際特許分類】
   C23G 1/10 20060101AFI20240520BHJP
   C25F 3/26 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C23G1/10
C25F3/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570021
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2024-01-08
(86)【国際出願番号】 US2022028290
(87)【国際公開番号】W WO2022240729
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】63/187,457
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/739,097
(32)【優先日】2022-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519078972
【氏名又は名称】ジェファーソン・サイエンス・アソシエイツ・エルエルシイ
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】パルツェウスキー, アリ, ディー.
【テーマコード(参考)】
4K053
【Fターム(参考)】
4K053PA09
4K053PA18
4K053QA04
4K053RA15
4K053SA06
4K053TA15
4K053YA02
4K053YA03
4K053YA04
(57)【要約】
SRF加速器空洞の品質係数(Q)及び加速勾配(Eacc)を増大させるための、ニオブ空洞で炉の汚染を除去する改善された方法。70%以下の濃度の硝酸浸漬を実施することで、従来の硫酸/HFEP、HF浸漬で除去することができない汚染を除去し、続いてニオブのQ及びRF加速勾配の両方を改善することができる。化学浸漬はまた、インフュージョン又はmid-Tベーキングなどの自然酸化膜の除去又はバルクニオブ除去を除去することなくニオブ表面から汚染を除去することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然酸化膜又はニオブを除去することなく、SRF品質係数(Q)及び加速勾配(Eacc)を増大させるために、ニオブ(Nb)の物品の表面から炉の汚染を除去する方法であって、前記Nb物品を硝酸(HNO3)中に浸漬することを含む、方法。
【請求項2】
前記硝酸(HNO3)の濃度が、70%以下であることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ニオブ(Nb)の物品の前記表面から炉の汚染を除去する方法であって、
前記Nb表面を窒素でドーピングすることと、
前記表面を電解研磨(EP)することと、
前記Nb物品を硝酸中に浸漬することと
を含む、方法。
【請求項4】
前記窒素ドーピングが、
少なくとも3分間、窒素を前記Nb物品に適用することと、
少なくとも60分間、真空を適用することと
を含むことを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記硝酸の濃度が、70%以下であることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ニオブ物品が少なくとも160℃の温度で浸漬されることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ニオブ物品が160℃~450℃の温度で浸漬されることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ニオブ物品が5ミリバール未満の真空下にある間に浸漬されることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ニオブ物品が5~6ミリバールの真空下にある間に浸漬されることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ニオブ物品が少なくとも160℃の温度で浸漬されることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記ニオブ物品が160℃~450℃の温度で浸漬されることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記ニオブ物品が5ミリバール未満の真空下にある間に浸漬されることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ニオブ物品が5~6ミリバールの真空下にある間に浸漬されることを含む、請求項11に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SRF(超伝導高周波、superconducting radio frequency)技術に関し、より詳細には、表面酸化物を破壊、又はバルク物質を除去することなく、炉の汚染を除去するための新規方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炉の汚染の除去プロセスは、典型的には、フッ化水素酸(hydrofluoric acid、HF)を含有する酸混合物又は二電極式電解研磨(bi-polar electro-polishing、EP)を使用する。こうした方法は、残念ながら、表面酸化物を破壊、又はバルク物質を除去する。こうした表面酸化物又はバルクの除去は、窒素ドーピング、窒素インフュージョン、mid-T焼成/酸素合金化及び従来の焼成を含む現代の空洞処理すべての基本的性能に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0003】
