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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-27
(54)【発明の名称】誘電損失の低いガラス繊維組成物
(51)【国際特許分類】
   C03C 13/00 20060101AFI20240520BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C03C13/00
C03C3/091
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574328
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 CN2022111308
(87)【国際公開番号】W WO2023082736
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】202111323970.1
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519433171
【氏名又は名称】タイシャン ファイバーグラス インク
【氏名又は名称原語表記】TAISHAN FIBERGLASS INC.
【住所又は居所原語表記】Dawenkou Industrial Zone, Daiyue District, Taian City, Shandong, China
(71)【出願人】
【識別番号】523177001
【氏名又は名称】中国建材集団有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】唐 志尭
(72)【発明者】
【氏名】李 永艶
(72)【発明者】
【氏名】王 加芳
(72)【発明者】
【氏名】張 艶萍
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA05
4G062BB05
4G062DA06
4G062DB03
4G062DB04
4G062DC04
4G062DD01
4G062DD02
4G062DD03
4G062DE01
4G062DF01
4G062EA02
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4G062EB02
4G062EC01
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4G062ED01
4G062ED02
4G062ED03
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4G062FB01
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4G062FE02
4G062FF01
4G062FG01
4G062FH01
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4G062FK01
4G062FL01
4G062GA01
4G062GB01
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE02
4G062GE03
4G062HH01
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4G062HH05
4G062HH07
4G062HH09
4G062HH11
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM28
4G062NN26
(57)【要約】
本発明は、ガラス繊維の技術分野に属し、詳しくは誘電損失の低いガラス繊維組成物に関する。前記組成物の各成分の含有量は、SiO:50~60%、B:20~30%、Al:8~18%、CaO:1~6%、F:0.2~1.50%、SnO:0.05~0.5%、LiO:0.05~0.5%、KO+NaO≦0.05%である。本発明は、SnOとFを同時に添加し、F/SnOの比を制御することにより、ガラス繊維の誘電率と誘電損失が低いだけでなく、ガラス繊維の粘度を低下させて、ガラス繊維中の気泡数がゼロとなる。本発明は、各成分の間の相互作用により、得られるガラス繊維組成物が低誘電率と低誘電損失、低気泡、低粘度を有し、ガラス性能に優れる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量百分率で、各成分の含有量が、
SiO:50~60%、
