IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ネーデルランドセ・オルガニサティ・フォール・トゥーヘパスト−ナトゥールウェテンスハッペライク・オンデルズーク・テーエヌオーの特許一覧

特表2024-520953エネルギー効率の高いポリオレフィンの分離
<>
  • 特表-エネルギー効率の高いポリオレフィンの分離 図1
  • 特表-エネルギー効率の高いポリオレフィンの分離 図2
  • 特表-エネルギー効率の高いポリオレフィンの分離 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-27
(54)【発明の名称】エネルギー効率の高いポリオレフィンの分離
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/08 20060101AFI20240520BHJP
   B29B 17/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
B29B17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574246
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 NL2022050303
(87)【国際公開番号】W WO2022255872
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】21177212.4
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511095850
【氏名又は名称】ネーデルランドセ・オルガニサティ・フォール・トゥーヘパスト-ナトゥールウェテンスハッペライク・オンデルズーク・テーエヌオー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ファン・デル・メール
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・クワケルナート
(72)【発明者】
【氏名】リュシー・プリンス
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド・フェルディナンド・へーラルト・へールス
(72)【発明者】
【氏名】アンネミーケ・ファン・デ・ルンストラート
(72)【発明者】
【氏名】コーネリス・ペートルス・マルクス・ロウランズ
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA08
4F401AD03
4F401BA13
4F401CA30
4F401CA46
4F401CA49
4F401CA51
4F401CA54
4F401CA57
4F401CB01
4F401CB10
4F401EA54
4F401EA62
4F401FA20Z
(57)【要約】
本発明は、プラスチック廃棄物のリサイクルの分野におけるものである。具体的には、本発明は、溶解/沈殿の手法に基づいて、ポリオレフィンをプラスチック廃棄物から分離する方法を対象とする。本発明による方法を用いて、少なくとも第一及び第二の冷却面を使用することによって高選択性でポリオレフィンを分離することができる。本発明は、LLDPE及びLDPE又はポリプロピレン及びポリエチレンをプラスチック廃棄物から少なくとも部分的に分離するのに特に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一及び第二のポリオレフィンをプラスチック廃棄物から少なくとも部分的に分離するための方法であって、
- 前記第一及び第二のポリオレフィンを昇温下で第一の溶媒中に溶解して、ポリオレフィン溶液を得る工程、
- 少なくとも第一及び第二の冷却面を使用して前記ポリオレフィン溶液を冷却し、第一の冷却面が、第一のポリオレフィンの沈殿温度より低い温度を有し、第二の冷却面が、第一のポリオレフィンの沈殿温度より高い温度を有する工程、
- 第一の冷却面上で第一のポリオレフィンを沈殿させる工程、
- 沈殿した第一のポリオレフィンをポリオレフィン溶液から分離して、第一のポリオレフィンに富む画分及び第二のポリオレフィンに富む画分を得る工程
を含む、方法。
【請求項2】
好ましくはエバポレーションにより、好ましくは第一の溶媒を実質的に除去することによって、第二のポリオレフィンを第二のポリオレフィンに富む画分から回収する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