したがって、表面酸化物を破壊、又はバルク物質を除去することなく、炉の汚染を除去するための改善された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、SRF加速器空洞の品質係数(Q)及び加速勾配(Eacc)を増大させるための、ニオブ空洞で炉の汚染を除去する改善された方法を提供する。70%以下の濃度の硝酸(HNO3)を用いて硝酸浸漬を実施することで、従来の硫酸/HFEP、HF浸漬で除去することができない汚染を除去することができ、続いてニオブのQ及びRF加速勾配の両方を改善することができる。加えて、化学浸漬はまた、インフュージョン又はmid-Tベーキングなどの自然酸化膜の除去又はバルクニオブ除去を除去することなくニオブ表面から汚染を除去することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の目的は、SRF加速器空洞の品質係数(Q)及び加速勾配(Eacc)を増大させるための、ニオブ空洞で炉の汚染を除去する改善された方法を提供することである。
【0006】
本発明の第2の目的は、表面酸化物を破壊、又はバルク物質を除去することなく、炉の汚染を除去する改善された方法を提供することである。
【0007】
本発明の更なる目的は、従来のBCPが行うようにニオブ表面を粗面化することなく、炉の汚染を除去する改善された方法を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、インフュージョン、mid-T焼成及び自然酸化膜の熱拡散後に使用されてもよいが、酸化物を取り除かない化学プロセスを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、容易に利用可能であり、かつほぼすべての化学システムに適合する化学物質を使用する化学浸漬を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本明細書では添付の図面を参照するが、これらは必ずしも縮尺通りに描かれていない。
図1】炉の汚染と、その後の本発明による硝酸浸漬実施形態による汚染除去を伴う窒素ドープされた空洞に対する、従来の(EP)プロセスについての加速勾配(Eacc)の関数(MV/m)としての、空洞単独の品質係数(Q)のプロットである。
図2】炉の汚染と、その後の本発明による硝酸浸漬割合の実施形態による汚染除去を伴う窒素ドープされた空洞に対する、従来のEPプロセスについての加速勾配(Eacc)の関数としての、空洞単独の品質係数(Q)のプロットである。
図3】炉の汚染と、その後の本発明による硝酸浸漬実施形態による汚染除去を伴う窒素ドープされた空洞に対する、従来の高勾配窒素ドープされた空洞プロセスについての加速勾配(Eacc)の関数(MV/m)としての、空洞単独の品質係数(Q)のプロットである。
図4】熱処理後の窒素ドーピング方法を示す概念図である。
図5】電解研磨後の窒素ドーピング方法を示す概念図である。
図6】化学浸漬後の窒素ドーピング方法を示す概念図である。
図7】熱処理後の本発明によるmid-T焼成/酸素合金化方法を示す概念図である。
図8】化学浸漬後の本発明によるmid-T焼成/酸素合金化方法を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、炉の汚染を有益に除去しつつも、表面酸化物を除去しない、又はバルク物質を全く除去しない、ニオブ(Nb)の化学除去工程除去方法である。本方法は、ニオブ金属が非還元環境(真空)中で熱処理されるとき、SRF空洞の勾配及び品質係数(Q)を増大させるためにニオブ(Nb)空洞で使用されることができる。本方法は、インフュージョン(ナノメータ窒素)及びmid-T焼成空洞(ナノメータ酸化物)の製造が空洞加工にとって新しい手段を切り開く未来において、非常に有益である可能性が高い。本明細書で使用される「mid-T焼成」という用語の意味は、160℃~450℃での焼成、又はオーブン温度を160℃以上に本質的に上昇させるが、酸化物(NbO5)の溶解が生じる前に停止することを指す。典型的には、100℃~160℃の範囲での従来のニオブ空洞焼成は、「標準焼成」又は「マジック焼成」と称される。別の従来の焼成は、75℃~120℃の範囲である。本明細書で使用される「焼成」という用語の意味は、真空下(慣習的には、約5~6ミリバール未満の圧力)、かつ通常は真空オーブン内部での熱処理、又は低温で空洞を外部から加熱しながらも真空容器として空洞自体を使用する熱処理を指す。
【0012】
ニオブ(Nb)空洞の様々な化学浸漬を、以下の表1に示される対照サンプルに対して試験した。図1図3は、結果として生じたQがEacc(MV/m)の関数としてプロットされている、それぞれの試験条件のプロットされた結果を提示している。
【0013】
【表1】
【0014】
複数のSRF空洞炉では、最大勾配及びQは、炉間で流動性が高い状態で予想を下回る値に限定される。これは、高温ドープ空洞+軽金属EP及び高温での水素脱気+窒素インフュージョン又はmid-T焼成された空洞の両方においてのものである。目標は、金属が非還元環境(真空)中で熱処理されるとき、SRF空洞の勾配及びQを増大させることである。
【0015】
本発明は、炉の汚染を依然として除去しつつも、酸化物を除去しない、又はバルク物質を全く除去しない、化学除去工程である。これは現在まで、何らかの有益な結果を生み出すことがなかったことを示している。この技術は、インフュージョン(ナノメータ窒素)及びmidーT焼成空洞(ナノメータ酸化物)の製造が空洞加工にとって新しい手段を切り開く未来では、非常に有益である可能性が高い可能性がある。本明細書で使用される「mid-T焼成」という用語の意味は、160℃~450℃での焼成、又は焼成温度を160℃以上に本質的に上昇させるが、酸化物の溶解が生じる前に停止することを指す。典型的には、100℃~160℃の範囲での従来のニオブ空洞焼成は、「標準焼成」又は「マジック焼成」と称される。別の従来の焼成は、75℃~120℃の範囲である。