:20~30%、
Al:8~18%、
CaO:1~6%、
:0.2~1.50%、
SnO:0.05~0.5%、
LiO:0.05~0.5%、
O+NaO≦0.05%であり、
SnOとLiOの質量百分率含有量は、SnO/LiOの範囲が0.2~3であることを満たし、
とSnOの質量百分率含有量は、F/SnOの範囲が1~5であることを満たすことを特徴とする、誘電損失の低いガラス繊維組成物。
【請求項2】
質量百分率で、各成分の含有量が、
SiO:50~60%、
:20~30%、
Al:8~18%、
CaO:1~6%、
:0.2~1.50%、
:0.05~5%、
SnO:0.05~0.5%、
LiO:0.05~0.5%、
O+NaO≦0.05%であり、
SnOとLiOの質量百分率含有量は、SnO/LiOの範囲が0.2~3であることを満たし、
とSnOの質量百分率含有量は、F/SnOの範囲が1~5であることを満たし、
、FとSnOの質量百分率含有量は、P/(F+SnO)の範囲が2~5であることを満たすことを特徴とする、誘電損失の低いガラス繊維組成物。
【請求項3】
質量百分率で、各成分の含有量が、
SiO:50~60%、
:20~30%、
Al:8~18%、
CaO:1~6%、
:0.2~1.50%、
SnO:0.05~0.5%、
LiO:0.05~0.5%、
O+NaO≦0.05%、
0<MgO<2.0であり、
SnOとLiOの質量百分率含有量は、SnO/LiOの範囲が0.2~3であることを満たし、
とSnOの質量百分率含有量は、F/SnOの範囲が1~5であることを満たすことを特徴とする、誘電損失の低いガラス繊維組成物。
【請求項4】
質量百分率で、各成分の含有量が、
SiO:50~60%、
:20~30%、
Al:8~18%、
CaO:1~6%、
:0.2~1.50%、
:0.05~5%、
SnO:0.05~0.5%、
LiO:0.05~0.5%、
O+NaO≦0.05%、
0<MgO<2.0であり、
SnOとLiOの質量百分率含有量は、SnO/LiOの範囲が0.2~3であることを満たし、
とSnOの質量百分率含有量は、F/SnOの範囲が1~5であることを満たし、
、FとSnOの質量百分率含有量は、P/(F+SnO)の範囲が2~5であることを満たすことを特徴とする、誘電損失の低いガラス繊維組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維の技術分野に属し、具体的には、誘電損失の低いガラス繊維組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
5G通信の発展に伴い、低誘電率材料に対する性能要求は、さらに厳しくなる。5Gの最大の利点は伝送速度が速いことであり、それに伴う最大の欠点は透過力差、減衰が大きいことであり、ガラスは高周波の電磁界で電気エネルギーの一部を熱エネルギーに変換して損失を発生させる。これは、伝送媒体の材料に誘電率が低く、誘電損失が小さいという特徴を持っていることを要求し、これにより、信号伝送がより早く、信号遅延がより低く、信号忠実度がより高いことを実現できる。
【0003】
中国特許CN102503153Aには、48wt%~58wt%のSiO、10wt%~18wt%のAl、18wt%~28wt%のB、0~6wt%のCaO、0~6wt%のMgO、0.5wt%~8wt%のY、0.2wt%~0.6wt%のCeO、0~3wt%のF、0~1wt%のNaO、KOとLiO、0~0.45wt%のTiO、0~0.5wt%のFeを含む低誘電率ガラス繊維が開示される。当該ガラス繊維は、室温で周波数が1MHzである時、誘電率が4.1~4.5で、誘電損失が6×10-4~9×10-4である。
【0004】
中国特許CN104556710Aには、異形ガラス繊維及びその製造方法が開示され、前記異形ガラス繊維は、モル百分率で、以下の成分:SiO 52%~58%、B16%~24%、Al13%~19%、CaO 1%~5%、MgO 4.2%~8%、F 0.4%~2%、LiO 0~0.5%、Fe0~0.4%、KO 0~0.2%、NaO 0~0.2%を含む。当該異形ガラス繊維は、室温で周波数が1MHzである時、誘電率が4.7未満で、誘電損失係数10-3未満である。
【0005】
中国特許CN103482876Aには、プリント配線基板用低誘電率ガラス繊維が開示され、前記ガラス繊維は、以下の質量百分率の成分:SiO48%~53%、Al 13%~16%、B 19%~25%、P0.5%~2%、CaO 5.0%~8.5%、La 0.5%~8%、ZnO 0.5%~2.5%、TiO0.5%~2%、NaO、KOとLiO 1%未満、SO 0.45%未満、Fe0.45%未満を含む。それは非常に低い誘電率と誘電損失を有し、室温で周波数が1MHzである時、誘電率が4.8~5.5で、誘電損失が4~8×10-4である。