好ましくは第一のポリオレフィンに富む画分を第二の溶媒中に昇温下で溶解し、後続して、好ましくはエバポレーションにより前記第二の溶媒を実質的に除去することによって、第一のポリオレフィンを第一のポリオレフィンに富む画分から回収する工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記プラスチック廃棄物が、不溶性画分を更に含み、前記方法が、前記不溶性画分をポリオレフィン溶液から除去する工程を更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記プラスチック廃棄物が、多成分複合体、好ましくは多層箔を含み、より好ましくは、前記プラスチック廃棄物が、DKR-310規格に準拠する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第一及び/又は第二の溶媒が、低沸点溶媒、好ましくは無極性低沸点溶媒であり、より好ましくは、第一及び/又は第二の溶媒が、MTBE及びシクロペンタンからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第一及び/又は第二の溶媒が、昇圧下で加熱される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ポリオレフィン溶液を冷却する前及び/又はその間、貧溶媒を添加する工程を更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも第一及び第二の冷却面が、異なる表面寸法を有し、第一の冷却面の表面積が、第二の冷却面の表面積より小さく、より好ましくは、第一及び第二の冷却面の面積比が、1:2未満、更により好ましくは1:5未満である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
好ましくは攪拌によってポリオレフィン溶液中に連続的循環がつくられる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第一のポリオレフィンが直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であり、前記第二のポリオレフィンが低密度ポリエチレン(LDPE)である、又は前記第一のポリオレフィンがポリプロピレンであり、前記第二のポリオレフィンがポリエチレンである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
プラスチック廃棄物を溶解する前及び/又は後に、前記プラスチック廃棄物を前処理工程に供する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第一の冷却面の温度が、第一のポリオレフィンの沈殿温度より5~10℃低い、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ポリオレフィン溶液(3)を保持するための容器(2)、第一の冷却面(4)及び第二の冷却面(5)を含む系(1)において実施される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法であって、前記第一の冷却面が、ポリオレフィン溶液中に少なくとも部分的に浸漬され、前記第二の冷却面が、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に前記ポリオレフィン溶液を囲む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック廃棄物のリサイクルの分野におけるものである。具体的には、本発明は、ポリオレフィンをプラスチック廃棄物から分離する方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、典型的には、化石燃料をベースとする石油化学製品に由来するポリマーを主に含む。一般に、化石燃料をベースとする材料を使用することは理想的ではないことが認識されており、したがって代替手段が求められている。可能な代替手段として、再生可能材料からプラスチックを合成すること及び/又はプラスチックをリサイクルすることが挙げられる。
【0003】
更に、プラスチック廃棄物が環境に悪影響を及ぼすことが認識されているため、リサイクルが好ましい場合がある。したがって、現在の関心は、循環型経済(即ち、再生可能資源が使用され、使用される材料の価値の損失が可能な限り少ない閉ループ系)にある。循環型経済を実現するためには、物質がリサイクルされることが必須である。
【0004】
典型的な従来のリサイクルプロセスは、製品が耐用年数の終わりに達し、廃棄物とみなされた後に開始する。廃棄物が収集され、分類される。分類は、典型的には、最初に材料のタイプ(例えば、プラスチック、紙)によって機械的に分類され、その後、例としては赤外線分光法を用いて、別個のプラスチック流がポリマーのタイプによって分類される。これは、いくつかの単一の流れ及び廃棄物の流れを産み出す。単一の流れは、理想的には、1つのタイプのポリマー又は複数の同様のタイプのポリマー、例としてはPET(ポリエチレンテレフタレート)を含む。単一の流れの純度は、典型的には94%以下であり、そのため、一部の用途では、再利用の要件に適合させるために、このリサイクル品の更なる処理が必要となることがある。加えて、廃棄物の大部分が結局は廃棄物の流れになることが多いため、分類プロセスは、限られた収率しかもたらすことができない。