【0016】
図1を参照すると、本発明による硝酸浸漬実施形態の前後に対する、従来のEPプロセスについての加速勾配(Eacc)の関数(MV/m)として、単一セルの空洞の品質係数(Q)のプロットが示されている。従来のEPプロセス(ベースライン-○)は、15℃での電解研磨及び110℃での24時間焼成を含んでいた。窒素ドーピングベースライン(□)は、ニオブ空洞の表面から67キロクーロン(約5~7ミクロン)を除去するための、3分間の窒素処理、続いて60分間の真空、続いて13℃での電解研磨(EP)除去を含んでいた。ドーピングベースライン後の硝酸浸漬(■)は、1時間にわたる硝酸浸漬(70%濃度での硝酸(HNO3))、続いて5回のHFのすすぎからなる。酸化物をリフレッシュするための硝酸浸漬及び10回のHFすすぎの後、空洞は予想された通りに動作した。
【0017】
図2を参照すると、本発明によるベースラインの窒素ドーピング及び2度の硝酸浸漬実施形態に対する、従来のEPプロセスについての加速勾配(Eacc)の関数(MV/m)として、空洞の品質係数(Q)のプロットが示されている。従来のEPプロセス(ベースライン-◇)は、120℃での24時間焼成を含んでいた。窒素ドーピングベースライン(3N120-○)は、3分間の窒素処理、続いて同一操業での925℃での予備焼きなましを伴う、120分の800℃での真空を含んでいた。ドーピング後、空洞は、13℃で行われた従来の8ミクロンEPを受けた。第1の硝酸浸漬実施形態(△)は、1時間にわたる硝酸浸漬(30%濃度)を含んでいた。第2の硝酸浸漬実施形態(■)は、1時間にわたる硝酸浸漬(50%濃度)を含んでいた。1時間での30%硝酸浸漬はQを改善したが、予想されたほどではなく、勾配は改善しなかった。50%硝酸浸漬は、Qを3N120ドーピングの予想されたレベルに更に改善したが、勾配は改善しなかった。
【0018】
図3を参照すると、汚染された炉でのリセット及び再ドーピング、続いて3分間の窒素処理、続いて60分間の真空、続いて5ミクロンのEPを含んだ硝酸浸漬A窒素ドーピングベースライン(□)に対して、従来の高勾配ドーピング空洞についての加速勾配(Eacc)の関数として、空洞の品質係数(Q)のプロットが示されている。空洞は、50ミクロンのリセットと、8ミクロンのEPへの変化を伴うベースラインドーピング操業と同一の再ドーピング(■)を受けた。ドーピングリセット後の硝酸浸漬(●)は、1時間にわたる硝酸浸漬(70%濃度)、続いて5回のHFのすすぎからなる。硝酸によって、最大32MV/mの高電界結果に戻った。
【0019】
本発明の化学除去方法は、SRF空洞の製造、又は熱処理を必要とする表面感度がある耐熱金属の加工に有益であろう。
【0020】
本技術の将来的な用途は、超伝導ニオブ加速器(ILC及びEIC)並びに現代のSRF加速器での用途、バルク若しくは酸化物除去が望ましくない、熱処理も必要とする薄膜耐熱堆積物での用途、又は表面感度がある炉が焼きなましされた耐熱金属での用途であり得る。
【0021】
方法は、約20ミクロン以上のバルクBCP/EP中のものなど、大量のバルク除去が可能である場合には有効ではない。
【0022】
複数のSRF空洞炉(真空オーブン)では、最大勾配及びQは、炉間で流動性が高い状態で予想を下回る値に限定される。これは、高温ドープ空洞+軽金属EP及び高温での水素脱気+窒素インフュージョン又はmid-T焼成された空洞の両方においてのものである。本明細書で使用される「窒素ドープされた」という用語の意味は、およそ450℃の自然酸化膜溶解温度を超えた真空炉処理、続いて短時間(20分)にわたる高温(慣習的には、800~1000℃)での(典型的には、約30ミリバールでの)窒素のガス注入、その後続いてガス注入で、又はガス注入温度未満での真空、続いてこのプロセスで形成された非超伝導窒化ニオブを除去するための5~20ミクロンの軽金属EPを指す。
【0023】
図4図6を参照すると、熱処理及び電解研磨後に、窒素ドープされた表面から炉の汚染を除去するための様々な工程の図を示す。この概念モデルでは、炉の汚染物は、窒素ドーピング処理中に高温であっても、窒素ドープされた表面中又はその上に堆積される(図4)。ドーピング後、表面から窒化物を除去し、強化された窒素ドープされたニオブ表面を曝露するEP工程(図5)がある。この場合、電解研磨は、炉の汚染を除去しない。本発明によるEP後の化学浸漬実施形態(図6)を行うことによってのみ、炉の汚染を首尾よく除去する。
【0024】
図7図8を参照すると、本発明の別の実施形態によるmid-T焼成/酸素合金化方法における工程の手順が示されている。概念モデルでは、炉の汚染物は、mid-T焼成熱処理中、ニオブ上に堆積する(図7)。表面酸化物を妨害してはならないことから、本発明による化学浸漬実施形態(図8)を使用し、表面酸化物を妨害することなく汚染物を除去する。本技術の将来的な用途は、超伝導ニオブ加速器(ILC及びEIC)並びに現代のSRF加速器での用途、バルク若しくは酸化物除去が望ましくない、熱処理も必要とする薄膜耐熱堆積物での用途、又は表面感度がある炉が焼きなましされた耐熱金属での用途であり得る。
【0025】
方法は、汚染物質周囲の金属を除去することで汚染されたいくらかの残存表面を切り落とす可能性がある、約20ミクロン以上のバルクBCP/EP中のものなどの大量のバルク除去が可能である場合には有効ではない。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】