【0006】
上記特許文献中のガラス繊維は、低い粘度があるが、誘電性能は1MHzの条件下で検出されたもので、ガラスの誘電損失は、周波数が高くなるにつれて増大する。例えば、常温、1MHzでは珪酸塩ガラスのtanδ=9×10-4であり、3000MHzでは36×10-4となる。したがって、上記特許では、常温と1MHzで検出した場合にのみ誘電損失が相対的に低い。
【0007】
中国特許CN113135666Aには、SiO:50~58%、Al:10~16%、B:20~28%、MgO:1~4%、CaO:1~4%、LiO:0.05~0.5%、NaO:0.05~0.6%、KO:0.05~0.8%、TiO:0.2~1.5%、CeO:0~1%、SnO:0.01~1.5%、Fe:0~0.1%を含む低誘電ガラス繊維が開示されている。シリカ、アルミナ、ホウ素酸化物の割合を適正に設定することにより、ガラス繊維に低い誘電率と誘電損失を有させ、ガラス粘度を適切に調整する。前記ガラス繊維は、室温で周波数が10GHzである場合、誘電率が4.2~4.5であり、誘電損失が2.5×10-3~4.4×10-3である。当該特許では、誘電率と誘電損失が高い。
【0008】
以上の問題に基づいて、高周波でのスケール生産に適した低誘電率、低誘電損失、低粘度、気泡ゼロのガラス繊維組成物の開発が急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、低誘電率、低誘電損失、低粘度、気泡ゼロのガラス繊維組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る誘電損失の低いガラス繊維組成物は、質量百分率で、各成分の含有量が、
SiO:50~60%、
:20~30%、
Al:8~18%、
CaO:1~6%、
:0.2~1.50%、
SnO:0.05~0.5%、
LiO:0.05~0.5%、
O+NaO≦0.05%である。
【0011】
好ましくは、前記誘電損失の低いガラス繊維組成物は、質量百分率で、各成分の含有量が、
SiO:50~60%、
:20~30%、
Al:8~18%、
CaO:1~6%、
:0.2~1.50%、
:0.05~5%、
SnO:0.05~0.5%、
LiO:0.05~0.5%、
O+NaO≦0.05%である。
【0012】
好ましくは、前記誘電損失の低いガラス繊維組成物は、質量百分率で、各成分の含有量が、
SiO:50~60%、
:20~30%、
Al:8~18%、
CaO:1~6%、
:0.2~1.50%、
SnO:0.05~0.5%、
LiO:0.05~0.5%、
O+NaO≦0.05%、
0<MgO<2.0である。
【0013】
好ましくは、前記誘電損失の低いガラス繊維組成物は、質量百分率で、各成分の含有量が、
SiO:50~60%、
:20~30%、
Al:8~18%、
CaO:1~6%、
:0.2~1.50%、
:0.05~5%、
SnO:0.05~0.5%、
LiO:0.05~0.5%、
O+NaO≦0.05%、
0<MgO<2.0である。
【0014】
ここで、
SnOとLiOの質量百分率含有量は、SnO/LiOの範囲が0.2~3であることを満たす。
とSnOの質量百分率含有量は、F/SnOの範囲が1~5であることを満たす。
、FとSnOの質量百分率含有量は、P/(F+SnO)の範囲が2~5であることを満たす。
【0015】
本発明でガラス繊維組成物を製造する原料は、それぞれ、石英粉末、無水ホウ酸、アルミナ、ウォラストナイト、酸化マグネシウム、酸化スズ、蛍石、メタリン酸アルミニウム、スポジュメンである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有益な効果は、以下の通りである。
【0017】
SiOは、シリコーン四面体の構造で不規則な連続ネットワーク構造を構成している。当該構造は、高い結合強度を有し、構造が緊密であり、外電場によって分極しにくく、コンダクタンスや弛緩などの損失も生じにくい。このため、SiO含有量が多いと、ガラス誘電率や誘電損失を著しく低減させ、機械的強度を増強させる。しかし、含有量が多くなると、粘度が上昇し、溶融製錬の難易度が高くなる。例えば、石英ガラスは、誘電損失が0.0001と非常に低いが、粘度が高く、溶解しにくい。本発明は、SiO含有量の範囲を50~60%に限定する。
【0018】