【0005】
再利用の要件を満たすための単一の流れの更なる処理は、リサイクル品の破砕及び洗浄から開始し、後続して新規の製品に再利用するための押出成形及びペレット化を行う。しかしながら、リサイクル品の品質は、典型的には十分でない(即ち、バージンポリマーに匹敵しない)。特に、ポリオレフィンを含有する多層フィルム等、容易に機械的分離できないポリマーの同様のタイプを複数含むプラスチックは、リサイクルが困難である。
【0006】
プラスチック等のポリマー混合物からポリマー、とりわけポリオレフィンを分離する方法を記載する開示がいくつか存在する。
【0007】
第一の例は、Hadiら(APCBEE Procedia 3、2012、281~286頁)によるものであり、これは、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)又はポリプロピレン(PP)を含むプラスチック廃棄物を溶解し、濾過し、非溶媒を使用することによってポリマーを沈殿させる方法を記載している。
【0008】
WO2018/068973は、層が種々のポリマーを含む多層プラスチックからポリマーを分離するための同様の方法を開示している。しかしながら、非溶媒の使用は、典型的には、溶媒を分離するための追加の精製工程を要するため望ましくない。更に、これらの方法の選択性は、典型的には、同様の特性を有するポリマーの分離を達成するのに十分には高くない。
【0009】
DE19905029は、液液抽出を用いたポリオレフィンの分離法を開示している。この方法も、高い選択性を提供しない。
【0010】
別の方法は、プラスチック中のポリマーが、選択的溶解に基づいて分離される、WO91/03515に開示されている。これは、特定の温度の特定の溶媒中の、プラスチック廃棄物中に含まれる第一のポリマーの溶解が必然的に伴う。次いで、この溶液は、残りの固体廃棄物から分離され、残りの固体廃棄物中に含まれる第二のポリマーに対して、新規の溶媒中でプロセスが繰り返される。同様の方法がDE102016015199に記載されている。欠点は、同様の特性、特に同様の溶解度を有するポリマーを分離できないことである。
【0011】
別法は、ポリマーの混合物を含む材料を溶媒に接触させて、ポリマーのタイプのうちの少なくとも1つを溶解するWO07/7082に記載されている。ポリマーは、剪断加工を用いる1つ又は複数の沈殿工程によって分離され、各工程は、溶液を冷却する幾つかの冷却工程を含み得る。しかしながら、これは、複数の工程を要し、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)の分離の例によって示されるように、選択性は限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2018/068973
【特許文献2】DE19905029
【特許文献3】WO91/03515
【特許文献4】DE102016015199
【特許文献5】WO07/7082
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Hadiら、APCBEE Procedia 3、2012、281~286頁
【非特許文献2】Wypych, G.、Handbook of Solvents、Toronto-New York、2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、プラスチック廃棄物からポリオレフィンを少なくとも部分的に分離するための別の、好ましくは改善された方法であって、上述の欠点の少なくとも一部を克服する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
具体的には、本発明による方法は、高選択性でポリオレフィンを分離するために使用することができる。本発明者らは、驚くべきことに、沈殿のための少なくとも第一及び第二の冷却面を含む溶解/沈殿の手法に基づく方法が、そのような高い選択性を可能にすることを発見した。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による方法において使用するのに適した系を例示する。
図2】MBTE中、いくつかの温度でのLLDPE及びLDPEの沈殿を例示する。
図3】シクロペンタン中、いくつかの温度でのLLDPE及びLDPEの沈殿を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
したがって、第一の態様では、本発明は、第一及び第二のポリオレフィンをプラスチック廃棄物から少なくとも部分的に分離するための方法であって、
- 第一及び第二のポリオレフィンを昇温下で第一の溶媒中に溶解して、ポリオレフィン溶液を得る工程、
- 少なくとも第一及び第二の冷却面を使用してポリオレフィン溶液を冷却し、第一の冷却面が、第一のポリオレフィンの沈殿温度より低い温度を有し、第二の冷却面が、第一のポリオレフィンの沈殿温度より高い温度を有する工程、
- 第一の冷却面上で第一のポリオレフィンを沈殿させる工程、
- 沈殿した第一のポリオレフィンをポリオレフィン溶液から分離して、第一のポリオレフィンに富む画分及び第二のポリオレフィンに富む画分を得る工程
を含む、方法を対象とする。
【0018】
第一及び第二のポリオレフィンは、プラスチック廃棄物に含まれる。このプラスチック廃棄物は、典型的には、機械的に分離され且つ単一の流れにした後に供給される。プラスチック廃棄物は、第一及び第二のポリオレフィンを溶解する前及び/又はその直後のいずれかで、前処理工程に更に供してもよい。この前処理工程は、例としては、着色不純物を除去することができる。これは、例えば、活性炭の充填層上での吸収等の吸収工程によって達成することができる。好ましくは、プラスチック廃棄物は、多層フィルム等の多成分複合体を含む。プラスチック廃棄物は、DKR-310規格に準拠することが特に好ましい。DKR規格は、独国の「Deutsche Gesellschaft fur Kreislaufwirtschaft und Rohstoffe mbH (DKR)」によって確立されている。
【0019】
DKR-310規格によるプラスチック廃棄物は、少なくとも92%の1つの特定のポリマータイプからなる箔を含む。規格によれば、箔は、プラスチック袋及び包装箔のように、DIN A4より大きい表面積を有するべきである。
【0020】
供給されたプラスチック廃棄物は、不溶性画分を更に含んでもよい。この画分は、例としては、PET、鉱物又は微小金属粒子等の他の不溶性ポリマーを含んでもよい。これに応じて、方法は、典型的にはポリオレフィン溶液を冷却する前に、不溶性画分をポリオレフィン溶液から除去する工程を好ましくは更に含む。これは、より高い純度の画分を得ることを可能にできる。不溶性画分の除去は、濾過等の当該技術分野において公知の任意の手段によって達成することができる。
【0021】
ポリオレフィンを昇温下で溶媒中に溶解した後(以下参照)、溶液を冷却する。ポリオレフィン溶液の冷却は、ポリオレフィン溶液をポリオレフィンで飽和するようにさせることができる。ポリオレフィン溶液の温度が第一のポリオレフィンの沈殿温度に達した場合、第一のポリオレフィンは溶液から沈殿し始める。これに応じて、沈殿温度は、対応するポリマーが溶液から沈殿し始める温度として定義される。
【0022】
本方法の少なくとも一部の間、例としては攪拌によって、ポリオレフィン溶液中に連続的循環をつくることが好ましい。典型的には、これは溶解を強化するため、ポリオレフィンの溶解中に好ましい。更に、第一のポリオレフィンが沈殿して溶液の連続的供給を可能にするとき、連続的な攪拌が好ましい場合がある。これに応じて、連続的な攪拌は、得られる画分の純度を改善することができる。
【0023】
ポリオレフィン溶液の冷却は、少なくとも第一及び第二の冷却面を使用することによって達成される。第一及び第二の冷却面は、好ましくは、表面を流れる水等の冷却液によって冷却される。第一の冷却面は、第一のポリオレフィンの沈殿温度より低い温度である。この沈殿温度より低い温度を有する冷却面を有することによって、第一のポリオレフィンは、この冷却面上で及び/又はその近くで沈殿する傾向がある。第二のポリオレフィンは、典型的には、第一のポリオレフィンの沈殿温度から十分に程遠い沈殿温度を有する。これに応じて、第二のポリオレフィンは、典型的には、溶液中に残留する。
【0024】
第二の冷却面のより高い温度(即ち、第一のポリオレフィンの沈殿温度より高い温度)に起因して、第二の冷却面は、典型的には、第一のポリオレフィンの沈殿が生じない。言い換えれば、第一のポリオレフィンは、典型的には、第二の冷却面上で及び/又はその近くで沈殿しない。理論に束縛されることを望むものではないが、第二の冷却面は、バルク用の冷却器としてのみ作用することができると考えられ、一方で第一の冷却面は沈殿の核形成部位として考えられ得る。
【0025】
特に、第一の冷却面の温度は、第一のポリオレフィンの沈殿温度より5~10℃低いことが好ましい。第二の冷却面の温度は、沈殿温度より高い。この温度における差は、第一のポリオレフィンが、第一の冷却面上で及び/又はその近くで沈殿するのに最適であり、且つ第二の冷却面上で及び/又はその近くでは最小限のみに留まると考えられ得る。更に、第二の冷却面の温度は、典型的には、バルクを、第一のポリオレフィンが沈殿する温度まで冷却させるのに十分低い。しかしながら、特定の好ましい温度は、二次的な不純物等の他の成分の存在によって決まり得る。