は、高温でホウ素がホウ素-酸素三角体として存在し、粘度を下げることがでる。しかし、ホウ素含有量が一定の値に達すると、それは代わりに粘度を増加させるので、ホウ素含有量が高すぎると、生産に不利になる。また、Bの含有量が多すぎると、SiO格子が析出しやすく、分相が発生する。また、Bの添加は、B3+を導入してB-Oを形成し、その結合エネルギーはSi-O結合エネルギーよりも大きく、ガラス中でガラスネットワーク構造を安定させ、酸素イオンの分極を制限する役割を果たすことができる。したがって、Bの添加により、誘電率と誘電損失を低減させることができる。本発明は、B含有量の範囲を20~30%に限定する。
【0019】
Alの添加は、ガラスの晶析を効果的に抑制することができる。多成分ガラスにおいて、Alは、破断ネットワークを接続する役割を果たすことができるため、ネットワーク構造が緊密になり、ガラス強度が向上するが、Al-O結合エネルギーがSi-O結合エネルギーより弱く、遊離酸素が増加して損失を増大させる。本発明は、Al含有量の範囲を8~18%に限定する。
【0020】
CaOは、ネットワーク外体に属し、カルシウムイオン配位数は一般的に6であり、構造中の活動性が小さく、一般にガラスから析出しにくく、高温時の活動性が大きい。Ca2+には、ブリッジ酸素を分極させ、及びシリコーン結合を弱める作用があるため、粘度を低下させる作用があり、材料性を短縮できるとともに遊離酸素による損失が増大する可能性がある。本発明は、CaO含有量の範囲を1~6%に限定する。
【0021】
本発明は、さらに、SnO及びFに加えてMgOを添加することにより、MgOはガラス系の粘度を低下させることができる。しかし、含有量が多すぎると誘電率や誘電損失が高くなるため、本発明は、MgO含有量の範囲をMgO<2.0に限定する。
【0022】
は、ガラス構造中に常に燐酸素四面体として存在するガラス形成体であり、ガラスの骨格としてガラスの分相温度を高め、ガラスの耐温性能を向上させることもできるし、ガラスの材料性を短縮することもでき、技術的研究ではDSCによるガラスの膨張軟化点温度試験を用いてP導入後は未導入の軟化点温度より上昇し、後段製品の耐温性向上に寄与することが認められた。また、単一のP原料は吸湿しやすく、しかも原料配合過程で凝集しやすく、配合材の均一性を悪化させ、しかも貯蔵条件に対する要求が高いことから、本発明はメタリン酸アルミニウム又は縮合リン酸アルミニウム原料でPを導入して、配合材中にPを均一に分散させ、配合材の溶融過程でBの溶解速度が速く、均一に分布するPに局所的に包み込まれ、揮発量を低減し、ガス排出量を低減する。しかし、導入量が多すぎると、低温粘度が大幅に上昇し、またP含有量が多すぎるとBから遊離酸素を奪いやすくなり、ガラスの失透を引き起こし、晶析が生成する。本発明は、Al含有量>8の場合、高B、P導入による分相抑制に有効であることを見出し、Al、P、B比率を制御することによりガラスの成形温度を低下させ、結晶析出を抑制するものであり、本発明はP含有量の範囲を0.05~5%に制御する。
【0023】
アルカリ金属酸化物であるLiO、KO、NaOは、ガラス粘度特性を急速に低下させ、ガラスの溶融と清澄に寄与する。しかし、アルカリ金属と酸素との結合は極めて分極しやすく、誘電損失を著しく増大させる。本発明は、LiOを少量添加することにより、誘電損失を保証する前提の下で粘度を低下させ、ガラス溶融に寄与する。本発明は、原料中のKO、NaO含有量を厳密に制御し、少量存在が原料中の不純物から導入され、添加する必要がない。本発明は、LiOの範囲を0.05~0.5%、KO+NaO≦0.05%に限定して、低い融解製錬温度で誘電損失の低いガラスが得られることを保証する。
【0024】
SnOは、高温で分解してOを生成し、ガス分圧を低下させ、気泡排出に有利である。さらに重要なことは、本発明のSnO+LiOは複合清澄剤として機能し、Sn4+外電子層の干渉を受けてLiの分極作用が強くなり、LiOの有益な効果を効果的に高めることであり、ガラス清澄過程におけるガラス液の表面張力が低下し、気泡を効率よく排出し、ガラス均一性を向上させ、低誘電ガラス繊維生産に必要なゼロ気泡率を実現する。また、配合材の溶融温度が大幅に低下し、B、Fの揮発を減少させる。本発明は、SnO含有量の範囲を0.05~0.5%に制御し、重量百分率の比SnO/LiOの含有量を0.2~3重量%に制御する。
【0025】
Fは、原子半径が小さく、O原子に相対して分極しにくく、SiとSi-F結合を形成し、Si-Oの一部を代替して、ガラスネットワーク中で網切れ作用をするとともに、ガラス中に形成されるSi-F、B-F、Al-F結合の強さがSi-O、B-O、Al-O結合の強さよりも弱い。このような二重作用は、ガラスの溶融温度を低下させ、粘度を低下させ、ガラスの表面張力を低下させるために、ガラスの成形工程の難易度の低下に寄与する。且つ、形成されたSi-F結合が分極しにくく、誘電損失を低減する。本発明は、F含有量の範囲を0.2~1.5%に制御する。