【0026】
更に、少なくとも第一及び第二の冷却面は、異なる表面積を有することが好ましい。異なる表面積を有することは、表面が円筒形等の同じ形状を有する可能性を除外しない。第一の冷却面の表面積が、第二の冷却面の表面積より小さいことが更に好ましい。第一及び第二の冷却面の面積比は、典型的には1:2未満、好ましくは1:5未満、例えば1;7である。面積比は、第一及び第二の冷却面の機能を更に区別することができる。
【0027】
第一のポリオレフィンが沈殿すると、残りのポリオレフィン溶液から容易に分離され得る。例としては、残りのポリオレフィン溶液を流し出すことができる、又は沈殿した第一のポリオレフィンを残りの溶液から取り出してもよい。第一のポリオレフィンを残りの溶液から分離することによって、第二のポリオレフィンに富む画分及び第一のポリオレフィンに富む画分が得られる。
【0028】
第一及び第二のポリオレフィンに富む画分の純度は、典型的には、とりわけ、プラスチック廃棄物中の第一及び第二のポリオレフィンの特定の比によって決まる。例としては、LDPE及びLLDPEの開始時の質量比が50/50である場合、プラスチックの総質量に対して、少なくとも70% w/w、例えば80% w/wのLLDPEのプラスチックが達成され得る。次いで、第二のポリオレフィンに富む画分は、画分の総質量に対して少なくとも70% w/w、例えば80% w/wのLDPEの対応する純度を有し得る。これらの純度は、一般に、更に処理して新規の材料及び物品にするのに十分であると考えられる。更なる処理に十分にするために正確に必要とされる純度は、最終用途によって決まり得る。特定の用途では、純度は、好ましくは、得られた画分が未使用の材料と区別なく使用することができるほど十分に高い。
【0029】
第一のポリオレフィンに富む画分は、例としては、固体画分又はスラリーであってもよい。これに応じて、方法は、好ましくは、第一のポリオレフィンを第一のポリオレフィンに富む画分から回収する工程を更に含む。これは、典型的には、第一のポリオレフィンに富む画分を第二の溶媒中に昇温下で溶解することによって達成される。第二の溶媒は、好ましくは、例としては、第一のポリオレフィンに富む画分の総質量に対して最大90%まで、好ましくは最大95%まで、より好ましくは最大99%まで実質的に除去される。これによって、典型的には、固体の第一のポリオレフィンが得られる。第一のポリオレフィンに富む画分は、場合により、残存する量の第一の溶媒を含む。この第一の溶媒も、第二の溶媒の実質的な除去と同時に、実質的に除去され得る。第二の溶媒は、第一の溶媒と同じでも異なっていてもよい。
【0030】
第二のポリオレフィンに富む画分は、典型的には、溶液又は液体の画分であるが、スラリーでもあり得る。方法は、好ましくは、第二のポリオレフィンを、第二のポリオレフィンに富む画分から回収する工程を更に含む。特に、回収は、第一の溶媒を実質的に除去することによって達成され得る。第一の溶媒は、例としては、第二のポリオレフィンに富む画分の総質量に対して最大90%まで、好ましくは最大95%まで、より好ましくは最大99%まで除去して、好ましくは固体の第二のポリオレフィンを得ることができる。
【0031】
第一及び/又は第二の溶媒は、凍結乾燥、溶質の沈殿及びエバポレーション等、当該技術分野において公知の様々な方法において除去することができる。方法の組合せも用いられ得ることが理解されよう。エバポレーションによって第一及び/又は第二の溶媒を少なくとも実質的に除去することが典型的に好ましい。第一及び/又は第二の溶媒が、典型的に低沸点溶媒であるため、エバポレーションが好ましい。第一の溶媒の好ましい低沸点に起因して、第一及び/又は第二の溶媒を蒸発させるために必要とされるエネルギーが少なくて済む。低沸点溶媒という用語は、本明細書では、150℃未満、好ましくは100℃未満、より好ましくは60℃未満の沸点を有する溶媒に使用される。
【0032】
第一及び/又は第二の溶媒が、無極性の低沸点溶媒であることが更に好ましい。溶媒の無極性は、ポリオレフィンの溶解をより成功させることができる。当該技術分野において、双極子モーメントを有さない溶媒は、無極性溶媒と考えられ、一方で極性溶媒は、双極子モーメントを有する溶媒である。したがって、双極子モーメントを有さない高度に対称的な分子及び脂肪族炭化水素は、無極性とみなされる(例えば、Wypych, G.、Handbook of Solvents、Toronto-New York、2001を参照)。したがって、無極性低沸点溶媒の例としては、メチル-tert-ブチルエーテル(MBTE)及びシクロペンタンがある。驚くべきことに、これらの溶媒中の第一及び第二のポリオレフィンの沈殿温度の差が特に高く、そのため、これらの溶媒が、ポリオレフィンを分離させるのに特に好都合であることが発見された。例としては、第一及び第二のポリオレフィンの沈殿温度の差は、溶媒中で、少なくとも5℃、例えば少なくとも10℃である。したがって、第一及び/又は第二の溶媒は、MTBE及びシクロペンタンからなる群から選択されることが好ましい。
【0033】
第一の溶媒中の第一及び第二のポリオレフィンの溶解は、昇温(即ち、20℃超)で実施される。より高い温度は、典型的には、ポリオレフィンの溶解を加速する。同様に、第二の溶媒中の第一のポリオレフィンに富む画分の好ましい溶解も昇温で実施される。
【0034】
しかしながら、第一及び/又は第二の溶媒の沸騰温度が、好ましくは低い(例えば、60℃未満)ため、溶媒は、常圧下で、ポリオレフィンがその沸点に達する前に溶解するために十分高い温度まで加熱することができない可能性がある。これに応じて、昇圧下で溶解/沈殿の手順を実施することが好ましい。
【0035】
ポリオレフィンの分離を更に強化するために、ポリオレフィン溶液を冷却する前及び/又はその間、貧溶媒を添加することが好ましい場合がある。貧溶媒の添加が溶質の沈殿を強化することができることは、当該技術分野において周知である。貧溶媒は、典型的には、溶質の溶媒能を低下し、そのため溶質(即ち、ポリオレフィン)は、溶液からより容易に沈殿することができる。好適な貧溶媒の例としては、極性貧溶媒、例としてはメタノール、エタノール等の低級アルコール及びアセトン等のケトンが挙げられる。n-ヘキサン等の貧溶媒も満たすことができる。
【0036】
上述したように、プラスチック廃棄物は、好ましくは、DKR310規格に準拠する。この規格は、例としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)の混合物を含み得る箔に用いられる。本発明者らは、驚くべきことに、本発明による方法が、少なくとも、LDPEからのLLDPEの部分的分離を可能にさせることを発見した。プラスチック廃棄物は、微量のポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及び/又は高密度ポリエチレン(HDPE)を更に含み得る。
【0037】
これに応じて、好ましい実施形態において、第一のポリオレフィンはLLDPEであり、第二のポリオレフィンはLDPEである。LDPEは、一般に、分枝状PEをLLDPEより多く含み、より高い沈殿温度を有する。或いは、ポリプロピレンが存在する場合、これが第一のポリオレフィンであり得、LLDPE等のポリエチレンは第二のポリオレフィンであり得る。また、方法を後続して用いて、プラスチック廃棄物に含まれる3種以上のポリオレフィンを少なくとも部分的に分離することもできる。第二のポリオレフィンに富む画分は、例としては、第二のポリオレフィン及び第3のポリオレフィンを含んでもよい。これに応じて、この第二のポリオレフィンに富む画分は、本発明による方法のためのインプットとして使用され得る。
【0038】
本方法は、図1に図示した、ポリオレフィン溶液(3)を保持するための容器(2)、第一の冷却面(4)及び第二の冷却面(5)を含む系(1)において実施されてもよい。第一の冷却面は、好ましくは、ポリオレフィン溶液中に少なくとも部分的に浸漬され、第二の冷却面は、少なくとも部分的に、好ましくは全体的にポリオレフィン溶液を囲む。大型の容器の場合、複数の第一の冷却面を用いることができることを理解されたい。第一及び第二の冷却面の位置は、それらの表面が目的及び上述の機能を果たすことを可能にする。
【0039】
説明を明確に且つ簡潔にするために、各特徴は、同一の又は別々の実施形態の一部として本明細書に記載するが、本発明の範囲が、記載した特徴の全て又は一部の組合せを有する実施形態を含み得ることを理解されたい。
【0040】
本発明を、以下の非限定的な実施例によって例示することができる。
【実施例1】
【0041】
LLDPE及びLDPEの混合物(10g)を、150℃/6.5バールで、110mLのMTBE/シクロペンタン中に溶解してポリオレフィン溶液を得る。90℃のコールドフィンガー(即ち、第一の冷却面)及び90℃超の冷却された容器の壁(即ち、第二の冷却面)を使用して溶液を徐々に90℃まで冷却する。約95℃の混合物の温度で、LLDPEがコールドフィンガー上で沈殿を開始することが推定される。更なる冷却後、溶液を容器から流し出して、LDPEに富む画分を得る。
【実施例2】
【0042】
MBTE及びシクロペンタン中のLLDPE及びLDPEの沈殿温度の差を決定した。結果は、図2及び図3のそれぞれにおいて確認することができ、数は摂氏度を示す。図2は、LDPEがMTBE中、98℃で沈殿を開始し、一方でLDPEが僅か82℃で沈殿を開始することを示す。
【0043】
図3は、沈殿温度の差が約10℃以下であることを例示する。
【符号の説明】
【0044】
1 系
2 容器
3 ポリオレフィン溶液
4 第一の冷却面
5 第二の冷却面
図1
図2
図3
【国際調査報告】