【0026】
また、本発明におけるFとSnOの含有量の比は、ガラスの誘電損失に大きく影響し、少量のSnOを導入すると両者が協働して誘電損失の低減が顕著になる。重量百分率の比F/SnOの範囲が1~5では、本発明の効果は明らかである。実験の結果、FやSnO単独添加又はF/SnOの範囲が1~5でなければ、いずれも本発明の目的を達成できないことが分かる。FとSnOを併用すると、FはSnOの周囲に分散してSn-F結合を形成し、Si-F、B-F、Al-Fと協働してガラスの溶融温度をさらに低下させ、粘度を低下させ、ガラスの表面張力を低下させる。
【0027】
以上のことから、本発明は、SnOとFを同時に添加し、F/SnOの比を制御することにより、ガラス繊維に低い誘電率と誘電損失を有させるだけでなく、ガラス繊維の粘度を低下させて、ガラス繊維中の気泡数がゼロとなる。
【0028】
また、本発明は、SnO及びFに加えてPを添加し、P/(F+SnO)の比を2~5の範囲に制御することにより、ガラス繊維の誘電率と誘電損失をさらに低減させる。
【0029】
本発明は、各成分の間の相互作用により、得られるガラス繊維組成物が低誘電率と低誘電損失、低気泡、低粘度を有し、ガラス性能に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施形態に関連してさらに説明する。
【0031】
実施例1~7
実施例1~7における誘電損失の低いガラス繊維組成物の組成を、表1に示す。
【0032】
(1)各成分的含有量に応じて、各化合物を一定の配合比で混合し、均一に混合した後、配合材を白金るつぼに入れて1550~1600℃で溶融させ、1350℃未満で伸線してガラス繊維とした。
ガラスに十分な強度を確保し、伸線工程に適応するため、弾性率強度測定を行う:ガラスを20*20*15mm(長さ*幅*厚さ)のガラスブロックに切断し、被験面が滑らかで平坦であり、超音波厚さ測定器を用いて、下記の式[厚さ測定器で測定した実際の音速単位はmm/usであるため、下記式中の音速値(cm/s)は、実測値*10で、密度単位:g/cmで、計算に必要なデータを代入すればよい]に従って測定する。
【0033】
【数1】
ここで、V=横波音速(cm/s)、V=縦波音速(cm/s)。
【0034】
【数2】
ここで、V=縦波音速(cm/s)、ρ=密度(g/cm)、ν=ポアソン比。
【0035】
(2)誘電特性測定は、均一に混合した配合材を白金るつぼに入れて溶融し、溶融したサンプルを600℃でアニールして応力を除去した後、Φ50*2mmのサンプルに切り出し、ネットワークベクトルアナライザで10GHzで試験する。
ガラス繊維組成物のlg3.0温度、液相温度、ΔT、誘電率、誘電損失、弾性率、気泡数の各指標を測定したデータを、表1に示す。
【0036】
比較例1~6
比較例1~6におけるガラス繊維組成物の組成を、表2に示す。
当該ガラス繊維組成物のlg3.0温度、液相温度、ΔT、誘電率、誘電損失、弾性率、気泡数の各指標を測定したデータを、表2に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
表中、lg3.0とは、ガラス液粘度が1000ポイズであるときの温度であり、ガラスの成形温度即ち伸線温度であり、液相温度即ち晶析温度又は分相温度の上限は、ガラスの失透上限温度であり、成形温度と液相温度との差が大きいほど伸線に有利である。
【0040】
表1~2のデータを分析すると、比較例1中のSnO/LiOの比は、5.00であり、0.2~3の範囲外である。比較例3中のF/SnOの比は、6.00であり、1~5の範囲外である。比較例4中のP/(F+SnO)の比は、1.58であり、2~5の範囲外である。ガラス繊維の粘度が高くなり、ガラス繊維中の気泡の個数も異なる程度増加する。
【0041】
実施例1と比較例2、5、6とを比較すると、本発明の実施例1に比べて、比較例2ではSnOが添加されておらず、比較例5ではFが添加されておらず、比較例6ではSnOとFが添加されていないことがガラス繊維の粘度上昇につながり、ガラス繊維中の気泡の個数が増加していることが分かる。本発明は、SnOとFを同時に添加し、F/SnOの比を制御することにより、ガラス繊維に低い誘電率と誘電損失を有させるだけでなく、ガラス繊維の粘度を低下させて、ガラス繊維中の気泡数がゼロとなる。また、本発明では、Pを添加し、P/(F+SnO)の比を2~5の範囲に制御することにより、ガラス繊維の誘電率と誘電損失をさらに低減させる。
【国際調査報告】